【SS】曜(25)「千歌ちゃんの結婚式」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: 2017/11/18(土) 11:24:44.83 ID:CP3zRBeX
曜の部屋


梨子(24)「曜ちゃん起きて」ユサユサ

曜(25)「ん……んん……」

曜「……なんで梨子ちゃんが私の家に?」

梨子「もう、自分が呼んだんでしょ」

曜「え?」

梨子「引き摺ってでも連れて行ってって」

曜「あ……」

梨子「朝ご飯もうすぐできるから」

曜(そうだ……今日は……)




曜(千歌ちゃんの結婚式だ)

2: 2017/11/18(土) 11:27:51.50 ID:CP3zRBeX
教会の一室


果南「まさか私達の中で一番最初に結婚するのが千歌とはねー。意外」

千歌「どういう意味ですかそれー」

果南「ふふっ、冗談だよ」

千歌「むー、みんなこのままだと美都ねぇみたいに行き遅れちゃうよ?」

果南「お、言うようになったねぇ。美都さんに言っていい?」

千歌「やめて、死にたくない」

3: 2017/11/18(土) 11:31:06.96 ID:CP3zRBeX
千歌「ねぇ、果南ちゃん」

果南「んー」

千歌「今日のブーケ、受け取ってもらえる?」

果南「ん、いいよ」

果南「ただ、私は別に結婚に興味ないけどね」

千歌「またまたー」

千歌「私、知ってるよ?」

果南「何を?」

千歌「今気になってる人がいるの」

果南「なっ、誰に聞いた!? 鞠莉!? ダイヤ!?」

千歌「ひっみつー」

果南「もう! 絶対誰にも言うなって言ったのに!!」

5: 2017/11/18(土) 11:35:03.24 ID:CP3zRBeX
広場


善子「お、来たわね」

花丸「こっちこっちー」フリフリ



ダイヤ「お二人ともお久しぶりです」

ルビィ「久しぶりヨハネちゃん、花丸ちゃん」

善子「ちょっと! その名前で呼ぶなっていつも言ってるでしょ!」

ルビィ「え~? 昔はいつもそう呼べって言ってたじゃん」

善子「昔は昔! この歳になってヨハネなんて痛すぎるわよ!」

花丸「昔も十分痛かったけどね」

善子「は~な~ま~る~?」

善子「アンタなんて未だに自分のこと、まるって言ったり語尾が出たりする癖に」

花丸「た、たまにだし。善子ちゃんと違ってむしろプラス要素だもん」

善子「うわっ、自分でプラスとか言っちゃう!?」

花丸「善子ちゃんに比べたらって意味ずらー!!」

ダイヤ「ふふふ、お二人は変わりませんね」

ルビィ「ね。安心する」

6: 2017/11/18(土) 11:39:00.98 ID:CP3zRBeX
ダイヤ「他の方は?」

善子「果南は先に千歌のとこ行ってるわ」

花丸「まだ来てないのは、鞠莉ちゃんと曜ちゃんと梨子ちゃんだね」

ダイヤ「そうですか」

ルビィ「Aqoursが揃うなんていつぶりだろうね」

ダイヤ「そうね……。この歳にもなると九人で会うのはこういう機会でもないと」

善子「ということは最低でも、あと八回は集まれそうね」

花丸「七回の間違いじゃ?」

善子「私が結婚できないって言いたいわけ~?」

花丸「別に善子ちゃんとは言ってないもーん」

善子「……いいわよねぇ、アンタみたいな『武器』がある奴は!」

善子「これがあれば男になんて困らないでしょうね!!」モミッ

花丸「ひゃぁ!」

花丸「セクハラ! 犯罪ずら! ルビィちゃん通報して!」

パシャッ

ルビィ「インスタにあげよ~っと♪」

花丸「ルビィちゃん!?」

7: 2017/11/18(土) 11:44:24.47 ID:CP3zRBeX
プルルルルルピッ

ダイヤ「もしもし、鞠莉さん?」

鞠莉『シャイニー☆』

ダイヤ「懐かしいですわねそれ」

鞠莉『うん、自分でも今思った』

ダイヤ「それで? 間に合いそうなの?」

鞠莉『式には遅れるかも』

ダイヤ「あら……」

鞠莉『披露宴までには必ず。なんならヘリ飛ばすから』

ダイヤ「どこに着陸するつもりですか……」

鞠莉『それより』

ダイヤ「はい?」

鞠莉『曜、もう来てる?』

ダイヤ「まだですね。おそらく梨子さんとご一緒かと」

鞠莉『そ。梨子っちがついてるなら安心ね』

ダイヤ「何がですか?」

鞠莉『こっちの話』

鞠莉『それじゃまた後で』

ダイヤ「ええ。お気をつけて」


――――

――

11: 2017/11/18(土) 11:50:01.57 ID:CP3zRBeX
教会

~~♪

曜「……」

曜(千歌ちゃんとは物心ついた時からずっと一緒で、どれだけの時間が過ぎただろう)

 

神父「これより新郎――と新婦、高海千歌さんの結婚式を執り行います」



曜(ずっと千歌ちゃんの傍にいた)

曜(気持ちを伝える時間は無限の様にあった)

曜(なのに私は……)

曜(女同士だからとか……そんなことは関係なくて……)

曜(ただ……)

曜(ただ私に勇気がなかったから……)

13: 2017/11/18(土) 11:55:09.72 ID:CP3zRBeX
神父「新郎。あなたは神の教えに従い、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

新郎「はい。誓います」

神父「新婦、高海千歌。あなたは神の教えに従い、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

千歌「はい。誓います」

 

曜(千歌ちゃんは今日、結婚する……)



神父「それでは、誓いのキスを」



曜(世界で一番大好きな人が。結婚する)

15: 2017/11/18(土) 11:58:53.39 ID:CP3zRBeX
披露宴


千歌「あ、曜ちゃん!」

曜「千歌ちゃん」

千歌「この式場ね、会社の先輩が教えてくれたんだー。いいとこでしょ?」

曜「来てビックリしたよ。こんなとこあったんだね」

千歌「ねー。値段も他より安いからオススメだよ!」

曜「あはは……」

千歌「あ」

千歌「ど、どうかな?」ヒラヒラ

曜「うん。すごく似合ってるよ」

千歌「えへへ……ありがとう」

16: 2017/11/18(土) 12:03:19.27 ID:CP3zRBeX
千歌「今日さ、曜ちゃん来るの遅かったね」

曜「あぁ……ごめんごめん。昨日、梨子ちゃんと飲んでたら寝坊しちゃって」

千歌「もー! 曜ちゃんスピーチするんだから気を付けてよね!」

曜「深く反省しております……」

曜「その分、スピーチは気合を入れてやらせて頂きますゆえ……」

千歌「うむ。頼んだぞよ」

曜「あはは」

千歌「ふふふ」

18: 2017/11/18(土) 12:07:28.92 ID:CP3zRBeX
曜「一つ、聞いてもいいかな?」

千歌「よかろう」

曜「千歌ちゃんはさ」

曜「後悔してることってある?」

千歌「後悔?」

曜「うん」

曜「やり直したいこととか」

千歌「うーん……」

千歌「私は……ないかな」

千歌「これで良かったんだって……そう思うようにしてきたから」

曜「そっか……千歌ちゃんらしいや」

19: 2017/11/18(土) 12:11:00.32 ID:CP3zRBeX
千歌「私からも一つ聞いていいかな?」

曜「もちろん」

千歌「曜ちゃんと梨子ちゃんってお付き合いしてるの?」

曜「えっ」

千歌「こっち(東京)来てからすごい仲いいよね」

曜「そ、そうかな」

千歌「そうだよ! ね、どうなの?」

曜「付き合ってないよ。第一女同士だし……ありえないよ」

千歌「……だよね。二人とも浮いた話聞かないからさ、良かった」

曜「良かった?」

千歌「うん。私の今の夢はね……」

21: 2017/11/18(土) 12:15:44.18 ID:CP3zRBeX
千歌「曜ちゃんとママ友になること!」

曜「ママ友……」

千歌「私達の子供も幼馴染になれたらいいなぁって夢」

曜「夢……」



梨子『私の夢はね、曜ちゃんと千歌ちゃんの結婚式で私がピアノ弾くの。だから早く告白してよね』



千歌「だからさ、曜ちゃんも早くいい人見つけて結婚してよね!」

曜「簡単に言うなぁ」

千歌「スピーチは私やるから!」

曜「千歌ちゃん以外いないよ」

千歌「ありがとっ。そろそろ時間だから戻るね。スピーチよろしく!」

曜「まかせて!」

曜(ごめんね)

曜(夢。叶えられなくて)


――

23: 2017/11/18(土) 12:21:27.77 ID:CP3zRBeX
司会「それでは、新婦のご友人を代表して幼少期からの親友である。渡辺曜さんよりメッセージを頂戴したいと思います」

パチパチパチパチ

曜「……」スタスタ


曜「えー、この度はお二人のご結婚、本当におめでとうございます」

曜「千歌さんとは幼い頃からずっと一緒で、学生時代のほとんどを共に過ごしてきました」

曜「そんな中で一番思い出深いといえば、やはり、高校でのスクールアイドル活動で――」

曜「私達が最も輝いていた時だと思っていました」

曜「それも束の間。千歌さんの輝きは今日この日、更新されました」

曜「まさか自分は普通、地味とばかり言っていた彼女が我先にと結婚してしまうとは私達八人思ってもみなくて……」

曜「本当に……眩しすぎて見ていられないくらい今日のお二人は輝いて見えます……」




曜(思わず泣きそうになった……ウェディングドレスを着た千歌ちゃんがあまりにも綺麗で……その隣にいられないことがなによりも悔しくて……)




曜「――――本当に……おめでとうございます。末永くお幸せに」

パチパチパチパチ

千歌「ありがとう……曜ちゃん……絶対に幸せになるからね――」

25: 2017/11/18(土) 12:25:44.76 ID:CP3zRBeX
曜「ただいま!」

梨子「頑張ったね曜ちゃん」

善子「最高だったわよ曜」

花丸「思わず泣きそうになったずらぁ」ポロポロ

ルビィ「いや泣いてるし」

鞠莉「私も早く結婚したーい」

ダイヤ「え? 仕事と結婚するんじゃなかったの?」

鞠莉「そのつもりだったけど――いざ、こういうの見ちゃうとねぇ」

果南「まぁ、鞠莉ならすぐ見つかるでしょ」

鞠莉「おっ、既に相手がいる人は随分と余裕なことで」

果南「あっ! やっぱりお前か! 千歌に喋ったの!?」

鞠莉「なんのことかしら~?」

ルビィ「果南ちゃん、相手いるの!?」キラキラ

花丸「気になるずら!」

善子「花丸、語尾でてるって」

ワーワー

28: 2017/11/18(土) 12:28:41.76 ID:CP3zRBeX
曜「……」

梨子「大丈夫?」

曜「うん、平気だよ」

曜「さすがにもう吹っ切れた」

梨子「そう……ならいいんだけど……」

曜「今までありがとう梨子ちゃん」

梨子「今までなんて言わないでよ。深読みしちゃうから」

曜「あはは、信用ないなぁ」

30: 2017/11/18(土) 12:31:47.40 ID:CP3zRBeX
曜(梨子ちゃんは優しい)

曜(こんな私を見守ってくれて……傍にいてくれて……)

曜(梨子ちゃんがいてくれなかったらスピーチも……ここに来ることさえ出来なかったと思う)

曜(感謝しきれないくらい梨子ちゃんには助けられた)

曜(だからもう……これ以上は……)

曜(甘えちゃいけない)

曜(一人で立たなきゃ)

曜(たとえ――進むことが出来なくても)

31: 2017/11/18(土) 12:36:16.12 ID:CP3zRBeX
司会「ただいまよりスライドショーをお楽しみ頂きます」

司会「こちらは新婦のご友人である小原鞠莉様と幼い頃より姉の様にお慕いしていた松浦果南様にご用意して頂きました」

司会「どうぞご覧ください」

パチパチパチパチ



曜(映し出される写真は見覚えのあるものばかり)

曜(それはそうだ)

曜(私はずっと千歌ちゃんの傍にいたんだから)

曜(写真に一緒に写った回数だって私が一番多い)

曜(一緒にいた時間も家族を除けば私が一番だって自信を持って言える)

曜(それなのに……)

曜(どうして今はこんな遠くに感じるんだろう)

曜(たった一言)

曜(好きだと言えていれば――)

曜(今よりは前に進めていたのかな)

32: 2017/11/18(土) 12:41:36.08 ID:CP3zRBeX
『ファーストライブ後の写真』


曜(懐かしい)

曜(この日が私達Aqoursの始まり)

曜(大雨で最初はお客さんいなくて、その上ライブ中に停電までして散々だった)

曜(――この日、私は初めて千歌ちゃんの悔し涙を見た)

曜(それだけスクールアイドルに本気なんだって)

曜(今までと違うんだってわかった)

曜(だから私は、ずっと続けていた水泳をやめて千歌ちゃんの隣にいようと決めた)

曜(私と千歌ちゃんの距離が一番近くだったこの時――)

曜(戻りたい……)

曜(戻ってやり直したい……)

曜(きっと全部上手くいく……ファーストライブも地区予選も……廃校だって……)

曜(もう一度)

曜(もう一度……)

曜「もう一度――」





パチン!

33: 2017/11/18(土) 12:46:56.02 ID:CP3zRBeX
「オスカー・ワイルドはこう言っている」

曜「わっ!」

「男は女の最初の恋人になりたがるが」

「女は男の最後の恋人になりたがる」

「女でありながら女に恋をするお前はどうだ?」

曜「えっ?」

曜「その……千歌ちゃんの最初で最後の恋人に……」

「はっ」

「なんて強欲な女だ」

曜「……」

36: 2017/11/18(土) 12:50:29.07 ID:CP3zRBeX
「その強欲さがありながら、一度もその想いを伝えることなく今日という日を迎えるとは」

「とんだ笑い種だな」

曜「うぅ……」

曜「確かに私はどうしようもないへたれですよ……へたれですけど!」

曜「それよりも! あなた一体どなたですか!?」

「私か? 私はこの教会に住む『妖精』だ」

曜「妖精……?」

曜「妖精!?」

妖精「そ」

妖精「こういうのはもう引退したつもりだったんだがな」

妖精「お前があまりにも『あの男』に似ているからつい出て来てしまった」

曜「あの男?」

妖精「お前と同じでどうしようもなく往生際の悪い男だ」

妖精「男である分、あいつのが質が悪いと言えるが」

曜「はぁ……」

妖精「何も昔話をしに出てきたわけじゃない」

44: 2017/11/18(土) 12:55:36.93 ID:CP3zRBeX
曜「もう何がなんだか……」

妖精「余計なことは考えなくていい」

妖精「あの日に戻りたいのか、戻りたくないのか」

妖精「どちらか一つを選べばいい話だ」

曜「そんなの戻れるなら戻りたいに決まってるじゃないですか」

妖精「よしわかった」

曜「いや、わかったって……」

妖精「これお前のエビフライか?」

曜「えぇ、まぁ……」

妖精「うむ。十年経ってもエビフライは変わらないな」モグモグ

曜「……」

47: 2017/11/18(土) 12:59:39.60 ID:CP3zRBeX
妖精「お前はこれから、あの写真が撮影されるまでの時間を悔いのない様にやり直す」

曜「やり直すって……」

妖精「私から一つアドバイスをやろう。私は紳士だからな、一度しか言わんぞ」

妖精「本質を忘れるな」

曜「本質?」

妖精「そうだ。耳を貸せ」

曜「はい」

ゴニョゴニョ

曜「はぁ……」

妖精「ハッキリと。ちゃんとポーズも決めてな。得意だろ?」

曜「まぁ」

妖精「求めよ、さらば与えられん」

曜「……ハレルヤー、チャンス!」ビシッ!

曜「ぬ、ぬおおおおおおおおおおおおおおおお」



☆――☆

49: 2017/11/18(土) 13:01:12.98 ID:CP3zRBeX


『渡辺曜のプロポーズ大作戦』

 

109: 2017/11/19(日) 11:40:16.71 ID:f8hs0Sht
 
女の名前は渡辺曜

結婚式場に現れた、哀れな女である

これまで何百という結婚式を見てきたが

女でありながら、新婦にここまで後悔しているのを見るのは、さすがの私も初めてである

女はスライド写真を見ながら過去をやり直したいと強く願った

見るに見かねた私は、写真の時代に戻ることを許可した

私とは無論、この教会に住む妖精である

果たして、この女に運命は変えられるだろうか

奇跡は訪れるのであろうか

110: 2017/11/19(日) 11:45:06.99 ID:f8hs0Sht
 
「――ちゃん」

「ねぇ曜ちゃんってば」


曜「っ!」

曜「は、はい!」

千歌「もう、どうしたの急に?」

曜「え、あれ……ここは……私……」

梨子「ここはって教室でしょ。記憶喪失にでもなったの?」

千歌「曜ちゃん大丈夫!? お弁当に何か入ってたの!?」

曜「あ、いや……」

曜(そうだ。確かライブ前に教室でお弁当を食べてたんだっけ……)

曜「もう大丈夫。ちょっと目眩がしただけ」

千歌「本当? 無理しないでね?」

曜「うん。ありがとう」

曜(まさか本当に……)

曜(本当に戻ってきたんだ……!!)

112: 2017/11/19(日) 11:51:46.44 ID:f8hs0Sht
千歌「私達のファーストライブ。お腹いっぱいにして臨まなきゃね!」

梨子「いや、お腹いっぱいにしたら動けないでしょ」

千歌「あ、そっか! 腹八分にしなきゃ」モグモグ

梨子「リーダーがこんな呑気で大丈夫かしら。ふふ」

曜「……」ジー

曜(可愛い……女子高生の千歌ちゃん可愛いすぎる……)

曜(大人っぽい千歌ちゃんももちろん可愛いけど……)

曜(やっぱこの頃の千歌ちゃんが一番……)

千歌「曜ちゃん?」

千歌「何? じっと私のこと見て」

曜「ごめんごめん。つい見惚れちゃって」

千歌「へ!?」

曜「あっ」

梨子「ちょっとー、人の前で口説かないでもらえますかー」

114: 2017/11/19(日) 11:55:57.57 ID:f8hs0Sht
曜「口説くとかじゃなくて!」

曜「美味しそうに食べる千歌ちゃんが小動物みたいで可愛いなー……って?」

千歌「ちぇー、口説かれたわけじゃないんだ」

曜「え?」

梨子「確かに。千歌ちゃんってちょっと幼い感じするもんね」

千歌「あー! 人が気にしてることをー!」

梨子「別にいいじゃない。それだけ可愛いってことで。アイドルにはピッタシ」

千歌「えへへー。梨子ちゃんに可愛いって言われたー」

梨子「そうやってすぐ調子乗るんだから」

千歌「にしし」

曜「……」

曜(もしかして脈アリ!? このまま千歌ちゃんに……)

115: 2017/11/19(日) 12:02:20.18 ID:f8hs0Sht
 


梨子「ご馳走様。ちょっとお手洗い行ってくるね」

千歌「ん。いっといれ~」

ガララ

曜(チャンス! 教室に二人きり……今しか……!)

曜「ね、ねぇ千歌ちゃん」

千歌「んー?」

曜「えっとね……私……千歌ちゃんのこと……」

千歌「……」

ガラッ

むつ「千歌ー! こっちは準備出来たよー!」

千歌「あ、ありがとう。むっちゃん!」

むつ「まだ食べてたの? そろそろ着替えた方がいいよ」

千歌「うん、そうするー」

むつ「そいじゃ」

千歌「ほんとありがとー!」

曜「……」

116: 2017/11/19(日) 12:07:30.25 ID:f8hs0Sht
千歌「ごめんね曜ちゃん。何かな?」

曜「あ……えっと……時間ないから着替えよっか!」

千歌「いいの?」

曜「うん……またライブの後で言うね」

曜(写真撮るまでがリミットだっけ……時間はある)

曜(それに今言われたらライブに影響するよね)

曜(まぁ私が一番影響されるんだけど……)

千歌「わかった! ライブの後ね」





ガララ

梨子「お待たせ二人共。そろそろ着替えにいきましょうか」

千歌「うん! むっちゃん達も準備出来たってー」

梨子「そう。私も後でお礼言わなきゃ」

曜「それでは! 私達のファーストライブに向けて! 全速前進ヨーソロー!」

117: 2017/11/19(日) 12:11:18.81 ID:f8hs0Sht
更衣室


千歌「みんな来てくれるかなー」ヌギヌギ

梨子「天気も悪いし心配ね」

千歌「ねー」

千歌「……もし満員に出来なかったら、これが最後のライブでもあるんだよね」

梨子「そうね。考えたくはないけど……」

曜「……」ジー

曜(jk千歌ちゃんの生着替え……)

曜(妖精さん……ありがとう……)

千歌「……」

千歌「曜ちゃん? また私のこと見て……着替えにくいんだけど……」

曜「い、いやーサイズとか大丈夫かなと思って」

千歌「昨日確認したじゃん……」

曜「念には念をってね」

梨子「大急ぎで作ったから耐久性も心配よね」

梨子「踊ってる途中で破れたりしたら恥ずかしいし……」

曜「そうそう!」

曜(ナイスフォロー梨子ちゃん!)

118: 2017/11/19(日) 12:15:56.01 ID:f8hs0Sht
千歌「うー……まぁ曜ちゃんだからいいけどさぁ……」

曜「ごめんごめん。きつかったら言ってね?」

千歌「うん。最近胸がきつくなるんだよね」

曜(おっふ)

梨子「え、千歌ちゃんまだ成長してるの?」

千歌「してるんだよねー。梨子ちゃんは止まった?」

梨子「え? いや、止まってないわよ」

梨子「止まってないよ」

千歌「なんで二回言ったし……」

千歌「でも、梨子ちゃんぐらいが丁度いいと思うけどなー」

梨子「そうなのよ。あんまり大きいとピアノ弾く時に邪魔になるからね」

梨子「邪魔にね」

千歌「う、うん」

曜(八年後も邪魔になってないから安心してね梨子ちゃん)

119: 2017/11/19(日) 12:19:41.24 ID:f8hs0Sht
ステージ裏


千歌「よし、それじゃ準備運動しよっか!」

曜「おっけー」

梨子「やっぱりこのスカート短すぎるような……」

千歌「いっちに、さんし」

曜「いっちに、さんし」

千歌「ほら、梨子ちゃんも!」

梨子「……いっちに、さんし」

ユッサユサ

曜「……」

曜(みかんが揺れてる……)

曜(って、ダメダメ!)

曜(さすがにもう言い訳できないって)

曜(告白する前に好感度下がる様なことは控えなきゃ……)

曜(ライブを大成功させて……その勢いで……)

曜(……!)

曜(そうだよ! ライブ!)

120: 2017/11/19(日) 12:24:03.26 ID:f8hs0Sht
曜「ねぇ二人共」

千歌・梨子「ん?」

曜「開演時間遅らせない?」

千歌「え?」

曜「実は……さっき見ちゃったんだよね」

曜「お客さん全然来てないの……」

千歌「そんな……」

梨子「じゃぁ私達……」

曜「大丈夫。この天気でみんな遅れてるだけだって!」

曜「だからさ、今いるお客さんには悪いけど三十分だけ遅らせよ?」

121: 2017/11/19(日) 12:28:07.83 ID:f8hs0Sht
梨子「でも三十分も急に待たせるなんて」

曜「そこは私に任せて」

千歌「曜ちゃん?」

曜(社会に出て鍛えられた私の一発ギャグスキル……)

曜(最多十七連発……)

曜(ここで使うしか……!)

曜「私が前説するから二人はお客さんの整理お願い!」

千歌「ま、前説……?」

122: 2017/11/19(日) 12:33:23.15 ID:f8hs0Sht
ステージ


曜「はいどうもー。Aqoursの渡辺曜でーす」パチパチ

観客「……?」

曜「今日はAqoursのファーストライブにお越し頂きありがとうございます」

曜「ちょっとね、雨で冷えてきた所だと思うので、私が前説で少し暖めたいなと思い出てきました」

曜「えーっ、では一つ目」

曜「ヤギの声真似」

曜「メ゛ェ゛~゛~゛~゛」

観客「」





梨子「曜ちゃんってああいうキャラだったんだ……」

千歌「いや、私も初めて見た……」

123: 2017/11/19(日) 12:40:21.22 ID:f8hs0Sht
体育館前

プップー

千歌「曜ちゃんの言った通りだ……」

梨子「本当に来てくれた……」

 


美渡「あれ、千歌? もう始まってるんじゃ」

千歌「天気悪いから開演時間遅らせようって、曜ちゃんが言ってくれたの」

美渡「さすが曜ちゃんね。ちょっと準備に時間かかちゃったのよ」

千歌「この天気だもんね」



梨子「みなさーん。ライブはまだこれからなのでゆっくり入場してくださーい」



千歌「ふふっ。梨子ちゃんもすっかり慣れっこだね」

梨子「曜ちゃんのアレ見た後だと、これくらい恥ずかしがってられないなって……」

千歌「それもそうだね……」

125: 2017/11/19(日) 12:44:33.93 ID:f8hs0Sht
ステージ裏


曜「おかえり!」

千歌「た、ただいま」

梨子「ありがとうね曜ちゃん……」

曜「どうしたの二人共?」

梨子「いや……うん……」

千歌「曜ちゃんって芸人さんになりたかったの?」

曜「え? そんなわけないじゃん」

千歌・梨子「……」

曜「さ、会場は十分暖まってるよ!」

千歌・梨子「」

126: 2017/11/19(日) 12:52:28.53 ID:f8hs0Sht
千歌「そ、それじゃどうするんだっけ」

曜「確か、こうやって手を重ねて」

千歌「……繋ごっか」

千歌「こうやって手を繋いで……ね。暖かくて好き」

曜「……ほんとだ」

曜(ここまでは前と同じ)

千歌「……お客さん。本当に来てくれたね」

曜「だから言ったでしょ」

千歌「うん……ありがとう曜ちゃん」

梨子「まるで未来を知ってたみたい」

曜「知ってたよ」

千歌・梨子「え?」

曜「だって今日は私達の始まりの日だもん」

曜「ここから始まるんだよ。全部」

曜(そう。今日なんだ。私達の始まりは)

曜(変えるんだ……未来を)

千歌「……そうだよね」

千歌「さぁ行こう! 今、全力で! 輝こう!!」


Aqours『アクア! サンシャイーン!』


――――――

――――

――

128: 2017/11/19(日) 12:59:12.72 ID:f8hs0Sht
ライブ後・ステージ裏


千歌「ぐすっ……うぅ……」ポロポロ

梨子「千歌ちゃん泣かないで」ヨシヨシ

千歌「だってだって……」

千歌「こんなに大成功するなんて思ってなくて……」

梨子「みんな暖かったわね……」

千歌「うん……」

千歌「ダイヤさんにはわかってるなんて言ったけど……」

千歌「でもやっぱり嬉しくて……」

曜「いいんだよ喜んで」

千歌「曜ちゃん……」ダキッ

千歌「曜ちゃんのおかげだよ……やっぱり曜ちゃんはすごいよ……本当にありがとう……」

曜「千歌ちゃん……」ギュッ

曜(千歌ちゃんの涙を私は変えられた)

曜(やり直せるんだ。妖精さんのおかげで)

曜(このまま……)

曜(私の気持ちを――――)

129: 2017/11/19(日) 13:06:07.29 ID:f8hs0Sht
千歌「梨子ちゃんもありがとう……っ」ダキッ

梨子「わっ」

千歌「梨子ちゃんが転校して来なかったら」

千歌「スクールアイドルなんて出来なかった……」

梨子「そんなことないわよ」

千歌「そんなことあるもん!」

千歌「わたし思ったんだ……」

千歌「あの日、教室で梨子ちゃんが入って来た時――」

千歌「奇跡だって」



千歌「運命の出会いだったんだって……」



梨子「大袈裟よ……。でも、私も二人に出会えて嬉しい。一緒に頑張ろうね、これから」

千歌「うん……!」

曜「…………」

131: 2017/11/19(日) 13:12:28.44 ID:f8hs0Sht
曜(私は思い出した)


曜(ずっと忘れていた感情を)


曜(教室に入って来た梨子ちゃんを見つめる――千歌ちゃんの瞳を)


曜(思い出してしまった)


曜(だから――――)

132: 2017/11/19(日) 13:15:25.77 ID:f8hs0Sht
☆――☆


『人はタイミングやきっかけに頼る生き物である』


『この信号が変わったら告白しよう』


『この車が通り過ぎたら言おう』


『このライブが終わったら伝えよう』


『そんな小さなことに拘っているから、いつまで経っても大きな幸せが掴めない』


『自ら手放しているのだ』


『もし、本当に』


『未来を――運命を変えようと思っているのなら出来るはずだ』


『いつであろうと。どこであろうと』


『誰がいようとも』


☆――☆

133: 2017/11/19(日) 13:15:41.86 ID:f8hs0Sht
続きます

152: 2017/11/19(日) 21:47:54.00 ID:f8hs0Sht


曜「…………」

妖精「なぜ、告白しなかった?」

曜「なんで……でしょうね……」

妖精「私は言ったはずだ」

曜「……」

妖精「お前が過去に戻ったのはライブを成功させるためか?」

曜「……違います」

妖精「何のためにお前は戻った?」

曜「千歌ちゃんに……気持ちを伝えるため……」

妖精「そうだな」

妖精「なのにお前はしなかった」

妖精「本来あるはずのないチャンスでさえ、お前には出来なかった」

曜「すみません……」

妖精「まぁ、なんだ」

妖精「『一回』で成功する人間はそうはいない」

妖精「一回ではな」



パチン!

154: 2017/11/19(日) 21:51:07.94 ID:f8hs0Sht
ザワザワ


鞠莉「懐かしいわね~ファーストライブ」

果南「まさか本当に満員にするとはね」

鞠莉「あの時のダイヤったら……ぷぷっ」

ダイヤ「な、なんですか」

鞠莉「勘違いしないように!キリッ」

果南「あっはっは! 似てる~」

ダイヤ「似てません! それにキリッなんて言ってませんわ!」

ルビィ「あの頃のお姉ちゃん怖かったなぁ」

花丸「自分達が挫折したからって後輩に冷たく当たる嫌な先輩だったずら」

善子「破廉恥破廉恥うるさいしー」

ダイヤ「……」

ダイヤ「うっ……」ウルウル

花丸「じょ、冗談だよダイヤちゃん!」

善子「これくらいで泣かないでよ、ダイヤちゃん」

ダイヤ「ダイヤちゃん呼びすれば何でも許されると思わないでください!」

鞠莉「それも懐かしいわね」

果南「結局ダイヤさんに落ち着いちゃったけどね」

155: 2017/11/19(日) 21:55:40.28 ID:f8hs0Sht
梨子「あの時は急に曜ちゃんが一発ギャグなんかするから本当驚いたなぁ」

梨子「でも曜ちゃんのおかげで私達のファーストライブは大成功」

梨子「千歌ちゃんも大泣きして……ふふっ。目真っ赤」

曜「……」

梨子「どうしたの曜ちゃん?」

曜「……なんか思い出しちゃって」

曜(梨子ちゃんに……)

曜(嫉妬していたことを――)

156: 2017/11/19(日) 21:58:59.09 ID:f8hs0Sht
曜(あの頃の私は、梨子ちゃんのことが本当は好きじゃなかった)

曜(突然現れて、私と千歌ちゃんの間に入ってきた梨子ちゃんが気に食わなかった)

曜(でも、あの日)

曜(電話を切る間際に梨子ちゃんは言った)

『私、応援してるからね』

曜(――本当の意味を知るのは少し後になったけれど)

曜(梨子ちゃんは私を応援してくれていた。今日、この日までずっと)

曜(だから忘れていたんだと思う)

曜(この、醜い感情を)

――――

――

157: 2017/11/19(日) 22:04:25.19 ID:f8hs0Sht
『Aqours再出発の写真』


曜(写し出された写真は私達が東京から帰ってきた次の日)

曜(ゼロ票という現実に叩きつけられた私達は落ち込んでいた)

曜(あの時……千歌ちゃんが本音を吐き出したのは私じゃなくて)

曜(まだ会って三ヶ月も経っていない梨子ちゃんだった)

曜(私は悔しかった……どうして私じゃないんだろう)

曜(どうして千歌ちゃんは私に言ってくれなかったんだろう)

曜(ずっと一緒にいたのに)

曜(私よりも梨子ちゃんの方がって)

曜(そう思ってた……)

159: 2017/11/19(日) 22:09:24.73 ID:f8hs0Sht
曜(もし、一番最初に千歌ちゃんの元に行っていれば……)

曜(千歌ちゃんは私に言ってくれたのかな……)

曜(私と梨子ちゃん、どっちが千歌ちゃんの一番だったのかな)

曜(知りたい……千歌ちゃんの本当の気持ちを)

曜(そして伝えたい……今度こそ)

曜(私の本当の気持ちを)

曜(もう一度)

曜(どうかもう一度……)

曜(私にチャンスをください……!)





パチン!

161: 2017/11/19(日) 22:14:38.89 ID:f8hs0Sht
妖精「よっ」

曜「でた!」

妖精「へへへっ。よく気付いたな」

妖精「一回しか呼べないと思って諦める人間は意外と多いんだ」

曜「あれだけヒント言ってくれればわかりますよ……」

妖精「それもそうか。お前には甘くしてしまう所があるのかもしれんな」

妖精「んで、この写真に戻りたい理由は?」

曜「知りたいんです」

曜「あの頃の千歌ちゃんの中でどっちが一番なのか」

曜「千歌ちゃんの本当の気持ちを……」

曜「この日なら聞けると思うんです」

162: 2017/11/19(日) 22:19:15.99 ID:f8hs0Sht
妖精「なるほど」

妖精「お前にとって最大のライバルは」

妖精「今、彼女の隣にいるあの男ではなく――」

妖精「今、お前の隣にいるその女というわけだな」

妖精「なんとも皮肉な話だ」

曜「ほんと笑えないですよ……」

妖精「理由はわかった。行って来い」

曜「ありがとうございます!」

妖精「その前に私から忠告だ。今度はアドバイスではなくな」

曜「忠告?」

妖精「ああ。ま、大したことじゃない」

妖精「同じ写真に二度、飛ぶことは出来ない」

曜「そんな贅沢言いませんよ」

164: 2017/11/19(日) 22:25:08.38 ID:f8hs0Sht
妖精「ふむ。わかってるならいいさ」

妖精「そしてもう一つ。これが一番重要だ」

曜「?」

妖精「過去に戻れるのは今回とあと一回だけだ。妖精の顔も三度までと言うしな」

曜「次がラストチャンス……」

妖精「実のところ、昔は写真の枚数だけ過去に送ることが出来たが……」

妖精「最近、景気が悪くてな。ここが曰く付きなせいもあるが」

妖精「やれ若者の結婚離れ、結婚式離れと」

曜「あ、そういうのが力の源なんですね」

妖精「妖精っぽいだろ?」

曜「はい」クスッ

165: 2017/11/19(日) 22:28:58.71 ID:f8hs0Sht
妖精「んじゃ、このフルーツサラダを頂くか」

妖精「って」

妖精「みかんばっかじゃねぇか」

曜「みかん好きなんで……」

妖精「ま、俺も好きなんだけどな」パクッ

妖精「求めよ、さらば与えられん」

曜「……」スゥー

曜「ハレルヤー! チャンス!!」

曜「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」



☆――☆

185: 2017/11/20(月) 05:06:18.60 ID:dnmBqmUG


曜「……っ」

曜「こ、ここは……」

曜「私の部屋か」

ギュッ

曜(写真持ったまま寝落ちしたんだっけか)

曜(懐かしいな……)

曜(私と千歌ちゃんとしいたけ)

曜(もう、どこにしまったかわからないけど)

曜(結局捨てられなくて……)

曜(私は何にも捨てられなくて……)

曜(今、ここにいる)

曜(戻って来たんだ……!)

186: 2017/11/20(月) 05:08:02.39 ID:dnmBqmUG
曜(えっと時間は……)

曜(五時……)

曜(今から行けば十分間に合う)

曜(でもその前に……)

プルルルルルルルルルルル

ピッ

梨子『ん……もしもし……?』

曜「ごめんね。こんな朝早くに」

梨子『ううん……そのまま寝落ちしちゃってたから丁度良かった』

梨子『それで……どうしたの?』

曜「梨子ちゃんにお願いがあるんだ」

梨子『うん』

曜「この後、浜辺で千歌ちゃんと二人きりにしてほしい」

187: 2017/11/20(月) 05:09:52.51 ID:dnmBqmUG
梨子『こんな朝早くにこっち来るの?』

曜「うん……どうしても話したいことがあるんだ」

梨子『そっか……』

梨子『千歌ちゃんのことお願いね』

曜「……まかせて」

梨子『ふふっ、千歌ちゃんの一番の理解者は曜ちゃんだものね』

曜「それは……どうかな……」

梨子『え?』

曜(確かめたい。だから行くんだ)

188: 2017/11/20(月) 05:11:23.59 ID:dnmBqmUG
浜辺


千歌「……」

スタスタ

千歌「……あれ」

千歌「……曜ちゃん?」

曜「おはよ、千歌ちゃん」

千歌「どうしてここに……」

曜「千歌ちゃんに会いたくて。千歌ちゃんは?」

千歌「へ? あぁ……うん」

千歌「何か見えないかなぁって」

曜「え?」

千歌「ほら、梨子ちゃんは海の音を探して潜ってたでしょ?」

千歌「だから私も何か見えないかなって」

189: 2017/11/20(月) 05:13:38.73 ID:dnmBqmUG
曜「そのまま潜ったら風邪引いちゃうよ」

千歌「へへっ。それもそうだね」

千歌「それに」

千歌「ほんとはわかってるんだ」

千歌「何も見えないって」

千歌「私にはまだ何も見えてないんだって」

曜「どうして?」

千歌「私は普通だから」

曜「え?」

190: 2017/11/20(月) 05:15:34.50 ID:dnmBqmUG
千歌「私にはね」

千歌「先にあるものがなんなのか」

千歌「このまま続けてもゼロなのか、それともイチになるのか。ジュウになるのか」

千歌「私にはわからないんだ」

千歌「わからないから……私は続けるよ。スクールアイドル」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「へへっ。昨日は返事できなくてごめんね」ニコッ

曜「……」

曜(やっぱり私には……見せてくれないのかな)

曜(本当は泣くほど悔しいはずなのに)

曜(私には……)

191: 2017/11/20(月) 05:18:34.11 ID:dnmBqmUG
曜「ねぇ、千歌ちゃん」

千歌「んー?」

曜「無理、しなくていいんだよ?」

千歌「何が?」

曜「無理に明るくしなくていいんだよ?」

千歌「無理なんて……してないよ」

曜「してるよ」

千歌「してない」

曜「してる」

曜「私にはわかるよ。千歌ちゃんのこと」

曜「だから――――」

千歌「わかってない!!」

曜「」ビクッ

192: 2017/11/20(月) 05:20:29.89 ID:dnmBqmUG
千歌「ゼロだったんだよ」

千歌「あれだけみんなで練習して、みんなで歌を作って、衣装も作って。PVも作って……」

千歌「頑張って頑張って、みんなにいい歌聞いて欲しいって……」

千歌「スクールアイドルとして輝きたいって……」

千歌「なのにゼロだったんだよ!!」

千歌「悔しいに決まってるじゃん! 聞かなくてもわかるでしょ!?」

千歌「私はリーダーなんだよ!? 後輩だっているんだよ!?」

千歌「言えるわけないじゃん!!」

曜「ご、ごめん……」

193: 2017/11/20(月) 05:22:58.15 ID:dnmBqmUG
千歌「曜ちゃんにはわからないよね」

千歌「私がどれだけ悔しかったか、どれだけ我慢してたか」

千歌「私よりもずっと先が見えてる曜ちゃんにはわからないよ」

曜「わ、私はただ……」

千歌「私ね、やっと見つけたと思ったんだ」

千歌「普通な私でも輝けるって」

千歌「スクールアイドルならもしかしたらって」

千歌「スクールアイドルなら……曜ちゃんと輝けるんだって――」

千歌「それなのに!!」

曜「」ビクッ

194: 2017/11/20(月) 05:25:54.22 ID:dnmBqmUG
千歌「どうして『スクールアイドルやめる?』なんて言うの!?」

千歌「私はやっと曜ちゃんと一緒に何か出来るって思ってたんだよ!?」

曜「そ、そんなつもりで言ったわけじゃ……」

千歌「わかってる!」

千歌「そんなのはわかってるんだよ……」

千歌「ただ私の気持ちも考えてよ……」

千歌「曜ちゃんに『それ』を言われる私の気持ちをさ……」

曜「……」

千歌「私はね、曜ちゃんが思ってるほど強い子じゃないんだよ……」

千歌「あの時……私は曜ちゃんに……」

千歌「『一緒に頑張ろうね』って言ってほしかった……」ポロポロ

曜「千歌ちゃん……」

千歌「こんなにずっと一緒にいるのに、曜ちゃんは何にもわかってない」

千歌「わかってくれないんだよ……わああああああああああん」

195: 2017/11/20(月) 05:30:22.50 ID:dnmBqmUG
梨子「千歌ちゃん!」

タッタッタ

千歌「梨子ぢゃぁん……私……わたし……」

梨子「いいのよ……素直になって」ギュッ

千歌「だって私が泣いたらみんな落ち込むでしょ……」

千歌「今まで頑張ってきたのに、せっかくスクールアイドルやってくれたのに、悲しくなっちゃうでしょ?」

千歌「だから……だから……」

梨子「バカね……みんな千歌ちゃんの為にスクールアイドルやってるんじゃないの。自分で決めたのよ」

梨子「私も。曜ちゃんも、ルビィちゃんも、花丸ちゃんも、善子ちゃんも。だからいいの」

梨子「千歌ちゃんは、感じたことを素直にぶつけて、声に出していいのよ」

千歌「ぐすっ……う、うわああああああああああああああん」

梨子「みんな一緒に、これからも、頑張りましょ?」

千歌「うん……っ」

梨子「…………ごめんなさい。見ていられなくて……」

曜「…………」

196: 2017/11/20(月) 05:33:55.96 ID:dnmBqmUG
曜(まるで、運命が告げているみたいだった)

曜(彼女の隣はお前じゃないと)

曜(お前では運命は変えられないと)

曜(私は彼女のことを理解した気になって苦しめていた)

曜(彼女が離れていったんじゃない)

曜(私が突き放したんだ)



『こんなにずっと一緒にいるのに、曜ちゃんは何にもわかってない』



曜(その言葉が何度も何度も)

曜(私の中で木霊していた)

197: 2017/11/20(月) 05:36:46.32 ID:dnmBqmUG
それから私達は、遅れてやってきた一年生達の手前


形だけの仲直りをし、別れた


そして昼過ぎ


『一度目』とは少し遅れて


私達は再出発の写真を撮った――――

198: 2017/11/20(月) 05:39:46.52 ID:dnmBqmUG
☆――☆


『女は、自分が彼女にとっての大陽であることを知らない』


『その一方で女は、自身が彼女にとっての星であることに最後まで気付くことはなかった』


『太陽と星』


『その二つの輝きは』


『いつしか』


『互いの本当の姿を』


『見えなくしてしまった』


☆――☆

199: 2017/11/20(月) 05:43:00.33 ID:dnmBqmUG


妖精「運命とは時に残酷なものだ」

妖精「本来なら知ることのなかった彼女の想いを」

妖精「本来なら爆発することのなかった彼女の想いを」

妖精「お前に突きつけてくる」

曜「……」

妖精「彼女は望んでいた。お前が隣で支えてくれることを」

妖精「だが、あの頃のお前は信じていた。彼女の強さを」

妖精「立ち上がり、自分の隣にいてくれると――」

曜「…………」

妖精「その僅かなすれ違い……隙が」

妖精「こうまで運命を変えてしまうとはな」

曜「……え?」

200: 2017/11/20(月) 05:45:45.86 ID:dnmBqmUG
妖精「周りをよく見てみろ」

曜「……」

キョロキョロ

曜「……あれ?」

曜「こんなに人、少なかったっけ……」

妖精「いくら寛容な世の中になったとはいえ」

妖精「同性同士の結婚となると、呼べる人間は限られてしまう」

曜「えっ」

バッ

201: 2017/11/20(月) 05:48:23.98 ID:dnmBqmUG
私はその光景を

現実だと受け入れられなかった

脳が、体が……いや

心がそれを拒絶していた

私は心のどこかで

男の人と結婚するならそれはしょうがないことだと

受け入れられていた

受け入れられていたんだ

202: 2017/11/20(月) 05:50:54.57 ID:dnmBqmUG
曜「なんで……」


曜「おかしいよ……こんなの」


曜「どうして……どうしてよ……」


曜「どうして千歌ちゃんの隣に……」


曜「梨子ちゃんがいるの……」

203: 2017/11/20(月) 05:53:10.59 ID:dnmBqmUG
妖精「この世に神がいるとするならば」

妖精「どうやらお前は、相当嫌われているらしい」

曜「こんなのってないですよ……」

曜「なんで……よりにもよって梨子ちゃんなの……」

妖精「なぜ彼女なのか」

妖精「その答えは――あの司会が教えてくれる」



パチン!

204: 2017/11/20(月) 05:57:52.08 ID:dnmBqmUG
ザワザワ…

『予備予選後の写真』


司会「こちらは桜内様が、ご自身の夢の一歩であるピアノコンクールよりも」

司会「高海様の傍にいることを決断したライブでございます」

司会「お二人は、このライブをきっかけに距離を縮め、大学での交際へと発展した次第であります」



鞠莉「コンクールよりも今はあなたが大事」

鞠莉「なんて言われたら、あの千歌っちもトキメイちゃうわよね~」

果南「まぁ、あの頃は余計にね……」

ダイヤ「にしても、本当に女性同士で結婚してしまうとは」

花丸「まさかずら」

ルビィ「ロマンチックだよね~」

果南「……相当揉めたみたいだけどね」

鞠莉「Why?」

果南「梨子が一人っ子だから」

鞠莉「あぁ~」

205: 2017/11/20(月) 06:00:29.26 ID:dnmBqmUG
ダイヤ「千歌さんは三姉妹の末っ子ですものね」

果南「うん……千歌の方はわりとすんなり説得できたみたいだけど」

花丸「梨子ちゃんは一人っ子で女同士だと子供が出来ないから……」

ルビィ「子供……かぁ……」

果南「大反対されたけどなんとか押し切って」

果南「ようやく今日を迎えられたってわけ」

鞠莉「困難や障害があるほどLOVEは燃えるって言うしね~」

鞠莉「私達は素直に祝福してあげましょ」

206: 2017/11/20(月) 06:02:41.72 ID:dnmBqmUG
曜「そんな……梨子ちゃんが……」

善子「どうしたのよ曜」

曜「ねぇ善子ちゃん!!」

善子「はいっ!?」

曜「なんで!? なんで梨子ちゃんはピアノコンクールに行かなかったの!?」

善子「えっ……えぇっと……」

善子「確か……あの頃……」

善子「千歌と曜がうまくいってなかったから……」

曜「え…………」

207: 2017/11/20(月) 06:04:40.29 ID:dnmBqmUG
善子「東京から帰って来てから、あなた達ギクシャクしてたじゃない?」

曜「……」

善子「それで梨子が、今は千歌の傍にいないといけないんだって……」

曜「じゃぁ私が……」

曜「私があの時、千歌ちゃんの所に行ったから……」

曜「私が二人を……」

善子「ど、どうしたのよ急に……」

曜「ねぇ善子ちゃん」

曜「私、今日どうやってここに来たんだっけ……」

善子「いや、私と一緒に来たじゃない」

善子「『昨日、曜の家で飲んでさ』」

曜「そんな……」

208: 2017/11/20(月) 06:07:16.83 ID:dnmBqmUG
曜「消えちゃったんだ……」

善子「何が?」

曜「思い出が……」

善子「思い出?」

曜「全部……全部消えちゃったんだ……」

曜「梨子ちゃんとの思い出も……千歌ちゃんとの思い出も……」

曜「あの日……千歌ちゃんが来てくれたことも……」

曜「ぜんぶ……ぜんぶもう……わああああああああああああああああああ」

善子「よ、曜!?」



パチン!

209: 2017/11/20(月) 06:09:40.36 ID:dnmBqmUG
曜「なんでよ……なんでこうなるの……」

曜「私はただ……千歌ちゃんの……隣にいたいだけなのに……」

曜「ただそれだけなのに……どうしてこうなるの……」

曜「こんなことなら……」

曜「過去になんて戻るんじゃなかった……」

曜「私じゃないんだ……千歌ちゃんの隣は……」

曜「私じゃ……ダメなんだ……」

妖精「…………」

曜「妖精さんは……全部知ってたんですか……?」

曜「こうなるって……」

妖精「……いいや」

210: 2017/11/20(月) 06:12:26.10 ID:dnmBqmUG
曜「あはは……そうですよね」

曜「良かった……もし、知ってたなんて言われたら」

曜「私、妖精さんのこと嫌いになってました」

妖精「……お前は優しいな」

曜「……私は、優しくなんてないですよ」

曜「私は周りが思ってるような良い子じゃないんです」

曜「本当の私は……醜くて……嫉妬深くて……わがままで……」

曜「いつまで経っても現実を受け入れられない子供なんです」

曜「だからこんな目にあうんです」

曜「全部……全部私が悪いんです」

妖精「いいや違う」

211: 2017/11/20(月) 06:15:45.11 ID:dnmBqmUG
妖精「お前は誰よりも強く、優しい。よく出来た人間だ」

妖精「出来すぎているんだ」

曜「……もういいんです」

妖精「お前はいつもそうだ。自分よりも他人を優先してしまう」

妖精「自分の本当の気持ちを押し〇し、相手の気持ちを、相手のことを想ってしまう」

妖精「だからこうなるんだ」

曜「私は……」

妖精「お前はまだ、自分の気持ちを彼女に伝えていない」

妖精「チャンスはまだ残されている」

曜「今更戻ったところで出来ることなんて……」

妖精「なぜ、今更諦める」

妖精「どうして今まで諦めなかったのに今になって諦める?」

曜「それは……」

212: 2017/11/20(月) 06:18:49.07 ID:dnmBqmUG
妖精「いいか? 運命を変えるのは行動ではない」

妖精「想いだ」

曜「想い……」

妖精「人の心を動かす程の強い想いが運命を変える」

妖精「たった数分の会話で運命はここまで変わってしまった」

妖精「それだけ、あの頃の彼女が抱いていた想いは強かったということだ」

曜「千歌ちゃんの……」

妖精「ならばお前もぶつけてみろ」

妖精「お前の中にある、想いを。全て」

妖精「お前の本当の気持ちを」

曜「……」

曜「どうして……」

曜「どうして妖精さんは、そんなに私の味方をしてくれるんですか?」

213: 2017/11/20(月) 06:22:01.42 ID:dnmBqmUG
妖精「見たいからだ」

曜「え?」

妖精「お前が『奇跡の扉』を開けるその瞬間を」

曜「奇跡の扉……」

妖精「お前はもう、その『鍵』を持っている」

妖精「後は、お前が使うか、使わないか」

妖精「それだけだ」

曜「それって――」

妖精「おっと、口が過ぎたな」

妖精「俺はチャンスを与える者であって、導く者ではない」

妖精「渡辺曜」

妖精「覚悟を決めろ」

曜「…………はい」

214: 2017/11/20(月) 06:24:47.70 ID:dnmBqmUG
妖精「俺も覚悟を決める」


妖精「ありったけの力でお前を送ろう」


妖精「相応しい舞台へ。な」


曜「また……会えますか?」


妖精「……さぁな」

215: 2017/11/20(月) 06:27:39.65 ID:dnmBqmUG


妖精「求めよ。さらば与えられん」


妖精「訪ねよ。さらば見出さん」


妖精「扉を叩け。さらば開かれん」


曜(私の……覚悟……)

 


曜「全速前進! ハレルヤァァァァァァァ」

曜「チャンス!!」



☆――☆

237: 2017/11/21(火) 11:03:45.58 ID:783rvEyM
チュンチュン


バッ

曜「今日は……」チラッ

曜「……」

曜「本当なら梨子ちゃんを送り出した日……」

曜「妖精さん……写真の日より随分前に送ってくれたんですね……」

<ヨーウ

<アサゴハンデキルワヨー

曜「答えなきゃ……妖精さんの期待に……」

曜「……」

曜「違う」

曜「そうじゃないって怒られたばっかりなんだ」

曜「私は」

曜「私のために戻ってきたんだ」

238: 2017/11/21(火) 11:08:13.65 ID:783rvEyM
食卓


曜ママ「曜、何かあった?」

曜「ん?」モグモグ

曜ママ「なんだか昨日とは違うから」

曜「そうかな……私は別に」

曜「……」

曜ママ『曜……今、お付き合いしてる人とかいるの?』

曜ママ『急かしてるわけじゃないのよ』

曜ママ『ただ……あなたからそういう話、今まで聞いたことなかったから』

曜「ねぇ……ママ」

曜ママ「なに?」

曜「私ね……千歌ちゃんのこと好きなんだ」

239: 2017/11/21(火) 11:10:50.23 ID:783rvEyM
曜ママ「ふふふ、なによいきなり」

曜「誰よりも好きなの」

曜「私は千歌ちゃんと結婚したい」

曜「他の人となんて考えられないんだ」

曜ママ「…………そう」

曜「……ごめんなさい」

曜ママ「どうして謝るの?」

曜「……親不孝者だから」

曜ママ「なんで?」

曜「なんでって……普通じゃないから……孫とか……」

曜ママ「そうね……女の子同士じゃ孫は見れないわね」

曜「…………」

240: 2017/11/21(火) 11:13:41.37 ID:783rvEyM
曜ママ「でもね、曜」

曜ママ「千歌ちゃん以外の人と結婚してあなたは幸せになれるの? 千歌ちゃんと結婚しないであなたは幸せになれるの?」

曜「…………なれないと思う」

曜ママ「なら、結婚しなさい。千歌ちゃんと」

曜「でも……」

曜ママ「パパとママの一番の幸せはね」

曜ママ「あなたが幸せになること」

曜ママ「自分の気持ちに嘘をついてほしくないの」

曜「ママ……」

曜ママ「それに知ってたわよ」

曜ママ「あなたが千歌ちゃんのこと特別に想ってるの」

曜「えっ」

241: 2017/11/21(火) 11:16:10.54 ID:783rvEyM
曜ママ「いつになったら教えてくれるんだろうってずっと思ってたのよ?」

曜「バレてたんだ……」

曜ママ「お見通しよ。それで、いつからお付き合いしてるの?」

曜「……まだ、してない」

曜ママ「え?」

曜「今日。告白する」

曜ママ「あら、そうだったの。結婚なんて言うからてっきり」

曜「ごめん……」

曜ママ「いいのよ。頑張ってね」

曜「ありがとう……。今まで……散々待たせてごめんなさい」

曜ママ「気にしないで。待つのは得意だもの」

243: 2017/11/21(火) 11:19:08.75 ID:783rvEyM
浦の星女学院


曜(伝えるんだ……私の気持ちを……)


スタスタ…


千歌「お、おはよう。曜ちゃん」

曜「おはよう、千歌ちゃん」

曜「ごめんね。急に呼び出したりして」

千歌「ううん……平気」

千歌「それで……何かな?」

曜「…………」

曜(言うんだ。二十五年間言えなかった言葉を)

曜(この一言のために)

曜(私はやり直して来たんだ)

千歌「よ、曜ちゃん?」

曜「千歌ちゃん!」

千歌「は、はい!」

244: 2017/11/21(火) 11:21:26.47 ID:783rvEyM
 

曜「私は! ずっと千歌ちゃんのことが好きでした!」


曜「私とお付き合いしてください!」

246: 2017/11/21(火) 11:23:44.51 ID:783rvEyM
千歌「……え、え?」

千歌「お付き合いって……恋人になるってこと?」

曜「うん。そうだよ」

曜「私は千歌ちゃんと恋人になりたい」

曜「ずっとそう思ってた」

千歌「…………どうして今なの?」

千歌「その……私達、今は……」

曜「わかってる」

曜「けど、今しかないって」

曜(私には今しかないから)

曜「今なんだって思ったから」

247: 2017/11/21(火) 11:27:03.74 ID:783rvEyM
曜「返事、聞かせてほしい」

千歌「そんな急に……」

千歌「まだあの時の整理も出来てないのに……」

曜「ごめん……自分勝手なのはわかってる」

曜「ただの私の我儘なんだって……」

曜「それでも『今』答えがほしい」

千歌「む、無理だよ……少し考えさせて……」

曜「いつ!? いつになったら答えてくれる!?」

千歌「えっ……その……ラブライブが終わってから……」

曜「それじゃ遅いの!!」

千歌「」ビクッ

248: 2017/11/21(火) 11:29:46.45 ID:783rvEyM
曜「お願い千歌ちゃん」

曜「返事を聞かせて」

千歌「わ……私は……」

千歌「曜ちゃんがわからないよ……」

曜「え?」

千歌「あの日からずっと、まともに口聞いてくれなかったのに……」

千歌「今になって急に好きだ、なんて……」

千歌「わかんないよ……曜ちゃんが何考えてるか……」

曜「それは……ごめん……でも……」

曜「千歌ちゃんのことが好きなのは本当だよ」

曜「私の……本当の気持ちだよ」

千歌「…………」

249: 2017/11/21(火) 11:32:00.34 ID:783rvEyM
千歌「ごめんなさい……」

曜「……」

千歌「今、こんな気持ちじゃ曜ちゃんと付き合えないよ……」

千歌「今は……」

曜「そっか……」

千歌「今はさ、ラブライブに集中して――」

曜「いいんだ」

曜「わかってるから」

曜(千歌ちゃんが今、私よりも梨子ちゃんの方が好きなんだって)

曜(そうさせたのは他でもない私だから)

曜(私なんだから……)

千歌「曜ちゃん……」

250: 2017/11/21(火) 11:35:06.61 ID:783rvEyM
曜「ごめんね。大事な予備予選の前にこんなこと言って」

千歌「ううん……」

千歌「もう……仲直りってことでいいんだよね?」

千歌「また、元に戻れるよね?」

曜「うん……戻れるよ」

曜「私達、親友だもん」

千歌「そうだよね……」

曜「へへっ! 今までごめんなさいでした!」

曜「私、変に意地張っちゃってた!」

千歌「私も……曜ちゃんにだけは私の弱い所見せたくなかったから」

曜「……どうして?」

千歌「曜ちゃんはね……」

千歌「私の」

千歌「一番の憧れだから」

――――

――

251: 2017/11/21(火) 11:38:08.18 ID:783rvEyM
 
ママ。妖精さん

ごめんなさい

振られちゃいました

あんなに応援してくれたのにダメでした

でも、もう平気です

伝えられたから

私の本当の気持ちを

後悔はありません

252: 2017/11/21(火) 11:40:57.24 ID:783rvEyM
プール


ルビィ「綺麗になったね!」

花丸「ぴかぴかずら!」

ダイヤ「ほら見なさい! やってやれないことはありませんわ!」

五人「えええええええええええええ」

果南「そうだ。ここでみんなでダンス練習してみない?」

鞠莉「oh! funny! 面白そう♪」

ダイヤ「滑って怪我しないでよ?」

鞠莉「ちゃんと掃除したんだし、平気よ」

果南「じゃ、みんなポジションについて」

ドン

梨子「あたっ」

曜「あっ……」

253: 2017/11/21(火) 11:43:20.61 ID:783rvEyM
果南「珍しいね。曜がポジション間違えるなんて」

曜「あはは……ごめん、梨子ちゃん」

梨子「ううん」

千歌「……」

トボトボ

曜(……そう。私はあなたの変わりだったから)

曜(そこは私の居場所じゃないから)

曜(もうこのまま)

曜(予備予選を終えて戻るだけなんだ……)

ピタッ

曜「…………」

254: 2017/11/21(火) 11:45:56.17 ID:783rvEyM
果南「珍しいね。曜がポジション間違えるなんて」

曜「あはは……ごめん、梨子ちゃん」

梨子「ううん」

千歌「……」

トボトボ

曜(……そう。私はあなたの代わりだったから)

曜(そこは私の居場所じゃないから)

曜(もうこのまま)

曜(予備予選を終えて戻るだけなんだ……)

ピタッ

曜「…………」

255: 2017/11/21(火) 11:48:40.83 ID:783rvEyM
果南「ん? どうかした曜?」

曜「……果南ちゃん」

曜「フォーメーションなんだけど」

果南「うん」

曜「私が千歌ちゃんの隣じゃダメかな?」

果南「え?」

千歌「曜ちゃん……」

梨子「……」

257: 2017/11/21(火) 11:52:35.40 ID:783rvEyM
果南「ん? どうかした曜?」

曜「……果南ちゃん」

曜「フォーメーションなんだけど」

果南「うん」

曜「私が千歌ちゃんの隣じゃダメかな?」

果南「え?」

千歌「曜ちゃん……」

梨子「……」

258: 2017/11/21(火) 11:55:01.66 ID:783rvEyM
曜「ほら……私と千歌ちゃんのが身長同じで見栄えいいと思うんだよね」

曜「大事な予選だから細かい所まで突き詰めた方がいいと思う」

果南「んー」

果南「まぁ、私も最初はそのつもりだったんだけど」

曜「それじゃあ」

梨子「イヤです」

曜「っ」

梨子「千歌ちゃんの隣は私がやります」

曜「梨子ちゃん……これは予選のために」

梨子「曜ちゃん。違うでしょ?」

曜「…………」

261: 2017/11/21(火) 11:57:48.53 ID:783rvEyM
梨子「曜ちゃんは千歌ちゃんが好きだから」

梨子「諦めきれないから隣がいいんでしょ?」

曜(梨子ちゃんに言ったんだ……)

曜「…………違うよ」

曜「諦めるために隣がいいんだ」

曜「最後に……この曲だけでいいから」

曜(最後の思い出を)

曜「私と変わってください。梨子ちゃん」

梨子「…………」

梨子「ごめんなさい。曜ちゃんには変わってあげられない」

梨子「あの日から、どれだけ千歌ちゃんが苦しんだか」

梨子「曜ちゃんは自分のしたことをわかってないよ」

曜(はは……私、何してたのかな……)

曜(何もしてなかったのかな……)

262: 2017/11/21(火) 12:00:40.73 ID:783rvEyM
果南「はいはい、おしまい!」

果南「曜と千歌は今朝、仲直りしたんでしょ?」

千歌「……うん」

曜「……」

果南「なら、もう大丈夫でしょ」

果南「ただポジションは一度決めたことで、曜も納得してたんだから」

果南「梨子ちゃんの意思を尊重してね」

曜(梨子ちゃんの意思……)

曜(そんなのわかってる)

曜(梨子ちゃんの優しさを。私が一番知ってる)

曜(梨子ちゃんは千歌ちゃんのことを想ってるだけで)

曜(私のことが嫌いとかそういうんじゃなくて)

曜(ただ、彼女の味方で……彼女のために傍にいる……)

曜(私にもそうしてくれたから……)

曜「それでも」

263: 2017/11/21(火) 12:04:12.06 ID:783rvEyM
曜「千歌ちゃん。私が隣じゃダメかな?」

千歌「えっ……」

曜「千歌ちゃんはAqoursのリーダーでしょ?」

曜「だからさ、お願い。これが最後」

曜「最後にあなたの隣で踊らせてほしい」

曜「もう二度とわがまま言わないから」

千歌「最後なんて言わないでよ……なんでそんな悲しいこと言うの……」

梨子「ちょっと曜ちゃ――」

果南「曜!!」

七人「」ビクッ

264: 2017/11/21(火) 12:06:36.06 ID:783rvEyM
果南「いい加減にして。私達はチームなんだよ?」

曜「…………」

果南「いくら千歌のことが好きだからってこれ以上は――」

曜「そうだよ」

曜「私は千歌ちゃんのことが好きなの。誰よりも。何よりも……」

曜「本当はスクールアイドルも廃校も私はどうだっていいんだ……」ポロポロ

八人「……」



感情をコントロール出来なかった
想いが溢れ出して
これが最後だと
彼女の傍にいられる最後なんだって思うと
言葉が止まらなくなったんだ

266: 2017/11/21(火) 12:09:06.29 ID:783rvEyM
曜「私は!!」

曜「私はただ! 千歌ちゃんの隣にいたいだけなの!!」

曜「おばさんになってもおばあちゃんになってもずっと。ずっと!」

曜「どんなに反対されたって、どんなに周りに受け入れられなくたって……離れたくない」

曜「千歌ちゃんとずっと一緒にいたい……私には千歌ちゃんしかいないって……」

曜「千歌ちゃんがいないとダメなんだって痛いほどわかったから……」

曜「千歌ちゃんは私の……ひぐっ……」



大陽だから

267: 2017/11/21(火) 12:11:49.59 ID:783rvEyM
 
あまりにも情けない光景だった

二十五歳にもなって

大泣きして、鼻水を垂らしながら

わがままを言って周りを困らせる子供

それが本当の私

輝いていたのは私じゃない

私はただ、あなたに

照らされていたんだ

271: 2017/11/21(火) 12:16:29.36 ID:783rvEyM
曜「私は!!」

曜「私はただ! 千歌ちゃんの隣にいたいだけなの!!」

曜「おばさんになってもおばあちゃんになってもずっと。ずっと!」

曜「どんなに反対されたって、どんなに周りに受け入れられなくたって……離れたくない」

曜「千歌ちゃんとずっと一緒にいたい……私には千歌ちゃんしかいないって……」

曜「千歌ちゃんがいないとダメなんだって痛いほどわかったから……」

曜「千歌ちゃんは私の……ひぐっ……」



太陽だから

273: 2017/11/21(火) 12:19:32.37 ID:783rvEyM
曜「はぁーっ……ふぅーっ……」

曜「ぐすっ……ひぐっ……」グシグシ

曜「…………ごめんね。みんな」

曜「私、今日帰るから」

曜「頭冷やしてくるね」

果南「曜……」

梨子「曜ちゃん待って!」

曜「大丈夫、予備予選には出るよ」

曜「ダンスとかはもうバッチシだし」

曜「心配しないで」

曜「泣いたらスッキリした!」

曜「それじゃ! また明日!」

タッタッタ……

275: 2017/11/21(火) 12:22:36.19 ID:783rvEyM
ダイヤ「曜さん……」

鞠莉「まさかあそこまでとはね……」

果南「私……間違えちゃったかな……」

梨子「果南さんは悪くありません」

梨子「私が……私が悪いんです……」

梨子「私があんなこと言うから……」

善子「誰も悪くなんかないわよ」

花丸「そうずら。誰も間違ってなくてもすれ違うことだってあるよ」

ルビィ「曜ちゃんなら絶対戻ってくる。ルビィは信じるよ」

ダイヤ「そうね……」

ダイヤ「ファーストライブの時、誰よりもAqoursの未来を考えていた方ですもの」

ダイヤ「彼女なら平気ですわ。そうでしょ、千歌さん?」

千歌「…………うん」


『だって今日は私達の始まりの日だもん』

『ここから始まるんだよ。全部』


千歌(曜ちゃん)

千歌(私――――)

277: 2017/11/21(火) 12:25:23.75 ID:783rvEyM
夜・曜の部屋

コンコン

曜ママ「曜? ご飯どうする?」

曜「……今日はいいや」

曜ママ「そう……」

曜ママ「……」

曜ママ「ママは待ってるからね」

曜「うん……ありがとう……ママ……」

曜(ごめんね……ママ……)

279: 2017/11/21(火) 12:28:04.76 ID:783rvEyM
 
もう、今となっては消えてしまった過去を思い出していた

みんなでラブライブに出たこと。冬では念願の優勝を果たしたこと

廃校は覆せなかったけど、私達の輝きは確かにそこにあった

それから三人で上京して

学校はバラバラだけど相変わらず一緒にいて

ある日、彼女に彼氏が出来た。と、告げられた日

私は泣いて。梨子ちゃんに慰められて

彼女を奪い返す作戦を二人で考えたりした

まぁ、作戦は失敗続きだったけど

楽しくて、笑えて……最高とは言えないけど

幸せだった過去を

280: 2017/11/21(火) 12:33:02.04 ID:783rvEyM
来週

写真に写って未来に戻っても

そこは私の知らない世界で

私は孤独で

そこにはもう太陽のない世界が待っている

そんな未来に戻る意味はあるのだろうか

そんな現実に私は耐えられるだろうか

もういっそ

このまま……


 







「よーちゃん!」

281: 2017/11/21(火) 12:35:55.09 ID:783rvEyM

声が聴こえた

優しい声が

私の心を暖かく、包んでくれる声

あの日も確か

こんな風に――




「よーちゃーん!!」

282: 2017/11/21(火) 12:37:41.38 ID:783rvEyM
曜「ち、か、ちゃん……?」

ガラッ

千歌「あっ! 曜ちゃん!」

曜「千歌ちゃん……どうして……」

千歌「曜ちゃんに謝りたくて!」

千歌「それと」

千歌「来週の予選、私の隣で踊ってくれませんか!?」

曜「謝るって……予選は……」

千歌「みんなにはもう許可貰ったよ!」

千歌「リーダー権限で今回限りだけど!」

千歌「だからね、私の隣にいてください!」

曜「……っ」ダッ

千歌「曜ちゃん!?」

283: 2017/11/21(火) 12:40:23.65 ID:783rvEyM
ガチャ

曜「…………」

千歌「曜ちゃん?」

曜「どうして来てくれたの……」

千歌「謝りたくて。返事がしたくて」

曜「千歌ちゃんが謝ることなんて何もないよ……返事って……」

千歌「あるよ」

千歌「私ね。曜ちゃんに私のことなーんにもわかってないなんて怒ったけど」

千歌「私も同じだったの」

曜「……え?」

千歌「私も曜ちゃんのことなーんにもわかってなかった」

285: 2017/11/21(火) 12:44:22.07 ID:783rvEyM
千歌「曜ちゃんって昔から器用で、みんなから頼りにされて、輝いてて……」

千歌「私と違う特別な子なんだーってずっと思ってた」

曜「私は……そんなんじゃ……」

千歌「きっと私なんかじゃ、曜ちゃんの隣に相応しくないんだって思ってた」

曜「そんなことない……」

千歌「だからね。いつか必ず曜ちゃんに追いついて、曜ちゃんと一緒に輝きたいって思ったの」

千歌「曜ちゃんみたいな輝く星になりたいって本気で思ってたんだよ」

曜「わたしは……」

千歌「でもね、違ったの」

千歌「曜ちゃんも私とおんなじ。普通の子だった」

千歌「普通の女の子だってわかった」

曜「普通……」

千歌「私とおんなじ、子供じみた我儘を本気で言っちゃう女の子」

千歌「あははは、本当笑っちゃうよね」

千歌「私達ってお互いのことぜーんぜんわかってなかったけど……」

千歌「気持ちはずっと一緒だった」

曜「一緒……」

千歌「私の返事……私の子供じみた我儘聞いてくれる?」

曜「…………うん」

千歌「曜ちゃん……私と……」

286: 2017/11/21(火) 12:46:49.04 ID:783rvEyM






千歌「結婚を前提にお付き合いしてください!」


 



290: 2017/11/21(火) 12:48:52.02 ID:783rvEyM
曜「へっ……?」

千歌「あーあー、言っちゃったー」

千歌「重いよねー。まだ高校生なのになー」

曜「けっ、結婚って……」

千歌「重い告白だよねー」

千歌「でもきっとね」

千歌「それくらいの覚悟がなきゃ、伝えちゃいけない想いだから」

曜「ずっと……私と結婚したいって……思ってたの……?」

千歌「そうだよ? 曜ちゃんはもう忘れちゃったと思うけど」

千歌「私の将来の夢はね」

千歌「曜ちゃんのお嫁さんになること!」

曜「あっ……」

291: 2017/11/21(火) 12:51:54.04 ID:783rvEyM
千歌「本当はね」

千歌「忘れないようにずっと言い続けるつもりだったんだよ?」

千歌「でもさ、段々わかってくるじゃん?」

千歌「それがどんなに大変か。夢みたいな話なんだって」

千歌「私達は女同士だから」

千歌「曜ちゃんは……一人っ子だから」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「だから仕舞ってたの。この想いを。私の心の奥に」

千歌「開けられちゃったけどね」テヘッ

曜「ぐすっ……ぅぅ……ぁぁぁぁぁ」ポロポロ

千歌「返事……聞いてもいいかな?」

295: 2017/11/21(火) 12:55:57.90 ID:783rvEyM
曜「ぢがぢゃぁぁぁああん!」ダキッ

千歌「わぁっ!」

ドサッ

千歌「もー危ないよー?」

曜「ひぐっ……二十五年間ずっと大好きだった……」

千歌「曜ちゃんはまだ十七歳でしょー?」

曜「何度も何度も諦めようと思った」

曜「彼氏が出来た日も、プロポーズされたって聞いた日も」

曜「スピーチをした後も、振られた後も、何度も何度も」

曜「でも結局諦められなくて、諦めることすら私には出来なくて……」

千歌「曜ちゃんさっきから何言ってるのー?」

曜「いいの!」

千歌「後、私振ってないからね?」

曜「いいの!」

千歌「いいのかな……」

曜「うん……」

千歌「それじゃ……返事、聞かせて?」

曜「千歌ちゃんっ……」

曜「私がぁ……私が絶対に……絶対に千歌ちゃんのこと――――」


 

297: 2017/11/21(火) 12:59:35.50 ID:783rvEyM
☆――☆

 

『奇跡の扉を開ける鍵は誰の手にも握られている』


『ただ、それに気付く者は、ほんの僅かしかいない』


『運命を変えるほどの大きな奇跡は、そうそう訪れない』


『どんなに辛く、険しい道のりでも、変えたいと思う小さな一歩を積み重ねる事で』


『いつの日か。奇跡の扉は開く』


『あの男と』


『この女の様に』



☆――☆

336: 2017/11/22(水) 12:40:20.50 ID:AOzf8T+c
 

「曜。出来たわよ」キュッ

「曜?」


曜「……っ!」

曜「あ……あぁ。うん」

曜ママ「もう。シャキッとしなさい」

曜パパ「曜。よく似合ってるぞ」

曜ママ「ほんと。若い頃のあなたに似て格好いいわ」

曜「…………ありがとう。パパ、ママ」ウルウル

曜ママ「なに泣きそうになってるのよ」


曜(私は戻ってきた。八年前から)


曜「だって……」


曜(この格好。この場所。この日に)


曜「本当にこの日が来たんだって……」


曜(奇跡は……)


曜「私と……」


曜(起きたんだ……!)


曜「千歌ちゃんの結婚式――――」

339: 2017/11/22(水) 12:45:23.67 ID:AOzf8T+c
広場


善子「お、来たわね」

花丸「こっちこっちー」フリフリ



ダイヤ「お二人ともお久しぶりです」

ルビィ「久しぶりヨハネちゃん、花丸ちゃん」

善子「ちょっと! その名前で呼ぶなっていつも言ってるでしょ!」

ルビィ「え~? 昔はいつもそう呼べって言ってたじゃん」

善子「昔は昔! この歳になってヨハネなんて痛すぎるわよ!」

花丸「昔も十分痛かったけどね」

善子「は~な~ま~る~?」

善子「アンタなんて未だに――」

鞠莉「ハロー♪」

ダイヤ「あら、鞠莉さん」

ダイヤ「あなた仕事で遅くなるかもって」

鞠莉「そんなもんほっぽり出して来たわよ」

鞠莉「あの二人の結婚式」

鞠莉「見逃したら一生後悔するもの」

ダイヤ「ふふっ。それもそうですわね」

340: 2017/11/22(水) 12:49:01.68 ID:AOzf8T+c
善子「これで全員揃ったわね」

ダイヤ「果南さんと梨子さんは?」

善子「先に中入ってるわ」

ダイヤ「そうですか」

ルビィ「Aqoursが揃うなんていつぶりだろうね」

ダイヤ「そうね……。この歳にもなると九人で会うのはこういう機会でもないと」

善子「ほんとよ。あの二人が結婚するせいで私達が集まれる回数が一回減っちゃったわ」

花丸「善子ちゃん、そんなにみんなと会いたいずらか~?」

善子「会いたいに決まってるでしょ」

花丸「およ」

善子「みんなには……感謝してるんだからっ」

ダイヤ「この素直さが、あの頃にほしかったですわね」

鞠莉「生意気な後輩だったものね~」

善子「何よ! 人がせっかく感謝してあげてるのに!」

ルビィ「善子ちゃんは昔から素直で良い子だよ!」

善子「だからヨハネよ!」

善子「あっ」

プッ

アハハハハハハ

モーワラウナー!

――――

――

341: 2017/11/22(水) 12:53:15.38 ID:AOzf8T+c
曜ママ「ふふ、やっと実感湧いてきたの?」

曜「うん……本当に私……結婚するんだなって……」

曜パパ「……そうだな」

曜「…………ねぇパパ」

曜パパ「なんだ」

曜「私、千歌ちゃんと結婚します」

曜(八年前では言えなかったから)

曜(私は直接言えてないから)

曜パパ「何を今更……」

曜パパ「まさか……まだ気にしてるのか?」

曜「気にしてないって言ったら嘘になると思う……」

曜パパ「そうか……」

曜パパ「一つ。話をしよう」

342: 2017/11/22(水) 12:56:59.65 ID:AOzf8T+c
曜パパ「結婚相手は世界で一番好きな人ではなく、二番目に好きな人を選んだ方がいい」

曜パパ「よく、そんなことが言われている。曜も聞いたことがあるだろ?」

曜「うん……」

曜パパ「だが、父さんはそうは思わない」

曜パパ「なぜだか、わかるか?」

曜「…………ママと結婚したから?」

曜パパ「そうだ」

曜パパ「父さんと母さんは、世界で一番好きな人と結婚した」

曜パパ「だから曜も」

曜パパ「世界で一番好きな人と結婚していいんだぞ」

曜「うんっ……」ポロポロ

344: 2017/11/22(水) 13:00:57.56 ID:AOzf8T+c
曜(やっぱりパパはすごい……)

曜(私の……世界で一番かっこいい人)

曜ママ「ちょっとあなた、泣かせないでよ」スッ

曜ママ「ほら、曜。下向いて。涙拭くから」

曜「うんっ……」

曜(ママは私の……世界で一番優しい人)

曜パパ「泣くにはまだ早いぞ、曜」

曜「そうだよね……」

曜パパ「式にはまだ時間がある」

曜パパ「行ってきなさい」

曜ママ「はいっ。これでヨシ」

曜「ありがとう……パパ、ママ」

曜「行ってくる!」

曜(私の。世界で一番大好きな人の元へ)

345: 2017/11/22(水) 13:04:07.92 ID:AOzf8T+c
バタン

曜「……」

「素敵なご両親だな」

曜「!」

曜「妖精さん!」

妖精「よっ」

曜「かるっ!」ズコー

妖精「感動の再会。というわけでもなかろう」

曜「いやでも……あんな別れ方したのに……」

妖精「俺は信じていたからな」

妖精「お前と再び出会うのを」

曜「妖精さん……」

346: 2017/11/22(水) 13:09:44.88 ID:AOzf8T+c
妖精「それにしても」

妖精「プロポーズするために戻った人間が」

妖精「逆にプロポーズされるとはな……ククッ」

曜「うっ……」

妖精「最後まで情けない奴だ」

妖精「だが……」

妖精「だからこそ。扉が開いたのかもしれんな」

妖精「お前が鍵を開け、彼女が扉を開く」

妖精「そんなところまで『あの二人』と同じとは」

妖精「つくづく運命とは不思議なものだ」

曜「あの二人って……私が似てるっていう?」

妖精「ああ。お前によく似た『あの男』のことだ」

曜「私、会ってみたいです。私と同じ旅をした……その人に」

妖精「会えるさ」

妖精「会いたいと願っていれば……いつか」

妖精「俺とお前が。また出会えたように」

曜「……はい!」

347: 2017/11/22(水) 13:15:52.89 ID:AOzf8T+c
妖精「引き止めて悪かったな」

曜「いえ……」

曜「会えて……またこうやって話せて、本当に、嬉しいです……」

曜「妖精さん……」

曜「本当に。ありがとうございました!」スッ

曜「このご恩は……一生忘れません!!」

妖精「……礼を言うのは俺の方だ」

妖精「久々に良いモノが見れた」

妖精「さぁ行け」

妖精「彼女の元へ。お前の手で幸せにしてやれ」

曜「はい! 行ってきます!」


タッタッタ……


妖精「……」

 

『二人の未来に』


『幸あれ』



パチン!

348: 2017/11/22(水) 13:20:26.75 ID:AOzf8T+c

曜「はぁ……はぁ……」

曜(やばい。かっこつけて飛び出したけど……)

曜(千歌ちゃんどこにいるんだ!?)

曜(新婦の部屋ってどこだ!?)

曜(『日記』は……鞄の中だろうし……)

曜(うぅ……こういうことのない様に日記付けてたのに……)

曜(かっこ悪いけど……一度取りに戻るか……)

曜「はぁ……」

トボトボ



男「何かお困りですか?」

曜「あっ」

349: 2017/11/22(水) 13:25:49.58 ID:AOzf8T+c
曜「その……お恥ずかしながら……迷っちゃいまして」

男「ここで、ですか?」

曜「はい……新婦の部屋を……ド忘れしちゃって」

男「それなら、ここをこう行って――――」

曜「あ、ありがとうございます!」

曜(すぐ近くだったじゃん!)

曜(妖精さんが『さぁ行け!』なんて言うから駆け出しちゃったよ!)

曜(恥ずかし……)

曜「えっと……あのぉ……」

男「ん? あ、僕ですか?」

曜「はい……」


男「岩瀬です」


岩瀬「高海さんの上司をしてます。岩瀬と申します」

350: 2017/11/22(水) 13:30:36.15 ID:AOzf8T+c
曜「そ、そうでしたか……これは失礼しました」

曜「いつも千歌ちゃんが……いえ、嫁がお世話になっております……」

岩瀬「いえいえ。職場ではいつもみんな、高海さんに元気を貰っていますよ」

岩瀬「呼び方、最初は慣れませんよね(笑)」

曜(千歌ちゃんの……上司……)



『この式場ね、会社の先輩が教えてくれたんだー。いいとこでしょ?』

 

曜「!」

曜「あの!」

岩瀬「はい?」

曜「もしかして、千歌ちゃんにこの式場を紹介してくれたのって……」

岩瀬「あぁ。僕ですよ」

岩瀬「ちょっと曰く付きなんですけど、その分安いんで、若いお二人に丁度いいかと思って――」

曜「ありがとうございます!!」

岩瀬「へっ?」

351: 2017/11/22(水) 13:34:44.97 ID:AOzf8T+c
曜「千歌ちゃんにここを紹介してくれて」

曜「本当に……本当に……ありがとうございます……」

曜(あなたのおかげで……私は……)

岩瀬「…………」

岩瀬「気に入っていただけて、なによりです」

曜「また……改めて嫁とお礼に参ります」

岩瀬「はい。楽しみにしてますね」

曜「それでは失礼します」スッ

岩瀬「ええ。また」


タッタッタ……

 


岩瀬「…………」

岩瀬(まさかね)

352: 2017/11/22(水) 13:38:25.95 ID:AOzf8T+c
教会の一室


果南「本当に二人が結婚するとはね~」

千歌「私も」

千歌「本当にこんな日が来るなんて思ってもみなかった」

果南「何? 千歌は信じてなかったの?」

千歌「そういうわけじゃないけど……」

千歌「なんだか夢みたいで……」

果南「まぁね~」

果南「でも、夢じゃない」

千歌「うん……」

千歌「夢じゃないんだ」

353: 2017/11/22(水) 13:41:17.62 ID:AOzf8T+c
千歌「私ね。ずっと思ってたの」

千歌「曜ちゃんは私の運命の人なんだって」

千歌「もし、結婚は出来なくても……」

千歌「ずっと傍にいる。そんな運命の人」

果南「千歌って結構ロマンチストだよね~」

果南「奇跡とか輝きとか大好きでさ。スクールアイドルやってる時なんか――」

千歌「やめてよ。恥ずかしいから!」

果南「ふふっ。でも、あると思うよ。運命」

千歌「果南ちゃんはどうなの?」

果南「え?」

千歌「ブーケ……いる?」

果南「一応……貰っておくかな」

354: 2017/11/22(水) 13:44:40.32 ID:AOzf8T+c
コンコン

果南「お、噂をすれば」

果南「来たみたいよ。運命の人」

千歌「それ。曜ちゃんには言わないで」

果南「なんで?」

千歌「重い女だと思われるから」

果南「あははっ。お似合いだと思うけどね~」


ガチャ


果南「お待たせ」

曜「ありがとう。果南ちゃん」

果南「それじゃ。お邪魔虫はこれで」ポンッ

曜「ん。また後でね――」

355: 2017/11/22(水) 13:48:27.14 ID:AOzf8T+c
バタン

曜「…………」

千歌「わぁ。曜ちゃん格好いい」

曜「……ありがとう」

曜「千歌ちゃんも……すごく綺麗だよ」

曜「眩しいくらいに……」

千歌「――ありがとっ。目、逸らさないでね?」

曜「うん。もう逸らさない」

曜「千歌ちゃん」

千歌「なあに?」

曜「私が、絶対に。幸せにします」

曜「私と」

曜「結婚してください」

356: 2017/11/22(水) 13:56:43.79 ID:AOzf8T+c
千歌「ふふふっ。これから結婚式なのにプロポーズなんて、おかしな曜ちゃん」

曜「おかしいよね」

曜「でも」

曜「言わなきゃいけない気がしたんだ」

千歌「うん…………嬉しい」

千歌「けど」

千歌「一つ。曜ちゃんは勘違いしてるよ?」

曜「え?」

千歌「だってね」

千歌「私はもう」

千歌「あの日からずっと――――」

 

曜『千歌ちゃんっ……』


曜『私がぁ……私が絶対に……絶対に千歌ちゃんのこと』


曜『し゛あ゛わ゛せ゛に゛す゛る゛か゛ら゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』


千歌『うん……お願いしますっ』



千歌「幸せ。なんだよ?」


――――――

――――

――

357: 2017/11/22(水) 14:01:03.99 ID:AOzf8T+c


司会「ただいまより。お二人の大親友であられる」

司会「桜内梨子様に。ピアノを演奏して頂きます」

司会「曲は、先程のスライドショーでもご紹介しましたとおり」

司会「お二人の想いが。一つになられた時にご披露された」

司会「あの。曲でございます」

司会「それではお聴き下さい」

司会「桜内梨子様で――――」


 


想いよひとつになれ





『渡辺曜のプロポーズ大作戦』





fin.

359: 2017/11/22(水) 14:03:19.75 ID:AOzf8T+c
想いよひとつになれ
このときを待っていた
なんてイントロが流れた所でこのSSは終わりです。ありがとうございました

本当は2期前に投下するつもりだったのでそのへんはお願いします

362: 2017/11/22(水) 14:10:09.79 ID:PhY9YRnl
2期前から練ってたのか
とても良かったです

364: 2017/11/22(水) 14:15:04.79 ID:htVu1ApI
ありがとうございました

366: 2017/11/22(水) 14:19:36.51 ID:s409q+J0
良かった、乙

368: 2017/11/22(水) 14:52:46.27 ID:D06JtL+s
すごく良かった乙!

369: 2017/11/22(水) 15:00:46.19 ID:TybHVJKU
久々にいいSSを見れた乙

自家発電とダイヤの家泊まるやつめっちゃおもしろかったよね

370: 2017/11/22(水) 15:25:32.51 ID:mBcBaaLi
面白かった!

乙!!

373: 2017/11/22(水) 16:14:43.54 ID:AIyhjOGd
いいもの見れたわ

376: 2017/11/22(水) 17:14:03.10 ID:pQhmMSHQ
超乙乙
最高だった

381: 2017/11/22(水) 19:43:36.53 ID:UDGS6vee
乙!
曜ちゃんが報われてよかったよ

383: 2017/11/22(水) 21:16:25.15 ID:SXV77XDB
お |c||^.-^|| つ

385: 2017/11/22(水) 21:56:03.37 ID:55sO5fdc
乙乙
久々にジーンとくるSS読んだ
過去作も全部好きなんでもっと書いてください

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1510971884/

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