【SS】彼方「ドッキドキ♡ポッキーゲーム!」果林「いえーい」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


7: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:06:09.21 ID:j5T+DPaN
ー11月11日ー


ぽかぽかと11月らしくない陽気。
部室でひとりお茶を飲んでいると睡魔が襲ってくる。
お昼寝なんてどこかの誰かさんみたいだけれど、少しだけ寝てしまおうか。

ガラッ

「彼方ちゃんいっちば~~ん…‥じゃないのか~」

噂をすれば何とやら。
ソファに横になろうとした時、どこかの誰かさん
——近江彼方が珍しく元気にやってきた。
 
8: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:09:53.05 ID:2ayndNpc
「おやおや果林ちゃんだけかい?…むふふっ」

「ん゛っんっ…かあ~りんちゃ~ん♡」

ああ、この声色は面倒くさい彼方だ。
少し心が痛むけれど、こういうときは放置するに限る。

「ちょっとちょっと~彼方ちゃんを無視しないで~」

「ねえってばぁ………果林ちゃん?」

先ほどの元気はどこへ行ったのか。
しょんぼりという文字が浮かびそうなほど落ち込んだ声。
まったくもう。
 
10: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:12:04.81 ID:2ayndNpc
「なに?くだらない用事ならひっぱたくわよ」

「あのねあのね、これっ!」

彼方が見せてきたのは棒状のクッキーをチョコレートでコーティングした定番のお菓子。
そう、ポッキー。
あぁそういうことか、今日は確か。

「ポッキーの日ってことかしら?」

「ピンポーン!だいせいか~い……わわっ!待って!手に持ったクッションを下ろして!」

「…なによ、ポッキーゲームなら遥ちゃんとでもしたらいいじゃない」

「いやほら遥ちゃんって今日がお誕生日でしょ?だから毎年その…死ぬほど貰ってくるんだよね」
 
11: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:13:48.96 ID:YZgD59Px
そうだった、遥ちゃんの誕生日は今日だ。
たしか去年はバトンドールのギフトセットをあげたっけ。
どうしよう、今年はなにも用意できていない。

「ごめんなさい、すっかり忘れてたわ…近いうちになにかプレゼントするわね」

「そんな気にしなくていいよ~だって去年までは私達」

「いいえ、私が気にするのよ」

「う~ん…じゃあこういうのは?今から2人でポッキーゲームをやって、その仲良しツーショを贈るの!」

「は、はぁ!?」
 
12: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:15:04.11 ID:YZgD59Px
「遥ちゃんも果林ちゃんのファンだし絶対喜ぶよ~!あ、もしかして私とは……イヤ?」

出た、彼方の必〇上目遣い。
どうも私はこの攻撃にめっぽう弱い。
私とこの子の身長差は9センチ。
そのたった9センチにいつも勝てずにいる。

「…写真を撮るだけよ、そして私は持ち手側しか食べない、条件はこれでいい?」

「う、うんっ!ありがとっ!」

彼方の嬉しそうな顔に私までつられて笑顔になる。
いけないいけない、クールにならねば。
 
13: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:17:35.93 ID:ZASkmtuj
「ほら、ニヤニヤしてないでソファにいらっしゃい、立ったままじゃできないでしょ?」

「はぁ~い……よっこいしょ~」

「………ねえ、どうして私の膝に座るのかしら」

「そこにお膝があるから?………いだっ」

「これ以上おでこが赤くならないうちに降りなさい」

「なにさ、可愛い彼方ちゃんの可愛い冗談じゃないか」

「彼方が可愛いのはずっと前から知ってるわよ、ほらさっさとポッキーを咥えなさい」

「う、うむぅ……果林ちゃんもやりおるな………はむ」

彼方のこういうところは本当よくない。
せっかく塗り直したばかりの"クールな朝香果林"のメイクを意図も容易く落としてしまう。
本当に、よくないわよ。
 
14: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:18:34.09 ID:ZASkmtuj
「……ふぁぃんひゃん?」

「あらごめんなさい、それじゃあいくわね……んっ」

…ポッキーなんて久しぶりに食べた気がする。
島にいた時は束にして頬張ってたりもしたっけ。
あの頃は本当に自由だったわね。

「んむむ………」

「……はぁに?」

「ん~ん」
 
15: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:21:10.45 ID:ZASkmtuj
ポッキーを咥え正面の彼方と目を合わせる。
キラキラとしたアメジストのような彼方の瞳。
そして、その瞳に囚われる私の姿。
じっと見つめていると私の心まで囚われてしまう。
いけない、今からするのは遥ちゃんのために写真を撮って、すぐにポッキー噛んで折る。
ただそれだけなんだから。

パシャリ

突如響くカメラのシャッター音。
彼方がいつのまにかスマホを向けていたみたい。
どうやら良い写真が撮れたようで私に画面を見せてくる。
ごちゃごちゃ余計なことを考えている私の顔が、奇跡的なことに物憂げな表情に見えている。
よし、あとは歯に力を入れるだけ。
 
16: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:22:19.47 ID:ZASkmtuj
「んふふっ」

スマホを見ていた彼方がこちらを再度見据える。
軽薄な空気をまといニヤニヤと挑発的に揺れる瞳。
そうあの顔は、あれれ~?果林ちゃん逃げるの~?
なんて舐めたことを考えている顔だ。
でもそれがどうした、今までの私ならいざ知らず今の朝香果林にそんな挑発は無意味だ。
さっさと終わらせて優雅にお昼寝でも…
 
17: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:25:59.43 ID:URKAmapU
「…むぐ…………はんっww」

……ちょっと待って、今なにをしたの。
え、こいつ私のことを鼻で笑った?
自分からやっすい挑発をしておきながら、大人な対応をするこの私を?小馬鹿にした……?
ちょっと可愛いからって調子に乗って、自分がどれだけ愚かなことをしたかわからせてやる。
別に挑発に乗せられるわけじゃないわ、でもね。
泣いても知らないわよ、近江彼方。
 
18: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:26:50.60 ID:URKAmapU
「……ん…ちゅる……」

唇の端を舐め、目を閉じる。
私は逃げない、さっさとかかってこいと合図をする。
明日は雑誌の撮影、出来るだけチョコは食べたくない。
だから彼方の方から食べ進めてもらう。
その代わり絶対に自分からは引かない。そういう覚悟。

サクッサクッ

私の意図を汲み取ったのか規則的な咀嚼音。
ちらっと見ても良いけれど、あえて目を閉じたまま。
ふふ、さっさと照れて負けを認めなさいな。
 
19: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:27:58.27 ID:URKAmapU
サクサクサクサクッ

!?待ってどうして?

サクサクサクサクサクサクッ

突如として加速するテンポ。
リスにでもなっての?あなたは羊でしょ!?
このペースだともう顔の目前、キスまでは秒読み。
さすがの私もたまらず目を開ける。
 
20: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:29:27.52 ID:URKAmapU
「ふへ……むふぅ♡」

目を開けて感じる違和感、残りはまだ半分。
もしかして、わざと小さく噛んで惑わせたの?
勝ち誇ったような彼方の表情に酷く腹が立つ。
昔はすぐに真っ赤になって震えていたくせに、いつの間にこんな賢しい真似を。
いいわ、奇策勝負を受けて立とうじゃない。

「……ん……ふ」

「ひゃ、ひゃりぃんひゃ…!?」
 
21: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:29:57.47 ID:URKAmapU
どうかしら?顔を真正面から斜め45度へ。
もし彼方が直進して来ればより深い角度でのキスになる。
ほおら、昔のように大慌てで折りなさいな。

「む………はむっ」

サッッッッックッ

さっきよりも長いストロークでの咀嚼。
彼方は一気に勝負をつけにきた、でもいいのかしら。
その判断のせいでもう2人の唇は触れ合う寸前。
おそらく身じろぎするだけでキスしてしまう。

「ふぐぅ……んむむ」

「はふ……ふ………」
 
23: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:36:38.02 ID:fK2mSMdH
私たちの間、ほんの数ミリの間に走る緊張感。
キスをするわけにもいかない、かといって自らポッキーを折ればそれ即ち敗北となる。
彼方も私とは同じくらい負けず嫌いなことは知っている。
だからこれは我慢比べだ。

「……ふむ……んんん」

「はっ……ん…すぅ………」

目に涙を溜め、冷や汗を流す彼方を見つめる。
…あれ、彼方ってこんなにまつ毛が長かったっけ。
こんなにお肌に艶があったっけ。
こんなに、こんなに、こんなに可愛かったっけ。
 
25: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:44:00.26 ID:0HiRXuew
いや、落ち着け、朝香果林。
まつ毛が長いのは1年生の頃にケアを教えたからだ。
肌に艶があるのは質の良い睡眠のおかげだろう。
可愛いのは、彼方が可愛いのはずっと前からだ。

「ぁう……むっ……」

「すふぅ……むむ……」

彼方に鼻息が当たるのを気にして、少しだけ大きめに息を吸い込む。
その瞬間、チョコレートの人工的な甘さと、彼方の優しくてあたたかくて心地いい甘さが肺に満ちる。
ある時期まで毎日嗅いでいた香り。
そんな昔ではないけれど、ノスタルジーを感じる。
 
26: (しうまい) 2022/11/11(金) 20:50:57.24 ID:hUabr76y
彼方も同じように感じたのだろう、彼女の瞳の中の私が大きく揺らぐ。
いや違う、揺らいでいるのは私の視界も同じだ。
過去に置いてきた感情が、今この瞬間、追いついてきた。

「っ…………ん…」

もう良いのかもしれない。
少しだけ過去を振り返っても良いのかも。
彼方と視線を交わす。2人の思考が直列に繋がる。
どうでもいい。
勝ち負けなんて、意地なんて、もうどうでも。
ただ目の前の唇に触れたい。それだけで。
 
28: (しうまい) 2022/11/11(金) 21:00:11.08 ID:a8zFKYZg
ドン!!!ガララッ!!!

「「…!?」」

「やった!かすみんの勝ち!!つまり!しず子とりな子としお子の負けでぇ~~~す」

「はぁ…はぁ…かすみさん足速すぎ…」

「無駄にこういう時は速いんですから」

「いつか……勝つ……」

「はぁい~負っけ惜しみぃ~~」

「て、あれ?彼方先輩と果林先輩?」

「な…なにかなぁ?」
 
29: (しうまい) 2022/11/11(金) 21:01:27.05 ID:vUuz6dJx
「そこに開封済みのポッキーがあるということはぁ、もしかしてポッキーゲームでもしてましたぁ?」

「大人な2人のポッキーゲーム、すごい」

「わぁ、お2人がそんな関係だったなんて…」

「かすみさん達、そんな揶揄ってはいけませんよ」

「……かすみちゃん?舐めてると潰すわよ」

「ひぃっ」

「…ちょっと顔を洗ってくるわ、彼方も来る?」

「う、うん~彼方ちゃんも行く~」

「ひょえ~果林先輩こわいよぉ…」

「かすみさんが調子に乗るからです」
 
30: (しうまい) 2022/11/11(金) 21:06:59.95 ID:++DfvwDO
「あのさ、この後どうしよっか」

「そうね…あの子達のことは…うん、一番元気なかすみちゃんを脅して口止めをしましょうか」

「うわ~果林ちゃんこわ~い」

「うるさいわね」

「はぁ…リップも塗り直しじゃないの」

「でもさ、美味しかったよね」

「甘いだけよ」

ほんと、チョコレートって甘すぎるのよ。
 
31: (しうまい) 2022/11/11(金) 21:08:34.05 ID:++DfvwDO
久々のかなかりでした。
なぜか書き込むごとにIDが変わったため少し見にくいですが、上手いことして読んでもらえると助かります。
 
32: (もんじゃ) 2022/11/11(金) 21:11:12.11 ID:67EgsgG0
いいかなかりだった乙
 
33: (もんじゃ) 2022/11/11(金) 21:36:14.32 ID:+X1AG9fC
素晴らしい
 
34: (すだち) 2022/11/11(金) 21:37:14.34 ID:0m43ESns
かなかりはいいぞ
 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1668164485/

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