1: (黒酢) 2021/09/12(日) 23:39:00.99 ID:hpYnwhAu
とある日曜日の昼下がり。学校が全館電気設備検査とかで、この二日間は立ち入り禁止。気持ちのいい秋晴れなのに部活もないし、なんとなくもったいなくて、かのんの喫茶店にお邪魔することにしたわ。普通に、お客としてね。
かのん「いらっしゃいませ――あ、すみれちゃん!」
店員モードから破顔一笑して友達モードになったかのんの後ろで、見慣れたショートヘアの女の子が声を上げる。
可可「げげっ、すみれ…!」
すみれ「来たったら来ちゃったわ……あら、可可もいたの?」
かのん「うん……あ、違うよ!? 次の歌詞がなかなか思い浮かばないって相談したら、可可ちゃんが尋ねてきてくれたの! 別にハブとかじゃ――」
すみれ「別に、気にしてないわよ。私も一人で来たんだし。それより、席空いてる?」
お店は、テーブル席なら誰かと相席になるし、カウンター席なら誰かと隣り合う程度に混んでいた。となると――いや別に、混んでなくてもそうだっただろうけど――私は可可のテーブルに向かい合わせで座った。
かのん「いらっしゃいませ――あ、すみれちゃん!」
店員モードから破顔一笑して友達モードになったかのんの後ろで、見慣れたショートヘアの女の子が声を上げる。
可可「げげっ、すみれ…!」
すみれ「来たったら来ちゃったわ……あら、可可もいたの?」
かのん「うん……あ、違うよ!? 次の歌詞がなかなか思い浮かばないって相談したら、可可ちゃんが尋ねてきてくれたの! 別にハブとかじゃ――」
すみれ「別に、気にしてないわよ。私も一人で来たんだし。それより、席空いてる?」
お店は、テーブル席なら誰かと相席になるし、カウンター席なら誰かと隣り合う程度に混んでいた。となると――いや別に、混んでなくてもそうだっただろうけど――私は可可のテーブルに向かい合わせで座った。
4: (しまむら) 2021/09/12(日) 23:51:37.09 ID:vJep7Tou
>>1 代行ありがとうございます!!
かのん「ごめんね~、お店混んでるから、手伝わなきゃなの! 落ち着いたら一緒にお茶しよ!」
かのんがお店の手伝いに戻っていって、可可が口を開く。
可可「こんなところで会うなんて、知遇デスね」
すみれ「? それを言うなら奇遇でしょ。っていうか、『げげっ』って何なのよ」
チョップをお見舞いすると、可可は「キャー」とわざとらしく首を竦める。
可可「深い意味はないデス。言ってみただけデス」
すみれ「そ」
かのんがメニューを持ってきてくれたので、パラパラと目を通す。
アメリカンコーヒー、エスプレッソ、ラテ、モカ、フロート……。
原宿にはかのんのお店より数倍”映える”店はいくらでもあるけど、でもかのんのお店ほど落ち着く店はないと思う。
普段ならロクに食べもしないカラフルなスイーツを頼んでインスタにアップするところだけど、ここではそう言う気にもならない。カフェモカとモンブランを頼んだ。
かのん「ごめんね~、お店混んでるから、手伝わなきゃなの! 落ち着いたら一緒にお茶しよ!」
かのんがお店の手伝いに戻っていって、可可が口を開く。
可可「こんなところで会うなんて、知遇デスね」
すみれ「? それを言うなら奇遇でしょ。っていうか、『げげっ』って何なのよ」
チョップをお見舞いすると、可可は「キャー」とわざとらしく首を竦める。
可可「深い意味はないデス。言ってみただけデス」
すみれ「そ」
かのんがメニューを持ってきてくれたので、パラパラと目を通す。
アメリカンコーヒー、エスプレッソ、ラテ、モカ、フロート……。
原宿にはかのんのお店より数倍”映える”店はいくらでもあるけど、でもかのんのお店ほど落ち着く店はないと思う。
普段ならロクに食べもしないカラフルなスイーツを頼んでインスタにアップするところだけど、ここではそう言う気にもならない。カフェモカとモンブランを頼んだ。
5: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:02:49.78 ID:IldL+cLX
私がメニューを選んでいる間、可可はなにやらノートとスマホの睨めっこを始めていた。
歌詞を考えているらしい。
むむむ、と眉間に皺を寄せてスマホをのぞき込んでは、ノートに書きかけの文字を消しゴムでゴシゴシと擦ったり、「ん~~~」と腕を組んで天井を仰いだり。
せわしない子ね。
しばらく眺めていたら、せわしない子は左手で頬杖をついてノートを睨み、右手ではペン回しをして長考の体勢に入った。
そういえば。
練習着でもない可可の私服を見るのは久しぶりね。神津島以来かしら。
選挙の時は制服で動き回っていたし。
可可は白のブラウスの上にベージュのワンピースを重ね着という、ガーリーな格好をしている。悪くはないわね。
ただ、テーブルの下に目を落とすと、足元はオープントゥのブーツサンダルだ。
服のコーデは秋っぽさは演出できているけど、つま先の見えるオープントゥはちょっと季節外れじゃないかしら?
それにペディキュアは塗っていないみたい。
考え事をするとき足の指をぴょこぴょこ動かす癖があるみたいで、それも相まってすっぴんの足先がやたら子供っぽく見える。
ふふ、まだまだね。
いくらスクールアイドルとしては注目を集め始めているとはいえ、こんなんじゃ到底ショービジネスの世界には通用しないわ。人に見られる者として、頭のてっぺんから足の先まで、神経をとがらせている必要があるのよ。
ここは先輩の私が一肌脱ぐ必要があるかしら。
歌詞を考えているらしい。
むむむ、と眉間に皺を寄せてスマホをのぞき込んでは、ノートに書きかけの文字を消しゴムでゴシゴシと擦ったり、「ん~~~」と腕を組んで天井を仰いだり。
せわしない子ね。
しばらく眺めていたら、せわしない子は左手で頬杖をついてノートを睨み、右手ではペン回しをして長考の体勢に入った。
そういえば。
練習着でもない可可の私服を見るのは久しぶりね。神津島以来かしら。
選挙の時は制服で動き回っていたし。
可可は白のブラウスの上にベージュのワンピースを重ね着という、ガーリーな格好をしている。悪くはないわね。
ただ、テーブルの下に目を落とすと、足元はオープントゥのブーツサンダルだ。
服のコーデは秋っぽさは演出できているけど、つま先の見えるオープントゥはちょっと季節外れじゃないかしら?
それにペディキュアは塗っていないみたい。
考え事をするとき足の指をぴょこぴょこ動かす癖があるみたいで、それも相まってすっぴんの足先がやたら子供っぽく見える。
ふふ、まだまだね。
いくらスクールアイドルとしては注目を集め始めているとはいえ、こんなんじゃ到底ショービジネスの世界には通用しないわ。人に見られる者として、頭のてっぺんから足の先まで、神経をとがらせている必要があるのよ。
ここは先輩の私が一肌脱ぐ必要があるかしら。
7: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:07:01.15 ID:IldL+cLX
めんどくさいったらめんどくさいわね。
私だって暇じゃないのよ?
でもまあ、しょうがないから、可可と放課後ショッピングに行って服選びを手伝ってあげたり、可可の部屋で化粧のコツを教えてあげたりしてもいいわ。
そのまま可可の部屋の貧相なキッチンで美味しい料理を作って見せつけるの。これ見よがしにね。負けず嫌いの可可が悔しそうな顔をするのが目に浮かぶわっ♪
可可「すみれ、何ニヤニヤしてるデスか?」
すみれ「は、はぁ!? ニヤニヤなんてしてないわよ」
可可「ニヤニヤでなくばニタニタです。気色悪いデス。エンガチョーデス」
可可が腕でばってんを作る懐かしいポーズをする。
すみれ「なんでそんな日本語知ってんのよっ。――ちょ、止めなさいそのポーズ!」
私が手を伸ばすと可可は身体をのけ反らす。
可可「触らないでクダサイ~~! エンガチョーデスよ、チカン~~~!!」
すみれ「止めなさいったら――甘い! 下半身がガラ空きよ!!」
可可「キャーアハハハ!! 足で触られました~~! 仕返しデス!! えいっ、えいえいっ!」
可可がつま先で私の脚を小突いてくる。
すみれ「痛ぁ! 弁慶の泣き所をやったわね~~~! 仕返しよ、このっ、このっ!」
「お客様! 他のお客様のご迷惑になるのでお静かにっ」
ごめんなさいっ、と言いかけて顔を上げると、ニコニコ笑顔のかのんがいた。
10: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:13:01.10 ID:IldL+cLX
すみれ「なんだ、かのん……」
かのん「相変わらず仲良しだねっ。でもあんまり大きな声は出さないでね?」
可可「かのん! お店の方は良いのデスか?」
可可が思わずという感じで腰を浮かせた。目を丸く輝かせている。
かのん「うん、洗い物も終わってひと段落かな」
可可「じゃあ、歌詞見てくれませんカ?!」
かのん「もっちろん! そのために仕事超特急で終わらせたんだから」
可可「ええっとええっと、まずこの部分! これ、クゥクゥが子供の頃大好きだった絵本から借りた言葉なのデスが――」
かのん「どれどれ、辞書によると――うわぁ、すっごく素敵な言葉! 日本語だと何ていえば良いかな~~?」
かのん「う~ん、”心から離れない人”、とかかなぁ?」ムーン
かのんは隣の空いている席から椅子を持ってきて、可可の隣に掛けた。
肩と肩が触れ合う距離で、二人はノートと辞書を行ったり来たりしながら、ああでもないこうでもないと歌詞を推敲している。
二人とも本当にスクールアイドルが好きなのね。
爛々とした表情で、自分たちだけの世界に浸る可可とかのん。
そこはまるで二人だけの秘密基地。
秘密基地で遊ぶ少女たちは無邪気で、残酷。
私はすっかり蚊帳の外。ホント、呆れちゃうわ。
子犬みたいに目を輝かせて。
かのんの言うことにいちいち感激して。
自然な流れでかのんの肩や太腿に手を置いたりなんかしちゃって――。
かのん「相変わらず仲良しだねっ。でもあんまり大きな声は出さないでね?」
可可「かのん! お店の方は良いのデスか?」
可可が思わずという感じで腰を浮かせた。目を丸く輝かせている。
かのん「うん、洗い物も終わってひと段落かな」
可可「じゃあ、歌詞見てくれませんカ?!」
かのん「もっちろん! そのために仕事超特急で終わらせたんだから」
可可「ええっとええっと、まずこの部分! これ、クゥクゥが子供の頃大好きだった絵本から借りた言葉なのデスが――」
かのん「どれどれ、辞書によると――うわぁ、すっごく素敵な言葉! 日本語だと何ていえば良いかな~~?」
かのん「う~ん、”心から離れない人”、とかかなぁ?」ムーン
かのんは隣の空いている席から椅子を持ってきて、可可の隣に掛けた。
肩と肩が触れ合う距離で、二人はノートと辞書を行ったり来たりしながら、ああでもないこうでもないと歌詞を推敲している。
二人とも本当にスクールアイドルが好きなのね。
爛々とした表情で、自分たちだけの世界に浸る可可とかのん。
そこはまるで二人だけの秘密基地。
秘密基地で遊ぶ少女たちは無邪気で、残酷。
私はすっかり蚊帳の外。ホント、呆れちゃうわ。
子犬みたいに目を輝かせて。
かのんの言うことにいちいち感激して。
自然な流れでかのんの肩や太腿に手を置いたりなんかしちゃって――。
11: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:19:47.22 ID:IldL+cLX
――私、必要?
「お手洗いに行ってくるわね」
「うん――」
「はいデス――」
ほらね? 二人とも上の空。
……そっか。そもそも私、呼ばれたわけじゃないものね。
別にトイレになんかいきたくはなかったけれど、すぐに戻っちゃ不自然だし。
適当に個室でスマホを弄って時間を潰す。
はぁ~なんて惨めなのかしらね。
ま、今に始まったことじゃないからもう慣れたわ。
み~じめ惨め、みじみじめ~~。
歌が出来ちゃったわw
インスタも見飽きたし、ついでに化粧直しでもしようかしら。
ポーチからコンパクトを取り出して、小さな鏡が私を覗く。
その瞬間、ギャラクシーって声も喉から出なくなるくらい、びっくりした。
自分の顔が歪んでいるんだもの。
12: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:20:33.12 ID:IldL+cLX
なにこれ??
原因はすぐにわかった。目からあふれる液体のせいだ。
泣いている。
なんで? 変なの。平安名だけにw
……いや、ホント何で泣いているの?
鏡の中の私は呆然としたまま、涙がさめざめと流れ出てくる。
独りでいることが辛いの? 私は私に訊いてみた。
どうなのだろう。一人の時間は嫌いじゃない。
じゃあ一番になれなかったこと?
そうかもしれないわ。私のコンプレックスだもの。
でも、そのくらい慣れっこでしょ?
まあ、飽き飽きする程度にはね。
じゃあ知っているでしょ。二番手の女優は、一番のヒロインに負ける運命なのよ。
分かってるわよそのくらい。私の人生、きっとピエ として笑われるのがオチなんだって。
でもピエ だって良いじゃない。人を笑わせるのは尊い役目だわ。
そうね、可可たちに出会って、みんなが楽しんでくれれば私も楽しいって思えるようになってきたわ。
じゃあ何がそんなに悔しいの?
何がそんなに悲しいの?
問いかけるたび、あの横顔が頭に浮かぶ。
私じゃない誰かに向けられる、あのキラキラした横顔が。
はっきりさせなさいよ。自分の正直な気持ちを。気持ち悪いじゃない。
私は――
私は、可可の――
原因はすぐにわかった。目からあふれる液体のせいだ。
泣いている。
なんで? 変なの。平安名だけにw
……いや、ホント何で泣いているの?
鏡の中の私は呆然としたまま、涙がさめざめと流れ出てくる。
独りでいることが辛いの? 私は私に訊いてみた。
どうなのだろう。一人の時間は嫌いじゃない。
じゃあ一番になれなかったこと?
そうかもしれないわ。私のコンプレックスだもの。
でも、そのくらい慣れっこでしょ?
まあ、飽き飽きする程度にはね。
じゃあ知っているでしょ。二番手の女優は、一番のヒロインに負ける運命なのよ。
分かってるわよそのくらい。私の人生、きっとピエ として笑われるのがオチなんだって。
でもピエ だって良いじゃない。人を笑わせるのは尊い役目だわ。
そうね、可可たちに出会って、みんなが楽しんでくれれば私も楽しいって思えるようになってきたわ。
じゃあ何がそんなに悔しいの?
何がそんなに悲しいの?
問いかけるたび、あの横顔が頭に浮かぶ。
私じゃない誰かに向けられる、あのキラキラした横顔が。
はっきりさせなさいよ。自分の正直な気持ちを。気持ち悪いじゃない。
私は――
私は、可可の――
13: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:22:55.41 ID:IldL+cLX
「――すみれ?」
!?
トイレの外から声がした。
「すみれ? 泣いてるデスか?」
「は、はぁ!? 泣いてないけど!?」
「すみれがトイレ長いので、かのん、心配してました。大丈夫デスか?」
「別に。なんともないわ」
急いで涙を拭いて気色を治す。
「そうデスか。じゃあ単純に”大きいほう”なので遅いのデスね」
「バッ…ち、違うわよ! あんたそういうこと言わないの!」
ツッコミの勢いで思わず外に出た、といった演技で私はトイレを出る。
いつものしたり顔の可可がいて、私は適当なことを言いながらチョップをお見舞いする。
可可がいたずらっぽい表情でまた憎まれ口を叩いて、私はそれを受け流す。
うん、いつも通りの私だ。
…………分かり切っていたことじゃない。
可可にとっての一番は、かのんなの。
だって可可が最初に憧れた人はかのんで、かのんはそれに応えたのだから。
!?
トイレの外から声がした。
「すみれ? 泣いてるデスか?」
「は、はぁ!? 泣いてないけど!?」
「すみれがトイレ長いので、かのん、心配してました。大丈夫デスか?」
「別に。なんともないわ」
急いで涙を拭いて気色を治す。
「そうデスか。じゃあ単純に”大きいほう”なので遅いのデスね」
「バッ…ち、違うわよ! あんたそういうこと言わないの!」
ツッコミの勢いで思わず外に出た、といった演技で私はトイレを出る。
いつものしたり顔の可可がいて、私は適当なことを言いながらチョップをお見舞いする。
可可がいたずらっぽい表情でまた憎まれ口を叩いて、私はそれを受け流す。
うん、いつも通りの私だ。
…………分かり切っていたことじゃない。
可可にとっての一番は、かのんなの。
だって可可が最初に憧れた人はかのんで、かのんはそれに応えたのだから。
14: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:25:08.28 ID:IldL+cLX
そのころの私は独りで、独りでいることを正当化するために敢えて周囲をねめつけて、肘を張って、スカウトを待つことで自分の居場所を守って。
しまいに、あろうことか可可の憧れをバカにした。
そんな私が、いまスカウト待ち以外の居場所を与えてもらっているだけで、感謝しなくちゃいけない。
私は可可と一緒にバカをやることで、一度は失った「普通の女子高生」でいることが出来る。
それ以上を求めること自体、贅沢の罪なのよ。
だからもう、私は何も期待しない。だって期待しなければ、絶望もないんだもの。
スカウトを待ち続けながら、本心ではスカウトなんて期待してなかったあの頃と全部一緒。
でも今は友達がいるだけ良いじゃない?
決して一番になれない私には、この居場所だって出来過ぎなくらい、十分恵まれているんだわ――。
しまいに、あろうことか可可の憧れをバカにした。
そんな私が、いまスカウト待ち以外の居場所を与えてもらっているだけで、感謝しなくちゃいけない。
私は可可と一緒にバカをやることで、一度は失った「普通の女子高生」でいることが出来る。
それ以上を求めること自体、贅沢の罪なのよ。
だからもう、私は何も期待しない。だって期待しなければ、絶望もないんだもの。
スカウトを待ち続けながら、本心ではスカウトなんて期待してなかったあの頃と全部一緒。
でも今は友達がいるだけ良いじゃない?
決して一番になれない私には、この居場所だって出来過ぎなくらい、十分恵まれているんだわ――。
15: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:28:04.55 ID:IldL+cLX
可可「かのん! すみれやっぱり大きい方デシた~~~!」
すみれ「はぁ!? ちょっと可可やめなさいよ! ってか大きい方じゃないんだから!!」
かのんが苦笑いを浮かべる。
かのん「二人とも~、ここ飲食店なんだからね~?」
可可「すみれ、ショーッビジネェスの人間のわりに甘すぎデェス! スクールアイドルなら、人前でお手洗いに行くなどそもそもご法度! なってないデス!」
すみれ「あんた人間やめる気!? そもそも人前でこの話題してる方がどうかと思うのだけど!? かのん、あんたもなんとか言ってやんなさいったら言っちゃいなさい!」
かのん「可可ちゃん、相変わらずすみれちゃんには当たり強いね~。さっきはあんなこと言ってたのに」
あんなこと?
と訊こうと思ったら、
可可「あー!あー!! ダメですよかのん!!」
可可が騒ぎ出した。
そしてかのんはにんまり不敵な笑みをこぼす。
かのん「え~~? どうしよっかな~、可可ちゃんちょっと懲らしめないといけないとは思ってたしな~~?」
可可「ぜったい、ダメ!デス! 言ったら厳罰に処しマス!!」
すみれ「なによ、聞かせなさいったら聞かせなさいよ!」
かのん「ん~~~すみれちゃんがどうしてもって言うなら~~~」
可可「ぎゃー!!!ぎゃー!!!」
かのん母「あんたたち、店では静かにしなさい!!」
クゥすみかぁ「ご、ごめんさない……」
……。
かのん「――それでね、さっき歌詞を考えている時……」
可可「あー!」
すみれ「はぁ!? ちょっと可可やめなさいよ! ってか大きい方じゃないんだから!!」
かのんが苦笑いを浮かべる。
かのん「二人とも~、ここ飲食店なんだからね~?」
可可「すみれ、ショーッビジネェスの人間のわりに甘すぎデェス! スクールアイドルなら、人前でお手洗いに行くなどそもそもご法度! なってないデス!」
すみれ「あんた人間やめる気!? そもそも人前でこの話題してる方がどうかと思うのだけど!? かのん、あんたもなんとか言ってやんなさいったら言っちゃいなさい!」
かのん「可可ちゃん、相変わらずすみれちゃんには当たり強いね~。さっきはあんなこと言ってたのに」
あんなこと?
と訊こうと思ったら、
可可「あー!あー!! ダメですよかのん!!」
可可が騒ぎ出した。
そしてかのんはにんまり不敵な笑みをこぼす。
かのん「え~~? どうしよっかな~、可可ちゃんちょっと懲らしめないといけないとは思ってたしな~~?」
可可「ぜったい、ダメ!デス! 言ったら厳罰に処しマス!!」
すみれ「なによ、聞かせなさいったら聞かせなさいよ!」
かのん「ん~~~すみれちゃんがどうしてもって言うなら~~~」
可可「ぎゃー!!!ぎゃー!!!」
かのん母「あんたたち、店では静かにしなさい!!」
クゥすみかぁ「ご、ごめんさない……」
……。
かのん「――それでね、さっき歌詞を考えている時……」
可可「あー!」
16: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:31:27.15 ID:IldL+cLX
=====
===
=
かのん『可可ちゃん、さっきの”心から離れない人”って部分、誰をイメージしてる?」
可可『誰を、デスか?』
かのん『うん。こういうのって、常夏☆サンシャインのときのちぃちゃんがそうだけど、この人っていうイメージを具体的に持っていると作詞が進みやすいんだ』
可可『う~~ン、そうデスね~~~~~~……』
可可『――すみれ?』
かのん『すみれちゃん? すみれちゃんが、”心から離れない人”?』
可可『――へっ、あっ、違いマス! そう言う意味じゃないです! ほらすみれ、スクールアイドルをバカにしてきてムカ~~ッてなったのに、ダンスも歌も上手いデス! だからクゥクゥやり返しても、すみれは笑われる役も全然へっちゃらで、そのくせ料理できて、大人な対応したりするデス!』
かのん『ハハハ、可可ちゃん日本語下手になってるよっ』
可可『かのん~~! クゥクゥのことバカにしてるデス!』
かのん『バカになんてしてないよぉ。ただすみれちゃんのことが大好きな可可ちゃんが可愛いなって』
可可『違いマス違いマス違いマス~~~!!!』
=
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かのん『可可ちゃん、さっきの”心から離れない人”って部分、誰をイメージしてる?」
可可『誰を、デスか?』
かのん『うん。こういうのって、常夏☆サンシャインのときのちぃちゃんがそうだけど、この人っていうイメージを具体的に持っていると作詞が進みやすいんだ』
可可『う~~ン、そうデスね~~~~~~……』
可可『――すみれ?』
かのん『すみれちゃん? すみれちゃんが、”心から離れない人”?』
可可『――へっ、あっ、違いマス! そう言う意味じゃないです! ほらすみれ、スクールアイドルをバカにしてきてムカ~~ッてなったのに、ダンスも歌も上手いデス! だからクゥクゥやり返しても、すみれは笑われる役も全然へっちゃらで、そのくせ料理できて、大人な対応したりするデス!』
かのん『ハハハ、可可ちゃん日本語下手になってるよっ』
可可『かのん~~! クゥクゥのことバカにしてるデス!』
かのん『バカになんてしてないよぉ。ただすみれちゃんのことが大好きな可可ちゃんが可愛いなって』
可可『違いマス違いマス違いマス~~~!!!』
=
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17: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:33:38.83 ID:IldL+cLX
すみれ「心から離れない人……」
可可「だ、だから違いマス!! クゥクゥの一番の憧れはかのんデス! クゥクゥはかのんとスクールアイドルをするのにふさわしい人になるためにバンガッテいるのデス!」
可可「……すみれは、その……憧れのかのんに近づくのに、一番意識して、一番越えなきゃいけない……そう、ライバルデス! 心から離れないというのはそう言うことなのデス!!」
かのん「ハハ、顔赤くしちゃって可愛ぃ~~!」
可可「か~~の~~ん~~!!! クゥクゥ、本気で怒りマシた!! 怒り心頭デス!!」
可可がかのんに追いかけっこを吹っ掛け、二人がお店でどたどたとはしゃぎ始めた。
二人の喧騒や、かのんママの雷がどこか遠くのことに思えるほど、私は静かに二つの言葉を反芻していた。
……心から離れない人。一番のライバル。
なんだか、私の胸に深く溶けて、染み込んでいく。
そっか。そうよね。
私も、頑張ればいいんだわ。
たとえ今は勝てなくても、諦めなければそのうち、いつの日か。
「可可!」
可可が赤い顔で口を尖らせたまま、躊躇いがちに振り向いた。
「……なんデス?」
「負けないわよ、私。私も頑張るったらバンガッテやるんだから!」
可可は小さく頷いて、はにかんで見せた。
「はいデス。その意気デスっ」
そして私はかのんに目を遣る。
目が合う。
目が合うのに私が何も言わないから、かのんはきょとんと目を丸くする。
今はまだ、その遠すぎる星に手は届かないけれど。
願うくらい、許されるわよね。
――私、あんたに負けないんだから!
可可「だ、だから違いマス!! クゥクゥの一番の憧れはかのんデス! クゥクゥはかのんとスクールアイドルをするのにふさわしい人になるためにバンガッテいるのデス!」
可可「……すみれは、その……憧れのかのんに近づくのに、一番意識して、一番越えなきゃいけない……そう、ライバルデス! 心から離れないというのはそう言うことなのデス!!」
かのん「ハハ、顔赤くしちゃって可愛ぃ~~!」
可可「か~~の~~ん~~!!! クゥクゥ、本気で怒りマシた!! 怒り心頭デス!!」
可可がかのんに追いかけっこを吹っ掛け、二人がお店でどたどたとはしゃぎ始めた。
二人の喧騒や、かのんママの雷がどこか遠くのことに思えるほど、私は静かに二つの言葉を反芻していた。
……心から離れない人。一番のライバル。
なんだか、私の胸に深く溶けて、染み込んでいく。
そっか。そうよね。
私も、頑張ればいいんだわ。
たとえ今は勝てなくても、諦めなければそのうち、いつの日か。
「可可!」
可可が赤い顔で口を尖らせたまま、躊躇いがちに振り向いた。
「……なんデス?」
「負けないわよ、私。私も頑張るったらバンガッテやるんだから!」
可可は小さく頷いて、はにかんで見せた。
「はいデス。その意気デスっ」
そして私はかのんに目を遣る。
目が合う。
目が合うのに私が何も言わないから、かのんはきょとんと目を丸くする。
今はまだ、その遠すぎる星に手は届かないけれど。
願うくらい、許されるわよね。
――私、あんたに負けないんだから!
18: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:37:13.87 ID:IldL+cLX
おしまい
一部フォントおかしくなってすみませんでした。
7話のすみれちゃんの扱いが不遇だったので、
辛くなって自分の解釈を投稿させてもらいました。
かのんに憧れる可可と互いに切磋琢磨しあうすみれちゃんは熱いなと思った次第です。
一部フォントおかしくなってすみませんでした。
7話のすみれちゃんの扱いが不遇だったので、
辛くなって自分の解釈を投稿させてもらいました。
かのんに憧れる可可と互いに切磋琢磨しあうすみれちゃんは熱いなと思った次第です。
19: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:42:08.81 ID:IldL+cLX
あと
すみれ「かのんって結構ヤンキーよね」
というSSも書いてます。
そっちはしんどさ抜きでかのんちゃんの可愛さを書こうとした奴なので、
よかったら読んでもらえれば嬉しいデス
すみれ「かのんって結構ヤンキーよね」
というSSも書いてます。
そっちはしんどさ抜きでかのんちゃんの可愛さを書こうとした奴なので、
よかったら読んでもらえれば嬉しいデス
20: (もんじゃ) 2021/09/13(月) 00:45:23.05 ID:Zv/LuxHk
ありがとう、良かったよ
まあアニメでも今後救いがあるだろうから待ちましょう
まあアニメでも今後救いがあるだろうから待ちましょう
23: (しまむら) 2021/09/13(月) 00:52:41.63 ID:IldL+cLX
>>20
公式のクゥすみをば…
公式のクゥすみをば…
25: (もんじゃ) 2021/09/13(月) 00:55:35.39 ID:97wzpcyo
乙
いいクゥすみだった
いいクゥすみだった
26: (SB-iPhone) 2021/09/13(月) 01:17:09.16 ID:6veebv+j
すみれちゃんのモノローグがすごくよかった
32: (茸) 2021/09/13(月) 13:39:27.97 ID:Vgp4BErl
こういうクゥすみが好きなんだよなあ
ありがとう……
ありがとう……
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1631457540/