副会長「……せつ菜ちゃん?」【副菜ss】【ラブライブ!虹ヶ咲】

副会長 SS


5: 2021/02/14(日) 23:53:15.84 ID:d4rVS3K6
副会長「会長、こちらの製本作業は終わりました。……会長?」

副会長(返事がなかったので、ファイルを置いて立ち上がる)

せつ菜「……すぅ……すぅ……すぅ……」

副会長(会長の机に近づくと、紙の擦れる音に埋もれていた寝息が、耳を澄まさなくても聞こえてくる……)

副会長「……会長、寝てる」

副会長(放課後の生徒会室。鮮やかな夕日に縁取られた会長は、普段の凛とした表情を出し忘れたように、年相応の幼さを滲ませている)

副会長(会長って、こんな子供っぽい顔もできたんだ……)

副会長(何をするでもなく、会長の無垢な寝顔を見つめ続けること数秒。すっと通った鼻筋の先にある眼鏡に気づいて、思わず手を伸ばす)

副会長「会長。せめて寝るなら、眼鏡くらい外さないと……」スッ

6: 2021/02/14(日) 23:55:31.16 ID:d4rVS3K6
副会長(眼鏡を外すと、会長の内に秘めていたような幼さが、より浮き彫りになった気がする)

副会長(そういえば、会長の眼鏡を外した姿って、初めて見るかも)

副会長(なんだか秘密を覗き見してしまったようで、少しだけ心が痛む)

副会長(まるで、見てはいけないものを目の当たりにしているような……)

副会長「…………あれ?」

せつ菜「……すぅ……すぅ……すぅ……」

副会長(私の大好きな人と、穏やかな寝息を立てる会長……。その二人が、なぜだか重なって見えた)

副会長「……せつ菜ちゃん?」

せつ菜「……っ」ビクッ

8: 2021/02/14(日) 23:58:41.13 ID:d4rVS3K6
せつ菜「……ほぇ? はっ、私ったら居眠りを……あっ! 眼鏡っっ!」

副会長(目元の違和感に気づくや否や、私の反応できない速度で眼鏡を取り返す会長)

副会長(いつも通りの姿に戻って、ほっと息をついている……)

副会長「あ……その、勝手にすみません。寝ている時に眼鏡を掛けっぱなしだと、少し危ないかなと思ったもので……」

せつ菜「い、いえ、お気遣いありがとうございます。むしろ謝らなければいけないのは私の方です。作業中に居眠りだなんて……」

副会長「会長は人一倍頑張っていますから。先日も、とある同好会のお手伝いに行っていたと聞きました。あまり無理をしないでくださいね?」

せつ菜「……心配されちゃいましたね。ほんとすみません」

副会長「ところで、会長」

せつ菜「はい」

副会長「先ほど、私の漏らしたせつ菜ちゃんという言葉に反応していましたが……」

せつ菜「……っ」ギク

11: 2021/02/15(月) 00:01:54.63 ID:dE2PdbSn
副会長(『せつ菜』というワードを聞いた瞬間、あからさまに会長の顔が強張った)

副会長「まさか……」

せつ菜「あ、あの、あのですね……?」

副会長「会長って、寝てる時でも反応できるくらい、せつ菜ちゃんのことが好きなんですか?」

せつ菜「…………え。あ、ああっ、はい、そうなんですよ!」

副会長「……やっぱり! でしたら会長、今度その、一緒にライブに行くというのは……」

せつ菜「……う」

副会長「……会長?」

せつ菜「いえ……ライブは、ちょっと。畏れ多いと言いますか……」

副会長「大丈夫です。せつ菜ちゃんはどんなファンでも受け入れてくれます。直接応援して大好きな気持ちを届けた方が喜ぶはずです」

せつ菜「……いや、それはそうだと思うんですけどね? 私は……こう、少し遠くから見守っていたいんですよね」

副会長「……そう、ですか。応援の形は人それぞれだと思いますし……会長の言い分は分かりました」

副会長「ただ、絶対に生で見た方が感動できると思いますよ。気が変わったら、いつでも声を掛けてください。一緒にせつ菜ちゃんのライブを楽しみましょう」

せつ菜「は、はい」

14: 2021/02/15(月) 00:06:19.95 ID:dE2PdbSn
副会長「……あ。ライブが駄目ならグッズはどうでしょうか」

せつ菜「グッズ、ですか?」

副会長「はい。実は私、ライブは数回ほど生で見られたんですけど、せつ菜ちゃんのグッズはまだ一個も持っていないんです……」

副会長「聞いた話によると、秋葉原にはスクールアイドルの専門店があるとか。……でも、そういう場所に行ったことがなくて……一人では心細いんです」

副会長「会長さえ宜しければ、付き添っていただけないでしょうか? 会長も、せつ菜ちゃんに興味があるんですよね?」

せつ菜「……あー、えっと……」

副会長「グッズも、駄目でしょうか……?」

せつ菜「う……」

副会長(会長は眼鏡のずれを直し、机の上で手を組み合わせ……)

せつ菜「い、いえ、グッズくらいなら大丈夫ですよ」

副会長「ほんとですかっ。嬉しいです。では早速、今週の土曜日はどうでしょうか」

せつ菜「……はい、大丈夫です」

副会長「……! ありがとうございます、会長。当日を楽しみにしていますね!」

せつ菜「……あはは。はい、こちらこそ」

15: 2021/02/15(月) 00:08:28.87 ID:dE2PdbSn
副会長(……やりました! ついに会長とせつ菜ちゃんのグッズを買いに行けます……!)

副会長(…………。やっぱり、気のせいですよね)

副会長(私の世界を、あの燃え盛るようなライブパフォーマンスで塗り替えた、スクールアイドル・優木せつ菜。憧れのアイドルが、会長と重なってしまうなんて……。いくらなんでも現実味がなさすぎます)

副会長(そもそも、会長とせつ菜ちゃんは二人揃って校内放送で呼び出されていたじゃないですか)

副会長(そうです、ヘンな考えは忘れてしまいましょう。それよりも、意識すべきは今週の土曜です!)

副会長(色んなせつ菜ちゃんのグッズが見つかると良いな……。あぁ、今から楽しみです!)

せつ菜「………………」

………………
…………
……

17: 2021/02/15(月) 00:11:03.76 ID:dE2PdbSn
~せつ菜の部屋~

せつ菜「やってしまいましたぁ!!」

せつ菜「スクールアイドルフェスティバルを終えてからというもの、副会長のせつ菜猛プッシュをのらりくらりと躱してきましたが!」

せつ菜「ついに、副会長と二人でショップ巡り……っ! せめて他のスクールアイドルのグッズを買いに行くとかならまだしも、対象私ですからねっ!!」

せつ菜「まずいです、正体がバレてしまうかもしれません……っ!」

せつ菜「というか、あぁ、私服っ! 普段はせつ菜モードで街中を歩いていますが、菜々の時ってどんな服を着れば……っ!?」

せつ菜ママ「菜々ー? 誰かとお話しているの?」

せつ菜「あっ、はいっ、すみません! 声が大きすぎました……っ」

せつ菜ママ「もう少し静かにねー?」

せつ菜「はーい。……うぅ、一人であれこれ悩んでいても仕方ないですし……ここはプロの力を借りましょう」

18: 2021/02/15(月) 00:13:25.48 ID:dE2PdbSn
せつ菜「…………」プルル

果林『せつ菜? 珍しいわね、電話なんて』

せつ菜「夜分遅くにすみません。その、果林さんに少々私服のことで意見をお聞きしたく……」

果林『コーディネートかしら? 全然大丈夫よ。……ええ。……えぇ? それって大丈夫なの? 正体がばれてしまうんじゃ……』

せつ菜「……はい。私の正体に関してはなるべく隠しておきたいところです」

果林『そうねぇ。なら菜々に合わせた服装にしないと……。とりあえずどの服を着ていくつもり?』

19: 2021/02/15(月) 00:15:15.88 ID:dE2PdbSn
せつ菜「あ、画像送りますね。えっと、これとかどうでしょう……?」

果林『……うーん。スカートは良いと思うけど、なんかライブに行くような恰好よね』

せつ菜「では、こちらはどうですか?」

果林『いつもの赤パーカーね……。あと、鞄の斜め掛けはやめて』

せつ菜「……菜々だけに?」

果林『からかっているの?』

せつ菜「す、すみません、つい言ってみたくて……」

果林『まあいいわ。もっとこう、ワンピースとか女の子らしい服装はないの?』

せつ菜「ええと……。あっ、ワンピースありました! チェック柄ですけど……」

果林『あ、それなら良いんじゃない?』

20: 2021/02/15(月) 00:19:11.92 ID:dE2PdbSn
せつ菜「ほんとですか? では、この上に赤のフードジャケットを……w」

果林『えっ!?』

せつ菜「えっ!!?」

果林『ちょ、ちょっと待って? ワンピースだけで良いじゃない』

せつ菜「ええ? でも、ワンピースだけじゃ落ち着かないんです。この恰好は赤い上着を着て完成するんですよ! ワンピース単体では手足の欠けたエクゾディアと同じです!」

果林『……はぁ。良く分からないけど、そこは譲る気ないのね?』

せつ菜「はいっ!」

果林『……分かったわ。今からとっておきのコーディネートを伝授してあげる。その通りにしてちょうだい』

せつ菜「はいっ! ご指導よろしくお願いします!」

21: 2021/02/15(月) 00:21:21.65 ID:dE2PdbSn
~秋葉原駅前~

副会長「……あ、会長」

せつ菜「すみません、待ちましたか?」

副会長「いえ、まだ十分前ですし。……それより、会長」ジー

せつ菜「……はい?」

副会長「どうして、制服なんですか?」

せつ菜「……その、制服が一番落ち着くので」

副会長「……そうですか。まあ、いいです」

せつ菜(よし、とりあえず服装の問題はクリアです! ありがとうございます果林さん!)

22: 2021/02/15(月) 00:22:57.09 ID:dE2PdbSn
副会長「ええと、お店の場所は……」スス…

せつ菜「あ、調べなくても大丈夫ですよ。知っていますので」

副会長「会長、お詳しいんですね?」

せつ菜「ああいえ、友達の付き添いで何度か……」

副会長「なるほど……。それは心強いです」

せつ菜(あぁ、これは気を抜けませんね……。ついボロが出てしまいそうです)

23: 2021/02/15(月) 00:24:27.43 ID:dE2PdbSn
~スクールアイドル専門店~

副会長「会長、スクールアイドルのグッズがこんなにたくさん! すごい……っ、ここは夢のようなお店ですね!」

せつ菜「あはは……まあ、専門店ですからね」

せつ菜(眼鏡の奥の瞳がキラキラ輝いています……っ)

副会長「せつ菜ちゃんのっ、せつ菜ちゃんのグッズはどこに……っ」

せつ菜「あぁ、落ち着いてください。確か最近入荷したばかりと聞きました。時間もありますし、ゆっくり見て回りましょう」

副会長「あっ、すみません。つい興奮してしまいました。他のお客さんもいるというのに……」

24: 2021/02/15(月) 00:25:52.63 ID:dE2PdbSn
せつ菜(声の大きさを自覚するや、恥じ入るように縮こまってしまいました)

せつ菜(副会長が興奮する気持ちも大いに分かります。ここは都内の中でも最大級の規模を誇る専門店です)

せつ菜(先のスクールアイドルフェスティバルが大成功を収めた影響で、同好会のグッズも販売されるという情報を学園伝てに聞きました。いずれこっそり見に行く予定でしたが、まさか副会長を伴って訪れることになろうとは……)

せつ菜(普段なら真っ先にはしゃいでしまうところですが、副会長が側にいるおかげで菜々モードの平静さを保っていられるのは僥倖ですかね……)

せつ菜「本当に色んなスクールアイドルのグッズがありますね……目移りしてしまいます」

副会長「私はせつ菜ちゃん一点突破です」

せつ菜(副会長、その使い方で合っているのでしょうか……?)

副会長「あ、会長! あれです! あれを見てください! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の特集が!」

せつ菜「な、そのようなものが……!?」

27: 2021/02/15(月) 00:29:01.19 ID:dE2PdbSn
せつ菜「う……本当ですね。スクールアイドルフェスティバルを取り上げて下さっています。しかも専用の棚まで……」

せつ菜(思い出しただけで心が震えるような、非常に素晴らしい一大イベントでしたが、よもやそこまでの影響力があるとは……!)

副会長「会長、これは……っ」

せつ菜「あ…………」

副会長「せつ菜ちゃん等身大パネル!」

せつ菜(……だ、誰がこんなもの作ったんですかあああぁっ!!)

副会長「わぁ、こんなものまであるんですね」

せつ菜「あ、あるらしいですね……」ヒキ…

28: 2021/02/15(月) 00:31:16.38 ID:dE2PdbSn
せつ菜(こういう恥ずかしいのはさすがに事前の許可とかなかったんですかね!? 自分の等身大パネルが設置されているなんて初耳ですよ!? いや、こういうの好きですけど!! でもこう、自分がアニメのキャラクターと同じ扱いを受けているのは、なんか違います! すごくムズムズします……っ!)

副会長「これは非売品ですよね……」ショボン

せつ菜(逆に売ってたら買うんですか! これを持って電車に乗るんですか! 絶対に嫌ですよ私!!)

副会長「そうだ、写真に収めないと」パシャパシャ

せつ菜(ものすごく連射しています……。何でしょう、某イベントで写真を撮られている方々はこんな気持ちなんでしょうか……いや、違いますね)

せつ菜(……あれ、なぜか某イベントのことを考えると頭痛が……。気のせいでしょうか……? まあ、それは置いといて)

せつ菜(そんなに写真を撮らなくても……。等身大パネルに熱中していますが、本人、あなたの真後ろにいますからね。……いや、私を撮ってほしいとかそういうのでは断じてなく!)

副会長「ふぅ、今日もせつ菜ちゃんフォルダが潤いました」

せつ菜(そんなフォルダ作ってたんですね。ていうか毎日更新しているんですか)

30: 2021/02/15(月) 00:33:47.58 ID:dE2PdbSn
副会長「あ、せっかくですし記念撮影もしておかないと……。会長もご一緒にいかがですか?」

せつ菜「えぇっ? いや、私は……恥ずかしいので、遠慮しておきます……」

せつ菜(自分のパネルと一緒に記念撮影とかどんな羞恥プレイですか! 私にそのハードルは越えられません!)

副会長「そうですか……。では、スマホをお願いしても……」

せつ菜「あ、はい。それならお任せください」

副会長「ありがとうございます。それでは、横に並びますね」

副会長「……あれ、意外とせつ菜ちゃんって小柄なんですね」

せつ菜「――っ」ピク

31: 2021/02/15(月) 00:37:59.41 ID:dE2PdbSn
副会長「? どうかしましたか?」

せつ菜「……いえ、その……そんなに、優木さんは小さいですか?」

副会長「まあ……そうですね。ライブの時は迫力があって、すごく大きく見えるんですけど……。こうして眺めてみると……ふふ」

せつ菜(笑われた!?)

副会長「会長と同じくらいでしょうか? ちっちゃくて……可愛いです」ナデナデ

せつ菜「…………っ///」プルプル

せつ菜(本人の前でその台詞はいかがなものでしょうか……二重の意味で//)

副会長「小柄な身体であのエネルギッシュなパフォーマンス……すごいです。きっとステージ上では小さな体躯に収まり切れないくらいの大好きを爆発させているんでしょうね……せつ菜ちゃんの新しい萌え――魅力を見つけてしまいました」

せつ菜「そ、そろそろシャッターを切りますよ……っ?」プルプル

32: 2021/02/15(月) 00:41:37.17 ID:dE2PdbSn
副会長「あ、はい。私だけがこの素晴らしいパネルを一人占めするわけにはいきませんよね」

副会長「では決めポーズを……」コホン

副会長「せつ菜☆スカーレットストームっ//」

せつ菜「…………///」パシャパシャ

せつ菜(なんでしょう、これ。顔から火が噴き出そうです……っ!)パシャパシャ

せつ菜(ノリノリならともかく、副会長も自分で言い出しておきながら照れちゃっていますし!)パシャパシャ

副会長「……ふぅ、ありがとうございます。堪能しました//」

せつ菜「……は、はい//」

せつ菜(お粗末様でした……? いや、違いますか)

副会長「あれ、会長……なんか疲れていますか?」

せつ菜「い、いえ。全然」

副会長「では本命のグッズを見に行きましょう」

せつ菜(あっ。一仕事やり終えたような達成感がありましたけど、本命が残っていましたよね)

34: 2021/02/15(月) 00:45:05.76 ID:dE2PdbSn
せつ菜(正直、今にも逃げ出したいくらいの羞恥心に襲われているんですけど……。スクールアイドル専門店でこんな気持ちになったのは初めてです……っ)

副会長「わぁ、団扇に下敷き、ボールペン……色々な種類のグッズがあるんですねぇ」

副会長「じゃあ、これとこれと……あとポスターも」

せつ菜(近くにあった籠を手に取って、グッズをほいほい入れていきます)

副会長「あの、会長」

せつ菜「はい、どうしました?」

副会長「会長も、何か買わないんですか? 例えば、このキーホルダーとか」

せつ菜「……う。えっと……」

せつ菜(グッズを買わないのは、さすがに不自然ですよね? まあ、買うくらいなら……)

35: 2021/02/15(月) 00:48:04.30 ID:dE2PdbSn
せつ菜「では、キーホルダーを一つ」

副会長「……! お揃いですね、会長。あ、鞄につけるのはどうでしょう?」

せつ菜「そ、それはちょっと……//」

副会長「鞄に付けてくれないんですか……? お揃いのキーホルダー……」

せつ菜(そんなに弱々しい目を向けないでくださいっ。私だってスクールアイドルのキーホルダーくらい付けたいですよ。自分のものでなければ!)

せつ菜「……わ、分かりました。……付けます//」

副会長「会長っ」パァァ

副会長「まずは形からでも大丈夫ですよ。一緒にせつ菜ちゃんを応援しましょう」

せつ菜(ほんと、どうしてこうなったんですかね……)

36: 2021/02/15(月) 01:02:15.10 ID:dE2PdbSn
~秋葉原 中央通り~

副会長「……♪」ホクホク

せつ菜(やっとお店から出られました……。アニメの一クールを一気見したような疲労感があります……)

副会長「あ。そういえば、そろそろお昼ですね」

せつ菜「あー……そうですね。秋葉原で昼食に困ることはありませんが……」

せつ菜(サンボとか美味しいんですけど……私一人ならともかく、この状況では無しですね。たぶん並んでいますし)

せつ菜(うーん。あいにくお洒落なお店は入ったことありませんし……そもそもあるんですかね、秋葉に。無難に適当なファミレスでも良いんですけど……)

37: 2021/02/15(月) 01:05:14.22 ID:dE2PdbSn
せつ菜「メイド喫茶、とか」ボソ

副会長「え、メイド喫茶ですか?」

せつ菜「あ、えっと、秋葉原と言えばメイド喫茶みたいなところはありますし。その、せっかく来たので、名物的な感じでアリかなーと……」

副会長「……興味、あります」

せつ菜「――!!」

副会長「お昼はメイド喫茶にしましょうか」

せつ菜「は、はい! ではご案内しますね」

38: 2021/02/15(月) 01:19:04.38 ID:dE2PdbSn
副会長「……あの、会長はメイド喫茶に行った経験が?」

せつ菜「……あ、いや、実はないんですよね。ただ、メイド服が可愛いので、いつか行ってみたいなぁと。ちなみに何度か通っているので、場所は大体分かりますよ」

副会長「なるほど。会長、メイド服に興味あったんですね?」

せつ菜「……うぅ、似合いませんよね?」

副会長「いえっ、そんなことないと思います。清楚な会長に可愛い給仕服……私は断然アリだと思います」

せつ菜「そ、そうでしょうか//」

副会長「はいっ」

せつ菜(断言されてしまいました。まあ少々古いイメージですが、三つ編み眼鏡にメイド服は鉄板とも言える組み合わせですよね。この菜々モードなら意外とアリなのかも……)

40: 2021/02/15(月) 01:27:28.55 ID:dE2PdbSn
ありがとうございます
一旦ここまでとなります

48: 2021/02/15(月) 09:58:49.31 ID:dE2PdbSn
――カランカラン

――お帰りなさいませ、お嬢様方❤

――あちらのテーブルにご案内いたします❤

せつ菜「お嬢様と呼ばれてしまいました……//」

副会長「ですね……//」

せつ菜「ええと、メニューは……」ペラ

せつ菜(どれもそこそこお値段しますね。まあ、こういうのはメイドさんのサービスがメインですし)

せつ菜「じゃあ、私はオムライスで」

副会長「私も会長と同じものを」

せつ菜「はい、では……すみませーん」

メイド「はぁい❤ ご注文お決まりですかぁ❤」

せつ菜(うぉ……っ、脳が蕩けるような声をしていますねっ)

49: 2021/02/15(月) 10:01:07.50 ID:dE2PdbSn
~昼食後~

せつ菜(普通にそこそこ美味しいオムライスでした。ポムの樹とかと比べなければ全然アリだと思います)

せつ菜(定番のケチャップで名前なんかを書いてくれるサービスには少し感動を覚えましたね……)

副会長「あのメイドさん、あんなに可愛くて料理もできて、すごいですよね」

せつ菜「……そうですね」

せつ菜(たぶん料理は別の人が作っていると思いますが……メニュー表に手作りうんぬんと書いてあるので、誤解してしまっても無理ありません。ここは夢を壊さないでおきましょう)

副会長「……あっ。会長、これを」

せつ菜「ん、何か気になるものでもありましたか?」

――『コスプレ衣装 貸し出しています❤ 記念撮影オッケー❤』

せつ菜「なっ// コスプレ……ですか。ええと、副会長が……興味があると?」

副会長「あ、いえ。会長にしてもらえればなと」

せつ菜「なんで私なんですかっ」

51: 2021/02/15(月) 10:03:22.68 ID:dE2PdbSn
副会長「会長……ここのメイド服、似合いそうですよね?」

せつ菜「ええっ。そんなことないと思いますけど……っ」

副会長「いえ、私の目に狂いはありません。会長のメイド服、見てみたいです」

せつ菜「ど、どうしてそんな……っ」

副会長「……だって。今日の会長、私服じゃないですか」

せつ菜「……う」

副会長「せっかく私服の会長が見られると思っていたのに。いつもと同じ格好なのは、なんか……寂しいです」

せつ菜「……っ」

脳トロメイド「コスプレ衣装ですかぁ❤ やん❤ お嬢様方にとっても似合うと思いますよ♥」

副会長「え、あ……いや、私は……」

脳トロメイド「せっかくですし、お二人ともメイドさんになっちゃいましょう♥ お一人だけ仲間外れなんて寂しいですし、お揃いの方が菜々お嬢様も喜んでくれると思いますよ♥」

せつ菜(このメイドさん、商売が上手い……っ!)

64: 2021/02/15(月) 18:45:06.09 ID:dE2PdbSn
>>51
訂正

×副会長「……だって。今日の会長、私服じゃないですか」

○副会長「……だって。今日の会長、制服じゃないですか」

52: 2021/02/15(月) 10:05:29.21 ID:dE2PdbSn
………………
…………
……

脳トロメイド「はいご開帳~♥」シャー

せつ菜(メイド服)「…………っ//」

副会長(メイド服)「…………//」

脳トロメイド「やーん可愛いーっ♥」

脳トロメイド「記念撮影しますねー♥ はいチーズ❤」パシャ

せつ菜(メイド服)「……副会長、お似合いですよ//?」

副会長(メイド服)「会長こそお似合いですよ//?」

せつ菜・副会長(メイド服)「……ぷっ」

せつ菜・副会長(メイド服)「あははははっ」

53: 2021/02/15(月) 10:07:44.24 ID:dE2PdbSn
~秋葉原~

副会長「ふぅ、今日は楽しかったですね。せつ菜ちゃんグッズの他に、会長の貴重な写真も手に入っちゃいましたし」

せつ菜「副会長、それは言いっこなしですよ? 副会長のレアな姿だって一緒に収まっているんですからね」

副会長「ふふ、ですね」

副会長「……あ」

せつ菜「……?」

せつ菜(副会長の視線を追うと、そこにはカラオケ店がありました)

せつ菜(もしかして興味があるんでしょうか? ……いや、でも、さすがに歌ったらバレますよね)

せつ菜(時間的にも微妙ですし……門限ギリギリになってしまいます。……でも)

せつ菜「あの。もしかして、カラオケとか……興味あります?」

副会長「えっ。……いえ、特には……」

せつ菜「……そう、でしょうか」

せつ菜(……でも、あの目は確かに……)

55: 2021/02/15(月) 10:09:40.71 ID:dE2PdbSn
副会長「会長? 駅はこっちですよね」

せつ菜「え、あ、はい」

せつ菜(いつの間にか前を向いていた副会長が、一人で歩き出していました。慌ててその背を追いかけます)

副会長「それにしても、この時間帯なのにまだ混雑しているんですね」

せつ菜「休日の秋葉はいつ行っても混んでいますからね……」

副会長「あまり人混みに慣れていないので歩き難いです……ひゃっ」ドン

せつ菜「――副会長っ!」ガシ

副会長「……あ」

せつ菜(肩をぶつけられ、よろめいた副会長の腕を掴み、こちらに引き寄せます)

せつ菜「大丈夫ですか」

56: 2021/02/15(月) 10:12:21.22 ID:dE2PdbSn
副会長「は、はい。あの、腕……」

せつ菜「……腕? ああ、すみません」バツ

せつ菜「――危ないので、手を握って歩きましょう」ギュ

副会長「あぅ……//」

せつ菜「副会長? 立ち止まっていては、またぶつけられてしまいますよ。さぁ、こちらです」

副会長「は、はい……っ」テクテク

副会長「あの、会長……。今日は、付き合ってくれてありがとうございました。こんなに楽しい休日、初めてかもしれません」

せつ菜「……! はいっ、私も楽しかったですよ!」ペカー

副会長「……っ!?」ドキ

副会長「………………セツナチャン?」

せつ菜「はい? 何か言いましたか?」

副会長「い、いえっ、何でも。ほんと私、どうかしていて……っ」

副会長「さあ、帰りましょうっ」

せつ菜「わ、もう少しゆっくり歩きましょうっ」

せつ菜(なぜだか副会長に手を引かれてしまいました)

せつ菜(……それにしても、今日一日、なんだかんだで楽しかったですね)

せつ菜(途中からはせつ菜のことなんて気にならなくなりましたし)

せつ菜(副会長の喜ぶ顔が見れて、本当に良かったです!!)

57: 2021/02/15(月) 10:15:22.14 ID:dE2PdbSn
区切りの良いところまで書きました
次回の更新で完結させるので書き溜めてきます

66: 2021/02/15(月) 23:53:30.55 ID:dE2PdbSn
………………
…………
……

~副会長の部屋~

副会長「………っ//」ボフ

副会長(枕に顔をうずめて、今日、秋葉原であった出来事を振り返ります)

副会長(……たくさんせつ菜ちゃんグッズ買えたし。会長とも遊べて……楽しかったな)

副会長(……それに、何よりも)

副会長(……会長、かっこ良かった//)

副会長(咄嗟に私の腕を引いて、手まで繋いでくれて……)

副会長(それに、最後に見せたあの笑顔……)

副会長「……あっ」←枕から顔を上げたら、さっき壁に貼ったせつ菜ちゃんポスターと目が合ってしまう。

副会長「うぅぅぅ~~っ//」シタバタ

副会長「はぁ……はぁ……ふぅ」

67: 2021/02/15(月) 23:55:46.85 ID:dE2PdbSn
副会長(……会長。やっぱり、せつ菜ちゃんに似ていたな……)

副会長(一曲歌い終わって、ファンの声援を一身に浴びた時に見せる、天真爛漫なせつ菜ちゃんの笑顔……)

副会長(あの時会長が見せた笑顔も、まるで太陽のような眩さを放っていて……せつ菜ちゃんに似たトキメキを感じてしまった)

副会長「……重症、だよね」

副会長(せつ菜ちゃんと会長は違うのに……)

副会長(どれだけ私、せつ菜ちゃんのこと好きなんだろう……)

副会長(……それとも。その逆だったり……するの?)

副会長(……分からない。自分のことなのに、自分の気持ちが分からない)

副会長(……会長。そういえば、一年前は会長じゃありませんでしたよね)

副会長(……会長は、あの日のこと、憶えているのかな)

副会長(私にとっては大切な、それこそスクールアイドル・優木せつ菜の動画を見た時にも感じた、あのトキメキ……)

副会長「……会、長……」

副会長「すぅ……すぅ……すぅ……」

………………
…………
……

69: 2021/02/16(火) 00:00:08.68 ID:QjE9aToG
~スクールアイドル同好会 部室~

せつ菜「ふぅ……こんな感じですかね」

果林「はぁ……はぁ……すごい気合の入れようね」

せつ菜「はい、今週末はライブですからね!」

果林「いや、それは私たちも同じなのだけど……」

せつ菜「……うーん。やっぱりファンにはとびきりのパフォーマンスを見せたいですし……毎回限界を超えようって心に決めているんです!」

せつ菜(……あれ、今、副会長の顔が浮かんで……//)

せつ菜「あっ、そうでした! そろそろ生徒会に顔を出さないと!」

せつ菜「それでは皆さん、お先に失礼しますね!」バタン

歩夢「お疲れ様~」フリフリ

かすみ「あれだけ踊って息上がっていないとか……せつ菜先輩って人ですよね?」

果林「……スクールアイドルの化身、かしら」

70: 2021/02/16(火) 00:01:40.11 ID:QjE9aToG
~生徒会室~

せつ菜「お疲れ様です。皆さん、お待たせしてしまいましたね」ガチャ

副会長「あ、会長。良いんです、気にしないでください。作業は大体済んでいますから」

せつ菜「もうこんなに……! 私が不在の中、ありがとうございますっ」

副会長「いえ。会長を支えるのが副会長の務めなので。それに、私だって用事があることくらいありますし。お互い様じゃないですか」

せつ菜「そんな、私ばっかりですよ……」

副会長「会長の頑張りは生徒会役員みんなが知っています。ご安心を」

71: 2021/02/16(火) 00:04:13.66 ID:QjE9aToG
副会長「……それより、会長。今週末の同好会のライブですが……」

せつ菜(……う。やっぱりこの話題になりますよね)

副会長「良かったら、私と一緒にどうですか? あの時から気が変わったりは……」

せつ菜(……さすがに、もう潮時でしょうか。……でも、あぁ……判断がつきません)

せつ菜「……あー、えっと。実は一度ライブ会場で応援してみたいなぁという気持ちにはなったのですが……その、ちょうど家の用事と重なってしまいまして……」

副会長「……そう、ですか。あっ、早く終わったりは……」

せつ菜「いやぁ……たぶん無理だと思いますね。学園への移動時間もありますし……席も、きっと……」

副会長「……そうですか」シュン

副会長「でも、現地参戦したいという気持ちに変わったのは嬉しいです。ライブはいつでも行く機会がありますし、また今度お誘いしますね」

せつ菜「はい、ありがとうございます。都合が合った際はぜひ……」

せつ菜(副会長……本当のことを言えずにすみません! もう少しだけ、私に時間をください……っ)

せつ菜(正体を打ち明けるための、時間を……っ)

72: 2021/02/16(火) 00:12:09.89 ID:QjE9aToG
~ライブ前日 せつ菜の部屋~

せつ菜(姿見の前に立って、スクールアイドルの衣装を自身に重ねます)

せつ菜(スクールアイドル・優木せつ菜……)

せつ菜(なるべくなら、その正体を明かすのは少人数に留めたい……)

せつ菜(ただ、副会長に正体を打ち明けられないのは、そんな理由じゃないんです)

せつ菜(重ねていた衣装をベッドに置いて、再び鏡の前に立ちます)

せつ菜(鏡に映るのは、スクールアイドルでもなんでもない、強いて言うなら生徒会長の中川菜々……。ヒーローが変身を解いた時のような、ただの女子高生の姿……)

せつ菜(副会長が憧れる優木せつ菜の正体が私だと、中川菜々だと知った時、彼女はどんな反応をするのでしょうか)

せつ菜(もっとこう、キラキラした女の子を想像しているのではないでしょうか)

せつ菜(だとしたら、私のちっぽけな正体は、副会長の描く憧れとは正反対のものです)

せつ菜(……彼女の憧れを砕いてしまうのが。幻滅されるのが、怖いんです)

せつ菜(……優木せつ菜は、最後まで優木せつ菜でなければならない)

せつ菜(高校を卒業するまでの三年間。たったの三年という短い時間を、煌めく星となって駆け抜ける……それがスクールアイドル)

せつ菜(その途上で輝きを失っては……ならないんです)

73: 2021/02/16(火) 00:15:15.40 ID:QjE9aToG
せつ菜(……でも、副会長なら、本当の私を受け入れてくれるような気もしていて……)

せつ菜(ただ、このまま彼女の気持ちを傷つけるのは、絶対に間違っていると思います)

せつ菜(それでも、やっぱり……)

せつ菜「…………怖いよ」ブルブル

せつ菜「……あ」

せつ菜(鏡に映る不安げな表情。こんなの、スクールアイドルが見せて良い顔じゃない)

せつ菜(再び衣装を手に取って、気持ちを切り替えます)

せつ菜(思い描くのはライブのステージ。飛び交う歓声。私が一番大好きを届けられる場所)

せつ菜「……よし!」

せつ菜(自然と元の笑顔が戻って、小さく拳を握ります)

せつ菜(……まずは、明日のライブを乗り越えましょう。悩むのはそれからです!)

せつ菜(ライブでは、見に来てくれた人みんなが笑顔になってほしいから……)

せつ菜「……副会長」

せつ菜(その観客の中に、彼女の顔がはっきりと思い浮かんでしまいます)

せつ菜(この気持ちは、一体……)

74: 2021/02/16(火) 00:19:10.09 ID:QjE9aToG
~ライブ当日 生徒会室~

せつ菜「休日出勤する会社員って、こんな気持ちなのでしょうか……」

せつ菜(少しでも生徒会の仕事を進めておきたくて、休日に鍵を借りて雑務……)

せつ菜(大丈夫、ライブの時間には余裕で間に合うはずです。念のため順番を最後にしてもらいましたし……)

せつ菜(……あれ、いつの間にかけっこう時間が経っていますね。さすがにそろそろ切り上げなくては……)

せつ菜「……ふぅ、こんなところでしょうか」

せつ菜(書類をファイルにまとめて完成っと。そろそろ向かわないとまずいですね)

せつ菜(本当なら開場前に入っておきたかったんですけど……。講堂内は薄暗いですし、誰も気づかないでしょう)

せつ菜(もし気づかれたとしても、生徒会長が講堂にいるのは何も不思議なことではありません。ライブの許可を出しているのは生徒会ですからね)

せつ菜(副会長が生徒会の権限でせつ菜に会いたいとか言い出したら困りますけど……そんな真似はしないので一安心です)

せつ菜(……さて、走った方が良さそうですね。休日の校舎に人はいませんし、生徒は講堂内に集中しているはず)

せつ菜「それではっ! うおおおおおぉぉっ!」ダダダダダ

~間~

せつ菜「ふぅ、無事到着です!」

75: 2021/02/16(火) 00:21:54.29 ID:QjE9aToG
かすみ「せつ菜先輩遅いですよ~」

せつ菜「すみませんっ! すぐに着替えますので!」ヌギヌギ

かすみ「……あれ?」

せつ菜「どうかしましたか?」

かすみ「ぷっ。そ、それ……ぷぷっ」

歩夢「どうしたの、かすみちゃん?」

かすみ「せ、せつ菜先輩の鞄っ! 見てくださいよっ、自分のキーホルダー付けちゃってますっ!」

せつ菜「……あっ! こ、これは色々と事情が……っ//」

かすみ「かすみんもよぉく分かりますよ~。せつ菜先輩の大好きは自分にも向いていたんですね?」

歩夢「ええっと。まずは自分を大好きになることが、スクールアイドルとして良いパフォーマンスを見せる秘訣……だったり?」

せつ菜「ち、違いますからぁ――――っ!//」

ワイワイガヤガヤ…

歩夢「…………あれ?」

せつ菜「……歩夢さん?」

歩夢「あっ……ううん、何でもないの。ちょっと気になっただけだから……」

せつ菜「……?」

せつ菜(何か言いたげな歩夢さんの視線が、私の脱ぎ捨てた制服に向けられていましたが……)

せつ菜(っと、余計なことで集中力を乱してはいけません。このライブ、全力で臨まなくては!)

76: 2021/02/16(火) 00:25:08.19 ID:QjE9aToG
~同好会ライブ せつ菜パート

せつ菜「みんなぁ――っ!! 会いたかったよ――っ!!!」

観客『Yeah――っ!』『私も――っ!』

せつ菜「それでは一曲目、CHASE!」

観客『きゃあああ――――っ♥』

せつ菜「走り出した~♪」

せつ菜(……よし! 今日も絶好調です!)

せつ菜(私のライブを見に来てくれた人が、みんな笑顔に…………!)

77: 2021/02/16(火) 00:27:46.13 ID:QjE9aToG
せつ菜(笑顔に……)

せつ菜(……あれ? 副会長……?)

せつ菜(観客の中から、ついその姿を探してしまって……。でもそれは、私の思い描いていたとびきりの笑顔ではなくて……)

せつ菜(……副会長、どうしてそんな顔をしているんですか?)

せつ菜(どうして、そんな傷ついた顔を…………)

………………
…………
……

78: 2021/02/16(火) 00:30:55.02 ID:QjE9aToG
~ライブ終了後 生徒会室前~

せつ菜「……おかしいです」

せつ菜(ライブが終わった後、雑務の続きをするため、職員室に一度返した鍵を取りに戻ったんですけど……)

せつ菜(そこに、生徒会室の鍵はありませんでした。誰かが持ち去った後……ということでしょう)

せつ菜(今日、私以外に登校している生徒会役員は……一人しかいません)

せつ菜(一体、なぜ……)ガララ

80: 2021/02/16(火) 00:33:06.29 ID:QjE9aToG
せつ菜「副会長…………どうして、生徒会室に」

副会長「……。ここなら、会長……あなたに会える気がしたんです」

せつ菜「え、私に会いに……?」

副会長「会長。今まで、どこにいたんですか? 家の用事があるって言っていたじゃないですか」

せつ菜「あ……ええと、予定より早く済んだので、生徒会の仕事をしようかと……。ライブには間に合わなかったんですけど……」

副会長「……っ。私、会長のこと、見ましたよ」

せつ菜「えっ」

副会長「珍しく廊下を走って、講堂に向かっていたじゃないですか。あのなびく三つ編みは、絶対に会長のものでした」

せつ菜「うっ……」

せつ菜(はったりじゃ、ありませんね。真っ直ぐな目をしています。まるで、何かを確信しているような……)

せつ菜(そういえば、ライブの時、副会長はいまいち盛り上がれていなくて……なぜか、傷ついた顔を……)

81: 2021/02/16(火) 00:35:37.10 ID:QjE9aToG
せつ菜(まさかっ!? 気づかれて、しまいましたか……?)

副会長「……黙っているということは、やっぱりそうなんですね。会長」

せつ菜「ぁ……うっ。ええと……その……っ」

副会長「もう良いですよ。嘘をつかなくても」

せつ菜「あ、私は……っ」

せつ菜(どうしよう。気づかれた。幻滅……された。でも、私は、あなたのことが――)

せつ菜(嫌だっ! その先の言葉を、聞きたくない!)

副会長「会長。あなたは――」

せつ菜「――っ!」

82: 2021/02/16(火) 00:38:04.25 ID:QjE9aToG
副会長「――あなたは、私のこと、嫌いなんですね」

せつ菜「……………え? 嫌い?」

副会長「……とぼけないでくださいよ」

せつ菜「え、えっと……どうして、そんな……」

副会長「私から説明させるんですか? ……ライブ、見に行っていましたよね」

せつ菜「あ……それは」

副会長「誘いを断ったのは、私と観に行きたくなかったからでしょう。本当は、せつ菜ちゃんが好きなのに」

せつ菜「え。違っ……そうじゃなくてっ」

副会長「違うなら、どうして無視したんですか。……一緒に見ましょうって、メッセージ、送ったのに」

83: 2021/02/16(火) 00:40:13.50 ID:QjE9aToG
せつ菜「……メッセージ? あっ」

せつ菜(慌ててスカートのポケットからスマホを取り出す。画面を付けると、LINEの通知が複数件来ていました)

副会長「何度も送って、電話までしたのに……。ちなみに、ライブが始まる前の話ですよ。あとは休憩時間に何度か……」

せつ菜「……あ、ええと。すみません、ライブ中は電源を切っていたんです。ライブの邪魔になるといけませんから……」

副会長「切ってないじゃないですか。今、電源を入れるような素振り、していませんでしたよね。すぐに確認できたじゃないですか。普通、電源を入れたらラグがありますよね」

せつ菜「……あ、う……私、勘違いをしていて。ミュートにしていたみたいです。本当にごめんなさい。せっかくメッセージを送ってくれていたのに、私ったら全然気づかな――」



ブーブーブーブー



せつ菜「――っ!!」

副会長「会長……スマホ、鳴っていますけど。出ないんですか?」

せつ菜「あ……うぅ……」

副会長「……ほら、また切れちゃいましたね」

84: 2021/02/16(火) 00:43:56.20 ID:QjE9aToG
せつ菜「……ら、ライブっ、ライブが終わった後にミュートを戻して……あっ」

副会長「なら、私のメッセージに気づいていたはずですよね。……会長、もう……嘘を重ねなくていいですよ」

副会長「……今まで、ごめんなさい」

せつ菜「……え? どうして、謝るんですか……?」

副会長「私、会長の気持ちに気づいていませんでした。会長は、私のこと、ただの生徒会役員としてしか見ていなかったんですよね。だから、私の誘いが煩わしくて……断った。せつ菜ちゃんのライブを観に行こうって言っても、何かと理由を付けて、何度も……何度も!」

副会長「この前、一緒にグッズを買いに行ってくれたのも……嫌々、なんですよね? 私……あの時、本当に楽しかったのに……」

せつ菜「――違いますっっ!!」

副会長「違うなら……どうして」


副会長「どうして、お揃いのせつ菜ちゃんキーホルダー、取っちゃったんですか?」


せつ菜「…………ぁ」

87: 2021/02/16(火) 00:47:28.89 ID:QjE9aToG
せつ菜(あの時。ライブ前にからかわれて、恥ずかしくて……)

副会長「休日だから、油断していましたね。……でも、もう大丈夫です。私に合わせなくていいですよ」

せつ菜「ぁ……う、副会長ぉ……っ」

副会長「会長なら、何かの勘違いだって、はっきり言ってくれると思っていました。なのに、そんな曖昧な態度で……。どうして、私は……っ」

せつ菜「あぁ……」

せつ菜(もうここで、私が優木せつ菜だって言えば……。ダメ、余計に混乱させちゃう。せつ菜のこと、嫌いにさせたくない……っ)

副会長「さようなら、会長。取り乱してしまってすみません。明日からは、これまで通り、お願いしますね。仕事はきちんとこなしますので」

せつ菜「ま、待ってくださ――」

副会長「付いてこないでくださいっ!」バタン

91: 2021/02/16(火) 00:50:48.09 ID:QjE9aToG
せつ菜「あ……そんな……」

せつ菜(私は……大切な友達を、一人失って……)

せつ菜(力が抜け、その場にへたり込んでしまいます)

せつ菜(……私は、一体、どうすれば良いんでしょう)

せつ菜(何が、いけなかったんでしょう)

せつ菜(……なんて、はっきりしていますよね。もっと早く、言うべきだったんです)

せつ菜(……それとも。こうなることが最良だったのでしょうか)

せつ菜(せつ菜だと打ち明けて幻滅されるより。私を嫌いになって、せつ菜を好きになってくれた方が……)

せつ菜(そんなの……)

せつ菜「そんなのって、悲しすぎますよ…………」ポロポロ

92: 2021/02/16(火) 00:54:55.26 ID:QjE9aToG
せつ菜(ぽつぽつと、スマホの液晶に滴が弾ける)

せつ菜(制服の袖で拭い、ポケットに仕舞おうとして……)

せつ菜(こつんと、指先が硬い感触に触れた)

せつ菜(これは……私のキーホルダー)

せつ菜(副会長は……今まで不安だったんでしょうね。私を誘うたび、また断られたらどうしようって。ずっと不安を抱えたまま、私と接してくれていた……)

せつ菜(副会長……。キーホルダーをぎゅっと握りしめると、あなたと過ごした一年以上の月日が頭を流れて……)

せつ菜(……やっぱり。私は、副会長を失いたくない!)

せつ菜「そんなの、絶対に嫌ですっ!」

せつ菜(震える脚に鞭打って、何とかその場から立ち上がる。ふらつきながらも、勢い良く生徒会室を飛び出した)

93: 2021/02/16(火) 00:58:15.49 ID:QjE9aToG
せつ菜「副会長っ!!」

せつ菜(……当然ですけど、いませんよね)

せつ菜(副会長が行きそうな場所の心当たりは……。それとも、もう家に帰ろうとしているのでしょうか)

せつ菜「……あぁ。私って、副会長のこと、全然知らなかったんですね」

せつ菜(もう、お終いなのでしょうか。……このまま、私は……)

せつ菜(……いえ。私には、同好会の皆さんが……!)

94: 2021/02/16(火) 01:00:10.53 ID:QjE9aToG
せつ菜「……」プルル

歩夢『せつ菜ちゃん? 何かあったの?』

せつ菜「歩夢さん……。私、大切な人と喧嘩をしてしまって……」

歩夢『せつ菜ちゃん……泣いてるの? えっと、詳しい話は分からないんだけど……たぶんね、喧嘩っていうのはお互いの気持ちがぶつかり合っているか、すれ違っているんだと思うの』

せつ菜「……私のは、すれ違い……でしょうか」

歩夢『良かった。それならね、ちゃんと話し合えば解決できると思うよ』

せつ菜「でも……話し合いなんて。私、その方を怒らせてしまって……」

歩夢『……本当に、怒らせただけかな? その子は、悲しそうな顔をしていなかった?』

せつ菜「……あ。して、いました……」

歩夢『だったら大丈夫。その子もきっと、本当は喧嘩なんてしたくないんだよ』

95: 2021/02/16(火) 01:03:32.18 ID:QjE9aToG
歩夢『……それにね? 喧嘩って仲が良くないとしないものなんだよ』

せつ菜「……あ」

せつ菜「私……仲直り、できるでしょうか?」

歩夢『うん、絶対できるよ。私も昔ね、幼稚園くらいの頃かな? 侑ちゃんと――』

せつ菜「歩夢さん……っ、ありがとうございますっ!」

歩夢『あ、ちょっと待ってね? ここからが大事な――』ブツ

せつ菜(たとえ嫌われてしまうとしても、やっぱり私、後悔したくないんです!)

せつ菜(最後の最後まで足掻きまくってからダメなら、それでいい)

せつ菜(行動を起こす前から諦めようとするなんて、私らしくありませんっ!)

せつ菜(涙から生まれる希望だって、あるはずです!)

せつ菜「よし、そうと決まれば副会長に話を……!」

97: 2021/02/16(火) 01:05:52.94 ID:QjE9aToG
せつ菜「って、どこに行ったのか分からないままでした。ええと、副会長の行きそうなところは……」

せつ菜「あ、スマホ……スマホがあるじゃないですか!」

せつ菜(喧嘩してすぐの相手が素直に出てくれるとも思えませんけど……)プルル…

せつ菜「…………やっぱり出ませんよね」

せつ菜「作戦変更です!」

98: 2021/02/16(火) 01:07:10.34 ID:QjE9aToG
………………
…………
……

副会長、先ほどは本当に申し訳ございませんでした。

確かに私は、嘘をつきました。

しかし、副会長のことが嫌いというのは誤解です。

私の気持ちを、今すぐにでも伝えたいです。

中庭のオブジェ近くで待っています。

……きっと、今日伝えなきゃダメだと思いました。

だから、待っています。

もう嘘はつきません。来ていただけたら嬉しいです。

中川菜々

99: 2021/02/16(火) 01:09:06.42 ID:QjE9aToG
~中庭~

せつ菜(オブジェ近くの円形ベンチに腰掛けて、副会長がくれたメッセージに目を通します)

副会長『会長、先ほど講堂に駆けて行くのが見えましたけど、ライブを観に来たんですか?』

副会長『私も講堂にいます。前から五番目の列です。実は、クラスメイトにお願いして隣の席を確保しておきました。宜しければこちらに来てください』

副会長『会長、どこにいるんですか? 一緒にせつ菜ちゃんのライブを楽しみましょう』

副会長『……会長?』

副会長『会場にいるんですよね? もしかして、一人で観たかったんですか? でしたらすみません』

副会長『会長、何か返信がほしいです』

副会長『私、何か会長にしてしまいましたか? もしかして、私……』

101: 2021/02/16(火) 01:10:52.62 ID:QjE9aToG
せつ菜(……副会長の気持ち、全然分かっていませんでした)

せつ菜(今まで、せつ菜のライブに誘ってくれた理由。グッズを買いに行こうと誘ってくれた理由……)

せつ菜(大好きなスクールアイドルを布教したかった。自分の大好きを広めたかった……そういう理由もあります。私だって、自分の好きなアニメやラノベを同好会の皆さんにおすすめしていますからね。……でも、それだけじゃなかった)

せつ菜(副会長は、私と友達になりたかったんです)

せつ菜(大好きなスクールアイドルを通じて、生徒会を超えた関係になりたかった……)

せつ菜(だから、私の制服姿にがっかりしたり、お揃いのキーホルダーを買おうと言ったりしたんですね……)

せつ菜(私は、副会長のこと、もう友達だと思っていました)

せつ菜(でも、副会長はもっともっと仲良くなりたかった。友達らしいことをして、彼女なりに繋がりの強さを実感したかった)

せつ菜「……私はまた、自分の気持ちばかりを考えてしまいました」

せつ菜「……あの時、すごく不安だったのでしょうね」

せつ菜「……小さな疑念に、私のあからさまな嘘と偶然が確信を与えてしまった」

せつ菜「副会長を、私の大切な友達を、傷つけてしまった」

せつ菜「……副会長。私のこと、許してくれるでしょうか。……私、は……」

102: 2021/02/16(火) 01:14:50.27 ID:QjE9aToG
………………
…………
……

あれ、そこのあなた……生徒会に何か用ですか?

……はい、私は副会長を務めています。と言っても、あなたと同じ一年生ですけどね。

……もしかして、生徒会に入りたい、とか。

……んー。果たしてそうでしょうか? では、なぜあなたは扉の前に立っていたんです?

……やっぱり。生徒会に興味、あるんですね。

でしたら、少し見学して行きますか?

……大丈夫ですよ。そんなに自分を下げないでください。

自分が自分を信じられないなら、一体誰が自分を信じてくれるんですか?

……そうです。でも、それだけでは足りません。

自分と、仲間たちです。さぁ、私と一緒に来てください。

一度走り出した気持ちを、押さえつけてしまってはいけませんよ。

……って、なんだか熱いことを言ってしまいましたね。恥ずかしいので忘れてください。

103: 2021/02/16(火) 01:17:22.03 ID:QjE9aToG
………………
…………
……

――会長。――会長。

――起きてください、会長。

せつ菜「う……ううん………はっ! 副会長!?」

副会長「おはようございます。と言っても、まだ夕方ですけどね」

せつ菜「あ……すみませんっ。呼び出しておいて眠ってしまうなんて……」

副会長「……本当は、行かないつもりでした」

せつ菜「え……」

副会長「多少は反省させようと思って……。でも、会長は待っていると言ったら、必ず待っている人です。夜になって警備員に追い出されて、それでも校舎の前で待っているような人が会長です。……違いますか?」

せつ菜「そ、その通りです……」

104: 2021/02/16(火) 01:19:26.60 ID:QjE9aToG
副会長「……私。たとえ会長に嫌われてしまっても……」

副会長「それでも、会長のこと、嫌いになりたくありません……っ」

せつ菜「……! 私もっ、私だって副会長のこと嫌いじゃないですし、嫌いになるつもりもありません! 大好きです!」

副会長「会長……。私も、そういえば一つだけ、嘘をついていました」

せつ菜「副会長が、嘘を……?」

副会長「はい。……実は、カラオケ……興味あります」

せつ菜「! 行きましょう!」

副会長「え、えっ。今、ですか?」

せつ菜「今です!!」

副会長「ま、まだ仲直りもちゃんと――」

せつ菜「善は急げですっ!」グイ

副会長「あっ、会長っ、止まってくださいっ。足、速い……っ!」

………………
…………
……

105: 2021/02/16(火) 01:21:44.50 ID:QjE9aToG
~カラオケ店の一室~

副会長「ええと、なぜこんなことに……」

せつ菜「でも行ってみたかったんですよね?」

副会長「それは……まあ、はい。友達とこういうところに行くの、憧れていたので……」

せつ菜「そうですか。実は私、カラオケ大好きなんです。特にアニメソングを熱唱しますね!」

副会長「えっ。あの会長が……アニメソングを?」

せつ菜「ちなみに秋葉原も自分一人で何度も行っています! メイド喫茶に行ったのは、本当にあれが初めてですけどね」

副会長「ど、どうして急にそんなことを……っ」

せつ菜「私……もう嘘はつかないって決めたんです。本当は、あの秋葉原の帰り……副会長と一緒にカラオケで歌ってみたかった」

副会長「あ……。私……私も、カラオケで歌ってみたくて! せつ菜ちゃんの、CHASE!」ピツ

副会長「……あ」

106: 2021/02/16(火) 01:24:11.91 ID:QjE9aToG
~~~~♪

副会長「は、走り出した~♪」

副会長(つい勢いで入れてしまいました。しかもトップバッターで!)

副会長(この歌、やっぱり高いし難しい……っ。初心者に歌えるはずもなかった)

副会長(音程はへろへろで、声も大きく出せない……)

副会長(思い描いていたイメージと、全然重ならない……)

副会長「……ごめんなさい」

せつ菜「えっ、曲……まだ途中ですよ?」

副会長「せつ菜ちゃんみたいに上手く歌えたら良かったんですけど。私……ダメみたいです」

副会長「やっぱり私、勉強以外は全然……」

せつ菜「前にも一度、言いましたよね? 一度走り出した気持ちを、押さえつけてしまってはいけませんよ」

副会長「あっ……」

せつ菜「カラオケ上級者の私が教えてあげます。カラオケは、巧く歌う場所じゃありません」

せつ菜「自分の大好きを爆発させる場所です! さぁ、私と一緒に――!」

107: 2021/02/16(火) 01:26:24.87 ID:QjE9aToG
せつ菜「まぶたを閉じれば 何度だって出会える――♪」

副会長(……っ! 会長、巧い……っ!)

副会長(巧いだけじゃなくて、この曲を心から楽しんで歌っている感じで……)

副会長(……熱い! 会長の周りに、紅蓮を思わせる炎がまとわりついて……っ!)

副会長(というか、この声…………え? せつ菜……ちゃん? 似てる? 似すぎ!?)

副会長(せつ菜ちゃんを意識して声真似を……いや、これはもうそんなレベルじゃない)

副会長(……あれ、なんで? せつ菜ちゃんが、ここにいる? でも、私の隣にいるのは会長で……)

108: 2021/02/16(火) 01:27:59.64 ID:QjE9aToG
せつ菜「さぁ、一緒に!」

副会長(!!? 何が何だか分からないけど、会長の歌声に合わせてみる)

副会長(巧さなんか気にしないで、ただ自分の大好きを爆発させる……!)

副会長(あれ、楽しい? さっきより、自分の歌声がスムーズに出る)

せつ菜・副会長「走り出した~♪」

副会長(会長……歌っている時の姿、かっこいい……//)

副会長(あ……眼鏡を外して。え、三つ編みも……?)

せつ菜「――っ! さぁ、一緒に叫びましょう!!」ファサ

副会長「え、せつ菜ちゃん!!?」

せつ菜「はいっ!!」

副会長(?????? 会長が、せつ菜ちゃんに変身した? いや、会長はせつ菜ちゃんだった? ということは、せつ菜ちゃんは会長だった??)

副会長(頭がぐちゃぐちゃで、やっぱり何がなんだか分からないけど――今はっ!)

せつ菜・副会長『Yeah――――っっ!!!!』

副会長(この幸せな時間を、全力で――っ!)

………………
…………
……

109: 2021/02/16(火) 01:31:35.38 ID:QjE9aToG
~有明通り交差点~

副会長「会長……どうして、教えてくれたんですか?」テクテク

せつ菜「そうですね……。副会長とは、もっと仲良くなりたかったからです!」テクテク

副会長「私と、仲良く……っ//」

せつ菜「はい! ……せつ菜は私の一部どころか、今や大半を占めていますから。ちゃんと私の全部を打ち明けないとダメだなって、今回の一件で思ったんです」

副会長「あ……っ。私……その、本当にすみませんでした。だって、せつ菜ちゃんをせつ菜ちゃんのライブに誘って……ううぅぅ//」

せつ菜「いえ、元はと言えば、正体を隠していた私が悪いんです。気にしないでください」

110: 2021/02/16(火) 01:32:51.33 ID:QjE9aToG
せつ菜「……それよりも。幻滅……しましたか?」

副会長「え……っと。どういうことでしょう?」

せつ菜「ですから……その、あなたの憧れる優木さんは、私だったんですよ」

副会長「はい。それが……どうして幻滅するんですか?」

せつ菜「え。だって、私なんかがせつ菜では、その……地味というか……」

副会長「ふふ。人にはあれだけ言っておいて、自分に自信、ないんですか?」

せつ菜「あ、えっと……//」

副会長「幻滅なんて、するわけないじゃないですか。……一年前、何の取柄もない私が、生徒会に入ろうか迷っていた時、力強い言葉で私の背を押してくれた……そんな会長のこと、ずっと憧れていました」

副会長「そんな憧れの会長が、私の大好きなせつ菜ちゃんだったんですよ? そんなの……もっと、大好きになってしまいます……//」

せつ菜「……そ、そうなんですか。あ、ありがとうございます//」

111: 2021/02/16(火) 01:33:57.88 ID:QjE9aToG
副会長「……ふふ。それにしても、会長がせつ菜ちゃんですか」

せつ菜「え? あの、やっぱり……意外でしたか? 似合って……ません?」

副会長「そういうわけではなくて。似ているなぁと」

せつ菜「似ているというか……その、本人なんですけど。もしかしてからかっています?」

副会長「いえ。似ているというか……姿は違っていても、根は変わらないんだなって思ったんです」

副会長「会長モードの時は、内なる炎という感じで……それがせつ菜ちゃんモードになると、もう炎を爆発させるんですよね」

せつ菜「なんだか表現がラノベチックですね……。おすすめの本、貸しましょうか?」

副会長「ぜひ。会長の大好きなもの、私も大好きになりたいですし……そうしたら、もっと仲良く……っ」

112: 2021/02/16(火) 01:35:03.82 ID:QjE9aToG
せつ菜「あ。でしたら、呼び方を変えてみませんか?」

副会長「え、呼び方を? ということは、えと…………」

副会長「…………菜々、ちゃん?」

せつ菜「――っ!//」

副会長「な、何か言ってくださいよぅ……っ//」

せつ菜「す、すみませんっ。萌えの破壊力があまりにも高すぎて……っ、ゴフ」

せつ菜「……えーと、気を取り直しまして」

副会長(菜々ちゃんが、私に手を差し出す)

副会長(迷わず握り返して、お互いの友情を確かめ合う。そして――)

せつ菜「これからもよろしくお願いしますっ、――さん!」

副会長(……この日、初めて菜々ちゃんと心が通じ合えたような、そんな気がしました)

113: 2021/02/16(火) 01:37:07.24 ID:QjE9aToG
~講堂 同好会ライブ~

せつ菜「~~~~♪」

せつ菜(あれからも、私と副会長の関係は変わっていません)

せつ菜(会場ではスクールアイドルとファン。交わることはないように思えて、確かにこのライブで私たちは一つになっています)

副会長「――せつ菜ちゃんっ! 大好きですっ!」

せつ菜「~~~~♪」ニコ

副会長「きゃあっ♥❤」

せつ菜(そして、ステージを降りれば――……)

115: 2021/02/16(火) 01:39:16.16 ID:QjE9aToG
………………
…………
……

副会長「……会長?」

副会長(返事がなかったので、ファイルを置いて立ち上がる)

せつ菜「……すぅ……すぅ……すぅ……」

副会長「ふふ、また居眠りですか。ライブ、頑張っていましたよね……」

副会長「……あ。寝ている時は眼鏡を外さないと」スッ

せつ菜「……んぅ。あ、れ……私、寝ちゃっていましたか」

副会長「すみません、起こしてしまいましたね」

116: 2021/02/16(火) 01:41:22.90 ID:QjE9aToG
せつ菜「いえ……あ、眼鏡」

副会長(会長は眼鏡に伸ばしかけた手を、空中でぴたりと止めます)

副会長(その顔は、何だか拗ねているようで……?)

副会長「会長、どうかしましたか?」

せつ菜「……いえ。その、眼鏡……外したままの方が良いんじゃないですか?」

副会長「? どうしてそう思うんです?」

せつ菜「……だって。大好きなのは、優木せつ菜だから」

副会長「……ふふっ。会長、自分に焼きもちですか?」

せつ菜「ち、違っ、そういうのではなくて――」

副会長「会長……。せつ菜ちゃんは、ステージ上でこそ眩く輝きます」

副会長「生徒会室では、やっぱり菜々ちゃんの姿でないと」

副会長(そう言って、会長の顔に優しく眼鏡を掛け直します)

副会長(レンズ越しに映る会長が、頬を赤らめつつ微笑み返してくれます)

副会長(その柔らかい笑みに、私はまた、自分の大好きを感じました)

副会長「――会長。眼鏡、とても良く似合っていますよ」


~END~

119: 2021/02/16(火) 01:44:38.35 ID:QjE9aToG
以上となります!
最近副菜が足りていなかったので書きました!

117: 2021/02/16(火) 01:42:34.71 ID:4rIpoJKK
副菜界の巨匠

118: 2021/02/16(火) 01:44:05.45 ID:RnkYPFBD
おつ、高級副菜をありがとう

120: 2021/02/16(火) 01:45:08.98 ID:KEPUZ/YO
乙。甘々になる前のこの期間たまらないね

121: 2021/02/16(火) 01:45:32.32 ID:ypDckj9f
素晴らしい

122: 2021/02/16(火) 01:49:12.95 ID:E4Y2a+li
うおおおおおおお

123: 2021/02/16(火) 01:51:05.65 ID:jAFmx8hj
これはすばらしい

124: 2021/02/16(火) 01:51:33.79 ID:OWMZxIrp
浄化された ありがとう

125: 2021/02/16(火) 01:53:44.57 ID:DVGyqTJr
は?
名作すぎんか?
ありがてぇ…ありがてぇ…

126: 2021/02/16(火) 01:55:57.66 ID:QjE9aToG
コメントありがとうございました!
あと、せつ菜ちゃんの顔文字嬉しかったです

最後に過去作貼っておきますので、宜しければ!

せつ菜「今日は私の誕生日です!!」栞子「…………」
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1596829323/

栞子「ここが二週目の世界ですか……」
https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1612450996/

127: 2021/02/16(火) 01:57:29.30 ID:RnkYPFBD
この前のタイムリープものの人だったか

130: 2021/02/16(火) 02:24:02.40 ID:iOT1GQq9
あなたは最高です!

133: 2021/02/16(火) 08:24:42.38 ID:oGeyib1y
素晴らし過ぎる

134: 2021/02/16(火) 08:55:03.05 ID:Cu2GLLnd
⁄/*イ`^ᗜ^リ素晴らしいSSでした!!!

138: 2021/02/16(火) 15:39:46.64 ID:fxF7eJx7
最高の副菜をありがとうございます…!!!!!

139: 2021/02/16(火) 15:48:11.36 ID:E7WXu2b6
副会長の顔文字もほしい

140: 2021/02/16(火) 20:49:50.53 ID:ALey17pg
最高品質かよ…

136: 2021/02/16(火) 12:18:32.21 ID:UmAV75d/
素晴らしい副菜ですね!!!!!
ありがとうございました!!!!!

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1613314042/

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