【SS】侑「しずくちゃんって私の事、苦手だったりする?」しずく「そ、そんなことありません!」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


1: 2021/03/29(月) 04:30:26.95 ID:Bbvya2E4
ゆうしず

2: 2021/03/29(月) 04:31:23.85 ID:Bbvya2E4
かすみ「──でねでね、侑先輩が材料を買ってきてくれてね! かすみん特製コッペパンが更に進化したんだよ!」

璃奈「おぉ~、さすが侑さん。頼りになるよね」

かすみ「ねー」ニコニコ

しずく「………………」ジー

かすみ「あれ? しず子どーしたの?」

しずく「へ? いや、なんでもないよ?」

璃奈「あっ、ごめんなさい。せっかく三人でお昼食べてるのに、かすみちゃんと2人で盛り上がり過ぎた」ペコリ

しずく「だ、大丈夫だよ?」

しずく「ただ、2人ともすっごく楽しそうだったから」

しずく「無意識にじぃーっと見つめちゃってたのかも」

4: 2021/03/29(月) 04:34:06.43 ID:sn8YiROY
かすみ「そー言えばしず子が侑先輩とお話してるの、あんまり見ないよね」

しずく「え? いやいや、そんなことないよ?」

かすみ「えー、うっそだぁ」

しずく「確かにいつも話すってわけでもないけれど、日常会話くらいならするし」

しずく「それに、スクールアイドルの事も沢山調べてくれて教えてくれるし」

しずく「とっても頼りになる方だなって思ってるよ?」

かすみ「そりゃおんなじ同好会なんだからそのくらいの会話はするでしょ」

5: 2021/03/29(月) 04:35:06.97 ID:sn8YiROY
かすみ「しず子ももっと侑先輩と仲良くした方が絶対いいって!」

しずく「な、なんで?」

かすみ「しず子とも侑先輩の魅力について語りたいもん」

璃奈「わかる」

しずく「えぇ……」

6: 2021/03/29(月) 04:39:38.56 ID:sn8YiROY
かすみ「それにぃ、侑先輩はかすみんの事可愛いって言ってくれるしぃ~! 優しいしよくなでなでしてくれるしぃ~! かすみん、侑先輩の事大好き!」ニコニコ

璃奈「侑さん、本当に優しいよね。私もすき」

しずく「………………」ムスー

しずく「……私だってかすみさんの事可愛いって言うしなでなでもしてるんだけど……」ボソッ

かすみ「へ? しず子何か言った?」

璃奈(あっ……これは多分しずくちゃん、嫉妬してるなぁ)

しずく「……なんでもありません」プイッ

かすみ「え? え?」

7: 2021/03/29(月) 04:43:16.47 ID:sn8YiROY
かすみ「り、りな子~……しず子が急に機嫌悪くなったんだけど」オドオド

璃奈「……今のはかすみちゃんが悪いかも」

璃奈「しずくちゃん、たまごやきあげるから元気出して?」

璃奈「はい、あーん」スッ

しずく「……あーん」パクッ

璃奈「美味しい?」

しずく「……うん」コクリ

璃奈「よかった。これ、私が作ったやつなの。もっと食べて」

しずく「ありがとう璃奈さん。かすみさんは置いてってあっちで二人で食べよっか」

かすみ「ちょ、ちょっと! かすみんの事無視しないでよー!!」

8: 2021/03/29(月) 04:45:18.71 ID:sn8YiROY
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタスタスタ

しずく(次の授業の教室はAの3201だったよね)スタスタ

しずく(授業までまだ時間あるけれど、少し早めに行って予習でもしてようかな)スタスタ

しずく(……それにしてもお昼はかすみさんに悪い事しちゃったなぁ)ピタッ

しずく(なんかモヤモヤしちゃって、気が付いたら言っちゃってたんだよなぁ)

しずく(璃奈さんが三人で食べようよって言ってくれたから笑い話で済んだけれど、あんな態度取られたら嫌だよね……)

しずく(あとで謝ろう……)

9: 2021/03/29(月) 04:46:19.68 ID:sn8YiROY
しずく(……それにしても)

しずく「……侑さん」

侑「私がどうかしたの?」

しずく「ひゃあっ!?」ビクッ!!

侑「!?」ビクッ!!

10: 2021/03/29(月) 04:47:34.22 ID:sn8YiROY
しずく「はぁ、はぁ。び、びっくりした」

侑「ご、ごめんねしずくちゃん! そんなに驚くとは思わなくて」

侑「たまたま後ろ姿が見えたもんだからさ」

侑「本当にごめんね?」

しずく「い、いえ! 私の方こそ急に変な声出してしまって申し訳ないです!」ペコリ

11: 2021/03/29(月) 04:50:04.81 ID:sn8YiROY
侑「それにしても奇遇だね。しずくちゃんも移動教室?」

しずく「はい、そうなんです。侑さんもですか?」

侑「そうそう。次は実技テストがあって音楽教室に移動なんだぁ」

侑「まだまだ周りの子達と比べてダメダメだからね。編入したばかりでやらなきゃいけない事もたっくさんあるからさ。ちょっと早めに行って、予習でもしてようかなって思ってたんだ」

しずく「え、偉い……」

侑「そーかな?」

12: 2021/03/29(月) 04:52:20.65 ID:sn8YiROY
侑「しずくちゃんだっていつもスクールアイドルの練習も、演劇の練習も頑張ってるじゃん」

侑「私から言わせてみれば、しずくちゃんの方が偉いよっ」ニカッ

しずく「………………」

しずく(本当、良い人なんだよなぁ侑さん)

しずく(ただ、自己評価が低いよね。お顔もとっても可愛いし声も可愛い。スクールアイドルになったら絶対人気出るのにサポートに徹するなんて、なんだか勿体ない気がする)

13: 2021/03/29(月) 04:54:24.14 ID:sn8YiROY
侑「そういえばしずくちゃん、私の名前呟いてなかった? 何かあったの?」

しずく「あっ、いや! たいしたことではないんです」

しずく「今日のお昼、かすみさんと璃奈さんのお二人とも食べてたんですけれど」

しずく「その時に侑さんの話題が出たのでつい思い出して呟いてしまった──って感じです」

侑「え!? 私の話してたの!?」

しずく「はい。かすみさんも璃奈さんもいつも助けて貰って助かってるって仰ってました」

侑「な、なんか恥ずかしいなぁ///」

しずく(かわいい)

14: 2021/03/29(月) 04:55:37.97 ID:sn8YiROY
しずく「………………」


かすみ『しず子ももっと侑先輩と仲良くした方が絶対いいって!』


しずく「ゆ、侑さん」

15: 2021/03/29(月) 04:56:20.91 ID:sn8YiROY
侑「ん? どしたのしずくちゃん」

侑「今度一緒に遊んでくれませんか……?」

しずく(と、突然過ぎたかな? 急なお誘いで困らせちゃったら申しわけな──)

侑「うんっ! いいよ!」ニコッ

しずく「!!」

しずく(判断が早い!)

侑「あはは、しずくちゃんから誘ってくれるだなんて嬉しい! すっごく楽しみだよっ!」ニカッ

しずく(フォローも早い!)

16: 2021/03/29(月) 04:57:15.23 ID:sn8YiROY
侑「何して遊ぼっか?」

しずく「そうですねぇ」

しずく「………………」

侑「………………」ニコニコ

しずく「………………」

侑「………………」ニコニコ

しずく「………………」

侑「………………」

侑「し、しずくちゃん?」

17: 2021/03/29(月) 04:59:35.94 ID:sn8YiROY
しずく「え、えと……その……」

しずく「なにして遊びましょうか……?」

しずく(だ、ダメだ)

しずく(何の遊びしようか考えても映画観るとか演劇の事とか自分の好きな事しか思い浮かばない。これじゃ侑さんが楽しめないよ!)

しずく(しかも質問に質問で返してるしぃー!! 私のお馬鹿!!)

侑「……んー、そうだなぁ」

しずく「ご、ごめんなさい……私から誘ったのに」シュン

侑「ううん、大丈夫だよ」

侑「私、演劇を観に行ってみたいかな!」

しずく「へ?」

18: 2021/03/29(月) 05:02:33.92 ID:sn8YiROY
侑「しずくちゃん、よく同好会で演劇について語っててとっても楽しそうだからさ!」

侑「前から思ってたんだよね! 演劇の話をしてる時のしずくちゃんはキラキラしてて」

侑「すっごくときめいちゃうんだ~」

侑「それを見てたら私も演劇について詳しくなりたいぁって思っててさ。だからさ、教えてほしいんだ!」

しずく「侑さん……」

しずく(私に合わせてくれたのかな?)

侑「……」ニコニコ

しずく(……優しいなぁ)

しずく「わかりました! 今度の日曜日、おすすめの劇があるので一緒に観に行きましょうっ」ニコッ

侑「ほんと!? じゃあ楽しみにしてるねっ」

しずく「はい! 私も楽しみにしています!」

20: 2021/03/29(月) 05:03:49.29 ID:sn8YiROY
──この日の事、今でもはっきり、鮮明に覚えている。

──この日から、私と貴方の物語が始まったんです。

70: 2021/03/30(火) 00:21:11.34 ID:FZPs3jC0
~日曜日~

しずく(今日は侑さんと演劇を観る日)

しずく(よし、予定通り集合場所に30分前に着けた)

しずく(計画はしっかりと練ってきたけれど、今日の流れの復習をしとかないと)

しずく(侑さんに楽しんでもらえるように頑張ろう)

しずく「えーと、メモに今日のスケジュールを──」


スタスタスタスタ


侑「あれ? しずくちゃん?」

しずく「へ?」

71: 2021/03/30(火) 00:28:34.97 ID:FZPs3jC0
しずく「ゆ、侑さん!?」

しずく(うそ、待って早すぎるんだけれど……ま、まだ全然復習終わってないよぉ!!)

侑「しずくちゃんおはよー。さすがだね。まだ30分前なのにいるなんて」ニコッ

しずく「あっ、えっと、その……お、おはようございます!」

しずく「ゆ、侑さんも随分早いですね」

侑「うん。昨日からすっごく楽しみで、ちょっと早めに着いちゃったっ」ニコニコ

しずく「………………」

しずく(楽しみにしてくれてたんだ……)

しずく「……ふふっ、ありがとうございます。侑さん」

しずく「私も、楽しみにしていました」

しずく「少し早いですが、遊びましょうか」ニコッ

侑「うん! 今日はよろしくねっ、しずくちゃん!」

しずく「はいっ」

しずく(一生懸命、エスコートしよう!)

78: 2021/03/31(水) 23:22:31.90 ID:YnUD3QCv
侑さんと一緒に本日の演劇が開演される会場まで歩く。
目指す場所は──地方文化会館。

日曜日は学生演劇が文化会館で行われる事が多い。

学生であれば無料(全国大会くらいの規模のものになると勿論チケット代は掛かる)で観られるし、初めて演劇に触れる方々にはとてもオススメなの。

向かう途中、侑さんは沢山私に話を振ってくれた。

演劇を楽しむコツとかあるの? ドキドキする。しずくちゃんが最初に演劇を観たのはいくつの時なの? 等々。

なんだか尻尾を振るオフィーリアみたいで、とっても可愛かった。──本当に楽しみにしてくれてたんだろうなぁ。

その事がよく分かり嬉しかったし、マシンガントークが止まらない侑さんのコミュニケーション能力の高さに驚いた。

尚且つ、一方的に話すだけでなく私の話もしっかりと聞いてくれるんだよ? すごいなぁ……。

ただ並んでお話しながら歩いているだけでも、すごく楽しかった。
自然と私も笑顔になった。本当に、本当に──すごく楽しい。

会場まであっという間に着いてしまい、少し残念だ。でも、同時にこれから演劇を観れるというワクワクもあった。

楽しい一日は始まったばかりだ。

79: 2021/03/31(水) 23:31:01.21 ID:YnUD3QCv
侑「わぁ~……!! いい席だね、しずくちゃんっ」

しずく「ふふっ、ですね。舞台がとっても見やすい、いい席が取れて本当によかったです」

しずく(この時間に来れば、いい席が取れるのは調査済みです!)

侑「演劇はしずくちゃんが主演だったやつ以外観たことないからとっても楽しみだよ」

侑「あの時も楽しかったなぁ……しずくちゃんのSolitude Rain、かっこよかったし」

侑「はぁ~……!! 思い出すだけでもときめいちゃう~!」クビフリフリ

しずく「ゆ、侑さん……嬉しいですけれど、会場内ですから」

侑「あっ、ごめんごめん……反省します」ヒソヒソ

しずく「……///」

しずく(……耳が熱い)

しずく(侑さんに褒めてもらえるの、凄く嬉しいな。侑さんは平等に同好会の皆さんの事を褒めてくれる。だけど、こうして真正面から褒めてもらったのは初めてだし)

80: 2021/03/31(水) 23:40:14.66 ID:YnUD3QCv
侑「そういえば、プログラムに載ってる演劇のタイトル、聞いたことないんだけどしずくちゃんは知ってる?」

しずく「いえ、私も知らないタイトルですね」

しずく「どうやらオリジナルのお話の演劇みたいです」

しずく「どんなお話なんでしょう……楽しみです」ニッコリ

侑「あはは、しずくちゃんは本当に演劇が大好きなんだね」

しずく「え?」キョトン

侑「すっごくいい笑顔だもん」

侑「落ち着いてるしずくちゃんも良いけれど、楽しそうに笑ってるしずくちゃんも可愛いね」ニコッ

しずく「!?/////」カァァァァァ

しずく「ちょ、ゆ、侑さんっ!」

しずく「か、からかわないで下さいよ」

侑「からかってないよ~」

81: 2021/03/31(水) 23:44:24.83 ID:YnUD3QCv
しずく「も、もう……!!」

侑「ごめんごめん。あとでクレープ奢るから機嫌直して?」ニコニコ

しずく「え!? クレープですか!?」パァァァァ

しずく「──って、そ、そんな甘い言葉で誘惑しないで下さい!」

しずく「侑さんなんてもう知りませんっ!」プイッ

しずく(本当は全然怒ってないけれど、わざと怒ったふりをしてみせる。演劇部の力を発揮する時です)

侑「し、しずくちゃん? あ、そのごめんね! 少しからかい過ぎちゃったよね。ほんとごめん!」アセアセ

しずく「え……?」

82: 2021/03/31(水) 23:49:31.53 ID:YnUD3QCv
意外だった。
侑さんの事だから、涼しい顔をするかと思っていたから。笑って更にからかわれるかと思っていた。

でも、反応は焦りだった。

……やっぱり、私は侑さんの事、全然知れていないんだなぁ。

──って、そんなこと思っている場合じゃないよね!?

83: 2021/03/31(水) 23:54:26.43 ID:YnUD3QCv
しずく「あ、えと、ごめんなさい! そんなに怒っていないので、あんまり気にしないで下さい」

侑「ほ、本当? よ、よかったぁ……」

しずく「いえ……大丈夫ですよ?」

しずく「むしろわざと怒ったフリしちゃいましたので私の方が謝らないとです」

しずく「ごめんなさい」ペコリ


しずく「……ただ、少し意外でした」

侑「へ?」

しずく「その……機嫌直してよ~って流れを続けられるかなと思ったので。まさか侑さんがそんなに焦るだなんて思いませんでした」

侑「えぇ!? だってしずくちゃんに嫌われちゃったらイヤだもん」

しずく「え?」

86: 2021/04/01(木) 00:12:09.57 ID:rjMfp2uW
侑「今日、さ。私、本当に楽しみだったんだ」

侑「しずくちゃんがデートに誘ってくれたんだもん」

しずく(デート!?)

侑「私としずくちゃんってさ、話はするけれどこうして遊んだことなかったじゃん?」

しずく「まぁ……はい」

侑「でしょ? だからこそ本当に嬉しかったんだぁ」

しずく「侑さん……」

87: 2021/04/01(木) 00:27:21.34 ID:rjMfp2uW
侑「私ってほら、結構思った事をどんどん口に出しちゃうタイプだからさ」

侑「結構発言したあとに後悔することが多いんだよね」

侑「それで折角仲良くなれそうだったしずくちゃんから嫌われたら……イヤだし、怖いと思ったんだよね」

しずく「……」

侑「──って、嫌われたらイヤだとか怖いとかデート中に言うべきじゃないよね?」

侑「ごめんね?」

しずく「…………」

88: 2021/04/01(木) 01:04:15.78 ID:rjMfp2uW
ふと、昔の事を思い出してしまう。

とても、とても小さかった頃の記憶。

私は小さい頃から古い映画とか小説が大好きだった。

その大好きが深く深く潜っていき、最終的に私は創作された物語が好きになった。
主人公を中心に展開されていくストーリーを楽しみ、のめり込んでいった。

そして、私がその物語の登場人物だったら、どんな風になるのだろうかと妄想もした。

それが普通だと思っていた。

「しずくちゃんって変な子だよねー」

だけど私は、変な子だったみたい。何気ない周りの子の一言で、私は他の子とは違うという事が分かった。

イヤだ、嫌われたくない。嫌われるのは怖い。

私は嫌われるという事に敏感だった。

そんな私が今、侑さんを不安にさせてしまっている。こんな事があっていいのだろうか?

──ダメに、決まってるよね。

89: 2021/04/01(木) 01:22:57.32 ID:rjMfp2uW
しずく「ゆ、侑さん」

しずく「私、からかってもらって正直嬉しかったです!」

侑「へ?」

しずく「何言ってるんだろうって思われるかもしれませんが、私もかすみさん達みたいに後輩として可愛がってもらえるんだって思って」

しずく「……そ、その……」

しずく「とにかく嬉しかったです」

しずく「それに……私が侑さんを嫌うだなんて、ありえません」

しずく「確かにあんまりお話してこなかったかもしれませんが、私を含めたスクールアイドル同好会の皆さんを沢山助けてくれる貴方を」

しずく「嫌うだなんて、ありえません」

侑「しずくちゃん……」

しずく「そ、それに!」

侑「しずくちゃん」

侑「ありがとう」

侑「気持ちは充分伝わったよ」

侑「ただ、ほら! もう演劇始まるから」

しずく「──っ!!」ハッ

しずく「ご、ごめんなさい。つい熱くなってしまいました……」

92: 2021/04/01(木) 09:04:09.64 ID:zrT/EdQn
侑「う、ううん。平気だよ」

侑「あと、その……ありがとうね」

侑「そう言って貰えると、凄く嬉しいよ」

しずく「侑さん……」

93: 2021/04/01(木) 09:07:53.77 ID:zrT/EdQn
侑さんと見つめ合う。
すごく綺麗な目。惹き込まれる。

それに侑さん、よく見ると耳が赤い。照れているのかな?

いつも笑ってる所とか、かっこいい所──スクールアイドルフェスティバルの計画を練ってる時とか──ばかり見ていたから、照れる侑さんは新鮮だった。

94: 2021/04/01(木) 09:12:10.82 ID:zrT/EdQn
しずく(侑さん、可愛い)

しずく(もっと貴方の事、知りたい)


「ご来場の皆様、ありがとうございます。まもなく、
青藍高校演劇部の──」


侑「!!」

しずく「!!」

侑「も、もう始まるね! じゃあ、また後で感想話し合おうねっ!」

しずく「は、はい! 楽しみましょうっ」フイッ

しずく(あっ……慌てて舞台の方へ顔を向けちゃった。そっか、もうそんな時間か。時間経つの早い)

しずく(今はとりあえず、演劇に集中しよう)

しずく(……侑さんも楽しんでくれる演劇だといいなぁ)

111: 2021/04/04(日) 12:01:06.86 ID:QZe9zczS
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

侑「はぁ~~~~……!!」

侑「しずくちゃん!」

侑「演劇」

侑「すっごく面白かったよ!」キラキラ

113: 2021/04/04(日) 12:04:34.33 ID:QZe9zczS
演劇公演は無事に終わり、時刻は13時。侑さんと私はランチに来た。近くの喫茶店の窓際の席に向かい合う形で座る。

公演終了した時に侑さんの横顔をちらっと覗いたけど、とってもキラキラしていた。

キラキラという、という表現方法は果たして伝わるのだろうか? と思うけれど、瞳が輝いていました。
楽しんで頂けたみたいだ。

一方、私はというと──すっっっっっごく楽しかった!!

さすが青藍高校です。あそこの演劇はクオリティがとっても高くて、本当にオススメなんです。

侑さんとも早く感想を語りたい。
彼女も同じ気持ちだったようで、すぐに語りたい気持ちを抑えながらお店に向かっているのが分かった。

114: 2021/04/04(日) 12:12:58.71 ID:QZe9zczS
侑「しずくちゃん、何食べる?」

しずく「そうですね……ハムサンドセットにします」

侑「わかった! 私はコッペパンセットにしようかなぁ」

しずく「コッペパン、美味しいですよね」

侑「うん。最近ハマってるんだよねぇ」

侑「店員さーん!」フリフリ

しずく「ゆ、侑さん。こちらにピンポンありますよ?」

侑「あっ、ほんとだ。ごめんごめん」ニコニコ

しずく「ふふふ、もう」ニッコリ


「お待たせいたしました。御注文でしょうか?」

侑「あっ、ありがとうございます。注文なんですが、こちらのハムサンドセットと──」

しずく(あっ、さりげなく私の注文も一緒に頼んでくれる。て、手馴れてるなぁ)

116: 2021/04/04(日) 12:42:09.63 ID:QZe9zczS
侑「よし、注文も終わったし……」

侑「しずくちゃん!」

しずく「!! は、はい」

侑「今日誘ってくれてほんとありがとうね!」

侑「すっっっごく面白かったよ!」

しずく「ふふっ、楽しんで頂けてなによりです」ニコッ

侑「やっぱり主人公の人が目立ってはいるけれど、周りの脇役? 呼び方あってるかな? ──とにかくその人達の演技もしっかりと印象に残るから、全員が主役に思えて、すっごく惹き込まれたよ! 見ていて楽しかった!」

しずく「そうなんですよね。皆が皆、全力で役を演じるので、物語を演じ、作りあげるには脇役の方々も絶対不可欠なんです」

しずく「特に主人公の先輩役の方の演技は素晴らしかったです」

しずく「静寂なシーンでは静かな動き。〇陣でのアクロバティックな動きと、一つ一つの動作がとても洗練されていてさすがのクオリティでした」

しずく「常日頃から努力している方なんだろうなと言う印象でした。特に参考にするべきだなと感じたのが──」

侑「………………」ポカーン

しずく「!!」

しずく(や、やってしまいました。悪い癖だ。演劇の事になるとつい語り過ぎてしまう)

しずく「あ、あの!」

侑「──もっと聞かせて!」

しずく「え?」

117: 2021/04/04(日) 12:47:30.54 ID:QZe9zczS
侑「同じ演劇部だからかな? しずくちゃんの感想、私と着眼点が違う所もあって聞いててすごく楽しいよ!」

しずく「……」

侑「それに、演劇について語ってるしずくちゃんはやっぱり活き活きしてて、すっごくときめ──」

しずく「変な子だって、思わないんですか?」

侑「え?」

118: 2021/04/04(日) 12:56:03.72 ID:QZe9zczS
しずく「普段の私って、割と静かな方だと思うんです」

しずく「でも、演劇の話になると……私は人が変わったように饒舌になります」

しずく「止められなくなるんです。どんどん言葉が溢れてくるんです」

しずく「演劇が大好きだから」

しずく「それは小さい頃から変わらなくて……この癖で友達もできませんでした」

しずく「今だってそうです。侑さんを置いてけぼりにして、一人で話してしまいました」

しずく「そんな私の事、変な子だって……思わないんですか?」

侑「思わないよ」

しずく「!!」

侑「全く思わない」

119: 2021/04/04(日) 13:10:00.94 ID:QZe9zczS
しずく「ど、どうして……ですか?」

侑「自分の大好きを語ってる子を変な子だなんて私は思わない」

しずく「……」

しずく「ごめんなさい、変な事聞いてしまって……。昔から苦手意識を持たれることが多くて、こんな事聞いてしまいました……」

侑「……」

侑「しずくちゃん、逆に聞いちゃうけど」

侑「しずくちゃんは私の事変な子だって思う?」

しずく「え?」

しずく「いえ……そんな事思いません」

侑「そう?」

侑「私もスクールアイドルについて語る時、しずくちゃんと同じくらい饒舌になるよ?」

しずく「あっ……」

侑「ごめん、あともう一つ質問するね?」

120: 2021/04/04(日) 13:15:36.40 ID:QZe9zczS
侑「しずくちゃんって私の事、苦手だったりする?」

しずく「そ、そんなことありません!」

121: 2021/04/04(日) 13:25:14.27 ID:QZe9zczS
侑「しずくちゃんはスクールアイドルについて語る時、饒舌になる私の事を変な子だとも苦手だとも思わないんだよね?」

しずく「はい」コクリ

侑「それと一緒だよ」

侑「私はしずくちゃんの事変な子だと思わないし苦手でもない」

侑「普段落ち着いてるのに演劇の話になると夢中で語る所、すごく可愛い」

侑「むしろ大好きだよ」

しずく「──!?////」

侑「あっ、顔真っ赤になった」

侑「そういう所も可愛いYO!」

しずく「ゆ、侑さん!!////」

侑「あはは!」

122: 2021/04/04(日) 13:28:06.20 ID:QZe9zczS
侑「しずくちゃん」

しずく「はい?」

侑「色々話してくれて」

侑「ありがとう」ニコッ

しずく「え……?」

侑「…………」ニコニコ

しずく「…………」

124: 2021/04/04(日) 13:31:15.91 ID:QZe9zczS
優しく微笑んでいる、目の前に座る侑さん。

何に対しての『ありがとう』なんだろう。

……分からなかった。

──だけど、何故か胸がドキドキして、顔が熱くなった。

125: 2021/04/04(日) 13:41:32.52 ID:QZe9zczS
侑「しずくちゃん」

しずく「は、はい」

侑「分かったと思うけれど、私も結構語りたがりなんだよね」

侑「聞き上手って訳でもないんだ。聞き上手は歩夢のポジションだもん」

しずく(いや、侑さんもすごく聞き上手だと思うんだけれど……)

侑「だからさ」

侑「一緒にさっきの演劇の事いっぱい語ろうよ」

侑「感想会しようよ!」

しずく「!!」

侑「遠慮しなくていいからさ」

侑「私もにわかなりに語りたいことたっくさんあるからさ!」ニコッ

しずく「侑さん……」

侑「ね? 一緒にお話しよーよ!」

しずく「…………」

しずく「い、いいんですか?」

侑「あったりまえじゃん」

侑「しずくちゃんの大好きは、先輩である私が全力で受け止めてあげるよ」

しずく「………………」

しずく「ふふっ」

しずく「わかりました」ニコッ

しずく「──侑さん!」

しずく「よろしくお願いします!」

侑「こちらこそ、よろしくね!」

126: 2021/04/04(日) 13:54:16.02 ID:QZe9zczS
私は遠慮しなかった。
感想を、私の気持ちを止める事なくさらけ出した。

侑さんも凄かった。
演劇について、誰かとこんなに熱く語れる日が来るだなんて思わなかった。

楽しかった。本当に。

ついつい熱く語るもんだから、店員さんに注意されてしまい……そこは反省。
注意された後、ふと侑さんと目が合って──何故かお互い笑ってしまった。

ランチ後も一緒にお買い物したり、お台場に移動しておすすめスポットの案内をしてもらったり、本当に楽しかった。

楽しい時間はあっという間だ。気が付けば帰りの時間になっていた。

今度は私が鎌倉の案内をする約束をして、この日のデートは終わりを迎えた。

──そして、この日から私は侑さんに自分から積極的に話しかける事が増えた。

127: 2021/04/04(日) 14:04:31.74 ID:QZe9zczS
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

しずく「え? 侑さんって運動苦手なんですか?」

侑「あはは……まぁ、うん」

しずく「ちょっと意外です」

しずく「あっ、でも確かに走り方可愛いですよね侑さん」

侑「し、しずくちゃん!? そんなことないよね?」

しずく「いや、すごく可愛いです」

侑「えぇ……」

しずく「すごく可愛いです」

侑「二回も言う!?」

侑「いや、まぁ話を戻すけど、今度の体育の授業でシャトルランがあるんだ。クラスの平均回数を下げたくないからなんとかしたいんだけど……どうにも運動が苦手で……」

しずく(侑さん、真面目だなぁ)

しずく(……よし!)

しずく「侑さん! 私に任せてください!」

侑「へ?」

128: 2021/04/04(日) 14:10:49.57 ID:QZe9zczS
しずく「私は球技は苦手ですが運動は得意な方です」

しずく「シャトルランはターンのコツを掴む事が一番大事なんです! スタミナ管理しつつ、疲れにくいターンを身に付けましょう!」

しずく「では、早速せつ菜さんに連絡して体育館の使用許可を頂いて──」

侑「い、今から!?」

しずく「はい! 善は急げですよ、侑さん!」

しずく「クラスで一番を目指して、クラスメイトの皆さんに侑さんの凄さを認識してもらいましょう!」

侑「目的が変わってるよ!?」

129: 2021/04/04(日) 14:24:31.40 ID:QZe9zczS
侑さんと話す事が増え、それと一緒に歩夢さんと話す事も増えた。

歩夢さんは本当に聞き上手な方で、一緒に話していてすごく安心する。──理想のヒロインって感じがして憧れる。

スクールアイドルフェスティバルが終わってからの歩夢さんは、前より話しやすくなった気がする。
動物が好きみたいで、今度オフィーリアを紹介する約束もした。

それに、歩夢さんだけでなく、せつ菜さんと愛さんともお話する機会が増えた。
侑さんを中心に、交流の輪が広がった。

改めて思う。侑さんはスクールアイドル同好会の中心人物だ。──まるで、ヒーローみたい。

……楽しい日々は続いていった。

130: 2021/04/04(日) 14:25:39.71 ID:QZe9zczS
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

彼方「最近のしずくちゃん、なんだか楽しそうだよね~」

エマ「わかるわかる~」

しずく「へ?」

131: 2021/04/04(日) 14:27:24.61 ID:QZe9zczS
同好会の練習中の出来事だった。
彼方さん、エマさんと私の三人でボーカル練習をしている時の。

柔らかい表情をしたお二人は語る。

132: 2021/04/04(日) 14:36:35.91 ID:QZe9zczS
エマ「なんだか雰囲気も柔らかくなってる気がするよ~」

彼方「だよね~」

しずく「えぇ……私ってそんなに硬い感じでしたか?」

彼方「うーん、なんだろぉ~。言葉にするの難しいんだけれど~」

エマ「あれかな? 距離感が近くなって話しやすくなった、かなぁ?」

彼方「そーそー! それだよエマちゃん」

しずく「そ、そうでしょうか?」

エマ「うんうん!」

彼方「いい子なのは変わらないけど、前のしずくちゃんはいい子でいないと! って感じがちょ~っとあったけれど、今は自然体で良い感じだよ~」

エマ「わかるなー! 可愛いよねー!」ナデナデ

彼方「ほんとね~」ナデナデ

しずく「う、嬉しいですけれど一緒に撫でられるのは少し恥ずかしいです……」

彼方「そっかぁ~ならもっと撫でるね~」

しずく「お話聞いてました!?」

133: 2021/04/04(日) 15:02:02.89 ID:QZe9zczS
撫でられつつ思う。
確かに前ほど『いい子な桜坂しずく』でいようって気はあまりしなくなった。

今でも嫌われるのは怖いし、イヤだけれど……それに脅える日々は無くなった。自然体の桜坂しずくでいる事が出来た。

桜坂しずくは、変な子で昔から友達がいなかった。
でも、今はスクールアイドル同好会の皆さんがいる。

同好会の皆さんは、本当の私を知っても離れない──優しい方々ばかりだ。

一度合同演劇祭の主演を下ろされて落ち込んでいた私に声を掛けてくれたかすみさん。彼女と一緒にヴィーナスフォートで励ましてくれた璃奈さん。
演劇祭に出る私の為にティアラを一生懸命作ってくれた同好会の皆さん。

そしてそれを渡してくれて、この前のデートで──


『そんな私の事、変な子だって……思わないんですか?』

『思わないよ』


──そう言ってくれた、侑さん。

本当に、本当に……優しい方ばかりだ。
そんな皆さんと過ごす日々は、かけがえのない宝物。……大好き。

幸せな日々を過ごす。



──でも、人生は上り坂の時もあれば、下り坂の時もある。

再び、下り坂の時が訪れた。

139: 2021/04/05(月) 00:13:39.90 ID:XtfXsTYU
しずく「最近の私の演技に違和感がある……ですか?」

140: 2021/04/05(月) 00:14:27.72 ID:XtfXsTYU
それは演劇部の練習中の時の出来事だった。

練習中、部長に別室へ呼び出される

定期公演のリハーサル中に呼び出されたから、お説教を受けるのかと身構えてしまった。けれど、状況は私にとってはもっと深刻なものだった。

141: 2021/04/05(月) 00:19:40.83 ID:XtfXsTYU
演劇部部長(以下部長表記)「うん。ごめん、急に呼び出してこんな事言って」

しずく「いえ全然大丈夫です」

しずく「ただ、どんな違和感を覚えるんですか?」

しずく「純粋に……気になります」

部長「……前の方が楽しそうに演技していた気がするんだよね」

しずく「え?」

142: 2021/04/05(月) 00:25:54.94 ID:XtfXsTYU
部長「えっとね。しずくの演技はさ、合同演劇祭を通して格段に良くなったんだよ」

部長「演技の幅も広がったと思う」

部長「私はそんなしずくだから今回の定期公演も、主役とは言わないけれど大事な名脇役に抜擢したの」

しずく「……ありがとうございます」

部長「さっきのリハーサルの時も、本当にいい演技をしていたと思う」

しずく「…………」

部長「真面目なしずくの事だから、一生懸命演じなきゃって思ってやってるんだと思うけれど」

部長「部活だからね。楽しむっていう本質は忘れちゃダメだよ」

しずく「……ごめんなさい」

部長「いや、謝ることじゃないって!」

部長「私は本当、しずくには期待してるの。成長してほしいんだ。……しずくはまだ一年生なのに、誰よりも自分に厳しくて、良い公演にしようと努力してくれる」

部長「尊敬してるよ、本当に」

しずく「部長……」

部長「だからこそ、かな」

部長「もっと楽しんでほしい。プレッシャーとか感じなくていいからさ」

しずく「……はい……」

143: 2021/04/05(月) 00:44:15.68 ID:XtfXsTYU
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

しずく「って事があって……」

璃奈「そんなことがあったんだね」

かすみ「演技が楽しそうじゃない、かぁ」

かすみ「実際どうなのさ、しず子」

しずく「へ?」

かすみ「演技、楽しくないの?」

しずく「いや、そんな事ない……と思う」

かすみ「めっちゃ曖昧な答え方するじゃん」

しずく「部長に言われて、分からなくなっちゃったの」

しずく「演劇は大好きだし、頑張りたいって思ってる」

しずく「次の公演も必ず成功させたいし、その為に努力ものしてる……でも、前の方が楽しそう演技してたって言わちゃった」

しずく「……私って、どんな演技していたんだっけか……わかんなくなっちゃったよ……」

かすみ「しず子……」

璃奈「しずくちゃん……」

144: 2021/04/05(月) 00:53:24.26 ID:XtfXsTYU
璃奈「………………」カキカキ

璃奈「しずくちゃん」チョイチョイ

しずく「?」

璃奈「りなちゃんボード……『从[ ・᷄ὢ・᷅ ]从』変な顔!」

しずく「ぶっ!」

かすみ「ッッッ!!」プルプル

璃奈「『从[ ・᷄ὢ・᷅ ]从』」グイッ

しずく「ちょ、ちょっ──ぷっ、あっはっは! そ、その顔で近づいて来、──あっはっは!」

璃奈「元気出た?『从[ ・᷄ὢ・᷅ ]从』」

しずく「あっはっはっはっは!! そ、その顔で、言わな……や、やめてよー!!」

璃奈「……」グッ

璃奈「かーらーのー」

璃奈「こしょこしょタイム」コショコショ

しずく「──!!」ビクッ!!

145: 2021/04/05(月) 01:01:18.46 ID:XtfXsTYU
しずく「あ、ぁっふ……ちょ、り……璃奈さん!!」

しずく「やめ、私……くすぐっ……よわ……!! ──あっはっはっはっは!! も、もうダメ! あっはっは!!」

かすみ「ちょ、ちょっとりな子? そろそろやめといた方がいいって」

璃奈「うん、止める」パッ

しずく「はぁ、はぁ、はぁ」

しずく「り、璃奈さん!? 急にどうし──」

璃奈「笑ってほしかった」

しずく「え?」

璃奈「元気ないしずくちゃん見てるの、私辛い」

璃奈「だから……とりあえず笑ってほしかった……」

璃奈「急にくすぐったりして……ごめんなさい」

しずく「璃奈さん……」

146: 2021/04/05(月) 01:06:22.13 ID:XtfXsTYU
しずく(璃奈さんなりの、励まし方だったんだろうなぁ)

しずく「璃奈さん」

璃奈「?」

しずく「ありがとう」ニコッ

璃奈「!! ──うんっ」

しずく「かすみさんも、話聞いてくれてありがとうね。二人には本当に感謝してるよ」

かすみ「いや、かすみんは全然いいんだけどさ」

かすみ「あんまり抱え込んじゃダメだよ?」

しずく「うん、分かってるよ」

しずく「何かあったらまた相談するね」

147: 2021/04/05(月) 01:20:48.33 ID:XtfXsTYU
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタスタスタ

しずく(かすみさんにも璃奈さんにも、心配させないようにあぁ言ったものの……)

しずく(前の方が楽しそうに演技していた、かぁ)

しずく(私は別に、前と同じように演技してるつもりなんだけれどね)

しずく(しっかりとキャラクターを理解して、自分の中に落とし込む。そして、ただ演技するだけでなく、キャラクターの気持ちをさらけ出すように演じる)

しずく(そこは前から変わらないし、前より成長したんじゃないかなって……思うんだけど……)

しずく(演技って……難しいなぁ)

148: 2021/04/05(月) 01:27:20.75 ID:XtfXsTYU
スタスタスタスタ

侑「あれ? しずくちゃんじゃん! また廊下で会ったね」ニコッ

しずく「!!」

しずく「侑さん、こんちには」ニコッ

侑「うん、こんにちはー」

しずく「移動教室ですか?」

侑「うん、前と一緒。実技があるんだぁ」

しずく「そうなんですね。ファイトです」

侑「ありがとう!」

侑「あっ、あとこの前シャトルランの練習、ありがとう! あれのおかげで恥ずかしい結果で終わらなかったよ!」

しずく「え? ほんとですか!? 良かったです!」ニコニコ

しずく(ふふ、なんか侑さんと話してると元気になるなぁ)

侑「……あれ? しずくちゃん?」

しずく「ん?」

侑「何かあった?」

侑「いつもよりちょっと元気ないよ?」

侑「何か悩み事でもあったりする?」

しずく「え……?」

149: 2021/04/05(月) 02:22:51.60 ID:Etqxu3yE
>>148 誤字あった為修正します。


スタスタスタスタ

侑「あれ? しずくちゃんじゃん! また廊下で会ったね」ニコッ

しずく「!!」

しずく「侑さん、こんにちは」ニコッ

侑「うん、こんにちはー」

しずく「移動教室ですか?」

侑「うん、前と一緒。実技があるんだぁ」

しずく「そうなんですね。ファイトです」

侑「ありがとう!」

侑「あっ、あとこの前シャトルランの練習、ありがとう! あれのおかげで恥ずかしい結果で終わらなかったよ!」

しずく「え? ほんとですか!? 良かったです!」ニコニコ

しずく(ふふ、なんか侑さんと話してると元気になるなぁ)

侑「……あれ? しずくちゃん?」

しずく「ん?」

侑「何かあった?」

侑「いつもよりちょっと元気ないよ?」

侑「何か悩み事でもあったりする?」

しずく「え……?」

150: 2021/04/05(月) 02:25:13.64 ID:XtfXsTYU
続きはまた今度更新します。

156: 2021/04/05(月) 23:45:41.59 ID:XtfXsTYU
しずく(うそ……なんで分かるの?)

しずく「えっと……そんなことないですよ?」ニコッ

しずく(でも、演劇部での私の問題だし……侑さんにあんまり心配かけたくない)

侑「……本当?」ジー

しずく「うっ……」

しずく(じーっと侑さんに見つめられる。なんだか恥ずかしい)

しずく(……本当に、綺麗な目してるなぁ)

侑「……」ジー

しずく「……」

しずく(これは……ダメっぽい)

しずく「侑さん」

侑「んー?」

しずく「なんで……分かったんですか?」

侑「さっき言った通りだよ?」

侑「いつもよりちょっと元気ないなって思ったんだ」

しずく「……あはは、敵いませんね……」

しずく「侑さんには、心配かけたくなかったんですけどね」

侑「……しずくちゃん」

侑「悩み事なら、相談してよ。私に出来ることがあれば、力になりたいから」

しずく「…………」

しずく「分かりました」

しずく「…………」スゥ-

しずく「──侑さん」

侑「うん」

しずく「放課後、お時間頂けますか?」ニコッ

158: 2021/04/05(月) 23:57:47.01 ID:XtfXsTYU
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


人気のない、放課後の空き教室。そこには私と侑さんしかいない。

同好会の練習は、先に始めてもらう事にした。

……多分、長くなるから。

演技の事もあるけれど、侑さんには全部話す事にした。

過去の事も、私がどんな子なのかを……。

──本当の私を知ってほしかったから。

ぽつり、ぽつりと、私は語り始める。


侑さんは静かに、私の話を聞いてくれた。

159: 2021/04/06(火) 00:06:19.58 ID:pFNMDaIz
しずく「私は小さい頃から、昔の映画と小説……ううん、それだけではありません。創作された物語が大好きでした」

しずく「主人公を中心に動く物語のシーンの1つ1つに心が躍って、物語にずっと浸っていたくなる感覚がも、大好きでした」

しずく「そして何時しか、『もし私が、あの世界の登場人物だったら?』って思い始めて、あれこれ想像や妄想ばかりしていました」

しずく「そんな私は、幼稚園の時……でしたでしょうか? 仲良しの友達に沢山そんな話をしました」

しずく「何の疑問もなく、皆、私と同じだと思っていましたから」

しずく「だけど、違いました」

しずく「私は──変な子だったんです」

160: 2021/04/06(火) 00:16:38.41 ID:pFNMDaIz
しずく「空想のお話をすればするほど、周りの子から変な顔をされる事が増えました」

しずく「設定をしっかり考えた、物語のようなおままごとをしても、楽しんでくれませんでした」

しずく「そんなこんなあり、いつしか……誰も私とは……遊んでくれなくなっちゃいました……」

しずく「そして、周りの子の何気ない一言が、私の心に突き刺さりました」

しずく「『しずくちゃんって変な子だよね』という一言」

しずく「私は、気づいてしまいました」

しずく「私みたいに、古い映画や小説が好きな子は普通じゃないって事に。空想や妄想ばかりしている子は、変な子だって事に」

しずく「変な子には、誰も寄り付きません。それがきっかけで……嫌われるんじゃないかって思ったら、怖くて震えが止まらなくなりました」

しずく「だから私は──本当の私を心の奥に閉じ込めました」

しずく「そして、演じました」

しずく「みんなが好きなものが好きで、妄想もしない、普通の女の子である」

しずく「──桜坂しずくを」

161: 2021/04/06(火) 00:22:18.86 ID:pFNMDaIz
しずく「そんな桜坂しずくは幸運にも、ある時お母さんが連れて行ってくれた子供向けの演劇を観て、演劇と出会う事ができました」

しずく「ステージの上でキラキラして輝く役者さん達を見て、私は演劇の世界に惹き込まれました」

しずく「舞台の上でなら、いくらでも世界にのめり込める。登場人物になれる。思い切り演じられる」

しずく「演劇は、本当に大好きでした」

しずく「演劇という居場所を見つけた私は、幸せでした」


しずく「そして、今はもうひとつ大切な居場所があります」

侑「………………」

しずく「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会です」

162: 2021/04/06(火) 00:40:02.04 ID:pFNMDaIz
しずく「優しい方が多くて、ソロアイドルの集まりなのに、皆で励まし合いながら練習をする」

しずく「皆バラバラに、それぞれの目標に向かっているのに……仲良しで、本当に幸せな日々を過ごせています」

しずく「先程話した過去の事を聞いても、本当の私を好きだと言ってくれる親友もいて……」

しずく「誰がこの話を聞いても、受け入れてくれるんだろうなっという安心感もありますし」

しずく「本当に……大好きで、大切な場所なんです」

しずく「本当に──大好きなんです」

しずく「そんな事もあり、最近の私は普通でいい子な桜坂しずくを演じようと思わなくなりました。嫌われるんじゃないかという日々に脅えることもなくなり、楽しく過ごしています」

しずく「皆さんや……侑さんのおかげで」

163: 2021/04/06(火) 00:57:59.60 ID:pFNMDaIz
しずく「ここからが、今私が抱えている悩み事のお話です」

しずく「演劇部の方では現在、定期公演の練習をしているんです」

しずく「私は主役ではないのですが、名脇役として選出して頂き、日々練習に励んでいます」

しずく「自分なりにキャラクターを理解して、落とし込んで、全力で演技しようと思っています。そして、公演を必ず成功させよう思っています」

しずく「……ただ、部長からこう言われてしまったんです」

しずく「『前の方が楽しそうに演技していた気がする』って」

しずく「色々思うことはあります。ただ、考えれば考えるほど、わからなくなりました」

しずく「……侑さん」

侑「…………」

しずく「私……どんな風に演技していたのか……分からなくなってしまいました」

しずく「今の私の演技って……楽しそうじゃないのかな……?」

164: 2021/04/06(火) 01:13:49.90 ID:pFNMDaIz
全部話し終えて、一息つく。

どくん、どくんと胸の奥が鼓動する。

大丈夫、大丈夫。

同好会の皆さんは──いや、侑さんなら! 私の話を聞いても、私を嫌わない。私から離れない。

それは、分かっている

──でも、想いを伝えるのって、やっぱり難しい。

いつまで経っても慣れない。
胸の鼓動が止まない。

大丈夫、大丈夫だよ。桜坂しずく。
侑さんなら、大丈夫。この話を聞いても、受け入れてくれる。

──侑さんから、嫌われたくない。

165: 2021/04/06(火) 01:17:49.41 ID:pFNMDaIz
侑「しずくちゃん」

しずく「…………」



侑「ありがとう」

しずく「え?」

166: 2021/04/06(火) 01:18:16.38 ID:pFNMDaIz
ずっと話を聞いてくれた侑さんは、私に向かって──微笑んでくれた。

167: 2021/04/06(火) 01:27:56.63 ID:pFNMDaIz
侑「色々と話してくれて、聞かせてくれて」

侑「本当に、ありがとう」ニコッ

しずく「侑さん……」

しずく「…………」

しずく(……本当に、この人は……)

しずく(なんでこんなに優しいんだろう)

しずく(璃奈さんがライブ前に塞ぎ込んでしまった時、彼女が思いを打ち明けてくれたあの時もそうだった)

しずく(侑さんは……こういう時必ず『ありがとう』って言ってくれるんだ)

しずく(感謝しなきゃいけないのは、私の方なのに……)

168: 2021/04/06(火) 01:38:52.59 ID:pFNMDaIz
侑「ねぇねぇ、しずくちゃん」

しずく「な、なんでしょう?」

侑「私が思った事を伝える前に、ちょっとやってほしいことがあるんだ」

しずく「やってほしい、こと?」

侑「うん!」

侑「覚えている範囲でいいからさ。次やる公演の演技をここで私に見せて欲しい」

しずく「私の演じる役のでしょうか?」

侑「そうそう!」

侑「覚えている範囲で大丈夫だから!」

しずく「覚えている範囲……ですか」

しずく「台詞は全部覚えていますので、どこのシーンでもいけますよ?」

侑「え? ……ぜ、全部?」

しずく「はい。なるべく台本を頂いた初日には全部台詞は覚えるようにしているので」

侑「ゆ、優秀だ」

侑「えーと、そしたら最初から通しで私に見せて欲しい。……いいかな?」

しずく「……はい! 良いですよっ」

侑「じゃあ、よろしくね!」

しずく「はい!」

しずく「では……ご覧あれ、です!」

169: 2021/04/06(火) 01:52:46.97 ID:pFNMDaIz
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

しずく「──ふぅ……以上です」

しずく(よし、我ながらよく出来た気がする)

しずく「侑さん、どうで──」

侑「はぁ~~~~~!!」キラキラ

しずく「!?」ビクッ!!

侑「やっぱりしずくちゃんってすっごいね! 演技上手すぎだよ!!」

侑「可愛いし、凛々しいし、それを見ていた私も、物語の世界に入っちゃったような感覚だった!惹き込まれたよ! ほんっとすごい!」

侑「凄いし可愛いしで! ときめいちゃう~!!」

しずく「……あ、ありがとう……ございます……////」

しずく(お、お顔があっつい……!!)

しずく「え、えっと、侑さん!」

侑「うん!」

しずく「あの……その……そう言って貰えるのは本当に嬉しいんですけれど」

しずく「これの意図は……」

侑「あぁ、えっとね!」

侑「ごめん、質問になっちゃうんだけどさ」

しずく「はい」

侑「しずくちゃん、今演技してて楽しかった?」

170: 2021/04/06(火) 01:54:15.35 ID:pFNMDaIz
しずく「へ?」

侑「重く考えないで、しずくちゃん。演劇部であった出来事は、全部忘れて」

しずく「………………」

侑「いま、ここで演技をしていて、しずくちゃんが楽しかったか、楽しくなかったかを……教えてほしいな」

しずく「………………」




しずく「楽しかったです」

171: 2021/04/06(火) 02:11:14.74 ID:pFNMDaIz
侑「あはは、そっか!」ニカッ

しずく「はい!」

侑「しずくちゃん」

侑「単純に考えちゃっていいんだよ」

しずく「え?」

侑「しずくちゃんは今、新しいステージに向かって歩き始めているんだよ」

侑「本当のしずくちゃんとして、演劇人生を歩み始めているんだ。そんな時に、定期公演で名脇役に選ばれて、どこか気を張りすぎていたんじゃないかな?」

侑「公演、絶対に成功させなきゃって」

しずく「それは……」

侑「そして、そんな必死で頑張っていた時に、部長さんから前の方が楽しそうだったって言われちゃったから……多分気持ちがいっぱいになってしまったんだよ」

しずく「でも……リハーサルの時に部長から演技が楽しそうじゃなく見えてしまっていたのは事実でしょうし……」

侑「しずくちゃん」

侑「他人が他人の気持ちを全て理解するだなんて、絶対にできない事だよ」

しずく「!!」

172: 2021/04/06(火) 02:24:19.12 ID:pFNMDaIz
侑「タイミング悪く、たまたまそう見えてしまっただけかもしれないよ?」

侑「現に私は、しずくちゃんの演技を見てすっごく楽しそうだなって思ったもん!」

侑「だから、単純に考えちゃっていいんだ」

侑「しずくちゃんの想いを」

侑「私は演劇が大好きで、演技も大好き」

侑「演技する事は楽しいんだ! 楽しそうに見えない? そんな事ない! 私は楽しいもん!」

侑「って感じでさ」

しずく「…………」

侑「周りからの目なんて気にしなくて良いんだよ」

侑「私はこれが楽しいし、大好きなんだってスタンスで、いいんじゃないかな?」

しずく「……」

しずく(そっか)

しずく(単純でいいんだ)

しずく「そっか……」

しずく(桜坂しずくは、演劇が大好き。演じる事も大好きで)

しずく(演技している時は、物語の一人になれるようで)

しずく(すっごく楽しいんだ!)

173: 2021/04/06(火) 02:39:08.14 ID:pFNMDaIz
しずく「侑さん」

しずく「ありがとう」ニコッ

侑「……うん!!」

侑「どういたしまして!」ニコッ

しずく「ッ!!///」

しずく(微笑む侑さんを見て、また顔が熱くなった)

しずく(さっきとは違う感覚で、心臓の鼓動する)

174: 2021/04/06(火) 02:54:47.84 ID:pFNMDaIz
侑「あとさ。デートの時の繰り返しになっちゃうんだけどね」

侑「私はしずくちゃんの事、変な子だなんて全く思わないよ」

しずく「侑さん……」

侑「しずくちゃんが演じていたっていう桜坂しずくだって」

侑「しずくちゃんはしずくちゃんだよ」

侑「私の可愛い後輩の、ね」

175: 2021/04/06(火) 03:05:10.25 ID:pFNMDaIz
侑「真面目で、優しくて、ちょっとイタズラ好きな所もあって少しおちゃめで……」

侑「一生懸命で努力家で、演劇が大好きで、少し甘え下手で頑張りすぎちゃう、少し頑固な一面もあって」

侑「とっても可愛い子で、演じることが大好きな子」

侑「全部、全部しずくちゃんなんだよ」

しずく「全部……私?」

侑「うん!」

侑「だから、さ」

侑「本当のしずくちゃんでいて、いいんだよ」

しずく「……」

侑「それで、またいい子である桜坂しずくを演じたくなったら、いつだって演じてもいいよ」

しずく「…………」

侑「演じちゃう事だって、しずくちゃんの良さだもん。どんなしずくちゃんでも、しずくちゃんはしずくちゃんである事に変わりないから」

侑「私が受け入れてあげる」

侑「だから、安心して?」ニコッ

177: 2021/04/06(火) 03:10:16.78 ID:pFNMDaIz
私にそう言ってくれて、手を差し伸べてくれる侑さん。

笑顔で、私の目を真っ直ぐ見つめて。

本当に……優しすぎますよ。

少し、泣きそうになる。
でも、泣いちゃダメだ。
笑顔を向けている人に、涙を見せるわけにはいかない。

笑おう。桜坂しずく。

178: 2021/04/06(火) 03:12:01.45 ID:pFNMDaIz
しずく「侑さん!」

しずく「ありがとうございますっ!」

しずく「そして……」

しずく「──これからもよろしくお願いします!」ニッコリ

179: 2021/04/06(火) 03:17:33.57 ID:pFNMDaIz
──侑さん、覚えていますか?

──この日があったから、今の私がいるんです。

──貴方のおかげで、私は救われたんです。

──本当に、ありがとう。

──大好きです。

180: 2021/04/06(火) 03:29:06.55 ID:pFNMDaIz
少し時は過ぎ、定期公演は無事終わりを迎えた。

結果は大盛況。お客様も部員の皆も笑顔になる素晴らしい公演が出来た。

部長からもお褒めの言葉を頂いた。……嬉しい。

定期公演が完了した為、最近あまり顔を出せていなかったスクールアイドル同好会の練習にもまた参加出来るようになった。
また皆に会えるのが楽しみで仕方なかった。
演劇に集中したい時は、どうしてもそっちメインにしなくてはいけないから。

ただ、今日からまた会える。
スキップでもしたい気分だけれど、抑える。テンションを上げ過ぎず、平静を装いながら部室に向かう。
我慢だよ桜坂しずく。

ただ、部室に着く前に──侑さんから連絡が来た。

181: 2021/04/06(火) 03:32:46.77 ID:pFNMDaIz
侑「ねぇねぇしずくちゃん」

侑「このフェスに出場してみない?」

侑「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の代表として!」

しずく「へ?」

182: 2021/04/06(火) 03:34:02.50 ID:pFNMDaIz
空き教室に呼び出され、キラキラと目を輝かせる侑さん。

そんな彼女から、予想も出来ない言葉が私の耳に届いたのでした。

183: 2021/04/06(火) 03:36:01.32 ID:pFNMDaIz
続きはまた今度更新します。
物語も終盤です。最後までよろしくお願い致します。

おやすみなさい。

191: 2021/04/07(水) 22:42:00.73 ID:Tq2CCMPE
しずく「フェス……ですか?」

侑「そうそう!」

侑「ダイバーフェスとはまた違うやつなんだけど、お台場で開催されるんだ!」

侑「詳しく教えたいから隣来て! 座ろ!」

しずく「は、はい!」

193: 2021/04/07(水) 22:48:16.88 ID:Tq2CCMPE
iPadを慣れた手つきで操作する侑さんはそのまま席に着いた。

私も隣の席の椅子に座る。

お席お借りします。……あ、ここ空き教室だから、誰かの席じゃないのか。

ふとそう思いながら侑さんの横顔を見る。

……ふふっ、今日も可愛い♡

194: 2021/04/07(水) 22:57:25.61 ID:Tq2CCMPE
侑「あった、これこれ!」スッ

しずく「あっ、ありがとうございます。……ふむふむ、なるほど……ソロアイドルが集まるフェスティバルなんですね」

侑「そうそう!」

侑「それでね! 運営の人達が私達ニジガクの事、スクールアイドルフェスティバルで知ってくれたみたいで、参加してみないかってお誘いが届いたんだっ」ニッコリ

しずく「へぇ~! それはすっごく嬉しいです!」ニコッ

侑「だよねだよね!」ニコッ

侑「ただ、やっぱり……ダイバーフェスの時と一緒で、一つの学校で使える時間は限られてくるから、誰か一人までしか出られない」

侑「そこで、しずくちゃんに是非出てほしくて連絡したんだっ」

しずく「な、なるほど」

しずく「でも……ゆ、侑さん!」

侑「ん?」

しずく「その、出てみないかって言ってもらえるのは凄く嬉しいんですけれど」

しずく「他の皆さんにも、そこは聞いてみないといけないのではないでしょうか?」

しずく「勿論、私は出場してみたいですけれど……」

侑「うん、しずくちゃんならそう言うと思ってた」

しずく「へ?」

195: 2021/04/07(水) 23:13:22.42 ID:Tq2CCMPE
侑「実はね、他の皆もライブイベントに出る予定が決まってるんだ」

しずく「え、えぇ!?」

侑「果林さんと愛ちゃんは今度やる藤黄学園のライブでゲスト参加が決まってるし、エマさんも来週の日曜日に学童達が集まる地域交流イベントでライブする事になってるし」スッ、スッ

侑「歩夢はこの前できたファンクラブイベントでライブの予定。かすみちゃんも同じ! 璃奈ちゃんと彼方さんもオンラインライブするし、せつ菜ちゃんなんかすごいよ! Zepp Tokyoでライブする予定があるよ!」スッ、スッ

しずく「……」ジー

しずく(iPadに表示されるスケジュールアプリ。ぎっしり文字で埋め尽くされてる……す、すごい……!!)

しずく「わぁ……!」

侑「校内だけでなく、校外でもどんどんウチは有名になってってるんだ!」

侑「ノリに乗ってる感じ! こんな感じのお誘いメール、すっごい届くんだよ!」

しずく「す、すごいです……!!」

侑「ふふ、ときめいちゃうよね!」

侑「だから、しずくちゃん。皆に遠慮することないよ」

侑「良かったら出てみない?」

しずく「はい! そういう事なら是非とも出たいです!」キラキラ

侑「あはは、分かった。エントリーのメール、送るね」ニッコリ

しずく「はい! よろしくお願いします!」ペコリ

侑「うん。任されたっ」

197: 2021/04/07(水) 23:28:14.99 ID:Tq2CCMPE
侑「あとね、しずくちゃんをこのフェスを紹介したのにも理由があるんだよね」

しずく「理由?」

侑「うん」

侑「このフェス、20校のスクールアイドルが参加するんだけどね」

侑「お客さんの投票で、どの子のライブが良かったか集計するんだ」

しずく「それって……数字でどの人のライブが良かったのか分かるって事ですか?」

侑「そう。1位から3位までは発表もされて、なんと表彰もされるんだよ!」

しずく「なるほど……なんだか大会みたいですね」

侑「そうなの!」

しずく「あれ? でもそれ、私に紹介した理由には繋がらない気が……」

侑「いや、ちゃんと理由はあるよ」

しずく「?」キョトン

198: 2021/04/07(水) 23:41:20.64 ID:Tq2CCMPE
侑「ほらっ、しずくちゃんは将来の夢って女優さんになることじゃん?」

しずく「えぇ、そうですね」コクリ

侑「でしょ?」

侑「それで今後、大学に行くのか、どこかの劇団に入るのか、または事務所に所属するようになるかはまだわからないけど」

侑「表彰されるって事は、部活動での実績になるよ」

しずく「あっ……確かにそうですね」

侑「これってさ、しずくちゃんの夢に繋がると思うんだ。だから紹介したんだ」

しずく「……侑さんは、私の女優になる夢を応援してくれるんですね」クスクス

侑「そんなのあったりまえだよっ」

しずく「!!」

侑「私、しずくちゃんなら絶対に女優になれると思ってる」

侑「その夢を応援したいんだ」ニコッ

しずく「侑さん……」

199: 2021/04/07(水) 23:51:26.21 ID:Tq2CCMPE
しずく(ほんと)

侑「……」ニコニコ

しずく(優しいなぁ)

しずく「ありがとうございます、侑さん」

しずく「私、表彰されるように頑張りますね」ニコッ

侑「うん! しずくちゃんなら絶対いけるよ!」

しずく「あははっ、ご期待に応えられるよう精進します!」

侑「うん!」

200: 2021/04/07(水) 23:56:08.21 ID:Tq2CCMPE
しずく「……」


しずく「……」キョロキョロ

侑「? しずくちゃん?」

しずく「……ゆ、侑さん」

侑「ん?」

しずく「その……えっと……」モジモジ

しずく「肩……少しお借りしていいでしょうか……?」

侑「え? 肩?」

しずく「は、はい」

しずく「その……」

しずく「肩に頭を乗せて……寄りかかりたいです……」モジモジ

侑「!!」

しずく「良いでしょうか……?」

侑「いいよっ!!」

しずく「!!」ビクッ!!

201: 2021/04/08(木) 00:00:21.96 ID:+N+/e9/j
侑「もうっ、ドンと来い!」

侑「別に言わなくたって寄りかかってくれて良かったのに」

しずく「そ、それはできませんよ!」

侑「まぁ、でもしずくちゃんは真面目な所も可愛いし」

侑「もじもじしてるしずくちゃん見れたからいいや!」

侑「可愛かったよ♪」

しずく「ゆ、侑さん! それは忘れて下さい!////」

侑「それはできないかな」

しずく「も、もぉ~!!」

ポフッ

侑「おっとっと」

しずく「肩、お借りします!!」

侑「うん、どーぞ」ニッコリ

しずく「っ、……////」

侑「……」ニコニコ

202: 2021/04/08(木) 00:11:37.69 ID:+N+/e9/j
しずく「……」

しずく(侑さん)

しずく(優しくて、私より小さいのにかっこよくて、可愛い先輩)

しずく(前は頼りになる先輩ってイメージだったけれど)

しずく(今はもう……愛しい人になっています)

しずく(私の……ヒーロー……)

しずく「侑さん」

侑「んー?」

しずく「いつも──ありがとうございます」

しずく「私、頑張りますね」ニッコリ

侑「うん! でもあまり無理し過ぎないようにね?」ナデナデ

しずく「!!////」

しずく「……う、うん……わかりました……////」ボソッ

侑「よしよし」ニコニコ ナデナデ

203: 2021/04/08(木) 00:19:46.36 ID:+N+/e9/j
侑「あっ、そうだしずくちゃん」

しずく「なんでしょうか?」

侑「どうせならさ、1位になっちゃおうよ」

侑「1位で表彰されよう」

しずく「えぇ、勿論そのつもりですよ?」

侑「もしさ」

しずく「?」

侑「今度のフェスで1位になれたらさ」

侑「私が出来る範囲になるけれど」





侑「一つなんでもしてあげるよ」ニコッ

しずく「──え?」

204: 2021/04/08(木) 00:40:09.00 ID:+N+/e9/j
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「ワンツーフリフォー・ファイブシックスセブンエイッ」

しずく「ふっ、ふっ……!!」

歩夢「ワンツーフリフォー・ファイブシックスセブンエイッ」

キュ、バッ──スタッ!!

しずく「はぁ、はぁ」

歩夢「しずくちゃん、お疲れ様っ! はい、タオルだよっ」スッ

しずく「歩夢さん、ありがとうございます!」ニコッ

歩夢「いえいえっ」ニッコリ

せつ菜「しずくさん、気合い入ってますね! ダンスのキレがすごいです!」

しずく「ふふっ、久しぶりのスクールアイドル活動ですし、楽しいですっ」

しずく「……よし、次は少しハードな基礎トレします!」

愛「もう!? しずく、本当に気合入ってるね~。愛さんも一緒にやっていーい?」

しずく「もちろんです!」

せつ菜「あっ、なら私も参加します!!」ペカー

果林「私もいいかしら?」

しずく「ぜひぜひ! 皆さん一緒にやりましょう!」ニッコリ

ワイワイガヤガヤ


璃奈「しずくちゃん、すっごい気合入ってるね。スーパー体力つよつよメンバーが揃っちゃった」

かすみ「ね、ねー。かすみん、あのメンバーと基礎トレする気にならないよ……前一緒に練習やった時、地獄だったし……」

かすみ(──というかしず子、気合入ってるというよりも……)


しずく「……(絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる絶対に1位になる)」ギロリ


かすみ(め、めっちゃギラついてない?)

205: 2021/04/08(木) 01:01:21.29 ID:+N+/e9/j
侑「──それで、ここでヒツジのぬいぐるみがいっぱい降ってくるようにセッティングして」スッ、スッ

彼方「ほーほー」フムフム メモメモ

スタスタ

かすみ「侑せんぱーい」

侑「あっ! かすみちゃん」

侑「どうしたの?」ニッコリ

かすみ「なんかしず子、すっごく気合い入ってるんですけど……さっき二人きりで話してる時に何かあったりしましたか?」

侑「へ? いや、特にはないかな……普通にフェスの話したくらいだよ?」

侑「何かあったの?」

かすみ「あ、いや! なんか気合い入ってると同時にすっごいギラついてる気がして……何かあったのかなぁって」

侑「ぎ、ギラ?」

侑「……うーん……あれかな? 投票制で、1位から3位は表彰されて実績になるよって話したから、気合い入ってるのかも?」

彼方「……」ジー

彼方「侑ちゃんは罪深い子ですな~」ニコニコ

侑「え、えぇ!?」

206: 2021/04/08(木) 01:12:04.31 ID:+N+/e9/j
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

~夜・侑の部屋~

侑「うん! うん……あはは! だね~」ニコニコ

侑「わかった! ──うん、うん。おやすみ、歩夢っ! また明日!」ニッコリ

ピッ

侑「ふぅ……今日も一日楽しかったなぁ」

侑「──あっ、そうだ。皆の練習スケジュール、もう少し組まないと」

侑「よーし」

侑「………………」カキカキ

侑「………………」カキカキ

侑「………………」カキカキ

侑「あっ、明後日……音楽室で実技テストあるんだった」

侑「あとで少しピアノ練習しよーっと」

侑「………………」カキカキ

侑「…………」カキ、カキ

侑「……ふぅ……」

侑「………………」ウト、ウト

侑「……ん!」パシッ!!

侑「……よし、頑張ろ……」

侑「みんなの為に、自分の為に」

侑「もっと頑張らないと」

216: 2021/04/09(金) 22:03:41.56 ID:96tmvfXG
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


侑「──しずくちゃん、遂に明日はフェスの開催日だね」

しずく「はい! 早いものですね。……緊張しますが、早く歌いたい気持ちもあってドキドキしています」グッ

侑「あっはは、気合十分だね」ニコッ

しずく「えぇ!」

しずく「それぞれ別のライブに向けてではありましたけれど、一緒に練習した皆さんの為にも」

しずく「侑さんの為にも、自分の為にも……頑張ります!」

しずく「そして、1位になります」

侑「うん! しずくちゃんなら絶対になれるよっ」

しずく「はいっ!」ニコッ

217: 2021/04/09(金) 22:15:14.74 ID:96tmvfXG
侑「明日の動きや流れについてはバッチリ?」

しずく「もちろんです!」

しずく「実家の鎌倉からお台場まで行くので少し朝は早いですが、慣れていますので平気です」

しずく「会場も控え室の場所も頭に入っていますし、メイク等も寮から近いという事でエマさんと果林さんが朝から手伝いに来てくれますので、安心ですっ」

侑「うん、なんの心配も無さそうだね。優秀優秀~」ニコニコ ナデナデ

しずく「!!////」

しずく「……えへへ」ニコニコ

218: 2021/04/09(金) 22:30:59.35 ID:96tmvfXG
侑「関係者入場、朝は3人までしか入れないから……果林さんとエマさんにお手伝いをおまかせする形になっちゃうけど」

侑「後から皆と一緒に行くから、その時はよろしくね」

しずく「はい! お待ちしていますね」ニコッ

しずく「それにしても……まさか全員で応援しに来てくれるだなんて思っていませんでした」

侑「私達ニジガクメンバーはなんだかんだ誰かのライブがあると皆で応援しに行ったり、お手伝いしたりしちゃうよね~」

しずく「本当ですよね。お優しい方ばかりです」

侑「ねっ」ニッコリ

侑「──よし! しずくちゃんは明日の準備バッチリなのは分かったし、他の子のスケジュールもチェックしとこっと!」スッ、スッ

しずく「……」ジー

侑「ん? しずくちゃんどうしたの?」

しずく「侑さん、最近休めていますか?」

侑「え?」

219: 2021/04/09(金) 22:46:18.75 ID:96tmvfXG
しずく「その……最近私を含め、皆さんのスケジュールや練習、演出や準備などして下さってるじゃないですか」

しずく「それに加えて音楽科での実技練習もあるでしょうし」

しずく「すっごく、すっごく助かっているんですが……その……疲れが溜まっていないか心配で」

侑「しずくちゃん……」

侑「ありがとうね」ナデナデ

しずく「……」

220: 2021/04/09(金) 22:49:53.47 ID:96tmvfXG
侑「確かに最近忙しいし、疲れも溜まってると思う。歩夢にも同じようなこと言われて、心配されたよ」

侑「でも私、最近毎日すっごく楽しいんだ」ニコッ

しずく「侑さん……」

侑「スクールアイドルに出会う前の私はさ」

侑「何もときめきが無くて、毎日同じような日々を過ごしてるだけだった」

侑「私の見ている世界の色は、黒色とピンク色でしかなかった」

しずく「世界の……色?」

221: 2021/04/09(金) 22:59:48.84 ID:96tmvfXG
侑「あはは、分かりにくい例え方してごめんね」

しずく「いえ……」

侑「歩夢と一緒にいる以外、楽しくなくてさ。……なんにもない毎日だった」

侑「でも! せつ菜ちゃんのライブを見て、スクールアイドルを知って、皆と出会ってからは──私の見ている世界の色が……たっくさん増えた」

侑「どんどん世界の色が増えていって、今の私の世界の色は、虹色に輝いてるんだっ」

侑「ときめくことばっかりで、ほんっとうに毎日が楽しいんだ」

しずく「……」

侑「でも、心配してくれてありがとうね。それだけでも私、すごく嬉しいよ」ニコッ

侑「でも、さ……もう少し頑張らせてよ」

侑「お願い」

しずく「………………」

しずく「分かりました」

しずく「でも!」

しずく「本当に、無理はしないでくださいね?」

しずく「私に出来ることがあったら、何でもしますから」

侑「──うん! ありがとうね!」

222: 2021/04/09(金) 23:07:41.61 ID:96tmvfXG
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

~夜・しずくの部屋~


しずく「……よし、イメージトレーニング終わり」

しずく(明日、頑張ろう)

しずく「………………」

しずく「歩夢さんと一緒にいる以外は、楽しくなかった……かぁ……」

しずく(意外だった)

しずく(毎日楽しそうな侑さんしか、見てこなかったから)

しずく(スクールアイドルが大好きで、真っ直ぐで、可愛くて、かっこいい侑さんしか見てこなかったから)

しずく(本当に……意外だった)

223: 2021/04/09(金) 23:15:48.03 ID:96tmvfXG
しずく「……侑さん」

しずく(今は楽しい毎日で、今見ている世界は虹色に輝いている。だから毎日が楽しいし、もう少し頑張らせてって侑さんは言っていた)

しずく「……」

しずく(こんなこと思っちゃいけないと思うけど)

しずく「無理はしないよって、言ってもらいたかったなぁ」

しずく(分かってる。……真っ直ぐ頑張るヒーローは、止めることはできない)

しずく(真っ直ぐ頑張れるから、ヒーローなんだもん)

しずく(……でも)

しずく(──ヒロインの言葉なら、止めることができる)

しずく(事もある……よね?)

しずく「……1位になろう」

しずく「とりあえず、今の目標はそれだ」

しずく「そうだよね?」

しずく「桜坂しずく」

224: 2021/04/09(金) 23:27:46.60 ID:96tmvfXG
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

~同時刻・侑の部屋~


侑「──うん、わかった。……あははっ、大丈夫だよ。ちゃんと起きるって」

侑「うん、おやすみ。歩夢」

ピッ

侑「ふぅ……今日も一日楽しかった」

侑「………………」

侑「よし、ピアノの練習でも──」


『侑さん、最近休めていますか?』


侑「!!」


『すっごく、すっごく助かっているんですが……その……疲れが溜まっていないか心配で』


侑「……」


『本当に、無理はしないでくださいね?』

『私に出来ることがあったら、何でもしますから』


侑(しずくちゃんの言葉……嬉しかったなぁ)

侑「……今日は」

侑「今日は早めに……」

侑「──ッ!!」ハッ!!

侑「ダメだ。甘えちゃいけない」

侑「今が一番大事な時だもん」

侑「もう少し、頑張ろう。まだ頑張れる」

侑「そうだよね?」

侑「高咲侑」

225: 2021/04/09(金) 23:46:00.04 ID:96tmvfXG
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

しずく「…………」

エマ「……よし! しずくちゃんのメイクおしまい!」

果林「ふふっ、おめかし完了ね。可愛いわよ、しずくちゃん」

しずく「はい! 衣装もバッチリですっ」

しずく「エマさん、果林さん。本当にありがとうございますっ」ニコッ

果林「仲間の為だもの。おやすい御用よ」

エマ「果林ちゃんと同じ気持ちっ! いくらでも手伝うよ~」ニコニコ

エマ「あっ、そうだしずくちゃん。きいてきいてー」

エマ「果林ちゃんってば、昨日の夜ね? 今日のフェスが楽しみ過ぎて眠れない~って私に連絡してきたんだよ~?」

果林「ちょ、ちょっとエマ! なんでバラしてるのよ!」

しずく「あはは! 果林さん、ありがとうございます」ニコッ

しずく「果林さんが楽しみにしてくれてるんですから、しっかりとしたパフォーマンスを見せないとですね。頑張ります」グッ

果林「……ふふっ、良い目してるわね」

果林「期待してるわ」ニコッ

しずく「はいっ」

226: 2021/04/09(金) 23:53:10.41 ID:96tmvfXG
ピローン

しずく「ん?」

しずく「あっ、歩夢さんから連絡来ました!」

しずく「もうすぐ会場着いて、控え室にも来てくれるそうですっ」ニッコリ

エマ「あぁ、もうそんな時間なんだね~」

しずく(もうすぐ……始まる)

しずく(よしっ、頑張ろう)

227: 2021/04/09(金) 23:54:14.52 ID:96tmvfXG
しずく(自分の為に)

しずく(皆さんの為に)

しずく(──侑さんの為に)

228: 2021/04/10(土) 00:16:10.25 ID:qynrN/Dk
──────
────


「──ちゃん」

侑「……ん……?」

「──うちゃん!」

侑「……んー……ん?」

侑(あれ……)

「侑ちゃん!!」

侑「──!!」バッ!!

侑「ッ!!」

歩夢「や、やっと起きた……」

侑「ごめん! 歩夢」

侑「今、何時!?」

歩夢「もう8時だよ!? 本来なら家出る時間!」

歩夢「電話何回かけても全然起きないから、侑ちゃんのお母さんに頼んで家にあげてもらったの!」

侑「っ、!!」

229: 2021/04/10(土) 00:22:54.30 ID:qynrN/Dk
侑(私のバカ!! こんな時に寝落ちするなんて……!!)

侑(ほんと、元も子もないよ!!)

侑「ごめん! すぐ準備して向かうから、歩夢は先に会場へ向かってて!」

歩夢「え?」

侑「このままだと歩夢まで遅れるかもしれない! 大丈夫、皆との集合には間に合わないけど……ライブには絶対に間に合うようにするから!」

侑「だから先に向かってて」

歩夢「侑ちゃん……」

侑「しずくちゃんも皆の顔見れた方がリラックスすると思うから」
 
侑「お願い」

歩夢「……分かった」

歩夢「皆には私から状況伝えて、会場に向かうね」

侑「!! ありがとう、歩夢」

歩夢「大丈夫だよ。侑ちゃんも気をつけて来てね? 会場着く頃、しずくちゃんへの連絡も私がするよ」

歩夢「侑ちゃんは準備に集中して。会場で待ってるからっ」ニコッ

侑「うん、分かった」

侑「本当にありがとう」

230: 2021/04/10(土) 00:27:42.17 ID:qynrN/Dk
──────
────

侑「行ってきます!」

タッタッタッタッ!!

侑(よし、この時間なら間に合う!)

侑(……っ、本当に私のバカ)

タッタッタッタッ!!

侑「はぁ、はぁ」

侑(しずくちゃん)

侑(本当に、ごめん)

侑(待ってて……!!)

232: 2021/04/10(土) 00:38:40.70 ID:qynrN/Dk
──────
────

タッタッタッタッ

侑「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

侑(よ、し……なんとか、間に合う。この時間ならバスで会場付近まで行ける。フェスがあるから交通規制で会場に直接着くわけじゃないけど)

侑(そこからはまた走って……)

侑「はぁ、はぁ」

侑(いけば……間に合う!)

タッタッタッタッ ──ピタッ

侑「──ッ!!」

侑(赤信号!!)

侑(ここの信号……長いんだよね)

侑「……あと、3分でバスが出ちゃう」

侑(信号が変わったら、全速ダッシュだ)

侑「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」

侑「あはは……、私……ほんと、体力ないなぁ」

233: 2021/04/10(土) 00:57:00.15 ID:qynrN/Dk
侑「はぁ、はぁ……」


『侑さん! 任せてください!』


侑「…………」


『私は球技は苦手ですが運動は得意な方です』

『では、早速せつ菜さんに連絡して体育館の使用許可を頂いて──』


侑「……あはは」

侑「あの時のしずくちゃん、スパルタだったなぁ」ニッコリ

侑「……でも、あの時の練習のおかげで」

侑「少しは体力ついたんだ」

侑「……しずくちゃん……」

侑「待ってて」

侑(……そろそろ信号も変わる)

侑「──よし! 変わった!!」 バッ!!




──走り始めた瞬間、なんだか時間の流れがゆっくりになったような感覚だった。

236: 2021/04/10(土) 01:00:53.78 ID:qynrN/Dk
キィィィィィィィィ!!

侑「────え?」

侑(ク──────)

238: 2021/04/10(土) 01:07:33.44 ID:qynrN/Dk
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

しずく「…………」

しずく(控え室は、少しざわついていた)

しずく(皆さん来てくれたんです。温かい言葉をかけてくれて……ライブに向けて、気合が入りました)

かすみ「ゆ、侑先輩……どうしたんでしょう」

愛「もうしずくのライブ、始まっちゃうよ!?」

しずく「……」

彼方「しずくちゃん、4番目に歌うから……」

歩夢「──っ、ダメ……何回電話かけても、繋がらない」

歩夢「電源が、入ってないって……!!」

しずく「…………」

しずく(でも)

しずく(侑さんは──まだ来ていない)

239: 2021/04/10(土) 01:12:15.39 ID:qynrN/Dk
果林「……さすがに心配ね」

かすみ「……」

せつ菜「……」

愛「……」

璃奈「……」

歩夢「侑ちゃん……」

エマ「……だ、大丈夫だよ! きっと今急いで向かってきてるって!」

彼方「そ、そうだよ! みんな、暗い表情はダメダメ!」

かすみ「そ、そうですよね! ライブ前ですもんね! ごめん、しず子」

しずく「…………」

240: 2021/04/10(土) 01:17:49.57 ID:qynrN/Dk
皆の表情は暗い。

無理もない。連絡が取れないんだもん。

何かあったんじゃないか? そう思い始めると、不安でいっぱいになってしまう。

……私だって、不安だよ。
侑さんが心配で仕方がない。

でも、それでいいの? 桜坂しずく。

不安な気持ちに負けていいの? 桜坂しずく。

そんなの──

──ダメに、決まってるよね。

241: 2021/04/10(土) 01:18:41.24 ID:qynrN/Dk
しずく「皆さん」

しずく「私」

しずく「バッドエンドって嫌いなんです」

242: 2021/04/10(土) 01:23:47.75 ID:qynrN/Dk
かすみ「……しず子?」

しずく「皆さん、知ってますか?」

しずく「物語がハッピーエンドで終わるのとバッドエンドで終わるの」

しずく「どちらか人気か」

しずく「ハッピーエンドのほうが圧倒的に人気なんです」

しずく「11万人に聞いた所、93パーセントの方々がハッピーエンドの方がいいって答えたみたいです」

243: 2021/04/10(土) 01:30:57.93 ID:qynrN/Dk
しずく「……大丈夫です。信じましょう」

しずく「……」スゥー

しずく「歩夢さん」

歩夢「!!」

しずく「侑さんは、絶対に来ます」

歩夢「……しずくちゃん……っ……!!」ウルウル

しずく「あの人は、絶対に来ます」

しずく「だってあの人は」

しずく「──私のヒーローだもん」

244: 2021/04/10(土) 01:40:16.61 ID:qynrN/Dk
しずく「歩夢さん」

しずく「せつ菜さん」

しずく「愛さん」

しずく「エマさん」

しずく「果林さん」

しずく「彼方さん」

しずく「璃奈さん」

しずく「かすみさん」


しずく「見ていて下さい」

しずく「私、1位になってきますから」

しずく「侑さんは無事に辿り着いて、私はこのフェスで──1位になる」

しずく「それがこの物語の」

しずく「ハッピーエンドです」

245: 2021/04/10(土) 01:47:36.80 ID:qynrN/Dk
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

今、私はステージの上にいる。

目の前にはフェスを楽しんでくれているお客様。

ありがたいことに、私を見る為に来てくれた方々もいるようで、私のイラストが描かれたタオルなどを振り回している方もいる。

少し、恥ずかしい。

246: 2021/04/10(土) 01:55:40.27 ID:qynrN/Dk
──1位になる、か。

勿論、簡単なことではないと思う。

そんな事は分かってる。

でも、私はやるよ。

やってやるんだ。

──イメージするんだ。

──1位になれる、スクールアイドルを。

そして──演じるんだ。

没入しろ、桜坂しずく。

247: 2021/04/10(土) 01:57:15.57 ID:qynrN/Dk
演じる事だって、私の良さですよね?

侑さん。

248: 2021/04/10(土) 01:58:19.64 ID:qynrN/Dk
「───────────ん!!!!」



しずく「!!」

249: 2021/04/10(土) 02:00:09.60 ID:qynrN/Dk
しずく「っ、あはは……!!」

しずく(ほら)

しずく(やっぱり)

しずく(貴方は私の──)

250: 2021/04/10(土) 02:02:39.56 ID:qynrN/Dk
侑「しずくちゃ──────────────んッッ!!!!」

侑「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

侑「頑張れぇぇぇえええええええええええ!!!!」

251: 2021/04/10(土) 02:03:42.40 ID:qynrN/Dk
しずく(ヒーローです……!!)

254: 2021/04/10(土) 02:12:25.01 ID:qynrN/Dk
しずく「──」スゥー

しずく「皆さ─────ん!!」

しずく「盛り上がっていますか────!?」


「「「わああああああああああ!!!!」」」


しずく(私の声に反応して、お客様が歓声をあげてくれる)

しずく(嬉しい……!!)

しずく「まだまだフェスは始まったばっかりですが!」

しずく「全力で、盛り上がっていきましょうっ!!!!」

255: 2021/04/10(土) 02:14:22.13 ID:qynrN/Dk
ヒーローは、遅れてやってくるんだ。

信じていましたよ。侑さん。

それじゃあ次は……私の番です。

行こう──桜坂しずく。

256: 2021/04/10(土) 02:17:12.61 ID:qynrN/Dk
しずく「皆さん、聴いて下さい」

しずく「────」スゥゥゥ……

しずく「『Solitude Rain』」

257: 2021/04/10(土) 02:29:36.70 ID:qynrN/Dk
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ライブの時のことは、あまり覚えていない。

お客様の大歓声を聴いて──私は、はじめて自分が歌い終わった事に気がついた。

流れるままにステージから裏に戻る。私の事を見て、応援してくれていたニジガクの皆が、私に駆け寄ってくれた。もみくちゃにされた。
かすみさんは大泣きしてた。果林さんも涙ぐんでいた。

そして──奥の方に目を向ける。

そこには、侑さんがいた。

足を痛めてしまったのかな? 歩夢さんが肩を貸して支えている。

侑さんを見た瞬間、私はおかしくなってしまった。




何故か視界が滲んで……侑さんが見え辛くなっちゃった。

258: 2021/04/10(土) 02:36:45.51 ID:qynrN/Dk
しずく「っ、ッッ! ……ぁ、ぅ、……!! 」

しずく「……っ……よかった……!!」

しずく「……よかった……っ、……!!」

しずく「……侑さんが……無事で……」

しずく「よかったよぉ……!!」

260: 2021/04/10(土) 02:49:26.47 ID:qynrN/Dk
スタスタ、スタスタ

侑「……しずくちゃん」

しずく「っ、侑さん……!」

侑「ほんと、ごめんね」

侑「心配かけて……本当にごめん」

しずく「っ……」ゴシゴシ

しずく「心配……だったんですよ?」

しずく「本当は不安だったんですよ?」

しずく「怖かったです。侑さんなら大丈夫だって思っていても」

しずく「本当は……怖かった!!」

侑「……ごめん……」

しずく「……ッ!!」

バッ!! ──ギュッ!!

侑「あ、おっと……と」 ギュッ

しずく「……侑さんのおバカ……!」

侑「……ほんとね」

しずく「ねぼすけさん……」

侑「……ごめん」

しずく「……でも!」

しずく「来てくれて」

しずく「ありがとう……!!」

侑「ッ!!」ジワッ

侑「本当に、ごめん……ごめんね」

侑「しずくちゃん……!!」 ギュッ

しずく「っ、っ……!!」


しずく「──あああああああ!! うあああああああんッ!!!!」 ギュッ

261: 2021/04/10(土) 02:59:24.36 ID:qynrN/Dk
──────
────

キィィィィィィィィ!!

侑「────え?」

侑(ク──────)

侑「っ、あっとと!!」

バッ──クルッ!! バキンッ!!

侑「あっ、いっ……!!」

侑「はぁ、はぁ……」

侑(あっぶな……何とか咄嗟にターンできたから、車にぶつからなかったけれども……!!)

侑「……車側は赤信号でしょうが……!」

侑「──!? す、スマホ!!」

侑「……だ、ダメだ。ターンした時に放り投げちゃって……」

侑(画面バッキバキで、電源も落ちてる……)

侑「──ッッ、いっ、た……!!」

侑(足も、変な風に挫いちゃった……)

侑「はぁ、はぁ、はぁ……」

侑(……大丈夫、大丈夫)

スタッ

侑「まだ……間に合うもん……!!」

──────
────

262: 2021/04/10(土) 03:17:49.91 ID:qynrN/Dk
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

フェスが終わり、いつもの日常が戻ってきた。

朝起きて、オフィーリアに挨拶をして、支度をする。

駅に向かう途中、野良猫さん達にも挨拶をする。

駅に着いて、電車に乗ってからは読書や空想タイム。この時間が私は大好き。

学校に着いたら、朝練に向かう。日によって演劇部だったり同好会とバラバラだけど、楽しい学校生活は部活から始まる。

今日はスクールアイドル同好会の朝練だ。

でも、私は練習はしません。私ともう一人の方だけは、ね。
うーむ。……朝練と言うより朝集合って言った方が良いのかな?
まぁ、あまり気にしすぎないようにしよう。

263: 2021/04/10(土) 03:25:42.99 ID:qynrN/Dk
侑「しずくちゃんしずくちゃん」

しずく「はい、なんでしょう侑さん」

侑「皆の練習結果、ノートにまとめ終わった?」

しずく「終わってますよ。どうぞっ」スッ

侑「ありがとー」ニコッ

侑「おぉ……さすが、わかりやすい。しずくちゃん文字綺麗だよね~」

しずく「ありがとうございますっ」ニコニコ

侑「よし、それじゃあ次は……生徒会に提出するこの書類を書いてもらっていい?」

しずく「分かりました」コクリ

侑「分からないことあったらなんでも聞いてね」ニコッ

しずく「はいっ」

264: 2021/04/10(土) 03:43:34.92 ID:qynrN/Dk
侑「あっ、しずくちゃん。作業中にごめんね」

しずく「?」キョトン

侑「改めてなんだけどさ」

侑「この前のフェス、1位おめでとう」

侑「圧倒的票数だったみたいだね」

しずく「あはは……ありがとうございます」

しずく「正直、自分でもビックリしています」

侑「いや、でも本当に良いライブだったもん」

侑「もう、ときめいちゃったよ」ニカッ

しずく「……侑さん、ときめいちゃったって言っておけばなんとかなるって思ってません?」

侑「え? いやいや、そんなことないよ」

侑「私の中で最高レベルの感動詞だもん」

しずく「だって皆に言ってるから……」

侑「皆最高だからね、ときめきまくるのも仕方ないんだよしずくちゃん」

しずく「まぁ皆さん本当に素晴らしい方ばっかりですから気持ちは分かります」

侑「でしょでしょ?」ニコニコ

しずく「……あっ、侑さん。話折っちゃってごめんなさい。ここの記入箇所についてご質問がございまして」

侑「んー? どれどれ?」グイッ

しずく「ここなんですけれど……」ササッ

265: 2021/04/10(土) 03:55:59.92 ID:qynrN/Dk
──────
────

しずく「侑さん」

しずく「私、1位になれましたよ?」

しずく「覚えていますか? 1位になったら、一つなんでもしてあげるって言ったこと」

しずく「それなんですが」

しずく「……私に何かする必要はありません」

しずく「代わりに」

しずく「私に侑さんの業務のお手伝いをさせて下さい」

しずく「侑さんが私達の力になりたくて、頑張ってくれているのはよく分かってますし、本当に嬉しいです。けれど!」

しずく「私も……侑さんのお手伝いを頑張りたい」

しずく「貴方の為に……頑張りたい」

しずく「侑さん」

しずく「私も貴方の力になりたいから」

しずく「これは桜坂しずくの本当の気待ちです」ニコッ

しずく「だから、お願いします」

──────
────

266: 2021/04/10(土) 04:01:54.70 ID:qynrN/Dk
しずく「侑さん? 侑さーん?」

侑「へ?」

しずく「……聞いてました?」

侑「あはは……ごめんごめん。ちょっとぼーっとしてた」

しずく「……やっぱりまだ疲れが溜まって──」

侑「ああああ! 違うから! その疲れ溜まってた問題についてはすっごく反省してるので触れないでぇ!」

しずく「……ふふっ、もう」クスクス

侑「……」

侑「しずくちゃん」

しずく「はい?」

侑「ありがとう」

しずく「え?」

267: 2021/04/10(土) 04:06:56.48 ID:qynrN/Dk
侑「安心してよ」

侑「もう私、無茶しないから」

侑「何かあったら、すぐに頼るね」

しずく「!!」

侑「もうしずくちゃんの事……泣かせたくないもん」

しずく「──ッ!?」

侑「しずくちゃん」

侑「──これからも、よろしくね」ニッコリ

しずく「侑さん……!」

しずく「はい!」

しずく「こちらこそ、これからとよろしくお願いします!」ニッコリ

268: 2021/04/10(土) 04:10:50.75 ID:qynrN/Dk
>>267 誤字修正。


侑「安心してよ」

侑「もう私、無茶しないから」

侑「何かあったら、すぐに頼るね」

しずく「!!」

侑「もうしずくちゃんの事……泣かせたくないもん」

しずく「──ッ!?」

侑「しずくちゃん」

侑「──これからも、よろしくね」ニッコリ

しずく「侑さん……!」

しずく「はい!」

しずく「こちらこそ、これからもよろしくお願いします!」ニッコリ

269: 2021/04/10(土) 04:18:19.67 ID:qynrN/Dk
侑さん。

貴方は優しくて、私より小さいのにかっこよくて、可愛い先輩。

昔は頼りになる先輩ってイメージだったけれど、今はもう愛おしい人。

私のヒーロー。


……前、侑さんに聞かれた質問をふと思い出してしまう。

270: 2021/04/10(土) 04:18:33.20 ID:qynrN/Dk
『しずくちゃんって私の事、苦手だったりする?』

271: 2021/04/10(土) 04:19:41.76 ID:qynrN/Dk
しずく「侑さん」


しずく「大好きです」

272: 2021/04/10(土) 04:20:09.72 ID:qynrN/Dk
おしまい。

273: 2021/04/10(土) 04:26:09.70 ID:ue0PumGX
おつ、いいゆうしずだった

277: 2021/04/10(土) 09:29:15.59 ID:Y5thGEtK
本当に素晴らしいSSでした…!乙です!

278: 2021/04/10(土) 11:50:35.48 ID:TNiZXiRm
素晴らしい…
今まで読んできたゆうしず要素のあるSSの中でも屈指の良さがあった
是非また何か書いてくれたら嬉しい

279: 2021/04/10(土) 12:15:34.48 ID:fQ5bxCyc

最高のゆうしずをありがとう

280: 2021/04/10(土) 12:50:56.71 ID:DCMbA/P2
ハッピーな展開でよかった

281: 2021/04/10(土) 15:33:22.07 ID:FT10uPNR
しずくちゃんとシャトルランのターンの練習をしてたから車にぶつからなかったんだろうね
おつでした!今まで見たゆうしずSSの中で一番すき

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1616959826/

【SS】しずく「侑さんって私の事、どう想っていますか?」侑「え?」【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約19000文字■かすみ「うわぁぁぁあああん!! 侑せんぱぁぁあああい!!」 ダッ 侑「わっとっと!」ギュッ かすみ「愛先輩ひどいと思いません!? かすみんボックスに落書きしたんですよ!?」 愛「デコレーションだよ! 可愛いっしょ?」 かすみ「星マークの主張が強すぎるんですよぉぉぉおおおお!!」 侑「ほらほら、泣き止んでかすみちゃん」ナデナデ かすみ「うぅ……侑せんぱ~い」ギュュュュ 愛「ごめんってばぁ! アメあげるから泣き止んでよかすかす~」 かすみ「かすかすじゃなくてかすみんです~! べーっだ!」ベー かすみ「でもアメはもらってあげてもいいですよ!」 侑「あはは……」ナデナデ しずく「……」ジー
タイトルとURLをコピーしました