【SS】しずく「刹那に伝う涙の雫」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 20:53:17.24 ID:Ek1L4xsJ
しずせつ

2: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 20:54:30.98 ID:Ek1L4xsJ
部室


かすみ(……)

歩夢「…」ニコニコ

かすみ「…歩夢せーんぱいっ」ダキッ

歩夢「ひゃ!?か、かすみちゃん?何?」ドキッ

かすみ「何?はこっちの台詞ですよ。そんなニコニコして生徒手帳なんか見て…」チラッ

歩夢「あ、こ、これは…」

かすみ「…あぁ…」

歩夢「何その反応っ、い、言いたいことがあるなら言って!」

かすみ「…そのおまじない、信じてる人いたんですねぇ」

歩夢「~~~///」ポカポカ

かすみ「ちょ!言って良いって、や、やめてください!」

かすみ(痛くはないけど!)

歩夢「信じててもいいでしょ、別に!///」ポカポカ

かすみ「わ、分かりましたから!かすみんが悪かったです!」

しずく「…」ペラッ

3: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 20:56:59.50 ID:Ek1L4xsJ
かすみ「でもそれ、隠してないと意味ないんじゃなかったですか?」

歩夢「ぅ…いいんだもん、お守りみたいなものだし…」

しずく「確か本人に気付かれなければいいんですよ」

かすみ「あ、そうなの?っていうかしず子いたの」

しずく「ずっと居たよ」ペラッ

歩夢「静かだったからね。それ、台本?」

しずく「はい、今度の文化祭で劇をやるので」

かすみ「へぇ…両立大変だねぇ」

しずく「大変だけど、好きだから楽しいよ?」

歩夢「しずくちゃんらしいね」


ガチャ

侑「ごめん、おまたせー」

歩夢「あ、侑ちゃん。お疲れ様」

侑「うん」

5: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:00:41.20 ID:Ek1L4xsJ
侑「…歩夢、また手帳の中見てたでしょ」

歩夢「!?、あ、手帳仕舞い忘れて…」

しずく「また、ってことは…」

かすみ「隠す気ありませんよねもう。ていうか歩夢先輩はそれやる意味あります?」

歩夢「いいのっ///」

侑「こういう分かりやすいところも可愛いんだよね」

しずく「ふふ♪」

かすみ「悔しいけど確かにかわいいですね…」

歩夢「やめてよ///」

侑「それよりまだみんな集まってないんだね。てっきり私が最後かと思ったよ」

かすみ「転科の手続きだったんですか?」

侑「うん、そんなところ」

しずく「お疲れ様です。あ、今のうちに彼方さん探して連れてきますね」

侑「ありがとう、お願いね」

しずく「はい」

ガチャ

バタン

7: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:02:27.44 ID:Ek1L4xsJ
校舎裏付近


しずく(今日は天気もいいしこの辺かな)

しずく(……)

彼方「……」スヤスヤ

しずく(…あ、居た)

しずく「彼方さん」ポンポン

彼方「…ぅん…?」

しずく「おはようございます」

彼方「…ぁ、しずくちゃん…おはよぉ~」

しずく「そろそろ練習の時間ですよ」

彼方「そっか…いつもありがと~」ニコ

しずく「いえいえ」

「…、……」

「~~~、~~~」

しずく(…?…あれ、何か話し声が…)

8: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:04:19.80 ID:Ek1L4xsJ
彼方「しずくちゃん?行かないの~?」

しずく「…すみません、先に行っててください」

彼方「…?、分かったよ~」






しずく(……この声、やっぱり)

しずく(こんな学校の隅で何してるのかな)

しずく(こっちの方から…)

チラッ

しずく(!!)



女生徒A「せつ菜ちゃんのことが好きなんです!私と付き合ってください!」

せつ菜「…っ」

しずく(え…)

しずく(告白されてる…せつ菜さんが…)

女生徒A「…ダメですか?」

せつ菜「…ごめん、なさい…」

9: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:06:10.28 ID:Ek1L4xsJ
女生徒A「っ、そ、そうですよね!あ、あはは、うん、わかってた」ウルッ

せつ菜「…!、あ、あの」

女生徒A「さようなら!ありがとうございました!」ダッ

しずく(こっちに来る!?隠れないとっ)サッ

せつ菜「…ぁ…」

せつ菜「……」



女生徒A「…」グスッ

女生徒B「…どんまい」ポンポン

女生徒A「…そりゃ、無理だよね…分かってたけど、辛いなぁ…」ポロポロ

女生徒C「…あんたはがんばったよ。帰り、どこか寄って行こ」

女生徒A「…うん」

しずく(………)

しずく(…せつ菜さんは…)チラッ

せつ菜「……」

せつ菜「……ぃ…」ツー

しずく(―――っ!)

12: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:08:36.86 ID:Ek1L4xsJ
―――その姿を見た瞬間、逃げるように走り出していた

―――ずっと見ておいて、ようやく見てはいけない場面だと気が付いた

―――最後の声は小さく、俯いてたせいで言葉は聞き取れなかった

―――でも確かに見た、頬を伝う涙

―――振られた方はともかく振った方が何故?

―――それと…


しずく(生の告白の場面なんて初めて見た…それも、近しい人の)

しずく(せつ菜さんって、やっぱりモテるんだ)

しずく(よくあることなのかな…)





ガチャ

しずく「…」

かすみ「あ、しず子も来た」

彼方「さっきはどうしたの~?」

しずく「……ちょっと野暮用を思い出しただけです」

彼方「そう?」

歩夢「…?」

14: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:12:24.54 ID:Ek1L4xsJ
侑「ま、これでほぼ揃ったね」

愛「後はせっつーだけ?」

果林「んー、そうね」

エマ「生徒会かな?」

璃奈「たぶん?」


バタン!

せつ菜「すみません!遅くなりました!!」

しずく「っ!」ビクッ

かすみ「もう!その勢い毎回ビックリするのでやめてください!」

せつ菜「えへへ、すみません!」ペカー

かすみ「なんで嬉しそうなんですかぁ!」

しずく(完全にいつも通り。せつ菜さんが泣いてたって言っても誰も信じなさそう)


―――じゃあさっきのは私の見間違い?

―――ううん、一瞬しか見えなかったけどそれはない

15: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:14:43.58 ID:Ek1L4xsJ
―――泣いてるところが想像できないからって泣かないなんて思ってない

―――例えば愛さんもかすみさんも普段明るいけれど、暗いところを見せないだけ

―――でもせつ菜さんはもっと感情を真っ直ぐ出す人だと思ってた

―――陰で泣く人だとは思わなかった

―――誰だって隠したい気持ちはある。そんなの当たり前なのに

―――ただ、あの場面で泣いたせつ菜さんの気持ちだけが本当に分からなくて…


かすみ「おーい、しず子?」

しずく「…へ?何?」

かすみ「いや練習始めるけど、着替えないの?」

せつ菜「もしかして体調悪いんですか?」

しずく「っ、いえ、大丈夫です。すぐ着替えますから」

せつ菜「…?」

侑「じゃあそろそろ行こっか。しずくちゃんも急がなくていいからね」

しずく「はい」

――――
―――
――

16: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:15:57.48 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「今日もお疲れ様でした!」

かすみ「あ~ん、疲れましたぁ…」

侑「あはは、かすみちゃんもお疲れ様」

かすみ「侑せんぱい~」ダキッ

侑「わわ…よしよし」ナデナデ

かすみ「えへへ♪」

歩夢「むぅ…」

侑「ほら、歩夢もお疲れ!」ナデナデ

歩夢「あ…えへへ///」

愛「ゆうゆって結構女たらしの素質あるよね」

璃奈「うん…愛さんみたい」

愛「え!?」

璃奈「冗談」

愛「もう、りなりーってばー」アハハ

しずく「……」

17: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:18:36.74 ID:Ek1L4xsJ
歩夢「ほんとに戸締りと片付け任せちゃっていいの?」

せつ菜「はい!私はもう少し後で帰るので!」

侑「そっか、ならお言葉に甘えちゃおうかな」

かすみ「お疲れ様です~!」

しずく「お疲れ様です」

せつ菜「お気をつけて!」







しずく(……)

しずく(…気になって戻ってきちゃった)


―――せつ菜さんは時々こうやって1人で残ることがあった

―――今まであまり気にしたこともなかったけど、今日は話が違う

―――もしかしたらせつ菜さんが残る日ってこういう日…?


しずく(……)ソー

18: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:20:32.97 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「……」

しずく(何してるのかな…)

しずく(何か読んでる…手紙みたいだけど、ファンレターかな)

しずく(それとも、ラブレター…?)

せつ菜「……」ツー

しずく(っ…また、泣いてるの?)

せつ菜「……」ゴシゴシ

しずく(……せつ菜さん)

せつ菜「……」

しずく(ほんの少しだけど、やっぱり泣いてる)

しずく(一瞬。すぐに表情には出なくなる)

しずく(…声を掛けてあげたい。でもできない)

しずく(今出て行って私になにができるの?)

しずく(せつ菜さんのことをもっと分かってあげられたら違ったんだけど)

20: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:23:24.76 ID:Ek1L4xsJ
しずく(…これ以上はやめよう)

しずく(私、何やってるんだろう…)

しずく(こんなのせつ菜さんに失礼だよ…)

しずく(勝手に盗み見るようなことをして)

しずく(理由も分からないのに勝手に同情して。私、最低だ)

しずく(せつ菜さん…ごめんなさい…)

しずく(…帰ろ)


―――ねぇ、せつ菜さん

―――あなたは何が悲しくて泣いてるんですか?

―――こうやっていつも一人で泣いてるんですか?

―――私たち同好会のみんなでは、力になれませんか?

―――私とあなたの間には扉が一枚あるだけなのに

―――計り知れない心の距離が、あなたのことをとても遠く感じさせるの


――――
―――
――

21: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:25:35.78 ID:Ek1L4xsJ
しずく自室


しずく「……」

しずく(何かしてあげられないのかな)

しずく(自己満足かもしれない。おせっかいかもしれないけれど)

しずく(知ってしまったのに無視するなんてできない)

しずく(…でも、どうするの?)

しずく(まさか正直に話すわけにはいかないし…)ポチ


―――スマホの画面には、ずっとせつ菜さんの連絡先が映ったまま

―――それを眺めることだけしかできず、思考は堂々巡り


しずく(とはいえなんの理由もなく電話するのも不自然だよね…)

『…もしもし?』

しずく「きゃああ!?」

『うわっ!なんですか!?』

しずく「せ、せつ菜さん!?」

菜々『は、はい。私ですけど…』

しずく(え、なに!?電話繋がってる!?私無意識に押してた!?)ドキドキ

22: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:28:16.39 ID:Ek1L4xsJ
しずく(どうしよう、どうしよう…何か考えないとっ)

菜々『珍しいですね、しずくさんから私に電話なんて』

しずく「あ、そ、そうですねっ」

菜々『それで、何か御用ですか?』

しずく「え、えーっと、あの、その、た、大した用はないんですけど!」アセアセ

菜々『…?』

しずく(無理だよ、何も思いつかない!)

菜々『何か相談事ですか?』

しずく「え…?」

菜々『なんとなく話しづらそうですし…』

しずく「それは…」

菜々『今日の部活中のしずくさんが、どこか元気なさそうに見えたので』

しずく(あれ…逆に心配されちゃった…)

23: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:31:08.56 ID:Ek1L4xsJ
しずく(…でも、ちょうどいいかも)

しずく「…はい、実は聞いていただきたいことがありまして」

菜々『聞くのが私なんかでよかったら、何でも言ってください』

しずく「ありがとうございます。…これは友達の話なんですけど」

菜々『…』

しずく(って、ダメ!これ本当は別の人の話するときの常套句!)

しずく「い、いや、違いますよ?本当に友達の話で!」アセアセ

菜々『私まだ何も言ってませんよ?』クス

しずく「~~~っ///」

菜々『…ぷっ、あは、あははは!』

しずく「笑わないでくださいっ///」

菜々『す、すみません。分かりました。続けてください…ふふっ』

しずく「最悪です///」

しずく(だけど、笑ってくれた。少しでも元気になってくれるならなんでもいい)

24: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:34:01.00 ID:Ek1L4xsJ
しずく「この間、偶然友達が悩みを抱えてることを知ったんですけど」

しずく「ずっと一人で抱え込んでて、相談してくれる気配がないんです」

菜々『……』

しずく「私やほかの友達と接する時は、なんでもないように振る舞うので」

しずく「きっと本人は知られたくないことで、私からも切り出せないままで」

しずく「でも、どうしても放ってはおけなくて…私、どうするのが正解でしょうか」

菜々『……』

しずく(露骨すぎたかな…)

菜々『…それってもしかして』

しずく(バレたらバレたで、もうなんとでもなっちゃえ、と思ったけど…)

菜々『かすみさんのことですか?』

しずく「え」

菜々『かすみさんもあれで、本当に悩んでることは表には出さない人なので』

しずく「…いえ、かすみさんのことではありませんけど、まぁそういう人です」

菜々『あ、そうでしたか』

しずく(まさか本人に相談するとは思わないかな…)

25: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:38:39.97 ID:Ek1L4xsJ
菜々『あまり私も偉そうに言えるほど人の心は分からないので』

菜々『私なら、という視点で言わせてもらいますけど』

菜々『多分、普通に傍にいてほしいって思います』

しずく「傍に…?」

菜々『はい。特に何かを求めたりはしません』

菜々『なんでもないように振る舞うというなら』

菜々『しずくさんの言う通り、きっと知られたくはないことだと思います』

しずく「そう、ですよね」ズキッ

菜々『そのうえで、普段通りの空気を求めてるんだと思います』

菜々『いつもみたいに話して、笑い合う、みたいな…』

菜々『そういう何気ない、変わりない日常の拠り所であってほしいと』

菜々『話しても困らせるだけ、余計な心配かけてしまうのを避けてるのではないでしょうか』

しずく「………なるほど」

しずく(事実、私は何もできない…)

26: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:41:24.72 ID:Ek1L4xsJ
菜々『相談してもらえない理由は本人にしか分からないので何とも言えませんが』

菜々『ずっと悩んでるということは多分解決方法が分からないんです』

菜々『そんな状態ではいつか耐え切れなくなってしまいます』

しずく「……」

菜々『意識してか無意識か、隠しきれずに周囲に零してしまうかもしれません』

菜々『だから傍にいて、見守って、そのサインを見逃さないであげてください』

菜々『…なんて、もう一度言いますが、私の考えであって正しいかは分かりません』

菜々『結論今は何もしないというだけなので。期待外れでしたらすみません』

しずく「…そんなことありません」

しずく「ありがとうございます。せつ菜さんに相談できてよかったです」

菜々『どういたしまして』

27: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:43:41.94 ID:Ek1L4xsJ
しずく(一応これがせつ菜さんの本音だとしてもどうしよう)

しずく(これで明日からせつ菜さんのことを気にかけてたら)

しずく(今度こそ嘘がバレちゃうかな…)

しずく(結局のところ、私にできることは何もなくて)

しずく(気付いてない振りをして普段通りの私を演じるしかないの?)

しずく(…せつ菜さんがそうしてって言ってるんだから)

しずく(それでいいんだよね)

しずく「……」

菜々『…しずくさん?どうかしましたか?』

しずく(…それでも、せめて今だけでも)

しずく「せつ菜さん、今お暇でしょうか」

菜々『え?…まぁ、特に何もしてないので暇と言えば暇ですね』

しずく「よろしければこのまま少しお話相手になっていただけませんか?」

菜々『あぁ、そういうことでしたらもちろん構いませんよ』

28: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:44:56.87 ID:Ek1L4xsJ
しずく「では早速。昨日のアニメはもう見ました?」

菜々『!!』

菜々『見てるんですか!?』

しずく「せつ菜さんがすごく推すので気になって♪」

菜々『そうなんですね!嬉しいです!面白いですよね!?』

しずく「はいっ。毎回毎回引き込まれちゃいますね」

菜々『ですよね!毎話本当に面白くて!1週間が長く感じてしまいます!』

しずく「ふふ、同感です♪」

しずく(せつ菜さんが見えないところで悲しむというなら)

しずく(その分元気を分けてあげるしかない)

菜々『まさか語り合える相手ができるなんて…興奮が抑えられません!』

しずく「それは良いんですけど、声は抑えたほうがいいかもしれませんね」クス

菜々『はっ!…すみません、つい…///』

しずく(分からないなら分からないなりに、できることをしなきゃ)




29: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:47:49.11 ID:Ek1L4xsJ
菜々『…だから、ライバルとの共闘が一番熱い展開だと思うんです』

しずく「…ほんとにそうでしょうか?」

菜々『!?』

しずく「亡き親友の技を借りて敵討ち。私はこっち派ですね」

菜々『むむ…』

しずく「むむむ」

菜々『…あは』

しずく「…あははっ」

菜々『楽しいです!ずっとこういう会話を誰かとしたかったんです!』

しずく「私でよろしければ、いつだってお付き合いしますよ♪」

菜々『本当ですか?』

しずく「はい。私もこういうの好きですから」

菜々『そんな……しずくさん……好きです。結婚してください』

しずく「へ!?///」

菜々『……ふふ、冗談です。半分くらい』

しずく「急に何を言ってるんですかもうっ///」




30: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:49:30.29 ID:Ek1L4xsJ
菜々「そういえば文化祭で演劇やるんですよね?」

しずく『あ、そうなんです』

菜々「今回はどういうお話なんですか?」

しずく『えっと、2人の幼馴染同士の子がメインの物語で』

菜々「はい」

しずく『アイドルを目指す子と、それを応援する子なんですけど』

菜々「…はい」

しずく『お互い、相手に秘めた恋心を持ってるんです』

菜々「…」

しずく『一方は自分の気持ちよりも好きな人の夢を優先したくて』

しずく『一方は相手と結ばれるためなら夢を諦めても構わない』

しずく『そんな好意のすれ違いのお話です』

菜々(なんとなく、知ってるような…)

菜々「ちなみに、その二人の役名は…?」

しずく『ユウコとアユミです』

菜々(…アウトです!)

32: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:51:48.93 ID:Ek1L4xsJ
菜々「これ脚本考えたのしずくさんですか?」

しずく『え、違いますけど』

菜々「では一体誰が…?」

しずく『多分うちの部長だと思います』

菜々「そうですか…」

菜々(そもそも侑さんと歩夢さんのいざこざを知ってるのは私だけのはず)

菜々(微妙に違いますが、まるであの二人の関係を模したような話)

菜々(演劇部の部長さんが怖いんですけど…)

菜々(にしても…好意のすれ違い…ですか…)

菜々(……)

しずく『…?、どうかしました?』

菜々「…いえ、なんでも。いいお話だと思います。とても興味が湧きました」

菜々「また今度台本見せていただいてもいいですか?」

しずく『もちろんです』




33: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:53:38.39 ID:Ek1L4xsJ
しずく「はい。いえいえ、こちらこそ」

しずく「それでは…おやすみなさい」

プツッ

しずく「…ふぅ…」


―――せつ菜さんを元気づけるためにと思ってのことだったけど

―――途中からそんなことを忘れるくらい楽しんでた

―――せつ菜さんも同じ気持ちだったらいいな


しずく(でも、演劇の話はどうだろう…聞かれたから仕方ないんだけど)

しずく(今のせつ菜さんには、できるだけ恋愛関連の話は避けたかったな)

しずく(あの話の時だけなんとなく雰囲気が変わった気がする)

しずく(……気にし過ぎかな)

しずく(冗談で告白なんて言えるくらいだから、大丈夫だよね)

しずく(今日はもう寝よう)


――――
―――
――

34: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:55:51.52 ID:Ek1L4xsJ
数日後・演劇部


しずく「―――そんなことどうだっていいの!」

しずく「私は、あなたと一緒に居られないならアイドルなんて―――!」

演劇部部長「……」

部員A・部員B「……」

しずく「…?、あれ、私何か間違えましたか?」

演劇部部長「あ、ううん…そうじゃないんだけど」

演劇部部長「しずく、何かあった?」

しずく「え…?」

演劇部部長「いや、なんか今日のしずくはいつも以上に魂入ってるというか…」

部員A「普段の桜坂さんが良くないって話じゃないんだよ?」

部員B「でも今日は特別、真に迫る感じがあるよね」

しずく「意識してるつもりはないんですが…」

しずく(あんなことがあれば、無意識にでも気持ちは入っちゃうものなのかな)

演劇部部長「まぁすごく良いよ。この調子で本番までお願いね」

しずく「はいっ」




35: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:57:54.41 ID:Ek1L4xsJ
「「「お疲れ様でした!」」」

演劇部部長「はい、お疲れ様。気を付けて帰ってね」


「疲れたねー」

「でも、仕上がってきたよね」

「いい感じ」


しずく「……」

しずく「…部長、少しお時間いいですか?」

演劇部部長「ん?どうしたの?」

しずく「お聞きしたいことがあります」

演劇部部長「いいけど。恋愛相談?」

しずく「!?、ち、ちがいますよっ///」

演劇部部長「ありゃ、違うか。今日の様子からしててっきり…」

しずく「…今日の私、そんなに違います?」

演劇部部長「うん。なんか実際経験してきたかのような感じはあるかな」

しずく「……そういうわけではないんですけど、まぁいろいろありまして」

36: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 21:59:34.72 ID:Ek1L4xsJ
しずく「部長は誰かに告白されたことはありますか?」

演劇部部長「…やっぱり恋愛相談?」

しずく「違いますっ。私の話じゃないんです」

演劇部部長「ふうん…まぁいいけど。あるよ」

しずく「!…それを受けたことは?」

演劇部部長「ないかな」

しずく「…その、断るときってどういう気持ちになります?」

演劇部部長「…一応聞くけど、真面目に聞いてるんだよね?」

しずく「…すみません、本当は聞くようなことじゃないのは分かってます」

演劇部部長「ううん、そうだよね。変なこと言ってごめん」

演劇部部長「もちろん申し訳ない気にはなるよ」

演劇部部長「でもそれだけ。それ以上のことは考えない」

しずく「え?」

37: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:02:04.03 ID:Ek1L4xsJ
演劇部部長「二人の関係性にもよると思うけど」

演劇部部長「お互い引きずってもいいことはないよ」

演劇部部長「だから私は気にしない。忘れてあげるとまでは言えないけど」

演劇部部長「あと、振った人が振られた人にできることなんてないからね」

演劇部部長「同情も失礼だしそういうのは友達が励ましてあげないと」

しずく「……」

演劇部部長「冷たいって思う?」

しずく「いえ、分かる気がします」

演劇部部長「そ?よかった」

しずく「ありがとうございました。私もそろそろ帰ります」

演劇部部長「うん、お疲れ様」

演劇部部長(………ふむ)

38: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:04:33.14 ID:Ek1L4xsJ
しずく「…」テクテク

しずく(部長の言ってたことは分かる)

しずく(同情なんてしちゃいけないし、できることもない)

しずく(きっとそれはせつ菜さんも分かってる)

しずく(誰も居なくなった後に涙を流すのは多分別の理由がある)

しずく(気を遣うにしては度が過ぎてるし…)


ガラッ

しずく「?」

女生徒D「…」ダッ

しずく「きゃっ」

女生徒D「!、す、すみませ…っ」ポロポロ

しずく「あ、い、いえ…」

タッタッタ…

しずく(……今の子、泣いてた)

しずく(この光景前も見た…もしかして…)

39: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:05:57.28 ID:Ek1L4xsJ
―――空き教室から飛び出した女の子が走り去り

―――空いた扉からは聞き覚えのある声のすすり泣きが漏れる

―――この前とは違ってはっきり聞こえる


しずく(…ごめんなさいせつ菜さん、やっぱり無理です)

しずく(私には知らないふりはできません)


―――泣いた分だけ元気を分けてあげたらいい?

―――隠しきれなくなってから助けてあげる?

―――それじゃあ遅い

―――気持ちが分からないから、できることがないからって

―――目の前で泣いてる人を放ってはおけないよ

40: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:07:20.88 ID:Ek1L4xsJ
しずく「せつ菜さん」

せつ菜「!?」

しずく「…」スタスタ

せつ菜「な、え、なんで、ここに」ツー

しずく「…」スタスタ

せつ菜「あ、これは、なんでもなくて…」ゴシゴシ

しずく「もう、見ていられませんよ…」ダキッ

せつ菜「…っ」

しずく「せつ菜さんの気持ち全てを分かってはあげられないかもしれません」

しずく「でもお願いですから、一人で泣くのだけはやめてください」

せつ菜「…だって、私が泣くのは、おかしいじゃないですか…」グスッ

しずく「…」ギュッ

せつ菜「ごめんなさい…ごめんなさいっ…」




41: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:09:06.11 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「知ってたんですね…私のこと」

しずく「…たまたまなんです」

しずく「先日、せつ菜さんが校舎裏で告白されているところを見てしまって」

せつ菜「…」

しずく「でも、その後何もなかったかのように練習に来て」

しずく「かと思えば、練習後に一人で泣いて…」

しずく「本当は辛いのに、平気なふりをしてるんだと思ったら、私もう…」

しずく「ごめんなさい。本当は知られたくないことだったんですよね」

せつ菜「…しずくさんが電話をくれたのも同じ日でしたね」

しずく「……はい」

せつ菜「……」

しずく「…怒ってますか…?」オドオド

せつ菜「…逆です。私の事、そんなに気遣ってもらえてるとは思わなくて」ニコ

しずく「……」

42: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:11:48.01 ID:Ek1L4xsJ
しずく「やっぱり、理由は話してもらえないんですか?」

しずく「私にできることはありませんか…?」

せつ菜「…同好会が5人だった時の事、覚えてますか?」

せつ菜「あの時の私は、自分の『好き』の気持ちに間違いはないと思ってました」

せつ菜「ですが、それがかすみさんの『好き』を否定していたと知って」

せつ菜「自分のしていることが何なのかよく分からなくなって、前に進めなくなりました」

しずく「……」

せつ菜「でも侑さんに、皆さんに救ってもらえました」

せつ菜「好きの形が違ったとしても否定しなくて済むのなら」

せつ菜「もう二度と誰かの好きを否定するような自分にはなりたくなかったのに」

せつ菜「告白をされ、断るたびに、相手の人の悲しむ顔を見るたびに」

せつ菜「あの時のかすみさんの悲痛な表情が重なってしまうんです」

せつ菜「あぁ、私はまた誰かの『好き』を否定してるんだって」

せつ菜「否定しながら、見ないふりして、平気で自分の大好きだけを叫ぶんです」

43: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:14:00.73 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「そもそも振った側が被害者面して、何様なんでしょうね…」

せつ菜「本当に泣きたいのは相手の人だというのに」

せつ菜「失礼な話ですよね…自分でも馬鹿な事言ってる自覚はあります」

せつ菜「何と言おうと、結局は断ったことへの罪悪感なんですから」

しずく「そんな、こと…」

しずく(ないとは言えない。安易に分かるだなんて言えない)

しずく(気にしすぎ、考えすぎ、仕方ないことだって言ったって響かない)

しずく(人一倍『好き』の気持ちを大事にするせつ菜さんだからこそ悩んでしまう)

しずく(思っていた以上に、私はせつ菜さんのことを分かってあげられない)


―――歩み寄れば寄るほど気付かされる

―――心の距離は想像以上に遠くて


せつ菜「だからせめて皆の前では笑っていたいんです」

せつ菜「普段通りのスクールアイドル優木せつ菜でいなきゃいけないんです」

しずく(……そんなの寂しいよ)ウルッ

せつ菜「…ごめんなさい。やっぱり困らせてしまいますよね」

45: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:18:41.46 ID:Ek1L4xsJ
しずく「っ、私のことは構いません!困ってるのはせつ菜さんのほうじゃないですか!」

しずく「でも、無理に聞いておいて、この体たらくで、私のほうこそごめんなさい…」

せつ菜「…しずくさんは本当に優しいんですね」

せつ菜「あなたみたいな人にそこまで想ってもらえるだけでも十分です」

せつ菜「ありがとうございます」ニコッ

しずく「でも…私は何もできなくて…」ウルウル

せつ菜「何もしずくさんまで泣く事ないじゃないですか」ナデナデ

しずく「だって…だって…!」

・・・・・・

女生徒B「…どんまい」ポンポン

女生徒A「…そりゃ、無理だよね…分かってたけど、辛いなぁ…」ポロポロ

女生徒C「…あんたはがんばったよ。帰り、どこか寄って行こ」

女生徒A「…うん」

・・・・・・

しずく(さっき振られた子もきっと友達や家族が慰めてくれるけど)

しずく(一人理解されない悲しみを抱えるせつ菜さんの涙は誰が拭ってくれるの?)

46: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:20:36.00 ID:Ek1L4xsJ
―――何も言えない私と、何も言わずに隣に座るせつ菜さん

―――私が慰めに来たはずなのに、また逆に気を遣わせてしまった

―――どうしよもない虚無感と静寂の中、下校時刻のチャイムが鳴る


せつ菜「…そろそろ帰りましょうか」

しずく「…はい」

せつ菜「もう、そんな気にしないでくださいって!私は大丈夫ですから!」

しずく「……分かりました」

しずく(せつ菜さんはこういう雰囲気になるのが分かってたから隠してたんだよね)

しずく(私、から回ってばっかりだ…)

せつ菜「うーん…あ、そういえば文化祭でやる劇の台本を見せてほしいです!」

しずく「え?」

せつ菜「見せてくれるって約束してくれたじゃないですか!」

しずく「あ、そうでしたね」ゴソゴソ

しずく「どうぞ」スッ

せつ菜「ありがとうございます!」

47: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:22:37.06 ID:Ek1L4xsJ
しずく「持って帰ってゆっくり読んでください」

せつ菜「よろしいんですか?」

しずく「もう頭に入ってますから」

せつ菜「え、これ全部ですか!?」

しずく「え、まぁ…」

せつ菜「すごいです!さすがはしずくさんですね!」

しずく「お、大袈裟ですよ///」

せつ菜「いいえ、謙遜しないでください」

せつ菜「スクールアイドルも演劇もこなせるしずくさんのこと、尊敬してるんですよ?」

しずく「…ありがとうございます///」

せつ菜「えへへ、今夜の楽しみができました!」ペカー

しずく(…ふふ、楽しそう)

48: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:24:48.55 ID:Ek1L4xsJ
しずく「せつ菜さんってお芝居には興味ないんですか?」

せつ菜「好きではありますよ。機会があるならやってみたいです」

せつ菜「ただ、やるからには本気でやりたいのですが」

せつ菜「基本スクールアイドルと生徒会がありますから…」

しずく「そうですか…残念です」

しずく「せつ菜さん絶対演劇向いてると思うので…」

せつ菜「そうでしょうか。そう言ってもらえるのは嬉しいですが」

しずく「そうなんです!本当は演劇部に引き込みたいくらいなんですから!」ガシッ

せつ菜「わ、ちょ、落ち着いてください!」

しずく「あっ…///」スッ

せつ菜「…ふふっ、好きなことで熱くなるところ、私たちそっくりですね」

しずく「そうですね///」


――――
―――
――

49: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:27:13.47 ID:Ek1L4xsJ
翌日・演劇部



しずく「…え…当日出られない?」

演劇部部長「…ごめん。本当に急でどうしようもなくて」

部員A「え、どうするの」

部員B「だって私たち全員役あるから代役はムリだよ」

部員C「中止…?」

演劇部部長「最悪中止になっちゃうけどそれは避けたい」

演劇部部長「今日までのみんなの努力を無駄にしたくない」

部員A「でも…」

演劇部部長「…そこでしずく、代役に当てはない?」

しずく「…え、私ですか?」

演劇部部長「しずくの相手役になるから、まずはしずくに聞きたい」

演劇部部長「あまり本番まで時間がないから難しいと思うけど…」

しずく「……」

しずく「…あります。少し待ってください」




50: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:29:14.53 ID:Ek1L4xsJ
しずく「…もしもし、せつ菜さん?」

せつ菜『はい。どうしました?』

しずく「昨日、台本は読んでもらえました?」

せつ菜『あ、はい!思った通りすごく面白かったです!』

せつ菜『本番も見に行きますからね!』

しずく「…見るのではなく、出てみませんか?」

せつ菜『…え?』

しずく「せつ菜さん言ってましたよね、機会があるならやってみたいって」

せつ菜『…あぁ、昨日の話ですか?それが何か…?』

しずく「お願いがあります。私と一緒に演劇やってほしいです」

せつ菜『…はい?』

しずく「ワケあって1人代役が必要になってしまって」

しずく「せつ菜さんにそれをお願いしたいんです」

51: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:31:10.13 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜『なるほど…でも文化祭まで時間があまりありませんが…』

しずく「そこは私も、他の演劇部の皆さんも全力でサポートします」

せつ菜『それなら、少しやってみたいですね』

しずく「本当ですか?よかった…」

せつ菜『ちなみに私の役は?』

しずく「ユウコちゃん役です」

せつ菜『は!?いやいや、超重要な役じゃないですか!!』

せつ菜『やっぱり無理です!そんな大事な役私にはできません!』

しずく「だ、大丈夫ですよ、せつ菜さんならできますよ。私が保証します」

せつ菜『う…いや、それでもちょっと…責任重すぎます…』

しずく「…無理を承知で頼んでます。お願いします」

しずく「私、せつ菜さんと演劇やりたいです」

しずく「誰にでも頼めることじゃないんです。せつ菜さんだから…」

せつ菜『っ…その言い方は、ちょっとズルいです』

52: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:33:19.82 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜『そこまで言われたら、私も応えないわけにはいきませんね…』

しずく「…ありがとうございます!」パァ

せつ菜『お芝居に関しては右も左も分からないので、助けてくださいね?』

しずく「もちろんです。任せてください」

しずく「せつ菜さんを完璧な役者に育て上げてみせます!」

せつ菜『あ、あはは、お手柔らかに…』

しずく「とりあえず演劇部の部室に来てもらえますか?」

せつ菜『分かりました。すぐに行きます』






コンコン

ガチャ

せつ菜「失礼します…」ソー

部員「「「え!?優木せつ菜ちゃん!?」」」

せつ菜「えっ」ビクッ

53: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:35:05.12 ID:Ek1L4xsJ
部員A「うそ、本物?」

部員B「せつ菜ちゃんが代役なの?」


ザワザワ


せつ菜「しずくさん!伝えてくれてなかったんですか!?」

しずく「そのほうが皆さん驚くと思って」クスッ

せつ菜「そんなサプライズはいりませんよ!」

演劇部部長「はいはい、みんな落ち着いて」

演劇部部長「優木さん、ごめんなさい。急に無理を頼んでしまって」

せつ菜「いえいえ。むしろ私なんかに務まるか心配ですけど…」

演劇部部長「私たちもできるだけ教えるし、しずくの推薦なら問題ないと思ってるよ」

演劇部部長「とりあえず、一度演技をやってみせてくれる?」

せつ菜「は、はい。えっと、どうしたら…?」

しずく「私が相手になります。このシーンの掛け合い、いけます?」

せつ菜「んん…台本見ながらならなんとか…」

演劇部部長「うん、じゃあ好きなタイミングでどうぞ」

54: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:38:42.33 ID:Ek1L4xsJ
しずく「私はユウコちゃんのことが一番なの!ユウコちゃんは違うの!?」

せつ菜「そんな言い方やめてよ!私だって…!」

せつ菜「私はアユミのことずっと見てたから…知ってるから」

せつ菜「アイドルになりたいって夢を大事にしたくて―――!」

しずく「でも、でも…!私もうどうしたらいいか分からないよ…っ」

せつ菜「…っ」ギュッ



演劇部部長「……」

せつ菜「ど、どうでしょうか…」

演劇部部長「…優木さん、経験者じゃないんだよね?」

せつ菜「は、はい」

演劇部部長「正直驚いてる。想像以上の演技力だよ」

せつ菜「本当ですか?よかったです!」

しずく「……♪」フフン

演劇部部長「なんでしずくが誇らしげなの?」

55: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:40:12.27 ID:Ek1L4xsJ
しずく「でもさすがせつ菜さんです、信じてました!」ダキッ

せつ菜「!?///」

しずく「やっぱり私の目に狂いはありませんでした!」ギュッ

せつ菜「…あの、ちょっと、近いです///」

演劇部部長「やたら仲いいね。息合ってたし実は二人で練習してたんじゃないの?」

しずく「…そういうわけじゃないんですけど」チラッ

せつ菜「あはは…まぁいろいろと」チラッ

しずく(息合ってる、か…ちょっと嬉しいな…)

しずく(少しはせつ菜さんに近づけた気がして)

演劇部部長「まぁこれなら安心して任せられるね」

演劇部部長「細かいところをこれから一緒に詰めていこっか」

せつ菜「はい!がんばります!」

――――
―――
――

56: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:42:24.62 ID:Ek1L4xsJ
本番前日



せつ菜「部長さん、ここは…で、あってますか?」

演劇部部長「んー、そうだね…」

しずく(いよいよ明日。あっという間だったな…)

しずく(正直、部長から代役の話が出たときはチャンスだと思っちゃった)

しずく(演劇をやってみたいというせつ菜さんのこともあったし)

しずく(何よりせつ菜さんが心配で傍に居たいと思う私)

しずく(結局何かできるわけではなかったけど)

しずく(目の届く範囲にいて、笑ってくれている姿を見て安心する)

しずく(なんだかせつ菜さんを独り占めしたいみたい…私、へんなの)

演劇部部長「しずく」

しずく「…あ、はい?」

演劇部部長「最後に軽く合わせておしまいにしよう」




57: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:44:42.51 ID:Ek1L4xsJ
演劇部部長「それじゃあお疲れ様」

せつ菜「お疲れ様です!」

演劇部部長「主役2人の打ち合わせは任せるけど、早めに帰って休んでね」

しずく「はい」


ガチャ

バタン



せつ菜「はぁー…」

しずく「お疲れ様です。…もう、明日ですね」

せつ菜「はい!大変でしたけどあっという間でした!」

せつ菜「役になりきるってすごく楽しいですね!」

しずく「…余計に演劇部に引き込みたくなりました。どうですか?」

せつ菜「あはは。何度言われても無理ですよ?」

しずく「…ねぇせつ菜さん、お願いします…♡」ピトッ

せつ菜「!?///」

58: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:45:44.34 ID:Ek1L4xsJ
しずく「せつ菜さんのこと、私にください♡」

せつ菜「―――っ…へ、変な雰囲気出さないでください!///」

しずく「なんのことでしょう?私は普通にお願いしてるだけですよ」

せつ菜「…ほんと、しずくさんって時々そういうところありますよね」

しずく「せつ菜さん、キスシーンだけすごく苦手そうだったので」

しずく「落とすならこれしかないと思いまして♪」

せつ菜「フリと分かっていても、あんなに顔近づけると流石に…」

しずく「逆によく平気ですね…」

しずく「動きとして小さいのもありますが、この話の大事なシーンですからね」

しずく「お客さんもフリなのはもちろん承知でしょうけど」

しずく「本当にしてるように見せるのが役目ですから」

せつ菜「そうですね…未だに慣れてませんが、なんとか頑張ります」

59: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:47:34.26 ID:Ek1L4xsJ
>>58
すみません訂正
しずく「逆によく平気ですね…」

せつ菜「逆によく平気ですね…」

60: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:50:17.95 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「ふぅ…喉乾いちゃいました」

ゴクゴク

しずく「あっ…」

せつ菜「?」

しずく「そっち、私の飲みかけ…」

せつ菜「ぶっ!!///」ビチャッ

しずく「きゃっ」

せつ菜「けほっ、す、すみません!かかってませんか!?」

しずく「い、いえ、私は大丈夫です。変な事言ってすみません」

しずく「せつ菜さんこそ大丈夫ですか?」

せつ菜「…っ///、大丈夫です、何か拭くもの持ってきます!」

ダッ

しずく「あ、はい…」


バタン

61: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:52:52.36 ID:Ek1L4xsJ
しずく(…鞄とか濡れてないかな)


―――とりあえず机の上を軽く確認し、拭きやすいように物をどける

―――せつ菜さんの鞄を持とうとして手が滑り、落としてしまう

―――筆記用具や教科書が軽く散らばる


しずく(あ、しまった。拾わないと…)

しずく(あれ、これ…)ドキッ


―――教科書の下に隠れて落ちていた生徒手帳

―――その隙間から軽くはみ出る小さな写真


しずく(…私の…顔写真…)ドクン、ドクン


―――生徒手帳に想い人の写真を挟んでおくと成就する

―――ひっそりと噂される、そんな恋のおまじない


しずく(嘘…せつ菜さんが、私の事を…?)バクン、バクン

62: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:54:52.33 ID:Ek1L4xsJ
ガチャ



しずく「!!」

せつ菜「持ってきまs―――ぇ」バサッ


―――雑巾を落とし固まるせつ菜さん

―――生徒手帳を持って固まる私


せつ菜「…中、見ました?」

しずく「…あ、あの!これは…!」

せつ菜「―――っ」バッ


―――素早く私から手帳を奪い、鞄を引ったくり走り去る

―――声をかけることも追いかけることもできない

―――私は何度、せつ菜さんの心に土足で踏み込むんだろう

―――やることすべてが裏目に出る

63: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:56:57.17 ID:Ek1L4xsJ
しずく(よりによって恋の話の演劇で、その相手は私)

しずく(…せつ菜さん、どういう気持ちでこの役を演じてたんだろう)

・・・・・・

しずく「お願い、あなたの事が欲しいの…今だけでいいの」ズイッ

せつ菜「いや―――!///」バッ

しずく「…もう、そろそろ慣れてもらえませんか?」

せつ菜「…ご、ごめんなさい…///」

・・・・・・

しずく(あれはただ恥ずかしいだけじゃなくて)

しずく(自分の気持ちを必死に抑えて…)

・・・・・・

せつ菜「だからせめて皆の前では笑っていたいんです」

せつ菜「普段通りのスクールアイドル優木せつ菜でいなきゃいけないんです」

・・・・・・

しずく(私の前では本心を我慢しないでほしかったのに)

しずく(一番我慢させてたのは私で…)

64: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 22:59:28.00 ID:Ek1L4xsJ
しずく(知らなかったとはいえ、たまたまとはいえ、急にせつ菜さんに近づいて)

しずく(結果、せつ菜さんが全く望まない形での本人への露呈)

・・・・・・

せつ菜「否定しながら、見ないふりして、平気で自分の大好きだけを叫ぶんです」

・・・・・・

しずく(もしかして、そういうことだったの?)

しずく(あの話の真の理由は…自分の特別な『好き』だけを貫くことが許せなくて)

しずく(自分の気持ちを諦めようとして、泣いてたの?)

しずく(…なに、それ…)


―――やっと、本当の心に届いたと思ったのに

―――今度こそ、私にできることは何もなくなった


――――
―――
――

65: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:04:55.70 ID:Ek1L4xsJ
劇当日・講堂



「うわ、人埋まってる…」

「緊張してきたね」

「なんとかなるっしょ。練習通りやるだけだよ」



しずく「……」

せつ菜「……」

しずく「…あの」

せつ菜「昨日はごめんなさい。急に逃げたりして」

せつ菜「できれば、今だけでも忘れてください」

しずく「…」

せつ菜「とりあえず、今日の演劇のことだけ考えましょう!」

しずく「…はい」




66: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:07:18.11 ID:Ek1L4xsJ
しずく「―――そんなことどうだっていいの!」

しずく「私は、あなたと一緒に居られないならアイドルなんて―――!」

せつ菜「…ダメだよ。アイドルの話をするアユミの顔は凄くキラキラしてた」

せつ菜「アレが嘘なわけない。私はアユミと、アユミのファンを裏切れない」

しずく「私はユウコちゃんのことが一番なの!ユウコちゃんは違うの!?」

せつ菜「そんな言い方やめてよ!私だって…!」

せつ菜「私はアユミのことずっと見てたから…知ってるから」

せつ菜「アイドルになりたいって夢を大事にしたくて―――!」

しずく「でも、でも…!私もうどうしたらいいか分からないよ…っ」

せつ菜「…っ」ギュッ

しずく「お願い、あなたの事が欲しいの…今だけでいいの」スッ

せつ菜「アユミ……」

しずく(……)グッ


―――ここでキス、のフリ。顔を近づける

―――観客には見えないけれど、触れ合いそうなくらい近づけて…

67: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:10:29.03 ID:Ek1L4xsJ
せつ菜「…っ」ポロ…

しずく「―――!」

・・・・・・

演劇部部長「ここで優木さんが涙を流せたら、文句無しなんだけどなぁ」

せつ菜「すみません、流石に泣く演技はできません…」

しずく「まぁまぁ、そこは仕方ないですよ部長」

演劇部部長「あはは、冗談だよ。そこまで求めちゃ酷だよね」

・・・・・・

―――この涙は本物だ

―――私が見たくなくて

―――私が拭ってあげたかった涙

―――それを、私が流させてる

―――お願い、もう一秒だって見たくないの


しずく「ごめんなさい―――」ボソッ

せつ菜「ぇ―――んっ!?」


―――きっと間違ってる

―――でも、触れ合ってはいけないわずかな距離さえ

―――私には我慢できなかった

68: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:15:14.71 ID:Ek1L4xsJ
―――客席からは影になって見えないと思う

―――舞台袖の部員の皆さんには見えてたかもしれない

―――でももうそんなこと考えられる余裕はなかった


せつ菜「ぁ…なんで…」ポロポロ

しずく「ごめんなさい…ごめんなさい…」ギュッ

せつ菜「私の気持ち、知ってるくせに…っ」グスッ


―――そこまで言った後、涙を止め、表情を整え、役に戻る

―――私はただ、せつ菜さんの心をぐちゃぐちゃにかき乱しただけ…


せつ菜「…今日だけ、だからね。こんなの…」

しずく「ごめん…ごめんね…わがまま言って…」

せつ菜「…でも、嬉しかったよ。アユミ、私も好き…」


「ほんとに泣いてる…こっちまでもらい泣きしそう」

「キス、本当にしてたように見えちゃった…なんかドキドキしたね」

「流石にフリでしょ…フリだよね?」

――――
―――
――

69: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:17:53.87 ID:Ek1L4xsJ
数日後・演劇部





しずく「…」ボー

演劇部部長「しずく」

しずく「…」

演劇部部長「しずくってば」

しずく「あ、はい、なんでしょう」

演劇部部長「…いや、最近毎日こっち来てるけど、同好会はいいの?」

しずく「…大丈夫ですよ」

演劇部部長「…はぁ。大丈夫なら大丈夫そうな顔して言ってくれる?」

しずく「……」

演劇部部長「優木さんと何かあったんでしょ?」

しずく「え…なんでそれを…」

演劇部部長「他の子から聞いたよ。なんか劇終わった後2人とも様子が変だったって」

しずく「…」

70: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:19:06.05 ID:Ek1L4xsJ
演劇部部長「…あと、普通に演劇部員としてダメ」

しずく「えっ」

演劇部部長「文化祭前のしずくはどこいっちゃったのよ」

演劇部部長「今のしずくの演技よりそこらの人のほうが気持ち入ってるよ」

演劇部部長「何させても心ここにあらず、って感じ」

しずく「…すみません」

演劇部部長「だから、しばらくこっち来るの禁止」

演劇部部長「そっちの事情解決してきなよ。いつまでもこのままじゃよくないでしょ?」

しずく「…そうですね…すみません、行ってきます」スッ


ガチャ

バタン

演劇部部長「ふぅ…がんばりなよ…」

72: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:23:02.22 ID:Ek1L4xsJ
同好会部室前


しずく(…ふぅ…よし)

―――それから、せつ菜さんに電話をして

―――まだ学校内に居るとのことだったから部室に残ってもらって

―――覚悟を決めて、扉を開く

ガチャ

しずく「お待たせしました。突然すみません」

せつ菜「いえ…私も、少しお話したかったところです」

しずく「…まずは、本当にごめんなさい」

せつ菜「……」

しずく「手帳の件はわざとではなかったんです…と言っても仕方ないでしょうけど」

しずく「いえ、そんなことはどうでもいいんですよね…」

せつ菜「すみません、もう、単刀直入に聞きます」

せつ菜「どうして、キスしたんですか…?」

せつ菜「泣いている私に、同情、したんですか…?」

73: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:25:55.45 ID:Ek1L4xsJ
しずく「……うまく言葉にできる自信はありませんが、正直に言います」

しずく「私はずっと、初めてせつ菜さんの涙を見た時から」

しずく「あなたの泣き顔は見たくないって思ったんです」

しずく「でもその時はせつ菜さんの気持ちが全然分からなくて」

しずく「こっそり探るような真似をして、無理に近づきました」

しずく「何も分からないけど、せめて傍にいて、涙を拭うくらいできるって思って」

しずく「そうしてあなたの事を知れば知るほど、どうしようもない自分に気が付いて」

しずく「終いには、私があなたを泣かせてしまいました」

しずく「本当にごめんなさい。全部全部、私の勝手な好意の押し付けでした」

しずく「最初は同情だったかもしれません。一人で泣くなんて寂しいじゃないですか」

しずく「でも、これだけは聞いてください」

しずく「―――私は、同情でキスはしません」ギュッ

せつ菜「…!」

74: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:29:12.16 ID:Ek1L4xsJ
しずく「気が付いたらせつ菜さんの事ばかり考えて」

しずく「せつ菜さんが傍に居ないと、心が寂しくて、どうしようもないんです」

しずく「またわがまま言ってすみません。でも、傍に居させてください」

せつ菜「…私は…」

しずく「私はせつ菜さんのように、心を晴れやかにしてあげることはできません」

しずく「でも、一緒に傘に入って止むまで待つくらいは多分、できます」

せつ菜「…やめてください…私にそんな言葉かけて…私は我慢しなきゃいけなくて…」

しずく「なら、私の大好きを否定するんですか?」

せつ菜「っ…なんですかそれ…」

せつ菜「本当に、あなたって人は…ズルいです…酷い人です」

せつ菜「私の大好きな人の『好き』を、否定できるわけないじゃないですか…!」グスッ

しずく(結局最後まで本当の意味で悩みを解決してはあげられなかったかもしれない)

せつ菜「…しずくさん、私も、大好きです」ニコッ

しずく(それでも、この笑顔を守れるのは私だけ、なんて、自惚れかな…?)

――――
―――
――

75: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:33:33.29 ID:Ek1L4xsJ
後日・演劇部



バタン!

しずく「部長!」

せつ菜「部長さん!!」

演劇部部長「うわ、何?びっくりした」

しずく「何?じゃありません!」

せつ菜「なんですかこの台本!!!」バシン!


『刹那に伝う涙の雫』


演劇部部長「最近、なんかいい話思いついちゃって。これがどうかした?」

しずく「とぼけないでください!これ、私たちのことですよね!?」

演劇部部長「え?どうかなぁ」

せつ菜「白々しいですよ!!役名が雪菜と雫って、隠す気ゼロじゃないですか!!」

せつ菜「おかしいと思ったんですよ!大体この間の劇も、侑さんと歩夢さんモチーフで!」

演劇部部長「しずくがよく言うからさ。スクールアイドルは演劇の勉強になるって」

演劇部部長「だからあなたたちのこと見てたら、なんともドラマ性のある日常だったから」

しずく「部長…あなたって人は…」

76: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:37:17.77 ID:Ek1L4xsJ
演劇部部長「その劇やってみたくない?」

しずく「やりませんよ!冗談言わないでくださいっ」

演劇部部長「えぇ、適任なのにな…配役そのままいけるよ?」

せつ菜「そりゃあ私たちの話ですからね!!!」

演劇部部長「なんなら、もう1回人前でキスできるチャンスだよ?」

しずく・せつ菜「!?!?」

せつ菜「な…え…?」

演劇部部長「他のお客さんは分からなかったみたいだけどね」

しずく「なんで…部長、当日来られないって…」

演劇部部長「…嘘♪」

せつ菜「~~~~~っ///」

しずく「もう、部長!!///」

演劇部部長「いやあ、あの熱いシーンもう1回みたいなぁ。やってくれない?」

せつ菜・しずく「「お断りします!!!」」




おわり

77: (えびふりゃー) 2021/11/28(日) 23:38:41.58 ID:Ek1L4xsJ
読んでくれた方ありがとうございました

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1638100397/

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