【SS】善子(20)「今日も眠れない」【ラブライブ!サンシャイン!!】

SS


1: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 21:59:29.26 ID:hcuMV+zn.net
善子(眠れない……)

善子「…………はぁ。またお酒飲むか……」


高校卒業後、私は東京の大学に進学。独り暮らしを始めた。

独り暮らしは、寂しい。どうしても夜になると、この世界のどこにも自分の居場所がないような、そんな気分になる。

孤独……というより、孤立、している気がする。


善子(本当は飲みたくないんだけどね……眠れないよりマシなのよ……)

善子「まあお酒飲んで寝るのって寝るって感じじゃないんだけどね…………」

善子「気絶ってのが一番近い表現だから…………」

善子(気絶するためだけに飲むお酒……もうイヤよ……」)

善子(でも、眠れないよりは………)

善子「…………違うわね……不安なのよ……」

2: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:01:12.79 ID:hcuMV+zn.net
善子(不安とか孤立とかを抱えたまま、それをどうにかすることも出来ず、ただただ頭のなかでグルグル回って……)

善子(それで眠れもせず、でも明日もやらなきゃいけないことがあるからって無理にグルグルを振り払おうとして……)

善子(結局グルグルから目を背けようとしてもずっと付きまとってきて、寝れなくて、でも寝なきゃいけなくて……)

善子「おかしくなりそう……いや、もうおかしいのかな、私………」

善子(…………お酒飲めば忘れられるし楽しくいられるけど………)

善子(最近飲む量が増えてきちゃって………結局次の日起きれなくなってきて……)

善子(無理に起きるといつも二日酔いで気持ち悪い………)

善子(いつになったら健康になれるんだろう………)

善子(もう嫌よ、こんなの………)

3: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:02:53.37 ID:hcuMV+zn.net
善子「どうしてこんな身体に産まれてきたんだろう……」

善子(小さなことですぐに不安になって、眠れなくなって……)

善子(でも起きれないと、予定を守れないと、社会では生きられなくて……)

善子(それを何とかするために、お酒を飲んで……すぐに依存していって………)

善子「いつの間にかそれ無しじゃ社会に適応出来ない身体になっていって………)

善子(ううん、社会だけじゃなくて、本当に……ただ生きていくこと自体も、それなしじゃつらくなっていって……)



善子「……たすけて…………」

善子「だれか…………たすけてよ…………」

5: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:04:33.31 ID:hcuMV+zn.net
善子(……こういう時、思いきり泣ければいいのにな…………」)

善子(ただ不快で不満で不安で……それだけが心にあって、それで一杯で…………」

善子「泣きたいはずなのに、全然涙が出ない………)

善子(泣き方を忘れちゃったのかな……)

善子「……だからお酒を飲むんだろうな…………」

善子(酔っている時は、素直に泣けるから………)

善子(酔っている時は、素直に笑えるから………)

善子(どうして、普通の時は笑えないのかな。泣けないのかな)

善子(私、もう辛いことしか感じられなくなっちゃったのかな……)

6: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:06:23.66 ID:hcuMV+zn.net
善子(楽しいことも、悲しいことも)

善子(嬉しいことも、ぜんぶ。)

善子「ぜんぶ、わからなくなっちゃった……」

善子(…………心の動かし方、わからなくなっちゃった………)

善子(私って、体は動かせても、心は動かせないんだね……)

善子「……なんだか、ロボットみたい……」

善子(私は心のないロボットなんだ……)

善子(………でも、だったらどうして)

善子(どうして、<つらさ>だけは残るんだろう……」)

7: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:07:08.47 ID:hcuMV+zn.net
善子(ぜんぶ、きれいサッパリなくなっちゃえばいいのに……)

善子(ほんとうに、ロボットになれればいいのに…………)

善子(どうして、いつまでも<つらい>んだろう…………)

善子「……だれか、わたしをろぼっとにしてよ…………」

善子「かいぞうしてよ…………さいぼーぐにしてよ…………」

善子「すきなときにすぐきぜつできて、すきなときにすぐおきれて…………」

善子「なにもかんじなくて…………」

8: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:07:47.69 ID:hcuMV+zn.net
善子「……………………」

善子(だって、それが一番じゃない)

善子(それが、社会に適合するために、一番じゃない)

善子(それが、みんなが望んでることじゃない……)

善子(だったら……だったら…………)


善子「……………………」

9: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:08:12.27 ID:hcuMV+zn.net
善子「……………………だれか…………」

善子「…………だれか……」

善子「…………だれか、たすけて…………」

11: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:09:50.13 ID:hcuMV+zn.net
善子(…………Aqoursのみんな………)

善子「…………ダメ……。めいわく、かける……」

善子(……きっと皆、そんなことないって、いつでも頼ってって言ってくれると思う……)

善子(「仲間だから」って…………「気にすることないよ」って…………)
善子(でも、私は…………)

善子(気にしちゃうよ……したくなくても……気にしたくないのに………)

善子(だって………仲間だから……)



善子(仲間だから……?)

善子「なかま………」

12: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:11:05.25 ID:hcuMV+zn.net
善子(……………………そっか。そうだったんだ……)


善子(私は…………「私だから」って言って欲しいんだ…………)

善子(仲間だったら誰でも優しくするの?って…………私じゃなくても優しくするの?って…………)

善子(そんなこと…………思ってるんだ…………)

善子(迷惑かけたくないんじゃなくて…………こんな自分を赦してくれるはずないって思ったから…………)

善子(『私だから』ってぜんぶ赦してくれる都合のいい人が欲しいだけなんだって…………思われて…………失望されたくないから…………)

善子(だから、頼れないんだ…………)

13: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:12:34.99 ID:hcuMV+zn.net
善子(私のちっぽけなプライドが、私の醜いところを全部押さえ付けるから…………)

善子(そうしないといけないから…………)

善子(そうしないと、ダメだから…………)



善子(…………でも、ほんとうは。 )


善子(醜い心、持っちゃってる…………)


善子(誤魔化せないんだ、この心を…………)


善子(全部私のワガママな気持ちなのに………)

15: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:13:40.72 ID:hcuMV+zn.net
善子(ほんとうに、どうしようもないメンヘラ女だ…………)

善子(嫌なのに。そんな人になるなんて嫌だったのに。 )

善子(でも、どうすればよかったの?どうしたらこうならなかったの?)

善子(私だって、なりたくなかった……私だって、普通に生きたかった…………)

善子(私だって………私だって…………!)

善子「ウウ……ヒック……!」

16: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:14:43.86 ID:hcuMV+zn.net
善子(…………こうやって人のせいにする自分も嫌い……)

善子(ぜんぶ、自分のせいなのに…………人のせいにばっかなんて…………)


善子(私って…………)


善子「…………さい、てい…」

17: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:16:14.11 ID:hcuMV+zn.net
善子(……………………死にたい)

善子「……………………しに、たい……」

善子(死にたい)

善子「しにたい」

善子(しにたい)

善子「しにたい」 .

18: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:17:00.29 ID:hcuMV+zn.net
善子(しにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたい)

20: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:17:47.40 ID:hcuMV+zn.net
善子「しにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたい」

21: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:18:31.45 ID:hcuMV+zn.net
善子(しにたい「しにたい」しにたい(しにたい)「しにたい」しにたい「しにたい」<しにたい>(しにたい)『しにたい』しにたい[しにたい}しにたいしにたいしにたい」

24: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:19:34.35 ID:hcuMV+zn.net
善子「……しに、たくない………」ポロポロ


善子「いやだよ……いきていたいよ……」

善子「でも……つらいよ……………………いきたくないよ……………………」



善子「…たすけて………………だれか……………………」

25: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:21:44.94 ID:hcuMV+zn.net
だれか………

26: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:22:20.88 ID:hcuMV+zn.net
たすけて ……






千歌『ちょっとまってて!!』

29: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:23:44.18 ID:hcuMV+zn.net
善子(………………え……?……)

あたまが、真っ白になった。

手元にはスマホ。その画面には、千歌さんからのメッセージがあった。

会話の履歴を見る。そこには、私からの『しにたい』というメッセージが。

『しにたい』という言葉が、私の目の前に。

私の心に。ひたひたと迫ってきていた。

30: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:24:36.12 ID:hcuMV+zn.net
善子「そ、んな………」

善子(どうして……。無意識のうちに、送ってたの……?…)

善子(『しにたい』って……)

善子「やだ……やだ………!」

善子(もう、なにもかんがえられないよ……)


放心状態のまま、時間はいつの間にか流れ。
スマホが、鳴った。

…………千歌さんからだ。

31: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:25:20.69 ID:hcuMV+zn.net
善子「も、しもし……?」

千歌『も、もしもし?善子ちゃん?』ハァハァ

電話の先の千歌さんは、少し息が上がっていた。

きっと、急いで何かを終わらせてきたんだ。私に電話をかけるために。

善子(………っ……)

ズキリと。

心が、痛んだ。

33: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:26:28.15 ID:hcuMV+zn.net
善子「ご、ごめんなさい、しんぱいかけて……」
善子(心配をかけたくない)

善子「わたしは、だいじょうぶ」
善子(迷惑をかけたくない)

善子「だいじょうぶ、だから……」
善子(……ホントは、たすけてほしい……)

善子「だいじょぶ……」
善子(大丈夫じゃ、ないよ……)

善子「よるおそくに、ほんとにごめん……また、ね……」
善子(たすけて!!千歌さん!!!)

34: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:27:39.36 ID:hcuMV+zn.net
……気持ちを言ってしまえば。認めてしまえば。

楽になるのかもしれない。

きっと、千歌さんも『迷惑なんかじゃないよ』って言ってくれるはずだ。

でも、だからこそ「大丈夫」だと言う。

『迷惑なんかじゃないよ』って、言わせたくないから。

『迷惑なんかじゃないよ』って、言われたく、ないから。

私の気持ちを、否定されたくないから。

私のちっぽけな葛藤を、無かったことにされたくないから。

……………ああ。本当に、私って……


善子(さいてい、だよ……)

35: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:28:36.44 ID:hcuMV+zn.net
けっきょく、自分のことしか考えてないんだから。

こんな私が、こんな存在が、赦されるはずがない。

自分のことをヨハネだと、堕天使だと、言ってきたけど。

堕天使は、赦されなかった天使だから。

赦されなかった存在だから。

私は、最初から…………


善子(生きてちゃ、いけなかったんだ……)

36: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:29:44.25 ID:hcuMV+zn.net
……こんな私に、千歌さんを付き合わせるわけにはいかない。

善子(でんわ、早く切らなきゃ……)

私が通話を終わらせようとした、その時。

今まで無言だった千歌さんの、口を開く音が聞こえた。

善子(…もしかして……っ!)

もしかして、『迷惑なんかじゃないよ』って、言われてしまうかもしれない……。

私の心が、今までにないくらい。鋭く、痛んだ。




…………でも、千歌さんは。

38: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:31:30.65 ID:hcuMV+zn.net
千歌『………善子ちゃんは、みんなに、心配をかけたくないんだね。 』


善子「………ぇ…?」


私に何も言わず。

ただただ、私を、抱きとめてくれた――――。


千歌『善子ちゃんは、私に、迷惑をかけたくないんだね。 』

善子「……………ぅん…」グスッ



……ついに、言ってしまった。

認めてしまった。……自分の、気持ちを。

千歌『……どうして…?』

善子「…………ッ!」

39: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:32:39.19 ID:hcuMV+zn.net
善子「だって!みんなが好きだから!!千歌さんが好きだからぁ!!迷惑なんてかけたくないの!きらわれ”た”く”な”い”の”ぉ”!!」

千歌『…うん。 』

善子「でぼっ”!……でも、ホントは言いたかった。頼りたかった。ワガママ言いたかっだ!!どうじでもっ!どうしてもどうにもならなかったからぁ……どうにも、できなかったがらぁ”……」

千歌『…うん。 』

善子「しにたくないのに……しにたくなったの……ゆるしてほしかったの……いきてること………


千歌『…うん。 』

善子「わたし……どうすればいいかわからなかったの……どうしたらいいのか………なにを、すれば、いいのか…………」

千歌『…そっか。 』

40: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:34:45.01 ID:hcuMV+zn.net
善子「ウッ…ヒィッ……グス…」

千歌『………善子ちゃん。 』

善子「ウッ…ウゥ……ウッ…」

千歌『善子ちゃんは、みんなに嫌われるのが怖かったんだね。 』

善子「!……ぅん」


千歌『たすけてほしかったんだよね』

善子「ウッ……うん…!」

千歌『…つらかった、よね』

善子「グス……ぅン…!


千歌『でも、泣けなかったんだよね』

善子「…グスッ……ウッ…」

千歌『思いっきり、泣きたかったんだよね……』

善子「…………ぅぅ…」

千歌『今、泣けそう……?』

善子「…グス……ぅ…ん」

千歌『……そっか』

41: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:35:49.34 ID:hcuMV+zn.net
善子「……ゥ…ン」

千歌『…………いいんだよ……』

善子「………う…」

千歌『……泣いて、いいんだよ…』

善子「ううぅ……!」

42: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:36:42.53 ID:hcuMV+zn.net
千歌『いま、……ないて、いいんだよ………!』グスッ



善子「ウワぁアアああァアあアアあーーーん!!!あぁああァァアん!!!!」

43: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:37:53.45 ID:hcuMV+zn.net
……今日。私は、心の動かし方を。

……思い、出した。



善子「………グスッ……スンッ……」

千歌『善子ちゃん、もう大丈夫そう?』

善子「…………うん。今はもう、大丈夫」
善子(ホントのホントに、ね……)

千歌『よかった……』

善子「千歌さんのおかげよ。……ありがとう…」

千歌『ふふっ、どういたしまして!』

44: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:40:48.89 ID:hcuMV+zn.net
善子「それにしても……やっぱり恥ずかしい。こんなに泣いちゃうだなんて…」

千歌『善子ちゃんすっごく大きな声で泣いてたもんね!』

善子「ちょっと!千歌さんの方こそすぐにつられてワンワン泣いてたじゃないの!


千歌『そ、それは言いっこなしだよ!……フフフ!』

善子「フフッ!」

あはははははははは……!



ひとしきり笑いあった後。私は恐る恐る、口を開いた。


善子「……ね、ねぇ、千歌さん……」

千歌『ん、なあに?』

千歌さんにどうしても聞きたいことがあったからだ。

46: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:42:08.64 ID:hcuMV+zn.net
善子「どうして、私を受け入れてくれたの……?」

千歌『え?…そうだなあ。普通は仲間だからって答えちゃうんだろうけど、違うもんね……』

一瞬、ドキリとした。

『仲間だから』……それは、私が一番恐れた答えだったから。

でも、千歌さんはそれは違うと言ってくれた。

千歌さんの言う通りだ。

だってそれは、今だけのことじゃなくて。

Aqoursで活動していたときも。

……そして、Aqoursに入る前からも。

千歌さんは、どうして私を……。

普通じゃない、堕天使の私なんかを……

47: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:46:59.62 ID:hcuMV+zn.net
千歌『善子ちゃんが、ヨハネちゃんが、好きだったからかな』

善子「……!」

千歌『私ね、やっぱり普通だったから。善子ちゃんみたいに普通とは違うことができるわけじゃなかったから、ちょっと憧れたんだと思う。』
千歌『あっでもそれだけじゃなくて、私の場合、普通をどうにかしたいって思う気持ちはあっても、結局ずっと出来なくって。』
千歌『でも善子ちゃんはヨハネちゃんになれたでしょ。そこがすごいな~って思って!それに堕天使ってかわいいなって!』

善子「……なによぉ………」グスン

千歌『えっ!どうしたの善子ちゃん!?』

善子「そのいいかただと、わたじがもともとふつうだったみたいじゃなぃ……わだしはもともとよはねよぉ……グス……」

千歌『あーあー!ごめんごめん!』

48: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:50:33.33 ID:hcuMV+zn.net
…………何が普通よ。

全然
普通じゃないじゃない。
堕天使を、救っちゃうだなんて。

好きだって言ってくれるだなんて。赦してくれるだなんて。

…………ありがとう。


善子「ちかちゃん……」

49: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:51:27.00 ID:hcuMV+zn.net
数日後のお昼、事情を知ったAqoursメンバーが、連絡もよこさずに私に会いに来た。
同じように東京に出てきてるメンバーならいざ知らず、内浦や沼津に残った仲間や、そもそも日本にいなかった者もいるというのに、だ。
Aqoursの絆を、改めて見せつけられてしまって、不覚にも涙腺が緩んでしまった。


みんなは、やさしかった。

50: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 22:53:04.44 ID:hcuMV+zn.net
ばかだなぁって。気にすることないのにって。迷惑になんてならないよって。

だいじょうぶだよって。頼られるくらい大したことじゃないよって。

みんな、口々に言ってくれた。

私が思った通り、みんなはやさしく接してくれた。

でも、なぜだろう。胸の奥が、チクリと傷んだ。

その痛みに気付かないふりをして、みんなにお礼を言おうとした時。

千歌ちゃんが、口を開いた。




千歌「みんなどうしてそんなこと言うの!?」

51: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:00:09.72 ID:hcuMV+zn.net
千歌「ばかだなって気にすることないって!!?そんなことない!!善子ちゃんの苦しみは、善子ちゃんにとってばかなことでも気にしないで済むことでもなかったんだよ!?」

千歌「みんなに迷惑かけたくないってすごく苦しんでたんだよ!!?それを大したことなんかじゃないだなんて!!勝手に善子ちゃんの苦しみを小さくしないでよ!!!」





Aqoursとして、もうずいぶんと長く、濃い付き合いをしてきたが、これほどの剣幕で起こる千歌ちゃんは初めて見た。
他のメンバーもそれは同じらしく、みんな最初はギョッとした顔をして、その後に……千歌さんが言ったこと、怒ったことの意味に……はっとした様子に、なった。

52: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:00:57.66 ID:hcuMV+zn.net
千歌「……そのままを受け止めてあげようよ………。善子ちゃんの苦しみ、そのままを……みんなで、受け止めてあげようよ………グスッ……」


…………その後はもう、泣くのをこらえられなくて。

千歌ちゃんと電話した時に、向こう数十年は涙が出ないだろうってくらいには泣いて泣いて泣き尽くしたはずなのに、私はそれよりももっと多くの涙を流した。

そんな私につられて、みんなも泣きじゃくって。

私にごめんねって言っては私がごめんねって返して。

私がこんなんでごめんねって言ってはこちらこそごめんねって返されて。

みんなが泣き止んだ頃には、すっかり日が暮れていた。

53: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:01:46.87 ID:hcuMV+zn.net
それから時は流れて。
私は今、千歌ちゃんとルームシェアを行い、共同生活を送っている。

実は千歌ちゃんも、家業を継ぐ前に大学で勉強して来いと言われ、東京の大学に進学していたのだ。

それで、あの一件以降、大分マシになったとはいえ、私の寂寥感は抜けきっておらず、度々千歌ちゃんの部屋に泊まりに行ったり泊まりに来てもらったりしていたのだが、それならいっそのこと一緒に住んでしまえ!という発想に至ったわけだ。

今ではあの一件もよくネタにされるようになり、その度に千歌ちゃんとお互い恥ずかしいところを見せたよねって笑い合っている。

そんな日々を送っていた、ある夜。

54: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:03:29.81 ID:hcuMV+zn.net
電気を消して、一緒に布団に入って、しばらくして……目の前の千歌ちゃんが急に愛おしく感じられて、つい話しかけてしまった。

善子「千歌ちゃん?起きてる?」

千歌「ん、起きてるよ。なあに?」

善子「……ありがとう。私を赦してくれて」

千歌「ん……?どういうこと……?」

善子「いや、あの時……。あなたが、私のことを、ヨハネのことを認めてくれたおかげで、すごく救われたなって思ったから……」

千歌「………そっか。うん。そっか……」

善子「千歌ちゃん……?

千歌「…………」

善子「どうか、した……?」

千歌「……………」

善子(どうしよう……私、何かしちゃったのかな…?)

56: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:07:10.32 ID:hcuMV+zn.net
千歌「善子ちゃん」

善子「ひゃ、ひゃいぃ!」

善子(なんて声出しちゃったのよぉ!)

千歌「善子ちゃんは覚えてる?スクールアイドルやってて、初めて東京に招待された時のこと」


善子「……あ、ああ。そんなこともあったわね」

千歌「……あの時、ゼロって数字を見たとき。悩んで悩んで、なんでμ'sみたいになれないんだろうって。」
千歌「いつかは手が届きそうだなって、わたしもなりたいなって思ってたのに。」
千歌「でも、セイントスノーとのすごい実力差が現実としてあって、その二人すらも到達できないような高みなんだなって思って……」

善子(……それって…)

57: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:09:15.79 ID:hcuMV+zn.net
千歌「それで、悔しかったんだけど、でも…私はその気持ちを言えなかった。認められなかった」

善子(私と……)

千歌「リーダーの私がそれを言っちゃったら…みんなを落ち込ませちゃうかもしれなかったから…そんな自分を赦せなくなるような気がしたから……」


善子(あの時の私と……同じ…)

千歌「でも、違ったんだよね。だって、悔しいって気持ちを押し〇しちゃうってことこそが本当に自分を赦さないってことだから」

善子「………だから、千歌ちゃんは私のことをちゃんと受け止めてくれたの…?」
千歌「ううん、それはそうだけどそうじゃないよ。だって、私がやったことはみんながあの時私にしてくれたことだから。」
千歌「自分に素直になっても、受け入れてくれるみんながいる。居場所がある。Aqoursが、包み込んでくれるんだよって。」
千歌「あの時みんなが、梨子ちゃん、曜ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、そして善子ちゃんが、教えてくれたんだよ!」

善子「……そっか。そうだったわね

58: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:10:25.05 ID:hcuMV+zn.net
千歌「ただ梨子ちゃんの言葉は後から考えるとちょっと腹が立ったな!ばかなんて言わなくてもいいのに~」

善子「ふふっ。リリーも結構ズバッと言うところがあるものね」

千歌「だよねだよね!あんなおしとやかそうに見えて…と、それはさておき~。……私ね、その時思ったの。みんなが受け入れてくれたおかげで、私は自分のこと、赦せそうだなって」

善子「え……?」

千歌「きっとね、最後は自分が自分を赦してあげないとダメなんだよ。周りの人ができるのは、どこまでもその手助けだけなんだと思う。………だから善子ちゃんが救われたっていうんなら、それは善子ちゃん自身のおかげだと思う。善子ちゃん自身が頑張ったおかげだと思う!」

善子「ちか、ちゃん……」

59: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:11:34.73 ID:hcuMV+zn.net
千歌「……私は、知ってるよ。善子ちゃんの頑張りを。今も、頑張っていることを。それは誰かの頑張りじゃない。自分自身の頑張りなんだよ」

善子「…………」

千歌「もちろんそのお手伝いが出来てるなら私も嬉しいんだけどね!」

善子「出来てるわよ…それはもう完璧に……」

千歌「ホントー!?よかったぁ~」

善子「私は……できてる……?」

千歌「うん。……もちろんだよっ」

善子「嘘よ……」

千歌「嘘じゃないよ。……そうだなぁ。善子ちゃん、もし私から、私普通すぎて善子ちゃんに好きでいてもらえるか不安だよって言われたらどう思う?」

善子「そんなことないわよ!私は千歌ちゃんのぜんぶが好きなの!普通だからって何よ!むしろより愛おしいわ!……あ」

千歌「……ちょ、ちょっと恥ずかしいけど…。でも、そういうことだよね。善子ちゃんにそう言ってもらえたら、私も自分の普通なところ、認められるんだ」

善子「……そっか。そうだね」

60: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:12:34.25 ID:hcuMV+zn.net
千歌「そうだよ。……ね、遅くなってきたし、そろそろ寝ようよ」


善子「うん。そうね。……おやすみ」


千歌「うん。おやすみ」


善子「………………」


ねえ、千歌ちゃん。

私を、堕天使を好きだと言ってくれて。

堕天使を、認めてくれて。

私自身が、堕天使を好きでいいんだって。

私が私を赦せるようにしてくれて。
ありがとう。


善子「大好きだよ、千歌ちゃん」

61: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:12:48.26 ID:hcuMV+zn.net
おわり

65: (プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/12/02(金) 23:22:10.93 ID:hcuMV+zn.net
ss書くのも2chに投稿するのも初めてなのでスレの建て直しまでするはめになった
読んでくれた方、ありがとうございました。
ちかよしもっと流行ってくれ

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1480683569/

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