【SS】愛「恋バナしようよ!」 せつ菜・かすみ・しずく「!?」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


3: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:25:27.31 ID:nJgHPgNu
代行ありがとうございます。
 
4: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:29:47.36 ID:nJgHPgNu
同好会合宿 夜

愛「じゃあそろそろ寝よっか!」

せつ菜「そうしましょう!」

しずく「電気消しますよー」

かすみ「はーい」

カチッ


『もうエマさんったら!』『ふふふっ』


しずく「……?」

しずく(隣の部屋から声が……)


『エマはこういうの強いわよ?』『私も騙された』
『これ面白いね!』『彼方ちゃん燃えてきたよ〜』

ワイワイ ガヤガヤ


かすみ「……」

愛「隣、まだまだ騒がしいね」アハハ

しずく「すごい盛り上がってます……」

せつ菜「あちらは6人部屋ですしね」

かすみ「こっちの4人部屋だって、4人でまだまだ盛り上がりましょうよ!」

しずく「もうちょっとお喋りしてから寝よっか」

せつ菜「明日も練習があるので早めに寝ないと……と言いたいところですが、このままだと負けた気がしますね」

愛「だったらさあ、愛さんのアイディア乗ってみる!? 愛だけに♪」

せつ菜「……?」

愛「恋バナしようよ!」

せつ菜・かすみ・しずく「!?」
 
6: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:35:46.35 ID:nJgHPgNu
かすみ「恋バナ……ですか!?」

愛「うん、修学旅行とか合宿の定番じゃん♪」

愛「ねぇねぇ、みんなは好きな人とかいないの?」

しずく「えっと……」

かすみ「そりゃ、好きな人はいますけど……」

せつ菜「……」

愛「じゃあ好きな人教え合おうよ! この4人だけの秘密ってことで!」ニコッ

愛「まずはかすみんから!」

かすみ「ええっ! 私からですかー!?」

かすみ「そんなの恥ずかしいですよー……」

愛「嫌ならパスしてもいいよ!」

しずく「パスありなんだ」

かすみ「うぅ……」

かすみ「でもしず子は知ってるし、どうせわかっちゃうことなんで、かすみん言います!」

愛「いいねー! だれだれー?」

かすみ「……」

かすみ「侑先輩……」


「「「おおおー!!!!」」」
 
11: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:40:03.31 ID:nJgHPgNu
かすみ「……!!」カアアアア

せつ菜「そうだったんですか……!」

愛「かすみんがゆうゆのこと大好きなのは知ってたけど、ほんとに好きなんだね!」

かすみ「はい……」

かすみ「大好きなんです……」ギュッ

かすみ「それで、実はこの合宿中に告白しようと思ってて……」

せつ菜「ええっ!?」

愛「凄い! 頑張って、かすみん!」

かすみ「えへへ、ありがとうございます」
 
14: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:44:31.23 ID:nJgHPgNu
かすみ「かすみんちゃんと言ったんですから、愛先輩も教えてくださいよー!」

愛「あはは、じゃあ愛さんもバラしちゃおっかなー!」

しずく「どなたなんですか?」

愛「愛さんはねぇ……」

せつ菜「……」ゴクリ

愛「りなりー!」ニコッ


「「「あ〜!!!」」」



せつ菜「もしかしてとは思いましたが、やっぱり璃奈さんでしたか!」

かすみ「そうだったんですね!」

しずく「仲良しですもんね!」

かすみ「……」

しずく「……」

かすみ(ねぇしず子、どうしよう!?)チラッ

しずく(ここは何も知らないフリするしかないよ、かすみさん!)チラッ

愛「うん? どうしたの?」

かすみ・しずく「いえ、何も!」
 
16: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:51:44.81 ID:nJgHPgNu
愛「じゃあ次はせっつーね!」

せつ菜「!!」ギクッ

せつ菜「わ、私は好きな人とか、特にいませんので……」アハハ

愛「そう? じゃあパスする?」

かすみ「せつ菜先輩、かすみんたちの好きな人聞いておいてそんなこと言うんですかー?」ジトッ

せつ菜「……!」

しずく「せつ菜さんの好きな人、気になります!」キラキラ

せつ菜「うぅ……」

愛・かすみ・しずく「……」ジーッ

せつ菜「わ、わかりました! 言います! 言いますから!」

かすみ「やったー!」

愛「いいね、せっつー!!」

しずく「それでその方とは……?」

せつ菜「…………」

せつ菜「歩夢さん…………」ボソッ


「「「ヒューヒューヒュー!!!」」」
 
17: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 21:55:03.77 ID:nJgHPgNu
せつ菜「うるさいですね!」カアアアアアア

愛「そっかー、せっつーは歩夢だったかー」

かすみ「そうだったんですねー!」

しずく「いつからですか!?」

せつ菜「えっと、スクールアイドルフェスティバルの前あたりから……」

愛「おおー!」

せつ菜「ってそんなことはいいんです!!」

せつ菜「つ、次しずくさんですよ!」

しずく「……!」

しずく「あ、えっと……」

しずく「実はかすみさんにも話したことないんですけど……」

かすみ「そうだよ! しず子の好きな人の話なんて聞いたことないよ! 誰なの!?」

愛「演劇部の人?」

しずく「いえ、実は……」

しずく「……」

しずく「彼方さんです……」


「「「おおおお!!!!」」」
 
19: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:02:05.87 ID:nJgHPgNu
しずく「私もかすみさんと一緒で、この合宿で告白しようと思ってるんです」

かすみ「そうだったの!?」

しずく「告白する前にかすみさんに話すつもりだったんだけど、今になっちゃった」ゴメンネ

愛「みんなやるねー!」

しずく「うまくいくかわからないですけどね」アハハ

せつ菜「しずくさんはよく彼方さんのお世話してますよね」

しずく「はい。彼方さんからもすごく優しくして貰ってて……」

愛「じゃあ両想いなんじゃないの!?」

しずく「いえ、そんな……! 期待しないようにはしてますが……」

しずく「彼方さん、私のこと何か言ってたことありませんか……?」

かすみ「うーん……」

せつ菜「1年生なのにとてもしっかりしてるとは前に言っていましたよ!」

しずく「彼方さんが!?」パァ

かすみ「良かったね、しず子! 告白、一緒に頑張ろうね!」ニコッ

しずく「うん!」ニコッ
 
24: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:14:52.04 ID:nJgHPgNu
せつ菜「えっと、その……」

せつ菜「歩夢さんは私のこと、何か言ってませんでした……?」

かすみ「歩夢先輩、何か言ってたかなぁ……」

愛「あ、歩夢この前、せっつーのことカッコいいって言ってたよ!」

せつ菜「えっ!?」バサッ

せつ菜「歩夢さんが私のことカッコいいって!? そう言ってたんですか!!?」

愛「せっつー、しーーっ! 隣に聞こえちゃうよ」

せつ菜「あ……」

愛「まあでも、歩夢も愛さんとりなりーと同じで、せっつーのライブ見てスクールアイドル始めたわけだしね」

愛「せっつーに対する憧れの気持ちはあると思うよ!」ニコッ

せつ菜「そう思ってくれてたら嬉しいのですが」

かすみ「ふふっ、せつ菜先輩も可愛いとこあるんですね」

せつ菜「そういうかすみさんは、侑さんにいつも可愛いって言ってもらってるじゃないですか」

かすみ「それはそうですけど……」

かすみ「侑先輩、みんなに可愛いって言うから……」シュン

せつ菜「あ……」

かすみ「だからかすみん、どうしても侑先輩の一番になりたくて……」

かすみ「もし告白ダメだったら、慰めてくださいね」エヘッ

せつ菜「かすみさん……」

愛「愛さん、めっちゃ応援するから! 2人とも頑張ってね!」

せつ菜「私も応援します!」

しずく「ありがとうございます」

しずく「ちなみに、愛さんとせつ菜さんは告白はされないんですか?」

愛・せつ菜「……!」


愛「うーん、愛さんもタイミングが来れば告白しようかなとも思うけど……」

愛「今はりなりーと楽しく過ごせれば十分なんだ」

かすみ・しずく「……」
 
26: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:26:02.90 ID:nJgHPgNu
せつ菜「私も同じです。今のままでいいと言うか……」

せつ菜「そもそも歩夢さんと付き合えるだなんて思ってませんから。脈なしです」アハハ

しずく「そんなことないように思うのですが」

かすみ「うーん、歩夢先輩は誰が好きなんだろ……?」

愛「歩夢の好きな人かぁ……元カノの話なら聞いたことあるけど……」

せつ菜・かすみ・しずく「!?」

かすみ「なんですかその話!?」バッ

愛「あ……」ヤベ

愛「前にゆうゆから聞いたんだけど、ごめん、この話やっぱりなしで……」アハハ

かすみ「今更なしになんてできないですよ!」

しずく「待ってかすみさん、せつ菜さんが……」

せつ菜「…………」

せつ菜「聞きたくないですが、やはり気になります……」

せつ菜「愛さん、教えてください!」キッ

愛「……!」

愛「いや、ゆうゆからチラッと聞いたことあるだけだよ?」

愛「中3の時に同じ学年の子と付き合ったんだって」

愛「長身でイケメン!って感じの女の子だったとか」

愛「すぐ別れちゃったみたいだけどね」

せつ菜「……っ!」ズキッ
 
28: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:30:41.64 ID:nJgHPgNu
せつ菜「はぁ……そうですよね……」ズーン

せつ菜「やっぱり歩夢さんは背が高くてシュッとしてる人が好みですよね……」

せつ菜「自分より背の低い私のことなんて……」ズーン

愛「あ、いや、ごめんせっつー、そんなつもりじゃ……!」

しずく「せつ菜さんだってイケメンですよ!」

愛「うん! それに歩夢はそういうの気にしないと思うけどなぁ……」

せつ菜「うぅ……」

かすみ「そしたら、かすみんが今度歩夢先輩にタイプの子をそれとなく聞いてみます!」

せつ菜「え!?」

かすみ「歩夢先輩には侑先輩のこと相談に乗ってもらってますから。秘密のお話する仲なのです!」

せつ菜「そうだったんですか!」

かすみ「侑先輩に告白するなら、まず押さえるべきは歩夢先輩ですからね! かすみん、そういうとこはちゃんとしてるんです!」エッヘン

愛「そしたらかすみん、歩夢のお墨付き貰ってるってことじゃん!」

せつ菜「かすみさんの行動力、見習いたいですね……」

かすみ「それならせつ菜先輩も私たちと一緒に告白しませんか?」

せつ菜「告白は無理ですー!」ブンブン

「「「あははははは」」」
 
31: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:35:56.12 ID:nJgHPgNu
愛「2人はいつ告白するか決めてるの?」

かすみ「最終日の夜です」

しずく「私もです」

愛「そっか!」

かすみ「それまでにイベントもありますからねー!」ニヤッ

せつ菜「イベント……?」

かすみ「明日の夜、みんなで肝試しやるじゃないですかー!」

かすみ「その時こそ、皆さんも距離を縮めるチャンスですよ!」

せつ菜「ああ、肝試しですか」

しずく「誰とペアになるかはクジで決めるんだっけ?」

愛「好きな人とペアになれればラッキーだよね!」

かすみ「まあまあ、そこはかすみんにお任せください!」ニシシ

愛・せつ菜・しずく「?」
 
32: (もんじゃ) 2021/12/10(金) 22:45:14.01 ID:nJgHPgNu
 ◆

愛「おやすみー!」

「「「おやすみなさーい!」」」



『…………』



愛(隣も静かになったね。もうみんな寝たのかな)

愛(りなりーの楽しそうな声も聞こえたから、愛さん嬉しいな)

愛(この合宿で、みんなとも、りなりーとも、楽しい想い出たくさん作りたいな)



しずく(彼方さんと同じ部屋になれなかったのは残念だったけど、皆さんとこういうお話できて楽しかったな)

しずく(勝負と決めていたこの合宿も1日目があっという間に終わっちゃった)

しずく(最終日の夜の私は、無事に告白できているでしょうか……)



かすみ(侑先輩に告白するの不安もいっぱいだったけど……)

かすみ(しず子も一緒に告白するって聞いて、愛先輩とせつ菜先輩も応援してくれて、ちょっと勇気出てきちゃった)

かすみ(えへへ、侑先輩、オッケーしてくれるかな……?)



せつ菜(まさかこの合宿でかすみさんとしずくさんが告白するなんて驚きです……)

せつ菜(告白……ですか……)

せつ菜「…………」

せつ菜(歩夢さん…………)ギュッ




愛(うーん、なんか……)

しずく(恋バナしたせいで……)

かすみ(好きな人のこと考えちゃって……)

せつ菜(ドキドキして……)


愛・しずく・かすみ・せつ菜(眠れない……!!)
 
52: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:05:00.67 ID:K8ekBmdi
翌日

しずく「昨日の夜、いろんな話しちゃったね」

かすみ「そうだねー」

かすみ「まさかしず子が彼方先輩のこと好きだったなんてビックリだよ!」

しずく「ふふふ」

しずく「でもかすみさん、私もビックリしたよ」

かすみ「愛先輩のこと……だよね」

しずく「うん」

かすみ「愛先輩、何にも気付いてないみたいだったよね」

しずく「そうだね。たぶん夢にも思ってないんじゃないかな」

しずく「璃奈さんがもう3回も愛さんへの告白に失敗してるってこと……」
 
54: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:08:58.62 ID:K8ekBmdi
1ヶ月前

かすみ「え、りな子が!?」

しずく「これから!?」

璃奈「うん、愛さんに告白しようと思う」

璃奈「望み薄なのはわかってる。きっと私の片想い」

璃奈「でも、この気持ちを知って欲しい」

璃奈「愛さんに知って欲しい」

しずく「璃奈さん……」

かすみ「頑張って、りな子! 応援してるよ!」

しずく「私も! 絶対うまくいって欲しいもん」

璃奈「ありがとう、2人とも」
 
55: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:14:42.69 ID:K8ekBmdi
璃奈「愛さん、大事な話があるんだけど……」

愛「うん? どうしたの? りなりー」ニコッ

璃奈「実は……」


ピンポンパンポーン

『情報処理学科2年宮下愛さん、職員室までお願いします』


璃奈「!?」

愛「あれ、なんだろう……?」

璃奈「愛さん、行ってきて」

愛「え、でも、りなりー話があるんでしょ?」

璃奈「話はまた今度にする」

愛「……そっか。わかった! ごめんね、りなりー!」

スタスタスタスタ

 ◆

かすみ「りな子、ドンマイ……」

しずく「また次があるよ!」

璃奈「うん……」
 
57: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:19:34.41 ID:K8ekBmdi
1週間後

璃奈「愛さん、聞いて欲しいことがあるの……」

愛「もしかしてこの前の大事な話?」

愛「話してみてよ」ニコッ

璃奈「……」グッ

璃奈「実は私、愛さんのこと……」

せつ菜「うおおおおおおおおお!!!!」

璃奈・愛「!?」

歩夢「せつ菜ちゃん、急にどうしたの?」

せつ菜「大好きなアニメの2期の制作が発表されたんです! これは嬉し過ぎます!!」ペカー


璃奈「…………」

愛「ごめん、せっつーがうるさくて聞こえなかった……」アハハ

愛「もう一度言ってくれる?」

璃奈「ううん。やっぱり何でもない」スタスタ

愛「りなりー……?」



璃奈「タイミングって難しい……」

しずく「気を取り直していこうよ」

かすみ「うん、次こそうまくいくよ!」
 
59: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:26:31.43 ID:K8ekBmdi
さらに1週間後

璃奈「愛さん、話があるんだけどいい?」

愛「もちろん! あっち行こっか」テクテク


女子生徒「あ、あの、愛先輩……!」バッ

璃奈・愛「!?」

女子生徒「当然すみません! ちょっとだけいいですか……?」

愛「いいけど、どうしたの?」

女子生徒「実は私、愛先輩の大ファンで、ずっと応援してて……」

女子生徒「本当に本当に大好きなんです!」

女子生徒「私とお付き合いしてくれませんか!?」

璃奈「……!!」

愛「……」


愛「いつも応援してくれてありがと」

愛「でも付き合うとかはできないんだ、ごめんね」

愛「他に好きな人がいるから」

女子生徒「……」

女子生徒「わかりました……聞いてくれてありがとうございます……」

女子生徒「これからも応援してるので……」ポロッ

女子生徒「頑張ってください……!」ダッ

愛「あ……!」

スタスタスタ

愛「……」

璃奈「……」
 
61: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:31:41.76 ID:K8ekBmdi
愛「愛さんビックリしちゃったよ」アハハ

愛「それでりなりー、話って?」

璃奈「……」


(愛『付き合うとかはできないんだ、ごめんね』)

(愛『他に好きな人がいるから』)


璃奈「愛さん……」グッ

愛「うん?」

璃奈「今度のライブ、頑張ろうね」

愛「あ、うん……」

愛「頑張ろうね!」

 ◆

璃奈「愛さんが断るところ目の前で見ちゃったから」

璃奈「私も同じこと言われると思うとすごく怖くなって」

璃奈「結局言えなかった……」

かすみ「りな子……」

しずく「……」
 
62: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:34:32.39 ID:K8ekBmdi
 ◆

しずく「あれから璃奈さん告白できずにいるんだよね」

かすみ「でもこれではっきりしたね、りな子と愛先輩は両想い」

しずく「だけどどっちも片想いだと思ってるみたい」

かすみ「もうっ! もどかしいよしず子ー!」

かすみ「両想いなんだから、2人にお互いの気持ち教えてあげたいよー!」

しずく「気持ちはわかるけど、それは絶対ダメだよ、かすみさん」

かすみ「わかってるけどさぁ……」

かすみ「早くどっちかが告白しちゃえばいいのにー!」

しずく「ふふっ、羨ましいよね」
 
65: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:40:16.82 ID:K8ekBmdi
 ◆

愛「ふー、今日も走ったー!」

せつ菜「これだけ走り込めば、この合宿で皆さんの体力もかなり向上しそうです!」

愛「そうだね!」

愛「……」

愛「せっつー、さっき歩夢のこと見てたでしょ」コソッ

せつ菜「……!!」ギクッ

せつ菜「ちょ、からかわないでください!」

愛「ごめんごめん!」アハハ

愛「でも愛さんも、りなりーのことやっぱり気になっちゃうよ」

愛「愛さんも告っちゃおっかなー」

せつ菜「愛さんもですか!?」

愛「なんてねっ!」

愛「せっつーも告白はまだ無理でも、デートとか誘ってみたら?」ニコッ

せつ菜「……」

せつ菜(デート……ですか……)
 
66: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:45:04.40 ID:K8ekBmdi


侑「肝試しだー!」

愛「いえーい!」

歩夢「えっと、この森の中に行くの?」

彼方「なかなか雰囲気あるね〜」

かすみ「そうです! ペアになった人は手を繋いで森の奥の折り返し地点まで行ったら帰ってきてくださいね!」

エマ「なんかドキドキしちゃうね!」


かすみ(本当は純粋に楽しむつもりでしたけど……)

かすみ(昨日の話を聞いてしまったので、かすみんちょっとイタズラしちゃいます!)
 
67: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:48:26.24 ID:K8ekBmdi
 ◆

森の中

せつ菜「……」テクテク

歩夢「……」テクテク

せつ菜(まさか歩夢さんとペアになれるなんて……)

せつ菜(他の皆さんも好きな人とペアみたいですし、これはかすみさん、何かしましたね……)

せつ菜(おかげで歩夢さんと手を繋げているわけですが……)ドキドキ


歩夢「夜にこんな森の中ってやっぱり怖いね」

せつ菜「そうですね。肝試しなんて誰が言い出したんでしょうか……」アハハ

せつ菜(これはチャンスです……!)

せつ菜(怖がっている歩夢さんの前でカッコいいところを見せられれば……!)


せつ菜「歩夢さん、何かあったら私が歩夢さんを守りますから」

せつ菜「この手を離さないでくださいね」ニギッ

歩夢「せつ菜ちゃん……」

歩夢「……」

歩夢「せつ菜ちゃん、この前しずくちゃんとお化け屋敷行った時も、私たちのこと守ってくれたよね?」

せつ菜「え?」

歩夢「あの時のせつ菜ちゃんも頼もしかったなー」

せつ菜「いえ、あれは……私も怖かったですから」

歩夢「それでも、先頭に立ってくれたもん」

歩夢「すっごくカッコよかったよ!」ギュッ

せつ菜「……っ!!!!」ドキッ

せつ菜(こ、これはどういうことですか……?)

せつ菜(私、もしかして今日死ぬんですか!?)
 
70: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:55:36.59 ID:K8ekBmdi
 ◆

歩夢「それでその時、侑ちゃんがね」クスクス

せつ菜「そんなことがあったんですか」クスッ

歩夢「あ、せつ菜ちゃん、着いたよ!」

せつ菜「ここが折り返し地点ですか」

歩夢「着いてみれば大したことなかったね」フフッ

せつ菜「そうですね。では戻りましょうか」

歩夢「うん」


ビュービュービュー!

ガサガサガサ!


せつ菜・歩夢「!?」ビクッ

歩夢「な、なに、今の……」


ガサガサガサガサ!!


歩夢「きゃあああっ!!」ダキッ

せつ菜「あ、歩夢さん!」バッ

せつ菜「だ、大丈夫ですよ……ただ風で葉が揺れただけです」

歩夢「本当に……?」ウルッ

せつ菜「大丈夫です。何でもありません」

せつ菜「さ、戻りましょうか」ニコッ

歩夢「うん……」ニギッ
 
72: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 22:59:45.22 ID:K8ekBmdi
歩夢「……」テクテク

せつ菜「……」テクテク


せつ菜(正直、今のは私もビックリしてしまいました……)

せつ菜(それにしても、歩夢さんに抱きつかれた時)

せつ菜(すごくいい匂いと柔らかい感触が……)ドキドキ


歩夢「せつ菜ちゃん、ごめんね……」

せつ菜「……?」

歩夢「本当はね、何かあったら、私がせつ菜ちゃんを守らなきゃって思ってたの」

歩夢「でも、結局せつ菜ちゃんに頼っちゃった……」

せつ菜「歩夢さん……」

せつ菜「謝らないでください。私も、歩夢さんに頼られて嬉しいですから」ニコッ

歩夢「せつ菜ちゃん……」

歩夢「ありがとう……」
 
73: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 23:03:04.08 ID:K8ekBmdi
 ◆

侑「かすみちゃん、転ばないようにね」テクテク

かすみ「はい。侑先輩も気をつけてください」テクテク


かすみ(ふふふ、かすみんの狙い通り、皆さんを好きな人とペアにすることに成功しました!)

かすみ(かすみん恋のキューピットですから! それに侑先輩ともペアになれたし!)

かすみ(でも……)


侑「怖いけど、かすみちゃんと一緒だと心強いなぁ」ニコッ


かすみ(なんか、ちょっと皆さんを騙したみたいで……)

かすみ(今になって少し胸が痛みます……)ズキッ

かすみ(だけどせっかく侑先輩とペアになれたんだから、たくさん可愛く甘えないと!)
 
75: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 23:07:38.75 ID:K8ekBmdi
侑「あ、ここが折り返し地点だね」

かすみ「そうですね! あとは戻るだけです」


かすみ(来ましたね、このポイント!)

かすみ(実は昼間のうちにりな子とこっそり仕掛けを用意しておいたんです!)

かすみ(この辺で物音がするはずですから、その弾みで侑先輩に可愛く抱きついて……)ニシシ


侑「たまにはこういうのもいいね」テクテク

かすみ「そ、そうですね」テクテク

かすみ「…………」


かすみ(あ、あれ、仕掛けが発動しない……!?)

かすみ(うーん、タイミングが合わなかったのかな……)

かすみ(残念だけど仕方ないかぁ……)


かすみ「でも侑先輩、こういうの平気なんですね!」ニコッ


ビュービュービュー!!

ガサガサガサ!!


侑「!?」ビクッ

かすみ「ひょえええええええ!!!!」ダキッ

侑「か、かすみちゃん!?」
 
76: (もんじゃ) 2021/12/11(土) 23:10:52.44 ID:K8ekBmdi
かすみ「な、な、な、何ですか!! 今の何ですか!!」ビクビク

侑「ただの風の音だよ。安心して、かすみちゃん」

かすみ「風……」ハッ


かすみ(そっか、りな子との仕掛けが今発動したんだ……)

かすみ(予想外だったから変な声出ちゃったし、全然可愛く怖がれなかったよぉ……)


侑「かすみちゃん、手離さないでね。ゆっくり戻ろ!」ニコッ

かすみ「はい、侑先輩……」ニギッ

侑「……」テクテク

かすみ「……」テクテク


かすみ(やっぱり侑先輩は優しくてカッコいい)

かすみ(もう、本当に大好き……)


侑「かすみちゃんの可愛いところ見れちゃった♪」ニコッ

かすみ「侑先輩っ! みんなには内緒ですよ!」


かすみ(こんな風にいつでも手を繋げたらどんなに幸せだろう)

かすみ(かすみん、明日告白しますからね、先輩)

かすみ(オッケー、してくれますよね……?)
 
94: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 21:35:26.75 ID:8WVESdn4
翌日

しずく「彼方さん、お疲れ様です」ニコッ

彼方「合宿もいよいよ大詰めだね〜」

しずく「はい。彼方さん、ダンス仕上がってきましたね!」

彼方「しずくちゃんも調子良さそうじゃーん!」
しずく(合宿中は彼方さんと一緒にいる時間もうんと増えて嬉しい)

しずく(昨日の肝試しも一緒にできて楽しかったな)

しずく(頼もしい彼方さんの一面も見られたし……)ドキドキ
彼方「ふー、たくさん踊って疲れたぜ〜」ゴロッ

彼方「こんな時はしずくちゃんのお膝に限るねぇ」スリッ

しずく「もう彼方さん……合宿でも寝ちゃうんですか?」

彼方「しずくちゃんのお膝寝心地いいんだもん♪」スリスリ

しずく「もう……」

彼方「すやぴぃ……」zzz

しずく「……」
しずく(彼方さん、相変わらず無防備なんだから……)

しずく(気持ちを許してくれてるのは嬉しいけど)

しずく(膝枕してる私は、あなたのこと好きなんですよ?)

しずく(何かされたらどうするんですか?)
彼方「……」スヤスヤ

しずく(もし、今夜の告白がうまくいったら……)

しずく(恋人としてこんな風に膝枕できたら、素敵だな……)

彼方「ふにゃ……」ニヘッ

しずく「ふふっ」

しずく(彼方さん、可愛い)
 
96: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 21:45:56.28 ID:8WVESdn4
森の中

愛「へー、こんなところに仕掛けがしてあったんだ!」

璃奈「うん。みんなを驚かせようってかすみちゃんと用意したんだ」カチャカチャ

愛「すごいね! 突然風が吹いたから、愛さん本当にビックリしたよ!」

璃奈「これで回収完了」ガシッ

愛「……」ヒョイッ

璃奈「あ、愛さんごめん。重いから、私も半分持つ」

愛「ううん、全然重くないよ! 行こ!」ヒョイヒョイッ

璃奈「あ……」

璃奈「ありがとう……」
 
97: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 21:55:23.75 ID:8WVESdn4
愛「~♪」テクテク

璃奈「……」テクテク


璃奈「ねぇ、愛さん」

愛「んー?」

璃奈「愛さんって、好きな人……いるの……?」

愛「どうしたのー? 急にー」アハハ

璃奈「ちょっと気になって……」

愛「うーん」

愛「いるよ。大好きな人」

璃奈「そうなんだ……」

愛「りなりーは?」

璃奈「え?」

愛「どうなの、どうなのー? 好きな人とか、いるのー?」ニヤニヤ

璃奈「私は……」

璃奈「いる……」

愛「……」

愛「へー、りなりーにもいるんだー!」ニコッ
 
99: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:03:36.11 ID:8WVESdn4
夜 4人部屋

かすみ「……」ジッ

かすみ「……」スッスッ


しずく「……」ジッ

しずく「……」ササッ


愛「せっつー、あの2人、鏡と睨めっこしてどうしたの?」

せつ菜「2人ともこれから告白ですから、身嗜みの最終調整をされています」

愛「ああ! 気合い入ってるねー!」


かすみ「ねぇしず子、かすみんの前髪変じゃないですか?」

しずく「大丈夫、可愛いよ!」ニコッ

かすみ「えへへっ、ありがとう!」


愛「頑張ってきてね!」

せつ菜「うまくいくよう願っていますから」


しずく「はい、ありがとうございます!」

かすみ「行ってきます!」
 
101: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:16:54.96 ID:8WVESdn4
かすみ「歩夢先輩、かすみん行ってきます!」コソッ

歩夢「うん! 頑張ってね、かすみちゃん!」コソッ

かすみ(応援してくれた歩夢先輩のためにも、この気持ちを全力で侑先輩に……!)グッ


かすみ「侑先輩、ちょっとだけいいですか……?」

侑「うん? どうしたの、かすみちゃん」スタスタ




しずく「彼方さん、お話があるのですが……」

彼方「なーに、しずくちゃーん」スタスタ


果林「……」

果林(ふーん……)


 ◆


エマ「あれ、侑ちゃんと彼方ちゃんは?」

果林「2人なら可愛い後輩に呼ばれて行っちゃったわよ」

エマ「そっか。どこ行ったんだろ?」

果林「まあ、秘密のお話ってところね」ウインク
 
103: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:22:55.95 ID:8WVESdn4
侑「ふー、風が気持ちいいねー!」

かすみ「そうですね!」

かすみ「……」

侑「それでどうしたの、話って?」

侑「何か悩み事……?」

かすみ「……」


かすみ「侑先輩、私、昨日ズルしちゃったんです……」

侑「ズル?」

かすみ「はい、肝試しで侑先輩とどうしてもペアになりたくて、それで私……」

侑「……」

侑「そうだったんだ!」

侑「かすみちゃんと2人で行けて私すごく楽しかったよ!」ニコッ

かすみ「かすみんもです!」

侑「それを言いたかったの?」

かすみ「いえ、それだけじゃなくて……」

かすみ「……どうして侑先輩とペアになりたかったか、わかりますか?」

侑「え?」

かすみ「侑先輩のことが好きだからです!」

かすみ「侑先輩に、恋してるんです……」

侑「ぇ……」

かすみ「私、侑先輩のためにもっと可愛くなりますから!」

かすみ「私と付き合ってください!」
 
104: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:25:01.10 ID:8WVESdn4
しずく「彼方さん、お呼び立てしてすみません」

彼方「ううん。私もちょうど外の空気吸いたかったんだー」

彼方「でもどうしたの〜、しずくちゃん、改まってお話なんて」

彼方「もしかして愛の告白かな〜?」ニヤッ

しずく「……」

彼方「……?」
 
106: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:29:06.78 ID:8WVESdn4
しずく「か、彼方さん……!」

しずく「大切なお話があります……」

彼方「おお……?」

しずく「……」グッ


しずく「私、今同好会での活動が本当に楽しいんです」

しずく「同好会の皆さんといる時間が楽しくて、皆さんのことが大好きです」

しずく「でも、その中でも彼方さんだけは、特別なんです」

彼方「……」

しずく「彼方さんと一緒に過ごす時間はとても安心できて、優しい気持ちになれて……」

しずく「気付いたら、彼方さんのこと、好きになっていました……」

しずく「こんなこと言われて驚くとは思いますが……私、彼方さんともっともっと一緒にいたいです」

しずく「私とお付き合いしていただけませんか?」
 
107: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:35:04.47 ID:8WVESdn4
侑「かすみちゃん……」

かすみ「……」ウルウル

侑「そんな風に思ってくれてたんだ、私のこと……」

侑「嬉しいな……」

かすみ「……」ウルウル

かすみ「侑先輩……」ウルウル

侑「……」

侑「うん」

侑「付き合おっか!」




かすみ「本当……ですか……?」

侑「うん! よろしくね、かすみちゃん!」ニコッ
 
109: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:38:01.30 ID:8WVESdn4
彼方「…………」

彼方「そっか……」

彼方「そうだったんだね」

しずく「はい」

しずく「やっと……やっと言えました……」

彼方「うん」

彼方「話してくれてありがとう。しずくちゃん」

彼方「大好きなしずくちゃんにそんなに想ってもらえて、私、とっても嬉しいよ」

しずく「でしたら……!」パア

彼方「でも」

彼方「ごめん」
 
112: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:46:02.26 ID:8WVESdn4
しずく「…………っ」

しずく「そ……そう……ですよね……」

しずく「そうですよね……当然です……」

しずく「私、何言ってるんでしょう。私なんかが、彼方さんと……」ポロッ

彼方「ううん!」

彼方「しずくちゃんはとっても素敵な女の子だよ。私には勿体ないくらい」

彼方「彼方ちゃん、しずくちゃんにはいつも感謝してるんだ。とってもしっかりしてるから、ついいつも頼っちゃうよ」

彼方「だから、これからも仲良しの友達でいよ?」
 
113: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:53:26.05 ID:8WVESdn4
しずく「…………」


彼方さんと別れてからも、私は1人夜の風に当たっていた。

彼方さんは精一杯の優しい言葉を私にかけてくれた。

悲しむ私に寄り添ってくれた。

やっぱり彼方さんは優しい人なんだ。

自分だって戸惑いがあるはずなのに、振る方だって辛いはずなのに、私が傷付かないように言葉をかけてくれた。


だからこそ、やっぱり私なんかじゃ到底手の届かない人だったんだって痛感した。


馬鹿だ。

私は馬鹿だ。

馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。



何を浮かれていたんだろう。

本気で彼方さんと付き合えると思ってたの?

彼方さんも自分のこと好きなんじゃないかって自惚れてたの?



これからどうするの?


「これからも仲良しの友達でいよ」って彼方さんは言ってくれた。

でも今まで通りになんてあるはずがない。

こうなった以上は2度と元の関係には戻れない。

気の合う先輩後輩として笑い合って、お世話をして、時に膝枕していたような、元の関係には。
 
116: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 22:57:28.50 ID:8WVESdn4
しずく「はぁ……」

しずく(今はどこにも行きたくないけど……)

しずく(そろそろ、戻らないと……)



しずく「あ……」


しずく「かすみさん……」

かすみ「あ、しず子!!」パア


かすみ「やったよおお!! やった、やったあああああ!!!!」ピョンピョン

かすみ「侑先輩オッケーしてくれたよー!!」ダキッ

かすみ「かすみん今最高に幸せ!! しず子のおかげだよーっ!!」ギュッ
 
120: (もんじゃ) 2021/12/13(月) 23:02:28.04 ID:8WVESdn4
しずく「……っ!!」

かすみ「やったぁぁぁ……!!」ギュウウ

かすみ「ありがとう! しず子っ!」ニコッ

しずく「…………」グッ

しずく「良かったね、かすみさん!」ニコッ

しずく「おめでとう!!」ポロッ

かすみ「しず……?」

かすみ「……!!」

かすみ「し、しず子……ごめ……」

かすみ「わ……私、そんな……ちが……」ポロッ

かすみ「ごめん……本当にごめん……!!」ポロポロ

しずく「うぐ……ふぇん……かずみざん……!」ブワッ

かすみ「ごめん、しず子ごめんね……!」ギュッ

かすみ「本当にごめん、ごめんしず子おお」ポロポロ

しずく「かすみさん……ふええええ」ギュッ




この夜は2人してずっと泣いていた。

かすみさんはいつまでも私の頭を優しく撫でてくれていた。
 
138: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:05:20.36 ID:10OoKh8l
彼方「エマちゃんのお膝が呼んでるー!」ゴロッ

エマ「ふふっ、彼方ちゃんいらっしゃい」ニコッ

彼方「極楽だぜ〜」スリスリ

しずく「……」
あれから1週間が経った。

彼方さんは相変わらず眠るのが大好きだし、私にも普通に接してくれていた。
ただ、これまでのように私に甘えることはしなくなった。

私に膝枕をねだることもなくなった。
当然だ。

それが彼方さんの優しさであることもわかってる。
だから、エマさんや愛さんが彼方さんの膝枕をする度、私の胸はズキリと痛む。

私が彼方さんの膝枕をしている様子を重ねてしまう。
でも私の気持ちを知られた以上、もう私から「膝枕どうぞ」なんて言うことはできない。

そんなの、下心が見え見えだ。

嫌われるかもしれない。
私が彼方さんの膝枕をすることはもうないんだ。
 
139: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:11:08.62 ID:10OoKh8l
しずく「私ならもう大丈夫だよ!」ニコッ

かすみ「しず子……」

璃奈「……」

しずく「想いを伝えてスッキリしたって感じかな」

しずく「気持ちいいくらい思いきりフラれたから未練とかもないし!」

しずく「彼方さんとはこれからも仲良くしたいけど、恋心は綺麗さっぱり忘れるよ!」

かすみ「……」

かすみ「しず子、辛かったら、なんでも言ってね」



しずく「ごめん、今から演劇部行かないといけないんだ」スタッ

かすみ「あ……」

かすみ「頑張ってね」

しずく「うん!」
 
140: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:15:00.75 ID:10OoKh8l
しずく「……」スタスタ

璃奈「待って、しずくちゃん」

しずく「璃奈さん?」

璃奈「あのね」

璃奈「私も……同じだから……」

しずく「え?」

璃奈「愛さんね、好きな人がいるみたいなの」

璃奈「だから、私もしずくちゃんの気持ちわかる」

しずく「わからないよ!!」バッ

璃奈「……っ!!」ビクッ

しずく「……ごめん」

しずく「でも、璃奈さんにはわからないよ……」

しずく「好きな人に選ばれなかったこの気持ち……」

しずく「じゃあ行くね」スタスタ

璃奈「……」

璃奈「しずくちゃん……」
 
142: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:21:11.66 ID:10OoKh8l
かすみの部屋

かすみ(今日は侑先輩との初デートです!)

かすみ(正直、しず子のことがあったから、素直に喜んでいいのかなって思うところはある……)

かすみ(でも侑先輩がせっかくオッケーしてくれたんだもん)

かすみ(夢見てた日が現実に来たんだもん)

かすみ(今日は思い切り楽しまないと)


かすみ「これでよしっ!」

かすみ(メイクも髪型もバッチリ!)

かすみ(そして、今日のために用意したとびきりの勝負服!)ファサッ


かすみ「ふふっ」


かすみ(侑先輩に可愛いって思ってもらえるかな)
 
143: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:24:27.20 ID:10OoKh8l
待ち合わせ場所

かすみ「侑先輩っ♪」タタッ

侑「かすみちゃん!」ニコッ

かすみ「すみません、待たせちゃいましたか?」

侑「ううん、私も今来たとこ!」

侑「なんだか緊張しちゃうね」アハハ

かすみ「ふふっ、かすみんすごく楽しみにしてたんですから!」

侑「私もだよ!」

侑「それじゃ行こっか!」

かすみ「はいっ!」

かすみ「〜♪」
 
144: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:30:40.40 ID:10OoKh8l
ジョイポリ

愛「いやー、遊んだ遊んだー!」ニコニコ

璃奈「愛さん、また上達してた」

愛「りなりーも相変わらず上手いねー!」

璃奈「愛さんと久々に2人で来られて嬉しい」

愛「愛さんも!」



愛(さて、次は……)

愛「愛さん、ちょっとお腹空いちゃった!」エヘッ

璃奈「……」

愛「りなりー?」

璃奈「あ……ごめん、愛さん……」

愛「何か考え事?」

璃奈「うん……」
 
145: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:35:51.11 ID:10OoKh8l
璃奈「私、しずくちゃんのこと傷つけちゃったんだ……」

璃奈「本当は落ち込んでるしずくちゃんを励ましたかったの」

璃奈「でも言葉を間違えちゃって……」ギュッ

愛「そっか……」

璃奈「ちゃんと謝りたい」

愛「うん。2人ならすぐ仲直りできるよ」ニコッ


璃奈「しずくちゃんの気持ち、私にもわかると思ったんだ」

璃奈「私も、失恋したから……」

愛「……?」

愛「え、りなりー、好きな人に告白したの……?」

璃奈「ううん。告白したわけじゃない」

璃奈「でも、その人の気持ち、知っちゃったんだ」

璃奈「だから失恋したようなものなんだ」

愛「……」

愛「告白……してないなら、まだわからないじゃん」

璃奈「それは、そうだけど……」

璃奈「でも……」

愛「だってさ!」

愛「りなりーみたいな可愛い子から告られたら、普通断らないよ」

愛「愛さんがその人だったら、絶対嬉しいし、オッケーしちゃうよ」

璃奈「……」

愛「……」

愛(アタシ、何言ってるんだろ……)
 
148: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:42:02.10 ID:10OoKh8l
店員「ありがとうございましたー!」


侑「美味しかったねー!」

かすみ「はい! このお店かすみんまた来たいです!」

侑「そうだね!」



侑「でもかすみちゃん、歩夢に相談してたなんて全然知らなかったよ!」テクテク

かすみ「歩夢先輩、たくさんお話聞いてくれたんですよ!」テクテク

かすみ「侑先輩、かすみんの気持ち、全然気づいてなかったんですかぁ?」

侑「あはは……かすみちゃんに告白された時は本当にビックリしたよ」

侑「私そういうの初めてだったから」

かすみ「かすみんだって初めてですよ?」

かすみ「でも侑先輩がオッケーしてくれて本当に嬉しかったんです」

かすみ「侑先輩、私……」

かすみ「侑先輩の彼女だって思っていいんですよね……?」

侑「もちろんだよ!」

侑「私もかすみちゃんの彼女だよ」ニコッ

かすみ「えへへ」


かすみ「あの、侑先輩……」

侑「うん?」

かすみ「手……繋いでもいいですか……?」

侑「……」

侑「うん。繋ごっか」サッ

かすみ「……」ニギッ

侑「なんか照れちゃうね」ニコッ

かすみ「そうですね」エヘヘ


かすみ(こんなの……)

かすみ(本当に夢みたいです……)ギュッ
 
150: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 22:50:37.11 ID:10OoKh8l
せつ菜の部屋

せつ菜「今日はこんなところでしょうか」


勉強も一区切りついたので、ノートを閉じてふと天井を見上げた。

正直、あまり集中はできていなかった。

合宿以降、あの恋バナやそれに纏わる事柄についてつい考えてしまう。



かすみさんとしずくさんはあの合宿の夜告白した。

凄いことだと思った。

そしてかすみさんはその想いの果てに、侑さんと恋人になれたんだ。

しずくさんは残念だったし、弱々しく目を伏せる彼女を見て私の胸も締め付けられそうだった。

でも、それだって勇気を出して挑んだ結果なんだ。


2人の告白の裏には、好きな人に対するまっすぐな感情と真摯な姿勢があった。

それを実際に好きな人に伝えられてしまうのだから、羨ましいなって思った。


どうせ脈なんてないから告白なんてしなくていい。

この気持ちはそっとしまっておけばいい。

そう思っていた私の心に、少なからず影響を与える出来事だった。



(愛『せっつーも告白はまだ無理でも、デートとか誘ってみたら?』)



そうですよ。最初から諦めてどうするんですか?

当たって砕けろ。
始まったのなら貫くのみ。

それが優木せつ菜じゃないんですか?


それなら、私も自分なりにアタックしてみよう。

歩夢さんに興味を引いてもらえるように。


大好きを伝えるのは私の得意なことのはずなのだから。
 
151: (もんじゃ) 2021/12/16(木) 23:04:49.25 ID:10OoKh8l
夜 かすみの部屋

かすみ「ふー、ただいまー!」

侑先輩との初デートを終え、自室で鞄を下ろす。

心地よい疲労感と幸福感。素敵な1日だった。


かすみ「侑先輩……」ニギッ


手に残る侑先輩の感触。

今日は侑先輩も楽しんでくれたみたいだったし、会話も弾んだ。

私のこと彼女だって言ってもらえたし、手だって繋げた。

初デートとしては上出来のはずだ。


かすみ「うんうん。大成功です!」


何もネガティブに考える必要なんてない。


侑先輩は元々私の気持ちに気づいていなかった。

だからこれから私のこともっと好きになってもらえるよう頑張ろう。

それでいいじゃん。


今日は憧れの先輩とデートできて最高に楽しかった。

それでいいじゃん。


些細なことなんて気にしないで、今日は侑先輩との幸せな時間を抱きながら眠りにつこうよ。

そう自分に言い聞かせた。


でも。

それでも。


鏡に映る私の表情が。

今日のためのとっておきの勝負服が。

寂しげに見えるのは気のせい?


かすみ「…………」シュン


侑先輩、今日1回も可愛いって言ってくれなかったな。
 
173: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:32:22.90 ID:UfjQZqxk
部室

せつ菜「へー、これも歩夢さんの手作りなんですか!」

歩夢「うん、侑ちゃんとお揃いの編みぐるみなんだ♪」

せつ菜「可愛いですね!」ニコッ

せつ菜「歩夢さんって本当に器用ですよね。凄いです!」

歩夢「そんなに難しくないんだよ」


たまたま部室で歩夢さんと2人きりになった。

このチャンスにと、歩夢さんといろいろな話がしたかった。

普段私の大好きをニコニコしながら聞いてくれる歩夢さんだけど、私が手芸について質問すると嬉しそうに教えてくれた。

それから、お菓子作りの話、スクールアイドルの話、とお喋りに花が咲いた。
 
174: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:36:50.40 ID:UfjQZqxk
せつ菜「このグループは原宿のスクールアイドルで、今すっごく勢いがあるんですよ!」

歩夢「へー、5人ともとっても可愛いね!」

せつ菜「はい! 新設校で全員が1年生なのですが、メンバーそれぞれがスキルをぶつけ合って、熱いステージを作り上げているんです!」

せつ菜「特にこの曲は、ダンスの掛け合いと、センターの方の圧倒的な歌声が絶妙に引き立て合っていて……」

せつ菜「って……!」ハッ

せつ菜「また私ばかり話してしまいました……」

歩夢「え!? 楽しかったのに……」

せつ菜「そ、それより!」

せつ菜「歩夢さんが最近気になるスクールアイドルを教えてください!!」

歩夢「私? そうだなー……」

歩夢「このグループの動画はよく見るよ!」ポチポチ

せつ菜「あー! 今人気ですよね!」

せつ菜「歩夢さんの推しはどなたなんですか?」

歩夢「私はこの子かな。カッコ良いいから……」

せつ菜「ああ……」


せつ菜(歩夢さんのタイプの女性がわかるかもと思って質問してみましたが……)

せつ菜(やっぱり背が高くてクールな感じです……)
 
175: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:43:16.91 ID:UfjQZqxk
夜 せつ菜の部屋

せつ菜「私は……タイプじゃないですよね……」

見聞きした情報を合わせて歩夢さんのタイプの女性を想定すると、私は対象外なんだなって思ってしまう。

でも今はそんなこと考えたって仕方ない。


それよりも、今日は歩夢さんとたくさん話せた。

とても楽しかった。


せつ菜「歩夢さんの編みぐるみ、可愛かったな……」


やっぱり歩夢さんの女子力は同好会でも随一だと思う。

仲間として尊敬できる点でもあり、女性として可愛らしいと思うところでもある。


私自身は手芸の経験はあまりないけど、こういうのを歩夢さんと一緒にやれたら楽しいだろうな……

歩夢さんに優しく教えて貰ったりして……


せつ菜「……」ドギドキ


うう……

歩夢さんとお話したい。


もうこんな時間だけど、歩夢さんにLINE送っちゃおうかな。
 
176: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:47:06.20 ID:UfjQZqxk
LINEを開き、文章を打ち込んで、送信ボタンを押す直前で手が止まる。


こんなこと突然送って、変に思われないですよね……?


いやいや、普段からLINEのやり取りはしてるし、気兼ねなく話せる友達なのだから、これくらいは普通のはず。

歩夢さんのことを意識し過ぎて感覚が麻痺しています……


色彩デザイン研究会のライブの時だって、歩夢さんを勇気付けたい一心で、前日に電話をかけたじゃないですか。

あの時は歩夢さんも喜んでくれました。


だから、どうってことありません。

日常的な何気ないメッセージです。


せつ菜「えいっ!」ポチッ



せつ菜:
歩夢さん、今日見せてくれた編みぐるみとっても可愛かったです!
私も手芸に興味が湧いたのですが、なかなか難しそうですね…
良かったら今度教えてくれませんか?



せつ菜「送ってしまいました……」
 
177: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:51:03.15 ID:UfjQZqxk
 ◆


せつ菜「…………」


せつ菜「…………」スマホチラッ


せつ菜「…………」


せつ菜「…………」スマホチラッ


せつ菜「…………」






せつ菜(送信から2時間経ったわけですが……)


せつ菜「…………」スマホチラッ


せつ菜「……っ!」ズキッ



せつ菜(歩夢さんから返信がありません……)


せつ菜(既読すらつきません……)


せつ菜「はぁ……」


せつ菜(もう死にたいです……)
 
178: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 17:56:54.20 ID:UfjQZqxk
せつ菜(やっぱり送らない方が良かったのでしょうか)

せつ菜(歩夢さん、通知だけ見て、既読つける気も起きなかったってことなのでしょうか)

せつ菜(歩夢さんからしたら、急にどうしたのって、感じですよね……)

せつ菜(ドン引きされてるかも……)


せつ菜「うう……歩夢さん……」グッ






ピロン



せつ菜「……!!」

せつ菜(歩夢さんからLINEです!)



歩夢:
せつ菜ちゃんが手芸に興味持ってくれるなんて嬉しい!!
私でよければいくらでも教えるよ!
今度一緒に編みぐるみつくろうよ!


せつ菜「……!!」パアアアアアアアア


せつ菜「うおおおおおおおおおお!!!!」


せつ菜(歩夢さあああああああん!!!!)

せつ菜(大好きです、歩夢さん!!)
 
180: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:00:52.85 ID:UfjQZqxk
校舎 中庭

しずく「彼方さん起きてください! 同好会始まりますよ?」

彼方「……」zzz

しずく「彼方さん、起きてください! 彼方さん!」

彼方「すやぴ……」zzz

しずく「もう……」


こうやって彼方さんを起こしに来るのも久々だ。

以前ならなかなか起きない彼方さんを、身体を揺すって起こしたものだけど、今は……


触っちゃ、ダメだよね?


私はフラれたんだから、彼方さんの身体にはもう触っちゃいけない……気がする。

彼方さんが嫌な思いするかもしれないし。

私自身、彼方さんを起こすために仕方ないって理由で、身体に触ることを正当化しようとする自分が嫌だった。


しずく「彼方さん……」

しずく「起きてください……」

彼方「…………」zzz


それでも呼びかけだけじゃとても起きないほどに、彼方さんは熟睡していて。

無防備で。


彼方「すやぁ……」ニヘッ


彼方さんの彼女になる人って大変だな。

恋人がいつでもどこでもすやすや寝ちゃう人だなんて、心配で仕方ないんじゃないかな。

まあ、私には関係ない話だけど。


しずく「彼方さん……」ボソッ


やっぱり……

やっぱり、私は……
 
181: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:06:55.74 ID:UfjQZqxk
 ◆

かすみ「そっか」

しずく「うん……」

しずく「諦めるって決めたけど、やっぱりダメだった……」

しずく「そもそも忘れたくても、同好会で毎日顔合わせるしね」アハハ

かすみ「しず子……」

しずく「とは言っても、フラれてるからどうしようもないんだけどね!」

かすみ「ううん、それならかすみん応援するよ」

かすみ「私にできることあったら何でも言ってね、しず子」

しずく「ありがと。かすみさんに話聞いてもらえて少しラクになったよ」ニコッ


しずく「かすみさんの方はどうなの?」

かすみ「え?」

しずく「もう何回かデートしてるんでしょ? 順調?」ニコッ

かすみ「うん、まあ」

かすみ「……」

しずく「何かあったの?」

かすみ「うーん……」

かすみ「侑先輩が何したら喜んでくれるかわからなくて……」

しずく「……?」

かすみ「デートの度に次はこうしよう、ここは直そうって思うんだけど」

かすみ「もっと侑先輩のこと楽しませたいなって」

しずく「私から見たら、2人でいる時とっても楽しそうだけど」

かすみ「うん。2人きりの時も侑先輩すごく優しいよ」

かすみ「……やっぱり考え過ぎなのかな」

かすみ「ごめんね、しず子に比べたら贅沢な悩みだよね……」エヘヘ

しずく「そんなことないよ」
 
182: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:08:53.88 ID:UfjQZqxk
歩夢の部屋

歩夢「いらっしゃい!」ニコッ

せつ菜「お邪魔します!」


今日は歩夢さんの部屋に遊びに来た。

歩夢さんがさっそく手芸を教えてくれることになったんだ。


せつ菜「それにしても……」ドキドキ


歩夢さんっていい匂いがするなって思うことはあるけど、歩夢さんの部屋もいい匂いが漂っている気がする。

歩夢さんみたいにふんわり可愛らしくて、優しくて、お洒落な空間。


ふと鏡に映るパーカー姿の自分が目に入る。


私なんかがこんな場所に踏み込んで良いのだろうか……
 
183: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:12:34.86 ID:UfjQZqxk
 ◆

歩夢さんとの手芸は本当に楽しかった。

普段しないことなので新鮮だったし、何より隣に歩夢さんがいるだけで心が弾んだ。

それからお茶をして、気付けば外は暗くなっていた。


あっという間だったな。

そろそろ帰らないといけない。

ずっとこの時間が続けばいいのに。



でも。

今日の私はこのままでは終わらない。


せつ菜「あ、歩夢さん、これ知ってますか?」スマホポチポチ

歩夢「うん? なあに?」


心臓が高鳴る。

ついにこの時が。

歩夢さんをデートに誘うんだ。
 
184: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:14:29.62 ID:UfjQZqxk
歩夢「うわぁ、綺麗……!」

せつ菜「今この水族館で、クラゲのライトアップイベントがやってるみたいなんです」

歩夢「凄い、これみんなクラゲなんだ……とっても幻想的……」

せつ菜「よ、良かったら……」

せつ菜「一緒に行きませんか……?」


歩夢「え……!?」

せつ菜「……」
 
185: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:22:41.69 ID:UfjQZqxk
歩夢「行きたい! 行ってみたいよ、せつ菜ちゃん!」

せつ菜「本当ですか!?」パアア

歩夢「今度の休みの日に行こうよ!」

せつ菜「はい! では行きましょう!!」


それは思いがけず、すんなりと。

歩夢さんも私も笑顔だったけど、私の方は、嬉し過ぎて不自然に顔が綻ばないよう絶えるのに必死だった。

勇気を出して誘ってみて良かったな。



歩夢「うわぁ、水族館かー! 楽しみだなー!」ニコニコ

せつ菜「ふふっ」

せつ菜(歩夢さん……!)ギュッ








歩夢「そしたら、他のメンバーはどうしよっか?」

せつ菜「……」

せつ菜(え……?)


歩夢「侑ちゃんも誘ってみるね!」ニコッ

せつ菜「ぁ……」

せつ菜「はい……」シュン
 
186: (もんじゃ) 2021/12/19(日) 18:29:06.88 ID:UfjQZqxk
翌日

歩夢「せつ菜ちゃんも上手に作れたんだー!」

侑「そうだったんだ! 楽しそうだね!ニコッ

歩夢「うん。その後はお茶して……」

歩夢「あ、そう言えば……!」

侑「?」

歩夢「せつ菜ちゃんと今度水族館行こうって話したんだ!」

侑「水族館!?」パアアア

歩夢「クラゲのライトアップがすごく綺麗みたいなの!」

侑「いいね、いいねー! 楽しそう! 私も行きたい!」

歩夢「うん、侑ちゃんも一緒に行こ!」ニコッ

侑「そしたら愛ちゃんも誘って2年生4人で行っちゃう!?」キラキラ

歩夢「それも楽しそうだけど……」

歩夢「侑ちゃん付き合いたてなんだし、かすみちゃんはいいの?」

侑「あ……」

侑「あ、そっか、そうだよね!」

侑「じゃあかすみちゃんも一緒に!」
 
207: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 21:36:48.90 ID:Ks8eQym9
保守ありがとうございます。
続きやってきます。
 
208: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 21:41:50.44 ID:Ks8eQym9
愛「……」テクテク

愛(あ、りなりーだ!)

愛「りな……」


今日子「璃奈ちゃんは動物大好きだよね!」

色葉「ねえねえ、はんぺん元気? 会いたいなぁ!」

璃奈「今から会いに行く?」

色葉「行く行くー!」

浅希「じゃあ中庭だね!」


愛「……」

愛(りなりーの好きな人……)

愛(やっぱり同級生だよね)

愛(あの中にいたりして……)



璃奈「……!」


愛「……」スタスタスタ


璃奈(あれ、愛さん……?)


浅希「璃奈、どうしたの?」

璃奈「ううん」

浅希「はんぺん探しに行こ!」

璃奈「あ、うん」
 
210: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 21:51:55.77 ID:Ks8eQym9
かすみの部屋

かすみ「〜♪」サッサッ

かすみ(今日は肩を出したお洋服で、ちょっぴりセクシーなかすみんをアピールです!)

かすみ(これで侑先輩もドキドキすること間違いなし……!)

かすみ(髪も整えて……)ススッ

かすみ(可愛く仕上がりました!)エヘヘッ


かすみ「待っててくださいね〜、先輩♪」フフッ


かすみ(でもこんな可愛いかすみん見て)

かすみ(侑先輩が大胆なことしてきたらどうしよう!!)キャー
 
212: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:00:36.70 ID:Ks8eQym9
かすみ(とは言っても……)


せつ菜「水族館着きましたー!!」ペカー

侑「せつ菜ちゃん元気だねー!」ニコニコ

歩夢「ペンギンのお散歩も見られるんだって!」

侑「それ絶対見たい!」

せつ菜「イルカショーも見ましょう!」

かすみ「……」


かすみ(今日は侑先輩と2人きりではなく、みんなで水族館なのですが……!)
 
213: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:05:45.46 ID:Ks8eQym9
水族館

侑「歩夢ー! こっち凄いよー!」

歩夢「ふふっ、綺麗だねー!」


かすみ「……」テクテク

せつ菜「……」テクテク

かすみ「せつ菜先輩、聞きましたよー」ニヤッ

せつ菜「え?」

かすみ「せつ菜先輩が歩夢先輩を誘って、ここ来ることになったらしいじゃないですか」

かすみ「本当は歩夢先輩と2人で来たかったんじゃないですか?」ニヤッ

せつ菜「……!」ギクッ

せつ菜「ま、まあ、これはこれで楽しいじゃないですか!」アハハ

かすみ「そんなことだろうと思いましたよ」

かすみ「……でも、せつ菜先輩も頑張ってるんですね」

せつ菜「あはは、空回りしてばかりですけどね」

かすみ「さっさと告っちゃえばいいんですよ」

せつ菜「そんな簡単に言わないでくださいー!」ウウー



かすみ(それにしても……)


侑「歩夢ー! マンボウだー!」キャッキャ


かすみ(侑先輩、かすみんとデートしてる時より楽しそう……)ズキッ
 
214: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:11:31.29 ID:Ks8eQym9
 ◆

せつ菜「侑さん、ジンベエザメですよ!」

侑「大きいねー!」キラキラ


歩夢「かすみちゃん、今日の服可愛いね!」

かすみ「ありがとうございます!」エヘヘ

かすみ(侑先輩は何も言ってくれませんでしたけど、さすが歩夢先輩です♪)

歩夢「かすみちゃんと侑ちゃんが付き合ってから、こうやって遊ぶのって初めてだよね」

かすみ「そうですね」

歩夢「2人がとっても仲良しで、私も嬉しくなっちゃった!」ニコッ

かすみ「これも歩夢先輩のおかげなんですよっ! ありがとうございます」

歩夢「えへへ」ニコニコ

かすみ「……」

かすみ「あ、あの、歩夢先輩……」

歩夢「なあに?」

かすみ「……」ギュッ

かすみ「やっぱり何でもないです!」ニコッ

歩夢「……?」
 
217: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:18:35.78 ID:Ks8eQym9
 ◆

歩夢「こんな色の魚もいるんだねー!」

せつ菜「歩夢さん、ピンクの魚もいますよ!」

歩夢「本当だー! 可愛いー!」ニコッ

せつ菜「……」チラッ

歩夢「わぁ……」キラキラ

せつ菜「……」ドキドキ




侑「……」

侑(せつ菜ちゃんって、もしかして……)


かすみ「侑先輩……?」

侑「かすみちゃん、2人であっち行こ」ニギッ

かすみ「……!」

かすみ「はいっ!」パアア
 
218: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:22:11.65 ID:Ks8eQym9
せつ菜「あれ、侑さんとかすみさんは……」

歩夢「ふふっ、2人きりにさせてあげようよ」

せつ菜「それもそうですね」

歩夢「せつ菜ちゃん、あっち行ってみよ!」

せつ菜「はい!」


せつ菜(うん……? ということは……)

せつ菜(私と歩夢さんが2人きりということに……!)ドキドキ




歩夢「凄い! クラゲがたくさん!」

せつ菜「本当ですね!」

歩夢「せつ菜ちゃん、こっちこっち!」ニギッ

せつ菜「あ……」ドキッ

歩夢「うわぁ、とっても綺麗……」キラキラ

せつ菜「……」


せつ菜(こんなの、本当にデートしてるみたいです……)

せつ菜(歩夢さんにはまったく意識されてないみたいですが、それでも……)


歩夢「……」キラキラ

せつ菜「……」


せつ菜(今はこの大切な時間を楽しみましょう)
 
219: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:27:21.16 ID:Ks8eQym9
 ◆

侑「じゃあ、私はかすみちゃん送ってくから」

せつ菜「はい、今日は楽しかったです!」

かすみ「かすみんも今日とっても楽しかったので、今度皆さんにお礼のコッペパン作ってきますね♪」

歩夢「本当に!? 嬉しいっ!」
 
221: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:32:18.27 ID:Ks8eQym9
歩夢「あの2人ラブラブだったね」ニコッ

せつ菜「はい! 見ててこっちも微笑ましくなりました!」

せつ菜「かすみさんが告白する前、歩夢さんが相談に乗ってたんですよね」

歩夢「うん! 大したことしてないけどね」エヘヘ

せつ菜「幼馴染の侑さんのことを誰よりも知っているのは歩夢さんですから!」

せつ菜「かすみさんも心強かったんだと思います」

歩夢「うん……」

せつ菜「……?」

歩夢「私ね……」

歩夢「侑ちゃんとかすみちゃんが付き合うことになって本当に嬉しかったんだ」

歩夢「かすみちゃんのこと応援してたし、2人ならいい恋人になるだろうなって思った」

歩夢「でもいざ侑ちゃんに彼女ができるとね」

歩夢「ちょっとだけ……寂しいな、って思ったの……」

せつ菜「……」

歩夢「侑ちゃんとはずっと一緒にいたから」

歩夢「仕方ないことだから、我慢しないといけないのにね」

せつ菜「歩夢さん……」

歩夢「だから」

歩夢「こうしてせつ菜ちゃんが遊びに誘ってくれるの、すっごく嬉しいの」

歩夢「寂しかったのも忘れて、温かい気持ちになれるんだ」

歩夢「私にはとっても素敵なお友達がいたんだって」ニコッ

せつ菜「……!」

せつ菜「あ、歩夢さん!」

せつ菜「たくさん遊びましょう! これからも、たくさん!」

歩夢「ふふっ、ありがとう、せつ菜ちゃん」ニコッ
 
222: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:42:30.63 ID:Ks8eQym9
せつ菜の部屋

せつ菜「はぁ……」

せつ菜「歩夢さん、可愛い過ぎです……」


結果的に今日の水族館はとても楽しかった。

みんなでワイワイと賑やかな時間もあったし、歩夢さんと2人きりの時間も持てた。

2人きりの時はずっと緊張してたけど。


そして、歩夢さんはやっぱり可愛かった。

水槽を夢中で眺める横顔も、私に向けてくれた優しい笑顔も。


せつ菜「もう可愛いです!! 可愛いです!!」ブンブン


ベッドに飛び込んで、枕をぎゅっと抱きしめる。


せつ菜「歩夢さん……」ギユッ


余韻に浸る中、ふとあの一言を思い出す。


(歩夢『私にはとっても素敵なお友達がいたんだって』)


せつ菜「……」


歩夢さんにそう言ってもらえるのは本当に嬉しい。

飛び上がりたくなるくらい嬉しい。


はずなのに。


”素敵なお友達”


歩夢さんのその言葉の裏にあるものを勘ぐってしまう。


「せつ菜ちゃんの気持ちは気付いてるけど、お願いだから友達のままでいてね」


そう歩夢さんに暗に示されたような気がしてならなかった。
 
224: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:46:43.88 ID:Ks8eQym9
侑「水族館なんて久しぶりだったけど、楽しかったなー」

かすみ「そうですね。かすみんも感動しちゃいました!」


先輩たちとの水族館はもちろん楽しかったけど、やっぱり侑先輩とこうして2人きりになれると嬉しい。

でもこのまま帰路につくのは寂しくて。


かすみ「侑先輩……」ギュッ


侑先輩の腕に絡みつき、ぎゅっと抱きしめる。

侑先輩の体温を感じたかった。
 
225: (もんじゃ) 2021/12/23(木) 22:57:55.75 ID:Ks8eQym9
侑「かすみちゃん……」

かすみ「えへへ、やっと2人だけになれたので甘えちゃいます」ギュウウ


私は侑先輩の彼女なんですから。

こうやってたくさん甘えてもいいですよね?

侑先輩が許してくれる限りは。


かすみ「……」ギュッ


水族館で楽しそうにはしゃぐ侑先輩の笑顔が脳裏に過る。


考えたくないけど、それでも考えてしまう。


侑先輩とあと何回デートできるんだろう。

いつまでこうして手を握れるのだろう。


もしも。

もしも、その日が来てしまったら。

そう考えるだけで……




やだ。そんなの絶対にやだ。

せっかく侑先輩と付き合えたんだもん。


離れたくなんかない。

ずっと侑先輩の彼女でいたい。

それなら……



侑先輩の心を繋ぎ止めないと。



かすみ「侑先輩」

侑「うん?」

かすみ「ホテル、行きませんか……?」
 
247: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:05:18.91 ID:WHZEWLRo
更新遅れてすみません。
続きやってきます。
 
248: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:13:51.08 ID:WHZEWLRo
璃奈「みんな手伝ってくれてありがとう」

璃奈「今度のライブも必ず成功させる。璃奈ちゃんボード、キリリッ」

浅希「うん、楽しみにしてるよ♪」

今日子「早く見たいよー!」

色葉「頑張ってね!」ニコッ


今日子「あ、そうだ!」

璃奈「?」

今日子「璃奈ちゃん……」モジモジ

今日子「これ、歩夢ちゃんに渡してくれる……?」スッ

璃奈「うん、わかった」ガシッ

璃奈「私が責任持って渡すね」

今日子「ありがとう!」ニコッ


浅希「色葉は愛先輩に渡さなくていいのー?」

色葉「私もこの前渡したんだ〜♪」

今日子「いつの間に!?」

璃奈「うん。愛さん、とっても喜んでた」

色葉「本当!?」

浅希「やるねー、色葉!」

色葉「ふふっ、愛先輩への愛なら負けないよ! 愛だけにっ!」

今日子「それ、愛さんの真似ー!」




璃奈「……」

璃奈(愛さん……)
 
249: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:20:20.57 ID:WHZEWLRo
せつ菜「歩夢さんの新しい衣装、とっても可愛かったです!」

歩夢「本当!? 嬉しい!」

せつ菜「歩夢さんの華やかさをより引き立ててくれて、優しいテイストなのにガツンと存在感のある素晴らしい衣装だと思います! まさに歩夢さんのステージを表現しているみたいです!」

歩夢「そんなに言われると照れちゃうよ」エヘヘ

せつ菜「早くこれを着た歩夢さんのステージ観たいです!

歩夢「ありがと!」ニコッ

せつ菜「歩夢さんの拘りポイントはどこなんですか?」

歩夢「うーんとね、今回は生地にも拘っててね……」


侑「歩夢ー! せつ菜ちゃん!」


歩夢「あ、侑ちゃん!」パアアア

せつ菜「…………」


どんなに歩夢さんと楽しく話していても、侑さんが来ると歩夢さんの目の色が変わる。

花が咲いたかのように表情が明るく弾ける。

それが少し辛かった。
 
250: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:29:44.64 ID:WHZEWLRo
歩夢「それじゃ行ってくるね!」

侑「せつ菜ちゃん、また後で!」ニコッ

せつ菜「あ、はい! いってらっしゃい!」


スタスタスタ


侑「今度の衣装、歩夢がますます可愛くなっちゃうなぁ」テクテク

歩夢「もう侑ちゃったら」ポムポムッ


せつ菜「…………」



幼馴染だし、付き合いの長さも深さも段違いの侑さんと比べても仕方ないのはわかってる。

それでも、歩夢さんとまた少し仲良くなれたかなって嬉しくなった日ほど、侑さんの登場で歩夢さんの態度は一変し、やっぱり私なんて何でもないんだと痛感してしまう。

ただの“素敵なお友達”の1人であって、何の意識もされていないんだと。

そんなの当たり前のことなんだけど。




今の歩夢さんの笑顔は、私の心に残酷に突き刺さっていた。


ちょっとはいい空気になってるかな?


そう感じていたのは私だけ。
 
252: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:37:49.96 ID:WHZEWLRo
 ◆

部室

果林「じゃあ、私たちは服飾同好会行ってくるわね」

エマ「いってきまーす!」ニコッ

愛「はーい!」

せつ菜・かすみ・しずく「「「いってらっしゃーい!」」


ガラガラガラガラ


愛「……」

愛「あれ……?」キョロキョロ

愛(今部室にいるこの4人って……)


かすみ「どうしたんですか、愛先輩」

愛「この4人って合宿の部屋のメンバーだなって!」

かすみ「ああ!」

せつ菜「確かにそうですね!」

しずく「4人部屋メンバーですね!」

愛「合宿のこと思い出すよ!」

しずく「ふふっ、それならまた恋バナでもしますか?」ニコッ

しずく「私、フラれちゃいましたけど」アハハ

愛「ぁ……」

かすみ・せつ菜「……」
 
253: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:43:38.10 ID:WHZEWLRo
愛「でも実は愛さんもダメそうなんだ……」アハハ

愛「りなりー、他に好きな人がいるらしくてさ」

せつ菜「そう、なんですか……」

かすみ・しずく「……」

愛「このまま片想いでも、友達のままいたいかなって」

かすみ「で、でも、わからないじゃないですか!」

かすみ「告白してみないと、わからないですよ……」

愛「そうは言ってもさ……」

しずく「……!」グッ

しずく「そうですよ、愛さん」

しずく「告白してフラれた私が言うのもなんですが」

しずく「愛さんには璃奈さんに告白して欲しいです」

しずく「きっとうまくいくって信じてます」

愛「しずくまで……」



愛「あはは、2人ともありがとうね!」ニコッ

愛「そうだよね、愛さんもうちょっと考えてみるよ!」

かすみ・しずく「……」

しずく(私たちに言えるのは……)

かすみ(ここまでだよね……)
 
255: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 21:49:56.54 ID:WHZEWLRo
愛「ねぇ、せっつーは最近歩夢とどうなのさー!」

せつ菜「わ、私は……」

せつ菜「やっぱり脈なしみたいです」

せつ菜「素敵なお友達って言われちゃいました……」

しずく「それっていいことなんじゃ」

せつ菜「本当は喜びたいんですけどね」

せつ菜「それ以上にはなれないのかなって思ってしまって」

かすみ「でもせつ菜先輩、デート誘ったり頑張ってるじゃないですか!」ニシシ

せつ菜「ちょ、ちょっとかすみさん!!」

愛「へー! そうなんだ!」

しずく「私は、せつ菜さんと歩夢さん、とってもお似合いだと思いますよ!」

せつ菜「本当ですか!?」バッ

かすみ「喜び過ぎです」

愛「あはは」

しずく「ふふっ」

せつ菜「……!」カアアア

せつ菜「か、かすみさんは侑さんと順調みたいじゃないですか!」フンッ

かすみ「……」

愛「そうだよー! かすみんとゆうゆはどんな感じなのー?」

かすみ「ふふっ、かすみんと侑先輩はー、もちろんラブラブですよっ!」

かすみ「会う度に2人の距離がどんどん縮まっていくんです♪」

愛「おおー!」

せつ菜「それは良かったです!」
 
257: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 22:03:35.51 ID:WHZEWLRo
愛「あ、愛さん、バスケ部に顔出さないといけないんだった!」

せつ菜「私も生徒会に用があるので、少し外しますね」

かすみ「わかりました!」

しずく「お2人とも相変わらずお忙しいですね!」


ガラガラガラガラ


しずく「それにしても」

しずく「かすみさん、侑さんとうまくいってるみたいで良かったよ!」ニコッ

かすみ「…………」

しずく「かすみさん……?」

かすみ「違うの……」

かすみ「しず子、違うの……」ポロッ

しずく「……!!」ガタッ

かすみ「かすみん、侑先輩とずっと一緒にいたくて……」

かすみ「侑先輩に離れて欲しくなくて……」ポロッ

しずく「うん……」ダキッ

かすみ「すっごく……焦っちゃって……」ポロポロ

しずく「うん……」ギュッ

かすみ「それで……」

かすみ「失敗しちゃった……」ポロポロ
 
258: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 22:10:02.08 ID:WHZEWLRo
 ◆

愛「……」テクテク

愛(そっか、せっつーも頑張ってるんだ)


(かすみ『告白してみないと、わからないですよ……』)

(しずく『愛さんには璃奈さんに告白して欲しいです」』)

(しずく『きっとうまくいくって信じてます』)



愛(みんなはああ言ってくれたけど……)



愛(でも本当に……)

愛(愛さんも告白、してみよっかな……)
 
259: (もんじゃ) 2021/12/28(火) 22:17:17.38 ID:WHZEWLRo
璃奈「じゃあ私、同好会行くね」

今日子「うん、行ってらっしゃい!」ニコッ

色葉「愛先輩によろしくねー!」ニコッ

 ◆

璃奈「……」テクテク

浅希「ねぇ、璃奈……!」スタスタッ

璃奈「浅希ちゃん?」

浅希「ちょっと聞きたいことがあって」ニコッ

璃奈「どうしたの?」

浅希「あのさ……」

浅希「今度の日曜、空いてる?」

璃奈「うん、同好会の練習もないし空いてるよ」

浅希「そしたらさ……」

浅希「2人だけでどっか遊び行かない?」
 
281: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:19:38.50 ID:CSv2Pb46
かすみの部屋

かすみ「ただいまー……」

同好会の活動を終え、部屋に戻ってひとまず椅子に座る。

グタッと全身の力が抜けた。


かすみ「今日は侑先輩とあんまりお話できなかったな……」


なんとなくお互いを避けてしまっていたのかもしれない。

話すことがあってもどこかぎこちなく、長く会話は続かなかった。

ただただ気まずい空気を感じるだけだった。

LINEだって今日はしていない。


かすみ「私の馬鹿……」


全部私のせいだ。

あの時、私は侑先輩を誘った。
 
282: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:24:53.24 ID:CSv2Pb46
『ホテル、行きませんか……?』

焦りのあまり出たその言葉。

今となっては泣くほど後悔してる。

でもその時はそれで侑先輩と結ばれるような気がして。

侑先輩の腕に私の胸を押し当てるようにして、上目遣いでそう誘ったんだ。


すると侑先輩は一瞬驚いた顔をしてから、目を伏せた。

痺れるような沈黙があった。

それから不意に私の頭にポンと手を乗せ、優しく撫でられた。


『そういうのは、また今度にしよっか』


微笑む侑先輩。

それでその話は終わりだった。


かすみ『嫌われ……ちゃったかな……』


侑先輩にどう思われただろうか。

困らせてしまったのは間違いない。

優しく断られたけど、内心引いてたよね。

軽い女だって思われちゃったかな。
 
283: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:30:00.78 ID:CSv2Pb46
翌日 同好会

璃奈「おおおおおお……」

愛「おお、りなりー、結構いけるようになったじゃん!」


柔軟でりなりーの背中を押してあげる。

前に比べたらだいぶ柔らかくなった。

日頃の努力の成果だ。


璃奈「うん。愛さんのおかげ」


りなりーはそう言ってくれる。


その小さな背中を見つめていると、後ろから抱きしめたくなる衝動に駆られる。

私がりなりーの全部を守りたくなる。


そしてりなりーが彼女になってくれたらどんなに幸せだろうと想像する。


愛(告白、しちゃおっかな……)


りなりーには好きな人がいる。

だから可能性は低いかもしれないけど。

撃沈覚悟でそれを伝えるのも、いいのかな。




璃奈「次、愛さんの番だよ」

愛「うん!」
 
284: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:34:14.19 ID:CSv2Pb46
夕方

同好会の活動後、りなりーと2人での帰り道。

そろそろ別れるタイミングで聞いてみた。


愛「りなりー、明日って予定ある?」

璃奈「あ、明日は……」

璃奈「浅希ちゃんと出かける」

愛「そっか!」ニコッ


りなりーの予定が空いてたら遊びたいなと思ったけど。

クラスの友達と2人で、か。


璃奈「……」

璃奈「ねぇ、愛さん」

愛「ん?」

璃奈「愛さんの好きな人って、どんな人……?」
 
285: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:39:52.77 ID:CSv2Pb46
りなりーにそんなことを聞かれてドキッとしてしまう。

目の前にいるりなりーこそ、私の好きな人なんだから。


愛「愛さんの好きな人はねぇ」

愛「とっても可愛くて、頭が良くて……」

愛「頑張り屋さんな子なんだ!」ニコッ

璃奈「そうなんだ……」

璃奈「素敵な人だね」

愛「うん……」



このまま言ってしまおうか。

この想いを何もかもぶち撒けてしまおうか。



愛「りなりー」

璃奈「……?」

愛「私の好きな人さ……」

璃奈「うん……」
 
286: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 15:49:07.35 ID:CSv2Pb46
りなりーの瞳を見つめる。

潤んでいるようにも見える美しく深い瞳。

それに吸い込まれそうになる。


愛「あのさ、りなりー……」


高まる鼓動がうるさい。

言葉が出かかる。


君のことが好き。


目の前のりなりーに伝えたい。




でも



ダメだ




愛「愛さんの好きな人、可愛い過ぎて参っちゃうよー!」アハハ

璃奈「…………」


言えなかった。

私には言えなかった。


璃奈「愛さんにそこまで想われて、その人も幸せだと思う」

璃奈「気持ち、届くといいね」

愛「うん、ありがとう!」ニコッ


りなりーは明日友達と2人で出かける。

きっと好きな人とのデートなんじゃないかな。

想いを伝えるなら今しかなかった。


でも、私はこの関係が壊れるのが怖かった。


りなりーが好きな人との恋を進展させるなら、私はりなりーの親友のままでいい。
 
289: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:04:06.14 ID:CSv2Pb46
翌日

浅希「わー、楽しかったー!!」ニコニコ

璃奈「時間あっという間だった」

浅希「それじゃ、そろそろ帰ろっか」

璃奈「うん」


璃奈「……」

璃奈(ここ、前に愛さんとも来たことあるけど、その時も楽しかったな)


(愛『愛さんの好きな人、可愛い過ぎて参っちゃうよー!』)


璃奈(そんなに可愛い人なんだ……愛さんの好きな人)

璃奈(私なんかじゃ、愛さんには……)


璃奈「……」


璃奈(それなら……)

璃奈(愛さんのこと、応援してあげられる友達にならないと)

璃奈(私も前に進まないと)



浅希「璃奈……?」

璃奈「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

浅希「あのね、璃奈に聞いて欲しいことがあるんだ」

璃奈「うん」

浅希「私ね……」

浅希「璃奈のことが好き」

浅希「ただの友達じゃなくて、もっともっと一緒にいたい」

浅希「恋人に、なってくれない……?」
 
290: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:13:00.21 ID:CSv2Pb46
数日後

かすみ「あさ子と!?」バッ

璃奈「うん。付き合うことになった」

しずく「そうなんだ……」

しずく「おめでとう、璃奈さん!」ニコッ

かすみ「あ、おめでとう、りな子!」

璃奈「ありがとう」

かすみ「でも驚いちゃったよ! りな子、愛先輩のこと好きだったから……」

璃奈「愛さんのことは随分悩んだけど」

璃奈「今は愛さんとは変わらず友達のままでいたいって思うようになったんだ」

しずく「そっか……」

かすみ「……」



しずく(2人が両想いだったなんてもう絶対言えないね……)

かすみ(言えるわけないよ……)

かすみ(あさ子だって勇気出して告白したんだから……)
 
291: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:17:15.09 ID:CSv2Pb46
 ◆

侑「というわけで、ファンのみんなからのリクエストの結果」

侑「今度のライブでは未来ハーモニーをやることになったよ!」

せつ菜「おお! いいですね!」

かすみ「未来ハーモニーですか!」

侑「全員揃ってるし、さっそく練習してみよっか!」

歩夢「うん!」

エマ「この曲、大好きなんだ〜♪」



しずく「……!」

しずく(え、未来ハーモニーって……)


 ◆


Brand New♪
Brand New World…♪


歩夢・かすみ パシッ

エマ・果林 サッ

愛・璃奈 ギュッ

しずく・彼方 ダキッ



しずく(やっぱりこうなるよね……)
 
292: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:20:42.90 ID:CSv2Pb46
未来ハーモニーのラストは彼方さんと私が抱き合うような姿勢になる。

踊りながらどうしようかと考えてしまったけど、結局、遠慮がちに彼方さんとくっついた。


今までのような密着はしちゃいけない気がして、軽く、表面上は抱き合って見えるように彼方さんに触れる。


でも、彼方さんは違った。


彼方「……」ギュッ

しずく「……!」ドキッ

彼方「……」ニコッ


力なく手を乗せる私をフォローするように、しっかりと私を抱き寄せてくれた。

嬉しかったけど、申し訳なかった。

彼方さんにまた気を使わせちゃったな。
 
293: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:25:30.09 ID:CSv2Pb46
せつ菜「はぁ……はぁ……」

せつ菜(今日もダンスに走り込みにたくさん練習できました)

せつ菜(とりあえずタオルで汗を……)サッ

せつ菜「……」フキフキ

せつ菜(あれ、このタオル、なんだか凄くいい匂いが……)フキフキ


歩夢「あ、せつ菜ちゃん、それ……」

せつ菜「……?」

歩夢「私のタオル……」

せつ菜「!!?」バサッ


せつ菜「す、すみません!!」

せつ菜「似ていたものでつい!!」

せつ菜「すみません、歩夢さん!!」

歩夢「そんな、大丈夫だよ!」

せつ菜「その……結構汗拭いてしまったので……」

せつ菜「ちゃんと洗って返しますから!」

歩夢「そんなのいいよー」ヒョイッ

せつ菜「あ……! でも本当に結構私の汗が……」

歩夢「せつ菜ちゃんのなら気にならないよ」フキフキ

せつ菜「……!!」

せつ菜(歩夢さん……!!)
 
295: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:37:00.55 ID:CSv2Pb46
彼方「彼方ちゃん、今日も頑張ったぜ〜」フキフキ

しずく「あ、あの、彼方さん!」

彼方「しずくちゃ〜ん」ニコッ

しずく「先ほどは、すみませんでした」

彼方「うん? 何のこと?」

しずく「未来ハーモニーの最後……」

しずく「彼方さん、私と抱き合うのなんて嫌でしたよね……」アハハ

しずく「嫌な気持ちにさせて、すみませんでした」

しずく「あの部分、今後は振りを変えて……」

彼方「しずくちゃん」

彼方「彼方ちゃん、嫌なんてこれっぽっちも思わなかったよ?」

彼方「しずくちゃんは何も気にすることないんだよ」

しずく「でも……」

しずく「私は彼方さんにフラれたのに……」

彼方「それはそれじゃん」

彼方「今は同好会の仲間でしょ?」ニコッ

しずく「……」
 
296: (もんじゃ) 2021/12/31(金) 16:45:40.36 ID:CSv2Pb46
しずく「彼方さん……」

しずく「私、今でも彼方さんのこと好きなんですよ?」

しずく「諦めきれてないんです……」

彼方「……」


そう、一旦は諦めようとしたけど、できなかった。

忘れようとしたけど、自分に嘘はつけなかった。

私は本当に彼方さんのことが好きだったんだ。

今にも想いが溢れ出しそうなほどに。


彼方「しずくちゃん、私は……」

しずく「わかってます。彼方さんの気持ちは……」グッ

しずく「でも私、こう見えて意外と諦めが悪くて頑固なんですよ」ニコッ

しずく「彼方さん、私のこと、嫌ではないんですよね?」

彼方「え……?」

しずく「それなら、彼方さん……」

しずく「1回だけ……」

彼方「……?」

しずく「1回だけでいいので……」

しずく「私とデート、してくれませんか……?」
 
317: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:02:55.72 ID:vvVM/rjI
しずく(また、言っちゃった、彼方さんに……)

しずく(結果はわかってるはずなのに)

しずく(それでも、やっぱり気持ちが抑えられなくて……)


彼方「……」

しずく「……」

しずく「ダメ……ですか……?」


彼方「ごめん……」


しずく「……!」グッ

しずく「私には……」

しずく「私には、チャンスはまったくないんですか、彼方さん……」

彼方「しずくちゃん」

彼方「私はしずくちゃんのことが大好き」

彼方「だから変に期待させないようにはっきり言うね」

彼方「今までしずくちゃんのことそういう目で見たことないし、これからもないと思う」

しずく「……っ」

彼方「ごめんね」
 
318: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:10:07.19 ID:vvVM/rjI
しずく「……」ズキッ

しずく「やっぱり、大好きな人に選ばれないって、辛いですね……」ウルッ

彼方「しずくちゃん……」

しずく「ごめんなさい、何度も聞いてもらって……」

しずく「ありがとうございます、彼方さん」ニコッ

しずく「それでは私、演劇部に行くので……」タタッ


スタスタスタ


彼方「……」
 
320: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:22:36.83 ID:vvVM/rjI
果林「彼方も罪な女ね。あんなに想ってくれる後輩をフるなんて」スッ

彼方「……!」

彼方「果林ちゃん、聞いてたの〜?」

果林「ごめんなさいね。盗み聞きするつもりはなかったんだけれど、しずくちゃんの泣きそうな声が聞こえちゃったから」

彼方「……」

果林「彼方、合宿の夜も告白されてたでしょ?」

彼方「おお、果林ちゃんにはお見通しだったか〜」

果林「しずくちゃんが彼方のこと好きなのは見てればわかるわよ」

彼方「へぇ〜」

果林「私なら、しずくちゃんみたいな可愛い女の子に告白されたら即オッケーしちゃうな」

彼方「それ、エマちゃんの前でも言える?」

果林「あら、エマだってしずくちゃんの可愛いらしさには同意してくれる思うけど?」

果林「彼方はタイプじゃないのかしら?」

彼方「うん? しずくちゃん可愛いよねぇ」

彼方「優しいし、しっかりしてるし、とってもいい子だよね」

果林「だったら……」

彼方「お邪魔しまーす!」ゴロン

果林「ちょっと……!」

彼方「果林ちゃんのお膝、久しぶり〜」スリスリ

果林「……」

果林「彼方、余計なお世話なのはわかってるけど……」

彼方「だからってさ」

果林「……!」

彼方「付き合えるとは限らないよね」

果林「それってどういう……」

彼方「すやぁ……」zzz

果林「……」




果林(もう……)

果林(この子はまったく……)
 
321: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:34:24.00 ID:vvVM/rjI
愛「あ、りなりー!」ニコッ

璃奈「愛さん」

浅希「愛先輩、こんにちは!」

愛「ちっすー!」ニコッ

愛「りなりー、これから部室?」

璃奈「うん。愛さんはバスケ部の助っ人だよね」

愛「うん、行ってくるね!」


璃奈「……」ジッ

愛「……」ジッ


璃奈「……」テクテク

愛「……」テクテク




りなりーが同級生と交際を始めた。

報告を聞いた時はおめでとうと祝福した。

覚悟はしていたことだ。


でもりなりーとは変わらず親友でいられる。

だから何も失っていない。

そう自分に言い聞かせてた。
 
323: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:40:24.46 ID:vvVM/rjI
 ◆

バスケ部の助っ人を終え、1人帰路につく。

いつも通る橋の途中で立ち止まる。

鮮やかな夕日に目を奪われたんだ。




さっきみたいに校内で2人とすれ違うことがある。

お相手の同級生はとてもいい子だってすぐにわかる。

りなりーを見る目にも優しさで溢れていたし、いい恋人になるだろうなと思った。

りなりーも楽しそうにしてる。



でも、どうしても引っかかることがある。

2人とすれ違う時、私はりなりーとじっと目が合う瞬間がある。

私とりなりーにしかわからない、一瞬の静寂。

私はりなりーの瞳に釘付けになってしまう。


その瞳の奥はどこか悲しく、私に何かを訴えかけるようだった。

それを覗くたびに、私はとてつもない過ちをしてしまったのではないかと胸が締め付けられる。


もちろん、そんなの私の気のせいなんだけど。
 
327: (もんじゃ) 2022/01/04(火) 22:47:08.33 ID:vvVM/rjI
それからというもの、私の中で虚しい願いが生まれてしまった。


もし時間を戻せるなら。

やり直せるなら。


あの瞬間に戻りたい。

りなりーへの告白を止めてしまったあの瞬間に。


あの時の私にあとほんの少しの勇気があったなら。

フラれてたかもしれないけど、想いは伝えられた。

こんなに苦しい気持ちにならずに済んだ。



あの瞬間に戻りたい。



沈みゆく夕日を眺めながら、そんな叶わない事ばかり夢見てる。



でも。

そうだね。


大学生か、社会人か、いつか大人になったら、実はあの頃好きだったんだよって、笑って打ち明けられる日がくるといいな。



夕日が街を照らし、私を照らす。

私の大好きな温かいオレンジ色。
 
351: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:20:32.97 ID:8XsU7L8K
夜 近江家

遥「ふぁ……そろそろ寝ようかな」

彼方「彼方ちゃんは少しだけ勉強してから寝るよ」

遥「うん。お姉ちゃん、あんまり無理しないでね」

彼方「大丈夫だよ〜」ニコッ


遥「ねえ、お姉ちゃん」

遥「気になる女の子とデートするならどこに行くのがいいのかな?」

彼方「気になる女の子……」

彼方「って……!!」ガタッ

彼方「遥ちゃんにいつの間にかそんな人が!?」

彼方「あ……あぁ……ついに……この時が……」フラフラ

遥「ち、違うよお姉ちゃん!」

遥「私じゃなくて、友達が悩んでて、それで私に相談されたの」

遥「でも私そういう経験ないから、お姉ちゃんに聞こうかなって」

彼方「友達……」

彼方「なんだー、友達かー……」ホッ

遥「あはは……」
 
353: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:25:13.81 ID:8XsU7L8K
遥「でもそう言うお姉ちゃんは、恋人作らないの……?」

彼方「ほぇ?」キョトン

遥「えっと、いや……お姉ちゃん美人なんだし、また恋人作らないのかなって……」

彼方「彼方ちゃんの恋人は遥ちゃんだよ〜」

遥「お姉ちゃん、真面目に……」

彼方「真面目だよ」ニコッ

遥「もう……」

遥「私ね、お姉ちゃんがいつも私のこと優先してくれるの本当に嬉しいし、感謝してるの」

遥「だからこそ、お姉ちゃんには幸せになって欲しいって、思ってるんだよ?」

彼方「ありがとう、遥ちゃん」

彼方「もしそういう人ができたら、遥ちゃんに紹介するから」ニコッ

遥「う、うん……」
 
354: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:32:20.96 ID:8XsU7L8K
翌日

部長「それにしても、東雲のみんなも気合い入ってたねー!」テクテク

しずく「そうですね。私たちも負けていられませんね!」テクテク


しずく(今日は合同演劇祭の打ち合わせのため、東雲学院に来ていました)

しずく(東雲の皆さん、すごい熱量だったなぁ……)

しずく(藤黄との演劇祭を思い出します)

しずく(私も頑張らないと……)


部長「東雲の主演の子がさぁ」テクテク

しずく「……」テクテク

部長「しずく……?」

しずく「あ、すみません、部長!」

部長「最近元気ない?」

しずく「いえ、そんなことないですよ!」エヘヘ

部長「そう?」

部長「悩んでたらあんまり抱え込まないでね」

部長「気分転換に今度の休み映画でも観に行こうよ」

しずく「いいですね!」ニコッ

部長「……」ニコッ




しずく「……!!」ハッ

しずく「え……」

しずく(あれは……)
 
356: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:42:53.42 ID:8XsU7L8K
JD1「君ほんと可愛いねー!」

JD2「お姉さんたちと遊ぼうよ!」

遥「いえ……私この後予定が……」

JD1「いいじゃん! ちょっとだけだからさー!」ズイッ

JD2「そうだよー、一緒に来てよ! 楽しいよ!」ズイッ

遥「え、えっと……」オロオロ


しずく「遥さん、どうされましたか?」バッ

遥「……!?」

遥「し、しずくさん……!?」

JD1「お友達? 君も可愛いね!」

JD2「どう? 君も一緒に」

しずく「結構です!!」ギロッ

JD1・2「!?」ビクッ

しずく「遥さん、行きましょう」グイッ

遥「あ、はい……」タタッ

JD1「あ、ちょっと……」

 ◆

部長「しずくどこに行ったのかと思ったら、ナンパから友達助けてたなんてカッコいいじゃん!」

遥「しずくさん、本当にありがとうございます!」ペコッ

しずく「いえいえ」ニコッ

しずく(ちょうど怖いギャルからヒロインを助ける役の練習をしていたのが役に立ちました!)
 
359: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:49:47.58 ID:8XsU7L8K
翌日 同好会

彼方「しずくちゃーん!」バッ

しずく「彼方さん!?」ドキッ

彼方「遥ちゃんから聞いたよ! 昨日、悪いお姉さんたちから遥ちゃんのこと、助けてくれたんだよね!?」ニギッ

しずく「あ、いえ、そんな大したことじゃないですよ……」アハハ

彼方「ううん、しずくちゃんは命の恩人だよ!」

彼方「遥ちゃんのこと守ってくれてありがとう!」

彼方「本当に……ありがと……」ニギッ

しずく「彼方さん……」

彼方「……」

彼方「しずくちゃん、今度お礼させてね」

しずく「いえ、お礼だなんて! 大袈裟ですよ、彼方さん」

彼方「遥ちゃんの命の恩人だもん。お姉ちゃんとして、お礼しないと気がすまないよ!」

しずく「は、はぁ……」


しずく(でも……)

しずく(彼方さんからこんなに感謝されるのは、嬉しいな)


彼方「あ、あとしずくちゃん」

彼方「同好会終わった後、ちょっとだけ時間ある?」

しずく「ええ、大丈夫ですけど……」
 
360: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 21:57:24.78 ID:8XsU7L8K
 ◆

同好会が終わった後、彼方さんと私は近くの公園に来た。

ベンチに腰掛け、静かな空間の中、今日の同好会のことなんかをお喋りする。


私の気持ちに対して、何らかの話があることはわかっていた。

彼方さんが切り出す。


彼方「しずくちゃん、気持ちを教えてくれてありがとう」

彼方「それと、応えられなくてごめんね」

しずく「……」

彼方「しずくちゃんが勇気を出して気持ちを伝えてくれたから、私もちゃんと話さないとって思ったの」

彼方「何回も言うけど、私はしずくちゃんのこと大好き」

彼方「だから聞いて欲しいんだ」

しずく「はい……」


彼方「実はね」

彼方「彼方ちゃん、前に付き合ってた人がいるんだ」

しずく「……!」

しずく「そう、だったんですか……」
 
361: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 22:02:39.85 ID:8XsU7L8K
1年前

「彼方のこと、好きです」

「私と……付き合って欲しい」

彼方「……!」

彼方「ふふっ、彼方ちゃんで良ければよろしくね!」ニコッ


その子とは告白されて付き合った。

付き合いたての頃は毎日楽しくて仕方なかった。

いろいろなところへ遊びに行ったし、一緒にいて笑顔が絶えなかった。

ずっと一緒にいるんだろうなって思ってた。


でも月日が流れるうち、すれ違いが始まって。


彼方「ごめん、その日は遥ちゃんと約束が……」

「え、また遥ちゃん?」

彼方「うん……」

「前からずっと思ってたんだけどさ」

「彼方ってシスコンだよね。しかも結構重度の」

彼方「え……」
 
364: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 22:11:51.01 ID:8XsU7L8K
「口を開けば遥ちゃん遥ちゃんってさ……」

「平日はバイトあるんだから、休日くらい私との時間も大切にしてよ」

彼方「うん。それはわかってるよ……」

「だいたい遥ちゃんももう高校生になるんでしょ? いつまでも姉離れできないなんて……」

彼方「は、遥ちゃんのこと、悪く言わないでよ……!」


初めは小さな綻びだったはずなのに。


「彼方、今日も眠そうだね」

彼方「あ、ごめん……」

「私といるのそんなにつまらない?」


気づいた時には、修復しようがない大きな溝になっていた。


「別れよ」

彼方「…………」

彼方「……うん、わかった」

「彼方となら、一緒に幸せになれると思ったんだけどな」

彼方「…………」
 
365: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 22:19:36.50 ID:8XsU7L8K
彼方の部屋 ベッド

彼方「……」ゴロリ


なんで別れることになっちゃったんだろう。

あんなにお互い好きだったのに。

大好きだったのに。


結局、私ではあの人を幸せにしてあげられなかった。

彼方ちゃん、恋人としてダメダメだったんだ。


彼方「寂しいな……」


心にぽっかりと穴が空いたみたいだった。

悲しみと虚しさで気力が湧かない。

でもそんな私を置いてけぼりにして、日常は進んでいく。


そんな時だった。


『届けて切なさには~♪』


スクールアイドルに出会ったんだ。
 
368: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 22:28:25.73 ID:8XsU7L8K
 ◆

彼方「こうしてスクールアイドルに夢中になった彼方ちゃんは同好会に入り復活を果たしたのでした〜」ウンウン

しずく「そうだったんですね……」

しずく「彼方さんのそういう話は初めて聞いたので驚きましたが……話してくれてありがとうございます」

彼方「……」

彼方「だからね」

彼方「彼方ちゃん、恋愛はしばらくいいかなって」

彼方「今はスクールアイドルと遥ちゃんに集中したいんだ」

彼方「それにしずくちゃん、そういうことだから、彼方ちゃんと付き合っても、きっと幸せになれないよ」

しずく「……っ」グッ

しずく「それだけは、違うと思います」

しずく「過去のことは過去のことじゃないですか」

しずく「私は、家族のこと大切に想う彼方さんのこと本当に素敵だなって思いますし」

しずく「眠っている彼方さんに膝枕するだけで幸せを感じるんですよ……」

しずく「彼方さんは人を幸せにする力があるんです」

しずく「少なくとも私は彼方さんといられるだけで幸せです!」


思わずぶつけた彼方さんへのありったけの想い。

私の恋のためじゃない。

ただ彼方さんの抱える自身への誤解を解きたくて。


でも。


彼方「ふふっ」

彼方「ありがと」ニコッ


その時の彼方さんの笑顔は、どこか遠くを見ているようだった。


彼方さんに私の声なんて届いていなかった。


しずく「…………」


もしかして、まだその方のこと。
 
369: (もんじゃ) 2022/01/10(月) 22:33:46.03 ID:8XsU7L8K
帰り道

歩夢「侑ちゃんとかすみちゃんに続いて璃奈ちゃんにも彼女ができるなんて」

歩夢「同好会に幸せの風が吹いてるのかな!」ニコッ

侑「そうだね!」ニコッ

侑「……」

侑「ねぇ歩夢」

侑「歩夢は今好きな人とかいる?」

歩夢「好きな人……?」

歩夢「うーん、今はいないかな」

侑「そっか」

侑「……」

歩夢「侑ちゃん……?」

侑「歩夢」

侑「恋愛って難しいね」

歩夢「え……?」

侑「私さ、かすみちゃんに告白されてとっても嬉しかったんだ」

侑「かすみちゃんのこと大好きだったし、可愛いとも思ってたし」

侑「でも……」

侑「もしかして、かすみちゃんの好きと私の好きは違ったのかなって……」

歩夢「……」

歩夢「それって……」

侑「私に恋愛はまだ早かったのかも」アハハ
 
391: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:20:35.17 ID:8GKJZBZU
部室

せつ菜「歩夢さん、ファンレターですか?」

歩夢「うん! やっぱりいつ貰っても嬉しいよね」ニコッ

歩夢「この前貰ったものもあるから、お返事書かないと!」

せつ菜「私もお返事を書かないとと思っていたんです」

せつ菜「まずは便箋を用意しないといけないのですが……」

歩夢「あ、私可愛い便箋売ってるお店知ってるよ!」

せつ菜「本当ですか!」

歩夢「今度の休み一緒に見に行こうよ。それから私の家で一緒にお返事書くのはどうかな?」

せつ菜「いいですね! とても楽しそうです!」

歩夢「あ、でも遅くなるかもしれないから、そのままお泊まりする?」

せつ菜「……っ!」ドキッ

せつ菜(お、お泊り……!)

せつ菜「はいっ! 歩夢さんが宜しければ……!)

歩夢「じゃあ決まりだね♪」

歩夢「買い物ついでにお洋服とかも見ようよ!」

せつ菜「はい! 私、服はよくわかりませんが……」アハハ

歩夢「ふふっ、せつ菜ちゃんに似合うお洋服選んであげるね!」

せつ菜「ありがとうございます! 楽しみです!」


せつ菜(歩夢さんと2人でショッピング……!)

せつ菜(しかもその後お泊まりなんて……)

せつ菜(本当にいいのでしょうか……!?)ドキドキ
 
393: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:24:14.00 ID:8GKJZBZU
歩夢「侑ちゃんも誘ってみるね!」ガタッ

せつ菜「……!」


あ。

まただ。

またこの流れだ。


歩夢「♪〜」テクテク


歩夢さんが私のことなんて何とも思ってないからこその反応。

でも、それなら意識して欲しい。

今度こそ、2人で出掛けたい。


だから。


せつ菜「待ってください!」ニギッ

歩夢「……!?」
 
394: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:29:31.73 ID:8GKJZBZU
せつ菜「今度は……」

せつ菜「今度こそは……」

せつ菜「歩夢さんと2人で遊びたいです」

歩夢「……」

せつ菜「ダメ……でしょうか……?」

歩夢「えっと……もちろんいいけど……」


せつ菜「……」ジッ

歩夢「……っ!!」


歩夢「せ、せつ菜ちゃん、”今度こそ”って……?」

せつ菜「あ、ああ……」

せつ菜「実はこの前の水族館も歩夢さんと2人で行きたくてお誘いしたんです」アハハ

歩夢「え……あ、えっと……」

歩夢「ごめん! 私そんなつもりじゃ……!」

せつ菜「いいんです! 私も楽しかったですから!」ニコッ

せつ菜「でも今度は2人だけで行きましょう。歩夢さん」

歩夢「……」

歩夢「うん……」

歩夢「よろしくね……」
 
396: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:36:05.67 ID:8GKJZBZU
 ◆

愛「いやさぁ、もうせっつーにかかってるんだよね!」

せつ菜「何のことでしょうか?」

愛「合宿の恋バナ組の話!」

愛「かすみんは順調みたいだけど、私としずくは失恋しちゃったからさ」

愛「1勝2敗ってことで、せめて引き分けに持ち込むにはせっつー次第なんだよ!」

せつ菜「それは、そうですが……」

愛「応援してるってこと!」ポン

愛「歩夢とデートするんでしょ? 頑張ってね!」ニコッ

せつ菜「……!」

せつ菜「はい、ありがとうございます」
 
398: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:43:45.72 ID:8GKJZBZU
当日

せつ菜「歩夢さん!」バッ

歩夢「せつ菜ちゃん……」ニコッ

せつ菜「お待たせしてしまいましたか?」

歩夢「ううん、今来たところだよ」

せつ菜「では行きましょうか!」

歩夢「うん……」

せつ菜「晴れて良かったですね!」ペカー

歩夢「うん……」


待ちに待った歩夢さんと2人きりのデート。

でもこの日の歩夢さんはどこか静かで、口数も少なかった。

心なしか顔が少し赤いようにも見える。

私があんな誘い方をしたから緊張しているのかな。

だとしたら、少しは私のことを意識してくれているのだろうか。
 
400: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 22:54:54.80 ID:8GKJZBZU
 ◆

歩夢「せつ菜ちゃん、こういうのもとっても似合うと思うよ!」

せつ菜「本当ですか!? 着てみますね!」


歩夢さんとの買い物デートは本当に楽しかった。

お互いに服を選び合ったり、手紙用の便箋や小物を見たり、甘いパンケーキを食べているうちに時間はあっという間に過ぎていった。

時間が経つにつれ、どこか硬かった歩夢さんの表情にも笑顔が見られ、会話も普段通りの雰囲気を取り戻した。



すっかり日は落ち、これから帰り道。

向かう先は歩夢さんの家だ。



せつ菜「歩夢さんのおかげでいい服が買えました!」

せつ菜「お気に入りになりそうです!」

歩夢「本当? 嬉しいな♪」

せつ菜「……」テクテク

歩夢「……」テクテク


今日はどこかしおらしく、よく顔を赤らめていた歩夢さん。

隣で歩くそんな彼女が愛おしくて堪らなかった。


歩夢さんの手にそっと触れ、優しく握る。

歩夢さんは前方に視線を向けたまま何も言わない。

私も黙ったまま歩き続ける。


繋いだ手にぎゅっと力を込めると、歩夢さんもぎゅっと握り返してくれた。
 
402: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 23:04:25.30 ID:8GKJZBZU
歩夢の部屋

せつ菜「確かに声に出して読むと、お相手の気持ちがより伝わってきますね!」

せつ菜「歩夢さんに教えて貰った方法で、いいお返事が書けた気がします!」

歩夢「特別なことはしてないよー!」フフッ

歩夢「私もせつ菜ちゃんと選んだ便箋でお返事書けたよ!」


歩夢さんとこんな遅くまで、しかもこのままお泊まりできるなんて最高だ。

ファンレターの返事を書き終え、ふと歩夢さんのことを見つめる。

歩夢さんは私の視線に気付くと、ニコッと笑ってくれた。




歩夢「せつ菜ちゃん、お風呂どうぞ」

せつ菜「すみません。ではいただきます!」
 
403: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 23:13:09.48 ID:8GKJZBZU
 ◆

元気なせつ菜ちゃんがお風呂に行ったことで、この部屋もしんと静まり返った。


歩夢「緊張したなぁ……」ギュッ


今日はせつ菜ちゃんがたくさんエスコートしてくれた。

たくさん話しかけてくれた。

すごく頼もしかったな。


(せつ菜『歩夢さんと2人で遊びたいです』)


あの時のせつ菜ちゃんの真剣で真っ直ぐな視線を思い出す。


そういう、ことなんだよね……?
 
405: (もんじゃ) 2022/01/15(土) 23:24:48.31 ID:8GKJZBZU
歩夢「あ、片付けないと……」

先ほどまで作業していた机の上には、便箋やら筆記用具やらが散らかっていた。

せつ菜ちゃんが戻るまでに少し片付けておこう。

そう立ち上がった時、足が何かに引っかかり、それを倒してしまった。


ガサッ


倒してしまったのはせつ菜ちゃんのバッグ。

口が開いていたのか、その中身が散らばる。


歩夢「ごめん、せつ菜ちゃん……!」


慌てて中身を拾い集め、バッグの中に戻していく。


その中であるものに気づいた。


歩夢「なに、これ……」


数センチ四方の平べったい小さなビニール状の梱包袋が1つ。

それが何なのかくらいわかる。

避妊具だ。


歩夢「…………」


私はそれをせつ菜ちゃんのバッグの奥の方に押し込んだ。

これですべて元通り。私は何も見ていない。

見ていない。


歩夢「…………」シュン


せつ菜ちゃん、そういう準備してきてたんだ。
 
421: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 21:25:28.44 ID:wj7cBGew
半日前 街中

果林「あら、せつ菜じゃない」

せつ菜「果林さん! 偶然ですね!」

せつ菜「これからモデルのお仕事ですか?」

果林「ええ。せつ菜はお出かけ?」

せつ菜「はい! 歩夢さんとお買い物に」

果林「あら、楽しそうね」

果林「じゃあ、これからデートのせつ菜にお守りあげる」ガサゴソ

せつ菜「お守り、ですか……?」

果林「モデル仲間に貰ったんだけど、私使わないから」ポンッ

せつ菜(果林さん、私のバッグに何を……?)

果林「まあ、歩夢相手にも使わないと思うけど」

せつ菜「……?」

果林「じゃあ頑張ってね。応援してるわ」

せつ菜「は、はい。ありがとうございます」

せつ菜(なんで果林さん私の気持ちを……)
 
422: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 21:28:01.77 ID:wj7cBGew
 ◆

しずく「部長、今日はありがとうございました!」

部長「ううん。私も楽しかったよ」

部長「どう? 気分転換になった?」

しずく「はい! とっても!」ニコッ

しずく「映画のストーリーも面白かったですし、あのヒロインのような演技もしてみたいなって!」

部長「ふふっ、いい演技だったよね」

部長「……」

部長「しずく、またこんな感じに誘ってもいい?」

しずく「え?」

部長「遊びとか」

しずく「はい! もちろんです!」ニコッ
 
423: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 21:33:00.74 ID:wj7cBGew
数日後 校内

歩夢「……」テクテク

歩夢(せつ菜ちゃんとのお買い物やお泊まり、すごく楽しかったけど……)

歩夢(せつ菜ちゃん、なんであんなもの持ってたんだろう……)


せつ菜「もう、果林さん!!」バッ


歩夢「……!」

歩夢(せつ菜ちゃん……?)



せつ菜「なんてものを渡してくれたんですか!」

せつ菜「バッグの中見てビックリしましたよ!」

果林「実は私も貰って困ってたのよ。そしたらちょうどせつ菜を見かけて……」

せつ菜「だからって、私に渡さないでください!!」

せつ菜「歩夢さんに見られたらどうするんですか……!」プンッ

果林「ごめんなさい……ジュース奢るから機嫌直して」

せつ菜「だいたいこんなもの高校生が持っていていいはずが……!!」ガミガミ



歩夢「……」


(果林『保健とか教えてあげましょうか?』)

(果林『教科書に載ってないコトだって……』)

(せつ菜『け、結構です! テストの範囲内だけで……!』)


歩夢「そうだよね」ボソッ

歩夢(よく考えてみたら、せつ菜ちゃんがあんなもの持ってるわけないよね……)アハハ


歩夢(でも……)

歩夢(何で私、あんなにショックだったんだろ……)
 
428: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 21:39:25.86 ID:wj7cBGew
音楽科 教室

侑「それでさー!」

同級生1「ええー、なにそれ侑ちゃんー!」クスクス

同級生2「おもしろーい!」クスクス

侑「でしょー!」クスクス


同級生3「高咲さーん! 1年の子が来てるよー!」

侑「え、1年生?」

 ◆

侑「かすみちゃん!」

かすみ「えへへ、すみません、教室まで来ちゃって」

侑「ううん。どうしたの?」

かすみ「いえ……ただ侑先輩の顔が見たくなって……」

侑「そっか」ニコッ

かすみ「迷惑でしたか……?」

侑「全然! 来てくれて嬉しいよ!」

かすみ「侑先輩……」

侑「音楽科の方でかすみちゃんがいるのってなんか新鮮!」

かすみ「そうですね!」エヘッ

かすみ「侑先輩、今日同好会終わった後、時間ありますか……?」

侑「うん、大丈夫だよ!」

かすみ「じゃあちょっとだけ寄り道して帰りましょう!」ニコッ
 
430: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 21:49:35.56 ID:wj7cBGew
 ◆

キーンコーン

かすみ「あ……」

侑「もう時間だね」

かすみ「……」

侑「どうしたの、かすみちゃん。授業遅れちゃうよ?」

かすみ「はい……」

かすみ「じゃあ……かすみん行きますね」エヘヘ

侑「うん。来てくれてありがとね!」

かすみ「はい。また後で」

スタスタスタスタ


同級生「なに高咲さん、もしかして彼女?」ニヤニヤ

侑「え!? あ、うん、まあ……」アハハ

同級生「おおー!!」


かすみ「…………」テクテク
 
432: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 22:01:18.30 ID:wj7cBGew
同好会 活動後

侑「歩夢、今日は私かすみちゃんと帰るから!」

歩夢「うん、わかった!」ニコッ

かすみ「すみません歩夢先輩、侑先輩お借りします」エヘヘ

歩夢「2人は恋人なんだから、気にしないで!」



せつ菜「あ、あの、歩夢さん……!」タタッ

歩夢「せつ菜ちゃん……?」

せつ菜「良かったら、途中まで一緒に帰りませんか?」

歩夢「……!」

歩夢「うん! 一緒に帰ろ!」ニコッ




愛「……」チラッ

愛(最近のせっつー、歩夢にガンガンアタックしてるじゃん!)

愛(いいよいいよ、その調子!)グッ


璃奈「愛さん、どうしたの?」

愛「ううん! 何でもないよ!」

愛「ねぇりなりー、この後どっか寄ってかない?」ニコッ

璃奈「ごめん、この後は浅希ちゃんと約束があって……」

愛「あ、そうなんだ!」

愛「じゃあ2人で楽しんできてね!」ニコッ

愛「また明日ね、りなりー!」タタッ

璃奈「あ……」

愛「……」スタスタ
 
434: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 22:13:37.17 ID:wj7cBGew
帰り道

せつ菜「歩夢さん、聞きましたか!? しずくさんが遥さんを助けた話」テクテク

歩夢「うん、聞いたよー! しずくちゃん、凄いよねー!」テクテク

せつ菜「同好会メンバーとして誇りに思います!」

歩夢「勇敢だよね。ナンパなんて怖そうなのに」

せつ菜「わ、私だって! 歩夢さんがナンパされたらお助けしますよ!」

歩夢「本当に?」

せつ菜「もちろんです! 絶対に守ります!」

歩夢「えへへ、ありがと!」



せつ菜「……」

歩夢「……」

せつ菜「……」ニギッ

歩夢「……」ニギッ
 
436: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 22:25:20.13 ID:wj7cBGew
公園

侑「ご馳走様!」

侑「やっぱりかすみちゃんのコッペパンはいつ食べても美味しいよ!」

かすみ「今回は侑先輩への愛情もたっぷり込めましたからね!」エッヘン

侑「ふふっ」

かすみ「……」

かすみ「侑先輩、手握ってもいいですか……?」

侑「いいよ!」ニコッ

かすみ「……」ニギッ

侑「……」

かすみ「こうして手繋いでると、周りからは恋人に見えますよね?」

侑「そうかもね!」

かすみ「えへへ……」

かすみ「これからも……」ニギッ

かすみ「こうしてずっと2人でいたいですね」

侑「……」

かすみ「……」

かすみ「侑せん……」

侑「あ、ごめん! ちょっとぼーっとしちゃった!」アハハ

かすみ「……」

侑「……」

かすみ「……」ポロッ

侑「……!」

侑「かすみ……ちゃん……?」

かすみ「…………っ」ポロポロ
 
437: (もんじゃ) 2022/01/16(日) 22:31:14.22 ID:wj7cBGew
侑「かすみちゃん、どうしたの!?」ガタッ

かすみ「侑先輩……」

かすみ「かすみん、侑先輩のこと大好きなんです……」ポロポロ

侑「うん……私だって……」

かすみ「侑先輩は……!」グスッ

かすみ「かすみんのこと、好きじゃないですか……?」ポロポロ

侑「…………」


そう尋ねるかすみちゃんの泣き顔はあまりにも痛々しく、寂しそうで。


うまくいってると思ってた。

私の好きは違うんじゃないかと疑問に思うことはあったけど、それでもかすみちゃんと恋人できてると思ってた。


でも、違ったんだ。


かすみちゃんの流した涙がすべてを物語っている。


彼女が今までどれほどの苦悩を抱えていたか。

私がどれだけ彼女を追い詰めていたか。


侑「かすみちゃん……」ギュッ


うまくやれてると思ってた。

私はどこまでも独りよがりだったんだ。

私は馬鹿だった。
 
477: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 21:41:47.98 ID:WpOheT6G
歩夢の部屋

歩夢「ふー……」

歩夢(勉強も終わったし、そろそろ寝ようかな)


ピロン


歩夢(侑ちゃんからLINEだ)

侑:
歩夢、ベランダ出られる?




ベランダ

歩夢「侑ちゃん?」タタッ

侑「あ、歩夢。ごめんね遅いのに」

歩夢「ううん。どうしたの?」

侑「ちょっと歩夢と話したくなってさ」

歩夢「そっか」

侑「そろそろせつ菜ちゃんのライブの日だね」

歩夢「そうだね!」

侑「楽しみだなー」

歩夢「私と侑ちゃんが同好会に入るきっかけをくれたライブだもんね」

侑「そうそう!」

侑「私がこんなにスクールアイドルにハマっちゃうなんて、昔は思ってもみなかったよ」アハハ

歩夢「私も!」フフッ
 
478: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 21:46:34.31 ID:WpOheT6G
侑「……」

侑「歩夢、話は変わるんだけどさ」

歩夢「うん」

侑「あんまり話したくないかもしれないけど……」

侑「歩夢、中3の時あの子と付き合ってたじゃん」

歩夢「うん……」

侑「どうして別れちゃったの?」

歩夢「……」

侑「ごめん、答えたくなかったら……」

歩夢「ううん、大丈夫だよ」

歩夢「どう言ったらいいのかな」

歩夢「実際付き合ってみたら、お互いに思ってた感じと違ったんだと思う」

歩夢「それですれ違っちゃって……」

侑「別れを切り出したのは歩夢からだったよね?」

歩夢「うん」

侑「辛かった?」

歩夢「辛かったかもしれないけど、そのまま無理に一緒にいる方がもっと辛いと思うから……」

侑「そっか」

侑「……」

侑「あのさ……」

侑「今日、かすみちゃんのこと泣かせちゃったんだ」
 
480: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 21:53:49.23 ID:WpOheT6G
歩夢「……」

歩夢「喧嘩、しちゃったの……?」

侑「喧嘩とは違うんだけどさ」

侑「私、ちゃんとかすみちゃんの恋人できてなかったみたい……」

歩夢「それって、この前言ってたこと……?」

侑「うん。たぶんそういうこと」

侑「私の好きとかすみちゃんの好きは違うのかなって」

歩夢「ま、待ってよ……それじゃ今私に聞いたのって……」

侑「……」

侑「その……私も、まだわからないんだ」

侑「どうしたらいいのか、わからない……」

歩夢「……」

歩夢「どうすべきか決めるのは侑ちゃんだけど」

歩夢「私、かすみちゃんからたくさんお話聞いたから知ってるんだ」

歩夢「かすみちゃんが侑ちゃんのことどれだけ大好きか」

歩夢「心の底から大切に思ってるか」

歩夢「だから、それだけは伝えておくね」

侑「歩夢……」
 
482: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:00:17.20 ID:WpOheT6G
そっか。

私だって中学の時そうだったように。

付き合って恋人になることがゴールじゃない。

その先にはさらにいろんな出来事があるはずで。

場合によっては……


(侑「私の好きとかすみちゃんの好きは違うのかなって」 )


侑ちゃんとかすみちゃん。

大丈夫かな……



せつ菜「歩夢さん……?」

歩夢「……!」

歩夢「あ、ごめん、せつ菜ちゃん!」

せつ菜「何か考え事ですか?」

歩夢「ううん、何でもないの!」

歩夢「えっと、編みぐるみの話だよね!」

せつ菜「はい! やっぱり歩夢さんと侑さんのお揃いの編みぐるみ、とっても可愛いです!」

歩夢「ふふっ、ありがと!」

せつ菜「その……」

せつ菜「私も、歩夢さんと何かお揃いのもの持ちたいな、なんて……」

歩夢「お揃い?」

せつ菜「はい……」

歩夢「いいね! 何にしよっか!」

せつ菜「……!!」パアアア
 
484: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:08:01.10 ID:WpOheT6G
 ◆

歩夢「それじゃせつ菜ちゃん、明日のライブ頑張ってね!」ニコッ

せつ菜「はい! 熱いライブにしてみせます!」

歩夢「すっごく楽しみなんだー!」ニコニコ

せつ菜「……っ」ドキッ

せつ菜「……」

せつ菜「あの、歩夢さん……」

歩夢「うん?」

せつ菜「明日のライブが終わった後、少しだけお時間いただけませんか?」

せつ菜「歩夢さんに大切なお話があるんです」

歩夢「……」

歩夢「うん、いいよ」
 
485: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:18:15.64 ID:WpOheT6G
部長「明日はせつ菜ちゃんのライブだね」

しずく「はい、楽しみです!」

部長「ふふっ」

しずく「……」ボーッ

部長「……」

部長「しずくさ、何か悩んでる?」

しずく「え……?」

部長「最近のしずく、たまに元気ない気がして……」

部長「何か悩みでもあるのかなって、ちょっぴり心配なんだよ」

しずく「それで最近遊びに誘ってくれたりしたんですか?」

部長「ま、まあ……」

しずく「部長は優しいですね」フフッ


しずく(そっか……)

しずく(部長もこんな私のこと、心配してくれてたんだ)


しずく「……」

しずく「悩み、というより……」

しずく「私、失恋したんです」

しずく「それはもう気持ちいいくらいフラれちゃって」

部長「そうだったんだ……」

部長「ごめん……」

しずく「いえ、部長のおかげでだいぶ気は晴れましたから」

部長「ちなみに、さ……その相手って……」

しずく「スクールアイドル同好会の先輩です」

しずく「彼方さん」

部長「……」

部長「彼方……」
 
487: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:30:56.31 ID:WpOheT6G
翌日 ライブ会場

しずく「部長! 始まっちゃいますよ!」スタスタ

部長「うん、待ってしずく!」


しずく(それにしてもお客さんたくさん!)

しずく「あ、彼方さんたちだ!」スタスタ

しずく「こんにちは!」

彼方「おー、しずくちゃーん!」

エマ「そろそろだよー!」

果林「あら、演劇部長さんも一緒なのね」

部長「せつ菜ちゃんのライブはやっぱり気になるからね!」


彼方「……」チラッ

部長「彼方、久しぶり」ボソッ

彼方「うん……」


しずく「……?」
 
489: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:39:43.97 ID:WpOheT6G
 ◆

せつ菜「夢はいつかー♪」

せつ菜「ほーら、輝き出すんだ!」


ワーワーワーワー


「せつ菜ちゃん可愛いー!!」

「きゃー、せつ菜ちゃーんー!!」

「せつ菜ちゃんカッコ良すぎ!!」


歩夢「……」

歩夢(やっぱりせつ菜ちゃんって凄いな……」


 ◆


愛「せっつー、すっごく良かったよ!!」

侑「うんうん! せつ菜ちゃんのライブ本当にトキメいちゃうよ!!」

歩夢「ファンのみんなもすごく盛り上がってたよね!」

せつ菜「皆さん、ありがとうございます!」

彼方「じゃあこの後は打ち上げだねぇ」

エマ「うん。まだまだ感想たくさん言いたいしね!」

せつ菜「はい!」

せつ菜「私はまだやらないといけないことがあるので、少し外しますね!」

果林「あら、何か手伝えることはある?」

せつ菜「いえ、大丈夫です! 皆さんは先に行っていてください!」




ピロン


歩夢「……!」カチャッ




せつ菜:
ステージ裏で待ってます。
 
490: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:49:55.01 ID:WpOheT6G
ステージ裏

せつ菜「……」


ついに。

ついに、歩夢さんを呼び出してしまった。

この想いを伝えるために。


せつ菜「……」ギュッ


期待しちゃダメなのはわかってる。

そんな夢みたいなこと起こるはずないってわかってる。

でも。

それでも胸の鼓動は高鳴って。


同時にのしかかってくるのは、とてつもない不安。


もし、歩夢さんが来てくれなかったらどうしよう。

想いを伝えることすら許してくれなかったらどうしようって。



それでも今は待つのみだ。

伝えるべ言葉を心の中で唱え、深呼吸し、歩夢さんの笑顔を思い出し、

そして……






歩夢「せつ菜ちゃん」

せつ菜「……!」

せつ菜「歩夢さん……」
 
491: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:56:03.45 ID:WpOheT6G
歩夢「ライブ、本当に素敵だったよ! お疲れ様!」

せつ菜「ありがとうございます」


せつ菜「歩夢さん、お呼び出てしてしまいすみません」

せつ菜「昨日お伝えしたとおり、歩夢さんに大事なお話があるんです」

歩夢「うん。なあに?」



歩夢さんの美しい瞳が私を見据える。


ついに、この時が。


せつ菜「歩夢さん……」


私は、


あなたのことが。


せつ菜「……っ!」 


発したい言葉が喉まで出かかっているのに、それが声にならない。

あと一歩前に踏み出せない。

全身が硬直していることに気付いた。



あんなにイメージしたはずなのに。

練習したはずなのに。

歩夢さんを前にすると、これ以上、何も言えない。
 
493: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:01:30.37 ID:WpOheT6G
大好きな人にその気持ちを伝える。

これ以上ないくらい素敵なことのはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。

胸が締め付けられるんだろう。

切り裂かれそうになるんだろう。


私は、


私は……




歩夢「せつ菜ちゃん」




その声にハッとする。

歩夢さんの声が、私の意識をその場に呼び戻したんだ。

鋭い興奮と共に。


いつものように優しく微笑んでくれている歩夢さん。

それが失速していた私に限りない勇気をくれて。




せつ菜「歩夢さん、大好きです」

せつ菜「私と恋人になってください!」
 
495: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:06:57.07 ID:WpOheT6G
歩夢「…………」

せつ菜「…………」


歩夢「ここに来たってことは、わかるでしょ?」

せつ菜「え……?」

歩夢「私で良ければ喜んで」ニコッ

歩夢「よろしくお願いします」
 
521: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:09:25.01 ID:k6dK7SwB
保守ありがとうございます!
続きやってきます。
 
522: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:12:06.19 ID:k6dK7SwB
ライブ打ち上げ後

ワイワイ ガヤガヤ

部長「なんで私も参加しちゃったんだろ……」

しずく「別にいいじゃないですか!」ニコッ

部長「でも私部外者だし……」アハハ

彼方「その割には楽しそうにしてたじゃ~ん」

部長「彼方……」


かすみ「ねぇねぇしず子ー! これ見てー!」

しずく「なあに、かすみさん」スタスタ

彼方「……」

部長「……」


部長「彼方も今度ライブやるんでしょ?」

彼方「うん。彼方ちゃんのライブはみんなでお昼寝するんだ〜」

部長「ふふっ、相変わらずだね」

部長「……」

部長「ねぇ彼方、ちょっと2人で話さない?」

彼方「……?」
 
524: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:24:57.43 ID:k6dK7SwB
部長「……」スタスタ

彼方「……」スタスタ



しずく「……?」

しずく(あれ、部長、彼方さんを連れてどこへ?)

しずく「……っ!」ハッ

しずく(まさか……!!)


(部長『彼方、あんた私の可愛い後輩のことフったらしいじゃない?』)

(部長『しずくは本気なのにどういうつもりなの?』)

(部長『普段お世話して貰ってるならデートくらいしてあげなよ』)


しずく(いやいやいやいやいや!!)

しずく(部長! 私のためでもそれは違います! 違いますよー!!)
 
525: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:31:30.87 ID:k6dK7SwB
部長「改まって言うのもなんだけど、なんて言うかさ、彼方にちゃんと謝れてなかったなって」

彼方「何のこと?」

部長「別れる前にさ、私ひどいこと言っちゃったじゃん……」

部長「遥ちゃんのこと悪く言ったりとか、彼方のことも、傷つけた……」

彼方「……」

部長「だから、ごめん。悪かったと思ってる」

部長「ちゃんと謝りたかったけど、なかなか言えなくてさ……」

彼方「そうだったんだ」

彼方「大丈夫だよ。気にしてないから」

部長「……」

部長「私さ」

部長「彼方と付き合ってた間、本当に幸せだったよ」

彼方「……!」

部長「それは伝えたかったんだ」

彼方「……」

彼方「そっか……」
 
527: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:37:47.20 ID:k6dK7SwB
彼方「彼方ちゃん達、なんで別れちゃったんだろうね」

彼方「あんなに楽しかったのに……」

部長「それは、仕方ないよ」

部長「彼方は次の人とかいないの?」

彼方「いないよ〜」

部長「付き合ってた頃は随分モテモテだったみたいだけど」

彼方「それ君が言う?」

部長「私は普通だよ」

彼方「……」ムゥ

彼方「あのさ……」

彼方「久しぶりに彼方ちゃんちにご飯食べに来ない?」

部長「え……?」

彼方「やり直せないかな、私たち」

部長「…………」




しずく「……っ!」ギュッ
 
529: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:58:39.49 ID:k6dK7SwB
かすみ「侑先輩、この前は変なこと言ってごめんなさい」

かすみ「かすみん、なんか熱くなっちゃって……」エヘヘ

侑「ううん。私の方こそ、ごめん……」


侑先輩と2人での帰り道。

侑先輩が一緒に帰ろうって言ってくれたのがすごく嬉しかった。

そしてそれは、駅に着いた時だった。


侑「え、あれ……!?」


侑先輩があることに気付く。

自分のバッグを凝視してから、青ざめた顔で私を見た。

私もそれに気付き、全身から血の気が引いていくのを感じた。


侑先輩がいつもバッグに付けている編みぐるみがなくなっていた。

歩夢先輩とお揃いの大切な編みぐるみが。
 
533: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:07:21.39 ID:k6dK7SwB
 ◆

それから私と侑先輩で懸命に編みぐるみを探し回った。

歩いてきた道中を辿り、ライブ会場まで戻った。

でもどこを探しても見つからなかった。


かすみ「ライブが始まる前に、侑先輩のバッグについてるのは見た気がするんです」

かすみ「だからきっとこの道のどこかに……」

侑「……」

侑「かすみちゃん、一緒に探してもらっちゃってごめん」

侑「でももう遅いから、帰ろっか……」

かすみ「……」

かすみ「嫌、です……」

侑「かすみちゃん?」

かすみ「私絶対見つけますから! もう1回ライブ会場戻ってみます!」タタッ

侑「あ、ちょっと、かすみちゃん!」


諦めたくなかった。

どうしても見つけたかった。

だって、あれは……
 
534: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:14:42.64 ID:k6dK7SwB
もう一度ライブ会場をくまなく探す。

入口からステージ裏まで。

それでも見つからない。

歩夢先輩手作りのあの……


なんで。

なんで、なんで、なんで!!


お願い!

お願い、出てきてよ!


かすみ「ああっ!」ヨロッ


焦りのあまり足が躓いて転んでしまう。

かすみ「いてて……」

侑「かすみちゃん、大丈夫!? 怪我はない?」

かすみ「うぅ……」


顔を上げたその時。

その先の花壇の隅に。



かすみ「あ……」

かすみ「あったああああああ!!」
 
536: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:19:28.72 ID:k6dK7SwB
 ◆

侑「かすみちゃん、本当にありがとう!!」

侑「ごめんね、洋服汚れちゃったよね」

かすみ「服は洗えばいいだけですから!」

侑「でも、私のために、こんなに……」

かすみ「えへへ、侑先輩のためなら当然です!」エヘヘ

かすみ「それに歩夢先輩のためにも……」

侑「え……?」

かすみ「もしその編みぐるみを侑先輩がなくしちゃったら」

かすみ「歩夢先輩、きっとすごく落ち込んじゃうと思うんです……」

侑「……」

かすみ「かすみん、歩夢先輩のことも大好きだから」

かすみ「侑先輩とかすみんが付き合うことで、歩夢先輩が寂しい思いするのだけは絶対嫌だなって……」

かすみ「ずっとそう思ってて……」

侑「かすみちゃん……」

かすみ「だから……」

かすみ「2人の宝物が見つかって、本当に良かったです!」ニコッ

侑「……!」
 
538: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:28:31.19 ID:k6dK7SwB
彼方「まさかしずくちゃんに聞かれてたとはね〜」

しずく「すみません。盗み聞きするつもりはなかったんですが……」


あたりはすっかり暗くなっていた。

公園のベンチで2人。

彼方さんは弱々しい表情でずっと下を向いていた。

こんな彼方さんは初めてだった。


彼方「彼方ちゃん、カッコ悪いよねー」

しずく「そんなこと、ないです……!」


この前私が感じたとおり、彼方さんの中には未練があったのだろう。

その相手には正直驚いたけど……


彼方「しずくちゃんにこんなこと言うの、彼方ちゃんひどいと思うけど……」

彼方「私、あの子のことまだ好きだったみたい」

彼方「今日話してみて、やっぱり好きだなって、思っちゃった……」

しずく「彼方さん……」


しずく「で、でも、部長もずるいですよね。幸せだったなんて言われたら、その気になっちゃいますよ」

彼方「ふふっ、しずくちゃんは優しいね」


彼方さんの頭が私の肩にもたれる。


彼方「少しだけ、こうしてていい? しずくちゃん」

しずく「……」
 
540: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:38:13.42 ID:k6dK7SwB
あまりにも弱った彼方さん。

私が慰めなきゃって、肩に乗る彼方さんの頭を優しく撫でる。

柔らかい髪。ふわふわとした感触が心地良い。

優しく、優しく。彼方さんに触れる。

そして、彼方さんの熱を感じる。


その熱にもっと触れたくなって。


指先をゆっくりと首筋まで移動させる。

さらさらな肌。そこをまた、慰めるように撫でた。

彼方さんはじっとして、黙っている。


指先はさらに彼方さんの熱を求める。

彼方さんに触れたい。

もっと先へ。奥深くへ。


しずく「……!!」


そこでピタリと手が止まる。


今、私はいったい何をしようとしてたんだろう。


最低なことをしようとした。

彼方さんの傷付いた心に付け込もうとしたんだ。

今なら、彼方さんが手に入る気がして。


しずく「……!!」グッ


そんな愚かな考えが一瞬でも脳裏を過った自分を恥じる。

欲望をぎゅっと堪える。

この時ばかりは、彼方さんへの気持ちを忘れないと。


そして、1人の後輩として、友達として、彼方さんの頭を優しく撫で続けた。
 
542: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:46:14.70 ID:k6dK7SwB
侑の部屋

侑(かすみちゃん……)

侑(歩夢のことそんなに考えてくれてありがとう……)


やっぱりかすみちゃんって本当に良い子なんだな。

心の優しい子なんだ。



それにしても……


(かすみ『本当に良かったです!』ニコッ)


侑「……」トクン


あの時感じた、この胸がざわつくようなトキメキ。

せつ菜ちゃんのステージを観た時のトキメキとはまた違ってて……
 
543: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:49:52.75 ID:k6dK7SwB
数日後

今日は侑先輩に夜ご飯に誘われていた。

侑先輩の方からそんな風に誘ってくれるのは珍しい。

以前なら頬が緩んでしまうところだけど、今回は素直に喜べなかった。

きっと侑先輩の方から何か話があるんだろうなって予感できたから。


それがいつなんだろう。いつ侑先輩の口から出るんだろうっていつも怯えてた。

今日がその日なんだ。


侑「これ美味しいね」

かすみ「そうですね!」ニコッ

侑「……」

かすみ「……」


料理は美味しかったけど、いつも楽しいはずの先輩との会話はまったく弾まなかった。

当然だよね。


侑先輩だって、私がこれから言われることを覚悟してるって、雰囲気で伝わっているんだと思う。

食事中はずっと重い空気だった。
 
544: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:56:45.03 ID:k6dK7SwB
侑「来て欲しい場所があるんだ」


そう言って侑先輩が食後に連れてきてくれた場所。

お台場の夜景が一望できる静かな場所だった。


かすみ「キラキラで素敵ですねー!」

侑「うん、そうだね!」ニコッ


こんなところで侑先輩と2人きり。

ロマンチックなはずなんだけど、今日は違う。

ここが最後の思い出の場所になるんだから。


侑「かすみちゃん、話があるんだ」


きた。


かすみ「なんですか? 侑先輩」


できるだけ明るく返事する。

最後は笑顔の可愛い私を見て欲しくて。
 
545: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:59:52.82 ID:k6dK7SwB
侑「この前泣かせちゃったこと、本当にごめん」

侑「かすみちゃん、辛かったよね」

かすみ「い、いえ、それはかすみんが勝手に……」

侑「ううん、私がしっかりしてないから、かすみちゃんのこと不安にさせちゃった」

かすみ「……」


侑「私、付き合うとか初めてだったし、よくわかってなかったんだ」

侑「かすみちゃんへの好きが、どっちの好きなのかなって、ずっと考えてた」

かすみ「はい……」

侑「それでね、答えが出たんだ」

かすみ「……」


だめだ。

堪えられない涙が、今にも溢れ出しそうだった。


侑「私……」

侑「かすみちゃんのこと、大好き!」


かすみ「…………」

かすみ「それって、どういう……」

侑「かすみちゃんのこと、彼女として、恋人として大好きだってこと」


何が起きてるのかわからなかった。

侑先輩にぎゅっと抱きしめられる。


侑「愛してるよ、かすみちゃん」
 
548: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:03:16.25 ID:k6dK7SwB
かすみちゃんはきょとんとしていた。

そうだよね。突然私がこんなこと言ったらビックリするよね。

でもね、これが今の私の本当の気持ちなんだ。


かすみ「ゆ、侑先輩……」ギュッ

かすみ「かすみんも、侑先輩のこと大好きですううう!!!!」ポロポロ


嬉しいけど、そんなに泣いたら、せっかくの可愛い顔が台無しだよって、そっと涙を拭ってあげる。

かすみちゃんはなかなか泣き止まなかったけど、顔をくしゃくしゃにして笑顔を見せてくれた。


そんな彼女が愛おしくて。愛おしくて。

堪らなくて。


侑「かすみ……」

かすみ「…………っ!?」


その頬を撫でながら、静かに口づけする。

初めて触れ合う互いの唇。

甘くて爽やかな香りがした。
 
549: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:13:52.41 ID:k6dK7SwB
 ◆

2ヵ月後

 ◆

虹ヶ咲学園 放課後

愛「……」テクテク

愛(今日は同好会も休みだし、これからどうしよっかなー)


歩夢「~♪」テクテク


愛(あ、歩夢だー! 遊び誘っちゃお♪)

愛「おーい、あゆ……」

せつ菜「歩夢っ!!」バッ

愛「!?」


歩夢「あ、菜々ちゃん!」ニコッ

歩夢「生徒会の方は大丈夫なの?」

せつ菜「はい! 今日は生徒会もお休みです!」

歩夢「そうなんだ!」

せつ菜「では行きましょうか」

歩夢「うん!」

歩夢「今日は菜々ちゃんに似合うコート選ばせてね!」

せつ菜「歩夢の選んでくれた服はどれもお気に入りになるので楽しみです!」

歩夢「菜々ちゃんはいろんな服が似合うから、選ぶのも楽しいんだよ♪」

せつ菜「あ、私も歩夢の服選びたいです!」


愛「……」

愛(これからデートだったのね!)
 
551: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:23:01.07 ID:k6dK7SwB
璃奈「……」ポツン
愛(あ、りなりーだ!)

愛「おーい、りな……」

浅希「ごめん璃奈! 待った?」スタッ

愛「!!」
璃奈「ううん。今来たところだよ」

浅希「そっか! それじゃ行こ!」

璃奈「うん」

璃奈「浅希ちゃん、今日はうち泊まっていくでしょ?」テクテク

浅希「うん。そのつもりだよ♪」テクテク
愛「……」
 
552: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:25:51.60 ID:k6dK7SwB
エマ「あ、愛ちゃん!」

果林「そんなとこでどうしたの?」

愛「エマっち、カリン!」

愛「いやー……」

愛「みんな青春してるねー!!」アハハ


愛「愛さんも青春しちゃうぞー!!」イエーイ

果林「やけに元気ね」

エマ「良い事でもあったの?」ニコニコ



「あ、愛ちゃんだ!」

「愛ちゃーん!!」

「みんなでこれからカラオケ行くんだけど、愛ちゃんも来てよー!」

愛「いいねー! 行く行くー!!」ピース



愛「それじゃあね、エマっち、カリン!」タタッ

果林「ええ」

エマ「じゃあね!」



愛「ねーねー、カラオケの後はみんなでカフェで恋バナなんてどう?」

「えー、なにそれー」クスクス
 
553: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:29:34.74 ID:k6dK7SwB
果林「あら、あそこにいるのは……」チラッ

エマ「侑ちゃんとかすみちゃんだね! これからデートなのかな?」ニコッ



かすみ「今日のスイーツビュッフェ、かすみんずっと楽しみにしてたんです!」

かすみ「今日のために、コッペパンを1週間我慢しましたから!」

侑「おお! すごい気合いだね、かすみ」

かすみ「美味しくて可愛いケーキがたくさんあるんですよ!」

かすみ「どれを食べようか迷っちゃいますー!」

侑「ふふっ」

かすみ「どうしたんですか、侑先輩?」

侑「ううん!」

侑「かすみ、今日も可愛いなーって思って」ニコッ

かすみ「……っ!」

かすみ「もうっ! 侑先輩、好き好きー!」ギュッ

侑「あはは」

侑「そうやって甘えてくれるかすみも最高に可愛いよっ!」ナデナデ

かすみ「あーんっ! 侑先輩ー!!」ギュッギュッ

イチャイチャ イチャイチャ




果林「……」

エマ「……」ニコニコ
 
555: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:36:28.30 ID:k6dK7SwB
中庭

しずく「彼方さん、みんな帰ってますよ?」

しずく「まだここにいるんですか?」

彼方「うーん、今はすやぴな気分なんだ~」


中庭のベンチで彼方さんと2人きり。

横になる彼方さんの膝枕をしてあげて。


彼方「しずくちゃんの膝枕は格別だよ〜」スリスリ


もう2度とできないと思っていた膝枕。

でもこうしてまた彼方さんのお昼寝を見守らせてくれるくらい、私と彼方さんは元の関係に戻っていた。

仲良しの先輩と後輩、友達の関係に。


彼方「だんだん瞼が重く……」

しずく「いいですよ。ゆっくり休んでください」


今でも、彼方さんは世界一美人で、世界一可愛い女の子だって本気で思う。

いつだって私は魅了される。


もちろんすぐ何かが起こるなんて思ってない。

それでも、彼方さんが私を傍にいさせてくれる限り、この気持ちを伝え続けたい。


彼方さんのことが大好きだって。いつも幸せを貰ってるって。

例え言葉にせずとも、伝え続けたい。


彼方「すやぁ……」zzz

しずく「おやすみなさい。彼方さん」ニコッ
 
556: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:39:43.70 ID:k6dK7SwB
 ◆

 ◆

 ◆

3年後

 ◆

 ◆

 ◆
 
559: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:42:25.94 ID:k6dK7SwB
愛「さすがしずく、凄かったねー!」


よく晴れた昼下がり。

しずくの主演舞台を観る為に、久々に同好会の面々が集まった。

みんなと会えたのは嬉しかったけど、今はこっそり2人で抜け出して……


璃奈「うん。しずくちゃんの演技、さらに磨きがかかってたと思う」


隣にいるりなりーが言う。

そよ風が気持ちいい。


私は大学2年に上がり、りなりーも大学生になって、お互いバタバタしていたから、私たちも会うのは久々だ。

”あの頃”に比べたら、りなりーも大人っぽくなったなって思う。

背も少し高くなったし、髪も伸びた。

まだ幼さみたいなのも残ってるけど、立派な大人の女性になっていた。


璃奈「愛さんも変わらず元気だね」

愛「愛さんはもちろん元気だよ! りなりーは大学どう? 楽しい?」


それから、お互いの大学のことや同好会のみんなのことを話す。

心が温かくなる時間だ。
 
561: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:47:27.51 ID:k6dK7SwB
愛「あの2人も結婚しそうだよねー!」

璃奈「うん。変わらず仲良しだった」


りなりーと話して思い出すのは、あの時のこと。

私にあと少しの勇気が足りなかったあの時のこと。

あれからもう3年が経つ。


思えばお互いいろんな事を経験したよね。楽しいことも、悲しいことも。

そして、こうしてりなりーと親友でいられている。

それが何より嬉しいことで。


だからこそ……




愛「私さ、りなりーにずっと話したいことがあったんだ」

璃奈「話したいこと?」

愛「うん。実はさ……」


もう、迷わない。




おしまい
 
563: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:52:15.30 ID:k6dK7SwB
以上で完結です。
4組ともハッピーエンドとバッドエンドをそれぞれ考えてから書き始めましたが、当初とは全然違うエンドになる組もあって、書いてて楽しかったです。

過去作紹介
・歩夢「浦の星女学院と合コン!?」
・歩夢「せつ菜ちゃんとエ チしちゃった」
・愛「ゆうゆ、ナンパに繰り出すよ!」 侑「え!?」

お読みいただきありがとうございました!
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1639139030/

【SS】愛「ゆうゆ、ナンパに繰り出すよ!」 侑「え!?」【ラブライブ!スーパースター!!】
同好会 エマ「見て見て! 服飾同好会のみんなに新しい衣装作ってもらったの!」 せつ奈「うわ、とっても可愛いです!」 歩夢「素敵ですね、エマさん!」 エマ「果林ちゃんの衣装もあるよー!」 果林「どうかしら?」フフッ 璃奈「すごい……」 彼方「果林ちゃんはやっぱりセクシーだねぇ」 侑「エマさんも果林さんもすっごくいいね! 写真撮ってもいい!?」 エマ「いいよー!」ニコッ 果林「もちろん」ウインク ワイワイガヤガヤ 侑「……」パシャパシャ 侑(エマさんも果林さんも可愛いなぁ)パシャパシャ 侑(しかも今回の衣装どっちもなんかエ いし!)パシャパシャ 愛「……」 愛(ゆうゆってやっぱり……)
タイトルとURLをコピーしました