桜坂しずく(28)「わたしの理想のヒロイン」【長編SS】

しずく SS


1: 2020/06/13(土) 21:28:11.32 ID:gteMtAb/

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1592051291/

2: 2020/06/13(土) 21:33:45.97 ID:gteMtAb/
以下しばらく振り返り+繋ぎの総集編

3: 2020/06/13(土) 21:36:15.49 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!


虹ヶ咲学園を卒業後、ソングライターを目指して頑張ってきた私(28歳)。
でも卒業後作った曲の出来は全然で依頼も全く来なくなり、並行してしていたバイトも辞め無事ニートに!?

甘えてしまうからと夢を叶えるまでは皆とは会わないんだと決めていたんだけど。
結局こんなプー子になってしまったので、私は同好会の皆とは卒業以来一切連絡を取らずにいた。




そんなダラダラと目的も無く生きていたところに、突然大女優となったしずくちゃん(27)から連絡が来た。

あなた『確か自分が希望した人の歌じゃないとデビューはしないって』

しずく『あれ、あなたのことです』


なんとこんな私にしずくちゃんから直々に作曲の依頼が!

でも今の私にしずくちゃんに相応しい曲なんて書けっこない。そう思って1度は断ろうとする。

しずく『あの頃以上にもっと頑張るので、応援よろしくお願いします!』

しかし、色々考えた結果作曲の依頼は一旦保留にし、同好会の皆ともう1度話すことで今の自分を見つめ直すことにした!

4: 2020/06/13(土) 21:38:29.78 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
2

まず私が最初に向かったのは「かすみんベーカリー」という分かりやすい名前のパン屋さん。

そこにいたのは当然……


かすみ(27)『どこ行ってたんですかぁぁぁ!!!連絡も全然つかないし、滅茶苦茶心配してたんですよ!!』


かすみちゃんは卒業後アイドルになっていたみたいだけど、人気が出ず1年もせずに解散しちゃったんだって。

辛いときに傍にいてあげられなくてごめんね……。


あなた『お腹、何ヶ月なの?』

かすみ『6カ月です。触ってみます?』

あなた『こ、こんにちは~』ピトッ

ドンッ

かすみ『あ、今動きましたね!』


そんなかすみちゃんも、今では悲しみを乗り越え立派なお母さんになっていた!

5: 2020/06/13(土) 21:39:20.19 ID:gteMtAb/
翌日私はかすみちゃんに、他の皆にも会いに行くために皆のおおよその居場所を教えてもらった。


かすみ『またそのうち、かすみんベーカリーに来てくれますか……?』

あなた『そうだなぁ。かすみちゃんのパンが美味しかったらまた来ようかな』

かすみ『それなら心配いらないですね!だって、かすみん達が作ったパンは世界一愛情のこもったパンですから!』ニコッ


かすみちゃんとまた会う約束を交わし、私は次の同好会メンバーに会うために新たな一歩を踏み出すのだった!




ブー!ブー!ブー!

着信 
上原 步夢

6: 2020/06/13(土) 21:41:48.85 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
3

私が次に会いにいったのは彼方さん(29)。

人気レストランで働いているんだけど、

彼方『まぁ、これでもあの店では1番下っ端なんだけどね……』

料理の世界は厳しいんだね……。

7: 2020/06/13(土) 21:42:41.74 ID:gteMtAb/
今でも妹の遥ちゃん大好きな彼方さん。
元々は実家を出て2人で暮らしていたみたいだけど、遥ちゃんは『私自立するから』って巣立っていったみたい。


彼方『でも、妹離れしないとって我慢した……』


そうして彼方さんと話していたところに突如遥ちゃんから一本の電話が……


遥『実は私、この人と結婚することになりました!!!』

彼方『え、え、ちょっと待って……。遥ちゃん付き合ってる人いたの……?いつから……?』プルプル

彼方『うわぁぁぁぁぁぁぁ』

8: 2020/06/13(土) 21:43:27.17 ID:gteMtAb/
案の定ショックを受ける彼方さん。しかしズルズルと悲しみを引きずるのかと思いきや


彼方『遥ちゃんが完全に自立しちゃうのは寂しいけど、やっぱりそれ以上に遥ちゃんが幸せになるのは嬉しいし』

彼方『それに、今は落ち込んでる場合じゃないしね』


今の彼方さんは、すぐに乗り越えて遥ちゃんの結婚を嬉しいと思える程に成長していた!


彼方『お仕事は大変だけど、好きなことに打ち込めてとっても楽しいんだ』 

彼方『いつか自分の店を開いて遥ちゃんや同好会の皆ともう一度集まりたいなって思ってるの……』


私も早く彼方さんに見合うような人にならなくちゃ!

そうして、私は決意を新たにして次の同好会メンバーに会いに行くのだった!

9: 2020/06/13(土) 21:47:14.56 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
4

私が次に会いに行ったのは、人気ラノベ作家兼人気声優のせつ菜ちゃん(28)!

アニソン歌手としても活動していて、正にせつ菜ちゃん自身の大好きをそのまま仕事にしていた。

10: 2020/06/13(土) 21:49:03.25 ID:gteMtAb/
せつ菜『あなたは、今本当に自分が大好きなことをやれていますか?』

せつ菜『あなたはソングライターをしてると言っていましたが、それは本当にあなたの大好きなことなんですか?私にはいまいち──

あなた『うるさい!!』バンッ

あなた『私のこと何にも知らないくせに!いいよね、せつ菜ちゃんは売れっ子で。自分の実力が皆に評価されて!!それが大ヒットして!!!』


せつ菜ちゃんの言葉にイラっときてしまい、つい怒鳴ったりもしちゃった……。


せつ菜『とにかく事情は分かりました。あなたが本気で将来のことに悩んでいるのなら、紹介したい方がいます』


栞子(27)『菜々さんからあなたとの連絡が一切取れないと聞いていたので、てっきり蒸発でもしたのかと思ってました』


そこでせつ菜ちゃんが紹介したのは栞子ちゃん!

11: 2020/06/13(土) 21:51:25.35 ID:gteMtAb/
そこでせつ菜ちゃんが紹介したのは栞子ちゃん!


せつ菜『はっ、しまった!!他の人がいるのにしおりんと呼んでしまいました!!!』 

せつ菜『しおりん、菜々、ってお互いに呼び合うのは2人きりの時だけと決めていたのに!!!』


私が知らない間に2人はかなり仲良くなってたみたい。


栞子『その皆に会って答えを出すというのは1か月以内に済ませて下さい』


いろいろ話を聞いてもらったんだけど、私の考えが纏まってないばっかりに、結局答えが出ないまま私の就職の話は保留に。

12: 2020/06/13(土) 21:53:06.30 ID:gteMtAb/
栞子『今週末のライブも頑張ってくださいね。楽しみにしてます』

せつ菜『折角だからあなたもぜひ来て下さい!!』


帰り際に偶然せつ菜ちゃんのライブがもうすぐだということを知り、ライブに招待された私。

なんとソロで武道館!

14: 2020/06/13(土) 21:54:48.56 ID:gteMtAb/
せつ菜『もしこの中にかつての私と同じように、自分の将来で迷っている人がいたら諦めないでください!!』


もう完全に別の世界の人になったんだなと思っていながらライブを見ていたけれど、そこでせつ菜ちゃんは特別に私に向けたMCをしてくれた。

せつ菜『あなたの大好きが何なのか、今の私には分かりません。でも、応援することなら私にも力になれるかなって!!』

あなた『私もなりたい自分を見つけられるように頑張るよ』


そのおかげもあり、私は考えを整理し、また一歩歩き出すことが出来た!

そうして次に私が向かった先は……。


メッセージを送信しました。

To しずく

17: 2020/06/13(土) 21:57:10.97 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
5

少し考えがまとまった私は、しずくちゃんと1度話をすることに。


あなた『あの頃良い曲が書けてたのは皆のお手伝いがしたい!って熱意があったからなんだろうなって』


そこでしずくちゃんにソングライターの仕事はなりたくてなったものでは無いかも知れないと告げる。


しずく『そんなの嫌です!』バンッッッ


しかしそれを告げるとしずくちゃんは顔色を変え、私に必死に問い詰める。

19: 2020/06/13(土) 22:00:11.43 ID:gteMtAb/
しずく『なぜですか……声をかけるのが遅かったからですか?私のために曲を作るのが嫌なんですか?』

あなた『いや、嫌というか書けないというか……』


なぜそこまで私にこだわるのか。


しずく『はぁ…………言えません』


問いただしても、しずくちゃんは答えてくれない。



ピロンッ

ピロンッ

あなた『五月蝿いなー……一体何事?』カチッ

【通知】
歩夢ちゃん (1033)件の未読



あなた『ひっ!』ポトッ

20: 2020/06/13(土) 22:02:20.25 ID:gteMtAb/
『ふふっ、先輩でも分からないならこの変装は完璧ですね!』スッ


気を取り直して一旦しずくちゃんと2人でお忍びデート。

一緒に映画を見たり、食事したり、お洋服を選んだり、楽しかったな。


しずく『私もあの後少し冷静になって、先輩に強要しても逆効果なんじゃ無いかって思ったんです』

しずく『だから今は無理にとは言いません。先輩が書きたくなったら書いてください。私はいつでも大歓迎ですから!」


しずくちゃんが一日考えて出した結論は、強要せずに私が書きたくなる時を待つというものだった。


あなた『昨日言ってた私に拘る理由っていうのは……』

しずく『そうですね……曲をくれたら教えてあげます。知りたかったら曲を下さい❤』ニッコリ


私にこだわる理由はやっぱり教えてくれないらしい……。

22: 2020/06/13(土) 22:04:16.94 ID:gteMtAb/
しずく『あ、そうだ先輩。私実は行ってみたいところがあって……』


そしてなんとしずくちゃんが演技の参考にしたいと言い出し向かった先は


『本日はどういった娘をお好みでしょうか』

しずく『あ、そういうの選べるんですね。えーと、格好いい雰囲気だけど、ボーイッシュ程ではないくらいの娘を……』


なんとキャバクラ!?



果林(29)『失礼しま~す』

しずく『え?』

あなた『あれ?』

果林『えっ』


しかも出てきた女の子はなんと果林さん(29)!?

24: 2020/06/13(土) 22:06:32.36 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
6

思わぬタイミングで再会してしまった私達と果林さん。

元々モデルをやっていたけど、売れなかったからこの仕事に就いたみたい。


果林『なぁに?顔赤くしちゃって、可愛い❤』

あなた『…………!!』ドキドキ


果林『実はしずくちゃんの事ずっといいなって思ってたの。この後ウチで飲み直さない?』ギュッ

しずく『えっ……えぇぇぇ///』カァァ


成長して更にセクシーになった果林さんの悩〇術、凄かったなぁ……。

25: 2020/06/13(土) 22:09:53.62 ID:gteMtAb/
その後果林さんとしずくちゃんと別れ家に帰った後


果林『特にエマには……』


私はふと気になってエマさんに連絡した。


?<(すっごく忙しいんだよね 服飾のお仕事って)


エマさんとのメッセージのやり取りの中で、果林さんはなぜかエマさんに服飾の仕事に就いていると嘘をついてることが発覚。

それに関して果林さんに話を聞くために私はもう1度キャバクラに行き、果林さんとデートの約束を取り付けた。

26: 2020/06/13(土) 22:12:21.24 ID:gteMtAb/
果林『うわー!!!見て見て!私の笹をパンダが食べてるわ!!』


あの頃のように果林さんがはしゃいで楽しく過ごした動物園デートの後私は果林さんに気になったことを尋ねる。


あなた『…………果林さん、キャバクラのお仕事は本当に果林さんのやりたいことなの?』

果林『なに?そんなこと言うために今日連れ出したの?』


対話の末、服飾の専門学校に行くためにキャバクラで働いているうちに、
また学校に行って売れるかどうかも分からない仕事を目指すのがアホらしくなってしまったということを話してくれた。


果林『このままずっとこの仕事をするのは無理だって何となく察してきたんだけど、今更他のお仕事できる気もしないし。
どうしようかなって丁度考え始めた所だったの』


これからどうしていいか自分でも悩んでいた果林さん。そんな果林さんに私はある場所に付き合って欲しいと頼み込む!

そうして私たちが向かった先は……!

27: 2020/06/13(土) 22:13:53.25 ID:gteMtAb/
前回までの!【元】虹ヶ咲スクールアイドル同好会!
7

そうして2人でやってきた場所はなんとスイス!

目的は勿論──


エマ(29)『チャオ~!会いたかったよ~!!』


更にグラマラスになり、癒し度が限界突破したエマさん。

そんなエマさんは私の突然の思いつきからの来訪にも優しく対応してくれた。

28: 2020/06/13(土) 22:14:57.12 ID:gteMtAb/
エマ(29)『わっ……。ふふ、あなたってば子供みたい。よしよし』ナデナデ


私は全力でエマさんにナデナデされにいったけど一方果林さんは


果林『私もうすぐ三十路よ!流石にこんな歳でそんな子ども扱いは……』

エマ『そっか、そうだったよね。ごめんね果林ちゃん……』シュン

果林『あっ……』

果林『そうよ……もうエマがいなくても私は大丈夫なんだから』


これはただ恥ずかしいと言うだけでは無いような。

やっぱりこの2人、なにやら一悶着ありそうな様子。

29: 2020/06/13(土) 22:17:41.86 ID:gteMtAb/
そして明かされる衝撃の事実!!


エマ『んー、でもホントにお母さんになったからかな?』

果林『そうそう、去年4人目が生まれたんだったかしら』

あなた『え……お母さん……?子ども……?』


わ、私のエマさんがぁぁぁぁぁ!!!

旦那さんめ……私のエマさんを奪うなんて許せない!私は勢いよくエマハウスに乗り込んだ!


あなた『よーし!一言文句言ってやる!!』

ガチャッ

ガタイの筋肉質の長身男『~~~~~~~~~!!』ハッハッハッ

あなた『』

果林『文句の1つでも言ってやるんじゃ無かったの?』


エ、エマさんの大切な旦那さんを傷つけるわけにはいかないから……。

30: 2020/06/13(土) 22:20:36.79 ID:gteMtAb/
あなた『結婚おめでとう。エマさん』

エマ『うん、ありがとう!あなたにそう言ってもらえて嬉しい!』


その後エマさんと一体一で話して、私もちゃんとエマさんの結婚をお祝いしたよ。
彼方ちゃん見てる?

て言っても、まだ気持ちの整理はついてないんだけどね……。



それから話題は果林さんの話に移り


エマ『うーん……分からない。でも、なんだか私に冷たい感じがするっていうか、なんだか無理してる感じがするの』

あなた『多分、その事については果林さん本人から直接話があると思う』

エマ『うん、分かった。私、果林ちゃんが話してくれるまで待ってるよ』


エマさんも果林さんの違和感には気付いていたけど、果林さんが自分から話して貰うのを待つことに。



エマ『私達と比べて恥じる必要なんて無い。私達は私達のペースで走ってるように、あなたはあなたのペースで走って行けばいい。誰かと比べて焦る必要なんて無いよ』

エマ『要は気にしすぎないで!私は今のあなたも大好きだから!ってことを伝えたかったの』


そして私はエマさんから激励の言葉をもらったよ!
スイスに来て良かった!!

31: 2020/06/13(土) 22:23:26.36 ID:gteMtAb/
果林『エマに本当のことを話そうと思う』


翌日、何かキッカケでもあったのか、とうとうエマに本当のことを話す決心をした果林さん。


果林『いやいや働いてる訳じゃないけど、誇れるものじゃないし、軽蔑されてもおかしくないとは自分でも思う』

果林『それに、服飾の仕事をしてるってずっと嘘つき続けてきたんですもの。流石にエマでも──』

エマ『それが果林ちゃんが言いたかったことなんだよね。今まで気付いてあげられなくてごめんね。辛かったよね?』

エマ『もう無理して強がらなくてもいいからね』


恐る恐る自分の感情を吐き出す果林さんに対しエマさんが取った行動は、ただただ需要して包み込むことだった。

32: 2020/06/13(土) 22:24:55.45 ID:gteMtAb/
果林『エマがスイスに帰っても心配しないように……立派な大人になるって……言ったから』


果林がエマに嘘をつき続け、必要以上に大人びた態度を取っていた理由。
それはエマに自分の事で余計な心配をかけたくないからだった。


エマ『もういいんだよ果林ちゃん。嘘つかなくたって』

果林『うわぁぁぁぁぁぁ!!!!』


長い時間とすれ違いを経てついに和解したエマさんと果林さん。


果林さんはこれからはキャバクラの仕事をやめ、やりたいことを探してみるという。


あなた『私もやりたいことを探してる途中だからさ、一緒に探そうよ』

果林『ええ。どっちが先に見つけられる勝負よ!』

33: 2020/06/13(土) 22:28:08.34 ID:gteMtAb/
果林『私やりたいことができたわ。この勝負、私の勝ちね』


ってその勝負、もう決着がついちゃった!?

2日後日本へと帰る途中、果林さんが私に勝利宣言をしてきたんだ。


果林『私、もう一度デザイナーを目指してみる』

果林『あの子、マリアと約束したの。あの子がスクールアイドルになったら私が衣装を作ってあげるって』


どうやら私の知らない間にエマちゃんの娘のマリアちゃんと大事な約束をしていたみたい。

仮にデザイナーになれなくてもマリアのサポートをすることを決意した果林さん。


『あ……そっか』

『そういうことだったんだ』


そんな果林さんの思いに触発され、私の意思がついに固まった……!



果林『私やりたいことができたわ。この勝負、私の勝ちね』

その勝負はなんと日本に帰ることになった2日後、すぐに決着がついてしまった!?

果林『私、もう一度デザイナーを目指してみる』

果林『あの子、マリアと約束したの。あの子がスクールアイドルになったら私が衣装を作ってあげるって』

どうやら私の知らない間にマリアちゃんと約束をしていたみたい。

仮にデザイナーになれなくてもマリアのサポートをすることを決意した果林さん。

『あ……そっか』

『そういうことだったんだ』

そんな果林さんの思いに触発され、私の意思がついに固まった……!




「先輩。今……なんて言いましたか……?」

34: 2020/06/13(土) 22:33:39.39 ID:gteMtAb/
>>33ダブってしまった

果林『私やりたいことができたわ。この勝負、私の勝ちね』


ってその勝負、もう決着がついちゃった!?

2日後日本へと帰る途中、果林さんが私に勝利宣言をしてきたんだ。


果林『私、もう一度デザイナーを目指してみる』

果林『あの子、マリアと約束したの。あの子がスクールアイドルになったら私が衣装を作ってあげるって』


どうやら私の知らない間にエマちゃんの娘のマリアちゃんと大事な約束をしていたみたい。

仮にデザイナーになれなくてもマリアのサポートをすることを決意した果林さん。


『あ……そっか』

『そういうことだったんだ』


そんな果林さんの思いに触発され、私の意思がついに固まった……!




「先輩。今……なんて言いましたか……?」

54: 2020/06/16(火) 22:52:45.45 ID:DMx44wbx
しずく「先輩。今……なんて言いましたか……?」




あなた「私に、しずくちゃんの曲を作らせてほしい」




しずく「ほ……本当ですか!?」


しずくちゃんの声が震え、電話越しに動揺しているのが伝わってくる。


あなた「うん、もう答えは出た」


しずく「そ、それならさっそく──」

55: 2020/06/16(火) 22:54:20.70 ID:DMx44wbx
コンコン

「桜坂さん、スタンバイお願いしまーす」

しずく「あ、はい!今行きます!」



しずく「すみません先輩!すぐに改めてメッセージを送らせていただきますので!」ブチッ


あなた「あ……」


あなた(収録前だったんだ。動揺させちゃったみたいだし、悪いことしちゃったな)


あとで謝ろうと思いつつ、スマホを操作し、トーク一覧の画面に戻る。

56: 2020/06/16(火) 22:56:46.07 ID:DMx44wbx
まだ会ってない同好会のメンバーはあと3人。

その中でも未読が溜まりに溜まった幼なじみのアイコンを見つめる。


私と歩夢ちゃんとの2ショット。
今歩夢ちゃんがどうなってるかは知らないけど、かつての私と同様にあの頃から抜け出せずにいるのかもしれない。


でも──


あなた「今更どんな顔して会えばいいんだろう」

57: 2020/06/16(火) 22:59:10.42 ID:DMx44wbx
1番謝らなくちゃいけない人。


ずっと長い間一緒に居たんだ。
連絡を避けていることで歩夢ちゃんにどれだけ心配をかけているかは想像に難くない。


あなた「…………」


後回しにしても、辛いだけなのに。

65: 2020/06/20(土) 03:24:37.71 ID:ft/ghYu5
ー お台場の某バー ー

バンッ

しずく「はぁ……はぁ……」

あなた「あ、しずくちゃん」

しずく「先輩……」


あなた「大丈夫?息上がってるけど」

しずく「お仕事が終わってすぐに飛んできました……。1秒でも早く話がしたかったので……」

あなた「とりあえず座ろう?」

しずく「はい……」ハァハァ

66: 2020/06/20(土) 03:25:45.86 ID:ft/ghYu5
しずく「すみません。いつものを」

しずく「それと、お水を一杯いただけますか?」

「どうぞ」スッ

しずく「ありがとうございます」


しずく「んっ……んっ……んっ……」

しずく「ぷはぁ……」


あなた「ほんとに急いで来たんだね。髪もボサボサだ」

しずく「あ……すみません。恥ずかしいです……」

あなた「ちょっとじっとしてて」スッ

しずく「あっ」

あなた「今度は私が髪直してあげる」

しずく「はい……」

67: 2020/06/20(土) 03:27:58.39 ID:ft/ghYu5
あなた「て言っても簡単に髪をとかすだけだけどね」

しずく「ふふ……」

あなた「どうしたの?」

しずく「いえ、今日は逆だなって。あの時の」


あなた「あぁ、しずくちゃんが私に頼んだ日の事?」

しずく「はい。あの時の先輩の顔はちょっと面白かったです」

あなた「言ったな?それを言うならしずくちゃんだって」

しずく「私はそういう演技をしてただけです」

あなた「あ、ずるい!」

68: 2020/06/20(土) 03:28:53.98 ID:ft/ghYu5
あなた「でも不思議だよ」

しずく「何がですか?」

あなた「もう何日も前の事のはずなのに、昨日のことのように感じるんだ。あ、髪はもう大丈夫だよ」

しずく「ありがとうございます」


「お待たせいたしました」スッ

しずく「あ、どうも。ありがとうございます」

69: 2020/06/20(土) 03:31:05.01 ID:ft/ghYu5
.


しずく「さっきの話ですが、人間って楽しいと時間は早く感じて楽しくない時間は遅く感じるみたいですよ」

あなた「あー、なんかそれ聞いたことあるかも」

しずく「私と最初に会った後も、楽しく時間を過ごせたっていうことになりますね」

あなた「うん。皆と久しぶりに会えて、色々あったけど楽しかったよ」

しずく「そうですか……」


しずく「そのおかげで作曲する決心を?」

70: 2020/06/20(土) 03:48:49.68 ID:ft/ghYu5
あなた「私、ずっとやりたい事が分からなくなってた」

あなた「ソングライターにはなったけど、それも何か違うなって」


あなた「それで皆と会っているうちに分かったんだ。私、やっぱり頑張ってる誰かのサポートがしたい。隣でその人のことを見守っていきたい」




あなた「皆に会っていって、皆の隣にはもう私じゃない誰かがいて。それが少し寂しかった」


あなた「でも曲を作ることでしずくちゃんのサポートが出来るなら、ぜひ協力させて欲しい!!」

しずく「私の、サポート……」

71: 2020/06/20(土) 03:56:27.24 ID:ft/ghYu5
あなた「最初にしずくちゃんに頼まれた時にすぐ承諾すればよかったんだけどね。 今の自分に作れるとは思ってなかったから迷惑かけちゃうと思って」

しずく「迷惑だなんて」

しずく「でも確かに私の曲として売りだした曲のクオリティが低いと、私も先輩も叩かれると思います……」


あなた「でも今は違う。迷惑かけるかもしれないけど、作ってみたい」

あなた「いや、作らせて欲しい!」

73: 2020/06/20(土) 04:19:10.08 ID:ft/ghYu5
あなた「これが私のやりたい事!」

あなた「私、曲を作りたい!しずくちゃんのお手伝いがしたい!」


あなた「どうか私に、しずくちゃんの隣を歩かせて!」




しずく「先輩……!その答えを待っていました!もちろんです!」

88: 2020/06/25(木) 22:33:35.80 ID:ESplwbac
しずく「先輩ならきっとまた私の力になってくれるって信じてました!」

しずく「嬉しいです。 また隣で、私のことを支えてくれるんですね……!」


しずく「昼間に1度聞いてはいましたけど、やっぱり直接聞けて嬉しいです……!」

あなた「しずくちゃん……!」


しずく「言質取りましたからね?やっぱりやめるなんて無しですよ」

あなた「え?」

しずく「どうしました?まさか他に女でも……?」ギロッ

あなた「そんなドラマで夫に詰め寄る妻みたいな演技で問い詰めなくても……」

89: 2020/06/25(木) 22:38:06.75 ID:ESplwbac
あなた「いや、そりゃあ途中でやっぱりやめます!なんて今更言う気は無いよ」

あなた「でも作るとは言ったけど、やっぱりまだ絶対作れる!とは言い切れないからさ」

しずく「なんだ。そういうことでしたか」

しずく「今の先輩なら大丈夫ですよ」


あなた「だと良いんだけど……」

90: 2020/06/25(木) 22:46:13.97 ID:ESplwbac
しずく「私もあれからなんで書けなかったか考えてみたんです」

しずく「それで、あの頃の事を思い出してみて」

ーーーー

あなた『私はただ、頑張るしずくちゃんの応援をしたかっただけだよ』

ーーーー

しずく「卒業してからの先輩は応援するって気持ちが薄くなったのかなって。ほら、燃え尽き症候群とかあるじゃないですか」

しずく「今思い返せば卒業後よくこのバーに連れて行ってくれた時も、そんな雰囲気がしてた気がします。まぁ、あくまで私の勝手な予想なんですけど」

あなた「応援する気持ち……。確かに同好会程密着して曲作りをしていた訳じゃ無かったからそれはあるかも」

91: 2020/06/25(木) 22:54:39.33 ID:ESplwbac
しずく「それなら大丈夫です!今の先輩には熱意と、私に密着して曲を作れる環境があります」

そう言ってしずくちゃんは軽く椅子から立ちあがり、より私に近くなるように座り直した。

しずく「それで次の曲はどんな風にするんですか?また私と一緒に色々話し合いましょう!」

私のグラスを持っていない方の手が、しずくちゃんの両手にスッと包み込まれる。

その仕草にお店の雰囲気も手伝ってか、少しドキッとしてしまう。

92: 2020/06/25(木) 23:00:08.45 ID:ESplwbac
あなた「そ、そうだなぁ……。とりあえず今のしずくちゃんとしてのアーティストデビューだから、私が今のしずくちゃんのことをもっと知る必要があるかな」

しずく「今の私ですか?」

あなた「うん、色々変わってるでしょ?しずくちゃんはもうスクールアイドルじゃない。大人の大女優なんだから、それに相応しい曲が必要だよ」

あなた「そのためにもっと今のしずくちゃんを知る必要があるかな」

しずく「そうですね。確かにスクールアイドルしずくとしての曲とアーティストしずくの曲はまた勝手が違いますもんね」

93: 2020/06/25(木) 23:04:30.08 ID:ESplwbac
しずく「それなら実際に今の私を見て貰うのが1番ですね」

しずく「撮影現場や稽古の様子を生で見て下さい。見学できるように私から頼み込んでみますから。多分OK貰えるはずです」

あなた「え、いいの!?」

しずく「これでも私、結構口が利くんですよ?何て言ったって、大女優ですから」

あなた「職権乱用?」

しずく「そっ、そこまでじゃありませんっ!」

94: 2020/06/25(木) 23:10:11.13 ID:ESplwbac
あなた「後は私がしずくちゃんの出てるドラマや舞台いっぱい見たり、しずくちゃんの記事調べたり……」

あなた「それとスクールアイドルの曲みたいに、色々曲について話し合う?」

しずく「ですね!あ、見て下さい先輩」

ゴソゴソ

しずく「じゃーん!曲のイメージを考えたノートです。私が歌いたい曲や演じたいキャラの設定等色々……」

あなた「おぉ凄い……。流石しずくちゃん」


あなた「ちょっと見せて貰ってもいいかな?」

しずく「勿論です!」

95: 2020/06/25(木) 23:17:14.04 ID:ESplwbac
ペラッ

ペラッ

あなた「へぇ……もうこんなに……」

しずく「嬉しいです。またこんな風に一緒に曲を作れるなんて」

あなた「私もだよ!うわぁ~なんだか本当にあの頃に戻ったみたいに思えてきたよ!」

しずく「でもしっかり私達は大人になってる、ですよね?」スッ


そう言ってしずくちゃんはグラスを私の目の前に差し出した。


あなた「あっ、そう言えばまだしてなかったね」

しずく「私のアーティストデビューを祝って」


「「乾杯」」コチンッ

110: 2020/06/30(火) 17:34:31.37 ID:de9in8lU
しずく「すみません。同じのもう一つ貰えますか?」

あなた「しずくちゃん大丈夫?明日も仕事でしょ?」

しずく「え?まだ3杯目ですけど」

あなた「そ、そう……」

あなた(まだ……?)


しずく「先輩こそ飲まないんですか?」

あなた「いや、私はしずくちゃん程ペース速くないから……」

111: 2020/06/30(火) 17:46:57.90 ID:de9in8lU
しずく「すみません、これお願いできますか?」

あなた「しずくちゃん、ほんとに大丈夫?ちょっと飲み過ぎじゃない?」

しずく「いえ、このくらい──」

そう言い終わらないうちに、しずくちゃんの肩が私の肩とこっつんこし、寄りかかる形になった。

しずく「あっ……」

あなた「ほら、やっぱり大丈夫じゃない」

しずく「そうみたいですね。嬉しくてつい……」

あなた「もう、しずくちゃんってば」

112: 2020/06/30(火) 17:48:39.41 ID:de9in8lU
しずく「あの」

あなた「ん?」

しずく「もう少し、このままでもいいですか……?」

あなた「えっ」

ふとしずくちゃんの方を向くと同時に、密着しているしずくちゃんの香りが頭に染み渡り、顔が赤くなった。



あなた「し、しずくちゃん。酔ってる……?」

しずく「そうかもしれません」


あなた「う、うん……。いいよ……」

少しかすれた気だるい声

さりげないボディタッチ

そんな大人の色気に胸の鼓動が速くなっていくおかげで肩の重さなど全く感じなかった

113: 2020/06/30(火) 17:49:58.16 ID:de9in8lU
更新遅いですが、エタりはしないので……

121: 2020/07/02(木) 01:43:29.32 ID:Xkrx6jrx
しずく「あ、私そろそろ帰らなきゃ……」

あなた「大丈夫?家まで帰れる?」

しずく「大丈夫です。酔いも大分覚めてきましたから」

そう言ったしずくちゃんの頬の赤みは確かに消えている。
これなら大丈夫そうだ。

あなた「分かった。じゃあ途中まで一緒に帰ろう?」

しずく「はい!」


しずく「あ、マスター。お代2人分でお願いします」

あなた「え、また私の分も?」

しずく「ええ。だって先輩、まだお金無いでしょ?もうすぐいっぱい入ってくると思いますけど」

あなた「だって前の時も払って貰ったのに……。あ、そういえば前の分まだちゃんと返してないよね!?」

しずく「その分はまだ考え中です。今回の分はそうですね……。お給料の前借りということで」


しずく「あ、もしかしてあんまり飲まなかったのってそのせいですか?なら次も私が出しますからもっと飲みましょうね」

あなた(え?4杯も飲んじゃったんだけど……)

122: 2020/07/02(木) 01:53:26.39 ID:Xkrx6jrx
カランカラン

しずく「ありがとうございました」ペコッ


しずく「さて、今日話した通り明日マネージャーさん達と相談します。少しお時間はいただきますけど……」

あなた「全然気にしないよ!私の時間ならいくらでもあるからね」

あなた「その間に今のしずくちゃんの事色々調べておくね。私、今のしずくちゃんの活動殆ど知らないから」

しずく「ありがとうございます。あ、でもネットの情報は嘘もあるので鵜呑みにしないで下さいね。全部確認している訳じゃありませんけど、たまに事実と違うことがあるので」


しずく「特に俳優の誰々と熱愛!?とかは全部嘘ですから」

あなた「そうなの?演技で恋人役になった人がそのまま結婚~みたいな話よく聞くけど」

しずく「そりゃあ私も役に入り込んでいる時はその人のことを好きになったりりはしますけど、それはあくまでその人を演じてるだけです」

しずく「お芝居はお芝居、プライベートはプライベートです。女優としてそこはしっかりしてますから」

あなた「そうなんだ」

123: 2020/07/02(木) 02:00:50.68 ID:Xkrx6jrx
ピッ

あなた「あっ、ICそのうちチャージしておかなきゃ……」

しずく「人がいっぱいいるときに引っかかったら気まずいですもんね」


あなた「うん。そういえば、しずくちゃんも電車移動なんだね」

しずく「えぇ、プライベートの時は殆ど。意外と気付かれないものですよ?」

今のしずくちゃんは、前一緒に遊んだ時と違いメガネにマスクをしているだけ。

でも確かに、芸能人特有のオーラは消えている気がする。

124: 2020/07/02(木) 02:11:24.78 ID:Xkrx6jrx
ガタンガタン

あなた「…………」

しずく「…………」

夜も遅いので人もまばらだけど、電車の中で喋っては周りに気付かれてしまうので黙っておく。


しずく「…………」ポチポチ

しずくちゃんは無言でスマホをタップしている。
やっぱり仕事が終わった夜中でも色々連絡事項があるのだろうか。


しずく「よしっ、一体削れた」ボソッ


アプリのジムバトルで遊んでいるだけだった。

137: 2020/07/07(火) 01:10:11.60 ID:ia1BNBav
あなた「あ、私ここで降りるね」

しずく「はい、お疲れさまです。都合が付き次第連絡しますね」

あなた「それじゃあお休み」



プシュー

あなた「はぁ……なんか電車から降りた瞬間にどっと疲れが……」

あなた「飲みすぎかな?それか……」


ーーーー

あなた『し、しずくちゃん。酔ってる……?』

しずく『そうかもしれません』

ーーーー


あなた「……///」ポー

あなた「いやいやいや……」ブンブンブン

あなた「昔から同好会の皆で妄想するような子だったけど、私までからかうなんてしずくちゃんも悪い子になったなぁもう!」

138: 2020/07/07(火) 01:12:07.49 ID:ia1BNBav
ー翌日ー



あなた「うーん……えーと、もう昼前か」

別にだらしないわけじゃない。まだスイスとの時差に慣れていないだけ。

それに、昨日はお酒が入っているにもかかわらず、目が冴えていた。理由は色々あるだろうけど、主にしずくちゃんのせいだ。

あの後布団に入ってもなかなか寝付けなかったので、しずくちゃんについてネットで夜遅くまで色々調べていたと言うわけだ。

だからただグータラしてるわけではない。そう自分に言い聞かせつつ、私はベットから腰を上げてスマホの画面をつけた。

139: 2020/07/07(火) 01:14:14.86 ID:ia1BNBav
あなた「あ、しずくちゃんからのメッセージが届いてる」


あなた「えーと……ドラマの撮影の見学と、インタビューの見学はOK貰いました!他も多分大丈夫だと思います。時間の都合が付きましたら改めて連絡します!」

あなた「PS.もし時間の都合が悪かったらすみません!」


あなた「ありがとう、私の都合なら大丈夫だよ。っと」

自分で言っててなんだか悲しくなってくるけど、自由というのは、ある意味では今の私の良いところの1つでもある。

あなた「お金と再就職は心配だけどね……」

でもそれも、しずくちゃんとのタイアップが成功すれば解決するかもしれないんだ。

140: 2020/07/07(火) 01:16:16.27 ID:ia1BNBav
あなた「あ、お金で思い出した。そろそろお金引き下ろしておかないと」


あなた「あと幾ら残ってたっけ……。スイス旅行でけっこう使っちゃったからなぁ」

あなた「最悪しずくちゃんに前借りを……?いや、そんなみっともないことできないよ!でも借金するよりは……。いや、バイト入れようか?」

あなた「はぁ……通帳見るのが怖い……」

141: 2020/07/07(火) 01:18:48.18 ID:ia1BNBav
あなた「あれ……?」


ザンダカ 1250000

あなた「12万……?流石に急に減りすぎなんだけど。誰かに引き抜かれた……?」



あなた「いや、ちょっと待って」

あなた「一……十……百……千……万」

あなた「十万……百万」


あなた「百万!?桁が1個多いぞ!?」


あなた「もう一回……」ヒーフーミー

あなた「やっぱり百万だ」

145: 2020/07/08(水) 18:00:56.06 ID:YA86oaIe
あなた「いやいや、百万も貯金してないぞ?え?これホントに私の通帳?」

ガーッ

改めて通帳を見てみたけど、確かに自分の名前だ。

あなた「おかしいな……。なんで増えてるの?」

しずくちゃんかなと思ったが、まだ作ると宣言しただけで契約はしてない。しずくちゃんならそれでも振り込みしてくれそうだけど。

あなた「1回記帳して確かめてみよう」

ガーッ

あなた「あっ」ペラッ

146: 2020/07/08(水) 18:03:38.51 ID:YA86oaIe
プルルル

果林「あら、おはよう……よね?キミも。もう昼過ぎだけど、時差ボケがまだ抜けないのよ」

あなた「もしもし、果林さんだよね?これ」

果林「これって?」

あなた「ほら、振り込み!私の口座に!」

果林「そうだけど。キミには本当にお世話になったから、そのお礼と旅費も兼ねて70万円振り込んでおいたわ。そういえば言ってなかったわね」

あなた「な、なんで……」

果林「なんで?あ、70万じゃ足りなかったかしら。幾ら出せばいい?」

あなた「え…………いやいや、そういう意味じゃなくて!」

149: 2020/07/08(水) 23:05:24.74 ID:YA86oaIe
果林「金額じゃ無いなら……ああ、なんで口座が分かったって?」

果林「ふふ、ほらキミ帰り際に通帳見せてくれたじゃない」

ーーーー

あなた『はぁ……思ったよりは掛からなかったけど、やっぱり海外旅行は高く付くなぁ』

果林『そんなに貯金無いの?』

あなた『通帳見る?家長い間留守にするから一応持ってきたんだ』

あなた『あ、言わないでね!私残高見てないの!現実を直視したく無くて……』

果林『これは……』ペラッ

ーーーー

151: 2020/07/08(水) 23:16:13.67 ID:YA86oaIe
果林「その時にこれじゃマズいだろうと思って口座番号を控えておいたの。やりたいことやるにもお金がいるでしょ?」

果林「どう?かしこくないかしら」

あなた「へぇ凄い……じゃなくて!!」

果林「もう!それなら一体何なのよ!!」


あなた「そうじゃなくて、私が言いたいのは何で70万なんて大金振り込んでるのってこと!!」

果林「さっきも言ったじゃない。エマとも仲直りさせてくれて、私をもう一度前に向かせてくれたからよ」

あなた「そんなの当然のことをしただけなのに!寧ろ私がそうしたかったというかお節介だったとも思ってるのに、こんな大金貰えないよ!」

果林「私はそうは思ってないの。お礼がしたいのよ」

152: 2020/07/08(水) 23:24:17.67 ID:YA86oaIe
あなた「いや、でもそんな……」

でも果林さんの言うことも事実だ。やりたいことをやるには、いやそれどころが1人暮らしで生活するだけでもかなりのお金がいる。
にもかかわらず今の私に収入は一切無い。


収入のアテと言えばしずくちゃんとの件があるけど、その契約も上手くいくか分からないし、今のこの状態で前金なんて貰えない。

しずくちゃんなら生活がピンチだと言えばお金を貸してくれるかもしれないけど、結局それじゃあ貰う相手が果林さんからしずくちゃんに変わるだけだ。

153: 2020/07/08(水) 23:57:01.78 ID:YA86oaIe
果林「言っておくけど、いくら稼いでたからって70万は私にとってもはした金じゃないから。そこまで金銭感覚おかしくなってないわ」

果林「なんならもっと出してもいいとも思ってるし、それほど感謝してるって事なんだけど」

あなた「…………果林さん、口座番号教えて。やっぱり受け取れないよ」

果林「キミも頑固よね。私はあげるって言ってるんだけど。人の好意は素直に受け取っておくものよ?」

あなた「でも私は本当にそんなつもりじゃ無かったし!」

154: 2020/07/09(木) 00:12:08.83 ID:IZSaSwf8
果林「そうは言っても残りのお金少ないのは事実でしょ?仕事も今は無いみたいだし大丈夫なの?」

あなた「それは……」

果林「じゃあこれならどう?そのお金は私がキミに貸したってことで。利子はつけないから、落ち着いてお金に余裕が出来てからゆっくり返してね」

果林「なんなら返さなくてもいいから。そこは任せるわ」

あなた「え!?」

果林「はいはい、質疑応答は受け付けません。こうでもしないとキミは受け取ってくれなさそうだから」
 
果林「やりたい事みつかったんでしょ?お互い頑張りましょう」

プツッ

あなた「果林さん……」

あなた「…………」


あなた「…………ありがとう」


果林さんとの通話を終えた後もしばらく複雑な心境だったが、今回は素直に好意に甘えることにした。

それから私は当初の予定通り少しのお金を降ろして銀行を後にし、しずくちゃんが出ている作品を見るためにレンタルビデオショップへと足を進めた。

161: 2020/07/12(日) 01:45:59.41 ID:gi/8XziB
ガチャ

あなた「ふぅ……」

店内でしずくちゃんのウィキペディアを見ながら探していたら、思っていた以上に長居してしまった。

ドサッ

あなた「さて、どれから見ようかな」

早速袋から借りてきたDVDを机の上に並べる。

162: 2020/07/12(日) 01:58:57.14 ID:gi/8XziB
とりあえず1本で完結の有名どころの映画を数本。

それとアニメのDVDも数本。

なんとジブリのヒロインとしても出演していて、その他にもいくつかアニメに出演していた。

せつ菜ちゃん曰く俳優が声優をするとアニメファンから叩かれる傾向があるにも関わらず、少し浮いている部分はあったものの真に迫る演技力でそれを黙らせたらしい。
いつか声優として共演したい、と言っていた。



女優というよりはマルチタレントといった感じみたいだ。

元々スクールアイドルも演技の役に立つからという側面もあったので、今回のアーティストデビューも含め、色々経験していこうという事なのだろう。

163: 2020/07/12(日) 02:15:12.00 ID:gi/8XziB
あなた「それからこれ」

私が目を向けたのは4巻まで借りた連続テレビ小説のDVD。


あなた「まさかしずくちゃんが朝ドラのヒロイン役として出ていたとは……」


しずくちゃんと会わなくなった後の事だしテレビを殆ど見ないので気が付かなかったのだけれど、しずくちゃんは6年程前の朝ドラに出演していた。

ネットによると、売れ出したきっかけはこれらしい。

あなた「やっぱ朝ドラ二出た人は売れるんだね」


とは言ってもたまたま朝ドラに出れたからラッキーという話でもない。
朝ドラのオーディションはかなり厳しいと聞く。そんなオーディションを勝ち取って演じきったのだから流石しずくちゃんと言うべきか。


あなた「よしっ、私も頑張らなくちゃ!」


マルチタレントとしてのしずくちゃんを理解して、早くしずくちゃんの役に立ちたい。

私は迷いを振り払い、ケースから朝ドラのDVDを取り出して勢い良くプレイヤーにセットした。

194: 2020/07/22(水) 17:17:04.26 ID:5EF38LE9
ー数日後ー

プルプルプル

あなた「ん?しずくちゃんから電話だ」


ドラマのしずく『公園で呑みてぇ~!』


あなた「それにしても今見てるドラマの女優と電話なんて凄いなぁ」

あなた「おっと、それより早く出なきゃ」


ポチッ


しずく「もしもし先輩?今お時間大丈夫でしたか?」

あなた「全然大丈夫!今しずくちゃんが出てる色んな作品見てるところ」

しずく「嬉しいです!私の演技見てくださってるんですね!
でも大変じゃないですか?私のファンでも全部追ってる人なんてまずいないでしょうし……」


そう言い切るのはファンの愛を軽く見ているわけでも自分を卑下しているわけでも無い。それほどまでにしずくちゃんの出演作が多いのだ。

映像化されていない舞台なども含めると、全ての芸能活動を追えている人なんてしずくちゃんの言う通りいないだろう。

195: 2020/07/22(水) 17:25:34.99 ID:5EF38LE9
あなた「ウィキ見たけど滅茶苦茶出てるもんね。申し訳ないけど流石に数本に絞らせてもらったよ」

しずく「ありがたいことに沢山の作品に携わらせていただいてますから」


あなた「あ、そういえばアニメの声優もやってるんだってね、せつ菜ちゃんから聞いてびっくりした!」

しずく「はい、声優も同じ演じる職業ですからとても楽しく仕事をさせていただきました!」


しずく「ですがドラマ等とはかなり勝手が違っていて、まだまだ実力不足だと痛感しました。次の機会までにはなんとかアフレコスキルを磨きたいと思っています」

あなた(評判は良い方って聞いてるんだけど流石の向上心だ)

197: 2020/07/22(水) 21:03:48.32 ID:5EF38LE9
しずく「って、肝心な事を伝え忘れるところでした」

しずく「先輩、先日言っていた見学の日程が決まりました。予定日は3/1から3/3までの3日間になります。何か用事とか入っていたりしてませんか?」

あなた「全日フリーだから大丈夫!」

しずく「よかったです。すみません、3日しか取れなくて……」

あなた「ううん、3日も見られるなんて凄いよ!頑張って3日で掴んでみせるよ!」

色んなしずくちゃんの作品を見ることで、女優としてのしずくちゃんの演技に対しての理解が深まってきている。あともう少しで何か浮かんでくる気がするんだ。

それに、撮影現場とかみるのはじめてだからワクワクする!


あなた「よーし、やるぞー!おー!」

212: 2020/07/30(木) 02:22:39.52 ID:J9oYIPbo
ー後日ー

プルプルプル

あなた「あ、またしずくちゃんからだ」


ピッ

あなた「はい、もしもし」

しずく「あ、先輩。明日からいよいよ見学ですね。よろしくお願いします!」

あなた「うん、こちらこそ!事務所に行けばいいんだよね?」

しずく「はい、ロビーの方には話を通してありますので」

あなた「分かった。わざわざありがとう」

しずく「あの、今日はそれだけじゃなくて……」

あなた「ん?」

213: 2020/07/30(木) 02:31:37.26 ID:J9oYIPbo
しずく「その、曲のイメージについてまだ話し合えてなかったなって。すみません、お時間取れず」

あなた「いや、しずくちゃんも忙しいんだし。でも確かにそうだね。軽く方向性は決めておいた方が明日からの見学も有意義に過ごせるかも」

しずく「そうですよね、私ったらすみません……」


しずく「あ、方向性ですよね。やっぱり演じることが好きなので、いずれはアーティストとして色々なテーマやシチュエーションの曲を、演じながら歌いたいと思っています」

あなた「オードリーみたいなのだね?」

しずく「はい。オードリーは私達が考えた設定の女の子の曲として演じながら歌いましたから、イメージとしてはそんな感じです」


しずく「でもデビュー曲は私自身としての曲が欲しいんです」

あなた「しずくちゃん自身の曲?」

しずく「はい」

214: 2020/07/30(木) 02:39:55.88 ID:J9oYIPbo
しずく「実際に見たりドラマで見たりした女優としての私、プライベートで先輩といるときの私」

しずく「それらをひっくるめて、先輩から見た私、桜坂しずくとしての曲を先輩に作ってほしいんです」


あなた「え、私目線でいいの?主観とかバリバリ入ると思うけど……」

しずく「はい、それを歌いたいんです。寧ろだからこそ先輩にしか作れない曲になると思います」

あなた「私にしか作れない曲……」

215: 2020/07/30(木) 02:47:12.66 ID:J9oYIPbo
あなた「分かった。それがしずくちゃんのオーダーだね。明日からはそれを意識して見学するよ!」

しずく「すみません、もっと早くに話せればよかったんですけど。私自身もいざ先輩に曲を作ってもらえるとなるとなかなかイメージが固まらなくて……」

しずく「できれば対面で話したかったんですが、どうしても時間が取れず」

あなた「気にしなくていいよ。昔からしずくちゃんは気にしすぎ」

しずく「先輩……あはは、そうですね」

216: 2020/07/30(木) 02:55:46.66 ID:J9oYIPbo
しずく「それでは先輩、改めて明日はよろしくお願いします」

あなた「うん、こちらこそ」

ピッ

あなた「私から見たしずくちゃんかぁ」

再び今見てるドラマのしずくちゃんへと視線を移す。

あなた「私にしか作れない曲か……えへへ」

しずくちゃんがわざわざ私なんかに曲作りを頼んだ理由がようやくわかった気がした。

確かに、私なら他のソングライターよりしずくちゃんの事をよく知っている。いや、他のぽっと出の人なんかにしずくちゃんの事が分かってたまるか。


あなた「しずくちゃんの期待、裏切るわけにはいかないね」

231: 2020/08/05(水) 04:35:01.77 ID:G9qfH2RM
ー見学1日目ー


あなた「…………」ゴクッ

私は今、とてつもなく恐怖を覚えている。
それは目の前にいる高圧的な女性が原因だ。


「本日から3日間見学されるとしずくから伺っています。マネージャーの立石あきこです。どうぞよろしく」

あなた「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……!」

つい声が上ずった。


綺麗な黒髪を後ろで括り、背も高く、キリットしたメガネが印象的なバリバリのデキる女性だ。
ただこちらを見つめているだけなのに威圧感を感じてしまう。


あなた(なんだか怖いな……)


しずく「大丈夫ですよ。この人普段はこんな顔してますけど、自宅で猫いっぱい飼ってるほどの猫好きなんです」

あなた「え?」

事務所の奥から聴き慣れた声が助け舟を出した。

232: 2020/08/05(水) 04:42:34.89 ID:G9qfH2RM
しずく「ほら、この写真見て下さい」

あなた「わっ、可愛い……」

しずくちゃんが見せてくれた写真には、沢山の猫に囲まれたマネージャーさんが写っていた。

猫だけじゃない、猫に囲まれている顔が崩れたマネージャーさんも可愛いと思った。そのふやけた表情は、とても今のマネージャーさんからは想像できない。



マネージャー「しずく!」

しずく「あまり怖がらせないで下さい。私の大切な先輩なんですから」

マネージャー「それは十分承知です。しかしだからといって──」

しずく「もう、先輩なら大丈夫って何度も言ったじゃないですか。現場に迷惑はかけないし、情報漏洩の心配もありません!ほんと真面目なんですから……」

あなた「……」

233: 2020/08/05(水) 04:55:48.89 ID:G9qfH2RM
マネージャー「……分かりました。そもそもしずくを信用してないと幾らしずくの友人であろうと見学を許可したりしませんからね」

マネージャー「それでは私は車の用意をしているので、もう少ししたらあなたはしずくと一緒に降りてきてください。諸注意は車の中で話します」

あなた「分かりました!」


バタン



あなた「ありがとうしずくちゃん。でもちょっと意外だな。しずくちゃんもあんな茶目っ気のある感じの事するんだね」

しずく「え?あっ……確かに先輩の前ではあんまりああいう態度は取らなかったかもしれませんね。お見苦しいところをお見せしてしまってすみません……」

あなた「いや、謝らなくても。ただ普段のしずくちゃんとギャップがあって可愛かったなって」

しずく「そうですか……///ありがとうございます……」


あなた「あれもしずくちゃんなんだよね。私、もっと色んなしずくちゃんを知りたい」

しずく「色んな私を……?」

あなた「そうしたら、もっともっと今のしずくちゃんにあった最高の曲を作れると思うんだ!」


しずく「…………はい」


しずく「でも先輩に色々見られると改めて思うと何だか恥ずかしいです///」

あなた「え、しずくちゃんなんだか顔赤いけど大丈夫!?」

しずく「先輩は相変わらずで安心しました」

234: 2020/08/05(水) 05:06:25.06 ID:G9qfH2RM
しずく「それじゃあ先輩、一緒に車まで行きましょうか」

あなた「うん、ちょっと緊張するなぁ」


しずく「あ、先輩。マネージャーには曲作りのこと内緒にしておいてくださいね」

あなた「え、言ってないの?」

しずく「はい。あまり言いにくいですが、今の先輩は世間から見てまだ無名です。なるべく私の希望を尊重するとは言ってくれてはいますが、先輩にお願いしたいって相談しても今の段階では断られるに決まってますから。
契約書も書いて、曲も用意して外堀を埋めた上で相談するつもりです」

しずく「それに手続きが済んだ後なら文句は言えないはずです。いえ、言わせません。絶対に」

あなた「う、うん……」

なんだかしずくちゃんがさっきのマネージャーさんみたいというか、それ以上の鬼気迫る表情をしていてゾッとしてしまった。

それだけ本気ということなのかな。
尚更私もしずくちゃんに相応しいクオリティの曲を作らないと。

239: 2020/08/07(金) 03:45:54.12 ID:+yg5t2WW
女優「この、卑怯者!!」

しずく「ふふ……あっハッハッハっ!!何それ、負け惜しみ?」


しずく「あのねェ、あんたには女としての魅力が無かった。それだけの話よ」

女優「この……人の男奪っておいてよくもそんなこと!!」

しずく「ふふ、魅力に関しては否定しないんだ」

女優「……っ」

しずく「まぁそれも当然よね。あんたみたいな田舎くさい女、誰が好きになるのって話よ」

女優「うるさいっ!」


パンッッッ!!


あなた(わっ……痛そう……)

240: 2020/08/07(金) 03:49:28.65 ID:+yg5t2WW
しずく「これで満足?」

女優「……!」

しずく「叩いたくらいで満足するなら何度でも叩けばいいわ!でもそれであんたの価値が上がることはぜッッたいに無いッ!」

女優「うっ……」

女優「うわぁぁぁぁぁぁ」ダッ

しずく「……」


監督「カット!!」

241: 2020/08/07(金) 03:56:10.13 ID:+yg5t2WW
監督「いやぁ……一発で取れて下さいよかったよ。しずくちゃんの顔何回も叩かせるわけにはいかないからね。ホントに叩かれなくてもよかったのに」

しずく「無理言ってすみません……。できるたけリアリティを追求したかったので。それに褒めるなら彼女の演技力を」

女優「そんな!桜坂さんのおかげですよ!!」

しずく「それは当然です。これからも足引っ張らないでね」プイッ

あなた(あれ?えらく冷たいんだなぁ……)

242: 2020/08/07(金) 03:59:25.58 ID:+yg5t2WW
>>241
誤字

監督「いやぁ……一発で取れてよかったよ。しずくちゃんの顔何回も叩かせるわけにはいかないからね」

監督「それにしてもホントに叩かれなくてもよかったのに」

251: 2020/08/09(日) 02:45:33.62 ID:2C+YtTa0
あなた「すみません、ちょっといいですか?」

女優「え?あ、あなたは桜坂さんの……」


あなた「ちょっと聞きたいんですけど、しず……桜坂さんっていつもあなたみたいな共演者にあんな態度なんですか?」

あなた「なんだか冷たいっていうか……私の知ってる桜坂さんとはちょっと違う感じで」


女優「いえ、とんでもない!桜坂さんは色んな共演者からとても印象が良いって評判なんですよ!」

あなた「え、そうなんですか?」

女優「はい!さっきの態度の事ならあれは私が頼んでしてもらってるんです」

あなた「頼んで?」

女優「はい」

252: 2020/08/09(日) 02:53:56.90 ID:2C+YtTa0
ーーーー

女優『えーっと……この人が山田さんで……この人が藤原さんで……』

女優『大先輩ばっかりなんだから失礼の無いようにしないと……!』

しずく『すみません、須田泉さんですよね?』

女優『え?』

しずく『はじめまして、桜坂しずくです。今日からよろしくお願いしますね?』

女優『え……』

しずく『あれ?違いましたか!?すみません……私ってば──』

女優『いえ!!!大丈夫です!!桜坂さんは間違ってないです!!!』

女優『ただ朝早いのに自分以外の人がもういるなんて思ってなかったので、びっくりしたというか……』

女優『というか桜坂さんの方からお声掛けしていただいて思考がフリーズしてます。あ!すみません!私から声を掛けないといけないのに……』

しずく『大丈夫ですよ。私そういうの気にしませんから』

女優『うぅ……すみません……』

253: 2020/08/09(日) 03:03:36.70 ID:2C+YtTa0
しずく『それで話があるんですけど』

女優『はい!なんでしょう!』

しずく『今回の役って、須田さんがヒロインで私が悪役じゃないですか。須田さんはこれからもこうして私が普通に接するのと、ドラマと同じように冷たくされるのどっちが役に入り込みやすいですか?』

女優『それって、私がヒロインの役を演じやすいように、ってことですか?』

しずく『うん。どうかな?余計なお世話?』

女優『いえ!とんでもないです!!』


女優『ですけど……』

しずく『…………』

254: 2020/08/09(日) 03:19:21.80 ID:2C+YtTa0
しずく『私ね、演じるには役の事を理解する他にも、それを自分に落とし込む事も大切だと思ってるんです。そうすることで、より一層その役になりきることができると思っていますから』

女優『それは……はい!』


しずく『それで1話のビンタシーンなんだけど、須田さん私に本気でできますか?』

女優『え!?いや、そこは本当にビンタしなくても……』

しずく『そうかもしれないけど……気持ちの問題。ヒロインは長い間私の役にイジメられてきて、ついに怒りが爆発したっていうのがこのシーンですよね?』

しずく『序盤で役に入れ込む時間も少ない内に、私へのヘイトをヒロインと同じくらい持てますか?』

女優『それは…………というか実は桜坂さんは私の憧れの女優さんですから、そもそもいがみ合うのが抵抗あったり……』


しずく『だよね。私も須田さんの立場だったら難しいと思う。だから今のうちから練習しておくんです。撮影シーンまでに私へヘイトが持てるように』

しずく『ここのビンタシーンは1話のクライマックスだから最高の演技をしないと。お互い頑張っていいドラマを作っていきましょう!』

女優『は、はい!!頑張ります!!』


ーーーー

255: 2020/08/09(日) 03:24:45.54 ID:2C+YtTa0
女優「というわけでこのドラマが終わるまでは現場ではあの態度でいるって事になったんです」

あなた「へぇ……そうだったんですね」


あなた「素人の私からの意見になるんですけど、さっきの演技とてもリアルでした。まるで本当に長年の怒りを叩き込んだような」

女優「本当ですか?ありがとうございます。一発撮りでOK出てよかったです……。直前になって桜坂さんが本当にビンタして欲しいって言い出した時はヒヤヒヤしましたから」



「はい!皆そろそろ次のカット行っていいかな!?」

女優「あ、すみません。私はこれで」

あなた「こちらこそすみません、引き止めてしまって」

258: 2020/08/10(月) 22:56:53.82 ID:pTRg19Q+
ーーーー

監督「今日の撮影はここまで!皆次もよろしくお願いしますね!」


「お疲れ様でした!!」



あなた「しずくちゃんお疲れ様」

しずく「ありがとうございます先輩」

あなた「ごめんね、しずくちゃんの方行けなくて」

しずく「本当ですよ。私寂しくて死んじゃうかと思いました」


あなた「ごめんごめん、色々と共演者の人に聞いてて……」

しずく「この現場ではヒロイン役の子を始め色んな人にツンケンしてるから印象悪かったですよね?」

あなた「そんなことないよ。皆しずくちゃんの事優しくて真剣に役作りする人だって褒めてたよ」

しずく「そうなんですか?自分から私の事をどう思っているなんて聞く機会無いからちょっと恥ずかしいです……」

あなた「しずくちゃんの気持ちはちゃんと皆に伝わってるんだね」

259: 2020/08/10(月) 23:01:02.14 ID:pTRg19Q+
あなた「今日はお仕事終わり?」

しずく「はい、お仕事は終わりなんですが寄るところがあって……」

あなた「寄るところ?」


マネージャー「しずく、お疲れ様」

しずく「あ、マネージャーさん。お疲れ様です」

マネージャー「今日は寄っていくの?」

しずく「はい」

マネージャー「なら行きは送って行くわね。車の準備しておくから」

しずく「ありがとうございます」


しずく「先輩も見に行きますか?」

あなた「いいの?それなら私も!」

260: 2020/08/10(月) 23:03:39.56 ID:pTRg19Q+
ガチャ

しずく「こんばんは」


あ!桜坂さんだ!!

皆!!桜坂さん来てくれたよ!!


しずく「ほら、先輩も」チョイチョイ

あなた「お、お邪魔しまーす……」

261: 2020/08/10(月) 23:24:46.36 ID:pTRg19Q+
「しずく、元気にしてた?」

しずく「座長、お久しぶりです」

「久しぶりって、先週来てくれたばかりだろ?無理してない?」

しずく「いえ、大丈夫です。今日はちょっと座長に紹介したい人がいて」


しずく「先輩、この方は私が卒業後お世話になった劇団の座長、ミズキさん」

そう言ってしずくちゃんが紹介した女性。聞いたことがある。

みんなと距離を置いておいた中でもしずくちゃんが20になった時お酒が飲みたいというので、今も二人で落ち合っているお台場のバーに連れて行ってあげた時、劇団の話に出てきたっけ。
確かとても尊敬する女優さんだとかなんとか。


そういえば私、この時他の皆には会わなかったのにしずくちゃんに会ってたんだよね。とはいえこの一回限りだけど。

何でだろう。やっぱりちょっと寂しかったのかな。

262: 2020/08/10(月) 23:33:28.58 ID:pTRg19Q+
しずく「先輩?」

あなた「あ、ごめん!昔しず……桜坂さんから聞いたことがあります!本日はよろしければ見学させていただければと……」

座長「こちらこそしずくから耳にタコができる程聞いてるよ。学生時代お世話になった先輩だって」

あなた「え?」

しずく「座長!わざわざ言わなくても……///」

座長「あっはっは。ごめんごめん」


座長「見学は構わないけど、今のしずくは舞台の出演予定無いだろう?何を見てもらうんだ」

しずく「いつものを見ていただこうかと」

あなた(あれっ 舞台の練習するわけじゃないんだ)

265: 2020/08/13(木) 02:42:14.81 ID:OfRIkFCf
ハムレット役「お前を愛したこともあった」

オフィーリア役「わたしもそのように受け取りました」

ハムレット役「そう受け取ってはならなかったのだ。
どんな美徳を接木しても、古くなった木が実を結ぶわけではない。
俺はもうお前を愛してはおらぬ」

オフィーリア役「わたしがひどい思い違いをしていたのですわ」


ハムレット役「尼寺へ行け!」


しずく「……」


ハムレット役「どうですか?」


しずく「…………」スーッ

しずく「尼寺へ行けッ!!」


しずく「うーん……」

266: 2020/08/13(木) 02:44:56.17 ID:OfRIkFCf
しずく「ハムレット、台詞覚えるのは大変?」

ハムレット役「え、はい……長い台詞を覚えるのは少し苦手で……」

しずく「さっきの場面だけど、台詞というよりは説明のように感じたんです。多分台詞を間違えないように、って思ってるからだと思う。私も同じだったから」


しずく「そう受け取ってはならなかったのだ!どんな美徳を接木しても古くなった木が実を結ぶわけではない!俺はもうお前を……愛してはおらぬ」

しずく「一息で畳み掛けるように言える?」

ハムレット役「はい!」


ハムレット役「そう受け取ってはならなかったのだ!どんな美徳を接木しても古くなった木が実を結ぶわけではない!俺はもうお前を愛してはおらぬ!!」


ハムレット役「どうですか?」

しずく「そのまま次、オフィーリア」


オフィーリア役「わたしがひどい思い違いをしていたのです──」


ハムレット役「尼寺へ行け!!」


しずく「もう一回お願いします」 


オフィーリア役「わたしがひどい思い違いをしていたので──」


ハムレット役「尼寺へ行けッ!!!」

267: 2020/08/13(木) 02:51:17.85 ID:OfRIkFCf
しずく「二人ともどうだった?」

ハムレット役「さっきよりは苦悩を表現出来たと思います!」

しずく「うん、私もそう思う」


しずく「……オフィーリア、今オフィーリアはどんな気持ちでこの台詞を喋っていると思う?」

オフィーリア役「えっと……一度は結ばれたハムレットをどうしても自分の物にしたいっていう気持ち……ですか?」

しずく「ですか?じゃなくていいよ」

オフィーリア役「あ……一度は結ばれたハムレットをどうしても自分の物にしたいっていう気持ちだと思って演じています!!」

しずく「本気でそう思ってる?」

オフィーリア役「えっと……はい」


しずく「私には必死さよりも悲しさが前面に出てるように感じられたかな。その気持ちなら悲しさが前に出るのはちょっと違うと思うの」

オフィーリア役「確かに……」

しずく「二人の演技はとても丁寧で綺麗だよ。でも、このシーンは綺麗なだけじゃ駄目だと思う。お互いの感情が爆発してるんだから、役者も感情を爆発させて演技をしなきゃ……って」

しずく「」スーッ


しずく「わたしがひどい思い違いをしていたのです!」


しずく「尼寺へ行けッ!!!!」



しずく「……って偉そうに言ってる私もまだまだなんだけど」

しずく「今でも感情を込めてるのかもしれないけど、まだ足りない。ここは劇の中でも特に重要なシーンだから、もっともーっとハムレットとオフィーリアの心情を理解した上で、完全に本人になったつもりでもう一回皆でやってみよう」

「「はい!!」」

268: 2020/08/13(木) 02:59:08.54 ID:OfRIkFCf
あなた「なるほど、しずくちゃんは後輩に演技指導するためにここに来たんですね」

座長「そんな大層なもんじゃないよ。あの子なんてまだまだひよっこさ。指導なんかできるもんか」

あなた「え?でもあれ……」

座長「あれはね、団員が行き詰まっている所を、しずくを含めた団員達だけでどうしたらいいか気づかせてるんだ。アドバイスともちょっと違う。しずくも当人達と一緒に考えてるんだ」

座長「だからさっきは~ですか?ってしずくが正解を持ってるような言い方を、自分の意見をしずくに伝えるように訂正させたんだ。しずくが団員の方に気付かされるなんてのもしょっちゅうだしね」

あなた「へぇ……そうなんですね」

269: 2020/08/13(木) 03:02:22.01 ID:OfRIkFCf
あなた「なんか、ちょっと意外です」

座長「何が?」

あなた「しずくちゃん、今は出ずっぱりの人気女優になって、完璧なイメージがあったんですけど、後輩に言われて初めて気付く、なんて事もあるんだなって」

座長「ぷっ」

270: 2020/08/13(木) 03:06:32.42 ID:OfRIkFCf
「あっはっはっはっはっ!!」

しずく「」ビクッ


しずく「ざ、座長……?」

座長「おっと。何でもないよ。あんたらは芝居を続けな」



座長「ったく、笑わせんじゃないよ。さっきも言ったろ?まだまだひよっこだって」

座長「それに視点なんて人それぞれなんだから、素人ベテランに限らず他人から学ぶ事が何も無いなんてことないよ」

あなた「それはそうかもしれませんけど、でもやっぱり今のしずくちゃんをひよっこって言われても繋がらなくて」

座長「皆そう言うよ、しずくは凄いってね」

271: 2020/08/13(木) 03:12:58.23 ID:OfRIkFCf
座長「でも18からずっと見てきた私には分かる。本当のあの子は皆が思ってるようなのとはちょっと違う」

座長「あんたこそ、高校の時からずっと見てきたんだろ?寧ろ私よりあの子の事を知ってるんじゃないのかい?」

あなた「それがその……個人的な事情で卒業してから距離を置いてまして……。20になった時にバーに連れて行ったのを除けば最近までずっと会ってなかったんです。だから、過程のしずくちゃんを知らなくて」

座長「なるほどね……通りであんたの事は高校生の頃の話しか喋らなかったわけだよ」

272: 2020/08/13(木) 03:21:02.52 ID:OfRIkFCf
あなた「あの、よかったらそれまでのしずくちゃんの事教えてもらっていいですか?それに本当のしずくちゃんって言うのも」


座長「今までっていうと、正にあんな感じさ」




しずく「ここのオフィーリアの気持ちは──」




座長「ストーリーや背景は勿論、すべての役の心情を理解し、演じる人物を完全に憑依させたように演じる。まるでその人物が本当にそこに存在しているかのような演技。この子なら伸びる、そう思ったよ」

座長「ある日朝ドラに受かって、そこからはもうトントン拍子でね。あとはもうずっとテレビに出ずっぱり状態。ここで舞台をやることも殆ど無くなってちょっぴりだけど寂しいよ」

273: 2020/08/13(木) 03:28:38.37 ID:OfRIkFCf
座長「あとなんだっけ、本当のあの子?それは本人に直接聞くか観察して察しな。私からは何も言えないよ」

あなた「ですよね……。すみません」

あなた(しずくちゃんの事知れると思ったんだけど、流石にそんな上手く行かないよね)


座長「でも1つだけ言っておくと」

あなた「え?」

座長「あの子ほど演じるのがうまい子、私は見たことないね」

276: 2020/08/14(金) 21:10:38.09 ID:V/EQiT0z
あなた「しずくちゃん遅くまでお疲れ様」

しずく「あ、先輩。先輩こそ遅くまですみません」

あなた「いやいや。こんな時間まで頑張ってるなんて凄いね」

しずく「別に毎日ってわけじゃないですし。それに、このくらいの事皆やってますよ」

あなた(そうかな……?)


あなた「この劇団には頻繁に来てるの?」

しずく「月に何度かは顔を出せるようにはしていますね。本当はもっと顔を出したいんですが、私のキャパでは……」

あなた(十分凄いと思うけど)

277: 2020/08/14(金) 21:22:45.44 ID:V/EQiT0z
しずく「いろんな仕事が次々に舞い込んできて劇に参加できなくなって。それでも劇に関わりたいというのと、お世話になった劇団に恩返しがしたかったんです」

あなた「それで指導みたいな事をしてるんだ」

しずく「座長から聞いてるかもしれないですけど私なんてまだまだですよ。指導なんて」

あなた「言ってた言ってた。一緒に学んでるだけだって」


しずく「はい、そうです。もっともっと演技について学びたいんです」


あなた(しずくちゃん、やっぱり真面目で良い子だなぁ)


あなた(……うん、今日一日で今のしずくちゃんのイメージが少し固まってきたかな)

278: 2020/08/14(金) 21:30:33.52 ID:V/EQiT0z
ー見学二日目ー


あなた「失礼しまーす」ガチャ

しずく「あ、先輩。おはようございます」

あなた「しずくちゃん!早いんだね」

しずく「はい、いつも早めに事務所に来て今日の仕事の準備をしているんです。自宅じゃイマイチ締まらなくて」

あなた「これまた意外。自宅でもシャキッとしてるかなって思ってた」

しずく「……嫌でしたか?」

あなた「え、何が?」

279: 2020/08/14(金) 21:37:07.01 ID:V/EQiT0z
あなた「でも分かるよ。一人暮らしってどうしてもだらけちゃうよね」

しずく「……ですよね!先輩も同じで嬉しいです!」


しずく「先輩、あんまり意外意外言わないでくださいね」

あなた「え?」

しずく「私だって先輩と同じ土台に立っている一女性なんですから!あまり神格化されても困っちゃいます」

あなた「ごめん、気をつけるようにはしてるんだけどまだちょっとね……。気をつけるよ」

あなた(いけないいけない。このままだといつの間にかしずくちゃんを持ち上げるだけの曲になっちゃうかもしれない)

280: 2020/08/14(金) 21:40:59.86 ID:V/EQiT0z
あなた「あ、そういえば今度しずくちゃんの家行っていい?」

しずく「へ!?」


しずくちゃんの落ち着いた雰囲気が一変。少し間が抜けた声が事務所に響いた。


しずく「いいいいえ、それは困ります。乙女の秘密です……」

あなた「え?あ、うん……ごめんね」

しずく「いえ……」


あなた(そりゃあ見られたく無いものとかあるかもしれないよね。ちょっと無神経だったかな)

281: 2020/08/14(金) 21:49:19.57 ID:V/EQiT0z
あなた「ところで今日もドラマの撮影があるらしいけど、昨日のドラマ?」

しずく「いえ、別の物です。そちらでは昨日のドラマほどメインというわけでは無いですが」

あなた「なら昨日とはまた違ったしずくちゃんが見られそうだね。楽しみだよ!」

しずく「なるべく多くの現場を見ていただけるように見学の日程を合わせましたから、曲作りの参考になれば幸いです。ぜひ色んな私を見ていってください」

あなた「うん!」

306: 2020/08/25(火) 00:42:23.45 ID:Rz4JMFp2
今日のドラマ撮影は同じお仕事物でも大分雰囲気が違う。

昨日の現場は機能同様恋愛要素も無い事は無いが、メインは推理要素だ。
 
検事役「山田……仕事だ。このファイルの人物リストの検索頼む」

しずく「えぇ……この後ケン君のライブ配信あるから無理なんスけど。知ってます?ライバーってヤツ」

検事役「知らん。無理じゃなくて、嫌なだけだろ。頼むから」

しずく「いや、マジで無理ですから。ケン君のライブ配信は全ての事象よりも優先されます」

検事役「はぁ……分かったよ」


検事役「あーあ、引き受けてくれたらこれあげようと思ったのになー」

しずく「…………?んんっ!?」

しずく「そ、それ!ケン君のサイン!?しかも私の名前入ってる……」

しずく「サイン会とかやらないのになんで!?ってか何であんたが持ってんスか!!」

検事役「引き受けてくれたら渡すよ」ヒョイ

しずく「……分かりましたよ」

検事役「助かる。これが目星をつけてる奴のリストだ。こいつらの素性についてできる限り洗い出して欲しい」

しずく「それで、期限はいつまでですか?」ペラペラッ

検事役「大体明日くらいまでには──」

しずく「舐めるな。配信までに終わる」

検事役「……そうか!さっすが山田!お前が味方でほんっとよかった!!」ギュッ

しずく「あーもう!分かったから離れろ~!」

307: 2020/08/25(火) 00:46:13.82 ID:Rz4JMFp2
しずくちゃんの役は普段はぐうたら、やる時はやるといった役柄だった。
これまた昨日のドラマとは雰囲気が全然違う。

あなた(ちょっと彼方さんみたい)

でも彼方さんとも違う。
勿論しずくちゃんでも無い。
そこにいたのは、間違いなくドラマ内の人物である山田本人だった。

あなた(演技の幅の広さをこれでもかと言うほど感じる。カメレオン俳優ってこういうことを言うんだろう)
  

それにしても難しいなぁ。
色んなしずくちゃんは見れるけど、演じている時のしずくちゃんは別人のようなものだし。
これをしずくちゃん自身の曲としてどう落としこもうか……。

308: 2020/08/25(火) 00:51:27.27 ID:Rz4JMFp2
検事役「え、桜坂さんの印象?そうだな……とにかくお芝居に真剣。心情を上手く汲み取っててね、まるで本当に物語の人物と話してるって思うくらい」

検事役「いつも普段とのギャップにめちゃくちゃ驚かされてるよ」

検事役「普段はね、皆に優しくて……。そうそう、よく皆にお菓子配ってくれるよ。めっちゃ気配りできる人っていう印象だね」

検事役「ところで君桜坂さんのお友達?桜坂さん誰かと付き合ってるーとか聞かないんだけど、何か知ってたりしない?」

検事役「知らない?そっか、ありがとう。やっぱガード固いな……」

309: 2020/08/25(火) 00:56:27.23 ID:Rz4JMFp2
あなた「しずちゃんお疲れ様」

しずく「ありがとうございます先輩。皆私の事なんて言ってましたか?」

あなた「えー?秘密」

しずく「先輩のいじわる……」

あなた「ごめんごめん。でも皆しずちゃんの事褒めてたよ」

しずく「ホントですか?嬉しいです!」

310: 2020/08/25(火) 00:58:16.28 ID:Rz4JMFp2
しずく「先輩、申し訳ないんですけど、すぐに次の現場に行かなくちゃいけなくて」

あなた「あ、ごめん。それは早く行かないとね」

しずく「歩きながら話しましょう」



しずく「それと先輩……」

あなた「ん?」

しずく「次の現場ですけど…………笑わないでくださいね?」

あなた「……?」

311: 2020/08/25(火) 01:08:47.55 ID:Rz4JMFp2
司会者「本日のゲストは!大人気の女優、桜坂しずくさんでーす!!」

しずく「よろしくお願いします!」ペコッ

パチパチパチ

あなた(へぇ、バラエティか。そっか、女優だからってドラマの撮影ばっかりなわけじゃないよね)


司会者「いやー目の前で見るとホンマにキレイやな。いわゆるガチ恋も大勢いるとか。うちの息子もね、しずくちゃんしずくちゃん言うてますわ」

しずく「ありがとうございます」

司会者「それでしずくちゃんと言えばね、SNS等でよくやらしい声言われてますけど」

しずく「や、それよく言われますけどそんなにやらしいですか!?」

共演者「自覚無いってのが1番怖いですよ」

しずく「私普通に喋ってるだけなんですけど!!」

司会者「なら素でやらしい言うことやな」

しずく「いや、それも違いますって!!やらしくないです!!」

312: 2020/08/25(火) 01:15:40.33 ID:Rz4JMFp2
司会者「まぁそんなしずくちゃんですけれどもね、事務所からNGが出ている意外な物があると」

司会者「それがこちら」

バンッ

司会者「球技シーン」

しずく「…………」

司会者「これは、どういうことですか」

しずく「スポーツする役に何度か挑戦させていただいてるんですけど、球技だけが昔からほんっとダメで」

しずく「何回やってもいい絵が撮れないんで、監督が痺れ切らしてしまって。球技選手の役なんですけど私だけ球技シーン撮影無しっていう」

しずく「その時は脇役だったから良かったんですけど、でもそれ以来球技を扱う役は一切来ませんね……」

司会者「はい、ということでね。どれだけしずくちゃんが酷いか見てもらおうということで!スタジオに卓球台をご用意しましたー!!」

しずく「やめてー!」

313: 2020/08/25(火) 01:24:28.63 ID:Rz4JMFp2
司会者「じゃあ私もそんなうまないですけど、ちょっとラリーやってみましょうか。しずくちゃんからどうぞ」

しずく「この燃えたぎる魂をピンポン玉に込めます!!」

しずく「とあああーーーっ!」

スカッ

しずく「たぁぁぁぁ!!!」

スカッ


司会者「全然こっち来んやないか!!」

アハハハハハ

あなた(しずくちゃん……あの頃から全然変わってない……)

319: 2020/08/25(火) 23:53:32.64 ID:Rz4JMFp2
しずちゃんはしずまで入力した時の予測変換による誤植です……

335: 2020/09/01(火) 22:10:12.49 ID:ubFFJAoo
しずく「笑わないでって言ったじゃないですか……」

あなた「ごめんごめん。でも役者としてはできない事があるのはマイナスかもしれないけど、私は可愛いと思うよ」

しずく「可愛っ!?」

あなた「うん。それに、そういうのも人気の秘密だと思うよ?しずくちゃんでも苦手な事あるんだなって親近感が湧くというか」

あなた「完璧すぎるとかえって敬遠されるって言うし」


しずく「うぅ……それでもあれは恥ずかしかったです///今度こそは、とは思ったんですけど」

あなた「ここ数日凄い成長してるんだなぁって思ったけど変わってない部分もちゃんとあるんだなって安心しちゃった」

しずく「こんな事で安心しないで欲しかったです……」

336: 2020/09/01(火) 22:12:43.68 ID:ubFFJAoo
コホン

しずく「それより!見学は明日で終わりですけど何か掴めそうですか?」

あなた「明日は映画の撮影に、その後雑誌のインタビューだっけ」

あなた「色々見させてもらったおかげでかなりイメージが沸いてきたかな」

しずく「本当ですか!?それはよかったです!」


しずく「あと1日、よろしくお願いしますね!」

あなた「うん!こちらこそよろしく、しずくちゃん!」

337: 2020/09/01(火) 22:27:37.59 ID:ubFFJAoo
ー見学三日目ー


共演女優「すごくお芝居しやすかったです。私の台詞まで教えてもらって」

共演女優「でもたまにプライベートで話している時思うんです。目の前の桜坂さん自身も演じている役の1つなんじゃないかって」

共演女優「まるでシェイクスピアの【この世は舞台、人はみな役者だ】という言葉みたいに……」


共演女優「まぁ桜坂さんに限らず人間誰しもそんなものだと思いますけどね」


あなたもそうなんじゃないですか?

338: 2020/09/01(火) 22:30:54.28 ID:ubFFJAoo
──桜坂さんは沢山の作品に出演されていますが、自分の出た作品を見返すことはありますか?

出演させていただいた作品は全て時間を見つけて見返しています。毎回何かしら発見や反省がありますから。もうダメ出しだらけですね。毎回ツッコんでいます、過去の自分に。


──趣味はお芝居を見ることということで、やっぱり休日の過ごし方もお芝居をみているんですか?

それはもちろんなんですけど、他にも犬の動画を見て癒やされたりしていますね。昔実家で犬を飼っていたんですけど、今は1人暮らしなのでどうしても飼えなくて。

──犬派なんですね。

はい、うちの子も素直で私に甘えてくるのがほんとに可愛かったんです!

339: 2020/09/01(火) 22:33:38.38 ID:ubFFJAoo
──今叶えたい夢等はありますか?

役者としてはハリウッドデビューですね。
そのために、最近は英語を頑張って勉強しています。主に海外の舞台を見て勉強していますね。楽しく覚えられるんです。


──役者としては、というと別の夢があったりするんですか?

鋭いですね。(笑)私個人としては近いうちにアーティストデビューしたいなと思っていたり。

──今噂になっていますよね。大手からの声掛けも断っているとか。

はい、どうしても一緒に仕事をしたい人がいて。今頑張って交渉しているところです。だから皆さんにはもう少し待っていただければ。


──それは私も一桜坂さんのファンとして楽しみです!本日はありがとうございました。


こちらこそ、ありがとうございました。


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