【SS】璃奈「どうぞ。これが枕型タイムマシン」恋「これが……」

SS


1: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:23:16.09 ID:XvFm4rFA
――夜、葉月家

恋「……」

『――今までお世話になりました。サヤさん、ありがとうございました』


恋「……手紙は、こんな感じでいいかしら。わたくしがこの世界からいなくなった後に、理事長が警察に捜索願いを出したとしても、これがあれば納得してくれるでしょうか?」

恋「あとは、この枕を使って眠るだけ……」



……
…………

2: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:26:58.71 ID:XvFm4rFA
――昼、江東区有明

璃奈『はい。天王寺です』

恋(入口のインターホンで聞いた声……)

恋「は、葉月です。メールでご連絡をさせて頂いた……」

璃奈『葉月恋さん、鍵は開けたから、どうぞ上がって』

恋「お、お邪魔します」




璃奈「はじめまして、天王寺璃奈です。私の発明品に目を付けてくれて、ありがとう」

恋「葉月恋です。その……ほ、本当に……」

璃奈「うん、タイムマシンを作ったから、その動作テストをしてくれる人を探していた。ネットで出していた募集、信じてくれてありがとう」

恋「い、いえ……本当だったら、良いなと……思っていたので」

璃奈「……とりあえず、こっちとしては使った結果を聞きたいから、今晩使ったら結果を教えて欲しい」

恋「タ、タイムマシンを使った後に、元の時代に戻れるんですか?」

璃奈「とりあえず、戻ってきてくれればいい。その時になったら、分かると思うから」

恋「は、はあ……」

璃奈「これがタイムマシン。枕の形をしているけど、使い方は難しくないし、マニュアルもある」

璃奈「マニュアル通りに使ってくれれば大丈夫だから」


……
…………

4: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:32:42.68 ID:XvFm4rFA
――朝、葉月家

「ワンッ、ワンワンッ!」

恋「――っ!」

「ワンワンッ!」

恋「朝……? わたくしは……チビ、チビ!?」

「クゥーン……」

恋「チビが、小さい……わ、私は……!?」

恋「……カガミにうつるわたくしのすがたが、子どものころの……それじゃあ!」

「ワン!」



サヤ「おや、どうしましたお嬢様? そんなに慌てなくても、朝食は出来たばかりですよ」

恋「サヤさ――」

「あらあら、どうしたの恋? 髪も直さないで」

「慌てなくても、まだ学校に行く時間じゃないだろう?」

恋「おかあさま……おとうさま……」

5: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:36:28.17 ID:XvFm4rFA
サヤ「お嬢様、お座りになってください。朝食をご用意します。お飲み物は何になさいますか?」

「きっと貴方が忘れていないか気になって仕方が無かったのよ?」

「恋の、ピアノコンクール入賞のお祝いだろう? 覚えているよ、夕食に店も予約しているし今日は仕事も早く上がるさ」

「ワンッ! ワンワンッ!」

「チビは残念だけどお留守番ね」

「キューン……」

恋(おかあさまが、おとうさまが……家にいる……チビも、サヤさんも……)

サヤ「お嬢様、お飲み物は紅茶か牛乳か……お嬢様?」

恋(もう、わたくしとチビだけになるはずだったのに……でも、でも……)

サヤ「お嬢様、お嬢様!」

恋「うっ、ううっ……うっ……」

「どうした、恋?」

「どうして泣いているの? 怖い夢で見たのかしら?」

「キュゥン……」

恋(もういちど、もどりたかった……みんながいる、この家に……)

恋(ほんとうに、もどってきた……)


……
…………

7: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:40:57.72 ID:XvFm4rFA
恋「いってきます」

「今日は早く小学校から帰ってくるのよ。夕方、みんなで夕食に出掛けますよ」

恋「はい。いってきます!」

サヤ「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

「ワン!」



恋(学校からかえっても、おかあさまがいる。おとうさまも帰ってくる……みんないる……)



千砂都「あ、葉月さーん! おはよう!」


恋(……?)


可可「ようやくきまシタ。アンチクショウ遅いデスヨ」

かのん「まあまあ、まだ時間あるんだしいいじゃん、ゆっくり行こうよ。おはよう、葉月さん」

恋「……おはようございます。遅くなってすみません」

かのん「いいよいいよ、それじゃ学校いこっか」

恋「はい」

10: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:45:07.61 ID:XvFm4rFA
千砂都「かのんちゃん、歌詞出来た?」

かのん「うーん……もうちょっとってところでピンと来なくて……」

可可「大丈夫、かのんなら素晴らしい曲を作ることができマス!」

かのん「そう言われると余計にプレッシャーが……」

千砂都「ダンスは今のうちに詰めておけばいいからね。今日も放課後はみっちり練習しないと」

恋「……」

可可「でも今日は学園祭の準備がアリマスヨ!」

かのん「あ、そっか。クラスの出し物の準備も手伝わなきゃならないけど、スクールアイドル部の準備も進めておかないと」

千砂都「そういえば葉月さん、屋上に並べる椅子って旧校舎のほうの物置にある椅子持っていっちゃっていいの?」

恋「へっ?」

千砂都「スクールアイドル部、学園祭で屋上にステージ準備するけど、立ち見だけだと辛い人もいるかなって」

可可「地蔵へのハイリョも必要デス」

11: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:49:01.94 ID:XvFm4rFA
恋「……ええ、大丈夫です。備品の持ち出し申請書に、椅子の数は間違えずに書いてください。あと、古い物もあるので壊れているものがあったら教えてください」

かのん「新校舎で使ってる綺麗な椅子が使えたら見栄えもいいんだけどね」

恋「すみません、新品の物は予備の数も多くないのと、校舎間での持ち出しが多すぎると戻すときが大変なので……」

千砂都「来年は旧校舎のほうも備品の買い替えするって聞いてるし、今年は我慢するしかないよ」

可可「やはり音楽科の生徒からスクールアイドル部に勧誘出来れば……!!」

かのん「私たちも音楽科や新校舎で使ってる備品使えるとか?」

可可「そうデス! 生徒会長がスクールアイドル部に入部してくれたら良いのデス!」

千砂都「もー、可可ちゃん、葉月さんは生徒会長で忙しいんだよ。音楽科も色々やることあるんだし」

恋「あ、えっと……わたくしは……」

かのん「さすがちーちゃん、音楽科同士良く分かってるねぇ」

恋「……」


……
…………

12: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:52:58.60 ID:XvFm4rFA
――結ヶ丘女子高等学校


『学校アイドル部』


恋「……」


千砂都「あれ、葉月さんどうしたの?」

恋「あら?」

かのん「あ、ゴメン、もしかして備品の持ち出し書の催促? まだステージの配置とか決めてる最中だから椅子の数が決まらないんだぁ」

恋「澁谷さん、嵐さんも……いえ、何となく……様子を見に来ただけです」


『学校アイドル部』


千砂都「そうなんだ。私とかのんちゃんはクラスのほうの学園祭の出し物の準備してたけど」

かのん「こっちは可可ちゃんとすみれちゃんがステージ作りの内容考えるのに屋上に行ってたから、私たちも様子を見に来たんだ」

恋「そう、ですか……」

かのん「可可ちゃんとすみれちゃん、ずっと二人きりにしているとあんまり進まなさそうだしね」

千砂都「あはははっ、でもクラスのほうも蔑ろにできないからね。あ、そうだ葉月さん」

恋「はい?」

14: (しうまい) 2021/09/14(火) 20:58:00.41 ID:XvFm4rFA
千砂都「学園祭の日、生徒会で忙しいと思うけど時間があったら私たちのライブ、見に来てよ」

かのん「そういえば葉月さんって、私たちのステージ見たことあったっけ?」

千砂都「ちゃんと見える席、用意しておくから」

恋「……わたくしは」

かのん「私たちも頑張って学園祭を盛り上げるステージにするから、応援に来てくれたら嬉しいな」

恋「……」


恋「……はい、時間が合えば、ぜひ応援に行かせてください」

千砂都「それじゃあ可可ちゃんとすみれちゃんのお尻を叩きに行こっか」

かのん「ちゃんと仕事してくれていればいいんだけどね……」


『スクールアイドル部』


恋「お母様……」



……
…………

15: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:03:16.54 ID:XvFm4rFA
――夕方、葉月家

千砂都「それじゃあ葉月さん、また明日ー」

恋「はい、また……明日」



恋「……」


『わたくしには、まだお母様が残してくれた結ヶ丘がありますから』

『母が遺した学校を続けるためには――』


恋「ここは――」

璃奈『家に帰らないの?』


恋「……この世界は、タイムマシンで戻った過去ではないのですね」

璃奈『そう。あの枕の本当の機能は、その時その人が望んでいたものを見せる機能。騙してごめんなさい』

恋「どうりで、家での私は子どもの頃の小さい姿なのに、外に出て嵐さんたちと会うと高校生の姿に戻ったり」

恋「そもそも私が嵐さんや澁谷さんたちと出会ったのは、結ヶ丘に入学してからです。サヤさんの姿も元の世界の姿のままでしたし」

璃奈『新しい記憶も強く残るから、色々混ざったんだと思う。改良の余地あり』

16: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:09:10.13 ID:XvFm4rFA
恋「どうして、私の前に姿を現したのですか?」

璃奈『あなたの元の世界に帰りたいっていう意思に、枕の管理プログラムが反応したから私が出てきている。私自身は、ガイドするただのAI』

璃奈『元の世界に、帰りたい?』

恋「はい。この世界は、確かに私が望んだ世界です。母が生きて……両親もサヤさんもチビも、みんなが家にいて」

恋「外に出ると嵐さんたちが待っていてくれて、皆で結ヶ丘に行くんです」

恋「何を悩むこともなく、私は私の思うままでいられるんだって、とても嬉しくて……」

恋「でも、それではいけないんです」

璃奈『どうして?』

恋「元の世界で、母は確かに亡くなりました。私は何度も母が生きていた頃の夢を見てきました」

恋「……その度に、目が覚めると胸が痛みました」

璃奈『この世界なら、ずっとお母さんがいる』

恋「はい。ですが私は、母の死を知っているんです。私がこの世界に甘んじてしまうと、初めてこの世界で目が覚めた時のように、母の死を思い出してずっと怯えていくことになる」

恋「胸の痛みは、母が私と一緒に生きてくれた証なんです。この痛みから逃げてしまうと、その証を否定してしまうことになります」

恋「だから、私は元の世界に帰らなければならないんです。母の生を否定しないためにも……これからの、私自身のためにも」

17: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:13:05.74 ID:XvFm4rFA
璃奈『……そう、わかった』

恋「それに、嵐さんたちとは元の世界でも会えますから」

璃奈『学校アイドル部……あなたたちは、スクールアイドル?』

恋「いえ、私は違います。それに……嵐さんたちはスクールアイドル部ですから」

璃奈『……私、あなたの気持ちが少しだけ分かるかも』

恋「え?」

璃奈『私の家は、小さい頃から両親が仕事で家にいなくて、私自身も色々あって笑えなくなって、友達もいなくて……』

璃奈『でも今はスクールアイドル同好会に入って、仲間が増えて、色んな人と繋がることができて……今しかできないことをみんなとやれて、とっても楽しい』

璃奈『私がタイムマシンを作ったのは、些細なことをやり直したかったから。でもそれは、今の私を否定することになる。それじゃあダメだって途中で気付いた』

璃奈『だから、あなたが私の作った枕を使ってくれて、今は凄く嬉しい』

璃奈『きっとあなたも、今しかできないことを仲間とやれる日が来ると思う。だから、そのときは――』

恋「はい。そんな日が来たら、私は――」


……
…………
………………
……………………

18: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:15:48.27 ID:XvFm4rFA
――朝、葉月家


恋「……」


恋「……私は」

「ワォン!!」


恋「チビ……おはよう」


……
…………

19: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:20:05.61 ID:XvFm4rFA
――夕方、江東区有明

璃奈「おかえりなさい。どうだった?」

恋「はい、とても助かりました。枕はお返しします」

璃奈「もう分かっていると思うけれど、騙すようなことをしてごめんなさい」

恋「夢の中の天王寺さんにお話をして頂きました。わたくしは……それでも、嬉しかったです」

璃奈「……どうして、タイムマシンが欲しかったのか、聞いても良い?」

璃奈「もしかしたら、AIの私が話を聞いたのかもしれないけれど」

恋「……小さい頃、母を亡くしました。もう、家に残っているのはわたくし一人なんです」

恋「せめて、母が遺してくれたものは守りたくて……だけど、今自分がしていることが本当に正しいことなのか、分からなくなって」

恋「タイムマシンで過去に戻って、またお母様と、お父様と一緒にいられることができたら……そう考えたんです」

璃奈「そうだったんだ」

恋「すみません、昨日今日会ったばかりの天王寺さんにこんな話をしてしまって」

璃奈「ううん、いい。私も、小さい頃から両親が家にいなくて、いまもここで一人で暮らしているから、気持ちはちょっと分かる……かも」

恋「ふふっ、そのお話も、夢の中でして頂きました」

璃奈「AIの私、口が軽すぎる。調整が必要。璃奈ちゃんボード[修正]」

20: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:26:02.84 ID:XvFm4rFA
恋「あ、それともう一つ、天王寺さんはスクールアイドルをやっていらっしゃるのですね」

璃奈「うん。今年から始めた……もしかして、あなたも?」

恋「いえ、私はまだ……」

璃奈「まだ……って、スクールアイドル、やってみたいの?」

恋「どうでしょう? まだ心に思っている事に引き摺られているだけなのか、それとも……いえ、まだ分かりません」

璃奈「それじゃあ、私が今度やるライブを見に来て欲しい」

恋「天王寺さんのライブ、ですか?」

璃奈「私はステージの上で、ファンのみんなと繋がることが出来るのが嬉しい。同じ気持ちを共有できるから」

璃奈「だから、葉月さんとも繋がってみたい。スクールアイドルをやっている私の気持ちを知って欲しいって思った」

恋「……分かりました。ぜひ、見に行かせてもらいます」

璃奈「楽しみにしている。璃奈ちゃんボード[やったるでー]」



恋「はい、わたくしも……もう少しだけ、頑張ってみようと思います」


……
…………

21: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:29:27.50 ID:XvFm4rFA
――翌日


璃奈「……」

かすみ「お? どしたのりな子? ぼけーっとしちゃって、口からヨダレ垂れてるぞ~?」

璃奈「……金髪巨乳もいいけど、黒髪ロング大和撫子もやっぱり最高だなって」

かすみ「は?」


おわり

22: (しうまい) 2021/09/14(火) 21:32:15.96 ID:XvFm4rFA
過去改変して没落黒髪ロング大和撫子を洗脳して
天王寺家の下僕メイドに仕立て上げる鬼畜りなりーの作戦って話にしようと思ってたのに
古戦場やりながら書いてたら何書いてるかよく分からんくなった

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1631618596/

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