【SS】「ねえ知ってる?こんな噂を……」

SS


1: 2019/07/28(日) 08:18:41.70 ID:mjj699Of
これは私の通う高校で流行っていた噂話です。

黄昏時にある踏切を渡り切ったら好きな人との思いが成就するんだって。
もしね、その踏切を渡り切れなかったら……今いる世界とは真逆の世界に連れ込まれてしまうんだってさ。

海未「そう、そんな噂話が流れていたのです」

しかし、実際にはそんな事が起きる訳はなく轢死するだけで終わるのです。
その今際を知る者はいないですし、その凄惨さときたら私たちの想像を超えたものでした。

海未「ですが、私の先輩がその噂話を検証してから行方不明になったのです」

そう、その先輩は目の前で列車のヘッドライトに照らされる様を見ていました。
ですが……その先輩の姿はおろかカバンすら残っていなかったのです。


海未「勿論の事ですが、その先輩は死亡したという事になっています」

不気味な噂話がそこから絶えたのですが、私は先輩が本当に真逆の世界に行ってしまったのか半信半疑ではありますが、そうだと信じるしかないのです。

3: 2019/07/28(日) 08:25:55.72 ID:mjj699Of
………
……


希「なあ、知ってる?」

海未「知ってるって何をですか?」

希「夕方に遮断棒が降りた踏切を渡り切ったら恋が成就するって噂」

海未「ええ、知ってますが……それが何かあるんでしょうか?」

希「それなんだけど、渡り切れなかったら現実とは真逆の世界に行っちゃうって話もあるやん?」

海未「ありますけど、それで失敗して亡くなっているんですよ」

希「それなんやけど、実は成功した例が一つだけあるんよ」

海未「はぁ……どうせ、ガセネタじゃないでしょうか」

希「それがね、この新聞には……」


新聞は去年のもので、地元の欄には女子高生の踏切事故に関する事が書かれていた。

『女子高生が踏切に飛び込む!しかし、行方不明』

奇妙な事にその女子高生は行方不明だけでなく所持品が散乱していなかった上に列車には傷や飛び血すら着いていなかったというのです。

希「な?不思議だと思わん?」

海未「言われてみればそうですが……まさか、やるとは言いませんよね?」

4: 2019/07/28(日) 08:32:09.89 ID:mjj699Of
希「そのまさかや」

海未「やめて下さい!それでなくても噂話の域を超えていないんですから!」

オカルト現象が起きると直ぐさまアンテナで受信して、直ぐに向かってしまうのです。

希「なんで?もしかしたら、その子を助けられるやん?」

海未「ですから、死んでしまったらどうするんですか!?」

希「ウチの力、知ってるやろ?」

そう、先輩の力は時を少しだけ止めて巻き戻すというものである。
それで何度助けられたことか……いいえ、そういう事じゃないです。

海未「知ってますが、それに失敗した時はどうするんですか!?」

希「リスクヘッジばかりじゃ、分かるものが分からなくなるよ」


私の制止を振り切り、放課後にその噂となった踏切へと足を運んだのです。

5: 2019/07/28(日) 08:45:47.92 ID:mjj699Of
人通りはそれほど多くない踏切、そこに私と先輩。

夕刻という事もあり、線路は茜色に染まっており雰囲気が何処と無く不気味さと切なさが漂っている。

希「それじゃあ、始めよっか!」

そう言って、腕時計を覗きながらメモを眺めていた。

メモには先の新聞に書かれた事件の時間、そしてその当時の種別と行先が書かれていた。

希「この規則が合っていれば、この事件で消えた子と同じ世界に行けると思うんよ」

海未「規則……ですか?」


希「そう、この事件が起きた時は5時43分で電車は特急やった。だけど、他の子はそれ以外の時間で種別も全く違った……という事はその時間帯だけが噂話の事が起きるって事や」

オカルト研究部の先輩は確信して時間の3分前に踏切の前に立った。
警報機は鳴り始め、遮断機は下り始めたのです。

希「いい、海未ちゃんチャンと写真に収めて」

証拠を抑える為に持たされたカメラのファインダーを覗き込みながら、先輩が接近する列車の真ん前に立った。

希「行くで!」

けたたましく鳴り響く警笛と警報機、そして先輩を照らし続けるヘッドライトは猛スピードで……。

6: 2019/07/28(日) 08:52:46.42 ID:mjj699Of
気が付くと列車はギリギリと音を立てながら徐々にスピードを緩めて行き、5両目辺りで踏切で停まった。

写真を撮る事に夢中だった私でしたが、衝撃は全く伝わって来ず衝突音すら聞こえなかったのでした。


……
………

その後に警察や救急隊によって列車の周りや踏切付近を捜査しましたが、所持品はおろか肉片すら見つからなかったというのです。

海未「これが噂話と私が経験した不思議な事の全容です」

そして、先輩は死亡扱いとなりいないものとなってしまいました。

ですが、私は不思議と先輩が戻って来ると思うのです。
もうそんな事が起きて数年は経つというのにです。


海未「アレは幻なのか、それともこの世界そのものが幻なのか?」

7: 2019/07/28(日) 08:56:00.79 ID:mjj699Of
私はあの夕刻の踏切を夢で思い出して、時折あの時を思い出す。




「ねえ、こんな噂知ってる?」





噂話は絶える事を知らない。

【終】

8: 2019/07/28(日) 08:58:49.56 ID:mjj699Of
取り敢えず、この話の結末はとあるSSで判明します。

そして、こんな怪談を学園七不思議というアニメを観たあの時を思い出しながら書いてみた感じです。

9: 2019/07/28(日) 09:12:23.52 ID:mjj699Of
【おまけ?】

海未「あの希……音楽室のピアノの噂話を信じるんですか?」

希「あのピアノの事知ってる?」

海未「知ってるも何も卒業生からの贈呈品じゃないですか」

希「その贈呈した卒業生の噂話や」


聞いた話だと、このピアノを贈呈したという卒業生は音楽コンクールに行く為にバスを待っていたところにトラックが猛スピードでバスに追突して、それで倒れて来た荷物の下敷きになってしまったというのです。

幸いにも死なずに済んだそうですが、コンクールに出られなかった後悔と周囲からの期待を裏切ってしまった責任から病院を飛び出して、家に帰る途中に亡くなってしまったそうなんです。

そのピアノを贈呈したものの、何故か真っ赤に染まってしまうので塗り直したのです。
しかし、塗り直しても真っ赤に染まってしまうので仕方なくそのままにしているそうです。

11: 2019/07/28(日) 09:20:59.93 ID:mjj699Of
そして最近……。

希「このピアノを弾いた者はトラックに轢かれてしまう」

立て続けにトラックによる事故が起きていて、それが何故かそのピアノを弾いた者だそうです。
ただ、幸いにも誰も死んでいないのですが……このままだと誰かが死んでもおかしくないというのです。

希「その証拠に音楽教師が事故に巻き込まれて、軽音部のあの子も事故に巻き込まれている……偶然とは思えんやろ?」

海未「確かに偶然にしては話が良く出来すぎてますね」


希「そこでなんだけど、そのコンクールで弾けなかった曲を代わりに弾いてあげれば成仏すると思うんよ」

海未「いや、そこまで上手くいくとは思えませんし……そもそも、霊なんて存在するんですか?」

希「存在する……だって、霊というのは亡き人の意識の欠けらでもあり、メッセージでもある。生き霊って知ってるやろ?」

海未「ええ」

希「その生き霊というのも同じ霊やし、その生き霊の元の人の思いによって出てきたもの。だから、それと同じ様な事や」

海未「言ってる事がよく分からないんですが……」

希「兎に角、霊はいるんよ!」

13: 2019/07/28(日) 09:28:15.66 ID:mjj699Of
そんなこんなで、私たちはその当時のコンクールに関することを聞いて周り、演奏する予定だった曲を調べる事になったのです。

海未「何とか曲は分かったのですが、肝心の楽譜が見当たらないですね……」

希「そうやね、今日も遅いから帰ろう」

時刻はもう5時を過ぎており、学校から見える街全体が茜色に染め上げられていた。

海未「まるでピアノの様です……」

あの不気味なピアノを連想してしまい、つい口に出してしまった。




「私をコンクールに連れてって……」




後ろから誰かの声が聞こえてきたのですが、振り向いてみても誰もいません。
風の音が強まるだけで、街灯が点き始めた。

海未「あまり長居しないほうが良いですね……」


私はバス停にやってきたバスに飛び乗り、家路を急いだ。

14: 2019/07/28(日) 09:34:49.76 ID:mjj699Of
妙に暑苦しく、未だ扇風機を点ける必要がある程のこの夜。

眠りに就こうとしても中々眠れない……それどころか、ピアノの音が微かに聞こえてくる。

海未「こんな時間にピアノなんて……」

耳を抑えながら、必死で眠ろうとしたけれども段々とピアノの音が大きくなっていくのです。

海未「なんなんですか……あっ……」





「私をコンクールに連れてって……お願い……」




あの夕方に聞いた声、何故私の部屋に?


「無理なら代わりに弾いて……お願い……」


海未「私がピアノを弾く……のですか?」


すると突然、身体中が苦しみ始めて息を吸おうにも吸えないのです。

窒息するのか……もしかして、これは怨霊というものだろうか?

その苦しみは次第に和らいでゆき、同時に意識が飛んでしまった。

15: 2019/07/28(日) 09:42:51.33 ID:mjj699Of
海未(あれ、私は……)

気が付くと私は音楽室で倒れ込んでいたのです。

希「海未ちゃん!大丈夫?」

話を聞くと、私は亡くなった先輩がコンクールで演奏する予定だった曲を弾いていたそうです。
そして、演奏が終わると同時に意識が飛んで倒れ込んだというのです。

海未「私は本当に霊に憑依されて……演奏していたのでしょうか?」

希「そうや、だけど無事で良かった」

海未「ええ、あの時はどうなる事かと思いました」

………
……


海未「あれから軽音部の方は回復したそうですね」

あの一見以来、ピアノを弾いた者が呪われて轢かれる事は無くなったそうです。

ですが、時折思うのですが本当に霊は存在するのでしょうか?

希「海未ちゃん、あの体育館から邪気を感じるで」

【終】

17: 2019/07/28(日) 09:46:30.77 ID:mjj699Of
取り敢えず、皆さんも心霊現象にはお気を付けて。

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1564269521/

タイトルとURLをコピーしました