しずく「私が歩夢さんになります!」【ラブライブ!SS】

しずく SS


1: 2021/01/09(土) 10:17:03.83 ID:DafK151N
侑(歩夢は今日、風邪でお休みかあ)

侑(SIFまでずーっと頑張ってたから、急に疲れが出たのかな…)

侑(──うん、別に歩夢が居ない日なんて、これまで何度だってあったじゃん)

侑(でも、同好会に入ってからは初めてだし、歩夢の居ない部室は変な感じだ)

侑(うう、寂しがってても仕方ないよね…。あまりしょげててもみんなを心配させちゃう)

侑(よしっ!切り替えていこう!)

しずく(………)

2: 2021/01/09(土) 10:19:07.20 ID:DafK151N
────

璃奈「侑さん、見てみて。今日はじめてMASTERの楽曲フルコンできた」

侑「うわ!璃奈ちゃんすごいじゃん!わたし、こないだEXPERTフルコンできたとこなのに」

璃奈「侑さんも頑張ればすぐMASTERまで来れるはず。今日の練習後、ちょっとだけリズカニで譜面触ってみる?」

侑「え?迷惑かけないかな?私、全然ユニット育ってないよ?」

璃奈「大丈夫。浅希ちゃんたちも一緒にやってくれるから」

璃奈「足りないところは皆でカバーしよ?」

侑「へへ、ありがとう璃奈ちゃん!焼き菓子同好会の子達も楽しみだ!」

璃奈「えへへ。璃奈ちゃんボード『テレテレ』」

しずく(………)

4: 2021/01/09(土) 10:21:39.44 ID:DafK151N
────

かすみ「侑先ぱーい!」ダキッ

侑「うわあ、かすみちゃん!いきなり後ろから抱きつかないでよお」

かすみ「えへへ~♡今日は~、かすみんとストレッチしましょ~」

侑「もう、それならもうちょっと心臓に優しく頼むよ」

かすみ「あれれ~?先輩、かすみんに抱きつかれて、ドキドキしちゃってますか~?」

侑「いきなりでびっくりしたって意味だよ…」

かすみ「ぶぅ…」

侑「かすみちゃんの可愛さにドキドキしてるのも本当だけど」

かすみ「ふえあ!///もう、油断させておいて急にそういうこと言うのやめてください!そういうとこですよ!侑先輩!」

侑「あはははは!ほんとかすみちゃんは可愛いなあ」

かすみ「えへへ~♡」

しずく(………)

5: 2021/01/09(土) 10:24:56.64 ID:DafK151N
────


璃奈さんもかすみさんも良いな。あんなに侑さんと仲良さそうで──

思い返してみれば、私も同じ1年生なのに、あまり侑さんと話したことない…。

知り合ったきっかけも、せつ菜さんの退部と廃部の件だったし──

話すことがあっても大抵が、事務的な内容だし、

誰かと一緒にいて、そのついでで一言、二言交わすくらい。

後は虹色Passions!のMV用写真撮影のために、かすみさんの家に一緒にお泊まりしたことくらいかな。

それだって結局は、かすみさんが私たちの間を繋いでくれただけのように思える。

それくらいの接点なのに──

演劇祭の前には、私にチョーカーをプレゼントしてくれた。

意外と私のこと、見てくれてるのかな?

いや、あの人はマネージャーだから、単にそれらしく自分の仕事をしてるだけか。

──ああ、いやだ。私、なんか冷めてるな…。

12: 2021/01/09(土) 10:35:44.01 ID:6MImsYI/
>>5
の虹色Passions!のMV用写真撮影のために、かすみさんの家に一緒にお泊まりした
って設定ssでよく見る気がしますけどなんかしらの媒体で公式の諸説ってありましたっけ?

16: 2021/01/09(土) 10:42:56.06 ID:DafK151N
>>12
公式による発表諸説等は私が確認した限りではありません
よって私が勝手にOPの映像から情報を抽出し二次創作として非公式に補完したものであります

続き書いていきますね

6: 2021/01/09(土) 10:26:59.25 ID:DafK151N
侑さんは私のこと、どう思ってるのだろう?

悪くは思われてないだろうし、無関心でもないだろうけど──

同好会の仲間?後輩?演劇部と掛け持ちのスクールアイドル?

───ううん、考えても仕方ないよね。

私、決めたじゃない。

どんな自分も受け入れるって。

私は私なりのやり方で、侑さんと向き合ってみよう。

8: 2021/01/09(土) 10:29:30.37 ID:DafK151N
───
侑「よーし!今日も練習頑張ろー!」

8人『おー!』

愛「しっかし、珍しいねー。歩夢が体調不良だなんて」

せつ菜「一番そういうのに気をつけてそうですのにね」

エマ「心配だねえ。今から看病しに行ってあげたいくらいだよ」

果林「ダメよ、エマ。練習は大事だし、お見舞いだってあまり大勢で行っても迷惑がかかるわ。それに──」

果林「あの子には侑って、旦那がいるじゃない」

エマ「そっかあ。やっぱり歩夢ちゃんには侑ちゃんだよねえ」

侑「ちょ、ちょっと2人とも~///」

彼方「おやおやあ?侑ちゃん赤くなってる~」ツンツン

侑「もう!彼方さんまでぇ!///」

8人『あはははははは!』



しずく「───」

しずく(───うん、決めた)

10: 2021/01/09(土) 10:32:09.01 ID:DafK151N
───

かすみ「じゃ、侑先ぱーい!向こうでストレッチしましょー♡」

侑「うん!よろしくね、かすみち──」

しずく「──待って!」

しずく「侑さん!今日は私とストレッチしてください!」

侑「え?」

しすく「かすみさん、今日は私に譲って?」

かすみ「えぇ!かすみんが侑先輩と約束してたのにぃ…!」

しずく「ごめんね。今度アイランド・ヴィンテージでスイーツ奢るから。お願い!」

かすみ「うぅ…。まあ、しず子がそこまで言うなら…」

しずく「侑さんも、よろしいですか?」

侑「う、うん…。かすみちゃんも良いって言ってるみたいだし、私は全然構わないよ」

しずく「ありがとうございます!」

かすみ「うわーん!歩夢先輩がいないから、思いっきり先輩とくっつけると思ったのにぃ!」

かすみ「しず子ぉ!今度お店で一番高いやつ奢らせてやるぅ!」タッタッタ…

11: 2021/01/09(土) 10:34:44.53 ID:DafK151N
いち、にー、さん───はち

にー、に、さん────はち

しずく「ふぅ。これでストレッチ終わりですね」

侑「そうだね。久々に参加すると気持ちいいや」

侑「改めて思ったけど、しずくちゃんて身体柔らかいよね。愛ちゃんにも負けないくらいっていうか」

しずく「演劇部でもやっていますからね」

しずく「舞台では最後列の観客の方にまで分かるよう、普段はしないような大袈裟な動きで演技する必要があるので、柔軟は大切なんです」

しずく「まあ、これはスクールアイドルにも言えますけどね」

侑「すごいなあ。しずくちゃんはストイックだね」

しずく「そんなことは…。ただ必要なことを必要なだけしているだけですよ」

侑「うん。なんだかしずくちゃんの一面を、ひとつ知ることができた気がする」

しずく「ふふ、それなら良かったです」

しずく「私も、私を知ってもらいたいなって思ってました」

13: 2021/01/09(土) 10:39:22.76 ID:DafK151N
侑「あ、だからさっきかすみちゃんに代わってくれ、って?」

しずく「はい。侑さんとじっくり話すことって、あまり無かったですから」

しずく「それに今日は歩夢さんもいませんし」

侑「歩夢が関係あるの?」

しずく「うーん、関係があるというより、きっかけになったって方が正しいです」

しずく「侑さんが、歩夢さん居なくて寂そうだな、と思ったから──」

侑「あはは…皆の前じゃ隠してたつもりだけど、バレてたのか…」

侑「しずくちゃん、よく見てるんだね」

しずく「演劇の参考のために人間観察をよくしますからね。職業病みたいなものかもしれません」

しずく「今も侑さんが寂しいのなら──」



しずく「今日は私が、歩夢さんの代わりになります」



侑「え?」

しずく「───侑ちゃん…」

侑「し、しずくちゃん!?」

17: 2021/01/09(土) 10:45:20.15 ID:DafK151N
侑「い、いいよ!大丈夫だって」

しずく「ううん、私、侑ちゃんの力になりたい。ダメ?」

侑(うわあ…。本当に歩夢みたいだ…。しずくちゃん、こういうこともできるんだ)

侑(けど、後輩の女の子から『侑ちゃん』って呼ばれるの、なんかくすぐったい…)

侑(歩夢は今日子ちゃん達からちゃん付けで呼ばれてるけど、あまりこういう気分にはならないのかな?)

侑(うーん、しずくちゃんも私のこと心配してくれてるみたいだし、ちょっとだけ付き合ってあげよう)

侑「わかった。今日はよろしくね、しずくちゃん」

しずく「んもう、歩夢って呼んで?侑ちゃん…」

侑「わ、分かったよしず──歩夢…」

しずく「ふふっ、ありがとう!じゃあ、みんなのとこ行こっか」ガシッ

侑(──!?)

侑(しずくちゃんが腕を組んできた…!)

侑(歩夢でも滅多にやらないよこんなこと…!)

侑(いったいしずくちゃんの目には…歩夢がどう映ってるんだろう…)

侑(でも───)

しずく「ふふっ、どうしたの侑ちゃん?」

侑「う、ううん。何でもない」

侑(──しずくちゃんが楽しそうだし、良いかな? )

18: 2021/01/09(土) 10:49:14.12 ID:DafK151N
────

かすみ「ってぇ!なんで侑先輩としず子が腕組んで帰ってきてるんですかあ!」

侑「いやあ、いろいろあって…」

かすみ「いろいろって何ですか!ストレッチしに行ったはずでしょう!」

しずく「かすみちゃん、今日は私が歩夢なの。だから、私のこと歩夢先輩って呼んでね?」

かすみ「ぐええ、しず子から『かすみちゃん』って呼ばれるなんて…。気持ち悪いです…」

しずく「もう、ひどいなあ。かすみちゃん」

かすみ「も、もうやめてえ!かすみん、今日はしず子と帰らない!」

しずく「ふふっ、なら私、侑ちゃんと帰るからいいよ?」

かすみ「うわーん!っていうか、家の方向違うじゃん!」

しずく「私のお見舞いもするつもりだから大丈夫だよ?」

かすみ「うう、頭おかしくなりそうです…。ほんと今日はもう話しかけないで…」

侑「し、しずくちゃん。さすがにみんなの前は、ややこしくなるからやめにしない?」

しずく「ううん、今日はとことん侑ちゃんに付き合うよ」

侑(あ、ダメだこりゃ)

愛「本当によく出来た演技だねえ。マジで歩夢じゃん」

璃奈「うん。見た目まで真似たらそっくり」

しずく「ふふっ、2人ともありがとう。今日一日はこれで過ごすから、宜しくね」

19: 2021/01/09(土) 10:51:46.87 ID:DafK151N
──練習後──

璃奈「侑さん。浅希ちゃんたち来てくれたから、リズカニやろう」

侑「おっけー。みんなよろしくね!」

浅今色『はい!』


シャンシャンシャン

シャンシャンシャン……


浅希「やった!BRILLIANTIV!りな、侑先輩!ありがとう!」

璃奈「うん。私も一緒に遊んでくれて嬉しい『>▽<』」

侑「いやあ、私は全然シャンシャンできなかったよ。MASTERはまだ厳しいね」

璃奈「大丈夫。感覚を掴んだら、練習あるのみ」

今日子「──ところで、さっきから気になってたんだけど…」

しずく「@cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ」

20: 2021/01/09(土) 10:55:14.95 ID:DafK151N
今日子「しずくちゃんは、何してるの…?」

しずく「ふふっ、今日子ちゃん。今日の私は歩夢だよ?」

今日子「ええっ!しずくちゃんが歩夢ちゃん!?どういうことですか!?侑先輩!」

侑「まあ、いろいろあって…。歩夢の代わりになってくれてるんだ」

今日子「そういえば歩夢ちゃん居ないと思ってました!いつも侑先輩の隣にいるのに!」

しずく「今日子ちゃん?歩夢は私だよ?」

今日子「わあ、もうやめてえ!歩夢ちゃんぽいけど、しずくちゃんは歩夢ちゃんじゃないよお!」

色葉「いやあ、すごいエミュレートっすねえ。さすが演劇部」

しずく「ふふっ。楽しいね、侑ちゃん」

今日子「うわーん!私でさえ侑先輩のこと、侑ちゃんって呼んだことないのにー!」

侑(あはは…。かすみちゃんといい今日子ちゃんといい…)

侑(今日のしずくちゃん、無自覚に人にダメージを与えすぎだよ…)

21: 2021/01/09(土) 10:57:52.42 ID:DafK151N
──歩夢の部屋──

侑「はい。歩夢のクラスメイトから預かってきたよ。今日の授業のノートと課題」

歩夢「ありがとう侑ちゃん。けほっ、けほっ…」

侑「ああっ、ほら、無理しないで。布団被ってなさい」

歩夢「う、うん…///」

侑「体調はどう?」

歩夢「まだ熱があるから、もうちょっとかかるかも。ごめんね、迷惑かけて」

侑「気にしないで。最近忙しかったしね。ゆっくり休んで、風邪治ったらまた一緒に練習しよう」

歩夢「うん…。ありがとう侑ちゃん」

しずく「早く良くなってね私。私がいなくて侑ちゃん、今日しずくちゃんが私にならなかったらどうなっていたか」

歩夢「───」

侑「───」

24: 2021/01/09(土) 10:59:26.10 ID:DafK151N
歩夢「──侑ちゃん、これどこからツッコんだらいいの?」

侑「私に聞かないで…」

しずく「でもこの様子だと、しばらくしずくちゃんは私にならないとね」

歩夢「頭、痛くなってきたよ侑ちゃん…」

侑「しずくちゃん、歩夢が可哀想だからもうやめたげて…」

しずく「う…、ごめんなさい…」

25: 2021/01/09(土) 11:00:58.13 ID:DafK151N
しずく「歩夢さん、はやく元気になってくださいね。その間、侑さんの面倒は私が見ますから」

歩夢「しずくちゃんもわざわざありがとう。なんだか二人の組み合わせ、って珍しいね」

しずく「歩夢さんもそう思いますか?私も気になってたんですそれ」

しずく「だから、今日は歩夢さんを演じることで、侑さんの寂しさを紛らせようとしたんです」

しずく「それをきっかけに、少しでも侑さんに私を知ってもらいたいな、って」

侑「びっくりしたんだよ。いきなり腕組んだりしてきてさ」

歩夢「ええ!?」

26: 2021/01/09(土) 11:02:03.21 ID:DafK151N
歩夢「ええ!?」

歩夢「しずくちゃん、私を演じるのは良いけど…ほどほどに、ね?」

しずく「あはは、ちょっと大胆すぎたでしょうか」

歩夢「私だってあの黒歴史の後くらいしかそんなことしてないのに…」ボソッ

しずく「えっ?」

歩夢「あ、ううん、何でもない」

歩夢「しずくちゃん、私がいない間、侑ちゃんをよろしくね」

しずく「はい!お任せください!」

27: 2021/01/09(土) 11:03:58.49 ID:DafK151N
──東雲駅前──

侑「歩夢のお見舞いに付き合ってくれてありがとね」

しずく「いえ、私は私にできることをしただけですから」

侑「しずくちゃん。明日からは歩夢じゃなくて、いつものしずくちゃんを見せてほしいな」

しずく「え?私の歩夢さんはダメでしたか?」

侑「そんなことないよ。おかげで今日の練習からさっきまで、ずっと楽しかった。もちろん今だって」

侑「けど、それは歩夢を演じてくれたからじゃなくて、しずくちゃんとこうして一緒にいられたからなんだ」

侑「私、しずくちゃんのこと、もっと知りたくなっちゃった」

しずく「───」

侑「だから、明日も一緒に練習しようね!」

しずく「は、はい!」

侑「暗くなっちゃったから、気をつけて帰ってね。おつかれさま!」

29: 2021/01/09(土) 11:06:32.19 ID:DafK151N
────

ふふっ、侑さんが喜んでくれて良かった。

今日だけで私のこと、侑さんに知ってもらえた気がするし、

私も侑さんのことを、もっと知ることができた気がする。



──『私、しずくちゃんのこと、もっと知りたくなっちゃった』



あの時の侑さんの笑顔、素敵だったな。

SIFで『夢がここから始まるよ』を歌った時も、

お腹を見せて喜んでたけど、

さっきの笑顔は、私にだけ見せてくれたんだ。

あの無邪気な笑顔は先輩なのに可愛いくて、けど台詞はちょっとかっこつけた感じで──

面白い人だなあ、侑先輩。

30: 2021/01/09(土) 11:08:14.46 ID:DafK151N
>>29
訂正:
×面白い人だなあ、侑先輩。
◯面白い人だなあ、侑さん

31: 2021/01/09(土) 11:09:17.32 ID:DafK151N
──『私、しずくちゃんのこと、もっと知りたくなっちゃった』



───なんで私、2回も思い出してるんだろう?

歩夢さんを演じてたから、侑さんのこと意識してるのかな?

うん、きっとそうだよ。

明日からはいつもの私を見せて欲しい、って言ってたじゃない。

切り替えなさい、しずく!

32: 2021/01/09(土) 11:12:41.30 ID:DafK151N
──そして次の日──

今日の練習はレクリエーションだ。

2人1組のチームでのバレーボール。

動体視力や咄嗟の判断力を鍛え、ライブでのMCや予期せぬトラブル、

何が起こるか分からない本番でのアドリブ力を養うのが目的。

今日も私は、侑さんと組んでの練習。

元々運動神経は良いほうのはずなんだけど──

侑「しずくちゃん!今日もよろしく!」

しずく「はい!後ろは任せてください!」

愛「行くぞー!愛さんの目にも止まらぬサーブを食らえー!」

愛「アイだけ、にっ!」パシューン!

侑「しずくちゃん!」

しずく「───!」

愛さんのサーブ!

確かに早いけど、目で追えないことはない。

引き付けて引き付けて引き──

しずく「わぷっ…!」ドガッ!

───つけ過ぎた…!

33: 2021/01/09(土) 11:15:18.35 ID:DafK151N
侑「しずくちゃん!?」

愛「うわ顔面にガーン!と行ったね!ガンだけに!」

侑「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

侑「───って、笑ってる場合じゃないよ!しずくちゃん大丈夫?」

しずく「ふぁ…ふぁい…。らいりょうふれふ…。ひょっとはふぁがいふぁいだけでふ…」

愛「ごめーん、しずくー!」

果林「しずくちゃーん、休んでもいいのよー?」

しずく「い、いえ!やります!やらせてください!」

うう、侑さんにもかっこ悪いとこ見られちゃった…。

今度こそ──

34: 2021/01/09(土) 11:17:57.63 ID:DafK151N
愛「もう1回いくぞー!とりゃああああ!」パシューン!

来た…!

さっきと同じコースを飛んでくる!

さすがに2回目なら…!

しずく「えいっ!」スポーン!

侑「しずくちゃん!そのレシーブは力みすぎだよ!ボール後ろ飛んでっちゃったよ!」

しずく「──はっ!すみません!」

侑「後ろと前、交代しよっか?」

しずく「はい…。お願いします…」

侑「あまり気にしないで。まずは相手側にボールを返すことを目標にしよう」


その後も試合は続いたものの、2回以上ラリーが続くことはなく──

試合は私たちの惨敗に終わってしまったのだった。

ああ、愛さんたちはもちろん、侑さんにも迷惑かけてしまった。

まともな練習にならなくてごめんなさい…。

35: 2021/01/09(土) 11:20:43.95 ID:DafK151N
────

侑「おつかれしずくちゃん。鼻ほんとに大丈夫?」

しずく「まだ少しジンジンする程度で、全然問題ないですよ」

しずく「それよりごめんなさい…。もっとバレー楽しみたかったですよね…」

侑「そんなの気にしないでいいよ。十分楽しめたよ」

しずく「全然ボール返せなかったじゃないですか。私のせいで…」

侑「もう、そんなに落ち込まないで。大丈夫、ちゃんと得るものはあったよ」

侑「──また、しずくちゃんの新しい一面を見られた」

しずく「うう、こんなとこ見られたくなかったです…」

しずく「──私、元々球技が苦手なんです」

しずく「けど、昨日侑さんと一緒に練習するって決めたし、もしかしたら今日は上手く行くかも──なんて根拠の無い期待をしてたんですけど…」

侑「わぷっ…!」

しずく「…?」

36: 2021/01/09(土) 11:23:00.19 ID:DafK151N
侑「いや、ボールを顔面で受けた時のしずくちゃんの声、ちょっと可愛かったなって」

侑「わぷっ…!」

しずく「も、もう…!繰り返さないでください!ひどいです!」プクー!

侑「あははは!良いよ良いよ!しょんぼりしてるより、それくらい元気のあるしずくちゃんのが、私は好きだな」

しずく「んもおおっ!適当なこと言って!侑さんって、結構いじわるなんですね!」

侑「私の新しい一面を発見できたと思わない?」

しずく「そんなところは知りたくなかったですぅ!」

侑「あははは!ごめんごめん!あっ、怒るしずくちゃん見っけ!」

しずく「もおおおおおおお!!」プクプクー!

37: 2021/01/09(土) 11:25:11.73 ID:DafK151N
侑さんって、結構子供っぽいところもあるんだな。

歩夢さんはこの人のこういうところが好きなのかな?

放っておけない感じ?それとも一緒にいて楽しい感じ?


──楽しい。


私───楽しいって感じてる。

侑さんとの時間を、楽しいって思えてる。

かすみさんと璃奈さんは、もっと前からそう思えてたのかもしれないけど、

私もやっと、二人と同じ景色が見られたよ。

38: 2021/01/09(土) 11:28:55.75 ID:DafK151N
──歩夢の部屋──

侑「はい、今日もノートと課題持ってきたよ」

歩夢「ありがとう!だいぶ熱も下がったし、明日には練習に復帰できそうだよ」

侑「良かった。歩夢がいないと、やっぱり寂しくてさ」

歩夢「あれ?今日はしずくちゃんが私の代わりしてくれたんじゃないの?」

しずく「今日は侑さんの頼みで、いつも通りの私で過ごさせてもらいました」

歩夢「そうなんだ。ありがとうね、しずくちゃん。侑ちゃんの相手をしてくれて」

しずく「いえいえ。そんなことよりひどいんですよ歩夢さん!」

39: 2021/01/09(土) 11:31:27.57 ID:DafK151N
しずく「今日、練習でバレーをしたんですけど──」

しずく「ボールを顔面で受けた私を、侑さんがからかったんですぅ!」

歩夢「わあ、それはひどいね。侑ちゃん、そういうとこあるからね」

しずく「ほんとですよ!歩夢さんは侑さんの幼馴染をよく続けられてると思います!」

侑「そ、そこまで言う…?」

歩夢「ふふっ、でもそういうところ可愛いでしょう?」

しずく「ええ、子供っぽいところもあるんだなって。親しみが湧きました」

侑「へっへっへー!」

あゆしず『侑ちゃん(さん)、調子に乗らないで(ください)』

侑「はい…」

侑「──あっ、私ちょっとトイレ借りるね」

しずく「侑さん、そういうのはお花を摘みにいくと言った方がいいですよ」

侑「しずくちゃんは私のお母さんかな?って、ああん、漏れる漏れるっ」タッタッタ…

40: 2021/01/09(土) 11:34:53.10 ID:DafK151N
────

しずく「もう、侑さんったら」

歩夢「ふふっ、でも良かった。2人が仲良くやってるみたいで」

しずく「それは──そうかもしれませんね」

しずく「少なくともあの人がどんな人なのか、以前よりずっと分かった気がします」

歩夢「大変でしょう?侑ちゃんと一緒にいるの」

しずく「ええ。退屈しないって言うか、心がかき乱されるというか」

歩夢「そうなの。あの子、スクールアイドルの女の子にすぐ可愛いとかトキメイちゃったー!って言うから、落ち着かないんだ」

しずく「あはは、侑さんは人たらしの才能がありますね」

41: 2021/01/09(土) 11:36:55.08 ID:DafK151N
歩夢「それでもSIFの前にローダンセの花を贈ってもらってからは、少し余裕を持てるようになったんだけどね」

しずく「花?侑さん、そんなロマンチックなことしたんですか?」

歩夢「うん。あの時期ちょっと悩み事があって不安だったんだけど、侑ちゃんが吹き飛ばしてくれたんだ」

歩夢「あの子は私の王子様なの。私が辛い時に気づいてくれて、すぐ不安を取り去ってくれる」

しずく「侑さんは女の子ですけど?」

歩夢「もう、細かいことはいいの!それくらいかっこよくて、素敵な人ってこと」

歩夢「私、侑ちゃんが大好きなんだ」

しずく「───」

歩夢「幼稚園の頃もね、私がお遊戯会で舞台に立つのが怖かった時に──」

42: 2021/01/09(土) 11:39:36.07 ID:DafK151N
そこからの歩夢さんの話は、あまり覚えていない。

なんか侑さんがいかにかっこいいか、昔どれだけ助けられたかとか、

特にそんな話をしていたような気がする。

侑さんの話をする歩夢さん、本当に楽しそう。

けど、何故だかその姿を見るのが辛かった。

私の心の奥深くから、嫌なものが生まれてくるような感覚がして、怖かった。

歩夢さんは私より侑さんのことをたくさん知っている。

そんなの当然なのに──、

自分が自分でなくなりそうなほど、それが悔しかった。

43: 2021/01/09(土) 11:41:47.50 ID:DafK151N
────

あれから自宅に帰り、私はベッドの上でうつ伏せになった。

東雲駅まで送ってもらう帰り道、侑さんからも話を聞いた。

なんか歩夢さんがいかに可愛いか、今まで何度彼女を助けたかとか、

特にそんな話をしていた気がする。

歩夢さんの話を楽しそうにする侑さんの顔が忘れられない。

明日から歩夢さんが練習に復帰するだろう。

そうなれば──たった2日だけだったけど──侑さんとの練習が終わる。

この2日間、本当に楽しかったよ。

侑さん、あんなに楽しい人だったんだ。

なんでもっと早く気づかなかったんだろう。

44: 2021/01/09(土) 11:43:52.02 ID:DafK151N
顔を横に向けると、スタンドにかけたチョーカーが視界に入った。

侑さんが私に、初めてプレゼントしてくれたもの。

ベッドから離れて、其れを手に取る。

あの時の侑さんの言葉が、頭の中で蘇る。




「私からしずくちゃんに、プレゼントだよ」


「エマさんに手伝ってもらって、しずくちゃんのために作ったんだ」


「きっとしずくちゃんに似合うと思う」


「主役、頑張ってね」




演劇祭の前にかけてくれた激励の言葉が、あの時よりも重く響いた。

あの人は私のこと、どれだけ応援してくれていたのだろう。

私、ちゃんと分かっていなかったのかもしれない。

馬鹿だ…。馬鹿だよ私…。今さらあの言葉の大切さに気づくなんて。

45: 2021/01/09(土) 11:46:35.16 ID:DafK151N
──歩夢さんは侑さんのことが大好きだと言った。

そして侑さんもきっと、歩夢さんのことが───

そんなの、あの楽しそうな顔を見れば分かる。

私の気持ちも知らずに見せる、あの無邪気な笑顔。




「侑さん──好きだよ」


「私──侑さんを好きになっちゃった」




気持ちを口にした途端、目から涙が零れた。

ひとしずくどころじゃない。

一粒を皮切りに、ぽつりぽつりと雨のように零れた。

どうしたら侑さんは、私を見てくれるだろう。

どうしたら侑さんの、理想のヒロインになれるだろう。

46: 2021/01/09(土) 11:48:48.96 ID:DafK151N
───そうか。

侑さんは歩夢さんのことを──

なら、話は簡単じゃないか。

私はまた、歩夢さんを演じればいいじゃないか。

そうすればきっと、侑さんは私のことを──











私の中で壊してはいけない何かが壊れた気がした。


人に好かれるための仮面を、粉々に砕いてくれた──


大切な──何かが。

47: 2021/01/09(土) 11:49:59.17 ID:DafK151N
──私は決めた。

──あなたの理想のヒロインになると。

──たとえ私が偽物になろうと、ありのままの私でなくなっても構わない。

──あなたに好きになってもらえるのなら、

──再び仮面をかぶり、演じ続けていこう。





おわり

48: 2021/01/09(土) 11:52:22.61 ID:u+mWoZSH
え?




え?

50: 2021/01/09(土) 11:52:55.93 ID:uQz1wZMD
ビターエンドね

54: 2021/01/09(土) 12:04:31.88 ID:TswPtghR
まって、終わんないで

52: 2021/01/09(土) 11:55:50.18 ID:iHidzfsv
まだ起承転結の転だよね

56: 2021/01/09(土) 12:27:00.73 ID:eOQui34l
むしろここで終わるから良いんだろうが

60: 2021/01/09(土) 12:51:15.01 ID:fVBLVokl
やっぱりゆうしずなんだよなぁ

63: 2021/01/09(土) 22:10:03.74 ID:plfEpwJ1
めっちゃ好きだわ。
この後が気になってしまう…。

59: 2021/01/09(土) 12:48:22.21 ID:SVGSisBb
終わってほしくないけどこれもあり
しずくちゃんはこういう切ない感じが似合う


凄くよかった

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1610155023/

しずく「私、侑さんの理想の歩夢さんになりますね♡」【SS】
──同好会・部室── 侑「おはようございまーす!」 かすみ「うわああん!侑先ぱあああい!会いたかったですううう!」ダキッ 侑「うわっ…!どうしたのかすみちゃん!」 侑「昨日も練習で会ってるじゃん、大袈裟だなあ」ナデナデ かすみ「でへへ♡───ってぇ!そんな場合じゃないんですよ!」 かすみ「しず子が大変なんですぅ!」 しずく「────」 侑「──?別にいつものしずくちゃんと変わらないことない?」 かすみ「違うんですよぉ!とにかくしず子と話してください!」 侑「う、うん、分かった」
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