【SS】千歌「私、いつから果南ちゃんと一緒に遊ばなくなったんだっけ」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:20:18.29 ID:jc+YPYFA
ちかなんSS

2: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:20:47.96 ID:jc+YPYFA
~浜辺~

千歌「………」ボーッ

私は一人浜辺に腰掛けて、ボーっと海の方を眺めている。
視界の先にあるのは、淡島。
私の幼馴染・果南ちゃんが住んでいた場所だ。

鞠莉ちゃんもダイヤちゃんも、そして果南ちゃんも今はもう内浦にはいない。みんな高校を卒業して、それぞれの進路へと進んでいった。
果南ちゃんは、ダイビングのインストラクターの資格を取るために、海外に行っている。

そういえば、昔もこんな風によく淡島の方を眺めていた気がする。
理由は、はやく果南ちゃんと遊びたかったから。
こうしていると、何だか懐かしさを感じる。

千歌「果南ちゃん……」

懐かしさと共に寂しさも込み上げてくる…。

3: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:22:09.17 ID:jc+YPYFA
~~~

-幼少期-

かなん「怖くないって千歌ー」

ちか「ん…」ブルブル

先に橋の上から海へと飛び込んだ果南ちゃんが、海から見上げながら私に呼びかける。
私は怖くて橋の上で震えていた。

かなん「ここでやめたら後悔するよ」

ちか「う~…」ブルブル

かなん「絶対できるからー」

ちか「うう~っ…」ブルブル

かなん「さぁ!」

ちか「うん…。ううっ……たぁっ!」

ピョンッ

ザパアァァァッ!

~~~

小さい頃はいつも遊んでいた果南ちゃん。
だけど、いつの間にか私は曜ちゃんや他の同級生の子達とよく遊ぶようになっていた。
果南ちゃんとの付き合いはずっと続いていたけど、小さい頃のようには遊ばなくなった。

一方で果南ちゃんの方も、鞠莉ちゃんやダイヤちゃんといった同級生と一緒に遊ぶようになっていたのだと思う。
同級生の方が顔を合わせる機会が多いだろうし、自然とそうなっていったのだと、これが私と果南ちゃんとの自然な距離なのだと、特に気にも留めていなかった。

あの時…
ラブライブ東海地区予選の時までは。

---

4: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:24:05.87 ID:jc+YPYFA
---

~電車内~

海外から一時的に帰国した私は、久しぶりに故郷の内浦へ帰ろうと電車に乗っている。

ガタンゴトン ガタンゴトン

果南「………」ボーッ

ガタンゴトン ガタンゴトン

電車に揺られて故郷の内浦に近づくにつれて色んな思い出が蘇る。
そして、内浦にいる人達の顔も浮かんでくる。
一番深い付き合いをしていたのは、鞠莉とダイヤだろうけど、二人共今は内浦にはいない。

そんな訳で、私の脳裏に真っ先に浮かんだ顔は……

5: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:25:36.10 ID:jc+YPYFA
 
千歌とも、色々あった。

小さい頃には、いつも一緒に遊んでいた。私にとって千歌は、妹みたいにすら思っていた。
本当に。

だけど、私は千歌と向き合う事を避けるようになってしまった。
小さい頃に起こった、"あの事故"をきっかけに。


~~~

-幼少期-

かなん「とぅっ!」

ピョンッピョンッピョンッ

高所から、私はピョンピョンと段差になっているところに飛び移りながら少しずつ下へと降りていく。

ちか「待ってよ果南ちゃ~ん」タタタ

遅れて千歌もやって来る。小さい頃は、私が率先して行動して、千歌がよくそれについてきてたっけ。

かなん「あはは、同じようにやって千歌も来なよ」

ちか「うん!」

前は低い橋の上から海へ飛び込むのも怖がっていた千歌も、この時には怯える事無く私についてくるようになっていた。

6: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:28:16.19 ID:jc+YPYFA
ちか「じゃあいくよ!」

タタタタタッ

助走をつけて千歌が最初の段差を跳ぼうとする。

タタタタタッ

ちか「あっ…!」

ガッ

かなん「千歌っ!」

跳ぼうとした瞬間、千歌はバランスを崩してしまった。
勢い余った千歌の身体は宙を舞い…


ガァンッ!!


高所から一気に私のいる一番下の地面へと落ちていった。

かなん「あ…ああ……!」

ちか「…………」ドクドクドク

その時の光景は私の脳裏にずっと焼き付いている。
空中に放り出されて、私の目の前まで落ちていく千歌。頭から血を流し、ぐったりと倒れる千歌の姿…。

全部、私のせいだ。
今思い出しても、心が痛む。


かなん「千歌!千歌ーーーーーっ!!」

7: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:31:19.97 ID:jc+YPYFA
私の泣き叫ぶ声を聞いた大人の人達が駆け付けてくれたおかげで、千歌は応急処置を受ける事ができた。
その後、通報を受けて千歌は病院に運ばれていった。

幸い、千歌の怪我は軽いもので済んだ。
意識を取り戻した後は、治療の甲斐もあってすぐに退院したようだ。
しかし、事故の時の状況からすると、軽傷で済んだのは本当に奇跡だった。
Aqoursの活動の時に、千歌は「奇跡を起こそう」と口にしていたけど、この事こそが千歌の身に起きた最初の奇跡だと思う。


その"事故"の数日後、私は千歌の元を訪ねた。
勿論、私と遊んでいて怪我をさせてしまった事を謝りたかった。
千歌はいつものように浜辺にいた。頭には包帯を巻いていた。

~浜辺~

ちか「果南ちゃん…」

浜辺に着くと、千歌はこちらに気付いた。いつもは元気に駆け寄って来る千歌だけど、この時は安静にしていなければいけない状態だったので、その場で立ってこちらを見つめていた。
千歌に怪我をさせてしまった事への負い目もあって、千歌との距離が凄く遠く感じた。

かなん「千歌…」

ちか「久しぶりだね、果南ちゃん」

かなん「うん…」

ちか「この前は怪我しちゃったけど、今はもうだいぶ良くなったよ」ニコッ

いつものような元気さはないものの、私にとっては眩しすぎる程の笑顔を見せてきる。
その笑顔を見て、改めて罪悪感が押し寄せてきた。

かなん「千歌…その……あの時は……ごめん…」

ちか「果南ちゃん」

かなん「?」

ちか「…あんまり長く外に出てるとお母さんが心配するから家に戻るね。それじゃあ…またね」スッ

かなん「あ……」

そう言って千歌は家へと歩いていった。


自分のせいで、千歌を傷つけてしまった…。
何処か寂しげに去って行く千歌の背中を、私はただ見守る事しかできなかった。

~~~

9: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:32:10.94 ID:jc+YPYFA
その後、以前のように遊ぶ事は無くなったものの、千歌との交流は続いた。
会えば普通に挨拶もするし、回覧板や差し入れなんかも届けてくれたりする。
私が休学していた時には、その間の学校の様子を教えてくれたりもした。
それでも、私は無意識の内に千歌とは最低限の交流以外は避けるようになった。例えば、千歌達よりも前にスクールアイドルをやっていた事を言っていなかったり。

この事故の後、私は今後自分のせい誰かを傷つける事は絶対にしないと心に誓った。
だけど…高校1年生の時に、今度は鞠莉を傷つけてしまった。
元を辿ると鞠莉の身体を心配しての行動だったけど、結果的に2年間も鞠莉とすれ違ったまま、心を傷つけてしまっていた。

果南「本当、いつになっても私は不器用なままだなぁ」ハァ

"あの事故"以降、私は知らない内に千歌の事も傷つけてしまっていた。
その事に気付き、千歌と再び向き合えるようになったのは、ラブライブ東海地区予選の時だった。

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10: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:34:13.13 ID:jc+YPYFA
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私と果南ちゃんとの関係に変化が訪れたのは、ラブライブ東海地区予選の時だった。


-ラブライブ東海地区予選20日前-

~浦の星女学院・屋上~

千歌「私達だけの道を歩くってどういう事だろう、私達の輝きって何だろう…。それを見つける事が大切なんだって、ラブライブに出て分かったのに…」

地区予選に向けて、私は「Aqoursらしさ」とは何なのかを考えていた。

千歌「それが何なのか…まだ言葉にできない。まだ形になってない…。だから、形にしたい。形に…!」

ダイヤ「このタイミングでこんな話が千歌さんから出るなんて、運命ですわ」

千歌「え?」

ダイヤ「あれ、話しますわね」

果南「え?でもあれは…」

千歌「何?それ、何の話?」

ダイヤ「二年前、私達三人がラブライブ決勝に進むために作ったフォーメーションがありますの」

曜「フォーメーション?」

千歌「そんなのがあったんだ、すごい!教えて!」

11: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:35:25.26 ID:jc+YPYFA
果南「でも、それをやろうとして鞠莉は脚を痛めた。それに、みんなの負担も大きいの。今、そこまでしてやる意味があるの?」

千歌「なんで?果南ちゃん、今そこまでしなくていつするの?」バッ

千歌「最初に約束したよね?精一杯あがこうよ!ラブライブはすぐそこなんだよ!?今こそあがいて、やれる事は全部やりたいんだよ!」

果南「でも…これはセンターを務める人の負担が大きいの。あの時は私だったけど…千歌にそれができるの?」

バッ

千歌「大丈夫!やるよ、私」

果南「千歌……」

果南ちゃんは止めようとしてたけど、私の決意は揺るがなかった。

ダイヤ「決まりですわね。あのノートを渡しましょう、果南さん」

鞠莉「今のAqoursをブレイクスルーする為には、必ず越えなきゃいけないウォールがありマース」

ダイヤ「今がその時かもしれませんわね」

果南「………」

果南「言っとくけど、危ないと判断したら、私はラブライブに棄権してでも千歌を止めるからね」

そう言われて果南ちゃんの手から渡されたのは、濡れたからなのか、少しクシャクシャになったノートだった。

千歌「早速、やってみよう!」

12: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:36:59.88 ID:jc+YPYFA
~体育館~

千歌「行きま~~す!」

タッタッタッタッタッ

みんなが見守る中、私は敷いてあるマットに向かって走り出す。
私のフォーメーションは、助走をつけて跳び、回転を決めるという難易度の高い"技"だった。果南ちゃんが危険視したのも当然だ。

タッタッタッタッタッ

千歌「……あれ?」スカッ

トトトッ…

私の身体は、マットの上を素通りしていった。

千歌「えっと、その……走るスピードはこれ位でよかった?」

ダイヤ「え、ええ」

梨子「いきなり跳ぶのは誰でも怖いわよね」

曜「千歌ちゃん、ファイトー!」

千歌「う、うん!」

私は再びスタート位置につき、マットに向けて走り出す。

タッタッタッタッタッ

千歌(スピードはこれ位。あとはあの辺の位置から跳ぶ……)

タッタッタッタッタッ

千歌「あれ?」スカッ

トトトッ…

……跳べない。
気持ちでは跳ぼうと思っていても、身体が動いてくれない。そんな感じだった。
私はまたマットの上を通り過ぎた。

千歌(なんで…?どうして?)

曜「千歌ちゃん…?」

周りのみんなも違和感を感じ始めているようだった。

梨子「助走のスピードはそれ位でいいから、次はその後の、ロンダートの形をやってみたらどう?」

曜「そうだよ。私達も補助するから」

千歌「うん、分かった」

果南「………」ジッ

13: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:38:33.21 ID:jc+YPYFA
千歌(助走をつけた時は駄目だったけど、このまま跳んで形のイメージを掴む事はできるかな?)

曜「千歌ちゃーん、準備できたよ」

梨子「頑張って!」

曜ちゃんと梨子ちゃんの補助を借りて、私は跳ぶ形の練習を始める。

千歌「行きまーす!」

千歌「………」フゥーッ

千歌「はっ!」

ダッ


千歌「…!?」

~~~

跳んだ瞬間、突如私の頭の中で何かの映像が再生される。

宙に放り出される身体、空中でぐるぐると回る視界。

「千歌っ!」

誰かの呼び声。そして私の身体は地面に向かって……

ガァンッ!!

~~~




曜「千歌ちゃん、千歌ちゃん!」

梨子「大丈夫!?千歌ちゃん!?」

千歌「………はっ!?」

気が付くと、私はマットの上に横たわっていた。

千歌「な……なに…いまの…?」ハァハァ

身体から汗が吹き出し、動悸がする。
曜ちゃんと梨子ちゃんが支えてくれたおかげで、特に怪我はしていなかった。

曜「どうしたの?すごい汗…」

梨子「それに呼吸も…。大丈夫?」

千歌「う、うん…。今…何かが……」ハァハァ

梨子「?」

曜「とりあえず…水飲む?」スッ

千歌「うん、ありがとう」ゴクゴク

14: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:39:40.84 ID:jc+YPYFA
しばらくして、もう一回さっきと同じフォームの練習を始めた。

千歌「行きまーす!」

ダッ


千歌(!?…まただ)

~~~

跳んだタイミングでまた、同じ映像が私の頭の中で鮮明に蘇る。

「千歌っ!」

回る視界、宙を舞いながら落ちていく身体。そして…

ガァンッ!!

~~~



曜「…千歌ちゃん!千歌ちゃん!!」

千歌「………はっ!?私、また…」

さっきと同じように、気付くとまたマットの上に倒れていた。

梨子「千歌ちゃん、さっきから様子が変だよ、どうしたの?」

千歌「うん…跳んだ瞬間に、何か映像っていうか、幻?みたいなものがいきなり頭の中に流れてきて…」

梨子「え…?」

鞠莉「もしかして、flashbackってやつ?」

千歌「フラッシュバック?」

ダイヤ「過去の記憶が突然鮮明に思い出される…という現象ですわ」

15: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:42:16.14 ID:jc+YPYFA
千歌「過去の記憶かぁ。うーん…何かの映像が鮮明に出てきたのはその通りだけど、それ昔の記憶なのかなぁ?」

ダイヤ「再生されるのは、おそらく過去に何らかのトラウマを体験した時の記憶との事…覚えていないのも不思議ではありませんわ」

千歌「そんな体験したかなぁ…覚えてないよ」

ダイヤ「おそらく千歌さんが跳べなかったのは、何らかのトラウマ体験の影響だったのかもしれませんわね」

果南「……!」ピクッ

千歌「そんな……記憶に無いのに」

梨子「じゃあ千歌ちゃんは、ただでさえ難しいフォームの練習に加えて、その恐怖も克服しなきゃいけないって事!?」

千歌「……」

果南「千歌…!」バッ

千歌「果南ちゃん…?」

果南「ただでさえ負担が大きいのに、そんなんじゃあいくら何でも危険だよ。やめるべきだよ」

千歌「そんな…」

果南「これ以上無茶するのは、私は許さないから」

千歌「私、頑張るから。きっとできるようになるから。鞠莉ちゃんもダイヤさんも、さっき認めてくれたし…」

ダイヤ「…」

鞠莉「…」

17: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:43:40.39 ID:jc+YPYFA
果南「さすがに鞠莉もダイヤも、こんな状態とは想定してなかったんだよ」

千歌「でも、私やらなきゃ……」

果南「千歌!」

果南ちゃんは険しい表情で私を睨みつける。

千歌「…果南ちゃんのその顔、嫌い」

果南「悪態突いたって、駄目なものは駄目だよ」

この時は軽く流されちゃったけど、私は果南ちゃんのこういう表情が苦手だ。
そういえば、果南ちゃんが私達のスクールアイドル活動に参加する直前にも、こんな表情を見せていた。

~~~

果南「うるさい、未練なんてない。とにかく私は…もう嫌になったの」

果南「スクールアイドルは・・・絶対にやらない」

~~~

私は果南ちゃんの事を心配して事情を聞こうと思っていたのに、私の話には耳を傾けず頑なに事実を話そうとしなかった。
あの時は正直…イライラした。鞠莉ちゃんが言うように「頑固親父」という例えがピッタリだ。
きっと今回も、そう簡単に意見を変えてはくれないだろう。

だから…言葉じゃなくて行動で示すしかない。

果南「さっきも言ったけど、いくら何でも危なすぎる…。この調子だったらラブライブを棄権する事になるよ」

千歌「それでも…何とか頑張るから!まだ時間もあるし…」

果南「……」スタスタ

そのまま果南ちゃんは歩いていった。

鞠莉「果南…」

ダイヤ「果南さん…」


千歌(さっき聞こえた声……もしかして、果南ちゃん…?)

18: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:46:24.39 ID:jc+YPYFA
-夕方-

~浜辺~

放課後も、私は家の前の砂浜で特訓を続けた。
この日は、他のみんなも練習に付き添っていた。
もっとも、果南ちゃんは付き添いと言うよりも、険しい表情のまま私を監視してる、という感じだけど。

タッタッタッタッ

千歌(やらなきゃいけないんだ!何回も挑戦して少しずつでも克服しないと…!)

タッタッタッタッ

千歌(ここで、跳ぶ!)

ダッ


千歌「…!?」

~~~

何とか助走を付けて跳ぶ事ができたけど、その瞬間に今度はまた別の映像が頭の中に再生された。

タタタタタッ

ちか「あっ…!」

ガッ

高所から跳ぼうとした直後にバランスを崩してしまう。
そして、目標を外れた私の身体は、宙へ……

~~~

果南「千歌っ!!」

千歌「!?」

ドサッ!

19: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:47:53.98 ID:jc+YPYFA
曜&梨子「千歌ちゃん!」

千歌「はぁ、はぁ……はっ!?」

気が付くと、砂浜の上に倒れていた。
補助が無かった上に助走もつけていて、それに加えて結構豪快に倒れたみたいで、身体が、特に額あたりが痛む。
おそらく頭から地面へ突っ込んでしまったんだろう。

曜「千歌ちゃん、大丈夫!?」

千歌「うう…痛い……」ハァハァ

梨子「また…フラッシュバックが?」

千歌「う、うん……」ハァハァ

千歌(でもさっきは、ハッキリと果南ちゃんの声が聞こえたような…)

千歌(そうだ、果南ちゃん!…こんなに思いっきり転んじゃったら、いくら何でも許してくれないだろうなぁ…)チラ

私は不安げに果南ちゃんの方を見た。

千歌「……え?」

20: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:49:14.80 ID:jc+YPYFA
鞠莉「か、果南…?」

ダイヤ「果南さん…?一体、どうしたのです?」

果南「……」ブルブル

そこには、先程の険しい表情とはまるで違う様子の果南ちゃんの姿があった。
果南ちゃんは、その場に膝を落として、頭を抱えながら震えていた。

千歌「果南…ちゃん……?」

果南「……千歌」ヨロッ

果南ちゃんはゆっくり立ち上がり、普段からは考えられないような弱々しい足取りでこちらに歩いてくる。

果南「千歌…もうやめよう……」

千歌「果南ちゃん…」

果南「ひどい汗、呼吸も乱れて……相当怖いでしょ?」

千歌「……」

果南「それに…」スッ

果南ちゃんがそっと手を伸ばす。
そして今打った額じゃなく私の頭の上の方をそっと撫でる。

果南「……痛いでしょ?」

千歌「!?」

物凄く悲しそうな表情を浮かべて私に囁く。
果南ちゃんのこんな表情、今まで見た事がなかった。


いや、見た事があった。
小さい頃に一度だけ。


千歌「あ…あ……」

その時、私の脳内に、これまで消えていた小さい頃の記憶が蘇った。

21: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:50:22.78 ID:jc+YPYFA
~~~

-幼少期-

かなん「とぅっ!」

ピョンッピョンッピョンッ

ちか「待ってよ果南ちゃ~ん」タタタ

小さい頃、私はいつも果南ちゃんと一緒に遊んでいた。
この時も。

かなん「あはは、同じようにやって千歌も来なよ」

ちか「うん!」

果南ちゃんの真似をして私も上から下へと、段差を飛び移って行こうとした。

ちか「じゃあいくよ!」

タタタタタッ

助走をつけて、最初に果南ちゃんが跳んだ足場の方へ跳ぼうとする。

タタタタタッ

ちか「あっ…!」ガッ

跳ぼうとした瞬間に、バランスを崩してしまった。

かなん「千歌っ!」

私の身体は宙に放り出され、ぐるぐる回りながら地面へと落ちていった。


ガァンッ!!


練習の時にフラッシュバックしていたのは、紛れもなくこの時の記憶だった。

22: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:52:03.66 ID:jc+YPYFA
~浜辺~

"あの事故"の数日後、頭に包帯を巻いた状態ながらも、私は浜辺にいた。
理由は、果南ちゃんに会いたかったから。
果南ちゃんの様に上手く跳べずに怪我してしまった事を、果南ちゃんに謝りたかった。

ザッ

ちか「果南ちゃん…」

かなん「千歌…」

事故の時以来に、私達は顔を合わせた。

ちか「久しぶりだね、果南ちゃん」

かなん「うん…」

ちか「この前は怪我しちゃったけど、今はもうだいぶ良くなったよ」ニコッ

かなん「千歌…その……あの時は…ごめん…」

その時果南ちゃんは、とても悲しそうな表情を見せた。
そんな果南ちゃんの顔を見て、凄く心が痛んだ。
私のせいで、私があんな失敗をしてしまったせいで、果南ちゃんを悲しませてしまった。

ちか「果南ちゃん」

かなん「?」

ちか「…あんまり長く外に出てるとお母さんが心配するから家に戻るね」スッ

果南ちゃんの悲しむ顔を見たくなくて、私は…

ちか「それじゃあ…またね」

かなん「あ……」


私は、果南ちゃんの前から立ち去った。


~~~


私にとってこの出来事が記憶から消える程のトラウマになっていたのは、
事故の恐怖や頭を撃った時の衝撃以上に、果南ちゃんを悲しませてしまった事が原因だった。

23: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:53:05.23 ID:jc+YPYFA
私がまだ小さかった事もあってか、"この事故"の記憶は消えていた。
果南ちゃんとの交流の中でも、思い出す事は無くなっていた。
それでも、事故の体験が潜在的なトラウマとして残っていて、今回のフォームの練習がきっかけで、一連の記憶が蘇ったのだった。


千歌「果南ちゃん……私、思い出したよ…全部…」

果南「ち…千歌…!?」

千歌「フラッシュバックした映像が何だったのか…何でその記憶が無くなってたのか…全部」

果南「千歌…それじゃあ……」

千歌「うん、果南ちゃん……」


千歌「私はこの練習を続けたい」

果南「千歌っ…!」ギリッ

千歌「昔は跳ぶのに失敗して怪我しちゃったけど…今度は絶対に跳んでみせるから!」

果南「そんな、無理だよ!」

果南ちゃんの表情が一気に険しくなる。

果南「届かないものに手を伸ばそうとして怪我をしてしまったら、意味がないよ」

千歌「なんで…」

千歌「なんで果南ちゃんは私のやろうとする事に反対ばかりするの…」ポロポロ

果南「千歌…」

千歌「果南ちゃんが復学した時だってそうだった…。私に何も話してくれなかった…」

果南「…何の話?」

千歌「『やめたら後悔する』って…『絶対できるから』って……」ポロポロ

千歌「小さい頃にそう言ってくれたのは果南ちゃんだったのに!」

ダッ

果南「千歌…!」

曜・梨子「千歌ちゃん!」

ダッダッダッダッ

24: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:56:10.48 ID:jc+YPYFA
~高海家~

バタン!

ダッダッダッダッ

志満「千歌ちゃん!?」

美渡「千歌、どうした?」

私は家の中まで駆け込んだ。いつの間にか美渡姉も帰っていた。

千歌「果南ちゃんと……喧嘩しちゃった…」グスッ

美渡「へぇ、果南ちゃんと…ねぇ」

志満「そう…」

しばらくして、志満姉が口を開いた。

志満「でも、ちょっと安心したわ」

千歌「安心…?」

志満「喧嘩するほど仲がいい…ってね」チラッ

美渡「なんでこっち見んの?志満姉」

志満「一緒にスクールアイドルをやるようになって、喧嘩もし合える程の中になるなんてねぇ」

美渡「そうだ、千歌、小さい頃はいつも果南ちゃんと一緒に遊んでけど、"あの時"から明らかに距離が開いてたもんね」

千歌「え…」ピクッ

美渡「千歌は小さかったから覚えてないかな?昔、千歌が果南ちゃんと一緒に遊んでた時に大怪我しちゃって…」

志満「それ以来、前ほど遊ばなくなったのよねぇ」

千歌(やっぱり…。私が果南ちゃんと遊ばなくなったのは、あの事故があってから…)

千歌「さっきちょうど…その事を思い出したところ…」

美渡・志満「…?」

25: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:56:55.95 ID:jc+YPYFA
美渡「そういえばさ、果南ちゃんや他のみんなは?」

千歌「浜辺で練習してた」

美渡「まだみんなそこにいるの?」

千歌「…うん」

美渡「もうこんな時間だし、今の千歌の様子じゃあ続けられそうにないから、今日は解散するように言ってこようか?」

千歌「うん、お願い」

美渡「今日はもう遅いし、遠くの子は送って行ってあげるよ」ヨイショ

志満「気を付けてね」



-夜-

千歌「そういえばさ」

美渡「ん?」

千歌「美渡姉と志満姉は、二年前に果南ちゃん達がスクールアイドルやってた事知ってたの?」

美渡「いや、知らなかったなぁ」

志満「私も」

千歌「そっか…」

26: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:58:04.01 ID:jc+YPYFA
~千歌の部屋~

千歌「浦の星女学院スクールアイドル『Aqours』、か…」

千歌(果南ちゃん…どうして私達には教えてくれなかったんだろう、二年前にスクールアイドルやってた事)

千歌(あの時、跳べなくてあんな事故になっちゃったから、頼りないと思われてたのかな…)ハァ


千歌(果南ちゃんがスクールアイドルに復帰した時だって、二年前の事で鞠莉ちゃんとの仲直りできたのがきっかけだった)

千歌(私はというと、果南ちゃんに対して何の力にもなれなかった…。果南ちゃんも果南ちゃんで、私には何も話してくれなかったし、話も聞いてくれなかった…)


千歌(元はと言えば、自分の失敗であんな事故を起こしてしまったせいで。事故の後に、果南ちゃんを悲しませてしまったせいで…今の私と果南ちゃんとの距離が出来てしまったんだ)

千歌「…嫌だ、このままじゃ…」

この時の私の目標はというと、ラブライブ東海地区予選を突破する事、その為にフォーメーションを完成させる事。
そして、あともう一つ、新たな目標ができた。

千歌「果南ちゃんを…見返したい」

27: (関西地方) 2020/08/08(土) 23:59:06.39 ID:jc+YPYFA
ダンッ!
ドサァッ!

千歌「いててて…」

美渡『ちーかー!うるさいよ』イラッ

千歌「やっぱり難しいなぁ……」

ダッダッダッ

千歌「たぁ~っ!」

バアァァン!!
ドサッ

千歌「うぅ~……」

美渡『ちーかー!!』

志満『お客様の迷惑よ、美渡』ニコニコ

美渡『は~い…』ゾッ


千歌「まだだ…もっと練習しなきゃ…」ムクッ

もう過去のトラウマはフラッシュバックしなくなっていた。
過去を克服して、未来に向かって進むのみ!

28: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:00:09.81 ID:/giKz8ie
-翌日-

~浦の星女学院・教室~

千歌「………」カキカキカキ

梨子(千歌ちゃん…)チラッ

曜(昨日練習終わった時よりも傷が増えてるような…あの後もあのフォーメーションの練習続けてたのかな…)チラッ

千歌「………」カキカキカキ

普段は歌詞を作るのが遅くて、梨子ちゃんに怒られる事もあったけど、この時は次々と歌詞が浮かんできた。
だから、授業中もひたすら思いついた歌詞を書き続けていた。
ラブライブ東海地区予選に向けて、僅かな時間も無駄にしたくなかった。


-放課後-

果南「千歌…今日はどうするの?」

千歌「果南ちゃん、これが今の私の気持ちだよ」サッ

果南ちゃんに歌詞を渡した。
ラブライブ東海地区予選への意気込み、難しいフォーメーションへの挑戦、そして果南への思いも詰めた一曲‐

果南「『MIRACLE WAVE』…」

千歌「果南ちゃん。私、やるよ!」

果南「千歌…」

千歌「昨日は途中で帰っちゃったけど、あの後も練習して、フラッシュバックを克服できたんだよ」

千歌「これって…0から1にできたって事だよね」ニコッ

曜・梨子「千歌ちゃん…!」

果南「……」

千歌「行くよ、1からその先へ!」

---

30: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:14:32.95 ID:/giKz8ie
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-ラブライブ東海地区予選20日前-

千歌の気迫と鞠莉とダイヤの説得に押されてノートを渡したけど、これで良かったのか…心の底ではずっと悩んでいた。
千歌が挑戦しようとしているのは、それ程までに難しく、リスクのあるフォーメーションだ。

とにかくまずは、千歌の練習を見守ろうと思っていたけど…

~体育館~

タッタッタッタッタッ

千歌「あれ?」スカッ

トトトッ…

フォームを確認したものの、跳ぶ事ができなかった千歌。
確かに、前準備も無しにいきなり跳ぶのは誰だって怖いだろう。

そこで、まず形を覚える為に、助走をつけずに跳ぶ事になった。
補助には曜と梨子ちゃんがついていた。

千歌「行きまーす!」

千歌「………」フゥーッ

千歌「はっ!」

ダッ

千歌「!?」

ドサァッ!!

跳んだ後、千歌の体勢が崩れ、着地に失敗する。
梨子ちゃんと曜が咄嗟に支えたとはいえ、無防備な状態での着地だったので、衝撃も大きいだろう。

果南「あっ……!?」

その時、脳裏にふと小さい頃、千歌と遊んでいた時の"あの事故"の記憶が過った。
あの時も、千歌は体勢を崩して、そのまま地面に…。

果南(やっぱり止めるべきかな……?)

私が迷っている間に、千歌はまた同じフォームの練習を始めた。

31: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:14:55.21 ID:/giKz8ie
ダッ

千歌「!?」

ドサァッ!!

先程と同じく、千歌はバランスを崩してそのままマットの上に落ちた。

曜「千歌ちゃん、千歌ちゃん!」

梨子「大丈夫!?千歌ちゃん!?」

補助をしていた曜と梨子ちゃんが千歌に声をかける。
よく見ると千歌は意識が飛んでいるのか、ボーッとしている。

千歌「………はっ!?」

千歌「な……なに…いまの…?」ハァハァ

千歌は目を覚ましたけど、呼吸は乱れて呼吸も荒い。
何があったんだろう?とにかく、危険が大きいのは間違いない。

32: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:15:27.34 ID:/giKz8ie
千歌「うん…跳んだ瞬間に、何か映像っていうか、幻?みたいなものがいきなり頭の中に流れてきて…」

鞠莉「もしかして、flashbackってやつ?」

千歌「フラッシュバック?」

ダイヤ「過去の記憶が突然鮮明に思い出される…という現象ですわ」

千歌「うーん…何かの映像が鮮明に出てきたのはその通りだけど、昔の記憶なのかなぁ」

果南(昔の記憶…!?)ハッ

ダイヤ「再生されるのは、おそらく過去に何らかのトラウマを体験した時の記憶との事…覚えていないのも不思議ではありませんわ」

千歌「そんな体験したかなぁ…覚えてないよ」

ダイヤ「おそらく千歌さんが跳べなかったのは、何らかのトラウマ体験の影響だったのかもしれませんわね」

果南「………!」ビクッ

この話を聞いて、千歌がフラッシュバックしたのは"あの事故"の記憶だという事はすぐに分かった。
千歌の様子を見る限り、事故の時の事は覚えていないようだった。一方、私にとっては心の痛む忌まわしい事故…。
千歌にとって、記憶から消える程の恐ろしいトラウマになったというのは想像に難くない。

果南「千歌…!」バッ

私は咄嗟に千歌に呼び掛けた。

千歌「果南ちゃん…?」

果南「ただでさえ負担が大きいのに、そんなんじゃあいくら何でも危険だよ。やめるべきだよ」

千歌「そんな…」

果南「これ以上無茶するのは、私は許さないから」

ただでさえ難しいフォームの上に、"あの事故"のフラッシュバックのせいで練習すらままならない。
「危険だ」と判断するには十分だった。

33: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:15:53.35 ID:/giKz8ie
でも、千歌は引き下がらなかった。

千歌「それでも…何とか頑張るから!まだ時間もあるし…」

鞠莉とダイヤの前という事もあり、私はその場を去った。

果南「……」スタスタ

鞠莉「果南…」

ダイヤ「果南さん…」


"あの事故"の記憶が無いという千歌に対して、事故の事を話す事がプラスになるのかマイナスになるのか分からなかった。
話すべきかどうか、その葛藤から逃げるようにその場を去った。

二年前に鞠莉の脚を傷めさせてしまった事、そして小さい頃の千歌の事故…。
私のせいで誰かを傷つけてしまったこの二つの出来事が、同時に私に襲い掛かっているような感じだった。

果南(もしトラウマの原因が私にあった事を知ったら、千歌は私の事を恨むだろうな…)

そんな私が、千歌を止めようとするなら尚更だろう。
ただ、どれだけ恨まれようとも二度と千歌をあんな目に遭わせたくないという思いはあった。

34: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:16:37.48 ID:/giKz8ie
~浜辺~

放課後も全員浜辺で練習する事になった。
もちろん千歌はあのフォームの練習を続けていた。

千歌「行きまーす!」

タッタッタッタッ

ダッ


果南「……!?」

助走をつけて跳ぶ千歌の姿を見て、私の脳裏にも再び昔の記憶が蘇った。


~~~

かなん「あはは、同じようにやって千歌も来なよ」

ちか「うん!」

ちか「じゃあいくよ!」

タタタタタッ

ちか「あっ…!」

ガッ

かなん「千歌っ!」

ガァンッ!!

~~~


ドサッ!

砂浜に倒れる千歌の姿が、"あの時の事故"で地面に落ちた千歌の姿と重なった。

果南「千歌っ……!!」ガクッ

鞠莉「え……?」

ダイヤ「か、果南さん…?」

果南「千歌…ごめん……私のせいで…」ブルブル

35: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:17:25.18 ID:/giKz8ie
鞠莉「か、果南…?」

ダイヤ「果南さん…?一体、どうしたのです?」

果南「…ごめんなさい……」ブルブル

気が付くと、私は無意識にその場に崩れ落ちていた。
横にいたダイヤと鞠莉が、唖然として私を見ていた。

千歌「果南…ちゃん……?」

千歌も、そんな私の異変に気付いたようだった。

果南「……千歌」ヨロッ

私はゆっくりと立ち上がり、千歌のもとへ歩いていった。

二度とあんな怖い目に遭わせたくない。
二度とあんな痛い目に遭わせたくない。
もう、千歌に練習を辞めさせる事しか頭に無かった。

果南「千歌…もうやめよう……」

36: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:17:56.24 ID:/giKz8ie
千歌「果南ちゃん……私、思い出したよ…全部…」

千歌も、昔にあった事を思い出したみたいだった。
またあんな目に遭う危険性があると分かれば、練習を辞めるのではないかと思った。

だけど…

千歌「私はこの練習を続けたい」

それでも千歌の気持ちは変わらなかった。

果南「千歌っ…!」ギリッ

果南「届かないものに手を伸ばそうとして怪我をしてしまったら、意味がないよ」

練習を辞めるように言おうとした時、千歌は目に涙を浮かべた。

千歌「『やめたら後悔する』って…『絶対できるから』って……」ポロポロ

千歌「小さい頃にそう言ってくれたのは果南ちゃんだったのに!」

ダッ

果南「千歌…!」


~~~

ちか「…あんまり長く外に出てるとお母さんが心配するから家に戻るね。それじゃあ…またね」スッ

かなん「あ……」

~~~

…あの時と同じだ。
私は去って行く千歌の背中を、ただ見つめる事しかできなかった。

37: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:18:34.26 ID:/giKz8ie
果南「千歌……」

ダイヤ「千歌さんがフラッシュバックしたという昔の出来事…果南さんは知っていたのですね……」

果南「……うん」

鞠莉「やりたかったなぁ…私達で」ハァ

ダイヤ「鞠莉さん…」

果南「それなら…何で千歌を止めなかったの?」

鞠莉「千歌っちならできるって、信じてるから。今のAqoursなら必ず成功する」

鞠莉「果南だって、信じてるんでしょ?」

果南「私は……」

鞠莉「ただ、私はここで辞めたら後悔すると思う。二年前の時みたいに…」

果南「……」

ダイヤ「明日どうするかは、千歌さんに任せましょう。私達は…見守るしかありませんわ」

結局、その日は解散する事になった。
千歌を無理矢理止めるべきかどうか、"あの時の事故"の事を思い出したという千歌がどんな心境なのか、未だに不安は尽きない。


果南「『やめたら後悔する』…『絶対できるから』…か……」ボソッ

私にとっては、小さい頃に千歌と遊んだ思い出は、苦い思い出だった。
最後に起こしてしまった事故によって黒く塗りつぶされていた。そして浜辺で事故後に浜辺で顔を合わせたところを最後に、終わった。
それなのに、千歌は…

果南「昔、私が言った事…覚えていてくれてたんだね、千歌…」

38: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:25:54.55 ID:/giKz8ie
-5日後・夕方-

~浜辺~

ドサッ!

千歌「いたっ!」

この日も千歌は、フォームの練習をしていた。
5日前の時点でフラッシュバックは克服できたみたいだったけど、本番の二週間前でこの状況というのは、正直厳しい。

ドサッ!

千歌「いたた…」

千歌が跳んで地面に落ちる度に、嫌でも"あの事故"の事が私の脳裏を過ってしまうようだった。

ドサッ!

千歌「うう…」

果南(やめて)

ドサッ!

千歌「いったぁ~…」

果南(やめて…)

ドサッ!

千歌「まだまだ!」

果南(もうやめてよ……)


曜「…果南ちゃん、大丈夫?」

果南(ハッ!?)

果南「う…うん」

曜と梨子ちゃんも一緒に、千歌の練習を見ていた。
横にいた曜に声を掛けられて私は我に返った。

39: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:28:35.41 ID:/giKz8ie
ドサッ

千歌「いたたたた…」

曜「大丈夫ー!?」

千歌「平気だよー!」

タッタッタッ

果南「……」

昔はこの浜辺でいつも仲良く、それこそ姉妹の様に一緒に遊んでいた。
でも今や、無茶をする後輩とそれを見守る先輩。時間の流れというのは不思議だ。

梨子「気持ちは分かるんだけど、何か心配…」

曜「だよね…」

果南(私も付き合いは長いけど、やっぱり二人の方がよく千歌の事を分かってるね…)

果南「じゃ、二人で止めたら?私が言うより、二人が言った方が千歌、聞くと思うよ」

私は千歌の練習に反対していた上に、その練習中に思い出させてしまった潜在的なトラウマの元凶でもあった。
そんな私に千歌を止める資格なんてないし、そもそも言ったところで聞かないだろう。

ただ、私も千歌と付き合いは長いのにこんな状況というのは、ちょっと悔しかったかな。

梨子「千歌ちゃん、普通怪獣だったんです」

果南「怪獣?」

梨子「何でも普通で、いつもキラキラ輝いてる光を遠くから眺めてて…。本当は凄い力があるのに…」

曜「自分は普通だって、いつも一歩引いて…」

梨子「だから、自分の力で何とかしたいって思ってる。ただ見ているんじゃなくて、自分の手で…」

果南「………!!」

果南(まさか…小さい頃、私と遊んでた時も…)

果南(怖い事や無茶な事でも、私に合わせようとしてついてきてたって事?……"あの事故"の時も…)

40: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:31:07.99 ID:/giKz8ie
果南("あの事故"の後、千歌に会いに行った時…)

~~~

ちか「…あんまり長く外に出てるとお母さんが心配するから家に戻るね」スッ

ちか「それじゃあ…またね」

かなん「あ……」

~~~

果南(千歌が寂しそうに去って行ったのはもしかして、跳べなかった事に対して嫌悪感を感じてたから……?)

果南(そんな……千歌は何も悪くない…!悪いのは私…)

ダダダダダ
ドサッ!

千歌「いったぁ~…」

果南(千歌は今でも自分の力で何とかしようとしてる…昔のトラウマが蘇ろうとも、どれだけ私が反対しても…)

果南(それなのに私は…そんな千歌に対して何もしてあげられていない…!)

果南("あの事故"の後も千歌とは付き合いは続いてたけど、前みたいには遊んでなかったし、自然と距離を置くようになってた)

果南(そういえば、6日前に…)

~~~

千歌「なんで果南ちゃんは私のやろうとする事に反対ばかりするの…」ポロポロ

千歌「果南ちゃんが復学した時だってそうだった…。私に何も話してくれなかった…」

~~~

果南(2年前のスクールアイドルの事も何も話してなかったし、スクールアイドルを再開する前も、千歌に冷たい態度を取ってしまった…。6日前、千歌もこの事を多少根に持ってたみたいだった)

果南(せっかく千歌が近づいてきてくれてたのに、私は……)


果南(千歌の心も傷つけていた………?)

41: (関西地方) 2020/08/09(日) 00:34:29.99 ID:/giKz8ie
果南「…」スクッ

曜・梨子「?」

ザッザッザッ

千歌「果南ちゃん?」

果南「千歌、約束して。明日の朝までにできなかったら、諦めるって」

今はまだ大きな怪我はしていないけど、今のまま怪我や疲労が蓄積されていくと大会当日には取返しのつかない事になるだろう。
それは、2年前の鞠莉の件からも明らかだ。

果南「よくやったよ、千歌。もう限界でしょ?」

千歌「っ………!」ギュッ

ザッザッザッ

私はその場を去った。
6日前の時とは違い、千歌は何も言い返して来ない。
言葉で言い返すよりも、実際に行動で示さなきゃいけない。きっと千歌もそう思ったのだろう。

5日前に、新曲…『MIRACLE WAVE』の歌詞を通して私に伝えた想いは本物だった。
それを確かめた私はその場を去った。

果南「……」ダッ

そのまま振り返らずに走った。
自分の練習をするために。

果南(千歌があんなに頑張ってるんだ、私もそれに応えてあげなきゃ!)

果南「…頑張って、千歌……!」

ダッダッダッダッ

---

43: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:44:10.40 ID:/giKz8ie
---

-ラブライブ東海地区予選2週間前・夜中-

~浜辺~

タッタッタッ

千歌「はぁ…はぁ…」

ダッ!

曜・梨子「!?」

千歌「うぅ!?」クルン

ドサァ!

千歌「はぁっ、はぁ…」ムクッ

タッタッタッ


私は練習を続けていた。
果南ちゃんから言い渡された期限は翌日まで。それまでになんとしても成功させなきゃいけない。

「千歌ちゃーん、頑張ってー!!」

曜ちゃんや梨子ちゃんだけじゃなく、1年生のみんなもはるばる応援に来てくれた。
だから、何としても期待に応えなきゃいけない。

タッタッタッ

ダンッ!

千歌「はっ!」

グルッ

千歌「うあぁぁっ!?」

ドサッ!

千歌「もぅ~、できるパターンだろぉ、これぇ~!」

口で言ってもどうにもならない事は分かってるけど、つい感情が爆発してしまう。

44: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:45:26.04 ID:/giKz8ie
千歌「なんで…なんでできないんだろう…。みんな、こんなに応援してくれてるのに…」

その時、脳裏に果南ちゃんの姿が浮かんだ。
私に期限だけを告げて去って行く後ろ姿。
6日前の、危険なフォームの練習を辞めるように警告する姿。

スクールアイドルを再開する前の、心配する私に耳を貸さずに去っていく姿。
小さい頃、包帯を巻いた私を悲しそうな表情で見る姿。

千歌「嫌だ…嫌だよ!私…何もしてないのに!何もできてないのに…!」ポロポロ

私は、果南ちゃんに対して、何もできていなかった。
スクールアイドルをやっていた事を知った時も、"あの事故"の時も。


曜「千歌ちゃん…まだ自分は普通だって思ってる?」

梨子「リーダーなのにみんなに助けられて、ここまで来たのに、自分は何もできてないって…違う?」

千歌「だって……そうでしょ?」ボソッ

曜「千歌ちゃん。今こうしていられるのは、誰のおかげ?」

千歌「それは…学校のみんなでしょ…。町の人達に、曜ちゃん、梨子ちゃん。それに…」

曜「一番大切な人を忘れてませんか?」クスッ

千歌「何…?」

梨子「今のAqoursができたのは、誰のおかげ?最初にやろうって言ったのは誰?」

千歌「それは…」

45: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:50:53.29 ID:/giKz8ie
曜「千歌ちゃんがいたから、私はスクールアイドルを始めた」

梨子「私もそう。みんなだってそう」

曜「他の誰でも、今のAqoursは作れなかった」

曜「千歌ちゃんがいたから、今があるんだよ。その事は、忘れないで」

梨子「自分の事を普通だって思っている人が諦めずに挑み続ける…それってすごい事よ。すごい勇気が必要だと思う」

曜「そんな千歌ちゃんだから、みんな頑張ろうって思える。Aqoursをやってみようって、思えたんだよ」

梨子「恩返しなんて思わないで。みんなワクワクしてるんだよ」

みんなが私の元へと集まってくる。
みんなよく見ると、私と同じようにあちこちに傷が付いている。

梨子「千歌ちゃんと一緒に…自分達だけの輝きを…見つけられるのを」

だけど…果南ちゃんは違う。
スクールアイドルを始めたのも復帰したのも、私が見ていなかった所からだった。

46: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:54:20.77 ID:/giKz8ie
少し前に、部室で果南ちゃんと二人きりになって話した時、果南ちゃんは「偶然が重なってここまで来た」と言っていた。

~~~

-数週間前-

~部室~

千歌「あれ?みんな屋上だよ。どうしたの?」ガラッ

果南「うん。どんな曲がいいのかなって」

千歌「だよね。果南ちゃんは、アイデアある?」

果南「ううん。ただ私は、後悔しないようにするだけ。これが最後のラブライブだしね」

千歌「最後…」

果南「ダイヤと鞠莉と三人でここで曲作って、その思いが重なって、偶然が重なってここまで来たんだよ」

果南「やりきったって、思いたい」

~~~

加入する前から、何だかんだで私達の活動を見守ってくれていた他の二人とは違い、果南ちゃんは私達や、スクールアイドルから距離を置いていた。
スクールアイドルとして果南ちゃんと一緒に活動できているのは、偶然私がスクールアイドルをやっていて、そこに果南ちゃん達が合流しただけに過ぎない。
2年前にすれ違いがあったけど、あの三人なら、私がいなくてもいずれ仲直りしてスクールアイドルを再開していただろう。
そんな風に思えてきた。

千歌(鞠莉ちゃんやダイヤさんだけじゃない…私だって果南ちゃんの事を昔から知ってるんだ…)

千歌(だから、このままじゃいやだ…リーダーとして…一人の人間、高海千歌として私の事を見て貰いたい…)

小さい頃、果南ちゃんと遊んでいた時に起こしてしまった事故…
"あの時"跳べなかった分まで跳んで二年前に果南ちゃん達が完成させられなかったフォーメーションを完成させる。
そうすれば果南ちゃんを見返す事ができる気がしてきた。
果南ちゃんが私の練習を止めようとしていたのは、二年前の鞠莉ちゃんの怪我の件だけでなく、きっと"あの事故"も原因なんだろう。


千歌(果南ちゃんを見返す為にも、果南ちゃん達の思いを繋げる為にも、なんとしてもこのフォーメーションを完成させなきゃ!)


私は練習を続けた。

47: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:58:00.38 ID:/giKz8ie
-早朝-

気付けば日が昇りかけていた。
もう期限の朝だ。

果南「千歌、時間だよ」ザッ

果南ちゃんがやって来た。他の三年生の二人も一緒に。

果南「準備はいい?」ニッ

これまでの険しい表情とはうって変わった、力強い笑みを浮かべながら私に問いかける。
よく見ると、果南ちゃんもまた、全身傷だらけになっていた。

千歌「うん!」ニッ

私も同じように、最低限の言葉で返事をした。

私が跳ぶのに失敗した"あの事故"の後、この浜辺で果南ちゃんと再会した時は、果南ちゃんの悲しむ顔を見たくなくて、私は果南ちゃんの前から去った。
でも今はこの浜辺で、果南ちゃんの方へ向かって跳ぼうとしている。
時間の流れというのは不思議だ。

48: (関西地方) 2020/08/09(日) 09:58:47.76 ID:/giKz8ie
ダッ

果南ちゃんの方に向かって私は歩を進める。

タッタッタッタッ

心に響く。
応援してくれているみんなの視線、歓声。
そして…

~~~

かなん「ここでやめたら後悔するよ」

かなん「絶対できるからー」

~~~

目の前にいる果南ちゃんが、小さい頃に私に言ってくれた言葉。
きっと今も同じ気持ちで見守ってくれているに違いない。
果南ちゃんの表情と傷が、それを物語っていた。

タッタッタッタッ



千歌(私、跳び越えてみせるよ!)

千歌(果南ちゃんを……あの頃の自分を!)


~~~

かなん「あはは、同じようにやって千歌も来なよ」

ちか「うん!じゃあいくよ!」

タタタタタッ

~~~

ダンッ!





果南「ありがとう……千歌」

49: (関西地方) 2020/08/09(日) 10:03:44.23 ID:/giKz8ie
そして迎えた、ラブライブ東海地区予選の当日。
この日の為に練習に練習を重ねたフォーメーションを披露して、結果は大成功!

-ラブライブ東海地区予選・ライブ後-

~東海地区予選会場~

千歌「果南ちゃん!私…やったよ!」

果南「千歌!『Aqours WAVE』を成功させてくれて…ありがとう」

バッ

ライブが終わった後、私は感極まって果南ちゃんに抱きついた。
そんな私を、果南ちゃんも力強く受け止めてくれた。
そういえば…こんな風に果南ちゃんとハグするのって初めてだった気がする。

更に、ラブライブ東海地区予選をなんと1位で突破!
最高の形でフォーメーションを完成させる事ができたよね、果南ちゃん。

50: (関西地方) 2020/08/09(日) 10:11:02.55 ID:/giKz8ie

57: (関西地方) 2020/08/09(日) 23:07:58.10 ID:/giKz8ie
だけど、卒業後に果南ちゃんは内浦を離れ、海外に行く事になった。


果南ちゃんが出発する前日、私は果南ちゃんを訪ねた。

~ダイビングショップ前~

千歌「私、果南ちゃんにお礼を言いたかったんだ」

果南「ん、何?」

千歌「小さい頃、一緒に遊んだ時に『やめたら後悔する』、『絶対できるから』って言ってくれたよね?」

果南「うん」

千歌「私、その言葉があったおかげで、スクールアイドルを続けられた気がする。特に、地区予選の時にはね」

果南「千歌…」

58: (関西地方) 2020/08/09(日) 23:46:26.55 ID:/giKz8ie
千歌「でもあの時、同時に"あの事故"の事も思い出しちゃった…」

果南「……」

千歌「その時も思ったけど、今になって改めて思うよ…。小さい頃から…もっともっと…果南ちゃんといっぱい遊んでおけばよかったって…」ポロッ

果南「千歌…」

千歌「ごめんね、あの時怪我しちゃって…」

果南「そんな!千歌は何も悪くない!悪かったのは…私……」ポロッ

千歌「果南ちゃん…」

果南「私の方こそ…本当にごめん…。千歌に無理させちゃって」

千歌「ううん、あれは自分でやった事だから」

果南「でも、あんな事があった分…ラブライブ東海地区予選の時、ちゃんと跳べた千歌を見た時は、本当に感激したよ」

千歌「えへへ」テレッ

"あの事故"の事はお互いに触れずにいて、特に私の場合は記憶から消えていた時期もあったけど、こうやってお互いに振り返って話す事ができて良かったと思った。

59: (関西地方) 2020/08/09(日) 23:53:21.95 ID:/giKz8ie
千歌「ねぇ、一つ聞いていいかな?」

果南「うん。何を?」

千歌「私がスクールアイドル部を立ち上げる前に一回、果南ちゃんを誘った事があったんだけど」

果南「うん、覚えてる。私が休学してた時に、曜と一緒に回覧板届けに来たときでしょ?確か鞠莉が帰って来た時期だっけ」

千歌「そう。その時は断られちゃったけど…」

果南「あはは…色々とあったからねぇ」

千歌「もし」

果南「うん、きっとね!」

千歌「果南ちゃん…!」パァァッ

果南「あの時、千歌の方から私に誘って来てくれて…本当はとても嬉しかったよ」

千歌「果南ちゃん…」


果南「ねぇ千歌、今度は私がお願いしていいかな?」

千歌「うん!」

果南「ハグ、しよ」

千歌「うん」コクッ

バッ

東海地区予選の時以来、久々にハグをした。
しばらく会えなくなるから、この感触を忘れずにいたい。

千歌「元気でね、果南ちゃん」

果南「千歌の方こそ」

63: (関西地方) 2020/08/10(月) 00:57:50.42 ID:8rweaNLd
>>59
ミス修正。


千歌「ねぇ、一つ聞いていいかな?」

果南「うん。何を?」

千歌「私がスクールアイドル部を立ち上げる前に一回、果南ちゃんを誘った事があったんだけど」

果南「うん、覚えてる。私が休学してた時に、曜と一緒に回覧板届けに来たときでしょ?確か鞠莉が帰って来た時期だっけ」

千歌「そう。その時は断られちゃったけど…」

果南「あはは…色々とあったからねぇ」

千歌「もし、昔の色んなトラブルが無かったとしたら…果南ちゃんは私の誘いに乗ってくれてた?」

果南「うん、きっとね!」

千歌「果南ちゃん…!」パァァッ

果南「あの時、千歌の方から私に誘って来てくれて…本当はとても嬉しかったよ」

千歌「果南ちゃん…」


果南「ねぇ千歌、今度は私がお願いしていいかな?」

千歌「うん!」

果南「ハグ、しよ」

千歌「うん」コクッ

バッ

東海地区予選の時以来、久々にハグをした。
しばらく会えなくなるから、この感触を忘れずにいたい。

千歌「元気でね、果南ちゃん」

果南「千歌の方こそ」

60: (関西地方) 2020/08/09(日) 23:55:20.14 ID:/giKz8ie
~浜辺~

千歌「……」ボーッ

淡島の方を眺めながら、果南ちゃんとの思い出に浸っていた。
色んな事があったけど、どれも今となっては良い思い出だ。

千歌「…!」スクッ

タッタッタッタッ

急に感情が高ぶり、いてもたってもいられなくなって、私は立ち上がり、走り出した。

---

61: (関西地方) 2020/08/10(月) 00:01:29.32 ID:8rweaNLd
---

~電車内~

ガタンゴトン ガタンゴトン

電車に揺られながら、私は千歌との事を思い出していた。
特に、ラブライブ東海地区予選の時の事は、思い出すだけで胸が熱くなってくる。

果南「ありがとう……千歌」

自然とそんな口から言葉が出てくる。
あの時跳んだ千歌を見た時、それまで黒く塗りつぶされていた千歌との思い出に光が差し込んだの感じた。
おかげで改めて、千歌と向き合えるようになった気がする。

ガタンゴトン ガタンゴトン

果南「……」ボーッ

色々思いを巡らせたせいか、眠気が襲ってくる。

そういえば、内浦を出発する前に、千歌が訪ねてきた事があった。
その時、千歌からなにかを聞かれた気がする
一体なんだったっけ?

果南「……」ウトッ

あれこれ考えようとする内に、私の意識は次第に遠のいていった。


~~
~~~

64:>>61からの続き(関西地方) 2020/08/10(月) 01:02:51.13 ID:8rweaNLd
 
~海上~

ザパッ

ダイビングを終えて、海の中から顔を出す。
そして浮かべてあったボートへと上がる。

‐はぁ~、疲れた

ダイビング用具も外し、ボートの上で横になる。
照りつける日差しが心地良い。

‐やっぱり、この時期の海は…最高…


『…ぃ…!おぉーい!』

遠い浜辺の方から声がする。
その声の主は…

千歌『おーい!おーい!』

‐千歌

浜辺から千歌が叫びながらこちらへ手を振っている。
上は制服だけど足元は裸足だ。
こんなに心地良い一休みなんだから、千歌も誘っちゃおうかな。

‐おぉーい!千歌も一緒に…

千歌『果南ちゃん!』


千歌『私たち、スクールアイドルになろうよ!!』

65: (関西地方) 2020/08/10(月) 01:04:21.30 ID:8rweaNLd
~千歌の部屋~

‐なに?さっきの話…スクールアイドルって

千歌『えええええ!果南ちゃんってばスクールアイドル知らないの!?スクールアイドルって言うのはね……』スッ

千歌はタブレットで画像を私に見せてくる。

千歌『伝説のスクールアイドルμ's!!少子化で生徒数が減っちゃって、廃校の危機にあった学校を…』ペラペラ

‐廃校……私たちとおんなじ…

千歌『で、これがμ'sのライブの動画!』タン

私は千歌が見せてくれたライブ映像を見る。
千歌も肩を寄せて、一緒に画面をのぞき込んでいる
その間も千歌は、得意げに解説等の話を続けていた。

千歌『どうだった、果南ちゃん』

‐うん…?

千歌『うわーん!果南ちゃんが全然人の話聞いてない~!!!』

‐ご…ごめん。教えてくれたらちゃんと聞くから…

千歌『ホント!?絶対約束だよ?』

私は小指を指し出す。千歌がやろうとしている事に付き合う約束をするために。

千歌『うそっこなーしーね♪』ギュッ


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66: (関西地方) 2020/08/10(月) 01:11:01.52 ID:8rweaNLd
 
ガタンゴトン ガタンゴトン

気が付くと電車は目的地まで随分と近づいていた。

しばらくの間、私は夢を見ていた。
千歌に誘われて、二人で一緒にスクールアイドルを始める…そんな内容の夢だった。

そういえば、内浦を出発する前に、千歌から「もし過去のトラブルが無かったとしたら、スクールアイドルを一緒に始めたか」という風な事を聞かれたっけ。
きっとさっき見た夢のような感じで、私達は一緒にスクールアイドルを始めていたに違いない。

もし、小さい頃の千歌の事故が無かったら…?

もし、鞠莉の足の怪我の件が無かったら
もし、廃校が決まる時期が早かったら
もし、私がスクールアイドルを知らないままだったら

偶然とか運命とかそんなものじゃなく、ほとんど腐れ縁みたいな感じでずっと一緒に付き合っていただろう。
気の知れた幼馴染として。

‐まあチカが言うなら付き合うよ!

先程見た夢は、遠い夢のはずが、どことなく懐かしいような感じがした。

68: (関西地方) 2020/08/10(月) 01:14:48.09 ID:8rweaNLd
そういえば、内浦にいた間は思い詰める事があったり、スクールアイドルの活動が忙しかったりして、ゆったりと海を満喫している余裕が無かった。
これから帰った後は、思いっきり内浦の海を満喫しよう。
千歌も一緒に誘って。

果南「絶対約束するよ」スッ

私は小指を掲げた。

果南「うそっこなーしーね♪」

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69: (関西地方) 2020/08/10(月) 01:16:06.21 ID:8rweaNLd
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~伊豆長岡駅・出入口~

果南(やっと着いた)スタスタ

タッ

千歌「果南ちゃん!」

果南「!?…千歌」

千歌「おかえり」ニコッ

果南「よく分かったね」

千歌「なんとなくね」アハハ

果南「…ふふっ」



おしまい

74: (SIM) 2020/08/11(火) 00:57:53.82 ID:Bg6HEccK
良きちかなんだった

75: (もんじゃ) 2020/08/11(火) 02:56:44.99 ID:/zV7f3ig
ちかなん増えて

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1596896418/

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