桜坂しずく(28)「わたしの理想のヒロイン」【長編SS】

しずく SS


672: 2020/10/27(火) 18:01:45.15 ID:jJyClgEH
ー翌日ー

あなた「うぅん……もう朝か」

あなた「実家だからかな。眠りが深くてあんまり眠った実感が──」

歩夢「…………」ジー

あなた「うわぁぁぁ!!」

歩夢「おはよう」

あなた「び、びっくりした!!いたの!!」

歩夢「あなたの寝顔がみたくて来ちゃった。すっごく可愛かったよ」

あなた「あ、ありがとう?」

673: 2020/10/27(火) 18:02:16.98 ID:jJyClgEH
歩夢「ねぇ、今日は……」

あなた「あ、歩夢ちゃん!」

歩夢「わっ、急に声張り上げてどうしたの?」

あなた「あの、今日はいい天気だし久々に2人で出かけない?」

あなた(クソゲーは嫌だクソゲーは嫌だクソゲーは嫌だクソゲーは嫌だクソゲーは嫌だ)

歩夢「…………」

あなた(ダメか……?)

歩夢「凄い……」

あなた「へ?」

674: 2020/10/27(火) 18:02:50.35 ID:jJyClgEH
歩夢「私もおんなじ事考えてたの!今日は一緒にお出かけしたいなって!」

あなた「そ、そうなんだ!凄い偶然!」

歩夢「ふふ、以心伝心だね」

あなた(よかった。本当によかった)


ーーーー

675: 2020/10/27(火) 18:05:13.63 ID:jJyClgEH
あなた「今日本当にすっごくいい天気だね歩夢ちゃん。お日さまカンカン照りだよ」

歩夢「眩し……。こうやって外に出るの、久しぶりかも」

あなた「あぁ……ちょっと分かるかも。私もバイト辞めてからは、買い出しとか必要な時以外はあんまり外出なくなったし」

歩夢「あなたも……同じなんだ」

あなた「あ、見て!クレープ屋さんだよ。行ってみない?」

歩夢「え?うん」

676: 2020/10/27(火) 18:09:35.44 ID:jJyClgEH
あなた「あぁ……ん」カプッ

あなた「んん~!クリームが美味し~!」

歩夢「ほんと!すっごく美味しい!」

あなた「お、歩夢ちゃんのも美味しそうだね。それって何味?」

歩夢「私は限定のコーンカスタード。食べる?」

あなた「うん、食べ……」

あなた「あっ……」

あなた(これって、間接キスになるのかな……)

677: 2020/10/27(火) 18:11:50.50 ID:jJyClgEH
歩夢「どうしたの?食べないの?」

あなた「あ、いや……」

あなた(気にする方が変か……でも)

あなた「やっぱりいいよ」

歩夢「そう?」

あなた「それよりゲーセン行かない?丁度最近出たぬいぐるみがあって……」


ーーーー

683: 2020/10/28(水) 01:16:27.40 ID:elfcB+pz
あなた「うー……結局ぬいぐるみ取れなかった……3000円も使ったのに」

歩夢「惜しかったね。もうちょっとでとれそうだったのに」

あなた「そのもうちょっとで取れそうな状況から2000円も使ったのに!もう……やっぱり最初からネットで買えばよかったかな」

歩夢「あ、服見て行かない?」

684: 2020/10/28(水) 01:21:28.16 ID:elfcB+pz
歩夢「これとかどう?似合うんじゃない?」

あなた「えー?私には似合わないよ。歩夢ちゃんみたいに可愛いくないし」

あなた「それにもうすぐ三十路だし……」

歩夢「年齢なんて関係無いよ!あなたはいくつになっても可愛いんだから」

歩夢「それに昔私がおんなじ事言った時言ったよね。歩夢ちゃんなら絶対似合うって!あなたもだよ!」

あなた「そ、そんな事言ったかな……」

歩夢「もう、忘れちゃったの?ほら、早く試着室行こう!」グイッ

あなた「あ、ちょっと!」

685: 2020/10/28(水) 01:23:31.80 ID:elfcB+pz
歩夢「うん!やっぱり可愛い!」

あなた「あはは……そうかな?キツくない?」

歩夢「ううん、全然!バッチリ似合ってる!」

歩夢「ねぇ、これとこれと……あとこれも着てみて!絶対似合うから!」

あなた「うぅ……これじゃまるで着せ替えにん──」

ーーーー

『ほらっ、これもこれも!や~可愛い~!』

(私着せ替え人形にされてる……?)

ーーーー

あなた「…………」

歩夢「どうかしたの?」

あなた「え?」

686: 2020/10/28(水) 01:24:17.88 ID:elfcB+pz
歩夢「ぼーっとしてたから」

あなた「あ、いや、なんでもないよ」
 

あなた「それより、歩夢ちゃんにも私が選ぶ可愛い服着てもらうからね!」

歩夢「あなたが私の服を選んでくれるなんて嬉しいな」

あなた「うっ、効いてない……」

689: 2020/10/28(水) 19:33:47.74 ID:elfcB+pz
あなた「次はどこ行こっか」


歩夢「ちょっと小腹空いちゃったかな」

あなた「それならコッペパンとかどう?かすみちゃんがすっごく美味しいパン屋さんやってるんだけど……」

歩夢「……!」

突如歩夢ちゃんの足が止まる。

表情は顔を下に向けているので読めないけれど、体が震えているのが分かる。  
それを見てハッと愛ちゃんと璃奈ちゃんを拒絶していたことを思い出し、罪悪感に苛まれた。


あなた「ごめん、また今度にしよっか」

歩夢「…………うん。ごめんね」

あなた「こっちこそごめん。まだ怖いよね」

あなた「その気持ち分かるから」
 
歩夢「……ありがとう」

690: 2020/10/28(水) 19:37:26.32 ID:elfcB+pz
ー自宅のベランダー

あなた「あの時は地雷踏んじゃったかな」

あなた(すぐに割り切れるものじゃないし難しいなぁ)

ガラガラ

あなた「あ、歩夢ちゃん」

歩夢「さっきベランダに出る音聞こえたから」


歩夢「私最近すっごく楽しいの。まるで高校生の時くらいに戻った気分」

歩夢「高校生の時は『今みたいな時間がずっと続けばいいのに』って思った」

歩夢「今でも思ってる」 

あなた「歩夢ちゃん……」

691: 2020/10/28(水) 19:41:07.87 ID:elfcB+pz
歩夢「あなたは?」

あなた「私は……」

あなた「…………」

私はその問いに答えられなかった。

確かに歩夢ちゃんと過ごすこの時間は楽しい。

けど大人になって、しずくちゃんとひと悶着あって。時間というのはどんなに楽しい時でも、永遠に続く事は無いということを知ってしまったから。 


それに人も、環境も、変わっていくのが自然な事。

変わらないのであれば、それは変わろうとしていないだけ。

そうなると寧ろ変わらない方が不自然なのかもしれない。

そう、今のこの時間も……

あなた(歩夢ちゃんも私も、将来の事を考えるとずっとこのままって訳にもいかないよね)


でも……

…………


ーーーー

692: 2020/10/28(水) 19:43:18.06 ID:elfcB+pz
 
そうして歩夢ちゃんとダラダラ過ごしているうちに一週間が過ぎた。

今日もさっきまでクソゲーを一緒に遊んでいたところだ。
慣れてきたのか、なんだかちょっと楽しくなってきている自分がいる。


最近、毎日が本当に早い。あっという間だ。

でもみんなに会いに奔走していた時もあっという間だったけれど、あの時と比べて中身がまるで無い。ただいたずらに時間が過ぎていくばかり。

693: 2020/10/28(水) 19:44:43.90 ID:elfcB+pz
こうして遊んで過ごしているのは、トキメキこそ感じないものの楽だし、ずっとこうしていたいという心地よさを感じる。
このままじゃダメだって事は頭では分かってる。

でも、何か強いきっかけでもない限り本当に抜け出せないんだ。つい数週間前までニートだった私が言うんだから間違いない。


いや、今もニートか。と心の中で1人苦笑する。

あなた(せっかく抜け出しかけてたのになぁ)

歩夢「ちょっとお手洗い行ってくるね」

あなた「あ、うん。いってらっしゃい」

694: 2020/10/28(水) 19:46:43.38 ID:elfcB+pz
あなた「なんか面白いテレビやってないかな」

ピッ

ピッ

あなた「あ、しずくちゃんだ」

あなた(記者会見……ってなんの発表だろう)



しずく「アーティストデビューの件ですが、私が希望するソングライターの方との交渉が決裂してしまったこともあり」


あなた(決裂……?)

695: 2020/10/28(水) 19:50:20.46 ID:elfcB+pz
 
 
 
   
 
 

 
 
  
しずく「本日をもって作曲の依頼は断念し、この件は白紙に戻すことになりました」


 







 
あなた「えっ──」
 
 
 
 
 

741: 2020/11/03(火) 00:11:41.11 ID:KveT7JmY
あなた「え……え?ちょっと待ってよ」


あなた「だって連絡なんて無かったし、前に送ったメッセージも…………やっぱり、まだ既読付いてないのに……!」


あなた「え……嘘だよね?」


あなた「そんな……だって、私まだ何にも!」ピッ


あなた「ねぇ、電話出てよしずくちゃん!!返事してよ!!」プルプルプル

742: 2020/11/03(火) 00:13:09.38 ID:KveT7JmY
あなた「ってこの記者会見生放送か……。そりゃ出るわけないよね」


あなた「今から行けばちょうど着く頃にはしずくちゃん事務所に帰ってきてるかな」

ガチャッ

あなた「とりあえず行かなきゃ!」バッ


歩夢「どこ行くの?」


あなた「え?」

755: 2020/11/05(木) 00:03:01.20 ID:4OrfvbUz
あなた「あ、歩夢ちゃん……」

声の主の方を振り返ると歩夢ちゃんがこちらの行く先を塞ぐようにドアの前に立っている。

全然気付かなかったけれど、いつの間にかお手洗いから帰っていたみたいだ。


あなた「どこって……普通に外に出ていくだけだけど……」


歩夢「嘘、またどこか遠くに行こうとしてる」

あなた「遠くって……別にそんな遠くには……」

歩夢「場所じゃなくて、心の距離が」

756: 2020/11/05(木) 00:08:22.22 ID:4OrfvbUz
歩夢「なんとなく分かるよ……。またどこかへ行っちゃうんでしょ」

歩夢「だって、あの時と同じ目してる。1つの事に没頭して周りが見えなくなるときの目」

歩夢「この団地を飛び出して私の連絡を無視するようになった直前の目!」


あなた「……!」




歩夢「ねぇ」ギュッ

あなた「わっ……」

ドサッ



 
 

757: 2020/11/05(木) 00:11:10.08 ID:4OrfvbUz
 
 
 
歩夢「お願い……。もうどこにも行かないで……ずっとここにいよう?」ポロポロ


あなた「歩夢ちゃん…………」

 
 
 

761: 2020/11/05(木) 18:53:54.88 ID:4OrfvbUz
「あ、待ってください桜坂さん!もうアーティストデビューの予定は無いということでしょうか!!」

あなた「っ!!」


あなた「離して!歩夢ちゃん!!やっぱり私行かなきゃ!」

私の力が弱いのか、歩夢ちゃんの力が強いのか、簡単には引き剥がさせてくれない。

あなた「歩夢ちゃんが辛かった事にも気付かずに無視してたのは本当にごめん!」

あなた「でももう無視したりなんてしないから、離して!」

歩夢「悪いと思っているなら一緒にいてよ!!!」

762: 2020/11/05(木) 19:03:40.45 ID:4OrfvbUz
歩夢「2人でずっと遊んで仲良く過ごそうよ……」

あなた「ごめん、私にはやっぱりやりたい事があるから」

あなた「そのためには、いつまでもここで立ち止まってるわけにはいかないんだ!」

歩夢「お願い、私を置いていかないで……」

歩夢「私はもう、歩き出せないから……」



あなた「…………歩夢ちゃんも本当は分かってるんじゃないの?このままじゃ駄目だって…………」

歩夢「…………」

763: 2020/11/05(木) 19:15:35.56 ID:4OrfvbUz
あなた「私も歩夢ちゃんと同じで長らくグータラ過ごして来たけど、今の私にはやりたいことができて、今はその夢に向かって進んでるところ」

あなた「私でも立ち直れたんだよ。歩夢ちゃんなら──

歩夢「やりたい事や夢なんて何もない!」

歩夢「なのにあなただけ立ち直って……ずるいよ!」

歩夢「私はもう立ち上がれない、働けないの!」

あなた「本当に働けないの?嫌なことがあったからもう働きたくないっていうだけなら、私はそんな歩夢ちゃんは見たくない」

歩夢「うぅぅぅぅ……」

私を掴む力が緩んでいくのが分かり、少し胸が痛む。

あなた「ごめん歩夢ちゃん。友達だけど、友達だからハッキリ言うよ」

764: 2020/11/05(木) 19:20:23.13 ID:4OrfvbUz
あなた「歩夢ちゃんのお母さん言ってたよ。歩夢もそろそろ働いてほしいって」

歩夢「え……」

歩夢「でも、お母さんも仕事辞めたいなら辞めていいって言ってくれたし、今だって何も言ってないよ……」

あなた「面と向かっては言いにくいんだと思う」


歩夢「嫌……無理だもん……」

歩夢「私には無理だったんだよ……」

765: 2020/11/05(木) 19:24:53.19 ID:4OrfvbUz
あなた「…………それに、今の歩夢ちゃんは、私が好きだった歩夢ちゃんじゃない」

歩夢「えっ……」

あなた「今の歩夢ちゃんは全然魅力的じゃないよ!」

あなた「だって、今の歩夢ちゃん。なんにも頑張ってないもん!!」

歩夢「…………っ!」

766: 2020/11/05(木) 20:23:46.68 ID:4OrfvbUz
あなた「確かに会社で辛い思いをしたのは分かるよ」

あなた「その時私が話を聞いてあげられなかったのも悪かった」

あなた「でも歩夢ちゃんは私がいなかっただけで何もかもが出来なくなるような人じゃないはず!」

歩夢「違うよ!私、やっぱりあなたがいないと……」

あなた「同好会の皆だっている!ただの仲良しグループじゃない、本気をぶつけ合った仲間が!」

歩夢「それは……」

767: 2020/11/05(木) 20:37:27.11 ID:4OrfvbUz
あなた「辛いのはみんな同じだよ。でもそれでも皆大切なものを見つけて、頑張って生きてる」



歩夢「…………」


歩夢「あなたは、私に頑張ってほしい?」

あなた「頑張るかどうかを決めるのは自分自身だよ」

歩夢「難しいなぁ……」

768: 2020/11/05(木) 20:41:03.85 ID:4OrfvbUz
歩夢「ホントは私もわかってたんだ。ずっとこうしているわけにもいかないって」

歩夢「怖くてずっと目を逸らしてただけ」


歩夢「そうだよね。皆やあなただって、辛いこといっぱいあってるはずなのに。私だけ落ち込んじゃって」

歩夢「コツコツ努力する事が私の強みなのに、そこで負けちゃったらダメだよね!」


あなた「歩夢ちゃん!」

770: 2020/11/06(金) 00:32:19.78 ID:Tg5gZe1t
あなた「今度は私無視したりしないし、同好会の皆もいる」

あなた「歩夢ちゃんは1人じゃないから」

歩夢「…………うん」




歩夢「私、働くよ」

歩夢「だからずっと一緒じゃなくていい。私の事、見ていて」

あなた「もちろん」

771: 2020/11/06(金) 00:34:22.32 ID:Tg5gZe1t
  
 
 
歩夢「最後に付いてきてほしい場所があるの。いいかな?」


ーーーー

あなた「付いてきてほしい場所って、花屋さん?」

歩夢「うん。ここ、覚えてる?」

あなた「確か、ファンクラブ用に花の種を買いに来た場所だっけ」

歩夢「覚えててくれたんだ……」

772: 2020/11/06(金) 00:38:53.80 ID:Tg5gZe1t
「ありがとうございました!」

歩夢「これも覚えてる?私にぴったりって言ってくれたお花」

あなた「ガーベラだね」


歩夢「私、この花と一緒に成長する」

歩夢「もう自分勝手にあなたを縛り付けたりしない。私達は離れていてもずっと一緒だもんね」

あなた「歩夢ちゃん……」

773: 2020/11/06(金) 00:39:49.25 ID:Tg5gZe1t
歩夢「これからもずっと……友達でいてくれる……?」

あなた「え?」

歩夢「えっ……だめなの!?」


あなた「ぷっ……」


あなた「あっはっはっは!!!!」

歩夢「ええ!?なんで笑うの!?」

774: 2020/11/06(金) 00:41:38.03 ID:Tg5gZe1t
あなた「だって、歩夢ちゃん変な事聞くんだもん!」

歩夢「だって!さっき今の私は嫌いって!魅力的じゃないって!」

あなた「あっ……まぁ確かに言ったけどあれは……」


歩夢「私、こんなだからまた挫折しちゃうかもしれないし、夢なんて見つからないかもしれないし……」
 
歩夢「そうしたら今度こそ愛想つかされちゃうんじゃないかって不安で……」

あなた「…………」

775: 2020/11/06(金) 00:45:08.01 ID:Tg5gZe1t
あなた「そうならないために私達がいる。だからこれからは何かあったら。いや、何もなくてもいつでも連絡してよ」

あなた「それに安心して、どんな事があっても私達はずっと友達だよ。」


歩夢「………っ!!!」パァァ


歩夢「うん!うん!!連絡いっぱいするね!」



あなた「それに幼稚園の時のこと覚えてる?」

歩夢「え?」

ーーーー

あなた(5)『わたしたち、ずっとおともだちでいようね!』

歩夢(5)『うん!』

ーーーー

歩夢「覚えてて……」


あなた「今更歩夢ちゃんのこと嫌いになんてなれないよ」

歩夢「わっ……私も!」

776: 2020/11/06(金) 00:48:15.26 ID:Tg5gZe1t
歩夢「これからも親友として私のこと見ててね」


ーーーー


歩夢「行っちゃった……。さて、私も頑張らないと」


「あなた、よく見たら上原歩夢ちゃん……?」


歩夢「え…………?」


ーーーー

777: 2020/11/06(金) 00:51:12.29 ID:Tg5gZe1t
歩夢ちゃんと分かれた私は、急いで駅に向かう。 

歩夢ちゃんともちゃんと話せて、彼女のお母さんの頼みも解決に向かって。もう他に心残りは何も無い。

私がいなくても、もう大丈夫だろう。仮に躓くことがあっても、彼女には私や、同好会の皆がついている。

躓いても躓いても、何度でも立ち上がればいいんだ。

そうするだめの力が、彼女には備わっているんだから。

778: 2020/11/06(金) 00:54:10.77 ID:Tg5gZe1t
 
 

あなた(しずくちゃん……待ってて)

もう答えは出たから


あなた「あとは、私のやりたい事をやるだけ!」



ーーーー

788: 2020/11/09(月) 00:04:52.99 ID:2AKVRwTW
あなた「え、いや。私しず……桜坂さんの知人ですよ?」

受付「はぁ……」

あなた(ってよく見たら、この人この前しずくちゃんが事情を説明してた人と違う人だ)


受付「あの……アポイントメントは取っていますでしょうか?」

あなた「取ってないけど……桜坂さんに連絡できますか?私の名前出せば絶対出てくれると思うので!」

受付「…………」

こちらに疑いの目を向けながらも渋々といった感じで受話器を取ってくれた。

しかし……

789: 2020/11/09(月) 00:06:25.88 ID:2AKVRwTW
受付「はい、はい。いえ、失礼いたしました」

ガチャッ

受付「申し訳ございません。やはりその様な要件は無いのでお引取りください、と」

あなた「……っ!」


あなた「やっぱり直接話さないと!!」バッ

受付「ちょっと!どこ行くんですか!?」

あなた「直接しずくちゃんの所に行く!!」

受付「許可も無く通すわけには行きません!」


受付「止まらないと……け、警察呼びますよ!!」

あなた「う"っ」

警察と呼ばれて勢いに任せていた足がピタリと止まる。


振り返れば騒ぎを聞きつけたのか人が集まり始めていた。

冷静になって考えれば、今の私の行動は不法侵入そのものだ。
いくらドラマチックな展開とはいえ常識的に許される行為ではない。

あなた(ホントに警察呼ばれる前に引き下がるか……)

790: 2020/11/09(月) 00:08:33.12 ID:2AKVRwTW
あなた「でもそう簡単には諦めないよ。事務所にいるのは分かったから、物陰でしずくちゃんが出てくるまで待ち伏せだ!」


あなた「…………」

あなた「…………」

ポンポン

あなた「はい?」

警官「あのぉ、ちょっとお話よろしいですかぁ?」

あなた「……!!」

あなた「す、す、すみません!!!」ビュー

791: 2020/11/09(月) 00:13:23.63 ID:2AKVRwTW
あなた「はぁ……はぁ……捕まらなくてよかった……。もうこれじゃあ完全にストーカーだよ」

あなた「後は……劇団の方を見張る……のもさっきと同じ事になりかねないし」

あなた「家は……そういえば鎌倉の実家じゃない、今のしずくちゃんの家知らないや」

そもそも仮に場所を知ったとしても、家に押しかけるのは流石にマズい。それこそ下手をすれば警察を呼ばれかねない。

あなた「あとは……出待ちしてるファンの人と連絡取って一緒に張り込む?」

あなた「…………」

あなた「いや、会えるかもしれないけど1対1で話できないだろうし……」


あなた「はぁ……」


これからどうすればいいのかな……

792: 2020/11/09(月) 00:14:49.33 ID:2AKVRwTW
悩んだ私はお台場のバーにふらっと流れ着いた。

一旦心を落ち着かせたかったというのもあるけれど、しずくちゃんが来るかもしれないという希望も僅かながらにあったからだ。

これは事務所前の待ち伏せとは違って、単に私がバーを利用している所にたまたま偶然しずくちゃんと鉢合わせするだけだからストーカーじゃない……
よね?


マスター「今日はお一人なんですね」

あなた「え?」

793: 2020/11/09(月) 00:16:12.25 ID:2AKVRwTW
飲み始めて1時間くらい経った頃、マスターが突然話しかけてきた。

今までマスターから話しかけてくる事なんて無かったから、状況を整理するのに少し時間が掛かる。

あなた「え、ええ……。たまには一人で飲みたい日もありますよ」

マスター「そうですか……」

本当は一人で飲まざるを得ないだけだけど。


嫌な事を忘れるように無理矢理頭に押し込んだアルコールには、しずくちゃんと2人で飲んだ時のような美味しさは無かった。

799: 2020/11/11(水) 00:39:34.78 ID:eLpj+EFZ
翌日、私はお台場駅の柱にもたれかかっていた。

腕時計に目を落とす。もうすぐ9時だ。

さて、そろそろ行こうかな。


あなた「まずは映画館……」
 
 

802: 2020/11/11(水) 22:24:38.80 ID:eLpj+EFZ
 

あの日彼女と来た映画館。


そこで私は同じ映画を見て


あの日と同じく、目が潤んだ。


あなた(ハンカチハンカチ……)

あの日と違い、隣にハンカチを貸してくれる人はいない。
 
 

803: 2020/11/11(水) 22:30:27.81 ID:eLpj+EFZ
 

彼方「またうちの店に来てくれたんだ~!」

あなた「うん、この前来た時すっごく美味しかったからね。ちょっと奮発して」

あなた「それに……」

彼方「それに?」

あなた「……」


あなた「いや、ディナーは予約でいっぱいだけど今日のランチは予約無くても食べられてラッキーだなって!」

あなた「この料理、すっごく美味しいよ!作った人に伝えておいて!」

彼方「お、おう……」


彼方「泣くほど美味しかったの?」

あなた「えっ」

804: 2020/11/11(水) 22:35:22.91 ID:eLpj+EFZ
彼方さんに言われて瞼を少し擦ってみると、薄っすらと濡れているようだった。

あなた「…………そうみたい」

彼方「彼方ちゃんも早くあなたを私の料理で泣かせられるようになりたいな~」

あなた「う、うん!彼方さんならきっとできるよ!頑張って!」

彼方「ありがとう~頑張るね!」


彼方「さて、そろそろ戻らなきゃ。しずくちゃんは今日仕事かな?しずくちゃんにもよろしく言っておいてね」

あなた「うん…………言っておくね…………」

805: 2020/11/11(水) 22:42:52.98 ID:eLpj+EFZ
  

 
あなた(あの服、まだ残ってるかな?)

スッスッスッ

あなた「あった」
 
見つけた服を手に取り、店の鏡の前で合わせてみる。

あなた「あはは、やっぱり私には可愛すぎるよこれ」


あなた(…………)

あなた(あとはこれとこれと……)


あなた「すみません、これらの服ください」

 
 
 

810: 2020/11/12(木) 18:32:40.81 ID:CNFflZLT
あなた「かすみちゃん、お疲れ様」

かすみ「せんぱ~い!いらっしゃいませ~!」

かすみ「あ、先輩服買ったんですか?ちょっと見せてもらってもいいですか?」

あなた「いいよ」

袋を開けて中の服を覗き込んだかすみちゃんの目がキラキラと輝いた。

かすみ「めっちゃ可愛い服ですね!流石先輩、センスいいです!」

あなた「前にしずくちゃんが選んでくれた服なんだ」

かすみ「え"っ"、しず子が?ぐぬぬ……流石大女優……」

一転して眉をひそめて悔しそうに唸るかすみちゃん。

この反応の差はなんなんだろう。

811: 2020/11/12(木) 18:34:44.49 ID:CNFflZLT
あなた「それよりかすみちゃん、しずくちゃんあれから来てない?」

かすみ「え、しず子?来てませんけど……」

あなた「じゃあ連絡って取れるかな?」

かすみ「先輩、スマホ無くしたんですか?連絡先は知ってますよね?」

あなた「いや、スマホは無くしてないし連絡先も知ってるんだけど、私のスマホからはかけづらくて……」

かすみ「喧嘩でもしたんですか先輩?……ちょっと待ってて下さい」

かすみちゃんは他にお客さんがいない事を確認してから、裏に回った。

812: 2020/11/12(木) 18:37:27.16 ID:CNFflZLT
 
少し時間が経ってから出てきたかすみちゃんの表情から何となく結果を察した。

かすみ「あれ……おかしいな。私の携帯からも連絡つかないです。確かに電話かけるのなんて久しぶりだけど、かすみん何かしちゃったかな」

あなた「……多分だけど、しずくちゃんの事だから、私が他の同好会の子に頼んで代わりに連絡をかける事くらい想定済みだったんじゃないかな」

あなた(おそらく他の皆からも同じだろうし、仮に繋がってもすぐに切られるのが落ちかな)

かすみ「えぇ……先輩ホントになにやったんですか……」

あなた「ちょっと複雑な事情が……」

813: 2020/11/12(木) 18:45:22.21 ID:CNFflZLT
あなた「っと、パンも買ってくね」

ヒョイヒョイヒョイ

あなた「お会計お願い」

かすみ「はいはーい。って先輩、このパン気に入ったんですか?」

あなた「え?」

かすみ「いや、この前しず子と一緒に来た時買ったパンと同じの買ってますから」 

あなた「そうだっけ……」

かすみ「そうですよ!このパン達がお気に入りなら、次先輩が来るまでにもっと美味しく作れるようにしておきますね!」

あなた「うん、ありがとう」

あなた(全然意識してなかったんだけどなぁ)

814: 2020/11/12(木) 18:53:57.12 ID:CNFflZLT
かすみんベーカリーで買ったパンを片手にお台場海浜公園のベンチに座る。

あなた(そういえばここしずくちゃんの目撃情報よくあるとかなんとか言ってたなぁ)

しかし周りをよく見ると、平日昼にも関わらず意外にも人がそこそこいる。

なんならしずくちゃんのファンらしき集団さえいる。

あなた(こんな状況じゃ話なんてできないか……)


あなた「………」

あなた(お日様も照ってて、海風も涼しいし、なんだかすっごく気持ちい……)


ーーー
ーー

815: 2020/11/12(木) 20:51:40.69 ID:CNFflZLT
あなた「……ん、んん…………」

あなた「あ、夕焼け……綺麗だな……」

あなた「…………」

あなた「ん!?夕焼け!?」


バッと飛び起きて、何か荷物を取られていないか確認する。

完全無防備で寝ていたけれど、幸いなことに何も盗られてはいないようだ。


あなた(のんきに寝ちゃってたんだ私……)


あなた「……次行こっか」

816: 2020/11/12(木) 20:55:49.02 ID:CNFflZLT
 

「え、みゆさん?あぁつい先日辞めちゃったんだよ」

「まぁ最近落ち目だったしちょうどよかったのかもね。いくら綺麗でもやっぱり30手前はね。引け目感じてたりしてたのかな?」

あなた「そうですか。彼女目当てだったので帰りますね」

あなた(果林さん、ちゃんと辞めたんだね)

「それよりさ、彼女なんかよりもっと若くて綺麗な子いっぱい──」
 

817: 2020/11/12(木) 21:00:55.63 ID:CNFflZLT
 
 
 
あなた(同じ場所を回ってみたけど、結局気持ちの整理付かなかったな……)

そして今日も一人旅の終着点となったいつものバーで、私は彼女を待ち続ける。
 
 
 

818: 2020/11/12(木) 21:08:36.32 ID:CNFflZLT
ーーーー

あなた「ん、メッセージ、歩夢ちゃんだ」

あなた「…………仲直りできたんだ。よかった」

歩夢ちゃんからはメッセージと共に璃奈ちゃんと愛ちゃんとの3ショット写真が送られてきた。


歩夢ちゃんはあの後璃奈ちゃんと愛ちゃんに会いにいって、あの時冷たく突き放してしまった事を誤りに行ったらしい。
いずれは他の皆にも会いに行きたいと言っていた。

それに、あの時私と別れた後花屋の店長が歩夢ちゃんのファンだったらしく、看板娘としてアルバイトに採用されたようだった。


歩夢ちゃんはもうすっかり前に歩き出している。

それに比べて私は……

819: 2020/11/12(木) 21:11:31.21 ID:CNFflZLT
しずくちゃんがこんなに会いにくい人だとは思わなかった。 

そりゃ当然か。
芸能人なんて簡単に会えるような人じゃないし。ましてや個人的に話すなんて普通は無理だ。
今までが普通じゃなかっただけなんだ。

改めてしずくちゃんは全く違う世界の人なんだなと痛感させられる。


あなた(あんまりしたくないけどやっぱりファンと一緒に追っかけしていくしかないのかな?)

あなた(いや、でもそれは……)

ストーカーや厄介行為をしたくないってのもあるけれど、私はしずくちゃんの一ファンにはなりたくなかったから。

ーーーー

しずく『先輩は私のこと女優じゃなく後輩の女の子として接してくれないと嫌です!』

ーーーー

私はやっぱり、後輩としてしずくちゃんと接したかった。


いや、もう後輩としては見れないかもしれないけれど。

820: 2020/11/12(木) 21:13:19.22 ID:CNFflZLT
今日も私はバーに通い詰める。ここ毎日ずっとだ。

勿論1番の目的はしずくちゃんが来店するラッキーを待っているんだけど

最近はただひたすら、しずくちゃんと一緒の時のお酒の味を追い求めるようにお酒を飲んでいる。
 

今日もまた、喉にアルコールを流し込む。

 

821: 2020/11/12(木) 21:16:43.95 ID:CNFflZLT
 

あなた(なんで……しずくちゃん……)

会えない日々が続いて思いが薄れるどころが、日に日に強くなっていき、自分でもどうしようもなくなっている。


伝えたいのに思いが伝えられない。

今ほど璃奈ちゃんが感じていた辛さが分かる時は無いだろう。

いや、璃奈ちゃんだけじゃない。きっとしずくちゃんだっていっぱい思いを我慢していたんだ……。

それを私が……。


あなた(悪いのは全部私なのに、謝ることすらできないなんて……)

 

822: 2020/11/12(木) 21:22:04.54 ID:CNFflZLT
マスター「大丈夫ですか?なんだか辛そうですよ」

あなた「ほっといてくださいよ……。どうせ私はしずくちゃんに捨てられた哀れな底辺ソングライターですよ」ヒクッ

マスター「……」


あなた「ここにいたらもしかしたらまたしずくちゃんに会えるかもって思ってたんですけど、甘かったみたいです」

お酒の高揚も手伝って、はぁ~とわざとらしく深くため息をついてみせる。

823: 2020/11/12(木) 21:23:35.38 ID:CNFflZLT
あなた「やっぱり私としずくちゃんの関係はあの時終わってたのかなって。当然ですよね。しずくちゃんを跳ね除けたのは他でもない私なんですから」


あなた「マスター、今までありがとうございました。今日で飲みに来るの最後にします」

あなた「それで、もうしずくちゃんの事は諦めます。私も歩夢ちゃんや果林さんみたいに、また新しくやりたい事をみつけて前に踏み出さないと」

あなた「いつまでも叶わない夢にしがみつくわけにもいきませんもんね。あと2年もしたら30になっちゃうんだし」アハハ



マスター「本当に、それでいいんですか?」



あなた「え?」
 
 
 

824: 2020/11/12(木) 21:25:52.94 ID:CNFflZLT
 
マスター「もうすぐあの日ですよね」

あなた「あの日?」

マスターの視線に釣られて、壁に貼ってあるカレンダーを見つめ、その日の意味を把握する。

あなた「…………そうですね」


マスター「その日また来てみてください。諦めるのはそれからでも遅くないと思いますよ」

あなた「え、それってどういう……」

 

825: 2020/11/12(木) 21:30:27.29 ID:CNFflZLT
マスター「そうですね……その日来ていただければ特製のカクテルをご馳走しますよ」

私の疑問を無視してマスターは話を進める。

あなた「特製カクテル?」

マスター「ええ。気になりません?特別に無料で提供いたしますよ」


…………別に無料に釣られたわけではないけれど、もう少しだけ待ってみても遅くはないかな。
なんとなくそんな気がした。



その日は特別な日。

その日に会えなければ、きっとしずくちゃんへの未練も断ち切れると思うから……。


 

826: 2020/11/12(木) 21:31:00.58 ID:CNFflZLT
次回の更新で最後になります。

今までコメントしてくださった方、保守してくださった方、読んでくださった方、本当にありがとうございました。

全て書き上げた後加筆修正して渋に上げる予定なので、終わった後もコメント色々いただけたら参考や励みになります。

849: 2020/11/18(水) 17:17:46.72 ID:C7VN+rsV
ーーーー

初めは、サポートしてくれる事に対しての感謝や尊敬としての感情にすぎなかった。

 
「やっぱり、スクールアイドルへの情熱は無くなってなかったんだね!」 

かすみさんと一緒に再び私をスクールアイドルに誘ってくれた少女。

彼女は私のために曲を作ってくれて、真摯に話を聞いてくれた。

そんな彼女と交流を深めていく内に、自分の中である感情が芽生え始めている事に気付いた。

初めてだった。物語の中の人物ではなく実在する人、それも同性をこんなに好きになってしまうなんて。

850: 2020/11/18(水) 17:20:33.25 ID:C7VN+rsV
でも私は女性で、彼女もまた女性。
この恋は実らない。それは分かりきっていた。 

女の子を好きになる女の子なんてごく少数。世間一般から見ればまだまだ理解が遠く及ばないマイノリティな存在。

それなのに実は先輩もそうでしたなんて、ある日突然白馬に乗った王子様が攫いにくるような、そんなおとぎ話みたいな事あるわけが無い。
ハッキリと確認したことはないけれど、今の関係性を崩すのが嫌だったから、このままでも十分だとそう自分に言い聞かせた。


そう思っているうちにあっという間に時が過ぎ、先輩は虹ヶ咲学園を卒業した。


告白は、しなかった。

851: 2020/11/18(水) 17:26:08.24 ID:C7VN+rsV
時が経ちもうすぐ20歳になる頃、ダメ元でメールを送ってみた。
在校中に約束していたから。私が20になったら一緒にお酒を飲みに行こう、と。

卒業以来連絡がつかなかった先輩だけど、意外にも返信が来た。


たまらなく嬉しかった。何気ない会話の中で出た程度の口約束だったけれど、先輩も覚えていてくれたんだ、って。


久しぶりに会った先輩は、少し大人びた雰囲気になっていて、緊張してしまった。

一方先輩も私に対して緊張していたようで、友達なのにおかしいですね、って2人で笑いあった。

初めて飲んだカクテルの味は……あまり覚えていないけれど、とてもいい気分だったことは覚えている。
私がお酒をよく飲むようになったのも、この時飲んだお酒の感覚を追い求め続けているから。

未だに同じ感覚は味わえずにいるけれど。


 

852: 2020/11/18(水) 17:29:33.10 ID:C7VN+rsV
それから何回かお酒を一緒に飲みには行った。

でも、私の稽古がどんどん忙しくなっていった事で、その関係はやがて自然消滅していった。

メッセージもまた返信が返ってこなくなった。

もっともそれ自体あまりショックは無く、嫌われんだなとは思っていない。
先輩自身がアーティストとして打ち込むために、なるべく皆に甘えないように連絡をたっている事は知っていたし、私も再びその中に戻っただけだから。

会えなくなるのは残念だったけど、この気持ちをカミングアウトして気持ち悪がられ絶縁、となるよりマシだと思った。

853: 2020/11/18(水) 17:30:28.12 ID:C7VN+rsV
以降私は、ひたすらお芝居に打ち込んだ。

幸運にも朝ドラのヒロインに抜擢され、気付けば本当に大女優と呼ばれるまでになっていた。


これからはひたすら女優業を頑張っていくんだと、先輩の事を徐々に胸の奥にしまい込んでいたその時

マネージャーがアーティストデビューの話を持ち込んできた。


これはチャンスだと思った。また先輩と一緒に活動できるかもしれないチャンス。


再びダメ元で送ったメールだったけれど、なんとその日のうちにメールが返ってきた。

また先輩と一緒にいられる!そう思うだけで胸の高鳴りが止まらなかった。

854: 2020/11/18(水) 17:34:27.88 ID:C7VN+rsV
7年ぶりにあった先輩は……髪もボサボサで普通だったら千年の恋も冷めそうな格好で現れた。

でも私の場合は冷めるどころが、以前までとは比べ物にならないほど心の炎が燃え上がるのを感じた。

先輩を好きになったのは若気の至りかと思ったし、そうだと自分に言い聞かせてきた。
だけれど好きになってから10年以上経ってもその思いはずっと変わらなかった。

それどころが再び一緒に過ごしていくうちに、先輩への思いはより一層強くなっていった。
もう自分の気持ちの誤魔化しはできない。


それでも私は先輩への思いを告げるわけにはいかなかった。

なぜなら、先輩が私に求めている理想の後輩(ヒロイン)像は、あくまで後輩としての桜坂しずくなのだから。
 

855: 2020/11/18(水) 17:35:20.29 ID:C7VN+rsV
 

先輩との飲みは楽しかった


だけどもそれは、後輩として


デートだって凄く楽しかった。


あくまで、後輩として


 

856: 2020/11/18(水) 17:35:53.74 ID:C7VN+rsV
そしてついに曲を貰えて有頂天になっている中、先輩は私にこう言った


あなた「ずっと一緒にいたいな」


そんなの、私だって同じ気持ちだ。


ただ一緒に過ごすだけ。
それだけで満足だったはずなのに。

そんなことを言われてしまったら

 

857: 2020/11/18(水) 17:36:59.76 ID:C7VN+rsV
ひょっとするとこれは両思いなのではないか?ベタなプロポーズなのか?

先輩がどんな意味でそれを言ったのか分からない。でももはや私の理性は限界だった。

先輩ももうすぐ30。いつどこかの馬の骨と結婚してしまうかも分からない。ならチャンスは今しかない。

そう思った
そう思ってしまった

 

858: 2020/11/18(水) 17:37:59.19 ID:C7VN+rsV
私の中の様々な思いが心の底から溢れ出し


思いを秘め続ける理想の後輩は


「好きです」


その瞬間舞台を降りた
 

859: 2020/11/18(水) 17:40:06.94 ID:C7VN+rsV
この恋が実ることはない。そんな事分かりきっていたはずなのに。

先輩に突き放された瞬間私はすべてを察した。

あぁ。これは、演じることを放棄した役者への「罰」だと。

こんなことなら報われなくても、
先輩がいつか素敵な男性と結婚するとしても、
先輩が思っているように「仕事仲間」としてずっと一緒にいる事を選んでいればよかった。


でもそんな後悔はもう遅い。私は、先輩の物語に関わらないように姿をくらませた。

先輩からの連絡は全てブロックした。先輩と間接的な交流もある同好会の皆もだ。

幸い今の家は教えていなかったので、直接会いに来るようなことも無い。


先輩と別れた次の日こそ少し吐いてしまったものの、仕事に打ち込むうちに意外とすぐに一ヶ月が過ぎた。


4月3日。

今日は私の28歳の誕生日で、27歳の私が終わる日。

860: 2020/11/18(水) 17:47:31.41 ID:C7VN+rsV
私はいつものようにバーに向かっている途中。毎年どんなに忙しくても、この日だけは必ずここを訪れるようにしている。
つまりは未だに忘れられないんだ。先輩と初めてお酒を飲んだあの日のことを。

でもそれも今日で終わりにしよう。先輩の事は忘れて生きていこう。 

私も三十路が近づいてきている。また親から結婚催促されるのかな。


そろそろ私も新しい恋を探す時なのかもしれない。

今度は報われない女性への恋などではなく、受け入れられやすい異性との恋を……
 

861: 2020/11/18(水) 17:49:09.25 ID:C7VN+rsV
しかし、10年以上もずっと思い続けていた恋が、あんなにあっさり壊れてしまうなんて。
今の私はさながら悲劇のヒロインのようだ。

でもよかったじゃない、しずく。
あなたこういう悲劇、大好きでしょう?

しずく「でもそれは……」

そう、それは物語としての話。

しずく「現実ではやっぱり、ハッピーエンドがいいよ……」


そう思いながら扉のドアノブを引いた先には

しずく「こんばんは、マスター。今日もいつもと同じものを──


「しずくちゃん!!」


しずく「……!?」

しずく「せん……ぱい……」


去年まで空席だった場所に、私を嫌っているはずの人がいた。

 

865: 2020/11/18(水) 20:53:30.92 ID:C7VN+rsV
あなた「しずくちゃん!!」

やっと……

やっと会えた!!


しずくちゃんは私を目に留めるなり後退りして逃げ出そうとしていたけれど、動揺して判断が遅れたのかあっさり捕まえられた。


しずく「離してください!」

あなた「離さない!」

あなた「ずっと会いたかったんだから!会って、話がしたかった!」

しずく「私は…………会いたくありませんでした」

しずく「返事を聞くのが、先輩の口からはっきり拒絶の言葉を聞くのが怖かったから……」

866: 2020/11/18(水) 20:57:11.47 ID:C7VN+rsV
観念したのか、しずくちゃんの抵抗する力が弱まっていく。

しずく「でもそうですね……。ここで今日会えたのも何かのめぐり合わせかもしれませんね」


しずく「分かりました、もう逃げません、私は罰を受け入れます。今日は過去と決別するためにここにきたんですから」

あなた「私も、この未練を断ち切るために来たんだ」


しずく「外、行きましょうか」

あなた「…………うん、分かった」


あなた「すみませんマスター、お代ここに置いておきます」

バタン


マスター「いってらっしゃい」
 

867: 2020/11/18(水) 20:58:38.97 ID:C7VN+rsV
あなた「ここは……」

連れられてやってきた場所は、しずくちゃんが私に思いを伝えた場所……。



しずく「先輩、あの時は勝手に逃げてしまいすみませんでした。先輩も思いを吐き出せずにイライラが溜まってますよね」

しずく「さぁ、先輩。あの日の答えを聞かせてください。覚悟はできてますから」

そういいつつも、しずくちゃんの声は明らかに震えている。
 

868: 2020/11/18(水) 21:01:23.28 ID:C7VN+rsV
あなた「…………」

あなた「しずくちゃん……あのね」

しずく「……うぅ」

あなた「しずくちゃん!?」

しずく「うぅ……あぁぁぁ!」

下を向いてすすり泣き始めたかと思えば、今度はうずくまって両手で耳を塞ぎだした。

しずく「すみません!やっぱり……やっぱり聞きたくないです……!!」

あなた「聞いて!しずくちゃん!」

しずく「いや!聞きたくない聞きたくない!」

869: 2020/11/18(水) 21:03:36.64 ID:C7VN+rsV
しずく「覚悟ができてるなんて嘘です!やっぱり駄目!先輩の口からそんな事言われたら、きっと私耐えられない!」

あなた「しずくちゃん…………」


しずく「聞きたくな──んんっ!?」

顎を引き上げ、その身で分からせるために一向に話を聞こうとしないしずくちゃんの口を塞ぐ。
 

870: 2020/11/18(水) 21:04:59.41 ID:C7VN+rsV
しずく「……ぷはっ」

あなた「これが私の答えだよ。これでもまだしずくちゃんは私から逃げるつもり?」

しずく「どうして……」

あなた「私、しずくちゃんを突き放しちゃった後、本当のしずくちゃんが分からくなったとか何とか言っていじけてた」

あなた「私の事を好きだなんて思いもしなかったから、突然あんな直接的に気持ちを伝えられてびっくりしたんだ」

あなた「それで突き放しちゃった。ごめん……」

しずく「…………」

871: 2020/11/18(水) 21:08:27.29 ID:C7VN+rsV
あなた「私ね、しずくちゃんに思いを伝えられてから、女性同士って事について色々悩んだし考えたんだよ。
でも答えは出ないまま時間が過ぎていった」

あなた「そんな中あの記者会見を見た時、しずくちゃんが私から離れていくのが信じられなくて!どうしても受け入れられなくて!
 
あなた「私の側からいなくなっちゃうかもって思った時、胸がキュゥゥって締め付けられて耐えられないくらい辛かった!」

あなた「久しぶりに会った皆が遠い所に行っちゃったような感覚も寂しくて辛かったけど、しずくちゃんの時はそれらとは全然違う感覚だったんだ!」

あなた「きっと私も、いつの間にかしずくちゃんのことが好きになってたんだと思う。
きっとこれは、しずくちゃんの言う好きと一緒」


あなた「普通じゃないとか、女性同士だからとか、そんな事悩む必要無かった!
私はしずくちゃんが好きで、しずくちゃんと一緒にいたい!ただそれだけだったんだ!!」

しずく「先輩……」
 

872: 2020/11/18(水) 21:11:28.66 ID:C7VN+rsV
あなた「私はどんなしずくちゃんでも受け入れる。だから、これからは本当のしずくちゃんを……」

あなた「いや、本当の、なんて言い方はおかしいかな。もう、私の前では演じなくていいんだよ」

しずく「えっ、それって……!」

あなた「私、しずくちゃんのこともっと知りたいんだ」

しずく「バレて……いたんですね。理想の後輩を演じていること」

873: 2020/11/18(水) 21:12:37.81 ID:C7VN+rsV
しずく「先輩。ほんとに、どんな私でも受け入れてくれるんですか……?」

あなた「うん」


しずく「またいきなりキスするかもしれませんよ」

あなた「私だってさっきしたよ」

しずく「それ以上の事したいって言うかも」

あなた「…………一応勉強はしたから、優しくしてくれるんだったら……」

しずく「本当の私は、先輩が思っているようないい子じゃないかもしれませんよ」

あなた「だから言ってるでしょ、どんなしずくちゃんでも受け入れるって」
 

874: 2020/11/18(水) 21:14:24.21 ID:C7VN+rsV
しずく「本当に……」

しずく「本当に私はもう、ガマンしなくていいんですか?」

しずく「嫌われないように先輩の理想を演じるんじゃなくて、私のしたいようにするわたしの理想のヒロインになってもいいんですか……?」

あなた「うん。だって、二人きりの時は女優として接してほしくないんでしょ?」

しずく「…………じゃあ、改めて言わせてください」

875: 2020/11/18(水) 21:19:23.28 ID:C7VN+rsV
 
しずく「先輩、好きです。私と……」

しずく「桜坂しずくと付き合ってください!!」

あなた「喜んで、お付き合いさせてください」

しずく「…………」

しずく「うっ……」

しずく「わぁぁぁぁぁん」

その瞬間目の前の女性は、まるで子どものようにその場に泣き崩れた。

それは学生時代でも時折見せた弱々しいしずくちゃんそのもので。
これは演技でもなんでもなく、正真正銘彼女自身の本当の気持ちなんだと思った。

877: 2020/11/18(水) 21:24:27.68 ID:C7VN+rsV
ーーーー

しずく「改めて、よろしくお願いします。その……恋人同士として……」

その後なかなか泣き止まないしずくちゃんを連れてそのまま観覧車に乗車した。

感情を吐き出したことで今はかなりスッキリしたようだ。

しずく「仕事柄あまり表立ってデートはできませんけど、先輩と2人で色んな所に行ってみたいです」

あなた「そ、そうだね///」

あなた(今度からは、正真正銘恋人同士としてのデートってことに……)チラッ

しずく「……?」

あなた(よく考えなくても私にはもったいなさ過ぎる!!)

 
 

878: 2020/11/18(水) 21:30:54.45 ID:C7VN+rsV
あなた「しずくちゃんはいつから好きでいてくれたの?」

しずく「いつから……かは自分でも分かりませんけど、2人で映画の舞台になった花畑に行った時には既に大好きでした」

あなた「え!?そんな前から……!?」

あなた「そ、それはなんというか……」

あなた「気付かなくてごめん」

しずく「先輩が謝る必要ありませんよ、バレないように隠してたんですから。寧ろそれだけ私の演技力が凄かったってことですよね!」

あなた(今思い返すと確かに私の事が好きなのかな?って思い当たる節があるのは黙っておこう……)
 

879: 2020/11/18(水) 21:39:26.75 ID:C7VN+rsV
しずく「先輩は、私のどこを好きになってくれたんですか?」

あなた「えぇ!?どこを!?」

あなた「そうだな……気付いたら、だったからそれは自分もハッキリ分かんないけど、強いて言うなら……」

しずく「髪きれいだしいい匂いするし可愛いし美人だし見つめられるとドキッとするし一緒にいて楽しいしオシャレだしスラッとしてて可愛いし顔がいいし雰囲気が艶めかしいし声も綺麗だし清楚だし演技も上手いししっかりしているし、かと思えば意外とあわてんぼうだったり抜けてる所もあって──」

しずく「やっぱりもういいです!!これ以上は私が耐えられません///」

あなた「でも1番は私のことを好きでいてくれてるところかなぁ」ニヤニヤ

しずく「もう……///」ポカッ
 

882: 2020/11/18(水) 21:42:32.07 ID:C7VN+rsV
しずく「ほ、ほら!夜景が綺麗ですよ~」

あなた(なんてわざとらしい気のそらし方……)


あなた「しずくちゃん、ちょっと思ったんだけど理想の後輩とやらはやめたんだから、別にもう丁寧語じゃなくてもいいんだよ。疲れない?」

しずく「いえ、これは別に演じてるとかじゃなく素ですけど……」 

あなた「あ、それは後輩キャラ演じてたからとかじゃないんだ……」

しずく「はい、親しき中にも礼儀ありです」

884: 2020/11/18(水) 21:46:44.29 ID:C7VN+rsV
あなた「なんか、思ってたよりあんまり変わらないね」

しずく「そうでしょうか?」

そう言ってしずくちゃんは立ち上がり、円形の椅子を向かい合って座っていた状態から、肩が触れ合う程至近距離に移動した。

あなた「わっ」

しずく「これからは、遠慮なくアプローチさせてもらいますから」

そのまま体を押し付けてグイッと迫ってくる。

885: 2020/11/18(水) 21:55:30.61 ID:C7VN+rsV
しずく「先輩、もうすぐ頂上ですよ」

あなた「うん、そうだね///」

しずく「ここの観覧車、頂上でキスをすると、別れないっていうジンクスがあるみたいですよ」

あなた「ふ、ふーん……そうなんだ……」

しずくちゃんが何を言いたいのかは分かるけれど、恥ずかしさからとぼけてみせる。

これじゃさっきのしずくちゃんを笑えない。


しずく「このまま抵抗しないと、もう返品できなくなっちゃいますけどいいですか?」

あなた「大金積まれたって手放したりしないよ」


そう、これからはどんな事があっても、この手を2度と放してなるものか。

頂上に到達すると共にどちらからともなく交わした口づけと共に、心の中でそう強く誓った。

 
ーーーー

886: 2020/11/18(水) 22:00:37.09 ID:C7VN+rsV
「ご利用ありがとうございましたー。またお越しください~」


しずく「先輩。手、繋いでもいいですか?」

あなた「こんな街中で大丈夫かな?バレて問題になったりしない?」

しずく「同性ですから傍から見たら、仲のいい友人同士にしか見えませんよ。きっと」

あなた「そうかな……バレたらファンに〇されそうだけど」

しずくちゃんと自分の身を案じる事にはなったけれど、

しずく「~♪」

嬉しそうなしずくちゃんの横顔にいっぱいトキメいてしまった。

あなた(こんな顔見せられたら、もっと好きになっちゃうよ……)

887: 2020/11/18(水) 22:04:24.40 ID:C7VN+rsV
しずく「そういえば先輩、なんで今日バーにいたんですか?」

あなた「バーで待ってたらしずくちゃんが来るんじゃないかと思って。本当は少し前にもう通うのやめようとしたんだけど、マスターに今日だけでも来てみればって言われたんだ」

あなた「その日はしずくちゃんの誕生日だし、まぁ行ってみようかなって。そしたらホントに来たからびっくりしたよ!」

あなた「今日しずくちゃんが来なかったら本当に諦めてたかな」

しずく「私も、今日で先輩の事を綺麗さっぱり忘れるつもりでした」

あなた「そうだったんだ……すごい偶然だね」

しずく「…………もしかしたら偶然なんかじゃなく、マスターは毎年今日の日は私が来るってことを知ってて、それを先輩にそれとなく教えたのかもしれませんね」

あなた「え!なんか特製カクテルで不自然に繋ぎ止めようとするから何かあるのかなって思ってたけど、そういうことだったんだ……」


 

888: 2020/11/18(水) 22:17:52.40 ID:C7VN+rsV
あなた「ん……?」

しずく「どうしました?先輩」

あなた「…………あ、特製カクテル!」

しずく「特製カクテル?」

あなた「そうだよ特製カクテル!マスターに今日来たら作ってもらえるって言ってたのに。そういえばまだ作ってもらってない!」

あなた「戻ろう!しずくちゃん!」バッ
 
しずく「わっ!」

しずくちゃんを連れて走り出す。

握った手は、そのまま離さない

889: 2020/11/18(水) 22:19:08.08 ID:C7VN+rsV
あなた「マスター!」バンッ

マスター「おかえりなさい」

あなた「え……ただいま……?」


あなた「あの、特製──」

マスター「今準備いたしますね」

あなた「あ、はい」
 

890: 2020/11/18(水) 22:20:36.26 ID:C7VN+rsV
あなた「あの、マスター」

マスター「なんでしょう」

あなた「しずくちゃんが今日ここに来ること知ってましたよね?それであの時諦めようとした私の事引き止めてくれて」

マスター「……なんの事でしょう。私はただカクテルを勧めただけですよ」

あなた「とにかく、ありがとうございます」

マスター「…………覚えはありませんが。一応、受け取っておきますね」

891: 2020/11/18(水) 22:23:46.57 ID:C7VN+rsV
しずく「なんだかこのバーも懐かしいです」

あなた「昔の事みたいに思えるけど、ちょっと前の事なんだよね」

あなた「しずくちゃんが呼び出してくれて、ここで曲を作ってほしいって言ってくれて。皆ともう一度会ってみることになって」

しずく「結局皆には会えたんですか?」

あなた「うん、会ったよ。色々あったけど、皆とまた会えて楽しかったな」

しずく「いいなぁ……私も会いたいです。特にエマさんなんかは今もスイスにいるんですよね?旅行に行く休みなんて絶対取れないだろうし……」

あなた「きっといつか会えるよ。皆もしずくちゃんに会いたがってるだろうし」

しずく「そうですね。先輩が言うなら、いつか本当に会えそうな気がします!」
 

892: 2020/11/18(水) 22:25:06.58 ID:C7VN+rsV
マスター「お待たせいたしました。特製カクテルになります」

あなた「え、これって……」

しずく「あの日、私達が初めて飲んだお酒……」

あなた「…………今なら、あの時みたいに美味しく飲める気がする」

しずく「私もです」
 

893: 2020/11/18(水) 22:29:25.87 ID:C7VN+rsV
あなた「しずくちゃん、28歳のお誕生日おめでとう!」

しずく「ありがとうございます!改めて、これからもサポートよろしくお願いしますね!先輩!」

あなた「それじゃあ飲もうか」
 


「「乾杯」」



2人の世界に祝福の音が響き渡る。

あなた「んっ…………美味しい」


その夜しずくちゃんと一緒に飲んだカクテルは

今までで1番気持ちよく酔うことができ、

今までで1番 甘い味がした。
 




桜坂しずく(27) 終


ーーーー

894: 2020/11/18(水) 22:32:46.94 ID:SLHQUJ+k
お疲れ様でした
スタンディングオベーション不可避

895: 2020/11/18(水) 22:34:42.37 ID:EwcUdMy9
お疲れさまでした
1月から完結までずっと追ってきて楽しかったです

896: 2020/11/18(水) 22:34:49.53 ID:z/VvcAl/
素晴らしいSSをありがとう

897: 2020/11/18(水) 22:36:43.96 ID:bOK/R7qm
お疲れ様でした
スレタイも無事に回収して素晴らしい

898: 2020/11/18(水) 22:37:26.12 ID:ma61/7sK
お疲れ様でした!楽しかったです!
貴重なあなしずをありがとうございました

900: 2020/11/18(水) 22:38:20.32 ID:4fT7fF4I
おめでとう…!
末長くお幸せに!

901: 2020/11/18(水) 22:38:55.50 ID:n49SS2hC
お疲れ様
脳が回復した

902: 2020/11/18(水) 22:39:55.99 ID:Mn1Vhbjk
21章の前に読めてよかった

903: 2020/11/18(水) 22:40:27.19 ID:Ll+HfgRh

タイトルそういうことだったのか

909: 2020/11/18(水) 23:26:29.74 ID:R1BNhZ53
完結お疲れ様でした
素晴らしい物語をありがとうございます
スレタイの数字が増えたことに意味がある綺麗なラストでした

913: 2020/11/19(木) 00:39:45.44 ID:1nr17NfR
乙でした
後日談が欲しくなってしまうな

917: 2020/11/19(木) 04:57:26.99 ID:L9b9Fg4I
完結本当にありがとうございました
約1年近く?毎日の様に覗いてたから終わるのはちょっと寂しいわ…
あなしず増えますように…

925: 2020/11/19(木) 14:57:18.45 ID:RNWbQoCw
完結乙です!最高のあなしずだった……
1月から追ってて良かったよ……

930: 2020/11/21(土) 03:19:24.96 ID:kIxkKVZ6
気付いたらこんな時間になってしまうぐらい夢中になって読める素晴らしい作品だった。

935: 2020/11/22(日) 10:07:27.65 ID:AT3cAGsZ
あなた「あーっっ!」


しずく「ん"ん"っ"!?ごほっごほっ……。よ、余韻が…………」

しずく「びっくりした……急にどうしたんですか?」

あなた「すっかり忘れてた!しずくちゃん、作曲の件やっぱり引き受けたいんだけど、まだ大丈夫かな?」

しずく「…………」

しずく「あっ」

936: 2020/11/22(日) 10:10:47.43 ID:AT3cAGsZ
しずく「そうでした!私アーティストデビューの方針をとりやめるって……」

しずく「すみません!つい自暴自棄になってあんな会見まで開いてしまって……!」


あなた「やっぱり、あんなに大々的に記者会見しちゃったら流石に……」

しずく「いっ、今からでもねじ込みます!なんとしてでもねじ込みます!」

しずく「もし駄目でも、同人作品として公開します!!」


あなた「すごい熱気……」

しずく「当然です!私が先輩を思う力を甘く見ないでください!」

しずく「確かに合うための口実として使いはしましたが、先輩の曲を歌いたいというのは本当ですから!」

937: 2020/11/22(日) 10:12:09.56 ID:AT3cAGsZ
しずく「さあ先輩、早速うちに来て泊まり込みで作業にとりかかりましょう!」

しずく(こんなこともあろうかと基本的な作曲ソフトを取り揃えててよかった……。一刻も早く完成させて、話を取り付けないと!!)

あなた「えぇ!と、泊まり込み!?もう家に連れ込まれるの!?」

しずく「大丈夫です。うちのマンション完全防音仕様なので夜でも気にせず(作曲のために)音出せますから」

あなた「音出すって……///しずくちゃん何言ってるの!!」

しずく「さぁ、早く!!」ガシッ

あなた「待って、心の準備がー!!」

938: 2020/11/22(日) 10:13:07.19 ID:AT3cAGsZ

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1592051291/

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