【SS】海未「私の、エリーチカ」

SS


1: 2015/07/12(日) 14:52:41.85 ID:hTlUsSvg.net
 友人から、どんな人が好き? と尋ねられた時、私は返事をすることができませんでした。
 その時は恥ずかしさで気が動転して答えられませんでしたが、冷静になって考えてみても、やはり答えることはできません。
 好みのタイプですとか、好きな人というのは、私の中に答えが用意されていないのです。


 恋愛を意識したのは他人よりも早いと思います。けれど、それは決して前向きな興味ではありませんでした。
 小さい頃から続けている趣味の読書では、恋愛物を避けて選んでしまいます。
 恋愛とは、互いの想いを伝え合い自分の全てをさらけ出す行為。
 たとえフィクションであったとしても、恥ずかしくて直視できそうにありません。
 まして当事者になるなど、私には到底不可能なことなのです。


 ―――でも、それは全くの間違いでした。恋愛とは、する、しないの話ではなく、落ちるものなのです。

2: 2015/07/12(日) 14:55:51.30 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未「おや、絵里だけですか?」

絵里「海未。そうなのよ、今日はみんな帰っちゃったみたいね」

海未「仕方ありません、明日からテストなんです。穂乃果やことりも授業が終わるとすぐに下校していました」

絵里「そういう貴女は帰って勉強しなくていいの?」

海未「私は毎日復習していますから心配ありません。いつも通りにやるだけです」

絵里「あら、頼もしいわね」

海未「絵里こそ、部室で何をしていたのですか?」

絵里「なんとなく、ね。もう少し待って誰も来なかったら帰るつもりだったわ。だから、海未が来てくれてよかった」

3: 2015/07/12(日) 14:58:58.83 ID:hTlUsSvg.net
海未「そうですか。私は部室で作詞をしようかと思いまして」

絵里「そうなの。そういえば、海未が作詞をしているところって見たことないわ」

海未「普段は自室でしていますから。行き詰まってしまって、少し気分を変えようかと」

絵里「それは大変ね。私も何か手伝おうかしら?」

海未「いえ、一人で頑張ってみます。ありがとうございます、絵里」

絵里「ううん、気にしないで。飲み物買ってくるけど、なにか飲む?」

海未「すみません。では、緑茶を」

絵里「わかったわ」

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4: 2015/07/12(日) 15:02:42.41 ID:hTlUsSvg.net
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―――

絵里「おまたせ。はい、緑茶」

海未「ありがとうございます。お金は……」

絵里「えぇと、なになに……、『夢に揺れる美少女なんて……』」

海未「なっ、なに見てるんですか!」

絵里「あぁ、ごめんなさい。読ませて?」ニコッ

海未「嫌です! 絶対に見せません!」

絵里「いいじゃない、完成したら見せてくれるんでしょう?」

海未「そういう問題じゃありません! 作っている途中を見られるほど、恥ずかしいことはないのです」

絵里「見せなさい、先輩命令よ!」キリッ

海未「先輩後輩はなしだと言ったのは、絵里、あなたでしょう!」

5: 2015/07/12(日) 15:05:47.05 ID:hTlUsSvg.net
絵里「残念。ごめんなさい、少し調子に乗っちゃったわ。完成を楽しみにしてるわね」

海未「はい、わかってくれればいいんです。必ず良いモノにしてみせますね」

絵里「………」

絵里「――と見せかけて!」

海未「え、絵里っ! だめです!」

絵里「ちょっとくらい、いいじゃない?」グググッ

海未「だーめーでーすっ、ノートを離してください」グググッ

絵里「海未ちゃん、おねがぁい」

海未「ことりの真似ですか? 全然似てませんよっ」

絵里「うそっ、希は似てるって褒めてくれたのに」

6: 2015/07/12(日) 15:08:21.14 ID:hTlUsSvg.net
海未「絵里、いい加減離してください!」

絵里「わかった、離すわ……見せてくれたらね!」

海未「全然わかっていません! 危ないっ、椅子が、椅子が倒れてしまいそうです!」

絵里「そんなこと言って逃れる気でしょう? そうはいかないわ!」

海未「本当です、信じてください! も、もう限界です!」

絵里「ダメよ、逃がさな――えっ?」グラッ

海未「きゃああぁ!」

絵里「海未っ!」

ガラガラガラッ

7: 2015/07/12(日) 15:10:11.94 ID:hTlUsSvg.net
海未(椅子ごと倒れてしまいました。けれど、思っていたほどの衝撃や痛みはありません)

海未(目を閉じる直前、絵里の顔が近くに見えました。きっと絵里が私の体を庇ってくれたのでしょう)

チュッ

海未(でも、なんでしょうか。柔らかいモノが唇に当っています。目を開けるのは少し怖いですが……)

パチッ

絵里「!」

海未「!?!?!?!?」

絵里「は、ハラショー……」

ガバッ

8: 2015/07/12(日) 15:13:00.72 ID:hTlUsSvg.net
絵里「ご、ごめんなさい。海未を守るのに必死で……覆いかぶさったらたまたま唇が」

海未「………ぁ……ぁ」

絵里「体痛いところ、ない? 女同士だからノーカン、よね?」

海未「うううぅぅぅ!」

絵里「海未!? どうしたのっ、どこか痛むの?」

海未「もう、だめです……」グスッ

絵里「急いで救急車呼ぶから!」

海未「体は平気です……。絵里が庇ってくれましたから……」グズグズッ

絵里「そう……なの? なら、どうして泣いているの?」

海未「絵里……あ、あなたは! き、キスしたのですよ!?」

9: 2015/07/12(日) 15:15:13.84 ID:hTlUsSvg.net
絵里「えぇ、そうね。ごめんなさい。でも、仕方ないじゃない? それより、怪我が無くて本当によかったわ」

海未「し、仕方ない!? 元はといえば、あなたがふざけてノートを見ようとしたりするからじゃないですか!」

絵里「返す言葉もないわ。もうこんなこと絶対にしないから」

海未「……もういいですから。だから頭を上げてください」

絵里「海未……。許してくれてありがとう」

海未「けれど、きっ……き、すの件は」

絵里「キスのことは事故だと思って忘れましょう」

海未「む、無理ですぅ! キスしてしまったんですよ!? 酷いです、あんまりです……」

絵里「……そこまで落ち込まれると、ちょっとショックなんだけど」

10: 2015/07/12(日) 15:17:32.04 ID:hTlUsSvg.net
絵里「私とキスしたのがそんなに嫌だったの? ロシアではね、親しい友達同士でキスしたりするのよ」

海未「ロシアのことは知りません! ここは日本です!」

絵里「ほんとにね……」

海未「絵里のことが嫌だったのではないのです。私がき、キスを……破廉恥です……」

絵里「あぁ、どうすればいいのかしら」

海未「死んでしまいたいです……。私の初めてが絵里に奪われてしまいました……」

絵里「海未も初めてだったの? 私もだから安心して!」パッ

海未「何を笑っているのですか! あなたはもっと反省してください!」

絵里「ごめんなさい」

11: 2015/07/12(日) 15:19:32.09 ID:hTlUsSvg.net
海未「今日はもう帰ります……」ヨロヨロ

絵里「えぇ……。あの、あんまり気にしないで、ね?」

海未「……何か言いましたか?」ギロッ

絵里「な、何でもないわ」

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15: 2015/07/12(日) 15:27:04.92 ID:hTlUsSvg.net
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―――

海未(自己嫌悪です……)

海未(絵里にキスされてしまったとはいえ、あれは完全な事故でした)

海未(私が怪我をしないように庇ってくれた絵里を一方的に責め立てたのです)

海未(あまつさえ、絵里に感謝の言葉すら伝えていないではありませんか)

海未(なんて女なのですか、私は……)

17: 2015/07/12(日) 15:29:55.06 ID:hTlUsSvg.net
海未(それにしても、昨日の絵里はどこか様子がおかしかったように思います)

海未(絵里は誰かが嫌だという意見を述べれば、上手い落としどころと言いますか……)

海未(折衷案を提示してくれるようなタイプの人です)

海未(良い意味で人との距離感を大事にしていて、線を引けば無理やり踏み入ってくるような真似はしないのです)

海未(しかし、昨日の絵里は明らかに違いました)

海未(私が歌詞を見せたくないと言っても、かなり強引に見せてと迫っています)

海未(絵里に何かあったのかもしれません)

19: 2015/07/12(日) 15:34:51.84 ID:hTlUsSvg.net
海未(それなのに、私は大事なμ'sメンバーの異変にも気づかず……)

穂乃果「海未ちゃん、どーしよおおお! テスト全然解けなかったよおぉぉ!」

ことり「きっと大丈夫だよ穂乃果ちゃん」

穂乃果「だって分からない問題ばっかりだったんだよ! 最初の答えって『ア』だよね? 『ア』で合ってるよね!? 『ア』だって言ってえぇぇ!」

海未「もう死んでしまいたいです……」

穂乃果「海未ちゃん!?」

ことり「どうしたの、海未ちゃん……?」

20: 2015/07/12(日) 15:37:47.30 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「海未ちゃんもあんまり解けなかったの? そっか、それなら穂乃果が出来なくても当然だよね!」

海未「私は、なんて愚かなことを……」

穂乃果「大丈夫だよ! 穂乃果だって、昨日勉強しようとしたのに結局漫画読んじゃったもん!」

ことり「勉強しなかったの? 頑張ってやるぞーって、別れる時言ってたよね……」

穂乃果「ち、違うんだよことりちゃん! 勉強始めたら部屋が散らかってることに気づいてね、片付けてたら懐かしい漫画が出てきて……。ほら、ことりちゃんも面白いって言ってたやつ!」

ことり「でも、穂乃果ちゃん勉強頑張るって言ったよ……」

穂乃果「ことりちゃんごめぇぇん! 今日は頑張るから!」

ことり「……うん。じゃあ、今日は一緒にやろうね♪」

穂乃果「ありがとおぉぉ!」ダキッ

ことり「よしよし」ナデナデ

21: 2015/07/12(日) 15:40:25.78 ID:hTlUsSvg.net
ことり「それで、海未ちゃんは何かあったの?」

穂乃果「そうだった! テストで失敗したからって気にしちゃダメだよ!」

ことり「テストのことじゃないんじゃないかなぁ。あの、ね……あんまり難しくなかったから……」

穂乃果「そ、そうだったんだ……」

ことり「悩んでることがあったら相談に乗るよ?」

海未「平気です……。私が何をすべきかは、もうわかっていますから」

穂乃果「そうなの?」

海未「はい」

ことり「海未ちゃんがそう言うなら……」

22: 2015/07/12(日) 15:42:22.18 ID:hTlUsSvg.net
海未「このことを口にしたとしても、それはただ、私が楽になりたいからという理由でしかありません」

穂乃果「わかったよ。でも、もし本当に大きな悩み事があったら、穂乃果たちに相談してね」

ことり「そうだよ海未ちゃん。海未ちゃんは私たちの大事なお友達なんだから」

海未「穂乃果、ことり……。はい、ありがとうございます」

穂乃果「よかった、いつもの海未ちゃんに戻った」

海未「えぇ、本当によかったです。これで心置きなく穂乃果の勉強を見てあげられます」

穂乃果「あ、れ……?」

海未「あの程度の問題が全然わからないとは、どういうことですか穂乃果! 追い詰められた状況で漫画を読む? 一体あなたは何を考えているのです、今日という今日は許しません!」

穂乃果「うわあぁぁん、ことりちゃん助けてよおぉぉ!」ダキッ

ことり「あはは……」

―――
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23: 2015/07/12(日) 15:49:21.77 ID:hTlUsSvg.net
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―――

海未「では、今日の練習はここまでにしましょう」

にこ「間が空くと、はぁ、はぁ……さすがに、きつい、わねっ」

花陽「いつもの、練習メニューって、こんなに、大変だったかな……?」

真姫「この程度で、だらしないっ……」

にこ「強がってんじゃ、ないわよっ……」

凛「久しぶりの練習だったから楽しかったにゃー」

穂乃果「テストも終わったし、これからは毎日練習するぞー!」ハイタッチ

凛「にゃー!」ハイタッチ

にこ「あんたたちはなんでそんなに元気なのよ!」

24: 2015/07/12(日) 15:53:07.42 ID:hTlUsSvg.net
凛「かーよちん、このあとラーメン食べに行こうよ」

花陽「ラーメン! 行きます、たくさん練習したからお腹ペコペコ」

凛「真姫ちゃんも行かない?」

真姫「なんで私まで……ベツニイイケド」

凛「早く着替えて出発にゃー!」

花陽「り、凛ちゃん!」

真姫「凛! そんなに腕引っ張らなくても、自分で歩くから!」

25: 2015/07/12(日) 15:55:56.53 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「凛ちゃんたちはラーメンかー、いいなぁ。穂乃果たちもどこか寄ってく?」

ことり「いいと思うよ」

穂乃果「それじゃあミナリンスキーさんのメイド喫茶に行こう!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん!」ヤンヤン

穂乃果「冗談だよ~。希ちゃんどこかイイところ知らない?」

希「そうやね、新しくできた駅前のケーキ屋さんとかどう? ティラミスが絶品なんやって」

穂乃果「いいねー! みんなで行こうよ!」

絵里「ごめんなさい、私はちょっと……」

26: 2015/07/12(日) 15:58:51.09 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「絵里ちゃん行けないの? 何か用事とか?」

絵里「えぇ……。あの、海未を借りてもいいかしら」

穂乃果「海未ちゃん?」

絵里「二人で話したいことがあって」

海未「あ……」

にこ「なによ、さっきの振り付けのことで話でもあるわけ?」

絵里「そんなところよ」

にこ「……ふぅん、まぁいいわ。にこたちは行きましょ」

希「なんやにこっち、自分に相談されなくてジェラってるん?」

にこ「ばっ……そんなんじゃないわよ!」

………
……

27: 2015/07/12(日) 16:01:27.42 ID:hTlUsSvg.net
絵里「みんな、行ったわね」

海未「……」

絵里「……やっぱりこの間のこと怒ってる?」

海未「いいえ……そんなことはありません」

絵里「嘘よ。だって、今日一日ずっと目を合わせてくれないじゃない」

海未「それは……」

絵里「ごめんなさい、何度だって謝るわ。どうしたら許してくれる?」

28: 2015/07/12(日) 16:04:26.14 ID:hTlUsSvg.net
海未「絵里、違うのです……」

絵里「違うって、何が?」

海未「もう怒ってなんかいません。私が悪いのです。申し訳なくて、顔向けができなくて……」

絵里「ま、待って。どういうこと?」

海未「絵里は私が怪我しないように助けてくれたじゃないですか」

海未「それなのに私は、絵里を糾弾して酷い態度を取ってしまいました」

絵里「そんな……元はと言えば、私がノートを見ようとしたからでしょ? 海未は全然悪くないじゃない」

海未「それについては、もうしないと約束してくれましたから」

海未「あの時は私を助けてくれてありがとうございます。おかげで怪我をしないで済みました」

29: 2015/07/12(日) 16:06:30.18 ID:hTlUsSvg.net
絵里「えぇ、どういたしまして……?」

海未「絵里こそ怪我はありませんでしたか?」

絵里「私はなんともないわ」

海未「よかったです」

絵里「その……本当にもう許してくれるの?」

海未「はい、もう絵里のことは完全に許しています。怒ってもいません」

絵里「……だって、キスしちゃったじゃない?」

海未「そ、その話は勘弁してください……。必死に忘れようと努めているところなんです……」

………
……

31: 2015/07/12(日) 16:09:06.87 ID:hTlUsSvg.net
海未「では、そろそろ行きましょうか」

絵里「穂乃果たちはもうお店に着いたかしら?」

海未「かなり時間が経っていますから、もう到着しているのではないですか?」

絵里「私たちも合流する?」

海未「いえ、私は帰ろうかと思います」

絵里「そう」

海未「今日はとてもよいことがありましたから、それを噛みしめていたいのです」

絵里「海未……。もしよかったら、少し付き合ってくれない?」

海未「はい?」

―――
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32: 2015/07/12(日) 16:16:14.58 ID:hTlUsSvg.net
―――――
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絵里「ここよ」

海未「ここは……クレープ屋ですか?」

絵里「えぇ。前に希と来たんだけどね、また食べたくなっちゃって」

海未「以前にも来たのですか」

絵里「すごく美味しいのよ。でもこういう場所って、一人だと来づらいじゃない?」

海未「確かに、そうかもしれません」

33: 2015/07/12(日) 16:18:41.19 ID:hTlUsSvg.net
海未「たくさん種類があるのですね」

絵里「でしょう? 海未はどれにする?」

海未「悩んでしまいますね……。絵里は何にするんですか?」

絵里「もちろんチョコよ!」

海未「もちろんなんですか」

絵里「この、チョコケーキ&チョコアイスクレープにしようかしら」

海未「……重くないですか?」

絵里「そんなことないわよ。チョコレートならいくらでも食べられちゃうわ」

34: 2015/07/12(日) 16:21:09.57 ID:hTlUsSvg.net
海未「私はどれにしましょう……。も、もう少しだけ待ってください」

絵里「別に急いでないからゆっくりでいいのよ。あ、これなんかいいんじゃない?」

海未「あずきとイチゴのクレープですか」

絵里「海未はこういうの好きそうよね」

海未「はい、いちご大福みたいで美味しそうですね。私はこれにします」

絵里「わかったわ。すみません、46番と12番のクレープを一つずつください」

36: 2015/07/12(日) 16:24:15.74 ID:hTlUsSvg.net
海未「えっと、私のは390円ですか」

絵里「あ、お金はいいわよ。私が出すから」

海未「それはいけません! 金銭関係はきちんとしなければ今後の付き合いにも影響してしまいます」

絵里「そんな大げさに捉えないでほしいんだけど……」

海未「いいえ、絵里が相手とはいえ譲れません」

絵里「この間のお詫びも兼ねて、ね? 私の顔を立ててくれないかしら」

海未「ですが……やはり、よくないと思います」

37: 2015/07/12(日) 16:26:31.95 ID:hTlUsSvg.net
絵里「なら、こうしましょう。今度また来た時に海未が奢ってくれない?」

海未「今度、ですか?」

絵里「えぇ。だから今日は大人しく私に奢らせてちょうだい」

海未「……わかりました。でも、絶対また来るんですよ? 約束ですからね」

絵里「はいはい、わかってるわよ」

海未「絵里! 私は奢られたままなんて嫌ですからね!」

絵里「ふふっ。あ、出来上がったみたいよ」

39: 2015/07/12(日) 16:29:27.86 ID:hTlUsSvg.net
海未「!」

絵里「美味しいでしょう?」

海未「はい、驚きました。クレープはそこまで食べる機会がなかったのですが、今まで食べた中で一番おいしいです」

絵里「そう言ってくれると嬉しいわ。連れてきた甲斐があるというものよ」

海未「……絵里、実は気になっていたことがあるのです。聞いてもよろしいですか?」

絵里「構わないわ、何でも聞いてちょうだい」

海未「あの日、私の書いている詞を強引に見ようとしたじゃないですか」

絵里「えぇ……」

海未「それはどうしてでしょう? そこまでして歌詞が出来上がる過程を見たかったのですか?」

40: 2015/07/12(日) 16:32:19.57 ID:hTlUsSvg.net
絵里「今から言うことに気を悪くしないでほしいのだけど、いい?」

海未「はい」

絵里「作詞している過程がどうしても見たい、というわけではなかったの」

海未「はい」

絵里「悪い意味じゃないのよ? 海未の書く詞はいつも素敵で、完成したモノを見るのは楽しみだったわ」

海未「ありがとうございます。では、あの時はなぜ? ますます不思議です」

絵里「それはね、なんというか……」

海未「はい」

絵里「海未と少し……じゃれてみたかったのよね」

海未「……はい?」

41: 2015/07/12(日) 16:35:27.85 ID:hTlUsSvg.net
海未「ちょ、ちょっと待ってください。絵里は何を言っているのです、気は確かですか?」

絵里「……もうこの際だから言ってしまうけど、海未が私に抱いてる幻想のようなものを壊したかったの」

海未「幻想……?」

絵里「私はバレエの経験者で、みんなこの技術を高く評価してくれている」

絵里「特に海未は、みんなと比べても私をすごく尊敬してくれているんじゃないかって、そう感じていたの」

絵里「違っていたら恥ずかしいのだけど……」

海未「いえ、私は絵里のことを尊敬しています」

絵里「そうよね! でも、それがハードルになっているんじゃないかって思ったの」

42: 2015/07/12(日) 16:38:26.83 ID:hTlUsSvg.net
絵里「スクールアイドルには、技術とは別次元の魅力がある」

絵里「それは、穂乃果にも希にも海未にも……みんなにそれぞれ違った魅力がある」

絵里「だから、私に対して尊敬みたいな特別視はやめてほしかったの」

海未「それは……」

絵里「私は海未が思っているようなすごい人間じゃないのよ」

絵里「海未とはもっと仲良くなって、気が置けない関係になりたい」

海未「……はい、私もそう思います」

絵里「海未……嬉しいわ」

海未「でも、尊敬するなと言われても無理な話です」

絵里「……私の話聞いてた?」

43: 2015/07/12(日) 16:40:50.18 ID:hTlUsSvg.net
海未「私が絵里の持つ技術に惚れ込んで、尊敬しているのは事実です。覆すことはできません」

海未「けれど、それは絵里に限った話ではないのです」

絵里「どういうこと?」

海未「ことりの縫製技術、真姫の作曲センス、にこのアイドルとしての徹底したこだわり……皆それぞれに長所があります。また、短所もあります」

絵里「そうね」

海未「良いところを共有し、拙い部分を補い合う……それが私たちμ'sです」

海未「絵里も先ほど、私の書く詞は素敵だと言ってくれていたではありませんか」

絵里「あ……」

44: 2015/07/12(日) 16:43:11.39 ID:hTlUsSvg.net
海未「仲の良い相手であっても……いえ、仲が良い相手だからこそ尊敬する部分はあると思いますよ」

絵里「確かにそう、よね……待って待って」

海未「はい?」

絵里「私もしかして、すごく恥ずかしいこと言ってなかった……? うわあぁぁ……」

海未「そんなことはありません。絵里が私のことで悩んでくれている可愛い一面が見られて嬉しかったです」

絵里「もうやめて……それ以上は言わないで……」

海未(絵里の顔が今まで見たことないくらいに紅潮しています)

海未(な、なんでしょう。見ているこちらまでドキドキしてきました……///)

………
……

45: 2015/07/12(日) 16:46:09.26 ID:hTlUsSvg.net
絵里「あぁもう、恥ずかしかった。酷い目に遭わされちゃったわ」

海未「自滅していたような気がしますが」

絵里「なによ、イジワルを言う海未なんてもう知らない」

海未「それはあんまりです。許してください」

絵里「それじゃあ、クレープ一口ちょうだい?」

海未「わかりました。それくらいなら安いものです」

絵里「あーん」

海未「………」

海未(口を開いている絵里が、妙に扇情的に映ります……///)

絵里「……あの、まだかしら?」

46: 2015/07/12(日) 16:48:41.39 ID:hTlUsSvg.net
絵里「ハラショー! これも美味しいわね」

海未「あずきとクリームのバランスが絶妙です」

絵里「海未もどうぞ」

海未「よいのですか?」

絵里「もちろんよ。はい、あーん」

海未「あー……ん」

海未(これは、思った以上に恥ずかしいですね……)

海未「む、いけますね。濃厚なチョコレートが癖になります」

47: 2015/07/12(日) 16:50:59.07 ID:hTlUsSvg.net
絵里「あら、ふふふ」

海未「どうしたのですか?」

絵里「口元にクリームがついてるわ」

海未「なっ、本当ですか?」

絵里「えぇ、少し動かないで」

海未「はい」

海未(……絵里の指が私の口元に?)

48: 2015/07/12(日) 16:53:12.68 ID:hTlUsSvg.net
絵里「ほら、ついてたでしょ?」

海未「はい、ありがとうございます」

絵里「あむっ」

海未「!?!?!?」

絵里「甘くて美味しい」ニコッ

海未「え、絵里っ! あ、あなっ、あ、あなたって人は!」

絵里「どうしたの? 海未、顔赤いわよ?」

海未「破廉恥です! 信じられません!」

絵里「……え? な、なにが?」

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50: 2015/07/12(日) 17:02:48.22 ID:hTlUsSvg.net
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海未(まったく、絵里には本当に困ったものです!)

海未(人の口に付いたモノを指で掬って食べるなんて、どうかしています)

海未(そういうことに抵抗はないのでしょうか?)

海未(私に付いたモノを口にするなど、嫌ではないのでしょうか……。他の人が相手でも同じことをするんでしょうか?)

海未(穂乃果やことり、真姫とにこ……それに希にも)

51: 2015/07/12(日) 17:05:03.62 ID:hTlUsSvg.net
海未(だめです、考えが上手くまとまりません)

海未(明日も練習があるのです。早く寝なくては体力が持ちません)

海未(練習では絵里と顔を合わせることになるでしょう)

海未(まともに顔を見られるでしょうか?)

海未(絵里のことを考えると、なぜか思考がグルグルと巡ってしまいます)

海未(私は一体、どうしてしまったのでしょうか……)

―――
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52: 2015/07/12(日) 17:07:01.60 ID:hTlUsSvg.net
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―――

??「だーれだ?」

海未「きゃっ、なにをするのですか!」

??「あ、もしかしてわからない?」

海未「声でわかるに決まっているでしょう、絵里!」

絵里「ハラショー、正解よ!」

海未「もう、なんなのですか一体」

絵里「海未の後ろ姿が見えたから驚かそうと思ったの」

海未「あなたは知人を見かけたら驚かそうとするのですか?」

絵里「誰彼構わずはしないわ。特別仲の良い相手にだけよ」

海未「そっ……そうですか」

53: 2015/07/12(日) 17:09:25.22 ID:hTlUsSvg.net
絵里「海未はこんなところで何をしているの?」

海未「移動教室なんです」

絵里「穂乃果とことりは?」

海未「私はお手洗いに行っていたので先に向かってもらいました」

絵里「そうだったの」

海未「絵里こそどうしたのですか? 三年生の教室は向こう側の校舎ですが」

絵里「生徒会室に用事があって、行く途中だったの。でも、もう時間が足りないから戻らないといけないわね」

54: 2015/07/12(日) 17:11:46.44 ID:hTlUsSvg.net
海未「すみません、邪魔をしてしまいましたね」

絵里「いいのよ。むしろ邪魔をしたのは私の方じゃないかしら?」

海未「そういえば、そうですね。謝り損です」

絵里「うふふ、なによそれ」

海未「私の謝罪を返してください」

絵里「それはどうやって返せばいいの?」

海未「こんなことを言っているうちに、もう時間です」

絵里「あら本当、あっという間ね。海未とお喋りができて楽しかったわ」

海未「はい……私もです」

絵里「それじゃ、また放課後に」

―――
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55: 2015/07/12(日) 17:14:20.00 ID:hTlUsSvg.net
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―――

凛「ん~~、今日もいい天気だにゃー」

花陽「ほんとだね。こんなに晴れてると眠くなってきちゃう」

にこ「これから練習だっていうのに何言ってんのよ」

真姫「にこちゃん、顔に寝た跡ついてるわよ」

にこ「え"? うそっ」

ことり「平気だよ、何もついてないから」

にこ「真姫ちゃん!」

真姫「……」クルクル

56: 2015/07/12(日) 17:17:07.95 ID:hTlUsSvg.net
絵里「みんな、練習の前にちょっといい?」

穂乃果「どうしたの絵里ちゃん?」

絵里「今日は希が用事で来られなくなったの。だから、個別の練習を多めにやりましょう」

にこ「なにそれ、聞いてないんだけど」

絵里「急いでいたみたいだから」

にこ「……まぁいいわ。希には明日、今日の分を取り戻してもらいましょ。真姫ちゃん、ストレッチやるわよ」

真姫「はいはい」

57: 2015/07/12(日) 17:19:05.36 ID:hTlUsSvg.net
海未「ほの――」

穂乃果「ことりちゃん、一緒にやろうー!」

海未「はな――」

凛「かよちんストレッチにゃー」

海未「……」

絵里「海未、ストレッチ一緒にやってくれる?」

海未「絵里……お願いします」

59: 2015/07/12(日) 17:21:11.52 ID:hTlUsSvg.net
海未(まさか絵里と組むことになるとは思いませんでした)

海未(なるべく意識しないようにしていましたが、これでは否応なく絵里を感じてしまいます)

海未(海未……落ち着くのです。廊下で会った時は普通に話せていたではありませんか)

絵里「海未? もうちょっと強く押してくれないかしら」

海未「……こうですか?」

絵里「全然力が入ってないわ。これじゃストレッチにならないわよ」

海未「ですが……」

絵里「痛くないから思いっきりやってくれる?」

海未「そんなことしたら絵里の感触が……」

絵里「え、なに? 声が小さくてよく聞こえないわ」

60: 2015/07/12(日) 17:23:50.90 ID:hTlUsSvg.net
絵里「もう、わかったわ。交代」

海未「すみません……」

絵里「はい、座ったら前に屈んでー」

海未「うぐ、んん……あっ。待って、待ってください!」

絵里「今度はなによ」

海未「今どこ触りました!?」

絵里「触る? 背中を押してたけれど」

海未「指先でむっ、胸を触っていました!」

絵里「触ってないわよ」

海未「いいえ、触っています! 確かに絵里と比べれば私の胸はないようなものかもしれませんが、これは胸なんです!」

絵里「……海未、本当にどうしちゃったのよ」

61: 2015/07/12(日) 17:26:44.39 ID:hTlUsSvg.net
絵里「調子悪いの?」

海未「いえ、そんなことはありません……」

絵里「少し顔が赤いわ」

海未(それはあなたが近くで見つめてくるからですっ)

絵里「ちょっと測らせてね」

海未(な、何が起こっているのです……絵里の顔が目の前にあります!)

海未(すごくいい香りがします)

海未(え、絵里のおでこが私のおでこと……!)

62: 2015/07/12(日) 17:29:42.85 ID:hTlUsSvg.net
絵里「やっぱり、ちょっと熱――」

海未「やめてくださいっ!」ドンッ

絵里「きゃっ」シリモチ

一同「――!」

花陽「な、なんで? 海未ちゃん、今……」

凛「絵里ちゃんのこと、突き飛ばしたにゃ……」

海未「ち、ちがっ、違うんです!」

絵里「……海未?」

海未「う、絵里……ゃ、いやぁっ……!」

穂乃果「海未ちゃん!」

絵里「待って海未! 行かないで!」

………
……

65: 2015/07/12(日) 17:32:19.05 ID:hTlUsSvg.net
海未(私は、どうして、どうして……!)

海未(もう嫌です……最低なことをしました)

海未(あんなことをして、どう謝れば絵里に許してもらえるのです)

海未(みんなにも顔向けができません)

海未「ごめんなさい、ごめんなさい……絵里」

………
……

66: 2015/07/12(日) 17:35:34.26 ID:hTlUsSvg.net
絵里「はぁ、こんなところにいたの。探しちゃったじゃない」

海未「っ!!」

絵里「まさか部室だとは思わなかったわ。灯台下暗しってやつね」

海未「絵里……来ないで、来ないでくださいっ」

絵里「逃げる場所がよくなかったわね。ほら、追い詰めちゃった」

海未「いやぁっ、嫌ですっ」

絵里「うーみ」ダキッ

海未「あ……」

海未(絵里、すごく汗をかいています)

海未(私を見つけるために、どれだけ懸命になってくれたのですか……)

70: 2015/07/12(日) 17:39:44.55 ID:hTlUsSvg.net
絵里「私ね、とても悔しいことがあってもその場では精一杯我慢する子供だったの」

絵里「つらいこと、悔しいこと……誰にも悟られないように、必死になって隠してた」

絵里「でもね、お祖母さまにはすぐにバレちゃって。こうやって胸に抱いてくれた」

絵里「悔しかったね、つらかったねって。するとね、堰を切ったみたいに涙が止まらなくなっちゃった」

絵里「あぁ、私ってこんなに我慢してたんだなって、その時になってようやく気づくの」

海未「うぐっ、絵里ぃ……」

絵里「きっと、何か理由があったのよね?」

絵里「ここには私しかいないわ。海未、つらいことを我慢しなくていいのよ」

海未「えり、絵里ぃ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……」

71: 2015/07/12(日) 17:42:49.76 ID:hTlUsSvg.net
海未「許してっ、許してくださいぃぃ……」

絵里「少しも怒ってないわ」

海未「ぐすっ、いだく、痛くはなかったですか……?」

絵里「あれくらい何ともないわよ」

海未「うぅぅ、絵里、えりぃ……」

絵里「よしよし、大丈夫だからね」ナデナデ

海未(絵里の腕に抱かれた私は、声を上げて泣いてしまいました)

海未(溢れ出る私の涙が枯れるまで、絵里はずっと抱きしめてくれました)

海未(誰の前であってもここまで泣いたことはありません)

海未(それが、絵里の前では形無しになってしまいました)

海未(絵里の胸の中は、安心して、気持ちがよくて……私は不埒にも、この時間がずっと続けばいいと思ってしまいました)

………
……

72: 2015/07/12(日) 17:44:34.75 ID:hTlUsSvg.net
海未「……ご迷惑を、おかけしました」

絵里「少しは落ち着いた?」

海未「はい、おかげさまで……あぁっ、絵里の服が大変なことに!」

絵里「気にしないで。でも、これは着替えないといけないわね。ジャージあったかしら?」

海未「本当に申し訳ありません……」

絵里「もう、だからいいってば。それより、海未は顔を洗ったほうがいいわ」

海未「そんなに酷いことになっていますか?」

絵里「……ちょっとその状態のままじゃ、みんなの前には戻れないわね」

73: 2015/07/12(日) 17:46:19.81 ID:hTlUsSvg.net
海未「みんなにも、迷惑をかけてしまいました。怒ってないでしょうか、呆れてはいないでしょうか……」

絵里「本気でそう思ってる? みんな海未のことを心配していたわ」

海未「でも、怖いです。みんなの前に戻るのが怖いんです……」

絵里「私が一緒に行ってあげるから、心配しないで」

海未「本当ですか? 嘘だったら、酷いですからね」

絵里「ふふっ、海未ったらなんだか子供みたい」

海未「……」ギュッ

絵里「あら、からかったつもりだったのに。着替えて顔を洗ったら、このまま手をつないで戻りましょうか」

海未「……お願いします」

―――
――――
―――――

74: 2015/07/12(日) 17:48:20.28 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未(あれから、数日が経ちました)

海未(迷惑をかけたのにも関わらず、みんなは変わらず今までと同じように接してくれています)

海未(本当に、私はよい仲間に巡り会えました)

海未(今日は部活が休みです)

海未(けれど、私はこうして誰もいない部室へやってきて……淡い期待を抱かずにはいられません)

75: 2015/07/12(日) 17:50:17.71 ID:hTlUsSvg.net
絵里「あら、海未。来てたのね」

海未「絵里!」パッ

絵里「今日は部活休みよ? もしかして知らなかった?」

海未「いえ、知っています。今日も気分転換で部室で書こうかと思いまして」

絵里「そうだったの。また事故が起こっちゃうかもしれないわよ?」

海未「もう、やめてください」

海未(どうしてでしょう。あれだけ恥ずかしかったキスが――)

海未(いえ、今も恥ずかしいのですが。絵里となら、またしてもよいと、そう思ってしまいます)

海未(私は破廉恥な娘になってしまったのでしょうか……)

海未(そうだ、絵里が言っていたではありませんか!)

海未(ロシアでは親しい者同士ならばキスは普通だと)

海未(そうです。絵里とキスしたいと思うこの感情は、極々正常なものなのです)

76: 2015/07/12(日) 17:52:37.85 ID:hTlUsSvg.net
海未「絵里はどうして部室に――」

絵里「希ってまだ来てないかしら?」

海未「……希ですか?」

絵里「えぇ。私は職員室に用があったから、部室で待ち合わせにしたんだけど」

海未「来ていませんが」

絵里「そう。どこへ行っちゃったのかしら……」

希「えりち、来てるー?」

絵里「希! もう、遅かったじゃない」

希「ごめんごめん。真姫ちゃんにCD借りに行ってて」

77: 2015/07/12(日) 17:54:48.77 ID:hTlUsSvg.net
希「お、海未ちゃんもいるやん。どしたん、今日部活休みだって知らなかった?」

絵里「それはもう私とやったわ。海未の邪魔をしないで、私たちはもう行きましょう」

海未「これから何か用事ですか?」

絵里「そうなのよ。希とちょっと、ね」

海未「そう、ですか」

希「………」

絵里「希、行くわよ」

希「あ、えりち置いていかんといて! 海未ちゃん、またね」

78: 2015/07/12(日) 17:56:29.11 ID:hTlUsSvg.net
海未(部室が、静かになってしまいました)

海未(絵里が来る前と同じだというのに、先程よりもずっと――)

海未(いけません。気分転換で来たと、自分でも言ったではありませんか)

海未(……なのに、今はここにいたくないと思ってしまいます)

海未「……帰りましょうか」

79: 2015/07/12(日) 17:58:28.16 ID:hTlUsSvg.net
海未(絵里と希は2年以上の付き合いがあります)

海未(私よりもずっとお互いのことを知っていて、わかり合っているはずです)

海未(それほど深い信頼関係が二人の間にはあるのです)

海未(少し仲良くなった程度の私が、一体絵里の何を知っているというのでしょう)

海未(思い上がりも甚だしいというものです)

海未「うぐっ、ぐす……。あれ、どうしたのでしょうか……」

海未「悲しいことなど何も、ないというのに……」

―――
――――
―――――

80: 2015/07/12(日) 18:00:28.13 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

絵里「そしたらね、海未はなんて言ったと思う?」

希「なんてゆーたん?」

絵里「『違います、それは飴玉ではなく雨です』、だって」

希「あはは、それは海未ちゃんらしいなぁ」

絵里「ほんと、可愛い子よね」

希「最近えりちは海未ちゃんのことお気に入りやね」

絵里「えぇ、とても距離が縮まったと思うわ」

81: 2015/07/12(日) 18:02:58.65 ID:hTlUsSvg.net
希「なら、誘ってみてもよかったんやない?」

絵里「ダメよ、希のバイトを手伝うって言ったのは私じゃない。色々と忙しい海未に手伝わせるのは申し訳ないでしょう。もし頼んだら、よっぽどじゃない限り断らないだうし」

希「海未ちゃんえりちが用あるって聞いて、残念がってなかった?」

絵里「そうだったかしら? でも、部室で作詞……あぁ、これは言わない方がいいわね」

希「言いかけて途中で止めるのはやめてほしいんよ……」

絵里「はぁ、海未ともっとお話がしたいわ」

希「海未ちゃんのこと好きすぎやね」

絵里「食べちゃいたいくらいね」

希「食べちゃったらお話できないやん」

82: 2015/07/12(日) 18:04:52.02 ID:hTlUsSvg.net
絵里「本当に食べるわけじゃないわよ」

希「ボケに突っ込んで急に素に戻られる気持ち、えりちにわかる?」

絵里「なんていうのかしら、妹みたいな感じ?」

希「ってスルーかい! 亜里沙ちゃんみたいなもん?」

絵里「亜里沙とはまた違うわね……。難しいわ」

希「なんやろね」

絵里「なんだかね、海未のこと考えているだけで、心がすごくウキウキするのよ」

希「えりち、それって……」

絵里「あ、神社が見えてきたわ。希、上まで競争よ!」

希「えぇー、またなん?」

希(えりちが思ってる海未ちゃんへの好きは、友達の好きとはちょっと違うかもしれんね?)

―――
――――
―――――

83: 2015/07/12(日) 18:07:12.48 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

絵里『海未……貴女が、好きよ』

海未『はい……私も絵里が好きです』

絵里『もっと言ってくれる?』

海未『絵里、好きです……あなたを愛しています』

絵里『嬉しいわ。海未、両手を出して?』

海未『こうですか?』

絵里『そうしたら、私の手を握って。そうじゃないわ、こうやって指の間を交互に通すの』

海未『絵里……///』

絵里『よくできました。目を、瞑ってくれる?』

海未『恥ずかしいです、絵里……』

絵里『大丈夫。全部私に任せてくれればいいから―――』

84: 2015/07/12(日) 18:09:45.44 ID:hTlUsSvg.net
海未「ほわぁぁぁぁ!!」ガバッ

海未「な、なんですか今のは! あ、あれ……?」

海未「ゆ、夢ですか……?」

海未(わ、私はなんという夢を見ているのですか!///)

海未(ベッドで裸の絵里と、私は何をしようと……///)

海未「落ち着いて……落ち着くのです海未……」

海未(今のは夢です。全ては虚構、妄想にすぎません)

85: 2015/07/12(日) 18:12:15.73 ID:hTlUsSvg.net
海未「そうです、ただの夢なのです」

海未(けれど、もしあれが現実だったとしたら――)

海未(私はどうしていたのでしょうか)

海未(よく……よく、考えるのです)

海未(今までずっと逃げ続けていた感情から、向き合う時が来たのです)

海未(相手は絵里です。信頼のおける、尊敬すべきμ'sのメンバー)

海未(絵里とは様々な思い出があります)

海未(たくさん話をしました。心の内を見せてもらいました。絵里に……弱みを見せてしまいました)

86: 2015/07/12(日) 18:14:09.54 ID:hTlUsSvg.net
海未(絵里といるとドキドキします。けれど、嫌な気持ちではありません)

海未(むしろ、ずっと一緒にいたいとさえ思います)

海未(先ほどの夢……私は嫌だと感じましたか?)

海未(とても恥ずかしかったです。ドキドキして爆発してしまいそうでした)

海未(夢から醒めた今もまだ、心臓が強く鼓動を打っています)

海未(――私はあの続きを、受け入れてもよいと、そう思いましたか?)

88: 2015/07/12(日) 18:16:05.43 ID:hTlUsSvg.net
海未(私は―――)

海未(私は、絵里となら、あの続きを見てみたいと思いました)

海未(絵里ならば受け入れてよいと、そう思っています)

海未(そうです。私は……私は、絵里のことが―――)



海未「好き―――なのですね」

89: 2015/07/12(日) 18:18:35.49 ID:hTlUsSvg.net
海未「ど―――」

海未(どうしましょうっっっ!)

海未(私が? 絵里を好き?)

海未(大変です、大変なことが起きてしまいました!)

海未(園田海未史上、一番の大事件です!)

海未(絵里のことはもちろん、今までも好意的に思っていました)

海未(けれど、この"好き"は明らかに性質が違います)

海未(絵里を、こ、こっ……恋人にしたいという、そういう好きです)

90: 2015/07/12(日) 18:21:13.84 ID:hTlUsSvg.net
海未(友達のままではいられないとか、この気持ちを誰にも気づかれたくないだとか――)

海未(こういうことだったのですね。私は意味もわからず詞を書いていたことになります……)

海未(もう、絵里を今までと同じように見ることはできません)

海未(これからは、下心を持って絵里と接していくことになるのです)

海未(…………)

海未(ああああぁぁぁ! 私は! 私は何を考えているのです!)バンバンバンッ

海未(絵里がそんな破廉恥な娘を好きになってくれるとは、到底思えません……)

92: 2015/07/12(日) 18:24:08.23 ID:hTlUsSvg.net
海未「はぁ、はぁ……」

海未(とりあえず、今日はもう寝ましょう……)

海未(明日になれば、もう少し冷静になれるかもしれません)

海未(絵里……)

海未「絵里、好きです……」

海未(まずいです、ニヤけた表情になっているのが見なくてもわかります)

海未(人を好きになるとは、こんなにも力を貰うことができるのですね)

海未(いえ、これはきっと相手が絵里だからなのでしょう)

海未(絵里、おやすみなさい。また明日、学校で会いましょう)

海未(………)

海未「……今眠れば、夢の続きが見られるでしょうか?」

海未(が、頑張って眠らなくてはなりませんね……///)

―――
――――
―――――

94: 2015/07/12(日) 18:27:17.85 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未(ほとんど眠れないうちに、気づけば朝になっていました……)

海未(結局、夢の続きも見られませんでしたし)

海未(……で、でもあの続きは現実で達成すればよいのでは?///)

海未(って、私はまたなんてことを考えているのですか……!)

海未(ダメです……睡眠時間が足りなくてマトモに頭が働きません……)

海未(今日はできるだけ大人しくしていましょう……)

95: 2015/07/12(日) 18:30:16.91 ID:hTlUsSvg.net
ことり「海未ちゃん、おはよう♪」

穂乃果「おはよー海未ちゃん! いやー、今日もいい練習日和だね!」

海未「ことり、穂乃果……」

ことり「海未ちゃん?」

穂乃果「なんだかやつれてる……?」

海未「何を言うのです! やつれてる? この新生・園田海未を見て、よくそんなことが言えますね!」

ことり「ひっ」ビクッ

96: 2015/07/12(日) 18:33:15.17 ID:hTlUsSvg.net
海未「朝日がこんなにもキラキラと輝いているのです。元気がないわけがないではありませんか!」

穂乃果「海未ちゃんがおかしくなっちゃった!」

海未「何をぼさっとしているのです! 学校まで競争ですよ! 登校アタックです!」

ことり「どうしよう穂乃果ちゃぁん……海未ちゃんが壊れちゃったよぅ」

穂乃果「待って海未ちゃん! 急に走り出さないでよ!」

海未「うふふふ、とてもよい気分です!」

………
……

97: 2015/07/12(日) 18:35:19.46 ID:hTlUsSvg.net
海未「ふ、二人とも……なかなかやりますね……」

穂乃果「海未ちゃん、途中から全然走れてなかったよ」

ことり「すごいペースダウンだったよね……」

海未「はぁはぁ……今日は、このくらいにしといて、あげます……」

穂乃果「うん、信号渡ったらもう学校だよ」

ことり「それにしても海未ちゃん、どうしちゃったの……?」

穂乃果「あっ!」

ことり「希ちゃんに絵里ちゃん、おはよう♪」

海未「っ!?」

98: 2015/07/12(日) 18:37:50.66 ID:hTlUsSvg.net
海未「ぇ、絵里がいるのでしゅか!?」

穂乃果「海未ちゃん声裏返ってるよ!?」

絵里「うーみ♪」

海未「うっ!! ま、まさか……」

希「お~、海未ちゃんにハグなんて、えりち大胆やね」

絵里「あら? 朝から運動でもしていたの?」

海未「あ、あっ、あ――――」ガクッ

絵里「え――?」

穂乃果「海未ちゃんどうしたの!? しっかりして!」

ことり「海未ちゃぁぁん! 死んじゃやだよぅ!」

―――
――――
―――――

100: 2015/07/12(日) 18:52:17.30 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未「そんな、私は3時間も眠っていたのですか……」

ことり「先生は、貧血と過労だろうって」

穂乃果「突然だったから驚いちゃったよ。みんなで海未ちゃんを保健室まで運んだんだよ」

海未「ご迷惑をおかけしました……」

ことり「気にしなくていいんだよ。それより、本当に平気? 気持ち悪かったりしない?」

海未「先ほど先生にも言いましたが、それはありません」

穂乃果「よかったよー! 貧血と過労って、昨日あまり寝なかったとか?」

海未「はい、実はほとんど……」

101: 2015/07/12(日) 18:54:34.15 ID:hTlUsSvg.net
ことり「悩み事?」

海未「……はい。でもすぐに解決できる問題でもないんです」

穂乃果「そっか……。穂乃果たちはいつでも海未ちゃんの味方だからね! この間も言ったけど、何でも相談してよ」

海未「はい、ありがとうございます」

ことり「今朝の海未ちゃん少し怖かったから……できれば、あれはもう見たくないかも」

海未「そういえば、私はいつ倒れたのですか? 家を出たあたりから記憶が途切れているんですが」

穂乃果「そんなことって本当にあるんだ!」

ことり「記憶が残ってたら海未ちゃんまた気絶しちゃうかも……」

海未「こ、ことり! 恐ろしいことを言わないでください!」

103: 2015/07/12(日) 18:56:50.81 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「倒れたのっていつだったかな? 絵里ちゃんと希ちゃんと会ってすぐ?」

海未「えっ、絵里ですか?」

ことり「海未ちゃんが絵里ちゃんに抱きつかれたあと、気絶しちゃったの」

海未「絵里が、私を……///」

穂乃果「そうそう! 絵里ちゃんすごい慌てちゃって、海未ちゃんのことずっと呼びかけてたんだよ」

海未「そうだったのですか……」

海未(絵里……あなたは、また私のことをとても心配してくれたのですね)

穂乃果「そういえば今はいないね?」

ことり「もうすぐ来るんじゃないかな?」

海未「――え?」

104: 2015/07/12(日) 18:59:24.34 ID:hTlUsSvg.net
絵里「海未! 目を覚ましたのね!」

希「保健室ではお静かに」

絵里「あぁ……ごめんなさい」

穂乃果「穂乃果たちもすごい騒いじゃってたよ!」

ことり「他に誰もいないし、多少はいいんじゃないかな?」

絵里「でも、本当によかったわ……。私すごく心配で。私のせいで海未が倒れたって思ったから」

海未「そ、そんなことはありません」

海未(眠れなかったのは絵里が原因なので、当たらずとも遠からずといったところです……)

海未(い、いけません! 今あの夢を思い出したら顔から火を吹いてしまいます。静まるのです、海未)

105: 2015/07/12(日) 19:01:33.97 ID:hTlUsSvg.net
絵里「もうなんともないの? 吐き気と目眩はない? 起きてからちゃんと水は飲んだ?」

希「えりち、そんなに質問したら海未ちゃん困っちゃうやん」

絵里「だって心配なんだもの! 授業中も気が気じゃなくって、海未の身に何かあったらどうしようって」

海未「絵里……。もう大丈夫です。心配してくれて、ありがとうございます」

絵里「そんなこと、全然いいのよ。でも、まだ休んでいた方がいいんじゃないかしら?」

希「あと一時間でお昼休みだし、そうした方がええんやない?」

穂乃果「海未ちゃん、そうしなよ!」

ことり「もうそろそろ四時限目だね……。私たち戻らないと」

絵里「えぇ! ついさっき来たばかりなのに!」

希「ちょっと授業伸びたから、しゃあなしやね」

106: 2015/07/12(日) 19:04:58.86 ID:hTlUsSvg.net
海未「そうですね……。ではあと1時間だけ安静にしています」

穂乃果「うん! お昼になったら迎えに来るからね」

希「今日の練習は様子見てからにしなね? 無理して出てきて調子悪くなったら元も子もないんやから」

ことり「何かあったら連絡してね」

海未「……みんな、ありがとうございます」

穂乃果「じゃあ、またあとでね!」

絵里「えぇ、行ってらっしゃい」

希「……えりち、なに座ってるん?」

107: 2015/07/12(日) 19:06:46.81 ID:hTlUsSvg.net
絵里「なにって、椅子よ」

希「いやいや、何にじゃなくて、なんでって聞いてるんよ」

絵里「私は海未と一緒にいるわ」

希「授業は?」

絵里「サボる」

希「ダメに決まってるやん!」

絵里「なんでよ!」

108: 2015/07/12(日) 19:08:41.60 ID:hTlUsSvg.net
希「いやだって、海未ちゃんは安静のために残るんだから、えりちが邪魔しちゃダメやん」

絵里「邪魔なんてしないわ。大人しくしてる。海未が寝ているところをずっと見ているだけだから」

希「そんなん寝てられるわけないやろ」

絵里「じゃあ、私が目を離している間に海未の容態が急変したらどうするのよ!」

希「何ムチャクチャゆーてるの……。それに、今は休み時間だから席外してるだけで、授業中は保健室に先生おるやん」

絵里「くっ……。あ、あーなんか急に目眩してきた。これはいけないわ。保健室で休むべきね」

希「子供かっ!」

109: 2015/07/12(日) 19:11:24.07 ID:hTlUsSvg.net
絵里「どうしてそんなイジワル言うのよ……。私はただ、海未と一緒にいたいだけなのに」

絵里「海未は、私がいても迷惑じゃないわよね?」

海未「うっ……」

海未(迷惑だなんてとんでもないです。嬉しいに決まっています)

海未(けれど、好きだとはっきり自覚してしまった今、絵里と二人きりで同じ空間にいるのは……)

海未(む、無理ですっ! 恥ずかしくて、とても耐えられるとは思えません!)

絵里「ほら見なさい、海未の顔が赤くなってるわ! こんな状態の海未を放っておけるわけないじゃない!」

110: 2015/07/12(日) 19:13:45.63 ID:hTlUsSvg.net
海未「え、絵里……」

絵里「海未? どうしたの?」

海未「お願いです……授業へ行ってください」

絵里「う、うそよね? どうしてそんな嘘を言うの?」

海未「絵里の気持ちはとても嬉しいです……ですが」

絵里「心配いらないわ。私って結構賢いのよ。授業もずっと真面目に出ていたし、成績もいいの。少しくらい休んだってどうってことないわ」

絵里「そうよ、今サボらないでいつサボるっていうの!」

希「いや、授業はずっとサボっちゃダメやろ!」

111: 2015/07/12(日) 19:16:06.92 ID:hTlUsSvg.net
絵里「希、余計な茶々を入れないで。これは私と海未の問題よ」

希「えぇー……ウチ、非行に走るえりちなんて見たくないんやけど……」

絵里「問題は全て解決しているわ。それでもまだ、海未は私が残ることに反対?」

海未「うぅ……。私も絵里が残ってくれるのは嬉しいです……ですが、どうしても……///」

希(海未ちゃん顔真っ赤やん……)

希(……え? まさかっ、うそやろ? こんなことって、現実でありえるん?)

絵里「海未……そこまで言ってくれるのにどうして」

希「えりち、そのへんにしとき」

112: 2015/07/12(日) 19:18:23.77 ID:hTlUsSvg.net
希「さっき、えりちが見てない間に体調が悪くなったらどうするの、ってゆーてたやろ」

絵里「えぇ、言ったわ」

希「それ、間違うとるよ。えりちがいるせいで、せっかく治りかけてる海未ちゃんの調子が悪くなったらどうするん?」

絵里「そ、そんなことないわよ……」

希「だって、海未ちゃん絶対えりちの我侭に付き合ってくれるやろ。たとえ自分の体調が悪くなったって」

絵里「う、そんな……」

希「かわいそうな海未ちゃん。自己中な先輩に無理やり付き合わされて、割りを食うんやもん」

絵里「………」

海未「の、希! それ以上はやめてください」

113: 2015/07/12(日) 19:21:22.29 ID:hTlUsSvg.net
希「でもウチ、ホントのことしか言ってないやろ?」

海未「それでも……絵里の気持ちが嬉しかったのは本当ですから」

絵里「海未……」

海未「私は平気ですから、安心して授業へ行ってください。練習にも参加できるくらい、しっかりと休んでいます」

絵里「うん、ごめんね……。ちゃんと安静にしてるのよ」

ことり「……もう、平気かな?」

穂乃果「怒ってる希ちゃん初めて見た……。うぅ、怖かったよ……」

希「えぇー怒ってへんよ。本気で怒ったウチの姿……見てみる?」

穂乃果「え、遠慮しておきます!」

114: 2015/07/12(日) 19:24:07.33 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「じゃあ、今度こそ! 海未ちゃん、まったあとでねー!」

絵里「海未、私どうしてもお昼は行けないのよ……。放課後待ってるからね?」

希「ほら、えりち行くよ」グイッ

絵里「あぁ! 海未ぃ!」

ことり「お邪魔しました~」

希「なぁ、えりちえりち」

絵里「……なによぅ」

希「――案外、運命ってあるのかもしれないね」

絵里「なによそれ。どういう意味?」

―――
――――
―――――

130: 2015/07/12(日) 22:38:14.70 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

穂乃果「いやー、海未ちゃんが治ってほんっとうによかった! 今日もパンがうまい!」

ことり「このままなら練習も出られそう?」

海未「体調は万全です。ですが、希も言っていた通り無理をしてぶり返しては元も子もありません。自分の体と相談しながら参加したいと思います」

穂乃果「それがいいと思う。しばらくライブの予定もないし、ゆっくり慣らしていこう」

ことり「そうだよ。無理したらみんな心配しちゃうよ」

海未「私が眠っている間、凛も花陽も、真姫もにこも、全員が私の様子を見に来てくれていたんですね」

ことり「保健室が狭かったよね」

穂乃果「海未ちゃんの顔にマジックで落書きしようとした凛ちゃんを、穂乃果が頑張って止めたんだよ!」

海未「凛……。あとで説教が必要ですね」

海未「それはともかく、みんなにお礼を言わなければなりません。練習に参加できなくとも放課後は屋上へ行こうと思います」

131: 2015/07/12(日) 22:40:31.95 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「でも、夜眠れないって大変だね。穂乃果は布団に入ったらすぐ寝ちゃうから」

海未「いえ、私も本来ならば寝付きはよい方なのです。ただ、今は……」

ことり「うーん、羊さんを数えるとすぐ眠れるっていうけど、本当なのかな?」

海未「羊ですか……。もし眠れなかったら試してみようと思います」

穂乃果「あ! 教科書読むとかは?」

海未「……どうしてそれが睡眠につながるのですか?」

穂乃果「数学の公式とか、絶対催眠術だよ!」

ことり「私も、漢文読んでると眠くなっちゃうかも……」

海未「ことりまで……」

………
……

134: 2015/07/12(日) 22:42:09.19 ID:hTlUsSvg.net
海未「穂乃果、ことり。話を聞いてくれますか」

穂乃果「もちろんだよ!」

ことに「なぁに、海未ちゃん?」

海未(私は、二人の笑顔に、優しさに、何度救われてきたのでしょう)

海未(二人は、私が最も信頼を寄せる友人です)

海未(だから――)

海未「ちゃ、チャットの友達の話なのですが」

海未(……うぅ、情けない私を許してください)

136: 2015/07/12(日) 22:43:50.45 ID:hTlUsSvg.net
ことり「チャット?」

海未「はい、顔も知らない友人がネット上にいます。年齢と性別が同じだとはわかっているのですが」

海未(うそです。知らない相手とチャットをしたことはありません)

ことり「ふぅん……」

ことり(自分の話なのかな?)

穂乃果「すごいよ海未ちゃん! 穂乃果知らない人とチャットなんてしたことないから!」

海未「……結構お手軽にできるものですよ」

137: 2015/07/12(日) 22:46:41.75 ID:hTlUsSvg.net
海未「その方がですね、最近あることで悩んでいるそうなんです」

穂乃果「なになに?」

海未「どうも、一つ年上の先輩を好きになったようで」

ことり「素敵♪」

穂乃果「へぇ、いいなぁ」

海未「二人の間柄は良好で、篤い信頼関係が結ばれています。ですが、大きな問題があるのです」

穂乃果「す、すでに先輩には恋人がいるとか? そんなの悲しいよ!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん。落ち着いて続きを聞こう?」

138: 2015/07/12(日) 22:49:27.78 ID:hTlUsSvg.net
海未「その先輩は、女性なんです」

穂乃果「へ?」

ことり「それは……」

海未「その方は先輩と付き合いたいと思っているのですが、先輩が自分のことをどう思っているのかわからない」

海未「先輩の自分へ対する好意が、同じ種類のモノなのかがわからないのです」

海未「告白して、もし気持ちが違えていたら……。今まで通りの関係すらも保てなくなる可能性が高いのです」

穂乃果「うーん……」

ことり「難しいね……」

139: 2015/07/12(日) 22:52:20.61 ID:hTlUsSvg.net
海未「この場合、この方は先輩に告白すべきなのでしょうか?」

海未「私一人では、この問題は荷が重すぎます。二人の知恵を貸してもらえないでしょうか」

ことり「その人は本当に、本当にその先輩が好きなんだよね?」

海未「はい、それは間違いありません」

ことり「全ての人間関係が壊れてしまってもいいって、それくらいの覚悟はあるのかな?」

海未「……どういうことですか?」

ことり「身近にいないとあまり意識しないんだけどね、同性を好きになるってそれくらいデリケートな問題なの」

海未「そんな……」

ことり「その先輩も、友達も、学校での自分の居場所すらも、失う覚悟ってあるのかな?」

140: 2015/07/12(日) 22:53:53.34 ID:hTlUsSvg.net
海未「そんなこと……わかりませんよ。友達や、自分を取り巻く人間関係は、とても大切じゃないですか」

ことり「うん、なくなったら困るよね。でも、それを失うかもしれない」

海未「……ならば、どうすればよいのです」

海未「想いを、諦めなければならないのですか……」

ことり「海未ちゃん……」

穂乃果「そんなのおかしいよ!」

海未「穂乃果……?」

穂乃果「だって、好きなんだよね。その先輩のことが、すーーっごく好きなんだよね?」

穂乃果「だったら、絶対に告白するべきだよ!」

141: 2015/07/12(日) 22:55:40.35 ID:hTlUsSvg.net
穂乃果「どうしても好きで好きでたまらなくて、付き合いたいって思ったら、もう止まれないよ」

穂乃果「付き合いたいって思える好きな相手が、たまたま女の子だったってだけでしょ?」

穂乃果「穂乃果はまだ付き合いたい人っていないけど、見つけられたらすごく幸せなことなんじゃないかな」

穂乃果「好きで好きで、付き合いたい人が見つかったらさ、相手が男の子でも女の子でも仕方ないじゃん!」

穂乃果「だって好きになっちゃったんだもん!」

ことり「穂乃果ちゃん……」

海未「穂乃果……そう、ですよね」

143: 2015/07/12(日) 22:58:27.82 ID:hTlUsSvg.net
海未「好きになってしまったら仕方がないのです。他のことと天秤にかけるなど、できません」

海未「たとえ、ことりが危惧したような問題が起こったとしても、きっと解決する手立てがあるはずです」

海未「好きだという気持ちに、間違いは絶対にないのですから」

海未「――やはり、二人に相談してよかった」

穂乃果「穂乃果、役に立てた?」

海未「はい、とても。助かりました」

穂乃果「うぇへへ、海未ちゃんに褒められちゃった」

海未「そして、ことりも。厳しい意見でしたが、現実としてそのような問題があるのは事実なのでしょう。覚悟が、必要です」

ことり「海未ちゃん……あのね」

ことり「受け入れて、支えてくれる人が、周りには必ずいるから」

ことり「だから――絶対に頑張ってほしいの」

海未「ことり……ありがとうございます」

ことり「その人に、そう伝えといてくれる?」

海未「は、はいっ。そのように伝えておきます」

―――
――――
―――――

145: 2015/07/12(日) 23:03:03.36 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未(いよいよこの日がやってきました)

海未(私にとって、聖戦と呼ぶべき日です)

海未(何度も何度もイメージトレーニングを重ね、完璧に仕上げたつもりです)

海未(勝負は先手必勝といいます。その先手は何よりも大事なのです)

海未(すぅ―――ふぅ)

海未(では……いざっ!)

海未「デートに誘うメッセージを送りましょう!」

146: 2015/07/12(日) 23:04:53.34 ID:hTlUsSvg.net
ピコピコ

海未『今度の日曜日ですが、私と出かけてくれませんか? 買いたいモノがあるのです』

海未(どうですか、この文章! 洗練された、下心が全く見えない、綺麗な文章でしょう)

海未(なにせ、ここまで推敲するのに三日かけています。誘い文句としては満点を付けてあげたいです)

海未(絵里はこの誘いを受けてくれるはずです。これでダメならば運がなかったと諦めましょう)

海未(そうです、きっと大丈夫です……。お願いです――信じてますよ、絵里)

ピコン

絵里『まぁ! 海未からデートの誘いなんて嬉しいわ!』

海未「っ!!」

148: 2015/07/12(日) 23:06:22.85 ID:hTlUsSvg.net
海未(ど、どういうことですか。一発でデートだと……下心が見ぬかれてしまいました)

海未(絵里には読心術でもあるのでしょうか? そうだとしか思えません)

海未(しかし、嬉しいと言ってくれています。誘いを喜んでくれて私も嬉しいです、絵里……)

海未(手応えは良好です、次の一手もまた重要になってきます――)

ピコン

絵里『でも、ごめんなさい……。日曜日は希と用事があるのよ。また今度でもいいかしら?』

海未(………)

海未(…………………)

150: 2015/07/12(日) 23:07:47.75 ID:hTlUsSvg.net
ピコピコ

海未『はい、構いません。私こそ間が悪くて、すみませんでした』

ピコン

絵里『本当に、ごめんなさいね』

海未(………)

海未(…………………)

海未(うぅ、死んでしまいたいです……)

152: 2015/07/12(日) 23:10:23.89 ID:hTlUsSvg.net
海未(希……また、希ですか)

海未(いえ、よいのです。私は希のことも、二人の関係性も、とても好ましく思っています)

海未(……ですが! 仲が良すぎではありませんか!)

海未(あなたたちはどれだけ一緒にいれば気が済むのです! 少しは絵里を私に譲ってください!)

海未(弱気になってはいけませんよ、海未)

海未(絵里は必ず……わ、私のものにしてみせます)

海未(立ち塞がるというのなら、たとえ希でも容赦はしません)

海未(希……あなたは、私といつかは戦うべき相手です)

153: 2015/07/12(日) 23:12:19.84 ID:hTlUsSvg.net
海未(ここで諦めるわけには、絶対にいかないのです)

海未(決めたではありませんか。絵里に、告白するのだと)

海未(一度断られたくらいでなんだというのです。私にはもっと強大な壁が待ち構えているのですよ)

ピコン

ことり『日曜日おひまですか? 海未ちゃんとお買い物に行きたいな♪』

ピコピコ

海未『うぅ、ことり……。私を慰めてください……』

155: 2015/07/12(日) 23:14:24.25 ID:hTlUsSvg.net
ことり『何かあったの海未ちゃん?』

海未『……いえ、取り乱しました。なんでもありません』

海未(日曜日は一切予定がなくなってしまいました)

海未(そうですね……ことりと一緒にいれば、少しは傷も癒えるでしょう)

海未(ことりと遊ぶのは、楽しくないわけがないのですから)

海未『一日空いてますので、構いませんよ。ことりの家へ向かえばいいですか?』

ことり『うん、お昼前くらいでもいいかな?』

海未『わかりました』

156: 2015/07/12(日) 23:16:05.55 ID:hTlUsSvg.net
ことり『美味しいって評判のお店教えてもらったから、お昼ごはんは向こうで食べよう♪』

海未『それは楽しみです。お店の場所はわかるのですか?』

ことり『ワタシニマカセタマヘ(・8・)』

海未『これで何処だかわからないとか、嫌ですからね』

ことり『大丈夫だよ、きっと♪』

海未(不安が残りますね……)

海未『穂乃果は来るのですか?』

ことり『誘ったんだけど、お店の手伝いで来れないって。残念(x8x)』

海未『そうでしたか……。まぁ、いくらでも機会はあるでしょう』

―――
――――
―――――

158: 2015/07/12(日) 23:17:54.59 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

海未(さて、そろそろ出発する準備をしますか)

海未(ことりから店名を聞き出して、場所も調べておきました)

海未(今日は不安なことを全て忘れ、楽しみましょう)

ピコン

絵里『今日ね、希との用事がなくなったの! もしまだ用事を入れてなかったら、デートに行きましょう?』

海未「え――」

159: 2015/07/12(日) 23:19:22.06 ID:hTlUsSvg.net
海未(なぜ、このタイミングなのです……絵里)

海未(あなたと共にいられることは、とても嬉しいです)

海未(ですが……私はこれから、ことりと遊びに行くのです)

海未(どちらを優先すべきかは、考えるまでもありません)

海未(ことりは私にとって、大切な友達なんです)

海未(それは、あなたが希を大切に想う気持ちにも決して負けたりしません)

海未「けれど……どのように言えばよいでしょうか」

160: 2015/07/12(日) 23:21:46.22 ID:hTlUsSvg.net
海未(ことりと買い物に行くと伝えれば、まるで私が絵里に断られたからことりを誘ったように思われてしまいます)

海未(それは違います。あなたの代わりなど誰もいません。絵里に、そのように思われたくはありません……)

海未(絵里の口ぶりからすると、今日は予定がないはずです)

海未(ですが、絵里も誘ってことりと三人で出かけるのは――)

海未(きっと二人は楽しんでくれます。しかし、私の心が持ちそうにありません……)

海未(今日は勝負の日だったのです。絵里に告白をするつもりでいました)

海未(それなのに、ただ絵里と遊んで解散するなど……とてもじゃないですが、できません)

海未(絵里と会うためには、再び心を奮い立たせる必要があります)

161: 2015/07/12(日) 23:23:37.46 ID:hTlUsSvg.net
海未「そうですね……気が引けますが、嘘も方便といいます。これは、必要な嘘なんです」

ピコピコ

海未『申し訳ありません。家の用事が入ってしまって、出かけられそうにないのです』

絵里『そうだったの……残念。また今度行きましょうね?』

海未『はい、また誘ってもいいですか?』

絵里『もちろんよ、楽しみに待ってるわ!』

海未「絵里……好きです」

海未「――はっ。物思いに耽っている場合ではありません。約束の時間に遅れてしまいます」

―――
――――
―――――

162: 2015/07/12(日) 23:25:22.95 ID:hTlUsSvg.net
―――――
――――
―――

ことり「海未ちゃん、今日はありがとう! 欲しかったお洋服がすごく安く買えちゃったー♪」

海未「いえいえ、最近迷惑をかけ続けていましたから。これくらい、なんでもありません」

ことり「迷惑なんて思ってないのに」

海未「屋上で暴れたり、突然気絶したり……」

ことり「ホントに……気にしてないよ?」

164: 2015/07/12(日) 23:29:57.85 ID:hTlUsSvg.net
海未「それにしても、あのお店の食事はとても美味しかったです」

ことり「本当に美味しかったね♪ でも、私じゃ場所わからなくて、結局海未ちゃんにお店まで案内してもらっちゃった……」

海未「構いませんよ」

ことり「穂乃果ちゃんも来られればよかったのに」

海未「今度は穂乃果も連れて、また行きましょう」

ことり「穂乃果ちゃん喜んでくれるかな?」

海未「むしろ、こんな美味しい料理二人で食べに行ってたなんてずるいー、と文句を言いそうです」

ことり「あはは、たしかにそうかも」

海未「そろそろ帰りましょうか」

ことり「そうだねー」

??「―――海未」

165: 2015/07/12(日) 23:32:26.86 ID:hTlUsSvg.net
海未「―――えっ?」

ことり「あー絵里ちゃんだ~♪ こんにちは、すごい偶然だね」

絵里「……ことり。こんにちは」

ことり「絵里ちゃんはお買い物?」

絵里「えぇ、必要な物があってね。ことりも?」

ことり「うん、海未ちゃんと。欲しかったお洋服がセールで安くなってたんだ~」

絵里「そう、よかったじゃない」

海未「え、絵里……これはですねっ」

絵里「――私、そろそろ帰るわね。ことりも早く帰るのよ?」

ことり「絵里ちゃん……? うん、またね」

167: 2015/07/12(日) 23:34:22.27 ID:hTlUsSvg.net
海未「ま、待ってください! 絵里!」

ことり「絵里ちゃん、なんだか怒ってた……?」

海未「ことりっ、ごめんなさい。私、絵里を追わないと……!」

ことり「絵里ちゃんを……? あっ」

海未「ここで絵里と話ができなければ、私はきっと、一生後悔することになってしまいます……」

ことり「わかったよ海未ちゃん、私のことはいいから」

海未「私の勝手を、どうか許してください。ではまたっ!」

ことり「海未ちゃん……!」

ことり(海未ちゃん、きっと大丈夫だよ)

ことり(だから、頑張って……!!)

………
……

168: 2015/07/12(日) 23:36:13.15 ID:hTlUsSvg.net
海未「絵里! 待ってください!」

絵里「………」スタスタスタ

海未「お願いです、こちらを向いてくださいっ」

絵里「………」

海未「これには、理由があるのです。どうか、私の言い訳を聞いてください……」

絵里「――それ、可愛い服ね」

海未「……えぇ、ありがとうございます。お気に入りの洋服です」

絵里「ふぅん。それを着て、ことりと遊んでたんだ。私とだったら、違う服だったのかしら?」

海未「なっ……絵里は何を言いたいのですか」

絵里「―――知らない。さようなら」

海未「ま、待ってください絵里!」

169: 2015/07/12(日) 23:38:31.19 ID:hTlUsSvg.net
海未「お願いですから、足を止めてください!」

絵里「嫌よ、私は帰るんだから」

海未「だったら、歩いたままでも構いませんっ。話を聞いてください!」

絵里「……絶対に嫌。私、海未とはもう、話したくない」

海未「なっ、なぜそのようなこと……!」

絵里「―――なぜ?」スタッ

海未「え、絵里……」

絵里「なぜって、貴女がそれを言ってしまうの……?」

172: 2015/07/12(日) 23:41:13.92 ID:hTlUsSvg.net
絵里「私ね、今日は希のバイトを手伝う予定だったの」

絵里「でもね……どうしても、私はどうしても海未とデートに行きたかった」

海未「――っ!!」

絵里「すごく悩んで、悩んで……直前になって、希に手伝いをやめさせてもらったの」

絵里「そうしたら希は、海未ちゃんと楽しんできてなって、そう言ってくれたわ……」

海未「……ぁ……ぁぁ……!!」

絵里「海未は、私とは違う気持ちだったみたいね……」

海未「違う、違うのです、絵里……!」

絵里「私のことなんて、どうだっていいんでしょう? 私に嘘をついてまで、ことりと遊んでいたんだから」

絵里「なら、ことりとずっと一緒にいればいいじゃないっ!!」

175: 2015/07/12(日) 23:44:40.55 ID:hTlUsSvg.net
海未「え、り……」

絵里「……私たちには、μ'sがあるわ。学校存続のためにもスクールアイドルは続けていく」

絵里「私たちは一つのグループで、手を取り合って協力していかなくてはならない」

絵里「でもそれは、グループの活動において……それだけよ」

海未「えりぃ……」

絵里「海未……あなたとはもう、必要以上には話さない。いいえ、話したくない」

絵里「だから―――さようなら、園田さん」

177: 2015/07/12(日) 23:46:56.39 ID:hTlUsSvg.net
海未「あ、ぁ……」

絵里「あなたも早く帰るのよ。もうすぐ暗くなって、危ないんだから」

海未「待って、待ってっ……」

絵里「………」スタスタスタッ

海未「私を、独りにしないでください……」

絵里「………」スタスタスタッ

海未「えりぃ、待ってっ!」ガバッ

絵里「きゃっ……な、なによ」

180: 2015/07/12(日) 23:50:04.19 ID:hTlUsSvg.net
海未「置いでがないでくださいっ、許してくだざいぃ……」ボロボロ

絵里「う、海未!?」

海未「ぐずっ、絵里と話ができないなんでっ、無理ですっ……」

海未「絵里と仲良くできないっ、くらいなら、じんだ方がマシです……」

海未「お願いですえりぃ、私を許してくれないならっ、こごで私を〇してぐださいぃっ……!」

ザワザワ……

絵里「ま、待って! 海未落ち着いて!? こっちに来なさい!」

………
……

181: 2015/07/12(日) 23:51:52.27 ID:hTlUsSvg.net
絵里「はぁ……なんなのよ、本当に」

海未「うぐっ、ぐすっ」ダキッ

絵里「前にもこんなことあったわよね。しかも結構最近? まだ一ヶ月経ってないかもしれないわ」

海未「絵里ぃ、ぐずっ、許してっ、えりぃ……」

絵里「もう……この服着て帰れるかしら?」

海未「ぐすっ、あぐっ、ごめっんなさいぃ、ごめんなさいっ……」

絵里「わかったわよもう! 泣き止むまでそうしてなさい」ダキッ

………
……

182: 2015/07/12(日) 23:54:45.04 ID:hTlUsSvg.net
絵里「少しは落ち着いた?」

海未「はい……」グズッ

絵里「はい、ウェットティッシュ。これで顔拭きなさい。綺麗な顔が台無しよ」

海未「うぅ……すびばせん」

絵里「いきなり驚いたわ。死ぬとか、〇してとか……物騒よ」

海未「私にはもう、ぐすっ、そうするしか、道がながったのです……」

絵里「――私が海未に、そんなことできるわけないじゃない」

183: 2015/07/12(日) 23:59:25.79 ID:hTlUsSvg.net
絵里「でも、海未が悪いのよ」

絵里「楽しそうにことりと歩く貴女を見て、私がどれだけショックを受けたかわかる?」

絵里「デートにいけると思ったのに海未は用事が入ったって聞いて、すごく悲しかった」

絵里「しかも、嘘をついてことりと遊んでいるんだもの。奈落の底へ突き落とされた気分だったわ」

海未「ううううぅぅ!」

絵里「あぁもういいから!」

絵里「――さっきの言葉で、海未が私を大事に想ってくれているって、わかったから」

………
……

184: 2015/07/13(月) 00:01:35.29 ID:F0IlK0cG.net
海未「絵里……言い訳を、聞いてくれますか?」

絵里「……うーん、別に聞かなくていいわ」

海未「ど、どうしてですかっ」

絵里「どうしても話したいって言うならまた今度聞くから。空見てみなさいよ、もう真っ暗よ」

海未「いつの間にこんな暗く……」

絵里「貴女が泣き止むまでに、どれだけ時間がかかったと思ってるの……」

海未「う……すみません」

絵里「海未の家ってどのあたりだったかしら? もう遅いし、送って行くわ」

186: 2015/07/13(月) 00:04:08.32 ID:F0IlK0cG.net
海未「絵里、もう一つ話があるんです」

絵里「だから、もう遅いから。今度じゃダメなの?」

海未「はい……。どうしても、今話さなければならないのです」

絵里「……大事な話?」

海未「はい、とても」

絵里「ふふっ、海未から大事な話って聞くと、なんだか緊張するわね」

187: 2015/07/13(月) 00:06:14.73 ID:F0IlK0cG.net
海未「すぅ―――――はぁ」

海未「絵里は私にとってどのような存在なんだろうって、考えました」

海未「初めて絵里を見た時、すごく綺麗な人だと思いました」

絵里「あ、ありがとう」

海未「それは容姿だけではなく、他人にも自分にも厳しい、曲がったことができない人なのだと」

海未「バレエの技術に惚れ込む前から、絵里のことはとても綺麗な人だなと、思っていたのです」

189: 2015/07/13(月) 00:08:13.57 ID:F0IlK0cG.net
海未「μ'sに絵里が入ってくれてからは、意外な一面を知ることになりました」

海未「絵里の綺麗な部分は変わりません。けれど、お茶目なところだったり、しっかりしているようで抜けているところがあったり」

海未「とても可愛い人だと、知ることができました」

絵里「海未……」

海未「―――部室で、絵里とキスをしてしまいました」

海未「私にとって、とても衝撃的なことだったのです」

海未「絵里を更に意識するようになったのは、間違いなくあの時からでした」

190: 2015/07/13(月) 00:09:52.74 ID:F0IlK0cG.net
海未「そこからは、絵里と加速度的に仲が深まったと、私は思っています」

絵里「えぇ! 私もそう思っていたわ」

海未「しかし、仲が良くなればなるほど、希との距離を知ってしまいました」

絵里「希……?」

海未「私がいくら絵里と仲良くなったところで、絵里と希の関係には追いつけない」

海未「そう思い始めたと同時に、私は希に嫉妬していました」

絵里「し、嫉妬? 海未が?」

海未「希が妬ましいとすら思っていました。どうして、絵里の隣にあなたはいるのですか、と」

海未「私は自分が絵里の一番でないと嫌だという、自分勝手で醜い人間なのです」

191: 2015/07/13(月) 00:11:32.28 ID:F0IlK0cG.net
海未「でも、気づいたんです。希がいるからとか、周りがどう思うとか……関係ないのです」

海未「私は海未で、それ以上でも以下でもありません」

海未「私がどうするのか、どうしたいのか……それだけしかなかったのです」

海未「――絵里、私はあなたのことを尊敬しています」

海未「綺麗で、正しくて、可愛くて、少し抜けてて、心配症で、不器用で、優しくて、誠実で――」

海未「そんなあなたを、そんなあなただからこそ――」

海未「私は、絵里のことが大好きなんです」

192: 2015/07/13(月) 00:13:20.18 ID:F0IlK0cG.net
絵里「海未……嬉しいわ。すごく、嬉しい」

絵里「私、今とても心が震えてる。感動してるの」

絵里「海未が私のことをそんなに想っていてくれたなんて、知らなかった」

絵里「私も海未のことが、大好きよ」

海未「はい……私も嬉しいです」

海未「ですが、違うのです……」

絵里「違う……? ど、どういうことよっ」

海未「私は、絵里とは違うのです」

193: 2015/07/13(月) 00:15:03.74 ID:F0IlK0cG.net
海未「私は絵里のことが大好きです」

海未「絵里を――私だけのものに、したいのです……」

絵里「……え?」

海未「私と、つ、つっ……付き合っては、くれませんか?」

絵里「つ、付き合う!?」

海未「はぃ……」

絵里「待って待って、ちょっとだけ待って!」

194: 2015/07/13(月) 00:16:37.75 ID:F0IlK0cG.net
絵里「え、付き合うって、あれ? その、恋人がしてる……」

海未「……そうです」

絵里「海未が言ってるのは、つまり、私と付き合いたいっていう……好きってことなの?」

海未「………」コクッ

絵里「あ、あーあー、そういうこと…………そういうこと」

海未「うぅ……」

絵里「……本気なのよね?」

海未「あ、当たり前です!」

197: 2015/07/13(月) 00:18:21.21 ID:F0IlK0cG.net
絵里「えぇー、どうすればいいのかしら……」

海未「絵里ぃ……」

絵里「そ、そんな目で見つめないで! 今すごく混乱してるんだから!」

海未「絵里、酷いです……私を好きだと、言ってくれたではありませんか……」

絵里「そりゃ好きよ! 好きだけど、こんなこと初めてだし……」

海未「……今までに告白を受けた経験はないのですか?」

絵里「そんなの、あるわけないじゃない……」

198: 2015/07/13(月) 00:20:03.32 ID:F0IlK0cG.net
絵里「誰とも付き合ったことなから、どうすればいいのかわからないのよ。考えたこともなかったもの……」

海未「……絵里は、私が嫌ではありませんか? 気持ち悪いと思ったりしませんか?」

絵里「そんなわけないじゃない。どうしてよ。海未のことは好きだって、さっきから言ってるでしょう?」

海未「私は絵里が、その……そういう意味で好きなんですよ?」

絵里「そういう意味って……」

海未「絵里と、またキスがしたいです……」

絵里「なんてことなの……海未が自分からそんなこと言うなんて!」

200: 2015/07/13(月) 00:21:36.98 ID:F0IlK0cG.net
海未「絵里とずっと一緒にいたい、手をつなぎたい……絵里に触りたい」

絵里「海未……今自分がすごいことを言ってるって、わかってる?」

海未「わかっています! 恥ずかしくて胸が張り裂けそうなんですよ! どうしてそんなことを、わざわざ聞くのですか!」

絵里「ご、ごめんなさい。悪かったわ……反省してる」

海未「……絵里は、私とキスした時どう思いましたか?」

絵里「あ、キスしちゃったなって」

海未「それだけですか!? あ、いえ……嫌ではありませんでしたか?」

絵里「嫌じゃなかったわ」

202: 2015/07/13(月) 00:23:06.10 ID:F0IlK0cG.net
絵里「そういえば……そうね」

海未「どうしました?」

絵里「私、海未と以外はあんまりキスしたくないかもしれない」

海未「え?」

絵里「前に言ったと思うけれど、ロシアでは親しい者同士でキスするのよ」

海未「はい、聞きました」

絵里「でも、私はそれになんだか抵抗があってね、キスされそうになっても拒否していたの」

204: 2015/07/13(月) 00:24:35.29 ID:F0IlK0cG.net
絵里「μ'sのメンバーでも、やっぱり海未以外とはしたくない。どういうことかしら……」

海未「絵里……」

絵里「あの事故で初めてキスしたけど、その時私は必死で――」

絵里「あれ、待って……あの時私がすごくドキドキしてたのって、もしかしてそういうこと?」

海未「ドキドキですか?」

絵里「えぇ。椅子が倒れた時、海未を抱え込むようにして床に落ちたじゃない」

絵里「キスをして離れた後、すごくドキドキしていたの」

絵里「それって、椅子から落ちた衝撃だと思っていたのだけれど、思い返してみてもドキドキするのよ」

206: 2015/07/13(月) 00:26:03.19 ID:F0IlK0cG.net
絵里「ごめんなさい、海未。貴女にはすごく大切なことなのかもしれないんだけど……試しにキスしてもいい?」

海未「き、キスですか」

絵里「ダメかしら?」

海未「いえ……とても、嬉しいです」

絵里「はい、こっち向いて」

海未「い、いきなりですか!? まぁ、いいでしょう……」

絵里「目閉じたわね。じゃあ、行くわ」

207: 2015/07/13(月) 00:27:10.47 ID:F0IlK0cG.net
海未「………」

絵里「………」

絵里「………?」

海未「あの、もうしましたか? あまり感じなかったのですが」

絵里「ま、まだよ。行くわね」

海未「はい」

絵里「……んっ」

チュッ

209: 2015/07/13(月) 00:28:43.79 ID:F0IlK0cG.net
海未(――あの時の感触です)

海未(事故でしたが、部室で初めて絵里とキスした時と同じです)

バッ

海未「きゃっ……絵里、どうしましたか?」

絵里「ま、待って! こっち見ないで!」

海未「どうして顔を逸らすのですか。寂しいです、絵里……」

211: 2015/07/13(月) 00:30:16.53 ID:F0IlK0cG.net
絵里「大変よ……海未」

海未「どうしたのですか?」

絵里「海未のことが見れないわ……」

海未「そ、それは……え、絵里!」

海未(絵里の顔が真っ赤に染まっています! 夜の、この暗さだというのに、はっきりとわかるほどです)

絵里「私の体、一体どうしちゃったの……?」

絵里「海未とキスしたら、すごくドキドキして、顔が熱くなって、胸がふわふわして……」

213: 2015/07/13(月) 00:31:39.09 ID:F0IlK0cG.net
絵里「私、海未のことが……海未の言っている好きと同じ意味で、好きなのかもしれない」

海未「絵里ぃ……!」

絵里「やめて、見ないで! 海未に見られると、すごく恥ずかしいの。心臓の音がうるさくて、体がすごく熱い」

絵里「体が爆発しそうだわ……。今海未に触られたら絶対爆発する!」

海未「大丈夫です」ダキッ

絵里「う、海未!?」

214: 2015/07/13(月) 00:33:06.61 ID:F0IlK0cG.net
海未「私もずっとそうでしたから」

海未「絵里が近くにいるだけで、顔が熱くなって、心臓が飛び跳ねて、頭がおかしくなりそうでした」

海未「今も、私の体は正常ではありません。ドキドキして、顔が熱くて、胸がふわふわします」

絵里「でも、違うのよ……。私はそれだけじゃないの……」

海未「なんですか?」

絵里「海未とキスした時ね……すごく、気持ち良かったの」

海未「そんなことは当然です。私と絵里の症状は、全て一緒です」

絵里「一緒? 本当に一緒なの?」

海未「だから、もう一つ……症状を言い当ててあげます」

海未「――絵里は、また私とキスがしたくて、仕方がないはずです」

絵里「海未ぃ!」

………
……

216: 2015/07/13(月) 00:34:26.87 ID:F0IlK0cG.net
絵里「もう、夜中ね……」

海未「はい……向こう側の繁華街も、かなり人通りが減っているように見えます」

絵里「海未、時間は……大丈夫なわけないか」

海未「先ほど自宅にメッセージは送りました。ですが、門限はとっくに過ぎているので、家に入れてもらえるかどうか……」

絵里「私が土下座でも何でもするから、家には入れてもらいましょう」

海未「そんな……絵里にそんなことさせられません」

絵里「いいのよ、それくらい」

219: 2015/07/13(月) 00:36:04.00 ID:F0IlK0cG.net
絵里「唇って、痛くなるのね。荒れたりしないかしら?」

海未「ケアをしっかりすれば、おそらく大丈夫でしょう」

海未「それと、回数をほどほどにすれば……」

絵里「……ほどほどにできそう?」

海未「……無理ですね」

絵里「なら、ケアをしっかりとしましょう」

221: 2015/07/13(月) 00:37:26.85 ID:F0IlK0cG.net
海未「絵里……何回したか、覚えていますか?」

絵里「覚えているわけないでしょう」

海未「そうですよね……」

絵里「海未こそどうなのよ」

海未「途中までは数えていたんです」

絵里「あら、意外と余裕あったんじゃない」

海未「ですが、回数が三桁を超えてからは諦めました……」

222: 2015/07/13(月) 00:38:41.77 ID:F0IlK0cG.net
絵里「ねぇ、海未」

海未「なんですか?」

絵里「こうして抱き合っていたら、いつまで経っても帰れないわ」

海未「そうですね」

絵里「そろそろ離れましょう?」

海未「わかりました。絵里の方からお願いします」

絵里「嫌よ、なんで私が海未を遠ざけないといけないの」

海未「そんなの、私も同じです。絵里を離したくありません」

224: 2015/07/13(月) 00:39:48.24 ID:F0IlK0cG.net
海未「絵里」

絵里「なぁに?」

海未「私……とても幸せです」

海未「絵里と両想いになれて、一緒にいられるんです」

絵里「私もよ……とても幸せだわ」

海未「本当に、幸せです。怖いくらい幸せなんです。今なら、たとえ死んだって構いません」

絵里「そんなの嫌よ。私は海未と、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと一緒にいたいわ」

海未「はい……末永く、よろしくお願いします」

225: 2015/07/13(月) 00:41:01.67 ID:F0IlK0cG.net
海未「私は絵里が好きで、絵里は私のことが好き。こんな奇跡、本当にあるんですね」

絵里「えぇ、運命ってあるのかも―――」

希『――案外、運命ってあるのかもしれないね』

絵里「希……あの子、本当に何者なのよ」

海未「――希ですか?」

絵里「う、海未?」

海未「私といる時に、他の女性の話をしないでください」

227: 2015/07/13(月) 00:42:33.43 ID:F0IlK0cG.net
絵里「海未、私の左手を右手で握って?」

海未「こうですか?」

絵里「……よくわかったわね。これ、恋人つなぎって言うのよ」

海未「予習済みです」

絵里「ふふっ、偉いわ。そしたらね――」

海未「あ、絵里……離れてしまいました」

絵里「体が離れていても、これだけ手がくっついていれば、寂しくないわ」

海未「……本当ですね」

絵里「さぁ、帰りましょう?」

―――
――――
―――――

228: 2015/07/13(月) 00:43:58.09 ID:F0IlK0cG.net
―――――
――――
―――

真姫「ねぇにこちゃん……あれ、どうにかならないわけ?」

にこ「いい加減に慣れなさい。にこたちじゃもう、どうにもならないわよ」

花陽「もう一ヶ月くらい経ってるのかな……?」

凛「毎日すごいよねー。凛ね、初めのうちはドキドキしてたけど、ちょっと慣れてきたにゃ」

穂乃果「みんなーー、おっは――あぁ! 海未ちゃんがまた絵里ちゃんに襲われてる!」

絵里「うーみー♪」

海未「絵里っ、そんなにくっつかないでください! みんなが見ていますから……」

絵里「海未の脚はスベスベねー」

海未「ふ、太ももは許してください……」

希「こほん! えりち、やりすぎ」

229: 2015/07/13(月) 00:45:23.41 ID:F0IlK0cG.net
絵里「なによ希、私の海未を盗る気? そんなことしたら、絶対に許さないわよ」

希「そんなことゆーてないやん……」

絵里「どうかしら。海未は可愛いから、ずっと私が側にいてあげないと心配だわ」

希「愛が重いと海未ちゃん疲れちゃうよ?」

絵里「私たちは相思相愛よ。海未だって二人きりになったら、『誰にも渡しません、絵里は私のも――』」

海未「うわああぁあぁ! 絵里! 突然何を言い出すのですか!」

花陽「部室の風紀が乱れています……」

230: 2015/07/13(月) 00:46:21.86 ID:F0IlK0cG.net
にこ「付き合うって聞いて最初は驚いたけど、あぁも開き直られるとね。なんかすごく自然に見えてきちゃったわ……」

希「ウチはいつかこうなるって、知っとったよ」

にこ「なんでよ」

希「カードがそう告げてたんや」

ことり「二人とも、幸せそう……本当によかった♪」

希「……ことりちゃんはいつから気づいてたん?」

ことり「二人が結ばれる直前、なのかな。希ちゃんはもっと前からだよね?」

希「うん。でも、ほんとにちょっとの差じゃないかな」

232: 2015/07/13(月) 00:47:34.45 ID:F0IlK0cG.net
真姫「でも、あれいいの? 海未、嫌がってるんじゃない?」

穂乃果「そんなことないよ」

ことり「海未ちゃんが本当に嫌だったら、あんな風に好きにさせてないんじゃないかなぁ」

絵里「あーむっ♪」

海未「ぁんっ」

凛「絵里ちゃんが海未ちゃんの耳たぶ食べちゃったにゃ……///」

花陽「あわわわわ……」

希「こらーー、えりちーー!」

234: 2015/07/13(月) 00:49:21.08 ID:F0IlK0cG.net
絵里「うみぃ……私のこと、もう嫌いになった?」

海未「そんなこと、なるわけないでしょう……だから離れてください」

絵里「だって、海未冷たいから……」

穂乃果「そうだそうだー!」

海未「穂乃果! うるさいです!」

海未「絵里、みんなの前では恥ずかしいです。ふ、二人の時はちゃんとしているでしょう?」

絵里「海未の言葉が信じられないわ……」

ことり「シンジラレナイゾー」

海未「ことり!」

236: 2015/07/13(月) 00:50:46.40 ID:F0IlK0cG.net
海未「――いいですか、一回しか言いませんよ。最初で最後です」

花陽「わ、海未ちゃん顔赤い……」

凛「海未ちゃん立ち上がっちゃって、ヤル気全開にゃ」

海未「みんなも、よく見ていなさい!」

海未「絵里!」

絵里「はぁい」ニコニコ

237: 2015/07/13(月) 00:52:32.34 ID:F0IlK0cG.net
海未「―――ふぅ」

海未「私は、あなたのことが大好きです」

海未「絵里を愛しています。一生離す気はありません」

海未「喜びも悲しみも分かち合い、共に生きていきましょう」

絵里「ハラショー」パチパチ

海未「………」

絵里「海未?」

海未「――――んっ」チュッ

絵里「!?」

239: 2015/07/13(月) 00:52:59.13 ID:F0IlK0cG.net
海未「―――ふぅ」

海未「私は、あなたのことが大好きです」

海未「絵里を愛しています。一生離す気はありません」

海未「喜びも悲しみも分かち合い、共に生きていきましょう」

絵里「ハラショー」パチパチ

海未「………」

絵里「海未?」

海未「――――んっ」チュッ

絵里「!?」

241: 2015/07/13(月) 00:54:25.52 ID:F0IlK0cG.net
海未「み、見ましたか? 絵里は私のものです! 誰にも渡しませんからね!」

海未「私のエリーチカです!!」

花陽「り、凛ちゃん! あの二人キスしたよ!」

凛「ちゃんと見てたよ! 幸せそうだにゃ!」

ことり「…本当におめでとう、海未ちゃん」

希「もうやってられんわ……」




おしまい

245: 2015/07/13(月) 00:55:13.29 ID:KKMOnVBP.net
良かったほんと良かった

247: 2015/07/13(月) 00:55:21.20 ID:CGNoeh5b.net
おつ
実に良いうみえりだった

249: 2015/07/13(月) 00:56:23.72 ID:eiejotH1.net
ハラショー(号泣

250: 2015/07/13(月) 00:56:49.06 ID:m0q/ryvD.net
良い夢が見られそうだ
ありがとう

253: 2015/07/13(月) 00:57:25.44 ID:JrNZ0yRO.net
これが見たかったんだよ、これが…
お疲れさま、本当にありがとう

254: 2015/07/13(月) 00:57:29.39 ID:g5Uf7QyR.net
ハラショー…(´;ω;`)ここまで泣けたSSは初めてや…。
これ、本にしよう。俺金だすから

257: 2015/07/13(月) 01:02:03.29 ID:Ki8z3CJi.net
心が満たされた

258: 2015/07/13(月) 01:02:08.15 ID:F0IlK0cG.net
あーもうホントこんなに遅くまで申し訳ない! しかも最後の最後で投下ミスするし!
付き合ってくれた方、ありがとうございました!

264: 2015/07/13(月) 01:07:52.17 ID:4jF2FTMf.net
>>258
お疲れ様!
リアルタイムで読んでたから更新される度にワクワクしてた
ことりとの買い物でえりと出くわした時めっちゃハラハラしたけどハッピーエンドでよかった

272: 2015/07/13(月) 02:02:50.63 ID:IEHK+uE2.net
>>258
あなたは最高です!
急なポンコツ化が可愛かった。やっぱギャップあるとすごくいい

293: 2015/07/13(月) 23:36:12.30 ID:BKydegH9.net
>>258
お疲れ様。
海未の告白のあたりがすごく良かった。

266: 2015/07/13(月) 01:11:29.12 ID:dv8JMxs4.net
10ハラショー

284: 2015/07/13(月) 19:06:30.51 ID:LTMZ9YFh.net
乙!
実にハラショーでした!

305: 2015/07/18(土) 06:26:31.67 ID:7WRVx2IQ.net


丁寧で凄く良かった
タイトルも良いな
うみえり最高

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1436680361/

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