【SS】絵里「海未、相撲しましょ」

海未「なんですかいきなり」

絵里「やってみたくなったのよ」

海未「国営放送付けっ放しにしてましたね」

絵里「実際、国技とはいえ親しみはないでしょう？」

海未「確かにそうですが……」

絵里「海未強そうだしいい対戦相手になると思って」

海未「剣道は足腰が重要になるので、そういう点では自信がありますよ」

絵里「ん？もしかして結構乗り気かしら？はっけよいのこった！」

海未「……もう」

ｶﾞｼｯ

海未「っぐ！」

絵里「うぅ……っ、本気でやる気じゃない！」

海未「喋ると歯に力が入りませんよっ……！！」

絵里「くうっ！」

絵里(あれ……海未、力抜いてるのかしら)

絵里(ちょっと体重を前足に移動してやれば……)ｸﾞｸﾞｸﾞ

海未「えっ！？ひゃぁっ！？｣ﾄﾞｼｰﾝ

絵里「あ……」

絵里「だ、大丈夫？」
　

海未「えっ……？｣ﾎﾟｶｰﾝ

絵里「ケガしてない？屋上でやることじゃなかったわね、ごめんなさい」

海未「私、負けたのですか？絵里に……」

絵里「海未がお遊びで付き合ってくれてることに気づかなくてつい力入れちゃったわ。突然体重かかってびっくりしたわよね」

海未「そんな、ウソです……｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

絵里「えっ」
　

海未「私が、絵里なんかに負けるはずが……」

絵里(『絵里なんかに』……)

絵里「た、たまたまよ！海未は相撲やったことないんだし、私は昨日みて、ついでに試合方法も調べてきたばっかり！当然のことよ！」

海未「そう、ですよね。ルールを知らなかったからですよね！」

絵里「その意気よ海未！次はあなたの得意な競技で私を負かせばいいじゃない！」

海未「ふ、ふふ。いいのですか絵里？一方的だと楽しくないですよ？」

絵里「ぜ、全力はやめてね……」
　

海未「剣道の経験は？」

絵里「中学の体育で何回かやったきりね。……この防具誰の？臭うわよ」

海未「部長のです。誰の防具も臭うので我慢してください」

絵里「付け方わからないわ……」

海未「じっとしていてください……こうして、こうですっ｣ｷﾞｭｯ

絵里「う゛っ……キツすぎじゃない？」

海未「外れると困りますから」
　

海未「審判がいないので、こて、胴、面のいずれかに当たればとにかく一本ということにしましょう」

絵里「ほぼ私に勝ち目ないじゃない」

海未「私は経験があるので自分自身で心技体すべて判定しますのでご心配なく」

絵里「それ、私が何度も打たれる可能性があるってことよね」

海未「試合中におしゃべりすると舌を噛みますよ。集中してください」

海未「……はじめっ！」
　

絵里(目の前にいるのは海未なのに、防具だからそうは見えないわ。……海未からみてもそうなのかもしれないけど)

絵里(というより海未が意外と小さく見えるのよね。思っている以上に小柄だったかしら)

海未「やぁぁーっ！」

絵里「えっ、ちょっと！？」

ﾌﾞﾝｯ

絵里「！」

絵里(振り上げが大きい……？海未と私ってそんなに身長差あったかしら、でも事実海未がこんなに振り上げてるし……もしかしたらこれってチャンスなのかも？)

ﾊﾟｼｰﾝ！

海未「……え？」

絵里「あっ、ど、どーう」
　

海未「え……は……？」

絵里「あっ……」

絵里(つい、反射で……華を持たせるつもりだったのに……)

海未「な、んで……どうして……｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

絵里「う、海未！今のも私に接待してくれたのよね！？」

海未「うわぁぁぁぁぁん…………」

絵里「そんなに泣かなくても……」

海未「どうして、絵里の方が！！私だって何年も……うぅぅ！」

絵里「っ｣ｿﾞｸ

絵里(海未のプライドが目の前で傷つけられる様子に、私のなかで、何かが弾ける音がした)

絵里「ねえ海未、もしかしてあなた……」

絵里「運動神経良くないでしょ？」

海未「っ……！？ぅ、え、ひぐっ……｣ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

絵里「ふふ、ふふふ……｣ﾆｺﾆｺ


こういうお話好き