【長編SS】千歌「過ぎ去りし時を求めて」【ラブライブ!サンシャイン!!】

AqoursーSS


4: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:18:30.97 ID:fHp8GIE2
千歌「エマちゃんもう少しだよ!」

エマ「待ってよ、千歌ちゃん」

千歌「到着!」ピョン

エマ「ここが神の岩のてっぺん…」

千歌「やっと着いたー」

エマ「ここまで来るのがイシの村の成人の儀式だけど…」

千歌「うん、何でわざわざこんなことするんだろうね?」

エマ「あ、千歌ちゃん見て!」

千歌「え?」

エマ「あっち!」
 
5: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:20:23.30 ID:fHp8GIE2
千歌「わぁ…きれい…」

エマ「おっきいね…」

千歌「世界が…広がってる」

千歌「村の外って、こんなに広いんだね」

エマ「もしかして…」

エマ「これが…儀式の目的だったのかな?」

千歌「どういうこと?」

エマ「わたしたち、この村から出たことなかったでしょ?」

エマ「だから、世界の広さを知るために…って」

千歌「あー…なるほど」

千歌「エマちゃんの言う通りかも」
 
7: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:23:08.09 ID:fHp8GIE2
千歌「果南ちゃんも、一緒に見たかったなぁ…」

エマ「しょうがないよ」

千歌「一緒に育ってきて、近い時期に成人するのに…」

エマ「果南ちゃんはもうデルカダールで働いてるんだもん」

エマ「儀式はしてないけど、先に大人になっちゃってるよね」

千歌「うー…チカも早く果南ちゃんに追いついてやる!」

エマ「追いつけるかな?」

エマ「だって果南ちゃん、デルカダールの将軍でしょ?」

千歌「そうなんだよね…」

エマ「将軍果南と軍師絵里」

エマ「この2人の名前は大人たちがよく話してるよね」
 
8: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:25:38.56 ID:fHp8GIE2
千歌「チカも…デルカダールに行こうかな?」

エマ「え、千歌ちゃん、この村から出て行っちゃうの?」

千歌「どうしようかな…」

千歌「エマちゃんは残るの?」

エマ「うん。わたしは動物のお世話とか好きだから、ここで続けようと思ってるよ」

千歌「そっか」

エマ「わたしとしては、果南ちゃんは出て行っちゃったから、千歌ちゃんには残ってほしいけど」

エマ「でも…それは千歌ちゃんが自分で決めることだもんね」

千歌「うん…」
 
9: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:27:44.47 ID:fHp8GIE2
エマ「そろそろ戻ろうか」

千歌「そうだね」

「ケェェー」

エマ「なに!?」

千歌「エマちゃん、あっち!魔物!?」

エマ「何でこんなところに…!」

「ケケェー」バサッ

エマ「きゃー!」

千歌「危ないっ」
 
10: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:30:12.08 ID:fHp8GIE2
千歌「くっ…」

千歌(なんとか崖から落ちずにエマちゃんを支えられたけど…)

千歌(このままじゃ魔物にっ)

エマ「千歌ちゃん、上!」

「ケェーー」

千歌(逃げられない!)

千歌(どうすれば…!)

ピシャ

「ギェー」ヒュー

千歌「え…?」

千歌(何が…)
 
11: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:32:12.12 ID:fHp8GIE2
千歌「よいしょ…」

エマ「ありがとう、千歌ちゃん…」

エマ「千歌ちゃんがいなかったらわたし…」

千歌「よかったよ、エマちゃんが無事で」

エマ「千歌ちゃん、その手…」

千歌「うん…」

エマ「あ、消えた」

エマ「今、左手のあざが光ってたよね?」

千歌「やっぱりエマちゃんもそう見えた?」

エマ「うん、そのあざから雷みたいなのが出てきて…」

エマ「それで魔物を…」

千歌「もしかして…チカがなにかやった?」
 
12: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:34:33.57 ID:fHp8GIE2
千歌「はっ」

千歌「やーっ」

千歌「何も出ない…」

エマ「やっぱり光らないとだめなのかな?」

千歌「光らせるって言ってもどうやって…」

千歌「はぁぁ~!」

千歌「…」

千歌「はぁ…」

エマ「だめ、だね…」

千歌「チカになんかすごいパワーあるなら自慢したかったのにー」

エマ「大丈夫。あれは千歌ちゃんのパワーだよ」

エマ「わたしちゃんと見たもん」

エマ「行こう」

エマ「みんな待ってるよ♪」
 
15: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:37:20.12 ID:fHp8GIE2
───

「おかえりなさい2人とも」

「ご飯の用意ができてるからエマちゃんも食べてってね」

千歌「お姉ちゃんたち…」

エマ「ありがとうございます」

「これであんたたちも大人の仲間入りかぁ」

「エマちゃんはともかく、あの千歌がねぇ…」

千歌「もう、どういう意味っ」

「あっはは、冗談だって」
 
16: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:39:27.47 ID:fHp8GIE2
エマ「それでね、ロープを昇っていくところで千歌ちゃんがね…」

千歌「ちょっとエマちゃん、それは内緒だって!」

「うふふ、千歌ちゃんったら」

「あんたたちはいいよなぁ、2人で行けて」

「あたしんときは歳近い子いなかったから1人だったんだぞ」

エマ「そうそう、千歌ちゃんすごかったの!」

エマ「実はね、てっぺんで魔物に襲われたんだけどね」

「魔物!?」

「大丈夫だったの?」

エマ「うん。千歌ちゃんの手がぴかーって光って、魔物を倒したの!」

「千歌ちゃんの手って、もしかして…左手のあざ?」

千歌「そうそう。チカ、すごいパワーに目覚めちゃったみたい」
 
17: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:41:53.04 ID:fHp8GIE2
「ねえ…」

「うん…」

千歌「どうしたの、お姉ちゃん?」

「実は、あなたに言っておくことがあるの」

「あなたが私たちの本当の妹じゃないって話は前にしたでしょう?」

千歌「うん、でも私は2人のことを本当のお姉ちゃんみたいに思ってるよ」

千歌「もちろん果南ちゃんとエマちゃんのことも」

「ありがとう。それは十分伝わってるわ」

「それで、母さんからあるとき聞いたんだ」

「この子は勇者の生まれ変わりだって…」

千歌「え…」

エマ「勇者って、あの伝説の…?」
 
18: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:44:52.48 ID:fHp8GIE2
「もちろんあたしたちも冗談だと思ったさ」

「でも、千歌の左手のあざがその証。いつか勇者のチカラに目覚めるときがくればわかるって言って」

千歌「これが…」

「どうやら…本当だったみたいだな」

千歌「チカが…勇者…」

「千歌ちゃん、はいこれ」チャラ

千歌「ネックレス?」

「お母さんから預かったの。いつか千歌ちゃんが勇者のチカラに目覚めたら渡してほしいって」

「これをデルカダールの王様に見せれば、あなたの生まれについて、そして勇者について何かわかるかもしれないと言ってたわ」
 
20: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:47:23.35 ID:fHp8GIE2
千歌「勇者か…」

「ちょうどいいじゃん。あんた、そういうのに憧れてたんじゃないの?」

「昔、果南と一緒にヒーローごっこやったりさ」

エマ「千歌ちゃん…」

「いきなりだったから、少し混乱してるかもしれないわね」

「少し外を歩いてきたらどうかしら」

千歌「うん…」

エマ「わたしも一緒に行くね」
 
21: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:49:57.77 ID:fHp8GIE2
エマ「ねえ、覚えてる?」

エマ「1年くらい前、千歌ちゃんがあそこの見張り台から落ちた時のこと」

千歌「うん、あの時だよね」

千歌「チカは運よく怪我しなかったけど」

千歌「エマちゃんすごい心配してたよね」

エマ「だって…死んじゃったかと思ったんだもん」

エマ「あれってもしかして…勇者のチカラで助かったのかな?」

千歌「あれはただラッキーだっただけじゃないの?」

千歌「だって私のあざは…」

千歌「あれ…?」

エマ「あの時ね、落ちてく千歌ちゃんが光った気がしたの」

エマ「その手のあざができたのもそのあたりからじゃなかった?」

千歌「そういえば、これ見てお母さんすっごくびっくりしてたような…」
 
22: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:51:29.04 ID:fHp8GIE2
エマ「ねえ、覚えてる?」

エマ「1年くらい前、千歌ちゃんがあそこの見張り台から落ちた時のこと」

千歌「うん、あの時だよね」

千歌「チカは運よく怪我しなかったけど」

千歌「エマちゃんすごい心配してたよね」

エマ「だって…死んじゃったかと思ったんだもん」

エマ「あれってもしかして…勇者のチカラで助かったのかな?」

千歌「あれはただラッキーだっただけじゃないの?」

千歌「だって私のあざは…」

千歌「あれ…?」

エマ「あの時ね、落ちてく千歌ちゃんが光った気がしたの」

エマ「その手のあざができたのもそのあたりからじゃなかった?」

千歌「そういえば、これ見てお母さんすっごくびっくりしてたような…」
 
24: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:53:16.54 ID:fHp8GIE2
エマ「まさか、千歌ちゃんが勇者なんてね…」

千歌「信じられないよ…」

千歌「デルカダールの王様に会えば、何かわかるかもしれないんだよね」

千歌「ついでに果南ちゃんとも久しぶりに会えるし」

エマ「千歌ちゃんも出て行っちゃうんだね…」

千歌「うん」

千歌「でもデルカダールまで行ってくるだけだよ?」

千歌「すぐ帰ってくるって」
 
25: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:55:20.27 ID:fHp8GIE2
エマ「だけど、千歌ちゃんは…勇者なんでしょ?」

エマ「勇者は世界を救う人」

エマ「きっと…これからすごいことをするんだと思う」

エマ「あの物語の勇者のように」

エマ「そうなったら…幼馴染として自慢させてね」

千歌「エマちゃん…」

エマ「じゃあ、そろそろ戻ろっか」

エマ「千歌ちゃんは村を出る準備があるもんね」

千歌「え、そんないきなりどっか行くとかしないよ?」

エマ「善は急げ、だっけ?こういうのはすぐにやったほうがいいんだよ」
 
27: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:58:04.75 ID:fHp8GIE2
───

千歌「じゃあ、行ってくるね」

「最近魔物が狂暴になっているらしいから、気を付けてね」

「果南に会えたらたまには帰って来いって言っておいてくれよー」

千歌「わかってるよ」

千歌「…エマちゃんは?」キョロ

「声はかけたんだけど…」

「案外さみしがってるんじゃないの?」

千歌「まあ、いっか。そんなに長くはかからないだろうし」
 
29: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:00:59.58 ID:fHp8GIE2
エマ「千歌ちゃん、待って!」

千歌「エマちゃん!」

エマ「これ、あげる」

千歌「これは?」

エマ「お守り。昨日、作ったの」

エマ「千歌ちゃんが無事に帰ってきますようにって」

千歌「ありがとう…大事にするね」

千歌「お姉ちゃん、エマちゃん。行ってきます!」
 
30: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:03:15.77 ID:fHp8GIE2
千歌(私が勇者だって話を聞いた時には驚いたけど…)

千歌(自分にすごい力があるなんて嬉しいし)

千歌(イシの村から外に出ること)

千歌(大きなお城があるデルカダールに行けること)

千歌(それと果南ちゃんとも久しぶりに会えること)

千歌(考えるといろいろワクワクがあふれてくる!)

千歌(初めての旅立ち…)

千歌(楽しい冒険になりますように♪)

───
──

 
32: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:00:42.33 ID:fHp8GIE2
千歌「はえー、おっき~…」

千歌(お城ってこんなにでかいんだ…)

「止まれ」

「この先はデルカダール王宮。用のないものを通すわけにはいかない」

千歌「あ、私…王様に会いに…」

「今日、王に来客の予定があるとは聞いていないが…」

千歌「あの、私、勇者で…」

「勇者…だと!?」

千歌「これを見せれば…って」

「…」

「確認してくる」
 
33: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:02:53.30 ID:fHp8GIE2
千歌(よく考えたら、王様になんて普通会えないよね…)

千歌(勇者とかいきなり言われても信じられないもん)

千歌(あ、果南ちゃんの友達として来ればよかったかな…?)

千歌「あの…」

絵里「この子が勇者?」

「はい、絵里様」

絵里「ふぅん…」

絵里「ついてきなさい」

千歌「え、あ、はい…」
 
34: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:05:32.99 ID:fHp8GIE2
千歌(この人が、軍師の絵里さん…?)

千歌(なんか…怖い…)

千歌(兵士もいっぱいいるし)

千歌「あの、果南、ちゃんは…?」

絵里「あら、あなた果南の知り合い?」

千歌「はい、幼馴染で…」

絵里「じゃあイシの村の?」

千歌「そこで一緒でした」

絵里「へえ、すごい偶然」

絵里「まさか果南…」ポツリ

千歌「え、どういうこと…」

絵里「着いたわ。ここが王座の間よ」
 
35: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:08:14.66 ID:fHp8GIE2
絵里「王様、勇者と名乗る者を連れてまいりました」

「その者が…」

千歌「えっと…これを…」

「その首飾りは…ユグノアの…!」

「勇者ならば手の甲に印があるはず」

千歌「これのことですか?」

絵里「確かにこのあざの模様は…」

「ふむ…どうやらまことの勇者のようだ」

千歌「じゃあ…」

「まさか生きておったとは…」

「こやつを捕らえよ!」

絵里「はっ!」

千歌「ええっ!?」
 
36: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:11:00.25 ID:fHp8GIE2
千歌「もがもが」

千歌(どうなってるの!?)

千歌(頭に袋をかぶせられて、手も縛られて何もできない…)

絵里「勇者…いいえ、悪魔の子」

千歌(悪魔の子…?)

絵里「どういうつもりでわざわざやってきたのかは知らないけど、あなたの思い通りにはさせないわよ」

千歌「もがが」

千歌(チカはなにも…)

絵里「せつ菜」

せつ菜「はいっ」

絵里「悪魔の子を捕らえたわ。地下牢に連れて行きなさい」

せつ菜「了解しました」
 
37: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:13:38.14 ID:fHp8GIE2
───

せつ菜「さあ、ここに入ってなさい」ガシャン

千歌「ひゃっ」ドサ

千歌「待って、何でこんなこと!?」

せつ菜「何で…?」

せつ菜「あなたが悪魔の子だからに決まっているでしょう?」

千歌「悪魔の子って何!?」

せつ菜「勇者は世界に災厄を呼ぶ悪魔の子」

せつ菜「我が王が授かった預言です」

せつ菜「そこでおとなしくしていてください」

せつ菜「おそらく数日以内に処分が待っているでしょう」スタスタ
 
39: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:15:30.84 ID:fHp8GIE2
千歌「待ってよ!ここから出して!」

千歌「果南ちゃんと話をさせて!」

千歌「チカは悪魔の子なんかじゃない!」

善子「うるさいわね…」

千歌「誰!?」

善子「私はヨハネ…ってそんなのどうでもいいじゃない」

善子「あんた、何やらかしたのよ。ここは重罪人を入れておくエリアよ?」

千歌「チカはただ勇者だって言っただけで…」

善子「勇者!?あなたが!?」

千歌「うん…」
 
40: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:18:27.79 ID:fHp8GIE2
善子「くくく…あーはっは」

善子「まさかあの預言の通りとはね」

千歌「預言?」

善子「こっちの話よ」

善子「今こそ、あれを実行するときね」

千歌「あの、ヨハネさん?」

千歌「話が分からないんだけど…」

善子「しっ、少し静かにしてなさい」
 
41: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:21:26.46 ID:fHp8GIE2
「食事だ」

善子「あらご苦労さん」

「なっ…」ドサッ

善子「鍵はこの辺かしらね」チャリ

千歌「なに、したの?」

善子「ちょっと眠ってもらっただけよ」

善子「ほら、行くわよ」ガチャ

千歌「行くってどこに?」

善子「決まってるじゃない。外へよ」

善子「ここから脱獄するの」

千歌「でもそんなことしたら捕まっちゃうよ!」

善子「捕まったから今ここにいるんでしょうに」
 
42: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:23:24.87 ID:fHp8GIE2
千歌「でも果南ちゃんに言えばきっと…」

善子「果南ってあの将軍の?知り合いなの?」

千歌「うん、幼馴染なんだ」

善子「へぇ…」

善子「だけど将軍と言っても兵士には変わりないわ。王様には逆らえないはずよ」

善子「私は勇者が善か悪かなんて知らないけど、この国では悪魔の子って呼ばれてるんでしょ?」

善子「ここで待ってても2人とも処刑されるだけよ」

善子「だったら私は逃げ出して自由になる道を選ぶ」

善子「あなたはどうするの?」

千歌「私は…」

善子「というかどっちにしろ私の為にも一緒に連れてくけど」

千歌「え?わわっ!」

善子「他の兵士が来ないうちに早く!」
 
43: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:26:16.73 ID:fHp8GIE2
───

善子「よいしょっ…と」

千歌「ここは…」

善子「水路かしら?」

千歌「何で牢屋の中からこんなところに穴があるんだろう?」

善子「さあ?牢屋が古かったんじゃないの?」

善子「人が通れる大きさまでこっそり掘り広げたのはヨハネだけどね」

善子「とりあえず、どこかに出口があるはず」

善子「さ、勇者千歌、脱走がばれないうちに行きましょう」
 
44: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:29:00.77 ID:fHp8GIE2
───

千歌「あれ、ここさっき通らなかった?」

善子「…そうね」

善子「もう、ややこしい作りしてるわね」

せつ菜「見つけました!」

千歌「…っ、さっきの兵士」

善子「げっ…もうバレたの?」

せつ菜「悪魔の子と善子さん、逃がしません!」

善子「…だからヨハネだっての」

善子「どっち行けば…」キョロキョロ

善子「あっちよ!」

千歌「うん!」

せつ菜「待ちなさい!」
 
45: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:31:38.07 ID:fHp8GIE2
───

「行かせんっ」

千歌「挟まれた!?」

善子「くっ…どうすれば」

千歌(橋の上…両側に兵士…逃げ場がない!)

せつ菜「どうやらここまでのようですね」

せつ菜「さあ、おとなしく捕まりなさい!」

ガラ

善子「ん?」

善子「ま、待って!」

せつ菜「待てと言われて…」

ガラグラリ

せつ菜「橋が!?」

善子「きゃぁー」

千歌「わぁっー」
 
46: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:35:07.68 ID:fHp8GIE2
───

千歌「ってて…」

善子「どうやら無事のようね…」

善子「あんなところで橋が落ちるなんてヨハネも運が悪い…」

善子「いえ、そのおかげで逃げられたんだからむしろ幸運なのかしら?」

千歌「ここも…水路なのかな?」

善子「人の手は入ってなさそうだし、違うんじゃない」

善子「上に登る道はなさそうだし…」

善子「こっちに続いてる道に行くしかないわね」
 
48: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:38:15.95 ID:fHp8GIE2
千歌「広い場所に出たね」

善子「しっ、何かいるわ」

千歌「魔物?」

「…」モゾ

千歌「大きくない?」

善子「この大きさはもしかして…」

「グルル…」ジロリ

善子「ド、ドラゴン!?」

千歌「ひっ…」

善子「かっこいい…じゃなかった。こんなの勝てるわけないわ、逃げるわよ!」

「ギャオー」
 
50: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:41:00.43 ID:fHp8GIE2
善子「何で城の地下にこんな魔物がいるのよー」

千歌「知らないよそんなの!」

善子「どこか隠れるところは…」

千歌「あ、あそこの裂け目!」

善子「いいわね、ナイスよ!」

「ガァッ」

善子「入って!」

千歌「えーいっ」
 
51: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:44:16.90 ID:fHp8GIE2
善子「ふぅ…この幅ならあいつも入ってこれないわね」

「グル…」ガリガリ

善子「ほらほら残念でしたー」

千歌「あれ、あっちから光が入ってきてるよ」

善子「もしかして外に繋がってるのかもね。好都合だわ」

善子「見えないところまで行けばドラゴンも諦めてくれるだろうし…」

「スゥー…」

善子「まさかあのモーションは…」

善子「急いで抜けるわよ!」グイ

千歌「どうかしたの?」

善子「ブレスよ!」タタタッ

「コォッー」

千歌「ひっ!」

善子(間に合えっ)
 
52: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:47:27.78 ID:fHp8GIE2
千歌「え…」

千歌(光の方へ飛び出したら足元が…ない!)

善子「うそでしょ…?」

千歌(崖!?)

善子「やばっ…」

千歌(落ち…)

千歌「やぁぁーーー!!」ヒュー

善子「んきゃぁぁーー!!」ヒュー
 
53: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:51:30.38 ID:fHp8GIE2
───

果南「騒がしいようだけど、どうかしたの?」

絵里「果南…戻ってきたのね」

果南「うん、さっきね」

絵里「…悪魔の子を捕まえたわ」

果南「ほんと!?やったじゃん」

果南「…って騒ぎじゃないよね、これ」

絵里「…そして脱獄されたわ」

果南「おいおい、何やってんの」

絵里「…うちの警備の甘さは見直すとして」

絵里「果南。あなたにも聞きたいことはたくさんあるのよ」

果南「私?何を?」
 
54: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:53:39.75 ID:fHp8GIE2
絵里「あの悪魔の子…イシの村から来たって言ってたのよ」

果南「嘘でしょ!?」

絵里「果南の幼馴染らしいわ」

果南「私の幼馴染…」

果南(千歌とエマのこと?まさかあの2人が…)

果南「悪魔の子の姿は…私たちより少し小さいくらいの女の子よ」

果南「千歌…」

果南「そんな…何かの間違いだよね?」

絵里「いいえ、あれは間違いなく悪魔の子よ」

絵里「あの手のあざと、持っていたネックレスの紋章は」

絵里「まさかあなた、悪魔の子と知ってて黙ってたんじゃないでしょうね」

果南「そんな!私は知らないよ」

果南「千歌の手にあざなんて見たことなかったし」
 
55: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:55:56.32 ID:fHp8GIE2
果南「そうだよ。悪魔の子は千歌じゃない。人違いだよ」

絵里「まあ私はどっちでもいいわ。やることは変わらないし」

絵里「悪魔の子は世界に災いをもたらす」

絵里「だから見つけ次第捕獲して…ね」

絵里「…仮に、本当にあなたの幼馴染だったとしても容赦はしないわよ」

果南「千歌はっ…」

絵里「デルカダールの将軍様が、世界の平和より幼馴染を優先するわけないわよね?」

果南「私は…」

果南「もし千歌が悪魔の子だったとしても災いなんて起こさせない」

果南「私がしっかり見張るから!」

絵里「…まあせいぜい王様に交渉してみることね」

絵里「ユグノアと姫様のことがあるから無駄だと思うけど…」
 
56: (もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:59:31.21 ID:fHp8GIE2
せつ菜「すみません、絵里さん、果南さん!」

せつ菜「悪魔の子を見失いました!」

絵里「あなたがいながら?珍しいわね」

せつ菜「すみません…地下水路の橋が崩れてそのまま下に…」

絵里「まあいいわ。せつ菜、周辺の捜索を続けて」

果南「絵里はどうするの?」

絵里「私はイシの村に行くわ」

絵里「悪魔の子についてたっぷりと聞き出したいこともあるしね」

果南「じゃあ私が…」

絵里「あなたはダメよ。身内でしょう?任せられないわ」

───
──

 
71: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:19:35.39 ID:zhiwADDc
千歌「ん…」

善子「気が付いたみたいね」

千歌「ここは…?」

善子「デルカダール近くの教会よ」

善子「ここのシスターが倒れてた私たちを助けてくれたみたいなの」

千歌「チカたち、生きてる…?」

善子「そうね」

善子「兵士に追われて、ドラゴンに追われて、崖から落ちて」

善子「あれだけの目にあって無事なんて…勇者様のおかげかしらね」
 
72: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:21:20.06 ID:zhiwADDc
善子「さて、これからどうしようかしら?」

善子「私たちはデルカダールではお尋ね者になってるだろうから、あまりこの辺りにうろうろするわけにもいかないし」

千歌「チカは…イシの村に戻りたい」

善子「イシの村?聞いたことないところだけど、それってどこにあるの?」

千歌「あっちの山の方。私が住んでたところなんだ」

千歌「ヨハネちゃんはどうするの?」

善子「ヨハネはあなたに着いていくわ」

善子「それが私の贖罪だしね…」ボソ

千歌「しょくざい?」

善子「こっちの話よ」
 
73: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:24:36.61 ID:zhiwADDc
千歌「そういえば、あの兵士に善子って呼ばれてなかった?」

善子「…あれは本みょ…いえこの世界での識別記号よ」

千歌「んん?」

善子「善子は確かに私の名前ではあるけど、あくまでも識別記号に過ぎず、私は善子ではなくヨハネで、ヨハネの名のもとに私のアイデンティティが構築されているのよ」

千歌「んー…よくわかんないからよっちゃんでいい?」

善子「はい?」

千歌「善子かヨハネかよくわかんないけど、よっちゃんならどっちもあるし」

善子「まあ…いいけど」
 
74: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:27:09.88 ID:zhiwADDc
千歌「よっちゃんは何であそこに捕まってたの?」

善子「それは…デルカダールの国宝の1つ、レッドオーブ窃盗の罪で」

千歌「え、泥棒さんなの!?」

善子「いや、盗んではないわよ?ただヨハネのカバンに入ってただけで」

千歌「盗んだから入ってたんじゃないの?」

善子「だから盗んでないって!」

善子「私はトレジャーハンターではあっても泥棒じゃないから」

善子「魔物から盗むことはあっても人のものは盗らないわよ」

千歌「じゃあ何でレッドオーブが…」

善子「知らないわよ…私が聞きたいわ」

善子「気づいたら、入ってたのよ」

善子「そう何回言っても全く信じてもらえなくて、あそこに入れられたんだけどね…」

善子「昔からトラブルに巻き込まれやすいとは思ってたけど、投獄されるなんて最大級のトラブルよ」
 
75: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:30:07.42 ID:zhiwADDc
善子「まあ、そのおかげで勇者様とも会えたし。結果オーライなのかしら?」

千歌「最初に会った時もだけど、よっちゃんはチカのこと知ってたの?」

善子「千歌ちゃんのことは知らなかったわ」

善子「ヨハネは預言を聞いたの。勇者を助けろって」

善子「半信半疑だったけど、本当に勇者に会っちゃったからね」

善子「もう信じるしかないじゃない」

千歌「それで私と一緒に来てくれるんだ。ありがとう♪」

善子「私にできることはそれくらいしかないから…」
 
76: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:35:21.91 ID:zhiwADDc
千歌「あ、そうだ」ゴソゴソ

千歌「よかった~壊れてない」

善子「そ、それは!」

千歌「赤くてきれいだよね。なんだかわかる?」

善子「レッドオーブじゃない!どうしたのよ!?」

千歌「んとね、ドラゴンのところで拾った」

善子「拾った!?あの時に!?」

千歌「これがレッドオーブかぁ…」

千歌「あれ、国宝なんだっけ?じゃあ返しに行った方がいいのかな?」

善子「そんなことしたら私たちが捕まるだけでしょ」

善子「捨てるわけにもいかないし、とりあえずこのまま持ってましょう」
 
77: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:38:36.47 ID:zhiwADDc
───

善子「ここが千歌ちゃんの故郷のイシの村なのよね?」

千歌「そうなんだけど…」

善子「なんか静かじゃない?」

千歌「おかしいなぁ…」

善子「あちこち壊れたような跡もあるし」

千歌「…みんなに何かあったとか!?」

千歌「おーい、誰かー」

千歌「チカだよー。帰ってきたよー」
 
78: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:42:07.66 ID:zhiwADDc
千歌「お姉ちゃんも、エマちゃんもいない…」

善子「それどころか人の気配がまったくないし…」

千歌「これって…まさか魔物が?」

善子「…多分違うわね」

善子「壊された建物はあるけど、戦いの跡…死体や血痕とかはないし」

善子「もしかして…」

善子「千歌ちゃん、デルカダールでこの村のこと話した?」

千歌「そういえば…絵里さんにイシの村から来たって言っちゃった…」

善子「だとすると、デルカダールのしわざかもしれないわね」

千歌「どうして?」

善子「勇者…悪魔の子を捕まえるために。この村の人たちは千歌ちゃんのことを知ってるから連れていかれたのかも」
 
79: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:45:28.71 ID:zhiwADDc
千歌「行かなきゃ。デルカダールに」

千歌「村のみんなを助けないと」

善子「行ったところであなたが捕まって終わりよ」

千歌「でも!」

善子「さすがに、悪魔の子が住んでいた村の人ってだけで手荒な扱いはされないでしょ」

善子「でもここも掴まれてるとなると…ヨハネたちも長居するわけにいかないわね」

千歌「チカはどうすれば…」

善子「うーん…」

千歌「1回、家に戻ってもいい?」
 
80: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:49:18.73 ID:zhiwADDc
善子「普通の生活をしてそうな、なかなかいい家ね…」

千歌「あれ、この箱…初めて見るかも」

善子「中身は?手紙?」

千歌「これ…お母さんの字だ」

『千歌ちゃん』

『あなたは自分のことについて何かわかったかしら?』

『あなたに渡したネックレス(まだ持ってなかったらお姉ちゃんに言ってね)は、あなたを拾っていた時に持っていたもの』

『一緒に手紙も入っていたけど、破れている部分もあって、読み取れたところはあなたが勇者であること、何かあったらデルカダールに頼ることと書いてありました』

『デルカダールはこの世界、ロトゼタシア一の大国。そして王様は博識な方だと聞いています。きっと助けになってくれたでしょう』

『それでも、もしまだわかっていないことがあれば、自分の手で探しに行くといいでしょう』

『成人の儀式で見たと思うけど、世界は広い。きっとどこかに真実があるはず』

『この村の東の岬にほこらがあること知ってる?あそこから別の場所に行けるんだけど、実はお母さん、ないしょで鍵を持ってるの。もしよかったら使ってね♪』
 
81: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:53:53.19 ID:zhiwADDc
千歌「お母さん…」

善子「自分の手で…か」

善子「確かにそうよね。何で勇者が悪魔の子と呼ばれているのか、その理由を見つけないと」

千歌「うん!チカは自分が何者か知りたい!」

善子「とはいえ、デルカダールがダメとなるとどうすればいいのかしらね」

千歌「そういえば、王様がこのネックレスを見てユグノアって言ってたような…?」

千歌「よっちゃん知ってる?」

善子「ユグノア?ロトゼタシアにある国の1つで、確か魔物に襲われて滅びたって聞いたわよ」

千歌「そうなの?」

善子「1年前くらいだったかしら?ヨハネも直接見たわけじゃないけど」

千歌「…とりあえずユグノアに行ってみよう」

善子「わかったわ」

千歌「場所、知ってる?」

善子「地図でのだいたいの場所はわかるけど、行き方までは…」

千歌「そっか」

千歌「じゃあ、とりあえずお母さんのこの鍵のほこらに行ってみよう!」
 
82: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:56:26.78 ID:zhiwADDc
───

善子「あれね」

千歌「岬で行き止まりだよね?本当に別のところに行けるのかな?」

善子「どこかに飛べるって言ったら旅の扉だけど、まさか…」

千歌「旅の扉…って本とかで見たことあるけど、実際にあるの?」

善子「さあ?ヨハネも知らないわ」

善子「だからここが旅の扉だとしたら面白そうよね」

千歌「確かに!旅の扉ってどんなんだろう?」

千歌「これが鍵って書いてあったけど…石みたいなやつどうやって使うんだろ?」

善子「鍵って言うからには、どこかにはめられるようなとこがあるんじゃないの?」
 
83: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 22:59:12.60 ID:zhiwADDc
せつ菜「見つけましたよ!悪魔の子!」

千歌「この声はっ」

善子「あそこ!デルカダールの…」

善子「ここまで追いかけてくるのね」

千歌「どうしよう!?」

せつ菜「ふふふ…その先に道はありません」

せつ菜「わざわざ逃げ場のないところに来てくれるとは好都合!」

せつ菜「さあ、観念しなさい!」
 
84: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 23:01:26.43 ID:zhiwADDc
善子「早く開けなさいよ!追いつかれるわよ?」

千歌「で、でも鍵穴がなくて…」

善子「そんなわけ…」

千歌「さっきから探してるけど、どこにもちょうどいい形がないんだよ」

善子「ああもう、どうすればいいのよ!」グイ

ガガ

善子「普通に横に開くじゃない!」

千歌「ええ!?じゃあこの石は何のために?」

善子「知らないわ。入るわよ」

せつ菜「待ちなさーい!」
 
85: (もんじゃ) 2021/12/06(月) 23:04:12.54 ID:zhiwADDc
千歌「中は…何もない?」

善子「床に魔法陣が書いてあるわ!」

千歌「これが旅の扉ってこと?じゃあこれで…どうすればいいの?」

善子「動かない?このままじゃ…」

善子「あ、千歌ちゃん!」

千歌「え?あ…石が…」

善子「光ってる!」

善子「こっちの魔法陣も!」

千歌「わぁっ~!」

グルグル

せつ菜「さあ、逃げられませんよ!」

せつ菜「…あれ、誰もいない…?」

───
──

 
86: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:00:04.43 ID:IHbpFPuV
千歌「うぇ…」

善子「これが旅の扉というものなのね…」

千歌「体がぐにゃぐにゃするよ~」

善子「…ここはどこかしら」

千歌「イシやデルカダールのあたりとは景色が全然違うね」

善子「火山地帯のようね。植物も全然生えてないし、寂しい感じ」

善子「とりあえず休めるところを探したいところだけど…」

千歌「あ、あっちの方に村があるよ!行ってみよう」
 
87: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:01:50.73 ID:IHbpFPuV
善子「へぇ~…蒸し風呂屋が新しくオープンしたばかりなんだって」

千歌「蒸し風呂って、何?」

善子「あれ、知らないの?」

善子「お湯につかる普通のお風呂じゃなくて、蒸気で蒸した部屋で汗を流すのよ」

善子「汗とともに疲れを落とし、さらに美容にもいいという噂!」

千歌「ふーん…そういうのもあるんだ」

善子「しかもオープン記念で先着でタダだって!行ってみない?」

千歌「そうだね、せっかくだし!」
 
88: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:04:20.32 ID:IHbpFPuV
───

千歌「あぁ~…」

千歌「なんか力が抜けてく~」

善子「でしょー…」

善子「これが蒸し風呂よー」

千歌「ここホムラの里って言うんだよね?」

千歌「よっちゃん知ってる?」

善子「確か南の方にある村ね。ユグノアからは結構遠かったと思うわ」

千歌「うーん…違う方法の方がよかったかな?」

善子「まあ、逆にデルカダールの目が届かないって利点もあるわね」

善子「ヨハネは一緒にいるから、焦らず行きましょう」
 
89: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:06:36.06 ID:IHbpFPuV
千歌「そういえば、この里の人たちの話、聞いてた?」

善子「人食い火竜のことでしょ?ここも大変だったみたいね」

千歌「巫女の穂乃果さんが倒したけど、戦いで妹さんが…とか」

善子「妹…妹か…」

千歌「よっちゃん、妹いるの?」

善子「さあね…」

千歌「?」

善子「…そろそろ上がりましょう」

千歌「う、うん…」
 
90: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:10:12.55 ID:IHbpFPuV
善子「さて、どうしましょう」

善子「もういい時間だし、宿屋にでも…」

ダイヤ「あ、あの!」

千歌「はい?…子供?」

善子「どうしたのかしら?」

ダイヤ「…!」

ダイヤ「あ、あなたは…」

千歌「私?」

ダイヤ「いえ、失礼しました。私はダイヤと申します」

ダイヤ「不躾なお願いですが…妹を探すのを手伝っていただけないでしょうか」

善子「小さいのに礼儀正しい子ね」

千歌「妹ちゃんが迷子になっちゃったの?」

ダイヤ「迷子というか、居場所は突き止めたのですが…」
 
91: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:13:49.02 ID:IHbpFPuV
ダイヤ「実は私が迂闊にも魔物に攫われてしまいまして…隙をついて何とか魔物のアジトから逃げ出してきたのですが…」

ダイヤ「どうやら妹は私を助けるために1人で魔物のアジトに向かったようです」

ダイヤ「私と入れ違いになるとは…」

千歌「大変じゃん!早く助けに行かないと」

善子「そうね、この子の妹だと魔物と戦うなんて無理だろうし」

千歌「ダイヤちゃん、だっけ?その魔物のアジトの場所教えてくれるかな」

千歌「私たちが君の妹を助け出してくるよ」

ダイヤ「いえ、私も一緒に行きます」

善子「ダメよ、危ないわ」

ダイヤ「心配には及びませんわ。自分の身くらいは守れます」

千歌「それならいいけど…」

善子「大丈夫かしら?」
 
92: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:15:41.46 ID:IHbpFPuV
───

善子「はー…よくこんなところまで小さな子が1人で来れたわね」

善子「魔物もいるってのに」

善子「まあそこから1人で逃げ出したダイヤちゃんもすごいんだけど」

善子「一体どうやったの?」

ダイヤ「あの、一応言っておきますが私は…」

千歌「あ、誰か倒れてるよ!」

ダイヤ「あれは…!」

ダイヤ「ルビィ!?」
 
93: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:18:14.71 ID:IHbpFPuV
ダイヤ「ルビィ!大丈夫!?ルビィ?」ユサユサ

ルビィ「ん…」ムクリ

ルビィ「あ、お姉ちゃん…」

ルビィ「お姉ちゃん!?」

ルビィ「どうしちゃったのその姿!?」

ダイヤ「あなた…私がわかるの?」

ルビィ「もちろんわかるよぉ!ずっとお姉ちゃんの妹だったんだよ?」

ダイヤ「あなた怪我は?どこが痛いの?」

ルビィ「ルビィどこも怪我してないよ?」

ダイヤ「じゃあなんでこんなところで倒れてたの?」

ルビィ「えっとね、このあたり魔物の気配がなかったから休んでたら、そのまま寝ちゃったみたいで…」

ダイヤ「はあ…」

ダイヤ「まったく、紛らわしい倒れ方しないでちょうだい」

ルビィ「ごめんなさい…」

ルビィ「でもお姉ちゃんも無事でよかったよ」
 
94: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:21:53.43 ID:IHbpFPuV
千歌「えっと…その子がダイヤちゃんの妹?」

善子「その子、私たちと同じくらいの歳に見えるんだけど、どういうこと?」

ダイヤ「すみません、説明が遅れました」

ダイヤ「この子はルビィ、私の妹です」

ダイヤ「私の年齢は、そうね…あなたたちよりほんの少し年上と言ったところかしら」

ダイヤ「本来は歳相応の見た目なのですが、今は魔力を吸い取られていまして…」

善子「魔力?」

ダイヤ「はい。おそらくこの先にいますが、あの魔物はさらってきた人の魔力を吸い取っているんです」

ダイヤ「私は魔力を取らないように抵抗したのですが、気づいたら身長まで吸い取られたみたいで…」

千歌「そんなことあるの?」

善子「私も初めて聞いたけど、目の前で起きてるんだからあるんじゃないの?」
 
95: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:25:57.66 ID:IHbpFPuV
千歌「じゃあダイヤちゃん…ダイヤさん?はずっとそのままってこと?」

ダイヤ「呼び方は別に変えなくても結構です」

ダイヤ「そうならないためにも、私の魔力を取り返しに行きます」

ダイヤ「戦闘になると思いますが…ご協力、いただけますか?」

千歌「それはもちろん、ここまで来たんだもん」

善子「そんな状態のままほっとけないもの」

ダイヤ「ありがとうございます」

ダイヤ「私は魔法が使えないため、微力ではありますがよろしくお願いします」

ルビィ「ルビィも回復の魔法でサポートするよ!」

千歌「じゃあ、行こう」
 
96: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:29:28.99 ID:IHbpFPuV
ギィ

「やっと戻ってきたか。で、どうなん…」

「なんだお前ら!デンダ様のアジトに勝手に入りやがって」

善子「あんたがボスね」

「んん…そこの小娘は逃げ出した奴じゃないか」

「そうか、わざわざ届けに来てくれたのか」

ダイヤ「そんなわけないでしょう」

千歌「ダイヤちゃんの魔力、返してもらうよ!」

「ちょうどいい、全員の魔力を吸いつくしてる!」
 
97: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:31:51.45 ID:IHbpFPuV
───

善子「シャドウアタック!」スパッ

「ぐゎっ…魔王様の右腕になるオレ様の野望が…」

善子「魔王?何のことかしら」

「くく、お前たちに何を言っても無駄さ…」バタリ

善子「なんなのよ…」

ルビィ「お姉ちゃん、あれ!」

ダイヤ「ええ。私の魔力はあの壺に入っているようね」

ダイヤ「これで私の魔力も…」シュー
 
98: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:35:58.55 ID:IHbpFPuV
ポワン

ダイヤ「ふぅ…」

ルビィ「お姉ちゃん!」

ダイヤ「無事、元通りよ。力がみなぎるのを感じるわ」

ダイヤ「それに…元の姿にも戻れたようね」

千歌「おお…美人さんだ」

ルビィ「よかった…」

ダイヤ「お2人ともありがとうございます。おかげで私の魔力も戻ったわ」
 
99: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:39:28.92 ID:IHbpFPuV
ルビィ「ねえ、千歌ちゃんって…」

ダイヤ「あなたも気づいたの?ええ、そうよ」

千歌「チカがどうかしたの?」

ダイヤ「命の大樹に選ばれし勇者よ。あなたをお持ちしていました」

ダイヤ「私たちは勇者を守る使命を持つ、聖地ラムダの一族」

ルビィ「これからは勇者千歌ちゃんのことを守らせてください」

千歌「ええ!?」

善子「勇者…って知ってたの?」

ダイヤ「それはもちろん、最初に会った時から」

千歌「チカはやっぱり勇者なの?どうやって分かったの?」

ルビィ「んー…なんとなく?」

善子「は?」

ルビィ「千歌ちゃんを見たら、勇者だなぁって」

ダイヤ「ラムダの民の勘というか…明確な根拠はないのだけど」

善子「勇者を守る一族…ね」

善子「そこの人が言うんだから、やっぱり本物なのよね」
 
100: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:41:47.14 ID:IHbpFPuV
ルビィ「大いなる闇、邪悪の神が現れし時、光の紋章を持つ大樹の申し子が降臨す」

ルビィ「昔から何回も聞いたラムダの言い伝えなんだけどね」

千歌「紋章…ってこの手の甲の?」

ダイヤ「そう、千歌ちゃんはかつてその紋章の力で邪悪の神を倒し、世界を救った勇者の生まれ変わりなの」

ダイヤ「邪悪の神はもういないのに、なぜ勇者が生まれたのか。その理由はわかりません」

ルビィ「だから真実を見つけるために、ルビィたちが勇者様をゆかりのある命の大樹に連れてくることになったの」

千歌「命の大樹ってあの空にある大きな木のことだよね?」

ダイヤ「ええ。すべての命を司り、世界の調和を保つと言われる神木よ」

千歌「そこに行けば勇者のことがわかるかもしれない…」

善子「だったらすぐに行きましょうよ」

善子「…ってどうやっていくの?空に浮かんでるのよね?」

ダイヤ「それは…私たちにもわからないわ」

ルビィ「ルビィたちは命の大樹への行き方も探してるんだけど、まだ…」

善子「あなたたちでもわからないのね…」

千歌「でも、これでまた近づいたね」
 
101: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:45:25.69 ID:IHbpFPuV
善子「悪魔の子については知ってる?」

ルビィ「どういうこと?」

千歌「私、デルカダールで悪魔の子って呼ばれて追っかけられてるんだ…」

善子「勇者は災いを呼ぶ悪魔の子って言ってたわね」

ダイヤ「そんな、勇者は災いを払う者。真逆なのに…」

ダイヤ「一体なぜそんなことが…」

千歌「それもわからないまま…か」

善子「そんなわけで、ヨハネたちはデルカダールから狙われてるから、巻き込んじゃうかもね」

ダイヤ「先ほど言った通り、私たちは勇者を守る使命があるの」

ダイヤ「たとえ国が相手でも、私たちは千歌ちゃんの味方よ」

ルビィ「うん!」

千歌「ありがとう…!」
 
102: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:48:07.91 ID:IHbpFPuV
善子「じゃあ一旦ホムラに戻ろうかしら」

ダイヤ「待って」

ルビィ「何かあるの?」

ダイヤ「私と一緒にさらわれた人がいるはずなの」

ダイヤ「その人も助け出さないと」

千歌「他にもいるの?」

ルビィ「この部屋にはいないけど…」

ダイヤ「あっちの扉の奥、さらわれた人が閉じ込められているわ」
 
103: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:52:53.62 ID:IHbpFPuV
千歌「いた!」

花陽「誰かいるんですか?」

善子「今開けるわね」

ガチャ

ダイヤ「大丈夫ですか?」

花陽「うう…ありがとうございます!」

花陽「私は花陽といいます。これでも一応情報屋をやっています」

花陽「助けてくれたお礼をさせてください。私にできることなら何でもします!」

善子「情報屋?ちょうどいいわね」

善子「命の大樹について知ってるかしら?」

善子「そこに関係する情報をできるだけちょうだい」

花陽「命の大樹ですか…」
 
104: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 01:57:03.96 ID:IHbpFPuV
花陽「命の大樹はロトゼタシアの中心に浮かぶ大きな木で、この世界の命の源です」

花陽「人は大樹より魂を与えられ生を受け、死とともに魂は命の大樹に戻り…」

ダイヤ「ええと…そういう本に載っているような知識は飛ばして大丈夫よ」

花陽「あ、そうですか」

花陽「そうすると…」

花陽「ああ、そういえば少し前にサマディーに行ったんだけど、そこのお城で見たんです」

花陽「七色に輝くきれいな枝を!」

花陽「あれは命の大樹の枝に違いありません!」

善子「七色に輝く枝ね…まあ行ってみる価値はあるかしら」

ダイヤ「それが命の大樹の枝ならば、勇者を導く手掛かりになるかもしれない」

花陽「お役に立てましたか?」

善子「ええ、ありがとう」

花陽「いえいえ、あなたたちは命の恩人です。何か知りたい情報があればまたどうぞ」
 
105: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 02:02:42.98 ID:IHbpFPuV
善子「次の目的地が決まったわね」

千歌「サマディー…ってどこにあるの?」

ダイヤ「ここから西の方よ」

ダイヤ「確か歩いて行けるはず」

ルビィ「砂漠の国だよね?大変そう…」

善子「サマディーといえば騎士の国ね」

善子「騎士たちのウマレースが人気らしいわ」

千歌「なにそれ、面白そう!」

───
──

 
109: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 21:50:13.94 ID:3xh1QqmC
千歌「サマディーに来たはいいけど、どうすればいいのかな?」

ルビィ「いきなりお城に行って七色の枝をくださいって言っても、無理だよね…」

ダイヤ「見ず知らずの旅人の要求を聞いてくれるわけがないでしょう」

善子「そもそも、ここってデルカダールとつながってたりしないわよね?」

善子「今んとこ兵士にそんな様子はないけど」

ダイヤ「悪魔の子逃亡の情報くらいは入っているでしょうね」

ダイヤ「姿かたちまではどうでしょうか…」

善子「変装とか?」

ルビィ「あ、あっちにお洋服屋があるよ!」

ルビィ「この踊り子の服とかお姉ちゃんに似合いそう」

ダイヤ「私?そういう服はあまり好まないのだけど…」

ルビィ「まあまあ、着てみるだけでも。ね」
 
110: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 21:51:57.42 ID:3xh1QqmC
ダイヤ「着てみたけれど…」

ルビィ「お姉ちゃんきれい…」

千歌「すっごいセクシー♪」

善子「えっろ」

ダイヤ「…さすがにこれは布面積が少なすぎて戦いには向かないわね」

ルビィ「だよね」

ダイヤ「あなた、わかってて着せたでしょう?」

ルビィ「だってお姉ちゃん、ラムダではお硬い服しか来てくれないんだもん」
 
111: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 21:54:08.25 ID:3xh1QqmC
ダイヤ「まったく、無駄な寄り道を…」

千歌「買ってもよかったんじゃない?みんなダイヤちゃんの魅力にメロメロになっちゃうかもよ?」

ダイヤ「わざわざ目立つ格好をしてどうするの…」

善子「ってあいだにお城の近くまで来ちゃったわね」

ルビィ「入る?」

善子「策もなく行っても追い返されるだけでしょ」

ルビィ「だよね…」

ダイヤ「何か方法は…」
 
112: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 21:56:05.91 ID:3xh1QqmC
にこ「ちょっとそこのあなた」

ルビィ「ル、ルビィ?」

にこ「そう、あなたよ。ウマは乗れるかしら?」

ルビィ「おウマさん?乗ったことはあるけど…」

にこ「走るのも?」

ルビィ「走るのはちょっと…」

にこ「くっ…ダメか」

千歌「私はウマに乗って走り回ったことあるよ?」

にこ「あなたは…まあ許容範囲ね。一部サイズが合わないけど、鎧で…」

善子「今度は何の勧誘?」

にこ「一応聞くけど、あなたたちは私のことを知らないのよね?」

善子「なんか有名な人なの?だったら悪いけど知らないわね」

にこ「ちょうどいいわね」

にこ「ここは人目に付くから…ちょっとこっち来て」

善子「は?」
 
113: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 21:59:06.09 ID:3xh1QqmC
ダイヤ「ここは…劇場?」

ルビィ「わぁ…いまマリーちゃんのライブやってるんだって♪」

善子「マリー?誰よ」

ルビィ「知らないの?人気のアイドルだよ?」

千歌「へー、アイドルかぁ」

にこ「入るわよ」

ルビィ「いいんですか?」

ダイヤ「え、だけど入場料が…」

にこ「そのくらい私が出すわ」
 
114: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:03:28.61 ID:3xh1QqmC
鞠莉「♪~♪~♪~」

ルビィ「綺麗な声…」

千歌「すごい、かっこいい!」

にこ「まあ、なかなかやるわね」

善子「で、こんなとこに連れてきて一体何なのよ」

にこ「…この辺りなら平気ね」

にこ「まず最初に。私はにこ、この国の王女よ」

千歌「王女ぉ!?」

にこ「しっ、声がでかい!」

にこ「いくら周りの歓声でかき消されるとは言っても、聞こえるかもしれないんだから」

ダイヤ「王女様…失礼しました。我々の無礼をお許しください」

にこ「いーのよ別に。そんな堅苦しくしなくて」
 
115: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:06:15.36 ID:3xh1QqmC
にこ「単刀直入に言うわ。明日のウマレース、私の代わりに出てくれないかしら」

千歌「はい?」

にこ「この国でウマレースが人気なのは知ってる?」

にこ「騎士たちが腕を競うウマのレースなんだけどね、それに私も出ることになったの」

にこ「だけど…」

千歌「だけど?」

にこ「私…ウマに乗れないのよ」

善子「は?」

にこ「いや、乗って歩くくらいは出来るわよ。ただレースなんてとても…」

にこ「明日は私の誕生日を祝うにこ杯。私が出ないわけにはいかないし」

ダイヤ「国王様はあなたの乗馬の腕を知っているのでは?正直に言って辞退すれば理解していただけると思いますが」

にこ「それが…お父様も国のみんなも知らないのよ」

にこ「にこのことを優勝候補だとも思ってるわ」

善子「ええ…どうしたらそうなるのよ…」
 
116: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:09:48.48 ID:3xh1QqmC
にこ「私は小さい頃から親や国民の期待を裏切らないようにしてきた…」

にこ「できないことをできるように見せかけてきたの」

にこ「部下たちの協力もあって、これまではごまかせてきたんだけど…」

にこ「そうしてるうちにいつの間にかまわりからの評価が上がっていって…後戻りできなくなっちゃって」

にこ「そこで、あなたに影武者になってもらいたいの」

にこ「ほんとはそっちの子の方がにことサイズが近いんだけどね。ウマで走れないんじゃしょうがないわ」

ルビィ「ごめんなさい…」

にこ「別に謝られることじゃないわ。私が一方的にお願いしてるんだもの」

善子「影武者ったって知ってる人に見られたらすぐバレるんじゃないの?」

にこ「それは大丈夫にこ。レースは安全のために防具をつけるから簡単には見破られないわ」
 
117: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:12:52.61 ID:3xh1QqmC
にこ「で、どうかしら?」

にこ「もちろんただでとは言わない。私のできる範囲でお礼はさせてもらうもの」

善子「あ、じゃあ七色に光る枝を貰うことってできるかしら」

にこ「七色の枝…?あ、もしかして虹色の枝のこと?」

にこ「あれは国宝だったはずだけど…まあいいわ、多分にこが言えば貰えると思う」

にこ「ってことは、代わりに出てくれるのよね?」

善子「千歌ちゃん!これはチャンスよ」

千歌「そうだね。うん、私、にこ王女の代わりにウマレース出るよ!」

にこ「ほんと?ありがと~」

千歌「あ、でも負けたらどうしよう…」

にこ「別に負けてもいいわよ。レースを完走してくれれば問題ないわ」

千歌「そうなの?よかったー」

にこ「よし、交渉成立ね」

にこ「明日の朝、レース場の入り口で待ってるわ」スタスタ
 
118: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:16:18.46 ID:3xh1QqmC
善子「あんな王女とそれを知らない王様でこの国大丈夫なのかしらねぇ…」

ダイヤ「将来が不安になるわね…」

千歌「悪い人じゃないんだろうけど…」

ダイヤ「さて、レースは明日だし私たちも…」

ルビィ「…」ウズウズ

ダイヤ「まだライブ見たい?」

ルビィ「うん!」

ダイヤ「まあ、いいでしょう。せっかく入ったのだから」

ルビィ「やったぁ!」

鞠莉「♪~♪~♪~」
 
119: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:18:40.23 ID:3xh1QqmC
───

「きゃー、王女様―」

千歌(バレてないよね…?)

千歌(鎧と兜でチカだとは分からないはず)

千歌(少し胸がきついけど…)

千歌(にこ王女のファンの人をだましてるみたいで悪いなー…)

千歌(でもこれも、虹色の枝のためだもん)

鞠莉「さすが王女様、人気ね」

千歌(あれ、この人確か…)

鞠莉「私、マリー♪ちょっと騎士の1人が怪我しちゃったとかで出れなくなったから飛び入り参加しちゃった~」

鞠莉「王女はウマの名手って聞いたわ。楽しみね」

「それではにこ杯を開始します」
 
120: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:22:51.75 ID:3xh1QqmC
「スタート!」

千歌(やばい、スタートが遅れたっ)

千歌(トップは…マリーさん。早い!)

千歌(思い出せ…果南ちゃんと競走した時を…)

千歌(無理に前の人を抜こうとすると逆にロスするかもしれない…)

千歌(途中までは離されないようにぴったりついて)

千歌(最終コーナー…ここから一気に、抜く!)

千歌(よし、あとはマリーさんだけ)

千歌(だけど、追いつけ…ない…)

「ゴール!」

「勝ったのは…マリー選手!」
 
121: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:26:08.25 ID:3xh1QqmC
───

にこ「千歌、あんたなかなかやるじゃない!」

にこ「まさかあれほどの腕とは思わなかったわ」

千歌「でも勝てなった…」

にこ「だから勝ち負けは気にしないって言ったじゃない」

にこ「それにあのマリーって人、相当な腕よ」

にこ「うちのトップ騎士でも勝てるかどうか…」

にこ「さあ、あとはにこが挨拶してくるわ」

にこ「虹色の枝は後で…」

ガチャ

にこ「誰!?」
 
122: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:29:59.99 ID:3xh1QqmC
鞠莉「ハーイ、お邪魔するわよ」

にこ「あなたはあのアイドルの!?」

鞠莉「さすが王女様ね。見事な走りだっ…た…?」ジー

鞠莉「ふーん…そういうことなの?」

鞠莉「さっきはこっちの子がウマに乗ってたってわけ?」

にこ「な、なによ」

鞠莉「王女が替え玉使ってたなんて、残念」

にこ「あんたに何がわかるのよ!みんなの期待を裏切らないためにはこうするしかなかったのよ!」

鞠莉「それが騎士の国のプリンセス様のすることなんだ」

鞠莉「勝てない勝負でも正々堂々戦うのが騎士道なんじゃないの?」

にこ「うるさい!アイドルが騎士道の何を知ってるの!」

鞠莉「…まあいいわ。そっちの替え玉のあなた、またどこかで会えるといいね♪」
 
123: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:33:13.68 ID:3xh1QqmC
───

善子「王女遅くない?」

善子「ここで待っててって言われたのよね?」

千歌「うん」

ダイヤ「虹色の枝の交渉に時間がかかっているのかしら」

善子「貰えないなんてことにならないといいけど」

にこ「…」トボトボ

ルビィ「あ、来た!」

千歌「なんか元気がないね」

善子「まさか…」
 
125: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:36:29.73 ID:3xh1QqmC
にこ「どーしましょ…」

千歌「どうしたの?」

にこ「ああ、あんたたち…」

善子「虹色の枝は?もしかして…」

にこ「あれね、うん…」

にこ「あの…その前に、ね」

にこ「もう1回、力を貸してください!」

ダイヤ「どういうこと?」
 
126: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:39:43.51 ID:3xh1QqmC
こ「デスコピオンは知ってる?」

千歌「デスコピオン?強そうな名前だね」

にこ「実際強いわよ」

にこ「砂漠の〇し屋って呼ばれる魔物なんだけどね。毎年この時期に国の近くに出てくるのよ」

にこ「また今年も何人か被害に遭ったらしいの…」

にこ「それで、ね。にこがそのデスコピオンの退治を任されることになっちゃって」

にこ「お願い!一緒に魔物を倒してください!」

善子「はい?」

善子「その前に、約束の虹色の枝が先じゃないかしら」

にこ「それは…その、デスコピオンの話があって言い出せなくて…」

ダイヤ「ヨハネ。魔物によって被害が出ているのであれば協力してあげるべきよ」

善子「わかってるわよ。別にヨハネも断る気はないわ」

善子「ただ約束を無視されたらどうしようってなるのよ」

にこ「それは大丈夫よ。デスコピオンを退治出来たら今度こそ虹色の枝のことを掛け合ってくるから」

善子「ほんとでしょうね」

千歌「よし、じゃあデスコピオンって魔物を倒しに行こう!」
 
127: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:44:42.85 ID:3xh1QqmC
鞠莉「話は聞かせてもらったわ!」

ダイヤ「誰!?」

鞠莉「デスコピオン退治、私もついていっていいかしら?」

ルビィ「マリーちゃん!」

千歌「え、でも…」

ダイヤ「戦力は多いに越したことはないけれど…」

善子「アイドルなんでしょ?そんなことして大丈夫なの?」

鞠莉「平気平気。こう見えて、戦いも結構自信はあるのよ?」

にこ「手伝ってくれるのなら断る理由はないわね」

にこ「みんな、よろしくお願いするわ」
 
128: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:48:50.03 ID:3xh1QqmC
───

鞠莉「ところであなたたちはどうして旅をしてるの?」

ルビィ「勇者が生まれた理由を知るために命の大樹を目指してるんです」

ルビィ「災厄を起こす邪悪の神は前に勇者が倒したのに、なんで今新しい勇者がいるのか」

ルビィ「もしかして邪悪の神が復活しちゃうのかも…」

ダイヤ「ダメよルビィ。会ったばかりの人にそんなとこまで」

ルビィ「あ…ごめんなさい、お姉ちゃん…」

鞠莉「命の大樹?へー…面白いことしてるじゃない」

鞠莉「ってことは、この中の誰かが勇者ってこと?」

鞠莉「んー…あなたかしら、千歌」

千歌「え、何で分かるの?」

鞠莉「あ、やっぱり?4人の中で勇者っぽいのって言ったらあなたしかいないもの」

鞠莉「邪悪の神が復活か…」

鞠莉「そうなったらあなたたちはそれを倒すんでしょ?すごいことね」

善子「そんな話をいきなりされて受け入れるなんて、あなたも変わってるわね…」

千歌「マリーさんはなんでアイドルやってるの?」

鞠莉「んふふ…ひみつ♪」

善子「人に聞いといて自分は言わないんだ?」
 
129: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:52:16.33 ID:3xh1QqmC
にこ「ここよ。目撃情報があったのは」

千歌「いねいね…」

にこ「油断しないで。砂の中に隠れて獲物を狙ってくるから」

鞠莉「ふーん…じゃあ♪」

鞠莉「デスコピオンちゃーん、でていらっしゃーい」

にこ「ちょっと、何言ってんのよ!」

鞠莉「だって出てきてくれないと倒せないじゃん?」

善子「そんなんでおびき出されるわけ…」

「シギャァ」

ルビィ「出たっ!」

にこ「こいつがデスコピオンよ!」

ダイヤ「砂漠の〇し屋…名前に恥じない威圧感ね」

鞠莉「よーし、王女様ファイトー」
 
130: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 22:55:56.19 ID:3xh1QqmC
にこ「…」プルプル

「シギギ」

にこ「にこじゃ無理ー!」ダダダ

鞠莉「逃げちゃった」

ダイヤ「まあ、正直あまり戦力になるとは思ってなかったわ」

ダイヤ「下手に動いて危険が及ぶのもそれはそれで困るし」

善子「…ヘタレ王女め」

鞠莉「しょうがないわね、私たちでどうにかするわよ!」
 
131: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:01:28.06 ID:3xh1QqmC
───

ダイヤ「氷雷陣!」バチッ

「ギギ…」パタリ

鞠莉「やったわね!」

にこ「倒した…の?」

善子「見ての通りよ」

にこ「…確かに動かない」ツンツン

にこ「あんたたちやるわね♪にこが見込んだ通りだわ」

にこ「さあ、証拠にこいつを持って帰るわよ」
 
132: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:07:26.73 ID:3xh1QqmC
にこ「それにしても、砂漠の〇し屋っていっても大したことなかったわね」

善子「怯えて隠れてた人が偉そうに」

にこ「べ、別に怯えてたわけじゃないわよ。足手まといにならないようにしてただけだし」

にこ「私は魔物と戦うのなんてやったことないんだから」

にこ「にこだってちゃんと実戦を重ねればいつかはこれくらい…」

善子「それより忘れてないでしょうね」

にこ「大丈夫よ。約束はちゃんと守るから」

にこ「今度こそ、お父様に言って虹色の枝を貰ってきてあげる」
 
133: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:13:07.79 ID:3xh1QqmC
───

にこ「どーもぉ♪にこでーす」

にこ「みんなもう心配いらないわよ!」

にこ「砂漠の〇し屋はほら、この通り」

ワーワー

ルビィ「すごい歓声だね」

善子「国民からの人気はすごいのねこの人」

鞠莉「手柄は全部あなたのものってわけ?」

にこ「私が退治を任されたんだからしょうがないじゃない?」

にこ「みんなは私が腕の立つ騎士だと思ってるみたいだし」

鞠莉「それで…いいの?」

にこ「別に私も好きでやってるわけじゃないわよ。ただみんなが望む王女になっているだけ」

鞠莉「あなたたちもそれでいいの?」

ダイヤ「別に称賛の声が欲しくて戦ったわけではないので」

千歌「平和になるんならいいんじゃない?」

善子「虹色の枝が手に入ればそれでいいわ」

鞠莉「欲がないのね」

にこ「…お父様に報告してくるから、そこで待ってて」
 
134: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:16:35.51 ID:3xh1QqmC
「あのデスコピオンを倒すとは、さすが我が娘」

にこ「いえ、そこにいる者たちの手助けがあってこそです」

「そう謙遜するでない」

「皆の者。勇敢なる王女にこに…」

「ギシャ…」ガバ

にこ「きゃー!デスコピオンが!」

「む、まだ生きておったか」

ダイヤ「しまった!止めをさせていなかったみたい」

千歌「このままじゃにこ王女が!」

鞠莉「ちょっと待って」

千歌「でも!」

鞠莉「お願い。危ないときはサポートに行くから」

ダイヤ「…町の人たちは被害に遭わないように避難させましょう」
 
135: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:19:41.69 ID:3xh1QqmC
「さあ、にこよ。今一度止めを刺してくるのだ!」

にこ「…」プルプル

「どうした?にこ。瀕死の相手じゃないか」

にこ「私には…」

鞠莉「騎士たるもの!」

にこ「信念を決して曲げない…え?」

鞠莉「騎士たるもの!」

にこ「どんな逆境にあっても正々堂々立ち向かう!」

鞠莉「そう、あなたは騎士の国のプリンセス」

鞠莉「このまま逃げていいの?」
 
136: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:23:13.40 ID:3xh1QqmC
にこ「私は…」

にこ「たぁっ」キン

「シギャ」

にこ「騎士の国の王女よ!」ズバ

「ギィ…」パタリ

にこ「はぁっ…はぁっ」

鞠莉「やればできるじゃない♪」

にこ「私が…倒した…」

「わぁー、王女様―」
 
137: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:27:08.99 ID:3xh1QqmC
善子「あの王女もそこまでへたれじゃなかったみたいね」

千歌「マリーさんはそれがわかってて…?」

善子「あの人もなかなかつかみどころがないわね」

ルビィ「お姉ちゃん、さっき何かした?」

ダイヤ「多少の補助呪文はかけたわ」

ダイヤ「まあ、それがなくても勝てたでしょうけど」

ダイヤ「余計なお節介だったかしら?」

善子「ま、いいんじゃない。みんな気づいてないみたいだし」
 
138: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:32:18.28 ID:3xh1QqmC
───

にこ「というわけでお父様。ウマレースを走ったのも、デスコピオンを倒したのもこの方たちなのです」

「そうか…どうやら私たちはお前に重圧をかけすぎたのかもしれない」

「だが、デスコピオンに止めを刺したのはまぎれもなくお前の力」

「その勇気があればいずれは…」

にこ「ところでお父様、お願いがあるのですが」

「なんだ」

にこ「こちらの方たちは虹色の枝を探して旅をしているのです」

にこ「お世話になったお礼に、ぜひ虹色の枝を差し上げたいのですが」

「虹色の枝とな…しかし、あれは行商人に売ってしまってのう…」

にこ「はぁ!?」

にこ「あれは国宝なんでしょう!?なんで売っちゃったの!?」

「しかたないだろう。この国の財政が危ないのだから」

にこ「そんな…」
 
139: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:37:06.52 ID:3xh1QqmC
にこ「ごめんなさい!本当に知らなかったの、虹色の枝がもうないことは」

善子「はぁ…」

千歌「まあ、知らなかったことは責められないし…」

「すまないな旅のものよ。その商人はダーハルーネの方に行ったと聞いた」

千歌「ダーハルーネ?」

「ここから西にある港町だ」

善子「じゃあ次はそこね」

ダイヤ「手掛かりがそれしかない以上、追うしかないわね…」

「私たちがしてやれることはないが、他に困ったことがあればまた来るといい」

にこ「そうよ、今度はにこが力になってあげるから♪」
 
140: (もんじゃ) 2021/12/07(火) 23:40:22.70 ID:3xh1QqmC
鞠莉「よし、決めた!私も一緒に行くわ」

千歌「どこに?」

鞠莉「あなたたちと一緒に命の大樹を目指すのよ」

鞠莉「そして邪神ちゃんが復活するならそれを倒す!」

善子「いきなり何言ってんのよ!」

ルビィ「ア、アイドルは!?」

鞠莉「一旦お休みね」

鞠莉「私はね、みんなをシャイニーにしたくてアイドルをやってるの」

鞠莉「だけど、いろんなところを回ってるときに、魔物に苦しめられる人も見てきた」

鞠莉「邪神ちゃんが復活するってなったらなおさらよ」

鞠莉「みんなのスマイルを奪うやつをほっておくわけにはいかないもの」

鞠莉「だからあなたたちの目的は私の目的にもつながってるわ」

鞠莉「それに…勇者ちゃんにも興味あるしね♪」

鞠莉「ね、いいでしょ?」

千歌「うん、仲間が増えるのは嬉しいよ!」

千歌「よろしく、マリーさん」

ルビィ「わぁ…あのマリーちゃんと一緒に旅できるなんて」

鞠莉「あ、アイドルマリーはお休み中だから、旅の間はただの鞠莉として扱ってね♪」

───
──

 
142: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 20:47:31.95 ID:2OD3FvGk
ルビィ「スイートポテトおいしい~」

鞠莉「このレモンパイもデリシャスね♪」

千歌「見てみて、このみかんゼリー。スライムの形で可愛い!」

千歌「あ、よっちゃんも食べる?」

善子「…みかんはあまり好きじゃないからいいわ」

千歌「えー、こんなにおいしいのに!」

ルビィ「あ…スライムさんの顔が…」

千歌「そう言われると食べにくくなっちゃうじゃん…」

善子「ヨハネはこのガトーショコラを堪能するわ」

鞠莉「それもおいしそうね。一口ちょーだい♪」
 
143: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 20:50:36.45 ID:2OD3FvGk
ダイヤ「あなたたち…ダーハルーネに来た目的、ちゃんとわかっているの?」

鞠莉「もちろんわかってるわよ?ほらダイヤも、あーん♪」

ダイヤ「はむ…」

ダイヤ「おいしい…」

鞠莉「でしょ?ここの町はスイーツ店が多いのよ」

鞠莉「特に今は海人コンテストが近いから、世界中からお店が集まってるし」

鞠莉「この抹茶プリンだって限定って書いてあったんだし、そりゃおいしいわよ」

千歌「海人コンテストも面白そうだよね。海が似合う人を決めるなんて」

ルビィ「千歌ちゃんとか似合いそう」

千歌「うーん…チカよりは果南ちゃんの方が似合うと思うんだよね」

千歌「あ、果南ちゃんっていうのはチカの幼馴染で…」
 
144: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 20:54:44.36 ID:2OD3FvGk
ダイヤ「…じゃなくて!」

ダイヤ「遊びに来たわけじゃないのよ?」

ダイヤ「私たちは虹色の枝を買った商人を探しているのでしょう」

鞠莉「もちろんわかってるわよ。だからちゃんと情報も集めたでしょ?」

善子「残念ながら、商人はもうグロッタの町に行くためにバンデルフォン地方への船で行っちゃったみたいなのよね」

ダイヤ「早く私たちも船を探さないと…」

鞠莉「船ならあるよ?」

ダイヤ「だからバンデルフォン地方への定期船を探して乗せてもらうと…」

鞠莉「じゃなくて。マリーが自分の船持ってるの」

ダイヤ「はい?」

千歌「え、鞠莉ちゃん自分の船持ってるの!?」

ダイヤ「それは…あのゴンドラのような小舟ではなく、海を渡れるレベルの船という意味?」

鞠莉「もちろん。私のシャイニー号はどこへでも行けるわ!」

ルビィ「すごい…」

善子「個人で船を持ってるなんて何者よ…」

鞠莉「ただのアイドルよ♪」
 
145: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 20:57:51.69 ID:2OD3FvGk
鞠莉「え、出せない?」

「はい。今は海人コンテストの期間で、町長の許可がなければ船の入出港はできないんです」

千歌「そんな…」

「町をあげてのお祭りです。ぜひ、皆さんも見て行ってください」

「いえ、なんなら参加したらいかがです?飛び入り参加も受け付けていますよ」

ダイヤ「私たち、急いでいるのですが…」

鞠莉「町長さんに許可をもらってくればいいのよね?」

「はい、町長の璃奈さんの許可さえあればドックを開けますよ」

善子「じゃあさっさと町長にかけあってきましょ」
 
146: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:00:56.46 ID:2OD3FvGk
善子「すみませーん!璃奈さんいますか?」

璃奈「はい」ガチャ

璃奈「私が、璃奈だけど」

善子「え、ちっちゃ」

千歌「実はお願いが…」

璃奈「あ…」

千歌「ん?」

璃奈「帰って」

千歌「え…?」

璃奈「ここはあなたが居ていいところじゃない」バタン
 
147: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:04:09.66 ID:2OD3FvGk
ルビィ「どういう…こと?」

鞠莉「何なの。話も聞かずに」

善子「今、千歌ちゃんを見てたみたいだけど…まさか!」

千歌「バレた…?」

善子「つまり、ここまでデルカダールの手が来てるってこと?」

ダイヤ「だとすると…早く動いた方が…」

鞠莉「どういうこと?千歌がどうかしたの?」

ダイヤ「実は…」
 
148: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:07:24.73 ID:2OD3FvGk
鞠莉「なるほど…そんなことに…」

千歌「ごめんなさい…何も言わなくて」

鞠莉「別にいいわよ。あなたが悪い人じゃないことなんてわかってるんだし」

ルビィ「でもマリーちゃんの評判にも影響しちゃうんじゃ…」

鞠莉「マリーはやりたいようにやってるだけだし」

鞠莉「むしろマリーがライブして千歌の汚名を晴らしてあげようかしら?」

ルビィ「おおごとにしないほうがいいんじゃ…」

善子「それよりどうする?町長が出港許可出してくれないとなると、町から出れないし」

ダイヤ「海人コンテストが終わるまで待つしかないのかしら…」

鞠莉「じゃあさ、せっかくだしコンテスト見てみない?」

善子「話聞いてた?千歌ちゃんは追われてるのよ?」

鞠莉「あの町長ちゃんは千歌を捕まえる気はないみたいだし、こっそりしてれば平気でしょ」

鞠莉「どうせ動けないんだから、楽しまなきゃ」
 
149: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:11:23.17 ID:2OD3FvGk
善子「結局見に来ちゃったし」

千歌「人がたくさんいるね」

ダイヤ「この中なら逆に紛れられるでしょうけど、周囲の警戒は怠らないように」

ルビィ「あ、あの騎士さんかっこいいね」

鞠莉「ほんとね。出場者かしら?」

鞠莉「スタイルいいし、鎧も似合ってる。なにより強者のオーラがあるわ」

ダイヤ「あの鎧のマークは確か…」

千歌「あ、あの人…」

善子「…っ!隠れて!」サッ
 
150: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:16:41.98 ID:2OD3FvGk
ルビィ「ど、どうしたの!?」

善子「あれ…デルカダールの兵士よ」

千歌「確か、軍師の…絵里さん」

鞠莉「え、それ見つかったらヤバいやつ?」

善子「捕まっちゃうでしょうね…」

ルビィ「千歌ちゃんを探してるのかな…?」

ダイヤ「一旦コンテスト会場から離れましょう」

善子「町から出たほうがいいかもしれないわね」

ルビィ「あれ、千歌ちゃんは?」キョロキョロ
 
151: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:19:57.24 ID:2OD3FvGk
「ほらあそこ、猫が海で溺れてるよ」

「かわいそうに…」

千歌「何で誰も助けてあげないの!」

千歌「私が行く!」ドボン

ルビィ「千歌ちゃん!?」

ダイヤ「あの子…」

善子「猫を助けに海に飛び込むなんて目立つこと…」

鞠莉「確かに勇者ねぇ…」
 
152: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:24:28.95 ID:2OD3FvGk
千歌「ほら、もう大丈夫だよ~」

「にゃー」

千歌「よいしょっ」

スッ

千歌「あ、ありがとうございます」ニギッ

絵里「見つけたわ」グイ

千歌「あっ…」

善子「絵里…」

鞠莉「いつの間に…」

絵里「こんなところで悪魔の子に会えるなんて、わざわざダーハルーネまで来たかいがあったわね」

千歌「くっ…」
 
153: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:29:02.08 ID:2OD3FvGk
ルビィ「えーいっ!」ドン

絵里「きゃっ」

ルビィ「千歌ちゃん、逃げて!」

ダイヤ「こっち!」

千歌「え、でも、ルビィちゃんが…」

ダイヤ「いいから早く!」

絵里「待ちなさい!」

絵里「この…離しなさい!」

ルビィ「離さないもん!」
 
154: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:32:02.41 ID:2OD3FvGk
───

ダイヤ「兵士は撒けたようね」

千歌「でもルビィちゃんが捕まって…」

千歌「何で見捨てたのさ!」

ダイヤ「私たちの役目は勇者を命の大樹へ導くこと。あの場はあなたの安全確保が最優先よ」

ダイヤ「ルビィもそれはわかっているはず」

千歌「ダイヤちゃんはそれでいいの!?」

ダイヤ「いいわけないでしょう…!」

千歌「だったら…!」

鞠莉「まあまあ2人とも落ち着いて」

鞠莉「ルビィが捕まっちゃったのは残念だけど、逆に言えばそれ以外は無事なんだから」

鞠莉「こっちから取り返しに行けばいいじゃない」

善子「それには賛成だけど…どうする気?」

善子「ここからちょうどコンテストのステージのとこが覗けるけど、ルビィはデルカダール兵に囲まれてるわよ」

善子「あいつの狙いは千歌ちゃんだろうから、多分人質みたいなもんね」

ダイヤ「正面からは数の分が悪いわね…」

鞠莉「なによりあの軍師の子も強そうだしね」
 
155: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:35:06.29 ID:2OD3FvGk
璃奈「あの…」

鞠莉「わっ、びっくりした!」

千歌「町長の…璃奈ちゃん?」

善子「まさか…私たちを捕まえに来たの?」

璃奈「あなたは、悪魔の子?」

千歌「え?」

ダイヤ「違います」

ダイヤ「この子は決して悪魔の子なんかではないわ」

璃奈「…そうだよね」

善子「何の確認?」
 
156: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:38:24.72 ID:2OD3FvGk
「にゃー」

千歌「あ、その猫…璃奈ちゃんのだったの?」

璃奈「そう。うちの子」

璃奈「あなたが助けてくれたの、私見てた。ありがとう」

璃奈「あの状況で見ず知らずの猫を助けてくれる人が悪魔の子のはずがない」

璃奈「さっきはいきなり追い返してごめんなさい」

璃奈「デルカダールの人から聞いた話だけで判断しちゃってた」

千歌「ああ…うん、いいよ別に」

千歌「いきなり悪魔の子とか言われたら、怖くなるのが普通だもん」

璃奈「お礼とお詫びに何か私に手伝えることない?」

璃奈「町長としての立場もあるから、表立ってデルカダールには逆らえないけど」

璃奈「あなたたちをこの町から逃がすことくらいはできると思う」
 
157: (調整中) 2021/12/08(水) 21:41:23.58 ID:2OD3FvGk
鞠莉「それなら、まずは船を出す許可を貰えないかしら?」

鞠莉「私の船がドックにあるの」

璃奈「船?それならこれを見せればドックを開けてくれるはず」ピラ

千歌「許可証くれるの?ありがとう!」

鞠莉「それからなるべくバレずにあそこのステージまで近づく方法はないかしら?」

璃奈「あの捕まってる子もあなたたちの仲間?」

ダイヤ「ええ、私の妹よ」

璃奈「ここからだと…そこの水路からゴンドラに乗って、左に曲がればステージの裏に繋がる道がある」

鞠莉「ステージの裏…うん、それならいけるかも」

善子「何か作戦あるの?」

鞠莉「成功する確率はあんまり高くないかもしれないけどね」
 
158: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:46:46.76 ID:2OD3FvGk
鞠莉「ありがとう、璃奈」

璃奈「もういいの?」

鞠莉「ええ、おかげでどうにかできそうよ」

鞠莉「これ以上はあなたを危険に巻き込んじゃうかもしれないから」

千歌「うん、これは私たちの問題だから」

璃奈「そう。じゃあ気を付けて」

千歌「猫ちゃんももう海に落ちないように気を付けてねー」

「にゃー」
 
159: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:49:24.04 ID:2OD3FvGk
───

善子「やっぱりこっちは警備が薄いのね」

千歌「1人だけ。眠らせちゃえばいいだけだったしね」

善子「ここからならステージがよく見えるわ」

ダイヤ「ルビィ…」

千歌「早くルビィちゃんを助けださないと」

善子「焦らない。作戦通り鞠莉ちゃんの合図を待たないと」

千歌「わかってるよ」

ダイヤ「タイミングはおそらくそろそろかと…」

ピィー

千歌「来た!」
 
160: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:54:42.68 ID:2OD3FvGk
ダイヤ「イオ!」

ドカン

絵里「!?」

絵里「今の爆発は?」

「あっちの方からです」

絵里「多分奴らの仕業ね。被害がないか確認してきて」

「はっ」

千歌(ダイヤちゃんが魔法で注意をそらしてる間に、後ろからルビィちゃんを)
 
161: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 21:58:08.75 ID:2OD3FvGk
絵里「…で、あれが揺動だと見抜けないとでも?」

千歌(見つかった!?)

ルビィ「千歌ちゃん!ヨハネちゃん!」

善子「その割には後ろが無警戒じゃない?」

善子「ルビィは取り返したわよ」

絵里「別に、その子はどうでもいいもの」

絵里「悪魔の子をおびき出せれば元々解放するつもりだったし」

絵里「わざわざ捕まりにきてくれるんだもの。囮に使ったかいがあったわ」
 
162: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 22:01:20.34 ID:2OD3FvGk
善子「ふん、私たちをなめてると痛い目見るわよ?」

絵里「さあ痛い目を見るのはどっちかしら」

絵里「あなたたちとこちらの人数の差わかってるの?」

善子「上を見なさい」

絵里「上?」

ドン

絵里「あっつ」

善子「騙されたー♪下からジバリアでした―」

絵里「この…っ」

善子「逃げるわよ!」
 
163: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 22:04:29.64 ID:2OD3FvGk
絵里「そっちは海よ!まさか泳いで逃げる気?」

絵里「モンスターの餌食になりたいのかしら?」

善子「さあどうかしらね?」

鞠莉「ジャストタイミング♪」

絵里「船!?」

鞠莉「シャイニー号のお通りよー」

鞠莉「さあ乗って」

ダイヤ「ルビィ、飛ぶわよ!」

ルビィ「え、うん!」

千歌「たぁっ」ピョン

絵里「待ちなさい!」

善子「待つわけないでしょ!」
 
164: (もんじゃ) 2021/12/08(水) 22:07:33.73 ID:2OD3FvGk
鞠莉「みんな乗ったね?」

千歌「大丈夫。ルビィちゃんも合わせて全員いるよ!」

鞠莉「よーし、全速力で進むわよー」

鞠莉「スピードなら軍艦にも負けないわ」

ダイヤ「それにしても岸壁ギリギリを通る見事な操舵ね」

鞠莉「でしょー♪マリーのテクニックならこんなもんよ」

鞠莉「…ぶっちゃけ、ぶつけそうで怖かったけどね」

善子「ルビィも大丈夫だった?絵里に捕まってる間なんともなかった?」

ルビィ「うん。あの人、ルビィに乱暴したりとかはなかったよ」

ダイヤ「よかった…本当に」

千歌「チカのために…ごめんね」

ルビィ「ううん、千歌ちゃんを守るのがルビィの役目だもん」

鞠莉「さあ、目指すはグロッタの町!」

───
──

 
167: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 21:50:34.04 ID:pQPt7KCq
「あなたたち武闘会に興味ないかしら?」

千歌「ぶとうかい?」

「もうすぐ開催されるの。よかったら参加してみてね」

鞠莉「ここグロッタは戦士たちが集まる町って聞いたことあるけど、舞踏…ダンスも人気なのかしら?」

ダイヤ「ダンスは本でなら見たことあるけど、実践はなかなか…」

ルビィ「鞠莉ちゃんはアイドルだったから得意だよね?」

鞠莉「んー…まあできると言えばできるけど…」

善子「あ、ここに書いてあるわよ」

善子「なになに…血沸き肉躍るタッグマッチ。グロッタ武闘会開催!」

鞠莉「あ、そっちのぶとうなのね」

千歌「優勝者には豪華賞品を贈呈…へーなんだろう」

善子「あそこに飾ってあるのじゃないかしら?」

ルビィ「あー!あれ!」

ダイヤ「あの光っている枝はもしかして…」

千歌「虹色の枝!?」
 
168: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 21:52:42.94 ID:pQPt7KCq
ダイヤ「グロッタで情報を集めようと思ったら、虹色の枝そのものが見つかるなんてね」

鞠莉「ラッキーだね♪探す手間が省けたわ」

ルビィ「でも…これ優勝賞品なんだよね?」

千歌「出るしかないね。武闘会」

善子「ええ、勝ち取ってやるわ」

鞠莉「タッグマッチとあったわね。ペアで出ないといけないのかしら?」

善子「じゃあヨハネと千歌ちゃんで…」

鞠莉「ずるい、マリーが千歌とコンビを組むわ」

千歌「ええ?…2人ともチカと?」

ダイヤ「まって、組み合わせは抽選で決まると書いてあるわ。」

善子「あ、そうなの?」

鞠莉「知らない誰かと組む…その運も必要なのね…」
 
169: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 21:55:35.91 ID:pQPt7KCq
鞠莉「じゃあ5人分エントリーしてくるね」

ルビィ「あ、あの…ルビィはちょっと」

ダイヤ「そうね、ルビィはこういう戦いには向いてないかもね」

善子「確かに。ルビィは回復メインのサポート系の魔法だもんね」

鞠莉「じゃあ4人…ダイヤは出るでいいの?」

ダイヤ「正直こういうのは好まないのだけど…勝ち残る確率を上げるためにも数は多いほうがいいでしょう」

鞠莉「よし、決まりね」

千歌「誰と一緒になるんだろう…」

善子「抽選会場はこっちよ」
 
170: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 21:59:13.36 ID:pQPt7KCq
「次の組み合わせは…千歌選手と愛選手!」

千歌「はい」

愛「はい」

「見ろよ、前回優勝コンビ、DiverDivaの愛だ」

愛「さすがに今回も果林と一緒ってわけにはいかなかったかー」

果林「ま、そんなものよ」

愛「君がアタシのパートナーだね。よろしく」

千歌「うん、よろしく!」

愛「愛さんと一緒にいい試合にしよう!アイだけに!」

千歌「チカも力いっぱい戦うよ!チカだけに!」

愛「あははっ、君なかなかやるね」

千歌「私たち相性いいかもね!」
 
171: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:02:15.53 ID:pQPt7KCq
「果林選手と鞠莉選手」

鞠莉「あなた、前回優勝したの?」

果林「ええ、あそこの愛と一緒にね」

鞠莉「それは心強いわね。優勝できちゃうかも?」

果林「あなたの実力次第かしらね」

「曜選手と梨子選手」

曜「やったよ梨子ちゃん、同じチームだよ!」

梨子「そうだね。一緒でよかったね」

曜「これで優勝はいただきだよ!」

梨子「もう、油断しちゃだめだよ?」
 
172: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:05:59.63 ID:pQPt7KCq
───

ルビィ「で…お姉ちゃんとヨハネちゃんは予選で負けちゃった…」

善子「あっさり流すな!」

ダイヤ「面目ないわね」

鞠莉「その辺は相手の運もあるからしょうがないわ」

鞠莉「ダイヤのパートナーとかブーメラン使いでしょ?魔法使いのダイヤとは遠距離タイプ同士で相性いまいちじゃない」

ダイヤ「そうね。それにあの人は…おそらく実力を発揮できていなかった」

ルビィ「そうなの?」

ダイヤ「舞台に上がる前からすごく緊張していたもの、人前で戦うのに向いてないのかもね」

ダイヤ「もし正体を隠して戦えれば…もっと上を狙えたでしょうね」
 
173: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:09:30.08 ID:pQPt7KCq
ルビィ「千歌ちゃんと鞠莉ちゃんは決勝トーナメントおめでとう!」

千歌「ありがとう!」

千歌「私たちは運がよかったよね」

千歌「愛ちゃんと果林ちゃんはさすが前回の優勝者だよ」

鞠莉「頼もしいわよね」

善子「決勝トーナメントでは、ヨハネに勝った曜って格闘家に気を付けてね」

善子「あの子…強いわ。ヨハネのパートナーもタイプの同じ格闘使いだったけど、レベルが違う」

千歌「うん、それは見ててわかるよ」

鞠莉「優勝への最大の敵かもしれないわね」
 
174: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:13:28.93 ID:pQPt7KCq
───

「準決勝は前回優勝者がいるコンビ同士の対決!これは見ものです」

果林「できれば決勝で当たりたかったところだけど」

愛「だね。カリンを準優勝にしてあげられなくて残念だよ」

果林「ふふ、言ってくれるわね」

鞠莉「バトルの前に、プレゼント♪」チュッ

果林「特別サービスよ♪」チュッ

千歌「…」スイ

愛「…」サッ

鞠莉「ちょっと、マリーの投げキッスを何で避けるのよ!」

千歌「なんとなく?」

果林「愛も冷たくない?」

愛「いやー、今更魅了されるとも思えないけど一応ね」
 
175: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:16:28.79 ID:pQPt7KCq
鞠莉「まあいいわ。私たち2人、名付けてマリーンのコンビネーションを見せてあげる!」

愛「ちょっと、カリンは愛さんとDiverDiva組んでるでしょ!?」

果林「大会終わったらまた戻るわよ」

果林「だけど今は鞠莉と果林でマリーンよ」

愛「よし、千歌っち。アタシたちもコンビ名つけよう!」

千歌「そうだね、愛ちゃん。えーと…千歌と愛で…」

愛「アイチカ?チカアイ?」

千歌「そのまますぎない?」

愛「じゃあ…」

鞠莉「話し合ってるところ悪いけど」

果林「遠慮なく攻めさせてもらうわ!」
 
176: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:19:46.46 ID:pQPt7KCq
ルビィ「うぅ…千歌ちゃんと鞠莉ちゃん、どっち応援すれば…」

善子「ダイヤちゃんはどう見る?」

ダイヤ「実力はおそらくほぼ互角」

ダイヤ「ただ、千歌ちゃんと愛さんはどちらも剣士タイプだから攻撃が単調になりがち」

ダイヤ「一方果林さんは魔法タイプ、鞠莉とのバランスがとれている」

ダイヤ「攻防の切り替えのコンビネーションもよく、押している状態ね」

ダイヤ「このままならおそらく…」

善子「私もおんなじ考えね」

善子「優勝は鞠莉ちゃんに託すことになるのかしら?」

ルビィ「多分…千歌ちゃん、何か狙ってる」

善子「何かって…何を?」
 
177: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:24:44.63 ID:pQPt7KCq
ルビィ「あっ!」

善子「何、今の…」

善子「鞠莉ちゃんの火ふき芸を避けずに、剣に乗せて攻撃に利用した!?」

ダイヤ「そして、相手の連携が崩れたところをすかさず2人で追撃」

ルビィ「千歌ちゃんたちが、勝った…」

ダイヤ「あんな戦い方…見たことないわ」

善子「ルビィは知ってたの?」

ルビィ「ううん。初めて見たよ…」

善子「じゃあ何で千歌ちゃんが狙ってるなんて…」

ルビィ「うーん…なんとなく?」
 
178: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:29:04.17 ID:pQPt7KCq
「決勝戦はこの2組!愛・千歌チーム対曜・梨子チーム!」

曜「いっくよー」

千歌(速い!)

曜「ていっ!」

千歌(よっちゃんがやられたのもわかる)

千歌(遠くで見るより、実際に戦うとさらに速い!)

曜「はっ!」

千歌(攻撃する隙がない…)

曜「まだまだ!」

千歌(防御するしか…)
 
179: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:33:55.05 ID:pQPt7KCq
千歌「くっ…」

曜「え…!」ピタ

千歌(止まった?)

曜「それ…」

千歌「え?」

曜「梨子ちゃん、この子!」

梨子「それは…まさか…」

愛「なに、よそ見してんのさっ」ボコッ

梨子「きゃぁっ」バタ
 
180: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:42:50.55 ID:pQPt7KCq
曜「やっぱり…生きて…」

千歌「どうし、たの?」

曜「ねえ…君は」

千歌(チカの手を見て?まさか…この子もデルカダールの?)

愛「2人とも、なに見つめ合ってんのっ」ガシ

曜「あっ」

愛「ほら、動き止めたよ。千歌っち決めちゃいな!」

千歌「うん!」

千歌(とりあえず、今は、勝つ!)

曜「あうっ」ガクッ

「勝者!愛・千歌チーム!」
 
181: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 22:47:18.53 ID:pQPt7KCq
愛「よっしゃー」

千歌「やった!」

愛「アタシたちが優勝だ」

愛「いやーみんな強かったね。千歌っちと一緒でよかったよ」

愛「優勝賞品は高く売れるだろうからそれを…」

千歌「愛ちゃん、それなんだけど…」

愛「う…あ…」

千歌「愛ちゃん!?」

愛「なん…」パタ
 
182: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:12:32.95 ID:5e3RBcWY
───

愛「ごめんね。急に倒れちゃって」

千歌「大丈夫なの?」

愛「うん、もう大丈夫だよ。多分バトルの疲れが出ちゃったんじゃないかな」

愛「表彰式は明日になったから、それまで休めば元気になるって」

千歌「ならよかったけど…」

千歌「ここ、子供がたくさんいるけど…愛ちゃんの妹?」

愛「妹…っていえばそうかな」

愛「ここは愛さんが育った孤児院なんだけどさ」

愛「今はアタシしか稼げる人がいないんだよね…」

愛「だから武闘会で勝って、お金を稼ぐ必要があった」

愛「今回も優勝できてよかったよ」

千歌「大変なんだね…」
 
183: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:13:30.79 ID:5e3RBcWY
愛「千歌っちは何で出たの?お金?名誉?」

千歌「私は…虹色の枝を探してたんだ」

愛「虹色の枝?ああ、あの光ってたやつ」

愛「キレイだからお金持ちのコレクターに売れそう、ってぐらいにしか思えなかったけど」

千歌「だから…」

愛「うん、じゃあそっちは千歌っちにあげるよ」

愛「アタシはお金になれば何でもいいからね。もう1つの、黄色の宝玉をもらうよ」

千歌「ありがとう、愛ちゃん!」
 
184: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:16:04.03 ID:5e3RBcWY
千歌「そういえば、果林ちゃんとはチーム組んでたみたいだけど、付き合い長いの?」

愛「ううん、そんな長くはないよ」

愛「カリンとは前回の大会でたまたま一緒になってね、相性よかったみたいで優勝できたから、それから一緒にやってたんだ」

愛「この孤児院の経営も手伝ってくれてさ。ほんといいパートナーだよ」

千歌「果林ちゃんは今会えるかな?」

愛「今はいないんじゃないかな?いろいろやらなきゃいけないこともあるしね」

千歌「そっか」

愛「…おっと、あんまり長居させちゃうと君の仲間に心配されちゃうかな。そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」

愛「アタシは見ての通り、もう問題ないからさ。また明日表彰式で会おうね」

千歌「うん、じゃあお大事にね」
 
185: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:19:34.76 ID:5e3RBcWY
千歌「ただいま」

鞠莉「おかえり。お客さんよ」

梨子「…こんにちは」

千歌「…っ」バッ

善子「なにいきなり身構えてんの?」

千歌「だってこの人…チカの手の紋章を知ってるみたいだし」

千歌「デルカダールの追手じゃないの?」

梨子「追手…?デルカダールに狙われてるんですか?」

千歌「違う…の?」

梨子「その紋章と勇者のことは知っています」

梨子「ただデルカダールとは…」
 
186: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:23:05.93 ID:5e3RBcWY
鞠莉「それより、今は急ぎの用があるんじゃないの?」

梨子「あ、そうでした」

梨子「実は…曜ちゃんがいなくなって、こんな手紙が置いてあったんです」

千歌「なになに…武闘会の敗者に特別賞をプレゼント?」

善子「私たちはそんなの貰ってないわよ?」

梨子「それで書いてある場所に行ってみたら、曜ちゃんも誰もいなくて…」

梨子「運営の人にも聞いてみたら、そんな予定はないと言われました」

鞠莉「怪しいわね…」

梨子「なので曜ちゃんを探すのを手伝ってほしいんです…」

千歌「わかった。一緒に探そう」

善子「そうだろうとは思ってたけど、即答ね」

千歌「事件に巻き込まれてるかもしれないんだもん。ほっとけないよ!」
 
187: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:27:10.26 ID:5e3RBcWY
───

千歌「愛ちゃんたち…なに、してるの…?」

愛「千歌っち!?」

鞠莉「果林が運んでるその子…」

梨子「曜ちゃん!」

果林「なんでここに…」

梨子「曜ちゃんが呼び出されたあたりを調べたら、隠し部屋を見つけました」

梨子「そこから地下に繋がる道を通ってきたらここに…」

愛「そう、バレちゃったんだ…」

ダイヤ「あなたはなぜ曜さんを連れてきたの?」

ダイヤ「それにそこの繭に吊るされているのは大会出場者よね?」

ダイヤ「返答次第では…」
 
188: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:30:26.00 ID:5e3RBcWY
「騒がしいと思ったら人間がぞろぞろと…」

ルビィ「ひっ…魔物!」

鞠莉「あんた…魔物とつながってたの!?」

愛「ごめんなさい!見逃してください!」

善子「は?」

愛「アタシとカリンは、前にこのアラクラトロと戦って死にかけた…」

愛「だけどその時、取引を持ち掛けられたんだ」

愛「強い人間から取れるエキスを差し出せば助けてやろう…って」

愛「アタシは乗るしかなかった。断ればアタシの命はもちろん、孤児院の子たちも危険な目に遭う」

果林「だから武闘会で負けた人たちを呼び出してたの」

果林「敗者の姿が見えなくても、疑問に思う人は少ない。元居た場所に帰っただけと思われる」

愛「だから…君たちは何も見なかったことにしてほしいの!」

愛「要求された人数はこの子で最後だし、エキスを取り終わったらちゃんとみんな解放するから!」
 
189: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:33:49.33 ID:5e3RBcWY
善子「って言ってるけど、ほんとに無事に返してくれるんでしょうね」

「さあ、知らんな」

愛「だって…ちょっとエキスを吸い取るだけって言ったよね!?」

果林「約束が違うわ!」

「人間から吸い取れるエキスなど、我にとってはほんの少しだ」

「だが、エキスを取られた人間の命がどうなるかは…我の知ったことじゃない」

愛「そんな…」

果林「じゃあ、私たちがやってることは…」

愛「みんなを解放…いやそれじゃ孤児院が…」ブツブツ

愛「あっ…ぐ…」

愛「なんで、また…」

果林「愛!?…っく、私も…?」

「所詮はその程度か…」

「お前の回復の為に与えたエキス…その力に軟弱な人間の身体じゃ耐えられなかったということよ」

愛「あは…魔物と取引した報いってわけ…」
 
190: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:39:05.59 ID:5e3RBcWY
「わざわざここまで来たんだ…我がまとめて始末してやろう」

千歌「みんなを返してもらうよ」

「せっかく集めたものを渡すわけがなかろう」

「すでに捕まえている分と合わせてさらにこの人数…十分なエキスが集まりそうだ」

「そしてエキスの力で我は…」

曜「てりゃーっ」

「ぐっ」

曜「よくわかんないけど、悪い魔物なんだよね?」

曜「だったら曜たちで倒しちゃおうよ!」

鞠莉「眠らされてたあの子はツッコミ起こしてあげたけど…行動が早いわ…」

千歌「みんな、行くよ!」
 
191: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:42:49.97 ID:5e3RBcWY
───

千歌「爆炎斬!」バシュ

「ぐはっ…人間、風情が…」バタリ

鞠莉「千歌との連携技も狙ってやればうまくいくものねぇ」

曜「よし!そっちはどう?」

善子「とらえられていた人たちはみんな無事よ」

梨子「愛さんと果林さんも大丈夫です」

ルビィ「よかった…」

梨子「ただ、2人ともしばらく激しい動きはできないかもしれない…」

ダイヤ「それは魔物のエキスのせい?」

梨子「はい…体の内からダメージを受けているようです」

梨子「しばらくすれば回復するかもしれないけど、戦いはとても…」

千歌「じゃあ、孤児院の子たちはどうなっちゃうの…?」

鞠莉「…それについては何とかできるかもしれないわ」
 
192: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:45:20.33 ID:5e3RBcWY
───

善子「思ったより…大事にならなかったわね」

鞠莉「結果的には大きな犠牲者が出なかったし、事情も事情だしね」

千歌「愛ちゃんと果林ちゃんは捕まっちゃったけど、そんなに長くはならないらしいし」

ルビィ「孤児院は鞠莉ちゃんの知り合いのつてで、しばらくは大丈夫だよね」

千歌「愛ちゃんが表彰を辞退することになったから、賞品は2つともチカが貰ったけど」

鞠莉「これが虹色の枝ね…光ってるのは魔法か何かかな?」

善子「こっちの黄色い玉はレッドオーブと似てるかも」

千歌「この虹色の枝が命の大樹への行き方を教えてくれるのかな?」

ダイヤ「勇者のチカラで何かわかったりしない?」

千歌「…う~ん…なにも?」

善子「えー、せっかくここまで追ってきたのに外れだったってわけ!?」

ダイヤ「また別の方法を探すしかないのかしら…?」
 
193: (もんじゃ) 2021/12/09(木) 23:51:53.76 ID:5e3RBcWY
梨子「みなさん、改めてお話があります」

千歌「あ、そうだ。勇者のこと、知ってるんだよね?」

梨子「あなたは、自分の生まれを知っていますか?」

千歌「知ら…ない、けど」

千歌「このネックレス…ユグノアが関係あるかもしれないんじゃないかって…」

梨子「それは…」

梨子「はい、あなたはユグノアの生まれ」

梨子「そして…」

梨子「続きは場所を変えましょう」

梨子「ユグノアに…ユグノア城だったところに行きます」

梨子「着いてきてください」

───
──

 
197: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:24:17.21 ID:PcUfLy7d
ダイヤ「ここがかつてユグノア城だったところ…」

ルビィ「ぼろぼろ…」

鞠莉「モンスターに滅ぼされたって聞いたけど、ひどい状態ね…」

善子「何でこの国が襲われたのかしら?」

千歌「ここがチカの生まれ故郷…」

梨子「そう、ここがあなたの生まれたところ」

梨子「そして私の故郷でもあります」

千歌「教えて!この国に何があったの?」

梨子「はい、私が知っていることを話します」
 
198: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:27:24.83 ID:PcUfLy7d
梨子「17年前、この国に王女が生まれました」

梨子「その王女は生まれた時には左手の甲にあざのようなものがあり、伝説の勇者の生まれ変わりと言われました」

千歌「それって…」

梨子「それが、千歌ちゃん」

ルビィ「うそっ、千歌ちゃんがユグノアの王女!?」

梨子「だけど王女が生まれてすぐ、この国は魔物に襲われました」

梨子「その時に当時の国王夫妻…つまり千歌ちゃんのご両親は亡くなり、王女も行方不明…亡くなったと思われていました」

梨子「もちろん私は実際に見たわけではありません。おじいちゃんから聞いた話です」

梨子「あ、おじいちゃんって言うのは、私の血のつながったおじいちゃんじゃなくて、千歌ちゃんの本当のおじいちゃんのことです」

梨子「おじいちゃんは一度、娘夫妻に王位を渡して隠居してたんだけど、千歌ちゃんのご両親が亡くなった後、もう1回王様に戻りました」

梨子「私はデルカダール王家の遠縁にあたる者。王女が行方不明になって間もなく生まれました」

梨子「子供と孫を同時に亡くしたおじいちゃんは、私のことを孫のようにかわいがってくれました」

梨子「だから私もおじいちゃんと呼んでいるんですけど」

梨子「…私の両親も数年前に病に倒れ、1人になった私の親代わりでもありました」
 
199: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:30:47.12 ID:PcUfLy7d
梨子「…そして1年前です」

梨子「再びこの国が魔物に襲われました」

梨子「その時は守り切れずにそのままお城も、国のみんなも…」

梨子「私と、一緒に遊んでいた曜ちゃんはおじいちゃんのおかげで運よく生き延びることができました」

梨子「でもおじいちゃんは…」

梨子「おじいちゃんから最後に聞いた言葉がデルカダール王が偽物だということ、そしてウルノーガという名前でした。」

ダイヤ「デルカダール王が偽物?」

曜「私と梨子ちゃんは助かった後、デルカダールに行ったんだ」

曜「おじちゃんの言葉が信じられなくて」

曜「こっそり見るだけで分かった。お父さんがおかしい。あれは本物のお父さんじゃないって」

善子「お父さん?…ってデルカダール王のこと!?」

曜「あ、うん。私、デルカダールの王女なんだ」

ルビィ「えぇ、曜さんも王女!?」

鞠莉「デルカダール王女はユグノアの滅亡に巻き込まれて亡くなったと聞いていたけど…生きていたのね」

曜「梨子ちゃんとおじちゃんのおかげだね」
 
200: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:33:30.79 ID:PcUfLy7d
曜「だから梨子ちゃんと一緒に調べることにしたの」

曜「お父さんのことと、ユグノアが滅びた理由、そしてウルノーガのことを」

曜「そして千歌ちゃんを見つけた。勇者のことも前から聞いてたからね」

曜「まさか生きてるとは思わなかったけど…」

梨子「勇者が生きていたからこそ、ユグノアが2回目の襲撃を受けたのかも…」

千歌「え…じゃあユグノアが滅んじゃったのってチカのせい…?」

梨子「ごめんなさい。そういうことじゃないの」

梨子「悪いのは全部魔物を操った者。それが多分…ウルノーガ」

鞠莉「ウルノーガは何者なの?」

梨子「それは…まだよくわかりません」

梨子「昔、とある国が滅びたのがウルノーガの手によるものらしい、というところはわかりました」

梨子「ウルノーガは人に化け、または操り、内側から壊していく…」

梨子「このままではもしかするとデルカダールも…そして世界が…」

梨子「きっと勇者が生まれたのはウルノーガと戦うためなんじゃないかと思うんです」

梨子「だからこそ、デルカダール王は勇者を悪魔の子として捕まえようとしている」
 
201: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:36:15.98 ID:PcUfLy7d
ダイヤ「王様以外のデルカダールのどなたかに相談しようとはしなかったの?」

曜「お父さんがああなった以上、誰も信じられない。果南ちゃんや絵里ちゃんだって…」

千歌「果南ちゃんを知ってるの!?」

善子「デルカダールの王女なら自分のとこ兵士知ってて当たり前じゃない?」

千歌「あ、そっか…」

曜「千歌ちゃんこそ果南ちゃんと知り合いなの?」

千歌「果南ちゃんは私の幼馴染で、お姉ちゃんみたいな人なんだ」

曜「あー、果南ちゃんイシの村で一緒に育った妹みたいな幼馴染がいるって言ってた」

曜「それが千歌ちゃんなんだ…すごい偶然!」
 
202: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:39:24.09 ID:PcUfLy7d
善子「しっ、待って何か聞こえるわ」

ルビィ「もしかして、魔物!?」

善子「違うわ。人の声…ウマの音…」

善子「ある程度の人数がいるわね」

鞠莉「廃墟とかを調査しに来た人かしら?」

善子「だといいけど…」

曜「ちょっと見てくる」

千歌「私も行くよ!」

ダイヤ「気を付けて」
 
203: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:43:04.99 ID:PcUfLy7d
千歌「ここからなら見つからずに様子を見れそうだね」

曜「あの鎧は…デルカダールの兵士たちだ」

千歌「じゃあチカを探して…?」

曜「どうだろう…」

曜「とりあえず見つからない方がいいよね。みんなに隠れるように言ってこなきゃ」

千歌「待って。あの人…」

曜「ん?ああ、あれは…」

千歌「っ!」ダッ

曜「千歌ちゃん!?」
 
204: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:48:06.37 ID:PcUfLy7d
千歌「果南ちゃん!?」

果南「千歌!?」

果南「久しぶり、だね…」

千歌「…うん」

果南「元気そうで、良かった」

果南「ここにいるってことは…やっぱり自分の生まれを知ったの?」

千歌「うん…チカはユグノアの王女だって…」

果南「そう、勇者がユグノアの王女だってことは私も聞いてた…そして千歌が勇者となると…」

千歌「果南ちゃんも…チカを捕まえに来たの?」

果南「捕まえに来たっていうか…」

果南「今、デルカダールは千歌のことを追ってる」

果南「他の人に捕まったら乱暴なことされるかもしれない。だからそうなる前に…」

果南「私が守るから…」

果南「一緒にデルカダールに行こう?」

曜「ダメだよ!」

果南「曜!?」

果南「まさか…生きて…!」

曜「今のデルカダールに千歌ちゃんは渡せない!」

果南「どういう…」
 
205: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:53:15.66 ID:PcUfLy7d
せつ菜「お待たせしました、果南さん!」

せつ菜「もうここまで悪魔の子を追いつめているんですね。さすがです!」

果南「え、いや…」

せつ菜「はっ、悪魔の子の横にいるのは…まさか曜姫様!?」

せつ菜「いえ、そんな…姫様は亡くなったはず」

せつ菜「つまりあなたは悪魔の子の仲間。おそらく魔物かなんかが化けているのでしょう」

せつ菜「姫様の姿を騙るとは許せません!ここで始末してやりましょう!」

果南「ちょ、待ってせつ菜」
 
206: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:57:32.95 ID:PcUfLy7d
曜「千歌ちゃん、泳げる?」

千歌「え、うん、一応」

曜「じゃあ行くよ!」パッ

ドボン

せつ菜「なっ…川に飛び込んだのですか!?この高さ…水深次第では危険ですよ?」

せつ菜「果南さん、下流を探して待ち伏せしましょう!」

果南「くっ…」

果南「せつ菜、鎧預かってて!」カチャカチャ

果南「追いかけてくる!」バシャン

せつ菜「果南さん!?」
 
207: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:03:00.29 ID:PcUfLy7d
───

千歌「はぁっ…はぁ…」

曜「ここまでくれば…」

果南「待って!」

千歌「果南ちゃん…」

曜「追いつかれちゃうか…」

果南「曜…本物だよね?」

曜「うん…」

果南「生きててよかった…」ギュ

果南「ユグノアの襲撃で行方不明になったって聞いて」

果南「あのとき、私がついていれば…って何度も思った」
 
208: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:07:10.86 ID:PcUfLy7d
果南「無事だったなら、何でデルカダールに帰ってこないの?王様もすごく喜ぶと思うよ?」

曜「…今は帰れないよ」

果南「そういえば、今のデルカダールに千歌は渡せないって言ったよね?」

果南「今の…ってどういう意味?」

曜「果南ちゃんは悪魔の子をどう思う?」

果南「千歌のこと?千歌が悪魔の子なんてありえない。何かの間違いだと思ってるよ」

曜「じゃあおかしいと思わないの?」

曜「前は勇者を信じてたのに、今は悪魔の子扱いしてるお父さんの様子を」

果南「確かに、急に言ってることが変わったのは変だと思ったよ」

果南「でも…曜がいなくなったことを考えるとそういうこともあるかなって」

曜「今のお父さんはウルノーガって魔物が化けてる」

果南「え、そんな…!」

曜「だから、勇者を…千歌ちゃんを渡すわけにはいかないし、正体をばらしてやっつけるまで曜は戻れないんだよ」

果南「…」
 
209: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:11:48.38 ID:PcUfLy7d
千歌「そうだ!果南ちゃんも一緒に来ない?」

果南「えっ?」

千歌「魔物が化けたデルカダールの王様を倒して、一緒に平和を取り戻そうよ!」

果南「…うん、私も千歌たちと一緒に行きたい」

果南「…けど、できないよ」

千歌「どうして?」

果南「今デルカダールは千歌を悪魔の子として追ってる。ただでさえ千歌が育った場所なのに、私まで裏切る形でいなくなったら、イシの村の人がどうなるか…」

千歌「そうだ、イシの人たちは無事なの!?」

果南「無事なはずだよ?一旦デルカダールで絵里が尋問した後、村に返したから」

千歌「じゃあ今度チカも帰って…」

果南「それはやめたほうがいい」

果南「みんな村にいるとはいえ、デルカダールの監視がいるから。千歌が帰ると騒ぎになっちゃうと思うよ」

千歌「そんな…」
 
210: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:15:31.79 ID:PcUfLy7d
果南「だから私は、中から王様のことを調べるよ」

千歌「中から?」

果南「私は王様に近いところにいるからね。魔物が化けてるならどこかで尻尾を出すかもしれないし」

千歌「でもそれって危ないんじゃ…」

果南「大丈夫だよ♪私は千歌と曜より強いんだから」

曜「わかった」

曜「曜たちは勇者千歌ちゃんと一緒にウルノーガを倒す方法を探す。果南ちゃんは近くで情報を集める」

果南「うん」

果南「…おっと、誰か来る」

果南「多分せつ菜だ。ごまかしておくから2人は逃げな」

果南「また元気で会おうね」
 
211: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:19:42.77 ID:PcUfLy7d
せつ菜「果南さん、無事でしたか!」

果南「うん、まあ…」

せつ菜「おひとりですか?悪魔の子は…?」

果南「…ごめん、見失った」

せつ菜「そうですか…」

せつ菜「こちらも川沿いを調べていますが残念ながら…」

せつ菜「一体どこに逃げたんでしょうね?」

果南「うーん…」
 
212: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:22:47.23 ID:PcUfLy7d
せつ菜「あの…失礼なことを聞きますが」

せつ菜「あの悪魔の子は果南さんの幼馴染なんですよね?」

せつ菜「だからわざと見逃すようなことは…ありませんよね?」

果南「…」

せつ菜「悪魔の子は災いを呼ぶ。野放しにしておけば、どんな良くないことが起こるかわかりません」

せつ菜「私たちはデルカダールの平和を守る義務があります」

せつ菜「果南さんがその優先順位を間違うとは思っていませんが…」

果南「…うん、わかってる」

果南「デルカダールの、世界の人たちを危険な目に合わせる選択をするつもりはないよ」

せつ菜「ですよね!」

せつ菜「私は、果南さんを信じていますから!」
 
213: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:25:16.06 ID:PcUfLy7d
───

曜「梨子ちゃんたちだ、おーい!」

鞠莉「あ、いた!」

梨子「よかった…2人とも無事で」

善子「デルカダールの人たちが探し回ってたけど、見つからなかった?」

千歌「果南ちゃんと会ったけど、ちゃんと話もできたよ」

善子「え、あの人と?」

千歌「うん、こっそり私たちに協力してくれるって」

鞠莉「危険なことをするのね」

曜「大丈夫だよ。果南ちゃんだもん」

千歌「うん」

善子「何その自信。まあ将軍になるような人なら腕は確かだろうけど」
 
214: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:29:25.96 ID:PcUfLy7d
千歌「だから私たちはウルノーガを倒す方法を探そう」

善子「デルカダールの王様に化けてるって分かってるなら、みんなで行って倒せないの?」

ダイヤ「仮に倒せたとしても、正体を暴かない限り私たちが重罪人扱いでしょうね」

梨子「それにウルノーガは2つの国を滅ぼしたとされる者。闇を纏うとも言われ、どんな力を持っているかわかりません」

ルビィ「闇…そういえば、命の大樹は闇の力を祓う何かが眠ってるって聞いたことある!」

鞠莉「じゃあやっぱり命の大樹へ向かうのね」

善子「でも、虹色の枝は何も分からなかったんでしょ?」

千歌「そうだよね…」

鞠莉「またいろんなところを探して情報を集めるしか、ないよね…」

ルビィ「千歌ちゃん、虹色の枝が!」

千歌「え?」

千歌「あ、すごい光ってる!」

ピカッ
 
215: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 23:33:23.44 ID:PcUfLy7d
───

ルビィ「なに、今の…」

鞠莉「みんな見えたの?」

ダイヤ「ええ。祭壇のようなところに、6つのオーブ?」

鞠莉「虹色の枝が見せてくれたのかな…?」

善子「もしかして…これのこと」

善子「レッドオーブと、イエ ーオーブ」

梨子「オーブを6個集めて、あの祭壇に捧げれば命の大樹への道が開けるということでしょうか?」

曜「ってことは命の大樹への行き方が分かっちゃたってこと!?」

ダイヤ「あの場所はおそらく始祖の森…命の大樹の下、ラムダの奥にある秘境ね」

千歌「じゃあオーブは2つあるから、あと4つ集めればすぐに命の大樹に行けるね!」

鞠莉「といっても、残りがどこにあるか、誰か知ってる?」

ルビィ「…そういえば、海に沈んだっていうオーブの話を前に聞いたことあるけど…」

善子「そんなのどうやって探せばいいのよ…」

ダイヤ「結局、情報が必要ね」

ダイヤ「オーブを探すという目的が明確になっただけでも、大きな進歩よ」

千歌「よし、みんなで世界中を回ってオーブを探そう!」

───
──

 
217: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:15:46.42 ID:BsUqdy8i
曜「なにかがおかしい」

鞠莉「おかしい…って、そりゃあ霧の中なんだから普通じゃないでしょ?」

曜「霧だけじゃなくて、こう、なんか変なんだよ」

鞠莉「変?いったい何が?」

曜「う~ん…」

曜「あっ!」

曜「何も聞こえないんだ!」

鞠莉「へ?マリーと会話できてるじゃん」

曜「そうじゃなくて。風の音も波の音も聞こえないんだよ!」

鞠莉「そういえば…え、何で!?」

曜「おかしい…」
 
218: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:17:46.82 ID:BsUqdy8i
ズズッ

曜「うわぁ」

千歌「なに、どうしたの!?」

千歌「何かにぶつかった?」

鞠莉「ぶつかったというより…座礁ね」

鞠莉「ごめん、霧の中で浅瀬が見えてなかった」

善子「…まあ、この霧じゃあしょうがないわよね」

梨子「ここは、どこだろう…」

ダイヤ「変ね…こんなところに島はないはずだけど」

鞠莉「だよね…」

千歌「降りてみよう」
 
219: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:20:57.48 ID:BsUqdy8i
曜「やっぱりおかしい。自然の音が聞こえない」

ルビィ「ほんとだ…音のない世界…」

千歌「波もない…どうなっているの?」

梨子「周りは霧に囲まれて…世界から切り離されたみたい」

善子「異世界に迷い込んだ…とかじゃないでしょうね?」

ダイヤ「否定できないのが怖いわね…」

ルビィ「そんな…」

ダイヤ「ちょっとあたりを調べてみましょう」
 
220: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:25:05.12 ID:BsUqdy8i
鞠莉「この水面だけ、揺れてる…?」

ことり「凛ちゃん?」パチャン

ルビィ「ひゃあっ」

ことり「…違う」

鞠莉「びっくりしたー…いきなり出てこないでよ!」

鞠莉「って、え?水中から?いつから潜ってたの?」

ルビィ「その足…というかヒレは…」

ルビィ「もしかして…に、人魚!?」
 
221: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:27:22.21 ID:BsUqdy8i
ことり「驚かせちゃってごめんなさい…」

ことり「私はことり。見ての通り人魚だよ」

鞠莉「人魚…物語の中だけだと思ってたけどほんとにいるんだ」

曜「凛ちゃんって誰?人魚の仲間?」

ことり「ううん、凛ちゃんは人間だよ。ナギムナー村っていうところにいるの」

ことり「また来るねって言ってくれたからずっと待ってたのに…」

ことり「ずっと来ないんだ…」

曜「なにそれひどい!」

鞠莉「約束を破るなんて!」

ダイヤ「残念ながら…社交辞令だったということね」

ことり「そんなことないもん!凛ちゃんは来るよ!」

ことり「きっと…来てくれるもん…」
 
222: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:30:14.81 ID:BsUqdy8i
ことり「そうだ!ねえ、あなたたち、凛ちゃんの様子見てきてもらうことってできないかな?」

梨子「私たちが?」

ことり「おねがぁい♪」

千歌「ナギムナーってどこにあるの?」

ダイヤ「ホムラの南の方ね。確か船じゃなきゃ行けなかったと思うけど」

善子「どうせオーブ探しにいろんなとこ行かなきゃいけないから別にいいんだけど、自分から会いに行こうとは思わなかったの?」

ことり「そうすると、すれ違いになっちゃうかもしれないから…」

ダイヤ「確かに、双方が動くことは得策ではないわね」

ダイヤ「かつて、お互いを探して歩き回った結果、何度もすれ違った王子たちの逸話もあるし…」

鞠莉「よし、行きましょう。そして、その凛って子を問い詰めてやるんだから!」
 
223: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:34:37.39 ID:BsUqdy8i
───

凛「凛に何か用かにゃ?」

鞠莉「ことりがあなたを待ってるのよ!」

凛「ことり?」

鞠莉「まさか忘れっていうの?人魚のことりよ!」

凛「にん…!」

凛「しー!」

凛「人魚なんて大きな声で言わないでよ」

曜「どういうこと?」

凛「このナギムナー村じゃ人魚はすっごく怖がられてるんだにゃ」

曜「なんで?別に悪いことしないよね?」
 
224: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:38:16.12 ID:BsUqdy8i
凛「むかしね、この村の人と人魚が恋人になったことがあったの」

凛「その時は村のみんなもお祝いしたんだ」

凛「だけど、その後…災害が続いた」

凛「漁もうまくいかなくて、特に真珠が取れなくなったから村は貧しくなっていった…」

凛「人魚の呪いだって噂が村に広がった」

凛「それで、責められた2人は心中を…」

ルビィ「そんな…」

凛「それから村はまた」

凛「おばあちゃんから聞いた話だから、どこまで本当かはわからないけど」

凛「人魚と仲良くなると災いがふりかかる…そういう言い伝えなんだ」
 
225: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:42:09.86 ID:BsUqdy8i
鞠莉「でも、あなたはことりにまた会いに行くって言ったんじゃないの?」

鞠莉「人魚の呪いを恐れてるとは思えないけど」

凛「ことりちゃんって、あのことりちゃんだよね?」

鞠莉「あのことり以外に人魚のことりがいるの?」

凛「…ずっと待ってるってどういうことにゃ?」

鞠莉「どういうこともなにも、そのままの意味よ」

凛「だってことりちゃんと会ったのって…10年くらい前だよ?」

善子「は?」

ルビィ「10年前!?」
 
226: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:45:24.88 ID:BsUqdy8i
凛「凛がまだ小さいときにね、船から落ちて、溺れそうになったんだ」

凛「その時に助けてくれたのがことりちゃん」

凛「凛はまだ小さかったから人魚のことは知らなくて…後から村の言い伝えを聞いて人魚のことが怖くなっちゃったって」

凛「それでことりちゃんとの約束は守れなくて、さっきまで忘れちゃってたけど」

凛「向こうも1回会っただけの凛のことなんてとっくに忘れてるって思ってたよ…」

千歌「ことりちゃんはずっと覚えてたってことだね」

梨子「10年…人魚の寿命は人より長いらしいけど、そんなに待っていられるものかな?」

ダイヤ「確かに、それだけの間待ち続けるというのもおかしな話ね」

ルビィ「でも、それだけことりさんにとって大事だったってことじゃないかな?」
 
227: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:49:23.58 ID:BsUqdy8i
凛「…凛、ことりちゃんに会いに行くよ」

凛「ずっと忘れてて、今更だからすっごく怒られるかもしれないけど」

凛「というか呪われちゃう?大丈夫かな?」

凛「もしかしたら凛だけじゃなくてこの村も…どうしよう!」

曜「ことりちゃんはそんなことしないと思うよ?」

千歌「うん、怒ってる感じはなかったし」

凛「そうなの?それなら…」

凛「でも1人で会いに行くのは怖いかも…」

曜「大丈夫、私たちもいるから!」

凛「ありがとう」

凛「お願い、ことりちゃんのところに連れて行って!」
 
228: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:53:07.54 ID:BsUqdy8i
───

ことり「凛ちゃん!」

凛「ことり…ちゃん?」

ことり「すごい、大きい!」

ことり「いつの間に…こんなに大きく…」

凛「ことりちゃんは変わらないんだね」

ことり「うん」

凛「ごめんなさい!」

凛「凛…また来るって約束したのに忘れちゃって…それで…」

ことり「ううん、会いに来てくれて嬉しいよ」

凛「でも、10年だよ?そんなにことりちゃんを待たせて…」

ことり「そっか…そんなに経ってたんだ」

ことり「凛ちゃんが大きくなるくらいの時間が…」
 
229: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 21:56:46.46 ID:BsUqdy8i
ことり「改めて…凛ちゃん、ことりとお友達になってくれますか?」

凛「凛で…いいの?」

ことり「もちろん!」

凛「よろこんで…お願いします!」

ことり「やったぁ!」

千歌「うん、よかったよかった」

ことり「あ、もちろん千歌ちゃんたちもお友達だよ♪」

千歌「私たちも?」

ことり「うん、みんな友達」

ルビィ「わぁ、人魚さんとお友達になれるなんて」
 
230: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:00:18.67 ID:BsUqdy8i
善子「しっかし、10年も待ち続けるって、あなたってどれだけ気が長いの?」

ことり「人魚はね、数百年生きるの。だから時間の感覚も人間のみんなとは違うと思うよ?」

ことり「もともとのんびり待つのは好きだし♪」

善子「だからって限度があると思うけど…」

ことり「あ、あとここはね、時間の流れが違うの。外の世界よりゆっくり時間が流れているの」

ことり「だからことりが待ってた時間はもっと短いと思うよ」

曜「そういえば…最初に来てから外に出た時、思ったより時間が経ってた気がする」

鞠莉「波も風もないのはそういうことだったのね…」

善子「って、私たちここにいても大丈夫?」

ことり「大丈夫だと思うよ?まあ、たまに迷い込んで抜けられなくなっちゃう人もいる見たいだけど」

善子「なるべく早くここから出たほうがいいんじゃ…」
 
231: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:03:58.96 ID:BsUqdy8i
ことり「待って!」

ことり「凛ちゃんに会わせてくれたお礼にがしたいの。ことりにできることなら何でもするから!」

梨子「あ、それなら…」

梨子「私たちは海に沈んだと言われるオーブを探してるの。何か知っていますか?」

ことり「オーブ?…ことりは知らないなぁ…」

ことり「あ、でも海未ちゃんならわかるかも!」

曜「海未ちゃん?人魚の仲間?」

ことり「海未ちゃんはね、私たち人魚たちが住んでる国の女王様なんだ」

ことり「いろんなことを知ってるからオーブのことも知ってるかも」

ことり「みんなを連れてってあげるね♪」

善子「人魚の国って…海の中にあったりしない?」

ことり「うん、海の中にあるよ?」

善子「そんなの人間がどうやって行くのよ!」

ことり「大丈夫!マーメイドハープを使えば人間でも海に潜れるようになるから」
 
232: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:07:41.86 ID:BsUqdy8i
───

ことり「海底王国ムウレアにようこそ♪」

曜「すごい!水の中で息ができてる!」

曜「何で?どうして?」

ことり「人魚の魔法だよ。この国の中にいる間は陸の生き物でも呼吸に困らないの」

梨子「熱いお茶を飲むと水の中でも息ができるっておとぎ話は聞いたことあるけど…」

ダイヤ「これが人魚の魔法…」

千歌「ことりちゃん以外にも人魚がたくさんだ!」

ルビィ「なんか…ルビィたち見られてる?」

ことり「人間が来ることなんてめったにないからね」

凛「凛も来ちゃってよかったにゃ?」

ことり「もちろん、凛ちゃんはことりの大事なお友達だもん♪」

ことり「じゃあ海未ちゃんのところに行こうか」
 
233: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:14:35.23 ID:BsUqdy8i
ことり「ただいまー」

海未「ただいまじゃありません!何年経ったと思っているんですか!」

ことり「ごめんね?」

海未「まったく…いつまでも来ない相手を待ち続けて」

ことり「でも海未ちゃんならことりのこと見つけられたんじゃないの?」

海未「当然居場所は把握してます。」

海未「だけど私はこの国の女王。離れるわけにはいかないんです」

海未「まあ、いい加減連れ戻そうかとは思っていましたけど」

ことり「そうだったの?」
 
234: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:18:49.99 ID:BsUqdy8i
海未「ああ、すみません、みなさん」

海未「私は海未。このムウレアの女王をしています」

海未「この国に人間が来るのもいつぶりでしょうか…最近はお互いに干渉しないようにしているもので」

千歌「そうなの?だから人魚がなかなか見つからないんだ」

海未「人魚は人間にとって珍しいからか、狙われることもあるので」

海未「その逆、同族が襲われた恨みとして人間の船を沈めることも…」

海未「お互いの安全のためにも、あまり接触しないほうがいいと思うのです」

ことり「あれ、もしかしてこの子たち連れてきたらまずかった?」

海未「この方たちは心が綺麗なので大丈夫ですよ。ことりもそう思ったから連れてきたのでしょう?」

海未「もしよからぬことを企んでいるようなら、すぐに海の藻屑に変えてあげますが」ニコッ

善子「ひっ」
 
235: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:22:46.37 ID:BsUqdy8i
海未「それと、知っての通り、人魚と人間は生活も寿命も全く違います」

海未「人魚が陸で暮らすことはできないし、人が海の中で暮らすこともできない」

海未「人の側だけがすぐに老いていき、人魚が残される」

海未「過去に人魚と人が仲良くなった例はいくつもありますが、ほとんどがよくない結果に終わったと聞いています」

海未「ことりの交友関係に反対するつもりはありませんが、それを承知で付き合ってください」

海未「…今ならみなさんから人魚に関する記憶を消して陸に戻すこともできますが、どうしますか?」

ことり「それはだめ!」

凛「うん、せっかく友達になれたんだもん。忘れたくないよ」

海未「そうですか…覚悟の上ならいいでしょう」
 
236: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:26:13.96 ID:BsUqdy8i
海未「さて、勇者千歌。あなた方が求めているのはこれでしょう?」

千歌「緑のオーブ!」

鞠莉「わぉ、あっさり見つかっちゃったね」

曜「あれ、何で千歌ちゃんが勇者だって知ってるの?」

海未「私はある程度のことはこの千里の真珠で知ることができるのですよ」

海未「このオーブはかつて沈んだ船にあったもの。ようやく人間に返すことができます」

海未「勇者なら…きっと役立ててくれるでしょう」

ダイヤ「ありがとうございます」

梨子「もしかして…他のオーブのことも知っていたりします?」

海未「そうですね…正確なところまではわかりませんが、わかる範囲で教えましょう」

梨子「ありがとうございます!」

───
──

 
239: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:38:15.84 ID:JP2R7y1y
千歌「これでオーブは5個…」

ルビィ「海未さんや、たまたま会えた情報屋の花陽ちゃんから聞いたりしたおかげだね」

善子「怪鳥がどっからか持って行って隠していたシルバーオーブ」

ダイヤ「バンデルフォンの王城跡に眠っていたパープルオーブ」

梨子「そして…最後の1つがあるのが、ここクレイモラン王国」

千歌「雪が降ってて真っ白だよ」

曜「うう…さっむ!」

梨子「ほら曜ちゃん、ちゃんと厚着しないと」

曜「ありがとう、梨子ちゃん♪」
 
240: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:40:08.45 ID:JP2R7y1y
曜「早く中に入っちゃおうよ!」

鞠莉「そうね…あら?」

ルビィ「どうしたの?」

鞠莉「この門…凍ってない?」

千歌「ほんとだ…」

鞠莉「ダイヤ、魔法で溶かせない?」

ダイヤ「このサイズの門の氷を溶かしきるのはさすがに…」

曜「あれ、おかしくない?門が凍ってたら、この国の人たちはどうやって外に出てるの?」

鞠莉「そうね…みんな閉じこもってるのかしら?」

千歌「他に入り口はないの?」

善子「確か…こっち」

ルビィ「ヨハネちゃんどうしたの?」
 
241: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:44:20.35 ID:JP2R7y1y
善子「ここに…」

千歌「こんなところにもちっちゃい入口があるんだ」

善子「夜とか、正門が閉まってるときはこっちが出入り口になるの」

曜「よっちゃんこの国に来たことあるの?」

善子「まあ、ね」

鞠莉「でもこっちのドアも凍っちゃってるみたいよ?」

ルビィ「ここもダメなの?」

ダイヤ「この程度なら…メラ」

千歌「むんん…開いた!」
 
242: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:46:44.15 ID:JP2R7y1y
梨子「町の中も雪が舞っててよく見えないね…」

曜「あ、見て。ウマの像があるよ」

鞠莉「氷でできてるの?見事なものね」

鞠莉「あ、こっちは飼い主役かしら?」

梨子「きれい…氷でこんなにきれいな像を作れるものなんだ…」

梨子「でもなんで道の真ん中に置いてあるんだろう?」

ダイヤ「この氷…魔力を感じるわ」

ルビィ「魔法で作られたってこと?」
 
243: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:50:56.03 ID:JP2R7y1y
鞠莉「ねえ、こっち来て!」

千歌「どうしたの?」

鞠莉「これっ…」

千歌「え…?」

梨子「なに…これ…」

曜「人型の氷ばっかり…」

ルビィ「これ…もしかして…町の人たちが凍ってる!?」

ダイヤ「そんなこと…いえ、そういうことでしょうね」

ルビィ「いくら寒くても、人が凍っちゃうなんて…ないよね?」

ダイヤ「ありえないわ」

ダイヤ「これは…何者かの魔法によるものよ」

鞠莉「でも、国1つフリーズさせるなんてそんな人…」
 
244: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:55:16.12 ID:JP2R7y1y
千歌「この人、ダイヤちゃんの魔法で溶かせる?」

ダイヤ「…やめておいた方がいいと思うわ」

ダイヤ「溶かせたとして、この人が無事で済むかは分からないから」

ダイヤ「この魔法をかけた存在を探して解いてもらうのが一番…」

鞠莉「一体誰が…ただの人にできるようなことじゃないよね」

梨子「この国に何が起こったのか…知っている人がいればいいんだけど」

ルビィ「みんな凍っちゃってるんだよね?」

曜「あ、あそこに誰かいるよ!」
 
245: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 13:57:48.93 ID:JP2R7y1y
曜「あのっ」

歩夢「ひゃっ!」

梨子「いきなりごめんなさい。あなたはこの国の人?ここで何があったか知っていますか?」

歩夢「私は…歩夢」

曜「歩夢ってもしかして歩夢ちゃん?」

歩夢「えっ?」

曜「私だよ、曜だよ!覚えてない?」

歩夢「曜…あ、えっと、デルカダールの王女の…」

曜「そう!わー久しぶりだね」

歩夢「そうね…」

千歌「知り合いなの?」

曜「クレイモランの王女だよ。前にあったことあるんだ」

歩夢「今は…女王だけどね」

曜「え、じゃあ王様は…」

歩夢「ええ、ちょっと前に…」

曜「そっか…」
 
246: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:00:53.10 ID:JP2R7y1y
鞠莉「再開を喜んでるところ悪いけど、この国の人たちが何で凍っちゃってるのか、何か知らない?」

歩夢「これは…魔女の魔法なの…」

ルビィ「魔女?」

歩夢「そう、魔女…」

歩夢「あの時、魔女が現れて、魔法をかけたらみんな凍っちゃったのよ」

善子「あなたは何で無事だったの?」

歩夢「さあ…分からないわ」

歩夢「ともかく私はこの魔法を解く方法を探しているんだけど…」

ダイヤ「それなら、魔女を倒せば魔法も解けるかもしれない」

歩夢「え、ええそうね。倒さなくても解いてくれるかもしれないけど」

曜「何言ってるの?みんなを氷漬けにした悪い魔女なんでしょ?話し合いで解決できるとは思えないよ」

歩夢「それは…」

千歌「魔女の居場所はわかるの?」

歩夢「…いいえ」

歩夢「ただ、東のシケスビア雪原の北、ミルレアンの森に魔女の手下の魔獣がいるって言われてるの。そいつを倒せば、魔女の手掛かりがあるかもしれないわ」

千歌「魔獣だね。よーし、倒しに行こう!」
 
247: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:05:22.10 ID:JP2R7y1y
───

千歌「うぅ…冷た。吹雪いてて全然見えないよ…」

千歌「ミルレアンの森に魔女の手下がいるって言ってたけど…」

千歌「いつ魔獣が出てくるかわかんないからね。みんな、はぐれないように気を付けて」

千歌「…あれ?」

千歌「いない!?」

千歌「よっちゃん?ダイヤちゃん、ルビィちゃーん!鞠莉ちゃん、梨子ちゃん、曜ちゃん!?」

千歌「…みんないない」

千歌「もしかして…はぐれた!?」
 
248: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:09:02.77 ID:JP2R7y1y
千歌「どうしよう…」

千歌(森の入り口戻ったほうがいいかな?)

千歌(いや、もう先に進んでて魔獣と戦ってるってことも…)

千歌(それに戻る道もわかんなくなっちゃったし…)

千歌(よし、このまま進もう)

千歌(多分誰かと会えるはず!)

「ムフォフォ!」

千歌「なんかの鳴き声!?」

「ムフォー!」

千歌(もしかして魔獣?)

千歌(行ってみよう!)
 
249: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:12:50.35 ID:JP2R7y1y
千歌(誰かが魔物と戦って…)

果南「くっ」キン

千歌(あれはっ)

千歌「果南ちゃん!?」

果南「えっ、千歌!?」

「ムフォフォー」ドン

果南「あぁっ!」

千歌「大丈夫!?」

果南「うん」

果南「なんでここに…っていうのは後だね」

果南「とりあえずあいつを倒さないと」

千歌「あれが魔獣なの?」

果南「さあ、そうなんじゃないの?」

「ムフォムフォ」
 
250: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:16:07.10 ID:JP2R7y1y
───

果南「渾身斬り!」ザンッ

千歌「はやぶさ斬り!」ザザッ

「ムフォフォーン…」バタリ

千歌「よっし!」

果南「千歌…強くなったね」

果南「イシにいた時とは大違いだよ」

千歌「そりゃあチカも旅をして鍛えてるもん」

千歌「それより果南ちゃんは何でここにいるの?」

果南「クレイモランに調査に来たら国全部が凍ったってたから、女王様の話を聞いて魔女を倒しに来たんだよ」

千歌「なんだ、チカと一緒じゃん」

果南「そうなの?」

果南「で、魔獣が魔女の居場所をしゃべってくれるわけもないし、倒したことで…魔女が出てきたりも…しなさそうだね」

千歌「ここには魔女はいないのかな…?」
 
251: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:22:33.24 ID:JP2R7y1y
果南「曜や他の仲間は?」

千歌「それが…吹雪ではぐれちゃったみたいで」

果南「そっか。まあ私もそうなんだけどね」

果南「でも吹雪も止んだし、すぐ見つかるでしょ」

果南「…っと、せつ菜たちに見つかったら千歌がまずいんだ」

果南「話したいこともたくさんあるけど、ゆっくりしてられないね」

千歌「果南ちゃんにこれまでの旅のことも離したいのに~…」

果南「あははっ。それは無事に全部解決したらってことで」

果南「1つだけ伝えておくね」

果南「デルカダール王は雰囲気がおかしいけど、怪しい動きを全然見せない。でもそれ以外にちょっと怪しい人を見つけたんだ」

果南「証拠がないから何とも言えないけど…」

千歌「それって、誰?」

果南「今はまだ、言えない」

果南「私もその人を信じたいから…」

カナンサーン

果南「…ん、時間切れのようだね」

千歌「せつ菜さんの声…よく響くね」

果南「今はそれが助かるよ」

果南「私たちは別の場所を調べてくるね」

果南「千歌たちも…元気で」

千歌「うん…またね!」
 
252: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:24:12.13 ID:JP2R7y1y
鞠莉「おーい、千歌ー」

千歌「鞠莉ちゃん!」

ルビィ「見つかってよかったぁ」

曜「あれ、今あっちに走ってったのって果南ちゃん?」

千歌「そうだよ。デルカダールの人たちも魔女を探してるんだって」

ダイヤ「それは…鉢合わせるとまずいわね」

梨子「ねえ、千歌ちゃん。この倒れてる魔物…って」

千歌「うん。果南ちゃんと倒したんだけど、これが魔獣…なんじゃないかな?」

ルビィ「え、もう倒しちゃったの!?」

ダイヤ「ふむ…魔女に繋がるものはとくになさそうだけど…」

曜「一旦歩夢ちゃんのところに戻ってみようか?」
 
253: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:29:37.42 ID:JP2R7y1y
───

曜「歩夢ちゃーん、魔獣は倒したけど、魔女は出てこなかったよ?」

歩夢「そうみたいね」

歩夢「こっちもダメだったわ」

梨子「何かしたの?」

歩夢「まあ…私にできることをね」

ダイヤ「あら…あなた、魔力が上がった?」

歩夢「え、そう、かしら?」

ダイヤ「さっきと比べるとかなり魔力にあふれてるわ」

歩夢「私は特に、何も…」

ダイヤ「そう…この感じは…」
 
254: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:33:00.54 ID:JP2R7y1y
歩夢「そ、それより古代図書館って知ってる?」

ダイヤ「確かシケスビア雪原の先にあるという、古の書物が眠る建物よね?」

歩夢「そう、そこに魔女が封印されていた魔導書はそこにあったの。もしかしたらそこに氷の魔法のことも…」

鞠莉「魔導書?魔女は封印されてたの?」

歩夢「え、ええ。何者かが封印を解いて、魔女は自由になったの」

ダイヤ「詳しいのね」

歩夢「まあ、私も調べたから…」

梨子「その人は何のために魔女の封印を解いたの…?」

歩夢「そこまでは…」

曜「とりあえず次は、その古代図書館ってところだね」

曜「本がいっぱいなのは頭痛くなりそうだけど……」
 
255: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:34:57.92 ID:JP2R7y1y
───

ダイヤ「このスイッチで…」ポチ

ガガガ

千歌「つながった!」

ダイヤ「ふぅ…やっと中央の部屋に入れるわね」

曜「上行ったり下行ったり、もうわけわかんないよ…」

鞠莉「なかなか面白いパズルだったね♪」

曜「誰が何のためにこんなの作ったのさ?入口から真っ直ぐつなげればよくない?」

ルビィ「それに魔物もいるから気をつけないといけないし…」

梨子「でもここの魔物はおとなしいじゃない?」

梨子「静かなところを求めて居付いてるのが多いんだと思う」

千歌「あそこの魔物とか、先生と生徒みたいな関係なのかな?」

梨子「だね。何話してるのか気になっちゃう」

曜「うわぁ…部屋の中も本がたくさん…」

ダイヤ「みんなで手分けして探しましょう」
 
256: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:37:34.76 ID:JP2R7y1y
善子「これじゃない?」

ダイヤ「どれどれ…」

『私は氷の魔女…真姫の魔力をミルレアンの聖獣ムンババに、体をこの魔導書に封印した』

『両者の封印が解けし時、魔女は力を取り戻し、復活するだろう』

鞠莉「聖獣?ミルレアンの森にいたのは魔獣じゃなくて?」

ルビィ「あ、見て、このイラスト!」

梨子「聖獣ムンババの姿だね。白い毛皮に金のたてがみがあって大きな口で…」

千歌「これ、あそこで倒した魔獣だよ!」

曜「え、千歌ちゃん聖獣を倒しちゃったの!?」

ルビィ「でも歩夢さんは魔獣がいるって言ってたよね?」

曜「歩夢ちゃんが間違えてたってこと?」
 
257: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:39:58.40 ID:JP2R7y1y
ダイヤ「…そう」

曜「ダイヤちゃん?」

ダイヤ「それならつじつまが合う…」

曜「何かわかったの?」

ダイヤ「ちょっと…確認したいことがあるの」

ダイヤ「クレイモランに戻りましょう」

ダイヤ「私の推測通りならそれで…」

千歌「もしかして魔女の居場所もわかるの?」
 
258: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:44:04.08 ID:JP2R7y1y
ルビィ「あ、ねえ!」

ルビィ「こっちに封印の呪文が書いてあるよ」

ルビィ「ポカ、ポカ…パマズ?」

ダイヤ「よく見なさいズマパよ」

ルビィ「あ、そうだね」

鞠莉「これで、もう一度封印できるかもしれないね」

梨子「でも、聖獣を倒しちゃったなら…魔女の力を解放しちゃったってことだよね?」

梨子「国1つ凍らせられる魔女がさらに力を取り戻してたら…」

千歌「それでもやるしかないよ。そんな危険な魔女をほっておいたら大変なんだから!」
 
259: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:46:47.04 ID:JP2R7y1y
───

歩夢「あ、みんなどうだった?この氷の魔法のこと…」

ダイヤ「やはり…」

歩夢「ん?」

ダイヤ「あなたの魔力…凍らされている人のものと同じね」

千歌「どういうこと?」

ダイヤ「この国を凍らせた魔法はあなたがかけたもの」

ダイヤ「つまり、あなたこそ魔女、真姫よ!」

歩夢「っ!」

曜「えぇっ!」
 
260: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:50:45.31 ID:JP2R7y1y
歩夢「…」

曜「歩夢…ちゃん?」

歩夢「はぁ…」

真姫「あーあ…ばれちゃった」ポン

曜「歩夢ちゃんから誰か出てきた!?」

真姫「そうよ。私が真姫よ」

真姫「確かにこの魔法をかけたのは私よ。だけどね…」

ダイヤ「ポカ、ポカ、ズマパ…」

真姫「え、ちょ、何を…」
 
261: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:53:05.85 ID:JP2R7y1y
ダイヤ「…ポカ、ジョマジョー!」

真姫「まだ話が…」

真姫「あぁぁー!」シュゥー

ルビィ「魔女が本の中に消えた…?」

ダイヤ「どうやら封印できたようね」

ダイヤ「不意を付けたのがよかったのかしら?」

千歌「あ、見て!」

善子「町の人たちが…元に戻ってく」

梨子「魔女を封印したことで、魔法が解けたんだ…」
 
262: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:55:47.71 ID:JP2R7y1y
歩夢「あの…」

鞠莉「あなたが本物の歩夢女王?」

歩夢「はい、そうです」

鞠莉「もう大丈夫よ。魔女は封印したから」

歩夢「そうじゃなくて…真姫ちゃんを出してあげてください」

曜「何言ってるの!?」

歩夢「あの子は悪い子じゃないの」

歩夢「私に憑いてたのだって、魔法を解く方法を探すためで…」

千歌「どういうこと?」

歩夢「真姫ちゃんが中に入ってた間にね、あの子の心の声もある程度聞こえたの」

歩夢「クレイモランに氷の魔法をかけたのは騙されたからで、ずっと解く方法を探していたって…」

歩夢「それに、女王としての私の悩みの相談にも乗ってくれたし…」

曜「…」
 
263: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 14:58:27.97 ID:JP2R7y1y
曜「ダイヤちゃん、魔女を出してあげて」

ダイヤ「でも…」

曜「お願い。歩夢ちゃんもああ言ってるんだし」

千歌「チカからもお願い。魔女が騙されてたっていうのも気になるし」

鞠莉「そうね、そもそも魔力が戻ってもマリーたちを襲う気配もなかったし」

ダイヤ「そこまで言うなら…」

ダイヤ「ええと…封印を解くには…」

ポン

真姫「ふぅ…」
 
264: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:00:38.06 ID:JP2R7y1y
真姫「話も聞かずにいきなり封印するなんてひどいじゃない!」

真姫「ま、でもおかげで氷の魔法が解けたみたいだし、結果オーライね」

真姫「ありがとう。感謝するわ」

千歌「あなたは悪い魔女なの?」

真姫「…確かに昔は少しやんちゃしたりもしたわよ」

真姫「それが原因で封印されたようなものだし」

真姫「だけど魔導書に封印されてる間に反省したんだから」

真姫「人に不要な危害を与えるようなことはしない…つもりだったわ」

ダイヤ「騙されて氷の魔法をかけたと言ってたわよね?」

真姫「そうよ」
 
265: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:04:03.97 ID:JP2R7y1y
真姫「ちょっと前に、その魔導書がある古代図書館に来た人がいてね。その人に言われたの」

真姫「封印を解いてあげるからクレイモランでこの魔法を使ってほしい、って」

真姫「一応何の魔法かは聞いたんだけどね、いいことが起きるとしか言われなくて…」

真姫「怪しかったけど、私も外に出たかったから約束したの」

真姫「それで言われた魔法を使ってみたら、クレイモランの人たちが凍っていくじゃない!」

真姫「しかもろくに魔力が戻ってない状態で使ったから、止めることもできないし、元に戻す方法もわからないし」

真姫「元の身体じゃ私がもたないから、とっさに歩夢に憑依して存在をとどめたのよ」

真姫「それで魔法を解く方法を探してたってわけ」

梨子「あなたの封印を解いた人はどんな人だったの?」

真姫「さあ?顔は見てにないわ。綺麗な人だった気はしたけど」

真姫「ああ、ウラ…だかウル…だったかの言葉も聞こえた気がするわ」

梨子「ウルノーガ…!」

曜「やっぱりあいつが関わってるの!?」
 
266: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:07:45.57 ID:JP2R7y1y
ダイヤ「なるほど…事情はわかったわ」

ダイヤ「とはいえ、効果の分からない魔法を使うのはいかがなものかと思うけれど」

真姫「確かに、よくわからないまま魔法を使った私も悪いけど…」

真姫「…そうね。私はクレイモランの人たちにすごい迷惑をかけちゃったし」

真姫「また封印されても文句は言えないわね…」

鞠莉「真姫を封印するの?」

ダイヤ「私たちが直接被害を受けたわけでもなく、クレイモラン王国の問題なので」

ダイヤ「あなたの処分については歩夢女王にお任せします」

真姫「歩夢…」
 
267: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:10:57.25 ID:JP2R7y1y
歩夢「ううん、真姫ちゃんは封印しないよ」

歩夢「国のみんなを凍らせちゃったのは悪いことだけど…」

歩夢「でもちゃんと元には戻ったし、犠牲者はいない」

歩夢「周りの人たちの反応からすると、多分…私以外は体が凍ってたことに気づいてもいないんじゃないかな?」

歩夢「あなたたち以外は真姫ちゃんが何をしたかも知らない」

歩夢「だから真姫ちゃんはこのままでいいんじゃないかな」

真姫「いいの、そんなので?」

歩夢「もうこんなことしないでしょ?」

真姫「しないわよ!」

歩夢「じゃあ大丈夫♪」

真姫「…お人よしね。女王として心配になるわよ」

歩夢「それなら、これからも私の相談に乗ってくれないかな?」

歩夢「私のそばにいて、国のこととか、個人的なことも話し相手になってほしいの」

真姫「…ほんと、お人よし」
 
268: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:14:09.65 ID:JP2R7y1y
歩夢「みなさんも、クレイモランのためにありがとうございます」

歩夢「何かお礼をしたいんだけど…私にできることなにかあるかな?」

曜「あ、そうだった」

曜「私たちね、ブルーオーブを探しに来たの」

歩夢「ブルーオーブ…?ああ、確か宝物庫にそんなのがあったはず」

歩夢「すぐ持ってくるね」

真姫「そんな即答していいの?国宝なんでしょ?」

歩夢「厳しい冬を耐えぬき、勤勉にはたらくクレイモランの民。それこそがこの国の宝だってお父様からの教えだよ」

歩夢「その宝を守ってくれた人たちだもん、ブルーオーブをあげるくらい大したことないよ」

曜「わぁ!ありがとう!」
 
269: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 15:16:48.03 ID:JP2R7y1y
鞠莉「これでオーブが6つそろったわね」

千歌「虹色の枝が…また光って…」

梨子「光が伸びてく…」

ダイヤ「あの方向は…聖地ラムダ。そして始祖の森の方ね」

ルビィ「あそこにある祭壇にオーブを捧げれば命の大樹への道が…」

鞠莉「そしてウルノーガを倒す方法も…」

曜「ゴールはもうすぐだよ!」

ダイヤ「行きましょう。私とルビィの故郷でもあるラムダへ!」

───
──

 
272: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:31:17.58 ID:Mojov8zY
善子「ずいぶん山奥にあるのね…」

梨子「神秘的な感じ…」

千歌「ここが聖地…」

ルビィ「ラムダへようこそ♪」

鞠莉「ここでダイヤとルビィが育ったのね」

ダイヤ「何もないところだけど、やっぱり帰ってくると落ち着くわね…」

曜「命の大樹も近いからおっきく見えるね」

ダイヤ「行きましょう。始祖の森はこの奥よ」
 
273: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:34:25.96 ID:Mojov8zY
花丸「ルビィちゃん?」

ルビィ「マルちゃん!何でここに?」

ダイヤ「あら、久しぶりね」

花丸「希さんのお使いでここの長老様に届け物に来たずら」

花丸「ルビィちゃんたちに会えると思って楽しみにしてたら、勇者を探す旅に出たって聞いて残念だったけど…」

花丸「ちょうど帰ってくるなんて!」

花丸「ということは、もしかして勇者様を…」

ルビィ「うん、そうだよ♪」
 
274: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:36:38.88 ID:Mojov8zY
梨子「マルちゃんってもしかして…花丸ちゃん?」

花丸「梨子ちゃん!?」

梨子「わ、やっぱり。あのマルちゃんだ」

花丸「何で梨子ちゃんも一緒なの!?」

ダイヤ「訳あって一緒に旅をしているのよ」

花丸「ユグノアが滅びたって聞いて、梨子ちゃんも…って思ってたけど」

花丸「無事だったんだね!」

梨子「うん、私は…なんとかね…」

花丸「梨子ちゃんだけでも無事でよかったよ…」
 
275: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:39:16.65 ID:Mojov8zY
善子「この子、この里の人?梨子ちゃんも知り合いなの?」

花丸「あ、そうでした。まだ名乗ってなかったずら」

花丸「初めまして、花丸と言います。ドゥルダ郷で僧をしています」

善子「ドゥルダ…ってどこだっけ?」

ダイヤ「ここラムダと命の大樹を挟んで反対にある里よ」

梨子「ユグノア王家とは親交があって、若いときの修行先になってるの」

梨子「私も短い期間だったけど、修行させてもらって、その時にマルちゃんと知り合ったの」

ルビィ「ラムダの里とも行き来はあって、昔から知り合いなんだ」

千歌「へー…いろんなところでつながってるんだね」
 
276: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:43:26.43 ID:Mojov8zY
花丸「あなたが…勇者様?」

千歌「へ?まあ、そうだけど…」

花丸「なるほど…確かに不思議な力を感じるずら」

梨子「迷いなく千歌ちゃんの方見たね」

善子「ルビィとダイヤちゃんも会ってすぐ分かったみたいだから、わかる人にはわかるオーラとかあるんじゃないの?」

花丸「それで、これから命の大樹のところに行くの?」

ルビィ「うん。命の大樹へ行く方法も多分わかったから」

ルビィ「勇者千歌ちゃんと一緒に、闇を祓うなにかを見つけに行くんだ」

花丸「命の大樹に行けるのかぁ…うらやましいな~」
 
277: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:46:58.25 ID:Mojov8zY
ルビィ「マルちゃんも来る?」

花丸「え?」

善子「ちょっと、いきなり何言ってるの?ルビィはともかく私たちは会ったばかりなのに」

鞠莉「あら、サマディーで会ったばかりのマリーのことは信用してくれたんじゃないの?」

善子「それは、そうだけど…」

花丸「…」

花丸「うれしいお誘いだけど、遠慮するずら」

花丸「この人たちはここまで苦楽を共にした仲間なんでしょ?」

花丸「命の大樹に行くって重要な時にいきなりマルが着いていくもどうかと思うんだ」

花丸「帰ってきたらお話聞かせてね」

ルビィ「うん、わかったよ!」
 
278: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:49:53.55 ID:Mojov8zY
花丸「出発前にお祈りを…」

花丸「勇者様、双賢の姉妹とその仲間たちに神のご加護がありますように」

曜「双賢の姉妹?」

ダイヤ「私とルビィのことらしいわ」

花丸「ダイヤちゃんとルビィちゃんは賢者あんじゅさんの生まれ変わりと言われているずら」

ダイヤ「長老様が勝手に言い出したことなんだけどね」

千歌「あんじゅさん…って誰?」

梨子「勇者ツバサさんと一緒に旅をした人だけど…知らないの?」

千歌「勇者ってチカの前の勇者?」

梨子「そうだよ。邪神を倒して世界を救った人」

善子「そういえば、千歌ちゃんが勇者の生まれ変わりって話は聞いてたけど、前の勇者のことは聞いたことがなかったかも」

ダイヤ「かつて、邪神が生まれ、大樹の魂が狙われましたとき、同時に千歌ちゃんと同じあざを持つ勇者、ツバサさんが誕生した」

ダイヤ「そしてツバサさんは勇者の剣を携え、行動を共にした賢者あんじゅさん、魔法使い英玲奈さんと3人で力を合わせ、邪神を倒したと言われているの」
 
279: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:53:52.20 ID:Mojov8zY
善子「しかし、伝説の勇者の生まれ変わりと賢者の生まれ変わりね…」

善子「すごい人たちと一緒になったもんだわ」

鞠莉「ほんとにね。曜は王女だし、梨子と千歌も滅びた国とはいえ王族」

鞠莉「マリーたちちょっと場違いじゃない?」

千歌「そんなことないよ!」

千歌「よっちゃんも鞠莉ちゃんも大事な仲間だもん!」

鞠莉「ありがと。千歌ならそう言ってくれると思ってたわ」

善子「一緒になったからには最後まで付き合うわよ」

善子「命の大樹へ行って、ウルノーガを倒しましょう!」

千歌「うん!」
 
280: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:55:51.14 ID:Mojov8zY
ルビィ「それじゃ、行ってくるね」

花丸「ダイヤちゃん!」

ダイヤ「はい?」

花丸「…気を付けてね」

ダイヤ「それはもちろん…」

ダイヤ「だけどどうして私だけ?」

花丸「もちろん、ルビィちゃんや他のみんなもだけど…」

花丸「なんとなく…気になって」

ダイヤ「そう…ありがとう」
 
281: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 22:59:30.69 ID:Mojov8zY
───

梨子「はぁ…はぁ…」

曜「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「へい、きだよ…」

曜「この山、結構急だからね」

鞠莉「日も落ちてきたし、そろそろ休みましょうか」

ダイヤ「そうね、無理するところじゃないし」

梨子「ごめんなさい…」

善子「気にしなくていいわよ。ヨハネもだいぶ疲れてるし」

千歌「あ、あそこでキャンプができそう」
 
282: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:03:35.63 ID:Mojov8zY
鞠莉「夜の命の大樹もミステリアスね…」

善子「あれが世界中の命を束ねてるんだっけ?」

ダイヤ「ええ。この世界で息絶えたものは大樹に戻り、また新たな命として生まれることで世界は回っているの」

曜「そもそもあれって何で空に浮いてるの?…」

千歌「不思議だよねー」

ダイヤ「…その原理は誰にもわかっていないわ」

梨子「うん。神の力って言われてる」

千歌「そんなすごいところにこれから行くんだね…」
 
283: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:05:20.01 ID:Mojov8zY
善子「ダイヤちゃん、それは…琴?」

ダイヤ「ええ、ちょっと家で見つけてね」

ダイヤ「小さいときに使ってた、オモチャみたいなものだけど…懐かしくて」

ルビィ「ねえ、おねえちゃん。あれ弾いて!」

ダイヤ「これのことかしら?」♪~

梨子「きれいなメロディ…」

ルビィ「これはね、ラムダに昔からある曲なの」

ルビィ「ルビィも小さいときからよく聞いていたんだ」

♪~♪~♪~

ダイヤ「ふう…こんなところかしら」

善子「心が安らぐわね」

鞠莉「さて、そろそろ寝ましょうか。夜更かしはレディの敵だしね♪」
 
284: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:09:30.17 ID:Mojov8zY
ルビィ「お姉ちゃん…」

ダイヤ「なあに?」

ルビィ「ルビィとお姉ちゃんは、ずっと一緒だよね?」

ダイヤ「さあ…どうかしら」

ダイヤ「ルビィはのんびりしているところもあるから、置いてっちゃうかもしれないわよ?」

ルビィ「…」

ダイヤ「でも…そうだといいわね」

ルビィ「うん…」

ダイヤ「…ルビィ」

ダイヤ「約束して。もし私に何かあっても、1人で生きていけるって」

ルビィ「…っ」

ルビィ「そんな約束…できないよ」

ルビィ「ルビィはずっと…お姉ちゃんと一緒だもん」

ダイヤ「…」
 
285: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:11:47.69 ID:Mojov8zY
───

ダイヤ「ここが例の祭壇ね」

曜「おお、ユグノアで見たのとおんなじだ!」

千歌「ここにオーブを置けば…」

千歌「…」

善子「どうしたの?」

千歌「置く場所って…決まってるのかな?」

鞠莉「どういう順番だったか誰か覚えてる?」

梨子「確か…あそこが赤だったような」

ダイヤ「こっちが緑で…いえ青だったかしら?」

ルビィ「ここが紫な気がする…」

善子「もう!とりあえず置いてみればいいでしょ」

善子「それで何も起こらなかったら配置を考えましょう」

千歌「それもそうだね」
 
286: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:15:37.56 ID:Mojov8zY
善子「デルカダールの国宝で、いつの間にか拾ってたレッドオーブ」

曜「グロッタ武闘会の賞品のイエ ーオーブ」

鞠莉「海底王国ムウレアで女王からもらったグリーンオーブ」

ルビィ「怪鳥さんが隠し持ってたシルバーオーブ」

梨子「かつてバンデルフォン王国のものだったパープルオーブ」

ダイヤ「氷漬けだったクレイモランを助けたお礼にもらったブルーオーブ」

千歌「6つのオーブよ、命の大樹への道を教えて!」

シューン

千歌「光が…!」
 
287: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:19:07.74 ID:Mojov8zY
善子「命の大樹まで繋がったわね…」

ルビィ「これ…虹の橋!?」

曜「そーっ」チョン

曜「みてみて!ちゃんと乗れるよ!」

鞠莉「ただの光じゃないようね…」

梨子「きれい…だけど、これを渡るの?」

善子「大樹まで結構距離あるんだけど…」

ダイヤ「足を踏み外さないよう気をつけないと…」

千歌「いよいよだ…」
 
288: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:23:20.29 ID:Mojov8zY
───

梨子「これが、大樹の魂…」

千歌「なにこれ、おっきー…」

ルビィ「すごい…生命力を感じる…」

鞠莉「中に剣が入ってる?」

バチッ

鞠莉「っつ!」

鞠莉「弾かれちゃった?勇者しか受け入れないってことかしら?」

ダイヤ「おそらく、そういうことでしょうね」

ダイヤ「そしてあれが闇を祓うものでしょうか?」

善子「闇の力を祓うっていうからどんなものかと思ったけど…ただの剣なのね」

梨子「もしかして…ツバサさんが使っていた、勇者の剣なのかな…?」

曜「さあ、千歌ちゃん!」

千歌「うん」
 
289: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:25:47.41 ID:Mojov8zY
千歌(左手の紋章が反応してる…)

千歌(剣が呼んでいるんだ)

千歌(うん、行くよ…)

ドン

千歌「あうっ!」バタ

ルビィ「千歌ちゃん!」

ダイヤ「魔法攻撃?」

善子「後ろから!?何者!」
 
290: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:28:55.71 ID:Mojov8zY
絵里「ふふ、悪魔の子…いいえ勇者千歌。ここまでよ」

梨子「絵里さんとデルカダール王!?何でここに…」

曜「横に倒れてるのは果南ちゃん!?」

善子「一体何が…」

果南「気を…付けて」

果南「この2人は、ウルノーガの…」

ダイヤ「あなたが…千歌ちゃんを撃ったのね?」

絵里「そうよ。後をつけられてるとも知らずに不用心なものね」

「果南もちょろちょろと嗅ぎまわっていたようだが、届かなかったようだ」

ダイヤ「デルカダール王の中から人が…!」

絵里「…ウルノーガ様」

梨子「あなたが…ウルノーガ!」

「デルカダール王の体を乗っとっていたが、もはや用はない」

曜「お父さん…」
 
291: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:32:40.40 ID:Mojov8zY
「絵里よ。何をゆっくりしている」

絵里「はっ、申し訳ありません」

絵里「この者どもは私が」

曜「させないよ!」

曜「はぁっ!」

絵里「無駄よ」バン

曜「弾かれた!?」

梨子「ヒャダルコ!」ピキ

絵里「そんなもの、今の私には効かないわ」

梨子「これもダメ!?」

ルビィ「絵里さんが持っているあの黒いオーブ…すごい闇の力を感じるよ…」

絵里「闇のオーブよ、私に力を!」

梨子「きゃぁぁっ!」
 
292: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:35:36.84 ID:Mojov8zY
千歌(みんな…倒れて…)

鞠莉「なんて強さ…攻撃が通じないなんて…」

絵里「ふふ、闇のオーブの力があればあなたたちなんて」

千歌(どうしようもないの…?)

「よくやった。絵里」

絵里「ありがたきお言葉」

「これが大樹の魂か…」

「これさえあれば世界だって…」
 
293: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:38:18.97 ID:Mojov8zY
「さて、勇者よ」

千歌「くっ…」

「そのチカラ…いただくぞ」

千歌「あっ…」

千歌(なに…なんか…)

千歌「あ…が…」

千歌(体に…入って…)

千歌「うぐ…ぁ…」

千歌(チカラが…)

「ふんっ」

千歌「あぁっ…!」
 
294: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:41:50.79 ID:Mojov8zY
「ほう…これが勇者のチカラ…」

曜「千歌…ちゃん!」

千歌「かはっ…ぐっ…」

「そしてこの大樹の魂の中にあるのが勇者の剣…」

「だが…我こそは魔王なり!」

鞠莉「勇者の剣が…闇に染まってく…!」

ダイヤ「あれでは魔王の剣とでも…」

「命の大樹よ…その力、我が貰った!」

千歌「だめっ!」

ザクッ

梨子「大樹の魂に、突き刺した…!?」

「くくく…はっはっは!」

曜「ウルノーガの姿が変わってく!」
 
295: (もんじゃ) 2021/12/12(日) 23:45:51.38 ID:Mojov8zY
ダイヤ「そんな…命の大樹が…」

梨子「大樹の葉っぱが散って…」

善子「大樹の魂が壊れたらどうなっちゃうの!?」

鞠莉「この木、落ちてない!?」

ルビィ「落ちたら、みんな…」

曜「どうすれば…」

ダイヤ「このままでは、世界が…!」

ダイヤ「そんなこと…」

ダイヤ「どうか…みんなを…!」

───
──

 
297: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:20:57.13 ID:dvroEnJf
鞠莉「ん…」

璃奈「あ…気が付いた?」

鞠莉「あなたは…璃奈だっけ?」

璃奈「そう」

鞠莉「ということは、ここは…」

璃奈「うん、ダーハルーネ。私の家」

鞠莉「私はどうなってたの…?」

璃奈「近くで倒れてたのを、町の人が見つけてくれた」

璃奈「無事に目が覚めてくれてよかった」

鞠莉「助けてくれたのね…ありがとう…」
 
298: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:24:16.75 ID:dvroEnJf
鞠莉「他のみんなは?」

璃奈「あなたの仲間のこと?」

鞠莉「そう」

璃奈「近くには他に誰もいなかった、って言ってた」

鞠莉「私だけ…」

璃奈「あの場所にいたのはあなただけ」

鞠莉「…命の大樹は?無事?」

璃奈「…」フルフル

鞠莉「あぁ…」
 
299: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:28:21.43 ID:dvroEnJf
璃奈「命の大樹が落ちて、その余波で多くの命が失われた」

璃奈「特に、デルカダールの方とかはひどいらしい」

鞠莉「ここの町の人たちも…?」

璃奈「ダーハルーネは直接の被害は大きくなかったけど…」

璃奈「海の魔物も狂暴化して、船が出せなくなった」

璃奈「この町は…貿易と漁で成り立ってるから…」

璃奈「みんな商売ができなくなってる」

璃奈「私は…どうすればいいのか…」

鞠莉「…どこも、大変なのね」
 
300: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:31:02.33 ID:dvroEnJf
鞠莉「それだけ大樹が落ちたダメージがあるってことは…」

鞠莉「もしかして、私以外の仲間はもう…」

鞠莉「そうだとしたら、どうすれば…」

璃奈「…」

璃奈「私は一度しか会ったことないからよく知らないけど」

璃奈「あなたの仲間は、あなたより先にやられちゃうような人たちなの?」

鞠莉「それは…」

璃奈「仲間を一番信じることができるのは、一緒に旅をしていた…あなた」

鞠莉「…」

鞠莉「ごめんなさい。ちょっと弱気になってたわね…」

鞠莉「外に出てもいいかしら?」

璃奈「ご自由にどうぞ」
 
301: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:32:38.52 ID:dvroEnJf
鞠莉(静かね…)

鞠莉(パワフルな町だったのに…人が全然いない)

鞠莉(出歩いてる人たちも暗い表情で…)

鞠莉(璃奈も、この町も…みんなの心に闇が…)

鞠莉(私たちがウルノーガを止められなかったせい…)

鞠莉(命の大樹は壊され、落ちた)

鞠莉(千歌たちも消息不明で、私1人)

鞠莉(1人で何が…)
 
302: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:34:59.63 ID:dvroEnJf
鞠莉「あら、どの道から来たっけ?」

鞠莉(もう、この町の道って複雑なんだから…)

鞠莉(確か…こっち?)

鞠莉(この広場…)

鞠莉(海人コンテストとかが開かれるステージだよね)

鞠莉(今は飾りも壊れかけ…)

鞠莉「ステージ、か…」

鞠莉「せっかくだし…久しぶりに、歌っちゃおうかな」
 
303: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:37:41.05 ID:dvroEnJf
鞠莉「♪~♪~」

鞠莉(そういえば、あの子たちの前では歌ってなかったわね…)

鞠莉「♪~♪~♪~」

鞠莉(観客は誰もいないけど)

鞠莉「♪~♪~」

鞠莉(マリーオンステージ)

鞠莉「♪~♪~♪~」

鞠莉(響け、どこまでも!)
 
304: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:40:16.09 ID:dvroEnJf
鞠莉「ふぅ…」

可可「わぁ~」パチパチ

鞠莉「わ、聞いてたの?」

可可「あのあの、マリーさん、ですよね?」

鞠莉「ええ、そうよ」

可可「やっぱり!」

可可「私、あなたのファンなんです!」

鞠莉「あら、ありがとう♪」

千砂都「この人があの…」

かのん「初めて見た…」

恋「たしかに、素晴らしい歌です」

すみれ「ええ、ギャラクシーね」
 
305: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:44:17.01 ID:dvroEnJf
鞠莉「あなたたちは?」

かのん「私たち、この5人でアイドルを始めようとしたんです」

可可「マリーさんにあこがれて、です」

千砂都「だけどあんなことがあって、アイドルをしてられるような状況じゃなくなっちゃって…」

かのん「でも、マリーさんの歌を聞いて元気が出ました!」

かのん「やっぱり歌には力があるんですね」

かのん「私も、アイドル続けたくなりました!」

かのん「ね?」

可可「はい!可可もです!」

千砂都「歌って、踊って、楽しいもんね!」

すみれ「やるったら、やってやるわよ!」

恋「私も負けていられません」
 
306: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:50:23.27 ID:dvroEnJf
鞠莉「そっか…」

鞠莉(私が何のためにアイドルをやっていたか…)

鞠莉(初心を忘れていたわ…)

鞠莉「私の歌だけじゃ世界中の人を救うことはできない」

鞠莉「でも、目の前にいる人をシャイニーにすることができるかもしれない!」

鞠莉「ステップバイステップ。たとえ1人ずつでも、続ければ世界中に広がっていくはず」

鞠莉「決めた!私もまたアイドルやる!」

鞠莉(そして、千歌やみんなも見つける!)

鞠莉「ありがとう、気づかせてくれて」
 
307: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:54:53.92 ID:dvroEnJf
鞠莉「さて、まずはこの町のみんなに歌を届けないと」

かのん「私たちも手伝います!」

鞠莉「ええ、もちろん。人数は多いほうがいいもの」

恋「まず何をすればいいのでしょうか?」

鞠莉「何って。歌って踊るのよ」

千砂都「え、でも、こんなステージじゃ…」

鞠莉「そんなの関係ない!」

鞠莉「私たちがいるところがステージよ。町中に歌を響かせよう!」
 
308: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 20:58:13.86 ID:dvroEnJf
───

「わー!」

「きゃーきゃー!」

鞠莉「みんなーありがとー!」

可可「やっぱりすごいです…」

すみれ「これがショウビジネスの力…」

鞠莉「まだまだ物足りないけど、とりあえずはこんなところかな?」

璃奈「そんなに数は多くないけど、マリーさんのライブを見た人の顔が活気づいてる…」

鞠莉「どう、璃奈?」

璃奈「ありがとう。この町も、まだ立て直せそうな気がする」

璃奈「ここから先は、私たちが頑張る番」
 
309: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 21:02:17.59 ID:dvroEnJf
鞠莉「それじゃあ、マリーは世界中の人達のところに旅をして行くから」

鞠莉「あなたたちも元気でね」

かのん「…あのっ」

かのん「私たちも連れて行ってください」

鞠莉「いいの?無事に帰れるかもわからないよ?」

恋「それでもマリーさんのもとで学びたいんです」

千砂都「私たちもマリーさんみたいになりたい!」

鞠莉「マーベラス!楽しい旅になりそうね」

鞠莉「それなら、みんなでレッツゴー♪」

───
──

 
312: (たこやき) 2021/12/13(月) 22:46:39.67 ID:Dg1adDOJ
てかこのマリーのシーンてPS4版?
3DSだとざっくり回想を見せただけだった気がする
 
313: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:26:01.65 ID:xOzS8pQR
Sで追加されたサイドストーリーをアレンジしています
 
314: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:27:08.87 ID:xOzS8pQR
曜「グロッタかぁ…」

曜(武闘会の時ぶりだね)

曜(ここに誰かいるといいな…)

曜(命の大樹が落ちた時みんなとはぐれちゃったけど…)

曜(曜が生きてたんだから、きっとみんな生きてる!)

曜(いつか見つけてみせる。ヨーソロー)

曜「ん…?」

曜(魔物!?)

曜(何で町の中に魔物が…)

曜(もしかして魔物に攻め込まれてる!?)

曜(周りには誰もいない…)

曜(まだ気づかれてない、よし1体なら…)
 
315: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:29:26.33 ID:xOzS8pQR
愛「ちょい待ち!」

曜「もがっ」

愛「君…たしかあの時の武闘会にいた…」

愛「曜って言ったっけ?」

曜「う、うん」

愛「もしかしてここに来たばっかり?」

曜「そうだけど」

愛「ちょっと、騒ぎ起こすのはまずいからね」

愛「こっち来て」
 
316: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:32:44.89 ID:xOzS8pQR
果林「あら、あなたは…」

愛「この町のことわかってないみたいだから連れてきた」

曜「ここはたしか孤児院だったよね?」

愛「そ。今は避難民もいるけどね」

曜「この町は今どうなってるの?」

愛「…」

愛「命の大樹が落ちた後、ブギーっていう魔物がやってきてね」

愛「闘技場を占領したんだ」

果林「それで町の人たちを連れてって強制的に働かせているのよ」

曜「そんな!」
 
317: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:36:08.63 ID:xOzS8pQR
曜「何で止めないの?」

愛「もちろんみんな反対したさ」

愛「町を守ろうと戦った」

愛「だけどあいつは強い」

果林「私と愛は負けそうになって逃げだすのが精いっぱいだったわ」

曜「2人でも!?」

愛「うん」

愛「そして、その後挑みに行く人もいたけど、誰も戻ってこなかった…」
 
318: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:40:18.65 ID:xOzS8pQR
曜「ここにいるの人たちは大丈夫なの?」

果林「今は人手が足りているのか、そうそう連れてかれないわ」

愛「だけどあいつらに逆らったらただじゃすまない」

愛「だからみんな閉じこもってるんだ」

果林「魔物におびえながら引きこもって暮らしてる…情けない姿よね」

曜「2人はもう諦めちゃったの?」

果林「まさか。いつまでも魔物の好きにさせる気はないわよ」

果林「だけど同じ戦力で行っても結果は変わらないわ」

曜「じゃあ私も行く。それならどう?」

愛「2人より3人…か」

果林「確かにそれなら…」

愛「この町の人じゃないのに力を借りて悪いけど」

曜「ううん。苦しんでる人たちを放っておけないもん!」
 
319: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:42:58.00 ID:xOzS8pQR
───

曜「この町の人たちを解放しろ!」

「うるさいなぁ…」

「お前たちがこのブギー様に逆らおうって追うおバカさんだね?」

「さあ、その間抜け面を見せてみな…」クル

「ブギー!きゃっわゆ~い!」

曜「は…?」

「そう、真ん中の君!すっごいボクちんの好みだの子じょ~」

曜「え…これ、曜のこと…?」

果林「そうみたいね…ご愁傷様」

曜「あんな魔物に好かれたくないんだけど…」
 
320: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:46:26.54 ID:xOzS8pQR
「決めた!君は今からボクちんのマイスイートハニーだじょ!」

曜「何言ってるの…」

「ねえ、今からボクちんと2人っきりでおしゃべりしない?」

曜「そんなのしたくないよ!」

「そんなこと言わないでさ。そうだ、お近づきのしるしにプレゼントを…」

果林「しつこい男はモテないわよ?」

「うるさいなあ。ボクちんは魔王軍一のダテ男だよ」

「こうなったら…」

「メガモリーヌちゃん、かわい子ちゃんの隣の邪魔もんを吸い込んじゃってちょ」

「承知しましたわ~ん」

曜「誰!?」
 
321: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:49:11.89 ID:xOzS8pQR
愛「なにこれっ」

果林「あれは異空間!?引き寄せられちゃう!」

「ふふふ…これで2人きりになれるじょ!」

曜「愛ちゃん、果林ちゃん、だめっ!」グイ

愛「曜!」

シュイーン

曜「私も…吸い込まれる!」

「あっ!」

「君が行っちゃだめだじょー!」
 
322: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:53:27.93 ID:xOzS8pQR
曜「ここは…」

果林「さっきので吸い込まれた先のようね」

果林「多分どこかの異空間…」

愛「ここから出る方法を探さないと」

「あら?1人多くない?」

曜「さっきの声だ」

「まあいいわ。ブギー様に歯向かう気が起きないよう、徹底的にお仕置きしてあげる」

果林「魔物の群れよ、気を付けて」

「さあ、お前たち、やっちゃいなさい!」
 
323: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:56:29.35 ID:xOzS8pQR
───

曜「はぁっ!」ドシュ

「ぐふっ…」

愛「これで全部?」

曜「こんくらい楽勝だよ!」

「ま、まさか、人間のくせに…メガトン級に生意気なやつね」

愛「声しか聞こえないけど、あんたがこの空間の主ってわけ?」

「そうよ。ブギー様のために生意気な人間を懲らしめてあげるの」

果林「ふーん…逆にあなたたちの方が懲らしめられたみたいだけど」

果林「姿を見せなさい。この空間から解放してもらうわ」

「うるさい!こうなったらこのメガモリーヌ様直々に、あんたたちに鉄槌を食らわせてあげるわ!」ドン

愛「でかっ!」

果林「これがメガモリーヌ…」

「だいたいあたしを差し置いて、何であんたなんかがブギー様に気に入られてるのよ」

「ブギー様の恋人はこのあたし♪人間ごときが出しゃばらないでよ」

曜「っていうか声と見た目合わなくない?」

愛「…それは思った。可愛い声と見た目のギャップがさ」

「はぁ?何言ってるの?このメガトン級にキュートなボディが見えないの?」

曜「きゅーと…?」
 
324: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 00:58:46.52 ID:xOzS8pQR
「とにかく!あんたなんかにブギー様は渡さないんだから」

曜「いや、元からあんなのいらないし」

「まあ、ブギー様をあんなのなんて失礼な!」

「まあそうよね。人間なんかにブギー様の良さがわかるわけないもんね」

曜「わからないし、わかりたくもないよ」

愛「私たちはブギーもあんたも倒して、この町を元に戻すんだから!」

「むかつく…メガトン級の地獄を見せてあげるわ!」

果林「来るわよ!」
 
325: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 01:03:28.35 ID:xOzS8pQR
───

愛「烈火斬り!」ボシュ

「きゃあぁぁ!」

曜「これで決めるっ、ムーンサルト!」

「そんな…ブギー様…」バタ

曜「さすが、2人はコンビネーションばっちりだね!」

愛「まあね♪」

果林「それなりに付き合い長いもの」

曜「今の技千歌ちゃんたちのやつみたい」

愛「うん、あの時の千歌と鞠莉の技を参考に、果林と進化させたんだ」

果林「見て、あそこ!」

愛「空間に裂け目が」

曜「あそこから戻れるかも。行こう!」
 
326: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 01:07:33.29 ID:xOzS8pQR
「ブギッ?まさかメガモリーヌちゃんの監獄から抜け出せるとは」

「一体どうやって?あの子が脱走を許すとは思えないけど…」

曜「メガモリーヌは倒したよ。あとはあんただ!」

「そんな、メガモリーヌちゃんが…うぅ」

「短い時間だったけど、君と一緒だった時は楽しかったよ…」

果林「ふぅん…そんな情があるのね…意外」

「こうなったら仕方がない。そこのかわいこちゃんだけに愛を注ごう」

曜「え…」

愛「切り替わり早っ」
 
327: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 01:11:00.26 ID:xOzS8pQR
「実は君のためにこれを作ってたんだ」

果林「バニースーツ?」

「絶対似合うと思うから、ほら着てみてよ」

曜「着るわけないじゃん、そんなの!」

「いいの?そんなこと言って?」

「ほら、あれを見てごらん」

愛「町の人たちを人質に…っ」

「ボク〇〇〇ういうのあんまり好きじゃないんだけどね。どーしても、君にこれを着てほしいからさ」

曜「…」

曜「…わかった。着るよ」

「ぎひっ、やったー!」

曜「くっ…」

「おっと、レディの着替えを除くのは失礼だからね。ボクちんは後ろを向いてるし、隠すものは用意するよ」
 
328: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 01:14:51.09 ID:xOzS8pQR
曜「…これでいい?」

「くぅ~~!最高イカしてるじょー!ボクちんの見立て通り」

曜「さあ、町の人を放して!」

「わかってるじょ。だけどこれで…ぐふふ」

曜「今度こそ倒し…あぅ」

愛「曜!?」

曜「なにが…」

果林「あんた、何したの!?」

「ボクちん特製バニースーツの効果だじょ」

曜(だめ…いしきが…)パタリ

「これからゆっくり、身も心もボクちんに染まってもらうね♪」

「まずは交換日記から…それからもしかしたら手をつないだりも…むふふ」

───
──

 
330: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:21:28.91 ID:xOzS8pQR
善子「…ここは」

善子(確か、命の大樹が落ちて…)

善子(それから…)

善子「私…生きてる?」

善子(何がどうなったのかしら?)

善子「他のみんなは…」

善子(いない…)

善子(もしかしてあのとき…ううん、そんなわけはない)

善子(運が悪いヨハネが生きてるんだもん、きっとみんな生きてるはず)
 
331: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:23:47.79 ID:xOzS8pQR
善子(まずは状況の確認ね)

善子(私がいるのは牢屋のようなところ)

善子(どこかの国に捕まった?いえ、それにしては作りが自然的のような…)

善子(この部屋には私1人)

善子(外に見張りは…いないわね)

善子(鍵は…この程度なら開けられるわ)

善子(壁は分厚くて壊せそうにない)

善子(だったら…正面から出るしかないじゃない)ガチャ
 
332: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:26:55.62 ID:xOzS8pQR
善子(さて、誰とも会わないといいけど…)

「お前は!」

善子「…っ」バシ

善子(あっ…!)

善子(魔物?)

善子(とっさに倒しちゃったけど…まずいわよね)

善子(だけど魔物が歩いてるってことは、ここは人じゃなくて魔物の国だってことなのかな)

善子(ここまで運が悪いとはね。人間相手ならまだ話し合いの余地があるかもしれないのに…)

善子(こいつはここに放っておくしかないし、バレちゃうのも時間の問題かしら?)

善子(急がないと…)
 
333: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:29:07.86 ID:xOzS8pQR
善子(ヨハネの他に人の姿は無し)

善子(千歌ちゃんたちはここにはいないのかしら)

善子(それならここから逃げ出すことだけを考えれば…)

善子(おっと、広い場所に出たわね)

善子(うゎ…魔物がたくさん)

善子(しかも強そうなドラゴン系ばっかり)

善子(1対1ならともかく、あの数は見つかったら終わりね)

善子(幸いここは、隠れられる高い位置の抜け穴…)

善子(気配を消して…こっそりと)

コロコロン

「ん?」

善子(やばっ)

「何だ…壁がちょっとはがれただけか」

善子(セーフ!)

善子(足元が欠けるなんてついてない…だけど小さな欠片で助かったわ)

善子(別のルートを…)
 
334: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:31:35.04 ID:xOzS8pQR
善子(こうしていると千歌ちゃんと一緒にデルカダールから逃げ出した時を思い出すわね…)

善子(あの時もドラゴンだっけ)

善子(あいつの方がはるかに強そうだったけど)

善子(それとも今のヨハネなら勝てるのかな?)

善子(その時はこんな旅になるなんて思ってもいなかったなぁ…)

善子(ホムラでダイヤちゃん、ルビィから千歌ちゃんの正体を聞いて)

善子(サマディーで王女の手伝いをして、鞠莉ちゃんが仲間になって)

善子(ダーハルーネで絵里さんに追われ)

善子(グロッタで武闘会に千歌ちゃんが優勝して、魔物も倒し)

善子(ユグノアで千歌ちゃんの生まれも聞いて、梨子ちゃん、曜ちゃんが加わり)

善子(海の底にある人魚の国に行ったり)

善子(氷漬けのクレイモランを助けたり)

善子(ラムダ…命の大樹では…)

善子(みんな…無事よね?)

善子(みんなに会うためにも、ヨハネもここから逃げ延びる!)
 
335: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:34:55.11 ID:xOzS8pQR
───

善子(光が見える!)

善子(外に出たわ!)

善子「な…」

善子(地面が見えない…)

善子(まさか…ここは空の上だって言うの!?)

善子(空飛ぶ島ってどういうことよ…)

善子(こっからどうやって逃げればいいのかしら)

善子(ヨハネが空を飛べたら…)
 
336: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:38:52.87 ID:xOzS8pQR
シュイン…ドスッ

善子「あぶなっ!」

「居ないと思ったらここまで逃げていたとは」

善子「あんたは…?」

「我はウルノーガ様に仕えし、邪竜軍王ガリンガ」

善子(ウルノーガの…)

「人間にしてはよくここまでたどり着いた…だがここまでだ」

善子(やばいやばいやばい)

善子(このガリンガってやつもかなり強そうなのに、魔物にまで囲まれた)

「皆の者、あの人間を逃がすな!」

善子(絶体絶命ってやつよね、これ?)
 
337: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:43:01.43 ID:xOzS8pQR
「力が欲しいか?」

善子「この声は…?」

善子(直接脳内に!?)

「1つだけここを突破する方法がある。1度だけの特別な力を授けよう」

善子(誰だかわからないけど、この場をなんとかできるならその力をちょうだい!)

「だけどそれは君の一番大切なものと引き換えになるかもしれない」

善子(私の一番大切なもの…?)

善子(それは…)
 
338: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:47:27.36 ID:xOzS8pQR
「…そうか」

「みんなとの思い出。それが君の大事なものだな」

善子(みんなとの思い出…私がとっさに思い浮かべたもの…)

「それを失うかもしれない。それでもいいか?」

善子「…」

善子(大事な思い出…だけど!)

善子(いいわ。生きていれば思い出はまた作れる!だから、私に力を!)

「そなたに力を与えよう!」カッ

善子「あぅ!」
 
339: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:50:34.13 ID:xOzS8pQR
「なにをつぶやいている。観念したのか、人間よ」

「さあ、奴を捕らえよ!」

善子「はっ」シュン

「何…!一瞬で魔物どもを蹴散らしただと!?」

善子(体が軽い…力が溢れる)

善子「ふっ」

善子(動きが止まって見えるわ!)

善子(周りの雑魚を殲滅して…)スパッ

善子(親玉…ガリンガを!)シュパン

「がはっ…」
 
340: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:53:55.91 ID:xOzS8pQR
「我が追えないスピード…だと」

善子(このまま一気にっ)

善子「あ…れ…」ヨロッ

善子(何で…体が、重く…)

「食らえっ」

善子「きゃああっ」

善子(吹っ飛ばされ…この方向は…)

善子(やばい…地面がない…)

善子(落ち…る)

善子(私は、ここまで、なの…?)
 
341: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 19:57:42.93 ID:xOzS8pQR
「地の底で出会う勇者に力を貸せ。そうすれば君の贖罪も果たされるだろう」

「かつて君に与えた預言だ」

「この言葉を授けた手前、最後まで導きたかったが…」

「私が今手助けできるのはここまでのようだ…」

「あの場は無事に切り抜けられたから、死なぬよう地に降ろしてやるくらいはできるが…」

「次に君が目覚めた時、私のことも、勇者たちのことも覚えていないだろう…」

「生きてさえいれば、道は開けよう」

「さあ、行くのだ…」

───
──

 
342: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:29:51.39 ID:xOzS8pQR
花丸「梨子ちゃん…本当に行くの?」

梨子「うん…だって希さんに会うためにはこうするしかないもの」

花丸「でも、戻ってこれる保証はないんだよ?修行ならここでも…」

梨子「短い時間で強くなれる方法、マルちゃんは知ってる?」

花丸「…ううん」

梨子「私はあのとき、自分の力不足を感じた。ウルノーガどころかその配下に歯が立たなかったから」

梨子「今のままじゃ千歌ちゃんの役に立てない」

梨子「だから、希さんに会いに行くの。あの人ならきっと…」

花丸「そこまで言うなら…」

花丸「いくよ…ドゥ~ラリホー…」
 
343: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:33:10.49 ID:xOzS8pQR
───

梨子「あれ、ここは…」

「ほれ、何をぼーっとしてるんじゃ」

梨子「おじいちゃん!?」

千歌「もう、梨子ちゃん。チカのおじいちゃん取らないでよ」

梨子「千歌ちゃん…何で…」

千歌「どうしたの?そんなにびっくりしちゃった?」

千歌「ほらほら、主役はもっと真ん中に」

梨子「主役…って?」

千歌「あれ、まだわかってなかったの?今日は梨子ちゃんの誕生日パーティだよ?」

梨子「私、の…?」
 
344: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:35:30.89 ID:xOzS8pQR
「梨子、おめでとう」

「梨子、こっちにいらっしゃい」

梨子「お母さん…お父さん…」

梨子「そんな…うぅ…」

千歌「ええっ!?そんな泣くほど嬉しかったの?」

梨子「…うん、嬉しい」

梨子「また、みんなに会えた…」

千歌「いつも会ってるじゃん?」

千歌「これまでも、これからもいつでも会えるよ」

梨子「…」
 
345: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:39:08.04 ID:xOzS8pQR
梨子(私の故郷、ユグノア)

梨子(1年前に奪われてしまった景色)

梨子(あの日亡くなったはずのお母さんやお父さん)

梨子(そして17年前、生まれてすぐいなくなってしまった千歌ちゃん…)

梨子(ありえたかもしれない日常。戦いのない平和)

梨子(私が望んでいたもの…)

梨子(だけど、これはきっと夢や幻)

梨子(いつまでも…ここにはいられない…)
 
346: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:41:51.99 ID:xOzS8pQR
「梨子、どうしたの?」

梨子「私、行かなきゃ」

「どこに?ここにいればずっと平和な日常があるのよ?」

梨子「世界のために、やらなきゃいけないことがあるの」

「それは梨子がすることなの?」

「あなたは大変な思いをしてきた。あとは他の人の任せてもいいんじゃない?」

梨子「それでも…」

梨子「世界が大変な時に、私だけ逃げるわけにはいかないから」

「…そう。わかったわ」
 
347: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:43:59.87 ID:xOzS8pQR
───

梨子「…え」

梨子「暗い…ここは…ユグノアじゃない?」

希「冥府へようこそ」

梨子「希さん!」

希「って言いたいところだけどね。梨子ちゃん、君はまだここに来ちゃいけないよ」

梨子「それを言うなら希さんだって…!」

希「うちはしょうがないもん。あれしかなかったから」

希「梨子ちゃんの目的はわかっているけど、生きてる人間が自ら望んでくる場所じゃない」

希「ここにいればいるだけ向こうの体は弱っていく。今ならまだ問題なく帰れるよ?」

梨子「いやです。希さんの修行を受けるまで帰りません!」

希「そんな強情な子だったかな?梨子ちゃんも変わったんだね」

梨子「私も…いろいろあったので」

梨子「お願いします、希さん!」
 
348: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:47:07.38 ID:xOzS8pQR
希「…そこまで言うならしょうがないか。修行をつけてあげよう」

梨子「ほんとですか!?」

希「幸せは時に歩みを止める枷となる。まずは第一段階、誘惑はちゃんと断ち切ったみたいだしね」

希「乗り越えてくれてよかったよ。一安心ってところかな」

梨子「じゃあ、やっぱりあれは…」

希「そう、うちが用意したものや」

希「梨子ちゃんが修行を受ける資格があるか試すためにね」

希「ま、あの程度に負けるようじゃ、うちに会うまでもなく追い返してたけど」

梨子「よかった…」
 
349: (もんじゃ) 2021/12/14(火) 23:50:06.59 ID:xOzS8pQR
希「さて、これからは実戦や。今の梨子ちゃんならあの奥義を習得できるかもしれないね」

希「だけどさっき言った通り時間もないし、短期間に詰め込んでいくよー」

梨子「はい、わかっています」

希「もちろん、うまくいかないときはわしわしもセットやで」

梨子「いえ、それは…」

希「ふふ、梨子ちゃんがどれだけ成長してるか楽しみにしてるよ」

希「久しぶりに、マックスでいっちゃおうかな~」

梨子「いやぁ~!」

───
──

 
352: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:36:18.55 ID:EYzGZou+
千歌(んん…)

ことり「あ、目覚めた!」

千歌(んー…)

千歌(ことりちゃん…?)

ことり「大丈夫?私見えてる?」

千歌(人魚のことりちゃんでしょ?)

千歌(あれ…しゃべれない?)パクパク

千歌(体も…動かせない…)

ことり「あ、ごめんね。はい、鏡」

ことり「今、千歌ちゃんこういう状態なの」

千歌(え…)

千歌(えーっ!)

千歌(何で、何でチカが魚なの!?)
 
353: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:38:48.02 ID:EYzGZou+
ことり「ん~?なんか言おうとしてる?」

千歌(うん、うん!)

ことり「そっか。お魚の姿だから声の出し方もわからないのかな」

ことり「えっとね、エラを使う感じで」

千歌(エラ?)

ことり「そう、このあたりにある…」サワ

千歌「ひゃっ」

千歌「あ?…あー」

千歌「しゃべれる!」

ことり「よかった~」

千歌「ここどこ?ムウレア?何でチカは魚になっちゃったの?チカの仲間は?命の大樹は?」

ことり「そんなにいっぺんに言われても答えられないよー」

ことり「とりあえず海未ちゃんのところに連れて行くから、話は移動しながらね」

千歌「移動…」

千歌「魚の泳ぎ方…こんな感じ?」

ことり「うんうん、ちゃんと動けてるよ」
 
354: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:41:25.54 ID:EYzGZou+
ことり「千歌ちゃんはね、ずっと眠ってたの」

ことり「命の大樹が落ちたあの日、海に沈んでいく千歌ちゃんを見つけて…」

ことり「死んじゃいそうな状態だった」

ことり「治療のために、海未ちゃんがお魚の姿に変えてたの」

ことり「ずっと目を覚まさないからどうしようかと思ったけど、戻ってきてくれた」

千歌「見つけたのは私だけ…?」

ことり「うん…千歌ちゃんの仲間は見なかったよ」

千歌「…そう」

ことり「あ、でも海の中にはいないってだけで、陸のどっかで生きてるかもしれないから」

千歌「…」
 
355: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:43:32.36 ID:EYzGZou+
ことり「お魚の泳ぎはどう?」

千歌「うん、人の姿で泳ぐより早くていい感じだよ」

ことり「そりゃあ、海に棲んでいる姿だもん。陸の生き物より速く泳げるよ」

千歌「ここ…ムウレアだよね?前はもっと人いなかった?」

千歌「あ、人っていうか人魚や魚」

ことり「うん。みんな…避難したんだ」

千歌「避難?」

ことり「って言っても、海の中に安全なところなんてないかもしれないけどね…」

千歌「それってどういう…」

ことり「あ、海未ちゃんの所に着いたよ」
 
356: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:47:56.51 ID:EYzGZou+
海未「ようやく…目覚めましたか、千歌」

海未「間に合ってよかった…」

千歌「間に合うって何が?」

海未「ことりから聞いているかもしれませんが、あなたは命の大樹が落ちた日から、ずっと眠っていました」

海未「その姿に変えたのは治療のためもありますが、敵の目を欺くためでもあります」

海未「意識が戻ったので、おそらくじきに元の姿に戻れますよ」

千歌「よかったぁ…ずっとこのままだったらどうしようかと思ってたよ」

ことり「そのままでも可愛いと思うけどねー」
 
357: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:56:11.16 ID:EYzGZou+
海未「そして、世界は大きく変わりました」

海未「千歌は外がどうなっているか知らないのですよね?」

千歌「うん、命の大樹はどうなったの?」

海未「地上の様子を少しだけ見せましょう」

千歌「え…なに、これ…」

千歌(地面が…焦げてる…)

海未「魔王ウルノーガが誕生したあの日、命の大樹が落ち、多くの命が奪われました」

海未「大樹の落下の衝撃で爆風が吹き荒れ、草木を枯らし、燃え盛る岩が大地を砕く」

海未「大樹に近いところでは壊滅状態になった地方もあります」

千歌「ひどい…」

海未「世界は絶望に覆われました」

海未「私は見ているだけ…どうすることもできませんでした」

海未「そして、命の大樹に変わり世界を統べるのは、天空の魔城に住む魔王ウルノーガ」

千歌「空の、お城…」

海未「魔王は…命の大樹の力だけでなく、地上のすべての命を奪おうとしているのかもしれません」
 
358: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:57:31.65 ID:EYzGZou+
ドン

千歌「な、なに!?」

海未「どうやら、限界のようですね…」

海未「ムウレアは魔王軍の魔物によってたびたび侵攻を受けています」

海未「私の結界で、どうにか持ちこたえてはいましたが…いつまでも防ぎきれるわけではありません」

海未「民にはできるだけ避難を促してはきました」

千歌「それでこんな少なく…」

海未「ことりにも早く逃げるよう言ったのですが…」

ことり「そんな!海未ちゃんも一緒にだよ!」

海未「私はこの国の女王。民がいる限り最後まで戦う義務があります」

千歌「私も一緒に戦うよ!」

海未「今のその姿で何ができるというのです」

千歌「それは…」
 
359: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 18:59:49.87 ID:EYzGZou+
海未「千歌、あなたはまだ生きている。それはあなたが魔王と戦う運命の中にあるという大樹のお告げなのかもしれません」

海未「絶望の中でも希望も持つ人はまだいます」

海未「しかし、その光も徐々に少なくなっている」

海未「お願いします。世界に再び希望の光を照らしてください」

海未「それは、勇者であるあなただからできること」

千歌「私だから…」

海未「行きなさい」

ビュッ

千歌(水流が…流される!)

海未「前を向きなさい。振り返ってはいけません」

海未「勇者とは…最後まで決してあきらめないもののことです!」

───
──

 
360: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:05:50.17 ID:EYzGZou+
千歌「ここは…陸?」

千歌(あ、人の姿に戻ってる)

千歌(ムウレアは…海未ちゃんやことりちゃんはどうなったんだろう…)

千歌(もしかしてあのまま魔物に…)

千歌(ううん…考えてもしょうがない)

千歌「私にできることは…ウルノーガを倒すこと!」

千歌「まずはどこに行けば…」

千歌「うゎっ」コケッ

千歌「ったた…」

千歌「今は人の姿なんだった…」

千歌(えーっと…こう足を動かして)

千歌(なんでちょっと魚になってただけなのに歩けなくなるかな…)
 
361: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:07:37.12 ID:EYzGZou+
千歌「よし、ちゃんと歩ける、走れる!」

千歌(で、進む道は…)

千歌(そういえばこの景色…見覚えある)

千歌(確か…こっちに行って…)

千歌(この滝を通ると…)

千歌「イシの村!」

千歌「…あれ?こんな木の壁あったっけ?」

「あんたは生き延びた者か?さあ、砦の中に早く」

千歌「…砦?」
 
362: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:09:49.09 ID:EYzGZou+
千歌(形は一緒だけど、なんか雰囲気も違うなぁ…)

千歌(だれか知ってる人は…)

エマ「千歌ちゃん!千歌ちゃんだよね!?」

千歌「あ…」

エマ「私だよ!幼馴染のエマだよ!」

千歌「エマちゃん…」

エマ「今までどこに…」

エマ「ううん、そんなことはどうでもいいの」

エマ「無事で、よかった…」ギュ

千歌「エマちゃんも…」
 
363: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:11:47.26 ID:EYzGZou+
エマ「ここはデルカダール地方最後の砦って言われてるの」

千歌「最後の砦?」

エマ「命の大樹が落ちた衝撃で、デルカダールの国は壊れちゃったの」

エマ「お城も、城下町も…そしてたくさんの人たちも…」

エマ「デルカダール城は物の群れに乗っ取られちゃって…」

エマ「ここももちろん色々壊れたりしちゃったけど、被害は少なかったから、生き残った人たちが集まってね」

エマ「みんなで力を合わせて暮らしてるんだ…」

千歌「ねえ、生き残った人って」

エマ「もちろん千歌ちゃんの家族のみんなも無事だよ」

千歌「ほんと!?」

エマ「あっちにいるから会いに行こうよ!きっと喜ぶから」
 
364: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:13:34.05 ID:EYzGZou+
───

ガヤガヤ

千歌「なんかあっちの方が騒がしいね、お姉ちゃん?」

「英雄のお帰りだろうね」

千歌「英雄?」

「この砦を魔物から守ってくれる英雄さ」

「狂暴化した魔物に困ってた時に、デルカダールの人たちを連れてきて助けてくれたの」

千歌「へー…そんなすごい人がいるんだ」

「千歌もよく知ってる子だよ」

千歌「…それってまさか!」

「私たちは会えなかった分の家族の話が十分できたわ」

エマ「会ってあげて、千歌ちゃん」

千歌「うん!」
 
365: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:16:23.45 ID:EYzGZou+
「…そうか、魔物が」

果南「はい。なので…」

千歌「果南ちゃんっ!」ハグッ

果南「え…」

果南「千歌!?」

千歌「うん、チカだよ」

果南「また…会えてよかった…」ギュ

「君が…千歌か」

千歌「デルカダールの、王様…」

せつ菜「あの、勇者…様」

千歌「あなたは…」

せつ菜「すみませんでした!」

千歌「え、あの…」

せつ菜「あなたが本当に勇者だと知らず、悪魔の子として追いかけてしまって」

「せつ菜、そんなに自分を責めるな。悪いのは全部操られて命令を出した私だ」

千歌「そ、そうだよ。別にあなたのことは恨んでないから、土下座なんてしなくても…」

せつ菜「しかし…」

「2人ともここでは目立つ…ちょっとこっちに来てくれないか」
 
366: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:19:27.37 ID:EYzGZou+
「さて、初めまして…ではないだろうが、私は覚えていないものでね。改めて…私がデルカダールの国王だ」

「…いや、国王だったと言うべきかな」

「君に何をしたかは全部果南やせつ菜から聞いた…」

「ウルノーガに乗っ取られていたこの1年ちょっとの間のことを私は何も覚えていないが…君にも、娘にも、もちろん兵や民にも申し訳ないと思っている」

千歌「…」

「許してくれとは言わない。国が滅びた今、王の名など関係ない、せめてこの身を盾にしてでもみんなを守ろうと思った」

果南「それはダメです」

「…この通り止められてね」

果南「悪いのは全部ウルノーガです。勝手に犠牲になられては曜も悲しみます」

「そう、そのこともある。君はどこかで…曜を見てないか?」

千歌「…」

「…そうか」

「君みたいに生きていてくれればいいが…」
 
367: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:21:01.00 ID:EYzGZou+
「さて、果南よ。デルカダール城で魔物たちに不穏な動きがあると言ってたな?」

果南「はい。これまで以上の勢力で、おそらくここに向かってくるかと」

「ふむ…」

果南「なので守りを固めて襲撃に備えるべきだと思います」

せつ菜「あの…大群で攻めてくるということは、デルカダール城に残る魔物が少なくなるということですよね?」

せつ菜「ならばその隙に逆に攻め入って、敵の将を討つというのはいかがでしょうか?」

果南「でもそれじゃあここの守りはどうするの?」

せつ菜「もちろんリスクはあります。しかし、戦いを長引かせても疲弊していくだけです。いつまでも防衛に徹するわけにはいきません」

せつ菜「守りも必要なので軍を出すわけにはいきませんし、敵に気づかれないためにも少数精鋭で挑みます」

せつ菜「いかがでしょうか?」
 
368: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:22:33.10 ID:EYzGZou+
「…なるほど。いい案だ」

果南「王様!?」

「私も攻める機会は伺っていた。このタイミングで勇者が訪れたことは好機かもしれん」

果南「その役は誰が…」

せつ菜「果南さんと千歌さん…お2人にお願いしたいと思います」

千歌「私たちに…?」

果南「…」

「果南、これを任せられるのはお前たちしかいない」

せつ菜「ここにはデルカダールの兵士たちも、戦闘員に名乗り出てくれた人たちもいます」

せつ菜「私や彼らだけじゃ守りは不安でしょうか?」

果南「…せつ菜、この砦の人たちのことは頼んだよ」

せつ菜「お任せください!」
 
369: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:26:16.56 ID:EYzGZou+
───

果南「ここはあの時千歌たちが逃げ出した、デルカダールの地下水路の出口だね」

千歌「そうだっけ?こんな場所だったかなぁ?」

千歌「あの時は逃げるのに必死で周り見る余裕なかったからね」

果南「私は後から千歌が悪魔の子って話を聞いて、耳を疑ったよ」

千歌「でも果南ちゃんは信じなかったんでしょ?」

果南「当たり前だよ。千歌が災厄をもたらすわけないもん」

果南「…あの時は私は何もできなかったけど、もう迷わない」

果南「千歌が世界を救う勇者なら…私は勇者を守る盾になる」

千歌「果南ちゃん…」

千歌「もう、チカも強くなったもん。守られるだけじゃないよ」
 
370: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:29:34.65 ID:EYzGZou+
千歌「ん、あれは…」

果南「デルカダールから魔物たちが出てく…」

果南「あっちはイシ…最後の砦の方だね」

千歌「村のみんな…大丈夫かな?」

果南「…王様やせつ菜たちに任せるしかないよ」

果南「私たちは早く魔物たちの頭を倒すだけ!」

千歌「うん」

果南「さ、水路からお城の方に潜入しよう」
 
371: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:32:28.52 ID:EYzGZou+
───

果南「やっぱりひどい状態…あんなに綺麗なデルカダール城だったのに」

千歌「階段が壊れて上のフロアに登れないね」

果南「うーん…大将がいるのは玉座の間ってのが王道なんだけど」

千歌「椅子の後ろに隠し階段とかあってその奥にいたりしないの?」

果南「あはは、物語じゃないんだから。デルカダールにはそんなのないよ」

果南「…いや、待てよ。そういえば」

千歌「やっぱりあるの?」

果南「昔ね、キッチンの食器棚に隠し通路があるって話を聞いたことがあるんだ」

果南「キッチンはこっちだよ」
 
372: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:34:32.87 ID:EYzGZou+
───

千歌「ほんとに隠し通路があったんだね」

千歌「ここは…誰かの部屋?」

果南「王様の部屋だね」

千歌「ってことは王様がこの通路使ってたってことだよね?」

果南「多分、緊急避難用の抜け道だと思う」

果南「まあ、王様は台所でつまみ食いもしてたって噂があるけど…」

千歌「え、あの人もそんなことするんだ…」

果南「ああ見えて、意外とおちゃめなところもあるんだよ」
 
373: (もんじゃ) 2021/12/15(水) 23:36:34.34 ID:EYzGZou+
果南「この通路の話は昔絵里から聞いたんだけどね…」

果南「絵里は何で…あんな裏切るようなことを…」

千歌「…果南ちゃんは絵里さんと仲良かったんだよね?」

果南「うん。私がデルカダールに仕えた時からいる…大事な友達で、ライバルだよ」

果南「2人でデルカダールを守っていこうって言ったのに…」

千歌「チカはよく知らないから悪い人にしか見えなかったけど…」

果南「王様がウルノーガに乗っ取られていたように、もしかして絵里も何か…」

果南「いや、今はこのお城にいる魔物を倒すことに集中しないとね」

果南「さ、ここから玉座の間はすぐだよ」
 
374: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:17:07.02 ID:raYLpRO8
果南「ここも天井がなくなっちゃってる…」

千歌「見て、あの椅子のところ…」

「ンフフフ…」

果南「誰っ!」

「我は魔王ウルノーガ様の六軍王が1人、死騎軍王ゾルデ」

「魔王様の望み通り、世界に闇をもたらそう」

果南「お前が、この辺りの魔物たちの親ボスだな!」

「いかにも。光を望む者よ、この世界にお前たちの存在はふさわしくない」

「我が始末してくれよう!」
 
375: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:18:42.36 ID:raYLpRO8
千歌「たぁっ」シュ

「フン」ガキ

果南「ていっ」

「ハッ」ガン

果南「二刀流…ガードが堅いね」

果南「だったら…」チラ

千歌(うん、何かの合図…?)

果南「これでどう?渾身斬り!」ガキン

「この程度の攻撃、効かぬわ!」

千歌(果南ちゃんのあの攻撃は両手を使わなきゃガードしきれない…)

千歌(つまりそのすきに…っ)

千歌「ていやぁっ!」ザシュ

「ぐっ…先の一撃は囮か…」

果南「ナイス千歌!」

果南「さあ、腕1本取ったよ」
 
376: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:20:18.26 ID:raYLpRO8
「ンフフ…ここまでたどり着くだけのことはある。人間にしてはやるようだ」

「ではこれなら…パープルシャドウ!」

果南「増えた!?」

千歌「ずるくない!?」

「我らが連携技を食らうがよい」

「冥界のいちげき!」

果南「危ない、千歌っ!」バッ

果南「ぐっ…!」

千歌「果南ちゃん!」

果南「平…気、だよ」

果南「ふう…あらかじめスクルトかけておいてよかったー…」
 
377: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:23:22.94 ID:raYLpRO8
千歌「どうしよう…」

果南「これは…背水の覚悟で行くしかなさそうだね」

千歌「防御を捨てて、攻撃一本…」

果南「リスクはあるけど、正攻法じゃ難しいよ」

千歌「そうだね。やろう」

果南「私たちの連携も見せてやる」

果南「一気に決めるよ!」

千歌「うん!」
 
378: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:26:29.75 ID:raYLpRO8
果南「フリーズブレード!」

千歌「…からのっ」

千歌「アイスストーム!」ズバン

「ぐぁぁ!」

果南「よしっ」

「ンフ、ンフフ…我の闇がなぜ光に、負け…」バタン

千歌「勝った!」

コロン

果南「何か落ちたよ?」

千歌「…パープルオーブ」

果南「宝玉?」

千歌「命の大樹に行くのに必要だったものなんだ」

千歌「何で、あの魔物が…」

果南「そういえば魔王の六軍王って言ってたよね?…だとすると」

千歌「オーブも全部で6個…ウルノーガの他にまだ5人もいるってこと?」

果南「先は長そうだね…」

千歌「はぁ…」

果南「さあ、ボスは倒したけど村も心配だ。急いで戻ろう!」
 
379: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:30:20.88 ID:raYLpRO8
───

せつ菜「お帰りなさい、果南さん、千歌さん!」

エマ「2人ともすごいよ!」

果南「せつ菜」

千歌「エマちゃんも。待っててくれたの?」

せつ菜「砦を攻めていた魔物が一斉に引いていったので、果南さんたちがやってくれたとすぐわかりました!」

エマ「もう2人が帰ってくるのが待ちきれなくて」

せつ菜「さあこちらへ。みなさん待ってますよ!」

エマ「今日はみんなでパーティだよ♪」

せつ菜「私も料理のお手伝いをしました!」

果南「え…」

エマ「大丈夫だよ、私が見てたから」
 
380: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:34:29.24 ID:raYLpRO8
───

果南「…王様」

「果南か…昨夜は眠れたか?」

果南「…ええまあ」

「はは、その様子じゃ寝られなかったようだな。まあ無理もない、あの騒ぎだ」

果南「1つ、お願いがあります」

「言わずともわかっている」

「世界はいまだウルノーガの脅威にさらされている」

「デルカダールの魔物がいなくなった今、この砦の守りは我らだけで十分だ」

「その力…存分に世界の為に役立ててくれ」

果南「はい!」

「それから、これを授けよう」

果南「これは…デルカダールの盾!?」

果南「国宝ですよね?いいんですか?」

「これは王国最強の騎士が持つ物。今のお前こそふさわしい」

果南「ありがとうございます」
 
381: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:37:30.71 ID:raYLpRO8
果南「という訳で千歌、魔王ウルノーガを倒すのに私も一緒に行くけどいいかな?」

千歌「もちろん!チカの方からお願いしたいくらいだよ!」

エマ「千歌ちゃん、果南ちゃん。やっぱり行っちゃうんだね」

千歌「うん。私は勇者だから」

千歌「エマちゃんも一緒に行く?」

エマ「…ううん。私は戦いは苦手だもの。行っても足手まといになっちゃう」

エマ「だからここで祈ってるね」

エマ「世界を…お願い」

千歌「任せて!」

果南「せつ菜、ここの守りは頼んだよ」

せつ菜「はい、果南さんの代わりに精一杯お守りします!」
 
382: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 00:40:35.14 ID:raYLpRO8
千歌「じゃあ2人で出発!」

果南「まずどこに向かうの?」

千歌「…どこだろう?」

果南「決まってないのに突っ走るのは相変わらずだねぇ」

千歌「えっと、やることは…はぐれちゃった仲間を探すことと、ウルノーガを倒す方法を探すこと」

果南「どっちもどこで何をすればいいか分からないんだよね」

千歌「うん…」

せつ菜「でしたらドゥルダ郷に行ってはいかがでしょうか?」

果南「ドゥルダってドゥーランダ山にある?」

せつ菜「はい、命の大樹の北のゼーランダと南のドゥーランダ。そしてその山にあるラムダとドゥルダは勇者ゆかりの地と聞いたことがあります」

せつ菜「ドゥルダならばここからそう遠くはありません」

せつ菜「ただ、デルカダールがこのありさまです…さらに命の大樹に近いあそこが、落下により今どうなっているかはわかりませんが…」

千歌「そういえば、ラムダで会った子がドゥルダの人って言ってたような…」

千歌「よし、じゃあドゥルダに行ってみよう!」

───
──

 
384: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:06:41.41 ID:NIj4ZwcA
千歌「はぁ…ドゥルダもラムダみたいに結構山の上にあるんだね…」

果南「デルカダールと違って建物とかが傷ついた様子もないね…ここは命の大樹が落ちた影響を受けてないのかな?」

千歌「ほんとだ」

果南「デルカダールよりも大樹に近かったはずなのに…」

花丸「勇者様!」

千歌「あ、花丸ちゃん…だっけ?」

花丸「命の大樹が落ちた時から心配していました。無事でよかったずら…」

千歌「花丸ちゃんもあの後ドゥルダに帰れたみたいだね」
 
385: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:08:54.29 ID:NIj4ZwcA
果南「聞いていい?ドゥルダ郷はどうやって命の大樹が落ちた衝撃から逃れたの?」

果南「建物がすごく丈夫とか?」

花丸「それは…大師である希さんが結界を張って守ってくれました」

果南「へぇ~…そんなすごい人がいるんだ。会ってみたいな」

花丸「…残念ながら、希さんは結界で力を使い果たし、そのまま亡くなってしまいました」

果南「あ…そうなんだ…」

果南「ごめんね。無神経なこと言っちゃって」

花丸「…いえ」
 
386: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:11:57.44 ID:NIj4ZwcA
花丸「ドゥルダに来たということは、もしかして梨子ちゃんを?」

千歌「梨子ちゃんがいるの!?」

花丸「ちょっと前に、希さんに会いにやってきたずら…」

果南「でも希さんはもう亡くなってるんでしょ?」

花丸「はい、なので…」

果南「じゃあすれ違っちゃったかな?」

千歌「梨子ちゃんはどこに行ったか知ってる?」

花丸「…こっちに来て下さい」
 
387: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:16:48.71 ID:NIj4ZwcA
果南「これは…」

千歌「梨子ちゃん!?」

千歌「寝てるだけ…だよね?」

花丸「うん、生きてるずら…まだ、今のところは…」

果南「どういうこと?」

花丸「梨子ちゃんの魂は今冥府に行ってるの」

果南「冥府?」

花丸「生と死の挟間。亡くなった人の魂が行く所です」

果南「ということは梨子ちゃんは死にそうな状態ってこと?」

花丸「このままでは…」

千歌「だれが…こんなことを」

花丸「マルが…梨子ちゃんを冥府に送ったずら」

千歌「え、どういうこと?」

花丸「この場所は冥府に最も近い所と言われています。郷に伝わる分霊の儀式で魂だけ冥府に送ることができるの」

果南「何でそんなことを…」
 
388: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:21:15.25 ID:NIj4ZwcA
花丸「梨子ちゃんはここに修行のために来たの」

花丸「だけど希さんはすでに亡くなっていて…」

花丸「それを聞いたら、直接会うために冥府に行くって言いだしたの…」

果南「無茶するなぁ…」

千歌「儀式ってことは、戻ってこられるんだよね?」

花丸「多分…冥府から戻ってきた例は過去にもあります」

花丸「ただ、時間が経ちすぎている…」

花丸「魂の無い肉体は衰弱していくだけ。このままだと魂が帰る肉体がなくなって永遠に戻ってこれなくなるずら…」

千歌「そんな…」
 
389: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:24:00.05 ID:NIj4ZwcA
千歌「冥府で何が起こってるの?」

花丸「マルにはわかりません…」

果南「強制的に呼び戻せないの?」

花丸「そういうのは…」

千歌「じゃあ私も冥府に行く」

千歌「梨子ちゃんが行けたんなら、チカも行けるよね?」

花丸「戻ってこれなくなるかもしれない。それでもいいんですか?」

千歌「大丈夫。梨子ちゃんと2人で戻ってくるから!」

果南「はぁ…根拠のない自信だね」

花丸「では…ドゥ~ラリホー…」

果南「え、なにその変な踊りは」

花丸「儀式です。集中するので黙ってください」

花丸「ドゥ~ラリホー…」
 
390: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:27:57.27 ID:NIj4ZwcA
───

千歌「ここが…冥府?」

千歌「空が…真っ暗だ」

希「君も来たんだね」

千歌「誰!?」

希「おっと、驚かせちゃったかな。うちは希だよ」

千歌「希…ってドゥルダの大師の希さん?」

希「そうそう。ここに来たってことは梨子ちゃんを迎えに来たのかな?勇者ちゃん」

千歌「何でチカのことを…」

希「カードがうちに教えてくれたからね」

希「こっちに来てごらん」
 
391: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:33:49.93 ID:NIj4ZwcA
希「見てみ」

千歌「梨子ちゃん…!」

希「あの子はここでずっと修行をしてたんよ」

希「魔王ウルノーガに対抗できる奥義を身に着けるために」

千歌「奥義…」

希「勇者ツバサの仲間、魔法使い英玲奈が編み出したと言われる、奥義グランドクロスを!」

千歌「すごそう!」

希「タイムリミットもだいぶ近いからどうかなとも思ったんだけどね、もう大丈夫」

希「さあ…完成や」
 
392: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:36:54.45 ID:NIj4ZwcA
梨子「…はぁっ!」

シュイーン

梨子「できた…」

梨子「希さん、できました!」

希「うんうん。ちゃんと見てたよ」

千歌「梨子ちゃんすごいよ!」

梨子「って千歌ちゃん!?」

梨子「何でここに…」

希「梨子ちゃんのことが心配で追ってきたんだよ」

梨子「そうなんだ…ごめんね、心配かけて」

梨子「でももう大丈夫。この技でウルノーガとも戦って見せるから」

千歌「よーし、元の世界に帰ろう」
 
393: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:40:29.71 ID:NIj4ZwcA
希「ちょい待ち」

梨子「希さん、ありがとうございました。まだ聞きたいこともありますが…私の体が持たないんですよね?」

希「まあ、一刻を争うって程でもないよ」

希「ついでだから千歌ちゃんにも修行をつけてあげようと思ってね」

千歌「私も?」

希「そう、君なら覇王斬を身に着けられる」

千歌「覇王斬?」

希「勇者ツバサが編み出した、グランドクロスと並ぶ奥義や」

希「なに、そんな時間はかからないよ。勇者のチカラを継ぐ千歌ちゃんならすぐだろうね」

千歌「でも、勇者のチカラはウルノーガに取られて…」

希「それはどうだろうね」

千歌「え?」

希「チカラなんて見えないし、触れるものじゃないよ」

希「まあ、やってみなさい」
 
394: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:43:37.36 ID:NIj4ZwcA
希「覇王斬は魔力を刃の形にして放つ技」

希「手を前に出して、魔力を集中させてイメージしな」

千歌「魔力を…刃に…」シュッ

千歌「できた!?」

希「何言ってるの。そんなんじゃスライムくらいしか倒せへんよ」

千歌「そんなぁ…」

希「だけど、いきなりそこまで形になるとはね。やっぱり思った通りだ」

希「後は実戦でやってみようかね」

梨子「ということは希さんと…?」

希「そ。うちに向かって撃ってみ」

千歌「でも危ないんじゃ…」

希「ほー…うちも舐められたものだね」

希「そんなに自信があるなら、外した時には…」

千歌「な、なんですかその手は…」

梨子「あれは…わしわしの構え!気を付けて千歌ちゃん!」
 
395: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:46:07.00 ID:NIj4ZwcA
───

希「ふむ…だいぶ様になったね」

千歌「わしわし怖い…」

梨子「大丈夫?」

希「ま、ひとまず完了ってとこだね」

千歌「これでウルノーガにも勝てるんですね?」

希「それはわからんよ」

希「グランドクロスもそうだけど、奥義の強さは自身の強さ」

希「自らの力を鍛えれば技はどんどん強くなる。後は君たち次第や」

千歌「自らの力…か」
 
396: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:48:28.71 ID:NIj4ZwcA
希「さて最後に…と言いたいところなんだけど、悠長にしてられないみたいだね」

千歌「あれは…!」

梨子「空間が割れて…」

希「どうやらここにもウルノーガの魔の手が迫ってるようだね」

千歌「ど、どうすれば…」

希「ぶっつけ本番。2人の力、冥途の土産に見せてもらおうか」

希「チャンスは1回…グランドクロスに覇王斬を合わせるんや」

梨子「グランドクロス!」

千歌「覇王斬!」

希「そう、それこそ…グランドネビュラ!」
 
397: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:52:19.84 ID:NIj4ZwcA
───

果南「千歌?千歌!」

千歌「あれ…果南、ちゃん?」

果南「ちゃんと…戻ってきたんだね」

千歌「こっちの世界…」

梨子「う…ん…」

花丸「梨子ちゃんも意識が戻ったずら!」

果南「そうか、よかった…」

千歌「希さん…は?」

花丸「…希さんにも会えたんだね」

花丸「あの人は…こちらに戻っては来れないでしょう」

千歌「そっか…」
 
398: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:55:55.59 ID:NIj4ZwcA
千歌「んしょ…っと」クラ

千歌「あれ、体が重い…」

花丸「魂が抜けていた間、体が弱ってたからです」

果南「少し休んでなよ」

千歌「うん…」

花丸「梨子ちゃんの方はかなり衰弱しているので、早く安静に出来るところに運ばないと」

花丸「それから栄養と睡眠と…」

果南「手伝うよ」
 
399: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 21:59:06.50 ID:NIj4ZwcA
千歌(チカと梨子ちゃんのグランドネビュラの後…)

千歌(希さんはどうなったんだろう…)

千歌(あれでウルノーガを倒せちゃったり…ってそんなうまくいかないよね)

千歌(もしかして攻撃が通じなくて希さんは…)

千歌(そもそも冥府にいる人がどうなったかって心配するところなのかな?)

千歌(死んでる人がさらに死んじゃったらどうなるの?)

千歌(あーもう、考えてもわかんない)

千歌(とりあえずチカにできることを1こずつやるだけだ!)
 
400: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:02:09.51 ID:NIj4ZwcA
───

梨子「心配をおかけしました」

花丸「回復できてよかったずら」

果南「千歌の仲間が見つかったのはよかったけど、これからどうする?」

果南「ドゥルダなら何かわかるかもしれないって思ったんだけど…」

花丸「こちらでも調べたんだけど、どうやら勇者ツバサさんは神の乗り物に乗って空を飛んで邪神とたたかったらしいです」

果南「神の乗り物?」

花丸「詳しくはわからないけど、それがあればもしかして天空魔城に行ってウルノーガと対峙できるかも」

千歌「空を飛べる乗り物があるの!?すごーい!」

果南「だけどそんなのどこに…」

花丸「そこまでは…本には何も…」

果南「うーん…」

梨子「ここで分からないなら、もう一度聖地ラムダに行ってみるのはどう?」

千歌「ラムダ…ってクレイモランから行くんだっけ?」

梨子「うん、クレイモランに行くには船で…ああ…」

果南「今は海の魔物も狂暴化してるからどこも動いてないよね…」

果南「とりあえず陸路で行けるところに行ってみるしかないか」

千歌「そうだね」
 
401: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:06:33.17 ID:NIj4ZwcA
花丸「あ、あの…」

花丸「マル…」

梨子「あのね、修行中に希さんに言われたの」

梨子「勇者ともう一度旅に出ることになったら、マルちゃんも連れてってほしいって」

花丸「え?」

梨子「回復魔法に長けているから役に立つだろう、ってね」

梨子「どうかな?」

花丸「うん、マルも勇者様や梨子ちゃんと一緒に行きたいです!」

梨子「で、いいかな、千歌ちゃん?」

千歌「もちろん!仲間が増えるのは歓迎だよ!」

千歌「よろしくね、花丸ちゃん!」

───
──

 
405: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 20:59:24.21 ID:OJD0guFn
鞠莉「あら千歌じゃない!梨子も!」

千歌「鞠莉ちゃん!」

鞠莉「こんなところで合えるなんて」

鞠莉「よかったわ~無事でいてくれて」ギュー

梨子「鞠莉ちゃんも元気そうで…」

鞠莉「そっちの子は…確かラムダであったっけ?」

花丸「花丸です。よろしくお願いします」

鞠莉「…あと果南」

鞠莉「今度はちゃんと千歌の仲間になったってこと?」

果南「まあね。敵が誰かはっきりしたし…」

果南「…って、え?」
 
406: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:01:18.97 ID:OJD0guFn
果南「もしかして鞠莉ってあの鞠莉!?」

鞠莉「あら、気づいてなかったの?」

千歌「あの鞠莉ってどの鞠莉?」

果南「デルカダールの兵士がソルティコで修行するって話、前したじゃん?」

千歌「んー…確か昔言ってたね。騎士道を叩きこまれたって」

果南「その時の修行先の家の子が鞠莉なんだ」

千歌「え、そうなの!?」

果南「あの時とはだいぶ雰囲気違うけど…確かにあの家の鞠莉だね」

果南「これまで千歌の仲間をあんまり近くで見てなかったから気づかなかった…」

鞠莉「もう、マリーに気づかないなんてにぶちんなんだから」
 
407: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:03:50.55 ID:OJD0guFn
千歌「果南ちゃんの修行先の家の子ってことは、鞠莉ちゃんって騎士の家の子なの!?」

鞠莉「…まあ、そうね」

千歌「あ、そういえばサマディーでも…にこ王女に騎士道のこと言ってたっけ…」

千歌「そういうことだったんだ」

梨子「剣の上手さにも理由があったんだね」

果南「昔はもっとおとなしい子だったんだけど…変わったね」

果南「一体何があったの?」

鞠莉「…」
 
408: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:06:00.48 ID:OJD0guFn
すみれ「あの~…」

千歌「その子たちは?」

鞠莉「あ、そうそう。紹介するね」

鞠莉「この子たちはマリーの…弟子とでも言えばいいかしらね?」

梨子「弟子?」

可可「はいです!」

千砂都「私たちは鞠莉お姉さまと一緒に世界を元気づける旅をしているんです」

鞠莉「世界に笑顔を取り戻すために、あちこちでライブツアーをしてるの」
 
409: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:08:23.20 ID:OJD0guFn
恋「それより、急がなくていいのですか?」

鞠莉「そうだわ!大変なんだった」

千歌「何かあったの?」

鞠莉「ちょうどよかった。ちょっと魔物退治手伝ってくれない?」

千歌「魔物?悪さしてるの?」

鞠莉「そこの村の人たちをだまして、大切なものを奪い取ってった悪―い魔物よ」

果南「さらわれた人がいるってこと?」

鞠莉「そう。そんなの黙って見てられないじゃない?」

千歌「うん。その魔物はどこにいるの?」
 
410: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:11:20.08 ID:OJD0guFn
───

「ホッホッホ。このフールフール様の前にノコノコ現れるおバカさんがいようとは…」

鞠莉「村の人たちを解放しなさい!」

「私の戦闘力は…そう、53万といったところですかねぇ」

千歌「何の単位?」

果南「さあ?」

「その私に歯向かおうなんてバカげた勇気に免じて取引をしましょうか」

鞠莉「取引?」

「あなたたちの一番大切なものをくれるなら、村の人たちを解放しましょう」

かのん「そんなの嘘だ!」

鞠莉「…いいわ」

かのん「お姉さま?」

鞠莉「じゃあ…私の持ってる、コレをあげる」

「ホッホ。物分かりがいいですね」
 
411: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:14:21.24 ID:OJD0guFn
「ふんふん、鈍い色合いに不規則な形状…」

「…ってただの石ころじゃないですかぁ!」

鞠莉「ふん、あんたなんてその石ころがお似合いよ」

「私を怒らせましたね…」

「初めてですよ…私をここまでコケにしてくれたおバカさんは…」

「これでも食らいなさい!」シュイン

梨子「これは…マホトーン!?」

花丸「魔法が使えなくなったずら!」

果南「2人は一旦下がって。まずは私たちで」

「あなたたちの大切なその命、力ずくで奪ってあげましょう」
 
412: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:17:05.31 ID:OJD0guFn
───

鞠莉「メラハリケーン!」

「う、うそだ…この私が、負けるなんて…」バタ

鞠莉「チートな手を使うやつなんてこんなもんよ」

かのん「やっぱりお姉さまは強いなぁ」

すみれ「さらわれた人たちは?」

千砂都「みんな無事みたいだよ」

鞠莉「よかった…」

恋「みなさん、村にお送りします」

可可「そしてその後は私たちのライブです!」
 
413: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:18:57.72 ID:OJD0guFn
───

千歌「鞠莉ちゃんたちのライブすごかったね!」

梨子「あれならみんな元気になれそう」

花丸「ああいう活動もあるんだねー」

鞠莉「あなたは、やっぱりウルノーガを倒しに行くの?」

千歌「うん。世界に光を取り戻すために」

千歌「私が…やらなきゃいけないことだから」

千歌「鞠莉ちゃんは?このままアイドル活動?」

鞠莉「千歌たちに着いていくに決まってるじゃない!もう、私だけ仲間外れにしないでよ」

果南「あの子たちも一緒に?」

鞠莉「ううん。連れていけないわ」

鞠莉「あの子たちはあまり戦いは得意じゃないもの」
 
414: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:21:26.78 ID:OJD0guFn
鞠莉「という訳でライブツアーは一旦中断します!」

可可「そんな…!」

鞠莉「と言っても魔王をやっつけるまでの間ね。終わったらまた戻ってくるから」

恋「私たちを連れて行ってはいただけないのでしょうか」

鞠莉「これから先はもう守ってあげられる余裕がないと思うの」

千砂都「私たちはダーハルーネに戻ることになるんですか?」

鞠莉「それでもいいけど…私の顔がきくソルティコに来ない?」

花丸「もしかして鞠莉ちゃんのご両親のところ?」

鞠莉「うん。あそこなら5人くらい面倒見れるだろうし」

すみれ「いいんですかお姉さま?」

鞠莉「あなたたちがよければ、だけどね」

かのん「ぜひ、お世話になります!」
 
415: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:24:58.63 ID:OJD0guFn
───

果南「ソルティコって私好きなんだよね。海が近いから」

千歌「潮風が気持ちいい~」

鞠莉「はぁ…」

花丸「緊張してるの?」

鞠莉「…まあね」

花丸「自分の家に帰るんだよね?」

鞠莉「私ね、親と喧嘩して家出てきたんだ…」

鞠莉「自分の道は自分で決める!…って」

果南「どうやってアイドルになったかと思ったら、そんな強引な方法で…」

鞠莉「だから親に顔合わせづらくて…ソルティコに来るのも避けてきたし」
 
416: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:28:32.86 ID:OJD0guFn
梨子「…でも」

梨子「鞠莉ちゃんはまだ帰る家がある…」

鞠莉「…!」

鞠莉「そう、よね…梨子はもう…」

鞠莉「親に会いたくてももう会えない人もいる…」

鞠莉「それと比べたら、私はなんて贅沢な悩みなんだろうね」

鞠莉「ごめんね、梨子」

鞠莉「よし、行ってくるわ!」
 
417: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:31:45.43 ID:OJD0guFn
「はい、どちらさまで…」

鞠莉「あ…」

「鞠莉…」

鞠莉「ママ…ただ、いま」

「あなたはっ…」

鞠莉「…っ」ビク

「よく…生きてて…」ギュウ

鞠莉「ママ…?」

「家を出てから連絡もなく…」

「ずっと…心配してたのよ…」

鞠莉「…ごめんなさい」

「パパにも会ってあげなさい」

鞠莉「うん…」
 
418: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:34:04.94 ID:OJD0guFn
「…鞠莉か」

鞠莉「パパ…」

「鞠莉が出て行ってから、どのくらいになるかな」

「自分の道は自分で決める。世界中の人を笑顔にするために生きると言って…騎士を捨て、アイドルになった」

鞠莉「…」

「それで?世界中の人を笑顔に出来たのか?」

鞠莉「それは…」

「では、諦めるのか?」

鞠莉「違う!」

鞠莉「私の夢は変わらない!」
 
419: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:37:36.26 ID:OJD0guFn
鞠莉「でもね。魔王がいるこの世界じゃみんな心から笑えない」

鞠莉「だから…私は魔王を倒してくる!」

「魔王を倒す…か。大きく出たものだな」

鞠莉「絶対にやって見せる。ここにいる千歌たちとね」

「…それでこそ我が娘だ」

鞠莉「パパ…」

「騎士たるもの、信念を決して曲げない」

「騎士にならなくても、騎士道は忘れていないようだな」

鞠莉「うん。私、行ってくる!」
 
420: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:39:24.56 ID:OJD0guFn
鞠莉「それと、1つパパにお願いがあるの」

「何だ?」

鞠莉「私が帰ってくるまで、この子たちをここに住ませてほしいの」

鞠莉「もちろん雑用でも何でも押し付けちゃっていいわよ」

恋「厚かましいお願いだとは思いますが…」

「ふむ…まあいいだろう」

鞠莉「ほんと?ありがとうパパ♪」

かのん「ありがとうございます!」

鞠莉「よかった~」
 
421: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:42:25.99 ID:OJD0guFn
果南「親子の仲も解決ってわけか」

鞠莉「まあね」

鞠莉「意外と…簡単だったわ」

花丸「よかったずら…」

鞠莉「さて、大丈夫だと思うけど、パパたちに迷惑はかけないようにね」

すみれ「わかってますって」

可可「マリーお姉さま、行ってらっしゃい」

千砂都「魔王を倒して帰ってくるのを待ってます」

鞠莉「まかせて!」
 
422: (もんじゃ) 2021/12/17(金) 21:45:37.71 ID:OJD0guFn
千歌「鞠莉ちゃんの船も無事でよかったね!」

梨子「うん、これでいろんなところに行けるね」

果南「じゃあそれでラムダに向かう?」

花陽「あの…千歌さんですよね?」

千歌「え…あ、花陽ちゃん!」

花陽「実は少し気になる話を聞いたんです」

花陽「はい、バンデルフォン地方のある宿屋で不思議な夢が見れるって噂で」

梨子「不思議な夢?」

花陽「なんでも、泊まった人みんなが同じ夢を見るんだとか」

果南「どんな内容なの?」

花陽「鎧を着た騎士がいたってくらいしか聞いてないけど…あんまりいい内容じゃないみたいですね」

花丸「みんな同じ夢ってことは何かの魔法…?あるいは強い思いが夢を見させるって話しを聞いたことはあるけど…」

花丸「一体誰が…」

果南「気になるね…先にそっちに行ってみようか?」

千歌「そうだね。ウルノーガが関係してるかもしれないし」

鞠莉「情報ありがとうね」

花陽「はい、お気をつけて」

───
──

 
424: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 12:48:20.06 ID:3AcboqmI
梨子「ユグノア城は…相変わらずボロボロだね」

鞠莉「むしろ命の大樹に近い分、壊れ方がひどくなってるわよ」

果南「宿屋の夢で見た騎士の鎧の紋章がユグノアのものだったからここに来たけど…」

果南「前に来たときは千歌たち以外に人なんていなかったよね」

果南「生き残ったユグノアの兵士が誰か戻ってきたりとかするのかな?」

花丸「あの人…くちおしい…って言ってたよね?」

花丸「もしかしたらこの世に未練のある怨念とかだったりして…」

千歌「怨念がおんねん…ってこと?」

果南「そういうのは遠慮したいな…」

梨子「とりあえず誰かいないか探してみようよ」
 
425: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 12:50:47.44 ID:3AcboqmI
───

果南「ま、誰もいないよね…」

鞠莉「モンスターもいるし、普通の人はわざわざ廃城には来ないよね」

梨子「まだどこか調べてないところは…」

花丸「梨子ちゃんやけに気にしてるね?」

花丸「ユグノアの人のことはやっぱり気になる?」

梨子「うん。あの人が生きていたとしたら助けてあげたいし、もし幽霊とかだったとしても成仏させてあげたいの」

果南「それはわかるけど…」

鞠莉「問題はどこにいるかだよねぇ」
 
426: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 12:53:59.18 ID:3AcboqmI
千歌「たあっ!」ドン

梨子「千歌ちゃん!?急に何を…」

千歌「やっぱり!」

果南「階段?がれきで塞がれてたのか…」

果南「言ってくれれば手伝ったのに」

花丸「お城の地下に行くのかな?」

鞠莉「この先、どこに繋がってるかわかる?」

梨子「分からないけど…お城のどこかに入れるかもしれない」
 
427: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 12:58:50.52 ID:3AcboqmI
───

千歌「あっ、夢で見た鎧の人だ!」

梨子「ほんとにいたんだ…」

果南「こんなところに1人で…」

花丸「あなたは…」

「くちおしや…」

千歌「ひっ!」

梨子「顔が…無い」

千歌(兜の中は暗闇…)

果南「やっぱり幽霊!?」
 
428: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:04:12.82 ID:3AcboqmI
「よくも…家族を…」

花丸「強い怨念を感じるずら…」

果南「襲い掛かってきたり…?」

千歌「ん…?」

千歌(この人…懐かしい感じがする…)

鞠莉「ちょっと、うかつに近づいたら…」

千歌(あれ…体が…)

梨子「千歌ちゃん!?」
 
429: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:07:56.59 ID:3AcboqmI
───

千歌「ここは…」

千歌(お城…?)

千歌(何でこんなところに…果南ちゃんたちは?)

千歌(確か鎧の人の顔の闇に吸い込まれたような…)

千歌(誰かいる…冠つけてるし、えらい人?あの人に…)

千歌「あのー…」

「…」

千歌(あれ、気づかない?)

千歌「もしもーし?」

千歌「私の声、聞こえてますかー?」スカ

千歌(すり抜けた!?)

千歌(この人に触れないし、他の物にも触れない…)

千歌(もしかして…チカ幽霊になっちゃった!?)

「王様!お生まれになりました!」

「そ、そうか…すぐに行く」

千歌(誰か子供が生まれたのかな?)
 
430: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:11:02.99 ID:3AcboqmI
「おうおう、元気に泣いて…」

「君もよく頑張ってくれたね」

千歌(ついてきちゃったけど、見ちゃっていいものなのかな…)

千歌(まあ、幽霊みたいな状態だからしょうがないよね?)

千歌(この子が今生まれたばかりの子かあ…可愛いなぁ)

「早速だが名前を考えているんだ…トンヌラというのはどうだろうか?」

千歌(え…?)

「まあ、素敵な名前。元気で賢そうで…」

千歌(ええ…)

「でも、私も考えていたのです」

「千歌。というのはどうかしら?」

千歌「千歌?」

「うーむ…千歌か。どうもパッとしない名だな…」

「しかし、君が気に入っているならその名前にしよう」

千歌(千歌って…)
 
431: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:14:48.26 ID:3AcboqmI
「よし、この子の名は千歌だ!この国、ユグノアの王女として健やかに育ってくれよ」

千歌(ユグノア!?ここはユグノアなの?)

千歌(ユグノアは滅んじゃったはず…どういうこと?)

千歌(この赤ちゃんの名前が千歌…)

千歌(あ、この子の左手…勇者の紋章だ!)

千歌(ってことは…これ、私!?)

千歌(もしかして…ここはチカが生まれた時、17年前のユグノアってこと?)

千歌(あの2人がほんとの親…になるの?)

千歌(似てる…のかな?よくわかんないや…)

千歌(というか私はトンヌラって名前になってたかもしれないってこと!?)

千歌(お母さん、千歌にしてくれてありがとう…)
 
432: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:19:32.00 ID:3AcboqmI
千歌(なんでこんなことになってるのかはわからないけど)

千歌(ここが17年前のユグノアだとしたら、この後…)

千歌(確か梨子ちゃんが言ってた話だと、この国は魔物に襲われて私の両親が…だよね)

千歌(助けなきゃ。みんなを)

千歌(魔物が来るってことを教えて…)

千歌(ってどうやって!?)

千歌(今の私は触ることも話すこともできない…)

千歌(見てるだけしかできないの…?)
 
433: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:22:25.04 ID:3AcboqmI
───

「♪~」

千歌(ん…?)

「千歌はよく寝てる…いつ聞いても君の子守歌は見事だね」

「この子守歌は昔からユグノアに伝わるものなの。もし眠りの魔法と組み合わせることができたら誰でも簡単に眠らせられちゃうかもね」

千歌(なんか時間飛んだ?場所もいつの間にか違うし…)

「やはり…千歌は勇者だったか」

「ええ。この紋章は間違いないと…」

「勇者ならばユグノアだけの問題ではない。他の国の王にも知らせなければ」

「この子はこれから…」

バタン

「王様!魔物の襲撃です!」

「何だと!」

千歌(来た!?)

「勇者を狙っているようです!すでに城内に侵入を許してしまいました!王様はお逃げください!」
 
434: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:27:10.54 ID:3AcboqmI
千歌(どうしよう…)

千歌(魔物に攻撃もできない…)

千歌(ただついていくだけ)

「ここは非常用通路だ。魔物に見つかる前に一旦城から離れよう」

千歌(お父さんの鎧…あの騎士とおんなじ…)

千歌(やっぱりあの騎士は…)

「逃がさんぞ…勇者よ」

「誰だ!」

千歌(あれは…ウルノーガ!?)

「ここは私が食い止める。君たちは先に!」

千歌(このっ、チカの手で倒して…)

千歌(やっぱり触れない…!)

「無駄なあがきを…」

「かはっ…」

千歌「お父さんっ!」

「きゃああっ」

千歌「お母さん!」

バシャン

「勇者は川に落ちたか…この流れだ、どうせ助からん」

千歌(守れなかった…チカは、何もできない…)
 
435: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:30:06.50 ID:3AcboqmI
───

千歌(ここは…?)

「ぐふふ…うまい、うまい…」

千歌「魔物!?」

「ここまで入ってくるものがいるとは…」

「我が名はバクーモス。絶望を食らうもの」

千歌「その人は…!」

千歌(さっきの騎士…そして私のお父さん…)

「家族をなくし、国をなくし、この者の絶望は極上フルコースだ」

「永遠にあの時の悪夢を見せて絶望させ、いくらでも食べられる」

千歌「さっきのは過去の記憶ってこと?」

千歌「ひどい…」

「だが、ついでだ…お前の絶望もいただくとしよう」

千歌「ああっ!」
 
436: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:33:04.61 ID:3AcboqmI
千歌(頭に浮かぶのは、あの時。命の大樹が落ちた日)

千歌(ウルノーガに勇者のチカラを取られて、)

千歌(私は勇者なのに…守れなかった…)

千歌(無力…)

「勇者のチカラは決して消えない」

千歌(…誰の声?)

千歌(そういえば希さんもそんなようなこと言ってったっけ…)

千歌(まだ私の中に残っているなら…チカラをちょうだい!)

ピカー

「な、なんだこの光は…」
 
437: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:36:22.25 ID:3AcboqmI
果南「千歌!」

梨子「戻ってきた…!急に消えちゃったから心配したんだよ?」

千歌「果南ちゃん…梨子ちゃん…ちゃんと触れる!」

梨子「どういうこと?」

「ぐ…忌々しい光め…」

花丸「魔物も一緒に出てきたよ!?」

千歌「あいつが原因なんだ!」

果南「だったら倒しちゃえばいいよね!」

「こうなったら…お前たちまとめてオードブルにしてやる」
 
438: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:38:27.65 ID:3AcboqmI
───

千歌「梨子ちゃん、行くよっ」

梨子「うん!」

千歌「グランドネビュラ!」シュイン

「ぐあぁぁ!」バタ

鞠莉「おー…千歌と梨子のニュースキル、すごいわね!」

千歌「でしょー!」

花丸「あ、鎧の人の顔が…」

果南「ちゃんと見えるようになった…」
 
439: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:40:48.98 ID:3AcboqmI
「君は…」

千歌「…」

「そんな…まさか…」

「千歌…なのか?」

千歌「そう…だよ」

「そうか…生きていたのか…」

千歌「うん…」

「こんなに…大きくなって…」

「わからないだろうけど、私は君の父だ…」

千歌「ううん…わかるよ」

「そうか…」

「悪夢から解放してくれて…ありがとう…」スッ

千歌「あ…っ」

梨子「消えた…」
 
440: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 13:46:13.06 ID:3AcboqmI
鞠莉「つまり、あの人は元ユグノアの王様で、千歌のほんとの親ってことなのね?」

千歌「うん…」

果南「あの魔物によってずっと悪夢を見させ続けられてたと…」

果南「ひどいことするもんだね」

花丸「でも、無事に…成仏できたみたいだね…」

梨子「よかった…のかな」

鞠莉「千歌としてはせっかく会えたのにまた別れることになっちゃうけど…」

花丸「亡くなった人の魂が残り続けると、怨霊になっちゃうこともあるから」

千歌「うん…これでいいんだと思う」

千歌「あんまり実感ないけど…本当の両親に会えてよかったよ…」

───
──

 
441: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:31:52.10 ID:3AcboqmI
鞠莉「な、何で町の中に魔物が…」

「ようこそ、グロッタの町へ」

果南「…っ」バッ

「おっと…争いはだれも望みません。ぜひ、この町自慢のカジノでお楽しみください」

千歌「カジノ…?」

花丸「カジノって、お金をかけて遊ぶところだよね?」

梨子「どういうこと?ここは闘技場が売りだったはずだけど…」

鞠莉「とりあえず…そのカジノに行ってみましょうか?」
 
442: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:34:26.72 ID:3AcboqmI
梨子「グロッタが楽園になったって情報を聞いて、ユグノアから近いからやって来たけど…」

梨子「楽園ってそういうことなのかな?」

花丸「みんなギャンブルに夢中になってるね…」

果南「カジノスタッフもみんな魔物だけど…誰も疑問に思わないのかな?」

果南「まあ、襲ってくる様子もないし、普通に接客してるように見えるんだけどさ」

梨子「魔物と仲良くできるなら、それにこしたことはないけど…」

鞠莉「なーんか…怪しいよね…」

鞠莉「ちょっと調べてみましょう」

果南「だね」
 
443: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:38:16.46 ID:3AcboqmI
千歌「ねえねえ」

果南「どうしたの千歌…って何その大量のコイン!?」

千歌「そこのスタッフの魔物にもらったんだけどさ。コイン持ってないならプレゼントって」

鞠莉「え…この量、何ゴールド分!?」

千歌「タダでいいって」

梨子「…そんなことあるの?」

千歌「しかもなくなったらまたくれるって言ってたし…」

梨子「明らかに不自然だよね…」

鞠莉「そんなことしたら商売にならないわよ」

花丸「一体どうなってるんだろう…」
 
444: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:41:38.89 ID:3AcboqmI
千歌「このコインちょっと遊んでみてもいいかな?」

果南「まあ…いいんじゃない。ただでもらったものだし」

梨子「なくなっちゃっても困らないもんね」

千歌「じゃあとりあえずこのスロットで…」チャリン

花丸「これってどんなゲームなの?」

鞠莉「この回ってるリールを止めて、マークが横に3つ以上そろったら当たりよ。そろったマークの種類、数によってコインがもらえるの」

花丸「へぇ~…じゃあ千歌ちゃんのこれも当たりなの?」

鞠莉「うん、真ん中の列に7が5個そろったから…」

鞠莉「は?」

果南「うそ…でしょ?」

千歌「当たっ…ちゃった…?」
 
445: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:43:47.68 ID:3AcboqmI
───

果南「絶対おかしいよ!」

果南「いきなりあんな大当たりしてVIPエリアに招待とか」

鞠莉「もしかして…これが罠だったり?油断せずに行きましょう」

曜「あら、どっかで見た顔だと思ったら」

梨子「曜ちゃん!?」

千歌「ここにいたの!?」

梨子「どうしたの?そんなバニーガールの格好して!?」

曜「どう、素敵でしょ?」

曜「アタシがみーんなもメロメロにしてあ、げ、る♪」

鞠莉「曜…」

鞠莉「似合わないわ」

果南「うん…」
 
446: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:47:19.30 ID:3AcboqmI
梨子「とにかく元気そうでよかった…」

梨子「私たちと一緒にウルノーガを倒しに来てくれるよね?」

曜「はぁ?何言ってんの?」

梨子「え?」

曜「ウルノーガとかどうでもいいしー」

曜「今のアタシはこのカジノを作ったブギー様がいればいいの」

曜「この服だってブギー様がアタシのために作ってくれたし」

花丸「ブギーって…誰?」

曜「知らないの?六軍王の1人、妖魔軍王ブギー様」

果南「六軍王だって!?」

鞠莉「知ってるの、果南?」

果南「言わなかったっけ?魔王ウルノーガの手下が六軍王を名乗ってるって」

鞠莉「ブギーってやつもその1人ってこと?」

果南「ってことだろうね」

千歌「曜ちゃん…どうなってるの?」

花丸「これってもしかして…操られてる?」

果南「だとしたら…ブギーを倒せば戻せるかも」
 
447: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:50:44.70 ID:3AcboqmI
曜「ブギー様を倒す?なんて愚かな人たちなの」

曜「そんなことアタシがさせないよ」

果南「曜にはちょっとおとなしくしてもらわないとね」

鞠莉「すばしっこいあの子でもこの人数ならどうにかできるでしょ」

曜「ふんっ、できるもんならやってみ!」スッ

果南「速いっ」

曜「ブギー様の邪魔をする奴は許さない!」バン

果南「くっ…」

鞠莉「私たちが知ってる曜のスピードじゃない。どこからこんな…」

曜「ほらほら、どうしたの?」

千歌「これじゃあ捕まえられないよ!」
 
448: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:54:20.25 ID:3AcboqmI
梨子「曜ちゃん相手に下手に攻撃呪文を使うわけにはいかない…どうすれば…」

千歌「梨子ちゃん、子守歌…知ってる?」

梨子「ユグノアの?小さいとき聞いたことはあるけど…それが何?」

千歌「歌ってみて」

梨子「え?」

千歌「曜ちゃんに効くかもしれないから」

梨子「いやいや、そんなので曜ちゃんが眠るわけ…」

千歌「それにラリホーをまぜてほしいの。1回試してみるだけでいいから」

梨子「そんな簡単に行くわけないと思うけど…うん、とりあえずやってみるね」
 
449: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 21:57:58.47 ID:3AcboqmI
梨子「ユグノアの子守歌」

曜「へぁ…」

曜「むにゃ…」パタ

花丸「眠った!?」

千歌「すごい、さすが梨子ちゃん!」

梨子「え…私はただ子守歌を歌っただけなんだけど」

花丸「梨子ちゃんの歌にそんな力があるなんて…」

梨子「そんなまさか…」
 
450: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:00:42.49 ID:3AcboqmI
「さわがしいなぁ~…いったい何だ?」

果南「何者!?」

「ボク〇〇〇そがキングオブモンスター、妖魔軍王ブギー様だじょ!」

千歌「これがブギー…」

鞠莉「曜やこの町をこんなにした張本人ってわけだね…」

花丸「なんか…あんまり強くなさそう…」

「ややっ、ボクちんのかわいい曜ちゃんが!」

「よしよし、仇は取ってあげるからね」

梨子「曜ちゃんは返してもらうよ!」

「ムダムダ。曜ちゃんはボクちんの忠実なしもべなんだからね」

「さあ、ボクちんの楽園を壊そうとする不届きものはまとめてぶっ飛ばしてあげるじょ!」
 
451: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:02:30.27 ID:3AcboqmI
「ほらほら食らえー」ヒュン

千歌「こんなぷよぷよした見た目なのに、強い!」

鞠莉「六軍王なのはダテじゃないってことね」

「お前もしもべになるんだじょ」キラッ

果南「あ…」

果南「ブギー…さま」フラフラ

鞠莉「ちょっと果南!」バシツ

果南「は…私は何を…」

鞠莉「あいつに操られそうになってたわよ!しっかりしてよね」

果南「ありがとう!」
 
452: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:05:38.11 ID:3AcboqmI
「一緒にダンシング!」

鞠莉「あら?あらら…?」

花丸「鞠莉ちゃん!?何で踊ってるの?」

鞠莉「や~ん…体が勝手に踊りだしちゃう♪」

花丸「戦い中だよ、止まってー!」

千歌「さすがアイドルだね。動きにキレがある」

果南「いや、冷静に見てる場合じゃないでしょ…」

花丸「搦め手を交えてこっちの動きを止めてくる…なかなか厄介ずら」
 
453: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:09:07.91 ID:3AcboqmI
果南「くっ…なかなか一斉攻撃ができないね」

花丸(梨子ちゃんは曜ちゃんのところにいて動けないから、マルがしっかり回復を…)

「ギガマホトラ」

花丸「ベホ…あ…」

花丸「魔力が…吸われて呪文が…」

果南「大丈夫?ほら、魔法の聖水飲んで」

花丸「ありがとう」

果南「私は近接メインだからともかく、長引くとまずいかもね…」

果南(千歌は…鞠莉となにやら企んでる?なら…)

果南「シールドアタック!」

「そんな攻撃、効かないじょー!」

果南「…だろうね」

果南(効かなくてもいいさ…こいつの注意をひければ)
 
454: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:14:05.78 ID:3AcboqmI
千歌「鞠莉ちゃん!いくよ」

鞠莉「オッケー!」

千歌「デイン」

鞠莉「からの~」

鞠莉「デインジャグリング!」シュシュシュ

「あばばばば!」

鞠莉「どうよ!」

「ばかな…このブギー様が…」

「ち、力が…コントロールできな…」
 
455: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:17:12.65 ID:3AcboqmI
曜「ん…」

梨子「あ、曜ちゃん?」

曜「梨子ちゃん…?」

曜「私…なんで…」

梨子「もしかして…元に戻った?」

曜「そういえば…ブギーに操られて…」

曜「っそうだ!ブギーは!」

梨子「あそこに。千歌ちゃんたちが倒してくれそうだよ」
 
456: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:19:40.62 ID:3AcboqmI
千歌「さあ、終わりだよ!」

曜「待って!」

千歌「曜ちゃん!?」

果南「もう目覚めたの?まずい…また止めなきゃ」

曜「そいつは私に倒させて!」

「曜ちゃん…まさか」

果南「洗脳が解けてる…?」

曜「よくも町の人たちを…許せない!」

曜「ばくれつきゃく!」ドコドカ

「うぎゃー!」
 
457: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:21:47.99 ID:3AcboqmI
鞠莉「容赦ないわね…」

千歌「曜ちゃんだけに?」

花丸「あ、なんか転がってきたよ?」

千歌「グリーンオーブだ」

千歌「ってことはやっぱり…」

鞠莉「何がやっぱり?」

千歌「デルカダールで戦ったゾルデがパープルオーブを持ってたの」

千歌「それでブギーはグリーンオーブ…」

鞠莉「六軍王はそれぞれオーブを持ってるってこと?」

千歌「多分…」
 
458: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:24:27.89 ID:3AcboqmI
───

愛「ほんっとにありがとう!」

果林「また、あなたたちに助けられちゃったわね」

鞠莉「みんなも無事でよかったわ」

愛「まんまとやられちゃって、自分が情けないよ」

愛「千歌っちたち…武闘会の時よりずっと強くなったみたいだね…」

千歌「そう?」

鞠莉「まあ、なんたって魔王を倒しに行くんだからね」

鞠莉「止まってられないわ」

曜「そうそう…え、そうなの!?」

千歌「そうだよ。目の前で魔王の誕生を見ちゃったんだもの」

千歌「自分たちの手でどうにかしなきゃいけないよ!」

千歌「曜ちゃんは来てくれないの?」

曜「もちろん行くよ!」
 
460: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:28:23.38 ID:3AcboqmI
曜「ねえ…デルカダールの方って、行った?」

果南「あー…うん。私と千歌はそっちの方から来たよ」

曜「じゃあ…」

果南「デルカダールのお城は…なくなった」

曜「…え」

果南「命の大樹が落ちた時の衝撃で、多分一番ひどい被害があった場所なんじゃないかな?」

曜「そんな…」

果南「だけど生き残ってる人はたくさんいるし、みんな諦めちゃいない」

果南「それに王様…曜のお父さんも無事だよ」

曜「ほんと!?」

果南「うん。ウルノーガも抜けて昔の王様に戻ってる」

曜「よかった…」

果南「だからデルカダール復興のためにも、先に進まないとね」

曜「うん!」
 
461: (もんじゃ) 2021/12/18(土) 22:32:49.07 ID:3AcboqmI
愛「はぁー…なんか千歌っちたち遠くに行っちゃったなぁ」

果林「私たちは、せめてこの町だけでも守っていかないとね」

鞠莉「闘技場があんなになっちゃったけど、これからどうするの?」

果林「町長さんは新しくカジノを売り出すって言ってたわ」

愛「商魂たくましいよね」

愛「アタシたちもカジノで働かせてもらおうかな?」

曜「あ、そういえばカジノってどんなゲームがあるの?」

曜「最初に来たときは見てる余裕なかったし」

果林「あら、じゃあ出発前に遊んでく?お姉さんが教えてあげるわよ♪」

愛「カリンだってあんま勝ったことないくせにー」

果林「この子よりは経験あるはずよ!」

千歌「チカもやる!また当てちゃうんだから」

鞠莉「ビギナーズラックは続かないわよ?」

果南「はまりすぎないようにねー」

花丸「…」ウズウズ

梨子「マルちゃんも行く?」

花丸「…うん!」

───
──

 
463: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 12:57:45.23 ID:kwk5BI6Z
梨子「あれ、ここに置いておいた果物知らない?」

鞠莉「見てないけど?」

梨子「おかしいなぁ…」

鞠莉「ここに置いたのは確かなの?」

梨子「うん、ちゃんと覚えてるもん」

鞠莉「じゃあ果南あたりがつまみ食いでもしたんじゃないの?」

果南「失礼な」

鞠莉「あ、聞こえてた?ごめんね」

果南「私を何だと思ってるのさ。そういうのはむしろ千歌が…」

果南「じゃなくて。大事なものだった?」

梨子「うーん、船で食べようとさっき買ってきたものだからそんなに大事ってわけじゃ…」

鞠莉「魔物にでも盗まれちゃったかな?」

梨子「そんなぁ…」

果南「残念だけど諦めるしかないかな」

曜「あ、この荷物はこの辺積んどけばいい?」

鞠莉「うん、これで全部かな?」

曜「よし、準備オッケー。出港ヨーソロー!」
 
464: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:00:50.78 ID:kwk5BI6Z
果南「ちょっと待って」

鞠莉「まだ何かあるの?」

果南「ん、何者かの気配…」

梨子「え、魔物?」

鞠莉「梨子のを盗んだドロボーさんかしら?」

果南「そこだ!」

善子「きゃぁ!」

果南「えっ…!」

曜「よっちゃん!?」

善子「ごめんなさい、許して下さい!」

梨子「え…ヨハネちゃ…ん?」

善子「何も、食べてなくて…それでつい…」
 
465: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:03:39.82 ID:kwk5BI6Z
果南「この子、千歌たちの仲間だよね?確か善子だかヨハネだかっていう」

鞠莉「そうよ」

善子「…」

鞠莉「ヨハネ…だよね?」

善子「ヨハネ…って何ですか?」

梨子「何言ってるの?あなたのことだよ?」

梨子「ほんとの名前は善子ちゃんだけど、ヨハネって呼んでほしいって」

善子「善子…」

善子「あの…善子って名前には覚えがあります」

鞠莉「これってもしかして…」
 
466: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:06:28.47 ID:kwk5BI6Z
千歌「よっちゃんが見つかったってほんと!?」

梨子「うん。だけど…」

果南「記憶喪失。みたいだね」

善子「あなたは…?」

千歌「そんな…忘れちゃったの!?」

善子「…ごめんなさい」

千歌「一緒にデルカダールから抜け出して、ずっと旅してたじゃん!」

善子「…」

千歌「よっちゃん…」
 
467: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:09:20.62 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「記憶喪失なんて、一体何があったのか…」

曜「曜たちのことどころか、昔のことも覚えてないしね」

果南「どうするの?」

鞠莉「連れてくしかないでしょ」

千歌「うん。どこかで記憶を戻せるかもしれないし」

善子「いいんですか?」

花丸「でも、これから魔王やその配下との戦いもあるんだよね?危ないんじゃ…」

千歌「よっちゃんなら大丈夫だよ」

善子「でも私は戦いなんて…」

鞠莉「それはなんとかなるんじゃないかな?」
 
468: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:12:15.44 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「ちょっとごめんね」

善子「え?」

鞠莉「はっ」ヒュン

善子「きゃぁっ」サッ

千歌「鞠莉ちゃん!?」

果南「なるほど。体が覚えてるってわけか」

鞠莉「そういうこと♪」

鞠莉「いきなりごめんね、ヨハネ」

果南「これなら自分の身を守るぐらいはできそうだね」

千歌「なんだ…びっくりした」
 
469: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:16:13.84 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「ってことで、一緒に来てくれるよね?」

善子「はい。あなたたちといると…なにか思い出せそうな気もするので…」

善子「私からもお願いたいところです」

千歌「うーん…こんなよっちゃんは変な感じだ…」

花丸「マルはよく知らないけど、こんな人じゃなかったの?」

千歌「うん。普段はもっとだてーんって感じで…」

花丸「それもわからないような…」

曜「よーし、仲間も増えたしクレイモランへレッツゴー!」
 
470: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:19:12.51 ID:kwk5BI6Z
───

千歌「わわわっ」グラツ

果南「おっと、危ない」ヒョイ

千歌「ありがとう、果南ちゃん」

鞠莉「波が高いね」

鞠莉「みんな、船から落ちないように気を付けて!」

果南「っていうか風もないのに揺れすぎじゃない?」

曜「どうなってるんだろう…」

ザバァ

鞠莉「なに!?」

善子「ひっ、なんか出てきました!」

曜「でかっ!」
 
471: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:22:32.45 ID:kwk5BI6Z
「匂う…命の匂いだ」

花丸「この船とおんなじくらい大きい…こんな魔物が…」

「我が名は覇海軍王ジャコラ。魔王様よりこの海を任された」

果南「また六軍王の1つってわけ?」

「魔王様のため…この海の命はすべて消し去ってやる」

梨子「私たちの…邪魔しないで!」

梨子「グランドクロス!」

キン

梨子「効かない…!?」

「ぐはは…魔王様より頂いたレッドオーブの力があればそんなもの効かぬわ」

鞠莉「やっぱりオーブが関係あるのね」

花丸「攻撃が効かないなんて…一体どうすれば」
 
472: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:25:03.31 ID:kwk5BI6Z
千歌(なにか…できることは…)

善子「千歌…さん?その手…」

千歌「え?」

曜「左手が光って…もしかして勇者のチカラ?」

千歌(何が起こるかわからないけど…)

千歌「私たちにチカラを…!」

ピカッ

「ぐああ…我がバリアが…」

果南「これは…攻撃が通るようになった!?」

「そのチカラ…まさか勇者か!?」

「ならば、魔王様の為にもここで葬ってやるわ!」

果南「来るよ、気をつけて!」
 
473: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:29:03.95 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「あんなのにまともに攻撃されたら船が持たないわよ!」

梨子「それなら…マヌーサ!」

「ぬ…幻か」ブン

果南「くっ」ガッ

鞠莉「果南、平気?」

果南「狙いがずれてくれたから何とかね…」

果南「船は私が守るからどうにかして倒して!」

曜「って言われても…」

曜「あーもう、攻撃が届かないよ!」

果南「基本近接攻撃の私たちには厳しいね」
 
474: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:32:24.83 ID:kwk5BI6Z
「クリムゾンミスト」

花丸「赤い…霧?」

「ぬぅん」ブン

果南「くうっ!」ガク

果南「なに、これ…体が重い…」

曜「うまく動けない…防御や回避もしにくいよ」

梨子「とりあえず呪文で…ドルクマ!」

千歌「ライデイン!」

鞠莉「バギマ!」

「ぐぅっ…」
 
475: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:34:44.46 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「霧が晴れてきたわ!」

曜「体が動く…」

曜「だったら…たぁっ」

花丸「曜ちゃん!?」

「な、なんだ!?」

果南「ジャコラの頭の上に飛び乗るなんてむちゃくちゃな…」

曜「千歌ちゃん、梨子ちゃん、力を貸して!」

千歌「オッケー」

梨子「任せて」

曜「火炎ばらい!」

曜「からの、ばくれいきゃく!」

「ぐわぁぁ…」

「このジャコラ様が人間なんかに敗れるはずが…」バシャン

曜「わっ…とと」

花丸「すごーい!」
 
476: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 13:37:41.97 ID:kwk5BI6Z
善子「勝ったん…ですか?」

花丸「うん、曜ちゃんがとどめを刺してくれたよ」

善子「みなさん、すごいんですね」

鞠莉「イエ ーオーブ…これで3つ目?」

千歌「そうだね」

鞠莉「まあ、順調ってとこかな…」

鞠莉「これで、この海も少しは平和になってくれるかしらね」

曜「おーい、見てないで助けてよー。このままじゃ魔物に乗って流されちゃう!」

梨子「あ、大変!」

果南「ほら、このロープに捕まって」ポイ

曜「ありがとう!」

───
──

 
477: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:16:51.63 ID:kwk5BI6Z
曜「みんなー、もうすぐクレイモランに着くよ!」

鞠莉「ん、何かしらあれ?」

梨子「クレイモランへの入り江に何か塊があるね」

花丸「氷山…にしては色が…」

曜「黄色っぽいね」

千歌「もしかして黄金!?」

善子「黄金…?」

果南「そんなバカな…」

梨子「でもこれじゃあ港に入れないよ…」

鞠莉「もうちょっと近くに寄ってみましょう」
 
478: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:19:11.95 ID:kwk5BI6Z
千歌「きれい…」

千歌「やっぱり黄金じゃないの?」

鞠莉「果南、ちょっとその辺どこか削ってもらえる?」

果南「ほいよ」パキン

鞠莉「む~…」

千歌「どうなの?」

鞠莉「梨子、どう思う?」

梨子「わ、私?」

鞠莉「元王族でしょ?本物の黄金も結構見たことあるんじゃない?」

梨子「まあ、それなりにはあると思うけど…」

鞠莉「マリーが見るより正確だと思うから確かめてくれない?」

曜「あれ、曜は?」

曜「一応デルカダールの王女なんだけど…」

果南「曜はそういう宝石とか全然興味持ってなかったじゃん」

果南「装飾品つけたら動きにくくて邪魔だって」

果南「見てもわかんないでしょ…」

曜「あはは、それもそっか!」
 
479: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:21:55.34 ID:kwk5BI6Z
梨子「これは…多分本物の黄金じゃないね」

鞠莉「やっぱりそう思う?よかった、マリーと一緒で」

千歌「えー…そうなの?」

千歌「お金持ちになれると思ったのになー…」

梨子「まあ、そんな簡単に行くわけないよ」

果南「じゃあこれは…なんなんだろうね」

鞠莉「わからないけど、とりあえずこのままじゃクレイモランに行けないね」

曜「どうする、吹っ飛ばす?」

梨子「自然にできたものならそれでもいいかもしれないけど、もしクレイモランの国が意図的に置いたものだったら問題にならない?」

曜「クレイモランの王様って歩夢ちゃんでしょ?謝ればどうにかならないかな?」

鞠莉「じゃあ謝る役は曜に任せるわね。デルカダールのお姫様♪」

曜「わ、私…?」
 
480: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:24:22.60 ID:kwk5BI6Z
花丸「それで、どうするの?」

花丸「このサイズだと、ちょっとやそっとの攻撃じゃ壊せなさそうずら」

千歌「うん、千歌のパワーだとちょっと…」

鞠莉「そうね。ってことで果南、行くわよ」

果南「おっけー」

果南「はぁっ、大まじん斬り!」ドカン

梨子「すごい、黄金の氷山がばらばらに…」

千歌「さすが果南ちゃん!」

鞠莉「これで船も通れるね」
 
481: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:26:27.63 ID:kwk5BI6Z
───

千歌「あれ…」

曜「あれれれ?」

千歌「人がいない!?」

花丸「城下町なのに人の気配がないなんて…」

果南「見たところ、命の大樹による被害はほとんどなさそうだけど…」

果南「寒いからってクレイモランの人ってみんな家に引きこもるんだっけ?」

梨子「そんなわけないと思うけど…」

鞠莉「前に来たときはみんな凍っちゃってたけど、今度は何だろう?」

曜「とりあえず歩夢ちゃんに会ってみようよ!」
 
482: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:29:53.78 ID:kwk5BI6Z
善子「この町…どこかで…」

梨子「よっちゃん?何か思い出せそうなの?」

善子「わからない…うう…」

花丸「もしかして、よっちゃんの故郷だったりするの?」

果南「そうなの?」

鞠莉「そういえば…ヨハネの故郷ってどこ?千歌?」

千歌「私?」

鞠莉「一番長い付き合いでしょ?」

千歌「って言っても…鞠莉ちゃんと会う少し前に会っただけだし…」

千歌「そういえば昔の話も聞いたことないね」

梨子「でも前にここに来たときはそんなこと…」

千歌「そうだよ!あの時に故郷に帰ってきたような雰囲気はまったく…」

花丸「その時はどんな話してたの?」

曜「それはあれだよ。えっと…」

曜「あれ?あの時クレイモランでよっちゃんがどんな話したか思い出せないや…」

梨子「…ここに来たことがあるって話はしてた気がするけど、そもそもあんまりしゃべってなかったような?」

果南「で、よっちゃんも何もわからないんだよね?」

善子「すみません…」

鞠莉「まあ、何かきっかけになるかもしれないから様子を見ましょう」
 
483: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:32:24.60 ID:kwk5BI6Z
歩夢「曜ちゃんたち!」

歩夢「よかった…無事だったんだね」

曜「歩夢ちゃんも」

曜「んー…お城の中も人が少ない?」

果南「普通この規模のお城だったらもっと兵士とか使用人がいると思うんだけど…」

千歌「もしかして大樹が落ちたせいでみんな…」

歩夢「ううん、その時はあんまり影響はなかったの」

歩夢「だけど…」

梨子「何かあったの?」
 
484: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:36:27.77 ID:kwk5BI6Z
歩夢「…今この国は謎の病気に襲われてるの」

鞠莉「病気?」

歩夢「急に体が金になっちゃって…」

千歌「はい?」

歩夢「いきなり言っても信じられないよね…」

歩夢「これを見て」

梨子「猫の…像?」

曜「黄金でできてるの?綺麗な形だね、まるで本物みたい…」

歩夢「これ…本物の猫なの」

鞠莉「どういうこと?」

歩夢「この子はお城の近くにいる野良猫だったんだけど、ある日突然黄金の姿になっちゃって…」

歩夢「ずっと、このまま…」

千歌「ええ!?生き物が黄金に?」

歩夢「人も、動物もいきなり…それが黄金病…そう呼ばれるようになったの」

花丸「黄金病…恐ろしい病気ずら…」
 
485: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:40:59.59 ID:kwk5BI6Z
梨子「病気について何かわかっているの?」

歩夢「もちろん国をあげて調べてはいるけど、原因とかはまだ全然…」

歩夢「黄金病にかかってしまった人を調べても共通点がなくて…」

歩夢「それこそ、老若男女問わずに被害に遭ってるの」

歩夢「これまでわかったことは、黄金になった人は全員外にいた時ということと、人から人にうつったことはないということ」

鞠莉「つまり屋内にいれば安全ってことね?」

果南「だから外に誰もいなかったのか…」

歩夢「あくまでこれまで起こったことからの判断だけど…」

歩夢「お城の人たちもみんな見えない恐怖と戦っている…」

歩夢「この国から出ていく人もいて、無理に引き留めることもできないし…」

歩夢「もう、どうしたらいいいの…」
 
486: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:44:46.55 ID:kwk5BI6Z
梨子「私たちが解決する…って言いたいところだけど…」

果南「魔物じゃなくて病気じゃね…」

曜「でも、どうにかしてあげないと…」

千歌「…あれ、そういえばあの時の魔女…真姫ちゃんは?」

歩夢「…今は牢屋に入れられてるの」

千歌「牢屋?」

歩夢「黄金病の被害者が増えだしてから、真姫ちゃんが原因じゃないかって疑われちゃって…」

歩夢「もちろん私は反対したんだけど…多くの人が強く訴えていたし、真姫ちゃんもそれを受け入れたから」

鞠莉「真姫も何も分からなかったの?」

歩夢「病気というよりは呪いだっていうことだけ…」

鞠莉「呪い…ね」

鞠莉「真姫に会うことはできる?」

歩夢「はい、解放はできないけど面会くらいなら」
 
487: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:46:20.86 ID:kwk5BI6Z
真姫「あら、久しぶり」

花丸「この人が魔女?」

曜「そう、この国をまるごと凍らせちゃえるくらいすごい魔女だよ」

真姫「まあ、今は魔力なんて空っぽに近い状態だけどね」

千歌「真姫ちゃんは黄金病に関係ないんだよね?」

真姫「もちろん。友達になった歩夢の国民にそんなことするわけないし、私にはそんなことできないわよ」

千歌「なのにこんなところに閉じ込められてていいの?」

真姫「しょうがないじゃない?私は魔女なんだから不安がる人がいるのは当然よ」

真姫「私を投獄することが安心材料なら、従うのが歩夢のためでもあるわ」

真姫「それに、これでも本の中に封印されてた時よりはマシだしね…」
 
488: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:50:11.13 ID:kwk5BI6Z
梨子「あなたは黄金病を呪いって言ってたみたいだけど…」

真姫「そうね」

梨子「何か心当たりがあるの?」

真姫「別にないわよ?」

真姫「うまく言えないけど、そう感じるの。魔術を扱うものとして、ね」

花丸「呪いってことは、誰かがこの現象を起こしてるってこと?」

真姫「そうなるわね。ただその術者が誰なのか…」

真姫「姿を見せずにこれだけのことをするんだもの。相当な使い手よ」

果南「居そうな方向とかわかんないの?」

真姫「それが分かったら苦労はしないわよ…」

真姫「だけど、他のところでこんな呪いあった?」

千歌「体が黄金になっちゃうなんて聞いたことないよ」

真姫「だったら、案外術者は近くにいるのかもね…」

千歌「わかった、探してみるよ!」

真姫「自分たちが黄金にならないようにせいぜい気をつけなさい」
 
489: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:53:43.81 ID:kwk5BI6Z
果南「近くって言ってもね…」

鞠莉「クレイモラン周辺だけでも結構な広さよ?」

栞子「もしかして…ヨハネさん?」

善子「…?」

曜「誰?」

栞子「あ、失礼しました。私はそこの教会でシスターをしている栞子と言います」

鞠莉「ヨハネのことを知っているの?」

栞子「やはりヨハネさん…ですよね?ご無事で何よりです」

善子「えっと…」

栞子「私のこと、覚えていませんか?」

鞠莉「この子、今記憶喪失になってるの。もしヨハネの昔のことを何か知っているなら教えてくれないかしら」

栞子「なんですって…そんなことに…」

栞子「外で話すのも危険なので、教会にいらしてください」
 
490: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 21:56:54.97 ID:kwk5BI6Z
栞子「さて、どこから話しましょうか…」

曜「よっちゃんはクレイモランに住んでたの?」

栞子「厳密にいえば違います。ここの近くにあるバイキングの住処、そこで暮らしていました」

千歌「バイキング?」

千歌「って海賊の?」

花丸「悪い人たち?」

栞子「いえ、あの方たちは基本的に人を襲ったりはしませんでした」

栞子「確かにガラが悪い人は多いですが、基本的に海での漁、トレジャーハント、時には運輸で生計を立てています」

栞子「クレイモラン王家とも取引経験があるそうですよ」

栞子「バイキングの方に連れられ、クレイモランの町に何度かやってきたヨハネさんと私は知り合いました」

果南「よっちゃんがバイキングの生まれとはね…」

栞子「…生まれについてはわかりません。彼女は小さいころバイキングに拾われたそうですから」

栞子「…妹とともに」

善子「…!」

千歌「妹!?姉妹がいたの?」

栞子「ええ。かすみさんという妹が。いえ、本当に妹かどうかはっきりとはわかりません。一緒に拾われたという話なので」
 
491: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:01:05.27 ID:kwk5BI6Z
梨子「その妹さんは今は…?」

栞子「…ある日、亡くなったと聞きました」

梨子「そんな…」

栞子「それとほぼ同時にヨハネさんも姿を消した…とバイキングの方は言っていました」

花丸「何でそんなことに…」

栞子「わかりません。細かい事情は誰も聞いてないそうです」

善子「…やめて」

栞子「私は…かすみさんにも、ヨハネさんにも何もできませんでした」

善子「やめてってば!」

梨子「よっちゃん…?」

善子「…」

「だ、だれかー!」

鞠莉「なに?」

曜「外だ!」
 
492: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:05:04.02 ID:kwk5BI6Z
「すべての黄金をキラゴルド様の下へ!」

「ヤイサホー!」

果南「魔物!?」

果南「町の中に来るなんて…」

花丸「全身金色…もしかして黄金病と関係が!?」

「キラゴルド様がお待ちだ、どんどん運べ―」

千歌「あ、見て。あの魔物たちが持ってるの!」

鞠莉「あれは…もしかして黄金病にかかっちゃった人間?」

鞠莉「連れ去るつもり…?止めなきゃ!」

「黄金以外に価値はないが…邪魔をするなら許さん!」

善子「黄金…人…」

善子「ああ…ああぁっ!」タタッ

花丸「よっちゃん、どこに!?」

栞子「私が追います!」
 
493: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:08:35.59 ID:kwk5BI6Z
───

果南「はぁっ」ズバン

果南「あとの敵は?」

千歌「こっちも終わったよ」

鞠莉「見て!残った魔物が船で逃げてくわ」

梨子「黄金になった人たちが何人か一緒に連れ去られちゃってる…守り切れなかったみたい…」

曜「あっ!あそこによっちゃんもいるよ!」

千歌「ほんとだ!捕まっちゃってるよ。何で…」

栞子「すみません…私のせいです…」

千歌「栞子ちゃんの?」

栞子「魔物たちがヨハネさんを狙ってきて…それで…」

鞠莉「…仕方ないんじゃない?戦いに慣れてるわけじゃないんでしょ?」

栞子「はい…ですが…」

果南「今はよっちゃんを取り返すのが先だよ。あの船の行った先に心当たりある?」

栞子「あの方向にはバイキングのアジトがあったはずです」

栞子「そして、船のマークもバイキングのもの…」

栞子「なぜ魔物たちがあの船を使っているかはわかりませんが…おそらくは…」

千歌「よし、そのアジトに行ってみよう!」
 
494: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:12:28.50 ID:kwk5BI6Z
───

鞠莉「ここがバイキングのアジトね」

鞠莉「黄金の物が散らばってる…」

果南「さっきの魔物たちがここにいることは間違いなさそうだね」

梨子「だけど…何でよっちゃんが連れていかれたんだろう?」

鞠莉「だよね…クレイモランでは黄金になった人を狙ってて、普通な人の被害はほとんどなかったみたいだし」

鞠莉「魔物たちはヨハネ個人を狙ってたってこと?バイキング暮らしだったのと関係あるのかしら…?」

果南「この先にいるんでしょ?直接聞いてみればいいんじゃないかな」

果南「よっちゃんを助け出すついでにさ」
 
495: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:16:43.04 ID:kwk5BI6Z
曜「誰もいない…」

曜「っていうか黄金の魔物たちが倒されてる…?」

花丸「一体誰がこんなことを…」

千歌「よっちゃんは?」

梨子「…見当たらないね」

鞠莉「ヨハネもいない…ってことはあの子がやったのかしら?」

曜「確かにこの数なら勝てると思うけど…」

曜「だったら何で曜たちの方に戻ってこないの?」

千歌「あ、この奥に道があるよ!」
 
496: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:20:42.74 ID:kwk5BI6Z
千歌「いた!よっちゃん!」

善子「千歌ちゃん…」

善子「私は…ヨハネは…」

千歌「もしかして…」

善子「全部…思い出したわ」

曜「ほんと?私のことも?」

善子「ええ。曜ちゃん、梨子ちゃん、鞠莉ちゃん」

善子「それから、花丸ちゃんと果南…さん?」

曜「おお、ちゃんと思い出せてる!」
 
497: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:23:55.66 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「何があったのか、聞いてもいい?」

鞠莉「あなたの昔のことと、私たちと別れてからのこと」

善子「…そうね」

善子「迷惑もかけたんだし、黙ってるわけにはいかないわね」

善子「それに…あれも無関係じゃないだろうし」

千歌「あれ?」

善子「黄金病のこと」

善子「…原因に心当たりがあるのよ」

千歌「ほんと!?」

善子「私がまだバイキングの仲間だった時の話ね」
 
498: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:29:01.86 ID:kwk5BI6Z
善子「かすみん…かすみのことは栞子ちゃんから聞いたわよね?」

花丸「うん、妹がいたって」

善子「私たちは昔、ここで暮らしていた」

善子「とてもいい暮らしとは言えなかったわ。家はこんなだし、バイキングたちは人使い荒いし」

善子「だけど、他に行く所もないから、バイキングに従うしかなかった」

善子「…ある時、トレジャーハント中に首飾りを見つけたの」

善子「いつもなら見つけた物は全部渡して、一部分け前を貰うだけだった」

善子「でも、あの時はかすみんにプレゼントしたくなったわ」

善子「だけど…間違ってた」

善子「あれは呪われたアイテムだったのよ」

善子「触れたものを黄金に変えていく…生き物でさえ」

善子「そう、黄金病のように…」

鞠莉「…!」
 
499: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:35:37.76 ID:kwk5BI6Z
善子「最初はかすみんも周囲のものを黄金に変えていくだけだった」

善子「この部屋が金色に染まっていったの」

善子「だけどすぐに制御できなくなって…」

善子「ついにはかすみん自身が黄金になってしまった…」

善子「私の、せいで…」

善子「私が、あんなものを、あげなければ…」

梨子「…」

善子「私は…何もできなかった」

善子「目の前で黄金に変わっていくかすみんを見てるだけ」

善子「ううん、それどころか距離を取った。怖かったのよ」
 
500: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:39:23.98 ID:kwk5BI6Z
善子「それからバイキングのアジトからも逃げ出して…」

善子「しばらくトレジャーハンターをしていたわ」

善子「そしてある時、預言者を名乗る人に言われたのよ」

花丸「預言者?」

善子「地の底で出会う勇者に力を貸せ。そうすれば君の贖罪も果たされるだろう…ってね」

善子「…めちゃくちゃ胡散臭いわよね」

鞠莉「確かに」

善子「もちろん私も最初は信じちゃいなかったわよ」

善子「だけど…デルカダールの地下牢で、実際に勇者に会った」

善子「あ、捕まってたのは冤罪だからね。そこのデルカダールの将軍は話を聞いてくれなかったけど」

果南「いや、それは、まあ…」

善子「それからは知っての通りよ。千歌ちゃんたちと一緒に旅をするうちに、いつかかすみんを元に戻せるかもしれないとも考えてたわ」
 
501: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:42:51.09 ID:kwk5BI6Z
善子「あと…命の大樹を落とされてからね」

善子「気づいたら空に浮かぶ魔物の巣にいたの」

曜「魔物の巣?どこの?」

善子「わからないわ…周りを見る余裕なんてなかったもの」

善子「そこには…ウルノーガの配下の強い魔物がいたわ。確か邪竜軍王ガリンガとか言ったかしら」

果南「邪竜軍王っていうと、そいつも六軍王の…」

善子「そうかもしれないわね」

善子「私はその魔物に追いつめられた。その時に謎の声が聞こえたの」

善子「私の大事なもの…記憶と引き換えに力を与えるって」

善子「実際に、一瞬だけガリンガと互角に戦えた…だけど」

善子「そこからはよく覚えてないわ。どうやって助かったのか…」

善子「次に目覚めたら記憶喪失ってわけよ」

曜「そのよっちゃんを曜たちが見つけた、と」

鞠莉「その声…何者なのかしら?」

善子「さあ…」
 
502: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:48:21.16 ID:kwk5BI6Z
善子「話を戻して。この黄金病には私が見つけた首飾りが関係してると思うわ」

善子「黄金病になった人とかすみんの様子はそっくりだったし」

善子「…だからこそ私の記憶が戻ったのかもしれない」

梨子「そのかすみちゃんは黄金化しちゃった後どこに…?」

善子「…そのままここにいたはずなんだけど」

鞠莉「さっきの魔物たちはキラゴルドのために黄金を集めてるって言ってたよね?」

善子「そう。多分連れていかれたんじゃないかしら?」

善子「この先に黄金城っていうキラゴルドのアジトがあるらしいの」

善子「お願い、かすみんを取り戻すのに力を貸して!」

千歌「何言ってんの…そんなのお願いされるまでもないじゃん!」

千歌「よっちゃんはこれまでチカたちを助けてくれたんだから、よっちゃんが困ってたらチカが助けるよ!」

鞠莉「どっちにしろ、クレイモランからさらわれた人たちも助けなきゃいけないしね」

善子「ありがとう…みんな」
 
503: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:51:54.67 ID:kwk5BI6Z
───

果南「黄金城って名前の通りどこもかしこも金色だねぇ」

花丸「目がちかちかするよ…」

千歌「チカもちかちか…なんて」

善子「キラゴルドってのは趣味が悪いわね。一色に染めるなら黒こそ綺麗なのに」

梨子「それもどうかと…」

果南「とっととキラゴルドを倒して出よう」

鞠莉「ここが玉座の間のようね」

鞠莉「奥にいるのは…人?」

曜「え、女の子?」
 
504: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:55:11.18 ID:kwk5BI6Z
善子「かすみん!」

千歌「え!?」

千歌「あの子が…?」

かすみ「久しぶりだね、ヨハ子」

かすみ「それと…今の私はかすみんじゃないから」

かすみ「鉄鬼軍王キラゴルド…それが今の私」

善子「キラゴルド…?なんで、あなたが…」

かすみ「ウルノーガ様のおかげだよ」

果南「ウルノーガ…!ここでもか」

かすみ「私が黄金になった時、ヨハ子は助けてくれなかった」

かすみ「でもウルノーガ様は私の体を元に戻してくれたどころか、特別な力をくれた」

かすみ「ほら見て。綺麗な黄金でしょ?ぜーんぶ私が作ったんだ」

善子「ってことはやっぱり黄金病は…」

かすみ「そうだよ。今はまだクレイモランしか届かないけど」

かすみ「くふふ…この力で世界中のみんなを黄金にしちゃうんだから♪」

善子「何でそんなことを…」
 
505: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 22:58:26.35 ID:kwk5BI6Z
善子「私のせいで黄金になっちゃったんだから、私を恨めばいい」

善子「でもクレイモランの人たちは関係ないでしょ!」

かすみ「もうそんなのどうでもいいよ」

かすみ「ヨハ子も、その仲間たちも。みーんな黄金にして可愛がってあげる!」

善子「なら…私が、家族として、止めてみせる!」

善子「これ以上かすみんの好き勝手にはさせない!」

かすみ「はっ、できるものならやってみなよ」

ガシャン

果南「かすみちゃんの体が黄金の装甲で覆われた!?」

曜「メカっぽいね」

梨子「これもウルノーガの力…?」

「みんなみんな黄金になっちゃえ!」
 
506: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:03:09.88 ID:kwk5BI6Z
善子「お願い、できればなるべくかすみんは傷つけないようにしてもらえる?」

千歌「わかってるよ!」

曜「だけど外側は遠慮なくっ」ガッ

曜「かった~い…」

果南「見た目通り、頑丈だね…なら、かぶとわり!」ザン

「邪魔するなっ…ゴールドアストロン」

果南「な…あ…」ピキッ

花丸「果南ちゃんの体が黄金に!?」

「にひひ…次に黄金になるのは誰かな?」

千歌「どうしよう…どうすれば果南ちゃんを元に…」

鞠莉「千歌っ、それは後!倒してから考えましょ」

鞠莉「みんな、あの攻撃は当たったらまずいわ!」
 
507: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:07:41.34 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「バイキルト。曜、動きを止めて!」

曜「わかった!足払い!」バシ

「あうっ」

曜「よしっ、転ばせた!」

「このっ…ゴールドアストロン」

梨子「曜ちゃんまで黄金に…!」

善子「かすみん、目を覚ましなさい!」

「うるさいうるさい!」
 
508: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:10:46.17 ID:kwk5BI6Z
善子「はやぶさの舞!」シュパパパン

「あああっ!」

花丸「纏ってる黄金がはがれてるずら!」

「なんで…なんで…私が…」

「ヨハ子は、私の味方じゃないの…」

シュシュル

千歌「な、なにこれ!?黄金の触手!?」

梨子「まだこんな力があるなんて…」

花丸「かすみちゃんがつけてるあの首飾り…あれがパワーの源だと思うよ!」

鞠莉「じゃああれを壊せば…!」

千歌「って言っても近づくだけでも大変だよ!」
 
509: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:14:31.26 ID:kwk5BI6Z
善子(落ち着きなさい、ヨハネ)

善子(私ならできる)

善子(しっかり動きを見て、避けて)

善子(かすみんは傷つけない)

善子(首飾りだけをっ)

善子「心眼一閃」

パキツ

千歌「首飾りが壊れた!」

「ヨハ…子…」

善子「かすみん…」
 
510: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:19:13.59 ID:kwk5BI6Z
鞠莉「キラゴルド…かすみを守る黄金が消えていくわ…」

梨子「見て、曜ちゃんたちも!」

果南「お、よし動ける」

曜「元に戻ったー」

千歌「あ、イエ ーオーブ!」

鞠莉「あの首飾りが壊れることで、ウルノーガの力も抜けたみたいね」

千歌「これで黄金病の人たちも治ってくれるかな?」

鞠莉「果南たちが治ったんだもの。きっと…」

バキバキ

千歌「へ?」

曜「なに、この音?」

花丸「もしかして…力がなくなることで、キラゴルドが作った黄金のものが全部なくなっちゃうんじゃ…」

鞠莉「この黄金城もなくなっちゃうってこと!?」

梨子「急いで脱出しなきゃ!」

千歌「よっちゃん、行くよ!」

善子「待って、かすみんが…」

果南「かすみちゃんは私が運ぶよ!」

善子「ありがとっ」
 
511: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:22:26.66 ID:kwk5BI6Z
───

歩夢「なるほど…かすみちゃんは魔王ウルノーガの力で…」

かすみ「はい…」

歩夢「じゃあ、もう黄金病はおこらないんだね?」

かすみ「そのはずです…」

歩夢「そっか…うーん…」

かすみ「あ、あの…私はどうなっちゃうんですか?」

かすみ「もしかして…死刑とかですか?」

歩夢「え?」

善子「そんなことはさせないわ」

善子「女王がそう言ったとしても、私はかすみんを連れて遠くに逃げるから」

かすみ「ヨハ子…」

千歌「それに悪いのはウルノーガでしょ?」

千歌「それならチカたちが倒しに行くから、かすみちゃんを許してあげて」

真姫「はぁ…早合点しすぎよ」

かすみ「ほぇ?」
 
512: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:26:39.42 ID:kwk5BI6Z
歩夢「…かすみちゃん、処分を言います」

かすみ「…はい」

歩夢「あなたをクレイモラン王宮女王付侍女に命じます」

かすみ「…はい?」

梨子「簡単に言うと…メイドさん?」

かすみ「ええっ!」

善子「それがかすみんの処分!?」

歩夢「黄金になっちゃった人たちは全員元に戻ったし」

歩夢「黄金病もかすみちゃんの負の感情が爆発しちゃっただけで、やりたいことじゃないってことはわかったから」

歩夢「元凶のウルノーガについては曜ちゃん、千歌ちゃんたちが倒してくれるみたいだし」

真姫「ほんと、お人よしよね…」

真姫「まあ、じゃなきゃ私はここにいないんだけど」

歩夢「それと行く所もないんでしょ?」

歩夢「黄金病のせいでお城も人手不足だからね。もし悪いと思ってるなら、みんなのためにいっぱい働いてくれないかな?」

かすみ「…はい!よろしくお願いします!」
 
513: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 23:30:34.53 ID:kwk5BI6Z
梨子「これで一件落着…だね」

果南「よっちゃんは妹と一緒に残らなくていいの?」

善子「ヨハネの贖罪はまだ終わってないもの」

善子「私は最後まで勇者と、千歌ちゃんと一緒に行くわよ」

千歌「うん、よろしくね!」

鞠莉「さて、いよいよラムダね」

曜「ラムダかぁ…ダイヤちゃんとルビィちゃんにも会えるといいな…」

鞠莉「きっと…いるわよ。私たちが元気なんだもん。あの2人だって…」

花丸「もしラムダにいなかったとしても、きっと見つけて見せるよ」

───
──

 
516: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:20:19.44 ID:Su3Eyr5h
千歌「氷炎乱舞!」バッシュ

「ぐぅぁっ!」

鞠莉「だいぶ弱ってくれたわね」

曜「よし、もう一息だよ!」

千歌(クレイモランからラムダに向かう道の途中、いきなり襲い掛かってきたネドラとかいうドラゴンの魔物)

千歌(封印が解けたばっかで力が入らないって言ってたけど、これならいける!)

「この強さ…ただものではないな……」

善子「そりゃそうよ。魔王を倒すのにこんなところで止まってられないもの」

「だが…!」

「焼けつく息」カーッ

果南「くっ…体が、痺れ…」

「油断したようだな…このまま始末してくれよう」

千歌(動けない…このままじゃ!)
 
517: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:21:57.38 ID:Su3Eyr5h
ルビィ「バギクロス!」

ゴォォ

「ぐわぁぁ!」バタリ

千歌「この、声は…」

ルビィ「みんな大丈夫?キアリク」

千歌「ルビィ…ちゃん?」

ルビィ「うん、ルビィだよ」

花丸「ほんとにルビィちゃんだ…」

ルビィ「マルちゃんも久しぶりだね」

善子「すごいタイミングね…おかげで助かったわ」

ルビィ「間に合ってよかったよぉ」
 
518: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:25:09.08 ID:Su3Eyr5h
花丸「あれから…ルビィちゃんはどうしてたの?」

ルビィ「命の大樹が落ちた後は、聖地ラムダを目指してたんだ」

ルビィ「そうすれば、お姉ちゃんに会えるかな…って」

ルビィ「だけど、その途中にクレイモランで、よく覚えてないけど黄金病っていうのになっちゃったみたいで…えへへ」

鞠莉「え、あの黄金になっちゃった人たちの中にルビィもいたの!?」

ルビィ「それで、治った後に千歌ちゃんたちが解決してくれたって聞いて追いかけてきたの」

梨子「ずっと一人で…大変だったね」

ルビィ「うん。でも、みんなにまた会えるって信じてたから」

ルビィ「…お姉ちゃん以外全員そろってるとは思わなかったけど」
 
519: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:27:04.32 ID:Su3Eyr5h
ルビィ「みんなもラムダに行くの?」

花丸「うん。神の乗り物について調べてるの」

ルビィ「神の乗り物…?」

花丸「昔の勇者様たちがそれで空を飛んだって話なんだけど…」

花丸「ラムダにそういう話伝わってない?」

ルビィ「う~ん…ルビィは聞いたことないなぁ…」

花丸「そっか…ルビィちゃんも知らないか…」

ルビィ「あ、でも聖地ラムダなら神話に詳しい人もいると思うし」

花丸「そうだね。やっぱり行ってみるしかないよね」
 
520: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:29:14.10 ID:Su3Eyr5h
善子「なんか…雰囲気変わった?」

ルビィ「そう?」

鞠莉「そうね…たくましくなったというか…」

鞠莉「1人だったからかな?」

ルビィ「そうかも」

ルビィ「ルビィはこれまでお姉ちゃんに頼ってばっかだったから…」

善子「ダイヤちゃんに会えても元に戻らないでよ?」

ルビィ「それは…どうだろうね」

鞠莉「ダイヤもこんなルビィ見たらビックリするかもね♪」
 
521: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:32:30.50 ID:Su3Eyr5h
───

果南「デルカダールほどじゃないけど、ラムダも大樹が落ちた被害大きそうだね…」

花丸「うん、命の大樹に一番近いところだからね…」

梨子「前来たときは厳かって雰囲気だったけど、今は違う…」

梨子「みんな気分が沈んじゃってる感じだね…」

ルビィ「…あっち」

ルビィ「お姉ちゃんがいる…」

曜「何で分かるの?」

ルビィ「何でだろう?…でもお姉ちゃんを感じるんだ」
 
522: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:34:36.90 ID:Su3Eyr5h
鞠莉「静かな森ね…」

ルビィ「ここは昔よくお姉ちゃんと遊んでたとこなんだ」

善子「こんなところにほんとにダイヤちゃんがいるの?」

ルビィ「ここにいる気がするんだけど…」

ルビィ「お姉ちゃーん!」

果南「姉妹だからって、どこにいるかなんてわかるもんかな?」

千歌「あ、ねえ、あの木の裏側」

ルビィ「お姉ちゃん!」
 
523: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:37:35.52 ID:Su3Eyr5h
ルビィ「もう、こんなところで寝ちゃって…」

ルビィ「いつも寝るならベッドでってルビィのこと怒ってたお姉ちゃんらしくもない」

ルビィ「…」

ルビィ「お姉ちゃん?」

ルビィ「ほら、千歌ちゃんたちみんな無事だったんだよ?」

ルビィ「だからお姉ちゃんも…起きてよ」スッ

パァッ

ルビィ「…え」

ルビィ「お姉、ちゃ…ん?」
 
524: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:40:26.25 ID:Su3Eyr5h
花丸「消え…た?」

梨子「え、ダイヤちゃんはどこに…」

鞠莉「あのダイヤは幻…?」

善子「杖だけが残ってるわね…」

ルビィ「これはお姉ちゃんがずっと使ってた杖…」

ルビィ「置いたままどこかに行っちゃうなんてことないと思うんだけど…」

千歌「とりあえず、これだけでも持って帰らないとね」ヒョイ

キィィーン

千歌「わっ」
 
525: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:43:50.92 ID:Su3Eyr5h
ルビィ(お姉ちゃんの杖がルビィたちに見せてくれた…)

ルビィ(命の大樹が落ちた、あの時の様子)

ルビィ(お姉ちゃんの…記憶)

ルビィ(お姉ちゃんはルビィたちを助けるために、力を振り絞って…)

ルビィ(みんなをどこかに飛ばしてくれた…)

ルビィ(ルビィたちは運よく助かったんじゃない)

ルビィ(お姉ちゃんに…助けてもらったんだ)

ルビィ(だけどお姉ちゃん自身は…そのまま落下に巻き込まれて…)
 
526: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:46:54.84 ID:Su3Eyr5h
───

千歌「…ルビィちゃん」

ルビィ「…千歌ちゃん」

ルビィ「お葬式…しちゃったね…」

ルビィ「もう、お姉ちゃんはいないんだね…」

千歌「…」

ルビィ「ルビィは生まれた時からお姉ちゃんと一緒だったんだ」

ルビィ「お姉ちゃんはお姉ちゃんだから、魔法も何でもいつも先にできるようになってたけど…」

ルビィ「こんな時まで…先に…」

ルビィ「ずっと…一緒だと思ってたのに…」
 
527: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:51:33.22 ID:Su3Eyr5h
ルビィ「あの日の前の夜ね、お姉ちゃんに聞かれたんだ」

ルビィ「もしお姉ちゃんがいなくなっても、1人でも生きていくって約束できるかって…」

ルビィ「ルビィは…約束できなかった」

ルビィ「お姉ちゃんがいなくなることなんて考えたくなかったから」

ルビィ「最後に…お姉ちゃんに心残りを作っちゃったかな…」

ポワン

ルビィ「え…?」

千歌「この光…ルビィちゃんの中に…」

ルビィ「…このチカラは」

ルビィ「メラ」ボォッ

千歌「その魔法はダイヤちゃんの…」

ルビィ「お姉ちゃん…ルビィと一緒に戦ってくれるんだね…」

ルビィ「…」

ルビィ「私はもう、迷わない」

ルビィ「お姉ちゃんが残してくれたこの命とチカラを無駄にしないために!」
 
528: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:54:16.45 ID:Su3Eyr5h
───

ルビィ「おはよう、千歌ちゃん」

ルビィ「私より遅いなんてねぼすけだね」

千歌「…おはよう」

ルビィ「神の乗り物について調べるんでしょ?マルちゃんや梨子ちゃんはもう村の歴史書を読み始めてるよ」

ルビィ「さ、千歌ちゃんも行こうよ」

千歌「ルビィちゃん…無理しないでいいよ?」

ルビィ「千歌ちゃんこそ変な気を使わなくていいよ?」

千歌「でも…」

ルビィ「大丈夫。お姉ちゃんは…ずっと私の中にいるから」

ルビィ「お姉ちゃんのためにも、世界中の人たちのためにも、私たちは魔王を倒さなきゃいけない」

ルビィ「でしょ?」

千歌「ルビィ…ちゃん」

ルビィ「みんなにも普段通りにしてって言ってあるから。千歌ちゃんも、ね?」

千歌「…うん」
 
529: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 22:57:29.74 ID:Su3Eyr5h
───

花丸「千歌ちゃん、ケトスって聞いたことある?」

千歌「ケトス?知らないけど…」

花丸「だよね」

鞠莉「なになに、なんか見つけたの?」

花丸「ここに書いてあるんだけど…」

花丸「天高く空を翔けめぐる神の使い、聖なる調べに導かれ勇者の下に降臨す」

千歌「それがケトス?」

花丸「そうみたい」

果南「空を翔ける…神の乗り物ともつながるね」

善子「で、神の使いケトスを呼び出すのに聖なる調べってのが必要なわけ?」

梨子「聖なる調べ…何かの音楽ってことだよね?」

鞠莉「みんなで歌って踊ってみる?」

果南「そんなんでどうにかなるわけ…」

鞠莉「でも歌を歌うか楽器を奏でるかでしょ?」

鞠莉「勇者の千歌がやればきっと…」
 
530: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:00:11.17 ID:Su3Eyr5h
ルビィ「あっ!」

花丸「どうしたのルビィちゃん?」

ルビィ「そういえば、昔長老様に笛を見せてもらってことがあるの」

曜「笛…ってもしかしてこれのこと?」

ルビィ「そう、それ…なんで持ってるの!?」

梨子「曜ちゃんいつの間に…」

曜「そこの箱に入ってたんだ」

ルビィ「この笛はかつて勇者ツバサさんが使った笛だって言ってた!」

曜「はい、千歌ちゃん」

千歌「私?」

曜「千歌ちゃんが吹くんでしょ?」

梨子「そうだね。千歌ちゃんならきっと使えるよ」

千歌「前の勇者が使った笛…」

ピカッ

千歌「あっ」
 
531: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:03:23.57 ID:Su3Eyr5h
善子「笛から光が…!」

鞠莉「山の方に伸びているわね」

ルビィ「あそこは…ゼーランダ山の山頂?」

ルビィ「確か勇者の峰って呼ばれてるとこだよ」

花丸「勇者の峰?ツバサさんが何か関係あるの?」

ルビィ「あそこは勇者ツバサさんが邪神を…なんだっけ?」

善子「まあ今は由来はどうでもいいじゃない」

梨子「これは…その勇者の峰でこの笛を吹けばいいってことなのかな?」

花丸「わからないけど…偶然じゃないよ、きっと」

曜「とりあえず行ってみようよ!」
 
532: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:07:22.79 ID:Su3Eyr5h
───

鞠莉「さすがゼーランダの山頂、高いわね~」

梨子「まるで雲が海みたいだね…」

千歌「この笛を吹けば…」

千歌「…」

曜「どうしたの?」

千歌「私、笛とか吹いたことないんだけど、どうすればいいの?」

善子「何でもいいから、とりあえず適当に音を出してみればいいんじゃない?」

千歌「そう?」

カシャン

千歌「え?」

シューン

千歌「うわぁっ」

果南「笛が…釣り竿になった?そんなバカな…」
 
533: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:10:26.74 ID:Su3Eyr5h
千歌「えっと…これどうすればいいのかな?」

梨子「待つしかないんじゃないかな?」

梨子「千歌ちゃんの勇者の紋章も反応してるし、きっと何か意味があるんだよ」

千歌「って言っても…」

ビン

千歌「ひゃっ!」

鞠莉「なにか掛かったよ!」

善子「こんな山の上で何が釣れるって言うのよ!?」

鞠莉「知らないわよ!」

ルビィ「千歌ちゃん、引いてみて!」

千歌「う、うん!」
 
534: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:14:56.95 ID:Su3Eyr5h
千歌「ん~!」

果南「大丈夫?手伝うよ」

千歌「平気!別に重くはないから」

千歌「何か…すごい力が近づいてくる…!」

千歌「ぐっ…とりゃぁっ」

ゴゴゴゴ

善子「なんか出てきた!?」

曜「魚!?」

鞠莉「ってより…クジラ?」

ルビィ「なんて大きさ…」

梨子「一体どうなってるの…」
 
535: (もんじゃ) 2021/12/20(月) 23:20:03.85 ID:Su3Eyr5h
曜「空を泳ぐ白いクジラなんて、夢見てるとかじゃないよね?」

果南「私も信じられないけど…現実だよ」

花丸「これが神の乗り物…ケトス?」

千歌「うん。この子、ケトスだって言ってる」

梨子「え?何も聞こえないよ?」

千歌「チカの頭の中に声が響くようなかんじ…」

ルビィ「千歌ちゃんにだけ聞こえるのかな?」

千歌「背中に乗せてくれるってさ」

善子「乗るの?あれに?」

千歌「空からなら天空魔城に、魔王のところに行けるよね!行こう!」

───
──

 
538: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 21:48:38.26 ID:9lQwFgJu
善子「ケトスって不思議な乗り心地ね…まさに神の乗り物」

花丸「あれだけのスピードで空を飛んでるのに、乗ってる間は風もなく、ケトスの背中に吸い寄せられるように重力がある…」

花丸「いったいどんな原理ずら…」

ルビィ「神様の乗り物を人間の常識で考えてもしょうがないよ」

ルビィ「命の大樹だって、当たり前のように空に浮いてたんだから」

果南「それに、そんなこといったらここだってねぇ」

鞠莉「空に浮かぶ島…こんなところがあるなんてね」

鞠莉「空飛ぶケトスと言い、まだまだマリーの知らないことばっかり」

鞠莉「ほんと千歌といると退屈しないわね♪」
 
539: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 21:52:30.29 ID:9lQwFgJu
千歌「忘れてたよ…勇者の剣がない今、魔王ウルノーガの闇の力を祓う方法がないことを」

善子「まあ、天空魔城に入る前にバリアで門前払いされて気づけて良かったんじゃないの?」

果南「強力なバリアだったね」

果南「あれじゃウルノーガに近づくことすらできないよ」

千歌「勇者の剣の代わりになる…なにかを見つけないと…」

善子「そんなものどこにあるのかしらねぇ…」

曜「ところでここはなんなんだろう?」

梨子「神殿…かな?」

梨子「いろいろ壊れてはいるけど、真ん中の建物だけは綺麗な状態だね」
 
540: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 21:56:21.81 ID:9lQwFgJu
しずく「ここに人間が来るのはいつぶりでしょうか…」

曜「君は…ここの人?」

しずく「私はしずく。神の民と呼ばれるものです」

千歌「神の民?」

果南「何それ?」

しずく「ご存じありませんか。まあそれも無理はないでしょう」

しずく「神の民ははるか昔から世界を見守ってきた天空の住人です」

しずく「ここは神の民が住む里…」

しずく「しかし、魔王によって里の大半を落とされてしまいました…」

しずく「神の民も次々に亡くなり、もはや生き残りは…」

梨子「あなたが…最後の1人なんだね」

しずく「2人ですよ?」

梨子「え、でも…」

しずく「こちらの彼方さんは今は寝ているだけです」

善子「紛らわしいわ!」
 
541: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 21:59:46.36 ID:9lQwFgJu
しずく「この奥には聖なる種火が祀られています」

千歌「聖なる種火?」

しずく「はい、世界が誕生した時から燃え続けるという神聖な炎です」

しずく「あなたたちが来た時からその力が強まったのを感じます」

しずく「本来人間の手に触れるものではありませんが…勇者であるあなたならば問題ないでしょう」

曜「わかるの?千歌ちゃんが勇者だって」

しずく「はい、神の民の名はダテじゃありませんので」

しずく「魔王を倒すため、聖なる種火がどのように役に立つのかはわかりません。その手で確かめてみてください」

千歌「ありがとう、行ってみよう」
 
542: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:03:04.56 ID:9lQwFgJu
梨子「綺麗…」

花丸「これが世界創造の時から燃えていると言われる炎…」

ルビィ「外からでも感じたけど、近くで見るとすごい神々しいね…」

善子「だけどこれをどうしろって言うのかしら?」

善子「持ってけば魔王の闇を祓ってくれるとか?」

果南「持ってくったって炎をどうやって?」

善子「…さあ?」

曜「あ、また千歌ちゃんの勇者の紋章が反応してるよ!」

千歌「え?」

ピカッ
 
543: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:06:09.61 ID:9lQwFgJu
───

果南「今のは…」

ルビィ「前にオーブを捧げる祭壇が見えた時と一緒だ…」

ルビィ「勇者の紋章が見せてくれたんだ」

曜「3人の人がいたよね?」

千歌「うん」

曜「あの人…千歌ちゃんと同じ、左手にあざがあったよ」

梨子「ということはあの人が…」

千歌「前の勇者、ツバサさん…」

鞠莉「一緒にいた人があんじゅさんと英玲奈さん?」

千歌「空に浮かぶ島の中で何か鉱石を採ってたみたいだね」

千歌「この島なのかな?」

花丸「それから砂漠を背景に大きなハンマーを持ってたずら」

果南「あのハンマーの形は武器というより鍛冶用の物っぽいね」

鞠莉「砂漠ってことはサマディーが関係あるのかしら?聞きに行ってみる?」

曜「最後に大きな山…」

善子「あの山は見覚えあるわ。多分ホムラの近くにあるやつよ」

花丸「というと、ヒノノギ火山のことかな?」

梨子「その中で…何か鍛冶をしていたみたい?」

ルビィ「つまり、あの鉱石から何かを作ろうとしていたってこと…?」

果南「一体何を…」
 
544: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:10:47.51 ID:9lQwFgJu
千歌「…勇者の剣」

果南「千歌、何か言った?」

千歌「勇者の剣だったりしないかな?」

曜「そっか!ツバサさんたちも邪神と戦うのに特別な武器が必要だったんだ!」

曜「そのために鉱石をハンマーで鍛えて武器を作った」

梨子「それが本当なら、同じようにすれば私たちも…!」

善子「勇者の剣は魔王に取られた。だったらまた作ればいいってことね」

果南「ハンマーと鍛冶場はいいとして、まずは肝心の鉱石だよね」

花丸「神の民のしずくさんに聞いてみようよ」
 
545: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:13:54.42 ID:9lQwFgJu
しずく「なるほど、そのようなことが…」

しずく「しかし鉱石が採れる空の島ですか…ここはそのような話は聞きませんが…」

彼方「それは多分、天空の古戦場のことだねぇ~」

しずく「彼方さん?目覚めたのですか?」

彼方「おはよー、しずくちゃん」

善子「天空の古戦場って?」

彼方「ここから南西の方向にもう1つ大きな浮島があるんだよ」

彼方「そこはかつて特別な金属が取れる鉱脈があって、それを争って神の民と魔物たちの間で大きな争いがあった場所なんだ」

彼方「大きな戦いが繰り広げられた結果、いつの日かそう呼ばれるようになってたんだ」

鞠莉「あの映像はそこのことなのね」

彼方「だけどそれも昔の話。もう何年も誰も足を踏み入れてないって聞くんだけどね…」

ルビィ「もう採れないんですか?」

彼方「戦いの末に鉱脈は失われたって話は聞くけど、本当のところは誰にもわからないね」

千歌「じゃあ行ってみようよ!もしかしたらまだ残ってるかもしれない!」

彼方「今どうなってるか私も知らないから気を付けてね~…すやぁ」

梨子「寝ちゃった!?」
 
546: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:18:57.82 ID:9lQwFgJu
しずく「ところでその手に持っているものは?」

千歌「あー、これ?」

千歌「なんか、気づいたらこの器に火が入ってたんだよ」

千歌「最初に見た時は空だったと思うんだけど…」

しずく「その輝きは紛れもなく聖なる種火」

しずく「それは、聖なる種火があなたを選んだということでしょう」

しずく「ぜひお持ちください」

千歌「いいの?じゃあありがたく貰っちゃうね」

しずく「魔王討伐は私たちの願いでもあります」

しずく「命の大樹が復活すれば、生命の流れもよみがえる。神の民もいずれ再び栄えるようになるでしょう」

しずく「勇者様…どうかお願いします」

千歌「うん。絶対魔王を倒してくるよ!」
 
547: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:23:02.24 ID:9lQwFgJu
───

善子「ひ~…登ったり降りたり、落ちそうになったり」

善子「天空の古戦場のつくりはどうなってんのよ」

ルビィ「昔の人たちもこんな大変ないどうしてたのかな…?」

鞠莉「鉱脈があっただけあって、高く売れそうな貴金属はたくさん落ちてるけど、剣にできそうなものはないわねぇ」

果南「まだ先は続いてるけど一体どこまで…」

曜「ねえ、あそこ誰かいない?」

善子「はい?こんなところに人がいるわけ…」

鞠莉「…いるね」

梨子「何者なんだろう…」
 
548: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:25:54.44 ID:9lQwFgJu
ランジュ「あら、あなたたち。ぱふぱふしていかない?」

千歌「ぱふぱふ?」

ランジュ「そう、気持ちいわよ?すべてをランジュに委ねちゃいなさい♪」

千歌「ぱふぱふ…って何?」

ランジュ「知らないの?でも無問題ラ。すぐにわかるわ」

千歌「え、でも」

ランジュ「いいからいいから」

ランジュ「こっち、ついて来なさい」
 
549: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:30:50.94 ID:9lQwFgJu
曜「…行っちゃった」

ルビィ「いいの、ほっといて?」

果南「こんなところにいるなんていかにも怪しいはずなんだけど…」

鞠莉「なーんか悪い人じゃなさそうなんだよね」

花丸「邪悪な気配はまったく無いずら」

果南「まあ、ぱふぱふだし。千歌も知らないなら1回経験してみればいいんじゃないかな」

鞠莉「あら、果南は経験あるの?」

果南「…まあ」

鞠莉「あらあら、どこで経験したのかしらね?」

果南「別にいいでしょどこでも」

花丸「果南ちゃん…大人ずら」
 
550: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:34:38.43 ID:9lQwFgJu
ランジュ「じゃあ目をつぶってちょうだい」

ランジュ「ほら、緊張しなくていいのよ」シュル

ランジュ「力を抜いてリラックスして…」シュッ

ランジュ「きゃあっ、いい筋肉してるじゃない?たくさん旅をしてきた証拠ね」ギュ

ランジュ「大丈夫?きつくない?痛かったら遠慮しないで言ってね」ギュギュ

ランジュ「はい、準備できたわ。目を開けていいわよ♪」

千歌「…」

千歌「…え?」
 
551: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:38:01.34 ID:9lQwFgJu
ランジュ「ガッツで飛ぼうぜ、気分はヘブン!」

ランジュ「レッツぱふぱふカウントダウン!」

千歌「え、あの…」

ランジュ「3、2、1」

ランジュ「バンジーーーーー!」

千歌「わぁぁぁっっ!」

パフ~ン

パフ~ン

パフ~ンパフ~ン

パフパフ~ン
 
552: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:42:27.22 ID:9lQwFgJu
善子「…なにこれ」

ルビィ「千歌ちゃんがバンジージャンプしてる…」

花丸「確かにロープが伸縮する音がぱふーんって聞こえる気もするけど…」

曜「果南ちゃんもこれやったの?」

果南「おかしい…私の知ってるぱふぱふと違う…」

曜「でも面白そうだね。曜もやりたい!」

鞠莉「確かに。マリーも興味あるわ」

梨子「えぇ…ロープついててもこんな空から落ちるの怖くない?」
 
553: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:47:22.42 ID:9lQwFgJu
千歌「怖かった…」

果南「よしよし」

曜「あのランジュって人どこ行っちゃったのかな?」

曜「次、曜がお願いしようと思ったのに」

鞠莉「いつの間にか消えちゃったわね…残念」

善子「やっぱり人じゃない何かなのかしら?」

曜「もしかしてぱふぱふの精霊かなにかだったり…」

千歌「もういいよ…先に進もうよ」
 
554: (もんじゃ) 2021/12/21(火) 22:50:50.57 ID:9lQwFgJu
───

曜「でっかい鉱石が取れたね!」

果南「これは…私は見たことないよ」

果南「プラチナやミスリルよりももっと硬い」

花丸「まさか…オリハルコン!?」

梨子「え、オリハルコンってあの伝説の神の金属と言われる?」

花丸「マルも本でしか見たことないけど…この色、硬さ、輝きは多分…」

梨子「伝説上のものだと思ってたけど、本当にあったんだ…」

善子「それほどの金属が眠ってるなんてさすが天空の島ね」

果南「これを材料にするとなると、すごい剣ができそうだよ!」

ルビィ「勇者の剣に一歩近づいたね♪」

鞠莉「千歌がぱふぱふという名のバンジージャンプをした甲斐もあったわね」

千歌「それ絶対必要なかったやつじゃん」

───
──

 
557: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:31:09.75 ID:3fzBEKh2
ルビィ「サマディーも国全体が落ち込んでる感じだね…」

千歌「にぎやかなところだったのに…」

鞠莉「原因は、間違いなくあれでしょうね」

梨子「勇者の星…」

鞠莉「近づいてるって話は聞いていたけど、こんなに大きく見えるなんてね」

花丸「手を伸ばせば届いちゃんじゃないかって錯覚する近さずら」

ルビィ「勇者の星と言えば、ツバサさんが邪神を倒した後、ロトゼタシア全体を見守るために星になったって伝説があるけど…」

善子「あれがねえ…あの不気味さは見守るための存在には見えないんだけど」

梨子「これも魔王の誕生と関係があるのかどうか…」

曜「だんだん近づいてるってことは、このままだと落ちちゃうよね?」

果南「そうだね。そうなるときっとサマディーはデルカダールみたいになっちゃうかもしれない」

鞠莉「とはいえ私たちに何かできるかっていってもねぇ」

果南「なるべく早く魔王を倒すことだね」
 
558: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:34:28.43 ID:3fzBEKh2
鞠莉「さてハンマーのことだけど…」

鞠莉「あら?」

にこ「あんたの力が必要なのよ!」

ミア「いやだ。行きたくない!」

ルビィ「王女様だ」

鞠莉「ちょうどいいところに」

鞠莉「おーい、にこっちー!」

にこ「誰よ、私をそんな呼び方するなんて…」

にこ「あ、あんたたちは!」

鞠莉「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

にこ「ちょうどいいわ。手伝ってちょうだい」

にこ「お願いなら後で聞いてあげるから」
 
559: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:39:14.63 ID:3fzBEKh2
千歌「古代文字?」

にこ「そう。勇者の星の表面に文字が見えるでしょ?」

花丸「星の表面に文字…なかなか興味深い話ずら」

曜「うーん?ただの模様にしか見えないけどなぁ」

にこ「素人が見たらそうでも、学者に見てもらったら違うと思うのよ」

にこ「…ん?」

曜「なに?」

にこ「あんた、前千歌たちと会った時にはいなかったけど、どっかで会ったことある?」

曜「会ったこと…あるような、ないような…」

千歌「この子は曜ちゃん。デルカダールの王女だよ」

にこ「あー、思い出したわ!」

にこ「小さいころ、1回会ったことあるわね」

曜「サマディー…ああ、そうだ!」

曜「あの時会った王女はもっとお姉さんだったイメージだったからわからなかったや」

にこ「それはにこが成長してないって言いたいの?」

鞠莉「それより勇者の星のことでしょ?」
 
560: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:43:07.62 ID:3fzBEKh2
にこ「そうね、話を戻すわ」

にこ「どうやらあれは古代文字らしいんだけどね。ここからじゃ遠くて読めないから、このミアって子を連れてもっと近くで調べるのよ」

ミア「だからボクは行かないって言ってるだろう」

鞠莉「この子は?」

にこ「うちの期待の若手学者よ」

にこ「こんなんだけど、特に言語に関する知識はすでに相当なものなのよ」

梨子「へ~、すごいんだね」

ミア「まあね。ボクにかかれば古代文字を読むのくらい余裕さ」

にこ「というわけでミアの護衛をお願いしたいの」

ミア「あんないつ落ちるかわからない星にさらに近づくなんてどうかしてるよ」

にこ「いつ落ちるかわからないからこそ、調べられることは調べて、防ぐ方法を探したいのよ」

にこ「サマディーを守るために、あんたの力が必要なの」

にこ「お願い、ミア。力を貸してくれないかしら」

ミア「…そこまで言われたらしょうがない」

ミア「だけどあの辺りは狂暴なモンスターも多いと聞く。ボクは戦闘は全然だからしっかり守ってくれよ?」

千歌「大丈夫。私たちに任せて!」
 
561: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:47:14.95 ID:3fzBEKh2
───

果南「ここがちょうど勇者の星の真下か…」

曜「ここから見る勇者の星はさらに大きいね」

にこ「ここはバラクバ石群。昔からこんな感じの石で囲まれた儀式的な場所らしいわ」

梨子「勇者の星の真下にこんな場所…何か関係あったりするのかな?」

にこ「どう、ミア?読める?」

ミア「Wait a moment。遠くて見にくい」

ミア「くっ…もう少し近ければ」

ミア「ん…おお、だんだん見えてきたぞ」

ミア「あの文字は、えっと」

ミア「ニ、ズ、ゼ、ル…」

ミア「ファ?」
 
562: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:51:00.56 ID:3fzBEKh2
にこ「ニズゼルファ?なにそれ?」

ミア「さあ?ボクも聞いたことない言葉だ」

にこ「誰か知ってる?」

花丸「マルも初耳です…」

梨子「私も…」

にこ「うーん…誰も知らないか」

にこ「せっかく何かヒントになるかと思ったのに…」

にこ「まあいいわ、戻って詳しく調べましょ」
 
563: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 22:56:24.38 ID:3fzBEKh2
善子「ねえ…あの勇者の星さっきより大きくなってない?」

千歌「見間違いじゃないよ!近づいてる」

にこ「まさか、このまま落ちてくるの!?」

ミア「Damn it、だから来たくなかったんだ!」

鞠莉「みんな、逃げるわよ!」

曜「逃げるってどこに!?」

鞠莉「できるだけ遠くに、よ!」

善子「無理よ、逃げきれない!」
 
564: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 23:00:04.34 ID:3fzBEKh2
果南「見て、勇者の星の近く!」

千歌「誰か…いる?」

善子「空を飛んで…魔物?」

曜「あんなの見たことないよ!?」

シュッ

梨子「勇者の星に攻撃した!?」

カッ

鞠莉「まさか…!」

バァーンッ
 
565: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 23:03:35.20 ID:3fzBEKh2
千歌「星が…消えた?」

ルビィ「今のは一体…」

果南「星を壊すなんてとんでもない攻撃だよね」

花丸「あれは敵か、味方か…」

にこ「何言ってんの」

にこ「サマディーが守られたのよ?救世主に決まってるじゃない!」

にこ「これで一安心ね」

にこ「勇者の星がなくなっちゃったってのは少し気になるところだけど…サマディーのみんなの方が大事だもの」

にこ「さあ、お城に戻るわよ」
 
566: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 23:10:11.50 ID:3fzBEKh2
───

にこ「結局、勇者の星に書いてあったニズゼルファっていう言葉からは何も分からなかったけど、結果オーライね」

梨子「気にはなるけど…私たちは魔王を倒すのが先だよね」

にこ「それで、あんたたちもなんか用事があるんだっけ?」

千歌「あ、そうだった」

千歌「私たちハンマーを探してるの」

にこ「ハンマー?」

鞠莉「大きな黒い鍛冶用のハンマーで、なんか伝説っぽいすごいやつなんだけど…」

にこ「伝説…ねえ」

にこ「あ、そういえば宝物庫にそんなのがあった気がするわ」

鞠莉「ほんと?」

にこ「ちょっと待ってて」
 
567: (もんじゃ) 2021/12/22(水) 23:12:44.94 ID:3fzBEKh2
にこ「サマディーの国に昔から伝わるガイアのハンマーよ」

果南「これだ!」

曜「あそこで見たものと同じ!」

にこ「よくわからないけど、これが必要なのよね?」

にこ「お父様に許可は取ってきたわ。好きに使ってちょうだい」

千歌「ありがとう!にこさん」

にこ「あんたたち魔王を倒しに行くって話じゃない」

にこ「良い報告、待ってるわよ」

───
──

 
570: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:20:46.86 ID:0T4InFJy
鞠莉「ホットね~。さすが火山」

千歌「う~ん、だめだ。門に鍵がかかってるね」

果南「まあ、こんな立派な門がある時点で開いてても勝手に入るのはどうかと思うけど」

花丸「ヒノノギ火山は火の神様がいると言われているところらしいからね」

善子「管理してるのはホムラの里?開けてもらえるかお願いしに行かなきゃいけないみたいね」

千歌「ホムラと言えば蒸し風呂だね。まだあるかなぁ…」

鞠莉「なにそれ、マリーも入りたい!」

果南「そんなのんびりしていいのかな?」

鞠莉「汗臭さはレディーの敵よ。ほらほら早くいきましょう」

ルビィ「ホムラの里を治めているのは穂乃果さんって人だっけ。会うのはお風呂の後だね」
 
571: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:23:05.94 ID:0T4InFJy
───

穂乃果「ヒノノギ火山の鍛冶場?」

穂乃果「そんなのあったっけ?」

ルビィ「え、ないんですか?」

穂乃果「あ、ちょっと待って。どこかで見たような…」

穂乃果「えっと、こっちの本…?」パラパラ

穂乃果「あった!これかな?」

穂乃果「炎の山の頂にて聖なる種火を投げ入れし時、伝説の鍛冶場がよみがえるだろう…」

千歌「それだっ!」

千歌「私たちはそこに行きたいの!」

穂乃果「何のために?あそこは禁足地って言われてるんだよ」

穂乃果「人が入らないようにずっとふさいであるの」

千歌「魔王を、倒すために」

穂乃果「魔王…本当に倒してくれるんなら開けてあげたいところだけど…」

穂乃果「でも、ヒノノギ火山は今は…」

曜「なにかあるの?」

穂乃果「それは…」

穂乃果「…」
 
572: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:29:29.98 ID:0T4InFJy
「魔物が…人食い火竜がでたー!!」

穂乃果「…っ!」

千歌「人食い火竜?」

ルビィ「確か前にホムラを困らせてったっていう…」

善子「あれ、でも穂乃果さんが倒したって聞いた気がするけど?」

穂乃果「あの時の火竜は倒したよ」

穂乃果「でも…あれは…」ダッ

善子「火竜のところに行くつもりね」

果南「追いかけよう」
 
573: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:33:20.56 ID:0T4InFJy
「グルルァ!」

鞠莉「人食い火竜って呼ばれるだけはあるわね」

花丸「あんなのにかじられたらひとたまりもないずら」

果南「倒し損ねたのか、別のやつかは知らないけど」

果南「また出てきたなら倒すしかないよね」

穂乃果「待って」

果南「え?」

「グルルル…」

穂乃果「だめ」

穂乃果「お願い…戻って」

「グァルル!」ガシッ

穂乃果「きゃああっ!」

ルビィ「穂乃果さんが!」

曜「掴まれて飛んでっちゃった!」

果南「あっちはヒノノギ火山の方だね!門を開けてもらって取り返しに行かないと!」
 
574: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:39:07.89 ID:0T4InFJy
───

善子「見つけたわ、火竜!」

「グルル…」

鞠莉「ヒノノギ火山の奥、ここがあなたの巣ってわけ?」

ルビィ「穂乃果さんは…」

曜「あ、あそこ!」

花丸「ひどい怪我…!」

梨子「マルちゃん、回復手伝って!」

花丸「うん」
 
575: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:43:43.51 ID:0T4InFJy
果南「私たちはこの人食い火竜の退治だね」

曜「放っておくとまたホムラの人が襲われちゃう」

鞠莉「あそこで穂乃果が戦うのを止めさせた理由も気になるけど」

鞠莉「この状況じゃ黙ってるわけにはいかないもの」

千歌「これ以上、手は出させないよ!」

善子「梨子ちゃんたちの方に攻撃がいかにように気を付けてよ?」

果南「わかってるよ。できるだけ私が引き付ける!」

「グォォァ!!」
 
576: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:48:45.13 ID:0T4InFJy
───

果南「竜王斬り!」ズバン

「グギャァ…」バタリ

千歌「どうだ!」

鞠莉「穂乃果は?」

梨子「…」フルフル

千歌「そんな…」

花丸「傷が…深すぎたんだ」

花丸「回復呪文も効かない状態だった」

ルビィ「助け…られなかったの?」
 
577: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:53:24.00 ID:0T4InFJy
ピカー

千歌「なに?」

曜「火竜の中で何か光ってる…」

シュゥゥ

果南「女の子になった…?」

果南「一体どういうこと?」

梨子「多分…穂乃果さんの妹さんだよ」

千歌「どういうこと?」

梨子「亡くなる前に言ってたんだ。あの火竜は妹だって」

善子「人間が火竜になったってこと?」

梨子「詳しいことはわからないけど…そういうことだと思う」

鞠莉「そっか、だからあの時止めたんだ…」

果南「家族だから、手を出せなかった…」

善子「これ…どうすればいいのかしら」

鞠莉「ホムラに…知らせに行くしかないよね…」
 
578: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:57:19.99 ID:0T4InFJy
───

千歌「これで…よかったのかな?」

鞠莉「他にどうすればよかったっていうのよ…」

鞠莉「あの場では火竜を倒すしかなかったじゃない」

梨子「穂乃果さんの手記を見せてもらったけど、難しい話だよね」

梨子「人食い火竜は倒したけど、最期に吐いた瘴気による呪いで妹さんが火竜になってしまった…」

梨子「真実を映すというやたの鏡なら呪いを解けるかも…と試したけど、うまくいかない」

梨子「やたの鏡の力を完全に発揮させるためには、ラーのしずくというアイテムが必要らしい」

曜「やたの鏡は火竜の姿から戻る時に体の中で光ってたあれだよね」

善子「あれは穂乃果さんが持ってたもの。どこかのタイミングで火竜に食べられたんでしょうね」

ルビィ「そして、多分弱らせたおかげでやたの鏡の力が効いてくれたんじゃないかな…」

果南「この事情を知ってたとしても、私たちもラーのしずくを持ってないから結局火竜を倒すしかできなかったし…」

花丸「人の姿で最期を迎えたことをせめてもの救いにするしか…」
 
579: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:01:11.97 ID:0T4InFJy
千歌「…うん」

千歌「これ以上犠牲者を出さないためにも、魔王を倒しにいかないとね」

果南「そうだね。起きちゃったことはどうしようもないけど…」

果南「これから起きることを防ぐことはできる」

鞠莉「ホムラのことはこの国の人たちに任せて、私たちは私たちにできることをするだけ」

梨子「火竜を倒したお礼ってわけじゃないけど、禁足地の入り口の鍵ももらえたし」

善子「あんな熱い火山の中なんて何度も行きたいとこじゃないけどね」

曜「勇者の剣を作るために必要なことだもん」

曜「伝説の鍛冶場があるって言う禁足地、さっそく行ってみようよ」
 
580: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:05:12.46 ID:0T4InFJy
───

善子「本当にここで合ってるの?」

善子「ただの火口にしか見えないんだけど…」

果南「一体どこに鍛冶場が…」

梨子「確か、聖なる種火を投げ入れるって言ってたっけ?」

千歌「これだよね?」

千歌「種火が反応してる…」

ルビィ「やっぱりここで合ってるんだね」

千歌「えーいっ」ポイ

曜「これで何が起きるんだろう?」

ゴゴゴゴ

曜「うわぁ!」
 
581: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:08:58.63 ID:0T4InFJy
鞠莉「びっくり!マグマの中から鍛冶場が出てきたわ」

曜「これもあの時見た映像と同じだね」

梨子「昔の勇者たちが剣を作った伝説の鍛冶場…」

善子「なんとなく感じる…とんでもないものができそうな雰囲気ね」

花丸「素材となるオリハルコンと、鍛えるためのガイアのハンマー」

ルビィ「そして作業をする場所」

ルビィ「全部神の民の里で見た通りだよ」

果南「さあ千歌、私たちも勇者の剣を作ろう!」

千歌「うん!」
 
582: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:13:23.71 ID:0T4InFJy
千歌(鍛冶なんてやったことないのに…)カン

千歌(どこをどう叩けばいいかがわかる)カン

千歌(ガイアのハンマーが叩き方を教えてくれてるんだね)カーン

千歌(一振り一振り、オリハルコンに力が込められていく…)キン

千歌「ふぅ…」

果南「千歌、代わるよ」

千歌「え、でも…」

果南「勇者だけじゃなきゃ作れないってわけじゃないでしょ?」

果南「神の民の里で見た時も、ツバサさん以外の2人も打ってたし」

果南「私も一緒に作りたいんだ」
 
583: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:17:44.99 ID:0T4InFJy
鞠莉「あ、果南ずるーい」

鞠莉「マリーだってやりたいわ」

善子「ここまで一緒にやってきたんだし、最後まで手伝わせなさいよ」

ルビィ「千歌ちゃんには仲間がたくさんいるんだよ」

梨子「私たちも力になりたいの」

花丸「マルも力は少ないけど、思いを込めるよ」

曜「みんなで力を合わせよう!」

千歌「みんな…ありがとう!」
 
584: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 23:20:56.36 ID:0T4InFJy
───

善子「これでいいのかしら?」

千歌「剣の形にはなったけど…」

ルビィ「千歌ちゃん、持ってみて」

千歌「うん」スッ

千歌(手にしっくりくる…こんな剣初めてだ)

ピカー

梨子「千歌ちゃんの紋章と剣が反応してるよ」

千歌「勇者の剣に…チカラを!」

ピシャン

花丸「わっ!」

善子「雷!?」

ルビィ「千歌ちゃん大丈夫!?」

千歌「うん、あの雷が剣にパワーをくれたんだ」

果南「刀身が光って…」

千歌「勇者の剣…完成だよ!」

───
──

 
587: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 20:43:51.34 ID:bo6J/Id+
果南「いよいよ魔王の城、天空魔城に乗り込むときだね」

梨子「ただでさえ空に浮いていて普通の人は届かないのに…」

花丸「神の乗り物、ケトスの力を借りても、バリアがあって中には入れない」

鞠莉「ガードが堅いにもほどがあるわね」

ルビィ「でも、勇者の剣を持った千歌ちゃんならきっと…」

千歌「うん。今なら届くよ」

千歌「行くよ、ケトス」

曜「魔王の城に突入だー」
 
588: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 20:46:14.39 ID:bo6J/Id+
千歌「勇者の剣よ、力を貸して!」シュッ

パリーン

曜「おおっ、バリアが消えた!」

梨子「これで天空魔城に入れるね」

善子「さあ魔王のアジトよ」

善子「どんな敵や罠があるかもわからない、慎重に行くわよ」

梨子「よっちゃんがそれ言っても…」

鞠莉「ヨハネは割とつっぱしったり、ドジしちゃうタイプなのにね」

善子「う、うるさい!」

善子「せっかく気合を入れてるのにさ」

果南「でも、まあ実際さ、まだ残ってる六軍王とかもいるかもしれないし」

果南「用心するに越したことはないよね」

善子「そうそう、果南ちゃんの言う通り」
 
589: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 20:48:23.83 ID:bo6J/Id+
「そこまでだ」

鞠莉「誰!?」

「貴様らが我が同胞を破ってきた勇者と仲間たちだな」

「我が名は邪竜軍王ガリンガ」

「この天空魔城の門を預かる身として、これ以上ウルノーガ様に近づけさせるわけにはいかぬ」

善子「あ、あんたは…」

曜「知ってるの?」

善子「私が前に戦ったやつよ」

「む、そこの小娘は…」

「あの状況で生きていたのか…まあどうでもよい」

「この場で全員血祭りにあげてやろう!」
 
590: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 20:53:19.15 ID:bo6J/Id+
ルビィ「守りを固めるよ、スクルト」

鞠莉「曜、攻めるわよ!バイキルト!」

「無駄だ…青の衝撃」シュン

梨子「魔法での強化が…消された?」

千歌「そんな…」

曜「だったらそのまま攻撃を…!」

「ふん、その程度」

「食らえ、我が必〇剣!」シュイン、ズババン

果南「あれはヤバイっ」ガガガッ

果南「ぐぅっ」

「む…防御に徹したとはいえ、我が剣を受け切って倒れぬとは…」

果南「さすがにきついねこれ…」フラッ
 
591: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 20:57:16.68 ID:bo6J/Id+
善子「こっちの番よ、パワフルスロー!」

鞠莉「極竜打ち!」

「その程度の攻撃で攻略できると思うか!」

鞠莉「ふん、私たちにはチームワークがあるのよ」

曜「隙ありっ、しんくうげり!」

「ぐっ」

鞠莉「体勢を崩したわ!」

梨子「消されないよう攻撃の直前に、ルカニ」

ルビィ「バイキルト」

善子「千歌ちゃん、決めちゃいなさい!」

千歌「食らえ、ストームスラッシュ!」シュバッ

「ぐぁぁっ…」

曜「どうだっ」
 
592: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:01:26.76 ID:bo6J/Id+
「まさか私が人間に敗れるなんて…」

「これが、勇者の力か」

「だが、いくらあがこうとももう遅い…世界は魔王様のものだ…」

千歌「そんなことさせないよ!」

善子「魔王も倒して、平和な世界を取り戻すんだから」

「ぐっ…」ガクン

ルビィ「…あ、ブルーオーブだ」

梨子「これで六軍王も5人目だね」

果南「最後の1人は…おそらく…」
 
593: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:04:32.34 ID:bo6J/Id+
───

「ひっく…ぐす…」

曜「誰か…泣いてる?」

果南「まさか。こんなところに人間なんているわけないし」

花丸「あ、あそこにいるのって!」

ルビィ「お姉…ちゃん?」

「この声は…ルビィ?」

「ああ、よかった。みんなもいる」

千歌「ダイヤちゃん…」

善子「嘘でしょ?」
 
594: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:09:33.84 ID:bo6J/Id+
「千歌ちゃん、会いたかったわ」

「それでね、あなたにお願いがあるの」

「今すぐ…死んでくれないかな」

千歌「え…」

「あなたたちを守ったせいで私は死んでしまったの」

「それなのにあなたたちは生きている。それって不公平だと思わない?」

「私はもっと生きていたかったのに…」

「あなたたちのせいで…」

「だから…命をもって償ってちょうだい!」
 
595: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:14:24.69 ID:bo6J/Id+
ルビィ「違う」

ルビィ「こんなのお姉ちゃんじゃない」

「ルビィ、何を言っているの?私はダイヤよ」

ルビィ「お姉ちゃんは自分の選択を決して後悔していない」

ルビィ「私のお姉ちゃんの姿で、声で、変なこと言わないで」

ルビィ「消えて」

「ああ、あああ…!」シュー

ルビィ「…」
 
596: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:17:14.41 ID:bo6J/Id+
絵里「ふふ…さすがにこんなのは効かないか」

果南「絵里…なんだよね」

絵里「久しぶりね、果南」

果南「その姿は…」

絵里「どう、この身体、この魔力。強そうじゃない?」

絵里「ウルノーガ様の力でこうなったのよ」

果南「賢くて、可愛かったのに、そんな魔物の姿になっちゃって…」

果南「やっぱり…あんたが最後の六軍王なんだね」

絵里「そう、今の私は魔軍司令絵里よ」

絵里「果南、今ならあなたなんてひねりつぶせるわ」
 
597: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:20:49.40 ID:bo6J/Id+
絵里「勇者千歌と仲間たちよ」

絵里「まさか六軍王がみんなやられるとは思わなかったわ」

絵里「だけどこの先はウルノーガ様がいらっしゃる場所。ここらでご退場いただきましょう」

善子「悪いけどそのウルノーガに用があるのよ」

絵里「まあ、そうでしょうね」

絵里「だからあなたたちを倒して、ウルノーガ様への供物とするわ。シルバースパーク!」バチン

果南「あぁっ!」

花丸「大丈夫?ベホマラー」
 
598: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:26:09.64 ID:bo6J/Id+
果南「どうして、こんなことに…」

絵里「どうして?」

絵里「あなたのせいよ」

果南「私の?」

絵里「そう。あなたはデルカダール騎士団に入った途端、どんどん頭角を現して」

絵里「気づいたら私と同じ立場になっていた」

絵里「人々の話題に上がるのはみんな果南のことばっかり」

絵里「私は影になっていった…」

絵里「私は…あなたのようになりたかった…」

絵里「でも…ウルノーガ様は私のことを認めてくれる」

絵里「ここが私の居場所!」
 
599: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:33:36.53 ID:bo6J/Id+
曜「違うよ!」

曜「絵里ちゃんも果南ちゃんも同じくらいみんなからほめられてた!」

曜「デルカダール自慢のコンビだって!」

曜「お願い、絵里ちゃん、元に戻って!」

果南「私は騎士団に入ってから、ずっと絵里の背中を追ってきた」

果南「絵里が、私の光だったんだよ!」

絵里「果南…」

果南「だから、絵里…」
 
600: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:37:46.56 ID:bo6J/Id+
絵里「ああ…あぁぁ」

絵里「今すぐこいつらを〇せ」

絵里「違う…わたしは…」

絵里「私はウルノーガ様の」

絵里「わたし、は…デルカダールの…」

果南「何…言ってるの?」

曜「元の絵里ちゃん?」

ルビィ「自分の中で2つの心が戦ってるんだ…」

果南「絵里!戻ってきて!」

絵里「もう戻れない。私は魔軍司令」

絵里「い…や」

絵里「私は力を求め、人を捨てた」

絵里「弱き心は消してしまおう」
 
601: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:43:45.38 ID:bo6J/Id+
絵里「かなん…おねがい…わたしを、ころし…て」

絵里「邪魔をするな」

絵里「わたしが…きえちゃう、まえに…」

果南「でもっ…」

絵里「はや、く…人の、こころが…あるうちに…」

果南「…っ」

果南「雷神むそう!」バババン

絵里「ありが…とう…」

絵里「みんな…ごめんなさい…」カクン

果南「…」

曜「…」

花丸「…この人もかすみちゃんと同じ、負の感情をウルノーガに利用されたんだろうね」

鞠莉「出てきたのはシルバーオーブ…全部そろったね」

梨子「六軍王は全員いなくなった」

善子「残るは、ウルノーガ1人」

千歌「…行こう。全部、終わらせよう」
 
602: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:47:12.59 ID:bo6J/Id+
───

「来たか…勇者よ」

「我こそは、全世界の王、ウルノーガ」

千歌「…」

「…気に入らん」

「なぜ希望などという下らぬ幻想にすがるのか」

千歌「違う、幻想なんかじゃない!」

千歌「希望があるから、みんな明日に向かうんだ!」

「…そうか。勇者の存在が希望か」

「ならば貴様らを倒し、世界中を絶望に染めてやろう」
 
603: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:51:28.56 ID:bo6J/Id+
「パープルシャドウ」

曜「増えた!?」

果南「まさかゾルデと同じ技を…」

曜「これどうすればいいの!?」

果南「分身の方から一斉に片付けちゃおう!」

曜「おっけー。タイガークロー!」

ルビィ「メラゾーマ!」

梨子「ドルモーア!」

鞠莉「アモーレショット!」
 
604: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:54:02.05 ID:bo6J/Id+
「ふん、分身が消えようとも…シルバースパーク」

千歌「ギガスラッシュ!」

シュパン

千歌「どうだ!」

「我が技を相〇…」

「そうか、勇者の剣…城のバリアを突破できたのはそれか」

「だが…紛い物。我が魔王の剣こそ真に大樹の力を込めた物」

千歌「これは私たちの思いを込めた剣なんだ!」

千歌「本物にも負けないよ!」
 
605: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 21:57:41.72 ID:bo6J/Id+
「ならば力の元を奪ってやろう、ギガマホトラ」

花丸「これは、魔力が吸われる…!」

梨子「もしかして六軍王の技を全部使えるって言うの?」

「六軍王は我が力を分け与えたもの。我がその力を扱えるのは当然だろう?」

ルビィ「祈りよ届け…女神の息吹」

梨子「魔力が戻ってくる…ありがとうルビィちゃん!」

「邪魔な小娘め、ゴールドアストロン」

果南「おっとルビィ危ない」ピキン

ガシャン

果南「盾が金色にコーティングされちゃったなぁ…」

果南「でも攻撃のパターンがわかってれば、対応もできるよ」
 
606: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:01:17.73 ID:bo6J/Id+
「これは回避できまい。クリムゾンミスト」

鞠莉「この霧の中は動きにくいから、ダメージを受けやすくなるよ!」

花丸「だったら防御を固めれば…マジックバリア」

ルビィ「スクルト」

「ならば青の衝撃」シュゥッ

梨子「やっぱりそう来るよね…」

「強化魔法など無駄なこと」

鞠莉「攻撃パターンはそれで終わり?」

「甘く見るな。まだ手はいくらでも…」
 
607: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:03:03.64 ID:bo6J/Id+
「む、1人いない…?」

善子「油断したわね」

善子「アサシンアタック!」グッ

「いつの間に背後に…!」

千歌「今だっ!」

千歌「ギガデイン!」ビシャン

「ぐぁっ…」ガク

「我に、膝をつかせるとは…」

千歌「どうだ!このまま…」
 
608: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:07:13.58 ID:bo6J/Id+
「だが、我が力はこんなものじゃない」

「我こそは万物の頂点、魔王ウルノーガなり!」

カッ

鞠莉「な、なに…」

ルビィ「魔王の剣の力が強くなってく…」

ドシュ

曜「お城の天井が吹っ飛んだ…」

曜「これ、ヤバそうじゃない?」
 
609: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:10:31.69 ID:bo6J/Id+
善子「待って待って。何あの姿」

花丸「人と竜、2つの顔と上半身、それをつなぐ竜のような長い身体…」

梨子「これまでのどの魔物より大きい…」

果南「本格的に化け物だね…」

鞠莉「あれがウルノーガの本気だっていうの!?」

「忌まわしき勇者どもよ…」

「我が手によって永遠の闇に堕ちるがいい!」

鞠莉「頭が2つあるなら二手に分かれましょう!」
 
610: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:16:20.55 ID:bo6J/Id+
千歌「人型の方は任せて、つるぎのまい!」

果南「千歌に続くよ、蒼天魔斬!」

「イオナズン」

果南「ぐっ…」

鞠莉「このくらいならファイトよみんな!そ~れ、ハッスルハッスル~♪」

果南「サンキュ、鞠莉」

ルビィ「魔法でくるなら、マジックバリア!」

鞠莉「ガンガン攻めるわよ、ゆうしゃのまい!」
 
611: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:19:44.36 ID:bo6J/Id+
善子「こっちの竜っぽいほうはヨハネたちが!」

曜「いっけぇー、ゴールドサイクロン!」

善子「煌めけ、シャインスコ…」

ガブ

善子「きゃあぁぁっ!」

梨子「うそ…よっちゃんが、食べられた…」

曜「このっ、吐き出せ!ウィングブロウ!」ガシガシ

梨子「マヒャド!」

ペッ

善子「あぅっ」

花丸「大丈夫!?」

善子「おえっ…丸呑みでまだ助かったわ…」

花丸「毒が回ってるね…キアリー」

善子「くっ、お返しよデュアルカッター!」
 
612: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:24:54.52 ID:bo6J/Id+
───

千歌「はぁっ、はぁっ…」

鞠莉「だいぶダメージは与えたはずだけど…」

曜「2体が集まったよ!」

果南「どうする気…?」

「地獄陣」

鞠莉「なに…?」

善子「…これは!」

善子「…ジバリア系よ、足元に気を付けて!」

梨子「え!?」

ドドン

梨子「いやぁぁっ!」
 
613: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:29:33.05 ID:bo6J/Id+
千歌(ウルノーガの地獄陣で体勢を崩され)

千歌(それに合わせて2体とも攻撃をくりだしてきた)

千歌(上と下からの同時攻撃に防御も回復も追いつかなくて…)

千歌(みんなはだんだん倒れていった…)

千歌「そんな…」

「ドルモーア」

千歌「ああぁっ!」ガク

「勇者たちよ…止めを刺してやろう」

「そして世界をわが手に…」
 
614: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:33:49.44 ID:bo6J/Id+
ルビィ(お姉ちゃん…)

ルビィ(私たち、ここまでなの?)

ルビィ(…違うよね?)

ルビィ(お姉ちゃんが諦めなかったから今のみんながある)

ルビィ(最後まで、できることを…!)

ルビィ「ラムダの祈りよ…みんなに届け」スゥー

千歌「まだ…」

果南「私たちは…負けない!」

梨子「そう、だね…」

鞠莉「こんなところで終わってられないわ」

善子「私たちは勝つ」

花丸「信じてくれるみんなの為に」

曜「世界に平和を取り戻すんだ!」
 
615: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:36:49.69 ID:bo6J/Id+
「まだ立ち上がる気力があるか…だがその傷ついた身体で何ができる」

「終わりだ、ジゴスパーク」

果南「攻撃は通さない!パラディンガード!」

「どこからその力が…!」

花丸「癒しの力よ、ベホマズン!」

ルビィ「ありがとう、マルちゃん」

鞠莉「向こうも弱ってるはず」

曜「千歌ちゃん、いける?」

梨子「私たちの力、受けとって!」

善子「正義の雷を轟かせちゃいなさい!」

千歌「うんっ!」
 
616: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:40:40.19 ID:bo6J/Id+
千歌「みんなの力を1つに!ジゴデイン!」ズガン

「ぐぁぁぁっ…!」バタン

千歌「はっ、ふぅ…」

梨子「終わった…の」

曜「ウルノーガを…魔王を倒したんだよね」

鞠莉「これで、世界は…」

ガラガラ

善子「…!」

善子「お城が崩れるわ!」

鞠莉「急いで逃げるわよ!」

千歌「待って。あっち!」

果南「え、でもそっちは…」

果南「あ、ケトスが来てる!」

千歌「飛び乗るよ!」
 
617: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:45:33.99 ID:bo6J/Id+
鞠莉「全員いる…よね?」

千歌「うん、逃げ遅れた人はいないよ」

曜「見て、天空魔城から!」

ルビィ「命の大樹だ…」

ルビィ「大樹の魂を取り込んだウルノーガが倒されたことで復活したんだ…」

梨子「綺麗に葉っぱが茂っていく…」

花丸「これでまた命が廻るようになるよね?」

果南「絵里は葬ってあげられなかったけど…これならいつか…」

善子「さあ、帰りましょう」
 
618: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:50:21.47 ID:bo6J/Id+
───

エマ「千歌ちゃん、果南ちゃんおかえりー」ギュー

千歌「エマちゃーん、チカやったよ!」ギュッ

果南「平和に出来たよ!」ギュ

せつ菜「おめでとうございます!」

果南「せつ菜もハグする?」

せつ菜「あ、いえ、えっと…」

せつ菜「お願いします!」

果南「おー、前のせつ菜なら断ってそうなのに」ギュ

せつ菜「…エマさんで慣れました」

エマ「せつ菜ちゃん抱き心地いんだもん♪」

果南「わかる」

千歌「えーそうなの?じゃあチカも!」

せつ菜「ちょっと、みんなで一斉に来ないでください!」
 
619: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:53:40.90 ID:bo6J/Id+
曜「お父…さん」

「曜…久しぶりだな」

曜「…うん」

「…」

曜「…」

果南「…あー、えっと」

果南「王様、私たちはあっちに行ってますね」

果南「親子でごゆっくり」

果南「せつ菜、これからデルカダール復興でまた忙しくなるよ!」

せつ菜「はい!」
 
620: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 22:57:31.59 ID:bo6J/Id+
───

真姫「本当に魔王まで倒しちゃうなんてね」

歩夢「クレイモランを2回も助けてくれるだけじゃなくて、世界まで救っちゃうなんてすごいね」

かすみ「さっすがヨハ子」

真姫「もう全盛期の私でも勝てないかもね」

かすみ「…あれ、ヨハ子とけんかしたらかすみん勝てない?」

真姫「手も足も出ないでしょうね」

かすみ「ひえっ…」

善子「そもそもかすみんと殴り合いのけんかなんてしたことないでしょうが」
 
621: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:01:32.10 ID:bo6J/Id+
歩夢「あなたはこれからどうするの?」

歩夢「かすみちゃんと一緒にここで暮らしてもいいけど」

善子「私は…宝探しの旅に行くわ」

歩夢「宝探し?」

善子「まだ世界には行ったことのない場所があって、見たことのない宝物があるかもしれないから」

かすみ「かすみんも行きたい!」

かすみ「あ、でも…」チラ

歩夢「いいよ、別に行っても」

かすみ「いいんですか?」

歩夢「黄金病もなくなって人も戻ってきたし、かすみちゃんがいなくても大丈夫だよ」

真姫「逆に言うと帰ってきても仕事はないわね」

かすみ「えぇ~…それは…」

歩夢「あはは、かすみちゃんのコッペパンはすごくおいしかったから、国の人たちに食べてもらうためにもやってほしいことはあるよ!」

かすみ「あーん、歩夢様すきすき!」
 
622: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:05:13.78 ID:bo6J/Id+
───

花丸(希さん。お久しぶりです)

花丸(勇者様にお供して魔王を倒すお手伝いをしてきました)

花丸(マルの力がどのくらい役に立ったのかはわからないけど…世界は平和になりました)

花丸(命の大樹も復活して、命の輪廻がつながりました)

花丸(希さんは命の大樹のもとへ行けましたか?)

花丸(生まれ変わってまたどこかで会えるといいですね)

花丸(マルはこれからはドゥルダの郷を守っていきます)

花丸(希さんのような立派な人になれますように…)
 
623: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:08:52.43 ID:bo6J/Id+
───

「アイドルってのも、なかなかいいものだな」

鞠莉「いきなりどうしたのパパ?」

「あの子たちの活動を毎日のように見てて感じたんだ」

「私は何も知らずに反対していた。」

「今度、鞠莉のライブも見せてくれないか」

鞠莉「ええ、もちろん!」

「そうだ、どうせなら庭の一部をステージにしよう。鞠莉もあの子たちも好きに使えるように」

鞠莉「パパ…ありがとう♪」
 
624: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:11:20.57 ID:bo6J/Id+
───

梨子「お父さん、お母さん…ユグノアのみんなの仇は取りました」

梨子「これで…ちょっとは安心できるかな?」

梨子「…いつかちゃんとしたお墓も作ってあげないとね」

梨子「おじいちゃんやみんなの分も一緒に」

千歌「チカの両親のお墓もどこかにあるんだよね?」

梨子「うん、王家の人のお墓は埋もれちゃったと思うけど」

千歌「…この壊れちゃったお城の跡も綺麗にしなきゃだね」

梨子「私たちだけじゃ手が足りないけど、これまでの旅で世界中の人たちと知り会えたからね」

千歌「みんなの力を借りられればそのうちに…」
 
625: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:14:30.11 ID:bo6J/Id+
梨子「ねえ、千歌ちゃん」

千歌「なに?」

梨子「王様になる気はない?」

千歌「ほえ?」

梨子「私はこの場所にユグノアを復興したいと思ってるの」

梨子「国を作るなら王が必要でしょ?」

千歌「でも王様なら梨子ちゃんでも…」

梨子「元々千歌ちゃんがユグノアの王女だったんだし、なにより世界を救った勇者じゃない」

千歌「王様かぁ…」

梨子「まあ、先の話だから。今は考えておいて」
 
626: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:19:03.28 ID:bo6J/Id+
───

ルビィ「お姉ちゃん…見ててくれたよね」

ルビィ「ルビィたち、勝ったんだよ」

ルビィ「お姉ちゃんが守りたかったもの…みんなで守れたんだ」

ルビィ「ほら、見える?」

ルビィ「ラムダからまた命の大樹がきれいに見えるようになってるよ」

ルビィ「たくさんの犠牲は出ちゃったけど、たくさんの人が生き残った」

ルビィ「まだやり直すことはできる」

ルビィ「だからこれからも、ルビィたちを見守っていてね…」

───
──

 
627: (もんじゃ) 2021/12/24(金) 23:22:25.67 ID:bo6J/Id+
to be continued
 
632: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:34:23.35 ID:GWwUOS/Q
千歌「ギガバースト!」シュドン

「お見事です」

「まさかここまでやるなんてね」

「聖なる雪の試練をクリアする人が出てくるとは思いませんでした」

「姉さまは手加減を知らないから…」

鞠莉「あなたたち何者なの?」

鞠莉「魔王クラスの強さじゃない」

「私たちが何者かなんてどうでもいいことです」

「さて、約束通り願いを1つかなえましょう」

「何でも言って」

千歌「本当に何でも叶うの?」
 
633: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:37:34.57 ID:GWwUOS/Q
千歌(魔王を倒して平和になった世界で私たちはそれぞれの道を進んでいた)

千歌(そんなある日、よっちゃんがグロッタの南で宝探しをしていた時に見つけたという古文書)

千歌(そこに書いてあったのは、聖なる雪の試練というもの)

千歌(なんでも、試練をクリアしたらどんな願いでもかなえてくれるらしい)

千歌(それが本当だったらもしかして…)

千歌(そんな都合のいい話がそうそうあるわけないなんてわかってる)

千歌(でも希望があるならそれに賭けてみたかった)

千歌(みんなも同じ考えで、そうして試練にやってきた)
 
634: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:41:41.51 ID:GWwUOS/Q
「私たちにできることに限られますが、人間の願いなら大抵は叶います」

「お金持ちになりたいですか?」

「あるいは意中の人との幸せな生活?」

「または…」パサッ

「姉さま、何か落とした」ヒョイ

「あっ…」

「この本…」

「こ、これは私のものではありません!」

「拾っただけで…捨てるのもどうかと思って処分に困っていただけです!」

「あ、この本が欲しいというなら差し上げますよ?」

千歌「え、いや、それは別に…」
 
635: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:46:36.49 ID:GWwUOS/Q
ルビィ「ねえ、あの本ってなんなの?」

ルビィ「2人の女の人がキス…してる表紙だったけど…」

ルビィ「それに、服も脱げてて…」

鞠莉「う~ん…まあいわゆるオトナの本…ね」

鞠莉「ルビィもそのうちわかるようになるわよ」

善子「こんな試練を出す人たちにしては意外な趣味ね」

「だから私のじゃないと言っているでしょう!」

「姉さま、いいの。私はそういうの拒否はしないから」

「あなたまで!」

花丸「この人たち…意外と俗物的なのかな?」
 
636: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:51:24.46 ID:GWwUOS/Q
「…こほん」

「ではあらためて…あなたは何を望みますか?」

お金持ちになりたい!

強い武器が欲しい!

人気アイドルになりたい!

○○と結婚したい!

エ チな本が欲しい!

時間を戻したい!
 
637: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:53:44.10 ID:GWwUOS/Q
千歌「私は…」

千歌「時間を戻したい」

千歌「世界を命の大樹が落ちる前から…ううん、できればユグノアがなくなっちゃう前からやり直して犠牲者を減らしたい」

「時間を?」

「それは…世界の理に反する…」

梨子「やっぱり無理…ですか」

「…確かに私たちではできません」

「しかしあの場所なら…」

「姉さま、だけど…」

「いいの。この方たちなら正しく使ってくれるでしょう」
 
638: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 13:57:49.62 ID:GWwUOS/Q
「これを持っていきなさい」

善子「…歯車?」

「これはあるところの入り口を開ける鍵」

「命の大樹の北、翼を持たぬ人が立ち入れない地に塔があるのを知っていますか?」

鞠莉「そんなところに塔なんてあったっけ?」

梨子「でもあったとしても、人が入れない場所なんじゃないの?」

「あなたたちは空を飛ぶ手段を持っているはず」

千歌「そっか、ケトスなら…!」

「その塔に行けば、あなたたちの願いも叶うかもしれません」

ルビィ「本当ですか?」

「断言はできない」

「私たちも使ったことはないから」

果南「行ってみないとわからないってことか…」

曜「でも可能性はあるんだ」

千歌「ダイヤちゃんや他の人を助けるために!」
 
639: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 14:01:20.88 ID:GWwUOS/Q
───

曜「誰が作ったんだろうね、この塔」

果南「人の技術じゃまず無理だよね」

果南「しかもだいぶ昔からあるみたいだし」

ルビィ「いきなり床が動き出したのはびっくりしたよ」

鞠莉「普通の人が来れないところにある塔だけあって、不思議なしかけね」

梨子「上がったり下がったりするあの浮いてる床はどんな魔法で動いてるんだろうね?」

鞠莉「神の民とかが関係するのかも?」

梨子「確かに。神の民の里も浮いてたもんね」

善子「ヨハネたち意外に生き物の気配もないわね…」

花丸「誰もいないこの塔…時間を戻すための何があるのか…」
 
640: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 14:05:53.70 ID:GWwUOS/Q
善子「何あの縦長のスライムみたいなの?」

「わたしは、時の番人」

果南「番人…って何者なの?」

「わたしはなにものでもありません。ただ時のながれをみまもるだけ…」

ルビィ「あの…ここで時間を過去に戻せるって聞いたんですけど…」

「そこにある、時のオーブをこわせば、せかいの時をもどすことができるでしょう」

千歌「じゃあ…!」

梨子「ユグノアが襲われる前にっ」

「ですが、もどれる時間には、かぎりがあります」

「さかのぼれるのはおそらく、命の大樹がおちたあの日のまえまで」

梨子「そんな…」

千歌「でも、命の大樹が落ちる前までは戻れるんだね?」

「おそらくは、できるでしょう」

「しかし、いちど時をもどすと、もうここにはかえってこれません」

「そして、時のはざまからぬけだせず、永遠にさまようことになるかのうせいもあります」

「あなたたちは、それでも時をもどしますか?」
 
641: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 14:10:07.59 ID:GWwUOS/Q
千歌「…ねえみんな」チラ

善子「別に迷うことじゃないわね」

ルビィ「お姉ちゃんが死なない世界を作れるなら」

鞠莉「より多くの人が明るく過ごせるように」

梨子「ユグノアは戻せない、それでも…」

曜「デルカダールを守れる道を」

果南「絵里だってもしかしたら…」

花丸「希さんもきっと…」

千歌「うん、みんなの気持ちは1つだよ!」

「…いいでしょう。では、こちらへ」
 
642: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 14:14:00.99 ID:GWwUOS/Q
善子「だけど、時を戻すなんて世界を変えかねないことが時のオーブを壊すだけでできちゃうなんてね」

善子「私たちが言うのもなんだけど悪用されないかしら?」

花丸「この塔に入るのに鍵が必要だったでしょ?」

花丸「マルたちも試練の結果もらったから、入れる人は限られるんじゃないかな」

善子「でも逆に言えば鍵さえあれば誰でもできちゃうってことじゃない?」

「時のオーブをこわすことができるのは、せかいをかえるかのうせいのあるおおいなるチカラのみ」

「そう、あなたの勇者のチカラです」

千歌「私の?」

「わたしのチカラではこれをこわすことは…」

鞠莉「あなた、時のオーブを壊そうとしたことあるの?」

「わたしは…?なにをいっているのでしょう」

「わたしは時の番人。ただ時のながれをみまもるもの」

鞠莉「…?」
 
643: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 14:18:08.64 ID:GWwUOS/Q
「時の番人のなのもとに、あなたたちを過去へとみちびきます」

「勇者よ、そのつるぎで時のオーブをこわすのです」

千歌「…」

千歌(ウルノーガに負けたあの日の前に)

千歌(今度は好きなようにはさせない)

「いまこそ、過ぎ去りし時へ」

千歌「はぁっ!」カキン

ピシッ

───
──

 
644: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 21:54:22.74 ID:GWwUOS/Q
千歌「ここは…」

ダイヤ「あら?なんだかみんな急に雰囲気が…」

千歌「ダ…」

ルビィ「お姉ちゃーん!」ダキッ

ダイヤ「ちょ、ちょっとルビィ?」

ルビィ「お姉ちゃん会いたかったよ!うわーん」

ダイヤ「一体どうし…」

ダイヤ「っ…!」

ダイヤ「これは…ルビィの記憶…」
 
645: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 21:58:30.74 ID:GWwUOS/Q
ダイヤ「そう…」

ダイヤ「みんなはウルノーガがこれから起こすことを防ぐために過去に来たのね」

千歌「それとダイヤちゃんが死なないようにするためにね」

善子「話が早いのは楽でいいんだけど、まさかルビィと記憶を共有するなんて…」

鞠莉「これも姉妹の絆ってやつなのね~」

梨子「それじゃすまないレベルの気が…」

花丸「2人はあんじゅさんの生まれ変わりだからね」

梨子「それなら納得…?」
 
646: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:01:14.77 ID:GWwUOS/Q
ダイヤ「だけど自分がしてないことが記憶にあるどころか、自分のお葬式まで見るなんて…不思議な感覚ね」

ルビィ「え、えっと…私、変なこと記憶にないよね?」

ダイヤ「大丈夫よ。あなたの旅の経験と、私に対する思いばかりだから」

ルビィ「よかった…」

ダイヤ「…それにしても、大人になったわね」

ルビィ「そうかな?」

ダイヤ「これならもう、私が居なくても1人で大丈夫そう…」

ルビィ「だめっ!」

ダイヤ「え!?」

ルビィ「お姉ちゃんはずっと私と一緒だもん!」

ダイヤ「それは…困ったわね」
 
647: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:04:48.29 ID:GWwUOS/Q
ルビィ「あ、お姉ちゃんのこの魔法の力、返すね」

ダイヤ「そのまま持っててもいいわよ?私はこれから自分で身に着けるから」

ダイヤ「ルビィができたことだもの。私にだってきっと…」

ルビィ「いいの。私とお姉ちゃんはお互いの苦手なことを補ってくから」

ダイヤ「そう?」

ルビィ「んー…えいっ」ポン

ダイヤ「…魔力が高まるのを感じるわ」

善子「ルビィがダイヤちゃんの魔法を使えるようになったのも驚いたけど、そんな簡単に返そうと思って返せるものかしらね?」

花丸「2人はあんじゅさんの生まれ変わりだからね」

梨子「2回目…?」
 
648: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:07:59.36 ID:GWwUOS/Q
鞠莉「さて、感動の再開も済んだところで」

鞠莉「マリーたちがこの時間に戻ってきた目的は忘れてないよね?」

曜「もちろん!命の大樹を落とされる前にウルノーガを倒しに行くんでしょ?」

善子「相手の手の内もわかってる。ヨハネたちも強くなった。今度は防ぐわよ」

千歌「果南ちゃんとマルちゃんもいるし、絶対勝てる!」

梨子「その果南ちゃんの姿がさっきから見えないんだけど…?」

千歌「えっ?」

曜「ほんとだ…何で?」

曜「果南ちゃんだけ別のところに飛ばされるとかある?」

千歌「まさか、時空の挟間に…」

花丸「それは多分違うと思うよ」

曜「どうしてわかるの?」
 
649: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:12:06.81 ID:GWwUOS/Q
花丸「ここはラムダ。今はマルと千歌ちゃんたちが初めて会った時なんだと思う」

鞠莉「そっか、その時は私たちは7人だった…」

曜「今は果南ちゃんはいないんだ」

千歌「じゃあ果南ちゃんはどこに…」

梨子「あの時は命の大樹で後ろからつけてきてたよね?絵里さんとデルカダール王と一緒に」

ダイヤ「それなら始祖の森へ、命の大樹の近くへ行きましょう」

ダイヤ「向こうから見つけてもらうのを待つしかないけれど、目的地が同じならどこかで会えるはず」

千歌「果南ちゃん、大丈夫かなぁ…」

鞠莉「マリーたちと違って向こうは一人。しかも敵と一緒だもんね」

鞠莉「変なことして怪しまれてなければいいけど」
 
650: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:15:33.22 ID:GWwUOS/Q
───

果南「え、絵里!?」

絵里「どうしたの急に?」

果南「え、いや、なんでも…」

絵里「もしかして居眠りでもしてた?」

果南「あー、いやー…そうかも?」

絵里「…しっかりしなさい」

絵里「あなたが悪魔の子を尾行するのについてくるって言ったんでしょ?」

果南「そうだったね、うん、ごめん」
 
651: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:19:23.74 ID:GWwUOS/Q
果南(絵里がいる…ってことは過去に来れたんだ)

果南(千歌たちはいない?私だけ?)

果南(えーっと…ここはラムダの近くか)

果南(そうか、絵里と一緒に千歌たちを追ってるところだ)

果南(つまり、このままだと…)

果南(命の大樹で私は後ろから王様に化けたウルノーガに襲われ)

果南(そのままウルノーガが大樹の魂を奪う)

果南(それを防ぐために私たちは過去の戻ったんだ)

果南(そのためには…)
 
652: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:23:40.45 ID:GWwUOS/Q
果南「…」キョロキョロ

絵里「どうしたの?急に周り見だして」

果南「…いや、変な気配がした気がしたから」

絵里「魔物?私は特に感じないけど…」

果南「気のせいだったかな…」

果南(ウルノーガはまだ近くにいない?)

果南(どのタイミングで絵里を止めればいいんだろう)

果南(というかすでにウルノーガの影響を受けてる状態なんだよね?)

果南「…」ジー

絵里「さっきからずっと変よ?」

絵里「幼馴染が気になるのはわかるけど、私の邪魔はしないでよね」

果南「…それは」

絵里「待って、悪魔の子たちが祭壇に着いたわ…!」

果南(千歌…!)
 
653: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:27:45.53 ID:GWwUOS/Q
絵里「なるほど…ああやって大樹への道が開けるのね…」

絵里「後はあの子たちを追いかけて大樹の下へ…」

果南(確か絵里は黒いオーブを持ってて、それで攻撃を無効化してた…)

果南(だったらそれを奪っちゃえばいいよね)

果南(その後千歌たちと協力すれば、絵里を止めるのは難しくないはず…)

果南(さて、どこに持ってるか)

果南(こういうのを隠し持てるとしたら…)

果南「そこだっ!」

絵里「きゃっ」

絵里「果南、何を!?」

果南(盗った!)

果南(あとはこのまま千歌たちと合流して…!)タタタッ
 
654: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:32:50.41 ID:GWwUOS/Q
絵里「待ちなさい!」

千歌「果南ちゃん!そこにいたの?」

果南「千歌っ、これ壊して!」ポイ

千歌「オッケー!」ブン

パリン

絵里「あっ…」

絵里「果南!あなた裏切るのね!?」

果南「ごめん、だけどウルノーガとつながってる絵里は動きを封じるしかないんだ」

絵里「何でそれを…!」

鞠莉「今よ、捕まえるわ!」

曜「よしっ」

絵里「くっ…」
 
655: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:36:17.79 ID:GWwUOS/Q
千歌「出てこい、ウルノーガ!」

善子「デルカダール王に化けてるのはバレれてんのよ!」

「やはり我が正体に気づいていたか…」

曜「お父さんを返して!」

「もはやこの姿に意味はない」スルリ

「今ここで、勇者のチカラを奪い、命の大樹の魂を我が物としよう」

千歌「させないよ、たぁっ」ブン

「ふん…無駄なことよ」

ピキッ

「なにっ、我が闇のバリアが…」

「その剣はまさか…しかしいつの間にそんなものを」

ダイヤ「ルビィ、行くわよ!」

ルビィ「うん!」

ダイヤ「クロスマダンテ!」

ドドドン

「ぐぅぁぁっ!」
 
656: (もんじゃ) 2021/12/25(土) 22:40:53.94 ID:GWwUOS/Q
「ばかな…そんな力…どこから…」

千歌「私たちは魔王になったあんたを倒してきたんだ!」

「魔王…?もしや…そうか、そういうことか」

「だが…我を倒して終わりだと…ぐふっ…」バタリ

ルビィ「勝った…」

善子「当然だけど…魔王の姿よりはあっけなかったわね」

花丸「ルビィちゃんとダイヤちゃんの魔力を合わせた奥義はすごいからね」

梨子「これで…全部終わったんだよね?」

千歌「うん、私たちはウルノーガに勝った」

千歌「命の大樹も落とされずにすんだんだ!」

───
──

 
658: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:21:13.22 ID:Zqrotu/B
善子「あの後、デルカダールに戻って王様が元気になるまで待って」

ルビィ「正式に千歌ちゃんが勇者だって認められたね」

果南「だけど王様との話はちょっとちぐはぐになっちゃったね」

果南「ここは時間を巻き戻した世界。私たち以外はウルノーガが魔王になっちゃった記憶はないんだからね」

鞠莉「他の人に会うときも気をつけないと」

花丸「それで、今はどこに向かって飛んでいるの?」

千歌「わかんない。ケトスが呼んでる気がしたから笛を吹いたんだけど…」

梨子「この方向は…神の民の里?」
 
659: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:23:43.37 ID:Zqrotu/B
ダイヤ「ここが神の民の里…」

花丸「本来はこんなきれいなところなんだね」

しずく「お待ちしてました。勇者様」

しずく「私はしずくと言います。神の民と呼ばれる一族の者です」

しずく「…あら?私のことを知っているかのような表情ですね」

千歌「え?えっと…」

しずく「まあいいでしょう。ついてきていただけますか」

しずく「あなたにお話ししたいことがあります」
 
660: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:27:48.01 ID:Zqrotu/B
しずく「彼方さん、起きてください」

しずく「勇者様たちが来ましたよ」

彼方「ん…むにゃ…しずくちゃん、おはよ~…」

彼方「おや~…君たちとは夢の中であったような…?」

彼方「じゃあしずくちゃん、勇者ちゃんたちに話をしてもらえるかな」

彼方「邪神…ニズゼルファのことを」

梨子「ニズゼルファ!?」

花丸「それって勇者の星に書いてあった…!」

しずく「ご存じでしたか?」

千歌「名前だけは…」

千歌「教えて、ニズゼルファって何なの?」
 
661: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:32:15.66 ID:Zqrotu/B
しずく「かつて邪神ニズゼルファというものが命の大樹の力を狙い、このロトゼタシアを攻めてきました」

しずく「それに対抗するために大樹が生み出したのが勇者…ツバサさんです」

しずく「ツバサさんはあんじゅさん、英玲奈さんとともにニズゼルファとの戦いに勝ちました」

しずく「しかし…それ以降の記録が残ってないのです」

果南「勇者が邪神を倒して終わりということじゃなくて?」

しずく「…1つ、わかっていることがあります」

しずく「人間たちが勇者の星と呼んでいるあの星…あれはニズゼルファを封じたものなのです」

ダイヤ「なんですって!?」

しずく「ニズゼルファは完全に消えてはいない。封印された状態でいつも私たちの上にあるのです」

梨子「そんな…勇者の星はツバサさんを象徴するものだと思ってたのに…」

しずく「なぜ邪神を封じたものが勇者の星と呼ばれているのかはわかりません」

しずく「しかし、新たな勇者…千歌さんの誕生には意味があるはずです」
 
662: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:36:51.00 ID:Zqrotu/B
彼方「勇者が再び誕生したということは、邪神の復活が近いんだと思う」

鞠莉「…そういえばサマディーで邪神が復活したら勇者が倒すとか言ってたわね?」

ダイヤ「ええ。つまり千歌ちゃんの本当の使命は…」

果南「ウルノーガじゃなくて、ニズゼルファを倒すこと…」

花丸「いつ邪神が復活するんですか?」

彼方「それは悪いけど分からないなぁ…」

彼方「私たちに言えるのは、復活に備えてほしいということだけ」

彼方「邪神ニズゼルファは強い。多分この世界のどの生き物よりも」

千歌「そんな敵に…私が勝てるのかな?」

彼方「勇者のチカラは邪神を倒すカギになる」

彼方「そのチカラを強めるのは君の思いとみんなとの絆だよ」

千歌「思いと絆…」

彼方「1人じゃ勝てなくても、仲間の…ううん、世界中のみんなの力を合わせればきっと勝てるって信じてるよ」

彼方「もし私たちの方でも何かわかったら教えるし、できることがあれば手伝うけど」

彼方「これまで関わった人たちと会ってくるのもいいんじゃないかな」
 
663: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:41:23.20 ID:Zqrotu/B
ダイヤ「邪神についてはまだわからないことが多いのね…」

花丸「そういえば、勇者の星は前に落ちそうになって、壊されたよね?」

鞠莉「あの壊した者のシルエット…ウルノーガに似てなかった?」

梨子「そういえば…」

梨子「あれがウルノーガだとすると、勇者の星…ニズゼルファが邪魔だからウルノーガは星を壊したってこと?」

千歌「じゃあ私たちも先に壊しちゃえばいいんじゃないの?」

ダイヤ「あんなに高いところにあるのよ?ケトスでも届かないんじゃないかしら」

善子「あの時は落ちてきてたから直接壊せた…」

善子「何か勇者の星が落ちる原因があるってこと?」

ルビィ「でもそれもわからないし…」
 
664: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:44:40.34 ID:Zqrotu/B
ダイヤ「結局、様子を見るしかないってことね…」

果南「勇者の星に警戒しつつ、とりあえず世界を見て回るしかないかな」

鞠莉「それでもし邪神ちゃんが復活しちゃったら倒しに行く!それだけよ」

曜「よし、じゃあどこから行こうか?」

ランジュ「またぱふぱふしに来てもいいわよ!」

千歌「え?」

曜「千歌ちゃんどうしたの?」

千歌「今、何か…」

千歌「気のせいかな?」
 
665: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:49:39.47 ID:Zqrotu/B
しずく「待って下さい!」

善子「どうしたの?」

しずく「彼方さんから…これを渡してきてほしいと」

しずく「ラーのしずくです」

曜「ラーの…しずく?」チラ

しずく「あ、私とは関係ないですよ」

しずく「これは神の民の里で採れる神聖な水。あなた方に必要だと彼方さんは言っていましたが…」

ルビィ「ラーのしずくと言えば、ホムラの里の!」

善子「そっか、今ならまだ間に合うのね!」

しずく「何か使い道に心当たりがあるようですね…」

千歌「ありがとう!」
 
666: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:52:18.35 ID:Zqrotu/B
───

ルビィ「穂乃果さん!」

穂乃果「え、なになに急に!?」

ルビィ「これ、ラーのしずくです。妹さんを助けるのに必要なんですよね?」

穂乃果「何でそれを…!」

穂乃果「ううん、理由は何でもいいよ」

穂乃果「これであの子を助けられるなら!」

穂乃果「行ってくる!」

ダイヤ「私たちも追いかけましょう」
 
667: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:57:03.88 ID:Zqrotu/B
穂乃果「これがやたの鏡の本当の形…」

穂乃果「ラーのしずくのおかげですごい輝いてるよ」

穂乃果「これで…お願い、戻って!」

ピカー

「ん…」

「お姉…ちゃん?あれ、私…」

穂乃果「うわーん、よかったよぉ~…」ダキツ

「ちょ、お姉ちゃん泣きすぎ…」

穂乃果「だって…」
 
668: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 12:59:36.51 ID:Zqrotu/B
「そっか…私、火竜になっちゃってたんだね」

穂乃果「そう、この人たちが助けてくれたの」

「見ず知らずの私たちにわざわざありがとうございます」

ルビィ「いえ、家族を亡くすのは悲しいですから」

穂乃果「あなたも家族を…?」

ルビィ「あ、いいえ。今は生きてます、ここに」

ダイヤ「ルビィ、よくわからないことを言わないの」

穂乃果「…?」

穂乃果「ともかく妹を助けてくれてありがとう!」

穂乃果「あなたたちに困ったことがあったら力になるよ!」
 
669: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:03:04.13 ID:Zqrotu/B
───

花丸「希さん!」ギュ

希「おおぅ、どうしたんマルちゃん?」

希「ラムダにお使いに行っただけなのに、ドゥルダに戻ってくるのにやけに時間がかかってるから心配してたんだけど…」

希「会って早々抱き着いてくるなんて」

花丸「あ、それは、その。ごめんなさい…」

希「ふーむ…そこの勇者ちゃんが関係あるようだね?」

希「…よくわからないけど、どうやらマルちゃんも勇者千歌ちゃんも長い旅をしていたようだね」

希「うん、マルちゃんが望むなら勇者の使命が終わるまで一緒にいてあげなさい」

花丸「はい!」
 
670: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:06:40.41 ID:Zqrotu/B
───

かすみ「戻った…動けるよ!」

善子「よかったわね、かすみん!」

かすみ「体が金に変わっていったときにはどうなっちゃうかと思ったけど、すぐ元に戻れてよかったよ」

善子「…」

かすみ「あ、れ…すぐじゃない?」

かすみ「よく見たらこの部屋ほこりが積もってるし」

かすみ「ヨハ子もなんか強そうなオーラ出しちゃってるし」

善子「…ごめんなさい。戻すのに時間がかかって」

かすみ「ううん、かすみんが変な力を使いすぎたせいだから…」

かすみ「あー、でもせっかくお金持ちになれると思ったのに、またバイキングにこき使われる生活が始まっちゃうのかー…」

善子「…ヨハネはまだやることが残ってるけど、この戦いが終わったら一緒にトレジャーハントの旅に出ない?」

かすみ「ヨハ子…」

かすみ「いや、やめてよ。そういう変なフラグみたいなの」

善子「あら?」
 
671: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:10:27.54 ID:Zqrotu/B
栞子「ヨハネさん、かすみさん!」

かすみ「あ、しお子!」

栞子「ご無事でしたか…いろんな噂を聞いて心配していたんです」

かすみ「そっか…ごめんね」

栞子「クレイモランには…お買い物ですか?」

かすみ「うん、久しぶりにコッペパンを焼こうと思ってるんだ」

かすみ「よかったらしお子も食べる?」

栞子「良いんですか?でしたらうちの教会のキッチンを使ってください」

かすみ「ありがと!バイキングのアジトじゃ料理するのも大変だからね」
 
672: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:14:11.04 ID:Zqrotu/B
曜「あ、よっちゃん。かすみちゃんも無事戻せたんだね」

善子「まあね」

かすみ「この人ヨハ子の知り合い?」

善子「ええ、旅の仲間よ」

曜「何この良い匂い!」

かすみ「あ、今コッペパン作ってるところです。よかったら食べますかぁ?」

曜「いいの?食べる食べる!」

かすみ「作りすぎちゃったんで、そちらの人たちもどうぞどうぞ」

歩夢「ありがとう。あむ…おいしい!」

真姫「あら、ほんとね」

かすみ「そうでしょう、そうでしょう。女王様のお口にも会う自信がありますから」

歩夢「うん、これなら毎日でも食べたいくらいだよ」

かすみ「ん?」

善子「この人、クレイモランの女王様」

歩夢「歩夢です」

かすみ「え、えぇ~!」
 
673: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:18:43.16 ID:Zqrotu/B
───

絵里「私はこの程度の罰で済んでいいのかしらね…」

絵里「謹慎と降格だけ…私のやったことはデルカダールの国家転覆を謀ったにも等しいのに」

果南「それはウルノーガの洗脳のせいだってわかってるし」

果南「そんなこと言ったら王様からして罪人になっちゃうじゃん」

果南「まあ王様も責任を取る形で、曜に王位を譲る準備をしてるところなんだけど」

果南「しかしあの曜が女王ねえ…」

絵里「なかなか不安なところもあるけれど…執務に関してはせつ菜とかがサポートしてくれるでしょ」

果南「私は?」

絵里「デスクワークに向いていると思う?」

果南「うーん…あんまり」
 
674: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:21:43.91 ID:Zqrotu/B
せつ菜「果南さん、絵里さん。ちょっと手伝っていただけますか?」

絵里「新しい軍師のお出ましね」

果南「昇進してから忙しそうだね。なにすればいいの?」

せつ菜「こちらの兵士たちの配属なんですが…」

絵里「せつ菜」

せつ菜「はい、何かいい意見ありますか?」

絵里「私はいつかまた、軍師の立場を取り返して見せるわ」

せつ菜「…はい、私も負けませんよ!」
 
675: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:25:23.89 ID:Zqrotu/B
───

エマ「千歌ちゃん、久しぶり!」

エマ「私だよ!幼馴染のエマだよ!」

千歌「うん、久しぶり…?」

エマ「千歌ちゃんがデルカダールに向かって旅立った時以来でしょ?」

エマ「その間勇者は悪魔の子だとかなんとか大変だったんだから」

千歌「そっか…そうだったね」

エマ「そしたら急にデルカダールの王様が偽物で、千歌ちゃんは本物の勇者だって噂が聞こえてきて…」

エマ「千歌ちゃんが帰ってくるの待ってたんだよ」

千歌「待たせてごめんね」

エマ「果南ちゃんは?一緒じゃないの?」

千歌「デルカダールのお城の方でお仕事が忙しいんだって」

エマ「そっかぁ…」
 
676: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:28:14.37 ID:Zqrotu/B
エマ「千歌ちゃんはずっとイシの村にいてくれるの?」

千歌「…まだ少し、やらなきゃいけないことがあるんだ」

エマ「そう…なんだ」

エマ「千歌ちゃんは勇者だもんね。私の知らない使命があるんだろうね」

千歌「それとね、ユグノア…私の生まれた国のこともあるし…」

エマ「本当はユグノアの王女だったんだっけ?」

千歌「うん、成人の儀式の日に渡されたこのネックレス…これが繋げてくれたんだ」

エマ「あ、一緒にあるそのお守り…」

千歌「これ?エマちゃんがくれたやつ…だいぶボロボロになっちゃったね」

エマ「大事にしてくれたんだね…」

エマ「貸して。直してあげるよ♪」

エマ「またいつでもこの村に帰ってきていいからね」

千歌「うん!」
 
677: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:31:22.08 ID:Zqrotu/B
───

愛「やあやあ、久しぶりー」

愛「グロッタに何か用?」

千歌「愛ちゃん、どうしたのその恰好?」

愛「なんかさ、町長が急にカジノを作るとか言い出してね」

愛「それで闘技場が作り替えられちゃったから、アタシたちは武闘会で稼ぐこともできなくなっちゃったんだよね」

愛「だからバニーガールになったってわけ」

愛「どう、似合ってる?」

曜「うん、すっごい似合ってるよ!」

愛「さんきゅー♪」

愛「まあカリンと新しくディーラーコンビでやっていくよ」
 
678: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:35:14.97 ID:Zqrotu/B
善子「しかし、見事なぼんきゅっぼんね」

千歌「確かに」

果林「ふふ、見とれちゃった?」

善子「べ、別に?」

果林「あら、そう」

果林「ついでだからカジノ遊んでく?」

善子「…遠慮しとくわ。どうせ当たんないし」

曜「私はやりたい!」

千歌「チカも!」

果林「はい、お客様ご案内~」
 
679: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:37:50.91 ID:Zqrotu/B
───

ルビィ「ねえ、あっちでイベントやるみたいだよ!」

鞠莉「ほんとね、行ってみましょうか」

花陽「おやおや、マリーさんじゃないですか!」

花陽「ダーハルーネに来たということは、今日デビューライブのあの子たちのことを見に来たんですか?」

鞠莉「え?ここに来たのは偶然だけど」

鞠莉「…そっか。こっちではちゃんときれいにスタートできるのね」ポツリ

ルビィ「鞠莉ちゃん知ってるの?」

花陽「あの子たちは期待大ですよ。ぜひ前の方で見ましょう!」
 
680: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:42:04.62 ID:Zqrotu/B
かのん「みなさん、来ていただきありがとうございます!」

千砂都「私たちは、今日…」

可可「あー!」

かのん「ど、どうしたの可可ちゃん?」

可可「あなたはもしかしてマリーさん!?」

鞠莉「あら、バレちゃった?」

すみれ「前に話してた可可が憧れてるって人?」

可可「はい、まさか見てもらえるなんて…!」

鞠莉「今日は楽しませてもらうわよ♪」

恋「これは一層頑張らなくてはいけませんね」
 
681: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:45:04.79 ID:Zqrotu/B
ルビィ「よかったね、あの子たち」

鞠莉「デビューにしてはなかなかのものよ」

ルビィ「鞠莉ちゃんはまたアイドルに戻るの?」

鞠莉「うん。この旅が終わったらそうするつもり」

鞠莉「ダーハルーネで復活ライブってのもいいかもしれないね」

璃奈「そうしてくれるなら嬉しい」

鞠莉「あら、璃奈」

璃奈「この前の悪魔の子騒ぎで海人コンテストがなくなっちゃったから、次のイベントで人を集められる何かが欲しいところ」

ルビィ「鞠莉ちゃんがライブするならみんなで見に行くよ!」
 
682: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:47:54.16 ID:Zqrotu/B
───

にこ「聞いたわよ!あんた勇者なんですってね」

千歌「もう知ってるの?」

にこ「私はサマディーの王女なのよ?その程度の情報は掴んでるに決まってるじゃない」

にこ「そんな千歌と友達になれてわたしも鼻が高いわ!」

ミア「Hmm…これが勇者ね…」

にこ「ああ、この子はミア。うちの期待の学者よ」

にこ「実はね最近勇者の星が明るくなった気がするから、調べてもらってるの」

千歌「勇者の星が…明るく?」

にこ「他の人に聞いてもいつもと変わらないって言うのよね」

ミア「ボク何が違うのかはわからないよ」

千歌「…」

にこ「ま、何かわかったら教えるわ」

千歌「うん、お願い」
 
683: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:50:09.73 ID:Zqrotu/B
───

海未「先ほどはことりと凛を助けていただきありがとうございました」

海未「あなたたちが来なければあのまま魔物に…ということも」

千歌「うん、間に合ってよかったよ」

果南「へぇ~…ここが海底王国ムウレアか…」

果南「サンゴがきれいですごいいいところだね!」

海未「そう褒めてもらえると嬉しいですね」

凛「そんなに気に行ったならお魚になって泳いでみない?」

果南「えっ?もしかしてさっきの子?」

ことり「そうだよ。海ちゃんの力で一時的にお魚さんの姿になってるんだ」

果南「そんなことできるの?」

海未「ええ、まあ」

凛「この姿も慣れたら楽しいにゃ!」

海未「あなたも魚になってみますか?」

果南「やりたい!」
 
684: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:53:18.82 ID:Zqrotu/B
海未「千歌、あなたは魚になる体験はしなくてよかったのですか?」

千歌「うん…私はいいや」

海未「そうですか…」

海未「ところで勇者の星でしたね」

千歌「うん」

海未「申し訳ないですが、私もあれについては詳しくありません」

海未「ただ…近頃あの星からよくない気配を感じます」

海未「それが邪神というのであれば、勇者に託すしかないでしょう」

千歌「そっか…」

海未「力になれずすみません」
 
685: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 13:56:32.78 ID:Zqrotu/B
果南「千歌ー!すごいよこの姿。こんなに速く泳げる!」

ことり「果南ちゃんうまーい。もうことりよりも速いかも」

凛「凛も負けてられないにゃ!」

千歌「果南ちゃんすごいはしゃいでるね?」

梨子「あはは、こんな果南ちゃんは初めて見たかも」

千歌「ねー。普段お姉ちゃんみたいなのに」

梨子「でもこういうのも新鮮でかわいいかも」

ことり「気に入ったならいつでも来ていいよ♪」

───
──

 
686: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:03:46.76 ID:Zqrotu/B
千歌「いよいよ曜ちゃんがデルカダールの女王になっちゃうんだね」

鞠莉「あの子で大丈夫なのかしらね?」

梨子「まあ、果南ちゃんや絵里さんはもちろん、せつ菜ちゃんも優秀だから問題ないとは思うよ」

「ではこれより、曜をデルカダール王に任命す…」

フッ

ルビィ「な、なに!?」

ダイヤ「空が赤く…?」

鞠莉「みんな、こっち!」

鞠莉「あれを見て!」

梨子「あれは…もしかして勇者の星!?」

果南「あんなに大きく…落ちてきてるんだ…」

千歌「まさか…ニズゼルファが…!」
 
687: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:05:48.36 ID:Zqrotu/B
パァンッ

善子「勇者の星が爆発した!?」

曜「なにあれ…中からでっかい変なのが…」

ダイヤ「あれがニズゼルファだっていうの…?」

ルビィ「勇者の真の敵、災厄の邪神…」

花丸「確かに、ウルノーガよりさらに強大な敵ずら…」

梨子「千歌ちゃん…」

千歌「やろう、みんな」

千歌「邪神ニズゼルファを倒して、本当の平和を取り戻そう」
 
688: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:08:52.72 ID:Zqrotu/B
「ついに復活してしまったようだね」

「パァ!これは大変だ」

梨子「あなたたちは…?」

「私たちはただの使いだよ」

「勇者たちよ、ついてきてくれるかな?」

善子「どこに?変なとこじゃないでしょうね?」

「心配することはない」

「勇者ツバサとニズゼルファについて知りたいでしょ?」
 
689: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:13:18.92 ID:Zqrotu/B
───

花丸「ここは…異空間のような?」

「勇者様たちをお連れしました」

「ありがとう」

善子「なっ…ウルノーガ…!」

曜「どうしてここに!?」

「おっと、今の私はそう見えているのかな?」

「ではこれでどうだろう」ポン

曜「んー…?どっかで見たような?」

ダイヤ「その姿は…英玲奈さん…!」

曜「ああそうだ!あの時見たツバサさんと一緒にいた人だ!」

「そう、私はかつて勇者ツバサ、賢者あんじゅと一緒に邪神と戦った1人、魔法使いの英玲奈だ」

「それから善子、君に預言を与えたのも私だ」

善子「なんですって!?」

「そして…」
 
690: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:16:09.75 ID:Zqrotu/B
「ここからは大樹の記憶を見せたほうが早いだろうな…2人とも、お願いだ」

「了解しました」

「気合入るよー。パァ!」

スー

梨子「私たちを連れてきた2人が木に!?」

「心配することはない。彼女たちはそういう役目の下にある」

「さて、ここから見せるは私たちの、ツバサとあんじゅと私の顛末だ」

「心してみてほしい」
 
691: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:19:02.75 ID:Zqrotu/B
───

千歌「こんなこと…」

「さて、見てもらった通りだ…」

「ニズゼルファをあと1歩で倒せるまで追い詰めたその時、私の頭に語り掛ける声があった」

「勇者を消せば力をやろう…と」

「只の言葉ではない。本能に呼びかけるような…強い誘惑だ」

「そして私は…負けてしまった」

「…気づいたらツバサを後ろから刺していたんだ」

「もちろん原因は私の心の弱さにある。元々私は力を求めるため、ツバサとともに行動していた部分もある」

「そして勇者のチカラを持つツバサに…嫉妬もしていた」

「だからこそ、ニズゼルファも私を狙ったんだろう…」

「そして、ニズゼルファの力を取りこんだ私は…ウルノーガとなってしまった」

「今の私はウルノーガが切り離した善の心。ウルノーガ亡き今そう長くは存在できないだろう」

梨子「あなたが…ウルノーガ…」

「ウルノーガが起こしたことはわかっている…それに許しを請うつもりはない。好きなだけ恨んでくれてかまわない」

「だけどそれでも、君たちに伝えたいことがあるのだ」

梨子「…」
 
692: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:23:04.93 ID:Zqrotu/B
「ツバサの…勇者のチカラがない状態ではあんじゅはニズゼルファに止めを刺せなかった」

「だからせめてもの手段として空高くに封印したんだ」

「いつか完全に倒してくれる者が現れるまで…」

「それがなぜ勇者の星と呼ばれるようになったのか…あんじゅなら何か知っているかもな」

ダイヤ「だけどあんじゅさんは…」

「そう、あんじゅはツバサを取り戻す方法を探し、ある塔にたどり着いた」

「しかし、勇者のチカラでなくては時をさかのぼることはできず…そのまま力尽きてしまい、記憶をなくして時の番人として存在することになった」

「元凶の1人である私が言うのもなんだが…どうかニズゼルファを倒し、終止符を打ってほしい」

千歌「言われなくても…私たちはニズゼルファを倒します!」

「そうか…ありがとう」
 
693: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:27:13.89 ID:Zqrotu/B
「では最後の仕事をするとしよう」

「今ニズゼルファは結界に覆われている」

「あれを壊すのは勇者のチカラでも困難だ」

ルビィ「勇者でも?」

「そう、結界を破るにはケトスと…あんじゅの力が必要だ」

善子「ケトスとあんじゅさん…」

「さあ、行け。勇者たちよ」

「ツバサが果たせなかったことをどうか…」スッ
 
694: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:31:36.71 ID:Zqrotu/B
花丸「ここは…時の番人…あんじゅさんがいた塔ずら」

梨子「英玲奈さんに飛ばされたってこと?」

「あなたたちは…どこかであったような?」

ダイヤ「あなたがあんじゅさんなのですね?」

「あんじゅとは、だれでしょう?」

ルビィ「あなたとケトスが邪神の結界を破る方法を知っていると聞きました」

「ケトス…?」

「それには、ふえの音…目覚めの調べを奏でるのです」

千歌「笛?これのこと?」

「そう、このふえです」ヒョイ

♪~♪~♪~

ダイヤ「綺麗な音色…これがこの笛の本当の音色なのね…」

果南「千歌が吹いてた時と全然違うね」

「ときは来たれり」

「いまこそ目覚めるとき」

「大空はおまえのもの」

「舞い上がれ空たかく!」

キィィン

千歌「勇者の紋章と剣が…!」

梨子「共鳴してる?」

千歌「この力…ケトスに届け!」

シュィーン
 
695: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:34:00.55 ID:Zqrotu/B
鞠莉「わお…ケトスちゃんにビッグな角が生えたわ」

善子「金色の立派な装甲もついてるわね」

花丸「強そう…」

果南「あれがニズゼルファの結界を破れるもの…なんだよね?」

千歌「うん、これがケトスの真の姿だよ」

曜「あの角で、ドーンって壊すのかな?」

ダイヤ「…準備は整ったわ」

千歌「行こう。最後の戦いだよ!」
 
696: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:38:06.76 ID:Zqrotu/B
───

千歌「突撃!」

ピキ・・・

曜「ケトス、お願い」

パリン

善子「結界が壊れたわ!」

果南「ご対面ってわけだね…」

千歌「邪神ニズゼルファ…」

ダイヤ「とんでもない邪気ね…」
 
697: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:41:39.39 ID:Zqrotu/B
千歌(魔王ウルノーガよりもさらに強い敵)

千歌(普通に戦っても勝てるかどうかわからない)

千歌(だけど私たちは9人だけじゃない)

善子(これまでの旅の中でたくさんの人たちと出会ってきた)

ダイヤ(それぞれ考えは違っても)

ルビィ(平和を望む気持ちは同じはず)

鞠莉(今こそみんなの思いが必要なの)

曜(だからお願い)

梨子(この世界の為に)

果南(私たちにチカラを)

花丸(届けて…)
 
698: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:44:35.00 ID:Zqrotu/B
エマ「聞こえたよ千歌ちゃん…」

絵里「あなたたちにかかっているわ…」

せつ菜「平和を、もたらしてください」

穂乃果「今は祈ることしかできないけど…」

にこ「勇者ならやっちゃいなさい」

ミア「Good Luck」

璃奈「繋がるよ」

花陽「希望のために」

かのん「1人1人」

千砂都「小さな思いでも」

可可「みんなの思いを」

すみれ「集まれば大きな」

恋「力になります」

愛「友情パワーだよ」

果林「どんなに遠くても」

海未「世界の命運を」

ことり「きっと、大丈夫」

凛「やっちゃうにゃー」

歩夢「どうか、お願い…」

真姫「あなたたちならできるわ」

かすみ「みんながいる…」

栞子「私たちは信じます」

希「人の思いは無限の可能性がある」

ランジュ「無問題ラ」

しずく「勇者様…」

彼方「さあ、受け取って」
 
699: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:48:26.95 ID:Zqrotu/B
ルビィ「ありがとう、みんな…」

鞠莉「祈りは届いたわ」

花丸「みんなとの絆が集まって」

善子「ものすごいチカラになった」

曜「全部、ニズゼルファにぶつける」

ダイヤ「私たちの思いと合わせて」

果南「最強の一撃を決めるんだ」

梨子「千歌ちゃん、お願い」

千歌「みんなの…思いを乗せて!」

千歌「ミナデイン!」
 
700: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:53:14.01 ID:Zqrotu/B
───

千歌「…」ポケー

梨子「千歌ちゃん、空ながめてどうしたの?」

千歌「いやー…平和だなぁって」

梨子「そりゃあウルノーガもニズゼルファも倒したんだもの。平和だよ」

千歌「こう平和だとのんびり昼寝したくならない?」

梨子「それはわかる。わかるよ?」

梨子「でもね…」

善子「こらっ、なにサボってんのよ。あんたたち中心の町でしょ?」

鞠莉「まあちょうどお昼だしいいんじゃない?」

梨子「私サンドイッチ作ってきたんだ。一緒に食べようよ」

千歌「わぁ、おいしそう!」
 
701: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 19:59:53.87 ID:Zqrotu/B
曜「あ、みんな集まってる」

鞠莉「あら女王様のお出ましよ」

曜「もう、やめてよそういうのー」

果南「ユグノアもだいぶ町の形になってきたね」

ダイヤ「まだ瓦礫を撤去した程度でしょう?」

ダイヤ「これから色々な建物を建てていかなければいけないのに」

花丸「まだまだ人も物もたくさん必要だね」

曜「まあちゃんとした町ができるまで、デルカダールはできるだけ協力するから」
 
702: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 20:05:59.92 ID:Zqrotu/B
ルビィ「でもよかったの?元のユグノア王国じゃなくて町の形にすることで」

千歌「うん。王様がまとめるんじゃなくて、みんなで作ってく町にしたいんだ」

千歌「私も梨子ちゃんも王様とかなるつもりないし」

曜「なるほど…じゃあデルカダールもそうすれば」

果南「それはさすがに無理があるよ」

鞠莉「なに、女王辞めたいの?だったらマリーが変わろうか?」

ルビィ「鞠莉ちゃん女王ってのもすごい国になりそう」

果南「曜以上に苦労しそうだね…」

花丸「王政には王政の、民主制には民主制のいいところがあるずら」

千歌「よし、お昼食べたらまたユグノアの町作り頑張ろう!」

───
──

 
703: (もんじゃ) 2021/12/26(日) 20:14:41.38 ID:Zqrotu/B
Fin
 
705: (SIM) 2021/12/26(日) 22:24:52.53 ID:xXG0P1Wh
乙です
元ネタを生かしながらラブライブキャラが生き生きしてて良かった
またDQ11やりたくなったわ
過去作も読んでみます
 
708: (あら) 2021/12/27(月) 15:16:38.81 ID:BP3u+LYv
乙です
凄い読み応えあった
 
709: (茸) 2021/12/28(火) 02:28:49.42 ID:8Ks+WYJL

王道の5で妄想でもするかぁ
 
710: (SB-Android) 2021/12/28(火) 10:41:38.94 ID:BpOjUZki
このSS読んで11s買ったわ
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1638699189/

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