【SS】歩夢「パラレルワールド」その後【ラブライブ!虹ヶ咲】

ぽむ SS


【長編SS】歩夢「パラレルワールド?」【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約220000文字■「──ゆむ! ──っ!!」 (……わたしを呼ぶ声が……聞こえる?) (あたまがぼーっとして……よくききとれない) (……目もよくみえない……) (どうしたんだろ……わたし……) 「────!! ──!!」 「────めです! ──さん!!」 (からだが……なんだか……さむい) (……ねむい……や……) 「──!!」 「──歩夢ッ!!」 最後に耳に届いたのは、愛おしい子の声。 ──私の意識はそこで途絶えた。
【SS】侑「歩夢が目を覚まさなくなった世界」【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約37000文字■侑「歩夢! 歩夢っ!!」 ──何が起きたか、理解出来なかった。 それは、今まで見た事のない景色。赤色の世界。 私の見ているこれは、何? 頭が上手く、動かない。──ただ、信じられなかった。 私の見ている赤色の世界は、大切で愛おしい幼馴染で作られたモノ。 侑「う、うそだ……うそだよ!! こ、こんな……ことって……!!」 視界が歪む。冷や汗が止まらず、身体が震える。 せつ菜「だ、だめです! 侑さん!!」 横から歩夢に触れようとする私を止めるせつ菜ちゃんの声が聞こえる。同好会の皆もざわめいている。──救急車を呼ばなきゃという声が聞こえた気がする。 でも、私は歩夢を見る事しか出来なかった。 侑「歩夢!!」 侑「──歩夢ッ!!」 呼びかけても、反応はない。 ──この日から、私の幼馴染は目を覚まさなくなった。
1: (しまむら) (4級) (ワッチョイ aa28-p8qD) 2021/08/19(木) 22:20:23.36 ID:BSQUFu/90

ゆるゆるほのぼのを書きます。

6: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:24:31.08 ID:BSQUFu/90
愛「歩夢」

愛「なんで、そんなこと言うんだよ……」

歩夢「…………」

歩夢「愛」

歩夢「これはね、仕方のない事なんだよ」

愛「でも、お前……そんな……」

歩夢「もう、わたしの事は忘れて」

歩夢「皆と、練習して」

愛「!!」

歩夢「もう……ダメなの」

愛「歩夢……」






歩夢「一週間も若葉ちゃんがいないなんて、耐えられないよ!!」

愛「仕方ねぇだろ。音楽科の夏合宿があんだからさぁ」

9: (茸) (スプッッ Sdc2-p8qD) 2021/08/19(木) 22:29:47.44 ID:eV9lgoPdd
歩夢「うぅ……若葉ちゃん……」

愛「そんなに凹むか?」

愛「また一週間経てば会えるし、スマホで連絡取れるじゃん」

歩夢「愛は分かってない」

愛「はぁ?」

歩夢「いい?」

歩夢「一週間、も!! 会えないんだよ?」

歩夢「7日間。時間で換算すると168時間」

歩夢「──耐えられる!?」

愛「耐えられるだろ」

11: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:33:21.47 ID:BSQUFu/90
歩夢「うぅ……若葉ちゃん……」

歩夢「寂しいよ……」

愛「…………」

愛「ちっ、めんどくせぇなぁ」

愛「歩夢」

歩夢「なにさ……」

愛「何すれば、その……元気出る?」

歩夢「へ?」キョトン

愛「なんか元気出る事、してやるよ」

歩夢「本当?」

愛「嘘ついてどーすんだよ」

愛「横でグズグズされるのも、落ち着かねぇんだよ」

歩夢「愛……」

歩夢「ありがとうっ」ニコッ

愛「……ふんっ」プイッ

13: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:35:08.62 ID:BSQUFu/90
愛「んで、何すればいいんだ?」

愛「ジュースでも飲む? なんならクレープでもいいぞ。奢ってあげるよ」

歩夢「うーん、それは流石に悪いよ」

歩夢「そうだね……」

愛「おう」

歩夢「ならさ」

歩夢「若葉ちゃんのモノマネしてほしい」

愛「」

14: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:39:38.80 ID:BSQUFu/90
愛「わ、若葉のモノマネ!?」

歩夢「うん」

歩夢「ほらっ、愛って結構声可愛いし……いけるかなって」

愛「どんな理由だよ!」

愛「そう言うのはしずくの役割だろ? アタシには無理!!」

歩夢「何か元気出る事してあげるって言ったじゃない」

愛「いや! 言ったけど!」

愛「流石にキャラが違い過ぎる!!」

歩夢「そうかな?」

愛「あぁ、違う!」

16: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:46:14.34 ID:BSQUFu/90
歩夢「そっか」

歩夢「流石に出来ないよね」

歩夢「無理難題言っちゃって、ごめんね」

愛「……は?」

愛「いや、やろうと思えば出来る」

愛「ただ、若葉に失礼になっちゃうだろ?」

歩夢「そんなことないと思うよ」

歩夢「あっ! 本当に大丈夫だから」

歩夢「気持ちだけでも嬉しいよ」

愛「いや、なに遠慮してんの?」

愛「──分かったよ! やってやるよ!」

愛「やろうと思えば出来るから!!」

歩夢「本当!? ありがとっ!」ニコッ

愛「……んっ」プイッ

歩夢(なんだかんだ優しいんだよね、愛って)

18: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:50:21.08 ID:BSQUFu/90
愛「……それじゃ、いくぞ?」

歩夢「うん」コクリ

愛「…………」

愛「はぁぁぁぁ……!」キラキラ

愛「歩夢っ! 今日もかわいいYO!」

愛「ときめいちゃう~!!」

歩夢「」

愛「はぁ、はぁ……////」カァァァァ

愛「どーだッ!!」

歩夢「思いの外クオリティ高くてびっくりした」

愛「もっと喜べよ!! それ普通の感想じゃん!!」

20: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 22:57:18.71 ID:BSQUFu/90
歩夢「あっ、でもすごく可愛かったし元気出たよ」

歩夢「ありがとうね、愛」ニコッ

愛「……別に、これくら──」

かすみ「2人とも、なに遊んでるんですか?」

愛「」

歩夢「あっ! かすみちゃん!」

歩夢「おはよっ!」ニコッ

かすみ「はい。歩夢先輩おはようございます」ペコリ

かすみ「愛先輩もおはようございます」

愛「……な、なぁ……かすみ」

かすみ「なんですか?」

愛「さっきの、見てたのか?」

かすみ「え?」

21: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 23:04:34.93 ID:BSQUFu/90
かすみ「はぁぁぁぁ……!」キラキラ

かすみ「歩夢っ! 今日もかわいいYO!」

かすみ「ときめいちゃう~!!」

かすみ「──って愛先輩がやってたやつですか?」

愛「完コピすんな!!」

歩夢「かすみちゃん、可愛い……!!」

愛「あああああああああ!! 負けた気がしてムカつく!!」

愛「しかも後輩に見られたんだけど!?」

かすみ「うるっさ! もうっ、別にいいじゃないですか」

かすみ「可愛かったですよ?」

愛「なんか複雑だし、同級生にだけ見られるのと後輩に見られるのじゃワケが違うんだよぉ……!」

歩夢「あはは……ごめんね、愛。愛のも可愛かったよ? 本当にありがとうね」

愛「……別にい──」

ガラガラ──ガシャン

しずく「今までの話は全て聞かせてもらいました!」

愛「」

24: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 23:14:57.67 ID:BSQUFu/90
しずく「スクールアイドル数あれど、正義のアイドルただ一人」

しずく「助けを呼ぶ声聞こえれば、願いを叶えてしんぜよう!」

しずく「ここからは私のステージよ!」

しずく「桜坂しずく、ここに見参!」

かすみ「……」

歩夢「しずくちゃん、おはよっ!」

しずく「おはよっすー!」ニコッ

愛「……」

愛「なぁ、しずく」

しずく「んー? どしたんです?」

愛「今までの話は聞かせてもらいましたって言ってたよな?」

しずく「うん」コクリ

愛「なら……あれも聞いてた?」

しずく「はぁぁぁぁ……!」キラキラ

愛「──分かった!! 分かったからやらなくていい!!」

しずく「愛さん凄いなって普通に思ったよ? 今度演劇部に見学に来ます?」

愛「行かねーよ……」

25: (茸) (スプッッ Sdc2-p8qD) 2021/08/19(木) 23:23:54.90 ID:03lZOyFld
しずく「歩夢さん、若葉先輩がいなくて寂しいんだよね?」

歩夢「うん……」

しずく「なら、寂しさを補う為に必要な事をやろーよ」

歩夢「必要な事?」

しずく「そそ!」

しずく「つまり! みんなでどこかに遊びに行こう!!」

かすみ「急過ぎるでしょ」

しずく「こういうのは思い切りが大事なんだよ中須かすみくん」

かすみ「せめてくんじゃなくてちゃんにして」

歩夢「みんなで……遊びに!?」パァァァァ

歩夢「うん! 行きたいっ!」ニコッ

しずく「あー、素直な歩夢さんかわいいですなぁ」

愛「まぁ、確かにこのまま練習しても見に付かなさそうだもんな。気分転換になる気がする」

しずく「でしょでしょ?」

しずく「ねっ? 2人とも?」

せつ菜「はいっ! そう思います!」ヒョコッ

璃奈「同感だよ」ヒョコッ

愛「」

26: (しまむら) (ワッチョイ c228-p8qD) 2021/08/19(木) 23:32:42.90 ID:BSQUFu/90
愛「待て」

愛「璃奈。せつ菜」

愛「お前らいつから廊下にいた?」

しずく「あたしと一緒にいたよ」

愛「って事は全部聞いてるじゃんかよ!!」

璃奈「可愛かったよ、愛さん」

璃奈「端的に言って、プリチーだった」

せつ菜「ときめきましたよー!」ペカー

愛「複雑な気持ちになるからやめろ!!」

しずく「それじゃ、かな姉達三年生ズにも連絡するね」

歩夢「しずくちゃん、どこ遊びに行く予定なの?」

しずく「ふっふっふ……お台場の楽しい遊び場と言えば決まってるんですよ歩夢さん」

しずく「イッツァ! ジョイポリース!」




34:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-fKQf) 2021/08/20(金) 08:05:10.51 ID:oK+dAvldd
歩夢「ここが、ジョイポリス……!」

歩夢「なんだかんだ初めて来た! すっごい楽しみっ」

歩夢「提案してくれてありがとうね、しずくちゃん!」

しずく「もう歩夢さんの笑顔でこっちの心も優しく満たされてるよ」

璃奈「実は私も初めて来たんだよね」

かすみ「私も」

しずく「な!? 2人ともそれでもお台場県人!?」

かすみ「うわ……すごい頭悪そう……。東京都だし県じゃないしもう色々と頭痛いんだけど」

璃奈「しずくちゃん、成績優秀者だけどね」

果林「室内の遊園地……!! すっごいたのしみ~!」

エマ「わたしもドキドキしてるよ~!」

果林「エマ! わたしが道案内してあげるからねっ」

愛「いや、カリンさんが道案内したら逆に迷うからダメっすよ!」

せつ菜「皆さん~。公共施設なんですからもう少し静かにしなきゃですよ?」

しずく「はーい!」
璃奈「はーい!」

彼方「みんなー、パスチケット全員分受け取ってきたよ~」


かすみ「すっごいわちゃわちゃしてますね……」

歩夢「うん。でも、楽しいねっ」ニコニコ

かすみ「……そうですねっ」ニコッ

35:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-fKQf) 2021/08/20(金) 08:11:27.65 ID:oK+dAvldd
しずく「さぁ! ジョイポリスと言ったら、最初はあれに乗ろうよ!」

璃奈「あれ?」

しずく「そう、ハーフパイプ!」

かすみ「どんなやつなの?」

しずく「あの床がブンブン振り子みたいに高さ7メートルまで揺れてね、その中でタイミング良く足の装置を踏むと回転するっていうアトラクション!」

しずく「詳しくは乗る時に店員さんが説明してくれますよ~」

かすみ「へぇ」

璃奈「すっごい楽しそう! 乗ってみたい!」

しずく「やる気でいいね璃奈! 素晴らしい」

かすみ「えー、でも髪とかぐしゃぐしゃになりそうじゃない? 初めてここに来る方も多いし、別のやつにした方がいいんじゃない?」

しずく「これがここでいっちばん人気なやつなんだよ!」

かすみ「…………」

36:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-fKQf) 2021/08/20(金) 08:17:18.67 ID:oK+dAvldd
しずく「あっ!」

しずく「もしかしてかすみ、あのアトラクションが怖いんでしょ〜?」ニヤニヤ

璃奈「それならそうと言ってくれれば良いのに〜」ニヤニヤ

かすみ「──は?」

かすみ「怖くないんですけど?」

しずく「いや、正直に生きるのがいちばんですからね。無理しなくて平気だよ」

かすみ「無理してないんですけど!?」

璃奈「素直に生きるのって、難しいよね?」ポンポン

かすみ「…………」

かすみ「歩夢先輩ッ!!」

歩夢「は、はい!?」ビクッ

かすみ「あれ、2人セットになって乗れるやつみたいです。一緒に乗りましょう」

歩夢「え?」

かすみ「よく見たら点数で競えるみたいですからね……!」

かすみ「乗ってあげるよ……! 絶対にあなた達2人に負けないから……!!」

しずく(ちょろかわいい~)ニコニコ
璃奈(ちょろかわいい~)ニコニコ

37:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-fKQf) 2021/08/20(金) 08:27:55.43 ID:oK+dAvldd
果林「わたし達も乗ろ! エマ」

エマ「そうだね! 楽しそう~」

彼方「なら最初は皆であれに乗ろっか」

エマ「うんっ!」

せつ菜「かすみさん、お待ちください」

璃奈「なんですか?」

せつ菜「みんなであれに乗るのは賛成です」

せつ菜「でも! なんで歩夢さんとかすみさんが一緒に乗るので確定してるんですか!?」

せつ菜「私も歩夢さんとコンビ組みたいです!!」クワッ

歩夢「せつ菜ちゃん!?」

かすみ「いや、前の歩夢先輩と約束したので。彼女をしっかりと見てあげるって」

せつ菜「私もですよ!!」

かすみ「早い者勝ちです」

せつ菜「ずるいー!!」

愛「おいお前らケンカすんなって」

歩夢「わたしはどっちでも大丈夫だけど……」

かすみ「ぐぬぬぬ……わがままな先輩もいたもんですね」

せつ菜「こっちのセリフですよ……! 同級生にこういう場面は譲るべきなんです!!」

彼方「2人とも~。もう公平にジャンケンで決めようよ」

かすみ「そうですね!」
せつ菜「そうですね!」

歩夢「息ぴったり……」

38:続きは夜更新します。(茸) (スプッッ Sd1f-fKQf) 2021/08/20(金) 08:48:07.80 ID:s1b2qCKbd




せつ菜「…………」

かすみ「ジャンケンで私に勝つなんて100年早いですよ、せつ菜先輩」

せつ菜「うぅ……!! うぅ……!!」

かすみ「そ、そんな泣きそうにならないで下さいよ……」

歩夢「泣かないで、せつ菜ちゃん」

歩夢「あっ! そうだ。これ終わったあとに、もう1回乗れば良いんだよ」

せつ菜「!! 良いんですか!?」

歩夢「うんっ」

せつ菜「~~~~~!! ありがとうございます!!」ペカー

せつ菜「なら、愛さ──」

愛「あっ、アタシは今回パスでいいよ。彼方さん、良かったらせつ菜と乗ってあげてください」

彼方「へ? いいの愛ちゃん」

愛「うん。アタシあぁいうの苦手でさ。なので皆が乗ってる動画撮って、若葉に見せられるようにしとくよ」

彼方「そう? わかった。ならせつ菜ちゃん、よろしくね~」ニコニコ

せつ菜「はいっ!!」

しずく「素直に言うあたり、推せるよね」チラッ

璃奈「分かる」チラッ

かすみ「こっち見るな」

愛(沢山乗ってるから正直飽きちゃってるってのは内緒にしとこ)

愛(ハーフパイプはMAXの点数は10800点。どのコンビが高い点数取れるか予想してよっと)

43: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 03:21:33.52 ID:sEgZcFim0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

赤チーム:歩夢&かすみ

青チーム:しずく&璃奈

黄チーム:せつ菜&彼方

緑チーム:果林&エマ


『──以上で説明は終わります! それでは皆様、楽しんでってくださいー!』


歩夢(揺れてる時に、中心に来た時に足の装置を踏むんだね)

歩夢(なるほど、2人の場合は足踏みするタイミングを合わせなきゃいけないんだ)

歩夢「ワクワクするね、かすみちゃん!」

かすみ「そ、そそそそそ、そうですね」ギュュュュュ…

歩夢「か、かすみちゃん? 大丈夫……?」

かすみ「だ、大丈夫に決まってるじゃないですか!」

かすみ「そう、ただ揺れて回転するだけです。全く怖くないです」

かすみ「怖くない!!」

歩夢「そ、そう? 無理はしないでね……?」

かすみ「大丈夫です」ギュュュュュ


しずく「久しぶりに乗るからワクワクするな~」

しずく「がんばろーね、璃奈」

璃奈「………………」

しずく「ん? 璃奈~?」

璃奈「しずくちゃんや」

しずく「ほいほい」

璃奈「ここだけの話なんだけどさ」

璃奈「実は私、高い所苦手なんだよね」

しずく「え? それ、大丈夫なの?」

璃奈「心配は無用さ。高いっていっても7メートルくらいでしょ? なぁに……かすみちゃんにあぁ言った手前、ここは軽く──」

『──それでは! よぉいスタート!!』

グオン!! グォン、グォン!!

44: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 03:30:14.58 ID:sEgZcFim0
歩夢「わー! 結構揺れるね!」

しずく「いやぁ、これが楽しいだよねー!」

かすみ「ああああああああああああああ!!」
璃奈「ああああああああああああああ!!」

歩夢「かすみちゃん!?」
しずく「璃奈!?」


せつ菜「わー! すごいですね! 揺れてるだけなのに楽しいですっ!!」

彼方「わかるー! そろそろ回転出来るようになるよ~!!」


果林「はい、はい、はい! 足踏みはこのタイミングっぽいねー!」

エマ「うん! 果林ちゃんに合わせるからね~」ニコニコ

45: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 03:51:52.43 ID:sEgZcFim0




『お疲れ様でした~!!』


かすみ「…………」

歩夢「かすみちゃん、大丈夫?」

かすみ「………………はい」

歩夢「間の長さがすごいね……降りたらお水飲もっか」

かすみ「うん……」

かすみ「あっ……歩夢先輩は楽しかったですか?」

歩夢「うんっ! すっごく楽しかった!」ニコッ

かすみ「なら……良かったです……」ガクッ

歩夢「かすみちゃん!?」


璃奈「………………」

璃奈「…………」

璃奈「……」

しずく「り、璃奈~? 大丈夫…じゃないよね?」

璃奈「ふっ、何言ってるのさ。余裕だったよ」ガクガクガクガク

しずく「足ガックガクじゃん……」

しずく「頑張ったね? よしよし」ナデナデ

璃奈「あったかい……」


彼方(あの2人大丈夫かな……後で飲めるタイプの酔い止め薬渡してあげよう)

せつ菜「彼方さん! こんなアトラクション初めてでしたけれど、すっっっっごく楽しかったです!」ペカー

彼方「おぉ~、せつ菜ちゃんは元気だねぇ。足踏みのタイミングも上手だったしすごいよ」ナデナデ

せつ菜「えへへ~。もっと褒めてくれても大丈夫ですよ!」ニコッ


果林「これ、すごきゃ~!」

果林「横に揺れて回転するだけなのに、すっごく楽しいねっ!」

エマ「目が回っちゃったよ~」

エマ「けど、楽しかったね!」

果林「うん!」


『──それでは、タイミング良く足踏みして、回転出来ていたグループの得点の結果が出ました! どうぞ!』

46: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:00:15.39 ID:sEgZcFim0
愛(よしよし、良い動画撮れた!)

愛(そんで結果は──)


赤チーム:歩夢&かすみ 5400点

青チーム:しずく&璃奈 3200点

黄チーム:せつ菜&彼方 9200点

緑チーム:果林&エマ 10800点


愛「」


歩夢「」

かすみ「」

しずく「」

璃奈「」

せつ菜「おー!」

彼方「満点! 初めて見たよ~」

果林「やったら~!」

エマ「やったね、果林ちゃん!」

47: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:04:42.79 ID:sEgZcFim0
『ありがとうございましたー』


果林「すっごく楽しかったね!」

果林「また乗りたい」

エマ「わかる~! 組み合わせ変えてまた乗るのも全然ありかも~」

彼方「そうだねー。歩夢ちゃんとせつ菜ちゃんも一緒にまた乗るみたいだもんね」

エマ「うん!」

スタスタ

愛「お疲れ様っした」

果林「あっ、愛! 動画撮ってくれてどーもよい!」

愛「いや、それはいいんすけど……」

愛「あの……本当に初めて乗ったんですか? これ」

果林「うん」

エマ「わたしも初めてだよ」

48: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:13:18.99 ID:sEgZcFim0
せつ菜「よく満点なんて出せましたね。すごいです」

果林「でも真ん中に来た時に足踏みするだけでしょ?」

果林「楽しかったし、タイミングも覚えやすかったよ?」

歩夢「すごいグルグル回りながらだから難しいと思うんだけど……」

璃奈「わかる。正直怖くて何も出来なかったよ私は」

しずく「璃奈固まってたもんね」

かすみ「全く。あんなに私の事煽ってきた癖にその体たらくはどうなの? 情けないよ璃奈」

璃奈「予想外の事が起きるのもまた人生なのさ」ドヤッ

かすみ「……」

果林「ダンスとあんまり感覚変わらなかったよ?」

エマ「わたしは果林ちゃんが足踏みしたなって思った瞬間に足踏みしてただけだから、果林ちゃんのおかげだよ~」

歩夢「それ出来るのが一番やばいと思います……」

愛(アタシMAXで9400点なんだけど……)

愛「上には上がいるし、天才っているんだな」




49: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:22:34.74 ID:sEgZcFim0
〜夜~

歩夢「──そんな感じでね、今日すっごく楽しかったんだ~」

若葉『うん! 愛ちゃんから動画も送られて来たよ』

若葉『絶叫してるかすみちゃんと璃奈ちゃんが新鮮で可愛かったね~』

歩夢「わかる」

若葉『いいなぁ、私も行きたかった』

歩夢「夏合宿終わったら行こうよ! 一緒に遊ぼっ」

若葉『うんっ!』

歩夢「夏合宿はどうなの?」

若葉『もうずっとピアノの練習してるよ……何故か運動もあるし、中々ハードだよ』

歩夢「そうなんだ」

若葉『でも、楽しいよ』

若葉『これは私が、やりたかった事だから』

歩夢「……そっか」ニコッ

50: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:33:26.84 ID:sEgZcFim0
若葉『ねぇ、歩夢』

若葉『この一週間はさ、私に気にせずどんどん遊びなよ』

歩夢「へ?」

若葉『もちろん、スクールアイドルの練習もしなきゃだけど』

若葉『皆と遊ぶのも大切だと思うんだよね』

歩夢「皆と……遊ぶ……」

若葉『うん』

若葉『楽しい事があると、人って他の行動のモチベーションも上がるし!』

若葉『スクールアイドルとしての成長にも繋がってくる気がするんだ~』

歩夢「……でも、若葉ちゃんが頑張ってるのに、わたしだけ遊ぶなんて……」

若葉『帰ったら、その分いっぱい遊ぼうよ』

若葉『今まで離れ離れだった分……これからは沢山時間があるんだから』

歩夢「……うん! そうだねっ」

若葉『これからはずっと近くにいるからね、歩夢』

歩夢「うんっ!」

51: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:41:35.78 ID:sEgZcFim0
若葉『それじゃ、そろそろ消灯時間だから部屋に戻るね』

歩夢「うん。合宿中なのにありがとう」

若葉『歩夢と話せて私も楽しかったから、こちらこそありがとうだよ』

若葉『おやすみ、歩夢』

歩夢「うん。おやすみ、若葉ちゃん」

ピッ

歩夢「……どんどん遊びなよ、かぁ」

歩夢(今まであんまり遊んだこと無かったから……何すれば良いのか分からないなぁ)

歩夢「…………」

歩夢「そう言えば、わたしの憧れのあの子は、歌が上手だったね」

歩夢「歌……あっ」

歩夢(わたし、カラオケって行ったことない)

歩夢「行ってみたいなぁ……カラオケ」

歩夢「──よしっ!」グッ

歩夢(明日皆を誘ってみようっと!)

52: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/21(土) 04:56:07.21 ID:sEgZcFim0
───────────

8月23日

若葉ちゃんが今日から音楽科の夏合宿で一週間長野に行ってしまった。

寂しくて落ち込んでたら愛が励ましてくれた。なんだかんだ優しいよね。

そしてそして、まさかの皆とお台場にある室内テーマパークのジョイポリスに行く事に!

しずくちゃんが寂しそうなわたしの事を気にしてくれて、提案してくれた。ほんと良い子。

アトラクションもクレーンゲームとか色々あって、すっごく楽しかった!

ハーフパイプ? だっけか?

一番人気のアトラクションに最初乗ったんだけど、珍しいかすみちゃんが見れた。

本当、楽しかった!

もっと皆と遊びたい。けど、スクールアイドルの練習も頑張らないと。

今のわたしと憧れのあの子の差はまだまだあるから。

でもとりあえず、明日はカラオケに行ってみたい!

今年の夏休みは楽しい。

そろそろ寝なきゃ。

おやすみなさい。

───────────

63: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/23(月) 22:54:07.50 ID:LPLPFGDJ0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

~翌日~

歩夢(昨日の夜、ふとカラオケに行ってみたいと思ったわたしは、早速皆を誘ってみた)

歩夢(みんなノリノリで、全員で行く事になった。今はもうお店の中)

歩夢(大部屋が他のお客さんで埋まってたから、3部屋借りて学年毎で歌っていたんだけど)

しずく「ほら、歩夢さん! こっちこっち~!」

歩夢「わわっ、しずくちゃん。お店の中で走っちゃダメだよ?」

しずく「あっ……そうだったね……。ごめんなさい! ついテンション上がっちゃって」

しずく「ありがとうございます」ニコッ

歩夢(しずくちゃんから面白いのが見れるから、1年生ズの部屋に来てほしいと言われて、今は彼女に引っ張られている)

65: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/23(月) 23:25:56.44 ID:LPLPFGDJ0
歩夢「しずくちゃん。面白いのが見れるって、何があるの?」

しずく「それは見てからのお楽しみっすよ~」

歩夢「そ、そっか」

しずく「ただ、まぁ」

しずく「かすみと璃奈って本当に仲良いよね~って思う」

歩夢「なんだかんだ仲良いよね」

歩夢「でも、しずくちゃん含めて3人とも仲良しって感じがするよ?」

しずく「そ、そうかな?」

歩夢「うん」

歩夢「しずくちゃんも、かすみちゃんと璃奈ちゃんと仲良しだと思う」

しずく「……そっか」

しずく「えへへ……そっか……」ニコニコ

歩夢(しずくちゃん、嬉しそう)

歩夢(なんかわたしも嬉しくなってくるなぁ)

66: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/23(月) 23:47:52.15 ID:LPLPFGDJ0
しずく「さっ、着いたね~」

しずく「入ろ入ろ!」

歩夢「うん」

歩夢(何があるんだろう?)

ガチャ

しずく「たっだいま~!」

歩夢「お、お邪魔しま──」

かすみ「あああああぁぁぁぁああッ!!」

かすみ「ムカつく……ムカつく!!」

璃奈「あっはっはっはっは!」

璃奈「次のチャレンジを、お待ちしてるよかすみちゃん」ニヤニヤ

かすみ「ッ……ッ!!」イライラ


歩夢「え? なにこれ……?」

67: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 00:42:40.85 ID:Gt9TVttR0
歩夢(モニターには89点という数字)

しずく「かすみと璃奈の、採点対決だよ!」

歩夢「採点……?」

しずく「そそっ!」

璃奈「おや、歩夢さんじゃないか」

かすみ「!? ちょ、ちょっとしずく!? なんで歩夢先輩連れてきてるの!」

歩夢「え!? き、来ちゃダメだった……?」

かすみ「あっ! いや、違くて! ──来てくれたのは嬉しいんですけど! ……そ、その……」

璃奈「歩夢さん。今ね、かすみちゃんと同じ曲を歌って点数を競っていたんだよ」

しずく「今のところ、璃奈の全勝なんだよね。多分、かっこ悪いところ見せたくなったんだと思う」

璃奈「ほんと可愛いよねかすみちゃん」

かすみ「2人ともうっさい!」

歩夢「カラオケってそんな機能もあるんだね」

歩夢「すごいなぁ、最近のカラオケ」

しずく「いや昔からあるよ?」

68: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 00:56:25.14 ID:Gt9TVttR0
しずく「それにしても璃奈、凄いよね」

しずく「めっちゃ高い点数取るもんね」

璃奈「ふふふ、しずくちゃんや」

璃奈「カラオケの採点機能は、機械が判定しているのさ」

しずく「ほう?」

璃奈「どんな歌い方をすればいいのかを理解すれば容易いのさ」

璃奈「端的に言うと、私は高得点の取り方を理解してるのさ」

かすみ「……」ムスー

璃奈「そーだ、歩夢さん」

歩夢「ん?」

璃奈「次の曲、選んでほしい」

歩夢「へ?」

70: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 01:12:05.26 ID:Gt9TVttR0
璃奈「そろそろネタも尽きてきちゃったからね。次に競う歌を歩夢さんに決めてほしいんだ」

璃奈「いいよね? かすみちゃん」

かすみ「……知ってる歌なら」

璃奈「おっけー。歩夢さん、いい?」

歩夢「別にいいけれど、わたしもあんまり歌詳しくないからなぁ……」

かすみ「あんまり難しく考えなくて大丈夫ですよ。オススメジャンルとかから決めても良いです」

しずく「はい、歩夢さん。デンモク」スッ

歩夢「しずくちゃんありがとう」

歩夢「えーと……えっと……」ポチ…ポチ

しずかすりな(操作に慣れてない感あってかわいい)

71: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 01:58:59.71 ID:Gt9TVttR0
歩夢「あれ? この曲……」

しずく「おっ? どれどれ?」グイッ

歩夢「なんで入ってるの?」

かすみ「何がですか?」

歩夢「かすみちゃんの曲が入ってる」

璃奈「え? スクールアイドルの曲なのに?」

歩夢「う、うん」

かすみ「あれ? 皆知らない感じ?」

かすみ「他のスクールアイドルの曲も入ってるよ?」

しずく「あたしの曲は!?」

かすみ「入ってないと思う」

しずく「えぇ!? なんで!」

かすみ「こういうカラオケに自分の曲が追加されたり、グッズが出る時には学校側から声が掛かるから」

かすみ「しずく、特に何も言われてないでしょ?」

しずく「モチのロン」

歩夢「かすみちゃん、詳しく教えてほしいな」

かすみ「良いですよ、歩夢先輩」

かすみ「スクールアイドル概論の授業です」

72: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 02:14:48.28 ID:Gt9TVttR0
かすみ「まず、スクールアイドルの総括をするスクールアイドル協会ってのがありまして」

かすみ「ある程度スクールアイドルとして有名になると、その団体から学校側に声が掛かるんです」

かすみ「あなたの学校のスクールアイドルの曲をCDにしませんか~、グッズにしませんかぁ~みたいな感じで」

かすみ「文言とかはどんな感じで来るか知りませんけどね」

歩夢「スクールアイドルにもそういう団体ってあるんだね」

かすみ「そうなんです」

かすみ「今や世はアイドルブーム。それを更に盛り上げる為に、協会も次々と動きのあるスクールアイドルがいる学校側に声をかけて、スクールアイドルを世に広めようとしてるんです」

しずく「なるほどね。だからスクールアイドルのグッズ専門店とかあるんだ!」

しずく「あれどこで許可取ってるんだろって思ってたんだよね」

璃奈「私、無断で出してるかと思ってたよ」

かすみ「そんなわけないでしょ……」

74: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 02:25:08.82 ID:Gt9TVttR0
かすみ「私も前に先生から呼び出されて、こういう話が来てますよって声を掛けられたんです」

かすみ「だから何枚かはCDもグッズも出てるし、こうしてカラオケに曲も入れて頂いているんです」

しずく「ちょっと、なんでその事教えてくれなかったの!?」

璃奈「そうだよ。水臭いよかすみちゃん」

かすみ「いや、声かかったのも結構前で、その時はスクールアイドル同好会もほとんど活動してなかったから……」

歩夢「でもかすみちゃん。その、グッズとかCDの売上とかってどうなるの?」

璃奈「あっ、確かに」

しずく「私もそれ気になる」

かすみ「本人には一銭もお金は入りません」

しずく「え?」

かすみ「全部お店と協会と学校側にいきますよ」

しずく「マ!?」

かすみ「マ」コクリ

75: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 02:47:22.03 ID:Gt9TVttR0
かすみ「ただ、何も恩恵がないわけじゃないよ」

かすみ「売上が上がれば上がるほど、スクールアイドルとしての活動の幅も広がります」

かすみ「例えば、広いライブ会場を借りられたり、舞台装置や演出も凝ったものに出来ます」

歩夢「あっ、分かった。その売上の分、学校側がスクールアイドル活動にお金を出してくれるんだ」

かすみ「そういう事です。歩夢先輩」

かすみ「大人気スクールアイドルが在学していたとある学園なんかは、東京駅前を会場にしてラストのサビに入る瞬間にイルミネーションを全てオレンジ色に輝かせるという演出をした所もあるみたいです」

しずく「それすご……」

璃奈「とても綺麗そうだね」

かすみ「私達スクールアイドルは、学校がないと活動は出来ませんし、スクールアイドルを名乗れません」

かすみ「在学している学校が、芸能プロダクションみたいなもんなんですよ」

かすみ「裏ではちゃんとお金が絡んでいるんです」

かすみ「だから、スクールアイドルに力を入れている学校もあります。全国大会であるラブライブ優勝を目標にしている学校もあるんです」

76: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 02:53:08.44 ID:Gt9TVttR0
歩夢「そうだったんだ」

かすみ「まぁ、なので私の曲を歌う事もできるんです」

歩夢「かすみちゃんありがとう! すごく分かりやすかったよ」

かすみ「これくらいお易い御用ですよ。なんでも聞いて下さい」

歩夢「ありがとうっ」ニコッ

璃奈「私も勉強になったよ」

しずく「あたしも~」

かすみ「璃奈はともかく、入学してすぐにスクールアイドルになったしずくは知らなきゃダメでしょ……」

しずく「幽霊部員だったので!」エッヘン

かすみ「誇るなっての……」

78: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 03:17:13.05 ID:Gt9TVttR0
歩夢「ねぇ、かすみちゃん」

歩夢「わたし、このかすみちゃんの曲が聴きたい」

かすみ「え?」

かすみ「あぁ、私が初ライブの時に披露した曲ですね」

歩夢「わたし、この曲大好きなんだ」ニコッ

かすみ「そ、そうなんですか? あ、ありがとうございます」

かすみ「わりとマイナーな曲なのによく知ってますね」

しずく「なんか懐かしいね。初ライブの時、あたしかすみの宣伝めっちゃ頑張ったんだよなぁ~」

かすみ「そのお礼はアイス奢ってあげたでしょ?」

しずく「あははっ! それも込みで懐かしいよ」

かすみ「……だね」ニコリ

かすみ「というわけで璃奈。歩夢先輩からのリクエストだから、勝負してもらうよ」ビシッ

歩夢「あっ! そ、そっか。これ、採点勝負だもんね!? ごめんね璃奈ちゃん……」

璃奈「全然構わないよ。私もこれ歌えるし」

かすみ「え? そうなの?」ポカーン

璃奈「当然だよ」

璃奈「私は同好会の皆の歌が大好きだからね。全員の曲はしっかりと聴き込んでるよ」

しずく「おー! なんかそう言ってもらえるの嬉しいね」ニコニコ

かすみ「……ふんっ///」プイッ

璃奈「照れるなよかすみちゃん~」

かすみ「照れてないッ!」

歩夢「照れてるかすみちゃんも可愛い……!」キラキラ

かすみ「当然です。もっと褒めて下さい」

しずく(歩夢さんには本当に素直だね)

80: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 03:23:40.43 ID:Gt9TVttR0
璃奈「じゃあ、2曲連続で入れるね。かすみちゃんから先に歌う?」

かすみ「別にどっちでもいいけど」

璃奈「なら先に歌って。本人の持ち歌を先に歌うのは気が引けるから」

かすみ「あなた本当、変な所で気遣うよね……」

璃奈「よせやい。褒めても何も出ないよ」

かすみ「褒めてないから」

歩夢「楽しみにしてるね、かすみちゃん!」

かすみ「……100点取ってあげますよ」

歩夢「うんっ!」

かすみ「じゃあ、いきます──」

♪~

81: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 03:33:08.16 ID:Gt9TVttR0
♪~

歩夢「……」



かすみ『わりとマイナーな曲なのによく知ってますね』



歩夢(かすみちゃん)

歩夢(この曲はね、わたしを救ってくれた歌なんだよ)

歩夢(わたしに、若葉ちゃんとした、スクールアイドルの夢を思い出させてくれたきっかけ)

歩夢(あの時わたしは、あなたに救われたんだよ)

かすみ「♪~」

歩夢(かすみちゃん)

歩夢「──ありがとう」

82: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/24(火) 03:54:15.64 ID:Gt9TVttR0
───────────

8月24日

今日はみんなとカラオケに行った。本当に楽しかった~!

かすみちゃん、持ち歌で98点という結果に対してすっごく悔しがってた。しかめっ面でもかすみちゃんはかわいい。

メンバーを分け、部屋はバラバラになっちゃってたけれど、各部屋を転々として歌ってたらあっという間に退出時間。

しずくちゃんのミュージカルソングもすごかったし、璃奈ちゃんの……ボーカロイドソング?
とにかく! 歌もすごかった。

せつ菜ちゃんと愛ともデュエットできたし(愛とタイミング合わない所もあってちょっとだけ口喧嘩したのは内緒)、エマさんの綺麗な歌や彼方さんの歌で癒されたり、果林さんの普段とのギャップがすごい、かっこいい歌も聴けて本当に楽しかった!

若葉ちゃんともカラオケ行きたいなぁ。

あと、改めてかすみちゃんのスクールアイドルとしてのレベルの高さも分かったし、スクールアイドルの事も勉強できた。まだまだ知らない事ばかり。

わたしも有名になれば、学校から声が掛かるよってかすみちゃんから言ってもらえた。

けれど、わたしにはまだ早い気がする。
校内で色々な子から話しかけてもらえるようにはなったけれど、これはあの子が築き上げたものだもん。もっと、頑張らないと。

でも最近思う。

わたし、どんなスクールアイドルになりたいんだろうって。

かっこいいスクールアイドル? 可愛いスクールアイドル?

まだ、答えが見つからない。

同好会のみんながどんなスクールアイドルを目指しているのか、聞いてみようかな。

うん、そうしよう。

もう少し夏休みは続くけれど、今日も早めに寝ます。

おやすみなさい。

───────────

90: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/25(水) 23:26:02.81 ID:wWiw14cx0
歩夢「行ってきまーす」

歩夢(今日は水曜日)

歩夢(同好会の練習もなく、遊びの予定も本日はいれてない)

歩夢(今日は、やらなきゃいけないことがあるから)

歩夢「……はぁ……」

歩夢「緊張する……」

歩夢「わたしに……ちゃんとできるかな……」

歩夢(目指すのは、お台場にある公園)

歩夢(そこで今日、わたしはボランティア活動に参加する)

歩夢(あの子がやっていた事を、やってみることにした)

91: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/25(水) 23:30:51.59 ID:wWiw14cx0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「歩夢ちゃん! いつも本当にありがとうね~!」

「これ、お菓子とか詰めてあるから! 後で持っていってね!」

「歩夢ちゃん。最近スクールアイドルとしてもすごく頑張ってるって聞いたよ? あんまり無理しないでねぇ~?」

歩夢「あっ、えと…は、はい! ありがとうございます」

歩夢(ボランティア活動をする人達の準備会場まで来た瞬間、すごい勢いで沢山のおば様達に囲まれた)

歩夢(うっ……大勢に囲まれるの、やっぱ苦手……)

「あれ、歩夢ちゃん? 元気無い?」

歩夢「!!」

歩夢(ダメダメ! 人への苦手意識は無くさないと!)

歩夢(優しい人も沢山いるって気が付けたし)

歩夢(こんなに喜んで出迎えてくれる方が沢山いる、この関係性を築き上げたのも! あの子の誠実な行動があったからだもんね)

歩夢「いえ! お菓子が嬉しいのと少し量が多くて驚いちゃってました。ありがとうございますっ」ニコッ

歩夢(それを無駄にしちゃダメだ)

92: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/25(水) 23:41:22.73 ID:wWiw14cx0
「あら、そうだったのね! なら良かったわ」

「歩夢ちゃん。今日のボランティア活動の内容なんだけどね」

歩夢「あっ、はい」

「今日、この公園でバザーがあるのだけれど、近くの学童の子達が遊びに来る予定なの」

「基本的にその子達に何か起こらないようにお世話をするのが主な仕事になるから、頑張ってね!」

歩夢「はい。分かりました」コクリ

「まぁ、歩夢ちゃんは子供の世話が得意なの知ってるし、あんまり心配していないけれどね」

歩夢「あはは……頑張ります」

歩夢(子供のお世話かぁ……やった事ないけれど)

歩夢(真心を込めて、頑張ろう!)




93: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 00:09:36.07 ID:We8d0BNC0
「ねぇねぇ! あそこで売ってるボール、お姉さん買ってよ!」

歩夢「え? ごめんね~。それはダメなんだ~」

「なんで!」

歩夢「わたし達お手伝いだから、直接お金は出せないの」

「なぁんだ。ビンボー人なのかぁ」

歩夢「え? いや、違くてね」

「ならいーもん! あっち行くから!」タッタッタッタ

歩夢「あっ……は、走っちゃダメだよ!」

「ねぇねぇ、お姉ちゃん~。肩車して~?」クイクイ

歩夢「え? 肩車?」

「うん!」

歩夢「いいよ。それじゃ──」

「ねぇ! あっちで風船もらえるってさ!」

「え!? ほんと!? いくいく~!!」

タッタッタッタ!!

歩夢「あ、あれ……?」

歩夢「おーい! 肩車は~!?」

歩夢「…………」ポツーン

歩夢(ぜ、全然まとまらない……!!)

94: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 00:24:13.92 ID:We8d0BNC0
歩夢(みんな好き勝手に動き過ぎだよ……)

歩夢(いや、元気いっぱいなのはいい事なんだけどね?)

歩夢(ドタバタし過ぎて怪我しちゃう子とか出てきそう……)

歩夢「…………」

歩夢(あの子なら、上手くまとめられたのかな?)

歩夢「幼稚園の先生とか似合うくらい、誰かのお世話をするのが上手だったもんね。あの子」ボソッ

歩夢(やっぱりあの子とわたし、全然違うよね。こうしてまた生活するようになって、改めて実感しちゃう)

歩夢「はぁ……自信無くすなぁ……」

97:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:07:26.41 ID:iy3KQsAed
歩夢(他の人がどんな感じで対応してるのか、観察しよっかな)スタスタ

歩夢(ん?)ピタッ


「…………」ポツーン


歩夢(あの子、1人でぼーっとしてる)

歩夢(何かあったのかな?)


「…………」


歩夢「……」

歩夢(話しかけてみよう)

歩夢(なんか、放っておけない)


歩夢「ねぇねぇ」

「!!」ビクッ

歩夢「あっ、びっくりさせちゃってごめんね?」

「……」ジー

歩夢「周りの子達と遊んだり、バザーを見て回ったりしないの?」

「…………」

歩夢「……」

歩夢(こ、この後……どうしよう)ダラダラ

歩夢(若葉ちゃん……助けて……)

98:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:15:08.82 ID:iy3KQsAed
「……え、えっと……その……」モジモジ

歩夢(あれ? この子)

歩夢(もしかして、緊張してるのかな?)

「…………」

歩夢(なんか、昔のわたしに似てるなぁ)

歩夢(だから、放っておけないのかも)

歩夢「緊張しなくても、大丈夫だよ?」

歩夢「わたしの名前は、上原歩夢」

「あゆむ……ちゃん?」

歩夢「うん。歩夢だよ」

「……えと……えっと……」

歩夢「ゆっくりで大丈夫だよ?」

歩夢「自分のペースで、いいの」ニコッ

「!!」

「う、うん! ありがとう!」

「えっと、わたしの名前は……」

今日子「きょうこって、言います。6歳」

歩夢「そっか。今日子ちゃんって言うんだ。よろしくね~」ニコニコ

今日子「──うん! よろしくね!」

今日子「あゆむちゃん!」ニコッ

99:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:19:57.53 ID:iy3KQsAed
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「歩夢ちゃん! 今日は本当にありがとうね!」

「バザーも無事に終わったし、ほんと助かったわ~!」

歩夢「いえいえ」

「はい! お土産のお菓子!」ドサッ

歩夢「あ、ありがとうございます」

歩夢(さっきよりもお菓子の量が増えてる……)

「あと、歩夢ちゃん?」

「その子は……」

歩夢「え?」

今日子「…………」ギュュュュュ

歩夢「えっと……」

今日子「あゆむちゃんの、友達です」ギュュュュュ

「そ、そう?」

歩夢(懐かれちゃった)

歩夢(いや、すごく嬉しいんだけどね?)

100:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:27:18.69 ID:iy3KQsAed
歩夢「きょ、今日子ちゃん?」

歩夢「学童の方に戻らなくて、大丈夫なの?」

今日子「うん!」

今日子「本日は解散ですって、ガクドーの先生に言われたし、お姉ちゃんが迎えに来るまであゆむちゃんと一緒にいるってちゃんとホーコクしたから、だいじょぶっ!」

「あら、学童の先生にちゃんと報告してるのなら平気ね」

「報連相ができて、偉いわね~! 今日子ちゃんって言うのね? 今日子ちゃんにもお菓子あげるわね」ナデナデ

今日子「ほんと!? わーい!」バンザーイ

歩夢「!!」

歩夢(些細な事だけど、直接褒めてあげてる。そっか、確かに偉いもんね)

歩夢(あぁいう細かい所まで見てあげて、言葉にしてあげるのが大事なんだ)

歩夢(勉強になる。次回こういう機会があったら、やってみよう)

101:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:31:24.23 ID:iy3KQsAed
「なら歩夢ちゃん。今日子ちゃんの迎えが来るまで──」

歩夢「はい、一緒にいます」コクリ

「ふふっ、さすがね。よろしくね~」

歩夢「はいっ」

「それじゃ、またね~」

スタスタスタスタ

今日子「ばいばーい! お菓子、ありがとうー!」

歩夢「……今日子ちゃん」

今日子「んー?」

歩夢「ちゃんとお礼が言えて、偉いね」ナデナデ

今日子「!! ──うん!」ニコッ

歩夢(か、かわいい……!!)

歩夢「えと……今日子ちゃんのお姉さんが来るまで、遊んで待ってよっか」

今日子「うん!」

今日子「砂場でおしろ作ろ!」

歩夢「うんっ」

102:>>1(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:37:46.29 ID:iy3KQsAed
今日子「おっしろ! おしろ!」ペタ、ペタ

歩夢「何か作るの、好きなの?」

今日子「うん!」

歩夢「そっか」ニコッ

今日子「えへへ~」

歩夢「ん? どうしたの?」

今日子「あゆむちゃん、お姉ちゃんと一緒でやさしくてすき!」

歩夢「あ、あははは~……照れる」ニコニコ

歩夢(に、ニヤケちゃう~!!)

歩夢(なに、この可愛い子)

歩夢(天使だよ)

歩夢「今日子ちゃんのお姉さん、優しいの?」

今日子「うん! すっごくやさしい!」

今日子「えっと、血はつながってないけど、本当のお姉ちゃんみたいで、大好き!」

歩夢(血は繋がってないけど? 複雑な家庭なのかな?)

今日子「でもね、お姉ちゃん」

今日子「ときどき、すごくさみしそうな表情のときがあるの」

今日子「しゅーんって、落ち込んでるんだ~」

歩夢「……そうなんだ」

歩夢(色々あるのかも、しれないね)

103:続きは夜更新します。(茸) (スプッッ Sd1f-8We8) 2021/08/26(木) 09:50:10.64 ID:4QtPXfPUd
「今日子~? 今日子ー」


今日子「あっ! お姉ちゃん!」

歩夢(あ、お姉さん来たみたい)


──振り返る。そこにいたのは、懐かしい人。


「へ?」

歩夢「──え?」

今日子「んー?」


──名前も覚えていない人。


■■「う、上原……さん?」


──あの人が、目の前にいた。

104: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 21:40:48.44 ID:We8d0BNC0
■■『──あぁ! あなた……あれか!』

■■『お父さんいない子でしょ?』



■■『お父さんがいないかわいそーな上原さんと仲良くしてあげるよ!』





歩夢「…………」

歩夢(もしかして……この人が)

歩夢(今日子ちゃんのお姉さん?)

今日子「え? お姉ちゃん! あゆむちゃんのこと知ってるの!?」

歩夢「……(やっぱり、そうなんだ)」

今日子「もしかして、トモダチ!?」

■■「……え、えっと……」

歩夢「友達じゃないよ」

今日子「え?」

歩夢「その人とは──友達じゃない」ニコッ

今日子「そ、そーなの?」

歩夢「うん」

■■「…………」

105: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 21:48:32.62 ID:We8d0BNC0
■■「あ、あの! 上原さん……」

歩夢「……………………なに?」

■■「その……えっと……」

歩夢「今日子ちゃんとここにいたのはね、ボランティア活動で出会って友達になったからだよ」

■■「え?」

歩夢「本当に、たまたま一緒にいただけ。別に怪しい事も何もしてないよ」

■■「べ、別にそんなこと聞いてないし、怪しんでもないわよ!」

歩夢「ふーん。そう」

■■「……」

歩夢「……」

今日子「え? へ!?」キョロ、キョロ

106: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 21:59:32.74 ID:We8d0BNC0
今日子「お、お姉ちゃんとあゆむちゃん……? どうしたの……?」

歩夢「……ごめんね、今日子ちゃん」

歩夢「なんでもないよ」ニコッ

今日子「う、うん……」

歩夢「…………」

歩夢(帰ろう。ここにいても、今日子ちゃんに気を使わせちゃう)

歩夢「それじゃわたし、帰るね」

今日子「え?」

■■「──ま、待って!」

歩夢「!?」

■■「す、少し……話したいことがあるの。だから、時間をちょうだい」

歩夢「…………」

歩夢(わたしは別に、話したいことなんか何もない)

■■「お願い……」

歩夢「…………」

今日子「お、お姉ちゃん……?」

歩夢(この人が、何を考えてるのか分からない)

歩夢(今更、わたしと何を話す事があるんだろう)

歩夢(新手の、嫌がらせかな?)

歩夢「…………」

歩夢(ダメだ。やっぱりわたし、ひねくれてる)

歩夢(変わらないと、ダメだ)

歩夢「……少しだけなら」

歩夢「いいよ」

108: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 22:17:05.92 ID:We8d0BNC0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

今日子「お姉ちゃ~ん! でっかいおしろ作るから見ててね~」


■■「ここのブランコのとこから見てるよ~」


今日子「うんー! あゆむちゃんも~!!」


歩夢「手、ケガしないようにね~」フリフリ


今日子「うん!」ニコニコ


■■「……」

歩夢「それで?」

歩夢「話したいことって、なに?」

■■「……あの子、さ」

■■「私の本当の妹じゃないんだ」

歩夢「……さっき、今日子ちゃんから聞いたよ」

歩夢「血は繋がってないけど、本当のお姉ちゃんみたいで大好きだってさ」

■■「……そう、なんだ」

109: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 22:26:06.45 ID:We8d0BNC0
■■「私の家、親が厳しかったの」

■■「パパが主体で、ママと一緒に色々厳しく見られてたんだよね」



■■『わ、私の家……親が厳しいから……こ、こんな事バレたら』



歩夢「…………」

歩夢(そんな事、言ってた気がする)

■■「でも、パパの浮気が原因で、離婚したの」

歩夢「え?」

■■「もう再婚したんだけど、今のお父さんがバツイチ子持ちの方でね。その子供が」

歩夢「今日子ちゃん、だったんだね」

■■「……うん」

歩夢「…………」

110: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 22:36:22.66 ID:We8d0BNC0
■■「今のお父さんとママはね、元々幼馴染だったんだって」

■■「小さい頃……将来、結婚しようって誓い合った仲だったみたいだけど……現実はそうならずお互いに別の道を歩んで、違う人と結婚したみたい」

■■「けど、2人とも上手くいかなかった」

■■「そして、また再会して、2人で結婚した」

■■「私と今日子は……血は繋がってないけど、姉妹になった」

■■「……運命の進み方が違っていたら、別の私や今日子が産まれてたかもしれないよね」

歩夢「……主題が見えてこないよ」

歩夢「つまり、あなたは何をわたしと話したかったの?」

■■「……その……えっと、ね……」

■■「私にも……父がいない時期が……あった」

歩夢「!!」

111: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 22:50:55.61 ID:We8d0BNC0
■■「別に、その事でイジメられたりとかはなかった」

■■「けど、ふとした時に思っちゃったの」

■■「私が今まで、してきた行動や」

■■「あなたに対して、お父さんがいないって可哀想な人って言っちゃった事とか」

■■「……五十嵐さんを……いじめた事とか」

■■「とんでもない事を、やってしまったんだって」

歩夢「…………」

■■「すごく、後悔した」

■■「なんであんなこと、してたんだろうって思ってた……」

歩夢「…………」

■■「上原さん」

歩夢「…………」

■■「今の私の行動とか言動は、本当に自分勝手なものだと思う。ただの自己満足だとも思う」

■■「許してとも、言わないけど……聞いてほしい」

■■「本当に、今まで」

■■「ごめんなさい」

112: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 22:58:30.50 ID:We8d0BNC0
歩夢(深々と、頭を下げ)

歩夢(謝罪される)

歩夢「…………」

歩夢(何、言えばいいんだろう)

歩夢「…………」

歩夢(分からない)

歩夢(この時、あの子なら……なんて答えるんだろ?)



歩夢『あなたの身体は、私の身体じゃない』

歩夢『だからあなたのやりたい事をすぐにするべきだよ』



歩夢「!!」ハッ

歩夢(そうだ……この事にあの子は関わっていない)

歩夢(これは、わたしの過去との向き合いだ。あの子なら、とかじゃなくて)

歩夢(自分で、決めないといけない)

歩夢(あの子はわたしの憧れで、理想のような子だけれど)

歩夢(──わたし自身じゃ、ないもんね)

114: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 23:27:13.03 ID:We8d0BNC0
歩夢「ねぇ」

歩夢「聞いていい?」

■■「うん……」

歩夢「なんで、最初にわたしに目を付けたの?」

■■「……いじめの対象にって事?」

歩夢「それ以外にある?」

■■「……誰でも、良かったのよ」

■■「親が厳しくて、上手くいかなくて、むしゃくしゃしてた。八つ当たりしようってことしか、考えてなかった」

■■「そして……大人しそうな上原さんが同じクラスにいて……その……」

歩夢「……」

歩夢「まぁ、わたしが直接いじめられたのは一瞬だけだったけれどね」

■■「……本当に、ごめんなさい……」

歩夢「わたしね」

■■「?」

115: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 23:36:21.35 ID:We8d0BNC0
歩夢「人の行動には、必ず意味があると思うんだ」

■■「意味……?」

歩夢「どんなにバカに見える行動でも、その人なりの正義があると思ってる」

■■「……」

歩夢「わたしは、あなたの行動を許さないよ」

歩夢「だって、わたしの大切な子をいじめたんだもん」

歩夢「絶対に、許さない」

■■「……うん……」

歩夢「ただ、ね。あの時の自分自身の行動も許してないの」

■■「え?」

歩夢「あなたの行動に正面から反撃するべきだった。若葉ちゃんの様子を見て、異変に気付くべきだった。優しく声を掛けてくれた子に対して、お礼を言うべきだった」

歩夢「後悔は……沢山ある」

116: (しまむら) (ワッチョイ 7f28-8We8) 2021/08/26(木) 23:56:39.13 ID:We8d0BNC0
歩夢「そして、あなたも自分の行動に後悔してる」

■■「……うん」

歩夢「許しはしないけど、それが知れただけでも……気持ちが変わるよ」

歩夢「勇気を出して謝ってくれて、ありがとう」

■■「……っ……!」

歩夢「あっ、絶対に泣かないで?」ニコッ

■■「へ?」

歩夢「好きじゃない人に目の前で泣かれても、対応がめんどくさいから」

■■「」

歩夢「それに、わたしじゃなくて若葉ちゃんに謝るべきだと思うんだよね」

■■「も、もちろん五十嵐さんにも謝りたいわよ!」

歩夢「でも、あなたと若葉ちゃんに会ってほしくもない」

■■「え、えぇ!?」

■■「どうしてよ!」

歩夢「だって、わたしと若葉ちゃんはもうあの時の事は乗り越えて、前を向いてるもん」

歩夢「謝ってくれるのは嬉しいけれど、あの時の事を思い出しちゃうし、今更別にって感じだし」

■■「……」ポカーン

歩夢「つまり、そういう事」

歩夢「わたしと若葉ちゃんは前を向いて歩いてるから」

歩夢「あなたも同じように、前を向いて歩けばいいよ」

歩夢「ね?」

■■「上原さん……」

118: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 00:07:52.01 ID:LMcLfVtE0
歩夢「だから、この話はおしまい」

歩夢「それで、良いでしょ?」

■■「……えぇ」

■■「上原さんがそう言うなら、それでいいよ」

歩夢「うん。もう、おしまい」

歩夢「謝られても、別にわたしのあなたへの好感度が変わる訳じゃない。改めて友達になろうとも思わない」

■■「うん」

歩夢「あの時の事も、許さない」

歩夢「だから、これからは今日子ちゃんと楽しく過ごして」

■■「うん。分かった」

歩夢「あっ、ただね」

歩夢「あなたから狂ってるって言われたのはすっごくムカムカしてるから、ビンタしていい?」ニコッ

■■「笑顔で頼む事!?」

歩夢「前までのわたしなら、あなたと再開した瞬間殴ってたと思う」

■■「こ、怖い事言わないでよ……あと、あの時の発言も本当にごめんなさい。狂ってたのは私だったのに……」

歩夢「ほとんど冗談だよ」

■■「なっ!? どっからどこまで!? ──なんなの!?」

歩夢「ふふふっ」クスクス

■■「何笑ってるのよ……」

119: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 00:20:40.00 ID:LMcLfVtE0
今日子「お姉ちゃんとあゆむちゃん! 仲直りしたの!?」ヒョコッ

■■「!?」ビクッ

歩夢「!?」ビクッ

■■「きょ、今日子? 急にどうしたの?」

今日子「お姉ちゃんとあゆむちゃん、なんか色々あったみたいだから」

歩夢「……」

歩夢(気付かれてたんだ。この人とわたしのギスギスした感じ)

歩夢(6歳なのに、すごいなぁ)

歩夢「ちっちゃい子は、よく周りを見てるもんだね」ナデナデ

■■「……そうね」

今日子「えへへ~」ニコニコ

歩夢「じゃ、わたし帰るね」

今日子「えー!? もう帰っちゃうの?」

歩夢「ごめんね、今日子ちゃん」

歩夢「またボランティア活動のお手伝いするし、学童にも遊びに行くから」

今日子「ほんと!? わーい!」バンザーイ

歩夢(なんか、喜び方が果林さんみたい)ニコニコ

歩夢「かわいいねぇ~」

歩夢「このお姉さんに何かされたら、わたしに教えてね?」

今日子「へ?」

■■「何もしないわよ!!」

■■「今日子は天使なんだから!! お嫁さんに行くまでは私が守るんだから!!」

歩夢「うわぁ……」

■■「なにドン引きしてるのよ」

■■「あなたの五十嵐さんへの発言もあんま変わらないからね!?」

121: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 00:37:27.76 ID:LMcLfVtE0
歩夢「それじゃ、そろそろ帰るね」

■■「……時間作ってくれて、ありがとうね」

歩夢「本当は嫌だったけどね」

■■「一々噛み付いてくるわね……」

歩夢「狂犬って呼ばれていましたので」

■■「なによそれ」

歩夢「わたしにも正直よく分かんない」

■■「???」

歩夢「それじゃ、ばいばい」

■■「……うん。バイバイ」

歩夢「今日子ちゃんは、また今度ね」

今日子「うん! ばいばいあゆむちゃん」ニコッ

歩夢「うんっ」ニコッ

スタスタスタスタ

■■「…………」

今日子「またねー!」ニコニコ

123: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 00:53:26.88 ID:LMcLfVtE0
■■「今日子。上原さん、優しかった?」

今日子「うん! すっごくやさしかった!」

今日子「話す子がいなくてきんちょーしたし不安だったんだけど、あゆむちゃんが話しかけてくれてね」

今日子「おかげでバザー、たのしかった!」

■■「そっか」

■■「……そっか……」

今日子「お、お姉ちゃん?」

■■「……うぅ……ぐす……」ポロポロ

今日子「お、お姉ちゃん!? どーしたの!? どっか痛いの!?」

■■「ううん。違う……っ……」

■■「あんな優しい子に、私……酷いのことしちゃってたって思うと……ほんと、後悔しちゃって…っ…」ポロポロ

今日子「お姉ちゃん……」

■■「……今日子……」ギュッ

■■「お姉ちゃん、もう……間違わないから……!」ポロポロ

今日子「お、お姉ちゃん。泣かないで?」

今日子「──未来お姉ちゃん」

124: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 01:04:12.28 ID:LMcLfVtE0
───────────

8月25日

今日は色々と疲れる日だった。ボランティア活動、中々上手くいかず大変だった。

あの子のすごさを再認識しました。

けれど、可愛いお友達ができた。名前は今日子ちゃん。サイドテールが似合う天使だった。

まぁ、お姉さんがあの人だったのは意外だったけれど……。

名前も覚えていない、あの人。結局、名前聞けてないや。

でも、別にそれでいい。わたし達は別に友達じゃないから。

これでいいんだ。これで。

明日は、久しぶりの練習だ。みんながどんなスクールアイドルを目指しているのか、聞いてみよう。

あと、愛とエマさんに言わなきゃいけない事もあるから、早く明日になってほしいなぁ~。

よし。今日も早めに寝ます。

おやすみなさい。

───────────

125: (しまむら) (ワッチョイ 8228-CGIZ) 2021/08/27(金) 01:04:57.00 ID:LMcLfVtE0
つづく。
次回は3年生との交流編。

163: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:16:23.79 ID:ULhpCtpFd
歩夢「おはようございます」


翌日、虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会に顔を出す。

本日も夏休み。久しぶりの練習な気がする。


歩夢(今日も頑張ろう)


そんな事を思いながら部室に入ると──


果林「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」

果林「終わらないよ゛ぉー!!」

かすみ「嘆いたって仕方ないじゃないですか!」

せつ菜「そうです! ファイトです! 果林さん!」


歩夢「」


混沌としていた。

164: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:19:30.45 ID:ULhpCtpFd
しずく「あっ、おはよう。歩夢さん」

璃奈「おはよー」

歩夢「うん。おはよう。……これ、どういう状況なの…?」

彼方「おはよ~歩夢ちゃん」

エマ「おはよう、歩夢ちゃん。実はね……」





歩夢「へ?」

歩夢「夏休みの宿題が、終わらない……?」

果林「はい……」

かすみ「どうやら1つも手をつけていなかったみたいです。今日は8月26日。もう夏休みも残り少ないのに」

せつ菜「先程、皆さん宿題は終わってますか? という話題になって発覚したんです」

歩夢「そうなんだ……」

果林「うぅ……夏休み、楽しくって……ついつい忘れちゃってたよぉ……」

かすみ「泣いたって宿題は終わりませんよ? 早く手を動かしてください」

果林「わがっでるよぉ~!!」グスグス

歩夢(号泣してる…)

165: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:23:48.04 ID:ULhpCtpFd
せつ菜「流石に、今日は果林さんはスクールアイドルの練習に参加できそうにないですね」

果林「え!?」

かすみ「何驚いてるんですか? 当然ですよ」

かすみ「学生の本分を忘れてはいけませんよ?」

果林「うぅ……」シク、シク

果林「わたしのばかぁ……!」

歩夢(ちっちゃい頃、若葉ちゃんも同じ感じで泣いてたの思い出すなぁ)

166: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:30:37.69 ID:ULhpCtpFd
歩夢「果林さん」

歩夢「わたしに何か手伝える事ないですか?」

果林「え!? いいの!?」

歩夢「だってこのままだと果林さん、中々練習に参加出来なくなっちゃいそうじゃないですか。そんなの可哀想」

果林「あ、歩夢ちゃん…!!」

かすみ「えぇ!? ……それってありなんですか? 生徒会長」

せつ菜「いや、ダメですね。宿題は本来自分でやるものです」

果林「うっ……」

せつ菜「でも、歩夢さんの好意を無駄にするのも、このまま練習出来ず宿題漬けになるのも可哀想です。学生の本分は勿論勉強ですが、運動も楽しむ事も含まれます。楽しい学生生活とは、大人になったら中々出来ないことをする事です」

せつ菜「学力向上に関わる宿題以外のお手伝いなら、私は見ないことにします!」ペカー

しずく「甘々だ……」

璃奈「柔軟な発想」

167: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:34:44.17 ID:ULhpCtpFd
エマ「なら、わたしもお手伝いするよ~!」

彼方「私も!」

果林「え!? いいの!?」

エマ「人数は多いに越したことはないもん」

彼方「そうそう。それに、行き詰まった所があれば教えられるし、私自身の復習にもなるし」

果林「ふ、二人とも……!」

かすみ「…………全く、皆さん甘すぎます」

かすみ「果林先輩」

果林「はい…」

かすみ「皆さんの練習の時間を割いてもらっている自覚は持たなきゃいけませんよ?」

果林「うん……」

かすみ「というわけで、これあげます」スッ

果林「え? これ、ラムネ?」

かすみ「はい。疲れてきたらこれでぶどう糖補充してください」

かすみ「早く手を動かして、さっさと練習に戻ってきてください」

果林「か、かすみちゃん……! どーもよい!!」

かすみ「はいはい…」プイッ

168: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:37:24.73 ID:ULhpCtpFd
歩夢「よかったですね! 果林さんっ」

果林「うん!」

果林「そういえば皆は宿題終わってるの~?」

歩夢「終わってます」

しずく「あたしも」

璃奈「夏休み2日目には終わってた」

せつ菜「横に同じです」

かすみ「あと少しで終わります」

果林「みんな偉すぎ……」

169: (茸) (スップ Sdff-P9G8) 2021/09/09(木) 09:40:16.24 ID:ULhpCtpFd
歩夢「あれ?」

歩夢「そういえば愛は?」

せつ菜「愛さんは本日お休みです」

かすみ「何か予定があるみたいです」

歩夢「あっ、そうなんだ……」

歩夢(愛とエマさんに伝えたい事があったけど)

歩夢(まぁ、仕方ないか)


エマ「よーし、果林ちゃん! がんばろー!」


歩夢(ちょうどエマさんと話せそうだし)

歩夢(タイミング見て、伝えよう)

176: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:11:50.42 ID:9gwXATTsd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

彼方「果林ちゃん。そこはここの数式を使えば簡単に解けるよ。その数字をこのXに当てはめてみて?」

果林「わかった!」

エマ「英語の課題、教科書まるまる書き写すって内容だけど……ほんとにあってる?」

果林「あってるよー」

エマ「そ、そうなんだ……」

彼方「ライフデザイン学科の課題って、わりとテキトーなの多いんだよね~」

エマ「なら、わたしはこれをやるねー」

果林「ありがと、エマ!」

歩夢「…………」

歩夢(テキパキと進んでく)

歩夢(すごいなぁ)

歩夢(でも、中々エマさんと話すタイミングがないや…)ジー

177: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:21:48.87 ID:9gwXATTsd
エマ「ん? 歩夢ちゃん? どうしたの?」

歩夢「へ?」

エマ「疲れてきたら、休んでても大丈夫だよ?」

果林「うぅ……ごめんね、歩夢ちゃん~……!」

歩夢「い、いえ! 果林さん、大丈夫ですよ?」

歩夢「えっと……その……」

彼方「悩み事~?」

歩夢「いや、悩み事ってわけでもないんですけれど……」

歩夢「そ、その!」

歩夢「果林さんって、1年生や2年生の時って、どんな風に過ごしていたんですか!?」

果林「へ?」

歩夢(うっ……咄嗟に誤魔化しちゃった……)

178: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:24:43.60 ID:9gwXATTsd
果林「わたし、2年生までは八丈島の学校にいたよ~」

歩夢「え?」

果林「わたし、交換留学生なの」

果林「3年生になってから虹ヶ咲学園に来たんだよ~」

歩夢「え、えぇ!?」

歩夢「八丈島って、外国なんですか!?」

果林「ちがうよ!?」

彼方「そっか、皆知らないかも」

エマ「わたしも果林ちゃんに聞くまでは知らなかったもん」

果林「あっ、そっか! なら歩夢ちゃんにも教えてあげるね!」

179: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:27:28.73 ID:9gwXATTsd
果林「歩夢ちゃん。八丈島って、何県だと思う?」

歩夢「け、県?」

果林「うん!」

歩夢「えっと……島っていうくらいだし……四国のどっかかな……?」

果林「ちょっと意地悪な問題にしちゃった。かんべんよ~?」

果林「実はね、東京都なの!」

歩夢「そ、そうなんですか!?」

果林「うん!」

180: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:31:35.32 ID:9gwXATTsd
果林「その八丈島にね、虹ヶ咲学園の分校があるんだ」

果林「2年生まではその分校で過ごしてたんだけど、学校で一年間生徒を交換して留学生として虹ヶ咲学園で勉強ができる制度があってね」

果林「わたしはそれを受けてここに来たんだよっ」

歩夢「知らなかった……」

彼方「方言学とかを学んでる子もいるからね。結構八丈島の方に行きたがる子も多いんだよね」

果林「逆に島からは東京へ来たがる子が全然いないから、わたしはぽんぽんって話が進んじゃった」

エマ「虹ヶ咲学園って自由な校風がウリで、色々な場所から生徒を集めたいって思ってるみたいでね。わたしもスイスの学校から交換留学生としてここに来たんだよ~」

歩夢「虹ヶ咲学園って結構すごい所なんですね……」

彼方「校舎の大きさからして普通じゃないもんね~」

181: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/10(金) 08:38:45.27 ID:9gwXATTsd
果林「八丈島の学校と比べると虹ヶ咲学園は勉強する事が多くて大変だよぉ……」

果林「──あっ! でもね!」

果林「大好きなみんながいるから、毎日楽しいよ!」

エマ「えへへ~! わたしも!」

彼方「照れますなぁ~」

果林「よぉし! いい感じにリラックスできたから、続きもがんばるよ~」

果林「みんな、本当にありがとうね! よろしくお願いします!」

彼方「うんっ」

エマ「早く終わらせて、練習しよ~!」

歩夢「はいっ」

歩夢「……」

歩夢(まだまだ知らないのとばかりだ)

歩夢(もっと、皆の事知りたいなぁ)




187: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/12(日) 10:07:32.43 ID:kh6Gu9wj0
>>181 誤字修正


果林「八丈島の学校と比べると虹ヶ咲学園は勉強する事が多くて大変だよぉ……」

果林「──あっ! でもね!」

果林「大好きなみんながいるから、毎日楽しいよ!」

エマ「えへへ~! わたしも!」

彼方「照れますなぁ~」

果林「よぉし! いい感じにリラックスできたから、続きもがんばるよ~」

果林「みんな、本当にありがとうね! よろしくお願いします!」

彼方「うんっ」

エマ「早く終わらせて、練習しよ~!」

歩夢「はいっ」

歩夢「……」

歩夢(まだまだ知らない事ばかりだ)

歩夢(もっと、皆の事知りたいなぁ)




188: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/12(日) 10:52:52.37 ID:QvpMKIB0d
果林「やったら~!」

果林「ありがとう! みんなのおかげで大体終わったよ、宿題っ」

エマ「よかったね、果林ちゃん!」

彼方「4人で進めるとやっぱり早かったね~」

エマ「午後の練習には参加できそうだね」

果林「本当にみんなのおかげだよ! このお礼は必ずするから!」

彼方「いいってことよ~」

歩夢「果林さん、お疲れ様でした!」

果林「歩夢ちゃん~……! 本当にありがとうね!」ギュッ

歩夢「いえいえ」ニコッ

歩夢「……」

歩夢(結局エマさんとあんまり話出来なかった……)

エマ「歩夢ちゃん」

エマ「なにかわたしとお話したい事でもあった?」

歩夢「へ?」

189: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/12(日) 10:56:46.58 ID:QvpMKIB0d
エマ「さっきもわたしの事、じぃ~って見つめてたし、そんな感じがしてね。あっ! 勘違いだったらごめんね?」

歩夢「えっと……」

エマ「言いにくいこと?」

歩夢「そ、そんなことはないです!」

果林「ん~?」パッ

彼方「何か相談? 私達で良かったら、お話聞くよ~?」

果林「悩み事? なんでも話聞くよ~!」

歩夢(あれ!? 何か余計な心配かけちゃってる気がする!)

歩夢「えっと……その!」

歩夢(もう、ここで伝えよう)

歩夢「エマさん!」

歩夢「ごめんなさい!」

エマ「え!?」

190: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/12(日) 11:03:33.86 ID:QvpMKIB0d
彼方「え? 何かあったの?」

エマ「ううん。謝られるようなことは何もないと思う」

歩夢「エマさん。違うんです」

エマ「ん~?」

歩夢「あの時の事です……」

エマ「あの時……?」

歩夢「……わたしが……エマさんに殴りかかってしまった時の事です……」

果林「な、殴りかかって!?」

彼方「???」

エマ「あっ! あの時の事?」

エマ「わたしと歩夢ちゃんが、初めて顔を合わせた時の事だよね?」

歩夢「はい」コクリ

192: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/12(日) 11:13:14.61 ID:eyJUPz4xd
歩夢「本当に……ごめんなさい。あの時は大事にならなかったけど……もしエマさんが防げていなかったら……」

エマ「だ、大丈夫だよ!? 何もなかったし」

エマ「それに、あの時は歩夢ちゃん、色々あったんでしょ? あの子から聞いたもん」

歩夢「…………」

エマ「だから、全然大丈夫だよ?」

エマ「でも、なんで急にその時の事を謝ってくれたの?」

歩夢「……実は昨日、小学生の頃の同級生と会ったんです」

歩夢「その時に、その子から昔の事を謝られて……わたしもよくよく考えたら、エマさんにも愛にもひどいことしちゃってたなって思って」

歩夢「謝らなきゃって、思ったんです。今更かもしれませんが……」

歩夢「本当に、ごめんなさい」ペコリ

193: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/12(日) 11:35:16.98 ID:eyJUPz4xd
エマ「歩夢ちゃん」

エマ「顔を上げて?」

歩夢「……」スッ

エマ「謝らなきゃって思ってくれたのは嬉しいよ? けど、本当に大丈夫だよ」

歩夢「で、でも!」

エマ「歩夢ちゃん。わたしが大丈夫って言ってるんだから、歩夢ちゃんが罪悪感を覚える必要は無いよ!」

歩夢「エマさん……」

彼方「なんか、色々あったみたいだね」

歩夢「……はい……」

彼方「そんな事があった事、知らなかったんだけど」

彼方「ある時に歩夢ちゃんはエマちゃんをぶとうとしちゃったって事だよね? それに対して、歩夢ちゃんは申し訳なくなっちゃって今謝ったって感じだよね?」

歩夢「はい…」

彼方「なるほど~」

歩夢「本当にごめんなさい……」

エマ「あ、歩夢ちゃん! 本当に大丈夫だから……」

彼方「ふむふむ。これは部長として見過ごせませんなぁ~」

歩夢「!!」

果林「へ? 彼方?」

彼方「歩夢ちゃん」

歩夢「はい」

彼方「あなたには今から罰を与えます」

エマ「か、彼方ちゃん!?」

歩夢「はい。なんでも言ってください」

彼方「じゃあ」

彼方「──午後の練習、彼方ちゃん達3年生ズと一緒に練習して?」

彼方「このまま4人で練習しよう。それが、罰ゲームですっ」ニコッ

歩夢「……え?」




199: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 08:55:27.51 ID:w/eHe8FKd
彼方「いいよー、歩夢ちゃん~。その体勢のまま、あーって声を出して伸ばして~」

歩夢「こ、このままでですか!?」プルプル

彼方「そうだよ?」

彼方「ほらほら、ファイト~」ニコニコ

彼方「2人も大丈夫そう?」

果林「無理!」プルプル

彼方「おーい、3年生~」

エマ「わたしはいけるよっ」

彼方「さすがエマちゃん! じゃあ、いけいけゴー」グッ

歩夢「あ、ぁ……!」プルプル

歩夢(ウエイトトレーニングしながら、今の体勢をキープしながら声出し……!?)

歩夢(き、キツい……!!)

歩夢(で、でもやらなきゃ!)

201: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:08:42.99 ID:w/eHe8FKd
>>199 誤字修正

彼方「いいよー、歩夢ちゃん~。その体勢のまま、あーって声を出して伸ばして~」

歩夢「こ、このままでですか!?」プルプル

彼方「そうだよ?」

彼方「ほらほら、ファイト~」ニコニコ

彼方「2人も大丈夫そう?」

果林「無理!」プルプル

彼方「おーい、3年生~」

エマ「わたしはいけるよっ」

彼方「さすがエマちゃん! じゃあ、いけいけゴー」グッ

歩夢「あ、ぁ……!」プルプル

歩夢(自重トレーニングしながら、この今の体勢をキープしながら声出し……!?)

歩夢(き、キツい……!!)

歩夢(で、でもやらなきゃ!)

200: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:01:22.18 ID:w/eHe8FKd
歩夢「あ、あ゛ーーーーーー!!」プルプル

彼方「おぉ! いいよー! 元気いっぱいだー!」

果林「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁあ゛あ゛!!」プルプル

彼方「呪詛かな?」

果林「ちがうもん!!」プルプル

彼方「よーし、それじゃあ綺麗な声を意識して、そのまま発声して? ビブラート効かせたらなおよし!」

歩夢「!?」
果林「!?」

エマ「わかったー!」

エマ「はぁ───────♪」

彼方「おぉー! すっごい綺麗な声!」

彼方「エマちゃん流石だね~」ニコニコ

エマ「えへへ~」ニコニコ

202: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:11:10.17 ID:w/eHe8FKd
>>200 誤字修正

歩夢「あ、あ゛ーーーーーー!!」プル、プル

彼方「おぉ! いいよー! 元気いっぱいだー!」

果林「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁあ゛あ゛!!」プルプル

彼方「呪詛かな?」

果林「ちがうもん!!」プルプル

彼方「よーし、それじゃあ綺麗な声を意識して、そのまま発声して? ビブラートを利かせられたらなおよし!」

歩夢「!?」
果林「!?」

エマ「わかったー!」

エマ「はぁ───────♪」

彼方「おぉー! すっごい綺麗な声!」

彼方「エマちゃん流石だね~」ニコニコ

エマ「えへへ~」ニコニコ

203: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:13:50.21 ID:w/eHe8FKd
彼方「はい、じゃあ一旦休憩。楽にしていいよ?」

歩夢「つ、疲れた……」

果林「ぽんぽん痛い……」

エマ「楽しかった~」ニコッ

彼方「うんうん。みんなお疲れ様~」

彼方「歩夢ちゃん、どうだった? 難しかった?」

歩夢「声出しがですか?」

彼方「うん」

歩夢「そうですね……トレーニング自体はよくやっているので、そんなに辛くはなかったのですが」

歩夢「そのまま声出しするとなると大変でした……」

果林「めっちゃ身体ぷるぷるした!」

彼方「だよね~」

彼方「じゃあ歩夢ちゃん。なんでこの発声練習をしたと思う?」

204: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:24:28.30 ID:w/eHe8FKd
歩夢「え? うーん……」

歩夢「綺麗な声を出せるようにするためですか?」

彼方「それは半分正解かな」

エマ「あれかな? どんな体勢でも安定して綺麗な声を出せるようにする為かな?」

彼方「そうそう!」

彼方「アイドルって、動きながら歌う事は勿論あるけれど、パフォーマンスの中で色んな体勢のまま歌う必要があるの」

彼方「寝転がりながらだったり、少しでもお客様達の近くで歌うように、柵から身体を出して、前のめりになりながら歌うって事もあるし」

彼方「どんな体勢でも、安定して綺麗な声を出す為の練習でした~」

歩夢「完璧に出来るようになるまで時間かかりそうです……」

205: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:29:07.87 ID:w/eHe8FKd
果林「意図はわかったし、意味もわかったけどさ~」

果林「もっと身体動かしたい!」スタッ

果林「ダンス練習しよーよ!」

彼方「おぉ、いいね~」

エマ「やろやろ!」

歩夢「わ、分かりました!」

彼方「ふっふー……歩夢ちゃ~ん?」

彼方「私達の練習、いっぱい付き合ってもらうからね~」

彼方「これは罰ゲームなんだから」ニコッ

エマ「がんばろーね! 歩夢ちゃんっ」

歩夢「は、はい……」

歩夢(罰ゲーム……これで良いのかな……?)




206: (茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:38:11.27 ID:w/eHe8FKd
エマ「みんな、お疲れ様~!」

彼方「いやぁ、エマちゃんの考えた練習楽しかったね」

果林「うん!」

歩夢「はぁ……はぁ……」

歩夢(つ、疲れた!)

歩夢(皆のやりたい練習を全部やったけれど、各々やりたい事がバラバラだから)

歩夢(色々な事やって、疲れた……)

歩夢(エマさん達はまだまだ余裕そうだ。わたしも体力は結構あるはずなのに……やっぱり先輩ってすごいなぁ)

彼方「歩夢ちゃん、最後までお疲れ様~」

歩夢「は、はい」

彼方「疲れた?」

歩夢「はい……」

彼方「ふふっ、なら罰ゲーム成立だね! お疲れ様でしたっ」

歩夢「…………」

彼方「ん? 歩夢ちゃん?」

歩夢「これで……いいんでしょうか?」

彼方「え?」

歩夢「罰ゲームって、もっと厳しくするはずだと思うんですけれど……」

207:昨日は寝落ちしました。申し訳ございませんでした! 続きはまた今度更新します!(茸) (スッップ Sd0a-BDcg) 2021/09/13(月) 09:50:20.46 ID:w/eHe8FKd
彼方「うーん……」

彼方「エマちゃん」

エマ「へ?」

彼方「エマちゃんはさ、歩夢ちゃんにどうしてもらいたい?」

エマ「わ、わたし!?」

彼方「うん」

彼方「歩夢ちゃん、真面目さんだからさ」

彼方「多分、エマちゃんがどうしてもらいたいかを正面から伝えてあげた方がいいかもしれない」

歩夢「……」

エマ「そっか……そうだね!」

エマ「歩夢ちゃん!」

エマ「わたしはね」

エマ「歩夢ちゃんに、笑っていてほしいの!」

歩夢「え?」

歩夢「笑ってほしい……?」

エマ「うん!」

211: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/13(月) 23:48:51.95 ID:s/kbu4/l0
エマ「さっきも言ったけれど、歩夢ちゃんが謝ろうって思ってくれたのは本当に嬉しい」

エマ「けどね、歩夢ちゃん」

エマ「大事なのは、今だよ」

歩夢「!!」

エマ「あの時の歩夢ちゃんは、色々あって大変な時期だった」

エマ「だから、ああいう事をしちゃったのも仕方がない事だとわたしは思う」

歩夢「……」

エマ「罪悪感がある気持ちも、勿論分かってる。けど!」

エマ「その気持ちに飲み込まれてちゃ、意味もないよ」

歩夢「……」

エマ「だから、だからね」

エマ「歩夢ちゃん。暗くならないで?」

エマ「もっと笑って?」

エマ「わたしと一緒に、沢山思い出を作ろうよ」

歩夢「思い出を……」

エマ「うん!」

エマ「楽しい思い出、沢山!」

歩夢「エマさん……」

212: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 00:02:23.09 ID:GjHLpUx80
彼方「そうだよ、歩夢ちゃん」

彼方「大事なのは、今だよ」

果林「うんうん。歩夢ちゃんは反省してるんだし、エマもこう言ってるんだから」

果林「少しくらい、自分にやさしくしても良いと思う!」

歩夢「自分に、優しく……?」

彼方「そーそー」

彼方「それにね、歩夢ちゃん」

彼方「私達3年生とこうして過ごせる時間も、あと半年もないんだよ」

彼方「私達は、卒業しちゃうから」

歩夢「あっ……」

エマ「そうだよ歩夢ちゃん。だからこそ」

エマ「過去への贖罪を求めるんじゃなくて、楽しい今の日々を求めてほしい」

歩夢「っ……!」

歩夢「本当に皆さん……優しいですね……」

果林「歩夢ちゃんもだよっ」

エマ「歩夢ちゃんは、これからどうしていきたい?」

歩夢「……わたしも!」

歩夢「楽しい今を、過ごしていきたいです」

歩夢「こんな幸せな今の日々を築きあげてくれた、あの子の為にも。若葉ちゃんの為にも。そして、皆さんの為にも!」

歩夢「それが今のわたしにできる恩返しだから!」

214: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 03:32:22.65 ID:GjHLpUx80
エマ「うん! それがいいよ!」ギュッ

彼方「全く、ほんとに歩夢ちゃんは真面目さんなんだから。もっと肩の力抜くんだよ?」ギュッ

果林「そうそう! わたしみたいに気楽に考えていこーよ!」ギュッ

歩夢「わわっ、く、苦しいですよ」

歩夢「それに今のわたし、その……たくさん汗かいちゃったから……」

歩夢「恥ずかしい……////」カァァァァ

エマ「!!」
彼方「!!」
果林「!!」

エマ「かわいい!!」
彼方「かわいい!!」
果林「かわいい!!」

歩夢「へ!?」

歩夢「ちょ! や、やめてくださいよ! 恥ずかしいです!」

エマ「歩夢ちゃんかわいい!!」
彼方「歩夢ちゃんかわいい!!」
果林「歩夢ちゃんかわいい!!」

歩夢「や、やめてくださいってばー!!」




215: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 04:02:02.54 ID:GjHLpUx80
しずく「歩夢さーん! ばいばーい!」

歩夢「うん。しずくちゃん、またね~」

彼方「ちゃんとお風呂上がりにストレッチするんだよ?」

歩夢「わかりましたっ」


同好会の練習も無事に終わり、家が近い東雲住みの皆とも別れ、家に向かって歩く。


歩夢(今日は色々と学べる日だったな)

歩夢「……」

歩夢(大事なのは、今……か)

歩夢「あっ」

歩夢(そういえば、愛にもエマさんと同じく謝ろうって思ってたけど、まだ連絡出来てないや)

歩夢(もう用事も済んでるかな? 電話してみよう) ピッ

prrrrrr ──ピッ

愛『もしもし? 歩夢? どうした?』

歩夢「あっ、お疲れ様」

愛『おう』

愛『今日は練習参加出来なくてごめんな。無事終わった?』

歩夢「うん。終わったよ」

216: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 04:08:55.83 ID:GjHLpUx80
歩夢「愛こそ、用事は終わったの?」

愛『あぁ。終わってるよ』

歩夢「そっか。ならよかった」

歩夢「ちょっと……愛に伝えたい事があってさ」

愛『アタシに伝えたい事?』

歩夢「うん」

歩夢「あのね、愛」

愛『うん』

歩夢「あの時……1年生の時とか、色々とごめんなさい」

愛『…………へ?』

歩夢「ケンカで傷つけちゃったりとかして、本当にごめんなさい」

愛『きゅ、急にどうしたん? 今更過ぎね?』

歩夢「いや……その……よくよく考えたらわたし、本当にひどいことしちゃってたなって思って……」

歩夢「エマさんにも、今日謝ったの」

愛『そうだったんだ』

歩夢「本当に……ごめんね」

217: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 04:13:47.85 ID:GjHLpUx80
愛『……なんか怖い』

歩夢「へ?」

愛『歩夢がアタシに謝るなんて……』

歩夢「いやいや、わたしだって普通に謝るからね?」

愛『まぁ……別に、あんまり気にしてなかったし、謝んなくっていいよ』

愛『それに、嫌な思い出ばかりじゃなかっただろ?』

歩夢「うん。そうだね」

歩夢「だから、もう1つ伝えたい事があったの」

愛『なんだ?』

歩夢「愛」

歩夢「わたしと友達になってくれて、ありがとう」

愛『!?』

218: (しまむら) (ワッチョイ 6a28-BDcg) 2021/09/14(火) 04:22:29.49 ID:GjHLpUx80
歩夢「わたし、荒れてたあの時」

歩夢「結構、愛に救われてたよ」

歩夢「本当にありがとう」

愛『歩夢……』

愛『……アタシさ』

歩夢「ん?」

愛『今日の用事、何してたかって言うとな』

愛『バスケ部の試合の助っ人として応援に行ってたんだ』

歩夢「へ? そうなの?」

愛『あぁ』

愛『アタシもさ。前の自分を振り返ってみると』

愛『手は出してはいないとは言え、周りの生徒達を怖がらせたり、迷惑かけちゃってたからさ』

愛『なにか出来ないかなって考えた結果、得意な運動を活かそうって思ったんだよね』

219: (茸) (スプッッ Sd0a-BDcg) 2021/09/14(火) 07:59:16.40 ID:9skq8x+Nd
歩夢「そっか…」

愛『うん』

愛『まぁ、でも……結局今まで悪い事をやっちゃってたわけだから、その過去は絶対に消せないからさ』

愛『少しでも、他の人の為になにかしたいって思ったんだ』

歩夢「うん。すごくいいと思う」

歩夢「わたしも……あの子がやって来た、他の人達の為になる事をやっていく」

歩夢「ボランティア活動もそうだし」

歩夢「わたしもあの子のような──皆の為のスクールアイドルになるよ」

愛『そっか。お互い頑張ろうな、歩夢!』

歩夢「うん!」

220: (茸) (スプッッ Sd0a-BDcg) 2021/09/14(火) 08:04:52.41 ID:9skq8x+Nd
愛『なぁ、歩夢』

歩夢「うん?」

愛『後でグループにもメッセージ送るんだけどさ』

愛『明日皆で』

愛「ボウリング行かない?」

歩夢「へ……?」

歩夢「ぼ、ボウリング……?」

221: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/14(火) 08:14:09.84 ID:/66CD1krd
───────────

8月26日

久しぶりの練習ですっごく楽しかった。

でも、果林さんが宿題終わってなかったみたいでお手伝いをした。他の学科の宿題がどんなのか分かったし、彼方さんが果林さんに色々と勉強を教えていたのをわたしも聞いて、すごく勉強になった。

そして、エマさんと愛に謝った。

2人とも全然気にしていない様子だったけれど、2人の優しさに甘え続けるワケにもいかない。ちゃんと反省して、向き合っていこう。

そして、皆とのキラキラ輝く日々を、これからも楽しく過ごしていこう。

あっ、そういえば、皆がどんなスクールアイドルを目指しているのかまだ聞けてないや。

どこかでタイミング見つけて、聞きたいな。

明日は、急遽ボウリングに行くことになった。

チャットアプリのグループで愛がみんなでいこ~って書き込んで、即行くことが決まった。
果林さんの反応がすごく早かったし、やる気もすごそうだった。

得意なのかな?

わたしはやった事ないから、少し緊張するなぁ……。

今日も早めに寝よう。

あと!! 月曜日には若葉ちゃんも戻ってくる!!
楽しみ~!!

おやすみなさい

───────────

222: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/14(火) 08:23:08.85 ID:/66CD1krd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

せつ菜「──なるほどですね」

かすみ「それで昨日はお休みだったんですね」

愛「そうそう、今説明した通りだよ。そういう事だ」

かすみ「──で、今度ボウリング部の助っ人があるので、練習含め皆でここに来たかったというわけですね?」

愛「あぁ。流石かすみ。理解が早いな」

かすみ「…………」

果林「同好会の皆とボウリング!!」

果林「来たかったー!!」バンザーイ

彼方「ボウリングなんて何年ぶりだろ? 出来るかなぁ?」

エマ「わたし、初めて!」

歩夢「わたしも初めてです」

璃奈「私も」

愛「皆付き合ってくれてありがとうな。色々と教えるから、今日は楽しも!」

「「「はーい!」」」

かすみ「…………」

歩夢「ん? かすみちゃん、どうしたの?」

223: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/14(火) 08:32:24.91 ID:/66CD1krd
かすみ「いや……」

かすみ「愛先輩」

愛「ん?」

かすみ「スクールアイドル活動も疎かにしちゃダメですよ?」

愛「分かってるって! 助っ人活動もだけど、スクールアイドル活動も全力でやってくから」

かすみ「なら良いんですけど……」

しずく「なんかテンション低いね、かすみ」

璃奈「ボウリング苦手なの?」

かすみ「いや、そうじゃなくて」

かすみ「腕とか筋肉痛になりそうだし……指怪我しないか心配なだけ」

しずく「気を付けてれば大丈夫っしょ」

かすみ「うーん……」

かすみ(あんまりやる気が出ない……)

彼方「へー、ボウリングってすごく良い有酸素運動になるみたいだね」スマホポチポチ

彼方「ダイエットとしても効果的らしいよ?」

かすみ「!!」

224: (茸) (スプッッ Sdea-BDcg) 2021/09/14(火) 08:38:26.52 ID:/66CD1krd
かすみ(そういえばこの前)

かすみ(家で作ったかすみん特製コッペパンが美味しすぎて)

かすみ(カ口りー計算にズレが出てるんだよね)

かすみ(……有酸素運動……)

かすみ(……ダイエット……)

かすみ「──さぁみなさん! ボウリングは非常に効率の良い有酸素運動なんです!」

かすみ「練習だと思って、気合い入れてやっていきましょう!」

しずく「なんか急にやる気出したよ!?」

璃奈「なんか食べ過ぎたりとかしたのかね?」

かすみ「ちーがーいーまーすー!」

歩夢「あはは…」

歩夢(皆でボウリング! 楽しみだなぁ)




231: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:03:26.60 ID:q5+hW1XTd
愛「──ってのが一通りのボウリングのやり方だよ。やることはシンプルっす」

璃奈「なるほど」

エマ「愛ちゃん教えてくれてありがとー」

愛「いえいえ」

愛「とりあえず3レーン借りることが出来て良かった。これなら待ち時間も少ないし、丁度良いと思う」

愛「一旦は学年別に別れて遊んでみよーぜ」

歩夢「そうだね」

せつ菜「歩夢さん! 分からない事があったらなんでも聞いてくださいね!」

歩夢「うんっ」

232: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:08:55.91 ID:q5+hW1XTd
果林「はいはい! 一投目、わたし投げます!」

果林「皆見てて!!」

彼方「やる気マックスだね~」

エマ「がんばって、果林ちゃん!」

果林「いくよ!」スッ

果林「──えいっ!」シュッ

ガコーン!!

愛「おぉ! 全部倒れた!」

せつ菜「ストライクですね!」

エマ「果林ちゃん、すごーい!」

歩夢「ボウリング得意なんですか?」

果林「ふっふっふ……八丈町コミュニティセンターでボウリングはたくさん遊んできたからねっ」

果林「これから任せてほしいよ!」

かすみ「すご……」

しずく「ねー。コツとか教わりにいこうかなぁ」

果林「ん~……いつもいじられてばかりのわたしが、皆からすごきゃ~って言われてる……!!」

果林「ふふんっ!」

果林「──お姉さんに、なぁんでも聞いて頂戴ね?」

彼方「果林ちゃんが楽しそうで私も嬉しいよ~」

233: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:15:23.95 ID:q5+hW1XTd
璃奈「ふむふむ。あんな感じで投げればいいのか」

璃奈「これならいけそうだね」

かすみ「自信満々じゃん」

璃奈「当然さ。天使天才天王寺に任せてくれたまへ」

かすみ「愛先輩。良かったら学年別で飲み物でも賭けて勝負しませんか?」

しずく「!?」

愛「おっ! いいなそれ」

璃奈「おーい。無視は良くないよ」

かすみ「投げないの?」

璃奈「もう少し皆が投げるの見て研究したい」

かすみ「さっきまでの自信はどこいったのさ……」

234: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:20:17.91 ID:q5+hW1XTd
歩夢「わたしももう少し見たいかな」

愛「あっ、ならアタシが投げるか。良い? せつ菜」

せつ菜「大丈夫ですよ! ストライク決めちゃってください!」

愛「地味なプレッシャーだなそれ……」

愛「よし。んじゃいくわ」スッ

愛「──」シュッ!

ガコーン!!

果林「」

せつ菜「おー!」キラキラ

歩夢「ス、ストライク! すごいね愛!」

愛「そ、そうか? ありがと」

かすみ「流石ですね」

果林「……っ……!」プルプル

エマ「か、果林ちゃん?」

彼方「だ、大丈夫だよ! 果林ちゃんも上手だったから!」

果林「──す、すごー! 愛ちゃん! めっちゃフォーム綺麗!!」

愛「あ、ありがとうございます……」

果林「少し照れてるのかわいー!」

彼方「あっ、この子嫉妬するような子じゃなかったね」

235: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:28:02.18 ID:q5+hW1XTd
かすみ「てかさっきからしずく、静かじゃない?」

かすみ「いつもの騒がしさとテンションの高さはどうしたの?」

しずく「そ、ソンナコトナイデスヨ!?」

かすみ「カタコト……」

璃奈「体調でも悪いのかい?」

しずく「う、ううん! 全然大丈夫!」

しずく「よ、よーし! あたしも綺麗に決めてこようかな! 投げます!」スタッ

歩夢「しずくちゃん! 頑張って!」

しずく「は、はい!」スタスタ

しずく「…………」

しずく「大丈夫。私はプロのボウリング選手……カーブからストレート、シュート回転すら全て扱えるプロの選手」ブツブツ


かすみ「ん?」


しずく「私ならいける……私ならいける……」ブツブツ

しずく「!!」スッ

しずく「エイエイサー!!」シュッ!

ガゴンッ!! ガーター

しずく「にゃぁぁあああああああああッ!!」

しずく「やっぱり無理ぃぃいいいいい!!」

236: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:33:33.76 ID:q5+hW1XTd
かすみ「し、しずくさん!?」

しずく「うぅ……ダメなの私……」

しずく「球技は本当に苦手で……」

かすみ「まだ一投目でしょ? だ、大丈夫だよ」

しずく「うん……そ、そうだね!」スッ

しずく「よーし……!」

しずく「シズクスカイブルーハリケーン!!」シュッ!

ガタンッ! ガーター

しずく「はい、お疲れ様でしたー。皆また明日ね!」

歩夢「しずくちゃん!?」

愛「帰るな! 戻ってこーい!!」

238: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:37:06.88 ID:q5+hW1XTd
しずく「うぅ……なんで私、球技こんなにできないの……」

彼方「し、しずくちゃん! 大丈夫だよ! しずくちゃんならきっと上達できるから!」

歩夢「そ、そうだよ! わたしも初めてだし、一緒に頑張ろ?」

しずく「かな姉……! 歩夢さん……!」パァァァァ

せつ菜「意外な弱点があったんですね、しずくさん」

エマ「しずくちゃん、運動神経良いもんね」

239: (茸) (スップ Sdea-BDcg) 2021/09/16(木) 09:48:19.30 ID:q5+hW1XTd
璃奈「仕方ない。ここは私がしずくちゃんのかたきを討とう」

璃奈「見ててね、しずくちゃん」

璃奈「私はキミを悲しみから救いに来たんだ」

しずく「り、璃奈ぁ……!!」

かすみ「変な世界を作るな」

璃奈「なぁに。見ててくれよ。もうやり方は理解した」スッ

璃奈「いくよ」

璃奈「てい」ピョン

コテン コロコロ… ガーター

璃奈「どんなもんだい?」

かすみ「ふざけてんの?」

璃奈「まぁまぁ。さっきのは練習だよ」

璃奈「見てて」

璃奈「えいっ」ピョン

ガタンッ! コロコロ… ガーター

璃奈「私も君と共にいくよ、しずくちゃん」

しずく「おいで……!」

かすみ「愛先輩!」

かすみ「さっきの学年別での勝負は無しにしましょう!!!!」




244: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/17(金) 07:27:29.17 ID:FmRhnPQd0
歩夢(1、2の……3!)シュッ!

ガコーン!!

歩夢「やった!」

せつ菜「お~! 歩夢さんすごいです。ラストでストライクからのスペアじゃないですか!」

愛「慣れるのはえーな」

歩夢「2人ともありがと!」

歩夢「すっごい楽しいねこれ! 特にピンにボールが当たった瞬間の弾ける音が気持ちいい!」

エマ「今度若葉ちゃんとも一緒に来たいね~」

歩夢「はいっ!」

彼方「とりあえず、1ゲーム目が終わったね~」

エマ「すっごい楽しかった~!」

果林「今日は投げ放題だからまだまだ遊べるよ!」

歩夢(みんなも楽しそう! よかった)

245: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 07:48:22.86 ID:1chtS1PSd
かすみ「うんうん。歩夢先輩とエマ先輩は今日が初めてのボウリングとは思えないくらい上手ですね」

かすみ「流石ですよ。本当に」

エマ「みんなが教えるのが上手なんだよ~」

歩夢「そうだよっ」

かすみ「それに比べて……」チラッ

璃奈「みてみてしずくちゃん。私の合計39だよ」

しずく「あっ、ほんとだ! サンキューって感じで縁起がいいねぇ~」

しずく「あたしは44……語呂悪い」

璃奈「しずくちゃんや」

しずく「なんだい璃奈さんや」

璃奈「私の合計と、しずくちゃんの合計を足してみ?」

しずく「ほうほう。83だね」

璃奈「2人合わせて、ヤミだよ」

しずく「闇……!」

璃奈「我ら、闇のチカラに溺れし同志だ……!!」

しずく「共に逝こう……!!」

璃奈「はっはっはっは!!」
しずく「はっはっはっは!!」

かすみ「遊んでるんじゃないッ!!」

246: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 07:59:46.85 ID:1chtS1PSd
彼方「まぁまぁかすみちゃん。どーどー」

かすみ「はぁ……璃奈はともかく、しずくはボウリング上手だと思ってたのに……予想が外れましたよ本当に」

しずく「あはは……面目ない」

璃奈「こらこら、私はともかくって、失礼じゃあないかい?」

かすみ「どの口が言ってんの?」

せつ菜「それにしても、かすみさんは上手ですよね」

せつ菜「120超えてますし、すごいです」

かすみ「……まぁ、人並みには……」

かすみ「そんなこと言ったら、せつ菜先輩も上手じゃないですか」

せつ菜「えへへ~。昔マンガでボウリングがテーマの作品を読んで、一時期ハマっていたんですよ」ペカー

247: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:06:41.49 ID:1chtS1PSd
愛「んじゃ、ちょっとチーム変えてみるか。上手くバランス良くしていこう」

エマ「だねー」

果林「じゃあみんなの名前とかまとめるね!」カキカキ

果林「──はい! できました!」

歩夢「はや!」

璃奈「どれどれ?」

248: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:16:13.92 ID:1chtS1PSd
───────────

かすみちゃん 上手!
璃奈ちゃん かわいい!
しずくちゃん かわいい!

歩夢ちゃん 上手!
せつ菜ちゃん 上手!
愛ちゃん すっごい上手!
若葉ちゃん 今度連れてこよう!

わたし すごい!!
彼方 普通!!
エマ そこそこ上手!

───────────


果林「こんな感じ! みんなの上手さも書いといた!」

歩夢「な、なんか恥ずかしいね」

かすみ「約2人おかしいのいますけど」

しずく「気にしない気にしない~」

璃奈「そーそー」

歩夢「それじゃ、チーム分けていこっか? どうする?」

せつ菜「歩夢さん! 私と組みましょう!!」

歩夢「うん! いいよっ」

かすみ「早速上手組が一緒になってバランス悪くなったんですけど!?」

249: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:26:19.13 ID:1chtS1PSd
せつ菜「えっ?」

かすみ「えっ? じゃありませんよ。早速おかしなことになりましたよ?」

果林「愛ちゃん! わたしと組まない?」

愛「え!? アタシとっすか!?」

かすみ「インフレ!」

果林「わたし達は2人でいいから! 近くで愛ちゃんの投げる所見たいの!」

愛「アタシはいいっすけど」

果林「やったら~!」

彼方「スコア合計的に2人だけでいいならバランス良くなるんじゃない?」

かすみ「まぁ……それもそっか」

彼方「エマちゃん。このまま私と組もーぜー」

エマ「うんっ!」

250: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:35:24.15 ID:1chtS1PSd
彼方「よーし、しずくちゃんも──」


歩夢「しずくちゃん! よかったらわたし達と組まない?」

せつ菜「一緒にやりましょう!」

しずく「え? いいの……?」

歩夢「うん。一緒に頑張ろ!」

せつ菜「コツさえ掴めばきっとすぐに慣れますよっ」

しずく「──うんっ! よろしくお願いします!」ニコッ


彼方「……」

彼方「ふふっ」クスクス

彼方(歩夢ちゃんとせつ菜ちゃん。ありがとうね)

251: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:39:30.89 ID:1chtS1PSd
璃奈「よし、なら私は──」

かすみ「あなたは私と一緒」

璃奈「え?」

かすみ「彼方先輩。エマ先輩。私と璃奈で組みましょう」

かすみ「4人にすればバランスも良くなると思います」

エマ「いいよっ」

彼方「かもんかもーん」

かすみ「ありがとうございます」ペコリ

かすみ「というわけで、いくよ璃奈」ギュッ

璃奈「……仕方ないなぁ」ニコニコ

かすみ「なんで偉そうなのよ……。今日中に80は倒せるようになってもらうからね!」

璃奈「うん!」

253: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/17(金) 08:50:30.62 ID:1chtS1PSd
果林「じゃあ、チームは決まったね!」


果林・愛

歩夢・せつ菜・しずく

エマ・彼方・かすみ・璃奈


せつ菜「なんか上手くまとまった気がします!」

かすみ「まぁ、そうですね」

愛「よし、じゃあ早速次のゲーム始めよーぜ」

「「「おー!」」」

歩夢「……」

歩夢(友達と遊ぶの、楽しい)


今年の夏休みは初めての経験が多い。

本当に、楽しいや。

来年もこんな感じに楽しめたらいいな。

わたしはそんな風に思いながら、次のゲームへという画面をタップするのでした。

ちなみに、今日組んだチームで後ほど練習をして、ユニットを組むようになったのはまた別のお話。

263: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/20(月) 09:10:36.30 ID:l8HS/C7hd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「……よしっ、今日のお風呂後のストレッチおしまい」

歩夢(今日も一日たのしかったなぁ)

歩夢(最後のゲームの愛と果林さんの対決、すごかった!)

歩夢(200超えてたもんね……)

歩夢(若葉ちゃんが戻ってきたら誘ってまた皆で行こうってなったし、楽しみ~)ニコニコ

歩夢(さてと、今日の日記を書──)

prrrrrr

歩夢(ん? 電話?)

歩夢(璃奈ちゃんからだ)

ピッ

歩夢「もしもし?」

璃奈『あっ、歩夢さん。夜遅くにごめんね?』

歩夢「ううん。大丈夫だよ?」

歩夢「今日は楽しかったね」

璃奈『うん! 楽しかった』

歩夢「何かあったの?」

璃奈『うん。ちょっと聞きたい事があってね』

歩夢「聞きたい事……?」

璃奈『うん』

璃奈『歩夢さん』

璃奈『自分の人生がここで変わったなって思える瞬間って、覚えているかい?』

歩夢「え?」

264: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/20(月) 09:20:39.95 ID:l8HS/C7hd
歩夢「自分の人生がここで変わったなって思える瞬間……?」

璃奈『うん』

歩夢「たくさんあるかも……」

璃奈『できたら教えてほしい。それも、いっちばん最初に思えた瞬間の事を』

歩夢「い、一番最初!? うーん……」

歩夢(ど、どこだろ? 直近だったらあの子と会えた時なんだけど)

歩夢「うーん……」

璃奈『ゆっくりで大丈夫だよ? 急にごめんね』

歩夢「あっ、わかった」

歩夢「多分、小学校低学年の時に若葉ちゃんと会ってから変わったと思う」

璃奈『若葉さんと会ってから?』

歩夢「うん!」

璃奈『なるほど……』

265: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/20(月) 09:26:23.98 ID:l8HS/C7hd
歩夢「でも、どうして急に?」

璃奈『可能性理論について今研究中だからね。確認したい事があって、今みんなに電話して聞いているんだ』

歩夢「!!」

歩夢「可能性……理論」

璃奈『あぁ』

歩夢「それってもしかして……」

璃奈『パラレルワールド』

歩夢「……あの子がいた、元々の世界」

璃奈『そう』

璃奈『多少の進捗が進んだんだ』

璃奈『明日、皆からも少し時間をもらって』

璃奈『詳しく伝えたい』

266: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/20(月) 09:30:14.03 ID:l8HS/C7hd
───────────

8月27日

ボウリング、すっごく楽しかった!

あと最近気が付いたんだけれど、皆が楽しそうにしているとわたしも楽しい。こんな日常がずっと続けば良いのになぁ~。

夏休みもあと少しで終わってしまう。

今日で夏休み最後の金曜日が終わり、明日は土曜日。
明日もスクールアイドル同好会で明日も集まることになった。

璃奈ちゃんから、話があるって事で……。

それは、パラレルワールドについての話。

どんな話になるんだろうか。気になって中々眠くならない。

でも、夜更かしは良くないのでとりあえず今日も毛布に包まります。

おやすみなさい。

───────────

267: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/20(月) 09:41:05.77 ID:l8HS/C7hd
更新頻度低下してて申し訳ない。
残りエピソードは2つです。今月中には完結させる予定なので気長にお待ち頂けると幸いです。

272: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/20(月) 23:34:02.39 ID:JGDFAvHk0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

愛「璃奈。プロジェクターのセット終わったぞ」

愛「パソコンもあそこでいいんだよな?」

璃奈「うん。バッチリだよ愛さん。ありがと」

愛「おう」

璃奈「さてさて皆。今日は集まってくれてありがとうね」


璃奈ちゃんから召集があり、部室にスクールアイドル同好会の全員が集まる。皆席に着いていた。

用意された長机の上にはパソコンやプロジェクター等々、色々な機器が置かれている。なんかネコ? みたいなロボットまで置いてある。

プロジェクタースクリーンも用意されており、何やら上映会が始まりそうな雰囲気だ。

273: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/20(月) 23:39:56.64 ID:JGDFAvHk0
果林「なんか色々いっぱいあるね?」

せつ菜「ですね」

かすみ「またよからぬ事を考えてたりしないよね?」

璃奈「またって何さ。そんなことした事ないよ」

かすみ「よく言うよ……」

しずく「てかさ! なんかめちゃかわな猫のロボットが置いてあるね! 璃奈、あれ何!?」

璃奈「あの子は私が自作で作ったロボットのアランカスタムMarkーIIIだよ」

せつ菜「じ、自作した!?」

璃奈「うん」

彼方「すっごぉ……」

エマ「さすが璃奈ちゃんだね」

璃奈「てれてれ」

275: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/20(月) 23:46:37.23 ID:JGDFAvHk0
>>273 誤字修正


果林「なんか色々いっぱいあるね?」

せつ菜「ですね」

かすみ「またよからぬ事を考えてたりしないよね?」

璃奈「またって何さ。そんなことした事ないよ」

かすみ「よく言うよ……」

しずく「てかさ! なんかめちゃかわな猫のロボットが置いてあるね! 璃奈、あれ何!?」

璃奈「あの子は私が自作したロボットのアランカスタムMarkーIIIだよ」

せつ菜「じ、自作した!?」

璃奈「うん」

彼方「すっごぉ……」

エマ「さすが璃奈ちゃんだね」

璃奈「てれてれ」

276: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/20(月) 23:48:18.39 ID:JGDFAvHk0
璃奈「とまぁ、とりあえずアランの話は置いておこう」

璃奈「今日、皆に集まってもらったのには理由があるんだ」

歩夢「昨日の電話で言ってたこと?」

璃奈「うん。そうだよ」

璃奈「私と愛さんは少しずつ時間を見つけて、色々と研究しているんだ」

しずく「研究?」

愛「あぁ」コクリ

璃奈「そう」

璃奈「今の歩夢さんの中に入っていた、あの歩夢さんに会うための研究をね」

歩夢「!! あの子の」

璃奈「うん。その進捗報告をしたかったから、今日は皆に集まってもらったんだ」


皆の表情が、真剣なものへと変わる。

278: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 00:06:51.02 ID:W6asteHp0
璃奈「彼女は、私達がいるこことは別の世界である歩夢さんだ」

璃奈「つまり、ずっと可能性理論として語られていた別の世界というモノが、存在するという事を知れた」

歩夢「うん。あの子の思い出を少し見たことがある」

歩夢「あの子にはあの子の人生があった。わたしの精神が事故で一時期的に変わっていたんじゃないか? って思われるかもしれないけど……」

歩夢「そんなことは絶対にない。あの子はわたしとは違う存在だったけれど、同じ上原歩夢だったもん」

彼方「うん。歩夢ちゃんから色々教えてもらった時、私が教えていなかったことまで知っていたしね。あの子は自分の元々いた世界で聞いたって言ってたし、きっと私達もあの子と同様に別世界の自分ってのがいるんだよね」

せつ菜「元々スクールアイドルであった私……とかですね」

璃奈「うむ。そうだね」

璃奈「自分と同じ存在がいるけれど、全てが同じでは無い別世界」

璃奈「パラレルワールドだ」

279: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 00:23:52.41 ID:W6asteHp0
かすみ「……でもさ璃奈。そんな別世界のあの人とどうやって会うの?」

璃奈「ごめん。正直それは考え付いてない」

璃奈「ただ、あの人が今どうなっているのかを確認する為のプロセスはできてる」

しずく「ま、まじ……?」

璃奈「成功するかは、分からないけれどね」

璃奈「──ところでかすみちゃん」

璃奈「パラレルワールドって、どこにあると思う?」

かすみ「え!?」

かすみ「そ、そんなのわかんないよ」

璃奈「うん。私も分からない」

かすみ「えぇ……」

璃奈「存在することはわかったけれど、どこにあるのかは分からない」

璃奈「ただ、1つの仮定から考えると」

璃奈「私は上にあると思う」

歩夢「上……?」

璃奈「宇宙だ」

果林「う、宇宙!?」

280: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 00:31:58.69 ID:W6asteHp0
璃奈「うん。ただ、私達が住んでいる地球があるこの宇宙とは別の宇宙だと思う」

璃奈「話すの凄く長くなるからこの仮定については簡単に語るけど、一緒に考えてほしい」

歩夢「うん。わかった」コクリ

璃奈「そもそも皆、宇宙はどうやって始まったか知っているかい?」

せつ菜「ビックバンが起きて、それによって宇宙ができたんですよね?」

璃奈「そうだね」

璃奈「でもね、ここ最近ではビックバンの前にあったのではないかって考えられているんだ」

果林「ビックバンの前に?」

璃奈「うん」

璃奈「それは、インフレーションって呼ばれているんだ」

281: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 00:34:27.77 ID:W6asteHp0
>>280 誤字修正


璃奈「うん。ただ、私達が住んでいる地球があるこの宇宙とは別の宇宙だと思う」

璃奈「話すの凄く長くなるからこの仮定については簡単に語るけど、一緒に考えてほしい」

歩夢「うん。わかった」コクリ

璃奈「そもそも皆、宇宙はどうやって始まったか知っているかい?」

せつ菜「ビッグバンが起きて、それによって宇宙ができたんですよね?」

璃奈「そうだね」

璃奈「でもね、ここ最近ではビッグバンの前にあったのではないかって考えられているんだ」

果林「ビッグバンの前に?」

璃奈「うん」

璃奈「それは、インフレーションって呼ばれているんだ」

283: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 00:58:47.27 ID:W6asteHp0
璃奈「今から138億年前。ビッグバンの急膨張により誕生されたって言われている」

璃奈「じゃあ、このビッグバンはなぜ起きたんだろう? それを証明する為に考えられたのがインフレーションなんだ」

璃奈「インフレーションは、超光速で空間を膨張させる、1秒よりも遥かに短い時間で、炭酸水の泡1粒が銀河の大きさになるほどの急膨張なんだ」

璃奈「このインフレーションの膨張が少しずつ減速する過程で、そのエネルギーが段々と物質や光に変わって」

璃奈「超高温の宇宙が形成された」

璃奈「そして、この超高温の宇宙がビッグバンの正体なんじゃないかって、考えられているんだ」

璃奈「これがインフレーション理論であり、この理論が正しいとすると──」

果林「せ、先生!」

璃奈「ん? どうしたの果林さん」

果林「ごめんなさい……」

果林「全然わかんない……」

璃奈「あっ、ごめん。少しテンション上がりすぎて語りすぎちゃった」

璃奈「あんま難しく考えなくて大丈夫だよ。そんな理論があったんだ~って思うくらいで平気さ」

璃奈「大事なのは、ここからだから」

果林「が、頑張ります」

284: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 01:34:10.91 ID:W6asteHp0
璃奈「まぁこのインフレーション理論を正しいと仮定すると、ビッグバンが起こる原因となる急膨張があるなら、私達が思っているよりも遥かに大きい宇宙空間が存在するかもしれないんだよね」

せつ菜「ビッグバンで宇宙ができるくらいですからね」

璃奈「そうそう。ビッグバンでできる宇宙よりも大きい宇宙空間があるかもしれないんだ」

璃奈「そして、このインフレーションは何回も起きている可能性があるんだ。もしかしたら今もどこかの宇宙でインフレーションが起きて、ビッグバンが起きて、新たな宇宙が出来ているのかもしれないね」

璃奈「さて、では一旦インフレーションの話は置いといて、本題に入ろう」

璃奈「また質問になっちゃうんだけど」

璃奈「皆、私達の身体って、何で出来ていると思う?」

しずく「えっと……タンパク質とか、水分とか色々あるよね」

彼方「つまりは分子が集まって出来てるね」

愛「そっすね。まぁもっと細かく言うと、原子や物質の最小単位である素粒子が集まってできたものって言えるな」

璃奈「うむ」

璃奈「私達は素粒子が集まって出来ている」

璃奈「そして、私達人間を含むあらゆるモノの違いは“素粒子の並びの違い”でしかないんだ」

286: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 02:12:25.74 ID:W6asteHp0
璃奈「サイコロを例に考えてみるね」

璃奈「皆は4つのサイコロを持っています」

璃奈「1ゲーム事に4つのサイコロを振るとする」

璃奈「ゲームが終わればサイコロを回収して、またサイコロを振る。すると毎回サイコロの出目は変わることになるよね?」

歩夢「そうだね」

璃奈「では、最初のゲームで出たサイコロの出目が、全て1だとして」

璃奈「ゲームの回数を増やしていって、無限回ゲームをやるとする」

璃奈「そうすると、最初のゲームと同じ出目になる確率はどうなると思う?」

かすみ「確率はわかんないけど、サイコロに書かれてる数字の種類は限られているし」

かすみ「無限回だったら同じになるのは避けられないんじゃない?」

璃奈「そう」

璃奈「では、サイコロの出目がこの世界に存在する素粒子だと考えて」

璃奈「私達を構成する素粒子というサイコロの出目が、偶然一致する可能性はあるよね?」

しずく「そう、だね」

璃奈「じゃあここで、さっきのインフレーション理論に話を戻そう」

璃奈「遥かに大きい宇宙空間で、何回もインフレーションが起きる。そして、ビッグバンが発生し、宇宙が誕生して、星──地球が出来る」

璃奈「このインフレーションが、無限回あったと考えてみて」

歩夢「!!」

歩夢「いつか……偶然一致する」

璃奈「そう。今、私達がいる地球と見分けがつかない、まるでコピーされたかのような地球が生まれて」

璃奈「自分と同じ存在が生まれる可能性は充分にある」

璃奈「それがパラレルワールドで、もう1人の自分なんだと思う」

287: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 02:31:21.78 ID:W6asteHp0
しずく「うぅ……」

彼方「し、しずくちゃん? どうしたの?」

しずく「なんか色々想像したら怖くなってきちゃった……」

しずく「宇宙って……なんなんだろって思えちゃって……」

璃奈「ご、ごめんしずくちゃん。大丈夫?」

しずく「あっ、ううん! 大丈夫だよ。私が勝手に想像しちゃっただけだから!」

かすみ「まぁ……とりあえずパラレルワールドがこことは別の宇宙にあるかもしれないってのは分かったけど」

かすみ「どうやってそこに干渉するの?」

璃奈「意識をそこへ飛ばしてもらう」

かすみ「……ど、どうやって?」

璃奈「このアランを使うのさ」

歩夢「そんなことが出来るの……?」

璃奈「もちろん、かなり可能性は低いよ」

璃奈「ただ、やってみる価値はある」

エマ「具体的には、どんな方法を考えているの?」

璃奈「アランの魂を、向こうの世界のアランに飛ばしてもらう」

せつ菜「と、飛ばす!? これ、ロボットですよね?」

璃奈「自立型のAIを搭載している。この子にはちゃんと魂がある」

288: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 02:41:19.97 ID:W6asteHp0
かすみ「それは分かったけど……誰に飛ばしてもらうの?」

璃奈「存在は不明だ。けど、魂っていうやは身体とは別のものなんだよ。精神的実体として存在する、想像上の概念なんだ」

璃奈「歩夢さんは……前の世界で事故にあって、生死をさまよっていた」

歩夢「…………」

璃奈「そして、その魂は不思議な事に私達の世界の歩夢さんの所へ入ってきた。なぜこんな現象が起きるのか分からない。けれど、魂が飛ばされる現象は存在するんだ」

璃奈「もしかしたら、私達のいる世界を第三者目線で見つめている、上位の存在がいるのかもしれない。世界を作った神がいるのかもしれない。分からないけれど、歩夢さんがこっちの世界に来た現象は、事実として存在する」

彼方「なるほどねぇ……。でも、歩夢ちゃんは自分と同じ存在が別世界にあったからここに来れたんだよね?」

彼方「そのロボットって、向こうの世界と同じものがあるのかな…」

璃奈「あるよ」

かすみ「え?」

璃奈「私は、歩夢さんとの最後の登校の時に、あの人の世界の私について沢山聞いたんだ」

290: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/21(火) 03:03:09.30 ID:W6asteHp0
───────────

璃奈『──ほうほう。それでそれで?』

歩夢『えっと、その後璃奈ちゃんが『りなちゃんボード』って言うのを作ってね』

璃奈『『りなちゃんボード』? 良いネーミングセンスだ。さすが別世界の私。非常に興味深いね』

歩夢『……』

───────────


璃奈「あの時、りなちゃんボードとかの話を聞く前にも色々な話を聞いたんだ」

璃奈「その中で、別の世界の私が自作した猫型自立型ロボットであるアランを部室に持ってきたって彼女は教えてくれたんだ」

せつ菜「それって、このロボットと一緒の名前ですね」

璃奈「そうだよ。それで、そのアランは彼女達の部室に置かれる事になったみたいなんだ」

璃奈「つまり、向こうの世界の部室に、今ここにあるアランと同じものがあったとしたら、もしかしたら繋がれるかもしれない」

かすみ「で、でも、全く同じ存在とは限らなくない?」

璃奈「同じ存在さ」

璃奈「だって、別世界の私が作ったロボットだよ?」

璃奈「私と同じ頭の構造になっているさ。作り方は変わらず、自作するはずさ。天使天才天王寺は、多分どの世界でもそこは変わらないよ」

璃奈「自分の技術力を信じているし、自分が一番良いと思った物をつくっているんだ」

かすみ「……なるほどね」

しずく「別世界の自分でも、そこは変わらないって事ね」

璃奈「そういう事」

291: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 07:48:01.51 ID:DG/V6XxTd
璃奈「だから、この子も同じようにAI機能だけが抜け落ちる状態にさせて、あの時の歩夢さんと同じような体験をしてもらう」

璃奈「アランにはカメラ機能があるから、上手く飛ばしてもらうことができたら」

璃奈「向こうの世界を見る事が出来るかもしれない」

せつ菜「それが出来れば歩夢さんを……!」

璃奈「うん。見る事は出来るかもしれないね」

エマ「せ、せんせー!」

璃奈「ん? どうしたの?」

エマ「か、果林ちゃんがショートしてる……」

果林「」

璃奈「……ごめん」

璃奈「まぁ、でも、皆あんまり難しく考えないでほしい」

果林「へ?」

292: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 08:03:26.12 ID:DG/V6XxTd
璃奈「要は、ただのトライアンドエラーを繰り返していこうって事」

璃奈「歩夢さんはここへ飛ばされてきた」

璃奈「それが誤りなのか、神様の気まぐれなのか、ただの偶然なのかは誰も証明できない」

璃奈「だから、その現象を再び起こせるように何回もチャレンジするんだ」

璃奈「意味の無い行動で終わる確率の方が高い」

璃奈「けど、未知の現象に干渉するためには意味の無い行動でもやっていくしかないんだ」

璃奈「だから、皆には協力してほしい」

璃奈「一緒に」

璃奈「彼女と再びコネクトしよう」

293: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 08:16:07.57 ID:DG/V6XxTd
かすみ「出来ることなら、なんでも協力するよ」

かすみ「向こうの世界にちゃんと戻れているか、確認もしたいですからね。……そ、それに! あの先輩は少し抜けている所もあって色々心配ですからね!」

せつ菜「ふふっ、そうですね」

せつ菜「それに、純粋にあの子と会いたいですからね」

愛「あぁ。あの時のお別れを最後のものにさせないって約束もしたからな」

エマ「わたし達は皆、あの子のおかげでめぐり逢う事ができたからね。また、お礼を言いたい」

果林「わたしも一緒!」

果林「こんなに楽しいスクールアイドルを教えてくれたんだもん。また会って抱きつきたい!」

璃奈「うん。私も歩夢さんにまたなでなでしてもらいたい」

彼方「私の得意なお料理もあの子に食べさせてあげられていないからね。また、遊びたいよ」

しずく「うん。私も歩夢さんに会いたい」

しずく「私に自分らしく生きる事の大切さを教えてくれたあの人に」

しずく「今の私の歌や演劇を見てほしい」

歩夢「みんな、考えは同じだね」

歩夢「わたしも、あの子とまた会いたい!」

294: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 08:41:04.47 ID:DG/V6XxTd
璃奈「みんな、ありがとう」

璃奈「では、早速手伝ってほしいことがあるんだ」

歩夢「うん!」

璃奈「今から皆に、入力してもらいたいものがある」

せつ菜「入力してもらいたいもの?」

愛「あぁ。璃奈、もう皆に配布していいか?」

璃奈「お願いするよ」

愛「おっけー」

愛「皆、今からアタシと璃奈が作ったアプリがあるから、それを開いてほしい。ここのURLからダウンロードしてほしい」

果林「つ、作った!?」

せつ菜「彼女達は情報処理学科ですからね」

愛「このアプリは、シュミレーターみたいなものだ」

愛「まずは今の自分になった経緯や環境なんかを入力して、200個くらいの質問が出るから全部答えてほしい」

歩夢「に、200?」

璃奈「うむ。そうする事によって」

璃奈「このアプリの中に、あなた達の存在がデータとして生まれる」

しずく「マジ!?」

璃奈「うん。私は持つ入力済だから、これを見てほしい」

璃奈ちゃんがスマホの画面を皆に見せる。

そこには3Dモデルのような璃奈ちゃんがいた。


璃奈「挨拶をさせてみるね」


慣れた手つきでスマホをタップさせ、再び画面をわたし達に見せてくる。

すると──


璃奈『やぁ、天王寺璃奈だよ』


「「「!?」」」


歩夢「しゃ、喋った?」

璃奈「こんな感じでデータの自分ができる。最初に50音も音声登録してもらうよ?」

298: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 10:51:46.80 ID:DG/V6XxTd
>>294 誤字修正


璃奈「みんな、ありがとう」

璃奈「では、早速手伝ってほしいことがあるんだ」

歩夢「うん!」

璃奈「今から皆に、入力してもらいたいものがある」

せつ菜「入力してもらいたいもの?」

愛「あぁ。璃奈、もう皆に配布していいか?」

璃奈「お願いするよ」

愛「おっけー」

愛「皆、今からアタシと璃奈が作ったアプリがあるから、それを開いてほしい。ここのURLからダウンロードしてほしい」

果林「つ、作った!?」

せつ菜「彼女達は情報処理学科ですからね」

愛「このアプリは、シュミレーターみたいなものだ」

愛「まずは今の自分になった経緯や環境なんかを入力して、200個くらいの質問が出るから全部答えてほしい」

歩夢「に、200?」

璃奈「うむ。そうする事によって」

璃奈「このアプリの中に、あなた達の存在がデータとして生まれる」

しずく「マジ!?」

璃奈「うん。私はもう入力済だから、これを見てほしい」

璃奈ちゃんがスマホの画面を皆に見せる。

そこには3Dモデルのような璃奈ちゃんがいた。


璃奈「挨拶をさせてみるね」


慣れた手つきでスマホをタップさせ、再び画面をわたし達に見せてくる。

すると──


璃奈『やぁ、天王寺璃奈だよ』


「「「!?」」」


歩夢「しゃ、喋った?」

璃奈「こんな感じでデータの自分ができる。最初に50音も音声登録してもらうよ?」

296: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/21(火) 08:50:57.41 ID:DG/V6XxTd
璃奈「このデータは、皆の人生を入力してもらって形成するんだ」

璃奈「かなりプライベートに関わる問題だし」

璃奈「時間はかかると思うけど」

璃奈「皆、全部正直に入力して、今の自分を形成してほしい」

璃奈「この理由とかは、この後ちゃんと説明する」

歩夢「わ、わかった」

璃奈「……さぁ」

璃奈「実験スタートだ」


璃奈ちゃんは、どこか楽しそうな表情をしていた。

304: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/22(水) 07:01:07.03 ID:+CGZxbu9d
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「で、できた!」


アプリのデータ入力が全て完了する。

朝から集まっているのに、気が付けばお昼過ぎ。かなりの時間が掛かった。
皆も少しずつ完了してきたのか、ちらほら璃奈ちゃんに声をかけている。


歩夢「璃奈ちゃん。全部終わったよ?」

璃奈「ありがとう、歩夢さん。今は作成中って画面が出てるかい?」

歩夢「うん」

璃奈「ならもうすぐ完成だよ。……あっ、ほら。できたみたいだよ?」

歩夢「え? ほんと?」


急いで画面を確認する。スマホの画面には、3Dモデリングされたわたしがいた。

305: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/22(水) 07:07:23.77 ID:+CGZxbu9d
歩夢「す、すごい……」

璃奈「歩夢さん。行動項目をタップして、そこから挨拶を選択して?」

歩夢「わかった」ススッ


歩夢『おはよう。わたしは上原歩夢っ』


歩夢「!! わ、わたしが喋った!」

璃奈「うむ。完璧だ」

306: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/22(水) 07:22:40.74 ID:+CGZxbu9d
しずく「あたしもできたよ~」


しずく『おはようございますっ。桜坂しずくです』


かすみ「いや、誰よこれ」

しずく「いやいや、あたしだよ」

かすみ「えぇ……こんな礼儀正しくないでしょ」

しずく「失礼! 私はこんな感じだもん!」


かすみ『中須かすみです。よろしくお願いします。──かすみんって呼んでねぇ! えへっ』


かすみ「私の完璧さを見てみなよ」ドヤッ

しずく「うっわ……ドヤ顔……腹立つわぁ」

璃奈「しずくちゃん」クイクイ

しずく「ん? どしたん?」

璃奈「しずくちゃん。信号待ちしているおばあさんが重そうな買い物袋を持ってたらどうする?」

しずく「へ? ……うーん、そうだなぁ……」

しずく「持ってあげたいけど、急に持ちますって言うと変に思われるかもしれないから、とりあえず大丈夫ですか? って聞くかな」

璃奈「答えてくれてありがとう。じゃあアプリの質問って項目があると思うから、そこをタップして質問内容に私がしたやつと同じのを入力してみて」

しずく「え? わかった」スッ、スッ


しずく『困っていそうなので持ってあげたいですけれど、急に持ちますって言うと変に思われるかもしれません。とりあえず大丈夫ですか? って聞きます』


しずく「!?」

璃奈「うん。大丈夫そうだね。画面のこの子はちゃんとしずくちゃんとして形成されてる」

果林「す、すごすぎない……?」

彼方「こんなの、作れるんだね……」

エマ「璃奈ちゃんすっごい!」

璃奈「よせやい、照れるじゃないか。もっと褒めてくれていいよ?」

璃奈「それに、愛さんが手伝ってくれたから作れたのさ。私だけの力じゃないよ」

愛「8割くらい璃奈が作ったけれどな」

307: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 21:33:35.57 ID:t20MMX6S0
璃奈「皆がちゃんと入力してくれたのと、質問に全て答えてくれた。だから皆の性格や行動方針はデータとして完成したんだよ」

璃奈「だから、同じ質問をしたら、基本的に行動方針や答えは一緒になると思うよ」

果林「これをあとはどうすればいいの?」

璃奈「データの皆を変更させる」

せつ菜「へ?」

璃奈「別の自分にするんだ」

かすみ「ど、どういうこと?」

彼方「もしかしてこれ、私達の人生を入力して作られたけれど……その経緯とかを変更出来るの?」

璃奈「さすが彼方さん。正解だよ」

璃奈「今、ここにはデータの皆が誕生した」

璃奈「そしてこのアプリは、今の皆がどういう人生を過してそうなったかが保存され、作成された」

璃奈「そうだなぁ……例えば、小さい頃に見たあるものをきっかけに自分の人生が変わったとする子のデータができたとする」

かすみ「……」

璃奈「では、そのきっかけを“無かった”ことにしたら」

璃奈「どうなると思う?」

かすみ「……別の自分になっていたかもしれないね」

璃奈「そうだよ」

璃奈「──それを、このアプリは再現することができる」

歩夢「!! 別の人生を、シュミレートできるって事なんだね」

璃奈「そうだよ、歩夢さん」

璃奈「このアプリは、“別の可能性の自分を擬似的に作る”ことが出来るんだ」

308: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 21:48:20.53 ID:t20MMX6S0
璃奈「皆、一旦今作ったデータを保存してほしい」

璃奈「それをベースに変更していくから、間違っても消さないようにね。また最初からやり直しになる」

果林「わ、わかった」

璃奈「そうすれば、またいつでもそのデータに戻すことが出来るようになる」

エマ「できた~」

璃奈「ありがとう」

璃奈「よし、なら……歩夢さん」

歩夢「うん」

璃奈「歩夢さんは、若葉さんと出会って人生が変わったって教えてくれたよね?」

歩夢「うん」コクリ

璃奈「思い出を変えちゃうのは本当に申し訳ないけれど……」

璃奈「その若葉さんとの出会いの人物を、かすみちゃんに変えてみて」

かすみ「え!?」

歩夢「……わかった」

璃奈「ごめん。ありがとう」

璃奈「かすみちゃんはそのデータのままでいいよ」

かすみ「う、うん」

歩夢「よし、できた。若葉ちゃんとの出会いをかすみちゃんに変えたよ」

歩夢「なんか……自動的に色々と書き換わったみたい」

璃奈「今の自分までもう作ってあったからね。きっかけの人が変わった後のものも自動的に書き換えてくれるんだ」

璃奈「そしたら、同期するって項目があるから、それを押してかすみちゃんのデータと共有させてほしい」

かすみ「うん」

歩夢「タップしたら同期する世界のQRコードを読み取ってくださいって文章が出てきた」

璃奈「じゃあ、かすみちゃんはQRコードを表示するって項目を選んで」

かすみ「わかった」

『ツナガルコネクト!』

歩夢「な、なんかアプリから声が出てきたよ!?」

璃奈「よし、成功したみたいだね」

璃奈「そしたら、パソコンに繋げるから少しスマホ貸してほしい」

璃奈「今出来たものを、映像化することが出来るんだ」

璃奈「そこのプロジェクターで映すよ」

歩夢「り、璃奈ちゃん……本当にすごいね」

310: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 22:08:22.12 ID:t20MMX6S0
璃奈「──よし、できた。愛さん、証明を落としてもらえるかな?」

愛「おっけー」

カチッ

璃奈「ありがとう」

璃奈「今から流す映像は、さっき同期された世界の登校前の二人の映像だ」

璃奈「見てて」

歩夢「な、なんかドキドキするね」

かすみ「……まぁ、普通に登校してる様子が見られると思いますけどね」

311: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 22:16:13.72 ID:t20MMX6S0
───────────

歩夢「ほーらかすみちゃん。リボンがズレてるよ?」

かすみ「だ、大丈夫だって……」

歩夢「大丈夫じゃないよ。かすみちゃんは世界一かわいいんだから、しゃんとしないと」

歩夢「ほらほら、お姉ちゃんが直してあげるね?」ニコニコ

かすみ「……うん」

かすみ「ありがと」

かすみ「──歩夢お姉ちゃんっ」ニコッ

───────────

歩夢「」

かすみ「」

しずく「わーお」

果林「歩夢ちゃん、めっちゃお姉ちゃんしてる」

エマ「かすみちゃんもデレデレだ~」

彼方「幼馴染の歳下の子ってほんっっっと可愛いからね。わかりみが深い」

愛「すげぇなこれ」

せつ菜「皆さん」

せつ菜「静かにしてください」

せつ菜「璃奈さん、続きを……!!」

璃奈「せつ菜さんの目のギラつきがすごい」

312: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 22:33:43.13 ID:t20MMX6S0
───────────

歩夢「かすみちゃん、宿題終わらせた?」

かすみ「ちゃんとやったよ」

歩夢「えらいえらい」ナデナデ

かすみ「も~……いつまで子供扱いするのさ……」

歩夢「おばあちゃんになっても、かな~」

かすみ「……今に見ててよね」

かすみ「日本一のスクールアイドルになって、かすみんのすごい所を証明して、子供扱い出来ないようにするから!」

歩夢「かすみちゃんは世界一のスクールアイドルになれるよ?」

歩夢「だって、世界一かわいいもんっ」

かすみ「ッ!!////」

かすみ「と、当然……です」

歩夢「照れてる。かわいいっ」

かすみ「し、知ってるもん!」プイッ

───────────

かすみ「イチャイチャ、すんなぁぁあああああッ!!」

かすみ「甘い! そ、そそそそそんなんで日本一のスクールアイドルになれるわけないでしょ!!」

かすみ「朝はゆっくり登校しないで、早起きしてランニングとか朝練しなさい!!」

かすみ「中須かすみぃぃぃいいいい!!」

しずく「かすみ、どーどー」

彼方「か、かすみちゃん! 映像だから! 抑えて抑えて~」

果林「かすみちゃんと幼馴染になると、デレデレになるんだね歩夢ちゃん」

エマ「若葉ちゃんにもデレデレだもんね」

せつ菜「そうですねただ若葉さんとの関係性で違うのは歩夢さんがお姉さんしていることですね若葉さんとの関係性は愛のある親友という感じで対等なのですがかすみさんとの関係性はまるで姉妹のようであり非常に可愛らしい映像が流れていましたねこれは歩夢さんは可能性の塊いや可能性の獣と言うべきなのではないでしょうか他のパターンも是非とも見てみたいですね」

愛「せつ菜落ち着け! すっげぇ早口になってるぞ!」

歩夢「な、なんかごめんね。かすみちゃん」

かすみ「別に……歩夢先輩が謝ることないですよ」

しずく「歩夢お姉ちゃんって呼ばなくていいの?」

かすみ「……」ギュュュュュ

しずく「いだだだだだ!! ご、ごめんごめん! いつも以上につねりが痛い!」

315: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 22:47:03.75 ID:t20MMX6S0
璃奈「とまぁ、こんな感じになるわけさ」

せつ菜「すごいですねこれ……」

せつ菜「もしかしたら、ファンタジーのような世界もやろうと思えば表現できるんじゃないですか?」

璃奈「多分、できると思う」

せつ菜「なるほど……」

せつ菜「私は……勇者。そしてお姫様は歩夢さんで、幼馴染の設定にして……ある時に竜が現れ歩夢さんを攫ってしまう……私は立ち上がり──」

愛「戻ってこい」チョップ

せつ菜「にゃむ!」

せつ菜「あはは……ごめんなさい」

璃奈「さっ、話を戻そう。閑話休題」

璃奈「なぜ、この機能を作ったのか伝えるね」

歩夢「うん」

璃奈「皆には今から」

璃奈「向こうの歩夢さんのいる世界の自分を再現してほしい」

歩夢「──え?」

317: (しまむら) (ワッチョイ 9f28-zsw9) 2021/09/22(水) 23:08:33.08 ID:t20MMX6S0
璃奈「向こうの自分がどんな人間だったのか、皆……最後に歩夢さんに聞いたよね?」

璃奈「私は、感情豊かだけど表情が上手く作れない子だって聞いた」

璃奈「何かがきっかけで、そんな自分になっていたのかもしれない」

璃奈「多分向こうの私は……両親に心配させないように……悲しい思いを出さないようにして過ごしていたんじゃないかな」

璃奈「それで、表情を出すのが苦手になったのかもしれないなって思う」

歩夢「……」

璃奈「そんな、向こうの世界の自分をできるだけ忠実に再現させて、皆で同期させる」

璃奈「そうして再現されたデータを記憶としてこの子<アラン>に入れて」

璃奈「AI機能だけシャットダウンさせて……魂だけ飛ばす現象を再現させる」

璃奈「向こうの世界のものだと、勘違いさせるんだ」

歩夢「……っ……」ゴクリ

璃奈「出来るかどうかは、分からない」

璃奈「けれど」

璃奈「やっていくしかないんだ」

歩夢「うん」

歩夢「やるよ、わたし」

歩夢「わたしの記憶にある、あの子の情報を思い出して」

歩夢「再現させるよ」


皆の気持ちも同じようで、全員璃奈ちゃんを見つめ、頷いていた。


璃奈「ありがとう、皆」

璃奈「実験再開だ」

320: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 08:56:46.20 ID:RyA1ke4kd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

途方もない事だった。

もう1人の自分。違う可能性で生まれた向こうの自分を再現するのは、簡単なことじゃない。


歩夢「向こうの若葉ちゃんは、確か……」

せつ菜「高咲侑さん、という名前でしたよね?」

歩夢「うん。確かそう」

愛「マンションの隣の部屋に住んでる幼馴染って言ってたよな」

歩夢「そうだったね。……てことは、わたしの家庭は昔、マンションに住むか一軒家に住むかで悩んでいたことがあったの。向こうではマンションに住んでいるから、そこから分岐は始まっているんだ」


でも、みんな諦めていなかった。

考えて、考えて考えて──話し合う。

そして、再現する為に、何度も繰り返す。

321: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 09:06:57.20 ID:RyA1ke4kd
璃奈「……ダメだ。なんにも起きない」

璃奈「失敗だ」

歩夢「……」


気が付けば、外は暗くなっていた。かなり時間も経っている。


かすみ「今の実験で、何回目?」

璃奈「128回目」

しずく「うへぇ〜……大変だね」

彼方「……うん」

果林「さすがにちょっと……疲れてきたね」


みんなの表情にも、疲れが見える。


歩夢「……わたしが上手く再現出来ていない気がする」

せつ菜「え?」

歩夢「データの歩夢は、まだあの子とは少し違う気がするの」

歩夢「また、少し修正する」

璃奈「歩夢さん……」

歩夢「トライアンドエラー、だよ」

エマ「……そうだね」

彼方「諦めちゃ、ダメだよね」

璃奈「うん」

璃奈「ペニシリンだって、電子レンジだって……偶然生まれたものなんだ。簡単に出来ると思っちゃ、駄目だもんね」

歩夢「うん! 皆、頑張ろう!」

せつ菜「──ダメです」

歩夢「へ?」

歩夢「せつ菜ちゃん……?」

322: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 09:20:36.67 ID:RyA1ke4kd
せつ菜「今日はもうおしまいです」

せつ菜「皆さん、疲れてきています」

せつ菜「無理は禁物です」

歩夢「……」

せつ菜「それに、もうすぐ門限ですから」

歩夢「……」

せつ菜「歩夢さんだって、疲れています」

せつ菜「だから……明日また集まろ?」

歩夢「……」

せつ菜「無理して身体壊す事を、あの子は望んでいないと思う」

歩夢「……そうだね」

歩夢「確かに、そうかも。ありがとう、せつ菜ちゃん」ニコッ

せつ菜「いえっ」ニコッ


せつ菜ちゃんの言う通りだ。無理はダメだ。

途方もないことにチャレンジするんだ。地道にやっていくしかない。

こうして、本日の実験は終了となり、解散することになった。


歩夢「みんな」

歩夢「また明日、頑張ろう」


その後家に着いたわたしは、何もしないまま眠りについてしまった。




324: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 09:32:56.93 ID:RyA1ke4kd
<8月29日>

今日は、夏休み最後の日曜日。明日、遂に若葉ちゃんが合宿から戻ってくる。楽しみ。


歩夢「行ってきます」


朝早くにわたしは家を出る。特に集合時間は決めていないけれど、ソワソワしてしまい家を出てしまった。

時間は有限だ。少しでも進捗を進めたかった。


歩夢(昨日、日記書けなかったなぁ)

歩夢(今日はちゃんと書かないと)

歩夢(良い結果、書けたらいいなぁ)


そんな事を思いつつ、わたしは虹ヶ咲学園を目指し歩いた。

325: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 09:46:49.76 ID:RyA1ke4kd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

スタスタ

歩夢「……あれ?」


部室棟の中に入り、部室を目指し歩く。


歩夢「みんな……?」


スクールアイドル同好会の部室の前には、皆がいた。


せつ菜「歩夢さん! おはようございます!」

愛「よっ! やっぱ歩夢も朝イチにここ来たんだな。全員考えは一緒だな」

璃奈「うむ。これぞ青春だ」

しずく「歩夢さんおはよー! ほらほらかすみ~? 早く部室の鍵開けてよ〜」

かすみ「うっさいな! ちょっと待っててよ! ほんとここの鍵、立て付け悪くて開けにくい……」

エマ「歩夢ちゃん、おはよー」

果林「おっはよー!」

歩夢「お、おはようございます……」


まさか、みんないるとは思わなくて困惑してしまった。

そんな時、彼方さんがわたしに近づいてくる。

326: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 14:59:36.28 ID:RyA1ke4kd
彼方「おはよー、歩夢ちゃん」

歩夢「あっ、彼方さん……おはようございます」


そんな挨拶を交わすと、彼方さんはわたしを──抱きしめた。


歩夢「──へ?」

彼方「気を張りすぎてる子、だーれだ?」ギュッ

歩夢「」ポカーン

彼方「歩夢ちゃん」

彼方「昨日、わたしが再現できてないかもしれないって落ち込んでたよね?」

歩夢「……はい」

彼方「自分の責任だって、思ってない?」

歩夢「……す、少しだけ」

彼方「もー、そんな事ないから気にしちゃダメだよ」

歩夢「でも……」

彼方「これは、皆で協力して頑張らなきゃいけない事だよ」

彼方「自分一人で気を張り過ぎちゃ、ダメ」

歩夢「彼方さん……」

327: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 15:05:32.44 ID:RyA1ke4kd
彼方「そもそもこれは、途方もない事じゃない?」

彼方「歩夢ちゃんの再現度が影響してるかも分かってないし、憶測で自分の責任だなんて思わないで?」

彼方「皆で、協力して頑張っていこうよ」


彼方さんは優しくわたしを抱きしめ、頭を撫でてくれる。

まるで、お姉ちゃんみたいだ。


歩夢(すごく落ち着く……)

彼方「それにさ」

彼方「歩夢ちゃん、知ってる?」

歩夢「え?」

彼方「夢はね」

彼方「口に出して言い続けていれば、いつか叶うものなんだよ」

歩夢「!!」

彼方「私は、この実験は成功すると思ってる」

彼方「私達の自慢の仲間が考えた方法なんだもん」

彼方「皆で、一緒に悩んで、頑張っていこう?」ニコッ

歩夢「…っ…!」

328: (茸) (スップ Sd3f-zsw9) 2021/09/23(木) 15:12:26.97 ID:RyA1ke4kd
歩夢「彼方さん……」

彼方「なぁに?」

歩夢「わたし、すっごく幸せものです」

歩夢「元々わたしは、人が嫌いでした。ううん、大っ嫌いだった」

歩夢「でも、こうして今はみんなと出会えたし、良い人も沢山いるって気が付けた……」

彼方「うん」

歩夢「でも、こんな今の日々を作ってくれたのも」

歩夢「わたしの憧れのあの子なんです」

歩夢「だから……わたしはあの子に会いたい」

歩夢「どうなったのか、見たい!」

歩夢「だから……だから!」

歩夢「皆で……頑張りたいっ!」

かすみ「当たり前です」

しずく「出来ること、やっていこう」

璃奈「うむ」

愛「みんなで話し合おうぜ」

せつ菜「ですね!」

果林「矢も三本揃えばなんたらってやつだよ!」

エマ「歩夢ちゃん! 頑張っていこ!」

彼方「さっ、歩夢ちゃん」

彼方「部室の中に入ろ?」

歩夢「はいっ!」ニコッ




333: (茸) (スップ Sd52-M3Bp) 2021/09/24(金) 08:04:57.05 ID:e906N7OWd
璃奈「……今回も成功せず、か……。気を取り直してやっていこう」

彼方「私の周りの子達との関係も少し修正してみるよ」


そこからは時間も忘れて、ひたすら実験を繰り返した。

昨日よりもデータは完成している中での修正作業を続けていく為、効率は3倍くらい良くなっていた。

でも──


璃奈「……ダメだ」

璃奈「もっかいやろう」

かすみ「うん」


中々、成功しない。


愛「向こうのアタシは……明るくって部室棟のヒーローって言われてるらしい」

愛「……おばあちゃんが無事だった世界なのかもしれないな」


ただ、誰も諦めていなかった。

何度も……


璃奈「次だ」


何度も何度も何度も──繰り返す。


璃奈「……次」

歩夢「うん」

せつ菜「もう一度皆さんのデータと同期し直してみましょう」

エマ「そうだね」


途方もない作業を、繰り返した。

334: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/24(金) 08:16:23.94 ID:h/wY17ubd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

歩夢「……」

璃奈「ごめん。今回もダメみたいだ」

しずく「なっかなか成功しないね~……」

かすみ「仕方ないでしょ、こればっかりはさ」

果林「うん……」

エマ「もう、外も暗くなり始めてるね」

愛「……今ので920回目のチャレンジだ」

せつ菜「そんなにやってたんですか!?」

彼方「あはは……通りでお腹が空いてきたわけだよ」

歩夢「……」

歩夢(どうしてだろう)

歩夢(大分、完成してきたと思うのに……!)スッ

歩夢(挨拶……っと)


歩夢『はじめまして。虹ヶ咲学園2年生の、上原歩夢ですっ』

歩夢『ご…ごめんなさい……すごく緊張してて……』

歩夢『1回深呼吸するね? すぅ……はぁ……』

歩夢『ありがとうございました! こんな私だけど、仲良くしてくれたら嬉しいなっ』


歩夢「……」

歩夢「あの子に……会いたいね」

かすみ「歩夢先輩……」

335: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/24(金) 08:31:09.63 ID:nCLC/dhNd
歩夢「……ごめんねみんな!」

歩夢「落ち込んでちゃダメだよね? 少し休憩しよ?」

エマ「だね……。紅茶でも飲んで、落ち着かせよっか」

彼方「うん。そうだね」

しずく「わぁ! かな姉達がいれてくれる紅茶大好きっ!」

歩夢(少し、気持ちをリセットさせないと)

果林「うーん……身体固まってきた~」ノビー

歩夢「果林さん、大丈夫ですか?」

果林「あっ、うん。大丈夫大丈夫」

果林「それにしても、結構完成してきた気がするのに中々難しいね~」

歩夢「ですね~……」

果林「もっと歩夢ちゃんに向こうのわたし達の事聞いておけばよかったなぁ」


果林「──タイムスリップしたいね」


歩夢「タイム……スリップ……?」

果林「え? うん。だって“過去に戻れたら”、あの子に直接また話聞けるじゃん?」


──何気ない、果林さんの一言だった。


歩夢「………………」

果林「あれ? 歩夢ちゃん……?」

歩夢「そっか……」

歩夢「そうだった……!」


わたしは、気が付いた。

果林さんの一言で。

336: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/24(金) 08:50:24.13 ID:nR5a5Fmad
歩夢「そうだよ」

歩夢「なんでこんな簡単な事に気が付けなかったんだろう」

せつ菜「あ、歩夢さん?」

愛「どうしたんだ? 歩夢」

歩夢「みんな、ごめんなさい」

歩夢「休憩の前に、1回だけ付き合ってほしいの」

璃奈「何か思い浮かんだの?」

歩夢「うん。思い出した事があるんだ」

歩夢「そもそも、時間がズレてたんだよ」

歩夢「あの子は──」


───────────

歩夢『今は“5月”で、私が最後に見た景色と季節は“10月”。こんなわけがわからないものが……現実だったの』

────
──

“10月5日” 16時29分

虹ヶ咲学園 普通科2年生 上原歩夢

同好会活動中。校外をランニングしていた途中。
公園から道路に飛び出す子供と走行中の車が衝突しそうになる。上原歩夢が身を呈し、走行していた車と衝突。飛び出した子供は無事であるも、上原歩夢は意識不明。お台場総合病院へと搬送。

命は助かるも、ずっと眠りについたままである。

医師はまるで魂だけが抜け落ちた状態だと語る。



“5月5日”

上原歩夢の意識が回復。

───────────


歩夢「──5ヶ月後の世界にいる」

歩夢「みんな! 時間設定を5ヶ月後に変更してみて」

歩夢「それで、もう一回だけチャレンジしてみよう!」

339: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:07:53.42 ID:qjg1At9p0
──暫くして、全員の設定変更と同期が完了する。


愛「そう言えば、そうだったな……」

愛「自分たちの事ばっかり考えてたわ」

歩夢「うん。わたしも一緒だよ」

璃奈「──よし、アランのセットも完了した」

璃奈「気が付いてくれてありがとう、歩夢さん」

歩夢「ううん。果林さんの一言のおかげだから」

果林「えへへ~」

エマ「果林ちゃんえらいえらい」ナデナデ

せつ菜「お手柄ですよ! 果林さん!」ペカー

しずく「これで成功できるかな?」

かすみ「……次で921回目のチャレンジ」

彼方「どうだろうね」

彼方「ただ、やってみるしかないよ。ね? 璃奈ちゃん」

璃奈「うん。彼方さんの言う通りだ」

璃奈「それに」

しずく「それに?」

璃奈「少しずつ、1歩ずつやっていこう。例え今日、今この瞬間成功できなくても」

璃奈「チャレンジする事はできるからね」

かすみ「……たまにはいい事言うじゃん」

璃奈「いつもだよかすみちゃん」

かすみ「はいはい…」

340: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:17:34.59 ID:qjg1At9p0
璃奈「よし、いくよ。みんな」

歩夢「うん……!」

歩夢「よろしく。璃奈ちゃん」


璃奈ちゃんがアランのボタンに指を添える。

もう何百回と見た光景だ。


璃奈「何度もごめんねアラン」

璃奈「お願いね」


優しい声色で、アランに声を掛けた璃奈ちゃんは──ボタンを押した。


歩夢(──飛んで!)

歩夢(お願い!!)

341: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:21:32.85 ID:qjg1At9p0
──回数にして、921回。

今日

この日

この瞬間

わたし達は──










──ベツノセカイヘツナガッタ。

343: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:33:45.30 ID:qjg1At9p0
ザァァァァァァアアアアアアアアアア─────────!!


耳を劈くような音が、部室に響き渡る。

アランの目と、その見えているのものを映す為に接続されているモニターに大量のノイズが走っていた。

今まで、見たことが無い光景だ。


璃奈「!! ──来た!!」


少しずつノイズが消えていく。



『──ん。────、──』



歩夢「!!」

歩夢(何か、聞こえる!)


ノイズが晴れていき、音を拾い始める。


モニターには、部室が映っている。

ロッカーの近くから、一人称視点で、部室を映している。

そして──



『もー、侑ちゃん?』



──声が届いた。

345: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:49:23.94 ID:qjg1At9p0
歩夢「あっ……」


まるで、遠くのものを見つめるような感覚を覚えた。





歩夢『あれだけ日頃からロッカーの中は整理しなきゃって言ってたよね?』

侑『あはは……いやぁ、最近色々忙しくって』

歩夢『言い訳しないのっ!』

侑『ご、ごめんって歩夢!』

侑『……ん? あれ?』

歩夢『どうしたの? 侑ちゃん』

侑『アランの電源が入ってる』


モニターに見知った女の子の顔が映る。

若葉ちゃんがモニターの奥にいた。

けど、彼女は侑ちゃんと呼ばれている。若葉ちゃんじゃない。

彼女は、高咲侑ちゃんだ。

──あの子の世界の、若葉ちゃん。

346: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 22:55:19.85 ID:qjg1At9p0
歩夢『え? そんな事あるのかなぁ?』

侑『ほら歩夢。見て見て』

歩夢『ん~?』

スタスタ…







歩夢『あっ、本当だ』










歩夢「」


モニターに──あの子が映った。

347: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 23:05:30.53 ID:qjg1At9p0
歩夢『うーん……なんでだろ? 璃奈ちゃんがちゃんと電源落としてたと思うんだけど』

侑『幽霊のしわざかなぁ?』

歩夢『へぇ!? ちょ、ちょっとやめてよ侑ちゃん! 怖いよ……』

侑『冗談だよ。歩夢はほんっと可愛いね』

歩夢『からかわないでよ。も~』








歩夢「あ、あの子だ……」

歩夢「みんな……」

歩夢「あの子が……いるよ…っ…!」


声が震えてしまう。

鼻がツンとする。ちゃんと見なきゃいけないのに、見たいのに、少しずつ視界もぼやけてしまう。


歩夢「あの子……」ポロ、ポロ

歩夢「元の……世界に……ッ」ポロポロ

歩夢「っ、戻れてるよぉ……!!」ペタリ

351: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 23:28:25.00 ID:qjg1At9p0
せつ菜「よかった……良かったぁ……!」ペタン

しずく「ちゃんと、戻れたんだ!」

かすみ「うん──うん! しずく! 歩夢先輩が、映ってるよ……!」

エマ「歩夢ちゃん……よかった……!」

果林「うん……! わたし、信じてたもん!!」

彼方「……おかえり、歩夢ちゃん……」

彼方「向こうの私はそう言ってあげたのかなぁ」

愛「璃奈! すまん、座標はまだ特定出来ない!!」

璃奈「こっちもダメそうだ……」

璃奈「場所はunknownか……まったくっ、世界はまだまだ謎に満ち溢れてるね」

352: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 23:43:12.30 ID:qjg1At9p0
歩夢『でも本当に急にどうしたんだろうね?』

侑『ねー。璃奈ちゃんに聞いてみよっかな』

歩夢『それがいいか──も』

ザザッ



歩夢「!!」


少しずつ、画面にノイズが走り始める。


愛「!! ちっ、まじかよ……時間制限付きかよ!」

璃奈「歩夢さんがこっちに来ていた時と同様に、向こうのアランにもかなり負荷が掛かってるのか!」

璃奈「向こうの私、ほんとごめん……アラン壊れるかも。いつかお詫びしに行くから!」

璃奈「今は少しでも情報を手に入れないと」カタカタカタカタ

歩夢(時間制限付き?)

歩夢(ってことは、もうすぐ接続が途切れちゃうの!?)


そう思った瞬間──わたしは急いでアランの所まで向かった。


せつ菜「歩夢さん!?」


わたしはアランにしがみつく。


璃奈「!!」

璃奈「歩夢さん!」

璃奈「マイク機能は横のスイッチを押しながらスピーカーに声をかけるんだ!」

歩夢「──うん!」


璃奈ちゃんが何かを察したのか、わたしにそう教えてくれた。

モニターに写っているのは、座標すら特定出来ない、別の世界。

奇跡でも起きなければ、干渉できるわけが無い。そんな事は分かっていたけれど、わたしは──あの子に声をかけた。








『歩夢!!』

歩夢『……へ?』

侑『え?』

353: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 23:45:13.64 ID:qjg1At9p0
ツナガルコネクト。

355: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/24(金) 23:58:24.51 ID:qjg1At9p0
『歩夢!!』

歩夢『え? ──へ!?』

『ありがとう!!』

歩夢『……?』ポカーン

『わた──は……あなたに会え──かった!!』ザザッ

『幸せに、なれた!!』

歩夢『……』

『わた──と!』ザザッ

『若葉ちゃんの夢を叶──くれて!!』ザ、ザザッ

歩夢『!!』

『ありがとう』

歩夢『…………』

侑『な、なに……これ──』

ギュッ

侑『え? 歩夢……?』

歩夢『私の方こそ、ありがとう』ニコッ

侑『あ、歩夢……?』

歩夢『ふふっ』

歩夢『なんか、そう言いたくなっちゃったんだ』

歩夢『なんでかは分からないけど』

歩夢『そう言いたか──』


──────────────

358: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 00:17:47.50 ID:HPokkHwG0
璃奈「……ロストした」スタスタ

璃奈「こっちのアランの電源も、落ちてるね」カチ、カチ

歩夢「……」

璃奈「歩夢さん……? 大丈夫かい?」

歩夢「わたしね」

歩夢「あの子……消えちゃったんじゃないかって心のどこかで思ってたの」

歩夢「だってさ」

歩夢「どうなったか、確認のしようがなかったんだもん」

歩夢「皆、わたしのせいじゃないって言ってくれたけれど」

歩夢「やっぱり、心の奥に罪悪感はあったんだ」

歩夢「けど……けどね!」

歩夢「あの子は……戻れてた」

歩夢「侑ちゃんの所に、戻れてた」

歩夢「璃奈ちゃん。ありがとうね」

歩夢「みんなも……ありがと……!」ポロ、ポロ

歩夢「!!」ゴシゴシ

歩夢「ご、ごめんね。さっきから急に泣いちゃって」

歩夢「に、虹ヶ咲学園の狂犬なんて言われてた元不良のわたしが、情けないよね?」

「情けなくなんかありません」

歩夢「──え?」

せつ菜「情けなくなんか、ありませんよ」

歩夢「せつ菜ちゃん…」

359: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 00:28:29.84 ID:HPokkHwG0
歩夢「……情けないし、わたしは泣かずに前を向かなきゃいけないのに……」

せつ菜「歩夢さんって本当に抱え込む癖がありますよね?」

せつ菜「あの子と何も変わりません。本質は一緒です」

歩夢「……」

せつ菜「歩夢さん。泣いていいんですよ」

歩夢「!!」

せつ菜「泣きたい時は、泣いていいの」

せつ菜「我慢しなくていいんだよ」

歩夢「で、でも! わたしは!」

せつ菜「それにあなたは、虹ヶ咲学園の狂犬なんかじゃない」

せつ菜「頑張ってきた、ただの一人の女の子だよ」

歩夢「……!」

せつ菜「情けなくなんか、ない」

せつ菜「だから……」

ギュッ

せつ菜「泣きたい時は、泣いていいの」

歩夢「」

360: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 00:39:19.65 ID:HPokkHwG0
愛「アタシ達が隠す」

愛「アタシ達以外、誰も見てねぇよ」

歩夢「愛……」

愛「それにさ。泣きたい時は、一緒に泣こうよ」

ギュッ

歩夢「!!」

かすみ「そうですよ。歩夢先輩」

しずく「自分の気持ちに嘘ついちゃダメ」

璃奈「うん。歩夢さん、みんな」

彼方「気持ちは一緒だよ」

果林「みんなの言う通りだよ、歩夢ちゃん」

エマ「わたし達が一緒にいるから」

ギュュュュッ

歩夢「!! っ、っ……!」


皆がわたしを守ってくれるように、囲んで抱きしめてくれる。

優しく、少しずつ。人数も増えていって、皆に触れられて、少し息苦しくなる。

けれど──


歩夢「ひっぐ……!!」ポロ、ポロ


とっても温かくて、心がぽかぽかしてきて、心地よかった。

幸せだ。幸せ過ぎて、我慢できなくなっちゃって──涙が止まらなくなっちゃった。


歩夢「うぁああああ……!! あぁああぁぁああ…っ…!!」


こうして、時間は過ぎていった。

361: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 00:48:00.70 ID:HPokkHwG0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

璃奈「いやぁ……いっくら接続し直しても成功しないねぇ」

璃奈「これはまた計画から練り直すしかないねぇ」

しずく「奇跡だったのかもしれないね」

かすみ「ここ最近起きてる現象は信じられないことばっかりだけどね」

璃奈「世の中そんなことばっかりさ」


実験が終わり、もうすぐ門限になってしまう。

今わたしたちが何をしてるかって言うと……。


彼方「はぁ……床って冷たくて気持ちいいね~……すやぁ……」

エマ「か、彼方ちゃん? 寝ちゃダメだよ~?」

果林「そーだやー……」ウト、ウト

愛「だや……? か、カリンさん? 起きてるか~?」


床にみんなで寝転がっていた。


せつ菜「大の字で寝るのもいいものですねぇ~」

歩夢「ふふっ、中々こんな事できないもんね」


何をするわけでもなく、ただ天井を見つめていた。

363: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 01:02:23.40 ID:HPokkHwG0
歩夢「ねぇみんな」

歩夢「みんなは、どんなスクールアイドルを目指してるの?」

かすみ「ナンバーワンスクールアイドル!」

しずく「声でっか!」

かすみ「気持ちを込めたからね」

かすみ「ここ最近遊んでばっかりだったし、明日は遂に若葉先輩が戻ってきます。彼女がいると練習もかなり捗るので、今一度気合い入れていきますよ?」

しずく「若葉先輩が戻ってきてくれるのほんっと楽しみ!」

しずく「せつ菜さんはどんなスクールアイドル目指してるの?」

せつ菜「わ、私ですか?」

しずく「うん」

かすみ「聞きなさいよ」

364: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 01:17:38.66 ID:HPokkHwG0
せつ菜「私は、正直自分が楽しむ事くらいしか考えられていないので」

せつ菜「今後は、見ている皆さんが楽しめるようなライブができるスクールアイドルになりたいですね」

愛「せつ菜らしい真っ直ぐな目標だな」

せつ菜「えへへ~」

愛「アタシも……せつ菜と一緒かな。皆が楽しめるライブが出来る、真っ直ぐで、太陽みたいに明るいスクールアイドルになりたい」

愛「太陽になりたいようってな」

歩夢「…………」

愛「ごめんって」

璃奈「若葉さんがいたら爆笑してくれてたと思うよ」

愛「若葉にダジャレ披露するとよく笑ってくれるからめっちゃ嬉しいんだよなぁ」

エマ「わたしはやっぱり……見てくれた子達の心をぽかぽか癒せるようなスクールアイドルかなぁ」

エマ「果林ちゃんはセクシーで情熱的なスクールアイドル?」

果林「うん!」

果林「あと、見ている子達を皆魅了させるモデルのようなスクールアイドルになりたいわね」

エマ「かっこいいなぁ、果林ちゃんは」

果林「でっへへ~……どーもよい!」

彼方「かっこいいし可愛いね~」

365: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 07:03:36.42 ID:HPokkHwG0
璃奈「私は、皆が参加して楽しめる、距離が近く接しやすいスクールアイドルになりたいかな」

璃奈「加えて、科学技術を活かした唯一無二のライブをするスクールアイドルにもなりたいね」

しずく「璃奈は頭良いからすぐにでもなれると思うなぁ」

彼方「私は、そーだなぁ……」

彼方「見てくれた子達の一生の思い出になるようなライブがしたいな」

彼方「エマちゃんと同じく、見ている皆が癒されるようなスクールアイドルになりたい」

彼方「しずくちゃんは~?」

しずく「……私は」

しずく「何かのきっかけになるようなスクールアイドルになりたい」

しずく「私のライブに来てくれた方々が、自分の本当にやりたい事に足を踏み出せるような……背中を押してあげられるようなライブがしたい」

歩夢「みんなすごく色々考えてるね」

かすみ「歩夢先輩はどうなんですか?」

歩夢「……わたしはねぇ」

歩夢「あの子と一緒」

歩夢「皆の為のスクールアイドルになりたい!」

366: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 07:16:02.70 ID:HPokkHwG0
歩夢「スクールアイドルは、色々な人に支えられて出来るものだと思うんだ」

歩夢「応援してくれる皆がいてくれるからできるものだと思うし」

歩夢「仲間である皆がいるから頑張れたりもする」

歩夢「でも、そんな皆もそれぞれ色々な思いを抱えながら日々を生きてると思うの…」

歩夢「ただ、わたしのライブを見ている時だけは、全てを忘れて楽しめる」

歩夢「見てくれた方々が本当に良かったなって思えるようなライブが出来るようになりたい」

歩夢「応援してくれる皆や、仲間である皆……全部引っ括めて!」

歩夢「そんな皆の為の」

歩夢「スクールアイドルになりたいっ!」




367: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 07:23:55.34 ID:HPokkHwG0
───────────

8月29日

昨日も今日も、色々な事がありすぎて何を書いていいか分からない。

ただ、一つ書けることがある。

わたしと若葉ちゃんの思い出を叶えてくれてありがとう。

憧れのあの子の幸せを祈っています。

またね。向こうの歩夢。

───────────

368: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 07:33:25.66 ID:HPokkHwG0
<翌日 東京駅>

歩夢「……」

歩夢(昨日は日記書きながら寝落ちしちゃった…)

歩夢(若葉ちゃん、道迷ってないかな?)

歩夢(早く会いたいなぁ)


今日は若葉ちゃんが合宿から戻ってくる日。

お迎えに行くと約束していて、今は彼女の帰りを待っている途中だ。

1週間ぶりの若葉ちゃん。早く会いたいなぁ。

そわそわしてしまうから、意味もなくスマホを付けて消してを繰り返す。

──そんな時だった。


「歩夢っ!」

歩夢「──あっ!」パァァァァ


若葉ちゃんが、帰ってきた。

369: (しまむら) (ワッチョイ 9228-M3Bp) 2021/09/25(土) 07:39:41.92 ID:HPokkHwG0
歩夢「若葉ちゃん! おかえりなさ──」

若葉「歩夢~~~~~!!!!」バッ

ギュッ!!

歩夢「ふへっ!?////」

若葉「会いたかったよー!!」

歩夢「わ、わわわわわわわわ若葉ちゃん!? ちょ、急にだ、抱きつかれるとそ、その!!」

歩夢「恥ずかしいよ!!////」

若葉「はぁ……照れてる歩夢も可愛い……」

若葉「この再会の為に必死に頑張った甲斐があったよ……」

歩夢「わ、若葉ちゃん!? 余韻に浸ってないでよ……」

若葉「歩夢ぅ……」ギュュュュュ

歩夢「あぅ…っ…///」

歩夢「も、もー!」

歩夢「恥ずかしいよーーー!!」


わたしの叫びが東京駅に響き渡った。

370: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 08:41:54.96 ID:kak1qSITd
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

若葉「歩夢」

若葉「1週間、色々できた?」

歩夢「うん。本当に色々な事があったよ」

歩夢「みんなで遊んだり、不思議な体験をしたり……過去と向き合ったり」

歩夢「色々できたよっ」ニコッ

若葉「そっか」ニコッ

歩夢「若葉ちゃんは合宿どうだった?」

若葉「めちゃくちゃ疲れた」

歩夢「あはは…」

若葉「でも」

若葉「楽しかったよ」

若葉「私やっぱり、ピアノを弾いたり音楽と関わるのが大好きなんだなって実感できた!」

歩夢「ふふっ、良かったね。若葉ちゃん」

若葉「うんっ!」

371: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 08:55:28.06 ID:aUc7Y7Tgd
若葉「ん~! 久しぶりに皆と会えるのも楽しみ~!」

若葉「今日この後13時から愛ちゃんの家で集まるんだよね?」

歩夢「うん。若葉ちゃんおかえりなさい打ち上げ」

若葉「めっちゃ集まるの早いよね」

歩夢「1週間会えなかった分をここで発散させるって皆意気込んでたよ」

歩夢「色々準備もしてくれてるみたい」

若葉「嬉しいなぁ」ニコニコ

歩夢「だねっ」

歩夢「──って、そう言えば若葉ちゃん」

若葉「ん?」

歩夢「荷物は? 行く時は旅行用の大きいバッグ持ってってたよね?」

若葉「重いから家に直接郵送してくれるんだって」

歩夢「そうなんだ。便利」

若葉「そんな事よりさ、歩夢」

歩夢「うん?」

若葉「打ち上げまでちょっと時間あるじゃん?」

歩夢「うん」

若葉「少しだけ、一緒に寄ってほしい所があるんだ」




372: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 09:00:12.90 ID:aUc7Y7Tgd
若葉「失礼しまーす」ガラガラ


若葉ちゃんが来たいと行った場所。

それは、虹ヶ咲学園の音楽室だった。


若葉「よかった、誰もいない」

若葉「これでピアノを独り占めできるぞ~」

歩夢「ピアノ、弾きたかったの?」

若葉「歩夢に聴いてほしいんだ」

若葉「私のピアノ」


にっこりと微笑む若葉ちゃん。

癒される。こうやってまた若葉ちゃんの笑顔を見る事が出来るのが嬉しくて堪らない。


若葉「いい?」

歩夢「うん」

歩夢「わたしも若葉ちゃんのピアノ、聴きたい」ニコッ

若葉「うん!」

373: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 09:07:25.17 ID:aUc7Y7Tgd
若葉「よしっ、準備完了」

若葉「すぅ……はぁ……」

若葉「じゃあ、いくね?」

歩夢「うんっ」

若葉「────」スッ


若葉ちゃんが、綺麗に指を動かす。

さっきまでわたし達の声しか音がなかった空間に、彼女の奏でるピアノの音色に染められていく。

すっごく、綺麗。


歩夢(若葉ちゃん、本当にピアノ上手だなぁ)

歩夢「……」

歩夢(心地良い)


目を瞑り、聴き込む。

音に合わせて、身体をゆったりと揺らしたくなる。


若葉「──歩夢」

歩夢「ん?」パチリ

若葉「私、歩夢の歌も聴きたいな」

歩夢「わたしの歌……?」

若葉「うん」


ピアノを弾きながら、若葉ちゃんがわたしに声を掛ける。器用だ。

374: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 09:15:50.75 ID:aUc7Y7Tgd
若葉「音は合わせて弾くよ」

若葉「歩夢の好きなように、歌ってほしい」

歩夢「……聴きたいの? わたしの歌」

若葉「聴きたい」

歩夢「もー、しょうがないなぁ」

歩夢「わたしも歌いたかったから、いいよ」ニコッ

若葉「ありがとっ」


再び目を瞑り、胸に手を当てる。

“あの子”との記憶が、蘇ってくる。


歩夢(わたしは、あの子と同じ皆の為のスクールアイドルになりたい)

歩夢(気持ちは一緒)

歩夢(この先、どんな未来が待っているかは分からないけれど)

歩夢(わたしは、ひとりじゃないから)

歩夢(これからも、一歩一歩、歩いていこう)

歩夢「いくよ? 若葉ちゃん」

若葉「うん!」

歩夢「────」スゥゥゥ


──真っ直ぐ、わたしらしく!

375: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 09:17:04.86 ID:aUc7Y7Tgd
【Dream with You】

376: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 09:18:32.19 ID:aUc7Y7Tgd
歩夢「パラレルワールド」その後

おしまい。

378: (なっとう) (ワッチョイ b37b-zD50) 2021/09/25(土) 09:34:40.33 ID:PErDPtzf0
乙でした。

すごくおもしろかった

386: (茸) (スプッッ Sd52-M3Bp) 2021/09/25(土) 10:31:25.56 ID:FKxW99Jkd
約1ヶ月の間読んで頂いたり感想レスや保守などして頂いて本当にありがとうございました。
今後ともSSは書いていくつもりなので、再度見かけたらよろしくお願いします。

また、よかったら
歩夢「パラレルワールド?」
はpixivで果林としずくの描写を追加した完成版として投稿してあります。暇な時がありましたら探してみて頂けると幸いです。

侑「歩夢が目を覚まさなくなった世界」
【SS】侑「歩夢が目を覚まさなくなった世界」【ラブライブ!虹ヶ咲】
■約37000文字■侑「歩夢! 歩夢っ!!」 ──何が起きたか、理解出来なかった。 それは、今まで見た事のない景色。赤色の世界。 私の見ているこれは、何? 頭が上手く、動かない。──ただ、信じられなかった。 私の見ている赤色の世界は、大切で愛おしい幼馴染で作られたモノ。 侑「う、うそだ……うそだよ!! こ、こんな……ことって……!!」 視界が歪む。冷や汗が止まらず、身体が震える。 せつ菜「だ、だめです! 侑さん!!」 横から歩夢に触れようとする私を止めるせつ菜ちゃんの声が聞こえる。同好会の皆もざわめいている。──救急車を呼ばなきゃという声が聞こえた気がする。 でも、私は歩夢を見る事しか出来なかった。 侑「歩夢!!」 侑「──歩夢ッ!!」 呼びかけても、反応はない。 ──この日から、私の幼馴染は目を覚まさなくなった。


↑のパラレルワールドの侑視点の話も前に書いたのでもし良かったらよろしくお願いします。

長文失礼致しました。ありがとうございました。

390: (茸) (スププ Sd32-Fnr6) 2021/09/25(土) 19:54:35.11 ID:YBSBwu2hd
おつおつ
最初からリアルタイムで読ませてもらってたが、ほんと引きこまれるし、パラレルの方の歩夢達のキャラも大好きだったからこういう日常が見れて嬉しかったし、試行錯誤の末の最後の展開には感動した。
素晴らしい作品群をありがとう

389: (SB-Android) (オッペケ Sr47-fSQe) 2021/09/25(土) 12:10:37.51 ID:5xBQrokqr
お疲れ様です!
めちゃ面白かったです!

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1629379223/

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