【SS】歩夢「ビターで甘いこの気持ち」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


8: 2021/02/14(日) 22:22:12.77 ID:dzwxddaY
侑「歩夢、お疲れ様!」

侑「帰ろっか?」

歩夢「侑ちゃんもお疲れ様」

侑「暗くなるとまた寒くなってくるね」

歩夢「そうだね、お昼とかだとポカポカで暖かかったのにね」

歩夢「春も、もうすぐだね」

侑「歩夢歩夢!」

侑「春より先に来るものがあるよ!」

10: 2021/02/14(日) 22:24:07.67 ID:dzwxddaY
歩夢「ん?」

侑「ほらほら!」

歩夢「そうだね」
ピンク色の旗を指さして、目を輝かせる。
ツインテールがぴょこぴょこしそうで可愛い。


歩夢「なんて、言えないけど」

侑「なにが?」

歩夢「ううん、なんでもないよ」

侑「えー、教えてよ!」

11: 2021/02/14(日) 22:24:37.72 ID:dzwxddaY
歩夢「それより、バレンタインの準備って侑ちゃん進めてるの?」

侑「もちろん!バッチリだよ」

侑「今年はみんなにあげたいんだ!」

侑「がんばれ!応援してるよ!大好きだよ!って」

歩夢「私にもくれるの?」

侑「当たり前じゃん!」

侑「歩夢には何個あげて何個貰ったか覚えてないよ」

歩夢「侑ちゃん一度くれなかった時あったよね?」

侑「え?嘘!」

12: 2021/02/14(日) 22:25:10.79 ID:dzwxddaY
歩夢「嘘じゃないよ?」

侑「えー、喧嘩なんてしたことないしなぁ……」

歩夢「くれなかった、は間違いかもね?」

歩夢「侑ちゃんね、ホワイトデーにくれたんだよ」

侑「あぁー!あったね!」

歩夢「私、始めどうしてくれないのかなんて泣いちゃってさ」

侑「私もその日に思いついたからさ」

侑「子供のイタズラじゃないけどさ、その時はそうしたかったんだよ」

歩夢「侑ちゃん、私が泣いちゃうからすごく困った顔してたよ?」

侑「ん、でも、そりゃあ困るでしょ」

侑「本人は渡すつもりはあるんだから」

15: 2021/02/14(日) 22:25:43.60 ID:dzwxddaY
歩夢「でも、おろおろして困ってる侑ちゃんも可愛かったよ」

侑「もうっ!茶化すならこの話はおしまいだよ歩夢!」

歩夢「あはは、ごめんごめん」

歩夢「ねぇ侑ちゃん」

侑「うん?」

歩夢「侑ちゃんはあの時……」

歩夢「ううん、やっぱりなんでもない」

侑「えー、そこまで言って何も言わないのずるいよ歩夢ー!」

歩夢「別に大したことじゃないよ」

侑「それでも!」

17: 2021/02/14(日) 22:26:28.82 ID:dzwxddaY
歩夢「うーん……なんで、ホワイトデーにくれたの?」

侑「え?」

侑「あー、その……」

歩夢「覚えてない?」

侑「うん……」

侑「でも、きっとホワイトデーを知ったからだと思う」

歩夢「侑ちゃんらしいかも」

侑「でしょ?」

侑「知ってしまったことはやってみたいでしょ?」

19: 2021/02/14(日) 22:27:34.15 ID:dzwxddaY
侑「大した理由なんてなかった、と思う」

侑「ただ……」

歩夢「ただ?」

侑「特別なことをしてみたい!」

侑「そんな動機だと思うよ?」

歩夢「今年もそうする?」

侑「えぇー!」

侑「もうどうするか考えてるのに!」

歩夢「ふふ、冗談だよ」

20: 2021/02/14(日) 22:28:43.41 ID:dzwxddaY
侑「それに、別に今となってはバレンタインデーでもホワイトデーでも一緒でしょ?」

侑「大切な人にチョコを贈る」

侑「何月何日の日付なんかよりもこの想いを大事にしたいな」

歩夢「侑ちゃん……」

歩夢「そうだね、私もいっぱい想いを込めて作るね」

侑「私は、歩夢の作るチョコいつも美味しくて好きだな」

侑「どうやって作ってるか教えてもらって作っても、歩夢にもらった方が美味しいんだもん」

侑「やになっちゃうね!」

歩夢「私も侑ちゃんが作るチョコ好きだよ」

21: 2021/02/14(日) 22:29:22.51 ID:dzwxddaY
歩夢「私が作ったチョコよりずーっと美味しいと思うし、好きだよ」

侑「それなら!」

歩夢「それなら?」

侑「きっと相手への愛情がこもってるんだね!」

歩夢「愛情って……なんだか恥ずかしいよ」

侑「でも、良く言うでしょ?」

侑「愛情が一番の調味料だ!って」

侑「歩夢がきっと愛をたくさんたくさん込めて作ってくれてるんだね」

歩夢「ぅ……それなら侑ちゃんもそういうことでしょ?」

侑「ぁ……うん、もちろんそうだよ!」

22: 2021/02/14(日) 22:30:02.91 ID:dzwxddaY
歩夢「ふふっ、それなら今年のチョコも楽しみだな」

侑「楽しみにしててね!」

侑「歩夢のチョコも楽しみにしてるよ!」

歩夢「うん、頑張る、ね」

侑「ありがと!」

侑「それじゃ、今日はもうお別れだね?」

侑「バイバイ、また明日」

歩夢「うん、バイバイ、侑ちゃん」


あの日の子ども同士の小さな約束。
それでも2人だけの秘密。
貴女は覚えていなくとも、そんなことはどうでもよくて。

25: 2021/02/14(日) 22:33:36.44 ID:dzwxddaY
今日はくだらないお話でもなんでもいいから。
別に話題もないけれど、お話なんてしなくても。

もっと一緒にいたい。



そんな気持ちが溶け出しそうで。
貴女を困らせたくなくて、溢れそうな言葉を唇で鍵かける。

27: 2021/02/14(日) 22:35:13.72 ID:dzwxddaY
――

歩夢「はぁ……」

歩夢「チョコ、どうしようかな?」

歩夢「レシピ、すごいな考えてる人」

歩夢「どれも美味しそう……」

歩夢「でも、なんだろう……」

歩夢「なにかピンとこない」


指を滑らせてスクロール。
昔、苦労して溶かしたチョコだって今は簡単にできる。

自分も、技術も、機械も、全て変わって、進化して。

28: 2021/02/14(日) 22:36:15.32 ID:dzwxddaY
歩夢「ダメだ」


手につかない。
スマホを置いて、寝転がる。
眩しい。


歩夢「リモコン、どこだっけ」


手元を探って、電気を消して、深く息を吐く。


歩夢「近すぎた……のかなぁ」


この部屋にいたって、ベランダに出たって、私たちは壁に阻まれる。
私たちの未来はこのまままっすぐ伸びて、ほんの数センチは埋まらないのかな。
手を天井に伸ばして、糸が切れたように落ちる。

29: 2021/02/14(日) 22:37:23.11 ID:dzwxddaY
歩夢「どうしちゃったんだろう」

歩夢「嫌なことばっかり考えて」

歩夢「こんなんじゃどんなチョコ渡せばいいかなんてわかんないよ」

歩夢「無邪気に渡せた記憶の中の自分がほんのちょっと羨ましいよ」

歩夢「私も、変わる」

歩夢「侑ちゃんも……変わった」

歩夢「あたりまえの世界なんてない」

歩夢「分かってるはずなんだけどなぁ」

31: 2021/02/14(日) 22:39:18.99 ID:dzwxddaY
歩夢:侑ちゃん

なんの計画もなく、自然とメッセージを送ってしまった。
だって、私も変わったんだ。
いつかこの気持ちを忘れてしまうのかもしれない。

そんなの嫌だから。


侑:どうしたの?

歩夢:遅くにごめんね?

歩夢:今少しだけお話いいかな?

侑:了解!

33: 2021/02/14(日) 22:40:31.58 ID:dzwxddaY
歩夢「ごめんね侑ちゃん」

侑「ううん、どうしたの?」

侑「うっ、さむ!」

歩夢「あ、ごめんね……」

侑「いいよいいよ!」

侑「ちょっと上着取ってくるから待ってて!」

歩夢「うん」

侑「ごめんごめん、お待たせ!」

侑「それでどうしたの?」

34: 2021/02/14(日) 22:42:14.91 ID:dzwxddaY
侑「あれ?歩夢、元気ない?」

歩夢「え?そ、そんなことないよ!」

侑「うそ」

侑「私に嘘ついたってすぐバレちゃうよ?」

侑「ね?」

歩夢「うん……」

侑「よっと……」

侑「ほら!手を伸ばせば届く距離にいるんだから!」

歩夢「侑ちゃん!危ないよ!?」

35: 2021/02/14(日) 22:43:42.72 ID:dzwxddaY
侑「大丈夫大丈夫!」

侑「ね、いつだってそばにいるんだから」

侑「なんだって相談してよ」

歩夢「うん、ありがとう」


触れられた顔が、暖かい。


歩夢「あのね、ゆうちゃんにお願いがあるの?」

侑「お願い?」

侑「そんなの歩夢のお願いならなんだって大丈夫だよ!」

侑「なに?」

歩夢「明日、一緒にチョコを作ってくれませんか?」

36: 2021/02/14(日) 22:45:41.58 ID:dzwxddaY
――

侑「おじゃましまーす!」

歩夢「侑ちゃん、いらっしゃい」

侑「案外一緒に作ったことなかったかもね」

歩夢「うん、そうだね」

歩夢「お互い秘密にしてたのかも」

侑「毎年楽しみだったよ」

歩夢「それならごめんね、今回」

侑「ううん、歩夢と一緒に作るのもすっごく楽しみ!」

歩夢「ありがとう、私も楽しみだよ」

侑「すっごく?」

37: 2021/02/14(日) 22:47:54.33 ID:dzwxddaY
歩夢「へ?」

侑「私はすっごく楽しみ、歩夢は?」

歩夢「ふふっ、もちろんすごーーーっく楽しみだよ」

侑「えへへ、そっかそっか」

侑「よーし、それじゃレッツクッキーング!」

侑「で、どんなの作るの?」

歩夢「うん、色々考えたんだけどね、今回はスタンダード?なチョコにしようかなって」

侑「なるほどなるほど?」

侑「私歩夢の作るのだったらなんでも好きだよ!」

39: 2021/02/14(日) 22:50:14.68 ID:dzwxddaY
侑「去年のガトーショコラだって、その前のクッキーだって、ブラウニーだって……」

侑「全部全部美味しかった!」

歩夢「あ、ありがと」

歩夢「そこまで言われると照れちゃうね」


湯煎のためのお鍋がコトコト音立てて。
私の心も貴女への想いがコトコトと。



レシピなんてないけれど、私の気持ちを込めて。
ビターで甘いこの気持ち。
苦い未来なんて溶けて消えちゃえば、なんてほんのちょっぴりビターチョコ。

41: 2021/02/14(日) 22:53:10.32 ID:dzwxddaY
――

侑・歩夢「かんせーい!!」

侑「ありがと、歩夢のおかげでとっても美味しくできた気がする」

歩夢「ううん、侑ちゃんほとんど自分でやってたでしょ?」

侑「それでも、歩夢が一緒にいてくれたからね」

侑「上手くできた気がする!」

歩夢「それなら、よかった」

歩夢「私も、侑ちゃんがいたから上手にできたと思う」

侑「ほんと?」

43: 2021/02/14(日) 22:54:57.15 ID:dzwxddaY
侑「ね、ね、歩夢」

歩夢「うん?」

侑「味見、したいなぁ」

歩夢「後で侑ちゃんにあげるものだよ?」

歩夢「ちゃんと包装して渡すまで待ってて」

侑「えー、いいじゃん!」

侑「ほら、ひとつだけ!」

歩夢「もう、仕方ないなぁ」

歩夢「ほら、あーん」

侑「あー……」


何気なしに取るハートの形をしたチョコ。
やっぱりこの気持ちは胸にしまったままじゃいられない。

44: 2021/02/14(日) 22:56:49.73 ID:dzwxddaY
せっかく作ったハートに嘘なんてつけないよ。
きっと、あの日あの時の約束から。
ずっと変わらないこの気持ちを言葉に。


歩夢「侑ちゃん、好き」

侑「……んっ!!」

侑「……っ!ごほっ!」

歩夢「侑ちゃん!?大丈夫?」

侑「だい、じょぶ……」

侑「それより……」

歩夢「好き」

45: 2021/02/14(日) 22:59:24.23 ID:dzwxddaY
顔なんかとっくに真っ赤になってると思う。
火照る体はきっとチョコなんて簡単に溶かしちゃう。


侑「……そっか」

侑「ありがとう」

歩夢「うん……」

侑「私は……」


このまま真っ直ぐな未来。
この近すぎる距離のまま、平行線なんて嫌だから。
触れられない未来なんていらない。

ずっと手を繋いで歩きたい。

47: 2021/02/14(日) 23:01:30.77 ID:dzwxddaY
侑「私、も」

侑「私も好きだよ」

侑「あの日のあの時の約束忘れたことなんてなかったよ」

侑「ねぇ、歩夢」

侑「もう一度約束」

侑「私とずっと一緒にいてくれますか?」

歩夢「もちろんっ!」

50: 2021/02/14(日) 23:05:46.08 ID:dzwxddaY
貴女へのとっておきのチョコ、もうひとつ手に取って。
溶ければいいと思ったビターチョコ、私の唇へ。
ほんの少し俯いて、目を閉じる。


ずっと埋まらなかった数センチの距離が、ゼロになる。

ビターなチョコのはずなのに、ずっと甘い味がする。
それでもほんのちょっぴり大人の味がした。

51: 2021/02/14(日) 23:07:00.98 ID:dzwxddaY
おしまい。
ハッピーバレンタイン!!

52: 2021/02/14(日) 23:07:14.47 ID:rUC5iIoq
ビターどころかすごく甘い

54: 2021/02/14(日) 23:09:57.05 ID:lk1LH5yn
甘々だった最高

55: 2021/02/14(日) 23:11:28.21 ID:kF80J9ne
?cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ素晴らしいSSだったよ!また書いてね!

57: 2021/02/14(日) 23:13:40.72 ID:dzwxddaY
あと、Aqoursもお昼に書いたので、気が向いた時にでも、こちらも読んで頂けると幸いです。

千歌「パティシエール!だよ!!」
【SS】千歌「パティシエール!だよ!!」【ラブライブ!サンシャイン!!】
1: 2021/02/14(日) 15:32:04.30 ID:dzwxddaY 梨子「はぁ」 千歌「ちょっと梨子ちゃん反応薄い!」 梨子「千歌ちゃんのノートが近すぎて何も見えないの」 千歌「そ...


μ'sは時間とアイデアが足りず書いてません。
すみません。

58: 2021/02/14(日) 23:14:22.62 ID:X8q5DX6x
バレンタインにふさわしい神SSだったと言わざるを得ない…

60: 2021/02/14(日) 23:19:41.75 ID:mbSBSwSh
素晴らしい…

62: 2021/02/14(日) 23:32:19.13 ID:CkJ8D/Qf
ハッピーバレンタイン!

64: 2021/02/14(日) 23:53:48.90 ID:2zg5FE93
バレンタインゆうぽむ多くて助かる

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1613308741/

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