璃奈「部室に行ったらエマさんが寝てた」【SS】

りな SS


1: 2021/01/03(日) 20:00:48.85 ID:538xvXCj
りなエマ。

3: 2021/01/03(日) 20:01:50.79 ID:538xvXCj
璃奈「………」

エマ「………Zzz…」スースー

璃奈(……珍しい事って、重なるものなんだな)


璃奈(昼休み、忘れ物を取りに部室を訪れたら)

璃奈(いつもは誰かしらお弁当を広げて談笑しているテーブルには、誰の姿もなくて)

璃奈(代わりに、部屋の隅にあるソファーで誰かが静かな寝息を立てていて)

璃奈(おまけにそれが、エマさんだっていうんだから)

5: 2021/01/03(日) 20:02:16.78 ID:538xvXCj
璃奈(…頭には、枕代わりのクッション。高さを確保するためか、2段重ねにしてる)

璃奈(身体には、普段は誰かの膝掛けとして──あるいは彼方さんの掛け布団として──使われている、タータンチェックのブランケットがふわりと被せられている)

璃奈(ソファの肘掛けに乗せられた両の足には、靴は嵌っておらず)

璃奈(視線を下にやると、ソファの脚元にきっちりと揃えて置かれているローファーが目に入った)

璃奈(満腹になった勢いに任せて、暫しの午睡と洒落込む──そんな類のものじゃなくて)

璃奈(…本当に、初めから仮眠を取るつもりでここに来たんだ)

7: 2021/01/03(日) 20:02:37.47 ID:538xvXCj
璃奈(…そういえば、エマさん)

璃奈(一昨日ライブがあったばかりなのに、昨日は新しいPVの撮影と新聞部のインタビュー)

璃奈(その間も服飾同好会の手伝いに顔を出してたみたいだし)

璃奈(…やっぱり、疲れてたのかな)

8: 2021/01/03(日) 20:02:59.96 ID:538xvXCj
エマ「………」スピー

璃奈(──…エマさん)


──私、エマ・ヴェルデっていうんだ。よろしくね、璃奈ちゃん♪

璃奈(私の分まで笑ってくれるみたいに、めいっぱいの笑顔で同好会に迎え入れてくれた)


──わあ、すごいすごい! 身体、すごく柔らかくなってるよ、璃奈ちゃん!

璃奈(人並み以下の運動神経な私相手でも、優しく、でも決して甘やかさず、根気強く練習に付き合ってくれた)


──はい、お水。休憩も必要だからね♪

──璃奈ちゃんは頑張り屋さんだけど、頑張りすぎちゃうところもあるから。

──だから、見守ってあげる人がいないと、ね?

璃奈(いつだって、近くから、遠くから、私を見守ってくれていた。見ていてくれていた)


璃奈(───じゃあ、私は?)

9: 2021/01/03(日) 20:03:20.53 ID:538xvXCj
璃奈(私は、エマさんに何かしてあげられた? 何をしてあげられた?)

璃奈(私は──…)

璃奈(………)


璃奈「…………」

璃奈「……──よし」

11: 2021/01/03(日) 20:04:36.25 ID:538xvXCj
トコトコ

ポスン

 

スッ

璃奈「…ん、っしょ……」

璃奈(落とさないように…起こさないように…)

璃奈「……ほっ」ポフッ

12: 2021/01/03(日) 20:05:29.19 ID:538xvXCj
璃奈「……おぉ…」

璃奈(──膝枕って、初めてやったけれど)

璃奈(人の頭って、思ったより重い)

璃奈(……でも、それ以上に──温かい)

璃奈(エマさんの頭から、肩から、背中から、じんわりと伝わってくる柔らかい熱が、とても心地良くて)

璃奈(膝枕をしている私の方まで、気持ちよくなってくる)

13: 2021/01/03(日) 20:06:09.02 ID:538xvXCj
エマ「……ん…ぅ…」モゾモゾ


璃奈「!」ビクッ

璃奈(マズい、起こしちゃった…!?)


エマ「…ん、っふふ…えへ……メー、ヴェ…ぇ…」

璃奈「………」ドキドキ

璃奈(…ね、寝言……?)


エマ「…ふふ…みん…なぁ、おい…でぇ……」

璃奈(メーヴェ、って…確か、エマさんの実家で飼ってる…)

璃奈(じゃあ、エマさんが今見てるのは……)

14: 2021/01/03(日) 20:06:54.29 ID:538xvXCj
 
エマ「…う、ん……」

 

エマ「………Mamma…」
 

15: 2021/01/03(日) 20:07:55.77 ID:538xvXCj
璃奈「────…!!」

 

璃奈(──その時の私は、ただ)

璃奈(自分の膝の上で寝息を立てているエマさんを、思いっきり抱き締めてあげたい衝動を、必死に堪えながら)

璃奈(震える手で、エマさんの髪をさらさらと撫でるだけで──それで、精一杯だった)

16: 2021/01/03(日) 20:09:17.35 ID:538xvXCj
後半へ続く (CV: キートン山田)

26: 2021/01/03(日) 20:11:55.03 ID:538xvXCj
>>19
うわ素で勘違いしてました恥ずかしい
ご指摘ありがとうございます

20: 2021/01/03(日) 20:10:43.60 ID:538xvXCj
レスが足りないので保守します
25でしたっけ?

31: 2021/01/03(日) 23:11:31.81 ID:538xvXCj
────────
──────
────
──

エマ「──ん、んん…」モゾモゾ


エマ(……?…)

エマ(何だか、後頭部に違和感がある…ような)

エマ(布張りのソファのそれとは明らかに違う、もちっとした柔らかさと弾力。その奥に感じる、芯のような硬さ。それに)

エマ(微かに伝わってくる、温もり──)

32: 2021/01/03(日) 23:12:02.85 ID:538xvXCj
璃奈「あ、起きた」ヒョコッ

エマ「!? !? 璃奈ちゃん!?」

エマ「え!? え!? 私もしかして膝枕されてる!?」

璃奈「おはよう、エマさん」

エマ「お、おはよう……っじゃなくて! ごめんね、重いよね、今どくから──」

璃奈「私は大丈夫。エマさんはそのまま横になってて」

エマ「でも」

璃奈「いいから。そのまま、聞いて」

33: 2021/01/03(日) 23:12:40.79 ID:538xvXCj
璃奈「エマさん──寂しいの?」

エマ「」ピタッ

エマ「……そんな事ないよ? どうしてそんな

璃奈「寝言、言ってた」

エマ「──………」

璃奈「イタリア語は、よく分からないけれど。…たぶん、お母さん、って言ってた」

エマ「………」

璃奈「…ねえ、エマさん」

34: 2021/01/03(日) 23:13:34.63 ID:538xvXCj
璃奈「エマさんは、いつでも優しくて、誰にだって優しくて」

璃奈「まごころを、みんなに分け隔てなく分け与えてくれる──そういう人」

璃奈「私も、その優しさに何度も救われてきた」

璃奈「でも──じゃあ、エマさんは?」

エマ「え…?」

璃奈「エマさんは、誰かに分けてもらえてるの? 誰が分けてくれるの?」

璃奈「エマさんは、自分が享受すべき分まで、誰かに分け与えてしまっていて」

璃奈「だから、寂しい、って。足りてないって、思ってる。…違う?」

エマ「………」

35: 2021/01/03(日) 23:14:25.92 ID:538xvXCj
璃奈「…エマさんは、みんなのお姉さんで、みんなのお母さん」

璃奈「同好会のみんなからそう言われてて、きっとエマさん自身も──たぶん無意識のうちに──そのロールを全うしようとしてる」

璃奈「だから私も、きっと他のみんなも、たぶんエマさんだって、忘れてしまいそうになるけれど」

璃奈「エマさんだって、私たちと同じ、高校生の女の子なんだ」

璃奈「──だからエマさんにも、きっと必要。優しさを、分け与えてくれる誰かが」

36: 2021/01/03(日) 23:15:10.80 ID:538xvXCj
エマ「………」

璃奈「……いいよ、起き上がって」

エマ「………」ムクリ

璃奈「……エマさん」

璃奈(ソファに座ったままの、エマさんの背中に声を投げかける)

璃奈「もし──もし私に、少しでもその役割を務めることができるのなら」

璃奈(そこで言葉を切ったのを合図に、エマさんはゆっくりとこちらを振り返ると)

璃奈(その目が、わずかに見開く)


璃奈「私で、試してほしい」


璃奈(エマさんが、私に向かって何度もしてくれたように──私は広げた両手を、エマさんに向かって差し出した)

37: 2021/01/03(日) 23:15:51.21 ID:538xvXCj
エマ「………」

エマ「……いい、の…?」

エマ「…だって、私…みんなの…」

璃奈「……」フルフル

璃奈「…今は私と、エマさんだけだから」

エマ「………」

エマ「……っ…」

38: 2021/01/03(日) 23:16:39.55 ID:538xvXCj
璃奈(ソファの軋む音)

璃奈(エマさんはソファの上に膝立ちになって、おずおずと私のほうへ両手を差し向ける)

璃奈(その手が、私の手をすり抜けると)

璃奈(エマさんはそのまま、私の胸の中へ、ゆっくりと滑り込んでいった)

璃奈(エマさんが両手を私の背中に回すと、それに応えるように私も、エマさんの頭を撫でるように軽く抱きかかえる)

39: 2021/01/03(日) 23:17:16.44 ID:538xvXCj
璃奈「……どう?」

エマ「…なんだか、すごく新鮮」

エマ「誰かに抱き締めてもらうのって、本当に久しぶりだから」

エマ「──あったかいなあ」

璃奈「…ふふっ、よかった」

エマ(璃奈ちゃんはそう言って、満足そうに微笑んだ)

40: 2021/01/03(日) 23:18:48.21 ID:538xvXCj
エマ(……──『微笑んだ』?)

エマ(私は思わず、璃奈ちゃんの方へ顔を向ける)


エマ「───……」


エマ(今まで決して、見上げることのなかった彼女の顔)

エマ(その口元はわずかに、けれど確かに、柔和な微笑をたたえていた)

エマ(その様は、まるで──)

41: 2021/01/03(日) 23:20:32.04 ID:538xvXCj
────────
──────
────
──

ガチャッ


エマ「璃奈ちゃん、いるー?」

璃奈「あ、エマさん」

エマ「……」キョロキョロ

エマ「…みんな、まだ来てないんだね」

璃奈「うん、そうみたい」

エマ「……じ、じゃあ、その…早速だけど」

璃奈「…うん」

 

スッ

 

璃奈「──おいで、エマさん」

 
 

43: 2021/01/03(日) 23:21:53.48 ID:538xvXCj
おしまい
お粗末様でした

47: 2021/01/03(日) 23:40:59.05 ID:LLZv3P+i

最高

48: 2021/01/03(日) 23:42:23.13 ID:G/tLxceB
璃奈ママもいいな

49: 2021/01/03(日) 23:47:31.17 ID:SnGmOvcr
素晴らしいりなエマでした!!!!!

51: 2021/01/04(月) 00:58:22.83 ID:Qwii+US1
素晴らしい

52: 2021/01/04(月) 01:26:46.57 ID:iQd2wYz9
脳が回復する

50: 2021/01/03(日) 23:48:46.20 ID:b/MkA3eV
こういうのでいいんだよ

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1609671648/

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