かすみ 「かすみんは学びます!」【ラブライブ!SS】jo

かすみん SS


67: 2020/12/19(土) 16:25:11.73 ID:SglJbksM
では+αである四作目頑張ります。

― かすみ 「またかすみんの名前を間違えたんですか!?」―

せつ菜 「覚えてますよ!! ハルカですよね!!」

かすみ 「違いますよ!? またポケモンじゃないですか!? しかも前回より遠くなってるし!!」

彼方 「今遥ちゃんの名前呼んだ?」

かすみ 「呼んでないです!」

せつ菜 「えっと、ではヒカリですか?」

かすみ 「違いますよ!?」

68: 2020/12/19(土) 16:25:58.15 ID:SglJbksM
せつ菜 「えっ!? じゃ、じゃあ、一体……!」 アセアセ

かすみ 「?」

せつ菜 「えっと……うーん……!」 ムムム

かすみ 「えっ? もしかして本当に思い出せないんですか?」

せつ菜 「……あの、その、ごめんなさい、本当に」

かすみ 「そ、そんな」

かすみ (仲間なのに、名前を思い出してくれないなんて……そ、そんなの……)

かすみ 「酷いじゃないですか……」 ポロポロ

69: 2020/12/19(土) 16:26:55.80 ID:SglJbksM
ガチャ

しずく 「みなさん、おはようございます」

かすみ 「あっ! しず子!! しず子なら分かるよね!? 私の名前!!」

しずく 「えっと……ハムレット?」

かすみ 「ハムレットはシェイクスピアの『ハムレット』の主役でしょ!?」

しずく 「じゃ、じゃあ春日さん?」

かすみ 「それはオードリーでしょ!?」

しずく 「あれ……なんでだろう、大切な人なのに……いつも一緒にいたのに……本当に……本当に、思い出せない……」

かすみ 「えっ……」

かすみ (そ、そんな……! しず子まで!? ど、どうして……)

70: 2020/12/19(土) 16:28:11.82 ID:SglJbksM
しずく 「どうして……どうして……思い出せないの!! 本当に忘れちゃいけないことなのに! なんで……」 ポロポロ

かすみ (しず子が泣いてる……)

かすみ 「……」

しずく 「ごめんなさい、すぐ、すぐ思い出しますから!」 ポロポロ

かすみ (何が起きてるか全然分かんない……でも、ここまで来たらきっと、しず子やせつ菜先輩が悪いわけじゃない……)

かすみ 「ごめんね、しず子」 ダキッ

しずく 「なんで、なんであなたが謝るんですか……! 悪いのは私なのに! 私なのに」 ポロポロ

71: 2020/12/19(土) 16:29:57.29 ID:SglJbksM
かすみ (私を名前で呼んでくれない……本当に思い出せないんだ、かすみんの名前)

かすみ 「ごめんね、しず子……!」 ポロポロ

ガチャ

愛 「ごめーん! アイス買ってたら遅れてきちゃった! 愛だけに! ……って、えっ?」

かすみ 「……」 ポロポロ

しずく 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 ポロポロ

せつ菜 「どうすれば、本当にどうすればいいんでしょうか……」 アセアセ

愛 「これはどういう状況……?」

72: 2020/12/19(土) 16:30:51.77 ID:SglJbksM
愛 「えっと、かすみん? 泣いてるとこ悪いんだけど何が起きてるのか教えてくれない?」 ヒソヒソ

かすみ 「えっ……!」

愛 「?」

かすみ 「愛先輩は私の名前、覚えてるんですか!?」 ガシッ

愛 「へっ? そ、そりゃ、覚えてるよ。中須かすみ、でしょ?」

かすみ 「良かった……良かった……ちゃんとかすみんの名前を覚えてくれている人がいた……」 ポロポロ

73: 2020/12/19(土) 16:31:40.39 ID:SglJbksM
愛 「何言ってんの、当たり前でしょ? 愛さん、かすかすのことはすごく印象に残ってるんだから。なんていっても、頭にかかった霞が一気に吹き飛ぶくらいの衝撃を受けたからね!! かすみんだけに!」

かすみ 「うぅ……良かったぁ……」 ポロポロ

愛 (ありゃ? かすかす呼びに怒らない? これ、思ったより重症かな)

愛 「ねぇ、みんな、今日かすかすどうしちゃったの……? ちょっと変だよね」 チラッ

愛 「って、えっ?」

74: 2020/12/19(土) 16:32:29.26 ID:SglJbksM
せつ菜 「今日の練習メニューはどうしましょうか!!」 ワクワク

しずく 「昨日と同じで良いんじゃないでしょうか?」

彼方 「彼方ちゃんも賛成だよ~」

愛 (あんなにさっきまでパニクっていたのに、もうみんな普通に喋ってる……!?)

愛 「ねぇ、みんな! 無視しないでよ!! かすかすが何で泣いてるのか教え……」

せつ菜 「あれ? 愛さん、いつの間にいたんですね! 良ければ一緒に練習メニューの話し合いをしてくれませんか?」

75: 2020/12/19(土) 16:33:56.66 ID:SglJbksM
愛 「練習メニューの話し合い?」

かすみ 「うぅ……」 ポロポロ

愛 「そ、それも大切だけど、今はまずかすかすのことを……」 チラッ

しずく 「かすかす?」

彼方 「ん?」

せつ菜 「そのかすかすって誰のことですか?」

愛 「はっ?」

かすみ 「えっ……」 ポロポロ

76: 2020/12/19(土) 16:34:59.26 ID:SglJbksM
愛 「かすかすはかすかすだよ!? えっと、つまり、かすみんのこと!!」 アセアセ

彼方 「かすみん……? 紅茶の名前かなぁ」

しずく 「それはジャスミンじゃないですか?」

せつ菜 「すいませんがその、かすみんのことなんですが分からないですね……」

愛 「はっ……?」

かすみ 「……」 ポロポロ

かすみ (三人とも嘘をついてるようには見えない。名前どころか存在すら忘れちゃったの? この一瞬で?)

77: 2020/12/19(土) 16:36:00.82 ID:SglJbksM
愛 「いやいや!? こ、ここにいるじゃん! かすみんが!」 ユビサシ

せつ菜 「?」

彼方 「うーん……えっと……」

しずく 「申し訳ないのですが、どこにいるんですか? そのかすみんという……人? 物?」

せつ菜 「愛さんが指を指してるところには何もないのですが……」

愛 「えっ……!?」

78: 2020/12/19(土) 16:37:23.72 ID:SglJbksM
ガチャ

エマ 「ごめんね、少し遅れちゃった!」

愛 「あっ! エマっち!! ねぇエマっちは分かるよね!?」 ガッ

エマ 「そんなに慌ててどうしたの愛ちゃん?」

愛 「中須かすみって分かるよね!? 大事な同好会メンバーだもん! 分かるよね!?」

エマ 「中須かすみ……? うーん、聞いたことないなぁ」

愛 「なっ」

かすみ 「っ!」 タタタタ

愛 (かすかす!!)

79: 2020/12/19(土) 16:38:02.19 ID:SglJbksM
ガチャ

愛 (今かすかす、泣きながら出て行ってた……)

せつ菜 「あれ? 今ひとりでに扉が開きませんでした?」

エマ 「それはないんじゃないかなぁ。気のせいじゃない?」

愛 (これって……さすがに嫌がらせにしても不気味すぎるよね。本当にみんな、かすかすのことを忘れてるし見えてないんだ……!)

愛 (って今はそんな場合じゃない!! かすかすを追わないと!!)

愛 「ごめん!! 少し外の空気吸ってくる!」

ガチャ






80: 2020/12/19(土) 16:39:06.38 ID:SglJbksM
果林 「ねぇ、璃奈ちゃん。なんでカーナビ機能に制約なんてつけるのよ」

璃奈 「スリル楽しめた? 璃奈ちゃんボート『ワクワク』」

果林 「楽しめるどころかそのせいで大変だったのよ!?」

璃奈 「えっ、悪いことしてしまったなら謝る……ごめんなさい……」 シューン

果林 「って、あっ、そんなに謝らなくても良いのよ? なんていうか、迷うのもまぁ楽しかったし、璃奈ちゃんは悪くないというか」 アセアセ

81: 2020/12/19(土) 16:41:06.83 ID:SglJbksM
璃奈 「ん? あそこにいるのって」 チラッ

果林 「あれはかすみちゃん?」

かすみ 「……」 グスッ

果林 「壁の角っこでうずくまってるわね」

璃奈 「なにかあったのかもしれない」

果林 「そんなところでどうしたのよ、かすみちゃん」 ヒョイ

かすみ 「えっ……!」

果林 「そんなに驚いた顔して……何があったのよ」

82: 2020/12/19(土) 16:41:49.39 ID:SglJbksM
かすみ 「果林先輩……私が見えるんですか……!」 ポロポロ

果林 「ええっ!? 急に泣き出したわよ!?」

璃奈 「た、大変だー……! 璃奈ちゃんボート『オロオロ』」

愛 「かすかすーーー!!」 タタタタ

かすみ 「あっ、愛先輩……!」

愛 「良かった無事で!!」 ダキッ

かすみ 「うぅ……愛先輩……!」 ポロポロ

83: 2020/12/19(土) 16:43:25.01 ID:SglJbksM
果林 「ちょ、ちょっと、愛!? かすみちゃんは泣いてるし、何があったのよ!?」

璃奈 「私にも教えて」

愛 「二人はかすかすのこと覚えてるの!?」

果林 「えっ、それはもちろん……当然じゃない。仲間なんだから」

璃奈 「仲間がつらいときは支え合うのが大事!」

かすみ 「りな子……果林先輩……!」

愛 「えっとね、じゃあ簡単に話すけど……」






84: 2020/12/19(土) 16:45:11.42 ID:SglJbksM
果林 「今日ってエイプリルフールだったかしら」

愛 「本当なんだってば!!」

果林 「分かってるわよ……だけどいまだに信じられない……演技とかじゃないの?」

愛 「いや。いくらしずくが演技が上手いにしても、あれはさすがに……! それに、カナちゃんやせっつー、エマっちまで演技してるなんてありえないよ!」

璃奈 「……」

85: 2020/12/19(土) 16:46:21.30 ID:SglJbksM
かすみ 「だけど少しホッとしました……愛先輩や果林先輩、りな子はちゃんと、私のことを覚えててくれましたから!」 ニコッ

果林 「ふふっ、かすみちゃんはやっぱり笑顔が一番素敵よ」 ナデナデ

かすみ 「ちょ……頭撫でないでください!!///」 カァァ

愛 (かすかす、少しは元気を取り戻せたかな……良かった……)

86: 2020/12/19(土) 16:47:25.82 ID:SglJbksM
「もういい加減にしてよ、侑ちゃん!!」 ドンッ

愛 「って今の怒鳴り声はなに!?」

果林 「声的には歩夢だけど……」

璃奈 「あの歩夢さんが怒鳴るなんて……しかもよりによって、侑さんに怒るなんて、信じられない」

かすみ (歩夢先輩……!)

かすみ 「みなさん、歩夢先輩のところに行きましょう!」

87: 2020/12/19(土) 16:48:40.22 ID:SglJbksM
果林 「ええっ!? もちろん歩夢のことも心配だけど……今は何より、かすみちゃんのことをどうにかしないと」 アセアセ

かすみ 「いや私は歩夢先輩のことが放っておけませんので行きます!」 タタタタ

愛 「かすかす!?」

かすみ (最初は侑先輩を取り合って喧嘩したり、仲も良くなかったです……でも、やっぱり歩夢先輩は私にとって最高の先輩で、憧れのスクールアイドルなんです! あの赤ちゃんレベル事件のとき、改めて私は歩夢先輩の大切さを知ったから! だから!!)

かすみ 「歩夢先輩! 今行きます!」 タタタタ






91: 2020/12/19(土) 19:16:48.66 ID:SglJbksM
侑 「あ、歩夢……どうしちゃったのさ!」 アセアセ

歩夢 「どうかしちゃったのは侑ちゃんの方だよ!?」

かすみ 「け、喧嘩はやめてくださいーー!」 サッ

愛 「どうしたのさ、二人とも!!」

歩夢 「……!」

侑 「愛さん……!」

愛 「とりあえず、喧嘩は良くないよ! 意見が合わないなら、ちゃんと冷静に話し合いをしなくちゃ!」

92: 2020/12/19(土) 19:17:39.12 ID:SglJbksM
侑 「……そうだね、怒鳴り合うなんて私たちらしくないや。ごめんね、歩夢」

歩夢 「わ、私だってごめんなさい……侑ちゃん……」

愛 「うんうん、それでこそゆうゆうと歩夢だよ……えっと、それで何があったのかな?」

侑 「歩夢が急に怒ったんです。でも今思えば、歩夢があんなに怒るなんて滅多にないことだから、きっと私が酷いことを言ったんだと思います」

かすみ 「先輩たちも喧嘩することがあるんですねぇ……侑先輩は何を言っちゃったんですか?」

侑 「……」

かすみ 「えっ、スルー?」

93: 2020/12/19(土) 19:20:22.64 ID:SglJbksM
愛 「ねぇ、ゆうゆうってば、答えてよ。何を言っちゃったの?」

侑 「知らないって言ったんです」

愛 「知らない?」

かすみ (ま、まさか)

侑 「歩夢が友達の話をし始めたんですけど、私の知らない人の話で。でも知らない素振りを見せたら怒っちゃって……」

かすみ 「そ、そんな……侑先輩まで……」

94: 2020/12/19(土) 19:21:30.26 ID:SglJbksM
―――――

―――



かすみ 「先輩、大好きっ!!」 ダキッ

侑 「ちょ、かすみちゃん?/// 急に抱きついてくるなんて恥ずかしいよ///」

かすみ 「大好きな先輩にくっつきたいかすみんのわがままを許してください!」

侑 「仕方ないなぁ///」



―――

―――――

95: 2020/12/19(土) 19:22:25.81 ID:SglJbksM
かすみ 「あんなに仲が良かったのに……先輩のおかげでかすみんは自分の好きを見つめ直せたのに……!」 ポロポロ

歩夢 「か、かすみちゃん……!」

かすみ 「ごめんなさい、愛先輩……少し誰もいない場所に行ってもいいですか?」

愛 「……」

愛 「うん、いいよ」

かすみ 「っ!」 タタタタ

歩夢 「かすみちゃん……」

歩夢 (私、またかすみちゃんを泣かせちゃった……)

96: 2020/12/19(土) 19:23:09.73 ID:SglJbksM
歩夢 「侑ちゃん……今日ばかりは侑ちゃんのこと、好きになれないよ……」 ボソッ

侑 「歩夢?」

愛 (まずはゆうゆうをこの場から帰ってもらって、歩夢に事情を説明する必要があるな)

愛 「ゆうゆう、悪いんだけど先に部室に行ってくれないかな? 歩夢と二人っきりで話したいんだ」

侑 「えっ? ……うん、分かった」

歩夢 「……」

愛 「歩夢、こっちに来てくれる?」






97: 2020/12/19(土) 19:24:00.68 ID:SglJbksM
果林 「気まずすぎて外からこっそり見ていることしかできなかったけど……侑の様子を見るに、愛の言ってたことは本当みたいね」

璃奈 「あっ、こっちに二人来る」

歩夢 「果林さんに、璃奈ちゃん……」

愛 「かすかすの様子は分かる?」

果林 「かすみちゃんはあっちの空き教室の方に向かったわ……でも今は一人にさせてあげて」

98: 2020/12/19(土) 19:25:10.14 ID:SglJbksM
璃奈 「歩夢さん。まず一言言わせて。侑さんを憎まないで欲しい、今回のことは侑さんだけのことじゃないから」

歩夢 「えっ? どういうこと?」

愛 「実は、かすかすの存在を忘れて、なおかつ姿さえ見えなくなっちゃう現象は、ゆうゆうだけじゃなくて……せっつー、カナちゃん、しずく、エマっち。つまりここにいるメンバー以外みんなに起きてるんだ」

歩夢 「そ、そんな……!」

果林 「原因は今のところ不明よ。でもかすみちゃんの心は相当傷ついてるはず……私たちでできるだけ支えなくちゃいけないわ」

璃奈 「原因は分かるかもしれない」

愛 「えっ!? そ、それ本当!?」

99: 2020/12/19(土) 19:25:49.40 ID:SglJbksM
璃奈 「うん……だけど、それを調べるにはかすみちゃんの協力が必要」

果林 「だけどかすみちゃんはしばらく一人にさせてあげるべきよ」

璃奈 「そうだけど……もしかしたらそんな時間はないかもしれない」

果林 「……どういうこと?」

璃奈 「歩夢さん」

歩夢 「!」

璃奈 「きっと今一番かすみちゃんに寄り添えるのは歩夢さんだから、お願い。かすみちゃんをここに連れてきて欲しい」

歩夢 「……」

璃奈 「お願い」

歩夢 「……うん、分かった。行ってくる」 タタタタ






100: 2020/12/19(土) 19:26:31.40 ID:SglJbksM
かすみ (こうして窓際の机に突っ伏してると……怖気ついてたときのしず子を思い出す……)

かすみ (でも今のしず子はすごく輝いてる……大きな壁を越えたんだ)

かすみ 「だけどそんなしず子の輝く場所に、かすみんの居場所はない……!」 グスッ

かすみ 「いや、侑先輩にも忘れられて、同好会の半数にも忘れられた今じゃ……同好会にすら居場所はないかもな……はは寂しいなぁ」

かすみ 「なんて……簡単に、簡単に……!!」 グググ

かすみ 「諦められるわけないよっ!!! せっかくここまで来たのに!! こんな今まで幸せだったのに!! なんで!! なんで!!」 ポロポロ

101: 2020/12/19(土) 19:28:01.57 ID:SglJbksM
ガチャ

歩夢 「かすみちゃん!!」

かすみ 「えっ……歩夢先輩」

かすみ (そっか、そういえばさっき歩夢先輩は私のことを覚えてた……。あの歩夢先輩が侑先輩に怒るんだもん、きっと、私が傷つかないように、一生懸命頑張ってくれていた……なのに私は……)

かすみ 「あはは、どうしたんですか、歩夢先輩。そんな怖い顔して。そんなんじゃ、せっかく可愛い顔が台無しですよ! まぁかすみんの方が可愛いですけどね!」 ニコッ

歩夢 (涙の跡でバレバレだよ……かすみちゃん……)

102: 2020/12/19(土) 19:28:51.99 ID:SglJbksM
歩夢 「かすみちゃん!!」 ダキッ

かすみ 「へっ……歩夢先輩……?」

歩夢 「無理して笑わないで、つらいときは泣いていいんだよ」

かすみ 「な、何言ってるんですか……歩夢先輩……それに急に抱きつかれたら、恥ずかしいですよぉ。いくらかすみんが可愛いとはいえ」 アセアセ

歩夢 「かすみちゃんは可愛いよ」

かすみ 「えっ」

歩夢 「そしてすっごく優しい……だから、そんなかすみちゃんが居なくなっちゃったら、私すごく悲しいよ」

かすみ 「歩夢先輩……」

歩夢 「かすみちゃん。今更だけど許可を取るね? ギュッとしても良いかな?」

かすみ 「ギュッ?」

歩夢 「遠くに行かないようにだよ」 ギュッ

かすみ 「歩夢先輩……///」 カァァ

かすみ (これって)

103: 2020/12/19(土) 19:29:42.99 ID:SglJbksM
―――――

―――



かすみ 「歩夢先輩……ギュッとしても良いですか?」 ポロポロ

歩夢 「ギュッ?」

かすみ 「遠くに行かないようにです!!」 ギュッ

歩夢 「えっ……///」 カァァ

かすみ 「うぅ、しばらく離しませんよ!」



―――

―――――

104: 2020/12/19(土) 19:30:31.45 ID:SglJbksM
歩夢 「かすみちゃん、絶対私たちがかすみちゃんを助けてみせるからね……!」 ポロポロ

かすみ (かすみんのやったことをまんま返してくるなんて……)

かすみ 「ありがとうございます……先輩……」 グスッ

かすみ (歩夢先輩も粋なことをしますね……大好きですよ、先輩)






105: 2020/12/19(土) 20:15:54.69 ID:9T41+f3T
引き込まれる

106: 2020/12/19(土) 22:27:36.26 ID:gos1BioA
ぽむかすういいよお

110: 2020/12/20(日) 01:06:06.06 ID:Z7Ll5Nlo
頑張れ

112: 2020/12/20(日) 13:29:46.43 ID:SHY2LIc8
>>108

>>109

>>110

>>111

待っていただきありがとうございます。
また少しずつですが、更新させてもらいます。
保守、ありがとうございます。

113: 2020/12/20(日) 13:31:40.85 ID:SHY2LIc8
トコトコ

愛 「あっ、歩夢……! かすかす……!」 パァァ

歩夢 「みんな、ただいま!」

かすみ 「今、みんなの可愛いかすみんが、帰ってきましたよ~♪」

果林 「ふふ、かすみちゃん、元気になったみたいで良かったわ」

かすみ 「先輩たちのおかげですよ……! たしかにすごくつらくて、今も胸の奥がずっと痛いですけど、だからって泣いてても何も変わらないですから。みんなが協力してくれるならもう怖くありません!! 絶対に解決しましょう!」

愛 「かすかす! その意気だよ!!」

114: 2020/12/20(日) 13:33:25.70 ID:SHY2LIc8
璃奈 「……」 カタカタ

かすみ 「ってりな子は何をしてるんですか?」

璃奈 「パソコンいじり。正確にはハッキング」

かすみ 「ええっ!? ハッキング!?」

歩夢 「璃奈ちゃん、さっき原因が分かるかもしれないって言ってたけど、もしかしてそれを調べてるの?」

璃奈 「そう。でも、そのためにはかすみちゃんの個人情報が必要。生年月日や住所、諸々教えてほしい」

かすみ 「えぇ~? アイドルの個人情報は重要機密ですよ!」 プンプン

果林 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

かすみ 「うぅ……ごめんなさい……」

115: 2020/12/20(日) 13:34:19.14 ID:SHY2LIc8
愛 「あはは、いつものかすかすに戻ったなら戻ったでテンションが高すぎて大変だね」

果林 「それよりハッキングって、一体どこにしてるのよ?」

璃奈 「市役所」

愛 「えっ? 市役所!?」

璃奈 「かすみちゃん、私に耳打ちでいいから個人情報を教えてほしい」

かすみ 「あっ、はい! 分かりました!」

かすみ 「……」 ゴニョゴニョ

璃奈 「……」 カタカタ

璃奈 「よし、確認できた」 カタッ

116: 2020/12/20(日) 13:35:25.57 ID:SHY2LIc8
果林 「えっと、戸籍を確認するだけならハッキングなんてしなくても良かったんじゃ……」

璃奈 「違う。あることを確認するのは簡単、でも、ないことを確認するにはくまなく調べる必要がある。だから個人情報を聞いてキーワード検索をした。関係者しか見れないところも確認したけど、どこにもなかった」

歩夢 「えっ? それってつまり……」

璃奈 「今、かすみちゃんは戸籍すら存在してない」

かすみ 「ええっ!?」

璃奈 「正確に言えば、生まれたことになっていない。過去が変わってる」

117: 2020/12/20(日) 13:36:22.36 ID:SHY2LIc8
果林 「えっ? つまりどういうことなの?」 キョトン

璃奈 「誰かがかすみちゃんが生まれるキッカケとなる過去を変えて、かすみちゃんの存在をなかったことにしたっていうこと」

愛 「それって、犯人はタイムトラベラーってこと?」

果林 「ええっ? 戸籍がないのは大問題だけど、そこからタイムトラベラーなんてそんな流石に非現実的な……飛躍しすぎじゃない?」

璃奈 「ここに時空間連続体計測装置がある」

果林 「……なんて?」

118: 2020/12/20(日) 13:37:22.64 ID:SHY2LIc8
璃奈 「簡単に言うと、時空の乱れを波として観測できる装置。趣味で作ってた」

かすみ 「趣味でって」

璃奈 「これで調べると、明らかにかすみちゃん周辺の時空だけ歪んでる。何者かの、干渉があったのは間違いない」

愛 「うーん……愛さん、さすがにそこまで難しいことは分からないけど、りなりーが言ってるならきっと本当だよ! 信じる! すごいなぁ、タイムトラベラーが本当にいたなんて」

かすみ 「ってことはそのタイムトラベラーが未来からやってきて、過去を変えて、私をいなかったことにしたってことなの?」

璃奈 「うん」

119: 2020/12/20(日) 13:38:10.51 ID:SHY2LIc8
かすみ 「で、でも! じゃあ、今ここにいるかすみんは一体誰なんですか!? 私は戸籍もないし、生まれたことにもなってないんですよね!?」

璃奈 「それはおそらくタイムラグがあるから」

果林 「タイムラグ?」

璃奈 「まだ影響が、パラドックス修正が、完璧には入ってないということ。いずれ修正は完璧になって、ここにいるみんなもかすみちゃんのことを忘れてしまって、かすみちゃん自身も消えてしまうと思う」

かすみ 「えっ……」

璃奈 「だけどそうならないために私たちがいる。璃奈ちゃんボート『任せて』」 キリッ

かすみ 「りな子……!」 パァァ

120: 2020/12/20(日) 13:39:20.61 ID:SHY2LIc8
璃奈 「まずはみんな最近あったことを思い出して。それがそのタイムトラベラーの正体に繋がるかもかもしれない」

歩夢 「でもタイムトラベラーって未来から来たんだよね? なのに最近のことを思い出すの?」

璃奈 「過去を変えられてるなら、あらゆる時系列でその反応が出てもおかしくない。でも、ここにいるかすみちゃんは記憶の中では今日まで生きてきてるはずだし、異常があったのも最近から。なら、最近に何か大きなポイントがあると考えられる」

かすみ 「むむっ……! 最近ですか、最近あったことって……」 ムムム

愛 「あっ、大岡裁き事件」

歩夢 「そういえばあのときかすみちゃん……」

121: 2020/12/20(日) 13:43:39.59 ID:SHY2LIc8
―――――

―――



かすみ 「なっ!? 歩夢先輩も往生際が悪いですよ!!」 ググググ

歩夢 「かすみちゃんこそ、しずかすがあるでしょ?」 ググググ

かすみ 「しず子は演技に夢中でよくかすみんと他の人の名前を間違えるからなしです!!」 ググググ

歩夢 「ならせつ菜ちゃんとかいるでしょ!」 ググググ

かすみ 「せつ菜先輩はアニメに夢中でよくかすみんとキャラクターの名前を間違えるからなしです!!」 ググググ

歩夢 「かすみちゃんの恋愛基準は名前を間違えないかどうかなの!?」 ググググ



―――

―――――

122: 2020/12/20(日) 13:44:31.96 ID:SHY2LIc8
歩夢 「って言ってたような……」

かすみ 「そっか、あの時点でもう、しず子やせつ菜先輩には影響が出てたんだ……」

愛 「他には……うーん、あれじゃない? 赤ちゃんレベル事件!」

果林 「赤ちゃんレベル事件? 大岡裁き事件は小耳に挟んだけど、それは知らないわね」

歩夢 「あっ……」

かすみ 「そ、それはちょっと色々あったんですよ!」 アセアセ

123: 2020/12/20(日) 13:45:08.64 ID:SHY2LIc8
かすみ 「あ、愛先輩! それは秘密にしておいて、って言ったじゃないですか」 ヒソヒソ

愛 「あっ、忘れてた」

果林 (あのかすみちゃんの焦り様に、歩夢の顔面蒼白なところを見ると、歩夢にとってよっぽど知られたくないことなのね……なら詮索しないのが先輩ってものよね)

果林 「へぇ……色々ね。詳しくは聞かないけどもしかしたら関係あるかもしれないから、頭の隅には置いておきなさい」

かすみ 「も、もちろんです!」

歩夢 (良かった、バレなかった……) ホッ

124: 2020/12/20(日) 13:46:03.62 ID:SHY2LIc8
璃奈 「その事件の内容については話さなくていいけど、日付だけ教えて。その時間の波の様子を確認してみる。大岡裁き事件に関しては私も一緒にいたから分かる」

かすみ 「分かりました!」

かすみ 「……」 ゴニョゴニョ

璃奈 「……」カタカタ

愛 「えっとじゃあ、他に今回のかすかすの件に関係ありそうな最近の出来事ってあった?」

かすみ 「むぅ……これ以外はこれと言って目立ったことはないような……思い出せないだけかなぁ」 ムムム

歩夢 「うーん、私も思い出せないや……」

125: 2020/12/20(日) 13:46:49.06 ID:SHY2LIc8
果林 「あっ!」

かすみ 「えっ!? 果林先輩なにか思い出したんですか!?」

果林 「まさか私が千葉で迷ったのも関係あるの!?」

璃奈 「いや関係ない」

果林 「あっ……そうなの……」

璃奈 「……」 カタカタ

かすみ (えっ、なに、この気まずい空気……)

126: 2020/12/20(日) 13:47:33.85 ID:SHY2LIc8
かすみ 「えっと、果林先輩? ちなみにその千葉で迷ったっていうのは……」

果林 「千葉に行きたかったのに東京ディズニーランドに着いちゃったって話よ」

かすみ 「えぇ……」

かすみ (東京ディズニーランドは千葉じゃないですか……)

果林 「あっ、ちなみにそのときに使ったアプリがあるんだけど……これ『璃奈ちゃんカーナビ』って言うんだけど」 スッ

愛 「おおっ、同好会のみんなが道案内をしてくれるんだ!」

歩夢 「わぁ……みんな可愛くて、素敵だね」

127: 2020/12/20(日) 13:48:42.34 ID:SHY2LIc8
果林 「だけど一人五分で交代して、一周したら二時間っていう制約があるのよ。おかげで何時間も彷徨ったわ」

璃奈 「じゃあ貸して」 シュッ

果林 「えっ」

璃奈 「……」 ポチポチ

璃奈 「はい。今自動解析中で手が空いてたから、ささっと設定を変えてみた。自由にメンバーを選べるし、制約は消したから、これで安心して使えるよ」

果林 「あっ、ありがとう」

128: 2020/12/20(日) 13:49:45.33 ID:SHY2LIc8
かすみ 「それにしてもりな子は面白いものを作るよねぇ~。あっ、そういえば、かすみんもいるんですよね!?」

果林 「ええ、いたわよ」

果林 (可愛さアピールばかりだったけど)

かすみ 「どれどれ~? かすみんをモデルにしてるくらいですから、人工知能とはいえ可愛さ抜群のはずです!!」

かすみ 「ふんふんー♪」 ポチポチ

かすみ 「ってあれ?」

果林 「?」

かすみ 「……かすみんがどこにもいない」

129: 2020/12/20(日) 13:50:50.82 ID:SHY2LIc8
愛 「ええっ!?」

歩夢 「もしかしてアプリ内にすら影響が出始めてるの……?」

かすみ 「あっ……」 ポロポロ

かすみ (さっき歩夢先輩に励まされて、ようやく泣き止んだのに、また涙が……! 止めなくちゃいけないのに、全然止まらないよ……)

かすみ 「うぅ……」 ポロポロ

果林 「かすみちゃん……」

歩夢 「かすみちゃん!!」 ダキッ

かすみ 「歩夢先輩……?」 ポロポロ

130: 2020/12/20(日) 13:51:56.02 ID:SHY2LIc8
歩夢 「さっきも言ったでしょ? 絶対私たちが助けるからって。ねぇだから、泣くのは大事だけど、心配はしないでよ。元気でいて。お願い、かすみちゃん……!」

かすみ 「歩夢先輩……」 グスッ

かすみ 「そうですよね……みんなが頑張ってくれてるのに、一人不安に潰されてる場合じゃありません……!」

かすみ 「かすみん、今度こそ強い気持ちで頑張ります!!」

果林 (かすみちゃん……)

果林 「私もできることは全力でやるわ、大切な後輩のためだもの!」

愛 「もちろん愛さんもだよ!」

131: 2020/12/20(日) 13:53:27.84 ID:SHY2LIc8
ピコーン

果林 「えっ? 今の音は?」

璃奈 「分析が完了した」

愛 「ど、どうだった!?」

璃奈 「やっぱりその二つの出来事は関係あるらしい。果林さんのは関係ない」

果林 「そ、そうなの……」 ショボーン

璃奈 「そしてもう二つ重要なニュースがある」

かすみ 「もう二つですか?」

132: 2020/12/20(日) 13:54:25.25 ID:SHY2LIc8
璃奈 「一つ。解決法が見つかった」

果林 「えっ、本当なの!?」

璃奈 「過去改変の影響の波が徐々に来ている。でも、波には波で対抗すれば良い」

愛 「ぶつけて収束させるってこと?」

璃奈 「うん。この装置で人工的な時間の波を作って、過去改変の影響による波とぶつける。そうすれば改変の波はその時点に戻っていって消えてゆき……過去改変をなかったことにできる」

かすみ 「ってことはかすみんが無事に生まれて、みんな元に戻るってことですよね!?」 パァァ

璃奈 「そう。だけど一つ問題がある。それが二つ目のニュースにも繋がる」

133: 2020/12/20(日) 13:55:40.24 ID:SHY2LIc8
果林 「問題って?」

璃奈 「そのタイムトラベラーがまた過去を変えたら、また同じ対策をしないといけないということ。何回も過去改変をやられてしまったら、いつか対抗に失敗して過去改変を成功させてしまうかもしれない」

愛 「つまりまずはタイムトラベラー本人の意志を変える必要があるってことか……!」

歩夢 「でも未来の人なんでしょ? 説得するにしてもどうやって……」

璃奈 「それが二つ目のニュース。今、大きな時空の歪みを確認した。おそらく、過去を改変し終えて未来に帰ろうとしてるところなんだと思う……。そして、この装置を使えば、タイムマシンをハッキングしてここに連れてくることが可能」

134: 2020/12/20(日) 13:57:05.90 ID:SHY2LIc8
かすみ 「つまりちゃんと面と向かって説得できるってことですね!! このかすみんを悲しませたこと、絶対に許しませんよ!!」 ムムム

果林 「だけどかすみちゃん、覚悟はできてるの……?」

かすみ 「えっ、覚悟?」

果林 「相手はあなたの存在を消そうとした人間なのよ? それに……」

璃奈 「一個人にここまで攻撃を仕掛けるなんて、普通ありえない。タイムトラベラーは、かすみちゃんの知り合いの可能性が大きい」

かすみ 「えっ……!」

愛 「つまり同好会の誰かかもしれないってこと!?」

歩夢 「そ、そんな……」

135: 2020/12/20(日) 13:58:19.24 ID:SHY2LIc8
璃奈 「もちろん未来の時点で知り合った人の可能性もある。だけど、今のかすみちゃんにとって大切な人の誰かである可能性も十分ありえる……覚えておいて」

かすみ 「……」

かすみ (私を消そうとした人が私の知り合いである可能性……!? そ、そんなの……)

果林 「だから覚悟はあるの、って聞いたの。説得するなら強気でいなくちゃいけない、あなたが、ぶれちゃだめだから」

かすみ 「……」

かすみ (真実を知って……この先どんなつらい思いをしたとしても……それがどんなに後悔することであったとしても……それでも、かすみんはここにいたい。スクールアイドルとして輝いて、同好会のみんなと一緒にいたい!!)

かすみ 「覚悟はあります。りな子、タイムトラベラーを呼んでください」

璃奈 「……分かった」

ポチッ

136: 2020/12/20(日) 13:59:50.03 ID:SHY2LIc8
ピピピピピ

果林 「なんか光ってるけど大丈夫なの?」

璃奈 「みんな。タイムマシンが出てくるから少し離れてて」

ピピピピピ

ピピピピピ

ピカーーーーーーン

ドンッ

シューシュー…

愛 「なんかでっかい乗り物が現れた……!」

果林 「これが未来のタイムマシンなのね」

137: 2020/12/20(日) 14:01:14.02 ID:SHY2LIc8
ウィーン

トコトコ

かすみ (誰か降りてきたけど煙がすごくてシルエットしか見えない……!)

果林 (背は私より小さいかしら……)

愛 (女性の人かな……?)

シューシュー…

歩夢 (煙がなくなってきた……! 見える!)

138: 2020/12/20(日) 14:02:19.22 ID:SHY2LIc8
歩夢 「えっ」

?? 「……」

果林 「な、なんであなたが……!」

愛 「そ、そんな!? 嘘でしょ!? 嘘って言ってよ!!」

璃奈 「……信じられない」

かすみ 「本当の……本当に……そうなんですか? ねぇ、答えてくださいよ!!」

139: 2020/12/20(日) 14:03:08.36 ID:SHY2LIc8
歩夢 「そんな、嘘だよね」

?? 「……」

歩夢 「ねぇ」






歩夢 「侑ちゃん……!」






140: 2020/12/20(日) 16:11:17.81 ID:2G0Ixlvb
なんだと……?

141: 2020/12/20(日) 18:12:07.77 ID:wc2Ixn8G
なんとなく侑ちゃんな気がしたけどマジで侑ちゃんだとは…

142: 2020/12/20(日) 18:41:29.44 ID:voKch6Qu
続きが気になるぜ
楽しみじゃ

148: 2020/12/21(月) 18:38:42.77 ID:uq6lkH1L
侑 「……」

果林 「まさか侑だなんて……!」

かすみ 「侑先輩……嘘ですよね……!?」

歩夢 「侑ちゃん……」

愛 「ゆうゆう……」

愛 (ゆうゆうがかすかすの存在を消した犯人……!? 信じられない……信じたくない。でも、悩んでる場合じゃない。りなりーは言ってた、時間がないって……! なら一刻も早く説得しないといけないけど……)

璃奈 「……」 カタカタ

愛 (りなりーは時間の波を作るのに集中させたい。それに、何より相手がゆうゆうなら)

149: 2020/12/21(月) 18:39:24.91 ID:uq6lkH1L
愛 「ねぇみんな、説得は誰が行くべきだと思う?」

果林 「侑なら歩夢が適任じゃないかしら」

愛 「私も同じ考え。どう、歩夢? いける?」

歩夢 「えっ……」

歩夢 (私が侑ちゃんを説得……? いつも侑ちゃんを肯定してきた私が……?)

愛 「もし無理なら私が行く。でもできるなら、歩夢が適任だと思う」

歩夢 (私が、侑ちゃんを止めて、侑ちゃんに反抗して、侑ちゃんを説得なんて……本当にできるの?)

150: 2020/12/21(月) 18:40:01.48 ID:uq6lkH1L
かすみ 「いや……歩夢先輩は行かなくても大丈夫ですよ、かすみんが行きます」 スッ

歩夢 「えっ、かすみちゃん!?」

かすみ 「任せてください、元々はかすみんの問題ですし、かすみんの説得ならきっとうまくいくはずです!」 ニコッ

歩夢 「あっ……」

歩夢 (あの笑顔は……あのとき見た……)

151: 2020/12/21(月) 18:46:11.85 ID:uq6lkH1L
―――――

―――



かすみ 「あはは、どうしたんですか、歩夢先輩。そんな怖い顔して。そんなんじゃ、せっかく可愛い顔が台無しですよ! まぁかすみんの方が可愛いですけどね!」 ニコッ

歩夢 (涙の跡でバレバレだよ……かすみちゃん……)



―――

―――――

152: 2020/12/21(月) 18:54:02.82 ID:uq6lkH1L
歩夢 (同じだ……またかすみちゃんは、私のために、無理矢理笑ってる……! そんなの……そんなの……絶対だめっ!!)

歩夢 「いや私が行くよ、かすみちゃん……!」

かすみ 「えっ……歩夢先輩?」

歩夢 「言ったでしょ? 私たちがかすみちゃんを助けるって。それに、侑ちゃんのことなら私が一番分かってるから」

かすみ 「歩夢先輩……」

歩夢 「大丈夫。ねっ?」 ニコッ

かすみ 「……」

かすみ (ありがとうございます、歩夢先輩……)

かすみ 「はい……歩夢先輩になら、安心して任せられます!!」 ニコッ

歩夢 「うん、任せて!」

153: 2020/12/21(月) 18:54:53.20 ID:uq6lkH1L
果林 「うーん、それにしても、あれって本当に侑なの? 見た感じそっくりだけど、ただのそっくりさんって可能性はない?」

歩夢 「それはないですよ。見た目や骨格、スタイル、全部私の知ってる侑ちゃんと一致してますから」

果林 「そうなの……」

果林 (ってなんでそんな詳しいのよ!?)

愛 「でもそれっておかしくない?」

歩夢 「えっ?」

154: 2020/12/21(月) 18:55:43.89 ID:uq6lkH1L
愛 「あそこにいるゆうゆうって、ゆうゆうはゆうゆうでも、未来から来たゆうゆうなんでしょ? なのに今の姿と全く変わってないのはおかしくない?」

かすみ 「あっ、たしかにおかしいですよね……!」

果林 「よくよく見てみると、年齢も私たちに近そうよね……? 未来から来た侑なら私たちより年上でもいいはずなのに……」

歩夢 「でも別人だとしたらあまりに侑ちゃんにそっくりすぎるよ……」

果林 「そういう変装の技術が未来にあるのかしら?」

愛 「だとしてなんでわざわざ、ゆうゆうに変装してくるのさ」

155: 2020/12/21(月) 18:56:38.28 ID:uq6lkH1L
かすみ 「うーん、侑先輩にそっくりだけど、年齢的には侑先輩じゃない……?」

かすみ 「むむむ……なんですか、それ! さっぱり分かりません……」

かすみ (ん? 待てよ?)

かすみ (もしかして、いやいや、でも……!)

かすみ 「ま、まさか!?」 アセアセ

果林 「えっ!? かすみちゃん、あの侑の正体が分かったの!?」

156: 2020/12/21(月) 18:57:21.23 ID:uq6lkH1L
かすみ 「で、でも、信じられないというか」

愛 「合ってなくてもいいからとりあえず言ってみてよ!! それが何かヒントになるかもしれないし!!」

かすみ 「えっと、じゃあ言いますよ?」

歩夢 「う、うん!」

かすみ 「あの侑先輩の正体は……!」

果林 「正体は……!?」 ドキドキ

愛 「……」 ドキドキ

歩夢 「……」 ドキドキ

157: 2020/12/21(月) 18:58:08.97 ID:uq6lkH1L
かすみ 「侑先輩のクローン人間じゃないかって」

果林 「はぁ?」

愛 「えっ」

歩夢 「!?」

果林 「あのねぇ……未来から来たからって流石にそれは無理があるわよ。そもそも侑のクローン人間なんて誰が作るのよ」

愛 「誰が作る……? うーん」 チラッ

歩夢 「えっ」

愛 「むっ……」 ジッー

歩夢 「な、なんでこっち見るの、愛ちゃん!?」

158: 2020/12/21(月) 18:59:51.40 ID:uq6lkH1L
かすみ 「歩夢先輩……見損ないましたよ」

歩夢 「ええっ!? かすみちゃんまで!? い、いや違うよ! 私が侑ちゃんのクローン人間を作るなんて、そんな!」 アセアセ

侑 「……よく分かったね」

歩夢 「!!??」

侑 「その通りだよ。私は高咲侑であって、高咲侑じゃない。高咲侑を元にして作られたクローン人間なんだ」

果林 「クローン人間!? ええっ!? 本当に!?」

159: 2020/12/21(月) 19:00:40.21 ID:uq6lkH1L
愛 「えっと、ちなみに君を作ったのはどこの誰か教えてくれる?」

侑 「そこにいるよ」

歩夢 「えっ、もしかして愛さん……!?」

愛 「ここに来て白々しいなぁ」

侑 「会いたかったよ、歩夢お母さん」

かすみ 「歩夢お母さん!!?」

歩夢 「っ……」 ダラダラ

かすみ 「ねぇ、先輩。私言いましたよね? クローン人間のことはもう諦めてって!? 周りに心配をかけないためにって!! なのにまさかの私の存在のピンチを招いたのが、歩夢先輩ってどういうことですか!?」

歩夢 「うぅ……ごめんなさい……」

160: 2020/12/21(月) 19:01:20.10 ID:uq6lkH1L
愛 「まぁまぁ、かすかす、許してあげてよ。そもそも今の歩夢がやったことじゃないじゃん。未来の歩夢がやったことなんだし」

かすみ 「それはそうですけど、こちとら正真正銘人生懸かってるんですよ!? そりゃあ怒りますよ!?」

果林 「話が全然分からないけどつまり元凶は歩夢ってこと?」←悪気のない天然の刃

歩夢 「うっ!」 グサリ

愛 「いやぁ……それにしても、本当にゆうゆうのクローン人間作っちゃうなんて、歩夢の愛は重いなぁ」←追撃

歩夢 「ぐっ!」グサグサ

161: 2020/12/21(月) 19:02:13.52 ID:uq6lkH1L
かすみ 「しかし今は歩夢先輩への説教は後回しです! 高咲侑さん……あなたはなんでかすみんの存在を消そうとするんですか!? そんなに未来のかすみんは、あなたの恨みを買うことをしたんでしょうか……」

侑 「……」

かすみ 「……」

侑 「ちょうどいいや。なぜか分からないけどこの時間に到着してしまったのもきっと何かの運命だよね。私の昔話をするよ」 ニコッ

歩夢 「クローン侑ちゃんの昔話……」

歩夢 (それって未来の私との話ってことだよね……)

162: 2020/12/21(月) 19:03:07.18 ID:uq6lkH1L
侑 「みなさんの言う通り、私は歩夢お母さんが作った高咲侑のクローン人間なんだ。私も最近知ったんだけど、璃奈さんに協力を得たらしい」

愛 「えっ」

璃奈 「……」 カタカタ

愛 「りなりーが?」

璃奈 「……私は今最新式の透明なイヤホンを耳につけてるから会話は聞こえてない」 カタカタ

愛 (聞こえてるじゃん……)

163: 2020/12/21(月) 19:04:48.00 ID:uq6lkH1L
侑 「でも歩夢お母さんや璃奈さんを責めないでほしい。私も一時期は認められなかった、自分がクローン人間だなんて。そして、お母さんを心から憎んだときもある。だけどそれでも愛してくれた……大切に育ててくれた……そんなお母さんをどうか責めないでほしい」

かすみ 「……もちろんですよ、誰が責めるんですか、仲間を」

歩夢 「かすみちゃん……」

かすみ 「さっきは驚いたのもあって怒っちゃいましたけど、クローン人間なんてよっぽどのことです。きっと、歩夢先輩もすごく悩んだんでしょう。そして出した結論がどうであれ私は歩夢先輩を責めません」

愛 「かすかす……そうだね、愛さんも同じだよ」

164: 2020/12/21(月) 19:05:39.95 ID:uq6lkH1L
かすみ 「もちろん、りな子にも同じ気持ちです。きっと、歩夢先輩の覚悟を知って協力したんでしょう。それを責めるなんてことしませんよ」

璃奈 「……ありがとう」 ボソッ

果林 「ふふ、イヤホンしてたんじゃなかったのかしら?」

璃奈 「別に……たまたま取ってただけ」

侑 「それにしても、みなさんに会える日が来るなんて思いませんでした……映像や写真でしか見たことがなかったので」

歩夢 「えっ?」

かすみ 「えっと、あなたって歩夢先輩と一緒に暮らしてるんでしょ? ならクローン元である侑先輩はともかく、かすみんたちなら一度くらい会ったこととかなかったの?」

165: 2020/12/21(月) 19:10:12.87 ID:uq6lkH1L
侑 「たしかに私は歩夢お母さんとずっと暮らしてました。だけど、歩夢お母さんは私を作った後は行方をくらまして、みなさんとはそれから一度も会ってません」

歩夢 「私が行方をくらます……!?」

果林 「えっ!? なにかショックね……歩夢とは仲良くなれたから、これからも同好会みんなで会うもんかと思ってたのに」

侑 「歩夢お母さんはいつもみんなに会いたがってましたよ。私がみなさんを知ってるのも、お母さんがいつも同好会のみなさんの写真や映像を私に見せながら、思い出を語ってくれたからです」

愛 「ならなんで歩夢は行方をくらましちゃったのさ!」

侑 「……では、私が歩夢お母さんから聞いた、上原歩夢の半生を話しますね」

―――――

―――


168: 2020/12/22(火) 02:07:14.20 ID:z+IFY1JL
歩夢 (分かってた……)

歩夢 (こうなることは分かってたけれど……)

せつ菜 「侑さんと結婚することになりました!!」

侑 「付き合ってから結構経ったし、私たちも高校、大学と卒業して社会人になったから、ちゃんと向き合わなくちゃ……って! だから決意したんだ!」

愛 「おおっ!! そろそろかな、って思ってたんだけど本当に結婚するんだね、おめでとう!!」 パチパチ

果林 「ふふ、めでたいわね」

169: 2020/12/22(火) 02:08:06.10 ID:z+IFY1JL
かすみ 「もぅ! せつ菜先輩! 侑先輩ったら、可愛いかすみんに目もくれずに、せつ菜先輩を選んだんですから、絶対幸せにしてくださいね!?」 プンプン

せつ菜 「もちろんです!!」

彼方 「結婚かぁ……いつか遥ちゃんも結婚しちゃうのかなぁ」 グスッ

しずく 「ふふ、彼方さん、気が早すぎますよ」

エマ 「本当におめでとう!! 二人とも!」

璃奈 「結婚式楽しみにしてる。璃奈ちゃんボード『いい夢見ろよ』」

170: 2020/12/22(火) 02:09:54.17 ID:z+IFY1JL
歩夢 「おめでとう、侑ちゃん!」

侑 「うん! ありがとう、歩夢!」 ニコッ

歩夢 「……」 ピクッ

歩夢 (侑ちゃんの笑顔、たくさん見てきたけど……あんな笑顔は見たことないや。侑ちゃん、本当にすごく幸せなんだね)

愛 「それにしても突然みんな集合なんて言うからどうしたのかなぁ、って思ったら結婚報告なんて……ゆうゆうも洒落たことするねぇ」

侑 「えへへ、いち早くみんなに知らせたくてつい」

愛 「あっ、良ければ、二次会は愛さんの実家のもんじゃ屋でやらない?」

171: 2020/12/22(火) 02:11:16.85 ID:z+IFY1JL
果林 「愛の家のもんじゃ、美味しいのよねぇ……ええ、賛成よ」

せつ菜 「良いですね!! さぁ、侑さん!! 二次会に行きましょう!」

侑 「うん! えっと……みんなは大丈夫かな?」

かすみ 「かすみんもオッケーです!!」

璃奈 「私も大丈夫」

しずく 「私も大丈夫ですよ」

エマ 「私も大丈夫だよ!」

172: 2020/12/22(火) 02:12:15.50 ID:z+IFY1JL
彼方 「ごめんね~、彼方ちゃんは遥ちゃんが家で待ってるから」

歩夢 「あっ、侑ちゃん。ごめん、私も明日早いから……」

歩夢 (嘘だけど……)

侑 「それなら仕方ないね……二人がいなくて少し寂しいけど、またみんなで一緒に会おうよ!」

彼方 「もちろんだよ~」

歩夢 「うん」 ニコッ

歩夢 (分かってた……)

歩夢 (分かってたけれど……やっぱり耐えられないよ。侑ちゃんが、いつも隣で笑っていた侑ちゃんが、私から離れていっちゃうなんて)

歩夢 「じゃあね、侑ちゃん」

侑 「うん! またね、歩夢!」

173: 2020/12/22(火) 02:12:52.40 ID:z+IFY1JL
かすみ 「む?」

かすみ (歩夢先輩……少し表情が暗いような……? 気のせいかなぁ)

かすみ 「ねぇ、りな子」

璃奈 「なに? かすみちゃん?」

かすみ 「もし歩夢先輩が悩んでたら力になろうね」

璃奈 「もちろん! 璃奈ちゃんボード『にっこり』」

璃奈 「でもなんで急にそんなことを聞いたの?」

かすみ 「いや……別に理由はないんだけど……」

かすみ (この胸騒ぎ、気のせいかなぁ)






174: 2020/12/22(火) 02:13:38.40 ID:z+IFY1JL
歩夢 「侑ちゃん……」 ペラッ ペラッ

歩夢 (アルバムの中にいる侑ちゃんは、いつも私の隣にいる……だけど、今の侑ちゃんはせつ菜ちゃんの隣……)

歩夢 「って! こんなこと考えちゃダメだよね……二人の幸せが嬉しいのは、本当なんだから」 アセアセ

歩夢 「で、でも、あれ……なんでだろう、涙が……あれ……止まらない……」 ポロポロ

歩夢 「侑ちゃん、侑ちゃん……!」 ポロポロ

歩夢 (分かってる。侑ちゃんはもう大切な人がいて、私を一番に思ってくれる侑ちゃんじゃないこと)

歩夢 (だけど、だけど、それでもやっぱり私には、侑ちゃんがいなくちゃ……侑ちゃんがいなくちゃダメなんだよ……)

歩夢 「侑ちゃん……!」 ポロポロ






175: 2020/12/22(火) 02:15:17.12 ID:z+IFY1JL
歩夢 「……」ボッー

歩夢 「あっ、眩しい……」

歩夢 (あれからずっと泣いてて、結局眠れずに夜が明けちゃった……今日は仕事は休みだから別に大丈夫だけど、でも、すごく胸が苦しい)

歩夢 「一時期本気で研究してた、クローン人間……やってみようかな」

歩夢 「そしたら侑ちゃんに……侑ちゃんに」

歩夢 「って、そんなこと、ダメだよ!? なに考えてるんだろう……私……」

歩夢 (だけど、あの侑ちゃんの笑顔……せつ菜ちゃんに向けたあの笑顔を……私に見せてくれるなら。私のために見せてくれるなら)

歩夢 「やってもいいかもしれない……」

歩夢 「たしか以前の結果をまとめた資料がバッグにあったはず……」 サッ

歩夢 (侑ちゃん……私は許されないことをするかもしれない。ごめんね。でも、やっぱり侑ちゃんがそばにいてほしいから……)






176: 2020/12/22(火) 02:16:38.90 ID:z+IFY1JL
璃奈 「……」 カタカタ

プルプル

璃奈 「電話……? 歩夢さんからだ」

歩夢 『もしもし? 璃奈ちゃん、今電話できるかな?』

璃奈 「うん、大丈夫。仕事も大体終わったから。どうしたの、歩夢さん」

歩夢 『璃奈ちゃんって、理系だけど、生物学の方も詳しいかな?』

璃奈 「生物学……? 専門ではないけど、できないこともないかも……」

177: 2020/12/22(火) 02:17:26.17 ID:z+IFY1JL
歩夢 『ならお願いがあるんだ』

璃奈 「お願い?」

歩夢 『実は私も個人でずっと研究してて、あと少しのところまで来てるんだ。あとはもう一人、詳しい人が必要で』

璃奈 「ちょっと待って。その研究ってなんの研究?」

歩夢 『……人間の研究だよ』 ボソッ

璃奈 「えっ? ごめん、今なんて言って……」

歩夢 『クローン人間の研究』

璃奈 「えっ?」

歩夢 『侑ちゃんのクローン人間を作りたいんだ』






178: 2020/12/22(火) 02:18:39.76 ID:z+IFY1JL
璃奈 「……本気なの、歩夢さん?」

歩夢 「うん。私には侑ちゃんがいなくちゃダメだから」

璃奈 「侑さんのクローン人間は、見た目や声は侑さんと全く一緒だけど、それでも別人だよ?」

歩夢 「……分かってるよ」

璃奈 「クローン人間が仮に作れたとしても、それは立派な犯罪。そしたらその生まれた子も、歩夢さんも、正しい生き方はできなくなる。それでも望むの?」

歩夢 「……」

歩夢 (そういえば昔、かすみちゃんに止められたことがあったなぁ……悲しませたくないってあのとき強く思ったんだ)

179: 2020/12/22(火) 02:19:51.35 ID:z+IFY1JL
歩夢 「もうここにはいられない。同好会のみんなとも会えなくなる。それは覚悟してるよ」

璃奈 「!」

璃奈 「歩夢さん。それは違う。たとえ歩夢さんがここにいられなくなっても、私たちは仲間。歩夢さんと会えなくなるわけじゃ」

歩夢 「心配をかけたくないの、みんなに。特にかすみちゃんに」

璃奈 「……!」

歩夢 「だからこっそり消える。連絡も少しずつ頻度を減らしていって、自然に消える。そしたらきっと」

180: 2020/12/22(火) 02:20:43.85 ID:z+IFY1JL
璃奈 「……」

璃奈 (それは違う。歩夢さんと会えなくなる、それをどんなに自然な状況にしたとしても、みんなつらい思いをするのは変わらない。でも……)

璃奈 (きっと歩夢さんは、侑さんにもせつ菜さんにも、迷惑をかけたくないんだ。だけど自分は侑さんがいないと耐えられない……。だからこんな決断を……)

歩夢 「璃奈ちゃん。もし罪に問われても、全て私に目が行くようにしておく。だけど、それでもきっと、抵抗があると思う。だから嫌なら断ってもいい、警察に言ってもいい、止められたら止められたでそれも正解な気がするから……」

璃奈 (こんなに覚悟がある……それを私が止められる?)

181: 2020/12/22(火) 02:21:51.71 ID:z+IFY1JL
璃奈 「正直に言えばやめてほしいと思ってる」

歩夢 「……」

璃奈 「だけどまず、警察に突き出すことは絶対にしない。歩夢さんの人生は、もう、歩夢さんだけのものじゃない。みんな……もちろん私も、歩夢さんが幸せであることを願ってる」

歩夢 「璃奈ちゃん……」

璃奈 「だけどやっぱりクローン人間なんて、間違ってると思う……だから止めなくちゃいけない」

歩夢 「!」

182: 2020/12/22(火) 02:22:51.60 ID:z+IFY1JL
璃奈 (そう。私は止めるべきなんだと思う。でも私は約束してしまった。かすみちゃんと……)

璃奈 「でも、歩夢さん」

歩夢 「……なにかな、璃奈ちゃん」

璃奈 「そんなことはしない、できないよ。その代わり、遠くに行っても私たちのことを忘れないでほしい……!」

歩夢 「えっ……それって……!」

璃奈 「止めるべきだと思う。だけど、歩夢さんが悩んでたら力になる、って言ってしまったから。その気持ちは今も嘘じゃないから」

璃奈 (後悔なら仲間のためにしたい)

183: 2020/12/22(火) 02:23:50.32 ID:z+IFY1JL
璃奈 「よろしくね、歩夢さん」

歩夢 「璃奈ちゃん……」 ポロポロ

璃奈 「その涙は嬉し涙? 悲し涙?」

歩夢 「どっちもかな……ごめんなさい、でも、ありがとう……」 ポロポロ

璃奈 「歩夢さんにはこれからも笑ってほしい。璃奈ちゃんボード『にっこり』」

璃奈 (これが間違っててもいい……歩夢さんの笑顔を今見たいだけだから……)






184: 2020/12/22(火) 02:24:46.65 ID:z+IFY1JL
かすみ 「ねぇ、りな子?」

璃奈 「……どうしたの、かすみちゃん」

かすみ 「最近、歩夢先輩と連絡が取りにくいんだ。なんでか知ってる?」

璃奈 「……」

かすみ 「りな子?」

璃奈 「ごめん。分からない」

かすみ 「うーん……そっかぁ……ならメールでも送ってみようかなぁ。ありがとう、りな子」 ニコッ

璃奈 (ごめんなさい、かすみちゃん……)

185: 2020/12/22(火) 02:25:29.94 ID:z+IFY1JL
プルプル

かすみ 「電話?」

璃奈 「うん。少し外に出るね」

ガチャ

かすみ 「……」

かすみ 「りな子は何を隠してるんだろう……」

かすみ 「こっそり追跡して調べたりもできるけど……うーん……」

かすみ (だけど、しっかり約束したもん。だから大丈夫だよね、ねぇ、りな子?)






186: 2020/12/22(火) 02:26:13.88 ID:z+IFY1JL
歩夢 「ついにこの日が来たね、璃奈ちゃん……」

璃奈 「うん。そして別れの日」

歩夢 「……」

璃奈 「……」

歩夢 「今まで、ありがとう璃奈ちゃん」

璃奈 「こちらこそ。歩夢さんと一緒に研究してるとき、とても楽しかった。やっぱり歩夢さんは大切な人の一人だから」

187: 2020/12/22(火) 02:27:01.72 ID:z+IFY1JL
歩夢 「……」

璃奈 「ねぇ、歩夢さん。歩夢さんはこれからどこに行くの?」

歩夢 「人が少なくて、自然がたくさんあるところ……かな」

璃奈 「この侑さんは、これからどうやって育ててゆくの?」

歩夢 「私が働いて養うよ。そして、周りには侑ちゃんの存在は絶対に気付かれないようにする。いつ、どこから情報が漏れるか分からないから」

璃奈 「学校とかはどうするの?」

歩夢 「私ができるだけ教えるよ。侑ちゃんには優しい人になってもらいたいなぁ……」

188: 2020/12/22(火) 02:28:05.54 ID:z+IFY1JL
璃奈 「……」

歩夢 「……もう質問はないの?」

璃奈 「……そろそろ別れの覚悟を決める方に時間をかけたいから」

歩夢 「……そっか」

ピピピピピ

璃奈 「!」

ピピピピピ

歩夢 「侑ちゃん……!」

189: 2020/12/22(火) 02:29:08.83 ID:z+IFY1JL
\オギャーー!/

璃奈 「……生まれた!」

歩夢 「だっ、抱っこしていいかな!?」 パァァ

璃奈 「もちろん」

歩夢 「よいしょ……! うわ、軽い」

歩夢 「そして可愛いや……」

璃奈 (歩夢さん、とても嬉しそう……ならきっと、この選択も悪くなかったんだと思う)

歩夢 「私、この子を絶対育てるよ」

璃奈 「……信じてる」

歩夢 「うん」

璃奈 「……」

190: 2020/12/22(火) 02:30:06.13 ID:z+IFY1JL
ピコーン

璃奈 「メール?」

歩夢 「あっ……多分チケットが取れた連絡だと思う。じゃあそろそろ行くね」

璃奈 「もう、行っちゃうの?」

歩夢 「うん。きっと、ここで立ち止まったら決意が揺らいじゃうから」

璃奈 「そう……」

歩夢 「……」

歩夢 「じゃあね」

璃奈 「……」

璃奈 「うん……!」

璃奈 (バイバイ、歩夢さん。どうか幸せで)






191: 2020/12/22(火) 02:31:09.65 ID:z+IFY1JL
歩夢 「メールを確認しとかないと」

ポチポチ

歩夢 「あれ? 新着メールが二件?」

歩夢 「一つが飛行機会社でもう一つは……あっ」

歩夢 「……」

歩夢 (ありがとう、かすみちゃん)

歩夢 (そして、さようなら……)



―――

―――――

198: 2020/12/24(木) 00:53:40.79 ID:89ESTzjp
>>195

保守ありがとうございます。

>>196

ありがとうございます。また書き溜められたので、更新していこうと思います。

>>197

クローン侑ちゃんの想いとは……そして結末はどうなるのか。優しく見守ってくださるととても嬉しいです。

199: 2020/12/24(木) 00:56:17.55 ID:89ESTzjp
侑 「それから、お母さんは自分を知ってる人とは二度と会いませんでした。そして、私は生まれてからお母さん以外の人と殆ど会ったことがありません。幽閉されていた、と言っても過言ではないでしょう」

果林 「ゆ、幽閉……!?」

侑 「でも、部屋に閉じ込められていたというわけではなくて、家の周りの森で遊ぶことはよくありました。単に、誰にも会わないように暮らしてただけです」

かすみ 「なんでそこまで……」

侑 「もちろん私のために……です。クローン人間は認められない存在だから、バレてしまえば歩夢お母さんは犯罪者になってしまうし、なにより私は遺伝子研究者の的になってしまうでしょう。そうならないために、お母さんは一人になる道を選びました」

愛 「そ、そんな……そんなことって……」

かすみ 「そ、そんなの……あなたは嫌じゃないんですか!? だってそんなの! おかしいじゃないですか!?」

200: 2020/12/24(木) 00:57:37.42 ID:89ESTzjp
侑 「たしかにおかしいと思います。ただ、それでお母さんを憎んだりしません。そして、お母さんも私という存在を生み出したことを後悔したりはしなかった。一生懸命、愛してくれました」

かすみ 「……!」

侑 「お母さんは侑さんとせつ菜さんが結ばれたことに耐えられなかった、そして私を作った。だけどお母さんはそこで投げやりにならなかった。その行動に後悔する前に、私をしっかり育てようとしてくれたのです。いつも顔はやつれてました、だけど私には一番笑顔で……」

歩夢 「……」

歩夢 (きっと、未来の私は、本当にこの子のことを愛してたんだ……最初は侑ちゃんの代わりだったのかもしれないけど、時が経って気持ちに整理がついて、そして、侑ちゃんじゃなくて何より大切な自分の子として、この子のことを心から愛したんだ……)

201: 2020/12/24(木) 00:59:16.16 ID:89ESTzjp
侑 「お母さんはいつも働きに行っていて、私を養ってくれました。合間には勉強を教えてくれましたし、感謝しかありません」

かすみ 「……」

愛 「……ねぇ、じゃあ一つ聞いていい?」

侑 「なんでしょうか」

愛 「それで、なんでかすかすの存在を消そうとするのに繋がるの?」

かすみ 「そ……そうですよ!? なんでそれでかすみんの存在が消えることになるんですか!?」

愛 「歩夢にそこまで愛されて、それほど愛情を知ってるはずの君が……こんな残酷なことをなんで……!」

果林 「そうよ! 今の話で歩夢が侑のクローンを作るまでの過程や気持ちはよく分かったわ。だけど、そこからなんで今回の事件に繋がるのかが理解できない……なぜそこでかすみちゃんなの?」

202: 2020/12/24(木) 01:00:33.26 ID:89ESTzjp
侑 「……」

侑 「お母さんを、独り占めしたかったのかもしれません」

歩夢 「えっ……」

かすみ 「独り占め……ですか……」

侑 「お母さんは本当に幸せそうにスクールアイドル同好会の思い出を語ってくれました。私のオリジナルである侑さんや、その侑さんと結ばれたせつ菜さんはもちろんのこと、同好会のみなさんの話をいつも……」

歩夢 「……」

侑 「お母さんがどれだけみなさんのことが好きなのかがいつも伝わってきて、それに嫉妬していたんだと思います。特に侑さん、せつ菜さん、かすみさんの三人との思い出は、本当に嬉しそうに話してました……」

203: 2020/12/24(木) 01:02:13.98 ID:89ESTzjp
かすみ 「えっ?」

かすみ (侑先輩とせつ菜先輩は分かるけど、その並びで私も……?)

侑 「お母さんはかすみさんとの思い出をたくさん持ってて、たくさん話してくれました。大岡裁き事件……赤ちゃんレベル事件……話を聞いてて思いました。かすみさんってみんなを笑顔にしてくれて、そしてなによりとても優しい人なんだと。だけど、私には理解できなかったんです。かすみさんのことを話すお母さんの気持ちが」

愛 「それっていったいどういう……」

侑 「お母さんが侑さんの話をよくするのは分かります……クローン人間を作るくらいですから、よっぽど好きだったんだと思います。せつ菜さんもよく話題に出てました、もちろんお母さんはせつ菜さんを憎んだりはしてません。むしろ、侑さんを幸せにしてくれたせつ菜さんに本当に感謝していました」

204: 2020/12/24(木) 01:03:28.37 ID:89ESTzjp
歩夢 「……」

歩夢 (良かった……私、これからもせつ菜ちゃんを憎まずに、二人の幸せを心から喜べるんだね……)

愛 「そっか……なんていうか、歩夢らしいなぁ……」

果林 「未来って言うからイメージしにくかったけど、やっぱり未来の歩夢も根本は変わらないのね……優しいところがそのままだもの。でも、あなたはそんな歩夢にかすみちゃんのことで不満があったのでしょう?」

侑 「はい……侑さんとせつ菜さんのことは理由も分かるし、別に嫉妬したりしなかったんです。でも、かすみさんの話を嬉しそうにするお母さんの気持ちは分からなかった。なんで侑さんの話をするときと同じ表情で、すごく穏やかな笑顔で……かすみさんの話をするのか。お母さんが好きだったのは侑さんだったはずなのに……! なんでなのか分からなかった……!!」

205: 2020/12/24(木) 01:07:13.44 ID:89ESTzjp
かすみ 「……」

かすみ (侑先輩を語るときと同じ笑顔……歩夢先輩はいったいどんな気持ちで、かすみんのことを話していたんでしょうか)

歩夢 「……」

歩夢 (私がかすみちゃんの話をするときに……侑ちゃんのことを話すときと同じ表情を……?)

206: 2020/12/24(木) 01:09:16.33 ID:89ESTzjp
―――――

―――



歩夢 「無理して笑わないで、つらいときは泣いていいんだよ」

かすみ 「な、何言ってるんですか……歩夢先輩……それに急に抱きつかれたら、恥ずかしいですよぉ。いくらかすみんが可愛いとはいえ」 アセアセ

歩夢 「かすみちゃんは可愛いよ」

かすみ 「えっ」

歩夢 「そしてすっごく優しい……だから、そんなかすみちゃんが居なくなっちゃったら、私すごく悲しいよ」

かすみ 「歩夢先輩……」



―――

―――――

207: 2020/12/24(木) 01:11:20.92 ID:89ESTzjp
歩夢 (かすみちゃんが居なくなったら悲しい……すごく悲しい……胸の奥がちくっとする……)

歩夢 (なんでだろう……いや、仲間だから当たり前だけれど……でも、それとはまた違うような胸の痛み……これは何……?)

208: 2020/12/24(木) 01:12:17.96 ID:89ESTzjp
―――――

―――



かすみ 「遠くに行かないようにです!!」 ギュッ

歩夢 「えっ……///」 カァァ

かすみ 「うぅ、しばらく離しませんよ!」

歩夢 「……」

歩夢 (なんだか最近侑ちゃんのことしか考えてなかったけど……抱きしめられるとあったかいなぁ……)

かすみ 「歩夢先輩……!!」 ポロポロ

歩夢 「……」 ナデナデ



―――

―――――

209: 2020/12/24(木) 01:14:52.81 ID:89ESTzjp
歩夢 (あのときのかすみちゃん、あったかかったなぁ……温もり……? いや、それもそうだけど、それだけじゃなくて、まるで心の中の氷が溶けてゆくような……)

歩夢 (あの気持ちは……)

210: 2020/12/24(木) 01:16:06.49 ID:89ESTzjp
―――――

―――



歩夢 「かすみちゃん、絶対私たちがかすみちゃんを助けてみせるからね……!」 ポロポロ



―――

―――――

211: 2020/12/24(木) 01:17:17.58 ID:89ESTzjp
歩夢 (……!)

歩夢 (そうか……私は……)

歩夢 (私はかすみちゃんのことが……)

愛 「もしかして、それでかすかすを憎んでこんなことをしたの……?」

歩夢 「!」

侑 「……はい、そうです」

果林 「そ、それはあまりにも理不尽じゃない!? 逆ギレにも程があるわ!!」

侑 「分かっています。でも、許せなかったんです。お母さんとの大切な時間を、思い出を、奪われた気がしたから。愛されていたからこそ、その愛を独占したかったんです……」

212: 2020/12/24(木) 01:18:33.28 ID:89ESTzjp
果林 「なっ……! それでかすみちゃんを消そうとするなんて!!」

愛 「そんなの間違ってる!! それにもう歩夢はあなた以外の人と殆ど関わってないんでしょう!? なら、これから! これから歩夢と大切な時間を! 思い出を! 作っていけばいいじゃん!!」

侑 「これからですか……」

愛 「そうだよ、これから……! これからまた一歩ずつ始めていけばいいじゃん……!」

侑 「それは……」

侑 「それは無理なんです」

213: 2020/12/24(木) 01:19:25.34 ID:89ESTzjp
かすみ 「……えっ、それってどういう?」

侑 「……」

歩夢 「?」

かすみ 「は、早く言ってくださいよ! それっていったいどういう意味なんですか!?」

侑 「……んです」 ボソッ

かすみ 「ちょっと聞こえないですよ!」





侑 「歩夢お母さんは亡くなったんです」

214: 2020/12/24(木) 01:20:42.73 ID:89ESTzjp
歩夢 「えっ?」

歩夢 (私が未来で亡くなってる……?)

侑 「車に気付かなくて……そのまま亡くなってしまったんです……」

かすみ 「そ、そんな……」

かすみ (未来の歩夢先輩はもう死んでしまってる……!? そ、そんなこと信じられない……)

侑 「誰にも頼らず私を育てて……普段から無理をしていました。だから、疲れで車が来ているのに気付かなかったんです」

215: 2020/12/24(木) 01:22:26.34 ID:89ESTzjp
果林 「そ、それは未来の私たちは知ってるの……!?」

侑 「知りません。教えることもできませんでした。お母さんの遺言です。私のことがバレないために……そう、私のせいで……」

愛 「そんな……歩夢が未来ではもういないなんて……」

歩夢 「……」

侑 「そんなとき、ある情報を掴みました。タイムマシンが開発されたという噂です」

かすみ 「!」

216: 2020/12/24(木) 01:25:57.17 ID:89ESTzjp
侑 「ある研究所で作られたらしく、その研究所は人里から離れたところにありました。そう、私の家の近くにあったんです」

果林 「まさかそのタイムマシンを盗んだの……?」

侑 「はい。まだタイムマシンは世間には公にされてませんでした。しかし、完成間近なら発表もすぐされるでしょうし、発表されたなら大発明ですから、防犯はとても厳重になるでしょう。だからその噂を知った日の夜に急いで研究所に忍び込みました」

愛 「そのタイムマシンで何をするつもりだったの……?」

侑 「お母さんを事故から助けて、生き返らせようとしたんです。もし誰かの犠牲が必要なら、自らの命を投げ出す覚悟もありました」

かすみ 「そ、そんな、自分の命を投げ出すなんて簡単に……!」

217: 2020/12/24(木) 01:28:19.80 ID:89ESTzjp
侑 「それくらい私は、お母さんに生きていて欲しかったんです。でも……!」

侑 「タイムマシンは素人が操作できるものではなく、時間もランダムで設定され、いざ辿り着いたのはお母さんが事故に遭う直前どころか……お母さんが生まれる前で」

歩夢 「……」

侑 「このタイムマシンは、一度使ったら次にボタンを押したときは元の時代に戻るように作られてます。しかし、戻れば私は追われる身……結局、お母さんを助けることはできなかったんです……」

侑 「そこで私は決意しました。かすみさんの存在を消すことを……」

果林 「ちょ、ちょっと!? そこからなんでそうなるのよ!?」

218: 2020/12/24(木) 01:30:30.25 ID:89ESTzjp
侑 「仕方ないじゃないですか……」

かすみ 「……!」

侑 「もうお母さんは戻ってこない!! なら過去を変えて、せめて私とお母さんとの時間を、思い出を、少しでも増やせたらって……記憶の中だけでももっと幸せになれたらいいって……」 ポロポロ

果林 「だ、だからってかすみちゃんの人生を奪う気!?」

侑 「私も申し訳ないと思いました……だけど耐えきれなかったんです。お母さんがもういないことに、もうあの笑顔が見れないことに!」 ポロポロ

219: 2020/12/24(木) 01:32:06.44 ID:89ESTzjp
かすみ 「!」

かすみ (大切な人の笑顔……)

かすみ (そうか、私はどこか他人事だったかもしれない。だっていなくなってしまったはずの歩夢先輩は今ここにいるんだから。でも、違うんだ。この子が追いかけてる笑顔は歩夢先輩の笑顔で、そして、歩夢先輩の笑顔はいつも変わらない素敵な笑顔だから……)

かすみ 「かすみんがいつも探してた、歩夢先輩の笑顔と一緒なんだ……」

歩夢 「……」 ポロポロ

侑 「……!」

歩夢 「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」 ポロポロ

220: 2020/12/24(木) 01:33:35.11 ID:89ESTzjp
侑 「な、なんでお母さんが謝るんですか!」

歩夢 「私のせいでつらい思いをさせて、つらいことをさせちゃったね……ごめんね……」 ポロポロ

かすみ 「うぅ……」 ポロポロ

侑 「ってなんであなたも泣くんですか!?」

かすみ 「あまりにも苦しいからだよ、あなたの気持ちがすごく分かったから!」 ポロポロ

侑 「私はあなたを消そうとしてるんですよ!?」

221: 2020/12/24(木) 01:34:45.38 ID:89ESTzjp
かすみ 「だって!! 私だったら!! そんなの悲しくて耐えられない!! 歩夢先輩の笑顔がもう見れないなんて、考えたくもない!! ならせめて記憶の中の幸せだけでも増やしたい……その気持ちも分かります。ただ、それがかすみんの存在を消すことに繋がるのは認められませんけど……それでも気持ちは分かっちゃうんです。だからつらくて、つらくて、涙が止まらないんです……」 ポロポロ

侑 「なんで!! なんであなたたちに私の気持ちが分かるんですか!! なんで……」

果林 「……」

果林 「これじゃダメじゃない」 ボソッ

果林 (許せなかったのに……この子のこと本当に許せなかったのに。被害者であるかすみちゃんがこんなにも共感してしまったら……怒ろうにも怒れないじゃないの……)

222: 2020/12/24(木) 01:39:11.25 ID:89ESTzjp
歩夢 「ねぇ……その決意は、私が止めてもダメなのかな……」

侑 「!」

歩夢 「ありがとう、そこまで私を愛してくれて……だけど、私にとってかすみちゃんは大切な人なんだ……消えてほしくない。ねぇ、本当にかすみちゃんを消さなくちゃいけないの?」

かすみ 「歩夢先輩……」

侑 「……あなたに憎まれることは想定済みです。でも、それでも私はわがままに生きたいから、お母さんと幸せでいたいから。やめるわけにはいきません」

愛 (本当に苦しそうな顔……)

愛 (そりゃあそうだよね……歩夢との思い出を幸せにしたいがために、今の歩夢を傷つけるんだから……)

223: 2020/12/24(木) 01:44:15.04 ID:89ESTzjp
果林 「ねぇ、あなた」

侑 「……なんですか」

果林 「大岡裁きって言葉知ってるでしょ?」

侑 「大岡裁き……ですか」

果林 「あなたのお母さんから散々聞かされていたはずよ……その大岡裁きって、どんな話か分かるわよね?」

侑 「ええ」

果林 「あの話ってつまり、真の愛の話なのよ」

侑 「真の愛……」

224: 2020/12/24(木) 01:45:39.53 ID:89ESTzjp
果林 「どうしても欲しい人がいる。だけど、その人の幸せのためなら自ら手を離す。そんな思いやりこそが、本物の愛……っていう話なの」

侑 「……」

果林 「あなたの愛は本物の愛なのかしら?」

侑 「私の愛……私の愛は……」

侑 (本物のはず……だって、だって、こんなにも愛してるから……会いたいから……!!)

かすみ 「一つ、言ってもいいですか」

侑 「!」

かすみ 「かすみんが今から言う言葉は、自分が助かりたいから言うわけじゃありません。歩夢先輩のことを、助けたいから言うんです」

侑 「助けたい……? ふざけないで!! もうお母さんは死んでしまって助けられないって言ったじゃないですか!?」

225: 2020/12/24(木) 01:46:58.06 ID:89ESTzjp
かすみ 「違うよ」

侑 「えっ」

かすみ 「かすみんが助けたいのは未来の歩夢先輩の、笑顔のことです」

侑 「笑顔……?」

かすみ 「あなた言いましたよね? さっき、お母さんの笑顔がもう見れないことが耐えられないって……」

侑 「ええ……」

226: 2020/12/24(木) 01:49:06.47 ID:89ESTzjp
かすみ 「そして、未来の歩夢先輩は私たちのことを話してくれるとき、本当に嬉しそうに話してくれるんですよね? ならそんな歩夢先輩の大切な人を消してしまうことは、歩夢先輩の笑顔をひとつ消してしまうことになりませんか?」

侑 「……!」

かすみ 「かすみんが消えることで、あなたと歩夢先輩の思い出がより満たされるなら、それは別に構わないんです……でも、私は助けたいんです。なくなってしまう、歩夢先輩のそのかけがえのない笑顔が……!」

侑 「かけがえのない笑顔……」

228: 2020/12/24(木) 01:51:05.72 ID:89ESTzjp
―――――

―――



歩夢 「侑ちゃん、おいで」 ニコッ

侑 「お母さーーーん!!」 ダキッ

歩夢 「ふふ、侑ちゃんはいつも元気だね」

侑 「だって私……お母さんのことが大好きだから!! お母さんの笑顔が大好きだから、それを見れたらすごく元気になるんだ!!」 ニコッ

歩夢 「そっか……」

侑 「うん!!」

歩夢 「ありがとう、侑ちゃん……私もすっごく今幸せだよ!!」 ニコッ

229: 2020/12/24(木) 01:53:10.89 ID:89ESTzjp
侑 「お母さんが幸せなら私はもっと幸せだよ!! そうだ!! 今日もスクールアイドルのみんなの話してよ!! 私、その話をしてるときのお母さんの笑顔が大好きなんだ!!」

歩夢 「ふふ……侑ちゃんがいつも楽しそうに聞いてくれるから私も話し甲斐があるよ。じゃあ今日はかすみちゃんの話をするね」 ニコッ

侑 「かすみちゃん? あの面白いかすみちゃんの話?」

歩夢 「面白いかぁ……たしかにかすみちゃんは面白いけど、面白いだけじゃないんだよ? かすみちゃんはすっごくカッコいいんだ!」

230: 2020/12/24(木) 01:54:14.56 ID:89ESTzjp
侑 「ふーん」

歩夢 「って興味ないの?」

侑 「いやなんかお母さん、顔が赤くなってるからなんでだろう……って思って」

歩夢 「ええっ!?/// 本当に!?」 カァァ

侑 「冗談だよ~」 ニコッ

歩夢 「もぅ! 侑ちゃんったら! じゃあ話を始めるね?」

侑 「うん!! 楽しみ!! 私もかすみちゃんのこと大好きなんだ!!」



―――

―――――

231: 2020/12/24(木) 01:56:41.59 ID:89ESTzjp
侑 (これはすっごく昔の記憶だ……まだ私が五歳くらいの……)

侑 「うぅ……お母さん……」 ポロポロ

かすみ 「って今度はあなたが泣くんですか!?」

歩夢 「侑ちゃん」 ダキッ

侑 「えっ……歩夢お母さん……?」

歩夢 「私は私でも、あなたのお母さんはきっとまだ私じゃないから。私は代わりにはなれないかもしれない。でも肩を貸すよ……思いっきり泣いてくれたら、きっと私たち、少しは分かり合えると思うんだ?」

233: 2020/12/24(木) 01:58:32.86 ID:89ESTzjp
侑 「お、お母さん……」 ポロポロ

歩夢 「大好きだよ、侑ちゃん」

侑 「うぅ、お母さーーーーん!!!」 ポロポロ

歩夢 「……」 ナデナデ

かすみ 「……」

かすみ (未来の歩夢先輩……あなたが育てたこの子は、とても良い子ですよ……そして、ようやく少しは心の傷が癒せたのかな……だからどうか安心してください……歩夢先輩……!)






244: 2020/12/27(日) 03:11:20.14 ID:TvvQHzex
侑 「……」

歩夢 「どうかな……思いっきり泣けた……?」

侑 「……はい。とても気持ちが楽になった気がします。ありがとうございます」

歩夢 「ふふ、どういたしまして」 ニコッ

かすみ (二人とも嬉しそう……良かった……)

侑 「かすみさん」

かすみ 「……はい! なんでしょうか」

侑 「本当に申し訳ないことをしました……ごめんなさい……」

かすみ 「もう、本当ですよ! 歩夢先輩が大好きで独占したい気持ちはかすみんも分かりますけど、それでも今回のことは度が過ぎますって!!」 プンプン

245: 2020/12/27(日) 03:12:26.18 ID:TvvQHzex
歩夢 (えっ、かすみちゃんそれって)

歩夢 「……///」 カァァ

果林 (なんだか歩夢、嬉しそうね……)

侑 「謝っても許されないことは分かってます。でも本当にごめんなさい……」

かすみ 「……」

果林 「ねぇ? 一応聞くけど、もうタイムマシンを使ってかすみちゃんを消そうとなんてしないわよね?」

侑 「もちろんです。先程話した通りタイムマシンは元の時代に戻ったら二度と使えませんし、なによりかすみさんの笑顔を、お母さんの笑顔を、私が無くすわけにはいきませんから」

歩夢 「良かった……これでかすみちゃんは消えなくて済むんだね……!」

かすみ 「だけど」

246: 2020/12/27(日) 03:13:31.07 ID:TvvQHzex
侑 「!」

かすみ 「今あなたは謝っても許されないって言いましたよね? たしかにその通りです。謝ったらオッケーというわけでもありません!! だから……罰を受けてもらいます!!」

愛 「ちょっと! かすかす!? たしかに許せないけどさ、クローンゆうゆうにもクローンゆうゆうの事情があったわけだし、さすがに罰なんて……!」

侑 「いいんです愛さん……私は本当に重い罪を犯しました……だからどんな罰でも受け入れるつもりです」

歩夢 「そ、そんな……」

歩夢 (かすみちゃん……!?)

かすみ 「なら罰を言いますから覚悟してくださいね?」

侑 「はい……」

歩夢 「ま、待って、かすみちゃ……!」

247: 2020/12/27(日) 03:17:44.50 ID:TvvQHzex
かすみ 「罰として、かすみんにあなたのことを教えてください!! 嫌がるくらいたくさんのことを!!」

侑 「えっ?」 キョトン

歩夢 「……教える?」 キョトン

かすみ 「それで今回のことは帳消しにしてあげます!! いくらあなたが未来人だとしても、可愛いかすみんの魅力は伝わるはずです……だからそんなかすみんのお願いを、断るなんてありえないですよね?」

侑 「こ、断るつもりなんてありません……! で、でもそれって罰ではないんじゃ……!」

かすみ 「自分の個人情報を話すのって結構抵抗ありますし、十分罰ゲームですよ? かすみんもさっき、りな子に個人情報を伝えるのに一瞬戸惑いましたし。それに、歩夢先輩の大切な人であるあなたを罰したりなんかしませんよ……もちろんそれ抜きにしても罰したりなんかしません。だってあなた、悪い人じゃないから」

侑 「かすみさん……」

248: 2020/12/27(日) 03:18:54.10 ID:TvvQHzex
かすみ 「私たち、出会いとしては結構最悪な部類だけど、それでも大切な縁には違いないんです。だからこれから……そうこれから、仲良くなってください!!」

歩夢 「かすみちゃん……!」

侑 「本当に……本当にあなたは優しい人ですね……かすみさん……」 ポロポロ

かすみ 「って、ええっ!? ちょ、ちょっと!! せっかく泣き止んだのにまた泣かないでくださいよ!? 歩夢先輩に怒られちゃうじゃないですか!?」

歩夢 「かすみちゃん……?」 ニコッ

かすみ 「ひぃぃ!」

249: 2020/12/27(日) 03:20:21.63 ID:TvvQHzex
果林 「……」

愛 「……」

果林 「やれやれ……色々あったけど、これでようやく万事解決かしらね」 ホッ

愛 「あとはりなりーの方だけど……りなりー? 私たちは説得に成功したよ。そっちはどう?」

璃奈 「……頑張った。あと少しで波を正確にぶつけられる準備が終わる」 カタカタ

果林 「ふふ、本当に良かったわ……私、忘れたくないもの……か……って、あれ?」

果林 (か……なんだったかしら?)

250: 2020/12/27(日) 03:21:17.05 ID:TvvQHzex
かすみ 「ふふーん、それでまず何を教えてもらいましょうか?」 ニヤニヤ

侑 「えっと、私も何から教えればいいのか分からなくて……」

かすみ 「あっ! そうだ! じゃあ写真とかないんですか? 未来の歩夢先輩の姿が見れちゃったりして……!」 ワクワク

歩夢 「えっ……それはちょっと恥ずかしいよぉ……///」 カァァ

侑 「写真は……撮ってないんです。私たちは存在してる証拠を残さない方が良かったから」

かすみ 「あっ……」

侑 「すいません……」 ショボーン

かすみ (ぎゃぁぁぁーー!! 空気が最悪になってしまいましたーーー!!) アセアセ

251: 2020/12/27(日) 03:22:40.76 ID:TvvQHzex
歩夢 「あれ? でも胸ポケットにスマホが入ってるよ? それには写真入ってないの?」

侑 「これはお母さんのものなんです……私はそもそも携帯を持ってませんし」

かすみ 「ってそれ、見覚えのある機種ですよ!? たしか現在で最新の機種ですよね!? 未来なのに私たちと近い機種なんですか!?」

侑 「お母さんも私も、ほとんど携帯は使わなかったんです。だから、皆さんの前から去ったときに持っていた携帯を、思い出の品のようにずっとお母さんは持ってました。もちろん、連絡できないように携帯の通話機能やメール機能は使えなくしてますけど……」

かすみ 「なるほど……えっと、その携帯に写真やメールは残ってないんですか?」

侑 「おそらく無いと思います……。以前、この携帯から身元がバレないように大体のデータを消したと言ってたので」

252: 2020/12/27(日) 03:24:14.55 ID:TvvQHzex
かすみ 「えっと、ちょっと見てもいいですか?」

侑 「はい、どうぞ」 サッ

かすみ 「さてさて、歩夢先輩の携帯を探索しますか……」 ポチポチ

かすみ 「ん? メールに一件だけ受信メールがありますよ?」

侑 「ええっ!?」

かすみ 「……見てみます?」

歩夢 「で、でも、それって未来の私の携帯なんだよね? ちょっと見られるのは嫌だというか……」 アセアセ

かすみ 「ふふ、なら見てみましょう!」

歩夢 「ちょ、ちょっと!?」 ガシッ

侑 「えっ」

253: 2020/12/27(日) 03:25:16.98 ID:TvvQHzex
かすみ 「なっ!? 歩夢先輩も往生際が悪いですよ!!」 ググググ

歩夢 「だって見られたくないんだもん!!」 ググググ

かすみ 「別に見たっていいじゃないですか!!」 ググググ

歩夢 「さっきかすみちゃん、個人情報を話すのは抵抗があるって言ってたじゃん!!」 ググググ

かすみ 「未来の歩夢先輩の個人情報であって、歩夢先輩の個人情報ではないじゃないですか!!」 ググググ

歩夢 「未来の私だからってやっぱり個人情報は恥ずかしいでしょ!?」 ググググ

侑 「ちょ、ちょっと待ってください!! このままじゃお母さんの携帯が割れちゃいます!!」

254: 2020/12/27(日) 03:27:53.45 ID:TvvQHzex
愛 「取り合って二人で引っ張り合うなんて……なんかデジャブだね」

璃奈 「というより懲りもせず二の舞を演じてるだけかもしれない」 ヒョコ

愛 「あっ、りなりー!! えっと、波の準備は終わったの?」

璃奈 「あと少し。だけどここからはタイムマシンと繋がなくちゃいけない」 サッ

ピピピピピ

ピピピピピ

ピカーーーーーーン

愛 「おおっ! すごい眩しいや!」

璃奈 「さすがに未来の技術を借りない限りはここからはできない。でもこうして繋げてデータ情報を借りることができれば、無事波も作り終えることができる。もちろん繋ぐだけじゃなくてプログラムを組む必要があるけれど」 カタカタ

255: 2020/12/27(日) 03:30:19.97 ID:TvvQHzex
果林 「ほんと璃奈ちゃんの技術力はすごいわねぇ……」

かすみ 「あのぉ……今の光は何なんですか?」

愛 「あっ、かすかす! 今りなりーがタイムマシンと機器を繋いだんだよ。これで無事、波をぶつけることができて、過去改変の影響を消せるはずだよ」

歩夢 「それなら本当に良かったぁ……」 ホッ

侑 「みなさん、本当にありがとうございます……」

256: 2020/12/27(日) 03:32:58.20 ID:TvvQHzex
璃奈 「……!」

愛 (ん? りなりーの表情が少し変わった? なんだか不安そう?)

果林 「璃奈ちゃんも自信のある表情だし、頼り甲斐があるわね」

璃奈 「……」 アセアセ

璃奈 「まずいことになったかもしれない」

果林 「って、ええっ!?」

かすみ 「まずいことって何なんですか!?」

璃奈 「過去改変の波が来るスピードは一定で計算していた。でも、どうやら徐々に早くなってきているみたい」 カタカタ

257: 2020/12/27(日) 03:34:44.96 ID:TvvQHzex
歩夢 「じゃあ、間に合わないの……!?」

璃奈 「いや、それでも過去改変が完了するまでに間に合うといえば間に合う。でも問題がある」 カタカタ

侑 「問題ですか……?」

果林 「問題ってなによ!? 早く助けないといけないのよ、か……。あれ、えっと、か……」

果林 (えっと、あの子の名前は、か……か……なんだっけ?)

果林 「……!」 フラフラ

果林 (なんだか意識が遠くに……でも大切な後輩なのよ思い出さなくちゃ……!! だ、だけど……)

果林 「」 パタッ

258: 2020/12/27(日) 03:35:58.09 ID:TvvQHzex
かすみ 「って果林先輩!?」

愛 「ちょ、カリン!? 何が起きたの!?」

璃奈 「問題はこれのこと。過去改変が急速に進んだ影響で私たちのかすみちゃんの記憶はすぐ消えてしまうかもしれないし、この果林さんみたいに意識まで飛んで気絶してしまうかもしれない」 カタカタ

愛 「そ、そんな……! じゃあ、もし、りなりーがこのプログラムを完成させる前に気絶しちゃったら……!?」

璃奈 「そう。間に合わなくなる。このプログラムは私にしか組めないから」 カタカタ

かすみ 「ええっ!?」

愛 「じゃあ早くしないと!!」

259: 2020/12/27(日) 03:37:23.07 ID:TvvQHzex
璃奈 「今、全力で急いでる」 カタカタ

歩夢 「私たちにはなにか手伝えないのかな……?」

愛 「……多分できないと思う。りなりーを信じて待つことしかできない」

侑 「そ、そんな……!」

かすみ 「……」

璃奈 「……!」 カタカタ

かすみ (私は愛先輩ほど、りな子の表情の違いは分からないけど、それでも分かるよ……りな子は今、私のために本当に必死に頑張ってくれている。なのに私たちがここで弱気になっちゃダメだ!!)

260: 2020/12/27(日) 03:39:24.98 ID:TvvQHzex
かすみ 「頑張れーーー!! りな子ーー!!」

愛 「……! が、頑張って、りなりー!!」

歩夢 「頑張って!! 璃奈ちゃん!!」

侑 「頑張ってください……璃奈さん……!」

璃奈 「みんな……!」 カタカタ

璃奈 (ありがとう。頑張る)

愛 「絶対にみんなでかすかすを救うんだ!!」

愛 (ってあれ? かすかすって、本名はなんだっけ? えっと、あれ……思い出せない!! じゃあ他のあだ名は? たしかもう一つのあだ名の方が原型が残ってたはず……!!)

261: 2020/12/27(日) 03:42:56.89 ID:TvvQHzex
―――――

―――



かすみ 「使ってる文字の種類の数が多い方がダジャレのレパートリが増えますよ?」 ニヤリ

愛 「!?」



―――

―――――

262: 2020/12/27(日) 03:44:29.04 ID:TvvQHzex
愛 (ダメだ……思い出せない……こんなことなら素直にかすかすの言う通りにしておけばよかったな……まるで頭に霞がかかったみたいに)

愛 (意識が遠くなっていく……ってあれ霞って?)

愛 「……」 フラフラ

愛 (良かった……最後の最後に思い出せて……やっぱり愛さんはダジャレが大好きだ……)

愛 「」 パタッ

かすみ 「愛先輩!?」

263: 2020/12/27(日) 03:46:12.39 ID:TvvQHzex
かすみ (ってダメだ!! りな子を全力で応援することをやめちゃいけない!! 愛先輩のためにも、果林先輩のためにも!!)

璃奈 (愛さん……)

璃奈 (愛さんがいないとダメな私はもう卒業する。だってかすみちゃんを助けたいから!)

璃奈 「……」 カタカタ

璃奈 (意識が少しぼやけてきた……直前までは分かってた名前も出て来なくなった……私もついに影響が……)

264: 2020/12/27(日) 03:47:43.31 ID:TvvQHzex
かすみ 「頑張れーー!! りな子ーー!!」

歩夢 「頑張って、璃奈ちゃん!!」

侑 「頑張ってください!!」

璃奈 (どんなにつらくても、諦めない)

璃奈 「頑張る」 カタカタ

侑 「……っ!」

侑 (あ、頭が痛い……! まさかこれが影響……?? でもなんで私まで……!! まさか……)

265: 2020/12/27(日) 03:50:13.59 ID:TvvQHzex
―――――

―――



かすみ 「私たち、出会いとしては結構最悪な部類だけど、それでも大切な縁には違いないんです。だからこれから……そうこれから、仲良くなってください!!」

歩夢 「かすみちゃん……!」

侑 「本当に……本当にあなたは優しい人ですね……かすみさん……」 ポロポロ



―――

―――――

266: 2020/12/27(日) 03:51:56.82 ID:TvvQHzex
侑 (そっか……もう私はかすみさんにとって、他人じゃないんだ……)

侑 (ここで意識が飛んでしまえばとても悲しい。かすみさんを忘れるなんて絶対に嫌だ!! だけど……だけど……)

侑 「……」 フラフラ

侑 (今意識が遠のいても少し嬉しいのは……時間の修正の影響に私も含まれたから……。なんだか初めて友達ができたように……嬉しいなぁ……ごめんなさい、かすみさん)

侑 (だけど信じてます。どうか目が覚めた時も、あなたと友達でいさせてください)

侑 「」 パタッ

269: 2020/12/27(日) 03:59:19.24 ID:TvvQHzex
かすみ 「……!」

かすみ (そ、そんな……もう私と歩夢先輩とりな子の三人だけ……!?)

歩夢 「頑張って!! 璃奈ちゃん!!」

かすみ 「!」

かすみ (そうだ。まだだ。まだ諦めちゃダメだ!! 歩夢先輩もりな子も、そして倒れたみんなも、私を助けたくてこんなに頑張ってくれてる!!)

かすみ 「頑張れーー!! りな子ーー!!」

璃奈 「……」 カタカタ

璃奈 (もう周りの声も聞こえない。私の手もどうして動いてるのか分からない。ただ、助けたいあの人の笑顔は分かる。それなら頑張れる)

璃奈 「……」 カタカタ

璃奈 「…」カタ カタ

璃奈 「」 カタ

璃奈 「」 パタッ

270: 2020/12/27(日) 04:01:09.12 ID:TvvQHzex
歩夢 「……!」

かすみ 「りな子!?」

かすみ (キーボードを打ちながら気絶したんだ……)

歩夢 「そ、そんな……璃奈ちゃんが……」

かすみ 「……」

歩夢 「だ、だけど、まだ方法はあるはずだよね? だって、かすみちゃんが消えちゃうなんてそんなことありえないよ? そうだよね、かすみちゃん……?」

かすみ 「……」

歩夢 「かすみちゃん?」

271: 2020/12/27(日) 04:02:49.69 ID:TvvQHzex
かすみ 「りな子は言ってた」

歩夢 「!」

かすみ 「このプログラムはりな子にしか組めないって」

歩夢 「そ、そんな……なにか、なにか方法があるはずだよ……! かすみちゃん!! ねぇ……!」 ポロポロ

かすみ 「……」

かすみ (そうだ。もう、諦めた方が早いんだ。だってみんな頑張ってくれたけど、無理だったんだから。それに私は消えてもみんなが消えるわけじゃない……それだけが唯一の救いかな……)

272: 2020/12/27(日) 04:04:33.44 ID:TvvQHzex
歩夢 「かすみちゃん!!!!」 ポロポロ

かすみ 「!」

歩夢 「なんでそんな諦めた顔をしてるの!? そんなの、かすみちゃんらしくないよ!!」

かすみ 「……!」

かすみ (私らしくない……?)

かすみ (そうだ。なんだか、今の私は私らしくない)

かすみ (侑先輩と出会って、スクールアイドル同好会は再スタートした。そして自分の夢、そしてみんなの夢、それを背負って、ときに荷物をみんなで持って、とにかくがむしゃらに走ったんだ……!)

273: 2020/12/27(日) 04:06:08.50 ID:TvvQHzex
かすみ (私がいなきゃ、私の可愛さは誰も知ることがない……そんなのいいの? それで私は満足なの?)

かすみ (みんなで叶えようとした物語……みんなで叶える物語……そうだ。届け!ときめき――。いままた夢を、追いかけていこう! そう言ったはずじゃないですか!!)

かすみ (みんなの夢を叶える場所……そこにかすみんが立つまで、かすみんがそこに立ってみんなの夢を叶えるまで、かすみんは諦めません!!)

かすみ (考え 、かすみん。ねばれよ、かすみん。諦めるな、かすみん!!)

かすみ (どうにかしてこの状況から抜け出す方法を考えるんだ! いつも学ぶことの大切さを学んでるじゃないか!)

274: 2020/12/27(日) 04:07:47.15 ID:TvvQHzex
歩夢 「……っ!」

歩夢 (えっ……今意識が飛びかけた……? もしかして、かすみちゃんを忘れようとしてるの?)

歩夢 (そんなの……そんなの……!)

歩夢 「絶対に嫌だ!! 私はかすみちゃんを絶対に忘れない!!」 ポロポロ

歩夢 「うっ……」 フラフラ

パタッ

かすみ 「歩夢先輩!?」

歩夢 「大丈夫だよ……かすみちゃん……! 立てなくなっちゃっただけで、私は大丈夫だから、かすみちゃんを忘れないから……!」 ポロポロ

かすみ 「歩夢先輩……」

歩夢 (意識が朦朧としてる……ってあれ? あそこにあるのは携帯? 落ちてる……。誰のかな? あれは……)

275: 2020/12/27(日) 04:09:26.49 ID:TvvQHzex
―――――

―――



かすみ 「えっと、ちょっと見てもいいですか?」

侑 「はい、どうぞ」 サッ

かすみ 「さてさて、歩夢先輩の携帯を探索しますか……」 ポチポチ

かすみ 「ん? メールに一件だけ受信メールがありますよ?」

侑 「ええっ!?」



―――

―――――

276: 2020/12/27(日) 04:12:56.49 ID:TvvQHzex
歩夢 (未来の私が唯一、残してた過去の証……一体誰からのメールなんだろう?)

歩夢 (意識が飛ばないように気をつけながら、少しずつ、携帯の方へ手を伸ばして……! そして携帯を開く!!)

歩夢 「!」

歩夢 (かすみちゃんだ……そうか、未来の私がいなくなる直前の……!)

歩夢先輩へ
最近お元気でしょうか?
歩夢先輩、単刀直入に聞きます。
何か隠してませんか?
もしつらいならいつでもかすみんに相談してください!! 私は歩夢先輩の力になりたいんです!!
いつまでも可愛い後輩……かすみんに隠し事をしたら損ですよ? かすみんボード『プンプン』
絶対にまた会いましょうね。歩夢先輩!

歩夢 「……」

歩夢 (これはさすがに未来の私でも消せないよね……)

歩夢 「ふふ、かすみんボードかぁ……璃奈ちゃんボードの真似かなぁ……」 ボソッ

歩夢 (ありがとう……かすみちゃん……)

277: 2020/12/27(日) 04:13:52.43 ID:TvvQHzex
かすみ 「?」

かすみ (今、歩夢先輩、璃奈ちゃんボードって言いました? 璃奈ちゃんボード……璃奈ちゃんボード……)

かすみ 「!」

かすみ 「あっ!! 『璃奈ちゃんカーナビ』!!」

278: 2020/12/27(日) 04:14:24.39 ID:TvvQHzex
―――――

―――



果林 「あっ、ちなみにそのときに使ったアプリがあるんだけど……これ『璃奈ちゃんカーナビ』って言うんだけど」 スッ

愛 「おおっ、同好会のみんなが道案内をしてくれるんだ!」

歩夢 「わぁ……みんな可愛くて、素敵だね」



―――

―――――

279: 2020/12/27(日) 04:15:18.29 ID:TvvQHzex
かすみ (そうだ!! これなら……!!)

かすみ 「かすみんは学びます!」

かすみ 「果林先輩、すいません!! 勝手にポケット漁りますよ~」 ガサガサ

かすみ 「あった! スマホ! スイッチオン!!」

ポチッ

璃奈 『璃奈ちゃんカーナビを起動してくれてありがとう』

かすみ 「りな子!!!!」

璃奈 『って……急に大声出さないで! えっと、あなたは誰?』

かすみ (やっぱり忘れられてるか……でもAIだからか私を認識はできるみたい)

280: 2020/12/27(日) 04:16:24.65 ID:TvvQHzex
かすみ 「あなたってりな子の人格を反映してるんでしょ!?」

璃奈 『りな子……? それが天王寺璃奈のことを言ってるとしたら、合ってる』

かすみ 「ならこのプログラムの続き、できるよね!?」 サッ

璃奈 『……すごい精密で新しいプログラム。これの続きを作ればいいの?』

かすみ 「そう!!」

璃奈 『ならこのスマホを機器に繋いで。それと、キーボードで打たないといけないところは私が指示するからあなたがして』

かすみ 「分かった!! 時間がないからすぐにやるよ!!」

璃奈 『ラジャー』

281: 2020/12/27(日) 04:17:46.02 ID:TvvQHzex
カチャ

璃奈 『プログラム……構築中……』 ピピピピ

璃奈 『そこでEnter押して?』

かすみ 「了解!!」 ポチッ

璃奈 『プログラム……構築中……』 ピピピピ

かすみ 「……」

かすみ (あとどれくらいで時間の修正は完了してしまうんだろう。間に合うのかな)

歩夢 「……っ!」

歩夢 (意識が……! だけど絶対に目を閉じたらダメ!! 今、かすみちゃんのことを覚えてるのは私だけだから……私がかすみちゃんを忘れたら、誰もかすみちゃんのことを覚えてないから……!)

歩夢 「それだけは絶対にダメ……っ!」 ポロポロ

かすみ (歩夢先輩……!)

282: 2020/12/27(日) 04:20:45.35 ID:TvvQHzex
かすみ (なにが間に合うかな、だ。違う!! 絶対に!! 絶対に間に合わせるんだ!! 私は、私は!!)

璃奈 『プログラム……構築中……』

かすみ 「……」 ポロポロ

かすみ (歩夢先輩……侑先輩……愛先輩……果林先輩……りな子……)

璃奈 『プログラム構築完了。あとはEnterを押すだけ』

かすみ 「……!」 ポロポロ

かすみ (しず子……せつ菜先輩……エマ先輩……彼方先輩……みんな!!)

かすみ 「かすみんはここにいますよーー!!」

ポチッ






286: 2020/12/27(日) 19:41:01.00 ID:TvvQHzex
かす……み……

かす……み……ち……

かすみちゃん……!!

かすみ 「はっ!?」

かすみ 「って」

歩夢 「むぅ!」 ダキッ

かすみ 「歩夢先輩なにしてるんですか!? なんでかすみんを抱きしめてるんですか!?」

歩夢 「うぅ……だって……だって……!」 ポロポロ

かすみ 「しかも泣いてるし!?」

果林 「良かった……かすみちゃん、目を覚ましたのね」

かすみ 「って果林先輩……えっと、あれからどうなったんですか? 私、少し記憶がなくて……歩夢先輩も泣いてるし……」

287: 2020/12/27(日) 19:42:46.41 ID:TvvQHzex
果林 「どうなったかは明白じゃない。見て分かるでしょ? 私もかすみちゃんのことを思い出せてるし、現にあなたは今ここにいるじゃない」

かすみ 「あっ……それってつまり……!」 パァァ

愛 「無事なんとかなったってことだよ!!」

かすみ 「本当ですか!? 本当にかすみんはもう消えずに済むんですか!?」

璃奈 「大変だったけど間に合ったみたい。璃奈ちゃんボード『一安心』!」

かすみ 「良かった……本当に良かったです……」 グスッ

歩夢 「うぅ……かすみちゃん……」 ポロポロ

かすみ 「で、なんで歩夢先輩は私に抱きつきながら泣いてるんです……?」

288: 2020/12/27(日) 20:18:07.87 ID:TvvQHzex
果林 「かすみちゃん、Enterキーを押した直後に気絶しちゃったのよ。多分、極度の緊張によるものね」

愛 「みんなも気絶しちゃったけど、歩夢だけは耐えて気絶しなかったから……いち早くかすみんの気絶に気付いて、それで不安になっちゃったらしくて……」

かすみ 「それでこんなに泣いてるんですか……って、そういえば愛先輩、かすかす呼びはやめたんですか?」

愛 「いや、うーん……やめるってわけじゃないけど、しばらくはかすみん呼びでいいかなって。もう懲り懲りというか」

かすみ 「あんなに頑固だったのに、何か理由でもあるんですか……?」 キョトン

愛 「えっ、いや、別に理由なんてないよ!」 プイッ

果林 (って愛が顔を背けた……? 目も泳いでるし……いつも純粋な気持ちで人と向き合ってる愛らしくないわね……そんなに理由が恥ずかしいのかしら?)

289: 2020/12/27(日) 20:24:00.86 ID:TvvQHzex
かすみ 「……」

かすみ (それにしても)

歩夢 「かすみちゃん……もう遠くに行かないでね……」 ギュッ

かすみ 「……」 ナデナデ

かすみ (みんな頑張ってくれたけど、それでも時間の力には勝てなかった。仕方ないと思った。だけど、歩夢先輩だけは私を最後まで忘れないでいてくれた……)

かすみ (最初は侑先輩を取り合ったり、決してそこまで仲良しって感じではなかったけど……だけど今は……今は……)

かすみ 「歩夢先輩……大好きですよ」 ボソッ

歩夢 「えっ? 今かすみちゃんなにか言った?」

かすみ 「別に……なんでもないですよ」 プイッ

歩夢 「?」

290: 2020/12/27(日) 20:25:35.49 ID:TvvQHzex
かすみ 「あっ、そういえば! クローン侑先輩はどこにいるんですか!? 私、まだまだ話したいことがたくさんあるんです!!」

愛 「クローンゆうゆうはタイムマシンの方に行ってたよ! タイムマシンが動かせるか、確認したいんだって」

歩夢 「えっ……?」

歩夢 (タイムマシンが動かせるか……? それって、未来に帰ろうとしてるってこと!?)

歩夢 「そ、そんな! えっと、タイムマシンは!? ……侑ちゃん!!」 タタタタ

果林 「えっ、歩夢!?」

かすみ 「ま、待ってください!! 歩夢先輩ーー!!」 タタタタ

果林 「ってかすみちゃんまで!? 二人とも行っちゃったわ……」

璃奈 「……」

愛 「どうする? 愛さんたちも行く?」

璃奈 「……あの三人だけで話せることがあると思う」

愛 「……そっか。なら愛さんたちはここで待っておこうか」 ニコッ

璃奈 「うん」






291: 2020/12/27(日) 20:29:21.94 ID:TvvQHzex
侑 (タイムマシンは無事に動いてる……)

侑 「これで帰れるね……」

侑 (未来に帰れば私はタイムマシンを盗んだ罪で捕まる……でも、ここは本来私のいる世界じゃない)

侑 「そう、帰らなくちゃ……」

侑 (大切な友達ができた……だけど、私たちは一緒に居れないから……!)

侑 「バイバイ、みなさん……」 グスッ

歩夢 「待って!! 侑ちゃん!!」

侑 「……! 歩夢お母さん……!」

かすみ 「かすみんもいますよ!!」

侑 「かすみさん……!」

292: 2020/12/27(日) 20:30:33.16 ID:TvvQHzex
かすみ 「ちょっと! どういうことですか!?」

歩夢 「ねぇ侑ちゃん……本当に未来に帰るつもりなの?」

侑 「……」

侑 「もちろんです。私は未来の住人なんですから」

かすみ 「で、でも、さっき言ったじゃないですか!? あなたのことをもっと教えてくださいって! それが罰ゲームだって!! 罰ゲームを破って帰るつもりなんですか!?」

侑 「それに関しては本当にごめんなさい……私ももっとかすみさんと喋りたかった、私のことをもっと知って欲しかった……でも、未来の住人がここに居続けるのは、きっと良くない影響が来てしまうから……だから、もうさよならなんです」

かすみ 「そ、そんな……!」

かすみ (せっかく友達になれたのに!! もうさよならなんてそんなの絶対嫌です……)

293: 2020/12/27(日) 20:31:27.57 ID:TvvQHzex
歩夢 「でも侑ちゃんは未来に帰ったら捕まっちゃうんでしょ……?」

侑 「……!」

歩夢 「それに一人ぼっちなんだよね……! だったら、ここで暮らしてた方が絶対楽しいよ!! 私もいるし、かすみちゃんもいるんだから!!」

侑 「お母さん……」

歩夢 「だからお願い……いなくならないで……!!」 ポロポロ

かすみ 「か、かすみんからもお願いです!! あなたにとって初めての友達なら、もっと大切にしてくださいよ!?」

侑 「かすみさん……」

かすみ 「かすみんはもっとあなたとたくさん喋りたいんです……! だからお願いです、帰らないでください!」 ポロポロ

侑 「……」

侑 (この人たちとずっと一緒に居たい……)

侑 (だけど)

294: 2020/12/27(日) 20:32:25.37 ID:TvvQHzex
―――――

―――



歩夢 「ふふ、侑ちゃんはいつも元気だね」

侑 「だって私……お母さんのことが大好きだから!! お母さんの笑顔が大好きだから、それを見れたらすごく元気になるんだ!!」 ニコッ

歩夢 「そっか……」

侑 「うん!!」

歩夢 「ありがとう、侑ちゃん……私もすっごく今幸せだよ!!」 ニコッ



―――

―――――

295: 2020/12/27(日) 20:35:47.49 ID:TvvQHzex
侑 「ごめんなさい……それは無理なんです……」

歩夢 「……」 ポロポロ

かすみ 「なんでですか!? 別に未来になんか帰らなくてもいいじゃないですか!!」 ポロポロ

侑 「気持ちは本当に嬉しいんです。そして、できることなら私もこの世界に居続けたい。歩夢お母さんと、かすみさんの隣にずっといたい」

かすみ 「ならどうして!?」 ポロポロ

侑 「……私はお母さんを忘れたくない」

歩夢 「!」

296: 2020/12/27(日) 20:39:12.73 ID:TvvQHzex
侑 「もうお母さんはいません。でも、お母さんと過ごした日々はずっと、この胸に残っているんです。そして、私たち二人の日々は、紛れもなく未来の……少し寂しい、だけど懐かしい、あの二人だけの家で、紡がれたものです」

かすみ 「……」

侑 「私はお母さんと過ごしたあの家を捨てたくない。それはここに残っていくら幸せになったとしても代えられないもの……お母さんと過ごした思い出を、私は捨てたくないから。今もずっと、心では一緒にいるから。だから……!!」

侑 「私は帰らなくちゃいけないんです……」

かすみ 「……」

かすみ (そんなことを言われたら……そんな顔をされたら……止められるはずがないじゃないですか……)

297: 2020/12/27(日) 20:43:00.40 ID:TvvQHzex
歩夢 「……侑ちゃん」

侑 「!」

歩夢 「ありがとう……そんなに未来の私を愛してくれて……」

侑 「……」

歩夢 「そうだね……侑ちゃんにはちゃんと、帰るべき場所があるんだもんね。それを私が止められるはずがないよ」

侑 「歩夢お母さん……」

歩夢 「でも最後に言わせて、侑ちゃん」

歩夢 (侑ちゃんはこれから、大変な道を歩くと思う。それは未来の私のせいであって、きっと今の私のせい。だけど、侑ちゃんは微笑んでくれた。こんな私を、本当に愛してくれた。そしてきっと未来の私も、本当にこの侑ちゃんを愛してくれたんだろう……だから)

298: 2020/12/27(日) 20:44:02.75 ID:TvvQHzex
歩夢 「これからも、つまずきそうになることは、あると思うけど……。あなたが私を支えてくれたように……」

歩夢 「あなたには私がいる!!」

歩夢 「だから、ありがとう、侑ちゃん。そしてさようなら、遠く離れても私たちはずっと一緒だからね」 ポロポロ

かすみ 「うぅ……かすみんも、少しの間でしたけど、あなたに出会えて良かったです……友達なのは永遠だからね!!」 ポロポロ

侑 「みなさん、本当に……本当に……ありがとう!! 大好きです!!」 ポロポロ

侑 (もしも……もしも神様がまたチャンスをくれたなら、私はあなたたちに出会いたい。そしてこの一瞬を、私は絶対に忘れないよ!!)

侑 「さようなら!!」 ポロポロ






299: 2020/12/27(日) 20:46:24.40 ID:TvvQHzex
ピピピピピ

ピピピピピ

ピカーーーーーーン

ドンッ

果林 「なにか機械音が聞こえるわね……」

愛 「きっと、クローンゆうゆうが未来に帰っちゃったんだよ……あーあ、少し、寂しくなるなぁ」

璃奈 「やっぱりクローン侑さんには帰ってほしくなかった?」

愛 「……いや、帰るべき場所があるなら、帰ったほうがいいよ」

璃奈 「……うん」

果林 「それにしても、璃奈ちゃん本当にすごいわねぇ。未来のタイムマシンをあそこまで使えるなんて……技術力が未来レベルってことでしょ?」

300: 2020/12/27(日) 20:47:50.89 ID:TvvQHzex
璃奈 「……違う。そこまで私はすごくない」

愛 「いやいや、りなりー謙遜しなくてもいいよ! 本当にすごかったんだから!」

璃奈 「なぜか分からないけど、あのタイムマシンのプログラムのクセが私にそっくりだった。相性が良かったから、スムーズに進んでなんとか間に合ったの」

果林 「へぇ……不思議なこともあるものねぇ……」

愛 「そういえばりなりー、どうなの? 未来の技術に触れてみて! タイムマシンとか作りたくなっちゃった?」

璃奈 「……タイムマシンはもう懲り懲り。作るのも使うのも、とても責任が伴う。だからやめておく」

果林 「そうね……もしかしたらかすみちゃんが消えてたかもしれないんだし、それが賢明よ。過去改変を止められて本当に良かったわ」

301: 2020/12/27(日) 20:50:47.65 ID:TvvQHzex
璃奈 「……過去改変はされてしまったかもしれない」

果林 「えっ?」

愛 「ええっ!? ってことはかすみんが消えちゃうってこと!?」

璃奈 「違う。かすみちゃんの過去が改変されたんじゃなくて、未来から見て過去である現在が、改変されてしまったかもしれない」

愛 「えっと、それはやっぱりクローンゆうゆうがこの時代に来たからってこと……?」

璃奈 「そう。クローン侑さんが過去を変えようとしたことで、私たちがクローン侑さんと出会った……そして今が変わった。だからクローン侑さんのいる未来は変わったはず」

果林 「どんな風に変わったのかしら……?」

302: 2020/12/27(日) 20:52:54.92 ID:TvvQHzex
璃奈 「分からない。でも、幸せな方に変わったことを願う」

愛 「……」

果林 「璃奈ちゃん……」

愛 「そうだね!! 愛さんもそう願うよ!! ゆうゆうーーー!! 未来で幸せでいてねーーー!!」

果林 「わ、私も叫ぶわ!! 侑ーー!! 幸せでいるのよーー!! 疎遠なんて寂しいんだからーーー!!」

璃奈 「璃奈ちゃんボード『またいつか会おうね!! そしてどうか幸せで!!』」






303: 2020/12/27(日) 20:54:27.96 ID:TvvQHzex
かすみ 「クローン侑先輩……帰っちゃいましたね……」

歩夢 「そうだね……」

かすみ 「歩夢先輩、一つ聞いていいですか」

歩夢 「……いいよ」

かすみ 「クローン研究はやめるんですか?」

歩夢 「クローン研究……」

歩夢 (そうだよね、本来はクローン研究なんていけないことなんだから……でも)

歩夢 「やめないよ」

304: 2020/12/27(日) 20:57:10.84 ID:TvvQHzex
かすみ 「……やっぱり、侑先輩に未練があるんですか?」

歩夢 「……違うかな。そうじゃなくて、今回未来から来たクローン侑ちゃんを見て思ったんだ。あんなに優しくて良い子が、いない世界は嫌だなって」

かすみ 「そうですか……」

歩夢 「……」

かすみ 「未来の歩夢先輩は、一人でずっと戦ってました」

歩夢 「……!」

かすみ 「だけど、今から始まる新しい未来では、みんな一緒にいます。決して離れたりなんかしません。だから、もし、クローン侑先輩が生まれたら……かすみんも会いに行っていいですか?」

歩夢 「うん、もちろんだよ!!」 ニコッ






305: 2020/12/27(日) 20:59:01.75 ID:TvvQHzex
『これは遠い、だけど近くにいる未来の話』

ピピピピピ

ピピピピピ

ピカーーーーーーン

ドンッ

シューシュー…

侑 (帰ってきた……この扉を出れば私は捕まる……)

ウィーン

306: 2020/12/27(日) 21:00:34.10 ID:TvvQHzex
侑 「ってあれ、研究所の中じゃない……?」

侑 (そっか。時間を移動してるんだから、座標が全く同じとは限らないよね)

侑 「だけど、ここら辺に研究所があった気がするんだけどなぁ……記憶違いかなぁ」

侑 (でも、これですぐ捕まることはない。いや、逃げ切ることは不可能だし、自首するつもりだけど……)

侑 「最後にお母さんとの思い出、私たちの家に寄ろうかな」

トコトコ

307: 2020/12/27(日) 21:06:38.24 ID:TvvQHzex
『禁忌に触れ、生まれた一人の子供がいました。しかし、それでも憎まれることはなく、本当にずっと愛されていたのです』

侑 (でも、家に帰っても誰もいない……そうだ、この世界では私は一人なんだ)

侑 「って、泣いちゃダメだ……」 グスッ

侑 「私は皆さんにちゃんとさよならを言って、ここにやってきたんだ。それを後悔したりなんかしないよ」

トコトコ

308: 2020/12/27(日) 21:08:09.96 ID:TvvQHzex
『しかし、愛はときに離れるもの。血の繋がりなんて関係ない、そんな大切な想いで結ばれた親子でさえも、ときに離れてしまったのです』

侑 「……」

トコトコ

侑 「……」

トコトコ

侑 「……」

侑 (そろそろ家が見えるはず)

侑 「って、えっ……?」

309: 2020/12/27(日) 21:09:48.88 ID:TvvQHzex
『だけどあくまでときに離れるだけに過ぎなくて、強い想いはやがて大切な人との再会を呼び込むもので』

?? 「おーい、侑ちゃん? なにしてるのー? ご飯だよー!」

侑 「な、なんで……? なんで……」 ポロポロ

?? 「あっ、そうだ。言い忘れてたんだけど、今日は同好会のかすみちゃんが遊びに来てくれたんだ!」 ニコッ

?? 「侑ちゃん久しぶりです!! 聞きましたよ? 昨日は彼方先輩と一緒に遊んだらしいじゃないですか! ずるいです!! 私も侑ちゃんと遊びたいのに~!!」 プンプン

侑 「……」 ポロポロ

?? 「って侑ちゃん、泣いてるの!?」

?? 「ええっ!? もしかしてかすみんのせいですか!? ど、どうしよう!!」 アセアセ

310: 2020/12/27(日) 21:19:55.80 ID:TvvQHzex
侑 「……」 ポロポロ

侑 (また、出会えた……本当に出会えた……)

侑 (本当にありがとう……みなさん……!!)

侑 「うぅ……お母さん……かすみさん……!!」 ポロポロ

?? 「もしかしてかすみちゃん、なんか悪戯でもしちゃったの?」

?? 「いやそんなわけないじゃないですか!? もぅ……! 侑ちゃん、泣かないでください~!!」

『この物語は未来のどこかで強く生きてゆく、とある誰かのこれからの物語……それがどれだけ不思議であっても分かることは一つ』

『その涙はとても綺麗で、優しいものでした』






璃奈 「璃奈ちゃんボード『紙芝居』」

璃奈 「これにてめでたし、めでたし……璃奈ちゃんボード『にっこりん』!」 キラン

おわり

311: 2020/12/27(日) 21:42:37.78 ID:TvvQHzex
これにて、完結です。
長丁場になってしまいましたが、応援してくれる皆様のおかげでなんとか書き切ることができました。
本当にありがとうございました。
これからも頑張りますので、優しい目で応援してくれたら嬉しいです。

前作
海未 「いいにこの日ssを書きます!」 にこ 「過ぎてるけど」
http://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1606400299/

313: 2020/12/28(月) 02:32:38.32 ID:VM/esXpU
良かったわ
でも未来の侑ちゃんもやっぱり結婚しちゃってるんだよね

314: 2020/12/28(月) 12:23:24.29 ID:S7tNI0Sj

二人の侑同士は打ち解けられるのだろうか

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1608303412/

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