【SS】エマ「ニッポンの給食」【ラブライブ!虹ヶ咲】

たまごかけご飯食べるエマさん SS


1: 2021/05/19(水) 15:26:04.54 ID:QinQDSmW
チャオ~♪ エマ・ヴェルデです!

突然ですが、きゅうしょくってご存知ですか?
スイスの学校では、お昼ご飯はみんなおうちから持参することになってるんだけど……。

日本の学校にはお昼ご飯が付いていて、給食の時間になると生徒たちが自分で配膳、盛り付けをして、同じ時間に、同じ教室で、同じ料理を頂くらしい。

とっても素敵な文化だと思わない?

留学を決めた時に本で読んで、それからすっごく楽しみにしてたんだけど給食が出るのは中学校までと決まっているみたい。

それを知ったときはほんとうにがっかりしちゃった。

一度でいいからクラスのみんなと机を引っ付けて、同じご飯を食べてみたい!

2: 2021/05/19(水) 15:27:36.40 ID:QinQDSmW
そんなことを考えていたら、ほんとにうちの高校でも給食が始まっちゃった!

本来、高校で給食が出るのは夜間の学校だけって聞いたけど、最近では全日制の高校でも給食を導入するところが増えているみたい。

うちの学校でも今日から1ヶ月間、試験的に給食が実施されることになった。

正直、同好会には今回の改革を嘆いてる子もちらほらいたけど。

でもわたし、これにかんしては嬉しくってついとび跳ねちゃった。

だって一度しかない人生、色んな文化を目で見て、触れて、味わってみたいんだもん!

3: 2021/05/19(水) 15:31:50.40 ID:QinQDSmW
【第一話 ソフト麺】


今日の4時間目は国語。

日本語は大好きだけど、やっぱり漢字の小テストは苦手。ちゃんと書けてたかなあ?

でも、そんな心配事も忘れさせてくれる魔法の時間、給食。

チャイムが鳴って、白衣に着替えたらお待ちかねの食堂へ。

給食実施期間中は食堂が配膳室の代わりに使われるの。

掲示板に貼られてた、わたしの当番は牛乳!

十数本の牛乳が敷き詰められたカゴを持って階段を登るのはすこし大変。

落として割っちゃわないように、気をつけなきゃ。

6: 2021/05/19(水) 15:38:58.04 ID:QinQDSmW
教室に戻ってみんなに牛乳を配り終えると、日直さんが教卓の前に立ちました。

「手を合わせてください」

それに倣ってクラスのみんなも手を合わせる。


「いただきます!」


普段は各々バラバラのタイミングで口にする感謝のことば。みんなで席に着いて一斉に言うのは気持ちがいい。

スイスでの食事の時間を思い出すな~。

机に並んだご馳走を確認する。

今日のこんだてはソフト麺、ミートソース、フレンチサラダ、なぜか炭水化物かぶりのコッペパン、そしてわたしが運んだ牛乳。

はじめて見るものばかりでワクワクする。

まずは牛乳から。

7: 2021/05/19(水) 15:42:30.87 ID:QinQDSmW
「あれ?」

大変。紫色のビニールを外すと、飲み口にすっぽりとフタがはまってたの。

どうやって取るんだろう……。

周りを見渡すと、みんな軽々とフタを外して飲み始めている。

え? どうやったの?

開けらないの、わたしだけなのかな……。

「どうしたの? エマさん」

オロオロしていたわたしに気が付いたのか、隣の席の子が赤いピックを持ってきてくれた。

なるほど! これをフタに刺して引っ張るんだ!

でもみんなこんな道具使ってなかったよね?

どうやった外したんだろう。

わたしの中で永遠の謎です。

8: 2021/05/19(水) 15:45:02.29 ID:QinQDSmW
「ぷっはーッ」

「エマさん牛乳好きなの?」

「あいー。こっちに来るまであんまりなじみなくて」

「スイスって牛乳ないの?」

「ないことはないハズだけど…うちではヤギのお乳が普通だったんだぁ」

こうして普段話さない子とも会話が広がるのは嬉しい。
給食ってやっぱり素敵!

あれ? なんでみんなわたしの胸を見るんだろう?

9: 2021/05/19(水) 15:46:00.30 ID:QinQDSmW
喉が潤ったところで本日のメインディッシュ、ソフト麺。

……ソフト麺って、なに?

うどんかな? ラーメンにも見える。

なのにミートソース?

考えれば考えるほど分からなくなる。

スイスでは麺類はパスタしかなかったけれど、日本には色んな種類の麺類があってこんがらがっちゃう。

食べてみたら分かるよね?

11: 2021/05/19(水) 15:49:46.84 ID:QinQDSmW
透明なビニール袋をビリビリと破いて、なみなみ盛られたミートソースの中にえいっと入れる。

「わっ!」

ソースが服に飛んじゃった。
思っていた以上に深かったみたい。

みんなの服は大丈夫かな?

あれ? 麺を開ける前にスプーンで切れ込みを入れてる子がちらほら。

「なにしてるの??」

「あっこれはね、いっぺんに入れるとソースが跳ねちゃうから、四等分にして分けて入れるんだよ」

「なるほど~!」って感心しちゃった。

食べる前から戦いはもう始まっている。それが給食。

せつ菜ちゃんの言っていたことがなんとなく分かった気がします。

13: 2021/05/19(水) 15:55:47.81 ID:QinQDSmW
先っぽがフォークのように割れたスプーンでまぜまぜ。まぜまぜ。

そしてひと口、パクリ。

「ん~ボーノ♪」

味はスイスでもよく食べていたボロネーゼに似ているけれど、食感はもちもちしてうどんみたい

……やっぱりラーメン?

食べてみても分かりませんでした。

でも、美味しいからいいよね!

14: 2021/05/19(水) 15:57:01.52 ID:QinQDSmW
ソフト麺を何口か食べて、目線を左に向けます。
フレンチサラダです。

クラスの子いわく、ドレッシング版とマヨネーズ版があるみたいです。

わたしはドレッシングの方が好みかな?

でも、今度マヨネーズ版も食べてみたいかも~。

濃厚なミートソースのあとに、酸味の効いたドレッシングがマッチしてボーノ!

「あっ! リンゴだ~」

レーズンも入ってる。

なんだか懐かしくなっちゃった。

隣の子がひとこと

「げっ、リンゴかー……」

15: 2021/05/19(水) 15:58:32.20 ID:QinQDSmW
「リンゴ苦手なの?」

「リンゴ自体は好きなんだけど、サラダに入ってると少し違和感があるんだよねぇ」

そういえば似たようなリアクションをしてる子が何人か。

「給食のサラダってなんでフルーツ入ってるんだろう」

「ねー」

日本ではサラダにフルーツを入れることは少ないのかな?

確かに日本に来てからははじめて見たかも。

でも、私はこれも好き!

17: 2021/05/19(水) 15:59:19.63 ID:QinQDSmW
シャクシャクとリンゴを噛みしめて、再びソフト麺。

ちゅるちゅる。ちゅるん。 

ソースが跳ねちゃわないように。
しんちょうに。しんちょうに。

ここでコッペパンをちぎって、ソースにつけてみる。

真っ赤なソースにたっぷり浸って、パンがふやけてきたら食べごろの合図です。

やわらかい!

今度はそのまま一口。

かすみちゃんが持ってきてくれる豪華なコッペパンも大好きだけど、シンプルなコッペパンははじめて食べるかも!

22: 2021/05/19(水) 16:15:10.71 ID:QinQDSmW
机を見下ろす。

もうちょっとでなくなっちゃいそう……。

少し寂しいけれど、ラストスパートは豪快に。

スプーンでコッペパンに切れ込みを入れ、残りのソフト麺を挟み込みます。

特製、エマサンドの出来上がり♪

サンドを一口。

牛乳。サラダ。サンド。サンド。サラダ。

牛乳。を一気に飲み干して。

「ごちそうさまでした!」

24: 2021/05/19(水) 16:18:48.38 ID:QinQDSmW
「美味しかったね~」

「給食が始まるって聞いた時は少し嫌だったんだけど、エマさんの食べっぷり見てるとこっちまで楽しくなってきちゃった!」

ふふっ。それは良かった。

でも、どうしてみんな嫌がるのかな?

すっかり膨れたお腹を撫でて、ため息をひとつ。

日本の料理は一通り制覇したつもりだったけど、まだまだ私の知らないものがいっぱい……。

そんな新しい発見をくれる給食が、わたしは大好きです!


明日はどんなこんだてが出るのかなあ?

25: 2021/05/19(水) 16:19:34.33 ID:QinQDSmW
第一話 おしまい

36: 2021/05/19(水) 17:07:38.14 ID:QinQDSmW
【第二話 揚げパン】


はぁー……。憂鬱です。
朝からテンションガタ落ちです。

いつもお昼はしず子達と食べるって決めてるのに。

だいたい! 高校生にもなって給食なんて、一体何を考えてるんでしょうか。

本日のかすみんの当番は大おかず。
これもまた許せないのです。

小学生の頃、大おかずのシチューを廊下にぶち撒けちゃって、うちのクラスではその日一日オカズ抜きになっちゃったんです。

その時の皆の痛い視線といったらもう……。

かすみん三大やらかしの一つです。

39: 2021/05/19(水) 17:17:50.31 ID:QinQDSmW
ちらりと時計を確認します。
もうすぐ4時間目が終わっちゃう……。

分針が一つ進むごとに、胃がズキズキしてきます。

「今日の給食なんだったかな……」

などと独りごちながら机に突っ伏していると

“キーンコーンカーンコーン”

げっ!

チャイムが鳴り響き、皆ぞろぞろと机をくっ付け始めます。

「やった! 同じ班だね!」なんて会話がちらほら。

かすみんには関係のない話です。

この教室には話す人なんていないので……。

47: 2021/05/19(水) 18:08:08.53 ID:QinQDSmW
キュートなかすみんには似つかわしくない割烹着に着替え、食堂に向かいます。

良かった。あの今にも地面にのめり込みそうなほど重たく、仰々しい銀の入れ物は、思っていたよりも小さくなっていました。

ん? かすみんが大きくなったのかな?

ひと先ず、ぶち撒ける心配はなさそうです。

48: 2021/05/19(水) 18:08:42.94 ID:QinQDSmW
配膳を終え、恐る恐る机を確認します。

今日のこんだては牛乳、アーモンドフィッシュ、ほうれん草とベーコンのソテー、コンソメスープ、揚げパン……揚げパン!?

「コッペパンはどこですか!?」

はっ……!つい声に出てしまいました。

「あ、あははー……」

と誤魔化して二度見します。

ぐぬぬ……。いやまぁ、揚げパンに罪はないのですが……。

かすみん、お昼は必ずコッペパンって決めてるんです! 

うちでは米飯が出ることはないので、毎日のコッペパンだけは保証されていたんです。

それが唯一の救いだったのに……。

57: 2021/05/19(水) 19:02:46.40 ID:6nDs/Xjt
「い、いただきまーす……」

まずはほうれん草のソテーです。

これはなかなかいけます。
かすみん野菜はあんまりー……なんですが、ベーコンの塩味が意外なジャンキーさを醸していて、食べやすいです。

牛乳瓶の蓋を爪でちょちょいとほじくり、つまみ上げます。

小学生の頃集めてたっけ。

58: 2021/05/19(水) 19:03:46.79 ID:6nDs/Xjt
牛乳を飲みながら、隣の人の会話を盗み聞きします。

「私揚げパン大好き!」

「毎日揚げパンだったらいいのにねー」

ちっちっちっ。まだまだですねぇ。

シンプルなコッペパンに一から食材を乗せていくビルド感こそ、パン食の真髄なのです。

甘いきな粉の振りかかった揚げパンでは、それが出来ないじゃないですかぁ。

「あっ美味しい」

い、今のは違いますよ!
かすみんは揚げパンなんて認めませんからね!

59: 2021/05/19(水) 19:05:07.06 ID:6nDs/Xjt
「中須さんも揚げパン好きなの?」

「え……?ま、まぁ……」

「美味しいよね揚げパン! ねえ、中須さんって指折りのコッペパンマニアなんだって?」

突然のことにビビってしまいました。
教室で人に話しかけられるのは初めてかもしれません。

コンソメスープを飲みながら、彼女の話に耳を傾ける。

なんでも、彼女はコッペパン同好会の一員で、コッペパンオタクの私には前々から目をつけていたんだそうです。

「実は私、中須さんの大ファンで! ずっと動画とか見てるの」

「そ、そうなんだ///」

可愛いかすみんに夢中になっちゃうのは分かりますが、初対面の人に面と向かって言われると、ちょっぴり照れてしまいます。

このスープ味薄っ!

60: 2021/05/19(水) 19:06:13.24 ID:6nDs/Xjt
毛嫌いしていた揚げパンをぺろりと平らげたところで、再びチャイムが鳴りました。

アーモンドフィッシュはこっそり取っておいて、休み時間に開ける派なのです。

「ねえ、かすみん」

「どうしたの? コペ子」

「良かったら、私のアーモンドフィッシュ食べない? お近付きの印に!」

「ほんと!? ありがとー!」

「この後コッペパン同好会の部室に遊びに来ない?」

「いくいく!」

気が付けば、胃の痛みはすっかり消えてなくなっていました。

クラスで出来たはじめての友達、コペ子と一緒に教室を飛び出します。

え? 彼女の名前ですか?

勿論聞きましたよ。でも教えてあげません。

かすみんだけの秘密なのです。

61: 2021/05/19(水) 19:06:20.25 ID:6nDs/Xjt
第二話 おしまい

66: 2021/05/19(水) 20:22:26.88 ID:0gEGhcGa
【第三話 名前の長い魚】

食べる前から戦いはもう始まっている。
それが給食。

今ちょうど1限目を終えたところですが、今日はゆっくり休んでいる暇などありません。

「ふっ! ふっ!」

屈伸。開脚。スクワット。

「何してるんだろう……生徒会長」

はっ……!私としたことがつい本気になってしまいました。

今の私は生徒会長・中川菜々。
飽くまで毅然に。毅然にです。

しかしあなた達、随分と余裕ですね?

今日の献立は牛乳にコッペパン、ポテトサラダ……

と、ここまではいつも通りですが、メインディッシュには鶏の唐揚げと白身魚のフライ……!

本学で給食が始まって以来、これほどまでに高カ口りーな献立があったでしょうか?

否!! ありません!!!

ふふふ……。今のうちに体を動かしておかないと、後で知りませんよ?

67: 2021/05/19(水) 20:25:50.27 ID:0gEGhcGa
「皆さん、手を合わせてください」

「いただきます」

逸る気持ちを抑えつつ、冷静に挨拶を執ります。

持ち場に戻り、本日のターゲットを確認。

神々しいきつね色です。

「うおおおおおおお!!!!」

「えっ! 何今の……!?」

おっと。大好きを叫んでしまうところでしたが、そんな粗相はいたしません。

飽くまで冷静にです。

72: 2021/05/19(水) 21:31:13.51 ID:0gEGhcGa
さて。どちらから頂きましょうか。

やはり一番人気の鶏の唐揚げ?
いやいや! 何を馬鹿なこと考えているんですか私は。

先に唐揚げを食べてしまうと、後半白身魚が余ってしまいます。

この巨体を徐々に崩していく果てしない時間こそが、白身魚の醍醐味。

ゆっくりとお箸を突き立て、一口大に切る。


「ふむ……」

73: 2021/05/19(水) 21:31:43.18 ID:0gEGhcGa
献立では”白身魚のフライ”という漠然な表記でしたが……

しかし、私はこの魚の名前を知っています。

メルルーサ。
学校給食用に選ばれた、安価な輸入魚です。

名前の響きが、なんとなくカッコいい。

さしずめ、戦隊ヒーローが乗り込むロボットといったところでしょうか?

「超変形!メルルーサ!」

75: 2021/05/19(水) 22:06:01.21 ID:0gEGhcGa
まずはそのままで一口。

「……っぅ」

作ってから時間が経っているはずなのに、このサクサク感……!

相変わらずいい仕事をします。

続いてお待ちかねのタルタルソース。

ジャム然り、先日のアーモンドフィッシュ然り、給食で配られる小袋は何故こうもテンションが上がるのでしょうか?

封を切って、ゆっくりと掛けていきます。

「おっと……」

またやってしまうところでした。

ここで使い過ぎては唐揚げに掛ける分がなくなってしまいます。

「あぁ……」

朝からお腹を空かせていて、本当に良かった。

76: 2021/05/19(水) 22:06:55.69 ID:0gEGhcGa
ここでライバル達の様子を窺います。

「うっ……どっちも好きなんだけど、ちょっとボリューム多いよね?」

「入るかなぁ……」

ぷっ……ふふっ……あっははははは!!!

何を甘い事言ってるんですか!
ここは戦場ですよ!

戦いは1限目から、いや、この献立を確認したその瞬間から始まっているんです!

「この勝負、どうやら私の勝ちみたいですね」

79: 2021/05/19(水) 23:28:34.41 ID:0gEGhcGa
「唐揚げは最後まで取っておきましょうか」

さて、次は……。

目標、発見しました。

茶色まみれのメニューに、純白のポテトサラダがいい差し色になっています。

しかし、今日はとことんジャンクな気分に浸りたいんです。

差し色は飽くまで差し色。
この調和は崩さない、程よいコッテリ加減は流石の采配と言ったところでしょうか。

パンに挟み込み、一気に平らげます!

それをさらに牛乳で流し込む。

今この教室で、私が一番のアウトローです。

80: 2021/05/19(水) 23:29:22.41 ID:0gEGhcGa
「いよいよですか……」

ここまで本当に長かった。
たった一つお皿に鎮座する唐揚げは、孤高の王者と言った風格です。

ポケモンで言う固定シンボルです。

キッサキしんでんのレジギガスです。

レジギガスをお箸でつまみ上げ、いざ尋常に勝負!

81: 2021/05/19(水) 23:30:25.40 ID:0gEGhcGa
ん?あれは……。

「ななななな!?」

遠くの席からこちらに微笑み掛けてくるその少女の手には、コッペパンが握られていて。

中にはポテトサラダ。
さらに追い打ちでタルタルソース。

くっ……。
この教室にも私と同じアウトローがいたとは……。

「……は?」

今度は何をする気ですか……。
メルルーサをほろほろにほぐして……。

入れた!?

あれはまさしく、ポテトメルルーササンド……!

いえ、彼女はポテトサラダの中の具材まで考慮しているはずです。

となると、エッグポテトオニオンメルルーササンド……!

なんと長くてジャンキーな名前でしょうか……!

うぅぅ……。私も食べたい……!

82: 2021/05/19(水) 23:30:59.57 ID:0gEGhcGa
「ふふっ」

!? 笑った……!?

一体何を企んでいると言うのですか……!

はっ……! 
よく見るとまだ唐揚げが残って……。

まさか、エッグポテトポテトオニオンチキンメルルーササンドを誕生させるおつもりですか!?

そんな……。
やめてください……!

「あぁ……ぁ」

「負け……ました……」

83: 2021/05/19(水) 23:31:11.19 ID:0gEGhcGa
第三話 おしまい

88: 2021/05/20(木) 02:01:28.21 ID:22tpXN6B
【第四話 ABCスープ】


ふぁぁ~。

4時間目が終わっていつものベンチに直行。

というわけにはいかず、教室に残ってないといけません。

ちょっと前に始まった給食制度、賛否両論あるみたいだね~。

彼方ちゃんは~……うーん……。

給食自体は美味しいから好き。

だけど、毎朝作っていたお弁当も今では遥ちゃんの分だけになっちゃったから、食材の調整が難しい。

あと、少し寂しい。

例え離れていても、今遥ちゃんと同じご飯食べてるんだ~って思うだけで、自然と元気付けられてたから。

まぁ試用期間中は給食費無料だし、お得っちゃお得かな?

取り敢えず今日は給食当番じゃないから10分だけ寝れる~。

Zzzz……

89: 2021/05/20(木) 02:01:44.55 ID:22tpXN6B
はっ……!いかんいかん。

もう日直さん立ってるじゃん。

少し出遅れたけど、お手々を合わせて~

「いただきま~す」

どれどれ~……鯨のオーロラ煮にキャベツのソテー……おっ、アルファベットが浮かんだ
スープ。

「懐かしい~」

これ昔から謎だったんだよね。マカロニ?

えぇっと、Hの文字は~……

あった!

むふふ、AとRも見つけちゃった~。

今日の彼方ちゃんはついてるぜ~。

90: 2021/05/20(木) 02:02:25.06 ID:22tpXN6B
コッペパンを浸して、パクリ。

うまい。

もっかい浸して、パクリ。

うまい。

今日の遥ちゃんのお弁当はマカロニグラタン。

広い意味では、同じの食べてることになるのかな?

スプンですくって、一口飲んでみる。

銀色の中にぷかぷか浮かぶUの文字。

幸先がいいぜ~。

91: 2021/05/20(木) 02:02:51.26 ID:22tpXN6B
ついスープに夢中になってたけど、今日のメインはこっちかな?

鯨のオーロラ煮。
彼方ちゃんの小学校では竜田揚げでした。

給食ってなんで鯨が出るんだろうね?

エマちゃん、これ食べて大丈夫なのか……?

コロコロしてて、スプンでもすくいやすい。

んぐんぐ。

竜田揚げより美味しいね~。

92: 2021/05/20(木) 02:03:19.11 ID:22tpXN6B
キャベツのソテーは、彼方ちゃんもよく作るよ。

キャベツは栄養満点だから、遥ちゃんのお弁当には欠かさず入れてる。

おっ? ということはリーチか?

鯨にかんしては……ノーカウント。
あれは家庭で用意出来るシロモノではない。

ところで、さっきからちょっとしたトラブルが。

Kの文字が見当たりません。

出だしは良かったんだけどなぁ……。

再び鯨をパクリ。

うん、やっぱりオーロラ煮の方が美味しいよ。

93: 2021/05/20(木) 02:03:48.87 ID:22tpXN6B
この酸味を牛乳で流し込むのが良いんだよね~。

小学生の頃、よく遥ちゃんの牛乳飲んであげてたっけ……。

私の教室まで涙目で牛乳を持って来る姿を、つい最近の事のように思う。

彼方ちゃんの卒業式の前日、空っぽになった牛乳瓶を自慢げに見せびらかしに来た時は、嬉しくて泣いちゃった。

今では姉妹揃って牛乳好きです。

いかん、泣けて来た。

94: 2021/05/20(木) 02:06:42.87 ID:22tpXN6B
ゆったりと流れるこの時間は、果てしないようで、それでいて着実に進んでいて。

周りの子もぽつぽつと席を立ち始めて。

彼方ちゃんも、残り一欠片のコッペパンと、スープに残った具材を平らげると完食です。


「今日はもうダメかなぁ」


ため息を混じりにスープのキャベツをすくい上げると、その下に隠れてたよ。K、Aが。


「あっ! 良かった~」

「どうしたの?近江さん?」

「ん? あはは~アルファベット集めてて」

「ふふっ、意外と子供っぽいとこあるんだ」


私を笑う悪い子のお椀にはN、A、T、Aが満足げに浮かんでいました。

95: 2021/05/20(木) 02:06:59.46 ID:22tpXN6B
第四話 おしまい

98: 2021/05/20(木) 05:47:59.18 ID:22tpXN6B
【第五話 ソフール】


急に積乱雲が立ち込めて、それからすっかり空は黒く濁ってしまった。

ついさっきまでの青天が嘘のようだ。

降雨に伴う湿度の上昇で、教室はいやな熱気に包まれる。

汗が服に纏わりついて、じめじめする……。

着替えたい。帰ってシャワーを浴びたい。
そんな事を考えているうちに四限が終わってしまった。

幸い、今日の私は給食当番ではない。

こんな蒸し暑い日に割烹着を着込むのはまっぴらだ。

99: 2021/05/20(木) 05:48:49.10 ID:22tpXN6B
「冷えた牛乳でも飲めば、少しは涼しくなるよね……」

おかずが運ばれて来る間、隣の席の子とたわいも無い雑談をしながら、暑さを紛らす。

「ねえ桜坂さん。涼しくなる話してあげよっか?」

「へ?」

「涼しくなる話」という触れ込みで、いい話だったことは一度も無い。

正直断ろうかと思ったが、その子が口角を吊り上げて、あんまり話したそうにするので、つい首を縦に振ってしまった。

100: 2021/05/20(木) 05:50:09.14 ID:22tpXN6B
「結構前の話なんだけどね、この学校で不幸な事故があったんだって」

「え……?」

嫌な予感は的中してしまった。
でもまぁ、よくある都市伝説の一種だろう。

設立間もないこの学校で死亡事故なんてあろうものなら、とっくに私の耳に入っているはずだ。

「ちょうどこの教室に猫が迷い込んじゃって、窓の框の部分に乗って降りられなくなってたんだって」

「それで助けようとした子がそのまま転落しちゃって……即死だったって」

「こ、怖いね……」

101: 2021/05/20(木) 05:50:49.14 ID:22tpXN6B
正直、そこまで怖くない。どこの学校でも、そういった噂の一つや二つ付き物だ。

第一、その話が本当だったとしたら「涼しくなる話」ではなく「いたたまれない話」だ。

この場合、化けて出たわけでも無いのに俗物的な好奇心で語るのは死者への冒涜だ。

「……その子の大好物、ソフールだったんだって」

「え!?」

幾らなんでもそれはルール違反だろう。

今日の献立にはソフールが出る。

話を盛り上げる為に、オチを取ってつけた感が否めない。

……とは言え、少し食欲が減退する。

102: 2021/05/20(木) 05:51:41.86 ID:22tpXN6B
給食当番の子達が帰ってきて、ものの数分で全員の机に食事が行き渡った。

「いただきます」

今は、とにかく喉の渇きを潤したい。

メインの料理を確認するより先に牛乳を手に取った。

生き返る。ちょうど半分ほど飲んだところで先生が言った。


「ソフール一個余ってますよ」


どうしよう。普段ならここでジャンケンに参加するところだが、先の話を聞いた後だと少し気が引ける。

──どうせただの作り話だろう。

給食期間だってあと半月ほど。

その短い間に、またソフールが出るとも限らないし、一応参加しておこう。

103: 2021/05/20(木) 05:52:22.46 ID:22tpXN6B
「あっやった!」

勝ってしまった。何気に余り物ジャンケンで勝ったのは初めてかもしれない。

参加して良かった。

ソフールを二つ、端によけて料理を確認する。

いつものコッペパン、ちくわの磯辺揚げ、トマトスープ、ピーマンとじゃこの炒め。

正直、ピーマンは苦手だ。
こんなに苦いものをなぜ有り難がって食べるのか、未だに理解できない。

104: 2021/05/20(木) 05:53:08.57 ID:22tpXN6B
でも私は、苦手なものほど先にいただく。

苦痛は後に残すよりも、先に片付けてしまった方が楽だからだ。

憎しみを込めて、先割れスプーンを突き立てる。

ぐしゃりと果肉を引き裂くその感触が心地良い。

口に運び、いつもより入念に咀嚼する。



ぐちゃ。ぐちゃ。ぐちゃ。あはは。楽しい。

105: 2021/05/20(木) 05:53:42.56 ID:22tpXN6B
磯辺揚げは好きだ。
揚げ物なのにさっぱりしていて、幾らでも食べられる。

半分に割って、二回に分けて楽しもう。

ジューシーな油の奥で、さりげない磯の風味が広がる。

パンを一口大にちぎり、口に運ぶ。

間を置かずに、磯辺揚げの半かけを食べる。

美味しい。あっという間になくなってしまった。

106: 2021/05/20(木) 05:54:04.29 ID:22tpXN6B
残っていたトマトスープをひとすくいずつ口に運んで、たまにパンを挟んで、牛乳を飲む。

おかずを平らげたところで、楽しみにしていたソフールを開ける。

パッケージのデザインを見るに、給食専用という訳では無さそうだが、市販されているのは見たことがない。

トロッとしたヨーグルトよりも、こういう固いヨーグルトの方が好きだ。

107: 2021/05/20(木) 05:55:19.42 ID:22tpXN6B
あっという間に一つ平らげたところで、二個目に手を伸ばす。

「あれ……?」

ここでちょっとした違和感が頭をよぎる。何かがおかしい。


──今日って、欠席者ゼロだよね?


「へ……?あれ……?」

「うふふっ」

隣で笑う女の子の名前が思い出せない。

彼女の情報が何も分からない。

ただ一つ分かっていることは



──彼女はソフールが大好きなんだ。

109: 2021/05/20(木) 05:55:30.78 ID:22tpXN6B
第五話 おしまい

119: 2021/05/20(木) 18:58:12.50 ID:22tpXN6B
【第六話 ミルメーク】


今日のランチは京野菜のテリーヌ、鴨のコンフィ、有機野菜の冷製ポタージュ、苺のパンナコッタ……。

ふぅん……。まぁまぁね。

テーブルに着くと、純白のクロスの上にはフォークが三つ等間隔で並んでいる。右手に目を遣ると同数のナイフ。スプーン。

ふふっ。私は知ってるのよ。

内側のフォークから使うのよ。

ところで、ウェイターはまだかしら?

「朝香さんのナフキンパンダの柄なんだ! 可愛い~」

なんのことかしら?

122: 2021/05/20(木) 22:29:59.28 ID:22tpXN6B
まずはオードブルから。

テリーヌの具材はレンコン、カボチャ、しいたけ、さやいんげん、にんじん、えのき。

プルプルのゼラチンにフォークを突き刺し、一口。

意外といけるわね。

あらやだ。
私ったら手を滑らせちゃったみたい。

でもレディーは自分で拾うなんてしないの。

こういうときはそっと手をあげてウェイターを呼ぶのよ。

「先生朝香さんがお箸落としました」

それはそうと、今日はいい天気ね。

124: 2021/05/20(木) 22:58:51.59 ID:22tpXN6B
お次は有機野菜の冷製ポタージュ。

この季節ひんやりしたものが食べなくなるのよね。

具材は、パプリカとにんじんかしら?

透明な器からのぞく赤色が情熱的。

スープ料理のマナーは知っているかしら?

間違っても音を立てちゃダメよ?

フーフー冷ますのもダメ。

スプーンを持つときはペンを握るようにそっと。

手前から奥にゆっくりとすくいあげ、口に運ぶ。

「あっつ!!」

125: 2021/05/20(木) 23:23:11.41 ID:22tpXN6B
ここでバゲットをいただくわ。

メインのお料理が運ばれてくる前に、一旦お口の中をリセットする役割があるの。

お皿の上で一口サイズにちぎる。

気にしないで。
パンくずが出ちゃうのは仕方のないこと。

自分で集めたり、はらったりしちゃダメよ?

ウェイターが次の給仕で掃除してくれるから、思う存分汚しなさい。

「コッペパンでそんなパンくず出ることある?」

次よ次!

127: 2021/05/21(金) 02:04:40.68 ID:Pc5FBCGi
いよいよ本日のヴィアンドね。

ポワソンがないのが少し残念だけれど。

コンフィはフランス語の“コンフィル=保存する”が語源なのよ。

低音のオイルでじっくりと煮ることで、コラーゲンの膜が出来て保存性が高まるの。

エマから聞いたわけじゃないわ。

鴨は身がしまっているイメージがあるけれど、骨に沿ってナイフを入れるとほろっとほぐれちゃうのよねぇ。

口に入れるとさらにほぐれる。絶品ね。


「タンドリーチキン楽しみだったんだ」

「煮凝りも美味しかったよね」


さっきからシェフに対する冒涜よ?

128: 2021/05/21(金) 02:05:20.60 ID:Pc5FBCGi
やっぱりコース料理にデザートは欠かせないでしょ?

濃厚な肉料理のあとは口どけなめらかな苺のパンナコッタでしめる。

「この粉入れるの難しいのよねぇ……」

そうよ。パンナコッタは自分で粉を入れて作るものなのよ。文句ある?

きっとゲストも調理に参加して楽しもうっていう演出ね。

「んっ……んっ……ぷはぁー!」

パンナコッタは飲み物なのよ。文句ある?

129: 2021/05/21(金) 02:06:41.15 ID:Pc5FBCGi
もちろん食後のマナーにも気を配るのがレディーよ?

ナフキンを綺麗に畳むのはNG。

あえて無造作に置いておくことで”畳むのを忘れてしまうほど美味しかった”っていう気持ちをあらわすの。

…………。


大切なパンダだから、やっぱりちゃんと畳んで鞄に仕舞うことにするわ。

130: 2021/05/21(金) 02:07:07.82 ID:Pc5FBCGi
第六話 おしまい

140: 2021/05/22(土) 17:19:13.85 ID:fzaQR6K5
【第七話 八宝菜】


今日の4時間目は体育だから退屈しないな~。

なんつって!

もちろん他の授業も好きだよ。

あっそういえばさ! 教室に戻ってくるとき食堂のおばちゃんから聞いちゃったんだよね。

今日の八宝菜、発注ミスでうずらが入ってないんだって。

これをみんなに言うべきか黙っておくべきか……。

だってさ、楽しみにしていた八宝菜、いざ蓋開けてみるとうずらなし! とか絶対テンサゲじゃん?

かと言って、今のうちからみんなを悲しませる必要はないと思うし……。

141: 2021/05/22(土) 17:47:01.26 ID:fzaQR6K5
うわっ、ごちゃごちゃ考えてたら給食当番帰ってきちゃった。

まいっか。配膳の時間も楽しいんだよね。


「愛さんも手伝おっか?」

「いいの愛ちゃん? ありがと~」


何事も助け合いってね! 当番が入ってないときも取り分けとか手伝うようにしてるんだ。

にしてもほんとにうずら入ってないんだねぇ……。


「愛ちゃん……私の野菜少なめにして」

「愛! 豚肉入れて豚肉」


わわわっ、みんな落ち着いて!

量が決まってるから特別扱いは出来ないよ!

142: 2021/05/22(土) 17:48:30.16 ID:fzaQR6K5
配り終わって自分の席に戻る。

今日のこんだては、生徒たちの間で好き嫌いが真っ二つに別れる、八宝菜。

どんなメニューにも必ず付いてくる名脇役、コッペパンに牛乳。

そして体を動かしたあとの嬉しいご褒美、白玉フルーツポンチ!

まずは八宝菜の豚肉をお箸でつまみ上げる。

これこれ! 理想的な八宝菜は野菜が7割、豚肉3割。

みんなにはおいしく食べて貰いたいから厳しいことも言っちゃうよ。

143: 2021/05/22(土) 19:02:18.46 ID:fzaQR6K5
「白玉1個余ってますよ」

おっ! この時を待っていた!

すかさず腕を捲り、席を立つ。

愛さんジャンケンなら誰にも負けないんだ。

144: 2021/05/22(土) 19:03:30.98 ID:fzaQR6K5
5人のライバルをなんとか破り、白玉を獲得。

いやぁ~、なかなかに手強かったけどね。

「はぁ……」

席に戻ると、前の子が寂しそうに机を眺めていた。

「どったの?」

「な、なんでもない……です」

お椀を確認する。
あれ? この子白玉入れ忘れられちゃったか?

「愛さんの1個あげるよ!」

「えっでも……」

「いいっていいって! この白玉キミのだったんだね」

「あ、ありがとうございます……!」

145: 2021/05/22(土) 19:20:32.82 ID:fzaQR6K5
清々しい気分で食事を再開。

玉ねぎとにんじんのシャキシャキ感に、片栗粉のとろみが絶妙なマッチング!

かまぼこの優しい味付けも嬉しい。

やっぱうずらがないのは寂しいけどね……。

「あたしの豚肉少ないんだけどー」

「野菜多くない?」

ちょっとちょっと! 豚肉より圧倒的に欠けてるものがあんじゃん!

意外と気付かないもんだねー。
さっきは言わなくて正解だったかな?

147: 2021/05/22(土) 19:30:09.68 ID:fzaQR6K5
コッペパンを頬張りながら、さっきの子を確認する。

「…………」

「どした? またなんかあった?」

なにかとほっとけない性分でさ、困ってそうな子がいたら、つい声かけちゃうんだよね。

「い、いや……」

お箸が全然進んでない。
やっぱこの子も八宝菜嫌いなのかな?


「食べてみなよ! 意外とおいしいよ!」

「あ、あの……」

「ひと口食べてみて、どーーしてもダメだったら愛さんが手伝ってあげるからさ!」

「い、いや……そういうのじゃなくて……」

148: 2021/05/22(土) 19:38:06.58 ID:fzaQR6K5
ズドドー! って足音とともに、教室の扉が開かれる。


え?


「皆ごめんねぇ! 遅くなっちゃったけど、業者さんが急遽うずらを届けてくれて……!」


前の子が満面の笑みを浮かべる。

「ずっと……信じてた……!」

彼女はそう言うと、誰よりも先に席を立ち、おばちゃんからうずらを受け取る。

「はむっ……美味しい!!」


ええええ!? 愛さんもう食べ終わっちゃったよ!?

こりゃ一本取られたなぁ。

149: 2021/05/22(土) 19:38:16.52 ID:fzaQR6K5
第七話 おしまい

152: 2021/05/23(日) 01:43:55.34 ID:b9k6Cv3u
【第八話 プロセスチーズ】


給食は、きらい。

昔から食べるのが遅くて、5時間目になっても食べてることが多かったから。

流石に今はそんなことないけど、たまに休み時間に繰り越してしまう。

「ねぇねぇ、グラタン楽しみじゃない?」

「ほんと! 今日の為に朝抜いてきたんだー」

「璃奈はなんか好きなのあった? 今日のメニュー」

同じクラスの京子ちゃん、浅希ちゃん、色葉ちゃん。

三人ともすごく優しい。休み時間になっても、私が食べ終わるまでそばにいてくれる。

そんな三人に気を遣わせてしまう給食は、やっぱりきらい。

153: 2021/05/23(日) 01:49:40.23 ID:b9k6Cv3u
「プロセスチーズ」

「あははっなにそれw」

チーズは、すき。

小さくて食べやすい。何よりおいしい。

程よい塩分がコッペパンや牛乳にもよく合う。

そんなことを思いながら廊下を歩いていると、突然後ろからけたたましい金属音が聞こえた。

次いで何か粘度の高いものがべちゃっと地面に叩きつけられる音。

女の子の悲鳴。

そんな彼女を口々に心配する声。


グラタンが、しんだ。

154: 2021/05/23(日) 02:13:10.22 ID:b9k6Cv3u
「残念ですが、彼女を責めないであげてください……幸いチーズはたくさん残ってますから1人3個までなら取っていいですよ!」

みんな茫然自失といった感じで、先生の言葉は耳に入っていないみたいだった。

「手を……合わせてください……」

「いただきます……」

今日のいただきますは悲壮感が漂う。

遠くから、すすり泣く声も聞こえる。

グラタン亡き今、机に並んだのは牛乳、コッペパン、ブロッコリー、プロセスチーズ。

やばい。

刑務所の食事みたいでワクワクする。

156: 2021/05/23(日) 02:42:48.76 ID:b9k6Cv3u
正直、ちょっとだけ気持ちの浮き立つ自分がいた。

みんなの気持ちは痛いほど分かるし、食材への感謝が欠けていることだって分かる。

でも、これなら浅希ちゃん達を待たせないで済む。

ぐるっと周りを見渡すと、みんなスプーンも持たずに俯いていた。

こんなこと考えちゃ、ダメだよね……。

157: 2021/05/23(日) 03:10:02.43 ID:b9k6Cv3u
牛乳をひと口飲んだところで、浅希ちゃんが口を開いた。

「はぁ……今日朝抜いて来たのに……」

「このあとの体育、倒れちゃうよね……」

そうだった。浅希ちゃんにいたっては朝食すら摂ってなかったんだ。

ワクワクするだなんて思っちゃって、ごめんなさい。

はっ……! 

この時、頭上でピコンと電球が光った。

すかさず璃奈ちゃんボードを取り出し、みんなに見せつけた。

「璃奈ちゃんボード、ピコーン!」

「えっどうしたの? 璃奈」

「みんな、食べないで待ってて」

「え!?」

「すぐ戻る、待ってて」

158: 2021/05/23(日) 03:10:52.83 ID:b9k6Cv3u
「はぁ……はぁ……」

食事中に教室を飛び出して、訪れたのは理科室。

私にしては思い切った行動だと思う。

先生に怒られるかもしれない。

でも、これなら浅希ちゃん達の笑顔を取り戻せるかもしない。

お目当ての品を携えて、教室へ急ぐ。

160: 2021/05/23(日) 03:46:27.29 ID:b9k6Cv3u
教室の戸を開けると、みんな驚愕の表情で私を見つめていた。

「天王寺さん! どこ行ってたの!」

「ごめんなさい」とひとこと断って、本来グラタンが入る予定だった器を手に取る。

席に戻って、理科室から持ってきた実験用のアルコールランプに火をつける。

器にチーズを3つ放り込んで、牛乳を少し。

ランプに五徳を設置して、器を置いて、あとは待つだけ。

161: 2021/05/23(日) 03:52:34.21 ID:b9k6Cv3u
チーズがグツグツと煮立って液体状になったら完成。

パンを浸して、ひと口食べてみせる。

ブロッコリーもいける。

「みんなの分のランプもある。グラタンには勝てないかもしれないけど……少しでもおいしいおかずを食べて欲しくて」

「うおおおおお!!!!」

クラス中が雄叫びをあげた。

ちょっぴり恥ずかしい。


ある日の給食、情報処理学科1年の教室にだけチーズフォンデュが出たという話は、虹ヶ咲学園七不思議のひとつになっている。

162: 2021/05/23(日) 03:52:42.50 ID:b9k6Cv3u
第八話 おしまい

169: 2021/05/25(火) 17:41:32.56 ID:FLrRsIpT
【第九話 酢豚】


板書を写しながら、窓の外をぼんやりと眺める。

降りそうなままだれた空は、まだお昼前だというのに深い森のように薄暗くにごっていてうっとおしい。

私は、先生の話もよそにホワイトボードにマグネットで止められた献立表を見る。

今日の献立は酢豚だ。

成分表の欄には豚肉やら玉ねぎやらと一緒にパイナップルという文字が並んでいた。

憂鬱だ。

あれさえなければ酢豚は大好きなんだけど……。

そんな事を考えている内にチャイムが鳴ってしまった。

170: 2021/05/25(火) 17:44:56.72 ID:FLrRsIpT
私はクラスメイトに混じって、出来るだけ音を立てないように机を並び替える。

こんな些細なことにも神経を使ってしまう自分が嫌いだ。

「歩夢ちゃん、そっち持って」

「う、うん」

「元気ないね、なんかあった?」

気分が顔に出ていたらしい。

「ううん」と返してすぐ、作業に戻る。

171: 2021/05/25(火) 17:45:47.98 ID:FLrRsIpT
当番の子がぞろぞろと帰ってきて、既に配膳が済んだ子から自分の席について手を合わせ始める。

それに前後して日直さんが教室の前の方に立ち、いただきますの合図を取る。

机に並んだ酢豚を見て「おいしそう!」と期待を膨らませる子、パイナップルを見た途端やはりと言わんばかりに落胆する子、そんなことは気にも留めないという風にお箸を手に取る子。それぞれ同じくらいの割合で散らばっていた。

私の反応は二番目だ。

油で揚げた豚肉、素揚げした野菜、ピリッとした酸味の甘酢あん。

その中に糖度の高いパイナップルが入っているのが、どうしても許せないのだ。

なのに。

侑ちゃんのわからずや。

172: 2021/05/25(火) 17:47:58.25 ID:FLrRsIpT
今一度机の上を確認して、私はサイドメニューの卵スープから食べることにした。

控えめな味付けでいて妙に満足感がある。

別段よく食べていたわけでもないのに、何故だか昔を思い出す味だ。

卵焼きを作るのは得意だけれど。

今度卵スープも作ってあげようかな。

「いやいや……」

ほんの一瞬浮かんだのを、すぐに言葉でかき消した。

許してあげないんだから。

173: 2021/05/25(火) 17:48:30.79 ID:FLrRsIpT
コッペパンをひと口かじって、牛乳を飲む。

中華尽くしのメニューにこの二つは違和感があるけれど、うちではお米が出ることがないからすっかり慣れてしまった。

小学生の頃、先生のギャグで吹き出した侑ちゃんに牛乳かけられたっけ。

あの時はデザートのゼリーをくれたから許してあげたけど。

174: 2021/05/25(火) 17:48:58.10 ID:FLrRsIpT
おずおずと酢豚に手をつけてみた。

パイナップルをかき分けながら、豚肉を一つつまんで口に入れる。

美味しい。

お家で食べるものよりもお肉が柔らかい気がする。

玉ねぎ、パプリカ、ピーマンとお箸が進み、お皿にはパイナップルだけが盛られた状態になった。

なんだか元々こういう料理だったみたいだ。

175: 2021/05/25(火) 17:49:50.57 ID:FLrRsIpT
「柔らかくて美味しいよね」

隣の子が話しかけてきた。

「そうだね」

と返してすぐ、少し素っ気なかったかと反省する。

「パイナップルに入ってる酵素がお肉を柔らかくしてくれるんだよ」

今朝、侑ちゃんも同じことを言っていた。

たしかに、パイナップルに含まれる酵素には、お肉を柔らかくするはたらきがある。

でも、その効果は60度以上の熱で消えてしまうから、実はなんの意味もない。

ましてや、給食に使われているこれは缶詰だろうから、とっくに加熱処理がなされているはずだ。

176: 2021/05/25(火) 17:51:28.86 ID:FLrRsIpT
「いわば縁の下の力持ち的な!」

心の中で反論していると、彼女が話を続けた。

「え?」

「私そういうの憧れるんだー。ほら、歩夢ちゃん達の部活もそんな感じじゃん?」

「私達の部活が?」

「私、SIFの会場準備とか担当してたでしょ?  その時の高咲さんの熱意といったらもう!」

「自分はスクールアイドルじゃないのに、あの会場にいた誰よりも楽しんで、奔走して」

「私それ見た時、この子がいるからスクールアイドルのみんなは最高の舞台を作れるんだーって凄く羨ましくなっちゃった!」

177: 2021/05/25(火) 17:51:46.60 ID:FLrRsIpT
ずるい。

そんなこと言ったってパイナップルはパイナップルだ。ほんとにそんな効果ないのに。

でも、たしかに柔らかかったな。

恐る恐る、甘酢にまみれたそれを口に入れて、噛んでみる。

「……おいしい」

「でしょ!」

休み時間になったら、音楽科の教室に行って謝ろう。

「今朝はごめんね」

と少し澄まして言ったのち、取っておいたゼリーを渡すんだ。

178: 2021/05/25(火) 17:51:56.72 ID:FLrRsIpT
第九話 おしまい

185: 2021/05/26(水) 23:31:52.36 ID:lPd9Kb65
【最終話】


非常にざんねんなお知らせです。

毎日楽しみにしていた給食、今日で最後なの。

もともとそういう決まりだったから、仕方ないよね……。

でもでも、今日は最終日だからって先生がたっくんサプライズを用意してくれたの。

最初で最後のお米の給食、紙パックにたんまり盛り付けたカレーライスを持って、これから同好会の部室に向かいます!

186: 2021/05/26(水) 23:32:24.92 ID:lPd9Kb65
エマ「お待たせ~」

かすみ「遅いですよ!エマ先輩」

かすみ「かすみんずっと楽しみにしてたんですからね」

侑「あれ?今日はコッペパンじゃないけどいいんだ?」

かすみ「たまにはぁー……こういうお昼も悪くないなぁーって」

エマ「ごめんね~、嬉しくってついよそいすぎちゃった」

愛「食べよ食べよ!」

「いただきます!」

188: 2021/05/26(水) 23:55:31.00 ID:lPd9Kb65
果林「美味しいっ…」

彼方「ん~?果林ちゃん最初はカ口りーがーって嘆いてたのに」

果林「うふふ、実は今日の体力テストちょっと結果が伸びてたのよ、この1ヶ月の食事のおかげかしら」

璃奈「私も伸びてた、璃奈ちゃんボード『むん』」

しずく「毎日牛乳でカルシウムを摂っていたおかげかもしれませんね」

189: 2021/05/26(水) 23:56:22.67 ID:lPd9Kb65
エマ「あっそうだそうだ!ずっとみんなに聞こうと思ってたんだけど、牛乳のフタってどうやって開けるの?」

かすみ「え!今までどうやって飲んでたんですかぁ」

かすみ「爪で引っ掻いて、ささくれた部分をつまみ上げるんですよ」

エマ「なるほど~!スッキリした~」

しずく「うん、分かってるよ、私にまかせて」

エマ「お礼にこのフタあげるね」

かすみ「い、いりません!いくつだと思ってるんですかぁ」

しずく「あれ?嬉しそうに集めてたのに」

かすみ「ち、ちがっ!///」

190: 2021/05/26(水) 23:59:13.26 ID:lPd9Kb65
愛「最後なんだし貰っときなよ!愛さんのもあげる」

かすみ「う…ありがとうございます」

歩夢「ふふっ、私もあげる」

せつ菜「私のも貰ってください!」

璃奈「私も」

かすみ「ちょ、ちょっとぉ」

かすみ「うぅーこんなに……」

ドッサリ

かすみ「……えへへっ」

192: 2021/05/27(木) 00:00:27.56 ID:sx8cP4Vt
彼方「たまにはこういう甘口のカレーもいいよね~」

侑「分かる!市販のやつは辛くて食べられないから助かっちゃう!」

愛「愛さんはもっとかれぇ~のが好きだな~」

侑「ブフォwwwwwww」ビチャッ

歩夢「ゆ、侑ちゃん!?」

侑「ご、ごめん歩夢!」アセアセ

せつ菜「歩夢さん…!これで拭いてください」

侑「ご、ごめんね……?ソフールあげるから許して」

しずく「あの子のソフール」

歩夢「むぅ、今日だけだよ」

しずく「かえせ」

194: 2021/05/27(木) 00:13:50.58 ID:sx8cP4Vt
せつ菜「あははっw牛乳拭いたこれ、あとで絶対臭くなっちゃいますね」

侑「ごめん……」

エマ「そうなの?」

彼方「エマちゃんは嗅いだことないか~、あれは強烈だよ~」

璃奈「給食あるある」

エマ「え~!嗅いでみたかったなぁ」

果林「やめときなさい」

しずく「大丈夫だよ、安心して」

エマ「1ヶ月間食べてきたけど、まだまだ知らないことがいっぱい……」

エマ「明日から寂しくなっちゃうなぁ……」

195: 2021/05/27(木) 00:22:49.64 ID:sx8cP4Vt
侑「色んなメニューが出たもんねー」

侑「みんなは何が好きだった?」

かすみ「勿論かすみんはコッペパン!……と言いたいところですが揚げパンが思いのほか美味しかったです」

侑「揚げパン美味しかったね!私あれ二つ食べちゃった」

エマ「えっ!いいな~」

侑「あの日たまたま休みの子が多かったんだ」

彼方「彼方ちゃんはやっぱり鯨のオーロラ煮かな~」

彼方「そうだ!ずっと気になってたんだけどエマちゃんも鯨食べたの?」

エマ「やめて」(低音)

侑「ひっ……」

璃奈「欧州人に鯨の話題はやばい」

198: 2021/05/27(木) 00:34:43.31 ID:sx8cP4Vt
歩夢「八宝菜が美味しかったかなぁ」

侑「おばちゃんが走ってきた時は傑作だった!」

愛「みんなうずらがないの最初から気付いてた?」

かすみ「ぜんっぜん気付きませんでした!」

果林「私も、最後うずらだけ食べる羽目になっちゃったわ」

愛「やっぱそうだよねぇ……愛さんは気付いてはいたんだけど、補充されるとこまでは予想してなかったよ」

せつ菜「私は気付いてましたよ?」

愛「えっ!せっつーすごい!」

せつ菜「八宝菜にうずらが入っていないとは考えにくいので、補充されるまでずっと待っていました」

愛「せっつープロいねぇ、アタシの教室にも1人いたよ」

せつ菜「なんと!是非その方を紹介してください!一戦願いたいところです!!」

199: 2021/05/27(木) 00:42:23.34 ID:sx8cP4Vt
侑「そういえば情報処理学科の1年生だけチーズフォンデュが出たって噂、本当?」

果林「そんな事あるわけないじゃない、噂よ噂」

かすみ「どーなの?りな子」

璃奈「ん?そんなの出なかった」

侑「なんだー、やっぱりただの噂かー」

璃奈「璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

かすみ「え…?なんで今にっこりん?」

璃奈「秘密」

しずく「にがさない」

歩夢「しずくちゃんさっきから誰とお話してるの……?」

201: 2021/05/27(木) 00:54:35.07 ID:sx8cP4Vt
エマ「Anima malvagia, torna a Dio」

しずく「あれ……!?私……今まで何してました?」

かすみ「えっ!しず子覚えてないの?ずっとひとりごと言ってたけど」

しずく「へっ!?」

エマ「しずくちゃん、続き食べよ~」

しずく「は、はい…!」

せつ菜「エマさん!?なんですか今の!!私にもしてください!!」

エマ「んー、せつ菜ちゃんには必要ないかなぁ」

彼方「エ、エマちゃん……すごい」

203: 2021/05/27(木) 01:20:29.35 ID:sx8cP4Vt
侑「本当に色んなメニューが出たよね」

エマ「わたし、はじめてのものばかりで興奮しちゃった!」

せつ菜「私も!ソフト麺などは小学生の頃出なかったので新鮮でした!」

彼方「逆にわかめご飯とか好きだったんだけど、出なかったね」

エマ「おいしそう…!わたしも食べたかったなぁ……」

果林「あれこれ言っても今日でおしまいなのよね……」

侑「少し寂しいね……」

璃奈「明日から、お弁当」

愛「明日から給食が食べられないなんて究極にショックだな~」

侑「ブッwww」

204: 2021/05/27(木) 01:20:49.39 ID:sx8cP4Vt
せつ菜「ゆ、侑さん……!」

侑「あ、あぶないあぶない……」

歩夢「もう侑ちゃん、次かけたら卵焼き作ってあげないからね」

侑「そんなぁ……でも今のは吹き出してないからセーフだよね?」

歩夢「ふふっ、どうかな」

侑「えぇー作って作って」

歩夢「そうだ、侑ちゃん卵スープ好き?」

侑「うん、好きだけど?」

歩夢「じゃあ明日のお弁当は卵スープだね」

侑「えっやった!楽しみ!」

205: 2021/05/27(木) 01:29:47.74 ID:sx8cP4Vt
かすみ「ついさっきまで感傷に浸ってたじゃないですかぁ…」

愛「あははっ気持ちもわかるけど、切り替えてかないとね」

しずく「そうですね、最近だと給食カフェなんかもあるみたいですし、またいつでも食べられますよ」

エマ「えっ!行ってみたい!」

侑「今度みんなで行こっか!」

璃奈「賛成」

エマ「やった!楽しみがひとつ増えちゃった!」

侑「よし!そうと決まれば明日からの練習も頑張ろう!」

せつ菜「ですね!久々のお弁当も楽しみです!」

エマ「うん!お弁当も好き~」

エマ「それじゃあ、みんな手を合わせて」


「ごちそうさまでした!」

206: 2021/05/27(木) 01:29:54.50 ID:sx8cP4Vt
おしまい

207: 2021/05/27(木) 01:37:11.00 ID:dyUeoLHF

給食を題材にする発想がまずおもしろかったし各話ごとにキャラの個性がキッチリ出ててよかった

208: 2021/05/27(木) 02:01:17.97 ID:wFf4K/gL
おつおつ
給食を懐かしみながら読んだ
全話それぞれにちゃんと個性があって良いSSだった

211: 2021/05/27(木) 07:28:45.15 ID:mOhL0rCV
給食久々に食べたいなぁ…って毎話毎話思いながら読んでた
乙でした、面白かったです

212: 2021/05/27(木) 12:06:40.75 ID:HhZ6qEAx
乙でした、とても良かった
こういうSSは貴重だな…

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1621405564/

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