1: 2020/01/05(日) 01:03:33.00 ID:tTQW94hT
∬8` -ヮ-)「……という訳で、この話はこれでおしまい」
∬8`^ヮ^)「ま、これ以上話したら、愛さんも糠漬けになっちゃうかもしれないからね~」
∬8`^ヮ^)「さて、二人ともどうだった? 愛さんの話、ナカナカのモンだったっしょ?」
@cメ*◉ _ ◉リ 从||;°▭°||从
∬8`^ヮ^)「?」
从||;°▭°||从「愛さんの怪談、迫力があってとても怖い。璃奈ちゃんボード『ガクブル』」
∬8`^ヮ^)「あはは、ごめんねりなりー。それで歩夢は……」
@cメ*◉ _ ◉リ
∬8;`・ヮ・)「あ、あれ? おーい、歩夢ー?」
从||; -人-||从「……駄目みたい。歩夢さん、失神してる。璃奈ちゃんボード『死亡確認』」
∬8`^ヮ^)「ま、これ以上話したら、愛さんも糠漬けになっちゃうかもしれないからね~」
∬8`^ヮ^)「さて、二人ともどうだった? 愛さんの話、ナカナカのモンだったっしょ?」
@cメ*◉ _ ◉リ 从||;°▭°||从
∬8`^ヮ^)「?」
从||;°▭°||从「愛さんの怪談、迫力があってとても怖い。璃奈ちゃんボード『ガクブル』」
∬8`^ヮ^)「あはは、ごめんねりなりー。それで歩夢は……」
@cメ*◉ _ ◉リ
∬8;`・ヮ・)「あ、あれ? おーい、歩夢ー?」
从||; -人-||从「……駄目みたい。歩夢さん、失神してる。璃奈ちゃんボード『死亡確認』」
2: 2020/01/05(日) 01:05:30.55 ID:tTQW94hT
…
……
@cメ*;> _ <リ「もう、愛ちゃんやりすぎ!」
∬8;`^ヮ^)「ごめんってば。歩夢が怖い話苦手なのは知ってたけどさ、これくらいなら大丈夫かなって」
@cメ*;> _ <リ「全然大丈夫じゃないよっ!すごく怖かったんだから!」
从||> ᴗ <||从「愛さんは話すの上手だから、つい怪談に引き込まれちゃう」
∬8`^ヮ^)「おっ、そうやって声に出して褒められるのはこーえーだね!」コエダケニ
∬8`^ヮ^)「でも、さっきの歩夢の話も怖かったなー。」
从||? ▭ !||从「うん。臨場感たっぷりだった。璃奈ちゃんボード『びっくり』」
@cメ*;> _ <リ「そ、そうかな? 怖がりだから、そんな怖くない話をしたつもりだったんだけど……」
∬8`^ヮ^)「まあ、あの話は歩夢にしかできないよねぇ」
……
@cメ*;> _ <リ「もう、愛ちゃんやりすぎ!」
∬8;`^ヮ^)「ごめんってば。歩夢が怖い話苦手なのは知ってたけどさ、これくらいなら大丈夫かなって」
@cメ*;> _ <リ「全然大丈夫じゃないよっ!すごく怖かったんだから!」
从||> ᴗ <||从「愛さんは話すの上手だから、つい怪談に引き込まれちゃう」
∬8`^ヮ^)「おっ、そうやって声に出して褒められるのはこーえーだね!」コエダケニ
∬8`^ヮ^)「でも、さっきの歩夢の話も怖かったなー。」
从||? ▭ !||从「うん。臨場感たっぷりだった。璃奈ちゃんボード『びっくり』」
@cメ*;> _ <リ「そ、そうかな? 怖がりだから、そんな怖くない話をしたつもりだったんだけど……」
∬8`^ヮ^)「まあ、あの話は歩夢にしかできないよねぇ」
4: 2020/01/05(日) 01:08:15.49 ID:tTQW94hT
从||> ᴗ <||从「やっぱり、この三人で集まると楽しい。」
∬8`^ヮ^)「おっ、りなりーもそう思う? 愛さん嬉しいなー」
@cメ*・ヮ・リ「それにしても、どうして怪談大会なんか企画したの?」
∬8`^ヮ^)「いやー、あえて冬に怪談やるって面白そうじゃん?」
∬8`^ヮ^)「それに、最近ファミ通組の三人で集まることってなかなか無かったからさ。
. ちょうど良い機会かなって思って考えてみたんだよね」
∬8`^ヮ^)「軽いノリで考えてたから、歩夢が失神するなんて思ってなかったけどね」
@cメ*;> _ <リ「もう!」
从||> ᴗ <||从「愛さんや歩夢さんの意外な一面が見れた。璃奈ちゃんボード『ぶいっ♪』」
∬8`^ヮ^)「さて、それじゃあ次はりなりーの番だね」
从||> ᴗ <||从「まかせて。やるからには頑張る。」
@cメ*;> _ <リ「あ、あんまり怖い話にはしないでね?」
∬8`^ヮ^)「おっ、りなりーもそう思う? 愛さん嬉しいなー」
@cメ*・ヮ・リ「それにしても、どうして怪談大会なんか企画したの?」
∬8`^ヮ^)「いやー、あえて冬に怪談やるって面白そうじゃん?」
∬8`^ヮ^)「それに、最近ファミ通組の三人で集まることってなかなか無かったからさ。
. ちょうど良い機会かなって思って考えてみたんだよね」
∬8`^ヮ^)「軽いノリで考えてたから、歩夢が失神するなんて思ってなかったけどね」
@cメ*;> _ <リ「もう!」
从||> ᴗ <||从「愛さんや歩夢さんの意外な一面が見れた。璃奈ちゃんボード『ぶいっ♪』」
∬8`^ヮ^)「さて、それじゃあ次はりなりーの番だね」
从||> ᴗ <||从「まかせて。やるからには頑張る。」
@cメ*;> _ <リ「あ、あんまり怖い話にはしないでね?」
5: 2020/01/05(日) 01:10:02.86 ID:tTQW94hT
【怪談:天王寺璃奈】
.
6: 2020/01/05(日) 01:10:06.01 ID:c4+A2iWb
(……スレタイは何が愛とかかってるの?『こわあい』?)
7: 2020/01/05(日) 01:11:57.33 ID:tTQW94hT
>>6
そうです 表記が分かり辛くてごめんなさい……
そうです 表記が分かり辛くてごめんなさい……
8: 2020/01/05(日) 01:14:17.23 ID:tTQW94hT
――この話は、私のとっておき。
といっても。そんなに怖い話じゃない、と思う。
でも、いつかは歩夢さんと、愛さんに。
ううん、同好会のみんなにも話そうと思ってた話だから。
ちょっぴりドキドキしてるけど、ちゃんと話すから安心して欲しい。
それじゃあ、始めるけど。その前に二人に一つ質問。
今、璃奈ちゃんボードを外しているけど。
二人とも、私の顔を見て、どう思う?
@cメ*・ヮ・リ「どうって……可愛い顔だと思うよ?」
∬8`^ヮ^)「二重で目がパッチリしてるしねー、すごく愛らしい感じ?」アイダケニ
……ありがとう。二人から言われると、なんだか照れちゃう。
といっても。そんなに怖い話じゃない、と思う。
でも、いつかは歩夢さんと、愛さんに。
ううん、同好会のみんなにも話そうと思ってた話だから。
ちょっぴりドキドキしてるけど、ちゃんと話すから安心して欲しい。
それじゃあ、始めるけど。その前に二人に一つ質問。
今、璃奈ちゃんボードを外しているけど。
二人とも、私の顔を見て、どう思う?
@cメ*・ヮ・リ「どうって……可愛い顔だと思うよ?」
∬8`^ヮ^)「二重で目がパッチリしてるしねー、すごく愛らしい感じ?」アイダケニ
……ありがとう。二人から言われると、なんだか照れちゃう。
11: 2020/01/05(日) 01:17:26.48 ID:tTQW94hT
――口裂け女みたいになっちゃったけど。話を続けようと思う。
正直な話、私も自分の顔は、きゅーとで綺麗な方だと思ってる。
だけど、それは自分に自信があるわけじゃなくて。
自分の顔が仮初の物だってわかっているから。
それから、もう一つ。謝らなきゃいけないことがあるの。
私が感情を出すのが苦手だっていうのは、二人とも知っているはず。
だから、愛さんのアイデアで璃奈ちゃんボードを使ってる。
誰にでも私の感情が、ちゃんと伝わるように。
でも、これってそういう『設定』なの。ごめんなさい。
表情は『出せない』わけじゃなくて。『出さない』ように努力してる。
何年も出してないから、ぎこちないかもしれないけれど。
困った顔も、驚いた顔もできるし、やろうと思えば笑顔にもできる。ただ、しないだけ。
正直な話、私も自分の顔は、きゅーとで綺麗な方だと思ってる。
だけど、それは自分に自信があるわけじゃなくて。
自分の顔が仮初の物だってわかっているから。
それから、もう一つ。謝らなきゃいけないことがあるの。
私が感情を出すのが苦手だっていうのは、二人とも知っているはず。
だから、愛さんのアイデアで璃奈ちゃんボードを使ってる。
誰にでも私の感情が、ちゃんと伝わるように。
でも、これってそういう『設定』なの。ごめんなさい。
表情は『出せない』わけじゃなくて。『出さない』ように努力してる。
何年も出してないから、ぎこちないかもしれないけれど。
困った顔も、驚いた顔もできるし、やろうと思えば笑顔にもできる。ただ、しないだけ。
12: 2020/01/05(日) 01:19:31.43 ID:tTQW94hT
∬8;`^ヮ^)「ちょ、ちょっと待ってりなりー!」
∬8;`^ヮ^)「だったら璃奈ちゃんボードって必要なくない?」
……そう言われると思った。だけど、どうしてもアイドルをやるには必要。
みんなの前で歌って踊って、笑顔になるには。
璃奈ちゃんボードを重ね掛けしないと、大変なことになっちゃう。
@cメ*・へ・リ「大変なこと?」
うん。それをこれから話そうと思う。
∬8;`^ヮ^)「だったら璃奈ちゃんボードって必要なくない?」
……そう言われると思った。だけど、どうしてもアイドルをやるには必要。
みんなの前で歌って踊って、笑顔になるには。
璃奈ちゃんボードを重ね掛けしないと、大変なことになっちゃう。
@cメ*・へ・リ「大変なこと?」
うん。それをこれから話そうと思う。
13: 2020/01/05(日) 01:21:29.56 ID:tTQW94hT
歩夢さんと愛さんも高等部からの入学生。
そして私は中等部から虹ヶ咲に入学。
だから、もっと昔。小学生の私のことは知らないはず。
あのね。私の小学生の頃のあだ名、なんだと思う?
それはね。「ハダカデバネズミ」。
略して「ハデミ」って呼ばれてた。
そして私は中等部から虹ヶ咲に入学。
だから、もっと昔。小学生の私のことは知らないはず。
あのね。私の小学生の頃のあだ名、なんだと思う?
それはね。「ハダカデバネズミ」。
略して「ハデミ」って呼ばれてた。
14: 2020/01/05(日) 01:24:01.34 ID:tTQW94hT
……二人とも、優しい。怒ってくれてありがとう。
けど、私は全然気にしてない。だって、もう過去のことだから。
今の私の顔からは想像できないかもしれないけど。
私は小柄だし、顔も小さい。それに当時は、顔の皮膚が余っていたみたいで。
笑うと、目尻や口周りや顎先、そういった所全部に皺が出たりしたの。
それだけじゃなくて。
ちょうどその頃、前歯が乳歯から永久歯に生え変わり終えるころで。
その横の歯が犬歯まで一斉に抜けちゃってた。
だから「ハダカデバネズミ」。
今の私でもすんなり受け入れるくらいには、そんな顔してた。
そのせいで、毎日からかわれた。
指をさされて笑われた。陰口を言われた。
黒板にハダカデバネズミの画像と私の写真を、一緒になって張り出された。
……そんな毎日だったから。
私は、色んな人を恨んでいたし。何より自分の顔が嫌いだった。
醜くて、皺くちゃの自分が、何より大嫌いだったの。
けど、私は全然気にしてない。だって、もう過去のことだから。
今の私の顔からは想像できないかもしれないけど。
私は小柄だし、顔も小さい。それに当時は、顔の皮膚が余っていたみたいで。
笑うと、目尻や口周りや顎先、そういった所全部に皺が出たりしたの。
それだけじゃなくて。
ちょうどその頃、前歯が乳歯から永久歯に生え変わり終えるころで。
その横の歯が犬歯まで一斉に抜けちゃってた。
だから「ハダカデバネズミ」。
今の私でもすんなり受け入れるくらいには、そんな顔してた。
そのせいで、毎日からかわれた。
指をさされて笑われた。陰口を言われた。
黒板にハダカデバネズミの画像と私の写真を、一緒になって張り出された。
……そんな毎日だったから。
私は、色んな人を恨んでいたし。何より自分の顔が嫌いだった。
醜くて、皺くちゃの自分が、何より大嫌いだったの。
16: 2020/01/05(日) 01:26:17.80 ID:tTQW94hT
――そして、そう。あれは3年生の秋の頃。
遠足で、近くの遊園地に行くことがあった。
班に分かれて行動するんだけど、当然私は余り物。
誰も「ハダカデバネズミ」を班に組み込みたくはないから、しょうがない。
でも、どこかの班に入らないといけないのが絶対の決まり。
時間の都合と、事なかれ主義。どっちもあったと思うけど。
それで、担任の先生はしぶしぶ、ある班に私を押し込んだ。
そんな感じだったから、班の計画決めの時には発言権なんかない。
私もそれを分かっているので何も喋らない。
くすくす笑い声が聞こえる中で、一つ嫌な想像をした。
例えば。私一人を置いてけぼりにして、皆で楽しんだり。
あるいは、戸惑う私を陰から眺めて、笑ったりするんじゃないかって。
遠足で、近くの遊園地に行くことがあった。
班に分かれて行動するんだけど、当然私は余り物。
誰も「ハダカデバネズミ」を班に組み込みたくはないから、しょうがない。
でも、どこかの班に入らないといけないのが絶対の決まり。
時間の都合と、事なかれ主義。どっちもあったと思うけど。
それで、担任の先生はしぶしぶ、ある班に私を押し込んだ。
そんな感じだったから、班の計画決めの時には発言権なんかない。
私もそれを分かっているので何も喋らない。
くすくす笑い声が聞こえる中で、一つ嫌な想像をした。
例えば。私一人を置いてけぼりにして、皆で楽しんだり。
あるいは、戸惑う私を陰から眺めて、笑ったりするんじゃないかって。
17: 2020/01/05(日) 01:27:36.36 ID:tTQW94hT
当日。その通りになった。
自由行動が始まって、生徒たちが思い思いのアトラクションに向かう中。
気付いたら他の班員はいなくて。ぽつりと私だけ取り残された。
先生も多分、ある程度の予想はしていたと思う。
だけど。
『どうしたの、璃奈ちゃん。ちゃんとついていかなかったの』
そうやって笑顔を浮かべながら、やんわりと注意を含んだ声をかけるだけ。
先生からすれば、散らばった他の班員を見つけて探すよりも。
その場にいる私を叱る方が楽だから。
自由行動が始まって、生徒たちが思い思いのアトラクションに向かう中。
気付いたら他の班員はいなくて。ぽつりと私だけ取り残された。
先生も多分、ある程度の予想はしていたと思う。
だけど。
『どうしたの、璃奈ちゃん。ちゃんとついていかなかったの』
そうやって笑顔を浮かべながら、やんわりと注意を含んだ声をかけるだけ。
先生からすれば、散らばった他の班員を見つけて探すよりも。
その場にいる私を叱る方が楽だから。
18: 2020/01/05(日) 01:29:20.25 ID:tTQW94hT
「大丈夫。集合時間まで、集合場所にいる」
そう言って、私も残る方を選択した。
今更班の子たちに追いついても、楽しい遠足は出来ないって、わかっていたから。
そのうち、担任の先生は見回りにいって。
残された私は、観覧車の見えるベンチで、集合時間までに何周回るのかを数えて過ごすつもりだった。
一周回って、二週回って、三週回って。
十周と少し、回ったくらい。熱中して周りが見えなくなり始めたころ。
『やぁ』
背後から。
突然、声をかけられたの。
そう言って、私も残る方を選択した。
今更班の子たちに追いついても、楽しい遠足は出来ないって、わかっていたから。
そのうち、担任の先生は見回りにいって。
残された私は、観覧車の見えるベンチで、集合時間までに何周回るのかを数えて過ごすつもりだった。
一周回って、二週回って、三週回って。
十周と少し、回ったくらい。熱中して周りが見えなくなり始めたころ。
『やぁ』
背後から。
突然、声をかけられたの。
20: 2020/01/05(日) 01:31:40.27 ID:tTQW94hT
びっくりした。
他の3年生の子でも、先生でもない、知らない人の声。
当時の私に話しかけてくる人がいるなんて、久しぶりのことだったから。
でも、何より驚いたのは、声をかけられた方を振り向いた後。
辺りを見回しても、誰もいなかった。
――本当に、誰もいなかったんだよ?
3年生全体で80人くらいだったかな。それと先生が何人か。
他のお客さん。遊園地のスタッフの人。大道芸人みたいなパフォーマーの人。
そういったものが、振り返った次の瞬間に、全部消えちゃった。
残ったのは、近くにあった船をひっくり返すようなアトラクションの、海賊をイメージしたようなBGMだけ。
他の3年生の子でも、先生でもない、知らない人の声。
当時の私に話しかけてくる人がいるなんて、久しぶりのことだったから。
でも、何より驚いたのは、声をかけられた方を振り向いた後。
辺りを見回しても、誰もいなかった。
――本当に、誰もいなかったんだよ?
3年生全体で80人くらいだったかな。それと先生が何人か。
他のお客さん。遊園地のスタッフの人。大道芸人みたいなパフォーマーの人。
そういったものが、振り返った次の瞬間に、全部消えちゃった。
残ったのは、近くにあった船をひっくり返すようなアトラクションの、海賊をイメージしたようなBGMだけ。
21: 2020/01/05(日) 01:34:33.19 ID:tTQW94hT
もう一度視線を回すと――今度は、視界の端で何かが動くのが見えた。
遠くの、メリーゴーランドの裏側。
赤や青、緑の粒の塊が、にょきっと顔を出すのが見えたの。
m&m'sのチョコレートって言えば、分かる?
あんな感じの色とりどりが、ふんわりと宙に浮かんでいて。
それが束になった風船だと気付くのに時間はかからなかった。
それから、それを手に持った「何か」のことも。
『やぁ』
その「何か」はもう一度、さっきと全く同じ音程と抑揚でそう言った。
私の目の前まで迫ってきた「何か」は――
――茶色の、着ぐるみ。
確か。ううん、間違いない。そこの遊園地のマスコットだった。
遠くの、メリーゴーランドの裏側。
赤や青、緑の粒の塊が、にょきっと顔を出すのが見えたの。
m&m'sのチョコレートって言えば、分かる?
あんな感じの色とりどりが、ふんわりと宙に浮かんでいて。
それが束になった風船だと気付くのに時間はかからなかった。
それから、それを手に持った「何か」のことも。
『やぁ』
その「何か」はもう一度、さっきと全く同じ音程と抑揚でそう言った。
私の目の前まで迫ってきた「何か」は――
――茶色の、着ぐるみ。
確か。ううん、間違いない。そこの遊園地のマスコットだった。
22: 2020/01/05(日) 01:37:19.69 ID:tTQW94hT
茶色をベースにした、でっぷり太った体に、白いもじゃもじゃのひげ。
口元からは二本の牙が生えていたから、セイウチか何かをモチーフにしてあったと思う。
胸には名札がついていたけど、真っ黒に塗りつぶされていて。
そのせいで、私も名前までは思い出せない。ごめんなさい。
だけど、そのマスコットは本来は喋らないはずだった。
身振り手振りだけで会話する、普通の着ぐるみと変わらないキャラクター。
それが今、私の目の前で。
くぐもっていたけど、女の人のような、ボーイソプラノのような。
身体に似つかわしくない声で、私に喋りかけている。
『やぁ』
マスコットは、丸い大きな黒目をこちらに向けて、三度目の挨拶。
不思議と恐怖は無かった。
あったのは、自分の喉に対する焦り。
今までそんなことなかったのに、突然声が上手く出せなくなった。
声を出そうとしても、出てくるのは空気と、掠れた小さな音だけ。
まるで、自分じゃない力で、喉が押さえつけられているみたいに。
口元からは二本の牙が生えていたから、セイウチか何かをモチーフにしてあったと思う。
胸には名札がついていたけど、真っ黒に塗りつぶされていて。
そのせいで、私も名前までは思い出せない。ごめんなさい。
だけど、そのマスコットは本来は喋らないはずだった。
身振り手振りだけで会話する、普通の着ぐるみと変わらないキャラクター。
それが今、私の目の前で。
くぐもっていたけど、女の人のような、ボーイソプラノのような。
身体に似つかわしくない声で、私に喋りかけている。
『やぁ』
マスコットは、丸い大きな黒目をこちらに向けて、三度目の挨拶。
不思議と恐怖は無かった。
あったのは、自分の喉に対する焦り。
今までそんなことなかったのに、突然声が上手く出せなくなった。
声を出そうとしても、出てくるのは空気と、掠れた小さな音だけ。
まるで、自分じゃない力で、喉が押さえつけられているみたいに。
23: 2020/01/05(日) 01:40:14.79 ID:tTQW94hT
『あ、返事は大丈夫。首を縦はイエス、横はノー。オッケーかな?』
そういってマスコットは、右手の人差し指と親指で丸を作った。
もっとも指が太すぎて、綺麗な丸が作れていなかったけど。
『君は迷子かな?』
首を横に振った。
私のいるこの場所は、スタートでもあるし、ゴールでもある。
そこから一歩も動いてないから、迷子なわけではない。
『お友達とはぐれたのかい?』
これも横。
あの子たちは友達じゃなかったから、はぐれたわけじゃない。
『じゃあ――』
顎に手を当て数秒黙った後、やけにオーバーに拳を掌に打ち付けると、
そのマスコットは上機嫌にこう言った。
『君は「独り」なんだねっ!』
そこで私は初めて首を縦に振った。
26: 2020/01/05(日) 01:44:20.22 ID:tTQW94hT
そういえば、前に、ネットで調べたことがあった。
「ハダカデバネズミ」って、女王を中心としたコロニーを形成する、蟻の様な習性をもった哺乳類。
だから、独りでは生きていくことなんてできない。
私は、独りの「ハダカデバネズミ」。
生きることも拒絶されて、醜い顔面を引っ提げて、のうのうと、こんなところまで来ちゃった。それが私。
そんな私に向かって、マスコットは『ヨーソロー!』と叫ぶと、持っていた風船を全て空に放った。
今にも雨が降り出しそうな曇天に、カラフルが吸い込まれてやがて消えていく。
その最後の一つが消えるか消えないかのところで、マスコットは私の手を掴んで走り出した。
マスコットの足元からは、歩くたびに、幼児用サンダルの様なぴよぴよが聞こえてきて、思わず私は笑顔になった。
「ハダカデバネズミ」って、女王を中心としたコロニーを形成する、蟻の様な習性をもった哺乳類。
だから、独りでは生きていくことなんてできない。
私は、独りの「ハダカデバネズミ」。
生きることも拒絶されて、醜い顔面を引っ提げて、のうのうと、こんなところまで来ちゃった。それが私。
そんな私に向かって、マスコットは『ヨーソロー!』と叫ぶと、持っていた風船を全て空に放った。
今にも雨が降り出しそうな曇天に、カラフルが吸い込まれてやがて消えていく。
その最後の一つが消えるか消えないかのところで、マスコットは私の手を掴んで走り出した。
マスコットの足元からは、歩くたびに、幼児用サンダルの様なぴよぴよが聞こえてきて、思わず私は笑顔になった。
27: 2020/01/05(日) 01:49:01.92 ID:tTQW94hT
『わあ! Pretty bomb a head! ってね!』
笑顔を見て、マスコットはそう言ってくれた。
もちろん当時の私にはその英語の意味は分からなかったけど
私の醜形を前向きに捉えてくれている事だけは理解できた。
私たちはいくつものアトラクションに乗った。
メリーゴーラウンドのユニコーンに跨るワタシを、柵の外からマスコットが見ていて。
私たちは互いが見えるたびに千切れるほど腕を振った。
コーヒーカップは、ハンドルを回し過ぎたせいで、マスコットがカップの外に放り出されちゃった。
だけど、くるくる三回とちょっと回って綺麗に着地してから、『ナイス着地であります!』とおどけてくれた。
本当は身長制限があって乗れないはずのジェットコースターにも特別に乗せてくれた。
それが嬉しくって、結局何回も乗っちゃった。
激しいジェットコースターでマスコットの頭もとれちゃいそうだったけど、
必死に抑える姿が何だかおかしくて、楽しかった。
本当に楽しかった。
死んでもいいと思った。
もう、私の人生で、これ以上楽しい事なんて何も起きないって思った。
笑顔を見て、マスコットはそう言ってくれた。
もちろん当時の私にはその英語の意味は分からなかったけど
私の醜形を前向きに捉えてくれている事だけは理解できた。
私たちはいくつものアトラクションに乗った。
メリーゴーラウンドのユニコーンに跨るワタシを、柵の外からマスコットが見ていて。
私たちは互いが見えるたびに千切れるほど腕を振った。
コーヒーカップは、ハンドルを回し過ぎたせいで、マスコットがカップの外に放り出されちゃった。
だけど、くるくる三回とちょっと回って綺麗に着地してから、『ナイス着地であります!』とおどけてくれた。
本当は身長制限があって乗れないはずのジェットコースターにも特別に乗せてくれた。
それが嬉しくって、結局何回も乗っちゃった。
激しいジェットコースターでマスコットの頭もとれちゃいそうだったけど、
必死に抑える姿が何だかおかしくて、楽しかった。
本当に楽しかった。
死んでもいいと思った。
もう、私の人生で、これ以上楽しい事なんて何も起きないって思った。
29: 2020/01/05(日) 01:52:15.23 ID:tTQW94hT
――最後に、マスコットが私を連れて行ったのは。
人気アトラクションの陰にひっそりと建っていたミラーハウスだった。
私は、入るのを拒んだ。
ここまでかかっていた「幸せの魔法」が、一気に解ける気がしちゃうから。
自分に刻まれた皺の一本一本が、ひしひしと現実を突きつける。
このマスコットだって、現実逃避の末に私が生み出した「イマジナリィフレンド」かもしれない。
その時の私は、現実の不幸よりも、妄想の中の幸福を強く望んでいた。
お願いだから、そこには入りたくないの。
喋れない代わりに、首が取れるんじゃないかって思うくらい、強く横に振った。
それでもマスコットは優しく、背中を押してきて。
最終的に私は根負けしてしまった。
彼(彼女?)を信じたいという気持ちもどこかにあったのかもしれない。
人気アトラクションの陰にひっそりと建っていたミラーハウスだった。
私は、入るのを拒んだ。
ここまでかかっていた「幸せの魔法」が、一気に解ける気がしちゃうから。
自分に刻まれた皺の一本一本が、ひしひしと現実を突きつける。
このマスコットだって、現実逃避の末に私が生み出した「イマジナリィフレンド」かもしれない。
その時の私は、現実の不幸よりも、妄想の中の幸福を強く望んでいた。
お願いだから、そこには入りたくないの。
喋れない代わりに、首が取れるんじゃないかって思うくらい、強く横に振った。
それでもマスコットは優しく、背中を押してきて。
最終的に私は根負けしてしまった。
彼(彼女?)を信じたいという気持ちもどこかにあったのかもしれない。
30: 2020/01/05(日) 01:54:36.68 ID:tTQW94hT
ミラーハウスの中は、外とは比べ物にならないほどひんやりしていて。
秋と言えど残暑という言葉がぴったりな、皮膚に張り付くような湿気は無い。
無音と、無数の鏡だけがそこにあった。
私は、薄くだけ目を開き、なるべく自身の鏡像が視界に入らない様に心がけた。
でも、マスコットは言う。
『目を開けて、璃奈ちゃん』
マスコットは喋れないはずの私の名前を知っていた。
それに驚いたせいか、思わず目を開いてしまった。
――私を取り巻くすべてに、私が映っていた。
.
秋と言えど残暑という言葉がぴったりな、皮膚に張り付くような湿気は無い。
無音と、無数の鏡だけがそこにあった。
私は、薄くだけ目を開き、なるべく自身の鏡像が視界に入らない様に心がけた。
でも、マスコットは言う。
『目を開けて、璃奈ちゃん』
マスコットは喋れないはずの私の名前を知っていた。
それに驚いたせいか、思わず目を開いてしまった。
――私を取り巻くすべてに、私が映っていた。
.
31: 2020/01/05(日) 01:56:37.81 ID:tTQW94hT
でも。映っていた「私」は、私であって、私ではなかった。
その一枚一枚が、微妙に現実の私と違っている。
目元だったり、口元だったり、鼻筋だったり、おでこの広さだったり。
今いる私の場所から遠い場所の鏡ほど、現実の私からかけ離れていく。
一番端の、奥の、暗い、隅の、鏡に映った私は、美しかった。
もう、私であるべきパーツなんて一つもない。
それでも、あれは私だと、浅ましくもそう思った。
マスコットは、いつの間にか持っていた小振りなハンマーを私に握らせた。
『最後の鏡に映った君が、本当の君になるんだよ』
そう言い終わるか終わらないかの内に、私はめちゃめちゃにハンマーを振り回した。
その一枚一枚が、微妙に現実の私と違っている。
目元だったり、口元だったり、鼻筋だったり、おでこの広さだったり。
今いる私の場所から遠い場所の鏡ほど、現実の私からかけ離れていく。
一番端の、奥の、暗い、隅の、鏡に映った私は、美しかった。
もう、私であるべきパーツなんて一つもない。
それでも、あれは私だと、浅ましくもそう思った。
マスコットは、いつの間にか持っていた小振りなハンマーを私に握らせた。
『最後の鏡に映った君が、本当の君になるんだよ』
そう言い終わるか終わらないかの内に、私はめちゃめちゃにハンマーを振り回した。
32: 2020/01/05(日) 01:58:06.59 ID:tTQW94hT
目がぱっちりした私の鼻が砕けて、弾け飛ぶ。
鼻筋の通った私が、目玉を飛び出させて、砕け散る。
愛らしい口元の私が、頭蓋をカチ割られて、崩れ去る。
もう、私は、誰を、何を、どこを、ぶち壊しているのか分からなくなっていた。
何十、何百、何千の私を〇した。
辺り一面が、私のパーツの海に溺れた。
歩くたびに、私の部品が、パリパリと音を立てた。
私は、予備の部品の、あまりの、鉄くずの部分なのに、
じゃあ、この足元に散らばる幾千の"私"はなんなのだろう。
もう頭が狂いそうだった。
いや、もう狂っていた。
ただ、醜悪な自分を〇すことだけに、喜びを見出していた。
鼻筋の通った私が、目玉を飛び出させて、砕け散る。
愛らしい口元の私が、頭蓋をカチ割られて、崩れ去る。
もう、私は、誰を、何を、どこを、ぶち壊しているのか分からなくなっていた。
何十、何百、何千の私を〇した。
辺り一面が、私のパーツの海に溺れた。
歩くたびに、私の部品が、パリパリと音を立てた。
私は、予備の部品の、あまりの、鉄くずの部分なのに、
じゃあ、この足元に散らばる幾千の"私"はなんなのだろう。
もう頭が狂いそうだった。
いや、もう狂っていた。
ただ、醜悪な自分を〇すことだけに、喜びを見出していた。
33: 2020/01/05(日) 02:00:13.89 ID:tTQW94hT
――パンパンッ!
マスコットが手を叩いて、私を止めた。
気が付けば、もう残り2枚の鏡しか残っていなかった。
最初に自分が映った、醜くグロテスクな鏡。
最後に自分が見た、美しく、麗しい鏡。
マスコットは言う。
『この鏡は、どこかの宇宙、どこかの世界の君なんだ』
『この鏡に映るのは、君と同じように悩み、嘆き、それでもなお生きようとした、どこかの誰か』
『君はそんな大勢の「他人の自分」を〇したんだよ』
『さぁ、最後の選択だ。君は、誰を〇して誰になるんだい?』
――マスコットの真っ黒な眼が、大きく見開かれていた。
大きさなんて変わらないはずなのに、めいっぱいに広がったその瞳を、鏡の中の私に向けていた。
爪なんか無いはずの茶色の手が、ぎりりと、万力の様に私の肩に食い込んでく。
逃がさないよ。
無言の圧力で、マスコットはそう言っていた。
無数の私の屍の上で、私は、何者になるかを選択しなければならなかった。
マスコットが手を叩いて、私を止めた。
気が付けば、もう残り2枚の鏡しか残っていなかった。
最初に自分が映った、醜くグロテスクな鏡。
最後に自分が見た、美しく、麗しい鏡。
マスコットは言う。
『この鏡は、どこかの宇宙、どこかの世界の君なんだ』
『この鏡に映るのは、君と同じように悩み、嘆き、それでもなお生きようとした、どこかの誰か』
『君はそんな大勢の「他人の自分」を〇したんだよ』
『さぁ、最後の選択だ。君は、誰を〇して誰になるんだい?』
――マスコットの真っ黒な眼が、大きく見開かれていた。
大きさなんて変わらないはずなのに、めいっぱいに広がったその瞳を、鏡の中の私に向けていた。
爪なんか無いはずの茶色の手が、ぎりりと、万力の様に私の肩に食い込んでく。
逃がさないよ。
無言の圧力で、マスコットはそう言っていた。
無数の私の屍の上で、私は、何者になるかを選択しなければならなかった。
35: 2020/01/05(日) 02:02:18.66 ID:tTQW94hT
答えはとうに決まっているはずだった。
醜い私が死ぬのが正解に決まっていた。
でも、振り続けた腕がダルくて、
熱を持っていて、
重くて、 痛くて、
仕方がなくて、
どうしようもなくて、
だから、振り上げられなくて、
決して死ぬのが怖いんじゃなくて、
〇したことに後悔なんてなくて、
今更友達がほしくなんてなくて、 呪った人たちに謝りたくなんてなくて、
お父さんお母さんにごめんなさいなんて言いたくなくて
泣きたくなくて、
逃げたくなくて、
喚きたくなくて、
しゃがみ込みたくなくて――
――もうどうにでもなれって、ハンマーを、醜い私が映る、鏡に向かって振り上げて。
「鏡像のハダカデバネズミ」を完全に消すため、頭上に掲げたハンマーを振り下ろした。
醜い私が死ぬのが正解に決まっていた。
でも、振り続けた腕がダルくて、
熱を持っていて、
重くて、 痛くて、
仕方がなくて、
どうしようもなくて、
だから、振り上げられなくて、
決して死ぬのが怖いんじゃなくて、
〇したことに後悔なんてなくて、
今更友達がほしくなんてなくて、 呪った人たちに謝りたくなんてなくて、
お父さんお母さんにごめんなさいなんて言いたくなくて
泣きたくなくて、
逃げたくなくて、
喚きたくなくて、
しゃがみ込みたくなくて――
――もうどうにでもなれって、ハンマーを、醜い私が映る、鏡に向かって振り上げて。
「鏡像のハダカデバネズミ」を完全に消すため、頭上に掲げたハンマーを振り下ろした。
36: 2020/01/05(日) 02:03:29.62 ID:tTQW94hT
沢山の鈴が鳴るような、金属のたわんだ唸り声が響いた。
――鏡には、ヒビが入っただけで、割れていなかった。
鏡に映るワタシは、泣き顔で、いつも以上にぐしゃぐしゃで、それでも、安堵の中で、歪な笑顔を浮かべていた。
ヒビのせいで、福笑いのパーツみたいに目も鼻も口も、本来の位置には無かったけど、それは少しだけ自分が好きになれるような笑い顔だった。
マスコットは軽く頷いた後、ヒビが無い方の遠くの鏡を指差して、
『いつか君もあの子の様になれる』
と言ってくれた。
私はそれが嬉しくて、同時に悲しくて、マスコットの胸に噛り付くように泣き伏せた。
『ただ、行為には責任が、責任には代償が伴うんだよ』
――鏡には、ヒビが入っただけで、割れていなかった。
鏡に映るワタシは、泣き顔で、いつも以上にぐしゃぐしゃで、それでも、安堵の中で、歪な笑顔を浮かべていた。
ヒビのせいで、福笑いのパーツみたいに目も鼻も口も、本来の位置には無かったけど、それは少しだけ自分が好きになれるような笑い顔だった。
マスコットは軽く頷いた後、ヒビが無い方の遠くの鏡を指差して、
『いつか君もあの子の様になれる』
と言ってくれた。
私はそれが嬉しくて、同時に悲しくて、マスコットの胸に噛り付くように泣き伏せた。
『ただ、行為には責任が、責任には代償が伴うんだよ』
37: 2020/01/05(日) 02:04:13.28 ID:tTQW94hT
――ミラーハウスを出ると、既にそこは元の世界に戻っていた。
走り回る子供、それを追う先生、風船を配るマスコット。
やがて、私に気付いた先生が、私の班の生徒を引き連れて、やってきた。
『ちょっと、璃奈ちゃん、どこ行ってたのっ!?』
いつもこちらに向けるような、昼行燈で曖昧な笑顔ではない。
あまりの剣幕だったので、私は思わず笑ってしまった。
瞬間、生徒たちが悲鳴を上げた。
先生も泡を吹いて失神した。
一番気の強い子が、私を指差しながら、上ずった声でこう言った。
『お前っ、顔っ、化けものっ!!!』
そう言いながら、泣きじゃくる隣の子のポーチから手鏡を取り出すと、私に投げてよこした。
その鏡に映る自分を見て、私は気付いてしまった。
――なるほど、これが代償なのだ、と。
走り回る子供、それを追う先生、風船を配るマスコット。
やがて、私に気付いた先生が、私の班の生徒を引き連れて、やってきた。
『ちょっと、璃奈ちゃん、どこ行ってたのっ!?』
いつもこちらに向けるような、昼行燈で曖昧な笑顔ではない。
あまりの剣幕だったので、私は思わず笑ってしまった。
瞬間、生徒たちが悲鳴を上げた。
先生も泡を吹いて失神した。
一番気の強い子が、私を指差しながら、上ずった声でこう言った。
『お前っ、顔っ、化けものっ!!!』
そう言いながら、泣きじゃくる隣の子のポーチから手鏡を取り出すと、私に投げてよこした。
その鏡に映る自分を見て、私は気付いてしまった。
――なるほど、これが代償なのだ、と。
38: 2020/01/05(日) 02:05:05.40 ID:tTQW94hT
……ふぅ。これが、私が素顔を、そして笑顔を。
二つのどちらも出せない理由。
∬8;`-_ -)「……」
∬8;`^ヮ^)「……いやー、りなりーって怖い話上手いねー!」
∬8;`^ヮ^)「びっくりして、ひっくり返っちゃいそうだったよ!思わず!」
……ううん。作り話なんかじゃない。全部ぜんぶ、本当のこと。
@cメ*・へ・リ「ねえ、璃奈ちゃん」
@cメ*・へ・リ「代償って、どういうこと?」
歩夢さんも、愛さんも。私の笑った顔って、見たことある?
∬8`^ヮ^)「もー、りなりーは最近よく微笑んだりしてるじゃん!
表情も柔らかくなったしさ!」
違う。もっとちゃんとした、にっこり笑顔。
@cメ*・へ・リ「それは……確かに見たことないかも」
だったら、丁度いい機会。二人とも、ちょっと並んでくれる?
二つのどちらも出せない理由。
∬8;`-_ -)「……」
∬8;`^ヮ^)「……いやー、りなりーって怖い話上手いねー!」
∬8;`^ヮ^)「びっくりして、ひっくり返っちゃいそうだったよ!思わず!」
……ううん。作り話なんかじゃない。全部ぜんぶ、本当のこと。
@cメ*・へ・リ「ねえ、璃奈ちゃん」
@cメ*・へ・リ「代償って、どういうこと?」
歩夢さんも、愛さんも。私の笑った顔って、見たことある?
∬8`^ヮ^)「もー、りなりーは最近よく微笑んだりしてるじゃん!
表情も柔らかくなったしさ!」
違う。もっとちゃんとした、にっこり笑顔。
@cメ*・へ・リ「それは……確かに見たことないかも」
だったら、丁度いい機会。二人とも、ちょっと並んでくれる?
40: 2020/01/05(日) 02:06:06.73 ID:tTQW94hT
@cメ*・ヮ・リ ∬8`^ヮ^) 「こう?」 ( 川川从
@cメ*・ヮ・リ ∬8`^ヮ^) ( 川川从「うん、そこでいい」
@cメ*・ヮ・リ ∬8`^ヮ^) ( 川川从「じゃあ、いくね」
@cメ*・ヮ・リ ∬8`^ヮ^) 「……」 ( 川川从
@cメ*;゚ヮ゚リ ∬8;`゚ヮ゚) ( 川川从 ニッ
@cメ*;゚м゚リ ∬8;゚×゚) ( 川川从 ニィィ……
@cメ*;゚м゚リ ∬8;゚×゚) 「……」 ( 川川从
.
41: 2020/01/05(日) 02:07:04.46 ID:tTQW94hT
ね?
.
42: 2020/01/05(日) 02:07:31.91 ID:tTQW94hT
【怪談:天王寺璃奈】終
47: 2020/01/05(日) 03:27:42.65 ID:Hq82dua/
笑うとミラーハウスの中で壊しまくった平行世界の自分の顔の醜いパーツを寄せ集めた顔になってしまい、それが今の美少女顔になれた代償って事かな
70: 2020/01/05(日) 23:36:12.69 ID:gO53vpG0
いいホラーSSだった、おつ
>>47
福笑いのパーツみたいってのはそういう意味か
>>47
福笑いのパーツみたいってのはそういう意味か
71: 2020/01/05(日) 23:41:31.98 ID:gJdgFKSi
乙
冬といえば怪談SS いい感じに怖かった
冬といえば怪談SS いい感じに怖かった
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1578153813/