【SS】真姫「あの娘がいない」

SS


1: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:09:56.72 ID:07Dz7lwp
【1】

朝。

いつもの時間に…いつも場所に行った。

「おっはようにゃ~」

そして、いつものように凛が飛びついてきた。



でも…



「あら?花陽は」

「はなよ?」

「今日は休み?」

「誰が?」

「誰って…だから花陽…」

「はなよ?」



いつもと違う朝の始まりだった…。
 

2: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:14:11.65 ID:07Dz7lwp
【2】

「…はなよ?…はなよって誰にゃ?」

「えっ?」

「はなよ…って?」

「何言ってるの?」

「真姫ちゃんこそ、なに言ってるにゃ?凛、はなよなんて人、知らないよ」

「花陽よ…あなたがいつも『かよちん』って呼んでる…」

「かよちん?」

「喧嘩でもしたの?」

「誰と?」

「だから花陽と」


「…」


(…これは相当なことをやらかしたのね…)

彼女たちもたまには言い争いくらいする。
でも凛が、その花陽の存在を否定するくらいに怒るような喧嘩は、未だ見たことがない。
 
3: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:23:19.27 ID:07Dz7lwp
【3】

「ねぇ…花陽と…何かあった?」

その問いに、凛は大きく首を傾げたあと、私に言った。

「真姫ちゃんこそ、何かあった?」

「どうしてよ」

「だって、いきなり変なことを言うから」

「変なことって」

「さっきから…はなよとか、かよちんとか…一体、誰のことを言ってるにゃ?」

彼女が真顔で訊き返してきた。


その表情と口調に違和感を抱く。
花陽に怒っている…というよりは、私を心配している…そんな感じだったから。

(ひとまず、この話は触れない方がよさそうね…)

「ごめん…そうね…学校に行きましょ」

「あはは…変な真姫ちゃん」



その後は、何事もなかったように、いつものに凛に戻り、私の手を引き歩き出した。



その様子が逆に不気味で…得体の知れない何かが…私の中で湧き上がってきた。
 
4: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:29:21.04 ID:07Dz7lwp
【4】

教室に着いて「その何か」がハッキリした。



花陽の席に、違う娘が座っていたからだ。



(どうして?)

「ねぇ、あなたの席は、ここじゃない?」

彼女にひとつ後ろの席を指さす。

「えっ!…って…合ってるよ!私の席はここだけど?…びっくりした~…間違って座ったかと思ったじゃん」

彼女は前後左右を見回して、そう言った。

「今日の真姫ちゃん、朝から変なんにゃ~。凛にも知らない人の名前を言ったりして」

「ドッキリ?…西木野さんらしくない遊びね」

そんな2人の会話を聴いて、慌ててその席の後ろを見ると…ひとりずつ繰り上がって座っていた。

そして、一番後ろの座席は…机ごと無くなっていた。



(噓でしょ?これって…花陽に対するイジメ?それとも…ドッキリを仕掛けられているのは私?)

そう思った。
 
5: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:35:05.94 ID:07Dz7lwp
【5】

『花陽がいない』ということに疑問を持っているのは私だけみたい。
クラスメイトは騒ぐ様子もなく、平然としている。

先生もまったく気付いていない。
何事もなくホームルームは終わり、何事もなく授業が始まった。

いつもは右前方に彼女の背中が見えるのに…今は…。



(怖い…怖い…一体どうなってるの…)



こんなことって…。
おかしいのは私?
頭を掻きむしりたい衝動に駆られる。



それを必死に抑え込み、昼休みを迎えた。

「さぁ!お昼にゃ!」

いつもと変わらず凛が私の席へと近づいてくる。

「ごめん!急用を想い出したわ。先に食べてて」

そう言って私は教室を出た。
 
7: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:38:56.40 ID:07Dz7lwp
【6】

向かった先は2年生の教室。



「あれ?」

「真姫ちゃん?」

「おや、こんな時間に珍しいですね」

ことりが…穂乃果が…そして海未が私の姿を見て声を掛けてきた。



「ひとつ訊いてもいいかしら」

「ん?」

「μ'sって今、何人?」

「1、2、3…」

指折り数える穂乃果。

「8人だよね?」

「はい…わざわざ数えることもありませんが」

「もしかして…それは…なぞなぞか何かかな?」

「そんな訳ないじゃない」

ことりの質問に首を振った。

「では…」

どうかしましたか…と言う海未のセリフを聴く前に、私は廊下へと飛び出した。
 
9: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:47:16.11 ID:07Dz7lwp
【7】

「あら?」

「真姫ちゃんやん」

「こんな時間に珍しいわね…」

「下の階でも同じことを言われたわ」

「下の階?穂乃果たちのところ?」

絵里が訝しむ。

「なんでもないわ。こっちに話」

「…で…どうしたの?」

「単刀直入に訊くけど…。あなたたち…『小泉花陽』って知ってる?」

「こいずみ…はなよ?」

「はて…」

生徒会コンビは想像通りのリアクション。

「にこちゃんは?」

「な、なによ急に!」

「いいから答えて!」

「知らないよわよ」

「本当に?」

私は念を押した。

「新人のアイドルやろか?」

「それならアタシが知らないわけないでしょ!」



頼みの綱が切れた。



「わかったわ…ありがとう…」

「はぁ?」
 
10: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:50:28.58 ID:07Dz7lwp
【8】

立ち去ろうとする私に
「ちょっと待ちなさいよ!」
とにこちゃんが怒鳴る。

「その人が誰だか、説明くらいしてもバチは当たらないんじゃない?」

「私もそう思うわ」



「…」



「何かあったん?悩んでるならウチが相談に乗るけど…」

「ありがとう…でも…またに機会にさせてくれないかしら…私自身ちょっと整理が付いてなくて…」

「そう…」



やっぱり彼女は…

小泉花陽は…

この世にいないことになっている!!



どこかでドッキリであることを祈っていたけど…どう見てもそれは違うということがわかった。
 
11: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:53:59.43 ID:07Dz7lwp
【9】

放課後。



「気分が優(すぐ)れないから」と練習を休んだ。

みんなは今日の私の言動を知っているから、素直に納得してくれた。



学校を出て向かった先は…花陽の家。



まさかとは思うけど…

もしかして…

そんなハズは…



愕然とした。

何度も、何度も周りを見渡す。

大切な親友の家だ。

間違えるハズはない。



それなのに…



小泉家があったハズの敷地は空き地になっていた。



私は膝から崩れ落ちた。
 
12: (しうまい) 2022/01/03(月) 19:58:23.26 ID:07Dz7lwp
【10】

こんなことって…



働かない頭を必死に回転させる。



例えば…引っ越ししたとか?
家を改築中とか?
それなら建物が無いという説明は付く。

だけど、みんなが花陽を知らない…という理由にはならない。



ふと思いついて、自分のスマホを確認する。

だが淡い期待はあっという間に消え去ってしまった。



住所も電話番号も…そして名前も…何も残っていなかった。
もちろんLINEでやりとりした履歴も。
一緒に撮ったハズの写真も…。



なにもかも…。
 
14: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:04:32.36 ID:07Dz7lwp
【11】

…気が付いたら朝を迎えていた。

見慣れた室内…。



私は自分のベッドの中にいた。
枕が濡れている。
どうやら、それは涙のせいらしい。
鏡を見なくても、目が腫れぼったいのがわかった。



花陽の家があったハズの場所へ行き…そこからの記憶がないけれど…どうやら無事に帰ってきたらしい。



待って!



ここがベッドだということは…「なら…夢?」



そうよ!

きっとそう!

そうに決まってるわ!



だけど…スマホを見ることが出来なかった。

これでもし、花陽の『は』の字も無かったら。



そう思うと、とても怖くて見られなかった。
 
15: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:07:14.94 ID:07Dz7lwp
【12】

ママに私の異変を悟られないように、平静を装って身支度を整えた。

「いってきます」

もうしばらくすれば、夢かどうかがわかる。



「おっはようにゃ~!」

昨日と同じように凛が飛びついてきた。



「やめてよ!」

花陽がいないのに、どうしてそんなに普通なの?

凛が花陽を知らないなんて…許せない!

そんな思いが、彼女の行動に強い拒否反応を示した。



「ごめん…そういえば具合悪かったんだよね…まだ治ってない?」

「あ、うん…ちょっと…」

「そっかぁ…真姫ちゃん、作曲大変そうだもんね…」

そう言うと凛は、花陽を待つことなく歩き出した。



頑張ってスマホを見なかったのに…結果は変わってないみたい…。
 
16: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:18:00.34 ID:07Dz7lwp
【13】

昨日と変わらない席順。
昨日と同じようにホームルームが終わり、昨日と同じように授業が始まった。

彼女がいないことに疑問を持つ人は、誰もいない。

とてもショックだ。



だけど…



私は昨日より少しだけ落ち着いていた。



花陽は凛と喧嘩をしているわけではないみたい。
μ'sのみんなもウソをついているとは思えない。
ドッキリでもないことも理解した。



…だとすれば…



私は今『花陽のいない世界』へ飛ばされた。

夢ではないなら、そうとしか考えられない。

現実的な話ではないけど…ないけれど、そうでなければ説明がつかない。



もしそうなら、この世界から抜け出す手立てを考えないと!!



真姫ちゃん 賢い かきくけこ。



まずは冷静になることが大事ね。
 
18: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:24:40.59 ID:07Dz7lwp
【14】

授業が終わった。
凛が一緒に行こうと、私を部室に誘う。



そういえば…



そもそも…花陽がいなかったら、凛はどうしてμ'sに入ったのかしら。
その疑問をぶつけてみる。


「ねぇ…凛はどうしてμ'sにいるんだっけ?」

「にゃ?いたらおかしい?」

「あっ…訊き方が悪かったわ…凛がμ'sに入ったキッカケって」

「やっぱり、 まだお疲れみたいにゃ…凛は真姫ちゃんに誘われたんだけど」

「そう…よね…」

「真姫ちゃんが庭で発声練習してるのを見てたら、あなたもやってみる?って…」

「発声練習?ひとりで?」

「そこからなし崩し的に巻き込まれたんだにゃ…真姫ちゃんだけに」



「…」



「ウソにゃ!ウソにゃ!巻き込まれたは言い過ぎたにゃ!…誘ってくれて嬉しかったにゃ~」

「そう…」

「…大丈夫?やっぱり、何か変だよ?」

「ごめん…もう1日お休みさせて…」

「わかったにゃ…みんなに伝えておくよ。ゆっくり休んでね」



私は凛にお礼を言って、家路に就いた。
 
19: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:31:55.39 ID:07Dz7lwp
【15】

このおかしな世界から抜け出すことが出来ず…に三日が経った。

今日は少しでも『その糸口』を見つけなきゃ…と思って部室へ顔を出すことにした。



「真姫、もう具合は宜しいのですか?あまり無理したらいけませんよ」

「ありがとう」

「いいなぁ、真姫ちゃんはそういう優しい言葉を掛けてもらえて」

「?」

「穂乃果なんか、毎日ダイエット、ダイエットって言われて、頭がおかしくなりそうだよ」

「それは貴方が自堕落な生活を送ってるからです」

「そんなことないよ!これが女子高生の普通なんだもん!食べ盛り、伸び盛り、育ち盛り!」

「はい。ですが私たちは普通の女子高生ではないのですよ!曲がりなりにもスクールアイドルなのです」

「わ、わかってるけどさ…じゃあ、希ちゃんにも言ってよ。穂乃果より絶対、体重あるじゃん」

「!!…そやね、ウチはおっ〇〇の分だけ、重さが…って!こらこら…ウチは元からこの体型やん。別に今、体重増えたわけやないやろ?」

「ん~んん…」

「無駄口を叩いてないで、早くランニングに行ってきてください」

「誰か一緒に行こう!」

「いってらっしゃ~い!」

全員が彼女に手を振る。

「薄情者!μ'sなんか辞めてやるぅ」

穂乃果はそう捨て台詞を残して、部室を出て行った。
 
20: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:43:48.61 ID:07Dz7lwp
【16】

「衣装出来たよ♡」

すれ違いざまに、ことりが入ってきた。

「凛も手伝ったにゃ~」

「お疲れ様。ちょっと見せてもらってもいいかしら」

ことりが絵里に、出来立ての衣装を手渡す。
その瞬間、表情が曇った。

「凛ちゃん…この飾り…ここだけ留めてって言わなかったっけ?」

「あっ…」

「これ…全部縫い付けてるよね?…もしかして…全員分?」

「ま…間違ったにゃ…すぐ直すにゃ」

凛がそう言って、衣装に手を伸ばす。

「あら、凛…ここ…縫えてないわよ」

「にゃ?」

「ほら…裾のところ…裏地が…」

「本当にゃ…」

「こっちは、生地が裂けているようです…」

「ご、ごめん…すぐ直すよ」

凛の語尾から『にゃ』が消えた。



「いいよ凛ちゃん!…ことりがなんとかするから」

「で、でも…」

「悪いのは…不慣れな凛ちゃんに手伝ってもらったことりだから♡」

口調は穏やかたが、内心はそうではないとすぐにわかった。



「ことり!そういう言い方は良くないですよ…」

「そうよ。それは凛に悪いわ」



「そんなこと言っても…海未ちゃんも絵里ちゃんも手伝ってくれないよね?…いいの、衣装作りはことりの仕事だから!じゃあ、またあとでね」

ことりは衣装を抱えると、走り去るように部室を出て行った。
 
21: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:46:42.25 ID:07Dz7lwp
【17】

「…」

なに、この気まずい雰囲気…。



海未と絵里は言葉を失い…ただ、ことりが出て行ったドアを見ていた。

凛を見ると、瞳に涙が浮かんでいる。
キッカケひとつで、大号泣…そのギリギリ一歩手前。



「一旦、落ち着こう」

こんな時、頼りになるのは…やはり希ね。
3人に近寄り、椅子に座らせた。



そんな時に…空気の読めない先輩がやってきた。

「さぁ!やっと手に入れた幻のアイドルのDVDをみんなで観るわよ」



「に、にこちゃん…今はそういう雰囲気じゃないから」

慌てて私は伝えた。



「どうしたの、みんなで辛気臭い顔して!?はい、元気出して!にっこにこに~」
 
22: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:48:12.56 ID:07Dz7lwp
【18】

「寒いにゃ」



「はぁ?」



「あなたも部長なら、自分だけ浮かれてないで、少しは気を遣ったらどうですか?」



「なに?どういう意味?今日はみんなでDVD観ようって話だったでしょ?苦労したのよ、これを手に入れるの…」



「でも、それ見て楽しいの…にこだけよね?」



「えっ?えっ?にこだけ楽しいってなによ?…」



「確かにスクールアイドルの研究って意味では、それも勉強かも知れないけど…悪いけど、今日は家で一人で観てほしいわ」



「ちょっとアンタたち…喧嘩売ってるの!?何があったか知らないけど、アタシに楯突くつもり」



「にこちゃん!」

「にこっち…やめとき!」



「なによ!なんでアタシが悪いみたいになってるのよ!」



「そんなことは言ってないやん」



「言ってるわよ。入ってくるなり、寒いとか、気を遣えとか、家に帰れとか…完全に除け者扱いじゃない!!」



「いや、それは…ほら…タイミングの問題で…やね…」



「なに、それ?」
 
23: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:50:42.36 ID:07Dz7lwp
【19】

「私…帰るわね」

「すみません、私も帰ります」

「凛も帰るにゃ」

言うが早いか…あっと言う間に3人は部室からいなくなった。



「えりち、海未ちゃん、凛ちゃん…」

希が呟く。



「絵里の言う通りね。このDVD観て楽しいのはアタシだけ…その通りだわ。所詮、ここには趣味をわかり合える友達なんていないってことよ」


「にこっち…そんなん…」


「アンタもそうやって心配するフリだけ…。わかったわよ、家に帰って観るわよ」

にこちゃんは、そう言い残し、ぷいといなくなった。
 
24: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:52:30.44 ID:07Dz7lwp
【20】

部室に残ったのは私と…希。
2人だけ。



「今日の練習は、中止やね」

「そうね…」

「じゃあ…ウチらも帰ろうか…」

「待って!…時間…ある?」

「そりゃ…今の今まで練習するつもりやったから…」

「相談…乗ってくれる?」

「昨日の話?」

私は黙って頷いた。



言葉は正しくないけど…希と2人になったのは…私にとって好都合だった。



「こいずみはなよ…って誰なん?」

「良く覚えてたわね」

「ずっと気になってたんよ」

「そう…」

「真姫ちゃんの知り合い?」



私は彼女の事を話した。
 
25: (しうまい) 2022/01/03(月) 20:56:27.36 ID:07Dz7lwp
【21】

「スピリチュアルやね…」

幾度も聴いた彼女の決め台詞だけど…意外にも神妙な顔をした。

「確かにそんな話はウチにしかできないやろなぁ」

「でしょ?」

「まぁ、聴いたところで…ウチは何の手助けもできないんやけど」

「何かないの?魔法の呪文を唱えると、元の世界に戻れるとか」

「魔法使いを始めたのは…にこっちやん」



「…」



「いや、そんな冷たい目で睨まないで…。まぁ、考えられる話としては…真姫ちゃんが、何らかの理由で夢を見ている…っていうこと」

「夢?…それなら早く覚めてほしいわ。花陽がいない世界なんて考えられないんんだから」

「逆かも」



「逆?」



「真姫ちゃんは…『ハイスクール奇〇組』って漫画、知ってる」

「…知らない…」

「それなぁ…5人組の面白男子高校生が主人公の…基本1話完結のギャグ漫画なんやけど…なんと…彼らのお話は、その作品に出てくるヒロインが見ていた夢の中の話やった…ってオチなんよ」



「…だから…何?…」



「その…はなよちゃん…って娘も、真姫ちゃんの夢の中の世界が生み出した人物やないかな…ってこと」



「えっ?」
 
26: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:13:41.69 ID:07Dz7lwp
【22】

「真姫ちゃんの心の中で…こういう娘がいたらいいなぁ…っていう深層心理が働いて、夢の中で具現化された…とでも言えばわかるやろか」

「私の…理想…」

「話を聴いただけやけど…そんないい娘、いないやん?…普段は大人しくて、頼りなさそうだけど、芯は強くて頑張り屋で…誰よりも優しくて、気配りが出来て…声がきれいで可愛くて…食べる姿を見てるだけで幸せになる…」

黙って頷く。

「おまけに…アイドルが大好き?」

「そうなの」

「いやいや…真姫ちゃんの理想は高いなぁ…そんな娘、いないやろ」

「いるのよ!本当にいるのよ!

「それで…ふわふわでもちもちでぷにぷにで…おっ〇〇が大きい?」

「ま、まぁ…一番最後は余計だけど…その通りよ」

「だとしたら…それってウチやない?」

「違うから!言葉だけを拾っていくと、そう聴こえなくもないかもしれないけど…あなたではない!!」

「冗談やって!そんな全力で否定せんでも…」

「あっ…ごめんなさい…」

「そんな娘が本当にいるんやったら、ウチも会ってみたいなぁ。にこっちじゃ…物足りないんよね」

両の手の指先を小刻みに動かす。



私はその意味を悟った。

「やってたわよ!多分、一番花陽がやられてる」

ちなみに私も被害者のひとりだ。



「やっぱり!?ウチがしない…ってことはないやろうなぁ」

「そんなことで自慢しないでよ」

「そうだとすれば、早くそっちの世界にいかないと…やね」

「お願いするわ」

「もちろん…ウチも一緒に♡」

「…なんか動機が不純じゃない?」
 
27: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:17:45.95 ID:07Dz7lwp
【23】

希の言った言葉が頭に渦巻く。



これまで私が見てきた花陽との日々は、夢の中の出来事だった?
実際は今が現実の世界?



絶対に違う!
今が夢の中なのよ!
眠りから覚めれば、元に戻る。

そう思ってた。



「退部するわ」

にこちゃんの言葉を聴いたのは、翌日のことだった。

「そもそも、アイドルが好きで部を立ち上げたアタシと、学校の廃校阻止が目的で部に入ったアンタたちとじゃ、目指すものが違ったのよ。これまでありがとう。少しの間だけど、楽しかったわ!…じゃあね…」

部室にあった彼女の私物は、いつのまにか全て無くなっていた。
 
29: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:21:30.28 ID:07Dz7lwp
【24】

「凛も…辞めるよ…」

部室を出て行くにこちゃんを見送ったあと、彼女も私たちにそう告げた。

「真姫ちゃんに誘われて入ったけど…にこちゃんの言う通り、凛はアイドルを目指してたわけじゃないし…」



「凛…」



「そんな悲しい顔しないで欲しいにゃ!…廃校にならなくて良かった!それに少しでも貢献できた!っていうことで、凛はもう満足にゃ!」



「…」



「次のライブ…頑張ってね!」

そう言うと、ホログラムが消えたかのように、この部屋から凛の姿が見えなくなった。



誰も止めないの?
どうしてそのまま行かせるの?
喉元まで言葉が出掛かった。



だったら自分が止めればいいじゃない!
どうして黙ってるのよ!



それは…



引き留める理由がないから…。
 
30: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:25:48.25 ID:07Dz7lwp
【25】

きっとみんなも同じ。
私と考えていることは一緒。
にこちゃんの話も、凛の話も…私たちが否定することはできない。



「『ミューズ』やなくて『6人(シックス)』になっちゃたね」

希がポツリと呟いた。



!!



「そう!それよ!希!」

「ん?」

「μ'sの名付け親は希でしょ!」

「そうやったっけ?」

「μ'sは…9人の女神…そういう意味がある…って、そう言ってたわよね?」

「う~ん…」

「しっかりしてよ!確かに言ったの!確かに!…だから、μ'sっていう名前があるってことは『いるハズ』なの…花陽が!花陽のいない世界線で、μ'sが存在するなんてありえないのよ!だって9人揃ってμ'sなんだから」
 
31: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:28:36.07 ID:07Dz7lwp
【26】

「私、もう一度、花陽を探してみる」

「探すって…どこに行くん?」

「あの娘が行きそうなところを、片っ端から探すわ。アイドルショップ、食堂、お米屋さん…とにかく全部よ!…手伝ってくれるわね?」

「もちの…ろんや!」

私は希の手を引っ張り走り出した。



学校を出ると、横断歩道の向こうに上下ピンクのジャージに…オレンジ色のカチューシャを付けた人影を見つけた。

「あっ…」

私にとっては見慣れた格好。
なのに…何十年ぶりかの再会…そんな感じに思えた。

徐々にその姿が近づいてくる。



「真姫ちゃん!」

私の顔を見て、彼女はにこやかに微笑んだ。
 
32: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:33:31.79 ID:07Dz7lwp
【27】

「花陽…花陽なのね?」

「えっ…うん…花陽だけど…」

「本当に花陽?」

「本当にもなにも…」

「探したわよ!」

希がいることも忘れて抱き締めた。

「さが…した?…私を?」

「もう、突然いなくなっちゃうから…心配したじゃない!今までどこに行ってたのよ!」

「ランニングしてたんだけど…」

「ランニング?いつから?」

「いつから?…海未ちゃんに怒られてから…」

「海未に?…ダイエット?」

「う、うん…そ、そんな感じ…どうかな?少しは痩せたかな?」

そう訊かれて、まじまじと彼女を見直した。



「!?」



私が驚きで声を失っていると、替わりに希が代弁してくれた。
 
33: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:39:39.51 ID:07Dz7lwp
【28】

「なぁ、真姫ちゃん…この娘が、…ふわふわのもちもちのぷにぷにの花陽ちゃんなん?…どっちかというと…ことりちゃんみたいなスリムボディやない?」

「じゃあ、希ちゃん!ランニングの成果は出てるってことだよね!」

「ん~…元を知らないから何とも言えないんやけど…って、花陽ちゃんはウチのこと知ってるん?」



「へ?知ってるも何も…」



「ちょっと待って!あなた本当に花陽なの!?」



「ぴゃあ!」

彼女は大きく飛び退(の)いた。



「いくらなんでも瘦せ過ぎよ!」

「でも、スクールアイドルとしてはこれくらいじゃないと…」



「胸は?」



「胸?」



「そ、その…あなたの胸は何処にいったのよ!ダイエットしたからって、そんな平らになることはないでしょ!?」



「胸は…その…えっと…海未ちゃんに取られちゃった」



「海未ちゃんが…」

「盗った?」



「盗った…じゃなくて…取った…かな」

「いや…その違いはどうでもいいやん」

「胸って取れるものなの?」

「スピリチュアルやね!」
 
34: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:43:28.84 ID:07Dz7lwp
【29】

「盗った…とは人聞きが悪いですね」



「!?」

振り返る海未がいた。

確かに…彼女の胸元は、ありえないくらい豊かになっている。



「花陽はまだ、1年生なんですよ!もしこのまま発育したとしたら、どうなりますか?2年後には希を越す可能性があります!そんなことが許されていいのでしょうか?いいえ、許されません!ですから、しばらくの間、私が借りているのです。もっとも、一生返さないかも知れませんが」

「哀れにゃ」

「哀れにこ」」

いつの間にか海未の後ろには、凛とにこちゃんがいた。



「うふふ…僻んでも2人には貸しませんよ」



えっ…なに、これ…意味わかんない…



「混乱してるみたいね?」



「絵里!?」



「真姫ちゃんも案外鈍いね?」

「お医者さんの娘なのにね?」



「穂乃果?ことり?…どういうこと?」
 
35: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:46:05.69 ID:07Dz7lwp
【30】

「花陽ちゃんの痩せ方みたらわかるでしょ?」

「いくらダイエットしたからって、こんな風にはならないよね?」



「!!…まさか…どこか悪いの!?」



「…」

無言で花陽は下を向いた。



「あ~あぁ…折角かよちんが気を遣って姿を消してたのに」

「アンタが見つけちゃダメじゃない」



「うそ…どういうこと?」



「花陽の命はあと僅かなんですよ…あなたが助けなかったせいで…」

「私が…助けなかったせい?」



「はい。傍にいながら、あなたは花陽の異変に気が付かなったのです。サイテーです!!医者の娘として失格です!」



「私が…花陽を…」



「死期を悟った花陽は…アンタが負い目を感じないように、自分の存在を消すことにした…ってワケ」

「かよちん…優しいにゃ…」
 
36: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:50:02.28 ID:07Dz7lwp
【31】

「そんなこと…そんなこと…そんなことあるわけないじゃない!」



「真姫ちゃんに、かよちゃんの何がわかるのかな?」



「ことり?」



「私はちゃんとかよちゃんに好きだって伝えたよ」


「急に何を言い出すの?」



「穂乃果も伝えたよ!」

「アタシも」

「はい、私もです」

「もっちろんにゃ!」

「真姫はどうかしら?あなたは勝手に花陽が自分の事を好きに違いない!って思い込んでない?でも…本当にそうなのかしら?確かめたこと…ある?」



「絵里…」



「私が訊いてあげましょうか?」



「!!」



「花陽…あなたは真姫の事をどう…」



「やめて!!余計なことを言わないで!!」

「真姫ちゃん、一旦、退避や」

「希?」

「ウチにしっかり捕まっておき!」

「えっ…えぇ…」

私は言われるままに、希にしがみついた。
 
37: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:53:15.32 ID:07Dz7lwp
【32】

「…ふう…テレポーテーション…終了…」

「ここは?」

「神田明神や」

確かにいつもの境内の前だった。

「結界を張ったから、しばらくは大丈夫やと思うけど…あとは、頑張ってな」

「頑張って?」

「ウチは今ので一生分のスピリチュアルパワーを使い切ってしもうたんよ…。そやから…もう何も残って…ないん…や…」



「希!」

私が叫ぶと同時に、しがみついていた腕から、彼女の感覚がなくなった。



「希!!」

彼女の名前をもう一度呼んだ。

でも、その姿は戻ってこなかった。


「真姫ちゃん…ごめんね…迷惑掛けちゃって…」

私と一緒に移動してきたらしい花陽が、弱々しく声を出す。



「迷惑も何も…この状況が理解できないわ…」

「事実は小説より奇なり…だね」

「にこやかに言わないでよ」
 
38: (しうまい) 2022/01/03(月) 21:58:38.01 ID:07Dz7lwp
【33】

「あら、こんなところにいたのね?」



「!?」

希が張ったという…結界…その外側に…黒っぽい塊が現れた。



「どこにいたって無理よ」

絵里…にこちゃん…2人の声がシンクロして聴こえた。

「出口のない結界の中に閉じこもっちゃったんだね」

穂乃果と、ことりの声。

「でも、ひとりじゃ何もできない(にゃ)(でしょう)」

そして海未と凛の声。

「こんな結界は時間稼ぎのもならないわよ」

6人の声が、一斉に頭の中で鳴り響く。



「なんなのよ、あなたたち!」



「私たちは…『六身合体ゴッドミューズ!!』」



「…意味わかんない…」



「やっぱり真姫ちゃんが知ってるワケないにゃ」

「だから、やめようましょう…って言ったのに」

「え~『ハラショー!』って言ったじゃん」

「それは…意味を教えてもらったからで…」

「だいたい、穂乃果は発想が幼稚なのよ」

「にこちゃんのレベルに合わせただけだよ」

「なんですって!」

「やめてください!ここはシリアスなシーンなんですよ!」

「ちゅんちゅん…」
 
39: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:02:07.49 ID:07Dz7lwp
【34】

「私たちが何者か…と問われれば…概念みたいなものね」



「概念?」



「そう…花陽の命を奪う病魔を具現化した…と言えばいいかしら」



「…なるほど…」



「この結界を私たちが破った瞬間…花陽は…死ぬわ」



「させないわよ!そんなこと!」



「ふふふ…いい目をしてるわ…」

「でも…それだけじゃ私たちを消すことはできないけどね」



「くっ…」



「さて、時間もないことだし、さっそく始めよっか!」



6人の重なった声が頭に響くと…黒っぽい塊が煙のようになり空一面に広がった。

何かに攻撃される…とというよりは…
押しつぶされる…圧迫される…そんな感じ。
胸が苦しくなる。

どうすればいいの!?
どうしたら花陽を救えるの!?
 
40: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:03:48.25 ID:07Dz7lwp
【35】

「真姫ちゃん、今までありがとう」

「花陽!」

「花陽は真姫ちゃんとお友達になれて幸せだったよ」

「なに言ってるの?やめてよ!そんな別れのセリフみたいなこと言わないでよ」

「あのね…今まで真姫ちゃんには黙ってたんだけど…花陽、生徒手帳、おうちまで届けに行ったでしょ?その時ね…やったぁ!って思っちゃたんだ…」

「えっ?」

「拾ったのは本当に偶然だったんだけど…これで西木野さんに近づくキッカケができた!って」

「花陽…」

「ファンだったんだ…真姫ちゃんの」

「ファン?」

「真姫ちゃんがピアノを弾く姿を見掛けた時から…実はね…穂乃果ちゃんよりも先に真姫ちゃんのファンになったのは花陽なんだよ」

「聴いてないわよ」

「今、初めて言ったもん…」

「そ、そう…」

「それでね…本当は次の日に渡しても良かったんだけど…ちょっとでも私に興味持ってもらえたらいいな…って思って…家まで届けに行ったの」
 
41: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:06:04.54 ID:07Dz7lwp
【36】

「えっ?」



「引くよね…自分でも思うんだ…なんて打算的で浅ましいんだろうって…」

「そんなことないわ。私も同じだもの」

「?」

「私もワザと落したの」

「ん?」

「生徒手帳…」



「へぇ…そうなんだ…えっ!えぇ!?」



「私も…誰かと話すキッカケが欲しくて…ワザと生徒手帳を落としたの」

「そうなの!?あ…じゃあ、それをたまたま私が拾ったんだね?」

「ううん…花陽が後ろにいることを知ってたわ」

「んん?」

「あなたなら拾ってくれるってわかってたから…まさか家に来てくれるとは思ってなかったけど…」

「なんと!!」

「だから…私も花陽と同じことをしていたの」

「これって…運命?」

「そうなのね…きっと…」

「そっか…良かった…それを知れただけで、花陽は幸せだよ。これで安心して…」
 
42: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:10:01.54 ID:07Dz7lwp
【37】

「ちょっと、そこで安心しないでよ!」

「でも…もう…花陽に…生きる力は残されていないから…」

「そんなことない!私がなんとかするから、あなたも頑張りなさいよ」

「ありがとう…真姫ちゃん…」

「そうだ!おにぎりがあれば!おにぎりを食べれば回復するわよね!?」

「…そう…かな?…」

「そうよ!待ってて!今、探してくるから!」

「その気持ちだけで…十分だよ…。今、結界の外に出たら…逆に…真姫ちゃんがやられちゃうよ…」



「!!」



「…好きな人の腕の中で死ねるなんて…花陽は…贅沢…だ…ね…」

「バカなこと言わないで!」

「でも…これで…花陽は…真姫ちゃんの…そばに…ずっと…いられるよ」

「私は?…私は…花陽の姿が見られないじゃない!花陽に触れないじゃない!そんなのイヤ!そんなのダメだから!」



「ま…き…ちゃ…」



ばしゅ~ん!!!!



私たちを黒い煙が押し覆いつくした…。
 
43: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:14:18.46 ID:07Dz7lwp
【39】

………
……


私はベッドの中で目覚めた。
抱き締めていた枕は、ぐっしょりと濡れている。



「…涙?…」



泣いてたの?
どうして?



「…夢?…」



とても悲しい夢を見ていた気がする。

…細かいことは覚えていないけど…確か…花陽が…。



背筋に悪寒が走った。



「いやよ!正夢なんて!」



飛び起きてスマホを確認する。
花陽の名前は…



あった!
名前も画像もLINEのやり取りも!!



いる!
この世界に花陽が!



待って…本当にそう?
これもまだ夢の中かもしれない?



そんなことって…
 
44: (しうまい) 2022/01/03(月) 22:19:34.37 ID:07Dz7lwp
【マルチエンディングA】

「おっはようにゃ~」

いつもの凛。

そして…その隣にいるのは…



「おはよう」



「花陽!!」



「ん?」



「花陽!花陽!花陽!…」

「ちょ…ちょっと真姫ちゃん…」

「あははは…今日の真姫ちゃん、凛みたいにゃ」



良かった。
本当に良かった。
花陽はいたわ。
ふわふわでもちもちでぷにぷにの…花陽がここにいる。
胸も…無事だわ!
本当に夢で良かった。



「どうしたの?何かあった?」

「ううん、なんでもないわ…」

「夢って不思議よね…どうしてあんなに脈絡もない話になるのかしら?」

「夢?」

「あっ…うんん…なんでもないわ…」

「ん?」

「…いいから!さぁ、行きましょう!遅れるわよ!」



訝しむ花陽から背を背けて、私はいつものように先に歩き出した。



彼女を見て赤らむ自分の顔を悟られないように…。
 
50: (しうまい) 2022/01/04(火) 22:34:31.68 ID:r9F+SB5m
【マルチエンディングB】

「おはよう…」

私はぼさぼさの頭に手をやりながら、スマホを手にした。

「おはよう!…ってもうお昼近いけどね…」

スピーカーの向こうから花陽は苦笑した。

「昨日、遅かったから…」

「お疲れ様」

「そのせいか…今日もおかしな夢を見たわ…」

「また?」

「そう…」

「仕事、きつそうだね」

「まぁね…」

「無理しないで」

「…それで…お願いがあるんだけど…」

「いいよ!今晩、空いてるよ」

「まだ、なにも言ってない」

「違うの?」

「違わない…けど…」

「あったかいトマトスープを作って待ってるよ」

「ありがと…」



私は時折、仕事で溜まったストレスを癒しに、花陽の家に行く。

花陽を抱き締めて…花陽に抱きしめられながら眠ると、すべての疲れが吹っ飛び、心身ともにリフレッシュされるから。



わけのわからない夢は『花陽成分』が切れたサイン。
こんな日が続くと、私の精神はきっと崩壊する。

だから…今日、彼女の予定が空いてたのはラッキーだった。



なにせ彼女は…毎晩のように誰かを癒しているのだから…。
 
54: (しうまい) 2022/01/05(水) 22:52:25.22 ID:cam0R2Jh
【マルチエンディングC】

私は考えた。

どうしたら、花陽がその笑顔を絶やさないようにできるのかを。

どうしたら、花陽のその優しさが失われないようにできるかを。私は考えた。



私は考えた。

誰が花陽を苦しめるのかを。

誰が花陽を不幸にするのかを。



敵は…消さなきゃ。


私は考えた。

その人物とその順番と…その手段を…



その…その…その…



そうね…まず最初は…
 
60: (しうまい) 2022/01/07(金) 21:29:23.28 ID:aPMrlw+p
【マルチエンディングE】

「おはよう」

「…」

「よかった…ちゃんと、いてくれて…」

「…」

「もっとも…ここから脱出するなんてことは不可能だけど…」

「…」

「でも…それでも…不安なのね…きっと…」

「…」

「いつか、抜け出すんじゃないかって…」



「今日、あなたがいなくなって夢を見たの…」

「私以外…みんなあなたを知らない…そんな夢…」

「まぁ…あと5年もすれば…そうなるかも…あなたのことなんてみんな忘れてしまうわ…」

「ふふふ…薄情なものね…」

「逆に…あなたはみんなのこと…もう忘れちゃったかしら?」

「いいのよ…忘れて…」



「だって…あなたのご主人様は…私、ひとりなんだから…」



「今日もたっぷり可愛がってあげるわ♡」










【SS】真姫「あの娘がいない」
~完~
 
61: (しうまい) 2022/01/07(金) 21:52:19.56 ID:aPMrlw+p
【あとがき】

自分が見た夢を記録して、映像化出来たらいいな…って思ったことはありませんか?

夢って前後の脈絡なく場面は替わるし、登場人物も言動もメチャクチャだったりするけど…その人の願望や心配事が現れるとも言いますよね。

今回の作品は、そこからヒントを得たものです。


分岐は作りませんでしたが、エンディングについては純愛(?)ものからサイコホラー、エ グロ(?)まで用意してみました。
一応、それぞれ、夢の内容とリンクするようにしたつもりです。
気に入ったものがあれば、幸いです。

ちなみに『C』は、アイドルになった花陽が過酷なダイエットから拒食症になり、それが原因で…という感じですかね。



では、また…。
 
63: (しうまい) 2022/01/07(金) 23:12:35.79 ID:aPMrlw+p
>>61

『C』じゃなくて『D』でしたw
 
62: (らっかせい) 2022/01/07(金) 22:49:10.82 ID:LCQjr/pF
乙でした。
次の話も待ってます。
 
64: (うめぼし) 2022/01/08(土) 10:43:59.63 ID:gZSE+6rf
なるほどねそれを知って最初から見直すと違う見方出来るわ
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1641204596/

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