2:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:55:41 ID:???00
「今日は何の日だと思いますか、かのんさん」
ある日の放課後、恋ちゃんにそう呼び止められた。
夕日に恋ちゃんの綺麗な黒髪が映えて、なんだか見てるとドキドキする。
「今日?何だったかな、みんなの誕生日じゃないよね?」
聞かれて今日が何の日か思い返してみるが、さっぱり思い当たらない。
敬老の日はもう過ぎちゃったし、すみれちゃんの誕生日はまだ先。
じゃあ私が知らない生徒の誕生日かな?生徒の誕生日を全員記憶しているという恋ちゃんならあり得る。
その子の誕生日プレゼントを考えたいから私に付き合ってほしいとか。
「違いますよ。さすがにそこまでかのんさんに頼んだりしません」
どうやら無意識に口に出していたらしく、私の考えはあっさりと否定された。
ある日の放課後、恋ちゃんにそう呼び止められた。
夕日に恋ちゃんの綺麗な黒髪が映えて、なんだか見てるとドキドキする。
「今日?何だったかな、みんなの誕生日じゃないよね?」
聞かれて今日が何の日か思い返してみるが、さっぱり思い当たらない。
敬老の日はもう過ぎちゃったし、すみれちゃんの誕生日はまだ先。
じゃあ私が知らない生徒の誕生日かな?生徒の誕生日を全員記憶しているという恋ちゃんならあり得る。
その子の誕生日プレゼントを考えたいから私に付き合ってほしいとか。
「違いますよ。さすがにそこまでかのんさんに頼んだりしません」
どうやら無意識に口に出していたらしく、私の考えはあっさりと否定された。
4:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:56:21 ID:???00
「でも、みんなの誕生日というのは間違っていませんよ」
ん?どういうことだろう?
みんな…みんな……Liella!のみんなってことかな?
Liella!……
「あ!もしかして今日って、Liella!って名前を付けた日?」
「ふふ、正解です」
半ばダメもとで恋ちゃんに答えを言うと、見事にマルをもらえた。
そっか、一昨年の今日にLiella!って名前をつけたんだ。
名付けておきながら忘れていたが、今日は結ヶ丘女子高校スクールアイドル部に「Liella!」という名前を付けた日。
あの時何の名前もなかった5人に、名前を付けた日。
恋ちゃん、覚えていてくれたんだ。
…いや、忘れてたのが私だけで他の3人も覚えてたりするのかな。
だとしたらちょっと嫌だけど。
ん?どういうことだろう?
みんな…みんな……Liella!のみんなってことかな?
Liella!……
「あ!もしかして今日って、Liella!って名前を付けた日?」
「ふふ、正解です」
半ばダメもとで恋ちゃんに答えを言うと、見事にマルをもらえた。
そっか、一昨年の今日にLiella!って名前をつけたんだ。
名付けておきながら忘れていたが、今日は結ヶ丘女子高校スクールアイドル部に「Liella!」という名前を付けた日。
あの時何の名前もなかった5人に、名前を付けた日。
恋ちゃん、覚えていてくれたんだ。
…いや、忘れてたのが私だけで他の3人も覚えてたりするのかな。
だとしたらちょっと嫌だけど。
5:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:56:50 ID:???00
「そうだったんだ。でも、別に今日何かプレゼントとか用意してないよ?」
そんな大事な日だというのにプレゼントの準備も何もしてないのはリーダーとしてどうかと思うが、今から用意できるものでもないので正直に白状する。
怒られるかも、と一瞬身構えたが、目の前の柔らかい笑顔でその不安は拭われた。
「別にそういったつもりはありません。ただ、私が個人的にお祝いしたいことなので」
恋ちゃんは笑顔のままそう言った。
個人的にお祝いするなら、なんで私に?
そんな疑問が浮かんで間もなく、言葉が紡がれた。
そんな大事な日だというのにプレゼントの準備も何もしてないのはリーダーとしてどうかと思うが、今から用意できるものでもないので正直に白状する。
怒られるかも、と一瞬身構えたが、目の前の柔らかい笑顔でその不安は拭われた。
「別にそういったつもりはありません。ただ、私が個人的にお祝いしたいことなので」
恋ちゃんは笑顔のままそう言った。
個人的にお祝いするなら、なんで私に?
そんな疑問が浮かんで間もなく、言葉が紡がれた。
6:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:57:23 ID:???00
「かのんさん。あの時、私たちに名前をくれてありがとうございます」
そっと目を閉じ、歌うように続ける。
「スクールアイドルとなって間もなかった私に、この学校を背負う私たちに、Liella!という名前を与えてくれてありがとうございます」
柔らかく、穏やかに、それでも強く強く想いのこもった口調で言葉が続く。
「何より、あの時さんざんひどいことをしてしまった私を受け入れ、私も含めてLiella!という存在を生んでくれて、本当にありがとうございます」
声に、ほんの少しの嗚咽が混じった。
だけど、その言葉は本当に恋ちゃんの気持ちがこもっていて、本当にうれしくて、聞いているこちらが泣きそうになった。
そっと目を閉じ、歌うように続ける。
「スクールアイドルとなって間もなかった私に、この学校を背負う私たちに、Liella!という名前を与えてくれてありがとうございます」
柔らかく、穏やかに、それでも強く強く想いのこもった口調で言葉が続く。
「何より、あの時さんざんひどいことをしてしまった私を受け入れ、私も含めてLiella!という存在を生んでくれて、本当にありがとうございます」
声に、ほんの少しの嗚咽が混じった。
だけど、その言葉は本当に恋ちゃんの気持ちがこもっていて、本当にうれしくて、聞いているこちらが泣きそうになった。
7:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:58:00 ID:???00
「恋ちゃん」
私からも言葉を返す。
「お礼を言いたいのは私もだよ」
「え……?」
ずっと恋ちゃんに言えなかったこと。
「曲がりなりにも、恋ちゃんは学校を守ろうとしてくれていた。お母さんの思いを背負って、学校を続けたいって思いながら一生懸命に行動していた」
あの時、恋ちゃんは間違ったのかもしれない。
だけど、それは全部じゃない。
あの思いは紛れもなく本物で、誰より正しかった。
「あの時の私達4人が学校を背負おうって思ったのは、恋ちゃんの強い思いがあったから。恋ちゃんの思いがあったからこそ、私達4人は同じ方向を向いてスクールアイドルをやろうって思えた」
憧れのため。
約束のため。
破れ続けた夢を追うため。
大好きな歌を届けるため。
そんなバラバラの思いを持った私達がこうやって同じ思いを持ってスクールアイドルを始めて、今までずっと続けていられたのは、恋ちゃんがいたから。
学校を守らなきゃ。
何より、恋ちゃんの思いをかなえなきゃ。
そんな強い思いが私達の中に生まれて、Liella!として同じ方向の夢を叶えようと思えた。
あの時はそんなのきっと意識してなかっただろうけど、今思うと私達を繋いだのは、紛れもなく恋ちゃんの存在だった。
私からも言葉を返す。
「お礼を言いたいのは私もだよ」
「え……?」
ずっと恋ちゃんに言えなかったこと。
「曲がりなりにも、恋ちゃんは学校を守ろうとしてくれていた。お母さんの思いを背負って、学校を続けたいって思いながら一生懸命に行動していた」
あの時、恋ちゃんは間違ったのかもしれない。
だけど、それは全部じゃない。
あの思いは紛れもなく本物で、誰より正しかった。
「あの時の私達4人が学校を背負おうって思ったのは、恋ちゃんの強い思いがあったから。恋ちゃんの思いがあったからこそ、私達4人は同じ方向を向いてスクールアイドルをやろうって思えた」
憧れのため。
約束のため。
破れ続けた夢を追うため。
大好きな歌を届けるため。
そんなバラバラの思いを持った私達がこうやって同じ思いを持ってスクールアイドルを始めて、今までずっと続けていられたのは、恋ちゃんがいたから。
学校を守らなきゃ。
何より、恋ちゃんの思いをかなえなきゃ。
そんな強い思いが私達の中に生まれて、Liella!として同じ方向の夢を叶えようと思えた。
あの時はそんなのきっと意識してなかっただろうけど、今思うと私達を繋いだのは、紛れもなく恋ちゃんの存在だった。
8:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:58:38 ID:???00
「ありがとう。この学校を愛してくれて」
グッと泣きたいのをこらえて、目いっぱいの笑顔で恋ちゃんに今まで言えなかったお礼の言葉を贈る。
目の前の恋ちゃんは、予想外の言葉に驚き目を見開いていた。
目尻に溜まっていた涙がその量を増して、とうとう頬をつたって一粒床に落ちた。
グッと泣きたいのをこらえて、目いっぱいの笑顔で恋ちゃんに今まで言えなかったお礼の言葉を贈る。
目の前の恋ちゃんは、予想外の言葉に驚き目を見開いていた。
目尻に溜まっていた涙がその量を増して、とうとう頬をつたって一粒床に落ちた。
9:
◆ur10HJGp★
2025/09/16(火) 20:59:13 ID:???00
「今なら誰も見てないよ」
そう両腕を開いて助け舟を出した。
見開いた目が潤んだかと思うと、顔を見る間もないほど勢いよく私に抱き着いてきた。
あの時、お母さんの本当の思いを知った時と同じか、それ以上に子供っぽく涙を流して大きく泣き声を上げた。
真面目で誠実で、どこまでもまっすぐな恋ちゃん。
チャイムが鳴るまでは、髪を濡らす涙も、耳元に響く声も、全部全部受け入れてあげる。
それが私なりの言い切れない「ありがとう」だから。
おしまい
そう両腕を開いて助け舟を出した。
見開いた目が潤んだかと思うと、顔を見る間もないほど勢いよく私に抱き着いてきた。
あの時、お母さんの本当の思いを知った時と同じか、それ以上に子供っぽく涙を流して大きく泣き声を上げた。
真面目で誠実で、どこまでもまっすぐな恋ちゃん。
チャイムが鳴るまでは、髪を濡らす涙も、耳元に響く声も、全部全部受け入れてあげる。
それが私なりの言い切れない「ありがとう」だから。
おしまい