【SS】しずく「私、かすみさんと叶えたい夢がたくさんあるの」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: 2021/03/13(土) 13:35:05.83 ID:pswbUDEb
しずかすSSです

3: 2021/03/13(土) 13:36:42.07 ID:pswbUDEb
しずく「なかなか髪型がうまく決まらない…うーんと…」

ピロン

こんな朝早くからメッセージ?

かすみ(今日はちゃんと起きれたよ!)

えらいけど毎日ちゃんと起きて欲しいな…。

しずく(ちゃんと起きれたね。えらい!えらいよかすみさん!)

かすみ(絶対からかってるでしょ!かすみんにはお見通しなんだからね!)

しずく(一応思ってること言ってるよ?)

かすみ(一応ってなに?!)

かすみさんと喋ってるとついからかいたくなっちゃう。

璃奈さんと話してる時はそんなこと思わないのに。

5: 2021/03/13(土) 13:41:20.53 ID:pswbUDEb
かすみ(ともかく、今日はしず子より早く行くからね!)

しずく(どこに?)

かすみ(待ち合わせ場所に決まってんじゃん!)

かすみ(しず子最近かすみんにあたり強くない??)

しずく(そうかな?)

かすみ(そうだよ!)

しずく(じゃあもうかすみさんと関わらないからねっ!)

かすみ(なんでそうなるの!)

しずく(というか、こんなやりとりしてたら私が先に着いちゃうよ?)

かすみ(あ、今日はかすみんが先だからね!)

…でもなんでこんな気持ちになるんだろう?

7: 2021/03/13(土) 13:46:08.98 ID:pswbUDEb
待ち合わせ場所

かすみ「なんでしず子の方が早いの?!」

しずく「かすみさんが遅いだけだよ」

かすみ「やっぱりあたり強いよっ!」

しずく「そんなに大声で言わなくてもいいのに…」

かすみ「全部しず子が悪いんだからね!」

しずく「……」グスン

かすみ「なんで泣くのー!」

かすみ「うぅ…なんかごめんなさい…」

8: 2021/03/13(土) 13:51:23.39 ID:pswbUDEb
しずく「…ふふっ」

かすみ「あー!嘘泣きじゃん!またからかったの?!」ポムポム

しずく「ごめんってば」

かすみ「絶対本気で謝ってないでしょ!」

かすみ「もう!しず子なんて置いていくからね!」

しずく「あ、待ってよかすみさん!」

かすみ「ベーっ!」

…ちょっとやりすぎちゃったかな。

9: 2021/03/13(土) 13:56:14.22 ID:pswbUDEb
お昼休み

しずく「かすみさん、まだかな…」

10分くらい待ってるのに全然来ない。

かすみ「しず子ごめんね!」

しずく「もう!遅いよかすみさん!」

かすみ「あぅ…本当にごめんなさい…」

しずく「あ、えーっとごめんね、急に大声出して」

かすみ「……………うん」

しずく「ご飯食べよ?」

かすみ「うん…」

今日はあんまり会話が弾まなかった。

大声で叫んだりしちゃって…私、体調悪いのかな。

10: 2021/03/13(土) 14:01:30.48 ID:pswbUDEb
放課後

今日は同好会も演劇部もお休み。

たまには1人でゆっくり帰ろうかな。

ピロン

かすみ(今日一緒に帰ってもいい~?)

しずく(ごめんね、今日は1人で帰ってもいい?)

かすみ(せっかく同好会の練習もないのに…)

かすみ(じゃあかすみんはりな子と一緒に遊んでくるね!)

…なぜか胸がもやもやする。

しずく(やっぱり私も行っていい?)

既読がついたけど…返信が来ない。

かすみ(別にいいよ)

5分くらい経って返信がくる。

やけに棘のある文章。別にってどう言うことだろう?

11: 2021/03/13(土) 14:06:23.79 ID:pswbUDEb
しずく「待たせちゃってごめんなさい!」

璃奈「あ、しずくちゃん」

かすみ「…全然待ってないから大丈夫だよ」

ちょっと不満げな顔をするかすみさん。

しずく「ほんとにごめんね?」

かすみ「別にいいし…」

璃奈「かすみちゃん、今日はどこ行くの?」

かすみ「えーっと…どこ行こうかな」

かすみ「今日はジョイポリで遊ぼっ!」

さっきとは打って変わって太陽のような笑顔を見せる。

璃奈「分かった。璃奈ちゃんボード『ワクワク』!」

かすみ「じゃああそこまで競争ね!」

璃奈「しずくちゃんも行こ?かすみちゃんに置いてかれちゃうよ」

しずく「うん…」

璃奈「どうしたの?」

しずく「なんでもないよ、早く行かないとね」

璃奈「うん!」

やっぱり朝のこと引きずってるよね…

私もやりすぎたと思うし謝らないと。

12: 2021/03/13(土) 14:11:08.33 ID:pswbUDEb
璃奈「遊びすぎて疲れちゃった…璃奈ちゃんボード『ヘトヘト』」

かすみ「じゃあ今日はここで終わりにする?」

璃奈「もっと遊びたかったのに…」

かすみ「休むのもスクールアイドルの仕事だよ、りな子!」

璃奈「わかった。じゃあまた明日」

かすみ「うん!またねー!」

かすみ「……」

しずく「…………」

しずく「あの…かすみさん」

かすみ「…なに?」

しずく「ええっと」

かすみ「もういいよ…」

しずく「え?」

かすみ「もういいってば!!!」

14: 2021/03/13(土) 14:16:15.04 ID:pswbUDEb
しずく「っ!」

かすみ「最近かすみんにあたり強かったりさ!」

かすみ「今日のお昼休みだってすごい大声で怒ったり!」

かすみ「りな子と一緒に遊ぶって言った瞬間ついてきたりさ!」

かすみ「かすみんが嫌いって言うなら直接言ってよ!!」

かすみ「うぅ…うぅ…」グスン

しずく「違うのかすみさん、」

かすみ「何が違うの?!ねぇ!説明してよ!!」

かすみさんの顔が涙で溢れている。

しずく「嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど…」

しずく「……………」

うまく説明できない。自分の気持ちが分からない。

かすみ「ふん!もうしず子とは友達じゃないから!」

かすみさんは私から逃げるように去っていく。

しずく「あ、待って…」

しずく「待って…………」

世界がモノクロに染まっていく。

15: 2021/03/13(土) 14:21:21.40 ID:pswbUDEb
しずく「……あれ…」

しずく「…ここは…」

目を開けると大きなパソコンがある部屋で寝ていた。

ジョイポリスでかすみさんと別れて以来、記憶が飛んでいる。

璃奈「あ、しずくちゃん起きたんだね」

しずく「璃奈さん?」

しずく「なんで私はここに?」

璃奈「私がダイバーシティで買い物してたら、フードコートにしずくちゃんが1人でいたよ」

しずく「フードコート?」

璃奈「うん。覚えてないの?」

しずく「うん…」

17: 2021/03/13(土) 14:26:10.76 ID:pswbUDEb
璃奈「私が話しかけたらいきなり『ごめんなさい』って何回も言い始めたから私の家まで連れてきた」

しずく「そうなんだ…」

璃奈「どうしちゃったの?」

璃奈「もしかしてかすみちゃんと喧嘩しちゃった?」

しずく「喧嘩というより…」グスン

久しぶりに本当の涙を流した気がする。

璃奈「私が助けられること?」

璃奈さんを巻き込む訳にはいかない。かすみさんと璃奈さんの仲を壊したくない。

しずく「これは私の問題だから、私が頑張ってかいけ」

璃奈「私たち、友達でしょ?」

璃奈「友達なんだから頼ってもいいよ」

『もう友達じゃないから!』

しずく「はぁ…はぁ…はぁ…」

かすみさんの言葉が脳裏をよぎる。

胸が苦しくなって過呼吸気味になってしまう。

18: 2021/03/13(土) 14:31:34.50 ID:pswbUDEb
ムギュッ

しずく「…璃奈さん?」

璃奈さんは彼女の小さな体で私を包む。

璃奈「こうやると心が落ち着くんだって」

しずく「…………」

しずく「うぅ…」グスン

本当に私って最低の人だ。自分から問題を起こしておいて人に頼ろうとするなんて…

璃奈さんの心の暖かさと自身の不甲斐なさに挟まれて涙が止まらない。

璃奈「今日はもう遅いし、しずくちゃんが良いなら私の家に泊まっていいよ」

しずく「…そこまでしなくても大丈夫だよ」

璃奈「結構遅い時間だけど大丈夫?」

スマホのロック画面は21時直前だと言うことを私に教えてくれる。

しずく「もうこんな時間なんだ…」

しずく「じゃあお願いしてもいい?」

璃奈「わかった。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

璃奈さんといれば心が救われるかもしれない、そんな淡い希望を込めて。

19: 2021/03/13(土) 14:36:32.41 ID:pswbUDEb
璃奈「サイズ間違えて買っちゃったパジャマ、残しておいてよかった」

しずく「パジャマまで用意してくれるなんて…」

璃奈「本当にたまたまだから大丈夫」

璃奈「もう夜遅いし、早く寝よう」

しずく「私は椅子で寝ていいかな?」

璃奈「ベッドが1つしかなかったの忘れてた…璃奈ちゃんボード『はわわ』」

璃奈「…でも私の身体大きくないからしずくちゃんと一緒に寝れると思う」

しずく「流石に申し訳ないよ…」

璃奈「遠慮はなしだよ」グィッ

しずく「わぁ!璃奈さん?!」

璃奈さんの白くて綺麗な肌がすぐそこまで迫る。

21: 2021/03/13(土) 14:41:29.20 ID:pswbUDEb
璃奈「…いきなりごめんね」

しずく「私は大丈夫だけど…」

璃奈「夜になると寂しい気持ちになるから…もっとしずくちゃんと一緒にいたいって思って」

璃奈「泊まるってしずくちゃんが言ってくれた時、嬉しかった」

璃奈さんって意外と子供っぽい部分があるんだ。

しずく「私なんかでいいの?」

璃奈「うん」

そう言うと璃奈さんは彼女の顔を私の胸にうずめる。

しずく「……」

私がかすみさんと過ごしたい時間はこういうものだったのに…。

本当に私って…。

璃奈「しずくちゃんの鼓動、早くなってる」

璃奈「やっぱり不安だよね」

22: 2021/03/13(土) 14:46:05.53 ID:pswbUDEb
しずく「ごめんなさい、せっかく璃奈さんが色々としてくれたのに…」

璃奈「私は全然大丈夫だよ」

璃奈「こうやって一緒に過ごせるだけでも嬉しいから」

しずく「璃奈さん…」

何か…私も…言葉で璃奈さんに何かお返ししたいな。

しずく「璃奈さんもやっぱり悩み事とかあるの?」

璃奈「……もちろん、あるよ」

しずく「良かったら聞かせて欲しいな」

しずく「今度は…私が聞いてあげる番、だから」

璃奈「しずくちゃん…」

23: 2021/03/13(土) 14:51:33.29 ID:pswbUDEb
璃奈「私は…私はやっぱりボードを使わないで笑顔でみんなとお話ししたい」

璃奈「同好会のみんなのおかげでボードは私の大切な個性になれた」

璃奈「でも…みんなの表情を見ながら会話してみたいって最近は思う」

璃奈「ボードがあると…みんなの顔がわからないから…」

璃奈「いつも鏡をみて笑顔の練習してるけど、やっぱり難しい」

璃奈さんは璃奈さんなりにすごい努力をしているんだ…誰にも知らない場所で…。

璃奈「どうして泣いてるの?」

しずく「…え?あ、ほんとだ…」

あまりにもひたむきで、純粋で、心が暖かくなるお話だったからかな。

璃奈「やっぱりしずくちゃんは優しいね」

しずく「…そんなことないよ」

しずく「今日は私のせいでかすみさんと…」グスン

璃奈「しずくちゃん、とりあえずもう寝よう」

璃奈「明日からゆっくり解決していこ」

しずく「うん…」

涙を流したからか、急にまぶたが重くなる。

小さい何かが私の頭を撫でる感覚を最後に、意識が途絶える。

25: 2021/03/13(土) 14:56:19.10 ID:pswbUDEb
しずく「昨日は本当にありがとう」

璃奈「私も久しぶりに夜を人と過ごせて嬉しかった。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

璃奈「…かすみちゃんのこと、早く解決できるといいね」

しずく「うん…」

璃奈「同好会のみんなも相談に乗ってくれると思う。みんなを頼ってね」

しずく「できるだけ沢山の人に相談したほうがいいかな…」

璃奈「した方がいいとは思うけど、しずくちゃんが苦しくなっちゃうのならやめておいてもいいと思う」

私はどんなに苦しくなってもいい。

1番苦しんでいるのはかすみさんのはずなんだから。

しずく「ありがとう。同好会の皆さんを頼ってみるね!」

しずく「本当にありがとう。おじゃましま」

璃奈「しずくちゃん、待って」

しずく「どうしたの?」

26: 2021/03/13(土) 14:57:27.61 ID:pswbUDEb
友人にAPEX誘われたので一旦投下はお休みします
夜の10時ごろに再開できると思うのでその時はまたよろしくお願いします
支援レス本当にありがとうございます!

29: 2021/03/13(土) 22:01:36.50 ID:pswbUDEb
しずく「どうしたの?」

璃奈「…私の悩みを聞いてくれて、ありがとう」

璃奈「それで…」

璃奈「まだまだ練習の途中だけど…笑顔の練習の成果、しずくちゃんに見せてもいい?」

しずく「っ!」

しずく「…もちろん!璃奈さんの全力の笑顔、みてみたいな」

璃奈「じゃあ、いくよ」

璃奈「……」ニコッ

璃奈さんを知らない人から見れば無表情にも近い顔って思われるかもしれないけれど…

私には分かる。

その顔は…

しずく「最高の笑顔だよ。璃奈さん!」

まだなにも解決してないけれど、ほんの少しだけ世界に色がついた気がする。

30: 2021/03/13(土) 22:06:17.35 ID:pswbUDEb
放課後

今日は同好会も演劇部もお休み。

今の状況に背を向けてはいけないよね。

誰に相談してみようかな…。

ピロン

スマホの通知が鳴る。

侑(しずくちゃん、今日会える?)

侑さんからだ。

しずく(はい。今日は演劇部もお休みなので大丈夫です)

侑(じゃああのおっきいロボットのところで待ってるね)

しずく(わかりました)

今日、侑さんに相談できるかな。

31: 2021/03/13(土) 22:11:08.01 ID:pswbUDEb
しずく「お待たせしました!」

今日の大きいロボットは何色にも光っていない。

侑「あ、しずくちゃん」

しずく「歩夢さんも一緒なんですね」

歩夢「うん…」

この雰囲気…かすみさんのことかな。

でも昨日の今日でどうして分かったんだろう。

侑「とりあえず、スタバ行こっか」

しずく「…はい」

32: 2021/03/13(土) 22:16:04.14 ID:pswbUDEb
歩夢「侑ちゃん!大学芋フラペチーノすっごく美味しいよ!」

侑「ほんと?一口ちょうだい!」

侑「うまっ!もう一口いい?」

歩夢「侑ちゃんったら…はい、あーん」

侑「あーん!」

侑「んん~!ほんっと美味しい!」

この2人の距離感は本当に憧れる。

幸せが詰まっているというか…見ている方も幸せになる感覚。

33: 2021/03/13(土) 22:21:31.58 ID:pswbUDEb
歩夢「しずくちゃんもいる?」

しずく「いえ、私は大丈夫です」

歩夢「遠慮しなくていいんだよ?はい、あーん」

侑「どうせ歩夢一人じゃ飲み切れないんだし遠慮なくもらっていいよ!」

歩夢「スタイル維持のためだよ侑ちゃん!」プクー

侑「トールサイズでも飲みきれない歩夢!ほんとにかわいいなぁ~!」

歩夢「もう!煽てないでよ~!」

歩夢「ほら、しずくちゃん!あーん!」

しずく「あーん…」

シロップの甘い味が口に広がる。

34: 2021/03/13(土) 22:29:15.34 ID:pswbUDEb
しずく「っ!おいしい…」

歩夢「もう一口いる?」

しずく「ではお言葉に甘えて…」パクッ

しずく「本当に美味しいです!」

自然と笑みが溢れる。

歩夢「うん!やっぱりしずくちゃんは笑顔が似合うよ」

はっ、と我に返る。

こんなことをしている場合ではない。

侑&歩夢「…………」

歩夢「そんな暗い顔しないで。悩み事があるなら私たちに話してみて?」

35: 2021/03/13(土) 22:34:16.48 ID:pswbUDEb
侑「…かすみちゃんと何かあったの?」

歩夢「侑ちゃん…」

しずく「どうして知ってるんですか?」

侑「璃奈ちゃんがメッセージくれたんだ。『しずくちゃんを助けてあげて』って」

璃奈さん…もう頭が上がらないよ。

侑「話すのは辛いと思うけど…」

侑「もしかしたら私たちが力になれるかもしれないからさ」

36: 2021/03/13(土) 22:39:42.20 ID:pswbUDEb
しずく「……」

しずく「私は…私がかすみさんに向ける気持ちが分からないんです」

しずく「璃奈さんや侑さん、歩夢さんたち、同好会のみなさんに向ける感情とは明らかに違うことは理解できています」

歩夢「それって、かすみちゃんのことが嫌いって言うこと?」

しずく「…嫌い、と言う感情ではないと思います」

しずく「お友達として一緒にいることが幸せでしたし、これからもそうでありたいと願っていました」

しずく「それこそ、今の侑さんと歩夢さんのような関係を築きたいと今でも思っています」

しずく「…でも、私がかすみさんに向けて起こした行動は…その願いとは真逆の行動で…」

しずく「過度ないたずらをしてしまったり、嘘をついてしまったり…」

しずく「自分が何者なのか、何がしたいのか、もう分からないんです」

37: 2021/03/13(土) 22:44:29.41 ID:pswbUDEb
侑「…………」

歩夢「…………」

しずく「私は、かすみさんと仲良くなりたいのでしょうか。それとも、歩夢さんが言ったように、私はかすみさんのことを心のどこかで嫌っているのでしょうか…?」

侑「しずくちゃん、それは違うよ」

侑さんは私の心を射抜くようなまっすぐな瞳を私に向ける。

侑「しずくちゃんはかすみちゃんのことを嫌いになっていないよ。絶対」

しずく「絶対…ですか?」

侑「だってさ」

38: 2021/03/13(土) 22:49:43.55 ID:pswbUDEb
侑「1人の人をそこまで想うことができるなんて、嫌いだったらそんなことできないよ」ニコッ

しずく「そう言うものなのでしょうか…?」

侑「うん!そうだよね?歩夢?」

歩夢「う、うん…///」

歩夢「侑ちゃんの言う通り、そこまでかすみちゃんを想えているのなら嫌いっていう気持ちじゃないと思う」

しずく「…では私がかすみさんに抱いているこの気持ちはなんですか?」

歩夢「それはゆっくりと探していけばいいと思うよ」

歩夢「しずくちゃんが抱くその気持ちは決して悪い気持ちじゃないんだから」

しずく「でも…急がないとかすみさんがどんどん遠くに行ってしまう気がして怖いんです」

歩夢「大丈夫。かすみちゃんはきっと待ってくれているはずだよ」

しずく「きっと…?でもそんな…」

そんなことあるわけがない。もう友達としてみられていないのだから。

39: 2021/03/13(土) 22:55:21.07 ID:pswbUDEb
歩夢「そんなわけない、なんて思っちゃいけないよ?」

歩夢「しずくちゃんは真面目だから重く捉えちゃう部分もあるけれど、私にはわかるよ」

歩夢「かすみちゃんは絶対にしずくちゃんのことを待っててくれてるから」

まるで歩夢さん自身がそのような体験をした、とでも言うような口調で言葉を紡ぐ。

しずく「…もしそうだったとしても、私にはかすみさんを待たせる資格があるのでしょうか」

侑「資格だなんて…そんなに重く捉えなくてもいいと思うけどなぁ」

歩夢「しずくちゃんの気持ちはすごくわかるよ」

侑「…歩夢……」

歩夢「でも闇雲に走ってもかすみちゃんはみつからないよ?」

歩夢「一歩づつ、ね?」ニコッ

しずく「一歩ずつ…ですか…?」

歩夢「心配しないで。私とか侑ちゃん、同好会のみんなが道を照らしてあげるからね」ニコッ

侑「そうだね。私たちはいつもしずくちゃんのそばにいるよ」ニコッ

歩夢さんの温かい…満開の桜のような笑顔と、侑さんの全てを包み込む夜空のような笑顔。

しずく「…あ…ありがとう…ございます」グスン

侑「泣いてるの?!」

歩夢「ごめんね!何か変なこと言っちゃったかな?!」

しずく「いえ、違うんです」

私は心の底から思う。

しずく「お二人と出会うことができて、本当に良かったです」

40: 2021/03/13(土) 23:15:20.85 ID:pswbUDEb
侑「あ、もうこんな時間なんだ!そろそろ帰ろうかなー」
 
あの後、私たちはダイバーシティの中をぐるりとみて回った。

そういえばかすみさんの髪飾りはここで買ったんだっけ。

…あの時の私の感情はどんな感情だったんだろう。

歩夢「そうだね、結構遅くなっちゃったね」

しずく「今日は本当にありがとうございました」

歩夢「全然大丈夫だよ。元気なしずくちゃんをみれて私たちも嬉しかった」

侑「やっぱりしずくちゃんは笑顔が一番似合うからね!」

42: 2021/03/13(土) 23:23:20.26 ID:pswbUDEb
侑「そういえば、同好会はどうする?少しだけ休む?」

歩夢「かすみちゃんと一緒にいてもお互い気まずいよね…」

かすみさんの大好きな場所を、私がいることで大嫌いな場所になってしまってはダメだ。

本当は同好会に行きたいけれど…かすみさんに苦い顔をさせるわけにはいかない。

しずく「そうですね…少しお休みをいただいてもいいですか?」

侑「りょーかい!」

侑「じゃあ、がんばってね!」

しずく「はい!ありがとうございますっ!」

世界がまた少し、彩られるような感覚になる。

43: 2021/03/13(土) 23:44:28.47 ID:pswbUDEb
『もう友達じゃないから』

『最近───』

『なんでかすみんにだけ───!』

違うの、そうじゃないの。

私が思い描いていたのは、こういう景色じゃないの。

しずく「違うのっ!!」

しずく「っはぁ…はぁ…はぁ…」

汗だくになった体を起こす。

時計を見る。午前3時?変な時間に起きちゃった。

とりあえずお風呂に入ろう。

44: 2021/03/13(土) 23:49:44.31 ID:pswbUDEb
しずく「……」

私が最後に見たかすみさんの顔…あまり覚えていない。

悲しいような、悔しいような、そんな顔だったような気がするけれど…。

スマホのフォルダに残るかすみさんの写真を見る。

そういえばお風呂の中でもかすみさんとお話ししたいから防水ケースを買ったんだっけ。

しずく「かすみさん…」

お日様のように明るくて、お花のように可憐で、お星様のように綺麗な笑顔…。

私はこんなにも素敵なモノを手放してしまったんだ。

しずく「…………」グスン

私のエゴだって分かっていても、

しずく「早く、逢いたいな」

そう願わずにはいられなかった。

45: 2021/03/13(土) 23:58:07.87 ID:pswbUDEb
同日 放課後

部長「じゃあ最後のところ、通しでもう一回やってみるよ!」

部長「3、2、1、はい!」

しずく「…2度とは来ない『今』が、僕らの全てだった」

しずく「この世界から弾き出されても、見ずとも良いものを目の当たりにしてしまったとしても」

しずく「お前の言葉とともに、僕は歩んでいくんだ」

部員「信念を失ったとしても、もう私は自分自身の道を探すこともない」

部員「あなたが私に言ってきた全ての言葉が、私の全てなのだから」

部長「…はい!ストップ!」

部員「やっぱりしずくちゃんの演技にはついていけませんよ~」

しずく「いえ、そんなことはありません。先輩の演技は儚さがあってとても良かったです!」

部長「私もそう思うよ。キミの演技は今回のヒロインを演じるには100点だと思う!」

部員「そう言っていただけるとすごく嬉しいです!」

46: 2021/03/14(日) 00:01:35.45 ID:xehCl5ws
部長「…逆に私はしずくの演技が少し気になったかな?」

しずく「私のですか?」

演劇部がお稽古をしている物語は一度お互いの関係が悪くなってしまった恋人同士が、再び愛を確かめ合うというものだ。

私はその物語の主人公を演じている。

部長「なんかセリフの一つ一つに迷いがある気がする」

部員「私には完璧に見えましたけど…」

部長「キャラクターそのものが言葉を発しているんじゃなくて、あくまでもしずくが喋っているような感覚がするよ」

しずく「なるほど……」

少なくとも私は全力で主人公を演じていたと思う。ここから修正するのは難しい。

部長「こう言う時って大体自分の演じる役の心情と役者の心情が一緒になってるらしいんだよね」

部長「たとえば、役者が失恋してしまったときに、失恋した人間の役をすると役がブレちゃうんだってさ」

しずく「…………」

47: 2021/03/14(日) 00:07:51.89 ID:xehCl5ws
部長「…しずく、ちょっと辛いことしちゃうけれど、いい?」

しずく「…辛いこと、ですか?」

部長「まぁ結局はリハーサルでやるところなんだけどさ」

部長「主人公とヒロインが喧嘩別れするシーン、ここで一回やってみよう」

しずく「っ…!」

しずく「はい、わかりました」

演劇は演劇、現実は現実だ。そこにはメリハリをつけなくちゃ。

部長「じゃあ行くよ」

部長「3、2、1、」

部員「私は信じていた!あなたの全てを!言葉を!」

しずく「君の方こそ、僕のことを気にもとめずに…」

部員「あなたとはもう―――」

『友達じゃないから!』

『何か言ってよ!』

『もういいってば!!』

あの時の記憶が雪崩れ込むように私の頭を満たす。

今は演劇のことに集中しないと!

しずく「僕は…私は…」

部長「…ストップ」

52: 2021/03/14(日) 12:02:56.97 ID:xehCl5ws
ごめんなさい爆睡してました続きます

53: 2021/03/14(日) 12:03:40.05 ID:xehCl5ws
しずく「ごめんなさい!台詞を間違えてしまいました」

部長「いや、多分頭の中では理解できてたと思うよ」

部長「合同演劇祭の時、私は『もっと自分をさらけ出して演じて欲しい』って言ったと思う」

しずく「はい、あそこで本当の私を演じきることができました」

部長「だけど今回はその逆かな」

部長「あまりにも自分が前に出過ぎてて、しずくの独白っぽくなってる」

部長「ついこの前まではそんなことなかったのに急にどうしたの?」

しずく「それは…」

部長「うーん、とりあえず発表会まで時間あるし、しずくはちょっと離脱だね」

やっぱりそうなるよね…。

54: 2021/03/14(日) 12:11:20.08 ID:xehCl5ws
部長「まぁ大体予想はつくからさ、それが解決したらまたおいで」

しずく「…わかるんですか?」

部長「お昼休みにいつも一緒にいる子いるでしょ?中須かすみちゃんだっけ?」

部長「すごい暗い顔しながら1人で食べてたからさ、なにかあったのかなって」

しずく「え…そうなんですか?」

部長「うん」

苦しんでいるのは私だけじゃない。

55: 2021/03/14(日) 12:18:07.85 ID:xehCl5ws
『かすみちゃんは絶対にしずくちゃんのことを待っててくれてるから』

歩夢さんの言葉を思い出す。

もしかして…本当にそうなのだとしたら。

しずく「できるだけ早く解決してきます!」

部長「お、目の色が変わったね。その調子だよ!」

しずく「ありがとうございますっ!」

私がかすみさんに向けている特別な感情はいまだに見つからない。

できるだけ早く見つけて、かすみさんのためにも解決しないと!

…いや、一歩ずつ、だっけ。

しずく「すぅー…ふぅ…」

深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

いきなりかすみさんに会っても解決することはないはず。

演劇部の活動が終わったら、今度は愛さんに相談したいな。

56: 2021/03/14(日) 12:27:01.09 ID:xehCl5ws
愛のお店

店員「愛ちゃんはまだ帰ってきてないねー…。私もメッセージ送ったのに返信こないから愛ちゃんのスマホの充電切れてるのかも」

しずく「そうですか…ありがとうございました、失礼します」

そんなにことがうまく行くわけないよね。

店員「せっかくだからここで待つ?」

しずく「他のお客さんに迷惑をかけるわけにはいかないので…」

ガラガラ

愛「ごめーん!スマホの充電切れちゃって…ってしずく?」

エマ「あれ?しずくちゃん!」

57: 2021/03/14(日) 12:38:00.11 ID:xehCl5ws
しずく「愛さん、エマさん!」

愛「今日はお客さんとしてかな?」

しずく「いえ…」

エマ「私と一緒の席でいい?一緒にたべよ?」

しずく「いえ、今日は…」

愛「せっかくここに来たんだし、ぜひ食べて欲しいな!」

しずく「分かりました。私の分もお願いします」

愛「おっけ~!じゃあたくさん作ってくるから待っててね~!」

エマ「ありがと~!」

しずく「ありがとうございます」

元気よく厨房に入っていく愛さん。あの底なしの元気、私も欲しいな。

58: 2021/03/14(日) 12:45:05.54 ID:xehCl5ws
しずく「エマさんはお客さんとしてここに?」

エマ「うん!今日は同好会が早く終わったから愛ちゃんに誘われたんだ~」

エマ「もんじゃ焼きなんて初めて食べるから楽しみ!」

厨房から美味しそうな匂いが漂ってくる。

エマ「すっごくいい匂いがする…」グー

しずく「エマさん、お腹なってますよ」ヒソヒソ

エマ「だって本当に楽しみなんだもん!///」

エマさんと話していると文字通り心がポカポカする。

…少しだけ果林さんが羨ましくなる。

59: 2021/03/14(日) 12:51:07.12 ID:xehCl5ws
愛「お待たせ~!今日はいっぱい作ってきたよ~!」

エマ「おお~!美味しそう!いただきます!」

愛「エマっち落ち着いて!?」

しずく「こ、これはこの鉄板で焼いてから食べるものなんです!」

エマ「てっぱん?この黒い板のこと?」

愛「そうそう!ここにもんじゃの素を…」

ジューっという音とともに芳ばしい香りが私たちを包む。

エマ「うわぁ~!すっごくいい匂いするね!」

しずく「そうですね…私もお腹が空いてきました」

愛「はい!できたよ!」

エマ「ありがとう!いただきます!」

エマ「これがもんじゃ焼き…」モグモグ

60: 2021/03/14(日) 12:58:36.68 ID:xehCl5ws
エマ「んん~!ボーノ!」

愛「エマっちの笑顔見てると本当に幸せになるなぁ~!」

しずく「そうですね。私も笑顔になります!」

愛「しずくもどうぞ!」

しずく「ありがとうございますっ!いただきます」

しずく「…すごい…すごく美味しいです!」

愛「うんうん!そういう笑顔を見せてくれると本当に嬉しいな!」

愛「よ~し、2人のために愛さんはじゃんじゃん焼いていくぞ~!もん『じゃ』だけに!」

こんなにも楽しい時間を過ごしていても…思ってしまう。

…かすみさんとこんな時間を過ごせたらどんなに幸せだっただろう、と。

61: 2021/03/14(日) 13:05:31.16 ID:xehCl5ws
エマ「ごちそうさまでした!」

しずく「ごちそうさまでしたっ」

エマ「本当に美味しかったよ~お腹いっぱいじゃなかったらもっと食べれたのになぁ~…」

愛「あたしのお店は年中無休だからいつでもきてね!しずくもだよ!」

しずく「もちろんです!」

愛「…今度はさ、今度はかすみんと来てね?」

エマ「そうだね。かすみちゃん、同好会ですごく寂しそうにしてたよ?」

しずく「そうなんですね…」

愛「私たちがが話しかけても上の空ってカンジだし…」

エマ「かすみちゃんはよっぽどしずくちゃんのことが好きだったんだね」

あの日まではずっと、メッセージでも、登下校でも、お昼休みでも一緒にお話ししてたから…。

ただただ、かすみさんに誤解させてしまった罪悪感に苛まされる。

62: 2021/03/14(日) 13:12:42.16 ID:xehCl5ws
しずく「…本当に申し訳ないことをしてしまったと思います。かすみさんにも、同好会の皆さんにも…」

愛「アタシたちはぜんぜんヘーキ!」

エマ「うん!今はしずくちゃんの方が大変なんだから気にしないでね!」ナデナデ

しずく「あ、ありがとうございます///」

愛「そういえばしずくって今日はお客さんとしてきたわけじゃないんだよね?」

しずく「ええ、愛さんにかすみさんのことで何かアドバイスが貰えればいいなと思って」

エマ「……」ニコッ

しずく「エマさん?私の顔に何かついてますか?」

エマ「ううん!何でもないよ?」

エマ「わたしもしずくちゃんの力になれるかな?」

しずく「エマさん…ありがとうございます」

愛「エマっちもいるからじゃんじゃん相談してね!」

しずく「ありがとうございます。では…」

63: 2021/03/14(日) 13:20:07.53 ID:xehCl5ws
しずく「…これは侑さんと歩夢さんにも相談したことなのですが」

しずく「私はかすみさんに向ける感情が何なのか、自分でもわからないんです」

しずく「嫌い、と言う感情ではないです。侑さんにそう言われました」

しずく「でも…嫌いではないのに何故かかすみさんに悪戯をしてしまったりして…」

しずく「かすみさんには、嫌われてしまいました」

エマ「うーーん…難しいね…愛ちゃんはどう思う?」

愛「えぇっとね…」

何秒かの沈黙。

エマ「?愛ちゃん?どうしたの?」

64: 2021/03/14(日) 13:26:23.28 ID:xehCl5ws
愛「…しずくはさ、かすみんのこと、どう思ってるの?」

しずく「もちろん、今でも好きです」

愛「どのくらい?」

しずく「どのくらい…ですか…」

頭の中で浮かんだことをそのまま答える。

しずく「それはもちろん、卒業してからも一緒に遊んだり、登下校したり、お泊まりしたいです。けれど…」

しずく「…もう叶わない夢かもしれません。これは私のわがままです」

65: 2021/03/14(日) 13:31:41.31 ID:xehCl5ws
エマ「うぅんっと…」

エマ「しずくちゃん、夢はね?」

エマ「夢は叶えるためにあるんだよ?」

エマ「スクールアイドルフェスティバルが成功したのも、みんなのやりたいライブができたのも、全部わたしたちの『夢』から始まってるの」

エマ「その夢のためにぜんりょくで頑張れば必ず叶うよ!」

エマ「だから諦めるなんて絶対しちゃいけないよ?」ニコッ

しずく「夢…」

エマさんの持つ浅葱色の瞳が輝く。

66: 2021/03/14(日) 13:39:17.64 ID:xehCl5ws
エマ「あ!愛ちゃんごめんね!お話を遮っちゃった…」

愛「ん?あぁ、全然大丈夫っ!」

愛「なんかエマっちの話聞いてたら愛さんも元気出てきたよ~!」

エマ「えへへ、ありがとう」ニコッ

エマ「愛ちゃんは何を聞きたかったの?」

愛「あたしが聞きたいことはもう終わったからね!」

しずく「どういうことでしょうか?」

愛「今の話聞いて分かったんだけど、かすみんに向けるしずくの心はたったの一つだよ?」

愛「しずくはそこに気づければ一つ目のゴールはあと少しだよ!」

エマ「…そうだね、今のお話を聞いてわたしもそう思った!」

67: 2021/03/14(日) 13:45:03.00 ID:xehCl5ws
しずく「私には…まだわかりません」

愛「しずくは気づけるよ、絶対に」ニコッ

愛さんの持つオレンジ色の瞳とともに発せられた言葉が私の心を勇気づける。

エマ「ゆっくりでもいいから自分の気持ちと向き合ってね?」

しずく「お二人とも、ありがとうございます」

愛「うんうん!頑張ってね!」

愛「あ、あと目の下にクマできてるから今日は早めに寝たほうがいいよ!」

エマ「あんまり自分を追い込まないようにね?」

私の気持ちはまだまだ見つからないけれど、二人のおかげで何かを掴めるような気がした。

世界がまた少し彩られる。

しずく「…夢は、叶えないと」

69: 2021/03/14(日) 14:08:35.72 ID:xehCl5ws
『友達じゃないから!』

『何か言ってよ!』

違うのかすみさん、これは───

これは───

しずく「……あ」

またあの夢。

またあの夢を見ると思うと寝るのが怖くなる。

しずく「すごい汗…またお風呂に行かないと…」

70: 2021/03/14(日) 14:15:56.87 ID:xehCl5ws
しずく「はぁ…」

湯船に反射する私の顔を見ながら考える。

同好会の皆さんに相談するのはいいことなのかもしれないけれど…。

かすみさんが苦しんでいる時にこんなことしていいのかな。

彼女が私のことで悩んでいる間に私は侑さん達と遊んだり、エマさん達とご飯を食べたり、璃奈さんとお泊まりしたり…。

しずく「こんな事して、本当にいいのかな…」

71: 2021/03/14(日) 14:20:08.26 ID:xehCl5ws
放課後になったけれど、演劇部も同好会もお休みさせてもらってるんだっけ。

しずく「どうしよう…」

久しぶりに独りぼっちの放課後が訪れる。

独りぼっちといえば…なんでかすみさんと璃奈さんが遊ぶって言った時に私はその輪に入りたいと思ったんだろう。

私の頭の中に何故か『嫉妬』という2文字が浮かぶ。

しずく「…まさかね」

そもそも嫉妬しているとしても誰に?

なんでこんな変なこと考えてるんだろう。

しずく「今日はもう帰ろうかな」

ホームに着き、ゆりかもめの座席に座る。

昨日あまり寝ていないのが原因なのか、急に瞼が重くなる…。

72: 2021/03/14(日) 14:28:32.14 ID:xehCl5ws
『友達じゃないから!』

『何か言ってよ!』

『ねぇ!』

あなたのことが嫌いなわけじゃないの!

信じて欲しい。

お願いだから―――

しずく「かすみさん!」

しずく「…あ」

目を開けるとゆりかもめの中にいた。

幸いにも駅で停車している。人の目から逃れるために急いで降りなきゃ。

しずく「はぁ…はぁ…」

しずく「もう夢なんか見たくない…」グスン

もう見たくないけれど…私がかすみさんと繋がっているのはあの夢しかない。

胸が苦しい、涙もでる。

だけどかすみさんは私よりも…

「あら?しずくちゃん?」

「どうしたの?ホームで泣いてるなんて…」

聞き覚えのある声がする。

しずく「果林さん…?」

73: 2021/03/14(日) 14:43:17.20 ID:LCs/Joei
果林「目が真っ赤じゃない…」

果林「とりあえず移動しましょ?ここは人目もあるし…」

果林「…しずくちゃん?」

足が動かない。もうここでずっと座り込みたい…。

しずく「もう…嫌…」

果林「……」

果林「とりあえず、あそこのベンチまで行ってもらえる?」

しずく「……はい」

もう力の出ない足を引きずってベンチにたどり着く。

74: 2021/03/14(日) 14:52:36.82 ID:LCs/Joei
果林「・・・・・・・・・・・」

果林さんが電話で何か話してるけれど、意識が朦朧として聞き取れない。

果林「・・・・・・ありがとうございます。失礼します」

果林さんがこちらに歩いてくる。

果林「しずくちゃん、とりあえず今日はもう帰りなさい」

果林「あと、明日は学校に行かず休むこと」

しずく「いえ…体調は大丈夫なので休む必要はな」

果林「そんな姿で体調は大丈夫なんて言っても誰も信じないわよ」

果林「鏡でしっかりと自分の顔を見なさい?」

果林「じゃあ私は仕事があるから行くわね」

しずく「ごめんなさい、お仕事があるのに…」

果林「そんな気に病むことはないわよ。好きでやってるんだから」

果林「次会う時はもう少し元気な顔でね?」

しずく「…本当にありがとうございます」

今日は帰ってたくさん寝よう。

75: 2021/03/14(日) 15:01:31.38 ID:LCs/Joei
『せつ菜先輩に借りました!…無断で』

絶対怒られるよ?!







この人と一緒にいれば毎日が楽しそう。

77: 2021/03/14(日) 15:09:37.14 ID:LCs/Joei
『これって…』

演劇祭のお礼。似合うと思って買っておいたの。

『うわぁ…えへへ』







この人ともっと一緒にいたい。

78: 2021/03/14(日) 15:14:53.30 ID:LCs/Joei
『            』

なかなか髪型がうまく決まらない…うーんと…







───かすみさんの事を考えると、いつもより身だしなみを整えたくなる。

79: 2021/03/14(日) 15:20:51.59 ID:LCs/Joei
『じゃあかすみんはりな子と一緒に遊んでくるね!』

…なぜか胸がもやもやする。







―――璃奈さんとかすみさんが一緒に遊んでいる姿を想像したから。

80: 2021/03/14(日) 15:25:42.17 ID:LCs/Joei
『         』







私がかすみさんと過ごしたい時間はこういうものだったのに。

82: 2021/03/14(日) 15:28:27.05 ID:LCs/Joei
『         』







お友達として一緒にいることが幸せでしたし、これからもそうでありたいと願っていました。それこそ、今の侑さんと歩夢さんのような関係を築きたいと今でも思っています。

85: 2021/03/14(日) 15:47:58.08 ID:LCs/Joei
『         』








私のエゴだって分かっていても、早く逢いたいな。

86: 2021/03/14(日) 15:53:39.27 ID:LCs/Joei
『         』


 




かすみさんとこんな時間を過ごせたらどんなに幸せだっただろう。

87: 2021/03/14(日) 15:58:59.62 ID:LCs/Joei
『         』







卒業してからも一緒に遊んだり、登下校したり、お泊まりしたいです。


 


もっと、ずっと一緒にいたい。

私は、かすみさんのことが

88: 2021/03/14(日) 16:02:24.00 ID:LCs/Joei
しずく「好き」

89: 2021/03/14(日) 16:07:02.30 ID:LCs/Joei
しずく「……え?」

また夢を見ていた。楽しくて、世界が色づいていた。

そして…

しずく「今…私…」

しずく「私は…かすみさんのことが…」グスン

しずく「うぅ…うぅ…」

私が犯してしまった行動をこれでもかというほど呪いたくなる、そんな夢だった。

90: 2021/03/14(日) 16:13:58.32 ID:LCs/Joei
しずく「好き…なんて、そんな…」

しずく「私のばか!ばか!ばか!…うぅ…」グスン

しずく「ごめんなさい…本当にごめんなさい…」 

真夜中だと言うことを忘れて大声で泣く。

まさかこんな形で私の本当の気持ちがわかるなんて…。

しずく「…違う」

しずく「違う、絶対間違ってる」

92: 2021/03/14(日) 18:02:35.55 ID:LCs/Joei
そう。こんな気持ちは絶対に間違っているはず。

普通は好きな人に悪戯なんかするはずがない。

しずく「夜遅くだし変な気分にでもなってるよね」

もう寝よう。先輩方にもゆっくり休んでって言われたしね。

しずく「…………」

…だめだ。

しずく「こんな気持ち、忘れられるわけないよ…」

堤防が決壊したように好きの感情が溢れ出る。

しずく「気づきたくなかったよ…」

こんな不幸になるのなら、こんな感情…。

結局朝日が出るまで私は寝ることができなかった。

93: 2021/03/14(日) 18:10:47.09 ID:LCs/Joei
しずく「んん…むぅ…はっ!」

今何時?!スマホは…

果林(私が休みの連絡入れておいたから、しっかり休みなさい。しずくの親御さんにも昨日のうちに説明しておいたわ)

スマホのロック画面には14:00という時刻とともに、果林さんからのメッセージが表示される。

しずく「果林さん…ありがとうございます」

お言葉に甘えて今日はしっかり休もう。

94: 2021/03/14(日) 18:17:56.34 ID:LCs/Joei
『同好会のみんなも相談に乗ってくれると思う。みんなを頼ってね』

白色。

『心配しないで。私とか侑ちゃん、同好会のみんなが道を照らしてあげるからね』

桜色。
 
『私たちはいつもしずくちゃんのそばにいるよ』

黒色。

『その夢のためにぜんりょくで頑張れば必ず叶うよ!だから諦めるなんて絶対しちゃいけないよ?』

緑色。

『しずくは気づけるよ、絶対に』

オレンジ色。

 




しずく「うぅん…」

瞼を開ける。どのくらい寝てたんだろう。

95: 2021/03/14(日) 18:24:22.09 ID:LCs/Joei
しずく「5時…朝の…」

昨日は1日中寝てたんだ。

しずく「ゴールはあと少し…頑張ろう」

かすみさんが待ってる。私のために。

同好会の皆さんのためにも、私の夢を叶えなきゃ。

鏡に映る私の顔見る。

しずく「笑顔っ!」ニコッ

今日からの私は何か頑張れる、そんな気がした。

96: 2021/03/14(日) 18:29:09.52 ID:LCs/Joei
朝 教室

教室について早々、クラスメイト達に話しかけられる。

生徒1「あ、しずくちゃんおはよう!」

生徒2「元気になった?」

生徒3「一昨日はすごく疲れてる顔してたから心配したよ~」

しずく「もう大丈夫だよ、みんなありがとう」

しずく「よかったら、昨日授業でやったところのノート見せて欲し」

ピンポンパンポーン

菜々「国際交流学科一年、桜坂しずくさん、生徒会室まで来てください」

菜々さん?

生徒2「しずくちゃん何かしたの?」

しずく「とりあえず行ってみるね。ノートはお昼休みに見せてもらっていい?」

生徒1&2&3「おっけー!」

97: 2021/03/14(日) 18:38:28.21 ID:LCs/Joei
しずく「失礼します」

菜々「朝から呼び出してしまい、申し訳ありません」

しずく「大丈夫です。それよりどうして生徒会室まで?」

菜々「朝、学園内で誰もいない場所と言えばここしかありませんから」

しずく「もしかして、かすみさんのことですか?」

菜々「はい。中須さんから伝言を預かっています」

かすみさんから…?!

98: 2021/03/14(日) 18:44:06.28 ID:LCs/Joei
菜々「『ゆっくりでいいから、待ってる』」

菜々「だそうです」

しずく「…っ!かすみさん…!」

侑さんか歩夢さんがかすみさんに言ってくれたのかな。

伝言とはいえ、その言葉を聞けただけで胸がいっぱいになる。

菜々「…意味は伝わったようですね。貴女の顔を見るに、自身が抱く気持ちには向き合えているようですし」

菜々「では私からも一つ、言いたいことがあるので」

そういうと菜々さんは周りをキョロキョロと見渡す。

菜々「しずくさんの歩むべき道は既に照らされています。そして貴女はその道を歩み始めています」

菜々「だから…もう後ろを振り向いて、後悔の感情に呑まれてはいけません」

菜々さんは私の胸に目掛けて拳を出す。

せつ菜「始まったなら、貫くのみ!です!」

菜々さん…いや、せつ菜さんの燃えるように赤い情熱が私の心を貫く。

99: 2021/03/14(日) 18:58:35.69 ID:LCs/Joei
菜々「私にできることはこれくらいです」

菜々「もし、後ろを振り返りたくなったのなら、私たちが背中を押してあげます」

菜々「しずくさんはしずくさん自身の道を全力で駆け抜けてください」

しずく「菜々さん…」

しずく「…こんな私のために、本当にありがとうございます」

菜々「そんなこと言わないでください」

菜々「しずくさんとはお友達ですから」ニコッ

しずく「お友達…」

璃奈さんもそう言ってたっけ。

100: 2021/03/14(日) 19:05:19.90 ID:LCs/Joei
しずく「私も!菜々さんとも、せつ菜さんともお友達だと思っています!」

しずく「なので、困ったことがあったら相談してください」

しずく「それが今の私にできる精一杯の恩返しです」

菜々「そうですね。何かあったらその時はよろしくお願いします」ニコッ

菜々「っと…そろそろ一限が始まってしまいますね」

菜々「せっかくですし、一緒に歩きませんか?」

しずく「喜んで!」

世界がまた一段と彩られる。

101: 2021/03/14(日) 19:14:46.60 ID:LCs/Joei
お昼休み

クラスメイトから借りたノートを写しつつかすみさんの事を考える。

しずく「ゆっくりでもいい…」

あんなことを言ってくれたのは嬉しいけれど…

かすみさんは今、私のことをどう思っているんだろう。

あんなことしたんだから、まだ私のことは嫌いになってるよね。

しずく「…いや、後ろを振り向いちゃいけない。待ってるんだから」

かすみさんのその言葉を信じて、私は歩かなきゃ。

102: 2021/03/14(日) 19:21:13.79 ID:LCs/Joei
放課後

しずく「この気持ちに気づいたのはいいけれど…」

どうやってかすみさんに伝えればいいんだろう。

ごめんなさいって言うだけの単純な問題ではないし、「好き」なんて伝えられるような状況ではない。

ピロン

果林(しずくちゃん、今日の夜って暇かしら?)

しずく(はい。あまり遅くならなければ大丈夫です)

果林(じゃあヴィーナスフォートで何か食べましょ。6時くらいでいいかしら?)

しずく(わかりました。では後ほど!)

この前は果林さんに迷惑かけちゃったし、お礼も兼ねて一緒に過ごしたいな。

103: 2021/03/14(日) 19:29:32.03 ID:LCs/Joei
ヴィーナスフォート

しずく「うーんと…」

この気持ちを誰かに共有してもいいのかな。でも…

しずく「やっぱり恥ずかしい…」

同じ同好会の人を好きになるなんて…口が裂けても言いたくない。

彼方「しずくちゃ~ん!お待たせ~」

エマ「しずくちゃんごめんね…果林ちゃんまた迷子になっちゃって…」

果林「エマっ!何もここで言わなくてもいいじゃない…」

しずく「皆さん!私も今来たばかりなので大丈夫です!」

彼方「ほんとに~?」

しずく「…確かに20分くらいは待ちましたけど、本当に大丈夫です」

果林「うぅ…悪かったわよ…」

104: 2021/03/14(日) 19:37:12.21 ID:LCs/Joei
エマ「果林ちゃんってばあのロボットのところでぼーっとしてたんだよ?」

果林「虹色に光ってて綺麗だったから見とれてただけよ」

エマ「果林ちゃん」

果林「…少し休憩してただけ」

彼方「果林ちゃん…」

果林「……お台場が広すぎるだけよ」

しずく「ふふっ…確かにここは広いですよね」

果林「もう!早く行くわよ!」

彼方「あ、果林ちゃん待ってよ~」ニヤニヤ

エマ「しずくちゃんも行こっ!」

しずく「はい!」

…この人たちには、私の気持ちを理解してくれるのかな。

105: 2021/03/14(日) 19:42:24.69 ID:LCs/Joei
彼方「しずくちゃんは何にする?」

しずく「そうですね…たくさんあって迷います…」

果林「そうね…じゃあマウンテンパンケーキをみんなで食べましょ?」

彼方「お、彼方ちゃんはさんせ~い」

エマ「私もさんせい!」

果林「しずくちゃんもそれでいい?」

しずく「はい!」

マウンテンパンケーキ…璃奈さんとかすみさんと3人で食べたっけ。

かすみさんも璃奈さんも楽しそうな顔だったことが記憶に蘇る。

106: 2021/03/14(日) 19:48:18.06 ID:LCs/Joei
彼方「しずくちゃん、ニヤニヤしちゃってどうしたの~?」

しずく「えっ!い、いや、なんでもありません!」

果林「次会った時はもう少し元気な顔でとは言ったけれど、予想以上にいい顔してるわね」

エマ「もしかして、見つけた?」ニコッ

しずく「…はい!」

彼方「…………」ニヤニヤ

果林「…………」ニコニコ

しずく「お、お二人とも笑ってないで何か言ってください!」

果林「じゃあ聞いていいかしら?しずくちゃんの本当の気持ち」

107: 2021/03/14(日) 19:57:00.78 ID:LCs/Joei
しずく「それは……」

恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。

彼方「大丈夫だよ~誰にも言わないからさ~」

果林「4人の秘密ね?」

しずく「…わかりました」

しずく「私はかすみさんのことが…えぇっと…」

胸の鼓動がおさまらない。

エマ「…………」ニコッ

しずく「…………好き…です」

109: 2021/03/14(日) 20:02:58.71 ID:LCs/Joei
果林「本当に甘酸っぱいわね…」

彼方「彼方ちゃんまでドキドキしてるよ~」

彼方「でもまずは仲直りしてからだよねぇ」

エマ「そうだね、しずくちゃんはどうやって仲直りしようかなーって思ってるの?」

しずく「今まで起こしてきた行動について謝る…くらいしか思いつきません」

しずく「でもそれだけでは絶対にダメだと分かっています。でも…」

彼方「まぁ仲直りっていうのは自然になるもんねぇ」

果林「そうね。謝る、それを許すっていう工程はあんまり見かけないわね」

彼方「あったとしても仲良くなってからだもんね~」

エマ「でもしずくちゃんはちゃんと謝りたいんだよね?」

111: 2021/03/14(日) 20:10:08.54 ID:LCs/Joei
しずく「はいっ!うやむやにするのは私自身納得いかないです」

果林「今のかすみちゃんなら…と思ったけれどしずくちゃんがそこまで言うなら私たちも何かしてあげないといけないわね」

彼方「私はしずくちゃんが思っていることをそのままかすみちゃんに伝えればいいと思うけどねぇ~」

しずく「私もそうしたいのは山々ですが、言葉にするのは…難しいです」

エマ「お手紙とかはどう?」

果林「あら、可愛いじゃない」

しずく「お手紙…ですか」

彼方「ラブレターみたいでちょっと可愛いかも~」

112: 2021/03/14(日) 20:15:48.71 ID:LCs/Joei
果林「でも結局想いを文章にするために時間がかかりそうね」

エマ「そっかぁ…難しいね」

エマ「うーん…」

果林「あ、パンケーキ来たわよ」

彼方「思った以上にでかいなぁ…」

エマ「でもすごく美味しそうだよ!」

果林「じゃあ早速頂こうかしら」

エマ&彼方&果林「いただきます!」

113: 2021/03/14(日) 20:21:31.85 ID:LCs/Joei
エマ「んん~!ボーノ!」

果林「あら、美味しいじゃない!」

彼方「はい、しずくちゃん!あ~ん!」

しずく「いただきますっ」

しずく「あ~ん…」パクッ

しずく「おいしいです!」ニコッ

彼方「しずくちゃんはほんとにかわいいなぁ~!はい!あ~ん!」ナデナデ

しずく「な、撫でながらは恥ずかしいですっ!」

果林「そう言いつつしずくちゃんも受け入れてるわね…」

エマ「果林ちゃん♪」

果林「わ、私はいいわよ」

エマ「……………」ニコニコ

果林「…………一回だけよ?」

エマ「うん!あ~ん!」

…こんな時間をかすみさんと過ごしたい。

侑さんと歩夢さんと一緒にいた時もそう思ったけれど、あの時とは少し違う。

後悔の気持ちのない、純粋な気持ちであの人と一緒にいたい。そう願っている自分がいる。

114: 2021/03/14(日) 20:30:17.79 ID:xehCl5ws
彼方「彼方ちゃんもしずくちゃんになでなでしてもらいながら食べさせてもらいたいな~」

しずく「そ、それは…」

果林「だめよ彼方、しずくには先客がいるのよ?」

彼方「は~い」ニヤニヤ

しずく「うぅ…///」

エマ「2人ともそんなにからかっちゃだめだよ~?」

エマ「そういえばなんでしずくちゃんってなんでかすみちゃんに悪戯しちゃったの?」

果林「そんなの照れ隠しに決まってるじゃない」

彼方「好き、だからこその行動だよね~」

しずく「…はい、今思い返してみると確かに照れ隠しのいたずらだったのだと思います」

しずく「私はかすみさんのことが、好きだから」

115: 2021/03/14(日) 20:35:50.33 ID:xehCl5ws
そう。好きだから。

お日様のように明るくて、暖かい性格も、あの可愛らしい声も、ほんの少しだけボサボサな髪も、瞳の色も。

少しだけ不機嫌な顔も、何かを企んでいそうな顔も、世界で一番綺麗なあの笑顔も。

かすみさんに言いたいことが次々と頭の中で思い浮かぶ。

しずく「…私、かすみさんに伝えたいことがたくさんできました」

彼方「おぉ~いい調子だねぇ」

しずく「でも…まだ勇気が湧きません」

しずく「ほんの少し、怖いです」

果林「しずくちゃんならきっと伝えられるわよ」

果林さんは群青色の髪を梳きながら私に笑いかける。

116: 2021/03/14(日) 20:41:13.03 ID:xehCl5ws
果林「合同演劇祭の時、インタビューで言ってたでしょ?『本当の私を見てください』って」

果林「あの時の勇気を今度はかすみちゃんに向けてあげればいい、それだけなんじゃないかしら」

しずく「それだけ、ですか」

果林「そうよ。しずくちゃんの前途は…えぇっと…輝かしいものだと思うわ」

彼方「『前途洋々』かな~?」

果林「ちょっとした言葉遊びよ」

前途洋々…果林さんの言ったように私の未来は明るいのかな。

そう思うと勇気が湧いてくる。

しずく「ありがとうございます。少し勇気が出てきましたっ」

117: 2021/03/14(日) 20:49:06.87 ID:xehCl5ws
彼方「果林ちゃんって本当に面倒見いいよね~彼方ちゃんも見習いたいねぇ」

果林「そんなことないわよ、彼方の方こそ姉なんだから面倒を見るのは慣れてそうね」

エマ「そうだね、あと彼方ちゃんなら仲良くなる秘訣とかたくさん知ってそう!」

彼方「仲良しになる秘訣かぁ…でも大したことはしてないかな~」

彼方「一緒にご飯作ったり、マニキュアを塗りに行ったり、買い物したり、たまに一緒に寝たりかなぁ?」

果林「姉妹だからこそ一緒にご飯とか作れるけれど、いつも隣にいれるわけではないのよね」

彼方「そもそも仲良くなるために考えるなんてこと自体が間違ってると思うな~」

118: 2021/03/14(日) 20:55:42.03 ID:xehCl5ws
彼方「私は遥ちゃんの笑顔が世界で一番好きだからその笑顔のために頑張ってるだけだよぉ」

彼方「まぁ遥ちゃんの全部が好きだけど強いて言うならね~」

彼方「しずくちゃんはかすみちゃんの何が一番好きなの?」

私は…かすみさんの何が一番好きなんだろう。

やっぱり…

しずく「私も…かすみさんの笑顔が何よりも好きです」

彼方「じゃあそのためにこれから頑張っていけばいいと思うよ」

彼方「照れ隠しなんていう気持ちはここに置いていってね?」

119: 2021/03/14(日) 20:59:03.76 ID:xehCl5ws
エマ「仲直り、できるといいね」

しずく「夢は叶えるもの、ですよね」

エマ「そうそう!絶対叶えてね!」

果林「あら、いいこと言うじゃない」

果林「私も応援しているわ、頑張ってね」

彼方「彼方ちゃんもだよ~」

しずく「はい!皆さんにいい報告ができるようにがんばりますっ!」

エマ「じゃあ最後の一口、あ~ん!」

しずく「あ~ん…」

しずく「本当に美味しいです!」

今度はかすみさんと2人きりで食べに行こう。絶対に。

120: 2021/03/14(日) 21:05:13.98 ID:xehCl5ws
彼方「なんだか今日はたくさんお話ししちゃったなぁ~ちょっと眠くなってきたかもぉ…」スヤピー

果林「なにもここで枕を出さなくてもいいじゃない…」

彼方さんのすみれ色のマニキュア…すごく綺麗。

かすみさんと仲直りしたら、一緒に塗りに行きたいな。

エマ「彼方ちゃ~ん起きて~」

彼方「もう彼方ちゃんは…眠いよぉ…」

果林「彼方は私たちがなんとかするからしずくちゃんは帰ってもいいわよ?」

しずく「せっかく相談に乗ってくれたのに私だけ先に帰れません」

エマ「でもしずくちゃんの家って遠いんだよね?無理しなくてもいいんだよ?」

果林「誘っておいて悪いけど、まだ疲れも取れてないんだろうし、帰ってしっかり休みなさい」

しずく「わかりました、本当にありがとうございましたっ!」

世界がまた彩られる。

121: 2021/03/14(日) 21:10:40.63 ID:xehCl5ws
同好会の皆さんのおかげでモノクロに見えた世界が段々と彩られてきたけれど、

しずく「一番大切な色がまだないよね」

明日になったらその色を見つけに行こう。

しずく「…あ」

あの大きいロボットが変形しながら色を変える。

白色、桜色、緑色、オレンジ色、赤色、群青色、紫色…

しずく「綺麗…」

ライトアップが消え、真っ暗になったかと思えば…

今度は黄色に輝く。

しずく「……!」

…これが私の1番大切な色。

122: 2021/03/14(日) 21:17:01.27 ID:xehCl5ws
『ねぇねぇ!今日は浅草に行こっ!』

もちろん!あなたと一緒ならどこでもいいよ!

 



『マニキュアの色、何にする?』

うーん、私は黄色がいいかな。

『じゃあ私は青色にするね!』

じゃあ私も青色にするね!

あなたとお揃いが好きだから。


 


『見てみて!すっごく綺麗!』

『しず子のも―――』


しずく「……ふふっ」

しずく「…あ」

また夢を見ていた。今度は悪い夢じゃない。

しずく「これは、叶えなきゃいけない夢だよね!」

朝の5時…もう支度をしないと。

しずく「髪型は…完璧!」

いつもより長く身だしなみを整える。

しずく「あとは笑顔!」ニコッ

あの人が待ってる。私の気持ちを伝えるために、頑張ろう!

123: 2021/03/14(日) 21:21:14.81 ID:xehCl5ws
授業中

放課後に近づくにつれて、胸がドキドキしてくる。

本当に許してくれるのかな。私の夢って叶えられるのかな。

同好会の皆さんに励ましてもらったとは言え、やっぱり心配になる。

『ゆっくりでいいから、待ってる』

あの言葉を思い出す。

しずく「待っててね…!」

先生「しずくさん、なにか?」

しずく「い、いえ、なんでもありません!」

早く放課後になって…!!

124: 2021/03/14(日) 21:26:51.99 ID:xehCl5ws
放課後

授業が終わるのチャイムがなった瞬間に教室から出る。

しずく「普通科の教室棟……あ!」

菜々さんがこちらに向かってくる。廊下を走ってること、怒られちゃうかな。

いや、かすみさんと仲直りしたら謝ればいい。とにかく早く走らないと!

……

菜々「生徒会室、空けておきました」

すれ違いざまに声をかけられる。

しずく「…!ありがとうございます!」

125: 2021/03/14(日) 21:31:59.56 ID:xehCl5ws
ガラガラ!

勢いよく扉を開けたせいか、教室にいる人達全員が私に目線を向ける。

……私がずっと逢いたかった人も私を見ている。

かすみさんの前に立ち、彼女の腕を引っ張る。

かすみ「ちょっと?!しず子?!」

しずく「いいから来て!」

強引でごめんね。あなたにはたくさん伝えたいことがあるから。

127: 2021/03/14(日) 21:37:17.70 ID:xehCl5ws
生徒会室

しずく「本当に誰もいない…」

菜々さんには感謝しなきゃ。

かすみ「…なに?急に」

少しだけ低い声。やっぱり怒ってるよね。

…そっか、まだ怒ってるんだ。逃げたくなってしまう。

でも色々な人に励ましてもらったんだ。ここで引いちゃだめだよね。

かすみ「…何か言ってよ」

しずく「あ!ごめんね」

しずく「かすみさん…」

大きく息を吸う。

…誰かが…いや、誰か達が背中を押してくれる。

しずく「かすみさん、私はあなたのことが好きです」

128: 2021/03/14(日) 21:41:17.74 ID:xehCl5ws
かすみ「………………」

しずく「あなたが合同演劇祭で励ましてくれた時…いや、多分もっと前からあなたの笑顔を見ることが好きになりました」

不思議と言葉が出てくる。

しずく「合同演劇祭までモノクロだった私の世界をいろとりどりの世界にしてくれて、もっとかすみさんのことが好きになりました」

しずく「髪飾りをあげたとき、あなたの笑顔を見ることができて本当に幸せな気持ちになりました」

しずく「もちろん笑顔だけじゃなくて、あなたの性格も、髪も、瞳の色も、表情豊かな顔も全部好きです」

しずく「でもそんな気持ちを隠してあなたと過ごしていると、だんだんと恥ずかしくなってきて…」

しずく「照れ隠しのためにいたずらをしたりしてしまいました」

しずく「いたずらをしてしまったのは本当にごめんなさい」

しずく「かすみさんと一緒にいられなかったこの数日間、私の世界はモノクロでした」

しずく「同好会の皆さんに相談したおかげで世界は少しだけ色づいたけれど、一番大切な色を私はまだ持っていません」

しずく「一番大切な色はかすみさんしか持っていないのだと、かすみさんと離れてからやっと気づきました」

しずく「私のわがままだけれど、私はこれからももっと、ずっとかすみさんと一緒に過ごしたいです」

しずく「私のせいでかすみさんを傷つけてしまって、本当にごめんなさい」

深々と頭を下げる。

しずく「謝るだけで解決できるほど小さい問題ではないけれど、これだけは伝えたかった」

言いたいことは全部言えたはず。あとはかすみさんの返答次第。

129: 2021/03/14(日) 21:47:04.38 ID:xehCl5ws
しずく「……かすみさん?」

かすみさんはずっと俯いている。

かすみ「…………」グスン

泣いているの?

しずく「本当にごめんなさい!こんなにも傷つけてしまって…」

かすみ「ほんとうに…」

かすみ「本当にしず子が私のこと、嫌いになっちゃったんじゃないかって!」グスン

しずく「っ!」

かすみ「本気で心配したんだからぁ!」

かすみ「うぅ…うわぁぁぁぁあん!!」

130: 2021/03/14(日) 21:54:08.39 ID:xehCl5ws
しずく「かすみさん…ごめんね、本当に…」グスン

かすみ「侑先輩たちに…励ましてもらったけど」

かすみ「本当に怖かったよ!うぅ…」

大粒の涙がかすみさんの頬を伝うのがわかる。

しずく「ごめんね…ごめんね…」

かすみさんがまだ私を信じてくれたこと、先輩方の優しい心遣い、かすみさんと仲直りできたこと、色々な感情が混ざって私も涙が止まらない。

131: 2021/03/14(日) 22:00:18.38 ID:xehCl5ws
ムギュッ

かすみ「うぅ…………」グスン

かすみさんが私を抱きしめる。

かすみさんのシャンプーの匂い、胸の鼓動…本当に仲直りできたんだ…

かすみ「かすみんが変なことしちゃったんじゃないかってずっと怖くて…本当によかった…」

しずく「かすみさんは何も悪くないよ」グスン

しずく「ありがとうかすみさん…私を待っててくれて…ありがとう…!」

10分ほど、2人で抱き合いながなら泣き合った。

132: 2021/03/14(日) 22:05:50.10 ID:xehCl5ws
かすみ「…しず子」

しずく「なあに?」

かすみ「かすみんもね」

かすみ「…………」

かすみ「桜坂しずくのこと、好きだったよ」

しずく「そっか…」

だった、…

そうだよね。あまりにもいたずらをしすぎたから…。

わかっていたとはいえ、視界が歪んでしまう。

しずく「でも、お友達としてまた一から始めたいな。いい?」グスン

私の夢は叶わなかったけれど、お友達としてまた始めたい。

かすみ「…いやだよ」

133: 2021/03/14(日) 22:10:39.62 ID:xehCl5ws
しずく「え?」

かすみ「かすみんは桜坂しずくのこと」

かすみ「大好き」ニコッ

しずく「…っ!」

涙が溢れる。

かすみ「しず子と離れてから私もわかったことがあるの」

かすみ「かすみん、しず子のこと大好きだったんだなぁって」

かすみ「だからね、いたずらが嫌いの気持ちじゃないってわかって…嬉しかった」

かすみ「嬉しかったから…」

かすみ「もうかすみんから離れないで…絶対…」グスン

しずく「…うん、もうずっと…一生離れないよ」

しずく「私も中須かすみのこと、大好き」ニコッ

134: 2021/03/14(日) 22:15:24.33 ID:xehCl5ws
夢は、叶った。でもそれは最後のゴールじゃない。

今叶ったのは夢を叶えるための夢。まだまだ私が目指すゴールはたくさんある。

しずく「私、かすみさんと叶えたい夢がたくさんあるの」

しずく「一緒に来てくれる?」

かすみ「…うん!ずっと一緒だよ!」

―――世界は元の色以上に彩られて、キラキラしている。


おしまい

136: 2021/03/14(日) 22:19:27.68 ID:xehCl5ws
最後までご覧いただきありがとうございました!
しずかす成分あんまりなかったのはめっちゃ反省してます

138: 2021/03/14(日) 22:32:12.31 ID:G2anIYi+
jΣミイ˶º ᴗº˶リ 乙です

143: 2021/03/15(月) 16:28:48.06 ID:yK2z6sJe
青春ですな

141: 2021/03/14(日) 23:31:49.56 ID:U89gTHHp
描写が素晴らしい
乙でした

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1615610105/

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