【SS】かなりこ、ふたりぐらし。【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/22(水) 13:42:36.58 ID:/lZoaN+6
♪1.お昼ごはんまで眠らせて

梨子「果南さーん。起きてますか?」ヒョコ

果南「んー。ねてないよ…」ゴロ

梨子「ああ、もう。またフローリングに寝転がって。埃が付きますよ」

果南「んー。つかないよ…」ゴロ

梨子「すでに付いてますから」ヒョイ

果南「頭なでた?」

梨子「埃を取りました」

果南「なでないの?」

梨子「埃が付いちゃうから撫でません」

果南「んー…」モゾモゾ


心底面倒くさそうに唸りつつ、手をばたつかせる。

残念ながら、私が見立てたところ、果南さんの手が届きそうな範囲にはなにもない。

3:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:44:19.16 ID:bsKjn72J
果南「んんー」モゾモゾ

梨子「…」

梨子 スッ

果南「あ」ペシ

果南「あった」モゾ…


上半身を器用にうねらせて、少しだけ上昇。

お気に入りのクッションに頭を乗せると、うつ伏せのまま果南さんは動きを止めた。


梨子「苦しくないんですか?」

果南「まふぁふぁええる」


もごもご。

たぶん、「まだ耐えれる」だと思う。

4:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:45:43.51 ID:bsKjn72J
果南「…」ジッ

梨子「…」ジッ

果南「??」

梨子「ふふっ」

梨子 ナデ…

梨子「そろそろお昼ごはんの用意をしますよ」ナデ…

果南「うん」

梨子「おそうめんでいいですか?」ナデ…

果南「うん」


お団子にされたポニーテールが、まだ行かないで、だって。

お腹ぺこぺこっていうほどでもないもの。

もう少し、お昼は遅くてもよさそうね。


♪1.お昼ごはんまで眠らせて(もっと甘えたがりなときは私の膝です) 終

5:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:46:51.95 ID:bsKjn72J
∬1.梨子ごはん

果南「りこー」

梨子「なんですかー」ジャアアア… カチッ


ややくびれ気味の細い腰。


果南「頭ちっちゃくなった?」

梨子「昨日と同じですよー」グッ… ザクン


後頭部で束ね上げられた髪。


果南「包丁気を付けて」

梨子「まず果南さんが離れてくださーい」ザクン、ザクン、ザクン


淀みのない手際、丁寧な効率化。


果南「梨子の腰好きなんだよなー」

梨子「4分ぶり、1625回目ですよー」ポチャポチャ グツグツ…


腕の中で細々と動き回る頼りがい。

7:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:48:02.15 ID:bsKjn72J
果南 スンスン

梨子「果南さん、玉子」

果南「夜、暑かったの?」スッ

梨子「…そういうの気付くタイプじゃないと思ってました」ザバ チャッチャッチャッ

果南「んー。梨子のことだし」

梨子「果南さんが寝てるうちに」バラッ グツグツ…

果南「寝てないよ」

梨子「そうですねー」グツグツ…

果南「おはし出す」スッ トコトコ

梨子「はーい」ポチャポチャ

梨子 コンコン カパッ

果南「梨子どっちー?」

梨子「押入のほうでー」カチッ

果南「はーい」

8:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:49:41.10 ID:bsKjn72J
梨子「おまちどおさまです」コト

果南「わーい。いただきまーす」

梨子「いただきます」


梨子の特製、そうめんと玉子とカボチャのお味噌汁。

赤黄緑の食べ物を全て摂ることができるバランス食――だそうな。

栄養のことはよくわからないけれど、美味しいから好きだ。


梨子「トマト切りましょうか?」ズル

果南「んー」ズル

果南「いいや。夜食べる」

梨子「はい」

果南「今日もおいしい」ニコニコ

梨子「よかったです」ニコッ


ズル… ズル…


梨子と二人、静かなお昼は過ぎていく。


∬1.梨子ごはん(あったかいそうめんって知らなかったなあ) 終

9:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 13:51:07.17 ID:bsKjn72J
♪2.好きな人とか心配事とか

梨子「果南さーん。コーヒー淹れたら飲みますかー?」

果南「んー」トコトコ

果南「先に洗濯物入れたほうがいいかも」

梨子「降りそうですか?」

果南「たぶん」

梨子「じゃあ取り込んできますね」


取り出したマグカップを一旦置いて、ベランダに。

そういえば雨のにおい。

曜ちゃんみたいで、でもらしくない空色。

果南さんってちょっとだったら傘ささずに歩いちゃうのよね。

それでも風邪引かないから危機感もないし…


梨子「果南さんが外にいるときは泣かないでほしいな。幼なじみでしょう」


なんて。

曜ちゃんに話し掛けてみた。


♪2.好きな人とか心配事とか(この二つは同じものです) 終

10:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:03:32.49 ID:bsKjn72J
∬2.果南の挑戦

果南「…」

果南「はがす」ペリ

果南「…」

果南「ひらく」ペリペリ

果南「…」

果南「はめる」スッ

果南「んで、お湯だよね」

果南 ジョボボボ… ザラ

果南「あ。」

果南「いいや、私のにしよ」

果南 ジョボボボ…


シト… ザァァァァ…


梨子「間一髪でした。ありがとう、果南さん」

梨子「ところで、コーヒー淹れますけど…わ」

果南「淹れてみたよ」

梨子「わあ! 嬉しい。頂きましょうか」

果南「うん」

11:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:04:38.95 ID:bsKjn72J
ザァァァァ…


果南「随分降ってるねー」

梨子「曜ちゃんってば意外と泣き虫さんですから」

果南「曜? 曜がどうかしたの?」

梨子「うふふ…」ズズ…

梨子「果南さんの淹れてくれたコーヒー、美味しい」

果南「えー。ねえ、曜がなんなのさ」

梨子「ふふ…それより、なんで私果南さんのマグカップなんですか?」

果南「こっち苦いから」

梨子「なんですか、それ。どんな淹れ方したんですか」

果南「梨子が言わないから言わないー」

梨子「えー、もう…」


雨が連れてきた肌寒さの中、梨子と飲むコーヒーはいつだって温かい。

今日の晩ごはんはなんだろうな。


ザァァァァ…


∬2.果南の挑戦(挑戦っていうかいつも梨子に淹れてもらってばっかだしさ) 終

12:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:05:49.45 ID:bsKjn72J
∬3.あなたは誰と遊んでいるの?

果南「ふあ…」パチ

果南 モゾ…

梨子 スー

果南「へへ…」


美人は寝顔まで美人なんだから、ずるいよね。

ダイヤも梨子寄りの系統だな。

チカと曜と鞠莉は口をぱかーっと開けて寝る。

私もそうなのかも。

さて、それじゃ梨子が起きる前にひとっ走りしてこようっと。


果南「いってくるね、梨子」サラ

梨子「…いくの?」

果南「あ。起こしちゃった」

梨子「んん…」モゾ… ギュ

果南「おっと」

13:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:06:39.34 ID:bsKjn72J
梨子「んん~」スリ

果南「あはは。梨子、これじゃ私ランニング行けないよ」

梨子「いいですもん」ギュ…

果南「いいってなんだ」


行かなくていいってことかな?

梨子は寝起きが得意じゃないようで、朝や、寝ているのを無理に起こしたときはこんな感じになる。

面白いっちゃ面白い。

記憶もほとんど残らないみたいだしね。

14:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:09:26.48 ID:bsKjn72J
果南 トントン

梨子「…?」クル

果南 トントン

梨子「……?」クル

果南 トントン

梨子「?? だれかいるんですか…?」ムニャ

果南 クス…

果南「豆腐のおばけが遊びたがってたよ」

梨子「ええー…とうふ…」トロン

果南「でも梨子が眠そうだから帰るってさ」

梨子「そうなの…とうふすきなのに…」ムニャ

果南「また遊びにきてくれるといいね」

梨子「うん…」ムニャ… スー


寝ちゃった。

今のうちに、そろりと布団を抜け出す。


果南「朝ごはんまでには戻るからね」


∬3.あなたは誰と遊んでいるの?(豆腐のおばけだよ) 終

16:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:10:54.61 ID:bsKjn72J
♪3.いつも通りの違う朝

~♪

馴染んだ音に肩を揺すられて目を覚ます。


梨子「ふあ」パチ…


空いた隣。

へこんだ枕。

あなたが眠っていた虚空を見詰める、この時間が好きだったりする。

果南さん自身は、今もまさにポニーテールを揺らしているのだろう。


梨子「…よし」


二人の朝よりしっかりと掛けられた毛布をあげて、布団から抜け出す。


梨子「朝ごはん用意しなくっちゃ」


お腹を空かせて帰ってくるあなたのためにね。

29:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:18:47.40 ID:bsKjn72J
炊飯の時間は少し短めに。

合わせ味噌をやや濃いめに。

玉子をといて、塩を気持ち多めに。

麦茶は昨晩のうちに作っておいたし、鮭の皮も剥がしてある。


梨子 ペロ

梨子「うん、ちょうどいい」


実家のお味噌汁とは全く違う味なのに、すっかり舌に馴染んでしまった。

時計を見やれば、そろそろかしら……ふふ、ほらね。


トントントントン ガチャ


果南「ただいまー」

梨子「お帰りなさい。おはよう」

果南「おはよ、梨子。はいワカメ」ガサ

梨子「ありがとうございます。タオル出してますよ」

果南「ありがとー。浴びてくるね」

梨子「いってらっしゃい」


さて、朝ごはんを仕上げます。

34:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 14:22:06.71 ID:bsKjn72J
かなりこ「「いただきます」」

果南「今日は豆腐だね」

梨子「はい。最近入れてませんでしたからね…」

梨子「…」

果南「どうかした?」

梨子「お豆腐…」ジッ

果南「お」

梨子「なんだか…もやっとする…」

果南 モグモグ

梨子「なにかありましたっけ? 昨日、お豆腐の話とか」

果南「どうだったかな~」

梨子「ううー…なんだかもやもやする…」ウウウ…

果南「早く食べないと冷めちゃうよ」

梨子「ううー…ううー……」

果南「梨子のごはんは美味しいなー」


♪3.いつも通りの違う朝(果南さんはいつも通りなんだけど…) 終

99:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:02:19.16 ID:A499giNQ
おや…なんだか伸びてると思ったら論争が…
立て直したほうがいいという意見さえなければ、おれはいくらか荒らされようが気にせず投下し続けます

101:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:11:17.93 ID:A499giNQ
∬4.嫌いなものを克服してみる。

ー近所のスーパーー


梨子「覚悟はいいですか?」

果南「もちろん。梨子こそ帰ってからやめるとか言わないよね?」

梨子「や・め・ま・せん」

果南「じゃあ、」

梨子「はい。打合せ通りに、」

かなりこ「「一番『強そう』なのを」」


シュバッ (解散)

102:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:12:29.75 ID:A499giNQ
果南「…とは言ったものの、私は別に嫌いなわけじゃないからなあ」ヒョイ

果南「普段の買い物なんかほとんど梨子に任せちゃってるし、どれがどうだかよくわかんないや」ヒョイ

果南 ウーン…

果南 スマホ スッ

果南「こっちはナマモノだし、やっぱり『美味しい』のが『強い』よね、きっと」

果南「なになに…色が濃くてムラがないもの、ハリとツヤがあるもの、あと…ヘタが6角のものぉ? 結構細かいんだなあ…」

果南 ヒョイ ヒョイ ウーン…

果南「…これかな」

果南「…」

果南 クンクン

果南「うん、いい匂い!(よくわかんないけど)」

果南「これにしよっと」

果南「スーパーのレジに並ぶのなんて久し振りだな~」スタスタ…

果南「お。これは…」

∬∬∬

103:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:13:33.07 ID:A499giNQ
∬∬∬

ピーマン ドン!

梅干し ドン!


梨子「うう…青い…」

果南「新鮮で美味しいやつだから大丈夫だよ」

梨子「そっちも塩と赤シソで漬けた本格的なやつだから、大丈夫だと思う…」

果南「ちょっと! それめっちゃ酸っぱいやつじゃん!」

梨子「『強い』梅干しといえばそっちでしょう?」

果南「ハチミツのやつだと思ってたのにー! うあーっ、梨子に任すんじゃなかったー!」

梨子「そんなの私だって! こんなツヤッツヤで緑色の、絶対『強い』のに!」

果南「そういう打合せじゃん!」

梨子「そういう打合せですもん!」

かなりこ グヌヌヌ…

かなりこ …ハァ

104:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:14:32.27 ID:A499giNQ
果南「…覚悟きめよ。大人なんだから、好き嫌いなんかあっちゃいけないよね」

梨子「…そうですね。じゃあちょっと料理してくるので、少し待っててください」スッ

果南「え? 料理?」

梨子「そりゃ、まあ。生のピーマンなんか食べられないじゃないですか」

果南「梅干しは?」

梨子「ごはん炊きますよ?」

果南「なんかずるい! 生のほうが『強い』でしょ!」

梨子「いやいやいやいや! だからって生はおかしいでしょう?!」

果南「梅干しも料理してよ!」

梨子「できません!」

果南「じゃあピーマンもそのまま!」

梨子「もっとできません!!」


∬4.嫌いなものを克服してみる。(生で食べる想定なんかしてませんから、この物体) 終

105:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:15:49.03 ID:A499giNQ
♪4.あなたはいつでもそうやって

ピーマンとベーコンの炒め物 ドン!!

ほかほかの白ごはん(と梅干し) ドン!!


梨子「…さあ。いよいよですね」

果南「くっ…くふふふ…喉が震えてきた」

梨子「美声になっちゃいますね」

果南「ふううう…」(深呼吸)

梨子「はい、お箸」

果南「ありがとう…ところで、なんか茹でてる?」

梨子「ちょっとね」

果南「そ。じゃ、いくか…」ゴクッ

梨子「そうね…」ゴクッ

果南「手を合わせて、」

かなりこ「「いただきま――」」

果南「――って、ちょっと待って!」

梨子「えっ、なんですか?」

106:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:16:59.71 ID:A499giNQ
果南「それベーコンの炒め物じゃない?」

梨子「そうですけど」

果南「食べていいのはピーマンだけだよ?」

梨子「え?! いや、これは炒め物という一つの料理であって、そこにピーマンだベーコンだって区別はなくって、そういう意味ではベーコンだけ食べちゃう確率もそこには等しく存在して、」アセアセ

果南「はいはい。ベーコンはみんな没収ね」ヒョイヒョイヒョイ

梨子「あーっ! あーっ! なにするんですか!」

果南「じゃなきゃ意味ないでしょ。ほら、いただきま――」

梨子「じゃあ果南さんだってごはん没収だもん!」サッ

果南「はあああああっ?! そんなんただの梅干しじゃん!」

梨子「果南さんの嫌いな食べ物はごはんじゃなくて梅干しでしょう?! それならいいはずです!」

果南「だーめ! ずるい! 意味わかんないよ!」

梨子「だったらベーコン返して! こんな緑一色の料理食べられませんし!」


ギャーギャー ワーワー

♪♪♪

107:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:18:03.90 ID:A499giNQ
♪♪♪

梨子「 」← !DEAD!

果南「 」← !DEAD!

梨子「か、果南さん…生きてますか…」グッタリ

果南「むり…むり梨子むり…一個食べたんだからもうよくない…」グッタリ

梨子「賛成。賛成です…これ以上やったら放送禁止のもの出てきちゃう…」

果南「なんか、なんかね梨子…なんか口直し的なものをね…」

梨子「そう言うと思ってました…」ユラ

梨子 フラフラ…

果南「…」ゴソゴソ

梨子「はい。サザエ茹でておきましたから」

果南「ほんとに! さすが梨子!」ガバッ

梨子「うふふ。ナイフ入れるので待ってくださいね」ズコズコ

果南 ワクワク

108:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:19:10.32 ID:A499giNQ
梨子「はい。熱いから気をつけて」

果南「わーいっ! いただきまーすっ」

梨子「子どもみたいにはしゃいじゃって。さっきまでの弱りきった果南さんはどこに行ったんですか?」クスクス

果南「サザエは別腹じゃん? …んー、おいしー! 頑張ってよかったよ~」クゥ

梨子「私も頂こっかな、」

果南「あ。梨子はこれ」つガトーショコラ

梨子「わあ…えっ、なんで」

果南「こうなるかなーと思っててさ。玉子で口直しってのも変かと思って、見掛けたから買っといたんだ」

梨子「果南さん…ありがとう。頂くね」ガサ パク

梨子「ん、美味しい♡」

果南「私、考えたんだけどさー」つサザエ ← 二個目

梨子「なんですか?」モグ

果南「私の梅干しは梨子が食べるし、梨子のピーマンは私が食べるから、それでいいじゃんって」モグ

梨子「えー。それじゃ意味ないじゃないですかー」

果南「そうだけどさー。せっかく二人いるんだし」

梨子「もう、果南さんってば~」


♪4.あなたはいつでもそうやって 終

109:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:24:30.92 ID:A499giNQ
∬5.英断の日

果南「はい梨子そこに正座」

梨子「この日が来た…」

果南「始めるよ」

梨子「はい…」


果南「これは?」つ銀紙

梨子「それはね、さすがにだめです。チョコキャンディの金ののんたん付き包装紙なんだから。確率で言えば1/1024しか出ないもので、」

果南「あー、知ってる。応募したら金の脳が貰えるやつでしょ」

梨子「そう! メロンパン入りの!」

果南「なら、まあ。どうせすぐ応募するんだよね? それなら――」

梨子「え? やだなあ、果南さん。聞いてなかったんですか? 1/1024ですよ。メロンパンのために金ののんたんを手放すわけないじゃないですか」

果南「じゃあゴミ」ポイ

梨子「ちょっ! ちょおおおおおおおっと!」バッ

果南「英断の第二条! 英断中は立ち上がらなーい!!」

梨子「だ、だってえ…」

果南「次ね、次」

梨子「金ののんたん…」

110:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:25:54.22 ID:A499giNQ
果南「これは?」つハガキ

梨子「暑中見舞いですよ」

果南「書きかけのね」

梨子「書きかけってことは半製品じゃないですか。捨てる判断をする段階じゃないでしょう」

果南「それは、まあ…ちゃんと書くの?」

梨子「書きますよ! だから置いてあるんだもん」

果南「来週まで置いてあったら捨てるからね?」

梨子「はいはい…もう、そこまで残ってたら残暑見舞いになっちゃうじゃないですか」ヤレヤレ

果南「なんか腹立つなあ…って、ん?」ピラ

果南「いやこれ去年のじゃん!」

梨子 ギクッ

梨子「そ、それはたまたま去年の余ってたハガキを…」

果南「善子引っ越したって! 去年の12月に! 誰に届くんだよこの暑中見舞い!」

梨子「転送届って知らないの?」キリッ

果南「なにを上手な言い訳してるのさ。わざわざ旧住所から転送させるメリットなんなんだよ」

果南「はいゴミゴミ」ポイ

梨子「ああ~~ん善子ちゃ~~ん」

果南「善子だって貰うなら今年のハガキで欲しいでしょ」

112:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:26:46.62 ID:A499giNQ
果南「まったく…ほんとに治らないねー、梨子の溜め込み癖」

梨子「なんでもかんでも溜め込んでるわけじゃ…」

果南「これは?」つボールペンのキャップ

梨子「高校の頃ずっと使ってたペンのキャップです」

果南「本体はどうしたのさ」

梨子「インクが漏れるようになっちゃったから捨てました。でもキャップさえあればあのコとの想い出も私の中に…」

果南「キャップなんかなくても想い出は梨子の胸の中に生き続けるから」ポイ

梨子「あ――――っ!」

果南「これは?」つ充電器

梨子「前に使ってたiPhoneの充電器です。そのうちiPad買うから、」

果南「私も梨子もAndroidじゃん」ポイ

梨子「そのうち買ーうーかーら~~~っ!!」

果南「これは?」つ椅子のおもちゃ

梨子「お隣のよしきくんが、『お姉ちゃんあげる』ってくれたの」

果南「これキャラメルのおまけでしょ」ポイ

梨子「それはひどくないですか?!」

∬∬∬

113:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:28:46.04 ID:A499giNQ
∬∬∬

果南「じゃ、明日捨てとくから」ギュ

梨子「のんた~ん…善子ちゃ~ん…」

果南「ゴミ袋にすがり付くなんてやめなよ、みっともない…」

梨子「でも、これも大切なことなんですよね…サヨナラの意味を考えなきゃ。思い出は今いる場所に置いていくの」グッ

果南「…」

果南「先にお風呂入っておいでよ」

梨子「あ、うん。そうする」パタパタ…

114:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:29:47.67 ID:A499giNQ
わかってるよ。

梨子だって、なにも考えずになんでもかんでも溜め込んでるわけじゃないってこと。

金ののんたんは、確か一時期まるがハマってたんだっけ。

『帰省したらあげるんだ』ってはしゃいでたな。

でもその年は帰省のタイミングが合わなくて、しばらく機会がないうちにまるも冷めてっちゃったみたいで。

暑中見舞いは、善子のほうが欲しがったんだよね。

社会人にもなって一回も貰ったことがないのを先輩にからかわれたって言ったっけ。

『もう9月よ…』ってぐちぐち言いながら書いてあげてたな。

でもお母様がくれたって嬉しそうな報告を受けて、一旦しまっちゃったんだよね。


果南「アイスでも買ってきといてやるかー」


∬5.英断の日(三ヶ月に一回くらいやるんだよ) 終

115:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:31:25.45 ID:A499giNQ
♪5.ご機嫌な夏の夜

梨子 ブォォォォン…

果南「あがったよー」

梨子 カチッ

梨子「お湯抜いてくれました?」

果南「もち」

梨子「じゃあ、はい。こっちに」

果南「はーい」テテテ


ぽす、と背中を向けて私の前に正座する。

普段はあぐらなのに、なぜかこのときだけは正座の果南さん。

ブォォォォン…

硬めの髪質、深い青。

熱風の唸りに紛れて、調子外れの鼻唄。

私の周りには鼻唄になると音が取れなくなる人の多いこと。


梨子「はい。いいですよ」カチッ

果南「さんきゅー」

116:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:32:29.20 ID:A499giNQ
果南「梨子も髪もういいの?」

梨子「はい。ドラマでも観ますか?」

果南「アイス食べよ」

梨子「ありましたっけ?」

果南「買ってきたんだよ」タタタ…

果南「どっちがいい?」

梨子「あ。えー。うーん、梨のほう」

果南「だと思った」ニッ


窓を開けて、虫の声。

並んでアイスをかじる音。

吹き込む風は、そんなに涼しくないかも。


梨子「なんでアイスなんですか?」シャリ

果南「食べたいなーと思って」ハム

梨子「言ってくれたら私も行ったのに」

果南「梨子お風呂だったから」

梨子「そのタイミングで行くからでしょう」


たまに、思い付きで行動しちゃうのよね。

一緒にお散歩したかったのにな。

なんてちょっぴり拗ねちゃう夏の夜でした。

♪♪♪

117:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:33:09.84 ID:A499giNQ
♪♪♪

…そんな夏の夜。


果南 スカー

梨子「…」ムクッ

梨子 チラッ

果南 スピー

梨子 モゾ… トコトコ…


こっそりと布団を抜け出して廊下へ。

結んで置かれたゴミ袋。

思い入れた品々と目が合う。

118:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:34:21.48 ID:A499giNQ
梨子「確かにゴミはゴミかもしれないけど」シュル

梨子「全部が全部捨てることないわよね」ガサ

梨子「たとえば、うーん…これとか!」つ暑中見舞い サッ

梨子「今年も欲しがってるに決まってるもの。書きかけのお手紙を捨てちゃうなんて、ないない…」

果南「りーこっ」

梨子 ビクッ

梨子「あ…か、果南さん…お手洗いなら向こうに…」ギギギ

果南「英断の第七条」

梨子「英断したものを…漁らない…」ダラダラ

果南 ニコッ

梨子 ニ…ニコッ?

果南「りーこ~~~~っ!!」コラー!

梨子「うわーん、ごめんなさ~いっ!」


♪5.ご機嫌な夏の夜(怒ってはいないんですよ) 終

119:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:38:02.73 ID:A499giNQ
♪6.資格

果南 カキカキ…

梨子 ペラ…ペラ…

果南 カキ… ピタ

梨子 ペラ…ペラ…

果南「…」

梨子 ペラ…

果南 ジッ

梨子「…」…ペラ

果南「梨子、ここ」

梨子「はいはい」パタン

梨子「どこですか?」

120:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:38:59.63 ID:A499giNQ
梨子「どれどれ…『沼津商店に商品1,800,000円分を発送し、代金の80%は荷為替を取り組み、当座預金に割引料を差し引かれた手取金1,436,000円の入金を受けた。なお残額は掛けとした』」

果南「荷為替って手形でしょ。だから支払手形を使うと思ったんだけど、でも右は売上になるから…」

梨子「現金が動いてるときは、現金を基準に考えるといいですよ。だからまずは借方に当座預金1,436,000円が立って、それで……」

果南「おー、わかった! なるほどね!」

果南「梨子の教え方はわかりやすいなー。先生になったらいいのに」

梨子「ええっ?! そ、そんなことないよ。果南さんの呑み込みが…呑み込みが……」

果南「いいんでしょ? いいって言いなよ。もったいぶらずに」

梨子「果南さんとは学習のフィーリングが合うから…」

果南「そうまでして言えなかったか」

121:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:39:32.75 ID:A499giNQ
梨子「今回は続いてますね」

果南「なんとかね。今までのやつよりは面白いし。せめて受検くらいまでは辿り着かないと」

梨子「漢検とー、英検とー、ワープロ検定とー、実務法務とー、あといくつ挫折しましたっけ」ユビオリ

果南「ちょっ、やめてよ洗い出すの!」//

梨子「うふふ。やめてほしかったら受検してみせてください」

果南「言ったなー? 絶対やってやるんだから!」

梨子「ちなみに合格は?」

果南「それはまたちょっと話が」

梨子「…」

122:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:40:32.50 ID:A499giNQ
果南さんは、割と飽きっぽい。

そもそも勉強に苦手意識を持っているからかもしれないけれど、たまに資格勉強に乗り出しては、結構すぐに挫折する。

そして忘れた頃になにか次の資格を引っ張り出してきては勉強を始めて、またしばらくのうちに挫折する――そんなことを何回か繰り返していた。

私がわかるもの、理解できるものは教えたりして一緒にやってみるけど、なかなか続かない。

今回はどうかな。


果南「邪魔してごめんね。勉強に戻るよ」

梨子「ううん。わからなかったら言って」

果南 カキカキ…

梨子 ペラ…ペラ…


♪6.(だから私は)資格(をたくさん持ってます) 終

123:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:41:25.90 ID:A499giNQ
∬6.一問だけでその笑顔なら。

私は恥ずかしい。

いくつもの勉強を途中で放り出してきたことがじゃなくて、もちろんそれも恥ずかしいんだけど、順番が逆で。

恥ずかしいから投げ出してきたんだ。


梨子「じゃあ、私は先に寝ますね」

果南「うん。明るくてごめんね」

梨子「平気。あんまり遅くならないようにね」

果南「うん。おやすみ」

梨子「お休みなさい」

125:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:42:32.87 ID:A499giNQ
お父さんに言われたり、ニュースで聞いたりして、いいトシして資格をなんにも持ってないのはまずいらしいってことを知ったから、なんだか簡単そうなものを始めてみた。

………………

…………

……


果南「んー…」

果南「『合同会社は有限社員のみで構成され、合名会社は無限社員のみで構成される。合資会社はその両方の社員から構成される』…か」

果南「よくわかんないなあ…」

梨子「ただいまー」ガチャ

果南「お。おかえりー、ちょうどよかった」キテキテ

梨子「なんですか?」トトト

果南「これなんだけどさ、」

梨子「んっとー…」

梨子「こういうことかな…」

果南「あ、なるほどね。さすが梨子」

梨子「えへへ…合ってるかわかりませんけど、読んだ感じ、たぶん」

果南「!」ズキ…

梨子「晩ごはん作りますね。今日は天ぷらと豚汁ですよ」

果南「うん…楽しみ」ニコッ

………………

…………

……

128:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/22(水) 18:43:42.99 ID:A499giNQ
私が何回も読んでもわからなかった部分を、梨子は一回で理解する。

梨子に教えてもらったところが、十分前にやったやつのおさらいだったことなんてザラだ。

ノートはすぐに『梨子マーク』でいっぱいになる。

こんなことが何回も続いて、とうとう恥ずかしくなって投げ出してしまう。

しばらくして、『この資格なら私も取れるかも』と思って、またなんとなく勉強し始めては――やっぱり、恥ずかしくなって投げ出す。

そんなことをもう何回繰り返してきたのかわからない。

梨子がからかうように、一回や二回のことじゃない。

勉強は昔から苦手だった。

頭がよくないほうなのも自覚してる。

これ以上、また同じことで梨子に面倒を掛けるのも、恥ずかしくなるのも、投げ出すのも、全部イヤだ。

本当は全部全部イヤなんだ。

それでも、こりずに次の資格を探してきてしまうのは。


――梨子『正解です! 果南さん、すごい!』


果南「…よし。一時間だけしっかり頑張ろう!」


めいっぱい誉めてもらいたいって、ただそれだけの気持ちなんだ。


∬6.一問だけでその笑顔なら。 終

184:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:45:21.55 ID:ZwSk6q/W
∬7.大家さんには許可を貰った

トントン


梨子「果南さん、あけてー」

果南「ん?」トコトコ ガチャ

果南「おかえりー。買い物? 言ってくれれば手伝ったのに…」

梨子「あっ果南さん気を付けて!」

?? ヒュッ ガバッ

果南「へ? うわっ!」ドテ

果南「な、なに?!」

??「ワン!」

果南「んん?」

梨子「善子ちゃんから預かってきたの。ノワールちゃんよ」

ノワール「ワン!」

果南「い…犬ぅ?!」

185:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:46:22.89 ID:ZwSk6q/W
ノワール アソンデアソンデ

果南「善子どうかしたの?」クッツクナ グイー

梨子「花丸ちゃんとルビィちゃんと旅行なんだって。函館に」ナカヨクシナサイ

ノワール フンフン ヒザノ ニオイ ダ

果南「あれ? 理亞も東京じゃなかったっけ」ヤメロ カグナ ゲシッ

梨子「そうよ。帰省するのについていくんだって」カガナイノ ケラナイノ

ノワール ポニーテール ハムッ

果南「相変わらず仲良いなー。聖良も一緒かな」カムナッテ ビシ

梨子「もちろん。前々から計画してたみたいよ」カマナイノ タタカナイノ

ノワール ハッハッハッ

果南「…」ジッ

ノワール ハッハッハッ

果南「ぶさいくな犬だなあ」アハハ

ノワール「アウゥ」グイグイグイグイッッ

果南「うわっ! なんだよ、もう! 鼻で押すなよ! なんか濡れてるし!」ウエーッ シッシッ

梨子「三日間大丈夫かな…」


∬7.大家さんには許可を貰った(梨子がね) 終

186:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:47:23.34 ID:ZwSk6q/W
♪7.きっとあなたは野生の香りがするのでしょう

梨子「ノワール、ごはんよー」ザラザラ

ノワール「アンッ」トコトコ

ノワール ポリポリ

梨子 ソーッ…

ノワール「!」バッ

梨子「あーっ、また逃げた! どうして逃げるの?! 撫でたいのに~っ」

ノワール「…」

梨子「うう…邪魔してごめんなさい。ごはん食べて」スッ

ノワール トコトコ… ポリポリ

梨子「嫌われてるわけじゃなさそうなのに…」

ノワール ポリポリ

梨子 (やわらかそう…)

187:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:49:22.71 ID:ZwSk6q/W
果南「ただいまー」ガチャ

ノワール「!」

梨子「あ、お帰りなさい。タオル出してるから」

果南「ありがと。シャワー浴びてくるね」

ノワール「キャン!」タタタ…

果南「なんだよ、また?」

ノワール「アンアンッ」グルグル

果南「うるさいなあ。犬ってお風呂キライなんじゃないのかよ~」

ノワール ハッハッハッ

果南「わかったわかった、好きにすればいいじゃん」

ノワール「キャウン!」シッポ フリフリ

果南「入ってくるね~」スタスタ

ノワール「クゥ~ン」トコトコ

梨子「……いってらっしゃーい…」

188:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:50:37.29 ID:ZwSk6q/W
ノワール ペロペロ

果南 なに壁なんか舐めてんの?

ジャアアアア…

果南 ♪とことこ歩くのが~

ノワール ワン!

果南 ♪なんだか物足りないから~

ノワール ワンワン!

果南 ♪またすぐ、 …なんだっけ

ノワール ワウ?

果南 おまえが変な合いの手入れるからわかんなくなったじゃん

ノワール ブルルルルッ

果南 うわっ 水飛ばすなよ!

ノワール アンアンッ

果南 そんなに濡らしたら梨子に怒られるぞ~

ノワール クゥン…

果南 まあおまえ頭悪そうだもんなあ

ノワール キャウンッ キャンキャン!

果南 やめろってば!


梨子「…………」ぶう

189:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:52:01.46 ID:ZwSk6q/W
果南「あがったよー」

ノワール「アオン」

果南「梨子、朝ごはん…あれ?」

梨子「なんで果南さんばっかりなつかれるの…」ムスッ

果南「なに? どしたの?」

ノワール「ウウ?」

梨子「そーやって! 自分たちばっかり仲良くして! 私だってノワールちゃんと遊びたいのにー!」

果南「えっ、なに、遊んだらいいじゃん」オロオロ

ノワール クンクン… カプ

果南「痛たっ! 噛むなよ!」

梨子「いーもんいーもん…私なんかただのお世話係さんだもん…」イージイジイジ

果南「あの、梨子、朝ごはん…」

梨子「ノワールちゃんと二人で食べたらいいじゃないですかー」プンッ

果南「いやそうじゃなくて…」

ノワール ポリポリ

果南「なにおまえだけ食べてるんだよ! ずるいぞ!」

ノワール ササッ

果南「取らないから! 隠さなくていいよ!」

梨子「あーあー、楽しそうだな~~~~」

果南「だ…だから梨子?! どうしたのさ?!」

梨子「ふーんだっ」プイ

ノワール ポリポリ

果南「梨子ぉ――――っ!!」


♪7.きっとあなたは野生の香りがするのでしょう(好きな匂いです) 終

190:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:53:11.79 ID:ZwSk6q/W
∬8.しいたけ

梨子「ノワールちゃん、行くよ」

ノワール「アンッ」

梨子「それじゃ、行ってくるね」

果南「うん。……」

果南「やっぱり私も行くよ」スッ

梨子「え? いいの? 遠いですよ」

果南「いいよ。久し振りに善子にも会いたいしね。帰りに買い物も行くでしょ」

梨子「ふふ…はい。じゃ、行きましょうか」

ノワール「キャン!」

果南「いちいち鳴かなくていいよ、うるさいなあ」

梨子「またそういうこと言って」

果南「なに言われてるかなんてわかんないからいいんだよ」

梨子「結構伝わると思いますよ?」

果南「えー。でもこいつばかだと思うよ」

ノワール「ウウッ」

果南「あ! なに威嚇してるんだよ」

梨子「ほらね」クスクス

191:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:54:13.10 ID:ZwSk6q/W
ブゥゥゥン…


梨子「運転までお願いしてよかったんですか?」

果南「じゃなきゃついていく意味ないじゃん」

梨子「なんですか、それ」フフ

果南「犬、静かだね」

梨子 チラッ

梨子「寝ちゃってるみたい」

果南「ふうん。ま、車の中ではしゃぎ回られても困るしね。静かでいいや」

梨子「果南さん、ノワールちゃん好きでしょう?」

果南「えー? 別に。いっつもお風呂の邪魔するんだよ」

梨子「私とは一回も入ってくれなかったなあ…」

果南 (あっやべ)

192:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:55:20.61 ID:ZwSk6q/W
果南「でも、梨子にだっこされるときは大人しいじゃん。生意気にも」

梨子「生意気ですか?」

果南「生意気だね。相当」

梨子「でも結局頭は撫でさせてくれませんでしたよ」

果南「…まあ、撫でたいなら私の頭でいいじゃん」

梨子「♡」キュン

梨子「よしよし」ナデ

果南「ちょっ! 運転中だから!」

梨子「私がノワールちゃんノワールちゃんで淋しかったの?」ナデ

果南「うるさいなあ! ほらみんな見てるって! ちょっとだけだし! ちゃんと座りなよ! シートベルト!」

梨子「見てませんよ。座ってます。してます」ナデナデ

果南「も~~~~~~っ!!」///


ブゥゥゥン…


∬8.しいたけ(間違えた) 終

193:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:56:21.01 ID:ZwSk6q/W
♪8.後部座席の営み

善子「失礼します」

梨子「ごめんね。混んでて」

善子「いいわよ。迎えにまできてもらっちゃった時点でお釣りよ」

果南「善子、住所打ち込んで」

善子「うん」ピピピ

果南「よーし、じゃあ出すよ」

梨子「はーい」

善子「お願いします」

194:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:57:51.28 ID:ZwSk6q/W
ブゥゥゥン…


果南「~♪」フンフン

善子「ねえリリー」

梨子「なに?」

善子「ノワールったら寝てるわ」ジッ

梨子「そうだね。一時間前くらいからよ」

善子「久し振りに主に会うというのに。いけないコね」

梨子「あ、ほら、善子ちゃんの匂いがするから安心して眠れるんじゃないかな…」

善子「ねぼすけさんめ。このこの。ふふ、うりうり。やだもう柔らかいわね」ラブラブ

梨子 (あっこれフォローいらないやつだ)

果南 (鼻こすりつける癖は飼い主からだったんだなあ)

善子 クンクン

善子「誰から貰ってきたのよ、この匂い。ああ、リリーと果南の家の匂いよね。知ってる。遊びにいったことあるもの」スリスリ

果南 (めっちゃ話し掛けるじゃん)

梨子 (うちってニオうのかな…) ガーン

善子「私も寝ようかしら。…って、友達に送ってもらってるのに寝るわけないでしょ! もう!」ギューッ

かなりこ ((友達と会話してないけどね))

善子「んもー、カワイイんだから~~~♡」


ブゥゥゥン…


♪8.後部座席の営み(仲が良いのはいいことですね) 終

195:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:58:57.66 ID:ZwSk6q/W
♪9.一人でできるもん

トマト、カボチャ、オクラ、ナス、黄パプリカ。

色とりどりの野菜が並ぶ。

並ぶ、なんて他人事みたいに言って、並べたのは私だけれど。

張り切って出掛けていった果南さんのために、美味しい夏野菜カレーを作りましょう。

196:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 04:59:58.00 ID:ZwSk6q/W
塩茹でして氷水に晒しておいたオクラと、気持ち大きめに切った野菜。

果南さんは一口が大きいから、ごろごろ具が好きなのよね。

オリーブオイルで挽き肉と野菜を炒めます――このとき、オクラは炒めないのがポイントですよ。

水を加えてオクラを入れて、野菜が柔らかくなるまで煮る。

これも、果南さんは柔らかすぎると残念そうなカオをすることを知っているから、少しだけ硬いうちに切り上げて。

ルーは市販の中辛。

辛味の物足りなさは、お皿によそってから香辛料で。

とは言っても、果南さんも私もそんなに辛いのに強いわけじゃないから、少しだけどね。

あとは食べる前にトッピング用の野菜を炒めれば、完成。


梨子 ペロ

梨子「…うん! 果南さん好みの味ね」


自信を持てることが、とっても嬉しく、誇らしく。

あなたの帰りを待つ時間は、どうしてこんなにも心が躍るのでしょう。


♪9.(二人のためなら)一人でできるもん 終

197:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 05:01:00.51 ID:ZwSk6q/W
∬9.闘いの日

ザッ


果南「…ここだね」


時は来た。

梨子に地図を描いてもらったし、一時間の余裕を持って家を出たから、会場には難なく到着できた。

水筒も持たせてもらったし、シャーペンを六本、消しゴムを八つ、電卓は百均で五つ買ってもらった。

絆創膏も目薬も、保険証のコピーも携帯の簡易充電器も持ってきた。

後ろ髪はお団子結びだし、きっと梨子が美味しいものを作って待ってくれてる。

鞄はパンパン。

だけど、そのおかげで。


果南「心配事は一つもないね」


いざ行こう。


簿記検定試験に――――

∬∬∬

198:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 05:02:36.32 ID:ZwSk6q/W
∬∬∬

試験官「では、はじめ」


バッ カリカリカリカリ カタカタカタ


試験官 コツ、コツ、コツ…

試験官 (みんなまじめにやっていますね…ん?)

果南 トン…  トン…  トン…

試験官 (ええ――――――っ!! 机に電卓めっちゃ並んでる――――――――っ!!)

試験官 (しかも電卓のキーを見ながら人差し指で一つひとつ確実丁寧に打鍵してる!!)

試験官 (悪いことはない。悪いことは全くないよ。不正をしているわけでもなければ、諦めているわけでもない。試験に向かう姿勢は真剣そのもの、それは目を見ればよく分かります)

試験官 (でも…)

果南 トン…  トン…  トン…

試験官 (打つの遅っそ――――――っ!!)

試験官 (だ、大丈夫なのかな…間に合うのかな…) ハラハラ

試験官 (まだ大問1番だし…見た感じ理解して解けてはいるみたいだけど、ペースが…) ハラハラ

199:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 05:03:35.91 ID:ZwSk6q/W
果南 トン…  トン…  トン…

試験官 ハラハラ

果南 トン…  トン…  トン…

試験官 ハラハラ

果南 トン…  カリ… カリカリカリ

試験官 ホッ…

果南 カリカリ… トン…  トン…

試験官 ハラハラハラハラ

果南 カリカリ

試験官 ホッ

果南 トン…

試験官 ハラハラ


受験生ズ (((なんであの人ずっとあそこにいんの?)))

果南 (なんでこの人ずっとここにいるんだろう)

試験官 ハラハラ…

∬∬∬ ?
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)

200:ぬし ◆z9ftktNqPQ (風靡く断層) 2018/08/23(木) 05:05:22.70 ID:ZwSk6q/W
∬∬∬

果南「いただきまーす」

梨子「いただきます」

かなりこ モグ

果南「美味しい!」

梨子「うん。美味しいですね」

果南「何杯でも食べれちゃうね~。頑張ったかいがあったよ」モグモグ

梨子「手応えはどうでしたか?」

果南「まあまあ解けたと思うよ。でも、時間足んなくってさ、最後の問題は全部終わんなかった」

梨子「そっか。合格してるといいんですけど…」

果南「ま、大丈夫でしょ!」

梨子「ふふ…そうですね。たくさん勉強しましたもんね」

果南「そんなことよりカレー美味しいよ! 野菜大っきくて食べごたえあるしちょうどいい!」モグモグ

梨子「そんなことって」


呆れたように笑って、お代わりたくさんあるからね、と微笑む。

梨子がいるから毎日を頑張れる。

願わくば、その期待に応えられていますように。


∬9.闘いの日(内心は意外とキてる) 終

204:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:07:30.20 ID:bmZcf3ob
∬10.デキる女

トントン、と低めのヒールを鳴らす音。


梨子「じゃあ、私は先に出ますね」

果南「うん。また後で」

梨子「遅れたら拗ねますから」

果南「さすがに遅れないよ」

梨子「ほんとかな~」


ほんの少し首をかしげる仕草に、思わずドキッとしてしまう。

いや、いや、梨子だし。いつも通りの梨子だし、うん。

昨日から梨子が何回も繰り返すから意識しちゃっただけだよ。

ゆっくりとドアが閉まって、部屋の中で一人になる。


果南「…よし。準備、準備」


今日は梨子と久し振りのデートだ。

205:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:09:00.05 ID:bmZcf3ob
と、意気込んでみたのはいいんだけど。


果南「デートの準備ってなにするんだっけ」


梨子相手にばっちり化粧していくってのも違うしなあ。

なんか照れ臭いし、今さらだし。

髪型もいつもと同じでいいよね。

あんまり気合い入れてるようになるのも変だし。

部屋着で行くのがまずいことはさすがの私にもわかるから、服はあれにすればいいとして。

スマホと、財布と、ハンカチ…くらいなら、バッグもなくていいか、うん。邪魔になるし。


果南「コンタクト入れよ」


…と立ち上がったところで着信アリ。表示された名前は

『チカ』

お? 珍しいね。

206:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:10:10.51 ID:bmZcf3ob
果南「はいはーい。どした?」

千歌『やっほー果南ちゃん。どうしてるかなーって』

果南「ふふふ…実はね、今から梨子とデートなんだ。その準備してるとこだよ」

千歌『うんうん、そっかそっか。どう準備してるの?』

果南「どうって、コンタクト入れるよ。あと服も着替える」

千歌『持ち物は?』

果南「スマホと財布。あとハンカチ」

千歌『バッグは?』

果南「ほとんど持ってくものないからね、持ってかないことにするんだ」

千歌『髪型はどうするの?』

果南「そのままじゃ暑いからさ、お団子にするつもり」

千歌『お化粧はどのくらい?』

果南「まあ、それなりに。リップくらいは塗っていくよ」

千歌『そっか~』

果南「あはは。なに、どうしたの? やけに気にするじゃん。あ、わかった。チカも梨子に会いたいんでしょ。でも今日はだめだよ、梨子ってば二人っきりでデートするの久し振りだって随分はしゃいでたんだから」

千歌『…』

果南「チカ? そう拗ねないでさ、来月の三連休にでも一緒に、」

千歌『果南ちゃんのばか――――~~~~っっっっ!!!!』

果南「………っ?!」キーーーン

207:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:11:16.17 ID:bmZcf3ob
果南「ちょ…いきなり電話口で大声出すのやめてよ…」

千歌『そんなのどーでもいいから!』

果南「どうでもよくないよ。鼓膜って破れたら元に」

千歌『聞いて果南ちゃん!』

果南「…なに?」

千歌『梨子ちゃんとデートなんだよね? しかも久し振りの』

果南「そ、そうだよ。一緒に住んじゃうとさ、なんかこうわざわざ『デートだ』って出掛けることってあんまりなくって、」

千歌『それなのに髪型はいつもと同じなの?』

果南「え? それはまあ、」

千歌『お化粧もしないの? 手ぶらなの?』

果南「いや手ぶらっていうか、スマホと財布と」

千歌『バッグ持たないんでしょ』

果南「まあ、うん」

千歌『それは手ぶらって言うんだよ』

208:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:12:18.84 ID:bmZcf3ob
千歌『服は? どんなので行くつもり?』

果南「あのほら、覚えてるかな。去年の夏、同窓会やったじゃん、九人で。あのときと大体おんなじ感じだよ。あれなら外に着てっても変じゃないでしょ?」

千歌『………』

千歌『…はあ……果南ちゃん…』

果南「い、嫌な声を出すのもやめてよ…」

千歌『いい? よく聞いて』

果南「聞いてるよ」

千歌『今日ね、果南ちゃんは梨子ちゃんとデートなの。恋人同士の大切な日なの。それは決して適当にしていいものじゃないんだよ』

果南「適当になんかするつもりないよ」

千歌『うん、そうだね。そうだよね。果南ちゃんにとってはそうなのかもしれない。でもね、こういうのは相手がどう感じるかが大事なんだよ』

果南「梨子が?」

千歌『そう、梨子ちゃんが。久し振りのデートにいつも通りの果南ちゃんが来たら、どう思うかな』

果南「どう…思うのかな?」

209:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:13:58.82 ID:bmZcf3ob
千歌『いつも通りの髪型で、いつも通り手ぶらで、いつも通りスッピンに近くて、同窓会に行く格好で、果南ちゃんが来たら。どう思うかな』

果南「…」

千歌『これでもまだわかんないなら、思い出して。今日の梨子ちゃんどうだった? 髪型は? 持ち物は? お化粧は? 服装は? 一個でも、いつも通りのとこ…あった?』

果南「!」ハッ

果南「…えっと、」

千歌『そういうことなんだよ、果南ちゃん』

千歌『デートってそういうものなの。わかるよ、いつも一緒にいる相手にわざわざお化粧をするのが恥ずかしいのも、気合いを入れて髪型とか服装とか考えるのが照れ臭いのも』

千歌『でもね、そうじゃないんだよ。今日はデートなんだから』

果南「…そっか。ありがとう、チカ。危うく私、梨子のこと悲しませちゃうところだったね」

千歌『梨子ちゃんのことだから、それも果南ちゃんらしいって笑ってくれると思う。でも、それに甘えちゃいけないってチカは思うな』

果南「そうだよね、私もそう思う。ただでさえ梨子には普段から色んなことでお世話になってるんだもん。ちょっと照れ臭いけど――めいっぱいおしゃれして、めいっぱい恋人らしくしてくるよ」

千歌『うん! 応援してるよ』

果南「へへ…チカには助けられてばっかりだね。…あ、でもどうしよう…凝った髪型っていつも梨子とかチカにやってもらってたから、自分じゃできないんだよね…美容室に行ってたら遅くなっちゃうし…」

千歌『あー、それなら大丈夫だよ。そうかなって思ってたから』

果南「へ?」


ピンポーン


千歌『着いたから、開けて』

果南「……へ???」


∬∬∬10.デキる女(その名も高海千歌) 終

210:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:15:33.48 ID:bmZcf3ob
♪10.あと10分、開始10分

今日は果南さんとデートです。

一ヶ月前から約束して、どこに行くか話し合って、ずっとずっと楽しみにしてきたの。

一緒に住むようになってから、傍にいられる時間はうんと増えた。

でもその代わりに、減った時間もある。

それはそれで一つの形なんだって分かっているけれど、でも、やっぱりふと昔みたいな時間を過ごしたくなるときもあって。

面倒くさがられちゃうかなって思ったけど、勇気を出して誘ってみた。

そんな心配はよそに『いいよ、どこ行こっか』なんて即答してくれて嬉しかったりして、でもそれはゆっくり話し合って考えればいいやって、一つだけ…どうしても。

あのね、デートするならね、


――梨子『待ち合わせ、したいの』


一瞬きょとんとしたのはもう完全に想定内のことで、続く言葉も予想はできていた。

けれど。


――果南『梨子がしたいなら、待ち合わせしよ』


呑み込んでくれたのでしょう。

疑問符付きの笑顔が、とってもとっても愛おしかったの。

♪♪♪

211:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:16:37.07 ID:bmZcf3ob
♪♪♪

カラン、コロン


私はSNSをやっていない。

アカウントは作っているけれど、ほとんど更新しない。

取り立ててみんなに話して聞かせるような日常を送っているわけじゃないし、もうそういう年齢じゃないし…と思う気持ちもあるから。

でもね、たまに――本当にすごくたまに、誰かに話したくって仕方なくなるときがある。

例えば、


店員「お待たせしました」


なんの変哲もないウインナーコーヒーを撮って、千歌ちゃんに送る。

今も昔も、形は違っても一番の親友。

今のこの気持ちだって、自分のことのように受け入れてくれるって知っているから。


『画像を送信しました』

『あと30分。なう』


待ち遠しくって、懐かしい。

♪♪♪

212:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:18:00.66 ID:bmZcf3ob
♪♪♪

ほろ苦い口を、リップクリームで上書きする。


梨子「――よし。ばっちり」


腕時計に目を落とせば、もう10分前に迫っていて。

想像していた以上に高鳴る胸に、自分でもやや驚いてしまう。

すっかり馴染んでしまった町の風景に連れられて、待ち合わせの駅へと歩く。

果南さんはどんな気持ちで来るかな。

服も、髪も、きっといつもと同じか、変わっても少しだと思うけれど。

そんなのはね、いいの。わかってるから。

それよりも、今日という一日に臨む気持ちが、私と同じでありますように。

どきどき? わくわく? それともうきうきかな。

こんな言葉を使うと幼稚に聞こえてしまうけれど、でも、それくらい素直な感情。

手を繋いで、並んで歩いて、そして隣で笑っていて。

213:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:19:15.04 ID:bmZcf3ob
ふと、スマートフォンがメッセージの受信を告げる。


千歌『素敵な一日になるといいね』

梨子「今日は返信が遅かったね。寝てたのかな」


ありがとう、と返そうとして。

両手を添えたその瞬間に。


梨子「きゃ」


足元につまずいて、スマートフォンを落としそうになって、慌てて受け止めて、そして――………


梨子「あっ!」


肩に流していたストールがふわりと風に乗って、まっすぐに。

そのまま川面へと浮いてしまった。

214:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:22:54.43 ID:bmZcf3ob
梨子「そ…そんなあっ」


川辺に駆け寄るも、だからと言ってどうなるわけでもなく。

水は流れるし、秒針は止まらない。


梨子「だめ、あ、ちょっと…待って…」


服を着ていると泳ぐ感覚は全く違うんだっけ。

ここから駅まであと何分掛かるかな。

駅前の服屋さんまだ開いてないよね。

夏なら川ってそんなに冷たくないのかな。

あそこの石に引っ掛かれば渡って取れるかも。

ちがくて、果南さん待たせちゃう。

汗かいちゃうから走りたくなかったけど仕方ないから。

えっと、だから、私、今、どうしたら――


ふらりと踏み出した肩が、くいっと寄せられる。


果南「濡れちゃうから」


大好きな声、颯爽と駆ける青髪と、控えめの水しぶき。

♪♪♪

215:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:24:51.01 ID:bmZcf3ob
♪♪♪

梨子「果南さんっ!」


遥か遠くで陸に上がった果南さんのもとへと駆け寄る。

その腕には私のストールがしっかりと抱きかかえられていて、だから泳ぐのに手間取ったんだ――


梨子「果南さん! 果南さん、平気ですか?!」

果南「…」

梨子「果南さん!」


呼ぶ声に反応がなかったのはほんの束の間で、びっくりしてしまうほどの勢いで笑顔が向けられる。


果南「間に合ってよかった」

梨子「…よ、」

216:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:25:36.93 ID:bmZcf3ob
梨子「よくないですも~~~んっ! うわああああん……」

果南「え、ちょっと梨子、なんで泣くのさ」

梨子「果南さんのばかあ~~~っ」

果南「でもこれ取れたし、びしょびしょだけど、梨子は濡れてないし、ねえ、泣かないでよ」

梨子「わあああああん…」ギュ

果南「ちょ梨子くっついたら濡れるから!」

梨子「いいもん私も濡れるもん~~~っ」ビエエエッ

果南「意味わかんないし! 意味ないじゃん! ほら離れてってば…」

梨子「やだもう今日はここで過ごすの~~~っ」ワンワン

果南「や、だから意味が…」

梨子「ああああ~~~~~んっ」ウエエン…

………………

………

217:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:26:43.22 ID:bmZcf3ob
果南「落ち着いた?」

梨子「うん」グス

果南「結局梨子も濡れちゃったじゃん」

梨子「果南さんほどじゃないもん」

果南「まあね。そりゃそうだけど。これも濡れちゃったしね」

梨子「そんなのいいですよ。洗って乾かせばいいんだから」

果南「一旦帰ろっか」

梨子「…ううん、このままデートしましょう」

果南「は?! 本気?!」

梨子「本気です。行きましょ」グイ

果南「や、でも私たちびしょびしょなんだよ?!」

梨子「いいの! これだけお天気いいんだから歩いてるうちに乾きますよ!」

果南「そ、そういう問題かなあ…」

218:ぬし ◆z9ftktNqPQ (帝国中央都市) 2018/08/23(木) 08:27:43.01 ID:bmZcf3ob
梨子「果南さん、その髪型似合ってますよ。服も可愛い」

果南「うえ?! や、まあ、ほら、デートだし、一応。こんなんなっちゃったけどね…」ビショ

梨子「編み込みなんてできたんですね」

果南「あみこみ?」

梨子「その髪型ですよ」

果南「あー…これね、うん。通りすがりの美容師にやってもらったんだ」

梨子「えー、なんですか。それ」

果南「梨子も可愛いよ。今日も可愛い」

梨子「えへへ…気合い入れましたからね」

果南「それより、これで美術館行くの? 遊覧船先にしない?」

梨子「だーめ。プラン決めたじゃないですか」

果南「そう頑なに守る必要あるかなあ」

梨子「そういうものなんですよ」

果南「そういうものなのか~」


一歩、一歩。ぐしょりぐしょりと音を立てながら、足跡は並んで刻まれていく。

私たちのデートは、始まったばかりです。


♪10.あと10分、開始10分(それと充分な幸せ。あ、これは10分と充分をかけた――) 終

222:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:17:01.83 ID:uP/hJHBh
last.今、贈りたい『ありがとう』

ー桜内家ー


梨子「ただいま」

果南「お邪魔します」

桜内母「お帰りなさい、梨子ちゃん。いらっしゃい、果南ちゃん」

果南「お世話になります」ペコ

桜内母「また背伸びたみたいね」

果南「そうですか? そう?」

梨子「言われてみたら、そうかも。いつも一緒にいるとわからなくなりますね」

果南「そうだね」

桜内母「ふふ。7時くらいにはお夕飯にするからね」

梨子「うん」

果南「手伝いますよ」

桜内母「いいわよ。ゆっくりしてなさい」

果南「え、でも…」

梨子「はいはい、じゃゆっくりしてるね。上行こ、果南さん」グイ

果南「え、あ、ちょっと、でも泊めてもらうのに…」

梨子「いいから」グイグイ

桜内母「ごゆっくり~」

***

223:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:18:07.28 ID:uP/hJHBh
♪♪♪

ー梨子の部屋ー


果南「梨子ってばたまに強引なんだもんなー。いいじゃん、晩ごはん作るのなんて手慣れたもんなんだから、ちゃちゃーっとやっちゃえば」

梨子「いやそれやるの私じゃないですか」

果南「私も傍にいるよ」

梨子「いいんですよ。ああいうのは、お母さんがやりたくてやってるんですから」

果南「そうなの?」

梨子「そうなの」

梨子「…」

果南「…」


少し沈黙。

下にお母さんがいると思うと、二人きりの時間がなんだか気恥ずかしいかも。


梨子「なにしましょっか。もうこっちにはほとんどなにもありませんけど、」

果南「ねえ」


果南「誉めて」


その声に振り向けば、頬を染めて、視線は逸らされて。

224:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:19:09.43 ID:uP/hJHBh
果南「あのね、頑張ったんだ、私。今回もいっぱい梨子に頼っちゃって、やめたいって思ったときもあったけど、ちゃんと受検まで辿り着けた。

果南「受検会場ね、高校生ばっかりだったんだ。しかもみんな解くの早くて、私が終わらない中どんどん終わって出ていっちゃうし、わかんないとこなんかなかったみたいなカオしてさ。

果南「受検が終わってからも、大丈夫だって言い聞かせてたけど、ほんとはずっとドキドキしてて、合格しててほしいって、落ちてたらイヤだって、ずっと思ってて。

果南「梨子とか、他の人とかにしてみれば、きっとなんてことない資格でさ。合格して当然みたいな感じなのかもしれないけど、私は精いっぱいだったし、さっきからね、今もね、ずっと、こんなんでもすっごく嬉しいって思ってて、

果南「ねえ、梨子。誉めて――


梨子「果南さんっ」


果南「わっ?!」

225:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:19:56.06 ID:uP/hJHBh
飛び付いた。

そのくらいのつもりとかじゃなくて、純粋な心の勢いで果南さんに飛び付いた。

勢い余ってベッドに押し倒す形になっちゃったけれど、そんなのどうだっていい。

強く、強く、この気持ちがそのまま伝わるようにって、強く抱き締める。


梨子「果南さん」

果南「梨子」

梨子「すごいよ。すごい。本当にすごいです」

果南「梨子…」

梨子「よく頑張りましたね」

果南「梨子ぉ…っ」


梨子「合格、おめでとう――!!」

226:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:21:13.38 ID:uP/hJHBh
ぎゅううううっと、回された腕に力が込められる。

いつでも笑顔で、どこか掴み所がなくて、なんでも卒なくこなしちゃう。

そんな風に見られがちな果南さんの心の声を、誰よりも近くで聞くことができるこの場所が、嬉しくて――嬉しくて。

ここまで手を繋ぎっ放しで帰ってきたこととか、心なしかいつもより饒舌だったこととか、頬の紅さとか、色んなことが頭の中を駆け巡って、愛おしくて堪らなくなる。

やがてふわりと腕の力が抜けて、果南さんと視線を交わす。


梨子「自分のことみたいに…ううん、それ以上に、すっごく嬉しい」

果南「えへへ…頑張ってよかったよ」


すん、と鼻をこすりつけて甘えてきたり。

前髪を掻いて額に口付けを落としたり。

二人きりの部屋、そっと頬に手をあてがえば、もう私たちを遮るものなんてなにもなくて――


――千歌ちゃんと目が合った。


千歌「はわー…なんだかセクシー…あ、だいじょぶ。続けて」ドゾ


梨子「――――――――――~~~~~~~~~~っっっっ???!!!」

♪♪♪

227:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:23:35.66 ID:uP/hJHBh
∬∬∬

千歌「いやー、チカまでごしょーばんにあずかっちゃって」パクパク

果南「言葉と食の進みが噛み合ってないぞー」ズズ…

桜内母「たくさん食べてね。果南ちゃんも千歌ちゃんも」

千歌「遠慮なく!」

果南「ありがとうございます。ん、おいし。さすが、梨子の先生」

桜内母「梨子はさぼらずにご飯作ってる?」

果南「はい。作ってくれるたびに私の好きな味になっていくんですよ」

桜内母「あらあら♡」

千歌「えー、いいなー。チカも梨子ちゃんのごはん食べたーい」

果南「いいよ、今度は晩ごはん食べにおいでよ。曜とかも誘ってさ」

千歌「わーいっ、行く行くー!」

果南「ところで、」

桜内母「梨子ちゃんはいつまで拗ねてるのかしら」

梨子 プクーッ

千歌「チカ悪くないよ。窓開けたらたまたま梨子ちゃんたちが」

梨子「いいいい言わなくていいからっ!!」// アワワワ

桜内母「あらあら♡」

228:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:25:50.74 ID:uP/hJHBh
梨子「もーっ! もーっもーっ千歌ちゃんったらもーっ!」パクパクモグモグ

梨子「いるならいるって言ってよ!」フンス

千歌「無茶言わないで」

果南「毎日報告じゃん」モグ

梨子「だいたい果南さんはなんでそんなに平然としてるんですか?!」

千歌「うわ矛先が」

果南「チカだし。キスくらいなら別に見られるの初めてじゃないし」

梨子「ちょっ! 言わないで!」チラッチラッ

桜内母「ほぼ自白よ梨子ちゃん」ニコニコ

梨子「もーやだ…恥ずか死ぬ…」

果南「んー」

果南「私とスキンシップ取ってたのそんなに恥ずかしいかね」

梨子「?! ちがっ、そういうことじゃないです!」バッ

229:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:28:39.83 ID:uP/hJHBh
梨子「果南さんと一緒にいるのが恥ずかしいってことじゃなくて、それをお母さんとか千歌ちゃんとかに見られるのが――ううん、そういうわけでもなくって、あのあの」アウアウ

千歌 ニコニコ

桜内母 ニコニコ

梨子 アウアウ アワアワ ハワワ…

果南 フフ…


くるくる表情が変わる。

優しくて大人っぽかったり、拗ねて子どもっぽかったり、照れて…なにっぽいのかよくわかんなかったり。

そんな梨子の素直な表情に、私はいつも救われてるんだよ。

ありがとう。ごめんね。私に任せて。一緒に頑張ろう。

こんなにたくさんの強い気持ちをくれるのは、世界中できっと梨子だけだから。

私は明日も、梨子の隣で歩いていきたい。


ねえ、梨子。

これからも私を支えて。これからも私に支えさせて。

大好きだよ――ね♡


last.今、贈りたい『ありがとう』 終



【ss】かなりこ、ふたりぐらし。 終

230:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:29:58.93 ID:uP/hJHBh
本編は以上です
以下、蛇足となりますが、書いたものの本編には含めなかったシーンを少し投下します。
別の世界線か、別の時間軸だとでも思っていただければ。

231:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:32:13.56 ID:uP/hJHBh
♪h1.衝動

ー浦の星、二年教室ー


果南「梨子ー」ガラ


昼休み。

お昼ごはんを済ませて千歌ちゃんと曜ちゃんと談笑していると、果南さんが訪れた。


梨子「あら、果南さん」

千歌「果南ちゃーん」ノシ

曜「こんにちは、果南ちゃん」

果南「よ。三人とも」

梨子「どうかしましたか?」

千歌「梨子ちゃんに会いにきたんでしょ」

曜「ラブラブしにきたんでしょ」

果南「なんなのさ」

232:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:33:41.07 ID:uP/hJHBh
果南「別に、なんでもないよ。ただ梨子のピアノ聴きたくなったから来ただけだよ」

梨子「へ?」//

果南「ね、聴かせて。音楽室行こ」グイ

梨子「え、あ、あの、はい、いいですけど…」アワワ

梨子「えっと、じゃあ、また後でね」


そのまま、私の手を取ったまま。


千歌「…なんでもなくないじゃん」

曜「…ラブラブしにきたんじゃん」


♪h1.衝動(たまにあります) 終

233:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:34:46.91 ID:uP/hJHBh
∬h1.音楽は聴く人がいて完成する

ー浦の星、音楽室ー


果南「たのもーっ」ガラ

梨子「果南さん、音楽室では静かに」

果南「えー、いいじゃん。誰もいないんだし」

梨子「そうですけど」

果南「ほら梨子、見える? あれがピアノだよ」

梨子「見えます。知ってます」

果南「今からおまえはあれを弾くんだぞ~」

梨子「弾くなんて言ってませんけど」

果南「え?! 弾かないの?! じゃあなんでついてきたのさ?!」

梨子「果南さんが勝手に引っ張ってきたんじゃないですか」

果南「ええ…弾かないの…」シュン

梨子「…」

梨子「ふふ。冗談ですよ」


そう言っていたずらっぽく笑うと、梨子はするりと私の手をほどいてピアノへと駆け寄った。

まったく、おちゃめな後輩だ。

先輩をからかうなんていい度胸をしてるね。

234:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:35:51.24 ID:uP/hJHBh
梨子「座ってください。なにが聴きたいですか?」

果南「ん? んー、あれ。チョコパン。ショコラパン?」

梨子「……ショパンですか?」

果南「そうなのかな」

梨子「金輪際、果南さんの前でショパンは弾かないことを決意しました」

果南「えー! なんでさー!」

梨子「果南さんには童謡で充分です」

果南「ちょっと! これでも一応スクールアイドルやってるんだよ! 耳の肥えた私に今さら童謡なんて――お、この曲なかなかいいね」

梨子「そうでしょう。線路はどこまでも続くって曲ですよ」

果南「『HAPPY PARTY TRAIN』みたいだね」


~♪

陽気で、軽快で、心配事なんか一つもない、鼻唄のような曲だね。

梨子もまあまあいいセンスしてるじゃん…ふふ……


果南 スピー

梨子「ピアノせがんでは必ず寝るんですから…まったく」フフ


∬h1.音楽は聴く人がいて完成する(ちゃんと聴いてたよ) 終

235:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:37:51.32 ID:uP/hJHBh
上の h1. は、読んでのとおり高校時代のシーンです
このssを書き始めてかなり早々に書いたのですが、全体を二人暮らしに統一したことで無事お蔵入りとなりました

236:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:38:59.20 ID:uP/hJHBh
∬9.闘いの日 のワンシーン

果南 トン… ……

果南「…?」

試験官 (止まっちゃった! そのペースで止まるのはまずいよ! 確かに5問目は少しだけ捻ってあるけど、そんなに難しい問題じゃないから! キミなら解けるから! 答えは借方『割賦売掛金』だよ!)

試験官「ン…」

果南「?!」ビクッ

試験官「ンー ンンー ゴホッゴホッ ンァップぅ ンァップぅ ンリカケぇ…ゴホッゴホッ」

果南 ビクビク

試験官「ンァッ ンァップぅ…ゴホッ」

受験生「すみません、うるさいです」

試験官「申し訳ありません。喉の調子が良くなくて」

試験官「ンンッ ンァ… ンァップぅ ンリカケぇ…」

果南 ビクビク…

果南 (あ、これ梨子とやったやつか。『割賦売掛金』だな…) カリカリ

試験官「ンイエスッッ!!」グッ

果南「?!」ビクッ



237:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:40:21.20 ID:uP/hJHBh
これは198か199の辺りに差し込む予定でしたが、メインフォーカスが果南じゃないことと全体の雰囲気をぶち壊しそうな気がしたことで、試験官にはおとなしくしていてもらうことになりました

238:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:41:28.99 ID:uP/hJHBh
∬h2.果南ちゃんと一年生ズ


果南 トコトコ

果南「…ん?」


ルビィ ジョキジョキジョキ

善子「ちょ、ルビィ。切りすぎ切りすぎ」

ルビィ「え? あー! 線はみ出てるー!」ガーンッ

善子「もう! あんた一人で何本使うつもりよ!」

ルビィ「うゆ…むずかしいんだもん…」

花丸「また善子ちゃんがコーラ飲むことになるよ」

善子「ねえいいんだけど毎回ジュース飲むのが私なのはなんで? なんであんたたちは飲まないの?」

花丸「もう善子ちゃんが作ってあげたらいいずら」

ルビィ「!」ムムッ

善子「作ろうって言い出したのルビィよ? そこ私がやっちゃったら意味が――」

ルビィ ワクワク

善子「いやいいんかい」


ワイワイ

239:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:43:37.91 ID:uP/hJHBh
果南「やっほー」

花丸「あ、果南ちゃん。こんにちはー」

ルビィ「かなんちゃん!」

善子「一人で散歩なんて優雅ね」

果南「誰も遊んでくれなくってさ。でもいいとこに会っちゃった」

花丸「果南ちゃんも一緒にやる?」

果南「なにしてるの?」

ルビィ「これ!」つペットボトル

果南「ペットボトル?」

善子「ペットボトルロケットって知らない? 小学生の頃に理科で習ったんだけど。なんか突然ルビィがやろうって言い出したのよ」

ルビィ「みんなでやったら楽しいかなって」

花丸「まだロケットが完成すらしてないけどね」

ルビィ「うゆゆ…」シュン

善子「どう? なにも予定がないならやってかない?」

果南「…」← ペットボトルロケットがなにかぴんと来ていない

∬( c||^ヮ^||「やるやる!」

花丸「そうこなくっちゃ」

240:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:44:40.96 ID:uP/hJHBh
果南「んで? どうすればいいの?」

ルビィ「まずはペットボトルを切るんだよ。線を引いて、」キュキュ…

花丸「ルビィちゃんずれてるずれてる。線がずれてるずら」

善子「あーあーもー、しょっぱなからなにやってんのよ。作り方は私が教えるから」カシテ

果南「こーやって線引いて、線の通りに切って」ジョギジョギジョギ

花丸「果南ちゃんずれてるずれてる。ずれてるっていうか盛大に線を無視して切ってるずら」

善子「ちょっともうなんなのよ。いいわよ作るのも私がやるから」カシテ

ルビィ「えへへ…おこられちゃった」

果南「へへ…怒られちゃったね」

花丸「本人たちは満足そうだよ」

善子「あっそう」キュキュ ジョキジョキ ← どうでもよくなってきた

241:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:45:44.76 ID:uP/hJHBh
果南「完成~っ!」パパーン

ルビィ「ルビィのも!」パパーン

花丸「かっこいいのできたね。色塗っただけだけど」

善子「もういいから。本人たちがいいならいいから」

果南「で、これをどうするんだっけ」

花丸「果南ちゃんもしかしてペットボトルロケット知らな」

果南「知ってる知ってる。知ってるんだけど忘れたの」

ルビィ「飛ばすんだよ。いちばん飛ばしたひとが勝ち」

果南「あー、そうそう。ロケットだもんね。飛ばさなきゃ話になんないよね」ウンウン

花丸「じゃあ飛ばすための加工しよっか。と言ってもそんなに――」

果南 ブンッッッ!! ピューーーーーーン… キラリーン

果南「おー、飛んだ飛んだ。私一位かな」

善子「あなたやっぱり知らないでしょ」


∬h2.果南ちゃんと一年生ズ(私は習わなかったしね) 終

242:ぬし ◆z9ftktNqPQ (有限の箱庭) 2018/08/23(木) 13:48:23.25 ID:uP/hJHBh
こちらも高校時代のシーンであるため本編から除きました

供養は以上です 文末汚しを失礼しました
次はダイよしを書くつもりですが、いかんせん奥手な二人なのでクソほど長くなりそうな気が…
ss総合でご意見を伺うことがあるかもしれませんが、そのときはどうぞよろしくです

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1534912956/

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