【SS】しずく「エイリアン」【ラブライブ!虹ヶ咲】

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3: (大酒) 2022/04/20(水) 00:34:28.97 ID:3c3KBqVX
人間は兎角分類分けというものを好む生物だ、例えば、学年、生まれが早いかどうかで区分けを行う
例えば、性別、生物学的に定められた基準に則って区分けを行う
ここに挙げたものはほんの一例でもっと厳密な、もしくはもっと大雑把な分け方なんていくらでも可能だ
肝心なのはこれが役に立つこともあれば社会的に問題となることもあるということでもっと具体的な言葉を使っていいのなら人類はそれを差別と呼ぶ
 
4: (大酒) 2022/04/20(水) 00:36:13.44 ID:3c3KBqVX
人間はその分類分けを生活において必要だから行なっていると考えるかもしれない、しかしこれはそんな合理的な側面以外にもただ個人が安心したいからという酷く傲慢な一面も含んでいる、自分が有利なグループに入った時、例えばクラスの多数決で過半数以上が手を挙げた時「じゃあ自分も……」と手を挙げたこともあるのではないだろうか、なんてことはない、それは当然の心理だ、自分が有利で間違っていないと安心したいのは普通のことだ。
 
5: (大酒) 2022/04/20(水) 00:37:15.77 ID:3c3KBqVX
しずく「中学生の時、生きていたって無駄じゃないのかな、なんて考えたことがあります」

しずく「生きる理由っていうのは誰かに教えてもらったんですけど学問の始まりみたいなものらしいです」

しずく「人間とは何かを始まりとして生まれて、それで生きる意味を問うたのが哲学?とかなんとか……」

しずく「詳しいことはよく分かりませんが人類がはるか昔から抱えてきた問いってことです」

しずく「だから、私がなんで生きてるんだろうって思うのは珍しくもないと思うし、誰でもそうなんじゃないかなって思います」
 
6: (大酒) 2022/04/20(水) 00:41:36.11 ID:3c3KBqVX
しずく「あ、ちょっとだけ話が脇道に逸れちゃうんですけど草枕って知ってますか?夏目漱石の小説で……はい、坊ちゃんとかそうです」

しずく「私も漱石の作品よく読むんですけど一番好きな作品がこれなんです」

しずく「色々思うところはあるんですけど中学生の時これを読んで、もしかしたら漱石も生の苦しみを抱えながらこれを書いたのかなって」

しずく「うまく言葉にできないんですけど漱石が生きていた時代においても自分らしく生きることって難しくて……それで追随する苦しみを伝えたかったのかなって……」
 
7: (大酒) 2022/04/20(水) 00:43:05.36 ID:3c3KBqVX
山路を登りながら、こう考えた。から始まる夏目漱石を代表する小説だ。おそらく読んだことある人も多いだろう、少し難しい印象を受けるかもしれない、いやむしろ表現としては何か「腑に落ちない」という感想を持つ人が多いかもしれない、にも関わらずどこか共感を得るところも多々ある。

そんなことない、と自分の意見を押し通そうとするとどうなるかは多くの人が経験して知っている筈だ。答えは大抵の場合反感を買い争いになる、だ。
 
8: (大酒) 2022/04/20(水) 00:47:17.33 ID:3c3KBqVX
しずく「私は海外の映画とかが子供の頃から好きでした……あっ今もですよ」

しずく「それで、子供だったから私は皆んなそういうものが好きなんだって思ってたんです」

しずく「でも実際違くて、私は少数派なんだってすぐ思い知らされました」

しずく「最初は自分の好きなものを知ってほしくて色々しました、でも勢いに任せて物事を推し進めようとしてもうまくいくわけなくて、私は……自分で言うのもなんですけどその、少し周りから浮いていったんです」

しずく「それは幼稚園だったか小学校の頃だったかの出来事でした、それ以来何かするにしてもそんなことやめておけって私の中で誰かが言うんです」
 
9: (大酒) 2022/04/20(水) 00:50:53.83 ID:3c3KBqVX
しずく「私にだって譲れない、譲りたくないものくらいあります、知って欲しい自分だって当然あります」

しずく「でも……そのためにはかならず何かにぶつからなければいけなかったから、それくらいなら自分を抑えておけばすむ話だって思って」

しずく「だから中学生の時そんなことばかり続けてる時にそんな窮屈な日々ばかり送っていてなんの意味があるんだろうなって、私は何がしたいんだろうって思いました」
 
10: (大酒) 2022/04/20(水) 00:52:16.00 ID:3c3KBqVX
しずく「話は変わりますが……なんでもない、本当になんでもない放課後のことでした」

しずく「周りには『みんな』がいて、面白いことを『みんな』が言っていて、わたしはそれを面白おかしく聞いていました」

しずく「ふと……それはわたしの中に襲来しました」

しずく「ああ、私今とっても『孤独』だって」



「あれ?しずくちゃんとっても笑って、そんな面白かった」

「え……私……笑ってる……?」

「えぇ〜、楽しそうに笑ってるじゃん、どうしたのさ」

意味が分からなかった、なんで笑ってるのか
襲来した孤独は徐々に拡大していった、私まだ多分まだ笑っている、何に?もう何も聞こえないのに
 
11: (大酒) 2022/04/20(水) 00:53:54.48 ID:3c3KBqVX
しずく「虹ヶ咲にきて、私は自分を表現し、自分を曝け出せるようになりました」

しずく「でも……まだ時々自分が何をしていいのか、何をしているのかすら分からなくなる時があるんです」

しずく「カラカラって映画のフィルムが無機質に回るように」

しずく「私は……世界が遠くなっていってる感覚に襲われます」

しずく「自分を曝け出すって言うのは残念ながら自己の消失も含んでいるって私は思います」

しずく「私は……怖いです、私が見ている世界から色が消えていくようなこの感覚が」

しずく「もしくは、私だけが一人透明になっていくこの感覚が……」
 
12: (大酒) 2022/04/20(水) 00:58:22.68 ID:3c3KBqVX
キーンコーンカーンコーン

しずく「……ふぅ、もうこんな時間ですね、ごめんなさい先輩変な話を聞いてもらって」

しずく「少し、楽になりました、よかったらまたお話聞いてください」

ガララ ピシャッ
 
13: (大酒) 2022/04/20(水) 01:03:17.85 ID:3c3KBqVX
しずく(……自分がいるべき場所はここだと思っているのになんで満たされないんだろう)

「いたるところに仕掛けられた孤立のトラップをくぐり抜ける曲芸の物語」

しずく(誰の言葉だったっけ、まあいいや、とにかく今更道化をやめますなんて言おうともその物語はそこで綺麗さっぱり終わりですなんてあるわけない)

しずく(まるで異世界から入り込んだエイリアンが正体をバレさせないようもがき苦しんでいるかのようなこの感じ)

しずく(疎外は英語でalienation、よく言ったものだ)

しずく(本来の自分として生きることができない、それならばエイリアンとしてしか存在を許してくれない、そんな日常が私たちの中にあるかもしれない)
 
14: (大酒) 2022/04/20(水) 01:04:10.71 ID:3c3KBqVX
ただ他者から排除されたくない、そのために歩調を合わせてそれで……
そんな小さな願望が無残に自己を飲み込み、残るのは透明な自分、誰からも見えない、いや認知されない自分
どちらがいいだろう、などと問うまでもなく答えを吐き出す
ああ、私はきっとまた演じるエイリアンとしての自分を
 
15: (大酒) 2022/04/20(水) 01:04:36.49 ID:3c3KBqVX
以上です、これ以上もこれ以下もないです
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1650382234/

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