0
1: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:00:00 ID:???00
※後半ほんの少しだけ微工 、SFぎんかほ
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2: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:01:01 ID:???00
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……」ゴクリ
セラス「蓮ノ空の片隅にある……古い公衆電話。一見ただの公衆電話ですが、このセラス調べではとある……奇妙な噂が、ありました……」
花帆「ひ、ひぇ……」ガクブル
セラス「その公衆電話で一人、今となってはもう珍しいテレホンカードを使って電話をかけると、なんと………………」
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
セラス「──“過去”の時間に、繋がるらしいのです!!!」バンッ
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
セラス「わぁー、さすが花ちゃん。すごくいいリアクション」パチパチ
吟子「…………花帆先輩、今のは雷が落ちた音に驚いたの? それとも、セラスさんが話した都市伝説の内容?」
花帆「…………全部……」グスッ
吟子「えぇ……??」
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……」ゴクリ
セラス「蓮ノ空の片隅にある……古い公衆電話。一見ただの公衆電話ですが、このセラス調べではとある……奇妙な噂が、ありました……」
花帆「ひ、ひぇ……」ガクブル
セラス「その公衆電話で一人、今となってはもう珍しいテレホンカードを使って電話をかけると、なんと………………」
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
セラス「──“過去”の時間に、繋がるらしいのです!!!」バンッ
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
セラス「わぁー、さすが花ちゃん。すごくいいリアクション」パチパチ
吟子「…………花帆先輩、今のは雷が落ちた音に驚いたの? それとも、セラスさんが話した都市伝説の内容?」
花帆「…………全部……」グスッ
吟子「えぇ……??」
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3: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:02:01 ID:???00
花帆「だ、だって、金沢は雷が多いと言っても不意打ちは酷いし……公衆電話の話も、せっちゃんの話し方が怪談風で変に怖いし……!」グスッ
吟子「……そういえば花帆先輩、夏合宿ラジオの時も瑠璃乃先輩の語り口調だけで怖がってたっけ」
セラス「花ちゃん。怖くて怖くて仕方がないなら、わたしが守ってあげる。よしよし」ナデナデ
花帆「せ、せっちゃん~……!!」ギュー
吟子「そのセラスさんが、怖がらせた当の本人やのに……雰囲気作るために部室のカーテン閉め切って、前方の蛍光灯だけつけてまで……」ハァ
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「…………って、あれ? 私のスマホに電話……? 非通知って誰からだろう……」ピッ
『あ、もしもし──吟子ちゃん?』
吟子「……そういえば花帆先輩、夏合宿ラジオの時も瑠璃乃先輩の語り口調だけで怖がってたっけ」
セラス「花ちゃん。怖くて怖くて仕方がないなら、わたしが守ってあげる。よしよし」ナデナデ
花帆「せ、せっちゃん~……!!」ギュー
吟子「そのセラスさんが、怖がらせた当の本人やのに……雰囲気作るために部室のカーテン閉め切って、前方の蛍光灯だけつけてまで……」ハァ
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「…………って、あれ? 私のスマホに電話……? 非通知って誰からだろう……」ピッ
『あ、もしもし──吟子ちゃん?』
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4: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:03:01 ID:???00
吟子「えっ」
セラス「吟子先輩?」
吟子「…………??? こ、これは……」
花帆「? ぎ、吟子ちゃん……急に固まって、どうしたの?」
吟子「……花帆先輩」
吟子「…………いま、“花帆先輩から”電話がかかってきたんだけど……」
花帆「……………………え?」
セラス「吟子先輩?」
吟子「…………??? こ、これは……」
花帆「? ぎ、吟子ちゃん……急に固まって、どうしたの?」
吟子「……花帆先輩」
吟子「…………いま、“花帆先輩から”電話がかかってきたんだけど……」
花帆「……………………え?」
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5: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:04:01 ID:???00
『繋がってる、よね? 吟子ちゃん、聞こえてるなら何か反応してほしいな! ここ静かだから、あたし一人だと怖くて……』
吟子「え、えぇと……」
吟子「……本当に、花帆先輩なの?」
『うん! 正真正銘、蓮ノ空女学院3年生の日野下花帆だよ!』
花帆「!??!???」ブルブルブルブル
セラス「はて、目の前に恐怖で携帯のバイブレーション並みに震えてる花ちゃんがいるのに……花ちゃんから電話……?」
吟子「え、えぇと……」
吟子「……本当に、花帆先輩なの?」
『うん! 正真正銘、蓮ノ空女学院3年生の日野下花帆だよ!』
花帆「!??!???」ブルブルブルブル
セラス「はて、目の前に恐怖で携帯のバイブレーション並みに震えてる花ちゃんがいるのに……花ちゃんから電話……?」
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6: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:05:01 ID:???00
『あ、その声! やっぱり吟子ちゃん、せっちゃんと一緒にいるんだよね?』
『そっか、それなら……今は、せっちゃんのお話が丁度終わったところなのかな?』
吟子「?? 合ってるけど、なんで電話越しに花帆先輩が……? 一体どこからこの電話をかけとるん?」
『ふふっ、それはもちろん……』
『──蓮ノ空の“公衆電話”、からだよ!』
『そっか、それなら……今は、せっちゃんのお話が丁度終わったところなのかな?』
吟子「?? 合ってるけど、なんで電話越しに花帆先輩が……? 一体どこからこの電話をかけとるん?」
『ふふっ、それはもちろん……』
『──蓮ノ空の“公衆電話”、からだよ!』
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7: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:06:01 ID:???00
吟子「え……!?」
『あたし、さっき吟子ちゃんにテレホンカードを何枚か貸してもらったからね! 半信半疑だったけど、繋がってよかった!』
吟子「テレホンカード…………それって」
吟子(蓮ノ空の公衆電話、そしてテレホンカード。……それにまつわるお話を、私はついさっき聞いたばかりだ)
吟子「……ねぇ、花帆先輩」
吟子「もしかしてこの電話……“未来”から、かけてたりするの?」
『あたし、さっき吟子ちゃんにテレホンカードを何枚か貸してもらったからね! 半信半疑だったけど、繋がってよかった!』
吟子「テレホンカード…………それって」
吟子(蓮ノ空の公衆電話、そしてテレホンカード。……それにまつわるお話を、私はついさっき聞いたばかりだ)
吟子「……ねぇ、花帆先輩」
吟子「もしかしてこの電話……“未来”から、かけてたりするの?」
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8: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:07:01 ID:???00
『お、さすが吟子ちゃん、大正解! 実はあたしもさっき、そういう仕組みだって、吟子ちゃんに教えてもらったんだよね』
『あたしは、“過去”にいる吟子ちゃんを正しく導くために……蓮ノ空の公衆電話から、この電話をかけてるんだ!』
吟子「え? 導くって、どういう……」チラッ
吟子「……花帆先輩?」
『? どうかした?』
吟子「あぁ、えっと、そっちの花帆先輩じゃなくて」
花帆「…………」ブルブルブルブルブルブル
セラス「これは……突然の超常現象に、花ちゃんの『寮のお部屋に帰って早く寝たいよ怖すぎ恐怖ゲージ』が振り切れてる……!」
吟子「なんなん、そのゲージ??」
『あたしは、“過去”にいる吟子ちゃんを正しく導くために……蓮ノ空の公衆電話から、この電話をかけてるんだ!』
吟子「え? 導くって、どういう……」チラッ
吟子「……花帆先輩?」
『? どうかした?』
吟子「あぁ、えっと、そっちの花帆先輩じゃなくて」
花帆「…………」ブルブルブルブルブルブル
セラス「これは……突然の超常現象に、花ちゃんの『寮のお部屋に帰って早く寝たいよ怖すぎ恐怖ゲージ』が振り切れてる……!」
吟子「なんなん、そのゲージ??」
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9: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:08:00 ID:???00
『あ、そっか……そういえば、あたしもそこに居るんだったよね? もしかして、怖がらせちゃってるのかな?』
吟子「あー、うん。……まぁ、急に自分自身から電話がかかってきたら、それは当然怖いと思うし……」チラッ
吟子「えっと……大丈夫、花帆先輩?」
花帆「…………」カニョーン…
吟子「………………花帆、先輩」
吟子「……もしよかったら、電話の向こうの花帆先輩と話してみるのはどう?」
花帆「!??? え゛!??」ビクッ
吟子「あー、うん。……まぁ、急に自分自身から電話がかかってきたら、それは当然怖いと思うし……」チラッ
吟子「えっと……大丈夫、花帆先輩?」
花帆「…………」カニョーン…
吟子「………………花帆、先輩」
吟子「……もしよかったら、電話の向こうの花帆先輩と話してみるのはどう?」
花帆「!??? え゛!??」ビクッ
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10: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:09:06 ID:???00
吟子「ほら、幽霊でもなんでも、知らないから怖く感じるって言うし……実際に喋れば、逆に恐怖心も消えるんじゃないかって」
『あたしは幽霊じゃないけどね、吟子ちゃん!』
花帆「…………」
セラス「……花ちゃん?」
吟子「? 花帆せんぱ──」
花帆「──む……無理無理無理!!! あたし、ほんっとうに怖いのは無理なんだってーーーー!!」ダッ
タッタッタッ…
吟子「!?? あっ、花帆先輩、待っ──」
『あたしは幽霊じゃないけどね、吟子ちゃん!』
花帆「…………」
セラス「……花ちゃん?」
吟子「? 花帆せんぱ──」
花帆「──む……無理無理無理!!! あたし、ほんっとうに怖いのは無理なんだってーーーー!!」ダッ
タッタッタッ…
吟子「!?? あっ、花帆先輩、待っ──」
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11: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:10:01 ID:???00
シーン…
セラス「花ちゃん、どこかに走っていっちゃいましたね」
吟子「……もしかして私、花帆先輩のこと却って怖がらせちゃったのかな…………失敗だったかぁ……」シュン
『吟子ちゃん、吟子ちゃん! そっちはどうなったの?』
吟子「あ……花帆先輩」
吟子「……たった今、こっちの花帆先輩は、走って部室から出ていっちゃったんだけど……」
セラス「花ちゃん、どこかに走っていっちゃいましたね」
吟子「……もしかして私、花帆先輩のこと却って怖がらせちゃったのかな…………失敗だったかぁ……」シュン
『吟子ちゃん、吟子ちゃん! そっちはどうなったの?』
吟子「あ……花帆先輩」
吟子「……たった今、こっちの花帆先輩は、走って部室から出ていっちゃったんだけど……」
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12: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:11:01 ID:???00
『ふんふん、やっぱりそうなっちゃったんだね……』
『……うーん、それじゃあ、この周はもう終わりなのかな?』
吟子「……え?? しゅ、周?」
『うん! ……えっと』
『今から言うこと、吟子ちゃんは、なるべく驚かないで聞いてほしいんだけど』
『吟子ちゃん──タイムリープ、してるらしいんだよね』
『……うーん、それじゃあ、この周はもう終わりなのかな?』
吟子「……え?? しゅ、周?」
『うん! ……えっと』
『今から言うこと、吟子ちゃんは、なるべく驚かないで聞いてほしいんだけど』
『吟子ちゃん──タイムリープ、してるらしいんだよね』
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13: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:12:01 ID:???00
吟子「………………何言うとるん??」
『あ、酷い! 吟子ちゃん自身が、あたしにそう教えてくれたのに!!』
吟子「え、いや……そんなん言われても、私はその記憶ないし……」
『むぅ、あたしはあるのにぃ……タイムリープ、つまり同じ時間を繰り返す現象に巻き込まれてるから、助けてあげてって』
『ほかでもない、吟子ちゃんに言われたんだよ』
『あ、酷い! 吟子ちゃん自身が、あたしにそう教えてくれたのに!!』
吟子「え、いや……そんなん言われても、私はその記憶ないし……」
『むぅ、あたしはあるのにぃ……タイムリープ、つまり同じ時間を繰り返す現象に巻き込まれてるから、助けてあげてって』
『ほかでもない、吟子ちゃんに言われたんだよ』
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14: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:13:01 ID:???00
吟子「もしかしてそれが、さっき花帆先輩が言ってた“導く”って言葉の意味? でも、それってどういう意味──」
ドタドタバタ…‼︎!
吟子「──!??」
セラス「……? 吟子先輩。今、廊下から何か物音が」
吟子「そう、だね。……まるで、誰かが人とぶつかったような音がした気が……」チラッ
『…………もしかして、もう起こっちゃったのかな? そろそろ時間、なのかもね』
吟子「花帆先輩? 一体、何が……」
『んー……心配しなくても大丈夫だよ、吟子ちゃん! 電話はかけ直すから、また後でね!』
吟子「え? か、花帆先輩、ちょっと待っ──」
ドタドタバタ…‼︎!
吟子「──!??」
セラス「……? 吟子先輩。今、廊下から何か物音が」
吟子「そう、だね。……まるで、誰かが人とぶつかったような音がした気が……」チラッ
『…………もしかして、もう起こっちゃったのかな? そろそろ時間、なのかもね』
吟子「花帆先輩? 一体、何が……」
『んー……心配しなくても大丈夫だよ、吟子ちゃん! 電話はかけ直すから、また後でね!』
吟子「え? か、花帆先輩、ちょっと待っ──」
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15: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:14:01 ID:???00
────
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「………………えっ!?!?」ガタッ
セラス「え……吟子先輩、もう怖くなっちゃったんですか……逆に怖……」
吟子「ち、違、そうじゃなくて!」
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「………………えっ!?!?」ガタッ
セラス「え……吟子先輩、もう怖くなっちゃったんですか……逆に怖……」
吟子「ち、違、そうじゃなくて!」
0
16: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:15:01 ID:???00
花帆「どうしたの吟子ちゃん、そんなにキョロキョロ、不思議そうな顔して……?」
吟子「……!? え……な、なんで花帆先輩がここに……!?? さっき、部室から飛び出して行ったはずじゃ……!」
セラス「?? 何言っちゃってるんですか、吟子先輩?」
セラス「花ちゃんはずっと、ここにいましたよ? 今からわたしの、蓮ノ空都市伝説を聞いてもらうところですし……」
吟子「…………え?」
吟子「……!? え……な、なんで花帆先輩がここに……!?? さっき、部室から飛び出して行ったはずじゃ……!」
セラス「?? 何言っちゃってるんですか、吟子先輩?」
セラス「花ちゃんはずっと、ここにいましたよ? 今からわたしの、蓮ノ空都市伝説を聞いてもらうところですし……」
吟子「…………え?」
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17: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:16:01 ID:???00
吟子(セラスさんが語る、蓮ノ空の都市伝説はもう聞いたはず……なのに、今から話すことになってる? え、じゃあ……)
吟子(さっきまでの出来事は全て──夢、だった?)
吟子「?? そんなわけ、ないと思うんやけど……」ポツリ
吟子「……」ウーン
吟子(まぁ……夢なら夢で、別に気にするようなことじゃないのかもだけど……本当に、そうなのかな……?)
吟子(さっきまでの出来事は全て──夢、だった?)
吟子「?? そんなわけ、ないと思うんやけど……」ポツリ
吟子「……」ウーン
吟子(まぁ……夢なら夢で、別に気にするようなことじゃないのかもだけど……本当に、そうなのかな……?)
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18: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:17:01 ID:???00
セラス「あっ、なるほど……吟子先輩が話を逸らそうとする理由、わたし、わかっちゃったかも」フフン
セラス「ズバリ、吟子先輩は、このセラスの語るお話に実は内心ビビりまくりなんで聞きたくない……から!」ビシッ
吟子「え? いや、別にそういうわけじゃ……」
花帆「!!! も、もしかして吟子ちゃん、あたしと同じくらい怖がりさん……?!!?」
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「……いや、そんな期待を持った目で見られても、数秒後にすぐ違うってわかるよ、花帆先輩」
花帆「? どうしてそんな──」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「……もう、やっぱり。“雷”の音、そんなに驚く?」クスッ
セラス「ズバリ、吟子先輩は、このセラスの語るお話に実は内心ビビりまくりなんで聞きたくない……から!」ビシッ
吟子「え? いや、別にそういうわけじゃ……」
花帆「!!! も、もしかして吟子ちゃん、あたしと同じくらい怖がりさん……?!!?」
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「……いや、そんな期待を持った目で見られても、数秒後にすぐ違うってわかるよ、花帆先輩」
花帆「? どうしてそんな──」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「……もう、やっぱり。“雷”の音、そんなに驚く?」クスッ
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19: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:18:01 ID:???00
花帆「だ……だって! いくら金沢は雷が多いと言っても、不意打ちは酷いよー!」グスッ
セラス「? あれ、吟子先輩は、不意の雷にも全く動じないんですね。あの花ちゃんの後輩なのに……!」
吟子「それ後輩関係ある? ……まぁ、私はついさっきも同じ光景を見たばかりやし……」
吟子「…………あれ?」ピタ
セラス「吟子先輩?」
吟子(……そう、だ。私は、雷が落ちるタイミング……それに花帆先輩のリアクションまで、全部“知っていた”)
吟子「……」
吟子(……やっぱり、夢なんかじゃない。だとすると、次は……)
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「……!」
セラス「? あれ、吟子先輩は、不意の雷にも全く動じないんですね。あの花ちゃんの後輩なのに……!」
吟子「それ後輩関係ある? ……まぁ、私はついさっきも同じ光景を見たばかりやし……」
吟子「…………あれ?」ピタ
セラス「吟子先輩?」
吟子(……そう、だ。私は、雷が落ちるタイミング……それに花帆先輩のリアクションまで、全部“知っていた”)
吟子「……」
吟子(……やっぱり、夢なんかじゃない。だとすると、次は……)
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「……!」
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20: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:19:01 ID:???00
吟子「……もしかして」ボソッ
セラス「鳴ってるの、吟子先輩のスマホですよね。出なくていいんですか?」
吟子「あぁ、えっと……」
吟子(さっきは花帆先輩に電話の詳細を知らせたから、無駄に怖がらせることになってしまった。それなら……)
吟子「……ちょっと、知り合いからのプライベートな電話みたい。部室の隅の方で、話してくるね」スタッ
セラス「鳴ってるの、吟子先輩のスマホですよね。出なくていいんですか?」
吟子「あぁ、えっと……」
吟子(さっきは花帆先輩に電話の詳細を知らせたから、無駄に怖がらせることになってしまった。それなら……)
吟子「……ちょっと、知り合いからのプライベートな電話みたい。部室の隅の方で、話してくるね」スタッ
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21: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:20:01 ID:???00
────
吟子「……」ピッ
吟子「…………もしもし?」
『やっほー、吟子ちゃん! さっきぶり!』
吟子「! あぁ、やっぱり──花帆先輩、やね」
吟子「……」ピッ
吟子「…………もしもし?」
『やっほー、吟子ちゃん! さっきぶり!』
吟子「! あぁ、やっぱり──花帆先輩、やね」
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22: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:21:01 ID:???00
吟子(予想通り、この非通知の電話は“未来”の花帆先輩からだった。……安心すると同時に、あることにも思い至る)
『電話がちゃんと繋がって良かった! これで吟子ちゃんも、あたしが言ったことを信じてくれたよね!?』
吟子「……うん」
吟子「私が“タイムリープ”してるって話、本当だったんだ」
『電話がちゃんと繋がって良かった! これで吟子ちゃんも、あたしが言ったことを信じてくれたよね!?』
吟子「……うん」
吟子「私が“タイムリープ”してるって話、本当だったんだ」
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23: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:22:01 ID:???00
吟子(タイムリープ、つまり同じ時間を繰り返す現象……実際に体感してしまえば、信じざるを得ない)
『ビックリだよねぇ……あたしは、吟子ちゃんの時間が戻って通話が切れる度に電話をかけ直してるだけだから実感はないけど』
吟子「そうなんだ。えっと……」
吟子「じゃあ……いま喋ってる花帆先輩がいるのは、私がタイムリープを抜け出した“未来”での花帆先輩ってこと?」
『うん! ややこしいけど……姫芽ちゃんみたいなゲーム風に言うと、吟子ちゃんが正解ルートを選んだ場合の花帆があたし!』
吟子「な、なるほど……??」
『ビックリだよねぇ……あたしは、吟子ちゃんの時間が戻って通話が切れる度に電話をかけ直してるだけだから実感はないけど』
吟子「そうなんだ。えっと……」
吟子「じゃあ……いま喋ってる花帆先輩がいるのは、私がタイムリープを抜け出した“未来”での花帆先輩ってこと?」
『うん! ややこしいけど……姫芽ちゃんみたいなゲーム風に言うと、吟子ちゃんが正解ルートを選んだ場合の花帆があたし!』
吟子「な、なるほど……??」
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24: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:23:00 ID:???00
吟子(時を超えて繋がる電話に、同じ時間を繰り返す現象……こんなSFシチュエーションに、まさか私が巻き込まれるなんて)
吟子「いや、そもそもなんで蓮ノ空の公衆電話が、時をかけるような機能を持っとるん……」ハァ
『あははっ、不思議な物はいつだって、そういうものなんだよ!』
『それにこの公衆電話、蓮ノ空の都市伝説になるくらいだし……なにか、特別な不思議パワーがあるんじゃないかな?』
吟子「! 都市、伝説……そっか」
吟子「……テレホンカードを使ってかけると“過去”の時間に繋がる、って内容だったっけ。セラスさんが言ってたのは」
吟子「いや、そもそもなんで蓮ノ空の公衆電話が、時をかけるような機能を持っとるん……」ハァ
『あははっ、不思議な物はいつだって、そういうものなんだよ!』
『それにこの公衆電話、蓮ノ空の都市伝説になるくらいだし……なにか、特別な不思議パワーがあるんじゃないかな?』
吟子「! 都市、伝説……そっか」
吟子「……テレホンカードを使ってかけると“過去”の時間に繋がる、って内容だったっけ。セラスさんが言ってたのは」
0
25: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:24:01 ID:???00
『あたしは吟子ちゃんから又聞きしただけだから、詳しくは知らないけど、そうそれ!』
『そのお話の通り……吟子ちゃんに借りたテレホンカードを使って、あたしはこの公衆電話から“過去”に電話をかけてるんだ』
吟子「“過去”、に……」ポツリ
『うん! それは全部……吟子ちゃんがタイムリープから抜け出せるよう、あたしが導くために、ね!』
『そのお話の通り……吟子ちゃんに借りたテレホンカードを使って、あたしはこの公衆電話から“過去”に電話をかけてるんだ』
吟子「“過去”、に……」ポツリ
『うん! それは全部……吟子ちゃんがタイムリープから抜け出せるよう、あたしが導くために、ね!』
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26: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:25:01 ID:???00
吟子「なるほど……つまり花帆先輩は、いろいろ詳しい事情……私が何をすればいいのか、とか全部知ってるってこと?」
『……一応、ね。でも今言えることは、ひとつだけ、だよ!』
吟子「? ひとつ?」
『うん。吟子ちゃんには、今はそのひとつだけ、伝えておくね!』
『タイムリープを終わらせる条件を知るためには、まず──吟子ちゃんが“わがまま”になること、だよ!』
『……一応、ね。でも今言えることは、ひとつだけ、だよ!』
吟子「? ひとつ?」
『うん。吟子ちゃんには、今はそのひとつだけ、伝えておくね!』
『タイムリープを終わらせる条件を知るためには、まず──吟子ちゃんが“わがまま”になること、だよ!』
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27: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:26:00 ID:???00
吟子「……? わ、わがまま……? 花帆先輩、そんな曖昧な言葉じゃわかるわけ──」
プツン…
吟子「…………え?」
「わ、わぁ!?!? ぶ、部室が急に真っ暗に……!??」
吟子「……!? え……て、停電……!?」
プツン…
吟子「…………え?」
「わ、わぁ!?!? ぶ、部室が急に真っ暗に……!??」
吟子「……!? え……て、停電……!?」
0
28: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:27:01 ID:???00
ザーザー…
『……もしもし、吟子ちゃん?』
『部室なんだけど……もしかして今、雷の影響で停電してるんじゃないかな?』
吟子「! そう、だけど…………あれ、でもこんな出来事さっきはなかったはずじゃ……」
吟子「…………いや、違う!」ハッ
吟子(今は、雷が落ちてから暫く経った後。さっきループした時刻よりも──“先”の時刻なんだ……!)
『……もしもし、吟子ちゃん?』
『部室なんだけど……もしかして今、雷の影響で停電してるんじゃないかな?』
吟子「! そう、だけど…………あれ、でもこんな出来事さっきはなかったはずじゃ……」
吟子「…………いや、違う!」ハッ
吟子(今は、雷が落ちてから暫く経った後。さっきループした時刻よりも──“先”の時刻なんだ……!)
0
29: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:28:01 ID:???00
『1回目の停電……ってことは、そろそろ……』
吟子「……っ! 花帆先輩は……」キョロキョロ
吟子(無意識のうちに、私は花帆先輩の姿を探していた)
吟子(花帆先輩のことやし……暗闇に怖がって動いた結果、ケガでもするんじゃないか、って嫌な予感がしたから。先輩は今何を──)
ムニッ…♡
「あ、ご、ごめん、せっちゃん! 柔らかい……変なところを触っちゃった!」
吟子「……は????」ピタッ
吟子「……っ! 花帆先輩は……」キョロキョロ
吟子(無意識のうちに、私は花帆先輩の姿を探していた)
吟子(花帆先輩のことやし……暗闇に怖がって動いた結果、ケガでもするんじゃないか、って嫌な予感がしたから。先輩は今何を──)
ムニッ…♡
「あ、ご、ごめん、せっちゃん! 柔らかい……変なところを触っちゃった!」
吟子「……は????」ピタッ
0
30: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:29:01 ID:???00
吟子(花帆先輩の慌てた声が聞こえた。変なところを触る、っていつかの夏合宿ラジオじゃないんやから……え、は??)
吟子「か…………花帆先輩!? セラスさんに何しとるん──」
吟子「か…………花帆先輩!? セラスさんに何しとるん──」
0
31: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:30:01 ID:???00
────
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……は?」ガタッ
セラス「え……吟子先輩、なんで威圧してるんですか……逆に怖……」
吟子「…………だって、そもそもセラスさんが悪いんやよ……?」
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……は?」ガタッ
セラス「え……吟子先輩、なんで威圧してるんですか……逆に怖……」
吟子「…………だって、そもそもセラスさんが悪いんやよ……?」
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32: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:31:01 ID:???00
セラス「??? な、何故このセラス柳田リリエンフェルト、吟子先輩に罪に問われているのやら……!」
花帆「もー、ダメだよ吟子ちゃん! せっちゃんに意地悪なこと言っちゃ、先輩らしくないよ!」ビシッ
吟子「そう言われても、さっきのはセラスさんの位置も……」
吟子「……あれ?」
吟子(正気に戻った。ついさっきのことが衝撃的すぎて、頭が回っていなかったけど……もしかして、今のこの状況は……)
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「……! もしかして……」チラッ
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「………………やっぱり」
花帆「もー、ダメだよ吟子ちゃん! せっちゃんに意地悪なこと言っちゃ、先輩らしくないよ!」ビシッ
吟子「そう言われても、さっきのはセラスさんの位置も……」
吟子「……あれ?」
吟子(正気に戻った。ついさっきのことが衝撃的すぎて、頭が回っていなかったけど……もしかして、今のこの状況は……)
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「……! もしかして……」チラッ
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「………………やっぱり」
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33: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:32:01 ID:???00
花帆「も、もー……金沢は雷が多いと言っても、不意打ちは酷いよー!」グスッ
吟子「……」ジー
吟子(同じタイミングで落ちる雷、そして花帆先輩のこの反応。……そのおかげで、完全に確信した。“時間が、戻ってる”)
吟子「……」ジー
吟子(同じタイミングで落ちる雷、そして花帆先輩のこの反応。……そのおかげで、完全に確信した。“時間が、戻ってる”)
0
34: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:33:00 ID:???00
吟子(3周目となるタイムリープだけど……実は、前回のループで私は、一つ手がかりを得ている)
吟子「……セラス、さん」
セラス「吟子先輩? どうかしましたか? あっ、このセラスプレゼンツの都市伝説が早く聞きたくてたまらないんですね!!」
吟子「すごい自信やね……そうじゃなくて、えっと」
吟子(──電話での花帆先輩は、都市伝説を私から“又聞き”したって言っていた。つまり……)
吟子(……正解ルートの花帆先輩は、“セラスさんの話を聞いていない”)
吟子「……セラス、さん」
セラス「吟子先輩? どうかしましたか? あっ、このセラスプレゼンツの都市伝説が早く聞きたくてたまらないんですね!!」
吟子「すごい自信やね……そうじゃなくて、えっと」
吟子(──電話での花帆先輩は、都市伝説を私から“又聞き”したって言っていた。つまり……)
吟子(……正解ルートの花帆先輩は、“セラスさんの話を聞いていない”)
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35: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:34:01 ID:???00
吟子(だから、正しい未来に近づくためには……)
吟子「……セラスさんの都市伝説語り、今日は中止にしてまた今度にしようか」コホン
セラス「!?!? え、急に……!??」
花帆「……! そうだよね、吟子ちゃんだって怖いお話は嫌だもんね!!」グッ
吟子「まぁ、別にそういうことじゃないんやけど……」
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「!」
吟子「……ちょっと私、廊下で電話出てくるね」スタッ
吟子「……セラスさんの都市伝説語り、今日は中止にしてまた今度にしようか」コホン
セラス「!?!? え、急に……!??」
花帆「……! そうだよね、吟子ちゃんだって怖いお話は嫌だもんね!!」グッ
吟子「まぁ、別にそういうことじゃないんやけど……」
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「!」
吟子「……ちょっと私、廊下で電話出てくるね」スタッ
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36: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:35:01 ID:???00
────
──廊下
ガチャ…
バタン
吟子「……」ピッ
『もしもし、吟子ちゃん?』
吟子「言いたいことがあるんやけど」
『え!? な……なにかな、吟子ちゃん?』
吟子「…………花帆先輩がセラスさんの胸を触ったら、時間が巻き戻ったんだけど……これって、どういう意味?」
──廊下
ガチャ…
バタン
吟子「……」ピッ
『もしもし、吟子ちゃん?』
吟子「言いたいことがあるんやけど」
『え!? な……なにかな、吟子ちゃん?』
吟子「…………花帆先輩がセラスさんの胸を触ったら、時間が巻き戻ったんだけど……これって、どういう意味?」
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37: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:36:00 ID:???00
『あー、胸を……なるほど、そういう仕組みになってたんだ?』
『……あぁそっか、だから吟子ちゃんは“私が”なんて言ってたんだね……』
吟子「……え、何のこと? というか……え、ちょっと待って」
吟子「今、電話の向こうにいる花帆先輩は……このタイムリープの、色んな詳しい事情を知ってるんじゃなかったの?」
『……あぁそっか、だから吟子ちゃんは“私が”なんて言ってたんだね……』
吟子「……え、何のこと? というか……え、ちょっと待って」
吟子「今、電話の向こうにいる花帆先輩は……このタイムリープの、色んな詳しい事情を知ってるんじゃなかったの?」
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38: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:37:01 ID:???00
『あ、いや……タイムリープを終わらせる条件のために、あたしが吟子ちゃんにされたことは、わかってるんだけど……』
吟子「……はい?? 花帆先輩、それどういう意味?」
『え、えぇと……』
吟子「? ねぇ、花帆先輩?」
『…………こ、これって、もしもあたしが不必要なことを吟子ちゃんに言っちゃったら、歴史が変わっちゃうんだったよね??』
『ご……ごめん! 今はこれ以上、吟子ちゃんにお話しできないんだ! またかけ直すから、後で!』
ツー…
吟子「!? な、電話が……!」
吟子「……はい?? 花帆先輩、それどういう意味?」
『え、えぇと……』
吟子「? ねぇ、花帆先輩?」
『…………こ、これって、もしもあたしが不必要なことを吟子ちゃんに言っちゃったら、歴史が変わっちゃうんだったよね??』
『ご……ごめん! 今はこれ以上、吟子ちゃんにお話しできないんだ! またかけ直すから、後で!』
ツー…
吟子「!? な、電話が……!」
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39: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:38:01 ID:???00
吟子「…………えぇ??」
吟子(いや……なんなんだろう、この状況……わからないことを質問したら、逆に疑問点が増えたんやけど……?)
吟子「よ、よくわからないけど……この繰り返す物語──抜け出せないループを、私は何とかしなくちゃ」グッ
吟子「……ループ……条件については多分、時刻は関係ないはずだよね。1回目の時は停電が起こる前に起きてたし……」ブツブツ
吟子「あとは、なんだろう……条件……」ブツブツ
さやか「……おや、吟子さん? こんな廊下でボンヤリとして、どうしたんですか?」
吟子「! あ、さやか先輩……お疲れ様です」ペコリ
吟子(いや……なんなんだろう、この状況……わからないことを質問したら、逆に疑問点が増えたんやけど……?)
吟子「よ、よくわからないけど……この繰り返す物語──抜け出せないループを、私は何とかしなくちゃ」グッ
吟子「……ループ……条件については多分、時刻は関係ないはずだよね。1回目の時は停電が起こる前に起きてたし……」ブツブツ
吟子「あとは、なんだろう……条件……」ブツブツ
さやか「……おや、吟子さん? こんな廊下でボンヤリとして、どうしたんですか?」
吟子「! あ、さやか先輩……お疲れ様です」ペコリ
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40: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:39:01 ID:???00
吟子(ここは見通しのいい廊下……部室にやって来たさやか先輩が、私と鉢合わせるのは、ある意味当然のことだ)
さやか「ふふっ、吟子さんもお疲れ様です。本日は吟子さん、花帆さん方と一緒に部室を使っているんでしたよね?」
吟子「えぇと……そう、ですね。さやか先輩は書類を提出してきたんですか?」
さやか「ええ。それも一先ず整理がついたので、一度部室に戻ってきた次第で──」
プツン…
さやか「……? おや、停電……でしょうか?」キョロキョロ
吟子「!」
さやか「ふふっ、吟子さんもお疲れ様です。本日は吟子さん、花帆さん方と一緒に部室を使っているんでしたよね?」
吟子「えぇと……そう、ですね。さやか先輩は書類を提出してきたんですか?」
さやか「ええ。それも一先ず整理がついたので、一度部室に戻ってきた次第で──」
プツン…
さやか「……? おや、停電……でしょうか?」キョロキョロ
吟子「!」
0
41: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:40:01 ID:???00
吟子「……あぁ」
さやか「? 吟子さん?」
吟子「……」ハァ
吟子(なんだか私、ものすごく嫌な予感がする)
吟子(…………一応、次のループに役立ちそうだし、停電した今の時刻だけは確認しておこうかな……)チラッ
ドタドタバタ…‼︎!
さやか「!?!? ぶ、部室の中で何かが倒れる音が……!??」
吟子「…………やっぱり」
さやか「? 吟子さん?」
吟子「……」ハァ
吟子(なんだか私、ものすごく嫌な予感がする)
吟子(…………一応、次のループに役立ちそうだし、停電した今の時刻だけは確認しておこうかな……)チラッ
ドタドタバタ…‼︎!
さやか「!?!? ぶ、部室の中で何かが倒れる音が……!??」
吟子「…………やっぱり」
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42: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:41:01 ID:???00
ムニッ…♡
「あ、ご、ごめん、せっちゃん! 柔らかい……変なところを触っちゃった!」
吟子「………………」
「あ、ご、ごめん、せっちゃん! 柔らかい……変なところを触っちゃった!」
吟子「………………」
0
43: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:42:01 ID:???00
────
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……はぁ」
セラス「え……吟子先輩、もう飽きちゃったんですか……逆に怖……」
吟子「そう……なのかも」ハァ
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……はぁ」
セラス「え……吟子先輩、もう飽きちゃったんですか……逆に怖……」
吟子「そう……なのかも」ハァ
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44: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:43:00 ID:???00
吟子(また、タイムリープ。最初のも合わせれば、私はもう4回この時間を体験していることになる)
吟子(……飽きるのも仕方がないと思う)
セラス「そ、そんな……! このセラスプレゼンツ、蓮ノ空都市伝説が丁度いま始まるところだったのに、吟子先輩……」ジトー
吟子「……とりあえず、都市伝説語りはまた今後ね。花帆先輩も怖がっとるし」
花帆「!! ほ、ほら! 吟子ちゃんもそう言ってるんだし、怖い話をするのはやめよ、ね! せっちゃん!!」
セラス「えー」
吟子(……飽きるのも仕方がないと思う)
セラス「そ、そんな……! このセラスプレゼンツ、蓮ノ空都市伝説が丁度いま始まるところだったのに、吟子先輩……」ジトー
吟子「……とりあえず、都市伝説語りはまた今後ね。花帆先輩も怖がっとるし」
花帆「!! ほ、ほら! 吟子ちゃんもそう言ってるんだし、怖い話をするのはやめよ、ね! せっちゃん!!」
セラス「えー」
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45: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:44:01 ID:???00
吟子(多分、そろそろ……)
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「…………」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「はぁ…………やっぱり」
吟子(決まりきった展開をなぞるように、物語が繰り返される。雷に怖がる花帆先輩に、私はなんのリアクションも返せない)
吟子(……なるべく早く、終わらせる方法を見つけなきゃ。私の方が壊れてしまう)
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「…………」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
吟子「はぁ…………やっぱり」
吟子(決まりきった展開をなぞるように、物語が繰り返される。雷に怖がる花帆先輩に、私はなんのリアクションも返せない)
吟子(……なるべく早く、終わらせる方法を見つけなきゃ。私の方が壊れてしまう)
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46: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:45:01 ID:???00
吟子(だけど……)
吟子「……」ウーン
吟子(今までのことを踏まえると………………一つ、ある仮説を建てることができる……できてしまう)
吟子(タイムリープの条件が──“花帆先輩が誰かの胸を触ること”、だという仮説を)
吟子「……」ウーン
吟子(今までのことを踏まえると………………一つ、ある仮説を建てることができる……できてしまう)
吟子(タイムリープの条件が──“花帆先輩が誰かの胸を触ること”、だという仮説を)
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47: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:46:01 ID:???00
吟子「……」
吟子(そう考えると、ぜんぶ辻褄が合う気がした。花帆先輩が人の胸を触ると、私のタイムリープが起こる)
吟子(実際、2周目3周目の時のループでは、花帆先輩が停電の最中、セラスさんの胸を触っていたし……)
吟子(1周目の時の花帆先輩は慌てていたのもあって、走って行った末に廊下でさやか先輩とぶつかって胸を触った……とか?)
吟子「……いや、なんなんそれ……??」ポツリ
吟子(そう考えると、ぜんぶ辻褄が合う気がした。花帆先輩が人の胸を触ると、私のタイムリープが起こる)
吟子(実際、2周目3周目の時のループでは、花帆先輩が停電の最中、セラスさんの胸を触っていたし……)
吟子(1周目の時の花帆先輩は慌てていたのもあって、走って行った末に廊下でさやか先輩とぶつかって胸を触った……とか?)
吟子「……いや、なんなんそれ……??」ポツリ
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48: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:47:01 ID:???00
吟子(…………冷静に考えてもバカバカしすぎる理論。だけど、タイムリープなんてことをしてる時点で今さらかもしれないし)
吟子(でも、なぁ……だとすると、ループを止める方法ってもしかして……)
吟子「…………」チラッ
花帆「? 吟子ちゃん、どうかしたの?」
吟子「えぇと…………花帆、先輩。ちょっといいですか?」
吟子「……少し、先輩とお話がしたくて」
花帆「?」キョトン
吟子(でも、なぁ……だとすると、ループを止める方法ってもしかして……)
吟子「…………」チラッ
花帆「? 吟子ちゃん、どうかしたの?」
吟子「えぇと…………花帆、先輩。ちょっといいですか?」
吟子「……少し、先輩とお話がしたくて」
花帆「?」キョトン
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49: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:48:01 ID:???00
────
──
吟子「……」スタスタ
吟子(このまま廊下で……は、さやか先輩と鉢合わせるから良くないかな。どこか別の場所を……)スタスタ
花帆「ま、待ってよー、吟子ちゃん! どうしたの、そんなに早歩きで?」
吟子「あ……ご、ごめん花帆先輩。少し、焦って急ぎすぎてたかも」チラッ
吟子「ここ……でいいや、花帆先輩入って」
花帆「? うん!」
──
吟子「……」スタスタ
吟子(このまま廊下で……は、さやか先輩と鉢合わせるから良くないかな。どこか別の場所を……)スタスタ
花帆「ま、待ってよー、吟子ちゃん! どうしたの、そんなに早歩きで?」
吟子「あ……ご、ごめん花帆先輩。少し、焦って急ぎすぎてたかも」チラッ
吟子「ここ……でいいや、花帆先輩入って」
花帆「? うん!」
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50: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:49:01 ID:???00
吟子(……私は、人けのない空き教室に花帆先輩を誘い込む。今からすることを考えれば、その方が都合が良かった)
ガチャ…
バタン
吟子「……電気をつけて、っと」
吟子「その……花帆先輩。いきなり呼び出して……ごめん」
花帆「ん、ううん、全然! 突然どうしたの、吟子ちゃん?」
吟子「………………えっ、と。……」コホン
ガチャ…
バタン
吟子「……電気をつけて、っと」
吟子「その……花帆先輩。いきなり呼び出して……ごめん」
花帆「ん、ううん、全然! 突然どうしたの、吟子ちゃん?」
吟子「………………えっ、と。……」コホン
0
51: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:50:01 ID:???00
吟子(話の切り出し方は、もう既に考えていた。これだって、今までのループで得た手がかりだ)
吟子(確か一番最初のとき……公衆電話の向こうにいる花帆先輩は、タイムリープについてこう言っていた)
──
『吟子ちゃん自身が、あたしにそう教えてくれたのに!!』
──
吟子(あの花帆先輩はやっぱり、正解ルートの花帆先輩のはずで。だから、私が花帆先輩に言わなくちゃいけないことは……)
吟子「……花帆、先輩」
花帆「? 吟子ちゃん?」
吟子「実は…………私、タイムリープしてるんだよ」
吟子(確か一番最初のとき……公衆電話の向こうにいる花帆先輩は、タイムリープについてこう言っていた)
──
『吟子ちゃん自身が、あたしにそう教えてくれたのに!!』
──
吟子(あの花帆先輩はやっぱり、正解ルートの花帆先輩のはずで。だから、私が花帆先輩に言わなくちゃいけないことは……)
吟子「……花帆、先輩」
花帆「? 吟子ちゃん?」
吟子「実は…………私、タイムリープしてるんだよ」
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52: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:51:01 ID:???00
花帆「?? タイム、リープ? それって……小説の『時をかける少女』みたいな?」
吟子「小説? あ、映画にもなってたSF作品だっけ、それ。タイムリープものの……」
花帆「うん! あの小説だと、お花の匂い──確か、ラベンダーの匂いが、タイムリープに影響するんだけど……」フンフン
花帆「……え。も、もしかして……吟子ちゃんもそんなラベンダーな感じなの!? 未体験の世界は現実に……!??」ワクワク
吟子「いや、ラベンダーは知らないけど…………そう、だね」
吟子「その“タイムリープ”が、実際に、私の身に起こってるの」
吟子「小説? あ、映画にもなってたSF作品だっけ、それ。タイムリープものの……」
花帆「うん! あの小説だと、お花の匂い──確か、ラベンダーの匂いが、タイムリープに影響するんだけど……」フンフン
花帆「……え。も、もしかして……吟子ちゃんもそんなラベンダーな感じなの!? 未体験の世界は現実に……!??」ワクワク
吟子「いや、ラベンダーは知らないけど…………そう、だね」
吟子「その“タイムリープ”が、実際に、私の身に起こってるの」
0
53: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:52:00 ID:???00
花帆「え! ほ、本当にタイムリープが……!??」
吟子「うん。だから、それを花帆先輩に信じてもらうために…………えぇと」チラッ
吟子「……今から10秒後に、蓮ノ空で停電が起きる。ここはカーテンが開いてるから、真っ暗にはならないと思うけどね」
花帆「…………?? て、停電?」
吟子「うん。その時間は前に覚えておいたから……えっと、あと5秒…………3……2……1……」
プツン…
花帆「!?」ビクッ
吟子「うん。だから、それを花帆先輩に信じてもらうために…………えぇと」チラッ
吟子「……今から10秒後に、蓮ノ空で停電が起きる。ここはカーテンが開いてるから、真っ暗にはならないと思うけどね」
花帆「…………?? て、停電?」
吟子「うん。その時間は前に覚えておいたから……えっと、あと5秒…………3……2……1……」
プツン…
花帆「!?」ビクッ
0
54: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:53:01 ID:???00
吟子「……どう、花帆先輩?」
花帆「わぁ、本当だ……! 吟子ちゃん、凄いよ!! まるで魔法使いみたいに、カウントダウンでパッて電気が消えて……!」パァァァ
吟子「よかった……これでわかったでしょ、花帆先輩」
花帆「あ、うん! そっか……吟子ちゃんはタイムリープをしてるから、この未来を知ってて……」フンフン
花帆「……あれ? だとしたら、どうして吟子ちゃんはあたしにその事を話してくれたの?」
花帆「わぁ、本当だ……! 吟子ちゃん、凄いよ!! まるで魔法使いみたいに、カウントダウンでパッて電気が消えて……!」パァァァ
吟子「よかった……これでわかったでしょ、花帆先輩」
花帆「あ、うん! そっか……吟子ちゃんはタイムリープをしてるから、この未来を知ってて……」フンフン
花帆「……あれ? だとしたら、どうして吟子ちゃんはあたしにその事を話してくれたの?」
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55: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:54:01 ID:???00
吟子「それが……その、タイムリープを終わらせるために、花帆先輩に協力してほしいことがあるから、なんだけど……」
花帆「? よくわからないけど……あたし、吟子ちゃんのためならなんでもやるよ!」グッ
吟子「なんでも……花帆、先輩が」ポツリ
花帆「うん! ね、あたし、何をすればいい?」
吟子「…………………その、多分、だけど」
吟子「花帆先輩が私の胸を触ってくれれば、タイムリープが終わるんじゃないかなぁ……って」
花帆「……………………え???」
花帆「? よくわからないけど……あたし、吟子ちゃんのためならなんでもやるよ!」グッ
吟子「なんでも……花帆、先輩が」ポツリ
花帆「うん! ね、あたし、何をすればいい?」
吟子「…………………その、多分、だけど」
吟子「花帆先輩が私の胸を触ってくれれば、タイムリープが終わるんじゃないかなぁ……って」
花帆「……………………え???」
0
56: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:55:01 ID:???00
────
花帆「──吟子ちゃんが何度も繰り返すループを抜け出すためには……これが必要、なんだよね? ……本当に?」
吟子「か、確信はないけど、たぶん……」
吟子(花帆先輩が胸を触ってそれが起きるのなら、後はもう、タイムリープを認識している私のを触ってもらうしかない……)
吟子(そういう飛躍した発想だった)
花帆「──吟子ちゃんが何度も繰り返すループを抜け出すためには……これが必要、なんだよね? ……本当に?」
吟子「か、確信はないけど、たぶん……」
吟子(花帆先輩が胸を触ってそれが起きるのなら、後はもう、タイムリープを認識している私のを触ってもらうしかない……)
吟子(そういう飛躍した発想だった)
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57: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:56:01 ID:???00
花帆「えー、っと……純粋な、吟子ちゃんの私欲じゃないのかなぁ……? あたしはその、少し恥ずかしいんだけど……」
吟子「…………や、やってみなくちゃわからんし……」ポツリ
吟子(私はある意味、諦めの境地に達していた。タイムリープを終わらせる条件のためやし、仕方がないと、そう考えて……)
吟子(…………タイムリープの、条件?)ピタ
吟子(あれ……そういえば、公衆電話の花帆先輩もそんな感じの……条件についてなにか言っていたような。確か、そう……)
吟子(──私が“わがまま”になるのがどう、とか……?)
吟子「…………や、やってみなくちゃわからんし……」ポツリ
吟子(私はある意味、諦めの境地に達していた。タイムリープを終わらせる条件のためやし、仕方がないと、そう考えて……)
吟子(…………タイムリープの、条件?)ピタ
吟子(あれ……そういえば、公衆電話の花帆先輩もそんな感じの……条件についてなにか言っていたような。確か、そう……)
吟子(──私が“わがまま”になるのがどう、とか……?)
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58: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:57:01 ID:???00
花帆「じゃあ……えと」
花帆「…………触るよ?」
吟子「! …………う、うん」
吟子(一瞬で、さっきまでの考えは吹き飛んでいった。花帆先輩の、白くて小さな指が私の方へ伸びていって……)
ムニッ…♡
吟子「ん、ん……」ピクッ
花帆「…………触るよ?」
吟子「! …………う、うん」
吟子(一瞬で、さっきまでの考えは吹き飛んでいった。花帆先輩の、白くて小さな指が私の方へ伸びていって……)
ムニッ…♡
吟子「ん、ん……」ピクッ
0
59: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:58:01 ID:???00
花帆「!? 吟子ちゃん!? こ……声を出すのは流石になんじゃないかな!?」
吟子「ん……♡ そ、そんなん言われても、花帆先輩の触り方が……ん、んん//」
花帆「…………ねぇ、吟子ちゃん」サワサワ
吟子「っ!? 花帆先輩、その手つきは…………ん、ぁ」ピクッ
吟子「ん……♡ そ、そんなん言われても、花帆先輩の触り方が……ん、んん//」
花帆「…………ねぇ、吟子ちゃん」サワサワ
吟子「っ!? 花帆先輩、その手つきは…………ん、ぁ」ピクッ
0
60: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 21:59:02 ID:???00
花帆「……」
吟子「はぁ……はぁっ……」
吟子「あれ……花帆、先輩? ……ん」ピク
花帆「…………」
花帆「…………………………吟子ちゃんの、工 」ボソッ
吟子「……~~~~っ!!?!? な、か、花帆先輩だって──」
吟子「はぁ……はぁっ……」
吟子「あれ……花帆、先輩? ……ん」ピク
花帆「…………」
花帆「…………………………吟子ちゃんの、工 」ボソッ
吟子「……~~~~っ!!?!? な、か、花帆先輩だって──」
0
61: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:00:01 ID:???00
────
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……////」
セラス「え……吟子先輩、なんで顔真っ赤にして恥ずかしがってるんですか……逆に怖……」
吟子「そ、それはだって、花帆先輩が今まさに私の……って、え?」パチクリ
ザーザー…ザーザー…
セラス「──こんな話を、知っていますか」
吟子「……////」
セラス「え……吟子先輩、なんで顔真っ赤にして恥ずかしがってるんですか……逆に怖……」
吟子「そ、それはだって、花帆先輩が今まさに私の……って、え?」パチクリ
0
62: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:01:01 ID:???00
花帆「吟子ちゃん? あたしが、どうかしたの?」
セラス「このセラスプレゼンツ、蓮ノ空都市伝説が丁度いま始まるところだったのに、吟子先輩……」ムゥ
花帆「せっちゃんのお話、絶対怖いやつだから、あたしはあんまり聞きたくないんだけどなぁ……って、大丈夫、吟子ちゃん?」
吟子「そんな…………これって、まさか……!」ガタッ
吟子(また──時間が戻ってる……!??)
セラス「このセラスプレゼンツ、蓮ノ空都市伝説が丁度いま始まるところだったのに、吟子先輩……」ムゥ
花帆「せっちゃんのお話、絶対怖いやつだから、あたしはあんまり聞きたくないんだけどなぁ……って、大丈夫、吟子ちゃん?」
吟子「そんな…………これって、まさか……!」ガタッ
吟子(また──時間が戻ってる……!??)
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63: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:02:01 ID:???00
吟子「な、なんで…………?」
花帆「? ぎ、吟子ちゃん……急に固まって、どうしたの?」
吟子「…………え……? あ……!」
吟子(聞き覚えのある花帆先輩のセリフを耳にして、私はあることに思い至る。同じことを繰り返すこのループの中で──)
吟子(──前回だけは“電話がかかってきていなかった”ことに)
花帆「? ぎ、吟子ちゃん……急に固まって、どうしたの?」
吟子「…………え……? あ……!」
吟子(聞き覚えのある花帆先輩のセリフを耳にして、私はあることに思い至る。同じことを繰り返すこのループの中で──)
吟子(──前回だけは“電話がかかってきていなかった”ことに)
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64: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:03:01 ID:???00
吟子(そう……いつもなら、唐突な電話の着信音に花帆先輩が驚いていたはずだ)
吟子「……そっか、だから」ポツリ
吟子(『またかけ直す』って電話口の花帆先輩が言ってた以上、前回でタイムリープが終わるはず、なかったんだ)
吟子「……!」
吟子「…………じゃあ、もしかして……!!」
花帆「?? 吟子ちゃん、ずっと独り言を言って……本当にどうしたの?」
吟子「……そっか、だから」ポツリ
吟子(『またかけ直す』って電話口の花帆先輩が言ってた以上、前回でタイムリープが終わるはず、なかったんだ)
吟子「……!」
吟子「…………じゃあ、もしかして……!!」
花帆「?? 吟子ちゃん、ずっと独り言を言って……本当にどうしたの?」
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65: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:04:01 ID:???00
ザーザー…
ゴロゴロゴロ…
吟子「! あー…………とりあえず、花帆先輩は耳、塞いどくといいよ」
花帆「え? それは──」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
花帆「も、もー……金沢は雷が多いと言っても、不意打ちは酷──」
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「……!」ガタッ
ゴロゴロゴロ…
吟子「! あー…………とりあえず、花帆先輩は耳、塞いどくといいよ」
花帆「え? それは──」
ピシャーン‼︎
花帆「うわぁぁぁぁ!?!?!?」ビクッ
花帆「も、もー……金沢は雷が多いと言っても、不意打ちは酷──」
ピピピ…‼︎
花帆「──!?!?」ビクッ
セラス「わ、花ちゃん、とうとうスマホの着信音にも普通に驚き始めちゃった」
吟子「……!」ガタッ
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66: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:05:01 ID:???00
────
吟子「……」ピッ
吟子(部室の隅で私は、非通知の電話に出る。緊張していたせいか、声が少し上擦った)
吟子「…………も、もしもし?」
『もしもし、吟子ちゃん!』
吟子「……! 花帆、先輩……!!」
『あ、吟子ちゃんのその感じ……今はタイムリープは5周目、あたしが吟子ちゃんに電話をかけるのは4回目、かな?』
吟子「……」ピッ
吟子(部室の隅で私は、非通知の電話に出る。緊張していたせいか、声が少し上擦った)
吟子「…………も、もしもし?」
『もしもし、吟子ちゃん!』
吟子「……! 花帆、先輩……!!」
『あ、吟子ちゃんのその感じ……今はタイムリープは5周目、あたしが吟子ちゃんに電話をかけるのは4回目、かな?』
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67: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:06:01 ID:???00
吟子「! そっか……やっぱり、そういう歴史……決められたルートを辿ってるんだ」
吟子(おそらく正解のルートでも、私は……4周目のループで電話を受け取っていないんだろう。そう決まっているはずだから)
吟子(花帆先輩の電話のおかげで、私は正しい歴史を……決まりきった展開をなぞることができている。つまり……)
吟子「きっと多分だけど……そういうのを全部、花帆先輩は知ってるんだよね?」
『うん! と言ってもあたしは、吟子ちゃんに教えてもらって、それをメモまでして、その通りに動いてるだけなんだけどね!』
吟子「メモ、か…………そうなんだ」
吟子(おそらく正解のルートでも、私は……4周目のループで電話を受け取っていないんだろう。そう決まっているはずだから)
吟子(花帆先輩の電話のおかげで、私は正しい歴史を……決まりきった展開をなぞることができている。つまり……)
吟子「きっと多分だけど……そういうのを全部、花帆先輩は知ってるんだよね?」
『うん! と言ってもあたしは、吟子ちゃんに教えてもらって、それをメモまでして、その通りに動いてるだけなんだけどね!』
吟子「メモ、か…………そうなんだ」
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68: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:08:00 ID:???00
『と言うわけで、吟子ちゃん! この周が──“最後”のタイムリープ! あたしからの電話も、これで最後だよ!』
吟子「…………やっぱり、ね」
『……! あぁ、そっか! メモの通りなら……今の吟子ちゃんはもう、答えに気づいてるんだもんね!』
吟子「……うん。そう、だね」
吟子(前回のループが終わる間際に、はたと思い出した……“未来”の花帆先輩の言葉を思い起こす)
──
『タイムリープを終わらせる条件を知るためには、まず──吟子ちゃんが“わがまま”になること、だよ!』
──
吟子「…………やっぱり、ね」
『……! あぁ、そっか! メモの通りなら……今の吟子ちゃんはもう、答えに気づいてるんだもんね!』
吟子「……うん。そう、だね」
吟子(前回のループが終わる間際に、はたと思い出した……“未来”の花帆先輩の言葉を思い起こす)
──
『タイムリープを終わらせる条件を知るためには、まず──吟子ちゃんが“わがまま”になること、だよ!』
──
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69: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:09:01 ID:???00
吟子(──改めて考えてみて、ようやく……私は、その言葉の意味を理解した。これは、私にしか伝わらないある種の暗号だ)
吟子「……」
吟子(私が、本当にすべきこと……タイムリープを終わらせる、その条件は“胸を触ってもらうこと”では、やはりなかったんだ)
吟子「うん……もう大丈夫だよ、花帆先輩。……今回で、必ず終わらせてみせるから」
吟子「……」
吟子(私が、本当にすべきこと……タイムリープを終わらせる、その条件は“胸を触ってもらうこと”では、やはりなかったんだ)
吟子「うん……もう大丈夫だよ、花帆先輩。……今回で、必ず終わらせてみせるから」
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70: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:10:01 ID:???00
『そっか………ん、わかった!』
『じゃあ、そろそろ時間、だね! 最後にひとつ』
『──“あたし”によろしくね、吟子ちゃん!』
吟子「! ……うん、約束する。それじゃ……」
吟子「……」ポチッ
『じゃあ、そろそろ時間、だね! 最後にひとつ』
『──“あたし”によろしくね、吟子ちゃん!』
吟子「! ……うん、約束する。それじゃ……」
吟子「……」ポチッ
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71: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:11:01 ID:???00
吟子「……ふぅ」
吟子(息をつき、辺りを見ると……セラスさんと談笑している部室の花帆先輩と、ふと目が合った)
花帆「あ、吟子ちゃん、お電話終わった?」チラッ
吟子「うん……一応」
吟子(こうして、近づいて話をすると……花帆先輩に対して、さっきからずっと続く私の緊張が、より一層増していく)
花帆「そっか! 電話って、クラスのお友達からだったの? それともクラブのメンバー?」
吟子「…………えっと」
吟子「大好きな……私の、先輩からの電話……かな」ポツリ
花帆「?」
吟子(息をつき、辺りを見ると……セラスさんと談笑している部室の花帆先輩と、ふと目が合った)
花帆「あ、吟子ちゃん、お電話終わった?」チラッ
吟子「うん……一応」
吟子(こうして、近づいて話をすると……花帆先輩に対して、さっきからずっと続く私の緊張が、より一層増していく)
花帆「そっか! 電話って、クラスのお友達からだったの? それともクラブのメンバー?」
吟子「…………えっと」
吟子「大好きな……私の、先輩からの電話……かな」ポツリ
花帆「?」
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72: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:12:00 ID:???00
吟子「………………ねぇ、花帆先輩」
吟子「ちょっと、いいですか? 少し外で……二人でお話がしたくて」
花帆「……?」キョトン
吟子「ちょっと、いいですか? 少し外で……二人でお話がしたくて」
花帆「……?」キョトン
0
73: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:13:01 ID:???00
────
吟子「……」トコトコ
吟子(さっきのループで見つけた空き教室に、先輩を連れて行く。気持ち、歩速はゆっくりに……花帆先輩が慌てず追いつけるように)
ガチャ…
バタン
吟子「……電気をつけて、っと」
吟子「……」スゥ
吟子「……花帆、先輩」
花帆「? 吟子ちゃん?」
吟子「……今から言うこと、なるべく驚かないで聞いてほしいんだけど」
吟子「……私って、タイムリープしてるんだよ」
吟子「……」トコトコ
吟子(さっきのループで見つけた空き教室に、先輩を連れて行く。気持ち、歩速はゆっくりに……花帆先輩が慌てず追いつけるように)
ガチャ…
バタン
吟子「……電気をつけて、っと」
吟子「……」スゥ
吟子「……花帆、先輩」
花帆「? 吟子ちゃん?」
吟子「……今から言うこと、なるべく驚かないで聞いてほしいんだけど」
吟子「……私って、タイムリープしてるんだよ」
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74: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:14:01 ID:???00
花帆「?? タイム、リープ? それって──」
吟子「──小説の『時をかける少女』みたいに、って花帆先輩は訊くんじゃない?」
花帆「……!? え……吟子ちゃん、何でわかったの!? て、テレパシーまさか届いた!??」
吟子「いや、だから……さっき言った通りだよ、花帆先輩」
吟子「私はタイムリープをしてるから、花帆先輩とはこの会話をするのも初めてじゃない……ってこと」
吟子「──小説の『時をかける少女』みたいに、って花帆先輩は訊くんじゃない?」
花帆「……!? え……吟子ちゃん、何でわかったの!? て、テレパシーまさか届いた!??」
吟子「いや、だから……さっき言った通りだよ、花帆先輩」
吟子「私はタイムリープをしてるから、花帆先輩とはこの会話をするのも初めてじゃない……ってこと」
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75: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:15:01 ID:???00
花帆「そっか……吟子ちゃんはタイムリープをしてるから、この未来を知ってて……」フンフン
花帆「……あれ? だとしたら、どうして吟子ちゃんはあたしにその事を話してくれたの?」
吟子「それは……」
吟子「…………タイムリープを終わらせるために、花帆先輩に協力してほしいことがあるから、なんだけど……」
花帆「?」
吟子(ここまでは、前回のループとほぼ同じ。違うのは……変えるのは、この先だ)
花帆「……あれ? だとしたら、どうして吟子ちゃんはあたしにその事を話してくれたの?」
吟子「それは……」
吟子「…………タイムリープを終わらせるために、花帆先輩に協力してほしいことがあるから、なんだけど……」
花帆「?」
吟子(ここまでは、前回のループとほぼ同じ。違うのは……変えるのは、この先だ)
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76: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:16:01 ID:???00
花帆「よくわからないけど……あたし、吟子ちゃんのためならなんでもやるよ!」グッ
吟子「花帆先輩……」
吟子「……」
吟子(タイムリープの条件。……私が本心に背き、今までずっとやってこなかったこと)
花帆「ね、あたし、何をすればいい?」
吟子「……タイムリープを終わらせるためには」
吟子「“私が”──花帆先輩の胸を、触ればいいんだよ」
吟子「花帆先輩……」
吟子「……」
吟子(タイムリープの条件。……私が本心に背き、今までずっとやってこなかったこと)
花帆「ね、あたし、何をすればいい?」
吟子「……タイムリープを終わらせるためには」
吟子「“私が”──花帆先輩の胸を、触ればいいんだよ」
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77: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:17:01 ID:???00
花帆「……………………え???」
プツン…
花帆「!? で、電気が消え…………って、わ、わぁあ!?!?」
ドサッ…
吟子「…………」ギュッ…
花帆「!? ……ぎ、吟子ちゃん? どうして」
花帆「あたしを、押し倒してるの……??」
吟子「…………」
吟子「……花帆先輩が悪いんだから、花帆先輩のせい、やよ」ポツリ
プツン…
花帆「!? で、電気が消え…………って、わ、わぁあ!?!?」
ドサッ…
吟子「…………」ギュッ…
花帆「!? ……ぎ、吟子ちゃん? どうして」
花帆「あたしを、押し倒してるの……??」
吟子「…………」
吟子「……花帆先輩が悪いんだから、花帆先輩のせい、やよ」ポツリ
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78: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:18:01 ID:???00
花帆「えっと……吟子、ちゃん……?」
吟子「…………」
吟子(ようやく……わかった。ずっと私は、勘違いをしていたんだ、ってことに)
吟子(タイムリープが起きる条件は、花帆先輩が誰かの胸を触ること……これはたぶん、間違っていない)
吟子(けれど、“終わらせる”条件は違った)
吟子(それこそ電話口の、未来の花帆先輩が言っていた通り──私が、“わがまま”に行動すること、だったんだ)
吟子「…………」
吟子(ようやく……わかった。ずっと私は、勘違いをしていたんだ、ってことに)
吟子(タイムリープが起きる条件は、花帆先輩が誰かの胸を触ること……これはたぶん、間違っていない)
吟子(けれど、“終わらせる”条件は違った)
吟子(それこそ電話口の、未来の花帆先輩が言っていた通り──私が、“わがまま”に行動すること、だったんだ)
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79: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:19:01 ID:???00
花帆「……なにかあったの、吟子ちゃん? あたしでよければ、お話いくらでも聞くよ?」
吟子「…………本当、花帆先輩は優しいね。いきなり後輩に押し倒されても、怒らないなんて」
花帆「そ、それは、だって……相手が、吟子ちゃんだもん! 別に、あたしが特別優しいなんてことは……」
吟子「ううん、花帆先輩はいつだって優しいよ。だから……」
吟子「……花帆先輩、いつも周りのことばっか優先して、考えるよりも先に行動をしちゃうんだ。手が先に出ちゃうとも、言う」
吟子「………………他の人の胸を触ったり、ね……」ボソッ
花帆「?? ……え、む、胸!?!?」
吟子「…………本当、花帆先輩は優しいね。いきなり後輩に押し倒されても、怒らないなんて」
花帆「そ、それは、だって……相手が、吟子ちゃんだもん! 別に、あたしが特別優しいなんてことは……」
吟子「ううん、花帆先輩はいつだって優しいよ。だから……」
吟子「……花帆先輩、いつも周りのことばっか優先して、考えるよりも先に行動をしちゃうんだ。手が先に出ちゃうとも、言う」
吟子「………………他の人の胸を触ったり、ね……」ボソッ
花帆「?? ……え、む、胸!?!?」
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80: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:20:01 ID:???00
花帆「あたし、そんなことしたっけ……え、それ一体いつの話??」
吟子「…………“過去”のこと、かな」ボソッ
花帆「? えっと……?」
吟子「……ずっと前の夏合宿のときだって、花帆先輩ばっか私の変なとこ触ってきてたし、今までもずっとそう」
吟子(私は、いつも羨ましかった。花帆先輩に対するそういう仄暗い欲望が……絶えず、私の心には蔓延っていて)
吟子「花帆先輩が誰かに触れる度に、私はモヤモヤしてた」
吟子「それはきっと──私が、花帆先輩のことを独り占めにしたかったから、だと思う」
花帆「……!」
吟子「…………“過去”のこと、かな」ボソッ
花帆「? えっと……?」
吟子「……ずっと前の夏合宿のときだって、花帆先輩ばっか私の変なとこ触ってきてたし、今までもずっとそう」
吟子(私は、いつも羨ましかった。花帆先輩に対するそういう仄暗い欲望が……絶えず、私の心には蔓延っていて)
吟子「花帆先輩が誰かに触れる度に、私はモヤモヤしてた」
吟子「それはきっと──私が、花帆先輩のことを独り占めにしたかったから、だと思う」
花帆「……!」
0
81: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:21:01 ID:???00
花帆「…………吟子、ちゃん。それは」
吟子「そう。……紛れもない、私の“わがまま”やよ」
吟子(曖昧な言葉だけれど、なにより核心をついていた。私ならそれがわかる。……『可惜夜花火』の詞にも込めた想い、だから)
吟子「花帆先輩がいつも話しかけてくれるのも、笑いかけてくれるのも……全部、私は本当に、嬉しかった」
吟子「でも、そんな花帆先輩の優しさを歪めたくもなかった。それは……私の真の望みじゃ、なかったから」
吟子「そう。……紛れもない、私の“わがまま”やよ」
吟子(曖昧な言葉だけれど、なにより核心をついていた。私ならそれがわかる。……『可惜夜花火』の詞にも込めた想い、だから)
吟子「花帆先輩がいつも話しかけてくれるのも、笑いかけてくれるのも……全部、私は本当に、嬉しかった」
吟子「でも、そんな花帆先輩の優しさを歪めたくもなかった。それは……私の真の望みじゃ、なかったから」
0
82: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:22:01 ID:???00
花帆「……」
吟子「だからずっと、我慢してた。でも、だけど……」
吟子(きっと……タイムリープを起こしたのは、私なんだろう。この想いが膨らんで、時間までも歪ませたのかもしれない)
吟子(そう考えると、私はもう、この気持ちを抑え切れる気がしなかった)
吟子「私は──花帆先輩のことが大好き、なんやよ」ポツリ
花帆「!」
吟子「っ……花帆、先輩!」
吟子「私は、たとえ一方通行な想いだったとしても……先輩後輩の関係以上に、花帆先輩のことが……!」
吟子(堰を切ったように、“わがまま”な感情が溢れていく。……あぁ、こんな姿、花帆先輩に失望されてしまうだろうか)
花帆「…………ねぇ、吟子ちゃん」ソッ
吟子「! ……先輩」
吟子「だからずっと、我慢してた。でも、だけど……」
吟子(きっと……タイムリープを起こしたのは、私なんだろう。この想いが膨らんで、時間までも歪ませたのかもしれない)
吟子(そう考えると、私はもう、この気持ちを抑え切れる気がしなかった)
吟子「私は──花帆先輩のことが大好き、なんやよ」ポツリ
花帆「!」
吟子「っ……花帆、先輩!」
吟子「私は、たとえ一方通行な想いだったとしても……先輩後輩の関係以上に、花帆先輩のことが……!」
吟子(堰を切ったように、“わがまま”な感情が溢れていく。……あぁ、こんな姿、花帆先輩に失望されてしまうだろうか)
花帆「…………ねぇ、吟子ちゃん」ソッ
吟子「! ……先輩」
0
83: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:23:01 ID:???00
花帆「……吟子ちゃんの本気の気持ち、教えてくれてありがとうね。あたし、すっごく響いたよ。……だから」
花帆「あたしも、吟子ちゃんにしっかりお返事がしたいんだ」
吟子「……っ」
吟子(やっぱり……フラれるのかな。これからも私は、前と同じように後輩として花帆先輩の隣に立つ、んだろうな……)
吟子「…………ごめんね、花帆先輩」ポツリ
吟子「私……本当にわがままだ。ただの後輩のままで終わらせられなくて、こうやって花帆先輩を困らせてばっかりで……」シュン
花帆「…………」
花帆「あたしも、吟子ちゃんにしっかりお返事がしたいんだ」
吟子「……っ」
吟子(やっぱり……フラれるのかな。これからも私は、前と同じように後輩として花帆先輩の隣に立つ、んだろうな……)
吟子「…………ごめんね、花帆先輩」ポツリ
吟子「私……本当にわがままだ。ただの後輩のままで終わらせられなくて、こうやって花帆先輩を困らせてばっかりで……」シュン
花帆「…………」
0
84: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:24:01 ID:???00
花帆「……はぁ…………吟子ちゃんのだらぶち……! あたしだって、ずっとそうだし同じはずなのに……」ブツブツ
吟子「……? 花帆先輩……?」
花帆「ねぇ、いいんだよ、吟子ちゃん」ニコッ
花帆「あたしは、吟子ちゃんに何をされても、壊れないし歪まない。だって……」
花帆「あたしも! ──吟子ちゃんが、大好きだから!!」
吟子「……!」
吟子「……? 花帆先輩……?」
花帆「ねぇ、いいんだよ、吟子ちゃん」ニコッ
花帆「あたしは、吟子ちゃんに何をされても、壊れないし歪まない。だって……」
花帆「あたしも! ──吟子ちゃんが、大好きだから!!」
吟子「……!」
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85: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:25:00 ID:???00
花帆「吟子ちゃんが、あたしと出会ってくれたこと……一緒に、スリーズブーケをやってくれたこと……」
花帆「その全部が、あたしだって本当に嬉しくて。あたしも、吟子ちゃんにはすっごく感謝してるんだよ」
花帆「だから……この大好きだって、嘘じゃないちゃんとした気持ち。吟子ちゃんに応えたい想いなんだ」
吟子「それ、は……」
花帆「だから、ね? 欲望のまま……“わがまま”になってよ。吟子ちゃん──……」
吟子「…………!!」
花帆「その全部が、あたしだって本当に嬉しくて。あたしも、吟子ちゃんにはすっごく感謝してるんだよ」
花帆「だから……この大好きだって、嘘じゃないちゃんとした気持ち。吟子ちゃんに応えたい想いなんだ」
吟子「それ、は……」
花帆「だから、ね? 欲望のまま……“わがまま”になってよ。吟子ちゃん──……」
吟子「…………!!」
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86: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:26:01 ID:???00
吟子「……」
吟子「…………」ギュッ
花帆「……」
吟子「すぅ………………花帆、先輩」
吟子(ここは──誰も来るはずのない空き教室。私の理性が、静かに溶けて行く)
花帆「いいよ、吟子ちゃん」ニコッ
吟子「! ………………うん」
吟子「……もう、我慢なんてせんから──」ガタッ
吟子「…………」ギュッ
花帆「……」
吟子「すぅ………………花帆、先輩」
吟子(ここは──誰も来るはずのない空き教室。私の理性が、静かに溶けて行く)
花帆「いいよ、吟子ちゃん」ニコッ
吟子「! ………………うん」
吟子「……もう、我慢なんてせんから──」ガタッ
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87: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:27:01 ID:???00
────────
──────
────
花帆「──……ねぇ、吟子ちゃん?」
吟子「……なに、花帆先輩」スゥ
花帆「………………どうしてずっと終わってからも、吟子ちゃんはあたしの首筋に顔をうずめてるの??」
吟子「? だって……」スゥ
吟子「花帆先輩から……すごく、良い匂いがするから」クンクン
──────
────
花帆「──……ねぇ、吟子ちゃん?」
吟子「……なに、花帆先輩」スゥ
花帆「………………どうしてずっと終わってからも、吟子ちゃんはあたしの首筋に顔をうずめてるの??」
吟子「? だって……」スゥ
吟子「花帆先輩から……すごく、良い匂いがするから」クンクン
0
88: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:28:00 ID:???00
花帆「…………そうやって積極的に嗅がれると、流石にあたしも恥ずかしいよ、吟子ちゃん……//」
吟子「これだけ色々しといて、花帆先輩……今さらやね、そんなの」クスッ
吟子「……でも、そっか。お花の匂い……か」
吟子(花帆先輩の匂いを嗅ぐことが、タイムリープが終わる合図になったならば……それはなんだか、相応しい終焉に思えた)
吟子「……って、そうだ。タイムリープ…………私、まだ花帆先輩に頼まなくちゃいけないことがあるんだった」
吟子「これだけ色々しといて、花帆先輩……今さらやね、そんなの」クスッ
吟子「……でも、そっか。お花の匂い……か」
吟子(花帆先輩の匂いを嗅ぐことが、タイムリープが終わる合図になったならば……それはなんだか、相応しい終焉に思えた)
吟子「……って、そうだ。タイムリープ…………私、まだ花帆先輩に頼まなくちゃいけないことがあるんだった」
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89: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:29:01 ID:???00
花帆「? あたしに?」
吟子「うん。花帆先輩には……過去の“私”を、正しく導いてあげてほしいの」
花帆「……?? み、導く……?」
吟子「タイムリープ……つまり、同じ時間を繰り返す現象。それに過去の私も巻き込まれてるから、助けてあげてほしくて……」
吟子(……あぁ、この説明。私が花帆先輩から受けたものとまったく同じだと、話しながら気づく)
吟子「うん。花帆先輩には……過去の“私”を、正しく導いてあげてほしいの」
花帆「……?? み、導く……?」
吟子「タイムリープ……つまり、同じ時間を繰り返す現象。それに過去の私も巻き込まれてるから、助けてあげてほしくて……」
吟子(……あぁ、この説明。私が花帆先輩から受けたものとまったく同じだと、話しながら気づく)
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90: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:30:01 ID:???00
吟子「……あ、そっか、そういうこと」ポツリ
花帆「?」
吟子(やっと理解できた。このややこしい……私が駆けてきた時間の流れというものは、文字通りループしていて)
吟子(私は、今までのタイムリープで花帆先輩に言われたこと。その全てを今、目の前の花帆先輩に伝えなくちゃいけないんだ)
吟子(きっと過去の私なら……実際に私がしたように花帆先輩の言葉から推察を重ね、この未来に辿り着くはず、だから)
花帆「?」
吟子(やっと理解できた。このややこしい……私が駆けてきた時間の流れというものは、文字通りループしていて)
吟子(私は、今までのタイムリープで花帆先輩に言われたこと。その全てを今、目の前の花帆先輩に伝えなくちゃいけないんだ)
吟子(きっと過去の私なら……実際に私がしたように花帆先輩の言葉から推察を重ね、この未来に辿り着くはず、だから)
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91: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:31:01 ID:???00
吟子(……それで、“わがまま”なんて、私にしか伝わらない暗号を残せたんだ。秘めていた想いで、私以外は知らない感情を)
吟子「えぇと……セラスさんが本来話してた都市伝説に、“過去”に繋がる公衆電話があって、花帆先輩はそれを使って欲しいの」
花帆「こ、公衆電話?? あの、10円玉を使う電話ボックスの?」
吟子「あ、公衆電話で使うテレホンカードは私が何枚か貸すよ。それを使えば“未来”から“過去”に繋がるって仕組みで……」
花帆「???」
吟子「……なんか、あんまり伝わっとらんね……」
吟子「えぇと……セラスさんが本来話してた都市伝説に、“過去”に繋がる公衆電話があって、花帆先輩はそれを使って欲しいの」
花帆「こ、公衆電話?? あの、10円玉を使う電話ボックスの?」
吟子「あ、公衆電話で使うテレホンカードは私が何枚か貸すよ。それを使えば“未来”から“過去”に繋がるって仕組みで……」
花帆「???」
吟子「……なんか、あんまり伝わっとらんね……」
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92: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:32:01 ID:???00
花帆「いや、なんだか吟子ちゃんのそのお話、未体験の世界で難しくて……」
吟子「……姫芽みたいなゲーム風に言うと、私が正解ルートを選んだ場合の花帆先輩が今の花帆先輩で、って言えばわかる?」
花帆「うーん……? それなら、ギリギリなんとなく……? でも、半信半疑と言うか……」
花帆「……本当にちゃんと繋がるのかなぁ?」
吟子「! ……ふふっ、私の知ってる花帆先輩も同じ心配をしとったから、安心して大丈夫だよ」ニコッ
吟子「……姫芽みたいなゲーム風に言うと、私が正解ルートを選んだ場合の花帆先輩が今の花帆先輩で、って言えばわかる?」
花帆「うーん……? それなら、ギリギリなんとなく……? でも、半信半疑と言うか……」
花帆「……本当にちゃんと繋がるのかなぁ?」
吟子「! ……ふふっ、私の知ってる花帆先輩も同じ心配をしとったから、安心して大丈夫だよ」ニコッ
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93: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:33:01 ID:???00
花帆「そっか……じゃあ、うん! あたし、吟子ちゃんのためならなんでもやるって言ったし、喜んで協力するよ!」グッ
吟子「ありがと、花帆先輩」ニコッ
吟子「とりあえず、花帆先輩は……歴史が変わらないように細心の注意をはらう必要があって……」
吟子「具体的には、相手──“過去”の私に不必要なことを言っちゃダメなんだよね」
花帆「? ……あ、そっか! 色々変わっちゃったら、あたしと吟子ちゃんが一緒の未来に辿り着けなくなるかもしれないもんね!」フンフン
吟子「ありがと、花帆先輩」ニコッ
吟子「とりあえず、花帆先輩は……歴史が変わらないように細心の注意をはらう必要があって……」
吟子「具体的には、相手──“過去”の私に不必要なことを言っちゃダメなんだよね」
花帆「? ……あ、そっか! 色々変わっちゃったら、あたしと吟子ちゃんが一緒の未来に辿り着けなくなるかもしれないもんね!」フンフン
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94: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:34:01 ID:???00
吟子「うん、そういうこと。だから……」
吟子「今から言うこと、花帆先輩はちゃんと全部覚えてね」ニコッ
花帆「え?」
吟子「……こほん」
吟子「まず、1回目の時は私がタイムリープしてるってことを電話で教えて……2回目に、終わらせる条件を知るためには“わがまま”になることだって言って……」ペラペラ
花帆「!?!? わ、わぁぁ、待って待って! 今メモするから、吟子ちゃん、ゆっくり話してー!!」
吟子「今から言うこと、花帆先輩はちゃんと全部覚えてね」ニコッ
花帆「え?」
吟子「……こほん」
吟子「まず、1回目の時は私がタイムリープしてるってことを電話で教えて……2回目に、終わらせる条件を知るためには“わがまま”になることだって言って……」ペラペラ
花帆「!?!? わ、わぁぁ、待って待って! 今メモするから、吟子ちゃん、ゆっくり話してー!!」
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95: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:35:01 ID:???00
────
──
花帆「えーと、ここかな? 蓮ノ空の片隅にある公衆電話って……」キョロキョロ
ポツン…
花帆「え、思ってたより雰囲気が暗い……!」
花帆「なんだか……辺りもすっごく静かだし、電話をかけて反応がなかったら怖いなぁ……」ガクブル
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花帆「えーと、ここかな? 蓮ノ空の片隅にある公衆電話って……」キョロキョロ
ポツン…
花帆「え、思ってたより雰囲気が暗い……!」
花帆「なんだか……辺りもすっごく静かだし、電話をかけて反応がなかったら怖いなぁ……」ガクブル
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96: ◆IcWSLbEE★ 2025/10/01(水) 22:36:01 ID:???00
花帆「まぁ……でも! 吟子ちゃんに貸してもらったテレホンカードは何枚かあるし……心配しなくても大丈夫、だよね」グッ
花帆「むしろ、今から過去の吟子ちゃんと話せるなんて、滅多にないファンタジーな体験! せっかくだし楽しまなくちゃ!」
花帆「えぇっと……メモによると……1回目は、部室のあたしが外に出ていって物音がしたらその周は終わり、かぁ……」フンフン
花帆「よーし、じゃあ早速……!」ポチポチ
花帆「あ、もしもし──吟子ちゃん?」
おしまい
花帆「むしろ、今から過去の吟子ちゃんと話せるなんて、滅多にないファンタジーな体験! せっかくだし楽しまなくちゃ!」
花帆「えぇっと……メモによると……1回目は、部室のあたしが外に出ていって物音がしたらその周は終わり、かぁ……」フンフン
花帆「よーし、じゃあ早速……!」ポチポチ
花帆「あ、もしもし──吟子ちゃん?」
おしまい
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97: ◆SI7XbBy7★ 2025/10/01(水) 23:03:50 ID:???00
素晴らしいわね
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98: ◆lJtKnRKd★ 2025/10/02(木) 03:42:22 ID:???00
良いものを見せてもらった
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1759320000/