【SS】侑 「この歌詞……ちょっと変かも。数単語リライトしよう!」【ラブライブ!虹ヶ咲】

SS


3: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:51:35.34 ID:LkTXY+2S
侑 「それでね、かすみちゃんがね……」 ペラペラ

歩夢 「ふふ、面白いね」

かすみ 「あっ、侑先輩ーー! 歩夢先輩ー! おはようございますー!」

侑 「あ、かすみちゃんおはよう」

歩夢 「おはよう、かすみちゃん」

かすみ 「登校ルートとは少しずれてますけど、先輩たちに用があったので待ち伏せしてました!」

侑 「用?」

かすみ 「次のライブで歌う曲の歌詞なんですけど……ここ、少しかすみんっぽくないかもと思って。侑先輩に相談しに来たんです」
 
4: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:52:17.76 ID:LkTXY+2S
侑 「うーん、どれどれ」

歩夢 「私も見ていい?」

かすみ 「もちろんです!」

侑 「この歌詞……ちょっと変かも。数単語リライトしよう!」

かすみ 「リライト?」

歩夢 「書き直すって意味だね」

侑 「ここを、こうして、ああして……ほら、どう?」

かすみ 「おおっー、良い感じです!」

ゴリラ 「うほっうほっ」

歩夢 「さすが侑ちゃん」

侑 「褒めてくれて嬉しいな、ありがとう」 エヘヘ

かすみ 「って遅刻しちゃいますよ!?」

侑 「本当だ! 急ごう歩夢!」

歩夢 「うん!」






 
5: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:52:57.14 ID:LkTXY+2S
キンコンカンコーン

歩夢 (一緒に登下校はしてるけど、侑ちゃんが音楽科に行っちゃってからは、前ほどは一緒にいれてないんだよね。仕方ないことだけど、ちょっと寂しいなぁ……)

愛 「歩夢!」

歩夢 「愛ちゃん!」

愛 「……なんか寂しそうだけど、ゆうゆ絡みかな?」 ニヤニヤ

歩夢 「ち、違うよぉ!!///」
 
7: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:53:37.47 ID:LkTXY+2S
愛 「せっかくだから休み時間中にゆうゆに会いに行ってみれば?」

歩夢 「で、でも……音楽科にも侑ちゃんの友達はいるはずだから……悪いよ」

愛 「そんなの関係ないって! ゆうゆは歩夢が来てくれたらすぐに歩み寄ってくるよ! 歩夢だけに!」

歩夢 「そうかな……?///」

愛 「もちろん。ほら行ってみよう? 愛さんもついていくからさ」

歩夢 「うん!」






 
8: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:54:34.76 ID:LkTXY+2S
歩夢 「……」 ドキドキ

愛 「ほら、歩夢。早く扉開けないの?」

歩夢 「す、少し緊張しちゃって……」 ドキドキ

愛 「大丈夫だよ。ゆうゆならきっと喜んでくれるって」

歩夢 (侑ちゃん……)

侑 『歩夢!!』

歩夢 (……そうだよね。侑ちゃんなら)

歩夢 「うん! 頑張ってみる!」

愛 「よし! その意気だ!」
 
9: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:55:19.51 ID:LkTXY+2S
ガラッ

歩夢 「侑ちゃ……」

侑 「それでビビッときたんだよね。メロディが降ってきたっていうか」

音楽科生徒 「音楽科に元々いた私たちでも、作曲はなかなか大変なのに……すごいよ侑ちゃん!」

侑 「あはは、ありがとう。でも私はまだまだだよ。だからこれからも頼っていいかな?」

音楽科生徒 「もちろん!! お互いに高め合おう?」

侑 「うん!!」

歩夢 「……」

愛 「ん? どうしたの? 歩夢?」
 
10: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:55:55.65 ID:LkTXY+2S
歩夢 「……」 ポロポロ

愛 「えっ!? 歩夢!?」

歩夢 「ごめん、愛ちゃん、少し離れるね」 タタタタ

愛 「歩夢ってば!」

音楽科生徒 「いてっ」

音楽科生徒 「ちょっと、走ったら危ないよ!」

ゴリラ 「うほっうほっーー!!」

歩夢 「ごめんなさい」 タタタタ

愛 「……」

愛 (今、歩夢泣いてた……)

侑 「あれ? 愛ちゃん、どうしたの?」

愛 「あっ、ゆうゆ……」

侑 「?」






 
12: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:57:10.28 ID:LkTXY+2S
古文の先生 「……懲り懲り楽勝には生きれない。そう勘吉は思ったのであった。という訳になるが、ここまでで質問はあるかな」

一同 「「……」」

古文の先生 「ないならないに越したことはないが、念のため、じゃあ……上原」

歩夢 「……」 ボッー

古文の先生 「上原?」
 
14: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:57:46.63 ID:LkTXY+2S
歩夢 (侑ちゃん……あんなに楽しそうにみんなと話してた。それはそうだよ)

歩夢 (私は侑ちゃんとたくさん話しをしてきた。でも侑ちゃんが音楽の理論を学べば学ぶほど、私には分からない話が増える。侑ちゃんは音楽の話ができなくなってゆくんだ……)

歩夢 (そんな侑ちゃんにとって、音楽科の友達は、かけがえのない『音楽について話せる友達』なんだもん……私なんかより……)

歩夢 (そっちを選ぶよ……) グスッ

古文の先生 「なんか話しかけにくい空気だな……」






 
15: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:58:32.80 ID:LkTXY+2S
ポロロン

歩夢 (誰もいない音楽室……侑ちゃんが前、ここで演奏してたよね……)

歩夢 「私は音楽についてあまり知らないから……ピアノをこうやって一回鳴らすことしかできない」

歩夢 「あはは、ダメだな私……侑ちゃんを応援するって決めたのに……」

歩夢 「また揺らいでるよ」

せつ菜 「大丈夫ですよ、歩夢さん」

歩夢 「! せつ菜ちゃん!?」
 
16: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 17:59:27.29 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「私の言葉……いえ、あのときの歩夢さんの決意を思い出してください」

歩夢 「で、でも」

せつ菜 「『非注意性盲目』という言葉を知ってますか?」

歩夢 「非注意性盲目?」

せつ菜 「一つの物事に集中してしまうあまり、視界には入ってるのに、まるで他のものを見えてないかのように認識できてない、という現象のことです」

歩夢 「……」

せつ菜 「分かったでしょ? 侑さんが、音楽科で友達と笑ってる。その風景ばかりを見てしまって、歩夢さんはすっかり大事なことを忘れてるんですよ」

歩夢 「大事なこと……」
 
17: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:00:11.56 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「もし私が音楽科の生徒でも、歩夢さんに嫉妬してしまうでしょうね。いくら仲良くなっても、平気でそれを超えてくる仲良しっぷりを見せつけられてしまうのですから」

歩夢 「……」

アユムゥゥーーーー!

歩夢 「! 侑ちゃん!?」

せつ菜 「ほら、歩夢さん。侑さんが探してくれていますよ」

歩夢 「……」

せつ菜 「行かないんですか」

歩夢 「……ありがとうせつ菜ちゃん。行ってくるね」

せつ菜 「はい。気をつけて、頑張ってくださいね歩夢さん」

歩夢 「侑ちゃん!」 タタタタ

歩夢 (侑ちゃん、今会いにゆくよっ!!)






 
18: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:00:50.96 ID:LkTXY+2S
侑 「歩夢っ!」

歩夢 「侑ちゃん!」

ダキッ

侑 「会いたかったよぉ……歩夢……」 ポロポロ

歩夢 「ゆ、侑ちゃん……」

侑 「愛ちゃんから、歩夢が泣いてどっかに飛び出しちゃったって聞いて……それで……居ても立っても居られなくて……」 ポロポロ

歩夢 「……」

侑 「歩夢……?」 ポロポロ
 
19: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:01:27.38 ID:LkTXY+2S
歩夢 「……侑ちゃん。私は侑ちゃんのそばにいても、音楽科のみんなみたいに音楽の話はできない」

侑 「えっ?」

歩夢 「今から勉強することもできるけど、きっと侑ちゃんには追いつけない。侑ちゃんの横で一緒に歩けないんだよ?」

侑 「……」

歩夢 「それが、すごく、すごく、寂しくて、涙が止まらないの……」 ポロポロ

侑 「あ、歩夢……」

歩夢 「ごめんね……侑ちゃん……」 ポロポロ
 
21: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:02:33.62 ID:LkTXY+2S
侑 「……」

歩夢 「……」 ポロポロ

ギュッ

歩夢 「!」

侑 「……歩夢、今私は歩夢を抱きしめてる。この温もり、そして鼓動、ねぇ、歩夢にちゃんと伝わってる?」

歩夢 「……」

ドキドキ

歩夢 (温かい、それに心臓の音もよく聞こえる……)
 
22: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:03:26.48 ID:LkTXY+2S
侑 「歩夢は大事なことを忘れてるよ」

歩夢 「!」

せつ菜 『分かったでしょ? 侑さんが、音楽科で友達と笑ってる。その風景ばかりを見てしまって、歩夢さんはすっかり大事なことを忘れてるんですよ』

歩夢 「大事なこと……」

侑 「確かに音楽科のみんなも大切な友達だよ? 音楽の話なら正直歩夢より話せると思うし」

歩夢 「……」 ズキッ
 
23: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:04:14.52 ID:LkTXY+2S
侑 「でも、逆に歩夢にしか話せないこともたくさんあるじゃん。歩夢としか共有できない、たくさんの思い出があるじゃん!!」

歩夢 「!」

侑 「この温もりだって、鼓動だって、歩夢しか知らないよ。歩夢にしか教えてない!!」

歩夢 「侑ちゃん……」

侑 「歩夢……私は、そして歩夢も、もう一人じゃない。たくさんの友達がいる。でも、歩夢と私の友情は、この世界で代わりなんかない、たった一つの友情なんだ」

歩夢 (侑ちゃん……!)
 
24: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:04:59.29 ID:LkTXY+2S
侑 「ねえ、そうでしょ、歩夢」

歩夢 「……」

侑 「……」

歩夢 「……ごめんね、侑ちゃん」

侑 「!」

歩夢 「そしてありがとう侑ちゃん。私たちは、かけがえのない幼馴染だもん……唯一無二の大切な友情だもん!」 ニコッ

侑 「歩夢っ!」 パァァ
 
25: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:06:01.11 ID:LkTXY+2S
ガラッ

愛 「良かったねーーー! 二人とも!」 ポロポロ

せつ菜 「うぅ、良かったです」 ポロポロ

ゴリラ 「うほっうほっーーー!」 ポロポロ

侑 「愛ちゃん!? せつ菜ちゃん!?」

歩夢 「隠れて見てたの!?」

愛 「もう、一時はどうなることかと思っちゃったよ。仲良しな二人がすれ違っちゃうんだもん」

せつ菜 「でも、分かり合えたみたいで良かったです!!」
 
26: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:06:51.55 ID:LkTXY+2S
歩夢 「だ、だけどそれはせつ菜ちゃんが背中を押してくれたから」

せつ菜 「……違います」

歩夢 「!」

せつ菜 「元々二人の距離は周りが羨むほど近いんです、離れてなんかないんですよ。だから歩夢さんが後一歩、踏み出せたからこうして分かり合えたんです。その一歩は紛れもなく、歩夢さんの努力ですよ」

歩夢 「せつ菜ちゃん……!」

愛 「よし、なんか雰囲気もしんみりしちゃったし、空気変えて今日も活動頑張ろーー!」

侑 「そうだねっ、行こっ歩夢!」 ニコッ

歩夢 「うんっ!!」 ニコッ

タタタタ

歩夢 (ありがとう、みんな。ありがとう、侑ちゃん!)






 
27: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:07:50.69 ID:LkTXY+2S
果林 「今日も練習お疲れ様」

一同 「「じゃあまた明日ー!」」 バイバイ

ガチャ

果林 「ふぅ、今日も練習大変だったわね。でも……ちゃんと努力が実ってる、そんな気がするわ」

ゴリラ 「……」

果林 「ん?」

ゴリラ 「……」

果林 「気のせいかしら?」 ジッーー

ゴリラ 「うほっ」
 
29: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:08:29.04 ID:LkTXY+2S
果林 「ひぃぃぃ!? ゴリラ!? なんでここに!?」

せつ菜 「ついに気付きましたか……果林さん……」

果林 「ええっ、せつ菜、これどういうことなの……?」

せつ菜 「『非注意性盲目』という現象をご存知ですか?」

果林 「ひちゅういせいもうもく?」

せつ菜 「ある一点に集中すると、他のものが視界に入ってても気付かないことがある。そういう現象のことです」

果林 「聞いたことないけど理屈としては分かるわ」
 
30: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:09:27.90 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「有名な実験に『見えないゴリラ実験』というものがあります」

果林 「見えないゴリラ……」

せつ菜 「被験者には、白いシャツを着た人と黒いシャツを着た人がバスケットボールをパスする短いビデオ映像を見せます。そのときに『白いシャツを着た人のパスの回数を数える』ことを指示するんです」

せつ菜 「映像の中では、パスが続けられている中、画面右側から黒いゴリラが登場し、そして画面中央に移動し、胸を叩いたあと左側に去っていく……しかし、被験者のうちの42%はゴリラの存在にも気付きませんでした」

せつ菜 「興味深い実験ですよね?」
 
31: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:10:28.14 ID:LkTXY+2S
果林 「ふむ。なるほどね、多分納得したわ」

せつ菜 「これを、私も実際に試してみたいと思いまして……」

果林 「ん???」

せつ菜 「動物園からゴリラさんを一匹連れ出して、今日一日、歩夢さんたちの周りに置いてみたんです」

果林 「いやどういうことよ!?」

せつ菜 「『多くの人はゆうぽむに夢中で、日常に潜んでるゴリラに気付かない』それを試す実験でした」

果林 「えぇ……」
 
35: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:13:27.69 ID:LkTXY+2S
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> 多くの人はゆうぽむに夢中で <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

_人人人人人人人人人人人_
> ゴリラに気付かない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
 
37: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:15:07.45 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「事実、果林さんも練習が終わるまで気付いてなかったじゃないですか」

果林 「ええっ!? 練習中もいたの!?」

せつ菜 「さらにはあらゆら場面にいました。それは言葉の中にも」

侑 『この歌詞……ちょっと変かも。数単 ゴリラ イトしよう!』

古文の先生 『……懲り ゴリラ く勝には生きれない。そう勘吉は思ったのであった。という訳になるが、ここまでで質問はあるかな』

せつ菜 「ただ、ほぼ全ての人が、ゴリラに気付かなかったんです……ゆうぽむに夢中で」

果林 「そ、そんな……」
 
39: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 18:16:42.67 ID:LkTXY+2S
すいません、用事があるので少し離れます。
ここから『せつ菜と果林、ゴリラの三人組で日常ストーリー』を展開する第二部の予定です。今日中に更新する予定なので待っててくださると幸いです。
 
51: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:08:09.16 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「……」

果林 「いやそんなことより動物園から連れてきたってどういうことよ」

ゴリラ 「それは私から説明させてほしいうほっ」

果林 「あなた喋れるの!?」

ゴリラ 「私は動物園という閉じた世界で、ただ人に見られて過ごす日々に、正直耐えられませんでした、うほっ」

果林 「そ、そうなの」

ゴリラ 「そんなとき、せつ菜さんが私に声をかけてくれて……つらいならば動物園から抜け出しませんか? と声をかけてくれたんです、うほっ」

果林 「無理に語尾つけなくてもいいわよ……」
 
52: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:08:31.03 ID:LkTXY+2S
更新再開します。
 
53: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:09:38.65 ID:LkTXY+2S
ゴリラ 「私は、何のために生まれたのか。それをもう一度知りたくて、せつ菜さんと共に動物園から出ることを決意したのです」

果林 「へぇ……なんというか、考えてそうね、色々……」

せつ菜 「ということで、ゴリラさんです」

ゴリラ 「よろしくお願いします」 ペコッ

果林 「……」

せつ菜 「ほら、果林さんも挨拶してくださいよ」

果林 「えっ……あっ、えっと、朝香果林です。よろしくお願いします」 ペコッ

ゴリラ 「……」

せつ菜 「……」

果林 「……」
 
55: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:11:00.04 ID:LkTXY+2S
果林 「いや何よこれ!?」

果林 「そもそもなんでゴリラがここにいるのよ!? そして喋るのよ!?」

果林 「しかもやけに紳士的で悪い人そうじゃないのがよりつらいっ!!」

せつ菜 「人ではなくゴリラですね」

果林 「どうでもいいのよそこはっ!!」

ゴリラ 「……私、やっぱり受け入れられない存在なのでしょうか」 グスッ

せつ菜 「落ち込まないでください、ゴリラさん……」 アワアワ
 
56: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:11:59.24 ID:LkTXY+2S
果林 「うっ……」

果林 (私が悪いみたいじゃない……)

果林 「……まあ、事情は分かったわ。それで、これからはどうしたいの、ゴリラさん?」

せつ菜 「えっ、それって」

果林 「話だけは聞いてあげるってことよ。勘違いしないで、まだゴリラさんを信用してるわけじゃないから」

せつ菜・ゴリラ 「「やったーーー!!」」 ワイワイ

果林 (ふふ、二人とも、いや一人と一匹とも、嬉しそうで良かったわ)
 
57: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:13:07.93 ID:LkTXY+2S
果林 「じゃあゴリラさん、さっきの質問なんだけど答えてくれるかしら」

ゴリラ 「……はい。私は自分の生まれた意味を知るまでは、しばらくはせつ菜さんたちと一緒にいるつもりです」

果林 「ふーん……」

ゴリラ 「それで、自分の生まれた意味を知った後は」

果林 「ってちょっと待ちなさいよ!?」

せつ菜 「? どうしたんです、果林さん?」

果林 「いやいや。私たちと一緒にいるって……よりによってあなた大きい動物なんだから、すぐ見つかって話題になるわよ? そもそも今日の夜はどうするのよ? 私は飼えないし、そもそもゴリラは普通飼えないわ」
 
58: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:14:06.64 ID:LkTXY+2S
ゴリラ 「それは安心してください。この虹ヶ咲学園はとても広いので、森の中に住みます」

せつ菜 「ここは建物も林も、だいぶ沢山ありますからね。なんとか夜なら隠れられるでしょう」

果林 「じゃあ昼はどうするの? 暗いならまだしも、太陽が照りつけてしまったら……」

せつ菜 「そこはあれですよ、果林さん」

果林 「?」

せつ菜 「『非注意性盲目』ですよ!!」






 
59: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:15:39.90 ID:LkTXY+2S
果林 「せつ菜、こっち来て」 ニコッ

せつ菜 「えっ、何でですか?」

果林 「ほら、髪の毛に毛糸がついてるわよ」

せつ菜 「あ、本当です、ありがとうございます!!」 ペカー

果林 「……そのドジなところは可愛いけど」 グイッ

せつ菜 「えっ」
 
60: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:16:57.05 ID:LkTXY+2S
果林 「私以外の人に見せちゃダメよ、その可愛いところ」 ボソッ

せつ菜 「か、果林さん……!///」 カァァ

キャーーーー

セツカリダワーー

ブーブー

トウトスギルーーー

果林 「……うぅ、流石に恥ずかしいわね、これ」

せつ菜 「でもせつかりをすることで、ゴリラさんがいることを誤魔化せるんです。頑張ってください」

ゴリラ 「助かるうほっ」

果林 「急に語尾つけるのも少しムカつくわね……」
 
62: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:18:26.17 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「それにせつかりが別に嫌というわけでは……///」 ゴニョゴニョ

果林 「ん? そういえば、さっき一人だけブーイングしたやついたわよね!? 誰よ!!」

ゴリラ 「とりあえず部室に向かった方がいいのでは?」

せつ菜 「確かに。このままじゃ部活に遅刻してしまいます。そういえば昨日の夜は大丈夫でしたか? ゴリラさん」

ゴリラ 「ここはとても広いし自然も豊かですから、とても助かりました。問題はないです」

せつ菜 「そうですか、それは良かったです。では行きましょう、果林さん」

果林 「……ええ、分かったわ」






 
63: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:29:52.42 ID:LkTXY+2S
かすみ 「しず子、かすみんのスマホがなくなっちゃったんだけど知らない?」

しずく 「うーん、ごめんねかすみさん。見てないよ」

かすみ 「舞台の上とか見てない?」

しずく 「えっと、なかったと思うけど」

かすみ 「りな子は? 知ってる?」

璃奈 「……ごめんね。分からない」
 
64: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:30:43.33 ID:LkTXY+2S
かすみ 「じゃあゴリ子は?」

ゴリラ 「よく分からないけど、バナナならありますよ」

かすみ 「うーん……どうしよう……ってゴリ子!?」

しずく 「どうしたの? かすみさん?」

かすみ 「いい、今、ゴリラがいた気が……」 ガクガク

せつ菜 「果林さん、好きです」

果林 「ふふ、私もよ」

かすみ 「あれ? 気のせい?」
 
65: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 20:31:52.44 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「……あまりにも雑なせつかりでしたが、なんとか乗り越えられたみたいですね」

ゴリラ 「せつかりのパワーは恐ろしい……」

かすみ 「果林先輩、かすみんのスマホがなくなっちゃったんですよーー!」

果林 「それは大変ね。まだ侑や歩夢も来てないみたいだし、少しの間、私とせつ菜で探してみるわ」

かすみ 「本当ですか!?」 パァァ

せつ菜 「どうしたんです? 果林さん?」

果林 「……いくらせつかりしてるとはいえ、こんな狭い部屋の中でゴリラさんがいたらバレる気がするから、一旦離れるのよ。かすみちゃんのスマホを探したいのも本当だし」

せつ菜 「なるほど。ということですが、大丈夫ですか? ゴリラさん」

ゴリラ 「分かった、大丈夫」

果林 「じゃあ一旦部室から離れるわね」

ガチャ






 
70: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:36:18.99 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「さて、かすみさんのスマホですが、一体どこに……」

果林 「おそらく電話はしてるはずだから、誰かが拾ったわけではなさそうね」

ゴリラ 「もしくは誰かが拾った後、電話が来てるのに、わざと出なかったか……」

果林 「そんなわけはないでしょう、ミステリーじゃないんだから」

ブタ 「ぶーぶー」

果林 「ん? 電話の話をしてたら電話が鳴ったわね。あら? 私のスマホは揺れてない……」
 
71: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:37:42.35 ID:LkTXY+2S
ゴリラ 「私も鳴ってませんね」

果林 「あなた持ってないでしょ、スマホ」

せつ菜 「私の携帯でもないみたいです」

果林 「ん? ていうか今」

ブタ 「無視しないでほしいブー!」

果林 「ブタ!? なんでこんなところに!?」

ブタ 「さっきから話しかけてたのにひどいブー!」

果林 「話しかけてた?」

ブーブー

果林 「あっ、さっきのブーイングってまさか!」

ブタ 「あれはブーイングじゃなくて、鳴き声ブー!」
 
72: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:38:25.68 ID:LkTXY+2S
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> 多くの人はせつかりに夢中で <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

_人人人人人人人人人人_
> ブタに気付かない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
 
73: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:39:46.88 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「というかもはやブタさんが喋ってても驚きませんね、果林さん」

果林 「まあ前例がいるし」

ブタ 「それにしてもひどいブー。いろんな場所でいろんな言葉にヒントを出してたのに!」

果林 「ヒント?」

せつ菜 『ここは建物も林も、だい ブタ く山ありますからね。なんとか夜なら隠れられるでしょう』

かすみ 『 ブタ いの上とか見てない?』

せつ菜 「なるほど……私自身は『非注意性盲目』の実験対象ではなかったので初めての体験ですが……本当にせつかりに夢中で気付きませんでした。すごいですね、この現象」

果林 「ゴリラだけでなくブタまで気付かないなんて……」
 
75: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:41:36.64 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「えっとあなたはどうしてこの虹ヶ咲学園に?」

ブタ 「それは……」

ブタ 「僕はずっと動物園にいたんだけど、ある日、何かのミスかトラックに乗せられ、動物園の外に行っちゃったブー」

ブタ 「そこからは苦労の日々。雨に打たれ風に打たれ、動物園の飼育さんが恋しくなりながらも、食事もあまり摂れない日々」

ブタ 「そんな中、ようやく辿り着いたのがこの虹ヶ咲学園なんだブー」

せつ菜 「それはとても大変でしたね……あの、良ければ」

ブタ 「?」
 
76: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:42:57.83 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「あなたを元の動物園に返す手伝いをさせてくれませんか? あなたがいた動物園の名前は分かりますか?」

ブタ 「分からないブー……ごめんなさいブー……」

せつ菜 「そんな、謝らないでください。少し大変かもしれませんが、みんなで協力してあなたを絶対に無事に返します。ですよね、果林さん!」

果林 「……」

せつ菜 「果林さん?」
 
77: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:43:39.67 ID:LkTXY+2S
果林 「がん゙ど゙ゔじだわ゙……!!」 ポロポロ

せつ菜 「おおっ、すごく号泣してますね」

ブタ 「僕のために泣いてくれるなんて、良い人ブー」

果林 「この子……」 キュン

ゴリラ 「?」

果林 「すごく良い子だわっ!!」 パァァ

果林 「それにこんな可哀想な子、放っておけないわよ……!」 グスッ
 
79: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:44:32.08 ID:LkTXY+2S
ゴリラ 「私は可哀想じゃないんですか?」

果林 「えっ」

ゴリラ 「この子だけに同情してるんですか、もしかして」

果林 「い、いやそういうわけじゃないけど……あなたは自ら出たけどこの子は放り出されちゃったわけじゃない? そっちの方が可哀想じゃない?」

ゴリラ 「……まぁ」
 
80: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 22:45:23.01 ID:LkTXY+2S
果林 「それにこの子、よく見たらすごく可愛いじゃない。健気だし、守りたくなるわ」

ゴリラ 「私は可愛くないんですか?」

果林 「えっ」

ゴリラ 「出会って一日経ってる私より、さっき現れたひよっこの方が可愛いんですか?」

果林 「ほら、ゴリラって可愛いよりかはカッコいいじゃない? 知らないけど……」

ゴリラ 「……まぁ」
 
82: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:08:27.88 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「ってこんなところでぼっーとしてる場合じゃありませんよ!! かすみさんのスマホ!!」

果林 「あっ、すっかり忘れてたわ。そうだ、探さないと」

ブタ 「? 困ってる様子。何かあったブー?」

ゴリラ 「……かすみさんという方の、スマホが無くなったそうです。今みんなで探してるんですよ」

ブタ 「なるほど……それなら僕に任せるブー!」

せつ菜 「? どういうことですか?」
 
83: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:09:22.61 ID:LkTXY+2S
ブタ 「僕の嗅覚でそのスマホを見つけることができるブー! その子の匂いがあるものを持ってきてくれたらすぐ見つけられるよ!」

果林 「じゃあこれなんてどうかしら。かすみちゃんから貰ったコッペパンの袋なんだけど」

ブタ 「匂いは覚えたブー! こっちだよ、ついてきて!」 タタタタ

果林 「ちょ、ちょっと待って!! そんなに早く行っちゃったら!」

シーン

ゴリラ 「いなくなっちゃいましたね」

果林 「見失ってしまったわ」

せつ菜 「とりあえず三人で一緒にブタさんを見つけましょう。バラバラに探したいところですが、せつかりをやってないとバレてしまうので……」
 
84: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:10:12.15 ID:LkTXY+2S
アレ? アレッテゴリラ?

せつ菜 「!」

果林 「……せつ菜。こないだのダンス、すごく上手だったわ」

せつ菜 「本当ですか!? 果林さんに評価してもらえるなんて嬉しいです!!」

アレ? キノセイダッタカナ?

せつ菜 (……一安心でしょうか)

果林 「一応言っておくけど、今慌てて言ったわけじゃなくて、本当にこないだのダンスは褒めてるの」

せつ菜 「えっ」

果林 「私もうかうかしてる場合じゃないわね。せつ菜、カッコよかったわよ」

せつ菜 「果林さん……!///」 カァァ

ゴリラ 「やはりせつかりのパワーは素晴らしい……」






 
85: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:11:52.92 ID:LkTXY+2S
ブタ 「……」 タタタタ

ブタ 「……」 タタタタ

ブタ (そろそろあいつらを撒けたかな)

ブタ 「うひゃうゃうひゃっ!! 人間なんてちょろい動物だぜ!!」

ブタ (何がブーだ! ブタの語尾がブーな訳ないだろ!!)

ブタ (それにあの過去話も全部嘘っ!! 俺は自ら動物園を出たのさ!!)

ブタ (あの動物園ではメインとして、そりゃあもう丁寧に扱われてたさ。でも、所詮小さな動物園だった。俺にはあのステージは似合わねぇ……まさにあそこは俺の ブタ いじゃない)
 
86: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:20:27.09 ID:LkTXY+2S
ブタ 「もっと大きい動物園のメインになるためには、やっぱりメディアの力が必要だ。そんなあるとき、この虹ヶ咲学園に、人気なスクールアイドルがいるって言うじゃねぇか。こりゃあもう、チャンスだぜ」

ブタ 「しかもそのうちの一人のスマホが現在行方不明。ならそいつのスマホをいち早く回収して、そいつのアカウントのSNSに俺を載せれば……もう、すぐに人気者! なんて完璧な作戦だ!」

ブタ (匂いはここら辺だが……)

?? 「ふふ、じゃあ証拠は削除したから、あとは待つだけ……」

ブタ 「ブー?」

?? 「ひっ! ブタ!? なんでこんなところに!?」
 
87: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:21:41.15 ID:LkTXY+2S
ブタ (スマホを拾った奴がいたか……だが、それは俺のもんだ)

ブタ 「ブー! ブー!」

?? 「ぎゃぁぁぁぁ! とりあえず逃げないと!」 タタタタ

ポトンッ

ブタ 「……よし、スマホを落としたな。これでついに俺が全国区に。うひゃうゃうひゃっ」

果林 「あっ、見つけたわよブタさん!」

ブタ 「あっ、さっきの優しい方ブー!」
 
88: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:22:57.13 ID:LkTXY+2S
果林 「こんなところにスマホがあったのね……よし、無事回収できたわけだし、帰ろうかしら」

せつ菜 「とりあえず同好会の誰かに報告しましょう。心配してるはずですから」

果林 「そうね。じゃあ歩夢にかけましょう」 プルルルル

歩夢 『もしもし、かすみちゃん?』

果林 「かすみちゃん? あっ、間違えてかすみちゃんのスマホでかけてしまったわ」

歩夢 『その声は果林さん?』
 
89: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:24:35.11 ID:LkTXY+2S
果林 「歩夢。かすみちゃんのスマホを見つけたわ。今そっちに行くから」

歩夢 『……どういうこと?』

果林 「えっ?」

果林 (そういえば、かすみちゃんが隣にいれば、かすみちゃんからの電話じゃないって分かるわけだし、さっきは歩夢は部室にいなかったわよね……ということはまだ歩夢は部室に行ってない?)

果林 「歩夢。歩夢は今どこにいるの?」

歩夢 『西校舎の裏庭の日陰のところ? って言ったら分かるかな。かすみちゃんから連絡で呼ばれたから待ってるの』

果林 「かすみちゃんから? そんなはずはないわ。かすみちゃんはスマホをさっきまで失くしてたんだもの」

歩夢 『あれ? おかしいなぁ?』
 
90: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:25:37.05 ID:LkTXY+2S
果林 「とりあえず部室にかすみちゃんはいるわよ。戻ってきなさい」

歩夢 『はーい』

ピーピー

果林 「……おかしなこともあるものね。とりあえず報告はしたし、帰りましょう、せつ菜、ゴリラさん、ブタさん」

せつ菜 「了解です!」

ゴリラ 「無事見つかって良かったです」

ブタ 「やったブー!!」

ブタ 「……」

ブタ (くそぉぉぉぉぉ、もう少しだったのにぃ……!!) ブルブル






 
93: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:49:57.53 ID:LkTXY+2S
かすみ 「ありがとうございます〜〜♪♪ おかげでかすみんのスマホは無事でした!」

果林 「何はともあれ、解決ね」

せつ菜 「ふぅ、今日もまた世界を救ってしまいました!」 ペカー

しずく 「かすみさん、物の管理はしっかりしないとダメだよ!」

かすみ 「うぅ……そうだね……でもちゃんとバックに入れてたはずなんだけどなぁ」

しずく 「そのバックは?」

かすみ 「置きっ放しでした……」

しずく 「それがダメなんだよ、かすみさん!」

かすみ 「ごめん! しず子!」
 
94: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:50:52.68 ID:LkTXY+2S
歩夢 「うーん?」

侑 「どうしたの? 歩夢?」

歩夢 「えっとね、さっきかすみちゃんから連絡が来たはずなんだけど……残ってないの」

侑 「電話?」

歩夢 「ううん、SNS」

侑 「それならきっと誤作動だよ。私もたまにあるもん」

歩夢 「そ、そうなのかな?」

侑 「うん!! 気にするだけ毒だよ!」

歩夢 「そうだよね……ありがとう侑ちゃん!」
 
95: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:51:34.11 ID:LkTXY+2S
せつ菜 「今はゆうぽむが強いおかげで、無理矢理せつかりをする必要もありませんね」

果林 「確かにゴリラもブタもいるのに、誰も反応しないものね」

ゴリラ 「……君は帰る場所があっていいね」

ブタ 「えっ?」

ゴリラ 「私は帰るべき場所で悩んでるから……いや、悩み事に大小はない、比べるのは失礼だな。すまない、聞いてなかったことにしてくれ」

ブタ 「わ、分かったブー!」

愛 「じゃあみんな練習を始めよーー!」

一同 「「おおっーー!」」






 
96: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:52:28.62 ID:LkTXY+2S
果林 「もう夕方ね……二人は野宿?」

ゴリラ 「そうなりますね」

ブタ 「僕は小さいから大丈夫だよ!」

菜々 「それにしても、ひと汗かいた後の帰り道は最高ですね」

果林 「ん? どうして?」

菜々 「頑張った後は、夕日を気持ちよく浴びれますから」

果林 「……ふふ、そうかもね」
 
97: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:53:08.08 ID:LkTXY+2S
ザワザワ

果林 「人混み?」

菜々 「どうしたんですか?」

生徒 「あ、会長……三時ごろに西校舎の裏庭で、屋上から脚立が落ちてきたらしくて。誰も下にいなかったから大丈夫だったけど、もし当たってたら大きな怪我だったよ……」

菜々 「それは怖いですね……」

果林 「西校舎の裏庭……」

果林 (歩夢がいた場所……時刻も大体そのくらい……)

果林 「たまたまよね……?」






 
99: (もんじゃ) 2022/01/28(金) 23:57:02.93 ID:LkTXY+2S
明日の夜ごろ、また更新する予定です。
ここから『パンダを見たい果林さんの動物園巡り』第三部の予定です。
 
110: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:30:20.85 ID:CJ8GFahS
チュンチュン

果林 「雀も鳴いてる……今日も良い朝ね……まあ今までと一つ違うとしたら」

果林 (日常に動物がいることかしら)

果林 「おはよう、せつ菜、ゴリラさん、ブタさん」

せつ菜 「……」

ゴリラ 「……」

果林 「二人して真剣そうな顔をしてどうしたのよ……?」
 
111: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:31:47.73 ID:CJ8GFahS
せつ菜 「私がお願いしてるんです」

果林 「何を」

せつ菜 「ゴリラさんのいた動物園に一回行くことを」

果林 「えっ?」

ゴリラ 「……やはり無断で外に出たのは申し訳ないので、一回謝りに行くという話なんですが」

せつ菜 「分かってます。外に出ようと提案した私が言えることではありません。しかし、あなたを心配してる飼育員さんがきっといるはずです。それならせめて一言、理由と謝罪を述べなければいけないはずです」
 
112: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:33:12.38 ID:CJ8GFahS
ゴリラ 「……私は今は、あの場所に戻りたくないんです」

せつ菜 「で、ですが」

果林 「ちょっと待って、せつ菜」

せつ菜 「なんです?」

果林 「私も正直せつ菜の案には乗り気ではないの」

せつ菜 「なんでですか」

果林 「言ってることは分かるんだけど、そもそも今ゴリラさんは言わば家出中なわけでしょ? 帰ってきたら当然保護される。理由を説明しても、もう二度と外には出れないでしょうね」

せつ菜 「……」
 
113: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:34:18.36 ID:CJ8GFahS
果林 「それに、急にゴリラが喋り始めたらみんなビビるわよ。もしくは特別がられて研究所にでも送られるかしら? この非日常に慣れた、私たちの方が例外なのよ」

せつ菜 「そ、それはそうですが……」

果林 「ゴリラさん。あなたが喋られるのを知ってるのって、私たちだけなんでしょ?」

ゴリラ 「……はい。飼育員さんの目の前で喋る機会がそもそもなかったので」

果林 「だからせつ菜。私たちはゴリラさんが帰るべき理由を見つけるその時まで、動物園に行くべきではないのよ。やっぱり、責任を持たなくちゃ、最後まで」

せつ菜 「果林さん……」

果林 「でしょ?」

せつ菜 「……ですね。私が間違ってました、ごめんなさい、みなさん」
 
114: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:35:36.49 ID:CJ8GFahS
ブタ 「ちなみにゴリラさんは何動物園なの? 僕は覚えてないけど」

ゴリラ 「〇〇動物園です」

果林 (〇〇動物園……? えっ、それってつい最近パンダが入った動物園じゃない? えっ、本当に?)

果林 「……」

ブタ 「聞いたことないですね……僕の動物園から遠いんでしょうか」

ゴリラ 「自分の動物園も覚えてないんだから、仕方ないよ。狭い世界にいるんだ、何も知らなくてもおかしくない」
 
115: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:37:00.36 ID:CJ8GFahS
果林 「ねえ、みんな」

せつ菜 「?」

果林 「行きましょうか、動物園」

せつ菜 「はい?」

果林 「今になってせつ菜の言ってたことが分かったわ。やっぱり育ててくれた人への礼儀って大事よ」

ゴリラ 「で、でも」

果林 「大丈夫。もし会うのが嫌なら、せつかりでなんとかあなたを見えないようにするから」
 
116: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:38:40.70 ID:CJ8GFahS
せつ菜 「? 会わないでいるなら、そもそも動物園に行く意味なんて……」

果林 「あるわよ。あるの」

せつ菜 「えっと、具体的にどんな意味が」

果林 「ある」

せつ菜 「ですから何の意味が」

果林 「ある」

せつ菜 「あるんですね……分かりました……」
 
117: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:40:15.37 ID:CJ8GFahS
ゴリラ (……まあ会いたくはなくても、かつて一緒にいた友の姿を見たい気持ちは本当だ)

ゴリラ 「分かりました、行きましょう。動物園」

ブタ 「やったーーー! みんなで動物園ブー!」

果林 「ブタさん、あなたも動物園に行くの? てっきり動物はゴリラさんだけと思ってたけれど」

ブタ 「僕も存在を誤魔化せてるのは二人のおかげだし……少しでも力になりたいんだブー!」

果林 「ブタさん……!」 キュン
 
118: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 19:41:25.39 ID:CJ8GFahS
果林 「なんて良い子なの!! 分かった、四人で行きましょう!!」

ブタ (動物園のスターになるためにも他の動物園を偵察させてもらうぜ……。ふ、所詮俺を超える逸材なんているわけないけど、もしいたなら……潰すだけだ)

せつ菜 「ですが、動物園は動物がメインの場所です。私たちよりむしろ動物が目立つ場所……そんなところでせつかりは通じるのでしょうか?」

果林 「……確かにそうね。ブタさんとゴリラさん、二匹を二人で誤魔化すのは難しい。それなら」

果林 「彼女に頼りましょう」






 
121: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:19:21.04 ID:CJ8GFahS
ホーケッキョ

せつ菜 「誰も来ませんね……」

せつ菜 「とりあえず二十分ほど待ってますが、待ち合わせ場所、ここで合ってますよね?」

?? 「ごめんね、せつ菜ちゃん。遅れちゃったよ〜」

せつ菜 「あ、彼方さん!」

彼方 「果林ちゃんが目を離すたびに相変わらず迷子になるもんだから、遅くなっちゃったよ、ごめんね〜」

果林 「ねえ、彼方? 私が迷子になってるということは、彼方も迷子になっているということなのよ?」

せつ菜 「それは違うと思いますよ」
 
122: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:20:22.33 ID:CJ8GFahS
果林 「あれ、そういえばゴリラさんにブタさんは?」

せつ菜 「えっ、一緒に来たのではないですか」

彼方 (ゴリラさんにブタさん? ペンネームとかかな? 今日は三人で動物園じゃないんだ)

ゴリラ 「おはようございます、果林さん、せつ菜さん」

ブタ 「二人がいないと人前に出れないから、あそこの茂みに隠れてたんだブー!」

果林 「あ、おはよう、二人とも」

せつ菜 「おはようございます」
 
123: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:22:17.63 ID:CJ8GFahS
彼方 「……」

彼方 「!?」

果林 「そういえば、彼方に紹介してなかったわね。こちらがゴリラさんで」

ゴリラ 「よろしくお願いします」 ペコッ

せつ菜 「こちらがブタさんです」

ブタ 「よろしくブー!」

彼方 「あ、えっと、近江彼方です。よろしくお願いします……」
 
124: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:23:47.53 ID:CJ8GFahS
彼方 「……」

彼方 「彼方ちゃん、まだ夢を見てるのかな」

果林 「安心して、彼方。目、覚めてるから。これ夢じゃないから」

彼方 「早く起きないと……果林ちゃんと一緒に行かないと果林ちゃん辿り着けないよぉ……」 トオイメ

果林 「夢じゃないから!!」

彼方 「夢の中で寝たら覚めるかな」 スピースピー

果林 「彼方!! 道の真ん中で寝ちゃダメよ!!」
 
125: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:27:09.92 ID:CJ8GFahS
アレ? アソコニ ゴリラガイル?

ソンナワケナイヨー

果林 (! や、やばい! せつかりをやってないから周りが違和感に気付き始めてる!?)

果林 「せつ菜……!」

せつ菜 「ライオンを見に行った後は、ここのスペースでアイスクリームを食べたいですね! そのあとはお馬さんを見に行って……」 キラキラ

果林 (計画立ててすごく楽しみにしてる!! 遠足前の子供みたいにめっちゃワクワクしてる!!)

果林 (こ、これは話しかけられないわ……こうなったら寝そうになってる彼方を起こすのも兼ねて……)
 
127: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:29:08.45 ID:CJ8GFahS
果林 「彼方!」

彼方 「むにゃむにゃ……果林ちゃん、寝ないと起きれない(?)んだよ……」 スヤスヤ

果林 「その可愛い寝顔も素敵だけど」 グイッ

彼方 「へっ?」

果林 「もっと彼方の綺麗な瞳を見たいわ」 ニコッ

彼方 「果林ちゃん!?///」
 
128: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:30:44.86 ID:CJ8GFahS
ゴリラナンテ イルワケナイヨ

トウトイカップルハイター

果林 (よし、誤魔化せたわね)

彼方 「か、果林ちゃん、流石の彼方ちゃんでもそれは照れるよぉ……///」 カァァ

ゴリラ 「かなかりも素晴らしい」

せつ菜 「むっ! 果林さん!」

果林 「ん? 何かしら、せつ菜?」
 
129: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:32:19.87 ID:CJ8GFahS
せつ菜 「今日のプランちゃんと聞いてましたか?」

果林 「それ独り言じゃなかったのね、ごめんなさい、聞いてなかったわ」

せつ菜 「もっと聞いてください!!」 プンプン

果林 「ふふ、分かったわよ」

彼方 「……急に怒るなんて、もしかしてせつ菜ちゃん、嫉妬しちゃったの?」

せつ菜 「っ!?///」 カァァ

彼方 「大丈夫だよ〜果林ちゃんを奪い取りはしないから」

せつ菜 「なっ、なっ、なっ……!///」
 
131: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 20:34:47.05 ID:CJ8GFahS
果林 「どういうこと? 奪い取る? ゲームの話でもしてるの?」

せつ菜 「そ、それは、えっと、あの、ですね……///」

彼方 (ふふ、果林ちゃんにはとっても嬉しいことを言われちゃったし、せつ菜ちゃんは照れてる様子が見れちゃったし、彼方ちゃん満足だよ〜)

彼方 (ってあれ、何か忘れてるような……)

ゴリラ 「ぼっーとして大丈夫ですか、うほっ」

ブタ 「今更語尾つけても誤魔化せないブー」

彼方 「やっぱりこれは夢……」 スピースピー

果林 「彼方っ!! 違うってば!! 起きてーーっ!!」






 
133: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:09:14.50 ID:CJ8GFahS
アホーアホー

果林 「彼方、アホウドリが鳴くくらい、バカバカしい話なのは承知してるわ。でも信じてくれた?」

彼方 「……うん。果林ちゃんが嘘を言ってないのは分かるし、実際に喋ってるゴリラさんとブタさんを見てるんだもん。信じるよ」

せつ菜 「ちなみに果林さん。アホウドリはアホーアホーとは鳴かないんですよ。実際はギーギーみたいな低い声なんです」

果林 「えっ、そうなの? 普通に知らなかった……勉強になったわ、ありがとうせつ菜」

せつ菜 「そう言ってくれると嬉しいです!!」 ペカー

果林 「……」

せつ菜 「……」

果林 「……じゃあ今の鳴き声は何なのよ」
 
134: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:10:09.30 ID:CJ8GFahS
彼方 「さっきは驚いちゃってごめんね〜……二人とも、事情があったんだね」

ブタ 「気にしないで大丈夫ブー!」

ゴリラ 「今日は一緒に動物園に行ってくれるんです。それだけで十分ですよ」

彼方 「この二人、すごく丁寧で親切だね〜彼方ちゃんも勉強になるよぉ」

果林 「そうなのよね。人間顔負けの紳士っぷりだわ」
 
135: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:10:54.62 ID:CJ8GFahS
カーカー

彼方 「ん? ごめん果林ちゃん、もう一回言ってくれる?」

果林 「……たまたまカラスの声と重なっちゃったのね。分かったわ、もう一度言うわよ? 人間顔負けの紳士っぷりだわ」

カーカー

果林 「……」

彼方 「……」

果林 「人間顔負けの」

カーカー

カーカー

カーカー

果林 「カーカーうるさいのよっ!!!!」
 
136: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:12:08.78 ID:CJ8GFahS
せつ菜 「近くにカラスの群れがいるように見えませんが……一体どこから?」

トリ 「カーカー」

彼方 「おおっ、カラスの鳴き声をしてる全然違う鳥がいる」

トリ 「……はじめましてみなさん」

せつ菜 「もはや喋っても驚きませんが……えっと、あなたは?」

トリ 「私はトリ。さっきからあなたたちに鳴き声で存在を伝えていた。しかし、気付いてくれなかったので目の前に来た次第だ」

果林 「さっきというといつから? カラスの声は今さっき聞こえてきたばかりだけど」

トリ 「さっきというのは正確には動物園に行く話をし始めた辺りからだ」

果林 「昨日からじゃない!」
 
138: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:21:06.42 ID:CJ8GFahS
せつ菜 「昨日の朝、私たちは計画を立てて、練習終わりに彼方さんを翌日の動物園に誘いましたからね。ですが、そのときには別にカラスの声は聞こえなかったような……」

トリ 「チュンチュン」

果林 「!?」

トリ 「ホーケッキョ」

せつ菜 「その声は!」

トリ 「……このように私は様々な声を真似できる」
 
139: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:24:14.33 ID:CJ8GFahS
果林 「も、もしかしてさっきのアホウドリも……」

トリ 「私だ。しかし、アホウドリの鳴き声は知らなかったゆえイメージでやってみた結果……事実とは異なってしまったみたいだが」

せつ菜 「だから多くの人のイメージ通りのアホウドリの鳴き声がしたんですね」

トリ 「ずっと話しかけたかった。話しかけたかったのだが……両者が急に褒め合うから話しかけにくい空気になってしまった」

果林 「あっ、その頃は、かなかりやせつかりをやってた頃ね……」
 
140: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:24:55.66 ID:CJ8GFahS
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> 多くの人はかなかりに夢中で <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

_人人人人人人人人人人_
> トリに気付かない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
 
143: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:37:32.95 ID:CJ8GFahS
トリ 「今度こそ話しかけたかったから、今日はヒントも用意した」

果林 「ヒントねぇ」

せつ菜 『 トリ あえず二十分ほど待ってますが、待ち合わせ場所、ここで合ってますよね?』

彼方 『大丈夫だよ〜果林ちゃんを奪い トリ はしないから』

果林 「にしてもトリって何よ。鳥にも何種類もあるじゃない。具体的に何の鳥なのよ」

彼方 「えっと、声真似をするってことは、オウムとかインコとか九官鳥の仲間なのかな?」

せつ菜 「でもこんな姿の鳥見たことありませんよ?」
 
145: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:38:14.22 ID:CJ8GFahS
トリ 「……そう、私は見たことのない鳥なのだ」

果林 「? どういうこと?」

トリ 「物心つく頃には一人きりだった。自分が何の鳥なのかも分からぬまま彷徨っていた……」

ゴリラ 「……自分と同じような鳥は見たりはしなかったのか?」

トリ 「よっぽど珍しい鳥らしい。私に似た模様の鳥は見たことがない。自分が何者かさえ分からぬまま今日を過ごしてきたのだ」

果林 「だから見たことのない鳥、なのね……」
 
146: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:39:23.27 ID:CJ8GFahS
トリ 「私は自分が何者かを知りたい。だが、そう簡単にいかないものだ」

彼方 「……あ、そうだ、今から彼方ちゃんたち動物園に行くんだけど、動物園でいろんな鳥を見れば、もしかしたら自分がなんの種類の鳥なのか分かるんじゃないかな?」

トリ 「もちろんそのつもりだ。だから君たちに話しかけたんだ。それに、ゴリラやブタまで連れてるなんて、特別な事情があるに違いない。まさにうってつけだと思ったんだ」

せつ菜 「ゴリラさん、ブタさん、トリさん……なんというか大所帯になってきましたね」

果林 「もはやここまでくると桃太郎みたいね」

彼方 「ゴリラさんがサルで、トリさんがキジ、ブタさんがイヌってこと?」

ブタ 「僕だけ別物ブー」
 
147: (もんじゃ) 2022/01/29(土) 23:42:10.38 ID:CJ8GFahS
果林 「まあ、良いじゃない。トリさんの正体を知るために、意味がなかったはずの動物園巡りに意味ができて」

せつ菜 「意味、あったんじゃなかったんですか?」

果林 「あるわよ」

果林 (パンダだけど……)

せつ菜 「とりあえず早く行きましょう? レッツゴー!!」 タタタタ

トリ 「なんというか彼女、楽しそうだな」

果林 「ふふ、きっと昨日からすごく楽しみにしてたのよ」

果林 (実際私もすごく楽しみだし……パンダ)






 
148: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:03:38.36 ID:TnYFtl8p
果林 「この鳥は違うの?」

トリ 「……私とは翼が違うな」

果林 (まずはパンダを見たいけど、パンダ見たさで来たことがバレるとまずい……)

果林 「それとゴリラさん、見たい人とは会えた?」

ゴリラ 「……いや、今のところは」

果林 「とりあえず今度はあっちのエリアに行ってみましょう?」
 
149: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:04:34.95 ID:TnYFtl8p
せつ菜 「あっちはゴリラたちがいるエリアでも、鳥たちがいるエリアでもありませんよ?」

果林 「……あはは、そうだったかしら」

果林 (せつ菜がしっかり調べてきてるから、上手く誤魔化せない。このままではパンダが)

彼方 「ん? あれ侑ちゃんたちじゃない?」

せつ菜 「えっ?」
 
152: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:22:57.37 ID:TnYFtl8p
侑 「歩夢。今度はあっちに行こうよ!」

歩夢 「でもそろそろチケットの時間になっちゃうよ? あっちのエリアに行かないと」

侑 「えっーー、まだ時間あるよ!?」

歩夢 「でも侑ちゃん。せっかく貰ったチケットなんだしちゃんと使わないと」

侑 「むー……まあそうだね。せっかくのパンダだし。しかも独占」

歩夢 「ほら? 行こっ、侑ちゃん!」

侑 「うん!!」
 
153: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:24:05.94 ID:TnYFtl8p
彼方 「……距離があったから全然聞こえなかったけど、もしかしてデートなのかな?」

せつ菜 「で、で、デートですか!?///」 カァァ

果林 「なんでせつ菜が恥ずかしがってるのよ」

果林 (……ほとんど聞こえなかったけど、聞き逃さなかったわよ。パンダ、っていう言葉だけは)

果林 「ついて行きましょう。気になるわ」
 
154: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:24:50.10 ID:TnYFtl8p
彼方 「確かに気になるけど、デートを邪魔するのは野暮だよ、果林ちゃん!」

果林 「そ、それはそうだけど」

せつ菜 「それにまだ私たちも動物園巡りの途中ですし!」

果林 「ぐぬぬぬぬぬ」

果林 (違うのよ、二人ともっ!! 私はデートが気になるわけでも、動物園巡りをしたいわけでもなくて!!)

果林 (ただパンダが見たいだけなのよぉ……!) グスッ

トリ 「苦行のような顔をしている……」






 
156: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:35:36.75 ID:TnYFtl8p
従業員 「上原歩夢さんですよね」

歩夢 「あ、はい、そうです!!」

従業員 「……隣にいるあなたは?」

侑 「あ、あの、高咲侑と言います! 今日は歩夢の連れ添いで……」

従業員 「……」

侑 「えっと……」

従業員 「まずは当選おめでとうございます。チケットを見せてください」
 
158: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:36:34.39 ID:TnYFtl8p
歩夢 「これですよね?」 チラッ

従業員 「はい。これを使えば、特別な場所でパンダを独占で見ることができます」

侑 「いやーほんとラッキーだったよね。まさかポストに入ってるチケットがこんなに素敵なものだったなんて」

歩夢 「わ、私は侑ちゃんと一緒に動物園に行けただけで嬉しかったよ?」

侑 「それは私もそうだよ歩夢!」 ニコッ

歩夢 「侑ちゃん……///」 テレテレ

従業員 「えっと、仲良しなところ悪いのですが」

侑 「あっ、えっと、すいません……えへへ」
 
159: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:38:34.45 ID:TnYFtl8p
従業員 「このチケット、一人分なので一人しかその場所に行けないんですよ。まさか二人でいらっしゃるとは思ってなくて……」

侑 「えっ……」

歩夢 「そ、そんな……」

従業員 「このチケットにも一人用と書いてあるのですが……」

侑 「本当だ……」

歩夢 「えっと、どうしようか……?」

従業員 「二人のうち、どちらかしか入れないということになってしまうのですが、どうします?」
 
160: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:40:16.84 ID:TnYFtl8p
侑 「なら歩夢が行ってきなよ」

歩夢 「侑ちゃん!?」

侑 「歩夢が当てたんだし、私は歩夢が楽しんでくれるのが一番だよ」

歩夢 「で、でもその間、侑ちゃんはどうするの? それに私は侑ちゃんと一緒なら別に……」

侑 「私はそこら辺をうろついてるよ。それに、パンダを見るって言っても一日中ってわけじゃないでしょ? ちょっとくらい全然待てるし、楽しんできなよ」

歩夢 「で、でも」

侑 「ね、歩夢?」 ニコッ
 
162: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:41:19.51 ID:TnYFtl8p
歩夢 「……」

従業員 「お決まりですか?」

歩夢 (侑ちゃんの優しさを無下にする方がダメだよね)

歩夢 「ありがとう、侑ちゃん。行ってくるね?」

侑 「うん、気をつけてね!」

従業員 「ではついてきてください、歩夢さん」

歩夢 「は、はい!」

従業員? 「……」

従業員? 「……あとはあの檻を外すだけ」 ボソッ

歩夢 「?」
 
163: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 00:42:16.22 ID:TnYFtl8p
侑 「歩夢、行っちゃったな。さてこれからどうしよう」

侑 「……」

侑 (それにしても、さっきの従業員さんの声)

侑 「よく聞き覚えのある声なんだよなぁ……どこで聞いたんだっけ? ただの空似かな?」

侑 「まあ、待ってる間はのんびり動物園巡りでもしておこう」






 
164: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 01:00:27.93 ID:TnYFtl8p
ブタ (……思ったよりもライバルは多いみたいだ)

ライオン 「ガオッーーー!!」

客 「きゃーーーー!! かっこいいーー!!」

ブタ (まずは一人、潰す対象が生まれた。あいつなら、まず俺の足で派手に蹴って……)

ライオン 「がぶっがぶっ」

客 「あ、巨大な肉食べてるよー」

客 「やっぱライオンって最強だからね〜。かぶりつき方もかっこいいよね」

ブタ (まあ、あいつは優しさで見逃してやろう……)
 
165: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 01:01:54.22 ID:TnYFtl8p
せつ菜 「次はアイスクリームを食べに行きましょう!!」

彼方 「あ、でも見て、あっちにはゾウがいるよ」

果林 「やっぱり、ゾウは流石の大きさね」

ゾウ 「パォォーーーーーーンッ!!」

ゴリラ 「……ただ、あのゾウがいない」

トリ 「あのゾウ?」

ゴリラ 「一番大きくて凶暴なアフリカゾウ……名前は忘れてしまったけど、この動物園の名物ゾウで、機嫌が悪いときは危ないから動物園の奥で檻に閉じ込めているらしい……今日がその日なんだと思う」

ブタ 「……動物園の名物ゾウ」
 
166: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 01:02:38.15 ID:TnYFtl8p
ブタ (これまたライバルが出ちまったな……ふん、凶暴だかなんだか知らないが、俺の小回りの利くスピードであっという間に翻弄してやるぜ)

トリ 「あのゾウでも随分大きいが、もっと大きいのか」

ゴリラ 「……その通り」

ゾウ 「パォォン!!」 ドシッ ドシッ

客 「ゾウってすごい足が大きいよね〜」

客 「あれに踏まれたらひとたまりもなさそうだよ〜」

ブタ (あんなやつ、雑魚すぎて戦う必要もないな……もう俺様の不戦勝だよ。そういうことにしよう)
 
170: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:53:39.48 ID:TnYFtl8p
彼方 「そういえば、トリさん」

トリ 「ん、なんだ?」

彼方 「動物園に行けば自分の種類が分かると思って、彼方ちゃんたちに話しかけたんだよね?」

トリ 「ああ、そうだ」

彼方 「一人で行こうとは思わなかったのかなって……トリさんなら動物園にも上から入れるでしょ?」

トリ 「……実はあまり言いたくないのだが、私は方向音痴なのだ。一人じゃ辿り着けなかった」

果林 「鳥なのに? 難儀なものね」

せつ菜 「果林さんと同じですね!!」

果林 「……どういうこと?」
 
171: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:54:33.47 ID:TnYFtl8p
ゴリラ 「……それにしても、このエリアは懐かしい」

せつ菜 「あっ、ここはゴリラさんの……」

ゴリラ 「私を育ててくれた飼育員さんはいるのだろうか……気になるけれど、会うわけにはいかない、やっぱりまだ会えない」

せつ菜 「ゴリラさん……」

ヴォーーーーーーーーン

ヴォーーーーーーーーン

果林 「なんの音?」

ゴリラ 「これは警報音です、何か起きたのかもしれません……!」
 
172: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:55:14.49 ID:TnYFtl8p
『落ち着いて聞いてください。アフリカゾウが一匹、檻から逃げ出しました。とても凶暴なゾウのため、出会うととても危険です』

ザワザワ

エエッ! ホントウニ?

コワイヨォォ

せつ菜 「アフリカゾウ……!?」

トリ 「もしかしてさっき言っていた……」

ゴリラ 「かもしれない」
 
173: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:56:10.67 ID:TnYFtl8p
『ですので、それぞれのエリアにいる、飼育員さんの指示をしっかり聞いて、避難してください。大丈夫です、落ち着いて避難してください』

彼方 「とりあえず、みんな避難しよう!」

果林 「ええ、分かったわ」

果林 (パンダ……っ! 会いたかった……) ガーン

飼育員 「みなさん! こちらに避難してください!!」

ゴリラ 「あ、あの人は……」

ゴリラ (私を育ててくれたあの飼育員……)
 
174: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:56:53.52 ID:TnYFtl8p
ハヤクニゲナイト

コッチデイイノカシラ

アノコガイナイワッ

せつ菜 「早く避難して……ってあれ?」

果林 「どうしたの?」

せつ菜 「あそこに女の子が……!」

女の子 「お母さん……」 ポロポロ

果林 「早く飼育員さんに伝えないと……!!」
 
175: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:57:47.47 ID:TnYFtl8p
飼育員 「こちらを通ってください。みなさん、しっかり並んで……一気に駆け込んでしまいますと詰まってしまいます……!」

客 「うるさい!! 早く通してくれ!!」

客 「死にたくないんだ!!」

客 「助けたくれぇ!!」

果林 (……人が多すぎて気付いてない! こうなったら)

果林 「私が行ってくるから、せつ菜と彼方は動物さんたちを連れて先に行ってて!」

せつ菜 「そんな、でも!」

果林 「分かったわね!?」 タタタタ

せつ菜 「果林さんっ!!」
 
176: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 14:58:49.00 ID:TnYFtl8p
果林 (……まだゾウは来ていない。でもいつ来るかわからない今、この子を逃してあげないと)

果林 「大丈夫? 怪我はしてない?」

女の子 「お姉ちゃんは誰……?」 グスグス

果林 「私は通りすがりのスクールアイドルよ。ほら、手を握って。ここから逃げるの」

女の子 「で、でも足が震えて……」 ガクガク

果林 「大丈夫」 ギュッ

女の子 「!」

果林 「あなたの手は温かいわね。君のその温かい手を握りたい人が……そう、お母さんがあなたを待ってるわ。だから行きましょ?」

女の子 「……うん!」

果林 「よし、良い子っ!」
 
177: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:00:11.98 ID:TnYFtl8p
タタタタ

タタタタ

果林 (……大丈夫、あそこの出入り口まで行けるっ!!)

パォォーーーーーーンッ

果林 「!?」

客 「あれ、ゾウじゃないか!?」

客 「このエリアに来たんだ!! 早く逃げないと!!」

客 「どいてくれ、早く通ってくれ!!」

飼育員 「みなさん、押さないでください……!!」 ググググ

果林 (……こ、このままじゃ、みんなゾウに追いつかれちゃうんじゃ)
 
178: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:01:04.55 ID:TnYFtl8p
果林 「……」

女の子 「お姉ちゃん?」

果林 「あそこに誰かを探している人がいるわ……あなたのお母さん?」

ドコニイルノーーッ!

女の子 「あ、お母さん!」 パァァ

果林 「なら早く行ってあげなさい。きっと喜ぶわ」

女の子 「で、でもお姉ちゃんは?」

果林 「大丈夫。すぐ追いつくから」

女の子 「……」

果林 「ね?」
 
179: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:02:15.32 ID:TnYFtl8p
女の子 「本当に?」

果林 「もちろん。お姉ちゃんは嘘をつかないわ」

女の子 「約束だからね!?」

果林 「ええ」

女の子 「……じゃあまたね。ありがとう。お姉ちゃん!!」 タタタタ

果林 「……」

果林 「行ったわね」
 
180: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:02:52.39 ID:TnYFtl8p
果林 (じゃあ朝香果林、一世一代の賭けに出るわよ……!)

果林 「この石ころを投げれば私に標的が向くかしら……」

果林 (なんとか生きて帰ってこれたら良いわね!!)

果林 「くらいなさいっ!!」 ブンッ

ゾウ 「!」 バシン

果林 「こっちよーーー!」

ゾウ 「パォォーーーーーーンッ!!」 ダダダダ

客 「ゾウが違うエリアに行った?」

飼育員 「とりあえずみなさん落ち着いてください、落ち着いて!」






 
181: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:06:34.23 ID:TnYFtl8p
果林 「はぁ、はぁ、ひとまず看板の裏に隠れたけど……」

果林 (見つかるのも時間の問題かしらね)

彼方 「これからどうするかだねぇ」

せつ菜 「歩夢さんと侑さんも心配ですね……」

果林 「ってなんであなたたちがいるのよ!?」
 
182: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 15:07:33.56 ID:TnYFtl8p
ゴリラ 「……果林さんを置いていけるわけがありません」

ブタ 「大切な仲間ブー!」

トリ 「子供を助けるために自分を犠牲にする……その心、実に感銘した。力になることがあるなら是非協力させてほしい」

せつ菜 「あはは……。みなさん、こんな感じですし、それに私だって……果林さんを置いてくことなんかできません!!」

彼方 「果林ちゃん、カッコつけたのはいいけど、もしそのままバイバイなんてことになっちゃったら、彼方ちゃん本当に許さないよ」

果林 「みんな……」
 
185: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:11:50.11 ID:TnYFtl8p
飼育員 「もうここに人はいませんかーーー!」

ゾウ 「!」 ピクッ

飼育員 「……ゾウにバレたらまずい。でももしも誰かいたなら助けなければ。誰かいませんかーー!」

彼方 「飼育員さんが助けに来てくれてる!」

果林 「でも、ここで出るのはまずいわ」

せつ菜 「なんでですか?」

果林 「私たちは今、命の危機に瀕している。そんなときに、せつかりやかなかりが通じるとは思えない。つまり」

ゴリラ 「……私たちの姿が見えてしまうというわけですか」
 
186: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:12:58.42 ID:TnYFtl8p
果林 「考えてもみなさい。あの飼育員さんは自分の命を危険に晒してまで、人を助けようとしてくれてる。でも、実際はアフリカゾウが逃亡したなんて、相当パニックになってるはずよ。そこにゴリラさんとブタさんが現れたら、危険な生き物がさらに逃げ出したと、余計にパニックにさせてしまうわ」

トリ 「私は空を飛べるし、外から来た鳥で誤魔化せるかもしれないが二人は……」

ゴリラ 「確かにそうだ」

ブタ 「僕らは檻から出てきたと思われるブー、しかも危険な動物二人が出てきたなんて」

せつ菜 「飼育員さんが気が気じゃなくなってしまいます……」

彼方 (ゴリラはともかくブタは別に大丈夫なんじゃ……)
 
187: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:14:20.03 ID:TnYFtl8p
飼育員 「こちらEエリア。全ての人が避難し終えました。また、ゾウもいます」

『分かった。では君も避難しなさい。私たちも避難準備を始めてる』

飼育員 「分かりました」 タタタタ

彼方 「飼育員さん、行っちゃったね」

果林 「とりあえず、なんとか人が落ち着いた後に、何事もなかったかのように動物園を抜け出すのよ。もしここでバレたらパニックはそうだけど、ゴリラさんはまた動物園で暮らすことになるわ」

せつ菜 「ですが人が落ち着いた後というのはどれくらい経った頃の話なのですか? ずっとこの物陰に隠れてるわけにもいかないですし……」
 
188: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:15:55.23 ID:TnYFtl8p
ゾウ 「パォォーーン?」 ジッー

ブタ 「なぜかこっちを見てるブー」

彼方 「もしかしてバレてる?」

果林 「いや気のせいよ、きっと、うん」

ゾウ 「……」 ドシッ ドシッ

彼方 「近づいて来てるね」

せつ菜 「やっぱりバレてるんじゃ……」

果林 「気のせいよ、そう信じましょう」 ドキドキ
 
189: (茸) 2022/01/30(日) 16:16:30.91 ID:bYQEdjPS
せつかりで誤魔化せるのにゾウでは無理なのか
 
191: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:18:31.75 ID:TnYFtl8p
>>189
ゾウが暴れてる緊迫状態で、せつかり効果が使えないのと、トリさんがゴリラさんとブタさんを見つけたように、動物には効かないという設定が一応あります。
 
199: (SB-iPhone) 2022/01/30(日) 16:38:58.65 ID:q2J5i6wc
>>191
意外と設定ちゃんとしてて草
 
190: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:16:44.34 ID:TnYFtl8p
ゾウ 「……」

彼方 「目の前で止まったけど……」

せつ菜 「これ、もしかしてまずいんじゃ……」

ドカーーーンッ!

果林 「ひぃぃぃぃ! 看板がぶっ壊れたっ!!」

せつ菜 「やっぱりまずいじゃないですか!!」
 
192: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:21:34.93 ID:TnYFtl8p
果林 「こうなったら対話を試みましょう。今日は良い天気ですね、よしこれでオッケー」

彼方 「果林ちゃん!?」

果林 「ふふ、ゾウさん、今日は良い天気ですね。暴れるのはやめてお茶にしませんか?」

ゾウ 「……」

果林 「鼻は武器じゃありませんよ、ふふ」

ゾウ 「パォォーーーーーーンッ!!」 ブンブン

果林 「ひぃぃぃぃ! めっちゃ鼻振り回してきたっ!!」
 
193: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:22:19.08 ID:TnYFtl8p
せつ菜 「果林さん!! ゾウは喋れませんよ!!」

果林 「なんでよ!! ゴリラもブタもトリも喋ってたじゃない!!」

せつ菜 「普通動物は喋れないんですよ!!」

彼方 「とりあえず距離を置かないと、冗談じゃなくみんな死んじゃうよ!?」

果林 「みんなダッシュよ!!」

タタタタ

タタタタ

タタタタ
 
194: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:26:38.36 ID:TnYFtl8p
ゴリラ (……いや、これではすぐ追いつかれる)

ゴリラ 「私があいつを止めます。みなさんはその隙に逃げてください」

せつ菜 「なっ!?」

果林 「……そうだ、そういえばゴリラってめっちゃ強かったわよね。ということはもしかして止められるんじゃ!?」

ゴリラ 「任せてください!」
 
195: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:27:29.92 ID:TnYFtl8p
ゾウ 「……」

ゴリラ 「……」 ドキドキ

せつ菜 「二人とも動きませんね……」

彼方 「聞いたことがあるよ。名人同士の戦いは、膠着状態が続くって」

ゾウ 「……」

ゴリラ 「……」 ドキドキ

ブタ 「僕に任せるブー!!」 タタタタ

果林 「ブタさん!?」

せつ菜 「ブタさん、無茶です!! ブタがゾウに勝てるわけが……!!」

ブタ 「おりゃぁぁぁぁぁぃぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!」 タタタタ

ゾウ 「!」
 
196: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:28:40.08 ID:TnYFtl8p
ブタ 「ああーーーー風で体が左に流されてゆくーーーー」 タタタタ

果林 「……」

せつ菜 「……」

彼方 「……」

一同 ((えっ、逃げた?))

せつ菜 「いや明らかに左に曲がって逃げましたよね……」

彼方 「ここにきて一人で逃げたってこと?」

果林 「ブタさん……風にすら逆らえないのにゾウに立ち向かうなんて……! なんて勇敢なのぉ……!」 グスッ

せつ菜 「えぇ……」
 
197: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:31:48.88 ID:TnYFtl8p
ゾウ 「パォォーーーーーンッ」 ドシッドシッ

果林 「攻めてきたわよ!?」

ゴリラ 「止めるっ……!!」

ドガッ

ゴリラ 「ぐわっ……っっ!!!!」

ドーーーン

せつ菜 「ゴリラさんが壁に叩きつけられた!?」

彼方 「……」

彼方 (聞いたことがある。陸上動物で最強なのが、アフリカゾウって……。もしかしてゴリラさんは勝てないのが分かってて、それでも私たちのために戦ってくれたんじゃ……)
 
198: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 16:33:50.17 ID:TnYFtl8p
ゴリラ 「ぐふっ。私でもやっぱり勝てないみたいですね……みなさん、逃げましょう。少しでも時間稼ぎになれればよかったのですが」

せつ菜 「ゴリラさん!! 怪我は大丈夫なんですか!?」

ゴリラ 「私は大丈夫です。受け身をしましたから。しかし、あのゾウは全力で走らなければすぐに追いつかれますよ!! 走ってください!!」

果林 「っ! 分かったわ!!」

タタタタ

タタタタ

タタタタ
 
202: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:43:18.13 ID:TnYFtl8p
ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!!!」

せつ菜 (追いつかれます……っ!)

トリ 「はっ!」 パッ

ゾウ 「パォォ……ッッッ!!」

トリ 「掴んだ砂を顔にかけた、今のうちに走るんだっ!!」

果林 「!」

果林 「あそこに巨大なトンネルがある、とりあえずあそこに逃げましょう!!」
 
203: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:47:52.01 ID:TnYFtl8p
—関係者以外立ち入り禁止—

せつ菜 「関係者以外立ち入り禁止って書いてありますよ!?」

果林 「状況が状況よ仕方ないわ。狭いところに入った方が、ゾウは体が大きいから動きにくくなるでしょう?」

彼方 「とりあえず相談してる暇なんてないよ、早く走らないと!!」

タタタタ

タタタタ

せつ菜 「明らかに動物園の裏側っていう感じですが……明かりはあるものの、少し暗いですね。ゴリラさん、ここに来たことはありますか?」
 
204: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:49:20.31 ID:TnYFtl8p
ゴリラ 「……ほとんどないと思います。物心つく前に来たことはもしかしたらあるかもしれませんが」

せつ菜 (……ということは、誰も道が分からないということですね。もし行き止まりだったらと思うと、考えるだけで恐ろしいです)

果林 「! あれって!」

トリ 「T字路……右と左で分かれてるが、どっちに行くべきか……」

彼方 「時間がないよ、果林ちゃん選んで!!」

果林 「ええっ!? 私が選ぶの!?」
 
205: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:51:05.51 ID:TnYFtl8p
果林 (もし選んだ方の道が行き止まりだとしたら、私のせいでみんなの命が……ってことに……!)

果林 (で、でも悩んでる暇はないし、一体どうすれば……)

果林 「むむむむむ……」

せつ菜 「果林さん、もし決められないのなら私が決めます! とりあえず時間がないので……」

果林 (もうこうなったら、どうせ後のことは分からないんだからやけくそよっ!!)

果林 「右よ! 右! 右!」
 
206: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:52:45.68 ID:TnYFtl8p
トリ 「こっちだな」

せつ菜 「こっちですね」

パッ

一同 「「えっ?」」

果林 「なんでトリさんそっち行ってるのよ! そっちは左でしょ!?」

トリ 「……君は『右』と三回言ったじゃないか! 右回りして右回りして、さらに右回りしたらそれはつまり左回りじゃないか!」

果林 「こんな状況でそんな遠回しな表現はしないわよっ!! 焦ってたから三回言ったの!!」

彼方 「天然なところまで果林ちゃんに似なくてもいいのに〜」

果林 「……どういうこと?」
 
207: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:54:09.73 ID:TnYFtl8p
せつ菜 「どちらにせよ、今更合流できません! トリさん、申し訳ないですが、そちらを進んでください! きっと合流できるはずです!」

トリ 「分かった!」

ゾウ 「パォォー?」

ゾウ 「……」 チラッ チラッ

ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!」 ドンッ ドンッ
 
208: (もんじゃ) 2022/01/30(日) 23:56:10.35 ID:TnYFtl8p
ゴリラ 「こっちに来たみたいですね」

彼方 「やっぱり人数が多い方に来るよね」

せつ菜 「それにしてもブタさんに次いで、トリさんとも離れてしまうとは……大丈夫でしょうか」

果林 「トリさんはこの狭い中とはいえ、空を飛べるんだからきっと大丈夫。でも、問題はブタさんよ。風に飛ばされるくらいのブタさん……心配だわ……」

彼方 (真実を言わないのも優しさだろう……彼方ちゃん、気遣えて偉いっ)






 
210: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:42:40.16 ID:/lIrV2Dx
従業員 『この待合室で少々お待ちください』

歩夢 『ここでですか?』

従業員 『はい。歩夢さん用の独占パンダ展示会に少々時間がかかってまして……』

歩夢 『分かりました。ありがとうございます』

従業員 『それと、近距離ゆえに仮にスマホの音等でパンダが驚いてしまうと大変ですので、スマホの電源は切っていただけると……』

歩夢 『スマホの電源をですか?』

従業員 『はい』
 
211: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:43:52.43 ID:/lIrV2Dx
歩夢 『分かりました。これで良いですか?』 ピッ

従業員 『ありがとうございます。では扉を閉めますので、そこの椅子でお待ちください』

ガチャ

歩夢 『ふふ、パンダ楽しみだなぁ。侑ちゃんにもしっかり感想伝えないと!』

歩夢 「……そんな会話をしてから結構経ってるけど、まだなのかな? うぅ。楽しみだからこそ待つ時間が長く感じちゃう」

キャーーー

ハヤクニゲテクダサイッ

歩夢 「? 外が騒がしいのは気のせいかなぁ?」






 
212: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:45:18.39 ID:/lIrV2Dx
ブタ 「……」 タタタタ

ブタ 「……」 タタタタ

ブタ (そろそろあいつらとも離れられたかな)

ブタ 「最初はこっちが利用しようとして近付いてたのに、まさかの友情ごっこであんな化物と戦う羽目になりかけるとは……危ない危ない」

ブタ (なんとか自然に抜け出せるよう手を尽くしたが、やっぱり違和感はあったか? まあ果林くらいなら騙せただろう)
 
214: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:48:13.37 ID:/lIrV2Dx
ブタ 「それにしても短い間だったが、変なやつらだった。利用価値はあっただろうが、その前に死んじゃ元も子もない。さらばして正解だぜ」

ブタ 「……」 タタタタ

せつ菜 『あなたを元の動物園に返す手伝いをさせてくれませんか? あなたがいた動物園の名前は分かりますか?』

せつ菜 『そんな、謝らないでください。少し大変かもしれませんが、みんなで協力してあなたを絶対に無事に返します。ですよね、果林さん!』

ブタ 「……っ」 タタタタ
 
215: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:48:54.95 ID:/lIrV2Dx
果林 『がん゙ど゙ゔじだわ゙……!!』 ポロポロ

果林 『すごく良い子だわっ!!』 パァァ

果林 『それにこんな可哀想な子、放っておけないわよ……!』 グスッ

ブタ 「……っっ」 タタタタ
 
216: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:49:40.14 ID:/lIrV2Dx
彼方 『さっきは驚いちゃってごめんね〜……二人とも、事情があったんだね』

彼方 『この二人、すごく丁寧で親切だね〜彼方ちゃんも勉強になるよぉ』

ブタ 「……あいつらと分かれて清々しいはずなのに、なんでだ」

ブタ 「なんであいつらの言葉が頭に響くんだっ!!!!」
 
217: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:50:50.48 ID:/lIrV2Dx
ブタ 「!」

ブタ (あそこにいるのはパンダ……?)

パンダ 「もぐっもぐっ」

ブタ 「……」

ブタ 「……お前は柵の中で、笹を食べてるだけで誰よりも可愛がられる。俺は、必死に芸を覚え、鳴き声で存在をアピールし続けて、ようやく少し評価されるんだ」

ブタ 「そうだ。憎くて、憎くて、しょうがない。なんでもかんでも上手くいくやつが、俺の努力を簡単に掻っ攫うやつらが……!」

ブタ (だからこそっ……!)
 
218: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 00:51:51.12 ID:/lIrV2Dx
ブタ 「俺を見てくれたやつを見捨てるのは、性に合わない」

ブタ 「知ってるか? パンダ」

ブタ 「……本当に人気のあるやつは、大切にしてくれた人を蔑ろにしないんだ」

ブタ 「!」

ブタ (あそこの窓、開いてるな……中に見えるのはカメラルームか? あっちの柵から飛んだらギリ届くか?)

タタタタ

ブタ 「だが届かなきゃ怪我じゃ済まないかもな……でも届かせるしかない」

ブタ 「飛べないブタはただのブタだっーーーーーーーー!!!」 バッ






 
223: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 12:52:41.38 ID:/lIrV2Dx
タタタタ

タタタタ

果林 「はぁ、はぁ、かなり走ったけどゾウはどんな感じ?」

ゴリラ 「……まだ距離が近いしスピードも落ちてない。少しでも気を抜いたらすぐ追いつかれますね」

彼方 「さ、流石に彼方ちゃん、しんどいよぉ」 フラフラ

せつ菜 「彼方さん頑張ってください!! ここで諦めたら試合終了ですよ!!」

果林 「試合どころか人生終了よ」
 
224: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 12:54:05.33 ID:/lIrV2Dx
彼方 「とりあえず少しだけ休憩を……壁に手をつけさせてほしい」 ペタッ

果林 「仕方ないわね……一瞬よ?」

彼方 「いやそれにしても、目の前に壁があって良かったよ〜。わざわざ端まで行かなくても良いんだもん。ん? 壁?」

せつ菜 「目の前に壁ありますね……これって」

果林 「行き止まりじゃない!!!!」
 
225: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 12:54:58.32 ID:/lIrV2Dx
ゴリラ 「まずいっ、ゾウが!!」

ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!」 ドンッ ドンッ

彼方 「ひぃぃぃぃ! このままじゃ彼方ちゃんたち潰されちゃうよ!?」

せつ菜 「でも行き止まりじゃどうしようもありません……」

彼方 「そ、そんな」

果林 「……」

果林 (必死に逃げたけど、ここが潮時かしらね……)

果林 「諦めるしかないみたいね」

ゴリラ 「果林さん……」
 
226: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 12:56:34.64 ID:/lIrV2Dx
果林 「つまり、今から話す言葉は遺言みたいなもの。最後くらい、言いたいこと言いなさい、みんな」

せつ菜 「……」

彼方 「……」

ゴリラ 「……」

果林 「……」

彼方 「遥ちゃん。届くか分からないけど、遥ちゃんに伝えたいことがあるよ」

果林 「彼方……」

彼方 「冷蔵庫の右上にある野菜炒めを優先して食べてほしいな……」

果林 「それが最後に言うことなの」
 
227: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 12:58:51.00 ID:/lIrV2Dx
ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!!!」 ドシッ ドシッ

彼方 「さようなら遥ちゃん……」

『諦めるのは早いブー!!』

ウィーーーーン

果林 「えっ!? 壁が開いた!?」

せつ菜 「その声はブタさん!?」
 
228: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:00:29.14 ID:/lIrV2Dx
『今カメラルームにいるブー。ここではたくさんのことができて、扉の開け閉めもできるんだブー! 僕が行き止まりがあるたび扉を開けるからとにかくみんなは走って!』

ゴリラ 「首の皮一枚繋がったみたいですね」

せつ菜 「良かった……まだ私は大好きを守る手伝いができそうです!!」

果林 「みんな走るわよっ!!」

タタタタ

タタタタ

彼方 「また行き止まりだよ!?」
 
229: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:01:48.62 ID:/lIrV2Dx
ウィーーーーン

『これで進めるブー!』

果林 「ブタさん、さらにお願いしても良いかしら」

『もちろんだブー!』

果林 「その壁の開け閉めであいつを閉じ込めることはできないかしら」

『もちろんできるブー。でも扉みたいな薄い壁じゃいつ壊されるか分からないから……檻を下ろして捕まえるブー! そのためには特定の場所に行かないといけないみたいだから、誘導した通りに行けるブー?』
 
230: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:22:59.10 ID:/lIrV2Dx
果林 「ええ、もちろん! 先頭は彼方に任せるわ!」

彼方 「あはは……果林ちゃんだと迷子になりそうだもんね……」

果林 「ち、違っ……/// 彼方を信用してるからよ!」

せつ菜 「それでブタさん。私たちはどうすれば良いんですか!?」

『まずその道を進んで道が別れたら左に行くブー。壁はその都度開けるから安心して直進して』

せつ菜 「分かりました!」
 
231: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:23:31.81 ID:/lIrV2Dx
『そこをさらに進んで今度は右に曲がるブー』

彼方 「なんだかどんどん奥に行ってるみたいだね……」

果林 「でも動物園の入り口より、奥の方がみんな避難して人がいないはずだから、ゾウを連れて行くにはちょうどいいわね」

『しばらく進んだら広い場所に出るから、そこで勝負を決めるブー!』

果林 (……ここが正念場ね)

タタタタ

タタタタ






 
232: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:24:39.59 ID:/lIrV2Dx
トリ 「……まさか離れてしまうとは。進んでいれば合流できるだろうか」

トリ 「ん? 広いところに出たが」

ポツン

トリ 「物置き? 小さな小屋がポツンと立ってるな」

歩夢 「……うーん、まだなのかなぁ」

トリ 「! 小屋の中に人がいる!? まずいぞ、ゾウほどの重さなら、こんな小屋簡単に潰されてしまう」
 
233: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:28:09.99 ID:/lIrV2Dx
トリ (……しかし、よく見ると扉に南京錠がかかっている。あれは動物を入れる檻などに使われてるものだろうか?)

トリ 「ただでさえ、鳥は人間のような器用な手を持ってないのだ。鍵など開けられるはずがない」

トリ (声をかけるにしても、鳥が喋ってるのを見られるのは少々困る……それに内側から鍵を開けることもできまい)

トリ 「……あそこに外の光が見える。出口があるな」

トリ (ここから出れば、誰かいるか?)
 
234: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:29:52.78 ID:/lIrV2Dx
バサッ

バサバサ

飼育員 「……とりあえず、無事全員避難できたか?」

飼育員 「こちらJエリア。全ての人が避難し終えま……」

タスケテェェーーー!

飼育員 「人の声!? まだ人がいたようです、通信一度切ります」 ピッ

タタタタ

タタタタ
 
235: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:30:52.81 ID:/lIrV2Dx
飼育員 「……こっちから声が聞こえたが、ここは飼育員でもあまり近付かない場所だぞ?」

飼育員 「ここにあるのは使われなくなった物置きくらいだが……」

飼育員 「! 中に人がいる!? 南京錠……確か鍵は共通のを持っていたな」

ガチャ

飼育員 「大丈夫ですか!?」

歩夢 「えっ?」

飼育員 「今、アフリカゾウが脱走してしまい、外は大変なことになってるんです。早く避難してください!!」

歩夢 「アフリカゾウ? は、はい!」

タタタタ

タタタタ
 
236: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 13:31:40.02 ID:/lIrV2Dx
飼育員 「……いやー、本当に良かった。飼育員でさえ多くの人が避難してるのに、まさか一般人がまだいるなんて。しかもこんなところに」

歩夢 「教えてくださなかったらそんな大変なことになってるなんて、きっと気付かなかったと思います。ありがとうございます」 ペコッ

飼育員 「?」

飼育員 (あなたの悲鳴で気付いたのだが……いや、きっとパニックになってしまってるのだろう。そう、いちいち突っかかるものじゃない)

歩夢 (……アフリカゾウが逃げちゃったなんて。きっと、あの従業員さんも逃げちゃったんだね。怖いもん、仕方ないよ)

カーカー

カーカー

トリ 「……声真似が得意で良かった」






 
239: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 18:22:25.15 ID:/lIrV2Dx
果林 「広いところに出たっ!! ここが」

せつ菜 「ブタさんの言っていた場所ですね……!」

彼方 「もう走れないよぉ」 ヘトヘト

バサバサ

バサバサ

トリ 「無事だったみたいでよかった」

せつ菜 「トリさん!」

果林 「なるほど。どちらの道を選んでたとしても、最終的にはこの広い場所に出てたってことね」
 
240: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 18:23:23.95 ID:/lIrV2Dx
トリ 「……あちらに外に出る道がある。いざとなればそこから出ればいい」

果林 「いや、ゾウを全員で止めるの。そのためにブタさんが準備してくれてるわ」

『置いてあった資料によると、そこの床に赤色の大きい四角形が描いてあるはずブー』

ゴリラ 「この四角形に入るように誘導すればいいってこと?」

『そういうことブー。その四角形にゾウが入った瞬間、僕が思いっきりボタンを押す。すると檻が下りてきて無事捕まえることができるよ!』
 
241: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 18:24:34.35 ID:/lIrV2Dx
ゾウ 「パォォーーーーーン……」 ドシッ ドシッ

果林 「来た……! ラスト勝負ね!!」

彼方 「でも彼方ちゃんたちが動かないからか、相手もゆっくり近付いてきてる……これなら問題なく檻に入れられそうだね」

ドシッ ドシッ

ドシッ ドシッ

『よし、ここだブーー!!』
 
242: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 18:25:43.01 ID:/lIrV2Dx
果林 「……」

せつ菜 「……」

彼方 「……?」

トリ 「……檻など出てこないが」

ゴリラ 「どうしたんだ?」

『……大変なことになったブー』

果林 「どうしたのブタさん!? 早くしないと私たち潰されちゃうわよ!?」
 
243: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 18:26:22.02 ID:/lIrV2Dx
『今まではボタンだったから僕でも押せたけど、檻を下ろすのはボタンじゃなくてレバーだったブー』

せつ菜 「レバー?」

『ブタのひづめじゃレバーは掴めないブー』

果林 「……」

果林 「みんなっ!! 逃げてっ!!」

ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!!!」 ドシッ ドシッ

せつ菜 「まずいです、近付いてきてますよ!?」

彼方 「遥ちゃん……エコバッグは棚に入ってるからレジ袋買わないでね……」

果林 「彼方!! 遺言はもういいから早く逃げなさい!!」
 
244: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:00:32.08 ID:/lIrV2Dx
『こうなったら……頭で無理矢理動かすしかないブー!!』

ゴリラ (……まだチャンスはある)

ゴリラ 「私がゾウを抑えて引き止める。その間にブタさんはなんとか檻を下ろしてほしい」

『分かったブー!』

せつ菜 「ゴリラさん!?」

ゴリラ 「大丈夫。今度こそ食い止めるから」

せつ菜 「そういうことを言ってるんじゃないです!!」

ゴリラ 「!」
 
245: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:01:32.60 ID:/lIrV2Dx
せつ菜 「さっきだって本当に危なかったんですよ!? これ以上、私たちを助けるために危険なことをしないでください!!」

ゴリラ (……本当に心配してくれているのか)

ゴリラ 「……」

ゴリラ 「いや、やっぱり食い止める」

せつ菜 「なんで、なんでですか! ゾウを檻で捉えるのが理想ですが……みんなであそこから逃げ出すこともできるじゃないですか! なんであなたが苦しむ必要があるんですか!」

ゴリラ 「……私は生きる意味を探している」

せつ菜 「!」
 
246: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:03:09.50 ID:/lIrV2Dx
ゴリラ 「みなさんと出会えて、私は少しずつだけど、その生きる意味に近付けてる気がするんです」

果林 「……でも、仮に檻でゾウを捕まえられたとしても、ゴリラさんまで檻に入ってしまったら、ゾウと一緒に保護されてあなたが嫌がっていたあの日々にまた戻るのよ? それでも、私たちのために戦ってくれるの?」

ゴリラ 「……覚悟の上です。私は今、できることをしたい」

果林 「……なら私たちには邪魔できないわ。だって私たちを助けてくれようと必死に頑張ってくれてるんだから」

せつ菜 「果林さん!! でも!!」

果林 「生きる意味は、生きる以上に大切なこともあるのよ」

せつ菜 「……っ!」
 
247: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:04:09.50 ID:/lIrV2Dx
ゴリラ 「私が食い止めますっ!!」 ガシッ

ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!!!」 ブンッ ブンッ

ゴリラ 「ぐはっ!!」

せつ菜 「ゴリラさん!!」

ゴリラ 「この手は死んでも離さない……っ!!」 グググ

トリ 「私もできることをしようっ!」 パッ

ゾウ 「パォォーー……!」

トリ 「同じ手が通じるかは分からないが、注意を逸らすには十分だ!!」
 
248: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:05:34.39 ID:/lIrV2Dx
『ぐぬぬぬぬぬぬ……よし、レバーが動いたっ!!!!』

ガラララララッ

ガラララララッ

ゴリラ (これでゾウは捕まる。私も捕まって動物園に帰るけれど、きっと、生きる意味を見つかけたこの日々……無駄じゃなかった……)

果林 「……でも、生きる意味を見つけた上で、無事なのが最高よね。彼方!! せつ菜!!」 グイッ

彼方 「三人で頑張ればいくらゴリラさんだって!!」 グイッ

せつ菜 「少しくらい引っ張れますよね!!」 グイッ
 
249: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:06:19.65 ID:/lIrV2Dx
ガラララララッ

ガラーーーンッ

ゾウ 「パォォーーーーーンッ!!!!」 ガシャン ガシャン

ゴリラ 「……」

ゴリラ 「……檻の外?」

せつ菜 「やりました!! ゾウだけを檻に入れることに成功しましたよーーー!!」

果林 「ふぅ、間一髪ね」

彼方 「彼方ちゃん、少しは役に立てたかなぁ……うー、疲れたよぉ」
 
250: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:07:12.35 ID:/lIrV2Dx
ゴリラ 「……みなさん、ありがとう」

果林 「ふふ、こっちのセリフよ」

せつ菜 「ゴリラさん……感謝はしてますが、もう無理はしないでくださいね?」

ゴリラ 「……無理する必要がなかったら」

せつ菜 「もう! 茶化さないでください!」

果林 (……とりあえずみんな無事で良かった。ブタさんとも合流しないとね)

トリ 「……確か私たちはバレないように、できるだけ早く動物園を出なければいけないのだろ?」

果林 「! ええ、そうね」

トリ 「ならば急いでここを離れた方がいい。飼育員に見つかったら確実に詳しく話を聞かれる」






 
253: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:34:01.35 ID:/lIrV2Dx
侑 「まだ歩夢がいるんです!! お願いです、通してください!!」

飼育員 「申し訳ありません、今ここは大変危険で誰も通せないんです……」

侑 「で、でも!」

歩夢 「侑ちゃん?」

侑 「歩夢!」 パァァ

飼育員 「こちらが先程連絡した、物置きの中でまだ残っていた人です」 ボソッ

飼育員 「そうか、お疲れ様。ありがとう」
 
254: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:35:25.07 ID:/lIrV2Dx
侑 「歩夢!! 無事だったんだね!! 良かったーーー!!」 ダキッ

歩夢 「もう、侑ちゃんったら……/// でも侑ちゃんも無事で良かった!」

彼方 「……相変わらずゆうぽむ絶好調だねぇ〜」

果林 「今ならあの二人のおかげで動物さんたちがバレずに出れるわよ」

せつ菜 「早く出た方が良いですね」
 
255: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:36:12.43 ID:/lIrV2Dx
女の子 「あっ! お姉ちゃん!」

果林 「ん? あなたは」

母 「あなたが娘の言っていた……この子を助けてくれたんですよね、本当にありがとうございます……なんてお礼をすれば良いか」 ペコッ ペコッ

果林 「いえいえ、お礼なんて……」

せつ菜 「果林さん。どうしますか?」 ヒソヒソ

果林 「あなたたちは先に行ってて。私はもう少し、この子と話したいわ」

せつ菜 「分かりました。入り口の外で待ってますね」
 
256: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:44:58.21 ID:/lIrV2Dx
女の子 「お姉ちゃん!!」 ダキッ

母 「まあこの子ったら!」

果林 「大丈夫ですよ。ふふ、あなたが無事で良かったわ」 ナデナデ

女の子 「お姉ちゃん! 約束を守ってくれてありがと!」 ニコッ

果林 「もちろん! だって私は通りすがりのスクールアイドル。スクールアイドルは誰かの笑顔を守るために頑張るのだから」

母 「あ、あの、本当にお礼させてください。あなたは娘の命の恩人なんです」

果林 「いえ、大丈夫ですよ。娘さんが無事なのが一番のお礼ですから……」
 
257: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:45:53.48 ID:/lIrV2Dx
侑 「あれ? もしかして果林さん?」

歩夢 「果林さんも動物園に来てたんですね」

果林 「あっ……」

果林 (まずい、見つかってしまったわ! いや、よくよく考えれば動物さんたちは近くにいないんだから……別に問題ないじゃない)

果林 「偶然ね、二人とも。もしかして動物園でデートだったのかしら」

歩夢 「で、で、デート!?///」 カァァ

侑 「あはは、それは違うよ果林ちゃん」

歩夢 「あ、えっと、そうだよね……」 ショボーン
 
258: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:46:59.39 ID:/lIrV2Dx
侑 「歩夢がチケットを当てたんです。このチケットなんですけど」

果林 「チケット?」

果林 (チケットってもしかして……!!)

果林 「それってパンダとか見れたりするの!?」

歩夢 「は、はい、パンダを独占して見れるチケットなんですよ。でもこの騒ぎで」

果林 「それ借りていいかしら!?」

歩夢 「えっ、もちろん大丈夫ですけど……」

果林 「ありがとうっ!!」 バシッ

タタタタ

タタタタ

侑 「チケット取って果林さん、どっか行っちゃった……」

歩夢 「ふふ、果林さん、パンダ大好きだもんね」
 
259: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 19:48:05.80 ID:/lIrV2Dx
果林 「あの、このチケットなんですけど!」

飼育員 「はい、なんですか?」

果林 「まだ使えますか!? このチケット、えっとパンダを独占して見れるチケットなんですが……」

飼育員 「すいません……このようなチケットは知らないですね」

果林 「えっ?」

飼育員 「知ってますか?」

飼育員 「いや、そもそもパンダを独占で見れるなんてサービスをうちは行ってない。違う動物園のチケットなんじゃないのか?」

果林 「そ、そんな……」

果林 (私のパンダドリームが……っ) フラフラ
 
260: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:03:40.73 ID:a+t1yYRl
侑ちゃんが果林ちゃんと呼んでるけどミスなのか伏線なのかどっちかな
 
262: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:07:10.63 ID:/lIrV2Dx
>>260
ごめんなさい、それは単純にミスですね。
 
261: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:06:07.04 ID:/lIrV2Dx
果林 『あはは、パンダちゃん、こっちおいで〜!!』

パンダ 『果林ちゃん、モフモフだよ』

果林 『やっぱり私がそっち行くわ〜! モフモフ〜!! モフモフだわ〜!!』 モフモフ

果林 (……ああ、幸せだわ)

果林 「ってなるはずだったのに……」 ガーン

果林 「いやなんで想像の中とはいえパンダ喋ってるのよ」

果林 「……ゴリラさんたちに影響されてるわね」

果林 「仕方ない。戻りましょう」 トボトボ
 
263: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:08:15.56 ID:/lIrV2Dx
歩夢 「果林さん、どうでした?」

果林 「いや、ダメだったわ……えっと、歩夢はパンダ見れたの?」

果林 (独占ではなくても、一般で見ることもできるし)

歩夢 「はい。待合室まで案内されたんですけど、従業員さんがアフリカゾウの件で逃げちゃったみたいで……」

果林 「えっ?」

侑 「ほんと、いくらアフリカゾウだからって、歩夢を置いてくなんてひどいよ!!」

果林 「……えっと、歩夢。その従業員さんの見た目って覚えてるかしら?」
 
264: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:09:26.59 ID:/lIrV2Dx
歩夢 「えっ、えっと……確か飼育員さんとは違う格好だったからすぐ分かるよ。あ、あそこにいる人! 多分あの人だよ!」

従業員? 「……」

果林 「分かった。じゃあ私は用事があるから帰るわね、二人とも気を付けて帰るのよ?」

侑 「果林さんも気を付けてね!」

果林 「もちろんよ」

タタタタ

タタタタ
 
266: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:10:16.88 ID:/lIrV2Dx
果林 (……なかったはずのチケット。でも歩夢は実際にどこかに閉じ込められた。しかも、あのアフリカゾウ騒動の中で置いてかれて)

果林 (……こないだの脚立の件もそう。もしかしてこれは偶然じゃないんじゃ)

果林 「そこの人! 待って! 待ってください!!」

ザワザワ

ザワザワ
 
268: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:14:32.68 ID:/lIrV2Dx
果林 (……人が多いっ! あと少しなのに、追いつけないっ!!)

従業員? 「……侑ちゃん」 ボソッ

果林 「えっ?」

ザワザワ

ザワザワ

果林 「……今なんて」

ザワザワ

ザワザワ






 
269: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:15:46.87 ID:/lIrV2Dx
果林 「……ただいま」

彼方 「おかえり〜果林ちゃん〜」

せつ菜 「おかえりなさい! 果林さん!」

ゴリラ 「みんな無事で帰ってきて本当に良かった」

トリ 「……怪我は大丈夫なのか?」

ゴリラ 「すぐ治る程度だから大丈夫だよ」
 
271: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:17:19.44 ID:/lIrV2Dx
ブタ 「みんなお疲れ様ブー!」

彼方 「いや〜それにしてもごめんねブタさん」

ブタ 「何がブー?」

彼方 「ブタさんがいなくなっちゃったとき、彼方ちゃん、普通に逃げたんだと思っちゃったんだぁ。でも助けてくれたんだね、ありがとう」

ブタ 「そ、そ、そんな逃げるなんて、そんなわけないブー……」 ドキドキ
 
272: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:18:05.07 ID:/lIrV2Dx
せつ菜 「歩夢さんと侑さんも無事みたいで良かったです。ですよね、果林さん?」

果林 「……」

せつ菜 「果林さん?」

果林 「……明日の朝、このメンバーで話したいことがあるんだけど大丈夫?」

せつ菜 「もちろん大丈夫ですよ!」

果林 (歩夢が誰かに命を狙われてる……それも……)

従業員? 『……侑ちゃん』 ボソッ

果林 (侑の存在を知ってるような、身近な誰かによって……)






 
274: (もんじゃ) 2022/01/31(月) 20:27:51.71 ID:/lIrV2Dx
とりあえず動物園編はこれでおわりです。思ったより長くなってしまいました。
ここから『ソロライブにて。直接対決』第四部の予定です。最終章の予定です。決着がつきます。
今日の夜更新、もしくは明日更新になりますが、待ってくださると嬉しいです。
 
284: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 14:54:37.04 ID:GIJI18T9
更新遅れてしまい申し訳ありません。
更新再開します。
 
285: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 14:55:42.71 ID:GIJI18T9
果林 「……ということなんだけど」

せつ菜 「そんな……歩夢さんが……!」

彼方 「命を狙われてるだなんて……」

果林 「それに話してる途中でブタさんとトリさんが教えてくれたのだけど」

ブタ 「確かにスマホを持ってた人が言ってたブー……」

?? 『ふふ、じゃあ証拠は削除したから、あとは待つだけ……』

果林 (やっぱり歩夢を呼び出した誰かがいるのね……)
 
286: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 14:56:49.21 ID:GIJI18T9
果林 「顔は……見えなかったのよね?」

ブタ 「影で顔が見えなかったんだブー」

果林 「だけど、虹ヶ咲学園の敷地内にいるということは、全くの部外者というわけではないはず。それに」

トリ 「あの上原歩夢、という女性は建物に南京錠で閉じ込められていた。あのまま放っておいたら、下手したらゾウに潰されていたかもしれん……」

果林 「……そしてその歩夢を閉じ込めていたと思われる従業員を人混みの中で見つけて、私が追いかけたとき、確かに聞いたの」

従業員? 『……侑ちゃん』 ボソッ

果林 「って」
 
287: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 14:59:37.22 ID:GIJI18T9
せつ菜 「……」

彼方 「……」

ゴリラ 「……それなりに親しい者の犯行ということだな」

果林 「っ……そうなるわね」

果林 (認めたくないけど……ひょっとしたら同好会の中にだってあり得なくない。絶対ないとは思うけど、万が一があったら耐えられない)

果林 「このことは私たち以外には誰にも話さないわ。もちろん、スクールアイドル同好会にもね」

せつ菜 「! なぜですか!? みんなで守らなければ歩夢さんが危ないんですよ!?」
 
288: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:00:35.91 ID:GIJI18T9
果林 「……あの従業員を見た場にいた、侑、そして私たち以外にはアリバイがないからよ」

せつ菜 「それって……もしかしてみなさんを疑ってるんですか!? 嘘ですよね、果林さん!!」

彼方 「……しょうがないよ」

せつ菜 「!」

彼方 「信じてはいる。でも、歩夢ちゃんが怪我をしてからじゃ遅いんだよ?」

せつ菜 「で、ですが」

果林 「それに誰にも心配をさせたくないの。まだ誰が出るか決まってないけどライブが近付いてるでしょ? 変に不安にさせたくないのよ」

せつ菜 「そ、そんな、で、でも!」
 
289: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:02:04.78 ID:GIJI18T9
彼方 「……歩夢ちゃんと侑ちゃんにはどうするの?」

果林 「話さない。理由は同じ。だから私たち三人と三匹で、絶対に歩夢を守るのよ」

せつ菜 「果林さん……」

果林 「なに?」

せつ菜 「あなたが」 プルプル

果林 「……」

せつ菜 「そんな人だと思わなかったです!!!!」 バンッ

タタタタ

タタタタ
 
290: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:03:29.87 ID:GIJI18T9
彼方 「せつ菜ちゃん!!」

トリ 「……行ってしまったな」

果林 「想定内よ。きっとせつ菜には耐えられないと思ってたわ……」

トリ 「苦しくないのか?」

果林 「……先輩だからね」

彼方 「果林ちゃん」

果林 「彼方?」
 
291: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:04:12.75 ID:GIJI18T9
彼方 「……憎まれ役に徹してるんだよね」

果林 「!」

彼方 「ごめん、彼方ちゃんが頼りないから……」

果林 「そんなの気にしないで。でも、ありがとう、彼方」 ニコッ

彼方 「……うん」

果林 「ちょっと私、離れるわね」

彼方 「果林ちゃん?」

果林 「大丈夫。外の空気を吸いたいだけだから」
 
293: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:05:32.72 ID:GIJI18T9
ガチャ

ブタ 「……絶対空気を吸うだけじゃないブー」

トリ 「そういうのは言わないものだ。野暮になる」

ゴリラ 「……仲間を疑わなければいけない、それはきっと酷なことなのだろう」

ゴリラ (今まで周りとの繋がりを拒んできた、私には完全には分からない。でも、最近少しずつ仲間というものが分かってきた。だから今の私なら理解できる……これは酷なことだ)

彼方 「彼方ちゃん、どうすればいいのかな……」 ハァ
 
294: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:08:08.69 ID:GIJI18T9
ガチャ

彼方 「果林ちゃん?」

愛 「ん? カナちゃん一人……?」

ゴリラ 「……」

ブタ 「……」

トリ 「……」

愛 「……と動物三匹」

彼方 「あっ」

彼方 (大変だ……っ!! かなかりか、せつかりか、せつかなをしないと……!) チラッ
 
295: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:09:02.73 ID:GIJI18T9
ゴリラ 「二人とも不在だ」

彼方 「……」 アセアセ

愛 「あれぇ……愛さん夢でも見てるのかな。あはは、ゴリラまでいるように見えるんだけど……しかも今喋ったし」

彼方 「……夢じゃないです」

愛 「だよねぇ」

彼方 「うん……」

愛 「えっと、カナちゃん。これどういうことなの?」

彼方 「一から説明するとどこから説明すればいいのか……」 アハハ






 
297: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:11:29.91 ID:GIJI18T9
果林 「はぁ」

果林 (……せつ菜、怒ってたわね。当然か)

侑 「あれ? 果林さん?」

果林 「侑、なんでここに」

侑 「……えっと私は今部室に向かってるところだけど、果林さんが部室じゃなくて外に立ってるから気になっちゃって」

果林 「それは……」
 
298: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:12:18.86 ID:GIJI18T9
侑 「もしかして迷子になっちゃったの? 部室はあの建物の中だよ?」 クスクス

果林 「なっ! 流石に部室までは迷わないわよっ!! バカにしないで!」

侑 「あはは! ごめんね果林さん。果林さんを揶揄うと、普段見れない果林さんが見れるからつい……」

果林 「はぁ、まあ本気では怒ってないわよ」

侑 「ふふ、知ってる」

果林 「このっ!」 グイグイ

侑 「ほぉっぺひっぱらないで〜!!」
 
299: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:16:42.62 ID:GIJI18T9
果林 「……ねえ、侑」

侑 「ん? なに、果林さん?」 ヒリヒリ

果林 「私たちは仲間よね」

侑 「もちろんだよ!! 仲間だし、友達だし、すっごく大事な人!」

果林 (そこまで言われると照れるわね……///)

果林 「でも、仲間でもすれ違うことはあるわよね? 怒ったり、喧嘩したり、相手の気持ちが分かんなかったりして」

侑 「それはそうだね、完璧に分かり合える人なんていないもん」
 
300: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:18:55.96 ID:GIJI18T9
果林 「……仲間とすれ違っちゃったとき、どうすればいいのかしら」

侑 「仲間とすれ違っちゃったとき?」

果林 「ええ」

侑 「……それって同好会の誰か?」

果林 「秘密、よ」

侑 (分かりやすいなぁ、果林さん……そこが果林さんの良いところだけど)
 
301: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:24:52.98 ID:GIJI18T9
侑 「やっぱり、ちゃんと思いを伝えて仲直りするしかないんじゃないかな」

果林 「でも普段はそれができてる相手と、すれ違っちゃったのよ? そんな簡単に行くものとは思えないのだけど……それに、さっきあなた言ったじゃない。完璧に分かり合える人なんていないって」

侑 「確かに言ったね」

果林 「じゃあ」

侑 「でも、分かり合おうとすることはできるよ」

果林 「……!」
 
302: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:26:36.57 ID:GIJI18T9
侑 「……私はみんなをサポートする役目だから、特にそれは考える。常に分かり合うことは難しいって。でも、それでも分かり合えた瞬間が、努力した分だけ何回も訪れて、幸せになっちゃうんだよね」

果林 「侑……」

侑 「だから仲直りしようよ。きっと、その人だって果林さんと喧嘩なんかしたくないよ、だってこんなに素敵な人なんだから!」

果林 「本当に自然に褒めてくるから恐ろしいわ……」 ボソッ

侑 「?」
 
303: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:27:38.69 ID:GIJI18T9
果林 「……侑、ありがとう。私話してみることにするわ。普段すれ違わない人だからこそ、ここでちゃんと気持ちを伝えないとね」

侑 「その通りだよ! 果林さん!! それに」

果林 「それに?」

侑 「仲間だけどライバル……ライバルだけど仲間、でしょ?」 ニコッ

果林 「!」

侑 「ライバルだから相手のことがよく分かって、仲間だから相手のことがよく分からなくて。ライバルだから相手と喧嘩しちゃって、仲間だから相手と仲直りできる! 大丈夫だよ、果林さん!」

果林 「……そうね、大丈夫よね。仲間なんだから、ライバルなんだから」
 
304: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:34:22.86 ID:GIJI18T9
果林 (せつ菜にはちゃんと謝ろう。そして、どんな結末になっても絶対仲間は守り切るわ。歩夢も……そして、傷つけたその誰かであったとしても)

侑 「ファイトだよ! 果林さん!」

果林 「ありがとう、侑! 私、頑張るわ!!」 タタタタ

侑 「……ふふ、ファイトだよ、っか。良い言葉だな。ふと浮かんだけど」

侑 「頑張って、果林さん」






 
305: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:35:34.06 ID:GIJI18T9
せつ菜 「……」

せつ菜 「私は果林さんになんてことを……」

せつ菜 (果林さんの言ってることも、彼方さんの言ってることも、ごもっともです。全てのことは、万が一を想定して動かなければいけません)

せつ菜 「もしも歩夢さんが大怪我を……いえ下手したら命を……そう考えるだけで、本当に苦しい。犯人に私たちが探してることがバレてしまったらヤケになるかもしれない……」

せつ菜 「それに、ライブ前に変な心配をさせて支障を与えるのも良くない……至極ごもっともです。そう、分かってるはずなのに」

せつ菜 (みんな我慢してるのに、私だけが、耐えられなかった。私だけが子供だった……)
 
306: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:37:03.93 ID:GIJI18T9
果林 「せつ菜!」 タタタタ

せつ菜 「果林さん……!」

果林 「一言言わせて欲しいの。さっき」

せつ菜 「待ってください」

果林 「!」

せつ菜 「私から先に言わせてくれませんか?」

果林 「……」

せつ菜 「お願いします、果林さん」
 
307: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:38:30.42 ID:GIJI18T9
果林 「……分かったわ」

せつ菜 「……」

果林 「……」

せつ菜 「ごめんなさい。果林さんに、怒ってしまったこと。だって、果林さんだって本当は言いたくなかったことなのに、それを私は……」

果林 「……いいのよ」

せつ菜 「で、でもっ!」

果林 「私もごめんなさい。そうよ、仲間を疑うなんて、絶対に間違ってる」

せつ菜 「で、ですが、それは仕方なく……!」
 
308: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:39:01.94 ID:GIJI18T9
果林 「信じましょう、仲間を」

せつ菜 「!」

果林 「仲間だからこそ、すれ違ったときにはちゃんと向き合わなきゃ」

せつ菜 「……」

果林 「そうでしょ、せつ菜?」

せつ菜 「……ふふ、その通りですね。果林さん。頑張りましょう、みんなで」

果林 「ええ。きっと、真実はあと少しよ」
 
309: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 15:39:56.88 ID:GIJI18T9
ガラッ

愛 「良かったねーーー! 二人とも!」 ポロポロ

彼方 「やっぱり仲良しが一番だよ〜」

ゴリラ 「ひとまず無事解決のようだ」

せつ菜 「みなさん!?」

果林 「隠れて見てたの!?」

愛 「カナちゃんから聞いたよ! 動物さんたちのこと!」

果林 「! 愛、なんで!」
 
312: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:28:50.93 ID:GIJI18T9
彼方 「あはは……実は動物さんたちと一緒にいるところを見られちゃったんだ。誤魔化せる、もう一人もいなかったし」

せつ菜 「で、ですがここまでの道はどうしたんですか? せつかりもできないのにゴリラさんがついてくるなんて……」

愛 「……えっと、そこはまあね?」

彼方 「かなあいで頑張ったよ〜」

愛 「ちょ! 言わなくてもいいじゃん!///」

ゴリラ 「かなあいも素晴らしかった」

果林 「なんだか気になるわね」
 
313: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:29:51.79 ID:GIJI18T9
彼方 「でも歩夢ちゃんのことは言ってないよ。二人のすれ違いのことも、動物さんたちをどうしていくかの方針で喧嘩した、って言ってるから」 ヒソヒソ

果林 「……ありがとう。できるだけ誰にも話さずに済むようにしたいから助かったわ」 ヒソヒソ

せつ菜 「えっと、ブタさんとトリさんは?」

彼方 「二人は学園の広い森の中で待機してもらってるよ〜。ほら、ゴリラさんと違って大きくはないから、少しの間なら誤魔化せると思って」

果林 「そう、良かった……」
 
314: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:31:04.75 ID:GIJI18T9
愛 「それにしても、こんな不思議なこと! なんでみんなに教えてくれなかったのさ!」

果林 「え?」

愛 「動物さんたちが色んな事情で困ってるんでしょ? 同好会のみんなで協力したらもっと早いじゃん!」

果林 「そ、それは」

果林 (……確かに動物さんたちのことなら、みんなに教えてもいいかもしれない。でも、芋づる式に歩夢のことまで知られるのはまずい)

果林 「あと少しでライブでしょ? こんなことがあったら、みんな集中できなくなる。だから愛、お願いなんだけど、もう少しだけ秘密にしてくれない? ライブが終わったらちゃんとみんなに話すから」

愛 「えっ? まあ、全然愛さんは大丈夫だけど……」
 
315: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:38:40.05 ID:GIJI18T9
彼方 「とりあえずブタさんたちが待っている場所に行こうよ! この短い時間だけど、頑張って料理を作ったんだ!」

愛 「愛さんも手伝ったよ!」

せつ菜 「料理ですか? えっと動物さんたちも手伝ったんですか?」

愛 「いや、衛生的に少し距離を置いてもらったよ」

果林 「意外と厳しいわね」

せつ菜 「それにしても料理なんて、なぜ急に? それなら私も手伝ったのに」
 
316: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:40:16.55 ID:GIJI18T9
彼方 「ふふ、それはね、二人の仲直りパーティーだからだよ! 短時間だから簡易的な料理ばかりだけどね〜」

果林 「仲直りパーティー?」

彼方 「彼方ちゃんができることはなんだろう、って思ったら浮かんだんだ〜。二人が喧嘩して、仲介役かなとも思ったけど、そうじゃなくて、二人が仲直りして帰ってきたときにお祝いできるような、人になりたいって思ったから」

せつ菜 「彼方さん……」

果林 「……ふふ、ありがとね二人とも」
 
317: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:41:13.80 ID:GIJI18T9
愛 「ゆうゆには、少しだけだけど遅れるって伝えてるから安心して! 事情も聞かれなかったから大丈夫だと思う!」

果林 (……侑。きっと、私と話してなんとなく察して、気を遣ってくれたのね)

果林 「分かった。行きましょう、みんな」

タッタッ

タッタッ

タッタッ
 
319: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:46:06.86 ID:GIJI18T9
彼方 「おにぎりがあるよ〜」

トリ 「君たちが帰ってきたということは……無事仲直りしたということだな」

果林 「心配かけちゃって、ごめんなさいね」

トリ 「いや、謝ることはない」

せつ菜 「そういえばブタさんは?」

トリ 「? その辺にいたはずだが」
 
320: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 16:47:02.69 ID:GIJI18T9
流しそうめん同好会部長 「どうかな、今度はブタさんの後ろに竹をつけて、動き回る竹にそうめんを入れるトレーニングというのは」

流しそうめん同好会 「面白そうですね〜」

流しそうめん同好会 「あまりにも動き回ったら弓矢を使いましょう」

ブタ 「たすけて……っっ!」 グスッ

果林 「ブタさーーーーーーーーーーんっっ!!!!」






 
322: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 23:44:02.15 ID:GIJI18T9
ブタ 「……不法に労働させられるところだったブー」

果林 「本当に危なかったわね。流しそうめん同好会は少し活動が過激で有名なのよ」

せつ菜 「生徒会のブラックリストにも載ってますからね」

果林 「流しそうめん同好会には、スクールアイドル同好会で飼ってるブタさんだって誤魔化せたから良かったわ。喋ったのも一言だけだから気のせいと思われたみたいだし」
 
324: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 23:44:44.09 ID:GIJI18T9
彼方 「どうだったかな、彼方ちゃんの手作り料理は!」

果林 「ふふ、彼方の料理はいつも美味しいわよ」

せつ菜 「改めてありがとうございます、彼方さん、愛さん!!」

愛 「喜んでくれたなら愛さんも手伝った甲斐があるよ! 今度はカナちゃんと貝料理にもチャレンジしてみようかな〜甲斐だけに!」
 
325: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 23:45:52.36 ID:GIJI18T9
ゴリラ 「……部室に私たちは入ってもいいんでしょうか」

果林 「今まで入ってたじゃない」

ゴリラ 「先程のようにバレてしまうのが怖くて……」

果林 「大丈夫。そこは『非注意性盲目』でなんとかするから安心しなさい。ほら入るわよ」

ガチャ

侑 「あ! みんな! お疲れ様! 今話せる?」

果林 「ええ、大丈夫よ」
 
327: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 23:55:21.50 ID:GIJI18T9
侑 「もう他のメンバーには話したんだけど、ライブ日程が決まったんだ!」

かすみ 「なんと三日後にはかすみんのライブですよ!!!」

侑 「ってかすみちゃん、ネタバレしちゃダメだよ〜!」

かすみ 「えへへ、つい、楽しみで」

侑 「三日後に行うライブは、各学年から一人ずつ出す予定だったんだけど、一年からはかすみちゃん、二年は歩夢、三年は果林さんから出てもらうことにしたんだ」

果林 「……三年は私か。久しぶりのライブ、緊張するわね」

侑 「大丈夫だよ!! いつでもライブできるように、果林さんは頑張ってきたでしょ?」

果林 「……ええ、その通りだわ」
 
328: (もんじゃ) 2022/02/02(水) 23:58:00.10 ID:GIJI18T9
侑 「いつもはせつ菜ちゃんと少し会議をしたりするんだけど、今回はせつ菜ちゃんが忙しいのと、私のサポート力の成長のために、私一人でできるだけ計画したんだ! 前回のライブの日程から間が空いちゃってる三人を優先して選んだよ! なまっちゃったら大変だからね」

せつ菜 「動物さんたちのことがありましたから、今回は侑さんに任せました。もちろん、後者の侑さんの成長の意図もあります」 ヒソヒソ

果林 「うん、良いと思うわ。侑も良い経験になるだろうし」 ヒソヒソ

かすみ 「ふふ、果林先輩! 歩夢先輩! 油断してたら簡単にかすみんが勝っちゃいますからね!!」 ドヤッ

歩夢 「負けないよ、かすみちゃん……!」

果林 「私だって負けるつもりはないわ」
 
330: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:19:09.45 ID:USH79va4
トリ 「みんな、やる気十分だな」

彼方 「それはそうだよ〜。ここにいるのは、アイドルが大好きでたまらない人たちばかりなんだから」

ブタ 「ステージに立って輝けるなんて、すごいブー!」

ゴリラ 「自分の好きなこと、やりたいことがはっきりしてるのは素晴らしいことだ……」

かすみ 「ん?」 ジッー
 
331: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:19:55.84 ID:USH79va4
かすみ (なぜかゴリラとブタと何かのトリがいるように見えるのは気のせいでしょうか……?)

彼方 「!」

彼方 「果林ちゃん」

果林 「ん? なに? 彼方」

彼方 「頑張ってね、ステージ。彼方ちゃん、応援しちゃうよ〜」 ダキッ

果林 「って急に何よ、恥ずかしいわ」
 
332: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:21:04.34 ID:USH79va4
かすみ (ん? あれ気のせい……いやでも……)

せつ菜 「果林さん!!」 ダキッ

果林 「せつ菜? せつ菜まで急にくっついてどうしたのよ」

せつ菜 「どうしたも、こうしたもありません!!」

果林 「えぇ……どういうこと?」
 
333: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:21:46.75 ID:USH79va4
かすみ (……気のせいですよね。ていうか、いつのまにか果林先輩モテモテになってません? いや前からモテてましたけど)

彼方 「ふふ、大成功かな」

彼方 (かなかりでなんとか誤魔化そうと思ったけど、意図せずせつ菜ちゃんまで、せつかりをやってくれたおかげで完全に誤魔化せたみたい)

侑 「じゃあ改めて、三人ともライブ頑張ろーー! そして、私やみんなも、裏方として全力でサポート頑張るよーー!!」

一同 「「おおっーーー!」」






 
335: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:53:21.99 ID:USH79va4
かすみ 「ひぃ、ひぃ、もうかすみんヘトヘトですよぉ」

しずく 「かすみさん! ライブはあと少しなんだよ? 頑張ろう?」

璃奈 「栄養ドリンクなら山ほどある。璃奈ちゃんボード『今にだけ賭けろ』」

ブタ 「なんというか……」

せつ菜 「? どうしたんですか、ブタさん?」

ブタ 「みんなすごく練習頑張ってるんだね。僕、アイドルってもっと、ただ可愛くてスポットライトに当たってて……そんな感じかと思ってたブー……」

ブタ (特にあの、中須かすみって子は、最初はただの目立ちたがり屋だと思ってたけど……思ってた以上に、すごく努力していて、ギャップがすごい)
 
336: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:54:28.71 ID:USH79va4
果林 「それはね、違うのよブタさん」

ブタ 「!」

せつ菜 「果林さん、水は要りますか?」

果林 「ありがとう、いただくわ」

ゴクゴクッ

果林 「……アイドルは、ステージの上に立って、多くの人に応援されて、誰よりも目立つ存在。それは、ときに甘やかされているように見えてしまうかもしれない。でも違うの。見えないところで常に努力をしてるのよ」

ブタ 「努力……」

果林 「目立つのにも努力が必要なのよ」
 
337: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:55:53.47 ID:USH79va4
ブタ (……努力……努力か。俺はずっと、愛されてきた、小さい場所だったけれど、動物園の中でスターとなれていた。もちろん、努力もしていた。芸を覚えたり、鳴き声で存在をアピールしていたり、でも、それもいつしか)

ブタ (それだけじゃどうにもならないことを知って、努力することをやめていた)

ブタ 「だけど、努力じゃなんとかならないのがアイドルじゃないの?」

果林 「……ブタさん、結構辛辣なことを言うのね」

ブタ 「! い、今のはなしブー!」
 
338: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:56:53.96 ID:USH79va4
果林 「合ってるかも。才能とか、スタイルとか、色んなものが必要ね。でも、それでも、努力なしでは人を魅せられないの」

ブタ 「みせる……?」

果林 「才能がある、それはそうかも。でも、世の中にはあらゆる人がいる。その中で才能さえあれば埋もれないなんて、誰が言えるの? 才能も、見せないと……そして、人を魅せる、魅了しないと……活かせないのよ」

ブタ 「魅せる……」
 
339: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:58:21.34 ID:USH79va4
果林 「環境もあるかもね。だけど、あの子は、かすみちゃんは決して、恵まれたスタートじゃなかった。あの子がいたから、今も同好会がある。だから一つ言えるの」

せつ菜 「果林さん……」

果林 「才能もある。環境もある。でも、たとえゼロからのスタートでも、どんな場所からでも、その場所で努力をし続ける。それだけが近道なのよ」

ブタ 「……」

果林 「まあ私の主観だから、聞き流す程度にしといて」

ブタ 「……分かったブー」
 
340: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 00:59:15.34 ID:USH79va4
果林 「侑。次のメニューはどうすればいいかしら?」

侑 「いつものメニューにしてもいいけど、せっかくだから飛ばしてダンスレッスンまで行っちゃう?」

果林 「えっ、いいの? ラッキーだわ。やっぱり基礎練って慣れると飽きるところあるし」

侑 「そんなことを言うのなら、普通にやります」

果林 「ええっ!? ごめん、今のなし! なしだから!」

せつ菜 「……ふふ、果林さんらしいですね」

ブタ 「……なんだかカッコよかったブー」

せつ菜 「……私もそう思います」
 
343: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 16:14:22.03 ID:USH79va4
侑 「歩夢? 歩夢は大丈夫?」

歩夢 「うん、大丈夫だよ、侑ちゃん! でも少しダンスで不安なところがあって……」

侑 「それなら私が一緒に見てあげるよ。頑張ろう? 歩夢?」

歩夢 「侑ちゃんがいるならいくらでも頑張れるよ!」

侑 「もう、歩夢ったら、このこの」

歩夢 「侑ちゃんったら///」

トリ 「……あの二人、恋人ではないんだよな?」

彼方 「……うん、多分」
 
344: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 16:17:39.46 ID:USH79va4
果林 「……」

果林 (歩夢、嬉しそうね……)

果林 「彼方、せつ菜」

彼方 「ん〜? どうしたの果林ちゃん」

果林 「私たちで歩夢のそばにいるのはもちろんだけど、ライブのときは私も離れてないといけないから、お願いね」

せつ菜 「もちろんです。誰一人、大切な人を傷つけさせはしません」
 
345: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 16:19:21.35 ID:USH79va4
愛 「あれ? 三人で何話してるの? 愛さんも話入っていい?」

果林 「ええ、もちろん。このメンバーだから分かると思うけど、動物さんたちの話よ」

愛 「……そういえば、愛さんもできるだけ協力しようとして調べたんだけど、それでもトリさんの正体は分からなかったんだよね。もしかしたら日本にいる鳥じゃないのかも」

果林 「? 実際日本にいたじゃない」

愛 「誰かが外国から連れてきたとか、もしくは日本では見つかってない新種だったり?」

せつ菜 「本人も言ってましたが、本当に珍しい鳥なのかもしれませんね……」
 
346: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 16:20:36.79 ID:USH79va4
愛 「それとブタさんの動物園も調べてきたんだけど、こっちに関しては少し情報つかんだよ」

果林 「えっ、本当!?」

愛 「動物園のマスコット的存在のブタさんが一匹いなくなっちゃったみたいで、おじいちゃんとおばあちゃんで運営してる地元では有名な動物園なんだけど、そのホームページで情報が出てたんだ」

彼方 「良かったぁ、これでブタさん帰れるんだね」

愛 「電話したほうがいいかな」

果林 「……確かにその方が、その二人も安心するし良いかもしれないわね。でも」

彼方 「でも?」
 
348: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:17:51.68 ID:USH79va4
果林 「……」

ブタ 『だけど、努力じゃなんとかならないのがアイドルじゃないの?』

果林 「もう少し私たちで預かってみない? もちろん、電話してオッケーをもらったらだけど」

せつ菜 「……寂しい気持ちは分かります。私も寂しいです。でも、帰りたいと思ってるブタさんの気持ちを蔑ろにしては」

果林 「そうじゃなくて。ブタさん、何か悩んでるみたいなのよ。それが、私たちのライブを見てもらったら、解決する気がするの」

彼方 「悩み? その悩みは具体的に何か分かってるの?」
 
349: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:18:31.63 ID:USH79va4
果林 「全然」

愛 「ええっ!? じゃあなんでカリンはそんな自信を持って……」

果林 「勘よ」

せつ菜 「勘、ですか……」

果林 「お願い。私を信じてほしい」

彼方 「……」

愛 「……」

せつ菜 「……」
 
350: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:19:02.42 ID:USH79va4
彼方 「普通は信じないような内容だけど、果林ちゃんは信じてるよ。だから、うん、信じる」

愛 「電話してみてオッケーもらうのが前提だけど、もしオッケーなら、私もオッケーだよ!」

せつ菜 「それがブタさんのためになるなら、私たちのエゴをぶつけてはいけないですね」

果林 「……ありがとう、みんな」






 
351: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:20:07.49 ID:USH79va4
侑 「それで当日なんだけど、最初にかすみちゃん、次に果林さん、最後に歩夢のライブを予定してるんだ」

果林 「歩夢がトリ……侑、公私混同してるんじゃないの?」 フフ

侑 「なっ!/// し、してないよ!/// ちゃんと考えてるんだから!」

かすみ 「本当ですか〜? ならかすみんがトリになるはずですけど!」

しずく 「なんて自信……!」

トリ 「トリは私だが」

彼方 「そっちのトリじゃなくてね」
 
352: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:20:40.92 ID:USH79va4
侑 「まずかすみちゃんは、インパクトがすごくあると思うんだ! 可愛さMAXというか!」

かすみ 「!?///」

侑 「だから最初に登場して、私たちスクールアイドル同好会のライブに釘付けになってもらうんだよ」

かすみ 「急に褒めないでくださいよぉ……///」

侑 「そこからはかすみちゃんとは真反対のタイプである、クールな果林さんにステージを披露してもらうことで、もう、観客はみんなにメロメロだよ!」

果林 「……まあ確かに悪くない案ね」
 
353: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:21:18.92 ID:USH79va4
侑 「そして、最後に歩夢が登場して、歩夢の透き通った素直な声で、ライブを締める!」

侑 「かすみちゃんで最初を掴んで、果林さんで観客を虜にして、完全に高まった熱気を、歩夢がその声で良い意味で落ち着かせるんだ。ライブにメリハリをつけるというか」

侑 「熱は放出しちゃうからね、歩夢の優しい歌声でその熱を心の中にプレゼントするの。そしたら、熱は冷めないまま、きっと私たちのファンにもっとなってくれるはずだよ!」

侑 「……どうかな?」
 
354: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:21:56.47 ID:USH79va4
果林 「……侑に任せるわ。大丈夫そうだし」

かすみ 「そこまで考えてくださってるなら、かすみんも大丈夫です。期待通り、応えますよーーー!!」

歩夢 「侑ちゃん……!」

侑 「歩夢。トリ、任せたよ」

歩夢 「うん!!」

せつ菜 「みなさん、モチベーション的には最高の状態ですね。後はこのままライブに持っていけるかですが……」

彼方 「またいつ歩夢ちゃんが狙われるか分からないから……しっかり気をつけないとね」






 
356: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:49:05.71 ID:USH79va4
果林 (それから私たちは練習を重ねた。あと、帰る時間になったら、なるべく歩夢が家に着くまで、侑だけじゃなく私たちもついていった。何も問題はなかった)

果林 (ライブに出る私たちはもちろんのこと、ライブに出ないみんなも、必死にサポートをして、まさに同好会一丸となって努力した)

果林 「そしてついにライブ本番が来たわけだけど……」

せつ菜 「あの動物園以降、何もなかったですね」

彼方 「諦めたのかな……?」
 
357: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:49:45.13 ID:USH79va4
せつ菜 「いや、それはないでしょう。その何者かは、偽物のチケットを用意してはアフリカゾウを檻から出したんですよ? こんな計画性のある犯人が、簡単に諦めるものでしょうか。そうは思えません」

果林 「どちらにせよ、今日は私たちが全力で輝ける日。誰にも邪魔させないわ、仮に犯人が私たちの近しい者だったとしても」

彼方 「……うーん、未だに信じられないよ。果林ちゃん、本当にその従業員は『侑ちゃん』って言ったの? 聞き間違えだったりしない?」

果林 「私もそう思いたいけど、はっきり聞こえたの、違いないわ」
 
358: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:50:18.82 ID:USH79va4
従業員? 『……侑ちゃん』 ボソッ

果林 「……」

果林 (それにしても侑ちゃんか……確か同好会の中で侑ちゃん呼びをするのは)

果林 (歩夢……彼方……そして、エマ……の三人だったかしらね)

果林 (ん?)

果林 (……あれ、エマって、ここ何日で一度も見てなくない? えっ?)

果林 「み、みんな……!」
 
359: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 17:51:03.67 ID:USH79va4
かすみ 「と、トップバッターってすごい緊張しちゃいます……」 ドキドキ

侑 「落ち着いて、かすみちゃん。息吸って」

かすみ 「すぅ」

侑 「よく吸って」

かすみ 「すぅ……!」

侑 「みんなの笑顔を思い出しながら吸い込んで」

かすみ 「すぅぅ……って死んじゃいますよ!? ちゃんと呼吸させてくださいよ!?」

侑 「あはは、ごめん。でも緊張は無くなったんじゃない?」

かすみ 「! そ、それはそうかもしれないですけど!!」
 
362: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:20:50.99 ID:USH79va4
果林 「みんな、ライブ直前、それぞれ自分なりのルーティンがあるわよね……」

果林 (とりあえずライブが終わった後に聞きましょう。変に邪魔しちゃダメだわ)

果林 (だけど、どういうことなの? なんでみんな、エマがいないことに気付かなかったの?)

果林 (それによくよく振り返れば、ここ何日、ギリギリだったけど自力で起きてたわ……エマに起こしてもらってない!)

果林 (いくら動物さんたちのことや、歩夢のことがあったからって……。それにもしかして、エマも歩夢の件に何かしら……?)

果林 「……」
 
363: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:21:21.87 ID:USH79va4
かすみ 「よしっ! 頑張ってきます!!」

侑 「頑張って! かすみちゃん!」

歩夢 「頑張ってね、かすみちゃん!」

果林 「! かすみちゃん、緊張しないでね」

かすみ 「……ありがとうございます。でも先輩たちは自分のことを考えてください、じゃないと簡単にかすみんに負けちゃいますよ?」 ニコッ

果林 「そうね、頑張るわ」

果林 (……エマのことは気になるけど、今日は大事な後輩のライブでもあり、私のライブでもある。目の前のライブに集中しなくちゃ!)
 
364: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:22:50.74 ID:USH79va4
ブタ 「……」

ブタ (努力……努力か……。確かに努力は必要だ、俺も分かってた。分かってたはずだ、だけど……)

ブタ (努力で叶わないことだって……っ!)

彼方 「ブタさん」

ブタ 「!」

彼方 「かすみちゃん、ライブ始まるよ? そんな怖い顔しないで楽しもうよ」

ブタ 「……僕、そんな怖い顔してたブー?」
 
365: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:23:20.06 ID:USH79va4
彼方 「……うーん、なんとなくそんな気がしただけ。でもさ、せっかくだから楽しもうよ? ね?」

ブタ 「……もちろんだブー」

ブタ (努力は知ってる。このちょっとの間だけでも、見てれば分かるくらい、みんなは努力してきた。でもそれが反映されるかどうかなんて、それこそ……)

かすみ 「いきますよっーーーーー!」

ブタ 「!」

かすみ 「かすみんで『Poppin' Up!』です!」






 
366: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:24:07.88 ID:USH79va4
アリガトーーーー!

ダイスキダヨーー カスミチャーーン

マタライブシテーー!

かすみ 「えへへ、活躍しちゃいました♪」

果林 「……お疲れ様。とても良いライブだったわ。私も負けられないわね」

せつ菜 「果林さん」

果林 「? なに、せつ菜」

ギュッ

せつ菜 「……」
 
367: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:24:42.74 ID:USH79va4
果林 「えっと、私の手にギュッとしてるけど、どうしたのよ?」

せつ菜 「……別に、果林さんがライブしてる間にせつかりが使えないので、先に発動しておこうかと」

果林 「そんな継続魔法みたいな扱いなの?」

せつ菜 「……頑張ってきてください。果林さん」

果林 「……もちろんよ」

果林 (いつのまにか手の震えが消えてる……敵わないわね、あの子には……)
 
368: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:25:20.41 ID:USH79va4
ブタ 「……」

ゴリラ 「どうしたんだ? ぼっーとして」

ブタ 「……努力は叶うのかなって、思っただけブー」

ゴリラ 「……そうか」

果林 「みんな」

ゴリラ 「!」

トリ 「……次は君の出番か。応援してるよ」

果林 「ありがとう。私の今できる最高のパフォーマンス、見せてあげるから」
 
369: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:35:11.58 ID:USH79va4
ゴリラ 「……あの子は私たちに任せて。必ず守るから」

果林 「……気掛かりが減って助かるわ」

ブタ 「果林さん、頑張ってブー!」

果林 「みんな、見ててね」

ゴリラ・ブタ・トリ 「「!」」

果林 「動物園では助けられちゃったからね、今度は私たちが魅せる出番よ」

タタタタッ

果林 「……」

果林 「『VIVID WORLD』!!」






 
371: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:38:47.17 ID:USH79va4
カリンサーーーーン!

カッコイイヨーーー ダイスキダヨーー

マタライブシテーー!

果林 「はぁ、はぁ……」

果林 (やりきった。全力で……!)

かすみ 「お疲れ様です! 果林先輩!」

果林 「今日は調子が良くて良かったわ」

歩夢 「果林さん! すごく素敵なライブでした!」

果林 「歩夢、今度はあなたの出番よ」

歩夢 「……!」

果林 「悔しいくらい良いライブをしなさい」

歩夢 「……はい!!」
 
372: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:54:26.19 ID:USH79va4
タタタタッ

果林 「どうかしら。今のところ、例えばライトとか、細工されてるところはない?」 ヒソヒソ

せつ菜 「大丈夫です。ライブが始まる直前に、しっかり危ないところは確認しましたから」 ヒソヒソ

彼方 「……じゃあもう大丈夫ってことだよね? そういうところが何も問題がなかったら、こんな多くの人がいる中で命を狙うなんてできないもん」 ヒソヒソ
 
373: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:54:58.66 ID:USH79va4
せつ菜 「動物園みたいにゾウさんがいるわけでもないですし、バレずに命を狙うのはおそらく不可能だと思いますが……念には念を。しっかり歩夢さんがライブが終わった後もそばにいましょう」 ヒソヒソ

ブタ 「ライブ、大丈夫かなぁ……」

トリ 「大丈夫にするために、私たちがいる。そうだろ?」

ブタ 「それはそうだけど……」
 
374: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:55:50.89 ID:USH79va4
歩夢 「……」 ドキドキ

歩夢 (緊張で胸が苦しい……かすみちゃんも、果林さんも、本当に素敵なライブだった。だからこそ、私がトリなんて……)

侑 『歩夢。トリ、任せたよ』

歩夢 「!」

歩夢 (……緊張で、不安で、たまらないけど、それでも。侑ちゃんが信じてくれたから!)

歩夢 「みなさん。聴いてください!」

歩夢 「『Dream with You』」






 
375: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:56:52.59 ID:USH79va4
アユムチャーーーン!

スッゴイカワイイヨーーー!!

マタライブシテーー!

侑 「うぅ……歩夢ぅ……良かった……」 ポロポロ

かすみ 「なんて良いライブなんでしょう……悔しいけど、さすがかすみんのライバル筆頭です」

果林 「……本当に良かったわ。歩夢」
 
376: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:57:17.17 ID:USH79va4
歩夢 「……」 ドキドキ

歩夢 「……みんな」

歩夢 「みんな、ありがとーーーー!!」

キャーーーー!!

コッチコソアリガトーーーー!!
 
378: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:58:17.35 ID:USH79va4
ブタ 「みんな……みんな、すごいライブだったブー……!」

トリ 「そうだな……本当に良いライブだっ……」

ブタ 「? どうしたんだブー?」

トリ 「果林っ!!!」

果林 「! どうしたのトリさん?」

トリ 「早くあの子を助けるんだっ! よく見ろっ! 包丁を持ってるやつがステージ端から近付いてる!」

果林 「ええっ!?」
 
379: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 18:59:22.37 ID:USH79va4
?? 「……っ」 タタタタ

果林 (そんな、気付かなかった……! もうあんな歩夢のそばまで……!)

果林 (そうか。これはあまりに歩夢のライブに夢中になったゆえの『非注意性盲目』……! お願い間に合って歩夢っ……!!)

果林 「歩夢!! 早く逃げてっ!!」 タタタタ

歩夢 「えっ、果林さん?」

?? 「遅いっ!」

せつ菜 「! そ、そんな、こんな場所で堂々とするなんて……!」

彼方 「歩夢ちゃんっ!!」

グサッ
 
381: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 19:14:07.23 ID:USH79va4
?? 「……えっ?」

ゴリラ 「間に合って良かった」

果林 「ゴリラさん!?」
 
382: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 19:15:27.59 ID:USH79va4
ゴリラ 「……痛いは痛いけど大丈夫。ゴリラには包丁なんて軽い傷程度だから」

トリ 「……っ」

ブタ 「と、とりあえず助かったブー……? そ、それなら良かったブー」

トリ 「なぜ私が果林に頼んだか分かるか」

ブタ 「えっ?」

トリ 「『非注意性盲目』によって、犯人の姿は見えなかった。人間でなく、かつ視力もいい私は比較的早く気付いたが……同時に、同じく『非注意性盲目』によって見えなくなっていたゴリラの存在にも気付いてた」

ブタ 「そ、そうだったんブー……」
 
383: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 19:16:24.98 ID:USH79va4
トリ 「だから万が一にも、あの歩夢という子や、助けに行った果林が危機に晒されることはないと思っていた。だから、できるだけなら果林の手で助けて欲しかったのだ」

彼方 「なんで果林ちゃんの手でなるべく助けて欲しかったの? 別にゴリラさんでも……」

トリ 「果林が助けたことになれば、みんな果林に注目する。しかし、果林は間に合わず実際に止めたのはゴリラだ……つまり」

エエッ! アレッテゴリラ?

ウソッ ナンデコンナトコロニ!

ニゲテェェーー!

ゴリラ 「……私の存在がバレてしまったようだ」

果林 「そ、そんな……」
 
384: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 19:17:20.53 ID:USH79va4
?? 「っ、今のうちに」

ガシッ

?? 「なっ」

愛 「……今、歩夢に包丁を突き刺そうとしてたよね? どういうことかな?」

侑 「歩夢、大丈夫っ!?」

歩夢 「う、うん、ありがとう侑ちゃん……」

?? 「……」

果林 「黙ってたら埒が明かないわよ? まずそのレインコート脱ぎなさい! 顔が見えないのよ!」 バッ

歩夢 「……!」

侑 「あなたは……!」
 
386: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:12:04.52 ID:USH79va4
音楽科生徒 「……」

侑 『それでビビッときたんだよね。メロディが降ってきたっていうか』

音楽科生徒 『音楽科に元々いた私たちでも、作曲はなかなか大変なのに……すごいよ侑ちゃん!』

侑 「なんで……どうして君が……」

音楽科生徒 「最初は小さな気持ちだった」

侑 「!」
 
387: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:13:09.74 ID:USH79va4
音楽科生徒 「侑ちゃんが、慌てて教室を出たあの日……私は途端に不安になった。私の侑ちゃんが取られるかもしれないって」

歩夢 「取られる……」

音楽科生徒 「上原歩夢、という子と幼馴染なのは知っていたし、すごく仲が良かったことも分かってた。でも、侑ちゃんが音楽科に転科してきて、侑ちゃんと毎日話して、本当に……本当に楽しかったの……」

侑 「……」
 
388: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:14:57.50 ID:USH79va4
音楽科生徒 「あなたたち、教室の扉越しに、二人の会話に聞き耳を立ててたよね?」

せつ菜・愛 「「!」」

音楽科生徒 「……でも、私は隣の教室の壁で、聞き耳を立てて聞いてたんだ。二人の会話」

ゴリラ 「……」

音楽科生徒 「侑ちゃんに気を取られてて、見間違えかと思ったけど、本当にいたんだねゴリラ……あはは、これは想定外だ……」

愛 「っ! でもだからって、包丁で命を狙おうとするなんて!」
 
390: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:28:17.25 ID:USH79va4
果林 「……それに、脚立で歩夢を狙ったでしょ」

歩夢 「えっ……」

音楽科生徒 「最初は命なんて狙ってなかった。ただ、ただ、少し目障りなあなたに、怪我をして欲しくて……あの教室での二人のやりとりは本当に信じ合ってるからこその会話だった……それが本当に羨ましかった」

せつ菜 「それであんなことを……」

音楽科生徒 「でも、なぜか上原歩夢はそこにいなくて、失敗した。今考えても、本当にあの失敗が、偶然が、憎い……あの失敗さえなければ、私はこうはならなかった……」
 
391: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:29:09.54 ID:USH79va4
彼方 「失敗さえなければ……? 自分がしたことを他のせいにしないでっ!!」

音楽科生徒 「!」

彼方 「歩夢ちゃんが、いなくなっちゃうところだったんだよぉ……? 責任取れるの? ねぇ、ねぇ!!」

歩夢 「彼方さん」

彼方 「!」

歩夢 「……ありがとう、彼方さん。私のために怒ってくれて。でも、この子の話を聞きたい。私には最後まで聞く権利と責任があるから」

彼方 「……」

歩夢 「……」

彼方 「彼方ちゃんもお人好しだと思うけど、歩夢ちゃんはお人好しすぎるよ……」
 
393: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:41:33.35 ID:USH79va4
果林 「……じゃあ続きを話して」

音楽科生徒 「……」

果林 「話しなさい。それがあなたの責任よ」

音楽科生徒 「少しずつ歯止めが利かなくなっていった……今度は、上原歩夢の家のポストに、チケットを入れて、動物園に行くよう誘導した」

侑 「! あのチケットってまさか!」

音楽科生徒 「……従業員に扮して、上原歩夢を案内して、小屋に閉じ込めて、ついでに動物を一匹でも檻から出せば、周りがパニックになってトラウマを植え付けられると思った」
 
394: (もんじゃ) 2022/02/03(木) 20:42:44.21 ID:USH79va4
果林 「……あのねっ! なんとかなったから良かったものの、歩夢は下手したら小屋ごとゾウに潰されるところだったのよ!?」

音楽科生徒 「そんなつもりなかった……驚かせようと思っただけだった……なのに、まさかあのゾウがあんなに凶暴だなんて……」 ポロポロ

侑 「……っ、聞き覚えのある声だと思ったけど、当然だよ。だって毎日いたクラスメイトだったんだから」

音楽科生徒 「侑ちゃんも一緒に来るのは想定外だった。そして、あの二人の仲の良さを見せつけられるのが耐えられなかった……。私だって、私だって、侑ちゃんの大切な友達だったのに……!」
 
400: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:46:26.69 ID:3tlUHQ5e
せつ菜 「……」

せつ菜 『もし私が音楽科の生徒でも、歩夢さんに嫉妬してしまうでしょうね。いくら仲良くなっても、平気でそれを超えてくる仲良しっぷりを見せつけられてしまうのですから』

せつ菜 (……まさかあの言葉が本当になってしまうだなんて、皮肉なものですね)

音楽科生徒 「そのときにきっと私は壊れちゃったんだと思う……もう、私は、命でさえも、奪おうと思って……っ」

果林 「それで包丁で狙おうだなんて……」
 
401: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:47:38.64 ID:3tlUHQ5e
せつ菜 「ですが、それならなぜ、このタイミングを狙ったんですか」

音楽科生徒 「!」

せつ菜 「動物園での騒動から、何日か経ってます。狙うチャンスなんていくつもあった……それに、わざわざステージの上で狙うだなんて。どう足掻いても、逃げ切ることはできない。どうして」

音楽科生徒 「……」

せつ菜 「あなたのことは全く理解できません。しかし、上辺だけでもあなたのことを理解しなければ、納得できないのです。納得できなければ、今ここで私は、あなたを殴ってしまうかもしれない……! だから教えてください、なぜですか」
 
402: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:48:27.54 ID:3tlUHQ5e
音楽科生徒 「……もしも、命まで奪ってしまったら、私はもう生きれないと思った。いや、生きてはいけないと思った。信じてくれないとは思うけど、罪悪感はあったの」

果林 「……」

音楽科生徒 「だから上原歩夢をこの手で刺して……自分もそのまま死ぬか、捕まるか、どちらにせよ、逃げようなんて気持ちはなかった。償いたかったの」

果林 「だからステージ上で……」
 
403: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:49:04.62 ID:3tlUHQ5e
音楽科生徒 「それと上原歩夢さん」

歩夢 「!」

音楽科生徒 「……あなたは憎んでいたけれど、あなたの歌声は好きよ。その歌声を私が聴きたかったのと、最後に素敵な夢で終わらせてあげたかったから、だから、この日まで待った」

歩夢 「……」

音楽科生徒 「あはは、今更言っても信じてもらえないか……」
 
404: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:52:12.13 ID:3tlUHQ5e
彼方 「……侑ちゃんのこと、好きだったんでしょ」

音楽科生徒 「……」

彼方 「なら、こんなことをしたら、侑ちゃんが悲しくなるって思わなかったの? それに、歩夢ちゃんを離したところで、あなたも逮捕なりされたら、侑ちゃんと過ごせないんだよ?」

音楽科生徒 「……承知の上です」

彼方 「君は本当に、間違ってるよ……。侑ちゃんが好きなら、同じ音楽科で仲良くすれば良かったじゃん。歩夢ちゃんがいなくなったって、自分もいなくなるんだよ!? そしたら、結局侑ちゃんと二人きりにはなれない……」

音楽科生徒 「……」
 
405: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:52:59.70 ID:3tlUHQ5e
——

歩夢 『侑ちゃん。一緒に帰ろう?』 ニコッ

侑 『うん!』

——

音楽科生徒 『侑ちゃん。一緒に帰ろう?』 ニコッ

侑 『うん!』

——
 
406: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:53:30.67 ID:3tlUHQ5e
——

歩夢 『あれ? それって』

侑 『次の新曲だよ。弾いてみよっか?』

歩夢 『うん、お願い侑ちゃん!』

侑 『任せて! まずはここなんだけど』

——

音楽科生徒 『あれ? それって』

侑 『次の新曲だよ。弾いてみよっか?』

音楽科生徒 『大丈夫。楽譜読めるから……ふむふむ、ここが良いね。流石侑ちゃん』

侑 『えへへ、褒められると照れちゃうな』

——
 
407: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:54:22.41 ID:3tlUHQ5e
音楽科生徒 「……ふふ、そうだね、侑ちゃんと過ごせる夢は終わった。でも、それでも、羨ましかった。私がそこにいたかったんだ」

侑 「……」

音楽科生徒 「バカだよね……」

侑 「ねぇ」

音楽科生徒 「……なに、侑ちゃん」

侑 「私信じてたのに、あなたのこと。音楽科で初めてできた友達で……いつも私を肯定してくれて……すごく大切な友達だったのに」

音楽科生徒 「私も侑ちゃんを信じてた」
 
408: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:55:54.93 ID:3tlUHQ5e
侑 『あはは、ありがとう。でも私はまだまだだよ。だからこれからも頼っていいかな?』

音楽科生徒 『もちろん!! お互いに高め合おう?』

侑 「お互いに高め合おうって言ってくれたじゃん! あれは嘘だったの!?」

音楽科生徒 「……本当だよ。だからこそ、あなたの才能に気付いてない彼女が憎かった」

歩夢 「!」

音楽科生徒 「侑ちゃんの才能は本物なの。なのに、音楽のことは分からない、ただただ、昔から一緒にいただけで、侑ちゃんの時間を、気持ちを、占めるあなたが嫌だった」

侑 「……っ、私はあなたに頼んだ覚えはないっ!! 私が歩夢と勝手に一緒にいた!! なのに歩夢に手を出すのは違うんじゃないの!?」
 
409: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:56:47.83 ID:3tlUHQ5e
音楽科生徒 「侑ちゃんのため、と言ったら傲慢かな。でも少しはそんな気持ちもあったかも……その才能をしっかり、理解するべきだよ」

侑 「……」

ピーポーピーポー

侑 「さっき誰かが呼んだんだと思う、警察が来る。歩夢のことは許せない。才能も私自身のものを周りに言われる筋合いはない。だけど、あなたと過ごした短い期間は楽しかった。本当に高め合えたら良いって思ってた……正直憎みきれないところもある。でもだからこそ」

侑 「信じてたのに、つらいよ」

音楽科生徒 「……」
 
411: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 18:57:54.73 ID:3tlUHQ5e
果林 「……」

彼方 「……」

せつ菜 「……」

愛 「……」

歩夢 「……」

音楽科生徒 「……私も侑ちゃんを信じていたよ。私に絶対賛同しないであろうことも含めて、それでも好きだった」

音楽科生徒 「さようなら……」






 
414: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:28:29.87 ID:3tlUHQ5e
ポツポツ

ポツポツ

果林 「……せっかくの良いライブだったのに、途中で乱入があるし、挙句に今は雨。最悪ね」

愛 「……ねぇ、カリン」

果林 「なに」

愛 「愛さんに隠してたことあるよね。歩夢が命を狙われてるなんて、全然知らなかった」
 
415: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:29:59.46 ID:3tlUHQ5e
果林 「……私の独断よ。殴るなら殴りなさい、間違った選択だとは思ってない」

愛 「っ、殴らないよ。何も気付かなかった自分自身が腹立つだけ」

果林 「……そう」

愛 「……」

タタタタ

せつ菜 「果林さん!」
 
416: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:31:12.98 ID:3tlUHQ5e
果林 「せつ菜! ゴリラさんは大丈夫だった?」

せつ菜 「……警察にはバレずに済みましたが、観客で見た人が多数。虹ヶ咲学園の生徒はもちろんのこと、お台場周辺はもう、隠し通せないでしょう」

果林 「そ、そうよね、あんなに派手に現れちゃったものね……」

彼方 「ねぇ」

果林 「!」
 
417: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:32:30.91 ID:3tlUHQ5e
彼方 「歩夢ちゃんと侑ちゃんが、取り調べから戻ってきたら、なんて声をかけてあげれば良いかな……」

果林 「……」

彼方 「……ごめん、やっぱり、聞かなかったことにして」

果林 「あの二人は、ちょっとの間はあの二人だけで話すのが一番良いと思う」

彼方 「……」

果林 「だから私たちは、ライブお疲れ様会の準備でもしましょ」

彼方 「!」

果林 「……二人が帰ってきたときにお祝いできるような、人になりたいって思ったの、私もね」

彼方 「果林ちゃん……!」
 
418: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:33:39.93 ID:3tlUHQ5e
かすみ 「ちょっと待ってください!」

果林 「かすみちゃん?」

しずく 「果林さん! 私たちにも事情を説明してください!」

璃奈 「何も分からないまま、終わるのだけは嫌だから」

せつ菜 「かすみさん、しずくさん、璃奈さん……」
 
419: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:34:19.67 ID:3tlUHQ5e
ゴリラ 「…… それは私から説明させてほしいうほっ」

かすみ 「ええっ!?」

しずく 「ゴリラが……」 アワワ

璃奈 「喋ってる。璃奈ちゃんボード『夢の世界線?』」

果林 「その取ってつけたような語尾、なによ」

ゴリラ 「いや、いきなりペラペラ喋り出したらより驚いてしまうかもと思って……果林さんと初めて喋ったときも、語尾つけてたでしょ?」

果林 「……そうだったわね」
 
420: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 19:35:33.20 ID:3tlUHQ5e
かすみ 「と、時々、ゴリラが部室で見えてた気はしてましたが……それに歩夢先輩のステージにも現れてましたが……まさか本当にいるなんて……!」

果林 「まあ五回くらい見ないと普通信じられないわよね」

トリ 「私も喋っていいか?」

しずく 「ええっ!? トリも喋ってる!?」

ブタ 「僕も喋るブー。話したいことがあるブー」

璃奈 「もう驚かないけど、愛さんも知ってたの?」

愛 「あはは……まあ動物さんたちに関してはね」
 
422: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:10:08.40 ID:3tlUHQ5e
ゴリラ 「じゃあ話しても大丈夫?」

かすみ 「! もちろんです!」

しずく 「演劇で動物と喋られる役がありましたが、まさか現実であるなんて……」

璃奈 「ちゃんと聞くから大丈夫」

ゴリラ 「……あれは、私の動物園にせつ菜さんが来てくれた日のことでした」






 
423: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:34:04.98 ID:3tlUHQ5e
侑 「歩夢。お疲れ様。取り調べ、大変だったでしょ?」

歩夢 「侑ちゃんもお疲れ様。ううん、大丈夫だよ」

侑 「……」

歩夢 「……」

侑 「ごめん……っ、歩夢。私のせいで」
 
424: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:34:47.04 ID:3tlUHQ5e
歩夢 「違うよ」

侑 「!」

歩夢 「侑ちゃんのせいじゃないよ」

侑 「で、でも……私のせいで……歩夢がもしかしたらと思うと……っ、つらくて……つらくて……」 ポロポロ

歩夢 「泣かないで侑ちゃん」 ダキッ

侑 「うぅ……うぅ……」 ポロポロ

歩夢 「……」

侑 「……」 ポロポロ
 
426: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:35:55.24 ID:3tlUHQ5e
歩夢 「……侑ちゃん、あの子のこと、憎んでる?」

侑 「! どういうこと歩夢……もしかして。歩夢はお人好しだよっ、だって命を狙われて……!」

歩夢 「そうじゃないの」

侑 「そうだ、最後に言われたこと気にしてるんでしょ!? 関係ない、私の才能がどうであれ、歩夢にはそばにいてほしい。歩夢が気にする必要なんて」

歩夢 「そうじゃなくて、聞いて、侑ちゃん」

侑 「えっ?」
 
427: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:37:19.07 ID:3tlUHQ5e
歩夢 「……確かに怖かったし、憎い気持ちもあった。でもね、少し分かっちゃうの。侑ちゃんが奪われそうになって、苦しくなる気持ちが」

侑 「歩夢……」

歩夢 「せつ菜ちゃんに前、言われたんだ。『非注意性盲目』。一つの物事に集中してしまうあまり、視界には入ってるのに、まるで他のものを見えてないかのように認識できない……そんな現象なんだって」

侑 「そ、それがどうしたの?」

歩夢 「侑ちゃんばかり見てた私は、自分のことばかり考えてた私は、あの子のことを何も考えてなかった。私も、あの子のこと、憎んじゃったんだ……あの日に……」
 
428: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:38:04.28 ID:3tlUHQ5e
侑 「……で、でも、歩夢は我慢できたじゃん。あの子は歩夢の命を狙った! 歩夢とは全然違うよ!!」

歩夢 「私には侑ちゃんがいた……」

侑 「!」

侑 『でも、逆に歩夢にしか話せないこともたくさんあるじゃん。歩夢としか共有できない、たくさんの思い出があるじゃん!!』

歩夢 「きっと、私は、侑ちゃんと共有できることがあったから、それに気付けたから、踏み留まれたの……もし、侑ちゃんのあの言葉がなかったら、侑ちゃんとあのとき話せてなかったら……どうなっていたか分からない」

侑 「あ、歩夢……」
 
430: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:52:45.91 ID:3tlUHQ5e
侑 『歩夢……私は、そして歩夢も、もう一人じゃない。たくさんの友達がいる。でも、歩夢と私の友情は、この世界で代わりなんかない、たった一つの友情なんだ』

歩夢 「……」

侑 「……」

歩夢 「その人にしか共有できないものがある。その人にしかない友情がある。だから、私はあの子を憎めないの。いくらこんなことがあっても、侑ちゃんだって、大切な友達だったんでしょ?」

侑 「そ、そんなわけ」

歩夢 「つらいことは我慢しなくて良いんだよ」
 
431: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 20:53:49.85 ID:3tlUHQ5e
侑 「……うぅ、歩夢」 ポロポロ

侑 「つらい……つらいよ……音楽科で一番最初の友達だったのに……すごく良い子だったのに……こんなことって……こんなことって……!」 ポロポロ

侑 「歩夢にしか共有できないものあって……それが嫌だったのかな……でも、私はあなたとしかない音楽について語る時間が、思い出があったのに……」 ポロポロ

歩夢 (……その人の心、全部欲しいと思っちゃうときがある。でも、侑ちゃんの友達を、大切な人を、全て捨てて、私だけが侑ちゃんといるのは違うんだ。なんか切なくなっちゃうなぁ)
 
433: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 21:00:15.31 ID:3tlUHQ5e
歩夢 「……もう一回、私の胸で泣いて、侑ちゃん」 ダキッ

侑 「歩夢……ごめんね、歩夢の方がつらいはすなのに……私ばかり泣いちゃって……」 ポロポロ

歩夢 「ううん。良いんだよ、侑ちゃん……」

歩夢 (いつか、あの子が罪を全て受け止めて、一から歩み直したとき、私で言う侑ちゃんのような)

歩夢 (優しい人に会えたなら良いな……)






 
434: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:41:56.21 ID:3tlUHQ5e
果林 「とりあえず、侑と歩夢が無事に帰ってきてよかったわ」

侑 「心配させちゃってごめんね。みんなが待ってくれてるってメールが来てたから、急いで戻ってきたよ」

歩夢 「ただいま、みんな」

せつ菜 「……」

せつ菜 (歩夢さんにも、侑さんにも、涙の跡が……聞くのは野暮ですね。つらいのは一緒ですから)
 
435: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:42:56.79 ID:3tlUHQ5e
果林 「今、軽く説明したけれど、動物さんたちのことは分かってくれた?」

歩夢 「あはは、いまだに少し信じられないかも……動物さんたちが喋ってるなんて」

侑 「だけど喋ってるのを目の当たりにしたら疑う理由なんてないよ……それに」

侑 「ゴリラさん!」

ゴリラ 「!」

侑 「さっきは歩夢を助けてくれてありがとう。あなたがいなかったら、歩夢を守れなかった。そしてブタさん、トリさん」

ブタ・トリ 「「!」」
 
436: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:44:14.90 ID:3tlUHQ5e
侑 「動物園で、歩夢を助けてくれたんだよね。それと、脚立が落ちるのからも……本当にあなたたちのおかげだよ、ありがとう」

歩夢 「ゴリラさん、ブタさん、トリさん、私が今ここにいるのは、あなたたちのおかげだから……本当にありがとう」

ゴリラ 「……」

ブタ 「……ほ、褒められるのも悪くないブー!」

トリ 「人として、当たり前のことをしただけだ。いやまあトリではあるが」

ゴリラ 「……歩夢さん、侑さん」

歩夢・侑 「「!」」

ゴリラ 「私もあなたたちにすごく感謝をしている……大切なことが分かった気がするから」

果林 (ゴリラさん……)
 
437: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:44:53.28 ID:3tlUHQ5e
果林 「! そういえばブタさん、さっき話したいことがあるって言ってたわよね?」

ブタ 「そうだブー! 一つ、お願いおよび提案があるブー!」

彼方 「提案?」

ブタ 「今からみんなで、二人が無事に帰ってきたお祝いパーティーをやるんでしょ?」

侑 「えっ!?」

せつ菜 「その予定です」

侑 「いや、悪いよ! 私たちのためにパーティーなんて」
 
438: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:45:37.61 ID:3tlUHQ5e
果林 「……正式にはライブお疲れ様会よ」

侑 「!」

果林 「それなら良いでしょ?」

侑 「だ、だけど!」

歩夢 「侑ちゃん」

侑 「歩夢?」

歩夢 「……パーティーを楽しむことが、私たちがみんなに少しでも恩返しできる方法なんじゃないかな」

侑 「……」

歩夢 「ね?」

侑 「……うん、そうだね。せっかくだから楽しもうか!」
 
439: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:46:25.31 ID:3tlUHQ5e
せつ菜 「それでブタさん、そのパーティーがどうしたんですか?」

ブタ 「お願いがあるブー……もう一度、ライブを見せてほしいんだ」

果林 「!」

ブタ 「三人のライブ、本当に素敵だったブー。そして、きっと、今日が終わったらお別れが近付いてるから……」

果林 「ブタさん……」

ブタ 「自分の気持ちを確かめるためにも、もう一度だけライブをやってほしいんだ」
 
440: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:47:57.31 ID:3tlUHQ5e
侑 「で、でも外は雨だし、暗くなってきたし会場は……」

しずく 「それなら大丈夫ですよ♪」

侑 「え?」

璃奈 「今、講堂が使えるか連絡してみた。今日のライブを楽しんでくれた人たちだったみたいで……快く了承してくれた」

かすみ 「問題ナッシングですよ!!」

ブタ 「僕のワガママでもう一度ライブをしてほしいなんて……ダメだとは分かってる……でもっ」

トリ 「私からもお願いだ」

ブタ 「!」
 
441: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 22:49:00.34 ID:3tlUHQ5e
トリ 「……私は自分の正体を知らない。だからこそ、せめて自分の気持ちだけはちゃんと理解しておきたいんだ。その心が言ってる、またあのライブが見たいって!」

ゴリラ 「私からもお願いします。みなさんのライブを、今度は、何もそれ以外気にしなくていい、素直な気持ちで見たい。この短い間だったけど、みなさんの頑張ってる姿を見てきた……だから分かる。絶対に素敵なライブになることが」

ブタ 「トリさん……ゴリラさん……」

愛 「……だってさ、どうする? カリン?」

果林 「えっ、私が決めていいの?」
 
444: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:30:17.78 ID:3tlUHQ5e
彼方 「当然だよ〜。果林ちゃんが頑張ってくれたから、ここに今、みんな一緒にいれるんだよ?」

果林 「侑は? 歩夢は? あなたたちの会なのに……」

侑 「私は果林さんが良いなら全然良いよ! 元々ライブを見るのは大好きだから!」

歩夢 「私も大丈夫! 少しでも動物さんたちにありがとうを伝えたいから!」

果林 「それなら私は……」

果林 (みんなで最高のライブを……!! 動物さんたちに見せてあげたい! それはお礼はもちろんそうだけど、それだけじゃなくて、単純に一人のスクールアイドルとして! 最高のステージを!!)
 
445: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:31:06.97 ID:3tlUHQ5e
せつ菜 「ふふ、果林さん」

果林 「!」

せつ菜 「私たちならずっと練習してきてますから、いつライブをすることになっても、問題ありません!」

果林 「……まだ言ってないのに、分かる?」

せつ菜 「顔がそう言ってますから。それに」

ガラガラ

ガラガラ

せつ菜 「九人揃いましたよ」

果林 「! あなた!」
 
446: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:31:48.19 ID:3tlUHQ5e
エマ 「ただいま〜果林ちゃん!」

果林 「エマ!! あなたどこに行ってたのよ!! すごい心配したのよ!?」

エマ 「……あれ、言ってたよね? スイスに一週間、用事があって帰るって。今日の昼には帰ってくる予定だったんだけど、飛行機が遅れて夜になっちゃったよ〜」

果林 「スイス?」

エマ 「?」

果林 「あっ」

エマ 「……もしかして忘れてたの、果林ちゃん?」 ジッー

果林 「……あはは、いや、違うのよエマ?」
 
447: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:32:37.31 ID:3tlUHQ5e
エマ 「久しぶりのスイス、楽しかったなぁ」

エマ 『ヒツジさん、柔らかいね〜』

ヒツジ 『メェーー』 モフモフ

エマ 『やっほーーーー!!』

ヤッホーーー

エマ 『うーーーんっ、自然が気持ちいい!』

エマ 『ボーノ! このスイーツ美味しい!』 モグモグ

エマ 『それにしても果林ちゃん……一週間私がいなくても大丈夫かなぁ。朝遅刻してないかなぁ』

エマ 『大丈夫だよね! ちゃんと寝坊しないで起きるって約束したもんね!』
 
448: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:33:39.30 ID:3tlUHQ5e
エマ 「……もしかして約束も忘れてたの?」

果林 「それが約束は無意識に覚えてたみたいで、この一週間はなんとか自力で起きれたわ」

エマ 「果林ちゃん、言いつけを守って自力で起きれたんだね! 偉い、偉い!」 ナデナデ

果林 「ちょ、エマぁ///」

彼方 (……ここ何日、果林ちゃんすごくカッコよかったから忘れてたけど)

彼方 (そういえば果林ちゃんって本来はこんな感じだったよね。エマちゃんには子供みたいに可愛がられるというか……)
 
449: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:34:21.97 ID:3tlUHQ5e
ゴリラ 「……えっと」

ブタ 「普通に僕たち喋ってるところ見られちゃったけど」

トリ 「驚かれたりはしないな」

エマ 「? 私はよく動物さんと喋るから珍しくないけど……」

果林 「ええっ!?」

エマ 「なんとなくだけどね♪ スイスの山奥にいると、動物さんたちと通じ合えてる気がするんだ」

果林 「……いや、あの子たちは実際に」

果林 (まあ、わざわざ驚かせる必要ないか。納得してるみたいだし)
 
451: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:35:06.45 ID:3tlUHQ5e
エマ 「あれ? 君って」

トリ 「?」

エマ 「スイスにいる鳥だよね?」

トリ 「! 私を知ってるのか!?」

エマ 「うん! 名前はど忘れしちゃったけど、スイスの森の中にしかいない、すごい珍しい鳥なんだよ!」

トリ 「わ、私の故郷はスイス……スイスだったのか……」

トリ (……これでようやく私は自分のことが分かった。分かったんだ)
 
452: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:36:12.80 ID:3tlUHQ5e
エマ 「今度またスイスに行くから、一緒に連れて行ってあげるよ!」

トリ 「本当か!?」

エマ 「うん!」

トリ (同じ仲間にも会えるんだ……ようやく、私は自分を見つけられた……)

トリ 「良かった……良かった……」 ポロポロ

エマ 「ええっ!? 急に泣いちゃった!? ごめんなさい、私何か失礼なことを」

果林 「大丈夫よ。エマ。嬉し泣きだから」

エマ 「そうなの?」

果林 「ええ」

果林 (良かったわね……トリさん……)
 
453: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:37:30.61 ID:3tlUHQ5e
果林 「エマ。帰国早々悪いんだけど、今からこの子たちのためにライブをしたいの? 大丈夫?」

エマ 「うん! 全然大丈夫だよ! 動物さんたちにも喜んでもらえるような、最高のライブにしよう!!」

侑 「……よし! ゴリラさん、ブタさん、トリさんのための、ライブをしちゃうよ!! みんな頑張ろーーー!」

一同 「「おおっーーーー!」」

タタタタ

タタタタ

タタタタ

侑 「じゃあ果林さん、お願いっ!!」

果林 「……みなさん。私たちの最高のライブを見てください!!」
 
454: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:39:09.68 ID:3tlUHQ5e
ゴリラ 「……」

ゴリラ (私はずっと自分がなんのために生きてるのか、生きる意味が分からなかった。でも、誰かを助けることを知り、笑顔を守った。そんな私は、これからもずっと、誇りになると思う……)

ゴリラ (ありがとう)
 
455: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:39:47.17 ID:3tlUHQ5e
ブタ 「……」

ブタ (努力が大事だって分かってた……でも、努力に裏切られるのが怖くて、いつからか逃げてばっかりだった。でも)

果林 『才能もある。環境もある。でも、たとえゼロからのスタートでも、どんな場所からでも、その場所で努力をし続ける。それだけが近道なのよ』

ブタ (……信じてみよう。みんなを、自分を)
 
456: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:40:38.49 ID:3tlUHQ5e
トリ 「……」

トリ (ずっと自分を探してきた。でも、振り返ってみると、自分から多くの人に関わろうとすることはなかった。それがダメだったのかもしれない……自分探しなんて、いくらしたところでダメなんだ。自分を見つけるには、他の人が必要だ)

トリ (自分の中に自分は見つからない……人と関わる中で、ようやく自分を見つけることができるのだから)
 
457: (もんじゃ) 2022/02/04(金) 23:41:24.28 ID:3tlUHQ5e
果林 「じゃあ行くわよ!! みんなっ!!」

果林 「まずは一曲目から! 『虹色Passions!』」

もうずっと

ひとりじゃないよ

いつもみんないるから

夢と夢 叶えていこう






 
459: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:04:41.70 ID:SAESxORk
果林 「……このコッペパン美味しいわね」

かすみ 「当たり前ですよ!! かすみんが作ったコッペパンですからね!!」

せつ菜 「そんなことより見てください、果林さん! この記事!」

かすみ 「そんなことより!?」

果林 「えっと……動物園のマスコットのブタさんがSNSで大バズり。大人気となる」

彼方 「……ブタさん良かったね」

愛 「園長のおじいちゃんとおばあちゃんも、ブタさんと再会して大喜びだったもんね!」
 
460: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:05:35.15 ID:SAESxORk
果林 「動物さんと言えば、少し部室が広く感じるわね……」

せつ菜 「トリさんもスイスに帰ってしまいましたからね。でも仲間と出会えて、本当に良かったです」

しずく 「それにしても、動物が三匹もいて部室も狭くなってたのに、違和感を感じないって……せつかりすごいですよね」

璃奈 「私たちは全く気付かなかった」

ゴリラ 「……」

一同 「「……」」

ゴリラ 「かすみさん。なぜまだゴリラさんはいるの? という顔をしてますね」

かすみ 「いや思ってませんが……」
 
461: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:06:40.40 ID:SAESxORk
果林 「仕方ないのよ。あの事件以降、虹ヶ咲学園周辺はいれないにもかかわらず、元の動物園にも話題になっちゃったから戻れないし……」

ゴリラ 「動物園に迷惑をかけてしまいますから……」

果林 「悩んだ末に、相変わらずせつかりで誤魔化してるのよ」

ゴリラ 「……でも、私もブタさんやトリさんのように、いつかは新しい場所に行かなければいけません。いつまでもここでお世話になってはいけないんです」

侑 「私は全然大丈夫だよ? だって歩夢の命の恩人だし!」

歩夢 「うん。それに、賑やかになってもっと楽しいもん」
 
462: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:07:30.41 ID:SAESxORk
ゴリラ 「……気持ちはありがたいのですが、私は生きる意味を見つけました。『もっと多くの人を助けて、笑顔を守る』という意味を。だから、私を必要とする新しい場所に行かなければいけないんです」

果林 「でもその場所を探すのが難しいのよね……たくさんあるのだろうけど、まずゴリラさんを非注意性盲目で誤魔化してくれる人たちがいないと」

一同 「「うーん……」」 ムムム

エマ 「神社に行ってみたらどうかな?」

せつ菜 「えっ?」
 
463: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:08:05.71 ID:SAESxORk
エマ 「悩んだときは日本では神頼みをするって聞いたことがあるよ!」

果林 「それはそうだけど……」

エマ 「東京だと、『神田明神』っていう神社が良いらしいよ?」

果林 「うーん……神頼みでなんとかなるか分かんないけど、行ってみる? ゴリラさん?」

ゴリラ 「縋ってみよう」






 
464: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:08:58.57 ID:SAESxORk
ガランガランッ

果林 (……ゴリラさんを必要とする場所を教えてください。神様)

せつ菜 (……果林さんとどうにか良いムードにさせてください。神様。それとゴリラさんの願いを叶えてあげてください)

ゴリラ (……私が役に立てる新しい場所を教えてください。神様)

果林 「よしっ、せつかりで誤魔化すために三人で来たけど、みんなちゃんとゴリラさんのことを願ったわね?」

せつ菜 「もちろんです!!」

果林 「それで……何か起きた? ゴリラさん?」

ゴリラ 「そんなに神様は即効性があるものなのか?」
 
466: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:09:47.42 ID:SAESxORk
ヒラヒラ

ヒラヒラ

せつ菜 「……なにか紙が落ちてきましたね」

果林 「どれどれ……? 『二エ三』?」

せつ菜 「カタカナの『ニ』と『エ』と、漢数字の『三』ですかね?」

果林 「いや、三があるからこの『ニ』は漢数字の『二』かもしれないわよ?」

せつ菜 「だとして、どういう意味なんですか?」

果林 「……分からない」
 
467: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:10:33.64 ID:SAESxORk
ゴリラ 「……ゴリラに送りつけられたメッセージ」

果林 「ゴリラに……」

果林 「!」

果林 「そうだ! この漢数字のところにゴリラの二文字目と三文字目を入れてみれば良いんじゃない!?」

ゴリラ 「そしたらどうなりますか?」

せつ菜 「……つまり、『リ』と『ラ』ですから」

リエラ

一同 「「リエラ……?」」






 
468: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:11:41.36 ID:SAESxORk
千砂都 「かのんちゃん……どうかな? この歌詞? 少しみんなに合ってないかもなんだけど……」

かのん 「この歌詞……ちょっと変かも。数単語リライトしよう!」

可可 「リライト?」

恋 「書き直すって意味ですね」

すみれ 「なんで少しカッコつけたの?」
 
469: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:12:19.12 ID:SAESxORk
かのん 「ここを、こうして、ああして……ほら、どう?」

可可 「おおっー、良い感じです!」

ゴリラ 「うほっうほっ」

千砂都 「さすがかのんちゃん!」

一同 「「……」」

一同 「「えっ?」」
 
471: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:14:15.00 ID:SAESxORk
千砂都 「ご、ゴリラ!?」

すみれ 「どういうことったらどういうことよ!!」

可可 「むむ、精巧なぬいぐるみデスね……」

恋 「チビよりも大きな犬? ですね」

かのん 「いやゴリラだよ!? どう見ても!?」

ゴリラ 「よろしくお願いします」

かのん 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

こうして、また新しい場所で、ゴリラさんのストーリーは始まる。でも、それはまた別の話……。

おわり
 
473: (もんじゃ) 2022/02/05(土) 00:22:13.66 ID:SAESxORk
ありがとうございました。
結構時間がかかってしまいましたが、コメントも力になり、なんとか完結させることができました。本当にありがとうございます。
途中でコメントで出てきた「ゴリライト」という通称良いですね。このssを上手く説明してる気がします。

前作
しずく 「かすみさん、この電話を使えば出れるんだよ!」 かすみ 「おおっ!」
【SS】しずく 「かすみさん、この電話を使えば出れるんだよ!」 かすみ 「おおっ!」【ラブライブ!虹ヶ咲】
しずく 「かすみさんがネット映えするパワースポットがあるからって森の中に入ったら、まさか迷っちゃうなんて……」 かすみ 「うぅ、想定外の事態です」 しずく 「でも私たちには携帯があるよ! すっかり忘れてたけど、これで連絡できれば……」 かすみ 「森から出れるってことだね!」 しずく 「じゃあまずは警察に……」 かすみ 「しず子、そのスマホ貸してくれない?」 しずく 「えっ?」  


前々作
歩夢 「侑ちゃーん? どこにいるのー?」
【SS】歩夢 「侑ちゃーん? どこにいるのー?」【ラブライブ!虹ヶ咲】
歩夢 「侑ちゃーーーん!」 ダキッ 侑 「もう、歩夢、どうしたのさ」 歩夢 「……えっと、少し寒いなぁと思って」 侑 「実は私もそうなんだよね。手繋ごうか?」 歩夢 「うん///」  

 

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1643359843/

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