【SS】しずく 「かすみさん、この電話を使えば出れるんだよ！」 かすみ 「おおっ！」【ラブライブ！虹ヶ咲】

しずく 「かすみさんがネット映えするパワースポットがあるからって森の中に入ったら、まさか迷っちゃうなんて……」

かすみ 「うぅ、想定外の事態です」

しずく 「でも私たちには携帯があるよ！ すっかり忘れてたけど、これで連絡できれば……」

かすみ 「森から出れるってことだね！」

しずく 「じゃあまずは警察に……」

かすみ 「しず子、そのスマホ貸してくれない？」

しずく 「えっ？」
　

かすみ 「今回のこと、私なりに責任を感じてるんだ……だからかすみんが責任持って電話したい」

しずく 「分かった……どうぞ、かすみさん」 ｽｯ

かすみ 「ありがとう、しず子！ じゃあ電話をかけて」

ﾌﾞｰﾝ

かすみ 「ひぃぃぃ！ スマホの上に虫がっ！」 ﾌﾞﾝｯ

ﾋｭｰｰｰﾝ

しずく 「えっ」

かすみ 「……」
　

しずく 「い、今私の携帯、崖の下に落ちていって……」

かすみ 「……」

しずく 「下が見えない……これじゃ拾えないよ……」

かすみ 「うーん……」

しずく 「かすみさんが思いっきり投げちゃったから……」

かすみ 「……」

しずく 「……」
　

かすみ 「失敗もあるよね♪ てへ」

しずく 「……」

かすみ 「ぎゃ、逆にあそこでビビらない方が問題だと思うな〜だってかすみんは可愛い乙女ですし？ 虫にビビる女の子の方が可愛いかなって」

しずく 「……」

かすみ 「しず子は親友でしょ？ 親友は優しく許してあげるべきだと思うんだ」

しずく 「許す……？」

かすみ 「うんうん！」

しずく 「……」

…

…

…
　

かすみ 「しず子ぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー！！ 助けてよぉぉぉぉぉぉぉぉ！！ 高いところ怖いよぉ！！」 ｶﾞｸｶﾞｸ

しずく 「ほらどんどん下に降ろしてゆくから、スマホ探して」

かすみ 「下真っ暗だよ！？ こんな高さ死ぬって！」

しずく 「安心してよ。ちゃんと命綱はあるから」

かすみ 「木のツルじゃん！！ いつ千切れるか分からないやつ！！」

しずく 「千切れたらそれまでだよ」

かすみ 「かすみんに拒否権はないの！？」
　

しずく 「あっ、手が滑った」 ｽﾙｰｰｰｰ

かすみ 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー！！！！！」 ﾋﾞｭｰｰｰｰｰﾝ

しずく 「危ない、危ない」 ｷﾞｭｯ

かすみ 「親友を命の危機に晒さないでよぉぉ！！」

しずく 「スマホを投げといて言い訳ばかりする親友なんて認めません」

かすみ 「ひぃぃぃ！ ごめんなさいぃぃ」

…

…

…
　

しずく 「反省した？ かすみさん？」

かすみ 「うぅ……しず子本当にごめんね。でもしず子、一つ忘れてることがあるよ」

しずく 「忘れてること？」

かすみ 「スマホはかすみんも持ってるってこと！」

しずく 「！ ということは！」

かすみ 「そう！ かすみんたちは助かるってことです！！」

しずく 「やったーー！ 良かったよぉ、かすみさん」 ｸﾞｽｯ

かすみ 「ふふ、じゃあ電話をしてと……あ、そうだ、ソシャゲのガチャ回すの忘れてた」

しずく 「えっ？」
　

かすみ 「これ毎日やらないと大変なんだよね〜」 ﾋﾟｺｯ

しずく 「そんなことやってる場合じゃ……」

かすみ 「大丈夫、大丈夫！ すぐ終わるから！」 ﾋﾟｺﾋﾟｺ

しずく 「で、でも」

かすみ 「このゲーム、容量は食うしバッテリーも無茶苦茶消費するのに、つい止められないんだよねぇ」 ﾋﾟｺﾋﾟｺ

しずく 「かすみさん、そのゲーム終わったら早く電話するんだよ？」
　

かすみ 「うん、もちろん……ってSSレア！？！？ すごい、こんな豪華な演出初めて見た……！！」

ﾊﾞﾊﾞｰﾝ

しずく 「すごく画面が眩しい……」

かすみ 「森の中で迷うなんて運が悪かったから、SSレアとして運が返ってきたのかな？」

しずく 「それ私には何も返ってきてないよね？」

ﾃﾞｭｰｰﾝ

かすみ 「って真っ暗になった？ え、充電切れ！？ ちょ、ちょっと！？ せっかくSSレアが手に入ったのにぃぃぃぃぃぃぃぃ」
　

しずく 「違うでしょ！！？」

かすみ 「え？」

しずく 「……充電切れたら電話できないよね！？」

かすみ 「あっ」

しずく 「せっかく最後の希望だったのに……」

かすみ 「えっと、そのー……」

しずく 「……」

かすみ 「あはは、憎きソシャゲ……かすみんたちをここまで追い詰めるとは」

しずく 「……」

かすみ 「しず子。この森から出たらこのソシャゲの会社を訴えよう。それで解決だね！」

しずく 「……いやかすみさんのせいでしょ」

かすみ 「親友を疑う気？ そんなわけないよね、しず子？ それとも今度演じるのはそういう役ってことなの？ 疑い深い役？」

しずく 「素だよ」

かすみ 「……」

しずく 「……」

…

…

…
　

かすみ 「これ以上は登れないよぉぉ〜しず子ぉぉぉぉぉぉぉぉ〜！！」 ｶﾞｸｶﾞｸ

しずく 「この木が一番大きいから、この木の一番上から見渡したらきっと出口が分かるはずだよ、かすみさん！」

かすみ 「でも木登りなんて得意じゃないし、できないよぉ！」 ｶﾞｸｶﾞｸ

しずく 「できないからやらないは、なしだから」

かすみ 「ひぃぃぃ！ りな子の名言が急にブラック企業味を帯びてきたっ！！」
　

しずく 「連絡手段がない今、これしか無いんだよ」

かすみ 「嫌だぁぁぁぁぁーーー死にたくないぃぃぃーーー！！ 親友にこんな仕打ちするの！？」

しずく 「私利私欲でスマホを使えなくしたくせに人のせいにする親友なんて知りません」

かすみ 「ひぃぃぃ！ ごめんなさいぃぃぃ」

…

…

…
　

しずく 「とりあえず、遭難してしまったなら食事をどうにかしないと……」

かすみ 「確かにお腹ぺこぺこかも……」 ｸﾞｩ

しずく 「キノコがたくさんあるね。でも毒キノコを食べたら大変だし気をつけないと」

かすみ 「うーん、でも見た目だけじゃ分からないなぁ」

しずく 「かすみさん、実は念のため持ってきたの、キノコ図鑑」

かすみ 「ええっ！？ 本当！？」

しずく 「このバックの中に……ってあれ、図鑑が汚れて読めない……？」
　

かすみ 「あ、ジュースのペットボトル、蓋ちゃんと閉めないでしまっちゃったかも」

しずく 「だとしても、なんでかすみさんのジュースが私のバックの中に……」

かすみ 「かすみんのバックはおしゃれグッズばっかりで〜♪ つい荷物が入らなくてしず子のバックに入れちゃいましたー、てへ♪」

しずく 「……」

かすみ 「……なんちゃって」

しずく 「……」

かすみ 「怒ってる？」

しずく 「怒ってないと思う。そう演じるのが私だから」

かすみ 「えっ、つまり怒ってるの？」

しずく 「どう見える？」

かすみ 「怒ってないと嬉しいな〜、なんて？」

しずく 「……」

かすみ 「あはは」

…

…

…
　

かすみ 「無理だよっっ！？ 絶対に食べれないよ！？」 ﾌﾙﾌﾙ

しずく 「大丈夫だよ。ほら、案外美味しそうなキノコが毒キノコってパターンがあるでしょ？」

かすみ 「う、うん」

しずく 「なら、いかにも毒キノコなこのキノコはセーフだよ、多分」

かすみ 「毒キノコの見た目で普通に毒キノコのパターンも絶対たくさんあるでしょ！？」
　

しずく 「ほら、あーん♪」

かすみ 「なんて嫌なあーんなんだ！！」 ｶﾞｸｶﾞｸ

しずく 「早く食べてよっ！！ このままじゃ私たちが食べられるキノコが分からないんだよ、かすみさん！？」

かすみ 「親友に毒見をさせる気なの！？」

しずく 「その親友のせいで何回もピンチになってるんだけど」

かすみ 「ぐうの音も出ません」 ｸﾞｩ

しずく 「ぐうの音、出てるじゃん」

…

…

…
　

かすみ 「ってこんなところに焼いてある魚があるよ！？」

しずく 「ええっ！？」

かすみ 「こんな人もいない森の奥に焼き魚が用意されてるなんて……」

しずく 「そんなの絶対に怪しいよかすみさん！ 食べちゃダメだよ！！」

かすみ 「いやきっと自然の産物だよ。間違いない」

しずく 「そんなわけない！！」
　

かすみ 「きっと雷だかなんだかで、どっかで火がついて、そこに優雅に川から跳ねた魚がダイブしちゃったんだね」

しずく 「で、でもわざわざ丁寧に木の串に刺さってるんだよ！？」

かすみ 「どっかで取れちゃった木の棒が川で流されてゆくうちに汚れや木の皮が取れて、串になって、それが風でその魚に刺さっちゃったんだよ」

しずく 「なんでそんなに想像力が豊かなの！？ 数学者じゃなくたってそんなことが起きる確率がとんでもなく低いことくらい分かるよ！？」

かすみ 「かすみんは生粋のスクールアイドルだから、天も味方してるんだよ」

しずく 「で、でも」
　

かすみ 「いただきます〜♪」 ﾓｸﾞﾓｸﾞ

モリノナカ族 「ソレ ワタシタチ ノモノ」

かすみ 「ひぃぃぃ！」

しずく 「も、もしかしてここに住んでる民族……？」

モリノナカ族 「オマエユルサナイ ソコノオンナ ナマエハナントイウ」

しずく 「わ、私ですか！？ 私は桜坂しず……」

かすみ 「しず子です！」

しずく 「かすみさん！？」

かすみ 「……知らない人に本名を教えちゃダメだよ、しず子」

しずく 「そっか……ありがとう、かすみさん」
　

モリノナカ族 「ソコノオンナ ヤイテバツヲアタエル」

かすみ 「や、焼く！？ かすみんを！？」

モリノナカ族 「シズコ キョウリョクシタラ ニガシテヤル」

しずく 「わ、私が協力したら、私だけは逃してくれる……？」

かすみ 「そ、そんな！？ しず子、しず子は裏切らないよね！？」

しずく 「……」

かすみ 「ウィーイズフレンズ！！」

しずく 「複数が主語ならアーだよかすみさん」

かすみ 「……」

しずく 「……」

…

…

…
　

しずく 「上手に焼けるかな〜♪」

かすみ 「しず子ぉぉぉぉぉぉぉぉ！！ 熱いって熱いって！！」 ﾄﾞﾀﾊﾞﾀ

しずく 「大丈夫だよ。焼いてるフリして火に当たらないようにしてるから」 ﾎﾞｿｯ

かすみ 「いや熱いよ！？ 普通に！？」

モリノナカ族 「ヤルナ シズコ」

しずく 「ふふ、ありがとうございます♪」

かすみ 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ！！ 助けてぇぇぇ！！ しず子ぉぉぉぉぉぉぉぉ！！」

しずく 「かすみさん、少しだけ耐えて。二人が生きるためなの」 ﾎﾞｿｯ

かすみ 「熱いぃぃ〜〜！！」

…

…

…
　

モリノナカ族 「ヒノトオリガワルイヤツダ」

かすみ 「し、死ぬかと思った……」 ﾊｧ ﾊｧ

しずく 「でもあまりにも焼けないから罰を与えるのはやめてくれるってかすみさん。良かったね」

かすみ 「良くはないよ」

モリノナカ族 「イマカラ ボスヲヨブ マッテイロ」 ﾀﾀﾀﾀ

かすみ 「ボス……？」

しずく 「逃げるわけにもいかないし、どうなっちゃうのかな私たち……」
　

かすみ 「……」

しずく 「……」

かすみ 「かすみん、死にたくないけど、もしものために言っておくね。しず子、本当にありがとう」

しずく 「かすみさん……」

かすみ 「こんなときまで、私と親友でいてくれてありがとう」

しずく 「親友やめかけたけどね」

かすみ 「ふふ、それでも親友でいてくれるじゃん」

しずく 「そう見えるかな……」

かすみ 「えっ、今は親友だよね、やめてないよね？？」

しずく 「……私、演技力が上がったってことだよね」

かすみ 「しず子！！？」
　

ｳﾎｯ ｳﾎｯ ｳﾎｯ

ｳﾎｯ ｳﾎｯ ｳﾎｯ

かすみ 「……なんの音？」

ﾄﾞﾝﾄﾞｺ ﾄﾞﾝﾄﾞｺ

ﾄﾞﾝﾄﾞｺ ﾄﾞﾝﾄﾞｺ

しずく 「……太鼓の音もするね」

モリノナカ族 「ｳﾎｯ ｳﾎｯ！」

モリノナカ族 「アーメン アーメン！」

朝香果林 「崇めよ讃えよカリンを！！」

モリノナカ族 「イェェーーーイ！！！」

モリノナカ族 「ボス！ ボス！」

朝香果林 「祈りなさい、全てに。願いなさい、全てに」

モリノナカ族 「「ヤーーーー！！」」

ﾄﾞﾝﾄﾞｺ ﾄﾞﾝﾄﾞｺ

ﾄﾞﾝﾄﾞｺ ﾄﾞﾝﾄﾞｺ
　

かすみ 「果林先輩！？ なぜか民族に讃えられてる……！？」

しずく 「そういえば二週間前から行方不明だった果林さんがまさかここにいるなんて……」

朝香果林 「久しぶりね、二人とも」

かすみ 「果林先輩、どういうことですか！？」

朝香果林 「私は部室に行こうとした最中、気が付けばこの森の奥にいた。そして、忘れられた民族、モリノナカ族と出会ったの」

しずく 「モリノナカ族……」
　

朝香果林 「スマホや制服を身につけていた私は、彼らには神様のように見えたんでしょう。転生して無双してるラノベ主人公の気分を味わえたわ」

かすみ 「ということは果林先輩がモリノナカ族のボス？」

朝香果林 「そう、朝香果林、いや」

カリン 「カリンと呼びなさい。ほら、毒キノコではないキノコを私直々に集めてきたわ、たんと食べなさい。私はこの森のことを熟知してるの」 ｻﾞｯ

しずく 「こんなに！」

かすみ 「食べていいんですか！？」

カリン 「当然よ。食べてないんでしょ？」
　

しずく 「うぅ……美味しい……美味しいよぉぉ……」 ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

かすみ 「涙が止まりません……」 ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

カリン 「ふふ、喜んでくれたなら良かった」

モリノナカ族 「カリンサマ ソレハドクキノコデス」

カリン 「そうだったかしら？」 ｷｮﾄﾝ

かすみ 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー！！ 体が痺れるぅぅぅぅぅ！！」

しずく 「目が染みるぅぅぅぅぅーーーー！！ これ涙が止まらないの毒のせいだーーっ！！」
　

こうして、危うく死にかけた私たちでしたが、果林さんのスマホのGPSを頼りに探していたエマさんたちに一緒に助けられ、無事生還することができました。

そして今日は……

しずく 「かすみさん、お誕生日おめでとう！！」

一同 「「おめでとう！！」」 ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

愛 「ちょっとー、誰か裏拍で拍手してるでしょ」

侑 「ごめんー、音楽科の癖が出ちゃった」

かすみ 「みんな、ありがとうございます……うぅ、かすみん、すっごく嬉しいです……」 ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

しずく (かすみさんが幸せそうで良かった！)
　

モリノナカ族 「「オメデトウ カスミン」」 ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

かすみ 「ってなんか多いしっ！！！！」

果林 「ついてきちゃったのよ」

しずく 「まあ楽しい方がいいよ、かすみさん！」

かすみ 「それもそうだけど……あ、そうだ」

しずく 「？」

かすみ 「しず子、ありがとう。一緒にいてくれて。一人で遭難してたらきっとダメだったと思う。大好きだよ、しず子」 ﾎﾞｿｯ

しずく 「も、もう！ かすみさん！///」

しずく 「……いつか気持ちを伝えられたらいいな」

しずく (こっちこそありがとう、かすみさん！！) ﾆｺｯ

おわり
　

ありがとうございました。
かすみん誕生日ss、ギリギリ間に合って良かったです。果林さんは秘境でリーダーになってそう。

遭難ssりんぱなバージョン
花陽 「凛ちゃん、貴重な火だよ！」 凛 「おおっーー！！」

https://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1618482285/

去年のかすみん誕生日ss
かすみ 「今日はかすみんの誕生日〜♪ 楽しみだなぁ〜♪」

https://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1611411850/
　

前作
歩夢 「侑ちゃーん？ どこにいるのー？」

https://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1641975666/

前々作
希 「スピリチュアルをこの身に呼ぶんよ」 2nd

https://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1641115862/