1: (もも) 2023/08/11(金) 08:22:59.81 ID:X+TRdmQP
梢「えぇと、花帆さんはどこかしら……。あ、あれは……」キョロキョロ
花帆「──梢センパ~イ。こっちですよぉ~」ピョンピョン
梢「お待たせしてしまったかしら。遅れてはいないと思うのだけれど」
花帆「いえ。あたしも今来たとこですからっ。全然だいじょーぶです!」
梢「ふふっ。そう。それにしても……縁日で待ち合わせってなんだか……」
花帆「えへへ。ちょっと恋人っぽいですよね」
梢「そ、そうかもしれないわね。えぇと、おほんっ」
花帆「?」
梢「花帆さんの浴衣、とてもよく似合っているわ。たくさんの人混みの中でもすぐ見つけられそうなほど魅力的よ」
花帆「えへ、えへへ……。これ、梢センパイのために時間をかけて選んだって言ったら、喜んでくれますか……?」チラリ
梢「か、花帆さんっ。それは、勿論……」
花帆「なぁ~んてっ。ほら、早く行きましょう!」グイッ
梢「……えぇ」ニコッ
花帆「──梢センパ~イ。こっちですよぉ~」ピョンピョン
梢「お待たせしてしまったかしら。遅れてはいないと思うのだけれど」
花帆「いえ。あたしも今来たとこですからっ。全然だいじょーぶです!」
梢「ふふっ。そう。それにしても……縁日で待ち合わせってなんだか……」
花帆「えへへ。ちょっと恋人っぽいですよね」
梢「そ、そうかもしれないわね。えぇと、おほんっ」
花帆「?」
梢「花帆さんの浴衣、とてもよく似合っているわ。たくさんの人混みの中でもすぐ見つけられそうなほど魅力的よ」
花帆「えへ、えへへ……。これ、梢センパイのために時間をかけて選んだって言ったら、喜んでくれますか……?」チラリ
梢「か、花帆さんっ。それは、勿論……」
花帆「なぁ~んてっ。ほら、早く行きましょう!」グイッ
梢「……えぇ」ニコッ
2: (もも) 2023/08/11(金) 08:24:23.51 ID:X+TRdmQP
──
梢「それにしても、なかなかの人混みね。綴理とバイトした時もなかなかだったけれど、今日は輪をかけてって感じね」
花帆「あたしも梢センパイとバイト、したかったなぁ~……。でもあの時はそれが最善だって思ってたし……」
梢「ふふ。花帆さんとはまた今度ね」
花帆「はいっ。何がいいかな何がいいかな~。やっぱり可愛い制服を着てウェイトレスとか。うぅん、ライブ衣装着ちゃうっていうのも……っ!?」
梢「それは無しよ」
花帆「で、ですよね~……」カニョーン
梢「そう言えば、花火が上がるのはいつだったかしら」
花帆「えぇと、あと一時間半? くらいですね」
梢「そう。場所取りとかは任せてしまったけれど、本当に大丈夫?」
花帆「はいっ。びわこちゃん達にお願いしてるので大丈夫です!」
梢「えっ。それは……彼女たちに申し訳ないわね……」
花帆「それは大丈夫かと。ほら、LINEに送られてきた写真見てください」バッ
梢「……確かに。笑顔が咲き誇っているわね」
花帆「だから梢センパイが心配することなんてびた一文ありません。まあ、そのために夏休みの宿題を多少代行したりとか、色々取引はしたんですが……」
梢「それにしても、なかなかの人混みね。綴理とバイトした時もなかなかだったけれど、今日は輪をかけてって感じね」
花帆「あたしも梢センパイとバイト、したかったなぁ~……。でもあの時はそれが最善だって思ってたし……」
梢「ふふ。花帆さんとはまた今度ね」
花帆「はいっ。何がいいかな何がいいかな~。やっぱり可愛い制服を着てウェイトレスとか。うぅん、ライブ衣装着ちゃうっていうのも……っ!?」
梢「それは無しよ」
花帆「で、ですよね~……」カニョーン
梢「そう言えば、花火が上がるのはいつだったかしら」
花帆「えぇと、あと一時間半? くらいですね」
梢「そう。場所取りとかは任せてしまったけれど、本当に大丈夫?」
花帆「はいっ。びわこちゃん達にお願いしてるので大丈夫です!」
梢「えっ。それは……彼女たちに申し訳ないわね……」
花帆「それは大丈夫かと。ほら、LINEに送られてきた写真見てください」バッ
梢「……確かに。笑顔が咲き誇っているわね」
花帆「だから梢センパイが心配することなんてびた一文ありません。まあ、そのために夏休みの宿題を多少代行したりとか、色々取引はしたんですが……」
3: (もも) 2023/08/11(金) 08:25:34.72 ID:X+TRdmQP
梢「……宿題の不正に関しては目を瞑るとして。ありがとうね、花帆さん」
花帆「い~えいえっ! 梢センパイのためなら溶岩だろうが氷河だろうがどんと来いですよ!」ドンッ
梢「スケールが大きすぎるのだけれど……」
花帆「えへへ。それだけ頑張るのも苦じゃないってことですよ。あたし、今日のこの日をいっぱいいっぱいい~っぱい楽しみにしてたんですから!」
梢「花帆さん……」
花帆「まあ、本当ならもっと綺麗に花火が見える場所に招待したかったんですが……」
梢「あら。そんな穴場スポットがあったの?」
花帆「あぁ、はい。実は昔、この花火大会に来たことがあるんですよ」
梢「へぇ。その時の場所?」
花帆「そうですね。近くに縁結びで有名な神社があるんですが、そこで見た花火が綺麗で……」
梢「神社で見る花火……素敵ね。でも花帆さんってこの辺出身じゃないわよね。ご家族の方と?」
花帆「はい。あたしのお母さんが蓮ノ空出身なので、久々に母校を見に行きたいって言うのと、花火大会がやっているから、みたいな理由で来たんだと思います」
花帆「あぁでも、家族と一緒に花火を見たわけじゃないんですよね」
梢「え? ではどなたと一緒に?」
花帆「それが……あまり覚えていないんですよね。あたしが小さかったってのは勿論あるんですが、靄がかかってみたいに上手く思い出せなくて……」
梢「ふむ……。奇妙な話ね。狐にでも化かされたとか、そういう話かしら」
花帆「い~えいえっ! 梢センパイのためなら溶岩だろうが氷河だろうがどんと来いですよ!」ドンッ
梢「スケールが大きすぎるのだけれど……」
花帆「えへへ。それだけ頑張るのも苦じゃないってことですよ。あたし、今日のこの日をいっぱいいっぱいい~っぱい楽しみにしてたんですから!」
梢「花帆さん……」
花帆「まあ、本当ならもっと綺麗に花火が見える場所に招待したかったんですが……」
梢「あら。そんな穴場スポットがあったの?」
花帆「あぁ、はい。実は昔、この花火大会に来たことがあるんですよ」
梢「へぇ。その時の場所?」
花帆「そうですね。近くに縁結びで有名な神社があるんですが、そこで見た花火が綺麗で……」
梢「神社で見る花火……素敵ね。でも花帆さんってこの辺出身じゃないわよね。ご家族の方と?」
花帆「はい。あたしのお母さんが蓮ノ空出身なので、久々に母校を見に行きたいって言うのと、花火大会がやっているから、みたいな理由で来たんだと思います」
花帆「あぁでも、家族と一緒に花火を見たわけじゃないんですよね」
梢「え? ではどなたと一緒に?」
花帆「それが……あまり覚えていないんですよね。あたしが小さかったってのは勿論あるんですが、靄がかかってみたいに上手く思い出せなくて……」
梢「ふむ……。奇妙な話ね。狐にでも化かされたとか、そういう話かしら」
4: (もも) 2023/08/11(金) 08:26:45.81 ID:X+TRdmQP
花帆「あ、でもでも。さっき言いましたよね。その神社が縁結びの神社だって」
梢「えぇ」
花帆「だから、ですかね。あたしがあの日出会った人こそ、運命の人なんじゃないかって……」
梢「……そう」
梢「それは」
梢「そうね」
梢「なんだかとても」
梢「ロマンチックだと思うわ」
梢「大いに」
花帆「……なんか、変な顔してません? ハムちゃんみたいになってますよ?」
梢「元からこういう顔なのだけれど」
花帆「ま、まあそれは置いておいて。折角の縁日、楽しまなきゃ損ですよ!」
梢「えぇ。大いにそう思うわ。今を全力で楽しみましょうね」
花帆「あはは……」
梢「えぇ」
花帆「だから、ですかね。あたしがあの日出会った人こそ、運命の人なんじゃないかって……」
梢「……そう」
梢「それは」
梢「そうね」
梢「なんだかとても」
梢「ロマンチックだと思うわ」
梢「大いに」
花帆「……なんか、変な顔してません? ハムちゃんみたいになってますよ?」
梢「元からこういう顔なのだけれど」
花帆「ま、まあそれは置いておいて。折角の縁日、楽しまなきゃ損ですよ!」
梢「えぇ。大いにそう思うわ。今を全力で楽しみましょうね」
花帆「あはは……」
5: (もも) 2023/08/11(金) 08:27:57.52 ID:X+TRdmQP
──
梢「花帆さん……? 一体どこへ行ったのかしら……」キョロキョロ
梢「人混みの中なのだから、勇気を出して手を繋げば良かったわね……。はぐれないように、という口実もできるのだし……」
梢「……」トコトコ
梢「運命の人、ね」
梢「曖昧な物に心揺れているようじゃだめよ。乙宗梢」
梢「……」トコトコ
梢「あ。鳥居……。階段の上に神社があるのね。もしかして、ここが花帆さんの言っていた縁結びの神社かしら」
梢「……ここを待ち合わせ場所にするのが最善みたいね」
梢「LINEで送ってと……機械さん。ご機嫌はいかが? 花帆さんに『縁結びの神社で待ち合わせしましょう』と送って欲しいのだけれど」
📱<イイヨ
梢「ありがとう、機械さん」ニコッ
梢「私たち、段々と仲良しになれているわね。さて、では先に登って待っているべきね」タッタッタ
梢「……浴衣でも、比較的動きやすい物を選んで正解だったわね」タッタッタ
梢「……あら。先客がいるのかしら。何やら話し声が……」
梢「……いえ。これは……啜り泣く声?」
梢「花帆さん……? 一体どこへ行ったのかしら……」キョロキョロ
梢「人混みの中なのだから、勇気を出して手を繋げば良かったわね……。はぐれないように、という口実もできるのだし……」
梢「……」トコトコ
梢「運命の人、ね」
梢「曖昧な物に心揺れているようじゃだめよ。乙宗梢」
梢「……」トコトコ
梢「あ。鳥居……。階段の上に神社があるのね。もしかして、ここが花帆さんの言っていた縁結びの神社かしら」
梢「……ここを待ち合わせ場所にするのが最善みたいね」
梢「LINEで送ってと……機械さん。ご機嫌はいかが? 花帆さんに『縁結びの神社で待ち合わせしましょう』と送って欲しいのだけれど」
📱<イイヨ
梢「ありがとう、機械さん」ニコッ
梢「私たち、段々と仲良しになれているわね。さて、では先に登って待っているべきね」タッタッタ
梢「……浴衣でも、比較的動きやすい物を選んで正解だったわね」タッタッタ
梢「……あら。先客がいるのかしら。何やら話し声が……」
梢「……いえ。これは……啜り泣く声?」
6: (もも) 2023/08/11(金) 08:29:08.46 ID:X+TRdmQP
梢「……まさか。心霊の類じゃないわよね。いやでも、ここを待ち合わせ場所に設定してしまったのだし……。えぇいままよ!」
少女「ひっくっ。ぐすっ……」
梢「……ほっ。可愛い女の子じゃない。迷子かしら……」
梢「あの……大丈夫?」
少女「ひぅっ。だ、だれ……?」
梢「あ、怯えなくても平気よ。私は怖い人じゃないから」
少女「こわいひとは……こわいって、ぐすっ、いわない……」
梢「え、えぇ。それはそうね……。結構理知的な娘ね……」
梢「えぇと……パパかママは一緒じゃないのかしら?」
少女「……わかんない。あたし、ひとりぬけだしてここにきたから」
少女「おかあさんが、じんじゃからはなびがよくみえるっていってたから……。ここでまってるの……」
梢「そう……。地元の人からは結構知られているスポットなのかしら……」
梢「……あれでも、ではどうして花帆さんはここを選ばなかったのかしら」
少女「ぐすっ、うぇぇ……」
梢「あぁっ。ご、ごめんなさいね。すぐ考えに没頭してしまうのは悪い癖ね」
梢「私は乙宗梢。蓮ノ空女学院でスクールアイドルをやっているわ。って言っても、スクールアイドルなんて分からないかもしれないけれど……」
少女「……うん。わかんない」
少女「ひっくっ。ぐすっ……」
梢「……ほっ。可愛い女の子じゃない。迷子かしら……」
梢「あの……大丈夫?」
少女「ひぅっ。だ、だれ……?」
梢「あ、怯えなくても平気よ。私は怖い人じゃないから」
少女「こわいひとは……こわいって、ぐすっ、いわない……」
梢「え、えぇ。それはそうね……。結構理知的な娘ね……」
梢「えぇと……パパかママは一緒じゃないのかしら?」
少女「……わかんない。あたし、ひとりぬけだしてここにきたから」
少女「おかあさんが、じんじゃからはなびがよくみえるっていってたから……。ここでまってるの……」
梢「そう……。地元の人からは結構知られているスポットなのかしら……」
梢「……あれでも、ではどうして花帆さんはここを選ばなかったのかしら」
少女「ぐすっ、うぇぇ……」
梢「あぁっ。ご、ごめんなさいね。すぐ考えに没頭してしまうのは悪い癖ね」
梢「私は乙宗梢。蓮ノ空女学院でスクールアイドルをやっているわ。って言っても、スクールアイドルなんて分からないかもしれないけれど……」
少女「……うん。わかんない」
7: (もも) 2023/08/11(金) 08:30:19.90 ID:X+TRdmQP
梢「そ、そうよね」
少女「でも、よろしくね、こずえちゃん」スッ
梢「あ……。えぇ。こちらこそ、よろしくお願いするわね。手が小さいから小指だけの握手になってしまうけれど」ギュッ
梢「それで、あなたのお名前はなんて言うの?」
少女「しらないひとになまえいっちゃいけないっておかあさんがいってた」
梢「あぁ。そこはだめなのね……」ガクッ
少女「だから……『らびっと』ってよんで」
梢「……らびっと。ふふっ。可愛らしい名前ね」
らびっと「えへへ。そ、そうかな……」テレテレ
梢「それじゃあどうしましょう……。運営のテントか警備本部とかに迷子センターはあるわよね」
梢「じゃあ、らびっとさん。私と一緒に迷子センターに行きましょう?」
らびっと「……いや。いきたくない」
梢「えぇ……。でも、お母さんやお父さんに会いたいわよね?」
らびっと「それは……っ。うん……」
梢「なら……行かないと」
らびっと「それはっ、いやっ、いやぁっ!」ブンブン
らびっと「うぅっ、うぇええええええええええんっ」ビエーッ
梢「あ、ちょっちょっと。ごめんなさい。そんなつもりは無いのよっ。泣かないでちょうだいっ」
らびっと「びゃああああああああああああっ!」
少女「でも、よろしくね、こずえちゃん」スッ
梢「あ……。えぇ。こちらこそ、よろしくお願いするわね。手が小さいから小指だけの握手になってしまうけれど」ギュッ
梢「それで、あなたのお名前はなんて言うの?」
少女「しらないひとになまえいっちゃいけないっておかあさんがいってた」
梢「あぁ。そこはだめなのね……」ガクッ
少女「だから……『らびっと』ってよんで」
梢「……らびっと。ふふっ。可愛らしい名前ね」
らびっと「えへへ。そ、そうかな……」テレテレ
梢「それじゃあどうしましょう……。運営のテントか警備本部とかに迷子センターはあるわよね」
梢「じゃあ、らびっとさん。私と一緒に迷子センターに行きましょう?」
らびっと「……いや。いきたくない」
梢「えぇ……。でも、お母さんやお父さんに会いたいわよね?」
らびっと「それは……っ。うん……」
梢「なら……行かないと」
らびっと「それはっ、いやっ、いやぁっ!」ブンブン
らびっと「うぅっ、うぇええええええええええんっ」ビエーッ
梢「あ、ちょっちょっと。ごめんなさい。そんなつもりは無いのよっ。泣かないでちょうだいっ」
らびっと「びゃああああああああああああっ!」
8: (もも) 2023/08/11(金) 08:31:33.35 ID:X+TRdmQP
──
梢「はぁっ、はぁっ……。いつか使うと思って習得した宴会芸がこんな形で役に立つなんて……」ゼェーッゼェーッ
らびっと「あはは。こずえちゃん、おもしろいね!」ペシペシ
梢「……まあ。この笑顔が見られるのなら、やった甲斐はあったというものね」
梢「それにしてもこの娘……花帆さんに似ているのよね。他人の空似だろうけれど……」
らびっと「ねーっ、ねーっ。もっとなにかみせて~っ」ペシペシ
梢「……あれね。心を許した相手にはとことん甘えるタイプねこれは」
梢「可愛いからいいけれど……」ナデナデ
らびっと「うわぁ~……」
梢「……って。こんなことしている場合じゃないわね。ねぇらびっとさん。どうしてここから離れたくないの?」
らびっと「えっ、それは……あの」ゴニョゴニョ
梢「……大丈夫よ。私に話してみて」ナデナデ
らびっと「……うん」
らびっと「あたし、からだがずっとよわくてね、おともだちもいなくて……。そとにあそびにいくのだってひさしぶりで」
らびっと「だからまちきれなくってここにきたの。でも、でもね……」
らびっと「ひとりできてるのってあたしだけで……。みんなおともだちといっしょにきてて」
らびっと「あたしって、やっぱりひとりぼっちなんだっておもったら……ぐすっ」
らびっと「ぜんぜん、たのしくないし、ぐすっ、もうかえりたいって、ひっくっ」
らびっと「……うぅ。なんでないちゃうのぉ~……」ズビズビ
梢「はぁっ、はぁっ……。いつか使うと思って習得した宴会芸がこんな形で役に立つなんて……」ゼェーッゼェーッ
らびっと「あはは。こずえちゃん、おもしろいね!」ペシペシ
梢「……まあ。この笑顔が見られるのなら、やった甲斐はあったというものね」
梢「それにしてもこの娘……花帆さんに似ているのよね。他人の空似だろうけれど……」
らびっと「ねーっ、ねーっ。もっとなにかみせて~っ」ペシペシ
梢「……あれね。心を許した相手にはとことん甘えるタイプねこれは」
梢「可愛いからいいけれど……」ナデナデ
らびっと「うわぁ~……」
梢「……って。こんなことしている場合じゃないわね。ねぇらびっとさん。どうしてここから離れたくないの?」
らびっと「えっ、それは……あの」ゴニョゴニョ
梢「……大丈夫よ。私に話してみて」ナデナデ
らびっと「……うん」
らびっと「あたし、からだがずっとよわくてね、おともだちもいなくて……。そとにあそびにいくのだってひさしぶりで」
らびっと「だからまちきれなくってここにきたの。でも、でもね……」
らびっと「ひとりできてるのってあたしだけで……。みんなおともだちといっしょにきてて」
らびっと「あたしって、やっぱりひとりぼっちなんだっておもったら……ぐすっ」
らびっと「ぜんぜん、たのしくないし、ぐすっ、もうかえりたいって、ひっくっ」
らびっと「……うぅ。なんでないちゃうのぉ~……」ズビズビ
9: (もも) 2023/08/11(金) 08:32:43.58 ID:X+TRdmQP
梢「……勇気を出してくれてありがとう、らびっとさん」ナデナデ
梢「あなたはとても強い人よ。だから、泣かないで」ナデナデ
らびっと「こずえちゃん……ぐすっ」
梢「ねぇ、らびっとさん。私たちの関係ってなんだと思う?」
らびっと「え……?」
梢「あら、分からない? お友達よ。さっきお手手を繋いだじゃない。だから、私たちはもう知らない間柄じゃない」
らびっと「ともだち……? こずえちゃんと、あたしが……?」
梢「えぇ。それで、お友達と一緒にすることと言ったら何かしら?」
らびっと「……あ! おまつり! いっしょにおまつりであそぶ!」ピョンピョン
梢「くすっ。えぇ。そうよ。私と一緒にお祭りを回ってくれるかしら?」
らびっと「うんっ。あたし、こずえちゃんといっしょにまわりたいっ」ピョンピョン
らびっと「うっ、けほっ、けほっ……」
梢「らびっとさんっ。大丈夫……?」サスリサスリ
梢「あなたはとても強い人よ。だから、泣かないで」ナデナデ
らびっと「こずえちゃん……ぐすっ」
梢「ねぇ、らびっとさん。私たちの関係ってなんだと思う?」
らびっと「え……?」
梢「あら、分からない? お友達よ。さっきお手手を繋いだじゃない。だから、私たちはもう知らない間柄じゃない」
らびっと「ともだち……? こずえちゃんと、あたしが……?」
梢「えぇ。それで、お友達と一緒にすることと言ったら何かしら?」
らびっと「……あ! おまつり! いっしょにおまつりであそぶ!」ピョンピョン
梢「くすっ。えぇ。そうよ。私と一緒にお祭りを回ってくれるかしら?」
らびっと「うんっ。あたし、こずえちゃんといっしょにまわりたいっ」ピョンピョン
らびっと「うっ、けほっ、けほっ……」
梢「らびっとさんっ。大丈夫……?」サスリサスリ
10: (もも) 2023/08/11(金) 08:33:55.06 ID:X+TRdmQP
らびっと「ご、ごめん、ね。あたし、あんまりうごいちゃだめで……けほっ、けほ……」
梢「そうなの……。ごめ……いえ、跳ねるくらい喜んでくれて嬉しいわ」
梢「そうね……。じゃあ、こういうのはどうかしら?」ヒョイッ
らびっと「わわっ」
梢「肩車よ。これなら大丈夫でしょう?」ニコッ
らびっと「たか~いっ。こずえちゃんちからもちなんだね~! すごいすご~い!」ペシペシ
梢「ちょっ、少しだけ痛いのだけれど……」
らびっと「あ、ごめんねっ。じゃあ、このまましゅっぱ~つ!」ビシッ
梢「えぇ。行きましょうか」
梢「その前にっと……。機械さん。花帆さんから連絡は来ているかしら」
📱<キテナイッスヨ
梢「ふむ……。ついでに花帆さんも探しに行けばいいかしらね」
らびっと「ねーねー、こずえちゃん。それなあに?」
梢「あぁ、これは機械さんよ。私とお友達を繋いでくれる……大切なお友達なの」
らびっと「ふぅん?」
梢「いずれあなたも手にする日が来るわ」
らびっと「へぇ~。でもいらないかな」
梢「どうして? これって小さいけれど色々と便利なのよ?」
らびっと「あたしにはこずえちゃんがいるもんっ」ギュッ
梢「……もう。上手な娘ね」
らびっと「えへへ……」
梢「そうなの……。ごめ……いえ、跳ねるくらい喜んでくれて嬉しいわ」
梢「そうね……。じゃあ、こういうのはどうかしら?」ヒョイッ
らびっと「わわっ」
梢「肩車よ。これなら大丈夫でしょう?」ニコッ
らびっと「たか~いっ。こずえちゃんちからもちなんだね~! すごいすご~い!」ペシペシ
梢「ちょっ、少しだけ痛いのだけれど……」
らびっと「あ、ごめんねっ。じゃあ、このまましゅっぱ~つ!」ビシッ
梢「えぇ。行きましょうか」
梢「その前にっと……。機械さん。花帆さんから連絡は来ているかしら」
📱<キテナイッスヨ
梢「ふむ……。ついでに花帆さんも探しに行けばいいかしらね」
らびっと「ねーねー、こずえちゃん。それなあに?」
梢「あぁ、これは機械さんよ。私とお友達を繋いでくれる……大切なお友達なの」
らびっと「ふぅん?」
梢「いずれあなたも手にする日が来るわ」
らびっと「へぇ~。でもいらないかな」
梢「どうして? これって小さいけれど色々と便利なのよ?」
らびっと「あたしにはこずえちゃんがいるもんっ」ギュッ
梢「……もう。上手な娘ね」
らびっと「えへへ……」
11: (もも) 2023/08/11(金) 08:35:08.18 ID:X+TRdmQP
──
らびっと「わぁ~、たかいとこからみると、ぜんぜんちが~う!」
梢「肩車して正解だったわね。それじゃあどこから攻めよう……あら?」
梢「何かしら。何か、違和感が……。出店の種類ってこんなだったかしら……」ブツブツ
らびっと「こずえちゃん! まずはなにからする!?」キラキラ
梢「あぁ、ごめんなさい。えぇと、そうね……」
らびっと「あ」グゥ~…
梢「ふふっ。まずは腹ごしらえからかしら」
らびっと「じゃあ……あれ! ちょこばななたべたい!」
梢「えぇ。すみません。チョコバナナ一本ください。はい。ありがとうございます」
梢「はいらびっとさん。どうぞ」
らびっと「わ~いっ。あ~むっ。んむっ、んむっ……」
らびっと「おいしいっ。こずえちゃんのうえでたべてるからかなっ。すっごくおいしい!」
梢「それはよかったわ。けれど……」
らびっと「?」モグモグミ
梢「チョコスプレーがポロポロ落ちてくるから落ち着いて食べるのよ……?」
らびっと「うんっ!」ポロリーン
梢「ふぅ。頭に種々様々な花が咲きそうね」
らびっと「わぁ~、たかいとこからみると、ぜんぜんちが~う!」
梢「肩車して正解だったわね。それじゃあどこから攻めよう……あら?」
梢「何かしら。何か、違和感が……。出店の種類ってこんなだったかしら……」ブツブツ
らびっと「こずえちゃん! まずはなにからする!?」キラキラ
梢「あぁ、ごめんなさい。えぇと、そうね……」
らびっと「あ」グゥ~…
梢「ふふっ。まずは腹ごしらえからかしら」
らびっと「じゃあ……あれ! ちょこばななたべたい!」
梢「えぇ。すみません。チョコバナナ一本ください。はい。ありがとうございます」
梢「はいらびっとさん。どうぞ」
らびっと「わ~いっ。あ~むっ。んむっ、んむっ……」
らびっと「おいしいっ。こずえちゃんのうえでたべてるからかなっ。すっごくおいしい!」
梢「それはよかったわ。けれど……」
らびっと「?」モグモグミ
梢「チョコスプレーがポロポロ落ちてくるから落ち着いて食べるのよ……?」
らびっと「うんっ!」ポロリーン
梢「ふぅ。頭に種々様々な花が咲きそうね」
12: (もも) 2023/08/11(金) 08:36:19.07 ID:X+TRdmQP
──
らびっと「ばんっ、ていうのやりたい!」
梢「ばんっ……? あぁ、射的のことね。すみません。一回お願いします」パラッ
梢「弾込めをして……と。はい、らびっとさん。支えてあげるから一緒に撃ちましょう?」ヒョイッ
らびっと「うんっ。えぇと……どれにしよっかな~」
梢「ふふっ。よく狙って撃つのよ?」
らびっと「……あ、あれがいいっ!」ピシッ
梢「あれは……。兎の髪飾り。らびっとさんは兎が大好きなのね」
らびっと「うんっ。よ~し、ちゃんとささえててね!」
らびっと「しゅうちゅう、して……。よく、ねらって……」
らびっと「えいっ」ポヒュンッ
スカッ
らびっと「あう~」
らびっと「ねぇ~、こずえちゃん。あれとって~」ウルウル
梢「だめよ。弾は残っている。らびっとさんもまだ動ける。それなら、挑戦するべきよ」
らびっと「ばんっ、ていうのやりたい!」
梢「ばんっ……? あぁ、射的のことね。すみません。一回お願いします」パラッ
梢「弾込めをして……と。はい、らびっとさん。支えてあげるから一緒に撃ちましょう?」ヒョイッ
らびっと「うんっ。えぇと……どれにしよっかな~」
梢「ふふっ。よく狙って撃つのよ?」
らびっと「……あ、あれがいいっ!」ピシッ
梢「あれは……。兎の髪飾り。らびっとさんは兎が大好きなのね」
らびっと「うんっ。よ~し、ちゃんとささえててね!」
らびっと「しゅうちゅう、して……。よく、ねらって……」
らびっと「えいっ」ポヒュンッ
スカッ
らびっと「あう~」
らびっと「ねぇ~、こずえちゃん。あれとって~」ウルウル
梢「だめよ。弾は残っている。らびっとさんもまだ動ける。それなら、挑戦するべきよ」
13: (もも) 2023/08/11(金) 08:37:30.59 ID:X+TRdmQP
らびっと「えぇ~。おに~っ!」
梢「鬼でも何でもいいわ。らびっとさんにはね、困難に当たった時、すぐに諦めてしまうような人になって欲しくないの」
らびっと「ぶ~……」
らびっと「……そうだ」
らびっと「こずえちゃん」
梢「何かしら。あぁ、弾込めね。ぐいぐいっと……」
らびっと「おねがい……あたし、どうしてもうさぎさんがほしいの……」ウルウル
らびっと「こずえちゃん、ちからもちでかっこいいからおねがい……」ウルウル
梢「ぐぅっ……! 無垢な輝きが目を焼くわ……っ!」
梢「う、うぅ……乙宗梢、あなたは甘さを捨てきれる強い人間のはずよ。今まで己を律してきたのは何のため? そう、こんな誘惑に抗うためじゃない」
らびっと「……おねがい」キラキラ…
梢「あら、がう……」
梢「……」ガクッ
梢「……仕方がないわね。じゃあ、一緒に引き金を引きましょう? それが私にできる最大限の譲歩ね」
らびっと「じょうほ? よくわかんないけど、うんっ!」
梢「鬼でも何でもいいわ。らびっとさんにはね、困難に当たった時、すぐに諦めてしまうような人になって欲しくないの」
らびっと「ぶ~……」
らびっと「……そうだ」
らびっと「こずえちゃん」
梢「何かしら。あぁ、弾込めね。ぐいぐいっと……」
らびっと「おねがい……あたし、どうしてもうさぎさんがほしいの……」ウルウル
らびっと「こずえちゃん、ちからもちでかっこいいからおねがい……」ウルウル
梢「ぐぅっ……! 無垢な輝きが目を焼くわ……っ!」
梢「う、うぅ……乙宗梢、あなたは甘さを捨てきれる強い人間のはずよ。今まで己を律してきたのは何のため? そう、こんな誘惑に抗うためじゃない」
らびっと「……おねがい」キラキラ…
梢「あら、がう……」
梢「……」ガクッ
梢「……仕方がないわね。じゃあ、一緒に引き金を引きましょう? それが私にできる最大限の譲歩ね」
らびっと「じょうほ? よくわかんないけど、うんっ!」
14: (もも) 2023/08/11(金) 08:38:42.53 ID:X+TRdmQP
梢「よく狙って……」スッ
らびっと「ねらいます……」スッ
梢「呼吸を整えて……すぅ~はぁ~」
らびっと「こきゅーをととのえます……すぅ~はぁ~」
梢「……今よっ」カチリッ
らびっと「……あ」バンッ
ベシッ、ポトン……
らびっと「や、やったやったあ! おちたよこずえちゃん! やったやったあ!」ピョンピョン!!
梢「あ、こらもう……。また咳が出てしまうわよ?」
らびっと「でもでも。うれしいんだもん! ありがと、こずえちゃん!」ニコッ
梢「……っ」ドキッ
梢「……えぇ。取った甲斐があったわね」ナデナデ
らびっと「ねねっ。つけてつけてっ」スッ
梢「えぇ、勿論よ。ほら、少しじっとしていて」
梢「あら……? この髪飾りって……」
らびっと「ねらいます……」スッ
梢「呼吸を整えて……すぅ~はぁ~」
らびっと「こきゅーをととのえます……すぅ~はぁ~」
梢「……今よっ」カチリッ
らびっと「……あ」バンッ
ベシッ、ポトン……
らびっと「や、やったやったあ! おちたよこずえちゃん! やったやったあ!」ピョンピョン!!
梢「あ、こらもう……。また咳が出てしまうわよ?」
らびっと「でもでも。うれしいんだもん! ありがと、こずえちゃん!」ニコッ
梢「……っ」ドキッ
梢「……えぇ。取った甲斐があったわね」ナデナデ
らびっと「ねねっ。つけてつけてっ」スッ
梢「えぇ、勿論よ。ほら、少しじっとしていて」
梢「あら……? この髪飾りって……」
15: (もも) 2023/08/11(金) 08:39:54.09 ID:X+TRdmQP
らびっと「はやくはやくっ!」
梢「あぁ、もう。急がないの。髪を結って……付けて、はい。可愛くなったわよ」
らびっと「わぁ~……。どうどう? いまのあたし、かわいい?」
梢「えぇ。とっても可愛いわ。もしかすれば、花火よりもあなたに見惚れてしまうかも」
らびっと「?」
らびっと「それってどういうこと?」
梢「少し難しかったかしら。らびっとさんが一番可愛いってことよ」
らびっと「やったぁ~っ! こずえちゃんだいすきっ!」ダキッ
梢「あらあら……」ナデナデ
その後、私たちはわたあめや焼きそば等に舌鼓を打ったり、輪投げやヨーヨー釣りを楽しんだ。
しかし、いくら歩けど歩けど花帆さんは見つからなかった。機械さんからは依然として反応はなく、少し心配が募り始めていた頃。
お祭りに来ていた人たちの動きが、規則性を持ち始めていた。
梢「この人の流れは……何かしら」
らびっと「あっ。はなびがはじまるのかも!」
梢「あぁ、なるほど……。でも、まずは運営のテントに行くのが先……」
らびっと「こずえちゃんっ。じんじゃにもどろうよ!」
梢「え……?」
らびっと「おかあさんがいってた! じんじゃでみるはなびが、いちばんきれいだって!」
梢「あぁ、もう。急がないの。髪を結って……付けて、はい。可愛くなったわよ」
らびっと「わぁ~……。どうどう? いまのあたし、かわいい?」
梢「えぇ。とっても可愛いわ。もしかすれば、花火よりもあなたに見惚れてしまうかも」
らびっと「?」
らびっと「それってどういうこと?」
梢「少し難しかったかしら。らびっとさんが一番可愛いってことよ」
らびっと「やったぁ~っ! こずえちゃんだいすきっ!」ダキッ
梢「あらあら……」ナデナデ
その後、私たちはわたあめや焼きそば等に舌鼓を打ったり、輪投げやヨーヨー釣りを楽しんだ。
しかし、いくら歩けど歩けど花帆さんは見つからなかった。機械さんからは依然として反応はなく、少し心配が募り始めていた頃。
お祭りに来ていた人たちの動きが、規則性を持ち始めていた。
梢「この人の流れは……何かしら」
らびっと「あっ。はなびがはじまるのかも!」
梢「あぁ、なるほど……。でも、まずは運営のテントに行くのが先……」
らびっと「こずえちゃんっ。じんじゃにもどろうよ!」
梢「え……?」
らびっと「おかあさんがいってた! じんじゃでみるはなびが、いちばんきれいだって!」
16: (もも) 2023/08/11(金) 08:41:05.87 ID:X+TRdmQP
梢「……そうは言っても」
らびっと「えぇと、えぇと……。あっ、おかあさんたちがあたしをさがしにきてるかも!」
らびっと「ね? ね? いいでしょう? こずえちゃんっ」
梢「……はぁ。少しだけよ? 少し見たら、ちゃんと運営テントまで行くって約束できるかしら?」
らびっと「うんうんっ。ぜったいぜったいっ。やくそくする!」
梢「もう、調子がいいんだから……。それじゃ、ちゃんと掴まってるのよ?」
らびっと「もちろん! しゅっぱ~つっ!」ビシッ
梢「それじゃ、少し急ごうかしらね……。幼児誘拐の容疑に掛けられたんじゃ、あまりにお粗末すぎるのだし……」タッタッタッ
らびっと「あははははっ。はやいはや~い」
梢「どう? 辛くないかしら?」
らびっと「うん。ぜんぜんつらくないよ」
梢「そう。ならよかったわ」
らびっと「……こずえちゃん」ギュッ
梢「えぇ」
らびっと「ありがとね」
梢「いいのよ。私だって楽しいのだから」
らびっと「……あたし、もっとこずえちゃんのことしりたい」
らびっと「はなびたいかいがおわったらさよならなんて……したくない」
梢「らびっとさん……」
らびっと「えぇと、えぇと……。あっ、おかあさんたちがあたしをさがしにきてるかも!」
らびっと「ね? ね? いいでしょう? こずえちゃんっ」
梢「……はぁ。少しだけよ? 少し見たら、ちゃんと運営テントまで行くって約束できるかしら?」
らびっと「うんうんっ。ぜったいぜったいっ。やくそくする!」
梢「もう、調子がいいんだから……。それじゃ、ちゃんと掴まってるのよ?」
らびっと「もちろん! しゅっぱ~つっ!」ビシッ
梢「それじゃ、少し急ごうかしらね……。幼児誘拐の容疑に掛けられたんじゃ、あまりにお粗末すぎるのだし……」タッタッタッ
らびっと「あははははっ。はやいはや~い」
梢「どう? 辛くないかしら?」
らびっと「うん。ぜんぜんつらくないよ」
梢「そう。ならよかったわ」
らびっと「……こずえちゃん」ギュッ
梢「えぇ」
らびっと「ありがとね」
梢「いいのよ。私だって楽しいのだから」
らびっと「……あたし、もっとこずえちゃんのことしりたい」
らびっと「はなびたいかいがおわったらさよならなんて……したくない」
梢「らびっとさん……」
17: (もも) 2023/08/11(金) 08:42:16.57 ID:X+TRdmQP
らびっと「……そういえば、まえにいってた、あの、すくーあいど? ってなんなの?」
梢「あぁ。スクールアイドル。それはね……っと、境内まで着いたわ。ゆっくり降りるのよ?」
らびっと「あ、うん。えいっ」ピョイッ
梢「ふむ……。スクールアイドルの前に、花火が見える場所ってどこなのかしら」キョロキョロ
らびっと「あ、それはたぶんこっちだよ!」タッタッタッ
梢「あ、らびっとさんっ」タッタッタッ
タッタッタッ…
タッタッタッ…
タッタッタッ…
らびっと「はぁ、はぁ……けほ、けほ。たぶん、ここだよ」
梢「大丈夫? 肩車に乗ったまま案内してくれてもよかったのに……。っと、確かに、ここなら少し開けているし、よく見えそうね」
らびっと「けほっ。けほっ。ここには、あたしが、あんない、したかった、から……えへへ」
梢「無理をするのね……。ありがとう、らびっとさん」
らびっと「それで……すくーあいどって、なんなの?」
梢「そうね……。言葉よりも、実際に見て貰った方が早いかもしれないわね」クルッ
らびっと「え?」
梢「花火までもう少し時間があるようだし、手慰みに一つ、ご覧あそばせ」
梢「──眩耀夜行」
梢「あぁ。スクールアイドル。それはね……っと、境内まで着いたわ。ゆっくり降りるのよ?」
らびっと「あ、うん。えいっ」ピョイッ
梢「ふむ……。スクールアイドルの前に、花火が見える場所ってどこなのかしら」キョロキョロ
らびっと「あ、それはたぶんこっちだよ!」タッタッタッ
梢「あ、らびっとさんっ」タッタッタッ
タッタッタッ…
タッタッタッ…
タッタッタッ…
らびっと「はぁ、はぁ……けほ、けほ。たぶん、ここだよ」
梢「大丈夫? 肩車に乗ったまま案内してくれてもよかったのに……。っと、確かに、ここなら少し開けているし、よく見えそうね」
らびっと「けほっ。けほっ。ここには、あたしが、あんない、したかった、から……えへへ」
梢「無理をするのね……。ありがとう、らびっとさん」
らびっと「それで……すくーあいどって、なんなの?」
梢「そうね……。言葉よりも、実際に見て貰った方が早いかもしれないわね」クルッ
らびっと「え?」
梢「花火までもう少し時間があるようだし、手慰みに一つ、ご覧あそばせ」
梢「──眩耀夜行」
18: (もも) 2023/08/11(金) 08:43:28.04 ID:X+TRdmQP
私は歌う。らびっとさんに伝えたくて。
私は踊る。スクールアイドルは魅力的だって。
真夏の夜。虫の輪唱が響き蒸し暑い夜だが、こうして一度歌って踊ってしまえば、そこはもう即席のステージ。彼女のための。らびっとさんに捧ぐためだけのステージ。
ああ、なんだか、どこへでも行けそうだ。
彼女の瞳が輝く。そして、その双眸に色味豊かな花が舞う。
ふと後ろを振り向くと、銀河に花火が散っていた。
梢「らびっとさ──」
始まっているわよ、と言いかけた時、
らびっと「こずえちゃん! もっとうたって! もっとおどって!」
と、らびっとさんが興奮したように声を上げた。スクールアイドルにとって、最高の賛美だった。
私は笑みを深め、その期待に応えるようにして歌い、踊り続ける。
ねぇ、らびっとさん。あなたは向日葵のような人ね。
陽の光りが差さない時は俯き、落ち込み泣きじゃくる。
けれど、一度太陽の光を浴びてしまえば空を仰ぎ、元気いっぱいに花を咲かせる。
そんなあなたのことを、私は愛おしいと思ってしまう。
そして私が、向日葵を笑顔にする太陽だったなら、なんて。
高望みし過ぎかしらね。
私は踊る。スクールアイドルは魅力的だって。
真夏の夜。虫の輪唱が響き蒸し暑い夜だが、こうして一度歌って踊ってしまえば、そこはもう即席のステージ。彼女のための。らびっとさんに捧ぐためだけのステージ。
ああ、なんだか、どこへでも行けそうだ。
彼女の瞳が輝く。そして、その双眸に色味豊かな花が舞う。
ふと後ろを振り向くと、銀河に花火が散っていた。
梢「らびっとさ──」
始まっているわよ、と言いかけた時、
らびっと「こずえちゃん! もっとうたって! もっとおどって!」
と、らびっとさんが興奮したように声を上げた。スクールアイドルにとって、最高の賛美だった。
私は笑みを深め、その期待に応えるようにして歌い、踊り続ける。
ねぇ、らびっとさん。あなたは向日葵のような人ね。
陽の光りが差さない時は俯き、落ち込み泣きじゃくる。
けれど、一度太陽の光を浴びてしまえば空を仰ぎ、元気いっぱいに花を咲かせる。
そんなあなたのことを、私は愛おしいと思ってしまう。
そして私が、向日葵を笑顔にする太陽だったなら、なんて。
高望みし過ぎかしらね。
19: (もも) 2023/08/11(金) 08:44:39.49 ID:X+TRdmQP
──
らびっと「わぁ~、すごいすごい! すご~いっ!」パチパチパチ
梢「……ふぅ。らびっとさん、これがスクールアイドルよ」
らびっと「すくーるあいどる……。こずえちゃんっ。あたし、いつかこずえちゃんのとなりで──」
母「あっ! ここにいたっ!」ダッ
らびっと「ふぇ……。あ、おかあさんっ!」フリフリ
母「もうっ、もうっ! こんなに心配させて……っ!」
らびっと「ご、ごめんなさ~い……」グスグス
梢「あの……この娘のお母さん、ですか?」
母「あぁ、はい。この娘を見ていてくれたのね。本当にありがとうございます」
梢「いえ。すぐに運営テントに行ってあげればよかったのですが、少々……」
母「あぁ……」
らびっと「みてみておかあさんっ。このかみかざり、こずえちゃんがとってくれたんだよっ!」
母「……本当に、ご迷惑をお掛けしてしまってすみません」
らびっと「わぁ~、すごいすごい! すご~いっ!」パチパチパチ
梢「……ふぅ。らびっとさん、これがスクールアイドルよ」
らびっと「すくーるあいどる……。こずえちゃんっ。あたし、いつかこずえちゃんのとなりで──」
母「あっ! ここにいたっ!」ダッ
らびっと「ふぇ……。あ、おかあさんっ!」フリフリ
母「もうっ、もうっ! こんなに心配させて……っ!」
らびっと「ご、ごめんなさ~い……」グスグス
梢「あの……この娘のお母さん、ですか?」
母「あぁ、はい。この娘を見ていてくれたのね。本当にありがとうございます」
梢「いえ。すぐに運営テントに行ってあげればよかったのですが、少々……」
母「あぁ……」
らびっと「みてみておかあさんっ。このかみかざり、こずえちゃんがとってくれたんだよっ!」
母「……本当に、ご迷惑をお掛けしてしまってすみません」
20: (もも) 2023/08/11(金) 08:45:51.05 ID:X+TRdmQP
梢「あぁ、いえ。私も楽しかったのでいいんですよ。それじゃあ後は、家族水入らずということで」
母「えぇ。本当にありがとうございました」
梢「それじゃあね、らびっとさん。私、お友達の元に帰るわ」
らびっと「えっ! こずえちゃん、もうか工 ゃうの!? いやいやっ!」
母「こらっ。だめでしょう? お姉さんにはお姉さんの事情があるんだから」
らびっと「うぅ……ぐすっ」
梢「……らびっとさん」スッ
らびっと「……ぐすっ。だいじょうぶだよ。なかないもん」
梢「そう、偉いわよ」ナデナデ
梢「……それじゃあ、はい。握手をしましょう?」
らびっと「え? あくしゅ?」
梢「えぇ。握手でお友達になったのだから、お別れするときも握手よ」ニコッ
らびっと「……うん」スッ
梢「……次に会う時は、小指だけじゃなく、五本全てで握手しましょう?」ギュッ
らびっと「……うんっ。こずえちゃんあのねっ」
らびっと「あたし、おっきくなったらこずえちゃんといっしょにうたいたいっ」
らびっと「かみのけのうさちゃんも、それまでずっとつけつづけるから!」
らびっと「ぜったいぜったいぜ~ったいっ、またあおうね!」
梢「……えぇ。約束よ。らびっとさん。私とあなたの……そう、運命の約束」
らびっと「うんめい……? うんっ、うんめいのやくそくっ!」ニコッ
母「えぇ。本当にありがとうございました」
梢「それじゃあね、らびっとさん。私、お友達の元に帰るわ」
らびっと「えっ! こずえちゃん、もうか工 ゃうの!? いやいやっ!」
母「こらっ。だめでしょう? お姉さんにはお姉さんの事情があるんだから」
らびっと「うぅ……ぐすっ」
梢「……らびっとさん」スッ
らびっと「……ぐすっ。だいじょうぶだよ。なかないもん」
梢「そう、偉いわよ」ナデナデ
梢「……それじゃあ、はい。握手をしましょう?」
らびっと「え? あくしゅ?」
梢「えぇ。握手でお友達になったのだから、お別れするときも握手よ」ニコッ
らびっと「……うん」スッ
梢「……次に会う時は、小指だけじゃなく、五本全てで握手しましょう?」ギュッ
らびっと「……うんっ。こずえちゃんあのねっ」
らびっと「あたし、おっきくなったらこずえちゃんといっしょにうたいたいっ」
らびっと「かみのけのうさちゃんも、それまでずっとつけつづけるから!」
らびっと「ぜったいぜったいぜ~ったいっ、またあおうね!」
梢「……えぇ。約束よ。らびっとさん。私とあなたの……そう、運命の約束」
らびっと「うんめい……? うんっ、うんめいのやくそくっ!」ニコッ
21: (もも) 2023/08/11(金) 08:47:02.16 ID:X+TRdmQP
梢「それじゃあ……またね」
らびっと「……ばいばい。こずえちゃん」
梢「……」
らびっと「……あっ!」
梢「?」
らびっと「こずえちゃんっ、あたしっ、らびっとじゃなくてほんとうは──」
梢「……え」
らびっとさんの言葉に振り向いたものの、そこに彼女の姿はなく。
代わりにあったのは、私の身長を優に越す、無機質な白い壁だった。
らびっと「……ばいばい。こずえちゃん」
梢「……」
らびっと「……あっ!」
梢「?」
らびっと「こずえちゃんっ、あたしっ、らびっとじゃなくてほんとうは──」
梢「……え」
らびっとさんの言葉に振り向いたものの、そこに彼女の姿はなく。
代わりにあったのは、私の身長を優に越す、無機質な白い壁だった。
22: (もも) 2023/08/11(金) 08:48:13.28 ID:X+TRdmQP
──
花帆「はぁ、もうっ。梢センパイったらどこ行ったの~?」
花帆「スマホでメッセージ飛ばしても電話をかけても繋がらないし~っ」
花帆「何が電波の届かない場所にいるかも、よ~。金沢がいくら田舎だって、バリサン余裕なのに~っ!」
花帆「……ふぅ。バリサンっていつの言葉だっけ」トコトコ
梢「……」
花帆「あっ! 梢センパイ!」ダッ
花帆「こんなとこにいた~。もうっ、いっぱい探したんですからね!」
ブルルッ
花帆「って、こんな時に誰から……って、梢センパイから? え? え? どういうこと?」
梢「……花帆さん。花火って、もう打ちあがった後かしら」
花帆「え? いえ、まだですが……。もう少しで始まりますよ」
梢「そう……。あまりびわこさんたちを待たせるわけにもいかないし、行きましょうか」
花帆「あ、はい……」
花帆「はぁ、もうっ。梢センパイったらどこ行ったの~?」
花帆「スマホでメッセージ飛ばしても電話をかけても繋がらないし~っ」
花帆「何が電波の届かない場所にいるかも、よ~。金沢がいくら田舎だって、バリサン余裕なのに~っ!」
花帆「……ふぅ。バリサンっていつの言葉だっけ」トコトコ
梢「……」
花帆「あっ! 梢センパイ!」ダッ
花帆「こんなとこにいた~。もうっ、いっぱい探したんですからね!」
ブルルッ
花帆「って、こんな時に誰から……って、梢センパイから? え? え? どういうこと?」
梢「……花帆さん。花火って、もう打ちあがった後かしら」
花帆「え? いえ、まだですが……。もう少しで始まりますよ」
梢「そう……。あまりびわこさんたちを待たせるわけにもいかないし、行きましょうか」
花帆「あ、はい……」
23: (もも) 2023/08/11(金) 08:49:25.11 ID:X+TRdmQP
梢「そう言えば……神社にあった白い壁って何なのかしら」
花帆「あぁ。実はここ、すぐ傍が崖らしいんです。だから危険防止ってことで壁が建てられて。そのせいで穴場が無くなっちゃったんですよ。誰か落ちた後にやっても仕方がないですし、しょうがないですよね」
梢「……それっていつ頃の話か分かる?」
花帆「え? えぇと、あたしが聞いたのが小学生くらいの頃だから……。まあ、そのくらいの話だと思います」
梢「あぁ……そうなのね」
花帆「梢センパイ……?」
梢「ねぇ花帆さん。その兎の髪飾り」
花帆「え?」
つい、髪飾りに手を触れた。もうずいぶん使っているあたしのトレードマークのようなものだ。
梢センパイは懐かしそうに目を細めながら、
梢「よく似合っていて素敵よ」
そう呟いた。
花帆「え、はい。ありがとうございます……?」
別に、この髪飾りを見るのなんて初めてじゃないのに。どうして今さらそんなことを言うんだろう。
そう頭を捻っているとふと、急に景色がダブり始める。
花帆「え……?」
花帆「あぁ。実はここ、すぐ傍が崖らしいんです。だから危険防止ってことで壁が建てられて。そのせいで穴場が無くなっちゃったんですよ。誰か落ちた後にやっても仕方がないですし、しょうがないですよね」
梢「……それっていつ頃の話か分かる?」
花帆「え? えぇと、あたしが聞いたのが小学生くらいの頃だから……。まあ、そのくらいの話だと思います」
梢「あぁ……そうなのね」
花帆「梢センパイ……?」
梢「ねぇ花帆さん。その兎の髪飾り」
花帆「え?」
つい、髪飾りに手を触れた。もうずいぶん使っているあたしのトレードマークのようなものだ。
梢センパイは懐かしそうに目を細めながら、
梢「よく似合っていて素敵よ」
そう呟いた。
花帆「え、はい。ありがとうございます……?」
別に、この髪飾りを見るのなんて初めてじゃないのに。どうして今さらそんなことを言うんだろう。
そう頭を捻っているとふと、急に景色がダブり始める。
花帆「え……?」
24: (もも) 2023/08/11(金) 08:50:36.46 ID:X+TRdmQP
目線が上がり、出店を上から見下ろすような形になる。すぐ下に目を向けると、そこには紫紺の髪の毛があった。
つまり、あたしはその人の肩に乗っていて。その人はひどく懐かしく、でも同時に今と変わらないように見えて。
気遣うように肩車が揺れ、その人の顔が露わになろうとして。
梢「花帆さん?」
花帆「……梢センパイ」
梢「大丈夫? 心ここにあらず、と言った感じだけれど……」
花帆「いえ……大丈夫です。人混みに少し酔っちゃったのかもしれません」
梢「そう。辛いなら言ってちょうだいね。そして、水分補給もしっかりよ」
花帆「はい。ありがとうございます」
花帆「あ、びわこちゃんたちが見えましたよ! 早く行きましょう!」ギュッ
つまり、あたしはその人の肩に乗っていて。その人はひどく懐かしく、でも同時に今と変わらないように見えて。
気遣うように肩車が揺れ、その人の顔が露わになろうとして。
梢「花帆さん?」
花帆「……梢センパイ」
梢「大丈夫? 心ここにあらず、と言った感じだけれど……」
花帆「いえ……大丈夫です。人混みに少し酔っちゃったのかもしれません」
梢「そう。辛いなら言ってちょうだいね。そして、水分補給もしっかりよ」
花帆「はい。ありがとうございます」
花帆「あ、びわこちゃんたちが見えましたよ! 早く行きましょう!」ギュッ
25: (もも) 2023/08/11(金) 08:51:47.50 ID:X+TRdmQP
──
花帆「ふぅ。何とか人心地付けましたね」
梢「えぇ。ありがとうびわこさん、えなさん、しいなさん」ペコッ
花帆「ふんふん。あははっ。出店で料理買いすぎちゃってお腹ぱんぱんなんだ。あ、そうだ。梢センパイはお腹減ってませんか?」
梢「私は出店でつまんだから平気よ」
花帆「えっ、先にご飯食べちゃったんですかっ。そんな~、梢センパイと一緒に食べるの楽しみにしてたのに~」ブーブー
花帆「ちなみに何を食べたんですかぁ?」
梢「チョコバナナに、焼きそば、それとりんご飴にわたあめも食べたわね。もう少し塩分を摂取すればよかったかしら」
花帆「へぇ~……。ずいぶん食べましたね……」
恨みがましく梢センパイを睨んでいると、微笑みを向けられる。いや、違う。
これは……いつかのあの日。デジャブが起きているんだ。
チョコスプレーがたくさん乗ったチョコバナナ。具材豊富な焼きそば。宝石みたいで食べるのが勿体ないりんご飴。ふわふわと口に入れた瞬間溶けてしまったわたあめ。
そしてその味を、あたしは知っている。ついさっきまで舌で味わっていたような錯覚を覚えた。
花帆「梢センパイ……」
梢「なに? 花帆さん」
花帆「あたしも……同じのを食べたと思います……」
梢「そう。そうなの……。奇遇ね」
違う……。味だけじゃない。あたしはこの微笑みを知っている。
いつ見た? さっき? うん。確かにさっき見た。でも、違う。
この微笑みは確か……そう、あの花火大会の日に会った……。
花帆「ふぅ。何とか人心地付けましたね」
梢「えぇ。ありがとうびわこさん、えなさん、しいなさん」ペコッ
花帆「ふんふん。あははっ。出店で料理買いすぎちゃってお腹ぱんぱんなんだ。あ、そうだ。梢センパイはお腹減ってませんか?」
梢「私は出店でつまんだから平気よ」
花帆「えっ、先にご飯食べちゃったんですかっ。そんな~、梢センパイと一緒に食べるの楽しみにしてたのに~」ブーブー
花帆「ちなみに何を食べたんですかぁ?」
梢「チョコバナナに、焼きそば、それとりんご飴にわたあめも食べたわね。もう少し塩分を摂取すればよかったかしら」
花帆「へぇ~……。ずいぶん食べましたね……」
恨みがましく梢センパイを睨んでいると、微笑みを向けられる。いや、違う。
これは……いつかのあの日。デジャブが起きているんだ。
チョコスプレーがたくさん乗ったチョコバナナ。具材豊富な焼きそば。宝石みたいで食べるのが勿体ないりんご飴。ふわふわと口に入れた瞬間溶けてしまったわたあめ。
そしてその味を、あたしは知っている。ついさっきまで舌で味わっていたような錯覚を覚えた。
花帆「梢センパイ……」
梢「なに? 花帆さん」
花帆「あたしも……同じのを食べたと思います……」
梢「そう。そうなの……。奇遇ね」
違う……。味だけじゃない。あたしはこの微笑みを知っている。
いつ見た? さっき? うん。確かにさっき見た。でも、違う。
この微笑みは確か……そう、あの花火大会の日に会った……。
26: (もも) 2023/08/11(金) 08:52:58.56 ID:X+TRdmQP
梢「花帆さん」
花帆「は、はいっ」
梢「あなたが見た花火の話、聞かせてくれないかしら?」
花帆「え……。でも、あまり覚えていなくて……」
梢「別にいいわ。でも、途切れ途切れでもいいから、話してほしいの。花火までもう少しだけ時間があるでしょう?」
花帆「……分かりました。あれは、あたしがまだ小さくて体も弱かった頃──」
あたしは語り始める。縁結びの神社で出会った、運命の人との話を。
その日、孤独と寂寥に泣いていたあたしは、一人の綺麗な女の人に出会う。菖蒲色の浴衣に身を包み、柔らかく穏やかな笑顔を向ける人だった。
あたしは肩車をして貰って、色々な我がままを聞いて貰った。その肩が、背中が、ひどく大きく思えて、だからこそ頼もしかった。
しがみついていたくなる。人肌にずっと触れていたくなるような、真夏であっても心地よい体温を持った人。
そんな人と一緒に境内に上がり、穴場である場所へと案内した。そこであたしは、そうだ。質問をしたんだ。
スクールアイドルについて質問をして、その人は歌って踊ってくれたんだ。
花帆「は、はいっ」
梢「あなたが見た花火の話、聞かせてくれないかしら?」
花帆「え……。でも、あまり覚えていなくて……」
梢「別にいいわ。でも、途切れ途切れでもいいから、話してほしいの。花火までもう少しだけ時間があるでしょう?」
花帆「……分かりました。あれは、あたしがまだ小さくて体も弱かった頃──」
あたしは語り始める。縁結びの神社で出会った、運命の人との話を。
その日、孤独と寂寥に泣いていたあたしは、一人の綺麗な女の人に出会う。菖蒲色の浴衣に身を包み、柔らかく穏やかな笑顔を向ける人だった。
あたしは肩車をして貰って、色々な我がままを聞いて貰った。その肩が、背中が、ひどく大きく思えて、だからこそ頼もしかった。
しがみついていたくなる。人肌にずっと触れていたくなるような、真夏であっても心地よい体温を持った人。
そんな人と一緒に境内に上がり、穴場である場所へと案内した。そこであたしは、そうだ。質問をしたんだ。
スクールアイドルについて質問をして、その人は歌って踊ってくれたんだ。
27: (もも) 2023/08/11(金) 08:54:10.25 ID:X+TRdmQP
……あぁ、そうだ。あたしはとんだ勘違いをしていた。
穴場の神社で見る花火が綺麗だったから印象に残っていたんじゃない。
夜空に散る花火よりも、目の前で咲き誇る『あなた』に、心惹かれていたんだ。
花帆「……こずえちゃん?」
そう呟いた瞬間、夜天に花が咲いた。お腹に響くような低音響かせ、暗闇を一瞬だけ儚く照らす。
だが、花火などまるで気にならず、あたしはあなただけを見ていた。
梢「なにかしら。らびっとさん」
あなたはそう言って可愛らしく小首を傾げ、柔和な雰囲気で微笑んだ。
そうだ……あなたこそ、あたしの。
瞼を伝い、地面に一粒の涙滴が落ちる。
花帆「また、会えたね……っ。こずえちゃんっ」
耐えきれず、あたしは両の指を絡ませた。
梢「くすっ。今度はちゃんと、手を握り合えたわね」
そんなあなたの笑顔が懐かしくて、眩しくて、でも安心して、より涙は出てしまって。
穴場の神社で見る花火が綺麗だったから印象に残っていたんじゃない。
夜空に散る花火よりも、目の前で咲き誇る『あなた』に、心惹かれていたんだ。
花帆「……こずえちゃん?」
そう呟いた瞬間、夜天に花が咲いた。お腹に響くような低音響かせ、暗闇を一瞬だけ儚く照らす。
だが、花火などまるで気にならず、あたしはあなただけを見ていた。
梢「なにかしら。らびっとさん」
あなたはそう言って可愛らしく小首を傾げ、柔和な雰囲気で微笑んだ。
そうだ……あなたこそ、あたしの。
瞼を伝い、地面に一粒の涙滴が落ちる。
花帆「また、会えたね……っ。こずえちゃんっ」
耐えきれず、あたしは両の指を絡ませた。
梢「くすっ。今度はちゃんと、手を握り合えたわね」
そんなあなたの笑顔が懐かしくて、眩しくて、でも安心して、より涙は出てしまって。
28: (もも) 2023/08/11(金) 08:55:21.77 ID:X+TRdmQP
梢「泣き虫なところ、あの頃と変わらないわね。でも、綺麗な笑顔よ」
その時、周囲で一層大きな歓声が上がる。空にひと際大きい花火が上がったらしい。
梢「……約束、いつの間にか果たしていたのね」
花帆「うん……っ、うんっ! 一緒に歌えたっ、踊れたっ!」
ぎゅっと、握った手に力を込める。もう、離さない。
梢「あなたが私の──」
花帆「あなたがあたしの──」
夜空に散る、色合い豊かな花火たち。
皆はつられるように銀河へと余所見をしてしまう。
けれどあたしたちだけは。
ただ二人だけは。
互いに見つめ合い、いつまでも見惚れ合っていた。
おわり
その時、周囲で一層大きな歓声が上がる。空にひと際大きい花火が上がったらしい。
梢「……約束、いつの間にか果たしていたのね」
花帆「うん……っ、うんっ! 一緒に歌えたっ、踊れたっ!」
ぎゅっと、握った手に力を込める。もう、離さない。
梢「あなたが私の──」
花帆「あなたがあたしの──」
夜空に散る、色合い豊かな花火たち。
皆はつられるように銀河へと余所見をしてしまう。
けれどあたしたちだけは。
ただ二人だけは。
互いに見つめ合い、いつまでも見惚れ合っていた。
おわり
29: (しまむら) 2023/08/11(金) 11:00:03.86 ID:/6fla7y8
名作ね……はなまるよ
33: (たこやき) 2023/08/11(金) 12:02:47.74 ID:3ulwBlDX
神作すぎる…
34: (もんじゃ) 2023/08/11(金) 12:09:39.20 ID:lmZfcU1y
歌詞に沿った花丸のストーリー ずっと忘れないわ
35: (もんじゃ) 2023/08/11(金) 12:29:06.11 ID:0CnxYc1f
綺麗な話で好き
36: (もんじゃ) 2023/08/11(金) 12:36:43.74 ID:ZQJbI+Hp
名作やんけ
これだからお盆休みは最高なんだ
あまりにも綺麗すぎて一気に読んでしまった
これだからお盆休みは最高なんだ
あまりにも綺麗すぎて一気に読んでしまった
37: (光) 2023/08/11(金) 12:53:15.59 ID:Vb/5cBqr
夏は冷たいホラーもいいけど
こういうSFチックな不思議な物語もいいね
こういうSFチックな不思議な物語もいいね
39: (しまむら) 2023/08/11(金) 13:16:53.79 ID:RxIqfMx2
素敵なお話だったわ
40: (ますのすし) 2023/08/11(金) 17:58:32.98 ID:O0ROKR8c
とても素晴らしいお話だったわ!花丸よ!
41: (しうまい) 2023/08/11(金) 20:58:12.34 ID:Kvr8LQXY
ちょうどリリックビデオ観ていたので泣いちゃった
45: (たこやき) 2023/08/12(土) 14:19:48.56 ID:GCeEVom/
素晴らしいわ。完璧よ
48: (もんじゃ) 2023/08/12(土) 14:52:48.64 ID:LB643AcF
すげえよかった
運命の出会い好き…
運命の出会い好き…
47: (もんじゃ) 2023/08/12(土) 14:35:29.67 ID:lGXAQGUs
素晴らしい作品
ありがとう、ありがとう
ありがとう、ありがとう
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1691709779/