【SS】あなた「留学から帰ってきたら居場所がなくなってた……」【ラブライブ!虹ヶ咲】

ゆう SS


1: 2020/08/08(土) 20:22:13.71 ID:7enxlrD1
あなた「いや~2ヶ月って結構長かったなぁ~」

あなた「同好会のみんなに早く会いたいし空港から直接学校来ちゃったよ」

あなた(みんなビックリするかな~?あえてずっと連絡も取らないでいたんだしいい反応もらえるといいなぁ)

トコトコ

菜々「……」

あなた(むっ……あの後ろ姿は……)

あなた「おーい!せつ菜ちゃーん!」

菜々「!?」ビクッ

バッ

あなた「久しぶり!元気だった?」

菜々「え……あ…いや、あの……」オドオド

あなた「?どうしたの?」キョトン
 
菜々「っ!」タタタタ

あなた「あっ!せ、せつ菜ちゃん!?」

あなた「超スピードで走ってっちゃった……なんで……」

あなた「あっ……!!」

あなた(そうだ……私ってばおもっきり“せつ菜”って呼んじゃったよ……校内じゃまだ隠してたのに……)

あなた(絶対怒らせちゃったよ……再開しょっぱなになんてこと……海外でのフレンドリー精神が抜けてなくてやっちゃった……)

2: 2020/08/08(土) 20:23:10.41 ID:7enxlrD1
あなた(それにしても逃げることないのに……)

テクテク

ピタ

あなた「……こうして部室の前に来ると懐かしさが溢れるなぁ……」

あなた(よくある展開で戻ってきたら部が崩壊してた……なんてあるかもと思ってたけど全然そんなことはなさそうだね)

あなた「すー……はー…」

あなた「よし!」

ガチャ

あなた「みんなー!!久しぶりー!!」

3: 2020/08/08(土) 20:24:38.82 ID:7enxlrD1
かすみ「なな、なんですかぁ!?」ビクッ

あなた「あ、かすみちゃん!あ、あはは……ごめん、ちょっとびっくりさせちゃったかな」

かすみ「え、えっと……」

あなた「ごめんね!連絡取らなくて……サプライズ帰国したくて」

キョロキョロ

あなた「まだかすみちゃんだけしか来てないか……ま、放課後になってすぐだから仕方ないよね」

あなた「どこかに隠れてドッキリでも……」

かすみ「あ、あの!」

あなた「ん?あ!そうだ!かすみちゃんにも協力…

かすみ「その……あなた……誰ですか?」

あなた「……え?」

4: 2020/08/08(土) 20:27:28.15 ID:7enxlrD1
あなた「あ……あはは!もう!かすみちゃんってば冗談キツいよ~」

あなた「そりゃ2ヶ月もみんなのこと放っちゃって悪いとは思うけどさ」

かすみ「え……あの……」

あなた(こんな震えながら涙目なんて……前より演技力上がったな?)

ガチャ

ゾロゾロ

愛「ちーっす!」

あなた「みんな!」

かすみ「あ、愛せんぱーい!」タタッ

愛「およ?かすかすどーしたの?」

しずく「また悪戯?」

璃奈「気をつけて、愛さん」

かすみ「違うから!その、なんか変な人が……」

愛「変な人?」チラ

あなた「あはは、変な人って……」

6: 2020/08/08(土) 20:35:25.44 ID:7enxlrD1
愛「この子のこと?」

かすみ「はい」コクコク

あなた「久しぶり、み––––––––

愛「あ!君もしかしてにゅーぶ希望者?」

あなた「えっ……?」

果林「そういうことね」

彼方「入部希望の子が来るなんてここも有名になってきたね~」

あなた「あ、あの……みんな…?」

かすみ「えぇ!?そ、そうだったんですか!?」

しずく「もう、かすみさんてば……」

璃奈「ちゃんと確認しなかったの?」

8: 2020/08/08(土) 20:41:32.20 ID:7enxlrD1
かすみ「だ、だって急に変なこと言うから……」

エマ「まぁまぁ、かすみちゃんを責めちゃダメだよ。……2年生の子かな?」

愛「んー?でも愛さん見覚えはないけど……」

果林「学科が違うんでしょ。この学校大きいし知らない子がいても不思議じゃないわよ」

あなた「ちょ……」

あなた「ちょっと待ってよ!!!」

みんな「?」

9: 2020/08/08(土) 20:42:08.78 ID:7enxlrD1
あなた「み、みんなさっきからどうしたの?流石に冗談キツいよ」

彼方「?どういうこと?」

あなた「どういうって……そんな、まるで私を知らないみたいな反応……」

エマ「えっと……ご、ごめんね?あなたと私たちってどこかで会ったことあるの?」

あなた「なっ……え、エマさん……」

愛「愛さん人のこと忘れるようなことしないんだけどなぁ~……ん~」

ガチャ

せつ菜「みなさん!!お待たせしました!!」

栞子「こんにちは」

10: 2020/08/08(土) 20:47:26.48 ID:7enxlrD1
エマ「どうしたの?かすみちゃん」

かすみ「かすみん分かっちゃったんです!この人の正体」

かすみ「ずばり!同好会の熱狂的なファンの方ですね!」ビシッ

あなた「な……」

愛「なるほどー!そーゆーことだったんだ!」

せつ菜「納得です!!だから私のことも知ってたんですね!」

彼方「入部希望じゃなかったか~」

栞子「しかし、妙ですね」

栞子「あなたのその制服、我が校のものですがあなたのような生徒が在籍していた記憶はありません」

せつ菜「そういえば私も……全校生徒の顔と名前は一致しているはずですが見覚えがありませんね」

あなた「は……?」

14: 2020/08/08(土) 20:51:19.57 ID:7enxlrD1
栞子「学科を教えてもらっていいでしょうか?」

あなた「音楽科だよ!栞子ちゃんそんな––––

愛「音楽科!?ぶちょーと一緒じゃん!!」

あなた「!?」ビク

あなた「はは……なんだ…もう、ビックリした……愛ちゃんやっぱり知ってるじゃん……」

ガチャ

歩夢「ご、ごめんなさい!遅くなっちゃった!」

あなた「!!!歩夢ちゃん!!」パァ

トテテ

あなた「聞いてよ歩夢ちゃん!みんなってば酷いんだよ?いくら久しぶりだとはいえタチの悪いドッキリ仕組んでてさ」アハハ

あなた「まぁさすがの私も結構驚いちゃったけどね」アハハ

歩夢「え……えーとぉ……」

歩夢「……ご、ごめんなさい!どなた……でしょうか?」

あなた「あは……え……っ?」

15: 2020/08/08(土) 20:53:52.72 ID:7enxlrD1
歩夢「ごめんなさい。私……よく話についていけなくて」

歩夢「もしかして部員の誰かのお友達ですか?」

あなた「な……何言って……歩夢ちゃん……」

あなた「私だよ!歩夢ちゃん!!幼馴染の顔忘れたなんて言わせないよ!!」ガシッ

歩夢「えと……その……」

あなた「……!」

 そう、私と歩夢ちゃんはずっと昔からの幼馴染。お互いのことはいっぱい知っている。

 だから私は、この歩夢ちゃんの表情が本気で困っている顔だと分かった。

歩夢「……ごめんなさい、あなたの言ってること、よく分からない……」

歩夢「それに––––––––」

歩夢「私の幼馴染は……一人だけだから」


ガチャ

16: 2020/08/08(土) 20:56:36.81 ID:7enxlrD1
「ごめんねみんな、ちょっとゴタついててさ」

かすみ「あ!せんぱーい!遅いですよー!」

愛「ぶちょーが遅れてどうすんの~」

果林「もしかして迷った?」

エマ「それは果林ちゃんだけだよ~」

あなた「……は?」

「あはは……ごめんごめん」

「……あれ?そっちの子は?」

しずく「あ、やっぱり先輩のお知り合いでもないんですね」

彼方「ちょおっと変わった子でね~」

あなた「あ……え……?」

「ん?どうしたの?何か驚いてるみたいだけど」

あなた「だ、誰……?」

「あ!ごめんね!そうだよね、スクールアイドルのみんなと違って私なんて知ってる子あんまりいないよね」

19: 2020/08/08(土) 21:07:09.02 ID:7enxlrD1
歩夢「そんなことないよ!侑ちゃんはいっぱい頑張ってるんだから!」

歩夢「最近だってよく侑ちゃんのこと学校で耳にするもん、幼馴染としてこんなに嬉しいことないよ」

「そ、そう言われると照れる……」

あなた「ゆ、侑……ちゃん……?」

「っと、そうだった。名前だよね」

「私は––––––––高咲侑」

侑「スクールアイドル同好会の部長やってます。よろしく!」ニコッ

20: 2020/08/08(土) 21:13:18.41 ID:7enxlrD1
あなた「ぶ……ちょう……?」

侑「うん」

あなた「なんで……だって部長は……」

あなた「そ、そうだ!だ、代理!部長不在だから代理でやってる新しい部長なんだよね!」

侑「?新しいっていうか部長はずっと私だけど……」

あなた「そんなわけ!」

かすみ「あの!これ以上あまり変なこと言わないでください!」

あなた「かすみちゃん……」

かすみ「先輩は私が廃部寸前でもうどうしようもないって時に現れて……救ってくれた人なんです!」

かすみ「しず子や彼方先輩、エマ先輩にせつ菜先輩が戻ってきてくれたのも……侑先輩のおかげなんです」

かすみ「だから、これ以上先輩のこと変に言うなら私が許しませんよ!」キッ

21: 2020/08/08(土) 21:21:54.07 ID:7enxlrD1
あなた「かすみ……ちゃん……」

かすみ「……」キッ

あなた(あんなかすみちゃんの目……みたことない)

––––––––
––––

かすみ「えへへ、先輩!かすみん先輩のためにパン焼いてきたんです!食べてください!」

あなた「ほんと!?ありがとう!かすみちゃんのパンとっても美味しいし大好きなんだ!」

かすみ「だ……っ!?そ、そんな……その……私も……///」テレテレ
 
––––––––
––––

あなた「っ……」

24: 2020/08/08(土) 21:26:17.00 ID:7enxlrD1
あなた「うそ……嘘だよ……そんなの……」

あなた「今まで……私はみんなと一緒に頑張って……」

あなた「スクールアイドルフェスティバルだって……成功させたのに……」

愛「いやいや、スクールアイドルフェスティバルが成功したのもぶちょーがいっぱい頑張ってくれたからだよ」

しずく「はい、ボランティアの件では侑先輩に負担をかけてしまって……」

彼方「歩夢ちゃんとのらぶらぶ生放送も効果的だったよね~」

歩夢「か、彼方さん!」

あなた「……は、はは……」

25: 2020/08/08(土) 21:33:27.77 ID:7enxlrD1
フラフラ

あなた「わけが……わからないよ……」

璃奈「正直、それはこっちも」

エマ「ねぇ、どうしてそんなこというの?……もしかして侑ちゃんのこと嫌いなの?」

せつ菜「え!?」

果林「侑が嫌われるようなことするわけないじゃない。この子の勘違いよ」

愛「そーそー!キミもちょっと具合でも悪いんだよね?」

あなた「え……」

愛「まぁちょっと変なこと言っちゃったのは仕方がないし、ここはちゃちゃっと謝っとこうよ」

しずく「そうですね!その方が互いにスッキリすると思います」

29: 2020/08/08(土) 21:48:32.40 ID:7enxlrD1
侑「私は別にいいんだけど……」

彼方「まーまー、ここは穏便にしたいからね」

愛「さ、キミもほら!」

グイ

あなた「あ……」

ジッ

 突き刺さる、みんなの視線。誰もが、私に謝罪を求む声が視線だけで感じられる。

 やめて、やめて、やめて。みんなして、そんな目で私をみないで。

 俯いていた私がふと顔を上げると、歩夢ちゃんと目が合った。

 まだ、私は心のどこかでは歩夢ちゃんだけは、と思っていたのかもしれない。けど、そんな思い込みは歩夢ちゃんの目を見て粉々に打ち砕かれた。

歩夢「……」

あなた「……ぁ」


あなた「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ダッ

タタタタ

愛「あ!ちょっと!?」

30: 2020/08/08(土) 21:51:19.69 ID:7enxlrD1
タタタタ  

タタタタ


タタタタ

あなた「はぁ……っ!んっ…はぁっ……!」

あなた(きっと……これは夢なんだ……そうだよ……)

あなた(うちに戻って……寝ちゃおう。そしたらきっと……)

テクテク

テクテク

テク……ピタ


あなた「……なん、で……」

 見知った道を通り、長年暮らしてきた団地の一室の前までたどり着いた。隣の部屋の表札には上原と書かれている。それはそうだ、歩夢ちゃんは私のお隣さんだ。


ガサッ  

あなた「!」フリムキ

あなた「あ––––––––おか–––––––

「あの……“うち”に何かご用でしょうか……?」

あなた「っっっ!!」ダッ

タタタタ

 私は、その場から即座に逃げたい気持ちに駆られ、足を再び動かした。

 あの人は、あの一室のことを指しながら“うち”と言ったんだ。

 ––––––––表札に、“高咲”と書かれたあの一室を、私の母は“うち”だと。

32: 2020/08/08(土) 22:00:19.83 ID:7enxlrD1
夜 公園

ギコ……ギコ…

あなた「何が……どうなってるの……」グス

 あの後、私はもう一度学園に戻り、一般生徒や先生に話を聞いてみた。

 結果は、誰も私のことを知らなかった。まるで私という存在そのものが最初から“高咲侑”だったといわんばかりだった。

 驚いたのが一緒に留学していたクラスメイトでさえ、連絡を取ったら私のことを誰一人として覚えてはいなかったことだ。ほんの数時間前空港で別れるまでは確かに私たちは友達だった。

あなた「……」

プルルル

穂乃果『もしもし』

あなた「あの、穂乃果ちゃ––––

穂乃果『?あなた誰?なんで穂乃果の電話番号知ってるの?』

あなた「っ……」

ピッ

33: 2020/08/08(土) 22:04:41.50 ID:7enxlrD1
プルルル  

鞠莉『hey!じゃなくて……もしもし』

あなた「あの……私のことを、わかる?」

鞠莉『……?えっと……』

鞠莉『ごめんなさい、誰かしら……』

あなた『……すみません、間違えました』

鞠莉『え?あ––––––––

プツン

あなた『……』

プルルル

プルルル

……

35: 2020/08/08(土) 22:21:24.23 ID:7enxlrD1
 他のμ's、Aqoursのみんなに連絡を取ったらやっぱり、誰一人として私を覚えている子はいなかった。

あなた「はは……にこさんにストーカーって疑われちゃったよ……電話番号変えられちゃうかな」

あなた「……」

ポロ……

あなた「なんで……こんなことに……」

あなた「私が何したって……いうの……」ポロポロ

37: 2020/08/08(土) 22:27:27.34 ID:7enxlrD1
あなた「……」ボ-ッ

『~~♪』

 スクールアイドルフェスティバルの動画を見ていた。

 どのスクールアイドルもみんなキラキラと輝いていて、見ているだけでトキメキが止まらない。

 この光景が見たくて私は、私たちは様々な問題を乗り越えてきた。

あなた「……はずなのに」ボソリ

 彼女たちはそうは思っていない。苦難を共にしたのは私ではなく、あの高咲侑という生徒なのだから。

38: 2020/08/08(土) 22:29:14.24 ID:7enxlrD1
『~♪』

あなた「アンコール……」

 動画の最後に流れたのは、最後に栞子ちゃんも含めたみんなで歌ったTOKIMEKI Runnersだった。

 最後にして最高のパフォーマンスと呼べるくらいその曲は盛り上がっていた。

 当時会場にいた私はこの最高の曲を自分が手掛けたことに誇りを感じていたんだ。みんなと一緒に、ステージに立てた気がして。

 でもここではあの曲も作ったのは私だとは思われていない。

 ……そもそも、本当に私が作ったんだろうか?おかしいのは私で、みんなが全部正しいんじゃないだろうか。

39: 2020/08/08(土) 22:30:44.11 ID:7enxlrD1
 その方がよほど自然に説明がつく。おかしいのは私。誰にも知られず、居場所もない、帰る場所さえも。

あなた「私は……」

 私は、一体––––––––––––誰なんだろう。

 何も残ってない、家族も、仲間も……私のしてきた全てがなかったんだとしたら……今私は存在するべきなんだろうか。

あなた「どうせ帰る場所もないなら……いっそ……」

40: 2020/08/08(土) 22:32:42.10 ID:7enxlrD1
フラフラ 

あなた「……」

タッタッタッ

あなた「……」

「––––––––」

 どこからか、声が聞こえる様な気がする。

あなた「……」

「––––、––––!」

あなた「……」

フラフラ

「––––––––」

 でも、もうどうでもいいや。どうせそれは私を呼ぶ声じゃない。私はもういない存在なんだから。

あなた「……」

「––––って……」

「待って––––––––ください!」

ガシッ

あなた「……ぇ?」

 腕を、掴まれた。もう誰の手にとってもらうこともないと思っていたのに。

 驚きから、顔を上げてしまった。そして、私に語りかけ、手を掴んだ人の顔を見た。


あなた「……栞子……ちゃん……?」

栞子「はぁっ……はぁ……––––––––はい」

59: 2020/08/09(日) 00:42:25.23 ID:kM1Vjz4+
あなた「なんで…….」

あなた「私のこと……覚えてる……の?」

栞子「……あなたが誰なのか、私は知りません」

あなた「……はは」

 やっぱりそうだ、栞子ちゃんだけ覚えてるなんてそんな都合のいいことなんてあるわけがない。

栞子「ですが……何かが、何か違和感を覚えるんです。部室であなたを見たあの時から」

あなた「え……」

60: 2020/08/09(日) 00:46:50.22 ID:kM1Vjz4+
栞子「あなたの顔も名前も私は知らない。ですが……あなたを見るとこみ上げてくる何かがあるんです」

あなた「栞子ちゃん……」

栞子「その呼び方も、初対面の方にされたら普通はあまり良い気持ちはしませんが何故かあなたからそう呼ばれても不思議と嫌な気持ちにはなりません」

あなた「……」

ポロ

あなた「あ……」

ポロ……ポロ…

 気づけば、私はぽろぽろと涙を溢していた。これはさっきまでの悲しみの涙ではなかった。

栞子「……すみません」

あなた「どうして……栞子ちゃんがあやまってるの?」ポロポロ  

栞子「事情はまだ分かりません……ですが、その涙はきっと私が原因だから……」

あなた「ちがうよ……これは、嬉し涙だから……えへへ、やっぱり栞子ちゃんは優しいね」

栞子「……そうですか」フフ

64: 2020/08/09(日) 00:54:07.62 ID:kM1Vjz4+
……


栞子「どうぞ」

あなた「お邪魔します……栞子ちゃんのお家初めてくるからなんだか緊張しちゃうな」

栞子「そう構えるほどでもないと思いますが……」

ガサゴソ

あなた「何してるの?」

栞子「私があなたを探していた理由です」

あなた「?」

栞子「部室であなたと会い、違和感を覚えた。と言いましたよね」

あなた「うん」

栞子「私もそこまではまだあまり大したことではないと思っていました」

栞子「しかし、家に帰りこれを見つけたんです」

スッ

あなた「これは……ノート?」

68: 2020/08/09(日) 09:11:20.42 ID:kM1Vjz4+
栞子「はい。私のノートです。中に書かれているものは確かに全て私の文字です」

あなた「……何が書かれていたの?」

栞子「……」

ペラ


『何かがおかしい。そう思い始めたのはつい最近のことだ。同好会のみなさんの様子が、少しおかしい気がする。
少し前と比べるとみなさんとても活気が良くなっているようだ。勿論それは悪いことではない。だが、あの方がいなくなってから目に見えて士気が下がっていたというのに一体どうしたのだろうか』

『理由はおそらく、あの高咲さんだろう。彼女が現れてから同好会のみなさんは少しずつ元気を取り戻している』

『かくいう私も、彼女と触れ合うことでモチベーションが上がることは感じていた。しかし同時に、何かが失われていくような、そんな感覚がしていた』

69: 2020/08/09(日) 09:13:19.44 ID:kM1Vjz4+
ペラ

『やはり、おかしい。同好会のみなさんは高咲さんと距離が一段と近くなっていた。彼女のことを部長やなんだと言い』

『最初はみんな冗談だと思っていた。しかし、次第に私もその光景に何もおかしいと感じることがなくなってきていた』

『高咲侑さんはスクールアイドル同好会の部長で、私たちを管理しサポートをしてくれる存在だということを認識し始めていた』

『違う、そうではない。だって私たちの部長は––––––––』

『……どうやら、私ももうすぐ完全にダメになるのだろう』

『その証拠に、私はもう彼女?の名前を思い出せない』

『だからそうなってしまう前に、今残ってある想いをここに綴る』

70: 2020/08/09(日) 09:13:47.72 ID:kM1Vjz4+
『彼女は、私の恩人だ。こんな私でも今こうしてスクールアイドルができているのも彼女が懸命に動いて、同好会のみんながそれに触発されたから今の私がいる』

『それは決して、高咲侑ではない』

『いつかこのノートをみつけた私。どうかおかしな文章だと切り捨てず、よく考えてほしい』

『そしてもし、彼女がいるなら……三船栞子。あなたは彼女を信じてあげてほしい』


あなた「……」

栞子「……文章は以上です」

74: 2020/08/09(日) 09:39:25.69 ID:kM1Vjz4+
栞子「……おかしいですよね、こんな訳の分からない文章」

栞子「普通だったらこんなもの、直視するまでもなくゴミ箱行きなはず」

栞子「ですがそうはしなかった。私はこの私の文字で綴られた文章から目が離せずにいた」

栞子「それに……あなたなら分かると思いますが」

あなた「……うん。栞子ちゃんは、意味もなくこんな文章を残すわけない」

栞子「……」フッ

栞子「これを読んで、私は慌ててあなたを探しました。ここで私が言っている“彼女”とはあなたのことなのだと確信したからです」

栞子「こうしてあなたと話している今も、何か胸が熱くなるような気持ちが込み上げてくるのも更なる証拠でしょう」

77: 2020/08/09(日) 10:03:36.06 ID:kM1Vjz4+
あなた「栞子ちゃん……」

栞子「話してください。あなたのことを」

栞子「私は……信じます。あなたを」

あなた「うん……うん……!」

~間~

栞子「……そうですか」

あなた「……うん」

栞子「誰にも……存在そのものを認められないなんてそんなあまりにも辛過ぎます」

栞子「……なんと言っていいのか」

あなた「……違うよ」

あなた「誰にもじゃない……いまの栞子ちゃんは覚えてないのかもしれない」

あなた「だけど私を“信じてくれる”栞子ちゃんが今ここにいる。それだけで私はとても救われたよ」

あなた「ありがとう。栞子ちゃん」ニコ

栞子「––––––––」ドキ

栞子「そ、そうですか……」

87: 2020/08/09(日) 15:20:44.34 ID:gi9g7wuL
栞子「っ、話を戻しましょう。まずは今回のことが起こった原因からですね」

栞子「……とは言っても、もう何が鍵なのかは承知のはずですよね」

あなた「うん……。“高咲侑”だね」

栞子「はい。今回の件彼女が何かしらに関与しているのはかなりの確率で高いでしょう」

あなた「高咲侑……」

栞子「まずは彼女について私が知っていることをお話ししますね」

栞子「高咲侑。虹ヶ咲学園音楽科に通う2年生。廃部寸前であったスクールアイドル同好会に所属し部を立て直し部長となる」

栞子「好奇心が旺盛で何事にも真剣すぎるほどのめり込んでしまう性格であり、そこが短所でもある」

あなた「……」

栞子「それが原因で歩夢さんとも一度仲違いを起こしている……あくまで、私の記憶上はですが」

88: 2020/08/09(日) 15:24:40.53 ID:cLAPnrtg
あなた「自分で言うのもあれだけど、全部私のこと……だよ」

栞子「そうですか……やはりあなたという存在そのものが高咲侑に全て置き換わっているということですね」

あなた「でも、そんなことが……」

栞子「不可能、と言いたいところですが現実はそうではありません……」

栞子「何よりおそろしいのは存在が置き換わったことにより私たち第三者の記憶までも改竄されているということです」

栞子「一体どうやったのか、私はまるで覚えがありません。それもそのはず、記憶を操作できるのならそんな痕跡は残すはずがありませんから」

89: 2020/08/09(日) 15:26:10.95 ID:cLAPnrtg
栞子「しかしいくら記憶を改竄しようとも、抜け道はあった」

あなた「……さっきのノートだね」

栞子「はい。それに私が違和感を覚えたこともです」

栞子「記憶の改竄が完璧なものならば私はこうしてあなたと話すこともなかったでしょう」

あなた「でも、歩夢ちゃんたちは……」

 思い出す、さっきまでのみんなの目を。

栞子「これは推測ですが……個人差、のようなものがあるのかもしれません」

栞子「記憶の改竄が強いものと、そこまでのもの」

90: 2020/08/09(日) 15:28:54.34 ID:nNgiFMLL
あなた「個人差……」

栞子「あくまで推測なので……私もあまりどうとは言えませんが……」

栞子「ですが……私がこうして違和感を覚えているというのに同好会のみなさんが感じていないのはやはり妙です」

栞子「あなたと彼女たちは私より長い期間共に過ごし、絆を深めてきた仲のはずなのに……」

栞子「特に、歩夢さんは……」

あなた「歩夢ちゃん……」

栞子「……大丈夫です。あなたたち二人なら」

栞子「私は記憶上あなたと歩夢さんが一緒なところは見たことがありません。ですが配役が置き換わってるだけということならあなたと歩夢さんの関係は分かります」

栞子「歩夢さんなら、きっとあなたのことを思い出してくれるはずです」

あなた「……うん!」

96: 2020/08/09(日) 16:18:38.37 ID:nNgiFMLL
グ-  

あなた「あ……///」

栞子「……ふふ」

あなた「ご、ごめん……」

栞子「いえ、それは元気な証です。家の者には友人が泊まると伝えているので食事も用意されているはずです」

あなた「え、そんな……いいの?」

栞子「勿論です。お風呂もどうぞお構いなく使ってください」

あなた「栞子ちゃん……ありがとう!」

97: 2020/08/09(日) 16:19:06.95 ID:nNgiFMLL
……


あなた「ふぅ……」ポカポカ

栞子「気持ちが良さそうで安心しました。食事は口にあいましたか?」

あなた「うん!ご飯も美味しかったしお風呂も気持ちよかった!さすがって思ったよ……」

栞子「それは何よりです」

栞子「寝室ですが客人用の部屋が何部屋かありますのでそちらに……」

あなた「あの……栞子ちゃん」

栞子「はい、どうしました?」

あなた「その……もしよかったらなんだけど……」



あなた「一緒に寝ちゃ……ダメかな?」

104: 2020/08/09(日) 16:49:39.21 ID:badX7670
……


あなた「……」

栞子「……」

あなた「……ごめんね、こんなこと頼んじゃって」

栞子「いえ……」

あなた「怖いんだ……ちょっとでも離れると栞子ちゃんも私から遠ざかっていくような気がして」

あなた「……」ブルブル

栞子「……大丈夫です」

ギュ

栞子「私は……離れませんよ」

あなた「……ありがとう」

……

112: 2020/08/09(日) 21:52:32.78 ID:kM1Vjz4+
ベランダ

歩夢「……」

ガラ  

侑「どうしたの?歩夢。何か考え事?」

歩夢「あ、侑ちゃん。……うん」

歩夢「放課後に部室にいたあの子のことなんだけど……」

ピク

侑「あの子がどうかしたの?」

歩夢「よく分からないこと言ってて、ちょっと戸惑いもしたんだけど……なんだか変なの」

歩夢「侑ちゃんのことも変に言うなんて、許せない、はずなんだけど……」

歩夢「あの子のこと、何も知らないのに……それでもなんだか、そんな子じゃないって思えて……」

侑「……」

114: 2020/08/09(日) 22:17:45.41 ID:kM1Vjz4+
歩夢「なんだか……もやもやしちゃって」

歩夢「さっきみんなであんなこと言っちゃってどこか行っちゃって……その時のあの子の顔、とても辛そうだった」

歩夢「あの顔が……頭から離れないの」

歩夢「あんなあの子……私は見たくないよ……」

侑「……」

歩夢「ねえ侑ちゃん。侑ちゃんなら何か知ってるんじゃない?あの子、侑ちゃんのことを……

侑「歩夢」

歩夢「?どうし

侑「私の目を見て」

歩夢「え?あ––––––––––––」トロン

歩夢「……」ボ-ッ

115: 2020/08/09(日) 22:18:11.49 ID:kM1Vjz4+
歩夢「……」

侑「いい?歩夢。歩夢は何も難しいこと考えなくていいんだよ」

侑「歩夢の幼馴染は私。歩夢は私のことだけ信じていればいいんだよ」

歩夢「私の幼馴染は……侑ちゃん」

侑「そう。あんな子のことなんてどうでもいい。幼馴染は私なんだから」

侑「わかった?」

歩夢「……うん」ボ-ッ

侑「……」スッ

歩夢「……あれっ?私……」パチパチ 

侑「あはは、もう夜だからね。眠くてぼーっとしてたんじゃない」

歩夢「えへへ……ごめんね」

歩夢「何か考え事してたような……」

侑「どうでもいいことでも考えちゃってたんじゃない?」

歩夢「うーん……そうだね」

歩夢「忘れるってことはきっとどうでもいいことだよね」ニコ

121: 2020/08/10(月) 17:55:25.02 ID:tDAnVtuO
翌朝

あなた「う……ううん……」

あなた「は……」パチ

栞子「あ、起きましたか」

あなた「栞子ちゃん……そっか……やっぱり夢じゃなかったか……」

栞子「もう少し眠っていても大丈夫ですよ?」

あなた「いや、起きるよ。時差ボケも治したいし」

あなた「朝早いんだね栞子ちゃん」

栞子「朝早くに登校して生徒会の仕事を少しでも処理したいんです」

あなた「そっか……」

123: 2020/08/10(月) 18:22:13.59 ID:tDAnVtuO
あなた「学校、行きたいな。やっぱり手がかりを掴むにはみんなと、そして高咲侑のことも知らないといけないし」

栞子「そうですか。いえ、確かにその通りですね」

栞子「我が校は所謂マンモス校ですし生徒以外の人間が一人増えようが気付かれはしないでしょう。全校生徒覚えている人なんてそれこそ一握りですし」

栞子「授業中は生徒会室にいれば大丈夫な筈です」

あなた「ありがとう、栞子ちゃん」

栞子「それでは行きましょうか」

124: 2020/08/10(月) 18:23:15.68 ID:tDAnVtuO
テクテク

あなた「ふわぁ……」

あなた「あ、ごめんね……」

栞子「いえ……それより、妙なんです」

あなた「妙?」

栞子「はい。あなたは海外短期留学から帰ってきたと仰っていましたよね」

あなた「うん」

栞子「そう。音楽科は毎年短期留学のカリキュラムがある。しかし私たちはここ2ヶ月の高咲さんの記憶がある」

あなた「あ……」

栞子「はい。矛盾しています。ですがその矛盾すらこの2ヶ月間私たちは感じることができませんでした」

あなた「音楽科は短期留学してる、だけど高咲侑とは交流していた……」

栞子「おそらくそういった意識操作のようなものもできるのでしょう」

あなた「……」

栞子「認識のズレを理解するのも、解決の糸口になるかもしれません」

あなた「うん。わかったよ」

125: 2020/08/10(月) 19:13:29.89 ID:tDAnVtuO
……


カタカタ

あなた「こっちの資料これでいいかな?」

栞子「はい。完璧です。ありがとうございます」

あなた「じゃあ次はこっちを……」

栞子「……」ジッ  

あなた「……ん?どうしたの?」

栞子「……いえ、なんだかこうして生徒会の仕事を一緒にしていると懐かしい感じがして……」

栞子「私の記憶では確かに高咲さんに仕事を手伝ってもらったりしていました」

栞子「しかし、あなたと一緒に作業をしている今の方がずっとしっくりしたものを感じます」

あなた「……そっか」

栞子「はい」

 私は、また泣いてしまいそうになったけど何度も栞子ちゃんを心配させないように必死に込み上げてくるものを抑え込みながら作業を進めた。

126: 2020/08/10(月) 19:14:00.46 ID:tDAnVtuO
栞子「それでは私は教室に行きます」

あなた「うん、頑張って!私は休み時間とかで生徒が出歩いてる時に色々と調べてみるよ」

栞子「くれぐれも無理はしないでくださいね」

あなた「うん!」

栞子「では」スッ

あなた「あ……」

栞子「……」

ギュ

栞子「大丈夫ですから」

あなた「うん……」

127: 2020/08/10(月) 19:14:37.11 ID:tDAnVtuO
テクテク  

栞子(本当は今のあの方を放ってどこかに行きたくはありませんけどここで私が下手に行動すれば不審に思われてしまう……)

栞子(すみません……)

テクテク      

ピタ…

「あ、おはよう。……栞子ちゃん」

栞子「っ……。おはようございます。高咲さん」

侑「ありゃ、もー栞子ちゃんてば。ようやく下の名前で呼んでくれると思ったらまた元に戻っちゃってるよ」

栞子「す、すみません。まだあまり慣れていなくて……」

侑「あはは、そう堅くならなくてもいいんだからね」

侑「……ところでさ」

侑「栞子ちゃん……何かあった?」

130: 2020/08/10(月) 19:41:17.57 ID:tDAnVtuO
テクテク

あなた(ほんとに歩いてても特に怪しまれないなぁ……さすがニジガク)

あなた(しかし調べるっていってもどうしようかな……)

あなた「……ん?」

果林「……」キョロキョロ

あなた「あのー……果林さん?」

果林「!な、なに?……て、キミは昨日の……」

果林「なぁに、昨日も急にどこか行っちゃったし。また何かおかしなこと言うつもり?」

あなた「あ……えっと……」

あなた「昨日はごめんなさい!ちょっとした出来心でつい悪戯しちゃったんです!」ペコ
 
果林「……」

あなた(……ちょっと苦しいかな?)

果林「……なーんだ、そうだったのね」フフ

あなた(果林さんでよかった……)

131: 2020/08/10(月) 19:56:21.33 ID:tDAnVtuO
果林「うちにも悪戯好きな子がいるから気持ちは分からなくもないわ」

果林「でもあんまり人を傷つける悪戯はしちゃダメよ?」

あなた「は、はい!すみません」

果林「それじゃあね」

スタスタ  

あなた「あ、あの!」

果林「?どうしたの?」

あなた「もしかして……道に迷ってませんか?」

果林「え……」

果林「そそ、そんなことないわよ!?私はこの後教室移動だったから被服室に向かってるだけで……」

あなた「そっち完全に逆方向ですけど」

果林「……」

あなた「……」

あなた「……迷ってますよね」

果林「……はい」

138: 2020/08/10(月) 22:12:51.73 ID:tDAnVtuO
テクテク

果林「あのね、いつもは違うのよ?」

果林「自分の教室から被服室までのルートは完全に覚えているの」

果林「でも今日は本当に偶々、前の授業が普段使わない教室でだったからそこからの行き方が曖昧だったわけで」

果林「少しうとうとしてたら友達も先に行っちゃってて……」

あなた「あはは……」

果林「本当なんだから!」

テクテク

あなた「あ、着いたよ。あそこが被服室」

果林「すぐ着いたわね……」

あなた(普通は迷わないもん……)

139: 2020/08/10(月) 22:13:27.07 ID:tDAnVtuO
果林「その……ありがとね」

あなた「そんな、これくらい全然いいよ」

果林「……なんだか、不思議だわ」

あなた「?」

果林「……ううん、なんでもないわ」

果林「それじゃあ、またね」フリ

あなた「あ……うん」

あなた(行っちゃった……何もできなかったなぁ)

あなた(喋ってる感じいつもの果林さんと変わらなかったし違和感なく別れちゃった)

あなた「またね、かぁ」

140: 2020/08/10(月) 22:15:19.37 ID:tDAnVtuO
あなた(みんな記憶は違っても性格は変わってないみたいだし……このままもし戻らなかったとしてもまた前みたいに友達になれるのかな……)

あなた「!」ハッ

あなた「いかんいかん!そんなこと考えちゃダメだ!絶対戻すんだ、みんなを!」

あなた(会ってみよう、みんなに……)

141: 2020/08/10(月) 22:16:01.19 ID:tDAnVtuO
 私は学校をうろつき同好会のみんなと接触を図った。最初はみんな昨日のことで少し警戒していたけど誤魔化せばすぐにいつものように話すことができた。

愛「あはは、もーダメだぞー悪戯は!いかん悪戯は誠に遺憾!なんつって!」

璃奈「そのダジャレはどうなんだろう……璃奈ちゃんボード『?』」

あなた「ぷぴょっwww」

璃奈「あれ?ひょっとしてウケてる?璃奈ちゃんボード『マジか』」

愛「お!君わかってんじゃん!愛さんの駄洒落そんなに笑ってくれる子がいるなんて!」

142: 2020/08/10(月) 22:16:24.31 ID:tDAnVtuO
あなた「ん……?」

愛「あれ……?いや、うちのぶちょーも笑ってくれた……よね?」

侑『ふふ、愛ちゃんのギャグ面白いね!』

愛「いや、なんかぶちょーの笑い方ってもうちょっと特徴的だったような……あれー?」

璃奈「どうしたの愛さん」

愛「ん、いや……なんでもない、かな?」

あなた(今のって……)

143: 2020/08/10(月) 22:17:03.04 ID:tDAnVtuO
愛「あ!ごめんねなんか急に」

あなた「あ、いや……別に大丈夫だよ」

愛「そうだ!放課後もう一度部室においでよ!君とぶちょーってなんだか気が合いそうだし、悪戯のことちゃんと話せばすぐ仲良しになれると思うよ!」

あなた「え?」

あなた(……いや、けどやっぱり高咲侑とはちゃんと話さないといけないし……それにいつまでもこそこそしているわけにもいかないか)

璃奈「行けない?」

あなた「……じゃあ、お邪魔しようかな」

145: 2020/08/10(月) 23:47:42.92 ID:tDAnVtuO
栞子「……それで、放課後はまた部室に、というわけですか」

あなた「うん」

栞子「それが良いのかもしれません。避けては通れないものですし」

栞子「……先ほど、高咲さんと接触しました」

あなた「!」

栞子「正直、また何かされるのではと思いましたが特に何もされませんでした」

栞子「もしかしたら記憶を操作するのには何か条件のようなものがあって私に使うことができなかったのではないでしょうか」

あなた「そ、そっか……よかったよ…栞子ちゃんが何かされたら私……」

栞子「もう、心配性ですね」

栞子「しかしタイミング的に私に接触してきたのも意図的かもしれません。注意していきましょう」

あなた「うん」

146: 2020/08/10(月) 23:48:30.22 ID:tDAnVtuO
放課後

ガチャ

あなた「……」

愛「お!きたきた!しおってぃーもいるじゃーん!」

彼方「なになに、栞子ちゃんその子と仲良かったの?」

栞子「はい」

かすみ「しお子がこんな素直に認めるなんて……」

しずく「それはちょっと失礼だよ……」

147: 2020/08/11(火) 00:26:06.76 ID:dD2DM7yX
あなた「高咲さんはまだ来てないんだね」

せつ菜「あの人は忙しい方ですからね!」

かすみ「どうせ歩夢先輩も一緒ですよ!もー!」プンプン

あなた(歩夢ちゃん……会えなかったな……)

愛「そのうちくるからもうちょっと待ってなよ!」

かすみ「あ!ならかすみんがお茶でも入れますよ!」ニヒ

璃奈「む。その顔、何か悪戯する気。璃奈ちゃんボード『ジーっ』」

エマ「ダメだよかすみちゃん。お客さんなんだから」

かすみ「す、するなんて言ってないじゃないですか!」

あなた(お客さん……かぁ。かすみちゃん、私には悪戯してこなかったんだけどなぁ……)

148: 2020/08/11(火) 00:37:09.55 ID:dD2DM7yX
あなた「……ん?この写真……」コト

no title



あなた(これはまだ栞子ちゃんが入る前にみんなで撮った……)

あなた(でも本来いないはずの高咲侑も写ってる……合成?)

あなた(いや……でも……)

愛「んー?どうしたの?」

あなた「愛ちゃん……この写真なんだけど」

愛「あ、それ?ちょっと前に近くで撮ったんだよね」

しずく「いつみても彼方さんの主張激しいですよね……」

彼方「照れるぜ」

せつ菜「ちょうど璃奈さんを守護らないとごっこしてた時ですね!!」

152: 2020/08/11(火) 01:02:56.44 ID:dD2DM7yX
あなた「ねぇ……みんな、この写真……どうやって撮った?」

かすみ「どうやってって……」

愛「そりゃ撮ってもらって……」

しずく「あれ?でも誰に……私たちは全員写ってますし栞子さんもこの時はまだいなかったですし……」

果林「この自然体な感じ……タイマーってわけでもないわよね」

彼方「あれ……彼方ちゃん、この写真撮る時……驚かせようと思ってこんなひょっこりしたはずなんだけど……あれ……誰を驚かせようとしてたんだっけ」

あなた「!」

あなた「みんな!よくこの時のこと思い出してみて!」

158: 2020/08/11(火) 01:44:39.28 ID:dD2DM7yX
かすみ「撮った時……」

しずく「かすみさんの妙に媚びた目線、歩夢さんのはしゃぎよう……何かが引っかかります」

エマ「うん、歩夢ちゃんのこんな顔、あの子以外に……」

彼方「うぅ……なんだか、彼方ちゃん頭が痛くなってきた……」

愛「あ、アタシも……あれ、えっと……」

––––––––––––
–––––––

「みんなー、こっちむいて!」

歩夢「!」フリフリ

かすみ「はっ!(可愛いアピールしないと!)」

かすみ「えへ」キャルン

愛「かーすかす何変なポーズしてんの!」ガシッ

かすみ「あ、愛先輩邪魔しないでください!あとかすみん!」

「あはは……じゃあ撮るよー

彼方「ぬっ」

「わっ!」パシャッ

彼方「ふふ、驚いた~?」

「も~!彼方さんてば~」

みんな「「「あはははは」」」

–––––––
––––––––––––

160: 2020/08/11(火) 02:01:37.62 ID:dD2DM7yX
愛「あ、あれ……今なんか……」

しずく「はい……撮った時の記憶が……でもこれだと先輩は……?」

せつ菜「???????????」

璃奈「……」

かすみ「うぅ……かすみんも、頭、痛く……」ズキズキ

あなた(やっぱり!矛盾点が鍵で記憶が……!!)

栞子「……」コクン

あなた「みんな!もうちょっと!もうちょっと思い出してみて!」

彼方「え……っと……」

ガチャ

侑「みんなどうしたの?」

164: 2020/08/11(火) 02:16:53.42 ID:dD2DM7yX
あなた「っ!」

栞子「!」

侑「ちょっとちょっと、そんなに驚かなくてもいいのに」

愛「ぶ、ちょー……?」

かすみ「せん……ぱい……」

璃奈「……」

侑「みんなそんなにフラフラして大丈夫?」

歩夢「大変、お薬あったかな?」

彼方「侑ちゃんは部長で……でも写真を撮ったのも部長で……あれ……あれ……」フラフラ

侑「あー……」チラ

侑「そっか……その写真……9人だけだったから都合いいと思って私も中に入れといたけど逆に失敗だったか……」

165: 2020/08/11(火) 02:19:49.02 ID:dD2DM7yX
あなた「っ……それは、認めてるってこと……?」

栞子「高咲さん、やはりあなたが……」

侑「わっ、怖い顔しないでよ」

歩夢「栞子ちゃん、どうしちゃったの?ちょっと怖い顔になってるよ」

歩夢「えっと……“そこの人”も、どうして侑ちゃんのことそんな目で見るの?」

あなた「––––––––––––っっ」ズキ

栞子「!歩夢さん!!!」

171: 2020/08/11(火) 15:23:11.29 ID:dD2DM7yX
歩夢「どうしたの?栞子ちゃん」

栞子「あなたは……本当に良いのですか?この方は歩夢さんにとって大事な……幼馴染なんですよ」

歩夢「……」

歩夢「違うよ。私の幼馴染は侑ちゃんしかいないよ」

歩夢「栞子ちゃんでもそれは怒るよ」

栞子「っ……」

侑「無理だよ、歩夢ちゃんは私の幼馴染なんだから」

あなた「……何言って、全部君が……」

172: 2020/08/11(火) 15:29:45.85 ID:dD2DM7yX
侑「そんな顔しないでよ」

侑「私はさ、あなたもちゃんと幸せにする気なんだよ?」

あなた「……何を」

侑「思った以上に帰ってくるのが急でちょっとズレちゃったけど最初から私はあなたにも“居場所”を用意する気だったんだ」

侑「私に身を委ねてくれれば帰る場所も……それこそ同好会にだっていられるよ?あ!アイドルやってみるのもいいんじゃない?栞子ちゃんとデュエットとか……」

あなた「ふざけないで!」

侑「ふざけてなんかないよ。たしかに今はそう思うかもしれないけどちゃんと幸せだって感じられるようにするから安心してよ」

174: 2020/08/11(火) 15:49:49.34 ID:dD2DM7yX
侑「みんなをみてみなよ」

かすみ「うぅ~」

彼方「なんだよこれぇ……」

しずく「頭が……」

エマ「くらくらするよ……」

果林「どうして……」

璃奈「……」

せつ菜「っ……何かに目覚める兆し……!?」

愛「何がなんだかわかんないよ……!」

侑「あなたが中途半端に刺激するから苦しんでる。可哀想だよ」

176: 2020/08/11(火) 16:32:13.58 ID:dD2DM7yX
あなた「全部……全部君が……」

侑「ふぅ……まぁいいや。歩夢ちゃん、ちょっとその子を押さえてくれない?」

歩夢「うん、わかった」スッ

ガシッ 

あなた「っつ!でも歩夢ちゃんくらいなら私でも……」

侑「だろうね、だから……」


侑「栞子ちゃん、お願い」

あなた「え––––––––––––」

栞子「はい……」

ガシッ

183: 2020/08/12(水) 00:46:58.61 ID:fcUOb8Z2
あなた「し、栞子ちゃん……?」

栞子「……!わ、私はなぜ……!?カラダが……」ググ

侑「私が頼み事をしたんだもん、そうなるよ」

栞子「高咲さん、あなたはいったい私に何を……!」キッ

侑「さっき栞子ちゃんにはちょっと細工させてもらったんだ」

侑「『私のお願いは聞いてくれる』『あの子を放課後部室まで誘導して』ってね」

侑「後者の方は必要なかったと思うけど」

あなた「なっ……!」

184: 2020/08/12(水) 00:51:01.40 ID:fcUOb8Z2
栞子「……何故、私の記憶を改竄しなかったのですか?私はバグのようなもの……記憶ごと変えた方が都合が良かったのでは?」

せつ菜「バグ!?」

侑「そうしようと思ったけどあえてしなかったんだ」

侑「この子に、この状況で絶望してもらうにはそっちの方が面白いと思ったから」

あなた「……!!」

栞子「……良い性格していますね」

侑「正直、ただの嫉妬だけどね」

185: 2020/08/12(水) 01:02:57.29 ID:fcUOb8Z2
侑「まぁもういっか」

侑「じゃあ二人とも、その子をちゃんとおさえといてね」

歩夢「うんっ」ググ

栞子「っ…は……い……!」ググ

あなた「うぅ……!(さ、流石に二人にこんな強く抑え込まれると……)」

侑「大丈夫、すぐに––––––––––––」

「ピキ--!!!」

シュルル

歩夢「きゃっ!!」

栞子「っ!」

侑「!?」

あなた「えっ……?」

186: 2020/08/12(水) 01:04:12.36 ID:fcUOb8Z2
侑「これは……思わぬお客さんだ……」

歩夢「なんで……」

歩夢「なんで……その子を助けるの……?」

歩夢「サスケ……」

サスケ「シャ-!!」シュルルル

207: 2020/08/12(水) 22:55:29.19 ID:7NF11Nbh
あなた「サスケ……もしかして私のことわかるの……?」

サスケ「ピキ-♪」スリスリ

あなた「サスケェ……」ペロペロ

歩夢「サスケが初めての人にこんなに懐くなんて……そんなわけないのに……」

侑「……そんなにおかしいことじゃないよ」

歩夢「でも……」

サスケ「シャ-!!!」

歩夢「サスケ……なんで侑ちゃんにそんなに威嚇してるの……?分からないの?侑ちゃんだよ?」

210: 2020/08/12(水) 23:07:06.68 ID:fcUOb8Z2
歩夢「あ、あれ……なんで……だってサスケはずっと侑ちゃんと仲良しで……あ、あれ……?」

侑「……ただの蛇畜生だと思って放置してずっと大人しかったと思ったら息を潜めていたってわけか……」

歩夢「ゆ、侑ちゃん?サスケのことそんな風に言っちゃダメだよ……」

侑「強力に仕込んだはずなのに歩夢ちゃんの認識がまた揺れるなんて……」

侑「でもそれならまたかけ直せばいいだけ……!」

栞子(まずい……!!)

あなた「やめ––––––––

サスケ「キ-!」

シュルル

歩夢「きゃっ!?さ、サスケ!?か、顔に!?」

213: 2020/08/12(水) 23:11:32.26 ID:fcUOb8Z2
侑「!?」

歩夢「さ、サスケ……これじゃ何も見えないよぉ…」

あなた「……?」

栞子(記憶を操作できていない……?……そうか!)

栞子「眼です!彼女はおそらく眼を使って記憶を改竄しているんです!」

あなた「!そうか、だからサスケは歩夢ちゃんの視界を……!!」

侑「そんなことに気付いていたなんて……大した蛇だ」

あなた「種は破れた!これならもう怖くないよ!」

218: 2020/08/12(水) 23:29:03.73 ID:fcUOb8Z2
侑「種が破れたところで根本的な解決策はないし本当に私と目を合わせないようにしながら動けるの?」

栞子(たしかに彼女の言うことも一理ありますが……)

あなた「そんなの、常に足元を注意して動きを洞察して対処すればいいだけだもん!」

侑「……」フゥ

栞子(溜息……まぁ分からなくないですが……)

あなた「それにさ……根本的な策はないって言ったけど本当にそうかな?」

あなた「現にみんなこうして記憶の齟齬で苦しんでいるってことは元に戻すのも不可能じゃないはずだよ」

侑「……」

225: 2020/08/12(水) 23:45:02.72 ID:fcUOb8Z2
歩夢「なに……何の話をしてるの……?」

侑「何でもないよ。この子がちょっと悪ふざけしてるだけだよ」

歩夢「でもそんな雰囲気じゃ……それに……その子は……」

侑(私の言うことに疑問を持たないという暗示も解けてる……?)ギリ

あなた「やはり……か」

歩夢「ねえ、侑ちゃん。私その子とちゃんとお話ししたいよ。侑ちゃんとも」

歩夢「こんな感じじゃなくて、みんなで楽しくしようよ……」

あなた「歩夢ちゃん……」

227: 2020/08/13(木) 00:15:53.84 ID:C8yZ/sQM
侑「っ!歩夢は黙ってて!私は幼馴染だよ!?」

歩夢「!」ビクッ

歩夢「違う……違うよ……私の、私の大好きな幼馴染はこんな人を怒鳴りつけるような子じゃないよ……」

侑「そんなことない!私は歩夢の幼馴染––––––––


あなた「ねぇ、歩夢ちゃん。覚えてる?幼稚園のお遊戯会の時のこと」

歩夢「あ––––––––」

あなた「あの時の歩夢ちゃん、すごく緊張しててさ。けど本番前、二人で手を繋いで頑張ろうって言ったよね」


ギュ

あなた「こんな風に」

歩夢「あ……あ……」ポロ、ポロ……

歩夢「覚え、てるよ……だって……だって……」


歩夢「“あなた”との……大切な思い出だもん……」ポロポロ

栞子「!歩夢さん……!(すごく感動的な筈なのにサスケに目元でトグロを巻かれているせいでなんとも奇妙な光景になっていますが)」

233: 2020/08/13(木) 01:35:37.65 ID:C8yZ/sQM
侑「っっ!」

歩夢「侑ちゃん……もうやめようよ」

あなた「……」

栞子「……」

侑「やめないよ!運良く歩夢が元に戻ったからなんなの!?目さえ合わせればまた私の瞳術でそんなの関係なくなるよ!」

侑「それに、私にはまだみんながいる!」

侑「ね!みんな!」


愛「う……うぅ……」

かすみ「か、かすみん……もう何が何だか……」

エマ「何かおかしいような……」

侑「––––––––!」

234: 2020/08/13(木) 01:45:44.76 ID:C8yZ/sQM
侑「何言ってるの!みんなちゃんと思い出してよ!」

侑「愛ちゃん、藍ちゃんがダジャレ好きになったのは誰の影響?」

侑「彼方さんが辛い思いしてまで勉強頑張るのは誰の為?」

侑「かすみちゃんが可愛いに拘る原因は?」

侑「果林さんの面倒を毎日見てあげてるのは?」

侑「璃奈ちゃんボードを考えたのは誰?」

侑「しずくちゃんのペットは?」

侑「エマさんがスクールアイドルになろうとしたきっかけは?」

侑「せつ菜ちゃんの名前の由来は?」


侑「全部、私だよね?」キィィィィィン

235: 2020/08/13(木) 01:45:58.98 ID:C8yZ/sQM
愛「え……?で、でも……」

璃奈「……」

かすみ「お、おかしいですよ……それって……」

せつ菜「!!!??!?????」

彼方「彼方ちゃん……は……」

果林「お世話……でもキミにそんな母性は……」

エマ「あなたはアイドルじゃ……」

しずく「ペット……」

侑「な––––––––効果が……!」

栞子「……完全に墓穴を掘りましたね」

栞子「動揺したからか、明らかに矛盾が大きい過去を挟み込むなんて……逆効果です」

侑「っ––––––––!」

栞子「さぁ!今なら皆さんにあなたの声が届く筈です!」

あなた「うん……!」

236: 2020/08/13(木) 01:46:14.96 ID:C8yZ/sQM
明日の夜には終わると思います

255: 2020/08/13(木) 22:47:33.38 ID:C8yZ/sQM
あなた「みんな、これを見て!」バッ

歩夢「あ……それって……」

あなた「私がバカな時、歩夢ちゃんとみんなで書いてくれたノートだよ」

あなた「私、留学中もこのノートを読んでみんなに元気をもらってたんだ!」


かすみ「あ……」

愛「そうだ……アタシ、歩夢に頼まれてぶちょーにメッセージを書いたんだ……」

しずく「そうです……先輩には短編脚本とメッセージを送ったんでした……」

侑「なっ……!」

エマ「そうだよ……部長はもっと私に……侑ちゃんはそんなことしてこなかったし……」

果林「さっき感じたあの感覚はやっぱりあなたは……」

彼方「なんてこった、彼方ちゃんもしかしてとんでもない寝ぼけ方をしてしまっていたのか……?」

せつ菜「わたしはしょうきにもどりました!!!」

258: 2020/08/13(木) 23:14:25.81 ID:C8yZ/sQM
侑「そ、そんな!もう一度、今度はちゃんと」キィィィン

璃奈「……もう無駄だよ」

璃奈「ここまで大きな矛盾を作ってしまったら再度術をかけるのにまた時間がかかるはずだもん」

侑「……っ!」

あなた「璃奈ちゃん……?」

璃奈「……ありがとう。私もあなたのおかげで正気に戻れた」


璃奈「……自分の作ったものに良いようにされるなんて発明家として失格。璃奈ちゃんボード『しょんぼり』」

あなた「つく………った……?」

261: 2020/08/13(木) 23:29:23.23 ID:C8yZ/sQM
侑「……」

栞子「???」

あなた「つ、作ったって……璃奈ちゃんが……?」

璃奈「Exactly。璃奈ちゃんボード『そのとおりでございます』」

あなた「ということはこの、高咲侑って……き、機械なの……?」

璃奈「そうとも言えるし、そうでないとも言える」

璃奈「正確にはこの高咲侑はあなたの細胞を利用して作られた人工生命体。簡単に言えばクローンのようなもの。機械の体ではなくちゃんと生物としての機能を備えている」

あなた「!?」

265: 2020/08/13(木) 23:48:43.38 ID:C8yZ/sQM
せつ菜「部長とサスケ……どこに行きました?!」

栞子「は?」

璃奈「……まだなんらかの記憶の乱れはあると思うけど時期に全員元に戻る筈」

あなた「く、クローンって……」

璃奈「前にコピー人形を作った時にこの技術を応用すれば生物も作れると思ったの」

あなた「だからってなんで私のクローンなんかを……」

璃奈「その説明をする前にあなたが留学していった後の状況を理解する必要がある。少し長くなるよ」

あなた「私が留学した後……?」

267: 2020/08/14(金) 00:19:49.67 ID:Rt1J5MN1
~~~部長留学から3週間後

歩夢「……」

かすみ「はぁ……」

彼方「zzz……」

栞子「み、みなさんどうしたんですか?今日はダンスレッスンをする日では?」

愛「あ、しおってぃー。うん、もちろん練習はちゃんとするよ?でもなんだか……ねー……」

果林「その……やる気はあるんだけど力がでないというか……」

エマ「あの子がいないとなんだか……」

菜々「しずくさんも演劇部の方に出ていますし……私も最近ではせつ菜モードになるのもなんだか疲れてしまって……」

栞子「みなさん……」

271: 2020/08/14(金) 00:43:05.13 ID:Rt1J5MN1
歩夢「ごめんね、栞子ちゃん……ちゃんと練習しないとだよね」

歩夢「あなた、今日の練習は……」

歩夢「あ……」

栞子「歩夢さん……」

璃奈「……ふむ」

 このままでは同好会が危うい。そう思った私は急いで研究に取りかかった。もちろん私もあなたがいなくて寂しかったのもある。


~~~1週間後

璃奈「今日はみんなに紹介したい子がいるの」

愛「りなりーが?」

かすみ「いまそんな気分じゃないんだけどな~」

璃奈「入って」

ガチャ

侑「はじめまして、高咲侑です」ニコ

歩夢「………」


歩夢「なに……?ソレ……?」

272: 2020/08/14(金) 00:58:59.63 ID:Rt1J5MN1
歩夢「璃奈ちゃん……私でもちょっとこれは……」

璃奈「!?ゆ、侑!」

侑「えっ!?そ、そんな……いきなりはダメだよ!」

璃奈「い、いいから!」

侑「うぅ……ご、ごめん!みんな」キイィィィィン

みんな「!!!」

かすみ「……まぁよくみたらかすみん程じゃないけど可愛い顔してますね」

愛「だよね~愛嬌があるっていうか……」

栞子「っ……(何……今の違和感……)」

璃奈(成功した。まだ効果は薄いけど継続していけば…)

歩夢「ねぇ……いま、何したの?」

璃奈「!?(き、効いてない?)」

273: 2020/08/14(金) 01:09:45.75 ID:Rt1J5MN1
 正直歩夢さんのあなたへの想いは想像の遥か先をいっていた。けど今回一番元気にしたかったのは歩夢さんだったから私は能力の強化を行った。
歩夢さんの脳波データを参考にしたりしてようやく歩夢さんにも侑の瞳術をかけることができた。

 でも能力の強化を行ったのが仇になった。まさか私まで嵌められる事になるなんて思わなかった。

璃奈「なんで?あなたの役目はみんなを元気付ける事でこの子の居場所を奪うことじゃなかったのに」

侑「……そんなの」

侑「そんなの!居心地がよかったからに決まってるじゃん!」

あなた「!!」

璃奈「?」

274: 2020/08/14(金) 01:20:49.42 ID:Rt1J5MN1
侑「生まれてまもなく右も左も分からない私は、ただ言われた通りに最初はみんなと楽しくお話しして元気づけようとしていた」

侑「でも、みんなと触れていくうちにだんだん私の方がみんなに惹かれていったんだ。それが偽物の感情だとしても」

侑「私は怖くなったの!その子が帰ってきたらみんな私のこと忘れてその子にべったりになっちゃう……そんなの嫌だ……」

あなた「……だから、記憶を偽造してまで……」

侑「私があなたになれば、私はずっとみんなと一緒にいられる。だから……」

栞子「ですが。だからといって高咲さん、あなたのしたことは人道を外れています」

侑「……」

277: 2020/08/14(金) 01:33:08.04 ID:Rt1J5MN1
侑「私も、そんな酷い目に合わせようとかは思ってなかったよ……でも」

侑「能力を緩めたりとか何もしてないのに歩夢ちゃんがこの子のことを……それで……」

栞子「今日ここでこの方にも瞳術を使い自分の都合の良い世界にしようとしたわけですね」

侑「……」

侑「やっぱり烏滸がましかったのかな。ただのクローンの私が、何かを求めることなんて」

璃奈「それはそう––––––––

かすみ「りな子!今ちょっと黙って!」サッ

しずく「同感です!」スッ

279: 2020/08/14(金) 01:47:30.76 ID:Rt1J5MN1
あなた「たしかに、君のやったことのせいで私は結構傷ついた。少しイケないことが頭をよぎったこともあった」

あなた「でも……君に何かを求める権利がないなんてことはあるはずないよ」

侑「……」

栞子「あなたは……それで良いのですか?」

あなた「……この子の事情や気持ちを聞いたらなんか、うん……そう思ってさ」

あなた「まぁ私のクローン?らしいし自分の子供みたいだし……」アハハ

栞子「……そうですか」フゥ

侑「……」ポロ

侑「う……うぅ……」ポロポロ

侑「ごめん、なさい……わたし……」ポロポロ……

298: 2020/08/14(金) 12:27:37.78 ID:Rt1J5MN1
璃奈「まさかここまで感情豊かになるとは思わなかった。反省してる」

かすみ「というかこれって大体りな子が原因なんじゃないの?」

璃奈「半分は当たっている。耳が痛い」

あなた(璃奈ちゃんもきっと生んだものを愛するってことが理解できなかっただけなんだ……ちゃんとそういうことも教えないと)

あなた「璃奈ちゃん、この子なんだけどさ……まず他の人たちを元に戻すのが先だけどその後は……」

璃奈「わかった。手続きは全部私がやる。流石にそれくらいしないと」

侑「え……?」

歩夢「ね、ねぇサスケ……もう離しても大丈夫だよ……」

サスケ「ピキ-」シュルル

300: 2020/08/14(金) 12:45:00.68 ID:Rt1J5MN1
シュルル

歩夢「あ……」パチ

あなた「歩夢ちゃん……」

歩夢「っ!」タタタ   

ダキッ
 
ギュ-ッ

栞子「!?」

あなた「あ、歩夢ちゃん!?」

歩夢「ごめ……ごめんなさい!私、あなたにひどいことを……」

あなた「いや、いいんだよ歩夢ちゃん。歩夢ちゃんが悪いわけじゃないんだし」

あなた「まぁ歩夢ちゃんに冷たくされるのも新鮮でよかったなぁーって……あはは」

304: 2020/08/14(金) 13:19:33.58 ID:Rt1J5MN1
歩夢「私……成長したところを見せるって言ったのに……それどころか……」

歩夢「あなたがいないと何にもできなくて……」グググ

歩夢「ごめんなさいごめんなさい、許して……ごめんなさい」グググググ

あなた「お、怒ってないよ!というかちょ、ちょっと強く抱きしめすぎだよ……(こっちは成長してる、ね?)」モガモガ

サスケ「ピキ-♪」(ご満悦)

栞子「やはりこの光景が……何より素敵ですね」

かすみ「あ、歩夢先輩だけずるい!かすみんも先輩とー!」

エマ「私も!ギュってしたい~!」

彼方「まくら……抱き枕……」

しずく「先輩はペット……」

果林「まだ混乱してるの!?」

309: 2020/08/14(金) 17:04:30.09 ID:Rt1J5MN1
数日後

あなた「ようやく同好会以外のみんなの術も解けてひと段落って感じだよ~」

璃奈「ニジガク生全員と多数のスクールアイドル、親族と中々の数だった」

侑「ご、ごめん……」

せつ菜「自分の存在が他の人物に置き換わる……恐ろしいですが少しワクワクする展開ですよね!私も今期観てる大好きなアニメも魔王が

かすみ「せつ菜先輩もだいぶ本調子になってきましたね~」

栞子「では今日からは……」

あなた「うん。私も自分の家に戻るよ」

栞子「そう……ですか……」

311: 2020/08/14(金) 17:26:40.10 ID:Rt1J5MN1
あなた「……また、行ってもいいかな?」

栞子「え……?」

あなた「もちろん、栞子ちゃんが良ければ……だけど……」

栞子「は、はい!是非来てください……家の者も……喜ぶと思います……///」

あなた「えへへ……」

栞子「ふふ……」



歩夢「……」

歩夢(そうだよね。あの子が大変な時支えてくれたのは栞子ちゃんだもん)

歩夢(なんで私はあの子のこと忘れちゃったのに栞子ちゃんは……栞子ちゃんなんて同好会のみんなよりもあの子と出会ったのは後なのに)

歩夢(……ずるいなぁ)ギリギリ

愛「ちょ!?歩夢!?どーしたの!?唇切れちゃってるよ!?」

彼方「ば、絆創膏~!」

313: 2020/08/14(金) 17:38:30.83 ID:Rt1J5MN1
歩夢(あの子はとっても優しい子だから本当に怒ってもないだろうけど……私たちが積み上げてきた信頼にはヒビが入っちゃった)

歩夢「……ねぇ、璃奈ちゃん」

璃奈「!?は、はい!」ビクビク

歩夢「ふふ、璃奈ちゃん。どうしてそんなに震えてるの?」

璃奈「い、いや……」ガタガタ

歩夢「ねぇ、なんで栞子ちゃんは他の子より侑ちゃんの効き目が薄かったんだろうね」

歩夢「本当は璃奈ちゃんが何かしたんじゃないの?そうだよね?じゃなきゃ私でもダメだったのに栞子ちゃんが

璃奈「し、知らない!本当に私なにも知らない!サスケしまって!」

歩夢「本当かな?」

316: 2020/08/14(金) 17:51:56.39 ID:Rt1J5MN1
璃奈「は、話を聞く限り栞子ちゃんは記録を取っていたし元の性格から真面目だから細かい変化にも敏感だったのかもしれない」

璃奈「あと歩夢さんには他の子の倍、いや数十倍以上の強度に設定されていたはずだから仕方のないことだと思う」

歩夢「むぅ……」

璃奈「あとこれはあまり大きな声じゃ言えないけど……」ヒソ

歩夢「?」

璃奈「侑は歩夢さんには他の誰よりも執着していた。それこそ友情よりもはるかに大きな感情で」

璃奈「侑はあの子の細胞で作られたクローンでほぼあの子の分身ともいえる。つまりその侑がそこまで歩夢さんのことを想っていたということは……本体の方は」

歩夢「……」

歩夢「……!?///」ポッ

323: 2020/08/14(金) 18:15:58.78 ID:Rt1J5MN1
歩夢(侑ちゃんはあの子のクローンであの子は侑ちゃんのこと子供みたいって言ってた……そして侑ちゃんは私のこと……)

歩夢(つまり侑ちゃんはあの子と私の子供……?)チラ

侑「?」キョトン

歩夢「ねぇ璃奈ちゃん、侑ちゃんのことなんだけど……

あなた「あ、そうだ璃奈ちゃん。侑の手続きはうまくいった?」

璃奈「うん、ちゃんとした戸籍も作ったよ」

璃奈「鞠莉さんに相談したら侑のこと引き取ってちゃんと一から面倒見てくれるって」

歩夢「……ん?」

328: 2020/08/14(金) 18:40:32.34 ID:Rt1J5MN1
侑「みんなに会えなくなるのは寂しいけど……私もちゃんと一から頑張ってみようって思って……」

あなた「鞠莉さんなら安心して侑を任せられるよ」

しずく「私が飼ってもよかったんですが……流石に財力では鞠莉さんに敵いません……」

バババババ

せつ菜「はっ!この聞こえ慣れた音は!」

あなた「鞠莉さんのヘリだ、もう迎えにきたんだね」

侑「じゃあ私行くね!歩夢ちゃ……じゃなくて歩夢!」タタタ

侑「いってきます!元気でね!」

歩夢「え?え?」ポカ-ン

329: 2020/08/14(金) 18:48:46.85 ID:Rt1J5MN1
……


あなた「~でね、ここの振り付けはこうした方がいいと思うんだ」

栞子「こう……ですか?」

あなた「えっとね……」

ギュッ

あなた「あ……//」

栞子「う……///」


歩夢「……」グイグイ

かすみ「いたたたたた!!あ、歩夢先輩!ストレッチなのにそんなにのばさいたたたたたた!!!」

栞子「そういえば今日の夜は空いていますか?今日は姉さんも帰ってくる日で……」

あなた「薫子さんも?ということは家族全員揃うのに私なんか行っても……」

栞子「いえ、そんなことありません。みんな喜ぶと思います」

あなた「そ、それじゃあ……お邪魔、しようかな……」


歩夢「……」ピラ

侑『歩夢へ すっごく楽しいです』(鞠莉と仲良く抱き合っている写真)

歩夢「……」


璃奈(歩夢さん元気なさそう……そうだ!新しい発明品を作って歩夢さんの元気を取り戻そう!)

璃奈「どんなもの作ろうかな……璃奈ちゃんボード『ワクワクしかしねぇー!』」

330: 2020/08/14(金) 18:48:52.68 ID:Rt1J5MN1

335: 2020/08/14(金) 18:57:13.39 ID:pVl1WmNB
おい天王寺

338: 2020/08/14(金) 19:21:30.72 ID:B8DBtme0
おつ
面白かった

340: 2020/08/14(金) 19:26:42.88 ID:HB0vRXk8
唇に絆創膏は草

342: 2020/08/14(金) 20:10:19.03 ID:QJYbgLW0
おつ
着々と関係が進んでいるっぽいあなしおなんかドキドキする

355: 2020/08/15(土) 05:25:15.11 ID:JAwx2wz2
完結おめでとうございます!
面白かったよー

356: 2020/08/15(土) 12:40:18.44 ID:fuP4IdAY

楽しかったありがとう
公式の小ネタも取り込んでたしちゃんとオチまで描けるストーリー書けるのは凄いな
また何か創ったら見せてくれ

360: 2020/08/17(月) 11:01:06.91 ID:W8GqJj3A
乙 面白かった

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1596885733/

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