侑「はあ~こたつ最高~」【SS】

ゆうぽむ SS


1: 2021/01/05(火) 18:01:23.73 ID:8b2s8ug/
侑「誰が考えたんだろうねえ」

歩夢「もう侑ちゃん!せっかく久しぶりにうちに来たのに寝てばかりじゃない」

侑「こたつが悪いよこたつが~。はあごくらく~」

歩夢「もう…」

歩夢「───」

歩夢「───」ゴソゴソゴソ

侑「──!?」

侑「わひゃひゃひゃひゃ!あひゅむ…!足…!なにしてっ…!あひゃひゃひゃひゃ!!」

歩夢「全然起きないだらだらさんには、くすぐりの刑だよ」

侑「わひゃ…!わひゃ!分かった…分かったからもうひゅるしてぇ!歩夢のゆび…!こしょ…うわひゃひゃひゃ!」

歩夢「侑ちゃんの足の裏を、私の足の指でもぞもぞしてるだけなのに」

侑「あーっ…あーっ…!はぁ…はぁ…わかったよ。もう起きるよ」ヨッコラセ

3: 2021/01/05(火) 18:02:38.87 ID:8b2s8ug/
侑「あ、みかんあるじゃん!もーらいっ!」

歩夢「侑ちゃんは昔から、みかんをヘタのところから剥いてたね」

侑「あそこからだと白いすじがいっぱい取れるんだよ」ムキムキ

歩夢「そうなの?でも指ひっかけるの難しくない?」

侑「慣れるとそうでもないよー」ヒョイパク

歩夢「そうなんだ。私はおしりから剥いちゃうなー」

侑「おしりも良いよねー。あのサクッと指が入る感触好きだよ」

歩夢「それはよくわからないよ…」

4: 2021/01/05(火) 18:04:11.99 ID:8b2s8ug/
侑「みかんってさ、美味しいけど最後薄皮残るのどうにかしたいよね」

歩夢「食べる前に剥けばいいじゃない」

侑「いやあ、剥くのも面倒くさくてさ。手がベタベタになっちゃうし」

歩夢「侑ちゃんわがまま」

侑「たはは…。で、薄皮だよ薄皮。今は良いけど、小さい頃はあれ飲み込むの難しくてさ」

歩夢「侑ちゃんガムみたいにティッシュにくるんでぺっぺしてたね」

侑「いやあ、お恥ずかしい。行儀悪かったね。歩夢には恥ずかしいところ見られたよ…」

侑「あっ、ウェットティッシュちょうだい」

歩夢「はい」

侑「ありがとう。うわぁ、ティッシュが真っ黄っ黄」

侑「手が黄色くならないみかんがあったら良いのになあ」

7: 2021/01/05(火) 18:05:19.79 ID:8b2s8ug/
───

侑「あっ!りぼむあるじゃん!読んでいい?」

歩夢「いいよ」

侑「ありがとう。まだ買ってるんだね」

歩夢「うん。りぼむの漫画って、絵が可愛くて好きなの」

侑「ピンクや可愛い服もだけど、歩夢って口では遠慮するのに、結構昔の好みが抜けないよね」

侑「そういうとこが可愛いんだけど」

歩夢「も、もう!すぐそういうこと言うんだから!」

10: 2021/01/05(火) 18:07:05.57 ID:8b2s8ug/
侑「小学校低学年の頃はちゃをだったよね」

歩夢「うん、ミルモでポム!が好きで」

侑「あー!あれ面白かったよね!私もアニメだけだけど見てた!」

歩夢「侑ちゃんは少女漫画じゃなくて少年漫画派だったよね」

侑「いやあ、やっぱりヂャンプのMENMAが面白くてさ」

歩夢「MENMA懐かしい!侑ちゃんにも貸してもらったね」

侑「歩夢はサスケが好きだったよね」

歩夢「うん!サスケくんが里抜けるときのサクラちゃんの──」

「私には…家族も友達もいる…。だけど…サスケくんがいなくなったら…私には…私にとっては…孤独と同じ」

歩夢「あのセリフ、すっごく共感しちゃったなあ」

侑「そんなに感情移入してたんだ」

歩夢「私も、もし侑ちゃんが今ニジガクを辞めてどこかに引っ越す、ってなったら同じようなこと言っちゃうかも」

侑「ははは、大丈夫だよ。今のとこ退学も引っ越しの予定も無いから」

歩夢「えへへ、良かった」

侑「あれ?そういや歩夢んちのサスケはどこいった?」キョロキョロ

歩夢「今はクリーニングに出してるよ」

侑「サスケェ!」

12: 2021/01/05(火) 18:09:25.64 ID:8b2s8ug/
──

侑「あー、りぼむ読んじゃったあ。久々に読むと面白いね」

歩夢「でしょう?」

侑「うん、なんていうかキュンキュンした!甘酸っぱい!心が潤った!」

歩夢「いいよね!」

侑「んー、でも高校生になると周りじゃガーベラとか歩とゆめ読む人多いよね」

侑「愛ちゃんと果林さんも、こないだ部室で一緒に読んでたし」

歩夢「そうだね。けど、私はまだりぼむのような王道が良いかな」

歩夢「好きな人と目が合った、とか手を繋ぐだけでドキドキとか、そういう些細なことで胸がいっぱいになれる、って素敵じゃない?」

侑「そっかあ。もしかして、それが歩夢の理想の恋愛像?」

歩夢「うん。──やっぱり子供っぽいかな?」

侑「そんなことないよ。歩夢のそういうとこ可愛くて好き」

歩夢「えへへ///」

15: 2021/01/05(火) 18:11:25.78 ID:8b2s8ug/
───

歩夢「──」

侑「──」

歩夢「侑ちゃん、起きてる?」

侑「寝てる」

歩夢「起きてるじゃん」

侑「バレた?」

歩夢「バレバレです」

侑「なんかこのやり取りって、林間学校の夜を思い出すよね」

歩夢「ああ、先生が部屋から出ていって、消灯した後よくあるね」

侑「それで周りが恋バナとかしはじめてさー。誰が誰を好きとかさ」

歩夢「私たちは普通に寝てたね」

侑「だねえ。いつも歩夢と隣同士の布団で静かに寝てたね」

歩夢「もしかして、侑ちゃんも恋バナグループに混ざったりしたかった?」

侑「いやあ、私はそういうの興味なかったし」

侑「可愛い歩夢の寝顔見てるほうが楽しかったよ」

歩夢「もう///侑ちゃん…!私は喜べばいいの?怒ればいいの?」

16: 2021/01/05(火) 18:12:59.22 ID:8b2s8ug/
────

歩夢「ねえ、侑ちゃんこの動画見てみて!ポメラニアン!」

侑「うわあ可愛い!なにこれ!もふもふじゃん!」

歩夢「良いよねえポメラニアン。私、好きなんだ」

侑「歩夢はなんかポメラニアンって感じだよね」

歩夢「えっ?どういうこと?」

侑「いや、なんか名前がさ。こないだついったで見たんだ」

侑「歩夢がぽむって呼ばれてるの」

侑「歩=ぽ、夢=む。で、ぽむなんだって」

侑「だからぽむとポメラニアンって音が似てるなあ、って」

歩夢「そ、それだけ?っていうか、私そんなあだ名付いてたんだね」

侑「みんな親しみを込めて呼んでる感じだったよ」

17: 2021/01/05(火) 18:14:41.16 ID:8b2s8ug/
──

侑「ねえ、ぽむ?」

歩夢「なあに?」

侑「あ、反応するんだ」

歩夢「侑ちゃんが言い出したんだよ?」

侑「気に入っちゃった?」

歩夢「ちょっとだけ。なんか可愛いなって」

侑「上原ぽむちゃん」

歩夢「それは何か変じゃない?」

侑「ミル!ミル!ミルモでぽむ!」

歩夢「も、もう!歩夢って呼んで!」ポムゥ!

18: 2021/01/05(火) 18:17:26.83 ID:8b2s8ug/
────

侑「はあ、お茶が美味しいですねえ、歩夢おばあさん」

歩夢「そうですねえ、侑おじいさん」

侑「えっ?私、おじいさんなの?」

歩夢「私がおばあさんなら、侑ちゃんはおじいさんでしょ?」

侑「いや私、女だよ?おばあさんがいいよ」

歩夢「でも、私におじいさんが似合うと思う?」

侑「思わない。っていうかどっちもおばあさんでいいじゃん」

侑「合宿の時ずーっと一緒にいたりして、って言ってたじゃん」

侑「もしそうなったときのシミュレーションだよシミュレーション」

歩夢「実際おばあさんになったら、私たちこんなふうに過ごしてるのかな」

侑「少なくとも冬はこうやって、こたつに入りながらお茶を飲みたいね」

歩夢「うん、なんか良いね。時間を忘れてまったりするの」

侑「お年寄りって寿命を考えたら時間あまり無いけど、何故だか何気ない時間を楽しめる余裕がある感じするよね」

歩夢「私は今もこの時間が楽しいよ」

侑「おやおや、もう心がおばあさんになったのかな?」

歩夢「もう!侑ちゃん!!」

19: 2021/01/05(火) 18:19:19.60 ID:8b2s8ug/
──

侑「歩夢って猫がこたつで丸くなってるとこ見たことある?」

歩夢「ううん。どうして?」

侑「いやあ、歌にある割には見たことないなーって」

歩夢「言われてみればそうかも。うちはペット禁止だからなおさら見ないね」

侑「こたつで丸くなってる猫とか絶対可愛いよねえ」

歩夢「だねえ。私はこたつでまるまる侑ちゃんも可愛いと思うけど」

侑「さっき寝てる私をくすぐってきたじゃん」

歩夢「だって、本当に寝ちゃったら私はどうすればいいの」

侑「うーん、歩夢も丸くなって寝る?」

歩夢「ダメだよ、風邪引いちゃう」

歩夢「さっきくすぐって起こしたのだってそう」

歩夢「侑ちゃんの身体は侑ちゃんだけのものじゃないんだから」

歩夢「ちゃんと気を付けてね?」

侑「わかりました…。歩夢おばあさん」

歩夢「おばあさんじゃないよ!」

21: 2021/01/05(火) 18:21:40.80 ID:8b2s8ug/
───

歩夢「…あっ、侑ちゃん!見てみて!璃奈ちゃんが写真送ってきたよ!」

侑「わあ!はんぺんちゃんじゃん!しかもこたつ!」

歩夢「冬休み中に猫用サイズのこたつ作って、さっき部室に置いてきたんだって」

侑「これがこたつで丸くなる猫かあ。可愛いなあ」

歩夢「後は雪で庭を駆け回る犬もあれば歌の通りだね」

侑「今、外雪降ってるけど、うちはお庭無いからなあ」

歩夢「しずくちゃんがワンちゃん飼ってたよね?」

侑「オフィーリアちゃんだね──」

ピロリン!

侑「お?言ってるそばからしずくちゃんから!ほら!」

歩夢「わっ!オフィーリアちゃんだ!ほんとに雪景色のお庭で走ってる!」

侑「可愛いねえ。いつか本当に見に行ってみたいなあ」

侑「しかし、こうやって見るとしずくちゃんちってお庭広いよね。お金持ちなのかな?」

歩夢「どうなんだろうね?しずくちゃんってちょっと気品あるから、お金持ちでも納得しちゃう」

侑「仮にお金持ちじゃなくても、演技でそういう風に見せられちゃいそうだよねえ」

歩夢「だねえ。今度二人で遊びにいってみる?」

侑「良いね良いね!いつも一年生で遊んでるから、たまには先輩の相手してよー、って感じで行こうよ!」

23: 2021/01/05(火) 18:23:52.27 ID:8b2s8ug/
───

侑「ありゃ、なんだかんだやってたらもうお外暗いね」

歩夢「そうだねえ。そろそろおうち帰る?」

侑「いやあ、今日はもうこのまま歩夢んちに泊まりたい気分」

歩夢「ふふっ、良かった。今日お父さんもお母さんも帰ってこないんだ」

侑「なら私が歩夢と一緒にいてあげなきゃ。歩夢は寂しいと泣いちゃうもんね」

歩夢「も、もう!子供じゃないんだよ///」

侑「おやおや?こないだ果林さんが動画で見せてくれたよ」

歩夢「へ?」

侑「シンジンスクールアイドルノー、アユムダピョン!」

侑「オクビョウダカラ、サミシイトナイチャウー…ピョーン」

歩夢「~~~!!!///」

歩夢「な、なんで!?あの時撮られてたの!?///」

侑「めちゃくちゃ可愛かったよ歩夢」ニヤニヤ

歩夢「もう…果林さんってば…」

侑「大丈夫大丈夫。私に見せた後、すぐ消してたよ」

歩夢「うう…。もう///」

侑(まあ、私が動画もらって保存してるんだけどね)

侑(こんな可愛い歩夢は、私がひとりじめしちゃうよ)

25: 2021/01/05(火) 18:26:15.54 ID:8b2s8ug/
──

歩夢「はーい、できましたー!」

侑「鍋だー!やっぱり冬は鍋だよねえ。ありがとう歩夢」

歩夢「えへへ、今一番人気のごま豆乳鍋だよ。熱いから気を付けてね」

侑「分かってる分かってる!よし、それじゃ」

2人『いただきます!』

侑「あー、はふっ、はふっ、お豆腐おいひ~」

歩夢「もういきなりお豆腐は火傷しちゃうよ、侑ちゃん」

侑「いや~、こたつに入りながら食べる鍋って最高だねえ」

歩夢「冬の醍醐味って感じだよねえ」

侑「ほんとそれだよ。こたつで鍋食べなきゃ冬って感じしないくらい」

歩夢「それは言い過ぎじゃないかな?」

侑「良いんだよ。こういうのは言い過ぎなくらいで」

歩夢「ふふっ。あっ、そうだ侑ちゃん!写真撮ろうよ!」

侑「いいねいいね!みんなにもこの光景をお裾分けだ!」

歩夢「行くよー。はい、チーズ」パシャ

2人『あははははは!』

26: 2021/01/05(火) 18:28:21.22 ID:8b2s8ug/
──

侑「あー!美味しかったー!シメのラーメンも最高だったよ!ごちそうさまでした!」

歩夢「ふふ、お粗末様でした」

歩夢「鍋食べてる間に沸かしておいたから、もうお風呂入れるよ」

侑「やったー!じゃあ、歩夢!今日は一緒にお風呂入ろうよ!」

歩夢「え!?」

27: 2021/01/05(火) 18:30:18.61 ID:8b2s8ug/
歩夢「い、いいよ…/// 私、後で一人で入るから。先に入っちゃって」

侑「えー、良いじゃん二人で入ろうよー」

歩夢「ふ、二人で入ったら狭いよ…」

侑「歩夢んちのお風呂ってうちのと変わらないでしょ?大人二人くらい余裕で入れたと思うけど」

歩夢「え、えーっと…そ、そう!私、一人じゃないとお風呂入れない主義なの!」

侑「幼稚園の頃、一緒に背中流し合ったじゃん」

侑「直近だって、中学の林間学校で二人どころかクラスの大勢と入ったじゃん」

歩夢「あ、ああ、あれから宗旨変えしたの!」

侑「……ふーん」ジトー

歩夢「な、何?」

侑「歩夢ってさ、実は嘘ついてる時前髪のくせ毛が動くんだよ」

歩夢「え!嘘!?」バッ

侑「嘘だよ」

歩夢「~~~~!もう!侑ちゃん!」ポカポカ

侑「いててて!ごめん、って!」

28: 2021/01/05(火) 18:33:00.37 ID:8b2s8ug/
歩夢「もう!絶対一緒にお風呂入ってあげない!」

侑「だから悪かったって!っていうか、そんなに嫌なの…?」

歩夢「う、うう…」

侑「どうしても?」

歩夢「…………」


侑「そうか…。歩夢は変わっちゃったんだね」

侑「私の思いはずっと変わらずにいたのに…」

歩夢「──!」

侑「分かった。ごめんね、嫌な思いさせて。私、一人で入ってくるから」

歩夢「あっ、侑ちゃん…待っ──」

歩夢「────」

29: 2021/01/05(火) 18:34:13.59 ID:8b2s8ug/
──風呂場──

侑「はあ…」バスチェアコシカケ

侑(私だけ…だったのかな?)

侑(歩夢とずっと昔と同じように居られると思ってたのは)

侑(うーん、私が子供のまま大きくなっただけ?)

侑(大きくなっても変わらないもの、大事にしたいものってあると思ってるけど)

侑(歩夢にとってはそうじゃなかったのかな)

侑(……………)

侑「…って、なんかくよくよしてるの私らしくないな」

侑「うん、こんな顔してお風呂上がったら歩夢に気を使わせちゃう」

侑「よし!」カオパシーン!

侑「今日は久しぶりに歩夢とお泊まりなんだ」

侑「お互い嫌なこと忘れるくらい楽しい夜にしよう!」

侑「まずは身体をあらっ───」

ブツン !

30: 2021/01/05(火) 18:36:17.60 ID:8b2s8ug/
侑(!?)

侑「電気が切れた。停電?」

侑(……いや、給湯器のリモコンは点いてる。停電じゃない。ブレーカーが落ちた……わけでもなさそう)

侑「歩夢ー!お風呂場の電気が切れちゃったんだけどー!」


………シーン


侑「……あれ?歩夢ー!歩夢ー!」


…………シーン



侑「え?」

侑(どうしよう。暗いお風呂怖い…え?何で電気切れたの?もしかして幽霊?え、え、え?)

侑(夜の学校も全然怖くなかったのにこの閉鎖空間じゃ怖い裸だしえ?何で電気切れたの?幽霊の仕業ならまだいいというかそんなのいるわけないし)

侑(けどこれがもし知らない人が家に入ってきてたら?強盗なら?歩夢は?歩夢が危ない私も危ないほんとに危ないこれはダメダメダメダメ)

ガサゴソ…ユラァ……

侑(うわしかもなんかお風呂の戸に人影ががががほんとなにこれこわいこわいこわい)



ガチャリ



侑(入ってきたあああうわあああああああああ!!!)

31: 2021/01/05(火) 18:38:26.35 ID:8b2s8ug/
侑「ご、ごごごご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

歩夢「……侑ちゃん?」

侑「ごめんなさ──……え?」

侑「あ、歩夢なの?」

歩夢「うん。さっきはごめんね。お風呂場の電気切ったのも私なんだ」

侑「……」

歩夢「本当は私も侑ちゃんと一緒にお風呂入りたかった」

歩夢「けど、二人きりでお風呂が久しぶりすぎて、誘ってくれたときも嬉しいのに、素直にうんって言うのが照れくさくって、恥ずかしくて…///」

歩夢「明かりを消せばこの気持ち、誤魔化せるかなって思って…」

歩夢「びっくりさせてごめん。お詫びに侑ちゃんの背中いっぱい洗ってあげるから許して?」

侑「」

歩夢「………侑ちゃん?」




侑「もおおおおおおお!!本当に怖かったああああ!!」ダキッ

歩夢「ええっ!?」ボフッ///

32: 2021/01/05(火) 18:39:39.22 ID:8b2s8ug/
侑「歩夢のばかっ!もう!なにかあったかと思ったじゃん!そんなんじゃ許さない!」

歩夢「…っ!」

侑「罰として私にも歩夢を洗わせること!そしたら許す」

歩夢「侑ちゃん…///」

歩夢「うん!私のこと……いっぱい洗って?」


侑(!?◎×△□◇$@cメリ)


侑「もおおおお!完全にトキメイちゃったっ!許すっ!」

歩夢「えへへっ…!」

36: 2021/01/05(火) 18:42:24.28 ID:8b2s8ug/
───

歩夢「どう?気持ちいい?」ゴシゴシ

侑「うん、すっごい幸せな気分。これだよこの感触。懐かしいなあ」

歩夢「ふふ、侑ちゃんの背中、大きくなったね」ゴシゴシ

侑「そりゃあ幼稚園の頃と比べたらね。っていうか、やっぱ電気付けない?」

歩夢「恥ずかしいって言ったでしょ?ダーメ」ゴシゴシ

侑「歩夢の裸なんて見慣れてるから気にしないのに」

歩夢「私が気にするの!」ゴリゴリゴリッ!!

侑「わわ、分かった分かった!もう言わないから力を弱めて!」

歩夢「もう…///侑ちゃんのばか」ゴシゴシ

侑「ごめん…。けど、暗いのによく分かるね。私の背中の大きさなんて」

歩夢「手の感触だけで分かるよ。ちょっとゴツゴツしてるかな」

侑「それ褒めてる?」

歩夢「褒めてるよ。かっこよくなったなあって」

侑「うーん、かっこいいか。自分じゃよくわからないなあ」

侑「歩夢のほうが背も大きいし、肩幅あるし、あと胸もお尻も大きいし」

歩夢「侑ちゃん?また強めにゴシゴシされたいのかな?」

侑「勘弁して!」

37: 2021/01/05(火) 18:44:13.05 ID:8b2s8ug/
──交代───

侑「力加減はどう?歩夢?」ゴシゴシ

歩夢「ちょうど良いよ。とっても気持ちいい」

侑「良かった」 ゴシゴシ

歩夢「侑ちゃんは昔から背中流すの上手だったよね」

侑「家でよくお父さんの背中洗ってたからね。お父さんのと違って歩夢の背中はすべすべだから、洗ってる方も気持ちいいよ」

歩夢「もう!何言ってるの?///」

侑「ほんとのこと言っただけだよ」

歩夢「……そういうのは他の人には言っちゃダメだよ?」

侑「え?こんなこと言うの歩夢にだけだよ」

歩夢「……もおおおおお!!」

侑「何で怒ってるの!?」

38: 2021/01/05(火) 18:46:17.00 ID:8b2s8ug/
──湯船──

侑「はあ~ごくらく極楽ぅ」

歩夢「温かいねえ」

侑「改めてだけど、今日おうちに泊めてくれてありがとね」

歩夢「どうしたの?急に?」

侑「いや、私せっかく歩夢の家来たのにだらだらして、ほとんど手伝いもしなかったしさ」

侑「それでそのまま泊まりたい気分とか言って、厚かましかったかなって」

歩夢「別にそんなの気にしてないのに。嬉しかったよ?」

侑「いや、でも親しき仲にも礼儀ありとも言うじゃん?」

歩夢「水くさいよ侑ちゃん。もう何年の付き合いだと思ってるの?」

侑「お風呂だけに?」

歩夢「これはお水じゃなくてお湯でしょ?」

侑「たはは、手厳しいなあ」

歩夢「もう、お風呂もほんとにお水になっちゃうよ」

侑「そんなに?」

歩夢「侑ちゃんは笑いのレベルが赤ちゃんだからね」

侑「え?歩夢そんなふうに思ってたの?」

歩夢「うん。でも、私は侑ちゃんのそういうところ、可愛いと思うよ」

侑「それは無いぴょん」ピョンピョン

39: 2021/01/05(火) 18:48:13.13 ID:8b2s8ug/
──洗面所──

侑「歩夢の髪って綺麗だよね」ポムノカミドライヤーブオオオ

歩夢「そうかな?スクールアイドル始めてからは、いつもより気を使うようにしてるけど」

侑「毎日シニヨン編み込んでるのに全然枝毛が無いんだもん」

歩夢「髪の毛は編み込んだ方が傷まないんだよ?」

侑「そうなの?」

歩夢「髪同士の摩擦が減るから髪に優しいの。合宿でもエマさんが寝る時もいつもみたいにおさげにしてたでしょ?」

侑「ああ、言われてみれば確かに」

歩夢「侑ちゃんも女の子なんだから、もっとおしゃれの勉強しようね」

侑「いやあ、私は良いよ。みんなみたいにステージに立つわけじゃないし、ガラじゃないよ」

歩夢「そんなことないよ。こないだ今日子ちゃん達も言ってたよ」

40: 2021/01/05(火) 18:50:20.94 ID:8b2s8ug/
─────


今日子『侑先輩って自分がかっこいいってことに気づいてないと思うんですよ!』

(すごい)髪(型の)子『今でも十分イケ女だと思うんですよね。歩夢先輩にローダンセ渡したあの日ほんとヤバかった。まぢ彼氏』

黒(サイドポニー)子『そうなの!私たちが歩夢ちゃん最推しなのは変わらないけど、侑先輩も尊いの!』

今日子『だからこそもったいないんです!誰よりも歩夢ちゃんの近くにいられるからこそ、もっとキラキラでいてもらいたいんです!』

髪子『悔しいけど歩夢ちゃんには、侑先輩が一番お似合いですからね』

黒子『あの光景はファンの中でも、私たちしか知らないからね。最近ファンになった人たちにも、侑先輩の魅力が伝わってほしい!』

今日子『歩夢ちゃんは今のままでもとっても魅力的!けど侑先輩が煌めくほど、歩夢ちゃんもまたさらに輝きを増すの!』

髪子『侑先輩が太陽なら歩夢ちゃんは月って感じ?』

黒子『そんな感じだね!そして歩夢ちゃんは私たちの太陽!』

今日子『たとえ埋められない距離があろうと!既に推しの隣のポジションは埋まっていようと!現実を突きつけられようと!ファンは推しの幸せを何よりも尊ぶもの!』

髪子『侑先輩×歩夢ちゃん、それは歩夢ちゃんの魅力の掛け算』

黒子『侑先輩無しで歩夢ちゃんの魅力が0になるわけでは決して無いんだけど、その公式すごくわかりみが深いよ…』

3人『『あ~尊い…』』

歩夢『あ、あははは……』

42: 2021/01/05(火) 18:52:13.20 ID:8b2s8ug/
───

侑「私の知らないとこでそんな話してたのかあ」

歩夢「うん。私のファンの中に侑ちゃんの隠れファンも結構居るんだよ?」

侑「う~、なんだか恥ずかしいな」

歩夢「ふふっ、私は嬉しかったよ。侑ちゃんの魅力に気づいてくれる人も居るんだって誇らしかった」

歩夢「けどちょっと嫉妬しちゃった」

侑「?」

歩夢「私はみんなよりずっと昔から、侑ちゃんが素敵だって知ってるんだよ!って」

侑「………」

歩夢「あれ?手が止まってるよ?」

侑「え?あ、いや、ごめん!ちょっとボーッとしてた」

歩夢「もう、髪乾かしてる最中に気をつけてね。火傷したら大変なんだから」

侑「ごめんごめん。次は私のをお願い」

侑(不意打ちだよ全く……心臓に悪いなあ)

43: 2021/01/05(火) 18:53:37.93 ID:8b2s8ug/
──交代──

歩夢「侑ちゃんの髪、つやつやしてる」ドライヤーブオオオ

侑「今日は歩夢のトリートメント借りたからかもね」

歩夢「普段はしてないの?」

侑「最近はあんまり。音楽科の勉強したり、作曲に没頭してるとついつい忘れちゃって」

歩夢「侑ちゃんのいつもしてる髪型痛みやすいから気をつけてね」

侑「はーい。歩夢のファンの子たちが喜んでくれるなら私も頑張らないとね」

侑「一番は歩夢のために、だけど」

歩夢「えへへ、ありがとう」

44: 2021/01/05(火) 18:55:02.62 ID:8b2s8ug/
──歩夢の部屋──

歩夢「…………」スマホポチポチ

侑「…………」ベンキョウカリカリ

歩夢「ふふっ」ポチポチ

侑「ふわあ…ああ」

歩夢「あ、侑ちゃんおねむ?」

侑「ちょっとね。最近いろいろあって夜更かし続きだから」

歩夢「今日は早く寝よっか。私もちょうど今日子ちゃんたちとのメッセ終わったとこだし」

侑「えー、もったいないよ。せっかくのお泊まりなのに」

歩夢「お泊まりはまたいつでもできるよ」

歩夢「お昼も言ったけど、侑ちゃんの体は侑ちゃんだけのものじゃないんだから」

歩夢「休めるときにしっかり休もう。ね?」

侑「……分かった。その代わりに条件がひとつ」

歩夢「なに?」

侑「今日は歩夢と一緒のベッドで寝たいな」

歩夢「ふえっ…!///」

45: 2021/01/05(火) 18:57:15.21 ID:8b2s8ug/
歩夢「も、もう!すぐそういうことさらっと言うんだから///」

侑「前も一緒に寝たことあるじゃん」

歩夢「それも幼稚園の頃の話でしょ。しかも寝たんじゃなくて寝落ちしただけだし」

歩夢「だいたいそんな条件とか言わずに普通に誘ってよ」

侑「だってお風呂の時は最初断られたから…」

歩夢「それは悪かったけど…。侑ちゃんが嫌って言っても、今日は一緒に寝るつもりだったよ」


歩夢「お泊まり決めた時から、今夜は侑ちゃんと同じベッドで寝たいなって思ってたから…」

侑「」

歩夢「……何か言ってよ」

侑「ごめん。歩夢があまりに可愛すぎて語彙力消し飛んだ」

歩夢「~~~~!!///」





侑(ほんとに消し飛んだのは私の意識だけどね)

46: 2021/01/05(火) 18:59:00.09 ID:8b2s8ug/
──

歩夢「それじゃあ電気消すよ」

侑「うん」

カチッ プツン

歩夢「えへへ、温かいね」

侑「そうだねえ」

歩夢「大丈夫?窮屈じゃない?」

侑「全然問題ないよ」

侑「むしろ窮屈なくらいが歩夢とくっつけるから温かい」

歩夢「もう、侑ちゃんったら///」

47: 2021/01/05(火) 19:01:03.28 ID:8b2s8ug/
ゴソゴソ


歩夢「あっ、侑ちゃんの足冷たいよ」

侑「私、冷え性だからこの季節になるといつもこうなんだ」

歩夢「なら、私の足で温めてあげる」

侑「い、いいよ!歩夢の足が冷えちゃうよ」

歩夢「そんなの気にしないで。ねっ」ピトッ

侑「わわわっ///」

歩夢「……どう?温かい?」

侑「う、うん。とっても。ただ…」

歩夢「ただ?」

侑「歩夢に足をからめられると、あの日の夜を思い出すな、って」

歩夢「あ、あああ、あれは忘れて!」

侑「まだあの日の夜としか言ってないけど?」

歩夢「……!!///」

侑「まあ、歩夢が私を押し倒した夜のことなんだけどね」

歩夢「も~~~!やっぱり!///」

48: 2021/01/05(火) 19:02:23.63 ID:8b2s8ug/
歩夢「私が悪いんだけど…!恥ずかしいから蒸し返さないで///」

侑「あはは、ごめんごめん。もう言わない」


侑「けど、今はあの時とは違う形で、こうやって二人でベッドの上に居る」

侑「上手く言えないけどさ」

侑「こんな日が来て良かった、って思うんだ」

歩夢「侑ちゃん…」

侑「へへ、なんかクサかったかな?」

歩夢「ううん、そういう侑ちゃんも良いと思う」

侑「ありがとう歩夢」

50: 2021/01/05(火) 19:04:47.29 ID:8b2s8ug/
 ̄ ̄ ̄

歩夢「足、だいぶ温まってきたね」

侑「歩夢が温めてくれたおかげだよ。おかげでぐっすり眠れそうな気がする」

歩夢「明日も同好会お休みだから寝坊しても大丈夫だよ」

侑「そっかあ。いっそ明日も一日歩夢の部屋で過ごすのもありかなあ」

歩夢「あ、私、お昼から今日子ちゃん達との約束があるの」

歩夢「……ごめんね。侑ちゃんも一緒に来る?みんな喜ぶと思うよ?」

侑「………いや、大丈夫。音楽科の課題結構出てるから、 勉強しなきゃだしね」

侑「それに、みんなのために作曲もしなきゃ」

侑「いっぱい楽しんできて。ファンを大切にするのも、スクールアイドルの大事な務めなんだから」

歩夢「そっか…。残念だけど、頑張って!応援してるからね!」

侑「うん!」

52: 2021/01/05(火) 19:06:05.18 ID:8b2s8ug/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

歩夢「すぅ……すぅ…」

侑「」

歩夢「すぅ…すぅ…」

侑(歩夢は──寝ちゃったかな?)

侑(…おかしいな。私が眠そうにして早めに床に付いたはずのに、目が冴えちゃった)

侑(……)

侑(…………やっぱり考えちゃうな)

53: 2021/01/05(火) 19:08:39.28 ID:8b2s8ug/
侑(歩夢は明日今日子ちゃん達と……か)

侑(うん、歩夢がファンのために頑張ってるんだ。私もその間、自分の夢のために頑張る。それでいいじゃん)

侑(向かう道は違っても、私達はずっと一緒。みんなのために歌う歩夢を応援するって決めたんだから)

侑(今は今日子ちゃん達だけじゃない。あの時よりもっと多くのファンがいる)

侑(それは幼馴染としてとっても誇らしい。歩夢の笑顔も同好会に入った頃よりずっと増えた)

侑(けど、なんでだろうな…)




寂しい…って思っちゃった。

54: 2021/01/05(火) 19:10:46.29 ID:8b2s8ug/
…………なんか私、女々しいな?




いや、女の私に女々しいはおかしいよね。けど、自分ってもう少しさっぱりしてると思ってた。

そもそもこうなることは分かってたこと。

歩夢もあれから──せつ菜ちゃんにしたという話を──話してくれた。

私と一緒じゃなくなるからってだけじゃない。

スクールアイドルをして、ファンが増えていって、大切なものが増えて、それはとても嬉しいことのはずなのに、

それと同じくらい私と一緒の時間が、関係が、私だけのスクールアイドルで居たいという最初の気持ちから離れていきそうなのが怖かったんだって。

その意味、分かったつもりで、ちゃんと分かってなかったのかも。

別にもう一度私だけのスクールアイドルに戻ってほしい、なんて言うつもりはない。

みんなのために歌う歩夢が、みんなに愛される歩夢が好きだから。

歩夢は何があってもこれからもずっと私と一緒にいてくれる。

たとえ離れることがあっても、思いはずっと変わらないって。

歩夢の心の片隅には、どんな時も必ず私がいるって信じてる。

なのに…

急に歩夢を遠くに感じちゃった。

55: 2021/01/05(火) 19:12:48.01 ID:8b2s8ug/
侑「おかしいな…」


転科による環境の変化や勉強の日々で、寂しくなっちゃったのかな?

前に、音楽科に転科してからのこと、歩夢に聞かれた。

大変じゃない?辛くない?──って

その時、叶えたい夢に近づいてると実感すると、大変以上に楽しいし、やれることやできることが増えていくのが嬉しい──

そんなふうにかっこつけて答えて見せた。

それは、決して嘘偽りの無い気持ちだけど、

逆境から来る不安や焦りも、全く無いわけじゃない 。

勉強しても手応えを感じない、変わらない日々が続くと、

自分のしている努力は正しいのかな?

本当に夢を叶えられるのかな?

普段は見て見ぬふりしていても、こんなときに考えてしまう。


…………────


侑(歩夢の横で何を考えてるんだろ、私)

56: 2021/01/05(火) 19:14:54.03 ID:8b2s8ug/
すっ、と歩夢の顔を見る。

歩夢は私のほうに身体を向けて寝息をたてている。

私の顔にかかるそれが、ちょっとくすぐったいけど気持ちいい。


侑(本当に可愛いよ、歩夢)


ファンの皆も知らない歩夢の寝顔。

それを私はこんなに近くで見ることができる。

独り占めできる。

なのに…


心がズキンと痛んだ。


侑(あっ…駄目だ)


我慢できなかった。

歩夢を愛しいと思う気持ちと、

急速に膨らんだ不安な気持ちがぐちゃぐちゃにないまぜになって、

私は─────



ぎゅっ、と

歩夢のことを抱きしめていた。

58: 2021/01/05(火) 19:17:08.54 ID:8b2s8ug/
侑「歩夢………歩夢っ!」

〇そうとした声が、口から漏れた。





歩夢の匂いがする──甘くて、優しい匂い。


歩夢の心臓の鼓動を感じる──小刻みで、少しだけ早い。


歩夢が私の腕のなかにいる──柔らかくて、温かい。


心と体の距離は同じくらい近いのに、


胸がぎゅっと締め付けられて仕方がなかった。


この温もりを離したくない。

今だけはこの温もりに溺れていたい。

侑(歩夢が寝てるのに……駄目だよ…こんなの…)

59: 2021/01/05(火) 19:19:35.87 ID:8b2s8ug/
そうだ。

歩夢が寝ている間に触れるなんて卑怯だ。

あと少ししたら歩夢の好きなかっこいい私に戻るんだ。

けど───

無理だった。

抗えなかった。

もっと、もっと歩夢を感じていたい。

目を覚まさないで、歩夢。

侑「私、こんなに弱いんだ…。弱かったんだ…」

いや、本当は弱い私はずっと前から居たんだ。

歩夢の前では強がってたんだ。

優しくて、自信がなくて、ちょっぴり泣き虫な歩夢を守るために。

いつも堂々として、歩夢の不安に気づいたときには、

その不安の原因を、すぐに否定してあげた。

寂しくても、悩むことがあっても、すぐにニカッと笑って見せた。

そうすれば歩夢も、笑ってくれたから。

60: 2021/01/05(火) 19:20:53.88 ID:8b2s8ug/
けど、今の私にその余裕は無かった。

これじゃあ歩夢を守ってあげられない。

侑「こんな私じゃ……歩夢を不安にさせちゃうよね…」












歩夢「そんなことないよ」

侑(!?)

61: 2021/01/05(火) 19:22:28.16 ID:8b2s8ug/
侑(歩夢……起きてた!?いつから!?)

侑(しかも…)

スッ

侑(え…私…歩夢に頭を撫でられてる…?)



歩夢「私の知らない侑ちゃんが…まだいたんだね」

侑(…………)

歩夢「良いんだよ。今は我慢しなくても」

侑(───っ)

歩夢「辛い思いはね、自分一人で止めちゃいけないの」

歩夢「一人でずっと抱えてたら、あの時の私みたいに、きっと良くない形で爆発しちゃう」

歩夢「音楽科で大変なこと、私は侑ちゃんほどわかってあげられないかもしれない」

歩夢「でも、不安になったのなら、いつでも受け止めたい」

歩夢「あの時、侑ちゃんは私を受け止めてくれたから」

歩夢「私も───侑ちゃんの支えになりたい」

62: 2021/01/05(火) 19:24:10.57 ID:8b2s8ug/
侑「────」


侑「……歩夢…ズルいよ」


どうして……

歩夢はとても可愛いはずなのに…


侑「いつのまに、そんなかっこいい事言えるようになったの?」

侑「そんなに優しくされたら…私……っ…」

歩夢「良いよ」

歩夢「弱い侑ちゃんも、隠さないで」

歩夢「私の知らない侑ちゃんがいるなら、もっと知りたい」

歩夢「いろんな侑ちゃんが居るなら、全部私に見せて?」

歩夢「どんな侑ちゃんでも」

歩夢「私は────侑ちゃんが大好きだから」

63: 2021/01/05(火) 19:26:18.83 ID:8b2s8ug/
────限界だった。


「う…っ…うわあああああ─────」


私は歩夢の胸の中で泣いた。

自分でも情けないくらい 子供みたいに わがままに 。

思えばすごく単純だった。

今まで無視して強がってたネガティブな感情。

久しぶりにこんなに歩夢と過ごせたから、

歩夢に甘えたくなってしまったんだ。

私は今までどこかで、

自分が歩夢を守らなきゃいけない、って傲ってたのかも。

でも歩夢は強かった 強くなっていた。

それはきっと──悔しいけど──私だけの力じゃない。

同好会のみんな、校内のファンのみんな、まだ顔も知らない世界中のファン

いろんな人に応援されて、

愛されて、

こんなに強くなったんだ。

そんな歩夢のことが 私も────

────────

─────

──

64: 2021/01/05(火) 19:28:08.62 ID:8b2s8ug/
歩夢「落ち着いた…?」

侑「うん…。ありがとう歩夢」

歩夢「えへへ、侑ちゃんの泣いた顔はじめて見ちゃった」

侑「あはは、見られちゃったなあ」

歩夢「もう大丈夫?」

侑「うん、すっきりした。明日からまた頑張れそうだよ」

歩夢「良かった。それじゃもう一度寝よっか。私が子守唄歌ってあげる」

侑「子守唄?私、赤ちゃんなのは笑いのレベルだけだよ?」

歩夢「自分で言っちゃうんだ…」

侑「歩夢がそう言ったんじゃん」

歩夢「ふふっ、いつもの侑ちゃんだ」

侑「へへっ、そうかも」

65: 2021/01/05(火) 19:29:11.26 ID:8b2s8ug/
侑「で、その子守唄はどんな唄なの?ねんねんころりよ~みたいな?」

歩夢「ううん、私が作ったの。侑ちゃんのために、今」

侑「即興!?歩夢…私より音楽の才能あるんじゃない?」

歩夢「違うよ!歌詞は考えたけど、メロディーは侑ちゃんも知ってるやつ」

侑「そっかあ。じゃあ歩夢の可愛い歌声を聞きながら眠ろうかな」

歩夢「も、もう!またすぐそういう恥ずかしいこと言うんだから」

歩夢「──それじゃあ、歌うね」

67: 2021/01/05(火) 19:30:14.02 ID:8b2s8ug/
────────────


果てしない道でも一歩一歩~♪


侑(!?)


諦めなければ夢は逃げない~♪


侑(このメロディー──)


隣にあなたがいてくれるから~♪


侑(毎朝聞いてる──)


逆境も不安も乗り越えて行けるよ~♪


侑(───歩夢のモーニングコール…!)


ありがとう~♪

69: 2021/01/05(火) 19:31:46.14 ID:8b2s8ug/
────────────

変わらない日々から一歩一歩


勇気むねに 未来へ踏み出そう


キラキラ眩しく光る毎日は


あなたにもらった とびきり素敵な


プレゼント

────────────


これまでずっと支えられて甘えてきたから


これから私があなた 支えられる様に


もっともっと強くならなくちゃ


今度は守りたい

────────────


あなたがいるから 私も輝ける ありがとう


───────

───

──

おやすみ侑ちゃん───大好きだよ

おやすみ歩夢───私も大好き






おわり

70: 2021/01/05(火) 19:33:02.49 ID:Tbo646/U
?cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 乙だよ!神SSをありがとう!

71: 2021/01/05(火) 19:36:21.73 ID:4AXtBeK8
?cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ素晴らしい神SSありがとう

72: 2021/01/05(火) 19:37:01.69 ID:zOyLBe61
?cメ*˘ ᴗ ˘ リ心が癒されるね

73: 2021/01/05(火) 19:37:50.17 ID:t2Qz/RBH
幼馴染から一歩踏み出すかどうかのギリギリ感がとてもいい

74: 2021/01/05(火) 19:42:35.72 ID:SOjaBFM8
津々浦々からぽむが集まる素晴らしいゆうぽむss

76: 2021/01/05(火) 19:46:36.90 ID:Klrkm92c
?cメ*˘ ᴗ ˘ リ 神SS認定だよ

78: 2021/01/05(火) 19:54:30.31 ID:QXdjpG4b
?cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ ちょっぴりシリアスも交えつつ温かさもある、最高かな?

79: 2021/01/05(火) 20:04:46.17 ID:w9M/rKAx
ゆうぽむの良いところ全部入ってるな?おつ

80: 2021/01/05(火) 20:04:46.91 ID:giQ2IOzH
ゆうぽむまだまだ流行れ

81: 2021/01/05(火) 20:10:42.85 ID:BDAcD2Fq
いついかなる時もゆうぽむは素晴らしいものだ

82: 2021/01/05(火) 20:19:41.14 ID:kiljyYxp
最高すぎた…

89: 2021/01/05(火) 21:55:14.77 ID:2C1fQy5E
おつおつ
このレズ一歩手前くらいの関係性いいね

91: 2021/01/05(火) 22:57:28.87 ID:fvG1YWtW
神SSすぎる

93: 2021/01/05(火) 23:33:58.70 ID:VqQeYJ7E
ありがとう……ありがとう……

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1609837283/

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