【SS】璃奈「記憶を消せる薬をつくったよ♪」ニコッ【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: 2020/11/28(土) 15:33:47.70 ID:QfhKjjZV
部室
愛「り……りなりー……?」


璃奈「みんな、お疲れさま!」ニコッ


愛「り……りなりー……!?」


璃奈「うん♪私、天王寺璃奈♪とってもキュートな女の子♪ホントだよ♪」ニコッ


かすみ「りな子……!表情が……!!」

しずく「初めて見た……!璃奈さんの……!!」

愛「り……りなりー……!!」


璃奈「…………」ニコニコ






璃奈(―――ふ~ん、そういう反応かぁ~……♪)

2: 2020/11/28(土) 15:34:13.92 ID:QfhKjjZV
璃奈「えっと、今日は3人だけ?」

愛「……え?」

璃奈「あ、え~っと。今日は、3人?ごめん、忘れちゃってて」

愛「う、うん。3年生は進路相談で休みで……」

しずく「せつ菜さんは生徒会のお仕事があって……」

かすみ「歩夢先輩と侑先輩は用事があるって……」

璃奈「……あぁ!そういえばそうだった!教えてくれてありがとう♪」ニコッ

3: 2020/11/28(土) 15:34:58.24 ID:QfhKjjZV
愛「~~~~!!」

璃奈「……?愛さん……?」


愛「りっ……!!りなりーっ!!!!」ギュッ


璃奈「わっ!?あ、愛さん……!?」

愛「よかった……!!よかったね……!!」

璃奈「いたたた……ちょっ、愛さん……/// いたいよぉ……///」


璃奈(…………)





璃奈(なるほど。『宮下愛』は、この反応か)

4: 2020/11/28(土) 15:35:33.42 ID:QfhKjjZV
璃奈「うふふ、ありがとう♪」ニコッ

愛「……!!」


璃奈『愛さんたちのおかげだよ……♪』


愛「りなりー……!!」パアァ…

愛「~~~~~~!!!!」ギュウウ

璃奈「いたたた……♪」ニコニコ

かすみ「よかったね……♪りな子……♪」グスッ


しずく「…………」


しずく『……うん!おめでとう、璃奈さん!』ニコッ

5: 2020/11/28(土) 15:36:16.46 ID:QfhKjjZV
かすみ「でもでも~!かすみん困っちゃう~!」

愛「……は?」

しずく「ちょっ……!?かすみさん……!?」

かすみ「かすみんの次くらいにかわいい、って思ってたりな子が、こぉ~んなにかわいくなっちゃうなんて!」

璃奈「そう?私、かわいいかな?」ニコッ

愛「かっ……!!かわいいっ!!」

かすみ「ぐぬぬ……強敵現る……!!」

愛「いや~!これはかすかすの完敗じゃないかな~!」

かすみ「な~に~っ!?かすみんぜったい負けませんから!!」

愛「このこの~!かすかす~!」

かすみ「かすかすって呼ばないでください!かすみんですっ!」

しずく「あははは……」





璃奈(ふ~ん、これが『中須かすみ』か)

6: 2020/11/28(土) 15:37:24.58 ID:QfhKjjZV
璃奈(……さて、もう1人は……確か、演劇部の……)チラッ

しずく「……!璃奈さん……!その……よかったね!」

璃奈「うん♪ありがとう♪」ニコッ




璃奈(やっぱり♪これが『桜坂しずく』だ♪♪♪)




璃奈「ねぇ、愛さん、かすみちゃん?」

愛・かすみ「ん?なに?」

璃奈「私、今からしずくちゃんと用事があって……そうだったよね?しずくちゃん♪」ニコッ

しずく「……っ!そっ、そうなんです!愛さん、ごめんなさい!かすみさんをお願いします!」

7: 2020/11/28(土) 15:38:11.70 ID:QfhKjjZV
愛「おっけ~!じゃあ今日はかすかすと2人っきりか~!」

かすみ「かすかすって呼ばないでください!かすみんですっ!」


璃奈「じゃ、行こ♪」

しずく「……うん」


ガララッ…


愛「ねぇ~~!!!!かすみん!!!!見た~~!?!?りなりーの表情!!!!」

かすみ「はいはいはい!!!!とぉ~~~~ってもかわいかったですよね!?!?」


キャッキャッ…


璃奈「うふふ、盛り上がってるね♪」

しずく「そ、そうだね」

璃奈「ごめんね?急に連れ出して。かすみちゃんたちと、はしゃぎたかったよね?」

しずく「…………」


璃奈「それで、どこに行こっか?屋上?庭園?―――それとも埠頭?」


しずく「……屋上に行こう、璃奈さん」

8: 2020/11/28(土) 15:38:59.43 ID:QfhKjjZV
屋上
璃奈「屋上に着いたよ♪ここなら、誰にも聞き耳を立てられないね♪」

しずく「……」

璃奈「ここは、広すぎて、広すぎる。建物として大きすぎるし、開放的すぎる。どれだけ大きな声を発しても、その“大きさ”に掻き消されてしまうような、錯覚に陥る」

しずく「……」

璃奈「だから、第三者に会話を聞かれたり、もちろん、盗聴されることもありえないよ♪」


しずく「…………」


璃奈(う~ん、頑固だなぁ……♪)


璃奈「ねぇ、しずくちゃん♪」ニコッ

しずく「え、あ、はい」

璃奈「うふふ♪ようやくお喋りしてくれた♪―――でも、お喋りしたいのは、実は、しずくちゃんの方だよね♪」

しずく「それは……」

璃奈「……♪」ニコニコ

9: 2020/11/28(土) 15:39:56.62 ID:QfhKjjZV
しずく「あの―――」

璃奈「さて」

しずく「……っ」


璃奈「私は、愛さんたちに、2つの重要な情報を、同時に与えたの」

璃奈「愛さんとかすみちゃんは、1つしか汲み取れなかったみたいだけどね♪」

しずく「……」

璃奈「……♪」ニコニコ


しずく「…………記憶を消せる、薬」


璃奈「うん♪汲み取ってくれてありがとう♪」

しずく「ねぇ……!ほんとに……消せるの……!?」

璃奈「消せるよ♪ほら――――――♪」



璃奈「こ ん な ふ う に ♪」ニコッ



しずく「……っ!」

璃奈「私が生き証人だよ♪私が実験体で、成功例の1つ目なんだ♪」

しずく「……ねぇ……璃奈さん……」

璃奈「なぁに?しずくちゃん♪」ニコッ


しずく「もしかして……私たちのことも……忘れてる……?」

10: 2020/11/28(土) 15:41:28.31 ID:QfhKjjZV
璃奈(おぉ~!そこに気付くとは!やっぱり“こっちの情報”に興味津々だね♪)

璃奈「どうしてそう思ったの?」ニコニコ

しずく「それは……」

璃奈「それは……?」ニコニコ



ーーーーーー
璃奈『愛さんたちのおかげだよ……♪』

愛「りなりー……!!」パアァ…
ーーーーーー


しずく「……ごめんね、言えない……」

璃奈「そっかぁ」

しずく「…………」


璃奈(しょうがないなぁ……♪)

11: 2020/11/28(土) 15:42:22.69 ID:QfhKjjZV
璃奈「しずくちゃん、しずくちゃん♪」ニコッ

しずく「な、なに……?」


璃奈『私は、みんなのこと憶えてるよ♪』


しずく「……っ!」

璃奈「どう?」

しずく「……私たちのことも、忘れてるかもって、思った理由は……」

璃奈「うんうん?」

しずく「……私は、演技をしている人間が分かるんだ」

璃奈『あっちゃ~!しずくちゃんにはお見通しだったかぁ~!』ニコニコ

しずく「………うん。『それ』は、演技だよね」

璃奈「あっちゃー。しずくちゃんにはお見通しだったかぁー」


しずく「…………」


しずく「……だからね、璃奈さん」

璃奈「なぁに?しずくちゃん♪」ニコッ

12: 2020/11/28(土) 15:43:06.30 ID:QfhKjjZV
しずく「さっき璃奈さんは『みんなのこと憶えてる』って言ったけど、それは『演技』だった。だから―――」

璃奈「え~、みんなのこと憶えてる、は、ホントだよ?」


しずく「……ほんとに?」

璃奈「ホントホント♪」

しずく「…………」


璃奈「―――桜坂しずくちゃん。虹ヶ咲学園高等部国際交流学科1年、血液型はA型、誕生日は4月3日、演劇部所属、役者志望で……」


しずく「いや、そうじゃなくて……」

璃奈「そうじゃない?え~っと、確かスリーサイズは―――」

しずく「そうじゃなくって!!」

璃奈「そうなの?」

13: 2020/11/28(土) 15:43:38.85 ID:QfhKjjZV
しずく「……えっと、例えば……前に3人で食べに行ったお店のこと、憶えてる……?」


璃奈「…………あー……うん、あのお店ね、おぼえてるよ♪えーっとね……」



璃奈「コバラヘッタ、ヴィーナスフォート店。7月1日から10月31日までの期間限定のマウンテンパンケーキ!!レインボーバージョン!!を食べたよ。かすみちゃんの成績は1勝5敗。注文から7分50秒で料理が到着し、47分23秒で完食。摂取カ口りーはかすみちゃんが819kcal、しずくちゃんが748kcal、私が715kcal。税込み3,050円の代金を、20%引きの学割を使って、割り勘。じゃんけんで負けたから、私が40円多く支払ったよ♪」



しずく「……っ!」

璃奈「ね♪記録《おぼ》えてるでしょ♪」ニコッ

14: 2020/11/28(土) 15:44:18.56 ID:QfhKjjZV
璃奈「それで、早い話が、しずくちゃんも記憶を消したいんでしょ?」

しずく「そ、そんなことは……」

璃奈「ううん。そんなことは、なくはないよね♪」

しずく「えっ……」

璃奈「いつも演技をしているしずくちゃんが、演技をしている人間を見分けられるようにね……」ニコニコ

しずく「……っ!やめてっ……!」


璃奈「私は、記憶を消したいと思ってる人間が分かるようになったんだ♪」


しずく「~~~~~~!!!!」

15: 2020/11/28(土) 15:44:55.40 ID:QfhKjjZV
璃奈「じゃ、消そっか?記憶♪」

しずく「え……?そんなにあっさり……?」

璃奈「え?消したくないの?」


しずく「けっ、消したいっ!!」


璃奈「うふふ♪……でも“あっさり”とは、必ずしも、いかないけどね♪」

しずく「どういう……?」


璃奈「記憶を消すための《条件》があるの」


しずく「条件……?私に満たせるかな……?」

璃奈「まぁ、演劇部なら―――自分の感情をコントロールすることに長けた人間なら―――容易いことだと、思うけどね♪」

16: 2020/11/28(土) 15:45:41.68 ID:QfhKjjZV
璃奈「記憶を消すためには、2つの手順があるの」

璃奈「媒体は、経口薬。飲み込むタイプの、カプセル剤。噛んじゃダメだよ♪」

璃奈「それが胃液に侵され始めて、およそ1時間以内に【ある行動】をすることで、ひどい頭痛に襲われる。それが消去成功の合図だよ♪」

しずく「【ある行動】って……?」


璃奈「消したい記憶を取り巻く感情、もっぱらネガティブな感情だと思うけど、それを強く意識できるような行動だよ」


璃奈「これが《条件》に該当するね。お薬は、誰でも飲み込めるけど、イやな感情は、誰だって吐き出したくない」

しずく「……?」

17: 2020/11/28(土) 15:46:52.49 ID:QfhKjjZV
璃奈「う~ん、説明が難しいなぁ~……」

璃奈「参考になるかは、分からないけど。【私】の場合はね―――」




璃奈「鏡の前で、ずっと突っ立ってたみたい♪」




しずく「え――――――」

璃奈「あぁ、“みたい”というのは、私が憶えてないから出てきた表現だね♪」


しずく「…………分かったよ、璃奈さん」

璃奈「おぉ!」


しずく「この言葉を、璃奈さんにかけるのは、とても不適切だと思うけど―――」



しずく『ありがとう、璃奈さん♪私、記憶を消せそう♪』

璃奈『こちらこそありがとう♪私は、しずくちゃんの記憶を消せそうで嬉しいよ♪』

18: 2020/11/28(土) 15:47:31.48 ID:QfhKjjZV
数時間後
演劇部部長「……しずく?私に用事って……おや?」

璃奈「こんにちは♪」

部長「君は……確かしずくと同じスクールアイドルの……」

璃奈「天王寺璃奈だよ♪私も、しずくちゃんに呼び出されたの♪」ニコッ

部長「へぇ~、そうなんだ。いい表情をするね、君♪」

璃奈「うふふ、スクールアイドルですから♪」


タッタッタッ…


しずく「ごめんなさい!呼び出しておいて遅れてしまって……!」

部長「いや、私も来たばかりだよ」

璃奈「私も♪」

19: 2020/11/28(土) 15:47:52.57 ID:QfhKjjZV
部長「それで、私たちに用事って?」
しずく「あの……!私の【お芝居】の練習をお手伝いしてくれませんか……!?」
部長「うん、いいよ♪」
しずく「ありがとうございます!」
璃奈「なるほど!じゃあ私はお芝居を撮影するね♪」
しずく「よろしくね、璃奈さん!」
部長「よし。じゃあ、お芝居の内容を教えてくれるかな――――――?」

41: 2020/11/28(土) 21:34:04.86 ID:QfhKjjZV
コメントありがとうございます

>>24 33 しずくちゃんの描写はダークな感じになってしまいました……

>>37 39 40 伝わっててよかったです……

>>35 アニメ璃奈ちゃんの「そう」とか「好きなの?」すき

続きは明日の昼になるとおもいます

>>19 改行の入れ忘れ……

20: 2020/11/28(土) 15:48:57.92 ID:QfhKjjZV
部長『やだ~!私がお姫様役をやるの~!』

しずく『だめ~!私がプリンセスをやるって、もう決めたの~!』

部長『くっそぉ~!じゃあ決闘だ!勝ったほうがお姫様だよ!』

しずく『デュエルだね!のぞむところ!私の愛馬、ジョナサン・スティーヴン号でふみつけちゃうから!』




璃奈(しずくちゃんのディレクションは【幼児のおままごと】か。じゃあ、消したい記憶の深度は【私】と同じくらいか……)


璃奈(それにしても……2人とも…………上手だなぁ♪♪♪)

21: 2020/11/28(土) 15:49:57.27 ID:QfhKjjZV
部長『うおおぉぉ!!くらえーー!!』

しずく『ざんねんでしたーー!!バリアでーーす!!』



部長(ふむ……幼児の演技というのは、難しいな……まず、可動域が違いすぎる……)

部長(しずくは……上手だな。まるで【幼児に戻っているような】―――)



しずく『じゃじゃーん!!私のスーパーアルティメットビューティロマンティックコーデ!!アイムウィナー!!ユールーズ!!』

部長『ふん!!なんだよ!!“ぷりんせす”とか“でゅえる”とか!!意味分かんない言葉ばっか使って!!』


しずく『えっ……」

22: 2020/11/28(土) 15:51:06.25 ID:QfhKjjZV
部長『もう、しずくとは二度と遊ばない!!ふーんだ!!』

しずく「まっ……待って……!!」



しずく(堪えて……!!演技をしなければならない【私】とは、もうさようならだから……!!)



しずく(これが最初で、最期の、私のつたない演技――――――)



しずく『……お待ちくださいっ!!姫っ!!』

部長『えっ……?』

しずく『一国の姫ともあろうお方が、城を離れるなど、あってはなりませぬ!』

部長『わぁ~!!私がお姫様~!?』

しずく『ささ、拙者と一緒に剣術の稽古をするでござるよ!』


部長『うん!!しずくだいすき!!私の理想の遊び相手だよ~!!』


しずく「うっ……!!」

23: 2020/11/28(土) 15:51:39.57 ID:QfhKjjZV
部長『いっくよぉ~!!私の真剣奥義~……!!』

しずく『なりませぬっ!?そのように刀を振り回してはっ!?……うわぁっ!?』



部長(……と、私の演技はここまで。ずいぶん意味不明な内容だったけど、たまにはこういうのもいいかな♪)



しずく「うぅ……」



部長(えっと、この演技はしずくに渡された台本に書いてあったね。刀で斬られて痛みを堪える演技?らしいけど……すごく迫真だね♪)





しずく「う゛っ゛…………う゛わ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛――――――」

25: 2020/11/28(土) 15:52:39.25 ID:QfhKjjZV
しずく『ありがとうございました!部長!』

部長「私も刺激になったよ。やはり、スクールアイドルと両立してるからこそ、見えてくる視野があるんだろうね。またよろしくね♪」

しずく『はい!』

部長「じゃ!」


スタスタ…


璃奈「……ねぇ、しずくちゃん」

しずく『なぁに?璃奈さん?』ニコッ


璃奈「―――憶えてる?」


しずく『うん♪全部記録《おぼ》えてるよ♪』ニコッ


璃奈「そっか♪それはよかった♪」

26: 2020/11/28(土) 15:53:29.01 ID:QfhKjjZV
しずく『ほら!今から璃奈さんの演技をするから見てて……!』

璃奈「どれどれ~……♪」


しずく『私、天王寺璃奈。とってもキュートな女の子、ほんとだよ?』


璃奈「おぉ~!たぶん似てる!」



しずく『はぁ~~~~♡♡♡♡こんなに晴れやかな気分で演技に没頭できるのは初めて♡♡♡♡』



璃奈「そう♪よかったね♪」

しずく『今までは演技をするとき【何か】に引っ掛かってたような“気がする”けど……!!』

しずく『今はずっと演技をしていられる!!璃奈さん!!ありがとう!!』

璃奈「そう♪よかったね♪」

27: 2020/11/28(土) 15:54:21.07 ID:QfhKjjZV
しずく『そういえば、どうして私と部長の演技を撮影していたの?』

璃奈「あぁ、これはね、【記憶が消える瞬間】を記録するためだよ♪」

しずく『えっと。質問攻めでわるいけど、それはどうして?』

璃奈「『私たち』は消した記憶の内容を思い出すことができないけど、これを見ることで、その輪郭をぼんやりと眺めることができるからだよ♪」

しずく『……あぁ、つまり、それは記憶を消す前と後の“私”の差分だね?』


璃奈「うん♪ (前の私)-(消したい記憶)=(今の私) だよ♪」


しずく『今の私が前の私を演じるために、役立つのがその録画だね♪』

29: 2020/11/28(土) 15:55:26.19 ID:QfhKjjZV
璃奈「そして『記憶を消した私』が、まず始めに、しずくちゃんに接触したのも同じ理由だよ♪」

しずく『というと?』



璃奈「しずくちゃんに【天王寺璃奈】の演技を教えてほしいんだ♪」



しずく『うん♪いいよ♪』

璃奈「やったぁ♪」ニコッ

しずく『いいんだけど、その前にまた質問いいかな?』

璃奈「いいよ♪」


しずく『私は、本当に記憶を失くしたの?』


璃奈「失くしたよ♪」

しずく『う~ん……本当に?』

璃奈「不安?」

しずく『不安というか……実感が無さすぎて♪』

璃奈「まぁ、無いものは見えないからね♪」

30: 2020/11/28(土) 15:56:29.84 ID:QfhKjjZV
璃奈「記憶が消えたかどうか、実証してみようか?」

しずく『どうやって?』


璃奈「今から、しずくちゃんが消した記憶の内容について端的に述べるから、よぉ~く聞いててね♪」


しずく『うん?分かったよ』

璃奈「じゃあ言うよ?……3、2、1……」




璃奈「しずくちゃんは、友だちがいなくなることを回避するために、演技を始めたよ♪」




しずく『……?』

璃奈「どう?“聞こえた”?」


しずく『えっと……聞こえたも何も……璃奈さん、何か言ったの?』


璃奈「そっか♪じゃあ、私の“口の動き”は見えた?」

しずく『……??璃奈さん、いい笑顔だね……??』

璃奈「うふふ♪ありがとう♪」ニコッ

31: 2020/11/28(土) 15:57:56.17 ID:QfhKjjZV
しずく『ねぇ、璃奈さんの演技指導、始めてもいいかな?』

璃奈「うん♪よろしくね、しずくちゃん♪」ニコッ

しずく『うん、まず。璃奈さんは自分の表情について悩んでいたよ』

璃奈「……?聞こえない♪」

しずく『うん、だから。言葉を選ばずに言うと、璃奈さんは笑顔が苦手だったよ』

璃奈「言葉を選ばずに言うと…………何?」ニコッ


しずく『―――あぁ、そういうことなんだね』

璃奈「うん♪そういうことなんだよ♪」


しずく『え~っと……璃奈さんは不愛想な人だったよ』

璃奈「聞こえない♪」

しずく『璃奈さんはクールな人だったよ』

璃奈「聞こえない♪」

しずく『璃奈さんはクールなスクールアイドルだったよ』

璃奈「おぉ♪私はクールなスクールアイドルだったんだね♪それは果林さんみたいな?」

しずく『ううん、クールビューティじゃなくて、クールジャパンの方』

璃奈「ほっほぅ♪じゃあ私はアニメとか好きなキャラだね!?」

しずく『うん』

璃奈「誰を参考にしたらいい!?式波アスカ!?涼宮ハルヒ!?」


しずく『せつ菜さん曰く、綾波レイや長門有希だって』


璃奈「…………そう」

32: 2020/11/28(土) 16:00:13.01 ID:QfhKjjZV
しずく編終了 書き溜めはこれのあと2倍あります あと3人分はまだ書き溜めてないです

44: 2020/11/29(日) 13:37:08.58 ID:LBoB0iPR
翌日
璃奈「記憶を消せる薬をつくったよ♪璃奈ちゃんボード『えっへん』」


歩夢「えぇ~!?すご~い!?」

せつ菜「マジなのですか!?」

果林「あら、璃奈ちゃんすごいわね♪」

彼方「彼方ちゃんビックリだよ~!」

侑「やっぱり璃奈ちゃんはすごいね!」


しずく(あれ……?反応薄っ……?世紀の大発明だと思うんだけどなぁ……?)

45: 2020/11/29(日) 13:37:49.59 ID:LBoB0iPR
愛「それよりそれより!!りなりーすごいんだよ!!」

かすみ「ほぉらぁ~!!かわいいお顔を見せてよりな子~!!」


璃奈「ちょっ……やっぱり恥ずかしい……/// 璃奈ちゃんボード『テレテレ』」


愛「まぁ、これからも一緒にがんばっていこうね!りなりー!」

璃奈「うん!」



果林「記憶を消せる薬より、私は、記憶が消えなくなる薬が欲しい……なんて思ってないわよ!!」

かすみ「あっ!!かすみんもそれほしい!!作ってよりな子!!」



キャッキャッ…



エマ「…………」


エマ「……記憶を消せる……薬……!!」

46: 2020/11/29(日) 13:38:39.08 ID:LBoB0iPR
せつ菜「記憶を消せるとなれば、作品を見て感動するということが、何度も何度も体験できますね!!」


璃奈「あ、確かに。それはいいかも」

璃奈(それはポジティブな感情だけど。効くのかな―――)

璃奈「じゃあ、やってみる?」


せつ菜「う~ん……」


璃奈(あれ?悩むんだ?)

しずく(あれ?悩むんですね?)


せつ菜「ひとつの作品を何度も初見できるのは、確かに魅力的ですが……」

璃奈「ですが?」

47: 2020/11/29(日) 13:39:10.30 ID:LBoB0iPR
せつ菜「ひとつの作品を何度も見て、深く没入するのも、オタクの醍醐味なんです」

しずく『そうなんですね』


せつ菜「その薬は、私にとっては、5億年ボタンのようなものなんです……!!」

せつ菜「それを使えば、私はおそらく、ひとつの作品を延々と初見し続けるでしょう……!!」

せつ菜「だけど、私は―――!!」


璃奈「え?まじかる☆タルるートくんをまた初見したいとは思わないの?」


せつ菜「思います!!!!!!!!!!」

璃奈「じゃあ決まりだね」

48: 2020/11/29(日) 13:39:36.00 ID:LBoB0iPR
璃奈「説明するね。これが5億年ボタンだよ」

果林「へぇ~、見た目は普通のカプセル剤と変わりないわね」

しずく『こういうのって、どうやって摂取するの?』

彼方「噛んじゃダメだよ~。お水で、クイっと飲むんだよ~」

愛「下を向くと飲み込みやすいよ~」

せつ菜「うぅ……ちょっと苦手かもです……」

歩夢「ふふ、せつ菜ちゃんもまだまだお子さまだね」

侑「あ~、私も苦手かも~」

かすみ「かすみんもです~……」

歩夢「そっ、そうだよね……!侑ちゃん、幼稚園の頃から苦手だったよね……!」

しずく『あははは……』

49: 2020/11/29(日) 13:39:59.32 ID:LBoB0iPR
璃奈「この薬を飲んで、消したい記憶を強く意識することで、記憶が消えるよ」

しずく『えっ!?そんな簡単に!?』


璃奈「“強く”ってところがポイント。例えばぶん殴られた記憶を消したかったら、同じようにぶん殴られる必要がある」


かすみ「ぶんなぐ……!?」

愛「り、りなりー……!?」


しずく(あっ……!?璃奈さん、璃奈さん……!!)(指で小さくバツ印を作る)

璃奈(あー…………)

50: 2020/11/29(日) 13:40:48.01 ID:LBoB0iPR
璃奈「……ヴンナグラ・レターっていうのは、かつて西アメリカで栄えた名門貴族“ヴンナグラ家”に伝わる文書作成術のことだよ」

愛「そ、そうなんだ……?」

しずく『へぇ~、璃奈さんものしりだね♪……つまり、せつ菜さんの場合は、薬を飲んで、アニメを鑑賞するだけ、ってことですね!』


せつ菜「なるほど!!アニメを見て爆発した大好きを、そのまま【記憶を消してもう一度見たい……!!】という感情に変換すればいいんですね!!」


璃奈「うん、そういうこと」

せつ菜「これで何度もあのワクワクを体験できますね!!わぁ~!!楽しみです!!」

愛「ん~!アゲアゲだね!アゲインだけに!」

かすみ「うわ、寒っ……」

彼方「せつ菜ちゃ~ん、あたためて~!」

せつ菜「行きますよ~!!せつ菜☆スカーレットォォォォ……―――!!」



ワイワイ…



エマ「…………」


璃奈(……うふふ)

51: 2020/11/29(日) 13:41:46.79 ID:LBoB0iPR
翌日
愛「おっ!せっつー!無事に記憶は消せたかな!?」


菜々「……あぁ?はい、消えましたよ?たぶん」


果林「あら?ずいぶん淡白な物言いね」

かすみ「今日は菜々先輩モードなんですか?」

菜々「菜々先輩“モード”?……まるで、私が多重人格か何かであるような発言ですね?」

かすみ「ひぇっ……!?」ビクッ

彼方「えっ……!?もしかして忘れちゃったの……!?」

歩夢「せつ菜ちゃんは、アニメが大好きで……!」



菜々「せつ菜―――?……あぁ、せつ菜は、私の双子の妹ですね―――ドラゴン退治に出かけると言い遺して、どこか遠くに逝ってしまいましたが……!!」



侑「ゑ……?」

璃奈・しずく「…………」

52: 2020/11/29(日) 13:42:41.42 ID:LBoB0iPR
璃奈(おい?どうなってんだよ?)

しずく(璃奈さん、璃奈さん……!!)(バツ印)

璃奈(……はわわっ!!大変ですぅ~!!)

しずく(……)(バツ印)

璃奈(……)



璃奈「予想外★これは、大変なことになってしまったよ」

しずく『そんなっ……!!アニメに対する感情が強すぎて、かえってアニメに関する記憶が消えてしまった……!?』


菜々「そうみたいですね?私は、アニメを見たことがありません」


彼方「そ、そんなぁ……」

かすみ「せつ菜先輩のあのかっこいいステージは、もう見られないんですかぁ……?」ショボーン

53: 2020/11/29(日) 13:43:33.18 ID:LBoB0iPR
菜々「……ん?“ か っ こ い い ”……!?」ガタッ

かすみ「ふぇっ?」

菜々「かすみさん、今、“かっこいい”とおっしゃいましたね……!?」

かすみ「え、あ、はい」

菜々「~~~~!!」



菜々「見ましたかっ!?みなさんっ!?昨晩の音楽番組に出演していた若手男性アイドルグループの新曲!!かっこよかったですよね~~~~っっっっ!!!!」



歩夢「せ……菜々ちゃん……!?」

果林「あらあら?」

侑「わ~、マジか~」

54: 2020/11/29(日) 13:44:27.98 ID:LBoB0iPR
菜々「うおおおお!!!!思い出すと踊りたくなってきました!!私があの人たちに抱いた大好きを……!!全身全霊で表現します!!!!」


菜々「~~~~♪♪♪♪!!!!」(キレのあるダンス)


一同「おぉ~!!」

璃奈・しずく「…………」



璃奈「なんで?」

しずく『さぁ……?』



ピロリン♪ピロリン♪



璃奈(……あ、メッセージだ。誰からだろう……)

璃奈(……!)


璃奈(うふふ、ようやくその気になったんだね♪)

55: 2020/11/29(日) 13:45:43.66 ID:LBoB0iPR
屋上
璃奈「ごめんね、待った?」

??「ううん、気にしないで」

璃奈「それで……私に、何をしてほしいの―――?」



ーーーーーーーーー

『璃奈ちゃん。璃奈ちゃんの発明について、お願いしたいことがあるの』

『了解。どこがいい?』

『屋上が、いい、かな』

ーーーーーーーーー



璃奈「―――エマさん♪」


エマ「……ほんとに……記憶が……消せるの……!?」

璃奈「うん!ホントだよ!」

エマ「す……すごいなぁ……!ニッポンのカガクシャは……!」

璃奈「うふふ、私は科学者じゃないよ。スクールアイドルだよ♪」

56: 2020/11/29(日) 13:46:26.97 ID:LBoB0iPR
璃奈「それで、エマさんは、これがほしいんでしょ?」

エマ「わぁ……!これで……!」

璃奈「……♪」


璃奈(意外。『エマ・ヴェルデ』は、もっとホワイトな印象。こんなグレーなインチキ、許容すると思わなかった)


エマ「うーん……」

璃奈「……?手順は、説明したとおりだよ?何か不足があった?」

エマ「……私がひとつ、気になってるのは、副作用のことなの」

璃奈「……」


璃奈(……………………“副作用”)

57: 2020/11/29(日) 13:46:56.48 ID:LBoB0iPR
エマ「何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない―――この世界の、大自然の法則」

エマ「【それ】は失うことだけど、私にとって、【それ】は得ることなの……きっと」


エマ「だから、私はまた何かを失うような気がして……ちょっと、怖いの……」


璃奈「……」


璃奈「副作用は、頭痛だよ。同時に、それが消去成功の合図なの」

エマ「……ほんとに、それだけ……?」

璃奈「うん、ホントだよ♪」

エマ「……そっかぁ。ごめんね、璃奈ちゃんを疑うようなことをして」

璃奈「ううん、気にしないよ♪」

58: 2020/11/29(日) 13:47:45.22 ID:LBoB0iPR
璃奈「はい。薬は、確かにエマさんに渡したよ。ここからは、干渉しないほうが、いい?」

エマ「……【消したい記憶】の部分には、干渉しないでもらえると……助かるかな」

璃奈「心得てるよ。センシティブだもんね」

エマ「でも、見守っててほしいの。不安だから。お願い」

璃奈「了解。がんばってね、エマさん」

エマ「ありがとう♪……それに、私、頭痛は初めて経験するから……」

璃奈(わぁ……!なんて健全な肉体と精神なんだろう……!)

エマ「何かあったら……お願いします……」

璃奈「うん、分かった」

59: 2020/11/29(日) 13:48:44.30 ID:LBoB0iPR
エマ「じゃあ……」

璃奈「……」スッ…


璃奈(5……10メートルくらいかな?ここなら、干渉できない)


エマ「…………」


エマ「~~!!」ゴクン

璃奈(薬を飲み込んだね)


エマ「……」スッ


璃奈(……写真?を取り出したね?)

エマ「…………」

璃奈「…………」


璃奈(実際、飲み込んでから、少しタイムラグがあるから、即効性に欠けるね。ここが改善点だろうね)



エマ「……~~~~!!」



璃奈「あ、頭痛だ」

60: 2020/11/29(日) 13:49:29.51 ID:LBoB0iPR
エマ「~~~~~~!!!!」

璃奈「エマさん!大丈夫!?ラクな姿勢に……ちょっと横になろうか?」

エマ「ぅ……ぅん……」

璃奈「念のために携行していた璃奈ちゃん特製★愛さんのダジャレが印刷された発熱冷却シートがあるよ!効き目バツグンだよ!」ピタ

エマ「ぁ……ぁりがとぅ……」



璃奈(……と、ふらついた反動で、エマさんが手に持ってた写真?が落っこちちゃってるね)

璃奈(不可抗力、不可抗力……♪たまたま見ちゃったんだから、しょうがない……♪)ヒョイ


璃奈「…………」

61: 2020/11/29(日) 13:51:27.65 ID:LBoB0iPR
璃奈(うーん。“他人”の私が見ても、ただの幸せそうな写真にしか見えないなぁ……?)

璃奈(【家族の写真】だね……?【天王寺璃奈】は、こういうのに憧れてたのかなぁ……?)




璃奈「……」




璃奈(写真の中央に、エマさんがいるね。少し幼い……2、3年くらい前かな?)



璃奈(エマさんの左右に、それぞれ4人ずつ。エマさんによく似た、エマさんより幼い子どもたちが、笑顔で映ってるね)



璃奈(……エマさんの兄弟かな?…………微笑ましいなぁ)


――――――――――――――――――
―――――
――

62: 2020/11/29(日) 13:52:07.59 ID:LBoB0iPR
一方その頃
かすみ「ねぇねぇ、しず子」

しずく『……ん?なぁに、かすみさん♪』


かすみ「しず子は―――りな子の作った薬、もう使ってるよね?」


しずく『どうしてそう思ったの?』ニコッ

かすみ「うーん……その理由を、ロンリテキに説明するのは、かすみんには難しいんだけど……」

かすみ「しず子にずっと、違和感があるの」

しずく『違和感?どんな?』

かすみ「うーん…………」

63: 2020/11/29(日) 13:52:49.64 ID:LBoB0iPR
かすみ「桜坂しずくには、2種類あって、『桜坂しずく』と、『桜坂しずくを演じる桜坂しずく』なんだけど」

しずく『や、ややこしいね……』


かすみ「それを見分けるのが―――この“前髪”なの」グイッ


しずく『わぁっ!?かすみさん!?近い近い……///』

かすみ「この、おでこに垂れた前髪。これが、かすみんから見て、右側に流れていると『桜坂しずく』で……」

かすみ「今みたいに、左側に流れていると『桜坂しずくを演じる桜坂しずく』なの」

しずく『へ、へぇ~……よく見てるね?』

64: 2020/11/29(日) 13:53:47.46 ID:LBoB0iPR
かすみ「うん。だから、今のしず子は『桜坂しずくを演じる桜坂しずく』なんだけど……」

しずく『なんだけど?』


かすみ「ずぅ~っと『そう』なの!いつもなら、右に垂れたり左に垂れたりする前髪が、ずぅ~っと左に垂れてるの!ワックスとか使った!?」


しずく『いや、使ってないけど……』

かすみ「でしょ!?それが違和感!!」

しずく『そ、そう……?』

かすみ「ちょうど同じ頃に、りな子が【記憶を消す】っていう摩訶不思議アイテムを作ったじゃん!?」

しずく『そうだね』


かすみ「……だから、しず子が【そう】じゃないかなー……って」


しずく「…………」

65: 2020/11/29(日) 13:54:22.02 ID:LBoB0iPR
しずく『そうだよ、かすみさん。よく分かったね♪』

かすみ「やっぱり~!!……で、何を消したの?覚えてないかもしれないけど」


しずく『え~っとね……』


しずく『私がこれまでお芝居のために覚えた台本の中には、普段使わない言葉がたくさんあってね』

かすみ「普段使わない言葉……?例えば、齟齬(そご)とか?」

しずく『よく知ってたね♪えらいねかすみさん♪』ナデナデ

かすみ「ばっ……ばかにしないでっ……///」

しずく『ちょうど、今日も台本を持ってるよ。見る?』

かすみ「うえぇ……かすみんカツジキライ……」

66: 2020/11/29(日) 13:54:54.10 ID:LBoB0iPR
ずく『それで、その中には、私が間違えて覚えた言葉もたくさんあるの』

かすみ「例えば?」

しずく『例えば―――反芻(はんすう)―――この言葉を初めて見た私は、反芻(はんじゅん)って読んじゃったみたいなの』

かすみ「半数?」

しずく『アクセントは“す”だよ』

かすみ「反芻?」

しずく『うんうん♪それが反芻♪』

67: 2020/11/29(日) 13:55:50.86 ID:LBoB0iPR
しずく『いちばん初めに読み間違えた言葉って、矯正するのが難しいんだ』

かすみ「へぇ~、それでりな子の薬を?」

しずく『うん、恥ずかしながら……でも!そのおかげで、私の演技の完成度が、格段に上がったんだよ!』

かすみ「あぁ~、それでしず子の言動がやたら演技じみてたんだ」

しずく『そうだよ♪不安にさせちゃって、ごめんね、かすみさん♪』


かすみ「…………」


かすみ「じゃあ、覚え間違えたという記憶を消すために、しず子はどうしたの?」

しずく『どうしたの?……って……どういうこと?』

かすみ「記憶を消すために、消したい記憶を強く意識することが必要って、りな子が言ってたよね」

しずく『そ、そうだね』


かすみ「どうやったの?」

68: 2020/11/29(日) 13:56:36.84 ID:LBoB0iPR
しずく『どう……って……』



かすみ「……」



しずく『……ごめんね、かすみさん。それは、覚えてないんだ』



かすみ「…………」




しずく『…………』





かすみ「……にしし♪」

しずく「!?!?!!?!??!?」

69: 2020/11/29(日) 13:57:17.71 ID:LBoB0iPR
かすみ「“覚えてない”……にしし♪そっかぁ、しず子♪“覚えてない”かぁ……♪」

しずく『ごっ、ごめんね、かすみさん……!』

かすみ「……?どうしてしず子が謝るの?それが薬の効果でしょ?」


しずく『……!!』


しずく(あぶないあぶない……!嘘が露呈するところだった……♪)


かすみ「知的キャラのしず子が“ちゃんと忘れてる”♪りな子おそるべし……♪」

しずく『かすみさん♪私は知的“キャラ”じゃないよ♪かすみさんと一緒にしないでね♪』

かすみ「うっさい!……つまり、あの薬はほんとに記憶が消せる!」

しずく『半信半疑だったの?』

かすみ「……?ふつうはそうじゃない?」


しずく(…………)

70: 2020/11/29(日) 13:58:29.05 ID:LBoB0iPR
しずく『せつ菜さんは、薬の影響を大きく受けてたと思うけど?』

かすみ「あれは、アニメオタクが、アイドルオタクになっただけじゃん?」

しずく『それはそうだけど……』


かすみ「せつ菜先輩が何のオタクかなんて、かすみんには関係ない。それでも、せつ菜先輩の“熱量”は変わってなかった」


ーーーーーー

菜々「~~~~♪♪♪♪!!!!」(キレのあるダンス)

ーーーーーー


かすみ「あのパフォーマンスは、大好きを大切にしている優木せつ菜にしかできない」

しずく『確かに、せつ菜さんのキレは本物だったね』

かすみ「うん。だから、せつ菜先輩の記憶は消えてないかも、って思ったの」


かすみ「記憶を消すなんて“都合のよすぎる奇跡”、そんな簡単に起こせないんだな、って」


しずく『…………』

71: 2020/11/29(日) 13:59:12.58 ID:LBoB0iPR
かすみ「でぇも♪今日のしず子を見て確信した♪やっぱり、天王寺璃奈は天才だった♪」

しずく『……考えてみれば、すごい技術だよね……』

かすみ「そんな悪魔的超天才技術は、悪魔的超天才かわいいかすみんに知れ渡ってしまった!!」

しずく『かすみさん、もしかして……!?』


かすみ「鬼にカネボウ!!まず手始めに、歩夢先輩の記憶を消す!!!!!」


しずく『か、かすみさん……鬼にお化粧してどうするの……』

72: 2020/11/29(日) 14:00:44.53 ID:LBoB0iPR
帰り道

ピロリン♪ピロリン♪


璃奈(あ、メッセージだ。誰からだろう)


ーーーーーーーーー

歩夢『璃奈ちゃん!今度の日曜日、私と一緒にカフェに行かない?』 17:29

璃奈『やったー!歩夢さんとカフェ、楽しみ♪よろしくね♪』 17:29

歩夢『侑ちゃんも一緒なの。いいかな?』 17:30

璃奈『うん!』 17:30

歩夢『……あ!璃奈ちゃんの発明を、私も試したいの。そのときにお願いしても、いい?』 17:35

璃奈『うん!』 17:35

歩夢『じゃあ、よろしくね♪』 17:35

ーーーーーーーーー


璃奈「…………」


璃奈「うふふ♪」


ピロリン♪ピロリン♪


璃奈(あ、メッセージだ。誰からだろう)

73: 2020/11/29(日) 14:01:33.67 ID:LBoB0iPR
ーーーーーーーーー

かすみ『りな子~!かすみんにも記憶を消す薬使わせて~!』 17:36

璃奈『のび太くんかな?』 17:37

かすみ『かすみん!』 17:37

璃奈『ごめんねかすかす』 17:38

かすみ【怒りのスタンプ】 17:38

かすみ【怒りのスタンプ】 17:38

かすみ【怒りのスタンプ】 17:38

璃奈『ごめんねかすみちゃんwwwwwwwwww』 17:40

かすみ『なにそれ?ダブリューいっぱいつけるの流行ってるの?』 17:40

璃奈『これはWatashigaWarukatta(私が悪かった)の略でね、謝罪をするときに使うと効果的だよ。かすみちゃんも使ってみてね♪』 17:43

かすみ『そうなんだ?分かった!今度使ってみる!』 17:43

璃奈『話は以上?いい夢見てね♪』 17:48

かすみ『ばいばーい』 17:48

ーーーーーーーーー

74: 2020/11/29(日) 14:02:42.34 ID:LBoB0iPR
ピロリン♪ピロリン♪

ーーーーーーーーー

かすみ『じゃなくて!!!!!薬のこと!!!!!』 17:48

璃奈『なに』 17:57

かすみ『今度の日曜日、歩夢先輩とりな子がカフェに行く、って侑先輩から聞いたの!そこにかすみんも同席させて!』 17:57

璃奈『ちょっとまって』 18:10



上原歩夢さんが入室しました 18:21



歩夢『かすみちゃん^^話って何かな?^^』 18:21

かすみ『今度の日曜日のカフェ、かすみんも行っていいですか?』 18:21

歩夢『だめ^^』 18:21

かすみ『え~なんでですか~?』 18:21

歩夢『練習後にかすみちゃんが間違えて侑ちゃんのタオルを使ったこと、まだ許してないから^^』 18:21

かすみ『なんで歩夢先輩が怒ってるんですか!?』 18:21

75: 2020/11/29(日) 14:03:53.62 ID:LBoB0iPR
高咲侑さんが入室しました 18:22


侑『璃奈ちゃん!?突然このグループに招待されたんだけど!?どういうこと!?』 18:22

歩夢『あ!侑ちゃんだ!』 18:22

かすみ『侑先輩~!』 18:22

侑『こんばんは、かすみちゃん』 18:25

歩夢『侑ちゃん?私にあいさつは?』 18:25

侑『だって隣にいるじゃん……』 18:31

かすみ『え~!歩夢先輩、侑先輩と一緒にいるんですか~!?ズルい~!!』 18:31

侑『だって家近いし……』 18:39

歩夢『うふふ♪かすみちゃん♪今日のことを謝ってくれるなら、今度のカフェのことを考えてあげてもいいよ♪』 18:39

かすみ『歩夢先輩wwwwごめんなさいwwwwかすみんがわるかったですwwwwもう二度としませんwwww許してくださいwwww』 18:39

侑『ちょっ!?かすみちゃん!?』 18:39

璃奈『草』 18:39

かすみ『歩夢先輩?wwww』 18:39

歩夢『かすみちゃん^^』 20:14

かすみ『あwwww歩夢先輩wwwwなんですか?wwww』 20:14

歩夢『いいよ^^今度のカフェ^^一緒に楽しもうね^^』 20:14


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

76: 2020/11/29(日) 14:06:37.98 ID:LBoB0iPR
次は歩夢VSかすみ編になります

82: 2020/11/30(月) 22:06:36.44 ID:WThVVi/T
今度の日曜日のカフェ
侑「ごめんね~、待った~?」

かすみ「あ、侑せんぱぁい♪かすみんも来たばかりですよ♪」

歩夢「ごめんね、みんな。侑ちゃんとお洋服を選んでたら遅れちゃった♪」

璃奈「待ってないよ。むしろ、まだ待ち合わせ時間の前」


しずく『みなさんお揃いですね♪それでは入店しましょう♪』


かすみ「……っていうか、どうしてしず子がいるの!?」



璃奈(それは私ひとりだと死ぬから♪道連r……一緒に楽しもうね♪しずくちゃん♪)

しずく(なんて思ってるんだろうなぁ……璃奈さん……)

83: 2020/11/30(月) 22:07:41.39 ID:WThVVi/T
しずく『むぅ!私がいたらダメなの?かすみさん?』

歩夢「そんなことないよ♪一緒に楽しもうね♪しずくちゃん♪」

かすみ「どうして歩夢先輩が答えるんですか……」




かすみ(まぁいいや♪しず子には、かすみんの“意図”は伝えてるし、かすみんの味方だよね♪)

かすみ(くふふ……♪“薬”は事前にりな子から受け取り済み……♪)

かすみ(これで歩夢先輩の侑先輩に関する記憶を……♪さすがにぜんぶ消せるとは思ってないけど、少しでも消せればかすみんの勝ち!!)



歩夢「……♪」ニコニコ



歩夢(しずくちゃんのフォロー完了♪これで、しずくちゃんは私の味方だね♪)

歩夢(うふふ……♪“薬”は事前に璃奈ちゃんから受け取り済み……♪)

歩夢(これでかすみちゃんの侑ちゃん関する記憶を……全て消す♪♪♪♪♪♪)


――――――――――――――――――
―――――
――

84: 2020/11/30(月) 22:08:24.69 ID:WThVVi/T
数日前
璃奈「特定の人間に関する記憶を消す?」

しずく『うん。そういう使い方もできるよね?その薬』

璃奈「前例がないから、何とも言えないけど。できなくはないと思うよ」

しずく『説明してもらってもいい?』

璃奈「うん。え~っと、特定の人間、というのは“ジャンル”に該当するね」

しずく『ジャンル……作品群の分類?』

璃奈「例えるなら、天王寺璃奈は“SF”で、桜坂しずくは“ドラマ”で、中須かすみは“コメディ”だね。例えだけど」

しずく『う~ん……?』

璃奈「天王寺璃奈は“算数”で、桜坂しずくは“国語”なの」

しずく『あぁ~……?』

85: 2020/11/30(月) 22:09:26.29 ID:WThVVi/T
璃奈「算数の記憶を消す場合、【がんばって勉強して算数のテストが100点の人】と【がんばって勉強して算数のテストが0点の人】なら、後者の方がより多くの算数の記憶が消える」

璃奈「テストの点数に換算すると、消したいと思えるような記憶が、前者は【0点分】しかないけど、後者は【100点分】もある」


璃奈「記憶を消すときに必要な《条件》―――消したい記憶を強く意識する―――このトリガーをより強く引けるのは、後者の人間」


璃奈「テストの点数はネガティブなトリガーだけど、作品を見て感動したなどのポジティブなトリガーも、記憶を消すための条件として有効」

璃奈「せつ菜さんの前例はそう。【百戦錬磨のアニメオタク】というトリガーは、そのまま“ジャンル:アニメ”に作用した。結果、せつ菜さんはアニメを忘れた」

しずく『アイドルオタクになったのは……?』

璃奈「せつ菜さんの場合は、記憶の置き換えが起こったと考えられる。せつ菜さんは『アニメを忘れた』けど、おそらく忘れてない。せつ菜さんが“アニメ”の記憶を“アイドル”の記憶として認識しているだけ」

86: 2020/11/30(月) 22:10:02.35 ID:WThVVi/T
璃奈「ネガティブな感情で記憶を消す場合は、その感情が大きいほど記憶がより消える」

璃奈「ポジティブな感情で記憶を消す場合も、その感情が大きいほど記憶がより消えるけど、同時に、その感情の作用によって置き換えなどが発生する」

しずく『置き換え“など”……?』


璃奈「他に考えられるのは、打ち消し」


しずく『打ち消し……?』

璃奈「消したいという感情が、やっぱり消したくないという感情と相〇する。記憶を消すということが、消される」

87: 2020/11/30(月) 22:10:46.83 ID:WThVVi/T
しずく『えっと……じゃあ……話が変わるけど……』


しずく『歩夢さんとかすみさんが、互いに【侑さんに関する記憶】を消し合ったとしたら……どうなるの?』



璃奈「あー…………」





璃奈「かすみちゃんが負ける」



――
―――――
――――――――――――――――――

88: 2020/11/30(月) 22:11:38.70 ID:WThVVi/T
侑「わぁ~!オシャレなお店だね~!」

歩夢「もともとは侑ちゃんと私のデートのために1か月前から予約していたお店なの♪」

侑「そうなんだ?ありがとう、歩夢♪」

歩夢「うふふ♪」

しずく『すみません……そんなお2人のデートにご一緒させていただいて……』

歩夢「ううん♪みんな、同好会の大切な後輩だからね♪」

侑「今日は一緒に楽しもうね、みんな♪」

かすみ「はぁい、せんぱい♪」

89: 2020/11/30(月) 22:13:14.03 ID:WThVVi/T
璃奈(円形のテーブルに、等間隔に着席)

しずく(上座が侑さん、そこから時計回りに、歩夢さん、かすみさん、私、璃奈さん)

璃奈(侑→歩夢→かすみ→しずく→璃奈→侑)

しずく(私と璃奈さんは、おそらく、歩夢さんとかすみさんの“目的”のために利用される……)

璃奈(それとなく“指示”が飛んでくるはず……私たちはそれを、言われたとおりに実行するしかない……)




お待たせいたしました~




侑「わぁ~!美味しそうなジュースだね♪」


歩夢(来た♪)

かすみ(来た!)

璃奈(来た)

しずく(来た)


侑「じゃあまずは乾杯しようか?かんぱ~い♪」


5人「かんぱ~い♪♪♪♪♪」

90: 2020/11/30(月) 22:13:53.63 ID:WThVVi/T
侑「歩夢のはなに?しそジュース?」

歩夢「もう~侑ちゃんったら~、ピーチジュースだよ~」

かすみ「かすみんはりんごジュースです!」

しずく『私はソーダ水です』

璃奈「カルピス」

侑「私はレインボージュースにしてみたよ。どう、カラフルでしょ♪」

歩夢「わぁ~!きれいだね~!」

しずく『キレイですけど……よく混ざりませんね……?』

91: 2020/11/30(月) 22:14:50.12 ID:WThVVi/T
璃奈(みんな、自分の“担当色”を選んだね。私もそうだけど)

しずく(だって、流れ弾を受けたくないもん。頭痛はイヤ、自分の身は自分で守らなきゃ♪)




侑「わぁ~!?ここのジュースに付いてるストロー、けっこう太いね~?」

歩夢「これはね、侑ちゃん♪タピオカを吸い込むためなんだよ♪」

侑「えっ!?これ、タピオカ入ってるの!?気付かなかった~!」

かすみ「えぇ……」




しずく(このストローの太さは、カプセル剤を通すことができる)

璃奈(つまり、その“仕込み”を成功させた方が、先手を取れる―――)

92: 2020/11/30(月) 22:15:46.83 ID:WThVVi/T
かすみ「はいは~い!かすみん、女子会を盛り上げるためのパーティゲームを用意してきました~!」

侑「へぇ~、これって女子会なんだ?」

歩夢「うふふ、侑ちゃんと私のお話たくさんしようね♪」

璃奈(なんでやねん)

しずく『パーティゲームって……どんな?』


かすみ「名付けて……かすみん王国ゲーム!!」


歩夢「は?」

璃奈「えっと、字面の雰囲気から察するに、王様ゲームのかすみちゃんエディション?」

かすみ「ぴんぽんぴんぽ~ん!」

侑「王様ゲームか~、どんなゲームだっけ?」

かすみ「はい!しず子説明よろしく~!」

しずく『えっ!?私がやるの!?』

93: 2020/11/30(月) 22:16:19.74 ID:WThVVi/T
しずく『まず、くじ引きで“王様”と“番号持ち”を決めます』

しずく『王様は“命令権”を得ます。番号を指定して命令などができます』

しずく『番号持ちは、自分の番号を秘密にすることができます』

しずく『ですが、王様の命令は絶対です。必ず従ってくださいね♪』


かすみ「しず子ありがとう♪これが王様ゲームのルールですよ~?理解しましたか~?」

侑「は~い!」

歩夢「ありがとね♪しずくちゃん♪」

94: 2020/11/30(月) 22:17:23.03 ID:WThVVi/T
かすみ「それでは、かすみん王国ゲームについて説明しますよ~!」


かすみ「このゲームでは、王様は―――女王様は♪―――常にかすみんです♪かすみん王国ゲームですから、当然ですね♪」


歩夢「は?」

しずく「は?」

璃奈「は?」


侑「えっ!?どういうこと!?かすみちゃん!?」

かすみ「このゲームでは“くじ引き”をしません!その代わりに“ジュースを飲み干します”!」

侑「ジュースを飲み干す?」

かすみ「はい♪ストローをお口に咥えて、キュウ~~~っと、ぜんぶ飲んでくださいね♪」

95: 2020/11/30(月) 22:18:40.28 ID:WThVVi/T
璃奈「それがくじ引きに相当するなら、そこに“ランダム性”があるの?」

かすみ「そのとおり!かすみんは女王様ですから、みなさんにジュースを与える義務があります!」 

かすみ「みなさんは、ありがた~く、かすみんのジュースを飲んでくださいね♪」


歩夢「……♪」イラッ


しずく『つまり、かすみさんは“ジュースの番号”を、私たちが分からないように指定して……』

璃奈「私たち4人は、それを1人1つずつ飲むってこと?」

かすみ「そう!みなさんが選ばなかった1つは、かすみんがいただきますね!」


しずく『じゃあ、かすみん王国ゲームのルールは……』



しずく『まず、かすみさんは“ジュースの番号”を決めます』

しずく『私たち4人は話し合いで“私たちの番号”を決め、自分の番号のジュースを飲み干します』

しずく『かすみさんは、残った1つのジュースを飲み干します』

96: 2020/11/30(月) 22:19:37.41 ID:WThVVi/T
歩夢「……全然王様ゲームじゃないね♪」ニコッ


かすみ「―――あっ、じゃあ、それっぽい罰ゲームを用意しますね♪」


侑「ばっ、罰ゲーム!?」

かすみ「“ジュースを飲み干せなかった”人は、かすみんが追加オーダーをしますので、“それを飲み干して”ください♪あっ♪ジュースの種類は選ばせてあげますね♪」

侑「なぁんだ?ぜんぜん罰ゲームじゃないね♪」

歩夢「侑ちゃん……カ口りーとか考えようね……?」




しずく(なるほど。この“かすみん王国ゲーム”なら、かすみさんは“誰かが特定のジュースの飲む”タイミングを完全に把握できるね♪)

璃奈(ルールの抜け道、“ジュースを飲み干さない”も、確実にトドメを刺せるね♪)

97: 2020/11/30(月) 22:20:17.24 ID:WThVVi/T
かすみ「は~い!じゃあみなさんのジュースを、一旦、かすみんが回収しま~す♪」

侑「は~い!」



歩夢「――――――“ッ”!!」



璃奈(と、私は見逃さなかったね。歩夢さんは、ピーチジュースに薬を仕込んだ)

璃奈(あれが当たり。しずくちゃん?)チラッ

しずく(……)コクリ




かすみ「は~い!ではかすみん女王がジュースに番号をつけま~す♪コップの“ふち”に1~5番のシールを貼りま~す♪みなさんは雑談でもしててくださ~い♪」

98: 2020/11/30(月) 22:20:57.88 ID:WThVVi/T
侑「ここってタピオカ専門店?いろんなメニューがあるね~」

歩夢「専門店、ではないけど。人気のドリンクなどを一通り飲むことができるんだよ」

しずく『へぇ~、お2人はよくこういうお店に来られるんですか?』

歩夢「うん、そうだよ♪」

侑「そうだね♪」

璃奈「かすみちゃんが なかまに なりたそうに こちらをみている」

かすみ「そんなことないしっ!!あんまりこっち見るとルール違反だから!!」




璃奈(まぁ、かすみちゃんがシールを貼る順番をよく観察することで、私たちは負けないけど)

璃奈(そんなことをしなくても、私たちは必ず負けない。試合で負けても、勝負で負けない)

璃奈(いいよね?しずくちゃん?)チラッ

しずく(もちろん♪)ニコッ

99: 2020/11/30(月) 22:22:10.31 ID:WThVVi/T
かすみ「は~い!シールを貼り終えました~!では、みなさんは番号を決めてくださ~い!」


歩夢「どうしよっか?侑ちゃんは何番がいい?」

侑「う~ん、何番でもいいかな~……」


璃奈「―――ねぇ、侑さん?ジュース飲みたい?」


侑「え?」

璃奈「私の“番号”をあげる。私の分も、飲んで」

侑「えっ!?いいの!?」

しずく「あ、侑さん、私のもあげます」


侑「えぇ~!3つも飲んでいいの~♪ときめいちゃうなぁ~♪」

かすみ・歩夢「!?!?」

100: 2020/11/30(月) 22:23:05.01 ID:WThVVi/T
璃奈(これで5つ中2つあるいは1つが“薬入り”のジュースのうち、3つが侑さんのもの。75%の確率で薬に当たる)

しずく(ごめんなさい、侑さん♪)




侑「ねぇ、歩夢は何番にする?私は歩夢が選ばなかった3つにするね♪」

歩夢「うん?……えーっとね……」




歩夢(マズイよ……)

かすみ(マズいですね……)

101: 2020/11/30(月) 22:24:02.99 ID:WThVVi/T
歩夢「―――決めたよ♪かすみちゃん♪」

かすみ「さ、さて!歩夢先輩が選んだのは~……―――!?」




かすみ(薬が入ってるのは“1番”!侑先輩が注文したレインボージュース……!)

かすみ(しず子とりな子は先輩に順番を譲り、侑先輩は歩夢先輩に順番を譲るだろうという予想……!)




歩夢「番号は、1番が私――――――」


かすみ(やった!!ビンゴ――――――!!)

102: 2020/11/30(月) 22:25:29.80 ID:WThVVi/T
歩夢「2番が私、3番が私、4番が私―――そして、5番が私―――だよ♪」


かすみ・侑「!?!?」

歩夢「ごめんね、侑ちゃん♪全部飲みたくなっちゃった♪……いいかな?」

侑「え、あ、うん。私は、いいけど」



歩夢「ありがとう♪―――じゃあ、いただきまーす♪♪♪♪♪」



歩夢(これで♪かすみちゃんは“ジュースを飲み干せない”♪罰ゲームの対象だよ♪)

かすみ「!?!?」

103: 2020/11/30(月) 22:26:06.88 ID:WThVVi/T
歩夢(ピーチジュースを飲むときに、注意深くサルベージ♪追加オーダーに投入♪道連れだよ、かすみちゃん♪)



歩夢「~~~~~~!!!!」ゴクゴク…



侑「わぁ、美味しそう……」ゴクリ

璃奈「飲みたいの?侑さん、追加オーダー、する?」

侑「えっ!?いいの!?」


璃奈「私たちも罰ゲームの対象だし。それに―――ふつうに飲みたいし」

104: 2020/11/30(月) 22:26:59.80 ID:WThVVi/T
翌日
菜々「あっ!!歩夢さん!!最近話題のあのお店に行かれたそうで!!どうでしたか!?タピオカ!?」

歩夢「TAPIOCA?私たち、TAPIOCAなんて飲んだかな?」

菜々「えっ!?なんですかその発音!?タピ↑オカですよ!?タ↑ピ↓オ↑カ↓ってなんですか!?!?」

かすみ「さぁ……?どうだったっけ?しず子?」

しずく『思い出したくない……まったく……食べ物で遊ぶのはダメだよ……』

侑「菜々さんも今度一緒に行こうよ!それが昨日のことぜんぜん覚えてなくてさ~」

菜々「はい!!みなさん一緒に行きましょう!!」

璃奈「あ、それはムリ」

菜々「えっ!?」

璃奈「私たち“出禁”になったから。あの店」

菜々「えっ!?!?えっ!?!?えっ!?!?えっ!?!?えっ!?!?」



ワイワイ…



璃奈(あと“2人”か……)

105: 2020/11/30(月) 22:27:57.60 ID:WThVVi/T
璃奈「―――そういえば、今日は愛さんは休み?」

歩夢「うん。今日はバドミントン部の助っ人なんだって」



璃奈「へぇ~……――――――」

108: 2020/12/01(火) 22:23:44.93 ID:iHSyjcn7
愛の家
愛(あ~!今日もつかれた~!でも!今日はご褒美があるんだっけ♪)

愛「んんんんんん~~~~~~!!!!!!」ワナワナ…


愛「今日はおばあちゃんの新作ぬか漬けの解禁日だ~!!」ヤッター


愛(アタシの開発アイデアを取り入れてもらったんだよね~!!……愛だけに!!)

愛(“ごま”をふんだんに使った漬け物……!!)

愛「いただきま~す!!」

愛「……♪♪」モグモグ…


愛「ん~!!おいしい!!」

109: 2020/12/01(火) 22:24:25.17 ID:iHSyjcn7
愛「……♪♪」ポリポリ…

愛(そういえば、りなりーのにっこりんお祝いパーティのプレゼント、まだ用意できてないな~……何がいいだろ?)

愛(このぬか漬けは~……なしよりのなしだね~……美味しいんだけど)ポリポリ…


愛(……そうだ!りなりーにおすそ分けしてあげよ♪今からダッシュで届けに行って、ついでに欲しいプレゼントの探りを入れちゃお♪)


愛「よ~し!!」

愛(……ってあれ?りなりーのお家ってどこだったっけ……?)

110: 2020/12/01(火) 22:25:05.97 ID:iHSyjcn7
愛「あ~!!思い出せない!?仕事しろアタシの脳細胞~!!」

愛(こうなったら!!疲れた身体の10秒チャージ!!漬け物を食べる!!)

愛「……♪♪」モグモグ…

愛(でも、効くのかな?脳の活性に―――)



愛「~~~~~~!?!?痛っ!?!?」グギッ



愛(腰痛!?確かに今日は慣れないバドで身体を酷使したけど……)

愛(うえ~ん!記憶があいまいになったり、腰痛になったり……!おばあちゃんは大好きだけど、おばあちゃんになるのはまだ早いよ~……!)

111: 2020/12/01(火) 22:27:20.45 ID:iHSyjcn7
愛「――――――ッッッッ!!!!!?!??!!?」


愛(何っ……!?このっ……!?“記憶の扉”が開く感じ……!!)


愛「おっ…………!?」

愛「思い出した~~~~!!!!」

112: 2020/12/01(火) 22:28:38.08 ID:iHSyjcn7
果林「何かしら、愛?急にお姉さんたちを呼び出して?」

愛「ごっ、ごめ~ん!!かわいい後輩のお願いを聞いて~!!」

エマ「うん、いいよ♪」

愛「聖母っ……!!」

彼方「でも、めずらしいね~?愛ちゃんが“後輩面”するなんて~?」

果林「そうね?もっと普段から頼ってくれてもいいのよ?」

愛「おっ、おっ、おっ、おっ……!?!?」

彼方「ステイステイ」

エマ「深呼吸して。スゥ~……」

愛「ハァ~~~~…………」

113: 2020/12/01(火) 22:29:09.27 ID:iHSyjcn7
愛「思い出したの!記憶を消せる薬について!」

果林「思い出した?その口ぶりから察するに、愛は薬を使った、ということかしら?」

愛「そうなの!正確には“使われた”だけど!」

彼方「使われた?それってもしかして―――」


愛「確認したいんだけど!!3人は薬を使った!?」グイッ


果林「使ってないわよ」

彼方「私も~」

エマ「あ~……私は、使っちゃった」

愛「エマっち!?意外だね!?」

114: 2020/12/01(火) 22:29:41.51 ID:iHSyjcn7
果林「そうね。私もそう思ったわ」

彼方「私も~」

愛「えっ!?2人は知ってたの!?」

果林「えぇ。すぐには気付けなかったけどね」

彼方「せつ菜ちゃんが“ああ”だったからね~。まさかエマちゃんが、って最初は思ったよ~」

果林「そうね。エマの言動は“変化してなかった”から」

彼方「うん。いつもどおりのエマちゃんだったね~」

エマ「そうみたいだね?私は、ちょっと分からないけど……」

愛「確かにアタシもそう思った……っていうか“そう思いすらしなかった”けど……」

115: 2020/12/01(火) 22:30:22.33 ID:iHSyjcn7
愛「じゃあ、2人はどうして“気付けた”の?」

果林「エマの部屋に【これ】があったわ」ヒョイ

愛「写真……?」

果林「この写真についてエマと会話しているうちに、エマがこの写真に関する記憶を消した、ということが分かったわ」

彼方「エマちゃんの、この写真に対する認識力が、ひどく朧げでね~」

果林「エマらしくないと思ったの。それなら、薬の影響と考えて論理的でしょ?」

愛「た、確かに……?」


エマ「果林ちゃんが【それ】を持ってポージングしてたよ~。『どう?』って聞かれたから、『かっこいいね~』って答えたよ~」


果林「私は『どうしたの、これ?昔の写真よね?』って言ったんだけどね」


エマ「ここまで“強制力”があるなんて思わなかったよ~!自分でもビックリ!」

果林「そうね。この写真を“見えない”って言われて驚いたわ」

118: 2020/12/02(水) 22:27:35.77 ID:1tiAnVrb
愛「えっと、聞いても、いいかな?その……エマっちの……消した記憶について……」

エマ「うん、いいよ~」

愛「えっ……?そんなにあっさり……?」

エマ「だって、その話は、私はちんぷんかんぷんだからね~」

彼方「“聞こえない”らしいからね~」


愛「えっと……“聞いてもいい?”って聞くのは……【意図】があって―――」


果林「あ~、大丈夫よ。ただの、青い思い出ってだけだから」

エマ「ちょっ!?果林ちゃ~ん……」


愛(えっ……それは“聞こえる”んだ……?)

119: 2020/12/02(水) 22:28:14.69 ID:1tiAnVrb
果林「じゃあ、説明しようかしら?この写真について」

愛「エマっちが真ん中にいて、左右にそれぞれ4人ずつ……エマっちの兄弟?……が映ってるね?」

彼方「うん、みんなかわいいね~。エマちゃんが中学生の頃の写真だって」

果林「愛は何だと思う?エマが、この写真から―――消した記憶―――」


愛「うーん……」


愛(エマっちは大家族の長女……兄弟で映った写真……消したい記憶……)

愛(9人で映った写真……)


愛(―――“9人”!?エマっちは、確か“8人兄弟”で―――)

120: 2020/12/02(水) 22:28:45.43 ID:1tiAnVrb
愛(9人兄弟が、8人兄弟に“なってしまった出来事”があったとしたら―――!?)


愛「もしかして兄弟が―――」


果林「違うわ。ごめんなさいね、あなたを試すようなことをして」


愛「えっ!?でも、写真に写ってる子たちは、みんなエマっちにそっくりで―――!?」

果林「えぇ、そうね。みんな“エマに似て”かわいいわね」

エマ「か、果林ちゃ~ん……///」

121: 2020/12/02(水) 22:29:19.78 ID:1tiAnVrb
彼方「愛ちゃんの反応は、日本人がスイス人を見た反応の結果として、当たり前という意味で正しいね~」

愛「どういう……?」

果林「私たちは、一般的に、外国人の顔を見慣れていないわ」

彼方「見分け慣れてないともいうね~」


エマ「そうだね~。だから、というわけでもないんだけど、特にニッポンの人たちは、私たちを“外国人”って言うね~。国名を指定せずに」


愛「えっと、つまり……?」


彼方「この写真の中に、ヴェルデ姓じゃない子がひとりいるよ~」


果林「結局のところ、エマが消したのは、この写真の、ここ。この子に関する記憶よ」

122: 2020/12/02(水) 22:29:52.56 ID:1tiAnVrb
愛「この子が……!?エマっちに……何かしたの……!?」

果林「あ~……何か、誤解してるわね……」

彼方「言っちゃってもいいのかな~……?」

果林「まぁ、いいんじゃない?当の本人は、真っ赤だけど♪」

エマ「うぅ……/// 話の端々は“聞こえない”けど、私の恥ずかしいことを暴露しようとしていることは分かる……///」

123: 2020/12/02(水) 22:30:26.40 ID:1tiAnVrb
果林「愛。写真の“裏側”を見てもらえるかしら?」

愛「裏側……?わっ!?文字がびっしり書いてある!?」

果林「愛は読めるかしら?イタリア語」


愛「えっと……プリマ、アモーレ……?」


彼方「イタリア語で“初恋”って意味だよ~♪」

愛「はっ……!?」

果林「その文章は“ポエム”よ。もっとも、それを教えてくれたのはエマじゃなく、翻訳サイトだけど♪」

彼方「そのポエムを読んで、私たちは理解したよ~♪」


果林「エマの消した記憶が【砕け散った初恋】だってこと♪」

124: 2020/12/02(水) 22:31:12.31 ID:1tiAnVrb
果林「“その子”はエマと同郷の子で、昔からヴェルデ・ファミリーと交友があったみたい」

彼方「でも、ある冬に、遠くに引っ越しちゃうことになってね~」

果林「この写真は、その間際に撮ったもの。そして、エマはその子に告白を試みたわ」

彼方「結果は、ダメだったみたいだけどね~」



果林「―――みたいなことが、そのポエムに書かれているわ」

愛「な~んだ?なんだかホッとしたよ~。ドンマイ、エマっち!」

エマ「も、もう~……///」

彼方「うふふ、それを忘れちゃいたい、なんて♪」

果林「エマってば、かわいらしいところもあるのね♪」

エマ「Chi semina vento raccoglie tempesta......!!!」

125: 2020/12/02(水) 22:31:58.61 ID:1tiAnVrb
果林「さて、なりゆきでエマの暴露話大会になっちゃったけど」


果林「―――聞かせてくれるかしら、愛?あなたの暴露話も」


彼方「記憶を消せる薬を“使われた”って言ってたね~……誰に?」

愛「りなりーだよ」


エマ「えっ……」


愛「りなりーはアタシから【薬を共同開発した】という記憶を消した」


果林「共同……開発……!?」

131: 2020/12/04(金) 22:18:28.98 ID:We8QKawS
彼方「【璃奈ちゃんと一緒に薬を作った記憶】を消されたってこと?」

愛「うん」

エマ「ということは、愛ちゃんが思い出せたのは、薬の効果を……解毒?……する方法を知っていたから?」

果林「でも【薬に関する記憶】を消されたのよね?どうやって……?」

彼方「それに、解毒っていう表現が正しいのがどうかも分からないよ~」

愛「まず“解毒”は4分の3は適切だよ。“毒性”は人によるけど、“解く”は常に正しい」


愛「そして、アタシが思い出せたのは、たまたま。これを食べたの」

132: 2020/12/04(金) 22:19:34.67 ID:We8QKawS
彼方「わぁ~!美味しそうなぬか漬けだね~!一口いい?」

愛「うん!みんな食べて食べて~!」


彼方・エマ・果林「いただきま~す!!!」


エマ「ん~!Buono!」

果林「愛、これいいわね!お口が寂しいときにちょうどいいわ♪」

彼方「ごまの風味を際立たせたぬか漬けなんだね~♪」

愛「お!そうだよ、カナちゃん♪愛さんのアイデアなんだ、愛だけに♪」


果林「このぬか漬けが解毒剤として効いたのね?」

愛「うん、アタシの予想が正しければ!3人に集まってもらった目的の1つ目はそれを改めて実証するためなの!」

彼方「つまり、エマちゃんだね~?」

愛「うん、いいかな?エマっち?」

エマ「え?うーん……」

133: 2020/12/04(金) 22:20:11.18 ID:We8QKawS
果林「ほぉら、エマ♪あなたの甘酸っぱい思い出、忘れちゃったままでいいの?」ヒラヒラ

愛「あ」

彼方「うふふ~、そういう思い出は、大切だよ~♪だって~、初恋は、一度しかできないからね~♪」

果林「そうね♪それに、そういう痛みは、私たちをより美しくすることができるわ♪」

エマ「も、もう~……2人とも~、からかってるのか、そうでないのか分からないよ~……」


エマ「――――――~~~~~~!?!?」グギッ


愛「あ」

134: 2020/12/04(金) 22:21:10.00 ID:We8QKawS
エマ「いたたたた……!?」

果林「どうしたの、エマ?腰痛にはプロテオグリカンが効くらしいわよ?」

彼方「愛ちゃんもどうしたの?“あ”しか喋れなくなった?」

愛「あっ!!」

果林・彼方「あ……?」


エマ「あ~~~~!!!!おっ……思い……出しちゃった……!!」


果林・彼方「あっ!?!?」

135: 2020/12/04(金) 22:21:50.64 ID:We8QKawS
エマ「~~~~っ///」カアァ…


愛「お、思い出した……思い出しちゃったみたいだね……?」

彼方「そうみたい……?すごく真っ赤になってるね……?」

果林「ぜんぜんエバーグリーンじゃないわね……?」

エマ「ぐすん……果林ちゃんのばか……///」

果林「えぇ!?私だけ!?」

彼方「えっと、どういうこと、愛ちゃん?」

140: 2020/12/07(月) 22:21:29.35 ID:tqwrbZzy
果林「エマの記憶は戻ったわ。その仕組みを教えてくれないかしら?」

愛「うん。まず、記憶を戻すには、2つの手順があるみたい。記憶を消すときと同じように」

エマ「何かを食べて、何かをする……」

愛「媒体は、このぬか漬け……の、どの成分かは、分からないけど」

愛「これを食べて、【ある行動】をすることで、ひどい腰痛に見舞われる」

彼方「【ある行動】……?」

愛「消した記憶を強く意識できる行動……エマっちの場合は【その写真を見る】だったね」


エマ「果林ちゃん……かえして……///」

果林「あ、えぇ……ごめんなさい、エマ」

エマ「ううん……ちょっと、心の準備がまだだっただけだから……」


愛「エマっち、その写真は“見える”?」

エマ「うん、見えるよ」

愛「おっけー、ありがと。これで、実証できたね」

141: 2020/12/07(月) 22:22:12.96 ID:tqwrbZzy
愛「エマっちは記憶を消せる薬によって、写真に関する記憶を消した―――」

愛「“消した”っていうのは結果としての表現で、実際は“思い出せなくなった”あるいは“その記憶に辿り着けなくなった”っていう効果が表れたの」

果林「辿り着けなくなった……た、例えばの話だけど、写真屋さんに行きたいけど、なかなか辿り着けない、みたいな感じかしら……?」

愛「その例えなら、写真屋さんに行く予定がない、が適切かな。行く、というムーブがそもそも発生しない」


愛「だから、消した記憶に関して“思考できなくなった”がいちばん近い表現かな」


愛「エマっちは写真を“見れた”けど“見えなくなっていた”」

愛「目から写真の情報を入力できても(見れる)、脳から写真の情報を出力できなくなっていた(見えない、と感じる)」

142: 2020/12/07(月) 22:22:40.39 ID:tqwrbZzy
彼方「エマちゃんはその写真を謎の物体Xとして認識していたってこと?」

愛「どう?エマっち?」

エマ「う~ん……【何もない】が見えてた……?」

果林「……??見えないものは見えないでしょ……??えっ、どういうことかしら……!?!?」

彼方「果林ちゃん、吸って~……」

果林「スゥ~~~~…………」

彼方「吸う~」

果林「スゥ~~~~……????!?!?」

143: 2020/12/07(月) 22:23:41.45 ID:tqwrbZzy
愛「イメージで例えると、エマっちの脳内にはその写真を保管してる宝箱があるんだけど、記憶を消せる薬によって鍵が掛けられた~、って感じかな」

彼方「それを開いたのが、このぬか漬けなんだね~」

エマ「オープンセサミだね~」

愛「アタシは【薬を作った】を忘れてたけど、ぬか漬けを食べて、りなりーの家に行こっかな~って思ったら腰痛が始まったの」

愛「アタシたちはりなりーの家で薬を作ってたから、【薬を作った】と関連して【りなりーの家の場所】も忘れてたんだね」

144: 2020/12/07(月) 22:24:02.06 ID:tqwrbZzy
果林「そもそも、どうしてあなたたちはそんな物騒な薬を開発してたのよ?」

愛「うーん、“物騒”かぁ……カリンは、記憶を消すことに否定的なんだね」

果林「否定もなにも……現代の倫理観に合ってないじゃない?あなたたちはどう思う?」

彼方「私は使いたくないかな~。なんか、もったいないじゃん」

エマ「使ってから言っても遅いけど、私は、使わない方がいいと思う」

愛「どうして?」

エマ「あの子との思い出も忘れてたから」

145: 2020/12/07(月) 22:24:33.89 ID:tqwrbZzy
愛「じゃあ3人とも、記憶を消すことに否定的、って認識でおっけー?」

果林「その表現はイマイチね。記憶を消さないことに肯定的ね」

エマ「うん」

彼方「そうだね~」

愛「そっか。実は、愛さんもそう思う」

果林・エマ・彼方「え?」

146: 2020/12/07(月) 22:25:11.02 ID:tqwrbZzy
果林「記憶を消さないことに肯定的なら、どうして記憶を消せる薬を……?」

愛「アタシは記憶を消せる薬を作ってるつもりはなかったの」

エマ「どういう……?」


愛「アタシは“固定観念を外す薬”を作ってたの」


彼方「固定観念……?」

愛「アタシとりなりーの目的は固定観念を外す薬を作ることだったの」

愛「でも、完成したのは記憶を消せる薬だった」

果林「なんでそうなるのよ……?」

愛「この2つの薬は、作用が対になるの」

愛「ある記憶に関して、鍵を閉めるのが記憶を消せる薬、鍵を開けるのが固定観念を外す薬」


愛「アタシが気付かないところで、りなりーが軌道修正してたんだと思う」

147: 2020/12/07(月) 22:26:14.52 ID:tqwrbZzy
果林「えっと……じゃあ、どうしてあなたたちは薬を開発してたの……?」

愛「うーん……」

彼方「答えづらいことなら、答えなくてもいいんだよ?」

愛「お気遣いありがと。でも、そうじゃなくて……」


愛「……最近のりなりーについて……その……どう思った?」

エマ「どう?……えっと、表情が豊かになったと思うよ」

果林「そうね。まぁ、私たちが璃奈ちゃんの表情の機微に明るくなった、とも言うけど」

彼方「仲良しになったってことだね~♪」

果林「そ、そうね……///」

愛「うん、アタシもそう思う……でも、りなりー自身はそうじゃなかったの」

エマ「そうなの?」

148: 2020/12/07(月) 22:27:19.25 ID:tqwrbZzy
愛「りなりーの表情をいちばん気にしてたのがりなりー自身だったから、気付いてると思ってたんだけど……」


愛「りなりーはずっと、自分の表情が“出てない”って言ってた」


愛「まるで記憶を消せる薬が作用してるように……りなりーが、自分の笑顔を忘れてしまったように……りなりーは、自分の笑顔が“見えない”って言ってた」

愛「だから、薬を作り始めた。りなりーの“自分の表情が出ない”という固定観念を外すために」


――――――――――――――――――
―――――
――

149: 2020/12/07(月) 22:28:33.19 ID:tqwrbZzy
数日前
璃奈「できたよ、愛さん。固定観念を外す薬」

愛「やった……!これで……!」

璃奈「うん。私たちは新世界の神になれる」

愛「り、りなりー!?」

璃奈「自分の中の“できない”を外し続けることで、理論上、全てのことができるようになる。つまり神」

愛「えっ、うそ……!そんなことができるの……!?」

璃奈「ふふ、ウソだよ、愛さん。理論上は、理論上。人間は、そんなタフな生物じゃない」

愛「そ、そう……?」


愛(りなりー、やっぱり、笑えて……!)


璃奈「……今、愛さんが考えてることが、実現できるよ」

愛「……!!」

璃奈「ありがとう、愛さん。一緒に、私たちの夢をかなえようね」


愛「うぅ……愛さんちょっと緊張してきたかも……」

璃奈「愛さんらしくないね?璃奈ちゃん特製ドリンク飲んで。落ち着くよ―――?」


――
―――――
――――――――――――――――――

150: 2020/12/07(月) 22:29:58.65 ID:tqwrbZzy
愛「いちばん初めに薬を使ったのはりなりー。薬の効果を確かめるために、鏡の前で服用した」

彼方「鏡の前で……!?」

愛「うん。でも、その行動は記憶を消すためだった。つまり、りなりーが消した記憶は―――」


愛「…………」


果林「“自分の表情が出ない”ということでしょうね」

愛「……そうだね。アタシはその様子を見守ってた。頭痛が始まって、しばらく苦しそうだったけど……」

愛「呼吸が整った後、りなりーはアタシにこう告げたの」


愛「あなたは誰?って」


エマ「えっ……」

愛「自分の表情が出ないという記憶に関連して、アタシや、アタシたちのことも忘れたみたい」


愛「一方で、りなりーはアタシに薬を投与していた」

愛「そのときのショックで、アタシは【薬を作った】という記憶が消えてたの」

151: 2020/12/07(月) 22:55:54.06 ID:tqwrbZzy
愛「……状況説明は以上だよ!愛さんが知ってる情報も以上!愛さんの目的は、りなりーにこのぬか漬けを食べさせること!協力お願いしてもいいかな?」

エマ「もちろん!」

果林「えぇ!」

彼方「がんばるよ~!」

愛「ありがと~!じゃあ早速、3人に集まってもらった目的の2つ目!カナちゃん!」

彼方「は~い!」


愛「このぬか漬けを、もっと食べやすい料理にアレンジして!」


果林「えぇ……愛がそれを言うのかしら……ぬか漬けを、食べにくい料理だと言ってるようにも聞こえるわよ……」

愛「一理ある!ぬか漬けは、メインディッシュではない!」

エマ「そ、そうなんだね……?」

152: 2020/12/07(月) 22:56:54.72 ID:tqwrbZzy
彼方「おけまる~!彼方ちゃんにまかせて~!」

愛「サンキュー!カナちゃん!」

果林「あ、愛……?もしかして、私たちが集まった目的の3つ目って、私かしら……?」

愛「お!察しがいいね!カリンにもやってもらいたいことがあるんだ!」

果林「な……何かしら……?」ソワソワ

エマ「がんばってね、果林ちゃん!」

彼方「応援してるよ~」


愛「カリンには~……」

果林「私には……?」ゴクリ…


愛「“何もしない”ということをやってもらいます!!」


果林「え?」

154: 2020/12/08(火) 22:11:09.07 ID:ewVFHDQP
果林「何もしない、って……えぇ!?」

愛「うん。カリンは今、狙われたお姫様状態だから。ピーチ姫なの。何もしないで、アタシたちに護衛されてほしい。迂闊に迷子にでもなられたら困るから」

果林「えぇ!?誰に狙われてるのよ!?」

愛「りなりーだよ」

果林「えぇ!?」

エマ「果林ちゃん、落ち着いて……」

155: 2020/12/08(火) 22:11:43.04 ID:ewVFHDQP
愛「順番から考えて、“次”はカリンなんだよね~、おそらく」

果林「何の順番よ?」

愛「りなりーが薬を使う相手だよ」

彼方「璃奈ちゃんにそんな意図が……!?」

愛「そういう風に見えるんだよね~、りなりーの行動が……」

愛「最初に自分自身、次にアタシ、そしてせっつー、エマっち……」

愛「歩夢と侑は、1年生とカフェに行ったらしいけど……」

エマ「……あっ!侑ちゃん、“覚えてない”って言ってたよ!」

愛「だよね~……歩夢、侑、それにかすみんと……」

果林「しずくちゃんは?」

愛「だいぶ早い段階で投与してるかも……?りなりーが“りなりーらしく”振る舞えてるのは、おそらくしずくのおかげだから……エマっちはどう思う?」

156: 2020/12/08(火) 22:13:20.82 ID:ewVFHDQP
エマ「言われてみれば……璃奈ちゃん、少し、しずくちゃんに似てるな、って感じたよ」

彼方「しずくちゃんに……?」

果林「どういうところが?」


エマ「まず、璃奈ちゃんは、言葉の選択が早いの」

エマ「話しかけたり、問いかけたりしたとき、ボードを使ったりして、瞬時に反応してくれるの」

エマ「だから、たまに少し驚いちゃうんだけど……」


エマ「それが、しずくちゃんとよく似た反応になったかな、って感じたよ」


エマ「しずくちゃんは、言葉をよく吟味するの」

エマ「国際交流学科のしずくちゃんが、外国人の私とコミュニケーションをするときに、なるべく私が理解できる言葉を選んでくれてる、とも捉えられるけど」

157: 2020/12/08(火) 22:14:58.36 ID:ewVFHDQP
果林「それは私も感じたことがあるわ。私の知識レベルを見透かした上で、配慮してくれてるようで、とても恐縮だけど……」

彼方「“間”だね~。彼方ちゃんは、何か演技に関する高等なテクニックだと思ってたよ~」

愛「それもあるかもね~。しずくは、アタシたちと話してるとき、たまに“演技”してるから」

彼方「そうだね~。最近はそうでもない、って思ってたけど……」


彼方「言われてみれば、しずくちゃん、ずっと演技してたね」

158: 2020/12/08(火) 22:16:03.31 ID:ewVFHDQP
一方その頃
璃奈「しずくちゃん、お願いがあるんだけど」

しずく『なぁに、璃奈さん♪』ニコッ

璃奈「記憶を消すことに肯定的なしずくちゃんに、お願いがあるんだけど」

しずく『そう前置くってことは、“また”、誰かの記憶を消すの?』

璃奈「うん。あと2人、消したい相手がいるの。手伝ってくれない?」

しずく『2人?誰と誰?』

璃奈「果林さんと彼方さんだよ」

しずく『どうやって?』

159: 2020/12/08(火) 22:16:35.63 ID:ewVFHDQP
璃奈「果林さんは……申し訳ないけど、余裕。消したい記憶に直結する“弱み”が多すぎる。押しにも弱い。対面交渉で容易に“使わせることができる”」

しずく『そ、そう……?』

璃奈「最終兵器も用意してる。果林さんについては、問題ない」

しずく『じゃあ、問題は彼方さんだね?』

璃奈「うん。彼方さんは、隙がありそうで、隙が全くない。遥ちゃんもだけど、姉妹揃って精神的成熟度が高い」

しずく『…………』

璃奈「あ、ごめんね。しずくちゃんのことを揶揄する意図はなかったよ」

160: 2020/12/08(火) 22:17:17.49 ID:ewVFHDQP
しずく『……ねぇ』

璃奈「……なに?しずくちゃん?」


しずく『璃奈さんの目的は、なに?』

璃奈「みんなの記憶を消すことだよ」

しずく『何の記憶?』

璃奈「分かんない」


しずく『えっ……』

璃奈「分かんないけど、消す方法だけは知ってるの。この動画だよ」

しずく『璃奈さんが、鏡の前で、薬を使ってる動画……』

璃奈「うん。私には“見えない”けど。しずくちゃんは【これ】を見てどう思った?」

しずく『えっと、心が痛むかな……』

161: 2020/12/08(火) 22:18:09.49 ID:ewVFHDQP
璃奈「…………」


ーーーーーーーーー

璃奈「分かんないけど、消す方法だけは知ってるの。この動画だよ」

しずく『璃奈さんが、――――、――――――動画……』

璃奈「うん。私には“見えない”けど。しずくちゃんは【これ】を見てどう思った?」

しずく『えっと、――――――……』

ーーーーーーーーー


璃奈(……やっぱり聞こえない……じゃあ、この動画が【正解】か……)

162: 2020/12/08(火) 22:19:16.18 ID:ewVFHDQP
璃奈「ねぇ、しずくちゃん」

しずく『なに、璃奈さん』

璃奈「ひとつだけ、ウソを言った。訂正させて」

しずく『もぉう、璃奈さん!ウソはダメだよ♪』ニコッ


璃奈「……ごめんね。えっと、薬の効果は“永続”なの」


しずく『えっ……』


璃奈「効果を再発させる方法は、特殊な電磁波なの。今からしずくちゃんに浴びせるね」


しずく『えっ、ちょっ、まっ―――!!』

璃奈「……」ポチ

しずく『――――――――!!!!』

璃奈「そして、この動画を見て」

しずく『~~~~~~!!!!』

璃奈「ごめんね。頭痛薬はあるから。大丈夫、相互作用はないよ」

163: 2020/12/08(火) 22:19:43.83 ID:ewVFHDQP
しずく『…………』


璃奈「…………」


しずく『……って、あれ、何の話をしてたかな、璃奈さん?』

璃奈「この動画を見てほしいの。どう思う?」

しずく『どう?って……』


しずく『璃奈さんの新しいスマホかな?スマホカバーもかわいいね♪』

168: 2020/12/10(木) 22:01:33.31 ID:jVPeKEiA
翌日
果林「あああああ愛……!!!!」

愛「どしたのカリン?」

果林「クッパ大魔王が来たの……!私のスマホに……!」

愛「ん~?どれどれ~?」


ーーーーーーーーー

璃奈『果林さん♪大切なお話があります!今から、部室棟の屋上に1人で来てください!』

ーーーーーーーーー


愛「おぉ~!これは定番のアレじゃないですか先輩~!妬けますね~!」

果林「もぉう!からかわないで!」

愛「だいじょ~ぶ!こっちも準備万端だから!」

果林「うぅ……もうもんじゃ焼きは懲り懲りよ……!」

169: 2020/12/10(木) 22:03:10.50 ID:jVPeKEiA
愛「要するに“口に食べ物を入れる”行為を避ければいい!!つまり、お腹いっぱい食べたら、そうはならんやろ作戦~!!」

果林「サイアクよ……!!愛、カ口りー消費、みっちり手伝ってもらうから……!!」

愛「おっけー!何十kmでも何百kmでも付き合うよ~!」

果林「いや、あなたと走るのはカンベン……」


愛「じゃ!がんばってね~!」

果林「えぇ!?愛は付き添ってくれないの!?」

愛「え?だってかわいい後輩から1人で来て、って言われたんでしょ?1人で行くのがスジでしょ!」

果林「えぇ……」

愛「それにアタシ、部室棟のヒーローだから!部室棟の屋上を“たまたま”通りかかっても、ぜんぜん不自然じゃないね!」

果林「そ、そうね……?じゃあ、そういう方向で……」

170: 2020/12/10(木) 22:04:30.81 ID:jVPeKEiA
屋上
璃奈「こんにちは、果林さん♪まずは、来てくれてありがとう♪」

果林「こ、こんにちは、璃奈ちゃん。それで、私に話って何かしら……?私、読モの仕事で忙しくて―――」


璃奈「果林さんは、消したい記憶、ある?」


果林「うっ……」

果林(直球で来たわね……)


果林「な、ないわよ、そんなもの」

171: 2020/12/10(木) 22:06:24.90 ID:jVPeKEiA
璃奈「そうなんだ……あっ!スタバの新作フラペチーノ、果林さん好きかな?って思って用意したの。受け取ってくれる?」

果林「え、えぇ、ありがとう……♪」

璃奈「どうぞ♪」


果林「うふふ……♪」


璃奈「……♪」


果林「お、美味しそうね~……♪」

璃奈「飲まないの?」

果林「ご、ごめんなさい。今、撮影に向けてカ口りー制限中なの。少しずつ頂くわね……♪」

璃奈「うん♪全部飲んでね♪」

果林「……♪」ダラダラ…


果林(あ、愛っーーー!?早く来てくれないかしら―――!!)

172: 2020/12/10(木) 22:07:51.75 ID:jVPeKEiA
一方その頃
??『あっ!愛さん!こんなところで奇遇ですね♪』

愛「げっ!?」

しずく『げっ!?ってなんですかもぉう!……と、これはかすみさんの物真似です♪』


愛「おっす~、しずく!……じゃ!!」


しずく『じゃ!!じゃないですよもぉう!……うふふ、最近かすみさんの物真似がマイムーブなんです♪』

愛「そっかぁ」

しずく『あ!それはエマさんの物真似ですね!さすが愛さん!物真似にも理解があるんですね!』


愛「あ~……」

173: 2020/12/10(木) 22:09:35.42 ID:jVPeKEiA
愛「あっ!!あんなところにUFOが!!」ビシッ


しずく『どこですか!?……あっ!6時の方向!目視で確認できる距離です!きっと異星人たちが私たちの地球《ほし》を視察しに来たのでしょう!』


愛「はぁ?」

しずく『一緒に見に行きましょう!キャトルをミューティレーションしましょう!』ギュッ

愛(やっべ~、めんどくせ~……よぉし!!こうなったら……!!)


愛「見てしずく!UFOが滑らかな軌道を描いて……部室棟の屋上に不時着しようとしている!?」


しずく『なに言ってるんですか先輩?……あ、これもかすみさんの物真似です♪』

愛「……」

174: 2020/12/10(木) 22:11:24.36 ID:jVPeKEiA
愛「で?しずくはアタシに何か用?」

しずく『璃奈さんに言われました。愛さんは必ず“ここ”を通る、って』


しずく『……部室棟の屋上に用事があるみたいですね?果林さんが心配ですか?』

愛「ううん、カリンは心配じゃない」

しずく『果林さん“は”……?どういうことですか?』

愛「アタシが心配なのはりなりーだよ。カリンは、絶対に記憶を消せる薬を使わないから」

しずく『えっ……』

175: 2020/12/10(木) 22:13:59.97 ID:jVPeKEiA
再び屋上
璃奈「ねぇ、果林さんは、ホントに消したい記憶、ないの?」


果林「……」


璃奈(『朝香果林』。読者モデル時代の“苦い”経験があり、それが原因で、自己評価が低い)

璃奈(消したい記憶は、必ず【ある】)


果林「……さっきも答えたけど。ないわ。そんなもの」

璃奈「…………」

果林「……まぁ、記憶を消したい気持ち、分からなくもないわ」


果林「少なくともあなたには―――【あなた】には―――必要なことだったらしいから」

176: 2020/12/10(木) 22:16:02.76 ID:jVPeKEiA
果林「消したい記憶に対するアプローチは千差万別よね……と、この使い方で合ってるかしら?」

璃奈「……合ってるよ。でも、私たちに適用するなら、十人十色の方がキレイ」

果林「ありがと♪……そう、あなたには開発力という強力なアプローチがあった」


果林「常識を覆すようなアイデアと、実現力が」


璃奈「……」


果林「それが天王寺璃奈ちゃんというスクールアイドルを最も輝かせる魅力だった、と、私は思うわ」

177: 2020/12/10(木) 22:18:15.25 ID:jVPeKEiA
璃奈「果林さんのアプローチは―――」

果林「ご存じのとおりよ。私たちは、カメラの前では最強なの」

璃奈「読者モデル……」


果林「何を食べた?とか、テストは何点?とか、そういう無数の積み重ねが、私だけど」

果林「その一瞬の前で、あらゆる言い訳は通用しない。その一瞬で『朝香果林』の最も美しい姿を表現しなければならない」


果林「だから、私は記憶を消さない。私にとって、それは朝香果林の美しさを減少させる行為だから」


璃奈「……」

果林「……言葉は選んだつもりだけど、癇に障ったのなら、ごめんなさい。あなたのことを否定する意図はないわ。そういうつもりで、私は千差万別という“言い訳”を使った」


果林「もっとハッキリ言うと、私にとって記憶を消すことは“言い訳”なの。それは私の美学に反するから、使わない。それだけ」



璃奈「…………」

178: 2020/12/10(木) 22:26:48.15 ID:jVPeKEiA
璃奈(……じゃあ、最終兵器を使うか……使いたくなかったけど……)




??「わぁ~……♡ステキですぅ~……♡」




果林「…………え?」




??「お久しぶりです♡朝香果林さん♡」

果林「あ、綾小路さん!?」

璃奈「後はよろしくね、姫乃さん」

果林「えっ!?ちょっ!?どういうこと……!?」

姫乃「はぁい♡果林さんに“べろちゅう”すればいいんですよね♡」


果林「は?」


――――――――――――――――――
―――――
――

182: 2020/12/12(土) 20:59:53.20 ID:xm1hsPpP
愛「アタシが心配なのは、しずくもだよ」

しずく『心配?私がですか?』

愛「心配、というか、変化したことを気に掛けるって感じだけど」

しずく『あ、それなら、かすみさんにも同じようなことを言われました♪』

愛「かすみんが?どんなことを?」

しずく『かすみさん曰く、私の髪型がいつもと違うそうです♪』

愛『そうなの?ちなみに、どこがどう違うの?』

しずく『いつもは右側に流れてる前髪が、今は左側に流れてるそうです♪』


愛「へぇ〜……そうなんだ―――」グイッ


しずく『……っ!?愛さん……!?』

183: 2020/12/12(土) 21:59:24.47 ID:xm1hsPpP
しずく(ちっ、近い……!?愛さん、タッパあるし……急に迫られると怯んじゃうなぁ)

愛(…………)

しずく『あ、あの……?』

愛「確かに、いつものしずくと違うね」

しずく『そうなんですか?よく気付けますね?』

愛「そうだね。前髪は、自分自身は常に見れないから、気付きにくいだろうね」

しずく『……?私が、じゃなくて、愛さんたちが、よく私の“どうでもいいこと”に気付けますね、っていう意味で……』

しずく『まぁ、愛さんやかすみさんは、他人の些細な変化をネタに、話題にする人たちですから。あまり驚きません♪』

愛「……」

愛「あれ〜?気付けなかったんだ?いつものしずくと、違いすぎる違いが?」

しずく『……?前髪じゃないんですか?』

184: 2020/12/12(土) 22:02:04.42 ID:xm1hsPpP
愛「いつものしずくは、急に接近すると、もっとうろたえる。ピュアな女の子みたいに」

しずく『……そうなんですか?』

愛「そういうとこだぞ〜!愛さんが心配なのは!」

しずく『……???』

愛「そうなんですか?は禁止!自分自身のことなのに、他人から回答を得ようとしない!」

しずく『……どういうことですか……?』

愛「分かんないならしょうがない!愛さんは困ってる後輩に弱いから、す〜ぐ手助けしちゃう!」


愛「【それ】が分かるようになるのが、このおまんじゅうだよ!」

185: 2020/12/12(土) 22:03:17.41 ID:xm1hsPpP
しずく『わぁ〜!美味しそうなおまんじゅうですね!』

愛「でしょ!愛さんがカナちゃんに注文したんだ!愛さんのアイデアとカナちゃんの料理スキル!ほっぺたが落ちるよ〜!」

しずく『彼方さんの手作りなら、絶対美味しいですね!』

愛「食べたい?」

しずく『はい!……ですけど、いまいち整合性に欠けますね?それが私の曖昧模糊の手助けになるんですか?』


愛「そうだよ!これを食べると【しずくが消した記憶】が元に戻るよ!」


しずく『……っ!?』

愛「どう?食べたい?」

186: 2020/12/12(土) 22:04:42.44 ID:xm1hsPpP
しずく『…………』


愛「……と!愛さんはこれでお手上げ!もうどうしようもない!」


愛「なので!愛さんは“みんな”に手助けしてもらう!みんな、お願い!」


エマ「Ciao!エマだよ〜!」

彼方「ぴえん。しずくちゃん、彼方ちゃんの手作りおまんじゅう、食べてくれないの〜?」

侑「しずくちゃん!手助けに来たよ!」

歩夢「私も!」

せつ菜「私たちに任せてください!」


しずく『みなさん……!?あの、どうしてせつ菜さんたちは“前かがみ”なんですか……?』

187: 2020/12/12(土) 22:06:22.45 ID:xm1hsPpP
歩夢「しずくちゃん、これはね……///」


かすみ「う゛う゛ぅ゛ぅ゛!!!!愛先輩に騙されました!!!!」


しずく『かすみさんまで……!?』

彼方「うふふ〜♪そんなに彼方ちゃんのおまんじゅうが美味しかったかね~?」

侑「お、美味しかったけど!」

エマ「これは記憶が戻ったっていう合図だよ!みんな、よかったね♪」

かすみ「よかった!?けど……よくないです!!スクールアイドルが腰痛なんて、ぜんぜんかわいくないです!!」

188: 2020/12/12(土) 22:07:40.86 ID:xm1hsPpP
愛「まぁまぁ。かすみんたちはお店を出禁になった前科があるから、その禊だよ♪」

歩夢「うぅ……反論の余地がない……」

かすみ「それにしても!!“こんな効果”があるのに教えないのはヒキョウです!!愛先輩のイジワル!!」

愛「まぁまぁ……そんなにプンプンしないでよかすかす〜」

かすみ「かすみんですっ!!!!」グギッ


かすみ「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」


歩夢「かすみちゃん……」

189: 2020/12/12(土) 22:08:52.41 ID:xm1hsPpP
愛「歩夢、侑、かすみん、ごめんね。せっつーの腰に免じて許してよ」


せつ菜「そうですよ!!!!私は完全に巻き添えですから!!!!」グギッ


せつ菜「あ゛っ゛!!!!!!!!」


歩夢「はい……」

侑「はい……」

かすみ「はい……」


愛「でも、しずくにはちゃんと“相談”する。それが、しずくのためになると思ったから」

彼方「私たちの総意だよ〜」

エマ「しずくちゃん……!」


しずく『……っ!』

191: 2020/12/13(日) 23:02:47.41 ID:euznLoIe
愛「じゃあ、まずは愛さんから」

愛「愛さんは、しずくが記憶を戻す場合のメリットについて説くよ」

しずく『メリット?わざわざ消した理由があるのに、それを戻すメリットなんて……』

愛「単純に、消した分の記憶が増える」

しずく『それはそうですが……』

愛「そう。“それはそうですが”、それは、消されるような記憶」

愛「でも、表現者として、それは貪欲に渇求すべき“台本”だと思うよ」

侑「私もそう思うよ」

しずく『侑さん……』

侑「しずくちゃんは、いつも演技にひたむきだったよ」

侑「でも、今のしずくちゃんは……ずっと同じ仮面を付けてるみたいで、あまりときめかないかな」

192: 2020/12/13(日) 23:04:16.12 ID:euznLoIe
歩夢「しずくちゃんに、しずくちゃんらしさを押し付けてた私たちに責任があるよ」

しずく『私らしさ……?』

せつ菜「えぇ。演技派、という一面を、しずくさんに強く当て嵌めていたのは、私たちです」

しずく『ですが、そのおかげで、私は私自身をよく知ることができましたよ?』

歩夢「うん。だから、しずくちゃんは自分自身をよく知ることができなかった」

せつ菜「しずくさんが追従していたのは、私たちが勝手に期待した、演技をしているしずくさんでしたから」

彼方「私たちは、のびのびと、自由に演じてるしずくちゃんがいちばん好きだよ」

エマ「しずくちゃんの全てをさらけ出したような、しずくちゃんがいちばん輝いてるステージが好きだよ」

しずく『……』

193: 2020/12/13(日) 23:07:34.06 ID:euznLoIe
かすみ「私たち、ライバルだけど……仲間で、友だちだよ?」

しずく『……そうだね♪私たち“シンユウ”だよ♪』

かすみ「……だから!カッコつけないで、って言ってるの!」

しずく『……っ』

かすみ「もっと自分のことばで喋ってよ!桜坂しずくが伝いたいことばで!」

彼方「しずくちゃん、手、繋ご?」

エマ「あったかいよ〜、ほら♪」

しずく『……///』

かすみ「演技をしない桜坂しずく。私たちに見せてよ」

しずく『かすみさんは……』

かすみ「かすみんはしず子のこと、ライバルで仲間で、友だちだって思ってるよ。しず子はどう思ってるの?」


しずく『私は……』

194: 2020/12/13(日) 23:14:41.74 ID:euznLoIe
しずく「私は、かすみさんに絶対負けたくなかった……!」

しずく「仲間であり、友だちであるかすみさんは、私にとって、ぜっっっったいに負けたくないライバルだった……!!」


しずく「かすみさんだけじゃない……!同好会のみんな、スクールアイドルのみんな、世界中のみんな……その誰にだって負けたくない……!」


しずく「桜坂しずくの舞台を―――人生を―――世界でいちばん巧く表現できるのは……私なの!!」

しずく「私という劇場を目撃した全ての人たちに、二度と忘れられない衝撃を与えたい!!」



しずく『だから……!!』



しずく「だから……!!忘れたくなるような記憶は……忘れたままでいたかった……!!


しずく「でも……!!忘れたままでは……私は……!!桜坂しずくになれない……!!」



しずく「でも……怖い……」

しずく「怖い……【私が消したかった記憶】を……また思い出すのは……」


しずく「怖いよ…………」

195: 2020/12/13(日) 23:20:16.68 ID:euznLoIe
かすみ「大丈夫だよ」

しずく「かすみさん……」

かすみ「桜坂しずくの目撃者は―――観客は―――目の前に、こぉんなにいるんだよ」

侑「そうだよ」

彼方「みんな、しずくちゃんの大ファンだよ〜♪」

エマ「うん♪ドラマティックで目が離せない♪」

せつ菜「続きが気になります!」

歩夢「しずくちゃんのペースで、物語の続きを私たちに見せてね♪」


しずく「みなさん……!!」


かすみ「ね?大丈夫でしょ?」


かすみ「だから私たちに教えてほしいな?桜坂しずくの、エピソード・ゼロを―――」

196: 2020/12/13(日) 23:22:51.55 ID:euznLoIe
しずく「いたたたたた……」

愛「よぉし!記憶が戻ったね!気分はどう?」

しずく「え、えぇ……思ったより……腰が痛いですね……」

かすみ「記憶は!?」

しずく「えっと、今思えば【こんなこと】で、って感じだね。全然大丈夫だよ」


かすみ「……」ジーーー


しずく「かすみさん?」

かすみ「うん、それは本音だね♪おかえり、しず子♪」

しずく「た、ただいま……♪」




愛「次はりなりーの番だよ!みんな!屋上へゴー!」




かすみ「……にしし♪歩夢先輩たちと、出禁になったお店にごめんなさいしに行くんだから、とうぜん、しず子とりな子も一緒だよ……♪」

197: 2020/12/13(日) 23:25:43.72 ID:euznLoIe
屋上
璃奈「あ、愛さん……と、みんな」

愛「おっす〜、りなりー……と、ヒメっち!?」

姫乃「ヒメっち?私のことでしょうか♪ご無沙汰です、同好会のみなさん♪」

エマ「果林ちゃんは……!?」


果林「……」


彼方「果林ちゃ〜ん、お〜い、聞こえてる〜?」


果林「ココハ……ドコ……?ワタシハ……ダァレ……?」フラフラ…


愛「あっちゃ〜!遅かったか……」

198: 2020/12/13(日) 23:28:03.15 ID:euznLoIe
果林「……!!」


エマ「……?果林ちゃんが、何か……合図してる?」

しずく「フラフラしながら、ウインクしてますね」

かすみ「ずいぶんマヌケな絵面ですね」


果林「……!!!?!?」


彼方「果林ちゃん……?」



姫乃「……と、部外者の私は、ここで失礼しますね。天王寺さん、よろしいですか?」

璃奈「うん、ありがとう」


姫乃「……朝香さんのこと、『よろしくお願いしますね』。では」


愛「……?」

199: 2020/12/13(日) 23:29:23.61 ID:euznLoIe
愛「りなりー!カリンの記憶は!?」

璃奈「見ての通りだよ」


果林「ソウ……ワタシハキオクガキエタノ……」


愛「……?」


エマ「ねぇねぇ愛ちゃん……?」コソッ

愛「ん?どしたのエマっち?」

彼方「私たち、果林ちゃんを回収するね……?」コソッ

愛「う、うん。まかせた」

206: 2020/12/17(木) 23:00:55.35 ID:wPa9ycQ4
彼方「果林ちゃん、確保〜!」

エマ「よ〜しよしよしよし……」

果林「た……助かったわ〜……!」コソッ

せつ菜「あ、やっぱり大丈夫だったんですね?」

歩夢「何があったんですか?」

果林「そ、それは……」

207: 2020/12/17(木) 23:02:22.98 ID:wPa9ycQ4
数十分前
姫乃「お久しぶりです♡朝香果林さん♡」

果林「あ、綾小路さん!?」

璃奈「後はよろしくね、姫乃さん」

果林「えっ!?ちょっ!?どういうこと……!?」


姫乃「はぁい♡果林さんに“べろちゅう”すればいいんですよね♡」


果林「は?」



姫乃「果林さん……大好きです!!」ガバッ



果林「ちょっ!?あやっ……!?んっ……!?ん〜〜!!ん〜〜!!」



璃奈「わぁ〜……センシティブな内容……璃奈ちゃんボード『指の隙間からこっそり覗く』……」


姫乃「〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡」

果林「〜〜〜〜〜〜!!!?!?」


果林「……!?」



果林(……あれ?“べろちゅう”されてない……!?)

208: 2020/12/17(木) 23:03:22.64 ID:wPa9ycQ4
姫乃「……朝香さん」コソッ

果林「ひゃっ!?耳元で喋らないでくれる……!?」ビクッ

姫乃「まずは、くちびるを指で塞いでしまって、ごめんなさい」

果林「そ、そうよ!?どういうことかしら!?」

姫乃「この角度なら、私が……朝香さんを押し倒してるこの体勢なら……」


姫乃「天王寺さんから見て、私たちが……その、キスしてるように見えるはずです」


果林「キス……?」

姫乃「このまま、私にキスされるフリをしてくださいませんか?」

果林「えっと……?フリなら、構わないけど……」

姫乃「ありがとうございます」

果林「でも、どうして?」

姫乃「あの……私の役目を果たすために、都合が良いので……ごめんなさい」

209: 2020/12/17(木) 23:04:28.51 ID:wPa9ycQ4
果林「役目?」

姫乃「天王寺さんに依頼されました。口移しで、カプセル剤を投与してほしいと」

果林「璃奈ちゃんが……?」

姫乃「はい。ですが、私の勝手な判断で、このような形で中断しました」

果林「な、ナイスな判断よ!!助かったわ!!」


姫乃「“助かった”?……妙ですね?その反応は想定外です」


果林「あ、えっと、それは……」

果林「カプセル剤を口移しで投与、なんて、ちょっとヤバいじゃない?」

姫乃「そうですね。私も、カプセル剤の効用が分からなかったので、引き受けたものの完遂しないことにしました」


果林「そ、そもそも……!!どうして引き受けちゃったのよ……!!」

姫乃「それは……」

210: 2020/12/17(木) 23:05:56.51 ID:wPa9ycQ4
ーーーーーーーーー

璃奈「―――以上が、依頼の内容。引き受けてくれない?」

姫乃「お断りいたします」

璃奈「え~……」


璃奈「でも、成功報酬は”コレ”だよ」


姫乃「こっ……これはっ……!?」

璃奈「同じ部活の特権だよ。とうさt……写真が撮り放題だから」


璃奈「姫乃さんは欲しくない?この“朝香フォルダ”?」


姫乃「……引き受けます!!」

ーーーーーーーーー

211: 2020/12/17(木) 23:07:11.11 ID:wPa9ycQ4
果林「それは……?」

姫乃「ごめんなさい、お教えできません……///」

果林「……!?どうして照れるのよ……!?」


果林(……まぁ、この状況は私にとって好都合だし、愛が来るまでこのまま押し倒されてるしかないわね……)


姫乃「朝香さんは、天王寺さんのカプセル剤について何かご存じですか?」

果林「え?えっと……」


果林(記憶を消せる薬なんて、気軽に広めていいシロモノじゃないわよね……)

果林(なるべく気付かれないようにしないと……)


果林「いえ、何も知らないわ」

姫乃「そうですか……」

212: 2020/12/17(木) 23:08:51.65 ID:wPa9ycQ4
姫乃「実は、朝香さんと天王寺さんの会話を少し離れた場所で窺ってまして―――」


果林(マズい……!?もしかして、気付かれた……!?)


姫乃「記“録”を消すとかどうとか……?写真やデータなどのお話でしたか?」

果林「そ……そうよ!そんな感じ!」

姫乃「なるほど、そうだったんですね~」

果林「えっと……そうね!」

姫乃「私、カメラが趣味で。写真やデータのお話に興味があるんです」

果林「そうなの?じゃあ今度、私のこと撮ってみる?」

姫乃「本当ですか!?ぜひお願いします!」

213: 2020/12/17(木) 23:10:02.89 ID:wPa9ycQ4
果林「……」

果林(なんとか、話題をそらせたわね……?)

姫乃「……」


姫乃「あの、朝香さん……?」

果林「何かしら?」

姫乃「こんな状況で、お願いしづらいのですが……」


姫乃「……もう少し、抵抗するフリをしていただけないでしょうか……?」

果林「そ、そうね!」


果林「ン〜〜!ン〜〜!」ジタバタ

姫乃「……」

214: 2020/12/17(木) 23:11:29.75 ID:wPa9ycQ4
姫乃「あの、提案なんですけど……」

果林「何かしら?」


姫乃「……ホントに、キスしてもいいですか……?」


果林「……!?なんでそうなるのよ!?」

姫乃「いえ……朝香さんの演技が、思ったよりアレだったので……」

果林「わ、わるかったわね!でもダメよ!」

姫乃「……ですよね、ごめんなさい」

果林「あ、あなたが謝ることはないわ。ヘンなカプセル剤から守ってくれて、ありがとう」

姫乃「果林さん……!」


姫乃「……じゃあ、提案なんですけど……」

姫乃「朝香さんの演技を減らすために、この押し倒すフリを、もっと長く続けてもいいですか―――?」

215: 2020/12/17(木) 23:12:18.95 ID:wPa9ycQ4
果林「―――ということがあって……」


果林「なんだかよく分からないけど、綾小路さんに助けられたわ」

侑「果林さんは記憶を消されなかったんだね!」

果林「そうね」

エマ「よかった~!果林ちゃんが無事で!」

彼方「そうだね~!でも、念のため、彼方ちゃんのおまんじゅう食べとく?」

果林「わぁ~!美味しそうね!いただくわ!」モグモグ…

愛「あ、でも、カリンは記憶を消されたフリをしててね」


果林「ソ、ソウネ……アレ?ココハドコカシラ……?」


かすみ「……しず子、アレ、どう思う?」

しずく「うーん……コメントに困る……」

216: 2020/12/17(木) 23:13:51.89 ID:wPa9ycQ4
愛「りなりー!……いや、闇のりなりー!!キミの企みもここまでだ!!」

璃奈「闇のりなりー……まぁ、あながち間違ってないけど……」

かすみ「どういうことですか?」

愛「りなりーは【自分のことに関する記憶】を封じた影響で、性格が大きく変わってる」

歩夢「確かに、口調や雰囲気が、いつもの璃奈ちゃんと違うような……?」

しずく「そうですね。私自身、そうだったので分かりますが、その表現はおおむね正しいです」

璃奈「あ~あ。そっち側に行っちゃったんだね?光のしずくちゃん?」

しずく「……えぇ。私たちは、元の璃奈さんを取り戻す必要がありますから」

217: 2020/12/17(木) 23:18:40.38 ID:wPa9ycQ4
璃奈「元の璃奈さん、かぁ。それはどんな感じだった?」


かすみ「どんな、って……かすみんの次くらいにかわいくて……」

歩夢「がんばり屋さんで……」

侑「機械に強くて……」

せつ菜「動物に優しくて……」

果林「アキラメガ、ワルカッタワネ……」


璃奈「…………」


璃奈「……そうだね。私は『諦めが悪い女』だった」



璃奈「―――だから『この状況』を用意した」

218: 2020/12/17(木) 23:19:49.73 ID:wPa9ycQ4
エマ「璃奈ちゃんが……何かを取り出した……!?」

せつ菜「パソコンでしょうか……!?」


愛「……っ!?りなり―――!!」

璃奈「動かないで」スチャッ


愛「……っ!!」

璃奈「……」

かすみ「りな子……!?」

璃奈「安心して、銃じゃないよ。これは、リモコンだよ」

219: 2020/12/17(木) 23:21:33.98 ID:wPa9ycQ4
歩夢「リモコンってことは、何かを動かすためのコントローラー……?」

しずく「おそらく、あの装置ではないでしょうか……?」

璃奈「そう。この電磁波発生装置のリモコンだよ」

果林「デンジハハッセイソウチ……?」

璃奈「リモコンの操作で、この装置から電磁波が出るの」

しずく「……!!まさか……!!」

璃奈「しずくちゃんは知ってるみたいだね。当然、受けたことがあるからだね」


璃奈「言い換えれば、これは記憶を消せる薬の補完システム」


璃奈「薬を投与した人間の、任意の記憶を、自由に消すことができる装置だよ♪」



璃奈「だから、動かないでね」



璃奈「私は、いつでもみんなの記憶を消し飛ばすことができるから♪」

愛「……」

220: 2020/12/17(木) 23:37:20.95 ID:wPa9ycQ4
侑「……ねぇ璃奈ちゃん。さっき、この状況、って言ってたけど……」

璃奈「うん。『この状況』には、2つの条件があるの」


璃奈「1つ目は、同好会のみんなに薬を投与していること」

璃奈「2つ目は、同好会のみんなを屋上に集合させること」


璃奈「1つ目は面倒だったね~。その件について、ご協力ありがとう♪しずくちゃん♪」

しずく「……」

せつ菜「2つ目の条件は……?」

璃奈「特に十分条件じゃないけど、確実に電磁波を当てられるからだね。屋上なら、遮るものが何もないから」

226: 2020/12/21(月) 22:45:21.10 ID:2WdtW7w0
しずく「璃奈さんがこの状況を作り出した目的って、もしかして……」

璃奈「そういえば、しずくちゃんには話してたね」

璃奈「だったら、みんなにもバラしていいね。“記憶消去率”も高められる」

愛「記憶消去率……?」

しずく「記憶の情報量や思い入れなどは、薬によって、記憶を封じ込める作用に変換されます」

璃奈「うん。だから、あえて説明する。私の目的を」

かすみ「りな子の目的……?」

227: 2020/12/21(月) 22:49:07.56 ID:2WdtW7w0
璃奈「私の目的は、みんなの記憶を消すこと」

璃奈「私が【消した記憶】を、同好会のみんなからも消すこと」

璃奈「そうすることで私が【消したかった記憶】に関する事実を、無かったことにできる」

璃奈「なぜなら、天王寺璃奈が【そう】であることを知ってるのは、同好会のみんなだけだから」


歩夢「私たちだけが知ってる……?」


璃奈「うん。天王寺璃奈の交友関係は浅く、狭かった」

璃奈「だから、みんなの記憶を消すことで、私の【闇】をこの世から消せる」


璃奈「分かった?」

かすみ「分かった?って言われても……」

侑「それで、璃奈ちゃんはどうするつもりなの?」

璃奈「う~ん……『私』は【私】のこと分からないな~……」


璃奈「天王寺璃奈と、スクールアイドル同好会の関係が、リセットされるんじゃない?」

228: 2020/12/21(月) 22:52:03.12 ID:2WdtW7w0
璃奈「愛さんはどう思う?」

愛「……りなりーは【自分の表情が出ない】ことを封じた」

愛「でも実際、りなりーの表情は出てた」


愛「だから、アタシたちの記憶を消すことで、アタシたちの、りなりーに対する固定概念が覆る」


愛「同時に、天王寺璃奈とスクールアイドルのつながりが消える」

愛「りなりーの、変わりたい、という意志が、無かったことになる」


愛「天使で、天才な、天王寺璃奈を表現できるスクールアイドルが、この世界からいなくなる」

侑「それはイヤだよ……!」

璃奈「そうなんだ?でも大丈夫だよ。天王寺璃奈はいなくならないよ」


璃奈「顔面にボードを貼り付けて、歌って踊ればいいんでしょ?それが天王寺璃奈の個性だったらしいから」

愛「違うね~。合ってるけど、その解釈は違う」

229: 2020/12/21(月) 22:56:07.67 ID:2WdtW7w0
璃奈「はぁ~~~~…………」

エマ「璃奈ちゃん……!」

かすみ「りな子……!」

璃奈「まぁ、やってみなくちゃ分からないし、そもそも私はやる気満々だし、そもそも愛さんたちは私を止められない」


璃奈「大丈夫♪これは必ず幸せになれるソリューションだから♪」


璃奈「……じゃあ―――」

愛「待って!!」

璃奈「……おや?時間稼ぎかな?」

愛「その装置の仕組みを教えてほしいな~?愛さん情報処理学科だから、そういうのに興味津々なんだよね~!」

璃奈「なるほど!そういうことなら……!」コホン


璃奈「じゃじゃーん!電磁波発生装置だよ!」


璃奈「みんなの体内に投与した薬が“受信機”だよ!このリモコンをポチっと押して、電磁波に載せて【消したい記憶の情報】を送信することで、記憶が消せるよ!」


愛「おぉ~、さすがりなりー!」

璃奈「いやぁ、それほどでも!」

230: 2020/12/21(月) 22:58:15.97 ID:2WdtW7w0
璃奈「じゃあ今から、電磁波を飛ばすね!」


璃奈「……」チラッ


??「……」コクリ


璃奈「いい?」

侑「そんな……どうしよう……!?」

せつ菜「璃奈さんとは数十メートル離れてますし……物理的にも阻止するのは難しそうです……!?」

歩夢「どうしよう……愛ちゃん……!?」


愛「……」チラッ…


果林「……ふふっ♪」

愛「カリン、後は頼んだ」

231: 2020/12/21(月) 23:00:50.47 ID:2WdtW7w0
果林「待ったッ!!」

璃奈「……どうしたの?果林さん?ロボットダンスは飽きた?」

果林「ロボットダンスじゃないわよ!……と、話をそらさないでちょうだい」コホン


果林「あなた、同好会のみんなに薬を投与していることが条件、って言ったわよね?」

璃奈「そうだね」


果林「私は投与されてないわッ!!」ドヤァ


璃奈「……」

232: 2020/12/21(月) 23:06:09.16 ID:2WdtW7w0
璃奈「そう。よかったね」


果林「……」


果林「えっ?……それだけ!?」


璃奈「うん。だって“私たち”は果林さんに薬を投与してるから」


愛「……っ!?私“たち”……!?」

しずく「璃奈さんに協力者がいる……!?」


璃奈「―――この際、バラしてもいいんじゃない?どうせ、その記憶もろとも、同好会のみんなから“あなた”の記憶も消すんでしょ?」

??「……っ!」

璃奈「別れのあいさつくらい、したい気分にもなるんじゃない?」





璃奈「――――――彼方さん?」

243: 2020/12/27(日) 23:12:54.25 ID:Nc59czsi
愛「えっ……」

エマ「彼方ちゃん……!?」

彼方「……」

璃奈「果林さん♪おまんじゅうは美味しかった?」

果林「あっ……」

彼方「……」


彼方「……バラしちまうなんてヒドイぜ~、璃奈ちゃ~ん……」


しずく「彼方さん……!?」

璃奈「え~、だって計画と違うじゃん!準備ができたらスマホで連絡して、って言ったじゃん!いつまで待たせるの!ぷんすか!」

彼方「それはそうだけど~……」

244: 2020/12/27(日) 23:13:31.36 ID:Nc59czsi
果林「あなた、記憶を消さないことに肯定的、って言ってたじゃない……!?」

彼方「そうだね~。私は、記憶を消すことに興味ないね~」

侑「だったらどうして……!?」


彼方「それは『お金になる』からだよ~。多くの人は、記憶を消したがるからね~」


彼方「そうだよね〜?かすみちゃんに、歩夢ちゃんに、しずくちゃん?」

かすみ「う……」

歩夢「それはそうですけど……」

しずく「否定……できません……」

245: 2020/12/27(日) 23:14:30.70 ID:Nc59czsi
彼方「彼方ちゃんは璃奈ちゃんと手を組んで〜、記憶を消せる薬でイッパツ当てようと思ったの~」

彼方「そのために〜、みんなから【薬に関する記憶】と【近江彼方に関する記憶】を消そうと企んだの~」

エマ「そんな……!?彼方ちゃんの記憶を……!?」

かすみ「どうしてですか……!?彼方先輩……!?」


彼方「邪魔だから〜」


しずく「えっ……」

彼方「記憶を消せる薬の商業化に成功したとき、みんなに投与していた、という過去が、とてつもなく邪魔になるの〜」

せつ菜「そんな……」

果林「あなた、それ、本気で言ってるの……?」


彼方「……」

246: 2020/12/27(日) 23:16:02.65 ID:Nc59czsi
彼方「……だから~、みんなとはここでお別れだよ~」


彼方「彼方ちゃんは~、記憶を消せる世紀の催眠術師としての人生を歩むの~!」


しずく「催眠術師……!?」


彼方「ふぅ~はっは~!みんなの記憶を消しちゃうぞ~!」


エマ「か、彼方ちゃん!?」

彼方「私たちを止めようをしてもムダだよ~!例え今ここで装置を壊しても、彼方ちゃんには“料理”があるから~!」

彼方「私には薬の“レシピ”があるから~!例え今ここで璃奈ちゃんが持ってるリモコンを壊してもムダだよ~!」

愛「カナちゃん……!?」

璃奈「そうだね。私たちにはレシピがある。今ここで阻止されても、後でいくらでも量産できる」

璃奈「それに、どんなアクションを起こされても、私がリモコンのボタンを押す方が早い」


彼方「だ・か・ら~!装置を壊そうとしてもムダだよ~!」


彼方「……!」チラッ


愛「……!」

247: 2020/12/27(日) 23:18:02.06 ID:Nc59czsi
愛「……わるいけど!そうさせてもらう!アタシはりなりーを止める!」

彼方「な~に~!?」

璃奈「へぇ~、私を止める……どうやって?」


愛「りなりーに近づいて、その装置を破壊する!」


璃奈「へぇー……どうやって?w」

愛「走る……!」

璃奈「えっ……?ww」


愛「走って近づく!!」


璃奈「無理だよ愛さんwwww20メートルは離れてるのに、電磁波より早く走って近づくなんてwwww」

愛「りなりー!!!!!!!!!!」

璃奈「!?」

248: 2020/12/27(日) 23:18:56.85 ID:Nc59czsi
璃奈「な、何?急に大声を出して……?」


愛「りなりーはカナちゃんのこと知ってたんだ?」


璃奈「知ってた……?何のこと?」

愛「カナちゃんが世紀の催眠術師になろうとしてたこと」

璃奈「いや、それは私も初耳だったけど……」


璃奈「私は彼方さんから、薬の共同開発者になりたい、ってお願いされたよ」

愛「え〜!カナちゃんズルい〜!そのポストは愛さんのものだったのに~!」

彼方「ごめんね〜、愛ちゃ〜ん」


愛「つまり、りなりーはカナちゃんのこと知ってたんだね?」


璃奈「まぁ、ざっくり言ったらそうだね」

愛「そっか……りなりーはカナちゃんのこと知ってたんだ……」

愛「りなりーは……カナちゃんのこと知ってた……」



愛「カナちゃんのこと……『知ってんの~ズリ~な~!』……天王寺璃奈だけに!!」



璃奈「…………はぁ?」

249: 2020/12/27(日) 23:21:36.67 ID:Nc59czsi
愛(りなりーの意識をそらせた!今のうちに……!)ゴクッ



愛(固定概念を外す薬を使う……!)



愛(走ることに関するあらゆる“できない”を……筋力、瞬発力、関節可動、G、空気抵抗……全て外す!!)

愛(耐え ……!!アタシの身体……!!)


愛「……ふぅ~~~~……」グッ…


璃奈「うわ、でた(笑)名前弄りのダジャレ(笑)なぜこのタイミングで(笑)」

彼方「あ、愛ちゃん……!?」

愛「Listen」

璃奈「え?」


愛「今の愛さんは、100メートルを8秒台で走ることができる」


璃奈「は?」

愛「りなりーに見せてあげる!《つながる》の体現を!」


愛「行くよっっっっ!!!!」ダッ


璃奈「っ!?」

250: 2020/12/27(日) 23:23:02.21 ID:Nc59czsi
璃奈(なんてスピード―――!?早くリモコンを―――!!)ポチポチ…


彼方「……♪」



璃奈(――――――効かない!?)



愛「つかまえた♪」ギュッ

璃奈「あ――――――」



カランカラン…



愛「よっと」クルッ



ズサアァ…

253: 2020/12/28(月) 11:33:28.12 ID:W7UsSKdX
歩夢「え……?何が起こったの……!?」

かすみ「愛先輩がつまんないダジャレを言ったかと思ったら……!?」

せつ菜「ものすごいスピードで動いて……璃奈さんを抱きしめて仰向けに横たわってます……!?」


愛「エマっち!リモコンをお願い!」

エマ「えっ?あっ、うん!璃奈ちゃんが落したのだね!」タッタッタ…


果林「けっこう吹っ飛んだわね……?」

侑「愛ちゃん、大丈夫かな……?」

しずく「璃奈さんをキャッチした後、身体を半回転させて、背中で着地しましたね……?」

254: 2020/12/28(月) 12:42:35.87 ID:W7UsSKdX
愛「いたたたた……」

璃奈「……大丈夫?愛さん?」

愛「だいじょ……ばなーい……!リミッター外した反動と着地の衝撃で、もう動けなーい……!」

璃奈「……っていうか、あの薬、使ったんだ……?」

愛「そだねー。使いたくなかったけど……毒を制すのは、結局、毒だねー」

璃奈「毒……」


エマ「愛ちゃん!これ、どうすればいい?」

愛「えっと……フンッ!!ってして!」

エマ「うん、分かったぁ!」バキッ


璃奈「あ〜あ……私のサイエンスが……世界の損失だよ?」

愛「い〜や!世界の損失の損失だね!」

256: 2020/12/28(月) 13:20:08.52 ID:W7UsSKdX
璃奈「で、どうする?とりあえず“今日のところは”装置が使えない」

璃奈「このまま私を確保して……どうする?残念なことに、私はフィジカル最弱。こうやって愛さんにぎゅうってされると成す術がない」

愛「そうだな~……闇のりなりーをこのまま野に放つわけにはいかないし……このままぎゅうってしちゃお♪」ギュッ

璃奈「わ~……まだそんな元気があるのか~……」


彼方「おいっす~、仲睦まじいことで~」

愛「おいっす~」

璃奈「ねぇ彼方さん?リモコンが効かなかったんだけど?何か知らない?」

彼方「え~?知らな~い?」

璃奈「……」

257: 2020/12/28(月) 15:04:28.36 ID:W7UsSKdX
彼方「それより、璃奈ちゃん疲れてない~?彼方ちゃんの“おまんじゅう”食べる~?」

璃奈「……?どういうつもり?“それ”は果林さんに薬を投与するために用意した―――」

璃奈「……!?」


璃奈(果林さんに薬を投与するために用意した、薬入りのおまんじゅう……?それとも、ただのおまんじゅう……?どっち……!?)


彼方「……うふふ~、どうする~?闇の璃奈ちゃ~ん?美味しいよ~?」

璃奈「……」

愛「……!」


愛(そのおまんじゅうは、記憶を消せる薬の解毒成分が入ってる……!?)

愛(カナちゃんは……“どっち”を入れてる……!?)

258: 2020/12/28(月) 15:08:58.80 ID:W7UsSKdX
璃奈「ねぇ、愛さん」

愛「ん?どしたんりなりー?」

璃奈「しずくちゃんたちの記憶を戻した方法は?」

愛「……え?りなりー、カナちゃんから聞いて―――」

彼方「おまん、銃は使っとるがか!?そんなおまんにおまんじゅうちゃあ~!!坂本龍馬の物真似~!!」チラッチラッ

愛「!?」


愛(なんて素晴らしいダジャレなんだ……!?じゃなくて!!)

愛(カナちゃんは……解毒成分を入れてる……!?)


愛「え~っと……叩いて直したよ!」

しずく「そ、そうだよ!ハリセンで頭をえいっ!って叩いたら直ったんだよ!」

せつ菜「そ、そうですね!!けっこう痛かったです!!」

エマ「イエ~!ジャパニーズコメディアンペーパーハンマー!ワタシスキ~!」

歩夢「うんうん!」

果林「そ、そうなのね……?」


かすみ「はぁ?なに言ってるんですか?彼方先輩のおまんじゅうを食べて―――」モゴッ


侑「かすみちゃん!?しぃ~!!」

かすみ「ん~~!?ん~~!?」モゴモゴ

259: 2020/12/28(月) 15:13:43.59 ID:W7UsSKdX
璃奈「……なるほど。ありがとう、かすみちゃん♪」

しずく「あ~あ、かすみさん……」

かすみ「えぇっ!?かすみん、なにかした!?」


璃奈「2つのことが分かったね」


璃奈「1つ目、私がお腹いっぱいなこと♪おまんじゅうはまた今度いただくね♪」

愛「くっ……!」

璃奈「2つ目、彼方さんが優れた催眠術師であること♪もう私の薬は必要ないね♪」

彼方「あ~あ、バレちまったぜ……」

果林「彼方……!?」


愛「……カナちゃん、いつから?」

彼方「う~ん、さっきまで?」

果林「さっき!?ってことは!?」

彼方「ごめんね~、果林ちゃんが食べたのはモノホンだよ~」


果林「ナンテコト……!アァ……ワタシノキオクガキエテク……」


愛「……しずく、ハリセンは?」

しずく「ないです」

260: 2020/12/28(月) 15:18:29.61 ID:W7UsSKdX
彼方「途中までは本気だったよ~。目的の目的は、彼方ちゃんたちに必要だからね~」

エマ「お金……」

彼方「そのために、私は璃奈ちゃんに“解毒方法”を教えなかったんだ~。さっきまでの時点で、毒と解毒をセットで使えるのは、彼方ちゃんだけだったからね~」

璃奈「……」

彼方「みんな、優秀だから~。ここを突破できたら、この先もなんとかなるかな~、とか思ってたよ~」


彼方「でも、やめた~。彼方ちゃんがやろうとしてたことには、対抗勢力が現れるの~。愛ちゃんたちみたいなね~」


愛「カナちゃん……」

彼方「改めて実感したよ~。この薬が、未来を先取りしすぎたシロモノだってね~」

261: 2020/12/28(月) 17:38:13.79 ID:W7UsSKdX
果林「やっぱりね」

彼方「どうしたの~?果林ちゃん?」

果林「妙だな、って思ったから。あなたの言動が」

彼方「おまいう~。ちなみにどの辺が~?」

果林「あなたはあまり自己顕示欲が高くないから、世紀の催眠術師なんて名乗るより、もっと地味な方法を選ぶはず、って思ったわ」

彼方「地味って……堅実って言ってよ〜!」

果林「そうね、そうとも言うわね」


彼方「みんな、ごめんね〜。彼方ちゃんのことは嫌いになっても、遥ちゃんのことは嫌いにならないでね~」


かすみ「いや、なりませんから……」

しずく「むしろ、彼方さんが脅威じゃなくて安心しました」

せつ菜「彼方さんが本気で記憶を消せる薬を活用したら、私たち、成す術がありませんから」

愛「お料理上手属性とのシナジーがハンパないんだよね〜」

262: 2020/12/28(月) 17:46:46.29 ID:W7UsSKdX
璃奈「あ~あ、孤立無援になっちゃった。どうしよう」

璃奈「愛さんはどうするつもり?っていうか、そろそろ放してくれない?」

愛「……」

璃奈「愛さん?」

愛「……あー、準備が整ったみたい。この体勢、もう少し我慢してね」

璃奈「……準備?何の?」


愛「今から薬を永久凍結するの。その準備だよ」


璃奈「え?永久凍結?どういうこと?」


愛「薬の効果を無効化する《方法》があるの。今からそれをアタシたちに作用させるから」

263: 2020/12/28(月) 17:55:22.69 ID:W7UsSKdX
璃奈「え?私たち、って……」

愛「うん。りなりーにも作用させるし、愛さんにも作用させる。もちろん、同好会のみんなにも」

愛「だから、この体勢は都合がいいの。このまま一緒にいようね♪」

璃奈「え……」


璃奈「永久凍結……?装置を作り直せばまだ使えるのに―――」


愛「というわけで、おねが〜い!!」

璃奈「!?」



??「了解です!愛先輩!」

??「璃奈、私たちが助けに来たよ!」

??「だって私たち、友だちだもんね!」



せつ菜「あなたたちは……!」

264: 2020/12/28(月) 18:05:15.00 ID:W7UsSKdX
今日子「こんにちは!同好会のみなさん!あ!歩夢ちゃん!こんにちは!」

歩夢「こ、こんにちは!えっと、どうしてここに?」

色葉「愛先輩に頼まれました!」

浅希「璃奈のピンチに、私たちが役立つそうです!」


色葉「……って愛先輩!?なんで力を使い果たした主人公みたいに横たわってるんですか!?」

浅希「……って璃奈!?なんでそんな愛先輩に抱っこされてるの!?」


璃奈「…………」


今日子「お〜い、璃奈ちゃ〜ん……?」


璃奈(誰……?クラスにいたような、いなかったような……?)

璃奈(名前もあやふやな、その他大勢の“モブ”たち……)

265: 2020/12/28(月) 18:17:30.01 ID:W7UsSKdX
璃奈「ねぇ、愛さん?彼女たちが、薬を永久凍結するための準備?」

愛「……」

璃奈「愛さん?」

愛「そうだね。ちょっと痛いかもしれないから、我慢してね」


璃奈「痛い、って……まさか―――!?」


愛「よし!さっそく始めるよ!色葉からお願い!」


色葉「はわわ~!愛先輩直々のレスポンス……!」

浅希「いいから始めるよ」

色葉「う、うん。じゃあ……!!」

266: 2020/12/28(月) 18:24:28.58 ID:W7UsSKdX
 
色葉「いろはにほへと ちりぬるを」

浅希「わかよたれそ つねならむ」

愛「うゐのおくやま けふこえて」

今日子「あさきゆめみし ゑひもせす」

267: 2020/12/28(月) 18:32:15.21 ID:W7UsSKdX
璃奈「な……何……!?」

愛「いろは歌だよ」

璃奈「いや、それは分かるけど―――」


璃奈「……っ!?」ズキッ


愛「効果があったみたいだね」

璃奈「どうなってるの……?どうして痛みが……!?」

愛「その痛みは、記憶を取り戻す代償だよ」


愛「いろは歌によって、芋づる式に、りなりーの記憶を引き摺り出したの」


璃奈「そんなことが……!?」



愛「できるの。いろは歌は、絶対に消せない記憶で―――《哲学》だから」



璃奈「哲学……!?」

愛「哲学の記憶は消せないの」

愛「そもそも、哲学の記憶を消すという事象は成立しない」


愛「だから消せないし、仮に消せてしまったら、人間がバグる」


色葉「いろは歌の特異性は《仮名が重複しない》完全パングラムであることだよ」

今日子「そして、ことばで表現できる歌である、という陳述記憶的な側面を有し」

浅希「主に初等教育において、仮名を覚えるための非陳述記憶として用いられるよ」


愛「つまり、いろは歌は忘れられない」

268: 2020/12/28(月) 18:40:10.12 ID:W7UsSKdX
かすみ「え……?そうなんですか……!?」

しずく「もしかして、かすみさん……!?」


かすみ「うっ……!?全部暗唱できないかも……」


愛「でも、いろは歌のことは覚えてるよね?いつ習った?」

かすみ「えっと、国語の授業で……」

愛「うん、覚えてる!それが陳述記憶で……」


愛「いろはにほへと?」

かすみ「……ちりぬるを?でしたっけ?」

愛「ほら!覚えてる!それが非陳述記憶!」


色葉「そして、いろは歌はひとつの歌であると同時に、いろは歌という体系だよ」

今日子「《仮名が重複しない》歌であれば、それはいろは歌とみなすことができる」

浅希「これが、いろは歌の最も哲学な性質だよ」

269: 2020/12/28(月) 18:45:02.60 ID:W7UsSKdX
愛「……これが、愛さんの仮説。りなりー、効いてる?」


璃奈「うっ……!」ズキッ


色葉「璃奈ちゃん覚えてる?私たちが仲良くなった頃」

今日子「私たちの呼び名を決めよう、って話したよね」

浅希「そのとき、いろは歌を話題にしたのは、璃奈だったよ」


璃奈「……!」

270: 2020/12/28(月) 18:53:25.48 ID:W7UsSKdX
ーーーーーーーーー
教室
璃奈「色葉ちゃん、今日子ちゃん、浅希ちゃん……まるでいろは歌だね」

色葉「うげっ!?国語の話題……!?」

璃奈「色葉ちゃん、苦手なの?」

色葉「う~ん、得意と言えば、ウソになる!」

璃奈「そうなんだ。私も苦手。同じだね」

色葉「璃奈ちゃ~ん……!」

浅希「2人とも、国語のテスト対策なら、私に任せてね!」

今日子「わ、私も……!国語だったら、自信あるかも!」

浅希「だから、2人は私たちに情報基礎を教えてね!」

璃奈「おっけー」

色葉「おけまる〜」


今日子「三人寄ればもんじゃの知恵だね!」


璃奈「え?」

浅希「四人ならもっとすごい知恵を出せるね!」

色葉「私たち最強卍卍卍卍」

璃奈「……」


璃奈「ちなみに、前回の国語のテストはどうだった?私は68点」

色葉「57点……」

今日子「ななじゅう……さんてん……」

浅希「77点だよ?」


璃奈「……」

ーーーーーーーーー

271: 2020/12/28(月) 19:03:34.99 ID:W7UsSKdX
璃奈「……そうだ、思い出した」


璃奈「あのとき、国語のことならしずくちゃんに聞いた方がいいかも、って思ったんだ」


色葉・今日子・浅希「璃奈ちゃ〜ん……」

しずく「あはは……」


愛「思い出したみたいだね?何か言うことはある?」


璃奈「ごめんなさい」


歩夢「璃奈ちゃんが謝ることないよ。私たち、自分の意思で薬を使ったから」

果林「私は違うけどね」

エマ「果林ちゃん……怒ってる?」

果林「お……怒ってないわよ!!」

272: 2020/12/28(月) 19:10:45.69 ID:W7UsSKdX
侑「それに、璃奈ちゃんが薬を作った理由、私たち分かるから」

せつ菜「分かるからこそ、私たちは璃奈さんを責められません」

しずく「私たちは気付けなかった、ということですから」

かすみ「ごめんね、りな子」

愛「そうだね。ごめんね、りなりー」


璃奈「みんな……」


璃奈「愛さんが表現した“闇のりなりー”はほとんど正しくて、アレは、スクールアイドルに出会う前の私の感情が暴走したものだった」


璃奈「だから、きちんと謝る。仲間として、必要な禊だから」

璃奈「みんなの気持ちを扇動して、ごめんなさい」

273: 2020/12/28(月) 19:14:43.05 ID:W7UsSKdX
愛「今回の件でよ~く分かったね!同好会のみんなが、記憶を消せる薬をどう使うのか!」


しずく「自分の苦しい記憶を消す人」

エマ「自分の恥ずかしい記憶を消す人」

せつ菜「自分の大好きなことを再体験する人」

かすみ「あ……悪用する人……」

歩夢「他人に使う人」

侑「他人に使われる人」

果林「使わない人」

彼方「多くの人に使わせる人」


愛「そして、それを作り出せる人」

274: 2020/12/28(月) 19:19:53.52 ID:W7UsSKdX
愛「個性バラバラ軍団のアタシたちだからこそ採取できた貴重な実験データ!」


愛「だから、この薬は永久凍結する!この薬は、使われない方がいい!」


愛「みんなもそう思うよね?」

しずく「……そうですね」

エマ「そうだね」

せつ菜「そうですね!」

歩夢「うん!」

果林「そうね」

かすみ「え~、かすみんは使―――」モゴッ

侑「かすみちゃん!?しっ~!!」

275: 2020/12/28(月) 19:28:31.36 ID:W7UsSKdX
彼方「しずくちゃんと、かすみちゃんが腑に落ちない気持ち、よく分かるよ〜」

彼方「でも、彼方ちゃんみたいな考えの人は、きっと、いっぱいいて、そして、それはとっても危険なの~」


彼方「争いが起きるから。記憶の消し合いが起きるから。何もかもが、消えるから」


彼方「だからこそ、彼方ちゃんが強く決断する必要があるんだ~。この薬が引き起こす戦禍を発生させないためにね~」


彼方「お願い、璃奈ちゃん。記憶を消せる薬を、消してほしい」

璃奈「そうだね」



璃奈「薬と装置を、虚無にする。誰も、記憶を消せないように」




璃奈(それに――――――)

 


276: 2020/12/28(月) 19:41:53.70 ID:W7UsSKdX
璃奈(今、思い出したけど、記憶を消す前の私は、薬の“解毒方法”を知ってた)


璃奈(愛さんの仮説通り、《哲学》は、記憶を戻すために有効)

璃奈(それは《スクールアイドル》も同様で、それが私の記憶を戻すためのトリガーになるはずだった―――)





璃奈(他人の夢をかなえてくれる存在である、という《アイドル》の特異な性質)

璃奈(高校生である、という《スクール》の特異な性質)

璃奈(この特異性は、リミットがあることと、ナチュラルでないことを含んでいて)


璃奈(《スクール》を形容的に解釈すれば、《スクールアイドル》の特記事項のひとつは―――)



璃奈(子どものときの夢を代わりにかなえてくれる存在)



璃奈(陳述記憶を含み、非陳述記憶を含み、特異性がある。スクールアイドルは【記憶を消すこと】に特効性のある《哲学》に成り得る)





璃奈(それを知ってて、私は薬を使ったのに――――――)


 


277: 2020/12/28(月) 19:46:26.66 ID:W7UsSKdX
愛「これで、過去と今のりなりーの記憶を、いろは歌によってつなげることができたね!」

愛「そして今から、今と未来のみんなの記憶を、いろは歌によってつなげるよ!」


愛「これで、私たちは記憶を消せる薬が効かなくなる!」


せつ菜「どういう仕組みですか?」


愛「いろは歌で《空》を表現する!」


愛「ちょうど、この屋上から十分に見渡せるね!」

彼方「う~ん!100億ドル!」

歩夢「きれいだね~!侑ちゃん!」

侑「そうだね~!歩夢!」


愛「いろは歌に《空》の情報を組み込む。アタシたちは、記憶が消えても、《空》というトリガーによって、今の状況を思い出せるようになる!」


果林「空が“とりがぁ”になるなら、記憶を消せる薬は太刀打ちができないわね」

エマ「果林ちゃん、“trigger”だよ♪リピートアフターミー、trigger♪」

果林「ト……とりがぁ」

しずく「いろは歌で空を表現する……かすみさんでも忘れられないんだもん、私たち全員が忘れられないね!」

かすみ「ちょっ!?それってどういう意味……!!」

278: 2020/12/28(月) 19:56:50.50 ID:W7UsSKdX
璃奈「いろは歌で空を表現する……」

愛「……りなりー、いい?」

璃奈「……それってつまり、空を見るたびに私たちのことを思い出せる、ってこと?」

愛「え?う~ん、そうなるのかな?そうかも!」

璃奈「そうなんだ……?それって―――」


璃奈「素敵だね」


璃奈「愛さん、お願い」

愛「おっけー!じゃあ……詠うね!」

279: 2020/12/28(月) 19:59:51.85 ID:W7UsSKdX
ほしのうみ あまかける ゆめふねよ

わすれえぬ せつなきおもいを

ちりはてやむころに ひとそらへ たくさん





(引用 現代いろは歌 http://www.ntt-i.net/IROHA/IROHA.html

280: 2020/12/28(月) 20:04:48.20 ID:W7UsSKdX
翌日
璃奈「記憶を消せるクスリをつくったよ!璃奈ちゃんボード『むんっ』」

愛「り、りなりー!?」

彼方「おいおい~……話が違うじゃないか璃奈ちゃ~ん……」


色葉「あ、同好会のみなさん、お揃いですね!差し入れですよ~!」


エマ「くんくん……わぁ~!美味しそうな香り~!」

今日子「どうぞ召し上がってください!あ!歩夢ちゃん!こんにちは!」

歩夢「こんにちは♪」

せつ菜「4人ともエプロン姿、ということは……!」


璃奈「焼き菓子同好会のみんなと一緒に、クッキーを焼いたの」

281: 2020/12/28(月) 20:09:08.43 ID:W7UsSKdX
果林「美味しそう……!」

侑「わぁ~!ときめいちゃうなぁ~!」

浅希「焼き菓子同好会は広く門戸を開いてますよ~!みなさんもどうですか~?」

色葉「と・く・に!彼方先輩!スカウトしちゃってもいいですか~!?」

彼方「うふふ~!スペシャル顧問に任命してくれたまえ~!」

かすみ「かっ!?かすみんだってスペシャル顧問くらいできますけどっ!?」

しずく「じゃあ今度一緒に作ろうね!」


ワイワイ…


璃奈「はい、愛さんの分」

愛「……!」

璃奈「記憶がぶっ飛んじゃうくらい美味しいよ。だって……私たちの自信作だから!」

愛「りなりー……!」



愛「いただきます!!」





おわり

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1606545227/

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