璃奈「重ねてきたら」愛「ここにいたの」【中編SS】

SS


1: 2020/12/26(土) 00:57:23.55 ID:n3BFmshm
りな「なんで!?やだっ!!!」

母「ごめんね……お父さんもその日はちゃんと休める予定だったんだけど……」

りな「うそつき!!!!」

母「ほら…わがまま言わないで……来週は絶対みんなで行けるようにするから、ね?」

りな「もういかない!!!せんしゅうだっていけるっていってたのにあそびにいけなかったもん!!!おとうさんもおかあさんも!りなよりおしごとのほうがすきなんでしょ!?」

母「そんなことない!!お母さんもお父さんも璃奈ちゃんが一番大切で……」

りな「もういい!!」

2: 2020/12/26(土) 00:58:41.59 ID:n3BFmshm
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りな「♪」ニコニコ

母「璃奈ちゃん、次は何乗りたい?」

りな「えっとね……あ!あれ!」

母「あれは……身長制限とか大丈夫?」

父「璃奈はちっちゃいからなぁ、ダメって言われるかも」

りな「え〜?」

母「ふふっ、もし乗れなくても、璃奈ちゃんが大きくなったらまた来ればいいんだから、がっかりしないで?」

りな「うんっ!」

りな「あ!じゃああれ!!あれはのれる?」

母「どうかしら?行ってみましょ!」

りな「うん!」

3: 2020/12/26(土) 00:59:16.12 ID:n3BFmshm
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母「………」

母「ほら、帰るわよ?」

りな「………やっ……」

母「もう……わがまま言わないの」

りな「やだっ!!」

母「困ったわね……」

りな「……じゃあつぎ、つぎはいつこれる?」

父「はは、もう次の話か……」

母「大丈夫、またすぐに来られるわよ」

りな「……すぐって……いつ……」

母「疲れて眠いんでしょ?ほら、おいで?」

りな「……ん……」

母「よい……しょっ……ふふっ、まったくしょうがないんだから」

りな「……すぅ……すぅ……」

母「また、来ましょうね」

父「ああ」

4: 2020/12/26(土) 00:59:55.65 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
祖母「はいお待たせ、今日は炒飯だよ」

あい「ありがとーおばーちゃん!」

あい「いっただっきまーす!」

あい「♪」モグモグモグ
 
祖母「お香香食べるかい?」

あい「きゅーり?」

祖母「たくあん」

あい「たべるぅ!」

祖母「少し待ってねぇ」

あい「ん〜♪」モグモグ

5: 2020/12/26(土) 01:01:07.21 ID:n3BFmshm
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祖母「じゃあ、ばあちゃんここで座ってるから、遊び終わったら戻っといで」

あい「うん!わかった!」

「あ!あいちゃーん!おにごっこしよー!」

あい「いいよー!……あれ?……ちょっと待っててー!」
 
 
 
 
「……………」

あい「こんちは!!」

「わっ!?びっくりした……こんにちは」ニコッ

あい「いっしょにおにごっこしよーよ!」

「……ごめんね、私、うんどうするとすぐつかれちゃうの。だから……」

あい「そっかー」

あい「じゃあ、あいもやすむ!」

「え?みんなとあそぶんでしょ?いってきなよ」

あい「いーの!きょうはおねーちゃんとおしゃべりする!」

「あはは、うん、いいよ」

「……あいちゃんっていうの?」

あい「え!?なんでわかるの!?」

「うーん……ふふ、ちょーのーりょく?(ほんとはじぶんでいってたんだけど)」

あい「すっごぉい!!そうだよ、みやしたあいっていうの!おねーちゃんは?」

「わたし?」

「みさとだよ」

6: 2020/12/26(土) 01:01:48.85 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「んしょ……んしょ……」

「そっちはできた?」

りな「ううん、もうちょっと」

「わあ!すごい!りなちゃんつくるのじょうず!」

りな「えへ、そうかな?」

「うん!」

りな「そっちもじょうずだよ!」

「でしょ?あははっ」
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「お迎え来たよ〜」

「あ、はーい!りなちゃんまたね!ばいばい!」

りな「うん!ばいばい」

りな「………」

りな「………」

りな「……よいしょ……」

7: 2020/12/26(土) 01:02:55.19 ID:n3BFmshm
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「おぉ、それはお城かな?」

りな「あっせんせー!」

「よくできてるね〜、あはは、手が砂だらけだ」

「暗くなってきたからそろそろ中入ろうか、手洗っておいで」

りな「はーい」
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「璃奈ちゃーん、お迎えきたよー」

りな「はーい!」

母「遅くなってごめんね」

りな「ううん!へーき」

母「いつもすみません……」

「いえいえ、お気になさらないでください」

りな「せんせーばいばーい!」

「はーいまた明日〜気をつけて帰ってね〜」

8: 2020/12/26(土) 01:04:11.77 ID:n3BFmshm
母「シートベルト締めた?」

りな「うん」

母「よし、じゃあ帰………」

りな「……?どうしたの?」

母「……」

母「今日は、夜ご飯、お店で食べて行こうか?」

りな「ほんと!?」

りな「あ!でもおとうさんは?」

母「……また遅くなるって」

りな「……そうなの……?」

母「うん……」

母「何か食べたいものある?」

りな「なんでもいいの?」

母「いいわよ〜」

りな「じゃあ、えっとね〜……」

母「ふふっ」

9: 2020/12/26(土) 01:05:38.25 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
あい「た〜りら〜りら〜♪」

祖母「なんか良いことでもあったかい?」

あい「うん!きょうはね、またおねーちゃんとあえるんだ!」

祖母「おねーちゃん?」

あい「そ!みさとおねーちゃん!」

祖母「みさと……っていうと川本さんとこの子かねぇ」

あい「おねーちゃんのことしってるの?」

祖母「ああ、あんまし見かけんかったけどねぇ……そうかい、あの子も出歩いても良いようになったんかねぇ……?」

あい「?」

祖母「愛ちゃん、その子と仲良くしてあげなね」

あい「うんっ!」

10: 2020/12/26(土) 01:07:13.53 ID:n3BFmshm
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あい「おねーちゃぁん!!」

みさと「あ!あいちゃん」

あい「きょうはなにする?」

みさと「そうだなー、あいちゃんはなにしたい?」

あい「ブランコ!……あっ、でもおねーちゃんは……」

みさと「だいじょーぶ!いこ!おしてあげる!」

あい「ほんと!?」




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みさと「それっ!」

あい「やっほー!」

みさと「よいしょっ!」

あい「ふー!」

みさと「よっ!」

あい「あははは!」

11: 2020/12/26(土) 01:08:45.60 ID:n3BFmshm
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みさと「………はぁ……はっ………ちょっと……っ…きゅうけい………」

あい「おねーちゃん?わ!?すごいあせ!!だいじょーぶ!?」

みさと「だいじょうぶ、だいじょうぶ……はぁ……」

あい「おねーちゃん………」

13: 2020/12/26(土) 01:10:51.13 ID:n3BFmshm
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あい「おねーえちゃん!おじゃましまーす」

みさと「あ……あいちゃん………いらっしゃ…こほっこほっ」

あい「おねーちゃん!うごいたらだめっ!」

みさと「へいきへいき……」

あい「でも……」

みさと「………」

みさと「あいちゃん、ごめんね。あそんであげられなくて……」

あい「んーん、いいよ」

みさと「………」

みさと「……私ね、がっこうだとぜんぜんうんどうさせてもらえないの……」

あい「……そう、なんだ……」

みさと「……たいいくもずっとけんがくだし、かえっても家にいなさいっていわれるし……」

みさと「だから前みたいに、たまにこっそり家からでてきちゃうの」

みさと「でもお母さんにみつかっちゃったから、もうまえみたいにおそとであそべないかも」 

みさと「ごめんね……」

あい「………」

みさと「……せっかくあいちゃんがあそんでくれるのに……やっぱりうんどうしないほうがいいのかな……」

みさと「もっといろんなことしたいのに……」

あい「…………」

15: 2020/12/26(土) 01:13:15.09 ID:n3BFmshm
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あい「………」

祖母「どうしたんだい?………美里ちゃんのこと?」

あい「!」

あい「なんでわかるの?」

祖母「愛ちゃんのことならなんでもわかるさ」

祖母「話してみな。ばあちゃんが聞いたげる」

あい「………」

あい「あのね、おねーちゃんがね……」
 
 
 
 
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祖母「そうかい……」

あい「……おばーちゃんはどうすればいいとおもう?」

祖母「愛ちゃんは、どうしたい?」

あい「……おねーちゃんが……おねーちゃんがたのしいっておもえること、いっぱいさせてあげたい」

あい「でも……でも……あいはなんにもしてあげられないの……」ポロポロ

祖母「そんなことないさ。愛ちゃんにもできることがきっとある」

あい「ほんと……?」

祖母「おねーちゃんが今はまだできなくても、代わりに愛ちゃんができることはある」

あい「かわりに?」

祖母「そうさ、そこから先は愛ちゃんが自分で考えな。よーく考えるんだよ、そうすれば、未知なる道がきっと開ける。みちだけに、ね」

あい「??」

祖母「ははっ、愛ちゃんには今度ダジャレを教えようかね」

あい「だじゃれ??」

祖母「ばあちゃんがボケないようにやってる頭の体操さ」

16: 2020/12/26(土) 01:14:48.36 ID:n3BFmshm
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あい「……おねーちゃんのために……あいができること……」
 
 
 
 
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あい「あのねあのね!」

みさと「どーしたの?」

あい「あい、おねーちゃんのためにがんばるよ!」

みさと「私の、ために?」

あい「おねーちゃんは、いまはすぐつかれちゃうかもだけど、ぜったいいろんなことできるようになる!!」

あい「それまであいがかわりにいろんなことして、あれはたのしかったー、あれはおもしろかったー、あれはあんまりだったー、っておしえてあげる!」

あい「そしたら、おねーちゃんはたのしいことだけいっぱいできるよ!」

みさと「あいちゃん……」

みさと「うん!わかった、いっぱい聞かせてね」

17: 2020/12/26(土) 01:17:19.45 ID:n3BFmshm
あい「やくそくね!」

みさと「うん!あ、じゃあ、指切りしよ?」

あい「ゆびきり?」

みさと「うん、ほら、こうやって……」

あい「………」

みさと「?愛ちゃん?」

あい「ゆび、いっぽんだけ?」

みさと「え?」

あい「ぜんぶ、ゆび、5ほんとも、ぜんぶくっつけよっ?そしたら、そしたらね、やくそく、ぜったいわすれないからっ!」

みさと「うーん、じゃあ、こうしない?」スッ…

みさと「ほら」

あい「……あっ!ハイタッチ!」

あい「えへへっ!」

みさと「ふふっ♪」
 
 
 
パチンッ♪






それから、おねーちゃんにはいろんな話をしたんだ
おばーちゃんが作ってくれた料理のこと、新しくできた友達のこと、道端に咲いてた綺麗な花のこと………
おねーちゃんはいつも、アタシの話を嬉しそうに聞いてくれるんだ

18: 2020/12/26(土) 01:19:34.12 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
prrr! prrr!
 
 
父「はいもしもし」

りな『おとうさん!』

父「おお!璃〜奈〜!」

りな『げんき?』

父「おっ、元気だよ」

父「電話掛けられるなんてすごいなぁ」

りな『お母さんにやってもらった』

父「そっか」

父「そっちは今何時だっけ?」

りな『なんじ?』

りな『──うん』

りな『よるの10じだって、おとうさんは?』

父「こっち?あー、8時、昨日の朝かな」

りな『きのうにいるの?』

父「そうだよー、遠くにいると時計がずれるんだ」

りな『へんなの〜』

父「あはは」

父「それで?今日はどうした?璃奈〜?」

りな『えっと、あのね』

父「?」

りな『こんどのね、にちよう、かえってくる?』

父「!」

父「……あー………そっか、今週だったね。水族館」

りな『うん………』

19: 2020/12/26(土) 01:21:40.37 ID:n3BFmshm
父「………」

父「ごめん!!璃奈!」

父「帰れないかもしれない」

りな『………』

りな『ん、わかった……』

父「ごめんな」

りな『ううん、いいよ!がまんする!』

りな『あ!まえにおくってくれたチョコ、またたべたい』

父「チョコか、わかった!また送るよ」

りな『……じゃあ、ね。おしごと、がんばってね』

父「うん、ありがとう。おやすみ」

20: 2020/12/26(土) 01:25:24.19 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
祖母「ほれ、じっとしてな、気をつけだよ」

愛「………」ピシッ

祖母「………」カキカキ

祖母「ほい、できた」

愛「これなーに?はしらにらくがきしちゃぁだめなんだよ?」

祖母「らくがきじゃないよ、これは愛ちゃんの成長記録さ」

愛「せーちょーきろく?」

祖母「そうさ?ここに毎年愛ちゃんの身長を書き込んで、愛ちゃんの背がどれくらい伸びたか一目でわかるようにするんだよ」

愛「へー!おもしろそー!」

祖母「ふふふ、今後が楽しみだねぇ」

愛「えへへ、おねーちゃんにおいつけるかな?」

祖母「そのためには、いっぱい食べていっぱい寝なきゃだね」

愛「はーい!」

愛「もーっとおっきくなって、そしたらおねーちゃんとおんなじクラスになるの♪」

祖母「………美里ちゃんは今年から中学じゃなかったかい?」

愛「…………えっ………?」

愛「………」

愛「………」

愛「………」

愛「……やぁ…だぁぁ………!」

祖母「……ほらほら、もう小学生になったんだから、泣かない泣かない」

愛「っ……ぐすっ……」

21: 2020/12/26(土) 01:28:23.43 ID:n3BFmshm
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──

 
 
 
 
美里「……」パチパチ…パチ

愛「それなーに?」

美里「え?ああ、そろばんだよ」

愛「そろばん?」

美里「えっと、ものをかぞえるのに使うどうぐ、かな」

美里「やってみる?」

愛「うん!」
 
 
 
 

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愛「………」

愛「わかんなぁい……」

美里「こっちのひとつある方が『5』で」

愛「わかんないもぉん……うぇぇん……」

美里「……あぁ……よしよし、まだ早かったかな」

美里「ゆっくり覚えればいいからね」

愛「……っ……」グスン…

22: 2020/12/26(土) 01:30:43.44 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
りな「おかーさーん、これなに?」

母「ああそれね、お父さんから璃奈ちゃんに入学祝いのプレゼント、って」

母「まったく……パソコンなんてまだ使えないのに……ね?」

りな「これで、なにするの?」

母「たしか、いくつかゲームソフトを入れてあるって言ってたような」

りな「ゲーム!?」

りな「やるっ!」ムンッ

母「ふふっ、そう?じゃあ今度お父さんにやり方聞いとくね」

りな「うん!」

23: 2020/12/26(土) 01:34:50.02 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
祖母「……ひどい嵐だねぇ」

あい「いてきまーす!」

祖母「!」

祖母「これ愛ちゃん、どこ行くの」

あい「おねーちゃんのところ!」

祖母「こんな天気で外へ出たらいけないよ、戻っといで」

あい「えー?やだ!」
 
 
ゴロゴロゴロ………ピシャーン!!
 
 
あい「わっ!!」

祖母「ほら、雷様も怒っとる」

あい「こっ、こわくないもん!いくもん!おねーちゃんまってるもん!!」

あい「………きのう……たんじょーびだったのに………おとーさんもおかーさんもおみせのことばっかりだったから……」

祖母「……!」

あい「でもきょうは、おねーちゃんがおいわいしてくれるっていった!だからいくのっ!!」

祖母「って言ってもねぇ……」

あい「いーくーのーーっ!!!」

祖母「……どうしたもんかねぇ……」

祖母「……ああ、そうだ、愛ちゃん」

祖母「どうしても行くんなら、その前に少し、ばあちゃんの昔話を聞いとくれよ」

あい「……?」

25: 2020/12/26(土) 01:38:39.27 ID:n3BFmshm
祖母「おばあちゃんが子どもんときの話だけんどね……」

祖母「近くに住んでた子が、山ん中に秘密基地を作っててねぇ、いっつもそこで遊んどったんだよ」

愛「……」

祖母「……それで、雨も風も強い、ちょうど今日みたいな嵐の日、」

祖母「その子は秘密基地のことが心配で、様子を見に親に黙って1人で山に行ったんだ」

祖母「そのあとすぐ、その子の親が気付いて、その子を探しに出て、それを知った大人たちもみんなで探したんだけど、どこにもいない」

あい「………」

祖母「みんなで山中探してもなかなか見つからなかった。でも嵐が少し落ち着いてきたとき、その子がひょっこり帰ってきたんだよ」

祖母「親がその子に、どこにいってたのかって聞いてみたら……」

祖母「『雷様に見つかって、雲の上に連れて行かれた』と言うんだよ」

あい「……!!」

祖母「そこで雷様は、『儂が見ているところでひとりで出歩くような悪い子は……こうだっ!!』と言って、」

祖母「その子のおへそをとっちまったって言うんだよ……!」

あい「……っ!!………ぅ……」プルプル

祖母「そんで、その子の親が本当かどうかその子のお腹を見てみたら………」

あい「……」ゴクリッ…

祖母「……本当におへそがなくなっちまってたんだよ……!!」

あい「ひゃ………っ!!」

あい「………」

祖母「愛ちゃんはどうかねぇ……」

あい「!!!」

あい「ゃぁ………!」ブワッ

あい「うえぇぇおばぁぁちゃぁ……!!!」ウルウル

祖母「おお、よしよし、今日は家でばあちゃんと2回目のお祝いをしよう、ね?」

祖母「おねえちゃんのところへは、また今度行こう」

あい「……っ……ぐすっ………ぅん……」

26: 2020/12/26(土) 01:43:28.85 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「おなじクラスだったねー!」「しょーがっこうでもいっしょだね!」「よかった〜、おなじクラスにしってる子いて」「わたしも!」
 
 
璃奈「………」

璃奈「………」

「……ねーねー!」

璃奈「…!」

「だれといっしょのほいくえん?」

璃奈「だれともいっしょじゃないよ……みんな、はじめてあった」

「そっか!」

「あっちでみんなでおはなししてるの、いこ!」   「おーい!」フリフリ

璃奈「!」

璃奈「うんっ!」

27: 2020/12/26(土) 01:47:19.02 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 
 
「璃〜奈ちゃん!休みじかんなにする?」

璃奈「としょしつ行こうかな」

「じゃあ私も行く〜」

「あ!じゃあ私も」

璃奈「いいよ!行こっ!」

「なんかかりる?」

「うーん…」

「マンガとか入れてくれないかなぁ、そしたらかりてくのに」

璃奈「どんなマンガよむの?」

「え?えーっとぉ……たとえば……ほら、さいきん、はやってるやつ!」

璃奈「ああ、あれ?」

「そうそれ!」

「……え、どれ………」

「あれはあれだよ!ね?」

璃奈「うんっ」

璃奈「ふふふっ」

28: 2020/12/26(土) 01:50:55.81 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 

母「璃奈ちゃん、あのね」

母「お母さん、これから少しお仕事が忙しくなっちゃうかもしれなくて……」

璃奈「……そうなの?」

母「ええ、だから……璃奈ちゃんをお家でひとりにさせちゃうことも、これから増えると思うの……」

璃奈「………」

母「ごめんね……」

璃奈「………」

璃奈「ううん、だいじょうぶだよ。もう7才だもん」

璃奈「ひとりでおるすばんできるよ!」

母「璃奈ちゃんは本当にいい子ね……」ナデナデ

璃奈「えへへ」

璃奈「お母さんもがんばってね!」

母「!!」

母「そうね!頑張るわ!!」

29: 2020/12/26(土) 01:54:12.47 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「ねーねー」

愛「ゆうえんちはー?」

母「おばあちゃんは?連れてって貰えば良いじゃない」

愛「まえいったけど、おばーちゃんあんまりビューッてなるやつのれなかったもん」

愛「つまんなーい」

愛「おかーさんもーー、いーこーうーよー」

母「はいはい、そのうちね」ポンポン

愛「………」

愛「むぅぅ………」

30: 2020/12/26(土) 01:58:03.46 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「……」カチカチッ

璃奈「……んー……」カチッ

璃奈「あっ!」

璃奈「……む……このゲームむずかしい………」
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀

──────
────
──

⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
テレビ『───、────………!』


璃奈「………っ」

璃奈「……」パリポリモグモグ…
⠀ ⠀
⠀ ⠀
テレビ『───、────!!!!』
⠀ ⠀
⠀ ⠀
璃奈「わっ……」

31: 2020/12/26(土) 02:01:22.64 ID:n3BFmshm
──────
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──

 
 
 
 
「昨日のさ〜」

「テレビ?みたみた!璃奈ちゃんは?」

璃奈「みたよ!」

「ちょー怖かったぁ〜」

「え〜そう?」

璃奈「びっくりはしたね」

「えー?怖かったよー?」

「え〜?」

「じゃあこの前のスペシャルのやつは?あのときの白目のやつが1番やばかったよね?」

「あのときのあんまり覚えてなーい」

「なんでよ!」

璃奈「ふっ、あははっ!」

32: 2020/12/26(土) 02:04:23.96 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「!!!」ドタドタドタ

愛「おばーちゃん!!!」

祖母「!」

祖母「どしたね、そんな急いで」

愛「おねーちゃんが!!タイヘンなの!!!びょーいんいったって!!にゅーいんだって!」

愛「どしよ……どぉしよぉ………!」

祖母「ほら落ち着いて、病院っていつものとこかい?」

愛「うん……」

祖母「じゃ、ばあちゃんと行こうか」

愛「うん……!」

33: 2020/12/26(土) 02:07:58.84 ID:n3BFmshm
祖母「あ、いたいた」
 
愛「おねーちゃん!!」

美里「あ、愛ちゃん、おばあちゃんもきてくれたんだ」

愛「おねーちゃんだいじょーぶなの!?いたい??!」

美里「へ?」

美里「……ああ」

美里「だいじょうぶだよ、なんともないよ」

愛「……ほんと?」

美里「うん、たまにこうやって、びょういんでしらべてもらうの」

美里「ほらみて、げんきだよ」ニコッ

祖母「良かったねぇ、なんともなくて」

愛「……」

愛「……うぅ」

美里「しんぱいしてきてくれたの?ありがとう愛ちゃん」

愛「……っ…よかった……」

愛「よかったぁ……っ…」ポロポロ

美里「ふふ、もう、なかないで?こっちおいで」

愛「………」

愛「………」トテトテトテ

愛「……おねーちゃん……」ギュッ…

美里「よしよし」ナデナデ

34: 2020/12/26(土) 02:12:20.66 ID:n3BFmshm
愛「………」

愛「おねーちゃん、つぎ、いつあそべる?」

美里「……うーん……」

愛「………」

美里「……らいしゅう?」

愛「………」

愛「やだぁ…!」ブワッ

美里「わわっ」

愛「やぁぁだぁ……やだやだぁ……」ウルウル

美里「もー、なかないのっ」

愛「だっ…てぇ………」

美里「ね、げんき出して?泣いちゃうからかなしくなっちゃうんだよ?」

美里「愛ちゃんが泣いてると、私もかなしくなっちゃう」

美里「おばあちゃんだって、しんぱいでかなしくなっちゃうよ?」

祖母「そうだねぇ……」

愛「!」

愛「………」

愛「………」

愛「………」

35: 2020/12/26(土) 02:15:49.03 ID:n3BFmshm
美里「………」コチョコチョコチョ

愛「あひひっ!ひひゃっ、やぁ!」

愛「もうっ!しんけんになやんでるのっ!」

美里「……ふっ、あははははっ」

愛「ねーえ!わらわないの!」

美里「ふふふ、ごめんね」

美里「でも、泣いてるよりおこってる顔のがいいかな」

愛「そーなの?」

美里「うん。でもできればやっぱり笑っててくれるのがいちばん♪」

美里「愛ちゃんが笑っててくれれば、みんなげんきになれるもの」

愛「……げんき……?」

美里「うん。愛ちゃんがげんきで、それで、みんなで楽しくえがおですごせたら、それがいちばんなの」

美里「だから愛ちゃんには笑っててほしいな」

愛「……あいがわらってたら、おねーちゃん、げんきでいられる?」

美里「うんっ」

愛「そっか!うん、わかった!もうなかない!」

愛「えへへ!♪」

美里「ふふっ」

美里「……」コチョコチョコチョ

愛「あひひひっひゃあぁっ」

愛「もうっ!もうっ!おねーちゃん!!」

祖母「ふふふ」

36: 2020/12/26(土) 02:18:47.42 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「またしゅっちょー?」

父「うん、今度は3ヶ月くらいかな」

璃奈「ことしもしゅっちょー多いの?きょねんも多かったね」

父「………ごめんな、先週末もどこにも連れて行けなかったのに、また……」

璃奈「ううん!お父さんと、あとお母さんも、おしごとがんばるから、私もがんばるの」

父「……そっか」

璃奈「おみやげ、楽しみにしてるね!」

父「お、いっぱい買ってくるよ」

璃奈「いつ行っちゃうの?」

父「明後日の朝には行くよ」

璃奈「そうなんだ」

璃奈「きをつけてね!」

父「うん、ありがとう」ナデナデ

37: 2020/12/26(土) 02:22:11.22 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 
 
テレビ『───?、────!!』


璃奈「あっ………おぉ!」

璃奈「〜♪」
 
 
 
 
──────
────
 
 
 
 
璃奈「……んーと……」
⠀ ⠀
璃奈「……アール、これだ」カチッ

璃奈「アイ、エヌ、エー」

璃奈「……んー……」カチッ

璃奈「!」

璃奈「……り、な……?」

璃奈「……できた?」

璃奈「(じょうずにパソコンつかえるようになったら、ほめてくれるかな……)」

璃奈「(がんばる!)」ムンッ

38: 2020/12/26(土) 02:26:11.33 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 
 
「璃~奈ちゃんっ!どうだった?」

璃奈「こくごがちょっとダメだったかな」

「みしてみして!」パッ

「あたしも!」

璃奈「あっ!」

「え〜ぜんぜんダメじゃないじゃん、あ!さんすう全部Aだ!Aいっぱいだぁ」

「すごーい!あたしなんかCついちゃった」

「帰ったらママに怒られる〜」

「あたしも〜……璃奈ちゃんはほめられるんだろーなー」

「いいなぁ〜」

璃奈「あはは……」

39: 2020/12/26(土) 02:31:24.02 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
テレビ『───、────!!』


璃奈「ふふっ…」

璃奈「………」
 
 
璃奈「…………」

璃奈「(おなか、すいた……)」
 
 
 
 
〈冷蔵庫にお弁当があるから温めて食べてね
お菓子も買ってあるから好きなの食べていいからね
あったかくしてちゃんとベッドでねてね
おやすみ、いつもごめんね〉
⠀ ⠀
⠀ ⠀


璃奈「………いただきます」

璃奈「………」パク 

璃奈「………」モグモグ

璃奈「………」

璃奈「(………今ごろみんなは、お父さんと、お母さんと、いっしょにごはん食べてるのかな)」パク 

璃奈「(……せいせきのこととか、怒られてるのかな、おしゃべりしてるのかな)」モグモグ

璃奈「(………お父さん……)」

璃奈「(………お母さん……)」

璃奈「………」ホロ...

璃奈「………」ポロポロ

璃奈「……っ……ひっ……っ、……ぅ」ポロポロ
 
 
『お父さんと、あとお母さんも、おしごとがんばるから、私もがんばるの』
 
 
璃奈「…」フキフキ

璃奈「……っ…がんばら……っ……なきゃ……」ポロポロ

44: 2020/12/26(土) 14:38:11.81 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「せーのっ!」

愛「「いーち!」」

愛「「にーのっ!」」

愛「「さんっ!」」グルッ
 
 
「「「「「「「1!」」」」」」」

「「「「「「「2!」」」」」」」

「「「「「「「3!」」」」」」」

「「「「「「「4!」」」」」」」

「「「「「「「5!」」」」」」」

「「「「「「「6!」」」」」」」

「「「「「「「な………」」」」」」」
 
 
「あー引っかかった……」

「だれだよ……」「またー?」

「さっきから10回もとべてないじゃん」
 
 
「………」
 
 
「2組なんか、この前80回とんだって」

「ゼッタイかてないじゃん」

「もううんどうかいまで1週間もないし、むりだね」
 
 
「(ごめんなさい………)」

45: 2020/12/26(土) 14:39:59.40 ID:n3BFmshm
愛「………」

愛「ごめーん!みんな!ちょっと回すのはやかったかも!」

愛「次もうすこしゆっくり回すね!」

愛「はいもう一回!せーのっ!」
 
 
 
 
──────
────
 
 
 
 
愛「ふぅ……おつかれー、つかれたね」

「あ、うん……」

「ごめんね、わたしのせいで……」

愛「?」

愛「だれのせいとかじゃないよ!」

愛「うんどーかい、だれかくる?」

「えっ?………お父さんとお母さんが……」

愛「……!」

愛「そっか!じゃあ良いとこみせなくちゃ!」

「……でも……」

「わたしうんどう苦手だし、体力ないし、むずかしいよ……」

愛「むずかしいからもえるんじゃん!!」

「!」

愛「あ、ねーねー、アタシととっくんしない?」

「とっくん?」

愛「うんっ!」

愛「本番まで、毎日なわとびするの!」

愛「アタシもいっしょにやるからさ」

「………」

「……わかった、やってみる」

愛「うんうんっ」

46: 2020/12/26(土) 14:40:24.89 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「今日の体育もまたリレーの練習だって」

「えー?また?」

「運動会近いからね〜、にしてもそろそろ飽きるよね〜」

「はぁ〜、私遅いからリレーとか出たくないんだけど」

「親にも見られたくないし」

「私もー」

「ねー」

璃奈「………」

「璃奈ちゃん?」

璃奈「えっ?、あ、うん、そうだね」

「どうかした?」

璃奈「……ううん、なんでもない」

47: 2020/12/26(土) 14:41:05.37 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
『次は徒競走です。出場する生徒は集合してください。』
 
 
 
愛「……ふぅーーっ……よしっ」

愛「……あっ!」

愛「おばーーちゃーーーん!!!」フリフリフリ
 
 
 
 
祖母「……♪」フリフリ
 
 
 
 
愛「………」

愛「(おばーちゃんだけ、か……)」

愛「………」

愛「っ!……だめだめっ」フルフル

愛「(おばーちゃんに良いとこみせなくっちゃ!!)」

48: 2020/12/26(土) 14:41:58.44 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
祖母「おつかれさまぁ、愛ちゃん」

祖母「ほら、たんと召し上がれ」

愛「わぁ!おにぎりいっぱい!」

愛「いっただっきまぁーす」

愛「ん〜〜〜、おいし」モチャモチャ

祖母「愛ちゃん、徒競走速かったねぇ」

愛「えへへ〜、そうでしょー?」

愛「あ、そうだ」

愛「午後の長なわ、ちゃんとみててねっ」

愛「ゼッタイゆーしょーするの!」

祖母「長縄?ああ、そういや最近ずっと友達と練習してたって話してたね」

祖母「愛ちゃんはたしか回す役だったね、頑張って」

愛「うん!」

49: 2020/12/26(土) 14:42:41.63 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 
 
愛『………97、98、99、100!』

愛『やったぁー!』

『はぁっ……はぁっ……』

愛『すごいじゃん!体力ついたね!』

『うん、ありがとう愛ちゃん』

愛『あ、でもちょっとだけいい?』

『うん?』

愛『長なわだとね、地面になわがつくとき、ちょっとなわがはねるんだ』

『うん』

愛『それでね、だからもう少しだけ高くとぶと引っかかりにくいと思うよ』

『そっか、うん、わかった』

愛『ふふ、もうちょっとで本番だね』

『そうだね』

『さいきん、愛ちゃんのおかげで、ちょっとだけ自信ついたの』

『ありがと!』

愛『えへへ、うんっ!』
 
 
 
 
 
愛「……よしっ!!!」

50: 2020/12/26(土) 14:44:42.19 ID:n3BFmshm
『──、──。制限時間は5分です。制限時間を過ぎても、跳んでいる途中なら引っかかるまで跳び続けることができます。』

『カウント係の人は、担当のクラスが跳び終わったら、本部まで報告に来てください。』
 
 
 
 
 
「それでは始めまーーす!」

「よーーーいっ」
 
 
パァンッッッ
 
 
 
 
愛「いくよー!」

愛「せーのっ!」

愛「「いーち!」」

愛「「にーのっ!」」

愛「「さんっ!」」グルッ
 
 
「「「「「「「1!」」」」」」」

「「「「「「「2!」」」」」」」

「「「「「「「3!」」」」」」」

「「「「「「「4!」」」」」」」

「「「「「「「5!」」」」」」」

「「「「「「「6!」」」」」」」

「「「「「「「な………」」」」」」」
 
 
愛「……ドンマイドンマイ!」

愛「次行くよー!」

51: 2020/12/26(土) 14:45:19.36 ID:n3BFmshm
「「「「「「「18!」」」」」」」

「「「「「「「19!」」」」」」」

「「「「「「「20!」」」」」」」

「「「「「「「21!」」」」」」」

「「「「「「「22!」」」」」」」

「「「「「「「23!」」」」」」」

「「「「「「「にじゅ………」」」」」」」
 
 
 
 
 
 
 
 
「「「「「「「6!」」」」」」」

「「「「「「「7!」」」」」」」

「「「「「「「8!」」」」」」」

「「「「「「「きゅ………」」」」」」」
 
 
 
 
 
 
 
 
「「「「「「「1!」」」」」」」

「「「「「「「2!」」」」」」」

「「「「「「「さ………」」」」」」」

愛「っ!」
 
 
「あっ………ごめんなさい……」

52: 2020/12/26(土) 14:45:49.91 ID:n3BFmshm
愛「……あ、……気」
 
 
「気にしないで」ポンッ

「!!」

「1人のせいじゃないよ」
「なんか、愛ちゃんと、れんしゅう?ずっとしてたでしょ?」
「昨日のクラスれんしゅうじゃ53回もとべたもん」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」

「……みんな……!」

「ばしょ交代する?そことびづらくない?」

「ううん、へいき!」
 
 
愛「……ふふっ!」

愛「そっち回すじゅんびできてるー?」

「いいよ〜!」

「あと多分次……ラストチャンス〜!」

愛「!!!」

愛「……!」チラッ

「……!」チラッ

愛「……!」コクッ

「……!」コクッ
 
 
愛「そんじゃあ……」

愛「いくよっ!みんな!!!」
 
 

「「「「「「「おーーー!!!!!」」」」」」」

53: 2020/12/26(土) 14:46:55.93 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
「……マジかぁ……」

「……ウソでしょ……」

「くやしーー……」

「おしかったぁ……」

「2位かぁーー……」

「まさか……ねぇ……?」

「うん……」

「………」

「………」

「………」

「1組に負けるとは……」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
愛「…………ぃぃぃぃい」

愛「やっっったぁぁあーーー!!!!」

「やったぁぁあーー!!」

「あははははっ!!」

「やっほぉぉおーー!!」
 
 
「やった!やったよ!愛ちゃん!」

愛「うん!うん!やったね!!」

愛「いぇーーいっ!」

「いぇーいっ!」
 
 
 
 パチンッ♪

54: 2020/12/26(土) 14:48:14.42 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
祖母「優勝おめでとう、愛ちゃん」

愛「うんっ!ありがと!」

愛「やっぱり、みんなとがんばっていっぱいうんどうするのって、」

愛「すっごくたのしいね!!」

祖母「ふふ、そうだねぇ」

祖母「そうだ、帰る前にお姉ちゃんのとこに寄ってくかい?話したいこともあるだろうし」

愛「!いくっ」

祖母「ああ、でも今日はもう暗くなるから、少しだけだね」

愛「えー」

祖母「ふふふ」

55: 2020/12/26(土) 14:49:50.05 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
『1時より午後の部が始まります。生徒の皆さんは10分前には入場門に集合するようにしてください。お昼ご飯をしっかり食べて、後半戦も赤組白組ともに全力で頑張りましょう!』
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
璃奈「………」

璃奈「………」パク 

璃奈「………」モグモグ

璃奈「………」

璃奈「………」パク 

璃奈「………」モグモグ

璃奈「………」

璃奈「………」パク 

璃奈「………」モグモグ

璃奈「(おいしい)」

璃奈「………」

璃奈「………」チラッ
 
 
 
 
 
 
「徒競走惜しかったねぇ」
「もうちょっとだったな」
「あーあ、あの子と一緒じゃなかったら1番取れたのにな」

56: 2020/12/26(土) 14:51:47.76 ID:n3BFmshm
「お母さんお弁当作りすぎ〜」
「おじいちゃんとおばあちゃん、おばさん達も来るんだから、これくらいなくちゃ」
「も〜呼びすぎだよ……」
 
 
 
 
「赤組大丈夫か?お前リレーのアンカーなんだろ?責任重大だな」
「うちのクラスははやい子多いしいけるでしょ」
 
 
 
 
「あんた玉入れの玉全然入ってなかったじゃないの」
「勝ったからいいのー、ねぇ水筒空になっちゃったから入れて?」
「はいはい」
 
 
 
 
「組体操ちゃんとみててね!!」
「1番上登るんでしょ、ちゃんと撮っとくわよ」
「怪我とか気をつけてよ?」
「だいじょぶだいじょぶ!」
 
 
 
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「………」パク 

璃奈「………」モグモグ
 
 
 
 
──────
────
──

57: 2020/12/26(土) 14:53:33.62 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「タッチ!はい次鬼ね!」

「はぁっ…はぁっ……あいちゃん足はやーい……」

愛「へへっ!」
 
 
 
 
愛「ふぅ……どっかにかくれてよーかな」

愛「ん?」
 
 
   
 
 
 
「………ぐすっ……」

愛「こんにちは!」

「………」

愛「どーしたの?」

「……おかぁしゃん……みちゅかんない……」

愛「まいご、かぁ……」

愛「よし!おねえちゃんといっしょにさがそっ!」

「………うん」

愛「よーし、じゃあしゅっぱ〜つ!」ギュッ

58: 2020/12/26(土) 14:55:38.14 ID:n3BFmshm
愛「こうえんの中で、はぐれちゃったの?」テクテク

「うん……」トコトコ

愛「ここ、よくくるの?」

「うん。ひろくてゆうぐいっぱいだから、たまにつぇてきてもらうの」

「まぇは、おとぉしゃんもいっしょだった」

愛「そっか」

愛「………いいな」

「?」

愛「どこまでお母さんといっしょだったかおぼえてる?」

「……おかぁしゃん、おといれいった」

「それで、おそとでまってたの。そしたらちょーちょさんがとんでたから」

愛「おいかけたの?」

「うん!はねがおっきくてね、きれーだった!」

愛「あはは……そっかそっかぁ」

愛「このこうえんのトイレなら、向こうのほうかな」

愛「いってみよー!」

「うんっ」

59: 2020/12/26(土) 14:57:44.05 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
愛「このへんかな〜……?」

「!!!おかあしゃん!!」

愛「いた?!」

「うん!あそこ!」

愛「そっか!よかった!!」

愛「ほら、もうだいじょうぶでしょ?」

「うん!あぃがとおねーちゃん!」

愛「どういたしまして♪じゃあねー!」

「ばいばーい!」
 
 
 
 
「おかーしゃん!」

「あっ!!………良かった………もう、どこ行ってたの?」

「ちょーちょさん!」

「蝶々?……もう、ダメじゃない……勝手にどっか行ったら」

60: 2020/12/26(土) 14:59:05.01 ID:n3BFmshm
「おねーちゃんがつぇてきてくえた!」

「おねーちゃーん」フリフリ

「お姉ちゃん?……あ」ペコッ


愛「!」ペコッ…


「もう、すっごく心配したのよ……?……でも良かった、無事で……」ナデナデ

「えへへ」
 
 
 
 
 
愛「………」

愛「………」

愛「………」


もし、アタシがいなくなったら、おかーさんは……しんぱいしてくれるかな

61: 2020/12/26(土) 15:00:44.25 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「どーせまた沖縄行くんでしょ?」

「へへーん!夏休みは沖縄っしょ!」

璃奈「去年も行ってたね」

「うん!ちゃんとお土産買ってくるから!」

「来年も沖縄か〜このカネモチめ〜」

「来年はねー、北海道!」

「ずるい〜あたしなんかそこら辺の温泉とかだし!」

「璃奈ちゃんも家族旅行どっか行くの?行くんでしょ?」

「えっ?」

「なに〜〜?璃奈ちゃんもか!」

璃奈「………」

「………璃奈ちゃん?」

璃奈「え?えっと、どうかな……あはは……」

「あーやーしーいー!」

璃奈「そんなこと……ないよ……」

62: 2020/12/26(土) 15:03:32.20 ID:n3BFmshm
──────
────
 
 
 
 
璃奈「……ただいま………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「……」
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
⠀ ⠀
エレベーターを降りてから通路を進み、玄関を開けると、電気がついたままの明るい空間が広がる。
⠀ ⠀
⠀ ⠀
私がいつ帰ってきても明るい家が迎えてくれるようにって、お父さんもお母さんも、電気を消さないでおいてくれるの。
⠀ ⠀
⠀ ⠀
2人の暖かい気持ちを映したような、優しい光。
⠀ ⠀
⠀ ⠀
なのに、
⠀ ⠀
⠀ ⠀
どうして、私はこの光を冷たく感じちゃうんだろう。
 
 
そしていつからか、自分の部屋の明かりだけ、
 
 
消えていることが多くなっていった。

63: 2020/12/26(土) 15:05:11.57 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「おわったー!しゅくだいおわりー!」

美里「え、もう終わったの?」

愛「うん!」

美里「ちょっと見せて」

愛「はいっ」

美里「………」

美里「……愛ちゃん、算数得意なんだ」

美里「すごいね!」

愛「えへへ!おねーちゃんがそろばん教えてくれたからね」

美里「ふふ、そっか♪」

美里「じゃあ愛ちゃんは将来理系かな?」

愛「……りけー?」

美里「うん」

愛「おねーちゃんは、あたしがりけーだとうれしい?」

美里「うーん、どうかな」

愛「うれしい?」

美里「うれしい、かな。頭よさそうだし」

愛「そっかー」

64: 2020/12/26(土) 15:07:06.93 ID:n3BFmshm
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「……」カタカタ

璃奈「……」

璃奈「……」カタカタ…カタッ…ターン

璃奈「……?」

璃奈「……」カタ…カタカタ

璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」カタカタッ

璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」カタカタ

璃奈「……」

璃奈「………はぁ………」ゴロン

璃奈「………」

璃奈「………」ポチポチ
 
 
 
 
──────

お母さん:今日も夜中まで帰れなくなっちゃったからカップ麺かなにか食べてて

お母さん:ごめんね

──────
 
 
 
 
璃奈「………」

65: 2020/12/26(土) 15:10:37.00 ID:n3BFmshm
──────
────
──

 
 
 
 
「え……そんなに……?」

「場合によっては、もっとかかるかもしれない」

「ねぇ……最近帰ってこない日も多くなってるし、少しは休んだら?」

「……それはお互い様だよ」

「……海外の研究なんて……海外に任せておけばいいじゃない……」

「そういう訳にはいかないよ。次の実証実験で僕の論文が使われてんだから行かなきゃ。それに実用まで持ってければ世界中の人が──「知らないわよそんなの……!」

「またそうやって研究につきっきりで……そのために璃奈ちゃんが寂しい思いして……!!それでっ、それで璃奈ちゃんが喜ぶと思う?!」

「だからそれはお互い様だって……!」

「仕事と璃奈ちゃんとどっちが大事なのよ!?!?」

「璃奈に決まってるだろ!!!」

「……っ………!」

「…………」

「…………」

「璃奈が1番大事だよ。当たり前だよそんなの」

「だったら!」

「でも僕は……璃奈のためだけに仕事してるわけじゃないんだ」

「キミも、そうなんだろう」

「……………」

「……………」

「ごめんなさい……少し……気が立ってたわ……」

「……」

66: 2020/12/26(土) 15:12:36.45 ID:n3BFmshm
──────
 
 
 
 
璃奈「…………」
 
 
 
 
 
 
お父さんもお母さんも、たくさんの人のためにお仕事頑張ってるんだ

⠀ ⠀
だから、私も頑張らなきゃ、
 
 
我慢、しなくちゃ。


もっと一緒にいたいなんて、わがまま言っちゃだめなんだ

77: 2021/01/02(土) 07:33:13.26 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「また同じクラスだねー」

「そうだね、あ!璃奈ちゃんもだ」

璃奈「ほんとだ」

「私たち、えんがあるね!」

「たしかに!」

璃奈「そうだね」

「………」

「璃奈ちゃん?」

璃奈「え」

「他のクラスがよかった?」

璃奈「え、なんで」

「だってなんか……そんな顔してたから」

璃奈「?また同じクラスでとってもうれしいよ」

「……でも……今…」

「もー、璃奈ちゃんがうれしいって言ってくれてんだからいいでしょ!ねー?」

璃奈「うん」

璃奈「今年もよろしくね」

「うん、よろしくね!」

「……よろしく……うん、よろしく!」

78: 2021/01/02(土) 07:34:30.46 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 

 
 
『───、────!!!』


璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」
 
 
『───、────!?』

 
璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」

 
『───、────』

 
璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」
 
 
『───、────!!』

79: 2021/01/02(土) 07:34:58.04 ID:7LQyinEa
璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」
 
 
『───、────!?』

 
璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」

 
『───、────』

 
璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……」ピッ
 
 
『』




この番組、毎週楽しみにしてたのに

欠かさずみてたはずなのに

みていても笑わなくなったのは、いつからだろう 

80: 2021/01/02(土) 07:37:32.53 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「昨日のさー」

「あ!テレビ?みたみた!」

「ゲストが出てきたときびっくりしちゃった!」

「あの人いつの間にふっかつしたのかって、ね?」

璃奈「え、なに」

「あれ?昨日テレビみてない?」

璃奈「えっと」

璃奈「うん、みのがしちゃった」

「そうなの!?昨日すごかったんだよ!」

璃奈「そうなんだ」

81: 2021/01/02(土) 07:38:25.74 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 

 
「はい、おみやげ!いやー涼しくていいねー北海道は」

「ありがとっ、い~な~北海道……」

「璃奈ちゃんも、はいこれっ!」

璃奈「ありがと」

「…?」

璃奈「楽しかったの」

「え、う、うん」

「……璃奈ちゃん、そのおかし、きらいだった?」

璃奈「え、どうして」

「いや……えっと……」

「なんか怒ってる?」

璃奈「ううん、怒ってないよ」

「………ほんとに?」

璃奈「怒ることなんて、ないよ」

「そっか…………」

82: 2021/01/02(土) 07:38:55.22 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「────、でさ~」

「うんうん」

璃奈「……」

「……」

「璃奈ちゃん?聞いてる?」

璃奈「聞いてるよ」

「そう?なんか考えてたみたいだけど?」

璃奈「べつに、そんなことないよ。ちゃんと聞いてたよ」

「……」

「話が面白くなかったんでしょー?」

「あ!何を~!」
⠀ ⠀
璃奈「……?」

83: 2021/01/02(土) 07:41:11.70 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「おはよー!」

「おはよー……あ!その服!」

「へへっ、いいでしょ?この前言ってたやつ買ってもらっちゃった!」

「よく買えたね?すぐ売り切れになったんでしょ?」

「最近またにゅうかしたみたいだよ?たまたまお店行ったら買えちゃった♪またなくなるかもだし買いに行ってみたら?」

「私には、にあわないよ……///」

「そんなこと言って~まんざらでもなさそうじゃ~ん?」

「うっさいな……///」

「ゆるふわ系いけると思うよ~!」

璃奈「かわいいね」

「ありがと~、これね、色違いもいくつかあってさ、璃奈ちゃんにもにあいそうな色とかあったよ」

璃奈「私には、にあわないよ」

「え?そ、そうかな、えっと…………ごめんね変なこと言って」

璃奈「変なことって」

「……変っていうか……こう言う服ってあんまり好きじゃなかったかな……」

璃奈「ううん、そういう服、あんまり着たことないから」

「そう、なんだね……」

84: 2021/01/02(土) 07:42:25.94 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「ねぇ……嫌われ、ちゃったのかな……」

「……だれに?」

「……璃奈ちゃん」

「………そうかもね……」

「なんでだろう?」

「知らないよ……」

「………」

「……私、あやまってみる」

「……そう」

「それで、なんで嫌われちゃったかちゃんと聞きたい」

「話してくれなかったら?」

「……話してくれるよ、これまでずっとなかよくしてくれてたんだもん」

「………」

85: 2021/01/02(土) 07:43:05.15 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「……ごめんね、ウザかったよね……」

「許してあげてよ璃奈ちゃん、ちょっとくらいじまんさせてあげてもいいじゃん?」

璃奈「………」

璃奈「……なんの……話……」

「……」

「ずっと前からあたしらと話しててもぜんぜんたのしそうじゃなかったし……」

「他のみんなにも素っ気無いし……」

「でもね、なんで嫌われちゃったのか分からなかったの。ごめんね、謝るから……ねぇ、ちゃんと教えてよ………」

「私、最近璃奈ちゃんが何考えてるかわかんなくなっちゃった……」

「どうして、笑ってくれなくなっちゃったの?」

璃奈「…………」

璃奈「……笑って……ない………?」

86: 2021/01/02(土) 07:44:35.10 ID:7LQyinEa
璃奈「そっ…」

璃奈「そんなことない、みんなとお話しするの、すっごく楽しいよ」

璃奈「きらってなんかない、きらいなんて思ったことない、ほんとだよ」

「………」

「………どうして……」

「なんでっ……言ってくれないの……っ……?」

「なんでっ………うぅ………」ポロポロ

「…………」

「この子は、この子は璃奈ちゃんのこと信じてたのにっ!」

「この子があやまることなんてないのに!!それでもあやまってあげたのに!!」

「たのしくないならそう言えばいいじゃん!!」

「どうしてうそつくの!?ひどいよ!!!」

「言いたいことがあるなら言いなよっ!!!」

璃奈「………」

璃奈「…………そんな、の、言いたい、こと、なんて、ない…よ……」

「………」

「………」

87: 2021/01/02(土) 07:46:30.84 ID:7LQyinEa
「わたしたちと話してて、ほんとに楽しい?」

璃奈「うん」

「おもしろい?」

璃奈「うん」

「じゃあ、笑ってよ」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「……」

璃奈「…」

「………」

「………」
 
 
 
 
「うそつき」

88: 2021/01/02(土) 07:51:35.09 ID:7LQyinEa
私が笑わないから、みんなが笑ってくれなくなっちゃった
⠀ ⠀
⠀ ⠀
笑わなきゃ、でも
 
 
どうすればいいのか、思い出せないの
 
 
私は、どうやって笑っていたんだろう
 
 
私は、どうやって怒っていたんだろう
 
 
こんなに痛くて苦しいのに、どうして涙が出てこないんだろう
 
 
その日、家に帰った後、
 
 
私はただ、
 
 
鏡に映るうそつきの顔を、ずっと眺めていた

89: 2021/01/02(土) 07:55:04.65 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「……おはよう」

「………」

「…………おはよ」

璃奈「………」

璃奈「あ、あの……」

「行こ」「あ、うん……」

璃奈「………」

璃奈「………」

90: 2021/01/02(土) 07:59:37.47 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
「知ってる?この前あの子が泣いてたのって璃奈ちゃんのせいなんだって」

「そうだったんだぁ」

「ケンカ?」

「そうみたい」

「そういえばいっつも怒ってるよね」

「怒ってるっていうか、無表情?」

「でもいつも一緒にいたよね?あの子たち」

「嫌いなのに付き合わされてイライラしてたんじゃない?」

「あー、それはあるかもね」

「でも、きらいなんて思ったことないとか言ってたらしーよ?」

「何でうそつくんだろうね?」

「もしかしてしょっちゅうウソついてたりするの?」

「さぁ……?」

「何考えてるかわかんないよね」

「感情ないんじゃない?」

「え、怖……」

91: 2021/01/02(土) 08:00:52.00 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「………」トボトボ
 
 
 
「あ、真顔女」スタスタ
 
 
 
璃奈「!」
 
 
 
「聞こえるでしょw?」「あははっ」スタスタ
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「………」






『怖い』『気持ち悪い』『不気味』『つまんない』『お面みたい』『近づきたくない』『ロボット』『かわいそう』『みたくない』『うそつき』
『うそつき』『わたしの友達を『うそつき』 『泣かせた』  『うそつき』『ゆるさない』『うそつき』 『うそつき』『うそつき』そつき』
『うそつき』『うそつ『うそ『うそつき』『うそつき』
   『うそつき』『うそつ『うそつき』  『うそつき』
『うそつき』『う『うそつき』    『うそつき』『うそつき』
  『うそつき』『うそつき』『うそつき』 『うそ『うそつき』 『うそつき』
『うそつき』つき』  『うそつき』『うそつき』
 
 
 
 
 
『うそつき』

93: 2021/01/02(土) 08:02:22.56 ID:7LQyinEa
──────
────
──

 
 
 
 
母「はいもしもし、天王寺ですが」

『あ、良かった。おはようございます。私、璃奈さんの担任の……』

母「ああ、お世話になっております……それで今日は何か……?」

『本日は璃奈さんは欠席、でよろしいんですかね……?』

母「えっ……?いえ、璃奈からは何も……」

『そうでしたか……いえ、璃奈さん今日学校に来ていないんですよ』

母「本当ですか!?」

『親御さんからも本人からも連絡がないので、お宅へお電話差し上げたんですが、留守電になるばかりで……』

母「わかりました……携帯を持たせてあるので、かけてみます」

『よろしくお願いします。万が一ということもあるので、何かあればまたすぐにご連絡ください』

母「はい、ありがとうございます。失礼します」

母「………」

母「………」
 
母「……璃奈ちゃん………!」

94: 2021/01/02(土) 08:04:06.91 ID:7LQyinEa
母「………」prrr……

母「………」prrr……

母「………」prrr……

母「………」

母「!」

母「璃奈ちゃん!?璃奈ちゃん今どこ!?」

『………』

母「璃奈ちゃん……?」

『………』

『……家に、いるよ』

母「!……よかった………」

母「どうしたの?熱出ちゃった?頭痛い?」

『……平気』

『でも……』

『……今日、休みたい』

母「………」

母「……うん、わかった。今日は家でゆっくりしてていいわ」

『…………ごめん、なさい』

母「いいのよ。璃奈ちゃんは頑張り屋さんだから、たまにはそういう日があっても誰も怒らないわ。でも、今度から休みたい時はちゃんとお母さんに言うのよ?」

『……うん』

母「……じゃあね、璃奈ちゃん」

『……うん』
⠀ ⠀
⠀ ⠀
母「………」

母「……はぁぁ……よかった………」

95: 2021/01/02(土) 08:06:38.28 ID:7LQyinEa
学校、休んじゃった
 
 
ごめんなさい
 
 
心配、かけちゃった
 
  
ごめんなさい
 
 
お父さんとお母さんみたいに、私もがんばるって言ったのに
 
 
がんばれなかった
 
 
やっぱり、私はうそつきなんだ
 
 
 
うそつきで、ごめんなさい

96: 2021/01/03(日) 00:09:56.37 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「おばーちゃん?もう動いていい?」

祖母「もうちょっと……よし」

愛「ふぅ」

愛「これ毎年書かなきゃダメ?」

祖母「そらそうだよ、愛ちゃんの成長記録だからねぇ」

祖母「この柱を見るたんびに、愛ちゃんは大きくなったねぇ……って思うんだよ」

愛「なんかハズい……」

祖母「ここが小学校に入学したときのだ、こんときはまだまだばあちゃんより背が低かったのにねぇ……6年でずいぶん伸びたもんだ」

愛「も、もういいじゃん///」

祖母「そうかい?……じゃあ、制服の写真を」

愛「入学式の前も撮ったじゃん!」

祖母「あら、そうだったかい……」

祖母「入学式はどうだった?」

愛「うーん………あ!聞いて!もう友達できたんだ~!」

祖母「そら良かったねぇ、さすが愛ちゃんだ」

祖母「………にしても、まったく、こんな祝いの日にも休めないなんてねぇ………」

愛「………」

愛「……いーよ別に、おばーちゃんがいてくれれば十分十分♪」

愛「ほらなんか、甘いもの食べ行こ?おごるよ」

祖母「何を言ってんだい、中学生が奢るなんてなぁまだまだ早いよ」

97: 2021/01/03(日) 00:10:50.06 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「算数理科は相変わらず素晴らしい理解度ですね。学力調査も全国上位に入ってますよ」

母「そうですか」

「……ただ、文系科目の方はあまり芳しくないですね……璃奈さんは、成績が極端と言いますか……」

璃奈「………」

「お母様は中学受験など考えていらっしゃいますか?」

母「中学受験、ですか」

母「……璃奈ちゃん、どこかいきたい中学はある?」

璃奈「……特にない、です」

「では、進学はそのまま持ち上がりということで……」

母「……」

母「どこか、理系が得意なことを活かせるようなところはありませんか?」

「………そうですねぇ………少々お待ちください」

「………あ、あった……近い場所ですと、ここですかね。資料どうぞ」

母「あ、どうも」

「これは内部進学後の高等部の話になりますが、情報処理学科という全国でもレベルの高い理系の学科がありまして」

「璃奈さんの学力なら十分狙えると思いますよ。もちろん、多少は文系科目の成績も上げていかなければいけませんが」

母「………わかりました、ありがとうございます」

「はい、宜しければご検討ください」

璃奈「………」

98: 2021/01/03(日) 00:11:55.92 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
 
璃奈「……お母さんは、その中学に行って欲しいの?」

母「え?……ああ……そういうわけじゃなくてね」

母「せっかく璃奈ちゃんには得意なことがあるんだから、どうせ勉強するなら得意なものの方がいいかなって思って」

母「………」

母「璃奈ちゃんが決めることよね、ごめんね、お節介だっわね……」

璃奈「………」

璃奈「………ううん、そんなこと、ないよ」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「……うん、いいよ」

璃奈「その中学、行く」

99: 2021/01/03(日) 00:12:38.61 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
美里「もう友達できたの?」

愛「うん、おもしろそーな子いっぱいいるんだよ~!」

愛「ずっとダンスやってた子でしょ?乗馬が趣味の子でしょ?あとあと、論文読むのが好きな子とか!」

美里「あはは、随分個性的だね」

愛「でしょでしょ?でも、面白いけどみんないい子なんだ♪」

美里「ふふ、愛ちゃんがいい子だから、友達もいい子なのね」

愛「あはは、そうかな?」

美里「そうよ」

100: 2021/01/03(日) 00:13:15.57 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「はー、ひま」
「なんか涼しくなったね」
「なんかやろー」「なにする?」
「あ、トランプあるよ」「うぇーいやろやろ」
「日当たりいいとこでやろ」
「どこ?あの机?」「あれ、だれの机?」
「さぁ」「真顔でしょ」「あー」
「休み時間いっつもいないね」
「前図書室いるのみたよ」
「なんかべんきょーしてたよ」
「うえーまじめ~」
「しばらく戻ってこないっしょ」「使っちゃえ」
 
 
 
 
──────
 
 
 
 
璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……休み時間は、図書室に行って)」

璃奈「(放課後も、塾に行って)」

璃奈「(べんきょうのこといっぱい考えてれば……)」

璃奈「………」

璃奈「(………さみしくない、さみしくない)」

璃奈「(……さみしく、ない)」

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

101: 2021/01/03(日) 00:14:07.71 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「はーい、HR始めるから席ついてー」

「今日は………あいつらまた欠席かぁ」
 
 
愛「………」
 
 
 

──────
────
 
 

 
「そこの席の人よく休んでんね」

「まー不良だからね」

愛「知ってんの?」

「あ、うん。小学校同じだったけど、その頃からよくサボってたよ」

「今も他のクラスの子とつるんで夜とかでも遊んでるみたい」

「へー、この学校にもそういうのいるんだ」

「ねー」

愛「……ふーん」

「なんか親が厳しいらしくてさー、嫌になってグれたっぽいよ?よく親の文句言ってたし」

愛「親の………」

愛「そっか、そうなんだ」

102: 2021/01/03(日) 00:14:49.84 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「………」カチカチッ

璃奈「………」

璃奈「………」ジーー

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「…………あ」

璃奈「(……あった、受かってた)」
 
 
prrr!


璃奈「!」

璃奈「……もしもし」

母『もしもし!おめでとう璃奈ちゃんっ!!』

璃奈「うん、ありがとう」

母『今日は早く帰るから、待っててね!』

璃奈「うん」

母『おめでとう璃奈ちゃん、よく頑張ったね、すごいね』

母『あっ、もう切らなきゃ……じゃあね!おめでとう!』

璃奈「うん、じゃあね」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……お母さんの前で、ちゃんと嬉しそうな顔、できるかな……)」

103: 2021/01/03(日) 00:16:31.54 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
 
母「ただいまーっ!!」

母「ごめんねっ、遅くなっちゃって!」

母「………あれ?」

母「………璃奈ちゃん……?」

母「………」

母「………部屋かしら」


 
ガチャ…
 
 
 
母「……璃奈ちゃーん………?」


璃奈「………」

母「寝ちゃった……?」

璃奈「………」

母「………」

璃奈「………」

母「………はぁ……ごめんね……」

母「………」ナデナデ

璃奈「………」

璃奈「………」
 
 
 
 
 
あんなにお母さんと一緒にいたいって、お話したいって思ってたのに、

面と向かってこの顔を見られるのが、見せるのが

なんだか、怖かった。

104: 2021/01/03(日) 00:17:09.76 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
母「愛ー?いるでしょー?」

母「愛ー?」
 
 
愛「……ふぁぁ……なに………?」
 
 
母「お父さんが風邪だからちょっとお店手伝って、今日暇でしょ?」

愛「………」

愛「(店休めばいーじゃん……)」

母「お小遣いあげるから」

愛「……」

愛「……チッ…」

愛「………」

愛「わかった」

105: 2021/01/03(日) 00:18:10.29 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 

 
愛「いらっしゃいませ~!」

愛「お好きなお席へどうぞ~」
 
 
 
 
──────
────




母「はい、これ5番テーブル、お願いね」

愛「ん」
 
 
 
 
愛「お待たせ致しました!チーズミックスもんじゃです」
 
 
 
 
──────
────




愛「少々お待ちくださいっ」
 
 
 
愛「………お会計だって」

母「はいはーい」

母「あ、3番テーブル、お皿下げてきて」

愛「……ん」

106: 2021/01/03(日) 00:19:33.94 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
母「お疲れ」

愛「うん」

母「……お父さん、だいぶ良くなったから明日は大丈夫そう」

愛「……あっそ」

母「ちょっとは心配したら?」

愛「全然休まないからそーゆーことになるんでしょ」

愛「自業自得じゃん、バッカみたい」

母「ちょっとあんたなんでそんなこと言うの!?」

愛「なに!?ほんとのこと言っただけじゃんっ!!」

母「お父さんはね「はいはいお父さんもお母さんもお店支えて頑張ってるから我慢しろっててんでしょもう聞き飽きたよそれ!!!」

母「っ!!」

愛「……チッ」スタスタ…
 
 
母「……」

107: 2021/01/03(日) 00:22:36.42 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
   璃奈へ

 合格おめでとう!!!
 直接祝ってあげられなくてごめん。その代わり、お祝いのプレゼントを何箱か送るから、お楽しみに!
 そうそう、工具はお父さんの部屋にあるの使って。部品が欲しいならいつもみたいに注文していいからね。なにに使うかは………それもお楽しみ!
 璃奈の夏休みまでには帰れるようにするから、それまで最初の中学生活楽しんで!
 
────────
 
 
 
璃奈「っと……」

璃奈「(2箱……)」

璃奈「こっちは……」

璃奈「!」

璃奈「………ワンちゃん」

璃奈「……」

璃奈「型ロボット?……ロボットだ……!」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……ワンちゃんか………どうせなら……)」

璃奈「(ううん、せっかく送ってくれたんだから、文句はなしっ)」

璃奈「……で、こっちは………」

璃奈「あ、服だ」

璃奈「………?」

璃奈「………あれ」

璃奈「………おっきい……」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「わぁ……ぶかぶか……」

璃奈「………」

璃奈「(えへへっ、ぶかぶか~……)」

108: 2021/01/03(日) 00:24:59.28 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
 
母「………ただいまー………」
 
 
 
ガチャ…
 
 
 
璃奈「…………すぅ……」

璃奈「……すぅ………」

璃奈「………」

母「………」

母「………」ナデナデ

璃奈「………」

母「………」プニプニ

母「……?」

母「……あら……これって」

母「(………こんなの着てたことあったかしら……何だろう……いつの間に……)」

母「(……あ、あの段ボール)」

母「(そういうことね)」

母「(はぁぁ~、まったくやだわあの人全然サイズ合ってないじゃない)」

母「(さては、自分の服がそうだからって娘の服までネットで買って送ってきたわね……!)」

母「(サイズ指定ミスるくらいならちゃんと直接店行って買って送ってこいってのよ!!)」

母「(今度帰ってきたら絶対文句言ってやるんだから……!)」
 
 
璃奈「………」

璃奈「……ん……」

璃奈「………」

璃奈「……♪」

109: 2021/01/03(日) 00:29:00.87 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
  
「あー、だりぃ」

「それな」

「3時間目行く?」

「行くわけねーじゃん」

「だよねー」

「はぁ……まーたクソババアにどやされたし、やってらんねー」

「あ、最近さー、8時過ぎぐらいに教師がゲーセンとか見廻ってんの、知ってる?」

「あたし見たことあるわ」

「は?ウザ」

「クソだわぁ」

「カラオケは?」

「たまにいるらしーよ」

「はーー、ウッザ」

「夜遊べねーじゃん」

「あんたん家行こーぜ」

「むりむり、あーしの家もクソババアがうるせーし」

 
 
「………」

「ねぇねぇ」

「アタシ、いいとこ知ってるよ」

110: 2021/01/03(日) 00:31:41.90 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 
 
「おらっ!」

「チッ」

「しゃっ」カキーーン

「おーー」

「当たった当たった!」

「はっ、あいつガチってんじゃん、ウケるw」

「にしても、バッセンは思いつかなかったわ」

「頭いーね、あんた」

「へへへ、どうも」

「でもあんた、あーしが言うのもアレだけどさ、こんなんとつるんでていーわけ?」

「こんなん言うなしw」

「………いいよ。なんかさ、楽しそうだったから」

「………」

「ふーん」

「あ………そういや名前も聞いてなかったわ」

「なんてーの?」

「アタシ?」

「んー……」

「愛さん、って呼んでよ」

111: 2021/01/03(日) 00:34:24.68 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 


 
愛「ただいまー」

祖母「あ、やっと帰ってきたよ。おかえり愛ちゃん、随分遅かったねぇ」

愛「……あー、ちょっとね」

祖母「……?」

祖母「ご飯は?」

愛「食べる!」

祖母「そう、じゃあ温め直すかね」

愛「あ、いいよ、自分でやっとく」

祖母「そうかい?」

愛「うん」

112: 2021/01/03(日) 00:37:01.66 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

愛「それでね、先生まで笑っちゃっててさ」

美里「ふふふ………あ」

美里「よし、できた」

愛「みせてみせて!」

愛「わっ、すごい……ホンモノのお花みたい……!」

美里「そう?ありがと」

美里「はー、もうやることなくなっちゃった、明日はどうしようかしら」

愛「明後日だっけ、退院」

美里「うん」

愛「そっか」

美里「………あ、もうこんな時間」

美里「愛ちゃん、そろそろ」

愛「えー」

愛「……もう少し居ちゃダメ?」

美里「ダメよ、おばあちゃん心配するでしょ?」

愛「おばーちゃん今日老人会で帰り遅いもん」

美里「……ほら、お父さんとお母さんも心ぱ」

愛「しないよ」

美里「!」

113: 2021/01/03(日) 00:38:46.06 ID:nRI5nBdR
美里「……そんなこと、ないわ」

愛「……」

愛「………あるよ」

愛「アタシのことなんてどーでもいんだよ」

愛「アタシだって向こうのことどーでもいいし」

愛「………」ムスッ…

美里「愛ちゃん………」

美里「………」

愛「………」

美里「ちょっと、こっち向いてくれない?」

愛「え?」

美里「……よいしょ、っと」

美里「ん、いい感じ」

愛「このお花……いいの?」

美里「うん、愛ちゃんにあげるわ」

美里「ふふ、いくつになっても寂しがり屋さんなんだから」

美里「この花を私だと思って、ね?」

美里「そしたら、寂しくない?」

愛「さ……寂しいとか……もう中学生だよ?」

美里「ふふ、いくつになっても、愛ちゃんは愛ちゃんよ」

美里「あ、差し込んだだけだから、取れやすいかも」

愛「……ありがと」

114: 2021/01/03(日) 00:44:47.76 ID:nRI5nBdR
─────
────
──

 
 
 
 
「よっ」ゴロゴロゴロ………カコーーン

「うぇーいストライク~」

「うぇ~い、やるじゃん」

愛「ナイスー!」

「いやー、ほんと、穴場よく知ってんね」

「このボーリング場とか潰れてんのかと思ってたし」

「よっ、愛さん!」

愛「ふっふっふっ、愛さんに任せなさい!」

「ふぅーー!かっけー!w」
 
 
prrr! prrr!
 
 
「誰か電話なってない?」

「あーしじゃないよ?」

「誰のー?」

愛「……あっ……」

「愛さんのやつか」

愛「………」

愛「………」

愛「……いいや」

愛「続き、やろ」

「おー」

115: 2021/01/03(日) 00:46:26.81 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

美里「愛ちゃん、大丈夫?」

愛「え?」

美里「ここのところ、なんだか元気ないみたい」

愛「そんなことないよ?」

美里「……そう?」

愛「うん」

美里「………」

美里「……最近はどんなことしてるの?」

美里「なにか、楽しかったことはあった?」

愛「んーとね、あ、みんなでボーリング行ったよ!」

美里「……そう」

美里「……無理、してない?愛ちゃん」

愛「えっ……?」

愛「………」

愛「……してないよ」

愛「……あっ!もうこんな時間だ!そろそろ行くね!」

愛「じゃあね、おねーちゃん」

美里「あっ」

美里「………」

美里「………」

美里「………愛ちゃん……」

117: 2021/01/03(日) 00:48:42.17 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
愛「ただいまー」
 
 
母「愛……!」
 
 
愛「!」

母「最近ちょっと帰りが遅すぎるんじゃないの?」

愛「……」

愛「……何、急に。おばーちゃんに聞いたの?」

母「そうだよ」

母「おばあちゃん心配してたよ?」

愛「………」

愛「……おかーさんは心配してないんでしょ」

母「何バカなこと言ってんの!心配してるよ!」

愛「………」

愛「はっ、どうだか」

母「!」

愛「何にしたっておかーさんには関係ないし」

母「っ!……関係ないわけ……」

母「ちょっと!愛!待ちな!」

母「愛!!………」

母「………」

母「………まったく」

118: 2021/01/03(日) 00:51:48.58 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
「しゃあー!1位~!」

「はぁ~?もっかいもっかい!もう1レース!」

「やだし」

「あー?やろーぜー?」

愛「………」

「……てかあいつ遅くね?」

「あー、また親に捕まったんじゃね」

「うわ、サイヤクじゃん」

「親ってなんでどこもクソみたいなのしかいないんだろーね」

愛「!」

「ほんっとそれなぁー」

「親とか無視してみんなでこういうことしてんのが1番楽しいわ」

「ね?」

愛「えっ?う、うん」

愛「………」
 
 
 
これって

楽しい、のかな

119: 2021/01/03(日) 00:54:05.77 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
愛「………」ソー…

母「愛!!」

愛「っ!!……」

愛「……」

母「今何時だと思ってんの……!?」

愛「………」

愛「……」スタスタ…

母「待ちなっ!!!」グイッ

愛「っ!」

母「愛、あんた最近何してんの?」

母「どこに行ってんの?」

愛「………」

母「言えないようなとこなの?ねえ?」

愛「………」

母「答えな!!」

120: 2021/01/03(日) 00:55:58.52 ID:nRI5nBdR
愛「………」

愛「………」

愛「……関係、ないでしょ」

母「関係ないって……あんたねえ!!」

愛「うるさいんだよっ!!!!」

母「!」

愛「今更っ……今更構ってこないでよ………!!!」

母「っ…!」

愛「離して!!」バッ

母「あっ、ちょ……愛!!」
 
 
タッタッタッ……
 
 
母「………」
 
 
祖母「……帰ってきたのかい?」

母「あ、お義母さん……うん、帰ってきた、けど……」

祖母「そうかい」

祖母「……愛ちゃん、大丈夫かねぇ……」

母「…………」

121: 2021/01/03(日) 00:58:45.96 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 

「今日は?またカラオケ?」

「えー、こないだも行ったじゃん、ダルくね?」

「じゃー、ファミレスか?」

「いんじゃね」

「……あー、そろそろまた髪染めねーと」

「ハゲない?」

「は?そっちこそ染めないん?」

「普通にめんどいでしょ」

「あー、ね」

「愛さんは?」

「染めねーの?」

「逆に色抜くとか」

愛「………」

愛「……そーだね、面白そう」

122: 2021/01/03(日) 01:02:49.03 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

母「お義母さん、愛は?」

祖母「まだ帰っとらんよ」

母「そう……どこでなにしてんだか……」



愛「ただいまー」



母「!!!」

母「……………」

母「……愛………どうしたの……」

母「その髪………!」

123: 2021/01/03(日) 01:08:47.16 ID:nRI5nBdR
愛「………」

愛「チッ…」

母「待ちな!!!」

愛「離して!!!」

母「あんた最近……何にも言わないじゃない……!!」

母「せめて一言くらい相談「相談したら、」

愛「私のことみてくれたの?」

母「!」

愛「……みて、くれたの」

母「……っ…」

愛「…………ご飯、いらないから」

母「…………」

母「……愛………」

124: 2021/01/03(日) 01:12:07.91 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
 
愛「………」

愛「………」

愛「………」

愛「………はぁ……」

愛「……もう……もうっ!」

愛「……なんなの……」

愛「(………頭……ぐちゃぐちゃする)」

愛「(……楽しくない)」

愛「(ずっと……もうずっとこんなのばっかり)」

愛「………」

愛「(みてくれたの、なんて……なんでそんな言葉言ったんだろ、アタシ)」

愛「(これじゃ、みて欲しかったみたいじゃん)」

愛「(……構って欲しかった……みたいじゃん………)」

愛「(全然そんなこと……思ってないのに)」

愛「(……全然………)」

愛「…………」
  
 
──『ふふ、いくつになっても寂しがり屋さんなんだから』
 
 
愛「………」

125: 2021/01/03(日) 01:16:12.83 ID:nRI5nBdR
愛「…………」

愛「(………そっか)」

愛「(ほんとは……)」

愛「……っ…」

愛「(ほんとは、アタシ……っ)」

愛「(みて、ほしかったんだ……)」

愛「(………寂しかったんだ)」

愛「………」

愛「……っ…」ポロポロ

愛「……っ…ぐすっ……」
 
  
──『そしたら、寂しくない?』
 
 
愛「……」スッ…

愛「(おねーちゃんがくれた、お花……)」

愛「………」

愛「……おねー、ちゃん……っ…」

愛「…………うぁ……っ…」

愛「…………っ……」

愛「…っ………寂しい、よ……」ポロポロ

126: 2021/01/03(日) 01:18:11.73 ID:nRI5nBdR
「愛ちゃん?」コンコン
 
 
愛「!!!」
 
 
「愛ちゃーん?」
 
 
愛「………」クシクシ
 
 
「入るわよー?」ガチャッ



愛「……おねー、ちゃん………」

美里「ごめんね、勝手に入って」

美里「……愛ちゃん?」

愛「………」

愛「……うぅ…」

愛「……おね゛ぇちゃん……!」

美里「あら……ふふ、おいで」

愛「……ん…っ……」ギュッ…

美里「よしよし」ナデナデ

127: 2021/01/03(日) 01:23:15.55 ID:nRI5nBdR
愛「………」

愛「………」

愛「……どーして、きてくれたの?」

美里「んー?」

美里「超能力者だから」

愛「……ふふ、なにそれ」

美里「……うん」

美里「前の笑い方に戻ったみたい」

愛「……前、の?」

美里「うん」

美里「最近の愛ちゃん………なんだか目が寂しそうだったから」

愛「……!」

愛「……そっか……」

美里「……うーん」ジーー

愛「……どーしたの?」

美里「その髪、ちょっといじってみてもいい?」

愛「えっ?」

愛「………」

愛「……いいよ」

美里「じゃあ遠慮なく♪」

128: 2021/01/03(日) 01:28:50.14 ID:nRI5nBdR
美里「できたっ♪あ、こっちの髪色の方が花に合うわね」

愛「………うん……」

美里「………」

美里「おばーちゃん、心配してたよ」

愛「………」

美里「それに、お母さんも」

愛「………そうかな」

愛「………」

美里「普段とやかく言わないのは、それだけ愛ちゃんが健康で元気いっぱいだからよ」

美里「私と違って、ね」

愛「……!」

美里「ふふ、なんてね。これ言うの、ちょっとずるいかしら」

愛「………」

美里「……本当はおばーちゃんもお母さんも、それにお父さんだって、いつも愛ちゃんのこと、気にかけてるのよ」

美里「当たり前よ、大事な大事な一人娘なんだから」

愛「………」

美里「これ、ヘアスタイルの雑誌。この間買ったんだけど、私不器用だからひとつ覚えるのも一苦労なのよね」

美里「その髪型だって最近やっと作れるようになったんだけど、愛ちゃんに似合うからちょうど良かったわ」

愛「………」

美里「愛ちゃんなら自分でいろいろセットできそうだし、これ置いていくわね」

愛「………」

美里「ふぅ、じゃあそろそろ行くね。ふふっ、ちょっとお節介しちゃった」

愛「………」

愛「………」

美里「……これからは、もう少し早く帰ってきてね」

愛「……うん」

美里「じゃあ行くね。またね愛ちゃん」

愛「うん、またね」

129: 2021/01/03(日) 01:35:45.59 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
 
母「………はぁ……」

母「………」

母「……あっ……」

母「これ……」

祖母「大丈夫かい」

母「!……お義母さん……」

祖母「やっぱり、それ、かいてて正解だったねぇ、一目でよくわかる」

祖母「大きくなったろう、ほらここ、小学校に入ったときゃこんなに小さかったのに」

母「………」

母「………」

母「……みて、なかった……か」

母「あっはは………ほんと、その通りだ……」

母「お義母さんがいてくれるからって、甘えすぎてたかな……」

祖母「………」

祖母「ばあちゃんは、結局、ばあちゃんでしかない。母親はあんたただ1人さ」

母「………」

祖母「あの子にはまだ………いや、ずっとあんたたち親2人が必要なんだ」

130: 2021/01/03(日) 01:38:25.74 ID:nRI5nBdR
母「………」

母「……愛は、愛は強い子だから……だから別に、必要ないんじゃないかって……もう、遅いんじゃないかって、いつからか、思っちゃって……」

祖母「そんなことないさ」

母「……!」

祖母「親が必要ない子なんていない」

祖母「親が一緒に居なくても大丈夫なんて子は、そうそういやしない」

祖母「もしいたとしても、必ずどこかで歪みが生まれちまうもんさ」

祖母「強い子って言ったって、限度があるからねぇ」

母「………」

母「……まだ、間に合う、かな……」

祖母「ああ」

祖母「でも、焦ったらいけないよ。ゆっくりでいい」

母「………」

131: 2021/01/03(日) 01:42:13.85 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
  
「────、えー、全国から、夢、そしてさまざまな想いを胸に、我が虹ヶ咲学園へ入学された皆さんは、この中等部でこれからたくさんのことを学び、経験することになります」

「私たちは、皆さんがここで学んだことを力に変え、やがて社会へと羽ばたき、さまざまな分野で活躍する人間へと成長していくことを、心より願っております。改めまして、ご入学おめでとうございます。それでは、これにて────」
 
 
 
 
璃奈「………」
 
 
 
 
──────
────
 
 
 
 
「次は、天王寺さん」

璃奈「はい………天王寺璃奈です。よろしくお願いします」
 
 
パチパチパチ…


「じゃあ次、────」

132: 2021/01/03(日) 01:47:29.41 ID:nRI5nBdR
──────
────

 
 
 
「ねえねえ」

璃奈「?」

「私たち、塾一緒じゃなかった?」

璃奈「そう、だったかな」

「私、天王寺さん見たことあるよ」

璃奈「えっと………ごめんなさい、覚えてなくて」

「ううん、全然!これからよろしくね」

璃奈「よ………よろしく」

璃奈「えっと、あの」

璃奈「今、嬉しい、よ」

「えっ?あ、うん……」

「?………」

璃奈「……ごめん、なんでもない」

133: 2021/01/03(日) 01:50:14.74 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「………うーん……」

璃奈「………やっぱりネコちゃんかな………」

璃奈「(……改造とか、できるかな)」

璃奈「………」

璃奈「……よし」
 
 
 
 

──────
────
 
 
 
 
璃奈「………」カチャカチャ

璃奈「ふぅ……よし、できた………かな」

璃奈「(起動!)」ポチッ

「………」

「………」

「ワンッ!」

璃奈「あっ……鳴き声………」

134: 2021/01/03(日) 01:53:47.07 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

「天王寺さん!おはよー」

璃奈「おはよう」

「今日ちょっと暑いよね~」

璃奈「そうだね」

「……あれ、あんまり暑くない?」

「っていうか、体調悪い?」

璃奈「え……ううん、平気だよ」

璃奈「暑い、ね」

「……?……そうだね……」

璃奈「……」

璃奈「……あ、」

璃奈「あのね」

「ん?」

璃奈「えっと……」

璃奈「……」

璃奈「……」

璃奈「……なんでもない」

135: 2021/01/03(日) 01:56:46.38 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

「あ、天王寺さんだ」「ほんとだ」

璃奈「!」

「お昼、よく中庭で食べてるの?」

璃奈「たまに」

「そーなんだ~、学食混むもんね~」

璃奈「うん」

「一緒に、いい?」

璃奈「うん」

「……別に、嫌ならいいんだけど……ね?」

「うんうん、1人で食べたい時もあるもんね」

璃奈「!」

璃奈「い……嫌じゃない、嬉しい、一緒に食べたい、ほんとだよ」

「?そ、そっか」

璃奈「……」

璃奈「………」

「「……?」」

璃奈「……」

璃奈「……私ね、……私、」

璃奈「気持ちを上手く、顔に出せなくて。こんな顔でも、ほんとに怒ってないの」

璃奈「勘違いさせちゃって、ごめんなさい」

「……そっか、そういうことだったんだ」

「……?……つまり、一緒に食べてもいいってこと?」

「良いってさ、ね?」

璃奈「うん」

「やった~」

136: 2021/01/03(日) 02:04:37.21 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 

璃奈「もしもし」

父『あ、璃奈?』

璃奈「お父さん、どうしたの?」

父『来週用事で少しそっちに戻るんだけど、土曜日にお父さんとお母さん、両方とも休みが取れそうなんだ』

璃奈「……ほんと?一日中?」

父『うん、そうだよ』

父『それで、どこか行きたいところとか、ない?』

璃奈「どこでもいいよ」

父『そっか、よしじゃあ買い物にでも行こうか』

璃奈「うん」

父『あ、そういえば、犬のロボットはもう作れた?」

璃奈「あっ……」

父『?』

璃奈「……ネコちゃんに改造しちゃった」

父『あー、ネコの方がよかったかぁ』

父『すごいなぁ、改造しちゃったのか。じゃ、犬はお父さんが作ろうかな』

璃奈「うん」

璃奈「あ、そういえば、ちょっと部品が足りないんだった」

父『そっか、ならそれも一緒に買いに行こう。お母さんは退屈かもしれないけどね』

璃奈「お母さんが行きたいところも、行けばいいよ」

父『そうだね』

璃奈「楽しみに、してるね」

父『ああ!』

137: 2021/01/03(日) 02:07:59.29 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
「天王寺さーん、チョコあげる」

「はい!」

璃奈「あ、ありがとう」

「……」

「嬉、しい……で合ってる?」

璃奈「うん。嬉しい。チョコ、好きだから」

「よしっ!当たった」

璃奈「(♪)」

「天王寺さーん!はい!私からも!親戚から送られてきたやつ」

璃奈「ありが……」

璃奈「(あ、このお菓子)」

138: 2021/01/03(日) 02:12:33.31 ID:nRI5nBdR
──────
 
『はい、おみやげ!いやー涼しくていいねー北海道は』

『……璃奈ちゃん、そのおかし、きらいだった?』

『いや……えっと……』

『なんか怒ってる?』

『………ほんとに?』

『そっか…………』
 
──────
 
 
 
璃奈「(小学生のときの……)」

「あれ、嫌いだったかな?」

「いや、喜んでるよ!多分」

璃奈「……」

「天王寺さん?」

璃奈「え?」

「ね?」

璃奈「あ、うん。ありがとう」

「よかったぁー♪」

139: 2021/01/03(日) 02:18:37.91 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
「ねーねー今度映画観に行かない?」

「いいよー、何観る?」

「今って何やってるっけ?」

「なんかアニメのやつとー、あ!ホラーやってるじゃん」

「えー?他にないの?」

「他はー……なんかドキュメンタリーとか続編とかばっかだなぁ」

「行ってから決めよー」

「そだね」

「てか天王寺さんも行こ?」

璃奈「えっ……う」

「来週の土曜ね」

璃奈「(!……来週の、土曜って)」

璃奈「あの」

「んーと、その顔はぁ……楽しみ?」

「………じゃなかった………?」

璃奈「……」

璃奈「ううん、楽しみ」

「えへへ、私も♪」

140: 2021/01/03(日) 02:22:49.44 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「もしもし、お父さん」

父『お、璃奈、どうした?』

璃奈「……」

父『……?』

璃奈「……あのね」

父『うん』

璃奈「来週の……土曜日、ね」

璃奈「……」

璃奈「やっぱり、行けなくなっちゃった」

父『………そうかぁ……』

父『友達と遊ぶ?』

璃奈「うん」

父『そっかそっか』

璃奈「……ごめんなさい。せっかく時間、作ってくれたのに」

父『いいよ、気にしなくても』

父『また今度……うん、また今度行けばいいよ』

璃奈「………うん……」

141: 2021/01/03(日) 02:26:27.58 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 

 

「どれ観る?」

「んー、そうだなぁ」

璃奈「………」

「ホラーいく?」

「やだよCMめっちゃ怖かったもん、やだやだ」

「天王寺さんも嫌がってるじゃん」

璃奈「え、あ」

璃奈「怖いのは、嫌じゃないよ」

「あ、そ、そうなんだ」

「嫌がってないじゃん」

「ごめん……」

璃奈「ううん……」

璃奈「(嫌がってる顔、しちゃってたのかな)」

璃奈「(誤解させちゃった……ごめんなさい)」

「……まあ、ホラーはやめとこっか」

「ねぇ今さぁ、あらすじ読んでたんだけどこれ面白そうじゃない?」

「………ふーん」

「いいんじゃない?」

璃奈「うん、観たい」

「じゃあ、これにしよう」

「おー」

142: 2021/01/03(日) 02:30:15.07 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
「はぁー、いやー笑ったわ」

「よくあんな声出せるよね(笑)」

「『ア゜ッ!!?』とか言って」

「やめてってw」

「映画館であんな笑ったの初めてだわ~」

「それな~」

璃奈「……」

「……」

「……つまんなかった……?」

璃奈「え」

璃奈「ううん、とっても面白かった」

「そ、そっか。なら、うん、良かった」

璃奈「……うん………」

「ってか主題歌は謎にめっちゃ良い曲使ってんのね」

「ねー」

璃奈「………」

143: 2021/01/03(日) 02:35:04.95 ID:nRI5nBdR
──────
────
 
 
 
「何食べる?」

「まだそんなお腹空いてないなぁ」

「あ!クレープある!」

璃奈「クレープ………私、食べたい」

「よしっ決まり」

 
 
 
「……♪」パシャッ

「いっただっきまーすっ」ハムッ

「ん~、おいし」

璃奈「……」モグモグ

「それにしてもさー、あの主演の人あんな顔芸して大丈夫なんかね?」

「白目剥いてたしね(笑)」

「あそこヤバかったわ(笑)」

「でもどっかで見たことある気すんだけどなー」

144: 2021/01/03(日) 02:38:55.50 ID:nRI5nBdR
璃奈「CMに出てる人、じゃないかな」

「CM?」

璃奈「不動産かなんかの」

「………あ、あー……?……あー!!」

「いたわそんな人!」

「え、え、どれだ……?」

「パンフ見せて!名前調べればわかるよ」

「………」ポチポチ

「……いたかなー……そんな人……」

「………あれ」

「?どした?わかった?」

「……違くない?」

「違うわこの人」

「違うんかいっ!!!ww」

「違うんかいっ!!……ッッ……!!」

「……ッ!」

璃奈「………」

璃奈「………」

「っ!」「!!」

「あっ、ごめん、別に笑うつもりは、その」

「わ、私も勘違いしてたし……」

璃奈「え?」

「気悪くしたら、ごめんね?」

145: 2021/01/03(日) 02:42:56.47 ID:nRI5nBdR
璃奈「?気にしてないよ」

璃奈「2人が楽しそうで、よかった」

「………」

「………」

璃奈「どうか、したの?」

「……」

「あの、さ」

「天王寺さんは、楽しい?」

璃奈「………!」
 
 
───『わたしたちと話しててほんとに楽しい?』
 
 
璃奈「た……っ楽しいよ」

璃奈「一緒に映画観られて、お話しできて、とっても嬉しい」

「………」

146: 2021/01/03(日) 02:45:45.50 ID:nRI5nBdR
「……天王寺さん」

璃奈「?」

「その……えっと……」

「嘘、じゃ、ないんだよね……?」

璃奈「!」

璃奈「……………」
 
 
璃奈「う…そ……」
 
 
───『うそつき』
 
 
「無理して付き合ってるなら、その、全然言ってくれていいし」

璃奈「ち、違うよ、本当に」
 
 
───『うそつき』
 
 
璃奈「………」
 
 
───『うそつき』
 
 
璃奈「………」

璃奈「…………」

147: 2021/01/03(日) 02:50:12.71 ID:nRI5nBdR
璃奈「(また、だ)」

璃奈「(また、うそつきになっちゃった)」

璃奈「(また、不安にさせちゃった)」

璃奈「(嫌な気持ちに、させちゃってたんだ)」

璃奈「………」

「えっと……」「天王寺さん……」

璃奈「ごめんなさい。たくさん、気を遣わせちゃって」

璃奈「ごめんなさい」

「え、や、そんなこと」

璃奈「今日は、ありがとう」

璃奈「……っ」

璃奈「……さよならっ…」タッタッ……

「あっ……!」

148: 2021/01/03(日) 02:54:58.15 ID:nRI5nBdR
──────
────
──

 
 

 
父「お!おかえり~」

母「あら、早かったわね」

父「ロボットの部品、買っておいたよ。部屋に置いてるから」

母「夕ご飯、どこに食べに行……え?」

母「あ、ちょっと」

母「……?」

父「……どした?」

母「……ご飯いらない、って……」





璃奈「(やっぱり、口だけじゃダメなんだ)」

璃奈「(言葉だけで気持ちを伝えても、意味、ないんだ)」

璃奈「(表情がついてこない、言葉だけの気持ちなんて、うそだから)」

璃奈「(だから、ちゃんと……)」

璃奈「ちゃんと、笑わなきゃ」

149: 2021/01/03(日) 02:58:24.36 ID:nRI5nBdR
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「……ふぁぁ……」

母「おはよー」

愛「……!」

愛「………」

愛「……おはよ」

愛「……お店の準備は?」

母「開店前だけおばあちゃんに代わってもらってる」

愛「……」

愛「……なんで?」

母「えっ……まぁ、たまには、ね」

愛「……」

愛「……ふーん」

母「ほら、座って」

母「朝ご飯冷めるよ」

愛「……」

愛「……うん」

153: 2021/01/04(月) 00:48:04.44 ID:21FkeZYT
愛「……」モグモグ

母「あ、そうだ」

母「成績表とか、そろそろ貰うんじゃない?」

母「前のテストはどうだったの?」

愛「……」モグモグ

愛「……」

愛「……なに?朝から、急に」

母「……あ、いや、別に………」

愛「……」

愛「……」

愛「5位だった」

母「クラスで?」

愛「学年」

母「学年!?……すごいじゃん!」

愛「……別に」

愛「……ごちそーさま」スタスタ…

母「あ、うん」

母「………」

母「………」

母「………」

母「はぁ………」

154: 2021/01/04(月) 00:50:50.00 ID:21FkeZYT
愛「………ねぇ」

母「!……ん?」

愛「……その」

母「……?」

愛「髪、似合うかな……」

母「………」

愛「………///」

母「……んーー」

母「ちょっと待ってな」

愛「?」
 
 
 
──────
────
 
 
 
母「うん、いい感じ、似合うじゃん」

愛「このスカーフ、おかーさんの?」

母「あげるよ、昔使ってたやつ」

愛「……あ、ありがと………」

母「はーあ、あたしも金髪に戻そっかなー」

愛「!!?え!?金髪だったの!?」

母「あれ?言ってなかったっけ」

愛「知らないよ……」

155: 2021/01/04(月) 00:51:43.50 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
母「愛ー?」

愛「なに?」

母「またお店手伝って欲しいんだけど?」

愛「……えー……」

美里「私からもお願い♪」ヒョコッ

愛「わっ!?おねーちゃん!?」

美里「わたしも手伝うからっ」

美里「今日はなんだか身体の調子が良いの」

美里「愛ちゃんが一緒なら、もっと元気になる、かも?」

愛「………」

愛「……おねーちゃん出すのは反則じゃん………」

美里「ふふふっ♪」

156: 2021/01/04(月) 00:53:28.86 ID:21FkeZYT
──────
────
 

 
 
愛「ありがとうございました〜!」

美里「ありがとうございました~」
 
 
愛「……ふぅ」

母「愛、美里ちゃん、そろそろ上がっていいよ」

美里「あ、はーい」

母「2人とも好きな席座って?美里ちゃん、もんじゃ食べてきなよ」

美里「いいんですか?」

母「もちろん!」

母「……おとーさーん、焼いてあげてーー」
 
 
 
父「おう」

157: 2021/01/04(月) 00:54:36.08 ID:21FkeZYT
父「注文は?」

美里「……えっと」

愛「コーン」

愛「ベーコン」

愛「明太子」

愛「ウィンナー」

愛「チーズ」

愛「あと、おもち」

美里「ちょっと愛ちゃん、そんな」

父「ああ、いいからいいから」

父「今持ってくる」
 
 
 
美里「もう、愛ちゃん?」

愛「いーのいーの」

158: 2021/01/04(月) 00:55:50.06 ID:21FkeZYT
父「はい、お待ちどう」

父「……」ザバッ……ジュゥゥゥウ……!

父「……」ジュージュー!

美里「わぁ、いい匂い……」

父「……」トポトポトポ……ジュゥゥゥウ

父「……」カチャカチャ

父「……」

父「……」
 
 
グツグツ……
 
 
父「……よし」

159: 2021/01/04(月) 00:57:57.11 ID:21FkeZYT
父「はい、これ使って」

美里「ありがとうございます」

美里「いただきますっ」

愛「………いただきます」

愛「……あっっつ!」

父「……」

父「……気をつけてな」

愛「あ………うん」

美里「大丈夫?」

愛「ヘーキヘーキ」

父「……」

父「愛」

愛「……なに」

父「今日は、ありがとな」

愛「え」

愛「……ああ、うん」

愛「……」

美里「ん~~♪」モグモグ

160: 2021/01/04(月) 01:00:41.69 ID:21FkeZYT
母「ふふふっ♪」

父「……なんだよ」

母「んー?別に?」

父「………」

母「………」

母「また、手伝ってくれるかな、あの子」

父「………」

父「………」

父「……だと、いいな」

161: 2021/01/04(月) 01:05:58.70 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
 
  
璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(せっかく、話しかけてくれたのに……あの日からもう、ずっと話してない)」

璃奈「(……でも、私と一緒にいて、嫌な気持ちになるよりは、いい)」

璃奈「………」

162: 2021/01/04(月) 01:08:58.05 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」カキカキ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

「おー、感心感心」

璃奈「!………先生」

「ありゃ、あんま驚かないね?こうやっていきなり声かけると、みんなびっくりするんだけど」

「よくここで勉強してるの?」

璃奈「……はい」

「そっか〜」

「邪魔しちゃったね、なんかわかんないとこあったら先生のとこ来なね」

璃奈「はい、ありがとうございます」

璃奈「………」

璃奈「(びっくりした……)」

163: 2021/01/04(月) 01:11:31.21 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「平均いった?」

「ギリいったけど……」

「みんなそんなにできてないっぽい」

「なに、聞いて回ってんの?やらし〜」

「こうなったらクラス最高点探し出してやるわ」

「なんのために……」

「あとは………あっ、天王寺さん!何点だった?」

璃奈「えっ、えっと、92点」

「………」「………」

「平均いくつつったっけ」「52」

「………」「………」

璃奈「あの……」

「すごいね!多分クラスで一番じゃないかな?!」

「わ、この問題わかる人いるんだ……よく解けたね」

璃奈「そうかな」

「そうだよー」「すごーい!」

「(………)」「(………)」

「(……あー、そういう感じか)」

「(できて当然て感じ?……私苦手かも……)」

164: 2021/01/04(月) 01:14:02.92 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「どういう子なの?」

「さぁー……」

「同じ小学校だった人とか、いないん?」

「あー、どこ小だったっけかな、知ってる?」

「知らん」

「そいえばテストのことで話してたでしょ」

「あー、『こんなのできて当然でしょ』みたいな」

「うわ」

「あー、あーそういう、ね……」

「つまんなそーーな顔してたよ」

「なんかさ、ロボットみたいだよね、あの顔」

「目、怖くない?」

「あー、わかる」

165: 2021/01/04(月) 01:16:42.43 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「そんでその後さー」「うんうん」スタスタ………ポトッ
 
 
璃奈「!」

璃奈「……」ヒョイッ

璃奈「………」

璃奈「っ……」
 
 
璃奈「あ、あの、」

「え?」

璃奈「これ、落ちたよ」

166: 2021/01/04(月) 01:20:23.67 ID:21FkeZYT
「あ、ああ、ありがと……」

「………」
 
 
璃奈「(怖がられてる……)」

璃奈「………」

璃奈「……っ…」

「?」「……?」

璃奈「……」
 
 
璃奈「(……笑わ、なきゃ)」
 
 
璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ)」

璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ)」
 
璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ)」

167: 2021/01/04(月) 01:29:09.40 ID:21FkeZYT
璃奈「……」

璃奈「……」ニィ…

「ひっ…!」「っ!?」

「い、行こっ」「うんっ」スタスタスタ
 
 
「……ヤバ……」
「…………キモ……」
 
 
 
璃奈「…………」

168: 2021/01/04(月) 01:37:16.54 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……また、嫌われちゃった)」

璃奈「………」

璃奈「(痛い、苦しい……)」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(………本当に?)」

璃奈「(痛い顔も、苦しい顔もできないのに)」

璃奈「(涙も、流れないのに)」

璃奈「(本当に……痛い……?)

璃奈「(……苦しい……?)」

璃奈「……………」

璃奈「………」

璃奈「………私…は………」

璃奈「………」

璃奈「………」

169: 2021/01/04(月) 02:03:06.79 ID:21FkeZYT
お父さんの工具箱、どれも使いやすくて良いものが揃ってる

そのうちのひとつを取り出して、机に向かう

薄い暗がりの中、机のライトをつけると、その周りだけがぼんやりと照らされる

左手を机の上にそっと置くと、光のせいか、その手はいつもよりいっそう白く見えた

まるで、冷たい光が、手の熱をどんどん奪っていくみたい

右手で握り締めたものから、チキチキと音がなって、少しずつ刃が伸びる

左手首にその刃を押し付けて、
 
少しずつ、

少しずつ力を入れていく。

そのまま、手前に少し引いた
 
 
璃奈「っ……」
 
 
痛い……痛い

良かった、ちゃんと流れてるんだ

私は、ロボットじゃないんだ

170: 2021/01/04(月) 02:10:33.96 ID:21FkeZYT
──────
 
 
「ただいまー……」
 
 
──────
 
 
 
 
璃奈「!」
 
 
 
 
 
 
 
 
ガチャ…


母「……ただいまー………」


璃奈「………」


母「………」

璃奈「………」

母「………」ナデナデ

母「……おやすみ」

璃奈「………」

母「………あら」

母「(工具箱?何か作ってたのかしら)」

母「(これなんか、刃も出しっぱな……し……)」

母「……!!」

璃奈「………」
 
 
 
璃奈「(………もう、眠いや……)」

171: 2021/01/04(月) 02:12:55.23 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「……んぅ……」パチ…

璃奈「………ふぁぁ……」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「……あれ」

璃奈「(……包帯、巻いてある)」

璃奈「………」
 
 
 
──────
 
 
 
母「あ、おはよう璃奈ちゃん。朝ごはん、ちょっと待ってて」

璃奈「!」

璃奈「………仕事は……?」

母「ないわよ〜」

璃奈「でも、いつもは……」

母「……いいのよ、今日は休みっ」

璃奈「……?」

母「朝ごはん食べたらお出かけしましょ」

璃奈「……この、包帯」

母「ん?あー、ちょっと目立つわね。あ、そうだ、お父さんに貰ったあのパーカーなら隠せるんじゃないかしら」

璃奈「えっと、そうじゃなくて」

母「さ、できた。食べましょ?」

璃奈「あ………うん」

174: 2021/01/04(月) 02:22:25.95 ID:21FkeZYT
今日は、珍しく電車で出かけた

お父さんに文句言いそびれちゃったからって、洋服を買いに行った

雑貨屋さんを見て回ったりもした

お昼ご飯に寄ったお店で、

お母さんは、昔の私の話、自分の子どものときの話、お父さんの話、親戚の話、いろんなお話をしてくれた

少し無理して、たくさん話してるみたいだった

午後は、久しぶりに一緒に観れるねって、映画を観にいった

映画の途中、ふと隣にいるお母さんの方を見たら、ちょうどお母さんも私の方に顔を向けた

暗くてよく見えなかったけど、その顔はなんだか悲しそうだった

映画の後は、しばらく歩いて、早めの夕食を食べにまたお店に寄った

お母さんは、お昼のときよりも口数が少なくなったけど、時折私の方を見て、嬉しそうに笑っていた

帰りにショートケーキを買って、そうして家に帰ってきた

お母さんと1日ずっと一緒にいられた、それだけですごく嬉しくて、だけど

だけど私は今日、お母さんの目から、顔から、自分の顔を逸らすように俯いていた

電車の中でも、歩いているときでも、私の左手はずっと、お母さんの右手に包まれて暖かかった

家に着いたとき、お母さんが私の手を握る力が、

少し、強くなった

175: 2021/01/04(月) 02:25:46.93 ID:21FkeZYT
璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「……なにか、あったの」

母「………」

母「……ううん、何も」

璃奈「………」

璃奈「……やっぱり、お母さん今日、変だよ」

母「そう?」

璃奈「……うん」

母「………」

母「………そうね、変だったかしら」

璃奈「………やっぱり、なにかあったの」

母「………」

母「………」

母「お母さんね、」

母「仕事、辞めようと思うの」

176: 2021/01/04(月) 02:28:30.58 ID:21FkeZYT
璃奈「……どうして」

母「璃奈ちゃんとずっと一緒にいるためよ」

母「………ごめんね、ごめんね璃奈ちゃん、もっと早くこうするべきだったのにね」

母「もっと……早く気づいてあげなきゃいけなかったのに……」

母「……璃奈ちゃん」ギュウ……

璃奈「……お母…さん」

母「ごめんなさい……っ…親、失格よね……」

母「ごめんね、こんなになるまで……っ…放っておくなんて……っ…ごめんね……」

璃奈「……どうして、謝るの」

璃奈「お母さんは、何にも悪くないよ」

母「………」

母「………」

母「その手首の傷、自分でやったでしょ」

璃奈「……!」

母「傷痕なんて仕事で何度も診てるもの。すぐわかったわ」

母「……お母さんが、傷つけたようなものよね……」

璃奈「違う……!」

177: 2021/01/04(月) 02:29:53.08 ID:21FkeZYT
璃奈「お母さんは悪くない、私が、私が頑張れなかったから、お母さんも、お父さんも頑張ってるのに、私が頑張れなくて、うそつきで、弱かったから」

璃奈「私が自分でやったの、お母さんは悪くないの」

璃奈「全部、私が悪いの」

母「違うわ!璃奈ちゃんこそ何にも悪くないっ…!!」ギュッ

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「ねえ、お母さん」

璃奈「お仕事、辞めないで」

178: 2021/01/04(月) 02:34:05.53 ID:21FkeZYT
母「……!」

母「どうして……」

璃奈「……お母さんのことも、お父さんのことも、すき」

璃奈「それに、たくさんの人を助けるために頑張ってる、かっこいい2人がすきなの」

璃奈「私の、自慢なの」

母「!!」

璃奈「お母さんも、助けたい人がたくさんいるから、お仕事続けてるんでしょ」

璃奈「私は、大丈夫だから」

母「………」

母「………」

母「……ほんとに、いいの……?」

璃奈「うん」

母「………」

母「……璃奈ちゃん………」

母「…………璃奈ちゃんは……本当に優しいのね」

母「お母さんも、優しい璃奈ちゃんが大好きよ……!」ギュウ……

璃奈「……お母さん……」ギュウ……

璃奈「……心配しないで。もうあんなこと、2度とやらないから」

母「……うん」

璃奈「それにね、今は前よりは寂しくないよ」
 
 
ニャー、ニャー
 
 
母「……あの子は?」

璃奈「あたらしい家族だよ」

璃奈「お父さんがくれたの」

母「……」

母「ふふ、そう……♪」

183: 2021/01/04(月) 20:19:01.37 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 

美里「あ、愛ちゃんいらっしゃい……ごほっごほっ」

愛「ああ!!起き上がらなくていいって!!」

美里「……うん………」

愛「いろいろ買ってきたよー、飲み物と、ゼリーでしょー、あとあとー……」

美里「……ごめんね……」

愛「あ!もー!謝んのナシ!っていつも言ってんじゃん!」

美里「ふふっ、そうだったね」

愛「あ!それよりさ、みてみて!」

愛「じゃーん、お土産!木刀!」

美里「あ、修学旅行の?」

愛「うん、しゃきーん!とりゃっ、とうっ!」

美里「ふふふ、もう、愛ちゃんったら」

美里「っ!ごほっごほっ!……けほっ」

愛「おねーちゃん!!!大丈夫!?」サスサス

美里「はぁっ……はぁ……」

美里「………ごめん、ね……」

愛「…っ……」

愛「大丈夫……?」

美里「うん、もう平気」

184: 2021/01/04(月) 20:19:46.92 ID:21FkeZYT
美里「……ふふ、でも、愛ちゃんが修学旅行楽しめたみたいでよかった」

美里「私の分も楽しんできてって言ったもんね」

愛「!」

愛「………」

愛「……ごめん……1人だけ、はしゃいじゃって……」

美里「……もう、どうして愛ちゃんが落ち込むの?」

愛「だって……」

美里「愛ちゃんが楽しかったなら、私も嬉しいのよ?」

美里「仕方ないわ、ほら、私、こんなんだしね」

美里「…………」

愛「………」

愛「………」

185: 2021/01/04(月) 20:22:49.17 ID:21FkeZYT
愛「……じゃあさ」

愛「はいこれ!」

美里「え?」

愛「この木刀で病気なんかボックボクにしてトーウってやっつけてよ!」

美里「………」

美里「……ふっ、ふふっあははっ!」

愛「!」

美里「もう、どうしたの急に?」

愛「え、いやさ……おばーちゃんがたまーにダジャレ言うからさ」

愛「……えへへ、言ってみただけ!」

美里「ふふ、そうなの?」

愛「うん!」

愛「……♪」

186: 2021/01/04(月) 20:24:23.04 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「それでは、午後からは中学校ごとに別れて自由に見学してください。わからないことがあれば、担当の生徒に聞いてください」
 
 
「どこか行きたいとことかあるかな?」

愛「はいはい!向こうのおっきい建物行きたいです!」

「あー、部室棟か」

「オッケー、じゃあみんなで行こうか」
 
 
──────
 
 
愛「………」

愛「………」

愛「広っっ!!!」

「あははっ、部室棟の敷地だけでそこらの高校ひとつ分の面積あるらしいよ?」

愛「へぇー……!」

愛「部活ってどれくらいあるんですか?」

「そりゃもういっぱい、としか言えないかな」

「同好会だけでも、もう少しで100超えるとか言われてるし」

愛「100!?」

愛「……楽しそー……!!!」

「見て回るだけでも大変だけど、ウチに入ったら色々体験入部とかしてみるといいよ」

愛「はいっ!」

187: 2021/01/04(月) 20:25:46.15 ID:21FkeZYT
愛「そーいえば、学科もいっぱいあるんですっけ」

「そうだよ。あー、でも、一般受験枠はほぼ普通科だけどね」

愛「そうなんですか?」

「うん。普通科じゃないとこは、ほぼ内進組か編入組が占めてる感じ」

「普通科以外の学科にも、一般の筆記とか実技とかの試験で入ってくる子も一応いるにはいるけど、倍率高いしやめたほうがいいよ?特に理系の方とか」

愛「……理系……」

愛「……ふふっ」

「?……どうかした?」

愛「え?ああ、いえっ、なんでも」

愛「あ、じゃあ」

愛「この学校でいっちばん理系っぽいのって、どこですかね?」

188: 2021/01/04(月) 20:27:43.74 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「たり~」

「てか、どした?それ」

「ブたれた」

「親?」

「ん」

「は?クソじゃん」

「な~」

「今日どうする?」

「ファミレス?」

「もう金ねーわー」

愛「………」

愛「………」

愛「……あ、あのさっ」

189: 2021/01/04(月) 20:30:38.95 ID:21FkeZYT
「ん?」

愛「えっ……と」

「どした?」

愛「……これから先、さ、ちょっと、付き合い悪くなるかもしんない」

「………」

「ふーん」

愛「……ごめん」

「別に謝るとこじゃなくねw」

愛「……そう?」

「ね」

「バイトとかで?」

愛「いや……勉強する!」

「真面目かw」

「真面目かww」

「やっぱ愛さんてほんとは頭いーでしょ」

「お前と違ってなw」

「は?うっせ黙れ」

「www」

愛「ふふっ」

「まあ、でもほら、息抜きとかしたくなったらまた遊ぼ?」

「うんうん」

「べんきょー頑張って~」

愛「うんっ、ありがと♪」
 
 
愛「(やっぱり、おねーちゃんの言った通り、アタシの友達はみんないい子、かな?……♪)」

190: 2021/01/04(月) 20:32:13.52 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
愛「………」カキカキ…

愛「………」

愛「………」

美里「………」

美里「……私の部屋なんかで集中できる?」

愛「うん」

美里「……ほんと?やっぱり出ていこうか?」

愛「やだ、わからないとこあったらおねーちゃんに教えてもらいたいし」

美里「ふふ、わからないとこなんて特にないんでしょ?」

愛「うっ……今のところは……」

愛「でもでもっ、後から出てくるかもしれないし……」

愛「だからその時は教えて!この問題の答えは?こんなもんだいっ!って」

美里「うふふっ、わかったわ」

美里「………ねぇ、愛ちゃん」

愛「ん?」

美里「ひとつ聞いてもいい?」

愛「なーに?」

美里「どうして情報処理学科なのかなーって」

愛「んー、それはねぇ~」
 
 
 
 
 
『愛ちゃん算数得意なんだ、すごいね!』
 
『じゃあ愛ちゃんは将来理系かな?』
 
 
 
 
 
愛「ふふふっ!内緒♡」

191: 2021/01/04(月) 20:34:39.03 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
愛「………」ジーーー

愛「………」

愛「………」

愛「………」

愛「ん~~~~~………?」

愛「………」

愛「………!」

愛「……!!」

愛「あっ、あっ!あった!!」

愛「あったあったあった!!!」

愛「おばーちゃーーーん!!!!!あった!!!受かってたよっ!!!」

祖母「おや!そうかい!良かった良かった」

愛「おばーちゃぁん……!!」

祖母「すごいねぇ、よく頑張った!」

祖母「流石ばあちゃん自慢の孫だ」

祖母「……おや、もう少しで撫でるのもできなくなっちまいそうだ」

祖母「大きくなったねぇ」

愛「あははっ、大袈裟だなぁー」

愛「でも、大きくなれたのはおばーちゃんが作ってくれるご飯のおかげ!」

愛「私が今までいーーろんなことができてたのも、この体が……」

祖母「あったカラダっ!、かい?」

愛「あっ!!もー!!取らないでよぉ~」

祖母「あっははは!」

愛「あははははっ!♪」

愛「………ありがとね、おばーちゃん」

192: 2021/01/04(月) 20:37:05.47 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「────、では最後に、改めて入学おめでとうございます。明日はオリエンテーションと全校集会があるので、8時50分までには教室にいてくださいね」

「では、また明日」
 
 
「「「「「さよーならー」」」」」
 



「このあとどうする?」

「どっか行く?」

愛「じゃあカラオケ行かない?」

「いーね!」

「どこのカラオケ?」

「ここだとひとつくらいしかなくない?」

「そーなんだ。私この辺あんま知らないんだよね」

愛「家遠い感じ?」

「うん」

愛「あ!じゃあさ、今度みんなでお台場巡りしよーよ!」

「いいねいいね」

愛「あ、でもでも」

愛「お台場巡りのお代は高いぞ!なんちゃって!」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………え、なに言ってんの?」

愛「え!?」

193: 2021/01/04(月) 20:39:14.47 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「バスケ部でーす!お願いしまーす!」

「一緒にバレーやりませんかー?」

「テニス部でーす!初心者も大歓迎ーー!」
 
 
 
愛「うわー、やっぱり多いなぁ」

「宮下さんはやっぱ運動部?」

愛「うーん、どうだろ?」

「違うの?」

愛「違うっていうか、どれもやりたいんだけどー……」

「あー、迷っちゃうよね」

194: 2021/01/04(月) 20:42:12.17 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「どこ入った?」

「私?バスケ部」

「へー」

「そっちは?」

「流しそうめん同好会」

「……………?……………あ、そー…なんだ……へぇ……」
 
 
 
 
 
愛「……部活ってほんといろいろあるんだね~」

「ねー」

「でも、多すぎて人が分散しちゃってたりして、試合出れないとこもあるらしいよ」

愛「そういうときってどうするの?」

「運動できる子に声かけて、助っ人とか頼むみたい」

愛「……へえー、助っ人かぁー」

愛「いいこと聞いちゃった……♪」

195: 2021/01/04(月) 20:45:41.11 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
美里「愛ちゃんはもう部活とか入ってるの?」

愛「ん?入ってないよ」

美里「え?そうなの?」

愛「うん」

美里「そう……なんか意外ね。てっきり運動部とかに入ると思ってたわ」

愛「あ、でも助っ人ならしてるよ!」

愛「バスケ部にハンドボール部に、テニスとサッカーでしょ、あとバレーとかも!」

美里「ふふ、いろいろやってるのね」

愛「うん!」

愛「………約束、だからね」

196: 2021/01/04(月) 20:47:48.42 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
  
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
 
 
 
愛「勝ったー!」

「お疲れ様ー」

「いつもありがとね愛ちゃん」

愛「いいっていいって!」

「それにしても、ほんと足速いよね」

「うんうん!」

愛「そう?そんなことないって」
 
「………」

「ねえ、そろそろさ、正式に部に入らない?」

愛「………」

「どう……?」

愛「……」

愛「んー……」

愛「ごめんっ!」

「ダメかぁ……」

197: 2021/01/04(月) 20:50:02.10 ID:21FkeZYT
愛「……アタシね、助っ人でいろんな部にお邪魔させてもらって、いろんな子と知り合って、それでいろんな景色がみられる今の感じがすっごく楽しいんだ!」

愛「それにね、自分が楽しいって感じたたくさんのこと、伝えたい人がいるの」

愛「だから、ごめんね?」

「そっか……」

愛「ごめん、なんか、いろいろ、よくわかんないこと言っちゃった」

「……うん、よくわかんなかった(笑)」

愛「そーだよね、うん(笑)」
 
「お疲れー、どうだったー?」

「ダメだって」

「えー、なんで?」

「これだよ、これ」

「小指?…………マジ!?恋人!!?」

愛「違うよ!???」

「え、違うん?」

愛「違うわ!!!!!///」

「うっわ、テレテレじゃん、ガチかよ」

「このネタで揺すれんじゃね?」

「採用」

愛「こーらー!!!」

198: 2021/01/04(月) 20:53:07.20 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
愛「よっすー、おねーちゃーん」

祖母「こんにちは」

美里「あら愛ちゃん、おばあちゃんも」

愛「検査、どうだった?」

美里「いつも通り、特に問題ないみたいよ」

愛「そっか、良かった」

美里「それより、まだそんな薄着で……もう夏じゃないんだから」

愛「ヘーキヘーキ!」

祖母「もうちっと上着着た方がいいって私も言ってるんだけどねぇ」

愛「ダイジョーブだって!」

美里「もう愛ちゃんったら……」

美里「……」ジーー

愛「?どしたの?」

美里「その花、まだ付けてたのね」

祖母「そういえば、愛ちゃんがそれ付け始めたのはいつ頃からだったかねぇ」

美里「ふふふ、いつ頃だったかしらねぇ」

愛「な、なにさー」

美里「………お父さんとお母さんと、仲良くやってる?」

愛「んー、別に。相変わらず忙しそうだよ」

祖母「愛ちゃんが自分から手伝ってくれるようになって、2人とも喜んどるよ」

愛「あ!もうおばーちゃんてばぁ!」

美里「ふふふっ♪」

美里「よかったね、愛ちゃん」ナデナデ

愛「うっ………」

愛「……うん……///」

200: 2021/01/04(月) 20:56:05.64 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「次、は……」

「天王寺さーん、入ってー」
 
 
璃奈「……失礼します」

「……よし、じゃあ面談始めます」

璃奈「よろしくお願いします」

「えーと、情報処理学科志望ってことだけど……」

璃奈「はい」

「……うん、特に問題なし、このままなら進学できます、って感じ」

璃奈「そうですか」

「……理系得意なのはみればわかるけど、他に志望理由とかってあるのか聞いてもいい?」

璃奈「理由、ですか」

璃奈「えっと………」

璃奈「……小学校の頃から算数とか理科の方ができて、それで、母がそのことを活かせるようにって考えてくれて、そしたらそのときの先生が、ここの高等部の情報処理学科のことを勧めてくれたので……」

「そっか。お母さんが……」

璃奈「はい」

「……うん、娘が無事に進学できて、お母さんも喜んでると思うよ」

璃奈「……いえ」

「?」

璃奈「………」

璃奈「私は……頑張れなかった、から」

201: 2021/01/04(月) 20:59:29.12 ID:21FkeZYT
璃奈「ずっと、何も変えられなかったから」

璃奈「それで、お母さんには、心配ばっかりかけて」

「………」

璃奈「だから私には、喜んでもらえる資格なんか、無いんです」

「………」

璃奈「………」

「そんなこと言わないで?顔、上げてよ」

「数学と理科、3年間ずっとテストで学年上位5位以内だったんだよ?」

「頑張ったじゃん!ね?」
 
璃奈「………」

「きっとお母さんも、お父さんも、もちろん先生だって、あなたが頑張ってたの、ちゃーんと分かってるんだから」

「だからさ、喜んでもらえる資格が無いなんて、そんなこと言わないで」

璃奈「………」

璃奈「はい。ありがとう、ございます」

「ふふふ♪ちょっと早いけど、卒業おめでとう」

202: 2021/01/04(月) 21:02:29.65 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「あ、来てくれた!」

愛「ちーっす!」

愛「どうしたの?人手が欲しいって」

「いやー、実はさぁ」

「新入生勧誘のポスターとビラ配り手伝って欲しいんだよね」

愛「あ、もうそんな季節かぁ」

「大丈夫?」

愛「うん!OK OK」

「ありがと!助かるよ!」

愛「いえいえ!」

203: 2021/01/04(月) 21:05:59.46 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
「ねぇ!勧誘手伝ってくんない?!」

「こっちも!ウチ部員少なくて……頼んでいいかな?!」

愛「え、あー……」

「じゃあウチも!」

愛「え!?」

「じゃあ……」

愛「(わーーーぁ)」

愛「………」

愛「………」

「愛ちゃん?いける?」

「流石にムリ?」

愛「……や!いける!」

愛「全部やったろーじゃん!愛さんに任せなさいっ!!」

204: 2021/01/04(月) 21:13:07.80 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
「────、改めて、入学おめでとう!じゃあ、明日はオリエンテーションと全校集会があるから、8時50分には教室にいるように」

「それでは解散!」
 
 
 
「このあとどうするー?」
「どっか寄ってく?」
「カラオケいきますかー」
「いこいこ、行くの久しぶりだなぁ」
 
 
 
璃奈「………」

璃奈「(校内、見て回りろうかな)」
 
 
 
──────
 
 
 
璃奈「………」トコトコ

璃奈「(……わぁ………)」

璃奈「(……中等部の校舎よりずっと大きい………迷っちゃうかも)」

205: 2021/01/04(月) 21:16:21.14 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「お願いしまーす!」

「すみません!ソフトテニス部ってないんですか?」

愛「ソフトテニス?あるよ!」

愛「今テニスコートで体験入部みたいのやってたと思うよ!」

愛「場所わかる?」

「どこですか?」

「えっとね……あー、一緒に行こっか!」

「はい!ありがとうございます!」



──────
────
 
 

愛「お願いしまーす!」

愛「ねぇねぇそこのキミ!背高いねー!バレー興味ない?」

「えっと……」

愛「バスケは?」

愛「じゃあー、ハンド?」

「……あの……」

愛「………あ」

愛「どっかの部に行くところ?」

「!」

「……あの、服飾同好会って……」

愛「ああ!案内するよ!」

「あ、ありがとうございます」

愛「こっちこっち」

207: 2021/01/04(月) 21:20:48.82 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「(部室棟、ここも広い……)」トコトコ
 
 
「じゃあまた!」ガラララ…
 
 
「次はバスケ部か、急げ急げー………わっ!」 

璃奈「!!」
 
「ごめん!!ぶつかるとこだったね、だいじょーぶ?」

璃奈「はい」

「そっか!なら良かった、ほんとごめんねっ」

「そんじゃーね!」タッタッタッ

208: 2021/01/04(月) 21:25:08.56 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「(今の子……)」

愛「(かぁわいかったぁぁ~~!)」

愛「(あの子も部活見に来たのかな……?)」

愛「(せっかくだし勧誘しとけばよかった~)」

愛「(っとと!それより早く行かなきゃ!)」タッタッタッ

209: 2021/01/04(月) 21:29:27.13 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
「バドミントン部どこですか?」

愛「バド部は今向こうの奥の……あ、ほら!ラケット見える」

「あっほんとだ!ありがとうございます!」

愛「いえいえ!はい次の人!」

「卓球部は……」

愛「卓球部は2階だよ、そこの階段上がって左に3つ目の部屋」

「ありがとうございます!」

愛「いえいえ!はいお次は?」

「書道部の活動場所教えて下さい!」

愛「書道部って、たしか今教室棟の方でなんかやってなかった?」

「そうなんですか?」

「うん。そっちの方に行けば案内ポスターとかあったはずだよ」

「分かりました。ありがとうございます」

愛「いえいえ~」

愛「次……」

愛「あっ……」

「………なにしてんの……?」

愛「や、これはその……」

「いつから案内係になってたん……」

愛「あ、あはは……」

210: 2021/01/04(月) 21:34:45.51 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
「貼り終わった?」

愛「後1枚!」

「OK」

愛「こんなとこにもポスター貼るんだね……よいしょっ」

「同好会は数が多いからさ、部じゃないと電光掲示板使わせてもらえないんだよねぇ」

愛「へぇー、大変なんだ」

「そーそー」

愛「………よしっ、と。じゃあ次のとこ行こうかな」

「愛こそ大変じゃない?」

愛「そうでもないよ♪まぁあっちこっち行ってて流石にちょっと疲れたけど、でも!新入生といっぱい喋れたし!」

「おー、さすが愛さん!」

愛「へっへーん」

「頑張ってねー!」

愛「ありがと~!」
 
 
 
────────
 
 
 
「そっち貼り終わったー?」

「ばっちりー、さっきまで愛さんに手伝ってもらってたー」

「そっかー、よし、じゃあひとまずてっしゅー」

「ほーい」

「……ん、風強くなってる?」

「うん、あ、ねぇ聞いた?」

「何?」

「午後からちょっと天気悪くなるらしいよ」

211: 2021/01/04(月) 21:38:38.69 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
愛「おーい!来たよー!」 

「あ!おーい!」

愛「入部希望者いた?」

「興味持ってくれた子は何人かいたけど、入部してくれるかはわかんないなぁ」

愛「そっか、でも、興味持ってくれたんなら可能性あるっしょ」

「そだね」

「そういえば、さっき誰か案内してた?」

愛「さっき?ああ、新入生かな」

愛「たくさん案内したからどの子かわかんないや」

「あはは、やっぱ請け負いすぎじゃないの?」

愛「かもねー」

「やっぱり体力あるなー………」

「………あれ?」

愛「どしたん?」

「……今日は」

「頭の花飾り、付けてないんだね」

愛「……」

愛「………え………?」

212: 2021/01/04(月) 21:42:52.90 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「………あれ」

璃奈「これ……」

璃奈「(造花……?)」

璃奈「………」

璃奈「(さっきの人の……?)」

璃奈「(落としちゃったのかな)」

璃奈「………」

璃奈「(届けないと、だよね)」

璃奈「………」

璃奈「………」スッ……

璃奈「……!」ピタッ…

璃奈「………」

213: 2021/01/04(月) 21:47:17.41 ID:21FkeZYT
────────
 
『でねー』『うんうん』

『あっ』

『あの、』

『え?』
 
────────
 
 
 
璃奈「…………」
 
 
 
────────
 
『これ、落ちたよ』

『あ、ああ、ありがと……』

────────
 
 
 
 
璃奈「………」

214: 2021/01/04(月) 21:52:15.45 ID:21FkeZYT
────────
 
……笑わなきゃ

笑わなきゃ、笑わなきゃ

笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ
 
笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ
 
────────
 
 
 
 
璃奈「………」
 
 
 
 
────────
 
『ひっ…!』『っ!?』

『い、行こっ』『うんっ』
 
 
『……ヤバ……』
『…………キモ……』

────────
 
 
 
 
 
璃奈「…………」

璃奈「………」

璃奈「……」

215: 2021/01/04(月) 21:57:14.60 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「はぁッ、はぁッ、はぁッ、はぁッ……」タッタッタッッ

愛「(無い……無い……!!……どこ……どこで落とした……風で飛ばされた?)」

愛「(部室棟の中?1階?2階?外?グラウンドの方?テニスコート?)」

愛「見つけなきゃ……早く……!!」
 
 

 
愛「(ない……じゃあ、あっち……?)」
 
 
 
 
愛「(ここにもない……)」
 
 
 
 
 
愛「(ここにもない……!)」
 
 
 
 
 
愛「ないっ………!!」
 
 
 
 
 
愛「(どこ……)」
 
 
 
 
 
愛「(どこ行っちゃったの……?……っ!)」

216: 2021/01/04(月) 22:00:14.76 ID:21FkeZYT
おねーちゃんにもらった大切なお花、失くしちゃった……

あの花を付けてると、いつもおねーちゃんを近くに感じられて、なんだかお守りみたいで、安心できた、のに………

それなのに、失くしちゃった……

アタシが気づかなかったせいで、どこかに……いっちゃった………

絶対、失くさないって、言ったのに……
 
 
 
 
愛「……っ」ポロポロ…

愛「っ!」

愛「あ、だめ、……泣いちゃ……」
 

 
「あ、おーい!愛~何してんの~!」
 
 
 
愛「っ!!」

愛「…っ……」

愛「……!」ダッッ!
 
 
 
「あれ!?………行っちゃった……」

217: 2021/01/04(月) 22:03:53.20 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
璃奈「(……きっと……誰かが拾ってくれる……)」

璃奈「(そう、だよ……)」

璃奈「(わたしが拾って届けても、不気味なだけ)」

璃奈「(だから……私じゃなくても……)」
 
 

────────

『璃奈ちゃんは本当に優しいのね』

『お母さんも、優しい璃奈ちゃんが大好きよ』
 
────────
 

璃奈「…………」

璃奈「…………」

璃奈「…………」

218: 2021/01/04(月) 22:09:22.72 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「……」トボトボ……

愛「……」

愛「(……逃げ、ちゃった………)」

愛「……ぅうっ………」ポロポロ

愛「(泣きたく、ないのに………泣いちゃっ……ダメなのに…………!)」

愛「どうしよ……っ失くしっ…ちゃった……っ……」

愛「……っごめん……おねーちゃん…っ……」

愛「……ひぐっ……っ……うぅっ……」ポロポロ…

愛「………あ」

愛「………雨……?」
 
 
ゴロゴロゴロ………ピシャーン!!
 
 
愛「ひゃっ!!?」

愛「……ぁぅ……っ…」

愛「(……濡れる……寒い……っ…雷……音…っ…大きい……)」

愛「……っ……うぅ…っ……」ポロポロ

愛「(……ダメ……っダメなのに………っ……泣き虫の、アタシに……)」

愛「(戻っちゃう………)」

219: 2021/01/04(月) 22:14:38.01 ID:21FkeZYT
「………はぁ…はぁ………いた」
 
 
 
愛「……どこっ……っ……行っちゃっ……たんだよぉぉ……っ……」ボロボロ
 
 
「………」
 
 
愛「……ひっ…っ……うぁぁ……っ……」
 
 
「………」

「………」

「あの……」
 
 
愛「ぅぅぅう……っ……クスンッ…っ…」

「あのっ」

愛「わっ!?」

愛「えっ!??」

愛「なっ、なっ、……!?」

「これ」スッ…

愛「……?」

愛「!!!!!」

愛「これ………!!」

愛「どこに」

「そっ、それじゃあ……」タッタッタッッ

愛「あっ………待っ……」

愛「……ありがとっ!!!」

222: 2021/01/04(月) 22:19:58.78 ID:21FkeZYT
愛「………」

愛「今のって………」

愛「………」

愛「………」

愛「………」

愛「……あ……」

愛「……お花、戻って、きた…………」

愛「………」

愛「………」

愛「……っ…!」

愛「戻ってっ…っぎだぁ……っ……!」

愛「っ……うっ…………っ…」

愛「…っ……よがっだ………」

愛「……っ……んぅぅう……っよがっだぁ……っ!!」

愛「ぅぁぁ……っ…」

愛「……っ…」

愛「……!」
 
 
愛「……あっ……」

223: 2021/01/04(月) 22:25:00.05 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 

璃奈「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

璃奈「……はぁっ……」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……あの人、泣いてた。大丈夫かな)」

璃奈「(でも)」

璃奈「(ありがと、って言われた)」

璃奈「(言ってくれた)」

璃奈「(言ってもらえた)」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(手を伸ばして、拾って、)」

璃奈「(届けられて、よかった)」

璃奈「………」

璃奈「………」

璃奈「(……晴れてきた)」
 
 
璃奈「あ」
 
 
 
 
 
 
 
 
「「 虹…… 」」

224: 2021/01/04(月) 22:37:11.71 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
愛「………」

愛「………」

愛「……ん~~~………」

美里「どうかしたの?」

愛「ん~~?ちょっとねー………」

美里「?」

美里「今日何かあったでしょ?」

愛「うぇ!?」

愛「べっ別に?」

美里「やっぱり何かあったのね」

愛「……あっはは、おねーちゃんにはお見通しかー」

美里「ふふふっ」

美里「それで?何があったの?」

愛「………」

愛「……実はね」

愛「今日さ、ちょっと落とし物しちゃってね、それで学校中探してて」

愛「もうめちゃくちゃ探し回ったんだけど全っ然見つかんなくてさー」

愛「もうヤバい!どーしよーー!ってなってたんだけど、」

愛「そしたらね!1年生の子が届けてくれたの」

愛「渡してくれた後、すぐ走ってどっか行っちゃったんだけどね」

愛「とにかく本当に助かったんだよ。あの子がいなかったらまだ探してたかも」

美里「そうだったの。あ、じゃあ今考えてるのってそのお礼とか?」

愛「……うん、まぁそんなとこ」

愛「(……ホントは、あの子が最後に見たアタシの顔が泣き顔のままじゃ嫌!っていうのが1番だけど)」

愛「(とにかく、もう1回会って、今度はちゃんと話したいな)」

225: 2021/01/04(月) 22:44:46.36 ID:21FkeZYT
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 
 
──────
 
     :初登校はどうだったかな?

──────
 
 
 
母「………」

母「………」

母「(ふぅ、休憩終わり)」

母「(さ、そろそろ戻らないと)」
 
母「!」
 
 
 
──────
 
     :初登校はどうだったかな?

璃奈ちゃん:先輩に落とし物届けたよ

璃奈ちゃん:(スタンプ)

──────
 
 
 
母「ふふっ♪」

226: 2021/01/04(月) 22:50:15.70 ID:21FkeZYT
──────
 
     :初登校はどうだったかな?

璃奈ちゃん:先輩に落とし物届けたよ

璃奈ちゃん:(スタンプ)

     :すごい!良いことしたね?

     :(スタンプ)

──────
 
 
 
 
──────
 
     :初登校はどうだったかな?

璃奈ちゃん:先輩に落とし物届けたよ

璃奈ちゃん:(スタンプ)

     :すごい!良いことしたね?

     :(スタンプ)

璃奈ちゃん:お母さんが勇気をくれたの

璃奈ちゃん:ありがとう

──────

227: 2021/01/04(月) 22:56:31.99 ID:21FkeZYT
──────
────
──

 
 
 
 
ppp! ppp! pppp! pppp!
 
 
璃奈「………ん」

璃奈「……ぅむ……」カチッ

ピッ………

璃奈「………」

璃奈「……んーーー………」
 
 
 
 
──────
────
 
 
 
 
璃奈「……ふぁぁ…………」

璃奈「………あっ」

228: 2021/01/04(月) 23:02:25.83 ID:21FkeZYT
──────

おはよう!
ちょっと時間あったからサンドイッチ作っておいたよー!
いってらっしゃい!

──────
 
 
 
璃奈「(♪)」

璃奈「……いただきます」

璃奈「……」パクッ

璃奈「……」モグモグ

璃奈「……♪」
 
 
 
 
──────
────
 
 
 
 
ニャー、ニャー

璃奈「………」ナデナデ

璃奈「……よし」

璃奈「行ってきます」

230: 2021/01/04(月) 23:08:59.47 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
「きりーつ」

「礼!」

「「「「「「ありがとうございましたー」」」」」」
 
 
 
「はー終わった終わったー」
「午前授業最高」
「この後どうする?」
「ご飯?」
「ファミレス行こーよ」
「そだね」
 
 
 
璃奈「(………)」

璃奈「(……食堂とか、行ってみようかな)」






──────
────
 
 
 
璃奈「(……広いっていっても、やっぱりお昼になればこんなに混むんだ)」

璃奈「(席、空いてるかな……)」

璃奈「………」

璃奈「(今日は、いいか……)」

璃奈「(家に食べるもの、あったかな)
 
 
「どーしたの?あ、席無かった?」

璃奈「えっ」

「あっ!!!君……!」

璃奈「!」

231: 2021/01/04(月) 23:14:27.71 ID:21FkeZYT
「……やった、あははっ!やぁーっと見つけた~!」

「この間はホントありがとね!これ、拾って届けてくれて」

璃奈「……いえ」

「……これ、すっごい大切なものなんだ」

「今度何かお礼させて?」

璃奈「お礼なんて、別に」

「させてもらわないと愛さんが困る!」

「あ、ところでさ、これからお昼?」

璃奈「えっと……はい」

「そーなんだ!じゃあさ、外で一緒に食べない?」

璃奈「えっ」

璃奈「……なら、買ってこないと………」

「いいよいいよ!アタシのお弁当あげる!一緒に食べよ?」

璃奈「えっ、そんな」

「いいっていいって!」

232: 2021/01/04(月) 23:19:35.39 ID:21FkeZYT
「………あ!そうだ!」

「その後さ、愛さんのダジャレショー!、お昼のついでに御いっショー!しちゃわない?」

「あ、今のはダジャレショーのショーと御一緒の……」

璃奈「面白い、です」

「お……そっか!」

「ふふっ、やぁ~今日初めてダジャレで笑ってくれる人見つけた~愛さん超嬉しいよ!」

璃奈「……笑って……?」

「?……どうかした?」

璃奈「……いえ……」

「へへっ、じゃあ行こっか ♪」ニカッ!
 
 
 
 
 
変な人

背も高くて、金髪で、ちょっと怖い

でも、

笑顔があったかくて、眩しい

233: 2021/01/04(月) 23:24:35.78 ID:21FkeZYT
──────
────
 
 
 
「あっ!そういえば名前、言ってなかったよね?」

「アタシ、」

愛「宮下愛っ!」

愛「キミは?」

璃奈「………私、」

璃奈「天王寺、璃奈です」

愛「璃奈ちゃんって言うんだ!」

愛「んー、じゃーあー………」

愛「りなりー!かな♪」

璃奈「……りなりー……?」

愛「うん!よろしくね!りなりー」

愛「ほら」パッ

璃奈「?」

愛「ハイタッチ♪」

璃奈「……え?」

愛「ん♪」ニコニコ

璃奈「………」

璃奈「………」スッ…

愛「ふふっ!」
 
 
 
パチンッ♪

235: 2021/01/04(月) 23:30:19.14 ID:21FkeZYT
おばーちゃんと、いつも繋いでいた手

お母さんと、お父さんと、繋がなくなっていった手

おねーちゃんと、約束をした手

おかーさんと繋げなくて、乱暴に振り解いた手

自分で、傷つけてしまった手

繋いだり、離れたり、また近づいたりを、積み重ねてきた手

そして今日、ここで

アタシの手は、アタシより少し小さなその手と、

私の手は、私より少し大きなその手と、
 
 
また新しく、ひとつに重なった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おしまい

238: 2021/01/04(月) 23:35:24.64 ID:21FkeZYT
年末に規制で書き込めなくなっていたときに保守していただいた方、ありがとうございました

239: 2021/01/04(月) 23:40:26.78 ID:NTP5+mwd
マジでよかった、乙

236: 2021/01/04(月) 23:31:36.08 ID:rv7Z4zgh
素晴らしい、乙

240: 2021/01/04(月) 23:42:13.56 ID:U/18KUvf
めちゃめちゃ好きだった。乙
これはスクスタに繋がる素晴らしい脳内補完用二次創作

241: 2021/01/05(火) 00:01:53.30 ID:gvcLgA+s
二人が出会えてよかった

243: 2021/01/05(火) 00:10:09.22 ID:map3hgUm
名作

244: 2021/01/05(火) 00:37:45.28 ID:kluAbdPc
素晴らしい
愛さんとりなりーが変わっていく過程の描き方がめちゃくちゃ丁寧で本当に素晴らしい
読めてよかったありがとう

245: 2021/01/05(火) 14:04:04.06 ID:byr20fp/
じっくり読んでしまった
傑作

246: 2021/01/06(水) 13:52:37.18 ID:4q/0aVDS
最高でした

247: 2021/01/06(水) 19:27:23.78 ID:SejVXo/R
何回読み返しても最高としか言いようがない
本当にこのssを読めて良かった

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1608911843/

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