【SS】せつ菜「侑さん…..私がスクールアイドルではなくなったらどう思いますか？」

ー　虹ヶ咲学園・音楽室　ー

侑「♪～」

せつ菜「またピアノが上手になりましたね」

侑「うん、毎日練習してたら楽しくなっちゃって」

侑「しかも、CHASE!だけじゃなく他の曲も練習したんだ」

侑「例えば」

侑「♪～」
　

せつ菜「この曲は！」

せつ菜「MELODY ですね」

侑「CHASE! も大好きだけどMELODY も大好き！」

侑「せつ菜ちゃんの気持ちが込められたこの曲を弾いてると、もっとピアノが弾きたくなるの」

せつ菜「侑さん….」

侑「これからもずっとピアノを弾きたいよ」

せつ菜「これからもずっと….」

せつ菜「……」
　

せつ菜「私もできれば…..ずっとスクールアイドルをしていたいです…..」

侑「ん？せつ菜ちゃん？」

せつ菜「……..」

せつ菜「侑さん…..私がスクールアイドルではなくなったらどう思いますか？」

侑「え？」
　

せつ菜「いきなり変なことを言ってすみません…」

せつ菜「ただ、卒業式での果林さんを思い出してしまって…..」

侑「果林さんか….」

侑(卒業式の日、果林さんは涙が止まらなくなっていた…..)

ーーーーー

ーーーー
　

果林「うっ…..ううっ…..」ｸﾞｽｯ

エマ「果林ちゃん泣かないで」

彼方「せっかくの可愛い顔が台無しだよ～」

果林「ごめん…..なさい…..」

果林「みんなとの…同好会での時間が終わってしまうのが….嫌なの…..」

果林「もっとスクールアイドルとして….ライブがしたかった…..」



せつ菜「っ…..」
　

エマ「果林ちゃん….」

彼方「……」ｷﾞｭｩ

果林「ごめんなさい…..本当は泣くのを我慢したかったけど….」

果林「みんなの顔を見たら…..同好会での日々を思い出しちゃって……」

彼方「もう….やめてよ…..果林ちゃん…..」

彼方「私だって…..我慢…..してたのに…..」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ
　

エマ「彼方ちゃん…..」ﾎﾟﾛｯ

彼方「ほらっ….エマちゃんも….泣いちゃったじゃん…..」

果林「うっ…..ごめんなさい…..」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

彼方「でも…前を向かなきゃ…..」

果林「っ…..そう….ね…..」

エマ「……」ｷﾞｭｩ

果林「っ…..！」

彼方「エマちゃん…..」
　

エマ「二人とも…今は我慢しないでいいよ…..」

彼方「うっ…..でも…..」

エマ「ありがとう…彼方ちゃん….果林ちゃん….それにみんなも…..」

エマ「私は日本に来てよかった…..みんなと過ごせたこの時間が大好き……」

エマ「二人もこともみんなも大好きだよ….」

エマ「だからありがとう…..彼方ちゃん….果林ちゃん….」

果林「ううっ…..エマっ……」

彼方「うううああああああん」ｷﾞｭｩ

果林「うううっ….ううううううああああ」ｷﾞｭｩ

エマ「うっ…..ううう……」ｷﾞｭｩ




せつ菜「……」ﾎﾟﾛｯ
　

侑「果林さんもだけど、彼方さんもエマさんもあんなに涙を流すとは思わなかったよね」

せつ菜「はい….それだけ同好会やスクールアイドルへの想いが強かったのが分かります….」

せつ菜「あの時の３人を見て…..スクールアイドルでいられる時間は有限なんだと思いました….」

せつ菜「私達も3年生になって卒業したら高校生ではなくなりますし、もちろんスクールアイドルも辞めなければいけません….」

せつ菜「私は同好会の皆さんと過ごす時間も、スクールアイドルとしてライブをする時間も、大好きなんです」

せつ菜「ですがその大好きな時間にもいつか終わりが訪れる….」

せつ菜「怖いんです….いつか大好きな時間が終わってしまうのが….自分がスクールアイドルではなくなってしまうのが……」

侑「せつ菜ちゃん……」
　

せつ菜「っ…….」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

せつ菜「私は….ずっと….スクールアイドルでいたいんです…..」

せつ菜「”優木せつ菜”はスクールアイドルをするための存在なのですから….」

せつ菜「毎日歌もダンスも練習して、ライブで大好きな気持ちをファンのみんなに届ける」

せつ菜「大変なこともありますが、私はせつ菜としてスクールアイドルをするこの日々が大好きなんです」
　

せつ菜「けど…卒業したら….もうせつ菜と名乗ることもできないでしょう..」

せつ菜「歌とダンスの練習をすることも……」

せつ菜「私の大好きな気持ちを届けることも…..」

せつ菜「侑さんや、ファンのみんなに向けてライブをすることもできなくなる…..」

せつ菜「優木せつ菜が終わる時….」

せつ菜「その時があと一年後の未来に必ず来る….それが….怖くて….」
　

侑「せつ菜ちゃん…..」ｷﾞｭｩ

せつ菜「っ…..侑さんっ….」ｷﾞｭｩ

侑「…..」

せつ菜「うっ….ううっっ」ｸﾞｽｯ

侑「せつ菜ちゃん、ありがとう。せつ菜ちゃんの気持ちを教えてくれて」

せつ菜「ううっ….」
　

せつ菜「うっ….ううっ…..」

せつ菜「侑さん….しばらくこのままでもいいですか…..」

侑「もちろん。せつ菜ちゃんが良いと思うまでいいよ」

せつ菜「ありがとう…ございます….」

ーーーー

ーーー
　

歩夢「あれ…また侑ちゃんとせつ菜ちゃんが音楽室にいる….しかも抱き合ってるし…..」

歩夢「はぁ…今度は何を話してるんだろう….」


せつ菜「うっ……ううっ…」

侑「…..」ｷﾞｭｩ


歩夢「えっ？」

歩夢「せつ菜ちゃん.....泣いてるの….？」
　

せつ菜「侑さん…..ごめんなさい….」

せつ菜「スクールアイドルはみんなを笑顔にしないといけないのに…..」

侑「ううん、いいよ。そんなに気負わないで」

せつ菜「でもっ…..」

侑「せつ菜ちゃん、もしかして気を遣ってる？」

せつ菜「えっ…？」

侑「もしそうなら、気を遣わなくていいよ」

せつ菜「…….」

侑「せつ菜ちゃんが思ってること、全部言っていいよ」

せつ菜「私が思っていること…..」
　

歩夢(せつ菜ちゃんが思ってること….)

せつ菜「私は….」

せつ菜「ずっと….スクールアイドルでいたいです！」

せつ菜「同好会のみんなと一緒にいたいです！」

せつ菜「みんなで練習して…ライブをして….ファンのみんなに大好きな思いを届けたいです！」

せつ菜「卒業してしまったエマさん、彼方さん、果林さんと、もっとライブがしたかった….」

せつ菜「卒業したら…この学校でも過ごせなくなる…..」

せつ菜「こうして侑さんと音楽室で過ごす時間もなくなってしまう….」

せつ菜「音楽室で侑さんと話して、侑さんのピアノを聞きたいです…..」

せつ菜「こんなに大好きで幸せな時間があと一年だけなんて….そんなの嫌ですよ…..」
　

侑「せつ菜ちゃん…….」

歩夢(せつ菜ちゃん……)

歩夢(スクールアイドルは残り一年……確かに…..私達は卒業したらもうスクールアイドルとしては活動できない……)

歩夢(卒業式から元気がなくなってたように見えたけど......その理由が今分かったよ…..)

歩夢(でも……それでも…..)
　

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

侑「えっ歩夢！？」

せつ菜「あ、歩夢さん？」

歩夢「ごめん….二人とも…..さっきの話聞いちゃった…..」

せつ菜「そう…..ですか…..」

歩夢「……」
　

歩夢「せつ菜ちゃんの気持ち分かるよ…..」

侑「歩夢….」

歩夢「確かに私達はあと一年しかスクールアイドルとして活動できない…..」

歩夢「いや….卒業したら…スクールアイドルどころかみんなと一緒に過ごす時間も減る….」

歩夢「そう考えると…..とても儚いよね…..」

せつ菜「はい…..」
　

歩夢「でもね、私達にはまだ一年あるんだよ」

歩夢「それに……どんなに考えたって….卒業する時は必ず来る…..」

歩夢「仕方がないよ…..」

侑「歩夢っ….」

せつ菜「っ…..ですが！」

歩夢「だって……卒業しちゃった３人は一年どころか…..もう二度と活動できないんだよ…..」
　

歩夢「卒業する時を考えたら…..私だって辛い…..悲しい」

歩夢「こんなに毎日が楽しいんだもん…..」

歩夢「みんなと練習して….ライブで歌って…..」

歩夢「スクールアイドルをしていなかったら、こんなに楽しい時間は過ごせなかったと思う」

歩夢「この時間が大切だし大好きだから….私だって終わっちゃうのは嫌….」

歩夢「けど…..残りの時間終わりばかり気にしてたら、今の大切な大好きな時間がもったいないよ」

せつ菜「っ….！」
　

侑「…….」

侑「そうだね」

せつ菜「侑さん…..」

侑「せつ菜ちゃん、さっきの質問の答えだけど」

侑「たとえスクールアイドルではなくなっても、私はせつ菜ちゃんが大好きだよ」

せつ菜「えっ….」

せつ菜「スクールアイドルではない私に意味なんて….大好きになるところなんて」
　

侑「せつ菜ちゃん」

侑「前にも言ったけど、こんなに好きにさせたのはせつ菜ちゃんだよ」

侑「それはスクールアイドルの時だけじゃない、同好会で一緒に過ごしてきて、せつ菜ちゃんのことがもっと大好きになった」

侑「スクールアイドルだけじゃない。せつ菜ちゃんのことが、人として、女の子として、大好きだよ」

せつ菜「侑さん….」
　

歩夢「もぉ侑ちゃん….それ告白じゃん….」

歩夢「私だって…..せつ菜ちゃんのことが大好きなのに」

せつ菜「えっ」

歩夢「私がスクールアイドルを始めたのは、せつ菜ちゃんのおかげなんだよ」

せつ菜「私の….おかげ….？」

歩夢「うん。あの日侑ちゃんと一緒にせつ菜ちゃんのライブを見てたんだ」

歩夢「あの時のせつ菜ちゃんのライブを見てスクールアイドルをやってみたいって思えたの」

歩夢「だから今の私がいるのはせつ菜ちゃんのおかげなんだよ」

せつ菜「歩夢さん….」
　

歩夢「せつ菜ちゃんと一緒にライブで歌うのが楽しいの…」

歩夢「あと一年しかないけど、あと一年もせつ菜ちゃんと一緒にスクールアイドルとして頑張れる….」

歩夢「それに….前にも言ったけど」

歩夢「始まったのなら、貫くのみ！」

せつ菜「！！」

歩夢「私はせつ菜ちゃんと一緒に大切な今を楽しみたい」

歩夢「だから….一緒に最後までやりきろうよせつ菜ちゃん」

せつ菜「っ….」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ
　

侑「せつ菜ちゃん…泣かないで」

歩夢「あああっ！ごめん….私の意見を言い過ぎちゃって….」

せつ菜「いえ….違うんです…..」

せつ菜「二人があまりにも優しくて….それが嬉しくて….」

侑「そりゃあ、私も歩夢もせつ菜ちゃんのことが大好きだからだよ」

歩夢「うん。せつ菜ちゃんのおかげで、今の私達がいるだもん」
　

侑「だから、ありがとうせつ菜ちゃん」

侑「私達に大好きな気持ちを届けてくれて」

せつ菜「っ…..うっ…..」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

歩夢「そして、これからもよろしくねせつ菜ちゃん」

歩夢「私達はこれからも、ずっとせつ菜ちゃんが大好きだよ」

せつ菜「うぅ….うああああああああん」

侑「…..」ｷﾞｭｩ

歩夢「……」ｷﾞｭｩ

せつ菜「うっ……うぅ…..」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

せつ菜「私も….二人のことが….大好きです！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

せつ菜「同好会も….ファンのみんなも….この学校も…スクールアイドルも….全部大好きです！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ
　

おしまい
　

素晴らしい！