【長編SS】理事長「あの子はいらない」あなた「私はいらない」【ラブライブ!スクスタ】

ゆうイケメン SS


3: (もんじゃ) 2021/08/07(土) 23:57:31.48 ID:I8m78c4s
※スクスタのメインストーリーの裏で、もし理事長がちょっと動いて、「あなた」が苦しんでいたら、というお話です
※メインストーリーと同じ場面は省略していきます

4: (もんじゃ) 2021/08/07(土) 23:57:59.33 ID:I8m78c4s
理事長
(私には自慢の娘がいる。娘の名前はショウ・ランジュ。文武両道、才色兼備、全てを兼ね備えた素晴らしい子だ)

(私は親としてランジュが立派に育つように、多くの経験や知識、財産を与えてきた)

(ただ1つ、ランジュがこの年になっても、私が与えられなかったものが存在する……それは「友達」。ランジュの友達と呼べる人間は、幼馴染の栞子ちゃんただ一人)

(女子高生として友達が1人なのはあまりにも寂しい……しかも、その友達はランジュとは別の学校にいる。親として情けない限りだ)

ランジュ
『あの子たちとだったら、本気でぶつかりあえる、本当のお友達になれる! ママ、いいわよね! ランジュ、スクールアイドル部を作るわ!』

(そんな娘が今日、私の学園に転入し、友達を作るためにスクールアイドル部を作る事にしたのだ)

5: (もんじゃ) 2021/08/07(土) 23:59:27.65 ID:I8m78c4s
理事長
(……が、娘が出してきた申請には)

部活動名称:スクールアイドル部
活動場所:~

部員氏名:上原 歩夢 
部員氏名:中須 かすみ

理事長
「か、勝手に同好会の子たちの名前を書いてる!」

理事長
「確かに、5人以上じゃないと部どころか、同好会の申請すら出せないとは伝えたけど……」

理事長
「まさか、勝手に入部させてしまうなんて……これはいくらなんでも差戻すしかないわね」

理事長
「……」

理事長
「……違う」

理事長
「娘がやっと友達を作れそうなのに、今、親の私が応援できないでどうするの!」

理事長
「この「スクールアイドル部」、どうにかして通してみせるわ!」

6: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:00:25.12 ID:Igc33z1x
後日

理事長室

栞子
「失礼します」

理事長
「栞子ちゃん、いらっしゃい。スクールアイドル部は楽しくできてる?」

栞子
「楽しいどころではありません、大変な事になっています!」

栞子
「スクールアイドル部の活動場所に、スクールアイドル同好会が使用中の部屋が指定されていました。恐らく、ランジュの申請にミスがあったのでしょう。」

栞子
「しかも、ランジュは部室を改築するため、業者の方に既に依頼をしてしまったようで……もう工事に着手してしまいました!」

7: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:01:25.30 ID:Igc33z1x

部室


「待って待って、壁剥がしちゃダメ―!!」

トラックZ「」ブゥーン

重機K「」ヴィーン!

果林
「まだ乗り物が来るの!?」

璃奈
「璃奈ちゃんボード「あわわわ……」」

彼方
「んぅ~…すごい音で、彼方ちゃん眠れないよ~」

かすみ
「か、かすみん達の部室がぁ~~~!!」

業者A
「あの、工事中は関係者以外は入らないでいただけると」

ランジュ
「ランジュもこの子たちも部屋を使うんだから、関係者よ」

歩夢
「そ、そういう意味で言われたんじゃないと思うけど……」

エマ
「みんなの部屋をかってに工事してかえちゃうなんて……だめだよこんなの」

ランジュ
「大丈夫よ、エマ! 絶対に今より良い部室にするんだから!」

9: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:02:28.89 ID:Igc33z1x


理事長室

栞子
「とにかく、理事長先生の方からランジュをどうにか止めてください! 部屋が同好会と被っているのに、ランジュの申請を許可してしまった、理事長先生にも責任の一端はあるのですから」

理事長
「栞子ちゃん、私は部屋が同じなのを分かって通したのよ」

栞子
「な、なぜそのような事をしたのですか!?」

理事長
「うちの学園では同好会をやるのに、最低でも5人必要なの」

栞子
「それがいったい何の……あっ」

栞子
「ランジュをどうみなさんに上手く紹介するか、それに頭が回りすぎて、基本的な事を忘れていました。私とミアさん、ランジュだけでは、部どころか同好会も作れません」

理事長
「そう、私から声をかければ兼部して入ってくれる子はいると思うけど、ランジュはそれじゃ納得しないでしょ?」

栞子
「……ランジュはかなり人選にこだわってるようですから、難しいと思います。スクールアイドル部を新たに作るのは厳しそうですね。」

10: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:03:20.55 ID:Igc33z1x
理事長
「というわけで、私はランジュをスクールアイドル同好会に入れたの」

栞子
「えっ、あっ、そうだったんですか?」

理事長
「その後、私の全権限を活用して、同好会を部に昇格させ、部の代表者としてランジュを指定したわ」

栞子
「……な、何てことをやってるんですか、理事長先生!」

栞子
「これは明らかな職権濫用です!」

理事長
「栞子ちゃんだって、適性を判断してみんなを幸せにするために、色々職権を利用してたじゃない」

栞子
「それは、否定しませんが……いくら私でも転部を勧める事はできても、強制する事はできませんでしたよ」

理事長
「そうね、だからランジュの作ったスクールアイドル部に、同好会全員を強制で転部させるのは、さすがの私でも無理だったわ」

理事長
「ランジュをスクールアイドル同好会に入れて、その同好会を部へ昇格、部の代表者のランジュにする形で、スクールアイドル部を実現したのよ」

栞子
「……この親にしてこの子あり、という言葉を今理解した気がします」

11: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:04:01.96 ID:Igc33z1x
栞子
「ランジュが勝手に工事を始めてしまった理由は分かりました。理事長先生はどう責任を取られるつもりですか?」

理事長
「栞子ちゃん、うまくランジュと同好会のみんなの仲をとりもってちょうだい」

栞子
「はい?」

理事長
「うちの学園の運動部も文化部も、部屋がきれいになったり、ボールや楽器が新しくなったら喜んでくれるじゃない? スクールアイドル同好会も最初はビックリすると思うけど、何だかんで新しい部室を喜んで受け入れると思うわ」

栞子
「一般的には部活をする生徒が、新しい設備や備品を喜ぶ傾向があるのは認めますが、スクールアイドル同好会は無理です! 間違いなく反発しますよ」

12: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:05:06.74 ID:Igc33z1x
理事長
「そう? 栞子ちゃんは同好会に所属してるし、ランジュの幼馴染でもあるから、一番仲を取り持つ「適性」があると思うのよ」

栞子
「適性……それは認めますし、私もそのつもりでしたが、さすがに無理なものは無理です」

理事長
「栞子ちゃん、頑張って」

栞子
「はぁ……この親子は本当に……」

栞子
「やってはみますが、成果は期待しないでください」


理事長
(後日、栞子ちゃんからは「やっぱりダメだった」と連絡が来た。同好会の子たちは新しい部室は使わずに、別の空いている場所で活動しているらしい)

14: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:07:02.59 ID:Igc33z1x
後日

ランジュ
「ママ、この委員会の設立を許可して! ちゃんと申請書も作ってきたわ」

理事長
「あら、スクールアイドル部でお友達を作るんじゃなくて、委員会でお友達を作る事にしたの?」

ランジュ
「違うわ そのスクールアイドル部の子たちと友達になるために、この監視委員会が必要なの」

理事長
「監視?」


理事長
「せっかく部を作ったのに、栞子ちゃん以外の子は誰も来てくれなかったのよね」

ランジュ
「そうなの! どうしてあの子たちが部に来ないのか理解できないわ」

理事長
「そうねぇ…あれだけ高品質の設備や人員を用意したのに、1人も来ないのは不思議」

15: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:08:25.26 ID:Igc33z1x
ランジュ
「だから、ランジュはどうすればいいか考えたの。それで思いついたわ、みんな惰性でなんとなく今までと同じやり方を選んでいるんじゃないかって」

理事長
「なるほど、今のままでいい、部に変わらなくていい、同好会のままでいい……そういう気持ちが、あの子たちを同好会に留まらせていると」

ランジュ
「そうなの! だからランジュはみんなが変わるための背中を押してあげたい。この監視委員会で同好会の活動を完全に禁止できれば、今までと同じ事が出来なくなって、きっと部に来てくれる」

理事長
「……確かに、私は日頃からランジュに「人に直接命令できないのなら、ルールや周りの環境を変えて、人を誘導しなさい」って教えてきたわ」


理事長
「でも、ランジュ。この監視委員会というのは、これを通す方がずっと難しい―」

ランジュ
「それじゃあランジュはみんなが部に来た時用の準備をしてくるわね、再見!」


理事長
「行ってしまったわ……」

16: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:10:04.15 ID:Igc33z1x
理事長
「監視委員会かぁ。どう考えても活動内容はうちの学風的にアウト。しかも、この申請だと委員に所属する学生が栞子ちゃん1人じゃない。生徒会長と兼任になっちゃう。」

理事長
「こんな出鱈目な書類、ランジュ以外が提出してきたら、即却下してやりたいわよ」

理事長
「……でも、この年までランジュが友達と呼べる子が、栞子ちゃん以外に誰もいなかった。親の私がランジュに友達をあげられなかったせいで、ランジュは孤独になってしまった」

理事長
「そんなランジュが、友達を作るために始めた活動を、私は親として応援してあげたい……」

理事長
「よし、ここは親として私も全力を尽くしましょう!」

17: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:11:46.51 ID:Igc33z1x
……

後日

コンコン

理事長
「どうぞ、入って」

栞子
「失礼します」

理事長
「こんにちは栞子ちゃん、そんなに怖い顔してどうしたの」

栞子
「何ですか、あの監視委員会というのは」

理事長
「今日からあなた達生徒会のメンバーに兼任してもらう委員会よ」

栞子
「そういう事ではありません。あのような生徒の活動を制限するような委員会、存在が許されるはずありません」

理事長
「許すわ」

栞子
「誰がですか!?」

理事長
「私が、この学園の理事長である私が」

理事長
「つまり学園が、監視委員会の設立を認めたのよ」

栞子
「そんな……」

理事長
「まずは立ってないで座りなさい、栞子ちゃん」

栞子
「……はい」

18: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:12:55.78 ID:Igc33z1x
……

理事長
「それにしても、ランジュは栞子ちゃんに委員会の事を説明しなかったのかしら?」

栞子
「いえ、昨日ランジュからは委員会について口頭で聞きましたが…ランジュは私が口で言っても聞いてくれないし、あんな申請を出しても通るはずがない。そう思っていたので…」

ランジュ
「ふふっ、確かにあんな申請は普通なら通らないわね」

栞子
「それが分かっているなら、何故監視委員会を認めたのですか?」

理事長
「ランジュが望んだからよ」

栞子
「……ランジュの為なら、何をしても許されると、そう仰るのですか?」

理事長
「ランジュだけじゃないわ、家族、大切な人の為なら、私はその人たちの力になってあげたい、多くの人達と戦う事になっても構わない、そう考えているの」

理事長
「かつて、栞子ちゃんの為に生徒会長選挙をした時のようにね」

栞子
「そ、それは……」

19: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:14:01.88 ID:Igc33z1x
理事長
「あんな時期に生徒会長を変える選挙をやるのは、通常ではありえない。それに、現任の生徒会長がリコールされる事になれば、その人の心に癒えない傷が残る。学園としては中々通しがたい話だったわ」

栞子
「……」

理事長
「それでも、私は栞子ちゃんに選挙をさせてあげたかった。それは、あなたが私にとっても大切な人だし、娘のランジュにとって大切な幼馴染だからよ」

理事長
「だから、今度はランジュの為に私は戦うわ。そして、それを栞子ちゃんにも手伝ってほしいと思ってる」
 
栞子
「……わ、私に生徒会選挙での恩を返せと、言うのであれば」

理事長
「?」

栞子
「監視委員会は私1人で活動します。他の生徒会の方々には関係のない話です」

20: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:15:10.73 ID:Igc33z1x
理事長
「ダメよ、生徒会長とスクールアイドル部を兼任しているあなた1人では、同好会の活動を監視しきれないのは目に見えてるわ」

栞子
「それでも私が1人でやります!他の方々を巻き込まないでください」

理事長
「関係ない子たちに監視委員を任命する事も含めてあなたにお願いしたいの。やってくれる、栞子ちゃん?」

栞子
「っ……」

理事長
「3つも委員と部を兼任させたのは悪いと思っているわ。同好会の子達が、みんな部に移ってくれば監視委員会の活動は終わりにできるから、それまでは頑張ってほしいの」

栞子
「……」

21: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:17:03.92 ID:Igc33z1x
栞子
「分かりました、監視委員会として本日より活動を始めるよう、生徒会に連絡します」

理事長
「分かってくれたのね、ありがとう」

栞子
「……ただ」

栞子
「生徒会選挙の恩については、この監視委員会で終わりです。これ以上、私が部の為に、ランジュや理事長先生に助言する事も、活動する事もありません」

理事長
「分かったわ、これ以上の助力は求めない事にする」

栞子
「……これで失礼します」

22: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:20:13.74 ID:Igc33z1x
20章 スクールアイドル同好会VSスクールアイドル部!?

理事長
「さて、栞子ちゃんに監視をお願いしてからそれなりに経ったけど、同好会の子は部に移って、何人くらいランジュとお友達になってくれたのかしら?」

理事長
「ふふっ、今日は久しぶりに、ランジュと一緒のビュッフェだから、どれだけお友達を連れてきてくれるか、楽しみだわ」

……
ランジュ
「ママ聞いて! 愛と果林が部に来てくれたのよ!」

理事長
「そうなの、それは良かったわね。2人も部に移ってくれ……2人?」

理事長
「ランジュ、同好会にはもっと人数がいた気がするけど……その2人以外はどうしたの?」

ランジュ
「他の子たちはまだ部に来てくれないの」

理事長
「ええっ、どうして来てくれなかったの?」

ランジュ
「ランジュにも分からないの! ランジュ、部にも誘ったしこのビュッフェにも誘った。ちゃんと、みんなが幸せになれる最高の環境を用意したのに!」

理事長
「ち、ちなみに入ってくれた2人は連れてこなかったの?」

ランジュ
「今日は同好会に残ってる子たちと一緒に食べるんだって」

理事長
「えぇ……」

23: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:22:43.64 ID:Igc33z1x
理事長
(何てこと……ここまでランジュの友達作りが難航しているなんて。私はランジュに力添えしたつもりだったけど、不足していたのかしら……?)

ランジュ
「それとね、ランジュ……すごく怒っている、許せない事があるの!」

理事長
「怒っているのは、同好会に残っている子たちに?」

ランジュ
「違うわ……その同好会の部長の子!」

理事長
「部長? 音楽家として留学して今は学園に不在の子よね。だから、ランジュは会えなかったと思うのだけど、メールか何かでやりとりして、何かその子に酷い事を書かれたの?」

ランジュ
「あの子が酷い事をしているのは私に対してじゃない、同好会のみんなに対してよ!」

理事長
「同好会に……? 詳しく教えてちょうだい」

24: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:25:28.30 ID:Igc33z1x
ランジュ
「あの子は同好会で作曲をしてるけど、作った曲からは何も感じれないわ、空っぽよ。同好会の子たちにはキラキラしたもの感じたけど、あの子から何も感じない」

ランジュ
「それに、部長としても、同好会を部に昇格させていないし、所属するみんなが幸せになれるような最高の環境も与えていない、何もできていない!」

理事長
「なるほど、ランジュから見て部長の子には才能が無いのね……続けて」

ランジュ
「何もできていない癖に、あの子は同好会のみんなの友達面をしている! 自分の作った価値の無い曲を、みんなに歌わせようとしているの! 同好会なんて酷い環境に、あの子たちを閉じ込めている!」

ランジュ
「ランジュが友達になるために用意したもの、何も持ってないのに!
 ランジュが友達になってからやりたかった事、全部平気な顔をしてやってるの!」

理事長
「……」

理事長
(これは、ランジュが怒るのも無理ない話ね。自分より結果を出していない子が、自分が欲しいものをすべて持っているのだから)

25: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:27:19.43 ID:Igc33z1x
ランジュ
「きっとあの子が泣きついて、部に行かないように頼み込んでいるのよ」

理事長
「それは困った話ね……ランジュはこれからどうしたいの?」

ランジュ
「絶対に同好会からみんなを解放してあげたい! そのために、もっと部の素晴らしさをみんなにアピールしていくわ!」

ランジュ
「実際、果林や愛は部に来てくれたんだから、他のみんなだってこのやり方で、ランジュの所に来るのが正解だって分かってくれるはずよ!」

理事長
「そうね、みんなランジュの所に来て、友達になってくれるといいわね」

ランジュ
「うん! あ、でもママは別に手出ししなくても大丈夫だから。ランジュは子供じゃないんだから、自分の力でやってみせるわ!」

理事長
「はいはい、分かってますよ」

(もう、部と監視委員会の設立の時点で、手助けはしているのよ)

26: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:29:18.37 ID:Igc33z1x
……
当日夜

理事長
「さて、娘の悩みの種である例の部長について、データを集めさせてみたけれど…」

理事長
「成績、経歴共に目立って優秀な点は無し、家柄も平凡」

理事長
「強いて功績を挙げるなら、スクールアイドルフェスティバルを成功させた事だけど、これも周りの人間に恵まれたというだけの事。気にしないでいいかな」

理事長
「ただ、才能を持つ「上原歩夢」と幼馴染である点は、部長の持つ強みだったと言えるわね」

理事長
「上原歩夢が幼馴染に配慮して同好会に残るというのは理解できるし、他の子も「上原歩夢が残るなら自分も」そう思って部への誘いに乗らないのは推測できる」

理事長
「うーん、これはランジュに分が悪い勝負ね。いくら部の魅力を伝えたところで、上原歩夢が幼馴染を放置するとは思えないし」

理事長
「もし、ランジュが部長を激しく糾弾すれば、幼馴染を守るためにランジュに敵意を強める事もありそう」

理事長
「……もう少し、私の方で動いてみる必要があるかしら」

27: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:34:11.22 ID:Igc33z1x
あなた視点

あなたが帰国した翌日

(私が留学から帰国した日、同好会のみんなから恐ろしい報告を聞いた。)

(ショウ・ランジュという理事長の娘が、スクールアイドル「部」を新たに設立し、部室を乗っ取ってしまったらしい)

(更に同好会からは愛ちゃんと果林さんが部に移籍し、同好会は練習とライブが禁止される絶望的な状況だった)


あなた
「今日は、ちゃんと学校側に抗議してみようと思う」

歩夢
「抗議って、どういう事?」

あなた
「活動場所について、部と同好会が同じ部屋を使う事になってるから、ランジュさんが同好会の部屋をすごい部室に改造しちゃったんだよね?」

あなた
「だから、同好会の部室が取られちゃった事については、多分同じ部屋を指定した学園側のミスだと思うんだ」

歩夢
「学園のミス……」

あなた
「学園の規則にも、2つ以上の同好会・部が同じ部屋を使う事は、禁止されているんじゃないかな?」

(私が規則を確認するために、学園のサイトにアクセスすると、そこにトップページに表示されていたのは)


お知らせ
「スクールアイドル同好会が、スクールアイドル部に昇格しました!」
学園公認の部に昇格したスクールアイドル部は、学園からの援助を受け、最高クラスの品質にパワーアップした楽曲、演出、パフォーマーで、ファンの皆様に喜んでいただける…

あなた
「!?」

29: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:36:29.33 ID:Igc33z1x
あなた
「学園から公式に同好会が部に昇格した事にされている……?」

歩夢
「えっ、私も見てみる!」

(画面を見た歩夢ちゃんはびっくりしていた。つまり、これについては私に内緒にしていたのではなく、みんなも把握していなかったんだ……)

歩夢
「私、同好会が部に変わったなんて聞いてないよ! これもランジュさんが勝手にサイトのお知らせを変えたのかな?」

あなた
「このお知らせの最後には、理事長名義で署名がされているから……これがこの学園の正式決定、という事だと思う」

歩夢
「そ、そんな……」

あなた
「ファンのみんなの反応は……」

(私はSNSでスクールアイドル部に対する意見を確認してみた)

30: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:39:06.77 ID:Igc33z1x
「部のハイクオリティな演出で彼方ちゃんのライブを見れる日を楽しみにしています!」

「せつ菜ちゃんのライブがマジで待ちきれないです」

「かすみちゃんのライブ期待!」


あなた
「やっぱり……ファンのみんなにとっても同好会のみんなが、部に所属している事になってるんだ」

あなた
「元から、同好会じゃなくて部だと思われてたりしてから、ファンのみんなが状況を理解していないのは、しかたがない事ではあるけど……」

歩夢
「でも、今の部はランジュさんしかライブしてないよね? そんな事してたら、さすがにファンのみんなもおかしいって気づくんじゃ?」

あなた
「確かに……あっ、それについての質問があったよ!」

31: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:42:25.18 ID:Igc33z1x
「ランジュちゃん以外のライブの予定はありますか? 最近、歩夢ちゃんがライブに出演しないので寂しいです」

ミア・テイラー
「作曲担当のミア・テイラーだけど、ボクのやり方は短くまとめれば、曲を先に作ってそれに最も合う人間を選んでいる。ランジュ以外の人がマッチする曲が作れたら、ボクはその人に歌ってもらうつもりだよ。」

歩夢
「このコメント……本当なのかな?」

あなた
「本心かどうかは分からないけど、あくまで今は曲が無いって名目でファンのみんなは納得してるんだ……」

歩夢
「ど、どうしよう……本当は私達まだ部に入ってないとか、練習もできないってファンの人達に説明した方が良いのかな?」

あなた
「うーん……応援してくれる人たちにはできれば、スクールアイドルフェスティバルの時みたいに要求を出すようなことはやめて、楽しい事を一緒にしたい、って伝えたいと思う」

あなた
「あんまりこういう組織の内側の争いには巻き込むのは、利用するみたいで気が引けちゃうよ」

歩夢
「じゃあ、どうすれば……?」

33: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:46:54.52 ID:Igc33z1x
あなた
「……」

(この学園の、特待生に関する規則は……)

(入学試験と在学中における成績優秀者、規則遵守など模範的生徒、部活動にて優秀な成果を出した者……)


(学園は完全にスクールアイドル部に協力している……つまり、部と敵対するという事は学園と戦うという事。もし、そうなったら、「模範的生徒」という条件に引っかかる可能性が、ある?)

彼方
『彼方ちゃんのわがままをきいてくれるのはあなただけ。彼方ちゃん、あなたから離れないもんね~』

エマ
『わたしも、ここにいたい。わたしのなりたいスクールアイドルには、ここでしかなれないと思うの』

(ダメだ、学園と正面から戦ったら、特待生の彼方さんや留学生のエマさんに何をされるか分からない。生徒に何かするなんて考えたくないけど、監視委員会を許した今の学園なら、何をしても不思議じゃないよね……)
 
(それに、部と本気で敵対してしまったら)


『それに正直、部のやり方に興味があった』

果林
『私はお友達を作りたくて同好会に参加したわけじゃないわ』

(愛ちゃんや果林さんと戦う、傷つける事になるかもしれない。2人にそんなことをする勇気、私には無いよ……)

34: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:49:23.56 ID:Igc33z1x
あなた
「……なるべく表向きはランジュさん達と対立しないようにしながら、ランジュさんが諦めてくれるのを待つしかない、と思う」

歩夢
「……諦めてくれるかな?」

あなた
「分からないけど……こんな案しか出せない、だらしない部長でごめんね」

歩夢
「だらしなくなんかないよ!」

あなた
「……ありがとう」

(私は同好会のみんなを集めて、「部との大きな対立を避け、諦めるのを待つ」という方針を伝えた)
(方針を聞いたみんなは不安そうな表情で、特にかすみちゃんには強く反発された)

かすみ
『何で、かすみんたちがショウ・ランジュなんかと仲良くしなきゃいけないんですか!!』

(同好会発足当初から、困難ばかりでかすみちゃんが嫌がるのは当たり前だと思う。だから、かすみちゃんにはこの方針を強くお願いしなかった。かすみちゃんのためにも早くなんとかしないと……)

35: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:51:21.93 ID:Igc33z1x
(その後、μ'sのみんなに練習場所を貸してもらってゲリラライブというアイディアを実施してみたけど、その結果は)

かすみ
『だってかすみんのライブは、かすみんしかできないもん!……っ』

(かすみちゃんを泣かせ)

しずく
『私……スクールアイドル部に……行こうと思うんです』』

(しずくちゃんが、部に移る事になった)

(……みんなは私が弱音を吐いた時、「あなた」が必要だと言ってくれたけれど)

ランジュ
『アタシ、アナタはいらないの』

(彼女にそういわれたように)

果林
『なんでもかんでも一緒っていうのは違うと思う』

『部は、やっぱりいろんなもののレベルが高いよ。さすがプロ集団って感じ』

(2人に見捨てられてしまったように)

(私は、いらないかもしれない。そんな気持ちが、消える事はなかった)

20章終了

37: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:53:08.46 ID:Igc33z1x
21章 「悩めるしずくのイノセント」

理事長視点


理事長
「これでまずは1人、ランジュの部に来てくれたわ」

理事長
「部長が何もできなくて当然だし、桜坂しずくが何もできない人よりランジュを選ぶのも当然」

理事長
(私は監視カメラに映った部長を眺めながら、満足していた)

あなた
『ランジュさんが諦めてくれるのを待つしかない、と思う』

理事長
「特待生の近江彼方、留学生のエマ・ヴェルデの事を考えたら、部長はもう動けないわよね」

理事長
「もちろん、実際にはランジュが友達になりたがっている2人に、私が酷い事をできる訳がない。でも、この事情を部長が知る事もない」

理事長
「学園中の監視カメラ、職員、スタッフ、こちらの息がかかった生徒、全てを活用して部長の言動を監視、録音しているけれど……」

理事長
「この調子なら、残りの子たちの入部もすぐに達成できそう。ランジュがお友達を連れてくる日が、待ち遠しいわ」

38: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:54:57.12 ID:Igc33z1x
昼休み

ランジュ
「ママ! 今日はランジュの親友がビュッフェに来てくれたの!」

しずく
「うわぁ、ここがビュッフェ会場ですか。色んな料理がありますね」

理事長
「桜坂さん、いらっしゃい」

しずく
「あっ、理事長先生! 理事長先生と一緒に昼食は……中々緊張しますね」

ランジュ
「ええっ、ランジュはそんなこと全然気にしないから、しずくも気にしないでいいわよ!」

しずく
「そ、そうでしょうか?」

理事長
「娘の親友に変なことしたりしないわ、気楽に食べてくれて構わないわよ」

ランジュ
「次のライブでは、しずくが歌う事になってるの! ママも聞いてあげてほしいわ!」
 
理事長
「それは楽しみね、私も時間を作って見に行こうと思うわ」

39: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 00:58:53.18 ID:Igc33z1x
理事長
「桜坂さん、何か部で困っている事はない?」

しずく
「いえ、設備も講師の方もとてもすごくて、部でできない事も、困っている事もないですよ」

ランジュ
「ママ、ランジュの部は最高の環境を整えているんだから、困る事なんてある訳がないじゃない。余計な心配はしなくていいの」

理事長
「はいはい、そうだったわね」

ランジュ
「でもしずく、もし困っている事があれば、なんでもランジュに相談してくれていいんだからね」

ランジュ
「しずくはランジュの親友なんだから、絶対に助けるわ」

しずく
「ランジュさん……ありがとうございます」

理事長
(ふふっ、ランジュに友達ができたようで何よりだわ)


……

(だけど、桜坂しずくは次のライブが終わった後)

(娘を、裏切った)

40: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 01:04:55.67 ID:Igc33z1x
21章終了後、放課後

理事長
「桜坂しずくを生徒指導室に呼び出してちょうだい。何故こんな事をしたのか、必ず吐き出させて」
 
理事長
「部屋内の情報は外には漏らさないから、どんな手を使っても、彼女を泣かせても構わないわ」

教員
「承知し、あっ」

理事長
(ノックもせずに扉を開けて、走りこんできたのは娘だった)

ランジュ
「ママ、余計なことしないでいいって言ったでしょ!」

理事長
「ランジュ、理事長室に入るときは親子でもノックを―」

ランジュ
「それにしずくはランジュの親友なの! しずくに酷い事するなんて、ランジュが許さないんだから!」

理事長
「親友って……あの子はランジュを騙してその気持ちを踏みにじったのよ!?」

ランジュ
「騙されてなんかないわ、しずくはランジュの親友なの! 今日のライブでしずくがあんな事をしたのは……きっと私の部か曲に問題があったんだわ」

理事長
「……ランジュ」

ランジュ
「とにかく、ママは余計なことも、ランジュの親友に酷い事もしないで、約束よ!」

理事長
「……分かったわ。桜坂しずくには手を出さない、約束するわ」

ランジュ
「それでいいの、しずくが戻ってきたらまた3人でビュッフェ食べましょう!」

理事長
「……」

41: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 01:07:31.41 ID:Igc33z1x


理事長
(ランジュには、手を出さないと約束したけれど、私はどうしても、桜坂しずくが何故あんな凶行に走ったのか)

理事長
(彼女の本心を探らずにはいられなかった)

部の臨床心理士
「映像からライブ前後の彼女の言動や行動、表情など様々な観点から心理を検証してみましたが……やはり、桜坂しずくからご息女や部への悪感情は認められません」」

理事長
「悪感情無しに、あんな残酷な事をしたっていう事……?」

部の臨床心理士
「はい、ビュッフェ会場でのご昼食時の映像も検証させていただきましたが、そこで嘘をついていた、という事もまず無いと言えます」

理事長
「部への不満も、ランジュへの不満もない、じゃあ何故?」

42: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 01:11:41.41 ID:Igc33z1x
……
理事長
「同好会に残っている人間で、中須かすみは最もランジュに敵意を向けている。親友の桜坂しずくに命令して、ランジュに攻撃させた……とも考えて、ゲリラライブ前後の映像を見返しているけど」

璃奈
『すっごくすっごく、不安だったんだよ。もう、こんなのやだよ。みんな、仲良しがいい』
しずく
『うん、これからは、意地を張ったりしないようにする。だから、仲良しでいさせて』
かすみ
『えーん、りな子、しず子~~~!』

理事長
「この様子を見る限り、中須かすみがそんな命令をしたとは思えない」

理事長
「ライブ中の「声」がどうこう、この2人は話していたけど、特別な音声や合図はライブ中には確認できなかったわ」

理事長
「私たちが解読できないような暗号の可能性は……無さそうね、中須かすみの成績的に」

43: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 01:16:23.37 ID:Igc33z1x
エマ
『……ふふっ。もう心配ないね』
彼方
『うんうん、美しい友情だね~』
歩夢
『いつもの3人に戻って、本当に良かった』
せつ菜
『じゃあ、改めて、お祝いに行きましょう!』

理事長
「1年生組から見て、先輩の命令なら……と思ったけど、この子たちも桜坂しずくが同好会に戻ることに驚いていた、つまり違う」
理事長
「桜坂しずくが入部した時、私たちと食事をした時は、こんな事をするつもりはなかったのは間違いない」
理事長
「誰なの?桜坂しずくに直前で、ゲリラライブでランジュを裏切るよう指示したのは?」


あなた
『昨日、しずくちゃんと話してて、ちょうどいいかな、って。それで璃奈ちゃんに相談したんだ』

理事長
「……あっ」

あなた
『ゴメンね。みんなには、ライブに集中してもらいたくて』

理事長
「……あぁ、そうか」

理事長
「-お前か?」


21章終了

44: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 01:21:12.85 ID:Igc33z1x
今夜はここまでです

50: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:09:11.86 ID:Igc33z1x
22章 気づいて、小さな声


理事長
「部長は動けない、何もできない、学校に対しては何もできない、だから、ランジュが諦めるのを待つ、なんて消極的な事しかできない」

理事長
「そう思っていた時から、私は部長の術中に嵌っていたのね」

理事長
「部長が選んだのは、積極的にランジュを諦めさせる方法だった!」

理事長
「もし、ランジュの心が折れてスクールアイドル部を諦めれば、それで部長の勝ち」

理事長
「もし、ランジュが桜坂しずくに怒り、手を上げたりすれば、同好会に残っている子は、桜坂しずくを守り、ランジュを更に敵視するようになってすなy」

あなたのクラスメイト(以下、クラスメイト)
「理事長、私は部長を監視する命令をいただく前から、同好会を見続けてきましたが、そんなしずくちゃんを犠牲にするような真似、彼女がするとは思えません……」

理事長
「私も以前はそう思っていたわ、でも、部長から見て目上のエマ・ヴェルデ、近江彼方は無理だとしても」

理事長
「桜坂しずくは下級生であり、これなら犠牲にする行為も「センパイからの命令」で正当化できなくもない」

クラスメイト
「やはり、部長がそんな考え方をするとは思え―」

理事長
「いいえ! 私は部長の危険性を良く分かっているわ!」

理事長
「しずくの件で、ランジュは心が強い子だから大丈夫だけど、作曲家のミア・テイラーは絶不調で部屋に籠る事態になった」

理事長
「部にいる子達の心が破壊されてからでは遅いの!部長が次の攻撃をしてくる前に―」

理事長
「あの子の心を壊すわ」

51: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:11:23.71 ID:Igc33z1x
クラスメイト
「そ、そんな!?壊すだなんて―」

理事長
「いいのよ、ランジュからもあの子についての意見は聞いているわ。あの子は「いらない」のよ」

理事長
「あなたは私の指示に従ってくれれば、それでいいの。あなたが所属する同好会への救済も、学費の援助も私がどうにかするから」

クラスメイト
「……分かりました」



理事長
「方法は、手っ取り早く暴力にするか、それとも脅迫か……」

教師
「理事長、ダメです! これ以上過激な手段を用いては」

理事長
「アナタ、ランジュではなく、あの子の味方をするつもりかしら」

教師
「そ、そうではありません、この学園にとってのリスクが大きすぎるという話です」

教師
「万が一暴行時の映像や音声、脅迫の証拠が漏れれば、学園もタダではすみません」

理事長
「生徒指導室なら、絶対に情報が漏れないはずよ」

教師
「一度ならともかく、何度も呼び出せば、さすがに怪しまれます」

教師
「既に監視委員会の件で危険を冒しているのです、これ以上は……」

理事長
「……分かった、暴力と脅迫は使わないわ」

52: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:13:03.39 ID:Igc33z1x
理事長
「なら、大量の批判であの子の心を折ってしまいなさい」

部の広報担当
「その、理事長……大変申し上げにくいのですが、それも危険かと」

理事長
「……この国には批判罪なんて法律があるのかしら?」

部の広報担当
「以前ならともかく、近年は過激な批判が問題となり、裁判に発展するケースもあります。絶対に安全とは言い切れません」

理事長
「アレも危ない、コレも危ない、いい加減にしてほしいわね。危険を冒さない方法がないなら、やるだけよ」

教師
「鞭ではなく飴で、部長の周りの部員に働きかけましょう。特に部員の中でも、3年生の近江彼方は特待生で、生活に余裕もなかったはず」

教師
「部員を次々と部に引き込んで、部員数が少なくなれば、部長の心も―」

理事長
「ダメよ、ランジュのお友達になる生徒には手を出さない、手を出すのは「いらない」あの子だけ」


理事長
「でも、鞭ではなく飴……これはいい考えかもしれないわ」

教師
「?」

53: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:15:53.59 ID:Igc33z1x
あなた視点

教室

(しずくちゃん、帰ってきてくれてよかったな)

(でも、私は何もできなかった。しずくちゃんが帰ってきてくれたのは、全部かすみちゃんのお陰……)

クラスメイト
「あの……」

(……同好会の部長として、もっとみんなの為に何かしないと)

クラスメイト
「あの……すいません」

あなた
「へっ、わ、私!?」

クラスメイト
「私、気分が悪くて、次の授業休むつもりなんだ、私の代わりに職員室に行って、次の授業で使う資料を運んでもらえない?」

あなた
「職員室? 分かった、私がやっておくから休んでてね」

……

あなた
「ふぅ、引き受けたのはいいけど、凄い量のプリントだよ……」
あなた
「階段を上るのちょっと大変だけど、頑張らないと!」


「えー、…さん、部長に黙って同好会抜けちゃったの、ヤバくない?」

??
「大丈夫、大丈夫! ぶちょーはそんなんで怒る子じゃないってー!!」

54: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:18:32.54 ID:Igc33z1x
下の階段の踊り場から声が聞こえる)

(……周りの環境音で邪魔されてよく聞こえないけど、この声は愛ちゃんに似ている?)


「いやー、相談も無しに退部したら気まずいっしょフツー。私だったら目線合わせらんないわ」

(こっちの声は知らない、愛ちゃんのクラスメイトかお友達かな?)
(……考えないようにしてたけど、私は愛ちゃんに退部されちゃったんだよね)

愛?
「いやいや、ぶちょーは私がスクールアイドルとして活動するのを、楽しみにしてくれてるんだって!」

愛?
「活動場所が同好会から部に変わったからって、スクールアイドルをするのは同じだから、今までと変わらずに応援してくれてるんだよ」

友人?
「マジ? 本人から文句とか言われなかったの?」

愛?
「ないない! ぶちょーは自分の曲で有名にしたいとか、自分の所に留めたいみたいな、そういう自己満足っぽい感情で動いてるわけじゃないんだ」

(……愛ちゃん、私は愛ちゃんが思うような立派な人じゃないよ)

(確かに、私はスクールアイドルのファンとして、愛ちゃんには最適な場所で輝いてほしい。私は応援できれば、それで満足。そういう気持ちもある。)


(同時に、愛ちゃんに私を必要としてほしい、私の曲を歌って欲しい。そういう自己満足のような気持ちだって、私の中にあるんだよ……)

55: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:21:51.89 ID:Igc33z1x
友人?
「じゃあさ、もしその自己満っぽい急に感情をぶつけられたら愛さんはどう思う?」

愛?
「それは、ショックというか、ガッカリしちゃうと思うな」

(……)

(愛ちゃんが本気でそうして欲しいと思っているなら、私は―)

キンコーンキンコーン

あなた
「あっ、チャイム!? 早く教室に資料を運ばないと」

(愛ちゃんの事は、また後で考えよう)

……


(でも、その機会はすぐに訪れてしまった)

56: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:24:11.60 ID:Igc33z1x
(放課後、飲食店で同好会のみんなと打ち合わせをしていると、愛ちゃんが必死な様子で、私達にお願いをしてきた)


「みんな! 助けて!」

(部の作曲担当、ミア・テイラーがスランプになり、行方不明になったそうだ。そして、私達同好会にそのミアちゃんを探してほしい、という事だ)

かすみ
「いやいやいや、なんでかすみんたちが手伝わなきゃいけないんですか? そんな義理ありませんよね?」

(……正直私も、「どうして」私たちに人探しを依頼するのか、それが分からないよ)

【部には最高の人間が揃っているんだよね? その人たちにはお願いしたの?】
【栞子ちゃん含めた生徒会の人達にお願いしてもいいし、愛ちゃんなら友達でもいいよね?】


「義理、はないけど……」

(でも、こんな質問を、気持ちをぶつけたら……)

【同好会の事は助けてくれなかったのに、愛ちゃんは同好会に助けを求めるの!?】

(……こんな醜い考えを愛ちゃんにぶつけたら、愛ちゃんはもう同好会に帰ってきてくれない)

57: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:27:06.06 ID:Igc33z1x
璃奈
「私、手伝う。どうしたらいい?」
しずく
「かすみさん、手伝わなかったら絶対後悔するよ。かすみさん、そういう子だもん」
かすみ
「しず子……」

せつ菜
「愛さんからのお願いなんです、理由なんてそれだけで十分じゃないですか」
エマ
「ミアちゃん、まだ日本に来たばかりだよね? 心細い思いをしているかもしれない、早く見つけてあげよう」
彼方
「みんなで探せば、きっとすぐに見つかるよ」

かすみ
「むぅ、仕方ありませんね」

あなた
「……ぁ」


「みんな、ありがとう!」

(私が考え込んでいる間に、かすみちゃんを含めた同好会の全員が、愛ちゃんを手伝う事を選んでいた)

(そして、私の返事は聞かれなかった。私が首を縦に振るのが、当たり前だから聞く必要はない、というように)

(やっぱり、愛ちゃんが私に望んでいる事は……)

58: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:29:55.48 ID:Igc33z1x

「マジ、感謝してる、もんじゃ焼きおごるからさー!!」

(それにみんなは、私がお願いした「部と仲良くする」方針を守ってくれている)

(その方針、言い出した私が破ったらダメだよね)

(自分の心の汚さが、嫌になっちゃうな)

あなた
「愛ちゃん、ミアちゃんが行きそうな場所に心当たりは?」

……

(この後、璃奈ちゃんがどうにかミア・テイラーを発見する事が出来た)

(更に私たちは監視委員会を演出のように利用する「オンラインライブ」を開催)

(これは多くのファンの人達に楽しんでもらえた)

(そして、ライブの最後にはなんとミアちゃんが出演。璃奈ちゃんと友達になった彼女は、距離が大分縮まった)

(これで部との関係も変わっていくかもしれない、ありがとう璃奈ちゃん)

(でも、この前のしずくちゃんの件も含めて、私は何もできていない)

(何もできないなら、せめて状況を悪くしないようにしないと……)

59: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:32:39.46 ID:Igc33z1x
夜、あなたの自宅

歩夢
「ねぇ、最近大丈夫?」

あなた
「身体は平気だよ、スクールアイドルフェスティバルの時と違って、忙しくて困っている訳じゃないから」

歩夢
「じゃあ、気持ちの方は?」

あなた
「うーん……部との関係は悩みの種だけど、璃奈ちゃんのお陰で一歩前進した気はするよ」

歩夢
「やっぱり、部の事は悩むよね」

歩夢
「ねぇ、あなたに何かあったら一人で抱え込まずに、私たちを頼ってほしい、そう言ったの覚えてる?」

あなた
「もちろん! でも、スクールアイドルフェスティバルの時みたいに人手が必要というよりは……」

歩夢
「ランジュちゃんをどうするかって話だもんね……ごめんね、頼ってほしいなんて言ったくせに」

歩夢
「結局、私達だけじゃどうにも話をまとめられなくて、あなたの力になれなかった」

あなた
「いやいや! 私もランジュさんとは全然上手く話せないし、何とかしてくれようとした気持ちだけで嬉しかったよ」

歩夢
「……ごめんね」

あなた
「歩夢ちゃん……」

60: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:35:28.77 ID:Igc33z1x
22章終了後、理事長視点

プロ声優
「こんな感じ、かしら?」

部のコーチ
「朝香果林の声はもうちょっと低い感じで……」

理事長
「やっぱり、最も声質が近い人物と、最高品質の変声機があれば、誰の声であっても、ある程度は再現できた」

クラスメイト
(お金持ちで大物なのに、やることがせこい、卑劣ですよ……)

プロ声優
「仕事なので頂いた映像の人物に、似せるよう全力は尽くしますが、どうしても別人だとバレてしまう時はあるかと」

理事長
「実際に部長が聞くときには周りの音も入るから、聞き分けるのは無理よ。あなた達は、こちらの指定した役を演じてくれればいいわ」

プロ声優
「はぁ……」

理事長
「暴力や脅迫では万が一発覚した際のリスクが高い。誹謗中傷も同じ。だけど、部を褒める言動はバレたところでリスクにならない。しかも、演じる人間の良心も傷まない、我ながらいいアイディアだったわ」

クラスメイト
(どこが良いアイディアなんですか……)

61: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:38:20.86 ID:Igc33z1x
理事長
「それにしても、部長はまだまだ元気みたいね。オンラインライブを開催するなんて」

理事長
「映ってしまった監視委員会は、演出や設定の一環。そういう意見を多く発信して、どうにか流せたけど」

部のコーチ
「しかも、作曲家であるミア・テイラーを出演させるとは……」

理事長
「その件はどうしようかしら……部長と仲良くなったら問題だけど、天王寺璃奈と仲良くなったと思えば、まぁいいでしょう」

理事長
「それにしても自分で桜坂しずくに、ミアちゃんをスランプに追い込む行動指示したくせに、そのスランプを天王寺璃奈に解消させ、友好関係を作るなんて」

理事長
「卑劣な人間ね……でも、これ以上は何もさせないわ」

理事長
「ランジュと部は私が守ってみせる!」

……

62: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:41:47.62 ID:Igc33z1x
23章 愛さんプロデュース! 合同イベント! 前編


理事長室

理事長
「ランジュが、監視委員会を解散するように命じた……?」

栞子
「はい、同好会のオンラインライブを見て、監視には効果が無いと認識したようなので」

理事長
「待って、ライブに効果がなくとも、練習や会議に対する監視は効果があるはず」

栞子
「そうですね、同好会の皆さんは相当困っていましたから」

理事長
「ちょっと、分かっていたならランジュにそうアドバイスしても良いじゃない!」

栞子
「理事長、私はかつてこう言ったはずです。監視委員会はやります。ただし、それ以外の助言はランジュに対して行わない」

理事長
「確かに、私からもう栞子ちゃんに命令することはできない。でも、栞子ちゃんが自発的にランジュを助ける分には、問題ないわよね?」

栞子
「それも、しません」

理事長
「長年の付き合いがある幼馴染を、友達を想う気持ちが無いと?」

栞子
「ランジュを想う気持ちはありますが、同様に同好会の方々を思う気持ちも私にはあります」

理事長
「どちらかに肩入れする事は、したくありません」

理事長
「もう、堅物なんだから。まぁ、後は私の方でどうにかするから、ランジュの言った通り監視委員会はもうしなくていいわ」

栞子
「そうですか、では失礼します」

栞子
(……『私の方で?』)

63: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:45:04.12 ID:Igc33z1x
~あなた視点~

(ミアちゃんと璃奈ちゃんが仲良くなってから数日後)

(私たちは栞子ちゃんから、監視委員会の活動停止の連絡を受け、練習とライブが自由にできる事となった)
 
(部室は、相変わらずないから、練習は屋上なんだけど……)


『スクールアイドル部と同好会の校内合同イベントについて!!』

(そして、愛ちゃんから「同好会と部による合同イベントを開きたい」というプレゼンを受けた)

(ただ、そのプレゼンの中で愛さんは、部への移籍理由について「同好会のみんなと戦って勝ちたい」そんなことを言っていた)

(私が帰国した日に愛ちゃんから訊いた理由は


『練習だけでもしておきたい』『部の事を知らずに否定したくなかった』

の2つだったはず。さっき聞かされた「勝ちたい」気持ちは、私は初耳だったし、留学前にもそんな素振りは無かった気がする)

(これは、ランジュさんがその場にいるから、彼女に対する表向きの理由、という事なのかな?)

(……この理由は嘘か本当か分からないから、今考えても仕方ない、合同イベントに集中しよう!)

64: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:47:48.38 ID:Igc33z1x
エマ
『……ごめんね。ランジュちゃんたちとは同じイメージを共有できないから、きっとわたし、満足のいくパフォーマンスができないと思うんだ。応援してくれる人たちには、そんなわたしを見せられないよ』

(そういって、エマさんは辞退し、歩夢と彼方さんも今回は遠慮する形になった)

(確かに、ランジュが、部に行った2人が何を考えているか、私はまるで分かっていない)

(でも、このトーナメントで勝つ事が出来れば、ランジュさんが諦めるかもしれない)

(逆に部が勝てば、ランジュさんは更に部が正しいと確信してしまう)

(同好会が勝てるよう、私も部長として全力を尽くさないと!)

65: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:50:52.40 ID:Igc33z1x
放課後、屋上

(よし、今日もみんなのパフォーマンスを見て、気になったところをノートに書きこもう)

クラスメイト
「あの、あなたミア・テイラーと同じ部なんだよね?」

あなた
「えっ、あっ、私は同好会の部長で、ミアちゃんは部に所属してて」

クラスメイト
「これ、この前のミアちゃんのライブを見て、ファンになった私達からのプレゼント。ミアちゃんに渡してあげて」 

あなた
「ええっ!? いや、確かに前の同好会のライブではミアちゃんが出たけどあれは特別で、それにそういうプレゼントは部の正規な窓口に―」

あなた
「行っちゃった……どうしようこのプレゼント」

かすみ
「先輩~誰宛てですかぁ、そのプレゼント? って、ミア・テイラー宛じゃないですか!」

せつ菜
「まぁ、同好会のオンラインライブに出演していましたから、あれを見た方が間違えるのも仕方ないかと」

璃奈
「私が、ミアさんに、渡してこようか?」

あなた
「璃奈ちゃんには練習もしてほしいし、私が運ぶよ」

あなた
「ごめん、みんなちょっと抜けるね。すぐ戻ってくるから!」

66: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:54:00.79 ID:Igc33z1x
スクールアイドル部、部室前
あなた
「うーん、部室の前まで来たけど、このプレゼントはどこに置けばいいのかな?」

あなた
「部屋の中は……」

??
「ご指導、ありがとうございました」

(わっ、部室の壁を通して僅かに声が聞こえる。この声は……果林さんかな?)

???
「何かレッスンについて、もっとこうしてほしい、というような要望はあるかしら?」

(こっちの声はコーチの人だよね、果林さんが練習中みたいだから、部屋には入れないかな)

果林?
「部の練習で不足している事もできない事もありません。ここではダンスも歌も、プロの優れた方たちに指導していただけるので」

果林?
「私、部に来て本当に良かったと思っています」


(……)

(当たり前じゃない、何を苦しんでるだろう、私は)

67: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 20:57:03.82 ID:Igc33z1x
コーチ?
「それは良かったわ。はい、これボイストレーナーからの指摘事項ね」

果林?
「ありがとうございます。指摘事項は、いつも分かりやすく書かれているので、読む側としても助かってます」

(指摘事項……つまり、これは私の)

(こんな事やっても苦しくなるだけ、と分かっているのに、私は自分の持っている練習ノートを、見つめずにはいられない)

コーチ?
「ちなみに、部に来る前はどんな風に練習を見てもらっていたの?」

果林?
「同好会では、練習を見てくれたのは部長の子です。その子は練習ノートっていう記録をつけて、気になった事を書いていました」

(果林さんとコーチの人のその言葉を聞いてしまい、私は練習ノートからもう目を離せない)

コーチ?
「もし、その練習ノートの方が優れている点とか、今の指摘事項に欠けている点があれば是非教えてほしいわ、こちらも今後に参考にしたいから」

果林?
「そんな点ありませんよ。その子はどうしても素人ですから、プロの方がしてくださる指摘の方が、質も分かりやすさも上です」

(これは、当たり前の事を言っているだけ。果林さんの言う通りだよ)

(素人の私が書いた練習ノートなんて、プロに勝てるわけないじゃない!)

68: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:00:59.94 ID:Igc33z1x
コーチ?
「それ、部長の子が聞いたら傷つくんじゃない?」

果林?
「あの子はそんな子供じゃありませんよ。自分のノートより、プロの指導が優れている事なんて理解しているはずです」

(そう、私はプロには勝てない。だから、本気でスクールアイドルに熱意を注ぐ果林さんは)
 
(何も間違っていない、何も間違っていない、何も間違っていない!)

【練習ノート、果林さんの分はもういらないね……】

(こんな汚い私の気持ち、スクールアイドルの邪魔をするこんな気持ちは-)

栞子
「部に何か御用ですか?」

あなた
「ひゃっ!?」

69: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:02:56.77 ID:Igc33z1x
栞子
「そ、そんなに驚かせてしまいましたか、申し訳ありません。深刻な表情で部室の前に立っているものですから、心配になって」

栞子
「もしかして、何かランジュや部の人間に言われましたか?」

あなた
「だ、大丈夫だよ! 誰にも何も言われてないから! これ、ミアちゃんに届けておいて、それじゃあ私戻るね!」

栞子
「あっ……」

(私は急いで部室から屋上に戻り、練習を続けた)

(でも……私の練習ノートにどれだけの意味があるのだろうか?)

(白紙のまま更新されない、果林さんと愛さんのページを見ながら、私はそう思った)

70: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:07:01.09 ID:Igc33z1x
理事長視点 スクールアイドル部の部室

栞子
「……部室の入り口で何をしていたのですか、あなた方は?」

プロ声優1
「……」
プロ声優2
「えーっと……」

栞子
「ランジュが集めたスタッフではないようにお見受けしますが? もし、不法に侵入したのであれば、通報させていただきます」

理事長
「その人たちは私のお友達よ、栞子ちゃん。今日は生徒会の仕事で遅くなるって思ったけど

栞子
「理事長先生……今日は確かに生徒会の仕事をする予定でした」

栞子
「ですが、生徒会の2人から、イベントに備えて練習に集中するよう言われ、こちらに向かったのです」

理事長
「そうなの、じゃあ練習頑張ってね! 私達はもう失礼するから」

栞子
「……ここで先ほど、同好会の部長に何か暴力や脅迫などの、許されない行為をしたのではないですか?」

理事長
「私は、暴力も脅迫もやってないわ、気になるなら部室前に設置した、監視カメラの映像を見てもいいのよ」

ランジュ
「栞子やっと来たのね! 早く着替えてトレーニングルームに行きましょう!」

栞子
「あっ、ちょ、ランジュ!無理やり引っ張らないでください!」

理事長
「ふふっ、2人とも練習頑張ってね」

71: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:11:31.34 ID:Igc33z1x
……
翌日 放課後


理事長室

理事長
「さて、次の合同イベントはいくら私でも、生徒全員の票を動かして勝敗を決めるのは無理だけど」

理事長
「曲の質、演出の質、練習の質以外にも、同好会は監視委員会で練習量すら部に劣っている」

理事長
「万に一つも負けはないわね、無問題ラ!」

部のコーチ
「理事長、次の合同イベントについてですが、先ほど部室で行われたイベント準備の中で、気になる会話がありました」

理事長
「気になる? 誰のどんな会話かしら?」

部のコーチ
「上原歩夢がμ'sとAqoursを招待する案を出し、宮下愛がそれに賛同していました」

理事長
「えっ、μ'sとAqoursが合同イベントに!?」


理事長
「人数は合わせて20人以下、仮に票が全て同好会に入ったとしても、勝敗は揺るがない、と思うけど……」

理事長
「あなた! この2つのグループ、確か同好会の部長と親交が深かったわよね?」

クラスメイト
「……はい、先のスクールアイドルフェスティバルの前から、部長とは交流が続いているようです」

理事長
「同好会の部長と親密な関係にあり、更に私が干渉する事は不可能な外部の人間……桜坂しずくの件を考えると、彼女たちをイベントに招くのは―」

理事長
「ランジュと部にとって、間違いなく危険よ!」

クラスメイト
「……また部長に対して何かするんですか?」

理事長
「ええ、今すぐ部長の方に干渉して、μ'sとAqoursの招待を止めて」

72: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:14:35.13 ID:Igc33z1x
あなた視点


あなた
「……はぁ」

(今日は愛ちゃんから部室に呼ばれて、合同イベントの設営を手伝ってきたけど)

(そこで、ランジュさんと会っちゃって)

ランジュ
『存在感が無さ過ぎて、気づかなかったわ』

ランジュ
『あなたみたいな素人はいらないの、帰っていいわよ』

(ランジュさんから私への意識は、初めて彼女と話をした日より、敵意が増していた)

(でも、彼女もうまくいかなくて、イライラしているという事だろうか?)

あなた
「いやいや、今は合同イベントに集中する時だよ!」

クラスメイト
「ねぇねぇ、次の合同イベントにAqoursとμ'sも来るって本当?」

あなた
「えぇっ!? な、なんでそれを知ってるの?」

(愛ちゃんか歩夢ちゃんが誰かに話しちゃったのかな?)

73: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:18:14.00 ID:Igc33z1x
クラスメイト
「なんか噂でそう聞いたよ。それで、これは本当なの?」

あなた
「まだ正式に招待はしていなくて、どうするか考えている段階なんだ。あと、来てもらうとしても、ライブとかはの出演は無いと思うよ」

クラスメイト
「なんだ、じゃあ来ても来なくてもAqoursとμ'sのライブは観られないんだね」

あなた
「うん、そういう事になるかな」

クラスメイト
「ねぇ、審査員ってことは、ランジュちゃんのライブも審査するんだよね? 学内だけじゃなくて、2つのグループからも評価されたら、もうランジュちゃんは最強スクールアイドルなんじゃない?」

あなた
「そ、そうなるのかな……?」
(私はそうなったら、困るんだけど……)

クラスメイト
「あっ、でもAqoursとランジュちゃんはちょっと相性悪いかも」

あなた
「Aqours? どうしてランジュさんとAqoursの相性が悪いと思ったの?」

クラスメイト
「うちのスクールアイドル部って、結構お金にモノを言わせてるっていうか、理事長の娘って立場と財力をフル活用してるじゃない? あとまぁ、あんまり大きな声じゃ言えないけど、学校全体の事は考えてなさそうだよね」

あなた
「そ、そうだね」

クラスメイト
「でも、Aqoursは地域を大事にしているというか、学校や地元に対する愛があるイメージじゃない?」

あなた
「うーん、確かに……」

クラスメイト
「そういう、学校とか地域に対する考え方で、合わなさそうだなーって思った」

あなた
「な、なるほど……」

クラスメイト
「それか、ランジュちゃんの方からAqoursとμ'sを自分の部に勧誘しちゃうかもしれないね」

クラスメイト
「ねぇ、あなたはどっちだと思う? ランジュちゃんへの評価」

あなた
「それは……」

74: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:21:29.09 ID:Igc33z1x
クラスメイト
「ランジュちゃん大絶賛?」

(私は帰国した時、どちらのグループにも同好会の状態について伝えてある。だから正直ランジュさんへの印象は、あまり良くないと思う)

(でも、ランジュさんのスクールアイドルとしてのパフォーマンスと同好会との状態を別だと考えれば―)

(私も、ランジュさんのライブはすごいと思えるし、μ'sとAqoursのみんなが高く評価する可能性は、あるかもしれない)

穂乃果
『穂乃果、ランジュちゃんのパフォーマンスに感動しちゃった!』

(っ! これは、正直キツイかな……想像しただけで胸が苦しいよ)

クラスメイト
「それとも大喧嘩コースかな?」

(大喧嘩……Aqoursの誰かが喧嘩するとしたら……)


ダイヤ?
『今の試合は、同好会の勝利と判定させていただきますわ』

ランジュ
『はぁ!?』

ダイヤ?
『あなたのパフォーマンスは学園や地方の特色を無視し、親の資金を利用しすぎています。これではスクールアイドルとして、ブッブーですわ!』

ランジュ
『ブッブーって何よ、あなた豚なの?』

ダイヤ?
『』ブチッ


(これはこれで、学校同士の大きい問題に発展しちゃいそうだよ)

(それに、部に移籍している果林さんや愛ちゃんにも、悪い影響が出るかもしれない)

(みんなをランジュさんとの今の状態には、巻き込みたくないな)

75: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:24:51.12 ID:Igc33z1x
(もしかしたら、私の心配は的外れで、冷静かつ公正にパフォーマンスだけを審査してくれるかも)

(ただ、ランジュさんから、来てくれたみんなに何かやる可能性まで考えたら……)


ランジュ
『みんなすごいわ! こんなにすごいスクールアイドルが他にもいたなんて! みんなランジュの部に来て一緒に活動しましょう!』

にこ
『行くわけないでしょうが! 大体、所属している学校が違うじゃない』

ランジュ
『大丈夫よ、ママに頼んで学園を買収して、統合してもらうわ』

ルビィ
『浦女が、買収!?』



あなた
「……どれも困るかも」

クラスメイト
「あっ、ごめんね、あなたを困らせるような質問をしちゃったみたい」

あなた
「ううん、むしろ呼ぶ前に気づけて良かったというか」

クラスメイト
「……本当に、ごめんなさい」

あなた
「? そんなに謝るような事じゃないよ、大丈夫」

76: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:27:53.66 ID:Igc33z1x
夜 通学路

あなた
「歩夢ちゃん、μ'sとAqoursの合同イベントへの招待はまだだったよね?」

歩夢
「うん、もうお願いした方が良いかな?」

あなた
「いや、今回は呼ばない事にしようと思うんだ」

歩夢
「ど、どうして!? みんなきっと喜んできてくれると思うけど」

あなた
「理由は……私が臆病だからかな」

あなた
「ランジュさんが肯定されるのを見るのも怖いし、否定されて大喧嘩になるのも怖いんだ」

あなた
「それに、ランジュさんが招待したみんなに何かするのが、一番怖い」

歩夢
「……こんなのあなたらしくないよ」

歩夢
「あなたなら、ランジュさんが何かとんでもない事をしても、みんなを守るって、そう言うと思っていた」

あなた
「……そうだね、同好会を守れていたら、そう言ってたかも」

歩夢
「あっ……」

77: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:33:38.69 ID:Igc33z1x
あなた
「同好会を無くそうとしていた時の栞子ちゃんみたいな感じなら、なんとか話をしてお互いの意見をすり合わせる事が、できると思う」

あなた
「でも、ランジュさんにはそもそも話をするのが難しい。留学から帰ってきた時に話をしようとしたけど、取り付く島もなかった」

歩夢
「そうだね、私もランジュさんと話をするの、難しく感じるよ」

歩夢
「たまに会った時、私達には「あなた」が必要だって、どうにか説明しようとするんだけど『部に来れば、最高の環境があるから、無問題ラ!』って返されて終わっちゃうの」

あなた
「す、すごく想像できる……」

あなた
「歩夢の言う通り、私が留学前みたいにできていない、なんだか弱気になっている、のはそうだと思う」

歩夢
「ううん、こっちこそ何もできてないのに、偉そうな事を言ってごめんね」

あなた
「……もう、この合同イベントで、終わりにしよう」

歩夢
「うん、早く今の状態がなんとかなるといいな……」

78: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:37:12.51 ID:Igc33z1x
24章 愛さんプロデュース! 合同イベント! 後編

(愛ちゃんが提案する合同イベントの日がついに来た)

(組み合わせは事前に発表されていて、勝ち抜きトーナメント形式だけど、なるべく部と同好会が戦う形に調整されるらしい)

(このイベントにおける部と同好会の関係については、同好会時代から活動していたせつ菜ちゃんチーム、部に昇格とほぼ同時にやってきたランジュさんチーム、という扱いだと学園の公式サイトには記載があった)

(私は同好会のみんなが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、全力で応援しよう!)




……

お昼休み

あなた
「ふぅ……」

(午前に行われた、1回戦の結果は「引き分け」と言っていいと思う)

(勝ち残れたのは、かすみちゃん、せつ菜ちゃん)

(そして、残っている部のメンバーは愛ちゃんと……ランジュさん)

(愛ちゃんとランジュさんが次でぶつかるのかと思ったけど、そこは調整されて、愛ちゃんとせつ菜ちゃん、ランジュさんとかすみちゃん、の組み合わせになるそうだ)

ランジュ
『いつでも戻ってきていいんだからね~~~~!!』

(ランジュさんは、しずくちゃんにそう言い切った)

(その時のランジュさんの笑顔は、怒りや悲しみを抑えている、風には見えなかった。本当に彼女は、同好会の子達を高く評価していて、純粋に心からそう思ったんだろうな)

(そんな彼女に比べて、私は……)

79: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:41:12.42 ID:Igc33z1x
(もう1つ、気になる事は)

彼方
「果林ちゃん、大丈夫かな~?」

せつ菜
「落ち込んでいなければ良いのですが」


(私は裏で設営の手伝いをしていたから、見逃しちゃったけど、果林さんはかすみちゃんに大敗したと聞いている)

(私が留学する前の状態では、果林さんとかすみちゃんにそこまで差はない)

(もちろん、私はかすみちゃんが勝てるよう全力で練習を見たけど、果林さん相手なら接戦にはなると思ってた)

(それなら、あの2人に大差がついた原因は―)

果林
『私のパフォーマンスで引きつけてあげる』

(果林さんの方、という事)

(ライブ前に話したとき、エマさんの事を気にしていたけど、それ以外は不調には見えなかった)

(果林さん、どんなライブをしたんだろう?)

(そして、今どんな気持ちなんだろうか? 心配だなぁ。でも、食事に誘っても断られちゃった)

ランジュ
「あら~、かすみったらランジュのことそんなに気になるのね! まあ当然よね、ランジュですもの♪」

(……果林さんには悪いけど、今は、合同イベントに集中しよう)

(ここで、ランジュさんに勝って、同好会のやり方を認めてもらうんだ!)

80: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:44:19.50 ID:Igc33z1x

かすみ
「うわ~ん、負けちゃいました~、しかも大差で~!」

せつ菜
「ううう~……負けましたー!」


……

合同イベント終了後 イベント会場


(私はとんでもない間違いをしてしまった)

あなた
「ごめんなさい、せつ菜ちゃん、かすみちゃん」

あなた
「ごめんなさい、璃奈ちゃん、しずくちゃん、歩夢ちゃん、エマさん、彼方さん」

81: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:48:18.33 ID:Igc33z1x
かすみちゃんもせつ菜ちゃんも、ランジュさんには勝てなかった)

(でも、それは能力の差が原因じゃない)

(2人のパフォーマンスに、余計なモノが入ってしまったからだ)

かすみ
『にっくきショウ・ランジュをボッコボコにしてきます!』

せつ菜
『任せてください。皆さんのために、同好会のために、絶対に勝ってきます!』


(ランジュさんという存在を、同好会と部という関係、対立を意識させてしまった)

あなた
「2人が全力を発揮できなかったのは、全部私のせいだ……」


(今日までに、私が問題を解決できていれば、2人は満足のいくパフォーマンスができた)

(かすみちゃんがランジュさんを強く意識しているのは、普段から分かっているのに、何もできなかった)

(せつ菜ちゃんには「同好会と部の戦い」を背負わせてしまった)

(もっとちゃんと力を抜いて、優木せつ菜個人として自由にパフォーマンスさせてあげられなかった)

(かすみちゃんが負けた時に、それは分かっていたはずなのに、次のせつ菜ちゃんにしっかり伝えられなかった)

あなた
「全部、全部私のせいだ」

82: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:53:13.03 ID:Igc33z1x
??
「あ、あの~大丈夫?」

あなた
「あ……愛ちゃんのお姉さん」

美里
「えぇ、久しぶりね」


美里
「その、今日の合同イベントお疲れ様」

あなた
「あ、ありがとうございます」

美里
「……」

(気まずい空気が流れる……)

(以前は美里さんと一緒に愛ちゃんの事について考えたりしていたけど、今はもう愛ちゃんは、私のところにはいない)

83: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 21:56:06.93 ID:Igc33z1x
美里
「愛ちゃんが同好会を抜けた事、恨んでたりする?」

あなた
「まさか、そんな恨みだなんてありませんよ!」

美里
「良かった、それを聞けて安心した」

美里
「愛ちゃんも、同好会では自分の願いが叶えられないから、同好会を抜けて部に行ったわけだけど」

(……願い?)

美里
「同好会の部長さんが、愛ちゃんの「みんなと本気で勝負したい、勝ちたい」ってお願いを叶える事ができないのは愛ちゃんも分かっていると思うの」

美里
「愛ちゃんが勝ちたい子も、部長さんにとっては同好会でサポートしているアイドルの1人だし、そもそも勝負に興味がない子もいるでしょうし」

(これは、合同イベントのプレゼンで聞いた愛ちゃんの移籍理由と同じ…?)

(愛ちゃんが家族同然の美里さんに嘘をつくとは思えない、これは本当の事?)

84: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 22:00:21.86 ID:Igc33z1x
美里
「だから、別に願いを叶えてくれなかった部長さんの事、愛ちゃんは悪く思ってないのよ。部長さんも愛ちゃんを悪く思ってない事が分かって、ちょっと安心したわ」

あなた
「……あの、1つ確認させてください。愛ちゃんが、一番勝ちたいと思っている子は、誰だか聞いていますか?」

美里
「せっつー、優木せつ菜ちゃんよ」

あなた
「……!」

美里
「他には勝率では近江彼方、応援サイトのランキングでは中須かすみ、って子にも勝ててないって聞いてるわ。みんな部長にとっては大切な部員だから、贔屓はできないわよね」

あなた
「……ぁ」

美里
「ぶ、部長さん大丈夫?すごく顔色が悪くなったけど…………まさか今の話、愛ちゃんはまだ部長さんにー」

あなた
「だ、大丈夫ですよ! 愛ちゃんからは移籍前にちゃんと聞いてますから。美里さん、今日は合同イベントにお越しくださり、誠にありがとうございました!」

美里
「そ、そう? それならいいんだけど……こちらこそ、素晴らしいライブを見せてもらったわ、ありがとう」

85: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 22:04:01.87 ID:Igc33z1x
……

(愛ちゃんの部への移籍理由は、全部本当だったんだ)

(その理由の全部を、私は留学前にも、返ってからも愛ちゃんから聴くことができなかった)


『勝ちたかった…。勝ちたかったな~……。こんなに勝ち負けにこだわったのは生まれて初めて』

(愛ちゃんは涙を流すくらい、その思いは強かったのに)

(気付きも、想像も、何もできなかった私……)

(悪いのは愛ちゃんから相談されなかった、相談しようと思ってもらえるだけの努力が足りなかった私だ)

[どうして、部に移籍する前に私に相談してくれなかったの!?]

(……違う、こんな言葉を愛ちゃんにぶつけるのは間違ってるし、思うのも間違ってる)

[私なりに、みんなからの意見はできるだけ、実現してたつもりなんだけどな……]

(私は同好会のみんな、その1人1人の希望を叶えている、つもりだった)

(でも、これは私の自惚れだったんだ。だって、愛ちゃんは私に相談できずに同好会を移籍し、かすみちゃんには「裏切者」呼びされる事になったんだから)

86: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 22:06:34.74 ID:Igc33z1x
(私は、同好会のみんなが満足するコーチや設備などの環境を用意できない)

(1人1人のお願いを聞いて、それを叶える事もできない)

(同好会と部の問題を解決できず、みんなを目の前のライブに集中させることもできない)


(それなのに、弱音を吐いてみんなを心配させたり)

[愛ちゃんは私の事、どう思ってたの!?]

(汚い気持ちに負けてみんなを悩ませて、スクールアイドルとしての活動を邪魔するなんて、絶対に嫌!)

(こんな汚い、みんなの障害になる、私は)

(いらない)

87: (もんじゃ) 2021/08/08(日) 22:09:39.57 ID:Igc33z1x
少し休憩します
スクスタの本編と大幅に展開が変わるのは、かなり後半になってしまいそうです

93: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:36:20.64 ID:zHvlr8QS
25章 私のままで、もっと高く


理事長視点

ビュッフェ会場

ランジュ
「今日はこの前のイベントの祝勝会よ、部のみんなでお祝いしましょう!」


「イエーイ! みんな盛り上がっていこー!」

栞子
「……」

果林
「……」

ミア
「もう部屋に戻っていい? 璃奈とゲームしてたんだけど」

理事長
「おめでとう、ランジュ」

ランジュ
「ありがとう、ママ!」

ランジュ
「でもママは帰っていいわよ。部員でもスタッフでもないでしょ。拜拜」


「まぁまぁ、祝勝会の人数は多くても困らないっしょ」

94: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:38:04.07 ID:zHvlr8QS
ランジュ
「とにかく、これでランジュの用意した部の環境の方が優れている、って同好会の子達にも分かったでしょう。それに、ファンのみんなにも部の方が良いって伝わったわ!」

栞子
「どうでしょうか、SNSを見ると同好会のパフォーマンスや曲も高く評価されているようです。部への友好的な意見と、数は同じくらいですよ」

ランジュ
「ウェイシェンマ(どうしてよ)! 決勝戦でみんながランジュに投票して、ランジュが優勝したじゃない!」

栞子
「確かに優勝はランジュでしたが、私は1回戦で負けましたので」

理事長
「……まさか栞子ちゃん、あなたわざと負けたんじゃ?」

栞子
「そんなことをしては、来ていただいた方や、応援していただいた方に失礼なので、全力でやらせていただきました」

ランジュ
「ママ、栞子に失礼なこと言わないで、栞子はそんなわざと負けたりする子じゃないわ! 全力でライブして負けたのよ!」

理事長
「そ、そうよね。ごめんなさい栞子ちゃん、失礼な事を言って」

栞子
「……本当に人を怒らせる天才というか、適性があるというか」

95: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:40:42.14 ID:zHvlr8QS
栞子
「ランジュが言ったように、部に所属する私は全力で挑んで負けました。つまり、ランジュにとっては部が最高の環境かもしれませんが、他の人間にとって最適な場所とは限らないのでは?」

ランジュ
「限るわよ」

栞子
「その自信はどこから来るのですか……」

ランジュ
「だって、栞子は生徒会の仕事があるとかで、あんまりトレーニングルームに来ないじゃない。つまり、練習不足で負けたのよ」

栞子
「……聞きますが、監視委員会などという組織を作り、それに生徒会の人員が回され、そのお陰で生徒会の人手が足りず仕事が溜まり、放課後に私がそれを処理するために練習に参加できなくなった、その原因は誰でしょうか?」

ランジュ
「監視しなきゃいけなくなったのは、同好会部長のあの子が、みんなをひどい環境に束縛しているから。結局、全部あの子のせいよ!」

栞子
「あ、あなたという人は……!!」


「あはは、ディベートが得意なしおってぃーでも、ランジュには「惜し」くも通用しないみたい。しおってぃーだけに」


果林
「……」

96: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:42:59.86 ID:zHvlr8QS

「アタシは、部に来て良かったって思ってるよ!前はせっつーに遠く及ばなかったけど、本気でぶつかり合って接戦になるぐらいには、成長できたわけだしね」

ランジュ
「愛、ありがとう!」

理事長
「よかったわね、ランジュ」

理事長
(……まさかとは思うけど、この宮下愛も桜坂しずくのように同好会から何か指示されている、って事はないわよね?)

果林
「……」

理事長
(朝香果林がさっきから黙っていて、表情も笑顔が無い。もしかして、実は何か企んでいて、そのせいで緊張している?)

理事長
(ランジュの安全の為に、少し探りを入れてみましょう)

理事長
「ねぇ、あなたはどう? この前の合同イベントを通して、「部に入って良かった」そう思えた?」

果林
「え、えっ!? 私、ですか?」

ミア
「うわっ」

97: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:45:25.08 ID:zHvlr8QS
果林
「……私は、一回戦で負けました」

理事長
「……そういえば、栞子ちゃんと同じ結果だったわね。モデルのお仕事とかで練習が足りなかったのかしら?」

果林
「練習は、いつも参加しています」

ランジュ
「そうよ、果林の熱意はランジュもすごく評価してるわ」

理事長
「うーん、じゃあ練習の中身が良くなかった?」

果林
「いえ、部の練習や、設備には、何の不満もありません……」

理事長
「じゃあ、何で負けちゃったのかしら?」

果林
「……わ、私が聞きたいです」


栞子・愛・部のスタッフ
「「「……」」」

98: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:48:48.01 ID:zHvlr8QS
ミア
「ベイビーちゃんが子犬ちゃんのために用意した曲が、ボクが果林に作った曲より優れてたんだよ。ボクは曲から先に作っているから、できた曲の中で一番果林にふさわしい曲を渡した」

ミア
「でもその曲は果林にとってはBESTな曲ではなかったのかもしれない。同好会はベイビーちゃんが、人に合わせて曲を作っているから、子犬ちゃんにとってはやりやすかったはず」

ミア
「作曲家としては、今回の合同イベントは勉強になったよ」


「ミアチ~!! 良い言葉でまとめるじゃん! 同好会の良いところは、どんどん学んでいかないとだよね!」

栞子
「……そうですね、私も敗北から多くを学びたいと思います」


ランジュ
「そんなことないわ! あの子の作った曲は空っぽで、ミアの曲の方が全てにおいて優れていた。同好会が勝ったのはパフォーマーの問題よ!」

ミア
「……Oh my gosh」

99: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:51:26.07 ID:zHvlr8QS
果林
「……私は、負けたパフォーマーだけど、ランジュから見たら私は、どうして負けたと思う?」


「も、もうやめときなって、カリンすごく辛そうじゃん」

果林
「これは私の、問題よ。愛こそ、私のライブを見てどう思ったの?」


「アタシは……次のせっつーとの試合の事で頭の中埋まっちゃって、カリンのライブにはあんまり集中できてない、ごめん」

果林
「別に謝らないでいいわ。私も、愛の試合を見る前に、部屋に帰ったから、愛のライブは見てない」


「……」

果林
「それで、ランジュの考えは?」

理事長
「ランジュ、ここはちゃんと考えて返事をするのよ」

ランジュ
「ママに言われなくたって分かってるわよ! 果林、あなたが負けた原因は―」

一同
「……」

ランジュ
「ランジュ、正直分かんないわ」

101: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:53:43.66 ID:zHvlr8QS
果林
「……私がかすみちゃんに劣っているのに、何が劣っているか分からないって、そう言うの?」

ランジュ
「ランジュといえでも原因は分からないの。ただ果林がここからどうすれば良いのか、その解決策は分かってるわよ!」

果林
「……もし答えがあるなら、聞くわ」

ランジュ
「ずばり、もっとランジュに近づく事よ!」

ランジュ
「果林は、完璧なスクールアイドルであるアタシに近づこうと必死に練習している。でも、まだランジュと完全に同じように、ライブでのパフォーマンスができるほどじゃないわ。だから、果林はまだ成長途中、幼虫なのよ」

ランジュ
「ランジュと同じくらい、完璧な動きや歌ができるようになれば、果林は間違いなくキラキラ輝くスクールアイドルになるわ! だから明日からも、ランジュを目指して部で一緒に練習しましょう!」

果林
「……今日はちょっと気分が悪いので、明日からの練習に備えて帰ります」

ランジュ
「アイヤー……」

103: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 00:56:50.39 ID:zHvlr8QS
ランジュ
「やっぱり、ランジュと果林はまだ友達じゃないから、ランジュの思いが伝わらなかったのかしら」

理事長
「もう、ランジュ、もっと考えて返事しないとダメじゃない」

ランジュ
「ママが変な話題振ったからでしょ!」

理事長
「うっ」

ランジュ
「とにかく、今から最高のカウンセラーと、カウンセリング専用の部屋を用意して、果林を助けてもらうわ」


「ちょっとちょっと、それプロの人材に任せるの? 用意するまで時間かかるんじゃない? それまでカリンを放っておくの?」

ランジュ
「仕方ないじゃない、ランジュの言葉は伝わらなかったんだから。後は、プロに任せるわ」


(……これは同好会のみんなを頼らざるを得ないかも)

104: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:01:06.66 ID:zHvlr8QS
あなた視点


(合同イベントの後、特にランジュさんからの働きかけは無い)

(学校にいると、愛ちゃんが友達と部について楽しく話す声を、聞く機会が何度もあった)

愛?
『同好会から部に移ってよかったよー!!』

愛?
『同好会にいた頃じゃ、せっつーには全然敵わなかったのに、部に入ってからあそこまで届くようになったもん!」

(こういう会話を聞いても、段々と自分の心が動じなくなっている、成長を実感できた)

(だって、愛ちゃんが会話の中で言う事は、全部事実で正しい事だから。苦しんでいた前の私がおかしかったんだ)


(そんな中、私は彼方さんから相談を受けた)

彼方
『果林ちゃん、今日も学校来てないんだって。昨日も来てなかったよね?』

(心配している彼方さんに代わり、私はお見舞いの品を預かって、果林さんの寮に行くことにした)

果林
『エマと、喧嘩しちゃったの。』

(部屋では果林さんから、エマさんに痛い所を突かれ、カッとなって追い出してしまった話を教えてもらった)

105: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:03:55.81 ID:zHvlr8QS

果林の部屋


果林
「ねぇ、私のパフォーマンスを見てどう思った? 昔と違う? 違うならどう違うの?」

(私の意見に自信が持てない、見当違いの事を言ってしまわないか、果林さんを傷つけないかな?)

あなた
「今の果林さんはかっこよくて圧倒されて、本当にすごいと思うんだけど……なんだか……そういう子なら果林さん以外にもいそうっていうか……」

(すごく抽象的な意見になっちゃった……でも、余計なことを言うよりいいよね)

果林
「私には、自分では気づけてないけど足りないものがある。同好会のみんなはそれを分かってる。なら、同好会のみんなの映像を見て研究するだけよ」

(果林さん、原因は分かったけれどどう解決すればいいのか、悩んでいるみたい)

【同好会に戻ってきて、また私と一緒に上を目指してくれませんか?】

(ダメっ!こんな事を言うのも思うのもダメ! 私の練習ノートやアドバイスが、部のプロに勝る部分はないんだから)

(今の状態だって仮に部が動かなくても、エマさんや彼方さんなら必ず果林さんを助けられるはず)

(私は、余計な事をする必要はない)

【一緒に上を目指すって、思っていたのに】

(そんな言葉をいつまでも引きづって、果林さんの足を引っ張るのは私の自己満足だ)

(果林さんは、プロの指導を受けて、プロと一緒に上を目指す、それでいいの)

(私は、それを遠くで見ていればいい)

106: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:07:14.29 ID:zHvlr8QS
果林
「ねぇ、キミも一緒に見て。それで、気づいたことがあれば教えてほしいの」

(果林さんは優しいから、こんな私にもアドバイスの機会をくれた)

(でも、私のアドバイスが果林さんの妨げになるかもしれない……果林さんにはプロのアドバイザーがついてるはず)

(それに、果林さんと一緒に同好会の映像を見返していたら、もしかすると、私の汚い心がでてきて、余計な事を言ってしまう)

あなた
「もちろんいいけど、その前に、ちょっと外の空気を吸いに行かない?ずっとこもりきりだったんでしょ?」

(この後、私はどうにか果林さんに余計なアドバイスをせずに、上手く会話を終わらせることができた)

(数字後には、エマさんと彼方さんが、果林さんを立ち直らせることに成功したみたい。2人は本当にすごいと思う、私が出る幕はないよね)


(元気を取り戻した果林さんが、ライブを同好会でしたいと言った後、同好会には来ないで部に戻った時には、また私の汚い心がでてきそうになってしまった)

【ライブはしたのに、帰ってきてくれないの? 私は果林さんにとってライブを用意するためだけの存在なの!?】

(私の準備するライブを必要としてくれるだけ、ありがたいと思わないといけないね)

(もし、ランジュさんがもっと色んなライブを、誰がセンターでも許可する方針に変われば、きっともう果林さんと関われる機会は無いだろうから)

107: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:10:22.67 ID:zHvlr8QS
26章 薫子がやってきた

理事長視点

理事長
(私は、同好会の部長の心を折り、娘の友達作りを完遂させるため、監視カメラによる最近の彼女の映像を確認していた)

理事長
(朝香果林はプロの指導を選び、同好会に戻らなかった。このショックで部長は落ち込んでおり、もう崩れる直前だと考えていた)

理事長
(だが、監視カメラに映った部長は―)


理事長
「何なの、この子……」

プロ声優1
「指示通り、宮下愛さんの声で会話をしていますが、最近は素通りされているみたいです」

プロ声優2
「朝香果林さんが復帰されたので、彼女の声でもいただいたセリフを読んでいますが、こちらも素通りされました」

果林?
『やっぱり部の環境は忘れられません、同好会とは大違いです』

あなた
『……』スタスタ

理事長
「何故、笑っているの?」

108: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:13:24.89 ID:zHvlr8QS
理事長
「最近の部長に関して、ランジュからも、同じような話を聞いたわ」


ランジュ
『最近のあの子、いくら私が悪口を言っても、厳しく当たっても、怒っても通用しないというか、分かってないというか……』

理事長
『通用しない?』

ランジュ
『怒ってやり返す訳でもないし、素直にアタシの言う事を聞いて同好会を解散するわけでもないし……ランジュばっかり不機嫌であの子はニコニコしていて、バカバカしくなってきちゃう』

ランジュ
『ランジュって、怒りを伝えるのも下手だったかしら……あの子への接し方はちょっと変えてみるわ』

理事長
『ニコニコ……』


理事長
「最初はランジュを相手に強がってそういう態度をとっているのかと思った。けど、監視カメラに映った部長は、学内すべてでこの態度を貫いている……」

理事長
「これが本心なの? それとも他の生徒の前では本心を隠しているだけ?」

理事長
「……調べる必要があるわね」

109: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:15:56.79 ID:zHvlr8QS
薫子
「失礼します、薫子です」

理事長
「入って」

薫子
「理事長先生、合宿の手配ありがとうございました! 急な話ですいません」

理事長
「えぇ、合宿の話も、教育実習の話も急だったけど、どうにか用意したわ」

薫子
「本当に感謝してます! それじゃあ、これで失礼―」

理事長
「1つ薫子ちゃんにやってもらう事があるわ」


薫子
「私、教育実習生として、生徒を傷つける事はしたくないんですけど」

理事長
「まだ何も言ってないじゃない」

薫子
「この部屋の空気も、理事長の表情もピリピリしてるんで、何となくヤバい依頼だって察しますよ」

理事長
「傷つけろとは言わない、ただ探ってくれればそれでいい」

薫子
「理事長の立場なら、ご自分で探偵をお雇いになられた方が、早いんじゃないですか?」

理事長
「探る相手は、スクールアイドルフェスティバルの立役者、今のスクールアイドル同好会の部長よ」

薫子
「……」

110: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:18:32.90 ID:zHvlr8QS
理事長
「フェスティバルの前任者ともいえる薫子ちゃんになら、本音を見せるかもしれない」

薫子
「私に、何を探れって仰るんですか?」

理事長
「スクールアイドル部について、部に移籍した元同好会の生徒について、どう思っているか聞き出して」

薫子
「部と同好会が対立しているって、本当なんですね」

理事長
「本当だけど、それがどうかしたの?」

薫子
「理事長先生、生徒を想う気持ち、無くしちゃったんですか?」

理事長
「薫子ちゃんが誰よりも妹の事を想っているように、私は娘を想っているの。誰よりも大切なかけがえのない存在としてよ」

薫子
「……」

薫子
「分かりました、断れなさそうなんで、やります。ただ、成果は期待しないでください、私は探偵でもメンタリストでもないので」

111: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:21:33.84 ID:zHvlr8QS
~あなた&薫子視点~

(教育実習生として、栞子ちゃんのお姉さんの薫子さんが突然やってきた。本当に、突然だったよ……)

(その薫子さんと合宿、イベントの準備を手伝っている中、薫子さんとはスクールアイドルの会話で盛り上がって、最近のスクールアイドル同好会の活動について、私は薫子さんに伝えた)


薫子
「部とうまくいっていないのかと思ってたけど、そうでもないんだ」


【うまくいってないです、すごく悩んでいます】

あなた
「うーん、どうなんでしょう?困ることもあるけど、みんなでそれを乗り越えるのが楽しいっていうか……」

(危うく出かけた汚い言葉を飲みこんで、どうにか薫子さんに無事返事ができた)

(私は楽しい。だから、愛ちゃんや果林さんに何もしてもらわなくても大丈夫)

(楽しいから、ランジュさんとも仲良くできる、スクールアイドルとして応援できる)

(私は楽しい、私は楽しい、私は楽しい……)

薫子
「ふふ、ますます楽しみになってきたな!」

薫子
(今の返事には一瞬、迷いがあったようにも見えたけど……スクールアイドルへの好意以外の言葉を、この子は口にしなかった)

薫子
(これは、理事長先生があんな顔になるわけだ)

112: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:25:06.95 ID:zHvlr8QS
(この後、私たちは薫子さんと一緒に、同好会と部による無人島での合宿を行う事になった)

(合宿の場で私たちが最初に目にしたのは、愛ちゃんと果林さんによる「ユニット」の練習)

(私が同好会時代に選ばなかった、複数人での活動だった)


薫子
「へぇ、面白いことに挑戦してるね」

薫子
(でも、このユニットを組むという行為は、かつて全員ソロでの活動を選んだこの子、その決断への否定という捉え方もできるよね?)

薫子
(そして、作曲を依頼されたのは部のミア。この子は頼めばライブの準備をしてくれるんだから、作曲の依頼もやってくれる、って果林は分かってたはず)

薫子
(それでも果林が部の作曲家を選んだのは、この子にとっては結構心にクルものがあるはず。この子はどんな反応をするのかな?)

113: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:28:21.82 ID:zHvlr8QS
あなた
「曲もすごい。ふたりのいいところが詰まってる! ねぇ、この曲はミアちゃんが作ったの!?」

ミア
「まあね」

あなた
「すごい、本当にすごいよ! こんなふたりが見れるなんて!」

薫子
「キミってまったくブレないなあ。ほんっと好きなのね、スクールアイドルが」

薫子
(……本当に、ブレがまったく見つけられない。「スクールアイドルが好き」、それ以外の気持ちが無いようにすら見えるよ)

薫子
(いや……そう見えるように徹底しているんだ。校内だけではなく、この無人島でも、外から来た教育実習生の私に対しても)

あなた
「はい! 大好きです!」

薫子
(君がそこまでする理由は、「スクールアイドルが好き」だからだよね)

薫子
(でもさ、こんな事を続けていたら、キミは壊れてしまうかもしれないよ?)

114: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:32:07.86 ID:zHvlr8QS
(この後、愛さんと果林さんに続き、「エマさん、彼方さん、かすみちゃん、璃奈ちゃん」によるユニット、「歩夢ちゃん、せつ菜ちゃん、しずくちゃん」によるユニットも結成された)

(私は、この2つのユニットの作曲を担当する事になったんだけど、ユニットの曲がうまく書けない)

ミア
『同好会の子たちがどんな目的でユニットを組もうとしているのか、ベイビーちゃんはまずそこをちゃんと知るべきなんじゃないの?』

(どうにかミアちゃんからアドバイスをもらいながら、作曲をする事が出来た)

(やっぱり、私なんかじゃなくてミアちゃんに曲をお願いした、愛ちゃんと果林さんは正しかったね!)

【2人から選んでもらえなくて、ちょっと辛いな】

(こんな風に思うのは間違ってるよ! だって、私はユニット曲が作れないんだから! 私の曲では勝てないんだから!)


(そして、私はユニット曲を完成させ、みんな無事に合宿を終えることができた)

ランジュ
『ぅぅ~~~~』

(……一人、せつ菜ちゃんの料理をたくさん食べて、無事じゃなかったけど)

【いい気味だ】

(違うでしょ、人の不幸を、スクールアイドルの不幸を喜ぶなんて最低だよ)

(ランジュさん、大丈夫かな?)

(これが、正しい感想、みんなが望んでくれる私の感想)

115: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:36:32.00 ID:zHvlr8QS
27章 もう我慢はヤメです!!

合宿終了日の夜 ランジュの家

電話
「ppp」

薫子
「はい、薫子ですけど」

理事長
「薫子ちゃん! あなた合宿でランジュに何を食べさせたの!? 食中毒系の問題は、さすがに庇いれないわよ!」

ランジュ
「ぅぅ~~~……」

薫子
「あー……お腹がやられたのは、ランジュとアタシだけです」

理事長
「えぇ!? どうして2人だけ、そんなお腹がやられるような毒物を食べたのよ?」

薫子
「生徒が一人、最終日の帰る直前に残った食材で創作料理を作ったようで、ランジュは真っ先にそれをバクバク食べてました」

薫子
「アタシも生徒が食べた以上、教育実習生として確認する必要があると思って、一口食べたんですけど……まぁ、今もトイレの中です」


理事長
「ちょっとランジュ、何で一口じゃなくて、たくさん食べちゃったの?」

ランジュ
「せつ菜の料理を完食したかったからよ~……」


理事長
「ちょっと無人島から戻るまで我慢すれば、そんなひどい料理より、いくらでも質の良い美味しいもの食べれるじゃない。ランジュったらそんなにお腹がすいて我慢できなかったの?」


ランジュ
「……ママ、うるさ~い!!」

理事長
「意地っ張りなんだから、もう」

116: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:39:34.07 ID:zHvlr8QS
理事長
「それで、部長の方はどうだったの?」

薫子
「スクールアイドルが好きって以外の顔は、アタシにも見せませんでしたよ」


理事長
「そう、薫子ちゃんでも、ダメだったの……」

薫子
「はい、理事長先生のご希望に添えず、すみません」

理事長
「いいのよ、こういう結果も予想していたから。つまり、あの部長は本当に何も感じていないという事ね……」

薫子
「……どうでしょうね」

薫子
「下手に手出ししてもランジュにバレる可能性が高くなるだけですよ。娘のためとはいえ、無意味なアクションはやめた方がいいんじゃないですか?」

理事長
「……そうね、この後どうするかは、ちょっと考えておくわ」

117: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:43:19.75 ID:zHvlr8QS
あなた視点

(合宿から帰った私たち。今日は彼方さんの妹の遥ちゃんが、同好会の見学に来ている)

(そこへ、部で練習しているはずの栞子ちゃんが、何故か同好会にやってきた。)

(目的は全く分からなかったけど……遥ちゃんが見学に来ているのに、練習を中断して内輪の話をするのも良くないから、栞子ちゃんを練習に入れる事にした)

栞子
「初めまして、三船栞子と申します」


「知ってます! スクールアイドルフェスティバルでの、アンコールパフォーマンス、感動しました!」

栞子
「見てくださったんですね、光栄です」


「今はスクールアイドル部なんですよね? 今はうちの学校でも話題なんですよ」

(別に間違ってはいない。外から見ている人たちにとって同好会は、学園の発表によって既に「部」になっているのだから)


「突如現れたパーフェクトスクールアイドル、ショウ・ランジュさんが作ったスクールアイドル部」

(パ、パーフェクトスクールアイドル? 今はそんな風に学園は宣伝しているの?)

(手持ちのタブレットで学園のサイトにアクセスすると、そこには遥ちゃんが言った通り、ランジュさんがパーフェクトなスクールアイドルとして、同好会を部に昇格させた…という記載を見つけた)


「みんなすごく刺激されてて……。だから、私もいろいろ勉強しなくちゃと思って、今日はお姉ちゃんのところに見学に来たんです」

【ランジュさんは部にいるから、そっちに行ってくれるかな?】
(こんな事、もし口に出したら彼方さんに嫌われちゃう。これは遥ちゃんが悪いわけじゃない、外から見て同好会と部が1つの組織になっている以上、仕方ない事なんだ)

(それに、この遥ちゃんのランジュさんへの好意……間違いなく彼方さんは、ランジュさんの言動や行動について、遥ちゃんに伝えていないみたい)

(彼方さんは妹の遥ちゃんををとても深く想っている、そんな愛しい妹にランジュさんの愚痴を、人の悪口を聞かせたくない……そんな彼方さんの行動が想像できた)

(彼方さんの決断を、私も尊重しよう)

(この後は、特にランジュさんには触れることなく、その日の練習を終えることができた

118: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:46:20.98 ID:zHvlr8QS
翌日

(またしても同好会にやってきた栞子ちゃんから、なんとライブをしたいという相談を受けた)

【私たちのライブを許可しなかった栞子ちゃんが、私たちにライブのお願いに来るんだ】
(こんな私の皮肉を言ったところで、誰も幸せにならない。今は栞子ちゃんのライブを成功させることを考えよう)


栞子
「新曲のことです……実は、あなたにおねがいしたくて……」

(私は栞子ちゃんから、ライブに向けて作曲を頼まれる。ただ、問題があって……)

(……)

(……)

(曲が上手く作れない……スクールアイドルとしての栞子ちゃんとの、思い出が少なすぎる!)

119: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:50:03.75 ID:zHvlr8QS
【スクールアイドル活動をする仲間としてのイメージより、同好会を廃止にしてきたときのイメージの方が強いよ】
(って今こんなことを考えても仕方ないし、栞子ちゃんに言っても何にもならないよ。どうにかして曲を作らないと)

栞子
「私の、ありのままの気持ちをさらけ出す曲にしたいです。姉の中にある私のイメージを全て壊すような、私が今まで諦めていた気持ちを全部叩き付けるような……」

栞子
「我慢しなくてもいいことを我慢している人たちが、その気持ちを解き放つ、そんなことができるような歌を歌いたいです」

あなた
「……」

【私ももう我慢しないでいいのかな、我慢しなくてもよかったのかな】
(違う違う! 私の気持ちなんか、後回し! とにかく今は栞子ちゃんの曲作りに集中するの!)

(この後は生徒会の人たちが作った資料と、栞子ちゃんから薫子さんへの想いを聞いて、どうにか新曲を作ることができた)


(ランジュさんが何故かノートの自慢をしてきたけど、特に問題はなく栞子ちゃんのライブは終了した)

(ただ、栞子ちゃんの「我慢の気持ちを解き放つ」ライブを見た私は、少しお腹が痛くなった)

【私は、まだ我慢しなきゃいけないの?】
(この我慢はずっと続けなきゃだめだよ……ずっと)


27章 終わり

120: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:53:07.91 ID:zHvlr8QS
28章 ランジュの想い

(栞子ちゃんのライブを成功させた後、私はいつも通りみんなの練習メニューを作ろうと思った)

(今回は私の練習ノートなんかは無視して、他の人の意見を重視してみよう)

あなた
「ダイヤさんと海未ちゃんに相談しながら作ってみたんだ」

彼方
「納得のキツさだ~」

(でも、練習を始めようとしたら、愛ちゃん、果林ちゃん、ミアちゃんが部屋に入ってきてこう告げた)


「スクールアイドル部は解散だって、ランジュが……!」

【…や……終…】
(あれ、 やっと何かが終わったような、そんな気持ちになる、何が終わったの?)

【…ず……待…】
(ずっとこの時を、待っていた気がする、なんでだろう?)

(私は、どんなことを考えていたのかな……)


ミア
「とにかく「ハイ、解散」なんて納得できないよ」

果林
「みんな、何か知らない?」

(みんなは、ランジュさんを探したいんだ)

(自分の望みは分からないけど、みんなが望むなら私のやる事は決まっている)

あなた
「ランジュさんが、どういう子なのか教えて」

121: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 01:56:48.58 ID:zHvlr8QS
(私たちは、ランジュさんを探しながら、栞子ちゃんにランジュさんについての話を聞くことにしていた)

(ランジュさんは他人より圧倒的に優秀だが、他人の気持ちに寄り添うことができなかったため、子供の頃から孤立していたらしい)

彼方
「彼方ちゃんたち……もっとちゃんと話し合えばよかったな」

璃奈
「伝えたいのに伝わらないのって、すごくつらい。でも、間違って伝わるのも、つらいよね…。」

(そんな話を聞いた同好会のみんなは、ランジュさんへの同情や、自分の行いへの後悔を口にした)

(私も、みんな後に続くべきだ。そう、思うのに、私にはランジュさんへの何の言葉も浮かばなかった)

あなた
「ランジュさんが部を大切にしてるんだな、ってのはすごく感じたよ。本当に大切な場所なんだな、って……。」


(仕方がないので、別の言葉を口にしてその場を何とかやり過ごした)

(でも、どうして私にはランジュさんへの同情の言葉も、過去のランジュさんに対する言動を後悔する言葉も、出てこないのだろう)

122: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:00:12.29 ID:zHvlr8QS
ランジュさんは結局見つからなかったが、彼女がライブを開くという情報を璃奈ちゃんが見つけた)

(そのライブで見た、ランジュさんのパフォーマンスは、私が最初に見たものとは大きく違っていて)


あなた
「ランジュさん、みんなに呼びかけてる……」

(ランジュさん……私やっと分かったよ。ずっとランジュさんの何に惹かれてきたのか)

(ランジュさんは、全身で叫んでいたんだ……そのパワーに、私は惹かれてたまらないんだ)

(……)

(これが、これが正しい感想のはずなのに)

(ランジュさんのライブを見ていると、スクールアイドルへの好意以外の気持ちが、あるはずのない気持ちが出てきてしまう気がする……)

エマ
「ごめんなさい……あんなに必死に叫んでいたのに、ずっと勘違いしてた」


(みんながランジュさんのライブを褒めたり、彼女を理解できなかったことを後悔するたびに、)

(私の中の何かが、それに同意することを邪魔してくる)

(私の中の何かが、私の胸を苦しめる、頭が壊れそうになる……)

あなた
「これが、ランジュさんのスクールアイドルか……心の中がランジュさんで一杯になっちゃう感じだよね」

(私は、力を振り絞ってランジュさんへの正しい言葉だけを口にする事ができた)


(ライブ後に、栞子ちゃんが楽屋を訪ねようとしたけど、既にランジュさんは帰宅した後だったそうだ)

123: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:03:29.79 ID:zHvlr8QS
翌日 同好会の部室

栞子
「ランジュから学園側に届け出があって、香港に帰るみたいなんです……っ」

(栞子ちゃんからランジュさんの退学と帰国の知らせを聞いて、みんなが焦り始める)

(私もみんなのために、ランジュさんをどうするか考えないと……)

(なのに……)


「そういうことになるなんて、ダメーーー!」

【どう……私の為に……張って……………】

(愛ちゃんが、ランジュさんの為に必死になっていると、胸が痛む……)


果林
「私もよ。私だって、友達だと思ってた」

【ラン…さ…は友………に、私は……じゃ………………?】
(果林さんが、ランジュさんを友達だって言うと、頭が重くなる……)


(こんなんじゃ、みんなの部長としてダメなのに!)

124: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:06:36.94 ID:zHvlr8QS
理事長室 理事長視点

理事長
「……はぁ」

理事長
「本当にダメな親だわ、私」


ランジュ
『……ついに栞子にも言われちゃった。同じようにはできない、向こうに行ってて、って……』

ランジュ
『仕方ないわ。ランジュは「特別」なんだもの』

ランジュ
『だから、最後にもう一回だけ特別なランジュを披露して、もといたところに帰るわ』



理事長
「結局、私は娘に友達を作ってあげることができなかったわ」

理事長
「私が同好会の部長を折る前に、ランジュが諦めるなんて……」

理事長
「私は負けた、女子高校生1人にすら負けてしまった」

理事長
「もっとリスクを恐れずに、攻めに行くべきだった……暴力でも脅迫でも、冤罪でもできることはすればよかったわね」

理事長
「親が保身した結果、娘は一人で国に帰る、バカな話ね」


栞子
「理事長先生!」

理事長
「今更、何か用かしら? 私の事を笑いにでもきた?」

125: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:10:08.80 ID:zHvlr8QS
栞子
「お願いです、ランジュの帰国日を教えてください」

理事長
「日付を知ってどうするの? 最後に会って、今までの文句や苦情でもぶつけるつもり?」

理事長
「ランジュに敵意をむき出していた中須かすみ、ランジュの勧誘に全く耳を傾けなかった近江彼方を引き連れて」

栞子
「愛さん、果林さん、ミアさんが、ランジュに自分たちがランジュと友達であること、ここまでのお礼を伝えたがっています」

栞子
「私も、ランジュに謝りたいんです。今まで、彼女を分かっていなかったことを」

理事長
「信じられないわ。ならどうして、同好会のその2人を連れてきたの? その2人からは、ランジュに何を言うつもり?」

かすみ
「うぅ~……確かにかすみんはランジュにされたことで一杯怒ってます!」

理事長
「そのランジュの親を相手に、率直に言う子ね」

かすみ
「ひぃ~!……で、でも、かすみんもランジュの話をもっと聞くべきだったって思うし、今は友達になってあげてもいいってそう思います!」

彼方
「彼方ちゃんも、ランジュちゃんに何度も話しかけられても、困った子だな~って思ってたけど、もっと向き合えばよかったと思ってるよ」

理事長
「……」

栞子
「お願いです、理事長先生!」

理事長
「……この書類に、日付が記入されているわ」

栞子
「先生、ありがとうございます!」

理事長
「その代わりに教えて。何があなた達のランジュへの態度を変えさせたの? 部は、どうすればあなたたち2人を迎えられたと思う?」

彼方
「う~ん、どうすれば部に行ったかは分からないけど彼方ちゃんは、ランジュちゃんのこの前のライブを見て、ランジュちゃんの願いが分かったよ。それで変わったかなぁ」

かすみ
「同好会の部室取ったり、練習やライブの邪魔したり、先輩の悪口言わなければ、お話できてましたよ!」

彼方
「そうだねぇ、あんな事しないで、友達が欲しいとか、一緒に遊びたいって最初から口で言ってほしかったかなぁ」

理事長
「……そう、分かったわ。もう行っていいわよ」


理事長
「いらなかったのは、私の余計な手出しだったって事ね……」

126: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:13:09.77 ID:zHvlr8QS
あなた視点
同好会の部室

(栞子ちゃんたちが、理事長からランジュさんの帰国日を聞いてきた)

(同時に、スクールアイドル部が解散し、ランジュさんが帰国するという噂も広まっているらしい)

(彼方さんやかすみちゃんは、ランジュさんと話をしなかったことをとても後悔しているようだ)

(ただ、その後悔の言葉を聞いたミアちゃんが―)


ミア
「でも、ランジュやボクの態度だって悪かったよ。キミたち部室も取られたんだよ。」

【そうだよ、ランジュさんが最初に同好会にひどい事したんじゃない!】
(!?)

(ミアちゃんに言葉を聞いた瞬間、消したはずのいらない気持ちが私の中でよみがえって、喉を上がっていくのを感じた)

あなた
「そ―」

あなた
「そういうのは後にしよう。とにかく今は、ランジュさんを見つけて話をすることを考えよう」

(急いで話題を変えて、どうにか口にすることだけは避けられた)

(気にかけてくれたミアちゃんには悪いけど、本当に危なかったよ……)

部の作曲室

(その後、ランジュさんを引き留めるために、ミアちゃんが曲を作ることに)

(今の私がランジュさんのための曲を作ることは、できない気がする)

(きっと、ランジュさんに伝えてはいけない気持ちが、曲に込められてしまうから……)

ミア
「力を貸してほしい」

(ミアちゃんからはそう頼まれて、部屋に来たけど、私は口を出さないようにしよう)

127: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:17:55.38 ID:zHvlr8QS


果林
「ふふ、どんどん機嫌が良くなっていくから、見てて微笑ましかったわ」

しずく
「強烈なハグをしてくれました。あたたかかったな……」


「そうだなあ……基本的に、ランジュってすっごく分かりやすい」


(作曲の為、みんなが楽しそうにランジュさんの事を振り返る中、私は彼女の事を考えないようにするのに精一杯)

(私が、余計な気持ちを出さなければ、ミアちゃん達が曲を完成させてくれるはず)

(この前の合同イベントみたいに、私の気持ちでみんなの邪魔をしちゃいけない……!)

ミア
「それほど好きな相手を独り占めしてるベイビーちゃんには、敵対心むき出しでさ」

【あんなに敵対心を向けられていたのに、ランジュさんの事を分からなかった私が悪いの? 愛さんや果林さんはどうして私の事は助けてくれなかったの?】
(違う違う違う! こんな気持ちはいらない! )

あなた
「えっ? 私って敵対心むき出しにされてた?」
(敵対心なんか向けられてない! 私は大丈夫だから! 愛さんも果林さんも何も悪くないから!)

ミア
「……あれだけされて自覚ないの? 散々言われてたと思うけど?」

あなた
「うーん、確かに」
【うん、確かにそうだね、ランジュさんの言葉が、私にはすごい辛かったよ】

(出てこないで!!)

あなた
「……そうだけど、ランジュさんから見たら、私は邪魔者だし、仕方ないと思ってた」
(私は邪魔者、私が悪い、ランジュさんは悪くない)

ミア
「Oh My Gosh,まったく、ベイビーちゃんと来たら……」

(ど、どうにかごまかせたよね?)

(ミアちゃんも納得してくれたのか、ランジュさんの私に対する態度の話題を終わりにしてくれた)


(私はスクールアイドルが好き、同好会のみんなの力になりたい)

(そして、同好会のみんなの為になるのは、「スクールアイドルが好きな私」)

(だから、私は「スクールアイドルが好きな私」だけあればいい)

128: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:23:59.52 ID:zHvlr8QS
(ミアちゃんが曲を完成させて、私たちはランジュさんを追いかけて空港に向かった)

ランジュ
「え……あなたたち、どうしたの?」

(一時は飛行機が離陸してしまったと思ったけど、ランジュさんと空港の入り口で会う事ができた)


「もう会えなくなるかと思って心臓が潰れそうだったよ!」

果林
「あなたが勝手に帰ろうとした事がショックだったのよ、私もね」

(部のみんながランジュさんへの好意を口にしながら、彼女に駆け寄っていく)

歩夢
「会えて良かったよ~、ランジュさん~!!」

しずく
「間に合って良かったです!」

かすみ
「戻ってきたってことは、ニジガクやめないってことですよね!?」

エマ
「わたしたちと一緒に、スクールアイドル続けてくれるよね!?」

(同好会のみんなもランジュさんへの想いを口に、彼女に近づいていく)

せつ菜
「そうに決まっています! あの曲を聴いて、戻ってきてくれたんですよね!?」

璃奈
「早く聴いて、って、ずっと思ってた」

(曲にランジュさんへの想いを込めたみんなが、彼女を迎える)

彼方
「ランジュちゃんのライブ観て、彼方ちゃんたちみんなわかったの! ランジュちゃんが願ってたこと、全部分かった!」

栞子
「私も、やっとわかりました、ランジュのこと。幼馴染なのに……わかってあげられなくてごめんなさい」

ミア
「絶対どこにも行かないでよ! 約束して!!」

(ランジュさんの願いを叶えるべくみんなが、彼女を理解する)

ランジュ
「これって夢? ランジュが夢見た世界すぎるのよ!」

(でも、そこに私はいない)

129: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:29:48.92 ID:zHvlr8QS
(私はランジュさんへの曲に、何も込めていない)

(私はランジュさんが友達になりたいと願った、スクールアイドルじゃない)

(だから、私はランジュさんに何も言わない、伝えない)

(ランジュさんもそう思っているのか、私には何も言わず、視線を向けられることもなかった)

あなた
「ランジュさん、落ち着いた? はい、お水」

ランジュ
「ありがとう…」

あなた
「改めて。お帰りなさい、ランジュさん」

ランジュ
「……」

(社交辞令のようなやり取りだけで、私とランジュさんの会話は終わる)

(「スクールアイドルが好きな私」が今やった方がいい事は、ランジュさんに近づく事じゃない)

【ランジュさんが、許せない】

(まだ私の中に残っていた、この汚い心を今度こそ完全に消す事だ)

28章 終わり

131: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 02:35:03.23 ID:zHvlr8QS
今夜は28章までです。

134: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:14:38.63 ID:zHvlr8QS
29章 これが私のスクールアイドル!


(ランジュさんは学園に残ることを決め、部と同好会の問題は、すべて終わった)

(同好会のみんなと、部のみんなの仲にも隔たりは一切感じられない)

(後は、私とランジュさんが仲良くなれば、すべてが終わる)

【許したくない】

(もうあきらめようよ、みんなで楽しくスクールアイドルをしよう)

【私は、誰かにこの気持ちを知ってほしいよ】

(気持ちを知ってもらって、スクールアイドルの邪魔して、私は幸せになれるの? なれないよね)

(だから、この気持ちは消えなくちゃだめだよ)

教室

ランジュ
「ねぇ、少しいいかしら」

あなた
「ランジュさん!? どうしたの?」

(ランジュさんが私に話しかけるとは思わなかったな、私は眼中にないはずだから)

135: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:16:38.41 ID:zHvlr8QS
部室

(私たちはランジュさんの前回のライブについての話をするために、スクールアイドル部の部室に移動した)

(ライブの話なら、大丈夫、楽しく話せるはず……)

(ランジュさんと正しい会話をするために、スクールアイドルが好きな私で頭の中を埋め尽くす)

ランジュ
「ねぇ、アナタ。ランジュのこと怒ってないの?」

あなた
「え?」

【怒っているに決まってるでしょ】
(何で、その話をするの?)

あなた
「えーっと……」

【今なら吐き出せる、私の中の気持ちをランジュさんに】
(ダメ、ダメ、これはダメ、傷つけちゃダメ)

あなた
「黙って帰ろうとしたこと?」

(正直、スクールアイドルが好きな私でも、ランジュさんの意図が全く分からなかった)

ランジュ
「もっと前のことよ! 覚えてないの!? 才能がないとかいじわる言ったわ!」

【アナタはいらない、とか存在感がないとか、色々言われた、すごく傷ついた】
(本当の事だから、何も問題ないから!)

あなた
「あ、大丈夫、覚えてるよ。でもそれはいじわるっていうより本当の事だしなぁ」

ランジュ
「アイヤー! 歩夢の言ったとおりだわ……いじわるだとも思ってないなんて……」

(ランジュさん、この話題の目的は何なの? 何のためにこんな話を―)

ランジュ
「ランジュこそごめんなさいだわ!」

(【は?】)

136: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:20:01.07 ID:zHvlr8QS
ランジュ
「ランジュはアナタにいじわるなことをしたし、言った」

【……】

(ランジュさんは手を合わせ、私に謝罪を始めた)

ランジュ
「全部ランジュが悪いの。ランジュの欲しいものを全部持ってるアナタが、ずっと羨ましかった」

【じゃあ、私は、同好会は、あなたの嫉妬のせいで……】
(自分の間違いを認めるのって、すごく心に負担がかかるよね)

ランジュ
「同好会のみんなとスクールアイドルをやりたくて日本に来たわ。でもやり方が間違ってた」

【今更謝られたって、全部は許せないよ】
(それでも、ランジュさんは過去の自分が間違っていたと言い、私に謝罪してくれた)

「間違ったことに気づかないまま、うまくいかなくて……勝手に嫉妬して……」

【ランジュさんになら、気持ちを吐き出してもいいよね?】
(もう、それで十分だよね?)

ランジュ
「まずは謝りたかったの」

(私は―)

>(ランジュさんを許す) 

【ランジュさんを許せない】

137: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:22:45.65 ID:zHvlr8QS
(ランジュさんを許す)

>【ランジュさんを許せない】

あなた
「……私も謝るね、さっきは嘘ついたから。ごめんなさい」

ランジュ
「嘘……?」

あなた
「本当は、怒ってるんだ。ランジュさんが私や同好会にしたことに」

あなた
「才能がないとか、いらないとか、言われたことについても、本当は傷ついたんだ」

ランジュ
「あ……ごめんなさい」

あなた
「謝ってくれたのは、うれしい。でも、それでいきなり全部を水に流すようなことは、したくないよ」

ランジュ
「そうよね……」

あなた
「もっと……もっと早く聞きかったな、ランジュさんの気持ちも、謝罪の言葉も」

ランジュ
「……本当に、ごめんなさい」

あなた
「今日は、失礼するね。さっきも言ったけど、謝ってくれたのは本当にうれしかったよ」

あなた
「この話をしなければ、私はきっと自分の気持ちを出せないで、ずっと隠していたと思うから」

ランジュ
「……」

139: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:26:30.95 ID:zHvlr8QS
スクールアイドル部、部室

ランジュ
「みんな、お待たせ! ランジュが来たわよ!」

果林
「あら、ランジュが遅れてくるなんて珍しいわね」

ランジュ
「ちょっと、同好会のあの子とお話しをしてたの」


「えっ、ランジュもやっとぶちょーの事に興味を持ったの!?」

栞子
「お話をするより、ランジュとあの人の場合は、先にランジュから謝罪をした方がいい気もしますが」

ランジュ
「だから、ランジュから謝ろうと思ったのよ」

ミア
「ランジュが自分から、謝罪? 明日は子犬ちゃんでも降ってくるんじゃない?」

ランジュ
「ウェイシェンマ(どうしてよ)!」


「まぁまぁ、それでぶちょーとはちゃんと仲直りできたんだね」

ランジュ
「謝ったけど、やっぱり許してもらえなかったわ」


「うんうん……ん?」

140: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:29:56.25 ID:zHvlr8QS

「いやいや、ぶちょーに限って、それはないでしょ!」

栞子
「ランジュ、ちゃんと日本語を使いましたか? 中国語じゃ伝わりませんよ」

果林
「また勝手に、許してもらえなかった、って早とちりしてるんじゃないの?」

ランジュ
「何よ、このランジュの信用のなさは。ちゃんと日本語で「ごめんなさい」って言ったわよ」

ランジュ
「それで、「謝ってくれたのはうれしい。でも、それでいきなり全部を水に流すようなことは、したくない」ってあの子に言われたの」

141: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:33:02.57 ID:zHvlr8QS
同好会部室

あなた
「……」

(言っちゃった……ランジュさんに、あんな言葉)

歩夢
「ねぇ、なんだか元気がなさそうだけど、また何か一人で抱え込んでない?」

あなた
「歩夢ちゃん……私、悩んでる事、あるよ」

せつ菜
「そうなんですか!? それは、ぜひ私たちにも話してください!」

歩夢
「うん、絶対に話して」

あなた
「ランジュさんと、スクールアイドル部の事」

歩夢
「えっ」

あなた
「歩夢ちゃんにはたまに伝えてたけど、私はずっとこれで悩んでるんだ」

歩夢
「確かに、あなたから何度か悩んでいるのは聞いたけど……」

エマ
「それは、もう大丈夫なんじゃないかな?」

璃奈
「私たち今は、特に何もされてないよ?」

かすみ
「ああっ、まさかショウ・ランジュにまた何かひどいこと言われたんですか!?」

彼方
「う~ん、それはないんじゃないかなぁ。この前空港で、彼方ちゃんたちを友達だって言ってくれたし~」

かすみ
「それはかすみん達だけで、先輩は言われてなかったですよ!」

彼方
「あぁ、言われてみれば確かに、あなたはあの時、ランジュちゃんからちょっと離れたところにいたねぇ」

あなた
「みんな、心配してくれてありがとう。まだ、何も言われてないから大丈夫だよ」

142: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:36:20.45 ID:zHvlr8QS
なた
「ランジュさんと部の話は1回ストップして、次の校内オーディションの話は覚えてる?」

かすみ
「あっ」

しずく
「すっかり忘れていました……」

あなた
「そっちに集中すべきなんじゃないか、って気持ちも確かにあるんだ」

あなた
「だから、ここにいるみんながオーディションに集中したい、って思うなら、私は……」

ドン!


「ぶちょー! どういう事なの!?」

あなた
「……やっぱり来たね」

143: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:39:44.33 ID:zHvlr8QS
歩夢
「愛ちゃん……?」

エマ
「果林ちゃんに、栞子ちゃんも、どうしたの?」

しずく
「も、もしかしてまたランジュさんが帰国しようとしてるんですか!?」

ランジュ
「しずく~! ランジュはここはいるわよ~!」

しずく
「お、お元気そうですね」

璃奈
「愛さん……なんでそんなに、怖い顔してるの?」


「ゴメン、りなりー。でもこれ、すごく大事なことだから」

(同好会のみんなも巻き込んじゃった。ごめんね……)


「ぶちょー、ランジュがさっき謝りに行ったよね」

あなた
「うん、謝ってもらったよ」


「その時、ランジュに何て答えたの?」


あなた
「「謝ってくれたのは、嬉しい。それでいきなり全部を水に流すようなことは、したくない」そんな風に答えたはずだよ」

144: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:42:30.32 ID:zHvlr8QS
歩夢
「えっ」

(今の言葉を聞いて、私が背を向けている同好会のみんなは、すごくびっくりして、困っていると思う。本当にごめん……)

栞子
「本当、なんですね……」

ランジュ
「だから、ランジュ記憶力もいいんだから、覚え間違いじゃないって言ったじゃない! リスニングだって点数高いのよ」


「何でそんな風に答えたの!? そんな返事したら、ランジュが傷つくってぶちょーならわかるでしょ!」

果林
「それにキミ、本心ではそんなこと思ってないわよね? ランジュへの嫌がらせ?それともドッキリ? どちらにせよすごくタチが悪いわ」

あなた
「本心だよ、果林さん。」

果林
「ふざけないで!」

(愛ちゃんと果林さんに、こんな仇を見るような表情をされて、怒りをぶつけられる日が来るなんて)

(でも、笑顔を向けてほしければ「スクールアイドルが好きな私」でいればよかったんだ。それを選ばなかったのは私だから)

148: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:47:06.60 ID:zHvlr8QS
果林
「だったら、ランジュが帰国しようとする前のライブはどう説明するのよ、キミだって感動してたでしょ、あれは嘘だったの!?」

あなた
「あれも本心だよ、あの時のランジュさんのライブは本気で感動できた」


「ぶちょーが何言ってんのか全然分かんないよ、おかしーじゃん! 感動してるのに許さないなんて」

(部屋の空気がおかしくなっていくのを感じる……後ろにいるみんなの空気は、きっと凍えてしまっているんだろう)


「もし、ぶちょーが適当な事を言って、逃げようとしてるなら、いくらぶちょーでも愛さん本気で怒るよ」

果林
「私も愛も、ランジュの事を友達だと思ってるの。だから、友達をあんまり悪く言われたら、黙っていられないわ」


「アタシ、ぶちょーがこんなこと言うなんて、信じてなかった。正直に言って、今すごくショック受けてる」

果林
「私も、スクールアイドルが好きなキミなら、必ずランジュを受け入れてくれるって、そう思ってたのよ」


「ちゃんとアタシたちが納得できる説明をして。今の愛さん、ぶちょーに裏切られた気分だよ」

(愛さんの「裏切られた気分」という言葉を聞いて、私の頭に血が集まり、熱くなっていく)

(もう止まらない、頭を働かせるより先に口が開く)

あなた
「……ったのは」

あなた
「私と同好会を先に裏切ったのは、愛ちゃんと果林さんでしょ!」

151: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:50:33.91 ID:zHvlr8QS

「今更その話を蒸し返さないでよ! 今はランジュとぶちょーについての話をしてるの!」

あなた
「じゃあ、愛ちゃんと果林さんにもわかるように説明するよ!」

あなた
「私はスクールアイドルが好き、大好き。応援するのも大好き」

あなた
「でも、それは私の一部であって、すべてじゃない」

あなた
「食事も、睡眠も、勉強もする。スクールアイドルに関係なくても、面白い動画を見たら笑うし、泣ける動画を見たら泣く」

あなた
「いくら好きでも、もしスクールアイドルから暴力を振るわれたら痛いし、苦しいの!」


「ぶちょーは何が言いたんだよ!」

あなた
「私は、スクールアイドルが好きな感情しかないような、純粋な人間じゃない」

あなた
「ランジュさんに同好会を滅茶苦茶にされたり、練習の邪魔されたり、ひどい事をされたら傷つくし、怒る」

あなた
「何の相談も無しに、黙って退部されたら傷つくんだよ!」


「!?」

153: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:54:43.71 ID:zHvlr8QS
ランジュ
「もうやめにして! 愛と果林ももういいの。ランジュがあの子にひどい事したのが悪いんだから。その、一応友達なんでしょ? 友達同士でこんな喧嘩しちゃダメよ」

あなた
「ランジュさん……私は、果林さんのお友達にはなれなかったんだよ」

果林
「は?」

ランジュ
「え、そうなの?」

あなた
「私が留学から帰国した日に、果林さんから部に移籍したことについて、こう言われた」

果林
『お友達を作るために同好会に入ったわけじゃないわ』

ランジュ
「果林、そんなことを同好会に言ったの? ランジュは一緒に遊ぶお友達が欲しくて部を作ったけど……果林は、そのつもりはなかったという事?」

果林
「ランジュ、私は…」

あなた
「大丈夫だよ、ランジュさん。最初はそのつもりがなかったかもしれない。でも、本当に友達だと思ってるから、ランジュさんが帰国しようとした時に、必死になって止めようとしたんだと思う」

ランジュ
「そう、なの? でも、確かに果林から「友達のつもりだった」ってそう言われたわ」

ランジュ
「なーんだ、ランジュ、あの子にないお友達を持ってたんじゃない、やったわ!」

栞子
「空気を読んでください、ランジュ!」

154: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 14:58:30.63 ID:zHvlr8QS

「……ぶちょー、アタシとカリンが今どんな気持ちか、分かる?」

あなた
「分からないよ、愛ちゃん」


「へぇ~……分からなくなっちゃったか、ぶちょーはヒトの気持ちが、分からなくなっちゃったのか!」

あなた
「分からないよ、分からないよ、分からない、分からない……全然、分かんない!!」


「怒りたいのはこっちなんだけど!」

あなた
「愛ちゃんと最後にまともに話したのいつだと思ってるの?」


「知らないよそんなの!」

あなた
「私が帰ってきた日だよ、そこから愛ちゃんとは碌に1回も話せてない、果林さんとは合同イベントの後1回だけ話した」

あなた
「もう練習だって見てない、2人に会った回数と時間は数えるほどしかないの」

あなた
「それで、どうやって今の2人の事を分かれっていうの!?」


「会わなくったって、活動場所が違ってたって、心は通じてるって信じてたのに!」

あなた
「分かるわけないでしょ!!」


「このっ―」

薫子
「もうそこまで!」

(薫子さんの声を聞いて、私は頭が重くなって、そのまま何も考えられなく―)

155: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 15:01:14.88 ID:zHvlr8QS
一旦、ここまでです。
(ランジュさんを許す)場合は、スクスタと同じ結末になるイメージでした

173: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 21:56:06.00 ID:zHvlr8QS


薫子
「よっ、雨降って、地固まった~? …って挨拶したかったんだけど、明らかに土砂崩れ状態よねこれ」

栞子
「姉さん……」

ミア
「ボクが呼んできた。ベイビーちゃん明らかにおかしかったし、愛もヒートアップしてたから」

薫子
「それにしても、催眠ガスを吹きかけるスプレーまで用意してあるとは、部の設備はヤバイわね~」

栞子
「一応は万が一に備えての防犯グッズとして、用意したものだった気がします」

歩夢
「この子に何したんですか!?」

薫子
「これ以上感情が爆発すると、本人の心が持たないと思ったから、緊急措置で眠らせてもらったの、ごめんね」

あなた
「……」

薫子
「キミの心に限界が来ちゃったか……」


薫子
「愛は、このキンキンに冷やしたドリンクでも飲んで、ちょっと頭冷やしなさいな」


「ちょっ、冷たい冷たいって!」

薫子
「先輩たちが喧嘩しちゃったら、1年生は不安になっちゃうわよ」

璃奈
「……ぐすっ」


「あっ、りなりー……ごめん」

薫子
「この子を保健室に運んでくるから、それまで仲良く待ってるんだぞ~」



廊下

クラスメイト
「そ、そんな……」

175: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 21:59:47.58 ID:zHvlr8QS
部室

薫子
「ただいま~、思ったより時間かかっちゃったけど、ちゃんと仲良く待ってた~?」

栞子
「姉さん……その、気になるメールが同好会に来ていて」

かすみ
「いたずらじゃないんですかぁ?」

璃奈
「別にメールに、ウイルスとかは、仕掛けられてなかったよ」


「同好会の部長と、愛ちゃんが喧嘩している声を聞いて、いそいでメールを送らせていただきました。名前と理由は明かせません。でも、喧嘩をやめてほしいです。私たちは部長に、宮下愛と朝香果林の声を偽って、ひたすらに部を褒める内容を聞かせていました。悪いのは私たちです、だからお互いを責めないでください。」

薫子
(……あぁ、そういう事か。えぐい事するなぁ、理事長先生。しかも「褒める」って、誹謗中傷でもないから、問いただせない、保険付きじゃないこれ)

璃奈
「メールアドレスから、身元を、割り出してみる?」

しずく
「そんなことできるんですか?」

璃奈
「詐称もされてないし、できると思うよ?」

薫子
「やめてあげてほしいな、多分このメールを送ってきた子は、これ以上は話せないだろうし、トカゲのしっぽ切りされちゃうだけだから」

エマ
「薫子さんは、このメールがほんとうのことを言ってると思うんですか?」

彼方
「う~ん、内容が、嘘っぽいと彼方ちゃんは思うけどなぁ~」

せつ菜
「そうですね、声を偽るなんて、名探偵でもなければ簡単にはできないです!」

栞子
「……あの、私からもよろしいでしょうか」

176: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:02:33.43 ID:zHvlr8QS
栞子
「……あの、私からもよろしいでしょうか」

歩夢
「栞子ちゃん?」

栞子
「以前、確か合同イベントの開催前の時期だったはずです。その時に、部室の扉を開けると見慣れない方々がいた時が、1度ありました」

ランジュ
「それ、確かママがお友達を連れて見学に来た話でしょ、ランジュも覚えてるわ。練習の邪魔はしないっていうから、トレーニングルームには入らない条件でOKしてたけど」

栞子
「その、理事長先生が友達だと言われた方々と、あの人が扉越しに話していたかもしれません」

栞子
「その時は、その方々が何者か、何をしていたのか、全く分かりませんでしたが、今になって思えば……」

かすみ
「り、理事長が黒幕ってことですかぁ!?」

栞子
「理事長先生の「私の方で」という言葉、こういう意味でしたか……」

薫子
「アタシも先生から言われて、部長の事ずっと見てたから、先生が部長に強い意識を向けているのは、間違いないと思うよ」

歩夢
「ちょっと待ってください! あの子が何かされてるって分かってたのに、助けてくれなかったんですか!?」

薫子
「アタシたちが合宿から帰ったころには、もう先生はほとんど動いてなかったみたい。何も証拠が無かったから、動けなかったんだけど……同好会のみんなには話しておくべきだったね、本当にごめんなさい」

178: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:05:40.81 ID:zHvlr8QS
エマ
「こんなの、ひどいよ……」

歩夢
「っ」

せつ菜
「歩夢さん、どこに行くんですか!?」

歩夢
「抗議してくる、あの子にそんな事するなんて許せないよ」

薫子
「賛成しかねるかな、アタシとしては」

歩夢
「どうしてですか!?」

薫子
「物的証拠がなさすぎる、これじゃあ理事長先生は絶対に認めない」

歩夢
「でも!」

薫子
「もし、本気で理事長先生をどうにかしたいなら、アタシも身を切って証言するけど、多分それをしても、問題解決にはすごく時間がかかる」

薫子
「先にみんなが解決できる、目の前の問題にもっと専念した方がいいと思うな」

栞子
「目の前、とは?」

薫子
「部長の事をどうするのか?って問題」

180: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:08:33.83 ID:zHvlr8QS

「……アタシ、偽物のアタシがぶちょーに何を聞かせたのとか、いつ頃からさっきみたいに思ってたのか、知りたい」

薫子
「愛は、ちゃんと部長と話がしたいって事でOK?」


「うん」

璃奈
「……私、もうこんなの、いやだ」

かすみ
「りな子……」

薫子
「璃菜はもうやめにしたいんだ」

璃奈
「うん、みんな、仲良しがいい」

彼方
「彼方ちゃんも、後ろで見てて、眠気が吹っ飛んじゃったよ~」

せつ菜
「あんなに胃が痛くなったのは、栞子さんとの生徒会長選挙での演説以来でした!」

薫子
「……演説で胃が痛いって、栞子、まさか「個人攻撃」とか答えにくい「質問攻め」したの? あれは禁じ手だとアタシ思ってるんだけど」

栞子
「……しました」

薫子
「はぁ……そんな汚いところが、大人にならないでもいいでしょうに……せつ菜、うちの妹が申し訳ない事をしたね。栞子も謝る」

栞子
「改めて、申し訳ありませんでした……」

せつ菜
「い、いえだいぶ前の事なので」

181: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:12:34.72 ID:zHvlr8QS
エマ
「そもそも、やめにするにしても、どうすればいいのかな?」

彼方
「さっきの事を無かった事には、できないよねぇ」

薫子
「キミたちが望めば大丈夫、そうアタシは考えてるよ」

しずく
「どういう事でしょうか?」

薫子
「部長が目を覚ましたら、同好会のみんなで伝えに行けばいいの」

薫子
「「もうこんなの嫌だ」「仲良くしてほしい」「楽しい事をしたい」「合同イベントに集中したい」……とかね」

かすみ
「せ、先輩にみんなでそんな事を言いに行けっていうんですかぁ!?」

薫子
「そうだよ。それを聞いたら、あの子は「スクールアイドルが好きな、いつものあの子」に戻ってくれると思う」

歩夢
「根拠は……あるんですか?」

薫子
「あの子がスクールアイドルが好きだから」

かすみ
「よく分かりませんよぉ!」

薫子
「みんなだって、あの子から「こういうあなたが好き!」って応援されたら、パワーをもらえるし、その通りになろうとするでしょ?」

せつ菜
「はい!」

薫子
「それと同じだよ。みんなから「スクールアイドルが好きなあなた」が好き、って応援されたら、あの子はそれに応えるはず」

薫子
「ランジュや愛、果林にも謝ってくれると思うよ。昨日はごめんなさい、私がおかしかった、って」

歩夢
「でも、そんなの……あの子がかわいそう」

薫子
「なら、その気持ちをあの子に伝えてあげればいいんじゃないかな?」

かすみ
「かすみんは、かすみんは……」

薫子
「今日はアタシがあの子を家まで送って帰るから、みんなは家に帰ってどうするか考えてみなよ」

一同
「……」

182: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:15:20.94 ID:zHvlr8QS
……

エマ
「果林ちゃん、だいじょうぶ?」

彼方
「さっきからずーっと、黙ってたけど」

果林
「エマ、彼方……」

果林
「……あの子からあんな事を言われるなんて、思わなかったから」

彼方
「あんな事?」

エマ
「「お友達」のことだよね」

果林
「そうよ……あんな言い方しなくたっていいじゃない」

彼方
「言い方が良くなかった、って果林ちゃんは思ってるんだぁ~?」

エマ
「たしかに、ちょっととげのある言い方だったよね……」

彼方
「でも、彼方ちゃんも「お友達を作るために同好会に入ったわけじゃない」って言われたときは、ショックだったなぁ~」

果林
「ええっ、か、彼方まで!?」

エマ
「わたしも、かなしかったよ。あの時はそれ以上に、果林ちゃんが部にいっちゃったことが、かなしかったけど」

果林
「エマまで……」

果林
「あれは、私が……悪かったわよ。私が合同イベントで落ち込んだ時に助けてくれたのは、友達のエマと彼方だった。それに、ランジュと友達になるためにいろいろ頑張ったわけだし」

果林
「私だって、今思えばあの発言が良くなかったってわかってるのよ」

183: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:18:29.67 ID:zHvlr8QS
エマ
「それ、ちゃんとあの子に伝えたの?」

果林
「伝えてはいないけど、ランジュが帰国しようとした時の私を見れば、考え方が変わったってあの子ならきっと―」

彼方
「じと~……」

エマ
「果林ちゃん」

果林
「……後で、ちゃんと謝るわ」

エマ
「うん!」

彼方
「それと、あっきあの子が言った、黙って部に行っちゃったことも、謝った方がいいと思うなぁ。あの子は留学してて帰国するまで知らなかったから、彼方ちゃんたちよりもショックだったんじゃないかなぁ」

果林
「それは……そうね。それも謝らないといけないわよね」


エマ
「ほかのことは、果林ちゃんが自分でなんとかしないといけないところも、あると思うんだ」

果林
「他のところって、どういう意味?」

エマ
「わたしと果林ちゃんは、同じスクールアイドルだけど、あの子と果林ちゃんはそういう関係じゃないよね?」

彼方
「彼方ちゃんやエマちゃんが感じなかったこと、想像もしなかったこと、もしかしたら、感じたのかもしれないよ」

果林
「……」

果林
「……キミは一体何を感じたの?」

184: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:21:45.58 ID:zHvlr8QS
……
宮下愛の自宅

美里
「愛ちゃん、見るからに辛そうだけど、何かあったの?」


「……ぶちょーと喧嘩した」

美里
「えっ……それはスクールアイドル同好会の部長の事よね?」


「そう、その部長!」

美里
「……そっか、こうなっちゃったかぁ」


「ねぇねぇ、聞いてよ、昨日ランジュがぶちょーに謝りに行ったんだけどさぁ…」


美里
「そう……そんな事があって、愛ちゃんはとってもビックリしたのね」


「うん、ショックだったよ……って、おねーちゃん、なんでそんな悲しそうな顔してるの?」

美里
「愛ちゃんから久しぶりに聞く部長さんの話が、こういう話になっちゃった、って思うとね」


「いやいや、久しぶりでもないでしょ! アタシ、よくおねーちゃんに話してたじゃん」

美里
「前は頻繁に聞いたけど、愛ちゃんが部に移ってからは、一度も聞いてないかな」


「そんな事ないって! アタシ、同好会の話してたよね? せっつーの事とかさ」

美里
「うん、せつ菜ちゃんの話は聞いた、他の子の話も聞いた、同好会全体の話も聞いた。部長さんは聞いてない」


「……本当に、本当?」

美里
「えぇ、本当よ」

186: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:24:44.30 ID:zHvlr8QS
美里
「だから、私も愛ちゃんが部長さんの事をどう思っていたのか、分からないかな」


「おねーちゃんも「分からない」って、アタシが悪かったっていうの?」

美里
「私は、愛ちゃんの事を家族だと思っているし、愛ちゃんのファンでもあるから、愛ちゃんの味方よ」


「……そうだよね。ゴメン、おねーちゃんに突っかかっちゃって」

美里
「いいのよ、私は大丈夫。でも、愛ちゃんを笑顔で受け止める余裕のある人ばかりじゃない、愛ちゃんが一人でいろいろ決断した事を、成長だと喜べる人ばかりじゃない、それも現実だと思うの」


「……」

美里
「愛ちゃんが部長さんの事、どう思っていたのか、見つめなおしてみて」

美里
「もし、それでも部長さんとまた喧嘩しちゃったら、私が受け止めてあげるから。せつ菜ちゃんに負けて大泣きした日みたいに」


「ちょ、いまその日の話はナシっしょ!」

187: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:27:41.87 ID:zHvlr8QS
……
タクシー車内
果林(幻聴)
『キミならランジュを受け止めてくれるって、信じたのに……っ!』
愛(幻聴)
『この裏切り者!!』

あなた
「っ!?」
薫子
「あっ、目が覚めた~?」

あなた
「えっ、薫子さん……みんなは、というかここは?」

薫子
「みんなは先に帰したよー。閉校時間になっても全く君が目覚めないから、ランジュの手配したタクシーで、アタシが君を家に送っているところ」

あなた
「眠って……えっ?」


(薫子さんは私に、あの後に部室で何があったかを教えてくれた)

(そして、私に対して行われた、偽の愛さん、果林さんによる攻撃について告発するメールが来た、という話もしてもらった)

189: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:30:18.59 ID:zHvlr8QS
あなた
「ごめんなさい、ご迷惑をおかけしました」

薫子
「それ、こっちのセリフなんだ」

あなた
「え?」

薫子
「アタシはキミが、自分の気持ちを抑え込んでいるのに合宿で気づいていた。でも、何もできなかった」

薫子
「偉い人がキミに何かやってるのは気づいていたけど、あたしはその人を止めなかった、むしろ協力する立場だった」

薫子
「本当にごめんなさい、キミをここまで追い込んで」

あなた
「いえ、別に薫子さんには、そんなに嫌な事、言われてませんから……」

あなた
「それに、偉い人って多分理事長先生ですよね? 実習生の薫子さんが何もできないのは、仕方ないと、思いますから」

薫子
「理事長先生って気づいてたんだ?」

あなた
「学園そのものが、部を援助してるのは気づいていたので……」

あなた
「あと、校内オーディションの事もごめんなさい、直前にこんなトラブルを起こして」

薫子
「それも、アタシがどうこういう権利はないんだな。アタシもトラブルの一因のわけだし」

あなた
「でも、薫子さん次のイベントを楽しみにしてたじゃないですか」

薫子
「キミ、ランジュとは別の方向性で大人ぶるね……。キミはさっきまで、うなされてたけど、悪夢なり幻聴なり聞こえたんじゃないの?」

あなた
「それは……」

薫子
「キミはコンディションが万全じゃない、その万全じゃない原因は学園、その学園のオーディションの都合なんてキミが気にかける必要はないよ」

薫子
「アタシがオーディションの日程とかはどうにかするから、キミは自分の心の事を考えなさい」

薫子
「スクールアイドルは学生時代にしかできない事だけど、それは学校の友人関係も同じなんだからね」

あなた
「友人……」

190: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:33:37.04 ID:zHvlr8QS
翌日

スクールアイドル同好会 部室

(私は、部の、愛ちゃんや果林さん、ランジュさんと話す前に、同好会のみんなと話をすることにした)

(ただ、一晩眠って少し熱が引いたのか、みんなへの申し訳ない気持ちが強くなっていた)

あなた
「みんな、その、昨日はびっくりさせて、いや、あんな事になって、ごめー」

歩夢
「言っちゃダメ!」

あなた
「歩夢ちゃん……」

歩夢
「それを言ったら、昨日の出来事が間違いになっちゃうよ」

あなた
「でも、昨日のあれは、やっぱり……」

歩夢
「私は、またあなたが一人で抱え込んだ、って怒ろうと思ったけど、あなたはちゃんと私に悩んでるって伝えてくれてた」

歩夢
「それなのに、私は部との問題にも、ランジュさんや、果林さんや愛ちゃんとの問題にも何もできなかった……本当に私だけ何もできなかった」

歩夢
「だからね、今は私が頑張る番だと思う」

歩夢
「あなたの背中を押す事、もし満足のいく結果にならなくても、私がフォローするよ、支えるよ、って安心してもらう事が、私のできることだと思う」

歩夢
「どんな結果になっても、私は絶対にあなたの味方だから、あなたの側にいるから」

歩夢
「だから、私はあなたに、思っていることをちゃんと伝えてほしい」


あなた
「歩夢ちゃん……」

あなた
「じゃあ、私も歩夢ちゃんに思っていることを伝えるよ」

歩夢
「私に?」

あなた
「私が帰ってきたとき、歩夢ちゃんが残っててくれて良かった」

あなた
「歩夢ちゃんが部に移ってたら、私は帰国初日にショックで倒れてたよ、多分」

かすみ
「先輩ぃ~……」

191: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:36:44.12 ID:zHvlr8QS
あなた
「かすみちゃん、それにしずくちゃんも」

かすみ
「かすみんの、かすみんのぉ……スクールアイドル活動はどうしてこうなるんですかぁ~!?」

かすみ
「最初はせつ菜先輩によって同好会が解散され、次はしお子によって同好会を廃止にされそうになり……」

かすみ
「やっとの思いでしお子の無理難題を乗り越えたと思ったら、今度はランジュが好き勝手に暴れて同好会は活動できなくなって、分裂!」

かすみ
「そのランジュの問題もようやく終わったと思ったら、最後に先輩が大爆発しました!!」

しずく
「ごめんなさい先輩、かすみさん昨日の夜からずっとこの調子なんです」

かすみ
「うわ~ん!!せんぱーい!!」


あなた
「かすみちゃん……最後の問題、私がその大爆発しちゃった問題、終わりにしよう」
あなた
「本当にかすみちゃんはずっと大変だったと思う。だから、最後の問題くらいは私が自分の気持ちに決着をつけて、すぐに終わらせてあげたいよ」

かすみ
「うぅ~……確かに、かすみんにも早く終わってほしい気持ちはあります、ありますけど……」

かすみ
「そしたら、先輩はいつまでも言いたいことを言えないじゃないですか!!」

かすみ
「かすみんは、しお子にも、ランジュにも、愛先輩にも、果林先輩にも思っていることは、遠慮せずに言いました!」

かすみ
「だから、先輩も……部の人たちに言いたいことを言ってもいいじゃないですか!」

かすみ
「かすみちゃん……」

しずく
「私もかすみさんと同じ気持ちです、先輩」

しずく
「初めてのゲリラライブをした日、同好会みんなで団結しよう、という空気の中で私は部への移籍を口にしてしまいましたが」

しずく
「先輩はそんな私を快く送り出してくれました、それに同好会に戻りたいという時の相談も……」

しずく
「私は好きにやらせていただいたんです。今先輩が心のままに行動することを、私がどうこう言う権利はないと思います」

あなた
「しずくちゃん……」

192: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:40:20.04 ID:zHvlr8QS
あなた
「かすみちゃんへの気持ちは……「色々言ってくれてありがとう」かな。」

あなた
「ランジュさんと、部と分かり合う妨げにはなったかもしれないけど、正直、かすみちゃんの言動で、スカッとする気分の時もあった」

あなた
「あとは、1回目のゲリラライブの事と、しずくちゃんが戻るきっかけになったライブの事も、本当にありがとう」

あなた
「かすみちゃんがいなかったら、きっと私は部に潰されてたね」

かすみ
「先輩~……じゃあ、かすみんの事、たくさん褒めてなでてくださーい!!」

あなた
「しずくちゃんは、部に行っちゃったけど、ちゃんと理由を話してくれて安心できたよ」

あなた
「そして、部に入った上で帰ってきてくれたのは、しずくちゃんだけだった。それにしずくちゃんがゲリラライブで戻ってきたことで、それを見たミアちゃんと璃奈ちゃんが仲良くなれるきっかけになった」

あなた
「しずくちゃんが戻ってきてくれなかったら、今の状況はないと思う、ありがとう」

ミア
「で、そのしずくのおかげで、ボクはスランプになったわけだけど?」

193: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:43:55.93 ID:zHvlr8QS
璃奈
「ミアさん!? どうしてこっちに?」

ミア
「あんなゲームのラスボス直前みたいな空気の部室、長居してたら頭がおかしくなるよ」

せつ菜
「ど、どんな空気なんでしょう……?」

ミア
「それにしても、ランジュとベイビーちゃんもすごいけど、しずくも結構crazyだよね」

しずく
「ク、クレイジーですか?」

ミア
「ボクとランジュにあんな期待させることを言ったあと、何の挨拶も無しに同好会に帰るって、やっぱりcrazyだよ」

しずく
「え、えっとですね、ミアさん……その件については、その、何と言いますか……」

ミア
「ま、そのおかげでボクは璃奈と友達になれたわけだし、Result all rightって言っておく」

璃奈
「私は、やっぱり、喧嘩はいやだ……」

194: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:46:49.02 ID:zHvlr8QS
璃奈
「昨日、愛さんとあなたが喧嘩してるのを見て、すごくつらかった……」

あなた
「璃奈ちゃんは、そうだよね。昨日は本当に嫌な気持ちにさせちゃったと思う、ごめー」

璃奈
「ま、待って! 昨日、ミアさんと話したの、どうしたらいいのかな、って」

璃奈
「ミアさんは、私に辛い気持ちを、過去の出来事を、全部伝えることができて、それで私と友達になれた」

璃奈
「だから、あなたにも、そういう気持ちを、伝える機会が、必要だって、そうも思うの」

あなた
「璃奈ちゃん……」

ミア
「ベイビーちゃん、ボクがこの前ランジュの敵意とか、部室が取られた事について話してた時、強がって何ともないふりしてた」

あなた
「うん……あの時は、せっかくミアちゃんが言ってくれたのに、ごめんね」

ミア
「ちょっと、耳こっちに向けて、しゃがんで」

あなた
「? いいけど」

かすみ
「ちょっと、かすみんにも何言ったか聞こえるように、しゃべってくださいよぉ」

ミア
「子犬ちゃんには絶対に聞かれたくないから」

かすみ
「むぅ~~!!」

ミア
「璃奈はボクに言ってくれた、情けない姿を見せてくれたのは、関係が深まった証拠だって。だから、ベイビーちゃんも情けない姿を見せてきなよ」

あなた
「ミアちゃん……」

195: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:50:27.75 ID:zHvlr8QS
あなた
「璃奈ちゃんがミアちゃんと仲良くなってくれたおかげで、部と同好会の関係が進展したと思うんだ」

あなた
「あの時期、まだ部と同好会がピリピリしてた状態で、ミアちゃんと友達になるのは簡単じゃなかったと思う」

あなた
「璃奈ちゃん、ありがとう」

璃奈
「うん、でも、なるべく喧嘩にならないように、気持ちを伝えてね」

あなた
「ミアちゃんとは、作曲家としてお互いに高めあえるいい関係になれた、と思う」

あなた
「ランジュさんみたいに、ミアちゃんからも敵意を向けられてたら、きっと私の限界はもっと早かった」

ミア
「ボクも新しい曲の作り方を知ることができたし、お互いに良かったんじゃないかな」


せつ菜
「私は、悔しいです!」

196: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:53:41.64 ID:zHvlr8QS
せつ菜
「先ほど歩夢さんが何もできなかった、と言いましたが、私もあなたが留学から帰ってきてから、何もできてない気がします」

歩夢
「せつ菜ちゃんは合同イベントに出て、決勝まで進んだじゃない? 私はそもそも辞退しちゃったから」

せつ菜
「う~、その決勝で負けましたー!!」

あなた
「決勝まで行けただけでも、私はうれしかったよ」

せつ菜
「なので、あなたが悩んでいるのなら、今度こそ力になりたい!……と、思うのですが」

せつな
「できれば、あなたにも、愛さんにも、果林さんにも「大好き」を伝えてほしい、とも思っています」

あなた
「大好き?」

せつ菜
「先日の3人の話は、お互いに「嫌い」とか「不満」をぶつけあって、傷つけ合って、怒りだけがパワーアップしていた、そんな会話でした」

あなた
「い、怒りだけがパワーアップ?」

せつ菜
「はい! ですから、そういった気持ちだけではなく「大好き」を伝えてほしいんです」

せつ菜
「あなたの中には、まだ愛さんや果林さん、ランジュさんを人として、友達として好きな部分、希望を持っている部分が、ありますから」

あなた
「持っている、のかな? もしかしたら、もう私は―」

せつ菜
「持っています!! 昨日があなたが怒ったのは、あなたが望みを持っていて、それが叶わなかったから、期待通りにならないから怒ったんです!」

せつ菜
「もし相手の全てに絶望していたら、怒りなんて感じないはずですから」

197: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 22:56:54.90 ID:zHvlr8QS
せつ菜
「だから、「大好き」を、相手の何が好きか伝えること、どうしても、怒りを伝えるときには、その怒りを生んだあなたの望みを伝えることを、どうか忘れないでください」

あなた
「せつ菜ちゃん……」

あなた
「せつ菜ちゃんが、合同イベントの決勝で、同好会を背負ってくれた時、そのせいでいつものせつ菜ちゃんが出せなくて、負けちゃったけど……」

あなた
「ちょっとだけ、肩が軽くなったよ。同好会っていう場所、集まりを背負っているのは、自分だけじゃないって思えたから」

あなた
「ありがとう、せつ菜ちゃん」


彼方
「彼方ちゃんは~、みんなで一緒にできるなら、それで嬉しいよ」

198: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:00:17.16 ID:zHvlr8QS
あなた
「……そうだよね、3年生の2人は、スクールアイドル活動がしたくてこの学園に来たのに、いろんな問題があって……また私のわがままで問題が」

彼方
「だから~、あなたの気持ちを伝えて、またみんなで一緒にできるようになろう」

あなた
「え?」

エマ
「わたしが聞いてあなたが楽になるなら、わたしが聞いてあげたいんだけど……きっと本人同士で言わないとダメなんだよね」

エマ
「だから、わたしもあなたが楽になって、みんなで前みたいに一緒にできるのを、待ってるよ」

あなた
「……気持ちを伝えた後に、仲良くなれるって、決まったわけじゃないですよ」

エマ
「大丈夫、仲良くなれるよ。わたしと果林ちゃんもそうやって気持ちを言いあって、また仲良しに戻れたから」

エマ
「喧嘩しても、絶対に仲直りする! その気持ちがあれば、あなたと果林ちゃんも大丈夫だよ」

彼方
「もし、あなたとお話してまた果林ちゃんが落ち込んじゃったら、彼方ちゃんたちが、なんとかするよ~」

あなた
「……落ち込むのは、果林さんの方なんですね」

エマ
「もちろん、あなたが落ち込んでも、わたしが元気づけてあげるよ」

彼方
「だから~、安心していってくるといいよ~」

あなた
「エマさん、彼方さん……」

あなた
「エマさんと彼方さんには……私が帰国した時から、「あなただけ」とか「あなたとじゃなきゃできない」とか、ずっと言ってもらって、すごく嬉しかった」

あなた
「もし2人の言葉が無かったら、この数か月は辛くて耐えきれなかったと思う、本当にありがとう」

200: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:03:31.50 ID:zHvlr8QS
薫子
「よっ、同好会のみんなは、結論が出たかな?」

あなた
「薫子さん……」

薫子
「どうするのか、私にも教えてもらえるかな? スクールアイドルが好きなキミとして、前だけ見て活動する? それとも、人としてのキミの気持ちを伝えに行くの?」

あなた
「行きます、気持ちを伝えに」

薫子
「そっか、それでみんなも納得できた?」

あなた
「はい」

薫子
「じゃあ、部に行こう。向こうもキミを待ってるよ」

……
スクールアイドル部 部室

あなた
「失礼します」

栞子
「おはようございます」

果林
「……あっ」


「……」

ランジュ
「みんな、よく来たわね!ランジュの部に!」

(栞子ちゃんとランジュさんはいつも通りという感じだけど、愛ちゃんと果林さんは緊張している感じがする。)

201: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:08:01.80 ID:zHvlr8QS
ランジュ
「お話はそこにある部専用のカウンセリングルームでしましょう。完全防音で外からも見えないわよ」

しずく
「あの、私がいた時より部屋が増えてませんか?」

ランジュ
「この部屋は果林が調子悪かったときに使おうと思って、急いで作ったのよ。でも、部屋が完成する前に果林が復活したから、出番はなかったけど」

果林
「え!? ちょっとランジュ、私それ初耳よ!?」

ランジュ
「だって別に聞かれてないし、部屋の必要性もなくなったから」

ランジュ
「ちなみにライトやアロマで、なるべく緊張せずに本音を話せるようなってるし、ドリンクだってあるんだから、部屋の中身も充実してるわよ!」

エマ
「す、すごいお部屋なんだね……」

栞子
「サウナと岩盤浴を作る予定だったところを、急きょ変更したので、その名残だそうです」

かすみ
「むしろ、そんなものまで部室に作るつもりだったんですかぁ!?」


「……ぶちょーは今日は何をしに来たの?」

あなた
「愛ちゃんに、みんなに私の気持ちを伝えるために来たよ」


「そっか……」

栞子
「では、私からでよろしいでしょうか?」

歩夢
「栞子ちゃん?」

果林
「あなたは昨日別に何もなかったじゃない……」

栞子
「昨日の件に関わらず、私にはあなたに言わなければならない事があります」

あなた
「分かった。じゃあ行こうか、栞子ちゃん」

ランジュ
「待ってるみんなは好きに部室を使ってちょうだい! トレーニングルームを使ってもいいし、お茶してもいいわよ」

202: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:12:22.11 ID:zHvlr8QS
……
歩夢
「ランジュさん、お願いがあるんだけどいいかな?」

ランジュ
「歩夢! このランジュになんでも言ってちょうだい!」

歩夢
「ランジュさんに、見てもらいたいものがあるんだ。もしかすると、ランジュさんはちょっと嫌な気分になる、かもしれないけど」

ランジュ
「何を見せるのか気になるけど、友達の歩夢からのお願いなんだから、ランジュはもちろん大丈夫よ」


カウンセリングルーム
栞子
「……ふぅ」

(深呼吸をしている、栞子ちゃんは大分緊張しているみたい)

栞子
「……覚悟は決まりました、言わせていただきます」

あなた
「う、うん……」

(栞子ちゃんからも、2人みたいに何か責められたり、するのかな……)

栞子
「今回のランジュと部の一連の件について、誠に申し訳ありませんでした!」

あなた
「えっ……一連っていうけど、具体的に栞子ちゃんは何について謝ってくれてるの?」

203: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:16:50.76 ID:zHvlr8QS
栞子
「いくつかありますが……まずは私がランジュを幼馴染として理解できていなかった、という点です」

栞子
「今回の話は、私がランジュの望みを理解していれば、「特別」に悩んでいると分かっていれば、そもそも問題にならなかったはずです」

栞子
「みなさんにも「友達が作りたくて、のようにしている」と伝えたり、ランジュに「それでは友達はできない」と伝えることもできましたから……」

栞子
「問題が長期化してしまったのには、私にも責任があるので、それについてますは謝罪させてください」

あなた
「……私も、栞子ちゃんならもっと早く解決できたかも、って今なら思う」

栞子
「……はい」

あなた
「それに、栞子ちゃんは、ランジュさんには悪意や悪気がないって言ってたけど、私に対して嫉妬とか意地悪したって本人から言われた」

栞子
「そうですね、ランジュはあなたに対して嫉妬し、それが悪意や悪気につながったのでしょう、これも私の無理解でした」

あなた
「ただ、「ショウ・ランジュ」という女の子を正確に理解するのは、栞子ちゃんでも難しかった、とは思うよ」

栞子
「他人の観察を得意として、適性によるアドバイスをしていた私が、よりによって幼馴染を見抜けなかったのは、バカな話ですよ」

あなた
「……」

204: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:19:51.31 ID:zHvlr8QS
栞子
「次に行きましょう。監視委員会についても誠に申し訳ありませんでした」

栞子
「本来、生徒会長として、同好会に所属していた身として、絶対に通してはいけない話でした」

栞子
「でも、私は結局……権力にも、あの人の言葉にも負けてしまいました、本当に情けない……」

あなた
「あの人は、理事長先生、でいいのかな?」

栞子
「! そうですが、どうしてそれを……」

あなた
「学園が、あの委員を通してるってことは、そういう事だと、感じてたよ」

栞子
「……そうですね、学園そのものの前には、結局私も……」

栞子
「せつ菜さんに、いえ生徒会長としては「中川菜々」の方がいいでしょうか。かつて彼女にやった事が私に返ってきた、因果応報だと、私は感じました」

栞子
「それは、どういう意味?」

栞子
「私は、生徒会選挙の時、あらゆる手を使って、生徒会長の座をとりにいきました」

栞子
「そのために、最後演説の際に「質面攻め」も、使ってしまいました」

あなた
「演説の時にやったのは、ディベートにおいては、強い技術なの?」

栞子
「反則だと思いますよ。人間というのは、発言をしている個人に問題があると、その人が言っている内容にも問題があると感じる……」

栞子
「あの時、返事をできなかった中川さんを見て、多くの生徒は中川さんの方に問題があると感じ、私へ投票したはず」

栞子
「だから、ディベートにおいてはあんな攻撃は基本的に禁止です」

栞子
「そもそも、理事会に生徒会再選挙を通した時点で、私は理事長先生と知り合い、という権力や立場も使っていたと、今は思います」

あなた
「……今のが、せつ菜ちゃんにやった事の方の話だよね」

205: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:23:21.31 ID:zHvlr8QS
栞子
「監視委員会の設立の際に、理事長先生に同じことをされたんです」

あなた
「同じこと?」

栞子
「先生も監視委員会を通すために、権力を私に使ってきました」

栞子
「話し合いにおいても、私は、理事長先生に手も足も出ません。先生も私と同じように、あらゆる手を使って目的を達成しようとしていました」

あなた
「それは、大人相手だから仕方がないんじゃ」

栞子
「大人以外でも、ランジュにも口で勝てませんよ、私」

栞子
「結局、特別な地位を持たず、ちゃんと私の話を聞いて返事をしようとする、せつ菜さんに甘えていたんだな、と」

あなた
「……今の話は、謝る相手を間違えてると思うよ」

栞子
「そうですね……後で、改めて謝罪しようと思います」

206: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:27:10.86 ID:zHvlr8QS
栞子
「最後に、同好会からの恩を仇で返すような形になった事も、本当に申し訳ありません」

栞子
「私は、なるべく今回の一件、ランジュと同好会の間で中立を保とうとしていました」

栞子
「監視委員会の一件以外は、なるべく同好会が不利になるような活動は、しなかったつもりです」

あなた
「そうだね、栞子ちゃんが監視委員会以外で、どちらかに味方しないようにしているのは、なんとなく感じてた」

栞子
「ただ、この中立というのは、あくまで私視点の話です」

栞子
「同好会視点で見れば私は、散々活動の邪魔をしてきて、同好会への所属を許した直後、ランジュの元に去り、監視委員会で再び邪魔をしてくる……」

栞子
「こうして羅列すると、ひどい女ですね、私」

あなた
「……そうだね」

栞子
「あなたはこんな私についてどう思ってるんですか? 皆さんお優しいから、この事で責められはしていませんが……」

あなた
「私は……栞子ちゃんと同好会でスクールアイドル活動ができる、と思ったら、すぐにいなくなった、とは思った」

栞子
「そう、ですね……特にあなたは合宿前に留学しましたから」

あなた
「うん、正直に言うと、一緒にスクールアイドルとして同好会で活動した思い出より、生徒会選挙前後だったり、部にいる時の印象の方が、まだ強いよ」

栞子
「……はい」

あなた
「だから……実は「翠いカナリア」作るの、すごく大変だった。だって、スクールアイドルとしての栞子ちゃんと、私はほとんどお話してないから、栞子ちゃんに寄り添って曲を作るの、難しかったよ」

栞子
「そうですよね……」

207: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:30:31.97 ID:zHvlr8QS
あなた
「それと、栞子ちゃんはせつ菜ちゃんから、本とかアニメとか勧められて、見た事はある」
栞子
「はい、いくつかありますが、何故そんな事を聞かれたのでしょうか?」

あなた
「……栞子ちゃんの事、そういう作品によく出てくる、敵の時には強いのに、仲間になった途端に弱くなるキャラクター、みたいにも感じてる」

栞子
「ぐっ、あの手の登場人物ですか……」

あなた
「大丈夫? 私の言いたい事は伝わっている?」

栞子
「大丈夫です……私もそういった作品を鑑賞していて、「強い人物が加入したはずなのに…」と感じることがあります」

栞子
「それに、私はせつ菜さんや同好会には強気で活動していたのに、ランジュや部、理事長先生には何もできなかったので、妥当な評価だと思います」


あなた
「……私の、最初から同好会にいたみんなへの想いと、栞子ちゃんへの想いは、まだ大きな違いがあるよ」

あなた
「一緒に困難を、難しい課題を乗り越えた、っていう部分で差がついてるんだと思う」

栞子
「……妥当だと思います」

あなた
「それに、さっき言ったみたいに、一緒に頑張った思い出より、栞子ちゃんが同好会を廃止しようとしたり、監視したりの思い出の方が多いとも感じる」

栞子
「……はい」

あなた
「そして、今言ったことは私の本心だけど、これからの栞子ちゃんの行動で、変わることもあると思う」

栞子
「あ……」

あなた
「だから、これからの栞子ちゃんの事、見てるよ」

栞子
「……分かりました、言葉ではなく行動で示せ、という事ですね」

栞子
「本日はありがとうございました。それと、この後についても、上手くいくよう願っています」

あなた
「うん、こちらこそありがとう」

209: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:33:58.71 ID:zHvlr8QS
栞子
「終わりましたよ」

薫子
「どう、満足いくまでお話できた?」

栞子
「ええ、私はもう十分させていただきました」

璃奈
「喧嘩、しなかった?」

栞子
「大丈夫ですよ、私が責められることはあっても、私には別にあの人を責めるような気持ちはありません」

栞子
「最初に立候補したのも、そういう点であの人が精神的に楽だと思ったからです」

しずく
「その言い方だと、後の3人が大変そうに聞こえます……」

栞子
「間違いなく、私より大変だと思いますよ」

エマ
「それって、あの子にとって?それとも残りの3人にとって?」

栞子
「……どちらにとっても、かと」



あなた
「次は…」

果林
「……」

あなた
「果林さん、お願いできるかな?」

果林
「わ、私? ……分かった」


「アタシじゃなくて、カリンにした理由は?」

あなた
「果林さんは、ある程度なら私にも「果林さんならこう考えたのかな」って想像できたから、かな」


「……愛さんは想像できないんだ?」

あなた
「……うん」


「っ!」

(愛さんは、下を向いてしまった……)

210: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:37:30.20 ID:zHvlr8QS

カウンセリングルーム

果林
「さ、先に一つ、謝らせて頂戴」

あなた
「えっ?」

果林
「昨日のその、私の「お友達を作るために同好会に入ったわけじゃない」って言葉について」

果林
「あれは、本当に私が悪かったわ、ひどい事を言ってごめんなさい」

果林
「同好会のみんなも、もちろんキミの事も大切な友達だと思ってるわ」

あなた
「……私も昨日は嫌な言い方をして果林さんを傷つけたから、それはごめんなさい」

果林
「そうね……昨日のアレは結構効いたわ」

あなた
「じゃあ、その「友達」について果林さんに聞きたいことがあるんだ」

果林
「……何かしら?」

あなた
「果林さんはこの間のランジュさんが帰国しようとする際の騒動で、友達だと思っていたランジュさんにそれを伝えるため、友達のためにすごい頑張ってたよね」

果林
「えぇ、そうよ」

あなた
「でも、同じように友達だと思っている私たち同好会が、ランジュさんのせいで活動できなくて困っている時は、あんまり頑張ってくれなかったイメージがあるんだ……」

211: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:41:32.16 ID:zHvlr8QS
果林
「それは部に入ったばかりの私が、調子に乗って友達の事を軽視していたからよ」

果林
「だから、あんな「お友達を作るために~」なんてひどい事も言うし、キミや同好会の為に全力で動いてなかった」

あなた
「じゃあ、果林さんはいつその考えを変えたの?」

果林
「もちろん、エマと彼方に助けてもらった時ね」

果林
「あれで私は友達の重要性を理解して、以前の自分が間違っていたと気づいたの」

果林
「ただ、あの時にはもう監視委員会は解散してたから、部にいながら同好会にできるようなことは私にはすぐに思いつかなくて……」

果林
「結果的にはランジュだけ友達として贔屓するような形になったわ、それについては悪かったと思う」

あなた
「そうなんだ……果林さんはそんな風に考えてたんだね」

果林
「それと、黙って部に移ったことも謝るわ、ごめんなさい」

あなた
「……私に言わなかった理由は?」

果林
「さっきと同じになるけど、部に入った私は友達の事を軽視して、高みに行くことばかり考えて……キミや同好会のこと見えなくなってた」

果林
「キミがどう思うか、なんて考えもしなかった。今思えば、ひどい事をしたわ、本当にごめんなさい」

あなた
「……うん」

213: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:44:40.46 ID:zHvlr8QS
あなた
「ちなみに私にこの話を聞かれるの、予想してた?」

果林
「えっ、な、なんで分かったの!?」

あなた
「すらすら答えてくれるし、なんかすごく準備してきてくれたんだなぁ……って返事の仕方に感じたから」

果林
「……昨日エマと彼方に言われて、この話についてはすごく考えてたから」

あなた
「エマさんと彼方さんが……2人には本当に感謝だね」

果林
「えぇ、私もそう思うわ」


果林
「これで、終わり……じゃないのよね」

あなた
「うん……」

果林
「今の話を除けば、特にキミに隠し事はしてないつもりよ、部とスクールアイドルへの想いも、あの時伝えたわ」

あなた
「……その想いは、わかってる」

果林
「さっきの話以外には、私にはもう見当がつかなかった」

あなた
「私が、果林さんについて、悩んでいるのは……新しい環境で上を目指す果林さんを、素直に応援したい、するべきだっていう気持ちと……」

あなた
「もう一緒に上を目指せなくて寂しいとか、果林さんに捨てられた悲しみとかが、ぐちゃぐちゃに混ざって、苦しくなって―」

果林
「ちょっと待って」

果林
「捨てられた、って言ったわよね? 私がキミの何を捨てたのかしら?」

(果林さん、ちょっと怒っているように見えた)

214: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:49:13.46 ID:zHvlr8QS
あなた
「そうだね……被害者ぶった言葉選びだった、ごめんなさい。選ばれなかった、が正しいと、思う……」

果林
「あんまり変わってないじゃない……じゃあ私はキミの何を選ばなかったの?」

あなた
「……うまくまとめられなさそう、長くなるかも」

あなた
「果林さんが部に行ったのは、もっと自分を高めるためって、帰国した日に聞いた」

果林
「そうね、そう言ったわ」

あなた
「つまり、果林さんは私の練習より、プロの指導の方が上を目指せるから、部に行ったんだよね?」

果林
「……それは、そうだけど、プロの指導の方が優れているのは、キミが悪いわけじゃなくて―」

あなた
「分かってるんだ、学生がいくら全力で練習を見ようとしても、それはプロの足元にも及ばない。だから果林さんの選択は、当たり前だと思うよ」

あなた
「頭では、分かっているはずだし、分かるべきなんだけど……」

あなた
「もう、これ、いらないんだなぁ……って思うと苦しくなるんだ」

果林
「……これ、って何?」

あなた
「練習ノート、だよ。果林さんが見るのは、久しぶりだよね」

果林
「あ……」

215: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:51:14.21 ID:zHvlr8QS
あなた
「果林さんと愛ちゃんの分は、留学してから更新してなくて、空白のままだけど」

あなた
「仮に、部と同好会が統合されて、2人が私のところに戻ってきてくれても」

あなた
「私が2人の練習を見て、このノートの続きを書くことは、無いんだなって」

果林
「……どういう事よそれ。キミはもう私の練習を見たくないって、そう言いたいの?」

あなた
「見たいよ、でも見たくない……」

果林
「訳の分からないことを言わないでちょうだい……」

(声に怒りがこもっていく果林さん。私もそれにつられて、頭が熱くなってきてしまう)

あなた
「私は、果林さんに私なんかで、「ほどほど」で妥協してほしくないんだよ!」

果林
「だ、妥協?」

あなた
「果林さんが一番上を目指せるのは、不満が残らないのは、部の、プロの指導なの!」

あなた
「だから、もし部が無くなったとしても、ランジュちゃんにお願いして、部にいたプロの人をまた呼んで、果林さん達の練習を見てもらうつもり」

果林
「は、はぁ!?」

あなた
「それに私も、「本当は不満なのかな」「私より優れた環境ができたら、また出てっちゃうのかな」とか思いながら練習を見るのは、辛いよ」

果林
「いい加減にしなさいよ!!」

216: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:55:55.82 ID:zHvlr8QS
あなた
「……」

果林
「部だ同好会だ、部の方が優れてるだ、前のランジュみたいな事言って」

果林
「部には部、同好会には同好会の良さがある、私も愛も栞子ちゃんも、ランジュにそう言い続けてきたわ」

果林
「同好会に残った子たちだって、キミにはキミの、部に負けない良さがあるから残ったんでしょう!?」

果林
「それなのに、同好会部長のキミが、今更そんな事を言わないで!」

あなた
「……じゃあ」

あなた
「じゃあ、教えてよ!!」

(気が付くと私は、席を立って果林さんの両肩をつかんでいた)

あなた
「果林さんにとって、私の練習が部のプロによる指導に勝ってた所って何!?」

果林
「……え」

217: (もんじゃ) 2021/08/09(月) 23:59:20.44 ID:zHvlr8QS
あなた
「曲にはそれぞれの良さがある、それはミアちゃんからも教えてもらった、分かってるよ」

あなた
「ライブの方針も、ランジュさんのところじゃできない事がいっぱいある、それも分かるの」

あなた
「でも、果林さんにとっての、練習における部に無くて、私にある良さって何なの!?」

果林
「それは……」

(果林さんが必死に言葉を考えて、焦っているのがわかる)

(でも、果林さんの肩を揺さぶる私の手も、思いを叩き付ける私の口も、止まってくれない)

あなた
「教えてよ……教えてよ!!」

あなた
「1つでもいいから、果林さんの口からちゃんと聞かせてよ!」


あなた
「聞けたら、私も頑張るから! 果林さんの言葉を信じて、練習見れるから!」

果林
「キミの良いところは……良いところは」

あなた
「教えてよ……私、また果林さんと楽しく活動したいから、教えてよぉ……」

果林
「なんで、なんで、なんで……」

あなた
「果林さん、お願い……」

(そう言って、私は果林さんの瞳を見つめる。そして、)

果林
「……っ」

(果林さんは、目をそらした)

218: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:02:45.92 ID:o69TNON4
……
(しばらくして、私の頭も冷えてくると、ずっと果林さんの肩をつかんでいたことに気づいて、手を放した)

あなた
「ごめん、子供みたいな事を言っちゃった。肩も痛かったよね、本当にごめんなさい」

果林
「いえ……」

あなた
「私が一方的に、抱えてたもの吐き出しちゃったね。果林さんの事ももっと考えないと」

果林
「……私は…」

あなた
「本当は、私も気づいていたんだと思う。果林さんが、部と同好会についてどう思っているか」

果林
「……」

あなた
「果林さんと一緒に上を目指したかったけど、私じゃ力不足だから」


果林
「上を、目指す……」


あなた
『果林さんの熱さ、私が全部受け止めるよ! 全力には全力で応えるから、一緒に上を目指そうよ!』

果林
『全力で応えて……一緒に、上を目指す……』

あなた
『私の熱が果林さんを上回っちゃうかもしれないよ!』


果林
「あっ」

あなた
「果林さんが、一緒に上を目指すのに選んだ相手は、もう私じゃない……」

219: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:05:06.25 ID:o69TNON4
果林
「私だって、キミのその言葉を忘れたことはないし、無かったことにしたつもりはないし、今でもそう―」

あなた
「でもっ! 次のスクールアイドルエキシビションで上を目指す果林さんとは、私は一緒にいないよ」

果林
「そんなことないわよ!」

あなた
「Diver Divaというユニットを組んだのは、果林さんと愛さんが自分で考えた結果。ダンスや歌のレッスンは、部のプロによる指導。そして、作曲を担当したのはミアちゃん……」

あなた
「これのどこに、私がいるの……?」

果林
「キミは、キミは……」

あなた
「果林さんが全力の熱を向けた相手は、もう私じゃないんだよ……」


あなた
「……でも、果林さんが前に、部に行ったことは間違っていない、って言ったように、私も果林さんの選択は上を目指すなら間違いじゃない、って理解はできる」

果林
「……めて」

あなた
「苦しい、寂しい気持ちは本当だけど、果林さんに満足いく活動をしてほしい気持ちも本当だから」

果林
「……やめて」

あなた
「これからは、果林さんが、上を目指すの、遠くから見て応援-」

果林
「やめてって言ってるでしょ!!」

あなた
「か、果林さん……」

(果林さんは、私の言葉を全て聞く前に外に出ていった)

あなた
「……果林さんの事、傷つけちゃった」

(果林さんにあそこまでさせた、自分が嫌になる)

(ランジュさんを許していれば、今頃は楽しく果林さんと話せていたのだろう)

(けど、これが私の選んだこと……果林さんの笑顔より、こうなる事を選んだんだ)

220: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:08:19.07 ID:o69TNON4
部室

エマ
「果林ちゃん、どうしたの!? とつぜん部屋から出てきたけど、あの子とのお話は終わったの?」

果林
「ランジュ! 部での練習の記録と、指摘の記録、データで保存されてるのよね?」

ランジュ
「えっ、保存されてるけど、今そんなもの何に使うのよ」

果林
「いいから早く頂戴! お願いだから!」


ランジュ
「ランジュがデータをプリントしてきたわよ、画質は最高品質なんだから!」

果林
「早く、早く見つけないと……」

ランジュ
「そんなに必死に練習の記録なんか見返して、果林は何を探してるのよ?」

果林
「どこかにあるはずなのよ……」

ランジュ
「何が?」

果林
「部の練習に欠けているものが、部の練習での問題点が必ずあるはずなのよ!」

果林
「だから、早く見つけて、伝えないと……!」

ランジュ
「ないわよ、そんなもの」

ランジュ
「部にはランジュが最高のコーチやトレーニングルームを用意して、みんなから不満がでないようにしたの」

ランジュ
「実際、果林も部の練習に不満を感じた事、1度も無かったでしょ?」

果林
「…うっ……」

ランジュ
「ええっ!? なんで泣くのよ!?」

223: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:12:21.07 ID:o69TNON4

しずく
「果林さん、探す方向性が違っていませんか?」

果林
「……えっ?」

しずく
「部側を見て欠けているもの、問題点を探すのは、ランジュさんが言ったように難しいと思います。私も、部に行ったときは不満なんてないと思っていました」

しずく
「探すべきなのは、同好会側で果林さんが感じた、良い点の方です。かすみさんのライブを見て感じたように」

果林
「もう、私……自力じゃそれすら探せないのよ…」

エマ
「じゃあ、果林ちゃんもあっちで、歩夢ちゃんとランジュちゃんと一緒に、振り返ってみない?」

エマ
「みんなと今までのあの子との思い出を」



(しばらくして落ち着いてからカウンセリングルームを出ると、愛さんが私の事を待っていた)


「愛さん、カリンがしっかり終わるまで待ってた方が良い?」

果林
「愛……私は答えを探すまで、どのくらいかかるか分からないから、あの子がいいなら……」


「だってさ。ぶちょーは準備できてるの?」

あなた
「私はいいよ、愛ちゃん」


「じゃあ、やろっか」

璃奈
「愛さん……」

224: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:17:26.92 ID:o69TNON4
カウンセリングルーム

あなた
「愛ちゃんと2人で話すの、久し振りだね」


「ほんとに久しぶりだよ~!……こういう形になるとは、予想してなかったけどさ」

あなた
「……私も、愛ちゃんとあんな風になる日が来るなんて、思わなかったよ」


「アタシ、昨日で君がランジュの謝罪を受け入れて、みんなで楽しくなれると思ってたんだけどな」

あなた
「私も、そうしようと思う気持ちがあったし、そうするつもりだった。でも、最後にはこっちの気持ちが勝ったの」


「君、そんなに溜めこんでたんだ?」

あなた
「そうだね……ずっと我慢して、爆発しちゃった」



「ズバっと聞いちゃうけど、君が愛さんの事、分からなくなったのっていつから?」

あなた
「帰国した日に、2人が転部したって聞いたときからかな」


「それ、部に入ってからの愛さん、全部分からないって事じゃん!」

あなた
「そう、なるね……。果林さんの方の転部理由はある程度納得できたんだけど、愛ちゃんの方は正直……」

226: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:21:20.61 ID:o69TNON4

「あの時に伝えたのが、一番の理由じゃないけど、理由の一部ではあるんだけどなぁ」

あなた
「私は、同好会が逆境の状態なら、愛ちゃんなら同好会に残って助け合うと思った。最悪、私に転部の連絡だけでももらえると思ったよ」


「……でも君は、そんなアタシを問い詰めずに、怒ったりする事もなかったよね? 何で?」

あなた
「愛ちゃんを責めるようなこと、したくなかった。それに、自分に自信が無かったの、ランジュさんの部の方がすごいから、それも当然って」


「当然って……本気で思ったの?」

あなた
「かもしれない、って気持ちが消えなかった。本当にその時から愛さんの事、分からなかったから」


「そっか……」


「また質問だけどさ、ミアチがスランプになった後、行方不明になった件、覚えてる?」

あなた
「うん。愛ちゃん、私たちにミアちゃんを探すのを手伝って、ってお願いしに来たよね」


「君、アタシの事が分からなかったり、悩んでたのに、探すのを手伝ってくれた、っていうの?」

あなた
「愛ちゃんがお友達と話すのを聞いちゃって……これ、偽物なんだっけ?」


「らしいね~。ちなみに何言ったの、アタシの偽物?」

あなた
「「自分が部に行っても同好会の部長は、変わらず応援し続けてくれる。自分が部で活躍するのを願ってくれている。」そんな意味の事を言ってたかな」


「それ、本物の愛さんも思ってるよ、キミならそうしてくれるって。この会話とお手伝いがどう繋がるの?」

あなた
「そう、だよね。……それを聞いた私は、そんな風に素直に応援できない自分のエゴが嫌になって、そこに愛ちゃんが来たの」

あなた
「愛ちゃんから、試されてるような気すらした。どうして私たちに頼むのかも、分からなかった。」


「……」

あなた
「そんな風に悩んでいたら、他のみんなが協力するって決めてて……」


「じゃあ、キミはアタシの事手伝いたい、ってわけじゃなかったんだ」

あなた
「うん」

227: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:24:22.68 ID:o69TNON4
あなた
「今度は、私から質問させて。愛ちゃん、せつ菜ちゃんに勝ちたくて部に移籍して、合同イベントを開いたんだよね」


「そうだよ、合同イベントのプレゼンの時にそう言ったじゃん」

あなた
「いつから、そう思うようになったの?」


「覚えてないよ、気づいたらそうなってた」

あなた
「気づいたら、って……それで納得しろっていうのは、私には難しいよ」


「……なんで?」

あなた
「……私は留学前に、みんなを楽しく、笑顔にさせるスクールアイドルを目指してる、って愛ちゃんから聞いた」

あなた
「愛ちゃんと一緒に活動する中で、勝ち負けにこだわるなんて、ほとんど聞かなかったし、せつ菜ちゃんを意識しているのも聞かなかったよ!」


「仕方ないじゃん! 留学前に君と一緒にやってるときには、本当にそう思ってなかったんだから!」

229: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:27:12.02 ID:o69TNON4

「そっちこそ、何でアタシが変わったことに、そんなに突っかかってくるわけ!?」


「君と歩夢だって、最初からスクールアイドルが好きだったわけじゃないでしょ」

あなた
「そ、れは……」


「アタシとりなりーだって同じだよ、君たちに誘われて、ある日突然スクールアイドルを始めたんだから」

あなた
「……」


「急に何かやりたくなること、アタシにだってあるよ。それがアタシの場合「勝負」だっただけの話だって」


「アタシ、キミならおねーちゃんみたいに喜んでくれるって思ってたよ」


「何で、私が黙っていたとか、隠し事をしていたみたいな、ネガティブな方にとらえちゃうかな!」

あなた
「ネガティブって……じゃあ何で私に一度も相談してくれなかったの?」

230: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:31:07.35 ID:o69TNON4
あなた
「私が、愛ちゃんの気持ちに気付けなかったから、寄り添えなかったから、せつ菜ちゃんに勝つためには役に立たないから、捨てたんじゃないの!?」


「……今の本気で言ってるの?」

あなた
「本気だよ……本気でそう思ってた」


「愛さんが君の事をそういう風に捨てるかどうかも、分からなくなっちゃったの?」

あなた
「そうだよ、分からないよ……愛ちゃんの事も、愛ちゃんが私のことどう思っているのかも、もう何にも分からなくなっちゃった……」


「ずっと、そんな気持ちを隠したまま、部にいるアタシに、何ともない顔して接してたってワケ!?」

あなた
「私は、愛さんが思ってくれてるかもしれない、キレイな心の持ち主になれなかったよ……」


「……じゃあ、アタシが君を信じて、これまでやってきた事って」


「本当に、ただ君をボロボロに傷つけただけ?」

……


「君はアタシが分からないって言ったよね。まだアタシの事を知りたいと思ってるの?」

あなた
「……できることなら」


「キミが傷つくかもよ」

あなた
「これ以上があるの?」


「……そうだったね」

231: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:34:05.83 ID:o69TNON4

「キミが留学中に、アタシは勝ちたい気持ちが芽生えて、ランジュがやってきて、アタシにはやりたい事が3つできた」


「勝ちたいって気持ちを叶える、練習とライブができない同好会をどうにかする、ランジュを理解して対応する、の3つ。3つ目はしおってぃーの時みたいに、何かスクールアイドルに対する強い思いをランジュが実は持っていて、そこを分かる必要があると思ったから」


「アタシはわがままだから、全部やりたい。だから、最初に愛さんがやろうとしたのは」


「同好会の全員を形だけでも部へ移しちゃうこと」

あなた
「?」


「監視委員会はあくまで「同好会」の活動を見るように言われているだけ。しおってぃーも「同好会」のライブを止めるように言われただけ。これはしおってぃー本人から確認が取れてた」


「それなら、「部の練習です」、「これは部のライブです」って言い張れば、例え今までと同じような活動でも、もう邪魔することはできないじゃん」


「だから、監視委員会をランジュに言ってどうこうするつもりはあまりなかった。ランジュって「指図しないで」って嫌がるし。全員部に来れば解決するって思ってたから」

あなた
「全員っていうけど、私はそこにはいないよね……私は、あの時にランジュさんに「いらない」って言われたんだよ! 私は部に行けないんだよ!?」


「それは君以外のみんなで部に行ったあと、今までと同じように、君のところで練習して、君のところでライブすればいい、って思ってた」


「果林が一度、同好会にライブの準備を頼んでたよね? しおってぃーも同好会に練習をしに行ってたって聞いてる。アタシはこういうのをひたすらやればいい、って思ってた」

あなた
「そんなの、ランジュさんが黙っているわけないよ」


「自信があった。アタシ、仲が良くない部とかグループの間を取り持つ機会が何度もあったし、こういう人間関係で失敗したこと無かったから、ランジュもどうにかできるって思ってた」


「でも、アタシの自惚れだったよ、全くうまくできなかった」

232: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:42:06.95 ID:o69TNON4

「ランジュの君への敵意の強さは想像以上で、幼馴染のしおってぃーからの言葉も聞かないほど。それで、その敵意を知ったかすかすや歩夢はランジュをもっと拒絶するし、優しいエマっちとカナちゃんですら、ランジュを嫌がるようになっていった」


「おまけに坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、っていうか、かすかすからは「裏切り者」「部外者」って言われて、嫌いなランジュに味方する愛さんも嫌い、みたいな状況になっちゃったし」

あなた
「それ、愛ちゃんはあんまり気にしてないと思ってたよ、平気な顔してかすみちゃんに話しかけるから」


「「ランジュが嫌わてる」っていうのが原因だと思ってたから、そこをどうにかすればアタシへの態度も戻るって、確信があったから、大した問題じゃないって思ってたよ」



「でも、この方法は完全失敗。アタシひとりじゃ3つのやりたい事ができないって、悩んだ」


「そんな風にグダグダしてたら、君が留学から帰ってくる日になった。歩夢たちも、この日までになんとか部の問題を決着付けようとしていてみたいで、アタシもこの日までに全員移すつもりだったから、どっちもキミに連絡はしてない」


「ぶっちゃけさ、ヤバいと思った」

あなた
「……ヤバい?」


「君がどんな反応をするのか、すごく怖かった。泣くのか、怒るのか、アタシと果林がビンタされるのか……」


「歩夢たちは「自分たちでどうにかしようとした」って言い訳つくかもしれないけど、黙って退部はどうにも言い訳できないじゃん」

あなた
「……」


「でも、そんなアタシと果林に君は嫌な顔一つ見せずに、真っ先に「部の活動は楽しい?」って聞いてくれたんだよ」

233: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:44:24.43 ID:o69TNON4

「アタシ、嬉しかった。どんな言葉で表現すればいいのか分かんないくらい、感動しちゃった」


「アタシは何の説明もしなかったのに、君は愛さんの事を応援してくれてるんだって、愛さんがやろうとしている事をサポートしてくれるって!」

あなた
「……」


「実際に、君は「練習とライブができない同好会をどうにかする」って私のやりたい事を、すぐにやってくれた」


「別の学校に合同練習しに行くっていうアイディアで練習はできるようになった、ゲリラでライブをやる事でライブの問題も解決した!」

あなた
「……1回目のゲリラライブは、うまくいかなかったよ」


「確かに1回目は、部の広報担当の大人たちに情報が漏れて、被せられちゃったけど、2回目からはうまくできたじゃん!」



「それを見てアタシは思った、「同好会側」の問題は、君がどうにかしてくれるって」


「君なら大丈夫だって思ったんだよ!」

あなた
「……何それ」

235: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:48:54.04 ID:o69TNON4

「アタシも、もしかしたら愛さんが一人で勘違いしているだけ、君は本当は怒っているかもしれないって、何日か経ってから思ったよ」


「だから、何度か君の事を見に行った。ミアチの件もそのつもりだった」

あなた
「ミアちゃんの件……?」


「さっき君が、試されている、どうして頼むのか、とか言ってたけど、当たりなんだよ。アタシ、君が怒っているか試しにいったんだ」


「アタシ、同好会の事はあれから君に任せっぱなしにしていたから、かすかすがいうように君がアタシを助ける「義理」がない」


「それに愛さんなら、大勢の友達にお願いしても、しおってぃーを通して生徒会の人たちに頼んだって良かった」


「君からしたら、やる必要のないお願いだったと思う、やるにしてもかすかすみたいに、文句なり疑問なりをぶつけて当然だったと思うよ」


「でも君は文句も疑問も1つも言わなかった。ミアチのいきそうな場所の心当たりを、アタシに聞いてくれた」


「これで、アタシは自信が持てた。キミは私の味方だ、アタシがやりたい事をサポートしてくれるんだ」


「活動場所が違っても、言葉で何も伝えなくても、分かってくれる、通じ合ってるって思えた」

236: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:50:49.07 ID:o69TNON4

「だから、アタシは完全に調子に乗って「勝ちたいって気持ち」と「ランジュを理解する」にだけ、全力を向ける事にした」


「同好会の方は、君が絶対にどうにでも解決してくれる、っていう安心感ができたから」

あなた
「……」


「もう合同イベントの時には、アタシはほとんどせっつーに勝つことしか頭になかったよ」


「後から思い返すと、せっつーは練習できない期間があったから、公平な条件の勝負じゃなかったんだよね。それでもアタシは負けたんだけどさ」


「そんな事も気づけないくらい、アタシは勝ちたい気持ちに目を向けてたんだね」


「かすかすに負けたカリンの気持ちにも気づけなかったし……本当に周りを見なくなった」



「そして、最後の「ランジュを理解する」についても、君は帰ろうとするランジュを止めるのに協力してくれた」


「何一つ、ランジュに対して、アタシ達に対して嫌な顔も、文句も怒りも見せずに、ミアチに正論言われても「後にしよう」って」


「アタシは、やっぱり君が「スクールアイドルが大好き」で、応援してくれる、絶対に力になってくれる、それが君の楽しみでもあるんだ、ってもう確信できた」

あなた
「……」


「これで、ランジュを引き留めれば、アタシは勝ちたい気持ちをぶつけるイベントができて、同好会は練習もライブもできるようになって、ランジュも友達ができて同好会と和解して、やりたい事3つ全部できた!ってそう思ったよ」

237: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:53:40.98 ID:o69TNON4

「だから、昨日ランジュが君から許してもらえなかった、って聞いて、アタシはワケ分かんなくなった」


「何かの間違いだと思って同好会に行ったら、アタシの知らない君がいた。冷たくて、怖い君が」


「今までみたいに、愛さんが何か言ったら、君からは愛さんが望む返事がくる、そう思ってた所に、君の口からは聞きたくないような言葉が次々に出てきて……」


「急に梯子を外されたっていうか、期待を裏切られた気がして、アタシも気づいたら怒っちゃってた」


「特に、君がアタシとカリンの事を「分からない」って言ったとき、すごくヤバかった」


「だって、君はアタシの事を分かってくれたから、私が部に行ってもサポートしてくれてたんだ、ってそのはずだったのに……今までのアタシが考えてたことが全部崩れていく気がして」


「もう口が勝手に動いてて、気づいたら、薫子さんに止められてた」


あなた
「……今話してくれたのが、愛ちゃんの気持ちなの?」


「うん」

241: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 00:57:08.40 ID:o69TNON4
あなた
「じゃあ、勝ちたい気持ちを叶えるために部に行ったのは、やっぱり私じゃ勝つために役に立たないからなんだよね」


「違うんだよ……当初のアタシがせっつーを意識して、チラチラそっちを見ちゃって練習に集中できないから、物理的に目に入らないようにしたかっただけ」


「果林はライバル意識を入部直後から持ってたから、もう対応してるかもしれないけど、アタシは同じ部屋の他人を意識するの初めてだから、うまく練習できなくてさ」


「部でプロから、どんな環境でも練習する方法を学んだら、後はもうどっちでやってもよかったよ……ただ、そのまま部にいる方がランジュをどうにかするのに都合が良かった」

(どんな環境でも練習する……合宿の時、ランジュさんが私を前にしても平然と練習ができていたから、部にはその方法があるんだろうな)

あなた
「正直、今になってこんな説明を聞いても、私はもう愛ちゃんの言った言葉を素直に信じられないよ」


「そだよね……だって、アタシが君にやってきた事は、君が悩んで苦しんでいるのに、一人で舞い上がって私だけやりたい事やって、楽しんで笑顔になって……」


「アタシがやりたい事やってる陰で、どんだけ君は不幸になったの……?」


「こんなの愛さんの事分からなくなって、怒って当たり前じゃん」


「謝って許される事じゃないけど、ごめん」

243: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:00:55.32 ID:o69TNON4
あなた
「……愛ちゃんを信じられないけど、愛ちゃんを好きな気持ちもまだ残ってるよ」

あなた
「好きだから、相談してほしくて、黙って退部されて苦しかった。好きだったから、昨日までどうにか頑張ってたんだと思う」

あなた
「最後には、好きより悲しさとか苦しさとかが上回っちゃったけど……」


「嫌いじゃないって、まだ言ってくれるの?」

あなた
「愛ちゃんを嫌いになれたら楽だったと思うよ、「同好会には帰ってこないで」とか「もう愛ちゃんを見たくない」でお別れできたから」

あなた
「でも、私の心の中には、愛ちゃんがこのままいなくなったら嫌な私が残ってる。何かの奇跡が起きて、また愛ちゃんと楽しく活動できる日が来るんじゃないかって希望を捨てきれない」


「愛さんの事信用できないのに?」

あなた
「そう、信用できないけど、嫌いにもなれないから、もう私には身動きが、とれないんだ」

244: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:03:56.72 ID:o69TNON4

「それって、どういう……」

あなた
「愛ちゃんの事を完全に嫌いになれたら、離れて、忘れて、過去の思い出にしておしまいだった。でも、嫌いになり切れないから、離れていったら辛くなる」


「じゃあ、アタシは君のそばにいればいいの?」

あなた
「愛ちゃんの事を信用できないから、いつかまた黙って離れていくんじゃないか、隠し事しているかも、嘘をついているかも、助けてくれないかも……。そんな風に怯えて、苦しくなる」


「ちょ、ちょっと!? 君、アタシにどうしてほしいの? アタシはどうすればいいの、キミはどうしたら笑って楽しくなれるの!?」

あなた
「もう! どうしようもないんだよ!」

あなた
「私は愛ちゃんと離れても辛くなるし、近くで一緒に活動しても怖い、苦しい。 だから、もう何を選んでも2人で笑って楽しくなれない、それが私と愛ちゃんの関係の、行き止まり、ゴールなんだ」

あなた
「……私も、もっと早くどこかで怒ってれば、気持ちを吐き出してれば、こんな結末にはならなかったから、それは、ごめんね」


「……おねーちゃんに、言われたんだ。部に行ってからのアタシ、ぶちょーの話、全然してないって」


「アタシを笑顔で受け止められる余裕のある人ばかりじゃないって……それに気づかないで君をほったらかしにした結果がこれなの?」



『誰にも気を遣わず、頭の中が空っぽになるくらい好きなことに向き合いたい、本気になりたい』



「みんなの笑顔とか楽しさ以外にやりたい事を見つけたら、君の笑顔と楽しさが無くなるなんて結末なの?」

あなた
「……これが、私たちの結末だよ、愛ちゃん」


「ぐっ、うぅっ……」

(部屋の中には、涙を流す愛さんと、一緒に泣くこともできなくなった私が残った)

246: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:08:58.97 ID:o69TNON4
スクールアイドル部 部室

ランジュ
「愛! どうだった? あの子と思いっきり話した感想は?」


「……ごめん」

ランジュ
「何よその反応は、友達と仲直りできたんでしょ?」


「……」

ランジュ
「えっ、まさか……できなかったの?」


「うん……」

ランジュ
「じゃあ、前みたいに2人で楽しく活動したりは?」


「もう、楽しくは、ならないよ……」

ランジュ
「……分かったわ」

……

カウンセリングルーム

(……そろそろ、外にいるランジュさんを呼びにいこうかな)

バンッ!

ランジュ
「待たせたわね! 大本命のランジュが来たわよ! たくさん話してのどが渇いたでしょ? この高級なお茶でも飲みなさい」

あなた
「……どうも」

(呼んでないのに勝手に入ってきたランジュさんから、頂いたお茶をのんだ)

ランジュ
「アナタ! 早速だけどランジュから2つお願いがあるの、聞いてちょうだい!」

あなた
「……お願いって……ランジュさんには悪いけど、私は言いたいことがたまってるから、先に吐き出させてほしいな」

ランジュ
「そう……なら先にアナタがランジュに言いたい事を言っていいわよ」

あなた
「うん、何から言おうかな……」

248: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:10:53.96 ID:o69TNON4

あなた
「ランジュさん、最初に私たちが会った日の事、覚えてる?」

ランジュ
「もちろん、覚えてるわ。ランジュ、記憶力にも自信があるのよ」

あなた
「あの時のランジュさんは、みんなについて私にこう言ったよね?」

ランジュ
『さらにアタシを輝かせる最高の光になってくれるはずなのよ』

ランジュ
「ええ、言ったわ」

あなた
「全然、この前と言ってること違うじゃない。友達が欲しいのと、自分を輝かせるためにみんなを利用するのは、同じじゃないよ!」

ランジュ
「アナタよりランジュの方がすごい、ってアナタに示したかったから、友達が欲しいとは言わなかったわ」

あなた
「友達が欲しいのと、自分の方がすごい、に何の関係があるの?」


ランジュ
「アタシは同好会からみんなを連れてきたいから、アタシとアタシが用意した環境がいかにアナタより優れているかを示していたの。でも、1つだけランジュがあなたに勝てないものがあった」

ランジュ
「それが、みんなと友達かどうかよ」

ランジュ
「友達が欲しい、って言ったら、ランジュが今は同好会のみんなと友達じゃない、って言ってるみたいじゃない? あなたにランジュと部の優秀さを示して、早く諦めてほしいのに、ランジュのできてないところを示しても意味がない、って思ったわ」

ランジュ
「ただ、このランジュといえども、あの時に一言だけもらしちゃったけど」

あなた
「一言?」

ランジュ
『アタシとアタシの友達がスクールアイドルをやるんだから、最高の環境でなくっちゃ』

ランジュ
「アナタと部室で話した時、うっかり、そう言っちゃったわ」

あなた
「……最初からランジュさんがもっと素直に目的をいってくれれば、こんな事にはならなかったかもしれないのに」

ランジュ
「そうね、ランジュは同好会のみんなには「一緒に遊びたい」って気持ちを伝えていたつもりだけど、アナタに対しては一切伝えなかったわ。これについてはアタシが悪かったわ、ごめんなさい」

249: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:14:04.41 ID:o69TNON4
あなた
「……ランジュさん、どうして私に対して急に謝る気になったの」

ランジュ
「空港でみんなと会うまでは、ずっとあなたの事、みんなを同好会に縛り付ける悪い子、ランジュの友達作りを邪魔する悪者だと思ってたし、嫉妬もしてた。だから、罪悪感なんて全くなかったわ。官軍が賊をやっつける、っていうの? そういうつもりでランジュは自分を正当化してた」

あなた
「私の事、そんな風に思ってたんだ……」

ランジュ
「ええ。ただ、空港でみんなと一緒にランジュに会いに来てくれて、お水渡してくれた時、「もしかしたら、この子は悪い子じゃないのかもしれない」って思い始めたの」

ランジュ
「そうしたら、悪い子じゃないアナタにひどい事を言ってたランジュの方が、だんだん悪い子に思えてきたのよね。だから、謝りに行ったわ」

ランジュ
「改めて、ひどい事を言ってごめんなさい」

あなた
「謝罪してくれるのはうれしいけど、今の説明じゃ納得しきれないよ」

ランジュ
「あら、何が納得できなかったのよ?」

あなた
「昨日の謝罪の中には、私に対する言葉以外にも、やり方が良くなかったって内容も入ってた」

あなた
「やり方について、練習させないとか、ライブさせないとか、最初から悪いって、ひどい手段だって分かっててやってたの?」

ランジュ
「そんなわけないでしょ! みんなにとって良い事だと思ってやったの!」

あんた
「どう考えたら、あれがみんなにとって良い事になるの!?」

251: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:16:09.18 ID:o69TNON4
ランジュ
「まず、アタシの部に来た方が絶対に幸せだという自信があったからよ!」

ランジュ
「同好会より部の方が施設も豪華だし、曲も、練習も、全てにおいて質が高い。部にいた方がどう考えても幸せになれる、って思ってたわ」

ランジュ
「次に、あの子たちが部に来てくれないのは、「変わるのが嫌」だからと思った。なんとなく今のままでいい、って気持ちね」

あなた
「それで、あんな委員会を?」

ランジュ
「そうよ、人を直接動かせないなら、ルールを作って人を誘導する、それが人の上に立つ者に必要な素質だって、ママからよく言われてるわ」

ランジュ
「アナタだって今まで登校に使っていた道が工事中だったり、立ち入り禁止になったら別の道で登校するでしょ?」

あなた
「……理屈は分かるけど」

ランジュ
「練習やライブをするには、部に来なきゃいけない、ってルールを作ったら、それらをやるために必ず部に来るって思ったけど……来たのは愛と果林だけ。残ったあの子たちは練習もライブも我慢して、アナタを待つ事を選んだわ」

ランジュ
「だから、最後はそのアナタにみんなを部に連れてこさせるため、アナタを諦めさせるために続行することにした」

ランジュ
「そして、アナタは別の学園で練習して、ライブもオンラインやゲリラで実施するようになって、このルールは無意味になったわ」

252: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:20:01.99 ID:o69TNON4
あなた
「私が、たまたま何とかできたから、みんなが部に来なかったから、有効じゃなかったから、あんなやり方間違ってたと思うって事?」

ランジュ
「そういう意味で言ったんじゃないわ……間違っていたのは「ランジュの部にいた方がみんなが幸せになれる」っていう最初のアタシの考えよ」

ランジュ
「この前の合宿で、家に帰った後もまだランジュはお腹が痛くて……ママに言われたわ」


理事長
『ちょっと無人島から戻るまで我慢すれば、そんなひどい料理より、いくらでも質の良い美味しいもの食べれるじゃない。ランジュったらそんなにお腹がすいて我慢できなかったの?』


あなた
「お腹が痛かったのは、確かせつ菜ちゃんの料理を食べたからだよね……」

ランジュ
「ママの言ってる事は正しいと思うわ。せつ菜はシェフじゃないし、合宿上にあった残り物で作った中華料理だから、プロのシェフが最高品質の食材で作った料理の方が美味しいでしょうね」

ランジュ
「それでも、アタシはせつ菜が作ってくれた料理が食べたかった、完食したかったわ」

ランジュ
「……その時、みんなが部に来ない理由がちょっと分かった気がした。質が劣っていても、そっちの方が良い時もあるって」

あなた
「……そう」

ランジュ
「だから、それからは高い品質を口にして、みんなを部に誘うのはもうやめにしたわ」

(そういえば、栞子ちゃんのライブ前後では、ランジュさんの勧誘を見かけなかった気がする)

253: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:22:38.85 ID:o69TNON4
あなた
「理由とか、ランジュさんが何を考えていたのかは分かったけど……」

あなた
「やっぱり、私はランジュさんの事、許せないよ……!」

あなた
「私たち以外にも、色んな人にも迷惑かけて」

ランジュ
「アナタたち以外? 誰よ?」

あなた
「監視委員会の2人だって、元同好会のファンだったんだよ。ランジュさんが栞子ちゃんに監視なんてさせなければ、普通にライブを見れたのに!」

ランジュ
「そうね……あの2人にも後で謝りに行くわ」

あなた
「音ノ木坂学院のみんなにも、心配と迷惑かけたよ」

ランジュ
「アナタ達が練習をするのを手伝ってくれた人たちよね? その学校にも謝りに行きましょう」


あなた
「……今更謝られたって」

あなた
「いくら謝られたって」

あなた
「どれだけ私や同好会のみんなが苦しんだか、ランジュさんに分かるわけがないよ!」

ランジュ
「……」

あなた
「ランジュさんには、ついこの間まで友達いないんだから! それに何も取られたことだってないんでしょ!?」

ランジュ
「無いわ。でも、無くなってしまう悲しみは想像できるわよ」

254: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:27:14.48 ID:o69TNON4
あなた
「できるわけない!」

ランジュ
「できるわよ! 歩夢が今日アタシに見せてくれた、アナタ達の思い出があるから」

あなた
「歩夢ちゃんが……?」

ランジュ
「今日、歩夢がアナタの部屋から今までの思い出が詰まった、アルバムとか写真とか、日記とか、配信記録とか、色々持ってきてくれたわ」

あなた
「私の部屋から!?」

ランジュ
「さっきまでみんなで一緒に見てたけど……アナタが本当に羨ましいというか嫉妬しちゃったわ」

ランジュ
「まぁ、ランジュもみんなとお友達になれたから、これからはランジュもみんなと色んなことできるし、無問題なんだけど」

あなた
「っ、私の事怒らせたいの!? 私たちはランジュさんのせいで―」

ランジュ
「できなくなったわよね、色んな事……」

あなた
「そうだよ!」

ランジュ
「アタシも、みんなとやっと友達になれたのに、急にいろんなことを禁止されたら……って想像すると、すごく腹が立つわ」

ランジュ
「だから、同好会のみんなやアナタがランジュに活動を禁止されてどんな気持ちだったか、少しは分かるようになった」

ランジュ
「アナタたちの友達との楽しい時間を無茶苦茶にして、本当に、悪かったわ。ごめんなさい」

あなた
「それは、私だけじゃなくて、かすみちゃんとかエマさん、同好会のみんなに謝ってよ!」

ランジュ
「ええ、必ず謝りに行くわ」


ランジュ
「ただ、ランジュがアナタ達の思い出を見ていて、一番悪い事をしたと思ったのはそこじゃないわ」

あなた
「…どこだと思ってるの?」

255: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:30:56.77 ID:o69TNON4
果林
『どこまでも付いてきなさい、後悔はさせないわ』


『そのためには、君のサポートが絶対なんだ……。これからも、愛さんのそばにいてくれる?』


ランジュ
「アナタと果林、愛がとっても仲良しの友達だったところ」


ランジュ
「ランジュはあの2人とアナタは、そんなに仲良くなかったと思ってたわ。だから、ランジュの部に来てくれたって認識してた」

ランジュ
「昨日だって「友達じゃない」なんてアナタが言うし、あんな喧嘩するからやっぱり仲が良くないんだって、そう思ってたのよ」

ランジュ
「でも、本当はアナタたちはあんなに仲が良くて、楽しそうに活動してた」

ランジュ
「それが、ランジュが色んな事をしたせいで、こんな風になっちゃったのよね」

あなた
「……そうだよ」


ランジュ
「果林はアナタとの事を思い出せなくなって、愛はもう楽しく活動できないって、そんな感じのことを言ってたわ」

ランジュ
「アナタ達を友達でなくしてしまった事。これが、ランジュのやった一番悪い事だと思う」

ランジュ
「ランジュ、アナタに言われた通り友達がいなかったから、友達同士がこんな風に喧嘩して、今みたいな状態になっちゃうなんて、知らなかった」

あなた
「分かっているの……? ランジュさんのせいで!」

ランジュ
「アタシも栞子やミア、友達になってくれた歩夢やかすみたちと、こんな風になるかもしれないって考えていたら……すごく嫌な気分になるわ」

あなた
「ランジュさんが、友達を作って笑っている陰で、私と愛ちゃん、果林さんは友達になれなくなった!」

あなた
「もう二度と戻れない! 楽しく笑うことも、一緒に上を目指すこともできないんだよ!!」

256: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:35:45.65 ID:o69TNON4


ランジュ
「アナタも果林や愛と同じように、もうダメだって、友達にはなれないって思ってるのね」

あなた
「そうだよ、今更ランジュさんを帰国させても、みんな悲しむし、私と2人の仲が元に戻るわけじゃない!」

あなた
「もうどうすれば良いのか、何にも思いつかないんだよ……!」

ランジュ
「……ランジュに怒っているせいで、アナタの頭が怒りでいっぱいになっているのなら、ランジュが、その怒りを引き受けるわ」

あなた
「……?」

ランジュ
「さぁ、その怒りを全部、ランジュに見せてみなさい!」


バキッ!

あなた
「痛っ!」
(気付いたら私は椅子から転げ落ちて、手で頬を抑えていた)

(ランジュさんの動きは見えなかったけど、私は殴られた? 私が殴るんじゃなくて、私の方が殴られたの?)

ランジュ
「ランジュがやりやすくしてあげたわよ、ほらっ、やり返してきなさいよ!」

ランジュ
「それとも前みたいに、アタシに何を言われても、何をされても平気なフリ続けるの?」

あなた
「っ!」

(自分が殴られたことに気付いたら、ランジュさんへの怒りで頭が埋め尽くされていく)

あなた
「うわああああぁぁぁぁ!!」

258: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:38:46.24 ID:o69TNON4
バギィ! ドゴッ!

ランジュ
「……ッ!」

ゴンッ!

(ランジュさんは、私に顔を殴られて、ドリンク用の冷蔵庫に頭をぶつけた後、そのまま座り込んだ)

あなた
「はぁ…はぁ…」

ランジュ
「……どう、満足?」

あなた
「……少しは」

ランジュ
「そう、ならいいわ」

(私の手を見ると、一部が赤くなっていた)

あなた
「血……?」

(手にこびりついた血を見て、自分が人を殴ってしまったことに気付き、頭が冷静さを少し取り戻す)

あなた
「あっ、ラ、ランジュさんごめんなさい、大丈夫!?」

ランジュ
「無問題ラ」

(ランジュさんはそう言ったけど、鼻から血が流れている)

259: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:42:12.97 ID:o69TNON4
あなた
「すぐに、部室の設備で手当をしてもらうから」

ランジュ
「待ちなさい、アナタが言いたい事を言ったら、今度はランジュのお願いを聞くんでしょ」

あなた
「止血したら、聞いてあげるよ」

ランジュ
「今、聞きなさい!」

あなた
「もう、本当にワガママなんだから! じゃあ、早く話して!」

ランジュ
「アナタの記録を見てたけど、遠い学校のスクールアイドルにも会いに行ってたのね」

あなた
「遠い学校……浦の星女学院の事?」

ランジュ
「詳しい事はランジュには分からないけど、あの時のアナタは、初めて行く場所に、人に恐れずに向かっていく、行動力と勇気がきっとあったはずよ」

ランジュ
「栞子に色々されてもめげずに、スクールアイドルフェスティバルを開催まで持ち込んだ、って記録されてたし、みんなからもそう聞いた。アナタにはそんな困難に立ち向かう力もあるはず」

ランジュ
「それをもう一度、取り戻して。これが1つ目よ」


あなた
「……簡単に言ってくれるけど、今の問題とスクールアイドルフェスティバルは、別のタイプの問題なの!」

ランジュ
「アナタの人生において、初めてのタイプの困難、という点では同じはずよ」

ランジュ
「実は過去に友達と仲直りに失敗した、そんな経験でもあったりするのかしら?」

あなた
「それは……ないけど」

ランジュ
「じゃあ、無問題ラ」

260: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:44:16.94 ID:o69TNON4
ランジュ
「それと、今からアナタがスクールアイドル部の部長よ」

あなた
「はぁ!?」

ランジュ
「もともと、アナタがトップだったところに、ランジュが横入りしちゃったんだもの。アナタに返すわ」

あなた
「さっきから無茶苦茶ばかり言って!」

ランジュ
「部はアナタが好きにしていいし、ランジュの事はずっと嫌いで許せないままでいいわ。だから、愛と果林と新しく、仲良くなってあげて」

ランジュ
「愛と果林の友達として、ランジュはそう願うわ。これが2つ目よ」

261: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:48:04.79 ID:o69TNON4
あなた
「勝手な事言うね、本当に……」

ランジュ
「それじゃあアタシ、目の前がぐるぐるして真っ暗になってきたから……拜拜」

ランジュ
「……」

(そう言ってランジュさんは目を閉じ、動かなくなってしまった)

あなた
「ランジュさん、ちょっと、ランジュさん!」

ランジュ
「……」

あなた
「……本当に、言いたい事ばかり勝手に言って、強引で自分勝手で、周りを巻き込んで」

あなた
「パワーに溢れてて、行動力がありすぎて、周りの気持ちを考えられない癖に変な親切をしようとして」

あなた
「そういうところが魅力的で、大っ嫌い!!」

ランジュ
「……」

あなた
「……っ……」

262: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:54:06.62 ID:o69TNON4
……

後日

スクールアイドル同好会 部室

歩夢
「あっ、待ってたよ!」

しずく
「一時は本当にどうなる事かと思いました……」

彼方
「心配で最近はよく眠れなかったよ~」

璃奈
「でも、大事にならなくて、良かった」

エマ
「これで、やっとみんなそろったね!」

せつ菜
「はい! これでスクールアイドル同好会が再スタートです!」


かすみ
「先輩~!! かすみん、ずっと先輩を待ってましたぁ~~!!」

あなた
「私の自宅謹慎で迷惑かけてごめんなさい。それと、本当に、みんな、ありがとう」


(あの後、理事長の娘に暴力を振るい、流血させる怪我をさせた事で、学園の怒りを買った私は退学処分となるはずだった)

(ただ、ランジュさんが「最初に自分から殴りかかった」と強く主張して、生徒同士の喧嘩の結果、片方が怪我をしたという話になり、私は自宅謹慎となった)


ランジュ
「アナタの素人パンチで、このランジュが大怪我するわけないじゃない、ママが騒ぎすぎなのよ」

栞子
「その、素人パンチを受けた結果、うっかり頭を打って失神し、大事にしたのは、ランジュだと思いますが」

ミア
「ベイビーちゃん、今度ランジュを殴りたいときは、ボクの部屋にそういう用途のバットがあるから、それでランジュのhipを叩いていいよ」

あなた
「うん、ミアちゃん、ありがとう」

ランジュ
「ウェイシェンマ! もう満足したでしょ!」

263: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 01:59:43.45 ID:o69TNON4
果林
「……その、おかえりなさい」


「ぶちょー、復帰おめでとう」

あなた
「うん、2人とも、ありがとう……」

(私と2人との仲は、やっぱり元には戻らなかった。会話にもどこか、ぎこちなさが残る)

果林
「その、今度キミと、一緒に行きたいお店があるんだけど、お願いできるかしら?」

あなた
「……私で本当にいいなら」

果林
「うん、キミがいいわ。キミと一緒に過ごして、あの時の答えを見つけたいから」

あなた
「うん……待ってるね、果林さんの答え」


「えっと、君と一緒に見たい手紙が、あるんだけど……」

あなた
「愛ちゃんなら、一人でも大丈夫じゃないかな」


「これは、君と一緒に見たいよ」

あなた
「分かった、後で見よう」


(でも、今までのようには戻れなくとも、新しく仲良くできる、そんな未来は、もしかしたら、あるかもしれない)

264: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 02:02:37.70 ID:o69TNON4
……

栞子
「では、部活動の名称は「スクールアイドル同好会」でよろしいでしょうか」

あなた
「部活だけど、同好会……」

栞子
「その、既にみなさん、学園のデータ上はスクールアイドル部に所属していて、その部の名称と代表者を変えるという事になるので……」

あなた
「そ、そうだよね……」

栞子
「では、学園に対して、そのように公式サイトなどで記載するよう伝えてきます」

あなた
「うん……」

(これでよかったのかな? やっぱり、あの時、ランジュさんを許していれば、もっとはやくスクールアイドル活動に戻れたし、愛ちゃんや果林さんともこんな事にはならなかった気がする)

(今頃は、校内オーディションを受けて、エキシビションに向けて盛り上がってたんじゃないかな……)

(ちなみに、薫子さんは私の謹慎中にも、自宅に来てくれて、校内オーディションは気にしないでいい、と言ってくれたけど)

薫子
『気にしないでね~謹慎中に学校来ちゃダメよ? あっ、ゴメン、ちょっと失礼。はい、薫子ですけど……はい……はい……虹ヶ咲学園だけ、当日まで内緒のシークレット枠みたいな感じで……え、ダメ!?』

(とても大変そうだったし、悪い事をしてしまった気がする)

265: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 02:08:13.44 ID:o69TNON4
(ただ、私がランジュさんを許さない選択をした事で、私の気持ちは消えずに済んだ)

(そんな私の気持ちは、大事にしていきたいと思う)


ランジュ
「アナタ、ちょっといい?」

あなた
「?」

(スクールアイドルが好き、応援したい、それだけじゃなかった私の気持ち)

ランジュ
「アナタがいない間に同好会のみんなと、生徒会のみんな、他の学校の人たちに謝ってきたわ。色々言われたわよ」

あなた
「そう、良かった」

ランジュ
「それについて、アナタに伝えたいのだけど、その前に……」

あなた
「?」

ランジュ
「ランジュの事嫌いでもいいし、許さなくてもいいとは言ったけど、やっぱり一緒に活動するなら、友達になった方がいいわ。だからアナタ、ランジュのお友達になってくれるかしら?」

あなた
「ランジュさん。お友達になる前に、私は言い返さないと、絶対に気が済まない言葉があるんだ」

(怒りとか悲しみ、苦しみも含めた私の気持ちを)

ランジュ
「え、何?」

あなた
「私、ランジュさんはいらないの」


終わり

266: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 02:11:51.16 ID:o69TNON4
これで完結です。
誤字脱字や呼称ミスがあり、申し訳ありませんでした。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

278: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 12:24:29.68 ID:o69TNON4
おまけ

夜 ランジュの自宅

理事長
「ランジュに、ランジュにやっと友達が~!! それも、あんなに大勢!!」

ランジュ
「ママ、今日はお酒何本飲むつもり?」

理事長
「何本でも飲むわよ! 今日を祝わないでいつ祝うの!」

ランジュ
「ママ、大分酔ってるわね……ランジュが面倒みてあげるわ」



理事長
「それにしてもぉ!…ランジュを殴ったぁ!…ヒック…あの子は本当に退学じゃなくていいの?」

ランジュ
「いいに決まってるでしょ、ちょっと意地悪言われたけど、ランジュのお友達……じゃないかもしれないけど、仮にそうだとしてもお友達になる予定なんだから」

理事長
「ランジュ、優しいわねぇ……ヒック!……もし意地悪なあの子に何かされたら、ママに言いなさぁい! 今度こそあの子を、やっつけるんだからぁ!……ヒック」

ランジュ
「別に言わな……「今度こそ」? ママ、何かあの子にしてたの?」

279: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 12:25:16.47 ID:o69TNON4
理事長
「してたわよぉ、ランジュからを手出しするなって言われたけど……ヒック!……心配だったからぁ、ゴメンなさいねぇ……手を出しちゃってぇ……」

ランジュ
「それより、具体的に何をやったの?」

理事長
「部に来た子たちのぉ……ウィック!……朝香果林と、宮下愛の声を使って、あの子に聞こえるように、部を褒めまくってやったのよぉ!」

ランジュ
「果林と、愛……」

理事長
「でも、あの子ったらぁ、何回聞かせても、ピンピンしてるんだからぁ! だから、今度はあの子にも効くような……攻撃をランジュのためにするわよぉ!」

ランジュ
「……そう」

理事長
「あ、お酒無くなっちゃったぁ、ランジュ~、次の持ってきて~!」

ランジュ
「お酒の前に、ママ、いいかしら?」

理事長
「なにぃ?……ランジュ、なんでそんなに怖い顔をしてるのぉ?」



あなた
「ランジュさんから電話だ、なんだろう?」

ランジュ
「ランジュだけど、ちょっといいかしら?」

あなた
「いいけど、何の用事?」

ランジュ
「ほら、ママ! ちゃんとあの子に謝って!」


「ア………ゴ…ゴ……」

あなた
「わっ! ちょっとランジュさん、何なのこのうめき声!?」

ランジュ
「しっかりしてよママ、それじゃあ伝わらないわよ!」


「ゴ、ゴ……ゴ……メ……………」

ランジュ
「ごめんなさい、ランジュ、アナタに電話かける前にやりすぎて、ママの意識が飛んじゃったみたい。でも、これからランジュが絶対にママを連れて謝りに行くから、待ってなさい、再見!」

あなた
「な、何をやりすぎたんだろう……」

おまけ 終わり

280: (もんじゃ) 2021/08/10(火) 12:25:58.79 ID:o69TNON4
これが初ssなので過去作はないです。

改めて、長い作品になってしまいましたが、読んでいただきありがとうございます。

引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1628348144/

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