【SS】ダイヤ「2年生の教室に誰か残っていますわね」曜「はぁ…」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2017/03/06(月) 21:20:15.54 ID:qN4C9nBg.net
曜「はぁ…」

ダイヤ「…あら?」

曜「あ、ダイヤちゃん…どうしたの?」

ダイヤ「見回りですわ。まだ残ってたの?今日の練習はもう終わってるでしょう?」

曜「あ、うん。ちょっと、えっと…寝ちゃってて」

ダイヤ「…そうですか」

曜「ダイヤちゃんは、生徒会終わり?」

ダイヤ「…ええ」ジーッ

曜「?」

ダイヤ「…あなた、嘘が下手ですわね」

曜「うぇ!?」

ダイヤ「手元のそのくしゃくしゃになったプリント。見えてますわよ」

曜「あっ…」バッ

3: 2017/03/06(月) 21:22:01.70 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「何かあったの?」

曜「え、っと…なんでもないよ」

ダイヤ「ふぅん」

曜「ほんと!ほんとになんでもないから!」

ダイヤ「…そうですか。そこまで言うなら、追及はしません」

曜「…うん、ありがと」

ダイヤ「さ、帰りましょう。先生に怒られても知らないわよ?」

曜「そ、そうだね」イソイソ

4: 2017/03/06(月) 21:23:36.14 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「二人で帰るのなんて――初めてかしら」

曜「そうだね。いつも皆が一緒だから」

ダイヤ「小さい頃から顔は知っているのにね」

曜「そうだね」

ダイヤ「…」

曜「…」

ダイヤ「珍しく静かですわね」

曜「えっ!?そ、そうかな」

ダイヤ「いつも千歌ちゃんとバカみたいにはしゃいでいるのに」

曜「ば、ばかって…」

ダイヤ「まあ、元気な事が悪い事ではありませんけれどね。むしろいい事ですわ」

曜「はぁ…」

6: 2017/03/06(月) 21:26:20.31 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「…今日の練習はどうでしたか?」

曜「あ、うん。今日はユニットごとの練習だったよ」

ダイヤ「あぁ、そういえば…果南とマルちゃんには迷惑かけちゃったわね」

曜「でもマルちゃんは聖歌隊に、果南ちゃんは家の手伝いにって早めに帰っちゃったよ」

ダイヤ「そうですか。AZALEA全滅とは…ちょっと情けないですわね」

曜「あはは…」

ダイヤ「…ルビィはどう?迷惑かけずに、ちゃんとやってる?」

曜「もちろん!むしろルビィちゃんがいないと、CYaRonは成り立ってないかも!」

ダイヤ「そうですか…あの子が」

曜「うん!ほら、私と千歌ちゃんって突っ走るタイプだから…ルビィちゃんが色々考えてくれて」

曜「やっぱり、アイドル好きだ~、っていうのが伝わってくるよ!」

ダイヤ「……ふふ」

曜「あれ?何かおかしなこと言った…?」

ダイヤ「いえ。少し――嬉しくて」

10: 2017/03/06(月) 21:29:15.41 ID:qN4C9nBg.net
曜「嬉しい?」

ダイヤ「ええ。わたくしの家って、ほら。ご存知の通り…堅いでしょう?」

曜「ああ」

ダイヤ「だから、もちろんルビィも習い事や、家の事をやらされていたわけで」

曜「ルビィちゃんもだったんだ…ダイヤちゃんだけかと思ってたよ」

ダイヤ「昔の話だけれどね。あの子、全部やめたのよ」

曜「そうなの?」

ダイヤ「そう。中学に入る前に、長かった髪もばっさり切って…習い事も全部やめて」

曜「へぇ…ルビィちゃんって、意外としっかりしてるよね」

ダイヤ「そうかもしれませんわね」

11: 2017/03/06(月) 21:30:28.59 ID:qN4C9nBg.net
曜「それで、なんで嬉しいの?」

ダイヤ「…スクールアイドルを始める時、あの子両親に猛反対されたの」

ダイヤ「家の事も習い事も投げ出してアイドルなんてふざけるな、ってね」

ダイヤ「でもその時、ルビィは…」


ルビィ『スクールアイドルはね…Aqoursの活動はね』

ルビィ『ルビィが生まれて初めて、本当にやりたいなって思えたことなの』

ルビィ『ルビィは、この気持ちを裏切りたくない』

ルビィ『―――ルビィ、スクールアイドルやりたいの』


ダイヤ「初めてですわ。あの子が涙一つ見せずに、両親に反発したのは」

ダイヤ「そのおかげか、ルビィの気持ちが伝わったのか――両親もわたくしも、何も言えなくなって」

ダイヤ「…それで、今に至るというわけ」

曜「そんなことがあったんだ…」

ダイヤ「…まぁ、その話し合いが終わった後、わたくしに泣きついてきたんですけどね」

曜「あはは…ルビィちゃんらしいね」

ダイヤ「ふふ…そうね」

12: 2017/03/06(月) 21:32:17.33 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「それより」

曜「はい?」

ダイヤ「そろそろ話す気になった?」

曜「えっ…と、だ、だからなんでもないって―――」

ダイヤ「…人に話せば、楽になることもありますよ」

ダイヤ「いくら名誉職みたいな生徒会長とはいえ、生徒の悩みを解決するのも仕事ですし――」

ダイヤ「わたくし、頭と口の固さには自信がありますから」

曜「ぷっ…」

ダイヤ「…やっと笑いましたわね」

曜「ご、ごめん…まさかダイヤちゃんが自分で頭が固いとか言うと思わなくて…」

ダイヤ「クスクス♡わたくし、ジョークもいけるかもしれないわね?」

曜「…そうかも♪」

13: 2017/03/06(月) 21:34:29.35 ID:qN4C9nBg.net
曜「えっとね。…進路希望調査、なんだけど」

ダイヤ「なるほど…進路で迷っている、と」

曜「うん…」

ダイヤ「何で迷っているか、聞いてもいいかしら?」

曜「私って、飛び込みの強化指定選手に選ばれてる…っていうのは、知ってる?」

ダイヤ「そうですね。わたくし、素直に尊敬していますわ」

曜「あ、ありがとう…えっとね、それで、○○体育大学から推薦が来てるんだよね」

ダイヤ「…それって、体育大学の中でも超名門…ですわよね」

曜「そうみたい」

ダイヤ「…改めてすごいわね」

曜「いやぁ、そんなことは…」

ダイヤ「それで?何を迷っていますの?そんな話、滅多に無いじゃない」

曜「…私、船の船長になりたくて」

ダイヤ「ああ――そういえば、言ってましたね。お父様が定期船の…」

曜「そうそう。それで、昔からお父さんみたいな船長になるんだー!って、決めてたんだけど…」

ダイヤ「けど?」

14: 2017/03/06(月) 21:35:49.24 ID:qN4C9nBg.net
曜「みんなから、飛び込みやらないのは勿体ないって言われて…」

曜「先生も、めったに無い事なんだから、この話を蹴るのは…とか、才能を〇すのは勿体ない、とか…」

ダイヤ「なるほど。それで迷ってしまった、と」

曜「うん…船乗りになるには、そういう資格が取れる学校に行った方がいいと思うし」

ダイヤ「それはまあ、その通りでしょう」

曜「…ダイヤちゃんは、どうすればいいと思う?」

ダイヤ「…そうですわね。わたくしが言えることは――」


ダイヤ「あなたの勝手ですわ」


曜「うえぇ…」ガクッ

曜「ひ、酷いよ!曜にしては、真面目に悩んでるのに!」

ダイヤ「だって、そういうしかないでしょう」

ダイヤ「最終的に決めるのは曜ちゃん、あなたよ。わたくしが決めることじゃない」

曜「でも、決められないから迷ってるのに――」

ダイヤ「…曜ちゃん、ちょっと寄り道をしていきましょうか」

曜「へ?」

15: 2017/03/06(月) 21:37:48.30 ID:qN4C9nBg.net
曜「いいの?本当に奢ってもらっちゃって…ソフトクリーム、しかも一番高いやつだし」

ダイヤ「構いませんよ。どうせ、お小遣いの使い道には困っているし――」

ダイヤ「それに。この前千歌ちゃんと話してたでしょう?買い食いしてばっかりでお小遣いが無いって」

曜「うっ…聞いてたんだ」

ダイヤ「お金は計画的に使わないとダメですわよ」

曜「がんばります…」

ダイヤ「ふふ…夕日、綺麗ね」

曜「そうだね…」

ダイヤ「さて、本題ですが」

曜「…」ゴクリ

ダイヤ「あ、食べながらでいいですわよ。早くしないと溶けちゃうわ」

曜「あ、うん」ペロ

16: 2017/03/06(月) 21:40:08.93 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「…わたくしの運命は、生まれた時から決められていますの」

曜「運命が…?」

ダイヤ「そう。黒澤家の長女として生まれついた時からね」


ダイヤ「幼い時から家の事を手伝ってきたし」

ダイヤ「習い事だって、稽古始の6歳の6月6日から今まで、ずっと続けてる」

ダイヤ「御琴に茶道、花道――ピアノ、バレエ、公文に英語もやっていたわ」

曜「ひぇぇ…」

ダイヤ「もちろん、今では御琴や踊りは好きだけれど――まあ、やっぱり興味の無いことまでやらされることもあって」

ダイヤ「でもわたくし、投げ出したことは一度もありません」

ダイヤ「そういう運命だと、わかっているから」

曜「ダイヤちゃん…」

ダイヤ「…曜ちゃんは、彼氏とかいるの?」

曜「えぇっ!?い、いないよ!なんで突然!?」ドキドキ

ダイヤ「じゃあ、親が決めた結婚相手とか」

曜「いないいないっ!漫画じゃないんだから――あ」

ダイヤ「ふふ、そうですね。普通はそうです」

曜「もしかして――」

ダイヤ「ああ、いえ――別に相手が決まっているというわけではありませんよ」

ダイヤ「ただ、跡取りだの婿取りだの――そういう話も、幼い頃から聞き慣れていた、というだけの話ですから」

曜「そ、そっか…安心したよ」

18: 2017/03/06(月) 21:51:28.11 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「……とまあ、長々と話しましたが」

ダイヤ「わたくしは本家の長女に生まれた、というだけで――」

ダイヤ「そういったことを義務付けられているの」

曜「…」

ダイヤ「…あ。もちろん、ルビィにもそうする義務はあるんだけどね」

曜「え、でもルビィちゃんはそんなこと…」

ダイヤ「そう、してないのよ。…あの子には無理でしょ?」

ダイヤ「あの子がもし長女だとして、わたくしと同じことができると思う?」

曜「え、えーっと…難しいかも」

ダイヤ「フフ――♡わたくしもそう思うわ」

ダイヤ「だから、その義務はあの子の分まで、わたくしが果たせばいいのよ」

ダイヤ「将来を選べないのは、わたくしひとりで十分」

曜「…ダイヤちゃん」

ダイヤ「なんですか?」

曜「……そんなの、ダメだよ」

19: 2017/03/06(月) 21:56:39.12 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「…ダメ、とは?」

曜「そんな、そんなの――かわいそう、だよ」

ダイヤ「…」

曜「自分の好きな人と結婚できなくて、やりたい事もできなくて、そんなの…」

曜「そんなの、ダイヤちゃんがかわいそうだよっ!」

ダイヤ「…ふふ」

曜「な、なんで笑って――」

ダイヤ「少し前にも、同じことを言われました。お見合いの話を聞いたルビィから、お姉ちゃんがかわいそう、って」

ダイヤ「まあ、そのお見合いの話というのはルビィの勘違いだったんだけど」

ダイヤ「それに、自分では可哀想とか、考えてもいなかったけれど――嬉しいものね」

曜「だって――」

ダイヤ「だったら」

曜「?」

ダイヤ「わたくしのことが可哀想だと思うのならば――どうすればいいか、わかるわよね?」

曜「あ――」


ダイヤ「周りから決められた運命に囚われるのが可哀想だと感じたなら」

ダイヤ「あなたは、自分で運命を決めればいいのよ」

ダイヤ「わたくしには無理でも――あなたには、できるのだから」

22: 2017/03/06(月) 21:59:27.16 ID:qN4C9nBg.net
ダイヤ「もし、あなたが決めた道に文句を言う人がいるなら」

ダイヤ「その時はわたくしが言って差し上げますわ」

ダイヤ「曜ちゃんの運命を決めるのは、あなたじゃない―――ってね」


曜「……うぅっ」

ダイヤ「?」

曜「ダイヤちゃ~~んっ!!」ギュゥゥゥ

ダイヤ「な、な―――」

曜「ダイヤちゃんっ」

ダイヤ「な、なんですのいきなり!」

曜「もし、もしもイヤ~な人がダイヤちゃんをお嫁に貰いに来たら、曜が助けに行くからね!」

ダイヤ「は、はぁ?」

曜「真っ白でかっこいい船に乗って現れて、ダイヤちゃんを悪の魔の手から救ってあげる!」

曜「そしたら、曜もダイヤちゃんも女の子だけど――曜がお嫁に貰うよ!」

曜「曜が、ダイヤちゃんの白馬の王子様になってあげるのであります!」ギュゥゥ

ダイヤ「な―――よ、曜ちゃ―――」

曜「エヘヘ♡」

ダイヤ「…ありがとう」ギュッ

25: 2017/03/06(月) 22:07:52.99 ID:qN4C9nBg.net
曜ちゃんは、憑き物が落ちたように――いつも通りの笑顔で、帰っていった。

わたくしは、将来の事を考えていた。

曜ちゃんの笑顔のように、眩しい夕日を見つめながら。


ルビィは、わたくしの為に暴れてくれるって。

曜ちゃんは、わたくしを助けに来てくれるって。

言ってくれた。


わたくしの人生なんて、もう決まりきったものなのだと。

誰も干渉しようがない、と。

そう思っていた。


でも―――

Aqoursのみんなと接するようになってから。

義務なんて投げ捨てて、わたくしとは全く違う考え方で生きているルビィと、同じことをするようになってから。

ちょっとずつ、わたくしの人生は―――変わってきている。


そんな気がする。

29: 2017/03/06(月) 22:18:22.53 ID:qN4C9nBg.net
「あ――もうこんな時間」


時計を見ると、もうそろそろ夕食の時間。

曜ちゃんと別れてから、15分もぼーっとしていたみたい。

今日はたしか、お客様が来てお食事会だったわね。


ピロン♪

携帯に、メールの着信音。


from 渡辺曜

今日はありがとう!
あの後すぐ、お父さんに電話で相談してみたんだけど、曜が決めたことならそれでいいって!
ダイヤちゃんのおかげだよ!
明日先生にも話してみる!
お礼に今度、一緒に何か食べに行こうよ!
今日でもいいよ!ハンバーグとか好き?


もう――わたくし、ハンバーグはあまり好きじゃないのに。


でも――。

お食事会を抜け出して、曜ちゃんとデートできるなら―――

食べに行っても、いいかもしれませんわね。

―――なんて。

そんなことしないけれど。


ああ、もう―――やだ。

こんな事を考えるようでは、黒澤家の長女失格かしら。

いや――失格でも、いいかしら?

そしたら、自分の好きなように生きられるし――曜ちゃんに、お嫁に貰ってもらえるかも。



―――なんて、ね。

フフ――♡


わたくしは、ちょっと上機嫌で。

鼻歌なんて、歌ってみたりして――

夕焼けに染まる家までの道を、歩き出すのでした―――

31: 2017/03/06(月) 22:21:28.29 ID:qN4C9nBg.net
おわり

32: 2017/03/06(月) 22:22:36.00 ID:fw8ot7LY.net
おつ
めちゃくちゃ良かった

33: 2017/03/06(月) 22:23:59.10 ID:yrBlgjOg.net

ブラボーですわ

34: 2017/03/06(月) 22:24:11.46 ID:cjd8rGRo.net
たまには友情もいいね

35: 2017/03/06(月) 22:25:34.48 ID:KJWHsNnO.net
ぶっぶいなくてワロタ

すばらし

39: 2017/03/06(月) 22:36:32.45 ID:s8+EfeIU.net
|c||;.-;||

40: 2017/03/06(月) 22:38:49.61 ID:bEWpR0Qz.net
普通にSIDにありそうな話だ

50: 2017/03/06(月) 23:20:55.67 ID:qN4C9nBg.net
補足
BD5巻特典のSID(ダイヤ編)を読んでる前提の描写をいくつか含んでいるSSなので、未読の方はぜひ
アニメとは違うルビィちゃんの魅力とダイヤさんの心情が素敵

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1488802815/

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