【SS】璃奈「今日はバレンタインデー」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


2: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:27:23.63 ID:fwx8/DmA
>>1
代行ありがとうございます!

ほのぼのSF、ちょい長めです。
 
3: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:29:47.79 ID:fwx8/DmA
璃奈(今日はお菓子を作ってきた。友達と、同好会のみんなの分。こんなリア充イベントを楽しみって思ったのは初めてかも……)

璃奈(まだ寒いけど、今日はなんだか空気が甘い気もする。みんな浮ついている。授業まで時間もあるし、取り敢えず同好会の部室に行ってみようかな。誰かいるかも)

侑「あっ、璃奈ちゃん!おはよう!」

璃奈「おはよう、侑さん。歩夢さんも」

歩夢「おはよう璃奈ちゃん。今日は早いね?」

璃奈「うん、実は…」
璃奈「これ、ハッピーバレンタイン。初めてだから上手くできてるかわからないけど…」

侑「わぁ、ってことは璃奈ちゃんの手作り!?すっごく嬉しいよ!ね、歩夢!」

歩夢「うん。凄いね璃奈ちゃん。ひとりで作ってきたんだ」

璃奈「璃奈ちゃんボード『テレテレ』」
 
4: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:33:25.28 ID:fwx8/DmA
侑「じゃあ私たちも!はい、ハッピーバレンタイン!」

璃奈「私たち、ってことは二人で作ったの?」

侑「うん、私は料理苦手だから…歩夢との合同ってことで」

璃奈「これ、マカロン…?手作りできるんだ」
璃奈「ありがとう。大事に食べるね」

侑「えへへ、歩夢の監修だから、味は保証するよ!私も今食べてるし!」

歩夢「もう、侑ちゃん…もっと味わって食べてよ〜」

侑「だって美味しいんだもん!歩夢のは毎年貰ってるけど、やっぱり最高だよ」

歩夢「え、そ、そんなぁ…私が一番なんて…」

璃奈(歩夢さんの顔、すっごく赤い…それに侑さんの持ってる袋の中、明らかに私のより凝ってる。侑さんが自分のだけ拘るとは思えないし…良く見れば歩夢さんの持ってるのはちょっと不格好。ってことはきっと、二人で交換したのかな)
 
5: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:37:20.26 ID:fwx8/DmA
侑「あ、さっきランジュちゃんとミアちゃんとも会ったよ。二人も皆に配るって言ってたし、きっと交換できるんじゃないかな」

璃奈「部活の時に渡しても良いけど…やっぱり早めにあげたいな。侑さん、今どこにいるかわかる?」

侑「どこだろ…あ!栞子ちゃんのところに行くって言ってたから、もしかしたら生徒会室じゃないかな?最近せつ菜ちゃんと一緒にお仕事頑張ってるらしいし」

璃奈「わかった、行ってみるね。お菓子ありがとう」

侑「うん、じゃあね〜。歩夢もホラ」

歩夢「歩夢しか選べないよ〜なんて、侑ちゃんったら…えへ、へへへ…」

侑「あれ?歩夢?お〜い」

璃奈「……お菓子作りで疲れてまだ眠いのかも。低血圧には糖分がいいらしいから、侑さんが食べさせてあげるといい」

侑「そうなの?じゃあ歩夢〜、あ〜ん」

歩夢「へひゃあ!?ゆゆゆゆ侑ちゃん!?」

侑「ちょ、避けないでよ〜」

璃奈「ごゆっくり。璃奈ちゃんボード『仲人』」

歩夢「璃奈ちゃ〜ん!?」
 
6: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:44:58.28 ID:fwx8/DmA
コンコン

璃奈「失礼します」

栞子「はい。…あ、璃奈さん。おはようございます」

ミア「璃奈!Good morning!」

璃奈「栞子ちゃんに、ミアちゃんとランジュちゃんも。おはよう」

嵐珠「璃奈、情人节快乐!」

璃奈「???」

栞子「ランジュ、いきなり中国語じゃわかりませんよ」

嵐珠「あっ!ごめんなさい…ええと、おはよう!そして、ハッピーバレンタイン!ランジュの手作りよ。受け取りなさい!」

璃奈「わっ、おっきいチョコ…嬉しい、ありがとうランジュさん」

ランジュ「きゃあっ!やったわ栞子!一週間前から準備してた甲斐があったわね!」
 
8: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:52:08.23 ID:fwx8/DmA
栞子「すみません璃奈さん。ランジュ、随分前から張り切っていたみたいで…」

嵐珠「だって日本じゃ友達同士で送り合う日でしょ?こんなの初めてだもの!それに栞子とミアも用意してるじゃない」

栞子「泣きますよランジュ…こほん。こちら、私からになります。実は私も、恥ずかしながらこういった催しの経験がなく、ランジュと違って既製品ですが…よろしければ受け取ってください」

璃奈「すごい、上品だね。美味しそう」

嵐珠「ほらミアも!」

ミア「なんだよ、別に渡さない訳じゃないだろ。これはボクからだ。Happy valentine、璃奈」

璃奈「わ…」
璃奈(これ、確かアメリカのブランド…すごく有名なやつじゃ)

璃奈「いいの?」

ミア「ここのチョコレートは結構気に入ってるんだ。璃奈にも食べてほしいんだよ」
 
11: (しまむら) 2023/03/08(水) 22:58:37.84 ID:fwx8/DmA
璃奈「ありがとうミアちゃん。栞子ちゃんも」
璃奈「これ…お返しって訳じゃないけど、作ってきたの。食べて欲しい」

嵐珠「きゃあっ!璃奈の手作り!?」

ミア「Thanks.ランジュに言われてだったけど、こっちも用意しておいて良かったよ。こんな最高なプレゼントがあるなんて」

嵐珠「あら、日本にはホワイトデーがあるじゃない」

ミア「一月後なんて遅すぎるよ。すぐ返したいじゃないか」

栞子「まあ、ホワイトデーは日本独自の催しらしいですから。今日のものはバレンタインとして受け取って、来月にまたお返しとして用意すれば良いのでは?」

ミア「Excellent!それだ!栞子、良いこと言うね」

嵐珠「来月も皆から貰えるの!?最高ね!」
 
12: (もも) 2023/03/08(水) 22:59:12.10 ID:dL3ZP93+
SFって言われるとランジュと嵐珠にクローン的な意味があるように思えてしまう
 
14: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:03:37.22 ID:fwx8/DmA
>>12
単純にミスです。ツールの表記と手書き修正が混ざりました
 
13: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:01:48.57 ID:fwx8/DmA
栞子「こらランジュ、お返しは自分から期待するものじゃありませんよ。璃奈さんも、こちらはありがたく頂戴しますが…ホワイトデーは無理に用意しなくても構いませんからね」

璃奈「ううん、作ってくる。大変だったけど…お菓子を作るのも、誰かにあげるのも、すごく楽しい」

嵐珠「栞子とミアも来月は作ってくれば?」

栞子「それは…名案ですね。ただ、私にお菓子作りの適性があるかどうか」

璃奈「大丈夫だと思う。栞子ちゃんは器用だし、私も初めてだったけど何とかなったから。レシピをなぞればきっと美味しくできる」

ミア「そっか…次はボクも何かやってみようかな。せっかく璃奈が手作りしてくれてるんだ」

栞子「では私も挑戦してみようと思います。彼方さんや歩夢さんにコツを聞いておきたいですね」

璃奈「それがいいと思う。私も教えてもらいたい」
 
15: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:05:51.04 ID:fwx8/DmA
コンコン

せつ菜「何やら楽しそうですね…璃奈さん!おはようございます」

璃奈「せつ菜さん…菜々さん?」

せつ菜「せつ菜でいいですよ。生徒会の仕事中なので今は菜々モードですが」

ミア「Hey、遅かったじゃないか。呼び出しだったんだろ?何かやらかしたのか?」

せつ菜「いえ、実は…一時間前位に、学校の近くで大きなベルの音と何かが光るのを目撃した人がいたらしくて」
 
16: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:08:17.65 ID:fwx8/DmA
栞子「ベルと光?火事ですか?」

せつ菜「いえ、不審火などもなく、特にそれ以降音沙汰が無いので問題はないのですが、一応頭に入れておいてくれと」

嵐珠「不思議ね。誰かのライブの演出とかでもないのよね?」

せつ菜「はい。目撃した生徒によると、いきなり空中が眩しくなったらしいんです。遠くからだったので詳しくはわからなかったそうですが」
せつ菜「……まぁ、火事等で無ければ問題ありませんよ。それより璃奈さん!忘れないうちにこちらをどうぞ!」

璃奈「これは…チョコ…え、チョコ?」

せつ菜「はい!チョコレートです!」

璃奈「……紫色だけど」

せつ菜「綺麗ですよね!」

璃奈「せつ菜さんが作ったの?」

せつ菜「頑張りました!是非今食べてみてください!」

璃奈「う…ええと…」

せつ菜「自信作です!」

璃奈「じゃあ、一つだけ……璃奈ちゃんボード『南無三』」
 
18: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:14:12.90 ID:fwx8/DmA
せつ菜「……!」ワクワク

璃奈「……」モグモグ
璃奈「……あれ、おいしい…」

せつ菜「良かったです!」

璃奈「どうして…」

ミア「ボクも驚いたよ。案外イケるよね。紫色だけど」

嵐珠「ええ、本当に凄いわせつ菜!」

栞子「うぅっ!ぐすっ…ずずずっ…やはり料理の適性は気持が大切なのですね」

せつ菜「皆さんにも喜んでもらえて嬉しいです!実は彼方さんに手伝ってもらったんですが、やはり彼方さんは凄いですね!いつも以上に好評な気がします!」

璃奈「彼方さんに?」

せつ菜「はい!彼方さんの方から誘って戴いて…ずっとつきっきりで教えてもらったんです」

璃奈(彼方さん…ありがとう)

ミア(彼方が見てても紫色なのは何なんだ…?)
 
19: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:19:18.45 ID:fwx8/DmA
璃奈(もう授業だし、あとは放課後に配ろう…)

浅希「璃奈、おはよう!」

璃奈「浅希ちゃん、おはよう。……眠いの?」

浅希「えへへ、今日はなんだか早く目が覚めちゃって。一時間半も前から学校に来てたんだけど…」

璃奈「えっ、そんなに前から?」

浅希「同好会の部室で時間を潰してたから暇じゃなかったんだけど…やっぱり寝不足かなぁ」

璃奈「私もたまに夜更かししたり、変に目が覚めたりすることあるけど、やっぱり翌日は辛い」

浅希「だよね〜。あっ、璃奈。それでなんだけど……」
 
20: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:22:15.02 ID:fwx8/DmA
キャーッ! 

浅希「!?」
璃奈「?」

「アンタ、××先輩に告白したの!?」「う、うん。好きですって言って」「返事は?」「逃げてきちゃったから聞いてないよ〜、ホワイトデーに返してくれたら良いけど…」「バッカ、乙女が一ヶ月も待ってたら春が過ぎちゃうでしょ!放課後か明日に聞きなさい!」「む、無理だよ〜」

璃奈「……告白」

璃奈(そっか、バレンタインは“そういう”人もいるんだ…)
璃奈(友達にあげるのも初めてだったからすっかり考えてなかった。……まぁ、考える必要もないけど)

浅希「り、璃奈…?」

璃奈「あっ、ごめん浅希ちゃん。何の話だっけ」

浅希「え、えっとね。これ、作ってきたんだ」

璃奈「わぁ…これ、栗?」

浅希「マロングラッセっていうの。チョコレートとかじゃないんだけど、璃奈のことだから沢山貰ってると思って。少し違うのが良いかなって」
 
22: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:26:08.08 ID:fwx8/DmA
璃奈「装飾も綺麗だし、すっごく美味しそう…流石、焼き菓子同好会」
璃奈「じゃあ私も。浅希ちゃんには及ばないけど」

浅希「えっ!璃奈が作ってきてくれたの!?」

璃奈「うん。初めて作った」

浅希「わ、私に?嬉しい…ありがとうね。袋も可愛い!」

璃奈「浅希ちゃんのみたいな透明のラッピングと迷ったけど、紙の袋にしたんだ。リボンが気に入ってる」

浅希「すっごく良いよ!流石璃奈!大事に食べるね!」

璃奈「こちらこそ。浅希ちゃんのお菓子、楽しみ」

浅希「それでね、璃奈……そのマロングラッセなんだけど…」

キーンコーンカーンコーン


璃奈「あっ、予鈴…」

浅希「えっ、あっ、そっか。次璃奈は別教室だっけ」

璃奈「うん、荷物を取りに来たの。浅希ちゃん、またね」

浅希「うん、またね…」
 
23: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:30:52.81 ID:fwx8/DmA
璃奈(今日は心なしか、学校全体の空気が甘い気がする。侑さんと歩夢さん、栞子ちゃん、ランジュさん、ミアちゃん、せつ菜さん、浅希ちゃん。こんなにバレンタインを祝える友達がいるなんて…嬉しいな)

璃奈(何か袋を持ってくればよかったかな。鞄がいっぱいで溢れちゃいそう)

璃奈(浅希ちゃんのお菓子…お店に売ってるみたい。半透明の花柄の袋が可愛いし、見えてる部分だけでも美味しいのがわかる。マロングラッセだっけ。初めてだな)

璃奈(そういえば何かカードみたいなのが見える……そっか、浅希ちゃん位慣れてるとメッセージカードを入れたりするんだ。全く思いつかなかった。私もホワイトデーはやってみようかな。無表情で言うよりは伝わるかも…)

璃奈(……なんだか眠くなってきちゃった。慣れないことしたから?)

璃奈(でも今日の授業は重要なところだし、聞かないと……やば、視界が白く……)


 ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
 
25: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:34:32.61 ID:fwx8/DmA
璃奈「はっ!……え?」

璃奈(ここは、私の家?ベッド?あれ、さっきまで授業を受けてた筈なのに…)

璃奈(目覚まし止めなきゃ…あれ?鳴ってない)

璃奈(さっきのは、夢?)

璃奈(ていうかやば、時間…!今は14日の……わ、授業の一時間半前か。良かった、遅刻は大丈夫そう)

璃奈(寝惚けてるのかな。それに、夢のせいか寝た気がしない。寝不足みたいな気持悪さがあって、頭が混乱してる……)

璃奈「……とにかく起きよう。時間もあんまりないし、眠気が無くなっちゃった」

璃奈(それから、私は不可解な目覚めを忘れるように、いつもより少し早めの時間に家を出ることにした)

璃奈「あっ、お菓子…忘れないようにしないと」

璃奈(昨日作ったお菓子はちゃんと冷蔵庫にあった。ちゃんと可愛い紙の袋に入って、すぐに渡せる状態だ。夢みたいにみんな喜んでくれるといいけど)
 
27: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:38:17.64 ID:fwx8/DmA
璃奈(今日はちょっと暑い…三寒四温って言うのかな。薄めの上着にしてくればよかった)

璃奈(取り敢えず部室に行こう。正夢なんて思わないけど、誰かいるかも)

 ガラガラッ

璃奈「おはよう……あれ、誰もいない」

璃奈「……少し歩こう。誰かと会えるかも」

璃奈(それにしても、長い夢だった。すごくリアルで…)

璃奈(夢は自分の願望とか、考えてることが現れるって聞いたことがある。ってことは、私はみんなに喜んで欲しかったってことかな。ちょっと恥ずかしい…)

璃奈(でも、本当に楽しい夢だった。あのまま放課後まで続いてくれれば良かったのに。それに、みんなのお菓子も食べたかった。夢の中じゃせつ菜さんのを一口食べたけど、それだけだし)

璃奈(……もしかしたら夢だから美味しかっただけで、現実のせつ菜さんは彼方さんに教わってないのかも……うん、正夢の保証はないし、覚悟の準備だけしておこう)
 
28: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:43:11.21 ID:fwx8/DmA
璃奈「あれは……果林さん?」

果林「あら璃奈ちゃん。おはよう」

璃奈「おはよう、早いのに珍しい…」

果林「ええ。今日は色々やることがあるから」

璃奈「どうしたの?ここは情報処理学科の棟だけど…」

果林「嘘……い、いいえ。なんでもないわ。普通科に行く途中に寄ったのよ」

璃奈「すごい荷物。もしかしてチョコレート?」

果林「自慢じゃないけど、この時期は大変なのよね。当然ありがたいことなのだけど」
 
29: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:46:44.32 ID:fwx8/DmA
璃奈「流石果林さん。そんなに貰えるなんて。……じゃあ、お腹いっぱいかもしれないけど。私も」

果林「あら、ホント?」

璃奈「うん。でも、果林さんはカ口リーに気をつけてるし、ない方が良かった…?」

果林「フフ、そんなことないわ。受け取らせて頂戴」

果林「実は、ファンの子も結構気を遣ってくれてるらしくて、低カ口リー低糖のものとか、日持ちするものを送ってくれる子も多かったのよね。だからカ口リーはそれほど気にしなくて大丈夫なの。もちろん大事なのは気持だから……璃奈ちゃんの気持も、私にとっては特別よ♡」

璃奈「良かった…」

果林「じゃあ、はいこれ。私からのお返しね」

璃奈「ありがとう…ボンボン、ショコラ?もしかしてお酒の?」

果林「ええ。でもほんの少しだから苦味もなくてすっごく美味しいの。良かったら食べてみて」

璃奈「うん。私、初めて食べる……今、一口だけ食べてもいい?」

果林「もちろん。でも食いしん坊さんね」

璃奈「もう夢オチで味わえないのは嫌だから」

果林「?まぁ感想も聞かせてくれると嬉しいわ。それと……普通科への行き方も教えてくれないかしら」
 
30: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:51:22.82 ID:fwx8/DmA
璃奈(やっぱり果林さんは人気者。まだ朝早いのにあんなに貰えてた)

璃奈(お酒の入ったチョコレート、美味しかった。そこまでアルコールを感じないし、これなら残りも食べたい)

浅希「璃奈!」

璃奈「あれ、浅希ちゃん?」

浅希「お、おはようっ!」

璃奈(浅希ちゃん…なんだか息が荒い?走ってきたみたいな…夢で寝不足って言ってたし、それも正夢なのかも)

璃奈(そしたら、あのマロングラッセも本当に食べられるのかな…)

璃奈(ううん、変に想像して期待するのは良くないよね。夢の栞子ちゃんも言ってたけど、今日は私からあげることが大切だし。また来月もあるんだから)

浅希「り、あ……」

璃奈「浅希ちゃん。これ、私から」

浅希「えッ!?」

璃奈「上手くできてるかわからないけど…」

浅希「ううん!大丈夫だよ!そっ、それより、これは璃奈から私ってこと、で、良いんだよね?」

璃奈「?うん。浅希ちゃんに、クッキーを焼いてきたの。受け取って欲しい」
 
31: (しまむら) 2023/03/08(水) 23:55:04.41 ID:fwx8/DmA
浅希「……く、クッキーなの?その、紙袋」

璃奈「うん」

浅希「そ、そっか……ありがとね。大事に食べるから」

璃奈「うん。それで――」

浅希「あッ、私、やることあるからちょっとごめんね!バイバイ!」

璃奈「え?浅希ちゃん?」

璃奈「……行っちゃった」
 
32: (しまむら) 2023/03/09(木) 00:01:20.18 ID:q20YOOOc
璃奈(どうしたんだろう。本当に体調悪かったのかな)

璃奈(なんだかすごく驚いてたように見えたけど……クッキー、嫌いだったとか?焼き菓子同好会で作ってたから違うとは思うけど…気に入らなかった…?)

愛「りなりー!おっはよー!」

璃奈「わっ、愛さん」

愛「どしたの?元気ないじゃ〜ん、ホワイ?っと、なんつって〜」

璃奈「?……ううん。なんでもない」

愛「そっか。なら、愛さんからチョコレートをあげよう!」

璃奈「ほんと?ありがとう愛さん。私もあげるね」

愛「マジ?やった〜!やっぱ貰えるのが続くと嬉しいよね!」

璃奈(続けて?誰かから貰ったのかな…というか、愛さんすごい荷物。2つも紙袋持ってる)
 
33: (しまむら) 2023/03/09(木) 00:06:24.05 ID:q20YOOOc
 
愛「その袋は…貰ったの?」

愛「うん!愛トモのみんなからね!」

璃奈「果林さんも沢山持ってたけど、愛さんもすごい」

愛「カリンにあったの?今日はカリンも大変だろうね〜」

璃奈「うん。朝早いのにあんなに沢山……放課後はもしかしたら持てなくなってるかも」

愛「え?ダイジョブだよ。だってカリンは減ってくだけじゃん。愛さんはあげたぶんだけ増えるから、あんまり減らないんだよね。ふえ〜って、嬉しい悲鳴だね!」

璃奈「え?……果林さんも愛さんも、沢山貰えるんじゃないの?」

愛「うん。だからその分返さなきゃなんだけど…愛さんはホラ、愛トモのみんなと交換したからさ。お返しでまた交換するの。こっちのは今日貰ったやつで、こっちは今日あげるやつ!でもカリンはファンの子たちから貰う専だったから、今日はお返しするだけで良いんだよね〜」
 
34: (しまむら) 2023/03/09(木) 00:12:49.30 ID:q20YOOOc
璃奈「……今日?」

愛「ま、こーいうイベントは愛さん大好きだから大歓迎!なんだけどね」

璃奈「……」

愛「りなりー?どしたん?」

璃奈「……じゃあ、果林さんも愛さんも、今日あげる分は全部お返し?」

愛「?そーだよ?」

璃奈「私のも?」

愛「モチロン!」

璃奈「いつの?」

愛「え?いつって……先月のバレンタインデーに決まってんじゃん。今日はホワイトデーだよ?」
 
37: (しまむら) 2023/03/09(木) 00:21:25.36 ID:q20YOOOc
璃奈「……は?」

璃奈(混乱が止まらない。酷い頭痛がする。これが寝不足のせいか、果林さんから貰ったボンボンショコラのせいならどれだけ良かったか)

愛「え、りなりー?大丈夫!?」

璃奈(多分、理解はしている。私の脳は、その優秀さを嫌味な位に主張していた。お前は答えに辿り着いているぞ、と)

璃奈(――だけど、理性がそれを拒んでる。ありえない、嘘だ、愛さんの方がおかしいはずだって)

璃奈(でも……)

愛「りなりー!保健室行こうか!?それとも救急車!?」

璃奈「救急車は、大丈夫……それより愛さん、もう一つ教えて欲しい」

璃奈「私が“バレンタインデー”にあげたお菓子……どんなのだった?」
 
38: (しまむら) 2023/03/09(木) 00:25:08.49 ID:q20YOOOc
璃奈(当てないで欲しかった。それはきっと愛さんの手元の、紙袋の中にあるはずなのに。絶対に知らないはずなのに)

愛「え?そんなの――」

璃奈(言わないで…!)

愛「バッチリ覚えてるよ?クッキーだよね!チョコレートでコーティングされたやつ!美味しかったよ〜」

璃奈「……嘘、そんな。だって…」

璃奈(それはまさしく、私が“昨日”作ったはずのもので――)

璃奈(私の意識は、真っ暗になった)
 
45: (しまむら) 2023/03/09(木) 20:58:17.71 ID:q20YOOOc
璃奈(目覚めたのは保健室だった。どうやらあの後倒れてしまい、三十分ほど眠っていたらしい)

璃奈(愛さんは大慌てで私を保健室に連れて行ってくれたみたい。その様子は普段の様からは考えられないほど狼狽していたらしく、学校中のAEDを引っこ抜いて119番に鬼電しようとしてたと聞いた。ただ、目覚めてすぐ横に映り込んだ顔面蒼白の愛さんを見れば、どれだけ心配をかけたのかが痛いほど理解できてしまった)

愛「保険の先生は寝不足で貧血になっただけだってさ。本当に大丈夫?病院、一緒に行こうか?」

璃奈「大丈夫。ありがとう愛さん、果林さんも」

果林「貧血って舐めてると大変だから、辛いなら必ず言って頂戴ね」

璃奈(果林さんは愛さんの連絡を受けて飛んできたらしい。自分のチョコレートが原因だったら本気で悪いことをしたと心配していたようだ。必死の弁解で罪悪感はなんとか解消してもらった)

璃奈「それより……二人に聞いてほしいことがあるの」
 
46: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:03:37.00 ID:q20YOOOc
璃奈(そこから、私はこれまでの出来事を語った。時系列順に話したつもりだが自信はない。与太話と思われても仕方のないそれを、二人は全く表情を崩さずに聞いてくれた)

果林「つまりまとめると……璃奈ちゃんはバレンタインデーの朝を過ごしていたと思ったら、ホワイトデーの朝だった。バレンタインデーで授業が始まった以降のことは全く記憶になくて…だからそれは夢で、今日こそがバレンタインデーだと思っていた。間違いない?」

璃奈「うん」

果林「……正直に言うと、信じられないわね」

愛「ちょっとカリン!」

果林「最後まで聞きなさい。だって、私たちにはちゃんと記憶があるわ。バレンタインデーの放課後に璃奈ちゃんからクッキーを貰ったのも覚えてる。それから一ヶ月間、私は何一つ変わったことなく過ごしてきたわ。同好会には璃奈ちゃんもいたし、2月末にはDDでライブもやった。璃奈ちゃんも見に来てくれたのよ?忘れる訳無いわ」

愛「そりゃあ……そうだけどさ……」

璃奈「……」
 
47: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:11:59.56 ID:q20YOOOc
果林「逆に聞くけど、愛は信じてるの?」

愛「そりゃあ…ちょっと突拍子もないけどさ。……でも!アタシはどんな時でも、りなりーを信じてるから!」

果林「愛らしいわね。……なら璃奈ちゃん。疑ってかかる上に不躾を承知で聞くけど、事故とか病気になった記憶はある?」

璃奈「私の記憶障害ってこと?でも…それはないはず。少なくとも果林さんたちにとっての先月までは」

果林「そうよね…私達も、璃奈ちゃんが何かおかしいと感じた記憶はないわ。ごめんなさい。下手なこと聞いたわね」

璃奈「ううん。果林さんなら平気」

果林「ありがとう。そうね、一つ言えるのは……璃奈ちゃんの話の脈絡のなさは信じられないわ。根拠もないもの」
 
48: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:15:17.70 ID:q20YOOOc
璃奈「……」シュン

果林「でも」

璃奈「!」

果林「私も、璃奈ちゃんが全く脈絡のないことを言うとも思えないわ」

愛「カリン!」

果林「ひとまずは調べてみましょう。璃奈ちゃんに何かあったのか、私たちがおかしくなってしまったのか、もしくは別の何かか……ここまで聞かされちゃ気になって眠れないわ」

璃奈「ありがとう、果林さん…!」

愛「愛さんもモチロン協力するからね!絶対解決しよう!」

璃奈「うん。本当に…助かった」
 
49: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:19:39.03 ID:q20YOOOc
璃奈宅 3月14日 午前


愛「調査はやっぱり現場百遍だよね!」

果林「現場……現場って言えるのかしら」

璃奈「ごめん、二人とも来てもらって」

愛「へーきへーき!りなりーのピンチなんだから!」

果林「私も今日は時間があるの。だから安心して」

璃奈「ありがとう…」

愛「まず大切なのは、りなりーの記憶と現実を比較してみることだと思うんだ。りなりーはバレンタインの朝から記憶が全く無いんだよね?」

璃奈「うん」

愛「じゃあ最初は、そのバレンタインが夢か現実かをはっきりさせよう。何か覚えてることはない?」
 
50: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:27:13.95 ID:q20YOOOc
璃奈「居眠りする前ならしっかり覚えてる。部室と生徒会室に行って、そこにいた同好会のみんなとバレンタインのお菓子を交換した」

果林「それ、どんなのかはわかる?」

璃奈「えっと…歩夢さんと侑さんは合同でマカロンを作ってた。ランジュさんはおっきなハートのチョコレート、栞子ちゃんとミアちゃんはお店の…どっちも有名なやつだったと思う。せつ菜さんは…チョコレート、的な何か」

愛「せっつーのって紫色の妙においしいやつ?」

璃奈「そう。彼方さんに手伝ってもらったって」

果林「全部私たちが貰ったのと同じね」

璃奈「じゃあ現実なのかな?」

愛「矛盾もないし…ひとまず現実と仮定してみよっか」
 
51: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:35:31.96 ID:q20YOOOc
璃奈「問題は…私の記憶にない一ヶ月」

愛「うん。愛さんたちの記憶では、りなりーはちゃんと生活してたよ。学校も同好会も来てるし、元気だった……と思う」

果林「学校で見てる限り、何かおかしな様子もなかったわ」

愛「だったら次に気になるのは、家のりなりーだね」

果林「家?」

愛「そうそう!愛さんたちの記憶があることと、現実世界でりなりーが生活してたことは必ずしもイコールじゃない。記憶の説得力が薄い中で見るべきなのは…記憶の介入しない現実世界じゃないかな」

果林「なるほど…誰の記憶にもないけど現実にあるもの。つまり、自宅にある生活の物的証拠を探せばいいのね」
 
52: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:38:45.94 ID:q20YOOOc
愛「そう!例えば……カレンダー!」

璃奈「3月のページ…」

愛「愛さんたちにとっては不思議じゃないよね。でもりなりーは変えた記憶がない?」

璃奈「うん。私はいつも1日にめくってるはず」

璃奈「不思議ね……あら、ここなんかどうかしら」

璃奈「クローゼット?」

果林「ええ。3月は冬服をしまい始める時期じゃない?私の記憶だと、最近の璃奈ちゃんの上着は結構薄めだったわ」

璃奈「あ、ほんとだ…私この服出した記憶ないのに」
 
53: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:43:54.49 ID:q20YOOOc
愛「自分の記憶にないのに“自分”が家で生活してる…って考えると不気味だね」

璃奈「そういえば、今日は暑かったと思ってたけど……私が2月の服装で来てたから暑いと思ったんだ」

果林「確かに、時間の意識にズレがあったら日常生活にも影響出るわね」

愛「夏だと思ったら冬だった!ならすぐわかるけど、今の季節は下手に寒暖差あるからね〜。三寒四温ってヤツ」

璃奈「そう、私もそう思ったんだ。テレビも朝は見なかったし…あっ、もしかして」

愛「ん?何か気付いた?」

璃奈「やっぱり。私、アニメは最新話の録画までちゃんと見てる。……けど知らない展開」

愛「電子記録もちゃんとある、かぁ。スマホの履歴とかもそのまんまみたいだし」
 
54: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:48:59.94 ID:q20YOOOc
果林「これだけ揃えば、璃奈ちゃんは生活してたって言えない?」

璃奈「私もそう思ってる。でもそれじゃあ、おかしいのは本当に私の記憶だけなのかな…」

果林「現状把握ができたと言えばできたけど、だからといってどうすればいいかはさっぱりね…」

璃奈「ちょっと休憩しよう。お腹はどう?お昼には早いけど、デリバリーで何か頼んでもいい」

果林「そんな、悪いわよ」

璃奈「いいの。ウチは親全然いないし、食費は貰ってるから。デリバリーはよく頼んでるし」

愛「……ってことはほとんど出来合い?健康に良くないよ〜?愛さん何かつくるから!冷蔵庫開けていい?」

璃奈「良いけど……何も入ってないと思う」
 
55: (しまむら) 2023/03/09(木) 21:57:06.66 ID:q20YOOOc
愛「え〜、ホントだ……冷凍のごはんとか冷食ははあるけど……あとは卵と牛乳と……調味料とか粉物くらいだね」

璃奈「うん。自炊したほうが良いかもだけど…私、全然料理したことないし、そんなに食べないから。一人だと自炊もあんまり」

果林「確かにね。私もサラダとか炒めもの位ならやるけど、一人だとやる気もないのよね」

愛「よ〜し、じゃあ今度愛さんと一緒に作ろう!二人なら料理もごはんも楽しいよ!」

璃奈「愛さん……いいの?」

愛「モチロン!愛さんもりなりーとごはん食べたいし!カリンもどう?」

果林「ええ、素敵ね。私も愛の料理技術は習いたかったし」

璃奈「すごく楽しみ。絶対やろう!」
 
56: (しまむら) 2023/03/09(木) 22:03:16.90 ID:q20YOOOc
愛「結局家中探したけど、手掛かりゼロ…いや、手掛かりしかなかったね」

璃奈「ごめんなさい…愛さん、果林さん。つき合わせちゃって」

愛「全然平気だって!遠慮しがちなとこはりなりーの悪いとこだぞ?愛さんにもさ、心配かけさせてよ」

果林「そうよ。私だって後輩の…いいえ、友達の助けになりたいの」

璃奈「……うん」

愛「よし!もう一度整理しよう。まず大前提。現実として天王寺璃奈は完全に存在した、と言っていいと思う」

果林「そもそも璃奈ちゃんが、璃奈ちゃんの記憶通りに『生活していない』って証拠を探す方が難しいんじゃない?」

愛「確かに。悪魔の証明になっちゃうね」

果林「?そうね」

愛「カリン意味わかってる?」

果林「…もちろんよ。こほん、とにかく今は情報を並べるわよ」
 
57: (しまむら) 2023/03/09(木) 22:53:21.60 ID:q20YOOOc
璃奈「私はここで暮らしてた。それは愛さんたちの記憶と合致するし、逆に私本人の記憶とは食い違う」

愛「ここから言えるのは…愛さんたちと現実世界は同期してるってことかな」

果林「同期?どういうこと?」

愛「例えばさ、りなりー以外の人間全員が偽の記憶を宇宙人に植え付けられてたとするじゃん?なら、私たちの記憶と現実の記録は食い違わなきゃ駄目じゃん」

果林「そうね…あぁなるほど。逆に現実世界だけがおかしくなってたら、璃奈ちゃん以外の私たちも何か違和感を覚えなきゃおかしいもの」

愛「つまり愛さんたちは…正しいかは置いておいて、この現実世界とは同じ状況にいるってこと。言い換えればりなりーだけが…愛さんたち、ひいては現実世界と切り離されちゃってる」
 
58: (しまむら) 2023/03/09(木) 23:41:28.61 ID:q20YOOOc
璃奈「なら、おかしくなってるのは私だけ…?」

愛「そこなんだよね〜。なんでりなりーだけ?他にもいないのかなぁ。学校に放送してさ、ここ一月の記憶がない人いませんか〜!って」

果林「それ、だいぶ変人に見られるわよ…」

愛「やっぱり?まぁちょっと非現実的だよね」

果林「……ふと思ったのだけれど、逆にも考えられないかしら」

愛「逆?」

果林「ええ。宇宙人が、地球まるごととそこに住む人間全員をおかしくした。偽の記憶と記録を全く違和感無く貼り付けて、地球も実際に30回回して一月過ぎたのを装った」

愛「カリン、2月は28日までだよ」

果林「……地球を28回回して一月が過ぎたのを装った。だけど、璃奈ちゃんだけがそれを逃れた。だからバレンタインデーの一時限目から璃奈ちゃんの起きた今朝までは、時間の概念では本当に地続き。どうかしら」
 
59: (しまむら) 2023/03/09(木) 23:51:22.55 ID:q20YOOOc
愛「……カリンってたまに凄いよね。それ、考え方としては存在論とかの話になるでしょ。時間って概念の哲学だや」

果林「それ褒めてるの?。まぁどっちが正解でも、結局は璃奈ちゃんが特別な理由がわからなければ意味はないけどね」

愛「ね〜。宇宙人の仕業なら、大銀河宇宙連邦とかが助けてくれればいいのに」

璃奈「……私の記憶か、現実世界か、かぁ」

愛「そもそも『何が』おかしいのかも現状じゃわからないんだよね。記憶なのか、記録なのか……それとも、りなりーは実はタイムスリップしてたりして」
 
60: (しまむら) 2023/03/09(木) 23:53:16.32 ID:q20YOOOc
璃奈(おかしいのは記憶じゃない…?私の記憶も、愛さんたちの記憶も正しいとしたら、おかしいのは……時間の流れ?)

璃奈(私とみんなの違い……人類の中でたまたま私だけ、なんて確率ある?そうじゃないとしたら…私だけなことには理由があるの?)

璃奈(この現象は、私に関係がある?)

璃奈「ねぇ、二人とも――」

ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!

璃奈「!?なにッ、この音!」

愛「え、りなりー?どしたん?」

璃奈「え?聴こえてないの!?」

璃奈(部屋の目覚ましが鳴ってるとかじゃない!頭に直接響くみたいな嫌な音…!)

璃奈(私だけに聞こえてる?それより、この音はまさか…!)

璃奈「愛さん!果林さん!」

璃奈(私は二人に手を伸ばした。けど、その指は空を切り……私の意識は光に包まれた)
 
62: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:10:21.63 ID:SEeEaYYb
璃奈「……また朝。それに、私の部屋」

璃奈「これで二回目。私、どうなっちゃったの…?」

璃奈(バレンタインからホワイトデー。そして今は…いつ?)

璃奈「時計…今日は…え?2月の、15日?」

璃奈「今度は時間が戻ってる?いや、単純に戻るだけなら14日じゃないの…?」

璃奈「規則的じゃないような…何か、意図がある気がする…」

璃奈(とにかく落ち着こう。私の記憶は確かに、バレンタインとホワイトデーの朝の記憶だけ。時間では半日もないはずなのに2日を経験したなんて、不思議な感じだ)
 
63: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:13:12.35 ID:SEeEaYYb
璃奈「そうだ、愛さんたち!もしかしたら覚えてるかも…」

璃奈(お願い、覚えてて…!)

愛『もしもし?りなりー?』

璃奈「あっ、愛さん!」

愛『どしたの?こんな朝早くからなんて珍しいね』

璃奈「あの…昨日のこと…ううん。“ホワイトデー”のこと覚えてる?」

愛『え?あはは、昨日ってバレンタインでしょ?覚えてるよ~、みんなでお菓子食べてさ、楽しかったよね!りなりーもクッキーありがと!』

璃奈「……そう、だね」

璃奈(やっぱり覚えてない…また私だけだ)

愛『もしもし?りなりー?何かあった?』

璃奈「……ううん。なんでもない。ごめんね、こんな朝から」
 
64: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:16:28.92 ID:SEeEaYYb
愛『…ぜーんぜん!愛さんは朝からりなりーと話せて嬉しいぞ~!』

璃奈「私も、愛さんと話すと元気がもらえる」

愛『えへへ、そう?チョー嬉しい!早朝だけに、なんつって~』

璃奈「…ふふ。じゃあ、また学校で」

愛『うん。ねぇ、りなりー』

璃奈「何?」

愛『なんかあったら、愛さんなんでも相談乗るからね』

璃奈「……ッ。ありがとう、愛さん」

璃奈(愛さん…電話越しなのに私の様子に気付いてた。やっぱり優しいな)

璃奈(でも、すぐに話すのは…やめておこう。『ベル音』の鳴る条件がわからない状態で、他の人たちを巻き込むのは危険だ)

璃奈(もう一度…もう一度何かが起こるまでは、私一人でやってみよう。さっきのホワイトデーでも思ったけど、これは私に関係があるかもだし)
 
65: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:47:10.76 ID:SEeEaYYb
学校 2月15日 朝

「そーいやさ、アンタ昨日の告白どうなったの?」「実は……オッケー貰っちゃった〜!」「やったじゃん!おめでと〜、今日奢ったげるよ!」

璃奈(学校も変わった様子はない…時々昨日のバレンタインの話題が出てくるだけ)

浅希「おはよう、璃奈!」

璃奈「あ、浅希ちゃん。おはよう…」

浅希「昨日はありがとうね。とっても美味しかったよ!」

璃奈「う、うん。私こそ…美味しかったよ、マロングラッセ」
 
67: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:49:47.39 ID:SEeEaYYb
璃奈(ひとつだけはっきりしたことがある。ベル音が鳴る直前の愛さんの台詞。それがヒントになった)

璃奈(狂っているのは恐らく私の『時間』だ。これは記憶の消去とか改ざんじゃない。むしろこっちの方が信じられないけど…アニメみたいに、私の意識だけが『時間移動』したのだ)

璃奈(じゃなきゃあまりにも不可解だ。記憶が問題ならホワイトデーを挟む意味がわからないし、断片的すぎる。そう、例えば……何か目的があってホワイトデーに行って、別の目的のために今日に戻したような)

璃奈(ただ、それが判明しても打つ手がないままなのは同じ。今の私に解決策は浮かんでこない)
 
68: (しまむら) 2023/03/10(金) 00:54:59.45 ID:SEeEaYYb
璃奈(それに、移動した間の記憶は欠けたままだ。特にバレンタインデーに貰ったはずのお菓子の味を――朝に貰っていない人に至っては貰ったかすらも――覚えていないことは、辛かった)

璃奈(幸い私の表情は誤魔化すのが上手いらしい。浅希ちゃんにはバレていないようだ。だが可能性はある。適当に理由をつけて深く話すのは止めておいた)

璃奈(そこからは不思議なほどつつがなく授業を受けた。困ったのは2月14日の授業の記憶がないこと位。幸い課題は出てないみたいだけど、教科書を読み込みながら受ける授業は大変だった)

璃奈「今日は同好会…どうしよう」

璃奈(きっと同好会でも、バレンタインの話題が出てくるはず。記憶にはないが、同好会のメンバーはみんな優しいし、イベント好きだ。朝に貰ったメンバー以外も……彼方さんやかすみちゃんなんかはお菓子を作ってきただろう)

璃奈(もしその話になったとき、私がお菓子を貰ったのを覚えてないと知ったら…みんな悲しむかな。それとも怒るのかな)

璃奈「…怖い。けど」

璃奈(それ以上に、バレンタインデーの出来事を把握しておきたい。それにずっと同好会を避けるわけにもいかないし。行くしかないよね)
 
69: (しまむら) 2023/03/10(金) 01:02:29.41 ID:SEeEaYYb
璃奈「こ、こんにちは…」

エマ「あっ璃奈ちゃん、こんにちは~!」

璃奈「エマさんと果林さん。彼方さんは…寝てる?」

果林「ええ。部室に来るなりエマの膝でぐっすりよ。璃奈ちゃんは早かったわね」

璃奈「そうかな。…早く皆に会いたかったのかも」

エマ「私も会えて嬉しいよ〜」

璃奈(皆の様子にも違和感はない。やっぱり異常なのは私だけみたい。果林さんも、多分起きてないと思って電話はしてないけど…愛さんと同じで忘れちゃったんだ)

エマ「あ、そういえば璃奈ちゃん。昨日は――」

璃奈「!」ドキッ

エマ「晩ごはん食べられた?」

璃奈「……へ?」

エマ「ほら、昨日はみーんなバレンタインのお菓子を持ってきたでしょ?おかげで私、お腹いっぱいになっちゃったよ〜」
 
70: (しまむら) 2023/03/10(金) 01:04:08.86 ID:SEeEaYYb
璃奈「あ、あぁ。うん。私もそう」

エマ「だよね〜。果林ちゃんは大丈夫そうだったのに」

果林「私は日持ちしそうなものは持って帰ったからよ。エマは『せっかくだから今日食べたい』とか言って全部食べようとしてたじゃない」

エマ「だってせっかくのバレンタインなんだよ?当日に楽しまなきゃ!」

果林「もう…エマもカ口リーに気をつけなきゃ、お肌荒れちゃうわよ?」

璃奈(…多分、昨日は部室でお菓子パーティーを開いたのかな。愛さんもそんな風なことを言ってた気がする)

 ピーンポーンパーンポーン

『情報処理学科1年、天王寺璃奈さん。生徒会室までお越し下さい。繰り返します――』

エマ「この声…栞子ちゃん?」

果林「どうしたのかしら、璃奈ちゃんを呼び出すなんて。同好会のことで放送を使うとは思えないし」

璃奈「わからない…取り敢えず行ってくるね」

果林「えぇ。皆が来たら伝えておくわ」
 
74: (しまむら) 2023/03/11(土) 00:50:19.62 ID:MnrcWl9I
璃奈「栞子ちゃん…呼ばれたから来たけど、どうしたの?」

栞子「あ、璃奈さん。お呼びだてして申し訳ありません」

璃奈「ううん。それより私、何かしちゃった?」

栞子「それが、まだ把握してはいないのですが、したかもしれないのでお呼びしたというか…」

栞子「?」

栞子「取り敢えず、昨日の朝にお会いした時の話を覚えていますか?菜々さんが言っていた“不審光”のことなのですが」
 
75: (しまむら) 2023/03/11(土) 00:54:01.31 ID:MnrcWl9I
栞子「せつ菜さんが?」

璃奈(朝…ランジュさんとミアちゃんと居たときのことか。良かった、覚えてる。確か…)

璃奈「あっ、学校の近くで変な光と音があったこと?」

璃奈(あれ?そういえばその音って…)

栞子「そうです。実はあの後、念のため目撃情報を集めていたのですが…光と音の発生源を見たという方がいまして。情報処理学科の2年生の方なのですが――」

生徒『あの時ね、私は部活の朝練で走ってたんだけど…大っきな目覚まし時計みたいな音がしたと思ったら、空中がすっごい眩しく光りだしたの!』

栞子『空中、ですか?』

生徒『そう。音も光も数秒だけだったんだけどチョー眩しくてさ。で、光り終わった後に目を開けたらそこに分厚いタブレットみたいな…画面のついた機械が落ちてて。怖くて遠くから眺めてたんだけど、パッて画面が付いたの。その画面にね……映ってたの!璃奈ちゃんボード!』
 
76: (しまむら) 2023/03/11(土) 00:59:28.77 ID:MnrcWl9I
璃奈「り、璃奈ちゃんボード!?」

栞子「はい。愛さんの友人…愛トモ?というのでしょうか…らしくて。繋がりで璃奈さんのライブも見たことがあり、すぐにわかったらしいのです」

璃奈「わ、私…そんな装置知らない」

栞子「璃奈さんのライブの演出装置等ではないのですか?」

璃奈「光はともかく、目覚まし時計みたいな音を出す装置なんてライブでも使わないよ…そもそも、そんな装置作った覚えもない」

栞子「そうですか…私も璃奈さんが悪戯に機械を悪用する方ではないと存じておりますし、その言葉を信じさせて戴きます。……ですが、目撃者の方もわざわざそんな嘘を言うとは思えませんし…」
 
77: (しまむら) 2023/03/11(土) 01:04:39.59 ID:MnrcWl9I
璃奈「栞子ちゃん。その装置、ある?調べれば何かわかるかも」

栞子「いえ、それなのですが――」

生徒『璃奈ちゃんボードの顔が出てビックリしてさ!思い返したら愛の後輩のやつじゃん!って。しおってぃーちゃんもわかるでしょ?あのカワイー顔文字の』

栞子『もちろんです。ですがまさか……それで、その機械はどうなりましたか?』

生徒『それが…詳しく見ようと思ったら、別の子がその機械を拾って持ってっちゃったの』

栞子『別の生徒、ですか?』

生徒『うん。後ろ姿だけだから誰かはわかんないんだけど、私みたいな通りすがりって感じじゃなくてパッと持ってったから、その子の作った演出装置のテストかな〜って思ってそれ以上気にしなかったんだけどね』

栞子『なるほど…情報提供、ありがとうございました』

生徒『…あ!情報提供で思いだした!その子、多分情報の子だよ!同じ棟で何回か見たことある気がするんだよね』

栞子『ジョーホー…情報処理学科ということですか?』

生徒『うん、学年とかはわかんないし、確証はないけど…多分ね!間違ってたらゴメン』

栞子「――ということでして」
 
78: (しまむら) 2023/03/11(土) 01:08:22.28 ID:MnrcWl9I
璃奈「情報処理学科の子が、璃奈ちゃんボードを…?」

栞子「私が思い付いたのは璃奈さんがご友人に装置の制作を依頼していて、そのテストだった…という場合ですが…」

璃奈「ううん。そんなことはしてない…はず」

栞子「…?」

璃奈(まずい、昨日の記憶から曖昧なせいで自信が無くなってる。でも、本当に思い浮かばないし…)

栞子「わかりました。昨日も菜々さんが言っていたと思いますが、怪我人や危険は発生していないので、学校側はそこまで重大視していないんです。ですが私としても璃奈さんとしても、この件が不明瞭なまま終わるのは凝りが残ると思いますので…一応、目撃情報の呼びかけは継続しておきますね」
 
79: (しまむら) 2023/03/11(土) 01:22:23.60 ID:MnrcWl9I
璃奈「うん。何も力になれなくてごめんね」

栞子「気にしないで下さい。それでは本件については以上になりますので、もう大丈夫です。私は他の仕事がありますので、もう30分ほどで同好会には参加できると皆さんにお伝え下さい」

璃奈「わかった。栞子ちゃん、頑張って……じゃあね」

璃奈(私の知らない“璃奈ちゃんボード”…今はボードを使う気にはなれないな)

栞子「璃奈さんこそ。……あっ、一つ言い忘れてました」

璃奈「?」

栞子「これは私としても突拍子がなく、目撃者の方の見間違いだと思うのですが……その“璃奈ちゃんボード”は、光と共に空中から突然現れた、と言っているんです」

璃奈「空中から突然?どういうこと…?」

栞子「私にもサッパリ…本人も半信半疑とはいえ、『“璃奈ちゃんボード”が地面に落ちる音を聴いた』とも言っているので…一応お伝えしておこうかと」

璃奈「わかった。ありがとう、栞子ちゃん」

栞子「はい。それでは改めて、同好会頑張って下さいね」
 
83: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:08:08.12 ID:45PWVzkW
璃奈(ただでさえ記憶に混乱があるのに、謎の“璃奈ちゃんボード”?もう頭がパンクしそう)

璃奈(突然現れた光と音…目覚ましみたいな音…?)

璃奈(駄目だ、頭が働かない。脳が疲れてるみたい…鞄に何かお菓子でも入ってないかな)

璃奈「あっ、チョコレート…」

璃奈(銀紙に包まれたチョコレート。多分既製品だけど…これが誰から貰ったものなのかも思い出せない。もし同好会の誰かからの気持が込められていたら……私は、それを無碍にしてることになるのかな)
 
84: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:11:47.95 ID:45PWVzkW
璃奈(でも調べようにも、現状打開策が全くない。ニジガクは生徒数も多いし、何か…推測できる要素があればいいんだけど)

璃奈「…甘い」

璃奈(璃奈ちゃんボードは私のアイデンティティ。1stで素顔を晒した時も、みんなで作った表情があるって事実が私を勇気付けてくれてた。それが今、何故か他人の手にある。酷い無力感だ)

璃奈(もうすぐ同好会が始まる。今は…今だけは考えるのをやめよう。いろんなことがありすぎて疲れちゃった。そうやって無理やり自分で区切りをつけて、同好会の練習に目を向けることにした。…正確には、問題から目を背けることにした)

璃奈(有り体に言えば…心が困憊していたのだろう。次に何かあれば…また問題が起きたら…新しい情報があれば…そんな風に逃げて)

璃奈(そして結局、私は原因探しを止めた。…諦めたのだ)
 
85: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:15:35.54 ID:45PWVzkW
学校中庭 3月13日 午後

璃奈(あれからほぼ一ヶ月。まるで無視するのが正解だったかのように、私の日常は問題なく回っていた。2,3月は学生にとって激動の月。それがすっぽり抜け落ちていたことの恐ろしさを感じたが、それも過去の話だ。忙しい毎日は、不可解な現実から目を背けるのにぴったりだった)

璃奈(結局不可思議なことも起こらず、そして私も会話の端々から記憶を補完していくうちに、段々と不自由を感じなくなっていった。このまま何も起きなければ、あの出来事は悪い夢のように忘却していくだろう。そんな予感があった)

璃奈「ホワイトデー…どうしよう」

璃奈(そして私の意識にバレンタインのことはとうに無く、明日に待ち構えたホワイトデーに向いていた)
 
86: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:17:40.80 ID:45PWVzkW
璃奈「クッキーは…簡単にできるけど、同じじゃつまらないよね」

璃奈「でも手作りできるお菓子っていっぱいある…どれならできるかな」

彼方「おや、璃奈ちゃん?」

エマ「わぁ、ホントだ!ここで会えるなんて。はんぺんのお世話?」

璃奈「彼方さん、エマさん。ちょっと…ホワイトデーのことを考えてた。二人は?もう学校もないよね」

彼方「エマちゃんが先生に用があってね。せっかくだから付き合ってたの。そんなことよりホワイトデーって、もしかしてまた手作りするの?」

璃奈「うん。でも何を作ればいいか…どれも難しそうで」

彼方「お菓子って言っても色々あるからね〜。最近はレシピの幅も広いし」
 
87: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:22:27.04 ID:45PWVzkW
璃奈「良ければ、二人はどうするか聞かせて欲しい」

エマ「私はスイスのお菓子を作るよ!バレンタインで皆が美味しいって言ってくれて嬉しかったからね」

彼方「彼方ちゃんはケーキかな〜前授業で習ったのを思い出しがてら作ってみたくて」

璃奈「すごい…私は、どうすればいいんだろ」

彼方「……!」

彼方「なら、彼方ちゃんたちと一緒に作ってみない?」

エマ「わっ、賛成~!一緒にやろうよ璃奈ちゃん!」

璃奈「え?でも…」

彼方「大丈夫、璃奈ちゃんにおすすめのお菓子があるんだ~。きっと上手くできるよ」

璃奈「いいの?」

エマ「もちろん!それに…私たちも、璃奈ちゃんとの思い出も作っておきたいんだ」

璃奈「エマさん…わかった。お願い」
 
88: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:25:12.02 ID:45PWVzkW
エマ「私達も調理室借りられて良かったね〜」

彼方「ニジガクは申請すれば色々使えるのが便利だよね〜。他にも使ってる子は何人かいるみたい」

璃奈「ほんとだ。ホワイトデーかな」

彼方「女子高生にとってお菓子イベントはお祭りだからね〜。まぁフードデザイン専攻の子たちとかは、結構いつもお菓子とか作ってるけど」

エマ「いいな~、彼方ちゃんも?」

彼方「たまに復習で作ったりはしてたかな。まぁでも、女の子にお菓子は付きものなんだぜ~。璃奈ちゃんも作りたくなったら調理室を借りるといいよ。道具とか調味料は一式そろってるし」

璃奈「うん。今度やってみる」
 
89: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:29:18.13 ID:45PWVzkW
彼方「さて、そろそろ彼方ちゃんたちも始めますか!」

璃奈「宜しくお願い致します、彼方先生」

彼方「えへへ、先生って呼ばれちゃったぁ」

エマ「ずるいよ〜私も呼んで!」

璃奈「えっと…エマ先生?」

エマ「わーい!先生だよ!」

彼方「ご機嫌だねぇ。じゃあこの調子で…エマ先生、今日作るお菓子はなんだっけ?」

エマ「カップケーキで〜す!」

璃奈「カップケーキ…難しそう」

彼方「実はそんなことないんだぜ〜。所謂バターケーキ系の洋菓子はマドレーヌとかフィナンシェとかいっぱいあるんだけど…その中でも初心者向けかな。カップに入れるから整形も簡単だし、材料を混ぜる工程さえちゃんとしてれば失敗しないよ」
 
90: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:36:42.55 ID:45PWVzkW
彼方「先ずはバターと砂糖!量が多いから大変だけど、常温に戻してるから混ぜられるはず」

璃奈「ん…結構大変」

彼方「料理は力仕事だからね。パティシエとかコックさんは男の人が多いんだよ」

エマ「へ〜、じゃあ彼方ちゃんも力強いの?」

彼方「もちろん!彼方ちゃんは意外と鍛えてるんだぜ〜。璃奈ちゃんも大変だったら言ってね」

璃奈「ううん、頑張る。二人は見てて欲しい」

彼方「ふふ、わかった。ちゃーんと混ぜて空気を入れてあげるとふっくらしたケーキにできるから、頑張って!」
 
91: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:45:10.58 ID:45PWVzkW
彼方「牛乳と小麦粉と卵も、全部しっかり混ざったかな?」

璃奈「ん…どうかな」

エマ「うん、すごくいい感じ!あとはオーブンで焼けば完成だね」

璃奈「お菓子作り…単純だけど、すごく体力がいる」

彼方「あはは〜。お菓子作り…というかお料理って、実は完成するのはそこまで難しくないんだよね」

エマ「そうそう。でもより美味しい完成形を求めたり、ひとつレベルが上の出来にしようとすると、色々コツが必要になるの。単純だけど繊細で、とっても奥が深いんだぁ」

璃奈「そうなんだ…」
 
92: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:50:57.10 ID:45PWVzkW
彼方「あっ、そろそろ焼き上がるみたいだよ」

璃奈「わぁ…いい匂い」

エマ「やっぱり焼き立ての匂いは最高だね!これだけでBuonoなのがわかるよ〜」

彼方「うん、整形もいい感じだね。取り敢えずカップケーキ自体はこれで完成だけど、トッピングとかデコレーションでもっと豪華にできるよ。何か構想はある?」

璃奈「そこまで派手なのはできないし、私があげるのは同好会のみんなと友達だけだから…何かでアイコンとか、簡単な絵を描く位しか思いつかない」

エマ「良いね!流石璃奈ちゃん!なら生地のままだと書きにくいから何かを乗せようか。簡単なのは…」

彼方「ちょっと溶かしたマシュマロを接着して、上から絵を描くのでもいいけど……ホワイトデー向きじゃないかな。アイシングをかけてからその上にチョコペンで書くのはどう?」

璃奈「?彼方さんが言うなら、それにする」

彼方「オッケー!じゃあまずはアイシングから作っていこう」

璃奈エマ「「おー!」」
 
93: (しまむら) 2023/03/12(日) 21:58:00.26 ID:45PWVzkW
璃奈「『今日は楽しかった。また料理を教えてほしい』…送信、と」

璃奈(二人が居てくれて良かった。一人で手作りに挑戦した時も面白かったけど、誰かと作ったほうが楽しかった。これも料理の楽しさなのかな)

璃奈(カップケーキ、良いな…スマホで調べたら、クリームとか果物でデコレーションするのもあるみたい。バリエーションも豊富で、確かに彼方さんたちが言った通り、すごく奥が深い。彼方さんならあんなのも作れるのかな…)
 
94: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:02:10.12 ID:45PWVzkW
璃奈(そういえば、“ホワイトデー”で愛さんと料理する約束もしたっけ。今の愛さんは覚えてないだろうけど、今度改めて誘ってみよう)

璃奈(思い返せばあの出来事のこと、すっかり気にならなくなってたな。無くなったなら良かったけど……最近は忙しかったし、みんなとやりたいことも沢山ある。悔いのないようにしなきゃ)

璃奈(明日が楽しみ。カップケーキは綺麗にラッピングしたし、浅希ちゃんに倣ってメッセージカードも入れてみた)

璃奈(……そういえば、浅希ちゃんのカードには何が書かれてたんだろ。結局マロングラッセも食べた記憶はないし。でももう確かめようがないよね…。きっと美味しいはずだから、明日のお返しを楽しみにしておこう)

璃奈(そろそろ寝よう。明日はきっと忙しくなるはず――)
 
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
 
95: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:04:22.73 ID:45PWVzkW
璃奈「……………………え?」

璃奈(聞き覚えのあるベル。目を開ければ、さっき見てたはずの自分の部屋の天井。だけど何かがおかしい)

璃奈(明るい。眠った記憶もないのに……カーテンから光が漏れている)

璃奈「そんな…嘘、うそだ」

璃奈(震える手でスマホを手に取る。ロック画面に映された時計に、ヒュッと喉が鳴った)

璃奈「2月……15日の、朝……」

璃奈(昨日まで忘れていたはずだったのに。もう一月も何もなかったのに)
 
96: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:08:07.15 ID:45PWVzkW
璃奈(バレンタインからホワイトデーに飛んだ時も、ホワイトデーから2月15日に飛んだ時も私の意識の根幹は2月14日にあった。そのせいで“未来に飛んだ”という認識でいられた。だから間の空白は“記憶の喪失”として処理できたし、ある意味で納得はできた)

璃奈(けど、既に私は3月13日までの27日間を生きてしまった。そこからまた2月15日まで戻されてしまえば、それはもう記憶の喪失ではない。私にとって“現実の喪失”だ)

璃奈(同好会のみんなや友達と過ごした、様々なことがあった一月。愛さんと果林さんの、感動したライブ。そして彼方さんとエマさんと作ったカップケーキ。それらが全てなかったことにされたんだ)

璃奈「もう、嫌だ…」

璃奈(“今回”も、一度体験した一ヶ月をまた過ごすのだろうか。そして、また自分の意志とは無関係に時間が移動してしまうのだろうか。その時に私は、正気でいられるのだろうか)

璃奈「みんな……私、どうすれば……」
 
97: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:12:15.63 ID:45PWVzkW
果林『璃奈の気持も、私にとっては特別よ』

愛『アタシはどんな時でも、りなりーを信じてるから!』

彼方『むしろすっごく嬉しいの。璃奈ちゃんと楽しさを共有できたんだなって思って』

エマ『えへへ、嬉しいなぁ…じゃあ明日、楽しみにしてるね』



璃奈(……そうだ。無くなったのは現実だけじゃない)

璃奈(愛さんと果林さんが心配してくれた気持も、彼方さんとエマさんと一緒にカップケーキを作った思い出も……みんなの“想い”も、無かったことになった)

璃奈(そんなの…許していいはずがない。みんなが私にくれた想いも、感情も…絶対に無くしちゃ駄目だったんだ。それを、無くしてから気付くなんて…!)

璃奈(これは罰だ。2月15日に原因究明を諦めた私への…みんなを蔑ろにした私への罰)

璃奈(だけど、もう絶対諦めない。また何かが無くなっちゃう前に、私が犯人を見つけるんだ!)
 
98: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:24:01.87 ID:45PWVzkW
学校 2月15日 午後


栞子「――それでは改めて、同好会頑張って下さいね」

璃奈(2月15日の放課後、私は栞子ちゃんに校内放送で呼び出された。内容は“前回”と全く同じ)

璃奈(肉体としては昨日も睡眠していたかもだけど、意識は起きっぱなしだったせいでちょっとくらくらする…どこかに座ってちょっと落ち着こう)

璃奈「ふぅ…眠くないのに寝不足なのは、気持ち悪い」

璃奈(一日過ごして分かったことは、前回と今回の2月15日は全く変わらない焼き直しってこと。ただ、私の行動でちょっとだけ変わる。例えば、前回さされたときは答えられなかった授業の問題とか)

璃奈(一旦情報を整理しよう。愛さんたちと調べたときみたいに、わからないことは並べて考える。そうすれば何か、繋がりや共通点が見つかるはず)
 
99: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:28:21.96 ID:45PWVzkW
璃奈(まず…既に知ってる情報だったけど、改めて聞いて確信した。『時間操作』と『偽璃奈ちゃんボード』は繋がってる)

璃奈(けたたましい目覚まし時計のようなベル音。それが2つを繋ぐ鍵だ。私が別の時間に飛ばされる時、いつもこの音がしてた)

璃奈(ただ…“ホワイトデー”で愛さんや果林さんに聴こえてなかったのを考えると、物理的に聴こえてる訳じゃないはず)

璃奈(二人はその後も、時間移動を認識していなかった。その共通点からいくと……カットされた時間の記憶を持たなかったのと、ベルの音が聞こえたのは同じ条件から来てる可能性が高い)

璃奈(それにこの時間操作は不規則で、人為的なものだ。自然現象とか、例えば『3月14日になったら自動で2月15日になる』みたいな機械的な動作でもない)
 
101: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:31:10.20 ID:45PWVzkW
璃奈(現時点で判明している情報は――)


・『時間移動』は人為的なもの。ベル音と光を伴って発生する
・時間の流れは2月14日朝→3月14日朝→2月15日朝~3月13日夜→2月15日朝(2回目)
・私だけは『時間移動』が発生したこと、それに伴うベル音と光を認識できる。けど、逆に『時間移動』でカットされた部分の記憶はない
 ・『時間移動』と『偽璃奈ちゃんボード』は関連している可能性が高い。『偽璃奈ちゃんボードを持ち帰った生徒』が犯人?


璃奈(ただ、わからないことも多い。せつ菜さんたちが言ってたバレンタインの朝のベル音は、私以外にも聴こえてたらしい。ベル音が鳴ったということは時間移動が発生したということだけど……私は時間移動もベル音も認識できていない)
 
102: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:35:24.84 ID:45PWVzkW
璃奈(それに犯人の狙いもわからない。なんで一度ホワイトデーに飛んでから、また2月15日に戻したの?それに今度はホワイトデーになる前にまた時間を戻してる。動きに一貫性がない)

璃奈(そもそも、バレンタインデーとホワイトデーっていうイベントは犯人の動機と関係があるのかな)

璃奈「……まだ手掛かりが少ない」

かすみ「何の?」

璃奈「!?か、かすみちゃん!?」

かすみ「わっ!そんな驚くことないじゃん!」

しずく「もう…かすみさん、璃奈さんを驚かしちゃ駄目だよ?」

かすみ「驚かしてないよ〜!りな子が勝手に驚いたんでしょ?ずっと難しい顔してブツブツ呟いてさ」

璃奈「ご、ごめん…」
 
103: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:40:08.95 ID:45PWVzkW
かすみ「それよりさ、さっきから何悩んでるの?」

璃奈「べ、別に大したことじゃ…うっ…」

かすみ「え、りな子!?どうしたの!?」

璃奈「いや、大丈夫…ちょっとくらっとしただけ」

しずく「ホントに大丈夫?凄い汗だよ」

璃奈「少し頭がくらくらするだけ。寝不足みたいな感じ…けど、すぐ良くなると思うから」

かすみ「…りな子、なんか困ってる?」

璃奈「え?どうして…」
 
104: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:43:24.12 ID:45PWVzkW
かすみ「今日のりな子、なんか変だよ。それにいくら夜型とはいえそんなにふらつくなんて…何か悩んでて、眠れなかったんじゃないの?」

しずく「璃奈さん、本当なの?」

璃奈「……すごいね、かすみちゃん」

かすみ「やめてよ…それより教えてよ。私達、友達じゃん。ね、しず子」

しずく「もちろん!璃奈さん、本当に悩みがあるなら、私にも教えて?」

璃奈「…!」


愛『愛さん達、友達じゃん?』


璃奈「……ふふ。ありがとう二人とも」

璃奈「私からもお願い。どうか聞いて…信じてほしい」
 
105: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:47:21.56 ID:45PWVzkW
かすみ「はぁ〜、それじゃあタイムマシンってこと?」

璃奈「広義の意味で言えばそう」

しずく「なんだか映画の話みたいだね」

かすみ「りな子はそんなこと言い出すキャラじゃないと思ってたけど」

璃奈「これは現実。私もまだ実物を見た訳じゃないけど、存在するのは確か……だと思う」

かすみ「まぁそんなに言われたら信じるけどさぁ…で、りな子はそのタイムマシンが欲しいってこと?」

璃奈「少し違う。私はタイムマシンを使った犯人を見つけたい。それで、バレンタインの日に戻してほしい。それだけ」

かすみ「バレンタイン?」

璃奈「……私はまだ、誰のお菓子も食べ切ってない。みんなからの気持を無かったことにはしたくないの」

しずく「そっか、タイムマシンに気を取られてたけど…璃奈さんはバレンタインの同好会の記憶がないんだよね」

璃奈「うん。……ごめん。かすみちゃんもしずくちゃんも、気持のこもったお菓子だったはずなのに」

かすみ「良いよそんなの!だってりな子は誰かに巻き込まれたんでしょ?なら、ちゃっちゃと解決してもう一度かすみんのチョココッペパン食べさせてあげるから!ね、しず子」

しずく「うん。それに、こんな璃奈さん放っておけないよ。私達でその事件を解決しよう!」
 
106: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:50:06.94 ID:45PWVzkW
かすみ「と、その前に…りな子、体調は?」

璃奈「少し楽になった。多分、これは単純な体調不良じゃない。もちろん寝た認識がないのもそうだと思うけど、タイムマシンの影響もある」

かすみ「え?ホントに?」

璃奈「うん。前に時間移動した時も似た気持悪さがあった。多分だけど…意識を持ちつつ時間移動するとこの症状が出るのかもしれない。無理やり意識を移動させるから、肉体と精神がすぐにはかみ合わないせいかも」

かすみ「前…ってさっき言ってたホワイトデーのことかぁ。そうだ、その時は愛さんと果林さんに助けてもらったんだよね?同じように同好会のみんなに打ち明けてみれば?きっと信じてくれるよ」

璃奈「それも考えた。けど、犯人がわからない現状で大きく広めるのは危険だと思う」

しずく「まさか、同好会の誰かが犯人ってこと?」
 
107: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:55:13.14 ID:45PWVzkW
璃奈「それはわからないし、そうは思いたくない。けど何かの表紙に犯人に私達が探してることがバレたら、また時間を操作してふりだしに戻してくる。何度もそうなったら犯人はわからないままだし、私もずっと記憶を持ったままでいられないかも」

かすみ「そっか…確かに犯人はタイムマシンを持ってるんだもんね。逃げ放題かぁ」

しずく「それに手がかりも薄いし…人海戦術でなんとかなる話でもないよね」

璃奈「それに、みんながタイムマシンの存在を知った後にまた時間移動があったら、何か悪影響が出る可能性もある。…かすみちゃんとしずくちゃんには、申し訳ないけど」

しずく「平気平気。先に解決しちゃぇば良いんだよ!」

かすみ「しず子って結構脳筋なとこあるよね…でも、同好会なんてお人よしばっかだし、みんな気にしないと思うけど」

璃奈「私もそう思った。けど、やっぱり大人数になることの危険性は捨てきれない。完全にどん詰まりになるまでは最低限の人員で調べていきたい」
 
108: (しまむら) 2023/03/12(日) 22:57:35.76 ID:45PWVzkW
かすみ「それもそうかぁ…っていうか話を聞く限り、その“偽璃奈ちゃんボード”が何なのかがわからなきゃ、犯人の探しようがなくない?」

しずく「そうだね。璃奈さん、本当に心当たりないの?」

璃奈「少なくとも私が作ったものじゃないと思う。実物を確認しない限りはっきりとは言えないけど」

しずく「じゃあ璃奈ちゃんボードはどうして…」

かすみ「りな子のファンとか?それかタイムマシンを可愛くしたくて、たまたま璃奈ちゃんボードに似せてみたとか」

しずく「そんな適当な…」

璃奈「……いや、考え方としては間違ってない」
 
109: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:00:52.46 ID:45PWVzkW
かすみ「かすみんだったらかすみんBOXに…え?」

璃奈「背理法を使うの」

しずく「背理法って…確か命題を逆にしてみて、矛盾を探すやつ?」

璃奈「そう。例えばかすみちゃんをスクールアイドルだと断定したい。その場合、逆にかすみちゃんはスクールアイドルじゃないと仮定する」

かすみ「スクールアイドルだよ!」

璃奈「うん、実際にかすみちゃんの曲はあるし、ライブもやってる。スクールアイドル協会に登録してグッズも出てるし、ファンもたくさんいる」

しずく「あっ、だからスクールアイドルじゃないは嘘になるから、かすみさんはスクールアイドルだっていう証明になる!」

璃奈「これと同じ。“偽璃奈ちゃんボード”は私となんの関連もない、ただデザインが似通っただけの類似品。だから時間移動も犯人がひとりで楽しんでるだけで、私とは全く関係のない人と仮定する」
 
110: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:03:32.81 ID:45PWVzkW
かすみ「え、でもりな子は時間移動した感覚があるんだよね?りな子だけ」

璃奈「そこ!重要なのは私と“偽璃奈ちゃんボード”…ひいては時間移動に関連があるかどうか。私は多分この世界で唯一、時間移動を認識できてる。これで時間移動と無関係って言うのは少し無理がある」

しずく「つまり…“偽璃奈ちゃんボード”と璃奈さんは関係がある!」

かすみ「え〜、でもそれふりだしじゃない?りな子はそれ作った覚えないんでしょ?」

璃奈「それは…そう。そもそも“偽璃奈ちゃんボード”がタイムマシンだったら、それを実現させる技術も私にはないし」
 
111: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:05:46.35 ID:45PWVzkW
しずく「璃奈さんの作った舞台演出は凄かったけど、タイムマシンは流石に無理だよね…」

かすみ「そういえば…前提みたいに話してるけど、ホントにタイムマシンなんて存在するの?」

璃奈「理論上時間移動は存在する。相対性理論だと時間は一定じゃないから、引力とか速さを利用すれば擬似的なタイムトラベルができる」

しずく「え、じゃあ今でも作れるの?」

璃奈「机上では可能。だけど、太陽の何十倍もの質量を手のひらサイズに圧縮したり、光の速さで動いたりする必要があるから、現代の地球での再現は無理」

かすみ「へ〜、それじゃあホントに宇宙人だったり?」

璃奈「可能性としてはゼロじゃない」

かすみ「冗談で言ったのに…」
 
112: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:12:44.48 ID:45PWVzkW
璃奈「……でも、それは物理的にタイムトラベルする方法。少し違うかも」

しずく「どういうこと?」

璃奈「時間移動で朝目が覚めた時、私は必ず寝間着でベッドにいた。その前は学校とか、リビングにいたはずなのに。それにバレンタインとホワイトデーは制服を着てた。仮に私だけが移動したなら、その場所から動いていないはずだし、その時間に本来いる天王寺璃奈も存在してなきゃおかしい」

かすみ「……んん?わかんなくなってきた…」

しずく「つまり、意識とか記憶だけが移動してるってこと?」

璃奈「そう。だから相対性理論とかの時間移動とは別の理論で働いてるんだと思う」

かすみ「ちょっと〜、かすみんを置いてかないでよ」

璃奈「ごめん。……えっと、仮にかすみちゃんが今から10年後にタイムトラベルしたとする。10年後の2月15日の午後。未来のかすみちゃんは何やってるのかな」
 
113: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:16:22.07 ID:45PWVzkW
かすみ「そりゃあ……働いてる?」

璃奈「どこで?」

かすみ「さぁ…会社?」

璃奈「そう。そのかすみちゃんは今より大人になってるし、何かしらの仕事をしているはず。仮に普通のタイムトラベルでかすみちゃんが未来に行っても、それは今のかすみちゃん。高校一年生のかすみちゃんが、ニジガクの校舎に現れるだけ。大人のかすみちゃんは普通に働いてる」

璃奈「けど、私の現状はそうじゃない。この例で言えば、大人のかすみちゃんの身体に、記憶は16歳のままのかすみちゃんが乗り移った感じ。そして、その世界にかすみちゃんは、身体は大人、頭脳は子供のかすみちゃんが一人しか存在してない」

しずく「名探偵みたいだね…」

かすみ「あ〜、なんかわかってきたかも」

璃奈「良かった。…意識や記憶だけを移動させるのは、ある意味でタイムマシンより難しい。脳の構造はまだ解明しきってないし、意識なんてものはどこにあるかすらわかってないから」
 
114: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:17:51.32 ID:45PWVzkW
かすみ「まぁどのみち、今の時代にはタイムマシンはできっこないってことかぁ」

璃奈「うん。論者が言うにはタイムマシンを作るには最低でもあと何十年も未来の…」

璃奈(何十年も、未来?)

かすみ「どうしたの、りな子?」

璃奈(璃奈ちゃんボードは私が作った…なら、“偽璃奈ちゃんボード”は……)

しずく「璃奈さん?」

璃奈(まさか…)

璃奈「……“偽璃奈ちゃんボード”は、私が作ったものかもしれない」

かすみ「え?ちょ、ちょっと待ってよ!りな子は作った覚えないって言ってたじゃん!」

璃奈「うん。でも私が作ったことと、私に作った覚えがないことは矛盾しない」

かすみ「は…?」

璃奈「“偽璃奈ちゃんボード”は…タイムマシンは、未来の私が作った可能性がある」
 
115: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:23:55.22 ID:45PWVzkW
璃奈「私はずっとバレンタインが時間移動の起点だと思ってた。でもそれは勘違い。本当は…遠い未来から、今年のバレンタインにタイムマシンが来たんだ」

しずく「じゃあ、バレンタインの朝の騒音と光の事件っていうのは」

璃奈「恐らくは時間移動で発生したもの。意識を移動させれば被験者が知覚できるけど、あの時は物理的にタイムマシン本体が送られてきたから、ベル音と光も物理的に認識されたんだ。だから……バレンタインも、時間移動した先の一つでしかなかった」

かすみ「ちょっと待ってよ!未来からって…そんなこと断言できるの?」

璃奈「断言はできない」

かすみ「だったら…」

璃奈「けど可能性はゼロじゃない。タイムマシン理論が不可能だっていう主張の一つに『我々は未だタイムマシンを観測できていない』っていうのがあるの」

しずく「どういう意味なの?」

璃奈「未来でタイムマシンが完成されてるなら、誰かしらが過去――つまり現在までの何時か――に来てるはず。だけど、そんな記録は有史以来一度も確認されてない。なら、タイムマシンは永遠に完成されてないはずっていう主張」

かすみ「へぇ…結構筋通ってると思うけど」

璃奈「そう、これは案外的を得てる。似た理論に『宇宙人からの接触が無いから、地球以外に生命体は存在しない』ってのもある」
 
116: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:28:44.64 ID:45PWVzkW
璃奈「今言いたいのはこの逆で、タイムマシンが存在すると仮定するなら、未来からタイムマシンがやってきた可能性もあるってこと。だから…現在の私が“偽璃奈ちゃんボード”を作ってなかったとしても、いつか作る可能性がある。未来の私自身がタイムマシンを現代に送り込んだと考えると、色んな辻褄が合うの」

しずく「じゃあ順番に並べると……未来の璃奈さんがタイムマシン本体をバレンタインに送り込んだ。だけど何故か校舎の近くに出現しちゃって、それを拾った犯人が勝手に意識の時間移動してる。ってこと?」

璃奈「うん。考えられるのは“偽璃奈ちゃんボード”は本体は移動できても、使用者は意識しか送受信できないのかもしれない。タイムマシン本体を特異点として人の精神を連れていける技術が別に組み込まれてるなら…タイムマシンの完成度に対する説得力にもなる」

しずく「じゃああの『璃奈ちゃんボード』の顔文字っていうのは…」

璃奈「きっと生産者表示兼、私への宛先だと思う。未来の私がこの時代の学校にタイムマシンを送ったなら、受け取り手は一番信用できる本人しかいない」

璃奈「そして、ボードを付けたスクールアイドルの天王寺璃奈は、今のニジガクじゃ結構知名度がある。バグで変なところに出現しちゃっても、人づてに私のところへ届く可能性は高いと考えたんじゃないかな」
 
117: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:33:56.09 ID:45PWVzkW
かすみ「けど現実は犯人の手に渡ってるじゃん。タイムマシンなんて変な人が持ったら悪用されちゃうに決まってるよ」

璃奈「そこは…うん。ひとまず未来の私の詰めが甘かったと考えよう。パスワード設定でもしておけば防げたかもしれないけど……」

璃奈「いや、もしかしたら私が時間移動を認識できる現状こそ、未来の私が意図的に設定したセキュリティ対策だったのかも。万が一パスワードで使えないってことがないように。それでもし他人が時間移動をした時、その時代の制作者本人が気付けるように」

かすみ「なるほど…あれ、それじゃあタイムマシンとりな子は関係あるけど、犯人とりな子は関係ないってこと?」

璃奈「あ……確かにそうなる。というか、それなら犯人は私が時間移動を認識できてることも知らない可能性すらある」

しずく「そっか。あ、だったらチャンスじゃない?犯人がわかればまた時間移動する前につかまえちゃえばいいんだもん」

璃奈「うん、そこは助かった」

璃奈「けど……良かった」

璃奈「『璃奈ちゃんボード』は同好会のみんなで作り上げたもの。……それが誰かの悪意で作られたものじゃなくて…本当に、良かった……」

かすみ「りな子…」
しずく「璃奈さん…」

かすみ「もう、落ち着くの早いよ!まだタイムマシンは悪用されてる最中じゃん!次は犯人探しだよ!」

しずく「はい!璃奈さん、このまま犯人まで辿り着いちゃいましょう!」

璃奈「うん。璃奈ちゃんボード『キリリッ』」
 
118: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:37:51.21 ID:45PWVzkW
かすみ「にしても、なんで犯人はせっかくタイムマシンがあるのに来月にしか行かないんだろ。かすみんだったら10年後でも20年後でも見たくなるけど」

しずく「あんまり遠くは難しいんじゃない?技術的に一ヶ月が限界とか。あとさっきの例だと、来月ならともかく10年後の私に高校生の私が入っても生活できないよ」

璃奈「未知の技術だから、制限があるかは…ちょっとわからない。それよりも、私はこの一ヶ月に犯人の目的があると思ってる」

しずく「目的?」

璃奈「この時間移動は明らかに人為的に起きてる。なら、移動したい理由があるはず」

しずく「なるほど…ホワイダニットから探っていくんだね」

かすみ「ホワイ…何?」

しずく「『Why done it』だよ。何故やったのか?…つまり犯人の動機をメインに考えていくの。誰が?と、どうやって?と並ぶミステリーの基本だね。他ふたつが現状わからないから、ホワイダニットから攻めていくのは良い考えかも」
 
119: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:41:11.28 ID:45PWVzkW
璃奈「そう。というか、それ以外に明確に犯人に辿り着く情報が現時点で無い」

かすみ「犯人の…動機かぁ」

璃奈「かすみちゃんは、タイムマシンを手に入れたら何がしたい?」

かすみ「かすみんが?そんなこと聞いてどうするの?」

しずく「犯人の気持ちになってみる、ってことでしょ?何かヒントになるかもだよ」

かすみ「え〜、唐突に言われても……あ、テストの答えを見てから過去に戻ってもう一度やり直すとか!」

しずく「かすみさん…定期テスト大丈夫なの?」

かすみ「もっ、もちろん!前みたいににゃんにゃん言われる筋合いはないからね!」

しずく「ホントかなぁ…」
 
120: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:44:09.35 ID:45PWVzkW
璃奈「しずくちゃんはどう?」

しずく「私だったら…一回しかない演劇を何度も見るとか?」

かすみ「えぇ〜、それだけ?」

しずく「わかってないなぁ…演劇は見るたびに発見があるんだよ?何度も見れたら…色んな楽しみ方ができるんだから!」

かすみ「やば、しず子に演劇熱付けちゃった…」

璃奈「でも、私もその気持はわかる。ライブとかイベントとか、一度しかないものは何度も体験したい」

璃奈(なら犯人の目的は『何かを何度も体験すること』?事実私は2月15日は2回目。今日からホワイトデーの間に何かがあるとすれば、それが犯人に繋がる…?)
 
121: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:47:00.90 ID:45PWVzkW
しずく「動機といえば、なんで未来の璃奈さんはタイムマシンを送ってきたんだろ」

かすみ「そりゃあ…完成したから試してみたくなったとか?」

しずく「でもタイムマシンだけが送られてきたんでしょ?それじゃ成功してるかわからなくない?」

かすみ「カメラがついてて、未来のりな子がモニターしてるとか?」

璃奈「データを保存して持ち帰るならまだしも、時間を超えてリアルタイムの情報共有ができるとは思えない。何か目的があって変えたい過去があって……2月14日に送り込んだと考えるべき」

かすみ「2月14日に、変えたい過去…?あ!」

しずく「何かわかったの?」

かすみ「もしかして〜、りな子、フラれちゃった?」
 
122: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:49:28.22 ID:45PWVzkW
璃奈「え?」

かすみ「もう、鈍いなぁ…バレンタインで後悔することなんて告白位じゃん!りな子はどーしてもフラれた過去を変えたくて、わざわざタイムマシンを作ったとか!」

しずく「えぇ…流石に説得力に欠けない?」

かすみ「わかってないなぁ。乙女の恋心は一生モノだよ?舞台で恋愛作品ばっかりやってるのにわからないの〜?」

しずく「そんなことないもん!……え、でも確かに恋愛の悲劇は心中とかしちゃうのも多いし……過去を変えられるなら変えたいのも仕方ない……?」

かすみ「ホラ、しず子もそう思うでしょ?」

璃奈「待って。私はバレンタインに告白なんてしてない。……少なくとも、しようはしてなかった」

かすみ「なんだぁ、それじゃハズレかぁ」

しずく「もう。こんな時に璃奈さんをからかっちゃ駄目だよ?」

かすみ「しず子だってそう思い始めてたじゃん!」

しずく「そ、それはそうだけど〜」
 
123: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:55:30.32 ID:45PWVzkW
かすみ「でもさ、できるならバレンタインももう一度やりたいよね〜。そしたらお菓子をもう一度食べられるし、意識だけならこれ以上太らないもん!」

しずく「そんなに食い意地張ってると、また太っちゃうよ?」

かすみ「うぐっ…しず子だって、今日から練習メニュー増やすんでしょ!」

しずく「ギクッ!し、しょうがないじゃん!だって先輩たちのお菓子、美味しすぎだもん…」

璃奈(バレンタイン…思い返してみれば、犯人の時間移動が始まったのはバレンタイン当日からだ。そこからホワイトデーに飛んだと思ったら、次はバレンタインの翌日からホワイトデーの前日…)

璃奈(やっぱり、バレンタインは犯人の動機と関係がある?けど今の時間移動の流れはむしろ、バレンタインやホワイトデーを避けてるような…)

璃奈「二人はバレンタイン、好き?」

かすみ「え?そりゃあもちろん」

しずく「私も人並みに好きだと思うけど…」

璃奈「じゃあホワイトデーは?」

かすみ「う~ん、バレンタインと比べるとそこまで…?」

しずく「そう?私は好きだけどなぁ。バレンタインの愛の告白に対する返答の日!甘い喜劇も苦い悲劇も、ホワイトデーならではでしょ?」
 
124: (しまむら) 2023/03/12(日) 23:58:37.46 ID:45PWVzkW
かすみ「でもホワイトデーって日本のお菓子メーカーが勝手に作ったんでしょ?しお子が言ってたよ」

しずく「それはそうだけど…言っちゃったらバレンタインのチョコだって日本特有のものだし」

かすみ「え、そうだっけ?」

しずく「うん。女性が意中の人にチョコレートを贈るって限定してるのは確か日本だけだったと思う。海外だと告白もするけど恋人の日ってイメージだし、花とか贈り物をし合ったり、食事したりするのが一般的らしいよ」

かすみ「ふ〜ん。ま、日本ならみんなでお菓子パーティーできるんでしょ?ならかすみんは全然文句ないけどね」

しずく「かすみさんは花より団子だよね…」

かすみ「い、いーじゃん別に。っていうか、何でりな子はそんなこと聞くの?また犯人なら~ってやつ?」

璃奈「……犯人の動機が、バレンタインデーに関係あるかもしれない」

かすみ「ええっ!?」
 
125: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:01:05.95 ID:qMBJUdZS
璃奈「犯人は…最初にバレンタインからホワイトデーに飛んだ。その後は2月15日に戻って、普通に3月13日まで過ごしてる。そしてまた今日…2月15日に戻ってきた」

璃奈「この不規則な流れが要領を掴めなかったけど…時間移動の途中で、犯人の目的が変わったと考えればいい」

しずく「変わった?」

璃奈「3月14日に行って、犯人はやりたかったことをやった。もしくはできなかった。だからこそ、2月15日〜3月13日を巻き戻すのが、“現在の”犯人の目的だとしたら?」

かすみ「バレンタインからホワイトデーの間を…?」

璃奈「言い換えれば、今の犯人はバレンタインもホワイトデーも大嫌い。わざわざタイムマシンで避けるほどに。だけど、バレンタインからホワイトデーの間を何度も過ごさなければならない。そういう理由がある…んだと思う」

かすみ「そんな理由ある?」

璃奈「それは…わからない。さっきの話みたくバレンタインかホワイトデーに『フラれた』と考えても…」

しずく「フラれちゃうってわかってるのに、その限定的な時間を巻き戻す理由がない?」

璃奈「うん。それならバレンタインからやり直して、告白のし直し…か、そもそも告白しなければいい。失敗するとわかっていればする必要もない」
 
126: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:04:40.56 ID:qMBJUdZS
かすみ「そうだよねぇ。バレンタインの告白かぁ……仮に本当にその理由だとしても、告白しそうな人を片ッ端から怪しむなんてキリがないよね」

しずく「ニジガクは生徒数多いし、告白する子も結構多いよね」

璃奈「そうなの?」

しずく「確か果林さんとか愛さんも、何人かのファンの子から本命の告白されてたらしいよ?演劇部の部長とかも…部員の子が告白するって言ってたなぁ」

かすみ「あの人たちは別でしょ…てかやっぱ女子校でもあるんだね、そういうの」

璃奈「二人はしない?告白」

しずく「え゛っ…しないしない!しないよ!」

かすみ「かすみんは、みーんなのアイドルだから恋愛厳禁なの!」

璃奈「そっか」

しずく「もう、ビックリさせないでよ…でも素敵だよね、バレンタインの告白。ロマンチック〜!一度くらいはしてもされても良いかも」

かすみ「かすみんのクラスの子も告白するって意気込んでた気がする…何日も前から準備してるって」
 
127: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:07:54.71 ID:qMBJUdZS
しずく「そりゃそうだよ、一世一代の大勝負だもん!相手の好みとか〜何をあげるかとか、包装とか、渡すときの台詞も考えないとだし。チョコレートをハート型にしたり…とにかく正面から伝わるのが良いよね。キャンディとか〜マカロンみたいな!」

かすみ「また暴走してるよ…」

璃奈「?キャンディとマカロンって、なんで伝わるの?」

しずく「え?知らない?お菓子によって意味が違うんだよ。キャンディなら『あなたが好きです』マカロンなら『あなたは特別な存在です』ってね」

璃奈「そういえば、歩夢さんと侑さんがマカロン作ってた」

しずく「そうなの!きっと歩夢さんが提案したんだろうな〜。侑先輩に気持を伝えたいけど恥ずかしい……それで歩夢さんにとって大事な同好会も含めてマカロンにすることで誤魔化したけど、歩夢さんの抑えられない気持は豪華なマカロンとなって表れちゃう!きっと侑先輩は意味に気付かずに美味しそうに食べるだけ……でもマカロンを送り合った事実と、侑先輩の幸せそうな顔を見るだけで今は幸せなの……だって侑先輩と歩夢さんは特別な存在同士だから!」

かすみ「うわ…」
 
128: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:12:47.34 ID:qMBJUdZS
しずく「でも実は侑先輩は何年も前から知ってて…その夜ついに侑さんは家で問い詰めるの。『ねぇ、マカロン作ろうって言ったの歩夢だよね?なんでなの?』『そ、それは…私が好きだから…』『違うよね?歩夢が好きなのは……“私”、だよね?』満足感で幸せだったはずのバレンタインは夜の侑先輩の独壇場に…💙」

璃奈「全然知らなかった…そういうのってどこで知るの?」

かすみ「う〜ん、ネットの情報とか、宣伝とか?ていうか、それなんでそんな意味になったんだっけ?」

しずく「さぁ…?そもそもお菓子を送り合うのが日本のお菓子メーカーの宣伝から始まったから、そこからじゃない?」

かすみ「うわぁ!いきなり落ち着かないでよ!」

璃奈「夢もトキメキもない…」

しずく「花言葉とかと同じだよ。昔の人がそう決めたのがずっと続いてるの。素敵だなぁ〜」
 
129: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:16:24.55 ID:qMBJUdZS
かすみ「う〜ん、かすみんはどうかと思うけどなぁ。言うほど昔じゃないし。それに誰が決めたのかわかんないので告白ってしたくなくない?りな子みたいに伝わらなかったら元も子もないじゃん」

しずく「そりゃあそうだけど…でも別にちゃんと本命ですって伝えれば良いんだよ。お菓子に意味を含めるのは、おまじないみたいなもの」

かすみ「そう考えればまぁ……アリかなぁ」

璃奈「……」ケンサク

璃奈「あっ、ホントだ。色んなお菓子に意味が付いてる。クッキーは『友達でいたい』か」

しずく「クッキーも作りやすいよね。ただ場合によってはマイナスの意味になっちゃうけど」

かすみ「そういえば、りな子がくれたのもクッキーだよね。あれって意味知らなかったの?てっきり友チョコとしてくれたのかと思ったけど」

璃奈「知らなかった。私、お菓子作り初めてだったから。簡単で失敗しにくいクッキーにしただけ。……美味しかった?」

かすみ「もっちろん!」
しずく「うん。すごく美味しかったよ」

璃奈「そ、それなら良かった…璃奈ちゃんボード『テレテレ』」
 
130: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:20:11.49 ID:qMBJUdZS
璃奈「……あ、『あなたが嫌いです』なんて意味がのもあるんだ」

かすみ「マシュマロでしょ?バレンタインのコッペパンにマシュマロ入れようとしたのに、それのせいで入れづらくなっちゃってさぁ。嫌いな人にお菓子なんてそもそも渡さないのに」

しずく「ま、まぁ理由つけもちょっとね…マシュマロ、私も好きなんだけどなぁ」

璃奈「あっ、彼方さんが『マシュマロはホワイトデーに向かない』って言ってた。あれはそういうことだったんだ」

しずく「彼方さんが?なら意味も知ってたのかもね。お菓子も詳しそうだし」

かすみ「りな子、彼方先輩に相談してたの?」

璃奈「ホワイトデーのお菓子作り…“前回の”3月13日に、彼方さんとエマさんでカップケーキを作ったの。もう無くなっちゃったけど」

かすみ「えぇ〜!?かすみんも参加したかったのに!QU4RTZ内差別はんた〜い!」

璃奈「ご、ごめん…今度はみんなで作ろう」
 
131: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:26:24.73 ID:qMBJUdZS
しずく「まぁまぁ。あ、ホワイトデーってことはお返しだよね。カップケーキは確か…『あなたが特別です』って意味だったし、友達相手にもおかしくないし。でも璃奈さんの作ったの、食べてみたいなぁ」

璃奈「大丈夫、もう作り方は覚えた。次のホワイトデーには作る予定だから……」

璃奈(次のホワイトデー?そういえば…“最初の”ホワイトデーは私、何を作ったんだろう)

かすみ(ん?りな子、また何か思いついたの?)

璃奈「まだ…わからないけど……なんか、違和感があって」

璃奈(最初のホワイトデー……私がバレンタインと勘違いした日。あの日までの1ヶ月にもちゃんと天王寺璃奈は生活してて。ホワイトデーのことも考えてたはず)

璃奈(なら“前回”と同じで彼方さんとエマさんを頼った?そして、カップケーキを作った?)

璃奈(実際あの朝冷蔵庫には紙袋があった。そして、私はそれを『2月13日に作ったクッキー』と勘違いしていた。愛さんに言われるまで、間違えたまま渡してた)

璃奈(逆にホワイトデーの時、私のお菓子はバレンタインのお返しと思われていた。私はそれをバレンタイン当日のクッキーと勘違いしてた)

璃奈(なんだろう…何か、重要なことが隠されてる気がする…)
 
132: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:28:41.00 ID:qMBJUdZS
璃奈「昨日…バレンタインは、同好会でお菓子パーティーが開かれたんだよね?」

しずく「う、うん」

璃奈「どんなことしたの?」

かすみ「どんなことって…みんなでお菓子を持ち寄っただけだよ。エマ先輩とか、スイスの伝統ケーキをホールで作ってくるから食べちゃおうって。それでついでに、同好会のメンバーのぶんはその時に…」

璃奈「完食した?」

かすみ「う〜ん、果林先輩とか彼方先輩は持って帰ってたような…あ、ランジュ先輩が冷凍保存しようとしてしお子に怒られてたなぁ。あはは」

しずく「そういえば、璃奈さんもちょっとだけ持ち帰ってたっけ」

璃奈(私が食べ切れてないなら……きっと『同好会以外の人から貰ったお菓子』も持ち帰って食べたはず。でも…愛さんたちと家を調べた時、そんなもの家にあったっけ?)

璃奈(違う。その日は“バレンタインの翌日”じゃない。“バレンタインから時間移動したホワイトデー”だ。そんな日ならバレンタインの痕跡なんて無くて当然)
 
133: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:31:22.58 ID:qMBJUdZS
璃奈(なら、私は……“バレンタインの翌日”以降に、家でお菓子の痕跡を見付けたっけ?)

璃奈(記憶がないせいで、勝手に受け取らなかったか食べ切って処分したと勘違いしてただけじゃ…?)

璃奈(バレンタインのお菓子はちゃんと受け取っていて、私の記憶に無かっただけで包装とかはまだ家にある…?)

璃奈「…まさかッ!」

かすみ「えっ、りな子!?」

璃奈「今すぐ家に帰って調べなきゃいけないことがある。同好会のみんなには今日は休むって伝えて欲しい」

しずく「璃奈さん!ひとりで大丈夫?」

璃奈「大丈夫。ありがとう、しずくちゃん、かすみちゃん。二人がいなかったら、真相に辿り着けなかったかもしれない」

かすみ「ってことは…犯人がわかったの!?」

璃奈「犯人かはわからない。けど、忘れてた事実を思い出した。この先は……私が確かめなきゃいけないことなはず」

璃奈「だから…行ってくるね」
 
134: (しまむら) 2023/03/13(月) 00:34:28.54 ID:qMBJUdZS
璃奈(今日は2月15日…私の体感にバレンタインはずっと前の、夢みたいな記憶だったから失念してたけど…今日はバレンタインの昨日にお菓子は食べ尽くしたとしても……今ならまだ、その痕跡があるはず!翌日なんだ)

璃奈(昨日にお菓子は食べ尽くしたとしても……今ならまだ、その痕跡があるはず!)

璃奈(……あった、包装…!せつ菜さんやランジュさんのとか、ミアちゃんのお菓子の箱もある。他のも…同好会の人たちのものかな)

璃奈(確認できるのは…多分同好会のみんなが作ってくれたものだけ。なら、“アレ”がゴミ箱以外にあるはず。昨日の私が捨てるはずがない)

璃奈(鞄、キッチン、コルクボード、私の部屋、引き出し……あった!やっぱり大事に保管してた。お菓子は多分食べ切って、包装と“コレ”は綺麗にしまわれてる)

璃奈(ここに私の予想通りのことが書いてあれば――!)

璃奈「やっぱり…そうなの?」

璃奈「でもそうなら…納得がいくけど…」

璃奈(他にも確かめて…本当に間違いがなかったら……)

璃奈(明日、決着をつけよう)
 
136: (しまむら) 2023/03/13(月) 19:56:08.87 ID:qMBJUdZS
学校中庭 2月16日 午後



璃奈「やっぱり、来てくれると思ってた」

「……『バレンタインの返事がしたい』なんて文面で呼び出されるなんて初めてだよ。なんか緊張しちゃうね」

璃奈「私も、呼び出したのは初めて」

「でもさ、こんな中庭じゃなくて良くない?放課後なら教室とか、屋上とかさ」

璃奈「ううん、ここがいい。この一ヶ月の始まり……あの“璃奈ちゃんボード”が現れた場所で、全部終わらせたい」
 
137: (しまむら) 2023/03/13(月) 19:58:49.58 ID:qMBJUdZS
「……気付いてたんだね。まぁ前はこんなことなかったし。そっか、知ってたかぁ」

璃奈「やっぱり、あなたなんだね。正直…違うと思いたかった。しらばっくれてくれれば、それを信じたかもしれない」

「……じゃあ私はさしずめ、のこのこ探偵に追い詰められた犯人ってところ?」

璃奈「それは違う。きっと私は…ううん、お互いに一番重要なところがわかってない。だからこれは告白。自分の全部を相手に伝えるの」

璃奈「……だから全部を教えて。浅希ちゃん」





浅希「……いいよ。何が聞きたいの?」
 
138: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:04:28.93 ID:qMBJUdZS
璃奈「最初に確認したいのはふたつ。浅希ちゃんは偶然“璃奈ちゃんボード”を拾って、それが未来の私が作ったタイムマシンだと知った。2月14日から3月14日、そして2月15日へ。最後に3月13日から今日へ。合ってる?」

浅希「うん。その通り。まさか璃奈が気付いてたとは思わなかったけどね」

璃奈「もう一つ聞いておきたい。未来へ行ったとき、浅希ちゃんにその間の記憶はあるの?」

浅希「?もちろん。あのタイムマシンは『ジャンプ』ってよりも『早回し』が正しいかな。2月14日の私を3月14日に送ったとしても、それは意識だけ。その間の現実は消えないし、タイムマシンが記憶を補完していく」

璃奈「早回し……」

浅希「あの時は半信半疑だったけど…タイムマシンを起動したら、瞬きする間に一ヶ月が過ぎたのがわかった。不思議とその間の記憶も頭に入ってきて…ホワイトデーになる頃には、タイムマシンは本物だって確信したよ」

璃奈(今の浅希ちゃんの反応……タイムマシンで記憶が補完されることが当然だって感じだ。なら、イレギュラーに対する抵抗措置…私の強制的な時間移動は、普通のそれじゃなかったんだ。そして浅希ちゃんは、それに気付いてない)
 
139: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:07:30.38 ID:qMBJUdZS
璃奈「私からもひとつ、話しておきたい。私は……ホントは移動の間の記憶がないの。あるのはきっと、浅希ちゃんと無関係な人たちだけ」

浅希「え……嘘」

璃奈「私の推測だとタイムマシンはそもそも、私以外の誰かに使われた時、当時の私が対処できるように…強制的に私を巻き込んで時間移動する仕様だった。だから浅希ちゃんは気付かなかった。自分一人だけが移動したと思い込んでいた」

璃奈「未来の私が設定した、今の時代の天王寺璃奈を使ったこのセキュリティ対策はとっても効果的だったと思う。なにせタイムマシンを知らなくても、異常事態が発生してると教えてくれるから」

璃奈「でもそれはバグか何かで不完全にしか働かなかった。私は知らないうちに時間が移動して、記憶もない。私、すごく混乱した。何がおかしいのかもわからなくて…それに時間移動を認識できてたのは私だけ。私だけが狂っていくのは…怖かった」

浅希「そ、それは……」

璃奈「謝らないで。浅希ちゃんは浅希ちゃんの目的があったんだよね。時間移動は許せないけど…今、それを責める気はない。私が聞きたいのは…浅希ちゃんの本当の心」
 
140: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:09:41.72 ID:qMBJUdZS
璃奈「時間移動の軌跡は不規則で、最初は全く理解できなかった。けど、3回も時間移動を経験しちゃえば…その動機も、なんとなくは推察できる。重要なのは、時間移動の主軸がバレンタインデーってこと。そうだよね?」スッ

浅希「ッ!そのカード…!」

璃奈「浅希ちゃんがくれたバレンタインデーのマロングラッセ。それに入ってたメッセージカードだよ。文面は…『一月後にお返事を下さい』」

璃奈「マロングラッセそのものを食べた記憶がなくて行方不明だったけど、私の部屋にちゃんと保管してあった。私が、浅希ちゃんのメッセージを捨てるはずがない」

浅希「……」

璃奈「バレンタインデーの贈り物にはそれぞれ意味がある。私も意味を調べるまで、全然知らなかったことだけど。そしてマロングラッセの意味は……『永遠の愛を誓う』」
 
141: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:21:25.80 ID:qMBJUdZS
浅希「……そうだよ。私はあの日…璃奈に告白したつもりだった」

璃奈「ッ!やっぱり…」

浅希「おかしいよね。ただの友達で、女の子同士なのに…気持ち悪かったでしょ?」

璃奈「そ、そんなこと…」

浅希「良いんだよ、嘘つかなくて。だって璃奈…ホワイトデーにちゃんと断ってくれたじゃん」

璃奈「断って…?いや、それよりもホワイトデー…!お願い、教えて。浅希ちゃんが最初に時間移動したのって…バレンタインの返事が知りたかったからなの?」
 
142: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:25:03.14 ID:qMBJUdZS
浅希「違うよ。すぐに知りたければ…その場で璃奈に答えを求めてる。たとえ一月間が空いたとしても、私はホワイトデーにあやかって、答えを待ちたかった。…でも、私にはすぐに答えを知らなきゃいけない理由ができた」

璃奈「…!私、時間移動の本当の動機だけはどうしても考えつかなかった。どうしてなの?たまたまタイムマシンが手に入ったから?」

浅希「……そうじゃないの」

璃奈「じゃあ、なんで…」

浅希「だってその日に…3月14日に、私は死んじゃうから」
 
143: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:33:30.31 ID:qMBJUdZS
璃奈「…………は?」

浅希「タイムマシンの中に、ひとつだけ文書データがあったの。それがどうしても気になって。ロックされてたけど…パスワードは今璃奈が使ってるPCと一緒だった」

璃奈(多分、未来の私からの伝言だ。パスワードは今の私にもわかるように同じものにしたのかな。浅希ちゃんには、ライブで使うプログラムを共同で作ってる時に私のPCのパスワードは教えてたから開けたんだ)

浅希「そこに書いてあったの。『浅希ちゃんが3月14日に交通事故で亡くなる。どうかこのタイムマシンを使って歴史を変えて欲しい。バレンタインの返事は良く考えて返すように。……この時代の私へ。20年後の天王寺璃奈より』って」

璃奈「そんな、なんで…浅希ちゃんが、交通事故…?」

浅希「驚いたよ。璃奈ちゃんボードだと思った機械が実はタイムマシンで、それによると来月私は交通事故に遭う。璃奈が作ったジョークにしては悪趣味すぎてる」

璃奈「……それで、確かめに行ったの?3月14日へ」
 
144: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:38:17.75 ID:qMBJUdZS
浅希「璃奈への告白で頭がいっぱいだった私は本当に混乱した。なんで私が死んじゃうの?未来の璃奈って何?何も分からなかった。でも、一番最初に頭をよぎったのは、璃奈のことだった」

璃奈「わ、私?」

浅希「もし通学の時に事故に遭ったなら、私は璃奈の返事を聞けないまま死んじゃうんだって。それは…それだけは、絶対に嫌だった。それで私は我慢できなくなって。璃奈にバレンタインのお菓子を渡した後、3月14日に行ったの」

璃奈「……事故には、遭わなかったんだよね?」

浅希「うん。私は無事だった。私自身が死んじゃったらもうタイムマシンで事故前に戻ることもできないし。……でも、それでね。あのホワイトデー…璃奈も経験したあの3月14日。死にはしなかったけど、結局私は死にかけたんだ」

璃奈「え?」

浅希「あの時は…何を考えてたんだっけ。覚えてないや。ずっと学校にいたんだけど、家に帰ろうとしてフラフラと歩いてたら…赤信号に気付かなくて。多分『事故に遭う』ってわかってたからギリギリで避けれたんだと思う。本来こうやって私は死んだんだなぁってわかったよ」
 
145: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:43:33.63 ID:qMBJUdZS
璃奈「なんで……いや、まさか……」

璃奈「私の、ホワイトデーのお返しのせい?」

浅希「……」

璃奈「私があの日あげたのは…」

浅希「クッキーだよね」

璃奈「ッ!」

璃奈(クッキーの意味は……『友達でいたい』友達相手なら何もおかしくないけど、告白の返事としては……拒否する意味になる)

璃奈「じゃあ、ホワイトデーの後に2月15日に戻ったのは」

浅希「怖くなったから。次は本当に事故に遭うんじゃないか。たとえ遭わなかったとしても……璃奈と私の関係はもう壊れちゃった。あんなに知りたかった告白の返事に…私は耐えられなかった」

浅希「ホワイトデーまでの璃奈は私のメッセージ通り、友達として何も変わらず接してくれた。それだけが救いだったって、過ぎてからわかったよ。きっと上っ面だけとはいえ、私が璃奈と過ごせるのはホワイトデーまで。そんな日を求めて戻ったんだ」
 
146: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:46:34.78 ID:qMBJUdZS
璃奈「……バレンタインデーには戻らなかったの?」

浅希「タイムマシンが現れたのがバレンタインの朝だったせいか、それより前には戻れないの。それに……璃奈の返事が耐えられないのと同時に、私は、この告白を無かったことには……どうしてもできなかった。璃奈に伝えた気持は、絶対に確かなものだから」

璃奈「……!」

浅希「そこからは普通に過ごそうと思った。けど、3月14日になったら私は本当に事故に遭うかもしれない。そして、きっと璃奈に断られる。だんだんと近付いてくるその現実に耐えられなくて……私は、もう一度バレンタインからホワイトデーまでの日常に戻すしかなかった」

璃奈(バレンタインからホワイトデーをループし始めたんだとすると、原因はホワイトデーにあると推測はできてた。でもまさかこんなことがあったなんて、想像もできなかった…)

璃奈(浅希ちゃんのバレンタインに対する真剣な想い……わかってなかったのは私だけ?タイムマシンの文章からして、未来の私も浅希ちゃんの事故がホワイトデーの返事に起因したものだと理解してた。だからあんな風に『良く考えて』なんて念押ししたんだ)
 
147: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:52:19.79 ID:qMBJUdZS
璃奈(浅希ちゃんを救うには、ホワイトデーの憂慮を無くせば良いはず…なら私が告白をOKすればいいだけ?))

璃奈(本当に?考えて。もっと良く考えて、私。今必要なのは、浅希ちゃんを救ってあげること?今大切なのは……!)

璃奈「……違うッ」

浅希「え?な、何が…?」

璃奈「さっき言った。私は、『時間移動した間の記憶』が無い。だからバレンタインデーに貰ったお菓子を食べた記憶もない。当然、浅希ちゃんのも空けてない」

浅希「そっ、それが何?」

璃奈「そもそも、ホワイトデーの時、私はバレンタインを夢だと思いこんで…反対にその日をバレンタインだと勘違いしてた。だから…」

璃奈「ホワイトデーのお菓子はクッキーじゃない。私は浅希ちゃんのマロングラッセに込められた意味も、メッセージカードの中身も知らないで……ホワイトデーのお菓子を、バレンタインクッキーだと間違えて渡してたの」

浅希「……え?」

璃奈「浅希ちゃん。私があげたホワイトデーのお菓子、袋は開けた?」

浅希「あっ、開けてない……開けたら本当に、泣いちゃいそうで……」
 
148: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:56:09.33 ID:qMBJUdZS
璃奈「私は浅希ちゃんに渡すとき、口頭で“クッキーだ”と言った。それで浅希ちゃんは断られたと思ったんだよね。でも、それは間違いなの。私はあの時浅希ちゃんが告白してくれたことも知らなかったし、返事でクッキーをあげたつもりもなかった」

浅希「そ、そんな……じゃあ、私が時間移動したから…璃奈のお返しをクッキーと勘違いして、勝手にショックを受けて…事故に遭いかけたってこと?」

璃奈「……」

浅希「でっ、でも!元の歴史で私が死んじゃったからこそ、璃奈はタイムマシンを作ったんでしょ!?なら、結局私はフラれるんだよね…?」

璃奈「それは……!」

浅希「璃奈が作ってくれたのがクッキーだろうが何だろうが、私の恋は叶わない!そうなんでしょ!?」

璃奈「ッ……浅希ちゃんのバカ!何にもわかってない!」

浅希「!?」

璃奈「私が…私が、どんな想いでクッキーを作ってたか…朝希ちゃんにわかるの…!?」

浅希「あ……」
 
149: (しまむら) 2023/03/13(月) 20:59:29.44 ID:qMBJUdZS
璃奈「浅希ちゃんが私をとっても想って作ってくれたって。私、このカードだけでも感じられるよ。浅希ちゃんは?私の心…ちょっとでも伝わってる?」

浅希「わ、私は……」

璃奈「私はこの一ヶ月、色んなことを経験した。時間移動に巻き込まれて…それを解明したり、必死に日常を取り戻そうと装ったり。でもそれだけじゃない。初めてお菓子を作って、初めて友達と交換して。誰かと一緒にお菓子を作ったのも初めての経験だった。……それに、誰かにこんなに好きって想われてたのも、きっと初めて」

璃奈「だから…バレンタインもホワイトデーも、その間の日常も。私にとって特別な日なの。その想いを……浅希ちゃんの勝手で無視してほしくないし、無かったことにもしてほしくない」
 
150: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:03:45.86 ID:qMBJUdZS
浅希「うぅ…だったら…」

浅希「だったら私は、どうすれば良かったの…?」

璃奈「……」

浅希「恋は叶わなくて、来月には死んじゃうって知って。…どうすれば良いの?教えてよ、璃奈…!」

璃奈(私にとってのみんなとの日々。浅希ちゃんにとっての告白。上手く繋がれなかった心が生んだのが…今回の事件だ)

璃奈(私が浅希ちゃんの心に気付いていれば、最初の時間移動も無かったかもしれない。そして、私が浅希ちゃんへの返答を間違って、浅希ちゃんが死んじゃう現実もあったかもしれない)

璃奈(でも、私にとっての現実は今ここにあるんだ。ここで、全ての決着をつけるには……)

璃奈「やり直そう。バレンタインも、ホワイトデーも」
 
151: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:09:58.79 ID:qMBJUdZS
浅希「…へ?タイムマシンで…?」

璃奈「ううん。今、ここでだよ」

璃奈「これ。受け取ってくれる?」スッ

浅希「それって…」

璃奈「包装、ホワイトデーにも使ったくらい余ってたから。張り切って多めなの買っちゃってて」

璃奈「これは…私の想いの全部。昨日の夜、頑張って作ったの。開けてみて」

浅希「あ…カップケーキ…?」

璃奈「ホワイトデーに送ったのと同じ。だけど、改めてバレンタインの想いも込めた。…浅希ちゃんの想いに負けないように」

浅希「……可愛いね。チョコペンの…璃奈のアイコン?」

璃奈「そう。電波みたいにみんなと繋がれるように。スクールアイドルを始めた時、そんな気持で決めたの」

璃奈(そう。大切なのは……誰かを想うキモチ。同好会のみんなが私に気持を込めてお菓子をくれたことや、愛さんと果林さん。かすみちゃんやしずくちゃんが私を助けてくれたのも、彼方さんとエマさんと一緒に作った思い出も。……浅希ちゃんが、私に告白してくれたことも)

璃奈(そして何より…私がクッキーとカップケーキに込めた、みんなへの想いも。それが消えるのも…否定されるのも、絶対駄目なことなんだ)
 
152: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:16:03.02 ID:qMBJUdZS
璃奈「でも…アイコン一つじゃ想いはきっと伝わらない。お菓子の種類や、友達だからっていう思い込みも…それだけじゃ意味がない」

璃奈「だから改めて。ここにいる私が、浅希ちゃんに想いを伝えるね」

浅希「璃奈…」

璃奈「浅希ちゃん、大好きだよ。私の、一番の…とっても特別で大切な友達。……だから浅希ちゃんとは、付き合えない。ごめんなさい」

浅希「そっか……そっかぁ」

璃奈「でも……告白、本当に嬉しかった。上手く笑えないし、口下手で…ダメダメな私を好きになってくれたこと、心の底から誇りに思えるの」
 
153: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:22:09.54 ID:qMBJUdZS
璃奈「だから私を好きな想いは、ずっと失くさないで欲しい」

浅希「ぐすっ…ずっと好きでいろって、こと?…付き合えないのに…?」

璃奈「ちょっと違う。私は浅希ちゃんの気持を否定したくない。けど、応えることはできない」

璃奈「でも浅希ちゃん自身は……浅希ちゃんの想いを肯定してあげて欲しい。誰か別の大切な人ができたり、自然と私を好きじゃなくなるまでは……その心、大切にしてあげて。その代わり、私は浅希ちゃんのこと、今まで以上に大切に想うから。…私が、絶対に死なせないから」

浅希「うぅっ、璃奈……璃奈ぁ!」

璃奈「浅希ちゃん」

浅希「璃奈、好き。好き、大好き!大好きなの!」

璃奈「……浅希ちゃん、大好きだよ」
 
154: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:33:15.94 ID:qMBJUdZS
璃奈「……もう大丈夫?」

浅希「うん。ハンカチありがとう。……ごめんね、こんなに泣いちゃって…」

璃奈「平気。でも部活動の人たちがいなくて良かった」

浅希「あはは…そうだね。…ねぇ、璃奈はこれからどうするの?」

璃奈「これから?」

浅希「タイムマシンは…返すよ。璃奈の気持、ちゃんと伝わったから。バレンタインに戻せば、本当に全部やり直せる。璃奈が使えば私の記憶も無くなるだろうし」

璃奈「……最初は、犯人が見つかったらバレンタインに戻して貰おうと思ってた。けど、今はこのまま何もしないでおきたい」

浅希「ええっ!?だって璃奈、朝以降の記憶ないんでしょ?同好会の人たちからのお菓子も食べてないって…」

璃奈「うん。だけど…今日も、私にとっては大切な日。きっと浅希ちゃんや、今日を生きる人たちにとっても。それも無かったことにはしたくない」
 
155: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:41:20.30 ID:qMBJUdZS
浅希「じゃあ…」

璃奈「同好会のみんなには、正直に話して謝る。みんなのお菓子を食べた記憶がないことも。それを黙ってたことも、全部」

浅希「……私も一緒に謝るよ」

璃奈「浅希ちゃん…」

浅希「信じてくれるかはわからないけど、本当のことを言わなきゃでしょ?そこに当人がいなきゃダメだもん。それに、璃奈は何も悪くないんだし」

璃奈「わかった。一緒に行こう。優しい人たちだから…ちゃんと謝れば、きっと許してくれる」

浅希「ありがとう。……あのさ、璃奈」

璃奈「何?」

浅希「私…諦めないでもいい?璃奈のこと」

璃奈「…うん」
 
156: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:48:03.32 ID:qMBJUdZS
浅希「それで…バレンタインは終わっちゃったけど、またマロングラッセ作ってきていい?結構練習したんだ。ずるいかもだけど、やっぱり食べてほしくて」

璃奈「もちろん。彼方さんが言ってた。女の子にお菓子は付きものだって」

浅希「ふふっ、なにそれ」

璃奈「じゃあ、一緒にいこ。浅希ちゃん、手」

浅希「えっ、あ…うん。一緒に行こっか」ギュッ

浅希「……璃奈」

璃奈「どうしたの?」

浅希「……ううん。なんでもない。また、今度言うね」

浅希(また今度…次のバレンタインデーに、きっと言うから。璃奈のこと、大好きだって)
 
157: (しまむら) 2023/03/13(月) 21:48:58.22 ID:qMBJUdZS
おわり
 
158: (もも) 2023/03/13(月) 22:05:41.74 ID:GRT6M9XZ
面白かった

 
159: (もんじゃ) 2023/03/14(火) 00:49:34.44 ID:O4K82MOn
あさりなの供給助かる

 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1678281840/

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