【長編SS】善子「ふたりのヨハネ」【ラブライブ!サンシャイン!!】

よしこーヨハネー魔術 SS


1: 2018/01/26(金) 20:06:34.85 ID:LACEqc8n
~善子の部屋~


善子「ククク……クフフフ……」

善子「買ってしまった……ふふ、買ってしまったわ」

善子「悪魔の鏡!」


【悪魔の鏡】※ヨハネ命名
学校の帰り道にたまたま見つけた怪しい骨董店で買った鏡。
小さな手鏡のように見えるけれど、鏡面じゃない方を光に翳すと鏡面がぼんやりと輝いて見えるの。謎のアイテム感がヨハネ的に高ポイント!


善子「店の主人が言うには……おのれの心を実体化させるらしいんだけど……」

善子「ふふ、そういう曰く付きなアイテムが一番ポイント高いのよね」

善子「明日ルビィとずらまるに自慢しよーっと」

『善子~? そろそろ寝なさーい』

善子「善子言うなー! もう……分かってるわよ寝るわよ」


カチッ(消灯)


善子「わ、月明かりがすごい」

善子「ククク……このような夜は我が魔力が高ぶる夜……ふふふ、今宵はいかなる魔力を我がリトルデーモン達に授けようか……」

善子「んふふ、でも今日は自分の魔力を溜め込む日だけどね」

2: 2018/01/26(金) 20:07:47.86 ID:LACEqc8n
善子「はあー……もうちょっと鏡見てたかったのになぁ」

善子「にしても……そっか、今日は満月なのね。そりゃ明るいわけだわ」

善子「あ、それじゃあ」スッ

善子「……やっぱり、月明かりでも綺麗に輝くんだ」

善子「ふふ、綺麗……いいわ……うふふふ」

善子「センパイあたり食いついてくんないかしら……みんなノリ悪いのよねえ」

善子「こんな時に私にバッチリ共感してくれるリトルデーモンがいたらいいのに……」

善子「……ま、私がもう1人いるのが一番手っ取り早いんだけど、それはちょっと違うわよね」

善子「どうせなら……本当の堕天使ヨハネ、とか」

善子「……懐かしいな、昔、私は自分のことを天使だと思ってて、いつか迎えに来てくれるんだって考えてた」

善子「まあ……結局来てくれなかったから、堕天使になったわけだけど」

善子「やだやだ、なんか感傷的になっちゃって」

善子「さてと……ゲームやって寝るか。今日は何を…………」


────その時、私は気づかなかった。

月明かりに翳した鏡から発した光────

それより生まれた私の影が。

微笑んだことを。

4: 2018/01/26(金) 20:09:28.56 ID:LACEqc8n
~翌朝~

善子「ぐぅ……zzz」

善子母(ドア越し)「善子~! 朝よ起きなさーい! よしこ~!!」ドンドンドン

善子「もう5分……」

善子母「遅刻しても知らないからね! 起きなさいほら!!」

善子「んんん~…………」バフッ

善子(あと5分くらい良いでしょ……あったかお布団の魔力は堕天使ヨハネでも逃げられないのっ)

ガチャッ

「ごめんなさい、ちゃんと起きてるから怒らないで?」

善子母「あ、起きてたの…………ってあんた、なんで裸なの!? さっさと服着てご飯食べなさい、お母さん先に仕事行くからね!

「ええ、わかったわ。あとヨハネだから、間違えないで」

善子母「はいはい……」


バタン


善子「────へ?」

善子(……………………誰?)

5: 2018/01/26(金) 20:10:04.90 ID:LACEqc8n
善子(しかも……え、しかも今の声……)


バサッ


善子「………………は?」

「あら、起きた?」

善子「……は、は……は……ぇ……?」

「おはよう、私」

善子「な……え、え…………」

「ちゃんと目は覚めているかしら?」

善子「なん、で……わた、私が……目の前に……?」

「あ、言っておくけれどアニメでよくある入れ替わりではありません。あなたはちゃんと津島善子だし、私も見ての通りの存在よ」

善子「────きゅぅ」バタリ

「え、ちょっと!? さすがに理解が追いつかないのは認めるけど倒れるのはやめてもらえないかしら!?」

「一応言っておくけど親たちに見られたら善子が2人!って展開から逃げられないんだから!!」

「ちょっとほら起きなさいって! ちょっとー!」ユサユサ


────そう。

私が目を覚ますと、目の前には全裸の私がいたのである。

何がおかしいって、全てがおかしいに決まってるでしょ?

こんなの、現実に起こるわけないじゃないの!!!

6: 2018/01/26(金) 20:11:37.88 ID:LACEqc8n
~10分後~


善子「……ええと、つまりあなたは」

「ええ、もうひとりのあなたということになるわ。でもクローンというわけではないわよ? SF映画ではあるまいし、遺伝子を分けてもらったわけではないから」

「でも、あなたが希望するならお母さんと呼んであげても構わないわよ?」

善子「自分にお母さんとか言われたくないからまじやめて」

「ちょっとしたユーモアなのに」

善子「そんなユーモアいらないわよ……」

「ふふ、でも私のことをもっとよく知れば驚くと思うわよ?」

善子「……なに?」

「じゃあ見せてあげる────」パアァ

善子「え、えっ……ちょ、なんか光ってるけどあんた何するつもr」

「はあっ!」バサッ!!

善子「……」

「どうかしら? あなた好みだと思うんだけど、だって私が好きだし!かっこよくない!?」

善子「…………」

「……ねえ? ちょっと、反応してよ」

善子「……………………おおおおーーー!!!」

「!!」

8: 2018/01/26(金) 20:13:13.60 ID:LACEqc8n
善子「羽生えた!!!! しかも黒!漆黒の翼!」

善子「ねえ、ねえ!ばさばさってやって!」

「こう?」バサバサ

善子「きゃーーーーー!!!!」

「ふふ、喜んでもらえて何より、かしら」

「ならば呼びなさい、崇高なる我が名を」

善子「もう認めざるを得ないようね……ええ、呼んであげる! あなたの名前は津島善k」

ヨハネ「────そう、我が名はヨハネ! 堕天使ヨハネよ!」

善子「ヨハネは私のなのー!」

ヨハネ「バカを言わないでもらえる? ならあなた、翼出せるの? 魔法使えるの? 使い魔とか召喚できるの~?」

善子「出せない……けどぉー!」

ヨハネ「ふふ、大丈夫よ。私はあなたの味方、だってあなた自身だもの」

ヨハネ「あなたが感じた辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、全て私が受け止めてあげる」

ヨハネ「この堕天使ヨハネが!!」

善子「くっ……なんかかっこいいのが腹立つ……」

ヨハネ「かっこいいでしょ? 当然よ、だってヨハネなんだもんっ!」

善子「ドヤ顔すんなっ!」

9: 2018/01/26(金) 20:14:40.41 ID:LACEqc8n
ヨハネ「クックック……それにまだまだ隠された力があるのよ───」


ポーンポーン


ヨハネ「ん?」

善子「あっ」

ヨハネ「え?」

善子「ああぁあぁあぁぁ……!!」

ヨハネ「え、何?どうしたのよ」

善子「遅刻!!!!」

ヨハネ「ああ、学校」

善子「やばいやばいやばい着替えないと……!」バタバタバタ

ヨハネ「大変ねぇ」

善子「ちょっとなに優雅に椅子に座ってるのよ!しかも全裸で!なんか色々見えてるから! いい加減服着て!」

ヨハネ「いいじゃない、別に減るものではないし。見てる相手も自分だし」

善子「それが尚更恥ずかしいってーの! ああもう時間がないのに……」

ヨハネ「ほんと大変ねー」

10: 2018/01/26(金) 20:15:46.58 ID:LACEqc8n
善子「やばいやばいやばい……バス、間に合わない……うう、遅刻確定……」

ヨハネ「ま、ヨハネには関係ないけど」

善子「ないわけないでしょ! あんた、私なんでしょ!?」

ヨハネ「それはそれ、これはこれ」

善子「随分と都合のいい…………」

善子「────あ」

ヨハネ「?」

善子「ねえ……あなた、翔べる?」


・・・


善子「ぎゃぁぁぁあああ~~~~~~~!!!!」

ヨハネ「あんまり喋らないで、舌噛むわよ」

善子「いや、いや無理ぃぃい!! 高い! 飛んでる!めっちゃ速い! やばい! さむーーい!」

ヨハネ「ったく……」


なんとか私の服を無理やり着せ、もう1人の私に空を飛んで学校まで連れて行ってもらうことができた。

翼ってやっぱりかっこいい!私も欲しい!なんでもう片方だけなの? ずるくない?

けど────これで認めるしかなくなった

この顔に当たる風の感覚、冷たさ、ぶらつかせた足先から背筋をよじ登る恐怖感


善子「紛れもなく現実だわ…………これ」

ヨハネ「なに? 何か言った?」

善子「なんでもなーーい!!」

11: 2018/01/26(金) 20:16:10.55 ID:LACEqc8n
みたいな感じで当然現れたヨハネと善子の生活を書いていきたいなと思っているよ

14: 2018/01/26(金) 20:19:56.86 ID:LACEqc8n
~浦の星女学院・1年生教室~


善子「ぐはぁあ~……間に合った……」


ガラガラガラ


ルビィ「あ、善子ちゃんおはよ~」

善子「おはよ……」

ルビィ「今日は早いね。いつもは遅刻ギリギリなのに」

善子「ま、まあ……ちょっと早起きしちゃって」

善子(そりゃあ飛べばバスなんかよりよっぽど速いわよね……)

善子「あれ、ずら丸は? いつも一緒でしょ、登校」

ルビィ「あ、マルちゃんなら図書室に用があるって言ってた。そのうち来ると思うよ」

善子「ふーん」

ルビィ「……もしかして、善子ちゃんはルビィよりマルちゃんの方が……」ウルウル

善子「えっ!? いや、あの……それは、ちょっと、からかわないでよ! ただ見えないから気になっただけでしょ!」

ルビィ「えへ、なんちゃって~」

善子「ったく……」

15: 2018/01/26(金) 20:21:03.38 ID:LACEqc8n
善子「……じゃ、先にルビィにみせちゃお」

ルビィ「?」

善子「ほら、これ」スッ

ルビィ「小さな鏡?」

善子「なんだけど……ほら、照明に翳してみて」

ルビィ「ぅゅ……んんー……?」

善子「裏面を翳してるのに、鏡面が輝いてない?」

ルビィ「……あ、ほんとだ! すごい、なんで!?」

善子「でしょ! 昨日、帰りに変な骨董屋で買ったのよ~」

ルビィ「え~いいな~」

善子「ふふ、でも残念ね、これが最後のひとつだったの」

ルビィ「あー……」

善子「でもまたそのお店教えてあげるわ、場所は覚えてるから」

ルビィ「うん、ありがと!」

ルビィ「わ~……本当にキラキラして綺麗……」

善子「あげないわよ?」

ルビィ「分かってるよ~」


ガラガラ


花丸「おはよう~」

よしるび『おはよー』

16: 2018/01/26(金) 20:21:52.03 ID:LACEqc8n
花丸「あれ、ルビィちゃん、何を見てるの?」

ルビィ「これね、善子ちゃんが買った鏡なんだって」

花丸「鏡? 身だしなみを整えるために買ったの?」

善子「違うわよ……それとはまた別なの。ルビィ、教えてあげなさい」

ルビィ「うん!」

ルビィ「これね、見てて! こうやって光に翳すと……」

花丸「……わぁ~! 鏡が光ってるずら~……!」

ルビィ「ね!ね! 綺麗だよね!」

花丸「わあ、わあ、わあ……すごい、未来の技術ずら~!」

善子(クックック……どうやら二人とも気に入ったようね。ふふ、やはり私の目に狂いはなかった)

善子(買ってよかった! あとあの店見つけてよかった!)

花丸「ねえねえ善子ちゃん、この鏡────」

善子「はあ?! ちょっと何言ってんのよ、返して────」

17: 2018/01/26(金) 20:23:04.67 ID:LACEqc8n
~授業中~


教師「────となるので、この式の形は何度も見たね? じゃあ使う公式は────」

善子(……それにしても、あの『私』)

善子(屋上で待つように言ったけど……ちゃんといるのかしら)

善子(次の休み時間にジュースでも買って持って行ってあげるか)

善子(はあ…………暇)

善子(授業受けてる私がこんなに暇なんだし……あいつはもっと暇なんでしょうね)

善子(次は暇潰しにゲームでも持たせて────)


バサッバサッ

ガサガサ


善子「……は?」

ヨハネ『!』ニコッ フリフリ

善子「」

18: 2018/01/26(金) 20:23:22.86 ID:LACEqc8n
善子「ちょっ────!?」ガタガタ

教師「津島さん?」

善子「え、あっ」

教師「そんなに勢いよく立ち上がって……そう、その熱意に先生は感動した! じゃあこの問題、津島さんが解いてくれ!」

善子「いや、あの……その」

教師「さあ!」

善子(やらかした~~!!!)

19: 2018/01/26(金) 20:27:58.87 ID:LACEqc8n
・・・


ヨハネ「ふう」←教室の外にある木に隠れている

ヨハネ「あんまり暇だから善子の授業風景を見にきたんだけど……ちょうど問題を当てられたところだったのね」

ヨハネ「ふふ────一般人ならば臆する難易度の問題にも挑む姿、我が器ながら褒めざるを得ないわね」


善子『~~!! ……!!』


ヨハネ「ふむ……半分正解ってとこね、惜しい」

ヨハネ「しばらくは授業見るだけで暇は潰せる……けど、どうせ放課後まではもたないか。あとで部室でも見に行ってみようかしら」

善子『……!!』

ヨハネ「あ、善子」

善子『!! !!』

ヨハネ「上? あ、あとで屋上に来いってことね、はいはい」フリフリ

善子 `¶cリ`A´)|

ヨハネ(なに怒ってんのかしら)

20: 2018/01/26(金) 20:28:36.69 ID:LACEqc8n
~休み時間・屋上~


善子「なにしてんの!?」

ヨハネ「なにって、暇だから授業でも見ようかと」

善子「バレたらどうすんの!?」

ヨハネ「……ああ、そのことね」

善子「はぁ?」

ヨハネ「ふふ、私は堕天使ヨハネよ? 魔法でちょちょいとすれば、自分の姿を消すなんて造作もないわ」

善子「……いやいやいやいや」

ヨハネ「あ、でも善子からだけはどうしたって隠れられないけど」

善子「いやいやいやいや……嘘でしょ」

ヨハネ「ほんとだってば。朝もそれ使ったから誰にも騒がれずにここまで来たのよ? 普通、人が飛んでたら騒ぎになるじゃない」

善子「ぐっ……なるほど……」

ヨハネ「あ、証明する方法あるわ。カメラ出して、ケータイでいいから」

善子「何よもう……」スッ サッサッ

21: 2018/01/26(金) 20:32:04.67 ID:LACEqc8n
善子「なに、写真でも撮れば────あっ」

ヨハネ「わかった?」

善子「カメラに……映ってない」

ヨハネ「もちろん姿を見せればカメラにも」

善子「あ、映った……」

善子「……あんた何者よ! 魔女!?

ヨハネ「だから堕天使だって言ってるでしょ? あとヨハネって呼んで」

善子「くっ……ますます認めざるを得ない……」

ヨハネ「はやく認めれば楽になれるのに」

善子「ぐぬぬぬ……って、もう授業だわ」

ヨハネ「もう? 暇になるわ~……」

善子「はい、これ」ガサ

ヨハネ「なに?」

善子「ジュースとパン。私の好きなやつだから、あなたも好きでしょ」

善子「購買で買ってきたから朝ごはんにしといて」

ヨハネ「いいの?」

善子「お腹空くでしょ?」

ヨハネ「……ふ、私は堕天使ヨハネよ? 空腹など」グゥー

ヨハネ「……」

善子「ほら」

ヨハネ「……ありがと」

善子「ふ、堕天使ヨハネはリトルデーモンへの施しを忘れない……」

ヨハネ「ヨハネは私なんだけど!」

善子「私がヨハネよ! って、早く行かないと! いい、動いてもいいけどあんまり変なことしないでよね!」

ヨハネ「はいはい」フリフリ


バタン! バタバタバタ


ヨハネ「……」

ヨハネ「私のこと嫌ってる風な言い方して────ふふ」ガサガサ パクッ

ヨハネ「もぐ……あ、うま」

27: 2018/01/26(金) 21:04:53.03 ID:LACEqc8n
・・・

ヨハネ「ペロリ……さて、と」

ヨハネ「お金はないし、ゲーセンにも行けない」

ヨハネ「パンとジュースも美味しく食べ終わった」

ヨハネ「うん、本格的に暇」

ヨハネ「改めて教室、行ってみましょうか」


~1年教室~


教師「では次の文を国木田さん」

花丸「はい」ガタ

花丸「『その声は、我が友、李徴子ではないか?』 袁傪は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かった李徴にとっては、最も親しい友であった。温和な袁傪の性格が、峻峭な李徴の性情と衝突しなかったためであろう────」

ヨハネ「……」スッ

ヨハネ(ラッキー、窓空いてた)

善子「……」

ヨハネ(あ、こっち見てる)フリフリ

善子「ハァ…」

ヨハネ(ため息って)

ヨハネ(クックック……呑気にしていられるのも今のうちよ? 私が今は誰にも見られないってことをよく考えなさい善子)

ヨハネ(ここで私が全裸になって教室を歩き回ったらあなたはどうする?)

ヨハネ(────ま、そんなことしないけどね、死ぬほど恥ずかしいし)

ヨハネ(自分に見られるならまだしも)

28: 2018/01/26(金) 21:05:41.09 ID:LACEqc8n
ヨハネ(側まで行ったら怒られそうだし……いいわ、ルビィの教科書見せてもらお)

ルビィ「むんむん……」

ヨハネ「……」

ヨハネ(ルビィ……あんた授業聞かずにお絵描きしてるの? Aqoursの衣装っぽいけど)

ヨハネ(あ、これ……善子のやつね。可愛いじゃない)

ヨハネ(アクセントに悩んでいるの? それなら────)

ヨハネ『ここ、黒いリボンをつけるのはどう?』

ルビィ「────なるほど!」※小声

ルビィ「……んふ、えへへ♪」

ヨハネ(よしよし、悩みは解消したようね♪)

29: 2018/01/26(金) 21:12:01.50 ID:LACEqc8n
花丸「……」カキカキ

ヨハネ(ん~……花丸は真面目ね)

ヨハネ(ちゃんとノートもとってるし……というか、いつも借りてるから知ってるんだけど)

ヨハネ(あ、ノートの端っこに落書き。ルビィかしら、似てるじゃない)

ヨハネ(あとはヨハネと花丸を……うんうん、そうそう)

ヨハネ(ふふ、仲良し3人組って感じね。善子はあんなだけど、いつもありがとね、ずら丸)ナデナデ

花丸「?」

ヨハネ(あっやべ)

花丸「……?」

ヨハネ(自然な撫でてしまったわ……見えなくても、触れてしまうから気をつけないと)

善子「………………」

ヨハネ(そして背中に刺さる視線……)

31: 2018/01/26(金) 21:24:56.25 ID:LACEqc8n
善子「……」

ヨハネ(そんな怒らなくてもいいじゃないの、ねえ?)

ヨハネ『よーしこ』

善子「だからよh────げふんげふん!」

教師「津島さんどうかしましたか」

善子「すみません、ちょっと咳き込んで……げほ、げふん」

教師「風邪には気をつけてくださいね、インフルエンザも流行る頃ですし」

善子「はい、すいません」

ヨハネ『あはは、ごめんごめん……頭で念じたらしゃべれるわよ』

善子『え、なにこれやば!』

ヨハネ『ヨハネの魔法その3! テレパシー!』


【テレパシー】
いつでもヨハネと善子はテレパシーでお話が可能なのよ!
他の人とやる場合、基本はヨハネからの一方通行だけど────さっきのルビィ参照で。
場合によっては普通に会話もできるわよ!


善子『へえ、すごい────じゃない! ちょっと、なにしてるのよ!』

ヨハネ『暇だったから』

善子『確かに見られないように、とは言ったけど……みんなにちょっかいかけないでよ』

ヨハネ『かけてないわ! みんなの様子を見てただけ』

善子『ふーーーーん……』

ヨハネ『うわ、全然信じてない顔』

善子『フゥン……』

ヨハネ『そんなどこかのカードゲームの社長みたいな言い方をしないの』

善子『……あんたどこまで私と記憶を共有してるのよ』

ヨハネ『んー……ほぼ全部? Aqoursのこともちゃんも知ってるわ』

善子『ふーん……』

34: 2018/01/26(金) 22:44:33.64 ID:LACEqc8n
ヨハネ『そろそろすごいって分かってくれる?』

善子『いや、すごいのは認めるけど』

ヨハネ『やった!』

善子『……喜ぶとこ?』

ヨハネ『そりゃそうじゃない? あなたが一番知ってるでしょ、私、人から褒められると言われるとすごく嬉しいんだから』

善子『ぐっ…………嫌なところ突かないでよ』

ヨハネ『ふふ、私はあなたなのよ? 分からないことは無いわ!』(`・ω・´)ドャッ

善子『うわあ、自分のドヤ顔って結構腹立つのね』

ヨハネ『うっわひどい』

善子『ふふ、だってあなた────』

教師「津島さん」

善子「ひゃいっ!?」

教師「……余所見してましたね?」

善子「うぅ……すいません……」

ヨハネ(あら……ごめん)

35: 2018/01/26(金) 22:46:36.19 ID:LACEqc8n
教師「悪い子には1問答えてもらいましょうかね」

教師「では、李徴の思いを書き綴った部分────『一読して作者の才の非凡を思わせるものばかりである』という一文」

教師「この才の非凡とはどういう意味でしょうか?」

教師「才能がどういうことでしょう」

善子「ええと……非凡は、平凡ではないこと……とてもよく優れているという意味です」

善子「なのでその文は、一度読めば作者の才能がとても優れていると思わされる……みたいな意味になります」

教師「はい、正解です。もう余所見はしないように」

善子「はい……」

ヨハネ『やるじゃない』

善子『いや、あんたもわかるでしょ』

ヨハネ『まあね? ふふ、難しい言葉を使うために漢字は勉強しているものね』

善子『うるせー!!』

ヨハネ『ふふふ、落ち着きなさい我が器。明らかに今のはあなたの落ち度。堕天使ヨハネが特別に許そう、だから前を見なさい早く』

善子『え?』

教師「津島さんさー」

善子「ごめんなさい……」


キーンコーン


ヨハネ『あ、授業終わった』

36: 2018/01/26(金) 23:15:06.19 ID:LACEqc8n
~昼休み~


善子「はあ……ひどい目にあった」

花丸「余所見してるから……」

善子「だってあいつが~!」

るびまる『あいつ(ずら)?』

善子「あ、いや……なんでもない」

花丸「もー……」

ルビィ「あ、でもさっきなんか変なことがあったよ」

花丸「へ?」

ルビィ「実はルビィも隠れて衣装のイラスト描いてたんだけど……」

花丸「ルビィちゃんも悪い子ずら……」

ルビィ「てへ……でね? 善子ちゃんの絵を描いてたんだけど」

善子「ヨハネだってば!」

ルビィ「……ヨハネちゃんのを描いてて、それでヨハネちゃんらしいアクセントに困ってたら」

ルビィ「頭の中にヨハネちゃんの声が響いて、なんと……とっても悪魔的な可愛いデザインが完成したんだぁ~」

善子『あんたの仕業?』

ヨハネ『もちろん♪』

37: 2018/01/26(金) 23:16:09.93 ID:LACEqc8n
花丸「あ、それならマルも……ふと誰かに頭を撫でられたような」

ルビィ「ぇっ……怖い。まさか幽霊が……」

花丸「そんなわけないよ~……ね、善子ちゃん」

ヨハネ「!?」ドキッ

善子「!?」ビク

ルビィ「マルちゃん……? 善子ちゃんはこっちだよ……」

花丸「あれ?」

善子「……」ドキドキドキドキ

善子『ま、まさかずらまる』

ヨハネ『もしかしたら、見えて……』

花丸「あ、ほんとだ~……あはは、マルったらお腹すいて変になっちゃってたのかなぁ?」

善子「も……もう、馬鹿ね」

花丸「……でも」

善子「なによ」

花丸「……ここに善子ちゃんがいるような感じが……」

善子「じゃあ私はなんなのよ」

ルビィ「あはは、ほんとだよ~! ねえねえ、ご飯いこうよ」

善子「そ、お腹すいてるんならなおさら急がないと」グイグイグイ

花丸「も、も~……押さないでよ~」

ヨハネ(……やっぱり見えてないけど、感じ取れはするみたいね)

50: 2018/01/27(土) 22:40:37.69 ID:JVXaSsPI
~中庭~


ルビィ「あ、ベンチ空いてる! やった~」タッタッタッ

花丸「ルビィちゃん、走ると危ないよ~」タッタッタッ

善子「ずら丸も走ってんじゃないの……」

ヨハネ『いいわねーお昼? 私も食べたい』

善子『あ、そうだったわね……あんたのお昼ご飯どうしよ……』

ヨハネ『あ、それじゃあお金ちょうだい、購買でなんか買って食べる』

善子『ひとりで?』

ヨハネ『まあ、そのほうがいいんじゃないの?』

善子『……』

善子(この気の使い方……私のぼっち属性を見てるようで嫌だわ)

善子『とりあえず……ほらお金』つ1000円

ヨハネ『やった、なんでも食べれる』

善子『あと、その……気なんて使わなくてもいいから────』

ヨハネ『それじゃあヨハネ、ひとっ飛びマクド行ってくるから!』

善子『えっ』

ヨハネ『最近食べてなかったし? なんとなく食べたくなっちゃって~』

善子『ちょ、あんた!!?』

ヨハネ『善子は3人のお食事楽しんで♪ ヨハネは優雅にハンバーガーを楽しんでくるから!』バサッバサッ


ヒューン! キラーン☆


善子「~~……あんのアホーー!」

ルビィ「!?」ビクンッ


花丸「むーん…………やっぱり、何か変ずら」

52: 2018/01/27(土) 22:41:48.54 ID:JVXaSsPI
~屋上~


ヨハネ「……よっと」スタッ

ヨハネ「……我ながら下手な演技だわ」

ヨハネ「ま、大丈夫でしょ私だし」

ヨハネ「さて……」キラキラ


シュルルル♡
キラン♡キラン♡
パァンッ♡


ヨハネ「ふっ!」※変身バンク

ヨハネ「堕天使衣装に変身完了~っと。せっかく学校なんだし、少しくらいいつもと違う雰囲気を味わいたいわよね~」

ヨハネ(これぞヨハネの魔法その4)


【変身】
堕天使ヨハネが持つ魔法の中でも使い勝手は最強格!他人に化けることは出来ないけど、善子をベースにするなら大人になったり子供になったり出来るわ!
主な使い方は衣服を変化させることね。今みたいに善子の服を制服に変化させられるの。
解除すれば元の服装に戻るから安心ね♪


ヨハネ「ふふ、ふふふ……学校の屋上で堕天使衣装……ククク、なんて悪魔的……」

ヨハネ「それに…………お昼ご飯くらいは実体化しても怒らないわよね?」

ヨハネ「さてと、いただきますか」


ヨハネ'sメニュー
コーラMサイズ
ポテトMサイズ
トリプルチーズバーガー
コールスローサラダ※栄養には気をつけるのよ!


ヨハネ「ふふ、ずっと食べたかったトリプルチーズバーガー……いただきまーs」

千歌「一番乗りだー!」バァーン‼︎

ヨハネ「げっ」

53: 2018/01/27(土) 22:47:07.75 ID:JVXaSsPI
千歌「あれー? 善子ちゃんだ」

ヨハネ「ヨハネよ!」

梨子「え? 善子ちゃん?」

曜「ほんとだ、善子ちゃんだ」

ヨハネ(やっばーい……あとで怒られるわこれ)

千歌「善子ちゃんもここでお昼?」

梨子「花丸ちゃんたちは?」

ヨハネ「……堕天使は群れないの」

梨子「あはは……そ、そっか」

曜「あ、マクドナルド」

千歌「えっ! ほんとだ、なんで!?」

ヨハネ「え、えっと~……」

曜「もしかしてこっそり抜け出して買いに行ったな!? この~!」ナデナデワシャワシャ

ヨハネ「あ、ちょっ……撫でんなー!」

千歌「ポテトいただき!」パクッ

ヨハネ「あ! ちょっと!」

梨子「千歌ちゃんお行儀悪いよ」

千歌「えへへ~♡ ごめんごめん」

54: 2018/01/27(土) 22:58:27.25 ID:JVXaSsPI
曜「あ、いいな! 私もひとくちちょうだい~」

ヨハネ「1本だけよ……」

曜「ありがとうございますヨハネ様!」

ヨハネ「! ……ふ、くるしゅうないわ」

千歌「じゃあ私ももう1本くださいヨハネ様!」

ヨハネ「それはダメ! リーダーは1本食べたでしょ勝手に!」

千歌「ちぇー……」(・ε・` )

梨子「当たり前だよ……」

梨子「ごめんね善子ちゃん、二人が勝手に……」

千歌「とか言って食べたそうな顔してる梨子ちゃん」

梨子「えっ!? そ、そんなわけないよっ! 人のものを勝手になんて~……!」

ヨハネ「いいわよ、リリーも1本あげる」

梨子「あ……ぁ、ありがとうございます……ヨハネ様……///」

ヨハネ「うふふ、もうこれであなたたちは立派なリトルデーモンよ! 以後、私の命令には従いなさい!」

ようちか『それはやだ』

ヨハネ「なんでよっ!」

梨子「あ、あはは……」

55: 2018/01/27(土) 22:59:31.77 ID:JVXaSsPI
ヨハネ「ったく……人の優雅な食事を邪魔してっ」チュー

ヨハネ「はー……コーラうまー」

千歌「それじゃあ私たちもお弁当食べよっか!」

梨子「晴れててよかったね。屋上の風が気持ちいいな~」

曜「ビニールシート敷いたよ~」

千歌「善子ちゃんもよかったらこっち座るー?」

ヨハネ「ん……ううん、私はいい。そもそも4人座れないでしょそれ」

千歌「うぅ……ご、ごめ~ん……」

梨子「もう、千歌ちゃんは……」

ヨハネ(……やっぱりいつ見ても仲良しな人たち。だいたい一緒にいるし……だいたい騒いでるし)

ヨハネ(ま、私はヨハネだから……優雅な一人の食事でよし)

ヨハネ(さてと、楽しみにしてたトリプルチーズバーガー……)

ヨハネ「はぐっ……もぐ、むぐむぐ」

ヨハネ「ん~~~~~っまぁ~~~!」

ヨハネ「やばいって、やばいってこれ! こんなの犯罪でしょ~!」ガツガツムシャムシャ

ヨハネ「チーチーダブルも買っとけばよかったかしら?でもお金足りなかったし……くう、次は絶対買う!」

56: 2018/01/27(土) 23:01:09.17 ID:JVXaSsPI
善子「うま~……」

千歌「いいなー……私もパンにしたらよかった」

曜「私もであります……」

梨子「私はサンドイッチ……♪」

ようちか『じゅるり』

梨子「こ、これはあげませ~ん!」

ようちか『え~!』

ヨハネ(いつもなら食べながらゲームでもしたいところだけど……今は外だし、ケータイも善子が持ってるし)

ヨハネ(あっ! ゲームのイベントちゃんとやってるのかしら善子……)

ヨハネ(くっ……きになる……)

千歌「……あれ? ねえ善子ちゃん」

ヨハネ「ヨハネよ! ……って、え? いま呼んだ?」

千歌「呼んだ呼んだ」

ヨハネ「なに?」

千歌「なんで制服じゃないの?」

ヨハネ「え゛っ」

57: 2018/01/27(土) 23:01:34.69 ID:JVXaSsPI
曜「あ……ほんとだいつも見てる服だったし気づかなかったけど、制服じゃないね」

ヨハネ「や、これは……その、えっと……」

ヨハネ「ほ……ほら、マクド買うのに制服じゃおかしいでしょ!? だから……それ用に用意してたの!」

千歌「ふーん?」

ヨハネ(誤魔化せたか……?)

千歌「そっか! 早く着替えとかないと、見つかると大変だよ~?」

ヨハネ「え、ええ……忠告ありがとう」

ヨハネ(助かった~……これからは学校で無闇に服装変えるのはやめとこ)

59: 2018/01/27(土) 23:02:46.88 ID:JVXaSsPI
・・・


ヨハネ「さてと」スクッ

曜「どこか行くの?」

ヨハネ「食べ終わったし、教室に帰るだけよ。バレないように着替えとゴミ捨てを済ませてからね」

千歌「まだ時間あるよ? お話ししていこうよ~」

梨子「お弁当片付けたら4人で座れるし、どうかな?」

ヨハネ「……嬉しいお誘いだけど、今日は日直だから」

千歌「あー……そっか、じゃあまた今度誘うから次は絶対おしゃべりしようね? 先輩命令だよ!」

ヨハネ「約束するわ。次は必ずお喋りする」

梨子「いい子だね、善子ちゃん」

ヨハネ「え?」

梨子「ふふ、ううんなんでも」

曜「それじゃあ放課後ね~!」

ヨハネ「ええ、またあとでね」ガチャッ


バタン


ヨハネ「……さてと」


シュルルル♡
バサッ!


ヨハネ「変身完了……と、透明化も完了」

ヨハネ「善子の様子は……ま、いっか」

ヨハネ「…………暇だし校庭で遊ぶ奴らでも眺めてようかしら」

60: 2018/01/27(土) 23:04:30.78 ID:JVXaSsPI
~中庭~


ルビィ「それでね、昨日お姉ちゃんが~」

花丸「ふふ、ダイヤさんらしいずら」

善子「……」モグモグ

善子(あいつ、変な誤魔化し方で逃げて……今どこで何してんのかしら)

善子(ちゃんと食べたのかな? まさかあのお金で勝手にゲーセンなんか…………ま、私に限って行くわけないか)

善子(案外、本当にマクドで食べてるのかもしれないし、そのうちまた出てくるでしょ)

ルビィ「善子ちゃん聞いてる~?」

善子「あ、ごめん聞いてなかった。なに?」

ルビィ「だからね、昨日ルビィがご飯食べてたら、食べ終わるまでお姉ちゃんが待っててくれたの~」

善子「ほんと過保護ね生徒会長……」

ルビィ「む、そんなことないもん! 一人で食べるのが寂しいから、寂しくないようにって一緒にいてくれただけだもん」

善子「それが過保護なのよ~」

善子「……ふふ、お姉ちゃんがいていいわね」

花丸「そういえば善子ちゃんは一人っ子だったっけ」

善子「ずら丸もでしょう?」

花丸「そうだけど、おらは小さな頃からダイヤちゃんがルビィちゃんと一緒に、妹みたいに可愛がってくれたから」

善子「お姉ちゃんはいないけど、いるようなもんだ……って?」

花丸「うんっ!」

61: 2018/01/27(土) 23:06:09.08 ID:JVXaSsPI
ルビィ「よく3人でお風呂はいったよね~」

花丸「あと、一緒のお布団で寝たり!」

ルビィ「どっちがお姉ちゃんを好きかで喧嘩したことも」

花丸「あったあった~」

ルビィ「ね! そうだ、今度は善子ちゃんも一緒にうちにおいでよ! お姉ちゃんも喜ぶよ」

善子「ええ、そうね」

善子(仲良しな二人ね……ほんと)

善子(二人のこういう部分を見ると────私はまだ、この子たちの絆ほど強いものは無いんだって実感させられる)

善子(元々ぼっち気質が強いんでしょう、人と仲良くなるのが苦手というか……どこまで踏み込めばいいのがかイマイチわからない)

善子(出会ってから数ヶ月で、Aqoursのみんなとはとても仲良くなった。だけど、ここの半数はもともと幼馴染)

善子(私は高校生になってから出てきた門外漢────若干、仲の良さに若干差が生まれるのは当然のこと)

善子(でも、みんなはそれを気にせず私と仲良くしようと……いえ、仲良くしてくれてる)

善子(だからこそもっと自分から行ってもとは思うけど……まあ、勇気が出ないというかなんというか)

善子(────情けないわ、ほんと)

62: 2018/01/27(土) 23:07:53.84 ID:JVXaSsPI
~練習後・屋上~


ガチャッ


善子「おまた────あれ?」

善子「……いないじゃん」

善子「え、まさか一人で帰れってこと!? ちょっとー!」


バサッバサッ!!


善子「!」


ゴオォォォォ!!

ズン!!


善子「けほ、けほ……」

ヨハネ「……」シュウゥ…

善子「ちょっと」

ヨハネ「見た? 見た!? スーパーヒーロー着地!」

善子「見たけどびっくりするわ! いきなりすんな!」

ヨハネ「なによ、せっかくかっこいい登場だったのに」

善子「ふん、翼でやる登場じゃないわよ」

ヨハネ「……ちっ、やっぱりパワードスーツが必要ね」

善子「パワードスーツ……ありね、かっこいい……」

ヨハネ「でしょ? ちょっと変身してみようかしら……」

善子「え、変身ってなに!? 変身って! なに、仮面ライダーなの!? レンジャーなの!? ウルトラマンなの!?」

ヨハネ「んー……どちらかと言うと、ひみつのアッコちゃん?」

善子「そっち系ね……いや、それでも十分すごいわ」

ヨハネ「ふふん、やっとヨハネのすごさを理解したかしら?」

善子「……いやまだまだ!」

ヨハネ「もー……強情ね」

64: 2018/01/27(土) 23:10:32.58 ID:JVXaSsPI
善子「ふん! ……っていうかあんた、お昼間にリーダー達と会ったんだって?」

ヨハネ「あ、そうだった。言うの忘れてたわ」

善子「話合わせるの大変だったんだから……ったく、しかも一人でトリプルチーズバーガー食べて」

ヨハネ「ああ、あれね!最高にやばかったわ!」

善子「私が食べたかったやつなのに……」

ヨハネ「ふふ、私はあなたなんだから、そりゃ食べたいに決まってるじゃない」

善子「今日の夕飯はトリプルチーズバーガーね……」

ヨハネ「えー……昼間食べたのに……」

善子「勝手にひとりで食べるからよ」

ヨハネ「いいじゃない、気を使ってあげたんだから」

善子「いらない気遣いよそれ。次からそういうのは一緒に食べること、いいわね」

ヨハネ「……なんで?」

善子「は?」

ヨハネ「だってあなたは津島善子よ? ずら丸もいる、ルビィもいる、リーダー達もいる」

ヨハネ「対して私は堕天使ヨハネ。崇高にして孤高なる存在」

ヨハネ「そんな私がどうしてあなたたちとご飯を食べるのよ」

善子「……はあ、言わないとわかんないわけ? あんた、私のくせに」

ヨハネ「いや、だから」

善子「あんたは私、私はあんた────なら、自分に遠慮なんかいらないでしょ」

ヨハネ「……」

65: 2018/01/27(土) 23:11:31.94 ID:JVXaSsPI
善子「津島善子って人間がぼっち気質なのは、私たちが一番よく知ってることでしょ? だからって遠慮しなくていいじゃない」

善子「ずら丸たちに遠慮するのも、リーダーたちに誘われても遠慮して断ったのも、多分私があんたでも同じことをする」

善子「だから腹立つのよほんとに!」

ヨハネ「……」

善子「ヨハネだからとか、かっこつけなくていいのよ。これからご飯は私と一緒、いいわね? あと、そのうちあんたのことみんなにも話すから」

ヨハネ「え、それはやばいわよ! バレたら混乱する……」

善子「関係ない。私は私であんたはあんた────だけど私はあんたであんたは私なんだから」

善子「私もあんたもみんなの仲間なんだから────認められてここに居るんだから、遠慮なんかいらないの」

ヨハネ「……善子」

善子「……まあ、今日一日中あんたのことでずっとイライラしてて気づいたことなんだけどね、これ」

ヨハネ「ふふ、情けない」

善子「あんたにまで言われたくないわ!」

ヨハネ「それもそうね、ふふふ」

善子「とりあえず……私が言いたいことはこれだけ。あとはあんたよ」

ヨハネ「そう……じゃあ、そうね」

ヨハネ「……私」

善子「……うん」

ヨハネ「実はそんなに深く考えてなかったわ」

善子「」

66: 2018/01/27(土) 23:12:51.71 ID:JVXaSsPI
ヨハネ「いや、でも言われてみればそうだなって部分はあったから……うん、ありがと善子」

善子「……………………私の心配を返して」

ヨハネ「まあまあ、そんなこと言わないで」

善子「はぁ……我ながら適当すぎて呆れるわ」

ヨハネ「でも、あなただって私と同じ部分はあるはずよ? むしろ私を見て、自分がそうだって気づいたわけだし」

善子「まあね────って、偉そうにすんな」

ヨハネ「ふふ」

善子「はあ……すっかり気が抜けちゃった。早く帰ってゲームしましょうよ、私が二人なら格ゲーもいい勝負できるでしょ」

善子「……ヨハネ」

ヨハネ「!! 善子、いま名前……」

善子「べ、別にそういうわけじゃないけど! そう……便宜上、便宜上ヨハネってことにしといてあげるわ!」

ヨハネ「ええ、ええ!それでもいい!うふふふ……♡」

善子「ああーもう! ニヤニヤすんなっ!」

ヨハネ「ふふ……はいはい、わかりました」

ヨハネ「じゃ……帰りましょうか」スッ

善子「うん、帰ろう……私たちの家に」ギュウッ

ヨハネ「飛ばしていくわよ!!」バサッ

善子「え゛っ」

ヨハネ「そーおーーれっ!!」バサバサバサバサ!!


バシューーーン!!


善子「ぎゃぁぁぁあぁあぁぁぁあああ!!!!」


この日から、私とヨハネの不思議な生活が始まった。

またこれから私はヨハネの(自分の)適当さに振り回されながらも、なんだかんだ楽しく暮らすのだけど────

それはまた、別のお話。

78: 2018/01/29(月) 02:13:44.38 ID:NIhjBHc9
~朝~


pipipi...


善子「ぅーん……」

善子「うるさーい…………」バシ

善子「……んふふ、休みくらい寝る……」ムニュ

善子「…………なにこれ」ムニュムニュ

ヨハネ「ぁ、んっ……は、ぁ……っ」

善子「!!???」


バチコーン!!


ヨハネ「いったああぁっ!? なに、なに! 魔王の降臨!? それとも悪魔の復活!?」

ヨハネ「って……ぁれ────よしこ?」

善子「あれ?じゃないわよ!! なんで全裸で寝てんのよ!」

ヨハネ「……ああ、だってパジャマないし」

善子「私のやつ着なさいよ……」

79: 2018/01/29(月) 02:14:36.62 ID:NIhjBHc9
ヨハネ「まあ、それはほら……ふたりで着ると消費も二倍だし」

善子「変な気を回すなっ!」

ヨハネ「まあまあ、それより見てよ────変身で少し大きくしてみたの」

ヨハネ「どう?」タユン

善子「むかつく」

ヨハネ「あら、善子? あなたの胸は貧相ねえ、ふふ、この堕天使ヨハネ様に服従を誓うなら少し大きくしてあげても」

善子「もう容赦はしないわ! PS4起動させなさい! ブレイブルーで決着をつけるわよ!!」

ヨハネ「受けて立つわ、我が器よ!! 先に2勝した方が勝ちね!」

善子「上等!」


────我が家の朝はこんな感じで始まる。

だいたいヨハネと私が挨拶がわりに軽い口喧嘩して、

ゲームやって、お腹空いたら部屋から出てご飯食べたりね。

80: 2018/01/29(月) 02:17:09.77 ID:NIhjBHc9
親はどうしたって? そんなもの出張とか宿直とか色々あるの。

だってうちの親、教師だし……土日も学校あるのよ。

今日のAqours? 休みよ!

────で、今朝の決着はというと。


善子「なんで引き分けなのよ」

ヨハネ「まあ、私たち実力は同じだしねえ?」

善子「10試合中5勝5敗……なぜなの」

ヨハネ「うふふ、だけどこの実力の均衡はゲームによっては価値があるわよ? 地球防衛軍とか」

善子「……確かにコープを組むうえでこれ以上に頼もしい味方はいないわ」

ヨハネ「ね? だから朝からかったのは許して」

善子「……仕方ないわね、ゲームの腕前に免じて許してあげる」

ヨハネ「よしっ! ……で、今日はどうするの?」

善子「今日は…………その……」

ヨハネ「なによ、歯切れが悪いわね」

善子「えと、あのね? その……その」

善子「ずら丸たちが……うちに来るの」

ヨハネ「────は?」

81: 2018/01/29(月) 02:18:05.72 ID:NIhjBHc9
善子「そ、それであんたには……!」

ヨハネ「ヨハネは外でぶらついてればいいのね、分かったわ」

善子「違うわアホ!」ガシッ

ヨハネ「ふぎゃっ!?」

善子「あんたのこと、二人に紹介するから!」

ヨハネ「…………………………………………え?」

善子「あの二人には……あんたの事、黙っていたくなくて、だから紹介する」

善子「……いい?」

ヨハネ「……い、や、でも……混乱させるし……やばいわよ……」

善子「うっ……で、でも、これは私がしたいから……」

ヨハネ「善子……」

善子「私のリトルデーモンだもの、ちゃんと分かってくれるわ」

ヨハネ「……ええ、そうね。じゃあお願い」

善子「うん……うん」

善子「じゃあまずは服着て」

ヨハネ「えー……」

善子「あんた本当に私なの?! 服は着なさいよ!」

ヨハネ「……ふふ、意外と裸もいいものよ? 夜な夜な、姿を消して裸で街を歩いたりしてるし」

善子「は、はっ……はぁぁぁあ!!?///」

ヨハネ「嘘よ」

善子「ばーか!ばーかばーか!///」

82: 2018/01/29(月) 02:18:37.26 ID:NIhjBHc9
ヨハネ「意外と素直で可愛いのね、善子って」

善子「自分で自分のこと可愛いとか言うな!」

ヨハネ「あら、だけどヨハネはあまりの美少女っぷりに嫉妬した神様が堕天させたのよ? 忘れてはいないでしょう」

善子「くっ……我が暗黒の記憶を呼び覚ますとは……」

ヨハネ「ふふ、それじゃあ朝ごはん食べて部屋の片付けね」

善子「そうね……じゃ、トーストでも焼きましょうか」

83: 2018/01/29(月) 02:20:51.39 ID:NIhjBHc9
・・・


善子「そういえば親に話した時の反応ってすごかったわよね」

ヨハネ「泡吹いて倒れたものね」

善子「まあ……でもなんやかんや信じてくれたし」

善子「我ながらものすごい親を持ったものね」

ヨハネ「普段のヨハネに慣れてるだけでしょ」

善子「……あんたえげつないこと言うわね」

ヨハネ「んふふ♪」

善子「まあいいか……信じてくれたから。で、ヨハネは何飲む?」

ヨハネ「コーヒー、ミルクたっぷり、お砂糖1杯」

善子「ふ、ならば私はブラックを!」

ヨハネ「なにっ!? 我が器よ……貴様、この堕天使ヨハネを差し置いて一人だけブラックを飲もうなど……!」

善子「クックック……これこそがオリジナルと分身の違いよ。常に進化し、飛躍し続ける我の姿に恐れおののくがいいわ!」

ヨハネ「くっ……ならばこのトースト、貴様はどのようにして食べるつもりだ!」

善子「それなら、ベーコンとレタスあるし目玉焼きも入れてサンドイッチにしましょ」

ヨハネ「予想外だった!」

84: 2018/01/29(月) 02:21:33.44 ID:NIhjBHc9
善子「ふ、最近私は料理にはまっていてね、美味しそうなのをクックパッドで見つけたのよ」

ヨハネ「知ってるわよ自分のことだもん」

善子「……で、サンドイッチなんだけど」

ヨハネ「無視かい」

善子「用意するのは────これね」

ベーコンエッグサンド 2人前
食パン4枚(個人的に5枚切りがベスト)
生卵2個
ベーコン4枚
レタスで4枚
バター適量
ケチャップ適量
マヨネーズ適量

ヨハネ「適量多くない……?」

善子「お好みでってやつよ! 自分の好きな量で味付けするといいわ」

85: 2018/01/29(月) 02:24:22.05 ID:NIhjBHc9
ヨハネ「で、どうするつもり?」

善子「まず火にかけたフライパンにベーコンを2組になるように4枚並べて」ジュー

善子「卵の膨らんでる方を割って……こう、カップみたいにするの。わかる?」

ヨハネ「写真があれば分かりやすいと思うけど、難しそうね」

善子「で、これをそれぞれ……えっと、横に並べたベーコンの片方に押し付けるように乗せて……ある程度固まるまで待つ」ジュー…ジュワワワ

善子「少し固まったら殻を取り上げると、ほら、君がベーコンの上で固定されてるでしょ?」

ヨハネ「なるほど……考えたわね」

善子「ふふ、これならベーコンエッグも綺麗にできるからオススメね」

善子「殻を外したら塩コショウを軽く振って、ベーコンを半分に折って卵にかぶせる。その後、少し水を入れて蓋をし、蒸し焼きにする────」カチャ

善子「その間にソースとパンを作るから」

ヨハネ「はーい」

86: 2018/01/29(月) 02:25:16.18 ID:NIhjBHc9
ヨハネ「マヨとケチャップ……ってことはオーロラソースね」

善子「その通り」

善子「マヨネーズとケチャップを混ぜてオーロラソースを作るわ」

善子「食パンは先にトースターで4枚焼いておいたから、それを出してきて薄くバターを塗っておく」

善子「そうしたら食パンにレタスを乗せて、レタスの上からオーロラソースを塗る」

善子「そして蒸し焼きにしたベーコンエッグを載せるのよ」

ヨハネ「うわ、すごいボリュームね。たべれるの?」

善子「意外とサクット食べれちゃうから安心しなさいな。で、またオーロラソース塗ってレタス乗せてパンで挟んで────!」

善子「あとは対角線で4等分して完成よ」

ヨハネ「ほえー……朝からハードそう」

善子「コーヒーに合うし、お手軽よ。それに肉と卵と野菜が取れるし」

ヨハネ「なるほどね……さすがは我が器、素晴らしい料理の才能だわ。無駄に辛くしようとしなければだけど」

善子「何よ、おいしいじゃない堕天使の涙!」

ヨハネ「あらぁ? ルビィが死ぬほど辛い辛い言ってたの忘れたのかしら~」

善子「あ、あれ以降はもう作ってないから……!! ほら、早く食べて!」

ヨハネ「はいはい、わかったわよー」

98: 2018/01/30(火) 01:24:53.33 ID:3jhtL+Qb
・・・


ヨハネ「いただきます……はぐ」

ヨハネ「むぐむぐ……」

善子「どう?」

ヨハネ「うまー♡」

善子( ・ㅂ・)و ̑̑

ヨハネ「いや、美味しいわこれ……ベーコンエッグはジューシーだし、オーロラソースの程よい酸味でさっぱり」

ヨハネ「レタスもシャキシャキだし、パンもカリッと焼けてて美味しいわ」

善子「解説ありがとうヨハネ。これは色んなもの挟んでも美味しいし、いいわよこれ」

ヨハネ「腕をあげたわね、我が器もとい善子」

善子「ヨハネよ」

ヨハネ「そうだわ、夕飯は私が作りましょうか」

善子「ならルビィ達にも食べさせる?」

ヨハネ「…………………………ヨハネはルビィ達に受け入れてもらえるのだろうかしら」

善子「大丈夫よ! …………………………多分」

ヨハネ「…………うん」

99: 2018/01/30(火) 01:25:59.29 ID:3jhtL+Qb
善子「ほら、堕天使ヨハネがそんな不安そうな顔をしちゃダメよ。二人を信じて────二人を信じられるなら大丈夫」

善子「だって────」

ヨハネ「……」

ヨハネ(私のせいで善子が、奇異の目で見られるのは嫌だ)

ヨハネ(私が堕天使ヨハネだから、あの子の堕天モードの象徴だから……とかじゃなくて)

ヨハネ(あの子から私が分裂……生まれたことで、善子という存在が恐ろしいものに思われてしまったら────)

ヨハネ(もしそんなことになったら、私は自分を許せないだろう)

ヨハネ(だからこそ、ヨハネは姿を消していれば迷惑はかからないと思っていた。事実、親に話すと善子が言った時も猛反対だった)


『────この子は私なの! 津島善子なの! 母さんたちは娘を信じられないの!?』


ヨハネ(けれど善子は無理を通して、親に私の存在を認めさせた)


『────悩む必要なんてなかった。あなたが津島善子なら、私たちの娘なんだから』


ヨハネ(一晩考えて、両親が出した答えがこれだった。きっとものすごく考えて、ものすごく話し合ったのだと思う)

ヨハネ(それでも、娘として受け入れてくれた────それだけで、私は泣くほど嬉しかった)

ヨハネ(だって────)

善子「だって───あなたも津島善子なんだから」

100: 2018/01/30(火) 01:26:33.37 ID:3jhtL+Qb
ヨハネ「……その言葉はずるい」

善子「あらあら、堕天使ヨハネは人間の言葉にほだされちゃうのかしら? 堕ちたものね堕天使ヨハネ、そろそろその名前を私に返却してもいいんじゃない?」

ヨハネ「……ふふ、やっぱりオリジナルには敵わないわね。名前は返さないけど」

善子「む……そう、ならもう少し預けておいてあげる」

ヨハネ「……ありがとう善子」

善子「……ふん! 別に、ヨハネのためじゃないけどね! 私が気分悪いだけよ」

ヨハネ「ふふ、素直じゃないわね~」ナデナデワシャワシャ

善子「あーもう撫でるな! ほら、さっさと食べ終わらせて! 食器洗って部屋の掃除するんだから手伝ってよ」

ヨハネ「あ……もう冷めてる……」

善子「冷めても美味しいからほらはやく」

ヨハネ「はむ……んふ、ほんとだ♡ うま~」

善子(……あんたの気持ちくらい、私にはわかるわよ。だって私があんたの立場なら…………)

101: 2018/01/30(火) 01:27:15.36 ID:3jhtL+Qb
~バス停~


ブロロロ…


花丸「長旅だったずら~……」

ルビィ「そんなに乗ってないよ……?」

花丸「内浦から出ることがあんまりないから、バスで移動って言うだけでマルにはちょっとした長旅なんだ……」

ルビィ「じゃあこれからいっぱいおでかけしようよ! 善子ちゃんも入れて3人でっ」

花丸「うんっ!」

ルビィ「えへへ……っと、あれー?」

花丸「おうちの場所は……?」

ルビィ「えっとね、善子ちゃんがバス停まで迎えにきてくれるはずなんだけど……」


「ずらまるー! るびぃー!」タッタッタッ


るびまる『!』

善子「はあ、はあ……お待たせ……」

善子「ごめん、待った?」

ルビィ「ううん、今ちょうどバス着いたとこだよ~」

102: 2018/01/30(火) 01:27:56.72 ID:3jhtL+Qb
花丸「善子ちゃん、今日はお世話になるね」

善子「ええ、練習もないし」

ルビィ「善子ちゃんのお部屋どんなだろね、まるちゃん! ルビィ、ずっと気になってたんだ~」

善子「えっと……ゲームがたくさんあるくらいよ?」

ルビィ「えっ……」

善子「なんでそんな残念そうなのよ……」

ルビィ「堕天使なのに!? 謎の黒い紋章とか! 拷問器具とか!」

善子「堕天使をなんだと思ってるのよ! それはもうただの拷問部屋じゃないの!」

花丸「ルビィちゃん、ずっと楽しみにしてたずら。堕天使のお部屋ってどんななんだろ~って」

善子「そうなの?」

ルビィ「でもルビィの期待は崩れ落ちました……」

善子「……でも、ちょっと驚くものが見られるかも」

ルビィ「なになに! 善子ちゃんの本気の堕天使衣装とか!?」

善子「ふ、それくらいならいつだって!」ギラン

花丸「やめるずら、みんなが見てるからね?」ポン

善子「……へい」

善子「んじゃ、行きましょうか。すぐそこだし」

るびまる『はーい!』

103: 2018/01/30(火) 01:28:37.33 ID:3jhtL+Qb
~善子の家~


花丸「あ、せっかくお邪魔させてもらうのに……おやつ買ってくるの忘れたずら……」

ルビィ「あっ……ほんとだ。今からコンビニ行ってくる?」

善子「いいわよ、もう用意してるし」

ルビィ「わあ、わあ……ごめんね……!」

花丸「ごめんね善子ちゃん……」

善子「誘ったのはこっちだし、気を使わなくていいの! ほら、入って入って」

ルビィ「う、うん」

るびまる『お邪魔しまーす』

花丸「……っ」ビクンッ

花丸「……?」キョロキョロ

104: 2018/01/30(火) 01:29:22.64 ID:3jhtL+Qb
パタパタパタ


ガチャ


善子「ここ、私の部屋」

ルビィ「わーー! ほんとにゲームいっぱい! あ、カメラだ! これで動画配信してるの? すごい……わわ、この前の鏡もある! わー! わー!」

善子「宝箱見つけた子どもかい……」

花丸「……」ジー

ルビィ「すごいよまるちゃん! 善子ちゃんのお部屋だよ!」

花丸「あ、うん」

善子「ゲームやりたいなら後でしましょ? 今日はリビングよ」

ルビィ「はーい……」

花丸「ご両親は、本当にいないの?」

善子「ん、どっちも仕事」

花丸「そっか……いつも寂しくない?」

善子「むしろ、いつもだから慣れた…………げふんげふん」

善子「この堕天使ヨハネが寂しいと? ふふ、あり得ないわねリトルデーモン花丸!」

花丸「はいはい……」ナデナデ

善子「撫でないでっ!」

ルビィ「わ~……マンションのお部屋ってあんまり入らないから新鮮~」

花丸「みらいずら……」

善子「まあ、とりあえず座って。ちょっと……話があるから」

花丸「……」

ルビィ「話?」

105: 2018/01/30(火) 01:30:13.58 ID:3jhtL+Qb
・・・


善子「……とりあえず、先に約束して欲しいんだけど」

善子「今日のことは……その、今は私たちの間だけの秘密にして欲しいの」

ルビィ「え、えっと……よ、善子ちゃん? なんか怖いよ~……?」

花丸「……」

善子「ずら丸は、何か気づいてるんでしょ?」

花丸「……えっと、少しだけ」

ルビィ「えっ……え、え? な、なに……なにがあるの……?」

善子「お願い……大丈夫、なにも危ないことじゃないの。ちょっと驚くものを見せるだけ」

ルビィ「う、うん……そ、それなら……」

花丸「マルは大丈夫ずら。多分、考えてることと同じだからね

善子「……ありがとう」

善子「…………もういいわよ、出てきて」

ルビィ「……え?」

スゥー……

ヨハネ「ど、どうも」

ルビィ「えっ……」

花丸「……」

ルビィ「え、えっ……えっ」

ルビィ「善子ちゃんが、ふ……ふた…………ふぅ」バターン!

ヨハネ「ちょ、ルビィ!?」

善子「やっぱりそうなるわよね……ルビィは……ソファに寝かせましょ」グイッ

ヨハネ「そうね……ああ、ルビィ……」

106: 2018/01/30(火) 01:30:51.01 ID:3jhtL+Qb
・・・


ルビィ「ぅぅん……」

善子「……よし、これでオーケーよ」

花丸「……善子ちゃん?」

善子「あ、えっと」

花丸「……そっちの善子ちゃんも」

ヨハネ「う、うん……花丸」

花丸「二人から、全く同じ気配……を、感じるずら」

ヨハネ「……」

善子「あの、ずら丸……この子はね……?」

花丸「……うん、分かるよ」

花丸「多分……時々感じてた、善子ちゃんと別の、善子ちゃんの気配……の、正体だよね」

ヨハネ「……そうね」

花丸「ふむ……むむむむ」

花丸「悪霊?」

ヨハネ「誰が悪霊よ! 私はヨハネ!」

花丸「うん、善子ちゃんずら」

ヨハネ「……で、えっと……」

善子「とりあえず説明するわね」

花丸「うん」


少女説明中・・・

107: 2018/01/30(火) 01:31:26.43 ID:3jhtL+Qb
花丸「……なるほど、朝起きたら増えてた」

ルビィ「むむむ……」←途中で起きた

善子「そう、だけどこいつは……自分が一番分かる。こいつは津島善子に間違いないし、私も津島善子で……」

善子「……だから、私たちは二人に分裂したの。分身とも言えるのかも」

花丸「善子ちゃんと……もう一人の善子ちゃんの気配は、マルが感じてる限りは……全く同じずら」

花丸「寸分違わず善子ちゃんが二人いるって……マルは感じてる。上手く擬態した悪霊なんかも、そんなことはできるってばあちゃんは言ってたけど……」

花丸「おらは善子ちゃんを信じるよ」

ルビィ「ルビィも……よく分かんないけど、善子ちゃんなんでしょ? なら、ルビィも大丈夫!」

ルビィ「むしろ、その……堕天使ヨハネ様が本物で、ちょっとかっこいいな……♡」

ヨハネ「ルビィ、花丸……」

善子「本当に……信じてくれるの?」

花丸「もちろん! 友達だもんっ」

ルビィ「ね~!」

花丸「なにより、花丸って呼んでくれたのが点数高いずら~♡」

善子「そこ!! そこなの!?」

108: 2018/01/30(火) 01:31:57.55 ID:3jhtL+Qb
ヨハネ「……いいの?」

るびまる『?』

ヨハネ「わたし……普通じゃないのよ? 見た目は、善子だけど……魔法が、使えるのよ……?」

ルビィ「えっ」

ヨハネ「透明になったり……変身したり、空飛んだり……普通の人間じゃ、ないのに……認めてm」

ルビィ「すごい!!」

ヨハネ「!」

ルビィ「すごいすごいすごーい! ヨハネ様は魔法が使えるの!?」

ヨハよし『ヨハネ様!?』

ルビィ「わあ~! 見てみたいなあ、すごいなあ、えへへへ……♡」

ヨハネ( ゚д゚)ポカーン

花丸「大丈夫みたいずら?」

善子「そう……みたいね……」

ヨハネ「ぅぅ……ルビィ~!」ガバッ

ルビィ「ピッ!? ……っとと」

ヨハネ「うぅぁ、ぅぅ~っ……!」

ルビィ「よしよし、ヨハネさま……大丈夫、大丈夫だよ~……?」ナデナデ

ヨハネ「うわ~~ん!!」

109: 2018/01/30(火) 01:32:44.03 ID:3jhtL+Qb
善子(……案外、二人は簡単に受け入れてくれた)

善子(ずら丸は前から気づいていた感じもあったから、なんとなくわかるんだけど……ルビィがネックだった)

善子(純粋な子だから……と思っていたけど、考えすぎだったみたい。……いい友達を持ったな、わたし)


ルビィ「ねえねえヨハネ様、今度、ルビィを抱えて空飛んでみてほしいな~」

ヨハネ「ええ、もちろん構わないわ! リトルデーモンの願い、叶えましょう!」

ルビィ「やった~!」

花丸「よかったね~ルビィちゃん」


善子(…………あそこまで懐くとは思ってなかったけど)

111: 2018/01/30(火) 01:48:34.28 ID:3jhtL+Qb
~落ち着いたのでお昼ごはん~


善子「堕天使特製チャーハン!さあ、おあがりよ!」

2人『いただきま~す』

ルビィ「はむ……おいしい!!」

花丸「むぐむぐ……んん、意外な才能ずら」

善子「意外とか言うなっ! 親が共働きだから、割と機会は多いのよ」

ヨハネ「そしてその分身たるこのヨハネも同等の技術を持ち合わせている────この意味がわかるわね、ルビィ」

ルビィ「ふたりで力を合わせて美味しい料理が作れる!」

ヨハネ「その通り! 賢いリトルデーモンには飴をあげましょう」ポン!

ルビィ「わあっ! えっ、すごい!」

善子「えっ……今、なんか手から飴がでてきたんだけど」

ヨハネ「これぞヨハネの魔法その5、テレポーテーション!」ギラン


【テレポーテーション】
物も別の場所に移動させる魔法よ!
送りつけ、取り寄せ、交換など方法は多彩! その気になれば敵の心臓だけをこの手のひらに────げふんげふん、まあそんなバトル漫画みたいなヤバイことはしないけど。
あと、泥棒とか犯罪も! ダメよ、絶対!


花丸「その飴はどこから取ってきたの?」

ヨハネ「キッチンの棚に隠してあったやつよ。ただのフルーツ味の飴だから大丈夫」

花丸「ふぁんたじぃずら……」

ルビィ「ごはんの後にもらお~」

112: 2018/01/30(火) 01:49:17.50 ID:3jhtL+Qb
善子「……あんた、他にどんなのが使えるわけ?」

ヨハネ「あとは……他人の認識に潜り込むとか、催眠術みたいなものとか」

善子「ん? 認識に潜り込むって?」

ヨハネ「つまりそうね……今の二つを組み合わせると、津島善子が最初から双子で、ヨハネと善子が存在した────みたいに、人にそういう認識を植えつけたり出来るわ」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「……」

ヨハネ「えっ……ど、どうしたの3人とも?」

善子「それを使ったら……説明に悩んだり、苦しむこともなかったんじゃ」

ヨハネ「そ、それはそうだけど」

ヨハネ「……やっぱり嫌じゃない、親や友達を騙したり……その、嘘ついたりするの」

3人『…………はぁあ~……』

ヨハネ「えっ……」

善子「……我ながら背中が痒くなる」

花丸「……善子ちゃんってものすごくいい子だね」

善子「やめて……むず痒い」

ルビィ「堕天使っぽくない……」

ヨハネ「えっ……えっ……な、なんでみんなため息つくのよ~!!」

128: 2018/01/31(水) 14:56:08.60 ID:45bR6H0x
count the skills
現在、ヨハネが使える魔法は?

その1
【漆黒の翼】
堕天使ヨハネの存在を示す最もシンプルで分かりやすい魔法ね!
もちろん飛ぶことができるし、その気になれば翼から魔法攻撃だって……げふんげふん。


その2
【インビジブル】
堕天使ヨハネは人に見られてはいけない────これは己が姿を消す魔法よ!
広範囲は基本的に私が触れているもの……だけど、自分でも具体的によく分かっていないわ。善子を抱きかかえて飛ぶときはあの子も姿が消えてるみたい。
ちなみに善子相手には透明化は効かないわ! なんでかしらね?


その3
【テレパシー】
我が究極の通信システム!
善子とは相互でやり取りができるけれど、善子以外には一方的に送りつけるだけになってしまうわ。
ただしヨハネの魔力を体内に取り入れれば、その魔力が残っている間だけテレパシーのやりとりができるみたいね!


その4
【変身】
堕天使ヨハネがどうしても姿を現わす必要がある場合に使うわ!と言っても、見た目大幅に変えて別人になる────なんてことはできなくて、変化してもベースは善子のまま。
基本的には衣服を変えたり、ちょっと胸を大きくしてみたり、善子を大人っぽくしてみたり。
でも変身、かっこいいわよね! ヒーローみたい!」


その5
【テレポーテーション】
近くのものを手元に移動させる魔法!単純明快ね!
使い方は色々あって「手元に移動させる」「物と物を入れ替える」「物を送りつける」といったことができるわ!
ただ、出来るのはやっぱり私が目で見えてる範囲だけのようね。


いま判明してるのはこの5個ね!
他にも言ってるかもしれないけど、使うまでは秘密よ!
それじゃあまた会いましょうね、リトルデーモン達♡

134: 2018/02/01(木) 00:41:08.82 ID:ckrtLeFo
~食後~


ルビィ「ヨハネ様ヨハネ様」

ヨハネ「ふふ、何かしら? リトルデーモンルビィ」

ルビィ「ルビィに魔法を見せてください!」

ヨハネ「ふふ、仕方ないわね……どんな魔法が見たいのかしら?」

ルビィ「えっと……えっと……」

ルビィ「テレパシーが見たいです!」

ヨハネ「わかったわ! ではこれからあなたの頭の中に話しかけるから、よく聞いておくように……」ムムムム

ヨハネ『────ルビィ、聞こえる? ヨハネよ!』

ルビィ「うわぁ~!!すごい!聞こえる!」

ヨハネ「ふふ、これがテレパシーよ!」

ルビィ「すごいなぁ~……えへへ、ほんとに魔法使いだ……」

ヨハネ「でも、善子以外の相手には、基本的に送信のみになるわ。返事はもらえないの」

ルビィ「そっかー……でも、ルビィ、テレパシーしちゃったんだ♡」

ヨハネ「他にも変身なんか出来るのよ! ちょっと大人なヨハネに変身なったり、着てるものを変えたり!」

ルビィ「すご~い!!」

135: 2018/02/01(木) 00:41:52.86 ID:ckrtLeFo
善子「……あの二人、なんであんな良い感じなの?」

花丸「ルビィちゃんはね、善子ちゃんの堕天使ネタが大好きなんだよ」

善子「ネタとか言わないで!? こっちは本気なんだから!」

花丸「んふふ、でも、善子ちゃんも嬉しそうずら」

善子「…………ふん、別に普通よ、普通」

花丸「素直じゃないんだから♪」

善子「るさい」

花丸「……みんなには言わないの?」

善子「言う……言うつもり。だけど……やっぱり、不安だから」

136: 2018/02/01(木) 00:42:32.28 ID:ckrtLeFo
花丸「驚くとは思うけど……誰も否定しないと思うよ?」

善子「それは、分かってるけど……」


ヨハネ「さあリトルデーモンルビィ! 今度はあなたが私への忠誠を見せる番よ!」

ルビィ「え、えーっと……え~っと……!」


善子「やっぱり、自分自身に置き換えちゃって……辛いのって嫌じゃない? もし、ヨハネの立場が、もし自分なら」

花丸「……優しいね、善子ちゃんは」

善子「別に優しくないわよ……ただ自分が傷つくのは見たくないだけ」

花丸「んふふ、それでも優しいことに変わりはないずら♪」

善子「……///」

花丸「あれれ、褒められて照れてるの? 善子ちゃん照れてるの?」

善子「あーもううるさいうるさい! ヨハネ、ルビィ! 4人でゲームやるわよ!」

ルビィ「ゲーム!」

ヨハネ「何やるの?」

善子「ふっふっふ……当然マリオカートよ……! もちろん負けたら罰ゲーム! 近くのコンビニまで────」

137: 2018/02/01(木) 00:43:33.62 ID:ckrtLeFo
花丸(さっき、まるはヨハネちゃんはいい子だ……って言ったけど、善子ちゃん)

花丸(ヨハネちゃんは善子ちゃんなんだったら……もちろん、善子ちゃんもいい子ってことになるずら)

花丸(いつも堕天使とか、奇抜な言動で遊んでるけど……みんな、ちゃんと知ってるんだよ?)

花丸(だから、善子ちゃんとヨハネちゃんのタイミングでみんなにお話したらいいと思うな。きっとみんな受け入れてくれます。まるのお墨付き♡)


善子「ずらまる、あんたはヨハネとチーム! ルビィは私とよ!」

花丸「は~い」

ルビィ「ヨハネ様~……」

善子「なによルビィ」

ルビィ「……なんて、えへへ♪ 冗談だよ善子ちゃん~」

善子「……ふん、どうせルビィは私よりヨハネの方が好きなんでしょ!」

ルビィ「ど、どっちも大好きだよ~! そんなこと言っちゃヤダ~!」

善子「なら……全力であの二人を負かしにいくわよ、リトルデーモンルビィ! 我の従え!」

ルビィ「あい・さー!」

ヨハネ「ならばリトルデーモン花丸、我らも負けるわけにはいかないな?」

花丸「まるはのんびりやるずら~」

ヨハネ「協調性のかけらもない!!」

ヨハネ「ぐぬぬ……なら一人でも勝つ!」

138: 2018/02/01(木) 00:44:32.90 ID:ckrtLeFo
・・・


ヨハまる『いってきまーす』

善子`¶cリˆヮˆ)| ニヤニヤ

ヨハネ「ムカつくわその顔……」

善子「えぇ~? やぁねぇ、勝利の余韻に浸ってるだけよぉ。ね、ルビィ?」

ルビィ「えへへ、ちゃんと買ってきてねヨハネ様、まるちゃんっ」

花丸「うんっ! じゃあ行ってくるね~」バタン


テクテク


ヨハネ「ったく……さすがに2対1じゃないの、あんなの」

花丸「まるが下手くそでごめんね……?」

ヨハネ「あぁ、いや……そうじゃないのよ花丸。あれはね、あの二人が私を執拗に邪魔してきたのよ」

花丸「そうなの?」

ヨハネ「そうなの。わざわざ私に当たるように甲羅投げたりボム兵投げたり、ほんとひどいったらないわ」

花丸「それに全部当たるヨハネちゃんもヨハネちゃんだと思うけど……」

ヨハネ「くっ……反論できなーい!」

花丸「ふふ、でも……まるは嬉しいな」

ヨハネ「え?」

139: 2018/02/01(木) 00:45:30.57 ID:ckrtLeFo
花丸「ほら、こうやってヨハネちゃんと二人きりでお買い物に行けるし」ムギュー

ヨハネ「ちょっ……な、なんか恥ずかしいから離れてよ……///」

花丸「その反応、やっぱり善子ちゃんそのものだね」

ヨハネ「わざとやってんの!?」

花丸「? まるはただ、むぎゅってしてるだけだけど……」

ヨハネ(わざとじゃないのか……)

花丸「ふふ、ヨハネちゃんも善子ちゃんも恥ずかしがりだね~♪ お友達同士なのに~♪」

ヨハネ「くっ……ならば!」ガシッ

花丸「え────?」

ヨハネ「よいしょっ」タンッ


ゴオォォォォッ


花丸「きゃぁぁぁぁあぁぁ~~~~~~~~~~~!!!!??」


バサッ!!

バサッバサッ


ヨハネ「ふふん、どうよ花丸! 堕天使ヨハネ、実は空を飛べるのです!」

花丸「うぅぅぅぅぅぅうううう……」ギュウウゥゥッ

ヨハネ「ちょ、しまっ……はなま、っ……首……っ!」ペシペシ

140: 2018/02/01(木) 00:46:10.49 ID:ckrtLeFo
花丸「あ、あわわわ……よ、よは、よはねちゃ、と、飛んで、あわわわわ……」

ヨハネ「わか、ってるから! ちょ、はなして!くび!」

花丸「で、でも落ち、や、怖い!いや~!」

ヨハネ「大丈夫だから!ちゃんと抱えてるから!」

花丸「ほ、ほんと? ほんとに……うう、じゃあ……」ソッ

ヨハネ「はあ……はあーっ……」

ヨハネ「ごめんごめん……少し驚かせようとはしたけど、あそこまでとは……」

花丸「普通驚くよ……? いきなり抱きかかえられて、飛び降りなんかされたら……」

ヨハネ「それもそうね、ええ……うん」

141: 2018/02/01(木) 00:46:54.23 ID:ckrtLeFo
ヨハネ「でも、慣れたら楽しいわよ? 善子だって毎日飛んで送ってってあげてるし」

花丸「わあ……そうなんだ」

ヨハネ「ふふ、怖いと思うけど……ゆっくり周りを見てみなさいよ。いつもと違う景色が見られるわよ?」

花丸「ぅうー……ん……」チラッ

花丸「……わあ、ほんとだ」

ヨハネ「どうせなら屋上より高く飛びましょうか────!」バサッ


バサッバサッ!!

ビュオォォ────


花丸「わぁ~! すっごいずら~!」

花丸「空ってこんなに広いんだ……」

ヨハネ「そうね……私も、ヨハネも善子も知らなかった。素晴らしい景色よね」

花丸「うん……でも、さすがに風が冷たいね」

ヨハネ「……そうね、風邪ひかないうちにコンビニまで行きましょうか」

花丸「それなら……歩いていこう?」

ヨハネ「飛んだほうが早いわよ?」

花丸「せっかくだもん、ゆっくりお話ししながら行きたいな……?」

ヨハネ「……ふふ、仕方ないわね! それじゃあマンションの一階まで、ゆっくり降りるわよ!」バサッ

花丸「ゆっくり、ゆっくりだよ?! ほんとにゆっくり降りて!」

ヨハネ「わかってるわよ~♪」バサッ!!


ヒューン!!


花丸「わぁぁあ~!! や、やっぱり落ちるのは怖いずら~~~~!!」

142: 2018/02/01(木) 00:49:04.38 ID:ckrtLeFo
・・・


花丸「ムスー」ギューッ

ヨハネ「あ、あの……花丸、さん? ちょっと……苦しいんだけど」

花丸「勝手に飛ばれたら困るから捕まえてます……」

ヨハネ「もう飛ばないって~…………信じてくれないのね」

花丸「ゆっくり降りてって言ったのにゆっくり降りてくれなかったずら」

ヨハネ「はい……」

143: 2018/02/01(木) 00:51:09.14 ID:ckrtLeFo
~コンビニ~


エアロスミスー


ヨハネ「なにする? 善子はお菓子を適当にって言ってたけど」

花丸「むー……まるはあんまりこんびにに来ないから、何がいいのかわかりません……」

ヨハネ「じゃあ、そうねえ……そろそろ3時のおやつだし、スイーツ系でも攻めましょうか」

花丸「すいーつ」

ヨハネ「そ、ケーキとか……プリンとか」

花丸「えっ! こんびにってケーキも売ってるずら!?」

ヨハネ「それくらいは知っててよ……」

花丸「いやあ、行かないから……えへ」

ヨハネ「んじゃあ……そうね、とりあえずシュークリーム3個と……」ヒョイヒョイ

花丸「……じー」

ヨハネ「ん、なに?」

花丸「よく見ると、ほんとに似てるな~って……」

ヨハネ「……当たり前でしょ? 同じ人間なんだから、違う方が怖いわよ」

花丸「ふふ、ほんとだね。もし入れ替わってても、誰も気づかないずら~」

ヨハネ「……ふむ」

ヨハネ(これは……面白いことを聞いたわね)

花丸「……何か企んでる?」

ヨハネ「えっ!? べ、別に……なにも!?」

花丸「ふーん……」

144: 2018/02/01(木) 00:51:39.44 ID:ckrtLeFo
ヨハネ「そ、それよりほら、飲み物はどうする? ペットボトル?紙パック?」

花丸「あ……それなら、まるはお茶にしようかな~」

ヨハネ「牛乳は?」

花丸「…………ヨハネちゃん、いじわるは嫌いです」

ヨハネ「あはは、冗談よ冗談。私と善子は……やっぱコーラね。ポテチとコーラは欠かせないわ」

花丸「ルビィちゃんは……オレンジジュースかな」

ヨハネ「よし、決まったら会計して帰りましょ」

花丸「は~い」

145: 2018/02/01(木) 00:52:21.27 ID:ckrtLeFo
・・・

エアロスミスー


ヨハネ「会計一緒で」

花丸「あとで半分払うね~」

ヨハネ「ん」


スタローンアイツケシマスカ?


ヨハネ「大丈夫です。あ、それと……その肉まんください」

花丸「ほえ?」

ヨハネ「買い物してるんだし、少しくらいね♪」

花丸「……えへ」


アランドロンフザイデシター

ムラオコシクルスタンハンセーン


ヨハネ(変な訛りの店員だったわね……)

146: 2018/02/01(木) 00:52:49.63 ID:ckrtLeFo
・・・

ヨハネ「よし……」ガサガサ

ヨハネ「コンビニの肉まん、おやつ感覚で食べれるから好きなのよね」ムシッ

花丸「ほえー……」

ヨハネ「ほら」

花丸「あ、ありがとう……あち、あちち」

花丸「ふー、ふー……はむ」

花丸「あふ、はふはふ……んふ、ほいひぃ~……♡」

ヨハネ「美味しそうに食べるわねあんた……」

花丸「えへへ、それだけが取り柄ずら~♪」

ヨハネ「ふふ、なんでも美味しく食べてくれる人は好きよ、私」

花丸「はむ…………善子ちゃんも、そうなのかな」

ヨハネ「……そりゃあ私と善子は同じ人間だし、私が好きなものはあの子も好きよ?」

花丸「そ、そっか……///」

ヨハネ「……ふふ、善子のこと、よろしくね? 花丸」

花丸「……うん///」

161: 2018/02/01(木) 13:39:39.58 ID:ckrtLeFo
~そして夜~


花丸「お夕飯までご馳走になっちゃって……ありがとうございました、善子ちゃん」

善子「いいわよ夕飯くらい」

ヨハネ「そうそう、むしろ善子が嬉しそうだったし、こちらこそお礼を言いたいわ」

善子「ちょっと!?」

ヨハネ「花丸もルビィも、今日はありがとう。私からも、善子からも改めてお礼を言わせてもらうわ」

ルビィ「ヨハネ様……」

花丸「そんな……友達なんだから、当たり前だずら。ね、ルビィちゃんっ」

ルビィ「うん! だからお礼なんていらないよ?」

ヨハネ「……本当に、いい友達を持ったわね、善子」

善子「ぁ、ぅ……ぇと、あ、あんたも……でしょ///」

花丸「照れてるずら?」

善子「うーるーさーいー!」

ルビィ「あはは、善子ちゃん真っ赤~」

善子「も~!!///」

善子「見送りはヨハネに任せた! 私は部屋に帰る!///」

162: 2018/02/01(木) 13:40:44.49 ID:ckrtLeFo
ヨハネ「ふふ、素直じゃないけど……これからも善子のこと、よろしくねふたりとも」

るびまる『はい!』

ルビィ「それじゃあ、また明後日学校で!」

花丸「今度はお昼、ヨハネちゃんも一緒に食べようね~」

ヨハネ「ええ、私も用意しておくわ」

善子「あ…………えっと、その……ルビィ、花丸」

るびまる『?』

善子「気を付けて…………帰りなさいよ」

ルビィ「!」

花丸「……えへ」

るびまる『善子ちゃーん!』ガバッ

善子「えっ!?」


ドタドタドタ!!


善子「いっ、た────」

花丸「えへへ、善子ちゃん~」ムギュー

ルビィ「も~! 善子ちゃん可愛い~!」ギュー

善子「な、なんなのよ二人とも……は、離れて……///」

るびまる『やだ~♪』

善子「なんでよー!///」

ヨハネ(これにて第2話・完! ……ってところね♪)

178: 2018/02/02(金) 20:37:47.80 ID:TD+rbSk4
~とある休日の朝~


善子「ケータイ?」

ヨハネ「そう! ケータイ……私と善子の意思疎通って何かと不便でしょ?」

善子「でもテレパシーあるじゃない、それなら────」

ヨハネ「効果の適用範囲ってものがあるのよ……」

善子「遊戯王カードみたいなこと言わないでよ……」

ヨハネ「ともかく、ヨハネはケータイが欲しい! 堕天使として世俗のニュースを知るのも必要不可欠だし!」

善子「とか言って、どうせ私送ったら家に帰ってネットサーフィンかゲームじゃない」

ヨハネ「……でも、だいたい善子の後ろに立ってるじゃない」

善子「あれ結構ホラーだからね……?」

ヨハネ「いいじゃない、授業参観みたいで♪ 学生なら慣れてるでしょ?」

善子「生まれてこれまで授業参観なんて来てもらった回数は指折り数える程度よ!」

ヨハネ「それもそうだったわ……寂しかったわよね」

善子「…………うん……って、今はその話はよくて!」

179: 2018/02/02(金) 20:39:20.87 ID:TD+rbSk4
善子「ったく……一体どうしたの? ケータイなんて、今まで何も言わなかったじゃない」

ヨハネ「一番の理由はさっき言った通り……テレパシーにも効果の適用範囲があるから、もしものことがあった時のためにと思って」

善子「もしもって、お互い別々の用事で動いてる時とか?」

ヨハネ「それもあるし……何かあったら善子を守れないでしょ?」

善子「……………………はい?」

ヨハネ「な、なによ! 何かあってからじゃ遅いのよ!? 私だって万能じゃないし……テレパシーは意思疎通はできても場所まで分からないし!」

善子「魔法も不便ねぇ……」

ヨハネ「……あ、善子が私の魔力を体内に取り込めばある程度の位置までは分かるわ! テレパシーの効果範囲も強くなるし!」

善子「魔力を……取り込む、って……」

ヨハネ「……キス♡」

善子「できるかーーー!!?///」

ヨハネ「ちなみに、ルビィたちも同じように魔力を取り込めばテレパシーで相互にやり取りできるわ」

善子「させるかーーー!!!///」

180: 2018/02/02(金) 20:40:03.15 ID:TD+rbSk4
ヨハネ「……だから言ってるんじゃない、ケータイ欲しいって。位置の特定もGPSの方が正確だし、ブレにくいのよ? まあ、場合によるけどさ」

善子「ぐぬぬ……ケータイ……ねえ」

ヨハネ「だから、ケータイ……買って♡」

善子「……我が地上の母に」

ヨハネ「許可はもらってるわ」

善子「……」

ヨハネ「それじゃあ街に繰り出すわよ!」ギラン

善子「わかったから……ちゃんと着替えてよ?」

ヨハネ「ん、そう?」

182: 2018/02/02(金) 20:44:35.75 ID:TD+rbSk4
~沼津駅前~


ヨハネ no title



善子 no title



ヨハネ「うふふ……やはり素晴らしいわね、漆黒の衣は」

善子「……なんであんたがゴス口りで私がまともな格好なのよ」

ヨハネ「ふふ、似合ってるわよ? 善子♡」

善子「ヨハネなのに……ぐぬぬぬ」

ヨハネ「ほらほら、急いで! はやく行くわよ!」(*ˊᵕˋ*)♪ルンルン

善子「ちょっと、ただのお出かけじゃないんだからー!」

ヨハネ「はいは~い!」テテテテ

善子「行くの早いってばー……」タッタッタッ

ヨハネ「だって久しぶりのお出かけよ? 善子ったら、私が生まれてからずっと学校とゲームだもん、体が固まっちゃうわ」

善子「む……」

ヨハネ「まあ、その気持ちもわかるけどね? だって善子、一緒にゲームする相手ほとんどいなかったもんね」

善子「べ、別にソロプレイ専門だから構わないわよ! それにセンパイだって時々遊んでくれるし」

ヨハネ「ふふ、でも私が生まれたことで毎日遊べるようになったじゃない? プレイスキルも自分と同レベル、最高効率でクエストも回せるってもんでしょ」

善子「分かったからもう言わないで……その通りだから……///」

善子「一緒に遊ぶ相手ができてめちゃくちゃ嬉しかったわよ!///」

ヨハネ「私も嬉しいわ、善子♡」ギュウッ

善子「ちょ、しがみ付くな~!///」

183: 2018/02/02(金) 20:47:56.95 ID:TD+rbSk4
ヨハネ「分かったならよし! たまにはゆっくり街を歩いて気分を変えたって文句はないでしょ?」

善子「仕方ないわね……どこ行きたいの?」

ヨハネ「まずはクレープ食べたりカフェでケーキ食べたり~♡」

善子「女子力高め!?」

184: 2018/02/02(金) 20:52:31.22 ID:TD+rbSk4
~クレープ屋さん~


ヨハネ「はあぁ~♡ 見てこのチョコソース……まるでこの世全ての悪だわ……!」

善子「それならこっちのいちごでしょ! 赤く輝く宝石のようなイチゴに、燃え盛る魔力がこめられたような赤々としたソース……♡」

ヨハネ「ふふ、お互い良い選択ができたようね!」

善子「……ふふ、休みの日にお出かけしてクレープとか高校生してるわ私……」

ヨハネ「いいじゃない、たまには♡ いただきまーす。……はむ」

ヨハネ「ん~♡ 濃厚チョコとしっとりチョコケーキ……最高!」

善子「……人が食べてると美味しそう見えるわね」

善子(私って普段、美味しいもの食べたらこんな顔してるのかしら……)

善子(くっ……自分が幸せそうな顔するのを見るのってかなり恥ずかしい……!!///)

185: 2018/02/02(金) 20:53:39.25 ID:TD+rbSk4
ヨハネ「あら、食べる? いいわよひとくち」グイッ

善子「な、なに……?」

ヨハネ「あーん」

善子「い、いいわよ自分で食べるから」パシ

ヨハネ「せっかくヨハネが食べさせてあげるって言ってるのに、勿体無いわね。ヨハネの魔力を得られるチャンスを」

善子「これでも魔力のやり取りできるの!?」

ヨハネ「堕天使ってすごいでしょ!」

善子「なんか納得いかない……はむ」

善子「……あ、うまー♡」

ヨハネ「でしょ! やっばいわよね、このチョコの濃厚な甘み!」

善子「……もうひとくち」

ヨハネ「ふふ、気に入ってくれたならよかった♡」

186: 2018/02/02(金) 20:54:11.70 ID:TD+rbSk4
善子「…………なんかムカつくから全部食べる!」

ヨハネ「ちょっと! それ私のなんだから!」

善子「お金出したの私でしょ!」

ヨハネ「共同財産!」

善子「知るか! あんたはイチゴでも食べてなさいよ!」グイッ

ヨハネ「む……いただきます。もぐ……」

ヨハネ「うま~♡」ヨハー♡

善子「はむ……あ、うま……♡」

ヨハネ(めっちゃいい顔してる……)

善子「ていうか、生クリームも美味しいわよこれ」

ヨハネ「ね! 既製品じゃないのかしら……店で味の調整してる?」

善子「そうかも……こう、生クリームっぽい味じゃないし」

187: 2018/02/02(金) 20:56:44.29 ID:TD+rbSk4
ヨハネ「ね……イチゴもう一回食べさせて」

善子「ん」スッ

ヨハネ「ぱく」

善子「!?」

ヨハネ「ん~……♡」

善子「ちょ、ちょっ……な、なんでそのまま食べたのよ!?」

ヨハネ「え? あーんしてくれたんじゃないの?」

善子「してないわ!」

ヨハネ「あら」

善子「も~! 恥ずかしいわねー!///」

ヨハネ「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」

善子「自分自身にあーんって意味わかんないでしょ!?」

ヨハネ「もうただの双子みたいなものじゃない」


ミテミテ-アノコタチ

カワイー! フタゴカナァ


ヨハネ「ほら」

善子「~~~~!!///」

善子「つ、次行くわよ!」グイッ

ヨハネ「わ、ちょっ……まだ食べてるのに~!」

188: 2018/02/02(金) 21:12:55.44 ID:TD+rbSk4
・・・


ヨハネ「ちょっとよしこー?」

善子「ヨハネよ!」

ヨハネ「もー……恥ずかしいのは分かるけど、それくらい別にいいじゃないのー」

善子「うるさーい! あんたはヨハネだからって色々区切りがつけられるんだろうけど、私はやっぱり恥ずかしいのー!///」

ヨハネ「よしよし……大丈夫大丈夫、私たちは一心同体でしょ? いいじゃない、ジャンヌとジャンヌオルタみたいな感じで」ナデナデ

善子「そ、それは……」

善子(確かに……妹や姉が欲しいとか、思ったことがないと言えば嘘になるけど……)

ヨハネ「ふふ、善子。あなたはちゃんと私が守ってあげるからね? このヨハネお姉ちゃんが!」

善子「は、はぁ!? 勝手に姉とか言わないでよっ!///」

善子「私は私、ヨハネはヨハネでしょ!」

ヨハネ「ふふ、まあいいけど」

189: 2018/02/02(金) 21:19:17.81 ID:TD+rbSk4
善子「ったく、ほんと勝手なんだから────あっ」

ヨハネ「どうしたの────ああ」


────アア、サクラガワルイコトヲシタラオコル。ダレヨリモシカル。

────ヨカッタ…センパイニナラ、イイデス。


ヨハネ「そういえばこの映画、見たかったんだったわね」

善子「……うん」

ヨハネ「観る?」

善子「いいわよ、アニメ映画だし。また今度一人で────」

ヨハネ「忘れてない? 私もあなたなのよ? 私だって観たかったんだから」

善子「む……そ、それも、そうね……うん」

ヨハネ「じゃあ観ましょうよ、二人で観た方が楽しいわ」

善子「じゃあ……観る」

ヨハネ「ええ!」

善子「でもあんたは透明化しといて、お金足りなくなるから」

ヨハネ「えぇっ!?」

193: 2018/02/03(土) 04:20:58.25 ID:JK7+PUcB
・・・


善子「はあ~……MX4D最っ高だったわ……!!」

ヨハネ「15年待った甲斐があったわ……」

善子「原作ファンの待ちに待ったアニメーション化だもの……ええ、そりゃあ力も入るってものよね……BD購入決定だわ」

ヨハネ「もう一回観てきても」

善子「くっ……行きたい、ものすごく行きたい! ……けど、最初の目的忘れてる!」

ヨハネ「……なんだったかしら」

善子「ケータイでしょあんたの!」

ヨハネ「……ああ!」

善子「本当に買う気あんの、あんた……」

ヨハネ「まあまあ。それより、そろそろお昼の時間よね」

善子「あ、そっか。じゃあマック行こマック」

ヨハネ「またぁ?」

善子「またーって、食べたのあんただけじゃない。私食べてないもん」

ヨハネ「まあいいけど……」

善子「じゃあ決まりね♪ トリチ~♡」

194: 2018/02/03(土) 04:23:53.25 ID:JK7+PUcB
・・・


善子「もう期間終了だなんて不幸だわ……」モグモグ

ヨハネ「仕方ないでしょ……決まりなんだし」

善子「食べたかったのに~!」ガツガツムシャムシャ

ヨハネ「ダブルチーズバーガーとチーズバーガーを合体させたらトリプルチーズバーガーよ?」

善子「そうだけど!そうじゃないの!そうじゃないの~!」

善子「こうなったらやけ食いよ! えびフィレオ2個買ってくる」

ヨハネ「やめといたら……? 太るわよ」

善子「くっ……スクールアイドルはやけ食いも許されないの……ッ」

ヨハネ「それ以前に女の子として……堕天使的にも許可できないわねぇ」

善子「ちっ……」

ヨハネ「でも私たちなら、ストレス解消法はひとつよね」」

善子「?」

195: 2018/02/03(土) 04:24:45.06 ID:JK7+PUcB
~ゲームセンター~


善子「……で、ゲーセンなのね」

ヨハネ「ふふ、私たちといえばゲームでしょ?」

善子「でも私たちが対戦したってどうせストレス溜まるだけよ?勝ち負け決まらないんだし」

ヨハネ「誰が対戦するなんて言ったのよ。やるのこれよ」


【某ガンシューティング】


善子「……ガンシュー?」

ヨハネ「そ! いつもは戦う二人だけれど、力を合わせれば……無敵じゃない? ひとつ、世界を救ってみない?

善子「……なるほどね。いいわ、乗ってあげる!」

善子「ヨハネ!」??ヨハネ「ええ!」

ヨハよし『世界の運命は……私が変える!』

チャリン

善子「超協力プレイで!」バッ

パシッ!

ヨハネ「クリアしてやるわ!」

196: 2018/02/03(土) 04:25:45.74 ID:JK7+PUcB
・・・

────ねえねえ聞いた? ゲーセンにめちゃくちゃ上手い子がいるらしいよ

─────今もいるって! 見にいこうよ!

────どっかのスクールアイドルに似てる子らしいよ

────まじ? 可愛いんじゃね?!


ヨハネ「善子、リロードするから頼んだ!」

善子「はいはい!」ガン!ガン!

ヨハネ「終わった! 善子も補充して!」

善子「頼むわよヨハネ!」


────やべえ! すげえぞあの二人!

────上手すぎ……あれまだ1プレイらしいよ

────プロのゲーマーじゃね?!

197: 2018/02/03(土) 04:27:23.17 ID:JK7+PUcB
善子「……なんかギャラリーが増えてきてるわね」

ヨハネ「いいじゃない、それだけヨハネたちに視線が集まっているってことよ。むしろ視線が集まるのは慣れたものだわ」

善子「そうね────その通りよ!」

善子「だけど……チッ、さすがにボスはキツイわ……」ガン!ガン!

ヨハネ「だけど、私たちなら────!」

GAMECREAR!!

善子「────はあ、はあっ……はぁ、っ……」

ヨハネ「勝っ……た……ぁぁあ……」

パチパチパチパチ

善子「!」


────おめでとうー!

────すっげぇええ!

────すごいぞ双子ー!


ヨハネ「……ふふ、善子」

善子「……ふん」

パシッ!

ヨハよし『やったー!!』

198: 2018/02/03(土) 04:28:45.46 ID:JK7+PUcB
~カフェ~


善子「はぁ~……ストレス解消~……」

ヨハネ「さすがに白熱したわね……やっぱり体動かすゲームは違うわ」

善子「でも、どうしよ……すごい人だったけど、私たち見られてない?」

ヨハネ「まあ……少なからず見られてたとは思うけど……そんな騒ぎになるわけないじゃない?」

善子「そう……? でもAqoursのヨハネが二人いて、ゲームして……ってのは」

ヨハネ「それはそうか……すぐやっとけばよかったわね、催眠術」

善子「催眠?」

ヨハネ「ヨハネの魔法その6ね」

【催眠術】
幻覚を見せたり記憶を消したりすることができるわ!
あとは認識阻害のようなものもね!
眠らせるとか、混乱させるとかもこの魔法の応用よ

199: 2018/02/03(土) 04:29:21.14 ID:JK7+PUcB
善子「……まあ、今更言っても遅いわね。騒ぎになるないことを祈りましょう」

ヨハネ「ええ」

ヨハネ「……でも、楽しかった。改めて善子と二人でゲームするのは楽しいわ」

善子「それは…………ま、まあ、こっちも悪くはなかったわ。あんたが私と同じ強さだから安心して背中を預けられた」

ヨハネ「ふふ、それはどうも♪ なんだかんだ、私たちいいコンビじゃない?」

善子「そりゃあ……自分自身なら、当たり前なんじゃないの?」

ヨハネ「うふふ♡」

善子「……ヨハネ」

ヨハネ「?」

善子「今日の外出……私を連れ出したかっただけなんじゃないの?」

ヨハネ「あ、バレた?」

善子「……」

200: 2018/02/03(土) 04:30:08.71 ID:JK7+PUcB
ヨハネ「まあ……ケータイが欲しいのはほんと。でもそれなら一人で契約してきたら済む話────だし」

善子「そうね」

ヨハネ「でも、ヨハネはそれじゃつまんなかったから」

ヨハネ「私たち、分裂してそろそろ2週間は経つけど────まだ一度も出かけたことなかったじゃない?」

善子「まあ……出かける用事もなかったし」

ヨハネ「だからわざわざ作ったの! 善子と二人で出かけたかったから」

善子「……でも、なんで私と? どうせならずら丸とかルビィ誘えばいいじゃない」

ヨハネ「わからない? 自分自身のことなのに」

善子「……さあ」

ヨハネ「────姉妹に憧れてたから」

善子「…………」

ヨハネ「ふふ、その顔、わかってたって顔ね」

善子「……るさい」

201: 2018/02/03(土) 04:31:31.37 ID:JK7+PUcB
ヨハネ「目の前にいるのが自分自身だって分かってても……どこか真剣になれない」

ヨハネ「自分自身ではあるものの、その割に気持ち悪いとかそんな風には思わない」

ヨハネ「むしろ遊べる相手が増えた気がして楽しい────そうでしょ?」

善子「…………心の中まで読めるの?」

ヨハネ「ヨハネが思ってることよ、ふふ」

善子「な、あぅ……///」

ヨハネ「だから────双子の姉妹って、こんな感じなのかなって、そう思ったから」

ヨハネ「だったら、姉妹デート……してみたいなって」

善子「む、ぐ……」

ヨハネ「あなたの願いでもあるのよ、今日のお出かけは」

善子「むむむむむむ……///」

202: 2018/02/03(土) 04:31:55.70 ID:JK7+PUcB
ヨハネ「ありがと、善子。おかげで夢が叶ったわ、とっても楽しかった」

善子「な、なら!」

善子「……それは、……こっち、の……セリフよ…………///」

ヨハネ「────」

善子「あ、りがと…………ヨハネ……///」

ヨハネ「────」

善子「……///」

ヨハネ「────」

善子「……? ちょっと、なんか言ってよ……」

ヨハネ「────ハグしていい?」

善子「……い、家でなら……///」

ヨハネ「善子がデレた……」

善子「う、うるさいわ! もう落ち着いたでしょ、さっさとケータイ契約して帰るわよ!!」

ヨハネ「はーい……♡」

203: 2018/02/03(土) 04:37:28.65 ID:JK7+PUcB
その日の夜


ヨハネ:ちゃんと送れてる?

YOHANE:同じ家にいるのにラインする意味ある?

ヨハネ:やりたいからいいのいいの

YOHANE:まあいいけど

YOHANE:早くお風呂から出てよ私も入るんだから

ヨハネ:私は別に一緒でもいいんだけど? 姉妹なんだし

YOHANE:どこに一緒にお風呂はいる双子がいるのよ

ヨハネ:せっかくお姉ちゃんが洗ってあげるって言ってるのに

YOHANE:は? 姉は私でしょ?オリジナルなんだから

ヨハネ:オリジナルが姉と誰が決めたの? 私の方が精神的にも肉体的にも大人なんだから私がお姉ちゃんでしょ

YOHANE:魔法でちょっと身長高くして胸増やしただけのくせに!

ヨハネ:♡

善子「…………姉妹ってムカつく」

────そんなふうに思いながらも

自然とほっぺがほころんでしまう私なのだった

あ、ヨハネのやつには内緒よ! 見られたらからかわれる!


第3話・完

212: 2018/02/03(土) 20:56:14.69 ID:JK7+PUcB
お家に帰ってからのこと


~善子の部屋~


ヨハネ「……」バタン

善子「はあ~……久しぶりに歩いたし、今日はゆっくり寝れそうだわ……」ゴロン

ヨハネ「……よ・し・こ♡」

善子「…………何その気持ち悪い声」

ヨハネ「気持ち悪くない!」

ヨハネ「それより……ほら、ほら」

善子「…………なに?」

ヨハネ「ハグよハグ! ほら、ヨハネの魔力を受け入れるがよい……」ワキワキ

善子「えぇ……」

ヨハネ「帰ったらハグしていいって言ったじゃない!」

善子「あ、あれはその……その場の勢いというか……///」

ヨハネ「勢い……? 勢いで、あんな、あんなことを……?」

善子「あ、ぅぅ……///」

ヨハネ「お姉ちゃんとハグするだけなのに……そんなに嫌なのね、ぐすんぐすん……」

善子「あーもう! わかったわよ! ほら、来なさいほら!」

ヨハネ「……善子から来て♡」

善子「どこまで注文が多いのあんたは!?」

213: 2018/02/03(土) 20:56:45.64 ID:JK7+PUcB
善子「うるさいっ!見るな!」

ヨハネ「は~やく~」

善子「う、うるさいわねほんと……ちょ、ちょっと……ちょっと待って」

ヨハネ「心の準備?」

善子「うるさいっ!///」

善子「すー……はー……すー……はー……」

善子「ふう……///」

善子「……いくわよ」

ヨハネ「ん!」

善子「……そ、それっ」ムギュウ

ヨハネ「んはぁ~♡」

善子「へ、変な声出さないでっ!?///」

214: 2018/02/03(土) 20:58:56.57 ID:JK7+PUcB
ヨハネ「善子やわこい……♡」ギュウッ

善子「ひ、ぁ……っ……///」

ヨハネ「あら、可愛い声♡」

善子「ぅっ……い、言わないで……///」ギュー

ヨハネ「はあ~……果南センパイがハグしたがるの分かるわ……」

善子「も、もういいでしょ!」

ヨハネ「あと5分……」スリスリ

善子「す、────すりすりすんなーーー!!?///」

ヨハネ「……このまま流れでキスを」

善子「するか!!!」

ヨハネ「ちぇっ……」

215: 2018/02/03(土) 21:00:30.21 ID:JK7+PUcB
ヨハネ「ふふ、満足したわ♡ ありがと、善子♪」

善子「そ……そう、そうなのね、ええ」

ヨハネ「またお願いするわ♡」

善子「そ、その時の気分で……」

ヨハネ「ありがと♡」

善子「え…………ええ」

善子(……なんかめちゃくちゃ柔らかかったんだけど────!///)

ヨハネ「さてと、ケータイの設定しないとね~♪」

善子(しかもなんか、いい匂い……?したし……///)

善子(な、なんなのよ……もー!自分自身のはずなのにー!///)

ヨハネ「あ、そうだ善子」

善子「ぁえっ……と……な、なに?」

ヨハネ「あとでもう一回してもいい?」

善子「────」

善子「────し、仕方ないわね!」


第3.5話・完

229: 2018/02/05(月) 01:43:54.90 ID:VlfxMn3j
ヨハネ「我が世界は自分で守る!」

善子「はいはい、保守保守」

236: 2018/02/05(月) 18:54:19.20 ID:VlfxMn3j
ある日の放課後


ダイヤ「明日は朝練の日だということを忘れず、全員遅刻のないように!」

みんな『はい!』

ダイヤ「では、本日はこれで解散ですわ。みなさん、気をつけて帰ってくださいな」

果南「はいはーいお疲れ~」

鞠莉「果南、ダイヤ、コンビニ寄っていきましょ!」

果南「お、いいね~」

ダイヤ「また買い食いですか……?」

鞠莉「運動したらお腹すいちゃったんだもん♪ ルビィもおいでっ」

ルビィ「ぁ、はいっ! じゃあ、善子ちゃんまるちゃん、また明日ね」

善子「ええ、また」

花丸「ばいば~い」

善子「じゃあリーダー、私たちも帰るわね」

花丸「また明日、ずら」

千歌「また明日ね~!」

曜「私たちも帰ろうよ千歌ちゃん」

千歌「うんー……ちょっと待ってー……」

曜「ツイッターくらいバスでも見れるのにー……」

千歌「情報の取り入れは早いに越したことはないのだ────ん?」

237: 2018/02/05(月) 18:54:48.88 ID:VlfxMn3j
千歌「あれ?」

曜「千歌ちゃん? どうしたの?」

千歌「んー……えっとね、ツイッター見てたら……」

梨子「?」

千歌「……ほら、これ見て?」

曜「……ゲームしてる人の動画?」

千歌「それはそうなんだけど、ほら、やってる人よく見てよ」

梨子「……善子ちゃん?」

曜「あっ!」

千歌「だよね! ……でもさー、善子ちゃんってお姉ちゃんとか妹とかいたっけ?」

梨子「……あ、一緒にやってる人、善子ちゃんそっくり」

曜「えっ……いや、でも……前に聞いたときは一人っ子だって言ってたよ?」

千歌「これは調査が必要でありますな……曜ちゃん隊員!」

曜「ヨーソロー! 善子ちゃんをつれてくるであります!」ダッ!!

238: 2018/02/05(月) 18:55:20.05 ID:VlfxMn3j
タッタッタッ!!

ヨーシコー!

キャッ!ナニヨチョット!?ヨハネダッテバ!

ヨシコチャンカクホデアリマース!

ズラー!?

ズラマルタスケテーー!


梨子「可哀想に……」

239: 2018/02/05(月) 18:58:38.71 ID:VlfxMn3j
・・・

善子「何よこれ!ちょっと!」(←椅子に座らされ、ロープでぐるぐる巻きにされた善子)

千歌「……津島善子くん」

善子「ヨハネよ!」

千歌「津島善子くん……」

善子「……はい」(←ふざけていい空気ではないと悟った善子)

千歌「津島善子くん……君は…………」

善子「……」

千歌「君は……姉や妹はいるかね?」

善子「え? それは……前に話したと思うんだけど」

千歌「質問に答えたまえ」

善子「……いないです」

曜「本当にいないのかね?」

善子「な、なんなのよぉ……」

梨子「ごめんね……ごめんね……」

曜「ネタは上がってるんだぞ津島善子!」(_๑òωó)_バァン

善子「ひっ!」Σ(゚ロ゚;)

千歌「落ち着きたまえ渡辺くん……」

曜「す、すみません高海さん……」

梨子「本当にごめんね……」

善子(なにこれ……)

240: 2018/02/05(月) 18:59:35.19 ID:VlfxMn3j
千歌「うちの部下がすまないね」

千歌「しかし津島善子くん……我々はすでにネタを握っているんだ。正直に話したほうがいいと思うがね……」

善子「だ、だからなんのこt────」

千歌「ゲームセンター」

善子「……え?」

千歌「シューティングゲーム」

善子「……」

善子(な、なんで……なんでそれを……)

千歌「……誰かと、二人でやっていたね?」

善子「……た、他人の空似じゃ」

千歌「善子やヨハネという呼び合いを聞いている。まさか、ヨハネと名乗る人がそうそういるわけもあるまい」

善子「……」

善子(やばい、やばいやばいやばい……)

曜「まずは動画を見てもらおうか津島善子」

善子「……」


~少女視聴中~


善子(確かに、この前の休みの日だわ……)

241: 2018/02/05(月) 19:00:07.76 ID:VlfxMn3j
千歌「さて……見てもらった通りだが……津島善子くん」

曜「これはなんだ! 津島善子!」(_๑òωó)_バァン

善子「……」

善子(まずい……まさか動画で撮られてたなんて……)

善子(どうしたら……隠すのはもう辞める……?)

梨子「え、えっとね……善子ちゃん」

善子「……?」

梨子「別に怒ってるわけじゃなくて、二人もただ遊んでるだけだから……そんなに重く受け止めないで?」

善子「とは、言うけど……」

梨子「あはは……まあ、先輩にこんな風に言われたらびっくりしちゃうよね」

梨子「ふたりとも、もうやめよう? 普通にしなさいっ」

千歌「ちぇー……」

曜「はーい……ちょっと刑事ごっこみたいで楽しかったのに」

千歌「ねー」

梨子「ねー、じゃないよ! 善子ちゃん怖がってたんだから」

善子「べ、別に怖がってなんか! ……ないけど」

242: 2018/02/05(月) 19:00:32.06 ID:VlfxMn3j
千歌「ごめんごめん、それで動画について聞きたいのは本当なんだ」

千歌「一人っ子だって言ってたのに、善子ちゃんそっくりな人とゲームしてるから、誰なのかなーって気になっただけだから」

善子「それだけでこんな大仰なことを……」

千歌「やっぱり秘密を聞き出すのは刑事でしょ!」

曜「であります!」

善子「……とりあえずこのロープ、解いてもらえる?」

ようちか『やだ』

善子「!!?」

千歌「話してくれるまで今夜は帰さないのだ……ふふふ」

曜「帰さないよ~……ふふふ」

梨子「本当にごめんね……」

244: 2018/02/05(月) 19:26:47.53 ID:VlfxMn3j
~屋上~

ヨハネ「こんなもんかしら……うん、いいわね。始めてすぐの割に、結構揃ってきた」

ヨハネ「あとはイベントでオーブ集めてガチャを……っと、降臨来たわね。それじゃ周回を────」

ヨハネ「────降臨が来たってことは、もう……18時?」

ヨハネ「……善子遅くない?」

タッタッタッ

ヨハネ「あ、来たかしら」

ガチャ!

花丸「ヨハネちゃん!!」

ヨハネ「花丸!?」

花丸「はあ……はあ、はっ……はぁ……っ」

ヨハネ「ちょ、ちょっとどうしたのよ花丸……落ち着いて? ほら、ミルクティーだけど飲んで」つ 紅茶花伝

花丸「あ、ありがと……」(/◎\)ゴクゴク

花丸「…………ふーーー」

ヨハネ「そうだ、待ってる間にお腹すいたからお菓子買ってたの。食べる?」

花丸「お菓子!? いただきます!」

ヨハネ「パイの実だけど……はい、あーん」

花丸「あーむ……んふふ、おいしいずら~♡」

花丸「……って、そうじゃなくて!」

花丸「善子ちゃんが……!」

ヨハネ「善子がどうしたの!!」

花丸「善子ちゃんが……善子ちゃんが……よ、曜ちゃんたちに……捕まって……」

ヨハネ「な、なんで……? 善子が何を……」

花丸「わ、分かんないんだけど……曜ちゃんがいきなり走ってきて、善子ちゃんを捕まえて部室n」

バサッ!!

花丸「ひゃぁっ!」

ダンッ!! ビュオォォ‼︎

花丸「……も、もう行っちゃった……」

花丸「あ、まるも部室に急がないと!」

255: 2018/02/06(火) 19:47:18.53 ID:QFJxtIZT
・・・


千歌「さあさあ話すのだ善子ちゃん!」

曜「話すのだー!」

善子「くっ……断る! あなたたちが知ることではない!」

千歌「いいや、私たちには知る権利があるはずだよ! だって友達でしょ!」

善子「と、友達……!」ドキッ

曜「そうそう! 決してただの好奇心じゃなくて、善子ちゃんの秘密が知りたいだけなんだ!」

梨子「それって好奇心だよね……?」

曜「え、そうなの?」

梨子「曜ちゃん……」

千歌「さあ教えるのだ善子ー!」

善子「知らない方がいいこともあるのよー!」

千歌「強情な奴め! こうなったら……」スチャッ

善子「ひっ!?」

梨子「ち、千歌ちゃん! カッターナイフなんて危ないよ!」

千歌「話してくれないならこれで……」

善子「そ、それでどうする気よ! 後輩を〇すの!?」

千歌「ロープを切って善子ちゃんを落ち着かせる!」

善子「……へ?」

256: 2018/02/06(火) 19:48:18.63 ID:QFJxtIZT
千歌「たぶん今は捕まってるっていう状況が善子ちゃんを混乱させてるんだよ。だから千歌はそれを解決して、気持ちを落ち着かせようって作戦なのだ」

善子「……は、はあ」

千歌「さあ……動かないでね、血は見たくないだろう……ふふふ」

善子「ううー……」


ヨシコー!!


千歌「何者!」

善子「ま、まさか!?」

曜「ん、今の声って」

梨子「善子ちゃん……?」


『せいやーーーっ!!』ガシャーン!


4人『!!!???』

257: 2018/02/06(火) 19:48:59.90 ID:QFJxtIZT
ズザザー


ヨハネ「善子!助けに────」


善子←ロープでぐるぐる巻きの善子

千歌←ナイフ片手に善子に近づく千歌

ヨハネ「リーダー!やってくれたわね、善子を人質に取ろうなんて! 何が望みよ、堕天使の秘密が知りたいなら答えるわよ!!」

梨子「」

曜「」

ヨハネ「……ちょっと、なんとか言いなさいよ。ねえリーダー、善子、リリー、曜センパイ」

善子「……はあああああ」

ヨハネ「えっ……な、なんでため息なの!? 誰も喋ってくれないし……」ウルウル

梨子「……よ、善子ちゃん?」

ヨハネ「ヨハネよ!」

曜「よ、善子ちゃんが……」

千歌「善子ちゃんが……」

ヨハネ「だからヨハネだってば」

ようちかりこ『善子ちゃんが二人ーーーーーーーー!!???』


~部室へ向かって走る花丸~

『善子ちゃんが二人ーーーーーーーー!!???』

花丸「ずらっ!? な、なに、なになに!?」

258: 2018/02/06(火) 19:50:01.11 ID:QFJxtIZT
・・・


※割ったガラスはヨハネが魔法で直しました。


善子「……えっと、というわけです」

ヨハネ「……」

曜「朝起きたら……増えてたと」

善子「……」コクコク

千歌「しかも分裂した子は魔法が使えて」

善子「……」コクコク

梨子「この前、屋上でハンバーガー食べてたのも分裂した子……」

善子「ご理解いただけましたでしょうか」

ようちかりこ『全然!』

善子「そうよね!!」

梨子「信じられないよ……今だって、目の前に善子ちゃんが二人いるなんて」

ヨハネ「リリー……」

梨子「はぅっ……善子ちゃんだ……」

259: 2018/02/06(火) 19:50:49.93 ID:QFJxtIZT
千歌「ねえねえ、私は!私は分かる!?

ヨハネ「リーダー!」

千歌「おおー!」

曜「ヨーシコー!」

ヨハネ「現れたわね妖怪ヨーソロー!」

曜「おおおおお!!!」

善子「……」

千歌「ほんとに善子ちゃんだ……その背中の羽がなかったら見分けつかないよ~」

善子「嘘ぉ!?」

ヨハネ「それには及ばないわリーダー! 私は善子よりも少し身長は高いしスタイルも良いのよ?」

善子「くっ……!」

梨子「それも……魔法のおかげ?」

ヨハネ「ええ、我が魔法のひとつ『変身』の効果よ! 少し大人になった善子の姿を模しているの」

曜「ほう……」

善子「あ、あんまり見ないで!///」

千歌「なんで善子ちゃんが顔赤くするの?」

善子「私の身体よ!!」

千歌「あ、そっか」

260: 2018/02/06(火) 19:52:39.24 ID:QFJxtIZT
善子「……ていうか、怖くないの?」

千歌「怖いって?」

善子「だって……いま、あなたたち超常現象を目の当たりにしてるのよ?」

善子「私が分裂したとか、魔法が使えるとか、空飛んでるとか……普通に考えておかしいことばっかりでしょう?」

善子「もし魔法を悪用すればあなたたちをこの場で消し去ることだって……」

千歌「まあ、それはそうだけど……」

千歌「それが善子ちゃんなら、怖くないかなって」

善子「……」

千歌「ね、えーっと……そっちの善子ちゃんはさ」

ヨハネ「ヨハネよ」

千歌「……ヨハネちゃんは、魔法で私たちに怪我させるつもりはあるの?」

ヨハネ「あるわけないじゃない……大事な先輩たちなのに」

千歌「ね! だから私たちも怖くないよ!」

善子「……」

梨子「ずっと内緒にしてたのは……怖がられると思ったからなんだね?」

梨子「でも、花丸ちゃんたちが信じたように、私たちも善子ちゃんを信じてるから大丈夫だよ」

曜「そうそう! なんなら怪獣ヨーソローが体力勝負でお相手しよう……ふっふっふ」

善子「……ほんとお人好しね、あなたたち」

千歌「えへ、よく言われまーす」

善子「褒めてないから」

千歌「え!?」

261: 2018/02/06(火) 19:54:09.16 ID:QFJxtIZT
ヨハネ「えっと……てことは、私は受け入れられた感じ?」

千歌「そんな感じ!」

曜「ねえねえ、その羽って本当に背中から生えてるの?」ツンツン

ヨハネ「もちろんよ! ちゃんと脱いだら生え際が……」

曜「おぉぅ……その胸の大きさも」

ヨハネ「我が魔法によるものよ!」

梨子「その魔法で私たちにも変身できるの?」

ヨハネ「それは出来ないの。ベースは善子から変えられなくて……髪型や衣服をコピーすることなら造作もないわ」

梨子「すごい……」

262: 2018/02/06(火) 19:55:47.27 ID:QFJxtIZT
千歌「ね、誰も怖がってないでしょ? 私たちを見て、3年生に話しても大丈夫とは思わない?」

善子「……うん、そうね、そう……思うわ」

善子「…………」

善子「……ルビィと、花丸は怖がらずに受け入れてくれたの」

千歌「うん」

善子「でも、先輩たちは……他のみんなが受け入れてくれるとは限らないって、思って」

千歌「うん」

善子「……よかった、よかった……」

千歌「怖かったね……よしよし」ナデナデ

善子「……」ギュウッ

千歌「大丈夫、大丈夫だよ……三年生たちにも私から話すから」

千歌「リーダーに任せなさい!」

善子「ぅん……ありがとう」


ガチャッ!


善子「!」バッ

千歌「ん?」

花丸「よ、よしこちゃーー……ん……あ、あれ?」

花丸「はあ、はあ…………もう終わっちゃったずら……?」

263: 2018/02/06(火) 19:56:16.92 ID:QFJxtIZT
~翌日~


だいかなまり『善子(さん)が二人ーーーーーー!!??』

よしヨハ『ヨハネよ!』

鞠莉「オゥ……おぅ……マリーは夢でも見てるの?」

果南「私もゲームのやりすぎかな……」

ダイヤ「これは何かの幻覚ですわ……」

千歌「もー! 何回も言ってるじゃん、本当のことなんだって!」

ダイヤ「で、ですが……」

ヨハネ「ふ、我は孤高にして至高の堕天使────ただの人間ごときが理解するなど不可能!」

だいかなまり『あー善子(さん)だ(ですわ)』

ヨハネ「なんでよ!!」

善子「……」

264: 2018/02/06(火) 19:57:16.45 ID:QFJxtIZT
ルビィ「ヨハネ様! お久しぶりです!」

ヨハネ「リトルデーモンルビィ! そうだわ、私ケータイ買ったのよ! ライン交換しましょライン!」

ルビィ「ぜひとも!」

ダイヤ「ルビィ!? こんなのに影響されてはいけません!」

ヨハネ「こんなのって何よ生徒会長!」

鞠莉「まあまあダイヤ! 善子もこんなに立派になったんだから!」

梨子「そっちはヨハネちゃんですよ……」

鞠莉「あら?」

果南「それにしても、そっかー」

善子「な、何よセンパイ」

果南「最近ゲームに誘ってくれなかったのは、そっちの善子が来たからか~……さびしいな~……」

善子「ま、また誘うから! また来て、ほら、新しいやつ買ったし!」

果南「はいは~い」

ヨハネ「そうだわ、センパイともゲームで戦わないといけないわね」

果南「お、やるか~? 勝てないぞ~

曜「勝てないんだ……」

果南「じゃあ曜もやってみたらいいじゃん! 善子強すぎるから!」

ヨハネ「ヨハネって言ってるでしょ!区別しなさいほら!」

265: 2018/02/06(火) 19:57:59.06 ID:QFJxtIZT
善子「……」

千歌「ね、善子ちゃん? みんな信じてくれたでしょ」

善子「ちょっと複雑だけどね……」

千歌「堕天使ネタのおかげで認められてるんだし、いいことじゃん!」

善子「ネタとか言わないで!」

花丸「そうそう、あれがないと善子ちゃんは善子ちゃんじゃないずら」

千歌「地獄弁は善子ちゃんの特徴だよ!」

善子「なにそれかっこいい……」

ヨハネ「善子! ほら、ちょっとこっち来て!」

善子「な、なによもう……」

ヨハネ「わたし一人じゃ相手しきれないから手伝って!」

善子「いや、みんなあんたに相手して欲しいんでしょ……仕方ないわね」

266: 2018/02/06(火) 19:58:51.87 ID:QFJxtIZT
花丸「ほんとによかったです」

千歌「そだねぇ……昨日は善子ちゃん、怖かったーって私に抱きついて泣いてたし」

花丸「は?」

千歌「んー?」

花丸「千歌ちゃんちょっとそのあたり詳しく聞かせてもらえますか」

千歌「えっと……まるちゃん? どうしたの?」

花丸「詳しく聞かせてほしいずら」

千歌「んー……やだ」

花丸「ずら!?」

千歌「善子ちゃんの涙は千歌だけのものなのだ」

花丸「むぅぅぅ~!」

千歌「それより……ほら、いま笑ってる善子ちゃんの方が大事だと思うな?」

267: 2018/02/06(火) 19:59:18.90 ID:QFJxtIZT
鞠莉「ねえねえヨハネ! 変身してマリーみたいになってよ! 金髪と、この髪型と!」

ヨハネ「お安い御用よ! その気になればおっ〇〇だってマリーと同じにできるんだから!」

鞠莉「わお! それってもうふたりのマリーじゃないかしら!? ふたりのヨハネ完!」

善子「させないからね!?」

ダイヤ「では……幼い頃の善子さんにもなれるんですの?」

ルビィ「あ、妹にする気だ」

ダイヤ「そ、そのようなことあるわけがモニュモニュ……」

ヨハネ「生憎だけど、私は善子のお姉ちゃんだから! 妹にはなれないわね」

ダイヤ「しかしわたくしよりは歳下ですわ!」

ヨハネ「それは盲点だったわ……」

果南「妹増えるなー……」

鞠莉「ほらヨハネ、マリーに変身!」

ヨハネ「よーしやるわよ!」

善子「やらなくていいから!」

268: 2018/02/06(火) 19:59:42.72 ID:QFJxtIZT
花丸「……楽しそうですね」

千歌「でしょ! ほら、私たちも混ざろう? ヨハネちゃんとライン交換もしないといけないし!」

花丸「はい!」

花丸「でもさっきの泣いて抱きついた話はちゃんと聞かせてもらうずら」

千歌「誤魔化せなかったか~!」


第4話・完

278: 2018/02/07(水) 15:27:35.44 ID:B4uUMeGl

280: 2018/02/07(水) 19:05:42.06 ID:B4uUMeGl
NETAGIRE!!

283: 2018/02/07(水) 19:49:47.47 ID:B4uUMeGl
今日も私は優雅に空のお散歩。

漆黒の翼を大きく広げ、誰にも見られないよう透過の魔法で姿を隠しながら青い空を自由に飛ぶ。

鳥よりも速く。

誰よりも高く。

速度が乗れば────飛行機すら追い越しちゃう。

284: 2018/02/07(水) 19:57:44.51 ID:B4uUMeGl
他の国だってひとっ飛び。

この時だけヨハネは何にも縛られない。

全てを追い越す速度。

心も身体も自由になるこの瞬間が、ヨハネは好き。

本当なら裸になっちゃいたいくらい────♡

だけど、流石にそれは善子に怒られちゃうから────仕方ないわね♡

285: 2018/02/07(水) 19:59:18.60 ID:B4uUMeGl
今日も私は空を飛ぶ。

誰にも追いつけない速度で飛ぶ。

富士山を軽く超えて、海も超えて。

高く高く、遠く遠く。

そう、私に追いつけるものは誰もいない。

飛行機さえ、戦闘機さえ────

────と思っていたのに。

286: 2018/02/07(水) 20:00:12.46 ID:B4uUMeGl
轟音が轟いた。

私は咄嗟に翼を翻し、回避行動を取った。

そしてすれ違いざまに見たのは────赤いヒトガタ。

私のように翼があるわけではない────ただのヒトガタ。

そのヒトガタは私より速いスピードで空を飛んでいた。

速く────速く────

287: 2018/02/07(水) 20:01:01.20 ID:B4uUMeGl
・・・


ヨハネ「っていうのを見たのよアメリカで!」

善子「はあ……そんな、空飛ぶ金属人間? どんな冗談よそれ」

ヨハネ「本当なのよ!」

善子「ないない、絶対にない! って言うか、私が授業受けてるのに1人で空の散歩なんて気楽なもんね」

ヨハネ「くっ……今度写真撮ろ……」


────


「次のニュースです。トニー・スターク氏が公開した写真が物議を醸しています」

「こちらはトニー・スターク氏が飛行しているときに撮影された写真です。黒い服を着た女性に見えますね」

「そしてこれは……翼でしょうか? 黒い翼が────」

288: 2018/02/07(水) 20:02:02.17 ID:B4uUMeGl
第4.5話・完

298: 2018/02/08(木) 23:52:18.16 ID:Gh71SBYo
~教室~

ルビィ「えっと、あの……ごめん」

花丸「い、いま……なんて……? もう一回言って……」

善子「だ……、っ……だからぁ!」


るびまる『ヨハネちゃん(様』と喧嘩した~~~~~~~~~!!!????!!!』



善子「ッ~~!!」キーン

299: 2018/02/08(木) 23:53:15.75 ID:Gh71SBYo
ルビィ「で、でもでもだってなんで!? ずっと仲よかったのに、どうして!?」

花丸「そう、そうだよ善子ちゃん! 先週会った時、まるには2人はとっても仲良しに見えたずら!」

善子「う、うるさいわね……たいした理由じゃないし、どうせお腹空いたら帰って来るわよ」

ルビィ「出てっちゃったの!?」

善子「はんっ! 子供よねえ、家出なんてさ。ケータイも持たないで……ほんとアホくさい」

花丸「い、家出……」

300: 2018/02/08(木) 23:53:44.42 ID:Gh71SBYo
ルビィ「あわわ……ヨハネ様、大丈夫なのかな……」

善子「魔法が使えるんだし、あいつは死なないでしょ」

ルビィ「もう! 善子ちゃんは心配じゃないの!?」

善子「……べつに、心配するほどじゃないわよ。もともとただの分身なんだし」

ルビィ「善子ちゃん!」

花丸「……ヨハネちゃんが出て行ってどれくらいなの?」

善子「……か、関係ないでしょ!」

ルビィ「教えて! ルビィたちも探すの手伝うから!」

善子「いいって、だからそんな……」

るびまる『善子ちゃん!!』

善子「……一週間」

るびまる『ええぇぇぇぇぇえ~~~~~~~~!!!」

301: 2018/02/08(木) 23:55:26.75 ID:Gh71SBYo
~部室~

千歌「家出かぁ……」

梨子「ケータイも持ってないんじゃ……心配だね」

曜「持ってても、一週間も経ってるなら充電切れてるだろうし……」

果南「警察には?」

善子「連絡してもダメよ……なんて説明したらいいのかわからないわ」

果南「まあ、そうだよね……」

ダイヤ「とりあえずわたくしの家には連絡してあります」

ダイヤ「地元の警察にツテがあるので、頭の端に留めておいてもらえるくらいにはなるでしょう」

ダイヤ「鞠莉さんも、協力してもらえますわね?」

鞠莉「そうね────マリーも色々調べてみるわ。海外で変な目撃情報が無いかどうか、とか」

善子「ありがとう生徒会長、理事長……迷惑かけるわね」

ダイヤ「まったくですわ。些細な喧嘩で家出など……帰ってきたらお説教です!」

善子「……うん」

302: 2018/02/08(木) 23:57:13.23 ID:Gh71SBYo
曜「出てった時の服装を頼りに、みんなでも聞いてみようか」

果南「そうだね、あんまり力になれるか分からないけど……無いよりマシだと思うし」

善子「ありがとう……みんな」

千歌「いいのいいの! ヨハネちゃんはAqoursのメンバーだもん!」

ルビィ「そうだよ! 仲間のために力を合わせるのは当然だよっ」

善子「……うん」

花丸「ほら、元気出すずら。パン食べる?」

善子「いらない……ってか、別に元気ないわけじゃないし!」

花丸「善子ちゃん……」

303: 2018/02/08(木) 23:59:07.97 ID:Gh71SBYo
善子「ふん、あらかた道に迷ってるだけでしょ? ケータイ死んでるなら尚更ね」

善子「私は別に大丈夫。帰ってきたら2、3回殴るだけだわ」

ダイヤ「……まったく、善子さんも2人揃ってお説教が必要ですわね」

善子「なんでよ!?」

果南「はいはいそこまで! じゃ、今日は解散で! また何か分かれば話すことにしよう」

善子「ええ、そうね……あんまりみんなも心配しないで、どうせそのうち帰って来るわ!」

善子「……だから、先に帰るわね。また明日」

花丸「善子ちゃん……」

果南「早く見つかるといいんだけど……」

ダイヤ「ええ……最近、妙に元気がないのはそういうことだったのですね」

千歌「早く善子ちゃんの笑顔を取り戻さないとね」

鞠莉「……」

果南「鞠莉?」

鞠莉「ん……なあに、果南?」

304: 2018/02/09(金) 00:01:37.76 ID:9X0mMuvk
果南「ううん……いつもなら鞠莉が率先して騒ぐと思ったから」

果南「今日静かだったね」

鞠莉「あはは……マリーもびっくりしちゃって」

曜「そうだよねぇ……あんなに仲良しそうだったのに、喧嘩なんてびっくりだよ」

鞠莉「そうよね……」

鞠莉「……じゃあ、今日はマリーも先に帰るね。何か見つかったらすぐにコネクトするわね」

ダイヤ「ええ、お願いしますわ」

果南「……」

305: 2018/02/09(金) 00:05:53.68 ID:9X0mMuvk
~鞠莉ハウス~


鞠莉「ただいま」

ヨハネ「おかえり」

鞠莉「……ヨハネ、今日も帰らないの?」

ヨハネ「帰らない!」

鞠莉「まったくぅ……世話の焼けるコーハイね!」

ヨハネ「厄介になってるぶん、ちゃんとお仕事してるんだから許しなさいよっ!」

鞠莉「みんな心配してるよ? 今日、善子がみんなに話してた」

ヨハネ「……ふん、あんなの知らない」

鞠莉(マリーには善子もヨハネも同じにしか見えないんだケド……)

ヨハネ「それよりマリー! ネルギガンテのソロクリアできたわよ!」

鞠莉「え、ほんと!? 見せて見せて!」

鞠莉(まあ……気が済めば帰るでしょ!」

317: 2018/02/10(土) 01:26:25.71 ID:TsfjHP/R
鞠莉(ヨハネがマリーのhouseに遊びにきたのは……ちょうど一週間前)

鞠莉(とても月の綺麗な夜だった────」


────

318: 2018/02/10(土) 01:27:00.73 ID:TsfjHP/R
~一週間前の夜~


鞠莉「────やっぱり見えない」

鞠莉「はあぁ……せっかくのsuper blue blood moon……」

鞠莉「天気が良ければ、みんな誘ってpartyでもしようと思っていたのに────残念だわ」

鞠莉「はぁ……あの月がマリーの自由になれば……いつでも好きな月を眺められたのに」

319: 2018/02/10(土) 01:27:53.94 ID:TsfjHP/R
鞠莉「なーんて……」

鞠莉「……明日も早いしもう寝よ」


バサッ


鞠莉「────」

『────じゃあ』


バサバサバサバサ!!


カツン


鞠莉「────」

「この堕天使があなたに月をプレゼントしてさしあげましょう、姫」

鞠莉「────」

「────それっ!!」バババシュッ!!!

鞠莉「きゃっ!」

鞠莉(────彼女が放った数本の光条)

鞠莉(凄まじい風を巻き起こしながら、夜空を覆う厚い雲へ迸ったそれは────)

鞠莉(一瞬にして雲を消し飛ばし────)

「ん……ちょうど紅くなったところみたいね」

鞠莉「────ヨハネ?」

ヨハネ「ふふ、いい月夜ね♪ 理事長」

320: 2018/02/10(土) 01:28:30.39 ID:TsfjHP/R
・・・

鞠莉(そして2人で月を眺めながら────)

鞠莉(ヨハネがどうしてうちに来たのかを聞いた────)


────

321: 2018/02/10(土) 01:32:05.71 ID:TsfjHP/R
鞠莉「ふうん、それで喧嘩して出てきたの?」

ヨハネ「そう! まあ……子供っぽいと思うだろうけど、私は許せなかったのよ」

鞠莉「確かに、ヨハネも善子も子供ねぇ」

ヨハネ「そうハッキリ言われると返す言葉もないわ……」

鞠莉「でも────そんなに一緒にやりたいゲームだったの?」

ヨハネ「うん!!!」

鞠莉「……ふふ、そっか。ヨハネはそれが悲しかったのね」

ヨハネ「うぅ~……考えれば考えるほど子供っぽい……」

322: 2018/02/10(土) 01:32:47.97 ID:TsfjHP/R
鞠莉「でも、姉妹喧嘩って言うの? マリーは一人っ子だから、つまんないことで喧嘩できるsisterがいるって、少し羨ましい」

ヨハネ「……ヨハネの方がお姉ちゃんのはずなのに、情けないわ」

鞠莉「でも我慢できなくて飛び出したんでしょ?」

ヨハネ「そう……ね、そうよ。善子と2人でやりたくて買ってきたのに……あのバカ、勝手に1人でやっちゃって」

ヨハネ「それでヤケになって家飛び出して……誰かの家に行くのも迷惑かなと思ったんだけど、理事長なら優しくしてくれるかと思って」

鞠莉「そうねえ……ダイヤのとこは追い返されそうだし、ようちかりこは……これも同じ。花丸は逆にこっそり善子に伝えられたりしそうで……果南は善子のお気に入り」

鞠莉「マリーが安全牌ってことね!」

ヨハネ「ち、違うわよ! 最初から……こういう時、頼ったら助けてくれそうなのは理事長だと思って……!」

鞠莉「うふふ、jokeよ♪ ありがとう、頼ってくれて嬉しいわ」

鞠莉「なら……気が済むまでここにいたら良い。マリーは歓迎よ♪」

ヨハネ「理事長……!」

鞠莉「でも、気が済んだらちゃんと善子のところに帰ること。OK?」

ヨハネ「うんっ! ありがとう理事長、愛してるわ!」ムギュー

鞠莉「ワオ! ……んふふ、善子なら絶対こんなことしないけど……堪能しちゃお♪」ナデナデ

323: 2018/02/10(土) 01:34:33.69 ID:TsfjHP/R
────

~そして現在~


鞠莉(という感じで早くも一週間……ヨハネが言うから、善子に伝えてなかったケド……)

鞠莉(これはmissったかしら……)

ヨハネ「ほら、ね! ちゃんと攻撃を見切りさえすればソロクリアなんて簡単なのよ!」

鞠莉「oh……マリーには見極めskillが足りないみたいねぇ」

ヨハネ「ふふ、これくらいすぐ慣れるわよ。マリー、果南センパイより筋がいいから」

鞠莉(そして一週間過ごすうちに……なんだかとっても仲良くなっちゃって、ヨハネはマリーを『マリー』って呼んでくれるようになったの♡)

鞠莉(前の理事長呼びは……善子なりの敬意の表し方だったみたい。確かに、先輩を先輩って呼ぶのは普通だものね)

鞠莉(ケド……みんなが探してるのに、ずっと黙っておくわけにはいかないわよね────)

324: 2018/02/10(土) 01:47:18.04 ID:TsfjHP/R
鞠莉「ねえ、ヨハネ?」

ヨハネ「ん?」

鞠莉「まだ気は済まない?」

ヨハネ「……善子が反省してるんなら」

鞠莉「善子、今日Aqoursのみんなに話したよ。ヨハネが家出したって」

ヨハネ「!」

ヨハネ「……そ、それで?」

鞠莉「ダイヤに力を借りて、内浦近辺は黒澤家の人に探してもらうことになったみたい。積極的にってほどじゃないけど」

鞠莉「あとは……後日、みんなで聞き込みしようって。もしかしたらビラでも作るかもね」

ヨハネ「ビラって……犬じゃないんだから」

鞠莉「善子、元気なかったよ?」

ヨハネ「……」

325: 2018/02/10(土) 01:48:27.86 ID:TsfjHP/R
鞠莉「マリーは……そろそろ許してあげてもいいと思うな」

ヨハネ「……ダメよ」

鞠莉「ヨハネ……」

ヨハネ「善子が謝るまで、私は許さないもん……」

鞠莉「……撫でていい?」

ヨハネ「……ん」

鞠莉「……」ナデナデ

ヨハネ「……善子は反省してるのかしら」

鞠莉「さあ…………でも、あなたがいなくて寂しいとは思ってるかもね」

ヨハネ「……抱きしめて、マリー」

鞠莉「ええ、いいわよ」ギュウッ

ヨハネ「……」ムギュー

鞠莉「よしよし、いい子ねヨハネは」

ヨハネ「……悪い子よ、私は。つまらない意地を張ってみんなに迷惑をかけちゃった」

鞠莉「それはマリーも同罪よ……ヨハネが来てること、誰1人にも言わなかったんだもの」

ヨハネ「そ、それは私が言ったから!」ガバッ

鞠莉「でも、みんなからすれば一緒なのよ」

ヨハネ「……」

326: 2018/02/10(土) 01:49:14.46 ID:TsfjHP/R
鞠莉「明日、一緒に学校に行きましょ? マリーも一緒に怒られてあげるから」

ヨハネ「……わかったわ」

鞠莉「ふふ、さすが善子! 名前通りのいい子ね♪」

ヨハネ「私はヨハネよ!」

鞠莉「ふふ♡」

ヨハネ「あ……そうだ」

鞠莉「?」

ヨハネ「一週間もお世話になったんだし……なにか、お礼をしないと」

鞠莉「お礼なんて────」

ヨハネ「だめ! これは私のけじめだもん、友達だからとか先輩だからとか、そんなのは関係ないわ。通さないといけない筋があるの」

鞠莉「……変なところで頑固ね、ヨハネ」

ヨハネ「私は間違ってないんだから」

鞠莉「ふふ、それなら────今日1日、ヨハネはマリーの本当のsisterね!」

ヨハネ「……はい?」

337: 2018/02/11(日) 01:23:38.94 ID:7CoAk36X
count the skills
現在ヨハネの使える魔法は?

【催眠術】
幻覚魔法! ぶっちゃけすごく強いわよ!
記憶をちょこっと操作したり人の認識を阻害させたりできるわ!
人を眠らせたり、混乱させたりもできるの。

強くない?めっちゃ強くない?うまく使えば悪いことやり放題!
ぜっっっっっっっっっったいしないけど。


【ビーム】
話の中で紹介しなかったけど、教えてあげるわ。
マリーに月を見せてあげる時に使った魔法!
使った後はすっごく疲れるのよねぇ。
でも本気で撃てば月に穴を開けるくらいは余裕かも?
ま、やらないけど!

347: 2018/02/12(月) 01:11:35.36 ID:icMiqLSw
鞠莉「だーかーらー! マリーのこと、お姉ちゃんって呼ぶのよヨハネ!」

ヨハネ「……な、なんで?」

鞠莉「お礼してくれるんでしょ? なら、妹になってよ」

鞠莉「……それとも、マリーの妹は嫌?」

ヨハネ「……別に、嫌ってわけではないわよ……マリーお姉ちゃん?」

鞠莉「おぉぉ! ヨハネ! so cute!! I love you!!」ムギュウ チュッ♥︎

ヨハネ「ちょおお!? やめ、っ……こら、アメリカのノリを出すなー!」

鞠莉「あら、ほっぺにkissくらいで照れちゃうのねヨハネったら♡」

ヨハネ「普通はしないでしょそんなことぉ!?」

鞠莉「うふふ、そんなところも可愛いわ♪」ナデナデ

ヨハネ「むぅ……///」

ヨハネ「それで……私を妹にして何をやろうっていうの?」

鞠莉「まあ……特別何をやろう、ってわけじゃないわ」

ヨハネ「じゃあ?」

鞠莉「こうやって~♪ムギュー

ヨハネ「む……」

348: 2018/02/12(月) 01:12:05.48 ID:icMiqLSw
鞠莉「ほら……泊まりに来てからも、先輩後輩、みたいな接し方だったじゃない? だから……最後の日はいっぱいハグして仲良くなりましょ♪」

ヨハネ「……じ、十分仲良しじゃ?」

鞠莉「うふふ、マリーはgreedなの。もっと仲良くしてほしいわ♡」

ヨハネ「『強欲な』って言いたいなら別の単語よ……」

鞠莉「いいの! かっこいいから!」

ヨハネ「それはわかるけど……もう少し謙虚にした方が好かれるかもよ?」

鞠莉「いいえ、むしろgreedyにヨハネを求めるわ」

ヨハネ「強欲で貪欲なマリーということね」

鞠莉「あら、マリーってすごく悪い人?」

ヨハネ「そんな人を姉に持ってヨハネは大変だわー」

鞠莉「いい子の善子が妹だから釣り合い取れてるわね♪」

ヨハネ「だからヨハネよ!」

鞠莉「はいはい♪ さて、dinnerの時間まで遊びましょ!」

ヨハネ「ええ! ゲームの時間ね!」

349: 2018/02/12(月) 01:12:37.83 ID:icMiqLSw
~bathroom~


ヨハネ「はー……マリーもなかなか上手くなってきたわね!」チャプ

鞠莉「一週間ヨハネにしごかれまくったもの」ザバ

ヨハネ「ふふ、でも私に勝てるかしら?」

鞠莉「善子powerを借りれば負けないと思うわね」

ヨハネ「あ、ずるい」

鞠莉「手加減してもらわないとねー?」タユン

ヨハネ「ぐぬぬ……」

鞠莉「……と・こ・ろ・で~」

鞠莉「これはどうなのかしら♡」モニュ

ヨハネ「ひゃわっ!?///」

鞠莉「ふむふむ……小さい」

ヨハネ「るっさいわ!!」

鞠莉「でも……感度は良さそ♡」クニ

ヨハネ「ひゃ、ぁっ……だ、だめ……っ///」

鞠莉「うふふ、悪ノリしてもいいけど怒られそうだし、これだけにしておいてあげる♡」

ヨハネ「くっ……これをいつも果南センパイは……」

鞠莉「マリーと果南の関係を勘違いしてないかしら!」

ヨハネ「えっ……」

鞠莉「あくまでお友達として♪」

ヨハネ「乳を揉み合う友達っているのかしら……」

鞠莉「揉み合うなんて恥ずかしい! マリーが一方的にしてるだけよ!」

ヨハネ「タチ悪いわ!」

350: 2018/02/12(月) 01:13:48.00 ID:icMiqLSw
鞠莉「ダイヤも意外と悪くないんだけど……ちかっちに比べると残念なのよねー」

ヨハネ「生徒会長……かわいそうに」

鞠莉「ま、やっぱりマリーがchampionだけどネ!」

ヨハネ「結局自分の胸の自慢したいだけじゃないの……」

鞠莉「ふふーん♪」

ヨハネ「そんなこと言うなら……!」ムギュ

鞠莉「おぅ!?」

ヨハネ「ヨハネにも触らせてもらう権利はあるわよね……マリーお姉様?」

鞠莉「お、ぉ……えーと……」

ヨハネ「それっ」モニュ

鞠莉「はぁぁんっ♡」ビクンッ

351: 2018/02/12(月) 01:14:33.59 ID:icMiqLSw
・・・


鞠莉「~っ……」ビクンッ♡

ヨハネ「ご、ごめんって……やりすぎたわ、ねえマリー……」

鞠莉「うぅ……ヨハネにここまでされるなんて……」

ヨハネ「いや、えっと……気分が乗って乗って……」

鞠莉「ヨハネの恋人は大変ね……こんなエ エ な堕天使に犯されたらたまったものでは」

ヨハネ「〇すとか言うなーー!?///」

鞠莉「あら……ウブなのかやり手なのか分からないわねヨハネ?」

ヨハネ「やり手じゃないわ!」

鞠莉「なら、むっつりすけべ?」

ヨハネ「べ、別にそんなわけでもないし!」

鞠莉「そうなんだ」

ヨハネ「違うったら!」

鞠莉「でもお家ではいつも裸なんでしょ?」

ヨハネ「それは服は全部善子のだし」

鞠莉「でもあなたも善子でしょ?」

ヨハネ「それはそれ、これはこれ」

鞠莉「ふうん……」

352: 2018/02/12(月) 01:17:04.25 ID:icMiqLSw
ヨハネ「さて……身体洗って、のんびりしましょ?」ザバッ

鞠莉「そうね、bath後のtea timeが待ってるわ♡」

ヨハネ「今日のデザートは何かしら、楽しみね────」フラッ

鞠莉「よ、ヨハネ!?」ザバッ


ギュウッ


ヨハネ「────マリー」

鞠莉「もう……びっくりするじゃない。逆上せてるわけじゃ……なさそうね」

ヨハネ「ああ……うん、ただの立ちくらみよ」

鞠莉「気をつけてよ? 長湯は体に毒だってダイヤも言ってたわ」

ヨハネ「うん……ありがとう」

353: 2018/02/12(月) 01:17:35.19 ID:icMiqLSw
~鞠莉's room~


ヨハネ「ねえ、本当にやるの?」

鞠莉「もちろん! ずっと夢だったんだもの、妹ができたら一緒のbedで寝るって!」

ヨハネ「は、恥ずかしいんだけど……」

鞠莉「あら、でも善子とは同じ布団でしょ?」

ヨハネ「……まあ」

鞠莉「それに今日はマリーがお姉ちゃんなんだから、お姉ちゃんの言うことは聞きなさいっ」

ヨハネ「わかったわよー……」

鞠莉「よしよし♪」

鞠莉「それじゃ……おいで、ヨハネ♪」バサッ

ヨハネ「……お邪魔します」ソロソロ

鞠莉「こうやって……おっきなbedで、妹とお話ししながら」

鞠莉「毎晩たくさんお話しして……気づいたら二人とも寝てて」

鞠莉「朝起きたら、おはようって言い合うの」

鞠莉「マリー、そんなのに憧れてたんだ。ずっと兄妹が欲しくて、寂しい時はぬいぐるみなんかを代わりに抱いてた」

ヨハネ「……」

鞠莉「けど……これで夢が叶うわ、ヨハネ。ありがとう」

ヨハネ「……別にいいわよ」

鞠莉「……」

354: 2018/02/12(月) 01:18:06.78 ID:icMiqLSw
ヨハネ「だってヨハネは……マリーの妹だもん。お姉ちゃんが願うなら、それを叶えるのは妹でしょ?」

鞠莉「へ……?」

ヨハネ「だ、だから……///」

ヨハネ「また泊まりにきてあげるから、その時は今日みたいに妹になってあげるって言ってるの!」

鞠莉「ヨハネ……」

ヨハネ「……こっち見ないで、今めちゃくちゃ顔赤いと思うかな……///」

鞠莉「……ありがとう、大好きよ、ヨハネ」ギュウッ

ヨハネ「……うん」

ヨハネ(善子の────私の大切な先輩のひとり、小原鞠莉)

ヨハネ(私の中で、彼女は豆腐メンタルで……色々な悩みを抱えながら、それでも誰かのために頑張れる人ってイメージだった)

ヨハネ(だけど……よく考えたら、それってとっても寂しがりってことじゃない)

ヨハネ(誰かのために頑張るのも、自分がそうしたいし、そうすることで……認められたいって思ってるんじゃないの?)

ヨハネ(私はヨハネだから、善子以外の相手に過干渉はするつもりはないけど……)

ヨハネ(『私』を妹と呼んで愛してくれるこの人には、精一杯愛を返してあげてもいいかな……?)

355: 2018/02/12(月) 01:18:38.74 ID:icMiqLSw
ヨハネ「────マリー」

鞠莉「……なあに?」

ヨハネ「ありがと、明日、ちゃんとみんなに謝るから」

鞠莉「うん……マリーも一緒にね」

ヨハネ「元はと言えば私のわがままのせいだし……すっごく怒られるんでしょうね……」

鞠莉「ふふ、でもマリーはヨハネがわがままを言ってくれたおかげで仲良くなれたから、結果オーライかな♪」

ヨハネ「ふふ、自分勝手なんだから」

鞠莉「そんなマリーはお嫌い?」

ヨハネ「むしろ、それでこそマリーって感じ」

鞠莉「む、貶してる?」

ヨハネ「……バレたか」

鞠莉「ひどい!」

ヨハネ「ふふ、そんなあなたも大好きだから安心して、マリー♪」

鞠莉「……ぉぅ///」

ヨハネ「赤くなった?」

鞠莉「なってなーい!」

ヨハネ「はいはい♪」

356: 2018/02/12(月) 01:19:54.82 ID:icMiqLSw
鞠莉「もう、ヨハネったら! マリーだってヨハネのこと大好きよ! 帰したくないわ!」

ヨハネ「……そ、そんなに?///」

鞠莉「of course! こんな可愛い妹を手放すなんて、マリー、とってもつらい!」

ヨハネ「じゃあ……今度は善子も連れて二人で遊びに来る」

鞠莉「reary?」

ヨハネ「ええ、本当。約束」

鞠莉「えへ……嬉しい」

ヨハネ「……だから、寂しくないわよ、お姉ちゃん」

鞠莉「うん♪」

鞠莉(それから、ヨハネとマリーはいっぱいお話をしたわ)

鞠莉(くだらないことや、普段思ってること……それこそ、本当の姉妹みたいに、心をぜんぶ裸にして、なんでもかんでも話し合ったの)

鞠莉(そのうち、私たちは気づいたら寝てしまって────)

357: 2018/02/12(月) 01:20:49.56 ID:icMiqLSw
ヨハネ(朝、マリーと一緒に部室へ行くと、大騒ぎになった

ヨハネ(当然よね、一週間も行方不明だった私がマリーに連れられて現れたんだから)

ヨハネ(生徒会長とセンパイはマリーに怒ってた。知ってたのに隠していたのか───って)

ヨハネ(リーダーがそれを抑えて、マリーが事情を説明してくれた)

ヨハネ(ルビィと花丸は泣いていた。とても心配してくれてたみたい────私ももらい泣きしてしまったのは、ちょっと恥ずかしいけど)

ヨハネ(リリーと曜センパイ、笑顔で迎えてくれた。すごく嬉しかった)

ヨハネ(だけど────)

ヨハネ(善子はひとつも言葉を発しなかった)

ヨハネ(たぶん、まだ怒ってるのよね……? 一週間、連絡をよこさなかったんだもの)

ヨハネ(ごめんね、ごめんね────何回も言ったけど、善子は黙っていた)

ヨハネ(学校が終わってからも善子は何も言わなくて────)

ヨハネ(二人、バスで家まで帰った)

ヨハネ(帰ってきた私を見て、親は泣いていた。怒ってもいた)

ヨハネ(けど……あの涙を見て、私は本当に受け入れられてるんだ……って、とても嬉しい気持ちになった)

ヨハネ(だけど、善子が声をかけてくれないことだけが寂しくて────)

358: 2018/02/12(月) 01:21:49.56 ID:icMiqLSw
善子「────ねえ」

ヨハネ(夜の10時を過ぎた頃、善子が私を呼んだ。一週間ぶりに聞いた善子の声は、少し震えていた)

善子「……ゲーム、やるわよ」

ヨハネ「え……?」

善子「ヨハネが出てった……理由は、私が勝手にゲームしたから、でしょ?」

ヨハネ「……うん」

善子「なら……ケジメはゲームでつけましょ。勝った方が勝ちってことで」

ヨハネ「……」

善子「私とヨハネが喧嘩したら……いつもゲームで勝敗を決めてた。だから今回もこれで決める、ただそれだけ」

善子「そしたら全部おしまい、もう怒らないし無視したりしない」

ヨハネ「善子────」

善子「ほら、コントローラーを握りなさい! 言っておくけどこの一週間、あんたをぶっ飛ばすことだけを考えてずっと研究してたんだから!」

ヨハネ「……ふふ、仲直りの法則は、決まった……わね」

善子「……ふん///」

善子「心火を燃やしてぶっ潰す……」

359: 2018/02/12(月) 01:22:36.74 ID:icMiqLSw
~後日~


鞠莉「welcome! よくきたわね、my sisterたち!」

ヨハよし『シスターじゃなくてヨハネ!』

鞠莉「はいはい! いいからあがってあがって、今日のために美味しいお茶とお菓子を用意しているの!」

善子「お菓子!」

ヨハネ「ふふ、お菓子が欲しければマリーの妹になることね!」

鞠莉「なることね!」

善子「何言ってんのこの人たち……」

鞠莉「普段の善子に言われたくないんだけど!」

善子「ヨハネよ!」

鞠莉「いいじゃな~い♪ ほらほら、まずはマリーって呼ぶところから始めましょ、my sister善子♡」ギュウッ

善子「ちょ、抱きつかないでよ理事長!」

鞠莉「ほーら、まりぃ~」

善子「やーだ!」

鞠莉「いーけーずー! まーりーぃ!まーりーぃ!」

善子「いーーやーーだーー!」

ヨハネ「うふふ♪ ────づっ……!」ズキッ

ヨハネ「……」サラサラ

ヨハネ(いま、一瞬……)

ヨハネ(そう……限界が近いのね、私)


善子といられるのも────あと少し、か

第5話・完

443: 2018/02/21(水) 01:50:02.52 ID:hekRn6oR
~放課後・屋上~


果南「ワン!ツー!スリー!フォー!ワン!ツー!スリー!フォー!」」パンパン

果南「花丸、腕の振り遅れてるよ! 梨子は身体もっと大きく使って!」

花丸「は……はい!」

梨子「はいっ!」

果南「鞠莉は足元少し雑、しっかりステップ! ルビィはもっとみんなを見て!」

鞠莉「ぉっ……OK!」

ルビィ「は、いぃ」

ヨハネ「ハードなダンスね」

果南「でも、そのぶんかなり高い評価をもらえると思う。今度のラブライブは本気で挑まなきゃいけないから」

ヨハネ「……そうね」

果南「善子、ちゃんと腕伸ばして!」

善子「はいっ……!」

ヨハネ「……」

ヨハネ「ラブライブ……かぁ」

444: 2018/02/21(水) 01:51:11.69 ID:hekRn6oR
・・・


果南「それじゃあ休憩! みんな今の動きを頭に入れて、これから更に改善していくよ!」

みんな『はい!』

千歌「はー……つっかれたああー……」

鞠莉「もう腕上がんないわー……」

梨子「膝が笑ってる……」

ダイるびまる『……』グッタリ

曜「はー……さすがにつらいなー……」

善子「はあぁ……きっつかったわ……」

ヨハネ「おつかれ。はい、スポドリ」スッ

善子「ありがと……」パシッ

ヨハネ「最近、みんなピリピリしてるわね」

善子「そりゃ……ラブライブは失敗するわけにはいかないからでしょ?」

ヨハネ「……そうね」

善子「?」

445: 2018/02/21(水) 01:52:01.69 ID:hekRn6oR
果南「あ、ヨハネ」

ヨハネ「センパイ……どうしたの?」

果南「ちょっと私のダンス、見てほしいんだけど」

ヨハネ「いいけど……どうして私なのよ」

果南「みんな疲れてるし、ヨハネも仲間でしょ?」

ヨハネ「……仲間、ね」

果南「?」

ヨハネ「いいわよ、見てあげる」

果南「ありがと助かる! ついでに善子も見ててよ」

善子「ついでで悪かったわね、あとヨハネ」

果南「指摘あったらよろしく!」

善子「はいはい……」

ヨハネ「それじゃ……」

果南「せー……のっ!」タッ

ヨハネ「ワン!ツー!スリー!フォー!」パンパン

果南「ふっ……ふっ……」タッタッタッ

善子「……悪くないわよね?」

ヨハネ「腕の振りも足もしっかり出来てる……けど」

ヨハネ「センパイ、難しいステップ入るとテンポが少し遅れるわ、気をつけて」

果南「うん!」

446: 2018/02/21(水) 01:53:19.48 ID:hekRn6oR
・・・


果南「はあ……ふう、ふぅ……」

ヨハネ「お疲れ、センパイ。全体的にいい感じだったわよ」

善子「さっきのテンポが遅れるところだけ直せば完璧ね」

果南「ほんと?よかった。振り付け考えた私がボロボロじゃ、カッコつかないからさ~……」

善子「まあ……誰も気にしないと思うけど」

ヨハネ「でも、ほんと難しいダンスよね……」タンッタンッ

ヨハネ「ほっ……ふ、っ」タッタッ

善子「……できてるし」

果南「やるねー」

ヨハネ「ふん、堕天使を舐めないことね! ────づっ!」ギシッ


グラッ


善子「あっ!」

果南「あぶなっ!」バッ


ガシッ


ヨハネ「……ナイスセンパイ」

果南「大丈夫?」

ヨハネ「ええ……足が絡まったみたい」

善子「なにやってんのよ……そんな難しいところじゃなかったでしょ」

ヨハネ「わかってるから言わないでってば……」

447: 2018/02/21(水) 01:54:20.38 ID:hekRn6oR
善子「ふふふーん? やっぱり運動不足なのかしらー?」

ヨハネ「なにをぅ! やる気!?」

善子「いいわよ、全力でかかってきなさい!」

果南「はいはい、ストップストップ」

ヨハネ「む」

善子「ふん」

果南「ていうかヨハネ、身体軽いね。ちゃんと食べてる?」

ヨハネ「毎日三食欠かすことはないわ!」

果南「もっと食べなよ? 女の子だから痩せてないと、って思うのは分かるけど……痩せすぎも毒だからね」

ヨハネ「ええ……ありがとう」

ヨハネ(いま、足が軋んだ……)

ヨハネ(……動きが鈍ってるってことね)

448: 2018/02/21(水) 01:55:04.40 ID:hekRn6oR
~練習後・部室~


善子「では我がリトルデーモンたち、私は一足先に失礼させていただきます。また明日、その顔を拝みに来てあげましょう」

ヨハネ「遊んでないで帰るわよ」

善子「遊んでないんだけど! というか、あなたもヨハネならノりなさいよ!」

ヨハネ「ああ、そうね……うん、ごめん」

善子「な、なによ……? 調子狂うじゃないの」

果南「あ、善子とヨハネ。今から時間ある? うちに来てほしいんだけど」

善子「?」

果南「体づくりにいい干物とかあげようと思ってさ。さっきヨハネ抱きとめた時、すごく軽かったから心配で……ね?」

ヨハネ「よ、余計なお世話よセンパイ! 私はこれでも毎日食べてるし、おかわりだって────」

果南「いいからおいで、先輩が心配してんだから」

ヨハネ「ぅ……はい」

善子「……」

果南「よし、じゃあ行こっか。ちょっと時間かかるけど、大丈夫だよね?」

ヨハネ「それなら私が二人を抱えて飛べばすぐに行けるわよ?」

果南「いいから、今日はバスで帰ろ。ダイヤにも寄ってもらうし3人は抱えて飛べないでしょ?」

ヨハネ「ぐっ……わ、我が能力をなめないでもらいたいのだけど」

善子「強がりね」

ヨハネ「くっ……」

果南「ふふ、仲良しだね二人はいつも」

果南「だいやー? ちょっと帰りにさー」

449: 2018/02/21(水) 01:56:39.25 ID:hekRn6oR
~果南の家~


善子(いっぱいもらってしまった……)

果南「こんなにあれば大丈夫でしょ!」

ヨハネ「多すぎよ! 一夜干しでしょ? どんだけ作ったのよ」

果南「んー……昨日休みだったからめちゃくちゃ釣ったからそれ全部?」

ヨハネ「限度がある!!」

ダイヤ「まあまあ、先輩の好意には心から甘えるのが後輩の務めではなくて?」

善子「……」

ヨハネ「……」

ダイヤ「な、なんですか? 人の顔をジロジロと」←一夜干しをいっぱいの紙袋を持ったダイヤ

善子「同級生だからってもらいすぎじゃない?」

ヨハネ「紙袋2袋って……」

ダイヤ「こ、これは果南さんに押し付けられたんです!!///」

果南「まだあるけど」

ダイヤ「こ、これだけいただいたので満足です!」

ヨハネ「なんぼ作ったのよこのセンパイ」

450: 2018/02/21(水) 01:59:21.06 ID:hekRn6oR
果南「まだ千歌の家に持ってくのがあるし、明日は曜のとこにも持ってかないといけないんだ」

善子「ほんと作りすぎでしょ……」

果南「でもそれだけ食べたら骨も強くなるから……だからヨハネも善子も、好き嫌いせず食べなよ?」

ヨハネ「はいはーい……」

果南「ダイヤもね」

ダイヤ「わ、わたくしに好き嫌いなんてありませんわ!」

果南「ふーん……」

ダイヤ「……分かってます、ありがとうございます」

果南「うん! ……じゃ、千歌の家までボート出すから送ってくよ」

ダイヤ「ええ、ありがとう。二人も乗って行きなさい?」

ヨハネ「ええ、お言葉に甘えさせてもらうわ」

善子「ボート……」

ヨハネ「学生なのにボート動かせるって、ちょっとかっこいいわよね」

善子「!」コクコクコクコクコクコクコクコク

451: 2018/02/21(水) 01:59:55.47 ID:hekRn6oR
・・・


ダイヤ「では、わたくしたちはこれで」

果南「また明日ね~」

善子「そうだセンパイ、リーダーに伝えておいてほしいんだけど」

果南「んー?」

善子「歌詞製作に困ってるなら、私でも手伝えると思うから……って」

果南「ふふ、わかったよ。ありがとね善子」ナデナデ

善子「な、なでるな! んじゃまた明日!」

果南「はいはーい」

452: 2018/02/21(水) 02:00:25.49 ID:hekRn6oR
ダイヤ (*´ω`*)

ヨハネ( ˆωˆ )ニヤニヤ

善子「……な、何よあんた! なによ生徒会長!」

ダイヤ「いえいえ、うふふ」

ヨハネ「自分から協力を申し出るなんて、馴染んだわねぇ? あんなにコミュ障だったのに」

善子「う、うるさいわ! 私だって……その、Aqoursの一員だもん」

善子「それに、全部あんたのおかげでゴニョゴニョ……」

ヨハネ「なに、なんて言ったの?」

善子「な……何でもない!」

ヨハネ「ふぅん」

453: 2018/02/21(水) 02:00:59.59 ID:hekRn6oR
ダイヤ「……ところで、ずっと気になっていたのですが」

よしヨハ『?』

ダイヤ「あなたたちふたりは……どちらが上でどちらが下……とか、決めてますの?」

よしヨハ『私が姉!』

よしヨハ『……』

よしヨハ『私よ!!』

よしヨハ『ぐぬぬぬ……』

ダイヤ「……分かりました、二人とも同じ主張なのでどっちつかず、という形なのですね」

454: 2018/02/21(水) 02:01:34.00 ID:hekRn6oR
ヨハネ「いやいやいやどう見たって私でしょう? ほら、この大人っぽいスタイルに美しい容姿!」

善子「私の顔でそんなこと言うなー!!」

ダイヤ「……確かに、見比べてみると善子さんより背は高いですし、その、全体的なスタイルも大人びているような」

ヨハネ「ふふ、当たり前よ! 我が必〇の魔法【変身】による効果ですもの!」

ダイヤ「……ああ、言っていましたわね。確か、善子さんをもとにするならば、基本何にでも仮装できるとか」

ヨハネ「ええ! 元のパーツは善子のまま、髪型や微細な部分を変化させて生徒会長のように変身することもできるのよ」

善子「忌々しいわその能力……」

ダイヤ「まさにオカルトの世界ですわ…………まあ、それを言ったらヨハネさんの存在そのものがオカルトなのですけれど」

善子「そうね……堕天使として現世で生きるこの私ですら、さすがに驚いたわ」

ヨハネ|c||˘ヮ˚||

ダイヤ「!!?」

善子「うわっ!?」

455: 2018/02/21(水) 02:02:11.85 ID:hekRn6oR
ヨハネ「変身してほしそうだったから♪」

ダイヤ「も、もっとよく見ても?」

ヨハネ「えっ……え、ええ」

ダイヤ「……じー」プニプニ

ヨハネ「ぅゆ……ぅー」

ダイヤ「……この髪……かつらではないですわね」

ヨハネ「変身だもん、本物よ」

善子「ちょ、ちょっ……な、なんかすごく恥ずかしくなるからやめて! 自分と先輩の百合絡みとか見たくないから!///」

ダイヤ「ゆり……??」

ヨハネ「あーら恥ずかしがっちゃって~」

善子「るっさいわ!」

ダイヤ「善子さん、百合というのは」

善子「え、えっと……えっと」

ヨハネ「耳貸して生徒会長……ゴニョゴニョ」

ダイヤ「ほうほう、ほ……」

ダイヤ「っ…………な、なんですかそれは!?///」

善子「教えるんじゃないわよ!」

ヨハネ「だって教えてほしそうだったしぃ」

ダイヤ「こ、後輩と……そんな、女同士でだなんて~……っ///」

ヨハネ「それにしてもこの生徒会長……満更でもない様子」

善子「マジなの……」

456: 2018/02/21(水) 02:02:52.71 ID:hekRn6oR
・・・


善子「そろそろ生徒会長のうちよね」

ダイヤ「そうですわね、あそこの瓦屋根の……」

ヨハネ「……デカない?」

ダイヤ「まあ……内浦ではそこそこ名のある家ですから……」

善子「今更ながらに自分が交流してる先輩のヤバさを感じるわ……」

ダイヤ「べ、別にそんな組とかそういう家ではないですからね!?」

善子「わ、わかってます!だから〇さないで!」

ダイヤ「よーしーこーさーん!!」

善子「ふっ……ふふふw」

ヨハネ「楽しいおしゃべりはそのへんで。善子、帰りにスーパーで買い物しましょ」

善子「あ、そうね……魚だけじゃ足りないし、確か味噌切れてたわね」

457: 2018/02/21(水) 02:03:31.69 ID:hekRn6oR
ダイヤ「買い物を頼まれていたんですか?」

善子「あ、そうじゃなくて……私の母親は教師で、父親も出張とか多くて……帰りが遅かったり帰ってこないことが多いのよ」

善子「だから夕飯は自分だけ……じゃなくて、私たちだけで済ませることがほとんどなの」

ヨハネ「特に今日は母親も教師同士の飲み会かなんかで遅くなるらしいから……」

ダイヤ「……そうなんですの、それは寂しいですわね」

善子「そ、そんなこと……ないわよ」

ダイヤ「本当?」

善子「…………意地悪ね、生徒会長は」

ダイヤ「強がる必要はないだけですわ、素直なことは美しいことです」

善子「……まあ、今は平気よ。家に帰っても一人じゃないしね?」チラッ

ヨハネ「ん、なに?」

善子「なんでもないわよ、ふふ」

ヨハネ「変なの」

ダイヤ「……では、本日は買い物をして帰ると」

善子「そ、だからスーパー閉まらないうちに急がないと」

ヨハネ「飛ばしていくわよ!」バサッ!!

ダイヤ「きゃっ!」

ヨハネ「パンツ見え……なかった」

善子「なにしてんのよ!」

ダイヤ「ま、まったく……油断も隙もありませんわね」

ヨハネ「ごめん生徒会長、わざとじゃないの」

ダイヤ「はあ……まあいいですわ」

ダイヤ「お二人、今日はうちで食べて帰りなさい」

よしヨハ『…………は?』

490: 2018/02/25(日) 00:29:25.57 ID:czYap2rt
~黒澤家~


ダイヤ「ただいま帰りました」


トテトテ


ルビィ「お姉ちゃんおかえり~……あっ!」

善子「お、お邪魔します……」

ヨハネ「お、お邪魔します……」

ルビィ「善子ちゃん!ヨハネ様!」

ダイヤ「今夜、彼女たちも我が家で夕食を一緒にすることになりました。お母さまは台所に?」

ルビィ「うん! おさかな待ってるよ~」

ダイヤ「では、二人のことを伝えて来ます。ルビィ、善子さんとヨハネさんをお部屋にお通しして」

ルビィ「はい!」

ルビィ「善子ちゃん、ヨハネ様、どうぞあがってくださいっ」

善子「は……はーい」

491: 2018/02/25(日) 00:30:05.43 ID:czYap2rt
ヨハネ『なんか色々やばい』

善子『直接脳内に!?』

ヨハネ『テレパシーを忘れるんじゃないわよ』

善子『ああ、そうだったわ……』

善子『萎縮しちゃうくらい凄いわね……』

ヨハネ『ええ……でっかい日本家屋に趣のある玄関……』

善子『飾られたお花や絵からもう……お金持ちのオーラが……』

ヨハネ『実際お金持ちなのよ。内浦の有力者らしいし』

善子『……まさかヤのつく……』

ヨハネ『いやいやいやいや……』

善子『いやいやいやいや……』

492: 2018/02/25(日) 00:31:30.30 ID:czYap2rt
ルビィ「ここだよ~」


ガチャッ


ルビィ「あ、あんまり見られると恥ずかしいんだけど……こ、子供っぽくないよね?大丈夫かな?」

善子「……めっちゃ可愛いんだけど」

ヨハネ「まさにルビィって感じの部屋だわ……」

ルビィ「えぇっ!? えと、あの……ぅゅ……///」

善子『こんな可愛い部屋がそんなお仕事の家にあるわけないわよねー』

ヨハネ『そうよそうよ、ええ、うん』

ルビィ「隣はお姉ちゃんの部屋だよ」

善子「生徒会長の部屋……」

善子「……みちゃダメ?」

ルビィ「えっ……や、やめときなよ、怒られちゃうよ?」

善子「こそっと見るだけよ、ちらっとちらっと」

ヨハネ「やめときなさいよバカ」

善子「えー……」

ダイヤ「そうです、人の部屋を見るようとするなんて性格の悪さが滲み出ますわよ」

善子「ひいっ!?」

ルビィ「ぴぎっ!?」

493: 2018/02/25(日) 00:31:56.13 ID:czYap2rt
ヨハネ「もっと言ってあげて生徒会長、バカな私のオリジナルに」

ダイヤ「あなたもバカなことを言うんではありませんわ……」

ヨハネ「そんなっ!?」

ダイヤ「母に伝えてきました。夕食までしばらくありますから、部屋で待っているようにと」

ルビィ「はぁ~い」

善子「あっ……でも、夕飯をご馳走になるのに挨拶しないわけには」

ヨハネ「そうね、私もひとっ飛びして菓子折りでも」

ダイヤ「気を遣わなくていいんです、先輩の誘いに応えただけですから」

善子「で、でもご両親は別で……」

ダイヤ「先輩の行為には?」

ヨハネ「……甘えるのが後輩の務め」

ダイヤ「母からも、構わないと言われていますから。夕食の時に言ってあげてください」

善子「……わかった」

ヨハネ「ありがとう生徒会長」

ダイヤ「ふふ、構いませんわ。可愛い妹二人のためですから」

ヨハよし『……妹?』

494: 2018/02/25(日) 00:33:24.58 ID:czYap2rt
ダイヤ「ええ、我が家に来たからには二人は妹です♪ お姉ちゃんに甘えていいのよ?」

ヨハよし『えー……』

ルビィ「お姉ちゃんの悪い癖だよー……」

善子「癖……?」

ルビィ「自分より年下で懐いてくれる子がいたらみんな妹にしちゃうの」

ルビィ「千歌ちゃんとか曜ちゃんとか」

ヨハネ「oh……」

ダイヤ「あら、それは人聞きが悪いわねルビィ。あなただってすぐに人を姉にしようとするくせに」

ルビィ「あっ……えっと、その……!」

ヨハネ「姉?」

495: 2018/02/25(日) 00:41:59.70 ID:czYap2rt
ダイヤ「ええ、わたくしというお姉ちゃんがいるのに、ルビィはすぐ人に懐いてお姉ちゃんにしようとするんです」

ダイヤ「千歌さんとか曜さんとか」

善子「なんでその二人なの?」

ルビィ「まるちゃんを妹にしようとした時はすごかったよ~……? まるちゃん本気にしちゃったもん」

ダイヤ「あら、わたくしこそ本気ですわ」

善子「そうか……あの話はここにつながるのか」

ヨハネ「なるほど……こう来たか」

>>2話参照

496: 2018/02/25(日) 00:42:51.78 ID:czYap2rt
ダイヤ「それはそれとして、夕食までどうします?」

ルビィ「お姉ちゃんが善子ちゃんから借りたゲームとか」

ダイヤ「あ、あれは人様と遊ぶものではないです!」

善子「! ちゃんとやってくれてるの!?」

ダイヤ「え、ええと……それは、当然です。貸してもらいましたし……ええ、もちろん」

善子「生徒会長だいすき!」ギュウッ

ダイヤ「……!!!」

ヨハネ(貸したゲームを楽しんでくれるととても嬉しいゲーマーの精神……)

ルビィ「でも、何する? うちにあるゲームって……ほんとに善子ちゃんに借りたやつと、花札、将棋、囲碁、トランプ、麻雀……」

ダイヤ「四人で遊べるもの、トランプくらいしかありませんわね」

ヨハネ「麻雀は? 4人でメンツ揃うけど」

善子「ほんとよ、遊べるじゃない」

ルビィ「……いいの? 麻雀」

ダイヤ「いいんですか、あなたたち」

善子「えっ」

ヨハネ「……え?」

497: 2018/02/25(日) 00:43:19.51 ID:czYap2rt
ルビィ「え、えっとね、善子ちゃん」

善子「う、うん」

ルビィ「ルビィとお姉ちゃん……すっっっっっっごく……強いよ?」

ヨハネ「!?」

ダイヤ「生まれてこれまで……家での娯楽は遊び尽くしましたからね。お正月に親戚の方々が集まった時はみんなで花札や麻雀で揉まれ……」

ルビィ「負けたらお年玉が減らされちゃうから……負けないように頑張って強くなって……」

善子「……」

ヨハネ「……」

ダイヤ「それでもいいのなら、やりますが……わたくしはあまりお勧めしませんわ」

ルビィ「ルビィも……」

善子「……ふ、ふふ」

ヨハネ「くふふ……ふふ」

ダイヤ「善子さん……?」

ルビィ「ヨハネ様……?」

善子「やるわよ麻雀!」

ダイヤ「!?」

498: 2018/02/25(日) 00:44:18.09 ID:czYap2rt
ヨハネ「私たち2人が一緒になれば無敵! 麻雀は運要素の強いゲーム……なら勝ち目はあるわ」

ダイヤ「……いいんですね」

ルビィ「な、泣かないでね……? その、ほんとにルビィたち強いから」

善子「ええ、もちろん! 本気でやらないと面白くないわ」

ダイヤ「ではテーブルと牌を持ってきます。泣いても知りませんからね?」


・・・


その日、私たちは思い出した。

ダイヤ「それロンです。8000点」

善子「えっ」

自分の人生が────

ルビィ「ご、ごめんなさい! ロンです……その、16000点……」

ヨハネ「」

『不幸』に支配されていたことを。

ダイルビ『ロン』

ダイヤ「12000」

ルビィ「8000……」

ヨハよし『』

自分が運要素に関わる一切の才能がないことを。


最終的に私とヨハネは3回ずつトバされた。
南4局までたどり着くことはなかった。

ちょっと泣いた。

499: 2018/02/25(日) 00:45:27.81 ID:czYap2rt
`¶cリ˘ヮ˚)| 「今回は短くてごめんなさい」

`¶cリ˘ヮ˚)| 「だけどこの魔力でまた保守、お願いね」

`¶cリ˘ヮ˚)| 「私のことは心配いらないわ、善子の幸せが、私の全てだもの!」

`¶cリ˘ヮ˚)| 「また会いましょう! サラバッ!」

515: 2018/02/26(月) 19:53:17.92 ID:aI2h+Rtg
`¶cリ˘ヮ˚)| 「私がヨハネで」

¶cリ˘ヮ˚)| 「私が善子……ってヨハネよ!」

`¶cリ˘ヮ˚)| 「見分け方は羽根が刺さってるか刺さっていないか、よ!」

¶cリ˘ヮ˚)| 「分かりにくいわ!」

523: 2018/02/27(火) 21:56:32.87 ID:D/23CF8j
>>515
可愛い

525: 2018/02/28(水) 02:26:56.10 ID:+0WPhMaH
・・・

『いただきます』

ダイヤ母「沢山ありますから、いっぱい召し上がってくださいね」

善子「あ、ありがとうございます……」モグモグ

ヨハネ「んむ……」モグモグ

善子「えっ……やば、おいしい……」

ダイヤ母「あら、本当?」

善子「はい……えと、お味噌汁も筑前煮も……すっごくおいしいです」

善子「ね!」

ヨハネ「……ええ、本当に美味しいです」

ダイヤ母「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいですわ♪ ダイヤもルビィも、素直で可愛らしい方とお知り合いになりましたわね」

ダイヤ「ええ……ふふ、いい後輩です」

ルビィ「大好きな友達だよっ」

善子「ちょ、ちょっとやめて……///」

ヨハネ「あら、照れてるの?」

善子「うるさいっ」

ダイヤ母「ふふ、仲が良くて素敵な姉妹ですわね♪」

善子「……///」

ヨハネ「ありがとうございます」

526: 2018/02/28(水) 02:27:36.78 ID:+0WPhMaH
ダイヤ母「うふふ、今日いただいたお魚もとても美味しいですわね。まだまだお代わりもありますから」

ルビィ「うんっ!」

ダイヤ母「ダイヤ、また果南さんにお礼にみかんを送ってあげてください」

ダイヤ「ええ、すでに手配しております。明日には届くと思いますわ」

ダイヤ母「それはよかった、今年のみかんも甘くて美味しいですから、きっと喜んでもらえるわね」

ダイヤ母「あなたたちも、帰りにお土産としてもらってくださいな」

ヨハネ「あっ……その」

ダイヤ「お母さま」

ダイヤ母「?」

ダイヤ「その……善子さんたちは、みかんが得意ではないんです。なので、りんごを持たせてあげたいのですけれど」

ダイヤ母「あら、そうだったの? ごめんなさい、わたくしったら……」

善子「あ、いえ、そんな……こちらこそ、申し訳ありません」

ヨハネ「申し訳ありません……」

ダイヤ母「いえいえ、誰にも好きなもの、嫌いなものはありますから。せっかく持って帰ってもらうなら、好きなものをあげたいですから」

ヨハネ「ありがとうございます、奥さま」

527: 2018/02/28(水) 02:28:17.04 ID:+0WPhMaH
ダイヤ母「あらあら、ふふ……奥さまなんて呼ばなくていいんですよ? おばさんで構いませんわ」

ルビィ「たぶん雰囲気に飲まれてるんだよ!」

ダイヤ「ルビィ……」

ダイヤ母「……ルビィ、あとでお話ししましょうね?」

ルビィ「ぴっ!?」

ダイヤ母「そういえば、さっき4人で麻雀をしていたんでしょう?」

ダイヤ「あ……聞こえていましたか?」

ダイヤ母「ええ、もちろん」

ダイヤ母「2人とも、いくら強いからと全力で叩いてはいけません。せっかくの相手がいなくなってしまいますよ?」

ダイヤ「すみません……」

ルビィ「ごめんなさい……」

ダイヤ母「まさかお金を賭けたり……」

ダイヤ「してませんわ!!」

ダイヤ母「……ならばよろしい」

ルビィ「お母さんはお金賭けないとやってくれないもんね」

ダイヤ母「!?」

ヨハよし『!?』

528: 2018/02/28(水) 02:29:17.22 ID:+0WPhMaH
ダイヤ母「あ、あの……えっと、これは……!」

ルビィ「おうちで一番強いよね……」

ダイヤ「それはそうですが、ルビィ、言っていい事実と悪い事実が!」

ダイヤ母「だ、ダイヤまで……っ」

ヨハネ「厳格なお母さんのイメージが崩れた……」

ダイヤ母「そんなー!」|c||>△<||?

529: 2018/02/28(水) 02:30:04.34 ID:+0WPhMaH
・・・

善子「今日は遅くまでありがとうございました。ご飯美味しかったです」

ヨハネ「ありがとうございました。2人揃って厄介になってしまって……こんなにりんごもいただいてしまって」ガサガサ

ダイヤ母「いえいえ。また来てくださいな、今日は楽しかったわ」

ルビィ「またねぇ~……」ポヤポヤ

ダイヤ母「あらあら、ルビィったら……」

ダイヤ「わたくしがお見送りしてまいりますわ」

ダイヤ母「ええ、お願いね。さあルビィ、行きましょう」ポンポン

ルビィ「はぁい~……」ヨタヨタ

ダイヤ「門までですが、行きましょう」

善子「ううん、ここで大丈夫よ」

ダイヤ「お客様ですから、ちゃんと送らせてください」

ヨハネ「大丈夫大丈夫、どうせ飛んで帰るし」

ダイヤ「……ふたりとも、先輩の好意には」

ヨハよし『……甘える』

ダイヤ「よろしい、では行きましょう♪」

善子「……ぐぬぬ」

ヨハネ(……いい先輩ね)

530: 2018/02/28(水) 02:32:18.38 ID:+0WPhMaH
ダイヤ「ちゃんとりんごは持ちましたか?」

善子「ええ、たっぷりいただいたわ」

ダイヤ「果南さんの魚も」

ヨハネ「ばっちり」

ダイヤ「よかった、それなら大丈夫ですわね。もし忘れ物があったら連絡ください。明日、持って行きますから」

善子「ありがとう」

ダイヤ「……そのお魚、ちゃんと全部食べるんですよ?」

善子「えっ……ええ、そりゃもちろんだけど」

ダイヤ「その一夜干しは、果南さんの心配ですから」

ヨハよし『心配?』

ダイヤ「その一夜干しをみんなに配ってると、果南さんは言いますが……必ずしも全員ではありません」

ダイヤ「基本は千歌さん、曜さん、そしてわたくし。善子さんは今日が初めてでしょう?」

善子「心配と魚がどう関係あるの?」

ダイヤ「果南さんは……人と仲良くなるのは得意ですが、気配りはあまり得意ではありません」

ダイヤ「心配してるからって、ストレートにそう伝えるのは苦手なんです」

ヨハネ「……私たちが心配だから、ってこと?」

ダイヤ「ええ、そうです。きっとたくさん食べて、体力をつけろ……と言いたいのでしょう。不器用なあの人らしい、不器用な優しさです」

善子「……」

ヨハネ「……」

善子「……ふふ、心配して魚って、変なの」

ダイヤ「果南さんらしいでしょう?」

善子「……うん」

531: 2018/02/28(水) 02:32:52.55 ID:+0WPhMaH
ダイヤ「ですので、しっかりと気持ちを受け止めていっぱい食べること! それが果南さんへのお礼ですから!」

善子「……うん、わかったわ」

ヨハネ「……」

ダイヤ「……はい、それでいいのです」ニコッ

ダイヤ「さて、それでは……わたくしはここで」

善子「……ありがとうございました」

ヨハネ「……また、明日」

ダイヤ「ええ、おやすみなさい」


バサッ!!


ダイヤ「きゃっ……」


バサバサバサバサ…


ダイヤ「……」

ダイヤ(月明かりに照らされて、空を舞うふたりの少女)

ダイヤ(その姿はまるで────いえ、まさに天使のようで────)


キラッ


ダイヤ「!!」

ダイヤ「……き、気のせいですよね?」

ダイヤ(いま……ヨハネさんの姿が、一瞬…………)

532: 2018/02/28(水) 02:33:18.29 ID:+0WPhMaH
・・・


バサッバサッ

善子「……ねえ、ヨハネ」

ヨハネ「んー?」

善子「ごはん、おいしかったわね」

ヨハネ「……そうねぇ、私なんて言葉失ったわ」

善子「そうそう、珍しいわよね」

ヨハネ「?」

善子「あんた、何食べても幸せそうな顔するのに……最近、あんまりいい顔してないから」

ヨハネ「……そう?」

善子「ちょっと気になってたのよ、本当に体調悪いんじゃないかって」

ヨハネ「心配してくれてたんだ、善子が私を」

善子「茶化さないでよ……腐っても家族なんだから、私とあんたは」

ヨハネ「……ありがと、心配いらない。私は元気よ」

善子「……」

533: 2018/02/28(水) 02:35:31.29 ID:+0WPhMaH
善子「……私、あんたが生まれてきてくれて感謝してるのよ」

ヨハネ「えっ……どうしたの?」

善子「あんたのおかげで……センパイたちとも、もっと仲良くなれた……と思うし」

善子「私の、嫌な部分を少しは好きになれたと思う」

善子「だから……感謝してる」

ヨハネ「……ね、ねえ? 本当にどうしたのよ」

善子「私と……あんたは、もう、家族よね?」

ヨハネ「えっ……ええ、もちろん。私はあなたであなたは私……そして、唯一無二の姉妹」

善子「だっ、たら…………だったら」

善子「……あんたの身に起こってること、ちゃんと話して」

ヨハネ「────!!」

善子「私、分かってるのよ。ヨハネに何か、良くないことが起こってるって」


第6話・完

534: 2018/02/28(水) 02:37:11.20 ID:+0WPhMaH
¶cリ˘ヮ˚)| 「結界の保持、いつも感謝しているわ。褒めてつかわす!」

¶cリ˘ヮ˚)| 「私の魔力をリトルデーモンたちに授ける! あともう少しお願いね!」

¶cリ˘ヮ˚)| 「またね……リトルデーモンたち」

542: 2018/02/28(水) 18:53:36.49 ID:1x5iUMR/
>>534
羽が刺さってないから善子だな

554: 2018/03/02(金) 02:02:47.17 ID:v/DG1cpv
その鏡を見つけたのは、学校の帰り道────なんとなく立ち寄った骨董店。

ビルとビルの間。なぜこのような場所に────と直感的に思ってしまうくらい薄暗い場所に、その店はあった。

外観は魔女の隠れ家と呼ぶにふさわしい、洋風の外観で────明らかに怪しさ満点の、人が一切入っていない、外も中も薄暗い店だった。

だが、私にはそれがとても魅力的だった。堕天使ヨハネである私には、その店が持つ不思議な雰囲気がとても心地よく感じたのだ。

だから、迷わず店に足を踏み入れた。


「いらっしゃい。ようこそ魔法堂へ」


私を迎え入れたのは、漆黒のローブに身を包んだ────それは美女にも老婆に見える、不思議な外見の女性。


「よほど切実な願いを持つと見える」


入った瞬間、ヤバイ店だこれ────と思った。私自身が占いをかじっているだけに、このような文句を唱える相手はだいたい胡散臭く見える。まあ私の占いは本物ですけどね。

しつれいしまーす────と小さく口にし、本当に暗い店内を見回す。店主っぽい人が何やらペンダントやら願いやら色々言っているが気にしない。

特に願いなんてないし、私は怪しい雰囲気を好んだだけで────

555: 2018/03/02(金) 02:04:52.30 ID:v/DG1cpv
「あっ」

目についたのはひとつの鏡だった。装飾がとても綺麗で、薄暗い部屋なのにぼんやりと光を写しているように見える。

不思議な魅力があった。

「その鏡は心を写す魔法の鏡じゃ」

「魔法の鏡?」

「そう。その鏡には特別な魔法がかけられておる────月にかざして願えば、おまえの心が現れよう」

「……それって、どうなるの?」

「それはおまえの心次第────汚れた心であれば、おまえの身を滅ぼそう。だが澄んだ心であれば────ひっひっひ、使ってみてからのお楽しみじゃ」

「ふうん……いいわね、心を写す鏡。いただくわ」

「良いのか? それよりも使い勝手のいい、なんでも願いが叶うペンダントの方が────」

「これがいいの」

「ぐむ……まあ、よいが」

返品は受け付けんぞ────と声高に言う女性を無視しつつ、なぜか惹かれたその鏡を購入した。

そしてその翌朝────私の心が実体として現れたのだ。

556: 2018/03/02(金) 02:06:45.84 ID:v/DG1cpv
・・・


自宅の前にある河川敷。

月明かりで真っ白に輝く川を背に、私は『私の心』と対峙する。

ヨハネ「私の体は魔力で構成されてる────って、前に話したことあったっけ?」

善子「……初めて聞いた」

ヨハネ「そっか……言ってなかったのね、私」

ヨハネ「まあ、そういうわけなの。私はあの鏡────『心を写す鏡』によって生まれた。あの鏡に写った、あなたの心から生まれた魔力を媒体にして、ね」

ヨハネ「もちろんその魔力は無限じゃない。使えば使うほど無くなって、最後には……」

善子「それ、って……もしかして、あんた」

ヨハネ「ええ────私の魔力はもう尽きかけてる」

善子「────」

ヨハネ「……ふふ、隠してたつもりなのに……よく気づいたわね。私はもう……満足に体を動かすこともできないし、食べ物の味も……」


ガシッ

グイッ


ヨハネ「っ……」

善子「っ、ふっ…………あん、た、あんた……なんで……!!」

ヨハネ「……なんで言わなかったのか、って? 言ったところで私にはどうにも出来ない。出来たとしても、何も知らない。製作者を除いて、ね」

557: 2018/03/02(金) 02:07:49.48 ID:v/DG1cpv
善子「そんなっ……そんなのって……」

ヨハネ「だから、どうしようもないの。あとは魔力が尽きるまで、悔いがないように過ごすだけなのよ」

善子「……」

ヨハネ「……言葉も出ない?」

善子「…………」

ヨハネ「大丈夫よ、安心なさい。私がいる限り……いえ、消えるまでに、あなたのことは必ず幸せにしてみせる」

善子「……しあわせ?」

ヨハネ「ええ、そう。これも言ったことなかったわね────私はあなたを幸せにすることが願いなの」

善子「……」

ヨハネ「だから……最後まで、あなたの幸せのために頑張らせて」

善子「……」

ヨハネ「……ね?」

善子「……か」

ヨハネ「え?」

善子「ば~~~~か!!!」

ヨハネ「は!?」

558: 2018/03/02(金) 02:08:18.30 ID:v/DG1cpv
善子「だーれがあんたなんかに幸せにされるかっての! 自分の幸せくらい自分で掴むわ!」

善子「そもそも勝手に私を幸せにして消えようなんて無責任にもほどがあるのよ!」

ヨハネ「じゃ、じゃあどうしろって言うのよ! 私の魔力はもうギリギリなのよ、いつ消えてもおかしくないのよ!」

善子「だったら消えるまでになんとかするわよ!」

ヨハネ「どう、するつもりよ……? あの鏡は────」

善子「製作者なら……なんとか出来るかもしれなんでしょ? なら、またあの店に行けば……」

ヨハネ「……!」

善子「……今から行くわよ、あの店」

ヨハネ「……まじで?」

善子「いついなくなってもおかしくないんでしょ! なら今から急ぐ!」

ヨハネ「で、でも私はもう受け入れて……」

善子「私が納得いかないから行くの! ついてきなさい!」

ヨハネ「…………わかったわよ、どうなっても知らないからね」

善子「……構わないわよ、それくらい」

善子「あんたがいなくなるほうが……嫌だ」

ヨハネ「……善子」

559: 2018/03/02(金) 02:09:22.69 ID:v/DG1cpv
・・・


ガチャッ

チリンチリーン


善子「乗った?」

ヨハネ「乗った……けど、自転車で行く距離なの?」

善子「急ぐためよ!」

ヨハネ「はあ……」

善子「じゃあ出発……ふぬ、っく」グッ

善子「ぬぐっ……くくく……」

善子「……はあ、はあ」

ヨハネ「……1mmすら動いてないんだけど。私がやろうか?」

善子「ちょっと……少し動かしてから飛び乗って」

ヨハネ「……はいはい」

560: 2018/03/02(金) 02:10:13.88 ID:v/DG1cpv
シャーッ


善子「ふぅ、ふう……」

ヨハネ「……ねえ」

善子「なに?」

ヨハネ「……なんでそこまでして、私を助けようとするわけ?」

善子「……じゃあ、あんたはなんで私を幸せにしようとするのよ」

ヨハネ「えっ……質問に質問で返す?」

善子「いいから」

ヨハネ「えっと……そりゃあ、私はあなたの心の写し身よ? 私は、あなたが幸せになりたいって可愛い本心を現実にするために」

善子「ぎゃーー! やめろ、やめなさいこら! そんなこと考えてないし!?///」

ヨハネ「1人が寂しい、自分のノリにばっちり共感してほしいって」

善子「わー!わー!」

ヨハネ「あと……もう1人自分がいれば、って」

善子「っ……」

善子「……そうね、そう言ったのは覚えてる」

ヨハネ「……そしてあなたの心は、寂しさに溢れていた。Aqoursのみんなと一緒にいることに若干の気後れがあって────」

ヨハネ「誰かと一緒にゲームしたり、遊んだり、中二トークをしたい」

ヨハネ「Aqoursのみんなが嫌いなわけじゃない……みんなとももっと仲良くなりたい。色々な気持ちが混ざって、とにかく寂しくて仕方なかった」

ヨハネ「……それが、あの鏡に写ったあなたの心」

ヨハネ「だから、私はあなたが幸せに、笑って暮らせるようにするために生まれた────」

善子「……余計なお世話よ、まったく」

561: 2018/03/02(金) 02:11:08.85 ID:v/DG1cpv
ヨハネ「でも、さっき私のおかげでみんなと仲良くなれたって感謝してくれたじゃない」

善子「わ す れ ろ!!」

`¶cリ´・ω・`)|ショボーン

ヨハネ「でも……嬉しいわ。本当に幸せに出来てるみたいで、安心した」

善子「……けど、あんたが消えたら意味ないから」

ヨハネ「……ありがと」ギュウッ

善子「ひぃっ!? ちょ、ちょっ……!」グラッ

ヨハネ「あっぶないわね!? しがみついてんだからバランスちゃんと保ちなさいよ!」

善子「いきなり抱きつく方が悪いんでしょうが!!」

ヨハネ「いいじゃないそれくらい!」

善子「悪くはないけどタイミングってものが……!」

ヨハネ「えー……でもぉ、いつ消えるか分かんないしぃ……」

善子「くっ……それ、ずるいわよ」

ヨハネ「ふふ、たまにはね」ギュウッ

善子「……ふん」

善子「いい、ヨハネ」

ヨハネ「?」

善子「…………あなたは私が絶対に消えさせない」

ヨハネ「……」

善子「無理でもなんでもいい。なにをやってでも、必ず、絶対にあなたは消えさせない」

善子「……分かったわね。だから、もう消えるなんて言わないで」

ヨハネ「……」

ヨハネ「……」

562: 2018/03/02(金) 02:11:51.36 ID:v/DG1cpv
ヨハネ「……この近くよね」

善子「っとと……」キキーッ

ヨハネ「……」

善子「……確か」

善子「この道沿いに……」

善子「ちょっと入り組んだ、ところに」

善子「──────あった」

善子「……ここ、よね」

ヨハネ「そうね、間違いないわ────ここがあの鏡の製作者の店」

ヨハネ「……魔法堂」

善子「……いきましょう」

ヨハネ「……こんな時間に空いてるの?」

善子「叩き起こすわよ、急いでるんだから」


コンコン

ギィィ…


善子「……空いてる」

「いらっしゃい」

善子「!」

563: 2018/03/02(金) 02:13:41.35 ID:v/DG1cpv
「────ひっひ、ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」

善子「……前に一度、来たことがあります。覚えてますか?」

「おお? おぉおぉ、おまえは……ひっひ、どうやらあの鏡を使ったようじゃな」

ヨハネ「……」

善子「……なら、分かりますよね」

「ああ、わかるとも。そこの写し身の魔力が切れかかってる────それをなんとかしろ、といいたいんじゃろ?」

善子「! そう、そうなんです! 製作者のあなたなら、それができるかもって────」

「無理じゃな」

善子「えっ……」

ヨハネ「……」

「あの鏡に込めた魔力は一回ぶん。あくまで一度きりの使い切りじゃ」

「確かに鏡に新たに魔力を込めることはできる────が、それとは別に改めておまえの心を写す必要がある」

善子「そ、れって……じゃあ」

「うむ……おまえの隣にいる影は、必ず消える。その後、また鏡で分身を生み出したとして────いまのそれとは別人じゃ。限りなく同一人物に近い、な」

善子「────」

ヨハネ「善子……」

善子「……」フラッ

ヨハネ「善子!」ガシッ

善子「……なんで、なんでなの……?」

ヨハネ「……」

「すまんが、わしにはどうもしてやれん。それの魔力から見て……およそ3日間くらいじゃろう。残る時間を楽しく過ごすことじゃな」

ヨハネ「……善子、帰りましょ」

善子「ま……待って、待って……」

564: 2018/03/02(金) 02:15:09.42 ID:v/DG1cpv
「……」

善子「わたしは……まだ、まだヨハネと一緒にいたいの……! もっとゲームもしたい、ごはんも食べたい、出かけたり、ダンスしたり……」

善子「たとえ、それが自分の心の写し身だとしても……私が欲しかった、大切な……ものだから」

善子「もう、この子は私の家族なのよ……! 一緒に起きて、ご飯食べて……遊んで……喋って……」

善子「ねえ、お願い! なんでもするから、必要なら私の命だって差し出すから、私からヨハネを奪わないで……っ!」

ヨハネ「……善子、もうやめて」

「……おまえの気持ちはわかった」

善子「じゃあ……!」

「それでもな……可能なことと不可能なことはあるんじゃ。おまえの命をもらったところで……それを今のままこの世界にとどめることは出来ん」

善子「なんでよ! あなたは、あなたは魔法が使えるんでしょ?!」

「────先を口にするでない」

善子「っ……」

「すまんな……わしの正体は気づいているんじゃろうが、口にはせんでくれ。事情があるんじゃ」

善子「……」

565: 2018/03/02(金) 02:16:17.43 ID:v/DG1cpv
「ヨハネ……と言ったな」

ヨハネ「……はい」

「おまえは、その娘の望んだ通りのことをしてやれたか?」

ヨハネ「……はい、できる限りのこと尽くしました」

「……消えることに悔いはないか?」

ヨハネ「……それは」

ヨハネ「……」

善子「……」

ヨハネ「それは………………」

ヨハネ「……………………悔いは、ありません」

善子「……ヨハネ、あんた」

ヨハネ「ですが」

善子「!」

ヨハネ「まだ……善子と、一緒にいたいです。まだ、消えたくない……です」

善子「……ヨハネ」

ヨハネ「まだ、まだ善子といたい。それに……私自身にも、友達ができたから」

「そうか、そうかそうか……」

566: 2018/03/02(金) 02:18:01.78 ID:v/DG1cpv
「……参ったのう。だから売りたくなかったんじゃ、あの鏡は」

「よかろう、わしには無理だが……おまえならばできるじゃろう」

善子「え……?」

「そやつの肉体は魔力で出来ているとは、聞いたな」

善子「……はい」

「わしには……そやつの身体に魔力を補充してやることはできん。だが小娘。おまえならば出来る」

善子「えっ……?」

「……分かっとらんのか」

善子「え、えっと……」

「……あの鏡は、おまえの心を写しそれを実体化させる。あの道具に込められた魔力はそこまでじゃ」

「それの肉体を形作るのは、おまえの心から溢れた魔力を媒体にしておる。つまりはおまえの生命力というやつじゃな」

善子「……ってことは」

「うむ……小娘。おまえの血を飲ませることで、それの魔力が補充できる」

善子「!!」

ヨハネ「……っ」

善子「じゃあ……そうしたら、ヨハネは消えなくて済むの……?」

「……いや、それでもせいぜい期間を伸ばすだけじゃな」

善子「伸ばすだけ……」

567: 2018/03/02(金) 02:19:33.32 ID:v/DG1cpv
「いくら血液が潤沢な魔力源とはいえ────全身が魔力の塊であるそやつにとっては腹の足し程度にしかならん」

「消費に供給が追いつかず、いずれ必ず魔力が枯渇して消える」

善子「……」

「血液が嫌ならばキスでも構わんぞ? 粘膜接触で魔力の受け渡しもできる」

「だが気を抜くと吸われすぎて死ぬかもなぁ? ひっひっひ」

ヨハネ「もうやめてください」

「ふむ。わしにしてやれるのは今のアドバイスだけじゃ。あとはおまえたちで考え、行動するのみ」

「また用があれば来るといい、わしはずっとここで店をやっておる」

善子「……」ヨロッ

ヨハネ「……」ギュウッ

ヨハネ「帰ろ……善子」

善子「……」


ガチャッ

ギィィ…


「今度来た時はなんか買ってくれ、魔法のペンダントとかな」


バタン

568: 2018/03/02(金) 02:21:14.65 ID:v/DG1cpv
・・・

ヨハネ「ほら、しっかり歩いて……自転車持ってるんだから」

善子「…………ねえ、ヨハネ」

ヨハネ「……なに?」

善子「……血を、飲ませたら……」

ヨハネ「……だめよ、それはだめ。ほら、帰りましょ……帰って明日に備えて寝ないと」

善子「じゃあ、じゃあ……キス、したらいいんでしょ? そしたらあなたは、まだ一緒に……」

ヨハネ「善子……落ち着いて、まって、だめよ!」

善子「だって、だって……っく、ぅぅうう……っ」

ヨハネ「……大丈夫、大丈夫よ。私はまだ消えないから……一緒だから、ね?」ギュウッ ナデナデ

善子「うぅ、っ……く、ぅぅう……っ」ギュウッ

ヨハネ「……よしよし、ごめんね、ずっと心配かけて」

善子「よ、はねっ……ぅぅ、ぅぁあっ……」

ヨハネ「……うん、帰りましょう。私たちの家に」

603: 2018/03/05(月) 02:27:59.45 ID:RgnmepIt
`¶cリ˘ヮ˚)|「大きな声でピリカピリララ」

609: 2018/03/05(月) 21:32:43.29 ID:RgnmepIt
~善子の部屋~


善子「……」

ヨハネ「寝ましょう、善子。今日も学校でしょ? 早く寝て明日に備えないと」

善子「……寝ない」

ヨハネ「……寝ないって、どうしてよ」

善子「寝てる間に……あんたが消えたら嫌……でしょ」

ヨハネ「大丈夫よ……寝てる間は魔力の消費も少ないわ」

善子「でも、何があるかわからないじゃない……」

ヨハネ「善子……」

善子「……ねえ、お願いだから……血、飲んでよ」

ヨハネ「……それはだめよ。私はあなたを傷つけたくない」

善子「あなたが消える方が嫌なのよ……! その方が、よっぽど傷つく……」

善子「……キスでも、なんでもいいから……ねえ、ヨハネ……」グッ

ヨハネ「だ、だめっ! そんなこと、したら……善子の体が!」

善子「私はっ!!」

善子「わたしは……じゃあ、どうしたら……」

ヨハネ「私は大丈夫……善子が、私を想ってくれるだけで……生きていけるから」

610: 2018/03/05(月) 21:33:42.35 ID:RgnmepIt
善子「ぐすっ……ぅぅぅ……」ギュウッ

ヨハネ「……よしよし」

善子「っ、う……」

善子「…………ぐす……」

善子「……ぅ…………」

善子「…………………………」

善子「……すぅ……すぅ……」

ヨハネ「……」ナデナデ

ヨハネ「……ごめんね、善子。私があなたから魔力を吸うと────きっと〇してしまう」

ヨハネ「……死ぬ直前の猫ってこんな気持ちなのかしら」

ヨハネ「死ぬときにいなくなるのは────飼い主が自分の死ぬ姿を見て、泣くのが嫌だから」

ヨハネ「それなら……先にいなくなってしまえば、いつ死んだのか分からなくなる」

ヨハネ「死に目を知らない方が……幸せだろう、って」

ヨハネ「…………善子に言わせたら、余計なお世話ってもんでしょうけどね」

ヨハネ「…………いなくなろうにも、こんなにしがみつかれたらねぇ」

善子「すぅ……すぅ……」ギュウウゥゥ

ヨハネ「……背骨折れるっての」

611: 2018/03/05(月) 21:34:13.76 ID:RgnmepIt
~翌朝~


チュンチュン…チチチチ

善子「っん……」モゾモゾ

善子「……………………」ポケー…

善子「────!!」ガバッ

善子「……ヨハネ」

善子「ヨハネ! どこ!」バッ


バタバタバタ

ガチャッ

バタン!


善子「ヨハネ……ヨハネ!」


ガチャッ


ヨハネ「……」

善子「…………いた」

ヨハネ「……早く閉めて」


※トイレ

612: 2018/03/05(月) 21:35:50.08 ID:RgnmepIt
~通学路~


善子「ちゃんといる?」

ヨハネ「いるいる」

善子「……」ギュー

ヨハネ「もう……」

善子「……いなくなったら怒るわよ」

ヨハネ「分かってる……大丈夫、だからこうやって空も飛ばずに歩いてるんでしょ?」

善子「……」

『おはよー!』

善子「!」

曜「やっほ!」

善子「……曜センパイか」

曜「そんな言い方あんまりじゃないかなー」

善子「えっと……ご、ごめんなさい」

ヨハネ「おはよう、曜センパイ」

曜「あ、うん────」

ヨハネ「?」

曜「……あ、ヨハネちゃん!」

ヨハネ「毎日会ってるのに忘れる!?」

曜「いや~……あはは! ちょっとしたジョークだよジョーク!」

ヨハネ「ったく……」

613: 2018/03/05(月) 21:36:34.82 ID:RgnmepIt
曜「……それで、善子ちゃんはどうしたの?」

善子「……」ムギュー

ヨハネ「……えっと、さびしんぼ?」

善子「ちがわい!」

曜「あはは、そうやってるとお姉ちゃん大好きな妹みたいだね」

善子「……」

曜「あ、あれー……? いつもなら怒るところじゃ……」

ヨハネ「……センパイ、今は、ちょっと」

曜「う、うん……ごめん」

曜「……なんかあったの?」ボソボソ

ヨハネ「……多分、そのうちみんなにも話すと思うから」ボソボソ

曜「……分かった。私でよければ力になるよ」ボソボソ

ヨハネ「……ありがと」ボソボソ

善子「……」ギュウ…

曜「……」

ヨハネ「センパイこそどうしたの? 変な顔してるけど」

曜「うーん……なんか頭がムズムズするっていうか……」

ヨハネ「はあ……」

曜「ちゃんと寝たはずなんだけどなー……」

614: 2018/03/05(月) 21:37:19.34 ID:RgnmepIt
~学校~

善子『いる?』

ヨハネ『……いるいる』


~昼休み・屋上~

善子「ちゃんと食べて」

ヨハネ「えー……」

善子「食事で少しは魔力が取れるんでしょ?」

ヨハネ「ほんの少しよ……」

善子「少しでも取れるなら……食べて」

ヨハネ「はいはい……」

るびまる『……』

善子「パンとかもあるから」

ルビィ「……朝からどうしたんだろう」

花丸「……うん」


~放課後~

善子「……」

ヨハネ「……みんなに話さなくてよかったの?」

善子「話したって……誰にも、どうにも出来ないもの」

善子「……やっぱり私の」

ヨハネ「だめ」

善子「……」

ヨハネ「こんなに元気な奴がすぐ死ぬわけないでしょ!」

善子「……」

ヨハネ「…………はー」

615: 2018/03/05(月) 21:38:18.56 ID:RgnmepIt
~夜中~


善子「すぅ……すぅ……」ギュー

ヨハネ「……」ナデナデ

ヨハネ「……」


pipipi...


ヨハネ「!」

ヨハネ「……」


【曜センパイ】


ヨハネ「……」

ヨハネ「……行ってくるわね、善子」ポンポン

善子「ん……すぅ……」

616: 2018/03/05(月) 21:40:24.92 ID:RgnmepIt
・・・

ヨハネ「えっと……」

曜「あ、こっちこっちー」

ヨハネ「曜センパイ────と、リーダーとリリー!?」

千歌「やっほー! …………ヨハネちゃん!」

梨子「こんばんは、……うん、ヨハネちゃん」

ヨハネ「……なんで、3人とも」

曜「私が呼びました!」

千歌「ほら、これ!」


【LINE:Aqours二年部】

YOU:集合だ諸君!

チカ:ほえー?

桜内梨子:どうしたの?

【グループ通話が開始されました】


千歌「……って感じで」

ヨハネ「ほぼグル通じゃないの」

千歌「えへー」

617: 2018/03/05(月) 21:41:32.78 ID:RgnmepIt
曜「とりあえず……ヨハネ、ちゃん」

ヨハネ「……はい」

曜「ヨハネちゃんに……今、何か大変なことが起こってる……よね?」

ヨハネ「……」

曜「きっと善子ちゃんに聞いても答えてくれないと思ってさ」

曜「だからヨハネちゃんだけを呼び出したんだけど……正直に聞かせてほしいんだ」

千歌「曜ちゃんから、朝の話は聞いてるよ。あと……私たちも思うことはあるから」

梨子「……うん」

ヨハネ「……気遣ってくれてありがとう」

ヨハネ「正直に言うわ────」

618: 2018/03/05(月) 21:43:52.60 ID:RgnmepIt
・・・


千歌「────」

梨子「────」

曜「…………」

ヨハネ「…………センパイたちもなんかあるんでしょ、私に言いたいこと。だいたい分かるけど」

曜「…………」

ヨハネ「当てようか?」

千歌「────いや」

曜「ちゃんと言うよ」

梨子「……」

曜「……ヨハネちゃん」

曜「私は…………」


曜「……私たちは、あなたのことを忘れはじめてる」


ヨハネ「────」

曜「……千歌ちゃんと梨子ちゃんにも聞いたから、間違いないと思う」

曜「それで……いま、その話を聞いて確信した」

ヨハネ「私が消えかかってる……だから、あなたたち忘れかけてる────」

梨子「……よはねちゃん」

619: 2018/03/05(月) 21:46:32.79 ID:RgnmepIt
ヨハネ「……うん、知ってたわ。私はあの子の心……だから、存在が希薄になれば……記憶からも消える」

ヨハネ「そして彼女の心に戻って────全て元通り。すべてが無かったことになる」

ヨハネ「……まあ、私も消えた時点で何もかも無くなるんだから仕方ない」

ヨハネ「どうせ私が覚えていられないんだから、みんなだって忘れた方が────」


ガバッ


ヨハネ「っ……ちょっと、3人して、なによ」

千歌「そんな、泣きそうな顔で……っ」

梨子「そんな泣きそうなこと言わないで……!」

曜「……」

ヨハネ「でも……その、悲しいのだって、そのうち忘れる」

ヨハネ「私が消えたら全て忘れて、無かったことになるわよ」

曜「そんなこと言わないでよ!」

ヨハネ「……」

曜「私たちは……忘れたくないから、今ここにきてるんだよ!」

ヨハネ「っ……」

梨子「……あなたは、善子ちゃんが大切なんでしょう? 何よりも大切で……何よりも大事で……」

ヨハネ「……そうね」

620: 2018/03/05(月) 21:47:38.67 ID:RgnmepIt
梨子「善子ちゃんもあなたが大切で……とても大事で」

梨子「でもね……私たちだって、あなたが大切なんだよ? 善子ちゃんの分身だから、とかじゃない」

梨子「あなたは……私たちの大切な友達で、仲間なんだよ。だから……忘れたくないの」

千歌「消えてほしくないんだよ、私たちだって!」

千歌「だから……だからね、私たち、忘れないようにいっぱい思い出そうって、決めたんだよ……」

千歌「……あなたのこと、今でも忘れそうになってる……これが、嫌だから……」

千歌「……ねえ、名前……何回でも教えて……?」

曜「その度に、覚えるから……だから……」

ヨハネ「……」

ヨハネ「……ふふ」

621: 2018/03/05(月) 21:48:41.53 ID:RgnmepIt
ヨハネ「仕方がないわね、我がリトルデーモンたち!」

ヨハネ「我はヨハネ! 黒より黒く、深き漆黒の闇より生まれし神!」

ヨハネ「さあ胸にしかと刻むがいい、この堕天使ヨハネの名を!」

曜「……うん! 覚える、何回だって!」

千歌「……ふふ、善子ちゃんが毎日言ってるはずなのに、なんで……なんでこんなに、初めて聞いたような気分になるんだろう……」

梨子「……ヨハネちゃん、ヨハネ……よはねちゃん……」

ヨハネ「……ありがとね、センパイたち」

曜「私たちこそ……ごめん」

ヨハネ「いいのよ……きっと3年生たちも同じなんでしょうね」

曜「たぶんね……」

梨子「……たぶん、忘れかけてることすら気づいてないと思う……まだ」

千歌「私たちも言われるまで気づかなかったからなぁ……」

ヨハネ「……そうなのね」

曜「……お願いだから、勝手に消えないでね」

ヨハネ「お願いされたわ。何も言わずに消えたりしない」

622: 2018/03/05(月) 21:49:28.00 ID:RgnmepIt
千歌「……そろそろ帰らないとやばいね」

梨子「あはは……そうだね」

曜「2人は内浦からだもんね……」

千歌「よーちゃんはいいよねー? 善子ちゃんちと近いしー」

梨子「今度は5人でお泊まり会、しないとね」

千歌「ほんとだ! 善子シェフのご飯食べないと! ルビィちゃんから聞いたやつ!」

ヨハネ「仕方ないわね……その時まで忘れないでよ、私のこと」

千歌「そっちこそ消えないでよ!!」

曜「消えたらぶっとばすよ!」

梨子「怒るからねっ!」

ヨハネ「はいはい……ほら、早く帰った帰った」

ようちかりこ『またねー!ヨハネちゃーん!』

ヨハネ「……」フリフリ

ヨハネ「……」

ヨハネ「…………」

ヨハネ「はぁ…………」

ヨハネ「……」

623: 2018/03/05(月) 21:51:00.31 ID:RgnmepIt
pi

ガシャコン


ヨハネ「……」パキッ

ヨハネ「ごく……んく、んくっ……」

ヨハネ「……はー」

ヨハネ「……」グッ

ヨハネ「……」スゥー…

ヨハネ(力を抜いたら、消え掛ける…………か)

ヨハネ「……」

ヨハネ「……センパイたちも、余計なことしてくれたわね」

ヨハネ「……尚更消えるの、嫌になったじゃん……」

ヨハネ「…………くそ、っ……」

ヨハネ「みんなに、迷惑かけて……私は……っ」

ヨハネ「私はどうしたら……」


どうしたら、みんなとずっと一緒にいられるの?


この願いは叶わないの?


神様────

625: 2018/03/05(月) 22:03:03.39 ID:RgnmepIt
ヨハネ「…………恩返し、しないと」

私はみんなから色々なものをもらった。

両親からは家族を。

ルビィと花丸からは友達を。

マリーからは仲直りの法則を。

生徒会長からは慈愛を。

果南センパイからは不器用な優しさを。

曜センパイ、リーダー、リリーからは────忘れたくないって言葉を。

そして────善子には、私という存在を。

だから私は……みんなにたくさんお返ししなくちゃいけない。

みんなのくれたものに見合うだけのものを。

でも、私にはどうしていいか分からない。

分からないから────

626: 2018/03/05(月) 22:12:22.38 ID:RgnmepIt
善子「────この手紙を残します」


朝起きたら、ヨハネはいなくなっていた。

私が慌てて学校に来ると、部室の机に一枚の封筒────

そして、ヨハネが着ていたはずの────

私が貸していた衣服が、パイプ椅子の周りに散らばっていた。


善子「手紙なんて書いて、いなくなったの……あいつは」


【Aqoursへ】とだけ書かれた封筒。

それは……手紙。

ヨハネから、みんなへ向けての手紙。


善子「……みんな、いい?」

千歌「うん……」

ダイヤ「……構いません。事情は昨晩のうちに曜さんから伺っています」

善子「………………」

627: 2018/03/05(月) 22:14:33.55 ID:RgnmepIt
花丸。
あなたと食べた肉まん、とっても美味しかったわね。
あの日の肉まんみたいに優しくて、暖かいあなたの笑顔にいつも元気をもらったわ。

花丸「うふふ……それじゃまるで……まるが肉まんみたいだよ、もう……」


ルビィ。
あなたが私をいつも慕ってくれたのは、とても嬉しかったし楽しかったわ。
これからは、たまには善子をそう呼んであげて。

ルビィ「ぐす、ぅ……ぅう……よはね、さま……っ」

628: 2018/03/05(月) 22:15:08.03 ID:RgnmepIt
リーダー。
私がみんなに溶け込めるように計らってくれたわね。あなたが居てくれなかったら、どうなってたのかわからないかも。
これからもAqoursのリーダー、頑張ってね。

千歌「……ぅん、ぅ……ん……っ」


曜センパイ。
忘れたくないって言ってくれてありがとう。
家が近くだなんて最近まで知らなかったわ、また善子を遊びに誘ってあげてほしい。
私も一緒に遊びたかったけど、仕方ないわね。

曜「……わ、かったよ……っ! ぜったい、さそうから……!」


リリー。
あなたのピアノには、いつも感動をもらったわ。
きっとあなたの作る曲なら、ラブライブにだって優勝できる。自信を持って。

梨子「っ……ぐす、ぅう……」

629: 2018/03/05(月) 22:16:37.11 ID:RgnmepIt
生徒会長。
あなたとはもっとたくさん話がしたかった。
母のような厳しくも優しい愛で、みんなを守ってあげて。

ダイヤ「…………とうぜん、です」


果南センパイ。
あの魚、全部食べられなくてごめんなさい。
今更なんだけど。
ハグ、してみたかったわ。

果南「なんだ……そんなの、言えばよかったのに……ふ、ふふ」


マリー。
喧嘩をした時、泊めてくれて助かったわ。
そして仲直りさせてくれたことも。
あなたの明るさでみんなを守ってあげて、私のお姉ちゃん。

鞠莉「ぐすっ……あ、ぅうっ……」

630: 2018/03/05(月) 22:19:29.20 ID:RgnmepIt
そして……善子。
あなたは私のすべて、私の存在理由だったわ。
善子が幸せに、笑顔になれるようにするのが私の役目で、願いだった。
ねえ……私、ちゃんとあなたを幸せに、笑顔にできたよね?

ふふ、言いたいことは尽きないけど……ひとつだけ。

ありがとう。

愛しているわ。
大切なAqoursのみんな。
心からありがとう。

津島ヨハネより。

善子「……ヨハネ」

善子「…………私も愛してるわ」

善子「ぐっ……ぅ、ぅ…………う゛ぅぅっ……っ」

善子「ぅわぁぁあああああっ……ぁぁぁぁあっ……」ボロボロ


第7話・完

631: 2018/03/05(月) 22:20:34.55 ID:RgnmepIt
¶cリ˘ヮ˚)|「……」

¶cリ˘ - ˘)| 「……きょうは、ここまで」

707: 2018/03/13(火) 02:13:23.74 ID:bMdf/RZ5
浦の星女学院。

午前7時00分。

月曜日。

「ワン!ツー!スリー!フォー!ワン!ツー!スリー!フォー!」

センパイの掛け声と手拍子でリズムを取りながらの振り付けの練習も、すっかり慣れた。

ところどころで指摘されるミスも、可能な限り修正できるくらいには……ダンスもうまくなったと思う。

授業は、まあ……適当にしてるけど。

花丸やルビィとは、休日はよく遊ぶようになった。

私の家に呼んだり、2人の家に行ったり、どこかへ遠出したり。

たまに2年、3年の先輩たちに連れられて出かけたり。

これは────俗に言う充実した日々というものではないだろうか。

708: 2018/03/13(火) 02:13:59.96 ID:bMdf/RZ5
部活に励み────

優しい先輩たちがいて────

いつも一緒に行動する大切な友達がいる────

これ以上ないってくらい、私はいま充実している。

彼氏は特にいないけど……毎日が、とても楽しい。

苦労も当然あるけど、それがどうした!って言えちゃうくらい、私は楽しいのだ。

そう、私はいま、幸せな毎日を過ごしている。

はずなのに────

善子「……はぁ」

ルビィ「ため息なんてついてどうしたの?」

善子「えっ……あ、私ため息ついてた?」

ルビィ「うん、ばっちり」

善子「そ、そう? 疲れてるのかな……」

花丸「んー……そんなことはないと思うずら」

善子「え?」

709: 2018/03/13(火) 02:14:47.11 ID:bMdf/RZ5
花丸「だって善子ちゃん、ここ1ヶ月くらいずっとそんな感じずら」

善子「……えっ」

ルビィ「あ、うんうん! 何か物足りなさそう……っていうか」

ルビィ「いつも窓の外を眺めてため息……って感じだよね」

善子「……いやいや、何で私がそんな」

善子「だって……いま、私すごく楽しいのよ? 部活も学校も楽しいし」

ルビィ「引きこもってたとは思えないくらいだね~……」

善子「う、うるさい! 今までの時間が惜しく感じるくらい、いますごく楽しいってことよ!」

ルビィ「むーん……」

花丸「それなら、まるは何も言わないけど……」

善子「大丈夫よ! どーせ次のテストが近いからだって」

ルビィ「あ゛っ……てすと……」

花丸「……2人とも、ちゃんと勉強してるよね?」

善子「してるわよもちろん! ね、ルビィ」

ルビィ「……ソウダネー」

花丸「……ルビィちゃん?」

ルビィ「チャントシテルヨー」

花丸「ふーん……」

710: 2018/03/13(火) 02:16:03.82 ID:bMdf/RZ5
ルビィ「そ、それより善子ちゃん!」

善子「だからヨハネ!」

ルビィ「……ヨハネ様! 春休みにね、ちょっとお出かけしたいなってまるちゃんと話してたんだけど……どうかな?」

善子「ふ……よかろう、来たる聖戦が終わり次第、そなたたちの旅の門出を祝おうではないかっ!」

花丸「善子ちゃんも行くんだよー」

善子「わかってるっ! どこいくの?」

ルビィ「んー……まだよく考えてないけど、大阪とか東京とか、結構遠くに旅行に行きたいなって!」

花丸「おおさか! 美味しいものいっぱいずら~!」

善子「いいわね、大阪! 日本一の高層ビル『あべのハルカス』に『通天閣』、『大阪城』そしてグリコの看板!」

花丸「ずら~! 串かつ、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き……」

ルビィ「明石焼きは明石だよまるちゃん」

花丸「ずらっ!?」

善子「確かにずらまるの言う通り、食べ物は魅力的ね……」

ルビィ「ヨハネ様の料理好きが唸りますか!」

善子「別にそんなんじゃないわよ! ……ただ、ヨハネも喜ぶと思って」

ルビィ「ヨハネ様も!」

花丸「あ、そうだね。ヨハネちゃんも一緒に……って」

ルビィ「あれ……ヨハネ?」

花丸「あれ……なんで……いま、まる」

善子「私でしょヨハネ!! ……って」


なんで私たち────

ヨハネが他にいる、みたいな言い方をしたの?

711: 2018/03/13(火) 02:18:30.77 ID:bMdf/RZ5
ルビィ「こ、これはもしかしていつの間にかルビィたちはヨハネ様の魔法にかかってしまって……!」

花丸「いやいやルビィちゃん……ついに善子ちゃんの自分の中にもう1人の人格が……」

ルビィ「もうひとりのぼく!」

花丸「あいぼう!」

るびまる『でゅえる!』

ルビィ「ぼくのたーん!」

花丸「それはどうかな!」

善子「違うわ! 二重人格なんかじゃないから!」

善子「あ、あれよ……ほら、私は私、で……本来のヨハネとしての自分が存在するから、そんなちょっとこう、あれな言い方でね、うん」

花丸「ふーん……」

ルビィ「もうひとりのぼくじゃないんだ……」

花丸「がっかりずら」

ルビィ「ねー」

善子「勝手に期待して勝手に落ち込むなっ!」


キーンコーン


花丸「あ、チャイム」

ルビィ「じゃあ行き先考えようよ! あとで4人……じゃないや、3人で!」

花丸「あれれ? ルビィちゃん、また……」

ルビィ「ち、ちがうよ! 今のは本当に間違えただけなのっ!」

善子「はいはい、いいからさっさと席について……」

善子「…………」グッ パッ


そう────私は今、とても充実した、幸せな毎日を過ごしている。

過ごしているのに────どうして?

胸にぽっかりと穴が空いたような────得体の知れない虚無感があるのは。

712: 2018/03/13(火) 02:19:26.12 ID:bMdf/RZ5
~善子の家~


善子「ただいま」

善子「……」

いつも通りの家。

帰っても誰もいない、日常通りの家。

こんなこと、もうずっとだから慣れている。

母は学校の先生で帰りが遅く、父は出張が多くて家にあまり帰らない。

もう慣れっこだ。

慣れっこのはずなのに────やっぱり、違和感がある。

なぜか、ひとりで『ただいま』を言うのがとてつもなく寂しいのだ。

それは────つい最近まで、誰かと一緒に『ただいま』を言っていたのでは、と思ってしまうくらいに。

どうしてだろう────

善子「まぁ……考えてもわかんないんだけどね」

713: 2018/03/13(火) 02:20:07.32 ID:bMdf/RZ5
部屋に入ってすぐ、私はいつものようにカバンを投げ捨てながらゲームの電源を入れる。

適当なソフトを入れて、おなかが空くまでやりっぱなし。

それが、家に帰ってからの私の日常。私の毎日の楽しみなのだ。

善子「……っはーー!」

善子「怒首領蜂……久しぶりにやると腕が鈍ってるのがよくわかるわ……」

善子「ちょっと気晴らしに別のゲーム………………ん?」ゴソゴソ

善子「……こんなゲームいつ買ったんだろ」

善子(ソロプレイヤーの私が、なんで2人プレイ前提のゲームを買ってるの……? 誰かが来たときに遊べるように……?)

善子(…………いれてみるか)


カシャ

ウィーン…


善子「……買った記憶は、ある」

善子「けど、なんで買ったんだっけ……」

善子「あ、セーブデータ…………2個ある?」

そのゲームに記録されていたセーブデータは2つ────データ名は『善子』と『ヨハネ』

714: 2018/03/13(火) 02:20:36.32 ID:bMdf/RZ5
善子「……なんで?」

善子「意味わかんないわね……他のにしましょう」ゴソゴソ


ガサガサ


善子「…………えっ」

善子「これも……これも」

善子「…………なんでいつの間にか私がやるはずないゲームがこんなにあるの?」

善子「誰かが……ううん、違う」

買った記憶はある────わたしが、誰かと買った、はず。

なのに、誰と買ったのかが思い出せない。

なんのために────って、それは遊ぶためなんだけど。

なんで私は、2人プレイ前提のゲームをこんなに買っているの……?

善子「……おかしい、わよね」

善子「もしかして……ここ最近の違和感も、ときどき無意識に口にする『ヨハネ』の存在も……」

善子「……まさか」

715: 2018/03/13(火) 02:21:56.32 ID:bMdf/RZ5
・・・


善子「つい最近まで自分の他に、誰かもうひとり隣にいたような気がするんだけど……」

善子「……どう思う?」

花丸『……ついに善子ちゃんの中二病が次のレベルに移行したずら』

善子「違うわい!」

善子「……あんたにしか相談できなさそうなのよ、こういうこと」

花丸『うん……分かってるよ。まるが霊感っていうか……ちょっとだけ感じることができるから、頼って電話してくれたんだよね?』

善子「……ここ最近、なにか違和感はない?」

花丸『違和感……って、やっぱり善子ちゃん』

善子「ん?」

花丸『ときどき出てくる……「別のヨハネちゃん」と関係あるのかな?』

善子「…………多分ね」

716: 2018/03/13(火) 02:22:34.08 ID:bMdf/RZ5
善子「今日見つけたんだけど……家に2人プレイ前提のゲームがたくさんあったの」

花丸『ふたりぷれい?』

善子「そう……私はソロプレイがメインなの。だから2人プレイのゲームはほとんど買わない」

善子「なのに家にそれがいっぱいあって────しかも、なぜか買った記憶はあるのよ。どうして買ったのかは思い出せないのに」

花丸『……』

花丸『……おらもね』

善子「?」

花丸『ときどき……善子ちゃんから感じる気配に……何か物足りなさを感じることがあるずら』

善子「私の気配……?」

花丸『うん……おらも善子ちゃんと同じようになにか違和感があるの』

花丸『何かおかしい……何か忘れてる……みたいな』

花丸『まるで夢を見ていたのに……起きたら、その夢を忘れてしまうような』

善子「……夢」

花丸『うん……夢』

花丸『おらもね、ちゃんと理解してるわけじゃないんだ』

花丸『でも……この心に、もやもやがかかってるのは……Aqoursのみんながそう感じているはずずら』

花丸『それが一番大きいのは、もちろん善子ちゃんだと思うけど……』

善子「……わかった」

善子「心当たりがある……とかじゃないけど」

善子「みんなも同じ風に感じているなら……やっぱり、何かあったはずよね」

善子「……『記憶にない思い出』が」

717: 2018/03/13(火) 02:23:27.31 ID:bMdf/RZ5
¶cリ˘ヮ˚)|「今日はここまでよ」

¶cリ˘ヮ˚)|「全然進められなくてごめんね」

¶cリ˘ヮ˚)|「少ないながらも、我が魔力で凌いでちょうだい」

730: 2018/03/14(水) 00:47:47.60 ID:I7Gwg8wG
~翌日・学校~


昨日の電話を切った後、もう少し部屋を探してみた。

ゲームはあれ以上見つかりはしなかったけどひとつ、見つかったものがある。

それは────


千歌「おはよー善子ちゃーん!」

曜「ヨーソロー!」

梨子「おはよう善子ちゃん」

善子「ああ……おはようセンパイたち」

千歌「今日はひとりなのー?」

曜「ほんとだ、久しぶりな気がするね」

梨子「そういえば、そうかも」

善子「いやいや……いつもひとりじゃない、私。一緒に来るとしても、たまに曜センパイと会うくらいで────」

千歌「いや、そうじゃなくてヨハネちゃん────」

善子「!」

731: 2018/03/14(水) 00:48:17.67 ID:I7Gwg8wG
曜「……あれ?」

千歌「……わたし何言ってんだろ!?」

梨子「わたしも……あれ、なんかおかしいね、あはは……」

曜「なんか、いつも誰かいた気が……うーん」

千歌「……善子ちゃんなんか変だよ!」

善子「────大丈夫よ、リーダー。リーダーの頭は正常よ」

千歌「すっごく失礼じゃないかな!」

善子「私が必ず見つけるから……大丈夫よ」

千歌「……??」

曜「あれ、善子ちゃんそんな鏡持ってたっけ」

梨子「わあ、可愛いね。丸い手鏡?」

千歌「ほんとだ! カバンのデビル人形のとなりに鏡が!」

善子「ああ、これ────」

善子「たぶん手がかりよ、今みんなの胸にある違和感を解決するための」

梨子「……?」

732: 2018/03/14(水) 00:49:50.74 ID:I7Gwg8wG
・・・


丸い鏡────

これは────私が買った。明確に覚えてる、これは私が買った……とても大切なものだ。

どうして大切なのか────その思い出はやっぱり、私の中には無い。

けれど感じる……私にとってこの鏡は、掛け替えのないほどに大切な思い出。

わざわざ綺麗な箱に入れて隠してあったんだから……これを隠した私は、よっぽど大切だったに違いない。

善子「……」

光に翳すと、鏡面が怪しく輝く。

────この輝きを覚えている。

全てを吸い込んでしまいそうなほどに美しい輝きを放つこの鏡を、私は覚えている。

よくわからない店で買ったこの鏡を月の光にかざした夜から。

その夜以降の記憶が曖昧になっていた。

だからこそ、私は確信している────

733: 2018/03/14(水) 00:50:23.41 ID:I7Gwg8wG
善子「やっぱりこの鏡が鍵を……」

ルビィ「あ、その鏡!」

善子「ん……ルビィ? おはよ」

ルビィ「おはよ~」

ルビィ「それ、前に見せてくれた鏡だよね! 光に当てたらキラキラするやつ」

善子「ああ、そうそう……よく覚えてたわね」

ルビィ「覚えてるよ~! 買った日からずっと大事そうに持ってたのに、いきなり見なくなっちゃったから、失くしたのかと思ってたよ」

善子「失くしたりしないわよ、部屋に置いてただけ」

ルビィ「どうして?」

善子「……大切だからね」

ルビィ「そっかー……」

734: 2018/03/14(水) 00:50:58.92 ID:I7Gwg8wG
善子「ねえ、ルビィ」

ルビィ「?」

善子「私……この鏡、どこで買ったかって話した?」

ルビィ「んーん……学校の帰りに骨董店見つけて、そこで買ったって聞いたくらいだよ」

善子「骨董店……わかった、ありがとう」

ルビィ「? うんっ」

骨董店────そうだ、確かに古い店で買った覚えがある。

だけど外観は、場所は、名前は……何も覚えていない。

やっぱりこの鏡は……私たちの『思い出』に繋がる重要な手がかり。

あとはこれに繋がる……もうひとつ、何か鍵があれば────

735: 2018/03/14(水) 00:52:30.36 ID:I7Gwg8wG
~放課後・部室~


鞠莉「antiqueのお店?」

善子「そう……たぶん、沼津なんだけど、知らない?」

鞠莉「そうねぇ……antiqueのお店と言われても、どんなものを扱っているかによって違うし」

鞠莉「マリーはあまりantiqueに興味ないから、やっぱり分からないカモ」

鞠莉「ごめんね、善子」

善子「ううん……いいのよ」

鞠莉「でも、どうしていきなりantiqueを? まさか古い時代の食器に宿る神様を……」

善子「フ……さすがね理事長、やはり我が目に狂いはなかったわ。さああなたも我と契約し、リトルデーモンに!」

鞠莉「なりませーん」

善子「……がくっ」

じゃあなんで乗せたのか!!

736: 2018/03/14(水) 00:53:00.04 ID:I7Gwg8wG
善子「で……その店を探してる理由は、これ」スッ

鞠莉「手鏡?」

善子「その鏡を売っている店を探しているの」

鞠莉「どうして?」

善子「……みんなの違和感の正体を突き止めるため」

鞠莉「違和感……」

善子「……私といて、感じることはない? つい最近まで、もう1人誰かがいた……ような気がしたり」

鞠莉「……」

鞠莉「…………それは、他の子にも聞いたの?」

善子「ええ。三年生以外には、みんな」

鞠莉「そう……で、今はマリーのターンってことね」

鞠莉「そうね、確かにふと感じることはあるわ。忘れちゃいけない大切なことを、忘れているような感覚がね」

善子「……やっぱり、あなたもなのね」

737: 2018/03/14(水) 00:54:32.30 ID:I7Gwg8wG
鞠莉「他の子も感じてるっていうことは……きっと果南やダイヤも感じてると思うわ」

鞠莉「善子が関係している……ってのは、初めて分かったことだけどね」

善子「手がかりはこの鏡だけ……なのよ」

鞠莉「それだけじゃあね……マリーにはどうしようもないかも」

鞠莉「内浦ならダイヤの家にお願いしたら探してもらえそうだけど……沼津なんでしょ?」

善子「ええ。だから、理事長の方が詳しいかと思って」

鞠莉「ふむ……頼ってもらえたのはとっても嬉しくて抱きしめたくなっちゃうくらいだけど、力になれなくてゴメンね」

善子「ううん……いいの。あなたにも違和感があるって分かっただけでも収穫よ」

善子「やっぱりこれは……考えないようにしちゃダメだ。気のせいにして、忘れていいものじゃない……」

738: 2018/03/14(水) 00:55:10.57 ID:I7Gwg8wG
鞠莉「……でも!」

善子「!?」

鞠莉「そんなに思いつめた顔しちゃNoよ!」

鞠莉「やっぱりsmileが素敵よ? 善子、今日マリーのおうちに遊びにおいで!」

善子「えっ……いや、でも」

鞠莉「考えたところで何も進まないんだから、一回考えるのをやめましょう! 息抜きは大切よ♪」

善子「う、うーん……」

鞠莉「理事長命令」

善子「……ずるいわよそれ」

鞠莉「ふふ、それじゃあダイヤに見つかる前にこっそり帰りましょ」

善子「え、サボるの!?」

鞠莉「善は急げって言うじゃない♪」

pipipi...

鞠莉「あ、セバスチャン? 帰るから車を回してちょうだい」

善子「……」

鞠莉「さ、見つかる前に出ちゃいましょ♪」ソソクサ

善子「は、はい……」コソコソ

739: 2018/03/14(水) 00:57:16.01 ID:I7Gwg8wG
・・・


ガチャッ

ダイヤ「おはようございます────あら、果南さんだけですの?」

果南「うん、私もさっき来たとこなんだけど……」

ダイヤ「そうでしたのね。今日は部室の大掃除をすると前々から言ってましたし、全員が集まる前にそれぞれ掃除する箇所を決めておきましょう」

果南「それがね~……」

ダイヤ「え?」

果南「さっき鞠莉からラインがあって……ほら、これ」スッ

ダイヤ「な、なんですの……?」


『お掃除なんてめんどくさいからマリーは善子を拉致して帰って遊ぶ!』


果南「……って」

ダイヤ「…………………………」


ガチャッ


るびまる『おはようごz』

ダイヤ「あの2人はぁぁあーーーーー!!!」

るびまる『ぴぎぃっ!?』

740: 2018/03/14(水) 00:58:28.11 ID:I7Gwg8wG
~鞠莉ハウス~


鞠莉「どうぞあがって♪」

善子「お邪魔します…………相変わらず広い……」

鞠莉「んふふ、メイドや執事のみんなが綺麗にしてくれてるの」

善子「本当にすごいわね理事長……さっきのセバスチャンさんもイケメンだし」

善子「高身長で外国人で黒髪で眼の色も紅くて…………まるで悪魔の使いみたい」

鞠莉「善子はああいうのがタイプ?」

善子「ぁ、いや……そ、そういうわけじゃないわよ!? ただ、まあ……イケメンはイケメンだから」

鞠莉「ふむふむ……善子はセバスチャンがタイプ」メモメモ

善子「やめなさいよ!」

鞠莉「ふふ、女の子なんだからかっこいい男性に惹かれるのは当たり前よ♪」

善子「そういう理事長はどうなのよ」

鞠莉「マリーは秘密♡」

善子「はあ!? ずるい!」

鞠莉「ずるくなーい♪」

善子「ちぇっ……ずるいの」

741: 2018/03/14(水) 00:59:15.82 ID:I7Gwg8wG
鞠莉「まあまあ落ち着いて落ち着いて」

善子「落ち着いてるわっ! ……で、なにして遊ぶつもり? 私、理事長と違ってインドア派なんだけど」

鞠莉「なにって決まってるじゃない、ゲームよ!」

善子「ゲーム!?」

鞠莉「Yes! やる相手がいないから、放置してたんだけど……ほら、PS4でーす」

善子「ほんとだ」

鞠莉「ふふ、善子に仕込まれた格ゲーのスキル、今ここであなたに見せてあげるわ!」

善子「……いや、私、理事長とゲームしたことないわよ? PS4あることすら初めて知ったし」

鞠莉「……あれ? そうだっけ」

善子「そうよ」

鞠莉「じゃあ誰に教えてもらったのかしら……うーむ、分からないわね」

善子「むぅ……」

鞠莉「まあ、せっかくだしやりましょ! 起動起動っと……」ピッ

ウィーン…

鞠莉「コントローラーはこれね。アカウントは……」

742: 2018/03/14(水) 00:59:50.04 ID:I7Gwg8wG
【アカウントを選択してください】

『マリー』

『ヨハネ』

『ゲスト1』

743: 2018/03/14(水) 01:01:21.58 ID:I7Gwg8wG
善子「…………………………!」

鞠莉「そうね、善子はヨハネを選んで────」

善子「な、んで…………」

鞠莉「え?」

善子「なんでここにヨハネのデータがあるの!?」

鞠莉「……え? だってヨハネが来たから買って────あれ?」

善子「…………いま、なんて?」

鞠莉「わたし……いま、えっ……と」

鞠莉「ヨハネが来たから買った……って」

善子「……やっぱり、誰かがいたのよ。私じゃない……別の『ヨハネ』が」

善子「やっぱり私たちの中にあったんだわ……今はいない、記憶の中からほとんど消えかけてる存在が……」

鞠莉「…………」

鞠莉「マリーも……たぶん、誰かがいないとゲームなんて買わないと思う」

鞠莉「それも、1度遊びに来ただけで買うわけない……たぶん、しばらくうちに通い続けるか、泊まるか……それくらいじゃないと」

善子「……理事長にそれを買わせたのが、『ヨハネ』……?」

鞠莉「……そういう、ことになるわね」

善子「じゃあ……他のメンバーにも聞けば……!」

鞠莉「……何かしらの痕跡は見つかるかもしれない」

745: 2018/03/14(水) 01:02:37.26 ID:I7Gwg8wG
鞠莉「でも問題はどうしてそれを今まで忘れていたか、今でも完全に思い出せないのか、よ」

善子「それの鍵を握るのが、この鏡……のはずなのよ」

善子「鏡を買った店さえ思い出せれば……」

鞠莉「とりあえずマリーの方でも探してみるわ。執事やメイドにも聞いてみる」

善子「……ありがとう、理事長」

鞠莉「……でも、ひとつきかせて?」

善子「?」

鞠莉「どうして善子は、その消えてしまった人を追いかけようとしているの?」

善子「…………」

746: 2018/03/14(水) 01:04:05.24 ID:I7Gwg8wG
鞠莉「忘れてしまっているなら……その方が幸せだってこともあるかもしれないよ?」

善子「………………関係ないわ」

善子「私が会いたいから────それ以上に理由なんてない」

鞠莉「……そう」

善子「それに、理事長だってそうでしょ? そのゲーム買って一緒に遊んだくらいなんだから」

鞠莉「……ええ。会いたいわ、とても会いたい」

鞠莉「一緒にゲームをした人は……私にとって、きっととても大切な子。まるで妹のように感じていた……」

善子「……まさか、覚えて」

鞠莉「ら、いいな~って!」

善子「がくっ……」

善子「……ともかくこれで決まった。必ずこの鏡の店を見つけて、私たちが忘れた存在を探すわ」

鞠莉「OK! じゃあまずお茶とお菓子とゲームにしましょ! せっかく来たんだからこれで帰らせはしないよ?」

善子「えっ……探しに」

鞠莉「うちのにやらせるから! ほらほら!」

善子「も、も~……」

鞠莉「それともこのゲームに自信はないの?」

善子「は?」カチン

善子「天才ゲーマーヨハネの力、見せてあげるわよ!!」

鞠莉「よしきた!」

このあとめちゃくちゃ格ゲーやった。

理事長は結構強かった。

747: 2018/03/14(水) 01:04:48.89 ID:I7Gwg8wG
・・・


善子「夕食までご馳走になって……お邪魔しました」

鞠莉「ノンノン♪ 可愛い可愛いsisterが遊びに来てるんだから、最高のおもてなしをするのが普通でしょ?」

善子「妹じゃなくてヨハネ!」

鞠莉「ふふ、ヨハネはどんな子なのかしらね? 会うのが楽しみだわ」

善子「ふん、ヨハネは私よ? 私以外にこの名前を名乗る不届きものなんて……まず出会ったらビンタしてやるわ」

鞠莉「あら怖い」

善子「ふふん」

善子「……誘ってくれたおかげで少しスッキリしたわ。おまけに『ヨハネ』の存在もより強く意識できた」

鞠莉「……うん、またおいで」

善子「ええ、また来るわ────」

善子「……マリー」

鞠莉「!! …………ふふ」

鞠莉「最高においしいsweetsと紅茶を用意して待ってるわ!」

781: 2018/03/17(土) 02:38:58.79 ID:oskSm5eD
~翌日~


不思議な夢を見た。

目の前に『私』がいて、私はその『私』と遊んでいる────

2人で街を歩き、映画を見て、クレープを食べて。

そしてケータイを買って……喜ぶ『私』

私はそんな『私』を見ている、まるで過去を追体験していると錯覚するほどにリアルな夢。

だが、こんな思い出は記憶にない。

そもそも私の目の前に『私』が存在している時点で夢確定。

どう考えたって妄想、幻の領域だ。

けれど、どうして。

私は懐かしい気持ちになっているのだろう。


────pipipipipi...


ガバッ

善子「…………」

善子「……………………」

善子「…………夢、か」

善子「…………」ポロ...

…………夢で泣くなんて、ガラでもないわね。

ふふ、堕天使が夢から覚めたら泣いてた────なんて、神様が聞いたら怒りそう。

782: 2018/03/17(土) 02:39:26.57 ID:oskSm5eD
・・・


善子「いってきます」バタン

先に行く母を見送ってから、私も家を出る。

いつも通りのひとりの登校。

最近……ひとりでいることに感じる寂しさが、本当にひどい。

だからなのか────『ヨハネ』のことを常に考えてしまう。

昨日はマリーの家で痕跡を発見した。

けれど、あれから発展は何もない。私の家には、あの鏡とゲーム以上の痕跡はひとつもなかった。

私が持っている違和感を、親も同様に持っている……ことだけ。

やっぱり『ヨハネ』は私と暮らしていた────と見て間違いはなさそうだ。

そして、それが何らかの理由で消えた────もしくは、いなくなった。

783: 2018/03/17(土) 02:40:27.54 ID:oskSm5eD
そんな夢みたいな現象が、そもそも有り得るの?

堕天使ヨハネだからとか、魔法だとか……

普通に考えて、そんな摩訶不思議アドベンチャーが実際に起こるなんて────ね。

けれどAqoursも私も親も、みんな『ヨハネ』の存在を感じている。

記憶の残滓のようなものが、まだみんなの中に残っている。

だったら……

善子「……連れて帰らないとね」

今日は学校にも何かがないか探そうと思う。

特に部室は、私が家以外で滞在する時間が一番長い場所だから────


ブーッ!ブーッ!


善子「……メール?」

善子「差出人は……黒澤ダイヤ。何よ朝から……練習時間には間に合うってのに」


『善子さんと鞠莉さんは少し早く来るように』


善子「……」

善子「…………昨日サボったの怒られる」


朝から少し憂鬱な気分だった。

784: 2018/03/17(土) 02:41:20.12 ID:oskSm5eD
~部室~

ダイヤ「……」

よしまり『……』

ダイヤ「何か言うことは」

よしまり『サボってごめんなさい』(土下座)

ダイヤ「あなたたち2人、本当にわかっているんですか?」

ダイヤ「昨日は! 部室の! 大・掃・除!!」

ダイヤ「大掃除をやるって何回も言いましたよね! 前日も先週も1ヶ月前から何回も!!」

善子「……」

鞠莉「だってめんどくさかったんだもーん」

ダイヤ「あなた理事長でしょうが!」

鞠莉「り、理事長であり生徒で……」

ダイヤ「だったら尚更でしょう!?」

鞠莉「ゴメンナサイ……」

785: 2018/03/17(土) 02:41:50.49 ID:oskSm5eD
ダイヤ「善子さんもです! そこの理事長が適当なのですから、あなたがしっかりしなければならないと言うのに……どうして2人で遊びに行きますか」

ダイヤ「あの子がいた時はもっとしっかりしている印象だったのに、なぜこうなったんでしょう……」

善子「あの子って?」

ダイヤ「あの子? あの子なんて言いましたか、私?」

善子「……」

ダイヤ「はあ……」

ダイヤ「いいですか? ここはみんなの部室なのです。なら、みんなで綺麗するのは当たり前のことですわ」

ダイヤ「普段、あなたたちも使う部屋ならば、ちゃんと責任をもって、一緒に掃除するべきではないですか」

よしまり『はい……』

ダイヤ「……今回はこの辺にしておきます。来月の掃除の日は、ちゃんと来るんですよ」

善子「わかりました……」

鞠莉「sorry……」

ダイヤ「……よし。ではふたりとも、片付けてねBOXからご自分のものを回収してくださいな」

786: 2018/03/17(土) 02:42:43.27 ID:oskSm5eD
ダイヤ「今回は特に携帯電話など貴重品ががありましたので、必ず持ち帰ってくださいまし」

鞠莉「ケータイ?」

ダイヤ「ええ。あと、善子さんの手紙が」

善子「……えっ、手紙?」

ダイヤ「ええ、内容はよく分かりませんでしたが……文字が善子さんのものでしたから、おそらくあなたのものでしょう」

善子「……」ゴソゴソ

善子「……これ?」ペラリ


【Aqoursへ】


ダイヤ「ええ、綺麗に封をして引き出しに入っていました」

善子「……」パラ

ペラ……ペラ

善子「……」

ダイヤ「まったく……なんですの、それは? まるで別れの手紙のようじゃありませんか」

ダイヤ「その割には自分にもあててメッセージが書かれているし……不思議なことをしますわね。またいつもの地獄弁ですの?」

善子「……」ペラ

ダイヤ「もう、返事も忘れるくらい読み込むなんて……」

787: 2018/03/17(土) 02:43:40.56 ID:oskSm5eD
ダイヤ「ああ鞠莉さん、それは果南さんのですから持ち帰らないように」

鞠莉「あれ、ほんと? マリーも同じようなやつ持ってたと思うんだけど」

ダイヤ「あなたのとは模様が少し違うでしょう」

鞠莉「あれー?」

鞠莉「あ、ケータイ発見」

ダイヤ「ああ、それは……充電が切れていて画面がつかないんです」

鞠莉「それなら、マリーのbatteryで充電してみるわね」ガサガサ

善子「……ねえ、生徒会長」

ダイヤ「なんですか?」

善子「この手紙を読んで……何か、感じたりは、しなかった?」

ダイヤ「変な手紙だ────としか? ただ、胸にチクリと棘のようなものが刺さる感覚はありましたが……」

善子「……」

ダイヤ「花丸さんやルビィたちは、泣いてましたわね。やはり変な手紙ですわ……」

善子「……そう」

善子「泣いてたんだ……ふたりは」

788: 2018/03/17(土) 02:44:43.27 ID:oskSm5eD
ガチャッ


果南「おはよー」

ダイヤ「おはようございます」

鞠莉「good morning!」

果南「あれ、善子と鞠莉、早いね?」

ダイヤ「ふたりはお説教するために早く来てもらったんですの」

果南「あはは……そ、そっか」

果南「あ、善子、その手紙」

善子「……センパイ」

果南「あげた干物、食べてなかったの? なんのためにあげたと思ってるのさー」

善子「ち、ちがうわよ! ちゃんと食べたわよ、全部!」

果南「本当に食べたの? 善子は大丈夫そうだけど、あの子が不健康みたいだったから干物あげたのに」

果南「わざわざ食べてないです、なんて手紙にして……」

善子「……」

果南「こら、ちゃんと聞いてるの?」ダキッ

善子「は……ちょっ……!?」

789: 2018/03/17(土) 02:45:09.15 ID:oskSm5eD
鞠莉「か、果南お得意のお姫様抱っこ!」

果南「……うん、ちゃんとしっかり食べてるみたいだね! あとはヨハネが心配だけど…………」

果南「……あ、なんでもない」

ダイヤ「ヨハネ? 果南さん、ヨハネって」

果南「ううん、なんでもないから! ……なんか最近、たまに善子が2人いるみたいな変な錯覚しちゃうだけだからさ」

ダイヤ「……」

ダイヤ「……果南さんもなのね」

善子「えっ……」

善子「……もしかして、ふたりとm」

鞠莉「電源ついたわよー!」

ダイヤ「本当ですか?」ガタッ

鞠莉「ええ、いまロック画面を…………って、善子?」

善子「え?」

790: 2018/03/17(土) 02:46:37.42 ID:oskSm5eD
ダイヤ「ちょっと見せてください。…………確かに、善子さんの顔写真ですわね、しかも寝顔……」

善子「な、なっ……ななっ……」

果南「ほんとだ……あれ? ねえ、この写真…………」

鞠莉「what……?」

善子「ちょっと私にも見せて……!」

ダイヤ「……はい? な、なんですかこれは……」

鞠莉「あっ……も、もしかして善子、これ!」

善子「な、なに? ねえ、見せてよちょっと……ねーえー……」

ダイヤ「……善子さん、あなた、双子……とか、よく似た親族はいらっしゃいますか……?」

善子「えっ…………え?」

ダイヤ「こ、この写真……」

生徒会長がおそるおそる見せてきた、ケータイの画面。

映し出されていたのはひとつの写真。

そこに写っていたのは────

ふたりの『私』だった。

791: 2018/03/17(土) 02:47:23.25 ID:oskSm5eD
`¶cリ˘ヮ˚)|「第8話・完」

`¶cリ˘ヮ˚)|「短くてごめんね、今日はここまでよ」

817: 2018/03/20(火) 02:30:53.41 ID:uHAORbtK
鞠莉「ねえ……善子、これ……」

善子「これ、って…………わたし、と……」

果南「善子が……ふた、いや……うぅ、なんだこれ……」

ダイヤ「善子さん……が、ふたり……?」

鞠莉「……ううん、きっと違うよ、ふたりとも」

ダイヤ「え?」

鞠莉「もちろん片方は善子……だけど、ねえ、善子。このもう片方は……」

善子「……うん、きっと…………『ヨハネ』だわ」

ダイヤ「よは……ね……?」

果南「ぁ、ぁあ……っ……」

果南「そう、そうなんだ……ヨハネ、やっぱり……」

鞠莉「果南?」

善子「センパイ、どうしたの?」

818: 2018/03/20(火) 02:32:12.74 ID:uHAORbtK
果南「……さっき、言ってたでしょわたし……善子が2人いる錯覚するって」

善子「……うん」

果南「でも、それは……やっぱり錯覚なんかじゃなかったんだよ」

果南「いたんだ、ここに。もう1人の善子……えっと、ヨハネだっけ? その子が……ここに」

ダイヤ「ま、まさか……そんな、これは善子さんがいつも堕天使ネタを言い続けるから、わたくしたちもそんな気になってしまっただけでは……」

鞠莉「違うよダイヤ。ヨハネはいたんだよ、ここに……私たちの目の前に」

鞠莉「善子の隣に」

鞠莉「その証拠がこの写真で……私たちがいつも感じている奇妙な感覚は、これだったんだ」

ダイヤ「では、あの手紙は……善子さんではなく、その『ヨハネ』さんが書いたもの……と考えると」

果南「……あんな風に書いたつじつまも合う、よね。何かの理由でいなくなってしまう前に……私たちに残したメッセージだ、ってさ」

善子「そっ、か……そっか……」ジワッ

鞠莉「……善子、泣いているの?」

善子「……泣いてなんか、いないわ。まだ……まだ会えたわけじゃないから」

鞠莉「……うん」

善子「……やっぱり居たのね、ヨハネ」

善子「ずっと探してたのよ、あなた。勝手にいなくなって……ほんとバカみたい。待ってなさいよ、本当に目の前まで引っ張り出してやるんだから」

ダイヤ「……」

果南「……」

鞠莉「……」

819: 2018/03/20(火) 02:33:31.60 ID:uHAORbtK
ダイヤ「……そのケータイは善子さんが持って帰ってください。その『ヨハネ』さんを探す手がかりになるかもしれませんから」

善子「……ありがとう生徒会長」

果南「もし私たちが力になれることがあったら、なんでも言ってよ! 少しくらい、センパイらしいことしなきゃねっ」

善子「センパイ……」

鞠莉「じゃあ、昨日言ってた鏡を見せてみたら?」

ダイヤ「鏡……?」

鞠莉「うん、善子の家にあった不思議な鏡……それを買った店を探すことが一番重要だと思ってるのよね?」

善子「ええ……その、不確定だけど……この鏡を買った後から、記憶が曖昧なのよ。何か奇妙な部分が抜けたりして」

ダイヤ「……なるほど」

ダイヤ「ではその鏡を見せてもらえますか?」

820: 2018/03/20(火) 02:34:50.80 ID:uHAORbtK
・・・


ダイヤ「……店のことはだいたい分かりました」

果南「写真も撮ったし、あとは色々聞き込みしてみよっか」

鞠莉「内浦なら、やっぱりダイヤのおうちの情報網ですぐ見つけられたの?」

ダイヤ「そうですわね……ある程度は」

鞠莉「わーお……」

善子「ありがとうございます……先輩たち」

善子「私のために、ここまで……」

ダイヤ「何を言っているんです! 大切な後輩のためですわ、当たり前でしょう」

果南「そうだよ。後輩が困ってるのに無視するなんて、そんなの先輩じゃないじゃん」

鞠莉「よーするに、みんな善子の力になりたいって思ってるってコト♪」

善子「……ありがとう……ぐすっ」

果南「ど、どうしよう鞠莉……善子が泣いちゃう!」

鞠莉「Go 果南! 抱きしめる攻撃よ!」

果南「わ、わかった! 善子、ハグしよ!」ギュウッ

善子「わっ……」

善子「…………あったかい」ギュー

果南「……よしよし」ナデナデ

ダイヤ「…………」

ダイヤ「それにしても、沼津の怪しい店……どこかで聞いた、ような……」

821: 2018/03/20(火) 02:35:45.41 ID:uHAORbtK
~教室~


善子「……」

普通に考えたら、このケータイは私のものということになる。

けれど……私はこのケータイを見た覚えがない。なぜ今まで部室に放置していたのか────センパイの話によれば、これは部室の机の引き出しに、手紙とともに大切に保管されていたらしい。

誰も開けないように封をして、机の奥に追いやられて……いや、むしろそうすることで思い出さないようにしていた、とか。

善子「……」

この写真────私ともうひとりの『私』が写っている写真。

どう見てもこれは合成なんかではないし……これは私自身だ。

……多分、この恥ずかしそうに顔を背けているのが私だろう。

そして嬉しそうに笑っているのが多分……『ヨハネ』ということになる。

ここまで決定的な証拠を突きつけられたら……もう、信じるしかないわよね。

ヨハネはここにいた。

私と一緒に暮らしていた。

Aqoursのみんなとも仲良くしていた。

みんなから大切な仲間として受け入れられていた。

────だけどヨハネはいなくなった。

822: 2018/03/20(火) 02:36:32.17 ID:uHAORbtK
結局いなくなった原因は分からない────けれど、確実にここにいた。

なら……やることは決まっている。

善子「……」チャラ

この鏡を売っていた店を探す……だけ。

探したら会えるとは限らないけど……最後につながる手がかりはこの鏡しかない。

なら、これを作った人を見つけて、聞くしかない。

それしか────もう道はない。

花丸「善子ちゃ~ん」

善子「ん」

花丸「あの~……ちょっと数学を教えて欲しいずら」

善子「数学?」

花丸「今日、まるの列が当てられる日だから……教科書の問題だけ教えて欲しくて」

善子「んー……ルビィー」

ルビィ「はーいー?」

善子「ずらまるが数学教えてほしいんだって。因数分解について細かく知りたいみたい」

ルビィ「えぇ~……なんでルビィなのぉ……」

花丸「国語は得意なんだけど、数学は苦手で……」

ルビィ「ぅゆ……ルビィも苦手なのに……」

善子「残念だったわね、私も苦手よ」

花丸「……ダメダメずら」

善子「あんたに言われたくないっての」

823: 2018/03/20(火) 02:37:55.59 ID:uHAORbtK
ルビィ「えっと、因数分解は……同じ文字をくっつけて……」

花丸「くっ……つけ……?」

ルビィ「なんでルビィの方がわかるの~!」

善子「ずらまる、国語は神だけど数学はザルだから」

花丸「が、頑張ってるんだよこれでも!」

善子「……まあ頑張りなさいよ、私は高みの見物だわ」

花丸「むむむ……」

花丸「あ、そういえば善子ちゃん。昨日の大掃除なんだけど……」

ルビィ「そうそう! ケータイとお手紙……見た?」

善子「……ええ、見たわ。読んだし、ケータイもここに」

ルビィ「……そっか」

花丸「……まるたち、あの手紙を読んで、なんでか泣いちゃったずら」

ルビィ「……きっとヨハネちゃんは、いたんだよね? ルビィたちと一緒に」

善子「ええ、当然。……それに、まだ諦めてない。私は必ず会いに行く」

善子「……そのためにも、この鏡を売ってた店を探し出さないと」カチャ

ルビィ「うん、そうだね……」

花丸「……善子ちゃん、その鏡を売ってるお店を探してるの?」

善子「え、ああ……そうよ。これが手がかりになるはずだから」

花丸「……そのお店ってもしかして、魔法堂じゃないかな?」

善子「────え?」

花丸「あ、そこも教えてほしいずら……」

ルビィ「も~……考えてよ~」

花丸「数学だけはだめずら……」

824: 2018/03/20(火) 02:41:10.72 ID:uHAORbtK
善子「花丸……いま、なんて……?」

花丸「えっと、数学だけは……」

善子「……その前」

花丸「その前……あぁ、その鏡の売ってるお店でしょ? 魔法堂って言う────」

善子「どこっ!! その店、どこにあるの!!」ガタッ

ルビィ「ピギッ!?」

花丸「……よ、よしこちゃん?」

善子「その店の場所はどこって聞いてるのよ!」ユサユサ

花丸「ちょっ……や、やめてっ……」

ルビィ「よ、善子ちゃんちょっと落ち着いて!」

善子「はやく、はやく教えなさいよその店は────」

花丸「いっ……痛いよ善子ちゃん!」

善子「ぁ、ごっ…………ごめん……」パッ

花丸「はぁ、ふぅ……ふぅ……」

花丸「沼津の……バス停から帰る道を、少し逸れたところに────」

善子「………………────ぁ」

825: 2018/03/20(火) 02:43:16.46 ID:uHAORbtK
善子「…………そうだ」

善子「忘れ、てた…………」

ガツンと頭を殴られた────そう錯覚するほどの衝撃だった。

なぜ私は忘れていたのか? どうしてこんなにも近くにある店を?

それに、どうして花丸はその店のことを────

花丸「……ルビィちゃんから聞いたんだよ。前に、善子ちゃんから教えてもらったって、嬉しそうに話してくれたずら」

ルビィ「えっ……ほ、ほんとぉ? ルビィ覚えてないよ……」

花丸「……ほんとう?」

ルビィ「うゅ……」

花丸「で、でもほんとに教えてもらったのに……」

善子「……」ガタ

花丸「よ、善子ちゃん?」

善子「花丸、ルビィ……先生には適当に言っといて」

ルビィ「どこ行くつもり!?」

善子「……早退する」

花丸「……善子ちゃん」

善子「花丸」

花丸「ん……」

善子「ありがと。それと、思いっきり引っ張ってごめん、また後でお詫びするから」

花丸「う、うん……!」

善子「うん。じゃあ、よろしく────」ダッ

ルビィ「あ、善子ちゃんカバn」

ピシャッ!

ルビィ「置いてっちゃった……」

花丸「……善子ちゃん、いってらっしゃい」

タッタッタッ────

826: 2018/03/20(火) 02:44:55.50 ID:uHAORbtK
タッタッタッ!!

ダイヤ「善子さん!」

善子「生徒会長……!?」

ダイヤ「思い出しましたわ……あの、鏡のお店! ルビィが以前、話してくれたんです!」

善子「それなら今聞いたわ! ありがとう、行ってくる!」

ダイヤ「えっ、ちょっ……授業がもうすぐ始まりますわよ!?」

善子「早退するから!」タッタッタッ

ダイヤ「っ……あぁ~もう! 今回だけですからね!」

……ありがと、生徒会長。

827: 2018/03/20(火) 02:45:47.11 ID:uHAORbtK
・・・


全速力で学校を飛び出し、足を止めることなく道を駆け抜ける────が。

走り出して10分ほどは興奮が頂点に達していたためか、なりふり構わず学校を抜け出してしまったけれど……よくよく考えれば、バスの時間があった。

時間は今────8時35分。

田舎も田舎にある、このバス停は登校時間、下校時間以外にバスはないのだった。

結局私は沼津まで3時間強を歩き続ける羽目になり、私がいつも利用するバス停付近に来る頃には12時を回ろうかという時間になっていた。

……大馬鹿をやってしまったわ。

カバンを置いてきて正解だった。

鏡と携帯と財布だけをポケットに忍ばせて飛び出したのは、テンションが上がりすぎたせいだけど……結果的には良かったのかな。余計な荷物を持たなくて済んだし。

……と言っても、3時間のお散歩は死ぬほど辛かったわけだけどね。おかげで足が痛いわ。

────そして、私はついに辿り着いた。

ビルとビルの間。とても薄暗い閉所────立地のせいか、昼間だというのに寒い風が吹いている。

魔女の館を小さくしたものか、もしくは魔女の工房か。

看板は文字がかすれてほとんど読めず。

窓は埃まみれで中の様子は伺えない。

その館すべてから溢れる空気が、人を拒んでいるように見えた。

けれど────そう、私はここを探していた。

善子「……どれだけ冷たい歓迎でも、行くしかないでしょ」

828: 2018/03/20(火) 02:46:55.16 ID:uHAORbtK
コンコン

ギィィ…


善子「……」

扉は開いていた。

初めてきた時と同じように軽く私を迎え入れた。

そして────

「いらっしゃい」

初めてきた時と同じように女性の声が語りかける。

「ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」

全てを見透かしているかのような物言い。まるでここに来る人は全て何か悩みがあるかのようだ。

それとも、悩みがある人を寄せ付ける何かがあるのか────今はそれを考える意味はないわね。

善子「こんにちは」

「ひっひ────そろそろ来る頃だと思っておったぞ」

善子「……会うのは2回目ね」

「なに?」

善子「え?」

「────そうか、忘れたんじゃな」

善子「……」

829: 2018/03/20(火) 02:49:21.89 ID:uHAORbtK
忘れた、か……私はここに来たのは、記憶の上では2回目。

だけど、ほんとうは……

「おまえがここに来るのは3回目じゃ。あの鏡を買ったとき、おまえの分身が消える前、そして今のな」

善子「……分身」

「今日おまえが来たのは、その分身を探しに来たからじゃろう?」

善子「……」

善子「……ヨハネってやつのことね」

「やはり、忘れておるようじゃ。それも当然か、奴は魔法の力で生まれた存在……消えてしまえば世界の修正力によって記憶も失われるものじゃ」

善子「世界……? 魔法……? 何を言ってるの、全くわからないんだけど」

「ふむ……おまえ、あの鏡は持ってきておるか」

善子「……ええ」

「それはわしが造った魔法の鏡」

善子「まほう……」

「持ち主の心を写し、それを見せる力を持っておる。今は使えぬがな」

善子「……」

830: 2018/03/20(火) 02:52:38.33 ID:uHAORbtK
少しずつ思い出してきた。

初めてここに来た時、この女性の話を聞かずに私はこの鏡を購入したんだ。

ゆらゆらと溢れ出す怪しげなオーラと、鏡という魔法のアイテムっぽい感じがとても気に入ったから……

そして。

「購入したその夜か……鏡はおまえの心を写した。そしておまえの心の奥に眠る願い────」

「わしは知らぬが、それを叶えんとした鏡は、おまえの分身を作り上げた」

鏡に込めてあった魔力を全て使ってな────と言った。

魔法。

心の願い。

分身。

買った夜のこと。

そこから分かる、ひとつのこと────

善子「鏡によって生み出された分身が……『ヨハネ』」

「うむ」

その通り、と頷いて続ける。

「魔法の力で生み出されたそやつは、おまえの願いを叶えるためにおまえをそばで支えておった」

「消える前も言っておったぞ、おまえの望むことはできる限りしてやった、と。幸せに、笑顔にしてやれた、と」

善子「……」

私の知らない話、だ。

こんな胡散臭い話を、どうして信じられる? 私の記憶では、会ったのは2回目で……こんなに話し込むほどの知り合いなんかじゃない。

ましてや魔法って……サタンとか堕天使とか、そんなのいるわけがない。全部私の中二病……設定だ。

だけど、だけど……その話を嘘だとは思えなかった。

全て真実だ────と、心が叫んでいるような気がするから。

831: 2018/03/20(火) 02:57:13.01 ID:uHAORbtK
善子「……そのヨハネは」

「消えたよ」

善子「……」

「分身は、あくまで鏡の魔力を媒体に作り上げられた。一挙手一投足すべてに魔力を消費し、魔法を使えばその消費量は段違い」

「魔力はいわば、その分身にとっての寿命じゃ。生きながらにして寿命を削っているようなもの」

善子「でも、魔力っていうからには、回復したり……」

「食事から魔力を微量に摂取することはできるが……魔力の塊である分身には、魔力を作る能力はない。言うなれば水道の蛇口を常に開け放っている状態じゃな」

善子「……」

「そして魔力を使い果たせば、当然消える」

善子「でも、それでどうして……記憶が消えるの? その、ヨハネとの……私たちの記憶が」

「これは特殊な事例なんじゃが……まあ、世界には修正力というものがあってな」

「イレギュラーが起こると、それを不可思議な力で消し去ってしまう。分身との記憶も、それじゃろう」

「まだ研究が進んでおらんから、わしにも分からんが……まあ、そういうものなんじゃ」

善子「……それは、もう思い出せないの?」

「…………」

女性は何も答えない。

832: 2018/03/20(火) 02:57:29.56 ID:uHAORbtK
善子「……なんで、答えてくれないの? もう思い出せないの? じゃあ、それなら……どうして私たちの脳裏に時々ヨハネの存在がよぎるの!?」

善子「私の家には、あいつが買ったゲームがあった! 学校にはケータイと手紙が!」

善子「それを見て、私は……私たちは、忘れていたことを思い出したような気がした……」

「待て、落ち着け。なんも言っておらん」

善子「じゃあ……」

「思い出すことは可能じゃ。記憶は消えても、思い出は違う。心の奥深くまで刻み込まれた暖かな思い出は、記憶が消えようとも残っているものじゃ」

「現におまえも、分身に関連する刺激を受けて思い出してきたじゃろう?」

「時間をかければ、分身との直接的な記憶は保証できんが、おおよそ思い出せるじゃろう」

善子「じゃあ……その子のことも」

「うむ」

善子「!!」

833: 2018/03/20(火) 02:58:30.51 ID:uHAORbtK
「だが、それには覚悟がいるぞ。忘れた記憶を刺激し、一気に取り戻すということは……脳に大きなダメージを負う可能性もある」

「ひっひっひ────そうなったら悲惨じゃぞ。廃人になってのたれ死ぬことだってある、家族や友達も驚くじゃろうなあ?」

「小娘……それでもやるか?」

善子「やる」

「」

善子「私は何したらいいの? 精一杯思い出そうとすれば?」

「待て待て待て待てぇえええ!!」

善子「なによ耳元でうるさいわね!」

「本気で言っとるんか!? 死んでもいいのかおまえ!」

善子「死なないわよ。それくらい耐えてみせるわ」

「それだけじゃないんだぞ!? 思い出すのに、まずダメージがあって……おまえはその後、分身を取り戻したいというじゃろう!」

善子「……当たり前でしょ。私はそいつに会いたい、思い出したいからここまで来たのよ? あなたの魔法の話を聞いて、いまさら代償なく取り戻せるとは思ってないわ」

「ぐぬ……おまえ、子供のくせに変に気合が入っとるな……」

835: 2018/03/20(火) 03:00:34.37 ID:uHAORbtK
善子「……それで、どうしたらいいの?」

「……そこのテーブルにペンダントがあるじゃろ」

善子「これ?」

「それをひとつ持って椅子に座れ。ちなみに売り物じゃから後で金はもらうぞ」

善子「はいはい……っと、へえ。綺麗ね」

「それはなんでも願いの叶うペンダントじゃ。わしが魔力を込めて作った逸品、それを売っておる」

善子「なるほどね……店に入った時の文句はこれを買わせるためのものなのか」

「ま、そういうことじゃ」

「だが注意しろ。そのペンダントは願いを叶えるが……その願いの大きさによって代償が異なる」

善子「?」

「大きな願いは身を滅ぼす、ということじゃ」

善子「……なるほどね」

「持ったら、わしの目の前に座れ」

善子「……」スッ

「そしてペンダントと鏡を胸の前に持ち、強く祈れ。鏡の力を借りておまえの思い出を刺激する。そしてペンダントの力で分身を取り戻す」

善子「でも、鏡にもう力はないって」

「わしは製作者だぞ? 鏡に新たな魔力を与えればそれくらい造作もないわ」

善子「……すごいわね、魔法って」

善子「わかったわ。……お願いします」

「目を閉じ、強く念じろ。記憶を取り戻したいと────」

善子「…………」スゥー

────やっとここまで来た。

836: 2018/03/20(火) 03:02:25.57 ID:uHAORbtK
私が知らない間に出会い、忘れてしまったもう1人の私。

あなたにもうすぐ追いつけるから……待ってて。

いま、そっちへ行くから────

善子「……私たちが忘れてしまった記憶、ヨハネがいた時の記憶を返して」

善子「そして────消えてしまったヨハネを返して。ずっとずっと一緒にいさせて」

そう願い、鏡を握る手に力を込めた瞬間だった。

カッ────とペンダントが強く輝いたかと思えば。

善子「──────────────────ぁ」

善子「ぁぁぁぁああああああああ─────────!!!!」

落ちる。

落ちる。

落ちる。

世界が全て反転し。

空へと加速しながら落ちていく。

眼に映るのは景色と呼べるほど美しいものではなく。

ただ流れるだけの閃光────いや、記憶の本流。

私が取り戻したいと願った記憶。

それが光となって世界を流れていく。

私を通り過ぎて彼方へ消えていく。

837: 2018/03/20(火) 03:03:25.13 ID:uHAORbtK
善子「まって────」

私はそれを追いかけようと空を落ちる。

加速は止まらない。

光に追いつくにはまだまだ足りない。

もっと速く。

もっと強く願わなくては、たどり着けない。

なぜなら私は、記憶だけではなくヨハネ自身も取り戻さなくてはいけないのだから。

だから止まるわけにはいかない。

この先にヨハネがいると信じて、私は加速し続ける。

やがて光を追い求める私の速度は音を超えた。

だが、届かない。

まだ届かない。

838: 2018/03/20(火) 03:04:06.93 ID:uHAORbtK
もっと────

もっと速く────

もっと強く────

だって、私は会いたいから。

あの手紙を読んだら、思ってしまったから。

私が幸せになれたのは、あの子がいたからだと。

あの子がいたからみんなと仲良くなれた。

あの子がいたからみんなと一緒に歩けるようになった。

あの子がいたから、私は笑えた。

だから、私はあの子に会いたい。

会うだけじゃなくて、もっと……もっと話をして、もっと一緒にいて、もっと遊びたい────

839: 2018/03/20(火) 03:05:28.65 ID:uHAORbtK
善子「────────」

もう少し。

もう少しで届く。

あと少しで、あの光に追いつく────

手を伸ばす。

必死に手を伸ばす。

手を伸ばせば届く距離に光がある。

あと少し。

あと10センチ、5センチ、2センチ、1センチ────

────そして私は光を超えた。

掴んだと思った。

その光はあふれるような輝きを放ち、私へと向かう。

まるで鏃のような鋭さを持った光が向かってくる。

善子「ぁぁぁぁああああああああ─────」

刃となった輝きが私を刺す。

腕を。脚を。手を。頭を。首を。喉笛を。

全身のあらゆる場所を刺す。

痛い。痛い。痛い。

刺さったところから何かが流れ込んでくる。

突き刺さるような痛みと共に流れ込んでくるそれは────記憶だ。

ヨハネと過ごした記憶が私の中に流れ込んでくる。

忘れてしまっていた記憶が私の中へ落ちてくる。

840: 2018/03/20(火) 03:07:04.27 ID:uHAORbtK
善子「────ァぁああああァアあああぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁあぁあぁあああ!!!!」


いたい。いたい。いたい。

光が過っては消えていく。

目の中を閃光がほとばしる。

かつて見た記憶が。

忘れてしまっていた記憶が毒となり、行き場を求めて私の身体を蹂躙する。

光の奔流が暴れ馬のように私の身体を崩壊させていく。

皮膚を突き刺し血管を破壊し心臓を破る。

骨を砕き肉を潰し脳を破裂させる。

そこまでされても私の意識は鮮明になったまま消えない。

そうぞうをぜっする痛みだけが私のなかにのこっている。

しこうすらできない。

いまめの前を通り過ぎた記おくがいつのものかすらりかいできない。

なんでわたしがこんな思いをしなくちゃいけないの?

どうしてこんなにも苦しいの?どうしてわたしのからだがぐちゃぐちゃになっているの?

いたイ。イタい。いタい。

やメて。ヤメテ。やめて。

もうたえられない。だれかたすけて。もうさけんでもさけんでもいたいの。

もうやめて。

こんないたいのはいや。

しんジャう、いたくてしんじゃウ

やめてもうムリなのイタイのはいやなのおねがいしますたすケて────

たすケテたすけてたすけてタスケてたすけてたすケてたすけてたすケテたすけて────

たすけてたすけてタスけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて──────

841: 2018/03/20(火) 03:07:44.48 ID:uHAORbtK
『大丈夫ずら。善子ちゃんは1人じゃないよ』

いたみのなかで、あたたかいこえがきこえた。

842: 2018/03/20(火) 03:08:29.21 ID:uHAORbtK
『ルビィたちがついてるから!』

ちいさなてが、わたしのせなかをおしてくれる。


『そうだよ!みんなで会いに行こうよ!』

たよれる声が、私といっしょにあるいてくれる。


『前方確認異常なし!ヨーソロー!』

力強いゆびさきが、いく先をおしえてくれる


『善子ちゃんの帰りを、みんなで待ってるからね』

やさしい旋律が、私をまってくれる。


『無茶は良くないよら そんな時くらいセンパイを頼らないと!」

おおきな背中が、ふらついていた私を支えてくれる。


『1人でこんなところまで……あと少しですわ、諦めないで』

慈愛にあふれたまなざしが、傷ついた私の心を癒してくれる。


『ほら、あっちで待ってるよ? perfect smileでlet's go!』

美しい笑顔が、私に一歩を踏み出させてくれる。

843: 2018/03/20(火) 03:11:30.31 ID:uHAORbtK
善子「────あぁ」

私には────みんながついていてくれる。

みんなが私を、あの子を待ってくれている。

私はもうひとりじゃない。

Aqoursが、みんながいるから。

闇の中へ一歩、また一歩と足を進める。

闇の奥で蠢く影が見える。

痛みはない。

もうすべて思い出したから。

あなたと出会った日。

2人でケータイを買いに行ったこと。

毎朝空を飛んで学校まで送り迎えをしてくれたこと。

あなたを助けたくて、どんなことでもしようとしたこと。

すべて、すべて思い出しているから。

────だから、はやく。

こっちへ────

844: 2018/03/20(火) 03:13:51.14 ID:uHAORbtK
『…………なんでここにいるのよ』

影が囁いた。


善子「会いに来たのよ、あなたに」

『どうして? どうして来ちゃったのよ!』

善子「会いたかったからよ」

『ダメよ、私はあなたと同じ世界にはいけない。また消えてしまう、またあなたを悲しませてしまう!』

善子「消えないわ、私がもう消えさせない」

『……無理よ、魔力で編まれた肉体だもの。いつか消えてしまうわ』

善子「弱気になるなんてあんたらしくないわね。いつもの自信たっぷりはどうしたの?」

『……バカね、ほんと。こんなところまで来たのに、笑ってるなんて』

善子「……舞い上がってるのかもね。また会えて嬉しいから」

『……』

善子「それにしても……ここ、真っ暗ね。ゲームも漫画もないし暇じゃない?」

『さあ……? 消えたと思ったら、今ここでいきなり覚醒させられたからね。私にも分からないわ』

善子「ふうん……じゃあ、あんたを連れて帰れば……復活ってことよね?」

『……善子』

善子「なに?」

845: 2018/03/20(火) 03:17:32.16 ID:uHAORbtK
『……私は覚悟を決めて消えたのよ? 手紙も書いて……みんなに、ごめんなさいって、泣きながら……泣きながら書いた』

『それなのに……のこのこみんなの前に帰れないわよ』

善子「……バカはそっちでしょ」

『……』

善子「いい、あなたは私の憧れ……堕天使ヨハネでしょう? それならいつもみたいに自信満々でいなさい」

善子「あんたが私を守ってくれたように……私も、あんたを守るから。ほら……いつまで座ってるの? 手を伸ばして」

『……善子。私がそっちに言っても……大変かもしれないのよ? 私を維持するためには、とっても苦しくて辛くて、嫌になるかもしれない』

『私を取り戻そうと足掻いたことを後悔するかもしれない。私は……私はあなたにそんなふうに思ってほしくない。あなたには、常に笑顔でいてほしい』

『だから私は自分の運命に従って────』

善子「……言ってくれたじゃない」

『え…………?』

善子「私とあなた……2人が一緒になれば無敵、ってね」

善子「さあ手を伸ばして! あなたの運命は……私が変える!」

『……っ!!』

そして、私は力なく伸ばされたヨハネの腕を────

846: 2018/03/20(火) 03:18:48.50 ID:uHAORbtK
・・・


善子「────っは」ガタ


ドタン


善子「はあっ────、はあっ、ひゅっ……ひゅぅ、っ……はぁ、っあ」

「おい、大丈夫か!? しっかり落ち着いて息をしろ、もう全て終わったんじゃ!」サスリサスリ

善子「ひゅぅ……はぁ、はぁ、ぐ、っは……はぁ、はぁ……」

「よし、よし……ようやったな。おい、水を持ってきてやれ」

「はい!」

善子「……はあ、ぅふ……はぁ」

善子「こ、こは…………?」

「魔法堂じゃ……まだ喋るな、呼吸を整え 」

善子「はぁっ……は、っは……」

「お水持ってきた! 善子、ほら……飲んで」

善子「ん、っく……んく、ごく……」

847: 2018/03/20(火) 03:19:54.57 ID:uHAORbtK
「しかし、本当にやってしまうとは思わんかったぞ……それほどに思い入れが強かったんじゃな」

「我がことながらお恥ずかしい……」

「とりあえずおまえ、服を着んか」

「……タオルとかでも貸してもらえます?」

善子「…………」

「……善子どうしたの?」

善子「ぁ、あ……あぁ……」

善子「よはね……」

ヨハネ「……あぁ」

ヨハネ「……あなたのおかげで帰ってこれたわ」

善子「……うぅ、ぅぁ……」フラフラ

「おい! まだ立てる状態じゃ……」

善子「よは、ね……よはね……」グッ…

ヨハネ「……」スッ


ギュウッ


ヨハネ「…………ただいま」

善子「ぉ、か……え゛りぃ……」ボロボロ

ヨハネ「……ぅん、うん……っ」ポロポロ

848: 2018/03/20(火) 03:21:47.98 ID:uHAORbtK
・・・


善子「……それにしても、本当に……取り戻せたのね」

ヨハネ「そうよ……あなた、あんなところまで来て……」

善子「……えへ」

ヨハネ「な、なによ……ニヤニヤして」

善子「し、してないし! ……えへ~」

ヨハネ「な……なんなのよ……」

善子「ちょっと……ほら、ちょっと、ね?」

ヨハネ「?」

善子「うれしい……なあ、って」

ヨハネ「!! ……///」

「……なんじゃこの空間」

善子「あ、いたの」

「ずっとおるわ! わしの店じゃぞ!」

ヨハネ「ありがとうございます、善子に力を貸してくださって……」

「ん、ああ……それくらいは構わん。ペンダントも買ってくれたことじゃからな」

善子「……いつの間にか手の中に3個握らされてたんだけど」

「はて、なんのことやら。1個では魔力が足りんかったから、おまえが無意識に取ったんじゃないか?」

善子「……ありがとうございます」

「……ふん、そのぶん、ちゃんと料金はいただいたわい」

善子「やさしいのね、あなたって」

「……リカじゃ」

善子「え?」

849: 2018/03/20(火) 03:22:30.53 ID:uHAORbtK
リカ「巻機山リカ……で通しておる。そう呼べ」

善子「まきはたやま……って、変な名前」

リカ「なんじゃとぉ!?」

善子「ふふ、ありがとうリカさん。あなたのおかげで、大切なものに出会えて……取り戻せた」

リカ「ぉ、ぉう……まあ、よいよい、うむ」

善子「それよりヨハネ」

ヨハネ「?」

善子「身体に何か変わったところとか、ない? 前と比べて」

ヨハネ「……そういえば、魔力が減らないような」

善子「……おお、成功してるのねそれも」

リカ「なんじゃ、勝手に変なことしたのか?」

善子「実は、ずっと一緒にいさせてって祈ったから……もしかしたらと思って」

リカ「……おい、身体をちょっと見せろ」ポゥ

ヨハネ「は、はい……」

リカ「…………」

リカ「!!!???」ガタッ

ヨハネ「えっ……えっ!?」

リカ「な、なぜじゃ……なぜ体内に魔力を生成する機関が……」

ヨハネ「えぇぇぇえぇぇぇぇえ!!??」

善子「まさかそんな風に叶うなんてねぇ……うんうん、やってみるもんだわ」

ヨハネ「な、ななっ……善子に、そんな才能が……」

リカ「世界改変レベルの願いで、なんの代償もないじゃと……」

善子「?」

850: 2018/03/20(火) 03:23:01.11 ID:uHAORbtK
ヨハネ「……ほんとに、私が守ってあげないと……狙われるかもしれないわね」

善子「えっ……狙われるって何!? 機関なの、機関の策略なの! コングルゥなの!」

リカ「いいや、おまえはもうわしの元で修行しろ! 才能がある、わしが鍛えてやる!」

善子「え、なに! 私も魔法使いになるの!? 魔法使いの弟子なの!」

ヨハネ「守るってあんたみたいな人からよリカさん!」

リカ「なにぃ!? わしは真っ当な使い方をだな!」

ヨハネ「いいや許さないわ! 善子は私と一緒に幸せに過ごすの! Aqoursのみんなも一緒にね!」

リカ「ならばそのアクアとかいうやつら全部ひっくるめて面倒見てやるわい!」

ヨハネ「巻き込みすぎでしょあんたー!?」

善子「……結局どうなるの?」

結局ヨハネが逃げるように引っ張って店から出ました。

851: 2018/03/20(火) 03:24:32.81 ID:uHAORbtK
・・・


ヨハネ「んーっ! シャバの空気は美味しいわねー!」

善子「仮釈放された模範囚かあんたは」

ヨハネ「ふふ、えへへ……嬉しいのよ」

善子「……まあ、私も嬉しいけど」

ヨハネ「よしこ~♪」ギュウッ

善子「もぉ……抱きつかないでよ歩きにくい……」

ヨハネ「いいじゃない? 消える前はあんなに抱きしめてくれてたのに」

善子「い、言わなくていいから……///」

ヨハネ「ふふ、でも……あなたがね」

善子「?」

ヨハネ「忘れたはずの私に……会うために、頑張ってくれたなんて……信じられない」

善子「……ふん、当たり前よ。堕天使ヨハネは執念深いの」

ヨハネ「ヨハネは私!」

善子「……ええ、あなたに会いたかった。勝手に消えて……文句言いたかったんだから」

ヨハネ「ご、ごめん……」

善子「それはまあ帰ってからね! ちなみにみんなの記憶も戻してもらえるよう願ったし……多分大丈夫でしょ」

善子「帰りましょ、私たちの家に!」

ヨハネ「っ…………」

ヨハネ「うんっ! おなかすいた~!」

善子「私もおなかすいた……って、ちょっともう23時!? やばい、はやくヨハネ!」

ヨハネ「わかったわ!」バサッ!

────ゴウッ!


久しぶりにヨハネに抱かれて飛んだ空は、とても美しくて。

この子が帰ってきたんだって、本当に実感できた気がして。

少し泣いてしまった。

852: 2018/03/20(火) 03:25:34.63 ID:uHAORbtK
~翌日・部室~


ルビィ「ヨハネ様~!!!」

花丸「よはねちゃ~ん!!」

ヨハネ「ルビィ、花丸……」

ヨハネ「ぁぁ……うぅ、た……ただいま~!!」

よはるびまる『うわ~ん!』

ダイヤ「そ、騒々しいですわよ! ヨハネさんが帰ってきたからって……」

鞠莉「なーんて言ってるダイヤもハグしたいんじゃない?」

ダイヤ「だ、だれが!」

ヨハネ「せいとかいちょぉ……」

ダイヤ「はぅっ……! さ、っ……サファイア~!!」ギュウッ

ヨハネ「ただいま~!!」ムギュー

鞠莉「ヨハネ! マリーも混ぜて!」ガバッ

ヨハネ「まりぃ~……!」

853: 2018/03/20(火) 03:26:12.46 ID:uHAORbtK
善子「……」

果南「……善子?」

善子「なに、センパイ」

果南「……えいっ」ギュウッ

善子「むぐっ……な、なに!? なんで私!?」

果南「ヨハネを取られて寂しそうだったから……かなん♪」ナデナデ

善子「べ、別に……寂しくはないけど」ギュウッ

果南「素直じゃないな~」

善子「違うから! センパイのぬくもりを感じようとしてるだけっていうかなんていうか……!」

果南「……余計恥ずかしいこと言ってないかなそれ?」

854: 2018/03/20(火) 03:27:03.21 ID:uHAORbtK
千歌「善子ちゃん!」

善子「!?」

果南「おっと千歌」

千歌「びっくりしたよ! 昨日いきなりヨハネちゃんのこと全部思い出してさ!」

梨子「しかも夜中だよお……? 起こされて大変だったんだから」

善子「リリー……お、お疲れ様」

千歌「善子ちゃんは電話でないしさー」

善子「だ、だって……多分その時間はまだ店に居たっていうか……」

千歌「む?」

曜「ヨーシコー!」

ヨハネ「だからヨハネよっ!」

善子「なんであんたが答えるのよ!」

ヨハネ「久しぶりに言いたいじゃない♪」

千歌「ヨハネちゃんだ!本物だ!」

ヨハネ「リーダー! 帰ってきたわよ私!」

千歌「元気そうだね~! よしよしまた会えて嬉しいよ!」

曜「うんうん! あの日……話した後すぐ消えちゃうんだから、びっくりしたよ本当に」

ヨハネ「ああ……それは、本当にごめん……なさい」

曜「でも、もう消えないよね?」

ヨハネ「ええ! 私の身体は完璧よ、ご都合主義か!ってくらいにね」

855: 2018/03/20(火) 03:28:24.40 ID:uHAORbtK
ダイヤ「……よく分かりませんが、もう心配はない、と?」

ヨハネ「そうね!」

鞠莉「じゃあまたうちに遊びにきても大丈夫よねっ! gameやりましょ、game!」

ヨハネ「やるやる! マリーがどれだけ強くなったか見てあげるわ!」

果南「おっ! じゃあ今日は練習休みにしてみんなで遊ぼっか!」

ちかるび『さんせ~!』

花丸「おらも、賛成……ずら!」

ダイヤ「ちょっ……な、何を勝手に……」

曜「はい! 曜ちゃんも賛成であります!」

梨子「それじゃあ……私もお邪魔しちゃおっかな……?」

善子「……って感じみたいだけど、どうする?」

ダイヤ「~っ!! わかりました、わたくしもいきます!」

ちかなまり『いぇ~い!』

ヨハネ「じゃあ善子! 早速飛んで……」

善子「私のことはヨハネと呼びなさいこらー! あと授業、授業はサボれないから!」


────こうしてヨハネは私たちの元へ帰ってきた。

前よりも私は素直になれる、と思うし。

もう、みんなもついているから……怖い事なんてひとつもない。

だからこれから先、ヨハネと暮らすことで何が起こっても大丈夫って言い切れる。

あの子と一緒に、みんなと一緒に乗り越えていける。

だって、私たちはヨハネだから。

そう────ふたりのヨハネは無敵だから!


最終話・完

856: 2018/03/20(火) 03:30:43.02 ID:uHAORbtK
`¶cリ˘ヮ˚)|「これでおしまいよ」

¶cリ˘ヮ˚)|「今まで見てくれてありがとう。心からお礼を言わせてもらうわ」

¶cリ˘ヮ˚)|「またどこかで会ったらよろしくね」

`¶cリ˘ヮ˚)|「そういえば善子、私のケータイはどうしの?」

¶cリ˘ヮ˚)|「私が持って……って、そういえばあんた、なんで勝手に人の寝顔をロック画面にしてんの!?」

`¶cリ˘ヮ˚)|「み、見たわね中を!?」

¶cリ˘ヮ˚)|「すぐ消しなさいすぐ!」

`¶cリ˘ヮ˚)|「おことわりしますぅー!」


ほんとにおしまい!

857: 2018/03/20(火) 03:32:50.51 ID:ObjZ46e8
すっごい綺麗にまとめたね
乙乙

860: 2018/03/20(火) 04:24:57.57 ID:q+/gvutr
おつ

861: 2018/03/20(火) 04:55:16.11 ID:AJDJPWRg
ヨハネちゃん本当に良かった…
ヨハネちゃんを加えたAqours10人の物語もぜひ読みたいです
二人でin this unstable worldを歌っている姿を見たい…

862: 2018/03/20(火) 09:00:32.44 ID:LJFSBMSy
そういや書き始めは1月だったのか…超大作だな
本当にお疲れさん!見届けられて嬉しいわ
ご都合主義大いに結構、最高のハッピーエンドだから清々しい気持ちで読み終えられたよ

863: 2018/03/20(火) 11:53:28.30 ID:R79Kv3t6
やっぱりハッピーが一番!
本当に良かったお疲れ様

864: 2018/03/20(火) 12:22:22.89 ID:fbQNSp4x
良かった……これ以上はないハッピーエンドで本当に良かった!!
お疲れ様!!ありがとう!!!最高だぜ!!!!
これは劇場版化希望!!

873: 2018/03/20(火) 23:22:19.53 ID:5I74VNCy
良かったぁ……やっぱエンドはハッピーなやつに限るぜぇ~

2ヵ月間もお疲れ様でした!
おもしろかったです!

876: 2018/03/21(水) 10:47:26.63 ID:w/ehWOI5
お疲れ様でした!
とても面白かったです!

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1516964794/

タイトルとURLをコピーしました