【SS】千歌「今からいくよー」曜「……」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2016/09/09(金) 23:05:45.93 ID:6IsKijDF.net
曜「……」

千歌「えへ」

曜「……」エート

千歌「きちゃった♡」

4: 2016/09/09(金) 23:07:04.60 ID:6IsKijDF.net
曜「ち」

千歌「ち?」

曜「ち、ちちち、千歌ちゃん!!?なんで私の家の前に」

千歌「えー?ちゃんとメールで連絡したじゃん」

曜「へ……?メールっていつの……」

千歌「さっきだよー」

曜「さっきって」パッ

5: 2016/09/09(金) 23:08:12.21 ID:6IsKijDF.net
――――――――――――――
From:千歌ちゃん♡

件名:夏!

本文:
今日も暑いねー!もう溶けちゃいそうだし喉もからからなのだ!
かき氷かアイス食べようと思って冷凍庫開けたら二種類あったんだけど
ラムネ味とサイダー味ってどう違うのかな?曜ちゃん知ってる?
いい感じにすっぱいのがラムネであっさりしてるのがサイダーってイメージ!
クレープアイスっていうのもあったけどかえって喉が乾きそう…
よーちゃんはどのアイスが好き?
――――――――――――――


曜「……これしか来てないよ?」

千歌「それそれ!ってか曜ちゃんもちゃんと返信してくれたでしょ?」

曜「返信って」スッスッ

7: 2016/09/09(金) 23:10:10.54 ID:6IsKijDF.net
――――――――――――――
To:千歌ちゃん♡

件名:Re:夏!

本文:
まぁラムネってレモネードが元らしいからね♪サイダーはりんご風味♡
って言っても、今やほとんど違いはないらしいけど…
ティラミス味なら食べたことあるけどクレープ味は想像つかないなー
ルビィちゃんが貸してくれたアイドル雑誌のスイーツ特集にあったかも?
わたしはそうだなー、やっぱりラムネかな!やっぱり柑橘系だよね!
――――――――――――――


曜「これしかないよ……?」

千歌「ほらちゃんと返信してるじゃん!」

曜「へ?」

9: 2016/09/09(金) 23:11:55.91 ID:6IsKijDF.net
千歌「『今からいくよ』って書いたら『まってるわ』って返してくれたでしょ?」

曜「……」

曜「……あっ」

曜「ああぁーーっ、そういう……」

千歌「あれ?本当に気付いてなかったの?」

曜「こんなの気付くわけないよ!」

千歌「でもちゃんと返信……」

曜「偶然だよ!」

千歌「……」シュン

10: 2016/09/09(金) 23:12:21.41 ID:6IsKijDF.net
曜「あ……で、でも縦読みになってるなんてすごいなー!さすが千歌ちゃんだ!」アセアセ

千歌「……!」パァァ

曜「普通は絶対思いつかないよー。冴えてるよ千歌ちゃん!」ウンウン

千歌「そ、そうかな?えへへ」

曜(かわいい)

11: 2016/09/09(金) 23:12:50.57 ID:6IsKijDF.net
千歌「でも曜ちゃんの方がすごいよ。まったく意識せずにちゃんと返信できちゃうんだもん」

曜「いや、それはただの」

千歌「偶然?ううん、奇跡だよ!」

曜「そんな大げさな」ハハ

千歌「でもそんな奇跡が曜ちゃんとの間で起きたって思うと」

千歌「なんか嬉しいな……♡」エヘ

曜「!!////」

曜「わ、わたしもうれし」

千歌「さて!それじゃおじゃましまー」ガチャ

曜「ま、ままま待って!!!!」

12: 2016/09/09(金) 23:14:04.59 ID:6IsKijDF.net
千歌「?どうしたの?」

曜「上がっちゃだめだよ!」

千歌「なんで?」

曜「う、それはほら、急だったから何の用意もできてないし」

千歌「用意?」

曜「何のおかまいもできないから、ね?」

千歌「えーでも曜ちゃんはいつも気が付くとうちにいるし、千歌も何のおかまいもしてないよ?」

曜「うっ」

千歌「旅館の手伝いをして部屋に戻ってきたら曜ちゃんがいるってこともよくあるし」

曜「ううっ」

14: 2016/09/09(金) 23:14:58.03 ID:6IsKijDF.net
千歌「いつの間にか曜ちゃん専用の食器まであるし」

曜「そ、それはまぁ」タシカニ…

千歌「でもそういう気兼ねのない関係が本当の家族みたいで嬉しかったんだけど」

千歌「私だけだったのかな……」シュン

曜「そんなことないよ!」

曜「私だって千歌ちゃんの家でお昼寝したりご飯食べたりお風呂に入ったりして……」

曜「ふとした瞬間に、高海家に溶け込めてるってことに気付いて嬉しくなってるもん!」

千歌「……それじゃ私も渡辺家に溶け込める?」

曜「もちろんだよ!千歌ちゃんが来たらパパやママだって喜ぶし!」

千歌「……ほんとに?」

15: 2016/09/09(金) 23:15:58.38 ID:6IsKijDF.net
曜「ほんとだよ!前に千歌ちゃんが泊まりにきた後なんて、次はいつ来るんだーってうるさかったくらい!」

千歌「そうなの?」

曜「そうそう!あの子はいいお嫁さんになるとか娘にしたいとか……その……」


曜「……もう一人娘がほしいから千歌ちゃんと結婚しなさいとか////」ボソッ


千歌「え?ごめん最後の方小さくて聞こえなかった」

曜「なんでもないよ!////」

千歌「?でもそっかー、そんな風に思ってもらえてたならよかったぁ」

曜「二人とも昔から千歌ちゃんのこと大好きだよ」クス

曜(……さすが私の遺伝元というか)

千歌「えへへ……」

19: 2016/09/09(金) 23:16:38.06 ID:6IsKijDF.net
千歌「それじゃ改めておじゃましまー」

曜「!?待って待って!!!」

曜母「ちょっと曜ー?さっきから何さわいで……あら?」

曜母「あらあらまぁまぁ!千歌ちゃんじゃない!」パァッ

曜「げっ、ママ……」

千歌「お久しぶりです!」

曜母「また泊まりにきてくれたの?おばさん嬉しいわぁ」ウフフ

曜「泊まり!?」

27: 2016/09/09(金) 23:17:33.16 ID:6IsKijDF.net
千歌「えへへ、今日は渡辺千歌になりにきました!」

曜「!?ちょ、千歌ちゃん!」

曜母「曜……あなた……」

曜「いや違うのママこれは」

曜母「やるじゃない!パパなんてもっと時間かかったわよ!ヘタレが似なくてよかったわぁ」キラキラ

曜「だから違うんだってば!」

千歌「?」

曜母「でもそうね、挙式は高校を卒業してからの方がいいわよ?校則とか色々と世間の障壁が」

曜「聞いてよ!」

曜母「でもそれでもっていうなら、分かったわ!ママ応援する!パパもきっと二つ返事でオーケーしてくれるわ!」グイッ

曜「だめだこの母なんとかしないと……ってちょ、ちょっと千歌ちゃん!」

千歌「え?」

曜「まだ上がっちゃだめだって!」

35: 2016/09/09(金) 23:18:44.48 ID:6IsKijDF.net
千歌「え……でもおばさんが」グイグイ

曜「ママ!千歌ちゃんのこと引っ張らないで!」

曜母「いいじゃない、あなたいつも十千万さんのところでくつろいでるんでしょ?毎朝毎夕」

曜「ぐっ、なぜそれを」

曜母「“渡辺 - 高海ネットワーク” 舐めんなー」

曜「なにそれ初めてきいた」

曜母「それにあなたがいつもお世話になってるのに千歌ちゃんを家に上げないのは不公平ってもんでしょ」

曜「ぐぅ……」

千歌「曜ちゃん……もしかして千歌のこと迷惑?」シュン

曜「や、違っ、色々と準備ができてなくて」アセアセ

曜「その、家はまずいっていうか……」

曜母「家はまずい……ハッ!……まさかあなた千歌ちゃんと“愛の休憩所”でしかできないことをしようとしてるのね?」

曜「してないよ!」

千歌「愛の休憩所?」

曜母「大人の遊園地みたいなものよ」ウフフ

曜「話をややこしくしないで!」

43: 2016/09/09(金) 23:19:55.13 ID:6IsKijDF.net
曜(今千歌ちゃんに上がられたら部屋のアレが見られちゃう!)

曜母「……」

曜母「しかたないわねぇ。千歌ちゃん、今からハンバーグ作ろうと思ってたんだけどちょっと手伝ってくれないかしら?」

千歌「え、でも千歌は料理とかあまり……」

曜母「大丈夫大丈夫。ひき肉のつなぎにするパンをちぎってもらうだけだから簡単よ♪」

千歌「うーん……それなら私にもできるかなぁ」

曜母「できるできる♪ ……それに曜は少し忙しいみたいだから」チラッ

曜「!」

52: 2016/09/09(金) 23:21:44.82 ID:6IsKijDF.net
曜母「何分くらいかかるかしら?」

曜「……20分くらい!」

曜母「オーキードーキー♪」

曜「ありがと!千歌ちゃんちょっとだけ待ってて!」バタバタ

千歌「あ、うん!」

千歌「……」

千歌「……なんか曜ちゃん、様子がおかしいなぁ」

曜母「そうねぇ」フフ

千歌「あ、今のはね?曜ちゃんの曜と様子の様をかけてて……」エヘヘ

曜母(相変わらずかわいいわぁ……)





56: 2016/09/09(金) 23:22:17.39 ID:6IsKijDF.net






~曜部屋~


曜「早く早く早く!千歌ちゃんが来る前に急いであれを隠さないと!」

曜「千歌ちゃんグッズと、千歌ちゃんに着せたいものリストと」テキパキ

曜「これはこっちで、これは床下収納、これは……うーん」テキパキ

曜「これは押入れの天井!」

曜「……」セッセッ

曜「ふう……」

62: 2016/09/09(金) 23:26:34.82 ID:6IsKijDF.net
NGワードに引っかかる……SS速報に行った方がいいかな?

69: 2016/09/09(金) 23:39:17.11 ID:6IsKijDF.net
曜「あとはこのコルクボードの写真!」

曜「……」ウーム

曜(さすがにこれは引くよね、我ながらドン引きだよ)ウン

曜(でも全部私の宝物だから……)

no title


曜(この走ってる千歌ちゃんの後ろ姿はたしか……)


口り曜『ちかちゃんまってよー!』

口り千歌『よーちゃんはやくはやくー!お日さまがしずんじゃう!』

口り曜『はぁはぁ、みせたいものってなにー?』

口り千歌『はぁっはぁっ、いいものだよー!』

口り曜『だからいいものってなにー!?』ゼェゼェ

口り千歌『よーちゃんのすきなものだよー!』ゼェゼェ

口り曜『んーと、すきなものすきなものー……チカちゃん!』ゼーゼー

口り千歌『チカはものじゃないよー!』ゼーハー


曜(今でも鮮明に覚えてる……あの時、夕暮れの中で見た背中だ)

曜(思えばあの時すでに千歌ちゃんのこと好きだったんだな……)

曜「ってか、さり気に告白とかしちゃってるよ私////」

曜(たしか後ろからママが写真撮ってたんだっけ)

曜「娘を撮らずに他所の娘だけ撮るってどういうこと!?」

曜「……」

曜(……まぁナイスジョブだけど)

74: 2016/09/09(金) 23:43:07.84 ID:6IsKijDF.net
>>71
改行を三つ以上するとダメっぽいっす

72: 2016/09/09(金) 23:42:29.44 ID:6IsKijDF.net
曜(でも急いでたのに途中の砂浜で……)ペラッ
no title



口り千歌『ぜぇぜぇ……あっ!よーちゃんみてみて!』ピタッ

口り曜『はぁはぁ……な、なに?』ピタリ

口り千歌『ほら、したみて!』

口り曜『え……わぁ!おおきなかげだねぇ!』

口り千歌『ふたりともおとなになったみたいだねー』

口り曜『おとなになったらなにするの?』

口り千歌『うーん……みかんをつくるひと? みかんたべほうだいだよ!』

口り曜『えー!?いいなー!わたしもわたしもー!』

口り千歌『じゃいっしょにしよ!』

口り曜『うん!チカちゃんといっしょにみかんつくる!』

76: 2016/09/09(金) 23:44:49.47 ID:6IsKijDF.net
曜母『あらあら、じゃあ二人で結婚しないとね』

口り曜『けっこん?』

口り千歌『チカしってる!すきな人といっしょにくらすことだよね!』

口り曜『そうなの?』

曜母『そうよー、千歌ちゃん賢いわねぇ~』

口り千歌『えへへー♪もしけっこんするならすきな人とっておかーさんがいってたの!』

口り曜『じゃわたしチカちゃんとけっこんする!』

口り千歌『じゃわたしもよーちゃんとけっこんするね!』

口り曜『やくそくげんまん!』

口り千歌『うそついたらはりせんぼん……はイタいからダメ!』

口り曜『でもそれじゃやくそくげんまんできない…‥』

口り千歌『うーん……』

78: 2016/09/09(金) 23:46:04.29 ID:6IsKijDF.net
口り千歌『じゃ、うそついたらチュウするとかは?』

口り曜『どうして?』

口り千歌『けっこんしきでやくそくするときチュウするっておねえちゃんがいってたの』

口り曜『そうなの?』

曜母『そうよ~。ママもパパとチュウして約束したからね』

口り曜『じゃあ、よーもチュウする!チカちゃんとチュウする!』

口り千歌『それじゃやくそくだね!』ユビキリ

口り曜『うん!』ゲンマン


曜(で、指切りしてる影を千歌ちゃんが携帯で撮ったんだよね)

曜(もう千歌ちゃんは覚えてないだろうけど……現像したの私だけだろうし)

曜(たしか約束の証拠とか言って残したんだっけ)

曜(どっちが千歌ちゃんか分かるようにリボンまでつけて)

曜「……」

曜「……我ながら重いなぁ」ボソッ

84: 2016/09/09(金) 23:58:14.24 ID:6IsKijDF.net
曜(大好きな千歌ちゃんと約束したことが嬉しくて、それを形にして残したかった)

曜(ただ、気がつくと日が沈んでて千歌ちゃんが私に見せようと思ったものは見られなくて)

曜(その時はまだ何を見せたかったのか知らなかったけど)

曜(千歌ちゃん曰く『曜ちゃんの好きなもの』を見られなかったのが残念で、二人でぐずったっけ)

曜「でも次の日にの夕方に……」カサ


口り曜『わぁ……!』

口り千歌『ねっ!すごいでしょ?』

口り曜『すごいすごーい!おひさまがうみにおちてキラキラしてる!』

口り千歌『えへへ、わたしとよーちゃんのすきなものでしょ!』

口り曜『え?』

口り千歌『ほら!ミカンみたい!』

口り曜『あっほんとだ!ミカン!おっきなミカンだー!』

口り千歌『たべられないのがざんねんだよねぇ』

口り曜『ううん!わたしミカンのいろがすきだから、あのミカンもだいすき!』

口り千歌『おー!さすがよーちゃんよくわかってる!』

口り曜『だってミカンのいろってチカちゃんとおなじでしょ?』


曜「わああああああっ!何言ってんの私!うわーうわー!////」ジタバタ

曜「あーあー!思い出すだけで恥ずかしいよー////」

曜「……////」

85: 2016/09/10(土) 00:02:12.21 ID:0Q8TS7gO.net
曜(その時の写真がこれ……)ペラ
no title


曜(二人で海に向かってバンザイしてるところを後ろから美渡姉が撮ってくれたんだよね)

曜(……)

曜(なんだっけ……二人で並んで、かけ算みたいなポーズするとカップルになれるとかなんとか……)

曜(この写真は偶然だったけど……)

曜(スイミングの友達から聞いたそんなおまじない?を信じて飾り始めたんだっけ)

曜(あれから随分経つけどおまじないの効果は出てるのかな……?)

曜(……)

曜「曜 × 千歌……」ボソ

曜「……」

曜「……なんてね」

曜(きっと千歌ちゃんは私のこと意識なんてしてないのに、効果も何もないよね)ハァ…

86: 2016/09/10(土) 00:04:17.83 ID:0Q8TS7gO.net
曜(で、この写真……この写真はたしか遠足でラベンダー畑に行ったときに私が撮った……)
no title


曜(……)ジーッ

曜「やっぱり好きだなぁ……千歌ちゃんの背中……」ボソッ

曜「……」

曜「……!」ハッ

曜(いけないいけない、思わず見とれてしまったよ!)パタパタ

曜(なんか昔から千歌ちゃんの背中ばかり追ってしまうんだよね……引き込まれるというか)

曜(気がつくと千歌ちゃんの背中にひっついちゃってる気がする……)

曜(もちろん隣に座るのも手をつなぐのも好きだけど)

曜(千歌ちゃんの背中を見てると触れたい、見つめたいって気持ちが強くなって……)

曜(……)

曜(うん、やっぱりこれも隠そう)

89: 2016/09/10(土) 00:08:48.38 ID:0Q8TS7gO.net
曜(こっちは三津シーで撮ったやつ……)ペラ
no title


曜(……私一人しか写ってないし隠さなくていいよね?)

曜(千歌ちゃんが撮ってくれたものだから飾ってるんだけど……一見すると普通の写真だし大丈夫なはず……)

曜(どうせ千歌ちゃん覚えてないだろうし……)

曜(……)

曜(……で、その下のツーショットは港の市場で迷子になったときの……)
no title



口り曜『ぐすっ……ふぇ……』

口り千歌『よかったぁ、みつかって。よーちゃんきゅうにいなくなっちゃうんだもん」

91: 2016/09/10(土) 00:09:35.68 ID:0Q8TS7gO.net
口り曜『ひぐっ……えぐっ……ごめ、なさ……』グスグス

口り千歌『だいじょぶだいじょぶーもうこわくないよー』ポンポン

口り曜『ふぇぇえん……』ポロポロ

口り千歌『ほらもう、なきやんでー。チカはちゃんとここにいるよ』ヨシヨシ

口り曜『だって……だってぇ……』エグエグ

口り千歌『そうだ!よーちゃん手をだして?』

口り曜『?』グスン

口り千歌『えへへ』ギュッ

口り曜『ふぇ……』

93: 2016/09/10(土) 00:10:46.99 ID:0Q8TS7gO.net
口り千歌『ねっ?こうやっておけばぜったいにバラバラにならないでしょ?ずっといっしょだよ!』エヘ

口り曜『チカちゃん……』ジワ

口り千歌『ほらにこってしよ!にこーっ』

口り曜『……うん!』グシグシ

口り曜『えへへ……』ニコリ

口り千歌『えへへ~』ヘニャリ


曜(千歌ちゃん……)

曜(千歌ちゃん千歌ちゃん千歌ちゃん……)

曜(……)

曜(……今思うとあのころ既に千歌ちゃんのことが好きだったんだなぁ)

曜(恋愛的な意味で)

曜(はっきりと自覚したのはもっと後になってからだけど)

曜(うちっちーの絵にまぎれてハートまで散らしちゃって……)

曜(……)

94: 2016/09/10(土) 00:11:33.50 ID:0Q8TS7gO.net
曜(……これは貼ったままにしておいても大丈夫だよね?)

曜(普通のツーショットだし)

曜(大きめのコルクボードに私の写真一枚だけだと変に思われるし)

曜(……ささやかなアピールになるかもだし)

曜(……)

曜(……でも周りのハートは外しておこう)ペリペリ

95: 2016/09/10(土) 00:12:41.67 ID:0Q8TS7gO.net
曜(よし、全部丁寧にクリアファイルに入れて、っと)

曜(本の間に挟んでおけば大丈夫)


         コンコン >


曜「」ビクッ


              千歌『よーちゃーん?入るよー?』>


曜「ま、待っ」

千歌「ん?」ガチャ

曜「……」タラ

96: 2016/09/10(土) 00:13:39.64 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「今何か隠さなかった?」

曜「な、何も隠してないよー」タラタラ

千歌「ふーん?」

曜「そ……それより早くない?まだ5分くらいしか……あっ」

曜(もう20分以上経ってるじゃん!)

千歌「5分?なにが?」

曜「う、ううん、なんでもないっ」

曜(思い出にふけってる時間が長すぎた……まぁぎりぎりセーフってとこかな?)

97: 2016/09/10(土) 00:14:58.62 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「?変な曜ちゃん」

曜「あはは……」タラー

千歌「あっ、それより曜ちゃんちょっと後ろ向いて♪」

曜「え?こ、こう?」

千歌「♪」ピトッ

曜「ひゃっ!首つめたっ……!?」

千歌「じゃーん!これ何でしょーかっ」プラプラ

曜「アイス……ってスイカバー?」

98: 2016/09/10(土) 00:17:18.36 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「ほんとは家のラムネ味持ってくるつもりだったんだけど、溶けちゃうことに気付いてさー」

曜「ああ、うんそりゃそうだよね」

千歌「んで、近くの駄菓子屋さん寄ったらこれしかなかったの。ごめんね?」

曜「ううん、スイカバーも好きだから嬉しいよ。ありがと千歌ちゃん」

千歌「えへへ♡」

曜「……っ////そ、そういえば昔はよく千歌ちゃん家でスイカ食べたよね////」

千歌「海で泳いだあとの定番だったねぇ」

曜「そうそう、海からあがってホースで塩っ気を落として!」

千歌「そのまま縁側に上がろうとしてよく怒られたよ」ウンウン

曜「あはは、そりゃそうだ…………あれ?」

99: 2016/09/10(土) 00:18:21.56 ID:0Q8TS7gO.net
曜「そういえば、いつの間にかサイダーとかラムネのアイスに変わったよね」

千歌「あー……うん、そうだね」

曜「何か理由とかあるの?」

千歌「ほら、私ってスイカの種を吐き出すの下手だったじゃん?」

曜「ああ、そういえばそうだったね」

千歌「がんばって種だけ出そうとしても、なぜか種を一緒に飲み込んじゃってさ」

千歌「で、途中から面倒になってもう全部飲んじゃえーってなったんだけど」

曜「ええー……」

100: 2016/09/10(土) 00:19:47.43 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「そんな時、旅館に興行にきた噺家の人がある怪談を話してくれて……」

曜「あ、わかった。お腹に入った種から芽が出ちゃうやつだ」

千歌「そうそう!それ!もー怖くってさ!」

曜「それでスイカを食べなくなっちゃったと」

千歌「今は普通に食べられるんだけどねぇ……もうその頃は恐怖の対象になっちゃってたから」

曜「ミカンは?」

千歌「種が取りやすくて素晴らしいと思います」

曜「なるほど」

千歌「あと美味しい!」

曜「だよね!」

101: 2016/09/10(土) 00:20:33.56 ID:0Q8TS7gO.net
曜「あれ?でも千歌ちゃん家のミカンって種なしだよね。温州だし」

千歌「う……だってやっぱ面倒じゃない?」

曜「私は結構好きなんだけどなー、種をピュッとするの」

千歌「ええー曜ちゃん種あり派なのー?」

曜「特にこだわりはないけど、たとえば巨峰なんかは種ありの方が美味しいよ」

千歌「うーん、そうかな……」ソウカモ…

曜「と、そういえばさっきも思ったけど、千歌ちゃん家のアイスってサイダーかラムネだよね。あとメロンシャーベット」

千歌「!」

曜「千歌ちゃんならミカンシャーベットとか冷凍ミカンとかの方が好きそうなのに」

千歌「あー……えっと……」ポリポリ

曜「?」

103: 2016/09/10(土) 00:23:39.55 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「最初はね?ミカンソフトとか夏ミカンゼリーだったんだけど」

曜「うん、美味しいよね。特に凍らせたやつ」

千歌「でもある日、お父さんが神社の夏祭りで余ったラムネをたくさん持って帰ってきてさ」

曜「ええっ!いいなぁー」

千歌「えへへ、役得役得♪」

千歌「で、その瓶をお日様にかざしたりして遊んでたらあることに気付いたの」

曜「あること?」

千歌「これ曜ちゃんの色だーって」

曜「えっ……」ドキ

104: 2016/09/10(土) 00:25:42.69 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「そう思ったらなんだか嬉しくなっちゃって」エヘヘ…

千歌「ほら、いつだったか曜ちゃん言ってたでしょ?」

千歌「ミカンが好きなのは私と同じ色だから、って」

曜「!……覚えてたの?////」

千歌「忘れるわけないよ。だってあの時すごく、すっごーく嬉しかったんだもん」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「だから私もなにか曜ちゃんの色を見つけたい、見つけて大好きになりたい!ってずっと思ってたの」

曜「そ、それがラムネやサイダーだったってこと……?////」

千歌「そっ!ラムネとかがね?こう、身体の中に入ってくると、ああ……今曜ちゃんが私の中にいるな……って感じるの」

千歌「そんなことを思いながら食べると何も考えてなかった時よりずっと甘く、美味しくなるんだ」

千歌「だからジュースも、ミカンジュース以外だとラムネやサイダー、あとメロンソーダも」

千歌「曜ちゃんの色だから大好き!」

曜「……////」

106: 2016/09/10(土) 00:27:58.16 ID:0Q8TS7gO.net
曜「え、えと、千歌ちゃんはあの日のこと

千歌「あー!この写真!」
no title


曜「!!そっ!それは!」ドキッ

千歌「三津シーで私が撮ったやつだー!」

曜「え……覚えてたの……?」

千歌「忘れるわけないよー。私が撮ったベストショットだもん」

曜「……そっ」

曜(そっかぁ……覚えててくれたんだ……)

曜「……」ニヘ

107: 2016/09/10(土) 00:28:50.65 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「?曜ちゃんなんでニヤけてるの?」

曜「へっ?い、いや、ちょっと……」

千歌「ちょっと?」

曜「ほ、ほら、なんか変な写真だなーって思ってさ!」

千歌「……」

曜「あ……変っていっても悪い意味じゃ」

千歌「だよねー!我ながらこんな可笑しな写真よく撮れたなって思うよ!」

曜「え?」

109: 2016/09/10(土) 00:29:40.13 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「ほら、富士山とイルカの像と海ってだけでもシュールなのに、そこに海坊主よーちゃんが生えてくるんだよ?」

千歌「ほんとおもしろすぎて忘れるに忘れられないよ!」ケラケラ

曜「むっ……笑えるから覚えてたってこと?」

千歌「そうだよ?」

曜「……」ムゥ

曜(なんだ……被写体が私だから覚えてくれてたんじゃないんだ……)

曜(……ぬか喜びしちゃった)シュン

千歌「でもね」

111: 2016/09/10(土) 00:30:49.36 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「一番の理由はモデルが曜ちゃんだったからかな」

曜「……え」トクン

千歌「だってほら、いつも曜ちゃんを撮る時は私じゃなくてお姉ちゃんとかおばさんだったから」

千歌「まぁ、それは一緒に写されることが多かったからだし、もちろん嬉しかったんだけどね」

千歌「それとは別に、自分の目が見た曜ちゃんを写真に残したいってずっと思ってたんだ」

千歌「どんなに大切な思い出も、いつかは薄れてぼやけるものだけど、こうすることでいつでもあの日に戻ってこれるから」

曜「……」

千歌「でもいざ撮ろうと思うと変に気負っちゃったり、別の感情が邪魔して結局殆ど撮れなかった」

曜「別の感情……?」

112: 2016/09/10(土) 00:31:29.07 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「たとえばさ、曜ちゃんの飛込の練習を見てる時も、撮ろうかどうかいつも迷ってたんだよね」

千歌「そこで見る曜ちゃんは、きれいで、すごくて、かっこよくて……」

千歌「……でも何だか遠くの人みたいだった」

千歌「曜ちゃんはみんなの人気者だったから、ダイブした曜ちゃんの側に沢山の子たちが駆け寄っていて」

千歌「なのに、私の目は観戦席とプールサイドの間の段差すら越えることができなかった」

千歌「あそこでは、曜ちゃんは私の知らない世界にいて」

千歌「そして周りの子たちはみんな私の知らない曜ちゃんを知っていた」

千歌「あの時の気持ち、今でもよくわからないし具体的にどう言い表せばいいのかわからないけどさ」

千歌「なんていうか……すっごくもやもやしちゃったの」

千歌「そんなもやもやを……離れたところから曜ちゃんを見つめるだけの思い出を……フィルムに残すことができなかった」


曜「千歌ちゃん……」

113: 2016/09/10(土) 00:32:56.56 ID:0Q8TS7gO.net
曜(……どうしてだろう。初めて聞いた話なのに、初めて知ったことではないような気になる)

曜(ううん……正確には、まるで自分が感じたことのように共感してしまった)

曜(この感覚どこかで……)


千歌「それを残すと、曜ちゃんが遠くに行ってしまうような不安まで残ってしまいそうだったから」


曜「……」

曜(……ああそうか、あの時だ)

曜(PVを撮ったあの日)

曜(ミカン色が沈み、夜の帳が海の半分を覆ったあの時)

曜(千歌ちゃんの背中が昔のあの写真の続きみたいで)

曜(その瞬間を残したくて、PVが終わってからも収録を続けていた)

曜(けれど、黄昏の中でふりかえった千歌ちゃんを見た瞬間)

曜(気がつくと反射的にカメラを下ろしてしまっていた)

曜(なぜだか急に、見慣れた後ろ姿が遠ざかっていくように感じて、ひどく不安になって……)

曜(その瞬間を写真の中に保存するのが恐ろしくなったんだ)

曜(あとでそれを見返すたびに、手の中から千歌ちゃんの温度がこぼれていくような気がして)

116: 2016/09/10(土) 00:36:43.53 ID:0Q8TS7gO.net
曜(あそこにいたのは、いつもの強がり千歌ちゃんじゃなく、みんなのために涙をこらえるリーダーだったんだ)

曜(私がそのことに気付いたのは、後悔よりもさらに後のことだった)

曜(海の中で人知れず涙を洗おうとしていた千歌ちゃん)

曜(そして)

曜(その時、最初に千歌ちゃんの側にいたのは私ではなかった)


曜(そのことに気付いた瞬間、千歌ちゃんがまた遠くなった気がした)



千歌「曜ちゃん?」

曜「……!」ハッ

117: 2016/09/10(土) 00:37:42.69 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「どうしたの? さっきからぼーっとしがちだけど」

曜「う、ううんなんでもないよ、気にしないで」

千歌「?」

曜「えっと……」

曜「……千歌ちゃんはさ……もし……」

千歌「もし?」

曜「……もしも私が千歌ちゃんを遠くに感じてるって言ったらどうする?」

千歌「え……そうなの……?」

曜「た、たとえばだよ!たとえばの話!」

千歌「うーん……」

118: 2016/09/10(土) 00:38:40.35 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「……」チラッ

千歌「……昔みたいにするかな」

曜「昔?」

千歌「ほら、さっきの写真の下にあるもう一枚の写真。曜ちゃんが迷子になった時の」
no title


曜「!これも覚えてたの……?」

千歌「あの時さ、曜ちゃんがどこかに行ってしまって、私ほんとはすごく恐かったんだ」

千歌「飛込のこととかで曜ちゃんを遠くに感じてた時だったからかな」

千歌「もう会えないんじゃないかって……子供だったから嫌な想像ばかりしちゃってさ」

曜「そんなこと……」

119: 2016/09/10(土) 00:40:49.23 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「でもね、涙と鼻水でぐしょぐしょになった曜ちゃんを見つけたとき思ったんだ」

千歌「どんなにすごくなっても、変わってしまったように見えても、曜ちゃんは曜ちゃんなんだなぁって」

曜「……!」

千歌「曜ちゃんのこと、知らない人みたいって決めつけてたのは私自身の心」

千歌「知らないのではなく知ろうとしてなかっただけ」

千歌「変わってしまったように見えたのは、私が変わろうとしてなかったせいだったんだ」

千歌「だから私も変わろうと思った。輝きたい!って思った」

千歌「曜ちゃんみたいにすごくはなれないけれど、心だけでも輝くように変えてみようって」

曜「心を変える……」

120: 2016/09/10(土) 00:43:28.38 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「ううん、“進める”って言った方がいいかな」

千歌「だって曜ちゃんが大好きって気持ちが変わるなんてことありえないもんね」

千歌「変わっていく曜ちゃんに向かって心を進めていこうって、そう思ったの」

曜「じゃあ、あのとき手をつないでくれたのは……」

千歌「もちろん曜ちゃんが泣いてたからってのもあるけど、一番の理由は私自身が曜ちゃんからハグレないようにするため」

千歌「船と船をつなぐモアイ綱みたいに、手と手をぎゅっとつないでさ」

千歌「そうすれば、今は肩を並べることができなくても一緒にいることはできるでしょ?」

千歌「完全に不安を拭えるようになるまでは何年もかかったけどさ。今は不安なんて感じてないよ」

千歌「それって私が少しは曜ちゃんに向かって進むことができたってことだよね」

千歌「だからもし仮に……仮にだよ?」

千歌「 曜ちゃんが私を遠くに感じるときがきたなら」


千歌「今度もまた私が曜ちゃんと手をつなぎにいくよ」



曜「……千歌ちゃん」

121: 2016/09/10(土) 00:44:27.70 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「長い間モアイ綱を結びつけてきたベテランだからね!絶対に曜ちゃんを離したりしないよ!」フンスッ

曜「……モアイじゃなくて“舫い”だよ」クス

千歌「そうそう!モヤイ綱!」

曜「……」

千歌「って言っても、私よりずっと前を行ってる曜ちゃんがそんなこと感じるなんて有りえないだろけど」タハハ…

曜「……」

曜「千歌ちゃん」

千歌「んー?」

曜「千歌ちゃんは強いね」

122: 2016/09/10(土) 00:45:34.35 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「えー何それ。曜ちゃんみたいに鍛えてないからめちゃくちゃ弱っちいよ私」

曜「強いよ千歌ちゃんは……私なんて……」


曜(あの海での一件以来、私の心はずっと不安定なままだった)

曜(私の知らない千歌ちゃんがいて、そのとき側にいたのは私ではなくて)

曜(たったそれだけで何もかもが足元から崩れていくような感覚に陥った)

曜(いつも通りに振る舞っていても、頭の片隅ではそのことが常にドス黒い煤のようなものを吐き出していて)

曜(見慣れていたはずのオレンジ色の太陽を、覆い隠すほどに広がっていってた)

曜(でもそれはきっと)


曜「千歌ちゃん」

千歌「なーに?」

123: 2016/09/10(土) 00:47:32.01 ID:0Q8TS7gO.net
曜「さっき言ってた“もやもや”って、なんだろうね」

千歌「うーん……」

千歌「……たぶん……嫉妬? ……かなぁ」

千歌「曜ちゃんの一番になりたかったっていうかさ」

曜「……そっか」

千歌「あはは、我ながら子どもじみてると思うけど、実際子どものときのことだしねー」

曜「今は?」

千歌「へ?」

124: 2016/09/10(土) 00:48:23.78 ID:0Q8TS7gO.net
曜「私は今でも……」

曜「……ううん、今まさに子どもなんだよ」


曜(それはきっと千歌ちゃんが幼い頃にずっと味わってきたもの)

曜(今の今まで知らなかった千歌ちゃんの姿だ)

曜(けれど何故だろう、さっきまで感じていたそれとは違う)

曜(知らない千歌ちゃんを知ることができたのがすごく嬉しい)

曜(私が今感じているものが、千歌ちゃんの感じてきたものと同じだったことが嬉しいんだ)


曜「あのさ」

千歌「え?」

曜「……手、今つないでほしいな」

千歌「ど……どうしたのいきなり」

125: 2016/09/10(土) 00:49:40.58 ID:0Q8TS7gO.net
曜「ほら、はやく」

千歌「あ、うん」ギュッ

曜「千歌ちゃん昔約束したこと覚えてる?」ギュゥ…

千歌「え……っと……どれのこと?」

曜「そっか覚えてないか」グイッ

千歌「わわっ!よ、よーちゃ」


曜「……」チュッ


千歌「……ふぇ……」

126: 2016/09/10(土) 00:52:18.91 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「い、今……ほっぺに……////」

曜「ゆびきりげんまんしたのに忘れてた罰!////」

千歌「ゆびきりって――……」

千歌「……」

千歌「……――あ ////」

曜「千歌ちゃん」

千歌「は、はひっ?////」

127: 2016/09/10(土) 00:54:51.00 ID:0Q8TS7gO.net
曜「千歌ちゃんの舫い綱はすごくしっかり結ばれていたよ。時々痛く感じるほどしっかりと」

千歌「痛く……!? え……えっとそれはただの例えだったんだけど」ドウイウコト

曜「でも、何も言わず舫うだけじゃだめなんだよ」

曜「綱が切れても気付けないし、お互いにぶつかってしまうことだってある」

曜「私はさ」

曜「『私と千歌ちゃんの間に言葉なんていらない!』『言葉では言い表せない絆があるんだ!』」

曜「『言葉なんかなくったって通じ合える!』『絆さえあればどんな航海だってできる!』」

曜「……なーんて、そんな曖昧で何の保証もない思い込みを本気で信じてた」

曜「でも、本当の航海では航海士さんが海図と睨めっこして、どんな荒波も越えることができるように船長さんと相談して」

曜「そして船長さんは他の船と連絡をとってお互いの情報や意志を確かめ合うんだ」

曜「言葉でつながる絆が船を動かしてるんだよ」


千歌「曜ちゃん……」

128: 2016/09/10(土) 00:59:12.32 ID:0Q8TS7gO.net
曜「言葉じゃ伝えられないことはもちろんある」

曜「でも言葉にしなきゃ伝わらないことだって、当然ある」

曜「そんな当たり前のことにも気付かないなんて、私ってほんとバカ船長だね」

千歌「ちがうよ!曜ちゃんはバカなんかじゃ」

曜「聞いて、千歌ちゃん」

千歌「!」

曜「私は、ずっと千歌ちゃんの結んでくれた舫い綱に胡座をかいてたんだ。千歌ちゃんが苦しんでいたことも知らずに」

曜「千歌ちゃんのことなら何でも知ってるって……志満ねぇ達よりも知ってるんだって、ずっと思い込んでた」

曜「自信過剰もいいとこだよ。本当はなにもわかってなかったんだ」

曜「自分が千歌ちゃんの立場になって、初めてそのことがわかったよ」

129: 2016/09/10(土) 01:00:21.61 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「……曜ちゃんも、もやもやしてたってこと?」

曜「さっきまで、ね」

千歌「そんな……」

曜「それはもう、もやもやどころかドロッドロでしたよ。プール開きの前のプールみたいに」

千歌「私全然気付かなかった……ずっと曜ちゃんの隣にいたのに……」

曜「まぁそれはお互い様というか……私なんて今の今まで気付けなかったわけだし」タハハ…

千歌「でもどうして? 私には曜ちゃんと違って何もないのに」

曜「千歌ちゃんが何もないと思っているそこは、私にとって何よりも大切な場所なんだよ」

曜「そんなの当たり前すぎてずっと言わなかったけどさ……」

曜「……誰にも取られたくないし失いたくない」

千歌「……!」

130: 2016/09/10(土) 01:03:00.10 ID:0Q8TS7gO.net
曜「私はさ、自然と高海家に溶け込めてると思ってたし、千歌ちゃんが私ん家で受け入れられてることにも満足してた」

曜「けれど本当に重要なのは周りの環境じゃなくて私たち自身の関係だったんだ」

千歌「私たちの関係……」

曜「私も、千歌ちゃんも……二人とも言葉が足らなさすぎた。もっと色々伝え合わないとだめなんだよ」

曜「だからさ、ゆっくりでいいから千歌ちゃん自身の口から聞かせてほしいな。千歌ちゃんの気持ち」

曜「私の気持ちも全部伝えるから」

千歌「曜ちゃん……」

千歌「……」

千歌「……うん……そうだね。私も曜ちゃんの気持ちちゃんと聞きたい」

千歌「だから私の気持ちも伝えるようにするよ」ギュッ

曜「千歌ちゃん……」ギュゥゥ

131: 2016/09/10(土) 01:03:40.97 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「でも私の気持ちとか情けなさすぎて、曜ちゃん幻滅しちゃうかもしれないよ?」クス

曜「情けない千歌ちゃんなんて見慣れてるから今更だよ」フフン

千歌「いやー、いつもよりずっと情けないんだから。びっくりするよ?」

曜「それより私の気持ちの重さに千歌ちゃんが耐えられるか心配だなー」

千歌「う……重いってどういうこと?」

曜「そのままの意味だよ。筋肉は脂肪よりもずっと重いんだからね」

千歌「もーまたはぐらかす!伝え合うんじゃなかったのー!?」

曜「軽いジャブだよー。小出しにしていかないと、鍛えてない千歌ちゃんじゃ受け止めきれないでしょ」

千歌「もう!」プクー

132: 2016/09/10(土) 01:04:37.91 ID:0Q8TS7gO.net
曜「あはは、ごめんごめん」

千歌「……」

曜「千歌ちゃん?」

千歌「えい!」チュッ

曜「」

133: 2016/09/10(土) 01:06:11.21 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「へへーん!さっきのお返しだよっ!////」

曜「」

千歌「これで約束成立ね!嘘ついたらもっとチュウするから!////」

曜「」


             『千歌ちゃーん!ちょっと味見てほしいんだけどー』>


千歌「あっ、おばさんが呼んでるからちょっと行ってくるね!////」スクッ


バタン


                 <『はーい!今いきまーす』


パタパタパタ…



曜「」

曜「……………ハッ」

135: 2016/09/10(土) 01:06:57.56 ID:0Q8TS7gO.net
曜「え……いま唇になにかやわらかいものが」

曜「ちゅ……って……」

曜「……」

曜「……」

曜「////」ボンッ

曜「あ////」

曜「ああーーーー!////」

曜「あああああーーーーーーーもーーーーー!!////」

曜「もーーー……////」

曜「……////」

曜「はぁ……もう、千歌ちゃんには敵わないや……////」

136: 2016/09/10(土) 01:09:39.04 ID:0Q8TS7gO.net
曜「……」チラ

曜「!げっ……」

曜(写真立て出しっぱなしじゃん!)
no title


曜「……」タラー

曜(ま、まぁ変な写真じゃないし大丈夫なはず!)

曜(普通に運動会の時の記念写真だし!)

曜「……」

137: 2016/09/10(土) 01:10:49.39 ID:0Q8TS7gO.net
曜(たしか二人三脚で千歌ちゃんと一緒に走った時のだっけ……)

曜(……足元を鉢巻で結んで)

曜「……」

曜(私と千歌ちゃんを結ぶ舫い綱か……)

曜「……」

曜「赤ければいいなぁ」ボソッ


                          『よーちゃーん!』>


曜「」ビクッ

曜「は、はーい!」


          『よーちゃんも手伝ってっておばさんが言ってるよー!』>


曜「わかったー!」

138: 2016/09/10(土) 01:12:38.81 ID:0Q8TS7gO.net
曜「……」

曜「『心を前進させればいい』か……」

曜「千歌ちゃんはそうやって私のところへきてくれたんだよね」

曜「……」

曜「……」スーッ

曜「……」ハーッ

曜「んっ!」両頬ピシャッ

曜「よーし!」


曜「両舷全速前進(フルアヘッツー)!」


曜「針路、友情ヨーソロー!」



曜「……」

140: 2016/09/10(土) 01:14:18.76 ID:0Q8TS7gO.net
曜「……なんちゃって」エヘヘ

曜「千歌ちゃん待っててね!私も今から」


           『よーちゃんまだー?』>


曜「!」

曜「い、今から行くよー!」


ガチャ


バタン







み完!

167: 2016/09/10(土) 14:17:19.26 ID:0Q8TS7gO.net
>>163
なるほど
じゃためしに



テス

 

テスト

169: 2016/09/10(土) 14:52:31.59 ID:0Q8TS7gO.net
>>163
できました!ありがとう!

168: 2016/09/10(土) 14:51:41.52 ID:0Q8TS7gO.net
千歌「うーん……」

曜「どうしたの千歌ちゃ……あっ」

曜(そういえば今月もそろそろだっけ)

曜「お腹痛いんでしょ? さすってあげる」

千歌「うん……ありがと……」

曜「それじゃ、よいしょ……はい隣に寝転んでー」ゴロン

千歌「はーい……ぅぅぅ……」ゴロン

曜「わたしの腕に頭乗せていいから、ね?」

千歌「曜ちゃぁぁん……」ウルウル

曜「大丈夫だいじょぶー、ほーら痛いの痛いのとんでけー」サスサス

 
   
美渡「薬飲め」
     
          
              
               
曜「ぅぅういたた……」

千歌「お腹痛いの?さすってあげる!はいっ寝転んでー」ヒザマクラ

曜「千歌ちゃぁぁあん……」ウルウル

千歌「大丈夫だいじょぶー、ほーら痛いの痛いのとんでけー」サスサス

 
        
美渡「薬飲め」

引用元:

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