【SS】遥「私、アルバイトがしたい!」【ラブライブ!虹ヶ咲】

はるか SS


1: (らっかせい) 2021/06/13(日) 13:39:48.65 ID:lUpX6JVG
遥「どうしてもしたいの!」

3: (らっかせい) 2021/06/13(日) 13:43:09.06 ID:lUpX6JVG
彼方「駄目だよ~」

彼方「スクールアイドルとアルバイトの両立が大変なのは、彼方ちゃんが一番よく分かってるんだから」

遥「それはそうだけど……」

遥「でも、どうしてもっ」

遥「……お願い」

彼方「何か欲しいものがあるとか、必要なものがあるとか」

彼方「そういうのだったら、全然、言ってくれれば用意するよ~?」

遥「駄目なの」フイッ

遥「私が自分でお金貯めなきゃ、駄目なの」

彼方「遥ちゃん……?」

6: (らっかせい) 2021/06/13(日) 13:46:32.09 ID:lUpX6JVG
――――――
―――

彼方「っていうことがあって」

果林「はぁ……なるほど」

果林「それで朝から元気がなかったのね」

果林「でも、いいじゃないちょっとくらい」

果林「難しくなさそうなバイトを一緒に探してあげて」

果林「それをやらせてあげたって罰が当たったりしないんだから」

彼方「でも……」

果林「あんまり過保護にしてると嫌われちゃうわよ?」

果林「もういい! って、家出しちゃったらどうするのよ」

彼方「それは困る」

彼方「けど……遥ちゃんには、スクールアイドルをいっぱい楽しんで欲しいから」

彼方「余計なところに気を使わせたり負担させたくないから」

8: (らっかせい) 2021/06/13(日) 13:50:47.00 ID:lUpX6JVG
果林「……」

果林「もし、遥ちゃんが彼方に自分で稼いだお金でプレゼントがしたいって思っていたらどうする?」

果林「普段の彼方を見てて、何か物足りなかったり、何かを欲しそうにしていたり」

果林「そんな姿を見ていつも頑張ってくれてるからって、プレゼントしたいと思ってるのかもしれないわ」

果林「……遥ちゃんは、自分のためっていうよりも彼方のためにする子でしょ?」

果林「だから、少しくらいなら許してあげてもいいんじゃない?」

彼方「……でも」

彼方「簡単なアルバイトなんてないよ」

彼方「何にしても暫くスクールアイドルがおろそかになっちゃうと思うし」

彼方「帰りが遅くなったりして、その帰り道で変な人に声かけられたりするかもしれない」

彼方「心配だよ……」

10: (らっかせい) 2021/06/13(日) 13:56:23.27 ID:lUpX6JVG
果林「……分かった」

果林「なら、アルバイトは私が紹介するのはどう?」

果林「読モの……まぁ、向こうが受けてくれるかは別として」

果林「遥ちゃんを紹介するくらいならできると思うから」

果林「遥ちゃんってば、スクールアイドルとして結構名前が売れてるから」

果林「普通の子よりはずっと、入れて貰える可能性があると思うし」

果林「ね?」

彼方「……」

彼方「……水着とか、そういういやらしい写真撮られそうだからダメ」

果林「いやらしくないわよ……失礼ね」

彼方「それは果林ちゃんがいやらしいからだよ」

果林「なに? いやらしいことされたいの?」クイッ

彼方「だめ~」プイッ

11: (らっかせい) 2021/06/13(日) 14:02:55.27 ID:lUpX6JVG
果林「とにかく、頭ごなしに否定しないで目的を聞いてみなさい」

果林「遥ちゃんが悪いことにお金を使うはずがないし」

果林「十中八九、彼方。貴女のためなんだろうから」

果林「答えてくれなくても、仕草で察してあげなさい」

果林「どうしても心配なら、私からそれとなく聞いてあげるから」

彼方「……」

彼方「ん……分かった」

彼方「でも、果林ちゃんみたいないやらしいのは、困るかなぁ」

果林「いやらしくないってば……」

果林「雑誌のサンプルあげたでしょ。あれのどこがいやらしいのよ」

彼方「えっと」

彼方「ん~……」

彼方「……」チラッ

彼方「果林ちゃんのプロポーション?」

果林「はいはい。いやらしくてごめんなさいね」グイッ

果林「二度と膝を貸さないわ」スタスタ

彼方「わー! 待って~!」

13: (らっかせい) 2021/06/13(日) 14:12:50.63 ID:lUpX6JVG
彼方「そのアルバイト、もし受けて貰えるなら果林ちゃんと同じ時じゃなきゃダメとかできる?」

果林「私にそんな権限はないけど……遥ちゃんが担当の時に一緒にいてあげることくらいならできるわよ」

果林「いつ、どこで。とか」

果林「そういう情報は関係者にしか伝わらないんだけど」

果林「紹介したの私だし、普段から参加してるから一緒にいても何か言われることはないはずだから」

果林「何にしても、遥ちゃんが受け入れて貰えないと意味がないけどね」

果林「一応、話だけはしてみるから」

果林「彼方もちゃんと話をしておくこと」

果林「それで、どうしてもというなら私が紹介してみるって話もね」

彼方「……」

彼方「水着NGだからね?」

果林「はいはい。善処はするわよ」

彼方「下着とかぜっっったいにNGだからね!」

果林「私でもしたことないわよ!」

17: (らっかせい) 2021/06/13(日) 14:22:53.08 ID:lUpX6JVG
――――――
―――

カチャカチャ....

遥「……」ムスッ

彼方「……モグモグ」

彼方「……」

彼方「……えっと」

彼方「アルバイトのこと、なんだけど」

遥「駄目だって言うんでしょ?」

彼方「……」

彼方「目的教えて? 何かしたいの? 何か欲しいの? 何のためにしたいの?」

彼方「遥ちゃんには、スクールアイドルをめいいっぱい楽しんでもらいたいって思ってるから」

彼方「その時間を削らなきゃい受けないようなことは、私が変わってあげたいなって思ってる」

彼方「でも、私に代わって貰ったら意味なくなるようなことをしたくて」

彼方「そのために自分でお金を貯めたいって言うなら、危なくないことなら許可してもいいかなって……思った」

彼方「それでね。果林ちゃんに話して、雑誌のモデルのお仕事を紹介してもいいよってお話も貰ってる」

彼方「だから……遥ちゃんの目的を、教えてくれないかな?」

18: (らっかせい) 2021/06/13(日) 14:35:00.28 ID:lUpX6JVG
遥「……」

遥「言わないと、だめ?」

彼方「……言えないようなこと?」

遥「……」

遥「したいことが、あって」

遥「でも、お姉ちゃんには言いたくないかな……」

彼方「……」

彼方「果林ちゃんには言える?」

彼方「絶対に聞かないって約束するから」

彼方「それなら……不安だけど、許可できる……から」

遥「聞かない?」

遥「本当に聞かないでくれる?」

彼方「うん、約束する」

遥「なら……果林さんには話してもいいかな」

21: (らっかせい) 2021/06/13(日) 14:50:02.92 ID:lUpX6JVG
彼方「でも、危ないことや悪いことのためじゃないってことだけは約束してね?」

彼方「例えば、その……悪いお薬とか」

遥「そんなことには使わないよっ」

遥「それだけは絶対にほんと、言い切ってもいい」

遥「約束するし、嘘だったら私の全部をお姉ちゃんに差し出すくらい本気」

彼方「なら、果林ちゃんにお話ししてみるね?」

彼方「遥ちゃんがアルバイトしてみたいって」

彼方「モデルのアルバイトだけど、いいよね?」

遥「うんっ」

遥「果林さんも一緒なら安心だし」

遥「お姉ちゃんだって、その方が良いから果林さんにお願いしてくれたんでしょ?」

彼方「果林ちゃんから言ってくれたんだけどね~」

彼方「果林ちゃんが紹介してあげるから、許可してあげたらって」

遥「えへへっそっかぁ」

彼方「……むぅ」

22: (らっかせい) 2021/06/13(日) 15:00:32.94 ID:lUpX6JVG
彼方「遥ちゃんって、そんなに果林ちゃんと仲良かったっけ」

遥「ん~……ほどほどには?」

遥「お姉ちゃん、時々連れてきたりしてたし」

遥「お姉ちゃんがアルバイトでいないときは……してないけど」フイッ

彼方「……えっ」

彼方「遥ちゃん?」クイッ

遥「なに?」フイッ

彼方「ちょっと」クイッ

遥「どうしたの?」プイッ

彼方「彼方ちゃんに秘密でこっそり会ってるの!?」

遥「そんなことないよっ」

彼方「……目を見て言える?」

遥「も~疑り深いなぁ」

遥「……秘密でこっそり会ってるわけじゃないよ」ジッ

彼方「ほんと?」

遥「ほんとだよ~」

23: (らっかせい) 2021/06/13(日) 15:10:24.20 ID:lUpX6JVG
彼方「モデルのアルバイト、駄目だったら別のを一緒に探してあげようと思ったけど」

彼方「駄目だったら駄目で良い?」

遥「え~っ」

遥「一緒に探してよ~」

彼方「……アルバイトの理由、果林ちゃんじゃないよね?」

遥「うん」

遥「違うよ」

彼方「……怪しいなぁ」

遥「違うってば~」ギュッ

遥「本当に、違うよ」

彼方「そっかぁ」

遥「……私が好きなのは、お姉ちゃんだもん」

28: (らっかせい) 2021/06/13(日) 16:02:28.01 ID:lUpX6JVG
――――――
―――


果林「じゃぁ、今日連れていくから」

彼方「うん……」

果林「そんな心配しなくても大丈夫よ」

果林「水着も下着も、私だって撮ったことないんだから」

果林「……それとも、そういう撮影に興味があるのかしら?」

……スッ

彼方「もうっ」ペシッ

彼方「果林ちゃんは、撮ってそうな雰囲気あるよ~」

果林「何それ」

果林「いやらしい雰囲気?」

彼方「そう……いやらしい雰囲気」

彼方「……」

彼方「……ねぇ。遥ちゃんとこっそり会ってたりする?」

果林「ふふっ、どうだったかしら」

果林「偶然会ったことなら何度かあるわ。彼方には、言ってないけど」

29: (らっかせい) 2021/06/13(日) 17:04:13.06 ID:lUpX6JVG
彼方「ほんとうに偶然?」

果林「偶然」

彼方「……ほんと~?」ムニィ~

果林「ほんほひ」

果林「……」

果林「……ん」ペチッ

果林「会ってたら都合が悪いわけ?」

彼方「え~……」

彼方「だって、果林ちゃんに義姉さんとか呼ばれたくないし」

果林「意味わからないわよ……」

果林「どうして、私が彼方をそんな呼び方するのよ」

....サワッ

果林「……彼方」ボソッ

彼方「っ」ビクッ

彼方「みっ、耳元は無しだって言ったのに~」

果林「だって、彼方が変なこと言うから」

果林「私は、そんな呼び方をするような関係になる気はないわ」

30: (らっかせい) 2021/06/13(日) 17:48:47.61 ID:lUpX6JVG
彼方「ほんと~?」

果林「本当よ」

果林「……それとも、呼ばれたいのかしら?」

果林「義姉さん? 彼方お姉ちゃん?」

彼方「彼方で良いよ~」

彼方「遥ちゃんはあげないけどね~」

果林「そう……」

果林「じゃぁ……彼方のことは貰えるのかしら?」ボソッ

彼方「ひゃわっ」ピクッ

ゴンッ

果林「う゛っ」

彼方「ダメっ! 彼方ちゃんもダメーっ!」

果林「いたた……冗談よ」

果林「……冗談。ね」

32: (らっかせい) 2021/06/13(日) 18:26:56.78 ID:lUpX6JVG
彼方「果林ちゃんの場合」

彼方「本気か冗談かわからないからそういうこと言ったらだめだよ~」

彼方「果林ちゃんのファンの子に聞かれたら、彼方ちゃん刺されちゃうかも~」

果林「なぁにそれ」

果林「大丈夫よ。彼方と付き合ったら、真っ先に私が葬り去られるに決まってるもの」

彼方「そうかなぁ……」

果林「そうよ。間違いないわ」

果林「……」

果林「ということで、間をとって彼方のお母さまとかどうかしら」

彼方「か~り~ん~ちゃ~ん~?」

果林「冗談よ。冗談」

果林「さすがに、ね?」

果林「一石二鳥だなんて思ってないから」

彼方「……遥ちゃんが心配になってきた」

果林「ふふっ」

果林「……大丈夫」

34: (らっかせい) 2021/06/13(日) 21:06:19.42 ID:lUpX6JVG
――――――
―――

遥「お姉ちゃんっ、私モデルになれるって!」

彼方「……水着?」

遥「じゃないよ~」

遥「見たいなら、見せてあげるけど……」チラッ

彼方「違うならいいよ~」

彼方「お話聞いてどうだった? 大丈夫そうだった?」

彼方「時間とか日にちとか、無理なこと言われなかった?」

遥「必ず事前に入れるか予定聞いてくれるって言ってたから」

遥「スケジュールとか大変なことにはならないと思うよ」

遥「なにより……」

遥「お姉ちゃんみたいに、ほぼ毎日じゃないから」

彼方「あはは……」

遥「もうっ、笑い事じゃないんだからねっ」

35: (らっかせい) 2021/06/13(日) 21:37:26.67 ID:lUpX6JVG
遥「私、頑張ってみるね」

遥「雑誌のサンプルももらえることがあるみたいだから」

遥「もらえたら、見せてあげるね」

彼方「え~もらえなくても買うよ~」

彼方「どんな雑誌に載るかだけ教えてね~」

遥「うんっ」

遥「あっ、でも……」

遥「スクールアイドル系の雑誌になるんじゃないかなって言ってた」

遥「ファッション系のものにもなるとは思うけど、やっぱりスクールアイドルで推したいかなって」

遥「雑誌の人が相談してた」

彼方「そっか~」

彼方「遥ちゃん、ナンバーワンだもんね~」

遥「そんなことないよ~」

彼方「あるよ~」

遥「ないよ~」

36: (らっかせい) 2021/06/13(日) 21:47:31.53 ID:lUpX6JVG
彼方「でも……そっかぁ」

彼方「ついに遥ちゃんもお仕事するんだ」

遥「うん……果林さんに見ていてもらわないと、安心はできないけど」

遥「でも……どうしても、必要だから」

彼方「……」

彼方「果林ちゃんには、話した?」

遥「……話した」

遥「恥ずかしかったけど、でも、約束だったから」フイッ

彼方「聞かないから大丈夫」

彼方「約束だもん、絶対に果林ちゃんに聞かない」

彼方「気になるけど、我慢するからね」

遥「えへへっ、ありがとっ!」ニコッ

43: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:04:19.28 ID:z/8y4TVQ
――――――
―――

彼方「……狡い」

グニィィィィ.....

果林「いぁい」

ペチンッ

果林「なによもう……遥ちゃんの恩人なのに」

彼方「その遥ちゃんが、果林さん果林さん果林さんって」

彼方「もう、彼方ちゃんは悲しくて……」

果林「紹介しただけじゃない」

果林「別にいいでしょ。一緒にいるのが彼方なんだから」

彼方「一緒にいるときにほかの女の名前出すなんて……」

果林「姉妹のくせに何言ってんのよ」

45: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:15:23.36 ID:z/8y4TVQ
果林「で、ほかの女ですけど? 何か文句ある?」

彼方「むぅ……」

彼方「果林ちゃんだと文句は言えない……」

果林「ふふっ、それはどうも」

果林「でも……」

果林「彼方だって、いっつもほかの女の話ばっかり」

彼方「へっ?」

サワ....

果林「遥ちゃん遥ちゃん遥ちゃんって」

果林「私といても、いっつも言ってるじゃない」

彼方「え~?」

彼方「……」

彼方「姉妹なのに、何言ってんのよ」

ペシッ

彼方「ぁぅ」

果林「下手な真似しないで」

46: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:18:27.24 ID:z/8y4TVQ
果林「……」

果林「それで? 聞きたくないの? 遥ちゃんの目的」

果林「遥ちゃんから口止めはされてないから」

果林「教えてあげようと思えば、教えてあげられるけど?」

彼方「ん~……」

彼方「でも……」

モゾモゾ

彼方「遥ちゃんと約束したから」

彼方「果林ちゃんには聞かないよって」

果林「聞いてないわ。聞かされたのよ」

果林「それなら、仕方がないと思わない?」

彼方「悪い女だねぇ」

果林「噂の女だもの」

47: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:33:03.09 ID:z/8y4TVQ
彼方「でも、聞かない」

彼方「聞いちゃったら、遥ちゃんを裏切ることになっちゃう」

果林「……そう」

果林「相変わらず、遥ちゃんのことに関してはいつも以上に真面目なんだから」

果林「けど」

サワサワ

彼方「っ」ピクッ

果林「……もう、裏切っちゃってるんじゃない?」ボソッ

彼方「そんなことないよ」

彼方「裏切ってるのは、果林ちゃんだよ」

果林「……」

果林「……」フイッ

果林「そうかしら」

彼方「……この泥棒猫」グイッ

果林「まだ盗んでないでしょ」

48: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:45:31.71 ID:z/8y4TVQ
彼方「……遥ちゃんのこと、よろしくね?」

彼方「しばらくは、失敗もしちゃうかもしれないけど」

果林「大丈夫よ。彼方の妹だもの」

彼方「えへへ……そうかなぁ」

果林「間違いないわ」

果林「……どうせなら、姉妹で雑誌のモデルになってみてもいいと思うけど」

彼方「え~?」

彼方「買いかぶりすぎだよ~」

果林「頬が緩んでるわよ」

果林「……」

果林「ねぇ、彼方」

彼方「ん~?」

49: (らっかせい) 2021/06/15(火) 00:55:31.33 ID:z/8y4TVQ
果林「最近、家で遥ちゃんの様子はどうだった?」

果林「バイトの件はあるとしても、それ以外で何もなかった?」

彼方「そうだねぇ……」

彼方「ん~」

彼方「……なにも、なかったと思うよ~?」

果林「そう……」

彼方「なにかあった?」

果林「ううん」

果林「なんでも」

果林「何もなかったなら、それでいいわ」

彼方「……?」

51: (らっかせい) 2021/06/15(火) 09:12:05.29 ID:z/8y4TVQ
――――――
―――

彼方(家での遥ちゃんかぁ……)

彼方(……)

彼方(別に、おかしなところは何もないと思うけど……)

彼方(ん……)

彼方(遥ちゃんが悪いことをするわけがないから……)

彼方(なんだろう?)

彼方(歩夢ちゃんたちみたいに、こっそりゲームをやってるとか)

彼方(せつ菜ちゃんみたいに、こっそりアニメや漫画を見てるとか)

彼方(それとも機械工学に目覚めて夜な夜な有事の際のロボット開発してるとか……)

彼方(……)

彼方(うん。ないねぇ~)

彼方(ロボットはともかく、ほかのことは彼方ちゃんと一緒にやろうとするから……)

彼方「……あっ!」ビクッ

彼方(まさか……果林ちゃんみたいにいやらしいことじゃないよね?)

53: (らっかせい) 2021/06/15(火) 20:55:46.29 ID:z/8y4TVQ
彼方「なっ……ないないないない!」

彼方「まさか……まさかねっ」

彼方「だって……」

彼方(そんな)

彼方(遥ちゃんが、そんなこと……)

.....ギシッ

彼方(遥ちゃんは良い子だもん)

彼方(いやらしいことなんてするわけがないよね?)

彼方(でも、だったら何を隠してるんだろう?)

キシッ....
      ギシッ

彼方(いうのも恥ずかしいようなこと)

彼方(私には絶対に言えないようなこと)

彼方(自分のお金じゃなくちゃいけないようなこと)

彼方(何かのプレゼントって、どうしても黙ってなくちゃいけないようなことなのかな……)

54: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:03:19.25 ID:z/8y4TVQ
彼方「気になる……」

彼方(うぅ……)

ギシッ
     ポフッ

彼方(遥ちゃんには約束したし)

彼方(果林ちゃんにも聞きたくないって念押ししちゃったけど)

彼方(果林ちゃんが変なこと言うから……)

彼方「……」

キシ.....
       ギシッ

彼方「....スンスン」

彼方(やっぱり、果林ちゃんはいやらしい子だ……)

彼方(どうしよう、遥ちゃん……本当に変なことじゃないよね?)

ギシッ....
      キシッ

彼方「んっ……」ピクッ

――ガチャッ

彼方「っ」ガタッ

遥「ただいまー……?」

55: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:09:09.08 ID:z/8y4TVQ
彼方「お、おかえり~」

遥「ただいま」

遥「お姉ちゃん、また私のベッドにあがって……」

遥「……別に良いけど」スンスン

遥「危なくない? 軋むでしょ」

彼方「うんっ、そうみたい」

彼方「そろそろ買い替えが必要かもしれないね~」

ギシギシッ

遥「そうだね……あ、お姉ちゃんが高校卒業したら買い替えようよ」

遥「私も高校生だし、二段じゃなくて一段で」

彼方「一段のを二つ?」

遥「ん~……」

遥「キングサイズを一枚」

彼方「部屋が埋まっちゃうから無理だと思うよ~」

遥「そっかぁ」

56: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:16:57.31 ID:z/8y4TVQ
彼方「そういえば、アルバイトの日程は?」

遥「そうだった……今日のお昼に連絡があって」

遥「さっそく明日どうかなって」

遥「果林さんに連絡したら大丈夫だって言ってたから、明日一緒に行ってくるね」

彼方「……果林ちゃんにはすぐ連絡したんだ」

遥「え?」

遥「あ、うん。そうじゃないと言う機会がないし、一緒に来てもらうから早い方が良いかと思ったから」

遥「……」

遥「もしかして、怒ってる?」

彼方「……怒ってないよ」

遥「じゃぁ、拗ねてるんだ」

ギシッ
    キシッ

遥「……お姉ちゃんとはこうやって話せるから、いいと思った」

ギュッ

彼方「……」

遥「ごめんね」

57: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:28:50.03 ID:z/8y4TVQ
彼方「……別に拗ねてないよ~」

遥「え~?」

遥「……私だったら、拗ねてる」

ゴソゴソッ

彼方「なのに、すぐに教えてくれなかったんだ」

遥「うん」

モゾモゾ
      ギシッ
   キシッ

遥「その方がお姉ちゃん可愛いから」

彼方「……お姉ちゃんは遥ちゃんが嫌いです」

遥「えへへっ」

遥「……」

スッ.....

――チュッ

遥「ごめんねっ」

彼方「だ~めっ」プイッ

遥「……明日果林さんのところに泊まっちゃおうかな」ボソッ

彼方「怒るよ~?」

遥「冗談だよ」

遥「ちゃんと、帰ってくるよ」ギュッ

58: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:38:20.79 ID:z/8y4TVQ
彼方(遥ちゃんは、いつも通り)

彼方(私に隠し事があっても、平然としてる)

彼方(大したことじゃないからなのかな)

彼方(遥ちゃんは気にしてないからなのかな)

彼方(それとも……)

彼方「……」

彼方「遥ちゃん」

遥「ん~?」

彼方「いやらしいことじゃ、ないよね?」

遥「……違うよ」

遥「いやらしいことじゃないよ」

遥「……でも、すっごく大切なこと」

59: (らっかせい) 2021/06/15(火) 21:42:35.10 ID:z/8y4TVQ
彼方「そっか」

彼方「そっか……」

彼方「なら、いいけど」

遥「……」

遥「お姉ちゃんに迷惑かけないから、大丈夫だよ」

ギシッ
     キシッ

遥「悪いことじゃないって、約束する」

彼方「うん」

彼方「……」

遥「今日は一緒に寝よ?」

彼方「ん~……」

彼方「いいよ」

遥「やった~」ギュッ

69: (らっかせい) 2021/06/17(木) 21:14:24.46 ID:Sh4KLLbY
――――――
―――

彼方「今日はよろしくねぇ~」

果林「ええ。任せて」

果林「と言っても、私がどうこうするわけじゃないけどね」

果林「彼方が見たこともない男達が、相手するのよ」

彼方「言い方」

果林「ふふっ、冗談よ」

果林「みんながみんな男ってわけじゃないわ」

果林「今回は、たぶん、カメラマンは男性だろうけどアシとかは女性だろうし」

果林「時々、女性のカメラマンもいるのよ? 男の人よりも見栄えする指示してくれるんだから」

彼方「そっか……」

彼方「果林ちゃんは、撮られ慣れてると思うけど」

彼方「撮る方はどう? 普通の人よりはいい写真、撮ったりできる?」

70: (らっかせい) 2021/06/17(木) 21:21:44.65 ID:Sh4KLLbY
果林「ん~……どうかしら」

果林「まぁ、撮れる……かもしれないわ」

果林「……」

果林「撮られたいの?」

果林「それとも」

スッ.....
       クイッ

果林「……盗られたいのかしら?」

彼方「……」チラッ

彼方「今、侑ちゃん居ないよ?」

果林「ギャグじゃないってば」

71: (らっかせい) 2021/06/17(木) 21:39:26.93 ID:Sh4KLLbY
彼方「え~? じゃぁ……」

彼方「彼方ちゃんの心は遥ちゃんに盗られちゃってるから駄目だよ~」

果林「あら、なら空っぽってこと?」

果林「……だとしたら、ここには何が詰まってるのかしら」

サワサワ....

彼方「んっ……」ピクッ

彼方「優しさ……かな?」

果林「私の心を入れる隙間はある?」

彼方「……」

彼方「どうかなぁ」フイッ

彼方「……どうだと思う?」

果林「ふふっ、なにそれ」

果林「試しにねじ込んでみてもいいの?」

72: (らっかせい) 2021/06/17(木) 22:03:21.51 ID:Sh4KLLbY
グッ.....

彼方「だ~めっ」

果林「誘っておいて?」

彼方「学校だよ~?」

果林「……」

果林「でも校舎裏だし」

彼方「外だよ?」

果林「……解放感も、たまにはね」

彼方「ダメなものはダメ~」

グイッ

彼方「果林ちゃんはエ チだなぁ……」

ゴロンッ

果林「そんな人の膝を借りて無防備なのは許されないと思わない?」

彼方「許して?」

サワサワ.....
        スッ

果林「 だ め 」ボソッ

73: (らっかせい) 2021/06/17(木) 23:40:07.14 ID:Sh4KLLbY
果林「……そうだわ」

サワサワ....
       ペシッ

彼方「っ……おさわりはダメ」

果林「もうっ……」

果林「で、彼方、遥ちゃんのお財布ってチェックしてる?」

彼方「えっ……そんなことするわけないよ」

果林「そう……」

果林「やっぱり、普通はチェックなんてしないわよね」

果林「だから……」

彼方「だから、なに?」

彼方「遥ちゃん、何か隠してるの?」

果林「ううん。何でもないわ」

果林「遥ちゃんは、いい子だもの」ニコッ

75: (らっかせい) 2021/06/18(金) 08:56:58.58 ID:vfBBqT0o
果林「良い子だから、私のところに泊めても――」

彼方「それはダメ」

彼方「果林ちゃん、いやらしいことするから」

彼方「遥ちゃんが垢抜けちゃう。悪い方向に」

果林「……」

果林「ねぇ、前々から思ってたんだけど」

果林「彼方、私のこと嫌いでしょ?」

彼方「え~……」ゴロンッ

彼方「好きだよ?」

果林「その割には評価が酷いわ。好きならもうちょっと贔屓して欲しいものね」

果林「彼方と遥ちゃんのこと、私甘く見てるのに」

彼方「甘く見てるから……駄目なんじゃないかな~」ギュッ

.....ナデナデ

果林「帰りに、寄り道するから帰すの遅くなるかも」

彼方「警察に電話する前に帰してね」

果林「もうっ、それじゃ私犯罪者になっちゃうじゃない」

76: (らっかせい) 2021/06/18(金) 09:05:26.51 ID:vfBBqT0o
果林「……」

果林「彼方も大変ね」

彼方「なぁに? 急に」

果林「……別に」

果林「ただ何となく」

果林「……いえ」

果林「朝忙しかった?」

彼方「あ~……」

彼方「ほら、他の女のにおいがするでしょ?」

果林「遥ちゃんね」

彼方「それで、ちょっと寝坊した」

果林「そう……」

果林「まぁ、別に良いんだけど」

果林「というより、もう気付いてるとは思うんだけど」

果林「ブラ……つけてないでしょ」

彼方「……へへっ」

彼方「触る?」

果林「やめてよ。本気にしちゃうでしょ」

果林「……」チラッ

ガバッ

彼方「わぁ~っ」ドサッ

78: (らっかせい) 2021/06/18(金) 09:27:28.04 ID:vfBBqT0o
――――――
―――

彼方「ん~……」

彼方(遥ちゃん、今日は撮影だから……遅くなる)

彼方(でも、今まで部活の練習で遅くなることもあったから)

彼方(その代わりだと思えば、帰ってくる時間も変わりないのかな)

彼方「……」スッ

>遥ちゃん:今日は帰り、いつもより遅いかも

.....ポスッ

彼方「……はぁ」

彼方(遥ちゃんのしたいこと、欲しいもの、お金が必要な何か)

彼方(お財布……お財布に秘密があるのかな)

彼方(聞いたことあるのは、お守りだったかな。金運とか……一緒に初詣行ったときに買う……)

彼方(あとおみくじ……ポイントカードとか……でも、それだけじゃないだろうし)

彼方(……もやもやする)

彼方(テレビでも、見ようかな)

ピッ.....

79: (らっかせい) 2021/06/18(金) 09:35:49.10 ID:vfBBqT0o
『でも私産みたい!』

『大変なことは分かってるよ! 分かってるけどっ、でも……!』

『お前はまだ高校生なんだぞ!』

ガタンッ!!

彼方「……」

彼方「ぁ……」

彼方(え、え……いや)

彼方「……ふぅ」

彼方(落ち着こう。まさか、うん)

彼方(これはドラマだから。うん、遥ちゃんが、そんな……)

彼方「……」

彼方「お財布……診察券……」

彼方「は、ははっ……まさか……」

彼方「まさか、ね……あはは……」

80: (らっかせい) 2021/06/18(金) 09:42:38.27 ID:vfBBqT0o
彼方(遥ちゃんが妊娠した?)

彼方(病院行くために、バイトを始めたの?)

彼方(中絶費用を貯めるため?)

彼方(それとも……)チラッ

『この子は何も悪くないの!!』

彼方(産んで、育てたいから?)

彼方「……」

彼方(悪いことでもいやらしいことでもないけど、恥ずかしいこと)

彼方(私に迷惑をかけたくないこと……)

彼方「……」ポロッ

彼方「え、あ……」ポロポロ....

彼方(違う、違うっ)

彼方(遥ちゃんがそんなことになるわけないっ!)

81: (らっかせい) 2021/06/18(金) 10:07:40.85 ID:vfBBqT0o
彼方(でも、ないとは言い切れない)

彼方(遥ちゃんかわいいから、引く手数多だろうし)

彼方(遥ちゃんが合意するとは思えないけど……)

彼方(え……でも、だったら……)

ガタンッ!!

彼方(無理矢理?)

彼方(嘘だよね……違う。ありえない)

彼方(そんなこと、あるわけない……)

彼方(遥ちゃんに、確かめてみなきゃ)

82: (らっかせい) 2021/06/18(金) 10:20:01.90 ID:vfBBqT0o
――――――
―――

遥「ただいま~」

彼方「お帰り~」

彼方「どうだった?」

遥「ん~……あれも違うこれも違うっていっぱい駄目だしされちゃった……えへへ」

遥「でも、上手くいくとみんな喜んでくれて、凄い凄いって褒めてくれて」

遥「大変だったけど、やっぱり楽しかった」

遥「スクールアイドルじゃなくて、一人の人だったけど」

遥「でも、なんだか……アイドルみたいだなって、思っちゃった」

遥「失礼かな、本当のモデルさんやアイドルの人に」

彼方「感じ方は人それぞれだよ~」

彼方「良いんじゃないかな……遥ちゃんがそう感じたなら、貶してるわけじゃないんだから」

遥「そっか……」

遥「お姉ちゃんは? また、私のベッド上がったの?」

彼方「そんな常習犯みたいに~」

彼方「珍しく暇だったから、久しぶりにドラマ見ちゃった」

彼方「……」

彼方「最近って、色々あるんだねぇ。女子高生が妊娠するようなものとか」チラッ

遥「あーあるよ。クラスでもたまにそういうドラマの話題上がることある」

彼方(普通だ……)

83: (らっかせい) 2021/06/18(金) 10:25:31.26 ID:vfBBqT0o
遥「でも、そういうのって身近にはいないかなぁ……」

遥「隠してるのかもしれないけど、聞いたことないよ」

遥「やっぱり、大変だし怖いし、何よりいろんな人に迷惑かけちゃうから」

彼方「そうだよねぇ」

彼方「……」

彼方「遥ちゃんも、いつかは……とか、考えてるの?」

遥「お付き合い? 子供?」

彼方「ん~両方……」

遥「……」

遥「子供は、どうだろう……たぶん、できないんじゃないかな」

彼方「えっ」

彼方(まさか、不妊治療?)

遥「だって――」

.....スッ

遥「お姉ちゃん、その為のものがないでしょ?」ボソッ

彼方「え、あ、まっ……」

遥「お風呂よりもご飯よりも、まずはお姉ちゃん。かなっ」ニコッ

彼方「わ~っ!」

ドサッ

84: (らっかせい) 2021/06/18(金) 10:30:47.51 ID:vfBBqT0o
遥「……え、お財布?」

彼方「うん」

遥「お財布の中なんて、大したもの入ってないよ」

遥「果林さんにからかわれてるよ。お姉ちゃん」

彼方「うぅ……やっぱり?」

遥「私、お姉ちゃんに後ろめたいことなんて何にもない」

遥「アルバイトしたいのは、欲しいものがあるから」

遥「ただ、その欲しいものはお姉ちゃんに教えたくないし、私が自分のお金で買いたいなって思ってる」

遥「教えたくないのだって、意地悪とかじゃないんだよ?」

.....チュッ

遥「私が、まだ知られたくないだけ」

彼方「……ほんと?」

遥「お姉ちゃんは私のこと信じられない?」

彼方「信じられる。けど」

遥「だったら……そんな不安にならないで」ギュッ

遥「大丈夫だから」

87: (らっかせい) 2021/06/19(土) 10:18:04.67 ID:BQaBaQuM
――――――
―――

彼方「というわけで、彼方ちゃんは果林ちゃんが嫌いになりました」

果林「……そう」

果林「一方的な愛情って、暴走すると危険なのよね」

果林「夜道に気を付けた方が良いわ」

彼方「怖いよ……」

果林「まぁ仕方がないわ。自業自得だもの」

果林「だから、バイト帰りに背後の電信柱の影で私を見ても近づいたら駄目よ」

彼方「ホラーだ……」

果林「でも、よかったじゃない」

果林「遥ちゃんがちょっとだけでも教えてくれたんだから」

果林「私のおかげよね」

彼方「ん~?」

88: (らっかせい) 2021/06/19(土) 10:27:04.70 ID:BQaBaQuM
果林「というか、本気で遥ちゃんが妊娠したとか思ったの?」

彼方「ちょっと不安になった」

果林「遥ちゃんよ? 襲われたならともかく」

果林「合意でそんなことになるとか地球の自転と公転が止まってもあり得ないでしょ」

果林「遥ちゃんは大丈夫よ。一生、男なんて作る気ないわよ」

彼方「それはそれで、どうなのかなぁ……」

果林「逆に、彼方はどうなの?」

果林「遥ちゃんのことばかりだけど、男性とお付き合いする気はあるの?」

彼方「そうだねぇ」

彼方「……今のところ、何にも考えてない」

果林「告白されたら?」

彼方「断っちゃう……かな」

彼方「だって、今はまだ……彼方ちゃんの時間を割いてあげる余裕がないから」

89: (らっかせい) 2021/06/19(土) 10:33:18.94 ID:BQaBaQuM
果林「そこよそこ」

果林「遥ちゃんのために使ってる時間を、自分のために使うって発想はないの?」

彼方「ない」

果林「早いわね」

彼方「だって、どっちにしろ自分のためだから」

彼方「あとは、そこにだれが関わるか」

彼方「好きになった……? 男の人と、遥ちゃん。どっちを優先するのかなんて、考えるまでもないよね」

果林「よね? って聞かれてもね」

果林「それって結局、好きになった相手がいないから言えることだと思わない?」

果林「恋人が出来たら、ぐるりと変わるわよ」

果林「……」

果林「というわけで、どう? 私と付き合ってみる気はない?」

彼方「なぁに言ってるの~」

90: (らっかせい) 2021/06/19(土) 10:58:11.70 ID:BQaBaQuM
果林「つれないんだから……」

果林「彼方ってば、後々刺されるわよ?」

彼方「え~……ないない」

彼方「彼方ちゃんはどちらかと言えば地味な子なので」

果林「いや、男って意外性もなく彼方みたいな家庭的な子に惚れるわよ?」

彼方「その言い方はどうだろう?」

彼方「彼方ちゃんより果林ちゃんはどうなの~?」

果林「ふっ……私に聞く?」

彼方「興味ないんだ」

果林「あったら、読モの仲間内で開かれる合コンに参加してるわよ」

彼方「……え、待って、何それ。遥ちゃんが危ない!」

果林「大丈夫だってば」

果林「遥ちゃん、そういうの絶対断るタイプでしょ」

彼方「むぅ……そういうデメリットを説明しないから、果林ちゃんはお付き合いできないんだよ」

果林「あら酷い」

98: (らっかせい) 2021/06/21(月) 23:26:53.63 ID:yJR3WFxb
果林「行き遅れになるまで囲っておいて、ほっぽり出すなんて彼方ってば罪な女ね」

彼方「囲われてた方が悪いんだよ~」

果林「ほら、やっぱり刺される」

ググッ

彼方「あっ」ビクッ

ググ.....
      グイ......

彼方「痛っ……背中っ」

グリグリグリ

彼方「いたっ……いたたたたたたたたたっ!」

果林「罪には罰が与えられるのよっ!」

グリグリグリ

彼方「やっ……痛っ……痛いっ、ホック外れちゃう!」

果林「……」

....スッ
      ――プツッ

彼方「なんで外すの!?」

果林「大丈夫よ。屋外だから」

グィッ

彼方「果林ちゃ……果林ちゃん!?」

99: (らっかせい) 2021/06/22(火) 00:18:58.10 ID:VyOqGpTd
――――――
―――

遥「……ねぇ、お姉ちゃん」

彼方「ん~?」

遥「お姉ちゃんはさ、自分が温泉に行くのと、お母さんが温泉に行くの。どっちを優先する?」

彼方「なぁに~その質問」

彼方「心理テスト~?」

遥「ううん、ただの質問」

彼方「そうだねぇ……彼方ちゃんなら、お母さんに温泉に行って貰うかなぁ」

彼方「いつも頑張ってお仕事してくれてるから」

彼方「その疲れを癒してくれたらいいな~って」

遥「……でも、お母さんはお仕事があるし、予定があるし」

遥「早番も遅番も分からないから、温泉に行って貰うのは難しいと思う」

彼方「遥ちゃん、狡いなぁ……」

遥「えへへ」

100: (らっかせい) 2021/06/22(火) 00:28:44.83 ID:VyOqGpTd
遥「私からしたら、お姉ちゃんもお母さんもすっごく頑張ってる」

遥「……毎日お仕事に言ってるから、お母さんの方が頑張ってるかもしれない」

遥「けど、お姉ちゃんだってお仕事、お勉強、部活、おうちのこと……たくさん頑張ってるよ」

彼方「頑張りすぎてる。かなぁ?」

遥「……前よりは、私に手伝わせてくれてるけど」

彼方「もしかして、だからアルバイトしたいって言ったの?」

彼方「それで、私のアルバイトの負担を減らそう。みたいな」

遥「ううん、違うよ」

遥「あっ」

遥「減らせたらいいなって思ってはいるけど、今回は違うの」

遥「だって、1週間に3回くらいあれば良い程度じゃ、そんなにお金は稼げないと思うし」

遥「とにかく、まだまだお姉ちゃんは頑張ってるって、私は思う」

101: (らっかせい) 2021/06/22(火) 00:41:14.77 ID:VyOqGpTd
彼方(もしかして、一緒に温泉行こう……みたいな?)

彼方(遥ちゃんと一緒に行きたいって言うと思ってたのかな……)

彼方(だったら少し、悪いことしちゃったかも……)

彼方「はるk――」

遥「だから、いつもよりちょっといい入浴剤を果林さんがくれたの!」

彼方「果林ちゃんっ」

遥「えっ?」

彼方「あはは……なんでもないよ~」

遥「そう? 果林さんがね、疲れが取れるし、気持ちいいからって入浴剤を分けてくれたんだ」

遥「肌もすべすべになるって」

彼方「遥ちゃん、温泉の話は……えっと、何だったの?」

遥「あれは、お姉ちゃんも疲れてるんだよってことで……」

遥「あっ、温泉……お姉ちゃん行きたかったり?」

彼方「そういうわけじゃ、ないけど」

彼方(ちょっと残念)

遥「そっか……ごめんね。変な期待させちゃって」

彼方「ううん。入浴剤も嬉しいよ~」

彼方「明日にでも、果林ちゃんにお礼しなきゃ」

102: (らっかせい) 2021/06/22(火) 00:50:51.44 ID:VyOqGpTd
遥「……」

遥「じゃぁ、そうだ。ねぇ、今日は一緒にお風呂入ろうよ」

彼方「ん~……」

遥「だめ?」

彼方「遥ちゃんと一緒に入ると、倍の時間かかるからなぁ」

遥「それはそうだけど、考えてみて」

遥「いつも、平均すると私とお姉ちゃんでそれぞれ30分くらいでしょ?」

彼方「そうだねぇ」

遥「だから、30分と30分で合わせて1時間かかるのは普通だよ?」

彼方「そっかぁ」

彼方「ん~……そうかなぁ?」

遥「なら、洗いっこしようよ。ねっ? それならいいでしょ?」

彼方「仕方がないなぁ~今日だけだよ~?」

遥「やった~」

遥「お姉ちゃん大好きっ」ギュッ

104: (らっかせい) 2021/06/22(火) 23:09:02.37 ID:VyOqGpTd
――――――
―――

彼方「果林ちゃん、ありがと~」

果林「えっ? なに、急に」

彼方「入浴剤、遥ちゃんに分けてくれたんでしょ~?」

彼方「あれ、使ってみたけどすっごくよかった~」

彼方「香りもそうだけど、上がった後に見違えるくらいにすべすべお肌だったよ~」

果林「入浴……あ、あぁ、そう」

果林「喜んでもらえたならよかったわ」

果林「けど、急にありがとうなんていうから驚いたじゃない」

果林「明日から転向とか言われるのかと思ったわ」

彼方「え~……しないよ~」

果林「わからないじゃない」

果林「ドラマでよく聞いたわ。夜逃げとか」

彼方「近江家は夜逃げするような状態じゃないよ~」

彼方「大丈夫、果林ちゃんのお財布を盗むほどじゃない……」

.....スッ

果林「こらこら」

105: (らっかせい) 2021/06/22(火) 23:56:17.06 ID:VyOqGpTd
果林「……まぁ、私のお財布なんて大したお金入ってないわよ」

彼方「そうなの?」

スッ

果林「ほら、千円札数枚くらいでしょ?」

彼方「……彼方ちゃんのお財布の中身と勝負したいのかな?」

彼方「良いよ~見せてあげるよ~」

果林「ちょ、ちょっと」

サッ

彼方「……果林ちゃんの半分くらい」

彼方「ジャンプした方が良い?」

果林「カツアゲじゃないんだから……」

果林「飲み物分けてあげる」

彼方「ありがと~」

彼方「ゴクゴク....」

彼方「あ、お財布の中身は少ないけど電子マネーにはちゃんとチャージしてあるよ?」

果林「だろうと思った」

106: (らっかせい) 2021/06/23(水) 00:08:58.16 ID:2dsnPmI4
果林「そうだ。彼方って、土日にバイト入れることもあるわよね?」

彼方「ん~……時々」

彼方「土日一回も入れませ~ん。だと、なんというか、色々ねぇ」

果林「でも、事前に言っておけば臨時で呼ばれたりもしないわよね?」

彼方「うん」

果林「そしたら、来月の……ここ」

果林「この週の土日空けて貰えないかしら」

彼方「えっと……」

彼方「良いけど、何かあるの?」

果林「……土日空けてって言ったら、デート以外にあると思う?」

彼方「デート? え、果林ちゃんが? 誰と?」

果林「大人げもなく泣くわよ」

彼方「ごめんごめん」

彼方「わかった、空けておくね~」

果林「約束だからね」

107: (らっかせい) 2021/06/23(水) 00:22:40.03 ID:2dsnPmI4
彼方「その代わり、果林ちゃんもちゃんと予定空けておいてね?」

彼方「先々月の、第三金曜日、彼方ちゃんは丑の刻参りが脳裏をよぎったんだから」

果林「わ、分かってるわよ……」

果林「あれは、ほんと、ごめんなさい」

果林「弁解の余地もないわ」

彼方「……藁人形は用意したからね。次は五寸釘を用意します」

果林「あ、彼方の顔も三度までなのね」

彼方「嬉しい?」

果林「怖いわよ」

ナデナデ

果林「でも、なんだかんだ許してくれるでしょ」

彼方「遥ちゃんは許すけど、果林ちゃんは許さないよ~」プイッ

果林「……」

――チュッ

彼方「っ」ビクッ

彼方「果林ちゃんっ?」

果林「……なぁに? 頬にキス、して欲しかったんでしょう?」

グイッ

彼方「待っ……釘、釘用意しちゃ――……」

果林「ふふっ」

110: (らっかせい) 2021/06/23(水) 10:53:27.62 ID:2dsnPmI4
――――――
―――

彼方「えっ?」

遥「来月のこの日、空けて貰えないかなって」

彼方「えっと、その日は……」

彼方「ちょうど、予定があるって言うか……」

遥「え、でも、バイトはなかったよね?」

遥「この週は、確か部活もお休みだって話になってなかったっけ」

遥「……え」

遥「あれ? 私の勘違い?」

彼方「遥ちゃん、怖い怖い」

遥「えへへっ、迫力あった?」

彼方「あったあった」

彼方「……」

彼方「それはそうと、本当にその日は予定があって……果林ちゃんと」

遥「そっか」

遥「……」

遥「私よりも果林さんの方が大事なんだね……良いよ。別に、その程度だったんだね」フイッ

彼方「遥ちゃん?」

遥「実家に帰りたい」

彼方「もう帰ってるよ~」ナデナデ

111: (らっかせい) 2021/06/23(水) 11:20:33.59 ID:2dsnPmI4
彼方「どうしたの~?」

彼方「急に、独占欲発揮しちゃって」

遥「いつもならいいよ~って言ってくれるのに、その日は予定があるなんて言うからだよ」

遥「……果林さんには、やっぱり予定があって無理だって言うこともできるのに」

彼方「そんなことするお姉ちゃんだったら、遥ちゃんもこんな距離近くなかったでしょ」

遥「そうだけど」

遥「でも、私のために融通を利かせてくれたことに、ドキドキしちゃうかも」

彼方「なぁに言ってるのかな~」ムニムニ

遥「ふへへ……」

彼方「遥ちゃん、その日しか駄目なの?」

遥「う~ん……」

遥「尾根ちゃん、果林さんと用事があるんだよね?」

彼方「うん」

遥「……」

遥「その日じゃないとやだ」

彼方「こらこら」

112: (らっかせい) 2021/06/23(水) 11:21:35.73 ID:2dsnPmI4
>>111
誤字修正


彼方「どうしたの~?」

彼方「急に、独占欲発揮しちゃって」

遥「いつもならいいよ~って言ってくれるのに、その日は予定があるなんて言うからだよ」

遥「……果林さんには、やっぱり予定があって無理だって言うこともできるのに」

彼方「そんなことするお姉ちゃんだったら、遥ちゃんもこんな距離近くなかったでしょ」

遥「そうだけど」

遥「でも、私のために融通を利かせてくれたことに、ドキドキしちゃうかも」

彼方「なぁに言ってるのかな~」ムニムニ

遥「ふへへ……」

彼方「遥ちゃん、その日しか駄目なの?」

遥「う~ん……」

遥「お姉ちゃん、果林さんと用事があるんだよね?」

彼方「うん」

遥「……」

遥「その日じゃないとやだ」

彼方「こらこら」

113: (らっかせい) 2021/06/23(水) 11:48:08.44 ID:2dsnPmI4
遥「……むぅ」

彼方「果林ちゃんが先約だよ?」

遥「でも、私が筆頭株主だよね?」

彼方「彼方ちゃんの筆頭株主はお母さんかな」

遥「……」

遥「……いじわる」プイッ

彼方「果林ちゃんと遥ちゃん」

彼方「どっちが大事なの~って言われると、私はたぶん、迷いなく遥ちゃんだよって、答えちゃうと思う」

彼方「ずっと一緒だったし、私の妹だし、可愛いし」

彼方「果林ちゃんも可愛いところはあって、一緒に過ごした親友みたいなもので、大切だけど、でも、遥ちゃんにとって変えられるかって話は別になる」

....サワサワ

彼方「だから、大丈夫」

彼方「体は果林ちゃんのものになっても、心は遥ちゃんのものだよ」

遥「ちっともよくないよっ!」

遥「……もうっ」

遥「変なこと言わないで」

114: (らっかせい) 2021/06/23(水) 11:55:50.59 ID:2dsnPmI4
遥「どこにお出かけするとか、決めてるの?」

彼方「ううん。全然」

彼方「ただ、この日は空けておいて~ってお願いされただけだから」

彼方「だから、もし何か、予定が変わったり」

彼方「早めに済むことだったら、そのあと遥ちゃんとデートできるよ?」

遥「……へぇ」

彼方「なぁに?」

遥「舌の根も乾かないうちに、私とするんだ」

彼方「……」

スッ

彼方「どこで覚えてきたの? そんな言い方」

遥「ネットで調べた、本で読んだ、友達から聞いた……ほかの人にされたことがある」

遥「どれだと思う?」

彼方「ん~……最後のだったら、彼方ちゃんは世界を許さないかな」

.....ぎゅ~

遥「正解は……お姉ちゃんをドキッとさせたくて考えた」ボソッ

彼方「そのまま心停止するから止めてね~」

サワサワ
      ギシッ
  キシッ

遥「えへへっ、お姉ちゃんもね」

115: (らっかせい) 2021/06/23(水) 21:59:32.48 ID:2dsnPmI4
遥「お姉ちゃん……というか、虹ヶ咲の3年生は卒業ライブみたいなことってするの?」

彼方「あ~……」

彼方「まるで考えたことなかった」

遥「えーっ」

遥「東雲だと卒業生のライブがあるみたいで、応援してくれた学校のみんなにって……体育館でやるみたい」

彼方「外に披露しないの~?」

遥「それは別でやるんだって」

遥「だから、お姉ちゃんもやるのかなって思ったんだけど」

彼方「ん~話してみようかな」

彼方「3年生、東雲は2人だっけ? 2人だけでやるの?」

遥「ううん、その二人を中心としたライブやるみたいだよ」

遥「2人組ユニットも悪くないと思うけどね。姉ちゃんは、3人でやってみるのはどう?」

彼方「ん~……そうだねぇ」

116: (らっかせい) 2021/06/23(水) 22:11:16.77 ID:2dsnPmI4
――――――
―――

果林「なぁるほど。それであんなこと言いだしたのね」

彼方「えへへ~」

果林「彼方がそんなアイディア出せるわけないわよね。安心した」

彼方「もぅっ」

グリグリグリッ

果林「いっっった!?」

果林「わき腹抉らないでっ!」ペシッ

彼方「彼方ちゃんを何だと思ってるの~?」

果林「っ……」スリスリ

果林「悪い男に捕まりそうな女の人」

グリッ

果林「ひにゃっ!?」

彼方「それはさすがに酷いよ~」

果林「わ、悪かったわ……」

117: (らっかせい) 2021/06/23(水) 22:23:55.45 ID:2dsnPmI4
彼方「果林ちゃんこそどうなの?」

彼方「この前は興味ないって言ってたけど、接点なくて頃っと騙されちゃうんじゃないかな?」

果林「ん~……言われてみると、そこまではっきりとした接点はないのよね」

果林「こっちに来る前は、同年代が多かったかって言われるとそうでもなかったし」

果林「どちらかというと、お父さんお爺ちゃん世代って感じで」

果林「モデルのアルバイトしてても、やっぱり、お兄さん世代だから」

彼方「果林ちゃんはもし付き合うとしたら、年上? 年下? 同い年?」

果林「そうねぇ」

果林「……」

果林「やっぱり、同い年……いや、少し上、かしら」

果林「地元基準になっちゃうけれど、子供っぽくて」

彼方「そっかぁ……」

彼方「彼方ちゃんも、同じか少し上が良いかなぁ」

彼方「バイトしてても、きびきびお仕事してる人、格好いいなぁって思ったりするし」

果林「へぇ……」

118: (らっかせい) 2021/06/23(水) 22:48:47.71 ID:2dsnPmI4
果林「彼方ってば、そう……バイト先に好きな人がいるのね」

彼方「好きか嫌いかで言われればね~」

彼方「お付き合いしたいかどうかはまた別の話だよ~」

彼方「だって、それはそれ。これはこれだから」

彼方「……」

彼方「遥ちゃん、撮影の時に声かけられたりしてない?」

果林「まぁ、されてるわね」

彼方「え゛っ゛」

果林「……すごい声ね」

果林「……」

果林「男の人ってだけじゃなくて、女の人からも」

果林「遥ちゃん、東雲学院のセンターも任されてる新進気鋭のスクールアイドルだから」

果林「スクールアイドルってどういうものなのかとか、かなり話されてるの」

120: (らっかせい) 2021/06/23(水) 22:59:48.45 ID:2dsnPmI4
彼方「そっかぁ……」

果林「ふふっ、嬉しそうね」

彼方「それはそうだよ」

彼方「妹を褒められて嬉しくないお姉ちゃんなんてお姉ちゃんじゃないよ」

果林「……それは、どうかしらね」

果林「中には、それに嫉妬する人もいると思うわ」

果林「彼方だってスクールアイドルでしょう?」

果林「自分よりも優秀な妹……焦ったり、不快に感じたりしない?」

彼方「私は、遥ちゃんがどれだけ優秀になっても嬉しいだけだよ~」

彼方「彼方ちゃんなんて置いて、ぐんぐん成長して欲しいって、思ってる」

彼方「……」

彼方「んー……」

彼方「でも……嫉妬とかはしないけど、焦ったりは、しちゃうのかなぁ」

彼方「もう、彼方ちゃんは要らないのかなって」

121: (らっかせい) 2021/06/23(水) 23:38:11.11 ID:2dsnPmI4
果林「遥ちゃんはそんなこと言わないと思うけど」

果林「むしろ、遥ちゃんが彼方に負けないように焦ってる……かもね」

果林「愛想つかされちゃうんじゃないかって」

果林「だから……」

彼方「そんなことは、きっと、一生ないけどねぇ」

彼方「……ん」

彼方「ないない」

彼方「逆に彼方ちゃんが愛想つかされちゃうかも、果林ちゃんのせいで」

果林「なんでまた」

彼方「ほら、昨日空けて置いてって言われた日」

彼方「遥ちゃんも予定空けて置いてって言ってたから……」

彼方「果林ちゃんの先約があるからごめんねって断っちゃった」

果林「……あぁ、なるほど」

果林「まぁ、大丈夫よ。気にしなくても」

果林「私のために空けておいてさえくれればね」

122: (らっかせい) 2021/06/23(水) 23:57:11.81 ID:2dsnPmI4
彼方「予定空けておくのは良いけど……何をするの?」

果林「デートよ。デート」

果林「せっかくだから、少し遠出したくない?」

彼方「遠出?」

果林「ええ。温泉行きましょ。温泉」

彼方「なんでまた、温泉?」

果林「入浴剤で思い出したのだけど、美容に良い温泉に入れる旅館があるの」

彼方「え、待って……それは」

果林「大丈夫。ね? 1泊くらい、したって怒られないでしょ?」

彼方「怒られはしないけど、でも、未成年2人だよ?」

果林「平気よ。大丈夫、そこはちゃんと手をまわすから」

彼方「……なんか、怖いけど」

果林「別に怪しいことはしてないわ」

果林「でも、彼方も一応、お母さんに話は通しておいてね」

彼方「う、うん……」

123: (らっかせい) 2021/06/24(木) 00:03:23.54 ID:ifGrX6qm
――――――
―――

彼方「あれ? 遥ちゃんも一緒に出るの?」

遥「ん~」

遥「お姉ちゃんは、果林さんが迎えに来てくれるとかじゃないの?」

彼方「……果林ちゃんが迎えに来るのは難しいかなぁ」

遥「あははっ、そうだよね」

遥「……」

遥「1泊だっけ」

彼方「うん……」

彼方「遥ちゃんは……」チラッ

彼方「遥ちゃんも、なんだか荷物多いねぇ」

彼方「合宿だっけ」

彼方「この前話してた、3年生のライブの練習?」

遥「えへへっ」

彼方「?」

124: (らっかせい) 2021/06/24(木) 00:26:46.44 ID:ifGrX6qm
.....スタスタ

彼方「遥ちゃん、モデルのアルバイトはいつまで続けるの?」

遥「需要がなくなるまで?」

彼方「生涯現役だねぇ」

遥「えへへ……今は、東雲のスクールアイドルとしての人気もあって、活用して貰えてるけど」

遥「来年はどうなるか分からないし、長くても今年いっぱいかなって思ってる」

彼方「……果林ちゃんみたいにモデルをしっかりやってみようとか、思ってたりしないの?」

遥「果林さんに比べると、モデルをやるには体系がちょっと」

彼方「じゃぁ、アイドル」

遥「養成所とか、すっごいお金かかるから」

彼方「……そっか」

遥「だけど、スクールアイドルから芸能界に入る人もいないわけじゃないんだって」

遥「……だから、ちょっとだけ、なれたらいいなって、思ってたり」フイッ

彼方「そっかぁ~」

.....スタスタ

果林「……来たわね」

果林「おはよう。彼方、遥ちゃん」

彼方「おはよ~」

遥「おはようございます」

125: (らっかせい) 2021/06/24(木) 00:47:20.00 ID:ifGrX6qm
彼方「遥ちゃんはどこで集合なの?」

彼方「東雲学院? 現地集合? 駅?」

遥「えへへ」

彼方「遥ちゃん?」

彼方「……?」チラッ

果林「ふふっ」

果林「遥ちゃんも一緒に行くのよ。旅行」

彼方「えっ!?」

遥「お母さんには、お姉ちゃんと一緒って言ってあるから大丈夫だよ?」

遥「……へへっ」

彼方「まさか……このためにアルバイトを始めたの?」

遥「うんっ」

遥「でも、それだけじゃないよ?」

遥「欲しいものがあったし……」

遥「思っていたよりも人気が出て稼げたから、お姉ちゃんを温泉に誘えたらいいなって思ったの」

遥「だから今日は、全力でおもてなしするからねっ」

果林「あ、私は帰った方が良いかしら」

彼方「うん」

果林「彼方!?」

131: (らっかせい) 2021/06/24(木) 21:13:54.44 ID:ifGrX6qm
彼方「……つい」フイッ

果林「ついって何よついって。失礼しちゃう」

果林「ったく……」

彼方「えへへ~ごめんね~」ギュッ

遥「ごめんなさ~い」ギュッ

果林「……」

果林「両手が遥か彼方だわ……」

彼方「両手に花だよ~?」

遥「花束だね~」

果林「もう……」

果林「しかたがないわね。許してあげる」

彼方「やった~」

彼方「……」

彼方「そういえば、人によっては太っ腹だねって言うと怒るけど、果林ちゃんも言われたくない?」

果林「なんなの突然、そんなことで怒らないわよ」

彼方「そっか~」

彼方「……知らない方が、幸せだよね」

果林「体重は毎日量ってるんだから、騙されないわよ」

132: (らっかせい) 2021/06/24(木) 22:03:40.01 ID:ifGrX6qm
果林「えぇっと……」

果林「ここで、乗り換えするから」

果林「……遅延とかがなければ、問題なく電車間に合うわね」

彼方「着くのお昼前だけど、お昼どうする?」

彼方「遥ちゃん居るなら、お弁当作ってきたのに」

果林「私にふるまってくれる気はないの?」

彼方「え~」

彼方「だって、果林ちゃんのプロポーション管理できる自信ないもん」

彼方「……ちょっと、輪郭太めにしちゃっていいの~?」

果林「それは困るけど、遥ちゃんだって標準というか、プロポーションは良いじゃない」

果林「それを維持してるのが彼方でしょ?」

遥「そうですよっ」

遥「お姉ちゃん、毎日いろいろ考えてご飯作ってくれて……」

遥「栄養一番でも、とっても美味しいんです」

果林「……ますます、食べてみたくなるわね。愛妻弁当」

彼方「え? 野菜弁当?」

果林「……野菜も大事よ。野菜もね」

133: (らっかせい) 2021/06/24(木) 23:22:05.87 ID:ifGrX6qm
彼方「でも、まさか3人で旅行に行くことになるとは思ってなかったよ~」

彼方「遥ちゃんも、言ってくれたらよかったのに」

遥「えへへっ、びっくりさせたくて」

果林「本当は、近場のホテルでもいいかもって思っていたんだけど」

果林「せっかくならちゃんとお出かけしたいって、遥ちゃんが」

遥「モデルのアルバイトしてた時にね、こういうところが良いんだよ~みたいなお話とかいろいろ聞けたし」

遥「お姉ちゃんにも、たまにはゆっくりして貰いたいなって思ったの」

彼方「そっかぁ」

彼方「お母さんには、本当に言ってあるんだよね?」

遥「うんっ」

彼方「……ところで、果林ちゃんは、エマちゃんには言ってあるの?」

果林「エマはお母さんじゃないんだけど……」

果林「でも、言ってあるわ」

果林「土日は私、いないからって」

134: (らっかせい) 2021/06/24(木) 23:53:39.11 ID:ifGrX6qm
彼方「エマちゃんに、日ごろのお世話頼んでるの?」

果林「まさか」

果林「まぁ、多少……片づけを手伝って貰ったりはしてるわね」

果林「なんていうか、雑誌とかが増えて言いちゃうのよね」

遥「分かります」

遥「私も、始めたころに参考として古いのを貰えたりしたんですけど」

遥「気づいたら机の上に一杯だったりして」

彼方「遥ちゃん、果林ちゃんのそんなところまで学ばなくていいんだよ~?」

果林「学ばせた覚えはないわよ……」

果林「そういえば、お母様……」

果林「……お義母様は何か言ってなかった?」

彼方「ううん……ん~……いや」

彼方「思えば、何か、ほほえま~って感じだった気がする」

彼方「遥ちゃんが話してたからだったんだ~」

彼方「ちょっと……あることないこと考えちゃったよ~」

遥「あることないこと?」

彼方「……新しい家族が増える。的な」

果林「あぁ……それは、ちょっと、悪かったわ。今度から事前に話すわね」

彼方「気にしてないよ~」

141: (らっかせい) 2021/06/27(日) 10:55:34.85 ID:NBZtBOIY
――――――
―――

彼方「とうちゃ~く」

果林「疲れた?」

彼方「ううん、大丈夫~」

彼方「果林ちゃんこそ、あんまり座らなかったけど平気なの?」

果林「大丈夫よ」

遥「ここまで20駅くらいだったから……特急とか、新幹線とかそういうのが乗れたらよかったんだけど」

彼方「新幹線まで使わなくても……」

果林「新幹線、あるにはあったのよね。ただ、2駅分しか乗らないし、そのくせ乗り換え一回増えるし」

遥「果林さんが途中で乗り換えミスするかもって言うから、乗り換えの少なさで選んだんだ」

果林「ちょっ……ちょっと、それは言わなくたっていいじゃない」フイッ

彼方「たとえ十字路だったって、道を間違ったりしないよ~」ギュッ

果林「ふふっ、そうね。頼りにしてるわ」

果林「……」

果林「さっそくで悪いんだけど、改札……どこかしら」

遥「えぇっと……こっち、ですね。上の看板に書いてあるので」

遥「タクシー乗り場の案内表示もあるので、間違いないかと」

142: (らっかせい) 2021/06/27(日) 11:41:21.43 ID:NBZtBOIY
彼方「すぅ……はぁ……」

彼方「ん~……駅から出ると、よりいっそう温泉の香りが……」

彼方「……」

彼方「いうほど、しないねぇ」

果林「まぁ、駅前はね」

遥「人、多いですね……タクシー乗れるかな」

彼方「駅前にもいろいろあるから、あとで戻ってきたいなぁ」

果林「そうねぇ」

彼方「果林ちゃん的に、温泉と言えばおまんじゅう? それとも玉子?」

果林「よく聞くのは、やっぱり玉子じゃないかしら。私も好きよ」

果林「ただ……人も日焼けするとあんな肌色になるって思うと、怖いわね」

彼方「日焼け止めがあれば大丈夫じゃないかな? あそこまでひどくはならないと思う」

彼方「あ、遥ちゃん待って」ギュッ

遥「わっ」

彼方「一人で動くと危ないよ。一緒にいこ」

遥「あ、うん。そうだね」

果林「……私の手を握らないなんて、迷子になっても知らないわよ」

彼方「果林ちゃんってば、嫉妬深いねぇ」ギュッ

143: (らっかせい) 2021/06/27(日) 11:54:27.00 ID:NBZtBOIY
彼方(3人で仲良くタクシー乗り場の並びに加わって、待つこと数分)

彼方(私たちの番が来て、タクシーの運転手さんに手伝ってもらいながら、荷物を積んで出発)

果林「この旅館まで、お願いします」

「了解しました。あ、後ろの方も、すみませんが、シートベルトの方お願いしますね」

彼方「は~い」

遥「果林さんって、なんだか助手席にいる姿映えて見えるね」

彼方「確かに~」

彼方「隣に座ってくれてるだけでワンランク上に見える」

果林「急に何言ってんのよ」

「いやいや、本当に素敵だと思いますよ」

果林「もうっ」

遥「果林さん、スタイル良くて大人びて見えるからかな」

彼方「生半可な気持ちじゃ付き合えない、高根の花だよねぇ」

遥「うんうん」

果林「ちょっとっ!」

果林「もうっ、後ろに乗ればよかった!」

144: (らっかせい) 2021/06/27(日) 18:13:52.32 ID:NBZtBOIY
「きをつけてね~」

果林「ありがとうございました」

遥「ありがとうございましたっ」

彼方「ありがとうございました~」

彼方「……」

彼方「運転手さん、果林ちゃんが隣で嬉しそうだったね~」

遥「ね~」

果林「部屋に行ったら覚えてなさいよ……」

彼方「褒めてるのに」

遥「果林さんなら、助手席でも運転席でも似合いそうな感じします」

果林「そうかしら?」

遥「はいっ」

遥「サングラスとかけて、オープンカーに乗ってるみたいな……」

果林「嬉しいけど、ちょっと複雑になる感じだわ」

彼方「胸元にサングラス差し込んでるイメージある」

果林「そういうのはエマの役目でしょ」

145: (らっかせい) 2021/06/27(日) 18:28:31.28 ID:NBZtBOIY
彼方「それにしても……すっごい、趣のある旅館なんだけど……」

果林「まぁそうね。それなりに良いところに泊まりたいって思ったから」

彼方「宿泊費用……」ガサッ

遥「大丈夫っ」

遥「お姉ちゃんの分は、私と果林さんで半分ずつってしてるから」

彼方「でもっ」

果林「大丈夫だから心配しないの」

果林「いつも、彼方に苦労欠けてるからお礼がしたいって遥ちゃんの気持ち、受け取ってあげないの?」

彼方「うぅ……」

彼方「う~……」

彼方「……」チラッ

遥「お姉ちゃんだって、アルバイトの最初のお給料でお母さんにも、私にも、お礼だって良いことしてくれたでしょ?」

彼方「う、うん……」

遥「だから、ね?」

遥「いこっ」グイッ

彼方「うん……ありがとねぇ」

146: (らっかせい) 2021/06/27(日) 19:12:42.06 ID:NBZtBOIY
彼方(朝香様の名義でのご宿泊)

彼方(案内されたのは10畳ほどの和室で、窓からは青々とした山が見える)

彼方(食事の時間とか、軽い説明を受けて、一息)

彼方「本当に、いいお部屋」

彼方「畳のにおいがする~」

果林「ふふっそうね。懐かしいわ」

果林「虹ヶ咲での合宿の時も、和室だったものね」

遥「なんだか、和室の匂いを嗅いでいると落ち着きますね」

果林「和の心ってやつかしら?」

彼方「眠気を誘うねぇ~」ゴロンッ

果林「もうっ寝たらだめよ」

果林「荷物置いたら少し外歩きましょ」

彼方「どのあたりに行く~?」

果林「まず駅前に戻るんじゃないの?」

遥「お姉ちゃんが行きたいところ行こうよ」

彼方「ん~じゃぁ、適当にふらつく感じで、駅前に戻ろう」

147: (らっかせい) 2021/06/27(日) 21:17:38.35 ID:NBZtBOIY
彼方「意外と車通りが多いねぇ」

果林「それはそう――」

グイッ

彼方「わっ」

果林「危ないから車道側歩かないで」

彼方「ありがと……」

遥「果林さんがお姉ちゃんポイント貯めようとしてる……」

彼方「お、お姉ちゃんポイント?」

遥「お姉ちゃんドキドキポイント。貯めると良いことあるかも」

果林「夜に同じ布団で寝られるのよね」

彼方「別にそんなポイントなくても一緒に寝るくらいなら別に良いよ~?」

果林「さすが彼方ね。特売だわ」

遥「お姉ちゃんがたたき売りされてるなんて……」フイッ

彼方「果林ちゃんのせいで遥ちゃんが不純な子に……」

果林「ただの英才教育でしょ」

彼方「あっ、見てみて。らーめん缶の自販機があるよ~」タタタッ

果林「……切り替え早いわね」

148: (らっかせい) 2021/06/27(日) 22:30:14.68 ID:NBZtBOIY
遥「みそ、しょうゆ、しお……とんこつもある」

果林「それ以前にパスタもあるんだけど……?」

彼方「パスタもラーメンなんだよ。きっと」

果林「いやいや……」

果林「ならうどんは?」

彼方「らーめんだよ~」

果林「……」

スッ
    サワサワ

遥「っ……果林さん?」

果林「このサラサラな髪の毛は?」

彼方「らーめんだよ~」

果林「じゃぁ、夕食はらーめんね」

遥「えっ?」

彼方「食後のデザートじゃないかなぁ?」

遥「お姉ちゃんっ!?」

彼方「美味しくいただくね?」

遥「あ、うん……別に良いけど」

果林「まずいわ。冗談にならない……」

152: (らっかせい) 2021/06/29(火) 11:46:18.57 ID:PcBr4LUc
彼方「遥ちゃんが美味しそうなのは別として、この自販機動いてないねぇ」カチカチッ

果林「ほんと……もう一つのなんて棚の一部欠落してるわ」

遥「でも、壊れてると思っていた自販機って夜になると動いてることがあるらしいよ」

彼方「えっ?」

遥「部活もあって、暗くなった帰り道」

遥「いつもは、しんっと静まってるはずなのに、どこからともなくジジッ、ジジッって音が聞こえてきてね」

遥「街路灯が切れかかってるのかな? って上を見ると、そんなことないよって言わんばかりに光はしっかりとしてて」

遥「早く帰ろうって一歩踏み出したとたんに、街路灯の明かりの届かない角のところがね、パッっと明るくなったの」

遥「でも、びっくりして動けずにいると、少ししてその明かりは消えちゃって」

遥「なんだろう? って、怖くも気になって近づいてみると、この自販機みたいに、年季の入った自販機が一台設置されてたの」

遥「恐る恐る触れてみると――パッっと、また電気がついて」

遥「売切の表示が並ぶ中、商品表示のない、一ヶ所のボタンだけが緑色で……」

彼方「待って待って」

彼方「誰? 誰の話?」

遥「えっと……」

遥「友達の友達の姉の友達の親戚の友達の従妹の親の妹の娘……だったかな」

彼方「遥ちゃんじゃないなら、よかったぁ」

果林「……謎の交友関係には疑問持たないのね」

153: (らっかせい) 2021/06/29(火) 12:02:13.67 ID:PcBr4LUc
スタスタスタ....

彼方「果林ちゃんは、高校出たら免許取ったりする予定ある?」

果林「また急な話ね」

果林「そうねぇ、取ると思うわよ」

彼方「さすが~」

果林「さすがでもないわよ」

果林「こっちにずっといるならともかく、地元ではあった方が良いし」

遥「果林さんの地元って?」

果林「ん、まぁ……大したことないわよ」

彼方「少なくとも、船舶免許が必要なところらしいよ~」

遥「すごいっ」

果林「……否定しきれない絶妙なラインで来たわね」

果林「でも悪いけど、取るのは車の方よ」

遥「大型バイクとか、似合いそうですけど」

果林「ムリムリ。あんなの、自力で起こせる自信がないわ」

154: (らっかせい) 2021/06/29(火) 13:57:52.76 ID:PcBr4LUc
彼方「果林ちゃんがバイクに乗るなら、後ろに乗せて貰おうと思ったのに」

遥「じゃぁ、私は前に乗せて貰えれば……」

果林「自転車じゃないんだから」

彼方「じゃぁ横かな? サイドカー」

果林「サイドカーって、何か条件必要だったはずよ?」

遥「お姉ちゃん」チョイチョイ

彼方「なぁに?」スッ

遥「えっと……」コソコソ

彼方「ふむふむ……果林ちゃんっ」

果林「……嫌な予感しかしないんだけど?」

遥「車の免許取るんですよね?」

果林「そう、だけど。なに? 準備が出来たら乗せるくらい構わないけど……」

彼方「彼方ちゃんと、遥ちゃん」

遥「助手席に乗せてくれるのはどっちですか?」

果林「……」

果林「……ん」

果林「抱き合ってる二人を助手席に乗せるってことで」

彼方「あ、免許取れなそうだね」

果林「質問が悪いのよ質問がっ!」

155: (らっかせい) 2021/06/29(火) 14:31:00.23 ID:PcBr4LUc
果林「助手席には荷物を送って選択肢は?」

彼方「どうしよう遥ちゃん、彼方ちゃん達荷物だって」

遥「えっ……」

果林「二人って、私に対して意地悪よね。まったく」

果林「はぁ……遥ちゃんね。乗せるとしたら」

遥「やったっ!」

彼方「そっか……彼方ちゃん、実家に帰――」

ガシッ

果林「こらこらこら」

果林「日頃の行いを顧みなさいよ。そうじゃなかったら、別に彼方だって……」

彼方「果林ちゃん……」

遥「……」

遥「でもベッドの上では隣にいて貰うからな。とか言わないんですか?」

彼方「果林ちゃん!」ギュッ

果林「痛っ……待って、違う。私じゃないっ!」

157: (らっかせい) 2021/06/29(火) 22:09:16.96 ID:PcBr4LUc
彼方「彼方ちゃんは怒ってます」プンスコ

果林「もうっ、遥ちゃんが変なこと言うから」

遥「えへへっ」

果林「彼方」スッ

.....サッ

彼方「やめて、彼方ちゃんが破廉恥になっちゃうっ」

果林「茂みに押し倒すわよ?」

遥「人が来たら教えますね」

彼方「謝るから止めて、警察呼ばれちゃうよ~」

サッサッ

彼方「果林ちゃんってば、冗談が通じないねぇ~」

果林「十分通じてる方よ。本気で茂みになんて押し込むわけないでしょ」

果林「まぁ……人気がない場所なら、壁ドンくらいは、するかもしれないけど?」

彼方「え……壁ドンだけで、いいの?」チラッ

果林「ね? この人、もう押し倒すしかないでしょ?」

遥「……お姉ちゃん、旅館では同室なんだよ?」

彼方「あっ」

158: (らっかせい) 2021/06/29(火) 23:45:24.66 ID:PcBr4LUc
彼方「見てみて~温泉饅頭だよ~」

果林「いいわね。買っていきましょうか」

遥「私、食べ歩きとかしてみたかったんですっ」

果林「あら、したことないの?」

遥「まったくないわけじゃないんですけど……やっぱり、この3人で」

彼方「そういえば、したことなかったねぇ」

遥「せっかくですから、いろんなものを食べて歩きませんか?」

遥「観光ですし」

彼方「うんっ、いいよね? 果林ちゃん」

果林「そうしましょうか。余計なこと考えずに好きなものを食べるのも、悪いことじゃないもの」

果林「すみません、このお饅頭三つください」

彼方「あ、お金」

サッ

果林「大丈夫……このお饅頭、私が奢るわ」ドヤッ

彼方「1つ70円のなのに~」

果林「こういうのは気分よ気分。奢ってくれる系彼氏」

彼方「わぁっかっこいい」

果林「そう思ってないってことだけは解ったわ」

162: (らっかせい) 2021/06/30(水) 17:21:58.24 ID:f6R62Jwy
彼方「あったかぁい」

彼方「できたてのお饅頭なんて、食べるの初めて」

果林「さすがの彼方にも、お饅頭を自作は出来ないのね」

彼方「ん~……作ろうと思えば作れるけど」

彼方「やっぱり、ちゃんとした器具で作りたいかなぁ」

果林「なるほどね。はい、遥ちゃんも」

遥「ありがとうございます」

遥「……」

遥「蒸しあげられたばっかりの皮は、指に張り付きそうなくらいにぷにぷにしてて」

遥「中のあんこは、時間が経ってるものよりもずっと柔らかいから、ちょっと力を入れただけで潰れちゃいそう」

....スッ
    パクッ

遥「んっ……」

遥「一口かじると、お饅頭の皮の仄かな甘さに包まれていたあんこが押し出されて」

遥「口いっぱいに広がっていく、強い甘味と出来立ての新鮮な温かみ」

モグモグ

遥「ちょっぴり火傷しちゃいそうな甘さがとろっと喉を流れていくこの感覚が、またクセになりそうで……」ペロッ

果林「……遥ちゃん、実はかなりテンション上がってるでしょ」

遥「えへへっ」

ナデナデ

果林「もう一個、買いましょうか」

163: (らっかせい) 2021/06/30(水) 20:52:52.32 ID:f6R62Jwy
彼方「あのお店、待ってる人いっぱいいるねぇ」

遥「お蕎麦屋さんみたいだよ」

遥「人気なんだって」

果林「寄ってみる? お昼、大したもの食べてないし」

彼方「ん~……今からだと、また結構時間かかっちゃうんじゃないかな?」

果林「そうねぇ。食べられる頃には、品切れになってるかも」

彼方「なら諦めてほかのとこいこ~」

彼方「タクシーの中で見た、あそこのお店とか」

遥「あ、ついでにお土産も見ておく?」

彼方「そうだね~何か良いのあるかなぁ」

果林「確かに、時間のある時に見ちゃっておいた方が良いわね」

164: (らっかせい) 2021/06/30(水) 21:11:58.67 ID:f6R62Jwy
遥「お姉ちゃんっ、プリン。プリンあるよっ」

彼方「お~買っていこ~」

彼方「果林ちゃ……」

果林「……」ジーッ

彼方「果林ちゃん?」

果林「へっ、あっ」

彼方「へぇ~ウリ坊饅頭?」

彼方「可愛いね~果林ちゃん好きそう」

果林「……ん」フイッ

果林「けど、可愛くて食べられないかも」

彼方「ふぅん……そっか」プイッ

果林「彼方?」

彼方「可愛くないから彼方ちゃんは食べられるんだね」

果林「またそういうこと言って」

.....スッ

果林「食べたって無くならないから。彼方は特別よ」ボソッ

遥「……じゃぁ、私は特別じゃないんですね」グスッ

果林「待って、二人で同じキャラ設定は困るわ」

165: (らっかせい) 2021/06/30(水) 21:32:40.00 ID:f6R62Jwy
果林「そもそも、私たちの中心は彼方でしょ?」

彼方「え、遥ちゃんだよ」

遥「そうです、私です」

彼方「ほら~」

果林「え、あ、ごめんなさい」

果林「……」

果林「いやいやいや、だったらさっき私が責められたのおかしいわ」

遥「私達はただの天秤ですよ」

....バッ

遥「この、両手……釣り皿の上には同じ重さのものしか乗っていない天秤」

彼方「そうそう。だから、みんな一緒~」

彼方「まぁ、一番背が高い果林ちゃんが二股する男みたいなものだけどね」

果林「そう……」

果林「……」

果林「待って、それって私がクズってこと?」

彼方「そんなことないよ~」ギュッ

遥「ないですよ~」ギュッ

果林「二人とも……」

果林「待って、やめて、見られてる。見られてるからっ!」

167: (らっかせい) 2021/07/01(木) 10:50:11.02 ID:1QBN10jh
果林「はぁ、もう。酷い目に遭った」

彼方「いやぁ、大変だったねぇ。二股彼氏様~」ギュッ

彼方「悪いけど、私の連れだから」カリンッ!!

グイッ

果林「彼方がいけないのよ? 私達にはこの人がいる。なんて、私の腕掴むから」

彼方「……だって、ナンパされるとは思わなくて~」

遥「果林さん、胸のある男の人みたいでした」

果林「誉め言葉になってない」

遥「……凛々しかったですよ」ボソッ

果林「もう……調子いいんだから」

彼方「でも、こういうところでも声かけられることってあるんだね~」

果林「それはそうでしょ。みんながみんな、恋人連れてるわけでもないし」

果林「地元と離れてるから、せっかくだし声かけてみようって勇気が出ることもあるんじゃない?」

彼方「そういうものなんだねぇ」

遥「あ、コンビニ寄って良い?」

彼方「いいけど……?」

168: (らっかせい) 2021/07/01(木) 11:46:35.00 ID:1QBN10jh
彼方「……Aneson?」

遥「そうっ」

遥「私が欲しかったもの、ここで受け取りにしてたんだ~」

彼方「わざわざ、観光地で受け取らなくても……」

彼方「そんなに大事なものなの?」

遥「ん~……」

遥「とっても大事だよっ」ニコッ

果林「そろそろ旅館に戻りましょ」

果林「帰りも歩きだし、そのまま温泉入って、ゆっくりして、食事」

果林「きっと、ちょうどいいわ」

彼方「じゃぁ段ボール持ってあげる~」

遥「ありがとっ」

彼方「段ボールは最悪持ち帰りで、旅館の人に相談してみた方が良いかな」

遥「それなら、処分してくれるって言ってたよっ」

169: (らっかせい) 2021/07/01(木) 12:14:55.32 ID:1QBN10jh
果林「……」

彼方「果林ちゃん?」

果林「ん」

果林「なんか、二人を見てるだけでも、いい感じなるかなと思って」

彼方「姉妹だからねぇ~」

彼方「彼方ちゃんと遥ちゃんは、二人で一人みたいな感じだから」

彼方「……」チラッ

彼方「けどっ」

ギュッ

果林「!」

彼方「果林ちゃんは私たちの緩衝材だから必要だよ~」

彼方「一歩引かれちゃったら、遥ちゃんに喰いつくされちゃうっ」

遥「も~っ、私そこまで節操なしじゃないもんっ!」ギュッ

果林「もぅ……仲がいいんだから」ナデナデ

170: (らっかせい) 2021/07/01(木) 15:18:31.14 ID:1QBN10jh
――――――
―――

チャプンッ
       ガララッ
  ザァァァ....

彼方「はふぅ……」

果林「さすがに、お風呂は貸し切りにはならないわね……」

彼方「なぁに~? 貸し切りにするつもりだったの~?」

果林「まさか」

果林「ただ、こう……これだけ広いお風呂で、贅沢に身内だけっていうのもいいと思っただけよ」

遥「お姉ちゃんっ、ここなら泳げるよっ」

彼方「泳いじゃ駄目だよ~」

遥「分かってるよ~……」

パシャッ....

遥「んっ……ん~……」ググッ....

果林「なんていうか、彼方。遥ちゃんに比べると髪の量とてつもないわね……減らしたら?」

彼方「果林ちゃんが切ってくれるなら」

果林「光栄だけど、やぁよ。美容院でやってもらいなさい」

171: (らっかせい) 2021/07/01(木) 15:46:19.23 ID:1QBN10jh
彼方「果林ちゃん、肌綺麗だよねぇ」

遥「うんうんっ」

遥「入浴剤もそうだけど、スキンケア頑張ってますよね」

遥「この前の撮影の時貸してくれたクリームも、すっごく良いのでしたし」

果林「良いの……って、程でもないのよ?」

果林「まぁ、確かにドラックストアで手軽に買えるものじゃないけど」

果林「そこらへん、手を抜いてそうな彼方が比較的色白なのがむしろ羨ましいわよ」

パシャンッ

彼方「わぶっ」

果林「……ずるい」

彼方「もぅ……」フルフル....

彼方「手を抜いてるわけじゃ、ないんだよ?」

遥「お姉ちゃんはお姉ちゃんで、私のためにいろいろ揃えてくれたりしてたんですけど」

遥「私ばっかりじゃ、なんかやだって、無理言って一緒に使って貰ってたりします」

遥「綺麗ですよね? お姉ちゃん」ニコッ

果林「……そうね」

サワサワ

果林「きれい可愛いわ」チュッ

彼方「か、果林ちゃんっ?」

172: (らっかせい) 2021/07/01(木) 16:07:15.90 ID:1QBN10jh
彼方「うぅ……のぼせたかも」

パタパタパタッ

果林「大丈夫?」

彼方「果林ちゃんがあんなことするからなのにぃ~……」

遥「ほかの人に見られちゃうかもって、ドキドキしちゃったんだね」

彼方「見られてた。絶対見られてたよ~」

遥「私が前にいたから、見えてなかったと思うよ」

遥「大丈夫大丈夫」

パタパタ....

果林「このあと夕食だけど、食べられる?」

彼方「少し休めば平気……」

遥「夕食は部屋でしたっけ?」

果林「そうよ。時間になったらここに直接持って来て貰えるから」

果林「少し、ゆっくりしてて」ナデナデ

彼方「遥ちゃんの、膝枕~……」

遥「えへへっ、あとで果林さんもします?」

果林「そうね。少ししたら交代するわ」

173: (らっかせい) 2021/07/01(木) 17:04:54.47 ID:1QBN10jh
果林「それにしても、遥ちゃん。こっちに送ったのね」

果林「向こうで受け取るとばかり思ってたわ」

遥「最初は、そう考えてたんですけど」

遥「よく考えたら、向こうじゃ果林さんがいないだろうなって思ったので」

果林「まぁ、それはそうなんだけど……」

果林「ほら、向こうでだって部屋を借りたらいいわけだし」

遥「思い出に、なるとおもって」

果林「あぁ、それで」

彼方「……」

彼方「ん~……」

彼方「ねぇ、遥ちゃん」

遥「なぁに?」

彼方「あのダンボール、開けちゃダメ?」

遥「良いけど、食事の後にしようよ」

彼方「そっかぁ」

彼方(これは、彼方ちゃん美味しく頂かれちゃうだろうなぁ……)

174: (らっかせい) 2021/07/01(木) 18:02:31.35 ID:1QBN10jh
彼方「お刺身、お蕎麦、煮魚、煮物、鯛の炊き込みご飯、ほかにも……」

彼方「美味しそう……っ」

果林「気にいって貰えてよかったわ」

彼方「自分で夕食を作らない贅沢……」

果林「……貴女、専業主婦か何か?」

彼方「えへへ~ついつい」

彼方「でも、最近は遥ちゃんも手伝ってくれてるから、今までよりはずっと楽だよ~」

遥「このくらい、早く作れるようになりたいな」

彼方「ん~……」

彼方「あと1年は頑張らないとだねぇ」

果林「1年でこのレベルになれるなら、プロになるべきだと思うわ」

遥「プロ……プロかぁ」

果林「あら、なぁに?」

遥「いえ、卒業したら、お姉ちゃんはどうするのかなって」

遥「専業主婦?」

彼方「わお、結婚前提」

果林「あら、結婚願望無し?」

175: (らっかせい) 2021/07/01(木) 18:28:32.09 ID:1QBN10jh
彼方「いつかはしたいけどねぇ」

彼方「でも、まだそういうのは考えてないよ~」

果林「共働き希望? 専業主婦希望?」

彼方「そうだなぁ……」

彼方「一緒になる人と、一番幸せになれる方が良いかな」

遥「お姉ちゃんの場合、お仕事してても朝食夕食……もしかしたらお弁当も作りそう。だけど」

遥「私は、専業主婦になって欲しいなぁ」

果林「そうねぇ」

果林「彼方には専業主婦になって貰いたいわ」

彼方「どうして?」

果林「そんなの、決まってるじゃない」

果林「行ってらっしゃいとお帰りなさい。彼方にして貰いたいからよ」

果林「なんて……」

果林「本音は、必要以上の負担をかけたくないって、プライドかしら?」

遥「お姉ちゃんはワーカーホリックな面があるから、絶対に専業主婦になって欲しい」

果林「確かに」

彼方「え~……」

176: (らっかせい) 2021/07/01(木) 18:49:42.33 ID:1QBN10jh
彼方「なら、旦那様にはお金持ちになっていただかないと~」

グイグイッ

果林「そうねぇ」

果林「相手には、専業になって貰いたい」

果林「その望みをかなえるには、平均的な年収よりも最低一回りは上の方が良いって聞くわ」

果林「それくらい、稼げるようになりたいわね」

遥「そうですね」

遥「果林さんは、ファッションデザイナーとか、ですか?」

果林「それもピンキリというか、まぁ、難しいところよね」

果林「本気で取り組んでる読モの方もうまくいっているし」

果林「もっと頑張ってちゃんとしたモデルを目指すのもありかなって思ってる」

遥「でも、平均年収が400万円くらいだとしても」

遥「2で割れば、200万円なのでどうにかなりそうな気がします」

果林「そうね」

果林「あとは、FXでどうにか」

彼方「それはやめようね~」

果林「最近、Web上の広告でよく見るのよ」

彼方「璃奈ちゃんが鼻で笑いそうなこと言ってないで、ご飯食べよ~」

177: (らっかせい) 2021/07/01(木) 19:22:35.59 ID:1QBN10jh
遥「お姉ちゃんお姉ちゃんっ」

ツンツンッ

彼方「なぁに~」

スッ

遥「あ~ん」

彼方「あ~んっ」

モグモグ

果林「躊躇ないわね……」

彼方「モグモグ.....ごくんっ」

彼方「誰かに見られる心配もないからねぇ」

彼方「だから」

.....スッ

彼方「あ~ん」

果林「ふふっ、そうね……」

果林「あ――」

遥「あ~んっ」パクッ

彼方「あっ」

果林「遥ちゃんっ!」

遥「えへへっ」

178: (らっかせい) 2021/07/01(木) 19:33:32.00 ID:1QBN10jh
遥「果林さんが早く食べないからですよ」

果林「だからって……」

遥「なので、はい。どうぞ」

スッ....

果林「まったく……遥ちゃんってば」

果林「……」

果林「あ――」

彼方「あむっ」パクッ

彼方「モグモグ」

果林「やっぱりね」

果林「ふふっ、知ってたわ」

果林「……塩味、マシマシの夕食になりそう」

彼方「果林ちゃん」

果林「なによ……」

彼方「あ~ん」

スッ

果林「……」チラッ

遥「しませんよ」

果林「あ~ん……パクッ」

モグモグ

果林「美味しい」

遥「次、こっちもどうぞ。美味しいですよ」

179: (らっかせい) 2021/07/01(木) 21:04:04.30 ID:1QBN10jh
――――――
―――

彼方「美味しかった~」

果林「結局、ほとんど食べさせあってたわね……」

果林「一生分した気がするわ」

彼方「美味しさ二割り増しだった~?」

果林「そうね。美味しかった」

果林「他人に見られる心配がない分、味覚が狂うこともなかったし」

彼方「そっかぁ」

遥「でも、お姉ちゃんのご飯の方が美味しかったかも」

彼方「そう?」

遥「うん……なんだろ」

遥「お姉ちゃんはいっつも、私の好きな味付けにしてくれてるから。かな」

遥「旅館のお料理もおいしいけど、やっぱりお姉ちゃんのお料理が好き」

彼方「遥ちゃん~」

ギュッ

遥「えっへへ~」

180: (らっかせい) 2021/07/01(木) 21:51:42.09 ID:1QBN10jh
果林「ほんと、愛し合ってるわねぇ」

遥「姉妹ですから」

彼方「姉妹だもん」

果林「……ふふっ、それでいいの?」

彼方「それでよかったら」

彼方「それだけで済んでたら、果林ちゃんの前にいるのは二人の内どっちか片方だったよ~」

果林「……でしょうね」

ガサガサッ
      ビリッ

彼方「あ、開けるの~?」

遥「うんっ」

遥「食器も係の人に回収して貰ったし、今日はもう、誰も来ないはずだから」

181: (らっかせい) 2021/07/01(木) 22:05:42.41 ID:1QBN10jh
ガサゴソッ

遥「~♪」

彼方「上機嫌だね~」

彼方「見せて見せて~」

果林「……」チラッ

果林「……ふふっ」フイッ

ピリッ
     ビリッ

遥「はいっ」スッ

彼方「どれどれ~……」

彼方「……んっ?」

彼方「……」

彼方「んん~?」

彼方「遥ちゃん……この、丸みを帯びた特徴的な先端の、緩やかなカーブを描いてるシンメトリーなやつって」

遥「えっとね」

遥「女の子が、男の子っぽいことできるようになるやつ」ニコッ

182: (らっかせい) 2021/07/01(木) 22:35:07.45 ID:1QBN10jh
果林「遥ちゃんが欲しがってたの、それなのよ」

果林「彼方に言ったって、絶対買ってもらえないだろうから」

彼方「うん、絶対買わなかった……」

遥「でも、買ってくれたとしても買って貰う気なかったよ~」

遥「だって……私のわがままだもん」

果林「で、私はその提案に乗ったってわけ」

ガシッ

彼方「わっ……えっ、あっ、か、果林ちゃん!?」

果林「ふふっ、夜は長いわ」

果林「たっぷり……ねっとり……」

果林「ふーっ……」

彼方「ひゃわっ」ビクッ

果林「彼方のこと……奥深くまで、戴くわ」

彼方「ま、待って、汚しちゃう……いろいろ。待っ……」

遥「一緒に色んな道具も買ったから、大丈夫」サワサワ

遥「ここにはお母さんもいないから、ゆっくり……しようねっ」チュッ

183: (らっかせい) 2021/07/01(木) 22:50:49.90 ID:1QBN10jh
――――――
―――

果林「おはよう、彼方」

彼方「うぅぅ……」グッタリ

果林「大丈夫?」

彼方「足腰が……もう……」

果林「大げさねぇ」

彼方「大げさじゃないよ~……」

彼方「二人は責め手だったから、平気なだけで」

彼方「板挟みだった彼方ちゃんはもう、擦り切れてボロボロになっちゃった」

果林「ふふっ」

ナデナデ

果林「ごめんなさい」

果林「あまりにも美味しかったから」

果林「はしたないと分かってても、骨までしゃぶっちゃったわ」

184: (らっかせい) 2021/07/01(木) 23:23:52.75 ID:1QBN10jh
モゾモゾ

遥「……お姉ちゃん?」

彼方「遥ちゃ~ん」

彼方「遥ちゃんは大丈夫~?」

遥「ぁふ……」

遥「ん……うん……大丈夫」

彼方「そっかぁ」

遥「お姉ちゃん、駄目そう?」

彼方「もう少し動けなそう」

遥「……」チラッ

果林「……」コクッ

ボフッ

彼方「アイコンタクト禁止~!」

遥「ちょっとだけっ」

遥「ちょっとだけだからっ」

彼方「や~っ!」

果林「良いじゃない、昨日……あんなに食べて欲しがってたんだから」ギュッ

彼方「お、怒るよっ」

彼方「彼方ちゃん、ほんとに怒るよっ!」

遥「大丈夫~」チュッ

彼方「~っ!!」

186: (らっかせい) 2021/07/01(木) 23:41:38.55 ID:1QBN10jh
遥「お姉ちゃん、好き」

遥「大好きっ」

遥「可愛くて、きれいで、優しくて、温かくて」

遥「自慢の……お姉ちゃん」

果林「そうねぇ」

果林「勉強も、仕事も、家事も、アイドルも」

果林「とっても頑張る努力家」

果林「そして家庭的な、女の子」

彼方「煽てたって、許さないよ~」

果林「もうっ……意地悪なんだから」

遥「お姉ちゃんは、私たちのこと嫌い?」

彼方「……」

彼方「好きだよ」

彼方「好きだけど……」

彼方「節操のない二人は嫌いっ」プイッ

遥「そんなぁっ!」

187: (らっかせい) 2021/07/02(金) 00:00:49.44 ID:4IE+bkq6
終わり。

終わりがないのでこの辺で。

188: (SB-iPhone) 2021/07/02(金) 00:22:28.48 ID:I9cpYtz1
かわいい終わらせ方でよき

189: (えびふりゃー) 2021/07/02(金) 00:37:48.28 ID:TkUhTH9q

また頼むぞ

190: (SB-iPhone) 2021/07/02(金) 02:45:51.40 ID:LiFeJFyZ
乙、次回作待ってます

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1623559188/

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