2: 2021/06/07(月) 22:32:13.51 ID:EYsUOGLP
曜「善子ちゃん、ミスドよっていかない?」
曜「ハンカチ借りちゃったし、ご馳走するよ」
善子「ヨハネよ」
善子「…いく」
帰りのバスはいつも曜と一緒。
それもそのはず、沼津市街に住んでいるのは私と曜だけだから。
この日はとある事情があって、曜が千歌に対してずっと抱いていた、
『一緒に何かをしたかった』と言う感情を私に漏らした。
その気持ちのせいで、梨子に嫉妬していたことも。
曜「自分の中では整理できたと思ってたんだけどね」
曜「たまに思い返すとうわ〜ってなっちゃうんだ」
いつも飄々としている曜が涙ながらに話す姿を見て、私はお気に入りのゴシック柄ハンカチを差し出すことしかできなかった。
曜「ハンカチ借りちゃったし、ご馳走するよ」
善子「ヨハネよ」
善子「…いく」
帰りのバスはいつも曜と一緒。
それもそのはず、沼津市街に住んでいるのは私と曜だけだから。
この日はとある事情があって、曜が千歌に対してずっと抱いていた、
『一緒に何かをしたかった』と言う感情を私に漏らした。
その気持ちのせいで、梨子に嫉妬していたことも。
曜「自分の中では整理できたと思ってたんだけどね」
曜「たまに思い返すとうわ〜ってなっちゃうんだ」
いつも飄々としている曜が涙ながらに話す姿を見て、私はお気に入りのゴシック柄ハンカチを差し出すことしかできなかった。
4: 2021/06/07(月) 22:32:33.09 ID:EYsUOGLP
曜って案外、誰よりも女の子らしくて繊細なのかもしれない。
なんてことを思いながら曜の提案に乗ることにした。
何よりも、私にそんな弱みを見せてくれた曜がたまらなく愛おしく感じて、もうちょっと側に居たいと思った。
曜「私はねーいつもポンデリング食べるんだよね。食感が可愛くて好きなんだ。善子ちゃんは?」
善子「オールドファッションかな。チョコがかかってるのとノーマルのを気分次第でって感じ」
曜「オールドファッションは普段私食べないなー。よし!今日はオールドファッション食べる!」
善子「ええ!?何よ急に!パサパサしたもの嫌いでしょ!?」
曜「善子ちゃんの好きなものをさ、私も好きになれたら良いなって思ってさ!」
なんてことを思いながら曜の提案に乗ることにした。
何よりも、私にそんな弱みを見せてくれた曜がたまらなく愛おしく感じて、もうちょっと側に居たいと思った。
曜「私はねーいつもポンデリング食べるんだよね。食感が可愛くて好きなんだ。善子ちゃんは?」
善子「オールドファッションかな。チョコがかかってるのとノーマルのを気分次第でって感じ」
曜「オールドファッションは普段私食べないなー。よし!今日はオールドファッション食べる!」
善子「ええ!?何よ急に!パサパサしたもの嫌いでしょ!?」
曜「善子ちゃんの好きなものをさ、私も好きになれたら良いなって思ってさ!」
6: 2021/06/07(月) 22:32:50.51 ID:EYsUOGLP
天然ジゴロなのだろうか、一つ上のこの先輩は。
きっと…
千歌以外には常にこういう感じなのだろうと、予測はできてもつい顔が緩みそうになる。
でも、それはつまり…自分は曜にとって、千歌ほどの特別ではないのかと思うと、
少し寂しい。
善子「じゃ、じゃあ私はポンデリング!!」
そんなことを言われたら、私だって曜の好きなドーナツにしたくなる。
正直私はあの食感が少し苦手だけど、今なら少し好きになれる気がした。
思い返すとこの瞬間が、私の曜に抱く感情が『憧れ』や『羨望』から『恋』に変わった瞬間だった。
そうハッキリ言える。
きっと…
千歌以外には常にこういう感じなのだろうと、予測はできてもつい顔が緩みそうになる。
でも、それはつまり…自分は曜にとって、千歌ほどの特別ではないのかと思うと、
少し寂しい。
善子「じゃ、じゃあ私はポンデリング!!」
そんなことを言われたら、私だって曜の好きなドーナツにしたくなる。
正直私はあの食感が少し苦手だけど、今なら少し好きになれる気がした。
思い返すとこの瞬間が、私の曜に抱く感情が『憧れ』や『羨望』から『恋』に変わった瞬間だった。
そうハッキリ言える。
7: 2021/06/07(月) 22:33:10.70 ID:EYsUOGLP
〜津島善子 24歳〜
善子「ふぁ〜、またあの頃の夢かぁ」
午前8時25分。
私は今日も元気に目覚める。
ゆっくりと、ららぽーとのカルディで買ってきたブレンドコーヒーでも入れよう。新聞も読まないと。
私は今も沼津に住んでいる。
流石に実家はもう出たけど、沼津で同居人と住んでいる。
その同居人はご察しの通り、渡辺曜だ。
善子「今日は久しぶりに曜が帰ってくる日ね。
ご飯、何作ったら喜ぶかな…」
と、心のなかでそっと呟く。
もしかしたら、楽しみすぎて声に出ているかもしれない。
善子「ふぁ〜、またあの頃の夢かぁ」
午前8時25分。
私は今日も元気に目覚める。
ゆっくりと、ららぽーとのカルディで買ってきたブレンドコーヒーでも入れよう。新聞も読まないと。
私は今も沼津に住んでいる。
流石に実家はもう出たけど、沼津で同居人と住んでいる。
その同居人はご察しの通り、渡辺曜だ。
善子「今日は久しぶりに曜が帰ってくる日ね。
ご飯、何作ったら喜ぶかな…」
と、心のなかでそっと呟く。
もしかしたら、楽しみすぎて声に出ているかもしれない。
9: 2021/06/07(月) 22:33:59.35 ID:EYsUOGLP
ちなみに、私はフリーのWEBデザイナーとして働いているから。
だから、基本はうちにいる。
一方で、曜は昔から言っていた通り、船乗りの仕事に就いたもんだからろくに帰ってもこない。
とは言ってもね、そんな曜を待つ時間は寂しいけれど、嫌いではないの。
会えない時間が愛を育てるということは、本当にあるんだと知った。
善子「さて、日課日課」
だから、基本はうちにいる。
一方で、曜は昔から言っていた通り、船乗りの仕事に就いたもんだからろくに帰ってもこない。
とは言ってもね、そんな曜を待つ時間は寂しいけれど、嫌いではないの。
会えない時間が愛を育てるということは、本当にあるんだと知った。
善子「さて、日課日課」
10: 2021/06/07(月) 22:34:21.66 ID:EYsUOGLP
コーヒーをすすり、日課である新聞を読みながらAqoursの仲間たちが活躍していないか、何か事件に巻き込まれていないかをチェックする。
船の事故の記事があろうものなら、心拍数は自分でも驚くくらい上がってしまう。
黒澤姉妹もいつかは沼津に戻ってくるみたいだけど、今はまだ関東の方で働いているみたいだから少し心配だ。
人が多い分、事件に巻き込まれる可能性も高いんじゃないかと不安になる。
鞠莉の経営するホテルの株価も、まぁ一応チェックする。
でも株価を新聞で見る意味ってあるのかしらね。
船の事故の記事があろうものなら、心拍数は自分でも驚くくらい上がってしまう。
黒澤姉妹もいつかは沼津に戻ってくるみたいだけど、今はまだ関東の方で働いているみたいだから少し心配だ。
人が多い分、事件に巻き込まれる可能性も高いんじゃないかと不安になる。
鞠莉の経営するホテルの株価も、まぁ一応チェックする。
でも株価を新聞で見る意味ってあるのかしらね。
11: 2021/06/07(月) 22:35:00.01 ID:EYsUOGLP
善子「あの夢を見た後だから、みんなのことを考えると思い出しちゃうな」
高校時代のあの輝かしい日々は、今も私の心を強く支えている。
何よりも曜と過ごしたあの時間は、格別だ。
一緒に暮らすようになった今だからこそ、一層宝石の煌めきのように心に残っている。
善子「もう7年以上も前だものね…」
高校時代のあの輝かしい日々は、今も私の心を強く支えている。
何よりも曜と過ごしたあの時間は、格別だ。
一緒に暮らすようになった今だからこそ、一層宝石の煌めきのように心に残っている。
善子「もう7年以上も前だものね…」
12: 2021/06/07(月) 22:35:33.30 ID:EYsUOGLP
〜善子 静真高校2年生 曜 静真高校3年生〜
曜「受験で忙しくなるから……」
曜「今までみたいにこうやって帰り道遊ぶのは減っちゃうね」
善子「仕方ないわよ…」
夏のラブライブは、地区予選こそ通過したものの、全国では入賞を逃してしまった。
やっぱり、年々レベルが上がっているのは間違いなんだろうな。
メンバーも口には出さないけど…
果南に鞠莉にダイヤのいたあの時が、自分たちのピークだと気付いていた。
1年の春休みに聖良に言われたことを、結果として覆すには至れなかったんだ。
悔しさは合ったけど、やっぱりあの9人こそがAqoursなんだという気持ちは拭えない……
曜「受験で忙しくなるから……」
曜「今までみたいにこうやって帰り道遊ぶのは減っちゃうね」
善子「仕方ないわよ…」
夏のラブライブは、地区予選こそ通過したものの、全国では入賞を逃してしまった。
やっぱり、年々レベルが上がっているのは間違いなんだろうな。
メンバーも口には出さないけど…
果南に鞠莉にダイヤのいたあの時が、自分たちのピークだと気付いていた。
1年の春休みに聖良に言われたことを、結果として覆すには至れなかったんだ。
悔しさは合ったけど、やっぱりあの9人こそがAqoursなんだという気持ちは拭えない……
13: 2021/06/07(月) 22:35:52.16 ID:EYsUOGLP
善子「曜は大学はどこに行くの?私にもわかるところかしら」
正直、私は大学の名前なんて東大京大慶應早稲田をZ会のCMで覚えた程度で他は知らなかった。
後は県内公立の大学くらいか。
曜が行くような大学…私の知ってる中にはなさそう。
曜「海上保安大学校」
善子「…は?」
本当に知らなかった。
曜「海上保安官になる大学だよ。興味なきゃ知らないよね」
善子「なんで…?」
正直、私は大学の名前なんて東大京大慶應早稲田をZ会のCMで覚えた程度で他は知らなかった。
後は県内公立の大学くらいか。
曜が行くような大学…私の知ってる中にはなさそう。
曜「海上保安大学校」
善子「…は?」
本当に知らなかった。
曜「海上保安官になる大学だよ。興味なきゃ知らないよね」
善子「なんで…?」
14: 2021/06/07(月) 22:36:30.09 ID:EYsUOGLP
曜「勉強しながらお金ももらえるし、そのまま海技士の資格も取れたりするし、船長にもなれるしね」
善子「お父さんみたいな船長になるんじゃなかったの?
なんならエスパルスドリームフェリーに就職すると思ってたくらいよ」
曜「パパみたいな船長になりたいのも、本当だよ」
曜「でもね、背中を追いかけるだけじゃなくて、パパやパパみたいな仕事につく人たちを守る仕事もかっこいいなって思ったんだ」
曜「大好きな内浦の海も守れるしね」
善子「そう…それにお金ももらえるのね。変な大学」
曜「正確には大学とは少し違うんだよね。お金は…まあ、うん。ちょっと早い段階から貯めておきたいって思うし」
善子「何か欲しいものでもあるの?船?」
曜「んー秘密」
何よそれ、気になるじゃない。
善子「お父さんみたいな船長になるんじゃなかったの?
なんならエスパルスドリームフェリーに就職すると思ってたくらいよ」
曜「パパみたいな船長になりたいのも、本当だよ」
曜「でもね、背中を追いかけるだけじゃなくて、パパやパパみたいな仕事につく人たちを守る仕事もかっこいいなって思ったんだ」
曜「大好きな内浦の海も守れるしね」
善子「そう…それにお金ももらえるのね。変な大学」
曜「正確には大学とは少し違うんだよね。お金は…まあ、うん。ちょっと早い段階から貯めておきたいって思うし」
善子「何か欲しいものでもあるの?船?」
曜「んー秘密」
何よそれ、気になるじゃない。
15: 2021/06/07(月) 22:38:53.22 ID:EYsUOGLP
少し腹が立ったけど、お金があって困ることはないから、別に不自然でもないか…と思った。
曜に関して言えば、受験が成功すれば夢を追いかけながらお金がもらえるのだから。
それは理想的なことなのかもしれない。
曜「善子ちゃん」
善子「ヨハネ。何よ」
曜「楽しかったね、Aqours。やっぱ寂しいよ」
曜「…受験に疲れたら、たまにこうやって遊んでくれる?」
善子「良いわよ…それと…」
曜「ありがとう!で、それと?」
曜に関して言えば、受験が成功すれば夢を追いかけながらお金がもらえるのだから。
それは理想的なことなのかもしれない。
曜「善子ちゃん」
善子「ヨハネ。何よ」
曜「楽しかったね、Aqours。やっぱ寂しいよ」
曜「…受験に疲れたら、たまにこうやって遊んでくれる?」
善子「良いわよ…それと…」
曜「ありがとう!で、それと?」
16: 2021/06/07(月) 22:39:42.12 ID:EYsUOGLP
善子「曜からは…ヨハネじゃなくて……」
曜「ん?」
善子「善子って…名前で呼ばれたいわ」
曜「…大丈夫?熱ある?」
善子「ない!もう!今のなし!」
曜「あはは!まぁ元々呼んでるけどね」
曜「善子ちゃん」
曜「ん?」
善子「善子って…名前で呼ばれたいわ」
曜「…大丈夫?熱ある?」
善子「ない!もう!今のなし!」
曜「あはは!まぁ元々呼んでるけどね」
曜「善子ちゃん」
17: 2021/06/07(月) 22:41:20.10 ID:EYsUOGLP
好きだ。たまらなく。
私は曜が。
千歌も旅館を継ぐための修行として、ホテルオハラへのインターン準備に忙しい。
リリーも東京の音大に進むために勉強を頑張ってる。
だから、そばに住んでいる私が曜を独り占めできているわけだ。
この時間が大好きよ。
千歌とリリーには悪いけどね!
私は曜が。
千歌も旅館を継ぐための修行として、ホテルオハラへのインターン準備に忙しい。
リリーも東京の音大に進むために勉強を頑張ってる。
だから、そばに住んでいる私が曜を独り占めできているわけだ。
この時間が大好きよ。
千歌とリリーには悪いけどね!
18: 2021/06/07(月) 22:43:36.85 ID:EYsUOGLP
そうして曜と過ごす時間は減ったけど、他のメンバーよりは一緒にいたと思う。
たまに勉強ですごい疲れているときや、模試の成績が芳しくなくて少し不機嫌な時があったけど、それも込みで曜のことが好き。
最後の模試の時は、ようやくA判定が出たと大はしゃぎしていた。
嬉しい時や楽しい時には、決まってあの日のミスドに行くの。
曜「やっと出たよA判定!さ、ポンデとオールドファッションどっちにしようかな〜」
善子「…私がオールドファッションにするから、曜はポンデにしなさいよ。
は、半分こ…しましょう」
曜「それだ!善子ちゃんは賢いなぁ!」
本当なら1個まるまるオールドファッション食べたかったけど、お金もないし…
それ以上に曜と1つのドーナツを半分こしたかった。
分かち合いたかった。
たまに勉強ですごい疲れているときや、模試の成績が芳しくなくて少し不機嫌な時があったけど、それも込みで曜のことが好き。
最後の模試の時は、ようやくA判定が出たと大はしゃぎしていた。
嬉しい時や楽しい時には、決まってあの日のミスドに行くの。
曜「やっと出たよA判定!さ、ポンデとオールドファッションどっちにしようかな〜」
善子「…私がオールドファッションにするから、曜はポンデにしなさいよ。
は、半分こ…しましょう」
曜「それだ!善子ちゃんは賢いなぁ!」
本当なら1個まるまるオールドファッション食べたかったけど、お金もないし…
それ以上に曜と1つのドーナツを半分こしたかった。
分かち合いたかった。
20: 2021/06/07(月) 22:45:13.94 ID:EYsUOGLP
善子「本番、もうすぐね」
曜「うん!でもね、受かる気がしてきた!もうひとガンバルビィだね!」
曜「そういえば、ルビィちゃんと花丸ちゃんは元気?」
善子「元気すぎるくらいよ。ルビィはなりたい仕事が見つかったって猛勉強してるわ」
善子「ダイヤも直ぐに家は継がないらしいし、黒澤家もどうなるのかしらね」
善子「ずら丸は沼津市役所を受けるみたいよ」
曜「で、善子ちゃんは?何か進路決まった?」
曜「うん!でもね、受かる気がしてきた!もうひとガンバルビィだね!」
曜「そういえば、ルビィちゃんと花丸ちゃんは元気?」
善子「元気すぎるくらいよ。ルビィはなりたい仕事が見つかったって猛勉強してるわ」
善子「ダイヤも直ぐに家は継がないらしいし、黒澤家もどうなるのかしらね」
善子「ずら丸は沼津市役所を受けるみたいよ」
曜「で、善子ちゃんは?何か進路決まった?」
21: 2021/06/07(月) 22:47:06.34 ID:EYsUOGLP
善子「私は……」
善子「うん、この前ね…私のブログを読んでくれている人からホームページの作成依頼がきたの」
善子「私、ブログとかもかなり凝って作ってるから、それで興味持ってくれたみたい。だから、それ系の仕事に興味湧いたかな」
善子「大学に行くか…はわからない」
曜「そっか〜!すごいね善子ちゃん。自分の得意を人のために活かせるって、なかなかないよ?」
曜がそれを言うのか…って思ったけど、曜に褒められるのは単純にすごい嬉しかった。
だから、もう、『この道で生きる!』って決めた。
単純すぎる自分が心配になるわよね。ほんと。
その後、曜は希望していた大学校に合格した。
善子「うん、この前ね…私のブログを読んでくれている人からホームページの作成依頼がきたの」
善子「私、ブログとかもかなり凝って作ってるから、それで興味持ってくれたみたい。だから、それ系の仕事に興味湧いたかな」
善子「大学に行くか…はわからない」
曜「そっか〜!すごいね善子ちゃん。自分の得意を人のために活かせるって、なかなかないよ?」
曜がそれを言うのか…って思ったけど、曜に褒められるのは単純にすごい嬉しかった。
だから、もう、『この道で生きる!』って決めた。
単純すぎる自分が心配になるわよね。ほんと。
その後、曜は希望していた大学校に合格した。
22: 2021/06/07(月) 22:47:36.68 ID:EYsUOGLP
その時はミスドではなく、Aqoursで活動していた時によく行っていた松月に集まってお祝いした。
流石に独り占めはしないわよ。千歌とリリーと花丸とルビィも呼んだわ。
そうして、あっという間に卒業式の日がきた。
花丸「すごい…」
ルビィ「本物のアイドル級だよぉ…」
善子「……ふんっ」
私たち3人の目線の先には二人の渡辺がいた。曜と月だ。
二人の下級生人気は凄まじく、とても近づけない。
流石に独り占めはしないわよ。千歌とリリーと花丸とルビィも呼んだわ。
そうして、あっという間に卒業式の日がきた。
花丸「すごい…」
ルビィ「本物のアイドル級だよぉ…」
善子「……ふんっ」
私たち3人の目線の先には二人の渡辺がいた。曜と月だ。
二人の下級生人気は凄まじく、とても近づけない。
23: 2021/06/07(月) 22:49:21.81 ID:EYsUOGLP
女生徒1「曜せんぱ〜い!ブレザーのボタンください!」
女生徒2「ずるい!私も欲しい!」
曜「ん〜だめ〜」
モブ「なんでですか〜!私浦の星時代からのファンなのに〜」
曜「あげたい人がいるんだ」
曜「え〜と…あ、いたいた!善子ちゃん!!」
善子「…あ?」
思わず柄の悪い声がでた。まさかこの人混みで私を見つけてくれるなんて、思わなかった。
女生徒2「ずるい!私も欲しい!」
曜「ん〜だめ〜」
モブ「なんでですか〜!私浦の星時代からのファンなのに〜」
曜「あげたい人がいるんだ」
曜「え〜と…あ、いたいた!善子ちゃん!!」
善子「…あ?」
思わず柄の悪い声がでた。まさかこの人混みで私を見つけてくれるなんて、思わなかった。
24: 2021/06/07(月) 22:49:55.11 ID:EYsUOGLP
曜「しっかりとってよ〜!ヨーソロー!」
曜はブレザーのボタンを豪快に千切って、私に向かって指で弾いて飛ばしてきた。
善子「いたっ!」
キャッチし損ねて頭にぶつかったけど、地面に落とす前には掴めた。
曜「あげる!大事にしてよね」
女生徒3「ずるい〜〜〜〜」
曜「ずるくないよ?」
曜「元々あげるって決めてたんだ」
曜はブレザーのボタンを豪快に千切って、私に向かって指で弾いて飛ばしてきた。
善子「いたっ!」
キャッチし損ねて頭にぶつかったけど、地面に落とす前には掴めた。
曜「あげる!大事にしてよね」
女生徒3「ずるい〜〜〜〜」
曜「ずるくないよ?」
曜「元々あげるって決めてたんだ」
25: 2021/06/07(月) 22:53:24.34 ID:EYsUOGLP
私にくれたの?でもなんで?
私にとっては曜は…かけがえのない大切で大好きな人。
でも曜は…あのとおりよ。大勢に囲まれる人気者。
曜にとって私は『沢山いる大事な人たちの中の1人』くらいの認識なんじゃないかって思ってた。
『あれだけ一緒の時間を過ごしておいて、何言ってるの?』って思うかしら?
だってそうじゃない。
曜は名前の通り、いつだってキラキラ輝いてる人。
誰にだって優しい。
でも、ボタンをくれたの。私に。
だったらもう、言うしかないじゃない。
私にとっては曜は…かけがえのない大切で大好きな人。
でも曜は…あのとおりよ。大勢に囲まれる人気者。
曜にとって私は『沢山いる大事な人たちの中の1人』くらいの認識なんじゃないかって思ってた。
『あれだけ一緒の時間を過ごしておいて、何言ってるの?』って思うかしら?
だってそうじゃない。
曜は名前の通り、いつだってキラキラ輝いてる人。
誰にだって優しい。
でも、ボタンをくれたの。私に。
だったらもう、言うしかないじゃない。
26: 2021/06/07(月) 22:54:00.74 ID:EYsUOGLP
善子「曜!卒業おめでとう!」
善子「好き!あなたが大好きなの!ずっと一緒にいたい!!」
花丸「善子ちゃん…」
ルビィ「だ、大胆…」
曜「善子ちゃん…」
曜「ごめん、君たちちょっどいて。ごめんね」
曜は人混みをかき分けて、私の方に走ってきた。
善子「好き!あなたが大好きなの!ずっと一緒にいたい!!」
花丸「善子ちゃん…」
ルビィ「だ、大胆…」
曜「善子ちゃん…」
曜「ごめん、君たちちょっどいて。ごめんね」
曜は人混みをかき分けて、私の方に走ってきた。
27: 2021/06/07(月) 22:54:36.20 ID:EYsUOGLP
曜「私たちまだ10代だよ?ずっと一緒って、気が早くない?」
善子「…早くないもん」
曜「これから互いにいろんな出会いがあるよ?」
善子「関係ないもん」
曜「じゃあさ、賭けようか」
善子「賭け?」
何を言い出すんだろう。
私「好き!」曜「良いよ!」じゃないの!?賭けって何よ。
善子「…早くないもん」
曜「これから互いにいろんな出会いがあるよ?」
善子「関係ないもん」
曜「じゃあさ、賭けようか」
善子「賭け?」
何を言い出すんだろう。
私「好き!」曜「良いよ!」じゃないの!?賭けって何よ。
28: 2021/06/07(月) 22:55:10.98 ID:EYsUOGLP
曜「何歳かな…2…28歳。28歳までにお互い良い人と出会わなかったら、一緒に住もう」
曜「どうかな?」
善子「好きなんだもん…そんな賭け、乗るしかないじゃない…」
でも。待てない。後10年もあるじゃない。
馬鹿じゃないの曜!
曜「賭け成立だね。あ、ボタンあげたよね?私も一つ欲しいものがあるんだ」
善子「何y…」
曜「どうかな?」
善子「好きなんだもん…そんな賭け、乗るしかないじゃない…」
でも。待てない。後10年もあるじゃない。
馬鹿じゃないの曜!
曜「賭け成立だね。あ、ボタンあげたよね?私も一つ欲しいものがあるんだ」
善子「何y…」
29: 2021/06/07(月) 22:56:07.17 ID:EYsUOGLP
言い終わる前に、私の唇には曜の唇が重ねられた。
曜「これだけは譲れないからさ。賭け以前に」
善子「はわわわわ……」
曜「じゃあね、善子ちゃん。10年後までごきげんよう」
曜「これだけは譲れないからさ。賭け以前に」
善子「はわわわわ……」
曜「じゃあね、善子ちゃん。10年後までごきげんよう」
30: 2021/06/07(月) 22:56:43.97 ID:EYsUOGLP
善子「ば、馬鹿〜〜〜〜!!!」
それから、曜は私の前に姿を見せなかった。
半年に一回開催しているAqoursの同窓会にも、
大学校に通っているであろう4年間は顔を出さなかった。
それで良いいと思ってる。
もし会ってしまったら、私は多分、気持ちを抑えられない。
そして、あの賭けが始まり5年が経とうとした頃、止まっていた私の…いや、私たちの時間が動き出す。
それから、曜は私の前に姿を見せなかった。
半年に一回開催しているAqoursの同窓会にも、
大学校に通っているであろう4年間は顔を出さなかった。
それで良いいと思ってる。
もし会ってしまったら、私は多分、気持ちを抑えられない。
そして、あの賭けが始まり5年が経とうとした頃、止まっていた私の…いや、私たちの時間が動き出す。
31: 2021/06/07(月) 23:00:37.27 ID:EYsUOGLP
〜善子 21歳〜
善子「良い天気ね」
善子「最近仕事が安定してきたし、ついにiPadProに手を出してしまったわ……」
善子「帰ったらさっそくYouTubeで『iPadを買ったら最初にやるべき設定』動画を見ないとね」
善子「…………んん!?」
買い物帰り、駅から家までの道を歩いていた時、横のホテルの前に私のファーストキスを奪った人の顔がある。
…制服を着て。
善子「良い天気ね」
善子「最近仕事が安定してきたし、ついにiPadProに手を出してしまったわ……」
善子「帰ったらさっそくYouTubeで『iPadを買ったら最初にやるべき設定』動画を見ないとね」
善子「…………んん!?」
買い物帰り、駅から家までの道を歩いていた時、横のホテルの前に私のファーストキスを奪った人の顔がある。
…制服を着て。
32: 2021/06/07(月) 23:01:53.08 ID:EYsUOGLP
曜「や!善子ちゃん!」
曜「やっと卒業後の世界一周研修が終わってさ、束の間の自由の身ってやつなんだ」
善子「は〜〜〜〜!?!?」
善子「なんなのよもう!!ずっと顔一つ見せず連絡一つせず!!こんな公衆の面前でずっと待ってたの!?」
曜「この格好で来たから、奇異の目で見られてね」
曜「ちょっと挫ける寸前だったよ」
善子「挫けてなさいよ!バカ!」
善子「で…今更何しに来たの?」
声は荒くなったが、自分でも思っている以上に、冷静だった。
曜「やっと卒業後の世界一周研修が終わってさ、束の間の自由の身ってやつなんだ」
善子「は〜〜〜〜!?!?」
善子「なんなのよもう!!ずっと顔一つ見せず連絡一つせず!!こんな公衆の面前でずっと待ってたの!?」
曜「この格好で来たから、奇異の目で見られてね」
曜「ちょっと挫ける寸前だったよ」
善子「挫けてなさいよ!バカ!」
善子「で…今更何しに来たの?」
声は荒くなったが、自分でも思っている以上に、冷静だった。
33: 2021/06/07(月) 23:02:29.06 ID:EYsUOGLP
曜「あの日のミスドの答え合わせだよ」
善子「え?」
私が疑問を唱えたその瞬間、曜の指からキラキラしたものが弾かれた。
善子「わ!わ!ちょ!」
曜「お!今度は取れたね」
善子「え、これって…?」
自分でも驚いた。
思わず涙がこぼれた。
こんな体験は、初めてだった。
善子「え?」
私が疑問を唱えたその瞬間、曜の指からキラキラしたものが弾かれた。
善子「わ!わ!ちょ!」
曜「お!今度は取れたね」
善子「え、これって…?」
自分でも驚いた。
思わず涙がこぼれた。
こんな体験は、初めてだった。
35: 2021/06/07(月) 23:03:52.62 ID:EYsUOGLP
曜「綺麗な指輪でしょ?」
善子「善子ちゃんに似合うよ。お金、貯めてたんだ」
善子「嘘でしょ……」
曜も、ずっと想ってくれていたのだ。
私と同じように…いや、自分の進路の一要因にするくらいに、私のことを…
善子「嬉しい…」
曜「賭けはね、私の負け!」
曜「我慢できなかった!」
曜「善子ちゃんが他の人の恋人になるなんて、考えたくない」
善子「あたり前でしょう!!その言葉そのまま曜に返す!!」
善子「善子ちゃんに似合うよ。お金、貯めてたんだ」
善子「嘘でしょ……」
曜も、ずっと想ってくれていたのだ。
私と同じように…いや、自分の進路の一要因にするくらいに、私のことを…
善子「嬉しい…」
曜「賭けはね、私の負け!」
曜「我慢できなかった!」
曜「善子ちゃんが他の人の恋人になるなんて、考えたくない」
善子「あたり前でしょう!!その言葉そのまま曜に返す!!」
36: 2021/06/07(月) 23:04:33.03 ID:EYsUOGLP
曜「ずっと一緒にいて欲しい」
曜「…良いよね?」
答えるまでも、なかった。
曜「…良いよね?」
答えるまでも、なかった。
37: 2021/06/07(月) 23:06:04.91 ID:EYsUOGLP
〜善子 24歳 曜 25歳〜
曜「ーーーーーちゃん。よっちゃん。よーしーこーちゃん」
善子「はわぁ!!曜!帰ってきてたの!?今!?」
曜「テーブルに伏せてずっと寝てるんだもん。かわいいからしばらく眺めてたけど、寂しかったから声かけた」
善子「…解説どうも」
曜「考え事?」
曜はもう部屋着になっていた。
帰ってきてから結構時間が経っていたらしい。
曜「ーーーーーちゃん。よっちゃん。よーしーこーちゃん」
善子「はわぁ!!曜!帰ってきてたの!?今!?」
曜「テーブルに伏せてずっと寝てるんだもん。かわいいからしばらく眺めてたけど、寂しかったから声かけた」
善子「…解説どうも」
曜「考え事?」
曜はもう部屋着になっていた。
帰ってきてから結構時間が経っていたらしい。
38: 2021/06/07(月) 23:06:46.55 ID:EYsUOGLP
善子「今日ね、初めて曜とミスドに行った時の夢を見たの。だから、少し昔を思い出していたわ」
曜「懐かしいね。私も大学校で辛い時はよくあの頃を思い出してたよ」
善子「あら、曜は辛い時に思い出すのね」
曜「善子ちゃんは違うの?」
善子「私はね、幸せな時に思い出すの。あの頃があったから今の私たちがある。
善子「今ある当たり前の幸せに感謝したくて、思い出すのよ」
曜「それ良いね。もらった」
善子「ふふ、あげた!」
曜を待つ時間は嫌いじゃない。
でも、やっぱり一緒に過ごす時間は大好き。
曜「懐かしいね。私も大学校で辛い時はよくあの頃を思い出してたよ」
善子「あら、曜は辛い時に思い出すのね」
曜「善子ちゃんは違うの?」
善子「私はね、幸せな時に思い出すの。あの頃があったから今の私たちがある。
善子「今ある当たり前の幸せに感謝したくて、思い出すのよ」
曜「それ良いね。もらった」
善子「ふふ、あげた!」
曜を待つ時間は嫌いじゃない。
でも、やっぱり一緒に過ごす時間は大好き。
39: 2021/06/07(月) 23:07:27.19 ID:EYsUOGLP
善子「ねえ曜」
曜「なぁに?善子ちゃん」
善子「私、高校の頃までずっと不幸体質って言ってたでしょ?」
曜「ちょっとうざいし、軽く引くくらい言ってたね」
善子「うざいはひどい!」
善子「でもね不幸体質で良かったって今は思うの」
曜「へえ、なんで?」
曜「なぁに?善子ちゃん」
善子「私、高校の頃までずっと不幸体質って言ってたでしょ?」
曜「ちょっとうざいし、軽く引くくらい言ってたね」
善子「うざいはひどい!」
善子「でもね不幸体質で良かったって今は思うの」
曜「へえ、なんで?」
40: 2021/06/07(月) 23:09:14.65 ID:EYsUOGLP
善子「人生の幸・不幸の収支が同じなら、今こうしてあなたと居られる時間はあの不幸があったからだと思うの」
善子「だから私、不幸で良かったと思ってる」
曜「じゃあ、不幸に戻らないように少し遠慮しようか?」
善子「馬鹿…そんなの許さないわよ」
曜「えへへ、許されたら困ってたよ」
曜「ねえ、善子ちゃん」
善子「何よ、曜」
曜「愛してる」
善子「だから私、不幸で良かったと思ってる」
曜「じゃあ、不幸に戻らないように少し遠慮しようか?」
善子「馬鹿…そんなの許さないわよ」
曜「えへへ、許されたら困ってたよ」
曜「ねえ、善子ちゃん」
善子「何よ、曜」
曜「愛してる」
41: 2021/06/07(月) 23:10:35.89 ID:EYsUOGLP
……本当に、ずるい人!
善子「私もよ。愛してる」
その日と次の日、私と曜は会えない時間を埋めるように幸せで濃密な時間を過ごした。
二人で街を歩いた。もうあのミスドはないけれど、残っている景色は他にもたくさんある。
私の運転でドライブもした。車はお父さんから借りて、二人で浦の星の跡地も見に行った。
夜は抱き合って眠った。パジャマ越しに伝わる曜の体温が愛おしい。
曜「離したくないなぁ」
善子「離されたくないわ」
善子「私もよ。愛してる」
その日と次の日、私と曜は会えない時間を埋めるように幸せで濃密な時間を過ごした。
二人で街を歩いた。もうあのミスドはないけれど、残っている景色は他にもたくさんある。
私の運転でドライブもした。車はお父さんから借りて、二人で浦の星の跡地も見に行った。
夜は抱き合って眠った。パジャマ越しに伝わる曜の体温が愛おしい。
曜「離したくないなぁ」
善子「離されたくないわ」
42: 2021/06/07(月) 23:12:06.94 ID:EYsUOGLP
朝起きると、曜はもう仕事に向かっていた。
曜が薄情なわけではなく、私が起きなかっただけだろう。
やっぱり、曜がいない時は無意識に不安なのかも。
きっと、曜がいたから安心して寝過ぎてしまったんだ。
善子「作って行ってくれたんだ…」
テーブルには曜お手製ヨキソバがおいてある。
あーあ、やっぱり『いってらっしゃい』は言いたかった!
曜が薄情なわけではなく、私が起きなかっただけだろう。
やっぱり、曜がいない時は無意識に不安なのかも。
きっと、曜がいたから安心して寝過ぎてしまったんだ。
善子「作って行ってくれたんだ…」
テーブルには曜お手製ヨキソバがおいてある。
あーあ、やっぱり『いってらっしゃい』は言いたかった!
43: 2021/06/07(月) 23:15:50.57 ID:EYsUOGLP
でも良いの。この当たり前の日常の1ページを、これから何百何千と繰り返すんだから。
そっと、あの日、あの場所で投げられた指輪とは違う、
曜とお揃いの指輪を右手で撫でた。
少しだけ、少しだけ寂しい時の…今のクセだ。
そっと、あの日、あの場所で投げられた指輪とは違う、
曜とお揃いの指輪を右手で撫でた。
少しだけ、少しだけ寂しい時の…今のクセだ。
44: 2021/06/07(月) 23:16:34.24 ID:EYsUOGLP
善子「さ!今日も一日、頑張ろう!」
それが私と、曜のこれからなんだ。
完
それが私と、曜のこれからなんだ。
完
45: 2021/06/07(月) 23:54:02.51 ID:Fq1zkywe
ヨキかな
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1623072697/