0
1: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:37:29 ID:???00
千砂都と店長(オリキャラ)の話
0
2: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:38:25 ID:???00
千砂都(高校生活も始まって色々やりたいことがあるけど、バイトもその一つなんだよね)
千砂都(中学生にはできないから、ずっと憧れてたんだ。自分で働いて、お金を稼いでみたいって)
千砂都(でも、どんなバイトにしようかな。事務作業系は数が少ないし、スーパーとかかな。……カフェの店員なんかもいいかも、なんてね)
千砂都「あ、こんなところにキッチンカー? ……たこ焼き屋だ」
千砂都(うう、つい引き寄せられてしまう。まだ、バイトも決まってないのに)
千砂都「あの、六個入り一つください。マヨネーズ有りで」
店長「はいよ、少々お待ちを」
千砂都(中学生にはできないから、ずっと憧れてたんだ。自分で働いて、お金を稼いでみたいって)
千砂都(でも、どんなバイトにしようかな。事務作業系は数が少ないし、スーパーとかかな。……カフェの店員なんかもいいかも、なんてね)
千砂都「あ、こんなところにキッチンカー? ……たこ焼き屋だ」
千砂都(うう、つい引き寄せられてしまう。まだ、バイトも決まってないのに)
千砂都「あの、六個入り一つください。マヨネーズ有りで」
店長「はいよ、少々お待ちを」
0
3: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:39:21 ID:???00
店長「……」
千砂都(す、すごい! なんて綺麗なマル!)
店長「……はい、六個入り」
千砂都「あ、ありがとうございます」
千砂都(駄目だ、帰るまで待てない。ここで食べちゃえ!)
千砂都「は、はふはふ……。おいしい……!」
千砂都(形マル、味マルだよ、これ!)
千砂都(常連になっちゃうかも。……でもキッチンカーだからいつもここにいるとは限らないのかな)
千砂都「ごちそうさまでした」
千砂都(あ、張り紙、……アルバイト募集?)
店長「……?」
千砂都「……あの! ここで働かせてください!」
千砂都(す、すごい! なんて綺麗なマル!)
店長「……はい、六個入り」
千砂都「あ、ありがとうございます」
千砂都(駄目だ、帰るまで待てない。ここで食べちゃえ!)
千砂都「は、はふはふ……。おいしい……!」
千砂都(形マル、味マルだよ、これ!)
千砂都(常連になっちゃうかも。……でもキッチンカーだからいつもここにいるとは限らないのかな)
千砂都「ごちそうさまでした」
千砂都(あ、張り紙、……アルバイト募集?)
店長「……?」
千砂都「……あの! ここで働かせてください!」
0
4: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:40:08 ID:???00
店長「ここで……? ああ、バイトか。……あんた名前は?」
千砂都「結ヶ丘女子高等学校一年の、嵐千砂都です!」
店長「嵐ね。……結ヶ丘? この辺の学校?」
千砂都「あの、この近くに今年からできた新設校で、私たちが一期生なんです」
店長「ふーん、なら通うのは問題ないか。じゃ、採用ね。いつから来られる?」
千砂都「え!? 採用ですか? 面接とかは……?」
店長「バイトの採用にそんなのいらねえよ。誰でもいいんだから。で、いつから来られんの?」
千砂都「は、はい、いつでも大丈夫です」
店長「じゃあ、明日もここにいるから、学校終わったらよろしく」
千砂都「わかりました。よろしくお願いします!」
店長「ああ、そうそう、ええと……どこだったかな、……あったあった。これ、手続きの書類、書いて明日持ってきて」
千砂都「はい、では、よろしくお願いします。失礼します」
千砂都(何かちょっと怖い人だったかも。採用もいい加減だし。バイトしたいなんてちょっと早まったかな。でも、あのたこ焼きは本物だったしなー)
千砂都(まあ、アルバイトだし、合わなければ辞めるくらいの気軽な気持ちでやってみようか)
千砂都「結ヶ丘女子高等学校一年の、嵐千砂都です!」
店長「嵐ね。……結ヶ丘? この辺の学校?」
千砂都「あの、この近くに今年からできた新設校で、私たちが一期生なんです」
店長「ふーん、なら通うのは問題ないか。じゃ、採用ね。いつから来られる?」
千砂都「え!? 採用ですか? 面接とかは……?」
店長「バイトの採用にそんなのいらねえよ。誰でもいいんだから。で、いつから来られんの?」
千砂都「は、はい、いつでも大丈夫です」
店長「じゃあ、明日もここにいるから、学校終わったらよろしく」
千砂都「わかりました。よろしくお願いします!」
店長「ああ、そうそう、ええと……どこだったかな、……あったあった。これ、手続きの書類、書いて明日持ってきて」
千砂都「はい、では、よろしくお願いします。失礼します」
千砂都(何かちょっと怖い人だったかも。採用もいい加減だし。バイトしたいなんてちょっと早まったかな。でも、あのたこ焼きは本物だったしなー)
千砂都(まあ、アルバイトだし、合わなければ辞めるくらいの気軽な気持ちでやってみようか)
0
5: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:45:10 ID:???00
千砂都「こんにちはー。よろしくお願いしまーす」
店長「お、来たな。荷物はここで、エプロンはこれ着て」
千砂都「はい」
店長「タネはここで、たこは冷蔵庫の中、調味料は補充しておくから多分なくならねえけど、ストックは一応ここ」
千砂都「はい」
店長「で、作り方だけど、家でやったことは?」
千砂都「はい、一応、あります」
店長「なら問題ねえな。油しいて、タネを入れて、たこを入れて、周辺が固まって来たら返す」
千砂都「はい」
店長「で、中まで火が通ったら器に盛り付けて、調味料かけて完成。最初は火の通り具合はタイマー使ったほうがいいな」
千砂都「はい」
店長「じゃ、一回やってみな」
千砂都「え、いきなりですか?」
店長「たこ焼き屋にたこ焼き作る以外何しようと思って来たんだよ。いいからやってみな」
千砂都「は、はい……。ええと、まずは生地を……」
店長「お、来たな。荷物はここで、エプロンはこれ着て」
千砂都「はい」
店長「タネはここで、たこは冷蔵庫の中、調味料は補充しておくから多分なくならねえけど、ストックは一応ここ」
千砂都「はい」
店長「で、作り方だけど、家でやったことは?」
千砂都「はい、一応、あります」
店長「なら問題ねえな。油しいて、タネを入れて、たこを入れて、周辺が固まって来たら返す」
千砂都「はい」
店長「で、中まで火が通ったら器に盛り付けて、調味料かけて完成。最初は火の通り具合はタイマー使ったほうがいいな」
千砂都「はい」
店長「じゃ、一回やってみな」
千砂都「え、いきなりですか?」
店長「たこ焼き屋にたこ焼き作る以外何しようと思って来たんだよ。いいからやってみな」
千砂都「は、はい……。ええと、まずは生地を……」
0
6: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:46:07 ID:???00
千砂都「ふう、あとは盛り付けて、調味料……。で、できました」
店長「ふーん、初めてにしちゃ上出来だな。」
千砂都「店長みたいな綺麗なマルにはなりませんけど……」
店長「たこ焼きが丸いのは作ってるときだけだからな。盛り付けた後は大体丸っぽければいいんだよ。食べりゃ同じだしな」
千砂都「はあ、そういうものですか……?」
店長「そういうものだよ。じゃあ次は会計。ここに値段表があるから……」
店長「ふーん、初めてにしちゃ上出来だな。」
千砂都「店長みたいな綺麗なマルにはなりませんけど……」
店長「たこ焼きが丸いのは作ってるときだけだからな。盛り付けた後は大体丸っぽければいいんだよ。食べりゃ同じだしな」
千砂都「はあ、そういうものですか……?」
店長「そういうものだよ。じゃあ次は会計。ここに値段表があるから……」
0
8: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:47:14 ID:???00
店長「……これでひととおり説明したな。何か質問は?」
千砂都「いえ、……多分、大丈夫です」
店長「なかなか要領も良さそうだな。……じゃ、八時頃戻るから。これ万一のときの連絡先ね」
千砂都「え? いきなり私一人ですか!? 接客とか、初めてなんですけど……」
店長「やったことはなくても、やられたことはあるだろ? 正解なんてねえんだから、見よう見まねでいいんだよ」
千砂都「で、でも……!」
店長「大丈夫だって。百貨店の店番しろってんじゃねえんだから。所詮バイト、所詮たこ焼き屋だよ。じゃ、よろしく」
千砂都「て、店長~!」
千砂都「行っちゃった……。本当に大丈夫かな。見よう見まね、所詮バイト……。よーし、当たって砕けろだ!」
千砂都「いえ、……多分、大丈夫です」
店長「なかなか要領も良さそうだな。……じゃ、八時頃戻るから。これ万一のときの連絡先ね」
千砂都「え? いきなり私一人ですか!? 接客とか、初めてなんですけど……」
店長「やったことはなくても、やられたことはあるだろ? 正解なんてねえんだから、見よう見まねでいいんだよ」
千砂都「で、でも……!」
店長「大丈夫だって。百貨店の店番しろってんじゃねえんだから。所詮バイト、所詮たこ焼き屋だよ。じゃ、よろしく」
千砂都「て、店長~!」
千砂都「行っちゃった……。本当に大丈夫かな。見よう見まね、所詮バイト……。よーし、当たって砕けろだ!」
0
9: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:49:01 ID:???00
店長「おう、お疲れ。どうだった?」
千砂都「店長! めちゃくちゃ大変でしたよ! お客さんたくさん来て焼くの追いつかないし、会計してたら焼きすぎちゃうし、そんなときに限ってレシートの紙詰まってどうしたらいいかわからないし!」
店長「でも、なんとかなっただろ?」
千砂都「なりましたよ! 皆さんのおかげで、ですけどね! 慣れないのに大変だねとか、ゆっくりでいいよとか言ってくれて、もう涙出そうでしたよ」
店長「それは何より。接客業の醍醐味だな。じゃ、閉店作業はしておくから、また次回もよろしく」
千砂都「……はあ、わかりました。では、失礼します」
千砂都(全く、初めてでワンオペってどうなってるの? ……確かに、やりがいはあったし、今この仕事でお金を稼いでるんだって感じはあったけど)
千砂都(……やっぱり、まともじゃないよなー)
千砂都「店長! めちゃくちゃ大変でしたよ! お客さんたくさん来て焼くの追いつかないし、会計してたら焼きすぎちゃうし、そんなときに限ってレシートの紙詰まってどうしたらいいかわからないし!」
店長「でも、なんとかなっただろ?」
千砂都「なりましたよ! 皆さんのおかげで、ですけどね! 慣れないのに大変だねとか、ゆっくりでいいよとか言ってくれて、もう涙出そうでしたよ」
店長「それは何より。接客業の醍醐味だな。じゃ、閉店作業はしておくから、また次回もよろしく」
千砂都「……はあ、わかりました。では、失礼します」
千砂都(全く、初めてでワンオペってどうなってるの? ……確かに、やりがいはあったし、今この仕事でお金を稼いでるんだって感じはあったけど)
千砂都(……やっぱり、まともじゃないよなー)
0
10: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:50:30 ID:???00
千砂都「こんにちはー」
店長「おう。じゃ、今日も八時までな」
千砂都「はい、わかりました」
店長「……」
千砂都「……?」
店長「嵐、お前何かあったか?」
千砂都(!?)
千砂都「……い、いえ、特に何も」
店長「ふーん、そっか。……じゃ、よろしく」
千砂都(……普通にしてたつもりだけど、顔に出てたかな)
千砂都「……よしっ! まずは仕事仕事!」
店長「おう。じゃ、今日も八時までな」
千砂都「はい、わかりました」
店長「……」
千砂都「……?」
店長「嵐、お前何かあったか?」
千砂都(!?)
千砂都「……い、いえ、特に何も」
店長「ふーん、そっか。……じゃ、よろしく」
千砂都(……普通にしてたつもりだけど、顔に出てたかな)
千砂都「……よしっ! まずは仕事仕事!」
0
11: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:51:47 ID:???00
店長「お疲れ、じゃ、またよろしく」
千砂都「あの、店長……」
店長「ん?」
千砂都「今日何かあったか聞いたのってなんでですか?」
店長「……なんとなくだよ」
千砂都「あの、ちょっと話をしてもいいですか?」
店長「……お前な、今からだと帰りが遅くなるだろうが」
千砂都「え? あ、すみません……」
店長「……」
千砂都「……?」
店長「どうした? 手短にしろよ。未成年を遅くまで拘束すると体面が悪いんだよ」
千砂都「は、はい!」
千砂都「あの、店長……」
店長「ん?」
千砂都「今日何かあったか聞いたのってなんでですか?」
店長「……なんとなくだよ」
千砂都「あの、ちょっと話をしてもいいですか?」
店長「……お前な、今からだと帰りが遅くなるだろうが」
千砂都「え? あ、すみません……」
店長「……」
千砂都「……?」
店長「どうした? 手短にしろよ。未成年を遅くまで拘束すると体面が悪いんだよ」
千砂都「は、はい!」
0
12: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:56:19 ID:???00
千砂都「……ええと、私には仲の良い幼馴染がいるんです。優しくて、強くて、才能があって、とにかくすごい子なんです」
千砂都「でも、ちょっとつまづいちゃうことがあって、前に踏み出せなくなっていたんです」
千砂都「心配して、力になってあげたくて、でもなかなかうまくいかなくて、……でもこの間、一歩進むきっかけがあったんです」
店長「ふーん、よかったじゃねえか」
千砂都「そうなんです。よかったんです。……でも、私はそれを見て嬉しいのと同時に、どうしてそのとき隣にいるのが私じゃないんだろうって、思っちゃったんです」
千砂都「本当は、100%嬉しい気持ちでいたかったのに、そんなことを思ってしまったのが、情けなくて」
店長「へえ。……で、何で嵐じゃなくて別のやつだったんだ?」
千砂都「その……、私は、その子の隣に立てるよう、その子に負けない何者かになれるよう頑張っているけど、まだその資格がなくて……」
店長「資格がないってそいつが言ったのか?」
千砂都「その子は、そんなこという子じゃありません。実際、その子は私のことも誘ってくれたんです」
店長「なるほどな。ならそいつにとって嵐は隣にいてほしい人間だってことなんだろ。じゃ、あとはお前の気持ち次第ってことじゃねえのか?」
千砂都「そう、かもしれません。それでも、私はまだかのんちゃんの隣に立つには……」
店長「そっか、面倒くせえな」
千砂都「なっ! そんないい方しなくてもいいじゃないですか」
千砂都「でも、ちょっとつまづいちゃうことがあって、前に踏み出せなくなっていたんです」
千砂都「心配して、力になってあげたくて、でもなかなかうまくいかなくて、……でもこの間、一歩進むきっかけがあったんです」
店長「ふーん、よかったじゃねえか」
千砂都「そうなんです。よかったんです。……でも、私はそれを見て嬉しいのと同時に、どうしてそのとき隣にいるのが私じゃないんだろうって、思っちゃったんです」
千砂都「本当は、100%嬉しい気持ちでいたかったのに、そんなことを思ってしまったのが、情けなくて」
店長「へえ。……で、何で嵐じゃなくて別のやつだったんだ?」
千砂都「その……、私は、その子の隣に立てるよう、その子に負けない何者かになれるよう頑張っているけど、まだその資格がなくて……」
店長「資格がないってそいつが言ったのか?」
千砂都「その子は、そんなこという子じゃありません。実際、その子は私のことも誘ってくれたんです」
店長「なるほどな。ならそいつにとって嵐は隣にいてほしい人間だってことなんだろ。じゃ、あとはお前の気持ち次第ってことじゃねえのか?」
千砂都「そう、かもしれません。それでも、私はまだかのんちゃんの隣に立つには……」
店長「そっか、面倒くせえな」
千砂都「なっ! そんないい方しなくてもいいじゃないですか」
0
13: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:58:03 ID:???00
店長「なら、嵐はそのために何をやってんだ? どうなったら資格があると思えるんだ?」
千砂都「それは、……私はダンスを頑張っていて、それで、自信が持てたら……」
店長「ダンスね。どれくらいだ? そこそこできんのか? で、自信を持つには?」
千砂都「同年代の中では、頑張っている方だとは思います。それなりに成果も出始めてはいます。まだ一番になるほどではありませんけど。自信は、……もっと納得できるレベルで何か結果が出せれば、でしょうか」
店長「よし、決まりだな」
千砂都「え?」
店長「一番近い大会に出て、そこで優勝しろ。そんだけやれば誰が見たって立派な成果だろ」
千砂都「でも、まだ一年生だし、大会だってそんなに簡単なものじゃありません」
店長「で、そうやって言い訳したまま高校を卒業するのか? そして卒業したらまた新人に逆戻り、また言い訳の始まりだ」
千砂都「そんなこと……!」
店長「本当にないと言えるか?」
千砂都「……」
千砂都「でも、頑張っても駄目かもしれない。そのときはどうしたらいいんですか?」
店長「胸を張ってやることはやったと言えて、それでも駄目だったら、何かやり方を変えるしかないだろうな」
千砂都「それは、……私はダンスを頑張っていて、それで、自信が持てたら……」
店長「ダンスね。どれくらいだ? そこそこできんのか? で、自信を持つには?」
千砂都「同年代の中では、頑張っている方だとは思います。それなりに成果も出始めてはいます。まだ一番になるほどではありませんけど。自信は、……もっと納得できるレベルで何か結果が出せれば、でしょうか」
店長「よし、決まりだな」
千砂都「え?」
店長「一番近い大会に出て、そこで優勝しろ。そんだけやれば誰が見たって立派な成果だろ」
千砂都「でも、まだ一年生だし、大会だってそんなに簡単なものじゃありません」
店長「で、そうやって言い訳したまま高校を卒業するのか? そして卒業したらまた新人に逆戻り、また言い訳の始まりだ」
千砂都「そんなこと……!」
店長「本当にないと言えるか?」
千砂都「……」
千砂都「でも、頑張っても駄目かもしれない。そのときはどうしたらいいんですか?」
店長「胸を張ってやることはやったと言えて、それでも駄目だったら、何かやり方を変えるしかないだろうな」
0
14: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 21:58:46 ID:???00
千砂都「やり方を変える?」
店長「何を変えるべきかは難しいが、そういうときは大体5W1Hのどれかだな」
千砂都「英語の5W1Hですか?」
店長「そうだ。今の話からすると、譲れないのは『何故』だな」
千砂都「……はい」
店長『『何を』『どうやって』を今から変えるのは現実的じゃねえな。『誰が』は当然お前だが、『誰と』って考えりゃ変える余地はあるか。あとは『どこで』だな」
千砂都「『誰と』『どこで』。……そっか、わかりました。……私は今年の夏の大会で優勝します。できなかったときは、……そのときは、武者修行に行って来ます」
店長「おう、やってみな。自分の本気を見てみる良い機会だ。駄目でも死ぬわけじゃないしな」
千砂都「自分の本気を……。あの、ちょっとバイトの日減らしても良いですか?」
店長「元々バイトにそんなに期待してねえよ。もし正社員ならもっとこき使ってやるけどな」
千砂都「ありがとうございます。私、やってみます。じゃあ、お疲れ様でした!」
店長「……ふん、……全く騒がしいことで」
店長「何を変えるべきかは難しいが、そういうときは大体5W1Hのどれかだな」
千砂都「英語の5W1Hですか?」
店長「そうだ。今の話からすると、譲れないのは『何故』だな」
千砂都「……はい」
店長『『何を』『どうやって』を今から変えるのは現実的じゃねえな。『誰が』は当然お前だが、『誰と』って考えりゃ変える余地はあるか。あとは『どこで』だな」
千砂都「『誰と』『どこで』。……そっか、わかりました。……私は今年の夏の大会で優勝します。できなかったときは、……そのときは、武者修行に行って来ます」
店長「おう、やってみな。自分の本気を見てみる良い機会だ。駄目でも死ぬわけじゃないしな」
千砂都「自分の本気を……。あの、ちょっとバイトの日減らしても良いですか?」
店長「元々バイトにそんなに期待してねえよ。もし正社員ならもっとこき使ってやるけどな」
千砂都「ありがとうございます。私、やってみます。じゃあ、お疲れ様でした!」
店長「……ふん、……全く騒がしいことで」
0
15: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:01:55 ID:???00
千砂都「店長!」
店長「ん? 嵐か。今日はシフト入ってないだろ」
千砂都「今日は、お客さんとして来ました!」
店長「そうか、……なんだそのピースサイン。うちは6個入りからだぞ」
千砂都「違いますよ! そうじゃなくて、何か気づきませんか? 制服とか!」
店長「いや、いつも着替えてからくるだろ。お前の制服なんて知らねえし」
千砂都「最初、お客さんとして来たとき着てたんですけど」
店長「そんなもん覚えてるわけねえだろ……」
千砂都「もう、じゃあ言っちゃいますけど、普通科に転入したんです!」
店長「そうか、駄目だったか。ま、人生はまだまだこれから……」
千砂都「あー、もう、違いますー!」
店長「……いいから結論を言え」
千砂都「むう、全然マルくないんだから。……大会には優勝できました。それで、幼馴染の子たちとやりたいことに集中するために、音楽科は辞めました」
店長「ん? 嵐か。今日はシフト入ってないだろ」
千砂都「今日は、お客さんとして来ました!」
店長「そうか、……なんだそのピースサイン。うちは6個入りからだぞ」
千砂都「違いますよ! そうじゃなくて、何か気づきませんか? 制服とか!」
店長「いや、いつも着替えてからくるだろ。お前の制服なんて知らねえし」
千砂都「最初、お客さんとして来たとき着てたんですけど」
店長「そんなもん覚えてるわけねえだろ……」
千砂都「もう、じゃあ言っちゃいますけど、普通科に転入したんです!」
店長「そうか、駄目だったか。ま、人生はまだまだこれから……」
千砂都「あー、もう、違いますー!」
店長「……いいから結論を言え」
千砂都「むう、全然マルくないんだから。……大会には優勝できました。それで、幼馴染の子たちとやりたいことに集中するために、音楽科は辞めました」
0
16: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:02:59 ID:???00
店長「なんだ、よかったじゃねえか」
千砂都「はい、ありがとうございました。あのとき店長に話を聞いてもらって、覚悟が決まりました。そのおかげだと思っています」
店長「おう、敬え敬え。で、音楽科を辞めたってことは、ダンスはもういいのか?」
千砂都「あ、いえ、そのやりたいことっていうのが、スクールアイドルっていって、歌ったり踊ったりするので、ダンスをやめるわけじゃありません」
店長「へえ、アイドルね。……ん? 誰がだって?」
千砂都「わ、た、し、が、で、す!」
店長「そうかそうか。ま、やるのは自由だわな。じゃ、今日はサービスしてやるよ。何個入りだ?」
千砂都「ぐう、今に見てろ。……じゃあ、十個入り二つ」
店長「ここぞとばかりに頼みやがって。……ほらよ。白よりはましだけどな、新しい制服なんだ、こぼすなよ」
千砂都「はーい。ありがとうございます。じゃあ、一パックは熱々のうちに……。うーん、やっぱり店長のたこ焼きはきれいなマルだしおいしい!」
千砂都「……ふう、ごちそうさまでした。じゃあ、また次のバイトで」
店長「おう、気をつけて帰れよ」
千砂都「お疲れ様でーす」
千砂都「はい、ありがとうございました。あのとき店長に話を聞いてもらって、覚悟が決まりました。そのおかげだと思っています」
店長「おう、敬え敬え。で、音楽科を辞めたってことは、ダンスはもういいのか?」
千砂都「あ、いえ、そのやりたいことっていうのが、スクールアイドルっていって、歌ったり踊ったりするので、ダンスをやめるわけじゃありません」
店長「へえ、アイドルね。……ん? 誰がだって?」
千砂都「わ、た、し、が、で、す!」
店長「そうかそうか。ま、やるのは自由だわな。じゃ、今日はサービスしてやるよ。何個入りだ?」
千砂都「ぐう、今に見てろ。……じゃあ、十個入り二つ」
店長「ここぞとばかりに頼みやがって。……ほらよ。白よりはましだけどな、新しい制服なんだ、こぼすなよ」
千砂都「はーい。ありがとうございます。じゃあ、一パックは熱々のうちに……。うーん、やっぱり店長のたこ焼きはきれいなマルだしおいしい!」
千砂都「……ふう、ごちそうさまでした。じゃあ、また次のバイトで」
店長「おう、気をつけて帰れよ」
千砂都「お疲れ様でーす」
0
17: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:05:17 ID:???00
店長「来たな、じゃ、今日もよろしく」
千砂都「はい、……もう慣れましたけど、バイト一人に任せるのって、まともじゃないですからね」
店長「何言ってんだ、飲食業やってる奴がまともなわけないだろ」
千砂都「開き直るし……。でも店長は、どうしてたこ焼き屋やってるんですか?」
店長「ん? 楽して稼げるから」
千砂都「そんな身もふたもない。……でも、それなら原宿なんだしタピオカとかドーナツとかでもいいのに。どっちもマルですし」
店長「流行り物だと、いっときは稼げてもブームが終わったら別のものに変えないと駄目だろ。……それは、『楽して』じゃねえからなあ」
千砂都「そういうものですか? まあ、私は店長のたこ焼き好きだから、いいですけどね」
店長「お、それそれ、好きだからってことにしとこうか」
千砂都「絶対適当だ……」
店長「じゃ、大好きなたこ焼き屋をよろしく」
千砂都「はいはい。いってらっしゃーい」
千砂都(あーあ、『店長の』たこ焼きって言ってあげたのになあ……)
千砂都「はい、……もう慣れましたけど、バイト一人に任せるのって、まともじゃないですからね」
店長「何言ってんだ、飲食業やってる奴がまともなわけないだろ」
千砂都「開き直るし……。でも店長は、どうしてたこ焼き屋やってるんですか?」
店長「ん? 楽して稼げるから」
千砂都「そんな身もふたもない。……でも、それなら原宿なんだしタピオカとかドーナツとかでもいいのに。どっちもマルですし」
店長「流行り物だと、いっときは稼げてもブームが終わったら別のものに変えないと駄目だろ。……それは、『楽して』じゃねえからなあ」
千砂都「そういうものですか? まあ、私は店長のたこ焼き好きだから、いいですけどね」
店長「お、それそれ、好きだからってことにしとこうか」
千砂都「絶対適当だ……」
店長「じゃ、大好きなたこ焼き屋をよろしく」
千砂都「はいはい。いってらっしゃーい」
千砂都(あーあ、『店長の』たこ焼きって言ってあげたのになあ……)
0
18: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:07:36 ID:???00
千砂都「店長、今度うちの高校の学校祭があるんですけど、この店出店しませんか?」
店長「嫌だな。面倒くさい」
千砂都「そう言わずに~。ほら、店番は私がやりますから、車持って来てくれるだけでいいです」
店長「うーん……」
千砂都「ここでやるか、学校でやるかの違いだけじゃありませんか。それに、学校祭だから、みんな財布の紐ゆるゆるですよ?」
店長「そういうイベントって、色々申請すんの面倒なんだよな」
千砂都「書類は私が書きますから、店長は名前だけ書いてくれればいいです!」
店長「詐欺の手口だな、それ。そういうの自営業にはたくさん寄ってくんだよ」
千砂都「もう、違いますよ! それに宣伝にもなりますし、顧客拡大のチャンスです!」
店長「……はあ、仕方ねえな。車持っていくだけだぞ」
千砂都「やったー! 店長、ありがとうございます!」
店長「そういうときは下ごしらえの分量が読めねえんだよなあ……」
店長「嫌だな。面倒くさい」
千砂都「そう言わずに~。ほら、店番は私がやりますから、車持って来てくれるだけでいいです」
店長「うーん……」
千砂都「ここでやるか、学校でやるかの違いだけじゃありませんか。それに、学校祭だから、みんな財布の紐ゆるゆるですよ?」
店長「そういうイベントって、色々申請すんの面倒なんだよな」
千砂都「書類は私が書きますから、店長は名前だけ書いてくれればいいです!」
店長「詐欺の手口だな、それ。そういうの自営業にはたくさん寄ってくんだよ」
千砂都「もう、違いますよ! それに宣伝にもなりますし、顧客拡大のチャンスです!」
店長「……はあ、仕方ねえな。車持っていくだけだぞ」
千砂都「やったー! 店長、ありがとうございます!」
店長「そういうときは下ごしらえの分量が読めねえんだよなあ……」
0
19: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:10:23 ID:???00
千砂都「お疲れ様です」
店長「おう、じゃ、今日もよろしく」
千砂都「店長……」
店長「ん?」
千砂都「この間バイト外してもらったとき、スクールアイドルの大会に出てたんですけど、……結果は駄目でした」
店長「そうか。残念だったな」
千砂都「はい、あと少しだったんです。あと少しで全国に……」
店長「終わったことはもう仕方がねえな。また次頑張んな」
千砂都「はい。……私たち、いろいろあったけど部の活動を始められて、楽しくて、それに満足しちゃってたのかもしれません。負けたらどんな気持ちになるか、考えられていなかった。やっぱり負けたら悔しくて、でももう結果は変えられなくて」
店長「おう、じゃ、今日もよろしく」
千砂都「店長……」
店長「ん?」
千砂都「この間バイト外してもらったとき、スクールアイドルの大会に出てたんですけど、……結果は駄目でした」
店長「そうか。残念だったな」
千砂都「はい、あと少しだったんです。あと少しで全国に……」
店長「終わったことはもう仕方がねえな。また次頑張んな」
千砂都「はい。……私たち、いろいろあったけど部の活動を始められて、楽しくて、それに満足しちゃってたのかもしれません。負けたらどんな気持ちになるか、考えられていなかった。やっぱり負けたら悔しくて、でももう結果は変えられなくて」
0
20: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:11:33 ID:???00
店長「勝負事だからな。勝てるのは一部だけだろ」
千砂都「そうなんです。わかっていたはずなのに……。だから、もう繰り返しません。次は勝ちます」
店長「ま、思い詰めすぎねえようにやれよ」
千砂都「ありがとうございます。あ、バイトには影響ないようにするので、ご心配なく」
店長「そいつはありがとよ。だが、生きるに困ってるわけじゃねえんだ、バイトなんて優先順位下から数えたほうが早いくらいでちょうどいいんだよ」
千砂都「まあまあ、もうこれも大事なライフワークですから」
店長「普通科になったんだろ。勉強をライフワークにしろよ」
千砂都「えー。そりゃ勉強もやりますけどねー」
店長「……高校生が言われてもわからんだろうが、嫌になるくらい勉強できるのは今だけだからな」
千砂都「……えー? はーい。頑張りまーす」
千砂都「そうなんです。わかっていたはずなのに……。だから、もう繰り返しません。次は勝ちます」
店長「ま、思い詰めすぎねえようにやれよ」
千砂都「ありがとうございます。あ、バイトには影響ないようにするので、ご心配なく」
店長「そいつはありがとよ。だが、生きるに困ってるわけじゃねえんだ、バイトなんて優先順位下から数えたほうが早いくらいでちょうどいいんだよ」
千砂都「まあまあ、もうこれも大事なライフワークですから」
店長「普通科になったんだろ。勉強をライフワークにしろよ」
千砂都「えー。そりゃ勉強もやりますけどねー」
店長「……高校生が言われてもわからんだろうが、嫌になるくらい勉強できるのは今だけだからな」
千砂都「……えー? はーい。頑張りまーす」
0
21: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:15:08 ID:???00
千砂都「そういえば、店長って歳いくつですか」
店長「何だ藪から棒に」
千砂都「そういう語彙とか、言葉遣いとかからすると思ったより上なんですか?」
店長「どう思ってるか知らねえけど、今年二十八になる年だな」
千砂都「わあ、私は今年十六になりますよ」
店長「知ってるよ」
千砂都「……ひとまわりかー。結構違いますね」
店長「ふん、油断してるとすぐだぞ」
店長「何だ藪から棒に」
千砂都「そういう語彙とか、言葉遣いとかからすると思ったより上なんですか?」
店長「どう思ってるか知らねえけど、今年二十八になる年だな」
千砂都「わあ、私は今年十六になりますよ」
店長「知ってるよ」
千砂都「……ひとまわりかー。結構違いますね」
店長「ふん、油断してるとすぐだぞ」
0
22: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 22:15:40 ID:???00
千砂都「いやー、すぐってことはないでしょ。……それより、十六になるって言ったじゃないですか。来週が誕生日なんですよねー」
店長「サービスはしねえぞ」
千砂都「えー、こないだはしてくれたのに」
店長「黙ってりゃ毎年やってくるようなもんにサービスしてやるほど優しくないんでね」
千砂都「うーん、そう言われるとそう? ですけど、もっとこう、ねえ?」
店長「何度言っても駄目なもんは駄目だ。それより、毎年やってくるのをただ待っていたら、あっという間にひとまわりだぞ」
千砂都「……歳を取るの嫌だ、って思いますか?」
店長「いいや、あいにくだが日々充実してるんでね」
千砂都「なるほど……。ってバイトに店を任せてふらふらするのが充実ですか?」
店長「そういうことだ。ま、あくせく働くよりはよっぽどな。ということで、よろしく」
千砂都「はーい。いってらっしゃ~い」
千砂都「……ただ待っていたらすぐ、かー」
店長「サービスはしねえぞ」
千砂都「えー、こないだはしてくれたのに」
店長「黙ってりゃ毎年やってくるようなもんにサービスしてやるほど優しくないんでね」
千砂都「うーん、そう言われるとそう? ですけど、もっとこう、ねえ?」
店長「何度言っても駄目なもんは駄目だ。それより、毎年やってくるのをただ待っていたら、あっという間にひとまわりだぞ」
千砂都「……歳を取るの嫌だ、って思いますか?」
店長「いいや、あいにくだが日々充実してるんでね」
千砂都「なるほど……。ってバイトに店を任せてふらふらするのが充実ですか?」
店長「そういうことだ。ま、あくせく働くよりはよっぽどな。ということで、よろしく」
千砂都「はーい。いってらっしゃ~い」
千砂都「……ただ待っていたらすぐ、かー」
0
23: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:03:52 ID:???00
千砂都「はあ……」
店長「なんだ、珍しいな。いつもの能天気はどうした」
千砂都「一言余計です。……年度が変わって、二年生になったじゃありませんか。それで、嬉しいことに後輩もできたんですけど、でも、どうやって接したらいいかなかなかわからなくて」
店長「別に気負う必要はねえと思うけどな」
千砂都「しかも、さっき部長をやらないかって言われちゃって……」
店長「へえ、部長ねえ」
千砂都「私、向いてると思いますか?」
店長「部活でどんな感じか知らねえからな。でもな、本当にリーダーに向いてるやつなんてそうそういないんだから、やってみりゃいいだろ」
千砂都「でも、うちの部活、本当に向いてそうな人もいるんですよね」
店長「なら簡単だ。嵐から見て向いてそうなやつよりも、お前を選んでくれたんだろ?」
店長「なんだ、珍しいな。いつもの能天気はどうした」
千砂都「一言余計です。……年度が変わって、二年生になったじゃありませんか。それで、嬉しいことに後輩もできたんですけど、でも、どうやって接したらいいかなかなかわからなくて」
店長「別に気負う必要はねえと思うけどな」
千砂都「しかも、さっき部長をやらないかって言われちゃって……」
店長「へえ、部長ねえ」
千砂都「私、向いてると思いますか?」
店長「部活でどんな感じか知らねえからな。でもな、本当にリーダーに向いてるやつなんてそうそういないんだから、やってみりゃいいだろ」
千砂都「でも、うちの部活、本当に向いてそうな人もいるんですよね」
店長「なら簡単だ。嵐から見て向いてそうなやつよりも、お前を選んでくれたんだろ?」
0
24: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:05:01 ID:???00
千砂都「そっか……。うーん、でもなー。……店長って、そういうリーダーみたいなのやったことありますか?」
店長「お前は自営業の店長を何だと思ってんだ?」
千砂都「あ、そっか。好き勝手にやってるだけだから、そういう意識がありませんでした」
店長「お前な……。でもリーダーなんてそんなもんだ、好き勝手やりゃいいんだよ。どうせ誰にも正解なんてわからん」
千砂都「でも、私のせいで部がまとまらなかったり、私が決めた方針で間違った方向に行っちゃったりしたら……」
店長「部のため、周りのためを思っての行動なら、堂々としてな。で、迷うことがあったら周りに押し付けりゃいい」
千砂都「相談しながらということですよね。……うーん、そっか。全部一人で決める必要はないし、頼ればいいのか……」
店長「そういうことだ。じゃ、今日もよろしく」
千砂都「周りに押し付ければいいって、こういうこと……?」
店長「お前は自営業の店長を何だと思ってんだ?」
千砂都「あ、そっか。好き勝手にやってるだけだから、そういう意識がありませんでした」
店長「お前な……。でもリーダーなんてそんなもんだ、好き勝手やりゃいいんだよ。どうせ誰にも正解なんてわからん」
千砂都「でも、私のせいで部がまとまらなかったり、私が決めた方針で間違った方向に行っちゃったりしたら……」
店長「部のため、周りのためを思っての行動なら、堂々としてな。で、迷うことがあったら周りに押し付けりゃいい」
千砂都「相談しながらということですよね。……うーん、そっか。全部一人で決める必要はないし、頼ればいいのか……」
店長「そういうことだ。じゃ、今日もよろしく」
千砂都「周りに押し付ければいいって、こういうこと……?」
0
25: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:06:51 ID:???00
千砂都「店長、私がこの店で働くようになってからもう結構たちますよね」
店長「一年ちょっとだな。それがどうした」
千砂都「まあ、店長ほどじゃないかもしれませんけど、それなりにたこ焼き作りも上手くなってきましたよ」
店長「そうか、それで?」
千砂都「何かこう、私だけの道具がほしいなあ、って」
店長「そのエプロンはお前だけのものだろ」
千砂都「そう、ですけど、エプロンは何か違うじゃありませんか。別にたこ焼きじゃなくてもいいっていうか」
店長「……つまり、これか?」
千砂都「そうです。ずっと店長のピックを使ってますけど、やっぱり専用のピックが欲しいんです!」
店長「買えばいいじゃねえか。給料払ってんだろ?」
千砂都「自分で買っても意味ないんです! こう、……師匠から実力を認められて、授けられるのがいいんです!」
店長「どういう設定だよ」
千砂都「そういう設定です。とにかく、店長からもらわないと意味ないんです!」
店長「はあ、わかったよ。ま、考えとくか」
千砂都「はい、よろしくお願いします!」
店長「実力を認めたらな」
千砂都「えー!? まだ駄目ですか!?」
店長「一年ちょっとだな。それがどうした」
千砂都「まあ、店長ほどじゃないかもしれませんけど、それなりにたこ焼き作りも上手くなってきましたよ」
店長「そうか、それで?」
千砂都「何かこう、私だけの道具がほしいなあ、って」
店長「そのエプロンはお前だけのものだろ」
千砂都「そう、ですけど、エプロンは何か違うじゃありませんか。別にたこ焼きじゃなくてもいいっていうか」
店長「……つまり、これか?」
千砂都「そうです。ずっと店長のピックを使ってますけど、やっぱり専用のピックが欲しいんです!」
店長「買えばいいじゃねえか。給料払ってんだろ?」
千砂都「自分で買っても意味ないんです! こう、……師匠から実力を認められて、授けられるのがいいんです!」
店長「どういう設定だよ」
千砂都「そういう設定です。とにかく、店長からもらわないと意味ないんです!」
店長「はあ、わかったよ。ま、考えとくか」
千砂都「はい、よろしくお願いします!」
店長「実力を認めたらな」
千砂都「えー!? まだ駄目ですか!?」
0
26: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:08:38 ID:???00
千砂都「店長、来月バイトの日減らしていいですか」
店長「いいけど、なんかあんのか?」
千砂都「去年駄目だったあの大会が、今年も来月にあるので、もっと練習しないといけなくて」
店長「ふーん。……じゃ、駄目だな」
千砂都「え? いつもたかがバイトって言うのに」
店長「違えよ。練習のためにバイトを減らすのが駄目って言ってんだ」
千砂都「どういうことですか?」
店長「今でも目一杯やってるって言ってたろ。それはどうなんだ?」
千砂都「それは、そうですけど。……でも、全国に行くためには、そして全国で勝つためにはもっとやらないと」
店長「それが逆効果だって言ってんだよ。現実では限界を超えた先で都合よく新たな力が目覚めたりしねえぞ」
千砂都「でも……」
店長「限界の先にあるのは疲労による能力低下か故障だ。わかるだろ?」
千砂都「それは、はい……」
店長「いいけど、なんかあんのか?」
千砂都「去年駄目だったあの大会が、今年も来月にあるので、もっと練習しないといけなくて」
店長「ふーん。……じゃ、駄目だな」
千砂都「え? いつもたかがバイトって言うのに」
店長「違えよ。練習のためにバイトを減らすのが駄目って言ってんだ」
千砂都「どういうことですか?」
店長「今でも目一杯やってるって言ってたろ。それはどうなんだ?」
千砂都「それは、そうですけど。……でも、全国に行くためには、そして全国で勝つためにはもっとやらないと」
店長「それが逆効果だって言ってんだよ。現実では限界を超えた先で都合よく新たな力が目覚めたりしねえぞ」
千砂都「でも……」
店長「限界の先にあるのは疲労による能力低下か故障だ。わかるだろ?」
千砂都「それは、はい……」
0
27: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:09:21 ID:???00
店長「そもそも、今より練習しないと駄目だと思うのは何でだ?」
千砂都「……いいところまではいける手ごたえはあるんです。でも、相手は春に別のイベントで負けた相手で……」
千砂都「その相手は、去年の優勝者を予選で破って進出してきたんです。去年の優勝者の人達にはすごくお世話になっていて、大会で対戦するのを楽しみにしていたんですけど、それが実現しなくなってしまって……」
店長「このままじゃ自分たちも負けると思ってるってことか」
千砂都「いえ、それは違います。私たちはこの一年、どんな相手にも、それこそ、その去年優勝した人たちにも勝てるように練習してきました。そして、実際勝てるレベルの実力になってきたと思っています。でも、予想外の状況にみんな動揺して実力を発揮できていないんです。だから、練習して自信を取り戻せれば決して勝てない相手じゃありません」
千砂都「私の個人的な見解、ですが」
千砂都「……いいところまではいける手ごたえはあるんです。でも、相手は春に別のイベントで負けた相手で……」
千砂都「その相手は、去年の優勝者を予選で破って進出してきたんです。去年の優勝者の人達にはすごくお世話になっていて、大会で対戦するのを楽しみにしていたんですけど、それが実現しなくなってしまって……」
店長「このままじゃ自分たちも負けると思ってるってことか」
千砂都「いえ、それは違います。私たちはこの一年、どんな相手にも、それこそ、その去年優勝した人たちにも勝てるように練習してきました。そして、実際勝てるレベルの実力になってきたと思っています。でも、予想外の状況にみんな動揺して実力を発揮できていないんです。だから、練習して自信を取り戻せれば決して勝てない相手じゃありません」
千砂都「私の個人的な見解、ですが」
0
28: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:09:53 ID:???00
店長「それなら猶更じゃねえのか。するべきはがむしゃらに練習することなのか?」
千砂都「う、そう言われると……。じゃあ、何をしたらいいですか?」
店長「それは知らねえよ。スクールアイドルとやらに何が必要かはお前のほうが知ってるだろ」
千砂都「そんな、そこまで言って丸投げですか?」
店長「自分で言ったんだろ? 自身を取り戻せれば、って。モチベーターは数少ない部長の役目だ。見せ場だな」
千砂都「うう……。自信を取り戻すには、ですよね」
店長「特別なことは必要ねえんじゃねえか? 普段どおりに戻りゃいいんだろ」
千砂都「……ミーティングかなあ。みんなの意識を統一して……。でも、ちょっと堅苦しいな。何か楽しみながら、……そうだ、たこパでもしながらにしようかな! ……うん、それだ!」
店長「ふーん、なるほどね。ま、無理な練習以外ならいくらでも休みな」
千砂都「ありがとうございます! 本当にこれが正解かわからないけど、とにかくやってみます!」
千砂都「う、そう言われると……。じゃあ、何をしたらいいですか?」
店長「それは知らねえよ。スクールアイドルとやらに何が必要かはお前のほうが知ってるだろ」
千砂都「そんな、そこまで言って丸投げですか?」
店長「自分で言ったんだろ? 自身を取り戻せれば、って。モチベーターは数少ない部長の役目だ。見せ場だな」
千砂都「うう……。自信を取り戻すには、ですよね」
店長「特別なことは必要ねえんじゃねえか? 普段どおりに戻りゃいいんだろ」
千砂都「……ミーティングかなあ。みんなの意識を統一して……。でも、ちょっと堅苦しいな。何か楽しみながら、……そうだ、たこパでもしながらにしようかな! ……うん、それだ!」
店長「ふーん、なるほどね。ま、無理な練習以外ならいくらでも休みな」
千砂都「ありがとうございます! 本当にこれが正解かわからないけど、とにかくやってみます!」
0
29: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:11:57 ID:???00
千砂都「店長! やりました!」
店長「ん?今度のピースサインは何だ? 遂になにかやらかしたか?」
千砂都「違いますよ! やったんです! 全国大会出場です!」
店長「ほお、そりゃよかった」
千砂都「はい、やりました! ……ちょっと東京大会に出てた相手の子のことは気になるんですけど」
店長「へえ、負かした相手を気にかけるとは、余裕じゃねえか。勝ったってことは、まだ先があるんだろ?」
千砂都「そうなんですよね。本当はもっとあの子とも話したかったんですけど、次に向けて準備もしなくちゃで」
店長「ま、縁がありゃまた大会なり何なりで会うことになるさ」
千砂都「ちょっと特殊な事情っぽいので、機会があるかはわからないんですけどね……。あ、それより、次は全国大会なんですけど、店長も応援に来てくれませんか?」
店長「ん?今度のピースサインは何だ? 遂になにかやらかしたか?」
千砂都「違いますよ! やったんです! 全国大会出場です!」
店長「ほお、そりゃよかった」
千砂都「はい、やりました! ……ちょっと東京大会に出てた相手の子のことは気になるんですけど」
店長「へえ、負かした相手を気にかけるとは、余裕じゃねえか。勝ったってことは、まだ先があるんだろ?」
千砂都「そうなんですよね。本当はもっとあの子とも話したかったんですけど、次に向けて準備もしなくちゃで」
店長「ま、縁がありゃまた大会なり何なりで会うことになるさ」
千砂都「ちょっと特殊な事情っぽいので、機会があるかはわからないんですけどね……。あ、それより、次は全国大会なんですけど、店長も応援に来てくれませんか?」
0
30: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:12:50 ID:???00
店長「ん? いつだ?」
千砂都「ええと、日程はこんな感じで、年明けの……」
店長「……無理だな。その日は別のイベントに出店予定だ」
千砂都「え、……そうですか。なんだー、残念」
店長「ま、他にも呼ぶ奴はいるだろ」
千砂都「でも、店長にも見てほしかったのにな~」
店長「じゃ、ニュースに出るくらい活躍してくれよ。NHKしか観ねえけどな」
千砂都「……いえ、むしろNHKのほうがいいような気が、する! ……なんとなくだけど」
店長「なんだそりゃ、……まあいい、期待させてもらおうか」
千砂都「わかりました! 任せてください!」
千砂都「ええと、日程はこんな感じで、年明けの……」
店長「……無理だな。その日は別のイベントに出店予定だ」
千砂都「え、……そうですか。なんだー、残念」
店長「ま、他にも呼ぶ奴はいるだろ」
千砂都「でも、店長にも見てほしかったのにな~」
店長「じゃ、ニュースに出るくらい活躍してくれよ。NHKしか観ねえけどな」
千砂都「……いえ、むしろNHKのほうがいいような気が、する! ……なんとなくだけど」
店長「なんだそりゃ、……まあいい、期待させてもらおうか」
千砂都「わかりました! 任せてください!」
0
31: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:13:55 ID:???00
千砂都「店長~! やりましたよ~!」
店長「うるせえな、大きい声出すな」
千砂都「店長は口うるさいですね」
店長「黙ってろ」
千砂都「嫌でーす! ニュース観ましたか? 優勝しましたよ! 優勝!」
店長「へえ、悪い観てねえ」
千砂都「何でですか!? 店長がNHKニュースなら観るって言ったのに!」
店長「朝は仕込みやら何やらで流し見だからな」
千砂都「もう、夜は絶対観てくださいね!」
店長「善処する」
千砂都「絶対です! というか、動画送るんで観てください! 今!」
店長「おい、営業中だぞ」
千砂都「いいです、私が替わりますから!」
店長「今日はシフト入ってねえだろ。ほら、さっさと帰れ」
千砂都「今日はお客さんでーす! お客さんにそんな態度取っていいんですか~!?」
店長「いいだろ」
千砂都「……むう、十個入り三つ。サービスで」
店長「前より増えてるぞ」
千砂都「いいんです! 十個入り三つ!!」
店長「うるせえな、大きい声出すな」
千砂都「店長は口うるさいですね」
店長「黙ってろ」
千砂都「嫌でーす! ニュース観ましたか? 優勝しましたよ! 優勝!」
店長「へえ、悪い観てねえ」
千砂都「何でですか!? 店長がNHKニュースなら観るって言ったのに!」
店長「朝は仕込みやら何やらで流し見だからな」
千砂都「もう、夜は絶対観てくださいね!」
店長「善処する」
千砂都「絶対です! というか、動画送るんで観てください! 今!」
店長「おい、営業中だぞ」
千砂都「いいです、私が替わりますから!」
店長「今日はシフト入ってねえだろ。ほら、さっさと帰れ」
千砂都「今日はお客さんでーす! お客さんにそんな態度取っていいんですか~!?」
店長「いいだろ」
千砂都「……むう、十個入り三つ。サービスで」
店長「前より増えてるぞ」
千砂都「いいんです! 十個入り三つ!!」
0
32: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:16:38 ID:???00
千砂都「店長~」
店長「何だ」
千砂都「私たち優勝したじゃありませんか、その関係で、前話した幼馴染の子が、留学することになったんです」
店長「ふーん、それで?」
千砂都「私としては、すっごく嬉しいし、応援したいんですけど、やっぱり寂しいし、それに、また先を行かれちゃったなって、複雑なんですよ」
店長「そうか」
千砂都「反応鈍いなー」
店長「知らん奴だしな」
千砂都「この間動画見せましたよね? 一番目立ってた子ですよ!」
店長「沢山いて嵐以外はどれかわからん」
千砂都「その子のおかげで優勝できたと言ってもいいくらいなんですから! ……あ、でもそうしたら、来年は私たちだけで出場しないといけないんだ」
千砂都「でも、絶対に優勝しないといけないわけでもないのか。少なくとも今年は優勝したわけだし」
店長「何だ、燃え尽き症候群か」
千砂都「うーん、そうなんでしょうか。やっぱりその子が『絶対勝つんだ』って引っ張ってくれていたのかもしれません」
店長「何だ」
千砂都「私たち優勝したじゃありませんか、その関係で、前話した幼馴染の子が、留学することになったんです」
店長「ふーん、それで?」
千砂都「私としては、すっごく嬉しいし、応援したいんですけど、やっぱり寂しいし、それに、また先を行かれちゃったなって、複雑なんですよ」
店長「そうか」
千砂都「反応鈍いなー」
店長「知らん奴だしな」
千砂都「この間動画見せましたよね? 一番目立ってた子ですよ!」
店長「沢山いて嵐以外はどれかわからん」
千砂都「その子のおかげで優勝できたと言ってもいいくらいなんですから! ……あ、でもそうしたら、来年は私たちだけで出場しないといけないんだ」
千砂都「でも、絶対に優勝しないといけないわけでもないのか。少なくとも今年は優勝したわけだし」
店長「何だ、燃え尽き症候群か」
千砂都「うーん、そうなんでしょうか。やっぱりその子が『絶対勝つんだ』って引っ張ってくれていたのかもしれません」
0
33: ◆6UkBZAlb★ 2025/03/09(日) 23:17:07 ID:???00
店長「ま、部活動だ、それもいいだろうよ」
千砂都「そうですけど、……でも、それじゃ駄目な気がします。その子がいなくなったから勝てなかったんだ、なんて……」
店長「ん?」
千砂都「それに、ずっとその子の隣に立ちたいって思ってたのに、それで満足したらまた置いていかれちゃう」
店長「じゃ、来年も勝ちゃあいい」
千砂都「そうですね。うん、そうしなきゃ……」
店長「そうしなきゃ、か。健全じゃねえな」
千砂都「じゃあ、何かモチベーションください。……そうだ、来年も決勝大会に出られたら、店長も観に来てくださいよ」
店長「先すぎてわかんねえな……」
千砂都「だから今のうちに押さえておいてください。ええと、春にはスケジュール出るはずなので」
店長「ま、空いてたらな」
千砂都「駄目です! 絶対ですからね! 約束しましたよ! 店長にスクールアイドルやってる私を生で見せてあげます!」
千砂都「よーし、やる気出てきた! やってやるぞー!」
店長「やる気が出たならいいが、一人で盛り上がんなよ……」
千砂都「そうですけど、……でも、それじゃ駄目な気がします。その子がいなくなったから勝てなかったんだ、なんて……」
店長「ん?」
千砂都「それに、ずっとその子の隣に立ちたいって思ってたのに、それで満足したらまた置いていかれちゃう」
店長「じゃ、来年も勝ちゃあいい」
千砂都「そうですね。うん、そうしなきゃ……」
店長「そうしなきゃ、か。健全じゃねえな」
千砂都「じゃあ、何かモチベーションください。……そうだ、来年も決勝大会に出られたら、店長も観に来てくださいよ」
店長「先すぎてわかんねえな……」
千砂都「だから今のうちに押さえておいてください。ええと、春にはスケジュール出るはずなので」
店長「ま、空いてたらな」
千砂都「駄目です! 絶対ですからね! 約束しましたよ! 店長にスクールアイドルやってる私を生で見せてあげます!」
千砂都「よーし、やる気出てきた! やってやるぞー!」
店長「やる気が出たならいいが、一人で盛り上がんなよ……」
0
36: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 18:13:50 ID:???00
千砂都「……こんにちはー」
店長「おう、どうした三年生、見るからに覇気がねえな」
千砂都「うーん、何だかすごく複雑なことになっちゃいまして」
店長「ふーん。よくわからんが、仕事してくれりゃそれでいいや」
千砂都「そうなんですよ。それぞれやるべきことをやるだけだとはわかってるんですけどね。予想外の事態ですぐには整理がつかないというか……」
店長「そうか。……じゃ、仕事中は明るく元気にな」
千砂都「……こんな状態のいたいけな少女を一人で置いていくんですか?」
店長「やるべきことはわかってんだろ? 店番もその一つだ。ま、よろしく」
千砂都「ぐう、いい大人のくせに……」
店長「お前だって今年成人だろ? いい大人の仲間入りだ」
千砂都「はいはい、いってらっしゃ~い。……でも、私はまだ誕生日まで一年近くありますからね」
千砂都(……ふう。明るく元気に、……やってやるか!)
店長「おう、どうした三年生、見るからに覇気がねえな」
千砂都「うーん、何だかすごく複雑なことになっちゃいまして」
店長「ふーん。よくわからんが、仕事してくれりゃそれでいいや」
千砂都「そうなんですよ。それぞれやるべきことをやるだけだとはわかってるんですけどね。予想外の事態ですぐには整理がつかないというか……」
店長「そうか。……じゃ、仕事中は明るく元気にな」
千砂都「……こんな状態のいたいけな少女を一人で置いていくんですか?」
店長「やるべきことはわかってんだろ? 店番もその一つだ。ま、よろしく」
千砂都「ぐう、いい大人のくせに……」
店長「お前だって今年成人だろ? いい大人の仲間入りだ」
千砂都「はいはい、いってらっしゃ~い。……でも、私はまだ誕生日まで一年近くありますからね」
千砂都(……ふう。明るく元気に、……やってやるか!)
0
37: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 18:16:03 ID:???00
千砂都「うーん……」
店長「何だ」
千砂都「たこ焼きって、そのまま食べる以外に何か工夫できないかなって」
店長「またそれか」
千砂都「だって、今年も学校祭に出店お願いしたじゃありませんか」
店長「ああ」
千砂都「またそこで何かできないかなって」
店長「そうやってできたのがスムージーか?」
千砂都「……いやー、あれも意外に悪くないんですけどね。店長、たこ焼き屋として何かないんですか?」
店長「そのまま食べるのが一番だな」
千砂都「それはわかりますけど~。でも、もっとインパクトが欲しいんだYO!」
店長「……なら、鍋だな」
千砂都「鍋!? 鍋ってあのぐつぐつ煮るやつですYOね? えっと、流石にそれは……」
店長「思ったよりいけんだよ」
千砂都「だって、ベロベロになりそう」
店長「そりゃ、最初からは入れねえだろ」
千砂都「うーん……」
店長「いいからやってみろ」
千砂都「うーん、うーん……」
店長「おい」
千砂都「……まあ、時期が違うので、冬になったらですねー」
店長「何だ」
千砂都「たこ焼きって、そのまま食べる以外に何か工夫できないかなって」
店長「またそれか」
千砂都「だって、今年も学校祭に出店お願いしたじゃありませんか」
店長「ああ」
千砂都「またそこで何かできないかなって」
店長「そうやってできたのがスムージーか?」
千砂都「……いやー、あれも意外に悪くないんですけどね。店長、たこ焼き屋として何かないんですか?」
店長「そのまま食べるのが一番だな」
千砂都「それはわかりますけど~。でも、もっとインパクトが欲しいんだYO!」
店長「……なら、鍋だな」
千砂都「鍋!? 鍋ってあのぐつぐつ煮るやつですYOね? えっと、流石にそれは……」
店長「思ったよりいけんだよ」
千砂都「だって、ベロベロになりそう」
店長「そりゃ、最初からは入れねえだろ」
千砂都「うーん……」
店長「いいからやってみろ」
千砂都「うーん、うーん……」
店長「おい」
千砂都「……まあ、時期が違うので、冬になったらですねー」
0
38: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 18:32:09 ID:???00
千砂都「いらっしゃいませー! ……え、アルバイトですか? ええと、私もバイトなので、……どうしたらいいかな。もうすぐ店長が戻るころなんですけど……」
店長「おう、お疲れ。……そちらは?」
千砂都「あ、ちょうどよかった。こちらアルバイト希望の方です」
店長「へえ、……あんた名前は?」
店長「ふーん、……じゃ、ちょっと話を聞かせてもらおうかな。嵐、お前はもうあがっていいぞ」
千砂都「はい、お疲れ様です」
千砂都(私のときはあんなのなかったよね……。ちょっと様子を窺ってみよう)
店長「なるほどね。……うん、……ああ。……じゃ、合否は五日以内に連絡するから」
店長「ふう……」
店長「おう、お疲れ。……そちらは?」
千砂都「あ、ちょうどよかった。こちらアルバイト希望の方です」
店長「へえ、……あんた名前は?」
店長「ふーん、……じゃ、ちょっと話を聞かせてもらおうかな。嵐、お前はもうあがっていいぞ」
千砂都「はい、お疲れ様です」
千砂都(私のときはあんなのなかったよね……。ちょっと様子を窺ってみよう)
店長「なるほどね。……うん、……ああ。……じゃ、合否は五日以内に連絡するから」
店長「ふう……」
0
39: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 18:32:20 ID:???00
千砂都「ねえ店長、私のときと全然違いませんか?」
店長「何だ、まだいたのか」
千砂都「だって私のときは、挨拶だけで『明日から来い』って感じだったじゃありませんか。あんな風にちゃんと面接してもらってないなーって」
店長「……うーん、ま、言ってもいいか。悪いけど今の奴は落とすからな。落とすときはそれなりにやったフリをしなきゃならねえんだよ」
千砂都「え!? 断っちゃうんですか? バイトでも後輩ができるかもって期待したのに。……それに誰でもいいんじゃありませんでしたっけ」
店長「誰でもいいにも二種類あるんだよ。本当に誰でもいいのと、よくないのが」
千砂都「んん? 誰でもよくない? じゃあ、私のときとの違いは何ですか?」
店長「顔見て一言話せば、そいつとやっていけるかはわかるからな。さっきの奴は、そうじゃなかったってことだ」
千砂都「ふーん、そういうものですか。……あ、じゃあ私とは上手くやっていけそうって思ったってことですか? へー、そうですか、へー」
店長「あのときは人手が足りなくて、本当に誰でもよかったからな」
千砂都「もう、何ですかそれ」
店長「……でも、合ってただろ?」
千砂都「……えへへ、そうでしょうそうでしょう。……でも、私も卒業ですし、いつまで続けられるかわかりませんよ。後継者は考えておいた方がいいと思いますけど」
店長「そうだな。ま、考えとくよ」
店長「何だ、まだいたのか」
千砂都「だって私のときは、挨拶だけで『明日から来い』って感じだったじゃありませんか。あんな風にちゃんと面接してもらってないなーって」
店長「……うーん、ま、言ってもいいか。悪いけど今の奴は落とすからな。落とすときはそれなりにやったフリをしなきゃならねえんだよ」
千砂都「え!? 断っちゃうんですか? バイトでも後輩ができるかもって期待したのに。……それに誰でもいいんじゃありませんでしたっけ」
店長「誰でもいいにも二種類あるんだよ。本当に誰でもいいのと、よくないのが」
千砂都「んん? 誰でもよくない? じゃあ、私のときとの違いは何ですか?」
店長「顔見て一言話せば、そいつとやっていけるかはわかるからな。さっきの奴は、そうじゃなかったってことだ」
千砂都「ふーん、そういうものですか。……あ、じゃあ私とは上手くやっていけそうって思ったってことですか? へー、そうですか、へー」
店長「あのときは人手が足りなくて、本当に誰でもよかったからな」
千砂都「もう、何ですかそれ」
店長「……でも、合ってただろ?」
千砂都「……えへへ、そうでしょうそうでしょう。……でも、私も卒業ですし、いつまで続けられるかわかりませんよ。後継者は考えておいた方がいいと思いますけど」
店長「そうだな。ま、考えとくよ」
0
40: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 18:34:43 ID:???00
千砂都「こんにちはー。あれ、バイト募集の紙はがしちゃったんですか? もしかして、誰か決まったりして?」
店長「……いや、今回は全員落としたからな。でもな、自分が落とされたあとも募集が続いてたらいい気はしねえだろ?」
千砂都「なるほど? そう言われると、他にいい人がいたわけでも、人手不足が解消したわけでもないのに断られたのか、とは思うかも?」
店長「ま、そこまで気にしてやる必要はないんだが、一応客商売なんでな」
千砂都「……店長って意外に色々考えてますよね」
店長「意外は余計だ」
千砂都「そうかなー。……でも、バイト募集はどうするんですか?」
店長「そのうちほとぼりが覚めたらまた張り出すさ」
千砂都「そっかー、……じゃあやっぱりしばらくは二人ですね」
店長「嵐が辞めるまでは、多分追加されないだろうな」
千砂都「仕方がない、もうちょっと私が店長の面倒を見てあげますか!」
店長「おう。じゃ、今日もよろしく頼むぜ」
千砂都「はーい、いってらっしゃーい」
千砂都(二人だけど、仕事中は一人なんだよなあ……)
店長「……いや、今回は全員落としたからな。でもな、自分が落とされたあとも募集が続いてたらいい気はしねえだろ?」
千砂都「なるほど? そう言われると、他にいい人がいたわけでも、人手不足が解消したわけでもないのに断られたのか、とは思うかも?」
店長「ま、そこまで気にしてやる必要はないんだが、一応客商売なんでな」
千砂都「……店長って意外に色々考えてますよね」
店長「意外は余計だ」
千砂都「そうかなー。……でも、バイト募集はどうするんですか?」
店長「そのうちほとぼりが覚めたらまた張り出すさ」
千砂都「そっかー、……じゃあやっぱりしばらくは二人ですね」
店長「嵐が辞めるまでは、多分追加されないだろうな」
千砂都「仕方がない、もうちょっと私が店長の面倒を見てあげますか!」
店長「おう。じゃ、今日もよろしく頼むぜ」
千砂都「はーい、いってらっしゃーい」
千砂都(二人だけど、仕事中は一人なんだよなあ……)
0
41: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:05:56 ID:???00
千砂都「あの、店長……」
店長「ん? 何だ?」
千砂都「その、……私、卒業したらダンサーになりたいと思っていて、そのオーディションが年明けにあるんです」
店長「ああ」
千砂都「それに、ラブライブ!、スクールアイドルの大会も勝ち進めれば一月で……。だから、そっちに集中したいから、バイトは、……年内で辞めさせてもらいたいです」
店長「……そうか、わかった」
千砂都「……でも、バイトは辞めても、お客さんとしては来るので! それに、ラブライブ!の決勝大会は見に来てくれるって約束ですよね」
店長「空いてれば、な」
千砂都「空いてますよ! 一年前から確保してたんですから。来なかったら怒りますからね!」
店長「善処する」
千砂都「善処じゃ困ります~。……絶対ですよ」
店長「……ああ、楽しみにしてるよ」
千砂都「……よーし、頑張ろうっと。これで予選で負けちゃったら意味ないですもんね」
店長「ん? 何だ?」
千砂都「その、……私、卒業したらダンサーになりたいと思っていて、そのオーディションが年明けにあるんです」
店長「ああ」
千砂都「それに、ラブライブ!、スクールアイドルの大会も勝ち進めれば一月で……。だから、そっちに集中したいから、バイトは、……年内で辞めさせてもらいたいです」
店長「……そうか、わかった」
千砂都「……でも、バイトは辞めても、お客さんとしては来るので! それに、ラブライブ!の決勝大会は見に来てくれるって約束ですよね」
店長「空いてれば、な」
千砂都「空いてますよ! 一年前から確保してたんですから。来なかったら怒りますからね!」
店長「善処する」
千砂都「善処じゃ困ります~。……絶対ですよ」
店長「……ああ、楽しみにしてるよ」
千砂都「……よーし、頑張ろうっと。これで予選で負けちゃったら意味ないですもんね」
0
42: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:10:24 ID:???00
千砂都(今日は最後のバイト。三年間、長いようで短かったな)
千砂都「お疲れ様です」
店長「よし、来たな。じゃ、よろしく」
千砂都「はい」
千砂都(むう、最後だっていうのにこの人は)
千砂都(でも、やっぱり寂しいな。このエプロンの染みも、私が落として凹ませた調味料入れも、お願いして買ってもらった私専用のピックも、今日でお別れ)
千砂都(……ああ、駄目だ駄目だ。こんな湿っぽくなっちゃって)
千砂都「……よし、……いらっしゃいませ! 何にしますか?」
千砂都「お疲れ様です」
店長「よし、来たな。じゃ、よろしく」
千砂都「はい」
千砂都(むう、最後だっていうのにこの人は)
千砂都(でも、やっぱり寂しいな。このエプロンの染みも、私が落として凹ませた調味料入れも、お願いして買ってもらった私専用のピックも、今日でお別れ)
千砂都(……ああ、駄目だ駄目だ。こんな湿っぽくなっちゃって)
千砂都「……よし、……いらっしゃいませ! 何にしますか?」
0
43: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:12:54 ID:???00
店長「おう、お疲れ」
千砂都「あ、お帰りなさい、店長」
店長「……嵐、五分時間あるか?」
千砂都「え、は、はい」
店長「よし、餞別にサービスしてやるよ。六個入りだけどな」
千砂都「やった! 一応最後だって覚えてたんですね。でも、十個入りがいいなー」
店長「この時間からそんなに食べんなよ。それに、中央の六個が一番均一に焼けるからな」
千砂都「えー、じゃあ六個入りで我慢してあげます」
千砂都(……おお、私も三年近くやって、それなりに上手くできるようになったつもりだけど、やっぱり店長には敵わないな)
千砂都(動きに無駄がなくて、ずっと見ていられそう)
千砂都「あ、お帰りなさい、店長」
店長「……嵐、五分時間あるか?」
千砂都「え、は、はい」
店長「よし、餞別にサービスしてやるよ。六個入りだけどな」
千砂都「やった! 一応最後だって覚えてたんですね。でも、十個入りがいいなー」
店長「この時間からそんなに食べんなよ。それに、中央の六個が一番均一に焼けるからな」
千砂都「えー、じゃあ六個入りで我慢してあげます」
千砂都(……おお、私も三年近くやって、それなりに上手くできるようになったつもりだけど、やっぱり店長には敵わないな)
千砂都(動きに無駄がなくて、ずっと見ていられそう)
0
44: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:17:35 ID:???00
店長「……よし、これが最後の一皿だ。よく味わえよ」
千砂都「ありがとうございます。でも、これからも、おかしなことしてないかお客さんとして見張りにきますからね!」
店長「……そうか、じゃ、あとはやっとくから、これで帰っていいぞ」
千砂都「……」
千砂都「店長、その、私……」
店長「ん?」
千砂都「あの、……クローズ作業、手伝ってもいいですか?」
店長「冷めるぞ」
千砂都「冷めてもおいしいからいいんです! ……でも、じゃあ食べてから。……熱っ! はふはふ、……やっぱり、おいしい」
店長「早く食え」
千砂都「こんな熱っふいのむりへふよ~」
千砂都「ありがとうございます。でも、これからも、おかしなことしてないかお客さんとして見張りにきますからね!」
店長「……そうか、じゃ、あとはやっとくから、これで帰っていいぞ」
千砂都「……」
千砂都「店長、その、私……」
店長「ん?」
千砂都「あの、……クローズ作業、手伝ってもいいですか?」
店長「冷めるぞ」
千砂都「冷めてもおいしいからいいんです! ……でも、じゃあ食べてから。……熱っ! はふはふ、……やっぱり、おいしい」
店長「早く食え」
千砂都「こんな熱っふいのむりへふよ~」
0
45: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:22:53 ID:???00
千砂都「ふう、……ごちそうさまでした。おいしかったです」
店長「……じゃ、鉄板と調理台の掃除頼む」
千砂都「……えへへ、初めてですね、一緒に働くの。もっと早くこうすればよかったな」
店長「狭いから動き回んな」
千砂都「店長こそ、もうちょっとそっちに寄ってください」
店長「金勘定はここでしかできねえだろうが」
千砂都「鉄板掃除だってここでしかできませーん」
店長「ったく……」
千砂都「あははは」
店長「……じゃ、鉄板と調理台の掃除頼む」
千砂都「……えへへ、初めてですね、一緒に働くの。もっと早くこうすればよかったな」
店長「狭いから動き回んな」
千砂都「店長こそ、もうちょっとそっちに寄ってください」
店長「金勘定はここでしかできねえだろうが」
千砂都「鉄板掃除だってここでしかできませーん」
店長「ったく……」
千砂都「あははは」
0
46: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 20:32:05 ID:???00
店長「……よし、これで店仕舞いだな」
千砂都「お疲れ様でした」
千砂都「……」
店長「何だ」
千砂都「あの、……最初は何だこのいい加減な店はって思いました。店長もちょっと怖かったし」
千砂都「でも、やっていくうちに、だんだん楽しくなってきて、店長にも色々教えてもらったり、相談に乗ってもらったりして、……そのうちに、私にとってこのお店は、家とも学校とも違う、大好きな場所になりました」
千砂都「だから! ……その、 ……ありがとうございました!」
店長「ふん、そんな大したもんじゃねえよ。……ああ、そうだ、こいつを持っていきな」
千砂都「私のピック……。一応店の備品なのに、いいんですか?」
店長「この店にはもう必要ねえからな」
千砂都「ありがとうございます。……嬉しい」
店長「……気張れよ、新米ダンサー」
千砂都「……! はい! お世話に、……お世話に、……なりました」
千砂都「お疲れ様でした」
千砂都「……」
店長「何だ」
千砂都「あの、……最初は何だこのいい加減な店はって思いました。店長もちょっと怖かったし」
千砂都「でも、やっていくうちに、だんだん楽しくなってきて、店長にも色々教えてもらったり、相談に乗ってもらったりして、……そのうちに、私にとってこのお店は、家とも学校とも違う、大好きな場所になりました」
千砂都「だから! ……その、 ……ありがとうございました!」
店長「ふん、そんな大したもんじゃねえよ。……ああ、そうだ、こいつを持っていきな」
千砂都「私のピック……。一応店の備品なのに、いいんですか?」
店長「この店にはもう必要ねえからな」
千砂都「ありがとうございます。……嬉しい」
店長「……気張れよ、新米ダンサー」
千砂都「……! はい! お世話に、……お世話に、……なりました」
0
47: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 21:02:14 ID:???00
千砂都(今年も決勝に行ける! 店長に、東京大会突破の報告しに行かなきゃ。……これで、ようやくスクールアイドルやってる私を見てもらえる!)
千砂都(それにしても、つい最近まで働いていたところにお客さんとしていくのは、何だか変な感じがするな)
千砂都(卒業後に学校祭に遊びに行くときなんかも、こんな感じなのかな)
千砂都「あれ、……キッチンカーがいない」
千砂都(イベントか何かかな。せっかく一番に知らせに来たのになー)
千砂都(……仕方がない、明日また来よう)
千砂都(それにしても、つい最近まで働いていたところにお客さんとしていくのは、何だか変な感じがするな)
千砂都(卒業後に学校祭に遊びに行くときなんかも、こんな感じなのかな)
千砂都「あれ、……キッチンカーがいない」
千砂都(イベントか何かかな。せっかく一番に知らせに来たのになー)
千砂都(……仕方がない、明日また来よう)
0
48: ◆WFwlpZe3★ 2025/03/15(土) 21:03:03 ID:???00
千砂都(でも、それからもずっと、見慣れたキッチンカーがいつもの場所に現れることはなかった)
千砂都(店長ともそれっきり連絡がつかなくなった。店長の言葉を信じるなら、経営状況は悪くなかったはず。でも、だからこそ、黙って姿を消した、その真意はわからないまま)
千砂都(だからかな。あの決勝大会のときから、ダンサーになった今でも、スポットライトのまばゆい光の向こう側に、いつも私は店長の姿を探してしまう)
千砂都(……あの人は、今どこで何をしているんだろう)
千砂都(私はダンサーの卵として頑張っている。だけど、やっぱり楽しいことばかりじゃなくて、挫けそうになるときだってある。でも、そんなとき、いつかの店長の言葉が聞こえるような気がして、歯を食いしばって、踏み止まれるんだ)
(黙ってりゃ毎年やってくるようなもんにサービスしてやるほど優しくないんでね)
(……気張れよ、新米ダンサー)
千砂都(それでこうやってやる気になるのも、あの人の掌の上で転がされている気がするけど、でも、乗ってやるか!)
千砂都(どこかで見てるかもしれないなんて思うのはもうやめだ。見てろ、すぐに一端の、ううん、一流のダンサーになって、NHKニュースにだって出てみせる)
千砂都(そして言ってやるんだ、好きな食べ物は、店長のたこ焼きだって!)
おわり
千砂都(店長ともそれっきり連絡がつかなくなった。店長の言葉を信じるなら、経営状況は悪くなかったはず。でも、だからこそ、黙って姿を消した、その真意はわからないまま)
千砂都(だからかな。あの決勝大会のときから、ダンサーになった今でも、スポットライトのまばゆい光の向こう側に、いつも私は店長の姿を探してしまう)
千砂都(……あの人は、今どこで何をしているんだろう)
千砂都(私はダンサーの卵として頑張っている。だけど、やっぱり楽しいことばかりじゃなくて、挫けそうになるときだってある。でも、そんなとき、いつかの店長の言葉が聞こえるような気がして、歯を食いしばって、踏み止まれるんだ)
(黙ってりゃ毎年やってくるようなもんにサービスしてやるほど優しくないんでね)
(……気張れよ、新米ダンサー)
千砂都(それでこうやってやる気になるのも、あの人の掌の上で転がされている気がするけど、でも、乗ってやるか!)
千砂都(どこかで見てるかもしれないなんて思うのはもうやめだ。見てろ、すぐに一端の、ううん、一流のダンサーになって、NHKニュースにだって出てみせる)
千砂都(そして言ってやるんだ、好きな食べ物は、店長のたこ焼きだって!)
おわり
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1741523849/