【SS】海未「もうすぐクリスマスですね」

umiうみ SS


1: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:03:55.24 ID:yuWq95qw
海未(熱を出して学校を休んだ翌日のことでした)

海未(いつも通り穂乃果とことりと共に学校へ行くと、私の隣の席にダブル金玉ドラゴンが座っていたのです)

海未「穂乃果、ことり。これは一体?」

ことり「あっ、そっか……海未ちゃん昨日休んでたんだもんね」

穂乃果「別の高校から転校してきたんだよ」

海未(それならそうと、メッセージでも通学路でもいいから一言その旨を伝えてほしいものです)

海未(教室についた途端、ダブル金玉ドラゴンがいるなんて私でなければ腰を抜かしていたことでしょう)

海未「隣の席の園田海未です、これからよろしくお願いしますね」

海未(私の言葉に、ダブル金玉ドラゴンは嬉しそうに煉瓦をすり合わせるようなザラザラとした鳴き声をあげていました)
 
2: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:11:12.15 ID:yuWq95qw
ことり「あ、雪だ」

海未「本当ですね……」

海未(窓の外ではちらちらと細かな雪が降り出していました。降り出したのが学校に着いてからで良かったです)

海未(病み上がりの身体に雪を浴びるのは、健康に良くありませんから)

穂乃果「初雪だね! もうすぐクリスマスだし、ホワイトクリスマスって感じで良いね」

海未「ああ……そういえばそろそろクリスマスでしたね」

海未「部でクリスマスパーティをやることは決まっていますけど、その後二人はどうします?」

ことり「遅くまでパーティしそうだし、そのまま家に帰ろうかなって」

穂乃果「私も……雪穂がケーキ楽しみにしてたし」

海未「ああ、そうですか」

海未(二人の言葉に少し寂しさを覚えてしまいました。今まではいつも三人でクリスマスを祝っていましたから)

海未(心のどこかで、パーティの後に三人で部とは別に軽くお祝いをしたいと思っていたのかもしれません。そんなこと、二人には言えませんけど)
 
3: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:16:21.68 ID:yuWq95qw
穂乃果「……もしかして、三人でパーティしたかった?」

海未「えっ……?」

海未(感じた寂しさが顔に出ていたのでしょうか。穂乃果は心配そうに私を見つめています)

海未(穂乃果はこう見えて鋭いところがあるので侮れません)

海未「いえ、別に……そんなことはありませんよ」

海未「ことりが言った通り、スクールアイドル部の皆とのパーティがいつ終わるかも分かりませんから。あまり遅くなると心配されますし」

穂乃果「そう? ならいいや」

ことり「けど確かに変な感じだね。今まではずっと三人でお祝いしてたのに」

ことり「今年は九人でクリスマスを過ごそうなんて。去年は思いもしなかったなぁ……」
 
4: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:20:47.30 ID:yuWq95qw
穂乃果「私は、ことりちゃんは彼氏を作ってその人と過ごすんじゃないかって思ってたよ」

ことり「か、彼氏!?」

海未「破廉恥です!」

穂乃果「こ、高校二年生で彼氏は破廉恥じゃないよ!」

海未「彼氏は破廉恥ではないかもしれませんが、クリスマスに男性と過ごすのは破廉恥です!」

海未「クリスマスに異性が二人でいると子供が出来ると物の本で見ました!」

穂乃果「なんてもの読んでるの!?」

海未(とはいえ、私もそういった思いを持っていなかったと言えば嘘になります)

海未(クリスマスだけではなく……いつまでこの三人でいられるんだろうと、高校に入った辺りから私はずっと考えていました)
 
6: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:28:47.27 ID:yuWq95qw
海未(穂乃果もことりも、男性に好かれやすい相貌と性格をしていることは間違いありません)

海未(女子校に入ったとはいえ、学外の男性と付き合う可能性はいくらでもあります。そしてもし、愛する人が出来たなら……)

海未(こういったイベントは私とではなく、そのお相手と祝う筈ですから)

ことり「あはは……私は彼氏なんてまだ考えられないよ」

穂乃果「メイド喫茶のお客さんとかにいい人いないの?」

ことり「お湯をかけた野良犬みたいな臭いする人しかいないよ」

穂乃果「難儀だね」

海未「そういう穂乃果はどうなのですか? まさか既に彼氏と破廉恥なことを……!」

穂乃果「私もいないよ。出会いがないもん」

穂乃果「それに彼氏が出来たら私、μ'sのグループラインでさんざん煽るし処〇喪ったらにこちゃんに煽りスタンプ連打するよ……」

海未「そ、そうですか」
 
9: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:35:23.30 ID:yuWq95qw
ことり「海未ちゃんは……まぁいないよね」

穂乃果「いないね。賭けてもいいよ」

海未「何故私の時だけ質問ではなく断定から入るのですか?」

海未「存外、日常生活が破廉恥祭りかもしれませんよ? ガニ股ドスケベ音頭だったらどうするんです?」

海未「破廉恥な!」バシィッ

穂乃果「痛いっ! うう……叩かないでよ」

海未(穂乃果の白い頬に、赤みがさしています。そのコントラストは雪景色に咲く一輪の薔薇のようで、私はそれがとても愛おしくて仕方ありませんでした)

海未(ことりもまた、白い頬をしています。ことりの頬も殴ってみたくなりました。しかしことりは破廉恥なことを言っていません)

海未(殴れる道理はきっと私には、無いのでしょうね)

海未「雪、少し強まりましたね。積もるのでしょうか」

穂乃果「積もったらかまくら作りたい! 先生に言ったらスコップ貸してもらえないかな?」
 
10: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:43:05.38 ID:yuWq95qw
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クリスマス当日

にこ「……どうする?」

海未「どうすると言われましても……」

海未(クリスマスの日、私達は皆で学校に集まってスクールアイドル部の部室でパーティを開きました)

海未(パーティはそれはそれは楽しいものでした。途中で凛が死にかけるハプニングもありましたが、それもまた一興でしょう)

海未(問題は……)

真姫「帰るどころか学校から出ることすら出来ないわね。間違いなく」

海未(私達がパーティをしている間に異常な量の雪が降り、学校を雪で埋め尽くしたことです)

真姫「東京でこんなに降るなんて明らかな異常気象よ。屋上に迫る勢いで積もるなんて……10mくらいかしら」

穂乃果「私の家完全に埋もれちゃってるじゃん……」

ことり「携帯も圏外になってるし、どうしよう……」
 
11: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:51:21.29 ID:yuWq95qw
希「とにかく今は待つしかないんじゃないかな? 晴れれば雪も溶けていくやん……水は残るけど」

絵里「この量の雪が溶けたら酷いことになりそうね……」

絵里「ある意味、学校に来ていた事は幸運だったのかもしれないわ」

にこ「確かに普通の家にいたら押しつぶされてもおかしくないわね」

穂乃果「自分ちが団地で潰れないからって軽く言ってくれるね……私は心配でしょうがないよ」

海未(……私の家も古い民家です。地震には強いそうですが、この降雪に耐える設備があるとは思えません)

海未(両親や住み込みの門下生達は無事でしょうか……仮に家が潰れていなかったとしても呼吸が出来るかも怪しい状態ですし)

花陽「わ……私、お兄ちゃん達が死んじゃったら……」グスッ

海未「大丈夫ですよ、花陽。きっと木陰さん達も無事ですから」

海未(口だけの慰め……心が微塵も篭ってないことに、気付かれなければいいのですが。この状況で皆無事なんてことは考えにくいのですから……)
 
12: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 01:59:39.79 ID:yuWq95qw
海未(翌日になっても、その翌日になっても空は曇ったままでした)

海未(電気が点かなくなったのは三日目の晩のことでした。この状況で電気が使えないというのは文字通りの死を意味します)

海未(電気を使わなくても使用可能なストーブを教室に持ち寄って、九人で震えながら身を寄せ合いました。三日間お風呂に入っていないせいか、皆の身体からはお湯に濡れた野良犬のような臭いが漂っていました)

凛「やっぱり、助けも何も来ないのはおかしいよ。凛が見てくるにゃ!」

海未(食料の残りを気にし始めた四日目の朝、凛はそう叫ぶや否や教室を出て走り出して行きました)

海未(屋上に向かっているようでした。慌てて後を追いましたが、屋上についた時には凛の背中は既に硬い雪の上を遠ざかっていっていました)

花陽「凛ちゃん……」フラフラ

海未(凛の後を追って、花陽もまた雪の中へと消えていきました。誰もそれを止める人間はいませんでした)

海未(皆々黙りこくって、凛と花陽の背中をじっと見ていました。にこが戻ろうと提案しなければ、きっと私達は凍りつくまでその場で呆けていたかもしれません)
 
14: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 02:06:42.80 ID:yuWq95qw
絵里「見て! 助けよ! 私達は助かるのよ! あはっあははっ!」

海未「……」

海未(五日目には絵里が発狂しました。何もない廊下を指差して、自衛隊が助けに来たと叫んでいました)

海未(希はそんな絵里を必死に止めていましたが、数時間すると酷く沈鬱な表情で教室に座り込み、耳を塞いで丸くなってしまいました)

海未(知らないうちに絵里はいなくなっていました。きっと屋上から外に行ったのでしょう。また吹雪が始まったのか、ごうごうと風の鳴る音だけが無言の教室に響いていました)

海未(六日目。食料が尽きました)

海未(七日目、朝起きると教室には私を含めて四人しかいませんでした。穂乃果、ことり、真姫。希とにこは学校のどこを探しても、見つかりませんでした)

海未(絵里を探しに行ったのか、家族の元に帰ったのか。それは分かりません)

海未(もう誰も何も言おうとはしませんでした。体力を使わないようにただジッと座り込んでいます。私達は何を待っているのでしょうか)

海未(助けなんて本当に来るのでしょうか)
 
15: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 02:11:19.76 ID:yuWq95qw
海未(九日目、もう三日も何も食べていません)

海未(穂乃果と真姫が口論をする声で目が覚めました。話を聞くに、穂乃果が食料を隠し持っていたそうです)

海未(鞄のポケットに入れっぱなしになって忘れていた、溶けた一口チョコ。賞味期限はとっくに切れているであろう、糖が浮いて表面が白く変色したそれを奪い合って二人は殴り合いの喧嘩をしていました)

海未(真っ赤でした)

海未(気付けば、真っ赤でした。ことりが椅子を持っているのが見えました)

海未(穂乃果と真姫は床に倒れています)

海未(急に全てがどうでもよくなり、私はもう一度眠ることにしました)

海未(願うなら、二度と目覚めませんように)
 
16: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 02:17:16.31 ID:yuWq95qw
海未(十日目のことでした)

海未(窓から差し込む光で私は目を覚ましました。……差し込む光?)

海未「ぁ……」

海未(窓を覆いつくしていた雪は、何処かに消えていました。あれほどあった雪が一晩で溶けるとは到底思えません) 

海未(誰かが助けに来たのです。ことりも顔を上げました。穂乃果と真姫もほぼ同時に。ピクリとも動かないので死んだと思っていましたが、生きているようです)

海未(よく見たら赤いのは真姫が懐に入れていた輸血液でした。通りで真っ赤なわけです)

海未(教室のドアが開く音が聞こえました。何人かが慌てて入ってくる足音も……)

凛「ごめん、皆! 助けに来るのが遅れて……これ飲んで!」

花陽「中々戻ってこれなくて……!」

海未(懐かしい声と共に、私の喉を清涼飲料水が潤しました。凛と花陽……そして絵里、希、にこの姿がそこにはありました。あの雪の中に分け入って、死んだと思っていた皆の姿がそこにはあったのです)
 
17: (鮒寿司) 2021/12/24(金) 02:29:08.19 ID:yuWq95qw
海未「どう……して」

凛「凛も正直死を覚悟したよ……けど、助けてくれたんだ」

凛「そう、ダブル金玉ドラゴンさんが」

海未(窓の外に視線をやると、ダブル金玉ドラゴンが雪を溶かし尽くしていました。ダブル金玉ドラゴンは金玉並の熱を操る種族の龍と、古い文献で読んだことがあります)

海未(確かにそれならば雪を溶かすことも出来るでしょう)

絵里「安心して、皆の家族も無事よ。あの異常気象が起こってすぐに、ダブル金玉ドラゴンが保護してくれていたの」

希「食料もあるから心配しなくていいんよ。ダブル金玉ドラゴンがスーパーで買い物をしてきてくれたから……」

海未「ダブル……金玉ドラゴン……」

海未(煉瓦を擦るような鈍い鳴き声が窓の外から響きました。楽しげなその声を聞きながら、私は気付けば涙を流していました)

海未(助け出されてすぐに私達は西木野総合病院に入院しました)

海未(異常気象の原因が何だったのかは分かりません。ただの大雪として処理され、いつの日かあの時は大変だったと語られるだけの笑い話になるのでしょう)

海未(それでも私は忘れません。窓から浴びた光を)

海未(あの煉瓦を擦るようなダブル金玉ドラゴンの鳴き声を……)

海未(ちなみにラブライブは私達が閉じ込められている間に決勝が終わったので敗退しましたが、ダブル金玉ドラゴンが百人一首の大会で優勝した為廃校は回避されました)


 
18: (えびふりゃー) 2021/12/24(金) 02:31:00.03 ID:lSjUbisu
なんだこれは…
 
19: (SB-Android) 2021/12/24(金) 02:37:02.94 ID:ZCrR++1G
俺が掲示板SSに求めてるのはこういう与太話よ
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1640275435/

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