【SS】絵里「海未と密室」

SS


1: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:12:41.93 ID:4lXVVpyy.net
教師A「よし、じゃあ今日の授業はこれで終わりな。解散」


穂乃果「あ゛ーつかれだぁぁぁ………1日の最後の授業が体育だとちょっとゲンナリしちゃうよね……」ヌギヌギ

ことり「そうだね…こうやって一回制服に着替えなきゃいけないところが少し手間がかかるよね。特に私たちは……」ヌギヌギ

海未「あまり弱音を吐かないでください二人とも。こっちまでやる気が削がれてしまいます」シュッ

穂乃果「ごめんごめん。この後練習だもんね、疲れてなんかいられないよ」

海未「……それなのですが穂乃果、今日は、実はその、弓道部に顔を出すよう言われていまして……」

海未「多分長くなりそうなので、練習はお休みさせてください。帰りも…わからないので二人でお先に帰宅してください」

穂乃果「えぇー!?今日休むの!?……はぁ、海未ちゃんの一言でやる気無くしちゃったよ…」

海未「なんてことを言うのです……」

ことり「まあまあ穂乃果ちゃん、海未ちゃんも忙しいから、ちゃんと受け入れてあげよう?指導役がいないから、今日は楽にできるよ♥ 」

海未「ことりも変なことを吹き込まないでください……」

2: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:15:54.00 ID:4lXVVpyy.net
海未「そういうわけですから、終礼が終わったら今日は……」

ガチャ

教師A「誰かちょっと頼まれてくれる?」

海未「先生?」

教師A「今日体育委員が休んでるんだったよ、体育館に使った道具出しっぱだから、誰かしまっておいて欲しいんだけど……」

海未「それでしたら、私が請け負いましょう。既に着替えていますので」

教師A「園田がやってくれるのか、悪いな。じゃあ終わったら倉庫の鍵を職員室に返してくれ」

海未「わかりました。それでは行って参りますね」

3: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:21:28.74 ID:4lXVVpyy.net
ーーーー

海未「さて、早く片付けてしまいましょう」スタスタ

海未「よいしょ……っ」ガチャン

海未「よっ……」シャー

教師B「あれ?園田さん何してるの?」

海未「あっ、バド部の顧問の……いえ、少し頼まれごとで。授業の後片付けをしています」

教師B「一人で?偉いね。……偉いついでに、ちょっといいかな?」

海未「はい、なんでしょう」

教師B「その…今日放課後体育館使えないの忘れてて、部活の準備しちゃったの。でも私終礼出ないといけないから代わりにこのネットしまっておいてくれる?」

海未「はあ……」

4: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:22:01.10 ID:4lXVVpyy.net
教師B「おねがい!内申点あげるから!」

海未「私、先生の担当授業ありませんよ。……わかりました、片付けておきましょう」

教師B「ホントに!?ありがとう園田さん!弓道と、それとダンス?の活動がんばってね!」

海未「はい、先生もバレーの指導頑張ってくださいね」

ガララ……

海未「……ダンス、ですか。まだまだ知名度は高くはないようですね」

海未「さて、がんばらねば」

6: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:27:38.26 ID:4lXVVpyy.net
海未「確かこれは…ここの上にいつも置いていましたよね」

海未「うーん……た、高いです…もう少し身長があればよかったのでしょうが……」ググッ

海未「もう、少し、でっ……!」

ガッ

海未「えっ……」ツルッ

ガラガラガラ!!ガシャーーーーン!!!!

海未「………」ボロボロ

海未「…終礼どころか、部活にも間に合いそうにないですね」

7: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:32:40.25 ID:4lXVVpyy.net
キーンコーンカーンコーン

絵里「………」スタスタ

ガラッ

絵里「失礼します。生徒会の書類を提出しにきました」

「そこ置いておいてー」

絵里「わかりました。………失礼しま…」

教師A「あっ、待って絢瀬、時間ある?」

絵里「……えぇ、一応は」

教師A「よかった。それじゃあちょっと体育館倉庫の様子見に行ってくれない?」

絵里「様子……ですか?」

8: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:33:18.36 ID:4lXVVpyy.net
教師A「ちょっと授業の片付け頼んだんだけど、帰ってこなくてね。結局終礼まで来なかったんでなにやってるのかと思って」

教師A「今から会議だからよかったら絢瀬に見に行ってきて欲しいんだけど……」

絵里「……わかりました、行ってきます」

教師A「ありがとう、それじゃあ頼むよー。サボってたら私の代わりに説教していいからさ」

絵里「失礼しました」ガラッ

絵里「……ふぅー」

絵里「やれやれね」スタスタ

9: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:37:10.87 ID:4lXVVpyy.net
絵里(人から頼まれたことをいい加減にするってどうなのかしら、ちゃんとやるべきことをやって頼まれごとを報告するのが筋ってものじゃない?)スタスタ

絵里(人に信頼を寄せられているくせに、それを逆手にとっていい加減に過ごしてるだなんて腹が立つわ)スタスタ

絵里(私だって本当はやりたくないことだってたくさんあるわよ。生徒会長だって好きでやってるわけじゃないし。でも頼まれたならそれをきちんと遂行するべきだわ。できないのなら最初から引き受けない方がいいわよ)スタスタ

絵里(ああ…こんな心の中でぐちぐち言っても仕方がないわ。どうも疲れてるみたいね、もしその人がサボってたら一言小言を言って終わりましょう)スタ…


絵里(体育倉庫……ここよね)

絵里(開けっ放しだけど、誰もいない……?しかも用具の一部が滅茶苦茶になってるわ……)

絵里(後は野となれ山となれ、ってところかしら……腹が立つのを通り越して呆れてきたわ)

絵里(こんな惨状にした人のことはものすごーーーく気になるけれど、こういうの見て見ぬ振りして帰るほど豪胆な性格はしてないのよね……自分でも損な性格してるって思ってるわよ)

絵里「はああぁぁぁ~~~……ごふっ!?」カーン

10: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:41:20.47 ID:4lXVVpyy.net
海未「えっ…!?だ、大丈夫ですか!?」

絵里「え、えぇ……だいじょうぶ……」ヒリヒリ

海未「申し訳ありません…周囲への注意が足りませんでした……」

絵里「それはいいけれど、私に鉄の何かを後頭部に直撃させるほど注意が欠けることってなにやってたのよ…」

海未「体育館の備品の後片付けを……」

絵里「後片付け……?」ピクッ

絵里「あなたが体育倉庫をこんな惨状にした張本人ね__」クルッ

海未「えっ………」

絵里「あ………」

海未「生徒会長……」

絵里「…園田さん」

12: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:44:55.51 ID:4lXVVpyy.net
絵里「…あなたが山田先生が言ってた生徒だったのね……」

海未「……?どういうことですか?」

絵里「頼まれたのよ。授業の後片付けを頼んだけど帰ってこないし鍵も返されてないから様子をみてこいって」

絵里「そんなに時間がかかるものだったの?」

海未「いいえ。終礼にはなんとか間に合わせるつもりだったのですが……まだ設置されたものを片付けた段階でして……」ドッサリ

絵里「え……これ全部片付けるように言われたの?」

海未「あ、いいえ、山田先生に頼まれたのはもう終わりました。バドミントン部の顧問とバスケ部の顧問の先生に頼まれたのがこちらです」

絵里「………」

絵里「…押し付けられたの?」

海未「そんなはずないでしょう、快く引き受けました」

14: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:51:44.64 ID:4lXVVpyy.net
絵里「……じゃあこの凄惨なことになってる倉庫の中は?」

海未「それは……不注意で崩してしまいました…」

絵里「不注意すぎるわよ……あっ」

絵里(そういえば1ヶ月くらい前だけど要望がきてたわ…体育館倉庫が乱雑になって置く場所がないからどうにかしろって……)

絵里(どうしようもないからその案件は放置してたけれど……これ、間接的に私のせいよね…)

絵里(でも……)チラッ

海未「??」

絵里(あんまり謝るのに気が進まないわ……!)

絵里(ここで気持ちの切り替えをして謝ることができたらどんなに楽なことか……)

絵里(自分の不器用を呪いたいわ……)

15: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 15:57:25.82 ID:4lXVVpyy.net
絵里「はぁ………」スッ ガチャガチャ

海未「生徒会長?」

絵里「いつまで経っても終わらないわよ。手伝うわ」

海未「で、でもそんな、悪いですよ。生徒会長もおつかいでここに来たのでしょう?」

絵里「暇だったからよ、口より先に身体を動かしなさい。あなたも部活があるでしょう?」

海未「生徒会長……!」

絵里「勘違いしないで。スクールアイドルのことじゃない。あなたの弓道部のことよ」

海未「やはり……認めてくれないのですね…いえ、今はそういった話がしたいわけではありません。…ありがとうございます」

17: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:00:45.72 ID:4lXVVpyy.net
ガサガサ……

絵里「………」

海未「………」

絵里(き…気まずい……)

絵里(この子…園田さんとは先日喧嘩…というか少し口論になったばかり。それをこんな形で再会するだなんて…)

絵里(そういう私情は抜きにしても…私は先輩なんだから、こういう重い空気をどうにかして明るくするべきよね?)

海未「………」ガサゴソ

絵里(今なら話しかけてもいいかしら…いや、でも今作業してるし、また後の方が……)

絵里(ああもう、なんでこういう時だけうまく話せないのよ!いつもは……そんなに話してたかしら……?)

絵里(いやっ、コミュ障なんかじゃないわよ。見てなさいよ……)

18: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:03:55.62 ID:4lXVVpyy.net
絵里「ね、ねえ園田さん」

絵里(言えた……!)

海未「はいっ、なんですか?」

絵里「えっと……なんでこんなことしてるの?」

海未「なぜって…さっきも言いましたが、頼まれたからです」

絵里「そうじゃなくて……こういう頼まれごと、よくあるの?」

海未「そうですね……普段は部活動に励んでいるので声は掛けられませんが、暇そうにしていたらよく頼まれますね」

絵里「断ったりは?」

海未「断る理由がありませんので」

絵里「……難儀な性格ね」

19: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:07:04.02 ID:4lXVVpyy.net
海未「生徒会長にだけは言われたくないです」

絵里「なんの話よ?」

海未「去年、私が入学してから生徒会長の姿を幾度か廊下で見かけましたが、あなたはいつも何かしているようでした」

海未「生徒会ってそれほど時間に余裕がなくなる仕事ではないでしょう?」

海未「先生方のみならず、後輩や先輩にまでいろいろな頼まれごとをされて、受け入れてきたのではありませんか?」

絵里「私は……見返りを求めてやっているからいいのよ」

海未「本当に見返りを求めてやっているのですか?私には、あなたはいつも一生懸命で、常に他人のことを考えているように見えました」

絵里「………」

20: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:12:03.44 ID:4lXVVpyy.net
絵里「…園田さんが私にどんなイメージを持っているのかわからないけれど、私のことをそんなの見てるだなんてストーカーに間違われても仕方がないわよ」クスッ

海未「なっ……ぁ…!?///」カァァ

絵里(すごい早さで顔真っ赤になっちゃった……こういうところがあるのね、意外とかわいい子なのかしら)

海未「そ、それを言うのだったら、生徒会長こそじゃないですか!//」

絵里「え……?」

海未「私たちのファーストライブ、勝手に撮影して……」

絵里「っ……」

海未「ですが先日も言いましたが、生徒会長の意図がどうであれ私たちのライブを撮影して、アップロードしてくれたことは私たちにとってとても大きな転機になったと思うんです。ありがとうございました」

絵里「…やめて。本当にあれはそういった意図があってやったことじゃないの。感謝されることなんてなにもないわ」

26: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:16:39.58 ID:4lXVVpyy.net
海未「……もしかして、後悔しているのですか?」

絵里「……少しだけ」ボソッ

海未「……ふふっ」

絵里「笑いなさいよ、自分から嫌がらせしておいて中途半端に自責の念を感じるだなんて滑稽でしょ?」

海未「ああ、いえ、そういうことではありませんよ」

海未「私はいままで生徒会長のことを、…そうですね、『氷の女王』とか『鉄の女』みたいな印象を持っていました」

海未「とにかくやると決めたことはブレずにどんなことでもやる、みたいな感じで……性格こそ違いますが、私の友人によく似ていると思っていました」

34: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:19:43.88 ID:4lXVVpyy.net
海未「でも、生徒会長はその、意外と可愛らしい人なんだと思いまして」

絵里「かわっ………!?」

海未「人間くささが垣間見えたといいますか……うまく説明できませんけどね」クスクス

絵里「……一応私、あなたの先輩なのよ?」

海未「すみません、わかってはいるのですがどうにも……ふふっ」

絵里「っ……///も、もう!口動かしてないでこれ片付けるわよ!」

海未「えぇ、そうですね。せっかく生徒会長に手伝っていただけるのですから……ふふっ」

絵里「っ~~~!!///」カァァ

41: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:23:38.74 ID:4lXVVpyy.net
絵里「よい…しょ……これであと少しかしら?」

海未「はい、本当にありがとうございます、生徒会長」

絵里「いいわよ。半分は自分のためだから」

海未「……見返りとしてスクールアイドルの活動をあきらめろなんて言っても聞けませんよ?」

絵里「そんなこと言わないわよ。ここでそんなこと言ったら性格が悪いと思われるでしょう?…もしかしたらもう思われてるかしら」

海未「まさか。生徒会長の立場もわかっているつもりです、理解はしていますよ。…だからと言って諦められないのですが」

海未「代わりに……もしなにか今後困りごとがあれば私に声をかけてください。なんでも手伝いますよ」

49: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:27:09.05 ID:4lXVVpyy.net
絵里「それは心強いわね。生徒会も最近手際が悪いからあなた一人いるのとでもきっと違ってくると思うわ。……あら、この扉動かないのね」

絵里「うー……ん!砂利が入り込んでて動かない……!」グググ……

絵里「ふっ……ぐ…!」

ガラッピシャンッ!!

絵里「ひゃっ」ステン

海未「うわぁっ!?」ビクッ

海未「な、なにやってるんですか!?」

絵里「ご、ごめんなさい。扉が動かなかったから力を入れて閉めたらいきなり…」

海未「びっくりさせないでください…もうすぐで終わりますから、あと少しだけ手伝ってくれますか?」

絵里「えぇ。もちろん」

58: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:30:05.19 ID:4lXVVpyy.net
絵里「………海未」

海未「ぇ……」

絵里「あなたの名前。海未ちゃん、よね?」

海未「え、えぇ。そうですが……」

絵里「そう。いい名前ね」

海未「ありがとうございます。初めての人にはうみみとか読まれますが…結構自分でも気に入ってるんです」

絵里「ねえ、海未って呼んでいい?」

海未「え……はい!もちろんですよ!」

絵里「よかった、それじゃあ海未もその呼び方やめてくれるかしら?」

海未「えっ…?」

69: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:33:43.97 ID:4lXVVpyy.net
絵里「『生徒会長』って呼び方。私には絢瀬絵里っていうちゃんとした名前があるの。なんだかその呼び方だと息苦しいわ」

海未「わ、わかりました。絵里……先輩」

絵里「っ!!」ドキッ

海未「あ、あの…なにか失礼なことを言いましたでしょうか…やっぱり生徒会長のほうが…」

絵里「い、いえ、大丈夫よ。まさかいきなり『絵里』って下の名前で呼ばれるとは思ってなかったから……それでいいわ」

絵里「あと少し、頑張りましょう?海未」

海未「……はい!絵里先輩!」

80: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:36:53.62 ID:4lXVVpyy.net
海未「よっこら……しょっ……ふぅ」

絵里「それで最後?」

海未「はい。これで全部です」

絵里「ふぅ~お疲れ様、思ったより時間かかったわね。二人がかりでこれなんだから、あなた一人でやったら日が暮れてたんじゃない?」

海未「本当に……そうですね。絵里先輩には感謝してもしきれません」

絵里「大げさよ。あなたもこれから部活でしょう?急いだ方がいいんじゃない?」

海未「そう、ですね。多分みんな待ちくたびれています。今日は久々に弓道部へ向かう予定だったので」

絵里「大変ね」

海未「自分で決めたことですから」

95: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 16:42:28.97 ID:4lXVVpyy.net
絵里「……そう。スクールアイドルの活動をまだ受け入れることはまだできないけれど、これだけは言わせて」

海未「??」

絵里「頑張ってね、海未」ボソッ

海未「ひゃあっ!?///」ビクッ

絵里「そ、それじゃあまた今度ね!」スタタ

海未「ちょ、ちょっと待ってください!」

絵里「待たないわよ!///」ガチャガチャ

絵里「……あ……れ…?」ガチャガチャ

海未「??どうかなさいましたか?」

絵里「あれ、これ鍵……開いてるわよね?なんで開かないのよ……」ガチャガチャ

海未「え、絵里先輩、いったん落ち着いてください。ドアから手を放して説明してくれませんか?」

絵里「海未……たぶん私たち、閉じ込められた、かも…」

海未「え……えぇぇ!?」

210: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 21:58:02.43 ID:4lXVVpyy.net
海未「閉じ込められた……って…」

絵里「砂利がドアの溝に詰まって動かなくなったわ……どうしましょう」

海未「どうしましょう……って開けるしかないでしょう!?」

絵里「たぶん引いてみたら砂利がずれて扉が動く気がするのだけれど……引っ張る構造にできてないから私の力では難しいわね」

絵里「外から押す力を加えてもらう…とかしないといけないわ」

海未「た、助けを呼ばなければ……!」

絵里「そうしたいのだけれど……私、生徒会室に携帯置きっぱなしだわ」

海未「わ、私はっ……って私もないです!?」

えりうみ「………」

212: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:01:03.06 ID:4lXVVpyy.net
海未「そうです!大声を出して体育館のみなさんに気づいてもらう方法は……」

絵里「今日は体育館が使用禁止になってるわ。この隙間から覗いてるけど誰一人としていないわね」

海未「一体どうすれば……」

絵里「とりあえず、頑張って引いて扉をずらしてみるか、誰かくるまで待った方がいいわね。山田先生が心配して来てくれると思うし」

海未「はぁ……こんなことになるとは…」

絵里「……ごめんなさい」

海未「??」

絵里「さっき私が勢いよく扉を閉めたばっかりにこんなことに……」

海未「そんな、不可抗力ですよ。まさか閉じ込められるだなんて思ってもみなかったですから」

214: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:04:33.13 ID:4lXVVpyy.net
絵里「それだけじゃないの。前々から体育館倉庫の状態が悪いって生徒会に意見が来てて…それを無視してたのもこうなった原因にあると思うわ」

海未「いま後悔しても仕方がないでしょう。とにかく体力を消耗しないようにしないと……」

絵里「……そうね。あまり意識してなかったけれど、意外と暑いわ……」ムシムシ

海未「夏も近いですからね…今日の気温は30度と聞いていましたし、ここは……」

絵里「よいしょ……っと…」ドサッ

海未「…なにしてるんですか?」

絵里「とりあえず座りましょう?ちょっと埃がついてるマットだけど…立ちっぱなしじゃ辛いでしょう?」スッ

海未「そう、ですね。それでは失礼します」スッ

215: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:11:13.24 ID:4lXVVpyy.net
絵里「あ、それとこれも飲んで。こっちくる時に買ってたの忘れてたわ」

海未「え、でも…悪いですよ」

絵里「熱中症で倒れられるよりは余程いいわ。ほら、早く飲みなさい」グイグイ

海未「んっ…!ちょ、ちょっと…押し付けないでください…!」

ボトッ…ボトト…

海未「つめたっ…」

絵里「あ……ごめんなさい」

海未「もう……一人で飲めますから…」ゴクッ

海未「っはぁ……すみません、ありがとうございました」

絵里「ん、どういたしまして」

216: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:15:56.62 ID:4lXVVpyy.net
絵里「私も飲んでおこうかしら」キュッ

海未「……あの」

絵里「なに?」

海未「絵里先輩、もしかして素がでてませんか?なにかいつもの絵里先輩とは違った印象が……」

絵里「別にいままでが素じゃないってわけじゃないのだけれど…確かにちょっと気は抜いてるかも」

絵里「まあ、焦ったって今は仕方がないってことで考えてるわ。んくっ……」ゴクッ

海未「ぁ………////」カァァ

絵里「っはぁ……ん?どうかした?」

海未「い、いえっ…なんでも……///」

218: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:19:48.58 ID:4lXVVpyy.net
絵里「……ふーん」

絵里「間接キスで恥ずかしがっていいのは中学生までよ」クスクス

海未「なぁっ……!///」

絵里「…ね、ドキドキしてるでしょ?」

海未「し、してないです!」ドキドキ

絵里「本当に?確かめさせてよ」

海未「なに言ってるんですか!あと絵里先輩やっぱり性格変わってますよね!?」

絵里「……少しだけ、怖いの」

海未「え……」

絵里「私、暗いところがすごく苦手で……その影響があってか狭いところもあんまり好きじゃなくて……」

絵里「こういうこと他の人に言うとからかわれたりして面倒だから言わないようにしてるのだけれど……海未になら、いいかなって」

海未「絵里先輩……」

219: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:24:17.58 ID:4lXVVpyy.net
海未「その、実は私も…地震が苦手なんです。ですからこういう閉鎖された空間にいるとどうにも落ち着かなくて……」

絵里「ふふっ、似た者同士ね?」

海未「そうですか?」

絵里「そこは素直に同意するところよ」クスクス

海未「ふふっ…」

絵里「なんだか海未と話してたらあんまり怖く無くなってきちゃったわ。ありがとうね」

海未「私もです。絵里先輩とはとても話しやすいですし、なんだか安心します」

絵里「そう言ってもらえると嬉しいわ。……それにしても、やっぱり暑いわね……ジメジメしてるし、助けが来るまで精神がもつかしら」ヌギッ

海未「っ!?///」

220: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:27:33.80 ID:4lXVVpyy.net
絵里「ああもう、汗で張り付いて脱ぎにくいわね……」ヌギヌギ

海未「な、なにしてるんですか絵里先輩!!///」

絵里「暑かったらそりゃあ脱ぐでしょう。というかあなたも脱いだ方がいいわよ?なんでこんな暑い日にベストしてるのよ」

海未「わ、わたしは……いいです」

絵里「そんなこと言っておでこから汗が噴き出してるじゃない。はい、タオル」ポスッ

海未「わぷっ……」フワッ…

海未「っ!!///」ドキッ

海未「ん………//」クンクン

絵里「……ちょっと、あんまり匂い嗅がないでくれる?一応今日使ってるから恥ずかしいのだけど」

海未「うわああああっ!?////すみませんすみません!!いい匂いがすると思って、つい…!」

絵里「使用済みのタオルを嗅いでいい匂いだなんていよいよヘンタイさんみたいよあなた……これ以上は海未の名誉のためにも掘り下げないけれど」

221: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:31:03.33 ID:4lXVVpyy.net
海未「……ふぅ」フキフキ

絵里「………」ジーッ

海未「っ」ピタッ

海未「………そんなにじろじろ見られると、恥ずかしい、です……///」

絵里「海未、やっぱりベスト脱ぎなさい。見てるこっちが暑苦しくなるわ」

海未「で、ですが……」

絵里「問答無用、大人しく脱がされなさい!」バッ

海未「きゃあああああっっ!?///」

222: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:34:50.97 ID:4lXVVpyy.net
絵里「よしっ、これでだいぶ楽になったでしょう?ちゃんと状況に合わせて服を脱いだり着たりしな……い、と……」

海未「うぅ……///」ベッタリ

絵里(目の前に映るのはワイシャツを汗で体に張り付かせた美少女。とても両手では隠しきれないほど透けていて……エ い、という言葉が一番似合っていたと思うわ)

絵里「う、海未……インナーとか着なかったの?」

海未「その、今日は暑いと聞いていたものですから、もうそのままブラの上にワイシャツを着ようと思って出掛けたのですが……」

海未「予想以上に汗で濡れてしまっていて…張り付いて透けて見えるのが恥ずかしくて急遽バッグの中に入れておいたベストを着たんです……」

絵里「それは、私もたまにやるときはあるけれど……」

絵里(今それを見られるのとでは全然違ってくるでしょ!……と言いたいところだったけれど、なにが違うのかしら、そもそも脱がせたの私じゃない。密室、二人きり、体育館倉庫、女の子同士……ってなにを考えているの!?)

224: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:38:23.56 ID:4lXVVpyy.net
海未「あの、そろそろベストを……///」モジモジ

絵里(…やっぱりこの子、よく見なくてもかわいい……人気があるっていうのもわかる気がするわ……)ドキドキ

絵里(えっ、なにこの心臓の音…私のよね?なんでこんなドキドキして……)ドキドキ

海未「え、絵里先輩?」ジッ

絵里(そんなに輝く瞳で私を見つめないでよ、私に何して欲しいの?あっ、ベストって言ってたわね。でも他にも欲しいものあるでしょう?私が欲しいだけ?……そうかも)

絵里「……海未」キュッ

海未「え…あ、あの……?」

絵里「動かないでね、少しで済むから……」

226: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:41:57.95 ID:4lXVVpyy.net
海未「なにをなさるおつもりなのでしょうか……とにかくこの手を一旦離していただけるとありがたいのですが…」

絵里「大丈夫、怖がる必要なんてないから…」グイッ

海未「ちょっと、いい加減にっ……!」ツルッ

海未「あっ……」

絵里「っ!?危ない!」ギュッ

ステンッ

絵里「っ……大丈夫?頭打ってない?」

海未「は、はい。頭がうまくマットに収まってくれたので……っ!///」

絵里「どうかし……っ///」

絵里(いつの間にこんな体勢になってしまったのかしら。気づくと海未は私の下敷き、私が押し倒す形になってしまっていた)

227: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:46:59.49 ID:4lXVVpyy.net
絵里(相変わらず海未はその瞳に私を映し続ける。彼女の真っ直ぐな目に捉え続けられていると、こちらの理性が音を立てて崩れ去っていく錯覚に陥った感じがする)

絵里「ねえ海未。………」

絵里(あとに続く言葉が出てこないわ。語彙を操る能力が完全に欠如してるみたい、その代わりと言っては大胆すぎるのだけれど…)

シュルッ…

海未「ぁ………」

絵里(いつの間にか海未のリボンを解いてしまっていた。海未も声が出ないようで、『だめ』といいたいことはわかったけれど、止められないわ)

海未「っ………」パチッ

絵里(いよいよ海未の瞳に私が映らなくなった。覚悟を決めてくれたのかしら、それじゃあ私もあなたに恥をかかせないようにしないと、ね)

230: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:51:03.81 ID:4lXVVpyy.net
プチップチッ

海未「っは……あ……///」

絵里(第二ボタンから、自分でも驚くほどの手際で海未のワイシャツのボタンを外していく。海未に手馴れてるって思われてないかしら。一応私、こんなことするの、あなたが初めてなのよ?)

絵里(でもまあ、昨日まで少し険悪だった人にこういうことするだなんて、今までそういう経験が何度かあるって思われても仕方がないかしら_)

ガコンッ

えりうみ「っ!?」バッ

教師A「あれ、開かない……半開きだから鍵は掛かってないのに……」

教師A「絢瀬、と園田ー?そこにいる?もしかして閉じ込められた?」

絵里「あ、ハイ!どうも砂利がレールに詰まったみたいで……!」

絵里(ってなに普通に返事してるのよ!?海未の格好見られたらただじゃ済まないわよ…!)

231: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:55:29.39 ID:4lXVVpyy.net
教師A「通りで帰ってこないと思ったよ、ちょっと待ってろ」

絵里「う、海未!今のうちにボタンだけでも…!」

教師A「ふっ…!」ズゴンッ

ガラララ

教師A「よし、開いた……ってなにしてんの」

海未「ぇ………」

絵里「あ、ち、違うんです!これは私がむりやり………!」

教師A「……他の不真面目な生徒とかだったら一発で停学、謹慎処分にするところだけど」

教師A「お前ら二人のことだからどうせ変な成り行きでもあったんだろう。変なところで互いに抜けてるのはなんとなくわかるし」

教師A「見なかったことにする。早く倉庫の鍵を返しに来るように」スタスタ

232: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 22:59:22.64 ID:4lXVVpyy.net
絵里「………」

絵里「山田先生が理解のある人でよかったわ……ねえ、う_」

海未「……っ///」カァァ

絵里(海未の方を見ると、すごく顔を赤くしていた。ただ泣いているようには見えなかったし、怒っている様子もなかった。けれど……)

絵里「…ごめんなさい、もう少しであなたに酷いことするところだったわ」

絵里(……もう絶対頭が上がらないと思っていた。どんな罵倒でも受け入れようとも考えていたのに)

海未「……ふふっ」

絵里「え……」

233: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:03:12.99 ID:4lXVVpyy.net
海未「なにを謝る必要があるのですか。あなたは私が一人では終わらないようなことを一緒に手伝ってくれました。絵里先輩は感謝されるべきです」

絵里(未だ顔に赤みを帯びたまま話す海未はとても美しく笑っていて……もしかしたら、いえ、きっと私は海未をこの時に好きになったのだと思う)

海未「それでは…ごきげんよう」ペコリ

絵里(お嬢様のような挨拶と習慣化された綺麗なお辞儀をいつの間にかされたと思った時には海未の姿はもう最初に見たときのもので……あまりもの速さに私も)

絵里「…ごきげんよう」

絵里(とおうむ返しをすることしかできなかった)

絵里「あ…鍵は私が返さないといけないのね」

237: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:11:37.15 ID:4lXVVpyy.net
絵里(数日後、廊下を歩いていると二年生3人組に会った。3人組というのは高坂さんと南さん……それと海未のことだ)

絵里(彼女たちはオープンキャンパスに向けて自分たちのパフォーマンスの向上に奮起している。私は……海未のことは関係なく揺れていた、だから挨拶をすべきか迷っているうちに)

ことほの「おはようございます!生徒会長」

絵里(息を合わせて二人が先に挨拶をする、てっきり3人一緒に言うのかと思ったから海未をみてみると)

海未「っ……ごきげん、よう」

絵里(少しだけ躊躇って、意を決したように挨拶をしてくれた)

239: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:15:04.09 ID:4lXVVpyy.net
絵里(名前は呼んでくれない、もし私が返事で『海未』と呼んだとするとこの関係を変えてしまうことになるでしょうし)

絵里(逆に『園田さん』と呼べば今までの廃校を阻止しようとする女の子『達』とそれを快く思わない生徒会長という関係が続いて、体育館倉庫でのことはなかったことになる)

絵里(海未は、私に任せるって言いたい……のだと思った。だから私は……)

絵里「おはよう、高坂さん、南さん、園田さん」

絵里(抑揚もつけずに、3人を1つの塊として見るような挨拶をしてしまった)

海未「………」

絵里(瞬間、海未がとても哀しい顔をしたような気がする。……そんな顔しないでよ、私まで顔が歪んでしまいそうになるじゃない)

絵里(表情の変化を隠せそうになかったので、そのまま通り過ぎようとすると)

穂乃果「あの、生徒会長。今日のお昼は生徒会室にいますか?」

絵里「えぇ、いるわ」

穂乃果「わかりました、ありがとうございます!」

絵里「……?」

240: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:16:22.12 ID:4lXVVpyy.net
絵里(その後、何故か指導を頼まれて、トントン拍子に私もμ'sに加入することになって、オープンキャンパスを成功へと導いて……)

絵里(知らない間にメンバー全員をいつの間にか下の名前で呼ぶようになって、もちろんそれは海未も例外ではなくて、違和感なく受け入れられたのだけれど…)

絵里(あの時点で私が『海未』って呼んでいたら、なにか変わっていたのかしら)

241: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:20:32.06 ID:4lXVVpyy.net
海未(夏がもう終わろうとしている頃)

海未(最近あったことといえば修学旅行で沖縄へ行ったことくらいでしょうか)

海未(透き通った海、10月も近かったというのにあの暑さ。それも東京とは違ったじめじめとしたものではありません。台風であまり満喫できなかったですが…とてもいい思い出となりました)

海未(μ'sの活動で言えば……凛がとても活躍してくれたそうです。心境にも変化があったようで、妹の成長を喜ぶ姉のような感覚ですね)

海未(それはさておき、絵里のことです)

海未(数ヶ月前でしょうか。まだ絵里がμ'sに加入する以前に体育館倉庫に閉じ込められる。なんてことがあった気がするのですが)

海未(どうにも絵里はその話を一切しませんし、私も記憶が薄れてきているので、もしかしたら夢だったのかも…なんて思ったりするのです)

海未(ですが最近、絵里を見ると気持ちが乱れるのです。打ち合わせなどでよく話すので、少し意識をしてしまっているのかもしれませんが、私はその出来事が重要だった気がしてなりません)

242: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:24:52.97 ID:4lXVVpyy.net
ガチャ

海未「……手紙?」

『放課後に体育館倉庫で待っています』

海未(綺麗な字でしたが、名前も書かれておらず、それだけでした)

海未(幸いこの学校には危ない人はいないはずなので、安心して向かおうと思うのですが…)

穂乃果「海未ちゃんそれラブレター!?」

海未「ちがう、でしょう。こんな普通の封筒に入れられているのですから、なにか個人的に用事があるはずです」

穂乃果「えー?でも海未ちゃんラブレターの1通や2通くらいもらったことあるでしょ?」

海未「それは、ないことはない、ですが……とにかくそういうわけですので、練習には遅れるかと思います」

穂乃果「ん、わかった!絵里ちゃんにも会ったら伝えておくね」

海未「よろしくお願いします」

244: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:28:16.24 ID:4lXVVpyy.net
放課後

穂乃果「うみちゃーん、絵里ちゃんも放課後用事で今日お休みするんだって」

海未「絵里が……?むぅ、そうですか。では今日の指導役で凛はどうでしょうか、もしかしたら負担になるかもわかりませんが、私が戻ってくるまでの間ですので」

穂乃果「わかった、じゃあ話してくるね」

海未「それでは、失礼します」

穂乃果「がんばってきてねー!」


海未「体育館倉庫……やはり既視感がありますね」

海未「さて、待ち人は……」

絵里「こんにちは、海未」

海未「絵里……?どうしてここに」

絵里「まあ、お話は作業しながらしましょう?ちょっと手伝いなさい」

海未「えっあっ、ちょっと!?」

246: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:32:02.03 ID:4lXVVpyy.net
海未「もしかしなくても、手紙を出したのは絵里だったのですか?」ヨイショヨイショ

絵里「そうよ、大当たり♥ 」ヨイショヨイショ

海未「あんな回りくどいことをせずに、直接言ってくださればいいのに…」

絵里「雰囲気が大事なのよ。封筒が入ってた時、ドキドキしたでしょう?」

海未「茶封筒だったではありませんか。誰かが寝ぼけて書類を放り込んだのかと思っていましたよ」

絵里「あー私ならそういうことたまにやるかも」

海未「ちょっと、しっかりしてくださいよ」クスクス

247: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:35:36.27 ID:4lXVVpyy.net
海未「そういえば、誰から頼まれたのですか?」

絵里「え?」

海未「倉庫の整理ですよ、もう生徒会長ではありませんし、絵里は3年生なのですからこんなことを頼まれるのもどうかと思うのですが」

絵里「ううん、自主的にやってるの」

海未「なぜです?」

絵里「やり残したことだったからよ」

海未「…そうですか」

絵里「よっこらしょ……」ドサッ

海未「ちょ…なにしてるんですか、折角埃が付かないように積み上げていたのに」

249: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:39:21.24 ID:4lXVVpyy.net
絵里「まあいいから。少し休憩しましょう?さあ座って」ポンポン

海未「……少しだけですよ?」スッ

絵里「ありがとう、海未のそういうところ好き♥ 」

海未「……///」

絵里「海未、一瞬だけ後ろ向いてくれる?」

海未「え、なぜです?」

絵里「おねがい」

海未「はぁ…」クルッ

ギュッ

海未「っ!?///え、絵里!?」

250: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:42:54.67 ID:4lXVVpyy.net
絵里「静かにしなさい。……少し、話に付き合ってくれる?」

海未「話…?」

絵里「海未、6月か7月か……夏も近かった頃かしら。それぐらいのこと覚えてる?」

海未「もしかして、それって…」

絵里「うん、私とあなたが倉庫に閉じ込められた時のこと」

海未「やっぱりあれは…夢じゃなかったのですね」

絵里「夢?」

海未「はい、なぜかあの時の記憶が薄れていて……もやかかっていた感じだったのです」

絵里「そうなの……もしかしたら、忘れてしまいたかったのかもね」

海未「どういうことですか?」

251: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:46:15.62 ID:4lXVVpyy.net
絵里「あのあと、私が初めてμ'sを指導した時の朝、あなたたち3人に会ったの」

絵里「その時に私があなたに挨拶する時に、倉庫の中では『海未』って呼んでいたのに、あの時は『園田さん』って言ったのね」

絵里「そしたら海未、すごく哀しい顔してた」

海未「………」

絵里「それから私はμ'sに入って、あなたとも普通に仲良くしてきたつもりだけれど、私はずっとあなたのその顔が頭の中に残ってたの」

絵里「いつか謝りたいって思って、でも今更?…なんて思ってたら、本当に今更になっちゃった」

海未「……覚えていますよ、絵里……先輩」

絵里「海未……」

252: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:49:40.38 ID:4lXVVpyy.net
海未「倉庫の一件で絵里と距離を縮められたと思っていたのに、出会い頭に園田さんと呼ばれたものですから、少しだけ傷つきました」

絵里「…ごめん」

海未「ですがその時の私はそれでいいと言い聞かせていたと思います。絵里には絵里の立場がありましたから、尊重すべきだと」

海未「後になってこうしておけば、ああしておけば……なんて考えて心がいっぱいになったので、記憶から消してしまっていたのだと思います」

絵里「……勇気がなかったの。あの時に海未って、その一言だけ言える勇気。そのせいで海未を傷つけてしまったこと…本当に申し訳なく思ってる」

海未「……いいですよ」

絵里「ぇ……」

海未「あの時がどうであれ、今は私と絵里は仲良しです、少なくとも私はそう思っていますが…違いますか?」

絵里「っ違わないわ!私は海未のことを大切に思ってる!」

海未「ありがとうございます、それは私もです。…だから、それでいいのではないでしょうか」

253: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:53:15.20 ID:4lXVVpyy.net
絵里「ほんとにいいの?それで……私を許してくれる?」

海未「えぇ。とはいえ許すもなにも怒ってもいないのですが……とにかく絵里が楽になるのでしたら許しましょう」

絵里「………よかったぁ~」ギュウゥゥ

海未「え、絵里っ…くるし……」

絵里「ずっと心の中に溜め込んでたの、海未が今でも気にしてるんじゃないかとか、そのせいでわだかまりができてるんじゃないかとか……今日吐き出せて本当によかった!…ありがとう、海未♥ 」ドサッ

海未「ちょ、ちょっと…抱きしめたまま倒れられると……うわぁっ!?」ドサッ

絵里「…もうすこし、このままで居させて?」

海未「倉庫の整理は……」

絵里「これを片付ければ終わりよ♥ 」

255: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:56:26.61 ID:4lXVVpyy.net
海未「……こんなところ誰かに見られたら、『今回こそ』停学しょb……はっ!?///」

絵里「ふーん、覚えてたんだ?」

海未「あ、いや、ちが……そのっ…///」

絵里「あの時も本当にごめんね、暑さで頭がやられちゃってたのか、閉じ込められるっていう非日常で気が動転してたのか……あなたをキズモノにしちゃうところだった」

海未「キズモノって……///」

絵里「でも、確かに本気だったの」クルッ

海未「え………」ドサッ

絵里「ふふ…まるであの時みたい♥ 」

絵里「やっぱりいつ見ても、あなたの瞳は綺麗な輝きをしているわ…」

海未「え……り……//」

256: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:57:15.24 ID:4lXVVpyy.net
絵里「もう1つ、重大な話があるの。……今思いついたけど、すごく重大」

絵里「前にここに二人できて、一緒に作業して、閉じ込められて、いろんな話をして……あなたのことを初めて知れたと思ったわ」

絵里「とても誠実な人で、人のことをよく考えていて……すごく素敵な人だと思ったし、守ってあげたくなった」

絵里「それはμ'sに入って、あなたと交流する時間が増えてからも同じ。それでね、私__」

海未「………!」ギュッ

絵里「えっ!?海未!?体勢が崩れちゃっ……!」ドサッ

海未「……ずっとあなたが好きでした、絵里」

絵里「あ、え………///」

絵里「なんで今言うのよ……私が今言おうとしたのに…//」

海未「すみません……記憶が鮮明になると共にあなたへ気持ちが大きくなっていって、耐えきれなくなってしまいました///」

257: (やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/26(火) 23:58:38.82 ID:4lXVVpyy.net
絵里「もう……大好きよ、海未」

海未「愛しています、絵里。……少し重いですか?」

絵里「ううん、私も愛しているわ。海未♥ 」

海未「………嬉しい、です♥ 」

絵里「ふふっ……ねえ、練習サボってこんなところで抱き合ってるだなんて、すごく悪いことしてるみたいね?」

海未「えぇ、本当に。こんなところ見られてはなんと言われるかわかったものではありません」

海未「ですが……たまには、いいですよね」

絵里「あら、海未ちゃんがそんなこと言うだなんて珍しい♥ 」

海未(一度、忘れ去られた時間がもう一度進み始めた気がします。絵里と一緒にその時間をずっと過ごせたらいい、なんて…私には贅沢過ぎるのでしょうけど、今だけは……)

海未「すき、です……絵里♥ 」ギュッ


おわり??

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1469513561/

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