【SS】遥「最近、お姉ちゃんが同好会とバイトばっかり……」【ラブライブ！虹ヶ咲】

　
遥「よしっ、反抗期になろう！」
　

ﾓｿﾞﾓｿﾞ

彼方「ん……」

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟ....ﾋﾟｯ

彼方「……」

ｺﾞｿｺﾞｿ

彼方「ゴミ出しもあるし、早く朝ご飯作っちゃおう」

ｶﾞﾁｬｯ

遥「あっ、お姉ちゃんおはよ～」

彼方「おはよ～……」

彼方「……ん」

彼方「えっ？ なんで！？」

遥「お姉ちゃんが起きるの遅いから、先に起きて朝ごはん作っちゃった」

彼方「え……」

遥「ゴミもまとめておいたから、家出るときに出しておくね」

彼方「え、あ、う、うん……」

遥「？」

遥「早くご飯食べちゃおうよ。顔洗ってきて」

彼方「そ、そうだね」

遥「ふふっ」

遥（お姉ちゃん驚いてた）

遥（いつもお姉ちゃんがやってることを奪って）

遥（さもお姉ちゃんが悪いように言う）

遥「……」

遥（辛い、けど……お姉ちゃんがいけないんだもん）

遥（私のことないがしろにするから）

遥「ふんっだ」ﾌﾟｲｯ

遥（お姉ちゃんのお世話になんてなってやらないんだから）

遥（……）

遥（しばらく、あんまり美味しくないご飯になっちゃうけど、仕方がないっ）

彼方「……ﾓｸﾞﾓｸﾞ」

彼方「玉子焼き美味しく作れるようになったんだね～」

彼方「すっごくおいしいよ」

遥「ほんとっ？ やったぁっ」

ｶﾞﾀｯ

遥「……ぁ」

遥「ｺﾎﾝｯ」

遥「お姉ちゃんのほどじゃないし、もっと美味しいの食べたかったらちゃんと早起きしてよ」

彼方「じゃぁ、いつも通り起きれば遥ちゃんの朝食が食べられるの？」

遥「えっ」

遥「お、お昼だけじゃなくてお昼もだよ。お弁当だって作ったし」

遥（余りものだけど）

遥「せっかくのお昼が美味しくないお弁当になっちゃうけど、いいんだ」

彼方「……そんなことないよ～」

彼方「確かにちょっぴり塩が多かったり、焼き過ぎだったりするかもしれない」

彼方「だけど、ちゃんと美味しいよ～」

ｶﾀｯ
　　　　　ﾋｮｲｯ

彼方「遥ちゃんが自分の分にした、ちょっと失敗した分でも」

遥「！」

彼方「ﾓｸﾞﾓｸﾞ」

彼方「……作った中でも出来が良いものを選んでくれた、私の分も」

彼方「遥ちゃんが一生懸命作ってくれたものだもん」

彼方「彼方ちゃんは嬉しいよ～」ﾆｺｯ

遥「う……」

遥「じゃぁ夕飯も作っちゃうからねっ」

遥「お姉ちゃんがやることなんて何にも残してあげないんだからねっ」

遥「全部私がやっちゃうもんっ」ﾌﾟｲｯ

彼方「そんなっ」

遥「……」

遥（落ち込んでる……ショックだよね）

遥（お姉ちゃん、お料理とか好きだし）

遥（なにより私のためにやるっていうのが大好きだもんね）

遥（でも、だから）

遥（お姉ちゃんからその役目を奪う）

遥（全部私がやっちゃう）

遥（嫌でしょ？ やりたいでしょ？）

遥（もう少しくらい、私のこと……）

彼方「全部はだめ」

遥（きたっ）

遥「なら――」

彼方「全部は遥ちゃんが大変だから、一つくらいは彼方ちゃんに任せて～」

遥「むっ……」

彼方「遥ちゃん？」

遥「やっ！」ﾌﾟｲｯ

彼方「遥ちゃん！？」

遥「全部私がやるっ」

彼方「な、なんで？」

遥「なんで？」

遥「なんでって……聞くんだ」

遥「ふ～ん」

遥「お姉ちゃんなんて大っ……」

遥「……」

遥「意地悪っ！」ｶﾞﾀｯ

彼方「えぇっ！？」

――――――
―――

ココ「なるほど……それで朝からちょっぴり不機嫌だったんだね～」

優理「……」

遥「うん……」

遥「お姉ちゃんってば酷いよ」

遥「なんで？ はないと思いませんか？」

ココ「そうだね」

優理「……」

遥「お姉ちゃんの大好きなこと奪って、嫌がって」

遥「あんなにアピールしたのにちっともわかってくれなくて」

遥「反抗期になったのにっ」

ココ「アピールが弱かったのかな？」

優理「いや……反抗期じゃなくないか……？」

遥「えっ！？」

ｸﾞｸﾞｲｯ

優理「ち、近い近い！」

優理「もう少し離れろっ！」

遥「反抗期じゃなかった……？」

遥「お姉ちゃんの大好きなこと勝手にやって」

優理「家事手伝いだろ」

遥「そうされたのはお姉ちゃんのせいだって言って」

優理「そうか？」

遥「いつもはお姉ちゃんと家を出るのに一人でさっさと家を出て」

優理「別に普通だろ」

遥「メッセージも全部既読無視してるのに……？」

優理「よくあるだろ」

遥「……反抗期って、難しいな」

ココ「じゃぁ、優理ちゃんの思う反抗期ってなに？」

優理「ん……そりゃぁ」

優理「出された食事に文句言うとか」

遥「無理！」

優理「……話しかけられても無視するとか」

遥「できない！」

優理「……」ｲﾗｯ

優理「メッセージをブロックするとか」

遥「耐えられないっ！」

優理「……」ｲﾗｲﾗ

優理「嫌いって言ってみるとか」

遥「言うくらいなら死ぬ……」

優理「あ゛ーっもうっ！ 無理だ無理！ 反抗期なんて一生来るかッ！」

優理「勝手にやってろっ！」

遥「そっか、私には反抗期なんて無理だったんだ……」

遥「お姉ちゃんの気が惹きたいのに」

遥「私には出来なんだ……」ｸﾞｽｯ

ココ「あっ、優理ちゃん！」

優理「はぁ！？」

遥「……まだ！」

ｶﾞﾀｯ

ココ「！？」ﾋﾞｸｯ

遥「まだ、やってないことある……」

遥「それを試してからじゃなきゃ、諦められないっ」

優理「そ、そうか……」

優理「無……ごほんっ」

優理「まぁやってみたらいいんじゃないか？」

遥「うん……きっとうまくいく」

遥「絶対にお姉ちゃんはショック受けるし、私のこと気にしてくれるはず」

遥「だから、今日は部活お休みする！」ｸﾞｯ

――――――
―――

ｶﾞﾁｬｯ

彼方「ただいま～」

遥「おかえりっ、お姉ちゃん」

彼方「う、うん……」

彼方「遥ちゃんっ、あのね？」

遥「……」

遥「今日、お母さん当直で戻ってこれないんだって」

彼方「え、あ、うん。そうだったね……」

彼方「えっと、それで――」

遥「お姉ちゃん」ｸﾞｲｯ

彼方「！？」

ｶﾞﾀｯ
　　　　ｶﾞﾀﾝｯ

彼方「は、遥ちゃん……？」

遥「……お姉ちゃんがいけないんだよ？」

遥「お姉ちゃんが同好会の人達ばっかりだから」

遥「アルバイトばっかりだから」

遥「いっつも、疲れちゃってるから」

遥「だから、全部。ぜ～んぶお姉ちゃんが悪い！」

彼方「えっと、その……ご、ごめんね……」

彼方「ちゃんと、遥ちゃんのこと見てあげるべきだ――」

ﾁｭｯ

彼方「！？」

遥「お姉ちゃん、私に主導権握られるの嫌だもんね？」

遥「でも、知らないっ、奪っちゃう……」

遥「私にだって、反抗期が来るんだからっ」

遥「ちゃんと見ててくれなきゃ、相手してくれなきゃ」

遥「……嫌なんだもんっ」

彼方「は、遥ちゃん待って、待って！」

彼方「制服っ、制服に皴が……っ」

遥「知らない！」ﾌﾟｲｯ

遥「あとでアイロンかけるもん！」ｸﾞｲｯ

ｶﾞﾀﾝｯ!!

彼方「うっうぅ……」ﾋﾟｸﾝｯ

遥「お姉ちゃんが悪いんだよ？」

遥「分かってくれた？」

彼方「わ、わかった……」

彼方「遥ちゃんが思っていた以上に不満だったことは分かった……」

彼方「ごめんね、明日からは気を付けるから……」

遥「危うく姉離れしちゃいそうになっちゃった」

彼方「えっ！？」ﾋﾞｸｯ

遥「しちゃってもいいの？」

彼方「そ、それは……」

遥「えへへっ、嫌だったらもっとっ」ｷﾞｭｯ

彼方「これ以上は彼方ちゃん死んじゃうっ！」

遥「はいっ、赤マムシドリンク」

彼方「わぁお……」

遥「私の反抗期は暫く続くからねっ！」

彼方「遥ちゃん」

遥「なに？」

彼方「……」

彼方「彼方ちゃんも反抗期にな――」

ﾁｭｯ

彼方「んっ……」

遥「え？ なに？」

彼方「は――」

ﾁｭｯ....
　　　　　　　ｻﾜｻﾜ

彼方「っ！」ﾋﾟｸｯ

遥「だめ」

遥「お姉ちゃんは、反抗期になっちゃ……」

ｻﾜｻﾜ....
　　　　　　　ﾂﾌﾟｯ.....

遥「　だ　め　」ﾆｺｯ

彼方「あっ……」

――――――
―――

侑「あれ？ 彼方さん？」ｶﾞｻｯ

彼方「ん～？」

侑「びっくりした……歩夢かと」

彼方「えぇ～？ 全然違うよ～？」

侑「そう、ですよね」

侑「ん……」

ｽﾝｽﾝｯ

侑「なんだか最近、彼方さんから歩夢みたいな匂いしますね」

彼方「え゛！？」

侑「シャンプー……いや、洗剤？ 柔軟剤？ 何使ってるんですか？」

彼方「あー……」ﾌｲｯ

彼方「えへへ……あ、愛。かなぁ？」

終わり。

私だけのお姉ちゃんでいてねっ

やっぱり姉妹愛は素晴らしいね