【SS】曜「おーいあんちゃーん!」杏樹「!?」【ラブライブ!サンシャイン!!】

AqoursーSS


1: 2019/01/24(木) 02:34:30.94 ID:/NXxhjWC
ザザーン…

ザーン…

杏樹「……ふぇ」

曜「あ、起きた。梨子ちゃーん、あんちゃん起きたよー」

梨子「よかった……どんなに起こしても起きないんだもの。心配したじゃない」

杏樹「……」パチクリ

杏樹「梨子ちゃん、と……曜ちゃん?」

曜「ん? ……寝ぼけてる?」

梨子「ああもう、髪まで砂だらけじゃない……」ナデナデ

杏樹「あ、あっ……ご、ごめん……」パッパッ

曜「大丈夫? 立てる?」スッ

杏樹「あ……ありがとう」ギュウッ

グイッ

杏樹「っとと」

杏樹「……」

曜「おーい? だいじょうぶ?」フリフリ

杏樹「……う、うん」

梨子「本当に……? なんだか、様子が変よ?」

杏樹「あ、あはは……えっと……」

杏樹(……え、なにこれ……?)

3: 2019/01/24(木) 02:45:10.07 ID:/NXxhjWC
杏樹(私……確か、4thライブのレッスン中で……)

杏樹(休憩時間に、居眠り、してて)

杏樹(……気づいたら……いま、ここに……)

杏樹(ここって沼津だよね? 何回も見た景色……アニメでも、実際にも……)

杏樹(そうだ! ここ、千歌の家の前の────)

曜「あんちゃん、あんちゃーん?」

杏樹「はっ……な、なに?!」

曜「さっきから考え事?」

杏樹「ぁ……え、えっと、そんな感じ……?」

梨子「仕方ないわよ。もうすぐラブライブの決勝なんだから……杏樹ちゃんだって、色々思うことはあるわよね」

杏樹「えっ」

曜「そうだよね……ラブライブ決勝、私たちの目指した大きな舞台。最高の輝きをみんなに見てもらうんだ!」

梨子「私たちの大好きな学校のこと、みんなに知ってもらわないとねっ」

曜「ね、あんちゃん!」

杏樹「ぇ……あ、え……と、うん……そ、そうだね!」

杏樹(やっぱり、梨子ちゃんと曜ちゃん……だよね? PSVRとかいう新手のゲームの映像とかじゃ……)プニ

梨子「杏樹ちゃん!?」

杏樹(……本物だ。間違いなく本物の感触……)プニプニ

曜「ほへ?」プニラレ

杏樹「……ほんとに、曜ちゃんなの……?」プニプニ

曜「もふぃろんでありまふ! よーそろー!」ビシッ

杏樹「っ……」

梨子「……杏樹ちゃん? 本当にどうしたの? 様子、おかしいわよ……?」

杏樹「ぁ、う、うん……なんでもないんだ。ごめん、ちょっと寝ぼけてるみたいで……」

杏樹(……まぎれもない、本物だ)

4: 2019/01/24(木) 02:52:30.53 ID:/NXxhjWC
梨子「……ちょっと触るわよ?」ソッ

杏樹「ん……」

梨子「……熱はない、みたい。本当に寝ぼけてるだけ?」

杏樹「そ、そうだってば~……あはは」

曜「それじゃあ今日はもう帰ろっか! あんちゃんもなんか疲れてるみたいだしっ」

杏樹「ご……ごめんね、曜ちゃん……?」

曜「いいのいいの! もうすぐラブライブなんだから、休息はたっぷり取らないと!」

杏樹「……そう、だね」

曜「よし! それじゃあ私は一足先に帰るとしますか! バスの時間もぴったりだし」

杏樹「あ、うん……」

梨子「……杏樹ちゃん?」

杏樹「だ、大丈夫だよ! ご飯食べてゆっくり寝れば……」

梨子「そう……?」

曜「それじゃあ梨子ちゃん、あんちゃんのことよろしくね!」

梨子「うん、わかった。また明日ね、曜ちゃん」

曜「うん、また明日! じゃあねー!」タッタッタッ

6: 2019/01/24(木) 03:00:15.46 ID:/NXxhjWC
~千歌の部屋~


杏樹(曜ちゃんが帰った────アニメで、何度も見た、あのバスに乗って)

杏樹(そして私は……梨子ちゃんに連れられて、家に。家……そう、私のじゃない。千歌の家)

杏樹(ほんとは安田屋旅館だっけ……? でも、ここの名前は『十千万』────アニメの中の、まま)

杏樹「アニメのまま……」

杏樹「私……アニメの世界に来ちゃった……!?」

杏樹「待って待って……状況の整理だよ、まずは」

杏樹「私は4thライブの練習してて……休憩時間にちょっと居眠りして……」

杏樹「気づいたら……あの海岸で寝てた」

杏樹「そしたら曜ちゃんと梨子ちゃんがいて……」

杏樹「……マジで?」

杏樹「いやいやいや、夢だよ夢。夢に決まってる、寝よう」

杏樹「夢なら寝たら覚めるってなんかで言ってたしそうしよう」

杏樹「おやすみ!」ゴロン

バサッ

杏樹「……」

杏樹「……私のじゃない匂い。柑橘系の……みかんの匂い……?」

杏樹「もしかしてこれが千歌の……」

杏樹「……なんかドキドキして眠れない……っ」

7: 2019/01/24(木) 03:05:04.87 ID:/NXxhjWC
ガラガラガラ

「おーい! 杏樹、夕飯だぞー!」

杏樹「!?」バサッ

美渡「ん? 寝てたの?」

杏樹「……美渡……?」

美渡「呼び捨て!? おま、姉に向かって呼び捨てか!? 随分偉くなったもんだな!」ガシッ

杏樹「あ、ちょっ……な、なにすんの!」グイッ

ギリギリギリギリ

美渡「いだだだだだ!! ギブ、ギブ!」

杏樹「あっ……ご、ごめんなさい……」パッ

美渡「ってて……素人に技キメるのは反則だろ……」

杏樹「ごめんなさい……」

美渡「はあ……まあいいけどさ。あんたいつまで制服着てんの? 早く着替えて降りてきなさいよー」

杏樹「あ、はーい」

杏樹「……」

杏樹「え、どれに着替えるの?」

9: 2019/01/24(木) 03:12:38.42 ID:/NXxhjWC
杏樹「……もしかしてこれ? これに着替えるのか……この千歌のパジャマに……」

杏樹「……」

杏樹「いやいやいやいやアウトでしょこれ!? 私がこれ着たら……アウトだろ……」

杏樹「……制服のままでいいや」


・・・


杏樹「……ごちそうさまでした」

志満「お粗末様でした。早くお風呂はいっちゃってね、杏樹ちゃん」

美渡「そうよ。あとがつかえてるんだから」

杏樹「は、はーい……」

美渡「ていうか、なんで制服のまま? シワになるぞ?」

杏樹「……き、着替えるよ? お風呂の時に」

美渡「ふーん」

志満「制服、あとでアイロンかけておくわね~」

杏樹「あ、ありがとう……志満、さん?」

志満「!!?」ガタッ

杏樹「!?」

志満「し、ま……さん……?!」

杏樹「ぁ……え、えと、志満ねえ……?」

志満「……杏樹ちゃん本当に大丈夫? 美渡にも聞いたけど、熱でもあるんじゃ……」

杏樹「な、ないないない! ほんとに、ほんとです!」

美渡「ほんとかしらね……」

杏樹「ほ……ほんとだから、美渡ねえも志満ねえも、心配しないで……ね、ね! じゃあお風呂いきまーす……」ササッ

12: 2019/01/24(木) 03:20:57.34 ID:/NXxhjWC
~大浴場~

カポーン


杏樹「はぁあ~……生き返る……」

杏樹「……って、こんなことしてる場合じゃないじゃん! 私、ほんとにサンシャインのアニメの世界に来ちゃってるよ……」

杏樹「……体は私のまんまだよね。別に千歌になったりしてるわけじゃない……よね」

杏樹「鏡、鏡……」

杏樹「……うん、私のままだ」

杏樹「みんな私を私のまま認識してる……よね? 多分」

杏樹「でも私とみんなの関係性は……千歌との関係性のまま。私が完全に千歌にすり替わってる……んだよね」

杏樹「……というか、みんな私のまま高校生って認識? アウトじゃね? ……いや、生放送で制服着てるし今更か」

杏樹「美渡とか志満ってあんななんだ……アニメをそのままリアルにしたって感じだなぁ」

杏樹「それを言えば梨子ちゃんと曜ちゃんもだけど」

杏樹「声は梨子ちゃんと朱夏のまんま……」

杏樹「……あれ、私って逆に外から見たらアニメになってんのかな? やばいな」

13: 2019/01/24(木) 03:24:11.02 ID:/NXxhjWC
ザパッ

杏樹「……まあ、悩んでても仕方ないし。明日になれば元に戻ってるでしょ! うんうん、リアルな夢にありがちなことだし」

杏樹「さっさと身体洗って寝よーっと」


・・・


杏樹「……」

杏樹「これを着るのか…………」ガックリ

14: 2019/01/24(木) 03:27:57.21 ID:/NXxhjWC
着た


杏樹「ぅ、うう……これはやばい、絶対やばい……///」

杏樹「舞台とかでもいろんなの着させてもらったけど、これはダントツでやばい……///」

杏樹「千歌、絶対ブラしてないよねあれ……っ」

杏樹「監督に言った方がいいよねこれ……千歌、これはまずいよ……///」

杏樹「というか、なんで私にぴったりなサイズなの?! めちゃくちゃ着心地いいんだけど」

杏樹「……すーすーするんですが」

杏樹「部屋に戻ったら他の服探そう……これでよく梨子ちゃんと夜に喋ってるなほんと」

15: 2019/01/24(木) 03:33:48.55 ID:/NXxhjWC
~千歌の部屋~

杏樹「うーん……ないなー」

杏樹「寝巻きになりそうな服がほんとにない……大きめのTシャツとかでもいいんだけどなぁ」ゴソゴソ

「杏樹ちゃーん」

杏樹「……この声は」

カラカラ…

杏樹「梨子ちゃん?」|´-`)チラッ

梨子「……半分だけ?」

杏樹「あ、えっと……着替えようかなって」

梨子「あら……邪魔しちゃった?」

杏樹「そんなことはないけど……なんかあのパジャマ、恥ずかしすぎない?」

梨子「え……いつも着てるのに」

杏樹「ほんとよく着れるよね……千歌ってすごい」

梨子「え?」

杏樹「あ、いや……なんでもない」

杏樹「まあそんなわけだから、他のパジャマ探してるんだよ」

梨子「でも、他に持ってなかったんじゃないの? 新しく買ったんなら知らないけど」

杏樹「え゛っ!?」

梨子「確か……同じやつを何枚か持ってて、それを着まわしてるとか」

杏樹「……まじか」

梨子「杏樹ちゃんが自分で言ってたんじゃない……」

杏樹「あ、アハハ……」

17: 2019/01/24(木) 03:44:37.55 ID:/NXxhjWC
杏樹「他にないのか……じゃあもういいや、どうにでもなれ……夢だし」

梨子「……なに言ってるの?」

杏樹「ううん、なんでもない……」

梨子「そう?」

杏樹「それで、どうしたの?」

梨子「うん……ラブライブ、もうすぐだって思ったら緊張してきちゃって」

杏樹「あぁ……」

杏樹(そっか……そういえば、さっきそんなこと……)

梨子「杏樹ちゃんにスクールアイドルに誘われて、曜ちゃんと3人でライブをして……ひとり、またひとりって増えて、今のAqoursになって」

梨子「ついに、ここまで来たんだ……って思ったら、なんだか手足がふわふわしてきちゃって」

杏樹「……そう、だね」

杏樹(私は……これから先のことを知ってる。だって、アフレコしたから。アニメも見たから……全部、知ってる)

杏樹(でも言わない方がいいんだろうな……言ったら、歴史が変わっちゃうかもしれない)

杏樹(千歌たちが今まで頑張ってきた積み重ねを、無駄にしちゃう気がする)

杏樹「……」

杏樹「大丈夫だよ梨子ちゃん」

杏樹「精一杯努力して、全力で頑張って、こんちくしょー!って気持ちでぶつかっていけば、きっと大丈夫」

杏樹「Aqoursなら大丈夫。私はそう信じてる、私たちみんなが本気でやってきたんだもん。絶対、絶対大丈夫だよ」

梨子「杏樹ちゃん……」

梨子「……ありがとう、すこし安心したかも」

杏樹「そう?」

梨子「ふふ、カッコいいね杏樹ちゃんは」

杏樹「え~」

梨子「さすがAqoursのリーダーさんね。いつもありがとう」

杏樹「っ……うん、こちらこそ」

梨子「んー……いい感じに眠れそう。また明日、朝早いんだから寝坊しちゃダメよ?」

杏樹「う、うん! ……おやすみ」

梨子「うん、おやすみなさい」

カラカラ…パタン

杏樹「私じゃなくて、千歌なんだけどね……」

18: 2019/01/24(木) 03:51:20.06 ID:/NXxhjWC
杏樹「……」

バフッ

杏樹「……みかんの香り」ゴロン

杏樹「アニメの、千歌の部屋のまんま」

杏樹「その中に私だけがいる……なんて言うんだろ……異物感?」

杏樹「……」

杏樹「はぁ……んー……っ」ノビー

杏樹「わかんないや」

杏樹「考えてもぜーんぜんわかんない」

杏樹「……どうせ夢だよ、夢。明日になれば……きっと休憩室で目が覚めて、レッスン再開」

杏樹「またあいきゃんが寝顔撮ってるんだろうなあ……」

杏樹「んで、あいにゃと笑ってるんだ」

杏樹「……梨子ちゃん、プレッシャー感じてないかな。想ひと……どうなるんだろ」

杏樹「……4th、がんばらな、い……と……zzz」

20: 2019/01/24(木) 03:56:45.66 ID:/NXxhjWC
~レッスン場~

「おーい千歌ちゃーん」

千歌「んがっ……んむむ……zzz」

「起きて、起きて! 休憩時間終わるよ! レッスンだよ!」

千歌「ふぇ……れっすん!?」ガバッ

千歌「……はえ?」

朱夏「あ、起きた」

千歌「……ここどこ?」

朱夏「なに言ってんの……休憩室だよ。ほら、顔洗って目覚ましといで! レッスン再開するから」

千歌「え、えっと……」

朱夏「ん?」

千歌「……誰?」

朱夏「はっ?」

千歌「え?」

朱夏「なに寝ぼけてんすか千歌さ~ん? ほら、さっさと顔洗う!」グイグイグイ

千歌「わ、ちょっ……引っ張らないで……ちょっと~!」

21: 2019/01/24(木) 04:02:25.67 ID:/NXxhjWC
ザー……キュッ

千歌「ぅあー……たおる、たおる……」

「はい!」

千歌「あ、ありがとー……」ゴシゴシ

「よいよい。存分に使いなされ」

千歌「……」

千歌「誰?」

愛奈「お!?」

千歌「……えっと」

愛奈「ちょっとちょっと、私の顔を忘れたの!?」

千歌「えっ……と」

朱夏「なにやってんのー! 早く行くよ!」

愛奈「はいはーい! 行こう千歌!」ギュウッ

千歌「うわわわ~!!? な、なんなの~……」

22: 2019/01/24(木) 04:07:27.85 ID:/NXxhjWC
ガチャッ

朱夏「おまたせー! 斎藤さん到着っ!」

愛奈「鈴木も到着!」

千歌「はひ~……」フラフラ

ななか「これで全員揃ったね」

ゆみ先生「それじゃあレッスン再開するよ。最初から通しでやるから」

千歌「えっ……え、え?」

ゆみ先生「千歌、寝ぼけてる?」

千歌「えっと……」

ゆみ先生「寝ぼけてる?」

千歌「だ、大丈夫ですっ!!」

ゆみ先生「それじゃあまずは君ここから。いくよ!」

千歌「わ、わ、わっ……」

23: 2019/01/24(木) 04:10:40.25 ID:/NXxhjWC
・・・

千歌「つ、疲れた……」グッタリ

愛香「だいじょぶ~?」

千歌「う、うん……」

千歌(……なに、ここ)

千歌(私、確か……ラブライブ決勝が近くなってて、レッスン終わって曜ちゃんたちと帰って……)

千歌(そう、確か海岸で遊んでて……ちょっと眠たくなったから寝転んだんだ)

千歌(そしたら、ここに……)

千歌(……どこここ)

愛香「ほら、スポドリだよー」

千歌「あ……ありがとう、ございます」

千歌(みんな、大人の人だよね……私より年上の……)

千歌(知らない人ばっかり……なのに、声は聞いたことがある)

千歌(ちょっと感じが違うけど、みんな……Aqoursのメンバーの声に似てる……ような)

24: 2019/01/24(木) 04:16:23.24 ID:/NXxhjWC
愛香「千歌ちゃん大丈夫? 上の空って感じだけど」

千歌「ぅん……なんか、変な夢見てるみたいで」

愛香「夢?」

千歌「私、学校でレッスンしてて、海岸で曜ちゃんたちと遊んでたはずなのに……ここにいたんです。どこかも分からないのに、なんでかみんな、Aqoursのみんなの声に似てるし……」

千歌「さっきのダンスも、曲も、全部Aqoursの……」

愛香「……」

千歌「……あの?」

愛香「やばいって、やばいよ! ちょっとみんな、千歌ちゃんがなんかやばいよ!」

千歌「えっ!?」

愛「どうしたん?」

梨香子「なになに」

ななか「千歌?」

千歌「え、えっと……」

愛香「なんか曜ちゃん梨子ちゃんとさっきまで海岸で遊んでたんだって!」

愛「なんだ、夢の話か」

梨香子「寝てたもんねー」

ななか「なにもやばくないじゃん」

愛香「いや、なんか……変じゃない? さっきからここがどこかも分からないみたいだし」

愛「え? マジ?」

千歌「……うん」

愛「……」

梨香子「……び、病院行った方が」

ななか「先生呼んでくる?」

千歌「ま、待って! その……それより、聞きたいことがあって……」

みんな『?』

千歌「……あなたたちは、誰ですか……?」

25: 2019/01/24(木) 04:25:32.40 ID:/NXxhjWC
みんな『……』

千歌「……」

愛「……やばくね?」

かなこ「……やばいよね」

愛奈「やばい」

梨香子「え、千歌ちゃん……ほんとに?」

ななか「……マジでやばいじゃん」

有紗「ちょっと、救急車呼んだほうがいいよね。私呼んでくる」

千歌「ま、待ってください!」


・・・


愛奈「千歌は本当は浦の星女学院の生徒で?」

梨香子「曜ちゃんたちと海岸で遊んでて……」

かなこ「気がついたらここにいたと」

千歌「……」コクン

朱夏「いやいつまで寝ぼけてんの!」

千歌「!?」

朱夏「もー……千歌ちゃん寝ぼけすぎだよー」

梨香子「というか、役に入り込みすぎじゃ……w」

千歌「え、えっ」

愛奈「役に対して真摯に向かうっていうのがスタンスなんだっけ? にしても、ここまで本気でなりきるまでやるとは」

愛香「さすがの私でもそこまでやらないよ……?」

千歌「ちょ……」

千歌(誰も信じてくれない……な、なんで……?)

27: 2019/01/24(木) 04:31:04.73 ID:/NXxhjWC
~帰路~

千歌(私の知らない服。知らない……街)

千歌(レッスンが終わって解散になって……みんな、帰ってって……)

朱夏「ちゃんと帰り道わかる?」

千歌「……ごめんなさい」

朱夏「仕方ないなあ。斎藤さんが家まで送ってってあげよう」

千歌「……ありがとうございます」

朱夏「……ほんとに大丈夫? 話し方まで変だよ?」

千歌「……」

千歌(私の荷物だー……って、言われたロッカーに入っていたカバン)

千歌(その中にあった、1冊の……台本)

千歌(そこには、ラブライブ!サンシャイン!! って書いてた)

千歌(ラブライブ……ラブライブ。私たちが目指しているスクールアイドルの甲子園、ラブライブ)

千歌(その名前が、どうしてこの台本に……)ペラ

朱夏「あ、映画の台本? 持ち歩いてるなんてさすがですなー」

千歌「……映画?」

朱夏「ん、その台本、映画のでしょ?」

千歌「……」ペラ

千歌(ほんとだ……school idol the movieって書いてる)

千歌(……これがカバンに入ってたってことは)

千歌(私の、持ち物……私の台本……)

28: 2019/01/24(木) 04:38:11.36 ID:/NXxhjWC
千歌(……台本に書いてる……この、名前)

千歌(信じられない……本当に信じられない)

桜内梨子(CV.逢田梨香子)

渡辺曜(CV.斉藤朱夏)

黒澤ルビィ(CV.降幡愛)

津島善子(CV.小林愛香)

国木田花丸(CV.高槻かなこ)

黒澤ダイヤ(CV.小宮有紗)

松浦果南(CV.諏訪ななか)

小原鞠莉(CV.鈴木愛奈)

千歌(私の知ってる名前、この訳のわかんないとこで目が覚めてから……やっと安心できると思ったのに)


伊波杏樹(CV.高海千歌)


千歌(いなみ……なんだろ。読めないや)

千歌(でも、CVって……声優ってことだよね。私が、この伊波さんの声優……?)

千歌(……私の、声)

千歌「……ねえ、えっと……斎藤、さん」

朱夏「朱夏って呼んでるでしょいつも」

千歌「……朱夏、ちゃん?」

朱夏「うむ」

千歌「……この、人って」

朱夏「あんちゃん? 千歌ちゃんの役じゃん」

千歌「……役」

朱夏「ラブライブ!サンシャイン!!のキャラクターの伊波杏樹……千歌ちゃんが声優やってるじゃん」

千歌「……キャラクター」

29: 2019/01/24(木) 04:42:33.28 ID:/NXxhjWC
千歌(……意味わかんないや)

千歌(斉藤朱夏さん……今、私の隣にいる人……ってことは、この人は、曜ちゃん……)

千歌「……」

千歌「……ねえ、曜ちゃん?」

朱夏「むむ、ヨーソロー! 渡辺曜であります!」ビシッ

千歌「ぁ……っ」

朱夏「……あれ、千歌ちゃん?」

千歌「っ、ぅ……」ジワッ

朱夏「ちょ、ちょっ?!」

千歌「ぅう、ぅぅ……曜ちゃん、よぉちゃん……っ」ギュウッ

朱夏「ぉ、ぉぅ……よ、よしよし……大丈夫、大丈夫だからね……」ナデナデ

千歌「よぉちゃっ……よ、ちゃん……ぅう、ぅぅぁぁっ……!」ギュウウッ

朱夏「服にシワが…………まあいいか。よしよし、大丈夫だよ、千歌ちゃん」ナデナデ

30: 2019/01/24(木) 04:43:44.44 ID:/NXxhjWC
neyou

45: 2019/01/24(木) 10:43:45.53 ID:/NXxhjWC
~公園~

朱夏「はい、オレンジジュースだよね」

千歌「……ありがと」

朱夏「でも……千歌ちゃんいきなり泣き出すんだもん。びっくりした」

千歌「ごめんね、曜ちゃん」

朱夏「いいけど……なんで曜ちゃんなんだよ~」

千歌「……私、私ね」

朱夏「うん?」

千歌「多分……多分なんだけどさ、足りない頭で必死に考えて考えて思いついたことなんだけどさ……」

朱夏「足りないことないってww」

千歌「……」

朱夏「ん、ごめん。真面目モードね」

千歌「私はね、多分、この……ラブライブサンシャインのキャラクター……なんだと、思う」

朱夏「……はい?」

千歌「信じたくないよ。私たちがアニメのキャラで、しかも起きたらいきなり……Aqoursメンバーと同じ声の人たちに囲まれてるなんて」

千歌「それが、私たちの声優だなんて……考えたくも、ないよ……」

朱夏「……」

千歌「……でも、これを見せられたら……信じるしか、ないんだよね? 私ってアニメの……」

千歌「もう会えないのかな……曜ちゃん、梨子ちゃん、果南ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん、花丸ちゃん、ダイヤさん、鞠莉ちゃん……」

千歌「多分、私、私……この、伊波杏樹って人が私の声優なんだよね? 今は私がこの人ってことになってるけど……そうだよね、そうなんだよね……」

千歌「わかんないわかんないわかんない……何もわかんないよ……」

朱夏「千歌ちゃん、見て!」

千歌「……?」

朱夏「きんにく!」?( ・_・ )

千歌「……ぶっww」

46: 2019/01/24(木) 10:57:14.27 ID:/NXxhjWC
千歌「ふ、っくく……」

朱夏「斎藤は難しい事はよくわからん。わからんけど、千歌ちゃんが嘘を言ってるようにも見えないので、とりあえず信じるよ」

千歌「……曜ちゃん」

朱夏「なんたって渡辺曜、これまでもこれからもずっと千歌ちゃんのそばにおりますゆえ! ヨーソロー」ビシッ

千歌「ょ、ぅちゃ……っ……」

朱夏「ふふん」

朱夏「明日あたり、またみんなに聞いてもらえばいいじゃん」

千歌「でも、信じてくれないよ……」

朱夏「うーん……信じてもらうのは、必要な事?」

千歌「え……?」

朱夏「千歌ちゃん自身も信じられてないことを、みんな信じられるかなって」

千歌「……わかんない」

朱夏「なら、千歌ちゃんは千歌ちゃんのできることを頑張るんだ。Aqoursとしてあんちゃん……じゃないや、千歌ちゃんだって頑張ってきたでしょ?」

千歌「……」

朱夏「やれるだけやろうぜ! 今、ここでやれって言われてることをやりきるのが使命だと思うんだよ!」

千歌「やれって言われてることをやりきる……」

朱夏「斎藤さんもよくわかんないこと言ってるなー! っし! 帰ろう!」

千歌「……うん、そうだね。帰ろう」

千歌「くよくよ悩んだって、仕方ないよね」

朱夏「そうそう! みかんパワーで乗り越えるんだ!」

千歌「おー!」

47: 2019/01/24(木) 11:06:57.68 ID:/NXxhjWC
~杏樹の部屋~


千歌「……ここが伊波さんの部屋か」

千歌「あ、にんてんどーすいっちだ。お金持ちー」

千歌「……ラブライブ、CDいっぱい」

千歌「これ……μ'sの……」

千歌「私の知らない曲がいっぱい……!」

千歌「聴いて、いいのかな? いいよね……今は私のものってことになってるし……」

千歌「……聴いちゃお! ごめんなさい!」


~♪


千歌「……」

千歌「ラブライブサンシャイン……」スマホスマホ

千歌「……伊波杏樹役、高海千歌」

千歌「伊波さんが、私の声の人……」

千歌「……私がこっちにいるって事は、伊波さんは私の世界に……?」

千歌「……まさかねー!」

千歌「『君の名は』みたい」

千歌「私がこっちにいる間、こっちの人はむこうにいる……って」

千歌「身体は私のままだから……そのまま、まるっと入れ替わってるんだよね?たぶん」

千歌「……ラブライブ決勝目前で、なんでかこの世界に来ちゃったんだ」

千歌「みんな……大丈夫かな。ラブライブ決勝……出たかった。私、行きたかったな……」

千歌「あんなに練習したのに、あんなに頑張ったのに……私、出られないのかな」

千歌「……ううん、悩んでも仕方ない! 伊波さんはこっちでAqoursをしてるんだし、安心だよね?」

千歌「なら、私はこっちで伊波さんの分もAqoursを頑張るんだ」

千歌「それで、いいんだよね……?」

49: 2019/01/24(木) 11:09:57.77 ID:/NXxhjWC
千歌「……疲れちゃったな」ボフッ

千歌「アニメ、か……このアニメを見たら私たちの物語、その先が全部わかっちゃうのかな」

千歌「……」

千歌「見ない方が、いいよね」

千歌「もうすぐら4thライブだって言ってた……ってことは、知らない曲も出てくるのかな」

千歌「……今日やったのは全部知ってたから踊れたし、歌えた」

千歌「けど、明日からは……わかん、ない……」ウトウト

千歌「……でも、やるだけやるんだ……」

千歌「ちょっと、遠くまで練習、しに来たくらい……の、気持ちで……zzz」

53: 2019/01/24(木) 11:21:30.14 ID:/NXxhjWC
~千歌の部屋~

pipipi pipipi…


「ぅ、うーん……」モゾモゾ

カチ

「うー……さむ」

「……はあ、やっぱり」


杏樹「帰れてない……」

杏樹「夢じゃないんだよね……やっぱ、もう認めるしかないか」

杏樹「千歌、千歌は今……困ってるよね」

杏樹「自分の世界がアニメだとか、架空だって……私だったら死にたくなるかも」

杏樹「千歌、結構悩む子だからなぁ……」

杏樹「みんなが支えてくれたらいいんだけど」

杏樹「……よし、着替えてごはんだ。どうせ学校だろうし」

54: 2019/01/24(木) 11:27:54.80 ID:/NXxhjWC
・・・

梨子「杏樹ちゃーん起きてるー?」

杏樹「んむ?」モグモグ

梨子「……起きてる」

杏樹「おはよー」

梨子「今日は早起き……だね?」

杏樹「え、そう?」

梨子「いつもは私が来てもまだ寝てる気が……あれ、そんなこともなかったっけ……」

杏樹(それ、千歌です……)

杏樹(思い出しかけてる? ……ううん、私と千歌が入れ替わって不安定になってるのかも)

杏樹(このままの勢いで思い出してくれたり、元に戻ったりって期待はしないほうがいいかも)

志満「あら、おはよう梨子ちゃん。梨子ちゃんも朝ごはん食べてく?」

梨子「あ、いえ! 私は食べてきましたから」

志満「遠慮しないで~? 杏樹ちゃんを待ってる間、いつも食べてるんだし」

梨子「はっ……!?///」

杏樹「え、ほんと?」

梨子「いや、それは、その……」

志満「はい、ど~ぞ~?」

梨子「……イタダキマス」

杏樹(マジかー……)

87: 2019/01/24(木) 17:28:48.21 ID:/NXxhjWC
大丈夫かな
もう少し続けてやっぱりダメだってなったらまた考えます

106: 2019/01/24(木) 20:09:18.04 ID:/NXxhjWC
志満「おかわりもあるわよ~」

杏樹「あ、いただきまーす」

杏樹(うまー……千歌、いつもこんな美味しいご飯食べてるんだ……)

杏樹(アニメだと日常描写省かれててよく分かんなかったけど……おかげで役者としてレベルアップできそうかも)

梨子「ねえ、杏樹ちゃん……」

杏樹「ふぇ?」モグモグ

梨子「……食べ過ぎじゃない?」

杏樹「……」

梨子「これから学校で朝練よ? 動ける?」

杏樹「……へ、へいきへいき、多分いける、多分」

梨子「杏樹ちゃん……」

志満「ふふふ、今日の杏樹ちゃんは早起きだし、ご飯もたくさん食べてくれるからお姉ちゃん嬉しいわ」

杏樹「志満ねえのご飯ほんと美味しい! また夜も期待してるから!」

志満「はいは~い」

杏樹「……さてと、ごちそうさま! 梨子ちゃん、学校だよね」パチン

梨子「あ、待って……ご、ごちそうさまでした」パチ

梨子「かばん、忘れちゃダメよ。まだ授業あるんだから」

杏樹「……」

杏樹「マジ?」

梨子「当たり前でしょう? 卒業式だってまだなんだから」

杏樹(そういえばそうだった……ラブライブシリーズってアニメじゃ時期が分からないんだよなぁ……)

梨子「杏樹ちゃん……?」

杏樹「今日の授業ってなんでしょうか……」

梨子「……」

109: 2019/01/24(木) 20:14:16.51 ID:/NXxhjWC
・・・

タッタッタッ

杏樹「ば、バス、遅れる……っ!」タッタッタッ

梨子「も~! なんで昨日のうちに用意しておかないのよ~!」

杏樹「だ、だって夢だと思ってたんだよ~!!」

梨子「夢ってなによ夢って~! ああ、バスでちゃう!」

あんりこ『そのバス待って~!!』


プー


杏樹「はぁ、はあっ……ま、間に合った……」

梨子「もぉ……レッスン前からクタクタになっちゃう……」

曜「ヨーソロー! あはは、ギリギリだったね~」

梨子「曜ちゃん……おはよう……」

杏樹「おはよー……うぁー……おなかやっば……」

曜「朝ごはん食べすぎた?」

杏樹「うん、おいしくってさー……」

曜「あはは……」

114: 2019/01/24(木) 20:31:37.22 ID:/NXxhjWC
杏樹(バスに乗ってるのは私たちだけ……? 確か、果南ちゃんと鞠莉ちゃん以外は千歌の家より向こうのはず……)

杏樹「みんなは、違うバスなんだ?

曜「というか、私たちが朝練に間に合う最後のバスなんだけど」

杏樹「あ……そうなんだ。早起きしたのに」

梨子「ずっとご飯食べてるからよ」

杏樹「……はい、ごめんなさーい」

杏樹(まるで私が千歌そのものじゃん……しっかりしろ私、頑張れ!)

杏樹(……そういえば、バスに乗って学校まで移動するのって初めてだっけ……?」

杏樹(いつも千歌たちが乗ってるバス……アニメで見たバス)

杏樹(あの映像そのもの……んや、実際にあるのをモデルにしてるから、沼津に行けばいつでも乗れるんだけど……)

杏樹(……こんな匂いなんだ)

曜「どしたの? あんちゃん落ち着かない?」

杏樹「あ、いや……」

杏樹「えっと……このバスに乗れるのも、あと数回なんだな……って?」

曜「……」

梨子「……」

杏樹(まずった)

115: 2019/01/24(木) 20:38:52.54 ID:/NXxhjWC
曜「あと何回かしたら、もう乗れないんだね……」

梨子「そうね……あと、数回……」

杏樹「ご、ごめんそんなつもりじゃ……」

曜「う、ううん……あんちゃんのせいじゃないよ。私も……ふと思っちゃうこと、あるから」

梨子「……ずっと通ってきた学校も、なくなっちゃうんだ」

曜「……今のうちに、この道を刻み込んでおかないとね」

梨子「そうね、曜ちゃん」

杏樹「……」

杏樹(……学校が、なくなる)

杏樹(きっつ……なんか、私まで辛くなってきた……)

杏樹(千歌は、いつもどんな気持ちでこのバスに乗ってたんだろ……?)

杏樹(廃校が決まって、次の4月からは通えない……この大好きな学校への道を……)

杏樹(……千歌が通うはずだった残り少ない登校を、私が……)

杏樹(……ごめんね、千歌)

116: 2019/01/24(木) 20:41:54.24 ID:/NXxhjWC
~学校~

杏樹「……ぉおぉお」

杏樹「本物だ……本当に浦の星女学院って書いてる……長井崎中学校じゃない……!」

曜「ながい……なに?」

杏樹「あ、なんでもない」

杏樹「まず部室だっけ」

曜「そうだよー」

梨子「軽くミーティングしてからレッスンだってライン来てたから。……見てないの?」

杏樹「あ、あはは……」

杏樹(勝手に千歌の見ちゃったらよくないかと思って……)

梨子「もう……」

曜「ほら、遅れちゃうし行こ! ダイヤさんがカンカンになっちゃうよ!」

杏樹「……ダイヤさん」

杏樹(そうだ、そうに決まってる……いるんだ。いるんじゃんか……ここがサンシャインのアニメの世界なら、曜ちゃん梨子ちゃん以外のみんなも……)

117: 2019/01/24(木) 20:52:45.38 ID:/NXxhjWC
~部室~


ガチャッ

曜「ヨーソロー!」

梨子「おはようございます」

杏樹「……オハヨゴザマス」壁|ω・`)

ダイヤ「来ましたわね?」

果南「これで全員?」

鞠莉「そうだね。Aqours9人、All Memberデース!」

杏樹「……」|ω・`)じー

杏樹(やばい……本当にみんながいる)

杏樹(いっそ感動してきた……みんなが普通に喋って動いてる……)ウルウル

杏樹(きゃんとかこの光景見たら泣くんじゃ……? あいあいもめちゃくちゃ喜ぶかも)

杏樹(……千歌に会えないのが逆に辛い)

ダイヤ「杏樹さん?」

杏樹「はひっ!?」

ダイヤ「なにをしているんですの? 早く中に入りなさいな」

杏樹「あ、うん……だいや、さん?」

ダイヤ「わたくしに何か?」

杏樹「……わあ、ほんものだ……」ナデナデ

ダイヤ「……」

ダイヤ「……杏樹さん?」

杏樹「……はっ! ご、ごめん!」

ダイヤ「べ、別に……嫌ではないですが、いきなりは困ります」

杏樹(え、そういうの……?)

果南「杏樹どしたの?」

杏樹「ぅっ……///」

果南「?」

杏樹(おすわにいきなり呼び捨てにされたこと思い出した……っ)

118: 2019/01/24(木) 21:05:42.88 ID:/NXxhjWC
・・・


ダイヤ「ラブライブ決勝、アキバドームでの最後の舞台が近づいてまいりました」

ダイヤ「そこで披露する曲はすでに出来上がっていますね、梨子さん

梨子「はい、昨日みんなに聞いてもらった『Water Blue New World』が」

ダイヤ「それの歌詞も出来上がっていますね、杏樹さん」

杏樹「ふぇ」

ダイヤ「……杏樹さん?」

梨子「ほら、昨日提出した歌詞カードよ!」ボソボソ

杏樹「あっ……はい! できてまーす!」

ダイヤ「まったく……ちゃんと人の話は聞いてください」

杏樹「はぁい」

曜「衣装もバッチリ完成してるよ!」

ルビィ「サビで衣装が変わる仕掛けも問題ないよっ」

ダイヤ「ありがとう、ふたりとも。そして最後、ダンスですが」

果南「うん、昨日できあがったから、あとで披露するよ。難しいところも多いけど、頑張ろうね」

鞠莉「ふふ、Aqoursの最後の曲、楽しみね♪」

杏樹「……」

果南「あとでみんなのパート見てもらうから、気合い入れてよ~?」

みんな『はーい』

ダイヤ「ラブライブ決勝まで、もう日がありません。いいですわね、みなさん。全力で完成させましょう!」

みんな『はい!』

119: 2019/01/24(木) 21:13:25.00 ID:/NXxhjWC
~屋上~


杏樹(千歌の練習着そのまんま……ひとつ違うのは、胸に書いてるのが『チ』じゃなくて『ア』ってところかな)

杏樹(私こんなシャツ着ないよ……いや着てるかも。結構面白いシャツ着てるかも……)

杏樹(いや、それはどうでもよくて)

果南「次は杏樹のパートやるよ。こっち来てー」

杏樹(めちゃくちゃ練習したこの曲の振り付け、どうやって初めて見た風にリアクションするかだよなぁ……きっつ……)


・・・


果南「……って感じ、大丈夫?」

杏樹「んー……うん、大丈夫」

果南「ほんとに? とりあえず覚えたとこまでやってみよっか」

杏樹「はぁい」

杏樹(適当にやっても果南ちゃんにはバレそうだし……普通にやった方がいっか)

杏樹「それじゃあ……リズムお願いします」

果南「ん、いくよ」パンッパンッ

杏樹「……ふっ」タッ

120: 2019/01/24(木) 21:18:53.03 ID:/NXxhjWC
・・・

果南「────いいよ」

杏樹「……っはあ、ふう、ふっ……」

果南「……ほとんど完璧。まるで何度も練習してきたみたいだよ」

杏樹「そ、そう……はぁ、はあ……」

果南「杏樹……覚醒した?」

杏樹「ふぇ?」

果南「ラブライブ決勝が目前って事実が杏樹の力を覚醒させたのかなって」

善子「覚醒!? 杏樹、ついに闇の力に目覚めたのね!」

杏樹「な、ないから~……」

杏樹(ガチでやりすぎちゃったかな……?)

果南「これなら杏樹の分の手間は省けそうだね。もし余裕あったらみんなの分も見てあげてよ」

杏樹「わ、わかった」

杏樹(私以外のパートでわかるとこあったっけなぁ……)

121: 2019/01/24(木) 21:30:44.66 ID:/NXxhjWC
・・・

果南「よーし今日はこれで朝練終わり! 放課後もやるからねー」

杏樹「ふう……」

花丸「今日の杏樹ちゃんはすごいずら……」

杏樹「ん?」

ルビィ「初めての曲なのに、あんなにびしって踊れてたもんね」

花丸「まるはいっぱい怒られたのに、杏樹ちゃんはほとんど何も怒られなくって……さすがリーダーずら……」

ルビィ「かっこよかったよ、あんちゃん!」

杏樹「あ、あはは……まあ、リーダーさせてもらってますし……?」

杏樹(知ってるから、仕方ないんだけどね……)

善子「まさに堕天使の授けた智恵ね。闇の力に目覚めし杏樹の力、ここに極まったわね」

杏樹「ないないない」

善子「冷たい!?」

杏樹「私のは……ほら、なんていうか、自分のタイミングとハマったっていうか……なんていうか」

杏樹「だから、みんなも今まで通り全力でやれば完成するよ。私も一緒に見てあげるから」

ルビィ「~♪」

花丸「カッコいいずら……!」

善子「さ、さすがAqoursのイケメン担当ね……」

杏樹「なんでや……」

123: 2019/01/24(木) 21:38:59.14 ID:/NXxhjWC
~教室~

「いいですかね? 長文はいつも言ってるように区切って読む。単語ごとに区切って読む。区切れない部分はイディオムなので覚える」

「そうやって読んでいくんですよ」

杏樹「……」

杏樹(ぜーんぜんわからん)

杏樹(わかるわけないじゃん……中卒だよ私? 高校通ってないんだよ、高校の英語とかわかるわけないじゃん)

杏樹(そっかー……私中卒なんだなぁ。千歌に負けてんだなぁ)

杏樹(まあね、そもそも声優のお仕事するために予備校行ったわけだから全然不満はないんだけどさ)

杏樹(こんな風にこう、ね? 現実叩きつけられるとちょっとなんか、ね?)

杏樹(……いつどんな役をいただけるかわからないし、ちょっと英語も勉強したほうがいいかもなあ……)

124: 2019/01/24(木) 22:23:51.87 ID:/NXxhjWC
~休み時間~


杏樹「やっと終わったぁあ……」

梨子「……杏樹ちゃん?」

杏樹「ふぇ?」

梨子「……さっきの授業、わかった?」

杏樹「ぜんぜん」

梨子「そうよね……」

曜「頭にハテナ浮かんでるみたいな顔してたもんね……」

杏樹「そりゃ分かるわけないよー……」

梨子「テスト大丈夫なのかしら……」

杏樹「ふぇ」

梨子「学年末テスト」

杏樹「……」

曜「来週だっけ」

杏樹「え、ちょっ……マジ?」

梨子「マジです」

曜「マジだね」

杏樹「……教えて!!!」

ようりこ『はいはい……』

125: 2019/01/24(木) 22:28:53.14 ID:/NXxhjWC
梨子「とりあえず単語覚えよっか……だいたい教科書の内容を出してるから、それさえ読めるようになれば……」

杏樹「ぅぐぐぐ……」

杏樹(17歳に英語を教わる22歳って……なっさけない……)

曜「梨子ちゃんここってなんて読むんだっけ」

梨子「ここは……って、なんで曜ちゃんまで私に教わってるの?」

曜「え、説明……いる?」

梨子「……いらないけど」

杏樹「曜ちゃんもアホなんかぁ……私と同類なんかあ……!」

曜「渡辺曜、制服と動くことしか脳にありませんゆえ!」

杏樹「仲間よ!」

曜「おお兄弟!」

梨子「バカやってないではやくやる」

ようあん『はい』

梨子「今日から全科目叩き込まないといけないの……? ハードだわ……」

杏樹「ごめんねぇ」

梨子「いいわよ……なんとかやってみせます。梨子ちゃんがんばる」

ようあん『がんばルビィ!』

梨子「あ・そ・ば・な・い』

ようあん『はい』

126: 2019/01/24(木) 22:41:31.15 ID:/NXxhjWC
杏樹(そんな感じで勉強を教わりながら、こっちのAqoursメンバーと過ごすことになった)

杏樹(この頃にはこの生活も悪くないな、なんて思い始めてて……)

杏樹(千歌っていう枠に私が入り込んでしまったってことは……私がみんなをラブライブ決勝の舞台に連れて行ってあげないと、ってことだよね)

杏樹(責任重大だ。千歌の分も私が頑張ってあげないと)

杏樹「……なんかやる気出てくるじゃん」

杏樹「みんなのことは心配だけど……っていうか、千歌はどこ行ったんだろ」

杏樹「朝……朝、なんか千歌も私の世界に……なんて思ったけど」

杏樹「まーっさかそんな『君の名は』みたいなこと起きるわけないしねー」

杏樹「アニメでよくある異世界転生ものだよ、多分。そう思おう」

杏樹「私が自分の世界に帰って、千歌が出てきたとき、困らないように」

杏樹「千歌の分も私がみんなを……」

杏樹「こういうのって、千歌が私に上書きされたってことだよね? なら、私の中で見てるのかな……千歌は」

杏樹「……頑張るよ、私。見ててね」

曜「あんちゃん練習行くよー!」

杏樹「あ、うん今行くよー!」

149: 2019/01/25(金) 16:41:48.76 ID:eYe6UVpa
~杏樹の部屋~


pipipi…pipipi…

pipipi…カチ

千歌「ん、っむ……」

千歌「ぅう……痛……」

千歌「今何時……6時かぁ……」

千歌「ご飯食べて学校行かないと…………って、あれ……ここどこ……」

千歌「……ぁ」

千歌「そ、そうだ……私、なんか変な世界に来ちゃったんだ……っ」

千歌「志満姉……美渡姉……」

千歌「曜ちゃん、梨子ちゃん……みんな……」

千歌「いな、いんだ……そうだ、わたし、一人で……」

150: 2019/01/25(金) 16:56:48.83 ID:eYe6UVpa
千歌「ぅ……」グス

千歌(決めたはずなのに。決意したはずなのに……ひとりだって思った瞬間、心がどうしようもなく不安になっちゃった)

千歌(怖がっちゃいけないのに。いまは、ここでやれることを出来るだけやるんだって……曜ちゃんと約束したのに)

千歌「曜ちゃん……」

千歌「私、どうしたらいいの……? 曜ちゃん、曜ちゃんどこ……?」

千歌「ひとりでいるの、こわいよ……」

千歌「……ぅぅう……」


~♪


千歌「ん…………なんの音?」

CDプレイヤー「~♪」

千歌「あ、μ'sのCD……昨日かけたまま寝ちゃったんだ」

151: 2019/01/25(金) 17:07:23.22 ID:eYe6UVpa
千歌「……μ's。ほのかちゃん……」

千歌「……そうだ、ここが別世界で……私のいたところがアニメだって言うなら……」

千歌「μ'sもアニメが……声優がいるんじゃ……」

千歌「えと、パソコン借ります……伊波さん!」カタカタ

千歌「らぶら、いぶ……っと」カタカタ

千歌「────でた」

千歌「ラブライブサンシャイン、オフィシャルサイト」

千歌「これの、μ'sの方……かな」カチ

千歌「……あった、アニメ……ラブライブ」

千歌「穂乃果ちゃんの声優……新田恵海」

千歌「……アニメだ」

千歌「本当にアニメに……なってるんだ……」

千歌「μ'sのこと……いっぱい書いてる。CDも、ブルーレイも……」

千歌「これ、私たちのアニメだったら……?」

千歌(画面を操作して、ラブライブサンシャインのページに飛ぶ。キャラクターとキャストの画面────あった)

千歌「……この人が、伊波杏樹さん。CV.高海千歌……」

152: 2019/01/25(金) 17:08:17.67 ID:eYe6UVpa
千歌(本当なら、ここには私が居たのかな。私が居て……伊波さんがキャストのところに)

千歌「…………みんな、アニメなんだ。本当にアニメなんだ……」

千歌(昨日の夜は、曜ちゃんに慰めてもらったおかげで元気になれた)

千歌(けど……一晩明けて、気持ちが落ち着いてきたら……やっぱり、何も変わっていなかった)

千歌(それでもざわついていた心が落ち着いたのか……だんだんと、冷静にこの状況を受け止め始めてる……)

千歌(これは夢じゃなくて現実で……勢いだけではどうにもならない、無情な……)

千歌「っ、く……」グシグシ

千歌(自然と涙が出てくる)

千歌(決めたのに、ゆらぐ)

千歌(だめなのに、現実を見てしまったら……こんなにも、私って弱かったんだって……)


piron♪


千歌「ラインの音……」

153: 2019/01/25(金) 17:09:44.91 ID:eYe6UVpa
千歌「ケータイ? 私のじゃないけど……ごめんなさい、見ます」

スッ


朱夏:おはよー千歌ちゃん! 昨日はよく眠れたかい?


千歌「…………あか、なつ?」

千歌「あ、この字……そっか、曜ちゃんだ」


Chika:おはよう曜ちゃん、なんとか眠れたよ


千歌「……」

千歌(ラインがひとつきただけ、だけど……ホッとする私がいた。誰も知らない、何もわからない世界で、いま、私が頼れる唯一の人……)

千歌(曜ちゃんの声を持つ人、斎藤さん)

千歌(……まだみんなのことは知らない。これから知っていかなくちゃいけない……んだよね)

千歌「……大丈夫、大丈夫。だって私、Aqoursのリーダーだもん」

154: 2019/01/25(金) 17:10:49.64 ID:eYe6UVpa
千歌「リーダーはしっかりするもんだからね……伊波さんも、頑張ってるのかな?」

千歌「……気合い、入れないと」


piron♪


朱夏:あとで迎えに行くからちゃんと用意しておくんだぞ! 必要なものは着替えとタオルと……


千歌「……ふふ、ほんとに曜ちゃんだ」

千歌「ありがとう、っと。だいたい学校でレッスンしてる時と変わんないや」

千歌「よし……頑張ろう!」

155: 2019/01/25(金) 17:17:59.69 ID:eYe6UVpa
~レッスン場~


ゆみ先生「それ、本当に言ってる?」

千歌「……すみません」

ゆみ先生「あれだけ練習した振り付けを忘れたって? WBNWもWSも」

千歌「……」

ゆみ先生「はあ……ちょっと練習中断。頭冷やしてくる」

156: 2019/01/25(金) 17:18:34.11 ID:eYe6UVpa
・・・


千歌「……」

愛香「千歌ちゃん大丈夫? 忘れたってほんとに?」

千歌「……忘れたって言うか」

かなこ「あんな怒った先生初めて見たかも……」

有紗「だいぶ怖かったね」

ななか「うむ」

梨香子「千歌ちゃん……?」

千歌「……わたし」

朱夏「ねえ……みんなちょっと聞いてくれないかな。千歌ちゃんのことで、大事な話があるんだけど」

千歌「曜ちゃん……」

朱夏「……」コクン

愛「なになに?」

愛奈「どしたの」

157: 2019/01/25(金) 17:19:37.59 ID:eYe6UVpa
朱夏「千歌ちゃん、自分で言える?」

千歌「……うん」

千歌「あの、あのね……私……」

・・・

ななか「千歌がこの世界の人間じゃない?」

千歌「……うん」

梨香子「いやいや、なに言ってるんだし……w」

千歌「私、私は……逆なんだよ。このキャラと、声優が!」バサッ

愛「それって……映画の台本?」

千歌「うん、その……私のところ。伊波さん」

愛香「伊波杏樹?」

千歌「そう……伊波杏樹さん。ここでは私が声優で、この伊波杏樹さん役を担当してるけど……」

千歌「……けど、違うんだよ。本当は逆なんだよ」

168: 2019/01/25(金) 22:04:48.87 ID:eYe6UVpa
愛香「うえぇ……ちょっと言ってる意味わかんないですよ小林は……」

千歌「だからね、私はこの世界の人間じゃなくて……多分、この……アニメの世界から来たんだと思う」

みんな『……』

梨香子「いやいやいや」

かなこ「なになにww」

愛香「もしかしてヨハネになったの? 小林、声優変更のピンチ!?」

有紗「今日の千歌ちゃん、なんかおかしいよ?」

朱夏「みんな……」

千歌「……」

愛「……ほんとなの?」

千歌「……」コクン

愛香「え、あいあい信じるの?」

愛「だってマジで言ってる顔だし……今までこんなになった千歌ちゃん見たことないよ」

かなこ「いやぁ……でもなぁ……」

169: 2019/01/25(金) 22:09:54.76 ID:eYe6UVpa
有紗「でも、さっき怒られてたし」

ななか「振り付けひとつも覚えてないって、普通ありえないしね。むしろ記憶喪失の方が説明もつきそうだけど」

朱夏「でも、千歌ちゃん、アニメのAqoursのことは知ってたでしょ? 昨日のMy舞だって完璧に踊れてた」

ななか「……確かに。記憶喪失でも説明できないね」

愛「アニメの世界から来たって考えたら……確かに、あれアニメの曲だもんね」

ななか「でもまだ信じきれないな……疑ってるわけじゃないけどさ。それに、このタイミングで振り付けがわからない曲があるってなるとライブに影響も……」

有紗「すわわ……」

千歌「ごめんなさい……」

愛奈「大丈夫!」

千歌「ぅう……」

170: 2019/01/25(金) 22:12:30.15 ID:eYe6UVpa
愛奈「分からないんだったら、分かるまで練習すればいいんだよ! 私らが教えるじゃん!」

千歌「っ、……」

有紗「あいなちゃん……」

愛奈「信じる信じないは別としてさ、こんな顔の千歌は見たことないっしょ?」

ななか「そりゃあ……まあ」

梨香子「……うん」

かなこ「確かに……アニメのあんちゃんっぽいかも」

愛「そのあんちゃんが千歌ちゃんだったら、納得できるかもね」

朱夏「みんな……」

有紗「じゃあ、どうする? まず分かる曲と分からない曲を確認したほうがいいよね」

愛香「誰かのプレイヤーで再生して、知ってる曲知らない曲って答えてもらう?」

ななか「そだね。千歌、できる?」

千歌「……」コクン

171: 2019/01/25(金) 22:17:26.82 ID:eYe6UVpa
愛香「知らなかったらちゃんと言ってね。4thのセトリに入ってるやつだけ流すから」

千歌「う、うん」

愛「そういえば、もし本当に千歌ちゃんがこのアニメの中から出てきたんだとして……あんちゃんと入れ替わってるんだとして」

愛「千歌ちゃんはアニメの何話くらいから来てるだろ……わかる?」

千歌「わ、分かんない……その、アニメを見たら、私の知らない先の話を知っちゃうと良くない気がして」

かなこ「でも分からないことには色々やばいよ? ライブの演出とか、他の仕事でも影響でるかも」

千歌「うう……」

梨香子「WBNW知らないって言ってたよね?」

千歌「えっと……曲は、知ってるんだ。ここに来るまえに、Aqoursのみんなで聞いたから。で、次の日にダンスレッスンを始める予定だったんだけど……」

愛香「じゃあラブライブ決勝は?」

千歌「まだだよ。……でも、もうすぐのはずだけど」

愛「閉校祭は?」

千歌「もうやったよ」

愛奈「じゃあ11話と12話の間?」

千歌「12話……?」

愛奈「あ、やべ」

172: 2019/01/25(金) 22:18:33.66 ID:eYe6UVpa
千歌「アニメって何話まであるの?」

朱夏「それは……知らない方がいいと思う。知っちゃったら、色々まずいでしょ?」

千歌「……そう、だね」

愛「早く練習再開できるように、早く始めようよ。いつまでもゆみ先生ブチギレたまんまだとマジで進まないし」

ななか「じゃあ千歌、始めても大丈夫?」

千歌「……」

朱夏「千歌ちゃん?」

千歌「……ごめん、みんなの名前……まだ覚えられてないから、私が分かる名前で呼ばせてね」

千歌「曜ちゃん、梨子ちゃん、果南ちゃん、ダイヤさん、鞠莉ちゃん、善子ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん」

千歌「みんな、ありがとう。私、頑張るよ……みんなの足、引っ張らないようにする!」

愛香「良きに計らえ!ギラン!」

ななか「うむ」

有紗「あんま無理しないで大丈夫だよ?」

愛奈「ワイだって間違うしww」

かなこ「んじゃ、再生するよー? イントロクイズねww」

愛香「お、じゃあ一番答えられなかった人全員分のジュース奢りでww」

有紗「あいださん、ちゃんと曲名分かる?」

梨香子「あいださん分かるよ!!? 当たり前だよ!」

愛「いや、千歌ちゃんの勉強の時間なんだけど……」

千歌「……ふふ」

朱夏「?」

千歌「なんだか、私の知ってるAqoursだなっね」

みんな『……』

173: 2019/01/25(金) 22:20:03.87 ID:eYe6UVpa
愛「まあ、中の人ですし?」

梨香子「私と梨子ちゃんは全然似てないけどね」

愛香「ヨハネはヨハネですけど!」

有紗「でも、そんな風に言われるとちょっと嬉しいね。ダイヤは私なんだから当然なんだけど」

ななか「私たちはずっと千歌を現実の存在だって思ってるから、変な感じするけど。まあ、悪くはないかな」

かなこ「私とまるちゃん……全然似てないぞ? 身長も性格も」

朱夏「まあまあ、千歌ちゃんが打ち解けてるってことでいいじゃん!」

愛奈「グフフ、私とマリーがそっくりですってよもうおほほww」

愛「にゃーちゃん一番喜んでるし……」

千歌「えへへ! みんな、よろしくお願いします!」

みんな『うん!』

174: 2019/01/25(金) 22:35:15.57 ID:eYe6UVpa
千歌(……こうして、私が、こっちのAqoursの一員になるための厳しい特訓が始まった)

千歌(分からない曲もいくつかあって、それは私の……伊波さんのカバンに入ってたプレイヤーにもあったから、それを借りてずっと聴かせてもらってます)

千歌(ダンスは善子ちゃんと曜ちゃんが得意だって言ってて、二人からみっちり叩き込まれることに)

千歌(あの怖い先生にもう怒られないように、動画やアニメのPVを参考にして、何度もなんども)

千歌(……そう、これから私たちが踊るはずだったPVを、何度も見て)

千歌(────みんな、輝いてた。PVの中のみんなは……とってもとっても、うーんときらめいてた!)

千歌(真ん中にいるのは私じゃなくて、伊波さんだけど……でも、なんだか私にそっくりな気がして他人に感じないんだ)

千歌(まるで私がそのままアニメになったみたいで、すごいなーって思った!)

175: 2019/01/25(金) 22:35:46.94 ID:eYe6UVpa
千歌(自分がアニメのキャラクターだって聞いて最初はびっくりしたけど……でも、私はちゃんと生きてる。みんなとの思い出も、ぬくもりも覚えてる)

千歌(だから、世界は違うけど……みんな、生きてるんだ。私がそう信じる限り、みんなはいる。ずっと、ずっと、あの世界に)

千歌(……寂しくないわけじゃないよ? もちろん、みんなと踊れないのは寂しい。みんなに会えないのはとっても寂しい)

千歌(でも……こっちのみんなも、やっぱり、Aqoursだった。私の知るAqoursのみんなとは少しずつ違うけど、紛れもなくAqoursだった)

千歌(だから、不思議と寂しすぎて死んじゃうってくらいにはなってないんだ。それなりに楽しい毎日だから)

千歌(私はこっちでみんなと踊るんだ。みんなが輝いたんだから、私だってみんなと輝いてみせる)

千歌(私たちはどこに居ても、どこに行ってもAqoursなんだから!)

176: 2019/01/25(金) 22:37:22.27 ID:eYe6UVpa
千歌「だから……伊波さん」

千歌「伊波さんが、私の代わりにみんなを輝かせてくれたんなら」

千歌「伊波さんの分、私がこっちでみんなと輝いてみせるよ」

千歌「……もちろん、戻りたいけどね」

千歌「いつか戻れるその日まで……私、伊波さんの分も頑張るから」

千歌「あ、それと、伊波さんのお仕事もマネージャーさんや事務所の人に手伝ってもらいながらなんとかやってて……」

朱夏「千歌ちゃーんりきゃこー!あと1分だよー」

千歌「はーい! ……っと、またあとでいっか」

梨香子「日記?」

千歌「わ、びっくりした……梨子ちゃん覗かないでよ~」

梨香子「ごめんw」

梨香子「でも日記にしては手紙っぽかったよね」

千歌「しかも読んだの!? ……まあ、その、伊波さんにね」

梨香子「……なるほど」

梨香子「……ねえ、千歌ちゃん」

千歌「?」

梨香子「……ちょっと相談があるんだけど」

千歌「私に、相談?」

梨香子「……梨子ちゃんのことで」

千歌「!」

千歌「……わかったよ。あとで、話そっか」

梨香子「うん……お願い」

183: 2019/01/26(土) 05:31:44.99 ID:Owm6kWFA
~レッスン後~


ゆみ先生「おつかれー! 千歌、だいぶ良くなってきてるよ」

千歌「あ、ありがとうございます!」

ゆみ先生「WBNWもWSも完成度あがってきてる。前はどうなるかと思ったけど……なんとかなりそうだね」

千歌「はい!」

ゆみ先生「今度全員集まったときにもう一回確認するから、気張ってよ」

千歌「はい!」

ゆみ先生「ふたりも気抜かないように!」

朱夏「はい!」

梨香子「……はい!」

ゆみ先生「よーしそれじゃあ今日はおしまい。明日は3人はレッスン無いけど、次全員集まったら……あれもやるからね」

ゆみ先生「────想いよひとつになれ」

梨香子「っ……」ビクッ

千歌「はい!」

朱夏「……りきゃこ」サスリサスリ

梨香子「……、っ……ん」

184: 2019/01/26(土) 05:32:53.81 ID:Owm6kWFA
・・・


朱夏「つっっかれた! 久々の学年曲きついなー」

千歌「私、これ、体育館で踊ったんだ。曜ちゃんと梨子ちゃんの3人で」

梨香子「アニメのやつだね」

朱夏「1期の3話? だっけ、りきゃこ」

梨香子「んー……忘れたw」

朱夏「おい!」

梨香子「冗談だしw」

千歌「ふふ」

千歌「そーだ! ねえねえ、ご飯いかない?」

朱夏「お、いいですねいいですね」

梨香子「飲み?飲み?」

千歌「いやわたし未成年だよ!? 普通にファミレスだよ!」

朱夏「ファミレスって高校生かよ! 私たちの認識だと22なんだけどなぁ……」

千歌「だって私高校生だもん……」

185: 2019/01/26(土) 05:34:30.96 ID:Owm6kWFA
梨香子「まあまあ行こう行こう」グイグイ

千歌「ね、ねえりこちゃん本当に良くないって~!」

梨香子「まあまあまあまあ」

朱夏「あ、でも私、明日浦ラジの収録だわ」

梨香子「あ、そういえばそっか」

千歌「へ?」

朱夏「うーん……行きたいけど、うーーん……」

朱夏「次のレッスンの日にして! この通り!」

千歌「曜ちゃんもこう言ってるし、そうしよ? ね、りこちゃん……ね?」

梨香子「そのときあいださんオフかわかんないんだけどw」

朱夏「そん時はまたそん時に考えるってことで!」

梨香子「……しゃーなしね?」

朱夏「うっす! あざっす! ……じゃ、斉藤はこのへんで! ……千歌ちゃん、もう平気そう?」

千歌「……うん、いつもありがとね、曜ちゃん」

朱夏「ん! それではまた次のレッスンで! ヨーソロー!」ビシッ

千歌「またね~!」フリフリ

梨香子「またね朱夏。気をつけて帰るんだよ」

朱夏「はいよー」フリフリ

186: 2019/01/26(土) 05:36:48.54 ID:Owm6kWFA
千歌「……どうする?」

梨香子「……」

梨香子「飲みいこ?」

千歌「未成年!!」

梨香子「お店じゃなかったら?」

千歌「……まだマシ。だけどお酒は……」

梨香子「大丈夫だって22歳なんだもん」

千歌「だーかーらー……」

梨香子「ま、あいださんがいいとこ連れてったげるから」

千歌「いいとこ……?」


~りかこのいえ~


梨香子「ただいまー」

千歌「お、おじゃまします……」

梨香子「ゆっくりしてって」

千歌「うん! ……あ、梨子ちゃんのグッズ! ピアノもある……かわいい」

梨香子「……ありがと」

梨香子「リビングこっちだよ」

千歌「あ、はーい」

187: 2019/01/26(土) 05:37:26.62 ID:Owm6kWFA
梨香子「そういや家にAqours連れてくるの初めてかも」

千歌「……あんまりプライベートのつながりってないの?」

梨香子「そんなこともないよ? すわわとか有紗とは遊んだりするし、ギルキスの二人とも仲良いし」

千歌「私にとって……Aqoursは常に一緒だって思ってたから」

梨香子「仕事の関係……みたいなのは、寂しい?」

千歌「……うん、すごく寂しい。こっちに来て、最初の頃……ものすごくつらかった」

梨香子「……そっか、そうだよね。アニメのあんちゃん────Aqoursは、ずっとずっと一緒だもんね。近所に住んでて、一緒に学校行って」

千歌「うん……」

梨香子「……頭撫でたげよっか?」

千歌「……うん」

梨香子「よしよし」ナデナデ

千歌「……へへ、りこちゃんだ」

梨香子「っ……、……」

千歌「りこちゃん……?」

梨香子「……さっき言ってた、話。覚えてる?」

千歌「えっと、相談だっけ」

梨香子「……うん。飲みながら話そっか」

梨香子「その方が私も話しやすいし」

188: 2019/01/26(土) 05:39:30.23 ID:Owm6kWFA
千歌「……本当に飲むの?お酒」

梨香子「当たり前じゃん! 千歌ちゃんが嫌がるからあいださんのお家に招待したんだよ?」

千歌「ま、まあそうだけどぉ……」

梨香子「……まあ、相談もこの方がしやすいかなって」

千歌「……わかったよ。じゃあ今日はりこちゃんに付き合います」

梨香子「うん、ありがと」

梨香子「あいださん最近料理番組やってるからね、ちょっとしたご飯とおつまみくらいは作れるんですよ」

梨香子「たまごやきとか食べる?」

千歌「食べる! あとご飯のおかずも……あ、ハンバーグとか作れる? 曜ちゃんと梨子ちゃんの3人で時々『さわやか』行くんだけど……」

梨香子「お前をハンバーグにしてやろうか……」

千歌「ひっ!?」

梨香子「冗談w」

千歌(あの顔は絶対冗談じゃない)

189: 2019/01/26(土) 05:45:25.19 ID:Owm6kWFA
・・・


梨香子「できたよーりきゃこお姉さん特製のたまごやき!」

千歌「おお、美味しそう」

梨香子「あいださんの愛が詰まってるから」

千歌「……あいださんの愛だ!」

千歌「あ、今のは逢田と愛をかけた~……」

梨香子「いや説明しなくていいw」

千歌「えへへ~」

千歌「それじゃあいただきまーす!」

梨香子「めしあがれ~」

千歌「はむ……」

梨香子「どう?」

千歌「んまい!」

梨香子「よかったぁ……」

千歌「それじゃあ、りこちゃん」

梨香子「ん」カシュ

千歌「私はオレンジジュースを」

梨香子「ほろよいね」

千歌「……ほんとにお酒飲むの?」

梨香子「22歳なんだから大丈夫だって」

千歌「17歳なのに……」

梨香子「ほらあけてあけて」

千歌「うぅ……もう知らないからね! 何かあったらりこちゃんのせいにする!」カシュ

梨香子「あいださんが守ってやるよお! かんぱーい!」

千歌「もお……かんぱい」


カチン

190: 2019/01/26(土) 05:47:51.39 ID:Owm6kWFA
ゴクッゴクッ…

梨香子「ぷはーーっ!! 仕事終わりの酒は格別!」

千歌「りこちゃんおじさんみたい」

梨香子「それはあいなでしょ」


愛奈「くしゅん!」


梨香子「このおつまみおいしいんだよ。タネザック。おすすめ」

千歌「ほえー……ぼーる?」

梨香子「違うしw」

梨香子「柿ピーを粉々にして丸く固めた……んだと思う」

千歌「? それボールじゃん」

梨香子「……ほんとだ」

梨香子「ボールw」

千歌「たべていい?」

梨香子「たべてたべて」

千歌「ポリポリ……あ、おいひ」

梨香子「でしょ」

千歌「曜ちゃんも来れたらよかったのになぁ」

梨香子「朱夏は今度! 今日はあいださんが千歌ちゃんを独占するからw」

千歌「ええ~……そんな人気者みたいに言わないでよ~」

梨香子「いやいや人気者でしょw」

千歌「やぁだもぅ……だーめ」

梨香子「あざとい声やめろし」

191: 2019/01/26(土) 05:51:23.50 ID:Owm6kWFA
梨香子「ん、んく、ごく……ん、はぁ」

梨香子「……」

梨香子「それで……相談のこと、なんだけど、さ」

千歌「ん、うん?」

梨香子「千歌ちゃん……私たちのライブの映像って見た?」

千歌「……ううん、見てないよ。伊波さんのお部屋にライブのブルーレイがあるけど、再生する機械がなくって」

梨香子「え、ほんと? まじ?」

千歌「ほんとです。だから見たくても見れないんだ」

梨香子「……そうなんだ」

梨香子「私、私も……あんまり見ない。見たいけど……見れないんだ」

千歌「見れない……?」

梨香子「……ライブを見るの、怖くて」

千歌「……怖い?」

梨香子「うん……」

梨香子「梨子ちゃんって……すごい子だよね」

千歌「ほえ?」

梨香子「最初は弾くのすら怖がってたのに、みんなに背中を押されてピアノのコンクールに出たでしょ」

千歌「……あったね。そんなこと」

梨香子「梨子ちゃんを抜いた8人で『想いよひとつになれ』を歌って……梨子ちゃんも一人じゃないって気持ちをもらって、自分に踏ん切りをつけてた」

梨香子「……歌も上手だし、作曲もできるし、私にないものをいっぱい、いっぱい持ってる」

梨香子「……ほんとに、梨子ちゃんってすごいんだ」

千歌「……りこちゃん」

192: 2019/01/26(土) 05:54:39.89 ID:Owm6kWFA
梨香子「Aqoursの……ううん、ラブライブのライブってね、アニメとのシンクロがテーマなんだ」

千歌「……シンクロ」

梨香子「アニメの完全再現っていうのかな。振り付けも衣装もアニメと完璧に同じ……カメラワークもそれに近づけて」

梨香子「それがラブライブのテーマ。μ'sもAqoursも、それを売りにしてる」

千歌「……うん。アニメの映像を見て練習してるから、なんとなく感じてた。ほんとになんとなくだったけど」

梨香子「……」

梨香子「それでね、千歌ちゃん」

千歌「……うん」

梨香子「Aqoursの1stライブ……そこで『想いよひとつになれ』をみんなで披露したの」

千歌「おぉ……」

梨香子「そこで私は梨子ちゃんみたいにピアノを弾くことになったの」

千歌「え、すごい!」

梨香子「私、それまで音符も読めなくって……3ヶ月間めちゃくちゃ練習したんだよ」

梨香子「いっぱいいっぱいいっぱい練習して、練習して、練習して、練習した」

梨香子「梨子ちゃんみたいになりたくて、必死に練習して……最高のライブにしようって」

千歌「すごいすごい! ピアノかぁ……ライブでピアノなんて考えたことなかったよ~!」

梨香子「でも、でも」

梨香子「失敗したんだ」

千歌「え……?」

193: 2019/01/26(土) 05:56:42.22 ID:Owm6kWFA
梨香子「1日目は上手くできたんだけど……2日目で、失敗しちゃって」

梨香子「それから『想いよひとつになれ』を聴くのも、ピアノを見るのも怖くなっちゃって……それからずっとライブでは披露できなくなっちゃった」

梨香子「大好きなのに、大好きな曲なのに……私のせいでライブではタブーみたいになっちゃったんだ」

梨香子「私は……梨子ちゃんとシンクロできなかった。梨子ちゃんにはなれなかったんだ」

梨香子「それからずっと梨子ちゃんを追いかけてる。遠くにいる、梨子ちゃんをずっと……ずっと」

梨香子「ずっと、あのライブから……何度ライブを繰り返しても、追いつけないんだよ。あと少しで届きそうになっても、あの日のことが引きずって梨子ちゃんに追いつけない。また引き離される」

梨香子「梨子ちゃんになれないんだよ、わたし……シンクロ、できないんだよ……」

千歌「っ……でも、4thライブのセットリストに……」

梨香子「……うん、やるの。『想いよひとつになれ』」

梨香子「また……ピアノ、ひかなくちゃいけなくないんだ。しかも、東京ドームで……みんなの憧れた、μ'sが最後に立ったあの舞台で……」

梨香子「私、また……ピアノを……」フルフル

千歌「りこちゃん……」ギュウッ

194: 2019/01/26(土) 06:01:04.00 ID:Owm6kWFA
梨香子「……怖い。またみんなに迷惑かけたらって、思ったら怖くて……怖くてっ……」ジワッ

梨香子「梨子ちゃんになれないことが、怖い……私、わたし……っ」

千歌「……りこちゃん」ナデナデ

梨香子「っ、ぅうぅ……っ……」

千歌「梨子ちゃんと……りかこちゃん」

梨香子「……ぇ?」

千歌「……かけがえのない日々を過ごしてたんだ♪」

梨香子「??」

千歌「この続きは?」

梨香子「えっ……と、……いまさらわかった ひとりじゃない……?」

千歌「かけがえのない日々を積み重ねて♪」

梨香子「いまさらわかった……ひとりじゃない」

千歌「……そういうことなんだよ!」

梨香子「いやわかんないし!」

千歌「えー!?」

梨香子「どういうことだし……」

195: 2019/01/26(土) 06:06:32.54 ID:Owm6kWFA
千歌「Aqoursメンバーと過ごして来た日々、積み重ねてきた日々は?」

梨香子「……かけがえのない、私の人生で最高に本当に濃密な時間だよ」

千歌「なら、梨子ちゃんと過ごしてきた時間は?」

梨香子「梨子ちゃんと、過ごした……?」

千歌「千歌はね、りかこちゃんが梨子ちゃんと過ごしてきた時間は、もっともっとかけがえのない大切なものなんじゃないかなって思う」

千歌「だってね、名前に梨子って入ってる……りかこちゃんは生まれた時から梨子ちゃんがずっとずっと一緒にいるんだよ」

千歌「だから、りかこちゃんはひとりじゃないんだよ」

梨香子「いっしょ、に……ずっと……」

千歌「シンクロ、なんだよね。ラブライブは」

梨香子「……」コクン

千歌「でも、無理に梨子ちゃんにならなくていいと思う」

梨香子「え……?」

千歌「なれないなら、一緒にいればいいんだよ。梨子ちゃんに隣にいてもらって、一緒に踊って歌ってもらえばいいんだよ」

梨香子「……ずっと、一緒」

千歌「そう! りかこちゃんは追いかけなくていい。だってすぐ隣にいてくれてるんだもん」

千歌「だからもう、あとは一緒に歩いていくだけでいいんだよ」

千歌「梨子ちゃんと一緒に」

梨香子「……一緒に」

196: 2019/01/26(土) 06:07:45.22 ID:Owm6kWFA
千歌「りかこちゃんの知ってる梨子ちゃんは、りかこちゃんを置いて行っちゃうような人?」

梨香子「……ううん、そんなことない」

千歌「だよね! 私もそう思う! 毎朝バス待っててくれるし、たまに起こしに来てくれるし」

梨香子「ちゃんと起きなよ……w」

千歌「面目ありません……ふふ」

梨香子「……」

千歌「ずっと梨子ちゃんはここにいるんだよ」

梨香子「……ここに」

千歌「メンバーとの想いは、もうとっくにひとつだよね。だったら、あとは、梨子ちゃんだけ」

千歌「梨子ちゃんはいつも隣にいてくれてる。りかこちゃんが遠くにいると思ってるだけで、すぐそばにいるんだよ」

千歌「いつもそばにいて、同じ方向を見てくれてる。あとはりかこちゃんがその想いに気づいてあげれば、もう梨子ちゃんとも心がひとつになるんだよ」

千歌「これが、梨子ちゃんとりかこちゃんの『想いよひとつになれ』なんだよ」

梨香子「……うん」

千歌「……どうかな?」

梨香子「分かんない。まだ、分かんない。怖いのは、変わらないけど……そっか」

梨香子「梨子ちゃん……ずっと隣にいてくれてるんだ」

千歌「うん!」

197: 2019/01/26(土) 06:08:32.01 ID:Owm6kWFA
梨香子「……梨子ちゃん」

千歌「りかこちゃんが動けなくなったら、きっと背中を押してくれる。大丈夫よって! 私と一緒にやりましょって!」

梨香子「……そう、かな? 私、こんな……こんなだけど、見捨てたりしないかな……っ」グス

千歌「そんなことしないよ……私が保証します」ナデナデ

梨香子「……うん、うん……ありがと」ゴシゴシ

梨香子「かっこいいね、千歌ちゃん」

千歌「えっ!? そ、そんなこと初めて言われた……」

梨香子「ふふ……なんかあんちゃんみたい。イケメンだ。イケちかだ」

千歌「遊ばないでよ、もぉ」

梨香子「……ありがと。ちょっと元気出たとおもう」

千歌「うんっ」

梨香子「……よし! 今からライブ観よう!」

千歌「なんですと!?」

198: 2019/01/26(土) 06:09:14.07 ID:Owm6kWFA
梨香子「明日オフでしょ?」

千歌「え、えっと……うん!」

梨香子「じゃあ今日はもう泊まってって! んで朝までライブBD見るぞ! あいださん決めたから!」

千歌「……りこちゃん」

梨香子「あ、りこちゃんに戻った」

千歌「だって上手く言えないんだもん……りかきょちゃん。りきゃきょ……り……」

千歌「りこちゃん」

梨香子「……まあ、ずっとそう呼ばれてるししっくりくるけどw」

梨香子「ちょっと用意するから。1stの2日目になったら絶対肩抱いてよ。泣くから私、絶対w」

千歌「ま、まかしとけー!」

梨香子「……」

梨香子「梨子ちゃん、私、頑張るからね」

千歌「……」

千歌(梨子ちゃん……こんな優しい人に愛してもらってるんだよ? ふふふ、これからもりこちゃんの隣で一緒に歩いてあげてね)

千歌(私のこと起こしに来てばっかじゃなくてさ……梨子ちゃんのこと、本当に愛してくれてる人に力を貸してあげて)

梨香子「あ、チューハイ終わった。次のやつ開けよ」

千歌「お酒飲みながら見るものなのかなライブ……」

千歌(そんなこんなでりこちゃんとのブルーレイ鑑賞が始まったのだった)

199: 2019/01/26(土) 06:09:58.02 ID:Owm6kWFA
『────君の心は輝いてるかい♪ 胸に聞いたらYesと答えるさ♪』


千歌(────私がいる)

千歌(────私がいる)

千歌(────私の知らない、私がいる)

千歌(Aqours1stライブ。横浜アリーナ)

千歌(アニメ1期が終わって、最初のライブ。現実のAqoursの最初のライブ)

千歌(そこで私の知らない私が踊っている)

千歌(そこで私の知らない私が歌っている)

千歌(その姿は、どうしようもないほど、私だ。高海千歌……鏡に写した、そのままの私)

千歌(初めてのライブで緊張してるのかな、トークも全然ぎこちなくて、りこちゃん曰く初々しい感じらしい)

千歌(でも……まだ2年も経ってないんだって。1stライブから2年で、もうアキバドーム……じゃないや。東京ドームだね)

200: 2019/01/26(土) 06:10:49.89 ID:Owm6kWFA
千歌「……、っ」ゴシゴシ

千歌(どうしてか、目頭が熱くなった)

千歌(このすごい舞台を私が経験してないからなのか、映像を見てみんなを思い出しちゃったからなのか)

千歌(それとも、Aqoursとの絆、想いの強さに胸を打たれたのか)

千歌(────わからない)

千歌(わからないけど、とりあえず)

千歌(アニメの映像をバックに背負って踊る、Aqoursは────とてもかっこよかった)

千歌(……伊波さんはこんなすごい舞台で踊ってたんだね)

千歌(批判の声も大きかったってりこちゃんは言ってたけど……そんな中で、これだけ多くの人の前で、輝きを見せられたんだ)

千歌(すごい、ほんとにすごい)

千歌(私の声優さんはこんなにもすごい人だったんだ)

千歌(みんなの頼れるリーダー……カッコいいリーダー)

千歌(私の声優さん)

千歌(ねえ、伊波さん────いつか会えるかな)

千歌(私、あなたに会ったら言いたいことがたくさんあるんだ)

千歌(お礼も言いたいし、まず自己紹介かな? 他にもこっちで経験した色んなことを話したいし……)

千歌(……へへ、日記に書くこといっぱいだ)

千歌(今日のこともちゃんも書いておくから、安心してね。帰って来たときに読んでくれれば、それでいいから)

千歌(────そんなことを思いながら、私はほろよいを飲み干すのでした)

214: 2019/01/26(土) 16:23:15.30 ID:Owm6kWFA
~千歌の部屋~


梨子「どう?」

杏樹「んー……解けた!」

梨子「……ふんふん、あってる」

杏樹「よっし!」

曜「梨子ちゃん私も見てー」

梨子「はいはい……うーん、曜ちゃんは間違ってます」

曜「えぇー!?」

梨子「大丈夫よ。解き方はあってるから、あとは簡単な計算ミスをなくすだけ」

曜「見直しって苦手なんだよなー……」

杏樹「じゃあ曜ちゃん」

曜「なあに?」

杏樹「点数で勝負しよう」

曜「……!!」

杏樹「数学のテストで負けた方が勝った方と梨子ちゃんにミスドおごりで」

曜「やる!」

梨子「もお……」

215: 2019/01/26(土) 16:25:00.64 ID:Owm6kWFA
杏樹「梨子ちゃんはどっちが勝っても食べれるから安心しといて!」

梨子「できないわよ……だってふたりともどんぐりの背比べだもの」

杏樹「おいなんだとこらぁ!」

梨子「ひゃっ!?」

杏樹「じゃあ梨子ちゃんも勝負する!?」

梨子「し、しないわよ! ……絶対勝つもの」

杏樹「くっ……言い返せない……」

曜「やめとこうあんちゃん……梨子ちゃんには勝てないよ私たち」

杏樹「ぐぬぬ……」

梨子「もう、遊んでないで続きやるわよ? 今日はこれ終わったら長文もあるんだから」

杏樹「英語やだぁ……もぉ……」

曜「曜ちゃんはおねむであります……」

杏樹「じゃああんちゃんはおなかぺこりんであります……」

(_๑òωó)_バァン

ようあん『』ビクッ

梨子「や・る・の」

ようあん『……はい』

216: 2019/01/26(土) 16:26:03.09 ID:Owm6kWFA
梨子「もう……勉強教えてって言ったのは二人からなんだからね? 私、手は抜かないわよ」

曜「お願いします」

杏樹「します……」

杏樹(梨子ちゃん怖いわ……りこちゃんたすけ……いやでもりこちゃんも分かんなさそうだな……)

曜「あ、でもそろそろ帰らないと」

杏樹「? 泊まればいいんじゃないの?」

曜「む」

梨子「そうね。時間もないし徹夜で勉強よ」

曜「むむ」

杏樹「テスト期間はAqoursの練習も減らすってダイヤさん言ってたし。明日はお休みだけど練習ないし」

曜「むむむ」

梨子「いくらラブライブが近いと言っても、テストが免除されるわけじゃないもの。頑張らないと出場も出来ないかもしれないのよ」

曜「わかったよぉ……」

杏樹「よし! じゃあ志満姉に泊まるって言ってくる」テテテーッ

217: 2019/01/26(土) 16:26:38.05 ID:Owm6kWFA
パタパタパタ

杏樹「志満姉ー」

「あんじゅー」

杏樹「ぉん?」

杏樹「あ、果南ちゃん」

果南「やっほ」

杏樹「来てたの?」

果南「干物、届けにね」

杏樹(そういえばそんな設定あったな……)

杏樹「干物かぁ」

果南「志満姉いる?」

杏樹「あ、うん。しまねー」

志満「はいはい~? ……あら、果南ちゃん」

果南「こんばんは。干物届けにきたよ」

志満「いつもありがとう。ご飯食べてく?」

果南「うんー」

杏樹「いくんかいw」

果南「志満姉のごはんおいしいし」

杏樹「めっっちゃわかる! マジでおいしいよね!」

志満「もお、ふたりとも~」

218: 2019/01/26(土) 16:29:24.62 ID:Owm6kWFA
杏樹「あ、そうだ。曜ちゃん今日泊まってくから」

志満「それじゃあ曜ちゃんと梨子ちゃんのごはんも用意しなくちゃ! 気合い入っちゃうわ~」パタパタ

果南「曜きてるの?」

杏樹「勉強会ってやつですよ。私たちアホなんで」

果南「なるほどね」

杏樹「果南ちゃんは? 勉強大丈夫なの?」

果南「え、うん。毎日やってるし」

杏樹「え゛っ」

果南「……杏樹、私のこと勉強できないとか思ってた?」

杏樹「……そ、そんなことないっすよ? うん」

果南「ふーん……じゃあ私もふたりの勉強見てあげよっかな。あがるね」

杏樹「あ、うん」

杏樹(果南ちゃん勉強できたのか……意外。そういえばアニメで勉強できない描写とかなかったっけ。まあそれは千歌と曜ちゃんも同じなんだけど)

果南「いま意外って顔した」

杏樹「!!!」ブンブンブンブン

219: 2019/01/26(土) 16:33:03.87 ID:Owm6kWFA
・・・

果南「英語かー」

曜「えいごきらーい」

梨子「それ、さっき数学の時も言ってたわよ」

曜「すうがくもきらーい……」

梨子「なんでも出来るみんなのヒーローなのにね、曜ちゃん」

果南「スポーツ出来る人あるあるって感じだよね」

曜「うー」グデー

杏樹「……」カリカリ

梨子「ほら、杏樹ちゃんはしっかり集中してる」

曜「む」

果南「……前は曜みたいにぐにゃぐにゃだったのにね」

梨子「……そうですね」

杏樹「……ん」カリカリ

果南「頼れるリーダーの顔になったね、杏樹」

杏樹「ぶっ!」

梨子「ちょっ!?」

杏樹「な、なぁにいきなり……ちょ、やめてよ……///」パタパタ

果南「ふふ。ごめん邪魔して」

杏樹「もぉ……///」

223: 2019/01/26(土) 19:25:35.42 ID:Owm6kWFA
曜「あんちゃんはずっとカッコいいリーダーだよ!」

杏樹「ちょ、ちょっと!」

曜「ほんとだよ?」

梨子「ええ、ほんとにね」

果南「誇らしい幼馴染を持てて幸せだなー、私?」

杏樹「な、なんの辱めだよこれぇ……///」

果南「ふふ、これなら私たちが卒業しても平気そうかな」

杏樹「……」ピクッ

梨子「そ、それは」

曜「……果南ちゃん」

果南「……この3月には、私たちは卒業する。それから、それぞれの向かう場所へ旅立ってく」

果南「私も、ダイヤも、鞠莉も」

果南「もちろん杏樹たちもね」

杏樹「……」

果南「頑張りなよ、杏樹。新しい学校は、また苦労も多いだろうけど」

杏樹「……うん」

杏樹(そうだ……Aqoursは離れ離れになる。映画で、3年生は卒業して……千歌たちAqoursは新しい学校で……)

杏樹(でも、私……私が……)

224: 2019/01/26(土) 19:29:17.77 ID:Owm6kWFA
・・・

梨子「……ぅ、んん……zzz」

曜「ぐぅ……んぅ……zzz」

杏樹「……」

杏樹(……眠れない。こんなの久々かも)

杏樹(……海、見に行こうかな)


~海岸~


ザザーン…

杏樹「……」テクテク

杏樹「うう、さむ……なんでこの寒い中をあんな薄い格好で歩き回れるの千歌……」


────頑張りなよ、杏樹。


杏樹「……頑張れ、かぁ」

杏樹「あんな言葉……私がもらっちゃダメだろ……普通」

杏樹「私じゃなくて……千歌がもらうべきなんだ。みんなのリーダーは私じゃなくて、千歌なんだから」

225: 2019/01/26(土) 19:38:34.75 ID:Owm6kWFA
杏樹(……私は最初、大好きなラブライブの作品に携われる、それだけで嬉しかった)

杏樹(もちろん、当然、批判の声は多くて……悩むこともあったけど……千歌の笑顔が元気付けてくれた)

杏樹(千歌と一緒に走り続けて……一緒に世界を見ていきたいと感じて、そう願い続けてきた)

杏樹(もちろん今もそう、これからもそれは変わらない)

杏樹(私は……私こそ、千歌に引っ張ってもらってきたんだ。千歌と一緒に、千歌の隣で……ずっと。Aqoursとしてこれまで頑張れたのは、千歌のおかげで……)

杏樹(私は千歌と一緒に、ずっと一緒にいた。今も、今も一緒にいる、そう信じてる。けど……みんなのAqoursのリーダーは……私じゃ、ないんだよ)

杏樹(私じゃ────)

「あーんじゅ」

杏樹「っ……、果南ちゃん」

果南「眠れないの?」

杏樹「……うん、ちょっと」

果南「勉強しすぎ? それともラブライブが近いから緊張してるとか?」

杏樹「……」

果南「ふふ、杏樹でも緊張するんだ」

杏樹「そりゃあね」

226: 2019/01/26(土) 19:46:48.50 ID:Owm6kWFA
果南「……最近会わなくなってたよね」

杏樹「え?」

果南「私と杏樹。ほら、Aqours始めるまではよく海岸で夜会ってたじゃん」

杏樹「……そう、だったね」

果南「でもAqoursが始まってから忙しくなって……お互い、夜に海岸を歩く暇なんて無くなっちゃったんだよね」

杏樹「……」

果南「ね、だから久しぶりに海、一緒に歩こうよ」

杏樹「わざわざ許可取るもんじゃないでしょ?」

果南「まあ……ね」

杏樹「ふふ」

果南「……綺麗だよね、内浦の海は」

杏樹「うん……ほんとに綺麗」

杏樹(アニメでもたくさん見た……現実でも、何回も見た)

杏樹(本当に綺麗、本当に……もう、私のふるさとみたいに感じる)

杏樹「果南ちゃんの宝物、なんだよね」

果南「ふふ、そうだよ? もちろんAqoursもね」

杏樹「……うん」

果南「どうしたの? そんな暗い顔して。寂しい?」

杏樹「……それは」

227: 2019/01/26(土) 19:47:44.67 ID:Owm6kWFA
果南「……私たちは大好きな地元を離れてく。もうこんな気軽には会えなくなっちゃうんだよね」

杏樹「……そうだね」

果南「新しい場所に行くときは、いっつも勇気がいる。怖いのも、不安なのも、乗り越えていかなくちゃダメ」

果南「でも杏樹がリーダーなら心配ないって思うよ。私は」

杏樹「……」

果南「杏樹がAqoursを引っ張ってってくれるなら、私たちは安心して卒業できる」

果南「私たちが一度は諦めた夢を、杏樹が叶えてくれた。また鞠莉とダイヤと、一緒の舞台に立てた。大切な仲間もできた」

果南「ありがと、杏樹。私、最高に幸せだったよ」

果南「だから、みんなのことは心配してない。だって杏樹がいるし、みんなの力を信じてるから」

果南「これからもずっとAqoursを、私たちの大好きなAqoursをよろしく頼むよ」

杏樹「────じゃない」

果南「え?」

杏樹「違う、違うんだよ果南ちゃん……」

果南「杏樹……?」

杏樹「その言葉をもらっていいのは、私じゃないんだよ────」

杏樹「私は、みんなのAqoursのリーダーじゃないんだよ……!」

228: 2019/01/26(土) 19:51:06.21 ID:Owm6kWFA
杏樹「みんなの知ってるAqoursの、リーダーじゃないんだ……っ」フルフル

果南「……どういうこと?」

杏樹「っ、……」

果南「大丈夫、ゆっくり話して」ナデナデ

杏樹「…………」

杏樹「私は……私は、この世界の人間じゃ、ないんだよ」

果南「……」

杏樹「私ね、声優なんだ。アニメの、声優」

杏樹「このAqoursの……リーダーの声優をしてる」

果南「リーダー……?」

杏樹「そうだよ……その子の名前は、高海千歌。果南ちゃんと曜ちゃんの幼馴染で、旅館の娘で、梨子ちゃんの隣人」

杏樹「そして……本当のAqoursのリーダー。μ'sに憧れて、みんなを集めて、浦の星女学院の名前を残そうと頑張ってる……」

杏樹「みんなのリーダーだよ」

果南「……杏樹、それは」

杏樹「私のこと……って言いたいんでしょ?」

果南「……」コクン

229: 2019/01/26(土) 19:51:37.72 ID:Owm6kWFA
杏樹「そうだよね、そうだと思う。今、みんなにとってはそれが私」

杏樹「でも私、私の世界では……同じ声優たちでAqoursってグループを組んでるんだ」

果南「……」

杏樹「そのAqoursは……みんなアニメプロジェクトの一員として集められて、知り合って……仲間になった、そんな始まりで」

杏樹「……私はそのAqoursでリーダーを……してる。アニメのAqoursのリーダー、高海千歌の声優だから」

果南「……アニメの、Aqours」

杏樹「私たちAqoursは、アニメの曲でライブをするんだ。もう3回やってて……もうすぐ4回目」

杏樹「今までみんなが歌ってきた、踊ってきた曲は全部知ってる。全部歌える。全部、私の宝物」

杏樹「だけど私は千歌じゃないから……私は果南ちゃんからその言葉をもらえない。だって私は、果南ちゃんたちの本当のリーダーじゃないから」

杏樹「その言葉をもらうべきなのは、私じゃなくて千歌。本当のAqoursのリーダー……私が憧れた、最高のリーダーなんだよ」

果南「……」

果南「……………………」

果南「アニメ……かぁ」

231: 2019/01/26(土) 20:48:34.10 ID:Owm6kWFA
杏樹「……ごめん、びっくりしたよね。いきなり自分がアニメのキャラクターだって言われて、信じられないよね」

果南「まあ、ね。あんまりよく分からないけど……でも、杏樹が違う世界の人ってことは分かった」

杏樹「……信じてくれるの?」

果南「もちろん。だって私は幼馴染なんだよ? ……えっと、私の記憶では幼馴染なんだけど」

果南「杏樹が真剣に言ってる時の顔は、何回も何十回も何百回も、何年も見てきた」

果南「今の杏樹の顔は、その時の顔なんだよ。それなら、信じない理由がないじゃん」

杏樹「かなんちゃん……」

果南「……ずっと不安だったよね」

杏樹「……」コクン

果南「その……こっちに来てどれくらいなの?」

杏樹「……1週間くらい」

果南「そっか……そうか、だからWBNW、完璧だったんだ」

杏樹「……うん」

果南「じゃあ、私たちがラブライブ決勝でどうなるかも」

杏樹「うん……知ってる」

果南「そっかぁ……そうなんだ」

杏樹「……ごめん」

果南「なんで謝るの?」

杏樹「それは……だって、今まで騙してて……」

果南「別に騙されてないよ?」

杏樹「……え?」

232: 2019/01/26(土) 20:56:07.42 ID:Owm6kWFA
果南「私たちにとっては、杏樹がいるのが現実で……それを疑ってない。まあ、いま私はそれを知ってびっくりしてるけど、騙されたってほどじゃないし」

果南「それに、それでも杏樹は私たちのリーダーだよ」

杏樹「いや……それは……」

果南「その、千歌?」

杏樹「……うん、千歌」

果南「杏樹はその千歌に憧れて頑張ってきたんでしょ。千歌に憧れて、千歌に背中を押してもらって、その……杏樹の世界のAqoursを頑張ってきた」

杏樹「……うん」

果南「そこで頑張ってきたこと、頑張った力を今ここでも発揮しようとしてる。千歌に貰ったものを私たちにくれようとしてる」

果南「それって、杏樹は杏樹だけど……その隣に千歌が一緒にいるってことだよね?」

杏樹「……」

果南「杏樹は今、ひとりでこの世界に来て不安なままAqoursをやってくれてるんだと思うけど……私たちはその背中を頼もしく思ってる」

果南「それって、不安に思う杏樹の背中を支える千歌が、私たちにも見えてるってことになると思うんだ」

杏樹「……」

杏樹「うん、……そう、そうだよ」

杏樹「いるよ。千歌はずっと、私と一緒に……一緒にいるんだ」

果南「ね! だから、杏樹を通して、千歌の言葉も伝わってる。ちゃんと聞こえてるよ────私たちに!」

杏樹「……わたし、たち……?」

233: 2019/01/26(土) 20:58:45.60 ID:Owm6kWFA
曜「そうだよ、あんちゃん!」

梨子「私たちにも聞こえたわ! ……千歌、ちゃんの声!」

杏樹「曜ちゃん、梨子ちゃん!?」

果南「千歌が本当の私たちの仲間なんだとしたら……その子と一緒にいる杏樹も、でしょ?」

杏樹「っ……」

ダイヤ「そうですわ。あなたがなんと言おうと、あなたは紛れもなく私たちの大切な仲間なんですから」

ルビィ「ルビィも、ルビィも……!」

善子「ギラン!」

花丸「こういう時くらい気の利いたこと言うずら善子ちゃん」

善子「む……私も杏樹のこと大事よ!」

花丸「まるもあんちゃんのこと、大好きずら!」

鞠莉「そういうことだね♪ 杏樹の悩み、頑張り、みんな知ってるよ!」

杏樹「……みんな」

杏樹「な、なによ……みんな集まっちゃって、さ」

杏樹「まるでアニメじゃん……アニメみたいな唐突な展開じゃん……っ」

果南「────だからさ、不安にならなくていい。杏樹は自信を持っていいんだ」

杏樹「……かなん、ちゃん」

果南「ハグ、しよ?」

杏樹「か……な……っ、」

杏樹「ぅうぅぅうっ……」ギュウッ

果南「……よしよし」ナデナデ

235: 2019/01/26(土) 21:02:02.51 ID:Owm6kWFA
・・・

杏樹「っあー……めっちゃ泣いたわ。久しぶりに泣いたわ……」ゴシゴシ

鞠莉「まるで子供みたいだったわね!」

杏樹「うるせっ!」

果南「ね、また杏樹の世界のこと教えてよ」

杏樹「……ん、いいの?」

果南「なんで?ダメ?」

善子「私も聞きたいわ! 私の声優? っていうのが、どれほどのリトルデーモンなのか……気になる!」

杏樹「でも、アニメのキャラクター……なんだよ? 果南ちゃんにも、善子ちゃんにも声優がいて……アニメーターさんが描いた……」

善子「そんなのたいした問題じゃないでしょ?」

杏樹「え……」

果南「私たちは生きてる。生きてて、杏樹といま喋ってるんだよ。それが全てじゃない?」

杏樹「すべて……」

ダイヤ「それとも、杏樹さんのアニメでは……このようなシーンがあったんですか? その、千歌さんとわたくしたちが海岸で話すシーン、思いを吐露する場面が」

杏樹「……ない。こんなエピソードはなかった」

果南「じゃあ、生きてるってことじゃん? 私は生きてる。曜も梨子も、みんなも」

曜「一緒にテスト勉強もしてるし!」

梨子「一緒にご飯も食べたし」

ルビィ「一緒に練習もしたもんねっ!」

花丸「まるは杏樹ちゃんにステップも教えてもらったずら!」

果南「そっ! ……みんな、生きてる。ここで、笑ってる」

善子「私たちの物語がたまたまアニメとして扱われている────そんな世界線である、というだけのこと!」ギラン

果南「そういうこと。もしかしたら杏樹の世界が実はアニメで……っていう世界もあるかもしれないしね」

杏樹「……確かに。果南ちゃん意外と賢い」

果南「意外とって言わないの」

236: 2019/01/26(土) 21:03:25.19 ID:Owm6kWFA
杏樹「さすが……お姉ちゃんだね。私22歳なのに」

果南「え、22なの? むしろそっちがお姉ちゃんじゃん」

杏樹「そうだぞ、お酒飲めるんだぞ」

ダイヤ「犯罪ですわよ」

杏樹「いや飲まないけど。ていうか犯罪ちゃうし!」

ダイヤ「いいえ、犯罪です。あなた以外の全ては17歳の高校2年生だと思ってるんですから」

杏樹「うわぁきっつ、きっつ……22歳で女子高生とかきっつ……」

果南「ふふ! ……んじゃあ、千歌が戻ってきたときに苦労しないように杏樹にはもっと頑張ってもらわないとね。特にテストとか」

杏樹「ぐっ……」

鞠莉「一人でも落第点だったらラブライブ決勝は辞退するから」

みんな『えーーー!!??』

鞠莉「学校を運営する理事長としては、落第は認められまセーン!」

善子「で、出れなくなったら一番泣くのはマリーじゃない!」

鞠莉「シャラップ善子!」

善子「ひぅっ……よ、ヨハネよ……」

ルビィ「おべんきょ、やだぁ……」

ダイヤ「ルビィの勉強はわたくしが見ているんですから、不安などありません。中間テストもよい成績だったでしょう?」

ルビィ「ぅゅ……おねぃちゃ……」

花丸「ま、まるもお願いします……」

ダイヤ「ええ、いつでもいらっしゃい」

曜「……梨子ちゃん」

梨子「はいはい、最後までみっちり教えてあげるわよ。杏樹ちゃんもね」

杏樹「……」

杏樹「ありがとう、みんな」

237: 2019/01/26(土) 21:03:51.86 ID:Owm6kWFA
杏樹(そんなこんなで────私はあらためてAqoursとして迎え入れられた気がした)

杏樹(果南ちゃん、やっぱりいいお姉ちゃんだよ。こういう役回りってシャイニー姉さんが多かったんだけど、やっぱり千歌のことになると果南ちゃんだよなーって)

杏樹(……おすわに教えてあげないと。果南ちゃんってめちゃくちゃかっこいいよって)

杏樹(あと、ほんとにアニメみたいな展開だったよって。みんな謎に集まりすぎ、冷静に考えたら笑うわ)

杏樹(……でも、燃えてきた。こんな素晴らしい仲間に囲まれて、背中を押してもらって、支えてもらって……)

杏樹(ラブライブ決勝、絶対成功させたい。ねえ、千歌。千歌は……すごいね)

杏樹(こんなすごいチームのリーダーなんだよ。私も千歌の色に染められちゃったみたいだ)

杏樹(……一緒に行こう。まだ見たことのない景色、みんなの知らない未来へ)

杏樹(私も立ったことのない、最高の舞台────東京ドーム、いや)

杏樹(アキバドームへ────!)

238: 2019/01/26(土) 21:05:00.55 ID:Owm6kWFA
杏樹「うおーー!!!」

みんな『!!?』

杏樹「私、やるぞーーーーー!!!」

杏樹「ラブライブも4thライブも絶対、絶対絶対成功させる!!」

杏樹「千歌ーー! 見ててーー!!」

杏樹「私、私、やるから!!」

杏樹「……っ…………はぁあーーーー」

杏樹「……すっきりした」

果南「……そっか」

果南「それじゃあ、一回寝て、また明日勉強の続きしようか」

杏樹「……ぁい」

梨子「あーんーじゅーちゃーんー?」

杏樹「やりまあす!」

梨子「よろしい!」

鞠莉「ほかのみんなはマリーの車で送り届けるよー!」

ダイヤ「安全運転でお願いしますわ……」

杏樹「……なんか私までアニメっぽくなっちゃった。ま、いっか!」

239: 2019/01/26(土) 21:05:29.95 ID:Owm6kWFA
杏樹(それから1週間……)

杏樹(果南ちゃんたちにみっちり叩き込まれたおかげで、学年末テストはなんとか乗り越えられた)

杏樹(……平均ギリだったけど、まあ、なんとか)

杏樹(ちなみに曜ちゃんとの点数勝負は同じ数字で引き分け。仲良く3人でミスドに行きました)

杏樹(テストが終われば、高校生はもうほとんど春休みみたいなもの。ラブライブ決勝へ向けて、ラストスパートが始まった)

杏樹(毎朝早くに集まって、夕方遅くまで練習を続ける)

杏樹(私の世界でやってきたレッスンと基本は同じ────だけど、熱意はそれ以上かも。ううん、私たちだって負けてるつもりはないけどさ)

杏樹(果南ちゃんが受け入れてくれた)

杏樹(みんなも受け入れてくれた)

杏樹(千歌のことも、受け入れてくれた)

杏樹(……もう、迷うことはない。ただ全力で、前に)

杏樹(前に……前に、進むだけ────!)

杏樹「みんな、行こう! ラブライブ決勝────アキバドームに!」

みんな『おーー!』

246: 2019/01/26(土) 22:07:34.11 ID:Owm6kWFA
~レッスン場~

梨香子「……」~♪

愛奈「りきゃこ」

梨香子「……ん?」

愛奈「ピアノ……平気?」

梨香子「……平気、じゃないよ。すごく怖い」

愛奈「……」

梨香子「でも、梨子ちゃんがついてくれてる、一緒にいてくれてる……って思ったら、勇気が出てくるの」

梨香子「めちゃくちゃ怖いしミスったらもうダメ、って思うけど……でも、梨子ちゃんがついてくれてるのに、やらないなんて、梨子ちゃんに申し訳ないから」

梨香子「頑張れてるんだ」

愛奈「……そっか、よかった……」ウルウル

梨香子「なに泣いてんのw」

愛奈「だってぇ……ねえ、千歌! りきゃこがピアノ弾いて────」

千歌「ほえ?」モグモグ

愛奈「……なに食べてんの?」

千歌「有紗ちゃんがおやつくれた!」モグモグ

有紗「愛奈ちゃんも食べる? チョコクランチ」モグモグ

愛奈「たべる」

有紗「おいしいよこれ」

愛奈「もぐもぐ……んま! やば!」

梨香子「おーい私のピアノで泣いてたんじゃないのかw」

愛奈「りきゃこも食べなってほら!」

千歌「おいしいよ!」

有紗「あと1個だけど」

梨香子「たべる」

梨香子「もぐもぐ……あ、うま」

有紗「でしょ」

247: 2019/01/26(土) 22:16:31.86 ID:Owm6kWFA
梨香子「もっとないの?」

有紗「えー……あとはポップキャンディくらい」

千歌「キャンディ……あ! ねえねえ、ルビィちゃん釣る?」

愛奈「えwwちょww」

梨香子「それってアニメのww」

有紗「千歌ちゃん名案だね。あいあいー」

愛「ん?」

千歌「ほーらほらほら、こわくなーい」フリフリ←ポップキャンディ

愛「え、なに……」

千歌「ほらほらー」

愛「……あ、アニメのか」

千歌「ほらほらー」

愛「ありしゃーふつうにくれー」

有紗「えーつまんない」

愛「つまんないとか言うなよww」

千歌「つまんなーい」

愛奈「あっはっはっはww」

梨香子「優勝w」

千歌「優勝?」

梨香子「あ、なんでもないw」

千歌「んー……そーれっ!」ポイッ

愛「あ、こら投げるな!」

千歌「えーい!」ムギュー

愛「うぎゃあ!」

有紗「おっと」キャッチ

248: 2019/01/26(土) 22:28:28.49 ID:Owm6kWFA
梨香子「千歌ちゃんの前だとふり、完全にルビィちゃん扱いだね」

愛「全然似ても似つかないし」

千歌「そんなことないよ!」

愛「えぇ……千歌ちゃんそれは流石に言い過ぎ……」

千歌「私、ラブライブサンシャインから来たんだけど! その私が言うんだから!」

愛「ぅー……も、もうやめろー!///」

有紗「あいあい、ほらほら」 フリフリ

愛奈「飴で釣られるあいあい……ww」

愛「……にゃーちゃん笑いすぎだろ」

有紗「……ルビィ、お姉ちゃんの飴が食べられないと?」

愛「む……」

千歌「ルビィちゃん、ほらほら!」

愛「……ぉ、お姉ちゃん! ルビィに、ルビィに……キャンディ、くだしゃい!」

有紗「ふふ、いいこね。ほら、あーん」

愛「うぇっ……ぁ、あーん……」パクッ

千歌「……ダイヤさんとルビィちゃんだ」ウルウル

愛奈「なんで泣いてるのwもぉやだわ千歌さんったらもぉ~ww」

千歌「ま、鞠莉ちゃんだってすぐ泣くじゃん!」

愛奈「う、うるせえい! 涙もろいんじゃ! おじさんになるともう涙止まらんのじゃ!」

梨香子「……w」

249: 2019/01/26(土) 22:43:55.43 ID:Owm6kWFA
ゆみ先生「みんな集まってる?」

みんな『はーい』

ゆみ先生「今日から参加するメンバーいるよー」

梨香子「あ、今日からだっけ」

千歌「え? Aqours以外に来るの?」

朱夏「千歌ちゃんは初対面なんだっけ。アニメじゃ何回も会ってると思うけど」

千歌「……?」

ガチャッ

アサミ「田野アサミですよろしくお願いしまーす」

日向「佐藤日向ですよろしくお願いします」

千歌「……」

愛香「アサ姉ー!」

朱夏「アサミさーん!」

愛「ひなひな~!」

アサミ「3rd以来だね!久しぶりー!」

日向「お久しぶりです……!」

千歌「今の、声って……」

千歌「聖良さんと理亞ちゃんだ!!!」

アサひな『!?』

257: 2019/01/27(日) 02:36:35.44 ID:lQkU5+fl
千歌「わー!わー! 聖良さん!理亞ちゃん!」ピョンピョン

アサミ「あ、あの……ち、千歌ちゃん!?」

千歌「はい! 聖良さんすっごい綺麗! ほそーい!」

アサミ「あ、いやっ……/// え、えっと……なんでキャラ名……?」

千歌「……だめ、ですか……?」

アサミ「…………いいけどね!?」

千歌「やった!」

千歌「理亞ちゃん!」バッ

日向「は、はい!?」ビクッ

千歌「理亞ちゃんも可愛い……」サワサワ

日向「ぁ、あのお……///」

朱夏「ストップ!ストップ千歌ちゃん!」

千歌「……はっ!」

愛「なんかさっき私もやられた気がするんだけど」

有紗「嬉しいんだよきっと」

ななか「うむ」

かなこ「いや二人ともびっくりしてるけどww」

アサひな『……』ビクビク

愛「うちの高海がすみません……」

愛香「すみませーんw」

258: 2019/01/27(日) 03:05:00.33 ID:lQkU5+fl
ゆみ先生「遊んでないでレッスンやるよ!ほらほら!」

みんな『はい!』

ゆみ先生「とくに千歌! AtP分からないとか言いださないよね?」

千歌「いけます!」

ゆみ先生「よし! それじゃあ各自、動き確認していくからねー」


・・・


日向「休憩しまーす……おかし食べまーす」

有紗「チョコあるよ。たべる?」

日向「いただきます!」

千歌「はー……」

アサミ「千歌ちゃんすごいね、やる気に満ちてて」

千歌「ぇっ……そ、そうかなあ?」

アサミ「やっぱり東京ドームってなると、気合いもひとしおって感じだね」

千歌「……うん。ラブライブ決勝の舞台に立てなかったけど、こっちでは立たせてもらえるから」

千歌「だから、頑張らなくちゃ」

アサミ「ラブライブ決勝……? あ、アニメのこと?」

アサミ「それなら優勝したし、立てたんじゃ……ん? どういうことだ?」

千歌「ぇ……」

アサミ「あ、アニメのドームが東京ドームモデルだから、それと同じ舞台にってことね! わかったわかった!」

千歌「あ、あはは! そうそう……うん、そういう……こと」

千歌「…………だよ」

愛香「ちょ、ちょっと千歌ちゃん!」

千歌「あ、うん……ごめんなさい聖良さん、ちょっと行ってくるね」

アサミ「はーい」

愛香「トイレいこ」サスリサスリ

千歌「……」コクン

259: 2019/01/27(日) 03:17:14.01 ID:lQkU5+fl
・・・

愛香「ほい、お茶」

千歌「……ありがと」

千歌「…………」

愛香「……千歌ちゃん」サスリサスリ

千歌「そっか……優勝、できたんだ」

愛香「……千歌ちゃん、アサ姉のは」

千歌「うん、聖良さんは悪くないよ? 全然、悪くないよ」

千歌「びっくりしちゃっただけだから。……でも、気にかけてくれてありがと。善子ちゃんはやっぱり善い子だね」

愛香「……まあこれでも保育士免許ありますし? 千歌ちゃん、妹みたいだから小林は目が離せないといいますか」

千歌「ありがと、善子ちゃんっ」

愛香「ん、苦しゅうないぞ!」ギラン

千歌「ふふ、善子ちゃんが一番善子ちゃんに似てるかも」

愛香「え、マジ? ヨハネ?私ヨハネ?」

千歌「うん、すっごく善子ちゃん」

愛香「ヨハネって言えやぁー!」

千歌「やーだー!」

千歌「……もういっそアニメ全部見るか、私」

愛香「マジ?」

千歌「どうかな?」

愛香「んー……」

千歌「……正直、WSの歌詞と映像見たときにだいたいわかってたし」

愛香「……まあそうだよねえ」

千歌「実際に見てないし、みんなも気を使ってアニメの結末は言わないでくれてたから、聖良さんの話にびっくりしちゃっただけなんだけど」

千歌「とりあえず聖良さんに謝ってこないと」

愛香「謝れるのはいい子だ! 飴ちゃんをあげよう」

千歌「なにあめ?」

愛香「ありしゃのポップキャンディww」

千歌「さっき食べたわ!」

260: 2019/01/27(日) 03:24:30.15 ID:lQkU5+fl
日向「あ、千歌ちゃんさんあいきゃんさん」

愛香「お~ひなひな~」

千歌「りありあ~」

日向「ぉ、ぅ……///」

愛香「照れてんのぉ?」

日向「いや、それはっ!」

愛香「可愛い奴め~!」

日向「ひぃっ」サッ

愛香「くっ……ヨハネの抱擁を避けるの!?」

日向「あいきゃんさんってそこまで善子に憧れて……?」

愛香「クックック、我が名は堕天使ヨハネ。精霊結界の崩壊により魔力が……ってなんでや!」

千歌「すっごく善子ちゃんだよね! 生き写しみたい!」

日向「わかります、絶対めちゃくちゃ意識してます」

愛香「そ、そう? 小林、そんなヨハネに似てる?///」

ひなちか『よろこぶんかい』

261: 2019/01/27(日) 04:03:20.74 ID:lQkU5+fl
~レッスン場~

千歌「聖良さーん!」

アサミ「はーい?」

千歌「さっきはごめんなさい!」

アサミ「え?」

千歌「いや、えっと……なんか私、変なこと言っちゃって空気悪くしちゃったから……」

アサミ「……言ってたっけ?」

千歌「え、うん」

アサミ「……んー……? うーん……」

アサミ「んー……言ってないと思うんだけど??」

千歌「えー……」

アサミ「まあ、全然気にしないでいいよ! だって私が分かってないもんw」

千歌「……でも」

アサミ「うーん……じゃあ気になるならあとでスタバ奢って?」

千歌「……スタバ!オシャレだ!」

アサミ「スタバでww」

千歌「なんでも奢ります!」

アサミ「やった! 理亞、なんでも奢ってくれるって!」

日向「え、ほんとですか千歌ちゃんさん!」

千歌「えっ……い、いいよぉ?!」

朱夏「ほーん? ほおーん? なんだか良さげな話をしておられますなぁ?」

愛香「小林も聞いてしまいましたぞ千歌ちゃんさん?」

千歌「ま、まさかその声は……」

きゃんしゅか『じもあい!』ビシッ

千歌「4人も無理だよー!」

愛香「じゃあタピオカでいいよ」

朱夏「私は焼肉」

千歌「ひとりだけ値段のレベルおかしいよ!?」

朱夏「ちっ……この流れならイケると思ったんだけどなあ」

千歌「いけないいけない」

262: 2019/01/27(日) 04:19:33.06 ID:lQkU5+fl
~レッスン終わり~

『ありがとうございましたー!』


朱夏「ちーかちゃん」

千歌「よーちゃん?」

朱夏「帰り、ご飯行こうぜっ!」

千歌「いいよ! あ、でもあんまり遅くなったら……明日、舞台のお仕事があって」

朱夏「おお、バリバリやれるようになってきたねー」

朱夏「最初はよく泣いてたのに」

千歌「……みんなのおかげだよ。みんなといると、Aqoursのみんなといるって気持ちになれる」

千歌「それが私の心の支えになってるんだ。だから……伊波さんのお仕事も、頑張ろうって思えるの」

千歌「舞台って結構面白いんだ。大変だし厳しいけど……事務所の人やマネージャーさんに助けてもらいながら、なんとかね」

朱夏「……そっか!」

朱夏「4thも、もうすぐだしね」

千歌「……うん」

千歌「頑張ろうね、一緒に」

朱夏「もちろん!」

264: 2019/01/27(日) 04:53:52.97 ID:lQkU5+fl
千歌(そう、本当に厳しい……厳しい毎日だった)

千歌(不意に襲われる不安な気持ちは、いつまでも消えないけれど)

千歌(だけど、私には支えてくれる人たちがいる)

千歌(私を応援してくれる人がいる)

千歌(Aqoursのみんなが私を助けてくれる)

千歌(そのAqoursを通して、私の……大好きな、大切な、何よりも愛してる仲間が笑いかけてくれてるような気がするんだ)

千歌(そしてなにより)

千歌「……伊波さん」

千歌「伊波さんが、私と一緒に歩いてくれる……そう思うと、辛くても諦めちゃダメだって思うんだ」

千歌「昔のインタビュー記事、見たんだ」

千歌「……伊波さんが、私のことをどんなふうに思ってるのか」

千歌「私と一緒に歩いてる、一緒の景色を見たい……って」

千歌「今は全部私の名前と姿で出てたけど……この言葉は、私じゃ出てこないかもしれない。あれは伊波さんのそのままの気持ち、だよね」

千歌「これ、すっごく恥ずかしかったんだよ? でも……とっても嬉しかった」

千歌「私には、こんなに力強くてかっこいい人が付いていてくれたんだ、って」

千歌「こっちに来なきゃ、分からなかった。知ることもできなかった」

千歌「だから……会ったことはないけど、伊波さんが常に隣にいて、私と一緒に歩いてくれてる……」

千歌「そう思うだけで、私は無限にパワーが湧いてくる気がする!」

千歌「……明日は4thラブライブ。伊波さん、もし私がいた世界にいるなら……今は何をしてるのかな」

千歌「伊波さんはアキバドームの舞台、立てたよね? 私が見たことのない景色、きっと全てが輝いた世界」

千歌「……これから、私もそれを見に行くんだよ。ううん、私だけじゃない」

千歌「Aqoursのみんなと……そして伊波さんと、一緒に」

千歌「頑張るよ、私。それが終わってからはどうなるのか、分からないけど」

千歌「明日と明後日のライブ……絶対、絶対絶対絶対に成功させるから!」

千歌「みんなで必ず成功させるから……!!」

265: 2019/01/27(日) 04:56:30.26 ID:lQkU5+fl
千歌「────だから」

千歌「一緒に、踊ってください。一緒に歌ってください」

千歌「私と……私たちと」

266: 2019/01/27(日) 05:07:03.25 ID:lQkU5+fl
・・・


杏樹「────みんな」

杏樹「ついに来たね。ラブライブ決勝の舞台……アキバドームに」

曜「……来たね」

梨子「……うん」

杏樹「ここにいるのが私で、本当にごめん」

杏樹「でも千歌は常に私と一緒にいる。今も一緒、ずっと一緒……だから安心して。私たちはAqoursだ」

善子「別に、最初から心配なんてしてないわよ」

花丸「杏樹ちゃんがいる、千歌ちゃんがいる、みんながいる、それだけで最強ずら!」

ルビィ「この9人……ううん、あんちゃんの世界のAqoursの9人も入れれば、最強を超えて無敵だよっ」

善子「私が言いたいかっこいいことばっかり!」

杏樹「ふふ、そうだね。私たちは無敵、この18人だからここまでやってこれた」

ダイヤ「ええ、あなたという存在のおかげで気付けたこともたくさんあります」

果南「杏樹の世界のこと、Aqoursのこと、千歌のこと。全部が今の私たちの力になってる」

鞠莉「マリーたちの大舞台、ちかっちにも見てもらいましょ! 外のAqoursのみんなにも、胸を張って見せてあげるの!」

杏樹「……うん! みんな、準備はいいね!」

267: 2019/01/27(日) 05:11:08.37 ID:lQkU5+fl
・・・

千歌「────ついにこの日が来たね」

朱夏「うん、きた」

梨香子「……うん」

愛香「……緊張するね」

愛「……」

有紗「さっきチラッと見てきたけど、すごいよ」

ななか「……」

かなこ「でも、今日、このためにやってきたんだから」

愛奈「ビビっちゃダメよぉ千歌!」

千歌「わ、私は……うん、ちょっと怖いかも」

千歌「だけどみんながいるから平気。私たちの背中には、あの9人のAqoursがついてるもん」

千歌「伊波さんが、杏樹ちゃんが隣にいてくれる。みんなの隣に、みんなの大切な人がいてくれてる」

千歌「だから、一緒に踊ろう! 最高の舞台を、最高に楽しもう!」

268: 2019/01/27(日) 05:16:56.33 ID:lQkU5+fl
『1!』

『2!』

『3!』

『4!』

『5!』

『6!』

『7!』

『8!』

『9!』


千歌「────ゼロからイチへ!」

杏樹「イチからその先へ────!」


『Aqours────』

『サンシャイン────!!』


────その言葉に導かれるように。

────私たちは、光の中へと飛び込んだ

269: 2019/01/27(日) 05:25:31.39 ID:lQkU5+fl
~???~


千歌「……」

千歌「あれっ!? こ、ここどこ……私、確か……」

千歌「東京ドームは!? みんなは……あれ、あれれれ??」

「……千歌?」

千歌「え……」

杏樹「……千歌」

千歌「っ、ぁ……もしかして」

杏樹「……はじめまして、伊波杏樹で────うわっ!?」


ギュウッ


千歌「やっっっと会えた!!!」ムギュー!!

杏樹「ちょ、苦しっ……」

千歌「会えた、会えた……杏樹ちゃん、杏樹ちゃんだ!」

杏樹「ぅ、うん……そう……そうだよ、千歌」

千歌「ほんとに、本当に杏樹ちゃんだ……」

杏樹「……うん、ほんとに千歌だ。千歌、私もずっと……会いたかった」

千歌「大変だったんだよ、もう……いきなり私はアニメだとか言われたり、声優とか、ライブとか、舞台とか……っ」

千歌「そう、そうだよ! 私たち、なんでか入れ替わってたんだよ!」

杏樹「う、うん……私は千歌に私が上書きされたと思ってたけど、そういうことみたいだね。ごめん、苦労したでしょ」

千歌「ほんとだよー! もー!」

千歌「……でも、杏樹ちゃんにも苦労かけちゃったよね。ラブライブ決勝の直前だったでしょ?」

杏樹「んー……いや、マジで苦労したのは学年末テストだった」

千歌「テスト……」

千歌「テスト!? どうだったの、赤点とかなってないよね~……!?」

杏樹「お恥ずかしながら平均ギリギリで……」

千歌「そっかぁ~……よかったぁ」

270: 2019/01/27(日) 05:37:45.34 ID:lQkU5+fl
杏樹「千歌は、4thラブライブだよね」

千歌「うん! 知らない曲多くて困ったよ……なんでアニメでやってない曲までやるのぉ……」

杏樹「アニメだけだとすぐ終わるし」

千歌「むぅ……」

千歌「でも、とっても楽しかった」

千歌「朱夏ちゃんはずっと私を支えてくれたし、りかこちゃんは私と一緒にいっぱい悩んでくれた」

千歌「有紗ちゃんはいつもお菓子くれて、愛ちゃんとら一緒にふざけて遊んだ。愛香ちゃんも、朱夏ちゃんみたいに私を気遣ってくれた」

千歌「愛奈ちゃんはちょっとおじさんっぽいことよく言ってたけど……いっつも優しくしてくれた。私が泣きそうになったらすぐタオルくれたし」

千歌「ななかちゃんはあんまり喋る方じゃなかったけど、むしろ頼もしい背中を見て、ついていってた」

千歌「みんな、私を支えてくれた。だから大変だったけど、辛くはなかったよ」

杏樹「……そっか、みんなやるじゃん。さすが、Aqoursだね」

千歌「杏樹ちゃんは? どうだった?」

杏樹「んー……」

杏樹「みんなアニメ通りだった」

千歌「どういうこと……」

杏樹「んー……私のよく知る、頼もしくて優しくて大好きなみんなのまんまだったってこと!」

千歌「……ふふ、そっか! みんな、最高の仲間だよ」

杏樹「うん、わかる……めちゃくちゃ楽しかったよ」

千歌「……ねえ、私ね、今から4thライブが始まるんだ。光の海に飛び込んでいく瞬間だった」

杏樹「……私はラブライブ決勝が始まる。私たちも、光の海に飛び込んでいく瞬間だった」

千歌「……」

千歌「……もしかして私たち、自分の世界に帰っちゃうのかな」

杏樹「……」

千歌「これまで頑張ってきて、やっと……やっと、私たちの目指した最高の舞台に立てる時だったのに」

千歌「……頑張ったのに、やっと夢が叶う瞬間だったのに……」

271: 2019/01/27(日) 05:45:35.38 ID:lQkU5+fl
杏樹「……千歌」ギュウッ

千歌「……ぁんじゅ、ちゃん」

杏樹「ねえ、知ってる?」

杏樹「私たち、ずっと一緒にいるんだよ。アニメが始まる前から……プロジェクトの開始から、ずっと」

千歌「……ぅん、インタビューで、見たよ」

杏樹「まじか、恥ずかし」

杏樹「……おほん。だから、もし帰ったとしても一緒だよ」

杏樹「私は、千歌と東京ドームで4thライブをやりきるし」

杏樹「千歌は、私とアキバドームでラブライブ決勝をやりきる」

千歌「……うん、ずっと一緒。私、杏樹ちゃんが一緒にいるんだって思って、ずって頑張ってこれた」

千歌「こんなにも素敵な人が一緒にいる。それだけで、無限にパワーが湧いてきた」

千歌「……これからも一緒だよね、私たち」

杏樹「もちろん、ずっとずっと」

杏樹「だって私は千歌と同じ景色を見るのが夢だもん」

杏樹「千歌の見る世界を私も見たい、そう思ってずっと頑張ってきたんだ」

千歌「……うん、私も見たい。杏樹ちゃんとずっと同じ景色、同じ世界を見たい」

杏樹「……なら、怖くないでしょ!」

千歌「……杏樹ちゃん」

杏樹「ほら、4thの練習途中で沼津に行っちゃったから、色々とわからないこともあるからさ」

杏樹「千歌が一緒に踊ってくんないとみんなが困るんだよ」

千歌「……私もラブライブ決勝の途中で入れ替わっちゃったから、みんなのステップあんまりわかんないかも」

杏樹「それはないでしょライブで同じことするんだからw」

千歌「てへ、ばれた」

千歌「とにかく、私も杏樹ちゃんが一緒じゃないとやだってこと!」

杏樹「……ありがとね、千歌。私の分も頑張ってくれて」

千歌「こちらこそ、ありがとう杏樹ちゃん。私の分も頑張ってくれて」

272: 2019/01/27(日) 05:47:20.34 ID:lQkU5+fl
杏樹「一緒に行こう。そして一緒にやり遂げよう」

千歌「うん! 一緒にやろう!」

杏樹「私たち、一緒に!」

千歌「同じ景色を────!」

274: 2019/01/27(日) 05:57:44.56 ID:lQkU5+fl
~内浦、海岸~


杏樹「……」ペラペラ

「おーいあんちゃーん」

杏樹「……ん」

杏樹「なにー? 朱夏」

朱夏「なにしてんの? みんな温泉行ったよ?」

杏樹「……うん」

杏樹「大切な人からの手紙を読んでたんだ」

朱夏「それって、千歌ちゃん?」

杏樹「そ! みんな忘れてるだろうけど、4thライブまで私と千歌は入れ替わってたんだぞ~?」

朱夏「それ何回も聞いたって~」

朱夏「絶対夢だって思うけど」

杏樹「マジなんだよなーこれ」

杏樹「だってほら、この日記の字、私の字じゃないんだよ」

朱夏「……わからん」

杏樹「わかんないかー」

朱夏「でも、なんとなく言いたいことはわかるよ」

朱夏「4thライブ、舞台に上がる直前に言われたんだ。私たちのそばに、常にAqoursが一緒にいるって」

朱夏「私なら曜ちゃんで、りきゃこなら梨子ちゃんって感じで」

杏樹「マジか。私それ言ってない」

朱夏「マジ?」

杏樹「めちゃくちゃマジ」

朱夏「……そっかぁ」

朱夏「じゃあ、いたのかな。千歌ちゃん」

杏樹「いたんだよ。あとでみんなにもこの日記読ませたげるから」

朱夏「お、楽しみにしとく」

275: 2019/01/27(日) 06:03:55.83 ID:lQkU5+fl
朱夏「でも、よくこんなこと言いだしたよね」

杏樹「こんなこと?」

朱夏「Aqoursのみんなで、沼津に旅行に行こうって。しかも完全にプライベートで」

杏樹「あー」

杏樹「私、千歌がこっちにいる間、アニメの世界にいたからさ」

朱夏「それも何回も聞いたって」

杏樹「まあまあ」

杏樹「それで、仕事じゃなくて、自分たちの足で沼津を見たくなったんだよ」

杏樹「Aqoursの9人で、誰一人欠けることなく」

杏樹「私たちを巡り会わせてくれたAqoursを、千歌たちを育ててくれた街を」

朱夏「……ふーん」

杏樹「ふーんてw」

朱夏「でも、名案。みんな仕事でしか来てなかったもんね」

杏樹「でしょ? やっぱり自分で見とかないと」

杏樹「Aqoursの見てきた世界、私たちも一緒に見たいじゃん」

朱夏「……ふふ、まあそれもありかな」

朱夏「全員が二つ返事で賛成したのは、みんな同じ気持ちだったってことかもしれないし」

杏樹「うん!」

杏樹「……じゃ、お先に温泉行くから!」ダッ

朱夏「あ、おい! 呼びに来てやったんだぞ私!」

杏樹「競争だー!」タッタッタッ

朱夏「……こどもめ」


『────ありがと、曜ちゃん』


朱夏「……ん?」クルッ

朱夏「……ふふっ」

朱夏「よかったね、千歌ちゃん」

朱夏「すー……っ」

朱夏「待てーー!杏樹こらぁー!」タッタッタッ

276: 2019/01/27(日) 06:14:19.26 ID:lQkU5+fl
~浦の星女学院~


パチパチパチパチ


曜「────踊れたね、もう一度!」

梨子「この学校でみんなと、Aqours全員で────!」

千歌「あのね────伝えたいことがあるの」

果南「千歌?」

千歌「みんなに、Aqours全員に!」

ルビィ「伝えたいこと?」

善子「なによ」

花丸「ずら?」

千歌「私たちAqoursと……それを愛してくれる世界のこと!」

ダイヤ「愛してくれる、世界……?」

千歌「そう! 私たちをずっと応援してくれた、私たちとずっとずっと一緒にいてくれた、大切な、もう9人の仲間たちのこと!」

鞠莉「Wow! 楽しそう、聞かせて聞かせて!」

千歌「うん、聞いてほしい!」

千歌「その人たちはね、私たちを誰よりも愛してくれてる────」

千歌「もうひとつのAqoursの物語────!」

277: 2019/01/27(日) 06:16:31.23 ID:lQkU5+fl
END

278: 2019/01/27(日) 06:17:39.87 ID:lQkU5+fl
お付き合いいただきありがとうございました

279: 2019/01/27(日) 06:19:15.90 ID:lQkU5+fl
初めて書いたキャストのSSだったので色々変なところもあったかもしれませんが、
読んでくれた皆さまに心からの感謝を

281: 2019/01/27(日) 07:14:05.44 ID:m9zQFEj9
お疲れ様
素晴らしいssだった

283: 2019/01/27(日) 08:06:24.52 ID:a7sRYfME
おつ
いいもん見せてもらったわ

284: 2019/01/27(日) 08:27:58.66 ID:NpK3kNtt
お疲れ様

285: 2019/01/27(日) 08:41:21.04 ID:rphji5Xa
おつ、面白かったぞ

286: 2019/01/27(日) 09:37:21.68 ID:UaYIeRee
面白かった、完結乙!

287: 2019/01/27(日) 09:44:10.37 ID:WY09LJpS

なるべくいろんなキャラやキャストに見せ場があってよかった

288: 2019/01/27(日) 09:56:07.69 ID:fqLSGgnl
暖かい気持ちになれた、完結おめでとうありがとう

292: 2019/01/27(日) 11:53:49.24 ID:lQkU5+fl
杏樹「千歌は、4thラブライブだよね」

千歌「うん! 知らない曲多くて困ったよ……なんでアニメでやってない曲までやるのぉ……」

杏樹「アニメだけだとすぐ終わるし」

千歌「むぅ……」

千歌「でも、とっても楽しかった」

千歌「朱夏ちゃんはずっと私を支えてくれたし、りかこちゃんは私と一緒にいっぱい悩んでくれた」

千歌「有紗ちゃんはいつもお菓子くれて、愛ちゃんとは一緒にふざけて遊んだ。愛香ちゃんも、朱夏ちゃんみたいに私を気遣ってくれた」

千歌「愛奈ちゃんはちょっとおじさんっぽいことよく言ってたけど……いっつも優しくしてくれた。私が泣きそうになったらすぐタオルくれたし」

千歌「かなこちゃんはいつも笑ってて、あの笑顔を見てると私も笑顔になれた。ななかちゃんはあんまり喋る方じゃなかったけど、むしろ頼もしい背中を見て、ついていってた」

千歌「みんな、私を支えてくれた。だから大変だったけど、辛くはなかったよ」

杏樹「……そっか、みんなやるじゃん。さすが、Aqoursだね」

千歌「杏樹ちゃんは? どうだった?」

杏樹「んー……」

杏樹「みんなアニメ通りだった」

千歌「どういうこと……」

杏樹「んー……私のよく知る、頼もしくて優しくて大好きなみんなのまんまだったってこと!」

千歌「……ふふ、そっか! みんな、最高の仲間だよ」

杏樹「うん、わかる……めちゃくちゃ楽しかったよ」

千歌「……ねえ、私ね、今から4thライブが始まるんだ。光の海に飛び込んでいく瞬間だった」

杏樹「……私はラブライブ決勝が始まる。私たちも、光の海に飛び込んでいく瞬間だった」

千歌「……」

千歌「……もしかして私たち、自分の世界に帰っちゃうのかな」

杏樹「……」

千歌「これまで頑張ってきて、やっと……やっと、私たちの目指した最高の舞台に立てる時だったのに」

千歌「……頑張ったのに、やっと夢が叶う瞬間だったのに……」

293: 2019/01/27(日) 11:54:21.73 ID:lQkU5+fl
きんぐ……すまん

294: 2019/01/27(日) 12:08:20.85 ID:4ow0gayv
良すぎた
ありがとう

295: 2019/01/27(日) 12:24:21.19 ID:QTQzsLl2
良き、めっちゃ良き!
おつかれさまでした!!

316: 2019/01/30(水) 00:10:11.79 ID:XqxCSizs
ほんと読んでてりきゃこのところとか4th思い出して泣くかと思った
作者に感謝を…

319: 2019/01/30(水) 10:30:16.65 ID:A2sDLoN/
乙、良いssに出会えた
聖雪描写あまり無かったけど、ひなひなと理亞ちゃんってコミュ力とかAqoursとの接し方とか真逆だから、その辺に千歌ちゃんとまどってたら面白そうだなと思った

318: 2019/01/30(水) 07:58:03.57 ID:Xk6Vhtiq
すげえssに出会ってしまった
高級たこ焼きに感謝

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1548264870/

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