【SS】絵里「アヒルの子どもはみずうみで」

SS


1:※ふたなり(非工口) (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:44:27.07 ID:7YVozdpe0.net
絵里「――それで海未ったら、
   さっきまで一人でなに読んでたのかしら?」にやっ

海未「っ、いいでしょう私の話は!」

海未「それより絵里、今日は遅くなるんじゃなかったんですかっ、
   その、心の準備が・・・・
   いやいや今は絵里に聞いてるんですっ!」

絵里「掃除当番だと思ってたんだけど、勘違いだったのよ。
   そしたらほら、向こうの窓、
   部室でにやにや本読んでる海未が見えてね、」ひょいっ

海未「にやにやなんてしてな――ああっ、返してくださいっ!?」


絵里「なになに、どんなはずかしい本を・・・・って、」

 【完訳 アンデルセン童話集(岩波文庫)】


絵里「これのどこが隠すような本なのよっ」ムッ
 

3: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:49:20.37 ID:7YVozdpe0.net
海未「それは、そうですけど・・・
   見られたら、なんとなく隠しちゃうじゃないですか」むぅ

絵里「うーん、でも読んでても違和感はないわねぇ。
   だってほら、海未の作る歌詞って、ロマンチックじゃない?」ぱらぱら

海未「・・・確かに、参考になればと
   子供の頃に読んでいた本をひもといてはみたのですが」

絵里「子供の頃に読んでたんだぁ・・・ふふっ。
   それより、根詰めすぎちゃだめよ? 今は急ぎの予定もないんだから」

海未「っ・・・その、こういう時期だからこそ心身を鍛えるべきなんですっ!
   って、なにがおかしいんですかっ」

絵里「ちがう、違うわよ海未。
   私も小さい頃に絵本で読んで、・・・大好きだったから。

   ねぇ、『みにくいアヒルの子』って、この本に入ってる?」
 
4: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:50:31.45 ID:7YVozdpe0.net
海未「ええと・・・その巻ではないですね。
   家に文庫で全七巻そろっていますので、よかったら」

絵里「そうね、・・・私も久しぶりに読んでみたくなったかな」

海未「そうですか・・・!
   でしたらあした全巻持ってきますね!」ルンルン


絵里「・・・あの、すごーくうれしいんだけど、
   いきなり全巻まとめては、ちょっと読みきれないと思う・・・」

海未「っ!・・・そうですね、すみません///」
 
5: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:52:06.14 ID:7YVozdpe0.net
絵里「ふふっ、心配しなくても大事に読ませてもらうわ」

絵里「そうだ、『アヒルの子』の巻から借りていいかしら?」

海未「はいっ! 絵里はあの話が好きなのですか?」

絵里「そうねぇ・・・『親指姫』や『雪の女王』も好きだけれど、
   やっぱり、アヒルの子は別格っていうか・・・

   あの話、考えてみたら、私がバレエを始めるきっかけだったの」

海未「そうなんですか・・・
   あれ、でもあの話って、バレエは出てこなかったような、」



ガチャッ

希「もーっ、えりち暇やったんならうちの当番手伝って!
  って、あれ?海未ちゃん? ・・・・さては急接近?」

海未「ちょっ、なんの話ですか!? やめてくださいっ!」///
 
6: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:53:12.87 ID:7YVozdpe0.net
希「あははっ、海未ちゃんかわいいなぁ。
  えりちもそう思わん?」

海未「・・・今日のユニット別練習、とっても楽しみですね」ギロッ

希「ひっ?!
  やぁんえりち助けてーっ! 海未ちゃんがいじめるぅーっ!!」

海未「元はと言えばあなたがっ!!
   っ、まあ今する話じゃないですけどね、はい、」


絵里「本当に何の話よ、おいてかないでよ・・・
   あっそうだ、
   いきなりだけど、希はアンデルセンの童話で好きなのある?」

希「ほんとにいきなりやね・・・

  うーん、・・・あっ、『ブレーメン』! みんなで楽しそうだから!
  あと、『ラプンツェル』もうち好き!」



海未「・・・・それは両方ともグリムです」はぁ

希「えっ、・・・そうなん?」
 
7: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:56:58.67 ID:7YVozdpe0.net
絵里「もっとこう、ないの?
   『人魚姫』とか、『マッチ売りの少女』とかあるでしょう」

希「・・・うーん、アンデルセンさん、
  もっとハッピーエンドの話はなかったん?」むむむ

絵里「なっ、あれはあの終わり方だからいいんじゃないっ!
   ハッピーとかバッドじゃなくって、
   幻想的なのにリアリティがあって、それは彼の生涯が反映さr」クドクド

希「ま、まあまあ!
  えりちの言いたいことは分かったから、ね?」あわわわ

絵里「そんな適当なこと言って・・・
   あのねえ、映画とかで勝手にハッピーエンドにするのって本当に、」

海未「絵里。スマホが鳴ってます」

絵里「え? ああっもしもし、亜里沙どうしたの?
   ごめん今の話はあとでね、」

ガチャッ



希「いやー命拾いしたわぁ」

海未「・・・」

希「・・・それで、海未ちゃん?
  今のえりちとのやりとり、そんなに不自然だったかなぁ?」
 
8: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:57:59.11 ID:7YVozdpe0.net
海未「・・・普段は大丈夫なんですけど、
   気にし出すと、気になっちゃうんです」シュン

希「まぁまぁ。えりちも海未ちゃんと絶対仲良くなりたいと思ってるよ」

海未「それは全員に対してですよ・・・
   それに、・・・気のせいだと良いのですが、」

希「・・・?」

海未「・・・やっぱり、絵里はどこか、今も壁を感じるんです。
   私だけでなくて誰に対しても、
   ふとした弾みで、・・・遠くにいってしまうような」

希「・・・そうかなあ」

海未「否定、しないのですね」

希「・・・うちもね、本当はわかるんよ。えりちの、壁」

海未「希でさえも、そうなのですね・・・」



希「――だってえりちだけ絶対わしわし許してくれないんやもん!!」クワッ

海未「そんな根拠ですか!?」
 
9: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 22:59:37.83 ID:7YVozdpe0.net
希「だから希ちゃんにとってもえりち攻略は高い壁なのです」ふんっ

海未「それは厳しそうですね、あはは」

希「うわー海未ちゃん温度差激しっ・・・

  まあでも、もし本当にそうなら、えりちも嬉しいんじゃないかな」

海未「そう・・・でしょうか?
   人には誰だって、踏み込まれたくない部分の一つや二つ」

希「あるねえ。たとえば海未ちゃんのバス・・・とぁっ?!」ポカッ

海未「真面目に聞いてください」イラッ

希「はい・・・・」
 
10: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:00:51.84 ID:7YVozdpe0.net
希「うーん、でも本当は、
  そんな人だって触れてほしいって思ってたりしないかなぁ」

海未「・・・そういうもの、でしょうか?」

希「いったん胸の奥に押し込めちゃうとね、
  自分でもどうにもならなかったりするん。そういうのって」

海未「・・・・」


海未「あの、さっきから胸の話ばかり続いてませんか?」

希「海未ちゃん、それは自意識過剰やん・・・」
 
11: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:02:39.33 ID:7YVozdpe0.net
  ◆  ◆  ◆


海未(それからずっと、絵里のことを考えていました)

海未(ランニング後、疲れ切った花陽にドリンクを差し出す姿
   真姫と話し合いながら振り付けを作っていく姿
   穂乃果が抱きついて、少し困ったような顔でことりに目を向ける)

海未(それはとても、普段と何一つ変わらない光景のように見えていました。)


海未(私は希にひとつ嘘をついています)

海未(絵里を避けてしまっていたのは・・・きっと、私の方です)

海未(あの人に近づくだけで胸の奥が熱くなって、
   息の仕方もわからなくなって。
   いないと不安で、ずっとあの人の温もりやにおいばかり思い出して)

海未(心の乱れを正そうと日々の鍛錬を増やしても、
   絵里の前に来ると、・・・もうだめでした)


海未(でも、及び腰で遠ざかろうとしていたのは
   この目が節穴でなければ、私の方だけではなかったようなのです)
 
12: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:03:33.88 ID:7YVozdpe0.net
凛「――みちゃん、海未ちゃん?」

海未「あ・・・はっ、失礼しました。それでは柔軟からですね!」

凛「それはもう終わってユニット練習だよ・・・
  ねぇ海未ちゃんどうしたの? 今日、なんだか、」

海未「気温のせいですよ、きっと!
   ほら、今日って最近にしてはこんなに暑いじゃないですか」

凛「海未ちゃんすごいにゃー・・・
  凛なんて、きょうジャージ忘れてちょっと寒かったのに」

海未「そうです! こんな時にこそ日々の鍛錬が・・・」ふらっ


ぱたっ
 
13: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:04:41.28 ID:7YVozdpe0.net
海未「・・・あ、あれ・・・?
   すみません、ちょっと手を、かりても、いいです・・・」


凛「ちょっ、海未ちゃんどうしt・・・うそっ?! すごい熱だよ!?

  ねえ ちょっとみんなぁっ、練習タンマ!!
  いま海未ちゃんが倒れちゃって、熱がすごくてっ、」


海未「っ・・・つぅ・・・大丈夫です、立てます・・・」くらくら



海未(そういう私の声は遠くて、
   凛や駆け寄ってきたメンバーの声も遠くなって)

海未(ひとりぼっちみたいに感じた時、
   誰かの背中の熱が、胸の奥まで流れ込んできました)

海未(私の意識は白い熱に溶かされながら、そのまま――)
 
14: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:06:04.34 ID:7YVozdpe0.net
――――――
――――
――


海未「・・・・ぁ・・・」


海未「ぅ・・・わたしは、どうして・・・・」

海未「・・・あ! そうです、ユニット練習のつづk」


絵里「それはもういいのっ」ぎゅうっ

海未「っ!? え、えり・・・?」


絵里「どうしたのよ海未ぃ、心配したんだからっ・・・」なでなで

海未「あの、ええと、・・・すみません、私は何を、」
 
15: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:08:56.69 ID:7YVozdpe0.net
絵里「海未。ここはどこだか分かる?」

海未「・・・こんなベッド、保健室にしかありません、よね?」

絵里「そうよ。あなた、昨日ちゃんと寝たの?
   体調管理が大事だって、穂乃果やみんなに散々言ってたのにっ、」


海未「・・・ご迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ありまs」

絵里「違うのっ! そんなことじゃなくって、
   ・・・ああもう私なにが言いたいんだろう、えっと・・・」

絵里「・・・とにかく反省してるなら、ゆっくり休んで回復しなさい?
   こないだも言ったけど、今は差し迫ったライブもないんだから」

海未「はい・・・すみません」


絵里「そう、・・・よかったあ。本当に、よかった」ぎゅうっ

海未「っ・・・!」
 
16: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:10:18.48 ID:7YVozdpe0.net
――――――
――――
――


絵里「じゃあ、私もカバン取りに戻るわね。
   自宅にはことりが電話してくれてるから、
   穂乃果と二人に付き添ってもらって、なんなら迎えに――」

海未「・・・あの、ちょっとすみません」

絵里「え・・・?」

 ぎゅうっ


海未「・・・っ」

絵里「・・・ねえ、これ・・・どういう意味」


海未「すみません・・・ごめんなさい・・・」

海未(絵里、ごめんなさい・・・でも、今だけは、おねがいです、)


絵里「・・・・・海未。やめなさい」
 
17: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:12:59.07 ID:7YVozdpe0.net
海未「っ!」


絵里「そういうのは、家でご両親を頼った方がいいわ。
   それかその、
   ・・・あなたには気の置けない、幼なじみもいるでしょう」


海未「いやです、・・・私はっ、絵里がいいんですっ・・・!」


絵里「・・・ごめんなさい、
   でも、そういうの・・・私、困るの」

海未「・・・ぁ・・」


絵里「あなたが眠ってる間、希が全部白状してくれたわ。
   あなたたち二人で、変な悪だくみしてたんでしょう?」
 
18: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:13:54.05 ID:7YVozdpe0.net
海未「ちがっ、そんなんじゃ、ないです・・・」

絵里「ありがた迷惑なのよ、距離感も考えないで・・・
   もうそういうの、勘弁してくれる?」

海未「・・・私は、絵里となかよく、」


絵里「海未。あなたはさっきまで過労で熱出して倒れてたのよ。
   最近ずっとそうだったでしょう? 穂乃果のこといえないわね」

海未「今は絵里の話をしてるんです・・・!」

絵里「・・・だから、早く熱をさましなさい。
   そしたらきっと、気の迷いだったって、分かるから」

海未「・・・なんでそんなこと、ぐすっ・・・ぅあっ、どうしてぇ・・・」
 
19: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/26(月) 23:14:52.26 ID:7YVozdpe0.net
絵里「ごめんなさい。私もちょっと、頭を冷やしてくるわ。
   海未、お大事にね」

海未「っ、・・・・・・はい」

海未「絵里・・・ありがとう、ございました」


絵里「・・・それに、海未のせいじゃないの、ぜんぶ」

海未「え・・・?」



絵里「ごめんなさい。・・・さよなら」


バタンッ


海未(どうして、)

海未(どうしてあなたは、そんなつらそうな顔で言うんですか・・・!)
 
24: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:35:38.62 ID:oRl2d1tQ0.net
  ◆  ◆  ◆

希「・・・」

海未「あの、遠慮せずに召し上がってください。
   お呼びしたのは私なんですから」

希「・・・ごめん、海未ちゃん」


海未「いえ・・・元はといえば、希は私が無理を言って」

希「だけど、わたしがあんな、・・・海未ちゃんまで避けられたり、」

海未「いいんです。
   私が、絵里の都合を考える余裕をなくしてたんですよ」
 
25: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:36:22.49 ID:oRl2d1tQ0.net
希「・・・にこっちがね、あんたたちどうしたの、って。
  他人みたいな感じがする、って。するどいなあ、にこっち」あはは

海未「・・・」

希「海未ちゃんのことも心配してたんよ。
  『μ'sに不仲説が流れたらどうすんのよ』、って」

海未「・・・やさしいのですね」

希「そう、・・・うん」


希「うちね、えりちの壁のこと、見ない振りしてたん」
 
26: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:36:59.72 ID:oRl2d1tQ0.net
海未「それは・・・いつからなんですか?」

希「一年生で出会ったときから、ずっとかな。
  でもうちが気にしすぎるのもよくないかな、って。

  でね? 最近はμ'sのおかげで、あんまり感じなくなってたの」

海未「希は・・・強いのですね」

希「んーん、単純なだけやって。
  単純だから、距離感とかわかんなくて失敗したなあってたまに、」

海未(そんなことないです、
   絵里もきっと、あなたが踏み込んでくれたおかげで)


希「・・・あー。前にもこんなことあったんよ!

  生徒会のスピーチの前日だったかな、リラックスさせようって思って、
  えりちにわしわししようとしたん」

海未(前言の撤回を検討しましょうか・・・)
 
27: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:37:46.30 ID:oRl2d1tQ0.net
希「そしたらえりち、ものすごく怒って。
  ああもう思い出したくない、あんな形相見たことない」ブルッ

海未「あなたはどんな風にしたんですか・・・」

希「いやいや、いつも通りやったんやって!
  ほら、海未ちゃんやにこっちにしてるように!」ワシワシ

海未「あの・・・絵里は、その頃にはもう友達だったんですよね?」

希「一緒にお出かけもしたんよ?! それって普通は友達やん!!」

海未「・・・ええと、では、ちょうど虫の居所が悪かったですとか」

希「うーん・・・
  あれからうちも考えたけどね、
  ・・・合ってるか、自信ないけどね?

  えりち、いきなり誰かに身体をさわられるのが嫌いなん」

海未「・・・ああ」


希「なんか腑に落ちたみたいだけど、
  海未ちゃん、最近いきなりえりちの身体にふれた?」

海未「っ・・・・その、心当たりは・・・あります」

希「・・・ごめん、今のなし」
 
28: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:38:28.96 ID:oRl2d1tQ0.net
海未「いいんです。
   それに・・・そんな人だって、本当は触れてほしいもの、なのでは?」

希「・・・そうかなあ」

海未「もう、希が言ったんですよ?
   私だって絵里もそうだと信じたいんです」

海未「それに、こうやって絵里のことを考えていけば、
   また一歩ずつ近づけると思うんです。
   信じたいんですよ、絵里を。・・・絵里に近づける、自分を」

希「・・・ふふ、強いなぁ。
  じゃあ、うちもえりちとちゃんと話してみる!」
 
29: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:39:09.06 ID:oRl2d1tQ0.net
  ◆  ◆  ◆


絵里「それで、真姫はいつ来るの?」

希「うーん、一年生のクラスはまだ授業なんかなぁ?」

絵里「・・・・」


絵里「ごめんなさい。私ちょっと今日忙しいの」

希「えりち待った!」ぐいっ

パシッ


希「っ!」

絵里「・・・ごめんなさい。
   その、こんなことするつもりじゃなかったの」

絵里「でも・・・ねえもういいかしら?
   急ぎの用事がなければ、」


希「・・・えりち、うちらのこと、苦手?」
 
30: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:39:59.58 ID:oRl2d1tQ0.net
絵里「そんなことっ!

   ・・・・自分の胸に、聞いてみたら」

希「・・・嫌いではなかった、って信じてるよ」

絵里「親しき仲にも、って言うでしょう」

希「それでもうちらは、同じメンバーなんだよ?
  言えないなら他の誰かにだっていい、
  せめて、海未ちゃんには、」

絵里「わかってる、・・・わかってるからお願い」


希「海未ちゃんはえりちにいじわるなんてしてない。
  えりちのことを信じたくって、仲良くしたかっただけ」

絵里「やめてよ・・・」

希「それにね、うちだって・・・
  えりちのこと、できるだけわかってあげたいから、」

絵里「――やめてって言ってるでしょう!?

   私のことなんにも知らないくせに、勝手なこと言わないでよ!」


希「ぁ・・・」

絵里「・・・っ!」
 
31: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:41:26.17 ID:oRl2d1tQ0.net
希「・・・ごめん。またあとで、はなそうね」

絵里「・・・のぞみ、」

ガチャッ  バタンッ



絵里「・・・・・」


絵里(あぁ・・・・もういや、もういやよ)

絵里(希も海未も、ちゃんと私のことを分かってるのに
   結局同じエンディングにとらわれて)

絵里(私はいつまでたっても、みにくい姿のままで
   結局ずっと自分自身に呪われたままで)


絵里(・・・いっそ、自分をころしてしまいたくなるわ)


絵里「・・・ごめんなさい
   私はまだ、だめだったみたい」
 
32: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:42:01.11 ID:oRl2d1tQ0.net
――――――
――――
――

亜里沙「・・・ねぇ、」

絵里「もう、そんな顔してどうしたの?
   早く食べないとお味噌汁、さめちゃうわよ」

亜里沙「お姉ちゃん、きょう学校で何かあったの?」

絵里「・・・どうしてそう思ったのよ?」ふふっ

亜里沙「だって・・・
    お姉ちゃん、前みたいな顔してた、から」

絵里「・・・・」


絵里「ねぇ、亜里沙はしあわせになるのよ。
   すてきな人と普通に結婚して、普通のしあわせな家庭を築いて」
 
33: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:44:08.89 ID:oRl2d1tQ0.net
亜里沙「そんなの、亜里沙だけじゃいや、
    お姉ちゃんだって、だれかとお嫁さんに、」

絵里「やさしいのね、あなたは」ぎゅっ

亜里沙「あっ・・・」


絵里「・・・私、三年間もうかれちゃってね。はじめてだったから。
   だから、自分のことだって忘れちゃってた」

亜里沙「・・・お姉ちゃんだって、しあわせになれるもん」ぎゅうっ

絵里「そうね、私は私なりに青い鳥をみつけるわ。
   ・・・ありがとう、亜里沙」

亜里沙「でも、μ'sの人たちは違う・・・
    お姉ちゃんのこと、分かってくれるのに」

絵里「ごめんね・・・私、こわがりだから」

亜里沙「そんなのって・・・」


絵里「さ、早く食べなくちゃ!
   私は大切な家族がいればじゅうぶんだから。ね?」

亜里沙「・・・うん」
 
34: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:45:39.40 ID:oRl2d1tQ0.net
絵里(小さい頃から、アンデルセンのあのお話が好きだった)

絵里(ひとりぼっちで泣いてた頃だって、
   いつか自分の居場所が見つかるって夢見て慰めてきた)

絵里(髪や目の色も、からだのかたちも、周りと全然違った私は
   あの物語のアヒルの子どもにそっくりだった)

絵里(どこに行っても気持ち悪がられて、
   転々としながら、一度は日本を出てみたことだってあった)


絵里(『リトル・ダンサー』って映画の、あの男の子)

絵里(私はあんな風に「本当の自分」を認めてほしかったんだと思う)
 
35: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/27(火) 08:48:31.47 ID:oRl2d1tQ0.net
絵里(十年前、おばあさまに連れられて
   モスクワのボリショイ劇場で見たクラシックバレエ作品
   ピョートル・チャイコフスキー作曲、『白鳥の湖』)

絵里(呪いをかけられ姿を変えられた女の子オデットが、
   月の光を浴びて、永遠の愛を誓われることで呪いを解こうとする物語)

絵里(オデットも、アヒルの子も、みずうみで本当の姿に変われたの)

絵里(私も白鳥に、認められる自分に生まれ変わりたかった)


絵里(・・・でも、私のからだに掛けられた呪いは、
   まだこんなに強くって)

絵里(海未の気持ちは分かってた、
   同じになって一つになりたかった
   そしたらあのオデットのように、生まれ変われるのに

   ・・・でもいえないわ、いえないのよ)


絵里(だって、あなたに見つけられたら、
   私、・・・今度こそきっと、こわれちゃうから)
 
39: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:00:01.34 ID:ITtJvse+0.net
  ◆  ◆  ◆


海未「――はい、分かりました。
   もちろん希のことも伝えておきます。
   それでは、そろそろ絵里の家なので失礼します」ピッ

海未(・・・・私は、あなたの力になれるのでしょうか)

海未(いえ、なるんです! なるために私は来たんですっ!)ぶんぶんっ



ピンポーン

亜里沙「海未さん、こんにちは!」ガチャッ
 
40: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:02:15.11 ID:ITtJvse+0.net
海未「はい、こんにちは。
   昼にラインでお伝えしました通り、絵里のお見舞いに来ました」

亜里沙「ありがとうございますっ!
    あがってください、羽を伸ばして足を洗ってください!!」

海未「え、ええ・・・・ありがとうございます」


亜里沙「あ、ホットココアのみませんか?
    亜里沙、最近はまっちゃってて、いい感じなんです!」

海未「はい、ではお言葉に甘えさせていただきます」にこっ

亜里沙「やったあ! えへへっ、がんばりますっ!」たたたっ
 
41: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:03:22.80 ID:ITtJvse+0.net
海未(たまには、このような甘い飲み物もいいですね)

海未(遅いですね・・・絵里の具合も、芳しくないのでしょうか)

海未(・・・あ、あのお人形さん、かわいいです。
   絵里が作ったのでしょうか?)

海未(って、いけませんいけません!
   私は遊びに来たんじゃありません、気合いを入れ直さないと、)



ガチャッ

海未「・・・あの、どうですか?」

亜里沙「・・・お姉ちゃん、まだ眠っているみたいです」

海未「そうですか・・・大事でなければよかったです」

亜里沙「でも、すごく苦しそうで、
    いやな夢でも見てるのかな・・・って」
 
42: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:12:16.39 ID:ITtJvse+0.net
海未「・・・私のせいかもしれません」


亜里沙「そうなんですか?」

海未「はい。絵里はその、・・・うまく言えませんが、
   自分の世界があって、あまり踏み込んでほしくない人なのでは、と」

亜里沙「・・・ええ? そうかなあ・・・
    あっすみません!」

海未「家では、絵里の様子は違うのですか?」

亜里沙「うーん・・・最近、一緒にお風呂に入らなくなったんです
    ちょっと前は一日中くっついてたのに」

海未「えっ・・・ええっ///」

亜里沙「あっあのっ違います! 変な意味じゃなくってー!!」あわわっ

海未「変な意味ってなんですか?!」///




海未「・・・お、落ち着きましょう///」
亜里沙「はいっ///」
 
44: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:37:17.37 ID:ITtJvse+0.net
亜里沙「でも、亜里沙はうれしいんです」

海未「・・・?」

亜里沙「だって、μ'sのみなさんの話をするお姉ちゃん、
    とっても楽しそうで、
    お姉ちゃんが生徒会以外のこと話すのがびっくりで、
    亜里沙も、いろんな人の話が聞けて楽しくって、」

亜里沙「あっ海未さん!
    海未さんの話、ずっと聞かせてもらってたんですよ!」

海未「それは・・・その、恐縮です」

亜里沙「セーソ?で品があってきれい、とか、
    なのに、むじゃき?でとってもかわいい、とか、
    私のこと分かってくれてうれしい、
    照れ屋さんなのにカッコいいのずるい、あとあと、」

海未「その辺で勘弁してくださいっ///」



亜里沙「・・・だから、海未さんのせいでも、
    海未さんはぜったいわるくないんです。
    だってお姉ちゃんは、海未さんのことが、本当に、」

海未「・・・」

亜里沙「・・・あの、海未さんは、
    お姉ちゃんの身体のこと、知ってますか?」
 
45: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:45:11.06 ID:ITtJvse+0.net
海未「それはその、クォーター、ということですか?」

亜里沙「違います、そっちじゃなくて、
    ・・・・いや、なんでもないです。ごめんなさい、言えません」

海未「・・・そうですか」


亜里沙「お姉ちゃんのことだから、お姉ちゃんに聞いてください」

海未「それは、私が聞いていいことなのでしょうか?」

亜里沙「・・・聞かれたい、って思います。
    亜里沙は聞かれたいです」

亜里沙「あ、えっと、ちがくて、
    お姉ちゃんが聞かれるのが、亜里沙はうれしい、
    ・・・あー、なんていうんだろう・・・・」


海未「・・・ふふっ、分かりました。
   私から、絵里にそれとなく聞いてみます」

亜里沙「わあっ・・・ありがとうございますっ!」



  「・・・ありさぁ?
   ねえ、誰かお客さんが・・・」


海未「・・・っ!」

絵里「・・・え、うそ、」


 バタンッ
 
46: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 00:50:01.10 ID:ITtJvse+0.net
亜里沙「あ、おねえちゃ――」

海未「すみません、ちょっと行ってきます!」



海未「絵里、えりっ! 話があるんですっ!!」ドンドン


  『・・・・・』


海未「絵里っ! 開けてくださいっ」ドンドン


  『・・・帰ってよ!』


海未「・・・・っ、入りますからね?! いいですねっ!?」


  『・・・勝手にして』


 ガチャッ
 
49: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 08:59:51.42 ID:ITtJvse+0.net
海未「・・・・」


  「・・・・」


海未「・・・・あの、・・・お見舞いに、参りました
   新鮮なりんごをいただいたので、先ほどお渡ししました。

   あとは身体が楽になったら・・・文庫本をどうぞ、約束なので」


  「・・・・あは、そうじゃないでしょう、話題。
   海未はいつも海未ね」


海未「絵里は寝ているのですか?」


  「・・・うん。寝ているわ」


海未「では、そのまま布団の中で聞いてください。

   まず・・・絵里、本当にごめんなさい」
 
50: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:00:52.75 ID:ITtJvse+0.net
  「・・・海未のせいじゃないって、言わなかったかしら」


海未「初めて聞きました。
   それでも、私の気持ちは私の問題なんです」


  「私の話なのに?」


海未「はい。

   今日の昼休みに希と話して、はっきり自覚しました。
   これはきっと、私の罪なのだと」


  「・・・・・」


海未「絵里は大切な友達なのに、
   友達によこしまな気持ちを抱いてしまって、
   “それ以上”を望んでしまった・・・そういう罪です」


  「・・・あなたにとっては、これでも友達なのね」


海未「いいえ、もう違います。
   私は、あなたに触れたい、あなたを知りたい。
   あなたの言葉を無視してても、あなたのためになりたい」


海未「私はあなたと、・・・・信じ合いたいです」
 
51: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:01:35.95 ID:ITtJvse+0.net
  「・・・・・」


海未「・・・こんなこと、誰にでもいえませんよ」

海未「はずかしくて、自分勝手で、
   それに・・・友達に向ける気持ちじゃ、ないです」

海未「こわいです。
   一番の気持ちですから、逃げられません」

海未「数日前まで知られるのが怖くて、
   自分から絵里を遠ざけようとまでしてしまってたのに」


  「・・・敵陣で丸腰だなんて、
   無防備すぎて、危ういにもほどがあるわ」


海未「・・・隠していたら、話はできないと思ったんです」

海未「きょうの私は罪を〇す悪い子です。
   だから、ずるいこと言います。

   絵里のことも、私にだけ話してください」


  「・・・ひどい人ね」


海未「・・・すみません。これしか、思いつかないんです」



  「っ・・・ねえ海未。
   あなた、男の子とつきあったことはある?」
 
52: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:02:30.54 ID:ITtJvse+0.net
海未「・・・ありませんよ。
   なんでそういうこと言うんですか・・・」

海未「でも私の気持ちはきっと、
   あなたに向ける気持ちはきっと、・・・そういう気持ちで、」


  「その人と、キスとか、したいの?」


海未「ぅあ・・・・よく、わかりません」

海未「・・・ぎゅってしてほしいです。
   あなたがそうしてくれたら、きっと、満たされます」


  「・・・キスのその先、なんて?」


海未「そういうのは・・・うぅ、考えて、いません!」

海未「・・・でも、いつか、
   私もそういうふうに、なると、思います」

海未「本当は、男の人とそうすべきらしいです。
   そういうふうに学校でも教わりました、
   この世界も、そうやってできてきたって分かります」

海未「でも、私は・・・・あなたに、抱きしめてほしいんです」


  「・・・私もいつか、誰かとそうなりたいって思ってた。

   でも私には、無理なのよ」


海未「・・・どうしてですか?」


  「だって私、男の子にも、女の子にもなれないから」
 
53: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:03:30.56 ID:ITtJvse+0.net
海未「・・・・どういう意味ですか」


  「性分化疾患、って、分かる?
   私、染色体がXXモザイクで・・・
   ああ、両性具有って言ったらイメージしやすいかしら」


海未「なっ・・・はい?
   あの、それってどういう、すみません、」


  「はぁ・・・だからね、
   私の身体は女性に見えるでしょう? なのに、男性器があるの。
   今も定期的に、新宿の病院で診てもらってるの」


海未「・・・そんな、ことって・・・」
 
54: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:04:24.58 ID:ITtJvse+0.net
  「だからね、ふふっ、・・・私は男にも女にもなれない、
   みにくいだけのアヒルの子なの」


海未「・・・・」


  「ねぇ海未、これで満足?
   私は、その程度のことで諦めがつかないだけだから」

  「海未はあんまり気にしないで。
   それでも、今まで通りにしてくれたら、・・・うれしいわ」



海未「・・・っ、ひっ、えうっ・・・ぐすっ・・・・」


  「・・・もう、なんであなたが泣いてるのよ」


海未「・・・だって、えりがっ、・・・」


  「・・・私とつきあえないって、わかったから?」


海未「――ちがいますっ!
   これまで、絵里がどうやって、生きてきたかって、
   思うだけで・・・わたしは、なんにもできなくて、

   なんにも、・・・ぅあっ、しらなくってぇ、・・・えぅっ、」


  「・・・やめてよ、お願いだから。
   そんなこと言われたら・・・私また、あきらめられなく、」



海未「・・・えり、失礼しますっ!」

  「なっ、ちょっ!? だめえっ!?」
 
55: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:05:24.10 ID:ITtJvse+0.net
  がばっ


  「離してよっ、はいってこないでっ、」

海未「いやですっ、絶対に離しません!」


ばさっ


絵里「やだぁっ、海未がきらいになるのやだあっ!!」ぐいっ

海未「そんなこと、ぜったいに、・・・っ!」ぎゅうっ

絵里「いやなのっ、出てって、忘れてよぉ・・・!!」

海未「だめです、
   いまの絵里は、絶対はなしませんっ!!」バタンッ


絵里「・・・あっ・・・」

海未「っ!/// え、ええと、今その、当たったのが、」

絵里「・・・・やだ、ゆわないで・・・
   うぁっ、ぐすっ・・・きらわないで、もうやなのぉ・・・っ」

海未「・・・」

絵里「おねがい、見ないで・・・
   きもちわるいんでしょ、わかってる、からっ・・・うぅっ」


海未「・・・では、大丈夫なように、
   後ろからなら、だきしめてても、いいですか?」ぎゅうっ

絵里「まだいいって言ってない・・・ひどいわぁ・・・」ぎゅっ
 
56: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:15:12.37 ID:ITtJvse+0.net
――――――
――――
――

絵里「・・・海未、ありがと。
   ほんとうに、ありがとう」

海未「・・・お礼を言われることなんてしてないです」

絵里「・・・私、血のつながらない人から、
   こんなふうに思ってもらえたの、はじめて」

海未「私が勝手に、あなたのこと、だいすきなだけですよ」

絵里「そうね。・・・あなたは勝手なひとよ」



絵里「・・・ねえ、海未ちゃん。
   やっぱり、だめよ。私たち、別れなくちゃ」

海未「・・・まだ付き合ってないじゃないですかぁ」

絵里「そうだけど・・・って、“まだ”ってなによ」


海未「・・・ぷふっ、あは」

絵里「くふふっ、ふふっ」
 
57: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:15:52.02 ID:ITtJvse+0.net
絵里「希も心配してるんでしょう?
   今日はもう大丈夫だから、明日からちゃんとするわ」

海未「はい・・・それは、安心しました」

絵里「・・・本当にありがとう。
   私も、あなたのこと、・・・ううん、やめときましょ」

海未「それはちゃんと言葉にしてほしいです・・・」

絵里「そうよね。でも、うん。
   じゃあ、明日また学校でね?」


海未「・・・・だめ、です」

絵里「っ、ねえ、海未、分かってるでしょう?」

海未「それでもです。

   私は私の都合であなたの秘密を暴いてしまいました。
   だから、責任をとらせてください」

海未「その重みを半分、私に背負わせてください。
   あなたの苦しみで、私も痛みたいです」
 
58: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:16:31.86 ID:ITtJvse+0.net
絵里「・・・・・」

海未「・・・・・」


絵里「・・・・いいの?」

海未「はい。・・・覚悟は、します
   絵里のこと、もっとちゃんと知っていきます」


絵里「・・・おそっちゃうかも、しれないわよ?」

海未「それはその・・・こまります」

絵里「ほらぁ、困るんじゃない・・・」


海未「困るけど、その、・・・なんとかします」

絵里「なんとかしてくれるの?」

海未「はい。
   私が、絵里に合うかたちになります」



絵里「海未・・・・」

海未「っ・・・・・ぁああっ今のなしですっ
   今のは精神的な、とにかくそういう意味じゃないんですうっ!」///
 
59: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:29:14.29 ID:ITtJvse+0.net
絵里「あははっ、・・・ひどいわぁ、今のちょっとぐっと来たのに」

海未「やめてくださいっ!
   絵里、なんだか楽しんでませんかっ!?」///

絵里「決まってるじゃない、
   だってあの海未が、あんなハレンチなこと・・・ねえ?」にやにや

海未「ぁああああほんっと無理です勘弁してくださぁいっ」///



絵里(ううん、これだけは海未のお願いでもダメ。
   私は絶対、今の言葉、忘れないんだから)

絵里(だって、さっきのことだけで、私、
   今までの人生が全部ゆるされた気がしたんだもの)

絵里(自分がこういう形で生まれてこれたのだって、
   海未のかたちに合うためだったんだって、
   いつかちゃんと、そう思える気がする)


絵里(だから・・・もう私、大丈夫みたい)
 
60: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 09:30:55.30 ID:ITtJvse+0.net
絵里「・・・ねえ、海未」

海未「はひっ?!
   ・・・す、すいませんっ。・・・はい」


絵里「・・・私のパートナーに、なってくれる?」

海未「・・・こちらこそ、よろしくお願いします」にこっ


絵里「・・・海未ぃ、だいすきっ!」ぎゅうっ

海未「あのっ、ちょっ、そんないきなり・・・!」



ガチャッ

亜里沙「お姉ちゃん大丈夫?!
    急にすごい音がして、声が、・・・・・・あっ」


えりうみ「「・・・・」」


亜里沙「――お楽しみくださいっ!!」ガチャッ バタンッ

絵里「待って亜里沙!!
   これはその違くて、まだそういうんじゃないのぉっ」

海未「うぅ・・・えりが、えりがぁ・・・」///
 
61: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 10:03:12.41 ID:ITtJvse+0.net
  ◆  ◆  ◆


希「それじゃあまた明日、あとは若いお二人で!」

海未「それってどういう意味ですかあっ」///

絵里「ちょっとー、あんまりうちの海未ちゃんいじめないでくれる?」

希「あはははっ、えりちもまたね?」



海未「はぁ・・・なんで希は一発で分かるんですかぁ・・・」

絵里「あなたがいけないんじゃない♪
   あのねえ、そんなに顔に出やすいと、この先、生きづらくなるわよ?」

海未「ことりにも言われました・・・だって、どうしたらいいんですか?
   その、恋人なのですよ!?」ぐいっ

絵里「さ、さあ・・・ええと、普通にしましょう? 普通に」

海未「・・・普通ってなんですかぁ」ムスッ

絵里「ふふっ・・・

   ああそうだ、海未。私、ひとつ決めたことがあるの」
 
62: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 10:03:52.10 ID:ITtJvse+0.net
海未「?」

絵里「大学に入って時間の余裕ができたら、
   私、またバレエをやり直してみようと思うの」


海未「それは・・・それは、すごく楽しみですっ」

絵里「そう?海未にそう言ってもらえるの、うれしいわ」

海未「だって、あの時の・・・
   あの、先日見せていただいた、白鳥の湖」

絵里「うん・・・あの頃より、もっと自然にできる気がするの。
   何かになりたいとかじゃなくって、自分らしく」

海未「・・・そうですね」


絵里「・・・私は、今度こそ白鳥になれるのかしら」

海未「何言ってるんですか、」
 
63: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 10:04:33.61 ID:ITtJvse+0.net
絵里「あっ海未ひどーい、海未のくせにっ」

海未「だって、あなたはずっと前から、」


絵里「・・・待ち受けになってると、ちょっと恥ずかしいわ
   いや、うれしいんだけど、うん」

海未「この娘はもう、誰がどう見たって、
   うつくしい白鳥ですよ」


絵里「・・・そっか。海未がそういうなら、そうよね」

海未「はい。そうです」にこっ
 
64: (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 10:05:28.72 ID:ITtJvse+0.net
絵里(それから、分かれ道までいろんな話をして帰った)

絵里(お互いの小さい頃の話。楽しかったこと、かなしかったこと)

絵里(こうやってちょっとずつお互いのイメージを確かにしていく)

絵里(声を聞いて、手をつないで、私をあなたに近づけていく)

絵里(いつか、あなただけの私になれるようにって)


絵里(これから先、私たちはどうなるんだろう?)

絵里(ラブライブが終わって、高校を卒業して、大学に行って)

絵里(・・・海未のことだから、急には進めないけれど、
   いつか同棲でもしてみたいな・・・ふふっ)


絵里(身体が軽くなって、どこにでも飛んでいけそうな気がした)

絵里(あのおとぎ話の、
   みずうみで生まれ変わった、一羽の白鳥のように)
 
65: ◆rB0CA7jVXk (テレビ埼玉)@\(^o^)/ (ワッチョイW 7946-FPhQ) 2015/10/28(水) 10:09:14.69 ID:ITtJvse+0.net
絵里「じゃあまた明日。あっそうそう、
   アンデルセン、次の巻も持ってきてくれる?」

海未「わかりました。楽しみにしてます!」

絵里「・・・それとね、海未にプレゼントがあるの。
   ちょっとこっち来て」

海未「はい。なんです――」


絵里(その瞬間、私はあの子の頬に唇を寄せた)

絵里(小さく音がして、あの子はぼうぜんと、
   やがて顔を真っ赤にする)

絵里(私のほっぺたもひりひりし出して、
   きっと海未と同じ色になって、)


海未「っ・・・いきなりは、やめてくださいっ///」

絵里「・・・ねえ、今日最後に、海未のもちょうだい?
   今はまだほっぺでいいから。ね?」

海未「むりで・・・そんな顔しないでくださいっ!
   わかりました、ええと、目を閉じてくださいっ」



絵里(目を閉じて、何万年にも思える数秒間が過ぎたとき、
   あいする人の熱いのが、頬にふれる)

絵里(呪いが解ける音、生まれ変わる音がした)



おわり。
 

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1445867067/

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